JP3896713B2 - 清浄性に優れた極低炭素鋼の溶製方法 - Google Patents

清浄性に優れた極低炭素鋼の溶製方法

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、清浄性に優れた極低炭素鋼の溶製方法に関し、とくに真空処理工程での取鍋内の溶融スラグ組成の調整を特徴とする溶製方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
表面欠陥が少なくかつ成形性に優れていることが要求される自動車の外装用鋼板には、極低炭素鋼が用いられており、溶製の際には、鋼の極低炭素化および高清浄化対策が採られている。
【0003】
極低炭素鋼を溶製する際の脱炭方法としては、真空下で未脱酸溶鋼に脱炭反応をおこさせる方法が一般的である。すなわち、転炉等の製鋼炉より炭素含有率が0.02〜0.1重量%の未脱酸溶鋼を取鍋に出鋼し、その後、真空下で溶鋼中の酸素または取鍋内のスラグなどの外部から供給される酸素と溶鋼中の炭素とを反応させ、炭素含有率が0.001〜0.005重量%になるまで脱炭する。
【0004】
上記の脱炭反応の際に、十分な脱炭速度を得るために必要な溶鋼中の酸素含有率は0.04重量%以上であることが知られている。このような酸素含有率の高い溶鋼を転炉等の製鋼炉で得る場合、スラグ中の低級酸化物であるFeOとMnOの含有率の合計が15〜20重量%程度と高くなる。
【0005】
真空下での脱炭処理後にAlによる脱酸処理を行った極低炭素溶鋼では、通常用いられる連続鋳造が終了するまでの間に、溶鋼中のAlとスラグ中の低級酸化物が反応する。この反応によりAlの酸化物(Al2 3 )が生成する。この酸化物の一部は連続鋳造中にタンデイッシュ内や鋳型内の溶鋼から除去されずに鋳片に残存して非金属介在物となり、鋼の清浄性を悪化させる。
【0006】
このAl2 3 系の非金属介在物は、鋳片の表面近傍に集積しやすく、そのため自動車の外装用鋼板の表面欠陥となったり、また、連続鋳造中に浸漬ノズルが閉塞する原因となったりする場合がある。浸漬ノズルが閉塞すると連々鋳ができなくなり、生産性が阻害されるばかりでなく、浸漬ノズル内を通過する溶鋼に偏流が生じて鋳型内の流動状態が変化し、Alの酸化物などが鋳片の表面近傍に集積し、製品に表面欠陥が生じる。さらにこの浸漬ノズルの閉塞を防ぐために、浸漬ノズルの上部より吹き込まれるAr等の不活性ガスの流量を増加する必要が生じる。多量に吹き込まれた不活性ガスも、鋳片の表面近傍に捕捉され、残留した場合には、製品の表面欠陥の一因となる。このような製品の表面欠陥を防止するために、鋳片や熱間圧延した鋼板用素材の表面を手入れすることは、経済性や生産性の面から大きな問題となる。
【0007】
そこで、鋼中のAlと反応を起こしやすい取鍋内のスラグ中のFeOやMnOなどの低級酸化物の含有率を、転炉等の製鋼炉からの出鋼時、または真空下での脱炭処理前に下げる対策が採られてきた。
【0008】
たとえば、特開平5−239537号公報に開示される方法では、転炉からの出鋼中または出鋼後の取鍋内のスラグに、スラグ改質剤を添加してスラグ中のFeOおよびMnOの合計の含有率を5重量%以下にし、その後、真空下での脱炭処理前に上吹きランスから真空槽内の溶鋼の表面に酸素ガスを吹き付ける方法を採っている。
【0009】
