JP4345769B2 - 極低硫高清浄鋼の溶製方法 - Google Patents

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Description

本発明は清浄度に優れた極低硫鋼の溶製方法に関し、詳しくは、CaO系フラックスの添加、溶鋼のガス攪拌および酸化性ガスの供給により脱硫および介在物除去を行い、特に、鋼中のS含有率が10ppm以下でかつ全酸素含有率の低い極低硫高清浄鋼を溶製する方法に関する。
近年、鉄鋼材料に対して厳しくかつ高い性能や特性が要求されるにともない、高清浄度を有し、鋼中の硫黄(S)含有率が例えば10ppm以下といった極低硫鋼(以下、「高清浄極低硫鋼」とも称する)の使用ニーズが高まっている。極低硫鋼を溶製する場合には、溶製の予備処理工程において、CaO、Na2CO3、金属Mgなどの脱硫剤を添加して脱硫するのが一般的である。しかし、溶銑予備処理工程において脱硫された溶銑は、次の転炉吹錬工程におけるスクラップや媒溶剤からの硫黄源の侵入、および溶銑予備処理工程における残留スラグからの復硫により硫黄汚染されるため、溶銑予備処理のみで極低硫鋼を製造することは極めて難しい。そのため、極低硫鋼を溶製する場合には、成品で要求されるS含有率のレベルに応じて、転炉出鋼後の二次精錬工程において溶鋼脱硫処理が実施される。
二次精錬工程において溶鋼脱硫処理を実施し、高清浄度極低硫鋼を溶製する場合には、処理中における溶鋼の温度低下の補償、脱硫能の確保および溶鋼の清浄度確保が極めて重要である。
温度低下の補償に関しては、電気アーク加熱法、電磁誘導加熱法などがあるが、電気エネルギーを使用するため、昇熱エネルギーがコスト高となり経済的に不利である。一方、Alを添加し酸素を付加する方法(以下、「Al昇熱法」とも記す)は、電気エネルギーを使用する昇熱法に比べて低コストであることから利用される場合があるが、Al23またはFeOの生成により介在物の増加をもたらす欠点がある。この対策として、例えば、取鍋溶鋼内に円錐状の浸漬管などを浸漬させ、その浸漬管内部でAl昇熱を行う特許文献1に開示されたような昇熱方法が実施されている。しかし、この方法では、ポーラスノズルを通して吹き込まれる攪拌ガスによる攪拌強度が弱いため、取鍋内溶鋼の温度の均一化には長時間を要するという問題があった。また、脱硫処理に際してAl昇温法を用いると、スラグ中のAl23濃度が上昇してスラグのサルファイドキャパシティー(脱硫能)が低下するため、Al昇温法は脱硫の進行が阻害されることを許容した上で用いられる技術であった。このように、スラグを用いることによる極低硫化が困難であることから、同文献の実施例には、生成したAl23とスラグとの混合を極力排除し、脱硫処理については、別途、脱硫用フラックスを吹き込む方法が示されている。
また、脱硫能を確保するための方法も提案されている。特許文献2には、CaO、MgO、Al23、SiO2の各成分組成および融点の範囲を規定し、流動性を確保したカルシウムアルミネート系合成脱硫剤が開示されている。しかし、合成脱硫剤は、事前に所定の成分組成に調整する必要があるため、原料をプリメルトあるいはプリミックスする工程が必要となり、このため、脱硫コストが上昇して経済性が損なわれる。また、同文献で開示された脱硫剤は、CaOの存在下でAl23を適切量存在させると脱硫促進に好都合であるとの知見に基づいてなされた発明ではあるものの、合成脱硫剤を多量に添加する必要があり、さらには、脱硫処理時間が長くなるといった問題を伴っていた。
また、特許文献3には、酸化鉄をT.Feで0.5〜6%含有し、かつ、CaO/(CaO+Al23+MXy)およびAl23/(CaO+Al23+MXy)の値を適正化した脱硫剤が開示されている。また、この脱硫剤は酸化鉄を含有することにより顕著な溶融促進効果を発揮し、脱硫率を向上させるとされている。しかし、この脱硫剤は、酸化鉄を含有するため、溶鋼への添加による熱損失が大きく、同文献の実施例に示されたとおり、溶鋼中のS含有率も20〜30ppm程度にまでしか低下しないため、鋼中S含有率を10ppm以下とすることが求められている近年の品質要求には応えられない。
さらに、特許文献4には、取鍋溶鋼中に浸漬した筒状浸漬管内を減圧して真空脱硫精錬することにより極低硫極低酸素鋼を製造する方法において、転炉からの出鋼時に取鍋中に生石灰、アルミナおよび螢石からなるフラックスを添加した後、溶鋼をガス攪拌してスラグ成分組成を適正範囲に調整する方法が開示されている。この方法は、Al23の吸収能が高く、かつ脱硫能の優れた取鍋スラグを利用して、ガス攪拌処理のみにより高清浄鋼を溶製する方法である。この方法では、スラグを活用するためのフラックスの積極的な溶融手段は、螢石の使用のみである。しかも、螢石を用いる溶融促進方法は、スラグの混合に長時間を要するのみならず、近年の環境問題に由来するフッ素排出規制により、操業が制約される。したがって、螢石を用いることなく極低硫極低酸素鋼を製造することができる溶製方法の開発が必要である。
また、特許文献5には、転炉で脱炭精錬した溶鋼を取鍋に受鋼し、その鋼中S含有率に応じてCaOおよびAl23を投入し、真空中にて取鍋の底部から不活性ガスを吹き込んでスラグおよびメタルを攪拌し、極低硫鋼を溶製する方法が開示されている。ここでは、さらに、投入Al23に替えて金属Alを溶鋼中に投入し、酸素を供給することにより燃焼させて溶鋼の昇熱に利用する方法も開示されている。しかし、この方法は、真空精錬下におけるスラグの強攪拌を必須としている。しかも、Alは溶鋼の温度保持のために投入するのであって、Alによる酸化反応の適正化に基づくCaOのスラグ化促進作用については示唆も配慮もなされていない。したがって、真空中での送酸による昇熱方法についても何ら具体的な開示はなされていない。
そして、特許文献6には、取鍋内のAlを含有する溶鋼および溶鋼上のスラグを不活性ガスで攪拌しつつ、溶鋼に酸化性ガスを供給することにより溶鋼を昇熱精錬する方法であって、攪拌動力と酸化性ガス中の純酸素供給速度との比を適正範囲にする溶鋼の極低硫化および清浄化方法が開示されている。しかし、この方法は、溶鋼の温度降下防止または昇熱を目的とするものであって、酸化性ガスの供給により生成したAl23を速やかにスラグに吸収させるために溶鋼上のスラグを利用するにすぎない。また、スラグの存在による脱硫能力の向上について指摘されてはいるものの、そのようなスラグを積極的に生成させて、これを利用するという思想はみられない。したがって、実施例に示されたとおり、攪拌可能なスラグ量は9〜10kg/tと少ない。
上述のとおり、従来の技術は、溶鋼の昇熱、スラグ制御、および攪拌のいずれか一つに着目したものであり、スラグを脱硫に適した成分組成に制御して脱硫を促進させ、同時に鋼の清浄化を図ることのできる精錬方法とはいい難い。したがって、エネルギーコストの低減をはじめとして、優れた経済性のもとに、極低硫かつ高清浄度を備えた鋼の溶製方法を確立するには、解決されねばならない課題が残されている。
特開昭63−69909号公報(特許請求の範囲および2頁右上欄11行〜左下欄3行) 特開2002−60832号公報(特許請求の範囲および段落[0004]〜[0006]) 特開2004−204307号公報(特許請求の範囲および段落[0012]〜[0014]) 特開平8−109411号公報(特許請求の範囲および段落[0047]〜[0055]) 特開2002−339014号公報(特許請求の範囲、段落[0007]〜[0012]および[0019]) 特開平9−87730号公報(特許請求の範囲、段落[0014]、[0015]および[0070])
前記のとおり、従来の極低硫鋼および高清浄鋼の溶製方法には下記の問題が残されている。すなわち、(a)二次精錬工程における温度低下を補償するためにAl昇温法を用いると、Al23またはFeOの生成により溶鋼中の介在物の増加をもたらすほか、スラグ中のAl23含有率が上昇してスラグの脱硫能が低下する、(b)螢石を含有するフラックスを用いた溶融促進法とガス攪拌法との併用法では、スラグの混合に時間を要し、また、フッ素排出規制により操業が制約される、(c)酸化性ガスの吹き付けにより溶鋼中のAlを酸化発熱させながら不活性ガスによりスラグを攪拌する方法では、攪拌可能なスラグ量が少なすぎる、などである。
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、その課題は、CaO系フラックスの添加、溶鋼および上記フラックスのガス攪拌ならびに酸化性ガスの供給を適正化することにより、高い脱硫効率を確保するとともに介在物を効果的に除去し、特に、鋼中S含有率が10ppm以下でかつ高清浄性をも兼備した極低硫高清浄鋼の溶製方法を提供することにある。
本発明は、溶鋼の昇熱処理およびスラグ成分組成の制御、ならびに溶鋼およびスラグの攪拌処理の適正化を図ることにより、脱硫と清浄化とを同時に促進させ、高清浄度を有する極低硫溶鋼を効率よく安定して製造できる精錬方法である。すなわち、本発明の要旨は、下記の請求項1〜6に係る極低硫高清浄鋼の溶製方法にある。
