<第1実施形態>
本発明の第1実施形態について説明する。
先ず、第1実施形態の製造方法を適用して製造される積層構造体を図1に従って説明する。
図1(a)に示すように、第1実施形態の積層構造体は、全体として中空板状をなす中空板材10と、その上下両面に配された金属板50、60とで構成されている。また、図1(a)に示すように、中空板材10は、内部に複数のセルSが並設されたコア層20と、その上下両面に接合されたシート状のスキン層30、40とで構成されている。
図1(b)及び(c)に示すように、コア層20は、所定形状に成形された1枚の熱可塑性樹脂製のシート材を折り畳んで形成されている。そして、コア層20は、上壁部21と、下壁部22と、上壁部21及び下壁部22の間に立設されてセルSを六角柱形状に区画する側壁部23とで構成されている。
図1(b)及び(c)に示すように、コア層20の内部に区画形成されるセルSには、構成の異なる第1セルS1及び第2セルS2が存在する。図1(b)に示すように、第1セルS1においては、側壁部23の上部に2層構造の上壁部21が設けられている。この2層構造の上壁部21の各層は互いに接合されている。また、第1セルS1においては、側壁部23の下部に1層構造の下壁部22が設けられている。一方、図1(c)に示すように、第2セルS2においては、側壁部23の上部に1層構造の上壁部21が設けられている。また、第2セルS2においては、側壁部23の下部に2層構造の下壁部22が設けられている。この2層構造の下壁部22の各層は互いに接合されている。また、図1(b)及び(c)に示すように、隣接する第1セルS1同士の間、及び隣接する第2セルS2同士の間は、それぞれ2層構造の側壁部23によって区画されている。この2層構造の側壁部23は、コア層20の厚み方向中央部に互いに熱溶着されていない部分を有する。したがって、コア層20の各セルSの内部空間は、2層構造の側壁部23の間を介して他のセルSの内部空間に連通している。
図1(a)に示すように、第1セルS1はX方向に沿って列を成すように並設されている。同様に、第2セルS2はX方向に沿って列を成すように並設されている。第1セルS1の列及び第2セルS2の列は、X方向に直交するY方向において交互に配列されている。そして、これら第1セルS1及び第2セルS2により、コア層20は、全体としてハニカム構造をなしている。
図1(a)〜(c)に示すように、上記のように構成されたコア層20の上面には熱可塑性樹脂製のシート材であるスキン層30が接合されている。また、コア層20の下面には、熱可塑性樹脂製のシート材であるスキン層40が接合されている。これらコア層20、スキン層30、40で中空板状の中空板材10が構成されている。なお、図1(b)及び(c)では、図示されている複数のセルSのうち、最も左側のセルSに代表して符号を付しているが、他のセルSについても同様である。
図1(a)〜(c)に示すように、中空板材10の上面(スキン層30の外面)には、金属板50が熱溶着で接合されている。金属板50は、例えばアルミニウム合金、鉄合金、銅合金などの金属製であり、その厚みは0.05mm〜数mm程度である。また、中空板材10の下面(スキン層40の外面)には、金属板60が熱溶着で接合されている。この実施形態では、金属板60は、金属板50と同一の構成になっている。
次に、積層構造体を製造する方法を、図2及び図3に従って説明する。先ず、中空板材10を製造する方法について説明する。
図2(a)に示すように、第1シート材100は、1枚の熱可塑性樹脂製のシートを所定の形状に成形することにより形成される。第1シート材100には、帯状をなす平面領域110及び膨出領域120が、第1シート材100の長手方向(X方向)に交互に配置されている。膨出領域120には、上面と一対の側面とからなる断面下向溝状をなす第1膨出部121が膨出領域120の延びる方向(Y方向)の全体にわたって形成されている。なお、第1膨出部121の上面と側面とのなす角は90度であることが好ましく、その結果として、第1膨出部121の断面形状は下向コ字状となる。また、第1膨出部121の幅(上面の短手方向の長さ)は平面領域110の幅と等しく、かつ第1膨出部121の膨出高さ(側面の短手方向の長さ)の2倍の長さとなるように設定されている。
また、膨出領域120には、その断面形状が正六角形を最も長い対角線で二分して得られる台形状をなす複数の第2膨出部122が、第1膨出部121に直交するように形成されている。第2膨出部122の膨出高さは第1膨出部121の膨出高さと等しくなるように設定されている。また、隣り合う第2膨出部122間の間隔は、第2膨出部122の上面の幅と等しくなっている。
なお、こうした第1膨出部121及び第2膨出部122は、シートの塑性を利用してシートを部分的に上方に膨出させることにより形成されている。また、第1シート材100は、真空成形法や圧縮成形法等の周知の成形方法によって1枚のシートから成形することができる。
図2(a)及び(b)に示すように、上述のように構成された第1シート材100を、境界線P、Qに沿って折り畳むことでコア層20が形成される。具体的には、第1シート材100を、平面領域110と膨出領域120との境界線Pにて谷折りするとともに、第1膨出部121の上面と側面との境界線Qにて山折りしてX方向に圧縮する。そして、図2(b)及び(c)に示すように、第1膨出部121の上面と側面とが折り重なるとともに、第2膨出部122の端面と平面領域110とが折り重なることによって、一つの膨出領域120に対して一つのY方向に延びる角柱状の区画体130が形成される。こうした区画体130がX方向に連続して形成されていくことにより中空板状のコア層20が形成される。
上記のように第1シート材100を圧縮するとき、第1膨出部121の上面と側面とによってコア層20の上壁部21が形成されるとともに、第2膨出部122の端面と平面領域110とによってコア層20の下壁部22が形成される。なお、図2(c)に示すように、上壁部21における第1膨出部121の上面と側面とが折り重なって2層構造を形成する部分、及び下壁部22における第2膨出部122の端面と平面領域110とが折り重なって2層構造を形成する部分がそれぞれ重ね合わせ部131となる。
