JP2016065198A - 茶系乃至褐色系の色素 - Google Patents

茶系乃至褐色系の色素 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明の目的の1つは、優れた耐酸性及び/又は耐塩性を備え、低pH条件又は高塩濃度条件で使用しても、析出、斑点、着色ムラ等の発生を抑制できる茶系乃至褐色系の色素を提供することである。【解決手段】茶系乃至褐色系の色素を色価E10%(500nm)=0.1となるように水に溶解させた茶系乃至褐色系の色素溶液に対してクエン酸を1重量%となるように添加すると、茶系乃至褐色系の色素の60%以上が溶解した状態を維持する特性等を備える茶系乃至褐色系の色素は、優れた耐酸性及び/又は耐塩性を備え、低pH条件又は高塩濃度条件で使用しても、析出、斑点、着色ムラ等の発生を抑制できる。【選択図】なし

Description

本発明は、優れた耐酸性及び/又は耐塩性を備え、更に優れた起泡性及び泡安定性をも備える茶系乃至褐色系の色素に関する。また、本発明は、当該茶系乃至褐色系の色素の製造方法に関する。
従来、飲食品を茶系乃至褐色系の色調に着色するための天然色素として、カカオ色素、コウリャン色素、タマネギ色素、タマリンド色素等の茶系乃至褐色系の色素が広く利用されている。これらの茶系乃至褐色系の色素は、植物原料から色素成分を抽出することによって製造されている。例えば、カカオ色素の場合であれば、カカオ種子(外皮及び豆)を原料として、色素成分を抽出することによって製造されている。また、カカオ種子(外皮及び豆)等の茶系乃至褐色系の色素の植物原料には、色素成分の他に、多糖類、ガム質、タンパク質等の夾雑物が含まれており、これらの夾雑物は、異味、異臭、退色、変色、析出物の生成等の要因になり得るため、茶系乃至褐色系の色素の製造では、これらの夾雑物を低減させることが重要になっている。手法が種々検討されている。
従来、茶系乃至褐色系の色素の製造において、夾雑物を低減させて茶系乃至褐色系の色素を得る方法が種々報告されている。例えば、特許文献1には、カカオハスクを中性ないし微アルカリ性で抽出する処理、得られた抽出液のpHを1〜2に調整した後にアセトンを添加してガム質を除去する処理、及び得られた色素液を微アルカリ性にして塩析により色素を析出させる処理を行うことによって、水に易溶性で広域のpHに安定な色素が得られることが報告されている。また、特許文献2には、カカオハスクを予め酸処理した後に抽出処理を行うことによって、夾雑物の混入を低減させた色素が得られることが報告されている。更に、特許文献3には、カカオハスクを弱アルカリ性で抽出処理した後に、分画分子量2,000〜100,000の限外濾過膜を用いて不純物を除去することにより、異味、異臭のない色素が得られることが報告されている。
しかしながら、従来の製造方法で得られる茶系乃至褐色系の色素では、低pH条件又は高塩濃度条件で析出する成分が不可避的に混在するため、低pH条件又は高塩濃度条件での安定性の点で満足できるものではなく、炭酸飲料、果汁飲料、ゼリー、ヨーグルト等の酸性飲食品や、タレ類、ソース類、つゆ類、カレールウ等の塩含有飲食品に添加すると、析出、斑点、着色ムラ等が生じることがある。
一方、ビール風ノンアルコール飲料、炭酸飲料、発泡性果汁飲料等において、飲んだ際の清涼感や口当たりを向上させるために、泡を発生させ、安定的な泡が保持できる特性が求められている。従来、茶系乃至褐色系の色素の中でも、カラメル色素には、起泡した泡を有効に保持する作用があり、発泡性飲料用泡安定化剤として使用できることが知られている(特許文献4参照)。しかしながら、カラメル色素以外の色素を使用して、優れた起泡性及び泡安定性を備えさせる技術については報告されていない。
このような従来技術を背景として、低pH条件又は高塩濃度条件でも安定に着色可能な茶系乃至褐色系の色素、或いは優れた起泡性及び泡安定性を備える茶系乃至褐色系の色素の開発が望まれている。
特開昭48−17825号公報 特開昭53−109529号公報 特開昭60−43355号公報 特開2014−82940号公報
本発明の目的の一つは、優れた耐酸性及び/又は耐塩性を備え、低pH条件又は高塩濃度条件で使用しても、析出、斑点、着色ムラ等の発生を抑制できる茶系乃至褐色系の色素を提供することである。また、本発明の他の目的の一つは、優れた起泡性及び泡安定性を備える茶系乃至褐色系の色素を提供することである。更に、本発明の他の目的の一つは、前記特性を有する茶系乃至褐色系の色素の製造方法を提供することである。
本発明者は、前記課題を解決すべく鋭意検討を行ったところ、下記(i)〜(iii)の少なくとも1つの特性を備える茶系乃至褐色系の色素は、優れた耐酸性及び/又は耐塩性を備え、低pH条件又は高塩濃度条件で使用しても、析出、斑点、着色ムラ等の発生を抑制できることを見出した。また、本発明者は、下記(i)〜(iii)の少なくとも1つの特性を備える茶系乃至褐色系の色素は、気泡力が強く優れた起泡性を備えると共に、生じた泡を長時間安定に維持でき、泡安定性の点でも優れていることを見出した。
(i)茶系乃至褐色系の色素を色価E10%(500nm)=0.1となるように水に溶解させた色素溶液に対してクエン酸を1重量%となるように添加すると、茶系乃至褐色系の色素の60%以上が溶解した状態を維持する。
(ii)茶系乃至褐色系の色素を色価E10%(500nm)=0.1となるように水に溶解させた色素溶液に対してクエン酸を1重量%となるように添加すると、茶系乃至褐色系の色素の40%以上が溶解した状態を維持し、且つ茶系乃至褐色系の色素を色価E10%(500nm)=0.1となるように水に溶解させた色素溶液に対して塩化ナトリウムを10重量%となるように添加すると、乃至褐色系の色素の80%以上が溶解した状態を維持する。
(iii)茶系乃至褐色系の色素を色価E10%(500nm)=0.1となるように水に溶解させた色素溶液に対してクエン酸を1重量%且つ塩化ナトリウムを10重量%となるように添加すると、茶系乃至褐色系の色素の20%以上が溶解した状態を維持する。
また、前記特性を備える茶系乃至褐色系の色素は、茶系乃至褐色系の色素(茶系乃至褐色系の色素を含む植物原料の状態であってもよい)に対してアルカリ性条件下で酸素ガスを供給することによって得られることをも見出した。更に、前記特性を備える茶系乃至褐色系の色素は、茶系乃至褐色系の色素を含む溶液を、吸着樹脂処理、陽イオン交換樹脂処理、陰イオン交換樹脂処理、又は活性炭処理に供して、特定の画分を回収することによって得られることをも見出した。本発明は、かかる知見に基づいて、更に検討を重ねることにより完成したものである。
即ち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1. 下記(i)〜(iii)の少なくとも1つの特性を備えていることを特徴とする茶系乃至褐色系の色素:
(i)茶系乃至褐色系の色素を色価E10%(500nm)=0.1となるように水に溶解させた色素溶液に対してクエン酸を1重量%となるように添加すると、茶系乃至褐色系の色素の60%以上が溶解した状態を維持する。
(ii)茶系乃至褐色系の色素を色価E10%(500nm)=0.1となるように水に溶解させた色素溶液に対してクエン酸を1重量%となるように添加すると、茶系乃至褐色系の色素の40%以上が溶解した状態を維持し、且つ茶系乃至褐色系の色素を色価E10%(500nm)=0.1となるように水に溶解させた色素溶液に対して塩化ナトリウムを10重量%となるように添加すると、乃至褐色系の色素の80%以上が溶解した状態を維持する。
(iii)茶系乃至褐色系の色素を色価E10%(500nm)=0.1となるように水に溶解させた色素溶液に対してクエン酸を1重量%且つ塩化ナトリウムを10重量%となるように添加すると、茶系乃至褐色系の色素の20%以上が溶解した状態を維持する。
項2. 前記(i)〜(iii)の少なくとも2つの特性を備える、項1に記載の茶系乃至褐色系の色素。
項3. カカオ色素、コウリャン色素、タマネギ色素、及びタマリンド色素よりなる群から選択される少なくとも1種である、項1又は2に記載の茶系乃至褐色系の色素。
項4. pHが2〜6及び/又は塩濃度が1〜30重量%の飲食品の着色に使用される、項1〜3のいずれかに記載の茶系乃至褐色系の色素。
項5. 項1〜4のいずれかに記載の茶系乃至褐色系の色素を含有する、タレ類の着色剤。
項6. 項1〜4のいずれかに記載の茶系乃至褐色系の色素を含有する、タレ類。
項7. 項1〜4のいずれかに記載の茶系乃至褐色系の色素を含有する、発泡性飲料の起泡剤又は泡安定剤。
項8. 項1〜4のいずれかに記載の茶系乃至褐色系の色素を含有する、発泡性飲料。
項9. 茶系乃至褐色系の色素に対してアルカリ性条件下での酸素ガスを供給することにより、茶系乃至褐色系の色素溶液を得ることを特徴とする、茶系乃至褐色系の色素の製造方法。
項10. 茶系乃至褐色系の色素を含む植物原料に対してアルカリ性条件下での酸素ガスを供給する、項9に記載の製造方法。
項11. 前記酸素ガスとして空気を供給する、項9又は10に記載の製造方法。
項12. 前記酸素ガスの供給速度が0.01vvm以上である、項9〜11のいずれかに記載の製造方法。
項13. 前記酸素ガス供給時のpHが8以上である、項9〜12のいずれかに記載の製造方法。
項14. カカオ色素、コウリャン色素、タマネギ色素、及びタマリンド色素よりなる群から選択される少なくとも1種の製造に適用される、項9〜13のいずれかに記載の製造方法。
項15. 茶系乃至褐色系の色素を含む溶液を、吸着樹脂処理、陽イオン交換樹脂処理、陰イオン交換樹脂処理、又は活性炭処理に供して、吸着樹脂処理による非吸着画分、陽イオン交換樹脂処理による非吸着画分、陰イオン交換樹脂処理による吸着画分、又は活性炭処理による非吸着画分を回収することを特徴とする、茶系乃至褐色系の色素の製造方法。
本発明の茶系乃至褐色系の色素は、優れた耐酸性及び/又は耐塩性を備え、低pH条件又は高塩濃度条件で使用しても、析出、斑点、着色ムラ等の発生を抑制でき、酸性飲食品や高塩濃度の飲食品を初めとして様々な飲食品に対して、均一で良好な着色が可能になる。
また、本発明の茶系乃至褐色系の色素は、起泡性及び泡安定性に優れているので、炭酸発泡性飲料に添加すると、効率的に気泡を形成させると共に、生成した泡を長時間安定に維持することができる。
更に、本発明の茶系乃至褐色系の色素の製造方法によれば、優れた耐酸性及び/又は耐塩性、並びに優れた起泡性及び泡安定性を備える茶系乃至褐色系の色素を簡便に製造することができる。
また、本発明の茶系乃至褐色系の色素は、優れた耐酸性及び/又は耐塩性を備えていることに加え、着色性も良好であるので、低pH及び/又は高塩濃度の飲食品に使用される着色料として好適である。更に、本発明の茶系乃至褐色系の色素は、優れた起泡性及び泡安定性を備えていることに加え、着色性も良好であるので、炭酸発泡性飲料に使用される着色料としても好適である。
