JP6750287B2 - 軟質ポリマーの重合体粒子及びその製造方法 - Google Patents

軟質ポリマーの重合体粒子及びその製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP6750287B2
JP6750287B2 JP2016081574A JP2016081574A JP6750287B2 JP 6750287 B2 JP6750287 B2 JP 6750287B2 JP 2016081574 A JP2016081574 A JP 2016081574A JP 2016081574 A JP2016081574 A JP 2016081574A JP 6750287 B2 JP6750287 B2 JP 6750287B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
polymer
propylene
polymer particles
component
particles
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2016081574A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2016204649A (ja
Inventor
正顕 伊藤
正顕 伊藤
伸浩 岩井
伸浩 岩井
茂雄 水上
茂雄 水上
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Japan Polypropylene Corp
Original Assignee
Japan Polypropylene Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Japan Polypropylene Corp filed Critical Japan Polypropylene Corp
Publication of JP2016204649A publication Critical patent/JP2016204649A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6750287B2 publication Critical patent/JP6750287B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Polymerisation Methods In General (AREA)
  • Addition Polymer Or Copolymer, Post-Treatments, Or Chemical Modifications (AREA)

Description

本発明は、流動性と成形性に優れ、揮発性成分が少ない軟質ポリマーの重合体粒子に関するものであり、詳しくは、溶融流動性が高くて成形性に優れ、ポリマーがべたつき易くなって、重合体粒子同士が付着したりする問題を抑止し、その軟質ポリマーの重合体粒子をサイロに積み上げる場合に閉塞を起すことがなく、また揮発分が少ないために、安全に次の造粒工程で用いることができる、軟質ポリマーの重合体粒子に係わるものである。
オレフィン系ポリマーの主要ポリマーであるオレフィン系熱可塑性エラストマーは、産業用資材として汎用されており、オレフィン系の熱可塑性エラストマーとしては、プロピレンとエチレン又はα−オレフィンとの共重合体に代表されるランダムコポリマーなどの成分のブレンドがよく知られ、適度な柔軟性と強度を持ち他の物性も良好で、リサイクルや焼却廃棄などの環境問題適応性が高く、また、軽量で成形性や経済性などにも優れていることから、フィルムやシート、繊維、不織布、各種容器などの成形品、ポリマーの改質剤などとして幅広い分野で用いられている。
かかる熱可塑性エラストマーのうち、第1工程でポリプロピレン成分を、第2工程でプロピレンとエチレン又はα−オレフィン共重合体を製造する、いわゆるプロピレン系ブロック共重合体と称されるものは、ランダムコポリマーのエラストマーに比べて耐熱性と生産性に優れ、また、機械的な混合により製造されるエラストマーに対して、製造コストの低減が図れるために経済性が高く、各種の物性にも優れているため、最近において非常に汎用されている(特許文献1,2を参照)。
第1工程でポリプロピレン成分を、第2工程でプロピレンとエチレン又はα−オレフィン共重合体を製造する、いわゆるプロピレン系ブロック共重合体においては、成型時のサイクルを短縮するために、また成形性をより向上させるために、ポリマーの溶融流動性(MFR)を高くすることが求められており、そのために第1工程でプロピレン系重合体或いは第2工程でプロピレンとエチレン又はα−オレフィン共重合体のMFRを高くすると、すなわち分子量を低下させると、ポリマーがべたつき易くなって、ポリマー粒子同士が付着したり、また、ポリマー粒子の取り扱いが難くなって、成形製品の外観も悪くなる問題を呈することになっている。
また、このような軟質ポリマーにおいては、非晶成分(非(低)結晶性の成分)の増加に伴う、ポリマー粉体へのモノマー溶解量の増加により、現状の乾燥設備ではポリマー粉体のモノマー残留が多くなった。この問題を解決するためには、乾燥温度を上げる、乾燥時間を長くする解決方法もあるが、それだけでは十分でなく、乾燥工程後の窒素通気、すなわちエアレーションにて、より効率的な残留揮発分の除去も必要となる(特許文献3〜6を参照)。
すなわち、軟質オレフィン重合体の製造方法においては、製造した重合体粒子から、残留モノマーや残留溶媒などの残留揮発分を除去する必要がある。例えば、製造直後の、重合反応器から排出直後に残留揮発分が5,000wtppm以上含まれることがある。
そこで、製造直後の重合体粒子の残留揮発分を除去する必要があり、その方法として、特許文献3には、サイロのエアレーションガスの温度制御によって、残留揮発分を除去する方法が記載されている。しかし、エアレーションガスがある一定温度以下になることで、残留揮発分を除去できないだけでなく、ポリマー粉体の固着を促進させて、サイロ閉塞を起こしてしまう危険性がある。反対に、乾燥工程の温度が著しく高い場合は、エアレーションの温度に関わらず、サイロ閉塞が発生するため、特許文献3に記載の条件だけでは、閉塞を生じない乾燥には不十分であった。
かかる軟質ポリマーのポリマー粉体は、非晶成分(非(低)結晶性の成分)を多く含むため、乾燥工程で加熱されたときに非晶成分が粉体表面にブリード(滲出)し、ポリオレフィン製造設備のような大きなサイロ設備で窒素通気により冷却されると、ブリードした非晶成分が粉体同士の接点となり、ポリマー同士の固着が生じるという問題も生じている。特に、サイロのように多量のポリマー粉体を保存する場合は、ポリマー粉体の自重により、ポリマー粉体が変形し、ポリマー粉体同士の接着面積が大きくなって、ポリマー同士の固着力は、更に大きくなり、サイロなどからの抜き出しができなくなる惧れも生じている。
例えば、特許文献6の記載に従って検討した結果、非晶成分を含むプロピレン系ブロック共重合体から成るポリマー粉体は、乾燥工程後のサイロでの窒素通気中に固着し、サイロより抜き出すことができなかった。
しかして、産業上優れたエラストマー資材であるプロピレン系ブロック共重合体においては、成型時のサイクルを短縮するために、また成形性をより向上させるために、ポリマーの溶融流動性(MFR)を高くすることが求められており、その結果として、ポリマーがべたつき易くなって、ポリマー粒子同士が付着したりする問題の抑止が必要となり、また、重合体粒子から、残留モノマーや残留溶媒などの残留揮発分を効率よく十分に除去する必要も生じ、更には、重合体粒子を貯蔵する際に、重合体粒子の圧着によるサイロなどの閉塞も抑制する必要が派生している。
特開2001−226435号公報 特開2005−220235号公報 特開2004−189913号公報 米国特許第4365057号明細書 特許第5161730号公報 特開2002−327008号公報
本発明の目的すなわち発明が解決すべき課題は、上記の従来の問題を鑑みて、プロピレン系ブロック共重合体などの産業上優れたエラストマー資材である軟質ポリマーにおいて、成型時のサイクルを短縮するために、また成形性をより向上させるために、ポリマーの溶融流動性(MFR)を高くし、その際に、ポリマーがべたつき易くなって、重合体粒子同士が付着したりする問題を抑止し、重合体粒子の圧着によるサイロなどの閉塞も抑制することである。
本発明者らは、上記の発明の課題を解決すべく、プロピレン系ブロック共重合体などの軟質ポリマーにおいて、ポリマーの溶融流動性(MFR)を高くする際に、ポリマーがべたつき易くなって、重合体粒子同士が付着したりする問題を抑止し、重合体粒子の圧着によるサイロなどの閉塞も抑制し得る手法を求めて、軟質ポリマーの性質や、重合体粒子の粒子性能、更に重合体粒子の乾燥手段やエアレーションなどを広く勘案し検討して、それらの結果として、共重合体の成分特性を選択し、重合体粒子の粒子性能を特定し、更には特異な乾燥法とエアレーション法を採用することにより、発明の課題を解決するに至り、本発明を創成することになった。
すなわち、本発明は、プロピレン系ブロック共重合体などの軟質ポリマーにおいて、ポリマーの溶融流動性(MFR)を可及的に高くし、その共重合体において、下記の要件を満たし、流動性と揮発性成分量及び成形性と粉体貯蔵性のバランスに優れることを特徴とする、軟質ポリマーの重合体粒子である。
a)TREF(温度上昇溶離分別)において、40 ℃以下で溶出する成分が
23wt%以上又は30wt%以上である
b)重合体粒子の揮発分が100wtppm以下又は50wtppm以下である
c)重合体粒子の安息角が20〜55°である
かかる発明を基本的な発明とし、この基本的な発明(請求項1及び2の独立請求項の発明)に対して、付随する実施の態様発明(従属請求項の各発明)としては、重合体粒子の成形品の曲げ弾性率を規定(請求項3)、重合体粒子の融点と嵩密度及び有効内部摩擦角を特定(請求項4)、共重合体を規定(請求項5〜7)、TREF成分を特定(請求項8,9)、共重合体の製法を規定(請求項10,11)、重合工程後の後処理工程を規定(請求項12)、エアレーションを規定(請求項13)、する各発明である。
しかして、本発明における基本的な発明の構成としては、前記のとおり、プロピレン系ブロック共重合体などの軟質ポリマーにおいて、ポリマーの溶融流動性(MFR)を可及的に高くし、その共重合体において、前記の要件の、a)〜c)を満たし、粒子流動性及び成形性と粉体貯蔵性のバランスに優れることを特徴とする、軟質ポリマーの重合体粒子であり、かかる特異的で新規な構成は、従来技術の各文献からは些かも見い出すことができない。
以上において、本発明の創成の経緯と発明の基本的な構成と特徴について、概括的に記述したので、ここで本発明の全体的な構成を俯瞰して総括すると、本発明は次の[1]〜[13]の発明単位群からなるものである。
ここで、[1]及び[2]における、重合体粒子が、基本発明[1]及び[2]として構成され、[3]以下の各発明は、基本発明に付随的な要件を加え、或いはその実施の態様を示すものであり、[1]〜[13]の各発明を総称して本発明という。
[1]下記の要件を満たす軟質ポリマーの重合体粒子。
a)TREF(温度上昇溶離分別)において、40 ℃以下で溶出する成分が23wt%以上である
b)重合体粒子の揮発分が100wtppm以下である
c)重合体粒子の安息角が20〜55°である
[2]下記の要件を満たす軟質ポリマーの重合体粒子。
a)TREF(温度上昇溶離分別)において、40 ℃以下で溶出する成分が30wt%以上である
b)重合体粒子の揮発分が50wtppm以下である
c)重合体粒子の安息角が20〜55°である
[3][1]又は「2」の重合体粒子を用いた成形品の曲げ弾性率が、50〜400MPaであることを特徴とする、軟質ポリマーの重合体粒子。
[4]重合体粒子の融点が115〜145℃であり、嵩密度が0.40〜0.49g/mlであり、有効内部摩擦角が20〜55°であることを特徴とする、[1]〜[3]のいずれかにおける軟質ポリマーの重合体粒子。
[5]軟質ポリマーが、プロピレン単位とエチレン単位又はC4〜C20のα−オレフィン単位とを含む、プロピレン系ランダム共重合体又はプロピレン系ブロック共重合体であることを特徴とする、[1]〜「4」のいずれかにおける軟質ポリマーの重合体粒子。
[6]軟質ポリマーが、プロピレン単位とエチレン単位及びC4〜C20のα−オレフィン単位とを含む、プロピレン系ランダム共重合体又はプロピレン系ブロック共重合体であることを特徴とする、[1]〜[4]のいずれかにおける軟質ポリマーの重合体粒子。
[7]軟質ポリマーが、メタロセン触媒にて重合されたプロピレン系ブロック共重合体であることを特徴とする、[1]〜[6]のいずれかにおける軟質ポリマーの重合体粒子。
[8]TREFにおいて、40℃以下で溶出する成分が、プロピレン単位とエチレン単位又はC4〜C20のα−オレフィン単位との共重合体であり、その重量平均分子量(Mw)が150,000〜250,000であることを特徴とする、[1]〜[5]及び[7]のいずれかにおける軟質ポリマーの重合体粒子。