また、第2膨出部122が折り畳まれて区画形成される六角柱形状の領域が第2セルS2となるとともに、隣り合う一対の区画体130間に区画形成される六角柱形状の領域が第1セルS1となる。本実施形態では、第2膨出部122の上面及び側面が第2セルS2の側壁部23を構成するとともに、第2膨出部122の側面と、膨出領域120における第2膨出部122間に位置する平面部分とが第1セルS1の側壁部23を構成する。そして、第2膨出部122の上面同士の当接部位、及び膨出領域120における上記平面部分同士の当接部位が2層構造をなす側壁部23となる。なお、こうした折り畳み工程を実施するに際して、第1シート材100を加熱処理して軟化させた状態としておくことが好ましい。
このようにして得られたコア層20の上面及び下面には、それぞれ熱可塑性樹脂製の第2シート材が熱溶着により接合される。コア層20の上面に接合された第2シート材はスキン層30となり、コア層20の下面に接合された第2シート材はスキン層40となる。
なお、第2シート材(スキン層30、40)をコア層20に熱溶着する際には、第1セルS1における2層構造の上壁部21(重ね合せ部131)が互いに熱溶着される。同様に、第2セルS2における2層構造の下壁部22(重ね合せ部131)が互いに熱溶着される。その一方で、第1セルS1及び第2セルS2における2層構造の側壁部23には、上壁部21及び下壁部22に比べて熱が伝わりにくい、したがって、2層構造の側壁部23は、中空板材10の厚み方向中央部に互いに熱溶着で接合されていない部分を有している。その結果、各セルSの内部空間は、完全に閉塞された空間でなく、各セルSの内部空間同士が、熱溶着で接合されていない2層構造の側壁部23の間を介して連通している。
次に、中空板材10に金属板50、60を貼り付けて積層構造体を製造する方法を、図3に従って説明する。
図3(a)に示すように、先ず、金属板50を板状の支持板210の厚み方向の一方の面に配置して支持させるとともに、金属板60を支持板210の厚み方向の他方の面に配置して支持させる。なお、支持板210の厚み方向の各面には、それぞれ複数のエアー吸引孔が形成されている。そして、これらエアー吸引孔から空気を吸引することで、支持板210の厚み方向の各面において金属板50、60を吸引して支持することができる。
次に、図3(b)に示すように、金属板50、60を支持した状態の支持板210を、対向配置された一対の加熱板220の間に配置する。加熱部材としての各加熱板220は、面方向において金属板50、60以上の大きさに形成されている。なお、図3では、面方向において加熱板220と金属板50、60とを同じ大きさで図示している。また、各加熱板220は、他方の加熱板220に対向する側の面である対向面が、中空板材10を構成する熱可塑性樹脂の溶融温度以上(例えば数百度以上)に加熱されている。また、各加熱板220の対向面には、複数のエアー吸引孔が形成されている。そして、これらエアー吸引孔から空気を吸引することで、各加熱板220の対向面側において金属板50、60を吸引して支持することができる。
一対の加熱板220の間に、金属板50、60を支持した状態の支持板210を配置した後、図3(c)に示すように、一対の加熱板220を互いに近接する方向に移動させて、一対の加熱板220で金属板50、60を支持した状態の支持板210を挟み込む。この挟み込んだ状態においては、支持板210における空気の吸引、又は各加熱板220における空気の吸引の少なくとも一方が行われているようにする。したがって、金属板50、60は、支持板210又は各加熱板220の少なくともいずれかに支持された状態となっており、支持板210と加熱板220の間から脱落することはない。また、金属板50、60は、上記のような状態では、その全面が各加熱板220の対向面に面接触し、各加熱板220からの熱を受けて加熱される。したがって、第1実施形態においては、金属板50、60が各加熱板220に支持されている工程が、金属板50、60を加熱する加熱工程に相当する。
その後、図3(d)に示すように、金属板50、60を支持した状態の加熱板220を互いに離間する方向に移動させる。そして、支持板210を、対向配置された加熱板220の間から移動させる。支持板210を移動させた後、図3(e)に示すように、中空板材10を、対向配置された一対の加熱板220の間に配置させる。この状態では、加熱板220の対向面に面接触されている金属板50、60と中空板材10の外面(表面)とが対向配置される。
中空板材10を一対の加熱板220の間に配置させた後、図3(f)に示すように、一対の加熱板220を互いに近接する方向に移動させる。その結果、各加熱板220は、中空板材10に近接する方向に移動し、各加熱板220に支持されている加熱状態の金属板50、60が中空板材10の外面に面接触する。このとき、金属板50、60は相応に高温になっているため、金属板50、60の熱で中空板材10の外面に熱溶着で接合される。その一方で、金属板50、60が中空板材10の外面に面接触した後、各加熱板220における空気の吸引を停止し、各加熱板220を互いに離間する方向に移動させる。したがって、各加熱板220が金属板50、60を介して中空板材10を挟んでいる時間はごく僅かであり、各加熱板220からの熱が中空板材10に過度に伝わることはない。なお、この第1実施形態では、金属板50、60を支持した状態の一対の加熱板220の間に中空板材10を配置してから、中空板材10の外面に金属板50、60を熱溶着で接合して、一対の加熱板220を離間する方向に移動させるまでが熱溶着工程に相当する。