この方法では、真空槽内の溶鋼表面に上吹きランスから酸素ガスを吹き付けるが、その理由は、スラグ改質により真空下での脱炭処理前のスラグ中の低級酸化物の含有率を低くするため、脱炭反応に寄与する低級酸化物からの酸素供給量が低下して、脱炭反応に必要な酸素が不足するからである。しかし、真空槽内の溶鋼表面に吹き付けられる酸素ガスにより、溶鋼中のFeやMnなどが酸化され、FeOやMnOなどの低級酸化物が発生し、結局スラグ中の低級酸化物の含有率が高くなる。また、出鋼後のスラグ中のFeOおよびMnOの合計の含有率を5%以下にするために、多量の改質剤および造滓剤を出鋼中に添加するので、取鍋内の溶鋼温度の降下が大きいことなどの問題がある。
【0010】
一方、真空下での脱炭処理後にAlによる脱酸処理を行った後に、真空槽内の溶鋼に酸化物系の媒溶剤を添加することにより、鋼中のAlと反応を起こしやすいFeOやMnOなどの低級酸化物の含有率を低下させたり、取鍋内のスラグと溶鋼の界面を遮断する対策などが採られてきた。
【0011】
特開平3−183722号公報では、真空下での脱炭処理後にAlによる脱酸処理を行った後に、真空槽内の溶鋼にMgOを主成分とする酸化物を添加し、スラグと溶鋼の界面に、この酸化物を介在させる方法が開示されている。MgOを、真空槽内のシュートまたは真空槽外の取鍋内に浸漬した管から、2〜5kg/溶鋼t程度添加する方法である。
【0012】
この方法では、MgOの添加量が多すぎるので、MgOがスラグと溶鋼の界面に均一に分散せず、部分的に固まったりして、MgO添加の効果が安定して得られなかったり、取鍋内の溶鋼の温度が大きく低下する場合がある。そのため、真空槽内の溶鋼表面に酸素ガスを吹き付けて溶鋼の温度を上げる必要があり、結局、清浄性に劣る鋼しか得られないという問題がある。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、真空下での脱炭処理時の脱炭速度を損なうことなく、また、取鍋内の溶融スラグからの溶鋼の再酸化を抑制し、かつ連続鋳造の際に浸漬ノズルの閉塞を防止して、清浄性に優れた極低炭素鋼を溶製できる方法を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明の要旨は、真空下で取鍋内の溶鋼を脱炭処理した後、脱酸処理することにより極低炭素鋼を製造する方法において、脱酸処理終了後の取鍋内の溶融スラグの組成が、重量%で、CaO:30〜60%、SiO2 :10%以下、Al2 3 :20〜50%、MgO:10〜20%ならびにFeOおよびMnOの合計が5〜15%となるように、真空処理工程で取鍋内の溶融スラグの組成を調整する清浄性に優れた極低炭素鋼の溶製方法にある。
【0015】
本発明で対象とする極低炭素鋼とは、炭素含有率がおよそ0.005重量%以下の鋼である。
【0016】
本発明でいう真空処理工程、すなわち、真空下での脱炭処理および脱酸処理の工程とは、RHやDHなどの環流型真空処理装置を用いた処理工程を意味する。このような真空処理工程により清浄性に優れた極低炭素鋼を溶製するには、真空下で脱炭処理した後の脱酸処理後に、取鍋内の溶融スラグからの溶鋼の再酸化を防止することが効果的である。上述したように、Alによる脱酸処理を行った極低炭素溶鋼では、溶鋼中のAlと取鍋内の溶融スラグ中の低級酸化物が反応するからである。
【0017】
取鍋内の溶融スラグからの溶鋼の再酸化を防止するには、取鍋内の溶融スラグと溶鋼の界面を遮断する方法が最も効果的である。このような界面を遮断する方法としては、脱酸処理後の溶融スラグに固相を晶出させるのが、最も効果的である。その理由は、取鍋内の溶鋼と直接接触して溶鋼を再酸化させているのは、液相状態の溶融スラグであり、固相のスラグの場合には、溶鋼の再酸化速度が著しく低下し、実質、溶鋼の再酸化は起こらないからである。
【0018】
