JP6684595B2 - 積層構造体 - Google Patents

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Description

本発明は、熱可塑性樹脂製の中空板材に金属板を貼り付けた積層構造体に関する。
従来、内部に多角柱形状又は円柱形状をなす複数のセルが並設された中空板材が知られている。例えば、特許文献1に記載の中空板材は、所定形状の熱可塑性樹脂製のシート材を折り畳むことにより、複数の六角柱形状のセルが区画されたコア層が形成されている。このコア層の上下両面には熱可塑性樹脂製のシート材であるスキン層が接合され、これら全体で板状をなしている。
特開2010−247448号公報
特許文献1に記載の中空板材に対して、例えば強度の向上や美観の向上等のために金属板を接合して積層構造体とすることがある。そして、このような積層構造体は、所望の板形状となるように積層状態の中空板材及び金属板がトリミングされ、その後、種々の用途に使用されることになる。トリミングした後の積層構造体においては、当該積層構造体の端縁において、中空板材と金属板とが同一平面上に位置している。積層構造体における、こうした中空板材と金属板との端縁状態では、積層構造体の端縁が他の物品に衝突した場合に、比較的に強度の高い金属板の端縁から物品へと衝撃力が伝わりやすく、その物品に傷やへこみ等を付けるおそれがある。
上記課題を解決するため、本発明は、内部に複数のセルが区画された熱可塑性樹脂製の中空板材に金属板を接合した積層構造体であって、前記積層構造体の面方向において、前記金属板の端縁は、前記中空板材の端縁よりも内側に位置していることを特徴とする。
上記の発明によれば、金属板の端縁が中空板材の端縁よりも内側に位置しているため、積層構造体の端縁が他の物品に衝突しても、金属板の端縁からはその物品に衝撃力が伝わりにくい。したがって、積層構造体の端縁が他の物品に衝突した際に、その物品に傷やへこみ等を付けてしまうことを抑制できる。
上記の発明において、前記中空板材は、前記金属板の端縁よりも外周側の縁部に、当該中空板材の厚み方向の中央側に向かって傾斜する傾斜面を有していてもよい。また、前記中空板材は、前記金属板の端縁から前記傾斜面までの間に前記積層構造体の面方向に沿って延びる平坦面を有し、前記平坦面における前記金属板の端縁から前記傾斜面までの幅は、前記積層構造体の厚み以下であるとよい。
本発明によれば、積層構造体の端縁が他の物品に衝突しても、その物品に傷やへこみ等をつけにくい。
(a)は積層構造体の斜視図、(b)は(a)におけるβ−β線断面図、(c)は(a)におけるγ−γ線断面図。 (a)は中空板材のコア層を構成するシート材の斜視図、(b)は同シート材の折り畳み途中の状態を示す斜視図、(c)は同シート材を折り畳んだ状態を示す斜視図。 (a)は周縁封止処理の説明図、(b)は(a)における一部拡大図。 (a)〜(c)は周縁封止処理における積層構造体の断面図。 変更例の積層構造体の断面図。 変更例の積層構造体の断面図。
本発明の積層構造体を図1に従って説明する。
図1(a)〜(c)に示すように、本実施形態の積層構造体は、全体として中空板状をなす中空板材10と、その上下両面に配された金属板50、60とで構成されている。また、図1(b)及び(c)に示すように、中空板材10は、内部に複数のセルS(第1セルS1及び第2セルS2)が並設されたコア層20と、その上下両面に接合されたシート状のスキン層30、40とで構成されている。
図1(b)及び(c)に示すように、コア層20は、所定形状に成形された1枚の熱可塑性樹脂製のシート材を折り畳んで形成されている。そして、コア層20は、上壁部21と、下壁部22と、上壁部21及び下壁部22の間に立設されてセルSを六角柱形状に区画する側壁部23とで構成されている。
図1(b)及び(c)に示すように、コア層20の内部に区画形成されるセルSには、構成の異なる第1セルS1及び第2セルS2が存在する。図1(b)に示すように、第1セルS1においては、側壁部23の上部に2層構造の上壁部21が設けられている。この2層構造の上壁部21の各層は互いに接合されている。また、第1セルS1においては、側壁部23の下部に1層構造の下壁部22が設けられている。一方、図1(c)に示すように、第2セルS2においては、側壁部23の上部に1層構造の上壁部21が設けられている。また、第2セルS2においては、側壁部23の下部に2層構造の下壁部22が設けられている。この2層構造の下壁部22の各層は互いに接合されている。また、図1(b)及び(c)に示すように、隣接する第1セルS1同士の間、及び隣接する第2セルS2同士の間は、それぞれ2層構造の側壁部23によって区画されている。
