JP3903603B2 - 清浄性に優れた極低炭素鋼の溶製方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、清浄性に優れた極低炭素鋼の溶製方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
表面欠陥が少なくかつ成形性に優れていることが要求される自動車の外装用鋼板には、極低炭素鋼が用いられており、その素材の溶製の際には、鋼の極低炭素化および高清浄化対策が採られている。
【0003】
極低炭素鋼を溶製する場合には、真空処理装置を用いて未脱酸溶鋼の脱炭反応をおこさせる方法が一般的である。すなわち、転炉等の製鋼炉より炭素含有率が0.02〜0.1重量%の未脱酸溶鋼を取鍋に出鋼し、その後に真空処理装置を用いて溶鋼中酸素と炭素との反応により炭素含有率0.001〜0.005重量%まで脱炭する。
【0004】
上記の反応の際に、十分な脱炭速度を得るために必要な酸素含有率は、0.04重量%以上であることが知られている。このような酸素含有率の高い溶鋼を転炉等の製鋼炉で得る場合、スラグ中の低級酸化物であるFeOとMnOの含有率の合計が、15〜20重量%程度と高くなる。
【0005】
真空脱炭処理後にAlにより脱酸処理を行った極低炭素鋼の溶鋼では、真空処理後から連続鋳造中の間に、取鍋内溶鋼中のAlとスラグ中の低級酸化物とが反応する。この反応によりAlの酸化物(Al2 O3 )が生成する。この酸化物は、連続鋳造中にタンデイッシュ内や鋳型内の溶鋼から除去されずに鋳片に残存して非金属介在物となり、鋼の清浄性を悪化させる。
【0006】
このAl2 O3 系非金属介在物は、鋳片の表面付近に集積しやすく、そのため自動車の外装用鋼板の表面欠陥となったり、また、連続鋳造中の浸漬ノズルが閉塞する原因となったりする場合がある。浸漬ノズルが閉塞すると連々鋳ができなくなり生産性が阻害されるばかりでなく、ノズル内を通過する溶鋼に偏流が生じて鋳型内の流動状態が変化し表面欠陥が生じる。さらにこのノズル閉塞を防ぐために、ノズルの上部より吹き込まれるAr等の不活性ガスの流量を増加する必要が生じる。この吹き込まれた不活性ガスも、鋳片の表面近傍に残留し捕捉された場合には、表面欠陥の一因となる。このような表面欠陥を防止するために、鋳片や熱間圧延した鋼板用素材の表面を手入れする場合は、経済性や生産性の面から問題がある。
【0007】
そこで、鋼中のAlと反応を起こしやすいスラグ中のFeOやMnOなどの低級酸化物の含有率を、転炉等の製鋼炉からの出鋼時、または真空処理前に下げる対策が採られてきた。
【0008】
たとえば、特開平5−239537号公報に開示される方法では、転炉からの出鋼中または出鋼後の取鍋内のスラグに、スラグ改質剤を添加してスラグ中のFeOおよびMnOの合計の含有率を5重量%以下にし、その後、真空脱炭処理前に上吹きランスから真空槽内の溶鋼の表面に酸素ガスを吹き付け、脱炭処理後のAl脱酸の後に、上記上吹きランスからCaOを50重量%以上含有するフラックスを溶鋼表面に吹き付ける方法を採っている。
【0009】
この方法では、真空槽内の溶鋼表面に上吹きランスから酸素ガスを吹き付けることを前提としている。その理由は、スラグ改質により真空処理前のスラグ中の低級酸化物の含有率を低くするため、脱炭反応に寄与する低級酸化物からの酸素供給量が低下して、脱炭反応に必要な酸素が不足するからである。
【0010】
しかし、真空槽内の溶鋼表面に酸素ガスを吹き付けることにより、溶鋼中のFeやMnなどが酸化され、FeOやMnOなどの低級酸化物が発生し、結局スラグ中の低級酸化物の含有率が高くなる。また、出鋼後のスラグ中のFeOおよびMnOの合計の含有率を5%以下にするために、多量の改質剤および造滓剤を出鋼中に使用するので、溶鋼の温度降下が大きい。
【0011】
