JP5243748B2 - ブタノール生産能を有する形質転換体 - Google Patents

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Description

本発明は、ブタノール生産技術に関する。詳しくは、ブタノール生産機能を付与するために特定の遺伝子操作が施された好気性細菌または通性嫌気性細菌の形質転換体、及びそれによる効率的なブタノールの製造方法に関する。
地球温暖化、及び化石資源枯渇問題を背景に、再生可能資源を原料とした“バイオ燃料”が注目されている。ブタノールは、バイオエタノールに続く次世代バイオ燃料として、高熱含量(容量当たりの熱量がエタノールの1.5倍)、低腐食性、低含水性、ガソリンへ高混合可能、及びディーゼル油への易混合性などの多くの利点を有している。
微生物によってブタノールが生成される現象は、1861年にパスツールによって初めて報告されたが、20世紀初頭、ハイム・ワイツマンが単離したClostridium acetobutylicumを用いて本格的な工業生産化が始まった。本微生物は、糖やデンプンを原料として、ブタノール:アセトン:エタノールを6:3:1の割合で生成する。この性質を利用したのが、“アセトン・ブタノール・エタノール発酵(以下「ABE発酵」と記す。)”であり、現在のバイオプロセスによるブタノール生産も基本は変わっていない。このABE発酵が大規模実利用されたのは、第一次世界大戦勃発時にも遡る。イギリスでは火薬原料に用いるためのアセトン需要が増加したが、Clostridium acetobutylicumを用いたABE発酵によって年間約3万トンが供給された。その後1917年には米国も参戦し、イギリスと同様、米国でも中西部コーンベルト地域にてABE発酵が行われ、生産されたアセトンが無煙火薬原料などに利用された。当時、ABE発酵にてアセトンと同時に得られるブタノールは、単なる副生成物であったが、その後、1920年以降の自動車産業の急速な成長によって、速乾塗料の材料として需要が拡大した。さらに、1936年にワイツマンのClostridium acetobutylicumによるABE発酵の特許切れを皮切りに、日本、インド、オーストラリア、南アフリカなどの世界各国にてABE発酵によるアセトン及びブタノールの生産が開始された。各国にて第二次世界大戦時頃まで生産が続けられたが、1950年代から1960年代にかけての石油化学工業の発達による安価な生産が可能となったことと、原料である糖蜜の動物飼料への利用増加を原因としてABE発酵法は衰退した。しかし近年、世界各国でのバイオ燃料生産利用の高まりの中で、ABE発酵を利用したバイオ燃料としてのブタノール生産研究開発が再び注目されている。
これまでにブタノールを生産する菌としては、ABE発酵菌またはブタノール・イソプロパノール発酵菌として知られるクロストリディウム属細菌のクロストリジウム アセトブチリカム(Clostridium acetobutylicum)、クロストリジウム ベージェリンキー(Clostridium beijerinckii)、クロストリジウム サッカロペルブチルアセトニカム(Clostridium saccharoperbutylacetonicum)、クロストリジウム サッカロアセトブチィリカム(Clostridium saccharoacetobutylicum)、クロストリジウム オウランティブチィリカム(Clostridium aurantibutyricum)、クロストリジウム パスツーリアウム(Clostridium pasteurianum)、クロストリジウム スポロゲンズ(Clostridium sporogenes)、クロストリジウム カダベリス(Clostridium cadaveris)、クロストリジウム テタノモルフュウム(Clostridium tetanomorphum)などが報告されている 〔Keis, S. et al., Taxonomy and phylogeny of industrial solvent-producing clostridia. Int. J. Syst. Bacteriol. 45:693-705 (1995)〕、〔George, H.A. et al., Acetone, isopropanol, and butanol production by Clostridium beijerinckii (syn. Clostridium butylicum) and Clostridium aurantibutyricum. Appl. Environ. Microbiol. 45:1160-1163 (1983)〕、及び 〔Gottwald, M. et al., Formation of n-butanol from d-glucose by strains of the "Clostridium tetanomorphum" group. Appl. Environ. Microbiol. 48:573-576(1984)〕。近年、ABE発酵研究の活発化を反映して、Clostridium acetobutylicumの標準株Clostridium acetobutylicum ATCC824株、及び高ブタノール生産株Clostridium beijerinckii NCIMB8052は全ゲノムが解読されている。
しかし、Clostridium属細菌を用いたブタノール生産には以下の(1)〜(3)の課題が存在する。
(1) Clostridium属細菌は、増殖、及びブタノールの生産において絶対嫌気性条件を必要とする。従って、嫌気条件下での培養、すなわち、培養装置内を窒素ガスなどの不活性ガスで置換するなどの煩雑な培養操作が必要である。また、増殖速度が極端に遅いために、増殖に伴うブタノール生産の速度が低い。これらの問題点を解決するには、高増殖速度の好気性微生物の利用が考えられるが、ブタノールを高効率に生産する好気条件下で増殖可能な微生物(好気性細菌または通気嫌気性細菌)は報告されていない。
(2) ABE発酵では、細胞増殖期において酢酸、酪酸が生成され、細胞増殖が停止した定常期にpHの酸性化が溶媒(アセトン、ブタノール)生成期への移行の引き金となり代謝系が大幅に変化して(以下、この現象を「代謝シフト」と記す)、アセトン、ブタノールが生成される。
また、近年の分子生物学的研究により、上記代謝シフトのメカニズムに関して以下のことが判明している。ABE発酵を行うClostridium属細菌は、細胞増殖停止後に胞子形成を行うが、胞子形成は転写因子Spo0Aによって引き起こされ、同時に本転写因子がブタノール生成に関わる遺伝子群の発現も誘導する。本転写因子は、細胞内のブチリルリン酸、及びアセチルリン酸濃度の増加によって活性化されることが報告されている。これらのリン酸生成は、pHの酸性化によって引き起こされると考えられ、従来経験的に認められていたpH酸性化によるブタノール生成に関わる遺伝子群の誘導が明らかになった。このように、発酵プロセスの厳密な制御が必要であり、発酵開始してからアセトン、ブタノールが生成されるまでに時間を要する、胞子形成期への移行によりアセトン、ブタノール生成が停止し、長時間生成が持続しない等の課題がある。
(3) ABE発酵菌に最も用いられているClostridium acetobutylicumにおいて、親株より生育が早くABE発酵能を消失した変異株(退化株)が継代培養中に増大し、主要菌株となる。これはABE発酵に関わる遺伝子群が巨大プラスミドpSOL1上に存在し、このプラスミドが脱落することによりABE発酵機能が欠失することに要因する。これがABE発酵の不安定要因の一つとなっている。
これらの課題を解決する新規ブタノール生産微生物の創製及びプロセスの開発が望まれている。
Clostridium属細菌を用いたブタノール生産技術としては、以下のような技術が知られている。例えば、特許文献1は、胞子形成に関わる遺伝子を制御することにより、胞子形成期を遅らせ、結果としてブタノール生産を向上させる技術を開示している。また、特許文献2及び非特許文献1は、連続発酵法において、gas-stripping法により、連続的にブタノールを抽出する技術を開示している。また、非特許文献2および非特許文献3は、Clostridium属細菌を固定化してブタノールを生産する技術を開示している。また、非特許文献4は、連続発酵法においてClostridium属細菌の高濃度菌体を用い、菌体をリサイクルする技術を開示している。しかし、これらは、何れもClostridium属細菌を用いる嫌気条件下でのブタノール生産技術であり、上記の(1)〜(3)の課題を解決するものではない。
また、Clostridium属細菌以外の微生物による溶媒生産技術に関しては以下のような技術が知られている。例えば、特許文献3は、好熱性の通性嫌気性細菌ジオバチラス エスピー BS-001株を用いて、セルロースから低級アルコールであるエタノールを主として生産し、その他にプロパノール(1-プロパノール)、イソブタノール(2-ブタノール)、ブタノール(1-ブタノール)を生産する技術を開示している。しかし、同文献の開示技術は、セルロースからエタノールを生産することに主眼をおいたものであり、ブタノールの生産能が不十分である。さらに、同文献は、ブタノール生成経路、ブタノール生成に関与する酵素及びその遺伝子に関する情報、及びブタノール生産能を向上するための遺伝子組換え手法などの効率的なブタノール生産技術についての有効な知見を何ら提供するものでない。
また、非特許文献5には、クロストリディウム アセトブチリカム(Clostridium acetobutylicum) ATCC 824株由来のβ-ヒドロキシブチル-CoA デヒドロゲナーゼ(HBD)、3-ヒドロキシブチリル-CoA デヒドラターゼ(別名クロトナーゼ)(CRT)、ブチリル-CoA デヒドロゲナーゼ(BCD)のそれぞれの酵素をコードする遺伝子を、エシェリヒア コリ(Escherichia coli)に導入し、好気条件下及び嫌気条件下で培養した場合の各酵素活性を測定したことが記載されている。しかし、好気及び嫌気の両条件下でBCD活性は検出されず、またブタノールは生産されていない。
国際公開公報WO2006/007530 米国公開公報US 2005089979 特開2005-261239号 Bioprocess and Biosystems Engineering, Vol.27, 2005, p207-214. Pakistan Journal of Biological Sciences, Vol.9, 2006, p1923-1928. Applied Biochemistry and Biotechnology, Vol.113-116, 2004, p887-898. Journal of Biotechnol, Vol.120, p197-206. Journal of Bacteriology, Vol. 178, 1996, p3015-3024.
