以下に、第1の実施の形態について、図1乃至図4を参照して説明する。なお、本明細書においては基本的に、鉛直上方を上方向、鉛直下方を下方向と定義する。また、実施形態に係る構成要素や、当該要素の説明について、複数の表現を併記することがある。当該構成要素及び説明について、記載されていない他の表現がされることは妨げられない。さらに、複数の表現が記載されない構成要素及び説明について、他の表現がされることは妨げられない。
図1は、第1の実施の形態に係るスパッタ装置1を概略的に示す断面図である。スパッタ装置1は、処理装置の一例である。スパッタ装置1は、例えば、半導体ウェハ2の表面に、金属粒子によって成膜を行う。なお、スパッタ装置1はこれに限らず、例えば、他の対象物に成膜を行っても良い。
スパッタ装置1は、処理室11と、ターゲット12と、ステージ13と、コリメータ14とを備える。ステージ13は、第1のステージの一例である。コリメータ14は、第1のコリメータの一例である。
図面に示されるように、本明細書において、X軸、Y軸及びZ軸が定義される。X軸とY軸とZ軸とは、互いに直交する。X軸は、処理室11の幅に沿う。Y軸は、処理室11の奥行き(長さ)に沿う。Z軸は、処理室11の高さに沿う。以下の記載は、Z軸が鉛直方向に沿うものとして説明する。なお、スパッタ装置1のZ軸が鉛直方向に対して傾斜しても良い。
処理室11は、密閉可能な箱状に形成される。処理室11は、上壁21と、底壁22と、側壁23と、排出口24と、導入口25とを有する。上壁21と底壁22とは、Z軸に沿う方向(鉛直方向)に対向するように配置される。上壁21は、所定の間隔を介して底壁22の上方に位置する。側壁23は、Z軸に沿う方向に延び、上壁21と底壁22とを接続する。
排出口24は、処理室11の内部に開口し、例えば真空ポンプに接続される。真空ポンプが排出口24から処理室11の内部の空気を吸引することで、処理室11の内部が真空状態にされ得る。
導入口25は、処理室11の内部に開口し、例えばアルゴンガスのような不活性ガスを収容するタンクに接続される。アルゴンガスが、導入口25から真空状態にされた処理室11の内部に導入され得る。
ターゲット12は、粒子の発生源として利用される、例えば円環状の金属板である。なお、ターゲット12の形状はこれに限らず、例えば円盤状に形成されても良い。ターゲット12は、処理室11の上壁21に、例えばバッキングプレートを介して取り付けられる。バッキングプレートは、ターゲット12の冷却材及び電極として用いられる。なお、ターゲット12は、上壁21に直接取り付けられても良い。
ターゲット12は、下面12aを有する。下面12aは、下方に向く略平坦な面である。ターゲット12に電圧が印加されると、処理室11の内部に導入されたアルゴンガスがイオン化し、プラズマが発生する。アルゴンイオンがターゲット12に衝突することで、例えばターゲット12の下面12aから、ターゲット12を構成する成膜材料の粒子Cが飛ぶ。
ステージ13は、処理室11の底壁22に取り付けられる。すなわち、ステージ13は、鉛直方向にターゲット12から離間して配置される。なお、ステージ13の代わりに、底壁22が第1のステージの一例として用いられても良い。ステージ13は、半導体ウェハ2を支持する。半導体ウェハ2は、例えば円盤状に形成される。なお、半導体ウェハ2は、他の形状に形成されても良い。
コリメータ14は、Z軸に沿う方向(鉛直方向)においてターゲット12とステージ13との間に配置される。Z軸に沿う方向及び鉛直方向は、ターゲットから第1のステージに向かう方向であり、第1の方向の一例である。言い換えると、コリメータ14は、ターゲット12と半導体ウェハ2との間に配置される。コリメータ14は、例えば処理室11の側壁23に取り付けられる。
図2は、コリメータ14を示す斜視図である。図3は、コリメータ14を示す断面図である。図2及び図3に示すように、コリメータ14は、枠部31と、整流部32とを有する。