参考試験例1において、従来のカカオ色素を添加した着色調味料を遠心分離した際の外観を観察した結果を示す。 参考試験例1において、従来のカカオ色素を添加した着色調味料を用いて調理した豚肉の外観を観察した結果を示す。 試験例1において、カカオ色素の酸溶解維持率、塩溶解維持率、及び酸/塩溶解維持率の測定時に遠心分離後の状態を観察した結果、カカオ色素を添加した着色調味料の遠心分離後の状態を観察した結果、並びにカカオ色素を添加した着色調味料で調理した豚肉の外観を観察した結果を示す。 試験例5において、カカオ色素を添加した着色調味料の遠心分離後の状態を観察した結果、及びカカオ色素を添加した着色調味料で調理した豚肉の外観を観察した結果を示す。 試験例6において、カカオ色素の酸溶解維持率及び塩溶解維持率の測定時に遠心分離後の状態を観察した結果を示す。 試験例6において、カカオ色素の酸/塩溶解維持率の測定時に遠心分離後の状態を観察した結果を示す。 試験例6において、カカオ色素を添加した着色調味料の遠心分離後の状態を観察した結果を示す。 試験例6において、実施例13及び比較例2〜3のカカオ色素を添加した着色調味料で調理した豚肉の外観を観察した結果を示す。 試験例6において、実施例13のカカオ色素又は市販のカラメル色素を添加した着色調味料を用いて調製した煮卵についてイオン交換水の浸漬前後の状態を観察した結果を示す。 試験例7において、カカオ色素の酸溶解維持率、塩溶解維持率、及び酸/塩溶解維持率の測定時に遠心分離後の状態を観察した結果を示す。 試験例7において、カカオ色素を添加した着色調味料の遠心分離後の状態を観察した結果を示す。 試験例8において、各茶系乃至褐色系の色素の酸溶解維持率、及び塩溶解維持率の測定時に遠心分離後の状態を観察した結果を示す。 試験例9において、光曝露前後で酸性飲料の外観を観察した結果を示す。 試験例10において、実施例27のカカオ色素を含む緩衝液の振とう直後の外観を観察した結果を示す。 試験例11において、実施例27のカカオ色素を含む緩衝液の振とう後の外観を観察した結果を示す。実施例2、12、及び27〜30で得られたカカオ色素、並び市販のカラメル色素を含む緩衝液の振とう直後、及び振とう5分後の外観を観察した結果を示す。 試験例11において、実施例2、12、及び27〜30で得られたカカオ色素、並び市販のカラメル色素を含む緩衝液の振とう直後、及び振とう5〜60分後の外観を観察した結果を示す。 試験例12において、カラメル色素、カカオ色素(実施例31)、タマネギ色素(実施例32)、コウリャン色素(実施例33)を含む緩衝液の振とう直後、及び振とう5〜60分後の外観を観察した結果を示す。 試験例13において、カカオ色素(実施例27)を各種濃度で含む緩衝液の振とう直後の外観を観察した結果を示す。
1.茶系乃至褐色系の色素
本発明において、茶系乃至褐色系の色素とは、着色対象物に対して、茶色系若しくは褐色系の色調を付与できる色素である。より具体的には、茶系乃至褐色系の色素とは、色価E10%(500nm)=0.05となるようにクエン酸緩衝液(pH7)(食品添加物公定書第8版記載のもの)にて測定色素を希釈した際に、分光色差計にて測定されるL値が5.00〜95.00、a値が1.00〜16.00、且つb値が16.50〜60.00を満たす色素である。
本発明において、茶系乃至褐色系の色素の種類については、特に制限されないが、具体的には、カカオ色素、コウリャン色素、タマネギ色素、タマリンド色素、カキ色素、カラメル色素、クーロー色素、シアナット色素、ファフィア色素、ペカンナッツ色素、ログウッド色素、チコリ色素等が挙げられる。これらの茶系乃至褐色系の色素の中でも、より一層優れた耐酸性及び/又は耐塩性を備えさせるという観点からは、好ましくはカカオ色素、コウリャン色素、タマネギ色素、タマリンド色素、更に好ましくはカカオ色素が挙げられる。また、これらの茶系乃至褐色系の色素の中でも、より一層優れた起泡性及び泡安定性を備えさせるという観点からは、好ましくはカカオ色素、タマネギ色素、タマリンド色素、更に好ましくはカカオ色素が挙げられる。
本発明の茶系乃至褐色系の色素は、下記(i)〜(iii)の少なくとも1つの特性を備えていることを特徴とする。下記(i)〜(iii)の少なくとも1つの特性を備えることによって、低pH条件又は高塩濃度条件で使用しても、析出、斑点、着色ムラ等の発生を抑制し、均一で良好な着色が可能になる。また、下記(i)〜(iii)の少なくとも1つの特性を備えることによって、優れた起泡性及び泡安定性を備えることも可能になる。
(i)茶系乃至褐色系の色素を色価E10%(500nm)=0.1となるように水に溶解させた色素溶液に対してクエン酸を1重量%となるように添加すると、茶系乃至褐色系の色素の60%以上が溶解した状態を維持する。
(ii)茶系乃至褐色系の色素を色価E10%(500nm)=0.1となるように水に溶解させた色素溶液に対してクエン酸を1重量%となるように添加すると、茶系乃至褐色系の色素の40%以上が溶解した状態を維持し、且つ茶系乃至褐色系の色素を色価E10%(500nm)=0.1となるように水に溶解させた色素溶液に対して塩化ナトリウムを10重量%となるように添加すると、乃至褐色系の色素の80%以上が溶解した状態を維持する。
(iii)茶系乃至褐色系の色素を色価E10%(500nm)=0.1となるように水に溶解させた色素溶液に対してクエン酸を1重量%且つ塩化ナトリウムを10重量%となるように添加すると、茶系乃至褐色系の色素の20%以上が溶解した状態を維持する。
本発明において、「色価E10%(500nm)」とは、茶系乃至褐色系の色素の吸収波長500nmにおける吸光度(測定セル幅:1cm)を測定し、茶系乃至褐色系の色素10w/v%の色素溶液の吸光度に換算した値である。
以下、茶系乃至褐色系の色素を色価E10%(500nm)=0.1となるように水に溶解させた色素溶液に対してクエン酸を1重量%となるように添加した際に、溶解状態を維持している色素の割合を「酸溶解維持率」と表記することもある。また、茶系乃至褐色系の色素を色価E10%(500nm)=0.1となるように水に溶解させた色素溶液に対して塩化ナトリウムを10重量%となるように添加した際に、溶解した状態を維持している茶系乃至褐色系の色素の割合を「塩溶解維持率」と表記することもある。更に、茶系乃至褐色系の色素を色価E10%(500nm)=0.1となるように水に溶解させた色素溶液に対してクエン酸を1重量%及び塩化ナトリウムを10重量%となるように添加した際に、溶解した状態を維持している茶系乃至褐色系の色素の割合を「酸/塩溶解維持率」と表記することもある。
前記(i)の特性は、低pH条件において、析出、斑点、着色ムラ等の発生を抑制し、酸性飲食品において安定な着色を可能にする上で有効になる。また、前記(i)の特性は、優れた起泡性及び泡安定性を備えさせる上でも有効になる。前記(i)の特性としては、酸溶解維持率が60%以上を満たしていればよいが、より一層優れた耐酸性、更にはより一層優れた起泡性及び泡安定性を備えさせるという観点から、酸溶解維持率として、好ましくは65%以上、更に好ましくは70%以上、特に好ましくは80%以上が挙げられる。
また、前記(ii)の特性は、低pH且つ高塩濃度条件において、析出、斑点、着色ムラ等の発生を抑制し、高塩濃度の酸性飲食品において安定な着色を可能にする上で有効になる。また、前記(ii)の特性は、優れた起泡性及び泡安定性を備えさせる上でも有効になる。前記(ii)の特性としては、酸溶解維持率が40%以上且つ塩溶解維持率が80%以上を満たしていればよいが、より一層優れた耐酸性及び/又は耐塩性、更にはより一層優れた起泡性及び泡安定性を備えさせるという観点から、好ましくは、酸溶解維持率50%以上且つ塩溶解維持率が85%以上、更に好ましくは酸溶解維持率60%以上且つ塩溶解維持率が90%以上、より好ましくは酸溶解維持率70%以上且つ塩溶解維持率が90%以上、特に好ましくは酸溶解維持率80%以上且つ塩溶解維持率が90%以上が挙げられる。
また、前記(iii)の特性は、低pH且つ高塩濃度条件において、析出、斑点、着色ムラ等の発生を抑制し、高塩濃度の酸性飲食品において安定な着色を可能にする上で有効になる。また、前記(iii)の特性は、優れた起泡性及び泡安定性を備えさせる上でも有効になる。前記(iii)の特性としては、酸/塩溶解維持率が20%以上を満たしていればよいが、より一層優れた耐酸性及び/又は耐塩性、更にはより一層優れた起泡性及び泡安定性を備えさせるという観点から、酸/塩溶解維持率として、好ましくは30%以上、更に好ましくは40%以上が挙げられる。
本発明の茶系乃至褐色系の色素は、前記特性(i)〜(iii)の内、少なくとも1つの特性を備えていればよいが、より一層優れた耐酸性及び/又は耐塩性、並びにより一層優れた起泡性及び泡安定性を備えさせるという観点から、前記特性(i)〜(iii)の内、少なくとも2つの特性を備えていることが好ましく、前記特性(i)〜(iii)の全てを備えているものが更に好ましい。
なお、本発明において、「酸溶解維持率」は、以下の方法によって求められる。先ず、常温にて色価E10%(500nm)=0.1となるように茶系乃至褐色系の色素を精製水に添加し、色素溶液を調製する。次いで、色素溶液にクエン酸を1重量%となるように添加して十分に撹拌し、5℃の温度条件下で24時間静置する。24時間静置後に、色素溶液を遠心分離して不溶化物を除去し、得られた上清の色価E10%(500nm)を測定する。クエン酸添加前の色素溶液の色価E10%(500nm)に対する前記24時間静置後の色素溶液の上清の色価E10%(500nm)の割合(%)を酸溶解維持率として求める。
また、本発明において、「塩溶解維持率」は、クエン酸の代わりに、塩化ナトリウムを10重量%となるように色素溶液に添加すること以外は、前記酸溶解維持率と同様の方法で求められる。
また、本発明において、「酸/塩溶解維持率」は、クエン酸の代わりに、クエン酸を1重量%且つ塩化ナトリウムを10重量%となるように色素溶液に添加すること以外は、前記酸溶解維持率と同様の方法で求められる。
ここで、色価E10%(500nm)とは、(吸光度測定用の色素溶液の希釈倍率)×(光路長1cmにおける吸収波長500nmの吸光度)×0.1によって算出される色価である。なお、色価E10%(500nm)の測定において、吸光度測定用の色素液の希釈溶媒としては、クエン酸緩衝液(pH7)(食品添加物公定書第8版記載のもの)が用いられる。
2.茶系乃至褐色系の色素の製造方法
本発明の茶系乃至褐色系の色素の製造方法については、前述する(i)〜(iii)の内、少なくとも1つの特性を備えるものが得られる限り、特に制限されない。
[第1法]
本発明の茶系乃至褐色系の色素の製造方法の好適な一例として、茶系乃至褐色系の色素に対してアルカリ性条件下で酸素ガスを供給する方法(以下、「第1法」と表記することもある)が挙げられる。このようにアルカリ条件下にて酸素供給することによって、低pH条件及び/又は高塩濃度条件で不溶化する成分が除去され、前記特性を備える茶系乃至褐色系の色素を得ることが可能になる。以下、第1法の具体的態様について説明する。
第1法の原料
第1法では、茶系乃至褐色系の色素に対して、アルカリ性条件下での酸素ガスの供給を行う。
第1法において、アルカリ性条件下での酸素ガスの供給対象となる原料は、茶系乃至褐色系の色素を含む植物原料から抽出された茶系乃至褐色系の色素、微生物培養によって得られた茶系乃至褐色系の色素、合成された茶系乃至褐色系の色素等のいずれであってもよい。また、これらの茶系乃至褐色系の色素は、従来の手法で精製処理に供されたものであってもよい。
また、第1法では、茶系乃至褐色系の色素を含む植物原料をそのままアルカリ性条件下での酸素ガスの供給対象としてもよい。第1法の原料として茶系乃至褐色系の色素を含む植物原料を使用し、当該植物原料に対して、アルカリ性条件下での酸素ガスの供給を行う手法は、当該植物原料から茶系乃至褐色系の色素の抽出も同時に行うことが可能になるので、製造工程の簡略化の点から好適といえる。
(茶系乃至褐色系の色素を含む植物原料)
