JP2018104805A - 溶鋼の昇温方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】真空脱ガス装置にてAlを含有した真空槽内溶鋼表面に酸素ガスなどの酸化性ガス吹き付ける溶鋼の昇温処理において、溶鋼中介在物量とスラグ中FeO濃度を大幅に低減する溶鋼の昇温方法を提供する。【解決手段】真空脱ガス処理装置を用いてAlを含有した真空槽内溶鋼表面に酸素ガスなどの酸化性ガス吹き付ける溶鋼の昇温処理において、酸化性ガス吹き付け終了前から溶鋼にCaO系フラックスを吹き付けまたは吹き込みを開始し、酸化性ガス吹き付け終了後にフラックスの吹き付けまたは吹き込みを停止する。【選択図】図3

Description

本発明は減圧下溶鋼に酸素ガスとAl等の金属元素を添加して溶鋼温度を上昇させる溶鋼の昇温方法に関する。
転炉で脱炭処理された溶鋼は取鍋に出鋼され、RH式真空脱ガス装置(以下、RH)やタンク脱ガス装置などの真空脱ガス装置にて処理を施された後、連続鋳造機等によって鋳造される。真空脱ガス装置では脱水素などの脱ガス処理の他、合金添加による成分調整、環流時間調整による介在物低減、酸素ガスなどの酸化性ガスを用いた溶鋼温度上昇処理(以下、昇温処理)が行われる。
昇温処理とは溶鋼にAlなどの還元性の強い金属を添加し、さらに溶鋼に酸素ガスなどの酸化性ガスを添加することで、還元性の強い金属と酸化性ガスとの反応熱を利用して溶鋼温度を上昇させる処理である。この方法は非常に簡便であることや、酸素ガスの添加量を調整することで昇温量を精度良く制御できることから、広く用いられている。
しかし、この昇温処理では以下の2つの課題があった。ここではAlと酸素ガスを例に説明する。
第一は介在物の生成抑制である。昇温処理ではAlと酸素ガスとの反応で生じる反応熱を利用しているが、この反応を利用すると反応生成物としてAl23が生成する。このAl23が介在物として溶鋼中に残留したまま鋳造されると表面疵などの欠陥の起点となってしまうため、これらの介在物の生成を抑制する必要があった。
第二はスラグによる再酸化である。溶鋼に供給された酸素ガスの一部は溶鋼中Alと完全に反応できずにFeOとして取鍋内溶鋼表面のスラグに移行するため、スラグ中のFeO濃度が増加する。スラグ中のFeOは真空脱ガス装置処理中から鋳造完了までの間、徐々に溶鋼にOを供給するため、このOと溶鋼中Alが反応し、徐々に溶鋼中Al23が増加する。これらのAl23は前述した反応の結果生成し溶鋼中に残留したAl23と同じく欠陥の起点となる。従って、スラグ中FeOの増加を抑制する必要があった。
第一の課題の対策としては昇温処理後に介在物を除去する方法が多く採用され、第二の課題の対策としてはAlとOとの反応効率を高める方法が採用されてきた。なお、昇温処理後の介在物の除去は環流時間の延長が一般的であるため、これまで主に第二の課題を解決することを目的とした多数の技術が報告されている。
特許文献1では酸素ガスを溶鋼に吹き付けるためのノズル形状と燃焼帯の形状を特定条件に調整することで高効率かつ高速で酸化精錬する方法が開示されている。特許文献2では溶鋼成分に応じて環流量と送酸量を適正範囲に制御することでスラグ中のFeOやMnOを低減する溶鋼の昇熱方法が開示されている。また、特許文献3ではRH真空槽内溶鋼表面に酸素ガスを吹き付けるとともにAlまたはAl含有還元材を添加する方法が開示されている。
特許第4938246号公報 特開平9−249910号公報 特開平5−287359号公報
以上のようにAlとOとの反応効率を高め清浄性を向上させる技術が多数開発されてきたが、一方で以下の課題が残っていた。