請求項1に係る発明: 溶鋼を下記の工程1〜3で示される工程により処理する極低硫高清浄鋼の溶製方法であって、下記工程1〜3のうちの1つ以上の工程において、取鍋内の溶鋼中に、その管内と管外とで溶鋼表面を隔絶する浸漬管を浸漬することなく、溶鋼を処理し、かつ、下記工程1または工程2において溶鋼中にAlを添加した後、工程2において純酸素換算量で溶鋼1トン(t)当たり1.2Nm3以上の酸化性ガスを該溶鋼に吹込むかまたは吹き付けるに際し、工程2での酸化性ガスの供給が完了するまでにCaOフラックスをCaO換算量で溶鋼1トン(t)当たり8kg以上添加し、かつ、工程1および工程2を通算して酸化性ガスの供給が完了するまでにAlを金属Al換算量で溶鋼1トン(t)当たり2kg以上添加して、工程3による処理終了後におけるスラグ中のCaOとAl 2 3 との質量含有率の比(CaOの質量含有率/Al 2 3 の質量含有率)を0.9〜2.5とし、同スラグ中のFeOおよびMnOの質量含有率の合計を8%以下とすることを特徴とする極低硫高清浄鋼の溶製方法。
工程1:大気圧下において取鍋内溶鋼にCaO系フラックスを添加する工程
工程2:前記工程1の後に大気圧下において取鍋内溶鋼中に攪拌ガスを吹き込むことにより該溶鋼および前記CaOフラックスを攪拌するとともに、溶鋼に酸化性ガスを供給し、酸化性ガスと溶鋼との反応により生成した酸化物をCaO系フラックスと混合する工程
工程3:前記酸化性ガスの供給を停止し、大気圧下の前記取鍋内溶鋼中に攪拌ガスを吹き込むことにより脱硫および介在物除去を行う工程
請求項2に係る発明: 前記工程3による処理終了後におけるスラグ中のCaOとAl23との前記質量含有率の比を1.3〜2.5とし、同スラグ中のFeOおよびMnOの質量含有率の合計を%以下とすることを特徴とする請求項1に記載の極低硫高清浄鋼の溶製方法。
請求項3に係る発明: 前記工程2における酸化性ガスの供給速度を、純酸素換算量で溶鋼1トン(t)当たり0.1〜0.24Nm 3 /minとし、前記工程3における攪拌ガスの吹込み流量を溶鋼1トン(t)当たり0.0035〜0.015Nm 3 /minとすることを特徴とする請求項1または2に記載の極低硫高清浄鋼の溶製方法。
請求項4に係る発明: 前記工程3において、酸化性ガスの供給を停止した後に攪拌ガスを吹き込む時間を、4分間以上とすることを特徴とする請求項1、2または3のいずれか1項に記載の極低硫高清浄鋼の溶製方法。
請求項5に係る発明: 前記工程3の後に、前記取鍋内溶鋼をRH真空脱ガス装置を用いて処理するに際し、RH真空槽内に酸化性ガスを供給して溶鋼温度を上昇させる工程4を付加することを特徴とする請求項1、2、3または4のいずれか1項に記載の極低硫高清浄鋼の溶製方法。
請求項6に係る発明: 前記工程4において、酸化性ガスの供給を停止した後に、引き続きRH真空脱ガス処理装置内における溶鋼の環流を継続して該溶鋼中の介在物を除去する処理を行うことを特徴とする請求項1、2、3、4または5のいずれか1項に記載の極低硫高清浄鋼の溶製方法。
本発明において、「極低硫高清浄鋼」とは、S含有率が極低水準まで低減された全酸素含有率の低い鋼を意味し、例えば、Ca添加処理を行わない状態で鋼材製品中のS含有率が10ppm以下であるとともに、鋼中の溶存酸素および介在物中の酸素の合計量である全酸素含有率(以下、「T.[O]」とも記す)が30ppm以下である鋼をいう。さらに好ましくは、鋼材製品中のS含有率が6ppm以下で、T.[O]が15ppm以下である鋼を意味する。
また、「CaO系フラックス」とは、CaO含有率が45質量%以上のフラックスを意味し、例えば、生石灰単味、および、生石灰を主体としてAl23、MgOなどの成分を含有するフラックスが該当する。
「酸化性ガス」とは、鋼の溶融温度領域において、Al、Si、Mn、Feなどの合金元素を酸化させる能力を有するガスを意味し、酸素ガス、二酸化炭素ガスなどの単味ガス、それら単味ガスの混合ガスならびに上記ガスと不活性ガスまたは窒素との混合ガスが該当する。なお、「不活性ガス」とは、周期律表18族の元素を意味し、例えばアルゴン、ヘリウム、ネオンなどが該当する。
以下の説明において、成分含有率を表す「%」は、「質量%」を意味するものとする。
本発明者らは、前述の課題を解決するために、脱硫の促進と高清浄化を同時に達成できる極低硫高清浄鋼の溶製方法を検討し、下記の(a)〜(c)の知見を得て、上記の本発明を完成させた。
(a)発明の基礎知見および各工程の機能
上述したとおりの極低硫化と高清浄化とを同時に満足する極低硫高清浄鋼を溶製するためには、下記の工程1〜工程4の処理により溶鋼を精錬することが有効である。
工程1:大気圧下において取鍋内溶鋼にCaO系フラックスを添加する工程
工程2:前記工程1の後に大気圧下において取鍋内溶鋼中に攪拌ガスを吹き込むことにより該溶鋼および前記CaOフラックスを攪拌するとともに、溶鋼に酸化性ガスを供給し、酸化性ガスと溶鋼との反応により生成した酸化物をCaO系フラックスと混合する工程
工程3:前記酸化性ガスの供給を停止し、大気圧下の前記取鍋内溶鋼中に攪拌ガスを吹き込むことにより脱硫および介在物除去を行う工程
工程4:前記工程3の後に前記取鍋内溶鋼をRH真空脱ガス装置を用いて処理するに際し、RH真空槽内に酸化性ガスを供給して溶鋼温度を上昇させる工程
溶鋼にAlおよび酸素を供給すると、溶鋼温度が上昇するとともにAl23が生成する。このAl23は、溶鋼温度の上昇とともに溶鋼表面に浮上し、浮上後にスラグに吸収される。この時、高温下でAl23とスラグとが一体化し、このスラグによるAl23の吸収により、スラグの成分組成は変化する。さらに、酸素の供給にともない徐々にAl23が生成し、順次浮上してくるため、スラグの成分組成の変化は緩やかであり、Al23の添加や合成フラックスの添加の場合のような急激なスラグの組成変化は生じない。また、Al23は溶鋼表面全体に均一に浮上してくるため、スラグ全体に分散し、一括添加の場合のような局部添加とはならないため、スラグの攪拌が弱くても十分に攪拌混合できるとともに混合時間も短縮できる。
したがって、溶鋼へのAlおよび酸素供給によって生じるAl23成分をスラグ成分組成の制御に活用することにより、高温でのAl23成分の混合と緩やかな組成変化、およびAl23成分の均一な分散を図り、スラグ成分組成の制御を可能とすることができる。その結果、強攪拌や螢石の使用を回避することができる。
溶鋼へのAlおよび酸素の供給によるAl23の生成、およびスラグへのAl23成分の吸収が可能であることは、上述のとおりである。このような条件下において脱硫を進行させるためには、予めCaO成分を添加しておく必要がある。
(a)−1 工程1
工程1では、脱硫を進行させるため、大気圧下において溶鋼にCaO系フラックスを添加する。ここで、CaOを大気圧下にて添加する理由は、次工程において酸化精錬を行うことから、工程1において精錬コストを上昇させる減圧下でのCaO添加を行う必要がないからである。AlはCaO系フラックスの添加前に溶鋼に供給しておくことを基本とするが、CaO系フラックスの添加と同時であってもよい。
(a)−2 工程2
次に、工程2において、大気圧下の取鍋溶鋼中に不活性ガスを吹き込むことにより溶鋼および添加されたフラックスを攪拌するとともに、溶鋼に酸化性ガスを供給し、酸化性ガスと溶鋼との反応により生成した酸化物をCaO系フラックスに混合させる。この処理は、溶鋼中のAlと酸素とを反応させ、生成したAl23成分を利用することによりスラグ成分組成を制御し、またスラグの溶融を促進させるためのものである。ここで、不活性ガスを吹き込むのは、溶鋼への酸化性ガスの吸収を円滑に進行させるためである。不活性ガスの吹き込みを行わずに、酸化性ガスのみを供給すると、酸化性ガスと溶鋼表面の衝突領域のみにおいて酸化反応が進行し、Al23の均一分散が阻害されるからである。
工程2において、スラグ成分組成の制御とその溶融が進行するとともに、脱硫反応が進行する。しかし、この酸化性ガスの供給時間では脱硫反応が飽和するまでは進行せず、スラグには脱硫余力が残っている。ここで、「脱硫余力」とは、後述するとおり、スラグの成分組成により支配される脱硫能力を意味する。また、スラグの成分組成を変化させるほどの量ではないが、溶鋼中に介在物としてAl23が数十ppm残留している。
(a)−3 工程3
そこで、前記工程2の後に、工程3において、酸化性ガスの供給を停止し、大気圧下で溶鋼中に攪拌ガスを吹き込むことにより、脱硫および介在物の除去処理を行う。この処理により、脱硫余力を有するスラグによるさらなる脱硫と、不要な残留介在物の除去を図る。ここでいう「脱硫余力」とは、スラグの成分組成により支配されるサルファイドキャパシティー、すなわち「脱硫能」を意味する。このサルファイドキャパシティーは、スラグ中にFeOやMnOなどの低級酸化物が存在すると低下する。したがって、脱硫力を最大限に発揮するためには、スラグ成分組成の制御を行い、低級酸化物の濃度を低減する必要がある。
前記工程2では、酸化性ガスの供給により、不可避的に低級酸化物が生成する。このため、工程2の後に、工程3において不活性ガスを吹き込み、これらの低級酸化物の濃度を低減させることによりさらに脱硫を促進させることができるのである。
(a)−4 工程4
最後に、工程4を実施する。前記工程1〜工程3においては、大気圧下において取鍋内溶鋼を処理するが、この処理の後に、取鍋をRH式真空脱ガス処理装置(以下、「RH装置」とも記し、RH装置による処理を「RH処理」とも記す)に移送し、RH処理において酸化性ガスを溶鋼に供給して溶鋼温度を上昇させ、さらに、その後、RH装置内において溶鋼を環流させる。この工程を経ることにより、さらに脱硫率と清浄度を高めることができる。これは下記の理由による。