茶系乃至褐色系の色素を含む植物原料については、製造目的となる茶系乃至褐色系の色素の種類に応じて適宜選定されるが、例えば、カカオ色素の場合であればカカオハスク及び/又はカカオ豆;コウリャン色素の場合であればコウリャンの実及び/又は殻;タマネギ色素の場合であればタマネギのりん茎及び/又は外皮;タマリンド色素の場合であればタマリンドの種子;カキ色素の場合であればカキの実;クーロー色素の場合であればソメモノイモの根;シアナット色素の場合であればシアノキの果実及び/又は種皮;ペカンナッツ色素の場合であればピーカンの果皮及び/又は渋皮;ログウッド色素の場合であれば、ログウッドの心材;チコリ色素の場合であればキクニガナの根等が挙げられる。
カカオ色素の抽出原料となるカカオハスクとは、アオギリ科植物の小高木であるカカオ(Theobroma cacao L.)の種子の皮である。また、カカオ色素の抽出原料となるカカオ豆とは、カカオ(Theobroma cacao L.)の種子である。カカオ色素の場合であれば、抽出原料として、カカオハスク又はカカオ豆のいずれか一方を単独で使用してもよく、またこれらを組み合わせて使用してもよい。当該抽出原料の好適な例としてはカカオハスクが挙げられる。
コウリャン色素の抽出原料となるコウリャンの実は、イネ科コウリャン(Sorghum nervosum BESS.)の種子である。また、コウリャン色素の抽出原料となるコウリャンの殻は、イネ科コウリャン(Sorghum nervosum BESS.)の種子の殻である。コウリャン色素の場合であれば、抽出原料として、コウリャンの実又は殻のいずれか一方を単独で使用してもよく、またこれらを組み合わせて使用してもよい。
タマネギ色素の抽出原料となるタマネギのりん茎は、ユリ科タマネギ(Allium cepa LINNE)のりん茎である。また、タマネギ色素の抽出原料となるタマネギの外皮とは、ユリ科タマネギ(Allium cepa LINNE)の外皮である。タマネギ色素の場合であれば、抽出原料として、タマネギのりん茎又は外皮のいずれか一方を単独で使用してもよく、またこれらを組み合わせて使用してもよい。
タマリンド色素の抽出原料となるタマリンドの種子とは、マメ科タマリンド(Tamarindus indica LINNE)の種子である。
カキ色素の抽出原料となるカキの実とは、カキノキ科カキ(Diospyros kaki THUNB.)の果実である。
クーロー色素の抽出原料となるソメモノイモの根とは、ヤマノイモ科ソメモノイモ(Dioscorea matsudai HAYATA)の根である。
シアナット色素の抽出原料となるシアノキの果実とは、アカテツ科シアノキ(Butyrospermum parkii KOTSCHY.)の果実である。また、シアナット色素の抽出原料となるシアノキの種皮とは、(Butyrospermum parkii KOTSCHY.)の種子の皮である。
ペカンナッツ色素の抽出原料となるピーカンの果皮とは、クルミ科ピーカン(Carya pecan ENGL. et GRAEBN.)の果皮である。また、ペカンナッツ色素の抽出原料となるピーカンの渋皮とは、クルミ科ピーカン(Carya pecan ENGL. et GRAEBN.)の渋皮である。ペカンナッツ色素の場合であれば、抽出原料として、ピーカンの果皮又は渋皮のいずれか一方を単独で使用してもよく、またこれらを組み合わせて使用してもよい。
ログウッド色素の抽出原料となるログウッドの心材とは、マメ科ログウッド(Haematoxylon campechianum)の心材である。
チコリ色素の抽出原料となるキクニガナの根とは、キク科キクニガナ(Cichorium intybus LINNE)の根である。
(茶系乃至褐色系の色素を含む植物原料から抽出された茶系乃至褐色系の色素)
茶系乃至褐色系の色素は、公知の抽出処理に従って、茶系乃至褐色系の色素を含む植物原料から得ることができる。
茶系乃至褐色系の色素を得るための抽出原料として使用される植物原料は、必要に応じて、乾燥処理、脱脂処理、発酵処理、焙煎処理等に供されたものであってもよい。また、抽出原料として使用される植物原料は、抽出効率を向上させるために、細切、粉砕等の破砕処理を行っていることが望ましい。
茶系乃至褐色系の色素を含む植物原料から茶系乃至褐色系の色素を抽出処理する際の抽出溶媒については、製造目的となる茶系乃至褐色系の色素の種類に応じて適宜設定される。
例えば、カカオ色素の場合であれば、抽出溶媒としてアルカリ性水溶液を用いればよい。また、コウリャン色素の場合であれば、水、含水エタノール、酸性含水エタノール、又はアルカリ性水溶液を用いてればよい。タマネギ色素の場合であれば、抽出溶媒として水、含水エタノール又はアルカリ性水溶液を用いればよい。タマリンド色素の場合であれば、抽出溶媒としてアルカリ性水溶液を用いればよい。カキ色素の場合であれば、抽出溶媒としてアルカリ性水溶液を用いればよい。クーロー色素の場合であれば、ソメモノイモの根に対して、抽出溶媒として水、アルカリ性水溶液、プロピレングリコール、又は含水エタノールを用いればよい。シアナット色素の場合であれば、シアノキの果実及び/又は種皮に対して、抽出溶媒としてアルカリ性水溶液を用いればよい。ペカンナッツ色素の場合であれば、ピーカンの果皮及び/又は渋皮に対して、抽出溶媒として水、含水エタノール、又は酸性水溶液を用いればよい。ログウッド色素の場合であれば、ログウッドの心材に対して、抽出溶媒として水を用いればよい。チコリ色素の場合であれば、キクニガナの根に対して、抽出溶媒として水を用いればよい。
茶系乃至褐色系の色素を含む植物原料から茶系乃至褐色系の色素を抽出処理するには、当該植物原料を抽出溶媒に含浸させて、必要に応じて撹拌すればよい。
抽出処理に使用される抽出溶媒の量については、製造目的となる茶系乃至褐色系の色素の種類に応じて適宜設定すればよいが、例えば、茶系乃至褐色系の色素を含む植物原料に対して重量比で5〜50倍量、好ましくは5〜40倍量、更に好ましくは5〜30倍量が挙げられる。
また、抽出処理時の温度についても、製造目的となる茶系乃至褐色系の色素の種類に応じて適宜設定すればよいが、例えば、30〜100℃が挙げられる。
また、抽出処理時間については、製造目的となる茶系乃至褐色系の色素の種類、使用する抽出溶媒の量、抽出処理時の温度等を勘案して適宜設定すればよいが、例えば、1時間以上、好ましくは1〜20時間、更に好ましくは1〜10時間が挙げられる。
(微生物培養によって得られた茶系乃至褐色系の色素)
茶系乃至褐色系の色素は、当該色素の産生能を有する微生物を培養によって得ることもできる。例えば、フィフィア色素の場合であれば、酵母(Phaffia rhodozyma MILLER)の培養液から回収することによって得ることができる。
(合成された茶系乃至褐色系の色素)
茶系乃至褐色系の色素は、公知の手法で合成することによって得ることもできる。例えば、カラメル色素の場合であれば、砂糖、ぶどう糖等の食用炭水化物を熱処理することによって得ることができる。
第1法の処理条件
第1法では、茶系乃至褐色系の色素(茶系乃至褐色系の色素を含む植物原料の状態であってもよい)に対して、アルカリ性条件下で酸素ガスを供給する。このようにアルカリ条件下にて酸素供給することによって、低pH条件及び/又は高塩濃度条件で不溶化する成分が除去され、前記特性を備える茶系乃至褐色系の色素を得ることが可能になる。また、第1法において、茶系乃至褐色系の色素を含む植物原料に対して、アルカリ性条件下で酸素ガスを供給する場合には、当該植物原料から、前記特性を備える茶系乃至褐色系の色素を選択的に抽出することも可能になり、本発明の茶系乃至褐色系の色素の製造効率の向上に資することもできる。
茶系乃至褐色系の色素を含む植物原料に対してアルカリ性条件下で酸素ガスを供給する場合、当該植物原料は、必要に応じて、乾燥処理、脱脂処理、発酵処理、焙煎処理等に供されたものであってもよい。また、当該植物原料は、記特性を備える茶系乃至褐色系の色素を効率的に得るために、細切、粉砕等の破砕処理を行っていることが望ましい。
酸素供給する際の液性(アルカリ条件)については、通常8以上、好ましくは9〜13、更に好ましくは11〜13が挙げられる。このようなアルカリ条件は、茶系乃至褐色系の色素(茶系乃至褐色系の色素を含む植物原料の状態であってもよい)をアルカリ性水溶液中に存在させることによって作成できる。
酸素ガスの供給を行う際の茶系乃至褐色系の色素の濃度については、特に制限されないが、例えば、植物原料の抽出処理、微生物培養、又は合成によって得られた茶系乃至褐色系の色素を酸素供給に供する場合であれば、アルカリ性水溶液中で色価E10%(500nm)=0.1〜70、好ましくは色価E10%(500nm)=1〜50、更に好ましくは色価E10%(500nm)=1〜30となる濃度が挙げられる。また、茶系乃至褐色系の色素を含む植物原料自体を酸素ガスの供給に供する場合であれば、茶系乃至褐色系の色素を含む植物原料に対してアルカリ性水溶液が重量比で5〜50倍量、好ましくは5〜40倍量、更に好ましくは5〜30倍量が挙げられる。
アルカリ性水溶液の調製に使用されるアルカリの種類については、飲食品分野で使用可能なアルカリであればよく、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、水酸化アンモニウム、アンモニア水、水酸化アルミニウム、水酸化鉄等が挙げられる。これらのアルカリは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
また、アルカリ性水溶液は、水に対して所定のpHを満たすように前記アルカリが添加されているものであればよいが、必要に応じて、アルコール、防腐剤、可溶化剤、消泡剤等の添加剤が含まれていてもよい。
酸素供給する際の温度条件については、通常30〜100℃、好ましくは50〜100℃、更に好ましくは70〜100℃が挙げられる。
第1法において供給される酸素ガスについては、酸素ガス自体であってもよいが、酸素ガスが含まれていることを限度として、例えば、空気のように酸素以外の気体成分が含まれている気体を使用してもよい。製造コストの低減等の観点から、抽出処理中に供給される酸素として、好ましくは空気が挙げられる。
酸素ガスの供給速度については、酸素ガス供給時のpH、酸素ガスが供給される液の量、酸素ガス供給中の撹拌の有無や撹拌速度等に応じて適宜設定されるが、例えば0.01vvm以上、好ましくは0.01〜2.0vvm、更に好ましくは0.05〜1.0vvmが挙げられる。より具体的には、酸素ガス供給時のpHが12以上13未満の場合であれば、酸素ガスの供給速度として0.2〜2vvm、好ましくは0.2〜1vvmが挙げられ、また、酸素ガス供給時のpHが13以上の場合であれば、酸素ガスの供給速度として0.05〜2vvm、好ましくは0.05〜0.5vvmが挙げられる。なお、ここで例示した酸素ガスの供給速度は、酸素ガス自体の供給速度を指している。即ち、例えば酸素ガスとして空気を使用する場合であれば、空気中には酸素が約20容量%含まれているので、前記供給速度の5倍の速度で空気を供給すればよい。
第1法における酸素ガスの供給時間としては、酸素ガス供給時のpH、酸素ガスが供給される液の量、酸素ガス供給中の撹拌の有無や撹拌速度等に応じて適宜設定されるが、例えば1時間以上、好ましくは1〜10時間、更に好ましくは1〜5時間が挙げられる。
また、酸素ガスを供給する際には、酸素ガスを均一に分散させるために、撹拌を行うことが好ましい。
