JP2016076481A - 有機エレクトロルミネッセンス用基板およびそれを用いた有機エレクトロルミネッセンスディスプレイ - Google Patents
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Abstract
【課題】塗布によって基板成形が可能であり、透明性に優れ、耐有機溶剤性、耐熱性、寸法安定性および機械的強度を併せ持つ有機EL用基板を提供する。【解決手段】一般式(1)で表される繰り返し単位を有するポリイミドを少なくとも含むポリイミド樹脂組成物、の成形体からなる、有機エレクトロルミネッセンス用基板。(式中、R1およびR2は、それぞれ独立に、水素原子、メチル基またはトリフルオロメチル基であり、R3は芳香環を含む4価の有機基を表す。【選択図】なし
Description
本発明は、有機エレクトロルミネッセンス(以下、有機ELと呼ぶことがある)用基板およびそれを用いた有機ELディスプレイに関する。
有機ELディスプレイは、高コントラスト比、高応答速度、広い視野角、低消費電力等の特徴を有する次世代ディスプレイとして実用化が始まっている。有機ELディスプレイの用途をさらに広げるために、有機ELディスプレイの基板を従来のガラスから薄型化、軽量化、フレキシブル化可能なプラスチックへと置き換える取り組みが行われている。
有機EL用基板に求められる性能としては、素子のリーク、ショートと密接に関係する表面の平坦性、素子作製プロセスで損傷しない程度の耐熱性または耐溶剤性が挙げられる。また、素子作製プロセスにおいては、昇温および冷却を繰り返すため、基板の伸縮による有機層または電極等の欠陥発生を防ぐための熱変化に対する寸法安定性も必要となる。さらに、有機ELディスプレイが基板側から光を取り出すボトムエミッション構造の場合には、基板には可視光領域の透明性が必須となる。
有機ELディスプレイ用のプラスチック基板の材料として、機械特性、絶縁性および耐熱性に優れたポリイミドの応用が検討されている。例えば、特許文献1、特許文献2では、トップエミッション構造の有機EL素子にポリイミド基板を使用した例が記載されている。
しかしながら、ポリイミドは、一般的に溶解性が低いため、ポリイミドの前駆体となるポリアミック酸の状態で加工成形し、支持基材上で加熱による脱水環化反応を行い、ポリイミド基板とするため、支持基材上で分子構造の変化が大きく、ハジキ、ヘコミおよびワレ等の欠陥が生じやすく、平坦性の高い均一な基板を作製することは容易ではない。加えて、ポリイミドは、基板として成形した場合、茶色や黄色に着色するものが多く、透明性が必須のボトムエミッション構造の有機ELデバイスへの応用が困難である。
一方、ポリイミドが有する溶解性が低い、成形性が劣る、成形後に着色するという問題は、屈曲性の高く柔軟な脂肪族構造を主鎖骨格に導入したり、嵩高く柔軟な置換基を側鎖に導入したりすることで解決することができる。しかしながら、このような柔軟な脂肪族構造または嵩高く柔軟な置換基の導入は、耐熱性や機械的強度等の物性の低下、熱膨張係数(以下、CTEと呼ぶことがある)が上昇する等の新たな問題点が生じる原因となり、基板材料に不適応になりやすいことが、特許文献3〜5に記載されている。
また、特許文献6〜12には、ヘキサフルオロイソプロパノール基(−C(CF3)2OH、以下、HFIP基と呼ぶことがある)を有するポリイミドが開示されている。
溶液での塗布によって容易に基板成形が可能であることに加え、基板成形後は、可視光領域における透明性に優れ、耐有機溶剤性、耐熱性、寸法安定性および機械的強度をバランスよく併せ持つ有機EL用基板を提供することを目的とする。
有機EL用基板に必要な成形加工性、透明性、耐熱性、耐有機溶剤性、寸法安定性および機械的強度をバランスよく有するポリイミドは知られていないのが現状である。
特許文献6に記載のポリイミドは、溶解性、成形加工性に優れるが、ポリイミド成形体における耐有機溶剤性、耐熱性、熱膨張係数、機械物性に関する記載はない。また、特許文献7〜9に記載のポリイミドは、溶解性、ポリイミド成形体における耐熱性に優れるが、耐有機溶剤性、耐熱性、熱膨張係数、機械物性に関する記載はない。特許文献10に記載のポリイミドは、成形加工性、ポリイミド成形体における耐有機溶剤性、耐熱性、熱膨張係数、機械物性に関する記載はない。特許文献11に記載のポリイミドは、溶解性、ポリイミド成形体における透明性、耐熱性に優れるが、熱膨張係数、機械物性に関する記載はなく、透明性に関する詳細は記載されていない。特許文献12に記載のポリイミドは、溶解性、ポリイミド成形体における透明性に優れ、低熱膨張係数を示すが、機械物性、耐熱性に関する記載はなく、透明性に関する詳細は記載されていない。また、これらの特許文献6〜12に記載のポリイミドについて、有機EL基板用途に関する具体的な記載はない。
特許文献6に記載のポリイミドは、溶解性、成形加工性に優れるが、ポリイミド成形体における耐有機溶剤性、耐熱性、熱膨張係数、機械物性に関する記載はない。また、特許文献7〜9に記載のポリイミドは、溶解性、ポリイミド成形体における耐熱性に優れるが、耐有機溶剤性、耐熱性、熱膨張係数、機械物性に関する記載はない。特許文献10に記載のポリイミドは、成形加工性、ポリイミド成形体における耐有機溶剤性、耐熱性、熱膨張係数、機械物性に関する記載はない。特許文献11に記載のポリイミドは、溶解性、ポリイミド成形体における透明性、耐熱性に優れるが、熱膨張係数、機械物性に関する記載はなく、透明性に関する詳細は記載されていない。特許文献12に記載のポリイミドは、溶解性、ポリイミド成形体における透明性に優れ、低熱膨張係数を示すが、機械物性、耐熱性に関する記載はなく、透明性に関する詳細は記載されていない。また、これらの特許文献6〜12に記載のポリイミドについて、有機EL基板用途に関する具体的な記載はない。
上述のように、HFIP基を有するポリイミドは、知られていたが、有機EL基板への応用についての検討はなされておらず、有機EL基板に要求される種々の物性をバランスよく有するかどうかは不明であった。
本発明者らは、上記課題を解決するための鋭意検討を行った。その結果、下記の繰り返し単位を含むポリイミドを少なくとも含むポリイミド樹脂組成物を用いることで、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。
即ち、本発明は以下の各発明を含む。
[発明1]
一般式(1)で表される繰り返し単位を有するポリイミドを少なくとも含むポリイミド樹脂組成物、の成形体からなる、有機エレクトロルミネッセンス用基板。
(式中、R1およびR2は、それぞれ独立に、水素原子、メチル基またはトリフルオロメチル基であり、R3は芳香環を含む4価の有機基であって、以下の何れかの構造で表される。)
[発明2]
一般式(1)で表される繰り返し単位を有するポリイミドのみからなるポリイミド樹脂組成物、の成形体からなる、発明1に記載の有機エレクトロルミネッセンス用基板。
[発明3]
400〜780nmの波長領域での透過率が60%以上であり、30〜250℃における熱膨張係数が40ppm/℃以下である、発明1または2に記載の有機エレクトロルミネッセンス用基板。
[発明4]
R1およびR2がそれぞれメチル基である、発明1〜3の何れかに記載の有機エレクトロルミネッセンス用基板。
[発明5]
R3が式(3)〜式(6)の何れかで表される基である、発明4に記載の有機エレクトロルミネッセンス用基板。
[発明6]
発明1〜5のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス用基板を少なくとも備える、有機エレクトロルミネッセンス素子。
[発明7]
発明1〜5のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス用基板を少なくとも備える、有機エレクトロルミネッセンスディスプレイ。
[発明8]
発明1〜5のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス用基板を少なくとも備える、ボトムエミッション型有機エレクトロルミネッセンスディスプレイ。
[発明9]
一般式(1)で表される繰り返し単位を有するポリイミドを少なくとも含むポリイミド樹脂組成物と、有機溶媒とを含む、ポリイミド溶液。
(式中、R1およびR2は、それぞれ独立に、水素原子、メチル基またはトリフルオロメチル基であり、R3は芳香環を含む4価の有機基であって、以下の何れかの構造で表される。)
[発明10]
R1およびR2がそれぞれメチル基である、発明9に記載のポリイミド溶液。
[発明11]
R3が式(3)〜式(6)の何れかで表される基である、発明10に記載のポリイミド溶液。
[発明12]
有機溶媒が、アミド系溶媒、エーテル系溶媒、芳香族性溶媒、ハロゲン系溶媒およびラクトン系溶媒からなる群から選ばれる少なくとも一種である、発明9〜11の何れか一項に記載のポリイミド溶液。
[発明13]