中空板材10の外面に金属板50、60を熱溶着で接合した後、図3(g)に示すように、一対の加熱板220の間に配置されている中空板材10を、一対のプレス板230の間に配置させる。各プレス板230は、面方向において金属板50、60の大きさ以上に形成されている。図3では、面方向においてプレス板230と金属板50、60とを同じ大きさで図示している。なお、これらプレス板230は、加熱板220のように加熱されてなく、常温の状態になっている。一対のプレス板230の間に中空板材10を配置した後、各プレス板230を互いに近接する方向に移動させて、中空板材10を厚み方向両面から挟み込んで所定のプレス圧でプレスする。これにより、各金属板50、60の全域が各プレス板230によって中空板材10側に押圧され、各金属板50、60が均一の押圧力でもって中空板材10に接合されるとともに、積層構造体の厚みを調整して当該積層構造体を反りのない平坦な板材にする。その後、一対のプレス板230を互いに離間する方向に移動させる。そして、図3(h)に示すように、一対のプレス板230の間から金属板50、60が熱溶着で接合された中空板材、すなわち積層構造体が取り出される。
ここで、上述したとおり、この第1実施形態では、加熱された金属板50、60自身の熱で金属板50、60が中空板材10に熱溶着で接合され、各加熱板220から中空板材10に伝わる熱は非常に少ない。さらに、各プレス板230は、熱溶着を目的としては加熱されていない。そのため、仮に中空板材10を各プレス板230でプレスする際に、依然として金属板50、60が高温の状態にあっても、金属板50、60が各プレス板230に接触した際にプレス板230に熱が奪われて、金属板50、60が速やかに冷却される。そのため、中空板材10の厚み方向中央に過度に熱が伝わることはなく、中空板材10の厚み方向中央部分が軟化する可能性は小さくなる。その結果、一対のプレス板230で中空板材10をプレスしたとしても、中空板材10の内部のセルSの構造が潰されてしまうことは抑制できる。
第1実施形態によれば、次のような効果を得ることができる。
(1)上記第1実施形態では、予め加熱された金属板50、60が中空板材10の外面に面接触されるため、中空板材10の外面部を金属板50、60そのものの熱で軟化させて熱溶着することができる。そして、中空板材10には、加熱された金属板50、60が持つ熱量以上の熱は伝わりにくい。そのため、金属板50、60から過度に多くの熱が中空板材10に伝わって中空板材10の厚み方向中央部が軟化することを抑制できる。
(2)上記第1実施形態では、金属板50、60を中空板材10の外面に面接触させた後、速やかに各加熱板220を互いに離間する方向に移動させる。そのため、各加熱板220が金属板50、60を介して中空板材10を挟んでいる時間はごく僅かであり、各加熱板220からの熱が中空板材10に過度に伝わることを抑制できる。
(3)上記第1実施形態では、金属板50、60を中空板材10の外面に熱溶着で接合した後、一対のプレス板230でプレスしている。そのため、金属板50、60を均一の押圧力でもって中空板材10に接合できるとともに、積層構造体の厚みを調整して当該積層構造体を反りのない平坦な板材にできる。
(4)上記第1実施形態では、一対のプレス板230が熱溶着を目的としては加熱されていないため、仮に中空板材10の外面に熱溶着で接合された後の金属板50、60が依然として高温の状態にあっても、一対のプレス板230で金属板50、60を冷却できる。したがって、金属板50、60から過度な熱が中空板材10に伝わることを抑制できる。
(5)上記第1実施形態では、対向配置された一対の加熱板220を面方向において金属板50、60よりも大きく形成し、それら加熱板220の対向面に金属板50、60を面接触させて加熱する。そのため、金属板50、60を均一に加熱することができる。また、各加熱板220に支持されている金属板50、60を、中空板材10の外面に面接触させるため、各金属板50、60を中空板材10の外面に均一に熱溶着で接合できる。
(6)上記第1実施形態では、コア層20における各セルSの内部空間が完全に閉塞されてなく、互いに連通している。したがって、金属板50、60を中空板材10の外面に接合する際にセルSの内部空間が加熱されて空気が膨張しても他のセルSの内部空間を介して、中空板材10の外部へと空気を排出できる。したがって、空気の膨張圧によって中空板材10のセルSの構造が変形等することが抑制できる。
<第2実施形態>
本発明の第2実施形態について、第1実施形態と異なる部分を中心に説明する。
先ず、第2実施形態の製造方法を適用して製造される積層構造体を図4に従って説明する。
図4に示すように、第2実施形態の積層構造体は、中空板材10と、その上下両面に配された一対の金属板60、70とで構成されている。積層構造体は、金属板60、70のうち、中空板材10の上面に配された金属板70に凹部80が形成されている点で第1実施形態と相違している。第2実施形態では、便宜上、積層構造体の上面に配された金属板70を上側金属板70、下面に配された金属板60を下側金属板60と言うものとする。
図4に示すように、積層構造体の凹部80は、正面視矩形状に形成されている。凹部80は、上側金属板70の上面72から垂下する4つの側壁81と、各側壁81に囲まれた矩形状の底壁82で構成されている。各側壁81は、上側金属板70の上面72に対して略直角をなすように折り曲げられ、底壁82は、各側壁81に対して略直角をなすように折り曲げられている。
図5(a)に示すように、積層構造体の上面の上側金属板70には、金属凹部71が形成されている。金属凹部71は、上側金属板70の上面72から垂下する4つの側壁75と、各側壁75に囲まれた矩形状の底壁76とで構成されている。上側金属板70は、厚みが0.05mm〜数mm程度の薄板であり、上側金属板70の下面73には、金属凹部71に対応する金属凸部74が、下面73から下方に突出するように形成されている。
図5(b)に示すように、中空板材10は、熱変形によって薄肉化された塑造凹部11を有している。塑造凹部11は、スキン層30の表面から垂下する4つの側壁12と、各側壁12に囲まれた矩形状の底壁13とで構成されている。本実施形態では、底壁13の下側に位置する中空板材10の厚みは、2mm〜15mm程度である。また、この部分での中空板材10の厚みは、中空板材10全体の厚みの、2分の1以下、或いは、3分の1以下であることが好ましい。
