JP6604226B2 - 低炭素鋼の溶製方法 - Google Patents

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本発明は、特にCaO系粗大介在物を低減させた低炭素鋼の溶製方法に関する。
自動車用鋼板や、家電、食品、飲料缶などの薄板として使用される低炭素鋼板においては、表面欠陥が少ないことが求められる。このため、従来より鋼材中の非金属介在物を低減させた高清浄度鋼が用いられてきた。近年、鋼材使用量を抑制する観点から、必要強度を維持した上で板厚を薄くすることが望まれており、その際には介在物に対する感受性が高まることから、従来よりも更に鋼の清浄性を向上させることが求められている。鋼の清浄度を低下させる介在物としては、主にAl23系とCaO系とが考えられており、従来は、Al23系介在物を低減することにより併せてCaO系介在物も低減することができたこともあり、従来技術としてはAl23系に着目した清浄化技術が多く提案されている。
例えば特許文献1には、真空脱炭処理後の取鍋内のスラグ中のT.Fe濃度を12質量%以下にすることを特徴とする技術が開示されている。この技術では、T.Feを低減することによりAlとFeOとの反応を抑制し、アルミナの生成を抑制するとしている。
また、特許文献2には、取鍋に受鋼した溶鋼上に浮遊するスラグにAl滓を散布した後、炭酸カルシウムと生石灰とを添加してT.Fe≦10%、CaO/Al23=1〜2となるようにスラグを改質し、Al23系介在物の極めて少ない高清浄度鋼を溶製する技術が開示されている。この技術は、低級酸化物濃度を低減することにより[O]を低減するとともに、CaO/Al23=1〜2とすることによりスラグのAl23吸収能を高めるとしている。
以上のように、スラグを改質した場合、従来はスラグ中のT.Fe濃度を5〜7質量%程度に低減して精錬するのが一般的であった。スラグ改質の方法としては、スラグにAl添加する手法の他、生石灰を添加することによりFeO濃度を希釈する方法が一般的であった。
一方、スラグ中のT.Fe濃度を直接低減させることなく、清浄化を行う技術として、特許文献3には、脱酸処理終了後の取鍋内の溶融スラグの組成が、重量%で、CaO:30〜60%、SiO2:10%以下、Al23:20〜50%、MgO:10〜20%ならびにFeOおよびMnOの合計が5〜15%となるように、真空処理工程で取鍋内の溶融スラグの組成を調整する技術が開示されている。この技術は、低級酸化物からの再酸化を抑制するためにMgOを添加し、スラグと溶鋼との界面を遮断することによって高清浄度鋼を得る技術としている。
また、異なる切り口の清浄化手法として、特許文献4には、アルミナに対しモル比で0.5〜1.0倍範囲の炭酸カルシウムを添加し、溶鋼中における炭酸カルシウムの分解反応により生成されるCO2ガスにより取鍋内の溶鋼を攪拌すると共に、同時に生成される生石灰により溶鋼の脱酸で生成されたアルミナを形態制御して低融点組成であるカルシウムアルミネートを生成させる技術が開示されている。この技術は、介在物をCaO・Al23に形態制御することによりAl23を溶鋼中で浮上させやすくする技術としている。
特開平7−41824号公報 特開2005−220391号公報 特開2000−178634号公報 特開平5−51624号公報
浅井滋生:攪拌を利用した精錬プロセスにおける精錬プロセスにおける流体運動と物質移動(第100、101回 西山記念講座)、1984年、社団法人 日本鉄鋼協会編、P90.