枠部31は、鉛直方向に延びる円筒状に形成される。なお、枠部31はこれに限らず、矩形のような他の形状に形成されても良い。枠部31の断面積は、半導体ウェハ2の断面積よりも大きい。整流部32は、XY平面において、筒状の枠部31の内側に設けられる。枠部31と整流部32とは一体に作られる。
整流部32は、複数の遮蔽壁35と、複数の第1の連通壁36と、複数の第2の連通壁37とを有する。遮蔽壁35は、第1の壁及び壁の一例である。第1及び第2の連通壁36,37は、第2の壁及び壁の一例である。
整流部32は、複数の遮蔽壁35、複数の第1の連通壁36、及び複数の第2の連通壁37によって、複数の貫通孔39を形成する。複数の貫通孔39は、鉛直方向に延びる六角形の孔である。言い換えると、複数の遮蔽壁35、複数の第1の連通壁36、及び複数の第2の連通壁37は、内側に貫通孔39が形成された複数の六角形の筒(ハニカム構造)を形成する。なお、貫通孔39の形状はこれに限らない。
図3に示すように、整流部32は、上端部32aと下端部32bとを有する。上端部32aは、整流部32の鉛直方向における一方の端部であり、ターゲット12に向く。下端部32bは、整流部32の鉛直方向における他方の端部であり、ステージ13に支持された半導体ウェハ2に向く。
貫通孔39は、整流部32の上端部32aから下端部32bに亘って設けられる。すなわち、貫通孔39は、ターゲット12に向かって開口するとともに、ステージ13に支持された半導体ウェハ2に向かって開口する孔である。
遮蔽壁35、第1の連通壁36、及び第2の連通壁37は、鉛直方向に延びる略矩形(四角形)の板である。すなわち、遮蔽壁35、第1の連通壁36、及び第2の連通壁37は、同一方向に延びる。
第1の連通壁36に、複数の第1の連通孔41がそれぞれ設けられる。第1の連通孔41は、第1の開口部及び開口部の一例である。第1の連通孔41は、例えば平行四辺形状の孔であり、鉛直方向及び水平方向に並べられる。本明細書における水平方向は、Z軸に対して直交する、XY平面上の方向である。なお、第1の連通孔41の形状及び配置はこれに限らない。
第1の連通孔41の鉛直方向における長さは、第1の連通孔41の水平方向における長さよりも長い。水平方向は、第1の方向と直交する方向、の一例である。すなわち、第1の連通孔41は、鉛直方向に延びる縦穴である。
第1の連通孔41は、当該第1の連通孔41が設けられた第1の連通壁36によって隔てられる、二つの貫通孔39を接続する。言い換えると、第1の連通孔41は、一つの貫通孔39と、隣接する他の貫通孔39とに開口する。
第2の連通壁37に、複数の第2の連通孔42がそれぞれ設けられる。第2の連通孔42は、第1の開口部の一例である。第2の連通孔42は、例えば平行四辺形状の孔であり、鉛直方向及び水平方向に並べられる。なお、第2の連通孔42の形状及び配置はこれに限らない。
第2の連通孔42の鉛直方向における長さは、第2の連通孔42の水平方向における長さよりも長い。すなわち、第2の連通孔42は、鉛直方向に延びる縦穴である。
第2の連通孔42は、当該第2の連通孔42が設けられた第2の連通壁37によって隔てられる、二つの貫通孔39を接続する。言い換えると、第2の連通孔42は、一つの貫通孔39と、隣接する他の貫通孔39とに開口する。
第2の連通孔42は、第1の連通孔41よりも大きい。第2の連通壁37における複数の第2の連通孔42の密度は、第1の連通壁36における複数の第1の連通孔41の密度よりも大きい。複数の第2の連通孔42の密度は、第2の連通壁37の大きさに対する複数の第2の連通孔42の大きさである。第2の連通壁37における複数の第2の連通孔42の密度が、第1の連通壁36における複数の第1の連通孔41の密度よりも大きければ、第2の連通孔42の大きさが第1の連通孔の大きさと同じかより小さくても良い。
遮蔽壁35は、上端部35aと下端部35bとを有する。第1の連通壁36は、上端部36aと下端部36bとを有する。第2の連通壁37は、上端部37aと下端部37bとを有する。