上側金属板70の金属凹部71は、その裏面で、中空板材10の塑造凹部11に接合されている。言い方を変えれば、上側金属板70の金属凸部74は、その表面で、中空板材10の塑造凹部11に接合されている。具体的には、金属凹部71(金属凸部74)の各側壁75が、塑造凹部11の各側壁12に接合され、金属凹部71(金属凸部74)の底壁76が、塑造凹部11の底壁13に接合されている。中空板材10の塑造凹部11と上側金属板70の金属凹部71とで、積層構造体の凹部80が構成されている。
次に、第2実施形態の積層構造体を製造する方法を、図6〜図8に従って説明する。ここでは、中空板材10を製造する方法は第1実施形態と同様であることから省略し、中空板材10の上下両面に下側金属板60及び上側金属板70を接合して、凹部80が形成された積層構造体を製造する方法について説明する。
まず、上側金属板70に、プレス加工により金属凹部71を形成する。図6(a)及び(b)に示すように、金属凹部71と同形状の凹み部91aが形成された下型91の上に、上側金属板70を、面73が下方を向くように配置する。続いて、金属凹部71と同形状の突状部92aが形成された上型92を、下型91へ向けて移動させる。このようにして、図6(c)に示すように、上側金属板70の面72には、金属凹部71が形成される。また、図6(d)に示すように、上側金属板70の面73には、金属凹部71と同形状の金属凸部74が形成される。金属凹部71及び金属凸部74は、薄板状の上側金属板70をプレス加工により形成されていることから、表裏一体の関係となる。
次に、中空板材10に各金属板60、70を貼り付けて積層構造体を製造する。図7に示すように、中空板材10に各金属板60、70を貼り付ける方法は、基本的には、第1実施形態と同様である。第1実施形態と相違している点は、第1には、金属凹部71(金属凸部74)が形成された金属板70を支持する支持板210に、金属凹部71(金属凸部74)に対応する形状の凹みが形成されていることである。第2には、金属凹部71(金属凸部74)が形成された金属板70を加熱する加熱板230に、金属凹部71(金属凸部74)に対応する形状の突出部231が形成されていることである。
図7(a)に示すように、プレス加工後の上側金属板70を板状の支持板210の厚み方向の一方の面に配置して支持させるとともに、下側金属板60を支持板210の厚み方向の他方の面に配置して支持させる。このとき、上側金属板70は、金属凸部74が突出形成された面73が、下側金属板60と対向配置されるようにする。また、支持板210には、上側金属板70の金属凸部74に対応する位置に、金属凸部74よりやや大きい凹みが形成されており、金属凸部74が支持板210の凹み内に収納可能に構成されている。このため、支持板210の一方の面に配置した上側金属板70は、金属凸部74が支持板210と干渉することがなく、上側金属板70の面73が支持板210の一方の面に対して、その全体で面接触する。なお、図7(a)は、上側金属板70を面72から見た図となっているため、上側金属板70に金属凹部71が形成された状態として視認できる。
次に、図7(b)に示すように、各金属板60、70を支持した状態の支持板210を、対向配置された一対の加熱板220、230の間に配置する。上側金属板70側の加熱板230には、上側金属板70の面72に形成された金属凹部71に対応する位置に、上側金属板70側に向かって突出するとともに、金属凹部71の内面形状に合致する形状の突出部231が形成されている。
一対の加熱板220、230の間に、各金属板60、70を支持した状態の支持板210を配置した後、図7(c)に示すように、一対の加熱板220、230を互いに近接する方向に移動させて、一対の加熱板220、230で上側金属板70及び下側金属板60を支持した状態の支持板210を挟み込む。このとき、各金属板60、70は、その全面が各加熱板220、230の対向面に面接触し、各加熱板220、230からの熱を受けて加熱される。また、上側金属板70側の加熱板230に形成された突出部231が、上側金属板70の金属凹部71内に配置されて、突出部231の外面が金属凹部71の内面に接触する。これにより、上側金属板70の金属凹部71(金属凸部74)が、加熱板230の突出部231からの熱を受けて加熱される。第2実施形態でも、金属板60、70が加熱板220、230に支持されている工程が、金属板60、70を加熱する加熱工程に相当する。
なお、支持板210、及び加熱板220、230にエアー吸引孔が形成されていることは、第1実施形態と同様である。
その後、図7(d)に示すように、各金属板60、70を支持した状態の各加熱板220、230を互いに離間する方向に移動させ、支持板210を加熱板220、230間から移動させる。支持板210を移動させた後、図7(e)に示すように、中空板材10を、対向配置された一対の加熱板220、230の間に配置させる。この状態では、各加熱板220、230の対向面に面接触されている各金属板60、70と中空板材10の外面(表面)とが対向配置される。上側金属板70では、面73が中空板材10と対向配置されており、面73に形成された金属凸部74が中空板材10側に位置している。
中空板材10を一対の加熱板220、230の間に配置させた後、図7(f)に示すように、各加熱板220、230を互いに近接する方向に移動させて、各金属板60、70を、自身の熱で中空板材10の外面に熱溶着で接合させる。