上述したように、従来はスラグ中の低級酸化物を低減することによって鋼の清浄性を向上させてきた。しかしながら、スラグ中の低級酸化物を低減するには、溶鋼へのAl添加とは別に、スラグにAl源を添加するため、溶製コストの増大を招くと共に、Al源添加に伴う煩雑な作業が必要である。また、近年の溶鋼清浄化に関する諸対策として、例えば転炉で過剰な送酸処理を抑制したり、鍋付きスラグを徹底的に除去したりするなどの努力により、鋼中のAl23系介在物が低減されてきており、近年は溶鋼中へAlを添加してスラグを改質するのみで精錬処理が行われるようになってきている。また、この時のスラグ設計思想としては、CaO/Al23比を高め、スラグのAl23吸収能を高めることに主眼が置かれている。
このような状況の中、CaO系介在物に起因する製品欠陥が増大してきた。このような製品欠陥が増大した理由は、これまでスラグ中のT.Fe濃度が低い状況では、Al23系介在物とともにCaO系介在物も低減されてきたが、スラグ改質を緩和したことによりCaO系介在物の割合が増加したことに加え、従来よりも板厚を薄くするニーズが増大したことにより、今まで以上にCaO系介在物の影響が顕在化したためと考えられる。これは、Al23系介在物であれば圧延時に破砕されて無害化されていたものが、CaO系介在物は圧延時に延伸するだけで破砕には至らないことが要因と考えられる。
このように従来は主にスラグ中のT.Fe濃度を低減することに主眼が置かれていたが、スラグ改質のコストを低減した結果、スラグ中のT.Fe濃度が高い状況では、CaO系介在物を低減する技術が無い状況である。
本発明は、上記の問題を鑑みてなされたものであり、スラグ中のT.Fe濃度およびMnO濃度が高い状況にあっても溶鋼中に粗大なCaO系介在物の生成を抑制した低炭素鋼の溶製方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、鋼材中に粗大なCaO系介在物が残存してしまう条件を鋭意調査した。その結果、粗大なCaO系介在物は、取鍋スラグ中のCaOから溶出したCaが溶鋼中の粗大なAl23と反応して生じていることが判明した。
一般的に、環流型脱ガス装置を用いて環流処理を行う場合、取鍋内の溶鋼には緩やかな流れが形成される。この時、非特許文献1に記載されているように、表面流速に応じたある粒径以下のスラグ滴が取鍋内へ巻き込まれることがあると考えられる。しかしながら、環流処理中の溶鋼流動であれば、溶鋼−スラグ界面には常に一定量のAlを含んだ溶鋼が供給される。このため、巻き込まれたスラグ滴は界面近傍で直ちに還元されるため、Ca成分が取鍋内部まで到達するのは希と考えられる。
一方で、溶鋼が取鍋内で保持されている間、取鍋内の溶鋼には取鍋壁面への抜熱に伴う熱対流が生じるとともに、スラグ内にも弱い流動が生じる。この時、取鍋内の溶鋼に生じる熱対流は環流処理中の流れに比べて遅い。
ここで、スラグ中のT.Fe濃度およびMnO濃度が高い、すなわちスラグ酸化度が高く、スラグからの酸素供給量が多い場合は、バルク溶鋼からAlを含んだ溶鋼の供給が追いつかなくなり、溶鋼−スラグ界面での溶存酸素濃度が高くなる。この場合、溶鋼とスラグとの間の界面張力は極めて小さくなることから、環流処理中の流れよりも弱い、取鍋内の熱対流またはスラグ内での流動程度の流れであっても、環流処理中と同様に溶鋼中にCaOを含む微細なスラグ滴が巻き込まれることがあると考えられる。
巻き込まれたスラグ滴は、そのまま溶鋼内に残存する場合もあり、一方で溶鋼の成分と反応する場合もある。巻き込まれたCaOを含むスラグ滴が、ある一定深さ以下のバルク溶鋼まで到達すると、バルク溶鋼は一定量のAlを含んでいることからCaOを含むスラグ滴は還元され、ある一定深さ位置で溶鋼中の溶存Ca濃度が高くなる。このような状況でバルク溶鋼中の粗大なAl23が溶存Caと反応することにより、溶鋼−スラグ界面から少し離れた深さの位置において、粗大なCaO系介在物が生成する状況が生じることになる。
