JP2017188305A - リチウムイオン二次電池の出力評価方法 - Google Patents

リチウムイオン二次電池の出力評価方法 Download PDF

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Abstract

【課題】有機電解液の分解により正極活物質/電解液界面に生じる高抵抗の有機分解生成物生成量を抑制し、安定した抵抗評価を可能とするリチウムイオン二次電池の出力評価方法を提供する。
【解決手段】リチウムを含む遷移金属酸化物を含有する5V級正極活物質を有する正極と、金属リチウム又はリチウム合金を有する負極と、正極と負極の間に配置されたセパレーターと、正極と負極の間を満たす非水系電解液とを備えるリチウムイオン二次電池を製造する電池製造工程S1と、電池製造工程S1で製造した電池のコンディショニング処理を行うコンディショニング工程S2と、コンディショニング処理後の電池に、測定対象とする充電深度まで充電を行う充電深度調整工程S3と、充電深度調製工程S3後の電池に対して抵抗値を算出して評価を行う出力評価工程S4を有し、コンディショニング工程S2において、電池のコンディショニング処理を−10℃以上5℃以下の環境下で行うことを特徴とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、リチウムイオン二次電池の出力評価方法に関する。
リチウムイオン二次電池は高いエネルギー密度をもつため、近年小型化や軽量化を要求される携帯電話やノートパソコンのような携帯電子機器に広く利用されている。また自動車用途ではクリーンなエネルギー源として開発が盛んであり、小型、軽量、高容量、高出力などの高性能化や低コスト化が求められている。その中で、金属リチウム電位基準で5V以上の電位まで充電可能な5V級正極活物質は電池の高エネルギー密度化や、組電池の電池個数を減少できる利点から、ハイブリッド車および電気自動車用電池の正極材料として開発が進められている。
これらの開発を迅速かつ低コストで進めるためには評価手段が重要な要素の一つであり、リチウムイオン二次電池正極材料の開発における評価方法の重要性は益々高まっている。具体的な評価方法としては、組成分析やXRD、SEM‐EDX、XPSなどのいわゆる分析評価方法による、正極活物質の組成、粒度分布、粒子形状、結晶構造、構成元素の配置等と電池性能との相関評価があるが、実際に電池を作製して電池特性の評価を行うことは不可欠である。しかしながら、正極の電位が高くなると、電解液が酸化分解されてガスが発生したり、電解液の分解に伴う副生成物が発生したり、正極活物質中のMnやNiなどの金属イオンが溶出して負極上に析出して負極の劣化を早める等の影響により、電池のサイクル劣化が大きい等の問題があり、5V級正極活物質を用いた5V級リチウムイオン二次電池の特性評価で正確な評価結果を得ることの障害となっていた。
リチウムイオン二次電池の主たる電池特性には、エネルギー密度、充放電サイクル特性(耐久特性)、出力特性、熱安定性などがあり、これらの特性の優先順位は、使われる機器、使用方法により異なる。車載用電池を例に挙げると、加速時に短時間で大きなエネルギーを必要とする出力特性と走行距離に比例するエネルギー密度が特に重要な特性となる。
例えば、特許文献1には、正極とセパレーターとの間に、非水溶媒と支持塩とを含む電解質ゲルが配置され、正極側電解質組成物Eに含まれる非水溶媒の酸化電位(対Li/Li)は、電解質組成物Eに含まれる非水溶媒の酸化電位(対Li/Li)よりも高いリチウムイオン二次電池とすることで高電圧化を可能とし、車両において使用される電源として好適であることが記載されている。
また、特許文献2には、4.5V以上の作動電位を有する(5V級)スピネル型リチウムマンガン含有複合酸化物について、電解液と反応することにより発生するガスの発生量を抑制するため、16dサイトと32eサイトとの原子間距離の比率を所望の値とすることが開示されている。