有機溶媒が、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルホルムアミド、ヘキサメチルリン酸トリアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、ジフェニルエーテル、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、トリオキサン、ベンゼン、アニソール、ニトロベンゼン、ベンゾニトリル、クロロホルム、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、ε−バレロラクトン、ε−バレロラクトン、γ−カプロラクトン、ε−カプロラクトンおよびα−メチル−γ−ブチロラクトンからなる群から選ばれる少なくとも一種である、発明9〜12の何れかに記載のポリイミド溶液。
[発明14]
溶液中、ポリイミド樹脂組成物の濃度が5〜50質量%である、発明9〜13の何れかに記載のポリイミド溶液。
[発明15]
発明9〜14の何れかに記載のポリイミド溶液を支持基材に塗布する工程と、
塗布したポリイミド溶液を乾燥させて、樹脂膜を得る工程と、
得られた樹脂膜を加熱処理してポリイミド成形体を得る工程と、を少なくとも含む、ポリイミド成形体の製造方法。
[発明1]
一般式(1)で表される繰り返し単位を有するポリイミドを少なくとも含むポリイミド樹脂組成物、の成形体からなる、有機エレクトロルミネッセンス用基板。
一般式(1)で表される繰り返し単位を有するポリイミドのみからなるポリイミド樹脂組成物、の成形体からなる、発明1に記載の有機エレクトロルミネッセンス用基板。
[発明3]
400〜780nmの波長領域での透過率が60%以上であり、30〜250℃における熱膨張係数が40ppm/℃以下である、発明1または2に記載の有機エレクトロルミネッセンス用基板。
[発明4]
R1およびR2がそれぞれメチル基である、発明1〜3の何れかに記載の有機エレクトロルミネッセンス用基板。
[発明5]
R3が式(3)〜式(6)の何れかで表される基である、発明4に記載の有機エレクトロルミネッセンス用基板。
発明1〜5のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス用基板を少なくとも備える、有機エレクトロルミネッセンス素子。
[発明7]
発明1〜5のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス用基板を少なくとも備える、有機エレクトロルミネッセンスディスプレイ。
[発明8]
発明1〜5のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス用基板を少なくとも備える、ボトムエミッション型有機エレクトロルミネッセンスディスプレイ。
[発明9]
一般式(1)で表される繰り返し単位を有するポリイミドを少なくとも含むポリイミド樹脂組成物と、有機溶媒とを含む、ポリイミド溶液。
R1およびR2がそれぞれメチル基である、発明9に記載のポリイミド溶液。
[発明11]
R3が式(3)〜式(6)の何れかで表される基である、発明10に記載のポリイミド溶液。
有機溶媒が、アミド系溶媒、エーテル系溶媒、芳香族性溶媒、ハロゲン系溶媒およびラクトン系溶媒からなる群から選ばれる少なくとも一種である、発明9〜11の何れか一項に記載のポリイミド溶液。
[発明13]
有機溶媒が、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルホルムアミド、ヘキサメチルリン酸トリアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、ジフェニルエーテル、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、トリオキサン、ベンゼン、アニソール、ニトロベンゼン、ベンゾニトリル、クロロホルム、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、ε−バレロラクトン、ε−バレロラクトン、γ−カプロラクトン、ε−カプロラクトンおよびα−メチル−γ−ブチロラクトンからなる群から選ばれる少なくとも一種である、発明9〜12の何れかに記載のポリイミド溶液。
[発明14]
溶液中、ポリイミド樹脂組成物の濃度が5〜50質量%である、発明9〜13の何れかに記載のポリイミド溶液。
[発明15]
発明9〜14の何れかに記載のポリイミド溶液を支持基材に塗布する工程と、
塗布したポリイミド溶液を乾燥させて、樹脂膜を得る工程と、
得られた樹脂膜を加熱処理してポリイミド成形体を得る工程と、を少なくとも含む、ポリイミド成形体の製造方法。
本明細書において、有機ELとは、有機物に電圧をかけることで発光する現象を指し、有機EL素子は、赤、緑、青などの色に発光する有機材料を組み合わせることで、白色を含めたあらゆる色の光を発することが可能な発光素子を指す。また、有機ELディスプレイとは、有機EL素子を用いた表示画面装置を指す。
本発明に係るポリイミド樹脂組成物は、極性有機溶剤に対する溶解性が高く、ポリイミド溶液の状態で支持基材に塗布し、支持基材上に成形することができる。成形後のポリイミドは、可視光領域における透明性に優れ、耐有機溶剤性、耐熱性、寸法安定性および機械的強度をバランスよく併せ持ち、有機EL用基板として有用である。
以下、本発明についてさらに詳しく説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
[ポリイミド樹脂組成物]
本発明に係るポリイミド樹脂組成物(以下、単に「本発明に係る組成物」と呼ぶことがある)は、下記一般式(1)で表される繰り返し単位を有するポリイミドを少なくとも含む。
本発明に係るポリイミド樹脂組成物(以下、単に「本発明に係る組成物」と呼ぶことがある)は、下記一般式(1)で表される繰り返し単位を有するポリイミドを少なくとも含む。
一般式(1)中、R1およびR2は、それぞれ独立に、水素原子、メチル基またはトリフルオロメチル基である。R3は芳香環を含む4価の有機基であって、例えば、以下の何れかの構造で表される。
これらの中でも、以下の4価の有機基が好ましい。
後述するように、一般式(1)中、R1およびR2は、一般式(7)で表されるジアミン化合物中のR1およびR2にそれぞれ由来し、一般式(1)中、R3は、一般式(9)で表されるテトラカルボン酸二無水物中のR3に由来する。
一般式(1)中、R1およびR2はそれぞれメチル基であることが好ましい。すなわち、上記一般式(1)で表される繰り返し単位は、下記一般式(2)で表される繰り返し単位であることが好ましい。
一般式(2)中、R3は一般式(1)中のR3と同義である。
本発明に係るポリイミドは、上記一般式(1)で表される繰り返し単位を有していれば、その他の骨格については特に制限されない。例えば、上記一般式(1)で表される繰り返し単位以外の繰り返し単位を有していてもよい。本発明に係るポリイミドは、上記一般式(1)で表される繰り返し単位を50モル%以上有していてもよく、好ましくは75モル%以上、より好ましくは、該繰り返し単位のみからなる。また、上記一般式(1)の繰り返し単位は、ポリイミド中に規則的に配列されていてもよいし、ランダムに存在していてもよい。上記一般式(1)で表される繰り返し単位以外の繰り返し単位としては、以下の何れかで表される繰り返し単位が好ましい例として挙げられるが、これらに限定されない。
本発明に係るポリイミドの重量平均分子量は、特に制限されるものではないが、下限は30,000であってもよく、40,000が好ましく、50,000が特に好ましい。上限は1,000,000であってもよく、500,000が好ましく、200,000が特に好ましい。本発明に係るポリイミドの重量平均分子量は、30,000〜1,000,000であってもよく、40,000〜500,000が好ましく、50,000〜200,000が特に好ましい。重量平均分子量が30,000未満だと、成形後の基板の安定性が悪く、基板割れ等の問題を生じやすく、1,000,000超だと、溶液の粘度が高く、成形するのが困難になることがある。なお、上記重量平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィ(以下、GPCと呼ぶことがある)による標準ポリスチレン換算の値をいう。
本発明に係る組成物は、一般式(1)で表される繰り返し単位を有するポリイミドを少なくとも含み、該ポリイミドのみからなることが好ましい。本発明に係る組成物はこのポリイミド以外にその他の成分を含んでいてもよい。その他の成分を含む場合の含有割合は、組成物中50モル%以下であってもよく、25モル%以下であることが好ましく、10モル%以下であることがさらに好ましい。その他の成分の種類は、特に限定されないが、一般式(1)で表される繰り返し単位を有するポリイミド以外のポリイミドであってもよい。このポリイミドは、特に限定されるものではなく、公知のポリイミドを一種若しくは二種以上適宜選択して使用することができる。このポリイミドは、後述の「他のジアミン化合物」や後述のテトラカルボン酸二無水物を原料として合成されるポリイミドであってもよい。
[有機EL用基板]
