以下に、実施の形態について図面を参照しながら説明する。なお、実施の形態を通して共通の構成には同一の符号を付すものとし、重複する説明は省略する。また、各図は実施の形態の説明とその理解を促すための模式図であり、その形状や寸法、比などは実際の装置と異なる個所があるが、これらは以下の説明と公知の技術とを参酌して、適宜設計変更することができる。
(第1の実施形態)
第1の実施形態によると、電極及び非水電解質電池が提供される。この非水電解質電池は、負極としての該電極と、正極と、非水電解質とを具備する。負極は、負極活物質含有層を具備する。負極活物質含有層は、斜方晶型の結晶構造を有するNa含有ニオブチタン複合酸化物を含む。負極活物質含有層はI2/I1≧1を満たす。I1は、負極活物質含有層についてのX線光電子分光法により得られるX線光電子分光スペクトルにおいて、289〜292eVの結合エネルギー範囲に現れるピークP1の強度である。I2は、負極活物質含有層のX線光電子分光スペクトルにおいて283〜285eVの結合エネルギー範囲に現れるピークP2の強度である。
第1の実施形態に係る非水電解質電池の負極が含む斜方晶型の結晶構造を有するNa含有ニオブチタン複合酸化物は、チタン含有酸化物の中でも低い電位でLiを吸蔵又は放出することができる複合酸化物である。例えば、斜方晶型の結晶構造を有し且つ一般式Li2+vNa2-wM1xTi6-y-zNbyM2zO14+δで表されるNa含有ニオブチタン複合酸化物は、1.2〜1.4V(vs. Li/Li+)の範囲内のリチウム吸蔵及び放出電位、すなわち作動電位を示すことができる。上記一般式において、M1は、Cs、K、Mg、Sr、Ba及びCaからなる群より選択される少なくとも1種であり、M2は、Zr、Sn、V、Ta、Mo、W、Fe、Co、Mn及びAlからなる群より選択される少なくとも1種であり、0≦v≦4、0<w<2、0≦x<2、0<y<2、0≦z<3、−0.5≦δ≦0.5である。
また、例えば斜方晶型の結晶構造を有し且つ上記一般式で表されるNa含有ニオブチタン複合酸化物は、上記作動電位範囲においては、充電状態の変化に伴い、大きな電位変化を示すことができる。
そのため、斜方晶型の結晶構造を有するNa含有ニオブチタン複合酸化物を負極において用いている非水電解質電池は、チタン酸リチウムを負極で用いている非水電解質電池に比べ、高い電池電圧を示すことができ、且つ充電状態を電位の変化に基づいて容易に把握することができる。
しかしながら、発明者らは、鋭意研究の結果、斜方晶型Na含有ニオブチタン複合酸化物は、反応性が高いため、非水電解質と副反応を起こしやすいという課題を有していることが分かった。そして、斜方晶型Na含有ニオブチタン複合酸化物を用いた非水電解質電池は、この副反応を原因として、寿命特性に劣るという課題があることが分かった。この課題を解決するために鋭意研究した結果、発明者らは、第1の実施形態に係る非水電解質電池を実現した。
第1の実施形態に係る非水電解質電池は、斜方晶型の結晶構造を有するNa含有ニオブチタン複合酸化物を含み且つX線光電子分光法(X-ray Photoelectron Spectroscopy:XPS)によるX線光電子分光スペクトル(XPSスペクトル)において強度比I2/I1が1以上である負極活物質含有層を具備する。このような非水電解質電池は、負極活物質含有層上に、C−C部分及び/又はCHα部分(ここでαは、1以上3以下である)を含んだ被膜が十分に形成されているということができる。その詳細な理由は、以下に図1を参照しながら説明する。このような第1の実施形態に係る非水電解質電池では、負極活物質含有層が斜方晶型の結晶構造を有するNa含有ニオブチタン複合酸化物を含んでいるが、負極活物質含有層の表面に形成された被膜が、Na含有ニオブチタン複合酸化物と非水電解質との副反応を防ぐことができる。その結果、第1の実施形態に係る非水電解質電池は、優れた寿命特性を示すことができる。
次に、第1の実施形態に係る非水電解質電池において、負極活物質含有層の表面に十分な被膜が形成されている理由を、図1を参照しながら説明する。
図1は、第1の実施形態に係る一例の非水電解質電池が具備する負極の表面及び参考例の電池が具備する負極の表面のそれぞれのXPSスペクトルの一部を示している。
図1に実線で示すスペクトル(1)は、第1の実施形態に係る第1の例の非水電解質電池が具備する負極の表面のC1s軌道に関するXPSスペクトルである。また、図1に破線で示すスペクトル(2)は、以下に詳細に説明するエージング処理を行わなかったこと以外は第1の例の非水電解質電池と同様にして作製した参考例1の非水電解質電池に含まれる負極の表面のC1s軌道に関するXPSスペクトルである。そして、図1に点線で示すスペクトル(3)は、非水電解質の組成を変更したこと以外は第1の例の非水電解質電池と同様にして作製した参考例2の非水電解質電池に含まれる負極の表面のC1s軌道に関するXPSスペクトルである。参考例2では、エージングに供した電池ユニットに含まれる非水電解質がエチレンカーボネートを含んでいなかった。
図1に示す3つのスペクトル(1)〜(3)において、289〜292eVの結合エネルギー範囲にピークトップを有するピークP1は、電池に組み込む前の負極の表面についてのXPSスペクトルにも現れる。よって、ピークP1は、負極活物質含有層の構成材料、具体的には導電剤及び結着剤に由来するピークであるということができる。
図1に示す3つのスペクトル(1)〜(3)を比較すると、ピークP1の強度I1については、第1の実施形態に係る第1の例の電池に関するスペクトル(1)のそれが最も小さいことが分かる。一方、ピークP1は、参考例1及び2の電池に関するスペクトル(2)及び(3)では、同様の強度を示すことが分かる。
一方、図1に示す3つのスペクトル(1)〜(3)において、283〜285eVの結合エネルギー範囲にピークトップを有するピークP2は、ピークP1とは異なる挙動を示す。具体的には、図1から明らかなように、スペクトル(1)でのピークP2の強度I2は、スペクトル(2)及び(3)のそれらに比べて大きい。また、ピークP2の強度I2については、エージングを行わなかった参考例1の電池についてのスペクトル(2)のそれが最も小さいことが分かる。この事実から、ピークP2は、以下に詳細に説明するエージングによって生じた物質に由来するピークであることが分かる。
まとめると、ピークP1の挙動から、XPSスペクトル(1)を示す負極では、負極活物質含有層の表面に何らかの物質、すなわち表面被膜が形成しているため、負極活物質含有層の構成材料に由来するピークP1の強度I1が小さかったと考えられる。また、ピークP2の挙動から、XPSスペクトル(1)を示す負極の負極活物質含有層の表面に形成している表面被膜は、以下に詳細に説明するエージングによって生じた物質であることが分かる。
なお、ピークP1は、COO部分及び/又はCO3 2-部分を構成するCに帰属され得る。また、ピークP2はC−C部分及び/又はCHα部分(ここでαは、1以上3以下である)を構成するCに帰属され得る。
更に、スペクトル(3)の284〜286eVの結合エネルギー領域にピークトップを示すピークP3は、ピークP2と同様に、C−C部分及び/又はCHα部分を構成するCに帰属され得る。ピークP3は、エージングによる被膜が十分に形成されていないため、ピークP2よりも高エネルギー領域にピークトップを有すると考えられる。
そして、スペクトル(2)において顕著なピークP4は、286〜287eVの結合エネルギー領域にピークトップを示す。このピークP4は、C−O部分及び/又はC−N部分を構成するCに帰属され得る。
負極活物質含有層の表面に形成された被膜は、負極活物質含有層が含むNa含有ニオブチタン複合酸化物と非水電解質との副反応を抑制することができる。
強度比I2/I1は、表面被膜の成分に由来するピークP2の強度の、負極活物質含有層の構成材料の成分に由来するピークP1の強度に対する比である。この強度比I2/I1が1以上である第1の実施形態に係る非水電解質電池は、先に説明したように、負極活物質含有層の表面に十分な被膜が形成されており、負極活物質含有層が含むNa含有ニオブチタン複合酸化物と非水電解質との副反応を抑制することができる。その結果、第1の実施形態に係る非水電解質電池は、優れた寿命特性を示すことができる。
一方、強度比I2/I1が1未満である非水電解質電池では、負極活物質含有層の表面に十分な被膜が形成されていない。このような非水電解質電池は、負極活物質含有層が含むNa含有ニオブチタン複合酸化物と非水電解質との副反応を十分に抑制することができないため、優れた寿命特性を示すことができない。
強度比I2/I1は、5以下であることが好ましい。強度比I2/I1が1以上5以下である場合、被膜がより適度に形成されている。強度比I2/I1は、1以上3以下であることがより好ましい。
なお、例えばスピネル型の結晶構造を有するチタン酸リチウム(例えば、Li4Ti5O12)は、斜方晶型の結晶構造を有するNa含有ニオブチタン複合酸化物よりも非水電解質との反応性が低い。そのため、斜方晶型の結晶構造を有するNa含有ニオブチタン複合酸化物を含まず、代わりにスピネル型の結晶構造を有するチタン酸リチウムを含んだ負極を具備した非水電解質電池は、強度比I2/I1を1以上にすることによる寿命特性の向上を期待できない。これは、チタン酸リチウムは、斜方晶型の結晶構造を有するNa含有ニオブチタン複合酸化物よりも作動電位が高いため、負極の表面において被膜が形成しづらいからであると考えられる。更に、チタン酸リチウムは、強度比I2/I1の値に関わらず、優れたサイクル特性を示すことができる。
以下、第1の実施形態に係る非水電解質電池を、より詳細に説明する。
第1の実施形態に係る非水電解質電池は、負極と、正極と、非水電解質とを具備する。
負極は、負極活物質含有層を具備する。負極は、負極集電体を更に具備することもできる。負極集電体は、互いに反対の向きに向いた2つの表面を有することができる。負極集電体は、例えば、帯状である。負極活物質含有層は、負極集電体の両方の表面又は片方の表面に担持されることができる。負極集電体は、負極活物質含有層を担持していない部分を含むこともできる。この部分は、例えば、負極タブとして働くことができる。或いは、負極は、負極集電体とは別体の負極タブを含むこともできる。
負極活物質含有層は、負極活物質を含むことができる。斜方晶型の結晶構造を有するNa含有ニオブチタン複合酸化物は、負極活物質として、又は負極活物質の一部として、負極活物質含有層に含まれ得る。負極活物質含有層は、導電剤及び結着剤を更に含むことができる。