特開平6−116623号公報では、真空脱炭処理前にAlを含むスラグ改質剤を取鍋内のスラグに添加し、真空脱炭処理開始時にMgOを含有するフラックスを真空槽内に添加し、また酸素ガスを真空槽内の溶鋼表面に吹き付ける方法が提案されている。しかし、この方法では、上述の特開平5−239537号公報の方法と同様の理由により、真空脱炭処理時の酸素ガスの使用を前提としているので、スラグ中の低級酸化物の含有率が高くなる。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、低級酸化物の含有率を低く抑えながら、かつ真空脱炭処理時に酸素ガスを吹き付けないことから、清浄性に優れている極低炭素鋼の溶製方法を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明の要旨は、下記の(1)に示す清浄性に優れた極低炭素鋼の溶製方法にある。
【0014】
(1)真空処理装置を用いて、取鍋内の溶鋼を脱炭処理後に脱酸処理することにより炭素含有率が0.005重量%以下の極低炭素鋼を溶製する方法において、真空処理前の取鍋内のスラグ中のCaO含有率とAl2O3含有率の重量%の比CaO/Al2O3を0.6以上2.0以下、FeOおよびMnOの含有率の合計を2重量%以上10重量%以下、SiO2含有率を12重量%以下ならびにMgO含有率を5重量%以上10重量%以下に調整した後、溶鋼を脱炭処理し、引き続き溶鋼を脱酸処理するために溶鋼にAlを添加し、それと同時にまたはその後に、真空槽内にMgOを含有する酸化物をMgO純分で0.40〜3.20kg/steel−t添加することによる清浄性に優れた極低炭素鋼の溶製方法。
【0015】
本発明の方法では、真空処理前のスラグ中のFeOおよびMnOの含有率の合計を適切でかつ低目の範囲に調整する。これにより、スラグによる溶鋼の再酸化が抑制される。また、真空脱炭処理時に脱炭速度の停滞を生じない程度に、FeOおよびMnOの合計の含有率を確保している。
【0016】
さらに、真空処理前のスラグの化学組成を、上述のFeOおよびMnOの含有率の合計以外に、CaO/Al2 O3 の値、SiO2 含有率、MgO含有率を適切な値の範囲とすることにより、スラグによる溶鋼の再酸化を抑制している。以下に、その機構を説明する。
【0017】
取鍋内のスラグは、固相と液相に分かれており、このうち、溶鋼と直接接触して溶鋼を再酸化させているのは、液相のスラグである。したがって、スラグによる溶鋼の再酸化を抑制するには、真空処理後のスラグの液相の割合を減らし、固相の割合を増やせばよい。
【0018】
このとき、液相のスラグを完全に固相とする必要はなく、液相のスラグの中に10体積%程度の固相を生成させれば、溶鋼の再酸化を抑制できることが分かった。
【0019】
真空処理前のスラグの化学組成を上述のような範囲にした場合、真空処理時のAl脱酸とともにMgOを主体とする酸化物を真空槽内の溶鋼に添加すると、液相のスラグ中に、10体積%程度の固相を生成させることができる。
【0020】
【発明の実施の形態】
真空処理前のスラグ組成を適正な範囲に制御するためには、転炉等の製鋼炉から取鍋に溶鋼を出鋼するときに、スラグの流出を抑制し、造滓剤として生石灰や、Al2 O3 またはCaOを主成分とするフラックスを添加する。また、スラグ中のFeOおよびMnOの合計の含有率を調整するため、Al灰やAl−CaO系のスラグ改質剤を添加する。
【0021】
本発明の方法では、真空処理前のスラグのCaO含有率とAl2 O3 含有率の重量%の比CaO/Al2 O3 を0.6以上2.0以下とする。CaO/Al2 O3 が0.6未満のスラグでは、真空脱炭処理後のAl脱酸時に不可避的に生成し、浮上するAl2 O3 を固定し吸収する能力が不十分である。また、この比が2.0を超えたスラグは、スラグ中の液相の割合が減少して流動性が低下する。そのため、Al2 O3 を吸収する能力が低下するので好ましくない。
【0022】
また、真空処理前のスラグのFeOおよびMnOの含有率は、合計で2〜10重量%(以下、単に%と記す)とする。2%未満では、真空脱炭反応に必要な溶鋼中酸素量0.04%以上を確保できない。また、これら低級酸化物からの酸素供給量が減少し、真空脱炭反応速度が遅くなるばかりでなく、極低炭素鋼の溶製ができない場合がある。
【0023】