本発明の有機EL用基板(以下、単に「本発明の基板」と呼ぶことがある)は、本発明に係るポリイミド樹脂組成物の成形体である。このポリイミド成形体は、透明性、耐有機溶剤性、耐熱性、寸法安定性、機械的強度をバランスよく併せ持つため、有機EL用基板として好適に用いることができる。
本発明の有機EL用基板(以下、単に「本発明の基板」と呼ぶことがある)は、本発明に係るポリイミド樹脂組成物の成形体である。このポリイミド成形体は、透明性、耐有機溶剤性、耐熱性、寸法安定性、機械的強度をバランスよく併せ持つため、有機EL用基板として好適に用いることができる。
従来のポリイミドは、一般的に溶解性が低いため、ポリイミド成形体の作成においては、ポリイミド前駆体であるポリアミック酸の状態で支持基板上に塗布した後、該支持基材上で加熱による脱水環化反応でポリイミド化して、ポリイミド成形体とする。そのため、支持基材上での加熱処理による分子構造の変化が大きく、クラックやハジキが起こり易く、平坦性の高い均一な基板を作製することは容易ではない。一方、本発明の基板の作成においては、ポリイミドの状態で支持基材上に形成することができるので、支持基材上での加熱処理による分子構造の変化が小さく、クラックやハジキが起こり難く、所望の平坦性の高く均一な状態のポリイミド成形体(基板)を得ることが容易である。成形後は透明性に優れ、耐有機溶剤性、耐熱性を併せ持ち、デバイス作製プロセスにおける基板の欠陥も生じ難い。
本発明の基板は有機ELディスプレイ用に好適に使用できる。特に、有機ELディスプレイがボトムエミッション構造の場合、本発明の有機EL用基板が好適に使用できる。また、可視光領域の光透過性の高いものについてはボトムエミッション型有機ELディスプレイにも使用できる。本発明の技術範囲はこれら有機EL用基板を含む、有機EL素子および有機ELディスプレイに及ぶ。
以下、本発明の基板、すなわち、本発明に係るポリイミド成形体の好ましい物性および特性について説明する。
<透明性>
本発明に係るポリイミド成形体は420nm以上の高波長の全可視光領域、すなわち420〜780nmの波長領域で透過率(以下、T%と表記することがある)が60%以上であることが好ましく、本発明に係るポリイミド成形体を有機ELディスプレイ用のボトムエミッション方式の基板に用いる場合は、400nm以上の高波長の全可視光領域、すなわち400〜780nmの波長領域で透過率は60%以上であることが特に好ましく、400nm以上の高波長の全可視光領域で70%以上の透過率であることがさらに好ましい。
また、カットオフ周波数は380nm以下の短波長であることが好ましい。
本発明に係るポリイミド成形体は420nm以上の高波長の全可視光領域、すなわち420〜780nmの波長領域で透過率(以下、T%と表記することがある)が60%以上であることが好ましく、本発明に係るポリイミド成形体を有機ELディスプレイ用のボトムエミッション方式の基板に用いる場合は、400nm以上の高波長の全可視光領域、すなわち400〜780nmの波長領域で透過率は60%以上であることが特に好ましく、400nm以上の高波長の全可視光領域で70%以上の透過率であることがさらに好ましい。
また、カットオフ周波数は380nm以下の短波長であることが好ましい。
<熱膨張係数(CTE)およびガラス転移温度(Tg)>
本発明に係るポリイミド成形体の熱膨張係数(以下、CTEと呼ぶことがある)は、30〜250℃の範囲において、上限値は50ppm/℃が好ましく、30ppm/℃がより好ましい。下限値は特に限定されないが、0.5ppm/℃が好ましく、1ppm/℃がより好ましい。0.5ppm/℃以上、50ppm/℃以下が好ましく、1ppm/℃以上、30ppm/℃以下がより好ましい。50ppm/℃より大きいと寸法安定性に劣り、クラック発生または意図せぬ基板の剥離等の問題の原因となることがある。
本発明に係るポリイミド成形体のガラス転移温度(以下、Tgと呼ぶことがある)は、耐熱性の観点から250℃以上が好ましく、プロセス温度が高くても対応できるという観点から300℃以上がより好ましい。ここで、ガラス転移温度(Tg)は、昇温速度10℃/分の条件で測定したときの値を指す。なお、熱膨張係数(CTE)およびガラス転移温度(Tg)は、熱機械分析(TMA)などで測定することができる。
本発明に係るポリイミド成形体の熱膨張係数(以下、CTEと呼ぶことがある)は、30〜250℃の範囲において、上限値は50ppm/℃が好ましく、30ppm/℃がより好ましい。下限値は特に限定されないが、0.5ppm/℃が好ましく、1ppm/℃がより好ましい。0.5ppm/℃以上、50ppm/℃以下が好ましく、1ppm/℃以上、30ppm/℃以下がより好ましい。50ppm/℃より大きいと寸法安定性に劣り、クラック発生または意図せぬ基板の剥離等の問題の原因となることがある。
本発明に係るポリイミド成形体のガラス転移温度(以下、Tgと呼ぶことがある)は、耐熱性の観点から250℃以上が好ましく、プロセス温度が高くても対応できるという観点から300℃以上がより好ましい。ここで、ガラス転移温度(Tg)は、昇温速度10℃/分の条件で測定したときの値を指す。なお、熱膨張係数(CTE)およびガラス転移温度(Tg)は、熱機械分析(TMA)などで測定することができる。
<熱分解温度(Td5)>
本発明に係るポリイミド成形体の分解温度は5%重量減少温度(以下、Td5と呼ぶことがある)を指標とし、5%重量減少温度は300℃以上が好ましく、350℃以上がより好ましい。5%重量減少温度が300℃より低いと、デバイス作製プロセスで基板の劣化の原因となる。なお、5%重量減少温度は、熱分析装置を用いて熱重量測定を行い、初期の重量に対して5%の重量損失があった温度のことをいう。
本発明に係るポリイミド成形体の分解温度は5%重量減少温度(以下、Td5と呼ぶことがある)を指標とし、5%重量減少温度は300℃以上が好ましく、350℃以上がより好ましい。5%重量減少温度が300℃より低いと、デバイス作製プロセスで基板の劣化の原因となる。なお、5%重量減少温度は、熱分析装置を用いて熱重量測定を行い、初期の重量に対して5%の重量損失があった温度のことをいう。
<機械物性>
本発明に係るポリイミド成形体の弾性率(引張弾性率)は、1.0GPa以上、6.0GPa以下が好ましく、1.5GPa以上、5.0GPa以下がより好ましい。弾性率が6.0GPaより大きいと、硬化後に基板が反る傾向にある。
最大応力(引張応力)は、70MPa以上が好ましく、100MPa以上がより好ましい。引張強度が70MPaより小さいと脆く、有機EL用基板として用いた場合に取扱いが難しくなる。
破断伸度は、5%以上が好ましく、10%以上がより好ましい。破断伸びが5%より小さいと、ポリイミド成形体を基板として用いた場合の曲げ応力が弱く、基板の信頼性が低下する。
なお、引張弾性率、引張応力、破断伸度等の機械物性は、JIS K 7161(プラスチック−引張特性の求め方−)に準じて、引っ張り試験を行うことで求めることができる。
本発明に係るポリイミド成形体の弾性率(引張弾性率)は、1.0GPa以上、6.0GPa以下が好ましく、1.5GPa以上、5.0GPa以下がより好ましい。弾性率が6.0GPaより大きいと、硬化後に基板が反る傾向にある。
最大応力(引張応力)は、70MPa以上が好ましく、100MPa以上がより好ましい。引張強度が70MPaより小さいと脆く、有機EL用基板として用いた場合に取扱いが難しくなる。
破断伸度は、5%以上が好ましく、10%以上がより好ましい。破断伸びが5%より小さいと、ポリイミド成形体を基板として用いた場合の曲げ応力が弱く、基板の信頼性が低下する。
なお、引張弾性率、引張応力、破断伸度等の機械物性は、JIS K 7161(プラスチック−引張特性の求め方−)に準じて、引っ張り試験を行うことで求めることができる。
<耐有機溶剤性>
一般的に、有機EL用基板は有機ELディスプレイの製造工程で使用される有機溶剤であるジメチルアセトアミド(DMAc)、テトラヒドロフラン(THF)、アセトン(Acetone)、酢酸エチル(EtOAc)、イソプロパノール(IPA)、トルエン(Toluene)およびヘキサン(Hexane)等の溶剤に浸され難いことが好ましい。後述の実施例からも明らかなように、本発明に係るポリイミドは成形前の状態ではこれらの有機溶剤に対する溶解性に優れるが、成形後の状態、すなわち、本発明の基板においては耐有機溶剤性に優れ、これらの有機溶剤に侵され難い。このことから、本発明に係るポリイミドは、溶液での塗布によって容易に基板成形が可能であり、成形後の基板、すなわち、本発明の基板は、耐有機溶剤性を有する。
一般的に、有機EL用基板は有機ELディスプレイの製造工程で使用される有機溶剤であるジメチルアセトアミド(DMAc)、テトラヒドロフラン(THF)、アセトン(Acetone)、酢酸エチル(EtOAc)、イソプロパノール(IPA)、トルエン(Toluene)およびヘキサン(Hexane)等の溶剤に浸され難いことが好ましい。後述の実施例からも明らかなように、本発明に係るポリイミドは成形前の状態ではこれらの有機溶剤に対する溶解性に優れるが、成形後の状態、すなわち、本発明の基板においては耐有機溶剤性に優れ、これらの有機溶剤に侵され難い。このことから、本発明に係るポリイミドは、溶液での塗布によって容易に基板成形が可能であり、成形後の基板、すなわち、本発明の基板は、耐有機溶剤性を有する。
