以下では、本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨およびその範囲から逸脱することなくその形態および詳細を様々に変更し得ることは、当業者であれば容易に理解される。したがって、本発明は、以下に示す実施の形態および実施例の記載内容に限定して解釈されるものではない。
(実施の形態1)
本実施の形態では、本発明の一態様に係る蓄電装置の構造及びその製造方法について、図1及び図2を参照して説明する。
本明細書等において、蓄電装置とは、蓄電機能を有する素子および装置全般を指す。例えば、リチウムイオン二次電池、リチウムイオンキャパシタ、および電気二重層キャパシタなどを含む。
図1(A)に、蓄電装置の一例として、ラミネート型のリチウムイオン二次電池について示す。
図1(A)に示す蓄電装置100は、ラミネート型の蓄電池である。蓄電装置100は、正極集電体101及び正極活物質層102を有する正極103と、負極集電体104と負極活物質層105を有する負極106と、セパレータ107と、電解液108と、外装体109と、を有する。外装体109に囲まれた領域内に設けられた正極103と負極106との間には、セパレータ107が設けられている。また、外装体109に囲まれた領域内には、電解液108が注入されている。
まず、負極106の構成について説明する。
負極集電体104には、銅、ニッケル、チタン等の金属など、導電性の高い材料を用いることができる。負極集電体104は、箔状、板状(シート状)、網状、パンチングメタル状、エキスパンドメタル状等の形状を適宜用いることができる。負極集電体104は、厚みが10μm以上30μm以下のものを用いるとよい。
負極活物質層105は、負極活物質を含む。活物質とは、キャリアであるイオンの挿入・脱離に関わる物質のみを指すが、本明細書等では、本来「負極活物質」である材料に加えて、導電助剤やバインダーなどを含めたものも、負極活物質層と呼ぶ。
負極活物質層105に用いる負極活物質としては、リチウムの溶解・析出、又はリチウムイオンの挿入・脱離が可能な材料を用いることができ、リチウム金属、炭素系材料、合金系材料等を用いることができる。リチウム金属は、酸化還元電位が低く(標準水素電極に対して−3.045V)、重量及び体積当たりの比容量が大きい(それぞれ3860mAh/g、2062mAh/cm3)ため、好ましい。
炭素系材料としては、黒鉛、易黒鉛化性炭素(ソフトカーボン)、難黒鉛化性炭素(ハードカーボン)、カーボンナノチューブ、グラフェン、カーボンブラック等がある。
黒鉛としては、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、コークス系人造黒鉛、ピッチ系人造黒鉛等の人造黒鉛や、球状化天然黒鉛等の天然黒鉛がある。
黒鉛はリチウムイオンが黒鉛に挿入されたとき(リチウム−黒鉛層間化合物の生成時)にリチウム金属と同程度に卑な電位を示す(0.3V以下 vs.Li/Li+)。これにより、リチウムイオン二次電池は高い作動電圧を示すことができる。さらに、黒鉛は、単位体積当たりの容量が比較的高い、体積膨張が小さい、安価である、リチウム金属に比べて安全性が高い等の利点を有するため、好ましい。
負極活物質として、リチウムとの合金化・脱合金化反応により充放電反応を行うことが可能な材料も用いることができる。例えば、Ga、Si、Al、Ge、Sn、Pb、Sb、Bi、Ag、Zn、Cd、In等のうち少なくとも一つを含む材料を用いることができる。このような元素は炭素と比べて容量が大きく、特にシリコンは理論容量が4200mAh/gと高い。このため、負極活物質にシリコンを用いることが好ましい。このような元素を用いた合金系材料としては、例えば、SiO、Mg2Si、Mg2Ge、SnO、SnO2、Mg2Sn、SnS2、V2Sn3、FeSn2、CoSn2、Ni3Sn2、Cu6Sn5、Ag3Sn、Ag3Sb、Ni2MnSb、CeSb3、LaSn3、La3Co2Sn7、CoSb3、InSb、SbSn等がある。
また、負極活物質として、二酸化チタン(TiO2)、リチウムチタン酸化物(Li4Ti5O12)、リチウム−黒鉛層間化合物、(LixC6)、五酸化ニオブ(Nb2O5)、酸化タングステン(WO2)、酸化モリブデン(MoO2)等の酸化物を用いることができる。
また、負極活物質として、リチウムと遷移金属の複窒化物である、Li3N型構造をもつLi3−xMxN(M=Co、Ni、Cu)を用いることができる。例えば、Li2.6Co0.4N3は大きな充放電容量(900mAh/g、1890mAh/cm3)を示し好ましい。
リチウムと遷移金属の複窒化物を用いると、負極活物質中にリチウムイオンを含むため、正極活物質としてリチウムイオンを含まないV2O5、Cr3O8等の材料と組み合わせることができ好ましい。なお、正極活物質にリチウムイオンを含む材料を用いる場合でも、あらかじめ正極活物質に含まれるリチウムイオンを脱離させることで、負極活物質としてリチウムと遷移金属の複窒化物を用いることができる。
また、コンバージョン反応が生じる材料を負極活物質として用いることもできる。例えば、酸化コバルト(CoO)、酸化ニッケル(NiO)、酸化鉄(FeO)等の、リチウムと合金化反応を行わない遷移金属酸化物を負極活物質に用いてもよい。コンバージョン反応が生じる材料としては、さらに、Fe2O3、CuO、Cu2O、RuO2、Cr2O3等の酸化物、CoS0.89、NiS、CuS等の硫化物、Zn3N2、Cu3N、Ge3N4等の窒化物、NiP2、FeP2、CoP3等のリン化物、FeF3、BiF3等のフッ化物でも起こる。
導電助剤としては、天然黒鉛、メソカーボンマイクロビーズ等の人造黒鉛、メソフェーズピッチ系炭素繊維、等方性ピッチ系炭素繊維、カーボンナノチューブ、アセチレンブラック(AB)又はグラフェンなどの炭素材料を用いることができる。また、例えば、銅、ニッケル、アルミニウム、銀、金などの金属粉末や金属繊維、導電性セラミックス材料等を用いることができる。
薄片状のグラフェンは、高い導電性を有するという優れた電気特性、及び柔軟性並びに機械的強度という優れた物理特性を有する。そのため、グラフェンを、導電助剤として用いることにより、負極活物質同士の接触点や、接触面積を増大させることができる。
なお、本明細書において、グラフェンは、単層のグラフェン、又は2層以上100層以下の多層グラフェンを含む。単層グラフェンとは、π結合を有する1原子層の炭素分子のシートのことをいう。また、酸化グラフェンとは、上記グラフェンが酸化された化合物のことをいう。なお、酸化グラフェンを還元してグラフェンを形成する場合、酸化グラフェンに含まれる酸素は全て脱離されずに、一部の酸素はグラフェンに残存する。グラフェンに酸素が含まれる場合、酸素の割合は、XPS(X線光電子分光法)で測定した場合にグラフェン全体の2%以上20%以下、好ましくは3%以上15%以下である。
バインダーとしては、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、スチレン・イソプレン・スチレンゴム、アクリロニトリル・ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、エチレン・プロピレン・ジエン共重合体、ポリスチレン、ポリアクリル酸メチル、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリプロピレンオキシド、ポリイミド、ポリ塩化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、イソブチレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリアクリロニトリル(PAN)、等の材料を用いることができる。
また、バインダーとしては、例えば多糖類などを用いてもよい。多糖類としては、カルボキシメチルセルロース(CMC)、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースおよびジアセチルセルロース、再生セルロースなどのセルロース誘導体や、澱粉、などを用いることができる。
バインダーはそれぞれ単独で用いてもよいし、複数の種類を組み合わせて使用してもよい。例えば接着力や弾力に優れるものと、粘度調整機能の高いものを合わせて使用してもよい。粘度調整機能の高いものとして、例えば水溶性高分子を用いるとよい。また、粘度調整機能に特に優れた水溶性高分子としては、前述の多糖類、例えばカルボキシメチルセルロース(CMC)、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースおよびジアセチルセルロース、再生セルロースなどのセルロース誘導体や、澱粉を用いることができる。
複数の種類のバインダーを組み合わせて使用する例としては、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)とカルボキシメチルセルロース(CMC)の組み合わせなどが挙げられる。
なお、カルボキシメチルセルロースなどのセルロース誘導体は、例えばカルボキシメチルセルロースのナトリウム塩やアンモニウム塩などの塩とすることにより、溶媒への溶解度が上がり、粘度調整剤としての効果を発揮しやすくなる。溶解度が高くなることにより、電極の活物質層となるペーストを作製する際に活物質や他の構成要素との分散性を高めることもできる。本明細書においては、電極の活物質層のバインダーとして使用するセルロースおよびセルロース誘導体としては、それらの塩も含むものとする。
水溶性高分子は水に溶解することにより、溶液の粘度を安定化させることができる。また、活物質や第2のバインダー、例えばスチレンブタジエンゴムなどを、水溶液中に安定して分散させることができる。また、官能基を有するために活物質表面に安定に吸着しやすいと期待される。例えば、カルボキシメチルセルロースは官能基として水酸基やカルボキシル基を有する。また、官能基を有するために高分子同士が相互に作用すると考えられる。例えば、高分子同士が水素結合などで結合する。よって、活物質表面を広く覆って存在することが期待される。
ここで、特にイオン液体においては、活物質表面への被覆は重要である。例えば、バインダーが活物質表面を覆うことにより、リチウムイオンとの反応の際に、活物質とカチオンとの副反応を抑える効果が期待される。
黒鉛などの層状構造を有する材料の場合、リチウムイオンのみでなく、イオン液体のカチオンが黒鉛の層間に挿入する場合がある。このカチオンの挿入は、不可逆容量の要因となり、また層の剥離などを引き起こす可能性もある。活物質表面をバインダーが広く覆うことにより、カチオン挿入を抑えて不可逆容量を低減することが期待される。また、活物質表面を覆うバインダーが膜を形成する場合には、不動態膜としての役割を果たして電解液の分解を抑える効果も期待される。ここで、不動態膜とは、電子の伝導性を抑える膜であり、活物質の電池反応電位において電解液が分解するのを抑える。また、不動態膜は、電子の伝導性を抑えるとともに、リチウムイオンは伝導できるとさらに好ましい。
ここでバインダーに粘度調整機能の高いセルロース誘導体を用い、活物質として黒鉛を用いる例を示す。セルロース誘導体として、ここではカルボキシメチルセルロースナトリウム(以下、CMC−Na)を用いる。CMC−Naが活物質表面へ被覆することにより、カチオンが黒鉛の層間に挿入するのを物理的に防ぐことが期待される。また、バインダーとしてゴム弾性を有する材料、例えばスチレン−ブタジエンゴム(以下、SBR)を併用する場合を考える。SBRなどのスチレンモノマー単位やブタジエンモノマー単位を含む高分子はゴム弾性を有し、伸び縮みしやすいため、充放電に伴う活物質の膨張収縮や、電極の曲げなどに伴うストレスに強く、信頼性の高い電極を得ることができる。一方、SBRは、疎水基を有し水に溶けにくい場合が多い。このため水溶液中で粒子が水に溶解しない状態で分散する場合がある。よって、SBRを用いて電極の活物質層となるペーストを作製する際に、電極の活物質層の塗布のために適した粘度まで高めることが難しい。ここで、粘度調整機能の高いCMC−Naを用いると、溶液、例えばペーストなどの粘度を適度に高めることができる。また、CMC−Naを活物質やSBRと溶液中、例えばペースト中などで混合することにより、互いが均一に分散し、均一性の高い良好な電極、例えば電極膜厚や電極抵抗の均一性が高い電極を得ることができる。また、均一に分散することにより、CMC−NaとともにSBRが活物質の表面を覆うことも考えられる。このときに、SBRもカチオン挿入を抑える効果や不動態膜としての効果に寄与してもよい。
次に、負極106の作製方法について説明する。
まず、負極活物質層105を形成するための負極ペーストを作製する。負極ペーストは、上述した材料を用い、適宜導電助剤やバインダーを添加して、溶媒とともに混練することで作製することができる。溶媒としては、例えば、水や、NMP(N−メチルピロリドン)などを用いることができる。安全性とコストの観点から、水を用いることが好ましい。ここで、バインダーとして水溶性高分子を用いることにより、塗工に適した粘度のペーストを作製することができる。また、分散性の高いペーストを作製することができる。このため、活物質の表面をバインダーが適度に覆うことができる。また、ペーストを作製する際に、はじめに活物質と水溶性高分子を固練りすることにより、より安定した粘度でペーストを作製することができる。また、それぞれの材料の分散性をより高めることができる。また、活物質の表面をバインダーが覆いやすくなる。
ここでは例として負極活物質に黒鉛を用い、バインダーにCMC−NaとSBRを用い、溶媒に水を用いる。
まず粘度調整剤であるCMC−Naを純水に溶解させ水溶液を調整する。ここで、例えばCMC−Naは重合度は、好ましくは200以上1000以下、より好ましくは600以上800以下とすればよい。次に、活物質を秤量し、CMC−Naの水溶液を添加する。黒鉛とCMC−NaおよびSBRの重量の総和に対して、CMC−Naの量が1weight%未満であると、塗工の際にかすれ(膜厚の均一性が悪く局所的に薄い個所ができること)が発生しやすい。かすれは、ペーストの乾燥(溶媒の揮発)による粘度増大等により発生する。また、CMC−Naの量が7weight%を超えると、ペーストの流動性が低下する。したがってCMC−Naの量は、黒鉛とCMC−NaおよびSBRの重量の総和に対して1weight%以上7weight%以下とするとよい。
次に、これらの混合物を混練機で固練りを行う。固練りとは、高粘度による混練のことである。混練条件として、例えば1500rpmで5分間ずつ、4回から6回の固練りを行えばよい。固練りを行うことで、活物質の凝集をほどくことができ、活物質とCMC−Naをより均一に分散させることができる。またこの時、CMC−Naの一部は、黒鉛の表面に付着し、表面を覆うことができると考えられる。
次に、これらの混合物にSBRの水分散液を添加し、混練を行う。混練条件としては、例えば混練機で1500rpmで5分間混練すればよい。
次に、これらの混合物に、所定の粘度になるまで分散媒である純水を添加し、混練を行うことでペーストを作製することができる。混練条件としては、例えば混練機で1500rpmで5分間ずつ、1回から2回混練すればよい。以上の工程により、活物質、CMC−NaおよびSBRが均一に分散した良好なペーストを作製することができる。
ここで、CMC−NaやSBRが活物質表面に膜を形成する場合には、カチオン挿入のみを抑えて、リチウムは挿入脱離できるような膜であれば、より好ましい。また、CMC−NaやSBRは膜の形態になっていなくとも効果が得られる場合もある。また、CMC−NaやSBRは、ポーラスな膜を形成してもよい。ポーラスな膜を形成することにより、カチオン挿入を抑えつつ、リチウムの挿入脱離をあまり妨害せずに反応抵抗の上昇を抑えることができるため好ましい。よって、良好な特性を有する電極を得ることができる。
