JP2018131596A - ポリエチレン系重合体及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明は、溶出成分を十分に抑えつつ成形効率を効果的に向上することができるポリエチレン系重合体、及びその製造方法を提供することを目的とする。【解決手段】本発明のポリエチレン系重合体は、エチレン単独重合体、又は、エチレンとα−オレフィンとの共重合体であって、極限粘度IVが、2dL/g以上15dL/g以下であり、融解熱量ΔH1が150J/g以上210J/g以下であり、数平均分子量Mn、重量平均分子量Mw及びZ平均分子量Mzにおいて、Mw/Mnが5以上18以下、かつ、Mz/Mwが1以上6以下であり、α−オレフィン含有量が0mol%以上0.60mol%以下である、ことを特徴とする。また、本発明のポリエチレン系重合体の製造方法は、前記ポリエチレン系重合体を重合する際、担持型メタロセン触媒とメタロセン触媒溶液とを接触させて反応溶液に添加することを特徴とする。【選択図】なし
Description
本発明は、ポリエチレン系重合体及びその製造方法に関する。
ポリエチレンは、分子量が数十万を超える超高分子量体では、耐衝撃性、自己潤滑性、耐摩耗性、耐候性、耐薬品性、寸法安定性が飛躍的に向上し、エンジニアリングプラスチックに匹敵する高い物性を示す。このため、各種成形方法により、ライニング材、食品工業のライン部品、機械部品、人工関節、スポーツ用品、繊維、多孔質焼結成形体を用いたフィルター(例えば特許文献1)、鉛蓄電池やリチウムイオン電池等の2次電池のセパレータとして用いられる微多孔膜(例えば特許文献2)などへの用途適用が試みられている。
ここで、上記のような用途を含め超高分子量ポリエチレンを用いた製品は、高品質や高度な精密さが求められており、それゆえにポリエチレンに求められる物性として、樹脂中から製品に影響し得る成分が高度に溶出しないことがある。
そして、上記のように溶出し得る成分をなくす方法としては、例えばポリエチレン中の低分子量側の成分を単に低減すようにポリエチレンを設計することも考えられるが、低分子量側の成分が成形効率(成形時間など)に寄与することもあり、このような方法では成形効率に影響する虞があった。
そして、上記のように溶出し得る成分をなくす方法としては、例えばポリエチレン中の低分子量側の成分を単に低減すようにポリエチレンを設計することも考えられるが、低分子量側の成分が成形効率(成形時間など)に寄与することもあり、このような方法では成形効率に影響する虞があった。
具体的には、超高分子量ポリエチレンを含めポリエチレンは重合後パウダーの形態で得られるが、超高分子量ポリエチレンは、その分子量が極めて高いがゆえに一般に溶融粘度が高く、その成形方法が低分子量のポリエチレンに対して工夫されている。例えば、成形方法としては、超高分子量ポリエチレンが射出成形等による加工が困難であるために、パウダーを溶剤に溶解させた後に成形させる方法が採用されたり、あるいは、ポリエチレンの溶融状態での高粘度を活用して、パウダー全体を加熱して、パウダー粒界に空隙を残しつつ相互に十分接合した状態になるようにパウダー同士を融着させて(またそのまま焼結させて)成形させる方法が採用されている。そして、このような成形方法においては、ポリエチレン中の低分子量側の成分の含有量によっては、ポリエチレンパウダーを溶剤に溶解させにくくなり、またはパウダー同士を融着させにくくなり、その結果として、成形時間を要するなど成形効率が低下し得る。特に、パウダー同士を融着させる成形方法では、パウダー同士の融着の程度が成形体の強度に影響を生じる虞もある。
そこで、本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、溶出成分を十分に抑えつつ成形効率を効果的に向上することができるポリエチレン系重合体、及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者は、鋭意研究した結果、特定のポリエチレン系重合体が上記課題を解決しうることを見出し、本発明を完成させるに到った。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
〔1〕
エチレン単独重合体、又は、エチレンと炭素数が3以上6以下のα−オレフィンとの共重合体であるポリエチレン系重合体であって、
デカリン溶媒中、135℃で測定した極限粘度IVが、2dL/g以上15dL/g以下であり、
示差走査熱量分析により昇温速度10℃/minで測定された融解熱量ΔH1が150J/g以上210J/g以下であり、
ゲル浸透クロマトグラフィーで測定された数平均分子量Mn、重量平均分子量Mw及びZ平均分子量Mzにおいて、Mw/Mnが5以上18以下、かつ、Mz/Mwが1以上6以下であり、
13CNMRで測定されたα−オレフィン含有量が0mol%以上0.60mol%以下である、ことを特徴とするポリエチレン系重合体。
〔2〕
前記ポリエチレン系重合体が、パウダー状であり、
平均粒径が50μm以上200μm以下であり、
かさ密度が0.20g/cm3以上0.40g/cm3以下である、
前項〔1〕に記載のポリエチレン系重合体。
〔3〕
誘導結合プラズマ質量分析より求められたAl含有量が1ppm以上100ppm以下である、前項〔1〕または〔2〕に記載のポリエチレン系重合体。
〔4〕
前項〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載のポリエチレン系重合体の製造方法であって、
前記ポリエチレン系重合体を重合する際、担持型メタロセン触媒とメタロセン触媒溶液とを接触させて反応溶液に添加する、ことを特徴とするポリエチレン系重合体の製造方法。
〔5〕
多孔質成形体用である前項〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載のポリエチレン系重合体。
〔6〕
多孔質焼結成形体用である前項〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載のポリエチレン系重合体。
〔7〕
微多孔膜用である前項〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載のポリエチレン系重合体。
〔1〕
エチレン単独重合体、又は、エチレンと炭素数が3以上6以下のα−オレフィンとの共重合体であるポリエチレン系重合体であって、
デカリン溶媒中、135℃で測定した極限粘度IVが、2dL/g以上15dL/g以下であり、
示差走査熱量分析により昇温速度10℃/minで測定された融解熱量ΔH1が150J/g以上210J/g以下であり、
ゲル浸透クロマトグラフィーで測定された数平均分子量Mn、重量平均分子量Mw及びZ平均分子量Mzにおいて、Mw/Mnが5以上18以下、かつ、Mz/Mwが1以上6以下であり、
13CNMRで測定されたα−オレフィン含有量が0mol%以上0.60mol%以下である、ことを特徴とするポリエチレン系重合体。
〔2〕
前記ポリエチレン系重合体が、パウダー状であり、
平均粒径が50μm以上200μm以下であり、
かさ密度が0.20g/cm3以上0.40g/cm3以下である、
前項〔1〕に記載のポリエチレン系重合体。
〔3〕
誘導結合プラズマ質量分析より求められたAl含有量が1ppm以上100ppm以下である、前項〔1〕または〔2〕に記載のポリエチレン系重合体。
〔4〕
前項〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載のポリエチレン系重合体の製造方法であって、
前記ポリエチレン系重合体を重合する際、担持型メタロセン触媒とメタロセン触媒溶液とを接触させて反応溶液に添加する、ことを特徴とするポリエチレン系重合体の製造方法。
〔5〕
多孔質成形体用である前項〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載のポリエチレン系重合体。
〔6〕
多孔質焼結成形体用である前項〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載のポリエチレン系重合体。
〔7〕
微多孔膜用である前項〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載のポリエチレン系重合体。
本発明によれば、溶出成分を十分に抑えつつ成形効率を効果的に向上することができるポリエチレン系重合体、及びその製造方法を提供することができる。
〔ポリエチレン系重合体〕
本実施形態のポリエチレン系重合体は、エチレン単独重合体、又は、エチレンと炭素数が3以上6以下のα−オレフィンとの共重合体を含んでいる。また、当該ポリエチレン系重合体は、デカリン溶媒中、135℃で測定した極限粘度IVが2dL/g以上15dL/g以下であり、示差走査熱量分析により昇温速度10℃/minで測定された融解熱量ΔH1が150J/g以上210J/g以下であり、ゲル浸透クロマトグラフィーで測定された分子量分布Mw/Mnが5以上18以下、かつ、Mz/Mwが1以上6以下であり、13CNMRで測定されたα−オレフィン含有量が0mol%以上0.60mol%以下である。
上述構成を有することにより、ポリエチレン系重合体は、溶出成分を十分に抑えつつ成形効率を効果的に向上することができる。
本実施形態のポリエチレン系重合体は、エチレン単独重合体、又は、エチレンと炭素数が3以上6以下のα−オレフィンとの共重合体を含んでいる。また、当該ポリエチレン系重合体は、デカリン溶媒中、135℃で測定した極限粘度IVが2dL/g以上15dL/g以下であり、示差走査熱量分析により昇温速度10℃/minで測定された融解熱量ΔH1が150J/g以上210J/g以下であり、ゲル浸透クロマトグラフィーで測定された分子量分布Mw/Mnが5以上18以下、かつ、Mz/Mwが1以上6以下であり、13CNMRで測定されたα−オレフィン含有量が0mol%以上0.60mol%以下である。
上述構成を有することにより、ポリエチレン系重合体は、溶出成分を十分に抑えつつ成形効率を効果的に向上することができる。
以下、上述の各要件について詳細に説明する。
ポリエチレン系重合体は、エチレン単独重合体、又は、エチレンと炭素数が3以上6以下のα−オレフィン(以下、単に「コモノマー」ともいう。)との共重合体である。本実施形態で用いることができるコモノマーは、特に限定されないが、例えば下記式のα−オレフィンが挙げられる。
H2C=CHR2
(式中、R2は、直鎖状又は分岐状である、炭素数1〜4のアルキル基を示す。)
ポリエチレン系重合体は、エチレン単独重合体、又は、エチレンと炭素数が3以上6以下のα−オレフィン(以下、単に「コモノマー」ともいう。)との共重合体である。本実施形態で用いることができるコモノマーは、特に限定されないが、例えば下記式のα−オレフィンが挙げられる。
H2C=CHR2
(式中、R2は、直鎖状又は分岐状である、炭素数1〜4のアルキル基を示す。)