図1(a)に示すように、第1セルS1はX方向に沿って列を成すように並設されている。同様に、第2セルS2はX方向に沿って列を成すように並設されている。第1セルS1の列及び第2セルS2の列は、X方向に直交するY方向において交互に配列されている。そして、これら第1セルS1及び第2セルS2により、コア層20は、全体としてハニカム構造をなしている。
図1(b)及び(c)に示すように、上記のように構成されたコア層20の上面には熱可塑性樹脂製のシート材であるスキン層30が接合されている。また、コア層20の下面には、熱可塑性樹脂製のシート材であるスキン層40が接合されている。これらコア層20、スキン層30、40で中空板状の中空板材10が構成されている。なお、図1(b)及び(c)では、図示されている複数のセルSのうち、一部のセルSに代表して符号を付しているが、他のセルSについても同様である。
図1(a)〜(c)に示すように、中空板材10の周縁部には、セルSの内部空間が当該中空板材10の外部に露出しないように封止する封止部11が設けられている。封止部11は、中空板材10の周縁部を内側(図1(b)及び(c)においては左側)に加熱しつつ圧縮することにより形成されている。したがって、封止部11は、中空板材10のコア層20及びスキン層30、40を構成する熱可塑性樹脂からなる一体構成物である。また、封止部11は、中空板材10の周方向全体に形成されている。
図1(b)及び(c)に示すように、封止部11は、断面視すると全体として四角形状の外形状を有する。具体的には、封止部11は、積層構造体の面方向(図1(b)及び(c)において左右方向)に沿って延びる上下一対の平坦面11bと、各平坦面11bから厚み方向の中央側に向けて円弧状に傾斜する上下一対の傾斜面11cとを有する。また、封止部11は、各傾斜面11cの間において積層構造体の厚み方向に延びる先端面11aを有する。この実施形態では、封止部11の先端面11aが中空板材10の端縁を構成する。また、封止部11の内部には、圧縮される前のセルSの内部空間に起因する空間S3が形成されている。なお、図1(b)及び(c)では、封止部11の内部の空間S3を断面半円状に描いているが、封止部11を形成する際の温度や圧縮の程度によって空間S3の形状や大きさは変化し得る。また、図1(b)及び(c)では、封止部11をコア層20及びスキン層30、40とは別部材として描いているが、封止部11はコア層20及びスキン層30、40と一体的に形成されている。
図1(a)〜(c)に示すように、中空板材10の上面(スキン層30の外面)には、金属板50が接合されている。金属板50は、例えばアルミニウム合金、鉄合金、銅合金などの金属製であり、その厚みは0.05mm〜4mm程度であり、好ましくは2mm以下である。図1(b)及び(c)に示すように、金属板50の端縁50aは、積層構造体の面方向において、中空板材10の端縁、すなわち封止部11の先端面11aよりも内側(図1(b)及び(c)において左側)に位置している。換言すれば、中空板材10のうち金属板50の端縁50aよりも外側の部分に封止部11が設けられている。
図1(a)〜(c)に示すように、中空板材10の下面(スキン層40の外面)には、金属板60が接合されている。この実施形態では、金属板60は、金属板50と同様の構成であり、金属板60の端縁60aは、積層構造体の面方向において、封止部11の先端面11aよりも内側に位置している。
次に、積層構造体を製造する方法を説明する。先ず、ハニカム構造をなす中空板材10を製造する方法を、図2に従って説明する。
図2(a)に示すように、第1シート材100は、1枚の熱可塑性樹脂製のシートを所定の形状に成形することにより形成される。第1シート材100には、帯状をなす平面領域110及び膨出領域120が、第1シート材100の長手方向(X方向)に交互に配置されている。膨出領域120には、上面と一対の側面とからなる断面下向溝状をなす第1膨出部121が膨出領域120の延びる方向(Y方向)の全体にわたって形成されている。なお、第1膨出部121の上面と側面とのなす角は90度であることが好ましく、その結果として、第1膨出部121の断面形状は下向コ字状となる。また、第1膨出部121の幅(上面の短手方向の長さ)は平面領域110の幅と等しく、かつ第1膨出部121の膨出高さ(側面の短手方向の長さ)の2倍の長さとなるように設定されている。