負極集電体104には、表面処理を行ってもよい。このような表面処理としては、例えば、コロナ放電処理、プラズマ処理、アンダーコート処理等が挙げられる。表面処理を行うことにより、負極集電体104の負極ペーストに対するぬれ性を高めることができる。また、負極集電体104と、負極活物質層105との密着性を高めることができる。
ここでアンダーコートとは、集電体上に負極ペーストを塗布する前に、活物質層と集電体との界面抵抗を低減する目的や、活物質層と集電体との密着性を高める目的で集電体上に形成する膜を指す。なお、アンダーコートは、必ずしも膜状である必要はなく、島状に形成されていてもよい。また、アンダーコートが活物質として容量を発現しても構わない。アンダーコートとしては、例えば炭素材料を用いることができる。炭素材料としては例えば、黒鉛や、アセチレンブラック、ケッチェンブラック等のカーボンブラック、カーボンナノチューブなどを用いることができる。
次に、負極集電体104上に、負極ペーストを塗布する。
次に、負極ペーストを乾燥させることにより、負極活物質層105を形成することができる。負極ペーストの乾燥工程は、例えば、大気雰囲気下、70℃、30分、ホットプレートで乾燥した後、100℃、10時間で減圧環境下にて乾燥を行う。このようにして形成された負極活物質層105の厚さは、例えば20μm以上150μm以下となる。
なお、負極活物質層105に、プレドープを行っても良い。負極活物質層105にプレドープを行う方法は特に限定されないが、例えば、電気化学的に行うことができる。例えば、電池組み立て前に、対極としてリチウム金属を用いて、後述の電解液中において、リチウムを負極活物質層105にプレドープすることができる。
次に、正極103の構成について説明する。
正極集電体101としては、金、白金、アルミニウム、チタン等の金属、及びこれらの合金(ステンレスなど)など、導電性の高い材料を用いることができる。例えば、金、白金、アルミニウムなどが好ましい。また、シリコン、チタン、ネオジム、スカンジウム、モリブデンなどの耐熱性を向上させる元素が添加されたアルミニウム合金を用いることができる。正極集電体101は、箔状、板状(シート状)、網状、パンチングメタル状、エキスパンドメタル状等の形状を適宜用いることができる。正極集電体101は、厚みが10μm以上30μm以下のものを用いるとよい。
正極活物質層102は、正極活物質を含む。上述したように、活物質とは、キャリアであるイオンの挿入・脱離に関わる物質のみを指すが、本明細書等では、本来「正極活物質」である材料に加えて、導電助剤やバインダーなどを含めたものも、正極活物質層と呼ぶ。
正極活物質としては、LiFeO2、LiCoO2、LiNiO2、LiMn2O4、V2O5、Cr2O5、MnO2等の化合物を材料として用いることができる。
または、リチウム含有複合リン酸塩(一般式LiMPO4(Mは、Fe(II)、Mn(II)、Co(II)、Ni(II)の一以上))を用いることができる。一般式LiMPO4の代表例としては、LiFePO4、LiNiPO4、LiCoPO4、LiMnPO4、LiFeaNibPO4、LiFeaCobPO4、LiFeaMnbPO4、LiNiaCobPO4、LiNiaMnbPO4(a+bは1以下、0<a<1、0<b<1)、LiFecNidCoePO4、LiFecNidMnePO4、LiNicCodMnePO4(c+d+eは1以下、0<c<1、0<d<1、0<e<1)、LiFefNigCohMniPO4(f+g+h+iは1以下、0<f<1、0<g<1、0<h<1、0<i<1)等が挙げられる。
または、一般式Li(2−j)MSiO4(Mは、Fe(II)、Mn(II)、Co(II)、Ni(II)の一以上、0≦j≦2)等のリチウム含有複合ケイ酸塩を用いることができる。一般式Li(2−j)MSiO4の代表例としては、Li(2−j)FeSiO4、Li(2−j)NiSiO4、Li(2−j)CoSiO4、Li(2−j)MnSiO4、Li(2−j)FekNilSiO4、Li(2−j)FekColSiO4、Li(2−j)FekMnlSiO4、Li(2−j)NikColSiO4、Li(2−j)NikMnlSiO4(k+lは1以下、0<k<1、0<l<1)、Li(2−j)FemNinCoqSiO4、Li(2−j)FemNinMnqSiO4、Li(2−j)NimConMnqSiO4(m+n+qは1以下、0<m<1、0<n<1、0<q<1)、Li(2−j)FerNisCotMnuSiO4(r+s+t+uは1以下、0<r<1、0<s<1、0<t<1、0<u<1)等が挙げられる。
なお、キャリアイオンが、リチウムイオン以外のアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオンの場合、正極活物質として、上記リチウム化合物及びリチウム含有複合リン酸塩及びリチウム含有複合ケイ酸塩において、リチウムの代わりに、アルカリ金属(例えば、ナトリウムやカリウム等)、アルカリ土類金属(例えば、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ベリリウム、マグネシウム等)を用いてもよい。
さらに、正極活物質層102には、導電助剤、バインダーなどの各種添加剤を用いることができる。
なお、正極活物質層102の導電助剤として、負極活物質層105で説明した導電助剤に加えて、黒鉛化度の低い炭素材料を用いても構わない。黒鉛化度の低い炭素材料としては、アセチレンブラック、ケッチェンブラック等のカーボンブラックを用いてもよい。
次に、正極103の作製方法について説明する。
図7に、正極活物質層102の縦断面図を示す。正極活物質層102は、粒状の正極活物質203と、導電助剤としてのグラフェン204と、結着剤(バインダーともいう。図示せず)と、を含む。
正極活物質層102の縦断面においては、図7に示すように、正極活物質層102の内部において概略均一にシート状のグラフェン204が分散する。図7においてはグラフェン204を模式的に太線で表しているが、実際には炭素分子の単層又は多層の厚みを有する薄膜である。複数のグラフェン204は、複数の粒状の正極活物質203を包むように、覆うように、あるいは複数の粒状の正極活物質203の表面上に張り付くように形成されているため、互いに面接触している。また、グラフェン204どうしも互いに面接触することで、複数のグラフェン204により三次元的な電気伝導のネットワークを形成している。
これはグラフェン204の形成に、極性溶媒中での分散性が極めて高い酸化グラフェンを用いるためである。均一に分散した酸化グラフェンを含有する分散媒から溶媒を揮発除去し、酸化グラフェンを還元してグラフェンとするため、正極活物質層102に残留するグラフェン204は部分的に重なり合い、互いに面接触する程度に分散していることで電気伝導の経路を形成している。
従って、活物質と点接触するアセチレンブラック等の従来の粒状の導電助剤と異なり、グラフェン204は接触抵抗の低い面接触を可能とするものであるから、導電助剤の量を増加させることなく、粒状の正極活物質203とグラフェン204との電気伝導性を向上させるができる。よって、正極活物質203の正極活物質層102における比率を増加させることができる。これにより、蓄電池の放電容量を増加させることができる。
次に、グラフェンを導電助剤に用いた正極の作製方法の一例を説明する。まず、活物質、結着剤(バインダーともいう。)及び酸化グラフェンを用意する。
酸化グラフェンは、後に導電助剤として機能するグラフェン204の原材料である。酸化グラフェンは、Hummers法、Modified Hummers法、又は黒鉛類の酸化等、種々の合成法を用いて作製することができる。なお、本発明に係る蓄電池用電極の製造方法は、酸化グラフェンの剥離の程度により制限されるものではない。
例えば、Hummers法は、鱗片状グラファイト等のグラファイトを酸化して、酸化グラファイトを形成する手法である。形成された酸化グラファイトは、グラファイトがところどころ酸化されることでカルボニル基、カルボキシル基、ヒドロキシル基等の官能基が結合したものであり、グラファイトの結晶性が損なわれ、層間の距離が大きくなっている。このため超音波処理等により、容易に層間を分離して、酸化グラフェンを得ることができる。
また、酸化グラフェンの一辺の長さ(フレークサイズともいう。)は一辺の長さが50nm以上100μm以下、好ましくは800nm以上20μm以下である。特にフレークサイズが粒状の正極活物質203の平均粒径よりも小さい場合、複数の正極活物質203との面接触がしにくくなるとともに、グラフェン相互の接続が難しくなるため、正極活物質層102の電気伝導性を向上させることが困難となるためである。
上記のような酸化グラフェン、活物質及び結着剤に溶媒を加えて正極ペーストを作製する。溶媒としては、水や、N−メチルピロリドン(NMP)やジメチルホルムアミド等の極性を有する有機溶媒を用いることができる。また、結着剤としては、例えばPVdFや、SBR、CMC−Naなどを用いればよい。
なお、酸化グラフェンは、酸化グラフェン、正極活物質、導電助剤及び結着剤の混合物の総重量に対して、0.1weight%以上10weight%以下、好ましくは0.1weight%以上5weight%以下、さらに好ましくは0.2weight%以上1weight%以下の割合で含まれていればよい。一方、正極ペーストを集電体に塗布し、還元した後のグラフェンは、正極活物質層の総重量に対して、0.05weight%以上5weight%以下、好ましくは0.05weight%以上2.5weight%以下、さらに好ましくは0.1weight%以上0.5weight%以下の割合で含まれていればよい。これは、酸化グラフェンの還元により、グラフェンの重量がほぼ半減するためである。
なお、混練後にさらに溶媒を添加して混合物の粘度調整を行ってもよく、混練と極性溶媒の添加を複数回繰り返し行ってもよい。
次に、正極ペーストを集電体上に塗布する。
集電体上に塗布したペーストを通風乾燥又は減圧(真空)乾燥等の方法で乾燥し、正極活物質層102を形成する。この乾燥は、例えば、50℃以上180℃以下の熱風を用いて行うとよい。なお、雰囲気は特に限定されない。
正極集電体101に、表面処理を行ってもよい。このような表面処理としては、例えば、コロナ放電処理、プラズマ処理、アンダーコート処理等が挙げられる。表面処理を行うことにより、正極集電体101の正極ペーストに対するぬれ性を高めることができる。また、正極集電体101と、正極活物質層102との密着性を高めることができる。
この正極活物質層102を、ロールプレス法や平板プレス法等の圧縮方法によりプレスして圧密化してもよい。
次に、還元剤を含む溶媒中で反応させる。このステップにおいて、活物質層に含まれる酸化グラフェンは還元され、グラフェン204が形成される。なお、酸化グラフェンに含まれる酸素は必ずしも全て脱離される必要はなく、一部の酸素は、グラフェンに残存してもよい。グラフェン204に酸素が含まれる場合、酸素の割合は、XPSで測定した場合にグラフェン全体の2%以上20%以下、好ましくは3%以上15%以下である。この還元処理は、室温以上150℃以下の温度で行うことが好ましい。
還元剤としては、アスコルビン酸、ヒドラジン、ジメチルヒドラジン、ヒドロキノン、水素化硼素ナトリウム(NaBH4)、テトラブチルアンモニウムブロマイド(TBAB)、LiAlH4、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、N,N−ジエチルヒドロキシルアミンあるいはそれらの誘導体を用いることができる。
溶媒には、極性溶媒を用いることができる。還元剤を溶解することができるものであれば、材料は限定されない。例えば、水、メタノール、エタノール、アセトン、テトラヒドロフラン(THF)、ジメチルホルムアミド(DMF)、N−メチルピロリドン(NMP)及びジメチルスルホキシド(DMSO)のいずれか一種又は二種以上の混合液を用いることができる。
その後、洗浄し、乾燥する。乾燥は、減圧(真空)下又は還元雰囲気下にて行うとよい。この乾燥工程は、例えば、真空中で50℃以上200℃以下の温度で、1時間以上48時間以下で行うとよい。この乾燥によって、正極活物質層102に存在する極性溶媒や水分をよく蒸発、揮発あるいは除去させる。乾燥後に、プレスを行ってもよい。
なお、上記の還元反応は、加熱によって反応を促進することができる。また、化学還元後に乾燥させて、さらに加熱してもよい。
以上のステップにより、正極活物質203とグラフェン204が均一に分散された正極活物質層102を作製することができる。このようにして形成された正極活物質層102の厚さは、20μm以上150μm以下となる。
電解液108は、非水溶媒および電解質から構成されている。
本発明の一態様では、非水溶媒として、イオン液体を用いる。イオン液体は、単一の溶媒として用いても良いし、複数のイオン液体を組み合わせて混合溶媒として用いても良い。また、非水溶媒として、イオン液体と有機溶媒と、を組み合わせて混合溶媒として用いてもよい。
本発明の一態様のイオン液体は、カチオンとアニオンからなり、有機カチオンとアニオンとを含む。有機カチオンとして、四級アンモニウムカチオン、三級スルホニウムカチオン、及び四級ホスホニウムカチオン等の脂肪族オニウムカチオンや、イミダゾリウムカチオン及びピリジニウムカチオン等の芳香族カチオンが挙げられる。また、アニオンとして、1価のアミド系アニオン、1価のメチド系アニオン、フルオロスルホン酸アニオン、パーフルオロアルキルスルホン酸アニオン、テトラフルオロボレート、パーフルオロアルキルボレート、ヘキサフルオロホスフェート、またはパーフルオロアルキルホスフェート等が挙げられる。
イオン液体として、例えば、下記に示す一般式(G1)を用いることができる。
一般式(G1)中、R1乃至R6は、それぞれ独立に、炭素数が1以上20以下のアルキル基、メトキシ基、メトキシメチル基、メトキシエチル基、または水素原子のいずれかを表す。
また、イオン液体として、例えば、下記に示す一般式(G2)を用いることができる。
一般式(G2)中、R7乃至R13は、それぞれ独立に、炭素数が1以上20以下のアルキル基、メトキシ基、メトキシメチル基、メトキシエチル基、または水素原子のいずれかを表す。
また、イオン液体として、例えば、下記に示す一般式(G3)を用いることができる。
一般式(G3)中、n及びmは1以上3以下である。αは0以上6以下であり、nが1の場合αは0以上4以下であり、nが2の場合αは0以上5以下であり、nが3の場合αは0以上6以下である。βは0以上6以下であり、mが1の場合βは0以上4以下であり、mが2の場合βは0以上5以下であり、mが3の場合βは0以上6以下である。なお、αまたはβが0であるとは、二つの脂肪族環の少なくとも一つが無置換であることを表す。また、αとβが共に0である場合は除くものとする。X又はYは、置換基として炭素数が1以上4以下の直鎖状若しくは側鎖状のアルキル基、炭素数が1以上4以下の直鎖状若しくは側鎖状のアルコキシ基、又は炭素数が1以上4以下の直鎖状若しくは側鎖状のアルコキシアルキル基を表す。
一般式(G1)乃至一般式(G3)は、カチオンに脂肪族四級アンモニウムカチオンを有する。