具体的なコモノマーとしては、特に限定されないが、例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、及び4−メチル−1−ペンテンが挙げられる。この中では、経済性及び取扱いの容易さから、プロピレン、及び1−ブテンが好適である。また、炭素数が6以下のα−オレフィンを用いることにより、ポリエチレン系重合体の成形性が向上する傾向にある。具体的には、α−オレフィンの炭素数が6以下であると、ポリエチレン系重合体が融解しやすくなりすぎるのを抑えることができ、それゆえに、成形温度範囲をある程度確保でき、成形しにくくなるのを抑えることができる。
ポリエチレン系重合体のデカリン溶媒中、135℃で測定した極限粘度IVは、2dL/g以上15dL/g以下であり、好ましくは3dL/g以上15dL/g以下、より好ましくは4dL/g以上14dL/g以下である。極限粘度IVを2dL/g以上にすることにより、ポリエチレン系重合体及びその成形品の強度を確保することができ、極限粘度IVを15dL/g以下にすることにより、ポリエチレン系重合の成形性を確保することができる。
本実施形態において、135℃で測定した極限粘度IVを2dL/g以上15dL/g以下に制御する方法としては、特に限定されないが、例えば、重合する際の反応器の重合温度を変化させること、メタロセン触媒溶液の量を調整すること等が挙げられる。一般に、重合温度を高温にするほど分子量は低くなる傾向にあり、重合温度を低温にするほど分子量は高くなる傾向にある。また、極限粘度IVを上記範囲内に制御する別の方法としては、例えば、エチレン等を重合する際に水素等の連鎖移動剤を添加すること等が挙げられる。連鎖移動剤を添加することで、同一重合温度でも生成する分子量が低くなる傾向にある。極限粘度IVは、後述する実施例に記載の方法により測定することができる。
ポリエチレン系重合体の示差走査熱量分析により昇温速度10℃/minで測定された融解熱量ΔH1が150J/g以上210J/g以下であり、好ましくは155J/g以上205J/g以下、より好ましくは160J/g以上200J/g以下である。融解熱量ΔH1が150J/g以上であることにより、成型に好適な温度範囲を広くとることが可能であり(成形性を向上させることができる)、また、融解熱量ΔH1が210J/g以下であることにより、ポリエチレン系重合体中の結晶成分を適切な量とすることができるので、ポリエチレン系重合体のパウダーが溶剤に溶解しやすくなり、又はパウダー同士が溶融しやすくなり、成形時間を短縮することができる。それにより成形効率を向上させることが可能となる。特に、融解熱量ΔH1を上記の範囲にし、同時に、後述のようにMw/Mn、Mz/Mwを所定の範囲にすることにより、成形効率を効果的に向上することができる。
本実施形態において、融解熱量ΔH1を150J/g以上210J/g以下に制御する方法としては、特に限定されないが、例えば、炭素数が3以上6以下のα−オレフィンの種類と共重合比を変化させること、乾燥機内の乾燥温度を下げること、乾燥機内の滞留時間を短くすること、担持型メタロセン触媒調整時のメタロセン担持量を増やし、かつ、温度を下げて担持すること、などが挙げられる。融解熱量ΔH1は、後述する実施例に記載の方法により測定することができる。
本実施形態において、ポリエチレン系重合体のゲル浸透クロマトグラフィーで測定された数平均分子量Mn、重量平均分子量Mw、及びZ平均分子量Mzは、Mw/Mnが5以上18以下であり、かつ、Mz/Mwが1以上6以下である。また、好ましくはMw/Mnが6以上17以下であり、より好ましくはMw/Mnが7以上16以下である。また、好ましくはMz/Mwが1以上5以下であり、より好ましくはMz/Mwが2以上5以下である。数平均分子量Mnに対する重量平均分子量Mw(Mw/Mn)が5以上18以下であり、かつ、重量平均分子量Mwに対するZ平均分子量Mz(Mz/Mw)が1以上6以下であることにより、成形体からの溶出成分(有機物)の溶出を十分に抑えることができ、且つ、上記のように融解熱量ΔH1を所定の範囲にすることと相まって、成形効率を効果的に向上させることができる。
さらに、例えば、多孔質焼結体(パウダー全体を加熱して、パウダー粒界に空隙を残しつつ相互に十分接合した状態になるようにパウダー同士を融着させて(またそのまま焼結させて)得られる成形体)においては、分子鎖の末端の数が多くなりすぎると、成形体中のパウダー同士の融着の強度が低下する傾向がある。しかし、Mw/Mn、Mz/Mwを所定の範囲にすることにより、分子量分布を狭くすることができるので、分子鎖の末端の数を比較的少なくすることができ、成形時間を短縮し成形効率を向上させた場合であっても、パウダー同士の融着による結合の強度を確保することができる。
本実施形態において、Mw/Mnは5以上18以下、かつ、Mz/Mwが1以上6以下に制御する方法としては、特に限定されないが、担持型メタロセン触媒と別のメタロセン触媒溶液を接触させて反応溶液に添加しながら、連続重合を行うことなどが挙げられる。上述の工程を経ることでMw/MnおよびMz/Mwを上記範囲に制御できる理由は必ずしも明確ではないが、担持型メタロセン触媒と別のメタロセン触媒溶液を接触させることにより、メタロセン触媒溶液の一部が担持型メタロセン触媒上のメタロセン種と置換され得る。この為、メタロセン触媒が持つシングルサイト性が乱れる為、通常のメタロセン触媒系ポリマーではMw/MnがおよびMz/Mw共に1以上5以下という値を示すことに対し、Mw/Mnが5以上18以下という高い値を示しながら、Mz/Mwは通常のメタロセン触媒系ポリマーと同様に低い値を示し、チーグラー触媒のようなマルチサイト性のポリマーとは異なる性能を発現するものと推測される。Mw/MnおよびMz/Mwは、後述する実施例に記載の方法により測定することができる。
上記の、担持型メタロセン触媒と別のメタロセン触媒溶液を接触させて反応溶液に添加するとは、より具体的には例えば、ポリエチレン重合器に投入する前に、担持型メタロセン触媒と別のメタロセン触媒溶液を、それぞれの配管を合流させる等して接触(さらには混合)させ、次いで、それぞれを接触させた状態でポリエチレン重合器に投入し、反応溶液に添加することなどが挙げられる。
ポリエチレン系重合体の13CNMRで測定されたα−オレフィン含有量は0mol%以上0.60mol%以下であり、好ましくは(エチレンとα−オレフィンとの共重合体の場合)、0.02mol%以上0.55mol%以下、より好ましくは、0.05mol%以上0.50mol%以下である。α−オレフィン含有量を0.60mol%以下とすることにより、ポリエチレン系重合体が融解しやすくなりすぎるのを抑えることができ、それゆえに、成形温度範囲をある程度確保でき、成形しにくくなるのを抑えることができる。
なお、ポリエチレン系重合体において、α−オレフィン含有量が0mol%になる場合は、ポリエチレン系重合体が、エチレンと炭素数が3以上6以下のα−オレフィン(以下、単に「コモノマー」ともいう。)との共重合体を含まず、エチレン単独重合体を含むことを指す。
本実施形態において、α−オレフィン含有量を0mol%以上0.60mol%以下に制御する方法としては、特に限定されないが、共重合性の高い担持型メタロセン触媒を使用すること、α−オレフィンの重合器へのフィード量を調整することなどが挙げられる。α−オレフィン含有量は、後述する実施例に記載の方法により測定することができる。
ここで、本実施形態のポリエチレン系重合体は、重合後パウダーの形態で得られるが、ポリエチレン系重合体がパウダー状であるとき、ポリエチレン系重合体の平均粒径は50μm以上200μm以下であることが好ましく、より好ましくは60μm以上190μm以下、さらに好ましくは70μm以上180μm以下である。平均粒径を50μm以上とすることにより、例えばパウダーを成形するに際し、静電気が生じてもパウダーの金型への充填を効率よく行うことができ、平均粒径を200μm以下とすることにより、ポリエチレン系重合体の成形性を確保することができる。
ポリエチレン系重合体の平均粒径は篩式粒度分布測定により測定することができる。具体的には、JIS Z8801で規定された複数種類の篩と受け皿を準備し、受け皿の上に開き目の小さい順に篩を重ね、最上段の篩にポリエチレン系重合体を投入後、ロータップ型フルイ振盪機にセットし分級した後、それぞれの篩および受け皿に残ったパウダーの質量を目開きの大きい側から積分した積分曲線において、50%の質量になる粒径を平均粒径とすることができる。平均粒径を上記範囲内に制御する方法としては、例えば、使用する触媒の粒度分布及び平均粒径、単位触媒量あたりの生産性により制御することが挙げられる。
また、ポリエチレン系重合体がパウダー状であるとき、ポリエチレン系重合体の嵩密度は、0.20g/cm3以上0.40g/cm3以下であることが好ましく、より好ましくは0.21g/cm3以上0.39g/cm3以下、さらに好ましくは0.22g/cm3以上0.38g/cm3以下である。嵩密度を0.20g/cm3以上とすることにより、例えばパウダーを成形するに際し、静電気が生じてもパウダーの金型への充填を効率よく行うことができ、嵩密度を0.40g/cm3以下とすることにより、熱伝導性が大きくなり成形性および成形効率が向上する傾向にある。
ポリエチレン系重合体の嵩密度を0.20g/cm3以上0.40g/cm3以下とするためには、特に限定されないが、例えば、重合時の温度や圧力、α−オレフィンの導入量等により調整することが挙げられる。ポリエチレン系重合体の嵩密度は、後述する実施例に記載の方法により測定される。
本実施形態のポリエチレン系重合体において、ポリエチレン系重合体の誘導結合プラズマ質量分析(以下、ICP−MSともいう)より求められたAl含有量が1ppm以上100ppm以下であることが好ましく、より好ましくは2ppm以上80ppm以下、さらに好ましくは、3ppm以上50ppm以下である。本実施形態のポリエチレン系重合体は、上述のように、分子量分布(数平均分子量Mn等)を所定の範囲内にすることにより成形体からの有機物の溶出を少なくすることができるが、Al含有量が1ppm以上100ppm以下であることにより、成形体からの金属(Al)溶出成分についても少なくなる傾向にある。また、上述のように、融解熱量ΔH1、Mz/Mw、Mw/Mnが所定の範囲となり、Al含有量を所定の範囲にすることにより、金属全般的に溶出を低減することができる。具体的には、融解熱量ΔH1、Mz/Mw、Mw/Mnが所定の範囲となることで、分子鎖の末端の数が比較的少ないポリエチレン系重合体において、非晶部分を比較的多く存在させることができ、例えば触媒由来の金属成分を非晶部分内に内包されたまま溶出しにくくすることができると推測される。Al含有量が上記のように低い範囲になることにより、触媒由来の金属成分を非晶部分内に内包されたまま溶出を効果的に抑制することができる。
特に、2次電池のセパレータなどに用いる微多孔膜においては、有機物だけでなく金属も全般的に溶出しないことが望まれており、これらの溶出成分を低減することで、例えば、2次電池のセパレータなどにおいて、溶出成分の存在に起因する自己放電を生じにくくすることができ、使用できる電気量をより多い状態に維持することができる。
ポリエチレン系重合体のAl含有量を1ppm以上100ppm以下とするためには、特に限定されないが後述する担持型メタロセン触媒を使用すること、重合時に溶媒や反応の被毒の防止のため、付加成分として共存させる有機アルミニウム化合物の使用量を削減すること、単位触媒量あたりの生産性を高めること等により調整することができる。ポリエチレン系重合体のAl含有量は、後述する実施例に記載の方法により測定される。