また、膨出領域120には、その断面形状が正六角形を最も長い対角線で二分して得られる台形状をなす複数の第2膨出部122が、第1膨出部121に直交するように形成されている。第2膨出部122の膨出高さは第1膨出部121の膨出高さと等しくなるように設定されている。また、隣り合う第2膨出部122間の間隔は、第2膨出部122の上面の幅と等しくなっている。
なお、こうした第1膨出部121及び第2膨出部122は、シートの塑性を利用してシートを部分的に上方に膨出させることにより形成されている。また、第1シート材100は、真空成形法や圧縮成形法等の周知の成形方法によって1枚のシートから成形することができる。
図2(a)及び(b)に示すように、上述のように構成された第1シート材100を、境界線P、Qに沿って折り畳むことでコア層20が形成される。具体的には、第1シート材100を、平面領域110と膨出領域120との境界線Pにて谷折りするとともに、第1膨出部121の上面と側面との境界線Qにて山折りしてX方向に圧縮する。そして、図2(b)及び(c)に示すように、第1膨出部121の上面と側面とが折り重なるとともに、第2膨出部122の端面と平面領域110とが折り重なることによって、一つの膨出領域120に対して一つのY方向に延びる角柱状の区画体130が形成される。こうした区画体130がX方向に連続して形成されていくことにより中空板状のコア層20が形成される。
上記のように第1シート材100を圧縮するとき、第1膨出部121の上面と側面とによってコア層20の上壁部21が形成されるとともに、第2膨出部122の端面と平面領域110とによってコア層20の下壁部22が形成される。なお、図2(c)に示すように、上壁部21における第1膨出部121の上面と側面とが折り重なって2層構造を形成する部分、及び下壁部22における第2膨出部122の端面と平面領域110とが折り重なって2層構造を形成する部分がそれぞれ重ね合わせ部131となる。
また、第2膨出部122が折り畳まれて区画形成される六角柱形状の領域が第2セルS2となるとともに、隣り合う一対の区画体130間に区画形成される六角柱形状の領域が第1セルS1となる。本実施形態では、第2膨出部122の上面及び側面が第2セルS2の側壁部23を構成するとともに、第2膨出部122の側面と、膨出領域120における第2膨出部122間に位置する平面部分とが第1セルS1の側壁部23を構成する。そして、第2膨出部122の上面同士の当接部位、及び膨出領域120における上記平面部分同士の当接部位が2層構造をなす側壁部23となる。なお、こうした折り畳み工程を実施するに際して、第1シート材100を加熱処理して軟化させた状態としておくことが好ましい。
このようにして得られたコア層20の上面及び下面には、それぞれ熱可塑性樹脂製の第2シート材が熱溶着により接合される。コア層20の上面に接合された第2シート材はスキン層30となり、コア層20の下面に接合された第2シート材はスキン層40となる。
次に、平面視長方形状の中空板材10の周縁部に封止部11を形成する方法を図3及び図4に従って説明する。
先ず、中空板材10の周縁部に封止部11を形成する前の前処理として、中空板材10の上面に金属板50が熱溶着で接合される。このとき、図3(a)に示すように、中空板材10の面方向において、金属板50の端縁50aが中空板材10の端縁よりも内側に位置するように、金属板50が中空板材10の上面に接合される。なお、この時点では、中空板材10の周縁部は封止部11として加工されてなく、中空板材10は封止部11を有していない。そのため、中空板材10の端縁は、コア層20及びスキン層30、40の端縁である。金属板50の端縁50aと中空板材10の端縁との間隔は、封止部11を形成するのに十分な距離として設計されていて、例えば1mm〜5cmであり、好ましくは3mm〜10mmである。また、同様に、中空板材10の下面にも金属板60が接合される。
金属板50、60を中空板材10に接合した後、中空板材10の四隅部に切欠部12が形成される。図3(b)に示すように、切欠部12は、平面視正方形状をなしている。また、切欠部12の縦横の寸法は、平面視した場合に切欠部12が金属板50、60に至らないように設定されている。
上記のような前処理が終了した後、中空板材10には、図3(a)に示すように、一対の短辺側封止治具80、及び一対の長辺側封止治具90を用いた周縁封止処理が施される。一対の短辺側封止治具80、及び一対の長辺側封止治具90は、例えば電磁ヒータ等によって、中空板材10を構成する熱可塑性樹脂の溶融温度よりも高い温度に加熱できるようになっている。