負極活物質含有層は、負極の表面を構成することができる。すなわち、負極のX線光電子分光スペクトルは、負極活物質含有層の表面のX線光電子分光スペクトルであるということもできる。
先に説明したように、第1の実施形態に係る非水電解質電池では、負極活物質含有層の表面上に、被膜が形成している状態にある。ただし、この被膜は、負極活物質含有層の厚さに比べて非常に薄く、肉眼ではもちろん、例えば走査型電子顕微鏡によっても、その存在を像として確認することは困難である。しかしながら、負極活物質含有層のX線光電子分光スペクトルにより得られる強度比I2/I1が1以上であれば、先に説明した理由により、負極活物質含有層の表面上に被膜が十分に形成しているということができる。また、XPSの結果から被膜の存在の確認及びその由来の推定を行うことができるが、被膜の組成自体を確認することは困難である。
正極は、正極集電体と、正極活物質含有層とを具備することができる。正極集電体は、互いに反対の向きに向いた2つの表面を有することができる。正極集電体は、例えば、帯状である。正極活物質含有層は、正極集電体の両方の表面又は片方の表面に担持されることができる。正極集電体は、正極活物質含有層を担持していない部分を含むこともできる。この部分は、例えば、正極タブとして働くことができる。或いは、正極は、正極集電体とは別体の正極タブを含むこともできる。正極活物質含有層は、例えば、正極活物質、導電剤及び結着剤を含むことができる。
第1の実施形態に係る非水電解質電池は、セパレータ、外装部材、正極端子及び負極端子を更に具備していてもよい。
正極及び負極は、間にセパレータを介在させて、電極群を構成することができる。非水電解質は、電極群に保持されることができる。電極群は、様々な態様をとることができる。例えば、電極群は、スタック型でもよい。スタック型の電極群は、例えば、複数の正極と、複数の負極とを、正極と負極との間にセパレータを挟んだ状態で互いに積層させることによって得ることができる。或いは、電極群は、捲回型でもよい。捲回型の電極群は、例えば、正極と負極とを間にセパレータを挟んで積層して得られた積層体を捲回することによって得ることができる。捲回体はプレスに供されてもよい。電極群は、以上の構造以外の構造を有することもできる。
外装部材は、電極群及び非水電解質を収容することができる。正極端子は、正極に電気的に接続することができる。負極端子は、負極に電気的に接続することができる。
以下、正極、負極、非水電解質、セパレータ、外装部材、正極端子及び負極端子について詳細に説明する。
1)正極
正極集電体は、アルミニウム箔、又はMg、Ti、Zn、Mn、Fe、Cu及びSiから選択される少なくとも1種の元素を含むアルミニウム合金箔であることが好ましい。
アルミニウム箔及びアルミニウム合金箔の厚さは、例えば20μm以下であり、より好ましくは15μm以下である。アルミニウム箔の純度は99質量%以上であることが好ましい。アルミニウム合金としては、マグネシウム、亜鉛、ケイ素、などの元素を含む合金が好ましい。一方、鉄、銅、ニッケル、クロムなどの遷移金属の含有量は1%以下であることが好ましい。
正極活物質としては、例えば、リチウムを吸蔵放出することが可能な、二酸化マンガン(MnO2)、酸化鉄、酸化銅及び酸化ニッケル、並びに、リチウムマンガン複合酸化物(例えばLixMn2-yMyO4又はLixMn1-yMyO2)、リチウムニッケル複合酸化物(例えばLixNi1-xMyO2)、リチウムコバルト複合酸化物(例えばLixCo1-yMyO2)、リチウムニッケルコバルト複合酸化物(例えばLixNi1-y-zCoyMzO2)、リチウムマンガンコバルト複合酸化物(例えばLixMn1-y-zCoyMzO2)、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物(例えば、LixNi1-y-zCoyMnzO2)、リチウムニッケルコバルトアルミニウム複合酸化物(例えば、LixNi1-y-zCoyAlzO2)、スピネル型の結晶構造を有するリチウムマンガンニッケル複合酸化物(例えばLixMn2-yNiyO4)、オリビン型の結晶構造を有するリチウムリン酸化物(例えば、LixFePO4、LixMnPO4、LixMn1-yFeyPO4、LixCoPO4、LixMn1-y-zFeyMzPO4)、硫酸鉄(Fe2(SO4)3)、及びバナジウム酸化物(例えばV2O5)から選択される少なくとも1種を用いることができる。上記において、0<x≦1であり、0≦y≦1であり、0≦z≦1であることが好ましい。上記において、Mは、Mg、Ca、Al、Ti、Zn及びZrからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素である。
これらの中でも、リチウムマンガン複合酸化物(LixMn2-yMyO4)、リチウムコバルト複合酸化物(LixCo1-yMyO2)、リチウムニッケルコバルト複合酸化物(例えばLixNi1-y-zCoyMzO2)、リチウムマンガンコバルト複合酸化物(例えばLixMn1-y-zCoyMzO2)、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物(例えば、LixNi1-y-zCoyMnzO2)、及びオリビン構造を有するリチウムリン酸化物(例えば、LixFePO4、LixMnPO4、LixMn1-yFeyPO4、LixCoPO4、LixMn1-y-zFeyMzPO4)から選択される少なくとも1種を用いることが好ましい。上記において、0<x≦1であり、0≦y≦1であり、0≦z≦1であることが好ましい。
リチウムコバルト複合酸化物を含んだ正極は、優れたレート特性を示すことができるので、好ましい。また、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物を含んだ正極は、高エネルギー密度を実現することができ、更に優れた寿命特性を示すことができるので、好ましい。また、スピネル型リチウムマンガン複合酸化物を含んだ正極は、優れた寿命特性及び優れたレート特性を実現できるため、好ましい。そして、オリビン型リチウムマンガン鉄複合リン酸化合物を含んだ正極は、優れた寿命特性、特に高温での優れた寿命特性を実現できるので、好ましい。
正極活物質は、例えば、粒子の形状を有することができる。正極活物質の粒子は、一次粒子でもよいし、又は一次粒子が凝集してなる二次粒子を含んでいてもよい。正極活物質の粒子は、一次粒子と二次粒子との混合物でもよい。一次粒子の平均一次粒子径は、10nm以上10μm以下であることが好ましく、50nm以上5μm以下であることがより好ましい。二次粒子の平均二次粒子径は、500nm以上50μm以下であることが好ましく、1μm以上20μm以下であることがより好ましい。
導電剤は、集電性能を高め、且つ活物質と集電体との接触抵抗を抑えるために、必要に応じて配合される。導電剤の例には、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、黒鉛及び/又はコークスなどの炭素質物が含まれる。導電剤としては、これらの炭素質物のうちの1種を単独で用いてもよく、複数の炭素質物を組み合わせて用いてもよい。
結着剤は、活物質、導電剤及び集電体を結着させる作用を有することができる。結着剤としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、セルロース系化合物、例えばカルボキシルメチルセルロースナトリウム(CMCのNa塩)、フッ素系ゴム、スチレンブタジエンゴム、アクリル樹脂又はその共重合体、ポリアクリル酸及びポリアクリロニトリルからなる群より選ばれる少なくとも1種を用いることができるが、これらに限定されない。
正極活物質、導電剤並びに結着剤は、それぞれ80質量%以上95質量%以下、3質量%以上18質量%以下、及び2質量%以上17質量%以下の割合で配合することが好ましい。導電剤は、3質量%以上の量にすることにより上述した効果を発揮することができる。導電剤は、18質量%以下の量にすることにより高温保存下での導電剤表面での非水電解質の分解を低減することができる。結着剤は、2質量%以上の量にすることにより十分な電極強度が得られる。結着剤は、17質量%以下の量にすることにより、正極中の絶縁材料である結着剤の配合量を減少させ、内部抵抗を減少できる。
正極は、例えば、以下のように作製することができる。まず、上述した正極活物質、導電剤及び結着剤を用意する。次に、これらを適当な溶媒に懸濁させ、この懸濁液を、アルミニウム箔などの集電体の片面又は両面に塗布し、乾燥させる。懸濁液を乾燥させた後の集電体をプレスすることにより、正極が得られる。得られる正極は、例えば、帯状の電極である。正極はまた、正極活物質、導電剤及び結着剤をペレット状に形成して正極活物質含有層とし、これを集電体上に形成することにより作製してもよい。
2)負極
負極集電体は、アルミニウム箔又はMg、Ti、Zn、Mn、Fe、Cu及びSiから選択される少なくとも1種の元素を含むアルミニウム合金箔であることが好ましい。
アルミニウム箔及びアルミニウム合金箔の厚さは、20μm以下、より好ましくは15μm以下である。アルミニウム箔の純度は99質量%以上が好ましい。アルミニウム合金としては、マグネシウム、亜鉛、ケイ素などの元素を含む合金が好ましい。一方、鉄、銅、ニッケル、クロムなどの遷移金属の含有量は1質量%以下にすることが好ましい。
先に述べたように、斜方晶型の結晶構造を有するNa含有ニオブチタン複合酸化物は、負極活物質として、又は負極活物質の一部として、負極活物質含有層に含まれ得る。すなわち、負極活物質は、斜方晶型の結晶構造を有するNa含有ニオブチタン複合酸化物以外の、他の負極活物質を含んでいてもよい。他の負極活物質は、後述する。
斜方晶型の結晶構造を有するNa含有ニオブチタン複合酸化物は、負極活物質含有層が含む負極活物質の質量の70質量%以上を占めていることが好ましく、80%以上を占めていることがより好ましい。負極活物質は、斜方晶型の結晶構造を有するNa含有ニオブチタン複合酸化物以外の他の負極活物質を含まないことが更に好ましい。
斜方晶型の結晶構造を有するNa含有ニオブチタン複合酸化物は、例えば、一般式Li2+vNa2-wM1xTi6-y-zNbyM2zO14+δで表すことができる。