本発明は、効率よくブタノールを生産することができる微生物、及び微生物を用いて効率よくブタノールを製造することができる方法を提供することを課題とする。
上記課題を解決するために本発明者は研究を重ね、アセチル-CoA アセチルトランスフェラーゼ活性を有する酵素をコードする外来性遺伝子、β-ヒドロキシブチル-CoAデヒドロゲナーゼ活性を有する酵素をコードする外来性遺伝子、3-ヒドロキシブチリル-CoAデヒドラターゼ活性を有する酵素をコードする外来性遺伝子、ブチリル-CoAデヒドロゲナーゼ活性を有する酵素をコードする外来性遺伝子、ブチリルアルデヒドデヒドロゲナーゼ活性を有する酵素をコードする外来性遺伝子、及びブタノールデヒドロゲナーゼ活性を有する酵素をコードする外来性遺伝子を好気性細菌または通性嫌気性細菌に導入した形質転換体は、ブタノールを効率よく生産することを見出した。
本発明は、上記知見に基づき完成されたものであり、以下の微生物及びブタノールの製造方法を提供する。
項1. 以下の(a)〜(f)の遺伝子を好気性細菌または通性嫌気性細菌に導入したことを特徴とする、ブタノール生産能を有する形質転換体。
(a)アセチル-CoA アセチルトランスフェラーゼ活性を有する酵素をコードする外来性遺伝子
(b)β-ヒドロキシブチル-CoAデヒドロゲナーゼ活性を有する酵素をコードする外来性遺伝子
(c)3-ヒドロキシブチリル-CoAデヒドラターゼ活性を有する酵素をコードする外来性遺伝子
(d)ブチリル-CoAデヒドロゲナーゼ活性を有する酵素をコードする外来性遺伝子
(e)ブチリルアルデヒドデヒドロゲナーゼ活性を有する酵素をコードする外来性遺伝子
(f)ブタノールデヒドロゲナーゼ活性を有する酵素をコードする外来性遺伝子
項2. (a)〜(f)の遺伝子が、クロストリジウム属細菌由来の遺伝子である項1に記載の形質転換体。
項3. (a) アセチル-CoA アセチルトランスフェラーゼ活性を有する酵素をコードする外来性遺伝子として、配列番号1の塩基配列からなるDNA、又は配列番号1とストリンジェントな条件でハイブリダイズし、かつアセチル-CoAアセチルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドをコードするDNAを用い;
(b) β-ヒドロキシブチル-CoAデヒドロゲナーゼ活性を有する酵素をコードする外来性遺伝子、(c) 3-ヒドロキシブチリル-CoAデヒドラターゼ活性を有する酵素をコードする外来遺伝子、及び(d)ブチリル-CoAデヒドロゲナーゼ活性を有する酵素をコードする外来遺伝子として、配列番号2の塩基配列からなるDNA、又は配列番号2とストリンジェントな条件でハイブリダイズし、かつβ-ヒドロキシブチル-CoAデヒドロゲナーゼ活性、 3-ヒドロキシブチリル-CoAデヒドラターゼ活性、及びブチリル-CoAデヒドロゲナーゼ活性を有するポリペプチドをコードするDNAを用い;
(e)ブチリルアルデヒドデヒドロゲナーゼ活性を有する酵素をコードする外来遺伝子、及び(f)ブタノールデヒドロゲナーゼ活性を有する酵素をコードする外来遺伝子として、配列番号3の塩基配列からなるDNA、又は配列番号3とストリンジェントな条件でハイブリダイズし、かつブチリルアルデヒドデヒドロゲナーゼ活性、及びブタノールデヒドロゲナーゼ活性を有するポリペプチドをコードするDNAを用いる項1又は2に記載の形質転換体。
項4. さらに、以下の(g)及び(h)の遺伝子が導入された、項1〜3の何れかに記載の形質転換体。
(g) エレクトロントランスファーフラボプロテインαサブユニット遺伝子
(h) エレクトロントランスファーフラボプロテインβサブユニット遺伝子
項5. (a)アセチル-CoAアセチルトランスフェラーゼ活性を有する酵素をコードする外来遺伝子としてラルストニア ユートロファ(Ralstonia eutropha)由来のPhaA遺伝子を用い、(b)β-ヒドロキシブチル-CoAデヒドロゲナーゼ活性を有する酵素をコードする外来遺伝子としてラルストニア ユートロファ由来のPhaB遺伝子を用いる、項1に記載の形質転換体。
項6. (d)ブチリル-CoAデヒドロゲナーゼ活性を有する酵素をコードする外来遺伝子として、ストレプトミセス アベルミティリス(Streptomyces avermitilis)、ストレプトミセス コエリカラー(Streptomyces coelicolor)、ストレプトミセス コリナス(Streptomyces collinus)、又はストレプトミセス シナモネンシス(Streptomyces cinnamonensis)由来のccr遺伝子を用いる項1に記載の形質転換体。
項7. 好気性細菌または通性嫌気性細菌が、エシェリヒア コリ(Escherichia coli)又はコリネ型細菌である項1〜6の何れかに記載の形質転換体。
項8. 形質転換体がエシェリヒア コリ(Escherichia coli)JM109/pBUT1(受託番号 FERM P-21323)である項1に記載の形質転換体。
項9. 項1〜8の何れかに記載の形質転換体を、糖類を含有する培地中で培養する工程と、培養物からブタノールを回収する工程とを含むブタノールの製造方法。
本発明により、糖類等から極めて効率よくブタノールを生産する組換えブタノール生産形質転換体が提供された。
本形質転換体は、好気条件下で増殖可能な微生物(好気性細菌または通気嫌気性細菌)であることから、増殖速度が速く、その分、ブタノール生産速度が高くなる。このため、ブタノール生産プロセス設計及び運転が容易である。
本発明により、再生可能資源を原料とした効率的なブタノール生産が可能となり、工業生産における合理的プロセスを実現することが出来る。
以下、本発明を詳細に説明する。
(I)ブタノール生産能を有する形質転換体
本発明のブタノール生産能を有する形質転換体は、以下の(a)〜(f)の遺伝子を好気性細菌または通性嫌気性細菌に導入した形質転換体である。
(a)アセチル-CoA アセチルトランスフェラーゼ活性を有する酵素をコードする外来性遺伝子
(b)β-ヒドロキシブチル-CoAデヒドロゲナーゼ活性を有する酵素をコードする外来性遺伝子
(c)3-ヒドロキシブチリル-CoAデヒドラターゼ活性を有する酵素をコードする外来性遺伝子
(d)ブチリル-CoAデヒドロゲナーゼ活性を有する酵素をコードする外来性遺伝子
(e)ブチリルアルデヒドデヒドロゲナーゼ活性を有する酵素をコードする外来性遺伝子
(f)ブタノールデヒドロゲナーゼ活性を有する酵素をコードする外来性遺伝子
宿主
本発明において形質転換の対象となる宿主は、ブタノール生産関連遺伝子群を含む組換えベクターにより形質転換され、これらの遺伝子がコードするブタノール生産に関与する酵素が発現し、結果としてブタノールを生産することができる好気性細菌または通性嫌気性細菌であれば特に限定されない。宿主としては、大腸菌、コリネ型細菌、ストレプトコッカス(Streptococcus)属細菌、スタフィロコッカス(Staphylococcus)属細菌、エンテロコッカス(Enterococcus)属細菌、バチルス(Bacillus)属細菌(例えば、枯草菌等)、ストレプトミセス(Streptomyces)属細菌などの細菌;アスペルギルス属菌などの真菌細胞;酵母、メタノール資化性酵母などの酵母細胞などが挙げられる。あるいはこれらのコンピテントセルなどが挙げられる。
好ましくは大腸菌とコリネ型細菌である。
大腸菌の中でも好ましい株として、エシェリヒア・コリ(Escherichia coli)B、W3110、W3100、CSH50、JM105、JM109、DH1、MC1060、HB101などが挙げられる。
コリネ型細菌とは、バージーズ・マニュアル・デターミネイティブ・バクテリオロジー〔Bargeys Manual of Determinative Bacteriology、Vol. 8、599(1974)〕に定義されている一群の微生物であり、通常の好気的条件で増殖するものならば特に限定されるものではない。具体例を挙げれば、コリネバクテリウム属菌、ブレビバクテリウム属菌、アースロバクター属菌、マイコバクテリウム属菌またはマイクロコッカス属菌等が挙げられる。コリネ型細菌の中ではコリネバクテリウム属菌が好ましい。
コリネバクテリウム属菌としては、コリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)R(FERM P-18976)、ATCC13032、ATCC13058、ATCC13059、ATCC13060、ATCC13232、ATCC13286、ATCC13287、ATCC13655、ATCC13745、ATCC13746、ATCC13761、ATCC14020またはATCC31831等が挙げられる。
ブレビバクテリウム属菌としては、ブレビバクテリウム ラクトファーメンタム(Brevibacterium lactofermentum)ATCC13869、ブレビバクテリウム フラバム(Brevibacterium flavum)MJ-233(FERM BP-1497)もしくはMJ-233AB-41(FERM BP-1498)、またはブレビバクテリウム アンモニアゲネス(Brevibacterium ammoniagenes)ATCC6872等が挙げられる。
アースロバクター属菌としては、アースロバクター グロビフォルミス(Arthrobacter globiformis)ATCC8010、ATCC4336、ATCC21056、ATCC31250、ATCC31738またはATCC35698等が挙げられる。
マイコバクテリウム属菌としては、マイコバクテリウム ボビス(Mycobacterium bovis)ATCC19210またはATCC27289等が挙げられる。
マイクロコッカス属菌としては、マイクロコッカス フロイデンライヒ(Micrococcus freudenreichii)NO. 239(FERM P-13221)、マイクロコッカス ルテウス(Micrococcus leuteus)NO. 240(FERM P-13222)または、マイクロコッカス ウレアエ(Micrococcus ureae)IAM1010またはマイクロコッカス ロゼウス(Micrococcus roseus)IFO3764等が挙げられる。
また、大腸菌及びコリネ型細菌は、野生株の他に、その変異株や人為的な遺伝子組換え体であってもよい。例えば、大腸菌においては、ラクテートデヒドロゲナーゼ(lactate dehydrogenase)、フマレートレダクターゼ(fumarate reductase)、フォルメートデヒドロゲナーゼ(formate dehydrogenase)などの遺伝子の破壊株が挙げられる。コリネ型細菌においては、ラクテートデヒドロゲナーゼ(lactate dehydrogenase)、フォスフォエノールピルベートカルボキシラーゼ(phosphoenolpyrvate carboxylase)、マレートデヒドロゲナーゼ(malate dehydrogenase)などの遺伝子の破壊株が挙げられる。これにより、ブタノールの生産性を向上させたり、副生成物の生成を抑制したりすることができる。
ブタノール生産関連酵素遺伝子
上記(a)〜(f)のブタノール生産関連遺伝子としては、これらの遺伝子を含むDNA断片の塩基配列が既知であれば、その配列に従って合成したDNA断片を使用することが出来る。DNA配列が不明の場合であっても、ブタノール生産関連酵素タンパク質間で保存されているアミノ酸配列をもとにハイブリダイゼーション法、PCR法により断片を取得することが可能である。さらに他の既知のブタノール生産関連遺伝子配列を基に設計したミックスプライマーを用い、ディジェネレートPCRによって断片を取得することが可能である。
上記(a)〜(f)のブタノール生産関連遺伝子はブタノール生産活性が保持されている限り、天然の塩基配列の一部が他の塩基(ヌクレオチド)と置換されていてもよく、削除されていてもよく、また新たに塩基(ヌクレオチド)が挿入されていてもよく、さらには塩基配列の一部が転位されていてもよい。これらの遺伝子誘導体のいずれも本発明に用いることができる。上記の一部とは、例えばアミノ酸残基換算で1乃至数個(1〜5個、好ましくは1〜3個、さらに好ましくは1〜2個)であってよい。