図3(a)に示すように、短辺側封止治具80は、全体として長尺な形状をなしている。そして、短辺側封止治具80の長手方向の寸法は、外側よりも内側の方が短くなっている。その結果、短辺側封止治具80の両端には傾斜部80aが形成されている。これら傾斜部80aは、短辺側封止治具80の長手方向に対して45度の角度をなしている。また、短辺側封止治具80の内側における長手方向の寸法は、中空板材10の短辺の長さよりも若干短くなっており、短辺側封止治具80の外側における長手方向の寸法は、中空板材10の短辺の長さよりも若干長くなっている。
図4(a)〜(c)に示すように、短辺側封止治具80の内側(図4において左側)には、短辺側封止治具80の長手方向に沿って延びるとともに外側(図4において右側)へと窪む溝部81が形成されている。溝部81は、底面82と、その底面82に対して垂直に延びる上側内面83及び下側内面84とを備えている。また、溝部81は、底面82と上側内面83との間を円弧状に繋ぐ上側曲面83aを備えるとともに、底面82と下側内面84との間を円弧状に繋ぐ下側曲面84aを備える。上側内面83と下側内面84との間隔は、金属板50、60を中空板材10に貼り付けた状態の積層構造体の厚み(金属板50の上面から金属板60の下面までの厚み)よりも僅かに大きくなっている。また、溝部81は、上側内面83から連続する上側テーパ面85及び、下側内面84から連続する下側テーパ面86を備えている。上側テーパ面85及び下側テーパ面86の間隔は、溝部81の開口側に向かうほど長くなっている。すなわち、上側テーパ面85及び下側テーパ面86の間隔は、金属板50、60を中空板材10に貼り付けた状態の積層構造体の厚みよりも大きくなっている。
図3(a)に示すように、長辺側封止治具90は、全体として長尺な形状をなしている。そして、長辺側封止治具90の長手方向の寸法は、外側よりも内側の方が短くなっている。その結果、長辺側封止治具90の両端には傾斜部90aが形成されている。これら傾斜部90aは、長辺側封止治具90の長手方向に対して45度の角度をなしている。また、長辺側封止治具90の内側における長手方向の寸法は、中空板材10の長辺の長さよりも若干短くなっており、長辺側封止治具90の外側における長手方向の寸法は、中空板材10の長辺の長さよりも若干長くなっている。長辺側封止治具90の内側には、長辺側封止治具90の長手方向に沿って延びるとともに外側へと窪む溝部91が形成されている。長辺側封止治具90の溝部91の形状等の構成は、短辺側封止治具80の溝部81の形状等の構成と同一であるため、詳しい説明は省略する。
中空板材10の短辺側の周縁部に封止部11を形成する際には、図4(a)に示すように、加熱した短辺側封止治具80を、中空板材10における短辺側の周縁部の側方に配置する。そして、図4(b)に示すように、短辺側封止治具80における溝部81の底面82側を、中空板材10の短辺側の周端縁に押し付ける。すると、中空板材10のスキン層30、40の端縁が溝部81の上側曲面83a及び下側曲面84aに案内されつつ中空板材10の厚み方向中央側に屈曲するように変形する。そして、さらに、短辺側封止治具80における溝部81の底面82を中空板材10に押し付けていくと、図4(c)に示すように、中空板材10の短辺側の周縁部が、中空板材10の面方向中央側に向けて圧縮されるようにして封止部11が形成される。
ここで、上述したとおり、短辺側封止治具80は加熱されている。そのため、中空板材10のうち短辺側封止治具80に触れた部分は溶融して流動性を有する。そして、溶融した中空板材10の一部(熱可塑性樹脂)は、溝部81における底面82、上側曲面83a、下側曲面84a、上側内面83及び下側内面84の各面上に沿って流動し、その後固化する。したがって、中空板材10の短辺側の周縁部における封止部11の外面形状は、全体としては、短辺側封止治具80の溝部81の内面形状と略同一に形成される。その結果、図1(c)に示すように、中空板材10の封止部11には、積層構造体の面方向に沿って延びる上下一対の平坦面11bと、各平坦面11bから厚み方向の中央側に向けて傾斜する上下一対の傾斜面11cとが形成される。
上記のように中空板材10の周縁部に封止部11を形成する過程では、中空板材10のセルSの構造は破壊されるものの、セルSの内部空間が溶融した樹脂で完全に埋まる可能性は低く、封止部11の内部には空間S3が残存する。なお、図4(c)では、空間S3を断面半円状に描いているが、周縁封止処理における各種の条件によって空間S3の形状や大きさは変化し得る。