[9]TREFにおいて、40℃以下で溶出する成分が、プロピレン単位とエチレン単位及びC4〜C20のα−オレフィン単位からなる共重合体であり、その重量平均分子量(Mw)が150,000〜250,000であることを特徴とする、[1]〜[4]、[6]及び[7]のいずれかにおける軟質ポリマーの重合体粒子。
[10][1]〜[5]、[7]及び[8]のいずれかにおける軟質ポリマーの重合体粒子を製造する方法であって、プロピレン単位とエチレン単位又はC4〜C20のα−オレフィン単位とを含む、プロピレン系ランダム共重合体又はプロピレン系ブロック共重合体を重合するに際して、その重合工程の一部又は全部が気相重合であることを特徴とする、軟質ポリマーの重合体粒子の製造方法。
[11][1]〜[4]及び[6]、[7]及び[9]のいずれかにおける軟質ポリマーの重合体粒子を製造する方法であって、プロピレン単位とエチレン単位及びC4〜C20のα−オレフィン単位とを含む、プロピレン系ランダム共重合体又はプロピレン系ブロック共重合体を重合するに際して、その重合工程の一部又は全部が気相重合であることを特徴とする、軟質ポリマーの重合体粒子の製造方法。
[12][1]〜[9]のいずれかにおける軟質ポリマーの重合体粒子を製造する方法であって、重合工程と重合工程後の後処理工程とを含み、後処理工程は下記の2つの工程を有することを特徴とする、軟質ポリマーの重合体粒子の製造方法。
工程a):ポリマー粉体を60〜95℃の温度で、0.6〜1.1時間乾燥する工程。 工程b):ポリマー粉体を25〜95℃の温度で、6〜50時間エアレーションを行う工程。
[13]前記のエアレーションをサイロにて行うことを特徴とする、[12]における軟質ポリマーの重合体粒子の製造方法。
プロピレン系ブロック共重合体などの軟質ポリマーにおいて、成型時のサイクルを短縮するために、また成形性をより向上させるために、ポリマーの溶融流動性(MFR)を高くし、その際に、ポリマーがべたつき易くなって、重合体粒子同士が付着したりする問題を抑止し、更に、重合体粒子の圧着によるサイロなどの閉塞も抑制することができる。
本発明の重合体粒子を製造するための製造装置の一つを示した模式図である。
[I]軟質ポリマーの重合体粒子
(1)基本的な規定
本発明の請求項1の発明は、軟質ポリマーの重合体粒子であり、下記の要件を満たし、溶融流動性並びに粒子流動性及び成形性のバランスに優れることを特徴とする。(なお、後記の実施例1〜3は当該発明に該当する。)
a)TREF(温度上昇溶離分別)において、40℃以下で溶出する成分が23wt%以上である
b)重合体粒子の揮発分が100wtppm以下である
c)重合体粒子の安息角が20〜55°である
本発明の別の発明すなわち請求項2の発明は、軟質ポリマーの重合体粒子であり、下記の要件を満たし、溶融流動性並びに粒子流動性及び成形性のバランスに優れることを特徴とする。(なお、後記の実施例1,2は当該発明に該当する。) a)TREF(温度上昇溶離分別)において、40℃以下で溶出する成分が30wt%以上である
b)重合体粒子の揮発分が50wtppm以下である
c)重合体粒子の安息角が20〜55°である
なお、上記した請求項1及び2の発明からして、下記の条件を満たす軟質ポリマーの重合体粒子も発明として内包されているのは明らかである。
a)TREF(温度上昇溶離分別)において、40℃以下で溶出する成分が23wt%以上である
b)重合体粒子の揮発分が100wtppm以下50wtppmを超える
c)重合体粒子の安息角が20〜55°である
また、上記した請求項1及び2の発明からして、下記の条件を満たす軟質ポリマーの重合体粒子も発明として内包されているのは明らかである。
a)TREF(温度上昇溶離分別)において、40℃以下で溶出する成分が23wt%以上30wt%未満である
b)重合体粒子の揮発分が100wtppm以下である
c)重合体粒子の安息角が20〜55°である
更に、上記した請求項1及び2の発明からして、下記の条件を満たす軟質ポリマーの重合体粒子も発明として内包されているのは明らかである。
a)TREF(温度上昇溶離分別)において、40℃以下で溶出する成分が23wt%以上30wt%未満である
b)重合体粒子の揮発分が100wtppm以下50wtppmを超える
c)重合体粒子の安息角が20〜55°である
以下においては、本発明の軟質ポリマーの重合体粒子について、軟質ポリマーが好ましい態様である、プロピレン系ランダム共重合体又はプロピレン系ブロック共重合体である場合を例として、具体的かつ詳細に説明する。
(2)TREFによる規定
本発明の軟質ポリマーの重合体粒子は、先ず、a)TREFにおいて40℃以下で溶出する成分が23wt%以上又は30wt%以上である、を要件とする。
TREFはいわゆる温度上昇溶離分別法であり、ポリマー成分の結晶性の相違による分離法としてよく知られており、ポリマーをo−ジクロロベンゼンなどの溶媒中に高温にて完全に溶解させ、カラムに充填した不活性担体表面に溶液を流下して、その後、冷却して、ポリマーなどの成分を担持させて薄いポリマー層を形成させ、次に温度を連続又は段階的に上昇させ、溶出液により、結晶性の異なる成分を順次溶離して分別する方法である。低温度段階で、対象のポリマー中の非結晶性成分や低結晶性成分など結晶性が低い成分から溶出し、温度が上昇するとともに順次結晶性が高い成分が溶出する。
したがって、TREFにおいて40℃以下で溶出する成分は主として、非晶成分である。すなわちTREFにおいて40℃以下で溶出する成分は主として、プロピレン系ブロック共重合体中のプロピレンとエチレン及び/又はα−オレフィンとの共重合体(以下、「プロピレン−α−オレフィン共重合体」という。)成分である。
本発明の軟質ポリマーの重合体粒子では、TREFにおいて40℃以下で溶出する成分が23wt%以上と規定されるが、70wt%以下が好ましい。この範囲であると成形品の剛性(曲げ弾性率)が低下し、柔軟になるため好ましい。
TREFにおいて40℃以下で溶出する成分の割合については、好ましくは、25wt%以上、30wt%以上、35wt%以上、更に好ましくは、40wt%以上である。また、TREFにおいて40℃以下で溶出する成分の割合は、更に好ましくは、65wt%以下である。
TREFにおいて40℃以下で溶出する成分の量は、プロピレン系ランダム共重合体の場合には、例えば、α−オレフィン(エチレンを含む)の含有量により制御できる。また、プロピレン系ブロック共重合体の場合には、例えば、プロピレン重合体成分とプロピレン−α−オレフィン(エチレンを含む)共重合体成分の合計に対するプロピレン−α−オレフィン共重合体成分の割合、プロピレン−α−オレフィン共重合体成分中のα−オレフィン(エチレンを含む)含有量によって制御可能である。例えば、プロピレン−エチレン共重合体の場合には、エチレン含有量が1wt%程度から50wt%へ増えるにしたがって40℃以下で溶出する成分の量は増大し、その結果として柔軟性が増大する。
(3)TREF測定方法
本発明においては、具体的には以下のようにして測定する。試料を140℃でo−ジクロロベンゼン(0.5mg/mlBHT入り)に溶解し溶液とする。これを140℃のTREFカラムに導入した後、8℃/分の降温速度で100℃まで冷却し、引き続き4℃/分の降温速度で−15℃まで冷却し、60分間保持する。その後、溶媒であるo−ジクロロベンゼン(0.5mg/mlBHT入り)を1ml/分の流速でカラムに流し、TREFカラム中で−15℃のo−ジクロロベンゼンに溶解している成分を10分間溶出させ、次に、昇温速度100℃/時間にてカラムを140℃までリニアに昇温し、溶出分離を行う。
溶出温度が低い非晶成分は、柔軟性に富み、一方、溶出温度が高い結晶性の成分は、剛性及び耐熱性の向上に寄与する。本発明におけるプロピレン系ブロック共重合体の、TREF測定で得られる溶出曲線(温度に対するdwt%/dT曲線)において、結晶性の、プロピレン単独重合体成分、プロピレンとエチレン及び/又はC4〜C20のα−オレフィンとの共重合体成分などのプロピレン重合体成分と、低結晶性又は非結晶性の、プロピレンとエチレン及び/又はC4〜C20のα−オレフィンとの共重合体成分は、その結晶性の違いから、異なる温度で溶出する成分として観測される。すなわち、第1工程で得られる、プロピレン単独重合体、又はプロピレンとエチレン及び/又はC4〜C20のα−オレフィンとの共重合体は高温側に、一方、第2工程で得られる、第1工程よりも高い、エチレン及び/又はC4〜C20のα−オレフィン含量の、プロピレンとの共重合体は、低結晶性又は非結晶性であるため低温側に観測される。
(4)揮発分による限定
本発明の軟質ポリマーの重合体粒子は、次に、b)揮発分(揮発性成分)が50wt
ppm以下又は100wtppm以下を要件とする。好ましくは40wtppm以下、更に好ましくは30wtppm以下である。
軟質ポリマーの重合体粒子の揮発分量は、例えば、後述する工程a)、工程b)の温度、時間によって制御可能である。
軟質ポリマーがプロピレン系ブロック共重合体であって、プロピレン−α−オレフィン共重合体成分がプロピレン−エチレンランダム共重合体の場合には、重合体粒子の揮発分(揮発性成分)は、好ましくは50wtppm以下、より好ましくは40wtppm以下、更に好ましくは30wtppm以下である。
軟質ポリマーがプロピレン系ブロック共重合体であって、プロピレン−α−オレフィン共重合体成分がプロピレン−エチレン−ブテンランダム共重合体の場合には、ブテンの沸点が高いことからより多くの揮発分の量を許容でき、重合体粒子の揮発分(揮発性成分)は、好ましくは100wtppm以下、より好ましくは80wtppm以下、更に好ましくは50wtppm以下である。
(5)重合体粒子に含まれる残留揮発分測定方法
本発明においては、具体的には以下のようにして測定する。
測定機器:オートサンプラー:Perkin Elmer製 Headspace Sampler Turbo Martrix 40
ガスクロ:島津製作所製 CG−2025
カラム:Phenomenex製 ZB−624
試料をオートサンプラーで温度150℃にて30分加熱し、重合体粒子中の残留揮発分を揮発させ、オートサンプラーに接続したガスクロにて成分及びその量を測定した。
(6)安息角による規定
本発明の軟質ポリマーの重合体粒子は、更に、c)安息角が20〜55°を要件とする。
本発明の軟質ポリマーの重合体は、サイロなどに積み上げても抜き出し時に流れを損なわないためには上記の範囲が必要である。
安息角は、粉体(粒体)を積み上げたときに自発的に崩れることなく安定を保つ状態での、積み上げ斜面の水平に対する最大角度である。粒子の大きさと粒子の角の丸みや形状により決まり、いわゆる「サラサラ度」として理解される。
すなわち、安息角とは一般的な粒子(粉体)の流動性指標の一つであり、安息角は粉体層の自由表面が限界応力状態にある場合に、粉体層表面が水平面に対してなす角度である。安息角は、粉体を空中の1点から水平板上に連続的に落下させて得られる円錐形堆積の斜面と、水平板のなす角度であるともいえる。
したがって、安息角が小さいと流動性がよいことを意味する。そこで、本発明の安息角の上限の範囲は、55°以下であり、好ましくは45°以下であり、更に好ましくは4
0°以下である。また反対に、安息角が小さ過ぎると、過剰にポリマーが流動してしまい、ポリマー抜き出し時の流れの量が多過ぎてしまうので、安息角の下限の範囲は、2
0°以上であり、より好ましくは25°以上であり、更に好ましくは30°以上である。
(7)安息角の測定
安息角の測定には、注入法、排出法、傾斜法があるが、本発明においては重合体粒子の流動の様子の確認が容易である傾斜法を用いることができる。本発明においては、筒井理化学機器(株)製の、三輪式円筒回転法の安息角測定器を用いて、回転時の傾斜の安息角を測定する。
(8)安息角の性状
安息角はポリマーの表面及び内部の結晶化度や柔らかさなどの物性、重量、全体の形状、外部と内部の形態により変化する。
特に、表面及び内部の結晶化度は、多段重合を用いた場合に各段での重合条件を変化さることで制御が可能である。例えば非(低)結晶性成分の重合比率を大きくする、分子量を低下させる、エチレンなどのコモノマーを増やすことにより、安息角は増大し、粒子の流れ性は低下する。
特に、プロピレン系ブロック共重合体の場合、プロピレンとエチレン−α−オレフィン共重合体のコモノマーにおけるエチレン量が10wt%〜20wt%の間では安息角は小さく流動性をよくできるが、20wt%を超えて50wt%の範囲では安息角は大きくなっていき流動性が低下していく。
また、重合体粒子の形状は、レプリカ則と呼ばれるように、元の触媒粒子の形状の影響を受ける。そこで触媒の種類、触媒に用いる担体の形状や強度その分布を適切に選ぶことにより、この安息角を制御することが可能である。
(9)重合体粒子の嵩密度
本発明は、副次的な規定として、重合体粒子の嵩密度を規定し、重合体粒子の嵩密度(BD)が0.40〜0.49g/mlとされる。
本発明の軟質ポリマーの重合体粒子は、嵩密度が好ましくは0.40g/ml以上である。より好ましくは0.42g/ml以上であり、更に好ましくは0.45g/ml以上である。
粒子の嵩密度が小さ過ぎると、粒子同士の接触点の増加や粒子粘着性の増加が原因でバインダー現象が促進されてしまう。
反対に、嵩密度が大き過ぎると、その重合体粒子をサイロで積み上げた時に自重が大きいことを意味し、その大きな自重により軟質ポリマーの重合体粒子のバインダー現象が促進されてしまう。また重合体粒子の一つについてみた場合にも、結晶性成分中に非(低)結晶性成分が充満されたような状態であり、後のブリードアウトの原因となる。よって、嵩密度の上限は0.49g/mlが好ましい。