リチウムイオン二次電池の重要特性である出力特性の評価方法には、直流法と交流法があり、直流法では、作製した電池を所定の充電深度の充電状態として短時間電流を印可し、その時間の電圧降下量(V)と印可した電流値(A)から抵抗を算出する方法(特許文献3参照)や、作製した電池について、定電流/定電圧充電を行い、一定時間休止の後、所定の電池電圧まで定電流で放電させ、このとき一定時間休止後の開回路電圧(OCV)、及び放電開始一定短時間後の閉回路電圧(CCV)、放電開始一定短時間後の放電電流(I)から、当該電池の直流抵抗(R)を算出する方法(算出式は、R=(OCV−CCV)/Iである)(特許文献4参照)などがある。一方、交流法は電池に微小な電流を重畳印可し、周波数を変化させることで抵抗を分離する交流インピーダンス法が用いられている。前者は、電池全体の抵抗(出力)評価となり、電池メーカーなどで利用されることが多い。後者は、正極、負極などの各抵抗成分の分離ができることから、正極活物質や負極活物質の解析に用いられ、研究機関や正極、負極、電解液のメーカーなどで利用されている。
特開2012−146492号公報 特開2015−38872号公報 国際公開第2015/182560号 特開2015−167118号公報
これらの出力特性などの電池特性を評価するには、作製した電池に対して、まず電池の状態を整えるコンディショニング処理を行う必要がある。コンディショニング処理は電池の設計上の容量や、性能を引き出すための前処理であり、一般的な方法としては、電解液を電極全体に浸透させるため、電流を印加しない状態で数時間保存する工程と、負極に用いられる黒鉛などの負極活物質表面に電解液の還元分解を抑えるSEI(Solid Electrolyte Interface)層を生成させるために小さめの電流で充放電サイクルを繰り返す、あるいは、所望の電位で数時間保持する工程を備えている。
上記コンディショニング処理時の保存時間や充電サイクル数あるいは、電位と保持時間は、電池の電極厚みやセパレーター等の部材の仕様、電池構造の違いによりどの電池に対しても一様な条件とはならず、電池の仕様に合わせた保持時間やサイクル数の最適化が必要となり、電池の構造によっては、数十サイクルの充放電が必要となる場合もある。
しかしながら、現在、市場に広く普及しているLiCoOなどを正極活物質に用いたリチウムイオン電池は放電電位が4V前後である、いわゆる4V級リチウムイオン二次電池であり、これらに用いられている従来のリチウムイオン電導性有機電解液は、金属リチウム電位基準で5V以上の電位まで充電可能な、いわゆる5V級正極活物質を作動させるには耐酸化性において適当でない。
よって、一般的なリチウムイオン用電解液を用いて5V級正極活物質の出力特性を評価しようとした場合、上記したように、コンディショニング処理時に正極活物質と電解液の界面で電解液の過剰な酸化分解が起こり、正極活物質表面に高抵抗の有機被膜が厚く形成されたり、ガスが発生する問題がある。この生成した有機被膜の抵抗成分は電池全体の抵抗成分の割合の大部分を占め、かつ生成量も不安定であることから、電池の抵抗評価に悪影響を及ぼすこととなる。また、コンディショニング処理後に行う出力特性評価、特に車載用電池においては満充電時の出力だけでなく、放電末期の出力特性も重要であることから、所望の充電深度に調整しての評価が必要となるが、当然、その充電深度調整時においても電解液界面と正極活物質表面は高電位にさらされることになり電解液の分解が起こる。
現在、有意義な電気化学測定が可能な電位領域を示す、電位窓の広い電解液の開発も進められているが、まだ、実用化レベルには至っていない。したがって、5V級正極活物質の評価は高抵抗の活物質表面の有機被膜を含めた評価となっている。
また、上記したガスの発生は、正極活物質と電解液の界面で電解液の過剰な酸化分解により、COガスとHOが生成するためであるが、発生したHOは、電解液中に含まれる支持電解質であるLiPFと反応してフッ酸(HF)を生成する。強酸であるHFは正極の溶出、Al集電体の腐食やCu集電体と負極塗工膜との剥離、セパレーターやバインダーの劣化など電池構成部材の多くの部材に対して悪影響を与え電池を急激に劣化させることから、5V級正極活物質の評価を難しくしている。