すなわち、前記工程2においても昇温は可能であるが、その主目的は、スラグ成分組成の制御による脱硫の促進である。このため、溶鋼温度が低すぎる場合であっても、酸素供給による溶鋼の昇温量は制限される場合がある。例えば、処理前の溶鋼温度が計画値よりも低い場合は、酸化性ガス供給量を増加して溶鋼温度を上昇させる必要がある。しかし、酸化性ガス供給量を増加させるとAl23の生成量が多くなるため、CaOの投入量も増加せざるを得ない。その結果、スラグ量の増大を招く。
そこで、本発明では、下記の方法を採用した。つまり、工程2における酸化性ガス供給量は、脱硫を主目的としたスラグの成分組成制御に適した酸素供給量とする。この場合、溶鋼温度はやや低くなる場合がある。この温度不足分は、いずれかの段階において補償する必要がある。前述したとおり、酸化性ガスを用いて昇温を図ると、スラグ中のFeOおよびMnOの濃度が上昇し、スラグから溶鋼への復硫が起こる恐れがある。そこで、RH処理においては、スラグと溶鋼間の反応がほとんど進行しないことに着目した。
RH処理におけるスラグ−溶鋼間反応は反応速度が遅いため、RH処理中にスラグ中のFeO、MnO濃度あるいはAl23濃度が増加しても、復硫が生じにくい。そこで、工程2において溶鋼温度が不足する場合は、第4工程として、RH処理において酸化性ガスを供給して、溶鋼温度を上昇させればよい。この方法によって、工程1〜工程3における脱硫効果を高め、さらに、脱硫効果を損ねることなく溶鋼温度を補償することができる。
以上に説明した工程1〜工程4による処理を上記の順序で行うことにより、溶鋼の昇温およびスラグの成分組成制御を同時に行うことが可能となり、その結果、溶鋼およびスラグの強攪拌ならびに合成脱硫剤および螢石の使用を抑制して、効率的に脱硫を図ることができる。
(b)工程1〜工程3による処理効果の確認
本発明の方法に基づき、工程1〜工程3による処理の効果を確認するための予備試験1を行った。
図1は、本発明の方法における工程1〜工程3の処理状況を模式的に示す図である。取鍋1内に収容された250tの溶鋼2に、CaOを溶鋼1トン(t)当たり8kg(以下、「8kg/t」とも記す)添加した後、大気圧下において、溶鋼1t当たり0.012Nm3/min(以下、「0.012Nm3/min・t」とも記す)のArガスを昇降可能な不活性ガス吹き込み用浸漬ランス4を通して吹き込みながら、酸素ガスを0.150Nm3/min・tの吹き付け速度にて昇降可能な酸化性ガス上吹きランス5を通して10分間にわたり、合計で溶鋼1t当たり1.5Nm3(以下、「1.5Nm3/t」とも記す)上吹きした。酸素の上吹きを終了後、引き続き溶鋼にArガスを吹き込み、7分間攪拌を行った。なお、図中の番号3はスラグを、また、番号6は取鍋のカバーを示す。
予備試験1における比較試験として、CaOのみを8kg/t添加し、酸素を供給せずに17分間Arガスの吹き込みによる攪拌を行った試験、および、CaOとAl23の混合比が質量比で60:40である混合フラックスを9kg/t添加し、酸素を供給せずに17分間Arガスの吹き込みによる攪拌を行う試験を行った。なお、いずれの試験においても、転炉からの出鋼時にAlを溶鋼に添加し、Arガスの吹込みによる攪拌前における溶鋼中のAl含有率を0.25%に調整した。試験結果を表1に示す。
Figure 0004345769
同表に示される結果から、予備試験1における本発明の方法による試験では、他の2つの比較試験に比較して、処理後S含有率が低く、介在物量の指標となるT.[O]も低いことがわかる。これは、本発明の方法にしたがって、Alと供給酸素との反応により生成したAl23を用いる方が、スラグ成分組成の制御が図りやすく、脱硫反応が促進することによる。また、T.[O]の値が低いのは、スラグの溶融が促進され、スラグによる介在物の吸収能が向上したからである。これらの結果は、換言すれば、生成したAl23とスラグとの混合が促進された結果、T.[O]の値が低下したことを意味しており、したがって、本発明の方法のように、溶鋼への酸化性ガス供給により生成したAl23を利用してスラグの成分組成制御を行う方法が脱硫および清浄化の同時処理に有効であることを示している。
さらに上記した基礎的知見の効果を高める請求項1ないし6に係る発明の基礎となった知見について下記に説明する。
(c)請求項1ないし6に係る発明の基礎知見
(c)−1 酸化性ガスの供給量
本発明者らは、酸化性ガス供給量の好ましい範囲を把握するため、酸化性ガスの供給量を種々変化させて、脱硫率に及ぼす効果を調査した。その結果、酸化性ガスの供給量を純酸素換算量で0.4Nm3/t以上とすることにより、90%以上の脱硫率を得ることができた。これに対して、酸化性ガスの供給量が純酸素換算量で0.4Nm3/t未満においては、脱硫率は上記の値よりも5〜10%低い値となった。これは、酸化性ガスの供給量が少なくなると、生成するAl23量が減少し、スラグの溶融が不完全になることによる。したがって、酸化性ガスの供給量を純酸素換算量で0.4Nm3/t以上とすることにより、脱硫率を一層高められることが判明した。なお、酸化性ガスの供給量に応じて、Al添加量およびCaO添加量を調整する必要があることはいうまでもない。
(c)−2 攪拌ガス吹込み時間
本発明では、Al23の生成後においてもスラグは脱硫余力を有しているため、不活性ガスを吹き込んで攪拌を継続し、脱硫を促進させる。この脱硫促進処理における好ましい攪拌時間を下記の方法にて検討した。Arガス吹込み流量を0.008〜0.020Nm3/min・tの範囲とし、吹き込み時間を変化させて脱硫率に及ぼす効果を調査した。その結果、吹き込み時間が4分以上の場合には、脱硫率は高位でほぼ一定値を示したのに対して、吹込み時間が4分未満では、脱硫率は上記の値よりも3〜10%低下し、かつ変動量が増加した。これは、スラグ中のFeOやMnOを十分に還元することができなかったために、スラグによる脱硫が阻害されたことによる。スラグの脱硫力を十分に確保するには、FeOやMnOの還元を行う必要がある。上記の結果から、酸化性ガスの供給停止後、攪拌用の不活性ガスを4分間以上吹き込むことにより、脱硫率を一層高位で安定化することができ、好ましいことが明らかとなった。
(c)−3 スラグの成分組成
本発明では、溶鋼への酸化性ガス供給により生成したAl23をスラグ成分組成の制御に利用して、脱硫を促進させる。そこで、脱硫を進行させるスラグにも好ましい成分組成が存在すると考え、処理後のスラグ成分組成と脱硫率の関係を調査した。その結果、処理後のスラグ中のCaOとAl23との質量含有率の比が0.9〜2.5であり、かつ、スラグ中のFeOとMnOとの質量含有率の合計が8%以下の場合に、80%以上の脱硫率が得られることが判明した。これに対して、上記の範囲を満足しない場合には、脱硫率は13〜25%低目の値となった。
また、処理後のスラグ中のCaOとAl23との質量含有率の比が0.9〜2.5の場合は、処理後における溶鋼中のT.[O]は14〜20ppmであったが、この範囲を満足しない場合には、T.[O]は18〜25ppmと高い値となった。
これらの結果から、本発明において、処理後スラグの成分組成を上記の範囲内とすることにより、一層高い脱硫率が得られるとともに、溶鋼の清浄度をさらに高めることができることがわかった。このスラグ成分組成の制御は、前述したCaO系フラックスの添加量により調整することができる。なお、本発明では螢石を使用せずとも上記目的を達成することができるが、添加フラックス中に混在するCaF2成分の存在を排除するものではない。また、螢石を併用した場合に、脱硫能率の向上や処理後のS含有率の低下などの面で一層有利となることは勿論である。
(c)−4 脱硫処理後のRH処理
前記工程3の処理によっても溶鋼の清浄化効果は得られるが、工程3により得られる以上の高清浄度が求められる場合には、酸化性ガスの供給停止後に、さらにRH装置内における溶鋼の環流を継続することにより、一層清浄化を向上させることができる。工程3の処理後においても介在物は一部残留しているのに加えて、工程4において脱硫効率を高位に保持したまま昇熱処理を行うことにより溶鋼温度を調整すると、昇熱処理によりAl23介在物が生成し、溶鋼に残留してしまう場合がある。そのような場合には、これらの介在物を除去するために、酸化性ガスの供給後、一定時間環流処理を行うことにより、溶鋼の清浄度をさらに一層高めることができる。
(c)−5 酸化性ガスの種類
本発明の方法では、処理時間を短縮する観点からは、酸素などの酸化性ガス単体を用いることが好ましいが、反応の制御性を高める観点から、酸化性ガスに不活性ガスを混合することができる。「酸化性ガス」とは、前記のとおり、鋼の溶融温度領域において、Al、Si、Mn、Feなどの元素を酸化させる能力を有するガスを意味し、酸素ガス、二酸化炭素ガスなどの単味ガス、それら単味ガスの混合ガスならびに上記ガスと不活性ガスまたは窒素ガスとの混合ガスが該当する。また、「不活性ガス」とは、周期律表18族の元素、例えばアルゴン、ヘリウム、ネオンなどを意味する。
不活性ガスを混合することにより、単位時間当たりの酸素供給量を制御できるのに加えて、供給する酸化性ガス中の酸素分圧を低減できるため、反応を緩やかに進行させることができ、スラグ成分組成の制御性が向上する。
