JP6892737B2 - ポリエチレン系パウダー及びその製造方法 - Google Patents

ポリエチレン系パウダー及びその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、ポリエチレン系パウダー及びその製造方法に関する。
エチレン単独重合体、又はエチレン−α−オレフィン共重合体のパウダー(以下、まとめて「ポリエチレン系パウダー」ともいう。)は、フィルム、シート、微多孔膜、繊維、発泡体及びパイプ等多種多様な用途に用いられている。特に鉛蓄電池やリチウムイオン電池に代表される二次電池セパレータ用微多孔膜及び高強度繊維の原料として、ポリエチレン系パウダーが用いられている。
ポリエチレン系パウダーが、これらの用途に用いられている理由としては、延伸加工性に優れる、強度が高い、化学的安定性が高い、及び長期信頼性に優れること等が挙げられる。二次電池セパレータ用微多孔膜は、ポリエチレン系パウダーを、例えば押出機中において、溶剤に溶解した状態で、高温下で混練し、次いで、延伸した後に溶剤等を除去して製造される。
ポリエチレン系パウダーを溶剤に溶解して得られる二次電池セパレータ用微多孔膜は、成形運転安定性や生産性、膜の品質を向上させることが求められ、そのためポリエチレン系パウダーには溶融混練工程において未溶融のポリエチレン系パウダーが粒として残存しないような優れた溶解性が望まれている。
従来、ポリエチレン系パウダーの溶媒への溶解性を高める技術として、パウダーの形状や比表面積、細孔容積に着目して、例えば、特許文献1では、平均粒子径が1〜150μm、パウダー比表面積が0.7m2/g以上のポリエチレンを原料として用いることが開示されている。また、特許文献2では、パウダー比表面積が0.10m2/g以上0.30m2/g以下であり、水銀圧入法により求められる細孔容積が0.85mL/g以下であるポリエチレンを原料として用いることが開示されている。
特許第4799179号公報 特許第5774084号公報
しかし、近年では二次電池の高エネルギー密度化・高容量化・高出力化・安全性の確保を目指して開発が進められており、それに伴ってセパレータについても高強度、高透過性などの要求に加えて、孔閉塞特性と耐熱性向上要求が高まってきており、これらの特性向上の為には単一のポリエチレン系パウダーを原料として達成することは極めて困難である為、通常、異種のポリエチレン系パウダーをブレンドし、その種類や配合比を検討し特性向上を目指すことが一般的である。
その際、異種のポリエチレン系パウダーは分子量の差や密度の差などに起因して、溶媒への溶解性が異なる為、未溶融のポリエチレン系パウダーが膜中に粒として残存する可能性が高くなり、膜の均一性が低下する場合がある。
更に、二次電池セパレータ用微多孔膜の需要の成長は著しく、生産性を向上することがより強く望まれている。具体的には、押出機等を停止することなく、より低温で連続的に安定的かつ高速生産ができること、すなわち低温においても均一な微多孔膜の成形が望まれていることから、ポリエチレン系パウダーの混練工程でのさらなる優れた溶解性の向上が望まれている。
本発明は上述問題点に鑑みてなされたものであり、低温成形における溶媒への溶解性に優れ、異種のポリエチレン系パウダーをブレンドして低温成形した場合においても均一な微多孔膜を連続かつ安定的に成形することが可能なポリエチレン系パウダー及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上述従来技術の課題を解決するために鋭意研究を進めた結果、水銀圧入法により測定した細孔のメディアン径とモード径の比と密度が所定範囲であるポリエチレン系パウダーが、上述の課題を解決できることを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
〔1〕
エチレン単独重合体、又は、エチレンと炭素数が3以上6以下のα−オレフィンとの共重合体を含み、
水銀圧入法により測定した細孔のメディアン径とモード径の比が、0.80以上1.20以下であり、
密度が、920kg/m3以上960kg/m3以下である、
ポリエチレン系パウダー。
〔2〕
水銀圧入法により測定した細孔容積が、0.85mL/g以上1.40mL/g以下であり、
水銀圧入法により測定した細孔のモード径が、30μm以上45μm以下である、
前項〔1〕に記載のポリエチレン系パウダー。
〔3〕
篩式粒度分布測定により測定した平均粒径が50〜300μmであり、106μm未満のパウダーの割合が、20質量%以上50質量%以下である、
前項〔1〕又は〔2〕に記載のポリエチレン系パウダー。
〔4〕
嵩密度が、0.30g/cm3以上0.45g/cm3以下である、
前項〔1〕〜〔3〕のいずれか1項に記載のポリエチレン系パウダー。
〔5〕
粘度平均分子量(Mv)が、10000以上3000000以下である、
前項〔1〕〜〔4〕のいずれか1項に記載のポリエチレン系パウダー。
〔6〕
触媒を用いて、エチレンを単独重合、又は、エチレンと炭素数が3以上6以下のα−オレフィンとを共重合することにより、前項〔1〕〜〔5〕のいずれか1項に記載のポリエチレン系パウダーを得る重合工程を含み、
前記触媒が、平均粒子径が、1.0μm以上20μm以下であり、細孔容積が、1.0mL/g以上2.5mL/g以下であり、比表面積が、400m2/g以上800m2/g以下である、無機担体物質を触媒担体として有する、
ポリエチレン系パウダーの製造方法。
〔7〕
二次電池セパレータ用である、
前項〔1〕〜〔5〕のいずれか1項に記載のポリエチレン系パウダー。
〔8〕
リチウムイオン二次電池セパレータ用である、
前項〔1〕〜〔5〕のいずれか1項に記載のポリエチレン系パウダー。
〔9〕
鉛蓄電池セパレータ用である、
前項〔1〕〜〔5〕のいずれか1項に記載のポリエチレン系パウダー。
本発明によれば、低温成形における溶媒への溶解性に優れ、異種のポリエチレン系パウダーをブレンドして低温成形した場合においても、均一な微多孔膜を成形することが可能なポリエチレン系パウダー及びその製造方法を提供することができる。更に、驚くべきことに粉体流動性に優れ、異種のポリエチレン系パウダーをブレンドして成形する際に、成形機の上部ホッパーでの分級が起こることに起因する成形機内での組成の偏りを抑制できるため、均一な微多孔膜を連続かつ安定的に生産することができる。
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」ともいう。)について詳細に説明する。なお、本発明は、本実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
〔ポリエチレン系パウダー〕
本実施形態のポリエチレン系パウダーは、エチレン単独重合体、又は、エチレンと炭素数が3以上6以下のα−オレフィンとの共重合体を含み、水銀圧入法により測定した細孔のメディアン径とモード径の比が0.80以上1.20以下であり、密度が920kg/m3以上960kg/m3以下である。
上述構成を有することにより、ポリエチレン系パウダーは、低温成形における溶媒への溶解性に優れ、異種のポリエチレン系パウダーをブレンドして低温成形した場合においても、均一な微多孔膜を成形することが可能となる。更に、驚くべきことに粉体流動性に優れ、異種のポリエチレン系パウダーをブレンドして成形する際に、成形機の上部ホッパーでの分級が起こることに起因する成形機内での組成の偏りを抑制できるため、均一な微多孔膜を連続かつ安定的に生産することができる。また、このような特性を有するポリエチレンパウダーは、二次電池セパレータ、リチウムイオン二次電池用セパレータ、及び鉛蓄電池セパレータ用途により好適に用いることができる。
以下、上述の各要件について詳細に説明する。