上記一般式において、添字vは、斜方晶型Na含有ニオブチタン複合酸化物の充電状態に応じて、0≦v<4で変化する。なお、斜方晶型Na含有ニオブチタン複合酸化物は、放電状態においては、0≦v≦0.2の値をとることができる。
上記一般式において、添字wは、0より大きく2未満の値をとる。添字wは、斜方晶型Na含有ニオブチタン複合酸化物におけるNaの量の指標である。斜方晶型Na含有ニオブチタン複合酸化物は、これが含むNaの量により、Liの吸蔵及び放出電位を調整することができる。すなわち、上記一般式における添字wの値を変更することにより、斜方晶型Na含有ニオブチタン複合酸化物の作動電位を適宜変更することができる。
上記一般式において、M1は、Cs、K、Mg、Sr、Ba及びCaからなる群より選択される少なくとも1種である。M1は、Cs、K、Mg、Sr、Ba及びCaからなる群より選択される1種でもよいし、又はこれらのうちの2種以上の組み合わせでもよい。斜方晶型Na含有ニオブチタン複合酸化物は、Csを含むことにより、より優れたサイクル特性を実現できる。斜方晶型Na含有ニオブチタン複合酸化物は、Kを含むことにより、より優れたサイクル特性を実現できる。斜方晶型Na含有ニオブチタン複合酸化物は、Mgを含むことにより、優れたサイクル特性を実現できる。斜方晶型Na含有ニオブチタン複合酸化物は、Srを含むことにより、より優れたレート特性を実現できる。斜方晶型Na含有ニオブチタン複合酸化物は、Baを含むことにより、より優れたレート特性を実現できる。斜方晶型Na含有ニオブチタン複合酸化物は、Caを含むことにより、より優れたレート特性を実現できる。M1は、Sr又はBaのうち少なくとも1種を含むことがより好ましい。
上記一般式において、添字xは、例えば、0≦x<2の値をとることができる。斜方晶型Na含有ニオブチタン複合酸化物は、添字xが0≦x<2になるようにM1を含むと、単相の結晶相となり易くなる。さらに、このような複合酸化物では、固体内のLi拡散性が十分であり、十分な入出力特性が得られる。添字xは、0.05以上0.2以下の値をとることが好ましい。添字xがこの範囲内にある斜方晶型Na含有ニオブチタン複合酸化物は、より優れたレート特性を示すことができる。或いは、斜方晶型Na含有ニオブチタン複合酸化物は、M1を含まなくてもよい。
上記一般式において、添字yは0<y<2の値をとることができる。添字yの値が0よりも大きい上記一般式で表される斜方晶型Na含有ニオブチタン複合酸化物は、より高い可逆容量を実現することができる。また、添字yの値が2未満である上記一般式で表される斜方晶型Na含有ニオブチタン複合酸化物は、単相の結晶相となり易くなる。さらに、このような複合酸化物では、固体内のLi拡散性が十分であり、十分な入出力特性が得られる。好ましくは0.1≦y≦0.8である。また、添字yの値が0.1以上0.8以下である上記一般式で表される斜方晶型Na含有ニオブチタン複合酸化物は、可逆的な充放電容量を十分に提供することができると共に、十分な入出力特性を実現することもできる。添字yは、0.1以上1以下の値をとることが好ましい。添字yの値がこの範囲内にある上記一般式で表される斜方晶型Na含有ニオブチタン複合酸化物は、より優れたレート特性を示すことができる。
上記一般式において、M2は、Zr、Sn、V、Ta、Mo、W、Fe、Co、Mn及びAlからなる群より選択される少なくとも1種である。M2は、Zr、Sn、V、Ta、Mo、W、Fe、Co、Mn及びAlからなる群より選択される1種でもよいし、又はこれらのうちの2種以上の組み合わせでもよい。斜方晶型Na含有ニオブチタン複合酸化物は、Zrを含むことにより、より優れたサイクル特性を実現できる。斜方晶型Na含有ニオブチタン複合酸化物は、Snを含むことにより、より優れたレート特性を実現できる。V及びTaは、Nbと同様の物理的及び化学的性質を示すことができる。斜方晶型Na含有ニオブチタン複合酸化物は、Moを含むことにより、より優れたレート特性を実現できる。斜方晶型Na含有ニオブチタン複合酸化物は、Wを含むことにより、より優れたレート特性を実現できる。斜方晶型Na含有ニオブチタン複合酸化物は、Feを含むことにより、より優れたサイクル特性を実現できる。斜方晶型Na含有ニオブチタン複合酸化物は、Coを含むことにより、より優れたサイクル特性を実現できる。斜方晶型Na含有ニオブチタン複合酸化物は、Mnを含むことにより、より優れたサイクル特性を実現できる。斜方晶型Na含有ニオブチタン複合酸化物は、Alを含むことにより、より優れたレート特性を実現できる。M2は、Al、Zr、Sn及びVからなる群より選択される少なくとも1種を含むことがより好ましい。他の好ましい態様では、M2は、Sn、V、Ta、Mo、W、Fe、Co及びMnからなる群より選択される少なくとも1種である。或いは、斜方晶型Na含有ニオブチタン複合酸化物は、M2を含まなくてもよい。
上記一般式において、添字zは、例えば、0≦z<3の値をとることができる。斜方晶型Na含有ニオブチタン複合酸化物は、添字zの値が3未満になるようにM2を含むことにより、単相の結晶相となり易くなる。さらに、このような複合酸化物では、固体内のLi拡散性が十分であり、十分な入出力特性が得られる。添字zは、0.1以上0.3以下の値をとることが好ましい。添字zの値がこの範囲内にある上記一般式で表される斜方晶型Na含有ニオブチタン複合酸化物は、より優れたレート特性を示すことができる。
添字δは、例えば、−0.5≦δ≦0.5の値をとることができる。添字δの値がこの範囲内にある上記一般式で表される斜方晶型Na含有ニオブチタン複合酸化物は、優れた充放電サイクル特性を示すことができる。また、このような複合酸化物は、単相の結晶相の状態を取ることができ、不純物の生成量を抑えることができる。添字δは、−0.1≦δ≦0.1の値をとることが好ましい。添字δの値がこの範囲内にある上記一般式で表される斜方晶型Na含有ニオブチタン複合酸化物は、より優れたレート特性及びより優れたサイクル特性を示すことができる。
上記一般式における添字v、w、x、y、z及びδは、先に説明した範囲内の値をとることができるが、当該一般式で表される複合酸化物が、電荷的中性を示すことができるように、各添字の値は組み合わせて選択され得る。
斜方晶型Na含有ニオブチタン複合酸化物は、例えば、粒子の形状を有することができる。斜方晶型Na含有ニオブチタン複合酸化物の粒子は、一次粒子でもよいし、又は一次粒子の凝集体としての二次粒子でもよい。或いは、斜方晶型Na含有ニオブチタン複合酸化物の粒子は、一次粒子と、二次粒子との混合物でもよい。さらに、斜方晶型Na含有ニオブチタン複合酸化物の粒子は、表面に炭素が付着していてもよい。炭素は、一次粒子の表面に付着していてもよいし、二次粒子の表面に付着していてもよい。或いは、斜方晶型Na含有ニオブチタン複合酸化物の粒子は、表面に炭素が付着した一次粒子が凝集してなる二次粒子を含んでいてもよい。このような二次粒子は、一次粒子間に炭素が存在しているため、優れた導電性を示すことができる。このような二次粒子を含む態様は、負極活物質含有層がより低い抵抗を示すことができるので、好ましい。
斜方晶型Na含有ニオブチタン複合酸化物の粒子の平均一次粒子径は、0.5μm以上3μm以下であることが好ましく、0.9μm以上2μm以下であることがより好ましい。斜方晶型Na含有ニオブチタン複合酸化物の粒子の平均二次粒子径は、5μm以上20μm以下であることが好ましく、8μm以上12μm以下であることがより好ましい。これらの好ましい粒子径は、炭素を含まない粒子の粒子径である。炭素を含む粒子については、平均一次粒子径は、0.8μm以上3μm以下であることが好ましく、1μm以上2μm以下であることがより好ましい。平均二次粒子径は、5μm以上25μm以下であることが好ましく、8μm以上15μm以下であることがより好ましい。
斜方晶型Na含有ニオブチタン複合酸化物の粒子が一次粒子と二次粒子との混合物である場合、平均粒子径は3μm以上10μm以下であることが好ましく、4μm以上7μm以下であることがより好ましい。
なお、負極活物質含有層に含まれる粒子の平均一次粒子径が小さいほど、負極活物質含有層における細孔直径を小さくすることができる。二次粒子についても同様であり、負極活物質含有層に含まれる粒子の平均二次粒子径が小さいほど、負極活物質含有層における細孔直径を小さくできる。また、一次粒子及び/又は二次粒子の粒度分布を調整することにより、負極活物質含有層の空隙率を調整することができる。例えば、1μm程度の平均粒子径を有する粒子と10μm程度の平均粒子径を有する粒子を負極活物質含有層に含ませることにより、大きい方の粒子径を有する粒子が形成する空隙を、小さい方の粒子径を有する粒子が埋めることができる。これにより、負極活物質含有層の空隙率を低減することができる。上記観点から、負極活物質含有層に含まれる斜方晶型Na含有ニオブチタン複合酸化物は、一次粒子と二次粒子との混合物であることが好ましい。このような好ましい態様の電極では、負極活物質含有層が小さな一次粒子と大きな二次粒子とを含むので、負極活物質含有層がより小さな空隙率を有することができると共に、さらに斜方晶型Na含有ニオブチタン複合酸化物の粒子同士のより高い接触性を実現することができる。
斜方晶型の結晶構造を有するNa含有ニオブチタン複合酸化物以外の、他の負極活物質としては、例えば、チタン酸化物を使用できる。チタン酸化物としては、リチウムを吸蔵放出可能なものであれば特に限定されるものではないが、例えば、スピネル型チタン酸リチウム、ラムスデライト型チタン酸リチウム、斜方晶型以外の結晶構造を有するか又はNaを含まないニオブチタン複合酸化物、チタン含有金属複合酸化物、酸化ニオブ及びその複合酸化物、単斜晶系の結晶構造を有する二酸化チタン(TiO2(B))、並びにアナターゼ型二酸化チタンなどを用いることができる。
スピネル型チタン酸リチウムとしては、Li4+x1Ti5O12(x1は充放電反応により−1≦x1≦3の範囲で変化する)などが挙げられる。ラムスデライト型チタン酸リチウムとしては、Li2+y1Ti3O7(y1は充放電反応により−1≦y1≦3の範囲で変化する)などが挙げられる。TiO2(B)及びアナターゼ型二酸化チタンとしては、Li1+z1TiO2(z1は充放電反応により−1≦z1≦0の範囲で変化する)などが挙げられる。
