JP2022182443A - ポリエチレンパウダー、及び成形体 - Google Patents

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Abstract

【課題】分子量の安定性に優れ、かつ白色度及びクリーン性に優れた成形体を得ることができるポリエチレンパウダー及びその成形体を提供する。【解決手段】極限粘度が3.0dl/g以上30.0dl/g未満であり、ISO11357-6(2018)に準拠した酸化誘導時間測定(150℃、酸素下、試料質量5mg)において、酸素切替後60分後の熱流が0.03mW以上0.25mW未満である、ポリエチレンパウダー。【選択図】なし

Description

本発明は、ポリエチレンパウダー、及び成形体に関する。
ポリエチレンは、溶融加工が容易で、ポリエチレンを用いて得られた成形体は、機械強度が高く、耐薬品性、剛性等にも優れているため、従来から、フィルム、シート、微多孔膜、繊維、発泡体、及び焼結体等の多種多様な用途に用いられている。
特に超高分子量ポリエチレンは、より機械強度が高く、摺動性や耐摩耗性に優れているため、実用上の利用可能性が高い。
しかしながら、超高分子量ポリエチレンは、融点以上の温度で溶融させても流動性が低いため、ペレット化することが困難であり、パウダー状で使用される。当該超高分子量ポリエチレンパウダーを成形する方法としては、超高分子量ポリエチレンパウダーを加熱下に加圧成形した後、使用する形状に切削する圧縮成形法や、流動パラフィン等の溶媒に溶解した後、延伸を行い、溶媒を除去することでシート状や糸状に成形する成形方法等が知られている(例えば、特許文献1、2参照)。
一方、近年、ディスプレイ、電子部品や各種メディア機器等の製造工程において使用される薬液や、洗浄水等に対するクリーン性に関する要求がますます高まっている。
例えば、高純度な薬品や、超純水等(以下、被接触物ともいう)を保管する容器や、濾過するフィルターとして、添加剤、不純物、及び劣化で生じたオリゴマー等を含む超高分子量ポリエチレンを使用した場合には、これらの物質が溶出して、被接触物を汚染、或いは変質させてしまうおそれがあるという問題点がある。
かかる問題点に鑑み、高純度なポリエチレン樹脂材料については、例えば、固有粘度が10dl/g以上80dl/g以下の超高分子量ポリエチレンと、分子量分布(Mw/Mn)が4以下のポリエチレンとの樹脂組成物が、低分子量成分の含有量が少なく、クリーン性に優れたポリエチレン樹脂材料であるとの技術が開示されている(例えば、特許文献3参照)。
また、例えば、固有粘度が10dl/g以上60dl/g以下の超高分子量ポリエチレンが、塩素含有量が少なく、成形機の腐食が抑制され、中和剤として金属石鹸等を添加する必要性がないため、クリーン性に優れているものである、との技術が開示されている(例えば、特許文献4参照)。
特許第6195403号公報 特開2020-16007号公報 特開2017-165938号公報 特開2018-145412号公報
超高分子量ポリエチレンパウダーの圧縮成形体については、優れた物性を発現させるためには、パウダー同士を完全に融着させる必要があり、長時間、高温で圧縮加工する必要がある。また、前記圧縮成形体に関しては、近年、より高強度で、高い寸法精度に優れたものを求められる用途が増えており、従来よりも長時間、高温で圧縮成形が行われ、成形後に残留歪を緩和するために融点以下で長時間アニーリングする必要も増加している。さらに、超高分子量ポリエチレンパウダーをセパレータや高強度繊維の用途に用いる場合についても、未溶解パウダーの管理が厳しく行われるようになっており、このため溶媒に超高分子量ポリエチレンパウダーを完全に溶解させるために、従来よりも長時間、高温で混練されている。上述した各種の用途において、クリーン性に優れ、白色度に優れた超高分子量ポリエチレンであることが要求されている。
しかしながら、特許文献1、及び特許文献2に開示されている技術においては、超高分子量ポリエチレンパウダーの劣化を抑制するために、多量の酸化防止剤やステアリン酸カルシウム等の中和剤を添加した後、加熱加工して成形体、及び高強度繊維を作製しており、その成形体は使用時に添加剤が溶出してくるためクリーン性に劣るという問題点を有している。
また、特許文献3には、チタンが原因で発生する変色(黄変)や酸化劣化等の抑制を図ること、及び低分子量成分が少なくクリーンであること、については記載されているが、その他の金属成分や、超高分子量ポリエチレンパウダーのポリマー構造に起因する劣化に関する記載はなされておらず、長時間加熱される圧縮成形工程において、分子量の低下やゲル化等を生じる、という問題点を有している。
さらに、特許文献4には、超高分子量ポリエチレンパウダー中の塩素含有量を少なくする旨の記載はなされているが、触媒残渣等の不純物が多く、劣化を抑制するための記載はなされておらず、極めて厳しいクリーン性が要求される用途に対しては使用が制限されるという問題点を有している。
そこで本発明においては、上述した従来技術の問題点に鑑み、分子量の安定性に優れ、かつ白色度及びクリーン性に優れた成形体を得ることができるポリエチレンパウダー及びその成形体を提供することを目的とする。
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意研究を行った結果、所定の極限粘度、及び所定の酸化誘導時間測定における熱流を有するポリエチレンパウダーが、上記の課題を解決することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
〔1〕
極限粘度が3.0dl/g以上30.0dl/g未満であり、
ISO11357-6(2018)に準拠した酸化誘導時間測定(150℃、酸素下、試料質量5mg)において、酸素切替後60分後の熱流が0.03mW以上0.25mW未満である、ポリエチレンパウダー。
〔2〕
Mgの含有量が、10.0ppm未満である、前記〔1〕に記載のポリエチレンパウダー。
〔3〕
Tiの含有量が、3.0ppm未満である、前記〔1〕又は〔2〕に記載のポリエチレンパウダー。
〔4〕
Alの含有量が、8.0ppm未満である、前記〔1〕乃至〔3〕のいずれか一に記載のポリエチレンパウダー。
〔5〕
α-オレフィンの含有量が0.10mol%未満である、前記〔1〕乃至〔4〕のいずれか一に記載のポリエチレンパウダー。
〔6〕
200℃、空気下で1時間加熱した時の重量最大増加率が、2.0%未満である、前記〔1〕乃至〔5〕のいずれか一に記載のポリエチレンパウダー。
〔7〕
粒子径106μm以上212μm未満の粒子の合計質量割合が、50質量%以上75質量%未満である、前記〔1〕乃至〔6〕のいずれか一に記載のポリエチレンパウダー。
〔8〕
固め嵩密度が、0.50g/cm3以上0.65g/cm3未満であり、
前記固め嵩密度をゆるめ嵩密度で除した値(固め嵩密度/ゆるめ嵩密度)が、1.05以上1.30未満である、前記〔1〕乃至〔7〕のいずれか一に記載のポリエチレンパウダー。
〔9〕
Caの含有量が、10ppm未満である、前記〔1〕乃至〔8〕のいずれか一に記載のポリエチレンパウダー。
〔10〕
前記〔1〕乃至〔9〕のいずれか一に記載のポリエチレンパウダーの成形体。
本発明によれば、分子量の安定性に優れ、かつ白色度及びクリーン性に優れた成形体を得ることができるポリエチレンパウダー及びその成形体を提供することができる。
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」ともいう。)について詳細に説明する。