斯して酸素ガスの供給がなされた後に得られる液は、前記特性を備える茶系乃至褐色系の色素が溶解しているので、固液分離処理に供して液体画分を茶系乃至褐色系の色素溶液として回収する。当該茶系乃至褐色系の色素溶液は、飲食品用の着色剤として使用してもよく、また必要に応じて、中和処理、濃縮処理、乾燥処理等を行った後に、飲食品用の着色剤として使用してもよい。
また、酸素ガス供給後に得られた茶系乃至褐色系の色素溶液は、そのまま、又は中和処理、濃縮処理等を行った後に、ガム質等の夾雑物を除去又は低減する精製処理に供してもよい。このような精製処理に供することによって、より一層安定な茶系乃至褐色系の色素を得ることができる。特に、茶系乃至褐色系の色素を含む植物原料に対して酸素ガスを供給した場合には、酸素ガス供給後に得られた茶系乃至褐色系の色素溶液は、前記精製処理に供して置くことが望ましい。
前記色素溶液に対して行われる精製処理については、特に制限されず、例えば、後述する第2法と同様の吸着樹脂処理、陽イオン交換樹脂処理又は陰イオン交換樹脂処理を行う方法、限外濾過により精製する方法等によって行うことができるが、好適な一例として、下記第(i)〜(iii)工程を順次実施する方法が挙げられる。
(i)前記茶系乃至褐色系の色素溶液のpHを1〜2に調整する工程、
(ii)前記工程(i)で得られた酸性の茶系乃至褐色系の色素溶液に対してガム質を凝集させる有機溶剤を添加し、水溶性画分を回収する工程、及び
(iii)前記工程(ii)で得られた水溶性画分を中性ないし微アルカリ性にして析出した茶系乃至褐色系の色素を回収する工程。
前記(i)工程において、前記茶系乃至褐色系の色素溶液のpHを1〜2に調整するには、当該茶系乃至褐色系の色素溶液に塩酸、硫酸、リン酸、クエン酸、酢酸等の酸を添加すればよい。これらの酸は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
また、前記第(ii)工程において使用される有機溶剤としては、ガム質を凝集させる作用を有することを限度として特に制限されないが、例えば、アセトン、エタノール等の有機溶剤、好ましくはアセトンが挙げられる。また、前記第(ii)工程において、前記工程(i)で得られた酸性の茶系乃至褐色系の色素溶液に対する前記有機溶剤の添加量については、当該酸性の茶系乃至褐色系の色素溶液に含まれるガム質を凝集可能であることを限度として特に制限されないが、例えば、容量比で当該酸性の茶系乃至褐色系の色素溶液の0.4〜9倍量、好ましくは0.6〜4倍量が挙げられる。前記第(ii)工程において、前記酸性の茶系乃至褐色系の色素溶液に前記有機溶剤を添加して混合することによって、前記酸性の茶系乃至褐色系の色素溶液に含まれるガム質が凝集して上層に浮上するので、当該ガム質の凝集物をろ過等によって分離することにより、茶系乃至褐色系の色素を溶解した水溶性画分が得られる。
前記第(iii)工程において、前記工程(ii)で得られた水溶性画分を中性ないし微アルカリ性にするには、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、リン酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリを添加すればよい。これらのアルカリは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。当該アルカリは、固体状のまま添加してもよいが、水に溶解させたアルカリ水溶液の状態で添加してもよい。前記第(iii)工程では、前記水溶性画分のpHを中性ないし微アルカリ性に調整すればよいが、調製後のpHとして、より具体的には7〜12、好ましくは8〜11が挙げられる。前記第(iii)工程において、前記水溶性画分を中性ないし微アルカリ性に調整することによって、茶系乃至褐色系の色素が塩析により上層に析出する。かかる上層部分をろ過等によって分離することにより、精製された本発明の茶系乃至褐色系の色素が得られる。得られた茶系乃至褐色系の色素は、必要に応じて、更なる精製処理や乾燥処理等に供してもよい。
[第2法]
また、本発明の茶系乃至褐色系の色素は、前述する第1法の他、茶系乃至褐色系の色素を含む溶液を、吸着樹脂処理、陽イオン交換樹脂処理、陰イオン交換樹脂処理、又は活性炭処理に供して、吸着樹脂処理による非吸着画分、陽イオン交換樹脂処理による非吸着画分、陰イオン交換樹脂処理による吸着画分、又は活性炭処理による非吸着画分を回収する方法(以下、「第2法」と表記することもある)によって得ることもできる。以下、第2法の具体的態様について説明する。
第2法の原料
第2法では、茶系乃至褐色系の色素を含む溶液に対して、所定の吸着処理を行う。
第2法において、所定の吸着処理に供される溶液については、茶系乃至褐色系の色素を含む植物原料から抽出処理された茶系乃至褐色系の色素の抽出液、微生物培養によって得られた茶系乃至褐色系の色素の溶液、合成された茶系乃至褐色系の色素溶液等のいずれであってもよい。植物原料から抽出処理、微生物培養、合成等によって茶系乃至褐色系の色素を得る方法については、前記第1法の欄に記載の通りである。
第2法において所定の吸着処理に供される溶液は、水を溶媒として含むことが好ましい。また、第2法において所定の吸着処理に供される溶液は、固形分が除去された状態であることが好ましく、必要に応じて、中和処理、濃縮処理、ガム質の除去処理等の処理に供したものであってもよい。
第2法の処理条件
第2法では、茶系乃至褐色系の色素を含む溶液を、吸着樹脂処理、陽イオン交換樹脂処理、陰イオン交換樹脂処理、又は活性炭処理に供して、吸着樹脂処理による非吸着画分、陽イオン交換樹脂処理による非吸着画分、陰イオン交換樹脂処理による吸着画分、又は活性炭処理による非吸着画分を回収する。
第2法における吸着樹脂処理とは、吸着樹脂に対して茶系乃至褐色系の色素を含む溶液を通液する処理であり、当該吸着樹脂に吸着せずに通過する画分(非吸着画分)が、前記特性を満たす茶系乃至褐色系の色素(即ち、本発明の茶系乃至褐色系の色素)として回収される。
吸着樹脂とは、合成吸着剤とも称される非極性又は中間的極性の多孔質樹脂である。このような吸着樹脂としては、具体的には、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体等のスチレン系樹脂、(メタ)アクリル酸エステル−エチレングリコールジメタクリレート共重合体等のアクリル系樹脂、メタアクリル系樹脂、ポリビニル系樹脂、デキストラン系樹脂等が挙げられる。これらの吸着樹脂の中でも、より優れた耐酸性及び/又は耐塩性を備えた茶系乃至褐色系の色素を得るという観点から、好ましくはスチレン系樹脂が挙げられる。このような吸着樹脂として商業的に入手可能なものについては、具体的には、スチレン系樹脂として、ダイヤイオンHP10、ダイヤイオンHP20、ダイヤイオンHP21、ダイヤイオンHP40、ダイヤイオンHP50、セパピーズSP207、セパピーズSP70、セパピーズSP825、セパピーズSP850、セパピーズSP207(以上、三菱化学社製)、アンバーライトXAD1180N、アンバーライトXAD2000、アンバーライトXAD4、アンバーライトFPX66(以上、ローム アンド ハース社製)等;アクリル系樹脂として、ダイヤイオンHP2MG(三菱化学社製)、アンバーライトHXAD−7HP(ローム アンド ハース社製)等が挙げられる。
第2法における吸着樹脂処理の温度条件については特に制限されず、例えば、室温で行うことができる。また、吸着樹脂処理において、茶系乃至褐色系の色素を含む溶液、及び必要に応じて通液される洗浄液の通液速度については、特に制限されないが、例えば、空間速度(SV、space velocity)として、通常0.5〜10/h、好ましくは0.5〜5/hが挙げられる。
また、第2法における陽イオン交換樹脂処理とは、陽イオン交換樹脂に対して茶系乃至褐色系の色素を含む溶液を通液する処理であり、当該陽イオン交換樹脂に吸着せずに通過する画分(非吸着画分)が、前記特性を満たす茶系乃至褐色系の色素(即ち、本発明の茶系乃至褐色系の色素)として回収される。
第2法に使用される陽イオン交換樹脂における官能基の種類については、陽イオン交換が可能であることを限度として特に制限されないが、例えば、−SO3M(Mはアルカリ金属又は水素原子)が挙げられる。このような陽イオン交換樹脂として商業的に入手可能なものについては、具体的には、アーバンライト200CT、アーバンライトIR120B、アーバンライトIR124、アーバンライト252、アーバンライトFPC3500、アーバンライトIRC76(以上、ローム アンド ハース社製)、ダイヤイオンSK1B、ダイヤイオンSK102、ダイヤイオンSK116、ダイヤイオンPK208、ダイヤイオンWK10、ダイヤイオンWK20(以上、三菱化学社製)等が挙げられる。
また、陽イオン交換樹脂処理において、温度条件、茶系乃至褐色系の色素を含む溶液の通液速度等については、特に制限されず、例えば、前記吸着樹脂処理の場合と同様の範囲に設定すればよい。
また、第2法における陰イオン交換樹脂処理とは、陰イオン交換樹脂に対して茶系乃至褐色系の色素を含む溶液を通液する処理であり、当該陰イオン交換樹脂に吸着した画分(吸着画分)が、前記特性を満たす茶系乃至褐色系の色素(即ち、本発明の茶系乃至褐色系の色素)として回収される。
第2法に使用される陰イオン交換樹脂における官能基の種類については、陰イオン交換が可能であることを限度として特に制限されないが、例えば、−N≡(CH33X(Xは塩素原子等のハロゲン原子)、−N(−C24OH)=(CH32X(Xは塩素原子等のハロゲン原子)が挙げられる。このような陰イオン交換樹脂として商業的に入手可能なものについては、具体的には、アーバンライトIRA958、アーバンライトIRA400J、アーバンライトIRA402BL、アーバンライトIRA404J、アーバンライトIRA900J、アーバンライトIRA904、アーバンライトIRA458RF、アーバンライトIRA410J、アーバンライトIRA411、アーバンライトIRA910CT(以上、ローム アンド ハース社製)、ダイヤイオンPA306、ダイヤイオンWA10、ダイヤイオンWA20(以上、商標、三菱化学社製)等が挙げられる。
第2法における陰イオン交換樹脂処理では、陰イオン交換樹脂に対して、茶系乃至褐色系の色素を含む溶液の通液及び脱離液の通液を順次実施し、通液した脱離液から本発明の茶系乃至褐色系の色素を回収する。また、抽出液の通液と脱離液の通液の間に、必要に応じて洗浄液を通液してもよい。
前記脱離液の組成としては、陰イオン交換樹脂に吸着した茶系乃至褐色系の色素を脱離可能な溶液であることを限度として特に制限されないが、例えば、アルコール水溶液が挙げられる。アルコール水溶液に使用されるアルコールの種類については、特に制限されないが、例えば、エタノール、プロパノール、ブタノール、好ましくはエタノールが挙げられる。また、アルコール水溶液に使用されるアルコール濃度としては、特に制限されないが、例えば、30〜90v/v%、好ましくは40〜80v/v%が挙げられる。
また、前記洗浄液の組成としては、陰イオン交換樹脂に吸着していない茶系乃至褐色系の色素を洗い流すことができることを限度として特に制限されないが、例えば、水が挙げられる。
また、陰イオン交換樹脂処理において、温度条件、茶系乃至褐色系の色素を含む溶液の通液速度、必要に応じて通液される洗浄液の通液速度、脱離液の通液速度等については、特に制限されず、例えば、前記吸着樹脂処理の場合と同様の範囲に設定すればよい。