また、上記一般式(G1)乃至一般式(G3)においてA−で表されるアニオンとして、1価のアミド系アニオン、1価のメチド系アニオン、フルオロスルホン酸アニオン(SO3F−)、パーフルオロアルキルスルホン酸アニオン、テトラフルオロボレート(BF4 −)、パーフルオロアルキルボレート、ヘキサフルオロホスフェート(PF6 −)、またはパーフルオロアルキルホスフェート等を用いることができる。1価のアミドアニオンとしては、(CnF2n+1SO2)2N−(nは0以上3以下)、1価の環状のアミドアニオンとしては、CF2(CF2SO2)2N−などがある。1価のメチドアニオンとしては、(CnF2n+1SO2)3C−(nは0以上3以下)、1価の環状のメチドアニオンとしては、CF2(CF2SO2)2C−(CF3SO2)などがある。パーフルオロアルキルスルホン酸アニオンとしては、(CmF2m+1SO3)−(mは0以上4以下)などがある。パーフルオロアルキルボレートとしては、{BFn(CmHkF2m+1−k)4−n}−(nは0以上3以下、mは1以上4以下、kは0以上2m以下)などがある。パーフルオロアルキルホスフェートとしては、{PFn(CmHkF2m+1−k)6−n}−(nは0以上5以下、mは1以上4以下、kは0以上2m以下)などがある。なお、当該アニオンはこれらに限るものではない。
なお、本発明の一態様に係る蓄電装置において、イオン液体は、一般式(G1)乃至一般式(G3)に示される全ての立体異性体を含むものである。異性体とは、化合物は異なるが同一の分子式をもつものをいい、立体異性体とは、空間での配向のみが異なる(しかし原子相互の結合関係は同じ)特別な種類の異性体をいう。よって、本明細書等において、立体異性体とは、鏡像異性体(エナンチオマー)、幾何(シス/トランス)異性体、および二つ以上のキラル中心を有する互いに鏡像ではない化合物の異性体(ジアステレオマー)を包含する。
イオン液体の耐還元性が低い場合、負極に黒鉛やシリコンなどの低電位負極材料を用いると、イオン液体が還元されることで初回不可逆容量の増加につながる。
なお、脂肪族四級アンモニウムカチオンを含むイオン液体は耐還元性が高いという特徴があり、黒鉛やシリコンなどの低電位負極材料を好適に用いることができる。しかしながら、電解液として脂肪族四級アンモニウムカチオンを含むイオン液体を用いた場合でも、更に初回不可逆容量を低減させたいという要求がある。
ここで、水溶性高分子を用いた電極では、電極ペーストを作製する際に活物質と水溶性高分子が均一に分散することにより、活物質表面を水溶性高分子が被覆することができる。これにより、電解液の分解を更に抑制できることが期待できる。特に、黒鉛のような層状構造を有する材料を用いた場合には、イオン液体のカチオンが黒鉛の層間に挿入するのを防ぐことが期待できる。
非水溶媒に溶解させる電解質は、キャリアであるイオンを含み、正極活物質層に対応した塩であればよい。塩としては、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオンを用いることができる。アルカリ金属イオンとしては、例えば、リチウムイオン、ナトリウムイオン、またはカリウムイオンがある。また、アルカリ土類金属イオンとしては、例えばカルシウムイオン、ストロンチウムイオン、バリウムイオン、ベリリウムイオン、またはマグネシウムイオンがある。正極活物質層にリチウムを含む材料を用いる場合には、リチウムイオンを含む塩(以下、リチウム塩とも記す)を選択すればよく、正極活物質層にナトリウムを含む材料を用いる場合には、ナトリウムを含む電解質を選択することが好ましい。
リチウム塩としては、塩化リチウム(LiCl)、フッ化リチウム(LiF)、過塩素酸リチウム(LiClO4)、硼弗化リチウム(LiBF4)、LiAsF6、LiPF6、Li(CF3SO2)2Nなどを用いることができる。
脂肪族四級アンモニウムカチオンにおいて、置換基を導入することにより、分子の対称性を低下させることができる。これにより、イオン液体の融点を下げることができる場合がある。このようなイオン液体を含む電解液を蓄電装置に用いることにより、低温環境下においても良好に動作させることができる。
なお、非水溶媒に用いることができるイオン液体については、実施の形態2で詳述する。
セパレータとしては、例えば、紙、不織布、ガラス繊維、セラミックス、或いはナイロン(ポリアミド)、ビニロン(ポリビニルアルコール系繊維)、ポリエステル、アクリル、ポリオレフィン、ポリウレタンを用いた合成繊維等で形成されたものを用いることができる。
ここで、図4は、活物質601と、活物質601を覆うバインダー602を示す。バインダー602は、図4(A)に示すように島状に活物質601を覆っていてもよいし、図4(B)に示すように膜状に広く覆っていてもよい。また、バインダー602は、ポーラスな膜でもよいし、表面に付着していればよく、膜としての形態をなしていなくともよい。活物質601を覆うバインダー602は複数の材料から構成されていてもよい。例えばバインダー602は、水溶性高分子を含むと好ましい。水溶性高分子の例としては、例えばカルボキシメチルセルロースなどのセルロース誘導体が挙げられる。
図5(A)は、活物質601の表面におけるイオン液体のカチオン603、イオン液体のアニオン604、および電池反応に寄与するカチオン605を示す。ここでカチオン605はアルカリ金属イオンまたはアルカリ土類金属イオンである。アルカリ金属イオンとしては、前述したアルカリ金属イオンから選んで用いればよい。また、アルカリ土類金属イオンとしては、前述したアルカリ土類金属イオンから選んで用いればよい。アニオン604は、カチオン605に配位している。活物質601の表面でイオン液体のアニオン604は脱離し、カチオン605と活物質との電池反応が起こる。このとき、電池反応の電位が低い場合には、脱離したイオン液体のアニオン604は、活物質601の表面で分解する。
また、イオン液体のカチオン603は、単独で電荷を有しており、容易に活物質表面に到達し反応することができると考えられる。このとき、イオン液体のカチオン603についても電池反応の電位が低い場合には活物質601の表面で分解する。イオン液体のアニオン604およびカチオン603の分解は、電池の初回不可逆容量の要因となる。また、分解物が堆積し表面に被膜を形成すると考えられる。被膜は、活物質の表面を覆う膜であり、電解液の分解物が堆積することなどにより形成される。また、被膜中にバインダーが含まれていてもよい。
図5(B)では、活物質601の表面をバインダー602が覆っている。このとき、バインダー602が不動態膜としての機能を有する程度に厚く、または緻密に存在している場合には、イオン液体のカチオン603やイオン液体のアニオン604と、活物質601の表面との反応を抑制することができると考えられる。また、バインダー602は、イオン液体のカチオン603やイオン液体のアニオン604と、活物質601の表面との反応を抑制し、かつ電池反応に寄与するカチオン605は伝導できれば、なお好ましい。
図6は、図5において活物質601に黒鉛、電池反応に寄与するカチオン605にリチウムイオンを用いた具体例を示す。図6(A)においては、リチウムイオンであるカチオン605に配位したイオン液体のアニオン604が脱離し、活物質601の表面で分解する。リチウムイオンであるカチオン605は、黒鉛の層間に挿入する。また、イオン液体のカチオン603も黒鉛の層間に挿入する場合があるが、その際には図6(A)に示す通り、黒鉛の層が剥離する可能性がある。
図6(B)においては、黒鉛である活物質601の表面をバインダー602が覆っており、バインダー602が覆っている箇所ではイオン液体のカチオン603の挿入は抑制できると考えられる。
図1(A)に示す蓄電装置100において、正極集電体101および負極集電体104は、外部との電気的接触を得る端子の役割も兼ねている。そのため、正極集電体101および負極集電体104の一部は、外装体109から外側に露出するように配置してもよい。また、正極集電体101および負極集電体104を、外装体109から外側に露出させず、リード電極を用いてそのリード電極と正極集電体101、或いは負極集電体104と超音波接合させてリード電極を外側に露出するようにしてもよい。
蓄電装置100において、外装体109には、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、アイオノマー、ポリアミド等の材料からなる膜上に、アルミニウム、ステンレス、銅、ニッケル等の可撓性に優れた金属薄膜を設け、さらに該金属薄膜上に外装体の外面としてポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂等の絶縁性合成樹脂膜を設けた三層構造のラミネートフィルムを用いることができる。
また、蓄電装置100の断面構造の一例を図1(B)に示す。図1(A)では簡略のため、2つの集電体で構成する例を示しているが、実際は、3つ以上の電極層で構成する。
図1(B)では、一例として、電極層数を16としている。なお、電極層数を16としても蓄電装置100は、可撓性を有する。図1(B)では負極集電体104が8層と、正極集電体101が8層の合計16層の構造を示している。なお、図1(B)は負極の取り出し部の断面を示しており、8層の負極集電体104を超音波接合させている。勿論、電極層数は16に限定されず、多くてもよいし、少なくてもよい。電極層数が多い場合には、より多くの容量を有する蓄電装置とすることができる。また、電極層数が少ない場合には、薄型化でき、可撓性に優れた蓄電装置とすることができる。
ここで、ラミネート型の蓄電池である蓄電装置100の外観図の一例を図26及び図27に示す。図26及び図27は、正極103、負極106、セパレータ107、外装体109、正極リード電極510及び負極リード電極511を有する。
図28(A)は正極103及び負極106の外観図を示す。正極103は正極集電体101を有し、正極活物質層102は正極集電体101の表面に形成されている。また、正極103は正極集電体が一部露出する領域(以下、タブ領域という)を有する。負極106は負極集電体104を有し、負極活物質層105は負極集電体104の表面に形成されている。また、負極106は負極集電体が一部露出する領域、すなわちタブ領域を有する。正極及び負極が有するタブ領域の面積や形状は、図28(A)に示す例に限られない。
[ラミネート型の蓄電池の作製方法]
ここで、図26に外観図を示すラミネート型の蓄電池の作製方法の一例について、図28(B)、(C)を用いて説明する。
まず、負極106、セパレータ107及び正極103を積層する。図28(B)に積層された負極106、セパレータ107及び正極103を示す。ここでは負極を5枚、正極を4枚使用する例を示す。次に、正極103のタブ領域同士の接合と、最表面の正極のタブ領域への正極リード電極510の接合を行う。接合には、例えば超音波溶接等を用いればよい。同様に、負極106のタブ領域同士の接合と、最表面の負極のタブ領域への負極リード電極511の接合を行う。
次に外装体109上に、負極106、セパレータ107及び正極103を配置する。
次に、図28(C)に示すように、外装体109を破線で示した部分で折り曲げる。その後、外装体109の外周部を接合する。接合には例えば熱圧着等を用いればよい。この時、後に電解液108を入れることができるように、外装体109の一部(または一辺)に接合されない領域(以下、導入口という)を設ける。
次に、外装体109に設けられた導入口から、電解液108を外装体109の内側へ導入する。電解液108の導入は、減圧雰囲気下、或いは不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。そして最後に、導入口を接合する。このようにして、ラミネート型の蓄電池である蓄電装置100を作製することができる。
[コイン型の蓄電池]
次に、蓄電装置の他の一例として、コイン型の蓄電池について、図2を参照して説明する。図2(A)に、コイン型の蓄電池の外観図を示し、図2(B)に、その断面図を示す。
図2(A)に示すコイン型の蓄電池である蓄電装置300は、正極端子を兼ねた正極缶301と、負極端子を兼ねた負極缶302と、がポリプロピレン等で形成されたガスケット303で絶縁シールされている。正極304は、正極集電体305と、これに接するように設けられた正極活物質層306により形成される。また、負極307は、負極集電体308と、これに接するように設けられた負極活物質層309により形成される。正極活物質層306と、負極活物質層309との間には、セパレータ310と、電解液(図示せず)と、を有する。
図2(A)および図2(B)に示す正極304、負極307、及びセパレータ310は、図1で説明した構成を適用することができる。
正極缶301、負極缶302には、耐腐食性のあるステンレス綱、鉄、ニッケル、アルミニウム、チタン等の金属を用いることができる。正極缶301は正極304と、負極缶302は負極307とそれぞれ電気的に接続する。
これら正極304、負極307、及びセパレータ310を、電解液に含浸させ、図2(B)に示すように、正極缶301を下にして正極304、セパレータ310、負極307、負極缶302をこの順で積層し、正極缶301と負極缶302とをガスケット303を介して圧着してコイン型の蓄電池を作製する。
ここで図2(C)を用いてバッテリーの充電時の電流の流れを説明する。リチウムを用いたバッテリーを一つの閉回路とみなした時、リチウムイオンの動きと電流の流れは同じ向きになる。なお、リチウムを用いたバッテリーでは、充電と放電でアノード(陽極)とカソード(陰極)が入れ替わり、酸化反応と還元反応とが入れ替わることになるため、反応電位が高い電極を正極と呼び、反応電位が低い電極を負極と呼ぶ。したがって、本明細書においては、充電中であっても、放電中であっても、逆パルス電流を流す場合であっても、充電電流を流す場合であっても、正極は「正極」または「+極(プラス極)」と呼び、負極は「負極」または「−極(マイナス極)」と呼ぶこととする。酸化反応や還元反応に関連したアノード(陽極)やカソード(陰極)という用語を用いると、充電時と放電時とでは、逆になってしまい、混乱を招く可能性がある。したがって、アノード(陽極)やカソード(陰極)という用語は、本明細書においては用いないこととする。仮にアノード(陽極)やカソード(陰極)という用語を用いる場合には、充電時か放電時かを明記し、正極(プラス極)と負極(マイナス極)のどちらに対応するものかも併記することとする。
図2(C)に示す2つの端子には充電器が接続され、蓄電池400が充電される。蓄電池400の充電が進めば、電極間の電位差は大きくなる。図2(C)では、蓄電池400の外部の端子から、正極402の方へ流れ、蓄電池400の中において、正極402から負極404の方へ流れ、負極404から蓄電池400の外部の端子の方へ流れる電流の向きを正の向きとしている。つまり、充電電流の流れる向きを電流の向きとしている。蓄電池400は、電解液406で満たされている。また、蓄電池400は、正極402と負極404の間にセパレータ408を有する。
[円筒型の蓄電池]
次に、円筒型の蓄電池の一例について、図3を参照して説明する。円筒型の蓄電池である蓄電装置700は図3(A)に示すように、上面に正極キャップ(電池蓋)701を有し、側面及び底面に電池缶(外装缶)702を有している。これら正極キャップ701と電池缶(外装缶)702とは、ガスケット(絶縁パッキン)710によって絶縁されている。
図3(B)は、円筒型の蓄電池の断面を模式的に示した図である。中空円柱状の電池缶702の内側には、帯状の正極704と負極706とがセパレータ705を間に挟んで捲回された電池素子が設けられている。図示しないが、電池素子はセンターピンを中心に捲回されている。電池缶702は、一端が閉じられ、他端が開いている。電池缶702には、電解液に対して耐腐食性のあるニッケル、アルミニウム、チタン等の金属、又はこれらの合金やこれらと他の金属との合金(例えば、ステンレス鋼等)を用いることができる。また、電解液による腐食を防ぐため、ニッケルやアルミニウム等を被覆することが好ましい。電池缶702の内側において、正極、負極及びセパレータが捲回された電池素子は、対向する一対の絶縁板708、709により挟まれている。また、電池素子が設けられた電池缶702の内部は、非水電解液(図示せず)が注入されている。非水電解液は、コイン型の蓄電池と同様のものを用いることができる。