ポリエチレン系パウダーは、エチレン単独重合体、又は、エチレンと炭素数が3以上6以下のα−オレフィン(以下、単に「コモノマー」ともいう。)との共重合体を含む。本実施形態で用いることができるコモノマーは、特に限定されないが、例えば下記式のα−オレフィンが挙げられる。
2C=CHR2
(式中、R2は、直鎖状又は分岐状である、炭素数1〜4のアルキル基を示す。)
具体的なコモノマーとしては、特に限定されないが、例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、及び4−メチル−1−ペンテンが挙げられる。この中では、経済性及び取扱いの容易さから、プロピレン、及び1−ブテンが好適である。また、炭素数が6以下のα−オレフィンを用いることにより、ポリマー鎖同士の絡み合いが少なく、溶媒への溶解性に優れる傾向にある。
ポリエチレン系パウダー中に占めるエチレンのモル%としては、密度を調整するという観点から、80%以上100%以下であることが好ましく、より好ましくは85%以上99%以下であり、さらに好ましくは90%以上98%以下である。
ポリエチレン系パウダーの水銀圧入法により求められる細孔のメディアン径とモード径の比は、0.80以上1.20以下であり、好ましくは0.85以上1.11以下であり、より好ましくは0.90以上1.06以下である。水銀圧入法により求められる細孔のメディアン径とモード径の比が0.80以上1.20以下であることにより、低温成形における溶媒への溶解性に優れる。メディアン径とモード径の比は、ポリエチレン系パウダーに存在する細孔径の均一性を表す指標であり、1.0に近いほど細孔径がそろっており均一であることを示す。細孔径が均一であれば、パウダーの細孔内部まで溶媒が浸透しやすく、また、パウダー粒子中の一部が局所的に溶解することがなく、細孔内部及び表面外部が同時に溶解する為、膜にした際に溶け残りがないと考えられる。更に驚くべきことに、細孔径がそろっている本実施形態のポリエチレン系パウダーは、粉体流動性にも優れる。
本実施形態において、水銀圧入法により求められる細孔のメディアン径とモード径の比を0.80以上1.20以下に制御する方法としては、特に限定されないが、製造工程の調整や、平均粒径、細孔容積、比表面積などが所定の範囲に制御された触媒担体を使用すること等で制御できる。製造工程の調整について、具体的には、(1)重合器の後、フラッシュタンクでエチレン、水素、α−オレフィンを除いた後、更に所定の条件のバッファータンクに原料供給がない状態で保持する、(2)溶媒分離工程後にポリエチレン系パウダーに含まれる溶媒量が増えるように溶媒分離効率を下げる、ことなどが挙げられる。
上述の工程を経ることで水銀圧入法により求められる細孔のメディアン径とモード径の比を上記範囲に制御できる理由は必ずしも明確ではないが、(1)原料供給のない低温・低圧のバッファータンクで少量の原料が存在する為、ごく一部の活性が持続している触媒粒子が重合し、106μm未満のパウダー(以下、微粉ともいう。)が発生する、(2)遠心分離機での溶媒分離を弱めることで、ヘキサン中に溶解しやすい低分子量成分(以下、WAXともいう。)をパウダー中に取り込み、その後乾燥工程を経ることで、WAXと微粉がパウダー中で凝集することで均一な細孔が形成される、と推測される。ポリエチレン系パウダーの細孔のメディアン径とモード径の比は、後述する実施例に記載の方法により測定される。
なお、「メディアン径」は、積算細孔分布において曲線のY軸(細孔容積又は細孔比表面積)の最小値と最大値の中間に相当するX軸(細孔径)の値を意味し、「モード径」は微分細孔分布において、微分値が最大となるところの細孔径を意味する。また、「細孔容積」は、測定時の最大圧力までに水銀が圧入された細孔容積の積算値をサンプル重量で割った値である。
ポリエチレン系パウダーの密度は、920kg/m3以上960kg/m3以下であり、好ましくは925kg/m3以上955kg/m3以下であり、より好ましくは930kg/m3以上950kg/m3以下である。ポリエチレン系パウダーの密度が920kg/m3以上960kg/m3以下であることにより、低温成形における溶媒への溶解性に優れる。
ポリエチレン系パウダーの密度は、特に限定されないが、例えば、主にエチレンと共重合する他のα−オレフィン(コモノマーともいう)との導入量等によって調整することができる。ポリエチレン系パウダーの密度は、後述する実施例に記載の方法により測定される。
ポリエチレン系パウダーの水銀圧入法により測定した細孔容積は、0.85mL/g以上1.40mL/g以下であることが好ましく、より好ましくは0.90mL/g以上1.35mL/g以下であり、さらに好ましくは、0.95mL/g以上1.30mL/g以下である。細孔容積が0.85mL/g以上であることにより、溶媒が浸透しやすく、溶解しやすい傾向にあり、1.40mL/g以下であることにより、溶媒は浸透しやすく、かつ、表面から溶解しだすことがなく、細孔内部及び表面外部が同時に溶解する為、膜にした際に溶け残りが発生しにくい傾向にある。
細孔容積は、ポリエチレン系パウダーの内部構造や、ポリエチレン系パウダーの凝集状態と関連しており、表面から内部へ貫通する細孔の容積や、ポリエチレン系パウダーの粒子が密着凝集した場合に存在する凝集粒子内部の空間容積を意味している。
ポリエチレン系パウダーの細孔容積を0.85mL/g以上1.40mL/g以下とするためには、特に限定されないが、例えば、平均粒径、細孔容積、比表面積などが制御された触媒担体を使用すること、主にエチレンと共重合する他のα−オレフィン(コモノマーともいう)との導入量、重合時の溶媒量とパウダー量の比から計算されるスラリー濃度を調整すること、等によって調整することができる。
特許第5774084号公報には、細孔容積が大きくなると、表面から通じる内部細孔が多く、溶媒混練時の溶媒含浸が十分に粒子内部まで到達しないため、気体を内部に抱き込んだ粒子が形成するためポリエチレンパウダーの溶解性が悪化する、という記述があるが、本発明では、細孔径が制御されている為、細孔容積が上述の範囲においても優れた溶解性を示す。ポリエチレン系パウダーの細孔容積は、後述する実施例に記載の方法により測定される。
ポリエチレン系パウダーの水銀圧入法により測定した細孔のモード径は、30μm以上45μm以下であることが好ましく、より好ましくは31μm以上44μm以下、さらに好ましくは32μm以上43μm以下である。モード径が30μm以上であることにより、ポリエチレン系パウダーの粒子表面に存在する細孔径が大きく、溶媒を粒子内部へ含浸することが容易で溶解性が良くなる傾向にあり、45μm以下であることにより溶媒は浸透しやすく、かつ、表面から溶解しだすことがなく、細孔内部及び表面外部が同時に溶解する為、膜にした際に溶け残りが発生しにくい傾向にある。ポリエチレン系パウダーの細孔のモード径は、後述する実施例に記載の方法により測定される。
ポリエチレン系パウダーの平均粒径は50μm以上300μm以下であることが好ましく、より好ましくは60μm以上250μm以下、さらに好ましくは70μm以上200μm以下である。ポリエチレン系パウダーの平均粒径は篩式粒度分布測定により測定することができる。具体的には、JIS Z8801で規定された複数種類の篩と受け皿を準備し、受け皿の上に開き目の小さい順に篩を重ね、最上段の篩にポリエチレン系パウダーを投入後、ロータップ型フルイ振盪機にセットし分級した後、それぞれの篩および受け皿に残ったパウダーの質量を目開きの大きい側から積分した積分曲線において、50%の質量になる粒径を平均粒径とすることができる。平均粒径を上記範囲内に制御する方法としては、例えば、使用する触媒の粒子径によって制御することができ、また、単位触媒量あたりのポリエチレンパウダーの生産性により制御することも可能である。また、触媒失活、乾燥工程においてポリエチレンパウダーの表面が負荷を受け融解、磨耗により表面が滑らかになることを抑えることで制御が可能となる。具体的には触媒失活、乾燥工程の際、ポリエチレンパウダー中に残存する溶媒等の含液率を低くすること等が挙げられる。