上記(a)〜(f)の遺伝子は、通常、ブタノール生産菌が保有する。ブタノールを生産する菌としては、アセトン・ブタノール発酵菌またはブタノール・イソプロパノール発酵菌として知られるクロストリディウム属細菌、例えばクロストリジウム アセトブチリカム(Clostridium acetobutylicum)、クロストリジウム ベージェリンキー(Clostridium beijerinckii)、クロストリジウム サッカロペルブチルアセトニカム(Clostridium saccharoperbutylacetonicum)、クロストリジウム サッカロアセトブチィリカム(Clostridium saccharoacetobutylicum)、クロストリジウム オウランティブチィリカム(Clostridium aurantibutyricum)、クロストリジウム パスツーリアウム(Clostridium pasteurianum)、クロストリジウム スポロゲンズ(Clostridium sporogenes)、クロストリジウム カダベリス(Clostridium cadaveris)、クロストリジウム テタノモルフュウム(Clostridium tetanomorphum)などが挙げられる〔Keis, S. et al., Taxonomy and phylogeny of industrial solvent-producing clostridia.Int. J.Syst. Bacteriol. 45:693-705 (1995)〕、〔George, H.A. et al., Acetone, isopropanol, and butanol production by Clostridium beijerinckii (syn. Clostridium butylicum) and Clostridium aurantibutyricum. Appl. Environ. Microbiol. 45:1160-1163 (1983)〕、〔Gottwald, M. et al., Formation of n-butanol from d-glucose by strains of the "Clostridium tetanomorphum" group. Appl. Environ. Microbiol. 48:573-576(1984)〕、〔Jones,D.T. et al., Acetone-butanol fermentation revisited. Microbiol. Rev. 50:484-524 (1986)〕。中でも、クロストリジウム アセトブチリカム由来の遺伝子を使用するのが好ましい。
これらのクロストリディウム属細菌におけるブタノール生成経路、すなわちアセチル-CoAからブタノールへの代謝経路は、具体的にはアセチル-CoAからアセトアセチル-CoAの反応を触媒するアセチル-CoAアセチルトランスフェラーゼ(Acetyl-CoA acetyltransferase)(別名チオーラゼ)(以下、遺伝子を「thiL」、酵素を「THL」と記す)、アセトアセチル-CoAからβ-ヒドロキシブチリル-CoAの反応を触媒するβ-ヒドロキシブチル-CoAデヒドロゲナーゼ(β-hydroxybutyryl-CoAdehydrogenase)(以下、遺伝子を「hbd」、酵素を「HBD」と記す)、β-ヒドロキシブチリル-CoAからクロトニル-CoAの反応を触媒する3-ヒドロキシブチリル-CoA デヒドラターゼ(3-hydroxybutyryl-CoA dehydratase)(別名クロトナーゼ)(以下、遺伝子を「crt」、酵素を「CRT」と記す)、クロトニル-CoAからブチリル-CoAの反応を触媒するブチリル-CoA デヒドロゲナーゼ(butyryl-CoA dehydrogenase)(以下、遺伝子を「bcd」、酵素を「BCD」と記す)、ブチリル-CoAからブチルアルデヒドの反応を触媒するブチリルアルデヒド デヒドロゲナーゼ(butyraldehyde dehydrogenase)(以下、遺伝子を「adhe1」、酵素を「BYDH」と記す)、およびブチルアルデヒドからブタノールへの反応を触媒するブタノール デヒドロゲナーゼ(butanol dehydrogenase)(以下、遺伝子を「adhe1」、酵素を「BDH」と記す)から構成されている。なお、上述のクロストリディウム属細菌におけるBYDHによる反応とBDHによる反応は、一つの酵素が両触媒活性を有するbifunctional酵素により触媒され、該酵素は2種のアイソザイム遺伝子、adhe1及びadhe遺伝子によりコードされている 〔Nolling, J. et al., Genome sequence and comparative analysis of the solvent-producing bacterium Clostridium acetobutylicum. J. Bacteriol. 183:4823-4838〕及び〔Nair, R.V. et al., Molecular characterization of an aldehyde/alcohol dehydrogenase gene from Clostridium acetobutylicum ATCC 824. J. Bacteriol. 176:871-885 (1994)〕。
本発明の形質転換体は、さらに、(g)外来性のエレクトロントレンスファーフラボプロテイン(ETF)アルファ-サブユニット遺伝子(以下、遺伝子を「etfA」、蛋白質を「ETFA」と記す)、及び(h) 外来性のエレクトロントレンスファーフラボプロテイン(ETF)ベータ-サブユニット遺伝子(以下、遺伝子を「etfB」、蛋白質を「ETFB」と記す)が導入されたものであることが好ましく、これにより、ブタノール生産効率が一層向上する。また、(a)〜(f)の遺伝子として、クロストリジウム アセトブチリカム由来の遺伝子を使用する場合は、通常、(g)及び(h)の遺伝子も導入すればよい。クロストリジウム アセトブチリカムにおいては、(d)の遺伝子(BCDをコードする遺伝子)のすぐ下流にetfA遺伝子及びetfB遺伝子が配置されている。
上記(a)〜(h)の遺伝子の由来微生物の種類、組み合わせ、及び導入の順番等は限定されない。
さらに、これらの遺伝子は、ブタノール生産能を有さない菌から取得してもよい。具体的には、以下の2例があげれらる。一つの例として、ラルストニア ユートロファ(Ralstonia eutropha)は、ブタノールの生産は報告されていないが、THL(本菌株においては、遺伝子が「phaA」、酵素が「PhaA」と命名されている)とHBD(本菌株においては、遺伝子が「phaB1」、酵素が「PhaB」と命名されている)をコードする遺伝子を有している〔Pohlmann, A. et al., Genome sequence of the bioplastic-producing 'Knallgas' bacterium Ralstonia eutropha H16. Nat. Biotechnol. 24:1257-1262 (2006)〕。従って、クロストリジウム アセトブチリカム由来の(a)アセチル-CoA アセチルトランスフェラーゼ活性を有する酵素をコードする遺伝子、及び(b)β-ヒドロキシブチル-CoAデヒドロゲナーゼ活性を有する酵素をコードする遺伝子の代わりに、またこれらと共に、それぞれ、上述のラルストニア ユートロファ由来のPhaAをコードする遺伝子及びPhaBをコードする遺伝子を用いてもよい。
また、他の例として、ストレプトミセス アベルミティリス(Streptomyces avermitilis)、ストレプトミセス コエリカラー(Streptomyces coelicolor)、ストレプトミセス コリナス(Streptomyces collinus)、ストレプトミセス シナモネンシス(Streptomyces cinnamonensis)などの微生物に由来するクロトニル-CoA レダクターゼ(crotonyl-CoA reductaase)(以下、遺伝子を「ccr」、酵素を「CCR」と記す)をコードする遺伝子が挙げられる〔Wu, G. et al., Predicted highly expressed genes in the genomes of Streptomyces coelicolor and Streptomyces avermitilis and the implications for their metabolism. Microbiology 151:2175-2187 (2005)〕、〔Liu, H. et al., Role of crotonyl coenzyme A reductase in determining the ratio of polyketides monensin A and monensin B produced by Streptomyces cinnamonensis. J. Bacteriol. 181:6806-6813 (1999)〕、及び〔Han, L. et al., A novel alternate anaplerotic pathway to the glyoxylate cycle in streptomycetes. J. Bacteriol. 179:5157-5164 (1997)〕。CCRは、BCDと同様に、クロトニル-CoAからブチリル-CoAの反応を触媒する酵素である。(d)ブチリル-CoAデヒドロゲナーゼ活性を有する酵素をコードする遺伝子に代えて、又はこれとともに、ストレプトミセス属のCCRをコードする遺伝子を用いてもよい。本酵素CCRをコードする遺伝子を使用するときは、エレクトロン トレンスファー フラボプロテイン(ETF)遺伝子を導入しなくても、高いブタノール生産能が得られる。
本発明では、(a) アセチル-CoA アセチルトランスフェラーゼ活性を有する酵素をコードする外来性遺伝子として、配列番号1の塩基配列からなるDNA、又は配列番号1とストリンジェントな条件でハイブリダイズし、かつアセチル-CoAアセチルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドをコードするDNAを用い;
(b) β-ヒドロキシブチル-CoAデヒドロゲナーゼ活性を有する酵素をコードする外来性遺伝子、(c) 3-ヒドロキシブチリル-CoAデヒドラターゼ活性を有する酵素をコードする外来遺伝子、及び(d)ブチリル-CoAデヒドロゲナーゼ活性を有する酵素をコードする外来遺伝子として、これらを含む配列番号2の塩基配列からなるDNA、又は配列番号2とストリンジェントな条件でハイブリダイズし、かつβ-ヒドロキシブチル-CoAデヒドロゲナーゼ活性、 3-ヒドロキシブチリル-CoAデヒドラターゼ活性、及びブチリル-CoAデヒドロゲナーゼ活性を有するポリペプチドをコードするDNAを用い;
(e)ブチリルアルデヒドデヒドロゲナーゼ活性を有する酵素をコードする外来遺伝子、及び(f)ブタノールデヒドロゲナーゼ活性を有する酵素をコードする外来遺伝子として、これらを含む配列番号3の塩基配列からなるDNA、又は配列番号3とストリンジェントな条件でハイブリダイズし、かつブチリルアルデヒドデヒドロゲナーゼ活性、及びブタノールデヒドロゲナーゼ活性を有するポリペプチドをコードするDNAを用いるのが好ましい。
配列番号1〜3の塩基配列のDNAは、クロストリジウム アセトブチリカムに由来する遺伝子であり、配列番号1はthiL遺伝子の塩基配列であり、配列番号2は、crt遺伝子、bcd遺伝子、及びhbd遺伝子を含むDNAの塩基配列であり、配列番号3はadhe1遺伝子の塩基配列である。クロストリジウム アセトブチリカムにおいて、etfB遺伝子及びetfA遺伝子は、crt-bcd-etfA-etfB-hbd遺伝子群として存在するため、配列番号2のDNAには、crt-bcd-etfA-etfB-hbd遺伝子群が含まれる。