なお、以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
〔ポリエチレンパウダー〕
本実施形態のポリエチレンパウダーは、極限粘度が3.0dl/g以上30.0dl/g未満であり、酸化誘導時間測定(150℃、酸素下、試料質量5mg)において、酸素切替後60分後の熱流が0.03mW以上0.25mW未満である。
本実施形態のポリエチレンパウダーが、上記構成を有していることにより、分子量の安定性に優れ、かつ白色度及びクリーン性に優れた成形体を得ることができる。
本実施形態のポリエチレンパウダーは、極限粘度が3.0dl/g以上の、いわゆる超高分子量ポリエチレンパウダーである。
本実施形態のポリエチレンパウダーを構成するポリエチレンとしては、以下に限定されないが、例えば、エチレン単独重合体、又は、エチレンと他のコモノマーとの共重合体等が好適に挙げられる。
他のコモノマーとしては、特に限定されないが、例えば、α-オレフィン、ビニル化合物等が挙げられる。
前記α-オレフィンとしては、以下に限定されないが、例えば、炭素数3~20のα-オレフィンが挙げられる。具体的には、プロピレン、1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、1-トリデセン、1-テトラデセン等が挙げられる。
前記ビニル化合物としては、以下に限定されないが、例えば、ビニルシクロヘキサン、スチレン及びその誘導体等が挙げられる。
また、必要に応じて、他のコモノマーとして、1,5-ヘキサジエン、1,7-オクタジエン等の非共役ポリエンを使用することもできる。
本実施形態のポリエチレンパウダーが共重合体である場合、当該共重合体は3元ランダム重合体であってもよい。
他のコモノマーは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
他のコモノマーの量は、エチレン共重合体を100mоl%としたとき、好ましくは0.1mol%以下であり、より好ましくは0.08mol%以下であり、さらに好ましくは0.06mol%以下である。他のコモノマーの量を0.1mol%以下に調整することにより、劣化し易い3級炭素の生成を低減することができ、オリゴマーの生成も抑制される傾向にある。また、触媒活性の高い重合反応になる傾向があり、触媒残渣の金属成分量を抑制し易い傾向にある。
なお、ポリエチレンのコモノマー量は、赤外分析法、NMR法等で確認することができる。
(極限粘度[η])
本実施形態のポリエチレンパウダーの、極限粘度[η]は、3.0dL/g以上30.0dL/g未満であり、好ましくは3.5dL/g以上28.0dL/g未満であり、より好ましくは4.0dL/g以上26.0dL/g未満である。
なお、極限粘度は、135℃のデカヒドロナフタレン中で測定することができる。
極限粘度[η]が3.0dL/g以上であることにより、耐酸化劣化性に劣る低分子量成分が少なく、成形加工時の劣化による分子鎖の切断や架橋が抑制され、成形体とした時に劣化耐久性に優れる傾向にある。また、本実施形態のポリエチレンパウダーから得られる成形体は、十分な機械強度や耐摩耗性を有するものとなる傾向にある。
一方、極限粘度[η]が30.0dL/g未満であることにより、触媒活性の高い重合反応になる傾向にあり、触媒残渣の金属成分量を抑制し易い傾向にある。また、成形加工性に優れるため、ポリエチレンパウダー同士の融着力が向上して機械強度に優れ、ポリエチレンパウダーの溶解性も高くなる傾向にある。
ポリエチレンパウダーの極限粘度[η]は、後述する重合条件等を適宜調整することにより、上記数値範囲に制御することができる。具体的には、重合系内に連鎖移動剤として水素を存在させること、又は重合温度を変化させること等によって極限粘度[η]を制御することができる。
本実施形態のポリエチレンパウダーの極限粘度[η]は、デカヒドロナフタレン中にポリエチレンパウダーを異なる濃度で溶解した溶液を用意し、当該溶液の135℃における溶液粘度を測定し、測定された溶液粘度から計算される還元粘度を濃度0に外挿して求めることができる。具体的には、後述する実施例に記載する方法により求めることができる。
(酸化誘導時間測定における酸素切替後60分後の熱流)
本実施形態のポリエチレンパウダーにおいては、ISO11357-6(2018)に準拠した酸化誘導時間測定(150℃、酸素下、試料質量5mg)における、酸素切替後60分後の熱流は、0.03mW以上0.25mW未満であり、好ましくは0.04mW以上0.24mW未満であり、より好ましくは0.05mW以上0.23mW未満である。
前記酸化誘導時間測定における酸素切替後60分後の熱流が、0.03mW以上であることにより、高純度な成形体が得られる傾向にある。
一方、前記酸化誘導時間測定における酸素切替後60分後の熱流が、0.25mW未満であることにより、ポリエチレンパウダーが酸化劣化し難く、成形加工時の劣化による分子鎖の切断や架橋が抑制され、成形体とした時に劣化耐久性に優れたものとなり、白色度の高い成形体が得られる傾向にある。
酸化誘導時間測定における熱流は、ISO11357-6(2018)に準拠して測定され、ポリエチレンの酸化反応による発熱を、示差操作熱量計(DSC)等を用いて測定することができる。測定方法としては、試験試料を窒素雰囲気中で昇温した後、150℃に到達したら酸素雰囲気に切り替え、150℃一定温度における60分後の熱流を測定する。なお、150℃での酸化誘導時間測定における酸素切替後60分後の熱流は、後述する実施例に詳細を記載する。
酸化誘導時間測定における酸素切替後60分後の熱流を0.03mW以上0.25mW未満に制御する方法としては、酸化防止剤等の添加剤を配合せず、劣化しにくいポリエチレン構造として、劣化を促進する不純物が少ない構造のポリエチレンを作製するようにする方法が挙げられる。具体的には、劣化し易い3級炭素の生成を所定量以下に低減化すること、重合時の異常反応や熱劣化で生成するポリマー鎖末端の二重結合を所定量以下に低減化すること、酸化劣化を促進する触媒残渣等の金属成分や異常反応で生成するオリゴマー成分を所定量以下に低減化すること、等が挙げられる。
より具体的な方法としては、エチレンガス、溶媒、触媒等を連続的に重合系内に供給し、生成したポリエチレンパウダーと共に未反応のエチレンガス、及び溶媒を連続的に排出する、系内が均一な連続式重合を行うこと、主触媒と助触媒を同一ラインから交互に導入して局所的な急重合を抑制すること、高活性な重合反応として触媒残渣の金属成分量を抑制すること、重合反応の冷却はジャケット冷却と気化した溶媒等を冷却するコンデンサーを併用し、気化した溶媒に同伴された異常反応したポリエチレンパウダーが重合反応器に再投入されないようにすること、ポリエチレンパウダーと溶媒を分離する前のバッファータンクに、エタノールを溶剤量の10質量%になるように導入して金属成分やオリゴマー成分を可能な限り除去すること、重合後のポリエチレンパウダーに対し、水とイソプロピルアルコール(70/30質量%)のスチームを噴霧して、100℃以上110℃以下で窒素ガスをブローしながら、揮発した溶剤や触媒から生成する塩酸ガスを除去すること、等の方法が挙げられる。
通常、ポリエチレンパウダーの作製工程においては、重合反応時の局所的な異常反応、精製不足や乾燥時の劣化等により、酸化劣化し易いポリエチレンパウダーとなるが、本実施形態のポリエチレンパウダーは、酸化劣化しにくい構成となっている点に大きな特徴を有している。
(Mg含有量)
本実施形態のポリエチレンパウダーのMg含有量は、好ましくは10.0ppm未満であり、より好ましくは8.0ppm未満であり、さらに好ましくは6.0ppm未満である。