また、第2法における活性炭処理とは、活性炭に対して茶系乃至褐色系の色素を含む溶液を混合又は通液する処理であり、当該活性炭に吸着せずに通過する画分(非吸着画分)が、前記特性を満たす茶系乃至褐色系の色素(即ち、本発明の茶系乃至褐色系の色素)として回収される。
第2法に使用される活性炭については、前記吸着樹脂と同様の吸着作用を有するものを使用すればよく、また、活性炭処理において、温度条件等についても、特に制限されず、例えば前記吸着樹脂処理の場合と同様の範囲に設定すればよい。
第2法では、茶系乃至褐色系の色素を含む溶液に対して吸着樹脂処理、陽イオン交換樹脂処理、陰イオン交換樹脂処理、又は活性炭処理のいずれか1つの処理を実施すればよいが、より一層優れた耐酸性及び/又は耐塩性を備えた茶系乃至褐色系の色素を得るという観点から、好ましくは吸着樹脂処理、更に好ましくはスチレン系樹脂を使用した吸着樹脂処理が挙げられる。
第2法で得られた本発明の茶系乃至褐色系の色素を含む画分(吸着樹脂処理による非吸着画分、陽イオン交換樹脂処理による非吸着画分、陰イオン交換樹脂処理による吸着画分、又は活性炭処理による非吸着画分)は、そのまま飲食品用の着色剤として使用してもよく、また、必要に応じて、濃縮、乾燥等の処理に供した後に、飲食品用の着色剤として使用してもよい。
第2法は、茶系乃至褐色系の色素の種類によらず、本発明の茶系乃至褐色系の色素の製造に適用できるが、特に、カカオ色素の製造に好適に使用できる。
茶系乃至褐色系の色素の用途
本発明の茶系乃至褐色系の色素は、飲食品を着色するための着色剤として使用される。本発明の茶系乃至褐色系の色素は、着色対象となる飲食品については特に制限されず、あらゆるpH、あらゆる塩濃度の飲食品に対して使用することができる。
従来の茶系乃至褐色系の色素(特に、カカオ色素)は、酸性飲食品や高塩濃度の飲食品に添加すると、不安定化され、析出、斑点、着色ムラ等が発生するという欠点があったが、本発明の茶系乃至褐色系の色素は、優れた耐酸性及び/又は耐塩性を備え、従来の茶系乃至褐色系の色素の欠点が克服されており、酸性飲食品や高塩濃度の飲食品に添加しても、良好な着色が可能になっている。かかる本発明の効果を鑑みれば、本発明の茶系乃至褐色系の色素の添加対象となる飲食品の好適な例として、酸性飲食品、及び高塩濃度の飲食品、特に好適な例として高塩濃度の酸性飲食品が挙げられる。本発明の茶系乃至褐色系の色素の添加対象となる酸性飲食品のpHとしては、具体的には、2〜6、好ましくは2〜5、更に好ましくは2〜4が挙げられる。また、本発明の茶系乃至褐色系の色素の添加対象となる高塩濃度の飲食品の塩濃度としては、具体的には、1〜30重量%、好ましくは1〜20重量%、更に好ましくは5〜20重量%が挙げられる。ここで、塩含有飲食品の塩濃度とは、飲食品に含まれている水溶解性の無機塩(塩化ナトリウム、塩化カリウム等)の総濃度を指す。
本発明の茶系乃至褐色系の色素の添加対象となる酸性飲食品として、具体的には、果汁飲料、ゼリー、ヨーグルト、漬物、炭酸飲料等が挙げられる。また、本発明の茶系乃至褐色系の色素の添加対象となる高塩濃度の飲食品として、具体的には、タレ類、ソース類、つゆ類、カレールウ、漬物、つくだ煮等が挙げられる。また、本発明の茶系乃至褐色系の色素の添加対象となる高塩濃度の酸性飲食品として、具体的には、タレ類、漬物、ソース類等が挙げられる。
本発明の茶系乃至褐色系の色素を着色剤として使用する場合、飲食品への添加量については、飲食品に付与すべき着色の程度に応じて適宜設定すればよい。
また、本発明の茶系乃至褐色系の色素は、優れた起泡性及び泡安定性を備えているので、発泡性飲料の気泡剤又は起泡安定剤として使用することもできる。本発明の茶系乃至褐色系の色素を気泡剤又は起泡安定剤として使用する場合、添加対象となる飲料については、起泡性及び/又は泡安定性が求められているものであることを限度として特に制限されないが、例えば、発泡性飲料が挙げられる。発泡性飲料としては、具体的には、ビール、発泡酒、その他の発泡性醸造酒、リキュール、発泡性ワイン等の炭酸アルコール飲料;ビール風味ノンアルコール飲料;コーラ、ジンジャーエール等の炭酸清涼飲料;発泡性オレンジ果汁飲料、発泡性グレープ果汁飲料、発泡性リンゴ果汁飲料、発泡性レモン果汁飲料等が挙げられる。また、本発明の茶系乃至褐色系の色素を気泡剤又は起泡安定剤として使用する場合、その添加対象となる発泡性飲料のpHについては特に制限されないが、より一層優れた起泡性及び泡安定性を付与するという観点から、添加対象となる発泡性飲料のpHとして、好ましくは2〜6、更に好ましくは3〜5が挙げられる。
特に、本発明の茶系乃至褐色系の色素は、優れた起泡性及び泡安定性のみならず、茶系乃至褐色系の色調を発泡性飲料に対して付与できるので、茶系乃至褐色系の色調を呈する発泡性飲料において、気泡性着色剤又は起泡安定性着色剤として特に好適に使用される。このような、茶系乃至褐色系の色調を呈する発泡性飲料としては、具体的には、ビール、発泡酒、麦芽及び/又は麦を原料の一部として使用して製造される他の発泡性醸造酒、麦芽及び/又は麦を原料の一部として使用して製造されるリキュール、発泡性赤ワイン等の炭酸アルコール飲料;ビール風味ノンアルコール飲料;コーラ、ジンジャーエール等の炭酸清涼飲料;発泡性オレンジ果汁飲料、発泡性グレープ果汁飲料、発泡性リンゴ果汁飲料、発泡性レモン果汁飲料等の発泡性果汁飲料等が挙げられる。
本発明の茶系乃至褐色系の色素を発泡性飲料の気泡剤又は起泡安定剤として使用する場合、発泡性飲料への添加量については、発泡性飲料に付与すべき気泡力や泡持続力等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、色価E10%(500nm)=100となる溶液量換算で0.001〜5重量%、好ましくは0.005〜3重量%、更に好ましくは0.01〜1重量%となる量が挙げられる。
以下、実施例等を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例に限
定して解釈されるものではない。
参考試験例1:従来のカカオ色素の低pH条且つ高塩濃度条件での特性評価
1.カカオ色素の製造
従来法でカカオ色素を製造した。具体的には、以下の抽出工程及び精製工程を行うことによってカカオ色素を製造した。
<抽出工程>
カカオハスク100gをpH12.52の水酸化ナトリウム水溶液2000mlに添加し、80℃で撹拌しながら抽出処理を2時間行った。抽出処理後に固形分を除去し、カカオ色素が含まれる抽出液を得た。
<精製工程>
前記で得られた抽出液を濃縮し、アセトンを加え、更に塩酸にてpHを3に調整した後、5℃で16時間静置して、ガム質等の不純物を析出させた。次いで、濾過により不純物を取り除いた後、水酸化ナトリウムでpHを10に調整して5℃で16時間静置して、カカオ色素成分を析出させた。析出したカカオ色素を回収して水で溶解させた後に、濃縮によってアセトン除去し、更に濃縮乾固して乳鉢で粉砕し、カカオ色素粉末10gを得た。
2.カカオ色素の特性評価
低pH且つ高塩濃度の食品としてタレ液(pH4.8、塩含有量7重量%)を用いて、上記で得られた従来のカカオ色素による着色を行った。具体的には、表1に示す組成のタレ液に前記で得られたカカオ色素粉末が色価E10%(500nm)=130換算で0.5重量%となるように添加して混合することにより着色調味液を調製した。
得られた着色調味液を1000rpmで30分間遠心分離処理に供したところ、不溶物が生成していることが確認された(図1)。また、得られた着色調味液40gに、豚肉40gを25℃で1時間浸漬させた後に、74℃で1時間ボイルすることによって豚肉を調理したところ、豚肉に斑点が認められ、着色が不均一になっていた(図2)。このように、本試験結果から、従来のカカオ色素では、低pH且つ高塩濃度の食品に対しては均質で良好な着色ができないことが確認された。
試験例1:本発明のカカオ色素の製造及び性能評価(1)
1.カカオ色素の製造
カカオハスク215gを、pH13.17又は12.96の水酸化ナトリウム水溶液3000mlに添加し、50℃で撹拌しつつ、更に表4に示す通気速度となるように空気(酸素含有量:約20v/v%)を通気しながら抽出処理を5時間行った。抽出処理後、抽出液中の固形分を除去し、抽出液を得た。次いで、得られた抽出液を前記参考試験例1と同条件で精製工程を行うことによって、カカオ色素粉末を得た。得られたカカオ色素粉末量は、比較例1では8.1g実施例1では9.0g、実施例2では7.9g、実施例3では9.0g、実施例4では5.7gであった。
2.カカオ色素の特性評価
得られた各カカオ色素について、以下の方法で、酸溶解維持率、塩溶解維持率、低pH条件且つ高塩濃度条件での安定性、及び着色特性(1)について評価した。
(酸溶解維持率)
5℃の温度条件下で、クエン酸1重量%を含む精製水10mlに、前記で得られた各カカオ色素を色価E10%(500nm)=0.1となるように添加して十分に撹拌した。次いで、5℃の温度条件下で24時間静置した。その後、3000rpmで30分間遠心分離に供し、不溶化物を沈降させた。更に、溶解した状態のカカオ色素をpH7のクエン酸緩衝液で希釈し、カカオ色素の濃度を分光光度計(U-3310 HITACH製)によって測定した。添加したカカオ色素総量に対する溶解した状態のカカオ色素の割合を酸溶解維持率(%)として算出した。
(塩溶解維持率)
5℃の温度条件下で、塩化ナトリウム10重量%を含む精製水10mlに、前記で得られた各カカオ色素を色価E10%(500nm)=0.1となるように添加して十分に撹拌した。次いで、5℃の温度条件下で24時間静置した。その後、3000rpmで30分間遠心分離に供し、不溶化物を沈降させた。更に、溶解した状態のカカオ色素をpH7のクエン酸緩衝液で希釈し、カカオ色素の濃度を分光光度計(U-3310 HITACH製)によって測定した。添加したカカオ色素総量に対する溶解した状態のカカオ色素の割合を塩溶解維持率(%)として算出した。
(低pH条且つ高塩濃度条件での安定性)
前記で得られた各カカオ色素を色価E10%(500nm)=130となるように精製水で調整して、カカオ色素液を得た。前記表1に示す組成のタレ液(pH4.8、塩含有量7重量%)に、各カカオ色素液を0.5重量%となるように添加して混合することにより着色調味液を調製した。得られた着色調味液を1000rpmで10分間遠心分離処理に供し、不溶化物の生成の有無を確認した。
(着色特性(1))
前記で得られた各着色調味液40gに、豚肉40gを25℃で1時間浸漬させた後に、74℃で1時間ボイルすることによって豚肉を調理した。調理後の豚肉の外観を観察し、豚肉の着色状態(斑点の有無)について評価した。
得られた結果を表2に示す。また、酸溶解維持率、塩溶解維持率、及び酸/塩溶解維持率の測定時に遠心分離後の状態を観察した結果、各カカオ色素を添加した着色調味料の遠心分離後の状態を観察した結果、並びにカカオ色素を添加した着色調味料で調理した豚肉の外観を観察した結果を図3に示す。
これらの結果から、カカオハスクをアルカリ性水溶液で抽出処理する際に、空気(酸素を含む気体)を通気することによって、酸溶解維持率が60%以上且つ塩溶解維持率90%以上のカカオ色素が得られることが明らかとなった。また、得られた各カカオ色素は、低pH条件又は高塩濃度条件使用しても、析出、斑点、着色ムラ等の発生を抑制できることも確認された。
試験例2:本発明のカカオ色素の製造における抽出処理時のアルカリの種類の検討
1.カカオ色素の製造