(c)−6 酸化性ガスの供給方法
本発明の方法においては、酸化性ガスを上吹きランスを介して溶鋼表面に吹き付けることにより、脱硫率を安定化させることができる。その理由は、下記のとおりである。すなわち、酸化性ガスの供給には、この他に酸化性ガスを溶鋼内に吹き込む方法があるが、この場合には、酸化性ガスが溶鋼の静圧を受けるため、酸化性ガスの分圧が上昇する。酸化性ガスの分圧が過剰に上昇すると、酸化性ガスが溶鋼中のAl以外の元素であるFeやMnなどと直接反応する。その結果、Al23生成量の制御が難しくなる上に、スラグ中FeO含有率とMnO含有率の合計含有率を、(c)−3で規定した好ましい上限値以下に維持することが難しくなるからである。さらに、(c)−6のように酸化性ガスを上吹きすると、スラグ近傍に高温領域が生成するので、スラグの溶融および滓化に一層有利となる。
また、酸化性ガスを溶鋼中に吹き込むためのランスには、その溶損を防止するための工夫が必要になるが、ランスを浸漬せずに上吹きランスを介して溶鋼表面に吹き付ける方法では、ランスの溶損はほとんど問題とならない点でも有利である。
上記の理由により、溶鋼表面に酸化性ガスを吹き付けることにより、脱硫反応を一段と安定して進行させることができる。なお、上吹きランスは溶鋼あるいはスラグからの強い輻射熱を受けるため、耐久性の面から水冷構造とすることが好ましい。
(c)−7 スラグ全体の均一流動の確保
本発明の溶製方法では、溶鋼中で生成したAl23を溶鋼の上表面に浮上させ、溶鋼の上表面に存在するスラグ全体に均一に分散供給することが重要である。したがって、スラグが少なくとも溶鋼表面全体にわたって均一に流動する必要がある。
精錬方法によっては、前記図1に示した取鍋を用いた精錬装置とは異なり、精錬容器内に収容された溶鋼内に浸漬管を浸漬し、浸漬管の内部に酸化性ガスを供給して精錬する方法も公知である。しかしながら、溶鋼内に浸漬管を浸漬する精錬方法においては、Al23の均一分散が浸漬管の存在により阻害される可能性がある。このような点を考慮すると、本発明の溶製方法において、精錬効果を最大限に発揮させるためには、前記図1に示したとおり、取鍋内に収容された溶鋼内に浸漬管を浸漬させずに溶鋼を精錬することが好ましい。
(c)−8 取鍋内への転炉スラグの流入抑制
本発明の溶製方法においては、スラグ成分組成の制御が重要な要素を占めている。前記(a)の基礎的知見をはじめとして、スラグ成分組成の制御精度を高めるには、転炉からのスラグの混入量を極力最小にすることが重要である。したがって、本発明の溶製方法の前工程である転炉精錬において、転炉炉内で生成したスラグが本発明で使用する取鍋内に流入するのを抑制することにより、本発明の効果をさらに一層高めることができる。
本発明の溶製方法によれば、CaO系フラックスの添加、溶鋼およびフラックスのガス攪拌ならびに酸化性ガスの供給を適正化することにより、高い脱硫効率を確保するとともに介在物を効果的に除去できるので、極低水準までS含有率を低減させた高清浄鋼を安定して溶製することができる。したがって、本発明の方法は、Ca添加処理などを行うことなく、優れた経済性のもとに、例えば、鋼中S含有率が10ppm以下で、かつ、全酸素含有率が30ppm以下の極低硫高清浄鋼を溶製することができる。
本発明の方法は、前記のとおり、(請求項1に係る発明:)溶鋼を下記の工程1〜3で示される工程により処理する極低硫高清浄鋼の溶製方法である。すなわち、下記工程1〜3のうちの1つ以上の工程において、取鍋内の溶鋼中に、その管内と管外とで溶鋼表面を隔絶する浸漬管を浸漬することなく、溶鋼を処理し、かつ、下記工程1または工程2において溶鋼中にAlを添加した後、工程2において純酸素換算量で溶鋼1トン(t)当たり1.2Nm 3 以上の酸化性ガスを該溶鋼に吹込むかまたは吹き付けるに際し、工程2での酸化性ガスの供給が完了するまでにCaOフラックスをCaO換算量で溶鋼1トン(t)当たり8kg以上添加し、かつ、工程1および工程2を通算して酸化性ガスの供給が完了するまでにAlを金属Al換算量で溶鋼1トン(t)当たり2kg以上添加して、工程3による処理終了後におけるスラグ中のCaOとAl 2 3 との質量含有率の比(CaOの質量含有率/Al 2 3 の質量含有率)を0.9〜2.5とし、同スラグ中のFeOおよびMnOの質量含有率の合計を8%以下とすることを特徴とする極低硫高清浄鋼の溶製方法。
工程1:大気圧下において取鍋内溶鋼にCaO系フラックスを添加する工程
工程2:前記工程1の後に大気圧下において取鍋内溶鋼中に攪拌ガスを吹き込むことにより溶鋼および前記CaOフラックスを攪拌するとともに、溶鋼に酸化性ガスを供給し、酸化性ガスと溶鋼との反応により生成した酸化物をCaO系フラックスと混合する工程
工程3:前記酸化性ガスの供給を停止し、大気圧下の前記取鍋内溶鋼中に攪拌ガスを吹き込むことにより脱硫および介在物除去を行う工程
以下に、本発明に係る極低硫高清浄鋼の溶製方法を実施するための好適態様につき、さらに詳細に説明する。
(1)工程1
(1)−1 CaO系フラックスの添加時期、添加方法および添加量
本工程では、転炉吹錬の終了後に出鋼され、取鍋内に収容された溶鋼の上部に、溶鋼脱硫処理に用いるCaO系フラックスのうちの一部または全部を添加する。目標温度および目標Al含有率、および目標S含有率に応じて、Al添加量および酸化性ガス供給量が決定されるので、それに応じた量のCaO系フラックスを添加する。CaO系フラックスは、所定量を一括して添加してもよいし、また、分割添加してもよい。
一括添加の場合は処理が簡便であり、また、分割添加の場合はスラグの溶融および滓化性が向上しやすい。ただし、工程1および工程2での添加を通算して、CaO系フラックスの全量を工程2での酸化性ガスの供給が完了するまでに添加し終える必要がある。この理由は、本発明においては、生成したAl23を利用する性格上、酸化性ガスの供給後にCaO系フラックスを添加しても、フラックスと生成Al23との反応が十分には進行せず、溶融および滓化促進が不十分となる恐れがあるからである。また、CaO系フラックスは融点が高いため、後続する工程2における酸化性ガスの供給により形成される高温領域を利用して、さらにCaO系フラックスの溶融および滓化を促進させるのが好ましいからである。
なお、酸化性ガスの供給完了後にも取鍋内スラグの融点を上昇させるなどの目的でCaO系フラックスを添加することがあるが、それは本発明の改良技術であって、本発明はそのようなフラックス添加を排除するものではない。
CaO系フラックスは、CaO含有率が45%以上のフラックスを意味し、例えば、生石灰単味、および、生石灰を主体としてAl23やMgOなどを配合したフラックスを用いることができる。また、カルシウムアルミネートのような滓化性の良いプリメルト合成造滓剤を用いてもよい。極低硫高清浄鋼を溶製するための脱硫および清浄化を達成するためには、工程3以降において溶鋼上のスラグ成分組成を適正範囲に制御する必要があり、そのためには、工程2での酸化性ガスの供給が完了するまでにCaO系フラックスをCaO換算で6kg/t以上添加するのが好ましく、より好ましくは8kg/t以上を添加する。
CaO系フラックスの添加方法としては、ランスを介して溶鋼中に粉体吹込み(インジェクション)する方法、溶鋼表面に粉体吹き付けする方法、取鍋内の溶鋼上に上置きする方法、さらには、転炉からの出鋼時に取鍋内に添加する方法などのいずれの方法をも用いることができる。ただし、大気圧下にて処理する本発明の方法では、吹込みや吹き付けなどの専用設備を使用せずとも、出鋼時にCaO系フラックスの全量を取鍋内に添加する方法が簡便で好適である。
CaO系フラックスの添加前における取鍋内溶鋼の成分組成は、C:0.03〜0.2%、Si:0.001〜1.0%、Mn:0.05〜2.5%、P:0.003〜0.05%、S:11〜60ppm、Al:0.005〜2.0%であり、温度は1580〜1700℃程度であることが好ましい。ただし、これらの溶鋼成分の調整は、CaOの添加後酸化性ガスの供給前に行ってもよい。
(1)−2 Alの添加方法、添加量など
Alの添加により、後の工程における溶鋼昇熱のための発熱源およびAl23源が供給される。Alは、溶鋼中の酸素やスラグ中の酸化鉄を還元して、最終的にはスラグ中のAl23となり、スラグの融点を低下させて、溶鋼の脱硫および清浄化に有効に作用する。
極低硫高清浄鋼を溶製するための脱硫および清浄化を達成するためには、工程3以降において溶鋼上のスラグ成分組成を適正範囲に制御する必要があり、工程1および工程2を通算して酸化性ガスの供給が完了するまでに金属Al換算量で1.5kg/t以上のAlを添加するのが好ましく、より好ましくは2kg/t以上を添加する。Al添加量が1.5kg/t未満では、生成するAl23量が少なすぎ、スラグ制御へのAl活用の効果が小さくなるのに加えて、CaO添加量の調整も必要となるからである。また、スラグ中の低級酸化物の十分な低減効果も小さくなるため、効果にややばらつきが大きくなる。
Alの添加方法としては、CaO系フラックスの添加方法と同様に、溶鋼中にランスを介して粉体吹込みを行う方法、溶鋼表面に粉体吹き付けを行う方法、取鍋内溶鋼上に上置きする方法、さらには、転炉からの出鋼時に取鍋内に添加する方法などのいずれの方法をも用いることができる。また、Al源としては、純金属AlやAl合金を用いてもよいし、Al精錬時の残渣などを用いてもよい。