斜方晶型以外の結晶構造を有するか又はNaを含まないニオブチタン複合酸化物の例には、例えば、Lix2Ti1-y2Mαy2Nb2-z2Mβz2O7で表される化合物群が含まれる。ここで、x2は充放電反応により0≦x2≦5の範囲で変化する値である。また、MαはZr、Si及びSnからなる群より選ばれる少なくとも1種であり、MβはV、Ta及びBiからなる群より選ばれる少なくとも1種であり、y2は0≦y2<1を満たす値であり、z2は0≦z2≦2を満たす値である。この化合物群は、例えば、単斜晶型の結晶構造を有するニオブチタン複合酸化物(例えば、Lix2TiNb2O7(0≦x≦5))を包含する。上記一般式において、Mαは、Zr、Si及びSnからなる群より選ばれる1種でもよいし、又はZr、Si及びSnからなる群より選ばれる2種以上の組み合わせでもよい。また、Mβは、V、Ta及びBiからなる群より選ばれる1種でもよいし、又はV、Ta及びBiからなる群より選ばれる2種以上の組み合わせでもよい。
チタン含有金属複合酸化物としては、TiとP、V、Sn、Cu、Ni及びFeよりなる群から選択される少なくとも1種類の元素とを含有する金属複合酸化物などが挙げられる。TiとP、V、Sn、Cu、Ni及びFeよりなる群から選択される少なくとも1種類の元素を含有する金属複合酸化物としては、例えば、TiO2-P2O5、TiO2-V2O5、TiO2-P2O5-SnO2、TiO2-P2O5-MeO(MeはCu、Ni及びFeよりなる群から選択される少なくとも1種類の元素)などを挙げることができる。
チタン含有金属複合酸化物の他の例としては、更に、Li2Na2Ti6O14又はLi2SrTi6O14で表される組成を有する複合酸化物を挙げることができる。
このような金属複合酸化物は、結晶性が低く、結晶相とアモルファス相とが共存しているか、又は、アモルファス相が単独で存在しているミクロ構造であることが好ましい。ミクロ構造であることにより、サイクル性能を更に向上させることができる。
以上に説明した他の負極活物質も、斜方晶型の結晶構造を有するNa含有ニオブチタン複合酸化物と同様に粒子の形状を有することができる。粒子は、一次粒子でもよいし、二次粒子でもよいし、或いは一次粒子と二次粒子との混合物でもよい。斜方晶型の結晶構造を有するNa含有ニオブチタン複合酸化物とこれ以外の負極活物質とを含んだ負極活物質の粒子について、一次粒子の平均一次粒子径は、10nm以上10μm以下であることが好ましく、50nm以上5μm以下であることがより好ましい。二次粒子の平均二次粒子径は、500nm以上50μm以下であることが好ましく、1μm以上20μm以下であることがより好ましい。
導電剤は、集電性能を高め、また、活物質と集電体との接触抵抗を抑える作用を示すことができる。導電剤の例には、アセチレンブラック、カーボンブラック、黒鉛、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ、及びコークスのような炭素質物が含まれる。これらの中でも、黒鉛及びカーボンナノファイバーが好ましい。黒鉛及びカーボンナノファイバーは、アセチレンブラックやカーボンブラックに比べて、斜方晶型Na含有ニオブチタン複合酸化物の粒子間に入り込みやすく、電極活物質含有層の空隙をより小さくすることができる。また、導電剤としては、アスペクト比の大きい炭素材料粒子を用いることがより好ましい。ここでの炭素材料粒子は、炭素材料を含む粒子であってもよいし、又は炭素材料を含む繊維であってもよい。好ましいアスペクト比は、15以上であり、より好ましくは50以上である。アスペクト比の大きい炭素材料粒子は、負極活物質含有層厚さ方向の導電性を付与することができ、より高い入出力特性を実現することができる。導電剤として、先に示した炭素質物のうちの1種を単独で用いてもよいし、或いは複数の炭素質物を用いてもよい。
結着剤は、活物質、導電剤及び集電体を結着させる作用を有することができる。結着剤としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、セルロース系化合物、例えばカルボキシルメチルセルロースナトリウム(CMCのNa塩)、フッ素系ゴム、スチレンブタジエンゴム、アクリル樹脂又はその共重合体、ポリアクリル酸及びポリアクリロニトリルからなる群より選ばれる少なくとも1つを用いることができるが、これらに限定されない。
負極活物質含有層において、負極活物質、導電剤及び結着剤は、それぞれ70質量%以上96質量%以下、2質量%以上28質量%以下、及び2質量%以上28質量%以下の割合で配合することが好ましい。負極活物質は、85質量%以上93質量%以下の量で含まれていることが好ましい。導電剤を2質量%以上の量で含ませることにより、負極活物質含有層に十分な集電性能を提供することができ、それにより優れた大電流特性を実現することができる。また、結着剤を2質量%以上の量で含ませることにより、負極活物質含有層と負極集電体との間に優れた結着性を提供することができ、それにより、優れたサイクル特性を実現することができる。高容量化の観点から、導電剤及び結着剤は、それぞれ28質量%以下の量であることが好ましい。負極活物質、導電剤及び結着剤は、それぞれ85質量%以上96質量%以下、2質量%以上13質量%以下、及び2質量%以上13質量%以下の割合で配合することがより好ましい。
負極活物質含有層の密度は、2.4g/cm3以上2.7g/cm3以下であることが好ましく、2.5g/cm3以上2.6g/cm3以下であることがより好ましい。負極活物質含有層の密度が好ましい範囲内にある電極は、斜方晶型Na含有ニオブチタン複合酸化物の粒子同士の接触がより十分であり、そのため、負極活物質含有層がより優れた電子導電性を示すことができる。また、非水電解質が含浸する空間をより十分に確保できる。
負極は、例えば、以下の手順で作製した負極中間部材を用いて電池ユニットを作製し、この電池ユニットを後段で説明するようにエージングに供することにより、製造することができる。
負極中間部材は、例えば以下の手順で製造することができる。まず、上述した負極活物質、導電剤及び結着剤を用意する。斜方晶型の結晶構造を有するNa含有ニオブチタン複合酸化物の合成方法は、後段において説明する。次に、これらを適当な溶媒に懸濁させる。この際、攪拌速度が過剰に高くなると二次粒子が崩壊する可能性があるため、攪拌速度は比較的低い方が好ましい。この懸濁液をアルミニウム箔などの集電体の片面又は両面に塗布し、塗膜を乾燥させる。次いで、乾燥させた塗膜を集電体ごとプレスする。かくして、負極集電体と、負極集電体上に担持された負極活物質含有層とを含んだ負極中間部材を得ることができる。得られる負極中間部材は、例えば、帯状である。負極はまた、負極活物質、導電剤及び結着剤をペレット状に形成して負極活物質含有層とし、これを集電体上に形成することにより作製してもよい。
3)非水電解質
非水電解質は、例えば、電解質を有機溶媒に溶解することにより調製される液状非水電解質、又は、液状電解質と高分子材料を複合化したゲル状非水電解質であってよい。非水電解質は、添加剤を含んでいてもよい。
液状非水電解質は、電解質を0.5モル/L以上2.5モル/L以下の濃度で有機溶媒に溶解することが好ましい。
電解質の例には、過塩素酸リチウム(LiClO4)、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)、四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF4)、六フッ化砒素リチウム(LiAsF6)、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiCF3SO3)、ビストリフルオロメチルスルホニルイミドリチウム[LiN(CF3SO2)2]のようなリチウム塩、またはこれらの混合物が含まれる。電解質は高電位でも酸化し難いものであることが好ましく、LiPF6が最も好ましい。
有機溶媒の例には、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、ビニレンカーボネートのような環状カーボネート、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、メチルエチルカーボネート(MEC)のような鎖状カーボネート、テトラヒドロフラン(THF)、2メチルテトラヒドロフラン(2MeTHF)、ジオキソラン(DOX)のような環状エーテル、ジメトキシエタン(DME)、ジエトキシエタン(DEE)のような鎖状エーテル、アセトニトリル(AN)、及びスルホラン(SL)が含まれる。これらの有機溶媒は、単独又は混合溶媒の形態で用いることができる。
有機溶媒は、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)及びメチルエチルカーボネート(MEC)からなる群より選ばれる少なくとも2種以上を混合した混合溶媒であることが好ましい。環状カーボネートはリチウム塩の解離度が高いため好ましく、鎖状カーボネートは電解液の粘度が低いため、リチウムが拡散しやすいため好ましい。混合溶媒にすることでこれらの特性を両立できるため好ましい。
有機溶媒は、エチレンカーボネート(EC)を含んでいることが好ましい。有機溶媒は、エチレンカーボネートを、有機溶媒の体積に対して1体積%以上の割合で含んでいることが好ましく、5体積%以上の割合で含んでいることがより好ましい。他の好ましい態様では、有機溶媒は、エチレンカーボネートを、有機溶媒の体積に対して1体積%以上80体積%以下の割合で含んでいることが好ましく、5体積%以上50体積%以下の割合で含んでいることがより好ましい。
高分子材料の例には、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリエチレンオキサイド(PEO)が含まれる。
或いは、非水電解質は、リチウムイオンを含有した常温溶融塩(イオン性融体)、高分子固体電解質、無機固体電解質等を用いてもよい。
常温溶融塩(イオン性融体)は、有機物カチオンとアニオンとの組合せからなる有機塩の内、常温(15〜25℃)で液体として存在し得る化合物を指す。常温溶融塩には、単体で液体として存在する常温溶融塩、電解質と混合させることで液体となる常温溶融塩、有機溶媒に溶解させることで液体となる常温溶融塩が含まれる。一般に、非水電解質電池に用いられる常温溶融塩の融点は、25℃以下である。また、有機物カチオンは、一般に4級アンモニウム骨格を有する。
高分子固体電解質は、電解質を高分子材料に溶解し、固体化することによって調製される。
無機固体電解質は、リチウムイオン伝導性を有する固体物質である。
