JP2018130052A - 風味増強油脂の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】コク味増強作用が十分に強められ、且つ違和のある刺激が感じられない風味増強油脂の製造方法を得ること。またトランス脂肪酸の酸性が抑制された風味増強油脂の製造方法を得ること。【解決手段】本発明の風味増強油脂の製造方法は、酸化油脂を原料とし、上記酸化油脂中に含有される過酸化物を水素で還元する工程を含む。上記酸化油脂を水素ガス加圧下で、水素化触媒と共に60〜130℃で加熱することが好ましい。上記酸化油脂を0.1〜2.5kg/cm2の水素ガス加圧下で、水素化触媒と共に加熱することも好ましい。【選択図】なし

Description

本発明は、油脂が元来有するコク味増強作用を強化した風味増強油脂の製造方法に関する。
飲食品分野の研究開発において、味の向上・改善に関する検討は欠かせない。
とりわけ、飲食品が有する風味の豊かさやコク味を強める作用を有している油脂は、広範な飲食品に対して、味の向上・改善を目的として用いられていることもあり、その作用が強められた油脂や、作用を強めることを目的とした油脂の加工方法が従来検討され、油脂の美味しさ、油脂由来の飲食品の美味しさを得る手法が追求されてきた。
油脂が有する作用を強化する方法として、第一に、油脂中の風味成分を増加させることを目的として、油脂に熱酸化等の酸化処理を施し、複雑な風味成分を得ることが挙げられる。例えば、特許文献1には、油脂を酸化処理し生成するアルデヒドを有効成分とする風味剤が開示されている。また、特許文献2には、バター脂肪を酸化させバター風味を強めた油脂が添加された食品の製造法が開示されている。
特許文献1及び2に示す通り、油脂を酸化することにより、油脂が有する風味の豊かさやコク味を強める作用、及び油脂自体の風味は強めることができる。しかしながら、酸化処理に伴って、油脂の過酸化物価やアニシジン価が上昇してしまうことから、品質の安定性や得られる風味の質に課題が生じていた。
油脂が有する作用を強化する方法として、第二に、油脂の風味を改質する目的から、油脂に対して水素添加処理を施すことが挙げられる。
水素添加処理が施され改質された油脂は、好ましい特徴的な風味を有していることから、種々の飲食品やその調理油に用いられてきた。例えば、特許文献3には、融点が40〜50℃の部分水素添加油脂を含有させたフライ油が開示されている。また、特許文献4には、ラード1〜20重量%及び/又は実質的に融点20〜40℃の硬化油1〜20重量%並びに任意の非硬化油からなるフライ油が開示されている。
しかしながら、水素添加処理によれば油脂の風味を好ましく改質することができる反面、融点の上昇を伴う油脂物性の変化や、人の健康に悪影響を与えるとされるトランス脂肪酸の産生を伴うという問題があった。
近年では水素添加処理を施した油脂に対して前述の酸化処理をさらに施し、部分硬化油脂の風味を強めた、酸化部分硬化油脂の検討も盛んに行われてきた。
例えば、特許文献5には、特定の過酸化物価となるよう軽微に酸化した部分硬化油脂を含有した揚げ物調理用の油脂組成物が開示されている。特許文献6には、特定の炭化水素を含有する部分硬化油脂が開示されている。特許文献7には、全構成脂肪酸中のC18:2トランス型異性体含量及び過酸化物価を一定の範囲に制御し酸化された部分水素添加油脂が開示されている。特許文献8には部分硬化油を加熱酸化した後220℃以下で脱臭することにより得られる油脂が開示されている。特許文献9には、トランス型ポリ不飽和脂肪酸含量が10%未満の酸化された部分硬化油脂が添加された油脂が開示されている。
これらは油脂はいずれも、少量を飲食品に添加するものであるが、結果として部分硬化油脂に由来するトランス脂肪酸が最終製品に含有されてしまう課題があった。また酸化させることによって、品質の安定性や保存性が乏しくなり易いという課題があった。
一方、部分硬化油脂を原料として用いることなく、油脂の風味を向上させる手法として特許文献10に記載の発明が挙げられる。この発明は、微量の水素を添加する前に脱臭工程を経ることを特徴の一として謳うが、該発明中、最も好ましい油脂源である大豆油を使用し最も好ましい条件下で、強い食欲をそそる風味を有する食用油を作成した場合において、トランス脂肪酸を増加させてしまう上、水素添加反応時の高い反応温度によって、油脂の加熱劣化を引き起こす恐れがあった。
その為、油脂の、飲食品が有する風味の豊かさやコク味を強める作用を強化する手法には更なる改良の余地があった。
特開平4−229151公報 特開平1−039962公報 特開2011−152120公報 特開2009−005681公報 特開2009−089684号公報 特開2011−115149号公報 特許第5150797号公報 特開2014−054248号公報 特開2014−236672号公報 WO2008/082106