ここで重要なことは、CaO系介在物が生成する位置であり、環流処理中のように溶鋼−スラグ界面近傍でCaO系介在物が生成するのであれば、スラグの上下方向の流動等によってCaO系介在物がスラグに吸収されることから、取鍋の内部まで広がることは少ない。一方で、CaO系介在物が界面から離れた位置で生成された場合、スラグに吸収されることなく、溶鋼流動に乗って取鍋内部に拡散してしまうと考えられる。このような状態で取鍋からタンディッシュへ溶鋼が注入されると、溶鋼内にはCaO系介在物が懸濁していることから、タンディッシュ内の溶鋼にCaO系介在物が流出し、鋳造、圧延を経て鋼材まで残存してしまう可能性が高まると考えられる。
このことを考慮すると、スラグ中のT.Fe濃度およびMnO濃度が高い条件で粗大なCaO系介在物が界面から離れた位置で生成するのを防止するためには、スラグ組成を調整してCaO活量を下げて溶存Caが生成する熱力学的なハードルを高めるとともに、非特許文献1に記載されているようにスラグの粘度を高い状態とすることにより、物理的なスラグ滴の巻き込みを低減すればよい。
すなわち、従来のようにスラグのAl23吸収能を高めるためにCaO/Al23比を高める思想ではなく、スラグのCaO/Al23比を適正に制御し、スラグのAl23吸収能が過度に下がらない範囲でCaO/Al23比を下げることにより、CaO活量が下がることに加え、スラグ滴の粘度は増加する。
また、スラグ中のMgO濃度が高い場合はスラグ中に固相が晶出するため、スラグ全体の粘度は向上するが、液相部分のみに着目すると、粘度は低下する。熱対流によって巻き込まれるスラグ滴は、粘度の高い晶出した部分ではなく、粘度の低い液相部分になることから、スラグの設計思想としては、液相部分の粘度を低下させないことが重要である。
そこで、上述した事項を確認するため、熱力学計算ソフトを用いて求めたスラグの液相部分の粘度を図1および図2に示す。図1は、CaO濃度およびAl23濃度以外を固定した条件で、CaO/Al23比とスラグの粘度との関係を示す図であり、図2は、CaO、Al23およびMgO以外の成分濃度を固定し、かつCaO/Al23比を一定条件とした場合のMgO濃度とスラグの粘度との関係を示す図である。
図1に示すように、CaO/Al23比が高いほどスラグの粘度が低く、スラグが巻き込まれやすい条件になることが分かる。また、図2に示すように、スラグ中のMgO濃度が高いほどスラグの粘度は低くなるが、スラグ中のMgO濃度が過度に高くなるとスラグ中には固相が晶出してくる。なお、スラグの粘度は、この固相とスラグ液相との混合物して計算されるため、スラグ液相のみを考えた場合、スラグ液相の粘度は、計算結果よりも小さいと考えられる。
本発明では、上述した考えに基づき、鋼材溶製時のスラグ組成を最適化することによって、スラグ中のT.Fe濃度およびMnO濃度が高い状況であっても、鋼材中の粗大なCaO系介在物を低減することに至った。本発明者らは、鋼材溶製時のスラグ組成が及ぼす鋼材中の粗大なCaO系介在物との関係を調査し、スラグ中のT.Fe濃度およびMnO濃度が高い状況において、粗大なCaO系介在物を低減可能なスラグ中のCaO/Al23比ならびにMgO濃度を明確化することにより、本発明を完成するに至った。
具体的には、本発明は以下のとおりである。
(1)環流型脱ガス装置においてAlを用いて脱酸して低炭素鋼を溶製する方法であって、前記環流型脱ガス装置による環流処理終了後の取鍋内の溶融スラグ中のT.Fe濃度およびMnO濃度の合計が11質量%〜16質量%含まれる状態で、CaO/Al23比が1.4以下、MgOが9質量%以下となるように、前記取鍋内の溶融スラグの組成を調整することを特徴とする低炭素鋼の溶製方法。
(2)前記環流型脱ガス装置において減圧下で前記取鍋内の溶鋼を脱炭処理した後、脱酸処理することを特徴とする上記(1)に記載の低炭素鋼の溶製方法。