また、ポリエチレン系パウダーの篩式粒度分布測定により測定した106μm未満のパウダー(以下、「微粉」ともいう。)の割合は、20質量%以上50質量%以下であることが好ましく、より好ましくは22質量%以上49質量%以下、さらに好ましくは23質量%以上48質量%以下である。106μm未満の粒子の割合が20質量%以上であることにより、溶解性が高くなる傾向にあり、50質量%以下であることにより、微粉が凝集した状態で溶媒中に存在することによる溶け残りを抑制することができる傾向にある。
ポリエチレン系パウダーの106μm未満のパウダーの割合を20質量%以上50質量%以下とするためには、特に限定されないが、例えば、重合時の温度や圧力を上げること、篩を用いて分級すること等によって調整することができる。ポリエチレン系パウダーの106μm未満のパウダー(以下、微粉ともいう。)の割合は、後述する実施例に記載の方法により測定される。
ポリエチレン系パウダーの嵩密度は、0.30g/cm3以上0.45g/cm3以下であることが好ましく、より好ましくは0.31g/cm3以上0.44g/cm3以下、さらに好ましくは0.32g/cm3以上0.43g/cm3以下である。嵩密度が0.30g/cm3以上0.45g/cm3以下であることにより、溶媒と混合した際の混ざり具合が良く、溶解しやすい傾向にある。ポリエチレン系パウダーの嵩密度を0.30g/cm3以上0.45g/cm3以下とするためには、特に限定されないが、例えば、重合時の温度や圧力、主にエチレンと共重合する他のα−オレフィン(コモノマーともいう)との導入量、重合時の溶媒量とパウダー量の比から計算されるスラリー濃度を調整すること、等によって調整することができる。ポリエチレン系パウダーの嵩密度は、後述する実施例に記載の方法により測定される。
ポリエチレン系パウダーの粘度平均分子量(Mv)は、10000以上3000000以下であることが好ましく、より好ましくは20000以上2000000以下であり、さらに好ましくは30000以上1000000以下、最も好ましくは40000以上500000以下である。粘度平均分子量(Mv)が10000以上3000000以下であることにより、溶解性により優れ、成形した場合には、延伸性及び膜強度により優れるポリエチレンパウダーとなる傾向にある。このような特性を有するポリエチレンパウダーは、二次電池セパレータに好適に用いることができ、リチウムイオン二次電池用セパレータにより好適に用いることができる。
粘度平均分子量(Mv)を10000以上3000000以下に制御する方法としては、特に限定されないが、例えば、重合する際の反応器の重合温度を変化させること等が挙げられる。一般に、重合温度を高温にするほど分子量は低くなる傾向にあり、重合温度を低温にするほど分子量は高くなる傾向にある。また、粘度平均分子量(Mv)を上記範囲内に制御する別の方法としては、例えば、エチレン等を重合する際に水素等の連鎖移動剤を添加すること等が挙げられる。連鎖移動剤を添加することで、同一重合温度でも生成する分子量が低くなる傾向にある。
〔ポリエチレン系パウダーの製造方法〕
本実施形態のポリエチレン系パウダーの製造方法は、触媒を用いて、エチレンを単独重合、又は、エチレンと炭素数が3以上6以下のα−オレフィンとを共重合することにより、上記ポリエチレン系パウダーを得る重合工程を有する。触媒としては、平均粒子径が、1.0μm以上20μm以下であり、細孔容積が、1.0mL/g以上2.5mL/g以下であり、比表面積が、400m2/g以上800m2/g以下である、無機担体物質を触媒担体として有するものであれば特に制限されず、特許文献第5774084号公報に記載のチーグラー・ナッタ触媒や後述する担持型幾何拘束型メタロセン触媒を用いることができ、この中でも担持型幾何拘束型メタロセン触媒が好ましい。
<担持型幾何拘束型メタロセン触媒>
本実施形態の担持型幾何拘束型メタロセン触媒は、特に限定されないが、少なくとも(ア)無機担体物質(以下、「成分(ア)」、「(ア)」ともいう。)、(イ)有機アルミニウム化合物(以下、「成分(イ)」、「(イ)」ともいう。)、(ウ)環状η結合性アニオン配位子を有する遷移金属化合物(以下、「成分(ウ)」、「(ウ)」ともいう。)、及び(エ)該環状η結合性アニオン配位子を有する遷移金属化合物と反応して触媒活性を発現する錯体を形成可能な活性化剤(以下、「成分(エ)」、「(エ)」ともいう。)から調製される。
(ア)無機担体物質としては、特に限定されないが、例えば、SiO2、Al23、MgO、TiO2等の酸化物;MgCl2等のハロゲン化合物が挙げられる。この中で好ましい担体物質は、SiO2である。
無機担体物質の平均粒子径は、1.0μm以上20μm以下であり、好ましくは2.0μm以上15μm以下であり、より好ましくは3.0μm以上10μm以下である。無機担体物質の平均粒子径は、レーザー式光散乱法による測定方法での体積換算の平均粒子径である。具体的には島津製作所製「SALD−2100」等を用いて測定することができる。
無機担体物質の細孔容積は、1.0mL/g以上2.5mL/g以下であり、好ましくは1.2mL/g以上2.0mL/g以下であり、より好ましくは1.4mL/g以上2.0mL/g以下である。無機担体物質の細孔容積は、Barrett−Joyner−Halendaの方法(以下、BJH法ともいう。)により求められる。具体的には島津製作所製トライスターII3020等を用いて測定することができる。
無機担体物質の比表面積は、400m2/g以上800m2/g以下であり、好ましくは450m2/g以上800m2/g以下であり、より好ましくは500m2/g以上750m2/g以下である。無機担体物質の比表面積は、Brunauer−Emmett−Tellerの方法(以下、BET法ともいう。)により求められる。具体的には島津製作所製トライスターII3020等を用いて測定することができる。
無機担体物質の平均粒子径、細孔容積、比表面積が上述の範囲内であることにより、重合反応時に無機担体物質が破砕されながら、ポリエチレン系パウダーが成長することにより、ポリエチレン系パウダーの細孔径がそろい均一になる傾向にある。
(ア)無機担体物質は、必要に応じて(イ)有機アルミニウム化合物で処理されることが好ましい。好ましい(イ)有機アルミニウム化合物としては、特に限定されないが、例えば、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム等のアルキルアルミニウム;ジエチルアルミニウムハイドライド、ジイソブチルアルミニウムハイドライド等のアルキルアルミニウムハイドライド;ジエチルアルミニウムエトキシド、ジメチルアルミニウムメトキシド等のアルミニウムアルコキシド;メチルアルモキサン、イソブチルアルモキサン、及びメチルイソブチルアルモキサン等のアルモキサンが挙げられる。これらの中で、トリアルキルアルミニウム、及びアルミニウムアルコキシドが好ましく、より好ましくはトリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、及びトリイソブチルアルミニウムであ
担持型幾何拘束型メタロセン触媒は、(ウ)環状η結合性アニオン配位子を有する遷移金属化合物(以下、単に「遷移金属化合物」ともいう。)を含むことができる。本実施形態の遷移金属化合物は、特に限定されないが、例えば、下記式(1)で表すことができる。
lMXpX’q‥‥(1)