<膜厚>
本発明に係るポリイミド成形体の厚さは、特に限定されないが、下限は0.5μmであってもよく、1μmが好ましく、10μmが特に好ましい。上限は500μmであってもよく、100μmが好ましく、80μmが特に好ましい。0.5〜500μmであってもよく、1〜100μmがさらに好ましく、10〜80μmが特に好ましい。
本発明に係るポリイミド成形体の厚さは、特に限定されないが、下限は0.5μmであってもよく、1μmが好ましく、10μmが特に好ましい。上限は500μmであってもよく、100μmが好ましく、80μmが特に好ましい。0.5〜500μmであってもよく、1〜100μmがさらに好ましく、10〜80μmが特に好ましい。
[ポリイミドの製造方法]
本発明に係るポリイミドの製造方法は特に限定されない。例えば、特許文献6に記載のHFIP基を有するポリイミドの合成方法に準じて、本発明に係るポリイミドを製造することができる。具体例として、下記一般式(7)で表されるHFIP基を有するジアミンと、下記一般式(9)で表されるテトラカルボン酸二無水物とを必須原料とし、150℃以上で相互に溶融させる方法が挙げられる。その他の例として、これらの原料化合物を有機溶媒中で縮重合して得られるポリアミック酸を脱水閉環することで本発明に係るポリイミドを製造する方法が挙げられる。この縮重合反応は−20〜80℃で行い、前記ジアミンと前記テトラカルボン酸二無水物とをモル比で表して1対1で反応させることが好ましい。
本発明に係るポリイミドの製造方法は特に限定されない。例えば、特許文献6に記載のHFIP基を有するポリイミドの合成方法に準じて、本発明に係るポリイミドを製造することができる。具体例として、下記一般式(7)で表されるHFIP基を有するジアミンと、下記一般式(9)で表されるテトラカルボン酸二無水物とを必須原料とし、150℃以上で相互に溶融させる方法が挙げられる。その他の例として、これらの原料化合物を有機溶媒中で縮重合して得られるポリアミック酸を脱水閉環することで本発明に係るポリイミドを製造する方法が挙げられる。この縮重合反応は−20〜80℃で行い、前記ジアミンと前記テトラカルボン酸二無水物とをモル比で表して1対1で反応させることが好ましい。
一般式(7)中、R1およびR2はそれぞれ、一般式(1)中のR1およびR2と同義である。
一般式(9)中、R3は、一般式(1)中のR3と同義である。
前記縮重合反応に使用できる有機溶媒は、原料化合物が溶解すれば特に制限されず、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルホルムアミド、ヘキサメチルリン酸トリアミド、N−メチル−2−ピロリドン等のアミド系溶媒、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、ジフェニルエーテル、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、トリオキサン等のエーテル系溶媒、ベンゼン、アニソール、ニトロベンゼン、ベンゾニトリル等の芳香族性溶媒、クロロホルム、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、1,1,2,2−テトラクロロエタン等のハロゲン系溶媒、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、ε−バレロラクトン、ε−バレロラクトン、γ−カプロラクトン、ε−カプロラクトン、α−メチル−γ−ブチロラクトンのラクトン系溶媒を例示することができる。これらの有機溶媒は単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
本発明に係るポリイミドは、縮重合反応で得られたポリアミック酸をさらに脱水閉環させイミド化することで得られる。この脱水閉環反応は、環化を促進する、加熱法、化学法等の条件で行う。加熱法は、重合直後のポリアミック酸を150〜250℃の高温加熱でイミド化し、化学法は、室温(0〜50℃)でピリジンまたはトリエチルアミン等の塩基と無水酢酸を原料のジアミンに対してそれぞれ2モル当量以上10当量未満を加えることでイミド化し、本発明に係るポリイミドの溶液を得ることができる。この溶液中のポリイミドの濃度は、5質量%以上、50質量%以下が好ましい。5質量%より少ないと工業的に実用的でない。50質量%を超えると溶解し難い。さらに、好ましくは10質量%以上、40質量%以下である。
このようにして得られた本発明に係るポリイミドの溶液は、本発明の基板の製造、すなわち、本発明に係るポリイミド成形体の製造にそのまま用いることができる。また、本発明に係るポリイミドの溶液中に含まれる残存モノマー、低分子量体を除去する目的で、水またはアルコール等の貧溶媒中に、本発明に係るポリイミドの溶液を加え、該ポリイミドを沈殿、単離精製した後、改めて有機溶媒に前記濃度になるように溶解させて調整し、その調整した溶液を本発明に係るポリイミド成形体の製造に用いてもよい。この有機溶媒としては、本発明に係るポリイミドが溶解すれば特に制限されず、例えば、前記縮重合反応に使用できる有機溶媒で挙げたものと同様の種類の有機溶媒が挙げられ、単独で用いてもよいし、二種以上の混合溶媒を用いてもよい。
<HFIP基を有するジアミン>
本発明に係るポリイミドの製造において、原料化合物の一つとして、一般式(7)で表されるHFIP基を有するジアミンを用いる。
本発明に係るポリイミドの製造において、原料化合物の一つとして、一般式(7)で表されるHFIP基を有するジアミンを用いる。
中でも、原料の入手容易性から、式(8)で表されるジアミン(以下、HFIP−mTBと呼ぶことがある。)が特に好ましい。
有機EL用基板を作製する際に重要となる有機溶剤溶解性、成形性、および、基板とした際の強度、表面特性(撥水性、撥油性)、耐性(耐候性、耐腐食性等)、その他の特性(透明性、低屈折性、低誘電率等)、耐熱性を調整するために、一般式(7)で表されるHFIP基を有するジアミンとそれ以外のジアミン化合物(以下、他のジアミン化合物と呼ぶことがある)を併用してもよい。他のジアミン化合物の使用量としては、全体のジアミンの重量に対して、質量%で表して、5%以上、50%以下であり、好ましくは、10%以上、30%以下である。他のジアミン化合物の含有割合が5%未満の場合、機械的強度等の調整の効果が小さくなり、他のジアミン化合物の含有割合が50%より多い場合、耐熱性、寸法安定性、機械的強度、またはフッ素原子由来の物性や耐熱性の低下が生じる恐れがある。
併用できる他のジアミン化合物を具体的に例示すると、ベンジジン、2,2’−ジメトキシベンジジン、3,3’−ジメトキシベンジジン、2,2’−ジメチルベンジジン、3,3’−ジメチルベンジジン、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、3,3’ −ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、o−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、2,4−ジアミノトルエン、2,5−ジアミノトルエン、2,4‐ジアミノ−m−キシレン、2,4−ジアミノ−1,3,5−トリメチルベンゼン、2,3,5,6−テトラメチル−1,4−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス(4−(3−アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−(3−アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(3−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(3−アミノ−4−メチルフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4,4’−ジアミノベンズアニリド、4,4’−エチレンジアニリン、1,1−ビス(4−アミノフェニル)シクロヘキサン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、2,7−ジアミノフルオレン、α,α’-ビス(4−アミノフェニル)−1,4−ジイソプロピルベンゼン、または1,3−ビス(1−(4−アミノフェニル)−1−メチルエチル)ベンゼン等を例示することができる。上記ジアミンの芳香環の水素原子の一部がフッ原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、アルキル基、フルオロアルキル基、カルボキシル基、HFIP基、ヒドロキシ基、またはシアノ基で置換されていてもよい。また、これらは、単独で使用してもよく、2種以上併用することもできる。