本発明者らは、脱酸処理後の取鍋内の溶融スラグにこの固相を晶出させる時期を適切に選択することが、とくに重要であることを知見した。すなわち、脱酸処理終了後から連続鋳造を開始するまでは、溶融スラグによる溶鋼の再酸化が生じるよりも、むしろ、この時期には、脱酸処理時および脱酸処理後に溶鋼中に生成したAl2 3 などの酸化物が、溶鋼中を浮上して取鍋内の溶融スラグに吸着されている。つまり、取鍋内の溶融スラグによる溶鋼の再酸化は、連続鋳造を開始した後の連続鋳造中に抑制することが必要である。すなわち、脱酸処理後の連続鋳造を開始する時期に、取鍋内の溶融スラグに固相を晶出させれば効果的である。
【0019】
さらに、本発明者らは、脱酸処理後の取鍋内の溶融スラグの組成を、上述した組成とすることにより、連続鋳造を開始する時期に溶融スラグに固相を晶出させることができることを知見した。
【0020】
取鍋および連続鋳造のタンディッシュの容量によって若干異なるが、取鍋内の溶鋼およびタンディッシュ内の溶鋼の温度の液相線温度に対する過熱度は、通常、適度の範囲の過熱度を持った温度とする。過熱度が低すぎると、取鍋内の温度が時間とともに低下するため、連続鋳造の途中で、溶鋼が取鍋、タンディッシュまたは鋳型内で、急速に凝固して、鋳造できなくなる。また、過熱度が高すぎると、鋳型内の凝固殻が破断してブレークアウトが発生しやすくなる。さらに、鋼に固有の液相線温度は、鋼の炭素含有率によってほぼ決まる。したがって、本発明が対象とするC含有率が0.005重量%以下の極低炭素鋼の連続鋳造開始時の取鍋内の溶鋼温度は、1590〜1620℃程度とするのが望ましい。なお、取鍋内の溶鋼に接している溶融スラグと溶鋼の温度は、ほぼ同じである。
【0021】
このことから、連続鋳造を開始する時期、すなわち、1590〜1620℃の溶融スラグの温度で、脱酸処理後の取鍋内の溶融スラグに固相を晶出させれば、溶鋼の再酸化防止に対して効果的であることが分かった。
【0022】
このとき、溶融スラグ中に、少なくとも1〜2体積%程度の固相を晶出させれば、溶融スラグによる溶鋼の再酸化を防止できる。固相が溶融スラグに晶出する体積%(以下、固相率と記す)が、上述した程度に少なくても、溶融スラグの粘性は増大し、溶融スラグ側の物質移動を抑制できるので、溶鋼の再酸化を防止できる。
【0023】
【発明の実施の形態】
脱酸処理終了後の取鍋内の溶融スラグの組成を適正な範囲に調整するために、まず、転炉などの製鋼炉から溶鋼を取鍋に出鋼する際、スラグの流出をできるだけ抑制し、かつ造滓剤として生石灰、天然マグネシア、ドロマイト、ライムアルミネートなどを添加するのがよい。また、スラグ中のFeOおよびMnOの合計の含有率を調整するために、Al灰やAl−CaO系などのスラグ改質剤を添加してもよい。
【0024】
取鍋内に出鋼された溶鋼は、RHやDHなどの真空処理装置により、脱炭処理および脱酸処理される。この真空処理工程で真空槽内の溶鋼に媒溶剤を添加して、真空処理後の取鍋内の溶融スラグの組成を調整する。
【0025】
真空槽内の溶鋼に媒溶剤を添加する際に、Alなどの脱酸剤の添加後1〜3分程度してから、媒溶剤を添加できる。Alなどにより脱酸処理する際に生成するAl2 3 などの酸化物を溶融スラグに効率的に吸収させるためには、Al添加後3分以上溶鋼を環流した後に媒溶剤を添加する方がよい。なお、媒溶剤を効果的に溶融スラグと溶鋼の界面に到達させるためには、媒溶剤の添加後、2分間以上溶鋼の環流を継続することが望ましい。
【0026】
本発明の方法では、脱酸処理終了後の取鍋内の溶融スラグが、CaO−Al2 3 −MgO−SiO2 系を主成分系とし、これに低級酸化物としてFeOおよびMnOを含む組成となるように調整する。ただし、転炉などからの出鋼時のスラグから混入する程度のFe2 3 、P2 5 、TiO2 などの不可避的不純物を含んでも構わない。以下に、脱酸処理終了後の取鍋内の溶融スラグの組成を具体的に説明する。