本実施形態のポリエチレン系重合体は、酸化防止剤(フェノール系、リン系、イオウ系等)、滑剤(ステアリン酸カルシウム等)、帯電防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤等、公知の添加剤を、本実施形態の目的を損なわない範囲で含んでもよい。
〔ポリエチレン系重合体の製造方法〕
本実施形態のポリエチレン系重合体の製造方法は、触媒を用いて、エチレンを単独重合、又は、エチレンと炭素数が3以上6以下のα−オレフィンとを共重合することにより、上記ポリエチレン系重合体を得る重合工程を有する。触媒としては、後述する担持型メタロセン触媒とメタロセン触媒溶液を用いることが好ましい。
本実施形態のポリエチレン系重合体の製造方法は、触媒を用いて、エチレンを単独重合、又は、エチレンと炭素数が3以上6以下のα−オレフィンとを共重合することにより、上記ポリエチレン系重合体を得る重合工程を有する。触媒としては、後述する担持型メタロセン触媒とメタロセン触媒溶液を用いることが好ましい。
<担持型メタロセン触媒>
本実施形態の担持型メタロセン触媒は、特に限定されないが、少なくとも(ア)無機担体物質(以下、「成分(ア)」、「(ア)」ともいう。)、(イ)有機アルミニウム化合物(以下、「成分(イ)」、「(イ)」ともいう。)、(ウ)環状η結合性アニオン配位子を有する遷移金属化合物(以下、「成分(ウ)」、「(ウ)」ともいう。)、及び(エ)該環状η結合性アニオン配位子を有する遷移金属化合物と反応して触媒活性を発現する錯体を形成可能な活性化剤(以下、「成分(エ)」、「(エ)」ともいう。)から調製される。
本実施形態の担持型メタロセン触媒は、特に限定されないが、少なくとも(ア)無機担体物質(以下、「成分(ア)」、「(ア)」ともいう。)、(イ)有機アルミニウム化合物(以下、「成分(イ)」、「(イ)」ともいう。)、(ウ)環状η結合性アニオン配位子を有する遷移金属化合物(以下、「成分(ウ)」、「(ウ)」ともいう。)、及び(エ)該環状η結合性アニオン配位子を有する遷移金属化合物と反応して触媒活性を発現する錯体を形成可能な活性化剤(以下、「成分(エ)」、「(エ)」ともいう。)から調製される。
(ア)無機担体物質としては、特に限定されないが、例えば、SiO2、Al2O3、MgO、TiO2等の酸化物;MgCl2等のハロゲン化合物、特開2016−176061号公報に記載の脂肪族塩にて変性した有機変性粘土等が挙げられる。この中で好ましい担体物質は、SiO2である。
(ア)無機担体物質は、必要に応じて(イ)有機アルミニウム化合物で処理されることが好ましい。好ましい(イ)有機アルミニウム化合物としては、特に限定されないが、例えば、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム等のアルキルアルミニウム;ジエチルアルミニウムハイドライド、ジイソブチルアルミニウムハイドライド等のアルキルアルミニウムハイドライド;ジエチルアルミニウムエトキシド、ジメチルアルミニウムメトキシド等のアルミニウムアルコキシド;メチルアルモキサン、イソブチルアルモキサン、及びメチルイソブチルアルモキサン等のアルモキサンが挙げられる。これらの中で、トリアルキルアルミニウム、及びアルミニウムアルコキシドが好ましく、より好ましくはトリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、及びトリイソブチルアルミニウムである。
担持型メタロセン触媒は、(ウ)環状η結合性アニオン配位子を有する遷移金属化合物(以下、単に「遷移金属化合物」ともいう。)を含むことができる。本実施形態の遷移金属化合物は、特に限定されないが、例えば、下記式(1)で表すことができる。
LlMXpX’q‥‥(1)
式(1)中、Mは、1つ以上の配位子Lとη5結合をしている、酸化数+2、+3又は+4の周期律表第4族に属する遷移金属を示す。
LlMXpX’q‥‥(1)
式(1)中、Mは、1つ以上の配位子Lとη5結合をしている、酸化数+2、+3又は+4の周期律表第4族に属する遷移金属を示す。
式(1)中、Lは、各々独立に、環状η結合性アニオン配位子を示す。環状η結合性アニオン配位子は、シクロペンタジエニル基、インデニル基、テトラヒドロインデニル基、フルオレニル基、テトラヒドロフルオレニル基又はオクタヒドロフルオレニル基であり、これらの基は、20個までの非水素原子を含む炭化水素基、ハロゲン、ハロゲン置換炭化水素基、アミノヒドロカルビル基、ヒドロカルビルオキシ基、ジヒドロカルビルアミノ基、ヒドロカルビルフォスフィノ基、シリル基、アミノシリル基、ヒドロカルビルオキシシリル基及びハロシリル基から各々独立に選ばれる1〜8個の置換基を任意に有していてもよく、さらには2つのLが20個までの非水素原子を含むヒドロカバジイル、ハロヒドロカルバジイル、ヒドロカルビレンオキシ、ヒドロカルビレンアミノ、シラジイル、ハロシラジイル、アミノシラン等の2価の置換基により結合されていてもよい。
式(1)中、Xは、各々独立に、60個までの非水素性原子を有する1価のアニオン性σ結合型配位子、Mと2価で結合する2価のアニオン性σ結合型配位子、又はM及びLに各々1価ずつの価数で結合する2価のアニオン性σ結合型配位子を示す。X’は、各々独立に、炭素数4〜40からなる、フォスフィン、エーテル、アミン、オレフィン及び共役ジエンから選ばれる中性ルイス塩基配位性化合物を示す。
式(1)中、lは、1又は2の整数を示す。pは、0、1又は2の整数を示し、Xが1価のアニオン性σ結合型配位子又はM及びLに各々1価ずつの価数で結合する2価のアニオン性σ結合型配位子を示すとき、pは、Mの形式酸化数より1以上少ない整数を示し、また、XがMと2価で結合する2価のアニオン性σ結合型配位子を示すとき、pは、Mの形式酸化数よりl+1以上少ない整数を示す。また、qは、0、1又は2の整数を示す。遷移金属化合物は、式(1)でlが1を示すものが好ましい。
遷移金属化合物の好適な例は、下記式(2)で表される化合物である。
式(2)中、Mは、形式酸化数+2、+3又は+4の、チタン、ジルコニウム又はハフニウムを示す。また、式(2)中、R1は、各々独立に、水素、炭化水素基、シリル基、ゲルミル基、シアノ基、ハロゲン、又はこれらの複合基を示し、これらは各々20個までの非水素原子を有することができ、また、近接するR1同士が相俟ってヒドロカルバジイル、シラジイル、ゲルマジイル等の2価の誘導体を形成して環状となっていてもよい。
式(2)中、X”は、各々独立にハロゲン、炭化水素基、ヒドロカルビルオキシ基、ヒドロカルビルアミノ基又はシリル基を示し、これらは各々20個までの非水素原子を有しており、また、2つのX”が炭素数5〜30の中性の共役ジエン若しくは2価の誘導体を形成してもよい。Yは、−O−、−S−、−NR3−又は−PR3−を示し、Zは、SiR3 2、CR3 2、SiR3 2SiR3 2、CR3 2CR3 2、CR3=CR3、CR3 2SiR3 2又はGeR3 2を示し、ここでR3は、各々独立に炭素数1〜12のアルキル基又はアリル基を示す。また、nは、1〜3の整数を示す。
遷移金属化合物としてより好適な例は、下記式(3)及び下記式(4)で表される化合物である。
式(3)及び(4)中、それぞれ、R1は、各々独立に、水素、炭化水素基、シリル基、ゲルミル基、シアノ基、ハロゲン、又はこれらの複合基を示し、各々20個までの非水素原子を有することができる。また、Mは、チタニウム、ジルコニウム又はハフニウムを示す。Z及びYは、式(2)中で示すものと同様のものを示す。また、X及びX’は式(2)中のX”で示すものと同様のものを示す。
式(3)及び(4)中、それぞれ、pは、0、1又は2を示し、また、qは0又は1を示す。pが2、qが0を示すとき、Mの酸化数は、+4でありかつXは、ハロゲン、炭化水素基、ヒドロカルビルオキシ基、ジヒドロカビルアミド基、ジヒドロカルビルフォスフィド基、ヒドロカルビルスルフィド基、シリル基、又はこれらの複合基であり、20個までの非水素原子を有しているものを示す。
式(3)及び(4)中、それぞれ、pが1、qが0を示すとき、Mの酸化数が+3でありかつXが、アリル基、2−(N,N−ジメチルアミノメチル)フェニル基及び2−(N,N−ジメチル)−アミノベンジル基から選ばれる安定化アニオン配位子を示すか;Mの酸化数が+4でありかつXが、2価の共役ジエンの誘導体を示すか;MとXとが共にメタロシクロペンテン基を形成しているか、である。
式(3)及び(4)中、それぞれ、pが0、qが1を示すとき、Mの酸化数は+2であり、かつX’は、中性の共役又は非共役ジエンであって任意に1つ以上の炭化水素基で置換されていてもよく、また、X’は、40個までの炭素原子を含むことができ、Mとπ型錯体を形成している。
遷移金属化合物としてさらに好適な例は、下記式(5)及び下記(6)で表される化合物である。
式(5)及び(6)中、それぞれ、R1は、各々独立に、水素、又は炭素数1〜6のアルキル基を示す。また、Mは、チタニウムを示し、Yは−O−、−S−、−NR3−、−PR3−を示す。Zは、SiR3 2、CR3 2、SiR3 2SiR3 2、CR3 2CR3 2、CR3=CR3、CR3 2SiR3 2、又はGeR3 2を示し、R3は、各々独立に水素、又は、炭化水素基、ヒドロカルビルオキシ基、シリル基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アリル基、若しくはこれらの複合基を示し、これらは、20個までの非水素原子を有することができ、また必要に応じて、Z中の2つのR3同士、又はZ中のR3とY中のR3とが相俟って環状となっていてもよい。X及びX’は式(3)又は(4)中で示すものと同様のものを示す。
式(5)及び(6)中、それぞれ、pは0、1又は2を示し、qは、0又は1を示す。ただし、pが2、qが0を示すとき、Mの酸化数は+4でありかつXは、各々独立にメチル基又はベンジル基を示す。また、pが1、qが0を示すとき、Mの酸化数が+3でありかつXが、2−(N,N−ジメチル)アミノベンジルを示すか、Mの酸化数が+4でありかつXが、2−ブテン−1,4−ジイルを示す。また、pが0、qが1を示すとき、Mの酸化数は+2でありかつX’は、1,4−ジフェニル−1,3−ブタジエン又は1,3−ペンタジエンを示す。これらのジエン類は、金属錯体を形成する非対称ジエン類を例示したものであり、実際には各幾何異性体の混合物である。
担持型メタロセン触媒は、(エ)遷移金属化合物と反応して触媒活性を発現する錯体を形成可能な活性化剤(以下、単に「活性化剤」ともいう。)を含む。一般的には、メタロセン触媒においては、遷移金属化合物と上述活性化剤により形成される錯体とが、触媒活性種として高いオレフィン重合活性を示す。本実施形態において、活性化剤としては、特に限定されないが、例えば、下記式(7)で表される化合物が挙げられる。
[L−H]d+[MmQp]d- ‥‥(7)