図1は、真空処理前のスラグ中のFeOおよびMnOの含有率の合計と、真空脱炭処理時に溶鋼中のC含有率が0.002%に到達するまでの時間との関係を示した図である。溶鋼量270tの極低炭素鋼をRH真空処理装置により溶製した結果であり、その処理条件は、真空脱炭開始時の溶鋼中のC含有率は0.04〜0.05%、真空処理前のスラグ中のCaO/Al2 O3 は0.8〜1.2、SiO2 含有率は12%以下、MgO含有率は5〜10%である。
【0024】
図1に示すように、FeOおよびMnOの含有率の合計が2%未満では、真空脱炭に要する時間が大幅に延びる。5%以上でこの所要時間は最短となる。したがって、FeOおよびMnOの含有率の下限は合計で2%、さらに望ましいのは5%である。
【0025】
また、FeOおよびMnOの含有率の合計が10%までは溶鋼の清浄性を確保できる。しかし、10%を超えて多量に含有すると、真空槽内にMgOを含有する酸化物を添加した後にも、スラグによる溶鋼の再酸化が発生する。したがって、FeOおよびMnOの含有率の上限は合計で10%とした。
【0026】
真空処理前のスラグ中のSiO2 含有率は、12%以下とする。SiO2 は、転炉等の製鋼炉からの流出スラグや造滓剤から不可避的に混入する。このSiO2 が、12%を超えると、脱酸後の溶鋼の再酸化が発生する。また、脱酸後の液相のスラグに固相を生成させるために添加するMgOを含有する酸化物の量を増加させる必要が生じる。
【0027】
したがって、SiO2 は12%以下とし、望ましくは10%以下である。10%以下の場合には、脱酸時に添加するMgOを含有する酸化物を、さらに減らすことができる。また、SiO2 による溶鋼の再酸化も抑制できる。下限については、とくに限定しないが、脈石として造滓剤に含まれるので、通常1%程度以上となる。
【0028】
真空処理前のスラグ中のMgO含有率は5〜10%とする。5%未満では、脱酸後の液相のスラグに固相を生成させるためのMgOを含有する酸化物の添加量が多くなりすぎ、溶鋼の温度の低下を招く。また、出鋼時にMgO含有率を減ずるには多量の造滓剤を添加して希釈する必要があり、溶鋼の温度の低下を招く。一方、MgO含有率が10%を超えると、取鍋内のスラグの固相の割合が増大することに加えて、スラグのAl2 O3 を吸収する能力が低下するので好ましくない。
【0029】
真空脱炭処理後のAl脱酸時に添加するMgOを含有する酸化物には、MgO単体、MgO・CaO、MgO・Al2 O3 などがある。
【0030】
MgO単体としては、MgOを85%以上、望ましくは90%以上含有する酸化物で、一般的には、天然マグネシアあるいは海水マグネシアと呼ばれるものがある。
【0031】
また、MgO・CaOには、ドロマイトと呼ばれる鉱物があり、MgOを35%、CaOを60%前後含有するもの、このほかMgO含有率が50%以上あるいは70%以上のマグネシアドロマイトがある。MgO含有率が高い方が、添加量を抑えることができるので望ましい。マグネシアドロマイトは、レンガ材料として使用されるので、使用済みレンガを適宜破砕、整粒したものを用いることができる。
【0032】
MgO・Al2 O3 には、MgOを28%、Al2O3 を72%含有するスピネルやMgO含有率が40%以上あるいは60%以上に高めてMgO飽和組成にしたマグネシアスピネルと呼ばれるものがある。MgO含有率が高い方が、添加量を抑えることができるので望ましい。スピネルも、レンガ材料、不定形耐火物材料として使用されるので、これらの使用済み材料を適宜破砕、整粒したものを用いることができる。
【0033】
上述した天然マグネシア、ドロマイト、スピネルの使い分けについては、コスト等の経済性を勘案するほか、真空脱炭処理前のスラグ組成のCaO/Al2 O3 が0.6以上1.0未満ではスピネルを用い、1.0〜2.0ではドロマイトを用いるのが望ましい。また、天然マグネシアは、CaO/Al2 O3 が0.6〜2.0の全ての値のときに用いることができる。その理由は、CaO/Al2 O3 が0.6以上1.0未満では、液相のスラグにMgO・Al2 O3 の固相が増加し、1.0〜2.0では、MgOの固相が増加するためである。