式(1)中、Mは、1つ以上の配位子Lとη5結合をしている、酸化数+2、+3又は+4の周期律表第4族に属する遷移金属を示す。
式(1)中、Lは、各々独立に、環状η結合性アニオン配位子を示す。環状η結合性アニオン配位子は、シクロペンタジエニル基、インデニル基、テトラヒドロインデニル基、フルオレニル基、テトラヒドロフルオレニル基又はオクタヒドロフルオレニル基であり、これらの基は、20個までの非水素原子を含む炭化水素基、ハロゲン、ハロゲン置換炭化水素基、アミノヒドロカルビル基、ヒドロカルビルオキシ基、ジヒドロカルビルアミノ基、ヒドロカルビルフォスフィノ基、シリル基、アミノシリル基、ヒドロカルビルオキシシリル基及びハロシリル基から各々独立に選ばれる1〜8個の置換基を任意に有していてもよく、さらには2つのLが20個までの非水素原子を含むヒドロカバジイル、ハロヒドロカルバジイル、ヒドロカルビレンオキシ、ヒドロカルビレンアミノ、シラジイル、ハロシラジイル、アミノシラン等の2価の置換基により結合されていてもよい。
式(1)中、Xは、各々独立に、60個までの非水素性原子を有する1価のアニオン性σ結合型配位子、Mと2価で結合する2価のアニオン性σ結合型配位子、又はM及びLに各々1価ずつの価数で結合する2価のアニオン性σ結合型配位子を示す。X’は、各々独立に、炭素数4〜40からなる、フォスフィン、エーテル、アミン、オレフィン及び共役ジエンから選ばれる中性ルイス塩基配位性化合物を示す。
式(1)中、lは、1又は2の整数を示す。pは、0、1又は2の整数を示し、Xが1価のアニオン性σ結合型配位子又はM及びLに各々1価ずつの価数で結合する2価のアニオン性σ結合型配位子を示すとき、pは、Mの形式酸化数より1以上少ない整数を示し、また、XがMと2価で結合する2価のアニオン性σ結合型配位子を示すとき、pは、Mの形式酸化数よりl+1以上少ない整数を示す。また、qは、0、1又は2の整数を示す。遷移金属化合物は、式(1)でlが1を示すものが好ましい。
遷移金属化合物の好適な例は、下記式(2)で表される化合物である。
Figure 0006892737
式(2)中、Mは、形式酸化数+2、+3又は+4の、チタン、ジルコニウム又はハフニウムを示す。また、式(2)中、R1は、各々独立に、水素、炭化水素基、シリル基、ゲルミル基、シアノ基、ハロゲン、又はこれらの複合基を示し、これらは各々20個までの非水素原子を有することができ、また、近接するR1同士が相俟ってヒドロカルバジイル、シラジイル、ゲルマジイル等の2価の誘導体を形成して環状となっていてもよい。
式(2)中、X”は、各々独立にハロゲン、炭化水素基、ヒドロカルビルオキシ基、ヒドロカルビルアミノ基又はシリル基を示し、これらは各々20個までの非水素原子を有しており、また、2つのX”が炭素数5〜30の中性の共役ジエン若しくは2価の誘導体を形成してもよい。Yは、−O−、−S−、−NR3−又は−PR3−を示し、Zは、SiR3 2、CR3 2、SiR3 2SiR3 2、CR3 2CR3 2、CR3=CR3、CR3 2SiR3 2又はGeR3 2を示し、ここでR3は、各々独立に炭素数1〜12のアルキル基又はアリル基を示す。また、nは、1〜3の整数を示す。
遷移金属化合物としてより好適な例は、下記式(3)及び下記式(4)で表される化合物である。
Figure 0006892737
Figure 0006892737
式(3)及び(4)中、それぞれ、R1は、各々独立に、水素、炭化水素基、シリル基、ゲルミル基、シアノ基、ハロゲン、又はこれらの複合基を示し、各々20個までの非水素原子を有することができる。また、Mは、チタニウム、ジルコニウム又はハフニウムを示す。Z及びYは、式(2)中で示すものと同様のものを示す。また、X及びX’は式(2)中のX”で示すものと同様のものを示す。
式(3)及び(4)中、それぞれ、pは、0、1又は2を示し、また、qは0又は1を示す。pが2、qが0を示すとき、Mの酸化数は、+4でありかつXは、ハロゲン、炭化水素基、ヒドロカルビルオキシ基、ジヒドロカビルアミド基、ジヒドロカルビルフォスフィド基、ヒドロカルビルスルフィド基、シリル基、又はこれらの複合基であり、20個までの非水素原子を有しているものを示す。
式(3)及び(4)中、それぞれ、pが1、qが0を示すとき、Mの酸化数が+3でありかつXが、アリル基、2−(N,N−ジメチルアミノメチル)フェニル基及び2−(N,N−ジメチル)−アミノベンジル基から選ばれる安定化アニオン配位子を示すか;Mの酸化数が+4でありかつXが、2価の共役ジエンの誘導体を示すか;MとXとが共にメタロシクロペンテン基を形成しているか、である。
式(3)及び(4)中、それぞれ、pが0、qが1を示すとき、Mの酸化数は+2であり、かつX’は、中性の共役又は非共役ジエンであって任意に1つ以上の炭化水素基で置換されていてもよく、また、X’は、40個までの炭素原子を含むことができ、Mとπ型錯体を形成している。
遷移金属化合物としてさらに好適な例は、下記式(5)及び下記(6)で表される化合物である。
Figure 0006892737
Figure 0006892737
式(5)及び(6)中、それぞれ、R1は、各々独立に、水素、又は炭素数1〜6のアルキル基を示す。また、Mは、チタニウムを示し、Yは−O−、−S−、−NR3−、−PR3−を示す。Zは、SiR3 2、CR3 2、SiR3 2SiR3 2、CR3 2CR3 2、CR3=CR3、CR3 2SiR3 2、又はGeR3 2を示し、R3は、各々独立に水素、又は、炭化水素基、ヒドロカルビルオキシ基、シリル基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アリル基、若しくはこれらの複合基を示し、これらは、20個までの非水素原子を有することができ、また必要に応じて、Z中の2つのR3同士、又はZ中のR3とY中のR3とが相俟って環状となっていてもよい。X及びX’は式(3)又は(4)中で示すものと同様のものを示す。
式(5)及び(6)中、それぞれ、pは0、1又は2を示し、qは、0又は1を示す。ただし、pが2、qが0を示すとき、Mの酸化数は+4でありかつXは、各々独立にメチル基又はベンジル基を示す。また、pが1、qが0を示すとき、Mの酸化数が+3でありかつXが、2−(N,N−ジメチル)アミノベンジルを示すか、Mの酸化数が+4でありかつXが、2−ブテン−1,4−ジイルを示す。また、pが0、qが1を示すとき、Mの酸化数は+2でありかつX’は、1,4−ジフェニル−1,3−ブタジエン又は1,3−ペンタジエンを示す。これらのジエン類は、金属錯体を形成する非対称ジエン類を例示したものであり、実際には各幾何異性体の混合物である。
担持型幾何拘束型メタロセン触媒は、(エ)遷移金属化合物と反応して触媒活性を発現する錯体を形成可能な活性化剤(以下、単に「活性化剤」ともいう。)を含む。一般的には、メタロセン触媒においては、遷移金属化合物と上述活性化剤により形成される錯体とが、触媒活性種として高いオレフィン重合活性を示す。本実施形態において、活性化剤としては、特に限定されないが、例えば、下記式(7)で表される化合物が挙げられる。
[L−H]d+[Mmpd- ‥‥(7)
式(7)中、[L−H]d+は、プロトン付与性のブレンステッド酸を示し、Lは、中性ルイス塩基を示す。また、[Mmpd-は、相溶性の非配位性アニオンを示し、Mは、周期律表第5族〜第15族から選ばれる金属又はメタロイドを示し、Qは、各々独立にヒドリド、ジアルキルアミド基、ハライド、アルコキシ基、アリルオキシ基、炭化水素基、又は炭素数20個までの置換炭化水素基を示し、また、ハライドであるQは、1個以下である。また、mは、1〜7の整数を示し、pは、2〜14の整数を示し、dは、1〜7の整数を示し、p−m=dである。
活性化剤のより好ましい例は、下記式(8)で表される化合物である。