本発明によれば、スラグの改質に伴うコストを抑えて鋼材中の粗大なCaO系介在物を低減することができる。
CaO/Al23比とスラグの粘度との関係を示す図である。 MgO濃度とスラグの粘度との関係を示す図である。 本発明の実施例において、スラグ中のCaO/Al23比とスラグ中のMgO濃度とに対する清浄度指数の関係を示す図である。
以下、本発明について詳細に説明する。まず、本発明おける用語の定義について説明する。
「環流型脱ガス装置」とは、真空槽を具備する溶鋼処理装置であって、代表的な装置として環流処理を行うRHがある。ここで、「環流処理」とは、環流型脱ガス装置を用いて溶鋼を真空槽内に吸い上げ、片方の浸漬管にガスを流すことにより溶鋼を取鍋と真空槽との間を循環させる処理を指す。C濃度が高い場合は、溶鋼中のCとOとを反応させて溶鋼中の溶存C濃度ならびに溶存O濃度を下げる場合もある。脱炭処理をするためには、ある程度の酸素濃度が必要であるため、転炉または電気炉から出鋼する際に脱酸処理を行わないようにする。この時の溶鋼中の溶存O濃度は0.05質量%程度であり、スラグ中のT.Fe濃度およびMnO濃度の合計は15質量%から20質量%程度である。また、環流処理中にAlを添加して脱酸を行い、必要に応じて合金調整を行う場合もある。
「低炭素鋼」とは、主に自動車用鋼板や家電製品、食品、飲料缶などといった製品に用いられるC濃度<0.1質量%の鋼であり、本実施形態では特にAlで脱酸された鋼を指す。
「Al23系介在物」とは、SEM/EDSを用いた半定量分析法で介在物を測定した結果を酸化物組成に換算した際、介在物中におけるAl23濃度が95mol%以上となる介在物とする。
「CaO系介在物」とは、SEM/EDSを用いた半定量分析法で介在物を測定した結果を酸化物組成に換算した際、介在物中におけるCaO濃度とAl23濃度との和が70mol%以上であり、かつ、CaO濃度が10mol%以上含まれている介在物とする。介在物中の残部には、MgO、SiO2、MnO、その他酸化物が含まれる場合がある。
「粗大介在物」とは、顕微鏡で介在物を観察した際に観察される介在物の面積から求めた円相当直径が5μmを超える介在物とする。
次に、低炭素鋼の溶製方法について説明する。
環流型脱ガス装置で環流処理が終わった時点での取鍋内の溶融スラグの組成を制御するため、転炉または電気炉から出鋼する際にスラグの流出をできるだけ抑制した上で、出鋼時に造滓剤として生石灰、炭酸カルシウム、ライムアルミネートなどを添加する。この時、溶鋼中の酸素濃度、炭素濃度、およびAl添加量を考慮した上で、CaO分の添加量を決める。
そして、取鍋に出鋼された溶鋼を環流型脱ガス装置に搬送し、Al脱酸処理を行う。この時、必要に応じて脱炭処理を行ってもよい。環流処理中に、溶製コストが増加し過ぎない範囲で媒溶剤を添加してスラグ組成を調整する場合もある。
次に、スラグ組成について説明する。
本発明の方法では、出鋼中に、転炉から不可避的に流出したスラグに生石灰、炭酸カルシウム、ライムアルミネートなどが添加される。また、溶鋼を取鍋に保持している間は取鍋もしくは環流型脱ガス装置の耐火物からの溶損が生じる。さらに、添加したSiやMn等の合金、ならびに脱酸のために添加したAlが酸素と反応して酸化物を生成し、スラグ組成が決まる。また、転炉からの持ち越しスラグ、耐火物や合金に含まれる成分から僅かに混入するP25、TiO2等の不可避的不純物が含まれる場合もある。
本発明は、環流処理終了後の取鍋内の溶融スラグ中のT.Fe濃度およびMnO濃度の合計が11質量%以上含まれる状態において発明の効果が得られる技術である。通常、清浄鋼を溶製する際は、コストと手間とを掛けてスラグに生石灰を添加する等によってスラグを改質し、T.Fe濃度およびMnO濃度を10質量%以下まで低減して精錬するのが一般的である。従来は、このような低級酸化物が高い状況では鋼の清浄度を向上できないとの考えられていたため、これまで深く検討されてこなかったと考えられる。一方、溶融スラグ中のT.Fe濃度およびMnO濃度の合計が16質量%を超えると、Al23系粗大介在物が多く生成され、清浄性が著しく悪化してしまう。以下、本発明に必要な環流処理終了後の取鍋内のスラグ組成を説明する。