なお、転炉吹錬した溶鋼を取鍋に出鋼する際には、取鍋への転炉スラグの流入を抑制することが好ましい。転炉スラグにはP25が含有されており、後の脱硫処理工程において溶鋼中のP含有率が上昇する原因となるだけでなく、取鍋への流入スラグ量が変動すると、スラグ成分組成の制御が難しくなるからである。このため、転炉スラグの生成量を減少させること、転炉出鋼時に出鋼孔直上に羽根形状のダーツを投入して出鋼孔上部での渦形成を抑制すること、さらには、転炉からのスラグの流出を電気的、光学的または機械的方法により検出してスラグ流出のタイミングに合わせて出鋼流を停止すること、などの手段により、転炉からのスラグの流出を低減し、取鍋へのスラグの流入を抑制することが好ましい。
工程1のみならず、後述する工程2および3のいずれの工程も大気圧下にて行う。その理由は、本発明では減圧下において強攪拌操作を行う必要がないことに加えて、減圧下で工程1〜3の処理を行うには、設備コストおよびランニングコストが上昇するからである。
(2)工程2
工程2では、工程1においてCaO系フラックスを添加された大気圧下の取鍋内溶鋼に、攪拌ガスを吹き込むことにより溶鋼およびCaO系フラックスを攪拌するとともに、溶鋼に酸化性ガスを供給し、酸化性ガスと溶鋼との反応により生成するAl23などの酸化物をCaO系フラックスと混合する。
前述のとおり、CaO系フラックスの一部または全部を工程2で添加してもよいし、Alの一部または全部を工程2で添加してもよい。ただし、本発明において直接対象とするCaOおよびAlの添加量とは、転炉からの出鋼開始前に取鍋中に装入しておくものを含め、出鋼開始時点から工程2における酸化性ガスの供給が完了するまでのものを意味している。
(2)−1 酸化性ガスの供給方法
工程2において溶鋼に酸化性ガスを供給するのは、溶鋼成分と酸化性ガスとの反応により生じる酸化発熱反応を利用して溶鋼の加熱または温度低下の抑制を図るとともに、Al23を生成させてスラグの成分組成制御を行うためである。この酸化性ガスとしては、溶鋼中の元素を酸化させる能力を有する前記の種類のガスを用いることができる。
酸化性ガスの供給方法としては、溶鋼内部に酸化性ガスを吹き込む方法や、溶鋼の上方に配置したランスまたはノズルから酸化性ガスを吹き付ける方法などを用いることができるが、スラグの制御性および高温領域の活用によるスラグの溶融および滓化性向上の観点から、上吹きランスを用いて溶鋼表面に吹き付ける方法が好ましい。これにより、酸化性ガスと取鍋内溶鋼とが反応して形成される高温領域を利用してCaO系フラックスを直接的に加熱し、CaO系フラックスの滓化を促進することができる。
溶鋼の上方に配置したランスまたはノズルから溶鋼に酸化性ガスを吹き付ける場合に、発生した熱をスラグに有効に伝達させるためには、酸化性ガスの吹き付け強さをある程度確保する必要がある。この吹き付け強さを確保するためには、ランス高さを低くして溶鋼に接近させる必要がある。その結果、溶鋼から受ける輻射熱によりランス寿命が低下して、ランスの交換作業が増加するため、高い生産性を維持することが難しくなる。したがって、ランスまたはノズルを通して酸化性ガスを溶鋼に吹き付ける場合には、ランスまたはノズルを水冷構造とすることが好ましい。
湯面からのランスまたはノズルの高さ(湯面とランス下端との鉛直距離)は、0.5〜3m程度の範囲とすることが好ましい。ランスまたはノズル高さが0.5m未満では、溶鋼のスピッティングが激しくなるとともに、ランスまたはノズル寿命が低下するおそれがあり、一方、3mを超えて高いと、酸化性ガスジェットが溶鋼面に到達しにくくなり、精錬の酸素効率が著しく低下するおそれがあるからである。
(2)−2 酸化性ガスの供給量など
工程2における酸化性ガスの供給量は、純酸素換算量で0.4Nm3/t以上とすることが好ましく、1.2Nm3/t以上とすることがさらに好ましい。この酸素供給量は、Alを酸化させて、溶鋼の温度維持や温度上昇のための熱源を得るために好ましい酸素供給量であるとともに、工程1において添加したCaO源のスラグ化促進のためにも好ましい供給量である。上記の酸素供給量とすることにより、スラグ形成のための好適量のAl23が生成されて、スラグ成分組成の制御性が一段と良好になり、溶鋼の脱硫および清浄化作用がさらに一層向上する。
また、酸化性ガスの供給速度は、純酸素換算量で、0.075〜0.24Nm3/min・tの範囲とすることが好ましい。酸化性ガスの供給速度が0.075Nm3/min・t未満では、処理時間が長時間となって生産性が低下するおそれがある。一方、0.24Nm3/min・tを超えて高くなると、CaO系フラックスの加熱は十分に行うことができるものの、酸化性ガスの供給時間が短くなると同時に、単位時間当たりのAl23生成量が増加しすぎて、スラグの溶融およびスラグ成分組成の均一化のための十分な時間が確保できなくなるおそれがある。また、ランスや取鍋耐火物の寿命が低下するおそれもある。なお、生産性を確保する観点から酸化性ガスの供給速度を0.1Nm3/min・t以上とすればさらに好ましい。
工程2では、上記のようにして行われる酸化性ガスの供給により、Al23を生成させるとともに溶鋼温度を上昇させる。そして、火点に存在する高温領域を利用してスラグの溶融および滓化を促進させる。また、溶鋼中に浸漬したランスから攪拌ガスを吹き込むことにより、酸化性ガスと溶鋼との反応により生成したAl23をCaO系フラックスと混合させ、スラグの成分組成制御を行う。
酸化性ガスと溶鋼との反応によって生成する酸化物は、Al23が主体であるが、同時に少量のFeO、MnOさらにはSiO2も生成する。これらはいずれもCaOの融点を低下させる酸化物である。これらの酸化物は、CaOに混合されることによりスラグの融点を降下させる作用を発揮することから、CaO系フラックスの滓化をさらに促進する。ここで、これらの酸化物のうちでFeOおよびMnOは、スラグの酸素ポテンシャルを増大させる効果を有するため、熱力学的には溶鋼の脱硫に不利に作用するが、最終的には、次の工程3におけるガス攪拌によって溶鋼中のAlと反応して、消失する。
(2)−3 攪拌ガスの吹込み方法および吹込量
工程2における攪拌方法としては、溶鋼に浸漬したランスを通して溶鋼中に攪拌ガスを導入する方法、取鍋の底部に設置したポーラスプラグから攪拌ガスを導入する方法などがあるが、溶鋼に浸漬したランスを介して溶鋼中に攪拌ガスを導入するのが好ましい。その理由は、取鍋底部に設置したポーラスプラグから攪拌ガスを導入する方法などの場合には、十分な流量のガスを導入することが難いために、スラグとAl23との混合が不十分となり、その結果、極低硫鋼の溶製が困難となる場合があるからである。
攪拌ガスの吹込み流量は、0.0035〜0.02Nm3/min・tの範囲とすることが好ましい。吹込み流量が0.0035Nm3/min・t未満では、攪拌力が不足して、スラグとAl23との攪拌が不十分になり、また、スラグの酸素ポテンシャルが増大して、後工程である工程3におけるスラグの酸素ポテンシャルの低減が不十分になり、脱硫に不利になるおそれがあるからである。一方、吹込み流量が0.02Nm3/min・tを超えて多くなると、スプラッシュの発生が極度に多くなり、生産性の低下をきたすおそれがある。上記スラグの酸素ポテンシャルをできる限り低下させ、かつ生産性の低下を回避するためには、吹込み流量を0.015Nm3/min・t以下とすることがさらに好ましい。
(3)工程3
工程3では、上吹きランスなどを使用した酸化性ガスの供給を停止するとともに、大気圧下において取鍋内溶鋼に浸漬したランスなどを介して、攪拌ガスの吹込みによる溶鋼およびスラグの攪拌を継続し、脱硫および介在物の除去を行う。
(3)−1 攪拌ガスの吹込み方法および吹込量
酸化性ガスの供給停止後における攪拌ガスの吹き込み時間は4分以上とすることが好ましく、20分以下とすることがさらに好ましい。また、攪拌ガスの吹込量は0.0035〜0.02Nm3/min・tの範囲とすることが好ましい。上記の条件で攪拌を継続することが極低硫高清浄鋼を溶製する上で好ましい理由を下記に説明する。
工程2において、酸化性ガスの供給時にスラグの酸素ポテンシャルを増大させないためには、酸化性ガスの供給速度を低下させるか、または大気圧下にある溶鋼に多量の攪拌ガスを吹き込みながら酸化性ガスを供給することが考えられる。
しかし、酸化性ガスの供給速度を極度に低下させると、溶鋼の昇温速度が低下し、生産性が低下する。また、大気圧下の溶鋼に極度に多量の攪拌ガスを吹き込むと、溶鉄の飛散が増大し、鉄歩留まりの低下によるコストアップや、周辺装置への飛散地金の付着に起因する生産性の低下などを招く。
本発明の方法では、上記の問題を生じることなく、酸化性ガスの供給によるスラグの酸素ポテンシャルの増大を防ぐために、取鍋内の溶鋼とスラグとの攪拌を、酸化性ガス供給期(工程2)と、その後の酸化性ガスを供給しない時期(工程3)とに分離して行う。すなわち、上吹きランスなどによる酸化性ガスの供給を停止した後においても、取鍋内溶鋼に浸漬したランスなどを通して溶鋼中への攪拌ガスの吹き込みを継続する。この工程を経ることにより、スラグ中における低級酸化物の濃度を低下させ、スラグの脱硫能力を最大限に発揮させることができる。なお、通常のガス供給条件においては、工程2における酸化性ガス供給時間t0に対する工程3での攪拌ガス吹込み時間tの比(t/t0)は、0.5以上とすることが好ましい。