第一の課題に対しては環流時間延長などの対策が取られているが、生産性の観点から工業的には限界があった。酸素ガス量が多くなると生成する介在物量も増加するため、酸素ガス供給後の環流時間を延長することで介在物除去を促進させる必要がある。しかし、酸素ガス供給量が多い時点で処理時間が長くなっており、さらに環流時間を延長することは総処理時間の大幅な延長となり生産性の大きな課題となっていた。
加えて、昇温処理末期は昇温処理開始時よりも溶鋼中Al濃度が低下しているため、Al脱酸力が低下し、酸素活量が上昇する。このため、上吹き酸素噴流と真空槽内溶鋼表面との衝突部分において溶鋼への酸素の過剰溶解が容易になるため、最終的に生成する介在物も増加してしまう。
第二の課題に対しては先行技術により効果が得られていたが、酸素ガス量が多くなると十分にスラグ中FeOやMnOの濃度を抑制することが困難であった。昇温処理末期には溶鋼中Al濃度も低下しているため、溶鋼中の酸素活量が上昇しやすくなる。このため、FeOやMnOが溶鋼中でより安定的に存在できるようになるため、溶鋼からスラグへ移行してしまう。
以上のように溶鋼の昇温処理では処理末期に酸素活量上昇が容易となるため、介在物やスラグ中FeO,MnOの増加が発生するという課題があった。
本発明は、上記課題に鑑み、真空脱ガス処理装置におけるAlを含有した真空槽内溶鋼表面に酸素ガスなどの酸化性ガス吹き付ける溶鋼の昇温処理において、溶鋼中介在物量とスラグ中FeO濃度を大幅に低減させる溶鋼の昇温方法を提供することにある。
本発明者は上記の目標を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、酸素供給終了前から酸素供給終了以降までCaO系フラックスを溶鋼に吹き付けまたは吹き込むことで溶鋼中介在物量とスラグ中FeO濃度を大幅に低減することを見出した。
本発明は以上の知見に基づいてなされたもので、その要旨は以下の通りである。
(a)真空脱ガス処理装置を用いて真空槽内溶鋼表面に酸化性ガスを吹き付ける、Alを含有した溶鋼の昇温処理において、酸化性ガス吹き付け終了前から溶鋼へのCaO系フラックスの吹き付けまたは吹き込みを開始し、酸化性ガス吹き付け終了後にCaO系フラックスの吹き付けまたは吹き込みを停止することを特徴とする溶鋼の昇温方法。
(b)真空脱ガス処理中の経過時間比率である時期(%)について、真空槽内溶鋼表面への酸化性ガスの吹き付け開始時期を0%、酸化性ガスの吹き付け終了時期を100%と定め、CaO系フラックスの吹き付けまたは吹き込みによる供給開始時期(St(%))を60%以上80%以下、供給停止時期(Et(%))が下記(1)式を満足することを特徴とする(a)に記載の溶鋼の昇温方法。
Et≦0.5×St+80 … (1)
ここで、酸化性ガス吹き付け開始時を時間の起点(0min)として時間を定め、酸化性ガスの吹き付け開始から吹き付け終了までの時間を酸化性ガス吹き付け時間(min)とし、St(フラックス供給開始時期)とEt(フラックス供給停止時期)を以下のように定める。
St(フラックス供給開始時期(%))=(フラックス供給開始時間(min)/酸化性ガス吹き付け時間(min))×100、
Et(フラックス供給停止時期(%))=(フラックス供給停止時間(min)/酸化性ガス吹き付け時間(min))×100
本発明により、高清浄鋼を効率よく、しかも安定的に製造することができる。
フラックス供給開始時期と介在物個数との関係を示す図 フラックス供給開始時期とスラグ中FeO濃度との関係を示す図 フラックス供給開始時期ならびにフラックス供給停止時期の適正範囲を示す図
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明が解決すべき課題としている現象が発生する根本的な原因は、昇温処理末期に溶鋼中Al濃度低下に伴って溶鋼中酸素活量が増加し易くなることにある。つまり、昇温処理末期に酸素活量を低位に維持できればよいことになる。