表3に示すアルカリを、表3に示すpHとなるように精製水に添加して、アルカリ性水溶液を調製した。得られた各アルカリ性水溶液140mlにカカオハスク10gを添加し、50℃で撹拌しつつ、通気速度が0.25vvm以上となるように空気(酸素含有量:約20v/v%)を通気しながら抽出処理を5時間行った。抽出処理後、固形分を除去し、抽出液を得た。次いで、得られた抽出液を前記参考試験例1と同条件で精製工程を行うことによってカカオ色素を得た。
2.カカオ色素の特性評価
得られた各カカオ色素について、試験例1と同様の方法で、酸溶解維持率及び塩溶解維持率について評価した。
得られた結果を表3に示す。この結果から、カカオハスクをアルカリ水溶液で抽出処理する際のアルカリの種類の別を問わず、抽出処理の際に、空気(酸素を含む気体)を通気することによって、簡便に、酸溶解維持率が60%以上且つ塩溶解維持率90%以上のカカオ色素が得られることが確認された。
試験例3:本発明のカカオ色素の製造における抽出処理時の温度条件の検討
1.カカオ色素の製造
カカオハスク10gを、pH13.17の水酸化ナトリウム水溶液140mlに添加し、50℃又は15℃で撹拌しつつ、通気速度が0.25vvm以上となるように空気(酸素含有量:約20v/v%)を通気しながら抽出処理を5時間行った。抽出処理後、抽出液中の固形分を除去し、カカオ色素が含まれる抽出液を得た。次いで、得られた抽出液を前記試験例1と同条件で精製することによってカカオ色素を得た。
2.カカオ色素の特性評価
得られた各カカオ色素について、試験例1と同様の方法で、酸溶解維持率及び塩溶解維持率について評価した。
得られた結果を表4に示す。この結果から、カカオハスクをアルカリ水溶液で抽出処理する際の温度は、最終的に得られるカカオ色素の酸溶解維持率及び塩溶解維持率に殆ど影響しないことが確認された。
試験例4:本発明のカカオ色素の製造における精製工程の必要性の検討
1.カカオ色素の製造
カカオハスク10gを、pH13.17の水酸化ナトリウム水溶液140mlに添加し、50℃で撹拌しつつ、通気速度が0.25vvm以上となるように空気(酸素含有量:約20v/v%)を通気しながら抽出処理を5時間行った。抽出処理後、抽出液中の固形分を除去し、カカオ色素が含まれる抽出液を得た。次いで、得られた抽出液を濃縮乾固させ、乳鉢ですり潰してカカオ色素粉末を得た。
2.カカオ色素の特性評価
得られた各カカオ色素について、前記試験例1と同様の方法で、酸溶解維持率及び塩溶解維持率について評価した。
得られた結果を表5に示す。この結果から、カカオハスクに対してアルカリ性水溶液を用いた抽出処理及びアルカリ性条件下での酸素供給処理を行うことによって、従来の精製工程を行わずとも、酸溶解維持率が60%以上且つ塩溶解維持率90%以上のカカオ色素が得られることが明らかとなった。
試験例5:本発明のカカオ色素の製造における酸素供給タイミングの検討
1.カカオ色素の製造
カカオハスク100gをpH12.52の水酸化ナトリウム水溶液2000mlに添加し、80℃で撹拌しながら抽出処理を2時間行った。抽出処理後に固形分を除去し、カカオ色素が含まれる抽出液を得た。得られた抽出液を濃縮した後に、アセトンを加えて塩酸にてpHを3に調整した後に、5℃で16時間静置して、ガム質等の不純物を析出させた。次いで、濾過により不純物を取り除いた後に、水酸化ナトリウムでpHを10に調整し、5℃で16時間静置して、カカオ色素成分を析出させた。析出したカカオ色素を回収した後に水で溶解させた後に、濃縮によってアセトン除去し、更に色価E10%(500nm)=130換算で3重量%程度となるように精製水を加え、精製カカオ色素水溶液を得た。得られた精製カカオ色素水溶液に水酸化ナトリウムを加えてpH12.56に調整し、0.5vvmの通気速度となるように空気(酸素含有量:約20v/v%)を通気しながら酸素供給処理を5時間行った。酸素供給処理後、塩酸でpHを7に調整して濾過した後に、濾液を回収し、スプレードライで乾燥させて、カカオ色素粉末9gを得た。
2.カカオ色素の特性評価
得られた各カカオ色素について、前記試験例1と同様の方法で、酸溶解維持率、塩溶解維持率、低pH条件且つ高塩濃度条件での安定性、及び着色特性(1)について評価した。
得られた結果を表6に示す。また、カカオ色素を添加した着色調味料の遠心分離後の状態を観察した結果、及びカカオ色素を添加した着色調味料で調理した豚肉の外観を観察した結果を図4に示す。この結果から、カカオハスクに対してアルカリ性水溶液を用いた抽出処理、及び精製工程を行った後に、アルカリ性条件下で酸素供給出処理を行っても、酸溶解維持率が60%以上且つ塩溶解維持率90%以上のカカオ色素が得られることが明らかとなった。また、このようにして得られたカカオ色素は、低pH条件又は高塩濃度条件使用しても、析出、斑点、着色ムラ等の発生を抑制できることも確認された。
試験例6:本発明のカカオ色素の製造及び性能評価(2)
1.カカオ色素の製造
以下に示す抽出条件1〜6の方法で、カカオハスクからカカオ色素の抽出処理を行い、抽出液を取得した。
(抽出条件1)
カカオハスク100gを、pH12.12の水酸化ナトリウム水溶液1400mlに添加し、80℃で撹拌しながら抽出処理を2時間行った。なお、抽出処理中には、抽出溶媒内への通気は行わなかった。抽出処理後、抽出液中の固形分を除去し、カカオ色素が含まれる抽出液を得た。
(抽出条件2)
抽出溶媒として、pH12.73の水酸化ナトリウム水溶液を4000ml使用したこと以外は、前記抽出条件1と同条件で、カカオハスクの抽出処理を行った。抽出処理後、抽出液中の固形分を除去し、カカオ色素が含まれる抽出液を得た。
(抽出条件3)
抽出溶媒として、pH12.73の水酸化ナトリウム水溶液を使用したこと以外は、前記抽出条件1と同条件で、カカオハスクの抽出処理を行った。抽出処理後、抽出液中の固形分を除去し、カカオ色素が含まれる抽出液を得た。
(抽出条件4)
市販カカオ色素(チョコカラー610P:グリコ栄養食品株式会社製)を用いた。
(抽出条件5)
前記抽出条件3で使用したカカオハスクとは原産国が異なるカカオハスクを用いたこと以外は、前記抽出条件3と同条件で、カカオハスクの抽出処理を行った。抽出処理後、抽出液中の固形分を除去し、カカオ色素が含まれる抽出液を得た。
(抽出条件6)
前記抽出条件3及び5で使用したカカオハスクとは異なるカカオハスクを用いたこと以外は、前記抽出条件3と同条件で、カカオハスクの抽出処理を行った。抽出処理後、抽出液中の固形分を除去し、カカオ色素が含まれる抽出液を得た。得られた抽出液を前記参考試験例1と同条件で精製工程を行うことによってカカオ色素を得た。得られたカカオ色素量は、抽出条件1では5.4g、抽出条件2では9.4g、抽出条件3では9.7g、抽出条件5では15.0g、抽出条件6では11.8gであった。
次いで、精製後の各カカオ色素を色価E10%(500nm)=130換算で1重量%となるように精製水で希釈して、カカオ色素精製液を調製した。このカオ色素精製液を下記条件の吸着樹脂処理に供した。
吸着樹脂A:ダイヤイオンHP20(三菱化学社製);スチレン系樹脂、非極性、細孔半径290Å、比表面積590m2/g
吸着樹脂Aの使用量:内径2cmのカラムに高さが24cmとなるように充填した。
通液条件:カカオ色素精製液60mlを空間速度(SV)が0.3〜0.6/hとなる条件で通液した後に、洗浄液(イオン交換水)80mlを空間速度(SV)が0.8〜1.2/hとなる条件で通液し、更に脱離液(70容量%エタノール水溶液(脱離しにくい場合は塩酸でpHを3に調整した液)160mlを空間速度(SV)が0.8〜1.2/hとなる条件で通液した。
前記抽出液及び洗浄液の通液時に回収された画分(非吸着画分)を濃縮乾固した後に、乳鉢により粉砕して粉末化し、カカオ色素(実施例13〜18)を取得した。また、脱離液の通液時に回収された画分(吸着画分)についても、同様の方法で乾燥処理し、カカオ色素(比較例2、4、6、8、10及び12)を取得した。更に、前記抽出液を吸着樹脂処理に供することなく、同様の方法で乾燥処理したカカオ色素(比較例3、5、7、9、11及び13)についても取得した。
2.カカオ色素の特性評価
得られた各カカオ色素について、前記試験例1と同様の方法で、酸溶解維持率、塩溶解維持率、低pH条件且つ高塩濃度条件での安定性、及び着色特性(1)について評価した。更に、得られた各カカオ色素について、以下の方法で、酸/塩溶解維持率、及び着色特性(2)について評価した。
(酸/塩溶解維持率)
25℃の温度条件下で、クエン酸1重量%及び塩化ナトリウム10重量%を含む精製水10mlに、前記で得られた各カカオ色素を色価E10%(500nm)=0.1となるように添加
して十分に撹拌した。次いで、5℃の温度条件下で24時間静置した。その後、3000rpmで30分間遠心分離に供し、不溶化物を沈降させた。更に、溶解した状態のカカオ色素をpH7のクエン酸緩衝液で希釈し、カカオ色素の濃度を分光光度計(U-3310 HITACH製)によって測定した。添加したカカオ色素総量に対する溶解した状態のカカオ色素の割合を酸/塩溶解維持率(%)として算出した。
(着色特性2)
着色特性(1)の評価の際に調製した着色調味液(実施例13のカカオ色素を添加した着色調味液)に、ゆで卵1個を25℃で2時間浸漬させ、煮卵を調製した。次いで、煮卵を取り出し、25℃のイオン交換水50gに24時間浸漬させた。イオン交換水の浸漬前後で、煮卵の着色状態を観察した。
また、比較のために、実施例13のカカオ色素の代わりに、市販されているカラメル色素(カラメル色素1及び2)を用いて、前記と同様の条件で煮卵の調製、及びイオン交換水の浸漬を行い、煮卵の着色状態を観察した。なお、カラメル色素の着色調味液への添加量は、カカオ色素の場合と同じ色価となる量に調整した。
得られた結果を表7に示す。また、酸溶解維持率及び塩溶解維持率の測定時に遠心分離後の状態を観察した結果を図5に示す。また、酸/塩溶解維持率の測定時に遠心分離後の状態を観察した結果を図6に示す。更に、各カカオ色素を添加した着色調味料の遠心分離後の状態を観察した結果を図7に示す。また、実施例13及び比較例2〜3のカカオ色素を添加した着色調味料で調理した豚肉の外観を観察した結果を図8に示す。更に、実施例11のカカオ色素又は市販のカラメル色素を添加した着色調味料を用いて調製した煮卵についてイオン交換水の浸漬前後の状態を観察した結果を図9に示す。
これらの結果から明らかなように、吸着樹脂に吸着しなかった画分から回収されたカカオ色素(実施例13〜18)では、(1)酸溶解維持率が60%以上、及び(2)酸溶解維持率が40%以上且つ塩溶解維持率が80%以上の条件を満たしていた。また、実施例17及び18のカカオ色素では、酸/塩溶解維持率20%以上であった(なお、実施例13〜16のカカオ色素については酸/塩溶解維持率の測定は行っていない)。また、実施例13〜18のカカオ色素は、酸性且つ高塩濃度の着色調味料中で不溶物の生成が抑制されており、カカオ色素の溶解された状態が安定に維持されていた。更に、実施例13〜18のカカオ色素を添加した着色調味液を用いて豚肉を調理すると、豚肉に斑点を生じさせることなく、均一に着色できていた。
これに対して、吸着樹脂に吸着しなかった画分から回収されたカカオ色素(比較例1、