(10)嵩密度(BD)の測定方法
ASTM・D1895−69に準拠して、重合体粒子の嵩密度が測定される。
(11)有効内部摩擦角
本発明は、副次的な規定として、重合体粒子の有効内部摩擦角を規定し、重合体粒子の有効内部摩擦角は20〜55°とされる。
重合体粒子のような粉体が積み上げられた粉体層に応力を加えていくとやがて粉体層は崩壊するが、この崩壊が起こる限界状態での垂直応力とせん断応力を応力平面上にプロットして得られる曲線を粉体崩壊曲線と呼ぶ。この粉体崩壊曲線は粉体層にどれだけの応力を加えれば粉体層が崩壊するのか、或いは流動するのかを定量的に議論する上で重要な粉体の力学物性である。
本発明で使用される重合体粒子のような付着性の大きくなり易い粉体については、粉体崩壊曲線が上に凸の曲線となるが、粉体崩壊曲線の傾き、すなわち有効内部摩擦角は垂直応力によって異なる値を示す。そのため、容器内でブリッジングが発生し、閉塞しやすい、付着性の大きな粉体の性質を評価するには、圧密された状態での挙動を適切に評価できる測定方法として、有効内部摩擦角が有用であると云える(入門「粒子・粉体工学」椿淳一郎/鈴木道隆/神田良照著・2011年8月31日発行(日刊工業新聞社)p.16
1−164記載参照)。
貯蔵の閉塞現象は、粉体の力学的挙動と関係している。粉体内のせん断滑り現象、すなわち粉体の摩擦特性によって挙動を推定できることが知られている。特に粉体の摩擦特性に着目したJenike法によって求められる有効内部摩擦角は、縦型筒状乾燥器のような形状のタンクにおける流動性限界を把握するのに非常に有効である(改訂5版・化学工学便覧・昭和63年3月18日発行 (丸善出版)p.250−253記載参照)。
本発明の重合体粒子は、室温条件下でのJenike法の剪断応力測定によって測定される有効内部摩擦角が、好ましくは20°以上、より好ましくは35°以上、一方、5
5°以下である。
有効内部摩擦角が20°以上では、粉体流動性が小さいため、装置導入効果が小さくならない。また、有効内部摩擦角が55°以下では、粉体同士の付着性が適当となるため、連続で排出口より重合体粒子をより容易に抜き出せる。
(12)有効内部摩擦角の測定方法
有効内部摩擦角の測定方法は、上記の文献に詳しいが、本明細書においては、パウダーレオメーター(Malvern社製・FT−4)を用い、予圧条件6KPaにおいて、室温で、粉体層に予圧をかけて剪断試験を行い、この時に得られる破壊包絡線に対応するモール円を描き、モール円に接する直線の勾配を有効内部摩擦角として求めた値である。
室温で上記に記載のパウダーレオメーターにて、粉体層に予圧をかけて剪断試験を行った。この時に得られる破壊包絡線に対応するモール円を描き、モール円に接する直線の勾配を有効内部摩擦角とした。
(13)平均粒子径
本発明の軟質ポリマーの重合体粒子は、平均粒子径が700〜3,000μmであることが好ましい。平均粒子径がこの範囲である場合に、粒子同士の固着やブリッジングを抑制でき、サイロなどに積み上げて保管した場合に圧密されても、良好に配管を用いて安定に抜き出すことができる。
平均粒子径は好ましくは700μm以上、より好ましくは800μm以上、更に好ましくは900μm以上である。平均粒子径は好ましくは3,000μm以下、より好ましくは2,800μm以下、更に好ましくは2,500μm以下、より更に好ましくは2,000μm以下である。
ポリマー粉体の平均粒子径は、重合に用いる触媒の粒子径及び重合量によって制御が可能である。触媒の粒子径が大きいほどポリマー粉体の平均粒子径は大きくなる。また担持型触媒の場合には触媒に用いる担体の粒子径が大きいほど触媒の粒子径は大きくなり、結果的にポリマー粉体の平均粒子径も大きくなる。
(14)平均粒子径の測定
ポリマー粉体の平均粒子径の測定には、振動篩粒径測定器(目開き100μm、15
0μm、212μm、350μm、500μm、710μm、850μm、1,000μm、1,180μm、1,400μm、1,700μm、2,000μm、2,800μm、3,000μmの篩を振とう機で10分以上振動分級して測定し結果を、対数正規確率紙上にプロットし、50%粒子径を平均粒子径として求める方法)やこれらを自動で行うロボットシフターなどを用いてもよい。
(15)微粉粒子の量
本発明の軟質ポリマーの重合体粒子は、粒子径が約200μm以下の微小粒子(微粉粒子)の量が1.0wt%以下であることが好ましい。微粉粒子の量が1.0wt%以下であると、サイロなどに積み上げて保管した場合に圧密されても、良好に配管を用いて安定に抜き出すことができる。微粉粒子の量が少ないことは粒径分布が狭いということも意味する。微粉粒子の量は、目開き212μmの篩による篩下の、試料全体に対する重量の百分率で表す。
微粉粒子の量が1.0wt%以下の場合には、微粉粒子が平均的な粒子径の重合体粒子間の間に入ってポリマー間の接点が増えることなく、いわゆるバインダー現象を引き起こすことなく、重合体粒子間の固着が促進されることはない。したがって微粉粒子の量が好ましくは1.0wt%以下であり、より好ましくは0.9wt%以下、更に好ましくは0.8wt%以下である。
微粉粒子の量は、重合初期の触媒粒子の崩壊時に発生することが多い。したがって適度な強度の触媒粒子又は担体粒子を適切に選ぶことによって、その量を減らすことが可能である。また重合体粒子間や、重合体粒子と重合槽壁や撹拌翼との摩擦により生成する。したがって適切な重合方法を選択することでその量を減らすことが可能である。よって、重合方法においては滞留時間分布の制御も含まれる。
また、本発明のように微粉粒子の量が少ないことは、粒径分布が狭いということも意味する。本発明の軟質ポリマーの重合体粒子の粒径分布は、ロジンラムラー分布で表現した場合のn値で1〜5の範囲であることが好ましい。
本発明の粒径分布の重合体粒子を得るためには、重合時に撹拌翼付の横型撹拌装置を用いた栓流型の重合方法を用いることが好ましい。
[II]軟質ポリマーの重合体粒子のその他の規定
(1)曲げ弾性率
本発明は、副次的な規定として、重合体粒子を用いた成形品の曲げ弾性率を規定し、50〜400MPaとする。
曲げ弾性率は、柔軟性の指標であり、この値が小さいほど、成形品が柔軟性に優れていることを示し、例えば容器蓋材に用いた場合に、蓋開封時に強い力を必要とせず、また蓋が割れてしまう可能性を低くできる。
そこで、曲げ弾性率は400MPa以下であると、重合体としての柔軟性が保持される。したがって本発明の重合体は400MPa以下の重合体であり、好ましくは300MPa以下、更に好ましくは200MPa以下である。
また、弾性率が50MPaを上回ると、「重合体の非結晶性成分のもつ粘着性により、重合体粒子のベタツキが増大してしまい、その後どのような方法を用いてもサイロ閉塞を引き起こしてしまう」という問題は生じない。そこで重合体粒子を用いた成形品の曲げ弾性率は、好ましくは50MPa以上である必要があり、より好ましくは70MPa以上、より更に好ましくは100MPa以上である。
曲げ弾性率は、プロピレン系ランダム共重合体の場合にはα−オレフィンの量により、またプロピレン系ブロック共重合体の場合にはエチレン−α−オレフィン共重合体成分の重合割合によって制御できる。また、ブロック共重合体のエチレン−α−オレフィン共重合体中のコモノマー含量によって制御可能である。
例えばエチレン−プロピレン共重合体の場合には、エチレン含量が10wt%程度から50wt%へ増えるにしたがって曲げ弾性率は減少し柔軟性は増大する。
本発明の軟質ポリマーは、プロピレン系ブロック共重合体だけでなく、プロピレン系ランダム共重合体、エチレン・α−オレフィン共重合体などのエチレン及びC3−C20のα−オレフィンから選ばれる一種のα−オレフィンの単独の重合体又は二種もしくは三種以上のα−オレフィン間の共重合体などであってもよい。
本発明において「軟質ポリマー」とは、例えば曲げ弾性率が800MPa程度以下のポリマーであることをいう。
(2)曲げ弾性率の測定方法
射出成形法により試験片を成形し、成形後に室温23℃・相対湿度50%に調節された恒温室に24時間放置した後、JIS K−7171(ISO178)に準拠して求めた。
(3)融点(Tm)
本発明は、副次的な規定として、重合体粒子の融点を規定し、本発明の軟質ポリマーの融点は、115〜145℃の範囲のものが適当であり、融点が低くなるとそれに伴いポリマーの非(低)結晶性成分の量は増大する。
この範囲であると重合体の剛性(曲げ弾性率)が低下し、柔軟になるため好ましい。そこで、本発明の軟質ポリマーの融点は115〜145℃の範囲である。145℃以下であると、本発明の軟質ポリマーの柔軟性が保持され、115℃以上であると、重合熱でポリマーが溶融して製造が不能となることはない。好ましくは140℃以下であり、好ましくは120℃以上である。
融点は、プロピレン系ランダム共重合体の場合にはα−オレフィン(エチレンを含む)の量により、またプロピレン系ブロック共重合体の場合には結晶性成分中のα−オレフィン(エチレンを含む)の量などによって制御できる。
(4)融点測定方法
セイコー社製DSC(DSC6200R)を用い、試料5.0mgを採り、200℃で5分間保持した後、40℃まで10℃/分の降温速度で結晶化させ、次いで10℃/分の昇温速度で融解させたときの融解ピーク温度をTmとした(単位:℃)。
[III]共重合体としての規定
本発明の軟質ポリマーの重合体粒子は、プロピレン系ブロック共重合体だけでなく、プロピレン系ランダム共重合体、エチレン・α−オレフィン共重合体などのエチレン及びC3−C20のα−オレフィンから選ばれる一種のα−オレフィンの単独の重合体又は二種もしくは三種以上のα−オレフィン間の共重合体などであってもよい。
副次的な規定として、共重合体として規定され、具体的には、プロピレンとエチレン及び/又はC4〜C20のα−オレフィンとのランダム共重合体もしくはブロック共重合体であり、また、ポリマー重合体粒子が、メタロセン触媒にて重合されたプロピレン系ブロック共重合体であり、更にTREFにおいて、40℃以下で溶出する成分が、プロピレンとエチレン及び/又はα−オレフィンとの共重合体であり、その重量平均分子量(Mw)が150,000〜250,000であるとされる。
本発明の軟質ポリマーの重合体粒子の例としては、第1工程において、プロピレン単独重合、或いはプロピレンとエチレン及び/又はC4〜C20のα−オレフィンとのプロピレンランダム重合を行い、第2工程で、プロピレンと、第1工程よりも高い含有量のエチレン及び/又はC4〜C20のα−オレフィンを含む共重合が連続的に行なわれることが好ましく、2槽以上の重合反応器で製造されたエチレン及び/又はC4〜C20のα−オレフィンとプロピレンとのランダム共重合体又は、プロピレン系ブロック共重合体を挙げることができる。
TREFにおいて40℃以下で溶出する成分が、プロピレンとエチレン及び/又はα−オレフィンとの共重合体であり、その重量平均分子量(Mw)が150,000〜25
0,000であり、TREFで40℃以下で溶出する成分は非(低)結晶性共重合体成分である。
Mwが大きい場合、すなわち軟質ポリマーの溶融時の流動性(MFR)が小さくなってしいまい、成形性が悪化する。例えば、成型サイクルが長くなる、射出圧力が高くなるなどの問題が発生する。また、成形体にゴム成分が微分散しなくなり、外観が悪くなるなどが懸念される。したがって、Mwの上限値は250,000である。
また、Mwが小さい場合には、軟質ポリマーのMFRが大きくなり過ぎるため、成形不良が生じるばかりか、成形体の引っ張り特性の低下が生じ、衝撃強度が小さくなるなどの物性上の問題が生じる。
したがって、本発明に係る非(低)結晶性共重合体成分は、射出成形を主な用途とする場合、Mwの下限値に関しては、150,000以上、好ましくは160,000以上、より好ましくは170,000以上である。
非(低)結晶性共重合体成分の分子量の制御方法は、分子量調整剤として水素を用いることで制御可能である。その量に関しては、特定のメタロセン錯体の持つ極限分子量(水素以外の連鎖移動でできる分子量)、水素による連鎖移動反応速度、反応温度や、圧力、コモノマー濃度による依存性から予測して決めることができる。
[IV]メタロセン触媒による製造
(1)メタロセン触媒
本発明のポリマーの製造には、メタロセン触媒を用いることが望ましい。チーグラーナッタ触媒で製造した場合、低分子量成分が増加するため、後述する工程a)工程b)の温度設定範囲では、ポリマー粉体の固着を抑制することができ難い。
メタロセン系触媒の種類は、本発明の性能を有する共重合体を生成できる限りは、特に限定はされるものではないが、本発明の要件を満たすために、例えば、下記に示すような成分(A)、(B)、及び必要に応じて使用する成分(C)からなるメタロセン系触媒を用いることが好ましい。
成分(A):一般式(1)で表される遷移金属化合物から選ばれる少なくとも1種のメタロセン遷移金属化合物
Figure 0006750287
(式中、A及びA’は置換基を有していてもよい共役五員環配位子、Qは二つの共役五員環配位子間を任意の位置で架橋する結合性基、X及びYは、助触媒と反応してオレフィン重合能を発現させるσ共有結合性補助配位子、Mは、周期律表第4族の遷移金属であり、チタン、ジルコニウム、ハフニウムが好ましい。)