【0027】
CaOは30〜60重量%(以下、単に%と記す)、Al2 3 は20〜50%とする。CaOが30%未満の溶融スラグでは、Alなどで脱酸処理する時に生成する酸化物を吸収する効果が少ない。また、60%を超えると、固相を晶出し始める溶融スラグの温度が、上述した範囲の温度よりも高くなる。
【0028】
Al2 3 が20%未満では、溶融スラグの流動性が悪くなり、脱酸処理時に生成した酸化物を吸収する効果が少なくなる。また、50%を超えても、同様の現象が起こる。
【0029】
CaOおよびAl2 3 が上述した範囲であって、Al2 3 に対するCaOのモル比CaO/Al2 3 が2以上の場合、MgOまたは3CaO・Al2 3 が固相として晶出しやすくなる。また、このモル比が2未満では、Al2 3 が40%以上であれば、MgO・Al2 3 が固相として晶出しやすくなる。
【0030】
MgOは10〜20%とする。上述したようなCaOおよびAl2 3 の範囲で、かつMgOがこのような範囲の場合には、MgOまたはMgO・Al2 3 が固相として晶出しやすくなる。MgOが10%未満では固相が晶出しにくい。MgOが20%を超えると溶融スラグの流動性が悪くなり、Alなどで脱酸処理した時に生成した酸化物を吸収する効果が少なくなるので、その効果が飽和するばかりでなく、過剰な媒溶剤の添加を招いていることから、溶鋼の温度低下が生じる。したがって、MgOは10〜20%とする。
【0031】
SiO2 は10%以下とする。10%を超えると固相を晶出し始める温度が、上述した範囲の温度よりも高くなる。なお、下限については、とくに限定しないが、Siは脈石として造滓剤に含まれるので、通常1%以上となる。
【0032】
FeOおよびMnOの合計は5〜15%とする。FeOおよびMnOの合計が少ないほど溶融スラグからの溶鋼の再酸化が抑制できるが、本発明の方法では、従来の技術に見られるような5%以下などに低下させなくてもよい。FeOおよびMnOの合計が5〜15%と高くても、連続鋳造を開始する時点で、取鍋内の溶融スラグに固相が晶出すれば、溶融スラグからの溶鋼の再酸化を防止できるからである。したがって、真空下での脱炭処理時の脱炭速度を遅らせることなく、過剰なスラグ改質剤の添加も不要となり、また、真空槽内の溶鋼の表面に酸素ガスを吹き付ける必要もない。ただし、15%を超えると、溶鋼の再酸化が起こりやすい。5%未満では、真空下での脱炭反応に必要な溶鋼中の酸素量0.04%以上を確保できなくなり、脱炭反応が遅くなるばかりでなく、極低炭素鋼の溶製ができない場合がある。
【0033】
ところで、溶融スラグに晶出する固相の形態および晶出した体積%は、近年、熱力学的計算ソフトウエアを利用して推定することができるようになってきたので、これらを活用すればよい。
【0034】
真空槽内の溶鋼に添加する媒溶剤は、溶融スラグからMgOまたはMgO・Al2 3 の固相を晶出させる場合には、天然マグネシアなどのMgO系クリンカー、ドロマイトクリンカーおよびこれらと組成が同じレンガ屑などがよい。また、3CaO・Al2 3 の固相を晶出させる場合には、CaOを主成分とする生石灰、ドロマイト、これらのクリンカーおよびこれらと組成が同じレンガ屑がよい。
【0035】
添加する媒溶剤の粒径は、1〜30mmの間に90%以上が入るものがよい。1mm未満では、真空処理装置の排気系に引き込まれる。また、30mmを超えると、媒溶剤は添加時に溶鋼に侵入、搬入されず、真空槽内の溶鋼表面に残留したり、または真空槽外までは溶鋼により搬送されても、均一に分散されずに、ただちに浸漬管近傍で浮上して、固まりとなったりする。