[L−H]d+[Mmn(Gq(T−H)rzd- ‥‥(8)
式(8)中、[L−H]d+は、プロトン付与性のブレンステッド酸を示し、Lは、中性ルイス塩基を示す。また、[Mmn(Gq(T−H)rzd-は、相溶性の非配位性アニオンを示し、Mは、周期律表第5族〜第15族から選ばれる金属又はメタロイドを示し、Qは、各々独立にヒドリド、ジアルキルアミド基、ハライド、アルコキシ基、アリルオキシ基、炭化水素基、又は炭素数20個までの置換炭化水素基を示し、また、ハライドであるQは、1個以下である。また、Gは、M及びTと結合するr+1の価数を持つ多価炭化水素基を示し、Tは、O、S、NR、又はPRを示す。ここで、Rは、ヒドロカルビル、トリヒドロカルビルシリル基、トリヒドロカルビルゲルマニウム基又は水素を示す。また、mは、1〜7の整数を示し、nは、0〜7の整数を示し、qは、0又は1の整数を示し、rは、1〜3の整数を示し、zは、1〜8の整数を示し、dは、1〜7の整数を示し、n+z−m=dである。
活性化剤のさらに好ましい例は、下記式(9)で表される化合物である。
[L−H]+[BQ31- ‥‥(9)
式(9)中、[L−H]+は、プロトン付与性のブレンステッド酸を示し、Lは、中性ルイス塩基を示す。また、[BQ31-は、相溶性の非配位性アニオンを示し、Bは、硼素元素を示し、Qは、各々独立に、ペンタフルオロフェニル基を示し、Q1は、置換基としてOH基を1つ有する炭素数6〜20の置換アリル基を示す。
上述プロトン付与性のブレンステッド酸としては、特に限定されないが、例えば、トリエチルアンモニウム、トリプロピルアンモニウム、トリ(n−ブチル)アンモニウム、トリメチルアンモニウム、トリブチルアンモニウム、トリ(n−オクチル)アンモニウム、ジエチルメチルアンモニウム、ジブチルメチルアンモニウム、ジブチルエチルアンモニウム、ジヘキシルメチルアンモニウム、ジオクチルメチルアンモニウム、ジデシルメチルアンモニウム、ジドデシルメチルアンモニウム、ジテトラデシルメチルアンモニウム、ジヘキサデシルメチルアンモニウム、ジオクタデシルメチルアンモニウム、ジイコシルメチルアンモニウム、及びビス(水素化タロウアルキル)メチルアンモニウム等のようなトリアルキル基置換型アンモニウムカチオン;N,N−ジメチルアニリニウム、N,N−ジエチルアニリニウム、N,N−2,4,6−ペンタメチルアニリニウム、及びN,N−ジメチルベンジルアニリニウム等のようなN,N−ジアルキルアニリニウムカチオン;トリフェニルカルボニウムカチオンが挙げられる。
上述相溶性の非配位性アニオンとしては、特に限定されないが、例えば、トリフェニル(ヒドロキシフェニル)ボレート、ジフェニル−ジ(ヒドロキシフェニル)ボレート、トリフェニル(2,4−ジヒドロキシフェニル)ボレート、トリ(p−トリル)(ヒドロキシフェニル)ボレート、トリス(ペンタフルオロフェニル)(ヒドロキシフェニル)ボレート、トリス(2,4−ジメチルフェニル)(ヒドロキシフェニル)ボレート、トリス(3,5−ジメチルフェニル)(ヒドロキシフェニル)ボレート、トリス(3,5−ジ−トリフルオリメチルフェニル)(ヒドロキシフェニル)ボレート、トリス(ペンタフルオロフェニル)(2−ヒドロキシエチル)ボレート、トリス(ペンタフルオロフェニル)(4−ヒドロキシブチル)ボレート、トリス(ペンタフルオロフェニル)(4−ヒドロキシ−シクロヘキシル)ボレート、トリス(ペンタフルオロフェニル)(4−(4´−ヒドロキシフェニル)フェニル)ボレート、及びトリス(ペンタフルオロフェニル)(6−ヒドロキシ−2−ナフチル)ボレートが挙げられる。これらの相溶性の非配位性アニオンを「ボレート化合物」ともいう。触媒活性の観点並びにAl、Mg、Ti、Zr及びHfの合計含有量を低減する観点から、担持型幾何拘束型メタロセン触媒の活性化剤が、ボレート化合物であることが好ましい。好ましいボレート化合物としては、トリス(ペンタフルオロフェニル)(ヒドロキシフェニル)ボレートが挙げられる。
活性化剤として、下記式(10)で表される、ユニットを有する有機金属オキシ化合物も用いることができる。
Figure 0006892737
(式(10)中、M2は、周期律表第13族〜第15族の金属、又はメタロイドを示し、Rは、各々独立に炭素数1〜12の炭化水素基又は置換炭化水素基を示し、nは、金属M2の価数を示し、mは、2以上の整数を示す。)
活性化剤の好ましい他の例は、下記式(11)で表される、ユニットを含む有機アルミニウムオキシ化合物である。
Figure 0006892737
(式(11)中、Rは、炭素数1〜8のアルキル基を示し、mは、2〜60の整数を示す。)
活性化剤のより好ましい例は、下記式(12)で表される、ユニットを含むメチルアルモキサンである。
Figure 0006892737
(式(12)中、mは、2〜60の整数を示す。)
また、上述(ア)〜(エ)の成分の他に、必要に応じて有機アルミニウム化合物を触媒として用いることもできる。有機アルミニウム化合物としては、特に限定されないが、例えば、下記式(13)で表される化合物が挙げられる。
AlRn3-n ‥‥(13)
式(13)中、Rは、炭素数1〜12の直鎖状、分岐状若しくは環状のアルキル基又は炭素数6〜20のアリル基を示し、Xは、ハロゲン、水素又はアルコキシル基を示し、nは、1〜3の整数を示す。また、有機アルミニウム化合物は、式(13)で表される化合物の混合物であっても構わない。
触媒は、成分(ア)に、成分(イ)、成分(ウ)、及び成分(エ)を担持させることにより得ることができる。成分(イ)、成分(ウ)、及び成分(エ)を担持させる方法は特に限定されないが、例えば、成分(イ)、成分(ウ)及び成分(エ)をそれぞれが溶解可能な不活性溶媒中に溶解させ、成分(ア)と混合した後、溶媒を留去する方法;成分(イ)、成分(ウ)及び成分(エ)を不活性溶媒に溶解後、固体が析出しない範囲でないでこれを濃縮して、次に濃縮液の全量を粒子内に保持できる量の成分(ア)を加える方法;成分(ア)に成分(イ)、及び成分(エ)をまず担持させ、ついで成分(ウ)を担持させる方法;成分(ア)に成分(イ)及び成分(エ)、及び成分(ウ)を逐次に担持させる方法が挙げられる。本実施形態の成分(ウ)、及び成分(エ)は、液体又は固体であることが好ましい。また、成分(イ)、成分(ウ)、成分(エ)は、担持の際、不活性溶媒に希釈して使用する場合がある。
上述不活性溶媒としては、特に限定されないが、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、灯油等の脂肪族炭化水素;シクロヘキサン、メチルシクロペンタン等の脂環族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;これらの混合物が挙げられる。かかる不活性溶媒は、乾燥剤、吸着剤等を用いて、水、酸素、硫黄分等の不純物を除去して用いることが好ましい。
成分(ア)1.0gに対し、成分(イ)は、Al原子換算で1.0×10-5〜1.0×10-1モルが好ましく、より好ましくは1.0×10-4〜5.0×10-2モル、成分(ウ)は、1.0×10-7〜1.0×10-3モルが好ましく、より好ましくは5.0×10-7〜5.0×10-4モル、成分(エ)は、1.0×10-7〜1.0×10-3モルが好ましく、より好ましくは5.0×10-7〜5.0×10-4モルの範囲である。各成分の使用量及び担持方法は、活性、経済性、パウダー特性、及び反応器内のスケール等により決定される。得られた担持型幾何拘束型メタロセン触媒は、担体に担持されていない有機アルミニウム化合物、ボレート化合物、チタン化合物を除去することを目的に、不活性溶媒を用いでデカンテーション、濾過等の方法により洗浄することもできる。