成分(B):下記(b−1)〜(b−4)から選ばれる少なくとも1種の固体成分
(b−1)有機アルミオキシ化合物が担持された微粒子状担体
(b−2)成分(A)と反応して成分(A)をカチオンに変換することが可能なイオン性化合物又はルイス酸が担持された微粒子状担体
(b−3)固体酸微粒子
(b−4)イオン交換性層状珪酸塩
成分(C):有機アルミニウム化合物
(2)各成分
(i)成分(A)
成分(A)としては、上記の一般式(1)で表される遷移金属化合物から選ばれる少なくとも1種のメタロセン遷移金属化合物を使用することができる。
上記一般式中、A及びA’で表される、共役五員環配位子は置換基を有していてもよいシクロペンタジエニル基誘導体である。置換基を有する場合、その置換基の例としては、炭素数1〜30の炭化水素基(ハロゲン、珪素、酸素、硫黄などのヘテロ原子を含有していてもよい)が挙げられ、この炭化水素基は一価の基としてシクロペンタジエニル基と結合していても、またこれが複数存在するときにその内の2個がそれぞれ他端(ω−端)で結合してシクロペンタジエニルの一部と共に環を形成していてもよい。この環を形成した置換基の他の例としては、インデニル基、フルオレニル基、又はヒドロアズレニル基などが挙げられ、これらの基は、更に置換基を有していてもよく、中でもインデニル基又はヒドロアズレニル基が好ましい。
Qとして、好ましくはメチレン基、エチレン基、シリレン基、ゲルミレン基、及びこれらに炭化水素基が置換したもの、並びにシラフルオレン基などが挙げられる。
X及びYの補助配位子は、成分(B)などの助触媒と反応してオレフィン重合能を有する活性なメタロセンを生成させるものであり、各々水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、或いは酸素、窒素、ケイ素などのヘテロ原子を有していてもよい炭化水素基が例示できる。これらのうち好ましいものは、炭素数1〜10の炭化水素基、或いはハロゲン原子である。
Mは、チタン、ジルコニウム、ハフニウムが好ましい。特に、ジルコニウム、ハフニウムが好ましい。
更に上記遷移金属化合物の中でも、プロピレンの立体規則性重合を進行させ、かつ得られるプロピレン重合体の分子量が高いものが好ましい。具体的には、特開平1−301
704号公報、特開平4−211694号公報、特開平6−100579号公報、特表2002−535339号公報、特開平6−239914号公報、特開平10−226
712号公報、特開平3−193796号公報、特表2001−504824号公報などに記載の遷移金属化合物が好ましく挙げられる。
(ii)成分(B)
成分(B)としては、上述した成分(b−1)〜成分(b−4)から選ばれる少なくとも1種の固体成分を使用する。これらの各成分は公知のものであり、公知技術の中から適宜選択して使用することができる。その具体的な例示や製造方法については、特開200
2−284808号公報、特開2002−53609号公報、特開2002−69116号公報などに詳細な例示がある。
ここで、成分(b−1)、成分(b−2)に用いられる微粒子状担体としては、シリカ、アルミナ、マグネシア、シリカアルミナ、シリカマグネシアなどの無機酸化物、塩化マグネシウム、オキシ塩化マグネシウム、塩化アルミニウム、塩化ランタンなどの無機ハロゲン化物、更には、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、スチレンジビニルベンセン共重合体、アクリル酸系共重合体などの多孔質の有機担体を挙げることができる。
成分(b−1)、成分(b−2)に用いられる微粒子状担体は、レーザー粒径測定法で測定した平均粒子径が25〜200μmが好ましく、25〜150μmがより好ましい。
また、成分(B)の非限定的な具体例としては、成分(b−1)として、メチルアルモキサン、イソブチルアルモキサン、メチルイソブチルアルモキサン、ブチルボロン酸アルミニウムテトライソブチルなどが担持された微粒子状担体を、成分(b−2)として、トリフェニルボラン、トリス(3,5−ジフルオロフェニル)ボラン、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン、トリフェニルカルボニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートなどが担持された微粒子状担体を、成分(b−3)として、アルミナ、シリカアルミナ、塩化マグネシウム、フッ素化合物処理した後に火焼したシリカアルミナ、ペンタフルオロフェノールとジエチル亜鉛などの有機金属化合物を反応させ更に水と反応後同生成物を担持したシリカなどを、成分(b−4)として、粘土鉱物における、モンモリロナイト、ザコウナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、スチーブンサイト、ベントナイト、テニオライトなどのスメクタイト族、バーミキュライト族、雲母族などのイオン交換性層状珪酸塩が挙げられる。これらは、混合層を形成しているものでもよい。
上記成分(B)の中で特に好ましいものは、成分(b−4)のイオン交換性層状珪酸塩であり、更に好ましい物は、酸処理、アルカリ処理、塩処理、有機物処理などの化学処理が施されたイオン交換性層状珪酸塩である。
(iii)成分(C)
必要に応じて用いられる成分(C)有機アルミニウム化合物の例は、一般式AlR3−a(式中、Rは、炭素数1から20の炭化水素基、Xは、水素、ハロゲン、アルコキシ基、aは0<a≦3の数)で示されるトリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムなどのトリアルキルアルミニウム又はジエチルアルミニウムモノクロライド、ジエチルアルミニウムモノメトキシドなどのハロゲンもしくはアルコキシ含有アルキルアルミニウムである。またこの他に、メチルアルミノキサンなどのアルミノキサン類なども使用できる。これらのうち特にトリアルキルアルミニウムが好ましい。
(3)触媒の形成
成分(A)、成分(B)及び必要に応じて成分(C)を接触させて触媒とする。その接触方法は特に限定されないが、以下のような順序で接触させることができる。また、この接触は、触媒調製時だけでなく、オレフィンによる予備重合時又はオレフィンの重合時に行ってもよい。
1)成分(A)と成分(B)を接触させる
2)成分(A)と成分(B)を接触させた後に成分(C)を添加する
3)成分(A)と成分(C)を接触させた後に成分(B)を添加する
4)成分(B)と成分(C)を接触させた後に成分(A)を添加する
その他、三成分を同時に接触させてもよい。
本発明で使用する成分(A)、(B)及び(C)の使用量は任意である。例えば、成分(B)に対する成分(A)の使用量は、成分(B)1gに対して、好ましくは0.1μmol〜500μmol、特に好ましくは0.5μmol〜100μmolの範囲である。成分(B)に対する成分(C)の使用量は、成分(B)1gに対し、好ましくは(C)の量が0〜100mmol、特に好ましくは0.005mmol〜50mmolの範囲である。したがって、成分(A)に対する成分(C)の量は、遷移金属のモル比で0〜10、好ましくは0.02〜10、特に好ましくは0.2〜10の範囲内である。(C)は任意成分なので0を含めた。
(4)予備重合
本発明の触媒は、予めオレフィンを接触させて少量重合されることからなる予備重合処理に付すことが好ましい。使用するオレフィンは、特に限定はないが、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、ビニルシクロアルカン、スチレンなどを使用することが可能であり、これらは単独のみならず、他のα−オレフィンとの2種以上の混合物であってもよい。中でもプロピレンを使用することが特に好ましい。オレフィンの供給方法は、オレフィンを反応槽に定速的に或いは定圧状態になるように維持する供給方法やその組み合わせ、段階的な変化をさせるなど、任意の方法が可能である。
予備重合温度と時間は、特に限定されないが、各々−20℃〜100℃、5分〜24時間の範囲であることが好ましい。また、予備重合量は、予備重合ポリマー量が成分(B)に対し、好ましくは0.01〜100、更に好ましくは0.1〜50である。予備重合処理は、一般的に撹拌下に行うことが好ましく、そのとき不活性溶媒を存在させることもできる。予備重合処理に用いられる不活性溶媒は、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン及び流動パラフィンなどの液状飽和炭化水素やジメチルポリシロキサンの構造を持ったシリコンオイルなど重合反応に著しく影響を及ぼさない不活性溶媒である。これらの不活性溶媒は1種の単独溶媒又は2種以上の混合溶媒のいずれでもよい。これらの不活性溶媒の使用に際しては重合に悪影響を及ぼす水分、イオウ化合物などの不純物を取り除いた後で使用することが好ましい。
予備重合処理は複数回行っても良く、この際用いるモノマーは同一であっても異なっていても良い。また、予備重合処理後にヘキサン、ヘプタンなどの不活性溶媒で洗浄を行うこともできる。予備重合を終了した後に、触媒の使用形態に応じ、そのまま使用することが可能であるが、必要ならば乾燥を行うことも可能である。
更に、上記各成分の接触の際、もしくは接触の後に、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンなどの重合体やシリカ、チタニアなどの無機酸化物固体から選ばれる触媒の流動性改質剤を共存させることも可能である。
[V]ポリマー粉体の重合
(1)重合形式
重合形式は、それぞれ第1工程、第2工程とも回分法、及び連続法などの方式を採用できる。本発明の例として、第1工程と第2工程からなる2段重合が行われるが、場合によっては、それぞれの工程を更に分割することができる。生産効率の観点から、第1工程と第2工程からなる2段重合が好ましい。
(2)重合方法
本発明では、第1工程部分を、不活性溶媒中で重合を行ういわゆるスラリー重合で行う場合に、成分(A)(第1工程の重合体)の融点が比較的低いと、溶媒中への溶出成分量が多くなってしまうため、工業的に安定な製造が困難になる。また、溶出成分の分離・回収操作も、必要となるため、製造コストが上昇し、工業的な生産には適さない。また、第1工程部分を液体プロピレン中で重合を行ういわゆるバルク重合で行うと、低融点ポリマー製造時には、ポリマーの溶解が懸念されるため、工業的なレベルまで重合温度を上げることができない、更に活性の制御が難しいため、第1工程での触媒効率が高くなり過ぎる懸念がある。このため、第2工程で生成される成分(B)の割合の高いプロピレン−エチレンランダムブロック共重合体の製造ができなくなってしまう。このような観点から、本発明では、第1工程を気相重合で行うことが最も好ましい。
更に、第2工程の製造においても、気相重合を採用することが望ましい。第2工程において、プロピレン−エチレン及び/又はα−オレフィンランダム共重合体成分がゴム成分として製造されるが、溶媒などの液体が存在すると、溶媒中へゴム成分が溶出してしまう。
このことから、本発明の成分(B)(第2工程の重合体)の製造においては、気相重合法が好ましく、特に、本発明のような成分(B)の割合が多いポリマーを製造するには、気相重合法が好ましい。更に好ましくは、機械的な攪拌を伴う気相重合法を用いるのが望ましい。
更に、第2工程において、プロピレン−エチレン−ブテンランダム共重合体成分を重合した場合にも同様に気相重合が、溶媒中へゴム成分が溶出し難いため、好ましく、更に好ましくは、機械的な攪拌を伴う気相重合法を用いるのが望ましい。
(3)重合反応器
本発明においては、機械的な攪拌を伴う気相重合プロセスであれば、反応器の形態に制限はなく、縦型反応器でも横型反応器でも、或いはその他の形態でも使用することができる。より好ましくは、攪拌装置が水平方向の撹拌軸を有する横型反応器である。
横型反応器の上流末端へ供給される触媒粒子は、重合反応により、重合体粒子へと徐々に成長していく。横型反応器で重合を行う場合、重合によるポリプロピレンの生成と機械的な撹拌の2つの力により、これらの粒子は、徐々に成長しながら、反応器の軸方向に沿って進んでいく。そのため、反応器の上流末端から下流末端に向かって、成長度すなわち滞留時間の揃った粒子が経時的に並ぶことになる。 かくして、横型反応器では、フローパターンがピストンフロー型となり、完全混合槽を数台直列に並べた場合と同程度に、滞留時間分布を狭くする効果がある。これは、その他の重合反応器には見られない優れた特徴であり、単一の反応器で2個、3個又はそれ以上の反応器と同等な固体混合度を容易に達成することができる点で、経済的に有利である。
(4)気相重合における除熱
気相重合において、重合熱の除熱方式に、特に制限はなく、冷却ガス、液化プロピレンの気化熱による除熱、また、それ以外の形態でも使用できる。
より好ましくは、液化プロピレンを用いた除熱方式が望ましい。液化プロピレンは、ポリマー粉体へ含浸するため、ポリマー粉体内でも除熱効果が得られ、ポリマー粉体の性状維持に大きく寄与する。この効果により、液化プロピレンの気化熱による除熱方式は、プロピレン−エチレンランダムブロック共重合体の製造範囲の拡大に、非常に有効である。
(5)第1工程