スラグ中のCaO/Al23比は1.4以下とする。CaO/Al23比が1.4を超える場合、スラグの粘度が低くなり、溶鋼に巻き込まれるスラグ滴の量が増大するとともに、巻き込まれるスラグ滴中のCaO活量が増大し、溶鋼中の溶存Ca濃度が高くなる。このため、CaO/Al23比は1.4以下とする。好ましいCaO/Al23比は1.2である。一方、CaO/Al23比が低すぎる場合、スラグのAl23吸収能が低下するとともに、Al23活量が増大し、粗大なAl23系介在物が生成されて清浄度が悪化してしまうことから、CaO/Al23比は0.8以上であることが好ましい。この時、スラグ中におけるCaO濃度とAl23濃度との合計は60〜80質量%程度であることが好ましい。
スラグ中のMgO濃度は9質量%以下とする。MgO濃度が9質量%を超える場合、スラグの液相部分の粘度が低下することによって、溶鋼に巻き込まれるスラグ滴の量が増大してしまう。このため、スラグ中のMgO濃度は9質量%以下とする。好ましくはスラグ中のMgO濃度が8質量%以下である。一方、MgOは脈石成分から不可避的に混入することに加え、耐火物からの溶損も生じるため、通常、スラグ中のMgO濃度は3質量%以上となる。
スラグ中のSiO2は、転炉または電気炉から不可避的に流出するスラグから持ち越されるものと、合金として添加されるSiが酸化して生じるものとの両者がスラグ中に存在する。通常の精錬処理を行う場合、スラグ中のSiO2濃度は3〜12質量%程度となる。好ましくはSiO2濃度が6〜8質量%である。
通常、スラグの改質を行う場合には、スラグにCaOもしくはMgOをベースとした副原料を添加することが一般的であるため、本発明のようなT.Fe濃度およびMnO濃度が高い状況で、CaO/Al23比と、MgO濃度とを低い条件に制御することは、これまでの清浄鋼を溶製する観点からは思い至らなかったことである。
次に、本発明の効果の確認方法について説明する。
本発明の効果を確認するためには、タンディッシュにおいて鉄製サンプラーを用いて溶鋼サンプルを採取し、鏡面研磨で仕上げした面を顕微鏡で観察する。採取するタイミングは、全鋳込み時間の半分が経過した時点とする。そして、測定視野300mm2中に存在する円相当径5μmを超える粗大介在物を抽出し、SEM/EDSを用いた判定量分析法で組成分析を行い、酸化物組成に換算する。その測定結果から、Al23系介在物およびCaO系介在物の個数密度を算出し、CaO系介在物の割合(={CaO系/(CaO系+Al23系)}×100%)を算出する。また、スラグの改質によりT.Fe濃度およびMnO濃度の合計を低減して清浄度を改善している従来例のCaO系介在物の個数密度を清浄度指数として1.00に設定した際の各サンプルの清浄度指数を算出することによって、鋼の清浄度を評価する。
次に、本発明を実施例に基づいて更に説明するが、実施例での条件は、本発明の実施可能性及び効果を確認するために採用した一条件例であり、本発明は、この一条件例に限定されるものではない。本発明は、本発明の要旨を逸脱せず、本発明の目的を達成する限りにおいて、種々の条件を採用し得るものである。
高炉から出銑された溶銑を、溶銑予備処理で脱硫処理し、転炉型精錬容器にて脱Pおよび脱C処理した後、取鍋に溶鋼を受鋼した。このとき、溶鋼量は250ton規模であり、出鋼時に造滓剤として生石灰を添加した。次に、取鍋内の溶鋼をRH真空脱ガス装置に搬送し、環流処理を行った。環流処理中においては、Alを添加して脱酸するとともに、合金元素を添加して溶鋼成分を調整し、C:0.03〜0.08質量%、Si:<0.05質量%、Mn:0.1〜0.5質量%、P:<0.04質量%、sol.Al:0.04〜0.08質量%の溶鋼を溶製した。C濃度が0.03質量%の溶鋼を溶製する場合は、環流処理前半で脱炭処理を行い、脱炭処理後にAlを添加した。この時、溶鋼温度は1560℃から1590℃で推移した。