3、5、7及び9)では、酸溶解維持率が15%未満であり、当該カカオ色素を添加した着色調味液では、不溶化物の生成が認められ、カカオ色素が溶解した状態を維持できていなかった。また、当該カカオ色素(比較例2、4、6、8、10及び12)を添加した着色調味液を用いて豚肉を調理すると、豚肉に斑点が認められ、着色が不均一になっていた。更に、カカオハスクを水酸化ナトリウム水溶液で抽出処理した抽出液から得られるカカオ色素(比較例3、5、7、9、11及び13)でも、酸溶解維持率が低く、当該カカオ色素を添加した着色調味液では不溶化物の生成が認められ、更に当該カカオ色素を添加した着色調味液を用いて豚肉を調理すると、豚肉に斑点が認められた。
また、実施例13のカカオ色素を添加した着色調味液を用いて煮卵を調製すると、燻製様の濃い着色が認められ、イオン交換水に浸漬しても、色抜けがなく、濃い着色状態を維持できていた。一方、カラメル色素を添加した着色調味液を用いて調製した煮卵では、十分な濃い着色が認められず、更にイオン交換水に浸漬すると、色抜けによって色が薄くなった。
以上の結果から、(1)酸溶解維持率が60%以上、(2)酸溶解維持率が40%以上且つ塩溶解維持率が80%以上、及び/又は(3)酸/塩溶解維持率20%以上であるカカオ色素を使用することにより、低pH条件又は高塩濃度条件使用しても、析出、斑点、着色ムラ等の発生を抑制して、均一な着色が可能になることが明らかとなった。
試験例7:本発明のカカオ色素の製造における吸着樹脂処理及びイオン交換樹脂処理の検討
1.カカオ色素の製造
前記試験例6における抽出条件3又は5と同条件でカカオハスクの抽出処理を行った。抽出処理後、抽出液中の固形分を除去し、カカオ色素が含まれる抽出液を得た。その後、前記試験例6と同様の条件で抽出液を精製してカカオ色素精製液を得た。次いで、吸着樹脂Aの代わりに下記吸着樹脂B、C、又は陽イオン交換樹脂Aを使用したこと以外は、前記試験例6と同条件で、得られたカカオ色素精製液の各樹脂に対する通液を行った。
吸着樹脂B:アンバーライトXAD1180N(ローム アンド ハース社製);スチレン系樹脂、細孔半径250Å、比表面積620m2/g
吸着樹脂C:アンバーライトHXAD7HP(ローム アンド ハース社製);アクリル系樹脂、細孔半径50Å、比表面積500m2/g
陽イオン交換樹脂A:アーバンライト200CT(ローム アンド ハース社製);官能基−SO3M、細孔半径50Å
前記抽出液及び洗浄液の通液時に回収された画分(非吸着画分)を濃縮乾固した後に、乳鉢により粉砕して粉末化し、カカオ色素(実施例17〜20)を取得した。また、脱離液の通液時に回収された画分(吸着画分)についても、同様の方法で乾燥処理し、カカオ色素(比較例14、16及び18)を取得した。更に、前記抽出液を樹脂に通液することなく、同様の方法で乾燥処理したカカオ色素(比較例15、17、19及び20)についても取得した。
2.カカオ色素の特性評価
得られた各カカオ色素について、前記試験例6と同様の方法で、酸溶解維持率、塩溶解維持率、酸/塩溶解維持率、低pH条件且つ高塩濃度条件での安定性、及び着色特性(1)について評価した。
得られた結果を表8に示す。また、酸溶解維持率、塩溶解維持率、及び酸/塩溶解維持率の測定時に遠心分離後の状態を観察した結果を図10に示す。また、各カカオ色素を添加した着色調味料の遠心分離後の状態を観察した結果を図11に示す。
これらの結果から、吸着樹脂処理に使用する吸着樹脂の種類を変えても、前記試験例4の結果と同様に、吸着樹脂に吸着した画分から回収されたカカオ色素は、(1)酸溶解維持率が60%以上、(2)酸溶解維持率が40%以上且つ塩溶解維持率が80%以上、及び/又は(3)酸/塩溶解維持率20%以上の特性を満たし得ることが確認された。また、アルカリ性水溶液で抽出処理された抽出液を陽イオン交換樹脂処理に供しても、陽イオン交換樹脂に吸着した画分から回収されたカカオ色素は、前記特性を満たし得ることが確認された。更に、この結果からも、(1)酸溶解維持率が60%以上、(2)酸溶解維持率が40%以上且つ塩溶解維持率が80%以上の条件、及び/又は(3)酸/塩溶解維持率20%以上であるカカオ色素は、低pH条件又は高塩濃度条件使用しても、析出、斑点、着色ムラ等の発生を抑制でき、飲食物を均一に着色できることが確認された。
試験例8:茶系乃至褐色系の色素の製造及び性能評価
1.茶系乃至褐色系の色素の製造
(カカオ色素)
カカオハスク100gをpH12.30の水酸化ナトリウム水溶液2000mlに添加し、80℃で撹拌しながら抽出処理を2時間行った。抽出処理後に固形分を除去し、カカオ色素が含まれる抽出液を得た。得られた抽出液を濃縮した後に、アセトンを加えて塩酸にてpHを3に調整した後に、5℃で16時間静置して、ガム質等の不純物を析出させた。次いで、濾過により不純物を取り除いた後に、水酸化ナトリウムでpHを10に調整し、5℃で16時間静置して、カカオ色素成分を析出させた。析出したカカオ色素を回収した後に水で溶解させた後に、濃縮によってアセトン除去し、更に色価E10%(500nm)=1.6となるように精製水を加え、精製カカオ色素水溶液を得た。得られた精製カカオ色素水溶液200mlに対して30重量%水酸化ナトリウム水溶液を加えてpH13に調整し、50℃に保温しながら撹拌した状態で0.5vvmの通気速度となるように空気(酸素含有量:約20v/v%)を通気することにより酸素供給処理を24時間行った。酸素供給処理前、及び酸素供給処理24時間後の精製カカオ色素水溶液に、塩酸を加えてpHを7に調整した後に濾過し、濾液を回収し、スプレードライで乾燥させて、カカオ色素粉末を得た。
(タマリンド色素)
市販品のタマリンド色素(第4版 既存添加物自主規格に記載されている規格内のもの)に対して色価E10%(500nm)=1.6となるように精製水を加え、精製タマリンド色素水溶液を得た。得られた精製タマリンド色素水溶液に対して、前記精製カカオ色素水溶液と同条件で酸素供給処理を行うことにより、タマリンド色素粉末を得た。
(タマネギ色素)
市販品のタマネギ色素(第4版 既存添加物自主規格に記載されている規格内のもの)に対して色価E10%(500nm)=1.6となるように精製水を加え、精製タマネギ色素水溶液を得た。得られた精製タマネギ色素水溶液に対して、前記精製カカオ色素水溶液と同条件で酸素供給処理を行うことにより、タマネギ色素粉末を得た。
(コウリャン色素)
市販品のコウリャン色素(第4版 既存添加物自主規格に記載されている規格内のもの)に対して色価E10%(500nm)=1.6となるように精製水を加え、精製コウリャン色素水溶液を得た。得られた精製コウリャン色素水溶液に対して、前記精製カカオ色素水溶液と同条件で酸素供給処理を行うことにより、コウリャン色素粉末を得た。
2.茶系乃至褐色系の色素の特性評価
得られた各茶系乃至褐色系の色素について、前記試験例1と同様の方法で、酸溶解維持率、及び塩溶解維持率について評価した。
得られた結果を表9に示す。また、酸溶解維持率、及び塩溶解維持率の測定時に遠心分離後の状態を観察した結果を図12に示す。この結果から、カカオ色素のみならず、タマリンド色素、タマネギ色素、コウリャン色素等の茶系乃至褐色系の色素についても、アルカリ性条件下で酸素供給出処理に供することによって、酸溶解維持率が40%以上且つ塩溶解維持率80%以上の茶系乃至褐色系の色素が得られることが明らかとなった。
試験例9:カカオ色素の酸性飲料中での安定性評価
市販の炭酸飲料(「三ツ矢サイダー」、アサヒ飲料株式会社製;果糖ぶどう糖液糖、砂糖、香料、酸味料含有)をクエン酸にてpHを2.5に調整し、酸性飲料を得た。次いで、実施例3で得られたカカオ色素、市販カカオ色素(チョコカラー610P:グリコ栄養食品株式会社製)、又は市販されているカラメル色素(カラメル色素1及び2)を色価E10%(500nm)=270なるように精製水に溶解させた色素溶液を、0.05重量%の濃度となるように前記酸性飲料に添加した。各色素を添加した酸性飲料を24000luxの光曝露条件下で、5℃で72時間静置して、色の退色を目視にて確認した。また、光曝露前後の酸性飲料について、500nmの吸光度を測定し、次式に従って色素残存率(%)を求めた。
色素残存率の結果を表10に示す。また、光曝露前後で酸性飲料の外観を観察した結果を図13に示す。この結果、現行品のカラメル色素では、酸性飲料中で沈殿が認められ、また、カラメル色素では、沈殿が認められなかったものの、光曝露によって著しい色素の退色が認められた。これに対して、実施例3で得られたカカオ色素の場合では、沈殿を生じさせることなく、更に光曝露による退色も抑制できていた。
試験例10:カカオ色素の起泡性及び泡安定性の評価
工業的なスケールにて製造を行ったこと、抽出処理時の温度を50℃に変更したこと酸素供給処理時間を26時間に変更したこと、及び精製カカオ色素水溶液に水酸化ナトリウムを加えてpH12.63に調整したこと以外は、前記実施例12と同様の条件で、カカオ色素粉末(実施例27)を製造した。
また、別途、クエン酸21gを量り、水を加えて溶かし、全量を1000mlに調整して第1液を得た。また、リン酸二ナトリウム71.6gを量り、水を加えて溶かし、全量を1000mlに調整して第2液を得た。第1液と第2液を適量混合し、pH3、pH4、及びpH5の緩衝液を調製した。次いで、各pHの緩衝液に、色価E10%(500nm)=70の溶液換算で0.5重量%となるように前記で得られたカカオ色素粉末を溶解し、15ml容チューブに10ml入れ、手で同時に20回上下に振とうさせた。直後の泡立ちを確認した。
得られた結果を図14に示す。図14から明らかなように、pH3、pH4、及びpH5の緩衝液のいずれにおいても、泡立ちが確認された。特に、ビール風味ノンアルコール飲料における一般的なpHであるpH3〜4の間で、格段に優れた泡立ちが認められ、ビール風味ノンアルコール飲料における起泡剤として有用であることも確認された。
試験例11:カカオ色素の起泡性及び泡安定性の評価
1.カカオ色素の製造
実施例2、12、及び27で得られたカカオ色素粉末、及び第8版食品添加物公定書に記載のカラメルIの規格内の市販品カラメル色素を準備した。また、別途、以下の方法で、カカオ色素粉末(実施例28〜30)を準備した。
(実施例28〜30)
カカオハスク100gをpH12.52の水酸化ナトリウム水溶液2000mlに添加し、80℃で撹拌しながら抽出処理を2時間行った。抽出処理後に固形分を除去し、カカオ色素が含まれる抽出液を得た。得られた抽出液を濃縮した後に、アセトンを加えて塩酸にてpHを3に調整した後に、5℃で16時間静置して、ガム質等の不純物を析出させた。次いで、濾過により不純物を取り除いた後に、水酸化ナトリウムでpHを10に調整し、5℃で16時間静置して、カカオ色素成分を析出させた。析出したカカオ色素を回収した後に水で溶解させた後に、濃縮によってアセトン除去し、更に色価E10%(500nm)=130換算で1重量%程度となるように精製水を加え、精製カカオ色素水溶液を得た。
このカオ色素精製液を下記条件の吸着樹脂処理に供した。
吸着樹脂A:ダイヤイオンHP20(三菱化学社製);スチレン系樹脂、非極性、細孔半径290Å、比表面積590m2/g
陽イオン交換樹脂A:アーバンライト200CT(ローム アンド ハース社製);官能基−SO3M、細孔半径50Å
吸着樹脂B:アンバーライトXAD1180N(ローム アンド ハース社製);スチレン系樹脂、細孔半径250Å、比表面積620m2/g
樹脂の使用量:内径2cmのカラムに高さが24cmとなるように充填した。
通液条件:カカオ色素精製液50mlを空間速度(SV)が0.3〜0.6/hとなる条件で通液した後に、洗浄液(イオン交換水)80mlを空間速度(SV)が0.8〜1.2/hとなる条件で通液し、更に脱離液(70容量%エタノール水溶液(脱離しにくい場合は塩酸でpHを3に調整した液)160mlを空間速度(SV)が0.8〜1.2/hとなる条件で通液した。