プロピレンとエチレンの共重合を例示すれば、第1工程は、反応器上流部分より、メタロセン系触媒をフィードし、反応器の気相部を、プロピレン、エチレンガスにて満たし、攪拌翼によってポリマー粉体相を攪拌混合させて、プロピレンとエチレンを共重合させ、成分(A)(第1工程の生成重合体)を製造する工程である。
成分(A)中のエチレン含有量[E]Aを高くするほど、融点(Tm)は、低くなり、[E]Aを低くするほど、Tmは高くなる。そこで、Tmが本発明の規定の範囲を満たすようにするためには、[E]Aとこれらの関係を把握し、[E]Aを所定の範囲になるように、制御すればよい。
重合槽に供給するプロピレンとエチレンの量比と、得られるプロピレン−エチレンランダム共重合体中のエチレン含有量の関係は、使用するメタロセン触媒の種類によって異なるが、適宜、供給量モル比を調整することによって、任意のエチレン含有量[E]Aを有する成分(A)を製造することができる。例えば、[E]Aを1〜6wt%に制御する場合には、プロピレンに対するエチレンの供給モル比を0.001〜0.3の範囲に、好ましくは0.025〜0.25の範囲とすれば良い。
(6)第2工程
本発明における、第2工程の重合温度は、好ましくは40℃以上、より好ましくは50℃以上、更に好ましくは55℃以上、一方、重合温度の上限は、85℃以下、より好ましくは80℃以下、更に好ましくは75℃以下である。40°以上では、重合速度が著しく低下することなく、生産性が悪化しない。85℃以下では、重合温度が高くならず、成分(B)(第2工程の生成共重合体)がポリマー粉体の表面にブリードせず、ポリマー粉体の付着性が高くならない。そのため、ポリマー粉体がポリマー粉体相互や攪拌翼、反応器の壁面へ付着せず、撹拌挙動が正常な状態となる。更には、貯蔵タンクや輸送配管で付着せず、閉塞が生じず、運転の継続が困難とならない。
第2工程で生成される成分(B)の割合は、一般的に、電子供与体化合物を、活性抑制剤として用いて、制御する。活性抑制剤としては、一酸化炭素、二酸化炭素、酸素、硫化カルボニル、アンモニアなどが挙げられる。
また、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、アセトン又は酢酸メチルなどの分子量の大きい電子供与体化合物(電子供与性化合物)を用いてもよい。
その他にも、第2工程の滞留時間の制御、モノマー圧力制御によっても、重合活性を制御できる。しかし、活性抑制剤を用いる方法が、制御方法として一番簡便である。
更に、分子量調節剤として、また、活性向上効果のために、補助的に、水素をエチレンに対してモル比で1.0×10−4以上、1.0×10−2以下の範囲で用いることができる。
そこで水素は、エチレンに対するモル比で、5.0×10−4以上で用いるのがよい。また、上限に関しては、2.0×10−3以下で用いるのがよく、好ましくは1.0×10−3以下である。
上記下限より多いと、水素濃度が低過ぎず、測定が可能である。本明細書記載の触媒では、水素濃度の上昇とともに、触媒活性が高くなる。また、上記上限より少ないと、活性が高くなり過ぎず、重合熱の除去が追い付かずに、非晶成分のブリードを冗長する惧れはない。
成分(B)中のエチレン含有量[E]Bを高くするほど、融点(Tm)は低くなり、[E]Bを低くするほど、Tmは高くなる。そこで、Tmが本発明の規定の範囲を満たすようにするためには、[E]Bとこれらの関係を把握し、[E]Bを所定の範囲になるように、制御すればよい。重合槽に供給するプロピレンとエチレンの量比と、得られるプロピレン−エチレンランダム共重合体中のエチレン含有量の関係は、使用するメタロセン触媒の種類によって異なるが、適宜、供給量とモル比を調整することによって、任意のエチレン含有量[E]Bを有する成分(B)を製造することができる。例えば、[E]Bを11〜20wt%に制御する場合には、プロピレンに対するエチレンの供給モル比を0.1〜0.8の範囲に、好ましくは0.2〜0.7の範囲とすれば良い。
また、成分(B)としてプロピレン−エチレン−ブテンランダム共重合体を製造する場合には、成分(B)中のブテン含有量[B]Bを、プロピレンに対して高くするほど、融点(Tm)は低くなり、[B]Bを低くするほど、Tmは高くなる。
そこで、Tmが本発明の規定の範囲を満たすようにするためには、[B]Bとこれらの関係を把握し、[B]Bを所定の範囲になるように、制御すればよい。
重合槽に供給するプロピレンとブテンの量比と、得られるプロピレン−エチレン−ブ
テンランダム共重合体中のブテン含有量の関係は、使用するメタロセン触媒の種類によって異なるが、適宜、供給量とモル比を調整することによって、任意のブテン含有量[B]Bを有する成分(B)を製造することができる。
例えば、[B]Bを20〜30wt%に制御する場合には、プロピレンに対するブテンの供給モル比を0.2〜1.6の範囲に、好ましくは0.4〜1.4の範囲とすれば良い。
本明細書記載の触媒では、エチレン濃度の上昇とともに触媒活性が高くなり、ポリマー粉体のTmが低くなる。段落0093に記載の範囲以下だと、エチレン濃度が低過ぎて、触媒活性が著しく低下し、成分(B)を十分な割合で得ることができない。段落0093に記載の範囲以上では、活性が高くなり過ぎるため、重合熱の除去が追い付かず、ポリマー粉体が溶融し、塊を発生する恐れがある。
ここで、生産されるポリマー粉体の粒径は、好ましくは700μm以上、より好ましくは850μm以上、更に好ましくは1,000μm以上、一方、好ましくは4,000μm以下、より好ましくは3,500μm以下、更に好ましくは3,000μm以下である。この範囲であれば、「成分(B)のポリマー粉体のホールド性が低下し、ブリードが生じやすくなったり、粒径が過大な場合に、攪拌やポリマー粉体の移送において、破砕などの問題が生じ易くなったりすること」を、効果的に防止できる。
運転安定性は、第2工程後にサンプリングされるポリマー粉体の流動状態で判断できる。流動状態の指標としては、ポリマー粉体のBD(嵩密度)が適当である。
安定な運転性を維持できるポリマー粉体BDは、0.40g/ml以上であり、更に、好ましくは0.44g/ml以上、また、0.55g/ml以下、好ましくは0.49g/ml以下である。
この範囲内では、「流動性低下による、攪拌不良、輸送時の配管閉塞が生じるため、運転継続が困難となる」ということはなく、また、攪拌動力が著しく増加することもない。
[VI]ポリマー粉体の後処理工程
(1)基本処理
本発明の軟質ポリマーの重合体粒子は、重合工程で得られるポリマー粉体を、例えば以下の後処理工程を施すことによって得ることができる。後処理工程として、乾燥工程とエアレーション工程の各処理を受けることにより、(a)ポリマーがべたつき易くなって、重合体粒子同士が付着したりする問題を抑止し、(b)重合体粒子から、残留モノマーや残留溶媒などの残留揮発分を効率よく十分に除去し、更に、(c)重合体粒子の圧着によるサイロなどの閉塞も抑制すること、が可能となる。
後処理工程は、下記の2つの工程を有することが好ましい。
工程a):ポリマー粉体を60〜95℃の温度に保持して、0.6〜1.1時間乾燥する工程。
工程b):ポリマー粉体を25〜95℃の温度で、6〜50時間エアレーションを行う工程。
また、工程a)、工程b)の順で後処理工程を行うことが好ましい。
以下、本発明のポリマー粉体の乾燥方法及びエアレーションについて、具体的かつ詳細に説明する。
本発明のポリマー粉体は、基本的には、ポリオレフィン重合で得られるもの、それ以外で得られるものと特に区別する必要はない。
本発明の技術は、主として、軟質なプロピレン系ブロック共重合体などの製造を目的とし、粉体流動性を維持する理由により、気相重合で得られるポリマー粉体への適用が望ましい。
ここでの乾燥とは、ポリマー製造時にフィードされるプロピレン、エチレン、C4〜C20のα−オレフィン、触媒スラリーで用いるヘキサン、ヘプタンなどの炭化水素において、重合時に未反応となったモノマーや残留溶媒を除去することである。所謂、脱気に該当する場合を含む。また、乾燥のために用いられる不活性ガスに触媒、有機アルミを失活させるために水蒸気を含ませて通気させることが一般的である。更に、乾燥はポリマー粉体を流動させながら行うことが好ましい。
一方、エアレーションとは、粉体工学用語辞典(第2版・p.21・粉体工学会編・日刊工業新聞社発行)記載のとおり、粉粒体層内に空気や窒素ガスなどを注入する操作をいう。本発明では、窒素などの不活性ガスを容器底に供給し、容器内の充填されているポリマー粉体に含まれているガスと容器中のガスとを平衡状態にすることを目的とし、粉体が流動しない程度の流量で乾燥工程後のポリマー粉体へ窒素などを通気し、1,400wtppm以下程度に残留炭化水素(残留モノマーを含む)を低下する工程を指す。乾燥工程では、主に乾燥器を用いて未反応となったモノマーや残留溶媒を除去することに対して、エアレーションは、サイロなどのポリマー粉体の貯蔵に際して、残留ガス濃度を管理する工程であり、乾燥工程とは区別される。
(2)工程a)
乾燥装置の様式は、特に形状、構造を問わないが、本発明に用いられる乾燥器は、例えば、粉体工学便覧(第2版p.358・粉体工学会編・日刊工業新聞社発行)に記載されたような種類があるが、回分式でも連続式でもよく、また攪拌式、振動式、スクリューコンベア式などいずれの方式でもよい。また、様々な様式の乾燥装置を組み合わせることも可能である。
工程a)の温度条件は、60℃以上、好ましくは、65℃以上、更に好ましくは、70℃以上、95℃以下、好ましくは、90℃以下、更に好ましくは85℃以下である。上記の60℃以上であると、十分にポリマー粉体を乾燥させることができ、上記の95℃以下であると、工程b)の温度にかかわらず、ポリマー粉体同士の固着が発生せず、サイロ閉塞が発生することがない。ここでの温度は、乾燥器内のポリマー粉体の温度である。
工程a)の乾燥時間条件は、0.6時間以上、好ましくは0.7時間以上、1.1時間以下、好ましくは、1.0時間以下である。上記の0.6時間以上であると、十分にポリマー粉体を乾燥させることができ、上記の1.1時間以下であると、乾燥工程設備が大型化せず、製造グレードの切り替え時の中間品が増大したり、製造コストが増大することを避けられる。
残留炭化水素などの残留ガス濃度は工程a)実施前と比較して低下し、工程a)を行った結果、工程a)実施後の好ましいガス濃度は、250wtppm以上、1,400wtppm以下の範囲であり、更に好ましくは275wtppm以上、1,150wtppm以下であり、特に好ましくは300wtppm以上、900wtppm以下である。
軟質ポリマーがプロピレン系ブロック共重合体であって、プロピレン−α−オレフィン共重合体成分がプロピレン−エチレンランダム共重合体の場合には、残留炭化水素の残留ガス濃度は工程a)実施前と比較して低下し、工程a)を行った結果、工程a)実施後の好ましいガス濃度は、250wtppm以上、1,400wtppm以下の範囲であり、更に好ましくは275wtppm以上、1,150wtppm以下であり、特に好ましくは300wtppm以上、900wtppm以下である。
軟質ポリマーがプロピレン系ブロック共重合体であって、プロピレン−α−オレフィン共重合体成分がプロピレン−エチレン−ブテンランダム共重合体の場合には、ブテンの沸点はエチレンより高いことにより、好ましい残留ガス濃度は、375wtppm以上、2,100wtppm以下の範囲であり、更に好ましくは410wtppm以上、1,725wtppm以下であり、特に好ましくは450wtppm以上、1,200wtppm以下である。
(3)工程b)
エアレーションを行う場所、エアレーション装置の形状は、特に問わないが、乾燥工程後のサイロで行うと効率が良い。乾燥工程後であれば、ポリマー粉体を高温にせず、少量のエアレーションガスで十分に乾燥及び残留ガス管理をすることができる。また、サイロ以外でもエアレーションを実施することはできるが、サイロ下部より、エアレーションガスをフィードすることで、ポリマー粉体とガスが向流で接触し、サイロ全体のガスを効率良く置換できるため、必要なエアレーションガスも少なくなり、経済性が良い。よって、多量のポリマー粉体をエアレーションで乾燥させる形態としてはサイロが好ましい。
乾燥工程では、主に乾燥器を用いて未反応となったモノマーや残留溶媒を除去することに対して、エアレーションは、サイロなどのポリマー粉体の貯蔵に際して、残留ガス濃度を管理する工程であり、乾燥工程とは区別される。この場合に、ポリマー粉体同士が圧着しないように対処する必要がある。
エアレーションに用いるガスは、不活性ガスであることが好ましい。特に、経済性、入手しやすさから窒素が好ましい。エアレーションのためのガスは、サイロ下部よりフィードすることが好ましい。サイロ上部よりフィードした場合、サイロ内のポリマー粉体と十分に接触できないため、一部のポリマー粉体を十分に管理できない可能性がある。
エアレーションのガス量は、単位保有量(ポリマー粉体1T)あたり、0.1Nm/h以上が好ましい。この数値以上であると、サイロ内で十分にガス置換が行われ、十分にポリマー粉体を適正に管理することができる。上限は特にないが、生産コストの面から、フィード量を極端に増量しないことが望ましい。
工程b)の温度条件は、好ましくは25〜95℃である。25℃以上であると、残留揮発分を十分に除去でき、乾燥工程を通過後のポリマー粉体同士が固着したり、サイロからポリマー粉体を抜き出すことができなくなることを避けられる。一方、95℃以下の設定とすれば、サイロ全体の加温設備が必要となったり、製造コストが著しく増大することを避けられる。