そして、環流処理が終了した後にスラグサンプルを採取し、化学分析に供した。その後、タンディッシュまで取鍋を搬送し、連続鋳造法によって半製品を得た。タンディッシュにおいて、全鋳込み時間の半分が経過した時点で溶鋼サンプルを採取し、化学分析に供すると共に検鏡用ミクロサンプルを得た。そして、前述の効果の確認方法に従い、測定視野300mm2中に存在する円相当径5μmを超える粗大介在物を抽出し、SEM/EDSを用いた判定量分析法で組成分析を行い、酸化物組成に換算した。その測定結果から、Al23系介在物およびCaO系介在物の個数密度を算出し、CaO系介在物の割合を算出した。また、T.Fe濃度およびMnO濃度の合計を低くした従来例(Heat.16)のCaO系介在物の個数密度を清浄度指数として1.00に設定した際の各溶鋼サンプルの清浄度指数を算出した。
環流処理後の取鍋内のスラグ組成ならびに溶鋼サンプルの清浄度指数を以下の表1に示す。また、スラグ中のCaO/Al23比とスラグ中のMgO濃度とに対する清浄度指数の関係を図3に示す。図3中の○印は、清浄度指数が1.00以下で、×印は1.00を超えていることを示す。
Heat.1からHeat.10は、取鍋内のスラグ組成が全て本発明の要件を満たしており、タンディッシュ(TD)において採取した溶鋼サンプルのT.Ca濃度は低位であり、CaO系介在物の割合も低く、清浄度指数は全て1.0以下であり、いずれも良好な結果であった。すなわち、本発明の要件を満たすことで、従来のようにスラグ改質してT.Fe濃度およびMnO濃度を低減させることなく、清浄度の高い鋼を溶製できることが確認できた。また、Heat.7およびHeat.8は環流処理前半で脱炭処理した例であり、取鍋内のスラグ組成が全て本発明の要件を満たしており、タンディッシュ(TD)において採取した溶鋼サンプルのT.Ca濃度は低位であり、CaO系介在物の割合も低く、清浄度指数は全て1.0以下であった。このように、脱炭処理した後にAlで脱酸してもよいことが確認できた。
一方、Heat.11からHeat.15は、取鍋内のスラグ組成が本発明の要件を満たしておらず、清浄度指数が劣っていた。Heat.11およびHeat.12はCaO/Al23比が1.4よりも大きく、CaO活量が大きいスラグ滴の巻き込まれる頻度が増大した結果、溶鋼内のCaO系介在物の割合が増大したため、清浄度指数が劣っていたと考えられる。また、Heat.13からHeat.15まではスラグ中のMgO濃度が高かったことから、スラグの液相部分の粘度が増大し、スラグ滴の巻き込まれる頻度が増大したため、清浄度指数が劣っていたと考えられる。図3に示すように、本発明で規定するCaO/Al23比およびスラグ中のMgO濃度の範囲を示しており、CaO/Al23比ならびにスラグ中のMgO濃度が本発明の範囲内にあることが必要であることが分かる。

Claims (2)

  1. 環流型脱ガス装置においてAlを用いて脱酸して低炭素鋼を溶製する方法であって、前記環流型脱ガス装置による環流処理終了後の取鍋内の溶融スラグ中のT.Fe濃度およびMnO濃度の合計が11質量%〜16質量%含まれる状態で、CaO/Al23比が1.4以下、MgOが9質量%以下となるように、前記取鍋内の溶融スラグの組成を調整することを特徴とする低炭素鋼の溶製方法。
  2. 前記環流型脱ガス装置において減圧下で前記取鍋内の溶鋼を脱炭処理した後、脱酸処理することを特徴とする請求項1に記載の低炭素鋼の溶製方法。
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