このとき、中空板材10の上側金属板70側の面では、上側金属板70の面73に形成された金属凸部74が、中空板材10を押圧する。そして、上側金属板70の金属凸部74も、上側金属板70と同様、相応に高温になっている。このため、中空板材10は、金属凸部74からの押圧力により圧縮されて内部のセルSが変形するとともに、熱可塑性樹脂製の中空板材10が加熱溶融されて塑造凹部11が形成され、上側金属板70の金属凸部74(金属凹部71)が塑造凹部11の外面に熱溶着で接合される。このようにして、積層構造体に凹部80が形成される。第2実施形態でも、金属板60、70を支持した状態の一対の加熱板220、230の間に中空板材10を配置してから、中空板材10の外面に金属板60、70を熱溶着で接合して、一対の加熱板220、230を離間する方向に移動させるまでが熱溶着工程に相当する。
中空板材10の外面に各金属板60、70を熱溶着で接合した後、図7(g)に示すように、一対の金属板60、70が接合された中空板材10を、加熱されていない一対のプレス板240の間に配置させる。なお、上側金属板70側に配置されるプレス板240も下側金属板60側に配置されるプレス板240と同様、平坦形状であり、凹凸形状は形成されていない。
図7(h)に示すように、一対のプレス板240の間に、一対の金属板60、70が接合された中空板材10を配置した後、各プレス板240を互いに近接する方向に移動させて、一対の金属板60、70が接合された中空板材10を厚み方向両面から挟み込んで所定のプレス圧でプレスする。その後、一対のプレス板240を互いに離間する方向に移動させる。そして、図7(i)に示すように、一対のプレス板240の間から一対の金属板60、70が熱溶着で接合された中空板材、すなわち凹部80が形成された積層構造体が取り出される。
このように、第2実施形態では、あらかじめ金属凹部71(金属凸部74)が形成された上側金属板70を加熱して、中空板材10に熱溶着で接合している。加熱された上側金属板70の金属凸部74で中空板材10を押圧していることから、金属凸部74からの押圧力によって中空板材10が圧縮変形されるとともに、金属凸部74自身の熱によって、熱可塑性樹脂製の中空板材10が熱溶融して、塑造凹部11が形成される。そして、上側金属板70の金属凹部71(金属凸部74)が中空板材10に接合されることにより、積層構造体に凹部80が形成される。
次に、凹部80が形成された積層構造体において、中空板材10の塑造凹部11での熱可塑性樹脂の溶融状態について、図8に従って説明する。
上側金属板70を比較的高温に加熱し、上側金属板70による押圧スピードを比較的ゆっくりすることにより、塑造凹部11が形成される部分の中空板材10は、熱可塑性樹脂が溶融しながら、セルSが均等に押圧されていく。このような場合、図8(a)に示すように、中空板材10を構成する熱可塑性樹脂が溶融されて溶融樹脂がセルS内に溜まりつつ、セルSの側壁部23は、上壁部21と下壁部22との間に立設された状態を保持したまま、上壁部21と下壁部22との間が狭くなる。その結果、セルSの内部空間が狭くなるとともに、冷却固化された後の溶融樹脂による樹脂溜まりRが生じ、薄肉化された部分の強度が向上する。
一方、上側金属板70の加熱温度を抑え、上側金属板70による押圧スピードを早くすることにより、塑造凹部11が形成される部分の中空板材10では、熱可塑性樹脂の溶融が抑えられた状態で、金属凸部74からの押圧力による圧縮変形が進行する。このような場合、例えば、図8(b)に示すように、セルSの側壁部23は、上壁部21と下壁部22との間で同じ方向に倒れるように変形し、上壁部21と下壁部22との間が狭くなる。したがって、相応に生じた樹脂溜まりRと、薄肉化してセルSが圧縮されたことにより積層構造体の凹部80での強度が向上する。
また、上側金属板70の加熱温度と、上側金属板70による押圧スピードを調整することにより、図8(c)に示すように、セルSの側壁部23が、上壁部21と下壁部22との間で不規則に倒れるように変形するとともに、熱可塑性樹脂が溶融されてセルS内に溶融樹脂が溜まる。そして、冷却固化された溶融樹脂による樹脂溜まりRが生じ、薄肉化された部分の強度が向上する。
このように、第2実施形態では、上側金属板70の加熱温度、上側金属板70による押圧スピードを適宜調整することにより、塑造凹部11でのセルSの状態を変化させ、積層構造体の凹部80での強度を調整することができる。積層構造体の製造過程の効率性と、積層構造体を利用する製品に対して要求される性能等を考慮して、加熱温度や押圧スピードの条件を設定すればよい。
第2実施形態によれば、第1実施形態の(1)〜(6)に加えて、次のような効果を得ることができる。
(7)第2実施形態では、上側金属板70の両面に対するプレス加工によって、あらかじめ金属凹部71(金属凸部74)を形成し、金属凹部71が形成された上側金属板70を加熱して、中空板材10を面接触させて接合している。このため、上側金属板60から過度に多くの熱が中空板材10に伝わることを抑制しつつ、凹部80が形成された積層構造体を得ることができる。
(8)第2実施形態では、上側金属板70の加熱温度、上側金属板70による押圧スピードを適宜調整することにより、塑造凹部11でのセルSの状態を変化させ、積層構造体の凹部80での強度を調整することができる。このため、凹部80以外の部分では中空板材10のセルSの構造の潰れを抑制しつつ、凹部80では、セルSの構造の潰れを調整して、凹部80に適度な強度を付与することができる。
(9)第2実施形態では、あらかじめ加熱された金属凸部74で中空板材10を押圧して、中空板材10に塑造凹部11を形成し、塑造凹部11に金属凹部71を接合させることにより、積層構造体に凹部80を形成している。
積層構造体に凹部80を形成するためには、平坦な上側金属板70を中空板材10に接合して積層構造体を得た後、上側金属板70の外側から凹部80形状の治具を押し当ててプレス加工することも考えられる。しかし、このような製造方法では、冶具による押し当て力は、上側金属板70だけでなく中空板材10でも受け止めることになるため、凹部80の深さを制御することが困難である。また、金属板が伸びにくいことから、深い凹部80を形成しようとすると上側金属板70に亀裂が入るといった問題もある。