本発明において「ストリンジェントな条件」は、一般的な条件、例えば、Molecular Cloning, A Laboratory Manual, Second Edition,1989,Vol2,p11.45等に記載された条件を指す。具体的には、完全ハイブリッドの融解温度(Tm)より5〜10℃低い温度でハイブリダイゼーションが起こる場合を指す。
種々の生物由来のTHL、HBD、CRT、BCD、ETFA、ETFB、BYDH、BDHをコードする外来性の遺伝子の配列をPCR(polymerase chain reaction)法により増幅するためのオリゴヌクレオチドプライマーとしては以下のものが挙げられる。このようなプライマーとしては、THLをコードする遺伝子を増幅するための配列番号4、5の各塩基配列で表されるプライマー;HBD、CRT、BCD、ETFA、及びETFBをコードする各遺伝子群を増幅するための、配列番号6、7の各塩基配列で表されるプライマー;BYDH、及びBDHをコードする各遺伝子群を増幅するための、配列番号8、9の各塩基配列で表されるプライマーなどが挙げられる。
PCR法は、公知のPCR装置、例えばサーマルサイクラーなどを利用することができる。PCRのサイクルは、公知の技術にしたがって定めればよく、例えば、変性、アニーリング、伸張を1サイクルとし、通常10〜100サイクル、好ましくは、約20〜50サイクルの条件とすればよい。PCRの鋳型としては、上述のブタノール生成経路の酵素活性を示す微生物から単離したDNAを用いて、PCR法によりTHL、HBD、CRT、BCD、ETFA、ETFB、BYDH、BDHをコードする遺伝子のcDNAを増幅することができる。
PCR法によって得られた遺伝子は、適当なクローニングベクターに導入することができる。クローニング法としては、pGEM-T easy vector system(Promega社製)、TOPO TA-cloning system(Invitrogen社製)、Mighty Cloning Kit(Takara社製)などの商業的に入手可能なPCRクローニングシステムなどを使用することもできる。また、方法の1つの例を実施例で詳記するが、該領域を含むDNA断片を、既知のTHL、HBD、CRT、BCD、ETFA、ETFB、BYDH、BDHをコードする遺伝子の塩基配列に基づいて適切に設計された合成プライマーを鋳型として用いたハイブリダイゼーション法により取得することもできる。
ベクターの構築
次いで、PCR法で得られた遺伝子を含むクローニングベクターを、微生物、例えばエシェリヒア コリ(Escherichia coli)JM109菌株などに導入し、該菌株を形質転換する。この形質転換された菌株を、ベクター中のマーカー遺伝子に対応した適当な抗生物質(例えばアンピシリン、クロラムフェニコールなど)を含む培地で培養し、培養物から菌体を回収する。回収された菌体からプラスミドDNAを抽出する。プラスミドDNAの抽出は、公知の技術によって行なうことができ、また市販のプラスミド抽出キットを用いて簡便に抽出することもできる。市販のプラスミド抽出キットとしては、キアクイックプラスミド精製キット(商品名:Qiaquick plasmid purification kit、キアゲン社製)などが挙げられる。この抽出されたプラスミドDNAの塩基配列を決定することにより、THL、HBD、CRT、BCD、ETFA、ETFB、BYDH、BDHをコードする遺伝子配列を確認することができる。DNAの塩基配列の決定は、公知の方法、例えばジオキシヌクレオチド酵素法などにより決定することができる。また、キャピラリー電気泳動システムを用いて、検出には多蛍光技術を使用して塩基配列を決定することもできる。また、DNAシーケンサー、例えばABI PRISM 3730xl DNA Analyzer(アプライドバイオシステム社製)などを使用して決定することもできる。
上記の方法は、遺伝子工学実験の常法に基づいて行なうことができる。種々の微生物のベクターや外来遺伝子の導入法及び発現法は、多くの実験書に記載されているので〔例えば、Sambrook, J. & Russel, D. W. Molecular Cloning: A Laboratory Manual(3rd Edition)CSHL Press(2001)、またはAusubel, F. et al. Current protocols in molecular biology. Green Publishing and Wiley Interscience, New York(1987)等〕、それらに従ってベクターの選択、遺伝子の導入、発現を行なうことができる。
広範囲の種類のプロモーターが本発明に使用するのに適している。そのようなプロモーターは、酵母、細菌及び他の細胞供給源を含む多くの公知の供給源から得られ、好気性細菌または通性嫌気性細菌において目的遺伝子の転写を開始させる機能を有する塩基配列であればいかなるものであってもよい。例えば、大腸菌及びコリネ型細菌においてはlac、trc、tacプロモーター等を用いることができる。本発明に使用されるプロモーターは、必要に応じて、修飾して、その調節機構を変更することができる。また、目的遺伝子の下流に配置される制御配列下のターミネーターについても、好気性細菌または通性嫌気性細菌においてその遺伝子の転写を終了させる機能を有する塩基配列であれば、いかなるものであってもよい。
THL、HBD、CRT、BCD、ETFA、ETFB、BYDH、BDHをコードする各遺伝子は、宿主となる好気性細菌または通性嫌気性細菌において、プラスミド上または染色体上で発現させる。例えば、プラスミドを用いて、これらの遺伝子は発現可能な制御配列下に導入される。ここで「制御配列下」とはこれらの遺伝子が、例えば、プロモーター、インデューサー、オペレーター、リボソーム結合部位及び転写ターミネーター等との共同作業によ転写翻訳できることを意味する。このような目的で使用されるプラスミドベクターとしては、好気性細菌または通性嫌気性細菌内で自律複製機能を司る遺伝子を含むものであれば良い。その具体例としては、例えば、大腸菌を宿主とする場合は、pUC18、19、pBR322、pET、pCold、pGEXとその誘導体などが挙げられ、コリネ型細菌を宿主とする場合は、ブレブバクテリウム ラクトファーメンタム(Brevibacterium lactofermentum)2256由来のpAM330〔特開昭58-67699〕、〔Miwa, K. et al., Cryptic plasmids in glutamic acid-producing bacteria. Agric. Biol. Chem. 48:2901-2903(1984)〕 及び 〔Yamaguchi, R. et al., Determination of the complete nucleotide sequence of the Brevibacterium lactofermentum plasmid pAM330 and the analysis of its genetic information. Nucleic Acids Symp. Ser. 16:265-267(1985)〕、コリネバクテリウム グルタミカム ATCC13058由来のpHM1519 〔Miwa, K. et al., Cryptic plasmids in glutamic acid-producing bacteria. Agric. Biol. Chem. 48:2901-2903(1984)〕 及びpCRY30 〔Kurusu, Y. et al., Identification of plasmid partition function in coryneform bacteria. Appl. Environ. Microbiol. 57:759-764 (1991)〕、コリネバクテリウム グルタミカム T250由来のpCG4〔特開昭57-183799〕、〔Katsumata, R. et al., Protoplast transformation of glutamate-producing bacteria with plasmid DNA. J. Bacteriol.、159:306-311 (1984)〕、pAG1、pAG3、pAG14、pAG50〔特開昭62-166890〕pEK0、pEC5、pEKEx1 〔Eikmanns, B.J. et al., A family of Corynebacterium glutamicum/Escherichia coli shuttle vectors for cloning, controlled gene expression, and promoter probing. Gene, 102:93-98 (1991)〕 とその誘導体などが挙げられる。更には酵母プラスミド(YEp型、YCp型など)、ファージDNAなどが挙げられ、宿主において複製可能である限り、他のいかなるベクターも用いることができる。また、ベクターは、種々の制限酵素部位をその内部にもつマルチクローニングサイトを含んでいる、または単一の制限酵素部位を含んでいることが望ましい。
形質転換に使用するプラスミドベクターの構築は、例えば、クロストリジウム アセトブチリカム(Clostridium acetobutylicum)由来のthiL、crt、bcd、etfB、etfA、hbd、adhe1の遺伝子を用いる場合は、塩基配列が確認された該遺伝子を、適当なプロモーター、ターミネーター等の制御配列を連結後、上記例示されているいずれかのプラスミドベクターの適当な制限酵素部位に挿入し、構築することが出来る。詳細は、実施例に記載している。
形質転換
目的遺伝子を含むプラスミドベクターの好気性細菌または通性嫌気性細菌への導入方法としては、公知の方法を制限無く使用できる。このような公知の方法として、例えば塩化カルシウム/塩化ルビジウム法、リン酸カルシウム法、DEAE−デキストラン介在トランスフェクション、電気穿孔法などの公知の方法で行うことができる。具体的には、例えば大腸菌の場合、塩化カルシウム法や電気穿孔法〔例えば、Sambrook, J. & Russel, D. W. Molecular Cloning: A Laboratory Manual(3rd Edition)CSHL Press(2001)、またはAusubel, F. et al. Current protocols in molecular biology. Green Publishing and Wiley Interscience, New York (1987)等〕などやエシェリヒア・コリ JM109のコンピテントセル(宝酒造株式会社製)を同社プロトコールに従い行うことができ、コリネ型細菌の場合、電気パルス法を、公知の方法 〔Kurusu, Y. et al., Electroporation-transformation system for Coryneform bacteria by auxotrophic complementation. Agric. Biol. Chem. 54:443-447 (1990)〕 及び 〔Vertes A.A. et al., Presence of mrr- and mcr-like restriction systems in Coryneform bacteria. Res. Microbiol. 144:181-185 (1993)〕により行うことができる。
上記方法は、遺伝子工学実験の常法に基づいて行うことができる。大腸菌や放線菌等の種々の微生物のベクターの情報や外来遺伝子の導入法及び発現法は、多くの実験書に記載されているので(例えば、Sambrook、J.、Russel、D.W.、Molecular Cloning A Laboratory Manual、3rd Edition、CSHL Press、2001;HopwoodにD.A.、Bibb、M.J.、Chater、K.F.、Bruton、C.J.、Kieser、H.M.、Lydiate、D.J.、Smith、C.P.、Ward、J.M.、Schrempf、 H.Genetic manipulation of Streptomyces:A laboratory manual、The John lnnes institute、Norwich、UK、1985等)、それらに従ってベクターの選択、遺伝子の導入、発現を行うことができる。