式(7)中、[L−H]d+は、プロトン付与性のブレンステッド酸を示し、Lは、中性ルイス塩基を示す。また、[MmQp]d-は、相溶性の非配位性アニオンを示し、Mは、周期律表第5族〜第15族から選ばれる金属又はメタロイドを示し、Qは、各々独立にヒドリド、ジアルキルアミド基、ハライド、アルコキシ基、アリルオキシ基、炭化水素基、又は炭素数20個までの置換炭化水素基を示し、また、ハライドであるQは、1個以下である。また、mは、1〜7の整数を示し、pは、2〜14の整数を示し、dは、1〜7の整数を示し、p−m=dである。
式(7)中、[L−H]d+は、プロトン付与性のブレンステッド酸を示し、Lは、中性ルイス塩基を示す。また、[MmQp]d-は、相溶性の非配位性アニオンを示し、Mは、周期律表第5族〜第15族から選ばれる金属又はメタロイドを示し、Qは、各々独立にヒドリド、ジアルキルアミド基、ハライド、アルコキシ基、アリルオキシ基、炭化水素基、又は炭素数20個までの置換炭化水素基を示し、また、ハライドであるQは、1個以下である。また、mは、1〜7の整数を示し、pは、2〜14の整数を示し、dは、1〜7の整数を示し、p−m=dである。
活性化剤のより好ましい例は、下記式(8)で表される化合物である。
[L−H]d+[MmQn(Gq(T−H)r)z]d- ‥‥(8)
式(8)中、[L−H]d+は、プロトン付与性のブレンステッド酸を示し、Lは、中性ルイス塩基を示す。また、[MmQn(Gq(T−H)r)z]d-は、相溶性の非配位性アニオンを示し、Mは、周期律表第5族〜第15族から選ばれる金属又はメタロイドを示し、Qは、各々独立にヒドリド、ジアルキルアミド基、ハライド、アルコキシ基、アリルオキシ基、炭化水素基、又は炭素数20個までの置換炭化水素基を示し、また、ハライドであるQは、1個以下である。また、Gは、M及びTと結合するr+1の価数を持つ多価炭化水素基を示し、Tは、O、S、NR、又はPRを示す。ここで、Rは、ヒドロカルビル、トリヒドロカルビルシリル基、トリヒドロカルビルゲルマニウム基又は水素を示す。また、mは、1〜7の整数を示し、nは、0〜7の整数を示し、qは、0又は1の整数を示し、rは、1〜3の整数を示し、zは、1〜8の整数を示し、dは、1〜7の整数を示し、n+z−m=dである。
[L−H]d+[MmQn(Gq(T−H)r)z]d- ‥‥(8)
式(8)中、[L−H]d+は、プロトン付与性のブレンステッド酸を示し、Lは、中性ルイス塩基を示す。また、[MmQn(Gq(T−H)r)z]d-は、相溶性の非配位性アニオンを示し、Mは、周期律表第5族〜第15族から選ばれる金属又はメタロイドを示し、Qは、各々独立にヒドリド、ジアルキルアミド基、ハライド、アルコキシ基、アリルオキシ基、炭化水素基、又は炭素数20個までの置換炭化水素基を示し、また、ハライドであるQは、1個以下である。また、Gは、M及びTと結合するr+1の価数を持つ多価炭化水素基を示し、Tは、O、S、NR、又はPRを示す。ここで、Rは、ヒドロカルビル、トリヒドロカルビルシリル基、トリヒドロカルビルゲルマニウム基又は水素を示す。また、mは、1〜7の整数を示し、nは、0〜7の整数を示し、qは、0又は1の整数を示し、rは、1〜3の整数を示し、zは、1〜8の整数を示し、dは、1〜7の整数を示し、n+z−m=dである。
活性化剤のさらに好ましい例は、下記式(9)で表される化合物である。
[L−H]+[BQ3Q1]- ‥‥(9)
式(9)中、[L−H]+は、プロトン付与性のブレンステッド酸を示し、Lは、中性ルイス塩基を示す。また、[BQ3Q1]-は、相溶性の非配位性アニオンを示し、Bは、硼素元素を示し、Qは、各々独立に、ペンタフルオロフェニル基を示し、Q1は、置換基としてOH基を1つ有する炭素数6〜20の置換アリル基を示す。
[L−H]+[BQ3Q1]- ‥‥(9)
式(9)中、[L−H]+は、プロトン付与性のブレンステッド酸を示し、Lは、中性ルイス塩基を示す。また、[BQ3Q1]-は、相溶性の非配位性アニオンを示し、Bは、硼素元素を示し、Qは、各々独立に、ペンタフルオロフェニル基を示し、Q1は、置換基としてOH基を1つ有する炭素数6〜20の置換アリル基を示す。
上述プロトン付与性のブレンステッド酸としては、特に限定されないが、例えば、トリエチルアンモニウム、トリプロピルアンモニウム、トリ(n−ブチル)アンモニウム、トリメチルアンモニウム、トリブチルアンモニウム、トリ(n−オクチル)アンモニウム、ジエチルメチルアンモニウム、ジブチルメチルアンモニウム、ジブチルエチルアンモニウム、ジヘキシルメチルアンモニウム、ジオクチルメチルアンモニウム、ジデシルメチルアンモニウム、ジドデシルメチルアンモニウム、ジテトラデシルメチルアンモニウム、ジヘキサデシルメチルアンモニウム、ジオクタデシルメチルアンモニウム、ジイコシルメチルアンモニウム、及びビス(水素化タロウアルキル)メチルアンモニウム等のようなトリアルキル基置換型アンモニウムカチオン;N,N−ジメチルアニリニウム、N,N−ジエチルアニリニウム、N,N−2,4,6−ペンタメチルアニリニウム、及びN,N−ジメチルベンジルアニリニウム等のようなN,N−ジアルキルアニリニウムカチオン;トリフェニルカルボニウムカチオンが挙げられる。
上述相溶性の非配位性アニオンとしては、特に限定されないが、例えば、トリフェニル(ヒドロキシフェニル)ボレート、ジフェニル−ジ(ヒドロキシフェニル)ボレート、トリフェニル(2,4−ジヒドロキシフェニル)ボレート、トリ(p−トリル)(ヒドロキシフェニル)ボレート、トリス(ペンタフルオロフェニル)(ヒドロキシフェニル)ボレート、トリス(2,4−ジメチルフェニル)(ヒドロキシフェニル)ボレート、トリス(3,5−ジメチルフェニル)(ヒドロキシフェニル)ボレート、トリス(3,5−ジ−トリフルオリメチルフェニル)(ヒドロキシフェニル)ボレート、トリス(ペンタフルオロフェニル)(2−ヒドロキシエチル)ボレート、トリス(ペンタフルオロフェニル)(4−ヒドロキシブチル)ボレート、トリス(ペンタフルオロフェニル)(4−ヒドロキシ−シクロヘキシル)ボレート、トリス(ペンタフルオロフェニル)(4−(4´−ヒドロキシフェニル)フェニル)ボレート、及びトリス(ペンタフルオロフェニル)(6−ヒドロキシ−2−ナフチル)ボレートが挙げられる。これらの相溶性の非配位性アニオンを「ボレート化合物」ともいう。触媒活性の観点並びにAl、Mg、Ti、Zr及びHfの合計含有量を低減する観点から、担持型メタロセン触媒の活性化剤が、ボレート化合物であることが好ましい。好ましいボレート化合物としては、トリス(ペンタフルオロフェニル)(ヒドロキシフェニル)ボレートが挙げられる。
活性化剤として、下記式(10)で表される、ユニットを有する有機金属オキシ化合物も用いることもできるが、この場合、ポリエチレン系重合体中のAl含有量が増加する傾向にある。
(式(10)中、M2は、周期律表第13族〜第15族の金属、又はメタロイドを示し、Rは、各々独立に炭素数1〜12の炭化水素基又は置換炭化水素基を示し、nは、金属M2の価数を示し、mは、2以上の整数を示す。)
活性化剤の好ましい他の例は、下記式(11)で表される、ユニットを含む有機アルミニウムオキシ化合物である。
活性化剤の好ましい他の例は、下記式(11)で表される、ユニットを含む有機アルミニウムオキシ化合物である。
(式(11)中、Rは、炭素数1〜8のアルキル基を示し、mは、2〜60の整数を示す。)
活性化剤のより好ましい例は、下記式(12)で表される、ユニットを含むメチルアルモキサンである。
活性化剤のより好ましい例は、下記式(12)で表される、ユニットを含むメチルアルモキサンである。
(式(12)中、mは、2〜60の整数を示す。)
また、上述(ア)〜(エ)の成分の他に、必要に応じて有機アルミニウム化合物を触媒として用いることもできる。有機アルミニウム化合物としては、特に限定されないが、例えば、下記式(13)で表される化合物が挙げられる。
また、上述(ア)〜(エ)の成分の他に、必要に応じて有機アルミニウム化合物を触媒として用いることもできる。有機アルミニウム化合物としては、特に限定されないが、例えば、下記式(13)で表される化合物が挙げられる。
AlRnX3-n ‥‥(13)
式(13)中、Rは、炭素数1〜12の直鎖状、分岐状若しくは環状のアルキル基又は炭素数6〜20のアリル基を示し、Xは、ハロゲン、水素又はアルコキシル基を示し、nは、1〜3の整数を示す。また、有機アルミニウム化合物は、式(13)で表される化合物の混合物であっても構わない。
式(13)中、Rは、炭素数1〜12の直鎖状、分岐状若しくは環状のアルキル基又は炭素数6〜20のアリル基を示し、Xは、ハロゲン、水素又はアルコキシル基を示し、nは、1〜3の整数を示す。また、有機アルミニウム化合物は、式(13)で表される化合物の混合物であっても構わない。
触媒は、成分(ア)に対して、成分(イ)、成分(ウ)、及び成分(エ)を担持させることにより得ることができる。成分(イ)、成分(ウ)、及び成分(エ)を担持させる方法は特に限定されないが、例えば、成分(イ)、成分(ウ)及び成分(エ)をそれぞれが溶解可能な不活性溶媒中に溶解させ、成分(ア)と混合した後、溶媒を留去する方法;成分(イ)、成分(ウ)及び成分(エ)を不活性溶媒に溶解後、固体が析出しない範囲でないでこれを濃縮して、次に濃縮液の全量を粒子内に保持できる量の成分(ア)を加える方法;成分(ア)に成分(イ)、及び成分(エ)をまず担持させ、ついで成分(ウ)を担持させる方法;成分(ア)に成分(イ)及び成分(エ)、及び成分(ウ)を逐次に担持させる方法が挙げられる。本実施形態の成分(ウ)、及び成分(エ)は、液体又は固体であることが好ましい。また、成分(イ)、成分(ウ)、成分(エ)は、担持の際、不活性溶媒に希釈して使用する場合がある。
上述不活性溶媒としては、特に限定されないが、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、灯油等の脂肪族炭化水素;シクロヘキサン、メチルシクロペンタン等の脂環族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;これらの混合物が挙げられる。かかる不活性溶媒は、乾燥剤、吸着剤等を用いて、水、酸素、硫黄分等の不純物を除去して用いることが好ましい。
成分(ア)1.0gに対し、成分(イ)は、Al原子換算で0.5ミリモル以上5.0ミリモル以下が好ましく、より好ましくは1.0ミリモル以上2.5ミリモル以下、成分(ウ)および(エ)は、150マイクロモル以上300マイクロモル以下が好ましく、より好ましくは160マイクロモル以上250マイクロモル以下の範囲で担持することが好ましい。各成分の使用量及び担持方法は、活性、経済性、パウダー特性、及び反応器内のスケール等により決定される。得られた担持型メタロセン触媒は、担体に担持されていない有機アルミニウム化合物、ボレート化合物、チタン化合物を除去することを目的に、不活性溶媒を用いでデカンテーション、濾過等の方法により洗浄することもできる。