正極704及び負極706は、上述したコイン型の蓄電池の正極及び負極と同様に製造すればよいが、円筒型の蓄電池に用いる正極及び負極は捲回するため、集電体の両面に活物質を形成する点において異なる。正極704には正極端子(正極集電リード)703が接続され、負極706には負極端子(負極集電リード)707が接続される。正極端子703及び負極端子707は、ともにアルミニウムなどの金属材料を用いることができる。正極端子703は安全弁機構712に、負極端子707は電池缶702の底にそれぞれ抵抗溶接される。安全弁機構712は、PTC素子(Positive Temperature Coefficient)711を介して正極キャップ701と電気的に接続されている。安全弁機構712は電池の内圧の上昇が所定の閾値を超えた場合に、正極キャップ701と正極704との電気的な接続を切断するものである。また、PTC素子711は温度が上昇した場合に抵抗が増大する熱感抵抗素子であり、抵抗の増大により電流量を制限して異常発熱を防止するものである。PTC素子には、チタン酸バリウム(BaTiO3)系半導体セラミックス等を用いることができる。
なお、本実施の形態では、蓄電装置として、ラミネート型、コイン型及び円筒型の蓄電池を示したが、その他の封止型蓄電池、角型蓄電池等様々な形状の蓄電池を用いることができる。また、正極、負極、及びセパレータが複数積層された構造、正極、負極、及びセパレータが捲回された構造であってもよい。
本実施の形態で示す蓄電装置100、蓄電装置300、蓄電装置700の負極には、本発明の一態様に係る負極活物質層が用いられている。そのため、蓄電装置100、蓄電装置300、蓄電装置700の放電容量を高めることができる。
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
(実施の形態2)
本実施の形態では、本発明の一態様に係る蓄電装置の電解液に適用することができるイオン液体について詳述する。
電解液として適用することができるイオン液体は、有機カチオン及びアニオンから構成される。
有機カチオンとして、四級アンモニウムカチオン、三級スルホニウムカチオン、及び四級ホスホニウムカチオン等の脂肪族オニウムカチオンや、イミダゾリウムカチオン及びピリジニウムカチオン等の芳香族カチオンが挙げられる。
また、アニオンとして、1価のアミド系アニオン、1価のメチド系アニオン、フルオロスルホン酸アニオン、パーフルオロアルキルスルホン酸アニオン、テトラフルオロボレート、パーフルオロアルキルボレート、ヘキサフルオロホスフェート、またはパーフルオロアルキルホスフェート等が挙げられる。
イオン液体としては、下記に示すものを適用することができる。
イオン液体として、例えば、四級アンモニウムカチオンおよび1価のアニオンから構成され、下記一般式(G1)で表されるイオン液体を用いることができる。
一般式(G1)中、R1乃至R6は、それぞれ独立に、炭素数が1以上20以下のアルキル基、メトキシ基、メトキシメチル基、メトキシエチル基、または水素原子のいずれかを表す。
また、イオン液体として、例えば、四級アンモニウムカチオンおよび1価のアニオンから構成され、下記一般式(G2)で表されるイオン液体を用いることができる。
一般式(G2)中、R7乃至R13は、それぞれ独立に、炭素数が1以上20以下のアルキル基、メトキシ基、メトキシメチル基、メトキシエチル基、または水素原子のいずれかを表す。
また、イオン液体として、例えば、四級アンモニウムカチオンおよび1価のアニオンから構成され、下記一般式(G3)で表されるイオン液体を用いることができる。
一般式(G3)中、n及びmは1以上3以下である。αは0以上6以下とし、nが1の場合αは0以上4以下であり、nが2の場合αは0以上5以下であり、nが3の場合αは0以上6以下である。βは0以上6以下とし、mが1の場合βは0以上4以下であり、mが2の場合βは0以上5以下であり、mが3の場合βは0以上6以下である。なお、αまたはβが0であるとは、二つの脂肪族環の少なくとも一つが無置換であることを表す。また、αとβが共に0である場合は除くものとする。X又はYは、置換基として炭素数が1以上4以下の直鎖状若しくは側鎖状のアルキル基、炭素数が1以上4以下の直鎖状若しくは側鎖状のアルコキシ基、又は炭素数が1以上4以下の直鎖状若しくは側鎖状のアルコキシアルキル基を表す。また、A−は1価のアミドアニオン、1価のメチドアニオン、フルオロスルホン酸アニオン、パーフルオロアルキルスルホン酸アニオン、テトラフルオロボレート、パーフルオロアルキルボレート、ヘキサフルオロホスフェート及びパーフルオロアルキルホスフェートのいずれかを表す。
スピロ四級アンモニウムカチオンにおいて、スピロ環を構成する二つの脂肪族環は5員環、6員環又は7員環のいずれかである。
上記一般式(G3)で表される四級アンモニウムカチオンの例として、5員環のスピロ環を有する四級アンモニウムカチオンが挙げられる。当該四級アンモニウムカチオンを含むイオン液体を、下記一般式(G4)に示す。
一般式(G4)中、R14乃至R21は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数が1以上4以下の直鎖状若しくは側鎖状のアルキル基、炭素数が1以上4以下の直鎖状若しくは側鎖状のアルコキシ基、又は炭素数が1以上4以下の直鎖状若しくは側鎖状のアルコキシアルキル基を表す。
また、イオン液体として、例えば、下記に示す一般式(G5)を用いることができる。
一般式(G5)中、R22乃至R30は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数が1以上4以下の直鎖状若しくは側鎖状のアルキル基、炭素数が1以上4以下の直鎖状若しくは側鎖状のアルコキシ基、又は炭素数が1以上4以下の直鎖状若しくは側鎖状のアルコキシアルキル基を表す。
また、イオン液体として、例えば、下記に示す一般式(G6)を用いることができる。
一般式(G6)中、R31乃至R40は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数が1以上4以下の直鎖状若しくは側鎖状のアルキル基、炭素数が1以上4以下の直鎖状若しくは側鎖状のアルコキシ基、又は炭素数が1以上4以下の直鎖状若しくは側鎖状のアルコキシアルキル基を表す。
また、イオン液体として、例えば、下記に示す一般式(G7)を用いることができる。
一般式(G7)中、R41乃至R50は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数が1以上4以下の直鎖状若しくは側鎖状のアルキル基、炭素数が1以上4以下の直鎖状若しくは側鎖状のアルコキシ基、又は炭素数が1以上4以下の直鎖状若しくは側鎖状のアルコキシアルキル基を表す。
また、イオン液体として、例えば、下記に示す一般式(G8)を用いることができる。
一般式(G8)中、R51乃至R61は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数が1以上4以下の直鎖状若しくは側鎖状のアルキル基、炭素数が1以上4以下の直鎖状若しくは側鎖状のアルコキシ基、又は炭素数が1以上4以下の直鎖状若しくは側鎖状のアルコキシアルキル基を表す。
また、イオン液体として、例えば、下記に示す一般式(G9)を用いることができる。
一般式(G9)中、R62乃至R73は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数が1以上4以下の直鎖状若しくは側鎖状のアルキル基、炭素数が1以上4以下の直鎖状若しくは側鎖状のアルコキシ基、又は炭素数が1以上4以下の直鎖状若しくは側鎖状のアルコキシアルキル基を表す。
また、上記一般式(G1)乃至一般式(G9)におけるアニオンとして、1価のアミド系アニオン、1価のメチド系アニオン、フルオロスルホン酸アニオン(SO3F−)、パーフルオロアルキルスルホン酸アニオン、テトラフルオロボレート(BF4 −)、パーフルオロアルキルボレート、ヘキサフルオロホスフェート(PF6 −)、またはパーフルオロアルキルホスフェートなどを用いることができる。1価のアミドアニオンとしては、(CnF2n+1SO2)2N−(nは0以上3以下)、1価の環状のアミドアニオンとしては、CF2(CF2SO2)2N−などがある。1価のメチドアニオンとしては、(CnF2n+1SO2)3C−(nは0以上3以下)、1価の環状メチドアニオンとしては、CF2(CF2SO2)2C−(CF3SO2)などがある。パーフルオロアルキルスルホン酸アニオンとしては、(CmF2m+1SO3)−(mは0以上4以下)などがある。パーフルオロアルキルボレートとしては、{BFn(CmHkF2m+1−k)4−n}−(nは0以上3以下、mは1以上4以下、kは0以上2m以下)などがある。パーフルオロアルキルホスフェートとしては、{PFn(CmHkF2m+1−k)6−n}−(nは0以上5以下、mは1以上4以下、kは0以上2m以下)などがある。なお、当該アニオンはこれらに限るものではない。
イオン液体としては、具体的には、構造式(101)乃至構造式(120)、構造式(201)乃至構造式(230)、構造式(301)乃至構造式(327)、構造式(401)乃至構造式(457)、構造式(501)乃至構造式(605)、及び構造式(701)乃至構造式(709)で表される有機化合物を挙げることができる。
構造式(101)乃至構造式(120)に、ピロリジニウム系のイオン液体を示す。
構造式(201)乃至構造式(230)に、ピぺリジニウム系のイオン液体を示す。
構造式(301)乃至構造式(327)、構造式(401)乃至構造式(457)、構造式(501)乃至(605)、及び構造式(701)乃至構造式(709)に、スピロ四級アンモニウム系のイオン液体を示す。
また、上記構造式(101)乃至構造式(120)、構造式(201)乃至構造式(230)、構造式(301)乃至構造式(327)、構造式(401)乃至構造式(457)、構造式(501)乃至(605)、及び構造式(701)乃至構造式(709)において、アニオンは1価のアミド系アニオン、1価のメチド系アニオン、フルオロスルホン酸アニオン(SO3F−)、パーフルオロアルキルスルホン酸アニオン、テトラフルオロボレート(BF4 −)、パーフルオロアルキルボレート、ヘキサフルオロホスフェート(PF6 −)、またはパーフルオロアルキルホスフェート等を用いることができる。そして、1価のアミドアニオンとしては、(CnF2n+1SO2)2N−(nは0以上3以下)、1価の環状のアミドアニオンとしては、CF2(CF2SO2)2N−などがある。1価のメチドアニオンとしては、(CnF2n+1SO2)3C−(nは0以上3以下)、1価の環状のメチドアニオンとしては、CF2(CF2SO2)2C−(CF3SO2)などがある。パーフルオロアルキルスルホン酸アニオンとしては、(CmF2m+1SO3)−(mは0以上4以下)などがある。パーフルオロアルキルボレートとしては、{BFn(CmHkF2m+1−k)4−n}−(nは0以上3以下、mは1以上4以下、kは0以上2m以下)などがある。パーフルオロアルキルホスフェートとしては、{PFn(CmHkF2m+1−k)6−n}−(nは0以上5以下、mは1以上4以下、kは0以上2m以下)などがある。なお、当該アニオンはこれらに限るものではない。
なお、本発明の一態様に係る蓄電装置において、イオン液体は、構造式(101)乃至構造式(120)、構造式(201)乃至構造式(230)、構造式(301)乃至構造式(327)、構造式(401)乃至構造式(457)、構造式(501)乃至構造式(605)、及び構造式(701)乃至構造式(709)に示される全ての立体異性体を含むものである。異性体とは、化合物は異なるが同一の分子式をもつものをいい、立体異性体とは、空間での配向のみが異なる(しかし原子相互の結合関係は同じ)特別な種類の異性体をいう。よって、本明細書等において、立体異性体とは、鏡像異性体(エナンチオマー)、幾何(シス/トランス)異性体、および二つ以上のキラル中心を有する互いに鏡像ではない化合物の異性体(ジアステレオマー)を包含する。
また、イオン液体として、例えば、芳香族カチオンおよび1価のアニオンから構成されるイオン液体を用いることができる。芳香族カチオンとして、イミダゾリウムカチオンや、ピリジニウムカチオン等を用いることができる。1価のアニオンとして、1価のアミド系アニオン、1価のメチド系アニオン、フルオロスルホン酸アニオン(SO3F−)、パーフルオロアルキルスルホン酸アニオン、テトラフルオロボレート(BF4 −)、パーフルオロアルキルボレート、ヘキサフルオロホスフェート(PF6 −)、またはパーフルオロアルキルホスフェート等を用いることができる。1価のアミドアニオンとしては、(CnF2n+1SO2)2N−(nは0以上3以下)、1価の環状のアミドアニオンとしては、CF2(CF2SO2)2N−などがある。1価のメチドアニオンとしては、(CnF2n+1SO2)3C−(nは0以上3以下)、1価の環状のメチドアニオンとしては、CF2(CF2SO2)2C−(CF3SO2)などがある。パーフルオロアルキルスルホン酸アニオンとしては、(CmF2m+1SO3)−(mは0以上4以下)などがある。パーフルオロアルキルボレートとしては、{BFn(CmHkF2m+1−k)4−n}−(nは0以上3以下、mは1以上4以下、kは0以上2m以下)などがある。パーフルオロアルキルホスフェートとしては、{PFn(CmHkF2m+1−k)6−n}−(nは0以上5以下、mは1以上4以下、kは0以上2m以下)などがある。なお、当該アニオンはこれらに限るものではない。
イオン液体の耐還元性が低い場合、負極に黒鉛やシリコンなどの低電位負極材料を用いると、イオン液体が還元されることで初回不可逆容量の増加につながる。ここで脂肪族四級アンモニウムカチオンを含むイオン液体は、耐還元性が高いという特徴があり、黒鉛やシリコンなどの低電位負極材料を好適に用いることができる。しかしながら、イオン液体として脂肪族四級アンモニウムカチオンを用いた場合でも、更に初回不可逆容量を低減させたいという要求がある。
水溶性高分子を用いた電極では、電極ペーストを作製する際に活物質と水溶性高分子が均一に分散することができる。このとき、水溶性高分子や、その他の構成要素としてバインダーが含まれていた場合にはそのバインダーが、活物質表面を被覆することができる。これにより、電解液の分解を更に抑制できることが期待できる。特に、黒鉛のような層状構造を有する材料を用いた場合には、イオン液体のカチオンが黒鉛の層間に挿入するのを防ぐことが期待できる。
また、構造式(101)乃至構造式(120)、構造式(201)乃至構造式(230)、構造式(301)乃至構造式(327)、構造式(401)乃至構造式(457)、構造式(501)乃至(605)に示すように、四級アンモニウムカチオンにおいて、置換基を導入することにより、分子の対称性を低下させることができる。これにより、イオン液体の融点が下がる傾向を示す。例えば、ピロリジン骨格にメチル基を導入することにより、融点を−10℃以下、好ましくは−30℃以下とすることができる。イオン液体の融点以下の温度では、イオン液体が凝固することに起因する抵抗の上昇を抑制することができる。このようなイオン液体を含む電解液を蓄電装置に用いることにより、低温環境下においても良好に動作させることができる。
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
(実施の形態3)