前記抽出液及び洗浄液の通液時に回収された画分(非吸着画分)を回収し、カカオ色素溶液を得た。吸着樹脂Aで処理して得られたカカオ色素(16.3g、E10%(500nm)=0.99)を実施例28、陽イオン交換樹脂Aで処理して得られたカカオ色素(7.4g、E10%(500nm)=2.59)を実施例29、吸着樹脂Bで処理して得られたカカオ色素(18.1g、E10%(500nm)=0.85)を実施例30とした。
2.各色素の特性評価(1)
各カカオ色素について、前記試験例1と同様の方法で、酸溶解維持率、及び塩溶解維持率について評価した。
また、各色素について、以下の方法で、起泡性及び泡安定性について評価した。先ず、クエン酸21gを量り、水を加えて溶かし、全量を1000mlに調整して第1液を得た。また、リン酸二ナトリウム71.6gを量り、水を加えて溶かし、全量を1000mlに調整して第2液を得た。第1液と第2液を適量混合し、pH3.5の緩衝液を調製した。次いで、得られた緩衝液に、色価E10%(500nm)=100の溶液換算で0.1重量%となるように前記で得られたカカオ色素溶液を溶解し、100ml容のメスシリンダー(cherry社製、内径:2.9cm、高さ:25cm)に20ml入れ、手で同時に20回上下に振とうさせた。振とう直後と5分後の泡の体積をメスシリンダーの目盛から読み取って計測した。各色素について、この実験を3回行った。
得られた結果を表11及び図15に示す。この結果から、実施例2、12、及び27〜30のカカオ色素は、いずれも、優れた気泡性と泡安定性を有していることが確認された。
3.各色素の特性評価(2)
各色素について、以下の方法で、起泡性及び泡安定性について評価した。先ず、クエン酸21gを量り、水を加えて溶かし、全量を1000mlに調整して第1液を得た。また、リン酸二ナトリウム71.6gを量り、水を加えて溶かし、全量を1000mlに調整して第2液を得た。第1液と第2液を適量混合し、pH3.5の緩衝液を調製した。次いで、得られた緩衝液に、色価E10%(500nm)=100の溶液換算で0.1重量%となるように前記で得られたカカオ色素粉末を溶解し、15ml容の蓋付き試験管(日電理化硝子株式会社製、内径:1.2cm、高さ:15cm)に5ml入れ、手で同時に合計100回上下に手で振とうさせた。振とう直後、5分後、10分後、20分後、30分後、60分後に泡の状態を確認し、泡の高さを測定した。泡の高さの測定は、画像補正用カラーCasmatch(株式会社ベアーメディック製)の基準スケール(10mm)を用いて求めた。更に、振とう直後の泡の高さを100%として、振とう後の泡の高さの比率を泡維持率(%)として算出した。
得られた結果を表12及び図16に示す。この結果からも、実施例2、12、及び27〜30のカカオ色素は、優れた気泡性と泡安定性を有していることが確認された。特に、実施例2、12、及び27〜30のカカオ色素は、振とう20分以降でも泡を維持できており、泡安定性を有していることが知られているカラメル色素に比して、優れた泡安定性を備えていた。
試験例12:茶系乃至褐色系の色素の起泡性及び泡安定性の評価
1.茶系乃至褐色系の色素の製造
(カカオ色素)
カカオハスク100gをpH12.30の水酸化ナトリウム水溶液2000mlに添加し、80℃で撹拌しながら抽出処理を2時間行った。抽出処理後に固形分を除去し、カカオ色素が含まれる抽出液を得た。得られた抽出液を濃縮した後に、アセトンを加えて塩酸にてpHを3に調整した後に、5℃で16時間静置して、ガム質等の不純物を析出させた。次いで、濾過により不純物を取り除いた後に、水酸化ナトリウムでpHを10に調整し、5℃で16時間静置して、カカオ色素成分を析出させた。析出したカカオ色素を回収した後に水で溶解させた後に、濃縮によってアセトン除去し、更に色価E10%(500nm)=7.5となるように精製水を加え、精製カカオ色素水溶液を得た。
得られた精製カカオ色素水溶液を200mlに30重量%水酸化ナトリウム溶液を加えてpH13に調整し、50℃に保温しながら撹拌した状態で0.5vvmの通気速度となるように空気(酸素含有量:約20v/v%)を通気することにより酸素供給処理を6時間行った。6時間後、30重量%の塩酸水溶液にてpHを7に調整後、濾過して濾液を回収し、カカオ試験液とした。このときの色価E10%(500nm)は2.88であった。
(タマネギ色素)
市販品のタマネギ色素(第4版 既存添加物自主規格に記載されている規格内のもの)を色価E10%(500nm)=7.5となるように精製水を加え、精製タマネギ色素水溶液を得た。得られた精製タマネギ色素水溶液に対して、前記精製カカオ色素水溶液と同条件で酸素供給処理を行うことにより、タマネギ色素試験液(色価E10%(500nm)=2.76)を得た。
(コウリャン色素)
市販品のコウリャン色素(第4版 既存添加物自主規格に記載されている規格内のもの)を色価E10%(500nm)=7.5となるように精製水を加え、精製コウリャン色素水溶液を得た。得られた精製コウリャン色素水溶液に対して、前記精製カカオ色素水溶液と同条件で酸素供給処理を行うことにより、コウリャン色素試験液(色価E10%(500nm)=2.36)を得た。
2.各色素の特性評価
各色素試験液を乾燥させ、色素粉末を得た。この色素粉末について、前記試験例1と同様の方法で、酸溶解維持率、及び塩溶解維持率について評価した。
また、各色素試験液を用いて、以下の方法で、起泡性及び泡安定性について評価した。先ず、クエン酸21gを量り、水を加えて溶かし、全量を1000mlに調整して第1液を得た。また、リン酸二ナトリウム71.6gを量り、水を加えて溶かし、全量を1000mlに調整して第2液を得た。第1液と第2液を適量混合し、pH3.5の緩衝液を調製した。次いで、得られた緩衝液に、色価E10%(500nm)=100の溶液換算で0.1重量%となるように前記で各色素試験液を添加し、15ml容の蓋付き試験管(日電理化硝子株式会社製、内径:1.2cm、高さ:15cm)に5ml入れ、手で同時に合計100回上下に手で振とうさせた。振とう直後、5分後、30分後、及び60分後に泡の状態を確認した。また、比較のため、第8版食品添加物公定書に記載のカラメルIの規格内の市販品カラメル色素についても、前記と同様に試験を行った。
得られた結果を表13及び図17に示す。この結果から、カカオ色素だけでなく、タマネギ色素及びコウリャン色素であっても、アルカリ性条件下で酸素供給出処理に供することによって、優れた起泡性及び泡安定性を備え得ることが明らかとなった。
試験例13:カカオ色素の濃度と起泡性の関係の評価
実施例27で得られたカカオ色素粉末を利用して、当該カカオ色素の濃度と起泡性の関係について、以下の方法で評価した。
別途、クエン酸21gを量り、水を加えて溶かし、全量を1000mlに調整して第1液を得た。また、リン酸二ナトリウム71.6gを量り、水を加えて溶かし、全量を1000mlに調整して第2液を得た。第1液と第2液を適量混合し、pH3.5の緩衝液を調製した。次いで、得られた緩衝液に、色価E10%(500nm)=100の溶液換算で0.001重量%、0.01重量%、0.1重量%、及び1重量%となるように実施例27で得られたカカオ色素粉末を溶解して色素溶液を得た。次いで、15ml容の蓋付き試験管(日電理化硝子株式会社製、内径:1.2cm、高さ:15cm)に各色素溶液を5mlずつ入れ、同時に合計100回上下に手で振とうさせた。振とう直後、の泡立ちの様子を確認した。また、対照として、カカオ色素粉末を添加していないpH3.5の緩衝液を用いて同様に試験を行った。
得られた結果を図18に示す。この結果から、実施例27で得られたカカオ色素粉末が0.001重量%以上の濃度であれば、起泡性が認められ、0.01重量%以上、とりわけ0.1重量%以上の濃度の場合に、格段に優れた起泡性が認められることが明らかとなった。

Claims (15)

  1. 下記(i)〜(iii)の少なくとも1つの特性を備えていることを特徴とする茶系乃至褐色系の色素:
    (i)茶系乃至褐色系の色素を色価E10%(500nm)=0.1となるように水に溶解させた色素溶液に対してクエン酸を1重量%となるように添加すると、茶系乃至褐色系の色素の60%以上が溶解した状態を維持する。
    (ii)茶系乃至褐色系の色素を色価E10%(500nm)=0.1となるように水に溶解させた色素溶液に対してクエン酸を1重量%となるように添加すると、茶系乃至褐色系の色素の40%以上が溶解した状態を維持し、且つ茶系乃至褐色系の色素を色価E10%(500nm)=0.1となるように水に溶解させた色素溶液に対して塩化ナトリウムを10重量%となるように添加すると、乃至褐色系の色素の80%以上が溶解した状態を維持する。
    (iii)茶系乃至褐色系の色素を色価E10%(500nm)=0.1となるように水に溶解させた色素溶液に対してクエン酸を1重量%且つ塩化ナトリウムを10重量%となるように添加すると、茶系乃至褐色系の色素の20%以上が溶解した状態を維持する。
  2. 前記(i)〜(iii)の少なくとも2つの特性を備える、請求項1に記載の茶系乃至褐色系の色素。
  3. カカオ色素、コウリャン色素、タマネギ色素、及びタマリンド色素よりなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1又は2に記載の茶系乃至褐色系の色素。
  4. pHが2〜6及び/又は塩濃度が1〜30重量%の飲食品の着色に使用される、請求項1〜3のいずれかに記載の茶系乃至褐色系の色素。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の茶系乃至褐色系の色素を含有する、タレ類の着色剤。
  6. 請求項1〜4のいずれかに記載の茶系乃至褐色系の色素を含有する、タレ類。
  7. 請求項1〜4のいずれかに記載の茶系乃至褐色系の色素を含有する、発泡性飲料の起泡剤又は泡安定剤。
  8. 請求項1〜4のいずれかに記載の茶系乃至褐色系の色素を含有する、発泡性飲料。
  9. 茶系乃至褐色系の色素に対してアルカリ性条件下での酸素ガスを供給することにより、茶系乃至褐色系の色素溶液を得ることを特徴とする、茶系乃至褐色系の色素の製造方法。
  10. 茶系乃至褐色系の色素を含む植物原料に対してアルカリ性条件下での酸素ガスを供給する、請求項9に記載の製造方法。
  11. 前記酸素ガスとして空気を供給する、請求項9又は10に記載の製造方法。
  12. 前記酸素ガスの供給速度が0.01vvm以上である、請求項9〜11のいずれかに記載の製造方法。
  13. 前記酸素ガス供給時のpHが8以上である、請求項9〜12のいずれかに記載の製造方法。
  14. カカオ色素、コウリャン色素、タマネギ色素、及びタマリンド色素よりなる群から選択される少なくとも1種の製造に適用される、請求項9〜13のいずれかに記載の製造方法。
  15. 茶系乃至褐色系の色素を含む溶液を、吸着樹脂処理、陽イオン交換樹脂処理、陰イオン交換樹脂処理、又は活性炭処理に供して、吸着樹脂処理による非吸着画分、陽イオン交換樹脂処理による非吸着画分、陰イオン交換樹脂処理による吸着画分、又は活性炭処理による非吸着画分を回収することを特徴とする、茶系乃至褐色系の色素の製造方法。
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