Mg含有量が10.0ppm未満であることにより、ポリエチレンの酸化劣化を効果的に抑制でき、分子量低下や架橋反応によるゲル化をさらに効果的に抑制することができる。また、成形体とした時に劣化耐久性に優れたものとなり、成形体の着色や脆化を抑制できる傾向にある。
Mg含有量は、単位触媒あたりのポリエチレンの生産性を高くすることにより上記数値範囲に制御することができる。
単位触媒あたりのポリエチレンの生産性は、ポリエチレンを製造する際の反応器の重合温度、重合圧力、スラリー濃度を調整することにより制御できる。すなわち、本実施形態のポリエチレンパウダーを構成するポリエチレンの単位触媒あたりのポリエチレンの生産性を高くするには、重合温度を高くする、重合圧力を高くする、及び/又はスラリー濃度を高くすることが挙げられる。
使用する触媒としては、特に限定されず、一般的なチーグラー・ナッタ触媒やメタロセン触媒等が好ましいものとして挙げられる。
単位触媒あたりのポリエチレンの生産性を高くする方法としては、さらに、主触媒と助触媒を同一ラインから交互に導入して局所的な急重合を抑制すること、重合反応の冷却はジャケット冷却と気化した溶媒等を冷却するコンデンサーを併用し、気化した溶媒に同伴された異常反応したポリエチレンパウダーが重合反応器に再投入されないようにすること、ポリエチレンパウダーと溶媒を分離する前のバッファータンクに、エタノールを溶剤量の10質量%になるように導入して金属成分やオリゴマー成分を可能な限り除去すること、遠心分離法によってポリエチレンパウダーと溶媒を分離し、乾燥前のポリエチレンパウダーに含まれる溶媒量をポリエチレンパウダーの質量に対して70質量%以下にすること等の方法が挙げられる。なお、ポリエチレンパウダーのMg含有量は、後述する実施例に記載の方法により測定することができる。
(Ti含有量)
本実施形態のポリエチレンパウダーのTi含有量は、好ましくは3.0ppm未満であり、より好ましくは2.5ppm未満であり、さらに好ましくは2.0ppm未満である。
Ti含有量が3.0ppm未満であることにより、ポリエチレンの酸化劣化を効果的に抑制でき、分子量低下や架橋反応によるゲル化をさらに効果的に抑制できる。また、成形体とした時に劣化耐久性に優れたものとなり、成形体の着色や脆化を抑制できる傾向にある。
Ti含有量を3.0ppm未満とする方法としては、上述したMg含有量の制御方法と同様の方法を適用できる。
(Al含有量)
本実施形態のポリエチレンパウダーのAl含有量は、好ましくは8.0ppm未満であり、より好ましくは7.0ppm未満であり、さらに好ましくは6.0ppm未満である。
Al含有量が8.0ppm未満であることにより、ポリエチレンの酸化劣化を効果的に抑制でき、分子量低下や架橋反応によるゲル化をさらに効果的に抑制できる。また、成形体とした時に劣化耐久性に優れたものとなり、成形体の着色や脆化を抑制できる傾向にある。
Al含有量を8.0ppm未満とする方法としては、上述したMg含有量の制御方法と同様の方法を適用できる。
(α-オレフィンの含有量)
本実施形態のポリエチレンパウダーのα-オレフィンの含有量は、エチレン共重合体を100mоl%としたとき、好ましくは0.10mоl%未満であり、より好ましくは0.08mоl%以下であり、さらに好ましくは0.06mоl%以下である。
α-オレフィンの含有量を0.10mоl%未満にすることにより、劣化し易い3級炭素の生成を低減することができ、オリゴマーの生成も抑制される傾向にある。また、触媒活性の高い重合反応になる傾向があり、触媒残渣の金属成分量を抑制し易い傾向にある。
ポリエチレンパウダーにおけるα-オレフィンの含有量は、赤外分析法、NMR法により測定することができる。
本実施形態のポリエチレンパウダーにおけるα-オレフィンの含有量は、重合反応器内に添加する、エチレンに対するα-オレフィンの添加量を調整することにより、上記数値範囲に制御することができる。
(酸化重量最大増加率)
200℃、空気下で加熱した時の、本実施形態のポリエチレンパウダーの酸化重量最大増加率は、好ましくは2.0%未満であり、より好ましくは1.9%未満であり、さらに好ましくは1.8%未満である。
200℃、空気下で加熱した時のポリエチレンパウダーの酸化重量最大増加率が2.0%未満であることにより、初期のポリエチレンの酸化が抑制され、その後の連鎖反応的な分解が起こり難くなる傾向にある。また、ポリエチレンパウダーの保存安定性が向上する傾向にある。
ポリエチレンは、空気下で加熱した際に、劣化の開始反応となる酸化による重量増加が起こる。この重量増加率が小さいほど、その後の分子鎖の切断による分子量の低下や架橋反応によるゲル化を抑制することができる傾向にある。また、ポリエチレンパウダーを夏季に長時間保管した場合、保管時に微劣化するが、初期の酸化反応が起こり難いポリエチレンパウダーは、保存安定性も向上する傾向にあるため、酸化重量最大増加率は小さいほど好ましい。
200℃、空気下で加熱した時のポリエチレンパウダーの酸化重量最大増加率を2.0%未満に制御する方法としては、エチレンガス、溶媒、触媒等を連続的に重合系内に供給し、生成したポリエチレンパウダーと共に未反応のエチレンガス、及び溶媒を連続的に排出する、系内が均一な連続式重合を行うこと、主触媒と助触媒を同一ラインから交互に導入して局所的な急重合を抑制すること、高活性な重合反応として触媒残渣の金属成分量を抑制すること、重合反応の冷却はジャケット冷却と気化した溶媒等を冷却するコンデンサーを併用し、気化した溶媒に同伴された異常反応したポリエチレンパウダーが重合反応器に再投入されないようにすること、ポリエチレンパウダーと溶媒を分離する前のバッファータンクに、エタノールを溶剤量の10質量%になるように導入して金属成分やオリゴマー成分を可能な限り除去すること、重合後のポリエチレンパウダーに対し、水とイソプロピルアルコール(70/30質量%)のスチームを噴霧して、100℃以上110℃以下で窒素ガスをブローしながら、揮発した溶剤や触媒から生成する塩酸ガスを完全除去すること、等の方法が挙げられる。
(粒子径106μm以上212μm未満の合計質量割合)
本実施形態のポリエチレンパウダーは、粒子径106μm以上212μm未満の好ましい合計質量割合が、50質量%以上75質量%未満であり、より好ましくは52質量%以上73質量%未満であり、さらに好ましくは54質量%以上71質量%未満である。
粒子径106μm以上212μm未満の合計質量割合が、50質量%以上であることにより、微粉、粗粉が少ないため、パウダー流動性に優れたものとなる。また、流動パラフィン等の溶剤とポリエチレンパウダーを混錬する際には、微粉による塊の生成や、溶解し難い粗粉による溶け残りの発生を抑制することができる。
一方、粒子径106μm以上212μm未満の合計質量割合が、75質量%未満であることにより、プレスやラム押出機を用いた圧縮成形の際に、金型に最密充填し易く、成形体に成形歪が残存し難くなる傾向にある。
本実施形態のポリエチレンパウダーにおいて、粒子径106μm以上212μm未満の合計質量割合を50質量%以上75質量%未満に制御する方法としては、ポリエチレンの重合に使用する触媒として、粒子径の分布が小さい触媒を使用する方法が挙げられる。また、ポリエチレンを重合する際の条件を調整することにより、ポリエチレンパウダーの前記粒子径における質量割合を制御することが可能である。例えば、重合圧力を下げたり、反応器の滞留時間を短くしたりすることにより粒子径106μm以上212μm未満の合計質量割合を制御することができる。