なお、以下に詳細を説明する電池ユニットのエージングにより、非水電解質の成分の一部が分解し得る。そのため、エージングにより完成した非水電解質電池が含む非水電解質は、電池ユニットに含ませる前に調製した非水電解質と組成が異なる場合がある。
4)セパレータ
セパレータは、正極と負極との間に配置される。
セパレータは、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、セルロース及びポリフッ化ビニリデン(PVdF)からなる群より選ばれる少なくとも1つを含む、多孔質フィルム又は合成樹脂製不織布を使用することができる。或いは、多孔質フィルムに無機化合物を塗布したセパレータを使用することができる。
5)外装部材
外装部材としては、例えば、ラミネートフィルム又は金属製容器が用いることができる。
外装部材の形状は、扁平型(薄型)、角型、円筒型、コイン型、ボタン型、シート型及び積層型等が挙げられる。外装部材は、電池寸法に応じた大きさを有していてもよい。外装部材は、例えば、携帯用電子機器等に積載される小型電池、二輪乃至四輪の自動車等に積載される大型電池に使用される寸法を有している。
ラミネートフィルムは、樹脂フィルム間に金属層を介在させた多層フィルムが用いられる。ラミネートフィルムの厚さは、0.2mm以下であることが好ましい。金属層は、軽量化のためにアルミニウム箔もしくはアルミニウム合金箔が好ましい。樹脂フィルムは、例えばポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の高分子材料を用いることができる。ラミネートフィルムは、熱融着によりシールを行って外装部材の形状に成形することができる。
金属製容器の壁厚は、0.5mm以下であることが好ましく、0.2mm以下であることがより好ましい。
金属製容器は、例えば、アルミニウム又はアルミニウム合金等から形成される。アルミニウム合金は、マグネシウム、亜鉛、ケイ素等の元素を含むことが好ましい。合金中に鉄、銅、ニッケル、クロム等の遷移金属を含む場合、その含有量は100ppm以下にすることが好ましい。これにより、高温環境下での長期信頼性及び放熱性を飛躍的に向上させることができる。
6)正極端子
正極端子は、例えば、リチウムの酸化還元電位に対して3V〜4.5V(vs Li/Li+)である電位での電気的安定性と導電性とを備える材料から形成することができる。具体的には、Mg、Ti、Zn、Mn、Fe、Cu、Si等の元素を含むアルミニウム合金、アルミニウムが挙げられる。接触抵抗を低減するために、正極集電体と同様の材料が好ましい。
7)負極端子
負極端子は、例えば、リチウムの酸化還元電位に対して0.4V〜3V(vs Li/Li+)である電位での電気的安定性と導電性とを備える材料から形成することができる。具体的には、Mg、Ti、Zn、Mn、Fe、Cu、Si等の元素を含むアルミニウム合金、アルミニウムが挙げられる。接触抵抗を低減するために、負極集電体と同様の材料が好ましい。
[斜方晶型の結晶構造を有するNa含有ニオブチタン複合酸化物の合成方法]
斜方晶型の結晶構造を有するNa含有ニオブチタン複合酸化物は、例えば、以下の手順によって合成することができる。
斜方晶型の結晶構造を有するNa含有ニオブチタン複合酸化物を合成する際、原料の混合比を、各元素が目的組成物の化学量論量で含まれる比とすると、単相の斜方晶型Na含有ニオブチタン複合酸化物だけでなく、TiO2などの不純物も合成され得る。これは、リチウム及びナトリウムが、熱処理により気化して損失するためであると考えられる。特にリチウムは、その損失による電池特性への影響が大きい。
この問題を解決する一つの方法としては、原料として混合するリチウムなどの量を化学量論比よりも多くすることが挙げられる。しかしながら、このような方法では、熱処理を行っても合成に寄与しないリチウムが残留する可能性がある。合成に寄与しなかった余剰のリチウムは、目的組成物の結晶相に取り込まれず、不純物として粒子表面に存在する可能性がある。余剰のリチウムが不純物として粒子表面に存在していると、このリチウムによって粒子表面での電解質分解反応が生じ、電極と電解質との界面抵抗が大きくなる恐れがある。
この問題に対しては、以下に説明するように熱処理後に活物質粒子表面に存在している余剰のリチウムを除去することにより、上記非水電解質分解反応を抑制できる。この副反応の抑制により寿命特性が向上し、また、抵抗を小さくすることができるため、レート特性も向上する。
上では、原料の混合比を目的組成物の化学量論比よりも多くする場合を述べたが、原料の混合比は目的組成物の化学量論比と同一であってもよい。この場合にも、熱処理後に、目的組成物の結晶相に取り込まれていないリチウムが存在し得るため、このようなリチウムが除去されることにより寿命特性が向上する。
斜方晶型Na含有ニオブチタン複合酸化物は、例えば固相法で合成することができる。或いは、ゾルゲル法又は水熱法など湿式の合成方法により合成することもできる。湿式合成によると、固相法よりも微粒子を容易に得ることができる。
以下、固相法による斜方晶型Na含有ニオブチタン複合酸化物の合成方法の一例を説明する。
まず、目的組成に合わせて、Ti源、Li源、Na源、Nb源、金属元素M1源及び金属元素M2源のうち必要な原料を準備する。これら原料は、例えば、酸化物又は塩などの化合物であり得る。上記の塩は、炭酸塩及び硝酸塩のような、比較的低温で分解して酸化物を生じる塩であることが好ましい。
次に、準備した原料を、適切な化学量論比で混合して混合物を得る。例えば、組成式Li2Na1.7Ti5.7Nb0.3O14で表され且つ斜方晶型の結晶構造を有するNa含有ニオブチタン複合酸化物を合成する場合、酸化チタンTiO2と、炭酸リチウムLi2CO3と、炭酸ナトリウムNa2CO3と、水酸化ニオブNb(V)(OH)5とを、混合物におけるLi:Na:Ti:Nbのモル比が2:1.7:5.7:0.3となるように混合する。但し、Li及びNaは、上述したように熱処理により損失する可能性があるため、目的組成の化学量論比よりも多く混合してもよい。特に、Liは、熱処理中に損失することが懸念されるため、目的組成の化学量論比よりも多く混合してもよい。
原料の混合の際、これら原料を十分に粉砕した後に混合することが好ましい。十分に粉砕した原料を混合することで、原料同士が反応しやすくなり、不純物の生成を抑制できる。
次に、先の混合により得られた混合物を、大気雰囲気において、800℃以上1000℃以下の温度で、1時間以上24時間以下の時間に亘って熱処理を行う。800℃未満では十分に結晶化しない可能性がある。1000℃を超えると、粒成長が進み過ぎ、粗大粒子となる可能性があるため好ましくない。また、熱処理時間が1時間未満であると、十分に結晶化しない可能性がある。熱処理時間を24時間より長くすると、粒成長が進み過ぎ、粗大粒子となる可能性があるため好ましくない。
この熱処理は、850℃以上950℃以下の温度で、2時間以上5時間以下の時間に亘って行うことが好ましい。こうして、斜方晶型Na含有ニオブチタン複合酸化物を得ることができる。また、得られた斜方晶型Na含有ニオブチタン複合酸化物を回収後、アニール処理を行ってもよい。
例えば、組成式Li2Na1.7Ti5.7Nb0.3O14で表される斜方晶型Na含有ニオブチタン複合酸化物の場合は、先のように原料を混合して得られた混合物を、大気雰囲気において、900℃で3時間に亘り熱処理することによって得ることができる。
次に、熱処理により得られた斜方晶型Na含有ニオブチタン複合酸化物を、例えば、水溶液を使用した湿式ボールミルによる粉砕に供して、活物質粒子表面を洗浄する。この洗浄により、活物質粒子表面に付着している余剰のリチウムを洗い流すことができる。水溶液としては、例えば、酸性水溶液を使用することができる。酸性水溶液は、例えば、塩酸及び硫酸などを含んだ水溶液である。水溶液の代わりに水を用いてもよい。粒子表面の余剰のリチウムによりpHが上昇するため、十分に洗浄するためには、酸性水溶液を使用するのが好ましい。
上記洗浄は、水溶液を使用しない乾式ミルによる粉砕によっても行うことができる。また、上記洗浄は、斜方晶型Na含有ニオブチタン複合酸化物を水溶液に浸漬することにより、粉砕することなく行うことができる。
続いて、洗浄後の活物質粒子を再熱処理に供する。再熱処理により、活物質粒子の表面近傍の組成が結晶化され得る。再熱処理の温度は、例えば500℃以上900℃以下であり、好ましくは、600℃以上700℃以下である。再熱処理の温度が500℃未満では、粒子表面の結晶性が乏しい可能性がある。再熱処理の温度が900℃超であると、粒成長する可能性がある。
以上の手順により、斜方晶型の結晶構造を有するNa含有ニオブチタン複合酸化物の例を合成することができる。
[製造方法]
第1の実施形態に係る非水電解質電池は、例えば、以下の方法によって製造することができる。
まず、先に説明した手順で、正極及び負極中間部材をそれぞれ作製する。次に、作成した正極及び負極中間部材と、セパレータとを用いて、電極群を作製する。次いで、電極群の正極を、正極端子に電気的に接続する。一方、電極群の負極を、負極端子に電気的に接続する。
次に、電極群を、外装部材内に収容する。次いで、非水電解質を、外装部材内に収容する。かくして、電極群に非水電解質を保持させる。次いで、外装部材を閉じて、外装部材内に電極群と非水電解質とを封止する。かくして、電池ユニットが得られる。
この電池ユニットを、第1のエージング及び第2のエージングを含むエージングに供する。第1のエージングは、第2のエージングの前に行う。第1のエージングにおける温度は、第2のエージングのそれよりも低くする。また、第1のエージングに供する電池ユニットの電池電圧は、第2のエージングに供する電池ユニットのそれよりも低くする。
具体的には、第1のエージングの温度は、35℃以上95℃以下であることが好ましく、50℃以上70℃の範囲内にあることがより好ましい。また、第1のエージングは、0.5時間以上48時間以内にわたって行うことが好ましく、5時間以上24時間以内にわたって行うことがより好ましい。また、第1のエージングに供する電池ユニットの電池電圧は、1.8V以上2.65V以下にあることが好ましく、2.4V以上2.6V以下にあることがより好ましい。