工程b)の乾燥時間条件は、6時間以上、好ましくは9時間以上、更に好ましくは、12時間以上、50時間以下、好ましくは、45時間以下、更に好ましくは40時間以下である。上記の6時間以上であると十分にポリマー粉体を処理させることができる。上記の50時間以下であると、サイロ規模が適正になり、単位時間あたりの生産量も適正となるなど、生産コストが好適となる。
サイロ下部で閉塞が生じやすいため、サイロ下部のポリマー粉体温度を測定することが望ましい。一方、本発明の実施例においては、実際にサンプリングしたポリマー粉体の温度を直接測定した。
残留炭化水素の残留ガス濃度は工程b)実施前と比較して更に低下し、工程b)を行った結果、工程b)実施後の好ましいガス濃度は、含まれるモノマーガス特にプロピレンの爆発下限界以下である。
但し、第2工程において、ブテンを使用し、プロピレン−エチレン−ブテンランダム共重合体を製造する場合には、ブテンの沸点はエチレンやプロピレンより高いことから、爆発下限界値は絶対値として大きくなる。
(4)処理温度の考察
なお、本発明者らは、これまでの実績と経験に基づき、ポリマー粉体の熱に対する挙動に焦点を当て鋭意研究を進めた。
本発明のような熱可塑性樹脂であるポリマーは融点をもつ。ポリマーがその固有の融点を超えると、ポリマー中の結晶成分中の分子の自由度が上がり粘性体としての性質を示し始める。また、本発明のような結晶性成分と非(低)結晶性成分からなる軟質オレフィン重合体粒子の場合には、温度が上がり結晶性成分の分子運動が大きくなるにつれて、非(低)結晶性成分が重合体表面上に移動する、いわゆるブリードアウトという現象がおこる。この現象は必ずしもポリマーの温度がその結晶性成分の融点以上にならなくても、融点より少し低い温度(T)から顕著に起こり始める。また時間を経るにつれてその程度が大きくなる。
したがって、本発明においては、重合体粒子と未反応のモノマーや溶剤を分離する乾燥工程が必要であり、分離だけを考えるとより高温にすることが好ましいが、ブリードアウトを抑制しつつ乾燥を行うためには乾燥工程である工程a)において、ポリマーの持つ融点より少し低い温度(T)より、更に低い温度で乾燥する必要がある。
ただし、上述のようにブリードアウト現象というのは、T℃以下で乾燥を行なって
も、また時間を経るにつれて、少しずつ起こる現象であり、完全に抑制できるものではない。またブリードアウトを引き起こした重合体の状態とは、重合体粒子の表面を非結晶性成分が覆っている。ところが、ブリードアウトを引き起こしたような非(低)結晶性成分であっても、ポリマーの温度が低下しこの非(低)結晶性成分のガラス転移点温度付近になると、非(低)結晶性成分の分子運動が小さくなってくる。この時、非(低)結晶性成分で表面が覆われた重合体粒子同士の非(低)結晶性成分が互いに接触したまま分子運動が小さくなると、その粒子間の接触点で互いの非(低)結晶性成分同士で固着してしまうという、いわゆるバインダー現象が起こってしまう。
この時、サイロのような重合体を積み上げて保存している場所でバインダー現象が起こると、重合体粒子全体の流動性が損なわれ、サイロから重合体が抜き出せなくなり、最悪の場合には製造ができなくなるという問題を引き起こしてしまう。
そこで、本発明においては、未反応モノマーや溶剤成分を除去する乾燥工程で特定温度履歴を経てブリードアウトが特定の範囲で進行した重合体を、後の重合体粒子内の揮発成分を除去する工程b)のエアレーション操作において、エアレーション時の温度を重合体のガラス転移点温度付近の温度(T)以下にしないことにより、重合体粒子の流動性を著しく損なうことなく、未反応モノマーや溶剤成分の除去という乾燥と重合体粒子中の揮発性成分の除去を十分に行うことができる。その結果、本発明の重合体粒子を容易に製造することが可能であることが分かった。
以下、実施例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではなく、各実施例は、比較例との対照により、本発明の構成の合理性と有意性及び有用性並びに従来技術に対する卓越性を実証するものである。
[触媒の製造]
珪酸塩の化学処理:10リットルの撹拌翼の付いたガラス製セパラブルフラスコに、蒸留水3.75リットル、続いて濃硫酸(96%)2.5kgをゆっくりと添加した。5
0℃で、更にモンモリロナイト(水澤化学社製ベンクレイSL;平均粒径=50μm)を1kg分散させ、90℃に昇温し、6.5時間その温度を維持した。50℃まで冷却後、このスラリーを減圧濾過し、ケーキを回収した。このケーキに蒸留水を7リットル加え再スラリー化後、濾過した。この洗浄操作を、洗浄液(濾液)のpHが、3.5を越えるまで実施した。回収したケーキを窒素雰囲気下110℃で終夜乾燥した。乾燥後の質量は707gであった。化学処理した珪酸塩を更にキルン乾燥機で乾燥した。
触媒の調製:内容積3リットルの撹拌翼のついたガラス製反応器に上記で得た乾燥珪酸塩200gを導入し、混合ヘプタン1,160ml、更にトリエチルアルミニウムのヘプタン溶液(0.60M)840mlを加え、室温で撹拌した。1時間後、混合ヘプタンにて洗浄し、珪酸塩スラリーを2.0リットルに調製した。次に、調製した珪酸塩スラリーにトリイソブチルアルミニウムのヘプタン溶液(0.71M/L)9.6mlを添加し、25℃で1時間反応させた。並行して、〔(r)−ジクロロ[1,1´−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4H−アズレニル}]ジルコニウム〕(合成は特開平10−226712号公報実施例に従って実施した)2,180mg(3mmol)と混合ヘプタン870mlに、トリイソブチルアルミニウムのヘプタン溶液(0.71M)を33.1ml加えて、室温にて1時間反応させた混合物を、珪酸塩スラリーに加え、1時間撹拌した。
予備重合:続いて、窒素で十分置換を行った内容積10リットルの撹拌式オートクレーブに、n−ヘプタン2.1リットルを導入し、40℃に保持した。そこに先に調製した珪酸塩/メタロセン錯体スラリーを導入した。温度が40℃に安定したところでプロピレンを100g/時間の速度で供給し、温度を維持した。4時間後プロピレンの供給を停止し、更に2時間維持した。予備重合終了後、残モノマーをパージし、撹拌を停止させ約10分間静置後、上澄み約3リットルをデカントした。続いてトリイソブチルアルミニウムのヘプタン溶液(0.71M/L)を9.5ml、更に混合ヘプタンを5.6リットル添加し、40℃で30分間撹拌し、10分間静置した後に、上澄みを5.6リットル除いた。更にこの操作を3回繰り返した。最後の上澄み液の成分分析を実施したところ有機アルミニウム成分の濃度は、1.23ミリモル/L、Zr濃度は8.6×10−6g/Lであり、仕込み量に対する上澄み液中の存在量は0.016%であった。続いて、トリイソブチルアルミニウムのヘプタン溶液(0.71M/L)17.0mlを添加した後に、45℃で減圧乾燥した。この操作により触媒1g当たりポリプロピレン2.1gを含む予備重合触媒が得られた。
[実施例1]
(1)第1重合工程
第一の、攪拌羽根を有する横型重合器(L/D=5.6、内容積100L)に、予め35kgのシーズポリマーを導入後、窒素ガスを3時間流通させた。その後、プロピレン、エチレン及び水素を導入しながら昇温し、重合条件が整った時点で、予備重合処理した上記触媒を0.47g/hr、有機アルミニウム化合物としてトリイソブチルアルミニウムを15mmol/hr一定となるように供給した。1:3の比のエチレン/プロピレンの混合ガスを反応温度75℃、反応圧力1.8MPaG、攪拌速度35rpmの条件を維持しながら連続供給し、更に水素ガスを連続的に供給して、生成ポリマーを調整した。
反応熱は原料プロピレンの気化熱により除去した。重合器から排出される未反応ガスは反応器系外で冷却、凝縮させて重合器に還流した。本重合で得られたプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(A)を間欠的に抜き出し第2重合工程の重合器に供給した。
(2)第2重合工程
第二の、攪拌羽根を有する横型重合器(L/D=5.6、内容積100L)に第1重合工程からのプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(A)及びプロピレンとエチレンの混合ガスをそれぞれ供給し、プロピレンとエチレンの共重合を行った。反応条件は攪拌速度18rpm、反応温度70℃、反応圧力1.7MPaGであり、気相中のガス組成を調整した。第2重合工程には、水素のフィードは行わなかった。反応熱は原料プロピレンの気化熱により除去した。重合器から排出される未反応ガスは反応器系外で冷却、凝縮させて重合器に還流した。
第2重合工程で生成されたプロピレン系ブロック共重合体は、重合器から連続的に抜き出した。
(3)後処理工程
図1に示される、内容積400Lの縦型の乾燥機に、第1重合工程及び第2重合工程を通じて得られたプロピレン系ブロック共重合体のポリマー粉体と、窒素を8m/時で連続的に導入し、0.05MPaG、80℃で0.8時間乾燥した(工程a))。工程a)後のポリマー粉体の一部をサンプリングして、揮発分の量を測定したところ720wtppmであった。
その後、工程a)からのポリマー粉体を、内容積0.6mのサイロに移送しポリマーを積み上げ、0.05MPaG、温度30℃で34時間、窒素を8m/時で流通させることでエアレーションを行った(工程b))。工程b)後、サイロ上部より重合体粒子を取り出し分析をおこなったところ、揮発分の量は、42wtppmであった。その他の重合体粒子の流動性、品質に関する値も含めて表1に記した。
(4)ポリマー閉塞の評価方法
得られた重合体粒子100gを、内径12φのロートを通過させたところ、自重のみでロートを通過した。
[実施例2]
実施例1と同様に行なったが、第2重合工程で水素のフィードを行うことにより、第2重合工程で生成するエチレン/プロピレン重合体の分子量を低く調整した。その後、実施例1と同様の後処理工程を行った。得られた重合体粒子100gを、内径12φのロートを通過させたところ、自重のみでロートを通過した。
[比較例1]
実施例1において、次のように後処理工程の条件を変更した。内容積400Lの縦型の乾燥機に、第1重合工程及び第2重合工程を通じて得られたプロピレン系ブロック共重合体のポリマー粉体と、窒素を8m/時で連続的に導入し、0.05MPaG、80℃で3時間乾燥した(工程a))。工程a)後のポリマー粉体の一部をサンプリングして、揮発分の量を測定したところ100wtppmであった。
その後、工程a)からのポリマー粉体を、内容積0.6mのサイロに移送しポリマーを積み上げ、0.05MPaG、温度30℃で34時間、エアレーションを行わず静置した(工程b))。工程b)後、サイロ上部より重合体粒子を取り出し分析を行なったところ、揮発分の量は、100wtppmであった。得られた重合体粒子100gを、内径12φのロートを通過させたところ、ロートが閉塞した。
[実施例3]
実施例1と同様に行なったが、第2重合工程でプロピレンとエチレンの混合ガスを供給する代わりに、プロピレン、エチレンとブテンの混合ガスを4:4:1の比で供給して、プロピレン、エチレンとブテンの共重合を行うことにより、プロピレン−エチレン−ブテン三元系のプロピレン系ブロック共重合体を製造した。その後、実施例1と同様の後処理工程を行った。
得られたポリマー粉体はTREF測定の40℃以下での溶出量は、25wt%、TREF40℃以下可溶分中に含まれるエチレン含量は16wt%、ブテン含量は、30wt%であった。残留揮発分であるプロピレン濃度は、15wtppm、ブテン濃度は、78wtppmであり合計93ppmであり、爆発下限以下であった。得られた重合体粒子100gを、内径12φのロートを通過させたところ、自重のみでロートを通過した。
Figure 0006750287
[実施例と比較例の対比結果の考察]
実施例1〜3と比較例1から明らかなように、本発明の規定を満たす、プロピレン−エチレンブロック共重合体及びプロピレン−エチレン−ブテン共重合体に係る、実施例の重合体粒子は流動性が良好であり、残留揮発分も効率よく十分に除去されていることが判り、閉塞も生じていない。
比較例1の重合体粒子は、ポリマー粉体の後処理工程において、乾燥時間が長く、また、エアレーションを行なっていないので、残留揮発分が多く、安息角が大きい粒子であったため、閉塞の評価結果が不適であった。
よって、本発明の構成の合理性と有意性及び有用性並びに従来技術に対する卓越性が実証されている。
本発明の軟質ポリマーの重合体粒子は、成型時のサイクルを短縮するために、また成形性をより向上させるために、ポリマーの溶融流動性(MFR)を高くし、その際に、ポリマーがべたつき易くなって、重合体粒子同士が付着したりする問題を抑止し、重合体粒子から、残留モノマーや残留溶媒などの残留揮発分を効率よく十分に除去し、更に、重合体粒子の圧着によるサイロなどの閉塞も抑制することができる。
したがって、本発明は、オレフィン系熱可塑性エラストマーの製造及び利用の分野において、産業上非常に有用である。
1.第一の横型重合器 2.第二の横型重合器 3.縦型攪拌乾燥機
4.サイロへの輸送配管 5.サイロ 6.エアレーション用の窒素配管 7.造粒機(図示せず)への輸送配管