本発明は、油脂が元来有している、飲食品の風味の豊かさやコク味を強める作用(以下、コク味増強作用)が十分に強められ、且つ違和のある刺激が感じられない風味増強油脂の製造方法を得ることを課題の一とする。また、トランス脂肪酸の産生が抑制された風味増強油脂の製造方法を得ることを課題の一とする。
本発明者らは上記課題を解決すべく、油脂の酸化処理及び油脂への水素添加技術について、調査・検討を進めるなかで、油脂の水素添加においては、油脂を構成する脂肪酸中の多重結合が還元されるよりも先に、油脂中の過酸化物の還元が優位に進行するという知見を得た。
この知見を利用して更に検討を進めたところ、酸化油脂を原料とし、沃素価を変動させることなく、酸化油脂中の過酸化物を極微量の水素で還元することで、油脂が元来有する、飲食品の風味の豊かさやコク味を強める作用が強化されることを知見した。
また、このとき原料となる酸化油脂中の過酸化物価やアニシジン価を大きく低減させることが出来るため、劣化臭等の風味の変質を抑制出来ることを知見した。
本発明は、上記知見に基づきなされたものであり、酸化油脂を原料とする風味増強油脂の製造方法であって、上記酸化油脂中に含有される過酸化物を水素で還元する工程を含む風味増強油脂の製造方法に関する。
本発明の製造方法により、コク味増強作用が強化された風味増強油脂を得ることが出来る。
以下、好ましい実施形態に基づいて、本発明の風味増強油脂の製造方法について詳述する。
まず、本発明の風味増強油脂の製造方法で原料として用いられる酸化油脂について述べる。
本発明で原料として用いられる酸化油脂は、一般的な食用油脂が酸化を受けることで得られるものである。上記食用油脂としては例えば、パーム油、パーム核油、ヤシ油、微細藻類油、コーン油、綿実油、大豆油、ナタネ油、米油、ヒマワリ油、サフラワー油、オリーブ油、キャノーラ油、牛脂、乳脂、豚脂、羊脂、カカオ脂、シア脂、マンゴー核油、サル脂、イリッペ脂、魚油、鯨油、リン脂質等の各種植物油脂、動物油脂、並びにこれらを水素添加、分別及びエステル交換から選択される1又は2以上の処理を施した加工油脂から選ばれた1種又は2種以上からなるもの、及びこれらを含んでなるものが挙げられる。
本発明の風味増強油脂の製造方法においては、酸化油脂は、牛脂や豚脂、乳脂等の動物油脂が酸化して得られたものであることが、製造された風味増強油脂がより強いコク味増強作用を有するので好ましい。
なお、本発明においては上記酸化油脂は、2種以上の酸化油脂の混合物であってもよい。
また、本発明においては上記酸化油脂は、少なくとも1種の酸化油脂を含んでいればよく、酸化していない通常の食用油脂との混合物であってもよい。上記酸化油脂が酸化油脂と通常の食用油脂との混合物である場合、混合物における通常の食用油脂の含有量は、50質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましい。
本発明では、上記酸化油脂は、原料として実質的に部分硬化油脂を含有しないことが好ましい。
尚、「実質的に部分硬化油脂を含有しない」とは、具体的には、原料である食用油脂中の部分硬化油脂の含有量が5質量%以下であることを意味し、3質量%以下がより好ましく、原料である食用油脂が部分硬化油脂を含有しないことが最も好ましい。
上記酸化油脂が原料として実質的に部分硬化油脂を含有しないことにより、酸化油脂及び得られる風味増強油脂のトランス脂肪酸含量を低減することができる。
尚、本発明において部分硬化油脂とは、水素添加が行われ、且つ、構成脂肪酸中にトランス脂肪酸を10〜55質量%含有する油脂を意味する。
次に酸化油脂の好ましい性状について述べる。
本発明において酸化油脂とは、過酸化物価が少なくとも0.05以上である油脂を指す。
本発明においては、とりわけ、酸化油脂の過酸化物価が5〜60であることが好ましく、10〜40であることがより好ましく、20〜35であることが最も好ましい。
過酸化物価の値が60超である酸化油脂を本発明の原料として用いた場合、過酸化物価を十分低減させる際に、油脂を構成するグリセリド中の不飽和脂肪酸が同時に還元されやすく、それにより物性の変化を伴いやすい上、トランス脂肪酸含量が増加してしまうおそれがある。
また、過酸化物価の値が5以上である酸化油脂の場合、得られる風味増強油脂のコク味増強作用がより強化されるため好ましい。
本発明において油脂の過酸化物価は、「日本油化学会制定 基準油脂分析試験法2.5.2.1-2013」に準拠して測定できる。
また上記酸化油脂のアニシジン価は、35以下であることが好ましく、30以下であることがより好ましく、15〜25の範囲であることが最も好ましい。
本発明に用いる酸化油脂のアニシジン価が35超であった場合、本発明により得られる風味増強油脂を食品中に含有させた際、異味が生じやすくなってしまう。