上端部35a,36a,37aは、遮蔽壁35、第1の連通壁36、及び第2の連通壁37の鉛直方向における一方の端部であり、ターゲット12に向く。上端部35a,36a,37aは、整流部32の上端部32aを形成する。
整流部32の上端部32aは、ターゲット12に対して曲面状に凹む。言い換えると、整流部32の上端部32aは、ターゲット12から離れるように湾曲する。なお、上端部32aはこれに限らず、例えば、上端部32aの中央部分のみがターゲット12に対して凹んで形成されても良い。
下端部35b,36b,37bは、遮蔽壁35、第1の連通壁36、及び第2の連通壁37の鉛直方向における他方の端部であり、ステージ13に支持された半導体ウェハ2に向く。下端部35b,36b,37bは、整流部32の下端部32bを形成する。
整流部32の下端部32bは、ステージ13に支持された半導体ウェハ2に向かって曲面状に突出する。なお、下端部32bはこれに限らず、例えば、下端部32bの中央部分のみがステージ13に向かって突出しても良い。
整流部32の上端部32aと下端部32bとは、略同一の曲面形状を有する。このため、鉛直方向における遮蔽壁35、第1の連通壁36、及び第2の連通壁37の長さは、略同一である。なお、位置によって鉛直方向における遮蔽壁35、第1の連通壁36、及び第2の連通壁37の長さが異なっても良い。
図4は、ターゲット12及びコリメータ14を概略的に示す断面図である。図2及び図4に示すように、整流部32は、第1の部分51と、第2の部分52とを有する。第1の部分は、第1の部分と、ターゲットから外れた領域との一例である。第2の部分52は、第2の部分と、ターゲットと向き合う領域との一例である。第1及び第2の部分51,52は、位置、範囲、及び領域とも称され得る。
図4の一点鎖線で示すように、第1の部分51は、ターゲット12から外れた位置に向く部分である。言い換えると、第1の部分51は、鉛直方向において上壁21に対向する部分である。このため、本実施形態における第1の部分51は、例えば円環状のターゲット12の内側の部分に対応する、円形の部分となる。
図4の一点鎖線で示すように、第2の部分52は、鉛直方向においてターゲット12に向く部分である。言い換えると、第2の部分52は、ターゲット12の下方に位置する部分である。このため、本実施形態における第2の部分52は、ターゲット12の形状に対応した円環状の部分となり、水平方向において第1の部分51の外側に位置する。
ターゲット12の下面12aから粒子Cが飛ぶ方向は、コサイン則(ランベルトの余弦則)に従って分布する。すなわち、下面12aのある一点から飛ぶ粒子Cは、下面12aの法線方向(鉛直方向)に最も多く飛ぶ。法線方向に対して角度θで傾斜する方向に飛ぶ粒子の数は、法線方向に飛ぶ粒子の数の余弦(cosθ)に大よそ比例する。
以下の説明において、鉛直方向に飛ぶ粒子Cを鉛直成分、鉛直方向に対して傾斜する方向に飛ぶ粒子Cを斜め成分と称することがある。鉛直成分が第1の部分51に向かう量に対する斜め成分が第1の部分51に向かう量の割合は、鉛直成分が第2の部分52に向かう量に対する斜め成分が第2の部分52に向かう量の割合よりも大きい。言い換えると、第1の部分51には、第2の部分52よりも斜め成分が飛来しやすい。
第1の部分51は、複数の遮蔽壁35によって形成されている。言い換えると、第1の部分51において、遮蔽壁35が、第1及び第2の連通壁36,37よりも多く配置される。すなわち、第1の部分51における遮蔽壁35の数は、第1の部分51における第1の連通壁36の数と第2の連通壁37の数との合計よりも多い。なお、第1の部分51に、遮蔽壁35に加えて、第1及び第2の連通壁36,37が設けられても良い。