本実施の形態では、実施の形態1で示すラミネート型の蓄電池を用いて、可撓性を有するラミネート型の蓄電池を電子機器に実装する例を図17を用いて説明する。フレキシブルな形状を備える蓄電装置を適用した電子機器として、例えば、テレビジョン装置(テレビ、又はテレビジョン受信機ともいう)、コンピュータ用などのモニタ、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、デジタルフォトフレーム、携帯電話機(携帯電話、携帯電話装置ともいう)、携帯型ゲーム機、携帯情報端末、音響再生装置、パチンコ機などの大型ゲーム機などが挙げられる。
また、フレキシブルな形状を備える蓄電装置を、家屋やビルの内壁または外壁や、自動車の内装または外装の曲面に沿って組み込むことも可能である。
図17(A)は、携帯電話機の一例を示している。携帯電話機7400は、筐体7401に組み込まれた表示部7402の他、操作ボタン7403、外部接続ポート7404、スピーカー7405、マイク7406などを備えている。なお、携帯電話機7400は、蓄電装置7407を有している。
図17(B)は、携帯電話機7400を湾曲させた状態を示している。携帯電話機7400を外部の力により変形させて全体を湾曲させると、その内部に設けられている蓄電装置7407も湾曲される。また、その時、曲げられた蓄電装置7407の状態を図17(C)に示す。蓄電装置7407はラミネート型の蓄電池である。
図17(D)は、バングル型の表示装置の一例を示している。携帯表示装置7100は、筐体7101、表示部7102、操作ボタン7103、及び蓄電装置7104を備える。また、図17(E)に曲げられた蓄電装置7104の状態を示す。
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
(実施の形態4)
蓄電システムの構造例について、図21、図22、図23、図24、図25を用いて説明する。
図21(A)及び図21(B)は、蓄電システムの外観図を示す図である。蓄電システムは、回路基板900と、蓄電装置913と、を有する。蓄電装置913には、ラベル910が貼られている。さらに、図21(B)に示すように、蓄電システムは、端子951と、端子952と、を有し、ラベル910の裏にアンテナ914と、アンテナ915と、を有する。
回路基板900は、端子911と、回路912と、を有する。端子911は、端子951、端子952、アンテナ914、アンテナ915、及び回路912に接続される。なお、端子911を複数設けて、複数の端子911のそれぞれを、制御信号入力端子、電源端子などとしてもよい。
回路912は、回路基板900の裏面に設けられていてもよい。なお、アンテナ914及びアンテナ915は、コイル状に限定されず、例えば線状、板状であってもよい。また、平面アンテナ、開口面アンテナ、進行波アンテナ、EHアンテナ、磁界アンテナ、誘電体アンテナ等のアンテナを用いてもよい。又は、アンテナ914若しくはアンテナ915は、平板状の導体でもよい。この平板状の導体は、電界結合用の導体の一つとして機能することができる。つまり、コンデンサの有する2つの導体のうちの一つの導体として、アンテナ914若しくはアンテナ915を機能させてもよい。これにより、電磁界、磁界だけでなく、電界で電力のやり取りを行うこともできる。
アンテナ914の線幅は、アンテナ915の線幅よりも大きいことが好ましい。これにより、アンテナ914により受電する電力量を大きくできる。
蓄電システムは、アンテナ914及びアンテナ915と、蓄電装置913との間に層916を有する。層916は、例えば蓄電装置913による電磁界を遮蔽することができる機能を有する。層916としては、例えば磁性体を用いることができる。層916を遮蔽層としてもよい。
なお、蓄電システムの構造は、図21に限定されない。
例えば、図22(A−1)及び図22(A−2)に示すように、図21(A)及び図21(B)に示す蓄電装置913のうち、対向する一対の面のそれぞれにアンテナを設けてもよい。図22(A−1)は、上記一対の面の一方側方向から見た外観図であり、図22(A−2)は、上記一対の面の他方側方向から見た外観図である。なお、図21(A)及び図21(B)に示す蓄電システムと同じ部分については、図21(A)及び図21(B)に示す蓄電システムの説明を適宜援用できる。
図22(A−1)に示すように、蓄電装置913の一対の面の一方に層916を挟んでアンテナ914が設けられ、図22(A−2)に示すように、蓄電装置913の一対の面の他方に層917を挟んでアンテナ915が設けられる。層917は、例えば蓄電装置913による電磁界を遮蔽することができる機能を有する。層917としては、例えば磁性体を用いることができる。層917を遮蔽層としてもよい。
上記構造にすることにより、アンテナ914及びアンテナ915の両方のサイズを大きくすることができる。
又は、図22(B−1)及び図22(B−2)に示すように、図21(A)及び図21(B)に示す蓄電装置913のうち、対向する一対の面のそれぞれに別のアンテナを設けてもよい。図22(B−1)は、上記一対の面の一方側方向から見た外観図であり、図22(B−2)は、上記一対の面の他方側方向から見た外観図である。なお、図21(A)及び図21(B)に示す蓄電システムと同じ部分については、図21(A)及び図21(B)に示す蓄電システムの説明を適宜援用できる。
図22(B−1)に示すように、蓄電装置913の一対の面の一方に層916を挟んでアンテナ914及びアンテナ915が設けられ、図22(B−2)に示すように、蓄電装置913の一対の面の他方に層917を挟んでアンテナ918が設けられる。アンテナ918は、例えば、外部機器とのデータ通信を行うことができる機能を有する。アンテナ918には、例えばアンテナ914及びアンテナ915に適用可能な形状のアンテナを適用することができる。アンテナ918を介した蓄電システムと他の機器との通信方式としては、NFCなど、蓄電システムと他の機器の間で用いることができる応答方式などを適用することができる。
又は、図23(A)に示すように、図21(A)及び図21(B)に示す蓄電装置913に表示装置920を設けてもよい。表示装置920は、端子919を介して端子911に電気的に接続される。なお、表示装置920が設けられる部分にラベル910を設けなくてもよい。なお、図21(A)及び図21(B)に示す蓄電システムと同じ部分については、図21(A)及び図21(B)に示す蓄電システムの説明を適宜援用できる。
表示装置920には、例えば充電中であるか否かを示す画像、蓄電量を示す画像などを表示してもよい。表示装置920としては、例えば電子ペーパー、液晶表示装置、エレクトロルミネセンス(ELともいう)表示装置などを用いることができる。例えば、電子ペーパーを用いることにより表示装置920の消費電力を低減することができる。
又は、図23(B)に示すように、図21(A)及び図21(B)に示す蓄電装置913にセンサ921を設けてもよい。センサ921は、端子922を介して端子911に電気的に接続される。なお、センサ921は、ラベル910の裏側に設けられてもよい。なお、図21(A)及び図21(B)に示す蓄電システムと同じ部分については、図21(A)及び図21(B)に示す蓄電システムの説明を適宜援用できる。
センサ921としては、例えば、変位、位置、速度、加速度、角速度、回転数、距離、光、液、磁気、温度、化学物質、音声、時間、硬度、電場、電流、電圧、電力、放射線、流量、湿度、傾度、振動、におい、又は赤外線を測定することができる機能を有すればよい。センサ921を設けることにより、例えば、蓄電システムが置かれている環境を示すデータ(温度など)を検出し、回路912内のメモリに記憶しておくこともできる。
さらに、蓄電装置913の構造例について図24及び図25を用いて説明する。
図24(A)に示す蓄電装置913は、筐体930の内部に端子951と端子952が設けられた捲回体950を有する。捲回体950は、筐体930の内部で電解液に含浸される。端子952は、筐体930に接し、端子951は、絶縁材などを用いることにより筐体930に接していない。なお、図24(A)では、便宜のため、筐体930を分離して図示しているが、実際は、捲回体950が筐体930に覆われ、端子951及び端子952が筐体930の外に延在している。筐体930としては、金属材料(例えばアルミニウムなど)又は樹脂材料を用いることができる。
なお、図24(B)に示すように、図24(A)に示す筐体930を複数の材料によって形成してもよい。例えば、図24(B)に示す蓄電装置913は、筐体930aと筐体930bが貼り合わされており、筐体930a及び筐体930bで囲まれた領域に捲回体950が設けられている。
筐体930aとしては、有機樹脂など、絶縁材料を用いることができる。特に、アンテナが形成される面に有機樹脂などの材料を用いることにより、蓄電装置913による電界の遮蔽を抑制できる。なお、筐体930aによる電界の遮蔽が小さければ、筐体930の内部にアンテナ914やアンテナ915などのアンテナを設けてもよい。筐体930bとしては、例えば金属材料を用いることができる。
さらに、捲回体950の構造について図25に示す。捲回体950は、負極931と、正極932と、セパレータ933と、を有する。捲回体950は、セパレータ933を挟んで負極931と、正極932が重なり合って積層され、該積層シートを捲回させた捲回体である。なお、負極931と、正極932と、セパレータ933と、の積層を、さらに複数重ねてもよい。
負極931は、端子951及び端子952の一方を介して図21に示す端子911に接続される。正極932は、端子951及び端子952の他方を介して図21に示す端子911に接続される。
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
(実施の形態5)
本発明の一態様に係る蓄電装置は、電力により駆動する様々な電気機器の電源として用いることができる。
本発明の一態様に係る蓄電装置を用いた電気機器の具体例として、テレビ、モニタ等の表示装置、照明装置、デスクトップ型或いはノート型のパーソナルコンピュータ、ワードプロセッサ、DVD(Digital Versatile Disc)などの記録媒体に記憶された静止画又は動画を再生する画像再生装置、ポータブルCDプレーヤ、ラジオ、テープレコーダ、ヘッドホンステレオ、ステレオ、置き時計、壁掛け時計、コードレス電話子機、トランシーバ、携帯電話、自動車電話、携帯型ゲーム機、電卓、携帯情報端末、電子手帳、電子書籍、電子翻訳機、音声入力機器、ビデオカメラ、デジタルスチルカメラ、電気シェーバ、電子レンジ等の高周波加熱装置、電気炊飯器、電気洗濯機、電気掃除機、温水器、扇風機、毛髪乾燥機、エアコンディショナー、加湿器、除湿器などの空調設備、食器洗い器、食器乾燥器、衣類乾燥器、布団乾燥器、電気冷蔵庫、電気冷凍庫、電気冷凍冷蔵庫、DNA保存用冷凍庫、懐中電灯、チェーンソー等の工具、煙感知器、透析装置等の医療機器などが挙げられる。さらに、誘導灯、信号機、ベルトコンベア、エレベータ、エスカレータ、産業用ロボット、電力貯蔵システム、電力の平準化やスマートグリッドのための蓄電装置等の産業機器が挙げられる。また、蓄電装置からの電力を用いて電動機により推進する移動体なども、電気機器の範疇に含まれるものとする。上記移動体として、例えば、電気自動車(EV)、内燃機関と電動機を併せ持ったハイブリッド車(HEV)、プラグインハイブリッド車(PHEV)、これらのタイヤ車輪を無限軌道に変えた装軌車両、電動アシスト自転車を含む原動機付自転車、自動二輪車、電動車椅子、ゴルフ用カート、小型又は大型船舶、潜水艦、ヘリコプター、航空機、ロケット、人工衛星、宇宙探査機や惑星探査機、宇宙船などが挙げられる。
なお、上記電気機器は、消費電力の殆ど全てを賄うための主電源として、本発明の一態様に係る蓄電装置を用いることができる。或いは、上記電気機器は、上記主電源や商用電源からの電力の供給が停止した場合に、電気機器への電力の供給を行うことができる無停電電源として、本発明の一態様に係る蓄電装置を用いることができる。或いは、上記電気機器は、上記主電源や商用電源からの電気機器への電力の供給と並行して、電気機器への電力の供給を行うための補助電源として、本発明の一態様に係る蓄電装置を用いることができる。
図18に、上記電気機器の具体的な構成を示す。図18において、表示装置8000は、本発明の一態様に係る蓄電装置8004を用いた電気機器の一例である。具体的に、表示装置8000は、TV放送受信用の表示装置に相当し、筐体8001、表示部8002、スピーカー部8003、蓄電装置8004等を有する。本発明の一態様に係る蓄電装置8004は、筐体8001の内部に設けられている。表示装置8000は、商用電源から電力の供給を受けることもできるし、蓄電装置8004に蓄積された電力を用いることもできる。よって、停電などにより商用電源から電力の供給が受けられない時でも、本発明の一態様に係る蓄電装置8004を無停電電源として用いることで、表示装置8000の利用が可能となる。
表示部8002には、液晶表示装置、有機EL素子などの発光素子を各画素に備えた発光装置、電気泳動表示装置、DMD(Digital Micromirror Device)、PDP(Plasma Display Panel)、FED(Field Emission Display)などの、半導体表示装置を用いることができる。
なお、表示装置には、TV放送受信用の他、パーソナルコンピュータ用、広告表示用など、全ての情報表示用表示装置が含まれる。
図18において、据え付け型の照明装置8100は、本発明の一態様に係る蓄電装置8103を用いた電気機器の一例である。具体的に、照明装置8100は、筐体8101、光源8102、蓄電装置8103等を有する。図18では、蓄電装置8103が、筐体8101及び光源8102が据え付けられた天井8104の内部に設けられている場合を例示しているが、蓄電装置8103は、筐体8101の内部に設けられていても良い。照明装置8100は、商用電源から電力の供給を受けることもできるし、蓄電装置8103に蓄積された電力を用いることもできる。よって、停電などにより商用電源から電力の供給が受けられない時でも、本発明の一態様に係る蓄電装置8103を無停電電源として用いることで、照明装置8100の利用が可能となる。
なお、図18では天井8104に設けられた据え付け型の照明装置8100を例示しているが、本発明の一態様に係る蓄電装置は、天井8104以外、例えば側壁8105、床8106、窓8107等に設けられた据え付け型の照明装置に用いることもできるし、卓上型の照明装置などに用いることもできる。
また、光源8102には、電力を利用して人工的に光を得る人工光源を用いることができる。具体的には、白熱電球、蛍光灯などの放電ランプ、LEDや有機EL素子などの発光素子が、上記人工光源の一例として挙げられる。
図18において、室内機8200及び室外機8204を有するエアコンディショナーは、本発明の一態様に係る蓄電装置8203を用いた電気機器の一例である。具体的に、室内機8200は、筐体8201、送風口8202、蓄電装置8203等を有する。図18では、蓄電装置8203が、室内機8200に設けられている場合を例示しているが、蓄電装置8203は室外機8204に設けられていても良い。或いは、室内機8200と室外機8204の両方に、蓄電装置8203が設けられていても良い。エアコンディショナーは、商用電源から電力の供給を受けることもできるし、蓄電装置8203に蓄積された電力を用いることもできる。特に、室内機8200と室外機8204の両方に蓄電装置8203が設けられている場合、停電などにより商用電源から電力の供給が受けられない時でも、本発明の一態様に係る蓄電装置8203を無停電電源として用いることで、エアコンディショナーの利用が可能となる。
なお、図18では、室内機と室外機で構成されるセパレート型のエアコンディショナーを例示しているが、室内機の機能と室外機の機能とを1つの筐体に有する一体型のエアコンディショナーに、本発明の一態様に係る蓄電装置を用いることもできる。