特許文献1乃至4には、有機電解液の分解により正極活物質表面に形成される有機被膜による抵抗評価への悪影響に対する対策については記載されていない。
本発明は、このような実情に鑑みて提案されたものであり、有機電解液の分解により正極活物質/電解液界面に生じる高抵抗の有機分解生成物生成量を抑制し、安定した抵抗評価を可能とする5V級正極活物質を用いたリチウムイオン二次電池の出力評価方法を提供する。
本発明者は、この問題を解決するために5V級正極活物質を用いたリチウムイオン二次電池の出力評価条件を詳細に検討したところ、電池のコンディショニング処理を−10℃以上5℃以下の環境下で行うことで、正極活物質上に有機電解液の分解による有機被膜が生じるのを抑制し、有機被膜による抵抗評価への悪影響を防止することができることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明の一態様は、5V級正極活物質を用いたリチウムイオン二次電池の出力評価方法であって、リチウムを含む遷移金属酸化物を含有する5V級正極活物質を有する正極と、金属リチウム又はリチウム合金を有する負極と、正極と負極の間に配置されたセパレーターと、正極と負極の間を満たす非水系電解液とを備えるリチウムイオン二次電池を製造する電池製造工程と、電池製造工程で製造した電池のコンディショニング処理を行うコンディショニング工程と、コンディショニング処理後の電池に、測定対象とする充電深度まで充電を行う充電深度調整工程と、充電深度調製工程後の電池に対して抵抗値を算出して評価を行う出力評価工程を有し、コンディショニング工程において、電池のコンディショニング処理を−10℃以上5℃以下の環境下で行うことを特徴とする。
本発明の一態様によれば、電池のコンディショニング処理を−10℃以上5℃以下の環境下で行うことで、正極活物質に有機電解液の分解による有機被膜が生じるのを抑制し、有機被膜による抵抗評価への悪影響を防止することができるため、安定した出力評価が可能となる。
このとき、本発明の一態様では、さらに、充電深度調整工程を−10℃以上5℃以下の環境下で行うこととしてもよい。
充電深度調整工程も−10℃以上5℃以下の環境下で行うことで、充電深度調整工程において正極活物質に有機被膜が生じるのを防止することができる。
また、本発明の一態様では、出力評価工程において、一度の電流印可時間を1秒〜10秒とするパルス充放電を繰り返し、その電圧低下量と、印可した電流から電池の抵抗を求めることとしてもよい。
電流の印加をパルスにすることで有機電解液の酸化分解を抑制することができる。
また、本発明の一態様では、正極は、正極活物質、導電材、バインダー及び溶媒とからなる正極合材スラリーをアルミ集電体に塗工したものであり、該正極合材スラリーの塗工量を5〜10mg/cmの範囲とすることができる。
塗工量を5〜10mg/cmの範囲とすることで、コンディショニング処理の時間を短くし、有機電解液の分解を抑えることができる。
また、本発明の一態様では、非水系電解液は、LiPFを支持塩とし、有機溶剤としてエチレンカーボネートとジメチルカーボネートから選ばれる1種を単独であるいは混合して用いてもよい。
本発明を適用することにより、LiPFを支持塩としてもHF等のガスの発生を抑制することができる。
また、本発明の一態様では、5V級正極活物質は、スピネル型リチウムニッケルマンガン酸化物、オリビン型リチウムリン酸コバルト、オリビン型リチウムリン酸ニッケルの何れかとすることができる。
これらの遷移金属化合物は、5V級正極活物質として好適に用いることができる。
本発明の一実施形態によれば、有機電解液の分解により正極活物質/電解液界面に生じる高抵抗の有機分解生成物生成量を抑制し、安定した抵抗評価を可能とするリチウムイオン二次電池の出力評価方法を提供することができる。
本発明の一実施の形態に係るリチウムイオン二次電池の出力評価方法のプロセスの概略を示す工程図である。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら下記順序にて詳細に説明する。なお、以下に説明する本実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではなく、本実施形態で説明される構成の全てが本発明の解決手段として必須であるとは限らない。