上記の方法により創製される好気性細菌または通性嫌気性細菌の形質転換体としては、具体的には、エシェリヒア コリ(Escherichia coli)JM109/pBUT1(FERM P-21323として、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター(日本国茨城県つくば市東1−1−1つくばセンター中央第6(郵便番号305-8566))に寄託済み。受託日:2007年7月23日)が挙げられる。
さらに、上述したのと同様の方法により、コリネバクテリウム(Corynebacterium)属菌においてもブタノール生産能を有する形質転換体の創製が可能である。
本発明の形質転換体は、ブタノール生産性を向上させるために、解糖系の流量の増加、ブタノール、浸透圧または有機酸に対する耐性の増加、及び副生物(目的とする生成産物以外の炭素含有分子を意味すると理解される)生産の減少、からなる群から選択された特徴の一つまたはそれ以上を生じる遺伝子修飾をさらに含むことができる。そのような遺伝子修飾は、具体的には、外来性遺伝子の過剰発現及び/または内在性遺伝子の不活化、古典的突然変異誘起、スクリーニング及び/あるいは目的変異体の選別により導入することができる。
また、形質転換体は、紫外線、エックス線または薬品等を用いる人工的な変異導入方法により変異しうるが、このように得られるどのような変異株であっても本発明の目的とするブタノール生産能を有するかぎり、本発明の形質転換された微生物として使用することができる。
かくして創製された本発明の好気性細菌または通性嫌気性細菌の形質転換体(以下、単に「形質転換体」という)は、微生物の培養に通常使用される培地を用いて培養すればよい。この培地としては、通常、炭素源、窒素源、無機塩類およびその他の栄養物質等を含有する天然培地または合成培地等を用いることができる。
炭素源としては、例えばグルコース、フルクトース、スクロース、マンノース、マルトース、マンニトール、キシロース、ガラクトース、澱粉、糖蜜、ソルビトールまたはグリセリン等の糖質又は糖アルコール、酢酸、クエン酵、乳酸、フマル酸、マレイン酸またはグルコン酸等の有機酸、エタノールまたはプロパノール等のアルコール等が挙げられる。また、所望によりノルマルパラフィン等の炭化水素等も用いることができる。炭素源は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。これら炭素源の培地における濃度は通常約0.1〜10%(wt)程度である。
窒素源としては、窒素化合物、例えば塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、酢酸アンモニウム等の無機もしくは有機アンモニウム化合物、尿素、アンモニア水、硝酸ナトリウムまたは硝酸カリウム等が挙げられるが、これらに限定されない。また、コーンスティープリカー、肉エキス、ベプトン、NZ−アミン、蛋白質加水分解物またはアミノ酸等の含窒素有機化合物等も使用可能である。窒素源は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。窒素源の培地濃度は、使用する窒素化合物によっても異なるが、通常約0.1〜10%(wt)程度である。
無機塩類としては、例えばリン酸第一カリウム、リン酸第二カリウム、硫酸マグネシウム、塩化ナトリウム、硝酸第一鉄、硫酸マンガン、硫酸亜鉛、硫酸コバルトまたは炭酸カルシウム等が挙げられる。これら無機塩は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。無機塩類の培地濃度は、使用する無機塩によっても異なるが、通常約0.01〜1.0%(wt)程度である。
栄養物質としては、例えば肉エキス、ペプトン、ポリペプトン、酵母エキス、乾燥酵母、コーンスティープリカー、脱脂粉乳、脱脂大豆塩酸加水分解物または動植物若しくは微生物菌体のエキスやそれらの分解物等が挙げられる。栄養物質の培地濃度は、使用する栄養物質によっても異なるが、通常約0.1〜10%(wt)程度である。さらに、必要に応じて、ビタミン類を添加することもできる。ビタミン類としては、例えば、ビオチン、チアミン(ビタミンB1)、ピリドキシン(ビタミンB6)、パントテン酸、イノシトール、ニコチン酸等が挙げられる。
培地のpHは約5〜8が好ましい。
好ましい微生物培養培地としては、大腸菌用培地としては、LB(Luria−Bertani)培地、NZYM培地、TB(Terrific Broth)培地、SOB培地、2×YT培地、M9培地等が、コリネ型細菌用培地としては、A培地〔Inui, M. et al., Metabolic analysis of Corynebacterium glutamicum during lactate and succinate productions under oxygen deprivation conditions. J. Mol. Microbiol. Biotechnol. 7:182-196 (2004)〕、BT培地〔Omumasaba, C.A. et al., Corynebacterium glutamicum glyceraldehyde-3-phosphate dehydrogenase isoforms with opposite, ATP-dependent regulation. J. Mol. Microbiol. Biotechnol. 8:91-103 (2004)〕等が挙げられる。
培養温度は約15〜45℃とすればよく、培養時間は約1〜7日間とすればよい。
ついで、形質転換体の培養菌体を回収する。上記の如くして得られる培養物から培養菌体を回収分離する方法としては、特に限定されず、例えば遠心分離や膜分離等の公知の方法を用いることができる。
回収された培養菌体に対して処理を加え、得られる菌体処理物を次工程に用いてもよい。前記菌体処理物としては、培養菌体に何らかの処理が加えられたものであればよく、例えば、菌体をアクリルアミドまたはカラギーナン等で固定化した固定化菌体等が挙げられる。
(II)ブタノールの製造方法
上記の如くして得られる培養物から回収分離された形質転換体の培養菌体またはその菌体処理物は、好気条件下または嫌気条件下の反応培地でのブタノール生成反応に供せられる。ブタノール生成方式は、回分式、流加式、連続式いずれの生成方式も可能である。
反応液には、ブタノールの原料となる有機炭素源(例えば、糖類等)が含まれていればよい。有機炭素源としては、本発明の形質転換体が生化学反応に利用できる物質であればよい。具体的には、糖類としては、グルコース、キシロース、アラビノース、ガラクトース、フルクトースもしくはマンノースなどの単糖類、セロビオース、ショ糖もしくはラクトース、マルトースなどの二糖類、またはデキストリンもしくは可溶性澱粉などの多糖類などが挙げられる。特に、単糖類、及び二糖類が好ましく、単糖類がより好ましく、中でもグルコースがさらにより好ましい。なお、本発明においては、2種以上の糖の混合糖を用いることもできる。
反応液には、その他、形質転換体またはその処理物がその代謝機能を維持するために必要な成分、即ち、各種糖類等の炭素源;蛋白質合成に必要な窒素源;リン、カリウムまたはナトリウム等の塩類;さらに鉄、マンガンまたはカルシウム等の微量金属塩を含むことができる。これらの添加量は所要反応時間、目的有機化合物生産物の種類または用いられる形質転換体の種類等により適宜定めることが出来る。用いる形質転換体によっては特定のビタミン類の添加が好ましい場合もある。炭素源、窒素源、無機塩類、ビタミン、微量金属塩は、公知のもの、例えば形質転換体の増殖培養工程につき例示したものを用いることができる。
培地のpHは、約6〜8が好ましい。
形質転換体またはその菌体処理物と糖類との反応は、本発明の形質転換体またはその菌体処理物が活動できる温度条件下で行なわれることが好ましく、形質転換体またはその菌体処理物の種類などにより適宜選択することができる。通常、約25〜35℃とすればよい。
最後に、上述のようにして反応培地で生成したブタノールを回収する。ブタノールの回収は、培地を回収することにより行える。また、バイオプロセスで用いられる公知の方法で培地から分離することもできる。そのような公知の方法として、ブタノール生成液の蒸留法、膜透過法、有機溶媒抽出法等があり、反応液組成や副生物等に応じてその分離精製採取法は適宜定めることが出来る。
実施例
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例1(エシェリヒア コリ(Escherichia coli)JM109/pBUT1の創製)
(1)クロストリジウム アセトブチリカム由来のブタノール生産遺伝子群のクローニング
クロストリジウム アセトブチリカム(Clostridium acetobutylicum)ATCC824におけるブタノール生産遺伝子(アセチル-CoAからブタノールまでの代謝経路に関わる遺伝子)は、以下のような遺伝子群により構成されている。
アセチル-CoAアセチルトランスフェラーゼ(別名チオーラゼ)遺伝子(thiL遺伝子)は、プラスミドpSOL1上にコードされている 〔Nolling, J. et al., Genome sequence and comparative analysis of the solvent-producing bacterium Clostridium acetobutylicum. J. Bacteriol. 183:4823-4838〕。
β-ヒドロキシブチル-CoAデヒドロゲナーゼ遺伝子(hbd遺伝子)、3-ヒドロキシブチリル-CoAデヒドラターゼ(別名クロトナーゼ)遺伝子(crt遺伝子)、ブチリル-CoAデヒドロゲナーゼ遺伝子(bcd遺伝子)、及びブチリル-CoAデヒドロゲナーゼとNAD(H) 間の電子転移に必要であるエレクトロン トレンスファー フラボプロテイン(ETF) アルファ-サブユニット遺伝子(etfA遺伝子)とベータ-サブユニット遺伝子(etfB遺伝子)の5つの遺伝子が、染色体上にcrt-bcd-etfB-etfA-hbdの順に連結したオペロン(BCS (butyryl-CoA synthesis) オペロン)を形成している〔Boynton, Z.L. et al., Cloning, sequencing, and expression of clustered genes encoding b-hydroxybutyryl-coenzyme A (CoA) dehydrogenase, crotonase, and butyryl-CoA dehydrogenase from Clostridium acetobutylicum ATCC 824. J. Bacteriol. 178:3015-3024 (1996)〕。
一方、ブチリルアルデヒド デヒドロゲナーゼ及びブタノール デヒドロゲナーゼは、一つの酵素が両触媒活性を有するbifunctional 酵素であり、プラスミドpSOL1上のadhe1遺伝子によりコードされている 〔Nolling, J. et al., Genome sequence and comparative analysis of the solvent-producing bacterium Clostridium acetobutylicum. J. Bacteriol. 183:4823-4838〕。
thiL遺伝子、crt-bcd-etfB-etfA-hbd遺伝子群、adhe1遺伝子をそれぞれ含むDNA断片を以下のPCR法により増幅した。
PCRに際して、thiL遺伝子、crt-bcd-etfB-etfA-hbd遺伝子群、adhe1遺伝子をそれぞれクローン化するべく、クロストリジウム アセトブチリカムの配列(配列番号1; thiL遺伝子)、(配列番号2; crt-bcd-etfB-etfA-hbd遺伝子群)、(配列番号3; adhe1遺伝子)を基に、それぞれ下記の一対のプライマーを、アプライド・バイオシステムズ(Applied Biosystems)社製「394 DNA/RNAシンセサイザー(synthesizer)」を用いて合成し、使用した。