また、本発明に用いる酸化油脂のアニシジン価が15以上であった場合、十分なコク味増強作用を有する風味増強油脂を得ることができるので好ましい。
本発明においてのアニシジン価は、「日本油化学会制定 基準油脂分析試験法2.5.3-2013」に準拠して測定できる。
食用油脂が酸化を受ける条件については特に限定されず、熱酸化や光酸化等、どのような酸化の過程をとってもよく、また自然に酸化された油脂を用いてもよく、人為的に酸化された油脂を用いてもよい。
なお、食用油脂を人為的に酸化させる場合においては、その油脂の酸化させる処理手法は特に制限されないが、効率良く油脂を酸化させることが出来る上、過酸化物価とアニシジン価の値を上記の特定範囲に調整することが容易である点から、加熱処理による熱酸化を行うことが好ましい。
加熱処理による熱酸化の具体的な方法としては、例えば、酸素あるいは空気雰囲気下で油脂を加熱する方法、水や、塩溶液を添加して、酸素存在下で加熱処理する方法、乾燥空気を吹き込みながら加熱酸化する方法等が挙げられる。
なお、食用油脂の熱酸化に際し、酸化中の油脂が均一になるように、撹拌を行うことが望ましい。
油脂の加熱処理による酸化は、酸化させた油脂が上記の範囲の過酸化物価及びアニシジン価を有するように行うことが好ましい。酸化させた油脂が上記の範囲の過酸化物価及びアニシジン価に到達する条件であれば、熱酸化の際の油脂の加熱条件については特に限定されないが、好ましくは80〜180℃、より好ましくは80〜160℃、さらに好ましく80〜140℃であり、加熱時間は温度によって異なり適宜選択すれば良いが、例えば180℃では5分〜30分、80℃では6〜48時間の範囲が望ましい。
食用油脂の酸化処理後において、酸化させた食用油脂(酸化油脂)にトコフェロール等の抗酸化剤を含有させることで、工程間における更なる油脂の酸化や保存時の油脂の酸化劣化を抑制することができるため好ましい。酸化させた食用油脂における抗酸化剤の含有量は、油脂中1000ppm以下であることが好ましく、700ppm以下であることがより好ましく、100〜500ppmであることが最も好ましい。
尚、得られた酸化油脂について、必要に応じて脱色や脱臭といった通常の油脂精製を経てもよい。
本発明は、上記酸化油脂を原料として使用し、該酸化油脂中に含有される過酸化物を水素で還元する工程を含むことを特徴とする。
そこで、次に酸化油脂中に含有される過酸化物を水素で還元する工程について述べる。(以下、この工程を単に還元工程と呼称する場合がある。)
本発明における還元工程は、上記酸化油脂中に含有される過酸化物を水素で還元する。具体的には、上記酸化油脂を、水素ガス加圧下で、水素化触媒と共に60〜130℃で加熱することにより行うことができる。上記酸化油脂を水素で、特に上記の条件下で還元することにより、上述したように、油脂を構成する脂肪酸中の多重結合が還元されるよりも先に、油脂中の過酸化物が還元され、トランス脂肪酸含量を高めることなく、また、沃素価の変動なく、酸化油脂中の過酸化物を還元し、伴って、酸化油脂中のカルボニル化合物を還元することができる。本発明において過酸化物とは、ペルオキシド構造(−O−O−)を有する化合物を広く包含し、例えば、油脂が酸化することによって生成した過酸化物だけでなく、油脂以外の物質が酸化することによって生成した過酸化物も含まれる。
この工程を経ることで、油脂が元来有するコク味増強作用が強化される。
尚、本発明において、「トランス脂肪酸含量を高めることなく」とは、還元工程前後における油脂中のトランス脂肪酸含量の増加量が2.5%以下、好ましくは1.5%以下であることを指す。又、「沃素価の変動なく」とは、還元工程を経る前の酸化油脂の沃素価を基準に、沃素価の変動率が5%以下、好ましくは3%以下であることを指す。
本発明においては、水素ガス加圧化で、酸化油脂中に含有される過酸化物を水素で還元する。過酸化物を還元するために用いる水素ガスとしては、100%水素ガスを用いることができる。また、触媒を被毒しない限りにおいて、水素以外のガスを含む水素混合ガスを用いることもできる。
還元工程に用いられる水素化触媒について述べる。
本発明に用いられる水素化触媒は、酸化油脂中の過酸化物を水素によって還元することが出来る物であれば特に限定されず、ニッケル触媒やプラチナ触媒、パラジウム触媒等を選択することが出来る。
この中でも特に、安価であり、且つ低温域においても安定的に過酸化物の還元を行うことが出来るため、ニッケル触媒を選択することが好ましい。
なお、ニッケル触媒は、選択性を有するニッケル触媒であっても、非選択性を有するニッケル触媒であってもどちらでもよい。
また、触媒の形状は粉末状であってもフレーク状であっても好ましく使用されるが、フレーク状である方が油脂に対して飛散することなく添加できるため好ましい。