1.リチウムイオン二次電池の出力評価方法
1−1.電池製造工程
1−2.コンディショニング工程
1−3.充電深度調整工程
1−4.出力評価工程
<1.リチウムイオン二次電池の出力評価方法>
図1に、本発明の一実施の形態に係るリチウムイオン二次電池の出力評価方法のプロセスの概略を示す。本発明の一実施形態は、5V級正極活物質を用いたリチウムイオン二次電池の出力評価方法であって、リチウムを含む遷移金属酸化物を含有する5V級正極活物質を有する正極と、金属リチウム又はリチウム合金を有する負極と、正極と負極の間に配置されたセパレーターと、正極と負極の間を満たす非水系電解液とを備えるリチウムイオン二次電池を製造する電池製造工程S1と、電池製造工程S1で製造した電池のコンディショニング処理を行うコンディショニング工程S2と、コンディショニング処理後の電池に、測定対象とする充電深度まで充電を行う充電深度調整工程S3と、充電深度調製工程S3後の電池に対して抵抗値を算出して評価を行う出力評価工程S4を有し、コンディショニング工程S2において、電池のコンディショニング処理を−10℃以上5℃以下の環境下で行うことを特徴とする。
このように、電池のコンディショニング処理を−10℃以上5℃以下の環境下で行うことで、正極活物質に有機電解液の分解による有機被膜が生じるのを抑制し、有機被膜による抵抗評価への悪影響を防止することができるため、安定した出力評価が可能となる。以下、各工程を順にそれぞれ説明する。
(1−1.電池製造工程)
電池製造工程S1では、リチウムを含む遷移金属酸化物を含有する5V級正極活物質を有する正極と、金属リチウム又はリチウム合金を有する負極と、正極と負極の間に配置されたセパレーターと、正極と負極の間を満たす非水系電解液とを備えるリチウムイオン二次電池を製造する。
リチウムイオン二次電池の正極は、正極活物質として金属リチウム電位基準で5V以上の電位まで充電可能な5V級正極活物質を含有する。正極は、この5V級正極活物質と導電材とバインダー(結着剤)とを混合し、適当な溶剤を加えてペースト状の正極合材スラリーとしたものを、集電体の表面に塗布乾燥し、必要に応じて電極密度を高めるべく圧縮して形成してもよい。
5V級正極活物質は、リチウムを含む遷移金属酸化物から成る。5V級正極活物質とは、金属リチウム電位基準で5V以上の電位まで充電可能な活物質であり、例えば、LiNiMnMe(MeはMn,Ni以外の遷移金属元素、Al及びアルカリ土類金属から選ばれる少なくとも1種の元素であり、a〜eは0.9≦a≦1.2、0.45≦b≦0.55、1.45≦c≦1.55、0≦d≦5.00、3.8≦e≦4.2)で表されるスピネル型リチウムニッケルマンガン酸化物、LiCoPOで表されるオリビン型リチウムリン酸コバルト、LiNiPOで表されるオリビン型リチウムリン酸ニッケルなどを用いることができる。なお、遷移金属としては、V,Ti,Cr,Fe,Co,Cu等が挙げられる。ただし、上記正極活物質に限定されるわけではなく、上記した、金属リチウム電位基準で5V以上の電位まで充電可能な性能を有するリチウムを含む遷移金属酸化物を含有する正極活物質であればよい。
正極作製時には、集電体に塗工する正極合材スラリー量が多いとコンディショニング処理に時間がかかり、電解液の分解が進みやすくなることから、塗工量は5〜10mg/cmの範囲にすることが好ましい。塗工量が5mg/cm未満の場合には、電解液抵抗など正極以外の電池内部抵抗による分極の割合が増え抵抗評価の精度が下がってしまう。また、塗工量が10mg/cmを超える場合には有機被膜やガスの発生が多くなり好ましくない。
正極作製に用いられる導電材は、半導体である正極活物質粒子間の電気伝導性を高め、正極の充放電反応を効率的に行うためのものであり、一般的な非水系電解質二次電池で使用されている導電材であればよく、例えば、黒鉛(天然黒鉛、人造黒鉛、膨張黒鉛など)やアセチレンブラック、ケッチェンブラック(登録商標)などのカーボンブラック系材料などの炭素材料を単体、もしくは複合して用いることができる。