図18において、電気冷凍冷蔵庫8300は、本発明の一態様に係る蓄電装置8304を用いた電気機器の一例である。具体的に、電気冷凍冷蔵庫8300は、筐体8301、冷蔵室用扉8302、冷凍室用扉8303、蓄電装置8304等を有する。図18では、蓄電装置8304が、筐体8301の内部に設けられている。電気冷凍冷蔵庫8300は、商用電源から電力の供給を受けることもできるし、蓄電装置8304に蓄積された電力を用いることもできる。よって、停電などにより商用電源から電力の供給が受けられない時でも、本発明の一態様に係る蓄電装置8304を無停電電源として用いることで、電気冷凍冷蔵庫8300の利用が可能となる。
なお、上述した電気機器のうち、電子レンジ等の高周波加熱装置、電気炊飯器などの電気機器は、短時間で高い電力を必要とする。よって、商用電源では賄いきれない電力を補助するための補助電源として、本発明の一態様に係る蓄電装置を用いることで、電気機器の使用時に商用電源のブレーカーが落ちるのを防ぐことができる。
また、電気機器が使用されない時間帯、特に、商用電源の供給元が供給可能な総電力量のうち、実際に使用される電力量の割合(電力使用率と呼ぶ)が低い時間帯において、蓄電装置に電力を蓄えておくことで、上記時間帯以外において電力使用率が高まるのを抑えることができる。例えば、電気冷凍冷蔵庫8300の場合、気温が低く、冷蔵室用扉8302、冷凍室用扉8303の開閉が行われない夜間において、蓄電装置8304に電力を蓄える。そして、気温が高くなり、冷蔵室用扉8302、冷凍室用扉8303の開閉が行われる昼間において、蓄電装置8304を補助電源として用いることで、昼間の電力使用率を低く抑えることができる。
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
(実施の形態6)
次に、電気機器の一例である携帯情報端末について、図19を用いて説明する。
図19(A)及び図19(B)は2つ折り可能なタブレット型端末である。図19(A)は、開いた状態であり、タブレット型端末は、筐体9630、表示部9631a、表示部9631b、表示モード切り替えスイッチ9034、電源スイッチ9035、省電力モード切り替えスイッチ9036、留め具9033、操作スイッチ9038、を有する。
表示部9631aは、一部をタッチパネルの領域9632aとすることができ、表示された操作キー9638にふれることでデータ入力をすることができる。なお、表示部9631aにおいては、一例として半分の領域が表示のみの機能を有する構成、もう半分の領域がタッチパネルの機能を有する構成を示しているが該構成に限定されない。表示部9631aの全ての領域がタッチパネルの機能を有する構成としても良い。例えば、表示部9631aの全面をキーボードボタン表示させてタッチパネルとし、表示部9631bを表示画面として用いることができる。
また、表示部9631bにおいても表示部9631aと同様に、表示部9631bの一部をタッチパネルの領域9632bとすることができる。また、タッチパネルのキーボード表示切り替えボタン9639が表示されている位置に指やスタイラスなどでふれることで表示部9631bにキーボードボタン表示することができる。
また、タッチパネルの領域9632aとタッチパネルの領域9632bに対して同時にタッチ入力することもできる。
また、表示モード切り替えスイッチ9034は、縦表示または横表示などの表示の向きを切り替え、白黒表示やカラー表示の切り替えなどを選択できる。省電力モード切り替えスイッチ9036は、タブレット型端末に内蔵している光センサで検出される使用時の外光の光量に応じて表示の輝度を最適なものとすることができる。タブレット型端末は光センサだけでなく、ジャイロ、加速度センサ等の傾きを検出するセンサなどの他の検出装置を内蔵させてもよい。
また、図19(A)では表示部9631bと表示部9631aの表示面積が同じ例を示しているが特に限定されず、一方のサイズともう一方のサイズが異なっていてもよく、表示の品質も異なっていてもよい。例えば一方が他方よりも高精細な表示を行える表示パネルとしてもよい。
図19(B)は、閉じた状態であり、タブレット型端末は、筐体9630、太陽電池9633、充放電制御回路9634、バッテリー9635、DCDCコンバータ9636を有する。なお、図19(B)では充放電制御回路9634の一例としてバッテリー9635、DCDCコンバータ9636を有する構成について示しており、バッテリー9635は、上記実施の形態で説明した蓄電装置を有している。
なお、タブレット型端末は2つ折り可能なため、未使用時に筐体9630を閉じた状態にすることができる。従って、表示部9631a、表示部9631bを保護できるため、耐久性に優れ、長期使用の観点からも信頼性の優れたタブレット型端末を提供できる。
また、この他にも図19(A)及び図19(B)に示したタブレット型端末は、様々な情報(静止画、動画、テキスト画像など)を表示する機能、カレンダー、日付又は時刻などを表示部に表示する機能、表示部に表示した情報をタッチ入力操作又は編集するタッチ入力機能、様々なソフトウェア(プログラム)によって処理を制御する機能、等を有することができる。
タブレット型端末の表面に装着された太陽電池9633によって、電力をタッチパネル、表示部、または映像信号処理部等に供給することができる。なお、太陽電池9633は、筐体9630の片面又は両面に設けることができ、バッテリー9635の充電を効率的に行う構成とすることができる。なおバッテリー9635としては、本発明の一態様に係る蓄電装置を用いると、小型化を図れる等の利点がある。
また、図19(B)に示す充放電制御回路9634の構成、及び動作について図19(C)にブロック図を示し説明する。図19(C)には、太陽電池9633、バッテリー9635、DCDCコンバータ9636、コンバータ9637、スイッチSW1乃至SW3、表示部9631について示しており、バッテリー9635、DCDCコンバータ9636、コンバータ9637、スイッチSW1乃至SW3が、図19(B)に示す充放電制御回路9634に対応する箇所となる。
まず、外光により太陽電池9633により発電がされる場合の動作の例について説明する。太陽電池で発電した電力は、バッテリー9635を充電するための電圧となるようDCDCコンバータ9636で昇圧または降圧がなされる。そして、表示部9631の動作に太陽電池9633からの電力が用いられる際にはスイッチSW1をオンにし、コンバータ9637で表示部9631に必要な電圧に昇圧または降圧をすることとなる。また、表示部9631での表示を行わない際には、SW1をオフにし、SW2をオンにしてバッテリー9635の充電を行う構成とすればよい。
なお、太陽電池9633については、発電手段の一例として示したが、特に限定されず、圧電素子(ピエゾ素子)や熱電変換素子(ペルティエ素子)などの他の発電手段によるバッテリー9635の充電を行う構成であってもよい。例えば、無線(非接触)で電力を送受信して充電する無接点電力伝送モジュールや、また他の充電手段を組み合わせて行う構成としてもよい。
また、上記実施の形態で説明した蓄電装置を具備していれば、図19に示した電気機器に特に限定されないことは言うまでもない。
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
(実施の形態7)
さらに、電気機器の一例である移動体の例について、図20を用いて説明する。
先の実施の形態で説明した蓄電装置を制御用のバッテリーに用いることができる。制御用のバッテリーは、プラグイン技術や非接触給電による外部からの電力供給により充電をすることができる。なお、移動体が鉄道用電気車両の場合、架線や導電軌条からの電力供給により充電をすることができる。
図20(A)及び(B)は、電気自動車の一例を示している。電気自動車9700には、蓄電装置9701が搭載されている。蓄電装置9701の電力は、制御回路9702により出力が調整されて、駆動装置9703に供給される。制御回路9702は、図示しないROM、RAM、CPU等を有する処理装置9704によって制御される。
駆動装置9703は、直流電動機若しくは交流電動機単体、又は電動機と内燃機関と、を組み合わせて構成される。処理装置9704は、電気自動車9700の運転者の操作情報(加速、減速、停止など)や走行時の情報(上り坂や下り坂等の情報、駆動輪にかかる負荷情報など)の入力情報に基づき、制御回路9702に制御信号を出力する。制御回路9702は、処理装置9704の制御信号により、蓄電装置9701から供給される電気エネルギーを調整して駆動装置9703の出力を制御する。交流電動機を搭載している場合は、図示していないが、直流を交流に変換するインバータも内蔵される。
蓄電装置9701は、プラグイン技術による外部からの電力供給により充電することができる。例えば、商用電源から電源プラグを通じて蓄電装置9701に充電する。充電は、AC/DCコンバータ等の変換装置を介して、一定の電圧値を有する直流定電圧に変換して行うことができる。蓄電装置9701として、本発明の一態様に係る蓄電装置を搭載することで、充電時間の短縮化などに寄与することができ、利便性を向上させることができる。また、充放電速度の向上により、電気自動車9700の加速力の向上に寄与することができ、電気自動車9700の性能の向上に寄与することができる。また、蓄電装置9701の特性の向上により、蓄電装置9701自体を小型軽量化できれば、車両の軽量化に寄与するため、燃費を向上させることができる。
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
本実施例では、実施の形態1に基づきコイン型の蓄電池を作製した。本実施例では、負極活物質層にバインダーとしてCMC−NaとSBRを有するリチウムイオン二次電池と、PVdFを有するリチウムイオン二次電池の充放電特性について、比較した結果を説明する。
はじめに、本実施例で作製したコイン型の蓄電池について図2を参照して説明する。
(正極の作製)
グラフェンを導電助剤に用いて正極ペーストを作製した。正極活物質として、リン酸鉄リチウム(LiFePO4)を用い、バインダーとしてポリフッ化ビニリデン(PVdF)を用いた。リン酸鉄リチウムと、酸化グラフェンと、ポリフッ化ビニリデンと、を94.4:0.6:5の割合で混合し、粘度調整のため分散媒としてNMPを添加して、混練することで正極ペーストを作製した。
上述の方法で作製した正極ペーストを、正極集電体(膜厚20μmのアルミニウム)に塗布した。
次に集電体上に設けたペーストを、通風乾燥機で乾燥させた。乾燥は、80℃40分間、大気雰囲気で行った。
次に、還元剤を含む溶媒中で反応させ、酸化グラフェンの還元を行った。還元処理は、60℃で4.5時間行った。還元剤として、アスコルビン酸を用いた。また、溶媒としてはエタノールを用いた。還元剤の濃度は13.5g/Lであった。
その後、エタノールで洗浄し、70℃で10時間の乾燥を行った。乾燥は、真空雰囲気下で行った。
次に、正極活物質層を、ロールプレス法によりプレスして圧密化した。
上述の方法で正極活物質層を形成した。なお、正極において、リン酸鉄リチウムの担持量を測定したところ、後述する負極Aと組み合わせてコイン型蓄電池を作製した正極は7.3mg/cm2であり、後述する負極Bと組み合わせてコイン型蓄電池を作製した正極は6.9mg/cm2であった。
(負極Aの作製工程1:ペーストの作製)
次に、バインダーとしてCMC−NaとSBRを有する負極Aを作製した。まず、負極活物質、バインダー、分散媒を用いて、負極ペーストを作製した。
ここでは負極活物質として、粒径15μmの球状化天然黒鉛、バインダーとしてスチレン−ブタジエンゴム(SBR)とカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC−Na)を用いた。用いたCMC−Naの仕様は、重合度は600から800の範囲、1%水溶液として用いた場合の水溶液粘度は300mPa・sから500mPa・sの範囲、乾燥後のナトリウム含有量は6.5%から8.5%の範囲である。ペーストの配合は、重量比で黒鉛:SBR:CMC−Na=97:1.5:1.5とした。
次に、ペーストの作製方法について詳細を説明する。まず粘度調整機能の高いCMC−Naを純水に均一に溶解させ水溶液を調整した。次に、活物質を秤量し、CMC−Naの水溶液を添加した。
次に、これらの混合物を混練機により1500rpmで、固練りを行った。
次に、これらの混合物にSBRの水分散液を添加し、混練機により1500rpmで5分間、混練した。次に、これらの混合物に、所定の粘度になるまで分散媒である純水を添加し、混練機により1500rpmで、混練した。以上の工程で、負極Aとなる負極ペーストを作製した。
(負極Aの作製工程2:塗布および乾燥)
上述の方法で作製した負極ペーストを、ブレードを用いて集電体に塗布した。ブレードと集電体との間隔を200μmとした。集電体には膜厚18μmの圧延銅箔を用いた。
次にホットプレートにのせて大気雰囲気下で乾燥させた。乾燥工程は、25℃から30℃で開始し、70℃以下の温度まで昇温させ、そのまま30分程度加熱することにより、分散媒である水を蒸発させることにより行った。その後、減圧環境下で、100℃、10時間乾燥させることにより、負極Aを形成した。得られた負極Aの活物質担持量は9.2g/cm2であった。ここで、活物質担持量とは電極の単位面積あたりの活物質重量である。
(比較例である負極Bの作製工程1:ペーストの作製)
次に、負極Aの比較例である負極Bを作製した。負極Bは、バインダーとしてPVdFを有する。まず、負極活物質、バインダー、分散媒を用いて、負極ペーストを作製した。
ここでは負極活物質として、粒径15μmの球状化天然黒鉛、バインダーとしてポリフッ化ビニリデン(PVdF)を用いた。ペーストの配合は、重量比で黒鉛:PVdF=90:10とした。まず、黒鉛と、PVdFのNMP溶液とを、混練機で混練した後、粘度調整のためNMPを添加し、再び混練機で混練し、負極Bとなる負極ペーストを作製した。
(比較例である負極Bの作製工程2:塗布および乾燥)
上述の方法で作製した負極ペーストを、ブレードを用いて集電体(膜厚18μmの圧延銅箔)に塗布した。ブレードと集電体との間隔を200μmとした。
次に、オーブンを用いて大気雰囲気下で70℃、30分間乾燥した。その後、減圧環境下で、170℃、10時間乾燥することにより、負極Bを形成した。得られた負極Bの活物質担持量は8.0mg/cm2であった。
(コインセルの作製)
作製した正極と、負極Aおよび負極Aの比較例である負極Bをそれぞれ負極に用いて、コインセル(コイン型の蓄電池)を作製した。
電解液において、非水溶媒として1,3−ジメチル−1−プロピルピペリジニウムビス(フルオロスルホニル)アミド(略称:3mPP13−FSA)を用い、電解質としてリチウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)アミド(以下、LiTFSAと略記する)を用い、LiTFSAを3mPP13−FSAに溶解させ、1mol/Lの濃度に調整した。
セパレータは、Whatman社製のガラス繊維濾紙であるGF/Cを用いた。
なお、GF/Cの膜厚は260μmとした。なお、セパレータは、上記電解液に含浸させて使用した。
正極缶及び負極缶として、ステンレス鋼(SUS)で形成されているものを用いた。また、ガスケットとしてスペーサーやワッシャーを用いた。
正極缶と、正極と、セパレータと、負極(負極Aまたは負極B)と、ガスケットと、負極缶とを重ね、「コインかしめ機」で正極缶と負極缶とをかしめてコイン型の蓄電池を作製した。負極Aを用いて作製したコイン型の蓄電池を試料A、負極Aの比較例である負極Bを用いて作製したコイン型の蓄電池を比較試料Bとする。
(充放電特性)