第2のエージングの温度は、40℃以上120℃以下であることが好ましく、70℃以上100℃以下であることがより好ましい。また、第2のエージングは、1時間以上48時間以内にわたって行うことが好ましく、5時間以上24時間以内にわたって行うことがより好ましい。また、第2のエージングに供する電池ユニットの電池電圧は、2.7V以上3.0V以下であることが好ましく、2.7V以上2.9V以下であることがより好ましい。ただし、先に述べたように、第2のエージングの温度は、第1のエージング温度よりも高い。また、第2のエージングに供する電池ユニットの電池電圧は、第1のエージングに供する電池ユニットのそれよりも高い。
第1のエージングは、内部ガスを解放できる状態にある電池ユニットに対して行うことが好ましい。或いは、第1のエージング及び/又は第2のエージングの後に、電池ユニット内のガス抜きを行ってもよい。
第1のエージングに供する電池ユニットの電池電圧は、以下のようにして調整する。まず、先に説明した手順で、電池ユニットを作製する。次いで、作製した電池ユニットを、5C以下の定電流で、電池電圧が所定の電圧に達するまで充電する。かくして、第1のエージングに供するための電池ユニットを準備できる。
また、第2のエージングに供する電池ユニットのSOCは、以下のようにして調整する。第1のエージング及び任意のガス抜きが終了後、電池ユニットを、電池電圧が1.8Vに達するまで定電流で放電する。次いで、電池ユニットを、5C以下の定電流で、電池電圧が所定の電圧に達するまで充電する。
電池ユニットを以上に説明した第1及び第2のエージングに供することにより、理由は不明であるが、負極中間部材が含む負極活物質含有層の表面に被膜を形成することができ、負極活物質含有層が先に説明したI2/I1≧1を満たすようになる。すなわち、電池ユニットを以上に説明した第1及び第2のエージングに供することにより、第1の実施形態に係る非水電解質電池を得ることができる。具体例として、本明細書の後段に実施例を示す。
一方、第1のエージングのみを行った場合又は第2のエージングのみを行った場合には、比較例で例を示すように、I2/I1が1未満となる。また、第2のエージングを行った後に第1のエージングを行った場合にも、比較例で例を示すように、I2/I1が1未満となる。
さらに、第1のエージング及び第2のエージングを行っても、例えば非水電解質の組成によっては、比較例で例を示すように、I2/I1が1未満となる。しかしながら、繰り返しになるが、実施例において具体例を挙げた手順によると、第1の実施形態に係る非水電解質電池を得ることができる。
第1のエージング及び第2のエージングの後であれば、更なるエージングを行うこともできる。
[各種分析方法]
以下に、非水電解質電池が具備する負極に含まれる負極活物質含有層の分析方法、負極活物質に含まれている活物質の分析方法を説明する。
(測定試料の準備)
まず、以下の手順で測定試料を準備する。
分析対象の非水電解質電池を準備する。分析対象の電池は、公称容量の80%以上の容量を有するものとする。
次に、非水電解質電池を放電状態にする。例えば、非水電解質電池は、5C以下の定電流で電池電圧が1.8Vに達するまで放電することにより、放電状態にすることができる。
次に、非水電解質電池をアルゴンが充填されたグローブボックス内に搬送し、ここで解体する。次に、解体した電池から、負極を取り出す。取り出した負極を、例えばエチルメチルカーボネート(EMC)で洗浄する。この洗浄により、負極の表面に付着しているLi塩を取り除くことができる。次に、洗浄した負極を、乾燥させる。かくして、測定試料たる負極試料を得ることができる。
(XPSによる負極活物質含有層の分析)
XPS測定は、例えば以下に説明する方法に従って行うことができる。
装置としては、例えば、PHI社製QuanteraSXMを用いる。励起X線源には単結晶分光Al−Kα(1486.6eV)を用い、光電子検出角度は45°とする。
先のようにして用意した負極試料を、XPS分析装置の試料ホルダーに装着する。試料の搬入は、不活性雰囲気、例えばアルゴン雰囲気で行う。
<負極活物質に含まれている元素の定量>
負極活物質に含まれている元素は、誘導結合プラズマ(Inductively Coupled Plasma:ICP)発光分光分析法、走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope:SEM)観察及びエネルギー分散型X線分光法(Energy Dispersive X-ray Spectrometry:EDX)を組み合わせて用いて分析することができる。
(ICP分析手順)
先のようにして準備した負極試料の一部を、適切な溶媒中に入れて超音波を照射する。例えば、ガラスビーカー中に入れたエチルメチルカーボネートに電極体を入れ、超音波洗浄機中で振動させることで、集電体から、負極活物質含有層を剥離することができる。次に、減圧乾燥により、剥離した負極活物質含有層を乾燥させる。得られた負極活物質含有層を乳鉢などで粉砕することで、負極活物質、導電剤、バインダ、被膜の成分などを含む粉末となる。この粉末を酸で溶解することで、負極活物質を含む液体サンプルを作成できる。このとき、酸としては塩酸、硝酸、硫酸、フッ化水素などを使用できる。この液体サンプルをICP発光分光分析に供することで、負極活物質に含まれている金属元素の定量を行うことができる。
(SEM−EDX分析手順)
先のようにして準備した負極試料をイオンミリング装置にて切り出し、試料断面を得る。切り出した試料の断面を、走査型電子顕微鏡にて観察する。試料のサンプリングについても大気に触れないようにし、アルゴンや窒素など不活性雰囲気で行う。
3000倍のSEM観察像にて、幾つかの粒子をランダムに選定する。粒子が小さく3000倍では粒子径を出すことが難しい場合には倍率を上げてもよい。この際、選定した粒子の粒度分布ができるだけ広くなるように選定する。
次に、選定したそれぞれの粒子について、走査型電子顕微鏡に付随したエネルギー分散型X線分光分析装置により、元素分析を行う。これにより、選定したそれぞれの粒子に含まれる元素のうちLi以外の元素の種類及び量を特定することができる。Liについては、先に説明したICP発光分光法により、電極に含まれている活物質におけるLiの含有量についての情報を得ることができる。
以上のICP及びSEM−EDXのそれぞれの分析結果を用いることにより、負極活物質含有層に含まれる負極活物質の組成を知ることができる。また、負極活物質が複数種類の活物質の混合物である場合も、SEM−EDXにより各活物質の元素(Li以外)の組成をそれぞれ知ることができ、ICP分析結果は各活物質に含まれる金属元素の合計であるとみなすことができるため、ICP及びSEM−EDXのそれぞれの分析結果を用いることにより、各負極活物質の組成、及び負極活物質に占めるそれぞれの活物質の質量割合を知ることができる。
<XRDによる活物質の結晶構造の特定>
SEMで選定したそれぞれの粒子に含まれている活物質の結晶構造は、X線回折(X-ray Diffraction:XRD)測定により特定することができる。
電極についてのXRD測定は、測定対象の電極を、広角X線回折装置のホルダーの面積と同程度切り出し、直接ガラスホルダーに貼り付けて測定することによって行うことができる。このとき、電極集電体の金属箔の種類に応じてあらかじめXRDを測定しておき、どの位置に集電体由来のピークが現れるかを把握しておく。また、導電剤や結着剤といった活物質含有層に含まれ得る材料のピークの有無もあらかじめ把握しておく。集電体のピークと活物質のピークが重なる場合、集電体から活物質を剥離して測定することが望ましい。これは、ピーク強度を定量的に測定する際、重なったピークを分離するためである。もちろん、これらを事前に把握できているのであれば、この操作を省略することができる。電極を物理的に剥離しても良いが、溶媒中で超音波をかけると剥離しやすい。このようにして回収した電極を測定することで、活物質の広角X線回折測定を行うことができる。
測定をCuKα線を線源として2θ=10〜90°の測定範囲で行って、X線回折パターンを得ることができる。
粉末X線回折測定の装置としては、Rigaku社製SmartLabを用いる。測定条件は以下の通りとする:Cuターゲット;45kV 200mA;ソーラスリット:入射及び受光共に5°;ステップ幅:0.02deg;スキャン速度:20deg/分;半導体検出器:D/teX Ultra 250;試料板ホルダ:平板ガラス試料板ホルダー(厚さ0.5mm);測定範囲:10°≦2θ≦90°の範囲。その他の装置を使用する場合は、粉末X線回折用標準Si粉末を用いた測定を行って、上記装置によって得られる結果と同等のピーク強度及びピークトップ位置の測定結果が得られる条件を見つけ、その条件で試料の測定を行う。
ここで取得するX線回折(XRD)パターンは、リートベルト解析に適用できるものでなければならない。リートベルト用データを収集するには、ステップ幅が回折ピークの最小半値幅の1/3〜1/5となるようにし、最強度反射のピーク位置における強度が5000cps以上となるように適宜、測定時間またはX線強度を調整する。
以上のようにして得られたXRDパターンを、リートベルト法によって解析する。リートベルト法では、あらかじめ推定した結晶構造モデルから回折パターンを計算する。ここでの結晶構造モデルの推定は、以上に説明したEDX及び以上に説明したICPによる分析結果に基づいて行う。この計算値と実測値とを全てフィッティングすることにより、結晶構造に関するパラメータ(格子定数、原子座標及び占有率等)を精密に分析することができる。これにより、複合酸化物の結晶構造の特徴を調べることができる。また、構成元素の各サイト中の占有率を調べることが可能である。リートベルト解析における観測強度と計算強度の一致の程度を見積もるための尺度として、フィッティングパラメータSを用いる。このSが1.8より小さくなるように解析を行う必要がある。また、各サイトの占有率を決定する際には、標準偏差σjを考慮に入れなければならない。ここで定義するフィッティングパラメータS及び標準偏差σjについては、「粉末X線解析の実際」(日本分析化学会X線分析研究懇談会編 中井泉、泉富士夫編著(朝倉書店))に記載の数式で推定するものとする。
以上に説明したXRD分析により、活物質の結晶構造に関する情報を得ることができる。
<活物質のBET比表面積の測定方法>
負極活物質のBET比表面積は、例えば以下で説明する方法で測定することができる。
まず、先に説明したように準備した負極試料から、ICP分析と同様の手順により、負極活物質、導電剤及びバインダなどの成分を含む粉末を取り出す。続いて、この粉末を600℃で1時間加熱し、活物質を単離させる。この活物質の粉末を測定試料として用いる。