上述一連の溶解、接触、洗浄等の操作は、その単位操作毎に選択される−30℃以上80℃以下の温度で行うことが好ましい。そのような温度のより好ましい範囲は、0℃以上50℃以下である。また、担持型幾何拘束型メタロセン触媒を得る一連の操作は、乾燥した不活性雰囲気下で行うことが好ましい。
担持型幾何拘束型メタロセン触媒は、それのみでエチレンの単独重合、又はエチレンとα−オレフィンの共重合が可能であるが、溶媒や反応の被毒の防止のため、付加成分として有機アルミニウム化合物を共存させて使用することもできる。好ましい有機アルミニウム化合物としては、特に限定されないが、例えば、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム等のアルキルアルミニウム;ジエチルアルミニウムハイドライド、及びジイソブチルアルミニウムハイドライド等のアルキルアルミニウムハイドライド;ジエチルアルミニウムエトキシド等のアルミニウムアルコキシド;メチルアルモキサン、イソブチルアルミキサン、及びメチルイソブチルアルモキサン等のアルモキサンが挙げられる。これらの中でも、トリアルキルアルミニウム、及びアルミニウムアルコキシドが好ましい。より好ましくはトリイソブチルアルミニウムである。
ポリエチレン系パウダーの重合方法は、スラリー重合法が好ましい。重合を行う場合、一般的には重合圧力は、0.1MPaG以上10MPaG以下が好ましく、より好ましくは0.3MPaG以上3.0MPaG以下である。また、重合温度は、20℃以上115℃以下が好ましく、より好ましくは50℃以上85℃以下である。
スラリー重合法に用いる溶媒としては、上述した不活性溶媒が好適であり、不活性炭化水素溶媒がより好ましい。不活性炭化水素溶媒としては、炭素数6以上8以下の炭化水素溶媒、具体的には、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素;シクロヘキサン、メチルシクロペンタン等の脂環式炭化水素;これらの混合物が挙げられる。
ポリエチレン系パウダーの重合方法は、連続式で重合することが好ましい。エチレンガス、溶媒、触媒等を連続的に重合内に供給し、生成したポリエチレン系パウダーと共に連続的に排出することで、急激なエチレンの反応による部分的な高温状態を抑制することが可能となり、重合系内がより安定化する傾向にある。均一な状態でエチレンが反応すると、分子量分布の広幅化が抑制される傾向にある。
また、重合器の後、フラッシュタンクでエチレン、水素、α−オレフィンを除いた後、更に所定の条件のバッファータンクに原料供給がない状態で保持することが好ましい。バッファータンクの温度は、65℃以上が好ましく、68℃以上がより好ましく、70℃以上が特に好ましい。また上限は80℃以下が好ましく、75℃以下がより好ましい。
本実施形態におけるポリエチレン系パウダーの製造方法における溶媒分離方法は、デカンテーション法、遠心分離法、フィルター濾過法等によって行うことができるが、ポリエチレン系パウダーと溶媒との分離効率が良い遠心分離法がより好ましい。溶媒分離後にポリエチレン系パウダーに含まれる溶媒の量としては、特に限定されないが、好ましくはポリエチレン系パウダーの質量に対して50質量%以上90質量%以下であり、より好ましくは55質量%以上85質量%以下であり、さらに好ましくは60質量%以上80質量%以下である。
上述の工程を経ることで水銀圧入法により求められる細孔のメディアン径とモード径の比を本願記載の範囲に制御できる。その理由は必ずしも明確ではないが、(1)原料供給のない低温・低圧のバッファータンクで少量の原料が存在する為、ごく一部の活性が持続している触媒粒子が重合し、106μm未満のパウダーが発生する、(2)遠心分離機での溶媒分離を弱めることで、ヘキサン中に溶解しやすい低分子量成分(以下、WAXともいう。)をパウダー中に取り込み、その後乾燥工程を経ることで、WAXと微粉がパウダー中で凝集することで均一な細孔が形成される、と推測される。
ポリエチレン系パウダーを合成するために使用する触媒の失活方法としては、特に限定されないが、ポリエチレン系パウダーと溶媒を分離した後に実施することが好ましい。
触媒を失活させる薬剤としては、特に限定されないが、例えば、酸素、水、アルコール類、が挙げられる。
ポリエチレン系パウダーの製造方法における乾燥に際しては、窒素やアルゴン等の不活性ガスを流通させた状態で実施することが好ましい。また、乾燥温度としては、好ましくは50℃以上150℃以下であり、より好ましくは50℃以上140℃以下であり、さらに好ましくは50℃以上130℃以下である。乾燥温度が50℃以上であれば、効率的な乾燥が可能となる傾向にある。一方、乾燥温度が150℃以下であれば、ポリエチレン系パウダーの分解や架橋を抑制した状態で乾燥することが可能となる傾向にある。上述のような各成分以外にもポリエチレン系パウダーの製造に有用な他の公知の成分を含むことができる。
以下に、実施例に基づいて本実施形態を更に詳細に説明するが、本実施形態は、以下の実施例に限定されるものではない。まず、下記に各物性及び評価の測定方法及び評価基準について述べる。
(物性1)水銀圧入法による細孔特性
実施例及び比較例で得られた各ポリエチレン系パウダーについて、水銀圧入法によりメディアン径、モード径および細孔容積を測定した。なお、測定に用いた装置及び条件は以下のとおりであった。
装置 :島津製作所製オートポア9500
サンプル量:500mg
1.低圧測定
測定圧力 :0〜30psia
測定細孔径:6〜120μm
2.高圧測定
測定圧力 :30〜33000psia
測定細孔径:0.005〜6μm
メディアン径は、積算細孔分布において曲線のY軸(細孔容積又は細孔比表面積)の最小値と最大値の中間に相当するX軸(細孔径)の値を意味し、モード径は微分細孔分布において、微分値が最大となるところの細孔径を意味する。細孔容積は、測定時の最大圧力までに水銀が圧入された細孔容積の積算値をサンプル重量で割った値である。
(物性2)密度
実施例及び比較例で得られた各ポリエチレン系パウダーの密度は、JIS K6760に準拠し、密度勾配管法により、測定した。
(物性3)パウダーの平均粒径、および106μm未満のパウダーの割合
実施例及び比較例で得られた各ポリエチレン系パウダーについて、JIS Z8801で規定された8種類の篩(目開き:600μm、425μm、300μm、212μm、150μm、106μm、75μm、53μm)の篩と受け皿を準備し、受け皿の上に開き目の小さい順に篩を重ね、最上段の篩に100gのポリエチレン系パウダーを投入後、ロータップ型フルイ振盪機にセットし分級した後、それぞれの篩および受け皿に残ったパウダーの質量を測定し、パウダーの平均粒径および106μm未満のパウダーの割合を測定した。ポリエチレンパウダーの平均粒径は、上述の各篩および受け皿に残ったポリエチレンパウダーの質量を目開きの大きい側から積分した積分曲線において、50%の質量になる粒径を平均粒径とした。
(物性4)嵩密度
実施例及び比較例で得られた各ポリエチレン系パウダーの嵩密度は、JIS K6891に準拠し、測定した。
(物性5)粘度平均分子量(Mv)
実施例及び比較例で得られた各ポリエチレン系パウダーの粘度平均分子量(Mv)は、ISO1628−3(2010)に準拠し、以下に示す方法によって求めた。
まず、溶解管にポリエチレン系パウダー20mgを秤量し、溶解管を窒素置換した後、20mLのデカヒドロナフタレン(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノールを1g/L加えたもの)を加え、150℃で2時間攪拌してポリエチレン系パウダーを溶解させた。その溶液を135℃の恒温槽で、キャノン−フェンスケの粘度計(柴田科学器械工業社製:製品番号−100)を用いて、標線間の落下時間(ts)を測定した。同様に、ポリエチレンパウダー量を10mg、5mg、2mgに変えたサンプルについても同様に標線間の落下時間(ts)を測定した。ブランクとしてポリエチレン系パウダーを入れていない、デカヒドロナフタレンのみの落下時間(tb)を測定した。以下の式に従ってポリエチレン系パウダーの還元粘度(ηsp/C)を求めた。