水素化触媒の添加量は、油脂量に対して設定され、対油脂0.01〜0.5質量%添加されるのが好ましく、対油脂0.05〜0.3質量%添加されるのがより好ましい。対油脂0.01質量%未満が添加されると、効率よく過酸化物を還元することができないおそれがある。また対油脂0.5質量%超が添加されると、酸化油脂中のグリセリドを構成する脂肪酸の多重結合を還元してしまうおそれがある。
また、本発明中における還元工程は水素ガス加圧下で行われるが、この時、水素ガスは0.1〜2.5kg/cmの圧力範囲で注入されることが、本発明において沃素価の変動を最も小さくし、酸化油脂中の過酸化物を還元することができるため好ましい。
なお、より好ましくは、0.5〜1.7kg/cm、最も好ましくは、0.6〜1.5kg/cmの圧力範囲で注入される。
なお、還元反応を行う容器内のヘッドスペースの空気を水素ガスで十分置換し、上記圧力範囲とした後で加熱を開始することが、酸化油脂の沃素価の変動を抑制する観点から好ましい。
ニッケル触媒による酸化油脂の還元工程中、酸化油脂の温度が、60〜130℃の温度範囲となるように加熱され、70〜120℃の温度範囲となるように加熱されることが好ましく、80〜115℃の温度範囲となるように加熱されることがより好ましい。
酸化油脂の温度が60℃未満の場合、十分に酸化油脂中の過酸化物の還元を行うことが出来ない上、選択した油脂種によっては油脂結晶が生じてしまうおそれがある。また酸化油脂の温度が120℃超の場合、沃素価が変動しないように制御しながら過酸化物の還元を行うことができなくなるおそれがある。
酸化油脂の加熱時には撹拌を行うことにより、過酸化物及びカルボニル化合物を効率よく還元することが出来るため好ましい。
加熱時の撹拌については、撹拌羽根等を用い、100〜750rpmの速度で撹拌することが好ましく、150〜600rpmの速度で撹拌することがより好ましく、200〜500rpmの速度で撹拌することが最も好ましい。
加熱時の撹拌速度が100rpmを下回ると、酸化油脂中に水素ガスが包含されず、過酸化物やカルボニル化合物の還元反応の進行が極めて遅くなるおそれがある。また、加熱時の撹拌速度が750rpmを上回ると、酸化油脂中に水素ガスが過剰に包含され、酸化油脂の還元反応を制御することが困難になるおそれがある。
還元工程の終点は、還元工程を経る前の酸化油脂の沃素価を基準に、沃素価の変動率が5%以下、好ましくは3%以下となる範囲のうち、過酸化物価が5以下となる点を終点とすることが好ましく、3以下となる点を終点とすることがより好ましく、1以下となる点を終点とすることが最も好ましい。
沃素価の変動率が5%超となる範囲を終点とする場合、油脂の物性が変化するおそれがある他、トランス脂肪酸含量が増加してしまうおそれがある。
また、沃素価の変動率が5%以下の範囲のうち、過酸化物価が5超である点を終点とする場合、得られる油脂の劣化が早まるおそれがある。
本発明おいて油脂の沃素価は、「日本油化学会制定 基準油脂分析試験法2.3.4.1-2013」に準拠して測定できる。
なお、好ましい風味増強油脂を得る観点から、還元工程の終点において、油脂のアニシジン価は10.0以下となっていることが好ましく、5.0以下となっていることが、より好ましい。
還元工程の後、油脂中から水素化触媒を除去する必要がある。水素化触媒の除去法は、特に限定されず、そのまま濾布等で濾別してもよく、またシリカゲルやセライト、活性炭等の濾過助剤を用いてもよい。この中でも濾過助剤を用いた濾過除去が、水素化触媒を効率よく除去する観点から好ましい。
濾過助剤としてシリカゲルを用いた水素化触媒の除去を行うことにより、漏れなく水素化触媒を油脂中から除去できる上、得られる風味増強油脂が強いコク味増強作用を呈するようになることから特に好ましい。
尚、シリカゲルやセライト、活性炭等の濾過助剤を用いる場合、その使用量は、油脂中から水素化触媒が除去されるものであれば特に限定されるものではないが、油脂重量に対して1〜10質量%を用いることにより、水素化触媒を系中から十分好ましく除くことが出来る。
上記工程を経て製造された風味増強油脂は、コク味増強作用を得る目的から、一般の食用油脂の一部又は全部を置き換えて、食品に含有させることができる。すなわち、マーガリン、ショートニング、ホイップクリーム、バタークリーム等の一般の油脂製品、あるいは油脂を使用する飲食品の製造時に、使用油脂の一部又は全部を、本発明で得られた風味増強油脂に置き換えて使用することができる。
なお、油脂を含有する食品の場合、上記の風味増強油脂を飲食品に直接使用してもよく、また、種々の食用油脂、またはマーガリン、ショートニング、ホイップクリーム等の油脂組成物に対して、あらかじめ含有させた油脂製品を使用してもよい。なお、得られる風味増強油脂の風味の強さや目指す飲食品の風味強度によって適宜調整されるが、好ましくは使用する食用油脂の0.005〜30質量%、より好ましくは0.01〜15質量%が本発明の製造方法によって得られた風味増強油脂であることが好ましい。