図3(a)に示すように、中空板材10の周縁部に対する封止部11の形成は、一対の短辺側封止治具80及び一対の長辺側封止治具90を用いて、中空板材10の周縁部における4辺に対して同時に行われる。なお、短辺側封止治具80の両端には傾斜部80aが設けられており、長辺側封止治具90の両端には傾斜部90aが設けられている。そのため、短辺側封止治具80及び長辺側封止治具90を同時に、中空板材10の周縁部に押し付けても各封止治具の端部同士がぶつかって干渉することはない。そして、短辺側封止治具80の傾斜部80aと長辺側封止治具90の傾斜部90aが面接触すると、短辺側封止治具80及び長辺側封止治具90がそれ以上中空板材10の面方向内側に移動することが規制される。
短辺側封止治具80及び長辺側封止治具90を中空板材10の周縁部に押し付けていくと、溶融した中空板材10の一部(熱可塑性樹脂)が短辺側封止治具80の溝部81及び長辺側封止治具90の溝部91に沿って長手方向両端部へと押し出される。そのため、短辺側封止治具80と長辺側封止治具90との境界部分、すなわち中空板材10の四隅には、多くの樹脂が流れ込むことがある。そして、過度に多くの樹脂が流れ込んだ場合には、例えば、短辺側封止治具80の傾斜部80aと長辺側封止治具90の傾斜部90aとの間の隙間から樹脂がはみ出して「バリ」が形成されてしまう。この点、本実施形態の中空板材10は、図3(b)に示すとおり、四隅に切欠部12が形成されていて、四隅における樹脂の量が少なくなっている。したがって、中空板材10の四隅に多少の樹脂が流れこんだとしても、その流れこんだ樹脂が短辺側封止治具80及び長辺側封止治具90からはみ出して「バリ」が形成されてしまうことは抑制できる。
上記実施形態の積層構造体及びその製造方法によれば、次のような作用・効果を得ることができる。
(1)上記実施形態の積層構造体によれば、金属板50の端縁50a及び金属板60の端縁60aが、中空板材10の端縁としての封止部11の先端面11aよりも内側に位置している。したがって、封止部11の先端面11aが他の物体に衝突しても、比較的に強度の高い金属板50の端縁50aや金属板60の端縁60aからは衝突力が物体に伝わりにくく、その結果、中空板材10が衝突した物体に傷やへこみ等をつけにくい。
(2)上記実施形態の積層構造体によれば、中空板材10における封止部11は、中空板材10の厚み方向の中央側に向かって傾斜する傾斜面11cを有しており、中空板材10における封止部11の先端面11aにおいて鋭角な角部を有さない。したがって、中空板材10の端縁が他の物体にぶつかっても、その他の物体に傷等をつけにくい。また、上述したように、中空板材10における封止部11の先端面11aにおいて鋭角な角部を有さないため、例えば、積層構造体を表皮材で被覆した際に、中空板材10の角部が接触する部分を起点として、表皮材に破れ等が発生することも抑制できる。なお、積層構造体を被覆する表皮材の材質としては、布、不織布、塩化ビニル製のレザーシート等が挙げられる。
(3)上記実施形態の積層構造体によれば、中空板材10の周縁部に封止部11が設けられている。この封止部11は、中空板材10の周縁部を圧縮して形成したものであるため、封止部11が設けられていない箇所に比べて剛性が高い。その結果、封止部11を設けない積層構造体と比較して、積層構造体全体としての剛性の向上が望める。
(4)上記実施形態では、中空板材10の周縁部を加熱しつつ圧縮することにより封止部11を形成している。そのため、この封止部11は、中空板材10を構成するコア層20やスキン層30、40と一体的なものとして形成される。したがって、例えば、中空板材10の周端縁に対して別体の部材を接合して封止する場合に比較して、封止部11が剥がれたり脱落したりしにくい。
(5)上記実施形態の積層構造体の製造方法では、平面視四角形状の中空板材10の4辺に対して同時に封止部11を形成する。したがって、各辺に対する封止部11の形成を別個に行う場合よりも、短時間で封止部11を形成できる。
(6)上記実施形態の積層構造体の製造方法では、平面視四角形状の中空板材10の四隅に予め切欠部12を形成し、その後、封止部11を形成している。そのため、中空板材10の4辺に対して同時に封止部11を形成するのに伴って中空板材10の四隅に溶融した樹脂が多く流れこんでも、その溶融した樹脂が各封止治具からはみ出て「バリ」が形成されてしまうことは抑制できる。
上記実施形態は以下のように変更してもよく、また、これらの変更例を適宜組み合わせて適用してもよい。