thiL遺伝子増幅用プライマー
(a-1); 5’- AT CCCGGG GAGGAGTAAAACATGAGAGA -3’(配列番号4)
(b-1); 5’- AT CCCGGG CTCGAG TTAGTCTCTTTCAACTACGA -3’(配列番号5)
尚、プライマー(a-1)には、SmaI制限酵素部位が、プライマー(b-1)には、SmaI及びXhoI制限酵素部位が付加されている。

crt-bcd-etfB-etfA-hbd遺伝子増幅用プライマー
(a-2); 5’- AT CCCGGG ATATTTTAGGAGGATTAGTC -3’(配列番号6)
(b-2); 5’- AT CCCGGG AGATCT CCATATTATAATCCCTCCTC-3’(配列番号7)
尚、プライマー(a-2)には、SmaI制限酵素部位が、プライマー(b-2)には、SmaI及びBglII制限酵素部位が付加されている。

adhe1遺伝子増幅用プライマー
(a-3); 5’- AT CCCGGG ATATCTATCTCCAAATCTGC-3’(配列番号8)
(b-3); 5’- AT CCCGGG CTCGAG CCAATCATAATTGTCATCCC-3’(配列番号9)
尚、プライマー(a-3)には、SmaI制限酵素部位が、プライマー(b-3)には、SmaI及びXhoI制限酵素部位が付加されている。
鋳型DNAとしては、American Type Culture Collection (ATCC)より入手したクロストリジウム アセトブチリカム(Clostridium acetobutylicum)ATCC824の染色体DNA(ATCC Cataloc No. 824D-5)を用いた。
PCRは、サーマルサイクラー GeneAmp PCR System 9700(アプライド・バイオシステムズ社製)を用い、反応試薬としてTaKaRa LA Taq(宝酒造株式会社製)を用いて下記の条件で行った。
<反応液>
TaKaRa LA TaqTM (5 units/μl) 0.5μl
10X LA PCRTM Buffer II (Mg2+ free) 5μl
25mM MgCl2 5μl
dNTP Mixture (2.5mM each) 8μl
鋳型DNA 5μl(DNA含有量 1μg以下)
上記記載の2種プライマー 各々0.5μl(最終濃度 1μM)
滅菌蒸留水 25.5μl
以上を混合し、この50μlの反応液をPCRにかけた。なお、2種のプライマーについては、thiL遺伝子を増幅する場合はプライマー(a-1)と(b-1)の組み合わせ、crt-bcd-etfB-etfA-hbd遺伝子群を増幅する場合はプライマー(a-2) と (b-2) の組み合わせ、adhe1遺伝子を増幅する場合はプライマー(a-3) と (b-3) の組み合わせで行った。
<PCR条件>
PCRサイクル:
デナチュレーション過程 :94℃,60秒
アニーリング過程 :52℃,60秒
エクステンション過程 :72℃,thiL遺伝子では60秒、crt-bcd-etfB-etfA-hbd遺伝子群では300秒、adhe1遺伝子では180秒
以上を1サイクルとし、30サイクル行った。
上記反応により生成した反応液10μlを0.8%アガロースゲルによる電気泳動に供したところ、thiL遺伝子の場合約1.2kb、crt-bcd-etfB-etfA-hbd遺伝子群の場合約4.8kb、adhe1遺伝子の場合約2.8kbのDNA断片が検出できた。
(2)発現プラスミドpBUT1の構築とエシェリヒア コリ(Escherichia coli)JM109/pBUT1の創製
上記(1)項のPCRにより増幅したクロストリジウム アセトブチリカム株由来thiL遺伝子を含む約1.2kbDNA断片10μl及びtacプロモーターを含有するプラスミドpKK223-3(ファルマシア社製)2μlを各々制限酵素SmaIで切断し、70℃で10分処理させることにより制限酵素を失活させた後、両者を混合し、これにT4 DNAリガーゼ10×緩衝液 1μl 、T4 DNAリガーゼ (宝酒造株式会社製) 1unitの各成分を添加し、滅菌蒸留水で10μl にして、15℃で3時間反応させ、結合させた。これをライゲーションA液とした。
同じく、上記(1)項のPCRにより増幅したクロストリジウム アセトブチリカム株由来crt-bcd-etfB-etfA-hbd遺伝子群を含む約4.8kbDNA断片10μl及びtacプロモーターを含有するプラスミドpKK223-3(ファルマシア社製)2μlを各々制限酵素SmaIで切断し、70℃で10分処理させることにより制限酵素を失活させた後、両者を混合し、これにT4 DNAリガーゼ10×緩衝液1μl 、T4 DNAリガーゼ(宝酒造株式会社製) 1unitの各成分を添加し、滅菌蒸留水で10μlにして、15℃で3時間反応させ、結合させた。これをライゲーションB液とした。
さらに、上記(1)項のPCRにより増幅したクロストリジウム アセトブチリカム株由来adhe1遺伝子を含む約2.8kbDNA断片10μl及びtacプロモーターを含有するプラスミドpKK223-3(ファルマシア社製)2μlを各々制限酵素SmaIで切断し、70℃で10分処理させることにより制限酵素を失活させた後、両者を混合し、これにT4 DNAリガーゼ10×緩衝液1μl、T4 DNAリガーゼ(宝酒造株式会社製) 1unitの各成分を添加し、滅菌蒸留水で10μl にして、15℃で3時間反応させ、結合させた。これをライゲーションC液とした。
得られた3種のライゲーションA液、B液及びC液のそれぞれを用いて、塩化カルシウム法〔Journal of Molecular Biology, 53, 159 (1970)〕によりエシェリヒア・コリJM109を形質転換し、アンピシリン50μg/mlを含むLB寒天培地〔1% ポリペプトン、0.5% 酵母エキス、0.5% 塩化ナトリウム、および1.5% 寒天〕に塗布した。
各々倍地上の生育株を常法により液体培養し、培養液よりプラスミドDNAを抽出、該プラスミドを制限酵素SmaIでそれぞれ切断し、挿入断片を確認した。この結果、プラスミドpKK223-3約4.6kbのDNA断片に加え、thiL遺伝子(ライゲーションA液)の場合、長さ約1.2kbの挿入断片が、crt-bcd-etfB-etfA-hbd遺伝子群(ライゲーションB液)の場合、長さ約4.8kbの挿入断片が、adhe1遺伝子(ライゲーションC液)の場合、長さ約2.8kbの挿入断片が認められた。
thiL遺伝子を含むプラスミドをpTHI、crt-bcd-etfB-etfA-hbd遺伝子群を含むプラスミドをpBCS及びadhe1遺伝子を含むプラスミドをpADHとそれぞれ命名した。
上述のプラスミドpBCSをBamHIとBglIIで切断し、アガロース電気泳動後、アガロースゲルからQIAquick Gel Extraction Kit(株式会社キアゲン社製)によって回収したtacプロモーターとcrt-bcd-etfB-etfA-hbd遺伝子群を連結した約5.1kbのDNA断片と、BamHIで切断した大腸菌ベクターpCRB1(Nakata, K. et al. Vectors for the genetics engineering of corynebacteria; in Saha, B.C.(ed.): Fermentation Biotechnology, ACS Symposium Series 862. Washington, American Chemical Society, pp. 175-191(2003) )を70℃で10分処理させることにより制限酵素を失活させた約4.1kbのDNA断片を混合し、これにT4 DNAリガーゼ10×緩衝液 1μl 、T4 DNAリガーゼ(宝酒造株式会社製) 1unitの各成分を添加し、滅菌蒸留水で10μl にして、15℃で3時間反応させ、結合させた。これをライゲーションD液とした。
得られたライゲーションD液を用い、塩化カルシウム法〔Journal of Molecular Biology, 53, 159 (1970)〕によりエシェリヒア・コリJM109を形質転換し、クロラムフェニコール 50μg/ml、X-gal(5-Bromo-4-chloro-3-indoxyl-beta-D-galactopyranoside) 200μg/ml、 IPTG(isopropyl 1-thio-beta-d-galactoside) 100μg/mlを含むLB寒天培地〔1% ポリペプトン、0.5% 酵母エキス、0.5% 塩化ナトリウム、および1.5% 寒天〕に塗布した。
この培地上で白色に呈する生育株を常法により液体培養し、培養液よりプラスミドDNAを抽出、該プラスミドを制限酵素で切断し、挿入断片を確認した。この結果、大腸菌ベクターpCRB1 約4.1kbのDNA断片に加え、長さ約5.1kbの挿入DNA断片が認められた。
このプラスミドをpCRB1-PtacBCSと命名した。
上述のプラスミドpADHをSalIとXhoIで切断し、アガロース電気泳動後、アガロースゲルからQIAquick Gel Extraction Kit(株式会社キアゲン社製)によって回収したtacプロモーターとadhe1遺伝子を連結した約3.4kbのDNA断片と、SalIで切断した上述のプラスミドpCRB1-PtacBCSを70℃で10分処理させることにより制限酵素を失活させた約9.1kbのDNA断片を混合し、これにT4 DNAリガーゼ10×緩衝液 1μl 、T4 DNAリガーゼ(宝酒造株式会社製) 1unitの各成分を添加し、滅菌蒸留水で10μl にして、15℃で3時間反応させ、結合させた。これをライゲーションE液とした。
得られたライゲーションE液を用い、塩化カルシウム法〔Journal of Molecular Biology, 53, 159 (1970)〕によりエシェリヒア・コリJM109を形質転換し、クロラムフェニコール 50μg/mlを含むLB寒天培地〔1% ポリペプトン、0.5% 酵母エキス、0.5% 塩化ナトリウム、および1.5% 寒天〕に塗布した。
この培地上の生育株を常法により液体培養し、培養液よりプラスミドDNAを抽出、該プラスミドを制限酵素で切断し、挿入断片を確認した。この結果、上記で作製のプラスミド約9.1kbのDNA断片に加え、長さ約3.4kbの挿入DNA断片が認められた。
このプラスミドをpCRB1-PtacBCS-PtacADHと命名した。尚、このプラスミドは、制限酵素部位SalIが1箇所のみ存在する。
上述のプラスミドpTHIをSalIとXhoIで切断し、アガロース電気泳動後、アガロースゲルからQIAquick Gel Extraction Kit(株式会社キアゲン社製)によって回収したtacプロモーターとthiL遺伝子を連結した約1.7kbのDNA断片と、SalIで切断したpCRB1-PtacBCS-PtacADHを70℃で10分処理させることにより制限酵素を失活させた約12.5kbのDNA断片を混合し、これにT4 DNAリガーゼ10×緩衝液 1μl 、T4 DNAリガーゼ(宝酒造株式会社製) 1unitの各成分を添加し、滅菌蒸留水で10μl にして、15℃で3時間反応させ、結合させた。これをライゲーションF液とした。
得られたライゲーションF液を用い、塩化カルシウム法〔Journal of Molecular Biology, 53, 159 (1970)〕によりエシェリヒア・コリJM109を形質転換し、クロラムフェニコール 50μg/mlを含むLB寒天培地〔1% ポリペプトン、0.5% 酵母エキス、0.5% 塩化ナトリウム、および1.5% 寒天〕に塗布した。