上記風味増強油脂を含有する飲食品としては、油脂を使用する飲食品であればとくに制限なく使用することができ、例えば、パスタソース、ドレッシング、マヨネーズ、トマトケチャップ、ウスターソース、とんかつソース、ふりかけ等の調味料、コンソメスープ、ポタージュスープ等のスープ類、焼肉、ハンバーグ、ミートボール、肉団子、ミートローフ、ミートパテ、チキンナゲット、ミートコロッケ、メンチカツ、つくね、ハム、ソーセージ、ウインナー等の畜産加工品、佃煮、珍味等の水産加工品、ポテトチップス、コーンスナック、煎餅等のスナック類、ドーナツやフライ食品、食パン、菓子パン、デニッシュ・ペストリー、バラエティーブレッド、バターロール、ソフトロール、ハードロール、スイートロール、米菓、蒸しパン、蒸しケーキ、パイ、どら焼、今川焼き、ホットケーキ、クレープ、バターケーキ、スポンジケーキ、クッキー、ビスケット、クッキー、クラッカー、乾パン、プレッツエル、カットパン、ウェハース、サブレ、マカロン、シュー、ワッフル、スコーン、発酵菓子、ピザ生地、中華饅頭等のベーカリー食品類、煮物、揚げ物、辛子蓮根、焼き物、カレー、シチュー、グラタン等の調理食品、パスタ、うどん、ラーメン等の麺類食品、フラワーペースト、餡等の製菓製パン用素材、チョコレート、キャンディ、ゼリー、アイスクリーム、ガム等の菓子類、饅頭、カステラ等の和菓子類、コーヒー、コーヒー牛乳、紅茶、ミルクティー、豆乳、栄養ドリンク、野菜飲料、食酢飲料、ジュース、スポーツドリンク等の飲料、ミルクレモンチェッロ、カルーアミルク等のアルコール飲料類、牛乳、ヨーグルト、チーズ等の乳や乳製品等が挙げられる。飲食品における風味増強油脂の含有量には特に制限はなく、飲食品の種類等に応じ適宜決定すればよい。
次に本発明の、油脂を含有する食品の風味改善方法について述べる。
本発明の油脂の風味改善方法は、上記のようにして得られた風味増強油脂を食品に使用することを特徴とするものである。
食品の種類、使用方法、使用量については上述のとおりである。
本発明を具体例を基に詳述する。本発明は下記内容に限定されない。
(比較例1)酸化油脂の調製(牛脂)
油脂の酸化を加速する条件として、下記の条件で牛脂を酸化した。
容量5000mLの四つ口フラスコに、精製牛脂を2000g量りとり、口を閉じずに乾燥空気を3.0L/minで吹き込みながら、マントルヒーターで油脂温度が150℃になるように加熱し、更にアンカー型撹拌羽根を用いて、300rpmで撹拌し、初めて過酸化物価が30以上となった点を終点とし酸化させた。酸化させた牛脂に抗酸化剤としてトコフェロールを300ppm加え、牛脂の酸化油脂(以下、酸化油脂A)を得た。
得られた酸化油脂Aの過酸化物価は30.0、アニシジン価は20.0、沃素価は50.8、トランス脂肪酸含量は3.5質量%であった。酸化油脂Aは部分硬化油脂を含有していなかった。
(比較例2)酸化油脂の調製(パーム分別硬部油)
容量5000mLの四つ口フラスコに、精製パーム分別硬部油を2000g量りとり、製造例1と同様の条件で初めて過酸化物価が25以上となった点を終点とし酸化させた。この後、抗酸化剤としてトコフェロールを300ppm加えて、パーム分別硬部油の酸化油脂(以下、酸化油脂B)を得た。
得られた酸化油脂Bの過酸化物価は26.0、アニシジン価は15.0、沃素価は36.0、トランス脂肪酸含量は0.4質量%であった。酸化油脂Bは部分硬化油脂を含有していなかった。
(比較例3)酸化油脂の調製(米油)
容量5000mLの四つ口フラスコに、精製米油を2000g量りとり、製造例1と同様の条件で、初めて過酸化物価が15以上となった点を終点とし精製米油を酸化させ、抗酸化剤としてトコフェロールを300ppm加えて、米油の酸化油脂(以下、酸化油脂C)を得た。
得られた酸化油脂Cの過酸化物価は15.8、アニシジン価は12.3、沃素価は106.0、トランス脂肪酸含量は1.0質量%であった。酸化油脂Cは部分硬化油脂を含有していなかった。
(比較例4)酸化油脂の調製(カカオ脂)
容量5000mLの四つ口フラスコに、カカオ脂を2000g量りとり、製造例1と同様の条件で、カカオ脂を過酸化物価が30以上となった点を終点とし酸化させ、抗酸化剤としてトコフェロールを300ppm加えて、カカオ脂の酸化油脂(以下、酸化油脂D)を得た。
得られた酸化油脂Dの過酸化物価は30.1、アニシジン価は19.7、沃素価は36.0、トランス脂肪酸含量は0.0質量%であった。酸化油脂Dは部分硬化油脂を含有していなかった。
(比較例5)酸化油脂の調製(乳脂)
容量5000mLの四つ口フラスコに、バターオイルを2000g量りとり、製造例1と同様の条件で、初めて過酸化物価が20以上となった点を終点としバターオイルを酸化させ、抗酸化剤としてトコフェロールを300ppm加えて、バターオイルの酸化油脂(以下、酸化油脂E)を得た。