・一枚の第1シート材100を折り畳み成形してコア層20を構成するのに限らない。例えば、複数の帯状のシートを所定間隔毎に屈曲させて配置してセルの側壁を構成し、これら帯状のシートの上下両側にスキン層を配置してセルの上壁及び下壁を構成するようにしてもよい。
・上記実施形態では、コア層20の内部に六角柱状のセルSが区画形成されていたが、セルSの形状は、特に限定されるものでなく、例えば、四角柱状、八角柱状等の多角形状や円柱状としてもよい。その際、異なる形状のセルが混在していてもよい。また、各セルは隣接していなくともよく、セルとセルとの間に隙間(空間)が存在していてもよい。
・中空板材10の構成は上記実施形態のように柱形状のセルSが区画されたものに限らない。例えば、所定の凹凸形状を有するコア層の上下両面にスキン層を接合したものであってもよい。このような構成の中空板材としては、例えば特開2014−205341号公報に記載のものが挙げられる。また、断面がハーモニカ状のプラスチックダンボール等であってもよい。
・上記実施形態において、コア層20に対するスキン層30、40の接合態様は問わない。例えば、接着剤で接合してもよいし、超音波接合等で接合してもよい。同様に、中空板材10に対する金属板50、60の接合態様も問わない。
・上記実施形態においてスキン層30、40が多層構造をなしていてもよい。例えば、スキン層30、40が比較的溶融温度の低い接着層と難燃性等の機能が付加された機能層とを有していてもよい。この場合、例えば、コア層20や金属板50、60と接合される側に接着層を配置しておくことが好ましい。また、同様に、金属板50、60が多層構造をなしていてもよい。例えば、金属板50、60が金属製の金属層と熱可塑性樹脂製の接着層とを有していてもよい。この場合、金属板50、60の接着層側を中空板材10と接合すればよい。
・スキン層30、40と金属板50、60との間に他の層が介在されていてもよい。例えば、スキン層30の上面に不織布が接合され、その不織布の上面に金属板50が接合されていてもよい。この場合、不織布も中空板材10を構成する層である。また、金属板50、60の上面に、他の層(例えば不織布)が接合されていてもよい。
・スキン層30、40のいずれか又は両方を省略してもよい。上記実施形態では、コア層20において第1セルS1の2層構造の上壁部21同士、第2セルS2の2層構造の下壁部22同士が熱溶着で接合されている。そのため、コア層20単独であっても板状の形状を維持でき、中空板材10として利用できる。
・金属板50、60のうちの一方を省略してもよい。すなわち、中空板材10のいずれか一方にのみ金属板を接合してもよい。
・封止部11を中空板材10の周方向の一部分に形成してもよい。例えば、中空板材10の周縁部の4辺のうちのいずれかの辺のみに封止部11を形成してもよいし、向かい合う一対の辺にのみ封止部11を形成してもよい。また、中空板材10の周縁部の1辺の全域に封止部11を設ける場合に限らず、1辺のうちの一部にのみ封止部11を設けてもよい。
・封止部11を形成する際の封止治具の加熱の程度や中空板材10の周縁部の圧縮の程度によっては、封止部11の内部に空間S3が生じないこともある。
・中空板材10に対する周縁封止処理において、例えば、金属板50の端縁50aと金属板60の端縁60aとの間など、金属板50、60に挟まれた領域に、溶融した樹脂が溜まることがある。この樹脂溜まりにおける樹脂が固化すると、金属板50、60を中空板材10の厚み方向の中央側から支持することができ、積層構造体全体の衝撃強度の向上等に寄与し得る。なお、上述したような樹脂溜まりは、例えば溶融した樹脂がコア層20における側壁部23に沿って付着するなどして形成される。
・中空板材10に封止部11を設けなくてもよい。なお、封止部11を設けていない場合、コア層20の端縁及びスキン層30、40の端縁が中空板材10の端縁を構成する。中空板材10の面方向において、コア層20の端縁及びスキン層30、40の端縁よりも内側に金属板50の端縁50aや金属板60の端縁60aが位置していれば、比較的に強度の高い金属板50の端縁50aや金属板60の端縁60aが他の物体に触れてその物体に傷等をつけることは抑制できる。