正極作製に用いられるバインダーは、正極活物質粒子をつなぎ止める役割を果たすもので、一般的な非水系電解質二次電池で使用されているものであればよく、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、フッ素ゴムなどの含フッ素樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレンなどの熱加塑性樹脂、エチレンプロプレンジエンゴム、スチレンブタジエン、セルロース系樹脂、ポリアクリル酸などを用いることができる。
正極(正極膜ともいう)は、正極活物質と、導電材とバインダー(結着剤)とを混合調製し、適当な溶剤を加えてペースト状の正極合材スラリーとしたものを、集電体の表面に塗布した後、乾燥する。溶剤としては、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、メタノール、メチルイソブチルケトン、水を例示できる。
負極は、金属リチウム又はリチウム合金を用いることが好ましい。リチウムイオン二次電池で一般的に用いられている黒鉛、ハードカーボンでは、電極内部への電解液の浸透や、電解液の還元分解を抑えるSEI(Solid Electrolyte Interface)の生成に数サイクルの充放電を必要とする。また、その際に、正極活物質表面で電解液の分解が起こり、高抵抗の有機被膜が正極活物質表面に生成されることから好ましくない。したがって、負極にはコンディショニング時間を短くすることができる金属リチウム又はリチウム合金を用いることが好ましい。
セパレーターは、正極及び負極の間に挟み込んで配置される。セパレーターは、正極及び負極を分離し、正極及び負極の短絡を防止する機能と非水系電解液を保持する機能を有するものである。セパレーターとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、セルロース、又はポリフッ化ビニリデン(PVDF)を含む多孔質フィルム、合成樹脂製不織布等を挙げることができ、それらを単独、あるいは、組み合わせて用いることができる。
非水系電解液は、支持塩としてのリチウム塩を有機溶媒に溶解したものである。従来、放電電位が4.2V以下であるいわゆる4V級の電池に用いられている有機溶媒としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、トリフルオロプロピレンカーボネート等の環状カーボネート、また、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジプロピルカーボネート等の鎖状カーボネート、さらに、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、ジメトキシエタン等のエーテル化合物、エチルメチルスルホン、ブタンスルトン等の硫黄化合物、リン酸トリエチル、リン酸トリオクチル等のリン化合物等から選ばれる1種を単独で、あるいは2種以上を混合して用いることができる。
支持塩としては、LiPF、LiBF、LiClO、LiAsF、LiN(CFSO等、及びそれらの複合塩を用いることができる。
例えば、本発明の一実施形態では、非水系電解液は、LiPFを支持塩とし、有機溶剤としてエチレンカーボネートとジメチルカーボネートから選ばれる1種を単独であるいは混合して用いることができる。
さらに、非水系電解液は、ラジカル捕捉剤、界面活性剤及び難燃剤等を含んでいてもよい。
(1−2.コンディショニング工程)
コンディショニング工程S2では、電池製造工程S1で製造した電池のコンディショニング処理を行う。
上述した通り、コンディショニング処理は電池の設計上の容量や、性能を引き出すための前処理であり、一般的な方法としては、電解液を電極全体に浸透させるために行う電池に電流を印加しない状態で数時間保存する工程と、負極に用いられる黒鉛などの負極活物質表面に電解液の還元分解を抑えるSEI(Solid Electrolyte Interface)層を生成させるために小さめの電流で充放電サイクルを繰り返す工程とを備えている。本発明の負極には、金属リチウム又はリチウム合金を用いるので、SEI(Solid Electrolyte Interface)層の生成は容易に形成されると考えられるため充放電サイクルを繰り返す必要はなく、一度の充放電サイクルでも良い。あるいは、充放電サイクルを繰り返す工程を、所望の電位で数時間保持する工程としても良い。