この点、第2実施形態では、こうした問題の発生を抑制することができる。あらかじめ金属凹部71が形成された上側金属板70を熱溶着させていることから、積層構造体に、5mm以上、さらには、10mm以上の深い凹部80を形成することが可能となる。また、凹部80の側壁81と底壁82との角度を直角とするなど、急な角度を付けた凹部80を形成することができる。積層構造体に意図した形状の凹部80を容易に形成することができる。
(10)第2実施形態では、上側金属板70側の加熱板230として、上側金属板70の金属凹部71の内面形状に合致する形状の突出部231が形成されたものを使用している。そのため、加熱板230の熱が上側金属板70の金属凹部71に伝わりやすく、上側金属板70の金属凸部74による中空板材10の圧縮変形及び熱溶融が適切になされる。また、加熱板230の突出部231以外の部分が、上側金属板70と面接触することができるため、上側金属板70の加熱が均等に行われ、上側金属板70を中空板材10の外面に均一に熱溶着で接合できる。
(11)第2実施形態では、上側金属板70の加熱温度、上側金属板70による押圧スピードを適宜調整することにより、塑造凹部11でのセルSの状態を変化させ、積層構造体の凹部80での強度を調整することができる。
(12)第2実施形態では、上側金属板70側に凹部80が形成された積層構造体が得られる。このため、得られた積層構造体は、凹部80が形成されている部位を対象として、特定の部材を取り付けることができる。例えば、凹部80に持ち手やフックを取り付ける等の加工をして、積層構造体を車両トノカバーに適用することができる。積層構造体の凹部80に特定の部材を取り付けることにより、積層構造体に特定の部品としての機能を付与することができる。利便性に優れた積層構造体を製造することができる。
上記各実施形態は以下のように変更してもよく、また、これらの変更例を適宜組み合わせて適用してもよい。
・一枚の第1シート材100を折り畳み成形してコア層20を構成するのに限らない。例えば、複数の帯状のシートを所定間隔毎に屈曲させて配置してセルの側壁を構成し、これら帯状のシートの上下両側にスキン層を配置してセルの上壁及び下壁を構成するようにしてもよい。
・上記各実施形態では、コア層20の内部に六角柱状のセルSが区画形成されていたが、セルSの形状は、特に限定されるものでなく、例えば、四角柱状、八角柱状等の多角形状や円柱状としてもよい。また、セルSの形状は、接頭円錐形状であってもよい。その際、異なる形状のセルが混在していてもよい。また、各セルは隣接していなくともよく、セルとセルとの間に隙間(空間)が存在していてもよい。
・中空板材10の構成は上記各実施形態のように柱形状のセルSが区画されたものに限らない。例えば、所定の凹凸形状を有するコア層の上下両面にスキン層を接合したものであってもよい。このような構成の中空板材としては、例えば特開2014−205341号公報に記載のものが挙げられる。また、断面がハーモニカ状のプラスチックダンボール等であってもよい。
・上記実施形態では、一枚の第1シート材100を折り畳み成形して、コア層20の内部に六角形状のセルSが区画形成されたハニカム構造体としてのコア層20を形成したが、成形方法はこれに限定されない。例えば、特許第4368399号に記載されるように、断面台形状の凸部が複数列設された三次元構造体を、順次折り畳んでいくことにより、ハニカム構造体としてのコア層20を形成してもよい。
・上記各実施形態において、コア層20に対するスキン層30、40の接合態様は問わない。例えば、接着剤で接合してもよいし、超音波接合等で接合してもよい。
・上記各実施形態においてスキン層30、40が多層構造をなしていてもよい。例えば、スキン層30、40が比較的溶融温度の低い接着層と難燃性等の機能が付加された機能層とを有していてもよい。この場合、例えば、コア層20や金属板50、60と接合される側に接着層を配置しておくことが好ましい。
・上記各実施形態において中空板材10を成形する際の熱可塑性樹脂として、各種機能性樹脂を添加したものを使用してもよい。例えば、熱可塑性樹脂に難燃性の樹脂を添加することにより、難燃性を高めることが可能である。また、タルクや無機材料等を混ぜて比重を大きくすることも可能である。コア層20、スキン層30、40のすべてに対して各種機能性樹脂を添加したものを使用することも可能であり、また、コア層20、スキン層30、40の少なくともいずれかに対して使用することも可能である。
・スキン層30、40と金属板50、60、70との間に他の層が介在されていてもよい。例えば、スキン層30の上面に不織布が接合され、その不織布の上面に金属板50、70が接合されていてもよい。この場合、不織布も中空板材10を構成する層である。また、金属板50、60、70の上面に、他の層(例えば不織布)が接合されていてもよい。
・スキン層30、40のいずれか又は両方を省略してもよい。上記各実施形態では、コア層20において第1セルS1の2層構造の上壁部21同士、第2セルS2の2層構造の下壁部22同士が熱溶着で接合されている。そのため、コア層20単独であっても板状の形状を維持でき、中空板材10として利用できる。なお、コア層20の上下両面にスキン層30、40を接合しない場合、コア層20の第1セルS1の上部及び第2セルS2の下部が完全に閉塞されない。そのため、コア層20(中空板材)に金属板50、60、70を熱溶着で接合する際に、コア層20と金属板50、60、70との間に空気が入り込んでも、その空気は第1セルS1や第2セルS2の内部空間へと流入する。そして、上記各実施形態のコア層20においては、各セルSの2層構造の側壁部23同士の間が接合されてなく、各セルSの内部空間が連通している。したがって、各セルSの内部空間に流入した空気は、他のセルSの内部空間を介してコア層(中空板材)の外部へと排出されることになる。このようなことから、コア層20を単独で中空板材として利用する場合には、コア層20に金属板50、60、70を熱溶着で接合するにあたって、両者の間の空気を抜く脱気処理等は不要である。