熱力学的には溶鋼中酸素活量を減少させるためには、AlやSiといった脱酸元素濃度を増加させる、あるいは脱酸生成物の活量を低減する、といった方法が考えられるが、鋼成分規格を有する製品では前者を選択することができないため、後者の原理を活用する必要がある。
脱酸生成物の活量を制御する方法としては、取鍋スラグを利用することもできるが、スラグ全量を制御するには大量の副原料を要するため経済的ではない。よって、取鍋スラグ以外の新たな酸化物を検討する必要がある。
酸素上吹き中に溶鋼中Al濃度が低下し酸素活量は増加するが、生成したAl23の活量を低下することができれば酸素活量は低位に抑制され、過剰な酸素による介在物生成やFeO生成を抑制できる。そして、Al23の活量を低下させるにはAl23生成部位にCaOを共存させればAl23とCaOが化合し、CaO−Al23系酸化物が生成するためAl23活量が低下すると考えられる。つまり、Alと酸素との反応部位に連続的にCaOを添加すればよい。また、形成されたCaO−Al23系酸化物は添加された粒径の大きいCaOを起点に生成するため大きな浮力を有するが、このCaO−Al23系フラックスが介在物と合体浮上することで更に介在物量を低減できる。
以上の考察から、酸素上吹き精錬中に酸化物フラックスを溶鋼に添加することで同一溶鋼中Al濃度でも酸素活量を抑制し、介在物とスラグ中FeOの生成を抑止できないかと考え、実験的に効果と適正条件を検証した。
Al脱酸溶鋼1500kgをAr:7kPa雰囲気下で1873Kに保持し、5%O2−Ar混合ガスを上吹きランスを介して0.5Nm3/minで溶鋼に吹き付けた。溶鋼トンあたりの酸素ガス吹き付け速度は0.017Nm3/(溶鋼ton・min)となる。吹き付け時間は20minとした。CaO系フラックス(以下単に「フラックス」という。)として、CaOの粉体を用いた。混合ガス吹き付け終了前からフラックスの上吹きを行った。フラックス供給速度は100〜500g/minの範囲で任意に制御し、混合ガスと共に溶鋼表面に吹き付けた。なお、一部の実験では上吹きランスからではなく溶鋼に浸漬した浸漬ランスからフラックスを溶鋼に吹き込んだ。
フラックス供給停止後に溶鋼とスラグからサンプルを採取し、介在物個数とスラグ中FeO濃度を定量した。介在物個数は以下の方法で測定した。溶鋼から採取したサンプル断面を鏡面研磨し、光学顕微鏡を用いて6.2cm2の視野を400倍で観察し、10μm以上の介在物個数を計測した。さらに、溶鋼へのフラックス供給を用いなかった実験での個数を1とし、各条件で得られた介在物個数を規格化した。
ここで、真空脱ガス処理中の経過時間比率である「時期」(%)について以下のように定めることにした。混合ガス吹き付け開始時を時間の起点(0min)(時期:0%)として、混合ガス(酸化性ガス)吹き付け終了時間(20min)における前記「時期」を100%とする。そして、フラックス供給開始時期と供給停止時期を上記定めた「時期」によって表現する。即ち、酸化性ガス吹き付け開始時を時間の起点(0min)として時間を定め、酸化性ガスの吹き付け開始から吹き付け終了までの時間を酸化性ガス吹き付け時間(min)とし、フラックス供給開始時期(St(%))は、フラックス供給開始時間(min)/酸化性ガス吹き付け時間(20min)×100(%)として算出でき、フラックス供給停止時期(Et(%))は、フラックス供給停止時間(min)/酸化性ガス吹き付け時間(20min)×100(%)として算出できる。次に二つの時期St、Etが介在物個数とスラグ中FeO濃度に及ぼす影響を評価した。なお、フラックス供給速度の影響は認められなかった。