第2の部分52は、複数の第1及び第2の連通壁36,37によって形成されている。言い換えると、第2の部分52において、第1及び第2の連通壁36,37が、遮蔽壁35よりも多く配置される。すなわち、第2の部分52における第1の連通壁36の数と第2の連通壁37の数との合計は、第2の部分52における遮蔽壁35の数よりも多い。なお、第2の部分52に、第1及び第2の連通壁36,37に加えて、遮蔽壁35が設けられても良い。また、第2の部分52は、第1の連通壁36及び第2の連通壁37のいずれか一方のみによって形成されても良い。
第1の部分51が遮蔽壁35、第1の連通壁36、及び第2の連通壁37のいずれか一種類のみによって形成される場合、第2の部分52は、遮蔽壁35、第1の連通壁36、及び第2の連通壁37の他の一種類を含む。すなわち、第1の部分51と第2の部分52とにおける、遮蔽壁35、第1の連通壁36、及び第2の連通壁37の構成比は異なる。
第2の部分52の、例えば外周側の部分に、他の場所よりも粒子Cの鉛直成分が飛来しやすい場所が存在する。当該第2の部分52の外周側の部分において、第2の連通壁37は、第1の連通壁36よりも多く配置される。なお、鉛直成分が飛来しやすい場所はこれに限らず、種々の条件によって変わる。
以上のように、整流部32において、遮蔽壁35、第1の連通壁36、及び第2の連通壁37が、ターゲット12の形状に対して所定の分布で配置される。すなわち、整流部32における遮蔽壁35、第1の連通壁36、及び第2の連通壁37の位置は、ターゲット12の形状に対応して設定される。言い換えると、コリメータ14の壁(遮蔽壁35、第1の連通壁36、及び第2の連通壁37)に設けられた開口部(第1及び第2の連通孔41,42)に、疎密の分布が設定される。
なお、第1の部分51と第2の部分52とは、上述の位置に限らない。鉛直成分が第1の部分51に向かう量に対する斜め成分が第1の部分51に向かう量の割合が、鉛直成分が第2の部分52に向かう量に対する斜め成分が第2の部分52に向かう量の割合よりも大きければ、第1及び第2の部分51,52は他の位置にあっても良い。すなわち、第1及び第2の部分51,52は、コリメータ14の各位置における鉛直成分と斜め成分との量に基づき設定される。
また、遮蔽壁35、第1の連通壁36、及び第2の連通壁37の分布は、上述のものに限らない。例えば、遮蔽壁35、第1の連通壁36、及び第2の連通壁37の分布は、例えば、ターゲット12の形状、コリメータ14の位置、印加される電圧のような種々の要素に基づいても設定され得る。
上記のようなコリメータ14は、例えば、3Dプリンタによって積層造形される。これにより、第1及び第2の連通孔41,42が設けられた第1及び第2の連通壁36,37が容易に形成され得る。なお、コリメータ14はこれに限らず、他の方法で作られても良い。コリメータ14は、例えば、金属によって作られるが、他の材料によって作られても良い。
図4に示すように、ターゲット12の下面12aから、粒子Cが飛ぶ。鉛直方向に飛ぶ粒子Cは、コリメータ14の貫通孔39を通過して、ステージ13に支持された半導体ウェハ2に向かって飛ぶ。なお、鉛直方向に飛ぶ粒子Cは、例えば、遮蔽壁35、第1の連通壁36、及び第2の連通壁37の上端部35a,36a,37aに付着することもある。
一方、鉛直方向に対して傾斜した方向(傾斜方向)に飛ぶ粒子Cも存在する。傾斜方向と鉛直方向との間の角度が所定の範囲よりも大きい粒子Cは、遮蔽壁35、第1の連通壁36、及び第2の連通壁37に付着する。すなわち、コリメータ14は、傾斜方向と鉛直方向との間の角度が所定の範囲外である粒子Cを遮断する。
傾斜方向と鉛直方向との間の角度が所定の範囲内である粒子Cは、コリメータ14の貫通孔39を通過して、ステージ13に支持された半導体ウェハ2に向かって飛ぶ。このような傾斜方向に飛ぶ粒子Cは、第1の連通壁36の第1の連通孔41、又は第2の連通壁37の第2の連通孔42を通過することが可能である。なお、傾斜方向と鉛直方向との間の角度が所定の範囲内である粒子Cも、遮蔽壁35、第1の連通壁36、及び第2の連通壁37に付着することがある。