・中空板材10に封止部11を設けない場合においても、中空板材10に平坦面や傾斜面を形成することは可能である。例えば、図5に示す変更例では、中空板材10における金属板50の端縁50aよりも外側の部分において平坦面10b及び傾斜面10cが設けられている。平坦面10bは、金属板50の端縁50aから所定の幅Wの範囲内に設けられている。積層構造体の面方向において平坦面10bよりも外周側の縁部には、中空板材10の厚み方向中央側に向かって円弧状に傾斜する傾斜面10cが設けられている。上側の傾斜面10cは、中空板材10におけるスキン層30の縁部及びコア層20の縁部における上壁部21を下側に湾曲させることにより形成されている。上側の平坦面10b及び傾斜面10cと同様に、中空板材10の下側にも平坦面10b及び傾斜面10cが設けられている。中空板材10の外周側の縁部を湾曲させて傾斜面10cを形成する方法としては、例えば図4に示す短辺側封止治具80の溝部81に、中空板材10の外周側の縁部を押し当てる方法が挙げられる。なお、この変更例の場合、スキン層30、40の端縁が中空板材10の端縁10aを構成する。
また、図6に示す変更例では、図5に示す変更例と同様に、上側の平坦面10bは、金属板50の端縁50aから所定の幅Wの範囲内に設けられている。また、積層構造体の面方向において平坦面10bよりも外周側の縁部には、中空板材10の厚み方向中央側に向かって直線的に傾斜する傾斜面10cが設けられている。傾斜面10cは、中空板材10を、外側ほど厚みが小さくなる先細り形状に成形することにより形成されている。上側の平坦面10b及び傾斜面10cと同様に、中空板材10の下側にも平坦面10b及び傾斜面10cが設けられている。中空板材10を先細り形状に成形する方法としては、中空板材10を切削加工する方法や、加熱した熱板を押し当てて中空板材10の一部を溶かす方法が挙げられる。なお、この変更例の場合、コア層20の端縁が中空板材10の端縁10aを構成する。
・図5及び図6に示す変更例では、中空板材10のうち、金属板50、60よりも外側の部分は金属板50、60に覆われていない分、強度が低い。したがって、積層構造体の強度という観点からは、中空板材10のうち金属板50、60よりも外側の部分の幅は小さい方が好ましい。その一方で、中空板材10のうち金属板50、60よりも外側の部分の幅を過度に小さくすると、金属板50の端縁50aや金属板60の端縁60aの位置が、中空板材10の端縁10aの位置に近くなる。したがって、金属板50、60の端縁50a、60aから物品へと衝撃力が伝わることを抑制するという観点からは、中空板材10のうち金属板50、60よりも外側の部分の幅は大きい方が好ましい。これら2つの観点を考慮すると、中空板材10のうち金属板50、60よりも外側の部分の幅は、積層構造体の厚みの80〜150%が好ましく、平坦面10bの幅Wは積層構造体の厚み以下であることが好ましい。
・図5及び図6に示す変更例において、加熱した治具を押し当てて中空板材10の傾斜面10cを形成する場合、溶融した樹脂の一部が金属板50の端縁50aの上側にせり出して金属板50の端縁50aを覆ったり、金属板60の端縁60aの上側にせり出して金属板60の端縁60aを覆ったりすることもある。
・中空板材10の封止部11の構成は、上記実施形態のものに限らない。例えば、中空板材10の周縁部を、一対のプレス板で厚み方向両側から挟み込んで潰すことにより封止部を形成してもよい。この場合の封止部は、中空板材10のコア層20の厚みよりも薄く形成されるが、コア層20におけるセルSの内部空間が外部に露出しないようになっているならば、封止部であるといえる。
・封止部11の断面形状は、上記実施形態の形状に限らず、適宜変更できる。例えば、短辺側封止治具80の溝部81の形状を断面円弧状に形成すれば、封止部11も断面円弧状に形成されることになる。この点、長辺側封止治具90についても同様である。なお、この変更例の場合には、中空板材10(封止部11)は平坦面11bを有さず、円弧状の面が傾斜面11cを構成する。当然ながら、この変更例以外の場合であっても、中空板材10(封止部11)が平坦面11bを有さずに傾斜面11cのみを有することもある。また、封止部11における二つの傾斜面11cのいずれか又は両方を省略してもよい。この場合、封止部11の平坦面11bと先端面11aとが成す角は、略90度となる。
・中空板材10の平面形状は、上記実施形態で例示した四角形状に限らない。四角形以外の多角形状であってもよいし、円形であってもよいし、円弧と直線とを組み合わせた複合的な平面形状であってもよい。なお、中空板材10の端縁に円弧状に延びる部分が含まれる場合には、それに合わせて円弧状に延びる封止治具を用いればよい。