工程3では、脱硫とともに、工程2において酸化性ガスの供給によって生成した酸化物系介在物の分離も、同時に行う。攪拌ガス吹込みによるガス攪拌時間は、4分以上とすることが好ましい。ガス攪拌時間が4分未満では、工程2における酸化性ガスの供給により上昇したスラグの酸素ポテンシャルを工程3において十分に低下させることが困難なことに加えて、脱硫率を高め、T.[O]を十分に低下させるための反応時間を確保することが難しくなるからである。ガス攪拌時間が長いほど低硫化作用および清浄化作用が高まるが、その反面、生産性が低下し、また溶鋼温度も低下することから、現実には20分程度以下とすることが好ましい。
工程3にて行う攪拌ガスの吹込みも、溶鋼中に浸漬したランスを通して攪拌ガスを導入する方法によるのが好ましい。その理由は、例えば、取鍋の底部に設置したポーラスプラグから攪拌ガスを導入する場合には、十分な流量のガスを溶鋼中に導入することが難しく、したがって、工程3においてスラグ中のFeOおよびMnO成分を十分に還元することができなくなり、極低硫鋼の溶製が困難になる場合があるからである。
本発明の方法は、大気圧下においてガス攪拌処理することを特徴の一部としている。減圧下におけるガス攪拌のように少量のガス吹込みでは、スラグとメタルとを強攪拌することが困難であり、また、安定したガス流量条件のもとでガス攪拌を行うことが難しいからである。
攪拌ガスの吹込み流量は、前記のとおり、0.0035〜0.02Nm3/min・tとすることが好ましい。吹込み流量が0.0035Nm3/min・t未満では、攪拌力が不足し、工程3におけるスラグの酸素ポテンシャルの低減が不十分となって、さらなる脱硫が促進されなくなるおそれがある。また、吹込み流量が0.02Nm3/min・tを超えて多くなると、スプラッシュの発生が極度に多くなり、生産性の低下を招くおそれがあるからである。スラグの酸素ポテンシャルをできる限り低下させ、かつ生産性の低下を回避するためには、吹込み流量を0.015Nm3/min・t以下とすることがさらに好ましい。
(3)−2 工程3の終了後におけるスラグ成分組成
工程3による処理終了後におけるスラグ成分組成は、前記(c)−3で規定するとおり、CaOとAl23との質量含有率の比(以下、「CaO/Al23」とも記す)を0.9〜2.5とし、同スラグ中のFeOおよびMnOの質量含有率の合計(以下、「FeO+MnO」とも記す)を8%以下とすることが好ましい。スラグ成分組成をCaO:45〜60%、Al23:33〜46%、CaO/Al23≧1.3、および(FeO+MnO)≦4%の範囲とすればさらに好ましい。特に好適な範囲は、CaO:50〜60%、Al23:33〜40%、CaO/Al23≧1.5、および(FeO+MnO)≦1%である。
スラグ成分組成の効果を明確にするために、下記の予備試験2および予備試験3を行った。C:0.05〜0.07%、Al:0.08〜0.25%、P:0.003〜0.015%、S:0.0012〜0.0035%、Mn:0.25〜1.75%、Si:0.01〜0.55%の成分組成を有する溶鋼250tを前記図1に示す装置を用いて脱硫処理した。
予備試験2では、本発明の方法にしたがって、工程1においてCaOおよびAlを溶鋼に添加した後、工程2において酸素ガスを上吹きランスにより吹き付け、その後9分間、Arガスの吹込みによる攪拌を行った。酸素ガス供給量は0.5〜1.5Nm3/tとし、酸素ガス供給量に応じてCaO添加量を調整した。なお、螢石は使用しなかった。
予備試験3は、比較試験として、CaOおよびAl23を添加するとともに、スラグ中の螢石含有率が10〜15%となるように螢石を添加し、酸化性ガスは供給せずにArガスのみを吹き込み、13分間攪拌操作のみを行った。予備試験2および予備試験3ともに、スラグ量の総量は18〜22kg/tである。処理後の脱硫率を測定し、スラグ中CaO/Al23およびスラグ中(FeO+MnO)含有率との関係として整理した。
図2は、予備試験2における脱硫率とスラグ中CaO/Al23およびスラグ中(FeO+MnO)含有率との関係を示す図であり、また、図3は、予備試験3における脱硫率とスラグ中CaO/Al23およびスラグ中(FeO+MnO)含有率との関係を示す図である。
図2で示される予備試験2の結果から、下記のことが判明した。すなわち、本発明の方法にしたがえば、スラグ中CaO/Al23の値が高く、(FeO+MnO)含有率が低いほど、脱硫率は向上する。また、(c)−3で規定したとおり、CaO/Al23の値を0.9〜2.5とし、かつ(FeO+MnO)含有率を8%以下とした場合には、脱硫率80%以上が得られ、好ましい。また、CaO/Al23の値を1.3以上とし、かつ(FeO+MnO)含有率を3%以下とした場合には、脱硫率90%以上が得られるのでさらに好ましく、特に、CaO/Al23の値を1.5以上とし、かつ(FeO+MnO)含有率を1%以下とした場合には、95%以上の脱硫率が得られるので極めて好ましい。
一方、図3で示される予備試験3によれば下記のことがわかる。すなわち、比較試験の条件においても、スラグ中CaO/Al23の値が高く、(FeO+MnO)含有率が低いほど、脱硫率が向上するという傾向は、予備試験2の場合と同様である。しかし、予備試験3においては、CaO/Al23の値および(FeO+MnO)含有率が同一であっても、脱硫率が90%以上に達する場合もあれば、また80%未満の場合も存在する。つまり、予備試験3では、予備試験1に比較して、同一スラグ組成における脱硫率が低く、しかも脱硫率の変動が大きい。
以上の試験結果から、本発明の方法のように、CaO系フラックスの添加後に酸化性ガスを供給してAl23を生成させ、これを利用してスラグの成分組成を制御する方法は、他の方法によりスラグ組成を制御するよりも、スラグ成分組成の制御性に優れており、その結果、高い脱硫率を安定して達成できることが示された。
(3)−3 工程3の終了後における鋼成分組成、介在物制御など
工程3の処理を終了することにより、溶鋼中S含有率が10ppm以下であるとともにT.[O]が30ppm以下である極低硫高清浄鋼、例えば、C:0.03〜0.2%、Si:0.001〜0.65%、Mn:0.05〜2.5%、P:0.005〜0.05%、S:10ppm以下、sol.Al:0.005〜2.0%、T.[O]:30ppm以下の鋼成分組成を有する極低硫高清浄鋼が製造される。工程3終了時の温度は1590〜1665℃程度である。
また、表2に、工程3の終了時における代表的な鋼の成分組成範囲を示す。
Figure 0004345769
同表には、製品の成分組成も併せて示されており、S含有率およびT.[O]の低減は、工程3の終了までに完了していることがわかる。なお、T.[O]は工程3終了時よりも製品において低下しているが、これは、工程3に続く工程4の効果などによるものである。
また、前記のとおり、工程1〜工程3においては、脱硫に有効に作用するスラグ量を確保する観点から、取鍋内の溶鋼にシュノーケルなどの浸漬管を浸漬させずに処理することが好ましい。脱ガス装置の浸漬管などを浸漬すると、浸漬管の内外でスラグが分断され、酸化性ガスが供給される領域に存在するスラグの滓化は促進されるものの、それ以外の領域に存在するスラグの滓化が遅れ、浸漬管の外側に存在するスラグの攪拌も不十分となって、脱硫に有効に作用するスラグ量が減少するおそれがあるからである。
なお、工程3の終了後におけるスラグ量は、13〜32kg/t程度であることが好ましい。スラグ量が13kg/t未満ではスラグ量が少なく、安定した脱硫率が得られにくい。また、スラグ量が32kg/tを超えて多いと、スラグ成分組成の制御に要する時間が長くなり、その結果、処理時間の延長につながる場合がある。
特に、耐水素誘起割れ性を要求される場合、あるいは、連続鋳造過程におけるノズル閉塞の防止を必要とする場合には、工程3の終了後に、例えばCaSi、CaAl、FeCa、FeNiCaなどのCa含有物質を添加して介在物の球状化を図ることが好ましい。この場合のCaSi添加量は0.2〜1.2kg/t程度の範囲が好ましい。なお、球状介在物中のCaO含有率は、45〜75%であることが好ましい。これは、CaO含有率が45%未満では球状化作用が不安定となり、一方、同含有率が75%を超えて高くなると介在物の延伸性が増加して、水素誘起割れの起点となる可能性が高まるからである。
以上に説明した工程1〜工程3の処理を経ることにより、CaO系フラックスの使用による極低硫域までの脱硫および鋼の清浄化が達成され、S含有率が10ppm以下であるとともにT.[O]が30ppm以下の極低硫高清浄鋼を安価に溶製することができる。
また、取鍋内の溶鋼に螢石(CaF2)を添加しなくとも、極低硫域までの脱硫および鋼の清浄化作用を確保できることから、螢石は使用しないことが好ましい。螢石は、近年、資源枯渇化により入手が困難であるとともに、環境問題への配慮により使用が制約される傾向にあることから、螢石の使用を要しない本発明の方法は、環境対応型の鋼の溶製方法としても好適である。