上記の中でも、入手の容易性から、o−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、2,4−ジアミノトルエン、2,5−ジアミノトルエン、4‐ジアミノ−m−キシレン、2,4−ジアミノキシレン、2,2’−ジメチルベンジジン、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジンがよく、CTEの上昇の小さい2,2’−ジメチルベンジジン、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジンが特に好ましい。
<テトラカルボン酸二無水物>
本発明に係るポリイミドの製造において、原料化合物の一つとして、一般式(9)で表されるテトラカルボン酸二無水物を用いる。
具体的には、以下のテトラカルボン酸二無水物が挙げられるが、これらに限定されない:
ベンゼン−1,2,4,5−テトラカルボン酸二無水物(以下、PMDAと呼ぶことがある)、3,6−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン−1,2,4,5−テトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(以下、BPDAと呼ぶことがある)、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(以下、6FDAと呼ぶことがある)、4,4’−オキシジフタル酸二無水物(以下、ODPAと呼ぶことがある)、チオフェン−2,3,4,5−テトラカルボン酸二無水物等。
これらのテトラカルボン酸二無水物は単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
本発明に係るポリイミドの製造において、原料化合物の一つとして、一般式(9)で表されるテトラカルボン酸二無水物を用いる。
具体的には、以下のテトラカルボン酸二無水物が挙げられるが、これらに限定されない:
ベンゼン−1,2,4,5−テトラカルボン酸二無水物(以下、PMDAと呼ぶことがある)、3,6−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン−1,2,4,5−テトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(以下、BPDAと呼ぶことがある)、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(以下、6FDAと呼ぶことがある)、4,4’−オキシジフタル酸二無水物(以下、ODPAと呼ぶことがある)、チオフェン−2,3,4,5−テトラカルボン酸二無水物等。
これらのテトラカルボン酸二無水物は単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
この中でも、入手の容易性から、PMDA、BPDA、6FDAまたはODPAが好ましく、フッ素原子由来の物性である表面特性(撥水性、撥油性)、耐性(耐候性、耐腐食性等)、その他の特性(透明性、低屈折性、低誘電率等)が高い基板が得られることから6FDA、強靭で寸法安定性のある基板が得られることからBPDAが特に好ましい。
<本発明に係るポリイミド成形体の製造方法>
本発明に係るポリイミド成形体は、本発明に係る組成物を加熱処理することで得られる。具体的には、本発明に係る組成物を含む溶液(本発明に係る組成物を前記有機溶媒に溶解させた溶液)を支持基材に塗布する工程(塗布工程)、溶媒を除去・乾燥する工程(溶媒除去工程)、得られた樹脂膜をさらに加熱処理する工程(加熱工程)を経て得ることができる。
本発明に係るポリイミド成形体は、本発明に係る組成物を加熱処理することで得られる。具体的には、本発明に係る組成物を含む溶液(本発明に係る組成物を前記有機溶媒に溶解させた溶液)を支持基材に塗布する工程(塗布工程)、溶媒を除去・乾燥する工程(溶媒除去工程)、得られた樹脂膜をさらに加熱処理する工程(加熱工程)を経て得ることができる。
塗布工程で使用される塗布方法は、特に制限されず、公知の塗布方法を採用することができる。所望の塗布厚および樹脂粘度等に応じて、スピンコーター、バーコーター、ドクターブレードコーター、エアナイフコーター、ロールコーター、ロータリーコーター、フローコーター、ダイコーター、リップコーター等の公知塗布機器を適宜使用できる。
前記支持基材は、特に限定されない。例えば、ガラス、シリコンウェハ、ステンレス、アルミナ、銅、ニッケル等の無機基材、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレングリコールテレフタレート、ポリエチレングリコールナフタレート、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリプロピレン、ポリエーテルスルホン、ポリエチレンテレフタレート、ポリフェニレンスルホン、ポリフェニレンスルフィド等の有機基材を例示することができる。耐熱性の観点から、ガラス、シリコンウェハ、ステンレス等の無機基材を用いることが好ましい。
支持基材に塗布する際、本発明に係る組成物を含む塗膜の厚みは、本発明に係る組成物を含む溶液中のポリイミド樹脂成分の濃度により適宜調整することができ、通常1μm以上、1000μm以下であり、5μm以上、500μm以下が好ましい。塗膜が1μmより薄いと成形後の基板に十分な強度が得られず、1000μmより厚いと基板のハジキ、ヘコミ、ワレ等の欠陥が発生し、均一な基板が得られない原因となる場合がある。
前記塗布工程により塗膜を得た後、さらに塗膜から溶媒を除去・乾燥する溶媒除去工程と、乾燥後の塗膜(樹脂膜)を熱処理し硬化させ、ポリイミド成形体を得る加熱工程を経ることで、本発明に係るポリイミド成形体が得られるがある。
溶媒除去工程で溶媒を除去・乾燥を行う際の温度は、本発明に係る組成物を溶解させた有機溶媒の種類にもよるが、50℃以上、220℃以下が好ましく、80℃以上、200℃以下がより好ましい。50℃より低いと乾燥が不十分となり、220℃より高いと急激な溶媒蒸発が起こりハジキ、ヘコミ、ワレ等の欠陥、均一な基板とならない原因となる。
溶剤除去工程後の加熱工程では、樹脂膜を高温で熱処理することで硬化させて本発明に係るポリイミド成形体を得ることができる。この工程では、溶媒除去工程で取り除くことができなかった残存溶媒の除去、イミド化率の向上、物理特性の改善も期待される。
加熱工程において、樹脂膜を加熱処理し硬化する際の温度は、150℃以上、400℃以下が好ましく、200℃以上、300℃以下がより好ましい。150℃より低いと溶剤が残存する恐れがあり、400℃より高いと、得られた有機EL用基板にひび割れなどの基板の欠陥が発生する原因となる。
加熱工程は、イナートガスオーブンやホットプレート、箱型乾燥機またはコンベヤー型乾燥機の装置を用いて行うことが好ましいが、これらの装置の使用に限定されるものではない。
加熱工程は、樹脂膜の酸化の防止、溶媒除去の観点から、不活性ガス気流下で行うことが好ましい。不活性ガスとしては、窒素、アルゴン等を例示することができる。不活性ガスの流速は1L/分以上、5L/分以下が好ましい。不活性ガスの流速が1L/分より遅いと溶媒除去・樹脂膜の乾燥が不十分となることがあり、5L/分より速いと樹脂膜表面のみの乾燥が生じ割れ等の発生の原因となる。
溶媒除去工程、加熱工程における加熱時間は、通常0.5時間以上、3時間以下であり、それぞれの工程を連続若しくは別個に行うこともできる。
本発明の基板は、支持基材から剥離してデバイスを作製することもできるが、新たな支持基板に固定するためには高度な技術が必要であり、工程数も増えることから支持基材から剥離せずに支持基材に固定されたままの成形体の状態で有機EL用基板とし、次いでデバイスを作製する方が好ましい。
[有機EL素子]
本発明の有機EL素子は、本発明の基板を少なくとも備えるものであり、それ以外の構成等は特に限定されない。
本発明の有機EL素子は、有機発光層と電極層と基板とを少なくとも備える有機EL素子において、該基板として本発明の基板を用いる、有機EL素子であってもよい。
その他の構成として、本発明の有機EL素子は、正孔注入層、正孔輸送層、正孔ブロック層、電子輸送層、電子注入層、乾燥剤、封止材、金属板、フィルタ層、色変換蛍光体層(CCM層)、パッシベーション層、平坦化層などを備えていてもよい。
本発明の有機EL素子は、本発明の基板を少なくとも備えるものであり、それ以外の構成等は特に限定されない。
本発明の有機EL素子は、有機発光層と電極層と基板とを少なくとも備える有機EL素子において、該基板として本発明の基板を用いる、有機EL素子であってもよい。
その他の構成として、本発明の有機EL素子は、正孔注入層、正孔輸送層、正孔ブロック層、電子輸送層、電子注入層、乾燥剤、封止材、金属板、フィルタ層、色変換蛍光体層(CCM層)、パッシベーション層、平坦化層などを備えていてもよい。
[有機ELディスプレイ]
本発明の有機ELディスプレイは、本発明の基板を少なくとも備えるものであり、それ以外の構成等は特に限定されない。
本発明の有機ELディスプレイは、本発明の有機EL素子を備えていてもよい。
本発明の有機ELディスプレイは、本発明の基板を少なくとも備えるものであり、それ以外の構成等は特に限定されない。