得られた酸化油脂Eの過酸化物価は23.6、アニシジン価は13.2、沃素価は35.5、トランス脂肪酸含量は2.5質量%であった。酸化油脂Eは部分硬化油脂を含有していなかった。
(比較例6)酸化油脂の調製(菜種油)
容量5000mLの四つ口フラスコに、精製菜種油を2000g量りとり、製造例1と同様の条件で、精製菜種油を酸化させ、抗酸化剤としてトコフェロールを300ppm加えて、菜種油の酸化油脂(以下、酸化油脂F)を得た。
得られた酸化油脂Fの過酸化物価は30.1、アニシジン価は19.7、沃素価は131.0、トランス脂肪酸含量は1.5質量%であった。酸化油脂Fは部分硬化油脂を含有していなかった。
(比較例7)酸化部分硬化油脂の調製(菜種油)
精製菜種油に硬化用ニッケル触媒(堺化学製)0.1質量%を添加し、200℃で水素添加後、脱色(白土3%、85℃、9.3×102Pa以下の減圧下)、脱臭(250℃、60分間、水蒸気吹き込み量5%、4.0×102Pa以下の減圧下)を行い、沃素価69である菜種油の部分硬化油脂を得た。尚、得られた菜種油の部分硬化油脂の過酸化物価は0.4、アニシジン価は2.4、トランス脂肪酸含量は50.2質量%であった。
次にこの部分硬化油脂を、容量3000mLの四つ口フラスコに1500g量りとり、マントルヒーターで油脂温度が150℃になるように加熱し、アンカー型撹拌羽根を用いて、300rpmで撹拌しながら、口を閉じずに乾燥空気を3.0L/minで吹き込み、1時間加熱処理を行った。加熱処理の後、抗酸化剤としてトコフェロールを300ppm加え、菜種油の酸化部分硬化油脂(以下、単に酸化部分硬化油脂と記載する)を得た。尚、沃素価、過酸化物価、アニシジン価、トランス脂肪酸含量については表1に示すとおりであった。
(実施例1)風味増強油脂(牛脂)の製造方法
耐圧容器中に溶解させた酸化油脂Aを原料として500g量りとり、水素化触媒として硬化用ニッケル触媒(堺化学製)を0.1質量%加え、ヘッドスペース部分を水素ガスで十分置換した後、容器内の水素圧を上げ始め、耐圧容器内の水素圧が1.0kg/cmに到達したところで、加熱撹拌を行い、酸化油脂の還元工程を開始した。尚、加熱は油温が90℃となるように調節し、撹拌はアンカー型撹拌羽根を用いて300rpmで行った。
途中、適宜サンプリングを行い、過酸化物価、アニシジン価、沃素価について分析し、初めて過酸化物価が3以下となった点を終点とし、シリカゲルを濾過助剤として、水素化触媒を濾別して取り除き、牛脂を原料とする風味増強油脂(以下、風味増強油脂A)を得た。尚、終点を迎えた際の沃素価、過酸化物価、アニシジン価、トランス脂肪酸含量については、表1に示すとおりであった。
(実施例2)風味増強油脂(パーム分別硬部油)の製造方法
酸化油脂Bを原料として、実施例1と同様の操作を行った。途中、適宜サンプリングを行い、過酸化物価、アニシジン価、沃素価について分析し、初めて過酸化物価が3以下となった点を終点とし、シリカゲルを濾過助剤として、水素化触媒を濾別して取り除き、パーム分別硬部油を原料とする風味増強油脂(以下、風味増強油脂B)を得た。尚、終点を迎えた際の沃素価、過酸化物価、アニシジン価、トランス脂肪酸含量については、表1に示すとおりであった。
(実施例3)風味増強油脂(米油)の製造方法
酸化油脂Cを原料として、実施例1と同様の操作を行った。途中、適宜サンプリングを行い、過酸化物価、アニシジン価、沃素価について分析し、初めて過酸化物価が3以下となった点を終点とし、シリカゲルを濾過助剤として、水素化触媒を濾別して取り除き、米油を原料とする風味増強油脂(以下、風味増強油脂C)を得た。尚、終点を迎えた際の沃素価、過酸化物価、アニシジン価、トランス脂肪酸含量については、表1に示すとおりであった。
(実施例4)風味増強油脂(カカオ脂)の製造方法
酸化油脂Dを原料として、実施例1と同様の操作を行った。途中、適宜サンプリングを行い、過酸化物価、アニシジン価、沃素価について分析し、初めて過酸化物価が3以下となった点を終点とし、シリカゲルを濾過助剤として、水素化触媒を濾別して取り除きカカオ脂を原料とする風味増強油脂(以下、風味増強油脂D)を得た。尚、終点を迎えた際の沃素価、過酸化物価、アニシジン価、トランス脂肪酸含量については、表1に示すとおりであった。
(実施例5)風味増強油脂(乳脂)の製造方法
酸化油脂Eを原料として、実施例1と同様の操作を行った。途中、適宜サンプリングを行い、過酸化物価、アニシジン価、沃素価について分析し、初めて過酸化物価が3以下となった点を終点とし、シリカゲルを濾過助剤として、水素化触媒を濾別して取り除き、乳脂を原料とする風味増強油脂(以下、風味増強油脂E)を得た。尚、終点を迎えた際の沃素価、過酸化物価、アニシジン価、トランス脂肪酸含量については、表1に示すとおりであった。