【0036】
媒溶剤の添加量は、脱炭処理前の取鍋内のスラグの組成、量などにもよるが、溶鋼t当たり2kg以下とするのがよい。2kgを超えて添加すると、溶鋼温度の低下が大きくなるため、かえって、真空槽の溶鋼表面に酸素ガスを吹き付けて、溶鋼の温度を上げる必要が出てくるからである。
【0037】
【実施例】
転炉およびRH真空処理装置(以下、単にRHと記す)を用いて、270tの極低炭素鋼を後述する表1に示す試験に対応して8チャージ溶製した。転炉から出鋼後の真空処理前の溶鋼の化学組成は、C0.02〜0.06%、Mn0.01〜0.2%、Si0.01〜0.03%、出鋼後の取鍋内の溶鋼温度は1660〜1690℃であった。なお、出鋼に際して、後のスラグ組成の調整をより確実にするために、転炉からのスラグ流出を極力抑制するようにした。出鋼直後の取鍋内の溶融スラグに、造滓剤として天然マグネシアを、スラグ改質剤として、Al灰、Al−CaO系フラックスを適宜添加した。
【0038】
次に、RHを用いて、溶鋼中の炭素含有率が0.005%以下となるまで真空下で脱炭処理を行った。その後に、真空槽内の溶鋼にAlを添加して脱酸を行い、溶鋼中のAl含有率を0.02〜0.06%に調整した。
【0039】
脱炭処理前に取鍋内の溶融スラグのサンプルを採取し、蛍光X線分析を行って溶融スラグの組成を確認した。確認した溶融スラグの組成を参考にして、脱酸処理後の溶融スラグの組成を調整するために、脱酸処理のためのAl添加から約6分後に、ドロマイトクリンカーまたは天然マグネシアの媒溶剤を、合金添加装置を利用して真空槽内の溶鋼に添加した。媒溶剤の粒径は、1〜13mmの範囲に95%入るものを用いた。媒溶剤の添加後約4分間、溶鋼の環流を行った。その後、取鍋内の溶融スラグのサンプルを採取し、蛍光X線分析を行った。
【0040】
また、RHでの処理工程を通じて、溶鋼温度を1600℃以上に保持して溶融スラグの溶鋼と接触する部分が均一な液相状態であるようにした。
【0041】
脱酸処理終了後の溶鋼を、厚み250mm、幅1250mmの断面形状の鋳片に連続鋳造した。
【0042】
溶鋼の再酸化の防止効果は、脱酸処理終了後の溶鋼中のAl含有率から連続鋳造中に測定したタンディッシュ内の溶鋼中のAl含有率を差し引いた値ΔAlを求めることにより評価した。また、タンディッシュ内の溶鋼を採取し、溶鋼中の全酸素量を測定した。
【0043】
得られた鋳片から横断面サンプルを採取し、鋳片の全酸素量および清浄度を調査した。鋳片の全酸素量は、横断面サンプルの表面直下、1/4厚および1/2厚の位置から採取した3個の試料の全酸素量を分析し、その平均値で求めた。鋳片の清浄度は、JIS G 0555に規定する試験方法に則り、鋳片の表面から表面直下10mm以内の位置で採取した10cm2 の被顕面積の試料を400倍で顕微鏡観察することにより調査した。後述する本発明例の試験No.1の鋳片の清浄度の調査結果を指数1.00として、他の試験の鋳片の清浄度の調査結果を指数化して評価した。
【0044】
また、脱酸処理後にスラグ組成を調整した後の、分析した溶融スラグの組成を用いて、熱力学的計算ソフトウエアを利用し、溶融スラグの温度の低下とともに溶融スラグに晶出する固相の形態および固相率を算出した。
【0045】
試験条件および試験結果を表1に示す。
【0046】
【表1】
Figure 0003896713
【0047】
本発明例の試験No.1〜6では、脱酸処理終了後の取鍋内の溶融スラグの組成を本発明で規定する範囲の組成とした。これら試験での溶鋼の再酸化の程度を示すΔAlの値は0.003%以下と低く、タンディッシュおよび鋳片の全酸素量も、それぞれ30および20ppm以下と低く、また、鋳片の清浄度も指数1.00以下であり、いずれも良好な結果であった。