本発明の有機ELディスプレイは、本発明の有機EL素子を備えていてもよい。
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はかかる実施例に限定されるものではない。
初めに、基板の評価のための測定項目およびその測定および評価方法について説明する。
初めに、基板の評価のための測定項目およびその測定および評価方法について説明する。
[測定項目]
<熱膨張係数およびガラス転移温度>
熱膨張係数およびガラス転移温度(以下、Tgと呼ぶことがある)は、株式会社リガク製、機種名‘Thermo Plus EvoII TMA8310’を用いた引張り試験を行い、求めた。
<熱膨張係数およびガラス転移温度>
熱膨張係数およびガラス転移温度(以下、Tgと呼ぶことがある)は、株式会社リガク製、機種名‘Thermo Plus EvoII TMA8310’を用いた引張り試験を行い、求めた。
<熱分解温度>
熱分解温度は、株式会社リガク製、機種名‘RIGAKU Thermo Plus TG8310’で測定を行った。
熱分解温度は、株式会社リガク製、機種名‘RIGAKU Thermo Plus TG8310’で測定を行った。
<機械物性>
弾性率、応力、破断伸度等の機械物性は、株式会社島津製作所製の精密万能試験機オートグラフ‘Autograph AG−IS’によって引っ張り試験を行い求めた。
弾性率、応力、破断伸度等の機械物性は、株式会社島津製作所製の精密万能試験機オートグラフ‘Autograph AG−IS’によって引っ張り試験を行い求めた。
<透明性>
透明性は、株式会社島津製作所製、紫外可視近赤外分光光度計(UV−VIS−NIR SPECTROMETER 機種名 UV−3150)で測定した。また、透過率が1%以下となる波長の最大値をカットオフ波長(nm)とした。
透明性は、株式会社島津製作所製、紫外可視近赤外分光光度計(UV−VIS−NIR SPECTROMETER 機種名 UV−3150)で測定した。また、透過率が1%以下となる波長の最大値をカットオフ波長(nm)とした。
<溶剤溶解性>
溶剤溶解性は、東京理化器械株式会社製の恒温振盪水槽である機種名‘UNI THERMO SHAKER NTS−1300’を用いて、水浴で恒温しながら100rpmの振盪スピードで下記の時間振動撹拌した後、目視による固形物のありなしで確認した。30℃で1時間以内に溶解するものを良好、70℃で1時間以内に溶解するものを可溶、70℃で1時間以内に溶解しないものを不溶とした。
溶剤溶解性は、東京理化器械株式会社製の恒温振盪水槽である機種名‘UNI THERMO SHAKER NTS−1300’を用いて、水浴で恒温しながら100rpmの振盪スピードで下記の時間振動撹拌した後、目視による固形物のありなしで確認した。30℃で1時間以内に溶解するものを良好、70℃で1時間以内に溶解するものを可溶、70℃で1時間以内に溶解しないものを不溶とした。
[ポリイミド溶液の調製と基板の作製]
以下の[実施例1〜5]および[比較例1〜2]により、ポリイミド基板(ポリイミドの成形体)の製法について説明する。なお、本製法においては、機械的強度等の物性を測定するために支持基材からポリイミド基板の剥離を行っているが、剥離を行わずにそのまま基板上に直接デバイスを作製することが可能である。
以下の[実施例1〜5]および[比較例1〜2]により、ポリイミド基板(ポリイミドの成形体)の製法について説明する。なお、本製法においては、機械的強度等の物性を測定するために支持基材からポリイミド基板の剥離を行っているが、剥離を行わずにそのまま基板上に直接デバイスを作製することが可能である。
[実施例1]
窒素導入管および攪拌翼を備えた容量500mLの三口フラスコに、それぞれの化学構造を下記反応式に示すHFIP−mTB、60.0g(110mmol)、BPDA、32.4g(110mmol)に、ジメチルアセトアミド(以下、DMAcと呼ぶことがある)220gを加え、窒素雰囲気下、20℃で攪拌し、下記反応式に示す反応を行った。得られた反応液にピリジン34.8g(440mmol)、無水酢酸44.9g(440mmol)を順に加え、さらに24時間攪拌し、イミド化を行った。その後、DMAc、150gを加え希釈し、加圧濾過することで、反応式中のポリイミド(A)のDMAc溶液を調製した。ポリイミドのDMAc溶液のゲル・パーミエーション・クロマトグラフィ(以下GPCと呼ぶことがある。東ソー株式会社製、機種名 HLC−8320GPC、カラム:TSKgel SuperHZM−H、溶媒:テトラヒドロフラン(以下、THFと呼ぶことがある)での分子量の測定結果は、Mw=134000、Mw/Mn=1.97であった。ポリイミドのDMAc溶液の一部を溶剤溶解性試験用サンプル、残りをポリイミド基板(ポリイミド(A)の成形体)の作製に用いた。
窒素導入管および攪拌翼を備えた容量500mLの三口フラスコに、それぞれの化学構造を下記反応式に示すHFIP−mTB、60.0g(110mmol)、BPDA、32.4g(110mmol)に、ジメチルアセトアミド(以下、DMAcと呼ぶことがある)220gを加え、窒素雰囲気下、20℃で攪拌し、下記反応式に示す反応を行った。得られた反応液にピリジン34.8g(440mmol)、無水酢酸44.9g(440mmol)を順に加え、さらに24時間攪拌し、イミド化を行った。その後、DMAc、150gを加え希釈し、加圧濾過することで、反応式中のポリイミド(A)のDMAc溶液を調製した。ポリイミドのDMAc溶液のゲル・パーミエーション・クロマトグラフィ(以下GPCと呼ぶことがある。東ソー株式会社製、機種名 HLC−8320GPC、カラム:TSKgel SuperHZM−H、溶媒:テトラヒドロフラン(以下、THFと呼ぶことがある)での分子量の測定結果は、Mw=134000、Mw/Mn=1.97であった。ポリイミドのDMAc溶液の一部を溶剤溶解性試験用サンプル、残りをポリイミド基板(ポリイミド(A)の成形体)の作製に用いた。
ポリイミド(A)基板(ポリイミド(A)の成形体)は、ポリイミド(A)のDMAc溶液をガラス基材に塗布後、乾燥、加熱処理することで作製した。
まず、ポリイミド(A)のDMAc溶液をガラス基材上に垂らし、スピンコーターを用いて10秒かけて回転速度1200rpmに上昇させた後、回転速度1200rpmで10秒間保持し、ポリイミド(A)のDMAc溶液を均一に塗布した。窒素雰囲気下、180℃で30分間乾燥して、溶媒を除去し、さらに200℃で2時間加熱処理した後、冷却し、ガラス基材からポリイミド膜を剥がすことで、ポリイミド(A)基板(ポリイミド(A)の成形体)を得た。膜厚計(株式会社ニコン製、機種名:DIGIMICRO MH−15)で厚みを測定したところ、51μmであった。
まず、ポリイミド(A)のDMAc溶液をガラス基材上に垂らし、スピンコーターを用いて10秒かけて回転速度1200rpmに上昇させた後、回転速度1200rpmで10秒間保持し、ポリイミド(A)のDMAc溶液を均一に塗布した。窒素雰囲気下、180℃で30分間乾燥して、溶媒を除去し、さらに200℃で2時間加熱処理した後、冷却し、ガラス基材からポリイミド膜を剥がすことで、ポリイミド(A)基板(ポリイミド(A)の成形体)を得た。膜厚計(株式会社ニコン製、機種名:DIGIMICRO MH−15)で厚みを測定したところ、51μmであった。
溶剤溶解性試験用サンプル(実施例1における沈殿物)は、前記のポリイミド(A)のDMAc溶液30gを、水90gとメタノール30gの混合溶液中に徐々に注ぎ、ポリイミド(A)を沈殿させたものを、窒素雰囲気下100℃で2時間乾燥して作製した。
[実施例2]
窒素導入管および攪拌翼を備えた容量500mLの三口フラスコに、それぞれの化学構造を下記反応式に示すHFIP−mTB、60.0g(110mmol)、6FDA、48.9g(110mmol)、DMAc、220gを加え、窒素雰囲気下、20℃で攪拌し、下記反応式に示す反応を行った。得られた反応液にピリジン34.8g(440mmol)、無水酢酸44.9g(440mmol)を順に加え、さらに24時間攪拌し、イミド化を行った。その後、加圧濾過することでポリイミド(B)のDMAc溶液を作製した。反応式中のポリイミド(B)のDMAc溶液の前記GPCでの分子量の測定結果は、Mw=86000、Mw/Mn=1.78であった。ポリイミド(B)のDMAc溶液の一部を溶剤溶解性試験用サンプル、残りをポリイミド(B)基板(ポリイミド(B)の成形体)の作製に用いた。
窒素導入管および攪拌翼を備えた容量500mLの三口フラスコに、それぞれの化学構造を下記反応式に示すHFIP−mTB、60.0g(110mmol)、6FDA、48.9g(110mmol)、DMAc、220gを加え、窒素雰囲気下、20℃で攪拌し、下記反応式に示す反応を行った。得られた反応液にピリジン34.8g(440mmol)、無水酢酸44.9g(440mmol)を順に加え、さらに24時間攪拌し、イミド化を行った。その後、加圧濾過することでポリイミド(B)のDMAc溶液を作製した。反応式中のポリイミド(B)のDMAc溶液の前記GPCでの分子量の測定結果は、Mw=86000、Mw/Mn=1.78であった。ポリイミド(B)のDMAc溶液の一部を溶剤溶解性試験用サンプル、残りをポリイミド(B)基板(ポリイミド(B)の成形体)の作製に用いた。