上述一連の溶解、接触、洗浄等の操作は、その単位操作毎に選択される−30℃以上80℃以下の温度で行うことが好ましい。そのような温度のより好ましい範囲は、0℃以上50℃以下である。特に、成分(ウ)、成分(エ)を担持する際の温度は、0℃以上20℃以下が好ましく、より好ましくは5℃以上15℃以下である。成分(ウ)、(エ)の担持条件を上記範囲とすることにより、融解熱量ΔH1が前述の範囲となる傾向にあり、更に驚くべきことに、成形体からの溶出量が減少する傾向にある。この原因については明らかではないが、おそらく、成分(ア)上に担持された成分(ウ)および(エ)の反応生成物(以下、活性点ともいう)が、成分(ア)上に過密に担持され、成長するポリマー鎖同士が絡み合うことにより、非晶割合が増加する為と考えられる。更に、絡み合う非晶部が多く存在する為に、発生する低分子量成分および触媒中の金属成分が内包されるまたは触媒中の金属とポリマー鎖末端が外れにくくなることにより、溶出が抑制されるものと推測される。
また、担持型メタロセン触媒を得る一連の操作は、乾燥した不活性雰囲気下で行うことが好ましい。
担持型メタロセン触媒は、それのみでエチレンの単独重合、又はエチレンとα−オレフィンの共重合が可能であるが、溶媒や反応の被毒の防止のため、付加成分として有機アルミニウム化合物を共存させて使用することもできる。好ましい有機アルミニウム化合物としては、特に限定されないが、例えば、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム等のアルキルアルミニウム;ジエチルアルミニウムハイドライド、及びジイソブチルアルミニウムハイドライド等のアルキルアルミニウムハイドライド;ジエチルアルミニウムエトキシド等のアルミニウムアルコキシド;メチルアルモキサン、イソブチルアルミキサン、及びメチルイソブチルアルモキサン等のアルモキサンが挙げられる。これらの中でも、トリアルキルアルミニウム、及びアルミニウムアルコキシドが好ましい。より好ましくはトリイソブチルアルミニウムである。
本実施形態のメタロセン触媒溶液は、特に限定されないが、少なくとも(A)メタロセン触媒(以下、「成分(A)」、「(A)」ともいう。)、(B)有機アルミニウム化合物(以下、「成分(B)」、「(B)」ともいう。)、及び(C)脂肪族炭化水素(以下、「成分(C)」、「(C)」ともいう。)から調製される。メタロセン触媒溶液は、成分(C)に成分(A)および(B)を溶解させることにより得ることができる。成分(A(B)を溶解させる方法は特に限定されないが、例えば、成分(A)及び(B)をそれぞれ成分(C)に分散又は溶解させた後、混合する方法、成分(B)を成分(C)に溶解させたのち、成分(A)に混合する方法等がある。
成分(A)については、特に限定されず、メタロセン触媒として公知の化合物を使用することができる。入手しやすさと価格等の観点から、チタノセンジクロリド、シクロペンタジエニルチタニウムトリクロリド、(ペンタメチルシクロペンタジエニル)チタニウムトリクロリド、ジルコノセンジクロリド、シクロペンタジエニルジルコニウムトリクロリド、デカメチルジルコノセンジクロリド、1、1’−ジブチルジルコノセンジクロリド、1、1’−イソプロピリデンジルコノセンジクロリド、ハフノセンジクロリド、1、1’−ジプロピルハフノセンジクロリド、バナジノセンジクロリド、(インデニル)チタニウムトリクロリドなどが好ましく、この中でもジクロリド化合物が好ましい。
成分(B)については、特に限定されず、有機アルミニウム化合物として公知の化合物を使用することができる。特にトリ−n−ブチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリ−n−ヘキシルアルミニウム、トリ(2−メチルペンチル)アルミニウム、トリオクチルアルミニウム等の炭素数が4以上のトリアルキルアルミニウムが成分(A)の均一溶解、保存安定性の観点で好ましく、更に好ましくは、トリアルキルアルミニウムとジアルキルアルミニウムハイドライドの混合物であることが好ましい。トリアルキルアルミニウムとジアルキルアルミニウムハイドライドの混合比は特に限定されないが、モル比10対0から5対5が好ましく、より好ましくは9対1から4対6である。
成分(C)については、特に限定されず、脂肪族炭化水素として公知の化合物を使用することができる。重合に使用される不活性炭化水素溶媒と同種のものが重合系を均一にする観点で好ましい。
メタロセン触媒溶液の重合器へのフィード方法は特に限定されないが、担持型メタロセン触媒と接触させて反応溶液へフィードする方法が好ましい。
ポリエチレン系重合体の重合方法は、スラリー重合法が好ましい。重合を行う場合、一般的には重合圧力は、0.1MPaG以上10MPaG以下が好ましく、より好ましくは0.3MPaG以上3.0MPaG以下である。また、重合温度は、20℃以上115℃以下が好ましく、より好ましくは50℃以上85℃以下である。
スラリー重合法に用いる溶媒としては、上述した不活性溶媒が好適であり、不活性炭化水素溶媒がより好ましい。不活性炭化水素溶媒としては、炭素数6以上8以下の炭化水素溶媒、具体的には、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素;シクロヘキサン、メチルシクロペンタン等の脂環式炭化水素;これらの混合物が挙げられる。
ポリエチレン系重合体の重合方法は、連続式で重合することが好ましい。エチレンガス、溶媒、触媒等を連続的に重合内に供給し、生成したポリエチレン系重合体と共に連続的に排出することで、急激なエチレンの反応による部分的な高温状態を抑制することが可能となり、重合系内がより安定化する傾向にある。均一な状態でエチレンが反応すると、分子量分布の広幅化が抑制される傾向にある。
本実施形態におけるポリエチレン系重合体の製造方法における溶媒分離方法は、デカンテーション法、遠心分離法、フィルター濾過法等によって行うことができるが、ポリエチレン系重合体と溶媒との分離効率が良い遠心分離法がより好ましい。溶媒分離後にポリエチレン系重合体に含まれる溶媒の量としては、特に限定されないが、好ましくはポリエチレン系重合体の質量に対して50質量%以上90質量%以下であり、より好ましくは55質量%以上85質量%以下であり、さらに好ましくは60質量%以上80質量%以下である。
ポリエチレン系重合体を合成するために使用する触媒の失活方法としては、特に限定されないが、ポリエチレン系重合体と溶媒を分離した後に実施することが好ましい。触媒を失活させる薬剤としては、特に限定されないが、例えば、酸素、水、アルコール類、が挙げられる。
ポリエチレン系重合体の製造方法における乾燥に際しては、窒素やアルゴン等の不活性ガスを流通させた状態で実施することが好ましい。また、乾燥温度としては、好ましくは25℃以上100℃以下であり、より好ましくは30℃以上90℃以下であり、さらに好ましくは35℃以上85℃以下である。乾燥温度が上記範囲であることで融解熱量ΔH1が低くなる傾向にあり、上述の本実施形態のポリエチレン系重合体の所望の範囲の融解熱量ΔH1にしやすくなる。上述のような各成分以外にもポリエチレン系重合体の製造に有用な他の公知の成分を含むことができる。
以下に、実施例に基づいて本実施形態を更に詳細に説明するが、本実施形態は、以下の実施例に限定されるものではない。
まず、下記に各物性及び評価の測定方法並びに評価基準について述べる。
まず、下記に各物性及び評価の測定方法並びに評価基準について述べる。
(物性1)極限粘度(IV)
後述の実施例及び比較例で得られた各ポリエチレン系重合体の極限粘度(IV)は、ISO1628−3(2010)に準拠し、以下に示す方法によって求めた。
後述の実施例及び比較例で得られた各ポリエチレン系重合体の極限粘度(IV)は、ISO1628−3(2010)に準拠し、以下に示す方法によって求めた。
まず、溶解管にポリエチレン系重合体を4.0〜4.5mgの範囲内になるように秤量し(下記数式中で質量「m」と表記)、溶解管内部の空気を真空ポンプで脱気し窒素で置換した後、真空ポンプで脱気し窒素で置換した20mLのデカヒドロナフタレン(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノールを1g/L加えたもの、以下、デカリンと表記)を加え、150℃で90分間攪拌してポリエチレン系重合体を溶解させ、デカリン溶液とした。その後、デカリン溶液を135℃の恒温液槽中で、キャノン−フェンスケ型粘度計(柴田科学器械工業社製:製品番号−100)に投入し、標線間の落下時間(ts)を測定した。ブランクとしてポリエチレン系重合体を入れていない、デカリンのみの落下時間(tb)を測定した。下記数式(A)に従って比粘度(ηsp)を求めた。
ηsp=ts/tb−1 (数式A)
比粘度(ηsp)と濃度(C)(単位:g/dL)から、下記数式B、Cを用いて、極限粘度IVを算出した。
C=m/(20×γ)/10(単位:g/dL) (数式B)
γ=(デカリン20℃での密度)/(デカリン135℃での密度)
=0.888/0.802=1.107
IV=(ηsp/C)/(1+0.27×ηsp)(数式C)
比粘度(ηsp)と濃度(C)(単位:g/dL)から、下記数式B、Cを用いて、極限粘度IVを算出した。
C=m/(20×γ)/10(単位:g/dL) (数式B)
γ=(デカリン20℃での密度)/(デカリン135℃での密度)
=0.888/0.802=1.107
IV=(ηsp/C)/(1+0.27×ηsp)(数式C)
(物性2)融解熱量(ΔH1)
実施例及び比較例で得られた各ポリエチレン系重合体の融解熱量(ΔH1)は、示差走査熱量計(DSC)としてPerkin Elmer社製DSC8000を用いて測定した。ポリエチレン系重合体を8.3〜8.5mg秤量し、アルミニウム試料パン中に入れた。このパンにアルミニウムカバーを取り付け、示差走査熱量計中に設置した。流量20mL/分で窒素をパージしながら、試料及び基準試料を50℃で1分間保持した後、10℃/分の速度で180℃まで昇温し、その際に得られる融解曲線のピーク面積から算出した総熱量をサンプル重量で割ることによって求めた。
実施例及び比較例で得られた各ポリエチレン系重合体の融解熱量(ΔH1)は、示差走査熱量計(DSC)としてPerkin Elmer社製DSC8000を用いて測定した。ポリエチレン系重合体を8.3〜8.5mg秤量し、アルミニウム試料パン中に入れた。このパンにアルミニウムカバーを取り付け、示差走査熱量計中に設置した。流量20mL/分で窒素をパージしながら、試料及び基準試料を50℃で1分間保持した後、10℃/分の速度で180℃まで昇温し、その際に得られる融解曲線のピーク面積から算出した総熱量をサンプル重量で割ることによって求めた。
(物性3、4)Mw/Mn、Mz/Mw
実施例及び比較例で得られた各ポリエチレン系重合体のMw/MnおよびMz/Mwは以下に記載する方法で測定した。IVが12以下のポリエチレン系重合体についてはポリエチレン系重合体2mg、o−ジクロロベンゼン8mLを導入して、150℃で1時間撹拌することで試料溶液を調製し、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)の測定を行った。IVが12より大きいポリエチレン系重合体については、ポリエチレン系重合体1mg、o−ジクロロベンゼン16mLとして試料溶液を調整した。