粒子径106μm以上212μm未満の合計質量割合は、目開きが300μm、212μm、150μm、106μm、75μm、53μmのふるいにかけて分級した際に、106μmと150μmのふるい上のパウダー合計質量を、全体のパウダー質量で除することにより算出できる。
(平均粒子径)
また、本実施形態のポリエチレンパウダーの好ましい平均粒子径は、加工性と取り扱い性の観点から、500μm以下であり、より好ましくは400μm以下であり、さらに好ましくは300μm以下である。上記で得られる各ふるいに残ったポリエチレンパウダーの質量を目開きの小さい側から積分した積分曲線において、50%質量となる粒子径が平均粒子径である。
(固め嵩密度)
本実施形態のポリエチレンパウダーは、固め嵩密度が、0.50g/cm3以上0.65g/cm3未満であることが好ましく、より好ましくは0.52g/cm3以上0.63g/cm3未満であり、さらに好ましくは0.54g/cm3以上0.61g/cm3未満である。
固め嵩密度が0.50g/cm3以上であることにより、ポリエチレンパウダーの凝集体や異形状のポリエチレンパウダーが少なく、球形状に近いため、パウダー流動性に優れ、プレスやラム押出機を用いた圧縮成形の際に、金型に最密充填し易く、成形体に成形歪が残存し難くなる。
一方、固め嵩密度が0.65g/cm3未満であることにより、パウダー溶解性に優れ、より低温、短時間で加工することが可能になり、より一層、高純度なポリエチレンパウダーが得られる傾向にある。
本実施形態のポリエチレンパウダーの固め嵩密度を0.50g/cm3以上0.65g/cm3未満に制御する方法としては、一般的なチーグラー・ナッタ触媒やメタロセン触媒を使用して合成する方法が挙げられるが、特に、後述する触媒を使用して合成する方法が好ましい。
また、ポリエチレンパウダーを製造する際に発生する急重合反応による発熱量を抑制することにより、本実施形態のポリエチレンパウダーの固め嵩密度を上記範囲に制御することもできる。
具体的な方法としては、エチレンガス、溶媒、触媒等を連続的に重合系内に供給し、生成したポリエチレンパウダーと共に未反応のエチレンガス、及び溶媒を連続的に排出する、系内が均一な連続式重合を行うこと、主触媒と助触媒を同一ラインから交互に導入して局所的な急重合を抑制すること、重合反応の冷却はジャケット冷却と気化した溶媒等を冷却するコンデンサーを併用し、気化した溶媒に同伴された異常反応したポリエチレンパウダーが重合反応器に再投入されないようにすること、等の方法が挙げられる。
(固め嵩密度/ゆるめ嵩密度)
本実施形態のポリエチレンパウダーは、固め嵩密度をゆるめ嵩密度で除した値(固め嵩密度/ゆるめ嵩密度)が、好ましくは1.05以上1.30未満であり、より好ましくは1.07以上1.27以下であり、さらに好ましくは1.09以上1.24以下である。
固め嵩密度をゆるめ嵩密度で除した値が1.05以上1.30未満の範囲内であることにより、ポリエチレンパウダーが流動性に優れ、圧縮成形加工時にボイドの発生を一層抑制することができ、成形体の機械的物性を一層高めることができる。
ゆるめ嵩密度は、所定容積の容器内に粉末を疎充填した(タップしない)状態で測定する密度である。
固め嵩密度は、粉末を充填した所定容積の容器を一定高さから一定速度で繰り返し落下させ(タップ)、容器内の粉末の嵩密度がほぼ一定となるまで密に充填した状態で測定する密度である。固め嵩密度、ゆるめ嵩密度は、具体的には、後述の実施例に記載する方法によって測定することができる。
固め嵩密度をゆるめ嵩密度で除した値が上記範囲内のポリエチレンパウダーは、粒度分布、粒子形状等を制御することによって、得ることができる。
(Ca含有量)
本実施形態のポリエチレンパウダーは、Ca含有量が、好ましくは10.0ppm未満であり、より好ましくは8.0ppm未満であり、さらに好ましくは6.0ppm未満である。
Ca含有量が10.0ppm未満であることにより、Caの溶出が少ない、より高純度なポリエチレンパウダーとなり、不純物の溶出を嫌う容器等に好適に使用できる。
本実施形態のポリエチレンパウダーのCa含有量を10.0ppm未満に制御する方法としては、Caを含まない触媒を使用する方法、ステアリン酸カルシウム等の中和剤や、Caを含む添加剤を配合しない方法等が挙げられる。
なお、ポリエチレンパウダーのCa含有量は、後述する実施例に記載の方法により測定することができる。
〔ポリエチレンパウダーの製造方法〕
本実施形態のポリエチレンパウダーは、従来公知の重合法により製造することができる。
重合法としては、以下に限定されないが、例えば、スラリー重合法、気相重合法、溶液重合法により、エチレン、又はエチレンを含む単量体を(共)重合させる方法が挙げられる。特に、重合熱を効率的に除熱できるスラリー重合法が好ましい。スラリー重合法においては、媒体として不活性炭化水素媒体を用いることができる。
前記不活性炭化水素媒体としては、特に限定されないが、例えば、プロパン、ブタン、イソブタン、ペンタン、イソペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、灯油等の脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン等の脂環式炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;エチルクロライド、クロルベンゼン、ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素;及び、これらの混合物等が挙げられる。
ポリエチレンパウダーの重合工程においては、炭素数が6以上10以下の不活性炭化水素媒体を用いることが好ましい。炭素数が6以上であれば、エチレン重合時の副反応や、ポリエチレンの劣化によって生じる低分子量成分が、比較的溶解しやすく、ポリエチレンと重合媒体とを分離する工程で除去を容易にできる。一方、炭素数が10以下であれば、反応槽へのポリエチレンパウダーの付着等が抑制されて、工業的に安定的な運転を行うことができる傾向にある。
本実施形態のポリエチレンパウダーの製造工程における重合温度は、30℃以上100℃以下が好ましく、35℃以上95℃以下がより好ましく、40℃以上90℃以下がさらに好ましい。重合温度が30℃以上であれば、触媒の活性が高くなる傾向にあり、ポリエチレン中に残存する触媒残渣である金属成分を少なくでき、さらには、工業的に効率的な製造が行うことができる傾向にある。一方、重合温度が100℃以下であれば、反応槽への付着物を抑制でき、また、気化した溶媒に同伴された異常反応したポリエチレンパウダーの生成を抑制することができ、安定的な運転が行うことができる傾向にある。
ポリエチレンパウダーの製造工程における重合圧力は、常圧以上2.0MPa以下が好ましく、より好ましくは0.1MPa以上1.5MPa以下、さらに好ましくは0.1MPa以上1.0MPa以下である。
重合反応は、回分式、半連続式、連続式のいずれの方法でも行うことができ、特に、連続式で重合することが好ましい。エチレンガス、溶媒、触媒等を連続的に重合系内に供給し、生成したポリエチレンパウダーと共にエチレンガス、溶媒、触媒等を連続的に排出することで、急激なエチレンの反応による部分的な高温状態を抑制することが可能となり、触媒の失活や副反応を抑制でき、重合系内がより安定化する傾向にある。
また、重合を反応条件の異なる2段以上に分けて行うことも可能である。
本実施形態のポリエチレンパウダーの製造工程においては、触媒成分を使用してポリエチレンを生成する。触媒成分としては、以下に限定されるものではないが、例えば、チーグラー・ナッタ触媒、メタロセン触媒、フィリップス触媒等が好適に挙げられる。