(実施例6)風味増強油脂(菜種油)の製造方法
酸化油脂Fを原料として、実施例1と同様の操作を行った。途中、適宜サンプリングを行い、過酸化物価、アニシジン価、沃素価について分析し、初めて過酸化物価が3以下となった点を終点とし、シリカゲルを濾過助剤として、水素化触媒を濾別して取り除き、菜種油を原料とする風味増強油脂(以下、風味増強油脂F)を得た。尚、終点を迎えた際の沃素価、過酸化物価、アニシジン価、トランス脂肪酸含量については、表1に示すとおりであった。
以下、実際の製造例を基に本発明の製造方法によって得られる、風味増強油脂の具体的な効果について更に詳述する。官能評価によって「コク味」「後味の広がり」「劣化臭」の3項目について評価した結果を下に示す。なお、各製造例における「コントロール」は風味増強油脂、もしくは酸化油脂の系中への添加分を食品に配合される油脂で同量置換したものである。
評価基準(コク味の程度)
5点:強くコク味が感じられた
3点:コク味が感じられた
1点:コク味が弱いが感じられた
0点:コク味が感じられない
(後味の広がりの程度)
5点:口腔中での風味の余韻を強く感じられた
3点:口腔中での風味の余韻が感じられた
1点:弱いが、口腔中での風味の余韻を確認できた
0点:口腔中での風味の余韻が確認できず、風味の残存が見られなかった
(劣化臭の程度)
5点:劣化臭が全く感じられなかった
3点:飲食品の風味を損ねない範囲で、極僅かに劣化臭を感じた
1点:劣化臭が感じられた
0点:強度の劣化臭を感じた
ここで、評価基準中の「コク味」とは、喫食して感ぜられる飲食品の風味の厚みや濃厚感、ボディを意味し、「後味の広がり」とは咀嚼し嚥下した後の口中への風味の残存の程度、風味の余韻を意味するものである。また、劣化臭とは、喫食から嚥下に至る間において違和のある刺激として感ぜられる風味を意味するものである。
尚、パネラーの合計点数が41〜50点の場合◎、31〜40点の場合○、21〜30点の場合△、11〜20点の場合×として、官能評価結果の比較分析を行った。
(製造例1:カレー)
表2に示す配合でカレールーを作成した。まず薄力粉、カレー粉、砂糖、塩、グルタミン酸ナトリウムを鍋に秤量し、だまにならないよう少量ずつ水を加え、中火で加熱しながら均一になるよう撹拌を行った。一旦、沸騰した後に火勢を弱火とし、鍋の中身の重量が秤量時の0.8倍になるまで、撹拌しながら加熱を続けた。これをさらに60℃に調温し、豚脂を加えた後、風味増強油脂A又は酸化油脂Aをコク味増強作用を得る目的で加え、良く撹拌し、カレーA、Bを得た。
酸化油脂Aを添加しないカレールーをコントロールとし、得られたカレー(製造例1−1、製造例1−2)を評価基準に則って、コク味、後味の広がり、劣化臭の観点からパネラー10人で官能評価を実施し、10人のパネラーの合計点を評価点数とし、結果を下記のようにして表2に示した。
豚脂のみを使用したコントロールでは、劣化臭は感じられないもののコク味増強の効果が得られにくく、後味の広がりも得られなかった。酸化油脂Aを添加した製造例1−2では、コントロールと比較するとコク味増強の効果が見られたが、劣化臭が強く全体の風味を損ねていた。また後味の広がりに欠け、好ましいカレールーが得られなかった。一方、製造例1−1では、風味増強油脂Aの添加に伴う劣化臭は感じられず、良好なコク味と後味の広がりが感じられるカレールーとなっていた。
(製造例2:フライ油およびフライドポテト)
パーム分別軟部油(沃素価56、(株)ADEKA製)に対して、風味増強油脂B、酸化油脂B、風味増強油脂C、酸化油脂Cをそれぞれ加え、これをフライ油とした。(表3参照)得られたフライ油1kgずつをそれぞれ鍋に入れ180℃に加熱し、冷凍フライドポテト(オレアイダ 細切りフライドポテト(シューストリング)、ハインツジャパン)100gを3分フライした。
得られたフライドポテトを上記評価基準に則って評価した。
コントロールの評価では、劣化臭は感ぜられないもののコク味、後味の広がりに欠ける評価結果となった。酸化油脂B、酸化油脂Cを使用した製造例2−2、製造例2−4では、コントロールにはみられなかった劣化臭が調理後のフライドポテトから感じられ、好ましくなかった。一方、風味増強油脂B、風味増強油脂Cを使用した製造例2−1、製造例2−3では劣化臭等なく、コントロールには感じられなかったコク味や後味の広がりを有するフライドポテトを得ることが出来た。
(製造例3:サブレ)
マーガリン(ソシエル、(株)ADEKA)75部に予め酸化油脂D、風味増強油脂Dを加えて均質に混ぜたものと粉糖をビーターで比重が0.8となるまで撹拌した後、卵黄を加えて更に混合した。卵黄が均一に混合された後、ふるった薄力粉を加え更に混合し、得られた生地を一晩冷蔵庫で生地を休ませせた。この生地を2.5mmに圧延し、型抜きし160℃で約15分焼成して、サブレを得た。(表4参照)