フラックス供給開始時期Stを種々変更し、フラックス供給停止時期Etを110%一定として処理を行い、それぞれの処理において上記介在物個数指数とスラグ中FeO濃度の評価を行った。溶鋼ならびにスラグのサンプルはいずれの条件でも時期は120%とした。
測定されたフラックス供給開始時期Stと介在物個数との関係を図1に示す。フラックスを使用せず混合ガスのみを上吹きした場合に比較して介在物個数は20%以上低減された。また、フラックス供給開始時期を60%以上80%以下とすることで更に介在物個数が低減された。
測定されたフラックス供給開始時期Stとスラグ中FeO濃度との関係を図2に示す。フラックスを使用せず混合ガスのみを上吹きした場合のFeO濃度は12.5%であったのに対し、フラックスを用いることでFeO濃度は低減されている。また、フラックス供給開始時期を60%以上80%以下とすることで更にFeO濃度が低減され1%以下となった。
以上の実験結果から、真空脱ガス装置を用いてAl含有溶鋼に酸化性ガスを溶鋼表面に吹き付ける処理において、酸素供給末期から酸素供給終了以降までフラックスを溶鋼に吹き付けまたは吹き込むことで溶鋼中介在物量とスラグ中FeO濃度を大幅に低減することを見出した。さらに、フラックス供給開始時期を60%以上80%以下とすることでさらに効果を高められることを見出した。
次に、フラックス供給停止時期Etの影響を調査した。フラックス供給開始時期Stとフラックス供給停止時期Etを変化させて実験を行い、得られた結果を図3に整理した。なお、フラックス未使用時のスラグ中FeO濃度あるいは処理前のスラグ中FeO濃度を13〜15%に調整した。溶鋼ならびにスラグのサンプル時期はフラックス供給停止1分後とした。図中にスラグ中FeO濃度1%以下、介在物個数指数0.4以下の結果が得られた条件を○、FeO濃度10%以下かつ介在物個数指数0.8以下の結果が得られた条件を△、介在物個数指数が0.8を超えて高いか、及び/又は、スラグ中FeO濃度が10%を超えて高い結果が得られた条件を×として示した。
図3から、混合ガス吹き付け終了前からフラックスの供給を開始し(St≦100%)、混合ガス吹き付け終了後にフラックスの供給を停止(Et≧100%)した場合(図3中に実線の区間として表示)には、評価結果がいずれも○または△となり、スラグ中FeO濃度と介在物個数を低減可能であることが解る。そこで、本発明を前記(a)のように規定することとした。
さらに、図1,2に示した高い効果が得られる条件(○)は極めて限定されており、フラックス供給開始時期Stは60%以上80%以下、かつ、フラックス供給停止時期Etは100%以上、かつ、フラックス供給停止時期Et≦0.5×フラックス供給開始時期St+80を満足する(図3中に破線で囲った区間)ことが必要であることを見出した。そこで、本発明の好ましい態様を前記(b)のように規定することとした。
フラックス供給停止時期Etが(1)式で規定する閾値より遅くなると効果がやや低下しているが、これは介在物が若干増加したことによる。酸素上吹きが終了して一定時間が経過するとAl23の生成も停止するが、この後も過剰にCaOを供給しても介在物浮上合体効果は発生せず、むしろフラックス脱酸が進行し、介在物が増加する場合があるためと推定される。
次に、本発明の実施形態を転炉、RH、連続鋳造機を用いたプロセスを例に説明する。
転炉での脱炭処理終了後に溶鋼を取鍋内に出鋼し、取鍋をRHへ移送する。転炉から取鍋への出鋼中に合金元素の他、Si,Alといった脱酸元素やCaOなどの媒溶剤を添加して溶鋼とスラグの組成を制御すると同時にスラグ中FeOやMnOを低減してもよい。