この培地上の生育株を常法により液体培養し、培養液よりプラスミドDNAを抽出、該プラスミドを制限酵素で切断し、挿入断片を確認した。この結果、上記で作製のプラスミド約12.5kbのDNA断片に加え、長さ約1.7kbの挿入DNA断片が認められた。このプラスミドをpBUT1と命名した。また、得られた株をエシェリヒア コリ(Escherichia coli)JM109/pBUT1と命名した。エシェリヒア コリ(Escherichia coli)JM109/pBUT1は、日本国茨城県つくば市東1−1−1つくばセンター中央第6(郵便番号305-8566)の独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターに寄託した(受託日:2007年7月23日、受託番号:FERM P-21323)。
実施例2(エシェリヒア コリ(Escherichia coli)JM109/pBUT1におけるブタノール生産関連酵素の活性測定)
エシェリヒア コリ(Escherichia coli)JM109/pBUT1におけるブタノール生産関連酵素、THL、HBD、CRT、BCD、BYDH、BDHの活性を以下の方法により測定した。尚、コントロールとして、エシェリヒア コリJM109も同様の方法にて測定した。
(1)THL、HBD、CRTの活性測定
エシェリヒアコリ(Escherichia coli)JM109/pBUT1を、50μg/mlを含むLB寒天培地〔1%ポリペプトン、0.5%酵母エキス、0.5%塩化ナトリウム、および1.5%寒天〕により30℃で静置培養した。これを50μg/mlを含むLB液体培地〔1% ポリペプトン、0.5%酵母エキス、および0.5% 塩化ナトリウム〕10mlに植菌し、13時間振盪培養(30℃、200rpm)した。エシェリヒア コリJM109は、LB培地にクロラムフェニコールを添加しないこと以外は同様の条件にて培養した。各培養菌体を遠心分離(4℃、5,000×g、10分)し、培地を取り除いた後、破砕液1(100mMトリス−塩酸緩衝液pH 7.5、2mMジチオスレイトール)により洗浄した。再び遠心分離し、回収した菌体を1mlの破砕液1で懸濁し、ガラスビーズ0.5gを加え、超音波破砕機(Biorupter、コスモバイオ製)により30分間ホモジナイズした。遠心分離(4℃、15,000×g、15分)により不溶性物質を取り除き、酵素液1を得た。タンパク質量はBio-Rad protein assay(Bio-Rad製)により決定した。得られた酵素液を用い、以下に記載の方法でTHL, HBD及びCRTの活性測定を行った。
THL活性は、アセトアセチル−CoA及びCoAを基質とし、アセトアセチル−CoAの減少に伴う303nmの吸光度減少を分光光度計DU-800(BECKMAN製)により測定した〔Wiesenborn D.P. et al., Thiolase from Clostridium acetobutylicum ATCC 824 and its role in the synthesis of acids and solvents. Appl. Environ. Microbiol. 54:2717-2722 (1988))。活性測定に用いた反応液は100mMトリス−塩酸緩衝液pH 8.0、10mM塩化マグネシウム、1mMジチオスレイトール、50μMアセトアセチル−CoA、0.2mM CoAである。30℃で酵素液1を反応液に添加することにより反応を開始し、反応液の吸光度減少の傾きとCoAを含まない反応液の吸光度減少の傾きの差から、モル吸光係数14,000M-1cm-1 を利用して活性値を算出した。
この結果、エシェリヒアコリ(Escherichia coli)JM109/pBUT1のTHL活性は、0.83 U/mg-protein(1Uは1分間に1μmolの基質を消費する酵素量を示す)であった。一方、コントロールであるエシェリヒア コリJM109は、0.043U/mg-proteinであった。
さらに、反応の前後での基質減少と生成物増加を、高速液体クロマトグラフィー(高速液体クロマトグラフシステム8020、東ソー製)によって確認した。100mMトリス−塩酸緩衝液pH 8.0、10mM塩化マグネシウム、1mMジチオスレイトール、1mMアセトアセチル−CoA、1mM CoAを上記条件で反応させ、反応開始0, 3, 6, 9, 12, 15, 18分後に、各時間の反応液を60%過塩素酸を反応液の1/100量添加することによって反応を停止させた。得られた反応停止液を6N水酸化ナトリウム溶液で中和後、200mMリン酸緩衝液pH5.0で2倍希釈し、限外ろ過(Ultracel YM-30 3,000MWCO、ミリポア製)を行った。得られた溶液をODSカラム(TSK-GEL ODS-100Z、東ソー製)、溶離液1(0.2Mリン酸ナトリウム緩衝液pH5.0、10%アセトニトリル)、流速1ml/1min、カラム温度30℃、検出UV254nmの条件で、高速液体クロマトグラフィーにより分析した。この条件下において、各0.2mMのCoA、アセチル−CoA、アセトアセチル−CoAは、それぞれ9.8分、20分、22分に検出された。反応時間とともにCoA、アセトアセチル−CoAが減少し、アセチル−CoAが増加していることが確認された。
HBD活性は、アセトアセチル−CoAとNADHからβ-ヒドロキシブチリル−CoAを形成する際の、NADHの減少に伴う345nmの吸光度減少を分光光度計DU-800(BECKMAN製)により測定した〔Hartmanis, M.G. et al., Intermediary metabolism in Clostridium acetobutylicum: Levels of enzymes involved in the formation of acetate and butyrate. Appl. Environ. Microbiol. 47:1277-1283 (1984)〕。活性測定に用いた反応液は、100mM MOPS緩衝液pH 7.0、1mMジチオスレイトール、0.1mMアセトアセチル−CoA、0.15mM NADHである。30℃で酵素液1を反応液に添加することにより反応を開始し、反応液の吸光度減少の傾きとアセトアセチル−CoAを含まない反応液の吸光度減少の傾きの差から、モル吸光係数6,220M-1cm-1を利用して活性値を算出した。
この結果、エシェリヒア コリ(Escherichia coli)JM109/pBUT1のHBD活性は、1.0 U/mg-protein(1Uは1分間に1μmolの基質を消費する酵素量を示す)であった。一方、コントロールであるエシェリヒア コリJM109は、0.047 U/mg-proteinであった。
また反応の前後での基質減少、生成物増加を、高速液体クロマトグラフィーによって確認した。50mM MOPS緩衝液pH 7.0、1mMジチオスレイトール、0.5mMアセトアセチル−CoA、0.5mM NADHを上記条件で反応させ、得られた反応停止液をTHLと同条件で分析した。この条件下において、各0.2mMのアセトアセチル−CoAとβ-ヒドロキシブチリル−CoAは、それぞれ22分と24分に検出された。反応時間とともにアセトアセチル−CoAが減少し、β-ヒドロキシブチリル−CoAが増加していることが確認された。
CRT活性は、クロトニル−CoAからβ-ヒドロキシブチリル−CoAを形成する際の、クロトニル−CoAの減少に伴う263nmの吸光度減少を分光光度計DU-800(BECKMAN製)により測定した〔Hartmanis, M.G. et al., Intermediary metabolism in Clostridium acetobutylicum: Levels of enzymes involved in the formation of acetate and butyrate. Appl. Environ. Microbiol. 47:1277-1283 (1984)〕。活性測定に用いた反応液は100mM トリス−塩酸緩衝液pH 7.6、50μMクロトニル−CoAである。30℃で酵素液1を反応液に添加することにより反応を開始し、反応液の吸光度減少の傾きとクロトニル−CoAを含まない反応液の吸光度減少の傾きの差から、モル吸光係数6,700M-1cm-1を利用して活性値を算出した。
この結果、エシェリヒア コリ(Escherichia coli)JM109/pBUT1のCRT活性は、15 U/mg-protein(1Uは1分間に1μmolの基質を消費する酵素量を示す)であった。一方、コントロールであるエシェリヒア コリJM109は、0.031 U/mg-proteinであった。
また反応の前後での基質減少と生成物増加を、高速液体クロマトグラフィーによって確認した。100mM トリス−塩酸緩衝液pH 7.5、0.5mMクロトニル−CoAを上記条件で反応させ、THLと同様の手順で得た反応停止液を、前述のODSカラムにより、溶離液2(0.2M リン酸ナトリウム、アセトニトリル12〜36%のグラジエント溶出(27分))、流速1ml / 1min、カラム温度30℃、検出UV254nmの条件で分析した。この条件下において、各0.2mMのβ-ヒドロキシブチリル−CoAとクロトニル−CoAは、それぞれ13.5分と22.5分に検出された。反応時間とともにクロトニル−CoAが減少し、β-ヒドロキシブチリル−CoAが増加していることが確認された。
(2)BCDの活性測定
エシェリヒア コリ(Escherichia coli)JM109/pBUT1を、50μg/mlを含むLB寒天培地〔1% ポリペプトン、0.5% 酵母エキス、0.5% 塩化ナトリウム、および1.5% 寒天〕により30℃で静置培養した。これを50μg/mlを含むLB液体培地〔1% ポリペプトン、0.5% 酵母エキス、および0.5% 塩化ナトリウム〕100mlに植菌し、13時間振盪培養(30℃、200rpm)した。エシェリヒア コリJM109は、LB培地にクロラムフェニコールを添加しないこと以外は同様の条件にて培養した。以降の操作は全て95% N2、5% H2で置換されている嫌気チャンバー内で行った。各培養菌体を遠心分離(4℃、5,000×g、10分)し、培地を取り除いた後、破砕液2 (50mM MOPS緩衝液 pH 7.0) により洗浄した。再び遠心分離し回収した菌体を1mlの破砕液2で懸濁し、ガラスビーズ0.5gを加え、1分間のボルテックスミキサーによるホモジナイズと1分間の氷上静置を10回繰り返し、遠心分離(4℃、5,000×g、10分)することで酵素液2を得た。得られた酵素液2を用い、以下に記載の方法でBCDの活性測定を行った。
BCD活性は、クロトニル−CoAからブチリル−CoAを形成する際に酵素への電子供与体として働くフェロセニウムの酸化を300nmの吸光度減少を、95% N2、5% H2で置換されている嫌気チャンバー内に設置した分光光度計Ultraspec 2100 pro(GEヘルスケアバイオサイエンス製)によりで測定した〔Lehman, T.C. et al., An acyl-coenzyme A dehydrogenase assay utilizing the ferricenium ion. Anal. Biochem., 186:280-284 (1990)〕。活性測定に用いた反応液は50mM MOPS緩衝液 pH 7.0である。30℃で酵素液2と0.4mM クロトニル−CoAを反応液に添加し10分間静置後、0.2mM フェロセニウムを添加することにより反応を開始し、反応液の吸光度減少の傾きとクロトニル−CoAを含まない反応液の吸光度減少の傾きの差から、モル吸光係数43,000M-1cm-1を利用して活性値を算出した。
この結果、エシェリヒア コリ(Escherichia coli)JM109/pBUT1のBCD活性は、0.04 U/mg-protein(1Uは1分間に1μmolの基質を消費する酵素量を示す)であった。一方、コントロールであるエシェリヒア コリJM109は、0.0001 U/mg-proteinであった。
また反応の前後での基質減少、生成物増加を、高速液体クロマトグラフィーによって確認した。50mM MOPS緩衝液pH 7.0、0.2mMクロトニル−CoA、0.2mM フェリセニウム錯体を上記条件で反応させ、THLと同様の手順で得た反応停止液を、前述のODSカラムにより、溶離液3(0.2M リン酸ナトリウム、アセトニトリル0〜36%のグラジエント溶出(42分))、流速1ml / 1min、カラム温度30℃、検出UV254nmの条件で分析した。この条件下において、各0.2mMのクロトニル−CoAとブチリル−CoAは、それぞれ36.5分と39分に検出された。反応時間とともにクロトニル−CoAが減少し、ブチリル−CoAが形成されていることが確認された。