実施例及び比較例で得られた各ポリエチレン系重合体のMw/MnおよびMz/Mwは以下に記載する方法で測定した。IVが12以下のポリエチレン系重合体についてはポリエチレン系重合体2mg、o−ジクロロベンゼン8mLを導入して、150℃で1時間撹拌することで試料溶液を調製し、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)の測定を行った。IVが12より大きいポリエチレン系重合体については、ポリエチレン系重合体1mg、o−ジクロロベンゼン16mLとして試料溶液を調整した。
別途、市販の標準ポリスチレンのMwに係数0.43を乗じてポリエチレン換算分子量とし、溶出時間とポリエチレン換算分子量のプロットから1次校正直線を作成した。
GPCの測定結果及び上記検量線に基づいて、数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、Z平均分子量(Mz)を求め、Mw/Mn、Mz/Mwを算出した。
GPCの測定結果及び上記検量線に基づいて、数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、Z平均分子量(Mz)を求め、Mw/Mn、Mz/Mwを算出した。
なお、測定に用いた装置及び条件は以下のとおりとした。
装置:Polymer Char社製GPC−IR5
検出器:RI検出器
移動相:o−ジクロロベンゼン(高速液体クロマトグラフ用)
流量:1.0mL/分
カラム:昭和電工(株)製UT−807×1本
東ソー(株)製GMHHR−H(S)HT18393×2本を直列接続
カラム温度:140℃
装置:Polymer Char社製GPC−IR5
検出器:RI検出器
移動相:o−ジクロロベンゼン(高速液体クロマトグラフ用)
流量:1.0mL/分
カラム:昭和電工(株)製UT−807×1本
東ソー(株)製GMHHR−H(S)HT18393×2本を直列接続
カラム温度:140℃
(物性5)α−オレフィン含有量
実施例及び比較例で得られた各ポリエチレン系重合体のα−オレフィン含有量は13C−NMRにより、以下の条件で測定した。
装置:AVANCEIII500HD Prodigy(Bruker Biospin社)
観測周波数:125.77MHz(13C)
パルス幅:5.0μsec
パルス繰り返し時間:5sec
積算回数:10,000 回
測定温度:120℃
基準:29.9ppm(PE:Sδδ)
溶媒:o−C6D4Cl2
試料濃度:0.1g/mL
試料管:5mmφ
実施例及び比較例で得られた各ポリエチレン系重合体のα−オレフィン含有量は13C−NMRにより、以下の条件で測定した。
装置:AVANCEIII500HD Prodigy(Bruker Biospin社)
観測周波数:125.77MHz(13C)
パルス幅:5.0μsec
パルス繰り返し時間:5sec
積算回数:10,000 回
測定温度:120℃
基準:29.9ppm(PE:Sδδ)
溶媒:o−C6D4Cl2
試料濃度:0.1g/mL
試料管:5mmφ
なお、測定試料は60mgのポリエチレン系重合体にo−C6D4Cl2 0.6mLを入れて、130℃で加熱しながら溶解させた。
測定で得られたスペクトルを(1)エチレン/プロピレン共重合体については、「J.Polym.Sci.PartA:Polym.Chem.,29,1987−1990(1991)」、(2)エチレン/1−ブテン共重合体については、「Macromolecules,15,353−360(1982)」、(3)エチレン/1−ヘキセン共重合体については、「Macromolecules,15,1402−1406(1982)」の文献に従い、観測ピークの帰属後、α−オレフィン含有量を求めた。
測定で得られたスペクトルを(1)エチレン/プロピレン共重合体については、「J.Polym.Sci.PartA:Polym.Chem.,29,1987−1990(1991)」、(2)エチレン/1−ブテン共重合体については、「Macromolecules,15,353−360(1982)」、(3)エチレン/1−ヘキセン共重合体については、「Macromolecules,15,1402−1406(1982)」の文献に従い、観測ピークの帰属後、α−オレフィン含有量を求めた。
(物性6)パウダーの平均粒径
実施例及び比較例で得られた各ポリエチレン系重合体について、JIS Z8801で規定された8種類の篩(目開き:600μm、425μm、300μm、212μm、150μm、106μm、75μm、53μm)の篩と受け皿を準備し、受け皿の上に開き目の小さい順に篩を重ね、最上段の篩に100gのポリエチレン系重合体を投入後、ロータップ型フルイ振盪機にセットし分級した後、それぞれの篩および受け皿に残ったパウダーの質量を測定し、パウダーの平均粒径を測定した。ポリエチレンパウダーの平均粒径は、上述の各篩および受け皿に残ったポリエチレンパウダーの質量を目開きの大きい側から積分した積分曲線において、50%の質量になる粒径を平均粒径とした。
実施例及び比較例で得られた各ポリエチレン系重合体について、JIS Z8801で規定された8種類の篩(目開き:600μm、425μm、300μm、212μm、150μm、106μm、75μm、53μm)の篩と受け皿を準備し、受け皿の上に開き目の小さい順に篩を重ね、最上段の篩に100gのポリエチレン系重合体を投入後、ロータップ型フルイ振盪機にセットし分級した後、それぞれの篩および受け皿に残ったパウダーの質量を測定し、パウダーの平均粒径を測定した。ポリエチレンパウダーの平均粒径は、上述の各篩および受け皿に残ったポリエチレンパウダーの質量を目開きの大きい側から積分した積分曲線において、50%の質量になる粒径を平均粒径とした。
(物性7)嵩密度
実施例及び比較例で得られた各ポリエチレン系重合体の嵩密度は、JIS K6891に準拠し、測定した。
実施例及び比較例で得られた各ポリエチレン系重合体の嵩密度は、JIS K6891に準拠し、測定した。
(物性8)Al含有量
実施例及び比較例で得られた各ポリエチレン系重合体のAl含有量は以下に記載する方法で測定した。各ポリエチレン系重合体0.2gをテフロン(登録商標)製分解容器に量り取り、高純度硝酸を加えてマイルストーンゼネラル(株)製マイクロウェーブ分解装置ETHOS−TCにて加圧分解後、日本ミリポア(株)製超純水製造装置で精製した純水で全量を50mLとしたものを検液として使用した。
上記検液に対し、サーモフィッシャーサイエンティフィック(株)製誘導結合プラズマ質量分析装置(ICP−MS)Xシリーズ2を使用して、内標準法でAl含有量を測定した。
実施例及び比較例で得られた各ポリエチレン系重合体のAl含有量は以下に記載する方法で測定した。各ポリエチレン系重合体0.2gをテフロン(登録商標)製分解容器に量り取り、高純度硝酸を加えてマイルストーンゼネラル(株)製マイクロウェーブ分解装置ETHOS−TCにて加圧分解後、日本ミリポア(株)製超純水製造装置で精製した純水で全量を50mLとしたものを検液として使用した。
上記検液に対し、サーモフィッシャーサイエンティフィック(株)製誘導結合プラズマ質量分析装置(ICP−MS)Xシリーズ2を使用して、内標準法でAl含有量を測定した。
(評価1)焼結成形体の成形時間
本発明の実施例および比較例における焼結体の作成は、以下の方法によって行った。まず、厚さ2mmのアルミニウム板を用いて、外寸が厚さ6mm、幅112mm、高さ108mm、内寸が厚さ2mm、幅100mm、高さ100mmの金型を作成した。金型の上蓋となるアルミニウム板を外し、30秒間バイブレーターで振動を与えながらポリエチレン系重合体を充填した。上蓋を元に戻した後、150℃のオーブンで所定時間加熱したのち、金型から離形した。
本発明の実施例および比較例における焼結体の作成は、以下の方法によって行った。まず、厚さ2mmのアルミニウム板を用いて、外寸が厚さ6mm、幅112mm、高さ108mm、内寸が厚さ2mm、幅100mm、高さ100mmの金型を作成した。金型の上蓋となるアルミニウム板を外し、30秒間バイブレーターで振動を与えながらポリエチレン系重合体を充填した。上蓋を元に戻した後、150℃のオーブンで所定時間加熱したのち、金型から離形した。
成形時間の評価は、焼結成形体が離形時に崩れるか否かを以下の指標で3段階に分類し、加熱成形時間が短いほど、ポリエチレン系重合体の成形効率を良いことを意味する。また、焼結成形体の成形においては、加熱成形時間を短縮した場合であってもパウダー同士が比較的融着しやすい重合体となっていることを示している。
○:10〜20分間の加熱成形で離形時に崩れない
△:20〜25分間の加熱成形で離形時に崩れない
×:25分間までの加熱成形では離形時に崩れる
○:10〜20分間の加熱成形で離形時に崩れない
△:20〜25分間の加熱成形で離形時に崩れない
×:25分間までの加熱成形では離形時に崩れる
(評価2)焼結成形体の強度
ポリエチレン系重合体20gを、幅10cm×奥行き10cmの金型に充填し、室温(23℃)で、金型のクリアランスが3.3mmになるように、プレス圧力をかけて2時間、加圧成形し、シート状の多孔質加圧成形体が得た。そして、この多孔質加圧成形体を170℃のオーブンにて、1.5時間加熱した後、放冷することにより、焼結成形体を得た。焼結成形体からダンベル型に切り出したサンプル(測定部の幅5mm)を、温度23℃湿度45%にて48時間静置した後、引張試験機((株)エイ・アンド・ディー製、(商品名)テンシロンRTG−1210)にて、測定温度23℃、試験片の初期長さ20mm、引張速度20mm/分で引張試験をし、引張破断強度を求めた。当該引張破断強度が大きいほど、パウダー同士がより融着し、焼結成形体が強度を有していることを意味する。
ポリエチレン系重合体20gを、幅10cm×奥行き10cmの金型に充填し、室温(23℃)で、金型のクリアランスが3.3mmになるように、プレス圧力をかけて2時間、加圧成形し、シート状の多孔質加圧成形体が得た。そして、この多孔質加圧成形体を170℃のオーブンにて、1.5時間加熱した後、放冷することにより、焼結成形体を得た。焼結成形体からダンベル型に切り出したサンプル(測定部の幅5mm)を、温度23℃湿度45%にて48時間静置した後、引張試験機((株)エイ・アンド・ディー製、(商品名)テンシロンRTG−1210)にて、測定温度23℃、試験片の初期長さ20mm、引張速度20mm/分で引張試験をし、引張破断強度を求めた。当該引張破断強度が大きいほど、パウダー同士がより融着し、焼結成形体が強度を有していることを意味する。
(評価3)焼結成形体からの有機物溶出量
評価2で得られた焼結成形体10gと和光純薬工業(株)製PCB試験用ヘキサン40mLを180mL容積のSUS製容器中に入れて密閉した。このSUS製容器全体を70℃の湯浴に浸し、速度50min-1で振とうしながら2時間抽出した後、20℃の水に浸し急冷した。上澄み液を、0.2μmフィルター(PTFE製)を取り付けたガラスシリンジで濾過し、試料とした。炭素数12と14の標準物質は、和光純薬工業(株)製特級n−ドデカンとn−テトラデカン、炭素数16から炭素数34の標準物質は、シグマアルドリッチ社製ASTM D5442 C16−C44 Qualitative Retention Time Mixを和光純薬工業(株)製PCB試験用ヘキサンに溶解して標準物質として用いた。