・第1実施形態の金属板50、60、又は第2実施形態の金属板60、70のうちの一方を省略してもよい。すなわち、中空板材10のいずれか一方にのみ金属板50、60を熱溶着で接合してもよく、中空板材10のいずれか一方にのみ金属板60、70を熱溶着で接合してもよい。なお、上記各実施形態によれば中空板材10のいずれか一方にのみ金属板50、60、又は金属板60、70を熱溶着で接合した場合でも、中空板材10に反りが発生することは抑制できる。
・金属板50、60、70の面方向の形状と中空板材10の面方向の形状との関係は問わない。例えば、中空板材10の面方向の大きさに対して小さい金属板50、60、70を接合してもよい。この場合には、中空板材10の外面の一部に金属板50、60、70が接合されることになる。なお、中空板材10の一部に金属板50、60、70を接合するときには、中空板材10は、金属板50、60、70が接合される部分しか加熱されないので、金属板50、60、70の接合に伴って板厚が変化したり、中空板材10の表面の平滑性が低下したりすることは少ない。特に、中空板材10の外面の面積の半分以下や1/3以下の面積に金属板50、60、70を接合したときには、金属板50、60、70が接合されない部分におけるコア層20が加熱されず、セルSの構造がくずれにくいので中空板材10の強度低下が小さい。
・第1実施形態の金属板50、60、第2実施形態の金属板60は、単純な板状である必要はなく、例えば孔等が形成されていてもよい。また、第2実施形態の金属板70の凹部80以外の部分、或いは、凹部80における底壁82も同様に、単純な板状である必要はなく、孔等が形成されていてもよい。
・中空板材10は、板状をなしているのであれば湾曲していてもよいし、折れ曲がっていてもよい。この場合、金属板50、60、70も、中空板材10の形状に合わせて湾曲形状や、折れ曲がり形状をなしていればよい。
・一枚の金属板を複数の中空板材に跨って接合するようにしてもよい。この場合、金属板が貼り付けられることによって、複数の中空板材が一体化されて一枚の板材のようになる。
・上記各実施形態において各金属板50、60、70が、金属製の金属層とその金属層の少なくとも一方の面に配置された熱可塑性樹脂製の樹脂層とを有していてもよい。この場合、各加熱板220、230は、金属板50、60、70における金属層と面接触するように、金属板50、60、70を支持すればよい。また、各加熱板220、230の対向面における加熱温度は、金属板50、60、70における樹脂層が軟化できる温度に設定すればよい。このように金属板50、60、70側にも樹脂層を設けることで、中空板材10と金属板50、60、70との接合強度を高めることができる。また、金属板50、60、70に樹脂層を設ける場合、その樹脂層の材質として、中空板材10を構成する樹脂材料よりも低い温度で溶融する樹脂材料を採用してもよい。なお、金属板50、60、70に接着層を設けるにあたっては、接着フィルムを金属層に貼り付けてもよいし、金属層にプライマー処理、アンカー処理等で表面処理を行って樹脂層を設けてもよい。
・金属板50、60、70を支持、移動させる構成は、支持板210に限らない。例えば、金属板50、60、70の上部を挟み込んで支持するクランプ部材や、磁力により支持するマグネット部材を採用してもよい。また、例えば、金属板50、60、70に凹みや孔を形成しておき、この凹みや孔にピンを嵌め合わせて支持してもよい。また、例えば金属板50、60、70を移動させずに固定しておき、代わりに加熱板220、230や中空板材10を移動させてもよい。
・上記第1実施形態において、一対の加熱板220で、金属板50、60を支持した状態の支持板210を挟み込んだ際に、支持板210における空気の吸引を停止し、各加熱板220における空気の吸引を開始するようにしてもよい。この場合には、一対の加熱板220で金属板50、60を支持した状態の支持板210を挟み込んだ後、速やかに金属板50、60が各加熱板220に受け渡されることになる。これは、上記第2実施形態における空気の吸引停止、空気の吸引開始についても同様である。
・上記第1実施形態において、支持板210及び一対の加熱板220に形成されるエアー吸引孔の構成は、金属板50、60を支持できるのであれば、どのようなものであっても構わない。なお、エアー吸引孔の大きさ(径)を小さくすることで、金属板50、60にエアー吸引孔の痕がつくことを抑制できる。これは、上記第2実施形態における支持板210及び一対の加熱板220、230に形成されるエアー吸引孔の構成についても同様である。
・金属板50、60、70を加熱する方法は上記各実施形態のものに限らない。例えば、バーナーやオーブンで加熱してもよいし、IHヒータで加熱してもよい。この場合、例えば、加熱した後の各金属板50、60、70を、支持板210で支持、移動させて、中空板材10の外面に面接触させるようにしてもよい。
・上記各実施形態において、金属板50、60、70が所定の温度以上に加熱された場合に、加熱板220、230に対する加熱を停止してもよい。このようにすれば、一対の加熱板220で、金属板50、60を介して挟み込んだ際、或いは、一対の加熱板220、230で、金属板60、70を介して挟み込んだ際に、中空板材10に熱が伝わることを、さらに抑制できる。
・一対のプレス板230の温度が所定の温度を超えないように冷却してもよい。プレス板230を冷却可能に構成しておけば、例えば、繰り返し積層構造体を製造する際に、金属板50、60,70の熱が繰り返してプレス板230に作用しても、プレス板230が高温になることはない。
・一対のプレス板230で挟み込んでプレスする工程がなくても、十分な接合強度、金属板50、60表面の平坦性、金属板70の金属凹部71以外の表面の平坦性が確保できるならば、このようなプレス工程は省略できる。積層構造体として求められる接合強度や美観を勘案して、プレス工程の有無を決めればよい。