ポリイミド(B)基板(ポリイミド(B)の成形体)は、ポリイミド(B)のDMAc溶液をガラス基材に塗布後、乾燥、加熱処理することで作製した。
まず、ポリイミド(B)のDMAc溶液をガラス基材上に垂らし、スピンコーターを用いて10秒かけて回転速度1200rpmに上昇させた後、回転速度1200rpmで10秒間保持し、ポリイミド(B)のDMAc溶液を均一に塗布した。窒素雰囲気下、180℃で30分間乾燥して溶媒を除去し、さらに200℃で2時間熱処理した後、冷却し、ガラス基材からポリイミド膜を剥がすことで、ポリイミド(B)基板(ポリイミド(B)の成形体)を得た。前記膜厚計で厚みを測定したところ、53μmであった。
まず、ポリイミド(B)のDMAc溶液をガラス基材上に垂らし、スピンコーターを用いて10秒かけて回転速度1200rpmに上昇させた後、回転速度1200rpmで10秒間保持し、ポリイミド(B)のDMAc溶液を均一に塗布した。窒素雰囲気下、180℃で30分間乾燥して溶媒を除去し、さらに200℃で2時間熱処理した後、冷却し、ガラス基材からポリイミド膜を剥がすことで、ポリイミド(B)基板(ポリイミド(B)の成形体)を得た。前記膜厚計で厚みを測定したところ、53μmであった。
溶剤溶解性試験用サンプル(実施例2における沈殿物)は、前記のポリイミド(B)のDMAc溶液、30gを水90gとメタノール30gの混合溶液に徐々に注ぎ、ポリイミド(B)を沈殿させたものを、窒素雰囲気下100℃で2時間乾燥して作製した。
[実施例3]
窒素導入管および攪拌翼を備えた容量500mLの三口フラスコに、それぞれの化学構造を下記反応式に示すHFIP−mTB、60.0g(110mmol)、ODPA、34.1g(110mmol)、溶剤としてのDMAc、160gを加え、窒素雰囲気下、20℃で攪拌し、下記反応式に示す反応を行った。得られた反応液にピリジン34.8g(440mmol)、無水酢酸44.9g(440mmol)を順に加え、さらに24時間攪拌し、イミド化を行った。その後、加圧濾過することで、反応式中のポリイミド(C)のDMAc溶液を調製した。ポリイミド(C)のDMAc溶液の上記GPCでの分子量の測定結果は、Mw=84400、Mw/Mn=2.03であった。ポリイミド(C)のDMAc溶液の一部を溶剤溶解性試験用サンプル、残りをポリイミド(C)基板(ポリイミド(C)の成形体)の作製に用いた。
窒素導入管および攪拌翼を備えた容量500mLの三口フラスコに、それぞれの化学構造を下記反応式に示すHFIP−mTB、60.0g(110mmol)、ODPA、34.1g(110mmol)、溶剤としてのDMAc、160gを加え、窒素雰囲気下、20℃で攪拌し、下記反応式に示す反応を行った。得られた反応液にピリジン34.8g(440mmol)、無水酢酸44.9g(440mmol)を順に加え、さらに24時間攪拌し、イミド化を行った。その後、加圧濾過することで、反応式中のポリイミド(C)のDMAc溶液を調製した。ポリイミド(C)のDMAc溶液の上記GPCでの分子量の測定結果は、Mw=84400、Mw/Mn=2.03であった。ポリイミド(C)のDMAc溶液の一部を溶剤溶解性試験用サンプル、残りをポリイミド(C)基板(ポリイミド(C)の成形体)の作製に用いた。
ポリイミド(C)基板(ポリイミド(C)の成形体)は、ポリイミド(C)のDMAc溶液をガラス基材に塗布後、乾燥、加熱処理して作製した。
まず、ポリイミド(C)のDMAc溶液をガラス基材上に垂らし、スピンコーターを用いて10秒かけて回転速度700rpmに上昇させた後、回転速度700rpmで10秒間保持し、ポリイミド(A)のDMAc溶液を、均一に塗布した。窒素雰囲気下、180℃で30分間乾燥して溶媒を除去し、さらに200℃で2時間加熱処理した後、冷却し、ガラス基材からポリイミド膜を剥がすことで、ポリイミド(C)基板(ポリイミド(C)の成形体)を得た。膜厚計で厚みを測定したところ、48μmであった。
まず、ポリイミド(C)のDMAc溶液をガラス基材上に垂らし、スピンコーターを用いて10秒かけて回転速度700rpmに上昇させた後、回転速度700rpmで10秒間保持し、ポリイミド(A)のDMAc溶液を、均一に塗布した。窒素雰囲気下、180℃で30分間乾燥して溶媒を除去し、さらに200℃で2時間加熱処理した後、冷却し、ガラス基材からポリイミド膜を剥がすことで、ポリイミド(C)基板(ポリイミド(C)の成形体)を得た。膜厚計で厚みを測定したところ、48μmであった。
溶剤溶解性試験用サンプル(実施例3における沈殿物)は、前記のポリイミド(C)のDMAc溶液30gを、水90gとメタノール30gの混合溶液中に徐々に注ぎ、ポリイミド(C)を沈殿させたものを、窒素雰囲気下100℃で2時間乾燥して作製した。
[比較例1]
窒素導入管および攪拌翼を備えた容量500mLの三口フラスコに、それぞれの化学構造を下記反応式に示すHFIP−mTB、60.0g(110mmol)、DSDA、39.4g(110mmol)に、DMAc、220gを加え、窒素雰囲気下、20℃で攪拌し、下記反応式に示す反応を行った。得られた反応液にピリジン、34.8g(440mmol)、無水酢酸、44.9g(440mmol)を順に加え、さらに24時間攪拌し、イミド化を行った。その後、加圧濾過することで、反応式中のポリイミド(D)のDMAc溶液を調製した。ポリイミド(D)のDMAc溶液のGPCでの分子量の測定結果は、Mw=74900、Mw/Mn=1.63であった。ポリイミド(D)のDMAc溶液の一部を溶剤溶解性試験用サンプル、残りを基板(ポリイミド(D)の成形体)の作製に用いた。
窒素導入管および攪拌翼を備えた容量500mLの三口フラスコに、それぞれの化学構造を下記反応式に示すHFIP−mTB、60.0g(110mmol)、DSDA、39.4g(110mmol)に、DMAc、220gを加え、窒素雰囲気下、20℃で攪拌し、下記反応式に示す反応を行った。得られた反応液にピリジン、34.8g(440mmol)、無水酢酸、44.9g(440mmol)を順に加え、さらに24時間攪拌し、イミド化を行った。その後、加圧濾過することで、反応式中のポリイミド(D)のDMAc溶液を調製した。ポリイミド(D)のDMAc溶液のGPCでの分子量の測定結果は、Mw=74900、Mw/Mn=1.63であった。ポリイミド(D)のDMAc溶液の一部を溶剤溶解性試験用サンプル、残りを基板(ポリイミド(D)の成形体)の作製に用いた。
ポリイミド(D)基板(ポリイミド(D)の成形体)は、ポリイミド(D)のDMAc溶液をガラス基材に塗布後、乾燥、加熱処理して作製した。
まず、ポリイミド(D)のDMAc溶液をガラス基材上に垂らし、スピンコーターを用いて10秒かけて回転速度350rpmに上昇させた後、回転速度350rpmで10秒間保持し、ポリイミド(D)のDMAc溶液を、ガラス基材上に均一に塗布した。窒素雰囲気下、180℃で30分間乾燥して溶媒を除去し、さらに200℃で2時間加熱処理した後、冷却し、ガラス基材からポリイミド膜を剥がすことで、ポリイミド(D)基板(ポリイミド(D)の成形体)を得た。膜厚計で厚みを測定したところ、43μmであった。
まず、ポリイミド(D)のDMAc溶液をガラス基材上に垂らし、スピンコーターを用いて10秒かけて回転速度350rpmに上昇させた後、回転速度350rpmで10秒間保持し、ポリイミド(D)のDMAc溶液を、ガラス基材上に均一に塗布した。窒素雰囲気下、180℃で30分間乾燥して溶媒を除去し、さらに200℃で2時間加熱処理した後、冷却し、ガラス基材からポリイミド膜を剥がすことで、ポリイミド(D)基板(ポリイミド(D)の成形体)を得た。膜厚計で厚みを測定したところ、43μmであった。
溶剤溶解性試験用サンプル(実施例4における沈殿物)は、前記のポリイミド(D)のDMAc溶液30gを、水90gとメタノール30gの混合溶液中に徐々に注ぎ、ポリイミド(D)を沈殿させたものを、窒素雰囲気下100℃で2時間乾燥して作製した。
[比較例2]
窒素導入管および攪拌翼を備えた容量500mLの三口フラスコに、それぞれの化学構造を下記反応式に示すHFIP−mTB、60.0g(110mmol)、BTDA、35.4g(110mmol)に、溶剤としてのDMAc、220gを加え、窒素雰囲気下、20℃で攪拌し、下記反応式に示す反応を行った。得られた反応液にピリジン、34.8g(440mmol)、無水酢酸、44.9g(440mmol)を順に加え、さらに24時間攪拌し、イミド化を行った。その後、加圧濾過することで、反応式中のポリイミド(E)のDMAc溶液を調製した。ポリイミド(E)のDMAc溶液のGPCでの分子量の測定結果は、Mw=74900、Mw/Mn=1.63であった。ポリイミド(E)のDMAc溶液の一部を溶剤溶解性試験用サンプル、残りをポリイミド(E)基板(ポリイミド(E)の成形体)の作製に用いた。