図8に試料Aおよび比較試料Bの充放電特性結果を示す。実線が試料A、点線が比較試料Bの充電カーブおよび放電カーブを示す。充放電温度は60℃、充放電レートは0.1C、充電条件は定電流、終止電圧4V、放電条件は定電流、終止電圧2Vであった。1回目の充電を行い、2時間の休止を行った後、放電を行った。
ここで、本明細書等においてレートとは、電池を充電または放電する際の速さの指標をいう。すなわち、活物質の理論容量を1時間で全て放電することができるだけの電流値を1Cとして、その電流値の何倍で電池を充電または放電させるかを示すものである。
比較試料Bでは、初回不可逆容量が大きく、充電容量145mAh/gに対し放電容量が40mAh/g(充電容量の約28%)しか得られなかったのに対し、試料Aでは、充電容量約153mAh/gに対し、約110mAh/g(約72%)の放電容量を得ることができた。
次に、負極Aと同じ条件で作製した負極A−2を用いて、コイン型の蓄電池を作製した。作製したコイン型の蓄電池を試料A−2とする。負極以外の各構成要素の条件は、試料Aと同じ条件を用いた。図9に試料A−2の60℃におけるサイクル特性を示す。充放電温度は60℃、充放電レートは初回が0.1C、2サイクル目以降が0.5C、充電条件は定電流、終止電圧4V、放電条件は定電流、終止電圧2Vであった。
80サイクル後に解体を行い、負極電極の観察を行った。図10にサイクル特性後に試料A−2を解体し、高分解能型透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscope)を用いて、負極電極の断面観察を行った結果を示す。黒鉛粒子721の表面を被膜722が覆っている様子が観察された。
実施例1で用いた電解液のCV(サイクリックボルタンメトリー)測定を行った。電解液は、非水溶媒として1,3−ジメチル−1−プロピルピペリジニウムビス(フルオロスルホニル)アミド(略称:3mPP13−FSA)を用い、電解質としてリチウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)アミド(以下、LiTFSAと略記する)を用い、LiTFSAを3mPP13−FSAに溶解させ、1mol/Lの濃度に調整した。作用極として負極A−3、負極B−2の2つの電極をそれぞれ用いた。負極A−3は、負極Aと同じ条件を用いてペーストを作製した。負極A−3の黒鉛の担持量は負極Aと比較して小さく、2.4mg/cm2であった。負極B−2は、負極Bと同じ条件を用いてペーストを作製した。負極B−2の黒鉛の担持量は負極Bと比較して小さく、1.1mg/cm2であった。
負極A‐3および負極B−2の電極作製方法を以下に説明する。負極Aとして作製したペーストと同じ条件で負極A−3のためのペーストを作製した。また、負極Bとして作製したペーストと同じ条件で負極B−2のためのペーストを作製した。次に、それぞれのペーストを用いて、集電体上に塗布する。負極A−3は、ブレードと集電体との間隔を50μmとして、塗布した。また、負極B−2は、ブレードと集電体との間隔を50μmとして、塗布した。
次に、作用極として負極A−3、負極B−2の2つの電極それぞれに用い、参照極と対極としてリチウム金属を用い、電解液として3mPP13−FSAにLiTFSAを1mol/Lの濃度で溶かしたものを用いてコイン型の蓄電池を作製した。なお、ここで参照極と対極は同じ電極で兼ねている。
走査速度は、0.0167mV/秒、走査範囲は、2Vから0V(vs.Li/Li+)、測定温度60℃として3サイクル行った。ただし、第1サイクルは、開回路電位から走査を開始している。
図11(A)に1サイクル目のCV(サイクリックボルタンメトリー)測定の結果を示す。2サイクル目および3サイクル目の測定結果については省略する。図中の実線は負極A−3、点線は負極B−2のデータである。なお、電流値は最大電流値で規格化した。電流の絶対値の最大は、負極A−3を用いたサンプルで20mA/g(ここでgは活物質の重量)、負極B−2を用いたサンプルで34mA/g(ここでgは同様に活物質の重量)であった。また、図11(B)に拡大図を示す。なお、図11(B)においては装置起因のノイズを除去するため、移動平均を算出してプロットした。1サイクル目において、バインダーにPVdFを用いた黒鉛負極である負極B−2で約1.7V近傍、および約0.9V近傍にピークがみられる。一方、バインダーにCMC−NaおよびSBRを用いた黒鉛負極である負極A−3では同じ個所においては顕著なピークはみられなかった。
負極B−2の1サイクル目でみられたこの2つのピークは、不可逆容量の要因になっていると考えられる。このことから、実施例1の図8に示した通り、バインダーにPVdFを用いた黒鉛負極に比べて、バインダーにCMC−NaおよびSBRを用いた黒鉛負極で不可逆容量が小さく抑えられた要因は、この2つのピークに代表されるような副反応が抑えられたためと考えられる。副反応としては、例えば、電解液の溶媒に用いたイオン液体のカチオンの挿入や、例えば、電解液の分解などが考えられる。
本実施例では、実施例1で作製したコイン型の蓄電池である試料Aおよび比較試料Bを解体し、負極活物質層を取り出して表面のXPSの評価を行った。
(1. 組成)
表1に、XPSで求めた組成を示す。なお、Cuについては検出下限以下であった。
試料Aでは、比較試料Bに比べてフッ素が多いことがわかる。また、窒素も多いことがわかる。ここで、フッ素に対する酸素の比(=O/F)は好ましくは、0.1以上2以下、より好ましくは0.3以上2以下である。また、窒素に対する酸素の比(=O/N)は好ましくは20以下、より好ましくは10以下、さらに好ましくは5以下である。
このような組成の違いは、黒鉛の表面に形成された被膜の成分による違いと考えられる。被膜は電解液が分解したものが堆積して形成されると考えられる。実施例2で示した通り、電解液の分解反応が異なることが示唆された。このため、形成される被膜にも違いがみられたと考えられる。
(2. C1sのスペクトル)
試料Aおよび比較試料Bについて、XPSで求められるC1sのスペクトルおよびその波形分離の結果を、図12(A)および図12(B)に示す。図12(A)は負極Aの、図12(B)は負極Bの測定結果である。図12(A)および図12(B)のスペクトルをC1,C2,C3,C4,C5,C6およびC7の7つのピークに分離してフィッティングを行った。C1,C2,C3,C4,C5,C6およびC7の帰属や、フィッティングの結果として得られたピーク強度などの情報を表2に示す。また、図12(A)は負極Aについて測定されたスペクトル1261(太線で示す)と、フィッティングの結果得られたC1からC7までのスペクトルの和1262(細線で示す)を示し、図12(B)は負極Bについて測定されたスペクトル1263(太線で示す)と、フィッティングの結果得られたC1からC7までのスペクトルの和1264(細線で示す)を示す。
図12(A)では、表2のC2で表される、285eV以上286eV以下の範囲のC−C結合、C−H結合などに起因するピークに対して、290.5eV以上291.5eV以下の範囲の、−CF2基、−CO3基などに起因するピークがきわめて弱い傾向にある。対して、図12(B)では、C6で表される、290.5eV以上291.5eV以下の範囲のピーク強度が強く検出されている。ここで、XPSで求められるC1sのスペクトルについて、284.5eV以上286eV以下の範囲の最大値に対する、290eV以上292eV以下の範囲の最大値の強度比は、0.3倍以下が好ましく、0.1倍以下がより好ましい。
表2のC6で表される290.5eV以上291.5eV以下の範囲のピークは−CF2基や−CO3に帰属される。−CF2基はPVdFの成分である。また、−CO3基は、電解液、黒鉛、バインダーのいずれの主成分にも含まれないため、これらの主成分が分解し、他の成分と反応して生成した可能性がある。炭素を含む成分が分解したと考えると、例えばカチオンの分解に起因している可能性があり、比較試料Bに比べて試料Aでは、黒鉛の表面をCMC−NaやSBRが覆うことにより、その分解が抑えられた可能性がある。
なお、XPSにおける検出深さは、約5nm程度であり、表面に形成された被膜の厚さによっては、被膜の下の黒鉛のピークも検出する場合もある。
(3. O1sのスペクトル)
試料Aおよび比較試料Bについて、XPSで求められるO1sのスペクトルおよびその波形分離の結果を、図13(A)および図13(B)に示す。図13(A)は負極Aの、図13(B)は負極Bの測定結果である。図13(A)および図13(B)のスペクトルをO1,O2,O3およびO4の4つのピークに分離してフィッティングを行った。O1,O2,O3およびO4の帰属や、フィッティングの結果として得られたピーク強度などの情報を表3に示す。また、図13(A)は負極Aについて測定されたスペクトル1361と、フィッティングの結果得られたO1からO4までのスペクトルの和1362を示し、図13(B)は負極Bについて測定されたスペクトル1363と、フィッティングの結果得られたO1からO4までのスペクトルの和1364を示す。
図13(A)では、532.5eV近傍に観測されるピークの半値幅が広いのに対して図13(B)においては半値幅が狭い。フィッティングの結果から、図13(A)においては、C−O−C結合などに起因するピーク(O3:533eV以上534eV以下の範囲に観測される)と、金属−OH結合、金属−CO3結合、C=O結合、S−O結合などに起因するピーク(O2:531eV以上533eV以下の範囲に観測される)の2つのピークが観測されていると考えられる。それに対し、図13(B)においては、C−O−C結合などに起因するピーク(O3:533eV以上534eV以下の範囲に観測される)が弱い傾向にある。ここで、C1sスペクトルの結果も考慮すると、例えば金属−CO3が形成されている可能性も考えられる。
(4. F1sのスペクトル)
試料Aおよび比較試料Bについて、XPSで求められるF1sのスペクトルおよびその波形分離の結果を、図14(A)および図14(B)に示す。
図14(A)は負極Aの、図14(B)は負極Bの測定結果である。図14(A)および図14(B)のスペクトルをF1,F2およびF3の3つのピークに分離してフィッティングを行った。F1,F2およびF3の帰属や、フィッティングの結果として得られたピーク強度などの情報を表4に示す。また、図14(A)は負極Aについて測定されたスペクトル1461と、フィッティングの結果得られたF1からF3までのスペクトルの和1462を示し、図14(B)は負極Bについて測定されたスペクトル1463と、フィッティングの結果得られたF1からF3までのスペクトルの和1464を示す。
図14(A)においては、フィッティングの結果より表4でF1として表される685eV以上686eV以下の範囲、またはその近傍の、Li−F結合、N−F結合などに起因するピークに対し、表4でF2として表される687eV以上688eV以下の範囲の、LiPFz(z>0)などに起因するピークの強度が約0.17倍である。
(5. S2pのスペクトル)
試料Aおよび比較試料Bについて、XPSで求められるS2pのスペクトルおよびその波形分離の結果を、図15(A)および図15(B)に示す。
図15(A)は負極Aの、図15(B)は負極Bの測定結果である。図15(A)および図15(B)のスペクトルをS1,S2,S3,S4およびS5の5つのピークに分離してフィッティングを行った。S1,S2,S3,S4およびS5の帰属や、フィッティングの結果として得られたピーク強度などの情報を表5に示す。また、図15(A)は負極Aについて測定されたスペクトル1561と、フィッティングの結果得られたS1からS5までのスペクトルの和1562を示し、図15(B)は負極Bについて測定されたスペクトル1563と、フィッティングの結果得られたS1からS5までのスペクトルの和1564を示す。
なお、SOα(α>0)やS−N結合は、イオン液体のアニオンも有する成分であり、イオン液体の残渣成分の可能性も考えられる。
(6. 存在割合の算出)
ここで、波形解析結果より分離された各ピークの面積と、各元素の組成を掛けた値を存在割合と定義する。例えば、図12(A)に示したC1sスペクトルより、表2でC2とあらわされたピークの面積比は64.82%である。この値に、試料Aの炭素の割合である46.7%を掛けた値、すなわち0.6482×0.467×100=30.27%を、C2の存在割合と定義する。表2に分離された各ピークの存在割合を示す。
比較試料Bにおいて、C6で表されるピークの存在割合は8.06%であり、F1で表されるピークの存在割合は3.19%である。その比(C6/F1)は2.53である。一方、試料Aにおいて、波形分離の結果、C6で表されるピークは非常に弱いことがわかった。
C6とF1の存在割合の比率:C6/F1は、2以下が好ましく、1以下がより好ましく、0.5以下がさらに好ましい。
(7. Liの状態別存在割合)
次に、表6に、C1s、O1s、F1s、S2pの波形解析結果より算出したLiの状態別存在割合を示す。
Li2O、LiOH、Li2O3、LiF、Li2SO4、LiSFγ(γ>0)の化合物、および金属Liが存在すると仮定し、それぞれの化合物におけるLiの存在割合を算出した。まずLi2Oは、O1sスペクトルのO1で表されるピークが全てLi2Oに起因するとした。次に、Li2O3は、C1sのC6で表されるピークが全てLi2O3に起因するとした。Li2SO4はS2pのS4成分が全てLi2SO4に起因するとした。LiSFγ(γ>0)は、S2pのS5成分が全てLiSFγ(γ>0)に起因するとした。LiOHは、O1sのO2スペクトルからLi2O3およびLi2SO4を差し引いて算出した。
LiFについては、F1スペクトルから、N−F結合に起因する量を差し引いた値として求めた。N−F結合に起因する量は、N1sスペクトルの解析より求めた。図16(A)および図16(B)にN1sスペクトルおよびその波形分離の結果を示す。図16(A)は負極Aの、図16(B)は負極Bの結果である。N1、N2、N3の3つのピークのうち、N3ピークはN−F結合およびN−SO結合(Δ>0)に起因する。図16(B)ではN3のピークはほとんどみられていないため、N−F結合の存在量をゼロとした。
図16(A)では、波形解析の結果、N1、N2、N3のピークの面積比は17%、35%、48%と見積もられた。それぞれに窒素の割合6.8%を掛けると存在割合は1.2%、2.4%、3.2%と見積もられた。ここで、N3ピークは全てN−F結合に起因すると仮定し、F1sスペクトルのF1ピーク(Li−FとN−F結合に起因)の存在割合7.52%から、N3ピークの存在割合3.2%を引き、LiFの存在割合は4.52%と求められた。ここで、N3ピークを全てN−F結合に起因すると仮定したが、N−SOΔ(Δ>0)が存在する場合には、更にLiFの存在割合は高く算出されることに注意する必要がある。つまり、LiFは少なくとも4.52%と見積もることができた。
また、金属Liは、表1のLiの割合から化合物としてのLiの量を差し引いて求めた。
ここで、表6はLiの存在割合であることに注意する。炭酸リチウムに起因するLiの存在割合とフッ化リチウムに起因するLiの存在割合がLi(炭酸リチウム):Li(フッ化リチウム)=2:1だったとする。この場合は、各化合物の存在割合は、炭酸リチウム、すなわちLi2CO3はLi原子を2つ有するのに対し、フッ化リチウム、すなわちLiFは1つ有することから、炭酸リチウム:フッ化リチウム=(2/2):1=1:1である。
表6より、試料Aにおいては、比較試料Bと比べてLiの状態割合は、フッ化リチウム(LiF)が多く、炭酸リチウム(Li2CO3)が少ない傾向にある。
ここで、フッ化リチウムの割合に対する炭酸リチウムの割合の比(炭酸リチウム/フッ化リチウム)は2以下が好ましく、0.5以下がより好ましい。