【0034】
これらMgOを含有する酸化物の粒径は、0.1〜30mmが望ましい。0.1mm未満では、真空槽内に添加する際に飛散しやすい。30mmを超えると、添加後に溶鋼に巻き込まれにくく、また溶鋼中に均一に分散しにくい。そのため、RH真空処理装置の場合には、下降側浸漬管の外周にかたまって浮上する場合がある。粒径は1〜20mmであれば、さらに望ましい。添加された酸化物が、より均一に溶鋼に巻き込まれるからである。
【0035】
図2は、RH真空処理装置を用いて、真空脱炭、脱酸処理後に真空槽内に添加した酸化物の粒径と液相のスラグへの分散率との関係を示す図である。MgO75%以上、SrO20%以上からなる酸化物をトレーサーとして、酸化物の分散率を調査した結果である。分散率とは、RH真空処理後、任意の位置のスラグを25箇所の位置にわたって採取し、SrOを含むスラグを採取した位置の数を、全調査の位置の数で除したものである。酸化物の粒径が0.1〜30mmでは、分散率は90%以上となり、とくに粒径が1〜20mmでは、分散率は、95%以上であった。
【0036】
MgOを含有する酸化物の添加量は、真空処理前のスラグの組成、スラグ量などにもよるが、MgO純分で0.4〜3.2kg/steel−ton程度である。これにより、脱酸後の液相のスラグ中に10体積%程度以上の固相を生成させることができる。
【0037】
【実施例】
転炉およびRH真空処理装置を用いて、270tの極低炭素鋼を溶製した。転炉では、C含有率0.02〜0.06%、Mn含有率0.01〜0.2%、Si含有率0.01〜0.03%に精錬し、1660〜1690℃の溶鋼を取鍋に出鋼した。出鋼に際し、転炉からのスラグ流出を極力抑制するようにした。出鋼直後の取鍋内の溶融スラグに、造滓剤として生石灰、Al2 O3 系フラックス、CaO系フラックスを、スラグ改質剤として、Al灰、Al−CaO系フラックスを添加した。
【0038】
次に、RH真空処理装置を用いて、溶鋼中の炭素含有率が0.005%以下となるまで真空脱炭を行った。その後に、真空槽内にAlを添加して脱酸を行い、溶鋼中のAl含有率を0.03〜0.08%に調整した。
【0039】
Al添加から約2分後にMgOを含有する酸化物の粒を添加した。酸化物としては、MgOを92%以上含有するマグネシアクリンカーと、MgOを52%、CaOを44%含有するマグネシアドロマイトクリンカーと、MgOを58%、Al2 O3 を33%含有するマグネシアスピネルクリンカーを用いた。酸化物の粒径は、1〜20mmの範囲に約95%含む粒径とした。これらのMgOを含有する酸化物は、RH真空槽の合金添加シュートを利用して、槽内の溶鋼に添加した。酸化物の添加後、5分以上の環流時間を確保した。なお、後述する比較例の試験の一部では、これら酸化物を添加しない試験も実施した。
【0040】
真空処理の後の溶鋼を、厚み250mm、幅1250mmの形状のスラブ鋳片に連続鋳造した。得られたスラブ鋳片から横断面サンプルを採取し、全酸素量および非金属介在物を検査し、鋼の清浄性を調査した。
【0041】
全酸素量は、スラブ鋳片の横断面サンプルの表面直下、1/4厚および1/2厚の位置から試料を採取し、3個の全酸素量の平均値とした。
【0042】
鋳片の清浄度は、鋳片の表面から表面直下10mm以内の10cm2 の被顕面積を400倍の倍率の顕微鏡観察により調査した。後述する本発明例の試験No.1の清浄度の調査結果を指数1.00として、他の試験の清浄度の調査結果を指数化して表示した。
【0043】
また、鋳型内に溶鋼を供給する浸漬ノズルの内面へのAl2 O3 の付着状況を調査した。連続鋳造終了後に浸漬ノズルを回収し、高さ方向の中央部の横断面の孔の空隙の断面積を測定した。未使用の浸漬ノズルの同様な位置の横断面の孔の空隙の面積を、使用後の孔の空隙の断面積で除した値を調査した。後述する本発明例の試験No.1の浸漬ノズルの詰まり発生状況、すなわち上述の面積の比の値を指数1.00として、他の試験の浸漬ノズルの使用後の状況を指数化して表示した。
【0044】
試験の条件および試験結果を表1に示す。
【0045】
【表1】
【0046】