溶鋼に酸化性ガスを供給することにより精錬反応を進行させる本発明の溶製方法では、溶鋼の酸化反応に伴ってスプラッシュの飛散、発煙および発塵を伴うため、取鍋上方にカバーを設けてこれらの散逸を防止するとともに、集塵設備により処理するのが好ましい。さらに、上記カバー内の圧力を正圧に制御することにより大気の巻き込みを防止でき、溶鋼の再酸化および窒素の侵入を防止できる。また、酸化性ガスの供給には非消耗型上吹きランスを使用するのが一般的であり、その冷却効率を高めるため水冷型のランスを使用することが好ましい。
(4)工程4
工程4は、復硫を抑止して極低S含有率を維持しつつ温度補償を行うこと、およびさらに清浄度を向上させるために行う工程である。このためには、RH装置を用いる必要がある。RH処理は、真空槽の底部に設けた2本の浸漬管を取鍋内溶鋼に浸漬し、これら浸漬管を通じて取鍋内溶鋼を環流させるため、スラグの攪拌が弱く、スラグの巻き込みが少ない状態で、介在物の分離処理が可能であることから、より一層の高清浄化を図ることができる。また、スラグ−溶鋼間の反応速度も小さいため、RH装置を用いて昇熱処理を施しても復硫を抑制できる。
(4)−1 RH処理における溶鋼の昇熱方法
RH装置を用いた溶鋼の昇熱処理方法について説明する。RH装置を用いて溶鋼を真空槽および取鍋間で環流させつつ、真空槽内溶鋼に酸化性ガスを吹き込むかまたは真空槽内に設けた上吹きランスを介して真空槽内溶鋼に酸化性ガスを吹き付ける。この酸化性ガス中の酸素が溶鋼中Alと反応し、Al23を生成すると同時に反応熱を生じ、この反応熱により溶鋼温度が上昇する。また、このAlと酸素との反応により、Al23介在物ならびにFeOおよびMnOが生成する。生成したAl23、FeOおよびMnOは取鍋内溶鋼表面のスラグ中に移行し、スラグ中の(FeO+MnO)含有率を増加させ、スラグの脱硫能を低下させる。
このとき、スラグと溶鋼との反応速度が速ければ、スラグ中のSが溶鋼中に移行する復硫現象が生じるが、RH処理ではスラグと溶鋼との反応速度が遅いため、復硫を抑制することができる。したがって、昇熱処理の一部を脱硫処理からRH処理へと移すことにより、復硫を抑制し、溶鋼のS含有率を極低レベルに維持したまま、昇温することが可能となる。
また、工程3の終了時よりもさらに清浄化が必要な場合は、酸化性ガスの供給停止後に環流を継続することにより、さらに介在物を除去し、清浄度を一層向上させることができる。工程4における酸化性ガス供給停止後のRH環流処理時間は、好ましくは8分以上、より好ましくは10分以上であり、さらに好ましくは15分以上である。このRH環流処理時間は、要求される介在物量レベルあるいは水素含有率レベルに応じて、適宜決定すればよい。また、酸化性ガスの供給量は、昇温後の目標溶鋼温度に応じて適宜決定すればよい。
工程4における酸化性ガスの供給速度は純酸素換算量で、0.08〜0.20Nm3/min・tとするのが好ましい。酸化性ガスの供給速度が0.08Nm3/min・t未満では処理時間が長くなり、また、0.20Nm3/min・tを超えて高くなると、FeOおよびMnOの生成量が増加しすぎて好ましくない。
酸化性ガスとしては、酸素ガス、二酸化炭素などの単味ガス、およびそれら単味ガスの混合ガスならびに上記ガスと不活性ガスまたは窒素ガスとの混合ガスを用いることができるが、処理時間短縮の観点から酸素ガスを用いることが好ましい。
酸化性ガスの供給方法は、溶鋼内への吹き込み、上吹きランスを介しての真空槽内溶鋼表面への吹き付けなどの方法を用いることができるが、操作性の良さを考慮すると、吹き付けによるのが好ましい。この場合、上吹きランスノズルは、ストレート型、急拡大型、ラバール型などいかなる形状のものであってもよい。また、ランス高さ(ランス下端と真空槽内溶鋼表面との鉛直距離)は1.5〜5.0mとするのが好ましい。ランス高さが1.5m未満では、溶鋼のスピッティングによりランスが損耗しやすく、また、5.0mを超えて高いと酸化性ガスジェットが溶鋼表面に到達しにくくなって、昇熱効率が低下する。
酸化性ガス供給中における真空槽内の雰囲気圧力は8000〜1100Paとするのが好ましい。酸化性ガスの供給停止後に引き続き環流を行う場合は、8000Pa以下とするのが好ましく、さらに好適には700Pa以下とする。真空槽内の雰囲気圧力が8000Paを超えて高いと環流速度が遅いため、介在物の除去に長時間を要し、好ましくない。また、700Pa以下では介在物の除去を効率的に行うことができるのに加えて、溶鋼中H含有率およびN含有率も同時に低減することができる。
なお、酸化性ガスの供給中または供給後に溶鋼中に合金元素などを添加して、溶鋼中のSi、Mn、Cr、Ni、Tiなどの成分調整を行ってもよい。
(4)−2 工程4による介在物量低減および復硫抑止効果
工程4における酸化性ガス供給速度(純酸素換算量)X(Nm3/min・t)を0.08〜0.20Nm3/min・tの範囲で変更し、工程3を終了した溶鋼から採取したサンプル中の50μm以上の大きさを有する介在物個数N0および工程4のRH処理後の溶鋼サンプル中の50μm以上の大きさの介在物個数Nを光学顕微鏡により計測し、N/N0により算出される介在物個数指数を調査した。なお、介在物個数の計測は、JIS G 0555にて規定された方法に準拠して、サンプル断面700mm2内に存在する50μm以上の大きさの介在物個数を計測した。
さらに、工程3終了後における溶鋼中のS含有率[S]i(%)と工程4終了後におけるS含有率[S]e(%)との差、ΔS=[S]i−[S]eを調査した。なお、酸化性ガス供給量は酸素ガス換算量で0.2〜0.8Nm3/tとし、酸化性ガス供給停止後の環流時間は8分間とした。
図4は、工程4における酸化性ガス供給速度(純酸素換算量)(X)と介在物個数指数(N/N0)との関係を示す図であり、図5は、工程4における酸化性ガス供給速度(純酸素換算量)(X)と、工程3終了後と工程4終了後におけるS含有率の差(ΔS)との関係を示す図である。図4および図5に示された結果から、工程4における酸化性ガスの供給速度によらず、RH処理における復硫を抑止しつつ、酸化性ガスの供給による溶鋼の昇温が可能であることに加えて、酸化性ガス供給停止後のRH環流処理によって50μm以上の大型介在物を効率よく低減できることがわかる。
本発明に係る極低硫高清浄鋼の溶製方法の効果を確認するため、下記に示す鋼の溶製試験を行い、その結果を評価した。
(1)溶製試験方法
予め、必要に応じて溶銑脱硫および溶銑脱燐処理を行った溶銑を、250トン(t)規模の上底吹き転炉に装入し、溶鉄中C含有率が0.03〜0.2%になるまで粗脱炭吹錬を行い、終点温度を1630〜1690℃として粗脱炭溶鋼を取鍋に出鋼し、出鋼時に各種脱酸剤および合金を添加して取鍋内溶鋼成分を、C:0.03〜0.2%、Si:0.001〜1.0%、Mn:0.05〜2.5%、P:0.003〜0.05%、S:27〜28ppm、sol.Al:0.005〜2.0%、T.[O]:50〜100ppmとした。
この溶鋼を出鋼する際に流出する転炉スラグの量は、調整せずにそのままとするか、あるいは、前述のダーツを用いて取鍋への流入を抑制することにより調整した。また、出鋼時には、脱酸用であるとともに、工程2において上吹きする酸化性ガスとの反応に要するAlを添加して溶鋼を脱酸するとともに、出鋼流の攪拌によりスラグの脱酸も行った。本発明法の工程1〜工程4の処理は、下記のとおり行った。
工程1として、大気圧下での出鋼時において取鍋内溶鋼にCaO換算量で8kg/tの生石灰を一括して添加した。また、この出鋼中に400kgの金属Alを一括して添加した。
工程2として、取鍋内溶鋼に浸漬ランスを浸漬させ、Arガスを0.012Nm3/min・tの供給速度で吹き込むとともに、水冷構造を有する上吹きランスから酸素ガスを0.14Nm3/min・tの供給速度で溶鋼表面に吹き付けた。このとき、ランス下端と溶鋼表面との鉛直距離は1.8mとし、酸素供給時間は6分とした。また、溶鋼には浸漬管を浸漬せず、取鍋上方にはカバーを設置し、発生ガス、スプラッシュ、ダストなどを集塵装置に導いて処理した。
工程3として、酸素ガスの供給を停止後、上記のArガス供給速度でArガスを10分間吹き込んで攪拌を行った。工程3終了後におけるスラグ成分組成は、CaO/Al23が0.9〜2.4、(FeO+MnO)含有率は0.7〜6.1%である。
工程4として、RH処理開始直後に真空槽内に設置した上吹きランスから酸素ガスを1.6Nm3/t吹き付けた。ランスノズルはストレート型を用い、ランス下端と真空槽内溶鋼表面との鉛直距離を2.5m、酸素ガス供給速度は0.14Nm3/min・tとした。RH装置の浸漬管径は0.66m、環流Arガス流量は2.0Nm3/minであり、到達真空度は140Paである。酸素ガスの供給停止後、10分間の環流処理を施して、処理を完了した。なお、溶製試験におけるスラグ量は約18kg/tである。
表3および表4に、本発明例の試験番号1〜14および比較例の試験番号15〜27についての試験条件、および脱硫率、溶鋼中S含有率、鋼中の介在物個数の指標となるT.[O]などの試験結果を示した。
Figure 0004345769
Figure 0004345769
試験番号1〜6は、上記の条件でスラグ成分組成を変化させて処理を行った試験であり、試験番号7および8は、工程3における酸素ガス供給停止後の攪拌時間を3分間とした試験である。また、試験番号9および10は、工程4において酸素ガス供給停止後の溶鋼の環流を行わなかった試験であり、そして、試験番号11〜14は、工程1においてAlを添加し、工程4の処理を行わなかった試験である。