取鍋をRHに移送後、直ちにRHで処理を開始する。RHでは溶鋼成分調整、脱ガス、昇温などの処理が行われるが、どの順番で行ってもよい。清浄性と精錬効率向上には成分調整、昇温、真空脱ガスの順に処理を行うことが望ましい。
測定された溶鋼温度と目標温度の差から、溶鋼の昇温のために上吹きする酸素ガス量とAl添加量を決定する。酸素ガス量とそれに応じたAl量は実績から決定することができ、Al添加量は前述のAl量と処理後の目標Al濃度から決定することができる。
Al添加量を決定したら溶鋼にAlを添加し、速やかに酸化性ガスの吹き込みを開始する。
酸化性ガスの吹き込みは真空槽内に設置した上吹きランスを介して行う。酸化性ガスとしては、酸素ガスを好ましく用いることができる。酸素ガスと不活性ガスとの混合ガスを用いても良い。以下、酸化性ガスとして酸素ガスを用いた場合を例に説明を行う。上吹きランスと真空槽内湯面との距離は1m以上3m以下が望ましい。1m未満では溶鋼飛散が激しくなり、3mを超えて高いと酸素ガスの一部が真空排気系へ吸引されてしまう場合がある。また、ランスノズルの形状は中細末広がり(以下、ラバールノズル)、直管、先細などいかなる形態でも良いが、酸素ガス噴流の直進性の観点からラバールノズルが望ましい。ラバールノズルを用いた際に噴流動圧が高くなり溶鋼飛散が激しくなる場合は不足膨張条件で用いることが望ましい。
酸素ガス上吹き時の真空槽内雰囲気圧力は1.5kPa以上6.7kPa以下が望ましい。1.5kPa未満では溶鋼飛散が激しくなり、6.7kPaを超えて高くなると溶鋼の環流速度が低下し、Alと酸素との反応効率が不安定となる場合がある。
酸素ガスの流量は0.05Nm3/(溶鋼ton・min)以上0.18Nm3/(溶鋼ton・min)以下が望ましい。0.05Nm3/(溶鋼ton・min)未満では処理時間が長くなりすぎ、0.18Nm3/(溶鋼ton・min)を超えて高いと単位時間当たりの発熱量が多くなり耐火物を損傷する場合がある。
本発明は、酸化性ガス吹き付け終了前から溶鋼へのCaO系フラックスの吹き付けまたは吹き込みを開始し、酸化性ガス吹き付け終了後にCaO系フラックスの吹き付けまたは吹き込みを停止することを特徴とする。
本発明においてCaO系フラックスとは、CaOを含有するフラックスであって、CaO単体、あるいはCaOを主体とする媒溶剤を意味する。用いるCaO系フラックスはCaO単体でよいが、耐火物保護や介在物吸収能向上の観点からAl23、MgOあるいはCaF2などを混合したフラックスでも良い。ただし、混合フラックスを用いる場合でもフラックス中のCaOは質量%で60%以上とすることが望ましい。60%未満ではCaO−Al23系酸化物中のAl23活量を十分に低下させられない場合が生じ、効果が不安定となる。
溶鋼中にはCaO系フラックスを粉体として供給する。CaO系フラックスの粒度は+230mesh〜−35meshが望ましい。−230meshではフラックス粒子が小さすぎてCaO−Al23中Al23濃度が短時間で上昇してしまうため活量低減効果が持続しにくい。一方、+35meshではフラックスが大きすぎて溶鋼−フラックス間界面積が不十分となり、効果が不安定となる可能性がある。
前述のように、溶鋼へCaO系フラックスの吹き付けまたは吹き込みを行う。本発明はCaO系フラックスを真空槽内溶鋼表面に吹き付ける方法でも取鍋内溶鋼に吹き込む方法のいずれの方法でも効果が得られるが、溶鋼に吹き込む方法は真空槽内雰囲気圧力やRHでの溶鋼環流量などの操業条件の影響が小さいという利点がある。よって、真空脱ガス装置の操業条件の変更が多い場合あるいは条件の変動が大きい場合は溶鋼へ吹き込む方法の方が安定した効果を得ることができる。