本発明の負極には、金属リチウム又はリチウム合金を用いるので、電流を印加しない状態で保存する時間は、特に限定はされないが、正極膜への電解液の浸透を考慮すると4時間以上、18時間以下が好ましい。保存時間が4時間未満では、電解液の正極膜への浸透が安定せず、一方、18時間を超えると操業効率の観点から問題がある。このため、本実施形態では、正極材料の出力評価の精度を高めるために、より確実に正極膜に電解液を浸透させた上で評価方法の操業効率を鑑みて、少なくとも12時間以上とすることがより好ましい。
充放電サイクルを繰り返す工程を行う場合の条件は、例えば、電極部に対し、0.2kg/cmの荷重をかけた状態で拘束し、充放電試験装置を用いて0.2Cのレート(5時間で満充電となる電流値)で5Vまで充電する操作と、0.2Cのレートで3Vまで放電させる操作を繰り返し、最期の放電時に放電容量を測定して、コンディショニング処理終了時の放電容量を求めることができる。本発明では、負極に金属リチウム又はリチウム合金を用いることでSEI層を短時間で均一に生成できるので充放電サイクルを繰り返すことなく抵抗を低くすることができていると考えられる。
なお、所望の電位で数時間保持する工程を行う場合、例えば0.2Cのレートで4.1Vまで充電し40℃の環境下で12時間保持することでSEI層を形成してもよい。
一般的なリチウムイオン二次電池用電解液を用いて5V級正極活物質の出力特性を評価しようとした場合、コンディショニング処理時に正極活物質と電解液の界面で電解液の過剰な酸化分解が起こり、正極活物質表面に高抵抗の有機被膜が厚く形成される。有機被膜が形成されてしまうと、抵抗評価を行う際に正極及び負極由来の抵抗に加えて、有機被膜由来の抵抗が加味されてしまい正確な特性評価を行うことができなくなってしまう。
本発明者は、この問題を解決するために測定条件を詳細に検討したところ、電池のコンディショニング処理を−10℃以上5℃以下の環境下で行うことで、正極活物質上に有機電解液の分解による有機被膜が生じるのを抑制し、有機被膜による抵抗評価への悪影響を防止することができることを見出した。
電池のコンディショニング処理の温度が−10℃未満の場合には、電解液が凍結してしまう場合がある。また、コンディショニング処理の温度が5℃を超える場合には、電解液の酸化分解反応が生じ始めてしまうため好ましくない。
(1−3.充電深度調整工程)
充電深度調整工程S3では、コンディショニング処理終了時の放電容量を100%として、測定対象とする充電深度(SOC:State of Charge)まで充電を行う。充電の条件は、例えば、0.2Cのレートで充電深度60%まで充電する操作を行い、充電深度60%に調整した電池を準備できる。同様にして所望とする充電深度を調整し、後述する抵抗評価を行うことで、リチウムイオン二次電池の出力評価を行う。
充電深度調整工程S3においても、コンディショニング工程S2の場合と同様に、正極活物質に有機電解液の分解による有機被膜が生じるのを抑制するために、−10℃以上5℃以下の環境下で充電を行うことが好ましい。
(1−4.出力評価工程)
出力評価工程S4では、充電深度調整工程S3後の電池に対して抵抗値を算出して評価を行う。
抵抗値の評価については、特に限定されず、DC−IR測定法等の一般的に知られている方法でよいが、出力評価工程S4においても電解液の分解を抑えるため電流印可時間が短い方が良く、一度の電流印可時間を1秒〜10秒とするパルス充放電を繰り返し、パルス放電した際の電圧降下量から抵抗を評価する方法が好ましい。例えば、1C/3C/5Cのレートでそれぞれ10秒間充電、放電を繰り返す操作を行い、その際に印可した電流値と、電圧降下量ΔVから抵抗値の計算を行う。なお、出力評価工程S4においては、電池の温度を室温(例えば25℃)に戻した上で抵抗の評価を行う。