活物質質量は4gとする。評価用セルは、例えば1/2インチのものを使用する。前処理方法として、この評価用セルを、温度約100℃以上で15時間の減圧乾燥することにより、脱ガス処理を実施する。測定装置としては、例えば島津製作所‐マイクロメリティックス社トライスターII3020を用いる。圧力を変化させながら窒素ガスを吸着させていき、相対圧を横軸、N2ガス吸着量を縦軸とする吸着等温線を求める。この曲線がBET理論に従うと仮定し、BETの式を適応することによって、活物質の粉末の比表面積を算出することができる。
<負極活物質粒子の平均一次粒子径及び平均二次粒子径の測定方法>
先のようにして準備した負極試料をイオンミリング装置にて切り出し、試料断面を得る。切り出した試料の断面を、走査型電子顕微鏡にて観察し、3000倍の倍率で、活物質粒子についての像を得る。得られた視野において、一次粒子が接触していることを確認できる粒子群を二次粒子とする。なお、試料のサンプリングについても大気に触れないようにし、アルゴンや窒素など不活性雰囲気で行う。
一次粒子の大きさは一次粒子に対応する最少円の直径から求める。具体的には、3000倍の倍率のSEM像において、10回粒径測定を行い、それぞれにおいて得られた最少円の直径の平均を一次粒子径とする。平均の算出には、10回測定した内、粒子径の最大値及び最小値は用いない。
二次粒子径も一次粒子径と同様の方法で測定する。すなわち、二次粒子に対応する最少円の直径を求める。具体的には、3000倍の倍率のSEM像において、10回粒径測定を行い、それぞれにおいて得られた最少円の直径の平均を二次粒子径とする。平均の算出には、10回測定した内、粒径の最大値及び最小値は用いない。
以上では、負極活物質についての分析方法を説明したが、正極活物質についても同様の手順で分析を行うことができる。
次に、図面を参照しながら、本実施形態に係る非水電解質電池の幾つかの例を説明する。
まず、図2及び図3を参照しながら、本実施形態に係る非水電解質電池の一例である、扁平型非水電解質電池について説明する。
図2は、第1の実施形態に係る扁平型非水電解質電池の一例を示す断面模式図である。図3は、図2のA部の拡大断面図である。
図2及び図3に示す非水電解質電池10は、扁平状の捲回電極群1を具備する。
扁平状の捲回電極群1は、図3に示すように、負極3、セパレータ4及び正極5を備える。セパレータ4は、負極3と正極5との間に介在している。このような扁平状の捲回電極群1は、負極3、セパレータ4及び正極5を積層して形成した積層物を、図3に示すように負極3を外側にして渦巻状に捲回し、プレス成型することにより形成できる。この積層物は、負極3と正極5との間にセパレータ4が介在するように積層されている。
負極3は、負極集電体3aと負極活物質含有層3bとを含む。負極3の最も外側に位置する部分は、図3に示すように負極集電体3aの内面側の片面のみに負極活物質含有層3bを形成した構成を有する。負極3のその他の部分は、負極集電体3aの両面に負極活物質含有層3bが形成されている。
負極活物質含有層3bの集電体と接していない表面には、被膜が形成されている。しかしながら、先に説明したように、この被膜は、負極活物質含有層3bの厚さよりもはるかに小さい厚さを有するため、図3においては図示していない。
正極5は、正極集電体5aの両面に正極活物質含有層5bが形成されている。
図2に示すように、捲回電極群1の外周端近傍において、負極端子6が最外殻の負極3の負極集電体3aに接続され、正極端子7が内側の正極5の正極集電体5aに接続されている。
捲回型電極群1は、2枚の樹脂層の間に金属層が介在したラミネートフィルムからなる袋状容器2内に収納されている。
負極端子6及び正極端子7のそれぞれの一部は、袋状容器2の外部に位置している。この状態は、例えば、袋状容器2の周縁部を負極端子6及び正極端子7を挟んでヒートシールすることにより得ることができる。
液状非水電解質は、袋状容器2内に収納されている。液状非水電解質は、電極群1に保持されている。液状非水電解質は、例えば、袋状容器2の周縁部に開口を設け、この開口を通して袋状容器2の中に注入することができる。この開口は、例えば、袋状容器2の周縁部のヒートシールの際、一部を熱融着せずに残すことで形成できる。非水電解質注入後、開口をヒートシールすることにより、捲回電極群1及び液状非水電解質を容器2内に密封することができる。
次に、図4及び図5を参照しながら、第1の実施形態に係る非水電解質電池の他の例について説明する。
図4は、第1の実施形態に係る非水電解質電池の他の例を模式的に示す部分切欠斜視図である。図5は、図4のB部の断面模式図である。
図4及び図5に示す非水電解質電池10は、積層型電極群11を具備する。図4に示すように、積層型電極群11は、2枚の樹脂フィルムの間に金属層を介在したラミネートフィルムからなる外装部材12内に収納されている。図5に示すように、積層型電極群11は、正極13と負極14とをその間にセパレータ15を介在させながら交互に積層した構造を有する。正極13は複数枚存在し、それぞれが正極集電体13aと、正極集電体13aの両面に担持された正極活物質含有層13bとを備える。負極14は複数枚存在し、それぞれが負極集電体14aと、負極集電体14aの両面に担持された負極活物質含有層14bとを備える。負極活物質含有層14bの集電体と接していない表面には、被膜が形成されている。しかしながら、先に説明したように、この被膜は、負極活物質含有層14bの厚さよりもはるかに小さい厚さを有するため、図5においては図示していない。
各負極14の負極集電体14aの一部は、正極13に対して突出している。負極集電体14aの突出した部分は、帯状の負極端子16に電気的に接続されている。帯状の負極端子16の先端は、外装部材12から外部に引き出されている。また、図示していないが、正極13の正極集電体13aのうち、各負極集電体14aの突出した部分と反対側に位置する部分が負極14に対して突出している。こちらも図示していないが、各正極集電体13aの突出した部分は、帯状の正極端子17に電気的に接続されている。帯状の正極端子17の先端は、負極端子16とは反対側に位置し、外装部材12の辺から外部に引き出されている。
以上に説明した第1の実施形態によると、電極及び非水電解質電池が提供される。この非水電解質電池は、負極としての該電極と、正極と、非水電解質とを具備する。負極は、負極活物質含有層を具備する。負極活物質含有層は、斜方晶型の結晶構造を有するNa含有ニオブチタン複合酸化物を含む。負極活物質含有層は、X線光電子分光法による強度比I2/I1がI2/I1≧1を満たす。この非水電解質電池は、負極活物質含有層が含むNa含有ニオブチタン複合酸化物と非水電解質との副反応を抑制することができる。その結果、第1の実施形態に係る電極及び非水電解質電池は、優れた寿命特性を示すことができる。
(第2の実施形態)
第2の実施形態によれば、電池パックが提供される。この電池パックは、第1の実施形態に係る非水電解質電池を備える。
本実施形態に係る電池パックは、1個の非水電解質電池を備えてもよく、複数個の非水電解質電池を備えてもよい。電池パックに含まれ得る複数の非水電解質電池は、電気的に直列、並列、又は直列及び並列を組み合わせて接続されることができる。複数の非水電解質電池は、電気的に接続されて組電池を構成することもできる。電池パックは、複数の組電池を含んでいてもよい。
電池パックは、保護回路を更に具備することができる。保護回路は、非水電解質電池の充放電を制御するものである。また、電池パックを電源として使用する装置(例えば、電子機器、自動車等)に含まれる回路を、電池パックの保護回路として使用することができる。
また、電池パックは、通電用の外部端子を更に具備することもできる。通電用の外部端子は、非水電解質電池からの電流を外部に出力するため、及び非水電解質電池に電流を入力するためのものである。言い換えれば、電池パックを電源として使用する際、電流が通電用の外部端子を通して外部に供給される。また、電池パックを充電する際、充電電流(自動車の動力の回生エネルギーを含む)は通電用の外部端子を通して電池パックに供給される。
次に、本実施形態に係る電池パックの一例を、図面を参照しながら説明する。
図6は、本実施形態に係る電池パックの一例を示す分解斜視図である。図7は、図6に示す電池パックの電気回路を示すブロック図である。
図6及び図7に示す電池パック20は、図2及び図3に示した構造を有する複数個の扁平型単電池21を含む。
複数個の単電池21は、外部に延出した負極端子6及び正極端子7が同じ向きに配置されるように積層され、粘着テープ22で締結されており、それにより組電池23を構成している。これらの単電池21は、図7に示すように互いに電気的に直列に接続されている。
プリント配線基板24が、複数の単電池21の負極端子6及び正極端子7が延出している側面に対向して配置されている。プリント配線基板24には、図7に示すサーミスタ25、保護回路26及び外部機器への通電用端子27が搭載されている。プリント配線基板24の組電池23と対向する面には、組電池23の配線との不要な接続を回避するために絶縁板(図示せず)が取り付けられている。
組電池23の最下層に位置する単電池21の正極端子7に正極側リード28が接続されており、その先端は、プリント配線基板24の正極側コネクタ29に挿入されて電気的に接続されている。組電池23の最上層に位置する単電池21の負極端子6に負極側リード30が接続されており、その先端は、プリント配線基板24の負極側コネクタ31に挿入されて電気的に接続されている。これらのコネクタ29及び31は、プリント配線基板24に形成された配線32及び33をそれぞれ通して保護回路26に接続されている。
サーミスタ25は、単電池21の各々の温度を検出し、その検出信号を保護回路26に送信する。保護回路26は、所定の条件で保護回路26と外部機器への通電用端子27との間のプラス側配線34a及びマイナス側配線34bを遮断することができる。所定の条件の例は、サーミスタ25から、単電池21の温度が所定温度以上であるとの信号を受信したときである。また、所定の条件の他の例は、単電池21の過充電、過放電、過電流等を検出したときである。この過充電等の検出は、個々の単電池21又は組電池23について行われる。個々の単電池21を検出する場合、電池電圧を検出してもよく、正極電位又は負極電位を検出してもよい。後者の場合、参照極として用いるリチウム電極を個々の単電池21に挿入する。図6及び図7の電池パックでは、単電池21それぞれに電圧検出のための配線35が接続されており、これら配線35を通して検出信号が保護回路26に送信される。