チーグラー・ナッタ触媒としては、例えば、特許第5767202号明細書に記載のものを好適に使用することができ、メタロセン触媒としては、以下に限定されないが、例えば、特開2006-273977号公報、及び、特許4868853号に記載のものを好適に使用することができる。また、本実施形態のポリエチレンパウダーの製造工程に使用される触媒成分には、トリイソブチルアルミニウム、Tebbe試薬等の助触媒が含まれていてもよい。
上述した触媒の平均粒子径は、好ましくは0.1μm以上20μm以下、より好ましくは0.2μm以上16μm以下、さらに好ましくは0.5μm以上12μm以下である。触媒の平均粒子径が0.1μm以上であれば、得られるポリエチレンパウダーの飛散や付着といった問題を防止できる傾向にある。また、触媒の平均粒子径が20μm以下であると、ポリエチレンパウダーが大きくなりすぎて重合系内で沈降したり、ポリエチレンパウダーの後処理工程でのラインの閉塞を招来したりする等の問題を防止できる傾向にある。触媒の粒径分布は狭い方が好ましく、篩や遠心分離、サイクロンによって、微粉と粗粉を除去することもできる。
本実施形態のポリエチレンパウダーの製造工程において、主触媒と助触媒の導入は、同じ導入ラインを使用して重合反応器の底部から交互に添加することが好ましい。添加方法としては、限定されるものではないが、主触媒である固体触媒成分を1分間連続添加した後、1分間停止し、次にトリイソブチルアルミニウム等の助触媒を1分間連続添加して1分間停止する操作を繰り返すことが好ましい。触媒反応は、主触媒と助触媒が接触することで反応を開始するが、同じ導入ラインから交互に添加することで、添加直後の高濃度の主触媒と助触媒の接触を低減させ、急反応を起こすことなく、ポリエチレンを生成することが可能となるため、耐酸化劣化性に優れた本実施形態のポリエチレンを生成する方法としては、最も好ましい。
本実施形態のポリエチレンパウダーの製造工程において、エチレンガスは重合反応器の底部から導入することが好ましい。さらに、例えば、西独国特許出願公開第3127133号明細書に記載されているように、得られるポリエチレンパウダーの極限粘度は、重合系に水素を存在させるか、又は重合温度を変化させることによって制御することができる。また、重合系内に連鎖移動剤として水素を添加することにより、極限粘度を適切な範囲で制御することができる。重合系内に水素を添加する場合、水素のモル分率は、0mol%以上30mol%以下であることが好ましく、0mol%以上25mol%以下であることがより好ましく、0mol%以上20mol%以下であることがさらに好ましい。
なお、本実施形態では、上記のような各成分以外にもポリエチレンの製造に有用な他の公知の成分を含むことができる。
本実施形態のポリエチレンパウダーの製造工程において、使用した触媒系の失活は、特に限定されないが、ポリエチレンパウダーと溶媒とを分離する延伸分離の前のバッファータンクで実施することが好ましい。触媒系を失活させる薬剤としては、以下に限定されないが、例えば、酸素、水、アルコール類、グリコール類、フェノール類、一酸化炭素、二酸化炭素、エーテル類、カルボニル化合物、アルキン類等が挙げられる。
触媒系の失活は、バッファータンクに、アルコール類を溶剤量の5質量%~20質量%になるように導入して実施することが好ましい。炭素数が6以上10以下の不活性炭化水素媒体に、アルコール類を所定量添加して攪拌することによって、触媒残渣である金属成分や、副反応により生成したオリゴマー成分等を効率よく抽出することができる。
本実施形態のポリエチレンパウダーの製造工程においては、重合反応後、溶媒とポリエチレンパウダーの分離を行う。
溶媒分離方法としては、例えば、デカンテーション法、遠心分離法、フィルター濾過法等が挙げられ、ポリエチレンパウダーと溶媒との分離効率が高い観点から、遠心分離法が好ましい。
溶媒分離後にポリエチレンパウダーに含まれる溶媒の量は、特に限定されないが、ポリエチレンパウダーの全質量に対して、好ましくは70質量%以下、より好ましくは60質量%以下、さらに好ましくは50質量%以下である。ポリエチレンパウダーに含まれる溶媒を70質量%以下とすることにより、溶媒中に含まれる金属成分やオリゴマー成分等がポリエチレンパウダー中に残存しにくい傾向にある。
本実施形態のポリエチレンパウダーの製造工程においては、溶媒を分離した後、乾燥処理を行うことが好ましい。
乾燥温度は、好ましくは80℃以上150℃以下、より好ましくは90℃以上140℃以下が、さらに好ましくは100℃以上130℃以下である。
乾燥温度が80℃以上であれば、効率的な乾燥が可能である。一方、乾燥温度が150℃以下であれば、ポリエチレンパウダーの熱劣化を抑制した状態で乾燥することが可能である。また、この乾燥工程で、重合後のポリエチレンパウダーに対し、水とアルコール類の混合液(20/80質量%~80/20質量%)を噴霧して、不活性ガスを10m3/時間以上の流量でブローさせ、揮発した溶剤を除去しながら乾燥することが好ましい。より揮発性の高いアルコール類を含む水溶液を噴霧して、揮発物を効率よく除去しながら乾燥することで、副反応により生成する低分子量成分や、触媒の失活により生成する塩酸等を低減することができるため好ましい。
(添加剤)
本実施形態のポリエチレンパウダーは、上記のような各成分以外にもポリエチレンパウダーの製造に有用な他の公知の成分を含むことができる。
本実施形態のポリエチレンパウダーは、例えば、さらに、中和剤等の添加剤を含有してもよい。
中和剤は、ポリエチレンパウダー中に含まれる塩素のキャッチャー、又は成形加工助剤等として使用される。中和剤としては、特に限定されないが、例えば、カルシウム、マグネシウム、バリウム等のアルカリ土類金属のステアリン酸塩が挙げられる。中和剤の含有量は、特に限定されないが、ポリエチレンパウダー全量に対し、好ましくは1,000ppm以下、より好ましくは600ppm以下、さらに好ましくは200ppm以下であり、本実施形態のポリエチレンパウダーにおいては、ポリエチレンパウダー、及びポリエチレンパウダーからなる成形体を使用する際に、添加剤が溶出してくる可能性があるため使用しないことが好ましい。
本実施形態のポリエチレン中に含まれる添加剤の含有量は、ポリエチレンパウダー中の添加剤を、テトラヒドロフラン(THF)を用いてソックスレー抽出により6時間抽出し、抽出液を液体クロマトグラフィーにより分離、定量することにより求めることができる。
本実施形態のポリエチレンパウダーには、極限粘度や分子量分布等が異なるポリエチレンをブレンドすることもでき、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等の他の樹脂をブレンドすることもできる。
〔成形体〕
本実施形態のポリエチレンパウダーは、種々の加工方法により、種々の用途に応用できる。
本実施形態の成形体は、本実施形態のポリエチレンパウダーを成形することにより製造することができ、当該成形体は、高純度で耐熱性にも優れることから、微多孔膜、繊維、シート状及びブロック状の成形体として好適に用いることができる。
このような成形体としては、例えば、二次電池用セパレータ、特に、リチウムイオン二次電池セパレータ、鉛蓄電池セパレータ、高強度繊維等が挙げられる。
また、超高分子量ポリエチレンの特性である耐摩耗性、高摺動性、高強度、高衝撃性に優れた特徴を活かし、押出し成形やプレス成形や切削加工等の、ソリッドでの成形により、ギアやロール、カーテンレール、パチンコ球のレール、穀物等の貯蔵サイロの内張りシート、ゴム製品等の摺動付与コーティング、スキー板材及びスキーソール、トラックやシャベルカー等の重機のライニング材等に使用することができる。