ηsp/C=(ts/tb−1)/0.1 (単位:dL/g)
濃度(C)(単位:g/dL)とポリエチレン系パウダーの還元粘度(ηsp/C)の関係をそれぞれプロットして、最小二乗法により近似直線式を導き、濃度0に外挿して極限粘度([η])を求めた。次に下記数式Aを用いて、上記極限粘度[η]の値から粘度平均分子量(Mv)を算出した。
Mv=(5.34×104)×[η]1.49 (数式A)
(物性6)粉体流動性
実施例及び比較例で得られた各ポリエチレン系パウダーについて、JIS Z2502に準拠し、ポリエチレン系パウダー50gが落下する時間(秒/50g)を測定した。
(評価1、2)溶解性評価
三井化学株式会社製ハイゼックスミリオン(登録商標)030Sを7gに対し、実施例及び比較例で得られた各ポリエチレン系パウダーを7g、酸化防止剤としてペンタエリスチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]を0.4g、及び流動パラフィン(松村石油社製P−350)36gの混合物を小型混練機(東洋精機社製LABPLASTOMILL30C150)に投入し、スクリュー回転50rpmで2分間混練した。混練温度は200℃および180℃の2水準実施した。これらの混練物を金属板に挟み込み圧縮成形機(神藤金属社製SFA−37)で厚み1mmになるまで170℃で熱プレスを行いシート状にした後、25℃で急冷しゲル状シートを成形した。
このゲル状シートを120℃で同時二軸延伸機を用いて7×7倍に延伸した後、塩化メチレンを使用して流動パラフィンを抽出除去後乾燥した。さらに125℃、3分で熱固定し、微多孔膜を得た。ポリエチレン系パウダーの溶解性は得られた微多孔膜250mm×250mm中に存在する50μm以上の粒子状の塊(微多孔膜を透過光で観察した際、黒点として観察されるもの、未溶融のポリエチレン系パウダーと考えられる)を目視により数え、得られた個数に基づいて下記評価基準により評価した。
(溶解性評価基準)
○:粒子状の塊が、1個以下である。
△:粒子状の塊が、2〜4個である。
×:粒子状の塊が、5個以上である。
[触媒の調製]
〔担持型幾何拘束型メタロセン触媒[A]の調製〕
充分に水洗し乾燥された触媒担体用シリカ(平均粒子径6.5μm、細孔容積1.70mL/g、比表面積715m2/g)を、窒素雰囲気下、550℃で5時間焼成し、脱水シリカを得た。容量1.8Lのオートクレーブ中にて、この脱水シリカ40gをヘキサン800mL中に分散させ、スラリーを得た。得られたスラリーを攪拌下25℃に保ちながら、トリエチルアルミニウムのヘキサン溶液(濃度1mol/L)を84mL加え、その後2時間攪拌し、トリエチルアルミニウムとシリカの表面水酸基とを反応させ、シリカの表面水酸基がトリエチルアルミニウムによりキャッピングされている成分[a]のヘキサンスラリーを得た。
一方、[(N−t−ブチルアミド)(テトラメチル−η5−シクロペンタジエニル)ジメチルシラン]チタニウムジメチル(以下、「チタニウム錯体」と記載する。)200mmolをアイソパーE(登録商標)[エクソンケミカル社(米国)製の炭化水素混合物の商品名]1000mLに溶解し、n−ブチルエチルマグネシウムの1mol/Lヘキサン溶液を20mL加え、さらにヘキサンを加えてチタニウム錯体濃度を0.1mol/Lに調製し、成分[b]を得た。
また、ビス(水素化タロウアルキル)メチルアンモニウム−トリス(ペンタフルオロフェニル)(4−ヒドロキシフェニル)ボレート(以下、「ボレート化合物」と記載する。)5.7gをトルエン50mLに添加して溶解し、ボレート化合物の100mmol/Lトルエン溶液を得た。このボレート化合物のトルエン溶液にジエチルアルミニウムエトキサイドの1mol/Lヘキサン溶液5mLを室温で加え、さらにヘキサンを加えて溶液中のボレート化合物濃度が70mmol/Lとなるようにした。その後、室温で1時間攪拌し、ボレート化合物を含む反応混合物を得た。
ボレート化合物を含むこの反応混合物46mLと上述で得られた成分[b]のうち32mLを上述で得られた成分[a]のスラリー800mLに20〜25℃で攪拌しながら同時に加え、さらに3時間攪拌し、チタニウム錯体とボレートとを反応・析出させ、シリカに物理吸着させた。その後、得られた反応混合物中の未反応のボレート化合物・チタニウム錯体を含む上澄み液をデカンテーションによって除去することにより、触媒活性種が該シリカ上に形成されている担持型幾何拘束型メタロセン触媒[A](表中、単に「A」と示す。)を得た。
[担持型幾何拘束型メタロセン触媒[B]]
触媒担体用シリカを、平均粒子径22μm、細孔容積0.85mL/g、比表面積325m2/gに替えた以外は、担持型幾何拘束型メタロセン触媒[A]の調製に準じて調整し、担持型幾何拘束型メタロセン触媒[B](表中、単に「B」と示す。)を得た。
〔チーグラー・ナッタ触媒[C]の調製〕
特許第5774084号公報の〔固体触媒成分[A−1]の調整〕に記載の方法でチーグラー・ナッタ触媒[C](表中、単に「C」と示す。)を得た。
[実施例1]
以下に示す連続式スラリー重合法によりポリエチレン系パウダーを得た。具体的には、攪拌装置を備えたベッセル型340L重合反応器を用い、重合温度80℃、重合圧力0.98MPa、平均滞留時間1.8時間の条件で連続重合を行った。溶媒として脱水ノルマルヘキサン80L/時間、触媒として上述の担持型メタロセン触媒[A]をTi原子換算で1.4mmol/時間、トリイソブチルアルミニウムを20mmol/時間で供給した。また、分子量調整のための水素をエチレンと1−ブテンの気相濃度に対して0.53mol%、1−ブテンをエチレンの気相濃度に対して0.17mol%になるように供給することで、エチレンと1−ブテンを共重合させた。尚、触媒は重合器の液面付近から供給し、エチレンおよび1−ブテンは重合器の底部から供給した。重合反応器内の重合スラリーは、重合反応器のレベルが一定に保たれるように圧力0.05MPa、温度70℃のフラッシュタンクに導き、未反応のエチレン、1−ブテン、水素を分離した。次に、スラリーは、フラッシュタンクのレベルが一定に保たれるように連続的に遠心分離機に送り、パウダーとそれ以外の溶媒等を分離した。その時のパウダーに対する溶媒等の含液率は60%であった。分離されたポリエチレン系パウダーは、85℃で窒素ブローしながら乾燥した。この乾燥工程で、パウダーに対し、スチームを噴霧して、触媒及び助触媒の失活を実施した。得られたポリエチレン系パウダーに対し、ステアリン酸カルシウム(大日化学社製、C60)を1500ppm添加し、ヘンシェルミキサーを用いて、均一混合した。得られたポリエチレンパウダーを目開き425μmの篩を用いて、篩を通過しなかったものを除去することで、実施例1のポリエチレン系パウダーを得た。測定結果及び評価結果を表1に示す。
[実施例2]
重合温度75℃、重合圧力0.80MPaの条件で、水素をエチレンと1−ブテンの気相濃度に対して0.25mol%、1−ブテンをエチレンの気相濃度に対して0.37mol%となるようにした以外は、実施例1と同様の操作により、実施例2のポリエチレン系パウダーを得た。測定結果及び評価結果を表1に示す。
[実施例3]
重合温度80℃、重合圧力1.0MPaの条件で、水素をエチレンと1−ブテンの気相濃度に対して0.31mol%、1−ブテンをエチレンの気相濃度に対して0.30mol%となるようにした以外は、実施例1と同様の操作により、実施例2のポリエチレン系パウダーを得た。測定結果及び評価結果を表1に示す。