以下に、本発明の実施例及び比較例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例によって何ら限定されるものではない。
(実施例1)
[正極膜]
実施例1では、正極膜として、正極活物質LiNi0.5Mn1.5とアセチレンブラック(導電材)とPVDF(バインダー)を質量比85:10:5となるように混合し、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)中に分散させてスラリー化した。この正極スラリーを、厚さ20μmのアルミニウム箔(正極集電体)にアプリケーターを用い、単位面積当たり5mg/cmに塗工した後、乾燥、ロールプレスして正極シートを作製した。この正極シートを、一角に幅10mmの帯状部が突き出た3cm×5cmの長方形に切り出し、帯状部から上記正極活物質層を除去し、アルミニウム箔を露出させて端子部を形成し、端子付きの正極シートを得た。
[負極膜]
負極膜は、集電体として厚さ18μmの銅箔を3.2cm×5.2cmで一角が幅10mmの帯状部(端子)が出た長方形に切り出し、その上に厚さ1mmで同サイズの3.2cm×5.2cmに切り出した金属リチウムを乗せ、端子付きの負極シートを得た。
[セパレーター]
セパレーターは、ガラスろ紙(アドバンテック社製、GF−75)を、付着水分除去するため80℃で8h間減圧乾燥行った後、5.8cm×3.4cmにカットしたものを用いた。
[電解液]
電解液は、電解質LiPF1mol/Lを含有するエチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DMC)を容積比でEC:DMC=3:7とした混合液を用いた。
[組み立て]
これらの材料を80℃で8h間減圧乾燥したのち、露点−60℃未満のドライルームに持ち込み、外装サイズ80mm×60mmの単層ラミネートセル型電池を組み立てた。
[コンディショニング処理]
コンディショニング処理は、5℃に制御された恒温槽の中で、電極部に対し、0.2kg/cmの荷重をかけた状態で拘束し、充放電試験装置(北斗電工製、HJ1001SD8)を用いて0.2Cのレート(5時間で満充電となる電流値)で5Vまで充電する操作と、0.2Cのレートで3Vまで放電させる操作を行い、このとき放電容量を測定した。
[充電深度調整]
コンディショニング終了時の放電容量を100%として、60%となる容量を計算し、コンディショニング処理後の電池を、5℃に制御された恒温槽の中で充放電試験装置(北斗電工製、HJ1001SD8)を用いて0.2Cのレートで充電深度60%まで充電する操作を行い、充電深度60%に調整した電池を得た。
[抵抗評価]
コンディショニング処理と同じく、5℃の環境下で充電深度60%に調整を行った電池に対して、25℃に調整した恒温槽の中で電池の温度が25℃に安定するまで保管し、その後1C/3C/5Cのレートで10秒間充電、放電を繰り返す操作を行い、その際に印可した電流値と、電圧降下量ΔVから抵抗値の計算を行った。その結果を表1に示す。得られた抵抗値は、1.53Ωであった。
(実施例2)
実施例2では、実施例1と同じ電池作製条件で作製した電池に対して、コンディショニング処理と充電深度調整時の恒温槽の温度のみ5℃から−10℃に変更した。抵抗評価は、実施例1と同条件で25℃での評価とした。結果を表1に示す。得られた抵抗値は、1.62Ωであり、実施例1の結果とほぼ同等の抵抗値となった。
(比較例1)
比較例1では、実施例1と同じ電池作製条件で作製した電池に対して一般的に室温評価に用いられる25℃に調整された恒温槽の中でコンディショ二ング処理と、充電深度60%に調整を行った。抵抗評価は、実施例1と同条件で25℃での評価とした。結果を表1に示す。得られた抵抗値は、2.54Ωであり、実施例1、2と比べ約1.5倍の抵抗値となった。
(比較例2)