また、本実施形態のポリエチレンパウダーを焼結して得られる成形体は、例えば、フィルター、粉塵トラップ材、吸引搬送シート等に使用できる。
さらに、高純度な薬品や超純水等(以下、被接触物ともいう)を保管する容器や、濾過するフィルター等のクリーン性が求められる用途に好適に使用することができる。
以下、具体的な実施例及び比較例を挙げて本実施形態について詳細に説明するが、本実施形態は、以下の実施例及び比較例により何ら限定されるものではない。
各種物性及び特性の測定方法を下記に示す。
〔各種物性及び特性の測定方法、評価方法〕
((1)極限粘度[η]の測定)
20mLのデカヒドロナフタレン(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノールを1g/L含む)に、ポリエチレンパウダー10mgを入れ、150℃、2時間攪拌してポリマーを溶解させた。その溶液を135℃の恒温糟で、キャノン-フェンスケ粘度計を用いて、標線間の落下時間(ts)を測定した。同様に、ポリエチレンパウダーの質量を変えて3点の溶液を作製し、落下時間を測定した。
ブランクとしてポリエチレンパウダーを入れていない、デカヒドロナフタレンのみの落下時間(tb)を測定した。以下の式に従って求めたポリマーの還元粘度(ηsp/C)をそれぞれプロットして濃度(C)(単位:g/dL)とポリマーの還元粘度(ηsp/C)の直線式を導き、濃度0に外挿した極限粘度[η]を求めた。
(ηsp/C) = (ts/tb-1)/C
((2)酸化誘導時間測定における酸素切替後60分後の熱流)
酸化誘導時間測定における酸素切替後60分後の熱流は、ISO11357-6(2018)に準拠した酸化誘導時間試験にて測定を行った。
示差走査熱量計(島津製作所製、商品名:DSC-60Plus)を用いて測定した。
まず、DSC測定用アルミパンに、リファレンスとして酸化アルミニウムを5mg入れた。これをDSC-60Plusの炉の左側にセットし、炉の右側にはポリエチレンパウダーを5mg(精秤)入れたアルミパンをセットした。炉内に窒素ガスを25mL/分で流しながら40℃から昇温速度25℃/分で150℃に昇温し、そのままの状態で5分間静置した後、窒素を酸素に切替え、測定を開始した。
測定時のサンプリング間隔は0.5秒に設定した。
60分後の熱流を、窒素を酸素に切替えた時の熱流で減じた値を、酸化誘導時間測定における60分後の熱流とした。
((3)Mg、Ti、Al、Ca含有量)
ポリエチレンパウダーをマイクロウェーブ分解装置(型式ETHOS TC、マイルストーンゼネラル社製)を用い加圧分解し、内部標準法にて、ICP-MS(誘導結合プラズマ質量分析装置、型式Xシリーズ X7、サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)にて、ポリエチレンパウダー中の金属含有量として、マグネシウム、チタン、アルミニウム、カルシウムの元素濃度を測定した。
((4)α-オレフィン含有量)
ポリエチレンパウダー中のα-オレフィン含有量の測定は、G.J.RayらのMacromolecules, 10, 773 (1977)に開示された方法に準じて行い、13C-NMRスペクトルにより観測されるメチレン炭素のシグナルを用いて、その面積強度より算出した。
測定装置 :日本電子製ECS-500
観測核 :13
観測周波数 :100.53MHz
パルス幅 :45°(7.5μsec)
パルスプログラム:single pulse dec
PD :5sec
測定温度 :130℃
積算回数 :30,000回以上
基準 :PE(-eee-)シグナルであり29.9ppm
溶媒 :オルトジクロロベンゼン-d4
試料濃度 :5~10wt%
溶解温度 :130~140℃
((5)酸化重量最大増加率)
熱重量測定装置(Perkin Elmer社製、商品名「Pyris1 TGA」)を用いて、試料重量:5mg、酸素流量:10mL/分、昇温速度:30℃/分にて室温から、200℃まで昇温し、その温度にて1時間保持して重量増加率を測定した。測定開始から約30分以内に酸化によりポリエチレンパウダーの重量が最も増加し、その後重量が減少していくことを確認した。最も重量が増加した割合を酸化重量最大増加率とした。
((6)粒子径106μm以上212μm未満の合計質量割合、平均粒子径)
粒子径106μm以上212μm未満の合計質量割合を、以下のようにして測定した。
200mLのポリカップにポリエチレンパウダー100gを量り取り、カーボンブラック1gを加えて薬さじで十分に撹拌した。撹拌したポリエチレンパウダーを、JIS Z 8801規格に準拠した目開きが300μm、212μm、150μm、106μm、75μm、53μmのふるいにかけて分級した。106μmと150μmのふるい上のパウダー合計質量を、全体のパウダー質量で除した割合を粒子径106μm以上212μm未満の合計質量割合(質量%)とした。
また、このとき得られる各ふるいに残ったポリエチレンパウダーの質量を目開きの小さい側から積分した積分曲線において、50質量%となる粒子径を平均粒子径とした。
((7)固め嵩密度/ゆるめ嵩密度)
パウダーテスターPT-X型(ホソカワミクロン製)を用いて、固め嵩密度とゆるめ嵩密度の測定を行った。
ステンレス製100cm3円筒容器に、ポリエチレンパウダーが容器に山盛りになるまでサンプル供給装置を振動させてポリエチレンパウダーを流下し、ブレードを用いて容器上の余分なポリエチレンパウダーを擦切って測定した密度を、ゆるめ嵩密度(g/cm3)とした。
また、ステンレス製100cm3円筒容器にキャップをかぶせ、サンプル供給装置を振動させてポリエチレンパウダーを流下し、ストローク長(タッピング高さ)18mm、タッピング速度60回/分、タッピング回数180回、でタッピングを行った。その後、ブレードを用いて容器上の余分なポリエチレンパウダーを擦切って測定した密度を、固め嵩密度(g/cm3)とした。
上述のように測定された、固め嵩密度の測定値をゆるめ嵩密度の測定値で除して、固め嵩密度/ゆるめ嵩密度の値を求めた。
((8)成形体の白色度)
成形体を、ISO11542-2に準拠して、220℃、5MPaで5分間予熱した後、220℃、10MPaで45分間加熱圧縮して作製した。その後、100℃で24時間アニールを行った。
成形体の白色度を、色彩色差計CR-20(コニカミノルタ製)を用いて、測定規格CIE/ASTM E 313-96に則って測定し、評価した。
評価基準は以下のとおりである。
〇 ・・・ 成形体の白色度が95以上。
△ ・・・ 成形体の白色度が90以上95未満。
× ・・・ 成形体の白色度が90未満。
実施例のポリエチレンパウダーの白色度が高く、長時間加熱圧縮しても耐酸化劣化性に優れ、変色することなく、白色度に優れる結果となった。
((9)混練時の分子量低下率)
ポリエチレンパウダーと流動パラフィンとの合計を100質量部としたときに、30質量部のポリエチレンパウダーと70質量部の流動パラフィンとを配合してスラリー状液体を調製した。
得られたスラリー状液体を、二軸押出機へフィーダーを介して投入し、230℃で30分間混練し、ポリエチレンゲルを得た。得られたポリエチレンゲルは、押出機先端に設置したTダイから押出した後、ただちに25℃に冷却したキャストロールで冷却固化させゲル状シートを成形した。このゲル状シートを120℃で同時二軸延伸機を用いて7×7倍に延伸し、延伸フィルムを得た。その後、この延伸フィルムをヘキサンに浸漬し、流動パラフィンを完全に抽出除去した後、50℃で12時間真空乾燥した。