CaO系フラックスを溶鋼に吹き込む場合は取鍋内に浸漬した浸漬ランスを用いる方法でも真空槽内側壁に設けた羽口から吹き込む方法などいかなる方法でもよいが、CaO系フラックスをより効果的に利用するには酸素ガスと溶鋼との接触部分にCaO系フラックスを供給することが望ましいため、上昇側浸漬管直下からCaO系フラックスを吹き込むことが望ましい。
CaO系フラックスの供給速度は0.1kg/(溶鋼ton・min)以上0.7kg/(溶鋼ton・min)以下が望ましい。0.1kg/(溶鋼ton・min)未満ではCaOが不足し、Al23活量が十分低下しない場合がある。0.7kg/(溶鋼ton・min)を超えて高いと酸素ガスと溶鋼との衝突部分をCaO系フラックスが遮蔽し酸素ガスとAlとの反応効率が低下する場合がある。本発明の効果と酸素とAlとの反応効率を両立するにより好ましい条件は0.3kg/(溶鋼ton・min)以上0.5kg/(溶鋼ton・min)以下である。
真空槽内溶鋼表面に酸化性ガスの吹き付けを開始した以降、酸化性ガス吹き付け終了前から、CaO系フラックスの供給を開始し、酸化性ガス吹き付け終了後にCaO系フラックスの供給を停止する。酸化性ガスの吹き付け終了後も2min以上Arなどの不活性ガスの上吹きを継続した後、CaO系フラックス供給を停止することが望ましい。
さらに、前記定義したフラックス供給開始時期(St)とフラックス供給停止時期(Et)に基づき、フラックス供給開始時期Stを60%以上80%以下、かつ、フラックス供給停止時期Etを100%以上、かつ、フラックス供給停止時期Et≦0.5×フラックス供給開始時期St+80を満足するようにフラックスの供給を行うことにより、より高い効果をより少ないフラックス量で得ることができる。
本発明に従いCaO系フラックス供給を停止した後、速やかにRH処理を完了し、取鍋を連続鋳造機に移送してもよいが、CaO系フラックス供給停止後1min以上5min以下の環流を行うことが望ましい。これにより溶鋼中に残留したCaO系フラックスによる介在物捕捉・除去効果をさらに高めることができる。
なお、本発明は特に溶鋼成分の制約を受けないが、RH後の溶鋼中Al濃度は0.003%以上0.3%以下、Si濃度は2.5%以下、Mn濃度は3.5%以下であることが望ましい。Al濃度が0.003%未満ではAl脱酸からAl−Si−Mn複合脱酸などの複合脱酸となるため本発明によるAl23活量低減効果が小さくなる。また、Al濃度が0.3%を超えて高いと昇温処理末期でも十分に酸素活量を抑制できるためスラグ中FeO低減効果が小さくなる。同様にSi濃度が2.5%、Mn濃度3.5%を超えるとAl脱酸からAl−Si−Mn複合脱酸などの複合脱酸となるため本発明によるAl23活量低減効果が小さくなる。
取鍋中のスラグはAl脱酸が前提であるのでCaO−Al23系スラグが望ましく、さらに望ましくは質量%で、SiO2濃度15%以下、MgO濃度5%以上20%以下、CaO/Al23濃度比(以下、C/A)1.2以上1.8以下である。SiO2濃度が15%を超えて高いとSiO2が酸素源となる場合があり、本発明の効果を小さくする場合がある。MgO濃度が5%未満では耐火物の損耗が速くなり、20%を超えて高くなるとスラグの液相率が低下し、溶鋼と反応する液相スラグ量が小さくなるため、僅かな外乱で効果が変動してしまう場合がある。C/Aが1.2未満では添加したCaO系フラックスとスラグ中CaOとの活量差が大きくなるため、CaO系フラックスがスラグに溶解する際にCaO系フラックスが溶鋼中で捕捉吸収したアルミナ介在物を再び溶鋼に放出する場合がある。C/Aが1.8を超えて高くなるとスラグの液相率が低下し、CaO系フラックスのスラグへの溶解速度が低下する場合がある。
上記本発明の好ましい溶鋼成分組成に調整した上で、必要に応じて出鋼時にCaOなどの造滓剤を取鍋内溶鋼中に添加することによって、取鍋スラグ組成を上記好ましい範囲とすることができる。