[実施例4]
重合温度80℃、重合圧力0.98MPaの条件にした以外は、実施例2と同様の操作により、実施例4のポリエチレン系パウダーを得た。測定結果及び評価結果を表1に示す。
[実施例5]
重合温度83℃、重合圧力0.5MPaの条件で、上記のチーグラー・ナッタ触媒[C]を使用し、水素をエチレンの気相濃度に対して3.0mol%、1−ブテンをフィードせず、圧力0.05MPa、温度70℃のフラッシュタンクに導き、未反応の原料を分離した後に、圧力0.30MPa、温度65℃のバッファータンクに平均滞留時間1.0時間の条件で導いた以外は、実施例1と同様の操作により、実施例5のポリエチレン系パウダーを得た。測定結果及び評価結果を表1に示す。
[実施例6]
水素をエチレンと1−ブテンの気相濃度に対して7.0mol%、1−ブテンをエチレンの気相濃度に対して0.30mol%となるようにした以外は、実施例5と同様の操作により、実施例6のポリエチレン系パウダーを得た。測定結果及び評価結果を表1に示す。
[実施例7]
重合温度86℃、重合圧力0.21MPa、水素をフィードしなかった以外は、実施例5と同様の操作により、実施例7のポリエチレン系パウダーを得た。測定結果及び評価結果を表1に示す。
[実施例8]
重合温度80℃、重合圧力0.40MPa、水素をエチレンの気相濃度に対して0.2mol%とした以外は、実施例5と同様の操作により、実施例8のポリエチレン系パウダーを得た。測定結果及び評価結果を表1に示す。
[比較例1]
特許第5774084号公報の実施例1に記載の方法で、比較例1のポリエチレン系パウダーを得た。測定結果及び評価結果を表1に示す。バッファータンクに導かず、遠心分離機で分離後のパウダーに対する溶媒等の含液率を45%とした為、メディアン径とモード径の比が大きかった。200℃での溶解性評価は○であったが、180℃での溶解性評価は×であった。
[比較例2]
未反応の原料を分離した後に、圧力0.30MPa、温度65℃のバッファータンクに平均滞留時間1.0時間の条件で導かず、遠心分離機で分離された後のパウダーとそれ以外の溶媒等を分離した際、パウダーに対する溶媒等の含液率は45%とした以外は、実施例7と同様の操作により、比較例2のポリエチレン系パウダーを得た。測定結果及び評価結果を表1に示す。バッファータンクに導かず、遠心分離機で分離後のパウダーに対する溶媒等の含液率を45%とした為、実施例7と比較して、メディアン径とモード径の比が大きかった。200℃での溶解性評価は△であり、180℃での溶解性評価は×であった。
[比較例3]
重合温度70℃、重合圧力0.8MPaの条件で、上記の担持型メタロセン触媒[B]を使用し、水素をエチレンと1−ブテンの気相濃度に対して200ppm、1−ブテンをエチレンの気相濃度に対して0.37mol%となるようにし、遠心分離機で分離された後のパウダーとそれ以外の溶媒等を分離した際、パウダーに対する溶媒等の含液率は45%とした以外は、実施例1と同様の操作により、比較例3のポリエチレン系パウダーを得た。平均粒子径、細孔容積、比表面積が異なる担体物質を使用し、遠心分離機で分離後のパウダーに対する溶媒等の含液率を45%とした為、メディアン径とモード径の比が小さく、密度が低かった。200℃での溶解性評価は×であり、180℃での溶解性評価は×であった。
[比較例4]
上記の担持型メタロセン触媒[B]を使用した以外は、実施例1と同様の操作により、比較例4のポリエチレン系パウダーを得た。測定結果及び評価結果を表1に示す。平均粒子径、細孔容積、比表面積が異なる担体物質を使用した為、実施例1と比較して、メディアン径とモード径の比が小さく、密度が高かった。粉体流動性が悪くなり、200℃での溶解性評価は△であり、180℃での溶解性評価は×であった。
[比較例5]
未反応の原料を分離した後に、圧力0.30MPa、温度65℃のバッファータンクに平均滞留時間1.0時間の条件で導かず、遠心分離機で分離された後のパウダーとそれ以外の溶媒等を分離した際、パウダーに対する溶媒等の含液率は45%とした以外は、実施例8と同様の操作により、比較例5のポリエチレン系パウダーを得た。測定結果及び評価結果を表1に示す。バッファータンクに導かず、遠心分離機で分離後のパウダーに対する溶媒等の含液率を45%とした為、実施例8と比較して、メディアン径とモード径の比が大きかった。粉体流動性が悪くなり、200℃での溶解性評価は×であり、180℃での溶解性評価は×であった。
Figure 0006892737
表1に示されるとおり、実施例においては、低温の混練温度であっても異物が生じにくく、低温成形における溶媒への溶解性に優れ、異種のポリエチレン系パウダーをブレンドして低温成形した場合においても、均一な微多孔膜を成形することが可能であった。
本発明のポリエチレン系パウダーの使用により、異種のポリエチレン系パウダーをブレンドして低温成形した場合においても、均一な微多孔膜を成形することができる。その為、本発明は高い産業上の利用可能性を有する。

Claims (9)

  1. エチレン単独重合体、又は、エチレンと炭素数が3以上6以下のα−オレフィンとの共重合体を含み、
    水銀圧入法により測定した細孔のメディアン径とモード径の比が、0.80以上1.20以下であり、
    密度が、920kg/m3以上960kg/m3以下である、
    ポリエチレン系パウダー。
  2. 水銀圧入法により測定した細孔容積が、0.85mL/g以上1.40mL/g以下であり、
    水銀圧入法により測定した細孔のモード径が、30μm以上45μm以下である、
    請求項1に記載のポリエチレン系パウダー。
  3. 篩式粒度分布測定により測定した平均粒径が50〜300μmであり、106μm未満のパウダーの割合が、20質量%以上50質量%以下である、
    請求項1又は2に記載のポリエチレン系パウダー。
  4. 嵩密度が、0.30g/cm3以上0.45g/cm3以下である、
    請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリエチレン系パウダー。
  5. 粘度平均分子量(Mv)が、10000以上3000000以下である、
    請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリエチレン系パウダー。
  6. 触媒を用いて、エチレンを単独重合、又は、エチレンと炭素数が3以上6以下のα−オレフィンとを共重合することにより、請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリエチレン系パウダーを得る重合工程を含み、
    前記触媒が、平均粒子径が、1.0μm以上20μm以下であり、細孔容積が、1.0mL/g以上2.5mL/g以下であり、比表面積が、400m2/g以上800m2/g以下である、無機担体物質を触媒担体として有する、
    ポリエチレン系パウダーの製造方法。
  7. 二次電池セパレータ用である、
    請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリエチレン系パウダー。
  8. リチウムイオン二次電池セパレータ用である、
    請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリエチレン系パウダー。
  9. 鉛蓄電池セパレータ用である、
    請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリエチレン系パウダー。
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