コリメータ14の貫通孔39を通過した粒子Cは、半導体ウェハ2に付着及び堆積することで、半導体ウェハ2に成膜される。貫通孔39を通過した粒子Cの向き(方向)は、鉛直方向に対して所定の範囲内で揃う。このように、コリメータ14の形状によって、半導体ウェハ2に成膜される粒子Cの方向が制御される。
第1の実施の形態に係るスパッタ装置1において、コリメータ14が、遮蔽壁35と、第1及び第2の連通孔41,42がそれぞれ設けられた第1及び第2の連通壁36,37とによって、鉛直方向に延びる貫通孔39を形成する。これにより、鉛直方向に対して傾斜した方向(傾斜方向)にターゲット12から飛ばされた粒子Cが、第1及び第2の連通壁36,37の第1及び第2の連通孔41,42を通過することができる。これにより、スパッタ装置1は、傾斜方向に飛ぶ粒子Cを用いて成膜をすることができ、スパッタリングの効率が向上する。鉛直方向に対する傾斜角度が所定の範囲外の粒子Cは遮蔽壁35と第1及び第2の連通壁36,37とによって遮断されるため、成膜される粒子Cの方向は鉛直方向に対して所定の範囲内に制御され得る。
鉛直方向において、ターゲット12に向く位置に第1及び第2の連通壁36,37が遮蔽壁35よりも多く配置される。粒子Cはターゲット12からコサイン則に従って飛ぶため、鉛直方向においてターゲット12に向く位置では、鉛直方向に対して所定の範囲内で傾斜する方向に飛ぶ粒子Cの割合が多い。第1及び第2の連通壁36,37が当該位置により多く配置されることで、鉛直方向に対して所定の範囲内で傾斜する方向に飛ぶ粒子Cが第1及び第2の連通孔41,42を通過しやすい。従って、鉛直方向に対して所定の範囲内で傾斜する方向に飛ぶ粒子Cを用いて成膜することができ、スパッタリングの効率が向上する。
一方、鉛直方向において、ターゲット12から外れた位置に向く位置に遮蔽壁35が第1及び第2の連通壁36,37よりも多く配置される。鉛直方向においてターゲット12から外れた位置に向く位置では、鉛直方向に対して所定の範囲よりも外れて傾斜する方向に飛ぶ粒子Cの割合が多い。遮蔽壁35が当該位置により多く配置されることで、鉛直方向に対して所定の範囲よりも大きく傾斜する方向に飛ぶ粒子Cが遮断されやすくなり、成膜される粒子Cの方向がより確実に制御され得る。
傾斜方向に飛ぶ粒子C(斜め成分)が飛来する割合が大きい第1の部分51において、遮蔽壁35が第1及び第2の連通壁36,37よりも多く配置される。粒子Cはターゲット12からコサイン則に従って飛ぶため、傾斜方向に飛ぶ粒子Cが飛来する割合が多い第1の部分51では、鉛直方向に対して所定の範囲よりも大きく傾斜する方向に飛ぶ粒子Cが飛来する割合も多い。遮蔽壁35が第1の部分51により多く配置されることで、鉛直方向に対して所定の範囲よりも大きく傾斜する方向に飛ぶ粒子Cが遮断されやすくなり、成膜される粒子Cの方向がより確実に制御され得る。また、全体的に均一なスパッタリングが出来る。
鉛直方向に飛ぶ粒子Cが飛来する割合が大きい第2の部分52において、第1及び第2の連通壁36,37が遮蔽壁35よりも多く配置される。粒子Cはターゲット12からコサイン則に従って飛ぶため、鉛直方向に飛ぶ粒子Cが飛来する割合が多い第2の部分52では、鉛直方向に対して所定の範囲内で傾斜する方向に飛ぶ粒子Cが飛来する割合も多い。第1及び第2の連通壁36,37が第2の部分52により多く配置されることで、鉛直方向に対して所定の範囲内で傾斜する方向に飛ぶ粒子Cが第1及び第2の連通孔41,42を通過しやすい。従って、鉛直方向に対して所定の範囲内で傾斜する方向に飛ぶ粒子Cを用いて成膜することができ、スパッタリングの効率が向上する。
遮蔽壁35、第1の連通壁36、及び第2の連通壁37は、ターゲット12の形状に対して所定の分布で配置される。これにより、鉛直方向に対して所定の範囲内で傾斜する方向に飛ぶ粒子Cを用いて成膜することができ、スパッタリングの効率が向上する。さらに、鉛直方向に対して所定の範囲よりも大きく傾斜する方向に飛ぶ粒子Cが遮断されやすくなり、成膜される粒子Cの方向がより確実に制御され得る。