分子量低下率を、下記式による、原料のポリエチレンパウダーの極限粘度を延伸フィルムの極限粘度で減じた値を、原料のポリエチレンパウダーの極限粘度で除した値に100を乗じて算出した。
[〔(ポリエチレンパウダーの極限粘度)-(延伸フィルムの極限粘度)〕/(ポリエチレンパウダーの極限粘度)]×100(%)
分子量低下率について、下記の基準により評価した。
評価基準は以下のとおりである。
〇 ・・・ 分子量低下率が90%以上。
△ ・・・ 分子量低下率が85%以上90%未満。
× ・・・ 分子量低下率が85%未満。
((10)クリーン度)
1Lの丸型ガラス容器に超純水(トレピュアLV-10T(東レ(株)製)(登録商標)を用いて精製)500mLを入れ、蓋をして30秒間振とう洗浄して排水した。この振とう洗浄を5回繰り返した。
この容器にあらためて500mLの超純水を充填し、その中にISO11542-2に準拠して作製した幅2cm、長さ15cm、厚さ4mmの成形体を導入して、蓋をして30秒間振とう洗浄して排水した。この振とう洗浄を5回繰り返した。
次に、成形体入りの1Lの丸型ガラス容器に超純水500mLを入れ、70℃で4週間振とうした。4週間後、この充填水から5mLを採取し、その中に浸出した0.1μm以上の微粒子の数をパーティクルカウンター(KL-22(リオン株式会社製))により測定した。
水中に含まれる微粒子数を下記で求め、これをクリーン度とした。
計算式及び評価基準を下記に示す。
クリーン度:水中の微粒子数(個/mL)={(カウント数(個))×(超純水の量100(mL))}/{サンプリング量5(mL)×容器容量200(mL)}
〇 ・・・ 40個/mL未満。
△ ・・・ 40個/mL以上70個未満。
× ・・・ 70個/mL以上。
〔(製造例)触媒の合成〕
(固体触媒成分[A]の調製)
充分に窒素置換された8Lステンレス製オートクレーブにヘキサン1,600mLを添加した。10℃で攪拌しながら1mol/Lの四塩化チタンヘキサン溶液800mLと1mol/Lの組成式AlMg5(C4911(OSiH)2で表される有機マグネシウム化合物のヘキサン溶液800mLとを4時間かけて同時に添加した。添加後、ゆっくりと昇温し、10℃で1時間反応を継続させた。
反応終了後、上澄み液を1600mL除去し、ヘキサン1,600mLで5回洗浄することにより、固体触媒成分[A]を調製した。
この固体触媒成分[A]1g中に含まれるチタン量は3.05mmolであった。
(固体触媒成分[B]の調製)
<(1)原料(b-1)の合成>
充分に窒素置換された8Lステンレス製オートクレーブに1mol/LのMg6(C4912Al(C253のヘキサン溶液2,000mL(マグネシウムとアルミニウムで2000mmol相当)を仕込み、50℃で攪拌しながら、5.47mol/Lのn-ブタノールヘキサン溶液146mLを3時間かけて滴下し、終了後ラインを300mLのヘキサンで洗浄した。さらに、50℃で2時間かけて攪拌を継続した。反応終了後、常温まで冷却したものを原料(b-1)とした。原料(b-1)はマグネシウムの濃度で0.704mol/Lであった。
<(2)原料(b-2)の合成>
充分に窒素置換された8Lステンレス製オートクレーブに1mol/LのMg6(C4912Al(C253のヘキサン溶液2,000mL(マグネシウムとアルミニウムで2000mmol相当)を仕込み、80℃で攪拌しながら、8.33mol/Lのメチルハイドロジエンポリシロキサン(信越化学工業社製)のヘキサン溶液240mLを3時間かけて滴下し、終了後ラインは300mLのヘキサンで洗浄した。さらに80℃で2時間かけて攪拌を継続させた。反応終了後、常温まで冷却したものを原料(b-2)とした。原料(b-2)はマグネシウムとアルミニウムの合計濃度で0.786mol/Lであった。
<(3)(B-1)担体の合成>
充分に窒素置換された8Lステンレス製オートクレーブに1mol/Lのヒドロキシトリクロロシランのヘキサン溶液1,000mLを仕込み、65℃で原料(b-1)の有機マグネシウム化合物のヘキサン溶液1340mL(マグネシウム943mmol相当)を3時間かけて滴下し、さらに65℃で1時間攪拌しながら反応を継続させた。反応終了後、上澄み液を除去し、1,800mLのヘキサンで4回洗浄し、(B-1)担体を得た。この担体を分析した結果、固体1g当たりに含まれるマグネシウムは7.5ミリモルであった。
<(4)固体触媒成分[B]の調製>
前記(B-1)担体110gを含有するヘキサンスラリー1,970mLに、10℃で攪拌しながら、1mol/Lの四塩化チタンのヘキサン溶液103mLと原料(b-2)131mLを同時に3時間かけて添加した。
添加後、10℃で1時間反応を継続させた。反応終了後、上澄み液を除去し、ヘキサンで4回洗浄することにより、未反応原料成分を除去し、固体触媒成分[B]を調製した。
〔実施例1〕
(ポリエチレンの製造)
ヘキサン、エチレン、1-ブテン、水素、触媒を、攪拌装置が付いたベッセル型300L重合反応器に連続的に供給した。
ヘキサンは80L/Hrで重合反応器の底部より供給した。
エチレンガスは重合反応器の底部より供給して重合圧力を0.3MPaに保った。
1-ブテンはエチレンの気相濃度に対して0.25mol%、水素はエチレンと1-ブテンの気相濃度に対して11.2mol%になるように重合反応器上部の気層部分に供給した。
触媒として、固体触媒成分[A]と、助触媒であるトリイソブチルアルミニウムとを使用した。固体触媒成分[A]は0.2g/Hrになる速度で、トリイソブチルアルミニウムは10mmol/Hrになる速度で、同じ導入ラインを使用して重合反応器の底部から交互に添加した。添加方法としては、固体触媒成分[A]を1分間連続添加した後、1分間停止し、次にトリイソブチルアルミニウムを1分間連続添加して1分間停止する操作を繰り返した。
重合温度はジャケット冷却と気化した溶媒等を冷却するコンデンサーを併用することにより78℃に保った。なお、コンデンサーで冷却された溶剤が重合反応器へ戻る配管には、目開き75μmのフィルターを設置して、溶剤に混入しているポリエチレンパウダーが重合反応器へ再投入されないようにした。
触媒活性は12,000g-PE/g-固体触媒成分[A]で、スラリー濃度は27%であった。
得られた重合スラリーは、重合反応器のレベルが一定に保たれるように連続的に攪拌装置が付いたフラッシュタンクに抜き、未反応のエチレン及び水素を分離した。
次に、重合スラリーは、フラッシュタンクのレベルが一定に保たれるように連続的に攪拌装置が付いたバッファータンクに抜いた。バッファータンクには、エタノールを溶剤量の10質量%になるように導入して、1.5時間攪拌した。
続いて、バッファータンクのレベルが一定に保たれるように連続的に遠心分離機に送り、ポリエチレンとそれ以外の溶媒等を分離し、ポリエチレンパウダーを得た。その時のポリエチレンに対する溶媒等の含有量は55%であった。
分離されたポリエチレンパウダーは、105℃で、2時間乾燥した。なお、この乾燥工程は、重合後のポリエチレンパウダーに対し、水とイソプロピルアルコール(70/30質量%)のスチームを噴霧して、窒素ガスを15m3/時間の流量でブローさせ、揮発した溶剤を除去しながら実施した。得られたポリエチレンパウダーを目開き425μmの篩を用いて、篩を通過しなかったものを除去して、実施例1のポリエチレンパウダーを得た。得られたポリエチレンパウダーの物性を表1に示す。
〔実施例2〕
重合工程において、1-ブテンを導入せず、水素をエチレンの気相濃度に対して10.6mol%になるように導入して、固体触媒成分[A]の代わりに固体触媒成分[B]を使用した以外は、前記実施例1と同様の操作により、実施例2のポリエチレンパウダーを得た。なお、触媒活性は12,000g-PE/g-固体触媒成分[B]で、スラリー濃度は29%であった。