Claims (12)

  1. 下記の要件を満たす軟質ポリマーの重合体粒子であって、軟質ポリマーが、メタロセン触媒にて重合されたプロピレン系ブロック共重合体であることを特徴とする重合体粒子。
    a)TREF(温度上昇溶離分別)において、40 ℃以下で溶出する成分が23wt%以上である
    b)重合体粒子の揮発分が100wtppm以下である
    c)重合体粒子の安息角が20〜55°である
  2. 下記の要件を満たす軟質ポリマーの重合体粒子であって、軟質ポリマーが、メタロセン触媒にて重合されたプロピレン系ブロック共重合体であることを特徴とする重合体粒子。
    a)TREF(温度上昇溶離分別)において、40 ℃以下で溶出する成分が30wt%以上である
    b)重合体粒子の揮発分が50wtppm以下である
    c)重合体粒子の安息角が20〜55°である
  3. 請求項1又は2の重合体粒子を用いた成形品の曲げ弾性率が、50〜400MPaであることを特徴とする、軟質ポリマーの重合体粒子。
  4. 重合体粒子の融点が115〜145℃であり、嵩密度が0.40〜0.49g/mlであり、有効内部摩擦角が20〜55°であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1に記載の軟質ポリマーの重合体粒子。
  5. 軟質ポリマーが、プロピレン単位とエチレン単位又はC4〜C20のα−オレフィン単位とを含む、プロピレン系ブロック共重合体であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の軟質ポリマーの重合体粒子。
  6. 軟質ポリマーが、プロピレン単位とエチレン単位及びC4〜C20のα−オレフィン単位とを含む、プロピレン系ブロック共重合体であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の軟質ポリマーの重合体粒子。
  7. TREFにおいて、40℃以下で溶出する成分が、プロピレン単位とエチレン単位又はC4〜C20のα−オレフィン単位との共重合体であり、その重量平均分子量(Mw)が150,000〜250,000であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の軟質ポリマーの重合体粒子。
  8. TREFにおいて、40℃以下で溶出する成分が、プロピレン単位とエチレン単位及びC4〜C20のα−オレフィン単位との共重合体であり、その重量平均分子量(Mw)が150,000〜250,000であることを特徴とする、請求項1〜4及び6のいずれか1項に記載の軟質ポリマーの重合体粒子。
  9. 請求項1〜5及び7のいずれか1項に記載の軟質ポリマーの重合体粒子を製造する方法であって、プロピレン単位とエチレン単位又はC4〜C20のα−オレフィン単位とを含む、プロピレン系ブロック共重合体を重合するに際して、その重合工程の一部又は全部が気相重合であることを特徴とする、軟質ポリマーの重合体粒子の製造方法。
  10. 請求項1〜4、6及び8のいずれか1項に記載の軟質ポリマーの重合体粒子を製造する方法であって、プロピレン単位とエチレン単位及びC4〜C20のα−オレフィン単位とを含む、プロピレン系ブロック共重合体を重合するに際して、その重合工程の一部又は全部が気相重合であることを特徴とする、軟質ポリマーの重合体粒子の製造方法。
  11. 請求項1〜8のいずれか1項に記載の軟質ポリマーの重合体粒子を製造する方法であって、重合工程と重合工程後の後処理工程とを含み、後処理工程は下記の2つの工程を有することを特徴とする、軟質ポリマーの重合体粒子の製造方法。
    工程a):ポリマー粉体を60〜95℃の温度で、0.6〜1.1時間乾燥する工程。
    工程b):ポリマー粉体を25〜95℃の温度で、6〜50時間エアレーションを行う工程。
  12. 前記のエアレーションをサイロにて行うことを特徴とする、請求項11に記載の軟質ポリマーの重合体粒子の製造方法。