第2の連通壁37は、第1の連通壁36よりも第2の連通孔42の密度が大きい。すなわち、第2の連通壁37は、第1の連通壁36よりも傾斜方向に飛ぶ粒子Cを通過させやすい。これにより、粒子Cが飛ぶ方向の分布により対応した第1及び第2の連通壁36,37の配置が可能となり、鉛直方向に対して所定の範囲内で傾斜する方向に飛ぶ粒子Cを、より効率的に用いて成膜することが可能である。
遮蔽壁35、第1の連通壁36、及び第2の連通壁37のターゲット12に向く上端部35a,36a,37aは、ターゲット12に対して凹む整流部32の上端部32aを形成する。これにより、ターゲット12の中央部分から、鉛直方向に対して所定の範囲内で傾斜する方向に飛ぶ粒子Cが、遮蔽壁35、第1の連通壁36、及び第2の連通壁37に遮断され難くなる。従って、鉛直方向に対して所定の範囲内で傾斜する方向に飛ぶ粒子Cを、より効率的に用いて成膜することが可能である。
遮蔽壁35、第1の連通壁36、及び第2の連通壁37の下端部35b,36b,37bは、ステージ13に向かって突出する整流部32の下端部32bを形成する。これにより、ターゲット12の端部分から、鉛直方向に対して所定の範囲より大きい角度で傾斜する方向に飛ぶ粒子Cが、遮蔽壁35、第1の連通壁36、及び第2の連通壁37により確実に遮断される。従って、成膜される粒子Cの方向がより確実に制御され得る。
第1及び第2の連通孔41,42の鉛直方向における長さは、第1及び第2の連通孔41,42の水平方向における長さよりも長い。これにより、鉛直方向に対して所定の範囲内で傾斜する方向に飛ぶ粒子Cが、遮蔽壁35、第1の連通壁36、及び第2の連通壁37に遮断され難くなる。従って、鉛直方向に対して所定の範囲内で傾斜する方向に飛ぶ粒子Cを、より効率的に用いて成膜することが可能である。
以下に、第2の実施の形態について、図5を参照して説明する。なお、以下の複数の実施形態の説明において、既に説明された構成要素と同様の機能を持つ構成要素は、当該既述の構成要素と同じ符号が付され、さらに説明が省略される場合がある。また、同じ符号が付された複数の構成要素は、全ての機能及び性質が共通するとは限らず、各実施形態に応じた異なる機能及び性質を有していても良い。
図5は、第2の実施の形態に係るコリメータ14の一部を概略的に示す断面図である。図5に示すように、遮蔽壁35、第1の連通壁36、及び第2の連通壁37は、上端部35a,36a,37aから下端部35b,36b,37bに向かうに従って厚くなる。言い換えると、貫通孔39の断面積は、整流部32の上端部32aから下端部32bに向かうに従って縮小する。
ターゲット12から飛ぶ粒子Cは、遮蔽壁35、第1の連通壁36、及び第2の連通壁37に付着及び堆積することがある。粒子Cは、遮蔽壁35、第1の連通壁36、及び第2の連通壁37の表面に膜61を形成する。
膜61が形成されると、コリメータ14は、膜61を除去するために洗浄されることがある。例えば、コリメータ14は、膜61を溶かす洗浄液に浸される。これにより、遮蔽壁35、第1の連通壁36、及び第2の連通壁37の表面から膜61が除去される。
コリメータ14が洗浄液に浸される時間は、例えば、膜61の最も厚い部分の厚さに応じて設定される。一方、洗浄液は、コリメータ14を溶かすことがある。このため、膜61の厚さが均一であるほど、コリメータ14が溶けることが抑制され、コリメータ14の耐用回数は増加する。
第2の実施形態のスパッタ装置1において、遮蔽壁35、第1の連通壁36、及び第2の連通壁37は、上端部35a,36a,37aから下端部35b,36b,37bに向かうに従って厚くなる。これにより、ターゲット12から飛ぶ粒子Cが遮蔽壁35、第1の連通壁36、及び第2の連通壁37の表面により均等に付着しやすくなる。すなわち、膜61の厚さがより均等になる。言い換えると、遮蔽壁35、第1の連通壁36、及び第2の連通壁37の上端部35a,36a,37aにのみ膜61が形成されることが抑制される。従って、コリメータ14に付着した粒子Cの膜61を洗浄する際にコリメータ14が溶けることが抑制され、コリメータ14の耐用回数がより多くなる。