・上記第1実施形態の説明に用いた図3、第2実施形態の説明に用いた図7では、支持板210や加熱板220、230等を鉛直方向に沿って立設されたように描いたが、これはあくまでも例示である。一対の支持板210や加熱板220、230の配置は自由に決定でき、例えば、これらを水平方向に沿って寝かせて配置してもよい。
・上記第2実施形態において、上側金属板70をプレス加工する前工程として、金属凹部71の底壁76に対応する位置を打ち抜き、側壁75の境界部に対応する位置にスリット状の切欠きを入れておいてもよい。例えば、図9(a)、(b)に示すように、上側金属板70において、第2実施形態における金属凹部71の底壁76に対応する矩形状の部分をあらかじめ打ち抜き、金属凹部71で隣り合う側壁75の境界となる部分に、あらかじめ4箇所の切欠き77を形成する。
こうした上側金属板70をプレス加工する際には、上側金属板70の4箇所の切欠き77の外側を結ぶ線(図9(a)における点線)が、下型91の凹み部91aの上端縁に合致するように配置して、上型92を下型91へ向けて移動させて上側金属板70をプレス加工する。また、金属板60、70を熱溶着する際には、加熱板230に形成された突出部231を中空板材10に押し当てることにより、中空板材10に塑造凹部11を形成するとともに、凹部80が形成された積層構造体を得ることができる。
上側金属板70にあらかじめこうした加工をしておくと、図9(b)に示すように、上側金属板70をプレス加工する際、側壁75の変形が容易になり、金属凹部71を深く設計しても上側金属板70に亀裂が入ることが抑制される。外観形状に優れた凹部80を形成することができる。
なお、切欠き77はスリット状に限定されるものではなく、より幅広な台形状としてもよい。また、上側金属板70の加工の際には、底壁76に対応する矩形状の部分と切欠き77とを同時に打ち抜くようにしてもよい。あるいは、矩形状の部分及び切欠き77の形成と、金属凹部71の側壁75の加工とを同時に行ってもよい。
・上記第2実施形態では、積層構造体の上側金属板70側の略中央部に凹部80を形成する場合について説明したが、凹部80の形成位置はこれに限定されない。積層構造体の端部に凹部80を形成してもよい。また、下側金属板60に凹部80を形成してもよい。
・上記第2実施形態では、積層構造体の上側金属板70側に凹部80を1箇所形成する場合について説明したが、凹部80の形成個数はこれに限定されない。積層構造体の上側金属板70側に複数個形成してもよく、上側金属板70側、下側金属板60側の双方に複数個形成してもよい。また、金属板60、70全体に複数の凹部80を形成して、積層構造体の一方または両方の面を波状としてもよい。この場合、例えば、凹部80の個数に対応した複数の凹み部91a及び突状部92aが形成された下型91及び上型92を使用して、1回のプレス加工により、上側金属板70或いは下側金属板60に金属凹部を形成してもよい。また、例えば、1つの凹み部91a及び突状部92aが形成された下型91及び上型92を使用して、複数回のプレス加工により、金属凹部を形成してもよい。
・上記第2実施形態では、積層構造体の上側金属板70側に正面視矩形状の凹部80を形成する場合について説明したが、凹部80の形状はこれに限定されない。正面視多角形状であってもよく、正面視円形状、正面視不定形状であってもよい。凹部80の底壁82にさらに凹部を形成するようにしてもよく、凹部80内に段差を形成するようにしてもよい。
また、上記第2実施形態では、凹部80の側壁81が底壁82とほぼ直角をなし、側壁81が上側金属板70の面72とほぼ直角をなすように形成したが、凹部80の形状はこれに限定されない。例えば、側壁81と底壁82のなす角度が25゜〜90゜の範囲となるように形成してもよく、20゜〜90゜の範囲となるように形成してもよく、或いは、45゜〜90゜の範囲となるように形成してもよい。上側金属板70のプレス加工において、下型91の凹み部91a、上型92の突状部92aの形状を変更することにより、凹部80の側壁81と底壁82のなす角度を比較的小さな角度として、なだらかな形状の凹部80を形成したり、側壁81と底壁82のなす角度を比較的大きな角度として、凹部80における曲げ強度を向上させたりすることができる。
・上記第2実施形態では、金属凹部71(金属凸部74)が形成された1枚の上側金属板70を中空板材10の一方の面に接合したが、上側金属板70は複数枚で構成されていてもよい。この場合、金属凸部74の部分と他の部分とが異なる板で形成されていてもよく、他の部分がさらに複数の板で形成されていてもよい。また、複数枚の板のそれぞれについて、金属板の厚み、材質等を異ならせてもよい。こうすることで、曲げ強度を向上させたり、積層構造体を軽量化させたりすることができる。これは、下側金属板60についても同様である。
・中空板材10に各金属板50、60、70を接合する際、中空板材10中に含まれる空気を脱気するための処理を行ってもよい。コア層20にスキン層30、40を接合することにより、中空板材10内部に空気が含まれる場合があり、この場合に金属板50、60、70を接合すると、接合後に中空板材10内部の空気が収縮して、金属板50、60、70を凹ませるように作用する場合がある。また、第2実施形態において、金属板60、70の接合により塑造凹部11での厚みが薄くなると、中空板材10内部で圧縮された空気が金属板60、70を膨らませるように作用する場合がある。この点、脱気処理により金属板50、60、70の膨らみや凹みを抑制することができる。
上記実施形態及び変更例から把握できる技術思想を以下に記載する。
・加熱工程の後に、加熱部材よりも温度の低いプレス板で中空板材を挟み込んでプレスするプレス工程を有する。
・中空板材のセルの内部空間は他のセルの内部空間に連通している。
・内部に柱形状のセルが複数並設された熱可塑性樹脂製の中空板材に金属板を熱溶着で接合する積層構造体の製造方法であって、前記金属板に凹部を形成するプレス工程と、凹部が形成された金属板を加熱する加熱工程と、加熱状態の金属板を前記中空板材の表面に配置して、金属板の熱で当該金属板を中空板材に熱溶着で接合する熱溶着工程とを有する。