JP2016081574A 2015-04-14 2016-04-14 軟質ポリマーの重合体粒子及びその製造方法 Active JP6750287B2 (ja)

Applications Claiming Priority (2)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2015082899 2015-04-14
JP2015082899 2015-04-14

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2016204649A JP2016204649A (ja) 2016-12-08
JP6750287B2 true JP6750287B2 (ja) 2020-09-02

Family

ID=57488988

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2016081574A Active JP6750287B2 (ja) 2015-04-14 2016-04-14 軟質ポリマーの重合体粒子及びその製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6750287B2 (ja)

Families Citing this family (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
SG11202008644YA (en) * 2018-03-07 2020-10-29 Mitsui Chemicals Inc Propylene-based block copolymer, production method therefor, and solid titanium catalyst ingredient for olefin polymerization
US11680127B2 (en) 2018-08-29 2023-06-20 Ineos Styrolution Group Gmbh Process for the production of graft copolymer powder compositions and thermoplastic resin compositions
EP3738984B1 (en) * 2019-03-29 2021-11-24 Sumitomo Chemical Company, Limited Method for producing heterophasic propylene polymer particles
JP7429097B2 (ja) * 2019-06-07 2024-02-07 サンアロマー株式会社 ポリプロピレン系樹脂組成物の製造方法及びシート成形体の製造方法

Family Cites Families (11)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS5452191A (en) * 1977-09-30 1979-04-24 Sumitomo Chem Co Ltd Method of removing solvent remaining in polyolefin powder
JPS6045646B2 (ja) * 1978-06-29 1985-10-11 住友化学工業株式会社 ポリα−オレフインの乾燥法
JP2000159817A (ja) * 1998-11-30 2000-06-13 Mitsubishi Chemicals Corp オレフィン重合体の製造方法
EP1558651B1 (en) * 2002-10-30 2009-02-25 INEOS Manufacturing Belgium NV Polymer treatment
JP2004189913A (ja) * 2002-12-12 2004-07-08 Sumitomo Chem Co Ltd エアレーション温度の調整方法
JP4512411B2 (ja) * 2004-04-30 2010-07-28 日本ポリプロ株式会社 新規なプロピレン−エチレンランダムブロック共重合体
JP5011639B2 (ja) * 2004-11-08 2012-08-29 住友化学株式会社 ポリオレフィン粉体の乾燥方法
JP2006213782A (ja) * 2005-02-02 2006-08-17 Sumitomo Chemical Co Ltd オレフィン重合体の製造方法
JP2010077231A (ja) * 2008-09-25 2010-04-08 Japan Polypropylene Corp プロピレン系ブロック共重合体
JP5401282B2 (ja) * 2009-11-30 2014-01-29 日本ポリプロ株式会社 プロピレン系重合体の製造方法及びプロピレン系ブロック共重合体
JP5764826B2 (ja) * 2012-06-13 2015-08-19 日本ポリプロ株式会社 ポリマー粉体の乾燥装置及びそれを用いたポリマーの製造方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP2016204649A (ja) 2016-12-08

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP6750287B2 (ja) 軟質ポリマーの重合体粒子及びその製造方法
KR101692346B1 (ko) 혼성 담지 메탈로센 촉매를 이용한 고밀도 에틸렌계 중합체 및 제조방법
US20190169323A1 (en) High-processability high-density ethylene-based polymer using hybrid supported metallocene catalyst, and preparation method therefor
JP6065796B2 (ja) 容器用ポリエチレン樹脂組成物及びそれよりなる成形体
JP6396523B2 (ja) ポリエチレン系重合体及びその製造方法
JP6982171B2 (ja) 超高分子量ポリエチレンパウダー
JP6065797B2 (ja) 容器用ポリエチレン樹脂組成物及びそれよりなる成形体
JP2006316160A (ja) オレフィン重合用触媒の保存方法
KR20210152582A (ko) 폴리에틸렌 수지
WO2020028059A1 (en) Polyethylene formulations for large part blow molding applications
JP5560161B2 (ja) 容器蓋用ポリエチレン樹脂組成物
JP5776602B2 (ja) 容器用ポリエチレン樹脂組成物及びそれよりなる成形体
TW201206968A (en) Multi-component catalyst systems and polymerization processes for forming broad composition distribution polymers
CN118369355A (zh) 用双活化剂-载体控制长链分支含量
JP6733278B2 (ja) ポリマー粉体の乾燥方法
JP6519466B2 (ja) ポリマー粉体の乾燥方法
JPH07500859A (ja) ポリオレフィンの製造方法
JP4866624B2 (ja) オレフィン重合用固体触媒成分、オレフィン重合用触媒、およびこれを用いたポリオレフィンの製造方法
JP6699536B2 (ja) ポリエチレン樹脂組成物、並びにその成形体及び容器
JP6607125B2 (ja) ポリエチレン樹脂組成物、並びにその成形体及び容器
JP6651938B2 (ja) ポリエチレン及びその成形体
JP6111962B2 (ja) ポリマー粉体の乾燥方法
JP5401282B2 (ja) プロピレン系重合体の製造方法及びプロピレン系ブロック共重合体
JP2015227459A (ja) 容器用ポリエチレン樹脂組成物及びそれよりなる成形体
JP5593202B2 (ja) 容器蓋用ポリエチレン

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20190226

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20200205

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20200218

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20200420

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20200714

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20200727

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6750287

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250