以下に、第3の実施の形態について、図6を参照して説明する。図6は、第3の実施の形態に係るコリメータ14の一部を概略的に示す断面図である。図6に示すように、第1及び第2の連通孔41,42は、鉛直方向に対して傾斜する方向に延びる。第1及び第2の連通孔41,42が延びる方向は、鉛直方向に対して所定の範囲内の角度で傾斜する。なお、第1の連通孔41が延びる方向と、第2の連通孔42が延びる方向とが異なっても良い。
上述のように、ターゲット12から飛ぶ粒子Cは、鉛直方向に対して傾斜する方向に飛ぶことがある。粒子Cが飛ぶ方向と、第1及び第2の連通孔41,42が延びる方向とが近いほど、第1及び第2の連通孔41,42は粒子Cを通過させやすい。
第3の実施形態のスパッタ装置1において、第1及び第2の連通孔41,42は、鉛直方向に対して傾斜する方向に延びる。第1及び第2の連通孔41,42が延びる方向により近い方向に飛ぶ粒子Cは、第1及び第2の連通孔41,42を通過しやすい。これにより、成膜される粒子Cの方向がより確実に制御され得る。
図7は、第3の実施形態のコリメータ14の変形例の一部を、概略的に示す断面図である。上記第3の実施形態において、第1及び第2の連通孔41,42は、鉛直方向に対して一つの角度で傾斜する方向に延びる。しかし、図7に示すように、第1及び第2の連通孔41,42は、例えば、鉛直方向に対して一つの角度で傾斜する方向に延びる孔と、鉛直方向に対して他の角度で傾斜する方向に延びる孔と、が合成された孔であっても良い。
図7の例において、第1及び第2の連通孔41,42は、当該鉛直方向に対して−45°傾斜する方向に延びる孔と、鉛直方向に対して45°傾斜する方向に延びる孔と、が合成された孔である。この場合、第1の連通壁36の、隣り合う二つの第1の連通孔41の間に位置する部分36cの断面形状は、略菱形となる。このような第1及び第2の連通孔41,42を有する第1及び第2の連通壁36,37は、隣り合う二つの貫通孔39のどちらから斜め成分の粒子Cが飛来したとしても、当該粒子Cを通過させやすい。なお、第1及び第2の連通孔41,42の形状はこれに限らない。
以下に、第4の実施の形態について、図8を参照して説明する。図8は、第4の実施の形態に係るコリメータ14を示す平面図である。図8に示すように、第4の実施形態のコリメータ14は、複数の円壁71と、複数の接続壁72とを有する。
複数の円壁71は、枠部31と同心円状に配置される、円弧状の部分である。接続壁72は、枠部31の中心に対して放射状に延びる直線状の部分である。接続壁72は、複数の円壁71と枠部31とを接続する。
遮蔽壁35、第1の連通壁36、及び第2の連通壁37が、複数の円壁71と複数の接続壁72とを形成する。すなわち、それぞれの円壁71及び接続壁72は、遮蔽壁35、第1の連通壁36、及び第2の連通壁37のいずれか一つによって形成される。言い換えると、コリメータ14は、遮蔽壁35によって形成された円壁71及び接続壁72と、第1の連通壁36によって形成された円壁71及び接続壁72と、第2の連通壁37によって形成された円壁71及び接続壁72とを有する。なお、円壁71及び接続壁72は、遮蔽壁35、第1の連通壁36、及び第2の連通壁37のいずれか一つ又は二つによってのみ形成されても良い。
第4の実施形態のスパッタ装置1において、遮蔽壁35、第1の連通壁36、及び第2の連通壁37は、同心円状に配置された複数の円壁71と、複数の円壁71を接続する複数の接続壁72と、を形成する。これにより、コリメータ14の貫通孔39を通過した粒子Cは、円形の半導体ウェハ2の形状に対応した同心円状に成膜される。