LiFのフッ素元素、Li2SO4のSとOの結合、およびLi2CO3の酸素元素は、いずれもイオン液体のカチオンおよびアニオンに含まれている元素、および結合である。被膜の成分が主に電解液の成分が分解し、他の成分と反応したものであると考えると、試料Aと比較試料Bでは、例えば充電時における分解の電圧、分解の量などが異なり、試料Aにおいては分解量が少なく、かつ低い電位まで分解が抑えられると考えることができる。また、前述の通り例えば−CO3基などはカチオンが分解して生成している可能性も考えられる。また、試料Aにおいては、LiFの成分が多く見られた。フッ素を含む構成要素として例えばイオン液体のアニオンが挙げられるが、アニオンが分解するのは比較的低い電位であるか、またはゆっくり分解が進むときにアニオンが分解されやすいことなどが推測される。
本実施例では、本発明の一態様である蓄電装置の作製方法及び特性について説明する。
(負極Cの作製)
バインダーとしてCMC−Na及びSBRを有する負極C及び負極Eを作製した。
まず負極Cの作製方法を説明する。
負極活物質、バインダー、及び分散媒を用いて、負極活物質層を形成するためのペーストを作製した。
負極活物質として、粒径15μmの球状化天然黒鉛を用いた。またバインダーとしてSBRとCMC−Naを用いた。用いたCMC−Naの仕様は、重合度が600から800の範囲、1%水溶液として用いた場合の水溶液粘度は300mPa・sから500mPa・sの範囲、乾燥後のナトリウム含有量は6.5%から8.5%の範囲であった。ペーストの配合は、重量比で黒鉛:SBR:CMC−Na=97:1.5:1.5とした。
次に、ペーストの作製方法を説明する。
混練は遊星方式の混練機を用いて行った。混練の際に用いた容器の容量は、1.4Lのものを用いた。
まず活物質を秤量し、炭素繊維およびCMC−Naの粉末を添加し、混合物Aを得た。
次に、混合物Aに水を加え、約40分間、混練機で固練りを行い混合物Bを得た。ここで加えた水の量は、混合物の重量の総和に対して、39%とした。ここで固練りとは、高粘度による混練のことである。
次に、混合物BにSBRの水分散液を添加し、さらに水を加え混練機で20分の混練を行い混合物Cを得た。
次に、混合物Cに所定の粘度になるまで分散媒である純水を添加し、混練機で20分の混練を行い、混合物Dを得た。ここで、所定の粘度とは、例えば塗工に適した粘度である。
次に、得られた混合物Dの減圧脱泡を行った。これらの混合物のはいった混練機を減圧し、20分間の脱泡を行った。圧力は、大気圧との差圧が、0.096MPa以下となるようにした。
以上の工程により、負極Cの活物質層を形成するためのペーストを作製した。
次に、連続塗工機を用いて、集電体にペーストの塗布を行った。集電体には膜厚18μmの圧延銅箔を用いた。塗工速度は、0.5m/min.とした。
次に、塗布した電極を、乾燥炉を用いて乾燥した。乾燥条件は大気雰囲気下で行った。乾燥温度および時間は、50℃で180秒間の乾燥を行った後に80℃で180秒間の乾燥を行った。
乾燥炉で乾燥を行った後、さらに100℃、10時間で減圧環境下にて乾燥を行った。
以上の工程により、負極Cを作製した。
(負極Eの作製)
次に、バインダーとしてCMC−NaとSBRを有する負極Eを作製した。まず、負極活物質、バインダー、分散媒を用いて、負極ペーストを作製した。
ここでは負極活物質として、粒径15μmの球状化天然黒鉛、バインダーとしてスチレン−ブタジエンゴム(SBR)とカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC−Na)を用いた。用いたCMC−Naの仕様は、重合度は600から800の範囲、1%水溶液として用いた場合の水溶液粘度は300mPa・sから500mPa・sの範囲、乾燥後のナトリウム含有量は6.5%から8.5%の範囲である。ペーストの配合は、重量比で黒鉛:SBR:CMC−Na=97:1.5:1.5とした。
次に、ペーストの作製方法について詳細を説明する。まず粘度調整機能の高いCMC−Naを純水に均一に溶解させ水溶液を調整した。次に、活物質を秤量し、CMC−Naの水溶液を添加した。
次に、これらの混合物を混練機により1500rpmで、固練りを行った。
次に、これらの混合物にSBRの水分散液を添加し、混練機により1500rpmで5分間、混練した。次に、これらの混合物に、所定の粘度になるまで分散媒である純水を添加し、混練機により1500rpmで、混練した。以上の工程で、負極Eとなる負極ペーストを作製した。
上述の方法で作製した負極ペーストを、ブレードを用いて集電体に塗布した。ブレードと集電体との間隔を220μmとした。集電体には膜厚18μmの圧延銅箔を用いた。
次にホットプレートにのせて大気雰囲気下で乾燥させた。乾燥工程は、25℃から30℃で開始し、50℃以下の温度まで昇温させ、そのまま30分程度加熱することにより、分散媒である水を蒸発させることにより行った。その後、減圧環境下で、100℃、10時間乾燥させることにより、負極Eを形成した。
(比較負極Dの作製)
次に、比較試料として、バインダーとしてPVdFを有する比較負極Dを作製した。まず、負極活物質、バインダー、及び分散媒を用いて、負極活物質層を形成するためのペーストを作製した。
負極活物質として、粒径15μmの球状化天然黒鉛を用いた。またバインダーとしてPVdFを用いた。ペーストの配合は、重量比で黒鉛:PVdF=90:10とした。
次に、ペーストの作製方法を説明する。
まず黒鉛およびPVdFを秤量して混練機により混練を行い、混合物Eを得た。次に、混合物EにNMPを加えて混練機により混練を行い、ペーストを作製した。
次に、ブレードを用いて、集電体にペーストの塗布を行った。集電体には膜厚18μmの圧延銅箔を用いた。ブレードの走査速度は10mm/sec.とした。
次に、塗布した電極を、大気雰囲気下、50℃、30分、ホットプレートで乾燥した後、さらに100℃、10時間で減圧環境下にて乾燥を行った。
以上の工程により、比較負極Dを作製した。
(蓄電池の作製)
次に、作製した負極C、負極E及び比較負極Dを用いて、実施の形態1に示すコイン型の蓄電池を作製し、対極をリチウム金属として負極の単極特性を評価した。
特性の評価にはCR2032タイプ(直径20mm高さ3.2mm)のコイン型の蓄電池を用いた。正極缶及び負極缶として、ステンレス鋼(SUS)で形成されているものを用いた。セパレータにはポリプロピレンとWhatman社製のガラス繊維濾紙であるGF/Cを積層して用いた。電解液には、以下に示す電解液A、または電解液Bのいずれかを用いた。
電解液Aは、非水溶媒として構造式(51)に示す1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニル)アミド(略称:EMI−FSA)を用い、電解質としてLiTFSAを用い、1mol/Lの濃度に調整した。
電解液Bは、非水溶媒として構造式(52)に示すP13−FSAを用い、電解質としてLiTFSAを用い、1mol/Lの濃度に調整した。
各蓄電池に用いた負極、及び電解液の条件を表7に示す。また、用いた負極の負極活物質層の活物質担持量、膜厚及び密度を表8に示す。表7に示す蓄電池C−1−1,C−1−2,C−2−1及びC−2−2は負極として負極Cを用い、蓄電池E−1−1及びE−1−2は負極として負極Eを用い、蓄電池D−1−1,D−1−2,D−2−1及びD−2−2は負極として比較負極Dを用いた。また、蓄電池C−1−1,C−1−2,D−1−1及びD−1−2は電解液Aを用い、蓄電池C−2−1,C−2−2,D−2−1及びD−2−2は電解液Bを用いた。
(充放電特性)
次に、作製した蓄電池の充放電特性を評価した。測定温度は25℃とした。放電(Li挿入)は、0.1Cのレートで0.01Vを下限として定電流放電を行った後、0.01Vの電圧で0.01Cに相当する電流値を下限として定電圧放電を行った。また充電(Li脱離)は、0.1Cのレートで1Vを上限として定電流充電を行った。
初回充放電効率を、([充電容量]/[放電容量])×100[%]とする。各蓄電池の初回充放電効率を表9及び図31に示す。
比較負極D、すなわちバインダーにPVdFを用いた電極を用いた蓄電池と比較して、負極C、すなわちバインダーにCMC−NaとSBRを用いた電極を用いた蓄電池では、より高い初回充放電効率を得ることができた。
蓄電池C−1−1,E−1−1及びD−1−1の充放電カーブを図29(A),(B)及び(C)に、蓄電池C−2−1及びD−2−1の充放電カーブを図30(A)及び(B)にそれぞれ示す。
例えば図30(A)及び(B)を比較すると、初回充放電効率が低かった条件(図30(B))では、放電、つまりLi挿入の際に、1Vから約0.15Vまでの間の容量がより大きいことがわかる。初回充放電効率が低かった条件では、この間に生じるLiの挿入以外の副反応、例えばカチオンの挿入や、電解液の分解等の反応の反応量がより大きいと考えられる。
以上より、バインダーにCMC−Na及びSBRを用いた負極Cを蓄電池に用いることにより副反応等による容量低下を抑制し、より優れた蓄電池を得ることができるといえる。また負極Cを、例えば実施の形態1に示す正極活物質等を有する正極と組み合わせて蓄電池を作製することにより、副反応による容量低下を抑制し、高い容量を有する蓄電池を実現することができる。
また、電解液A及び電解液Bのいずれを用いた場合においても、負極Cを用いることにより高い初回充放電効率を得ることができた。よって、例えば電解液の溶媒が有するカチオンとして、脂肪族環を有するカチオンである四級アンモニウムカチオンを用いた場合と、芳香族環を有するカチオンであるイミダゾリウムカチオンを用いた場合との、いずれにおいても、負極Cを用いることにより、高い初回充放電効率が得られることが示唆される。
本実施例では本発明の一態様である蓄電装置の一例として、実施の形態1に示すラミネート型の蓄電池の作製方法、及び特性について説明する。
(正極の作製)
正極の配合及び作製条件について説明する。活物質に比表面積=9.2m2/gのLiFePO4を用い、結着剤としてPVdFを用い、導電助剤としてグラフェンを用いた。なお、グラフェンは、ペーストを作製する際には酸化グラフェンであり、電極塗布後に還元処理を施した。電極を作製するためのペーストの配合は、LiFePO4:酸化グラフェン:PVdF=94.4:0.6:5.0(重量%)とした。
次に、正極用のペーストの作製方法について説明する。
初めに、酸化グラフェンの粉末と溶媒であるNMPを混練機を用いて混練し、混合物1を得た。
次に、混合物1に活物質を添加し、混練機を用いて固練りを行い、混合物2を得た。固練りを行うことで、活物質の凝集をほどくことができ、また酸化グラフェンをより均一に分散させることができる。
次に、混合物2にPVdFを添加し、混練機を用いて混練して混合物3を得た。
次に、混合物3に溶媒であるNMPを添加し、混練機を用いて混練した。以上の工程により、ペーストを作製した。
次に、作製したペーストを、あらかじめアンダーコートを施したアルミ集電体(20μm)に塗布した。塗布には連続塗工機を用い、塗布速度は1m/secとした。その後、乾燥炉を用いて乾燥を行った。乾燥条件は、80℃4分間とした。その後、電極の還元を行った。
還元条件としては、まず化学還元を行い、その後熱還元を行った。まず化学還元の条件について説明する。還元に用いた溶液は、溶媒としてNMP:水を9:1で混合した溶媒を用い、アスコルビン酸とLiOHをそれぞれ77mmol/Lと73mmol/Lの濃度になるように加えた。還元処理は、60℃で1時間行った。その後、エタノールで洗浄し、減圧雰囲気下、室温で乾燥を行った。次に、熱還元の条件について説明する。化学還元を行った後、熱還元を行った。熱還元は減圧雰囲気下で170℃10時間の処理を行った。
次に、正極活物質層を、ロールプレス法によりプレスして圧密化した。以上の工程により、正極を作製した。
(負極の作製)
次に、実施例1に示した負極Aと同様の工程を用いて、負極を作製した。負極活物質として粒径15μmの球状化天然黒鉛を用い、バインダーとしてSBRとCMC−Naを用いた。ペーストの配合は、重量比で黒鉛:SBR:CMC−Na=97:1.5:1.5とした。
(ラミネート型の蓄電池の作製)
次に、作製した正極と、負極とを用いて、ラミネート型の蓄電池Xおよび蓄電池Yを作製した。外装体として熱溶着樹脂で覆われたアルミのフィルムを用いた。電極面積は、正極が8.194cm2、負極が9.891cm2であった。また、セパレータには厚さ50μmの溶剤紡糸再生セルロース繊維(TF40,日本高度紙工業株式会社製)を用いた。
蓄電池に用いた正極の、正極活物質層の活物質担持量は9.0mg/cm2以上9.1mg/cm2以下、膜厚は54μm以上62μm以下、密度は1.6g/cc以上1.8g/cc以下であった。また、蓄電池に用いた負極の、負極活物質層の活物質担持量は4.9mg/cm2以上5.3mg/cm2以下、膜厚は51μm以上68μm以下、密度は0.8g/cc以上1.0g/cc以下であった。
蓄電池一つにつき、電極として正極と、負極Cとを1枚ずつ用い、セパレータを介して、それぞれの活物質層が形成されている面を向いあわせた。
また、蓄電池Xの電解液として以下に示す電解液Cを用い、蓄電池Yの電解液として以下に示す電解液Dを用いた。
電解液Cとして、非水溶媒として構造式(53)に示す1,3−ジメチル−1−プロピルピペリジニウムビス(フルオロスルホニル)アミド(略称:3mPP13−FSA)を用い、電解質としてLiTFSAを用い、1mol/Lの濃度に調整した。
電解液Dとして、非水溶媒として構造式(54)に示す1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニル)アミド(略称:BMI−FSA)を用い、電解質としてLiTFSAを用い、1mol/Lの濃度に調整した。
次に、作製した蓄電池X及び蓄電池Yのエージングを行った。なお、レートの算出は正極活物質重量あたり170mA/gの電流値を1Cとした。
エージングのフローを図32に示す。まず、25℃において3.2Vを上限電圧として0.01Cのレートで充電を行う(Step1)。
次に、ガス抜きを行った後、再封止を行う(Step2)。特に初回の充電においてガスが多く発生する場合がある。発生したガスにより例えば電極表面に電解液が存在しない個所ができてしまうと、充放電が正常に行われなくなってしまう。よって、ガス抜きを行うことが好ましい。
次に25℃において、4Vを上限電圧として0.05Cのレートで充電を行った後、2Vを下限電圧として0.2Cのレートで放電を行う(Step3)。
次に、25℃において、充電及び放電を2回行った。充電の条件は上限電圧を4V、レートを0.2Cとした。放電の条件は下限電圧を2V、レートを0.2Cとした(Step4)。
次に、作製した蓄電池X及び蓄電池Yの充放電サイクル試験を行った。測定温度は60℃とした。ここで、充放電サイクル試験とは、1回の充電と、充電に続く1回の放電と、を1サイクルとし、繰り返し行うことを指す。初回サイクルは、0.1Cのレートで充放電を行った。次に、0.5Cのレートで200サイクルの充放電を行った後、0.1Cのレートで1サイクルの充放電を行った。その後、0.5Cのレートで200サイクルを行う毎に0.1Cのレートで1サイクルの充放電を行うことを繰り返した。
蓄電池Xの2回目のサイクルの充放電カーブを図33(A)に示す。また、蓄電池Xの各サイクルの放電容量の推移を図33(B)に示す。600回目のサイクルの放電容量は92mAh/gであり、2回目のサイクルの放電容量の128mAh/gに対して70%以上の容量を維持し、良好な特性を実現することができた。
また、蓄電池Yの各サイクルの放電容量の推移を図34に示す。600回目のサイクルの放電容量は、2回目のサイクルの放電容量に対して70%以上の容量を維持し、良好な特性を実現することができた。