得られたサブレ―をパネラー10名が上記評価基準に則って評価した。
サブレの評価系においては、酸化油脂Dを含有させた製造例3−2とコントロールとの間に、コク味や後味の広がりの項目において差がみられない評価結果となった。風味増強油脂Dを含有させた製造例3−1においては、コントロール及び、酸化油脂Dを用いた製造例3−2の双方にみられなかったコク味や後味の広がりが確認され、好ましいサブレが得られていた。
(製造例4:プルマン型食パン(1))
強力粉(イーグル:日本製粉製)70質量部、生イースト2質量部、イーストフード及び水をミキサーボウルに投入し、フックを使用し、低速で2分、中速で2分混合し、中種生地を得た。尚、捏ね上げ温度は24℃であった。この中種生地を、温度28℃、相対湿度85%の恒温室で、4時間中種醗酵を行った。尚、終点温度は29℃であった。(表5中、「中種」項の配合参照)
中種醗酵の終了した生地を再びミキサーボウルに投入し、更に、強力粉(イーグル:日本製粉製)、上白糖、脱脂粉乳、食塩及び水を添加し、低速で3分、中速で3分本捏ミキシングした。ここで、ショートニング(プレミアムショートCF、(株)ADEKA)に風味増強油脂E、酸化油脂Eを予め添加し均一に混合したもののいずれかを投入し、フックを使用し、低速で3分、中速で3分、高速で1分ミキシングを行い、食パン生地を得た。
尚、得られた食パン生地の捏ね上げ温度は28℃であった。(表5中、「本捏」項の配合参照)
ここで、フロアタイムを20分とった後、230gに分割・丸目を行った。次いで、ベンチタイムを20分とった後、モルダー成形し、6本をU字にして3斤型プルマン型に入れ、38℃、相対湿度85%で50分ホイロをとった後、200℃に設定した固定窯に入れ40分焼成してプルマン型食パンA、Bを得た。
得られたプルマン型食パンを上記評価基準に則って、コク味、後味の広がり、劣化臭の観点でパネラー10人で官能評価を行い、10人のパネラーの合計点を評価点数とし、結果を下記のようにして表5に示した。
酸化油脂Eを加えた製造例4−2では、コントロールと比較してコク味の評価は同等程度であった。しかし、後味の広がりに乏しく、劣化臭が強く発現してしまうことが確認された。一方、製造例4−1ではコントロールと同等の劣化臭の程度であり、感じられなかった。またコク味や後味の広がりについては、コントロール及び製造例4−2と比較して強い効果が得られた上、風味増強油脂の基質となる乳脂の好ましい風味が付与されていることを確認した。
(製造例5:プルマン型食パン(2))
製造例4の配合中の風味増強油脂Eを風味増強油脂Fに、酸化油脂Eを酸化部分硬化油脂に同量置換し、製造例4と同様の手法でプルマン型食パンを得た。(表6参照)
得られたプルマン型食パンを上記評価基準に則って、コク味、後味の広がり、劣化臭の観点でパネラー10人で官能評価を行い、10人のパネラーの合計点を評価点数とし、結果を下記のようにして表6に示した。
製造例5−2では、コク味や後味の広がりといった観点においてコントロールと比較して、良好な効果を示す結果が得られた。しかし、劣化臭についてはコントロールよりも違和のある刺激が強く感じられてしまい、この点劣っていた。これは、製造工程の最後に酸化工程を経ることで、例えば過酸化物のような、刺激のある風味の因子となりやすい物質が含有されるためであると考えられる。
一方、製造例5−1ではコク味や後味の広がりの観点において好ましい結果が得られ、また劣化臭もコントロール同様感ぜられなかった。
これは風味増強油脂の製造工程において、酸化油脂に含有される過酸化物が水素による還元工程を経ることで、油脂が有する風味の豊かさや美味しさ、コク味を強める物質へと変換されるためであると推定される。

Claims (6)

  1. 酸化油脂を原料とする風味増強油脂の製造方法であって、
    上記酸化油脂中に含有される過酸化物を水素で還元する工程を含む風味増強油脂の製造方法。
  2. 上記酸化油脂を水素ガス加圧下で、水素化触媒と共に60〜130℃で加熱する、請求項1に記載の風味増強油脂の製造方法。
  3. 上記酸化油脂を0.1〜2.5kg/cmの水素ガス加圧下で、水素化触媒と共に加熱する、請求項1又は2に記載の風味増強油脂の製造方法。
  4. 上記酸化油脂が原料として実質的に部分硬化油脂を含有しない請求項1〜3の何れか1項に記載の風味増強油脂の製造方法。
  5. 上記酸化油脂の過酸化物価が5〜60である、請求項1〜4の何れか1項に記載の風味増強油脂の製造方法。
  6. 請求項1〜5の何れか1項に記載の製造方法により得られた風味増強油脂を飲食品に含有させる工程を含む、風味増強油脂を含有する飲食品の風味改善方法。
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