窒素導入管および攪拌翼を備えた容量500mLの三口フラスコに、それぞれの化学構造を下記反応式に示すHFIP−mTB、60.0g(110mmol)、BTDA、35.4g(110mmol)に、溶剤としてのDMAc、220gを加え、窒素雰囲気下、20℃で攪拌し、下記反応式に示す反応を行った。得られた反応液にピリジン、34.8g(440mmol)、無水酢酸、44.9g(440mmol)を順に加え、さらに24時間攪拌し、イミド化を行った。その後、加圧濾過することで、反応式中のポリイミド(E)のDMAc溶液を調製した。ポリイミド(E)のDMAc溶液のGPCでの分子量の測定結果は、Mw=74900、Mw/Mn=1.63であった。ポリイミド(E)のDMAc溶液の一部を溶剤溶解性試験用サンプル、残りをポリイミド(E)基板(ポリイミド(E)の成形体)の作製に用いた。
ポリイミド(E)基板(ポリイミド(E)の成形体)は、ポリイミド(E)のDMAc溶液をガラス基材に塗布後、乾燥、加熱処理して作製した。
まず、ポリイミド(E)のDMAc溶液を垂らし、スピンコーターを用いて10秒かけて回転速度550rpmに上昇させた後、回転速度550rpmで10秒間保持し、ポリイミド(E)のDMAc溶液を、ガラス基材上に均一に塗布した。窒素雰囲気下、180℃の温度下で30分溶媒を除去乾燥させ、200℃で2時間加熱処理した後、冷却し、ガラス基材からポリイミド膜を剥がすことで、ポリイミド成形体としての上記ポリイミド(E)からなる基板を得た。膜厚計で厚みを測定したところ、50μmであった。
まず、ポリイミド(E)のDMAc溶液を垂らし、スピンコーターを用いて10秒かけて回転速度550rpmに上昇させた後、回転速度550rpmで10秒間保持し、ポリイミド(E)のDMAc溶液を、ガラス基材上に均一に塗布した。窒素雰囲気下、180℃の温度下で30分溶媒を除去乾燥させ、200℃で2時間加熱処理した後、冷却し、ガラス基材からポリイミド膜を剥がすことで、ポリイミド成形体としての上記ポリイミド(E)からなる基板を得た。膜厚計で厚みを測定したところ、50μmであった。
溶剤溶解性試験用サンプル(実施例1における沈殿物)は、前記のポリイミド(E)のDMAc溶液30gを、水90gとメタノール30gの混合溶液中に徐々に注ぎ、ポリイミド(E)を沈殿させたものを、窒素雰囲気下100℃で2時間乾燥して作製した。
[参考例1〜3]
表1中に参考例として、特許文献3の実施例1に記載のポリイミドの物性測定および評価結果を参考例1、特許文献4の実施例1及び実施例2に記載のポリイミドの物性測定および評価結果を参考例2、参考例3として記載した。
表1中に参考例として、特許文献3の実施例1に記載のポリイミドの物性測定および評価結果を参考例1、特許文献4の実施例1及び実施例2に記載のポリイミドの物性測定および評価結果を参考例2、参考例3として記載した。
以下、参考例1〜3のポリイミド(ポリイミド(F)〜ポリイミド(H))の構造式を示す。
参考例1のポリイミドの構造:
参考例1のポリイミドの構造:
参考例2のポリイミドの構造:
参考例3のポリイミドの構造:
[基板の物性評価]
上記実施例で作製した有機EL用基板である実施例1〜3および比較例1〜2の基板の物性評価結果を表1に示す。
上記実施例で作製した有機EL用基板である実施例1〜3および比較例1〜2の基板の物性評価結果を表1に示す。
表1に示すように、本発明の実施例1〜3の有機EL用基板は、参考例1〜3の基板に比べCTEが低く、温度変化に対する寸歩安定性に優れている。類似構造を有する含フッ素ポリイミドである参考例1のポリイミド基板のCTEと比べても、非常に低い値を示していた。
本発明の実施例1〜3の有機EL用基板は、参考例1〜3の基板と比較して、Tgが高く耐熱性に優れていた。尚、実施例1〜2および比較例1〜2において、30℃〜400℃の間にはTgが観測されなかった。
本発明の実施例1〜3の有機EL用基板は、参考例1の基板に比べTd5は劣るが、有機EL用基板として用いるには十分な値であり、耐熱性を有していた。
本発明の実施例1〜3の有機EL用基板は、機械強度において十分な弾性率および最大応力を有している。破断伸度は、参考例2、参考例3と同等程度有しており、有機EL用基板として用いるには十分な引張強度を有していた。
本発明の実施例1〜3の有機EL用基板は、比較例1〜2の基板に比べて、400nmにおける光透過率、カットオフ波長に優れており、ボトムエミッション型有機ELディスプレイ用の有機EL用基板として用いるには十分な透明性を有していた。
[溶剤溶解性試験]
溶剤溶解試験は、ポリイミド(A)〜(E)(実施例1〜3および比較例1〜2)における沈殿物および実施例1〜5の有機EL用基板の10種類の試験体について行った。
溶剤溶解試験は、ポリイミド(A)〜(E)(実施例1〜3および比較例1〜2)における沈殿物および実施例1〜5の有機EL用基板の10種類の試験体について行った。
スクリュー式で蓋のできるビンに、試験体と表2に示す溶媒を入れ、溶解後は10質量%の濃度になるように調整し密栓し、振動撹拌機を用いて撹拌し、溶解性を評価した。
溶剤溶解試験の結果を表2に示す。
溶剤溶解試験の結果を表2に示す。
水浴温度が30℃で1時間以内に溶解するものを易溶、水浴温度が70℃で1時間以内に溶解するものを可溶、水浴温度が70℃で1時間以内に溶解しないものを不溶とした。
表2に示すように、ポリイミド(A)〜(E)(実施例1〜3および比較例1〜2)における沈殿物は、いずれもプロトン性極性溶媒及び無極性溶媒には不溶であった。非プロトン性極性溶剤に対して溶解性を示し、特にDMAc、THFに良好な溶解性を示した。したがって、ポリイミド(A)〜(E)(実施例1〜3および比較例1〜2)における沈殿物は、優れた成形加工性を有する。
ポリイミド(A)〜(E)(実施例1〜3および比較例1〜2)の基板は、試験を行ったすべての溶剤に対して不溶であったことから、本発明の透明基板は素子作製プロセスで損傷しない程度の耐溶剤性を有する。
Claims (15)
- 一般式(1)で表される繰り返し単位を有するポリイミドのみからなるポリイミド樹脂組成物、の成形体からなる、請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス用基板。
- 400〜780nmの波長領域での透過率が60%以上であり、30〜250℃における熱膨張係数が40ppm/℃以下である、請求項1または2に記載の有機エレクトロルミネッセンス用基板。
- R1およびR2がそれぞれメチル基である、請求項1〜3の何れか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス用基板。
- 請求項1〜5のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス用基板を少なくとも備える、有機エレクトロルミネッセンス素子。
- 請求項1〜5のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス用基板を少なくとも備える、有機エレクトロルミネッセンスディスプレイ。
- 請求項1〜5のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス用基板を少なくとも備える、ボトムエミッション型有機エレクトロルミネッセンスディスプレイ。
- R1およびR2がそれぞれメチル基である、請求項9に記載のポリイミド溶液。
- 有機溶媒が、アミド系溶媒、エーテル系溶媒、芳香族性溶媒、ハロゲン系溶媒およびラクトン系溶媒からなる群から選ばれる少なくとも一種である、請求項9〜11の何れか一項に記載のポリイミド溶液。
- 有機溶媒が、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルホルムアミド、ヘキサメチルリン酸トリアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、ジフェニルエーテル、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、トリオキサン、ベンゼン、アニソール、ニトロベンゼン、ベンゾニトリル、クロロホルム、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、ε−バレロラクトン、ε−バレロラクトン、γ−カプロラクトン、ε−カプロラクトンおよびα−メチル−γ−ブチロラクトンからなる群から選ばれる少なくとも一種である、請求項9〜12の何れか一項に記載のポリイミド溶液。
- 溶液中、ポリイミド樹脂組成物の濃度が5〜50質量%である、請求項9〜13の何れか一項に記載のポリイミド溶液。
- 請求項9〜14の何れか一項に記載のポリイミド溶液を支持基材に塗布する工程と、
塗布したポリイミド溶液を乾燥させて、樹脂膜を得る工程と、
得られた樹脂膜を加熱処理してポリイミド成形体を得る工程と、を少なくとも含む、ポリイミド成形体の製造方法。
Priority Applications (4)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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