〔実施例3〕
重合工程において、重合温度76℃とし、1-ブテンを導入せず、水素はエチレンの気相濃度に対して0.18mol%になるように導入したこと以外は、実施例1と同様の操作により、実施例3のポリエチレンパウダーを得た。なお、触媒活性は16,000g-PE/g-固体触媒成分[A]で、スラリー濃度は28%であった。
〔実施例4〕
重合工程において、重合温度71℃、重合圧力を0.35MPaとし、水素をエチレンの気相濃度に対して0.20mol%になるように導入して、固体触媒成分[A]の代わりに固体触媒成分[B]を使用したこと以外は、実施例1と同様の操作により、実施例4のポリエチレンパウダーを得た。なお、触媒活性は20,000g-PE/g-固体触媒成分[B]で、スラリー濃度は25%であった。
〔実施例5〕
重合工程において、ステアリン酸カルシウムをポリエチレンパウダーに対して150ppm導入したこと以外は、実施例4と同様の操作により、実施例5のポリエチレンパウダーを得た。なお、触媒活性は20,000g-PE/g-固体触媒成分[B]で、スラリー濃度は25%であった。
〔実施例6〕
重合工程において、重合温度65℃、重合圧力を0.35MPaとし、1-ブテンをエチレンの気相濃度に対して0.35mol%とし、水素をエチレンと1-ブテンの気相濃度に対して0.01mol%になるように導入して、固体触媒成分[A]の代わりに固体触媒成分[B]を使用したこと、及び、バッファータンクにエタノールを導入しなかったこと以外は、実施例1と同様の操作により、実施例6のポリエチレンパウダーを得た。なお、触媒活性は10,000g-PE/g-固体触媒成分[B]で、スラリー濃度は25%であった。
〔実施例7〕
重合工程において、重合温度57℃、重合圧力を0.36MPaとし、1-ブテンと水素を導入せず、固体触媒成分[A]の代わりに固体触媒成分[B]を使用したこと以外は、実施例1と同様の操作により、実施例7のポリエチレンパウダーを得た。なお、触媒活性は8,000g-PE/g-固体触媒成分[B]で、スラリー濃度は20%であった。
〔比較例1〕
重合工程において、重合温度85℃、重合圧力を0.90MPaとし、1-ブテンをエチレンの気相濃度に対して3.7mol%とし、水素をエチレンと1-ブテンの気相濃度に対して24.2mol%になるように導入したこと以外は、実施例1と同様の操作により、比較例1のポリエチレンパウダーを得た。なお、触媒活性は50,000g-PE/g-固体触媒成分[A]で、スラリー濃度は27%であった。
〔比較例2〕
重合工程において、重合温度85℃、重合圧力を0.85MPaとし、1-ブテンを導入せず、水素をエチレンの気相濃度に対して33.2mol%になるように導入したこと以外は、比較例1と同様の操作により、比較例2のポリエチレンパウダーを得た。なお、触媒活性は51,000g-PE/g-固体触媒成分[A]で、スラリー濃度は26%であった。
〔比較例3〕
重合工程において、重合温度61℃、重合圧力を0.32MPaとし、1-ブテンをエチレンの気相濃度に対して6.5mol%とし、水素を導入せず、固体触媒成分[A]の代わりに固体触媒成分[B]を使用したこと以外は、実施例1と同様の操作により、比較例3のポリエチレンパウダーを得た。なお、触媒活性は10,000g-PE/g-固体触媒成分[B]で、スラリー濃度は25%であった。
〔比較例4〕
酸化防止剤としてペンタエリスチル-テトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]を150ppm添加した以外は、実施例1と同様の操作により、比較例4のポリエチレンパウダーを得た。
〔比較例5〕
重合工程において、重合温度45℃、重合圧力を0.28MPaとし、1-ブテンをエチレンの気相濃度に対して0.35mol%とし、水素をエチレンと1-ブテンの気相濃度に対して0.23mol%になるように導入し、固体触媒成分[A]の代わりに固体触媒成分[B]を使用し、固体触媒成分[B]は0.3g/Hrの速度で、トリイソブチルアルミニウムは15mmol/Hrの速度で導入し、バッファータンクに、エタノールを導入しなかったこと以外は、実施例1と同様の操作により、比較例5のポリエチレンパウダーを得た。なお、触媒活性は4,500g-PE/g-固体触媒成分[B]で、スラリー濃度は35%であった。
〔比較例6〕
重合工程において、固体触媒成分[B]と、助触媒であるトリイソブチルアルミニウムを別々の導入ラインから連続添加して、バッファータンクに、エタノールを導入しなかったこと以外は、実施例6と同様の操作により、比較例6のポリエチレンパウダーを得た。なお、触媒活性は10,000g-PE/g-固体触媒成分[B]で、スラリー濃度は25%であった。
〔比較例7〕
重合工程において、固体触媒成分[A]と、助触媒であるトリイソブチルアルミニウムを別々の導入ラインから連続添加して、コンデンサーを使用せずジャケット冷却のみで温度調整を行い、バッファータンクにエタノールを導入せず、水のみを噴霧して、窒素ガスを3m3/時間ブローした以外は、実施例3と同様の操作により、比較例7のポリエチレンパウダーを得た。なお、触媒活性は14,500g-PE/g-固体触媒成分[B]で、スラリー濃度は28%であった。
Figure 2022182443000001
Figure 2022182443000002
本発明のポリエチレンパウダーは、より厳しい条件での加工条件においても分子量の安定性に優れ、かつポリエチレンパウダーを含む成形体は、白色度及びクリーン性に優れた成形体となるため、高純度を求められる、各種フィルム、シート、微多孔膜、繊維、発泡体、パイプ等の材料として、高い産業上の利用可能性を有する。

Claims (10)

  1. 極限粘度が3.0dl/g以上30.0dl/g未満であり、
    ISO11357-6(2018)に準拠した酸化誘導時間測定(150℃、酸素下、試料質量5mg)において、酸素切替後60分後の熱流が0.03mW以上0.25mW未満である、
    ポリエチレンパウダー。
  2. Mgの含有量が、10.0ppm未満である、
    請求項1に記載のポリエチレンパウダー。
  3. Tiの含有量が、3.0ppm未満である、
    請求項1又は2に記載のポリエチレンパウダー。
  4. Alの含有量が、8.0ppm未満である、
    請求項1乃至3のいずれか一項に記載のポリエチレンパウダー。
  5. α-オレフィンの含有量が0.10mol%未満である、
    請求項1乃至4のいずれか一項に記載のポリエチレンパウダー。
  6. 200℃、空気下で1時間加熱した時の重量最大増加率が、2.0%未満である、
    請求項1乃至5のいずれか一項に記載のポリエチレンパウダー。
  7. 粒子径106μm以上212μm未満の粒子の合計質量割合が、50質量%以上75質量%未満である、
    請求項1乃至6のいずれか一項に記載のポリエチレンパウダー。
  8. 固め嵩密度が、0.50g/cm3以上0.65g/cm3未満であり、
    前記固め嵩密度をゆるめ嵩密度で除した値(固め嵩密度/ゆるめ嵩密度)が、1.05以上1.30未満である、
    請求項1乃至7のいずれか一項に記載のポリエチレンパウダー。
  9. Caの含有量が、10ppm未満である、
    請求項1乃至8のいずれか一項に記載のポリエチレンパウダー。
  10. 請求項1乃至9のいずれか一項に記載のポリエチレンパウダーの成形体。
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