・周縁封止処理における種々の条件によっては、金属板50の端縁50aや金属板60の端縁60aが封止部11の内縁部に覆われることもある。例えば、図4(c)において、溶融した樹脂の一部が上側テーパ面85と金属板50との間にはみ出した状態で封止部11が形成されると、金属板50の上側に封止部11の内縁側がせり出したようになる。このせり出した封止部11の内縁側部分によって金属板50の端縁50aが覆われることになる。この点、金属板60についても同様である。
・中空板材10の周縁部に対する周縁封止処理は、中空板材10の4辺に対して同時に行わなくてもよい。例えば、中空板材10の2つの短辺側の周縁部に対して封止部11を形成し、その後、2つの長辺側の周縁部に対して封止部11を形成してもよい。なお、この場合、短辺側封止治具80と長辺側封止治具90とが互いに干渉することはないため、短辺側封止治具80における傾斜部80aや長辺側封止治具90における傾斜部90aは省略できる。
・上記実施形態では、中空板材10の4辺のうちの1辺に対して1つの封止治具を用いて封止部11を形成したが、これに限らない。例えば、第1の封止治具を、中空板材10の短辺側の周縁部全域と長辺側の周縁部の一部に沿って延びるように形成し、第2の封止治具を、中空板材10の長辺側の周縁部全域と短辺側の周縁部の一部に沿って延びるように形成する。これら第1及び第2の封止治具を用いて中空板材10に封止部11を形成した場合、中空板材10の四隅に対しては複数回に亘って封止部11の形成処理が施されることになる。したがって、特に、中空板材10の四隅における封止部11の形状を設計どおりの綺麗な形状にすることができる。
・中空板材10における切欠部12を省略することもできる。例えば、中空板材10の周縁部を圧縮して封止部11を形成するに際して、その圧縮の程度が小さいならば、中空板材10の四隅に流れこむ溶融した樹脂の量はそれほど多くない。したがって、切欠部12を形成しなくても「バリ」等の発生は起きにくい。
・上記実施形態では、中空板材10に金属板50、60を貼り付けた後に中空板材10に封止部11を形成したが、封止部11を形成した後に中空板材10に金属板50、60を貼り付けてもよい。
・上記実施形態の積層構造体の用途は問わないが、例えば、物流・輸送の際に用いられる容器やケースを構成する板材、建築物や足場等を構成する板材、棚やテーブルなどの家具を構成する板材、車両のトノカバーやラゲッジボード等を構成する板材として用いることができる。また、上記の各用途で使用する際には、上記実施形態の積層構造体を芯材として使用し、その外表面に表皮材を設けてもよい。
上記実施形態及び変更例から把握できる技術思想を以下に記載する。
・中空板材は、当該中空板材のうち金属板の端縁よりも外側の部分に、中空板材を構成する熱可塑性樹脂からなる一体構成物であるとともにセルの内部空間が中空板材の外部に露出しないように封止した封止部を有する。
・金属板の端縁は、封止部の内縁部により覆われている。
・封止部は、中空板材の周縁部を、当該中空板材の面方向内側に圧縮することにより形成されている。
10…中空板材、11…封止部、11a…封止部の先端面、11b…平坦面、11c…傾斜面、20…コア層、30、40…スキン層、50、60…金属板、50a、60a…金属板の端縁、80…短辺側封止治具、81…溝部、82…底面、83…上側内面、83a…上側曲面、84…下側内面、84a…下側曲面、85…上側テーパ面、86…下側テーパ面、90…長辺側封止治具、91…溝部、S…セル、S1…第1セル、S2…第2セル。

Claims (3)

  1. 内部に複数のセルが並設するように区画された熱可塑性樹脂製の中空板材に金属板を接合した積層構造体であって、
    前記中空板材の周縁部には、セルの内部空間が当該中空板材の外部に露出しないように封止する熱可塑性樹脂製の封止部が設けられており、
    前記積層構造体の面方向において、前記金属板の端縁は、前記中空板材の端縁としての前記封止部の先端面よりも内側に位置していることを特徴とする積層構造体。
  2. 前記中空板材は、前記金属板の端縁よりも外周側の縁部に、当該中空板材の厚み方向の中央側に向かって傾斜する傾斜面を有する
    ことを特徴とする請求項1に記載の積層構造体。
  3. 前記中空板材は、前記金属板の端縁から前記傾斜面までの間に前記積層構造体の面方向に沿って延びる平坦面を有し、
    前記平坦面における前記金属板の端縁から前記傾斜面までの幅は、前記積層構造体の厚み以下である
    ことを特徴とする請求項2に記載の積層構造体。
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