比較例2では、実施例1と同じ電池構造で負極を金属リチウムから天然黒鉛負極に変更した電池を0℃に調整された恒温槽の中で0.2Cのレート(5時間で満充電となる電流値)で4.9V まで充電する操作と、0.2Cのレートで3.5Vまで放電させる操作を行った。抵抗評価は、実施例1と同条件で25℃での評価とした。結果を表1に示す。得られた抵抗値は、4.41Ωとなり、実施例1の金属リチウムを用いた電池での抵抗値と比べ約2.9倍の抵抗となった。
(比較例3)
比較例3では、比較例2と同条件で、コンディショニング処理時の充放電回数のみ1回から5回に変更した。このとき、5回目の最後の放電操作のときの放電容量を測定し、充電深度60%に調整を行った。抵抗評価は、実施例1と同条件で25℃での評価とした。得られた抵抗値は、3.79Ωであり、実施例1と比べおよそ2.5倍の抵抗値であるが、同じ黒鉛負極である比較例2と比べてコンディショニング処理時の充放電回数を増やしたことで約2割程度抵抗が小さくなっている。これはコンディショニング処理時の充放電回数が1回の場合、電極内部への電解液の浸透が不十分、あるいは負極黒鉛表面で電解液の還元分解を抑えるSEI(Solid Electrolyte Interface)の生成が十分でないことが原因であると考えられる。負極に黒鉛を用いた場合には、一般的なコンディショニング処理条件から解離する低温でのコンディショニング処理や、コンディショニング処理時の充放電回数を減らすことは難しく、適当ではないことを示唆している。
これらの結果より、負極に金属リチウム又はリチウム合金を用い、低温でコンディショニング処理と充電深度の調整を行うことにより、一般的な有機電解液を用いた5V級正極活物質の抵抗評価においても正極活物質表面の電解液の酸化分解を抑え、正極活物質の出力評価を安定的に行うことができる。

Claims (6)

  1. 5V級正極活物質を用いたリチウムイオン二次電池の出力評価方法であって、
    リチウムを含む遷移金属酸化物を含有する5V級正極活物質を有する正極と、金属リチウム又はリチウム合金を有する負極と、前記正極と前記負極の間に配置されたセパレーターと、前記正極と前記負極の間を満たす非水系電解液とを備えるリチウムイオン二次電池を製造する電池製造工程と、
    前記電池製造工程で製造した電池のコンディショニング処理を行うコンディショニング工程と、
    前記コンディショニング処理後の電池に、測定対象とする充電深度まで充電を行う充電深度調整工程と、
    前記充電深度調製工程後の前記電池に対して抵抗値を算出して評価を行う出力評価工程を有し、
    前記コンディショニング工程において、前記電池のコンディショニング処理を−10℃以上5℃以下の環境下で行うことを特徴とするリチウムイオン二次電池の出力評価方法。
  2. さらに、前記充電深度調整工程を−10℃以上5℃以下の環境下で行うことを特徴とする請求項1に記載のリチウムイオン二次電池の出力評価方法。
  3. 前記出力評価工程において、一度の電流印可時間を1秒〜10秒とするパルス充放電を繰り返し、その電圧低下量と、印可した電流から前記電池の抵抗を求めることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のリチウムイオン二次電池の出力評価方法。
  4. 前記正極は、前記5V級正極活物質、導電材、バインダー及び溶媒とからなる正極合材スラリーをアルミ集電体に塗工したものであり、該正極合材スラリーの塗工量が5〜10mg/cmの範囲であることを特徴とする請求項1に記載のリチウムイオン二次電池の出力評価方法。
  5. 前記非水系電解液は、LiPFを支持塩とし、有機溶剤としてエチレンカーボネートとジメチルカーボネートから選ばれる1種を単独であるいは混合して用いることを特徴とする請求項1に記載のリチウムイオン二次電池の出力評価方法。
  6. 前記5V級正極活物質は、スピネル型リチウムニッケルマンガン酸化物、オリビン型リチウムリン酸コバルト、オリビン型リチウムリン酸ニッケルの何れかであることを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載のリチウムイオン二次電池の出力評価方法。
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