評価2で得られた焼結成形体10gと和光純薬工業(株)製PCB試験用ヘキサン40mLを180mL容積のSUS製容器中に入れて密閉した。このSUS製容器全体を70℃の湯浴に浸し、速度50min-1で振とうしながら2時間抽出した後、20℃の水に浸し急冷した。上澄み液を、0.2μmフィルター(PTFE製)を取り付けたガラスシリンジで濾過し、試料とした。炭素数12と14の標準物質は、和光純薬工業(株)製特級n−ドデカンとn−テトラデカン、炭素数16から炭素数34の標準物質は、シグマアルドリッチ社製ASTM D5442 C16−C44 Qualitative Retention Time Mixを和光純薬工業(株)製PCB試験用ヘキサンに溶解して標準物質として用いた。
上記試料について、(株)島津製作所製ガスクロマトグラフGC−2014AFを用いて測定した。カラムは、信和化工(株)SiliconeOV−1(3%)/CW80−100mesh/AW−DMCS処理を充填した、ガラス製3mmφx1.5mのカラムを用いた。温度は、インジェクション温度350℃、検出温度350℃で、初期温度100℃で2分間保持した後、10℃/minで昇温、330℃で20分間保持する条件とした。上記標準試薬の検出ピークのピーク面積(C12〜20は各6重量ppm、C22〜C34は各8.3重量ppm)に対し、試料から得られた同じ保持時間の検出ピークのピーク面積との相対比から、炭素数12以上34以下の炭化水素成分量を算出し、次の3段階に分類した。
○:溶出量が150ppm未満
△:溶出量が150ppm以上300ppm未満
×:溶出量が300ppm以上
○:溶出量が150ppm未満
△:溶出量が150ppm以上300ppm未満
×:溶出量が300ppm以上
(評価4)焼結成形体からの金属溶出量
評価2で得られた焼結成形体10gと3.6%塩酸50gを180mLのテフロン(登録商標)製容器中に入れて密閉した。この容器を室温で20時間静置した。その後、上澄み液を検液として使用し、サーモフィッシャーサイエンティフィック(株)製誘導結合プラズマ質量分析装置(ICP−MS)Xシリーズ2を使用して、Mg、Ti、Al、Si、Fe、Ni、Cu、Cr、Mo、Caの溶出量を測定し、次の3段階に分類した。
○:全溶出量が1ppm未満
△:全溶出量が1ppm以上50ppm未満
×:全溶出量が50ppm以上
評価2で得られた焼結成形体10gと3.6%塩酸50gを180mLのテフロン(登録商標)製容器中に入れて密閉した。この容器を室温で20時間静置した。その後、上澄み液を検液として使用し、サーモフィッシャーサイエンティフィック(株)製誘導結合プラズマ質量分析装置(ICP−MS)Xシリーズ2を使用して、Mg、Ti、Al、Si、Fe、Ni、Cu、Cr、Mo、Caの溶出量を測定し、次の3段階に分類した。
○:全溶出量が1ppm未満
△:全溶出量が1ppm以上50ppm未満
×:全溶出量が50ppm以上
(評価5)リチウムイオン電池の自己放電特性
(1)セパレータの作成
100ccのポリカップに、ポリエチレンパウダー4.0g及び酸化防止剤としてペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]を0.4g投入し、さらに、流動パラフィン(37.78℃における動粘度7.59×10-5m2/s)36.0g(ポリエチレン濃度10質量%)を投入し、室温にてスパチュラで撹拌することにより、均一なスラリーを得た。当該スラリーを190℃に設定したラボプラストミル((株)東洋精機製作所製4C150−01型)に投入し、窒素雰囲気下、回転数50rpmで30分間混練した。混練によって得られた混合物(ゲル)を165℃に加熱したプレス機で圧縮することにより、厚さ1.0mmのゲルシートを作製した。作製したゲルシートから10cm×10cmの試験片を切り出し、120℃に加熱した同時二軸テンター延伸機にセットし、3分間保持した。その後、12mm/secのスピードでMD倍率7.0倍、TD倍率7.0倍(即ち、7×7倍)になるように延伸した。次に延伸後のシートをメチルエチルケトン中に充分に浸漬して流動パラフィンを抽出除去し、その後メチルエチルケトンを乾燥除去した。抽出完了後の薄膜を室温で10時間乾燥しセパレータを作成した。
(1)セパレータの作成
100ccのポリカップに、ポリエチレンパウダー4.0g及び酸化防止剤としてペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]を0.4g投入し、さらに、流動パラフィン(37.78℃における動粘度7.59×10-5m2/s)36.0g(ポリエチレン濃度10質量%)を投入し、室温にてスパチュラで撹拌することにより、均一なスラリーを得た。当該スラリーを190℃に設定したラボプラストミル((株)東洋精機製作所製4C150−01型)に投入し、窒素雰囲気下、回転数50rpmで30分間混練した。混練によって得られた混合物(ゲル)を165℃に加熱したプレス機で圧縮することにより、厚さ1.0mmのゲルシートを作製した。作製したゲルシートから10cm×10cmの試験片を切り出し、120℃に加熱した同時二軸テンター延伸機にセットし、3分間保持した。その後、12mm/secのスピードでMD倍率7.0倍、TD倍率7.0倍(即ち、7×7倍)になるように延伸した。次に延伸後のシートをメチルエチルケトン中に充分に浸漬して流動パラフィンを抽出除去し、その後メチルエチルケトンを乾燥除去した。抽出完了後の薄膜を室温で10時間乾燥しセパレータを作成した。
なお、比較例2、6は極限粘度が高い、すなわち分子量が高すぎる為、延伸できず、セパレータを作成できなかった。
(2)電池評価
正極活物質がマンガン酸リチウム、負極活物質がメソフェーズカーボンマイクロビーズ、電解液がLiPF6の1M EC:DEC(30:70 vol%)溶液であり、セパレータが各実施例及び比較例のセパレータである、設計容量30mAhのパウチ型リチウムイオン二次電池を作製した。各評価用電池につき、30mAで定電流充電を行った。正負極間の電圧が4.2Vに達した後は、この電圧で定電圧充電を行った。充電電流が3mAに低下した時点で充電終了とした。その後、30mAの定電流放電(端子間電圧2.8Vで放電終了)を行った。この操作を3回繰り返した。その後、上記条件で再度充電を行い、45℃で14日間保存後、端子間電圧(V)を測定した。保存後の端子間電圧が高い程、自己放電が少なく良好な電池であり、次の3段階に分類した。
○:端子間電圧が3.9V以上の場合
△:端子間電圧が3.7V以上3.9V未満の場合
×:端子間電圧が3.7V未満の場合
正極活物質がマンガン酸リチウム、負極活物質がメソフェーズカーボンマイクロビーズ、電解液がLiPF6の1M EC:DEC(30:70 vol%)溶液であり、セパレータが各実施例及び比較例のセパレータである、設計容量30mAhのパウチ型リチウムイオン二次電池を作製した。各評価用電池につき、30mAで定電流充電を行った。正負極間の電圧が4.2Vに達した後は、この電圧で定電圧充電を行った。充電電流が3mAに低下した時点で充電終了とした。その後、30mAの定電流放電(端子間電圧2.8Vで放電終了)を行った。この操作を3回繰り返した。その後、上記条件で再度充電を行い、45℃で14日間保存後、端子間電圧(V)を測定した。保存後の端子間電圧が高い程、自己放電が少なく良好な電池であり、次の3段階に分類した。
○:端子間電圧が3.9V以上の場合
△:端子間電圧が3.7V以上3.9V未満の場合
×:端子間電圧が3.7V未満の場合
[触媒の調製]
〔担持型メタロセン触媒[A]の調製〕
窒素雰囲気下550℃で焼成された触媒担体用シリカ(平均粒子径8μm、細孔容積1.20mL/g、比表面積480m2/g)40gを、容量1.8Lのオートクレーブ中にて、ヘキサン800mL中に投入し、撹拌しながら25℃に保ち、トリエチルアルミニウムのヘキサン溶液(濃度1mol/L)を68mL加えた。その後2時間攪拌し、トリエチルアルミニウムとシリカの表面シラノール基とを反応させ、シリカの表面シラノール基がトリエチルアルミニウムによりキャッピングされている成分[α]のヘキサンスラリーを得た。
〔担持型メタロセン触媒[A]の調製〕
窒素雰囲気下550℃で焼成された触媒担体用シリカ(平均粒子径8μm、細孔容積1.20mL/g、比表面積480m2/g)40gを、容量1.8Lのオートクレーブ中にて、ヘキサン800mL中に投入し、撹拌しながら25℃に保ち、トリエチルアルミニウムのヘキサン溶液(濃度1mol/L)を68mL加えた。その後2時間攪拌し、トリエチルアルミニウムとシリカの表面シラノール基とを反応させ、シリカの表面シラノール基がトリエチルアルミニウムによりキャッピングされている成分[α]のヘキサンスラリーを得た。
一方、[(N−t−ブチルアミド)(テトラメチル−η5−シクロペンタジエニル)ジメチルシラン]チタニウムジメチル(以下、「チタニウム錯体」と記載する。)200mmolをアイソパーE(登録商標)[エクソンケミカル社(米国)製の炭化水素混合物の商品名]1000mLに溶解し、n−ブチルエチルマグネシウムの1mol/Lヘキサン溶液を20mL加え、さらにヘキサンを加えてチタニウム錯体濃度を100mmol/Lに調製し、成分[β]を得た。
また、ビス(水素化タロウアルキル)メチルアンモニウム−トリス(ペンタフルオロフェニル)(4−ヒドロキシフェニル)ボレート(以下、「ボレート化合物」と記載する。)5.7gをトルエン50mLに添加して溶解し、ボレート化合物の100mmol/Lトルエン溶液を得た。このボレート化合物のトルエン溶液にジエチルアルミニウムエトキサイドの1mol/Lヘキサン溶液5mLを室温で加え、さらにヘキサンを加えて溶液中のボレート化合物濃度が70mmol/Lとなるようにした。その後、室温で1時間攪拌し、ボレート化合物を含む反応混合物を得た。
ボレート化合物を含むこの反応混合物114mLと上述で得られた成分[β]のうち80mLを上述で得られた成分[α]のスラリー800mLに10〜15℃で同時に加え、さらに3時間攪拌し、チタニウム錯体とボレートとを反応・析出させ、シリカ上に物理吸着させた。その後、得られた反応混合物中の未反応のボレート化合物・チタニウム錯体を含む上澄み液をデカンテーションによって除去することにより、触媒活性種が該シリカ上に形成されている担持型メタロセン触媒[A](表中、単に「A」と示す。)を得た。
〔担持型メタロセン触媒[B]〕
ボレート化合物を含むこの反応混合物46mLと上述で得られた成分[β]のうち32mLを上述で得られた成分[α]のスラリー800mLに20〜25℃で攪拌しながら同時に加えた以外は、担持型メタロセン触媒[A]の調製に準じて調整し、担持型メタロセン触媒[B](表中、単に「B」と示す。)を得た。
ボレート化合物を含むこの反応混合物46mLと上述で得られた成分[β]のうち32mLを上述で得られた成分[α]のスラリー800mLに20〜25℃で攪拌しながら同時に加えた以外は、担持型メタロセン触媒[A]の調製に準じて調整し、担持型メタロセン触媒[B](表中、単に「B」と示す。)を得た。
〔チーグラー・ナッタ触媒[C]の調製〕
特許第5774084号公報の〔固体触媒成分[A−1]の調整〕に記載の方法でチーグラー・ナッタ触媒[C](表中、単に「C」と示す。)を得た。
〔担持型メタロセン触媒[D]〕