【0048】
脱酸処理終了後の取鍋内の溶融スラグ中のFeOおよびMnOの合計の含有率が5〜11%と高いにも関わらず、溶鋼の再酸化が少なく、溶鋼の全酸素量および鋳片の清浄度などが良好であったのは、連続鋳造開始後に取鍋内の溶融スラグに固相が晶出したためである。すなわち、組成を調整した後の溶融スラグの組成の分析値から熱力学的計算ソフトウエアを用いて算出した結果では、脱酸処理終了後から連続鋳造の開始までの間では、取鍋内の溶融スラグには固相が晶出せず、連続鋳造開始後から連続鋳造終了までの間で、MgO相の固相が1〜9%程度晶出していることが推定できた。
【0049】
とくに、固相が多く晶出していると推定される試験No.5および6では、△Alが低く、溶鋼および鋳片の全酸素量も低く、鋳片の清浄度指数も0.95以下の低い値で、良好な結果であった。
【0050】
比較例の試験No.7および8では、脱酸処理終了後の取鍋内の溶融スラグの組成を本発明で規定する範囲外の組成とした。試験No.7では、MgO含有率が低く、試験No.8では、さらに、Al2 3 に対するCaOのモル比CaO/Al2 3 が2未満であるにもかかわらず、Al2 3 含有率が40%未満の、それぞれの溶融スラグの組成とした。そのため、連続鋳造の末期でも溶融スラグに固相が晶出しないと推定できた。
【0051】
これら試験No.7およびNo.8での溶鋼の再酸化の程度を示すΔAlの値は0.01%以上と高く、タンディッシュ内の溶鋼および鋳片の全酸素量も、それぞれ40および30ppm以上と高く、また、鋳片の清浄度も指数1.00以上であり、いずれも悪い結果であった。
【0052】
図1は、脱酸処理終了後の取鍋内の溶融スラグの組成が溶鋼の再酸化に及ぼす影響を示す図である。連続鋳造中のタンディッシュ内の溶鋼中のAl含有率[Al]を脱酸処理終了直後の溶鋼中のAl含有率[Al]0 で除した値[Al]/[Al]0 と連続鋳造時間との関係を、試験No.1、5、6および8について示す。
【0053】
溶融スラグに固相が晶出しないと推定される試験No.8に比較して、溶融スラグに固相が1%でも晶出すると推定できる試験No.1では、溶鋼の再酸化は抑制されており、さらに、試験No.5およびNo.6のように固相率が多くなるにしたがって、溶鋼の再酸化防止の効果が顕著となっているのが分かる。
【0054】
【発明の効果】
本発明の方法の適用により、真空下での脱炭処理時の脱炭速度を損なうことなく、かつ取鍋内の溶融スラグからの溶鋼の再酸化を抑制できる。また、連続鋳造の際に浸漬ノズルの閉塞を防止でき、さらに、清浄性に優れた極低炭素鋼を溶製することが可能である。適切な媒溶剤の選択により、復硫防止や復燐防止ができることは言うまでもない。また、このような効果から製造コストの節減が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】脱酸処理終了後の取鍋内の溶融スラグの組成が溶鋼の再酸化に及ぼす影響を示す図である。

Claims (1)

  1. 真空下で取鍋内の溶鋼を脱炭処理した後、脱酸処理することにより極低炭素鋼を製造する方法において、脱酸処理終了後の取鍋内の溶融スラグの組成が、重量%で、CaO:30〜60%、SiO2 :10%以下、Al2 3 :20〜50%、MgO:10〜20%ならびにFeOおよびMnOの合計が5〜15%となるように、真空処理工程で取鍋内の溶融スラグの組成を調整することを特徴とする清浄性に優れた極低炭素鋼の溶製方法。
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