次に、比較例Aとして、工程3の処理を行わない試験を、また、比較例Bとして、工程2の処理を行わない試験を下記の方法により行った。
すなわち、比較例Aでは、工程1としてCaO換算量で8kg/tの生石灰を一括して添加し、また、400kgの金属Alを一括して添加した。次に、工程2として取鍋内溶鋼に浸漬ランスを浸漬させ、Arガスを0.012Nm3/min・tの供給速度で吹き込むとともに、水冷構造を有する上吹きランスから酸素ガスを0.14Nm3/min・tの供給速度で溶鋼表面に吹き付けた。このとき、ランス下端と溶鋼表面との鉛直距離は1.8mとし、酸素供給時間は6分とした。その後、工程3の処理は省略し、工程4としてRH処理開始直後に真空槽内に設置した上吹きランスから酸素ガスを1.0Nm3/t吹き付けた。RHの操業条件は、本発明例と同様とした。
また、比較例Bでは、工程1としてCaO換算量で8kg/tの生石灰を一括して添加し、また、400kgの金属Alを一括して添加した後に、工程2としての酸素ガスの供給を行わずに、工程3として取鍋内溶鋼に浸漬ランスを浸漬させ、Arガスを0.012Nm3/min・tの供給速度で吹き込み、16分間攪拌を行った。その後、取鍋をRH装置へ移送し、工程4としてRH処理開始直後に真空槽内に設置した上吹きランスから酸素ガスを2.7Nm3/t吹き付けた。ランスノズルはストレート型を用い、ランス下端と真空槽内溶鋼表面との鉛直距離を2.5m、酸素ガス供給速度は0.14Nm3/min・tとした。
RH処理の前工程で昇熱処理を行っていないため、RH処理における昇温量が増加し、本発明例の場合に比較してRH処理における酸素供給量が増加した。RH装置の浸漬管径は0.66m、環流Arガス流量は2.0Nm3/minであり、到達真空度は140Paである。酸素ガスの供給停止後、10分間の環流処理を施して、処理を完了した。
前記のとおり、表3および表4に、比較例の試験条件および試験結果を示した。なお、試験番号18〜22では、CaOとAlのみを添加し、試験番号23〜27では、フラックスとして螢石を1.5t添加した。
(2)溶製試験結果の評価
本発明例についての試験である試験番号1〜14は、比較例についての試験である試験番号15〜27に比較して、脱硫率が大幅に向上し、工程3後および工程4後のS含有率が大幅に低減し、介在物個数の指標となるT.[O]も低減している。なお、工程4を省略した試験番号11〜14では、工程2のみで酸化性ガスを用いているため、工程2および工程3でのAl23量が増加し、脱硫および清浄性がやや劣る。
また、例えば、本発明例の試験番号7と比較例の試験番号22などのように、スラグ成分組成がほぼ同レベルの試験を比較しても、脱硫率に差が生じている。この結果から、単にスラグ成分組成を一定範囲に調整するのみでは高清浄極低硫鋼の溶製は難しいことがわかる。
比較例の試験番号18〜27では、RH処理における酸素供給量が多くなるため、(FeO+MnO)含有率が増加し、若干の復硫が認められた。また、酸素供給量が多いことから、工程3の後におけるT.[O]に比較して、工程4の後におけるT.[O]が増加した。したがって、極低硫高清浄鋼を安定的に溶製するには、本発明法のように、Alと酸素との反応により生成するAl23を活用することが有効であり、この効果を高めるには、昇温を脱硫処理工程とRH処理工程との両者で分担すること、および工程3における攪拌ガス吹き込みによる脱硫および介在物除去処理が重要であることがわかる。
さらに、本発明例について詳細に検討すると下記のとおりである。試験番号1〜4では、CaO/Al23の値が高いほど、また(FeO+MnO)含有率が低いほど、脱硫率が高く、かつ、T.[O]も概して低くなっており、本発明の顕著な効果が得られている。
また、工程3における酸素ガス供給停止後の攪拌時間を充分に確保した試験番号4および6と、同攪拌時間を4分未満の3分間と短くした試験番号7および8とを比較すると、試験番号7および8では脱硫率がやや低く、工程3の後におけるS含有率がやや高くなっている。これは、工程3における不活性ガスの吹込み時間を4分以上とすることにより、本発明の脱硫効果がより大きくなることを示している。
さらに、工程4における酸素ガス供給停止後の溶鋼の環流を行った試験番号3および4と、同環流を行わなかった試験番号9および10とを比較すると、試験番号3および4の方がT.[O]が低くなっている。したがって、工程4における酸素ガス供給停止後に溶鋼の環流を行うことにより、溶鋼の清浄度を高めることができることがわかる。
以上に説明したとおり、本発明の請求項1の方法を実施することにより、清浄度に優れた極低硫鋼を溶製することができ、さらに、請求項2請求項6で規定する条件を満足させることにより、本発明の効果をさらに一層高めることができる。
本発明の溶製方法によれば、CaO系フラックスの添加、溶鋼およびフラックスのガス攪拌ならびに酸化性ガスの供給を適正化することにより、高い脱硫効率を確保するとともに介在物を効果的に除去できるので、極低水準までS含有率を低減させた高清浄鋼を安定して溶製することができる。したがって、本発明の方法は、Ca添加処理などを行うことなく、優れた経済性のもとに、例えば、鋼中S含有率が10ppm以下で、かつ、T.[O]が30ppm以下の極低硫高清浄鋼を溶製することができる精錬方法として、製鋼技術分野において広範に適用できる。
本発明の方法における工程1〜工程3の処理状況を模式的に示す図である。 予備試験2における脱硫率とスラグ中CaO/Al23およびスラグ中(FeO+MnO)含有率との関係を示す図である。 予備試験3における脱硫率とスラグ中CaO/Al23およびスラグ中(FeO+MnO)含有率との関係を示す図である。 工程4における酸化性ガス供給速度(X)と介在物個数指数(N/N0)との関係を示す図である。 工程4における酸化性ガス供給速度(X)と、工程3終了後と工程4終了後におけるS含有率の差(ΔS)との関係を示す図である。
符号の説明
1:取鍋、 2:溶鋼、 3:スラグ、 4:不活性ガス吹込み用浸漬ランス、
5:酸化性ガス上吹きランス、 6:カバー

Claims (6)

  1. 溶鋼を下記の工程1〜3で示される工程により処理する極低硫高清浄鋼の溶製方法であって、下記工程1〜3のうちの1つ以上の工程において、取鍋内の溶鋼中に、その管内と管外とで溶鋼表面を隔絶する浸漬管を浸漬することなく、溶鋼を処理し、かつ、下記工程1または工程2において溶鋼中にAlを添加した後、工程2において純酸素換算量で溶鋼1トン(t)当たり1.2Nm3以上の酸化性ガスを該溶鋼に吹込むかまたは吹き付けるに際し、工程2での酸化性ガスの供給が完了するまでにCaOフラックスをCaO換算量で溶鋼1トン(t)当たり8kg以上添加し、かつ、工程1および工程2を通算して酸化性ガスの供給が完了するまでにAlを金属Al換算量で溶鋼1トン(t)当たり2kg以上添加して、工程3による処理終了後におけるスラグ中のCaOとAl 2 3 との質量含有率の比(CaOの質量含有率/Al 2 3 の質量含有率)を0.9〜2.5とし、同スラグ中のFeOおよびMnOの質量含有率の合計を8%以下とすることを特徴とする極低硫高清浄鋼の溶製方法。
    工程1:大気圧下において取鍋内溶鋼にCaO系フラックスを添加する工程
    工程2:前記工程1の後に大気圧下において取鍋内溶鋼中に攪拌ガスを吹き込むことにより該溶鋼および前記CaOフラックスを攪拌するとともに、溶鋼に酸化性ガスを供給し、酸化性ガスと溶鋼との反応により生成した酸化物をCaO系フラックスと混合する工程
    工程3:前記酸化性ガスの供給を停止し、大気圧下の前記取鍋内溶鋼中に攪拌ガスを吹き込むことにより脱硫および介在物除去を行う工程
  2. 前記工程3による処理終了後におけるスラグ中のCaOとAl23との前記質量含有率の比を1.3〜2.5とし、同スラグ中のFeOおよびMnOの質量含有率の合計を%以下とすることを特徴とする請求項1に記載の極低硫高清浄鋼の溶製方法。
  3. 前記工程2における酸化性ガスの供給速度を、純酸素換算量で溶鋼1トン(t)当たり0.1〜0.24Nm 3 /minとし、前記工程3における攪拌ガスの吹込み流量を溶鋼1トン(t)当たり0.0035〜0.015Nm 3 /minとすることを特徴とする請求項1または2に記載の極低硫高清浄鋼の溶製方法。
  4. 前記工程3において、酸化性ガスの供給を停止した後に攪拌ガスを吹き込む時間を、4分間以上とすることを特徴とする請求項1、2または3のいずれか1項に記載の極低硫高清浄鋼の溶製方法。
  5. 前記工程3の後に、前記取鍋内溶鋼をRH真空脱ガス装置を用いて処理するに際し、RH真空槽内に酸化性ガスを供給して溶鋼温度を上昇させる工程4を付加することを特徴とする請求項1、2、3または4のいずれか1項に記載の極低硫高清浄鋼の溶製方法。
  6. 前記工程4において、酸化性ガスの供給を停止した後に、引き続きRH真空脱ガス処理装置内における溶鋼の環流を継続して該溶鋼中の介在物を除去する処理を行うことを特徴とする請求項1、2、3、4または5のいずれか1項に記載の極低硫高清浄鋼の溶製方法。
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