本発明例の試験No.1〜No.11の真空処理前のスラグ組成は、本発明で規定する範囲内である。また、脱酸処理後にMgOを含有する酸化物を、MgO純分で0.40〜3.2kg/steel−ton添加した。
【0047】
スラブ鋳片の全酸素量は、本発明例の試験No.1〜11では、すべて25ppm以下で清浄性が良好であることが裏付けられた。また、鋳片の清浄度は、本発明例の試験No.1〜11では、指数0.88〜1.01程度で良好な清浄度であった。さらに、浸漬ノズルの内面の孔の詰まり状況は、本発明例の試験No.1〜11では、指数0.88〜1.00程度で、浸漬ノズルの閉塞はほとんど発生せず、良好な結果であった。いずれの本発明例の試験も、脱酸後のスラグによる溶鋼の再酸化を抑制し、Al2 O3 などの非金属介在物の生成が抑制できた。そのため、清浄度が向上するとともに浸漬ノズルの詰まりも抑制できた。
【0048】
比較例の試験No.12は、スラブ鋳片の全酸素量が33ppm、また鋳片の清浄度は指数1.89で、いずれも悪かった。さらに、浸漬ノズルの詰まり状況は指数1.80で詰まりが発生した。これらの原因は、真空処理前のスラグ組成は本発明で規定する範囲内であったが、MgOを含有する酸化物の粒を添加しなかったため、スラグによる溶鋼の再酸化が顕著であったことによる。
【0049】
比較例の試験No.13〜No.18では、スラブ鋳片の全酸素量が27〜34ppmで清浄性が悪く、また鋳片の清浄度は、指数1.54〜2.03で悪かった。さらに、浸漬ノズルの詰まり状況は指数1.50〜1.80で詰まりの発生が多かった。比較例で清浄性が悪く、ノズルが詰まりやすかった理由は次のとおりである。
【0050】
試験No.13および試験No.16は、真空処理前のスラグのCaO/Al2 O3 が2.09、またはMgO含有率を10.8%と、それぞれ本発明で規定する範囲の上限を外れていたため、スラグの固相が多くなり、スラグのAl2 O3 吸収能力が低下したことによる。
【0051】
一方、試験No.14は、真空処理前のスラグのCaO/Al2 O3 が0.55で、本発明で規定する範囲の下限を外れていたため、スラグのCaO分が少なく、スラグのAl2 O3 吸収能力が低下したことによる。
【0052】
試験No.15および試験No.18は、真空処理前のスラグのFeOおよびMnOの含有率の合計が10.8%、またはSiO2 含有率が12.7%で、それぞれ本発明で規定する範囲の上限を外れていたため、スラグによる溶鋼の再酸化が顕著であった。
【0053】
試験No.17は、真空処理前のスラグのMgO含有率が4.6%で、本発明で規定する範囲の下限を外れおり、スラグ量も多く、MgO純分の添加量が少なかったため、スラグによる溶鋼の再酸化が顕著であった。
【0054】
【発明の効果】
本発明の方法の適用により、清浄性に優れた極低炭素鋼の溶製が可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】スラグ中のFeOおよびMnOの含有率の合計と真空脱炭処理時C含有率が0.002%に到達する時間との関係を示した図である。
【図2】真空槽内に添加した酸化物の粒径と液相のスラグへの酸化物の分散率との関係を示す図である。
Claims (1)
- 真空処理装置を用いて、取鍋内の溶鋼を脱炭処理後に脱酸処理することにより炭素含有率が0.005重量%以下の極低炭素鋼を溶製する方法において、真空処理前の取鍋内のスラグ中のCaO含有率とAl2O3含有率の重量%の比CaO/Al2O3を0.6以上2.0以下、FeOおよびMnOの含有率の合計を2重量%以上10重量%以下、SiO2含有率を12重量%以下ならびにMgO含有率を5重量%以上10重量%以下に調整した後、溶鋼を脱炭処理し、引き続き溶鋼を脱酸処理するために溶鋼にAlを添加し、それと同時にまたはその後に、真空槽内にMgOを含有する酸化物をMgO純分で0.40〜3.20kg/steel−t添加することを特徴とする清浄性に優れた極低炭素鋼の溶製方法。
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