(3)BYDH、BDHの活性測定
エシェリヒア コリ(Escherichia coli)JM109/pBUT1を、50μg/mlを含むLB寒天培地〔1% ポリペプトン、0.5% 酵母エキス、0.5% 塩化ナトリウム、および1.5% 寒天〕により30℃で静置培養した。これを50μg/mlを含むLB液体培地〔1% ポリペプトン、0.5% 酵母エキス、および0.5% 塩化ナトリウム〕100mlに植菌し、13時間振盪培養(30℃、200rpm)した。エシェリヒア コリJM109は、LB培地にクロラムフェニコールを添加しないこと以外は同様の条件にて培養した。以降の操作は全て95% N2、5% H2で置換されている全て嫌気チャンバー内で行った。培養菌体を50mlメディゥム瓶に移し、培養嫌気チャンバー内で開放し3時間攪拌することで培地及び菌体を嫌気置換した。破砕液2で洗浄後、1mlの破砕液2で懸濁し、ガラスビーズ0.5gを加え、1分間のボルテックスミキサーによるホモジナイズと1分間の氷上静置を10回繰り返し、遠心分離(4℃、5000g、10分)することで酵素液3を得た。得られた酵素液3を用い、以下に記載の方法でBYDH、BDHの活性測定を行った。
BYDH活性は、酵母由来アルコール脱水素酵素 (Roche製) との共役反応を利用して測定した〔Durre, P. et al., Enzymatic investigtations on butanol dehydrogenase and butyraldehyde dehydrogenase in extracts of Clostridium acetobutylicum. Appl. Microbiol. Biotechnol. 26:268-272 (1987)〕。BYDHが酵素反応により基質であるブチリル-CoAとNADHをブチルアルデヒドに変換し、さらに酵母由来アルコール脱水素酵素によりブチルアルデヒドとNADHからブタノールに変換する。BYDHが1分子のブチリル-CoAを反応する際に2分子のNADHを消費する。酵素活性は30℃での酵素反応の進行におけるNADH減少に伴う345nmの吸光度減少で検出した。反応液の組成は50mM MES緩衝液pH6.0、100mM KCl、0.15mM NADH、3U酵母由来アルコール脱水素酵素である。反応液に酵素液3を添加し10分間静置後、0.2mM ブチリル-CoAまたは対照試料として同体積の純水を加え、それぞれの吸光度減少の差からモル吸光係数6,220M-1cm-1を利用して活性値を算出した。
この結果、エシェリヒア コリ(Escherichia coli)JM109/pBUT1のBYDH活性は、0.0038U/mg-protein(1Uは1分間に1μmolの基質を消費する酵素量を示す)であった。一方、コントロールであるエシェリヒアコリJM109は、0.0019 U/mg-proteinであった。
また高速液体クロマトグラフィーより、酵素反応前後の基質減少を確認した。50mM MES緩衝液(pH6.0)、100mM KCl、1mM NADH、0.5mM ブチリル-CoAを上記条件で反応させ、CRTと同条件で分析した。この条件下においてブチリル-CoAは25分に検出され、反応時間と共に減少していることが確認された。さらにガスクロマトグラフィー(GC-2014、島津製)により生成物増加を確認した。同じ反応停止液を、パックドカラム(Thermon-1000、島津製)により、キャリアガス流速60ml/min、昇温速度3℃ / min、カラム温度160〜196℃の条件で分析した。この条件下においてブタノールは9.5分に検出され、反応時間と共に増加していることが確認された。
BDH活性は、ブチルアルデヒドとNADHからブタノールを形成する際の、NADHの減少を345nmの吸光度の減少で検出した〔Durre, P. et al., Enzymatic investigtations on butanol dehydrogenase and butyraldehyde dehydrogenase in extracts of Clostridium acetobutylicum. Appl. Microbiol. Biotechnol. 26:268-272 (1987)〕。反応液の組成は50mM MES緩衝液(pH6.0)、0.15mM NADHである。反応液に酵素液3を添加し10分間静置後、35mM ブチアルデヒドまたは対照試料として同体積の純水を加え、それぞれの吸光度減少の差からモル吸光係数6,220M-1cm-1を利用して活性値を算出した。
この結果、エシェリヒア コリ(Escherichia coli)JM109/pBUT1のBDH活性は、0.24 U/mg-protein(1Uは1分間に1μmolの基質を消費する酵素量を示す)であった。一方、コントロールであるエシェリヒア コリJM109は、0.12 U/mg-proteinであった。
またガスクロマトグラフィー(島津製 GC-2014)により基質減少と生成物増加を確認した。50mM MES緩衝液(pH6.0)、0.5mM NADH、0.5mM ブチルアルデヒドを上記条件で反応させ、BYDHと同じ条件で反応停止液をパックドカラムにより分析した。この条件下においてブチルアルデヒドは6.7分、ブタノールは9.5分に検出され、反応時間と共にブチルアルデヒドが減少し、ブタノールが増加していることが確認された。
このように、エシェリヒアコリ(Escherichia coli)JM109/pBUT1におけるTHL、HBD、CRT、BCD、BYDH、BDHのすべての活性は、コントロールであるエシェリヒア コリJM109と比較して、従来より報告されている各酵素の活性測定法(酵素反応に伴うNADHまたは電子供与体の吸光度減少、もしくは基質の特異的な吸光度の減少)に加えて、液体クロマトグラフィーまたはガスクロマトグラフィーによる上記酵素活性反応時の基質の減少及び生成物の増加を評価することにより、優位にすべての活性が上昇していることを確認した。
実施例3(エシェリヒア コリ(Escherichia coli)JM109/pBUT1を用いたブタノール生産実験)
冷凍庫(-80℃)に保存してある実施例1で創製したエシェリヒア コリ(Escherichia coli)JM109/pBUT1を、クロラムフェニコール 50μg/mlを含むLB寒天培地〔1% ポリペプトン、0.5% 酵母エキス、0.5% 塩化ナトリウム、および1.5% 寒天〕に塗布し、30℃、20時間暗所に静止した。
上記のプレートで生育したエシェリヒア コリ(Escherichia coli)JM109/pBUT1を、10mlのクロラムフェニコール50μg/ml を含むLB液体培地〔1% ポリペプトン、0.5% 酵母エキス、および0.5% 塩化ナトリウム〕 の入った試験管に一白金耳植菌し、30℃にて20時間、好気的に振盪培養を行った。
上記条件で生育したエシェリヒア コリ(Escherichia coli)JM109/pBUT1を、500mlのクロラムフェニコール50μg/ml を含むLB液体培地〔1% ポリペプトン、0.5% 酵母エキス、および0.5% 塩化ナトリウム〕の入った容量1Lの三角フラスコに植菌し、30℃にて20時間、好気的に振盪培養を行った。
このようにして培養増殖されたそれぞれの菌体は、遠心分離 (4℃、8,000×g, 20分)により菌体を回収した。得られた菌体を、終濃度OD660=20となるようにM9液体培地(0.6% Na2HPO4、 0.3% KH2PO4、 0.05% NaCl、 0.1% NH4Cl, 0.0001% 塩酸チアミン, 1mM MgSO4、 0.1mM CaCl2)に懸濁した。このそれぞれの菌体懸濁液80mlを容量100mlメディウム瓶に入れ、グルコース3.2gを、クロラムフェニコール が50μg/mlになるように添加し、30℃に保った嫌気チャンバー内で攪拌しながら反応させた。この時、反応液のpHが6.5を下回らないように2.5Nの水酸化ナトリウム溶液を用いてpHコントローラー (エイブル株式会社製、型式:DT-1023)でコントロールしながら反応した。
反応開始から22時間後の反応液を遠心分離 (4℃、15,000×g、10分) し、得られた上清液を液体クロマトグラフィーで分析したところ、エシェリヒア コリ(Escherichia coli)JM109/pBUT1ではブタノールを3.1mM生成していた。
比較例1
実施例3で使用したエシェリヒア コリ(Escherichia coli)JM109/pBUT1に代えて、エシェリヒア コリJM109を用い、LB培地もしくはM9培地にクロラムフェニコールを添加しないこと以外は、実施例3と同様の条件、方法にてブタノール生産実験を行った。
その結果、エシェリヒア コリJM109は、ブタノールを生成しなかった。
実施例3の結果との比較において、エシェリヒア コリ(Escherichia coli)JM109/pBUT1は、ブタノール生成能を有することが明らかとなった。
図1は、実施例1(2)項において作製したプラスミドpTHI、pBCS及びpADHを示す。 図2は、実施例1(2)項において作製したプラスミドpCRB1-PtacBCS、pCRB1-PtacBCS-PtacADH及びpBUT1の作製方法を示す。

Claims (4)

  1. 以下の(a)〜(h)の遺伝子をエシェリヒア コリ(Escherichia coli)に導入したことを特徴とする、ブタノール生産能を有する形質転換体。
    (a)アセチル-CoA アセチルトランスフェラーゼ活性を有する酵素をコードする外来性遺伝子
    (b)β-ヒドロキシブチル-CoAデヒドロゲナーゼ活性を有する酵素をコードする外来性遺伝子
    (c)3-ヒドロキシブチリル-CoAデヒドラターゼ活性を有する酵素をコードする外来性遺伝子
    (d)ブチリル-CoAデヒドロゲナーゼ活性を有する酵素をコードする外来性遺伝子
    (e)ブチリルアルデヒドデヒドロゲナーゼ活性を有する酵素をコードする外来性遺伝子
    (f)ブタノールデヒドロゲナーゼ活性を有する酵素をコードする外来性遺伝子
    (g) エレクトロントランスファーフラボプロテインαサブユニット遺伝子
    (h) エレクトロントランスファーフラボプロテインβサブユニット遺伝子
    但し、(a)アセチル-CoA アセチルトランスフェラーゼ活性を有する酵素をコードする外来性遺伝子は、配列番号1の塩基配列からなるDNAであり、
    (b)β-ヒドロキシブチル-CoAデヒドロゲナーゼ活性を有する酵素をコードする外来性遺伝子、(c) 3-ヒドロキシブチリル-CoAデヒドラターゼ活性を有する酵素をコードする外来遺伝子、及び(d)ブチリル-CoAデヒドロゲナーゼ活性を有する酵素をコードする外来遺伝子は、配列番号2の塩基配列に含まれるDNAであり、
    (e)ブチリルアルデヒドデヒドロゲナーゼ活性を有する酵素をコードする外来遺伝子、及び(f)ブタノールデヒドロゲナーゼ活性を有する酵素をコードする外来遺伝子は、配列番号3の塩基配列からなるDNAである。
  2. (g)エレクトロントランスファーフラボプロテインαサブユニット遺伝子、及び(h)エレクトロントランスファーフラボプロテインβサブユニット遺伝子が、クロストリジウム アセトブチリカム由来の遺伝子である請求項1に記載の形質転換体。
  3. 形質転換体がエシェリヒア コリ(Escherichia coli)JM109/pBUT1(受託番号 FERM P-21323)である請求項1又は2に記載の形質転換体。
  4. 請求項1〜3の何れかに記載の形質転換体を、糖類を含有する培地中で培養する工程と、培養物からブタノールを回収する工程とを含むブタノールの製造方法。
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