以下に、第5の実施の形態について、図9を参照して説明する。図9は、第5の実施の形態に係るスパッタ装置1を概略的に示す断面図である。図9に示すように、第5の実施形態のスパッタ装置1は、三つのステージ13と、三つのコリメータ14とを備える。
以下の説明において、三つのステージ13を、ステージ13A,13Bと個別に称することがある。一つのステージ13Aは、第1のステージの一例である。二つのステージ13Bは、第2のステージの一例である。
さらに、以下の説明において、三つのコリメータ14を、コリメータ14A,14Bと個別に称することがある。一つのコリメータ14Aは、第1のコリメータの一例である。二つのコリメータ14Bは、第2のコリメータの一例である。
ステージ13Aの形状及び配置は、第1乃至第4の実施形態のいずれか一つのステージ13の形状及び配置と同一である。コリメータ14Aの形状及び配置は、第1乃至第4の実施形態のいずれか一つのコリメータ14の形状及び配置と同一である。
処理室11は、複数の傾斜壁81をさらに有する。傾斜壁81は、底壁22と側壁23との間に介在する。傾斜壁81は、底壁22に対して斜めに傾斜する。傾斜壁81に、ステージ13Bが取り付けられる。
ステージ13Bは、鉛直方向に対して傾斜した方向(以下、傾斜基準方向と称する)に、ターゲット12から離間して配置される。傾斜基準方向は、第1の方向に対して傾斜した方向、及びターゲットから第2のステージに向かう方向、の一例である。ターゲット12とステージ13Bとの間の距離は、ターゲット12とステージ13Aとの間の距離と略同一である。
コリメータ14Bは、傾斜基準方向において、ターゲット12とステージ13Bとの間に配置される。コリメータ14Bの形状は、コリメータ14Aの形状と同一である。すなわち、コリメータ14Bは、コリメータ14Aと同じく、枠部31と整流部32とを有する。コリメータ14Bの整流部32は、コリメータ14Aと同じく、複数の遮蔽壁35と、複数の第1の連通壁36と、複数の第2の連通壁37とを有する。
コリメータ14Bの遮蔽壁35は、第3の壁の一例である。コリメータ14Bの第1及び第2の連通壁36,37は、第4の壁の一例である。コリメータ14Bの第1及び第2の連通孔41,42は、第2の開口部の一例である。
コリメータ14Bは、コリメータ14Aと同じく、遮蔽壁35、第1の連通壁36、及び第2の連通壁37によって貫通孔39を形成する。コリメータ14Bの貫通孔39は、第2の貫通孔の一例である。コリメータ14Bの貫通孔39は、傾斜基準方向に延びる。
ターゲット12の下面12aから、粒子Cが飛ぶ。鉛直方向に飛ぶ粒子Cと、鉛直方向に対して所定の範囲内で傾斜する方向に飛ぶ粒子Cとは、コリメータ14Aの貫通孔39を通過して、ステージ13Aに支持された半導体ウェハ2に向かって飛ぶ。これにより、ステージ13Aに支持された半導体ウェハ2の表面に、粒子Cが成膜される。
一方、傾斜基準方向に飛ぶ粒子Cと、傾斜基準方向に対して所定の範囲内で傾斜する方向に飛ぶ粒子Cとは、コリメータ14Bの貫通孔39を通過して、ステージ13Bに支持された半導体ウェハ2に向かって飛ぶ。これにより、ステージ13Bに支持された半導体ウェハ2の表面にも、粒子Cが成膜される。
第5の実施形態のスパッタ装置1は、ターゲット12から傾斜基準方向に離間したステージ13Bと、傾斜基準方向に延びる複数の貫通孔39を形成するコリメータ14Bとを備える。これにより、スパッタ装置1は、ターゲット12から傾斜基準方向に飛ぶ粒子Cを用いて成膜することができ、スパッタリングの効率がより向上する。言い換えると、スパッタ装置1は、処理室11の側壁23に向かって飛ぶ粒子Cを用いて成膜することができ、スループットが向上する。
以上説明した少なくとも一つの実施形態によれば、第1のコリメータが、第1の壁と、第1の開口部が設けられた第2の壁とによって、第1の方向に延びる第1の貫通孔を形成する。これにより、スパッタリングの効率が向上する。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。