転炉で脱炭処理した溶鋼400tを取鍋へ出鋼し、取鍋をRHへ移送した。RH到着後、直ちに成分調整を行った。成分調整後の主な成分は質量%で、C:0.035−0.065%、Si:0.2−0.4%、Mn:1.1−1.4%、P:0.008%、S:0.003%である。Cr,Ni,Ti,Nb,V,Mo,B等の合金元素を含有する場合もあったが、いずれも0.03%以下である。
成分調整後、真空槽内に設けた上吹きランスから、酸化性ガスとして酸素ガスを真空槽内溶鋼表面に吹き付けることにより、溶鋼の温度を5〜21℃の範囲で昇温した。雰囲気圧力は5kPa、酸素ガス流量は0.1Nm3/(溶鋼ton・min)とした。
CaO系フラックス添加は取鍋に浸漬したランスを用いて、上昇側浸漬管直下の溶鋼に吹き込んだ。用いたCaO系フラックスは−100meshのCaO粉末を用い、吹き込み速度は0.1kg/(溶鋼ton・min)とした。
表1に試験条件を示す。試験番号1〜10は本発明に従った条件であり、試験番号4,5,6,8,9は請求項2も満足した条件である。試験番号11〜17は本発明から外れた条件である。なお、試験番号16はCaO系フラックス供給停止1分後から酸素ガスを吹き付けた条件、試験番号17は酸素ガス吹き付け終了1分後からCaO系フラックス添加を行った条件である。
表1に示す条件で酸素上吹きならびに時期でCaO系フラックスを供給したのち、5min間の環流を行い、取鍋内の溶鋼とスラグからサンプルを採取し、介在物個数とスラグ中FeO+MnO濃度を定量した。
表1から上吹きした酸素量、昇温処理後のAl濃度によらず試験番号1〜10は試験番号11〜15よりも介在物個数指数、スラグ中FeO+MnO濃度共に低位となっており、本発明に従うことで介在物とスラグ中FeO、MnOの低減が可能であることが解る。
さらに、請求項2を満足する試験番号4,5,6,8,9は試験番号1,2,3,7,10に比較してさらに介在物個数指数とスラグ中FeO+MnO濃度が抑制されており、請求項2を満足することでさらに介在物とスラグ中FeO、MnOの低減が可能となることが解る。
Figure 2018104805

Claims (2)

  1. 真空脱ガス処理装置を用いて真空槽内溶鋼表面に酸化性ガスを吹き付ける、Alを含有した溶鋼の昇温処理において、酸化性ガス吹き付け終了前から溶鋼へのCaO系フラックスの吹き付けまたは吹き込みを開始し、酸化性ガス吹き付け終了後にCaO系フラックスの吹き付けまたは吹き込みを停止することを特徴とする溶鋼の昇温方法。
  2. 真空脱ガス処理中の経過時間比率である時期(%)について、真空槽内溶鋼表面への酸化性ガスの吹き付け開始時期を0%、酸化性ガスの吹き付け終了時期を100%と定め、CaO系フラックスの吹き付けまたは吹き込みによる供給開始時期(St(%))を60%以上80%以下、供給停止時期(Et(%))が下記(1)式を満足することを特徴とする請求項1に記載の溶鋼の昇温方法。
    Et≦0.5×St+80 … (1)
    ここで、酸化性ガス吹き付け開始時を時間の起点(0min)として時間を定め、酸化性ガスの吹き付け開始から吹き付け終了までの時間を酸化性ガス吹き付け時間(min)とし、St(フラックス供給開始時期)とEt(フラックス供給停止時期)を以下のように定める。
    St(フラックス供給開始時期(%))=(フラックス供給開始時間(min)/酸化性ガス吹き付け時間(min))×100、
    Et(フラックス供給停止時期(%))=(フラックス供給停止時間(min)/酸化性ガス吹き付け時間(min))×100
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