1リットルのフラスコに工業用アルコール(日本アルコール販売製、(商品名)エキネンF−3)300ml及び蒸留水300mlを入れ、濃塩酸15.0g及びジメチルベヘニルアミン(ライオン(株)製、(商品名)アーミンDM22D)42.4g(120mmol)を添加し、45℃に加熱して合成ヘクトライト(Rockwood Additives社製、(商品名)ラポナイトRDS)を100g分散させた後、60℃に昇温させてその温度を保持したまま1時間攪拌した。このスラリーを濾別後、60℃の水600mlで2回洗浄し、85℃の乾燥機内で12時間乾燥させることにより125gの有機変性粘土を得た。この有機変性粘土はジェットミル粉砕して、メジアン径を7μmとした。
特許第5774084号公報の〔固体触媒成分[A−1]の調整〕に記載の方法でチーグラー・ナッタ触媒[C](表中、単に「C」と示す。)を得た。
〔担持型メタロセン触媒[D]〕
1リットルのフラスコに工業用アルコール(日本アルコール販売製、(商品名)エキネンF−3)300ml及び蒸留水300mlを入れ、濃塩酸15.0g及びジメチルベヘニルアミン(ライオン(株)製、(商品名)アーミンDM22D)42.4g(120mmol)を添加し、45℃に加熱して合成ヘクトライト(Rockwood Additives社製、(商品名)ラポナイトRDS)を100g分散させた後、60℃に昇温させてその温度を保持したまま1時間攪拌した。このスラリーを濾別後、60℃の水600mlで2回洗浄し、85℃の乾燥機内で12時間乾燥させることにより125gの有機変性粘土を得た。この有機変性粘土はジェットミル粉砕して、メジアン径を7μmとした。
温度計と還流管が装着された300mlのフラスコを窒素置換した後に(1)で得られた有機変性粘土25.0gとヘキサンを108ml入れ、次いでジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2−(ジメチルアミノ)−9−フルオレニル)ジルコニウムジクロライドを0.600g、及び20%トリイソブチルアルミニウム142mlを添加して60℃で3時間攪拌した。45℃まで冷却した後に上澄み液を抜き取り、200mlのヘキサンにて2回洗浄後、担持型メタロセン触媒[D](表中、単に「D」と示す。)を得た。
〔メタロセン触媒溶液[a]〕
3Lのフラスコにチタノセンジクロリド(日亜化学工業製)13.07g、ヘキサン1250mLを入れ、室温で撹拌し、チタノセンジクロリドをヘキサン中に分散させた。その後、トリイソブチルアルミニウムとジイソブチルアルミニウムハイドライドをモル比9対1で混合した全アルミニウム濃度0.7mol/Lのヘキサン溶液150mLを投入し、室温で3時間撹拌し、チタノセンジクロリドとアルキルアルミニウムを反応させることでメタロセン触媒溶液[a](表中、単に「a」と示す。)を得た。
3Lのフラスコにチタノセンジクロリド(日亜化学工業製)13.07g、ヘキサン1250mLを入れ、室温で撹拌し、チタノセンジクロリドをヘキサン中に分散させた。その後、トリイソブチルアルミニウムとジイソブチルアルミニウムハイドライドをモル比9対1で混合した全アルミニウム濃度0.7mol/Lのヘキサン溶液150mLを投入し、室温で3時間撹拌し、チタノセンジクロリドとアルキルアルミニウムを反応させることでメタロセン触媒溶液[a](表中、単に「a」と示す。)を得た。
〔メタロセン触媒溶液[b]〕
トリイソブチルアルミニウムとジイソブチルアルミニウムハイドライドをモル比9対1で混合した全アルミニウム濃度0.7mol/Lのヘキサン溶液を、トリオクチルアルミニウム0.7mol/Lのヘキサン溶液に変更したこと以外は、メタロセン触媒溶液[a]の調整と同様の方法により、メタロセン触媒溶液[b](表中、単に「b」と示す。)を得た。
トリイソブチルアルミニウムとジイソブチルアルミニウムハイドライドをモル比9対1で混合した全アルミニウム濃度0.7mol/Lのヘキサン溶液を、トリオクチルアルミニウム0.7mol/Lのヘキサン溶液に変更したこと以外は、メタロセン触媒溶液[a]の調整と同様の方法により、メタロセン触媒溶液[b](表中、単に「b」と示す。)を得た。
[実施例1]
以下に示す連続式スラリー重合法によりポリエチレン系重合体を得た。具体的には、攪拌装置を備えたベッセル型340L重合反応器を用い、重合温度75℃、重合圧力0.80MPaG、平均滞留時間1.8時間の条件で連続重合を行った。溶媒として脱水ノルマルヘキサン80L/時間、触媒として上述の担持型メタロセン触媒[A]をTi原子換算で1.4mmol/時間、トリイソブチルアルミニウムを20mmol/時間で供給した。また、分子量調整のための水素をエチレンと1−ブテンの気相濃度に対して137ppm、1−ブテンをエチレンの気相濃度に対して0.31mol%、メタロセン触媒溶液[a]の系内濃度が0.41μmol/Lになるように供給することで、エチレンと1−ブテンを共重合させた。なお、担持型メタロセン触媒[A]とメタロセン触媒溶液[a]とは、重合反応器に投入する前にそれぞれ接触させて、反応溶液に添加した。重合反応器内の重合スラリーは、重合反応器のレベルが一定に保たれるように圧力0.05MPa、温度70℃のフラッシュタンクに導き、未反応のエチレン、1−ブテン、水素を分離した。次に、スラリーは、フラッシュタンクのレベルが一定に保たれるように連続的に遠心分離機に送り、パウダーとそれ以外の溶媒等を分離した。この時のパウダーの温度は28℃であった。分離されたパウダー(ポリエチレン系重合体)を、系内温度55℃のロータリードライヤーに搬送し、パウダー温度が50℃に達してから、15分間乾燥するように搬送量を調整した。得られた実施例1のポリエチレン系重合体の評価結果を表1に示す。
以下に示す連続式スラリー重合法によりポリエチレン系重合体を得た。具体的には、攪拌装置を備えたベッセル型340L重合反応器を用い、重合温度75℃、重合圧力0.80MPaG、平均滞留時間1.8時間の条件で連続重合を行った。溶媒として脱水ノルマルヘキサン80L/時間、触媒として上述の担持型メタロセン触媒[A]をTi原子換算で1.4mmol/時間、トリイソブチルアルミニウムを20mmol/時間で供給した。また、分子量調整のための水素をエチレンと1−ブテンの気相濃度に対して137ppm、1−ブテンをエチレンの気相濃度に対して0.31mol%、メタロセン触媒溶液[a]の系内濃度が0.41μmol/Lになるように供給することで、エチレンと1−ブテンを共重合させた。なお、担持型メタロセン触媒[A]とメタロセン触媒溶液[a]とは、重合反応器に投入する前にそれぞれ接触させて、反応溶液に添加した。重合反応器内の重合スラリーは、重合反応器のレベルが一定に保たれるように圧力0.05MPa、温度70℃のフラッシュタンクに導き、未反応のエチレン、1−ブテン、水素を分離した。次に、スラリーは、フラッシュタンクのレベルが一定に保たれるように連続的に遠心分離機に送り、パウダーとそれ以外の溶媒等を分離した。この時のパウダーの温度は28℃であった。分離されたパウダー(ポリエチレン系重合体)を、系内温度55℃のロータリードライヤーに搬送し、パウダー温度が50℃に達してから、15分間乾燥するように搬送量を調整した。得られた実施例1のポリエチレン系重合体の評価結果を表1に示す。
[実施例2〜7、比較例1〜6]
表1に記載の重合条件とした以外は、実施例1と同様の方法により、ポリエチレン系重合体を得た。評価結果を表1に示す。
表1に記載の重合条件とした以外は、実施例1と同様の方法により、ポリエチレン系重合体を得た。評価結果を表1に示す。
[比較例7]
表1に記載の重合条件でエチレンと1−ブテンを共重合させた。重合反応器内の重合スラリーは、重合反応器のレベルが一定に保たれるように圧力0.05MPa、温度70℃のフラッシュタンクに導き、未反応のエチレン、1−ブテン、水素を分離した。次に、スラリーは、フラッシュタンクのレベルが一定に保たれるように連続的に遠心分離機に送り、パウダーとそれ以外の溶媒等を分離した。この時のポリエチレン系重合体の温度は28℃であった。分離されたポリエチレン系重合体を、系内温度80℃のロータリードライヤーに搬送し、パウダー温度が78℃に達してから、60分間乾燥するように搬送量を調整した。得られた比較例7のポリエチレン系重合体の評価結果を表1に示す。
表1に記載の重合条件でエチレンと1−ブテンを共重合させた。重合反応器内の重合スラリーは、重合反応器のレベルが一定に保たれるように圧力0.05MPa、温度70℃のフラッシュタンクに導き、未反応のエチレン、1−ブテン、水素を分離した。次に、スラリーは、フラッシュタンクのレベルが一定に保たれるように連続的に遠心分離機に送り、パウダーとそれ以外の溶媒等を分離した。この時のポリエチレン系重合体の温度は28℃であった。分離されたポリエチレン系重合体を、系内温度80℃のロータリードライヤーに搬送し、パウダー温度が78℃に達してから、60分間乾燥するように搬送量を調整した。得られた比較例7のポリエチレン系重合体の評価結果を表1に示す。
表1に示されるとおり、実施例においては、溶出成分を十分に抑えつつ成形効率を効果的に向上することができる。また、有機成分および金属成分溶出量が極めて低い為、ポリエチレン系重合体から得られる多孔質成形体はフィルターとして好適に使用可能である。さらに更に驚くべきことに、リチウムイオン2次電池のセパレータとして適用した際には、溶出成分が少ないために自己放電抑制も可能である。
本発明によれば、溶出成分を十分に抑えつつ成形効率を効果的に向上することができるポリエチレン系重合体、及びその製造方法を提供することができる。
Claims (7)
- エチレン単独重合体、又は、エチレンと炭素数が3以上6以下のα−オレフィンとの共重合体であるポリエチレン系重合体であって、
デカリン溶媒中、135℃で測定した極限粘度IVが、2dL/g以上15dL/g以下であり、
示差走査熱量分析により昇温速度10℃/minで測定された融解熱量ΔH1が150J/g以上210J/g以下であり、
ゲル浸透クロマトグラフィーで測定された数平均分子量Mn、重量平均分子量Mw及びZ平均分子量Mzにおいて、Mw/Mnが5以上18以下、かつ、Mz/Mwが1以上6以下であり、
13CNMRで測定されたα−オレフィン含有量が0mol%以上0.60mol%以下である、ことを特徴とするポリエチレン系重合体。 - 前記ポリエチレン系重合体が、パウダー状であり、
平均粒径が50μm以上200μm以下であり、
かさ密度が0.20g/cm3以上0.40g/cm3以下である、
請求項1に記載のポリエチレン系重合体。 - 誘導結合プラズマ質量分析より求められたAl含有量が1ppm以上100ppm以下である、請求項1または2に記載のポリエチレン系重合体。
- 請求項1〜3のいずれかに記載のポリエチレン系重合体の製造方法であって、
前記ポリエチレン系重合体を重合する際、担持型メタロセン触媒とメタロセン触媒溶液とを接触させて反応溶液に添加する、ことを特徴とするポリエチレン系重合体の製造方法。 - 多孔質成形体用である請求項1〜3のいずれかに記載のポリエチレン系重合体。
- 多孔質焼結成形体用である請求項1〜3のいずれかに記載のポリエチレン系重合体。
- 微多孔膜用である請求項1〜3のいずれかに記載のポリエチレン系重合体。
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