組電池23の四側面のうち、正極端子7及び負極端子6が突出している側面を除く三側面には、ゴム又は樹脂からなる保護シート36がそれぞれ配置されている。
組電池23は、各保護シート36及びプリント配線基板24と共に収納容器37内に収納されている。上記保護シート36は、収納容器37の長辺方向の両方の内側面と、短辺方向の1つの内側面とに配置されている。保護シート36が配置されている内側面とは別の、短辺方向の1つの内側面に、プリント配線基板24が配置されている。組電池23は、保護シート36及びプリント配線基板24で囲まれた空間内に位置している。蓋38は、収納容器37の上面に取り付けられている。
なお、組電池23の固定には、粘着テープ22に代えて、熱収縮テープを用いてもよい。この場合、組電池の両側面に保護シートを配置し、熱収縮テープを周回させた後、熱収縮テープを熱収縮させて組電池を結束させる。
図6及び図7に示した電池パック20は複数の単電池21を直列接続した形態を有するが、電池パックは、電池容量を増大させるために、複数の単電池21を並列に接続してもよい。或いは、電池パックは、直列接続と並列接続とを組合せて接続された複数の単電池21を備えてもよい。電池パック20同士を、更に電気的に直列又は並列に接続することもできる。
また、図6及び図7に示した電池パック20は複数の単電池21を備えているが、電池パックは、1つの単電池21を備えるものでもよい。
また、電池パックの実施形態は用途により適宜変更される。本実施形態に係る電池パックは、大電流を取り出したときにサイクル特性が優れていることが要求される用途に好適に用いられる。具体的には、例えば、デジタルカメラの電源として、二輪乃至四輪のハイブリッド電気自動車、二輪乃至四輪の電気自動車、アシスト自転車などの車両の車載用電池として、定置用電池として、又は鉄道用車両用の電池として用いられる。特に、車載用電池として好適に用いられる。
本実施形態に係る電池パックを搭載した自動車等の車両において、電池パックは、例えば、車両の動力の回生エネルギーを回収するものである。
第2の実施形態に係る電池パックは、第1の実施形態に係る非水電解質電池を備えている。この非水電解質電池は、負極活物質含有層が含むNa含有ニオブチタン複合酸化物と非水電解質との副反応を抑制することができる。したがって、第2の実施形態に係る電池パックは、優れた寿命特性を示すことができる。
(第3の実施形態)
第3の実施形態によると、車両が提供される。この車両は、第2の実施形態に係る電池パックを搭載する。
第3の実施形態に係る車両において、電池パックは、例えば、車両の動力の回生エネルギーを回収するものである。
第3の実施形態に係る車両の例としては、例えば、二輪乃至四輪のハイブリッド電気自動車、二輪乃至四輪の電気自動車、及び、アシスト自転車及び鉄道用車両(例えば電車)が挙げられる。
第3の実施形態に係る車両における電池パックの搭載位置は、特には限定されない。例えば、電池パックを自動車に搭載する場合、電池パックは、車両のエンジンルーム、車体後方又は座席の下に搭載することができる。
次に、第3の実施形態の車両の例を図面を参照しながら説明する。
図8は、第3の実施形態に係る一例の車両の概略断面図である。
図8に示す車両41は、自動車である。この自動車41は、車体前方のエンジンルーム内に、電池パック42を搭載している。
次に、第3の実施形態に係る他の例の車両の構成を、図9を参照しながら説明する。
図9は、第3の実施形態に係る他の例の車両の構成を示している。図9に示した車両300は、電気自動車である。
図9に示す車両300は、車両用電源301と、車両用電源301の上位制御手段である車両ECU(ECU:Electric Control Unit)380と、外部端子370と、インバータ340と、駆動モータ345とを備えている。
車両300は、車両用電源301を、例えばエンジンルーム、自動車の車体後方又は座席の下に搭載している。しかしながら、図9では、車両300への非水電解質電池の搭載箇所は概略的に示している。
車両用電源301は、複数(例えば3つ)の電池パック312a、312b及び312cと、電池管理装置(BMU:Battery Management Unit)311と、通信バス310と、を備えている。
3つの電池パック312a、312b及び312cは、電気的に直列に接続されている。電池パック312aは、組電池314aと組電池監視装置(VTM:Voltage Temperature Monitoring)313aと、を備えている。電池パック312bは、組電池314bと組電池監視装置313bと、を備えている。電池パック312cは、組電池314cと組電池監視装置313cと、を備えている。電池パック312a、312b、及び312cは、それぞれ独立して取り外すことが可能であり、別の電池パックと交換することができる。
組電池314a〜314cのそれぞれは、直列に接続された複数の非水電解質電池を備えている。各非水電解質電池の各々は、第1の実施形態に係る非水電解質電池である。組電池314a〜314cは、それぞれ、正極端子316及び負極端子317を通じて充放電を行う。すなわち、電池パック312a、312b、及び312cは、第2の実施形態に係る電池パックである。
電池管理装置311は、車両用電源301の保全に関する情報を集めるために、車両用電源301に含まれる組電池314a〜314cの非水電解質電池の電圧、温度などの情報を組電池監視装置313a〜313cとの間で通信を行い収集する。
電池管理装置311と組電池監視装置313a〜313cとの間には、通信バス310が接続されている。通信バス310は、1組の通信線を複数のノード(電池管理装置と1つ以上の組電池監視装置と)で共有するように構成されている。通信バス310は、例えばCAN(Control Area Network)規格に基づいて構成された通信バスである。
組電池監視装置313a〜313cは、電池管理装置311からの通信による指令に基づいて、組電池314a〜314cを構成する個々の非水電解質電池の電圧及び温度を計測する。ただし、温度は1つの組電池につき数箇所だけで測定することができ、全ての非水電解質電池の温度を測定しなくてもよい。
車両用電源301は、正極端子と負極端子との接続を入り切りするための電磁接触器(例えば図9に示すスイッチ装置333)を有することもできる。スイッチ装置333は、組電池314a〜314cへの充電が行われるときにオンするプリチャージスイッチ(図示せず)、電池出力が負荷へ供給されるときにオンするメインスイッチ(図示せず)を含む。プリチャージスイッチおよびメインスイッチは、スイッチ素子の近傍に配置されたコイルに供給される信号によりオンおよびオフされるリレー回路(図示せず)を備える。
インバータ340は、入力した直流電圧をモータ駆動用の3相の交流(AC)の高電圧に変換する。インバータ340は、電池管理装置311あるいは車両全体動作を制御するための車両ECU380からの制御信号に基づいて、出力電圧が制御される。インバータ340の3相の出力端子は、駆動モータ345の各3相の入力端子に接続されている。
駆動モータ345は、インバータ340から供給される電力により回転し、その回転を例えば差動ギアユニットを介して車軸および駆動輪Wに伝達する。
また、図示はしていないが、車両300は、車両300を制動した際に駆動モータ345を回転させ、運動エネルギーを電気エネルギーとしての回生エネルギーに変換する回生ブレーキ機構を備えている。回生ブレーキ機構で回収した回生エネルギーは、インバータ340に入力され、直流電流に変換される。直流電流は、車両用電源301に入力される。
車両用電源301の負極端子317には、接続ラインL1の一方の端子が、電池管理装置311内の電流検出部(図示せず)を介して接続されている。接続ラインL1の他方の端子は、インバータ340の負極入力端子に接続されている。
車両用電源301の正極端子316には、接続ラインL2の一方の端子が、スイッチ装置333を介して接続されている。接続ラインL2の他方の端子は、インバータ340の正極入力端子に接続されている。
外部端子370は、電池管理装置311に接続されている。外部端子370は、例えば、外部電源に接続することができる。
車両ECU380は、運転者などの操作入力に応答して電池管理装置311を他の装置と協調制御して、車両全体の管理を行なう。電池管理装置311と車両ECU380との間で、通信線により、車両用電源301の残容量等の車両用電源301の保全に関するデータ転送が行われる。
第3の実施形態に係る車両は、第3の実施形態に係る電池パックを具備するので、優れた寿命特性を示すことができる。
[実施例]
以下に実施例を説明するが、実施形態は、以下に記載される実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
実施例1では、以下の手順で実施例1の非水電解質電池を作製した。
<負極活物質の製造>
以下の手順で、斜方晶型Na含有ニオブチタン複合酸化物としてLi2.0Na1.5Ti5. 5Nb0.5O14を合成した。
まず、原料として、酸化チタンTiO2と、炭酸リチウムLi2CO3と、炭酸ナトリウムNa2CO3と、水酸化ニオブ(V)Nb(OH)5とを準備した。これらの原料を、混合物のLi:Na:Ti:Nbのモル比が2.0:1.5:5.5:0.5となるように混合した。混合に先立ち、原料を十分に粉砕した。
混合した原料を、大気雰囲気中において、1000℃で10時間に亘って熱処理に供した。かくして、生成物の粉末を得た。得られた生成物の粉末を、純水中で5時間に亘って湿式ボールミル処理に供して、ろ過後、再度熱処理を行った。再熱処理の条件は600℃、3時間とした。かくして、負極活物質の粉末を得た。
得られた負極活物質を、先に説明したICP、SEM−EDX及びXRDで分析した。その結果、得られた負極活物質は、式Li2.0Na1.5Ti5.5Nb0.5O14で表される組成を有する斜方晶型Na含有ニオブチタン複合酸化物の粉末であることが分かった。
<負極中間部材の作製>
上で作製した活物質、アセチレンブラック及びポリフッ化ビニリデン(PVdF)を、90質量%:5質量%:5質量%の配合比でN−メチルピロリドン(NMP)に分散させて混合して、混合物を得た。この混合物を、自転公転ミキサーを用いて更に攪拌し、スラリーを調製した。このスラリーを、厚さが15μmであるアルミニウム箔からなる集電体の両面に塗布し、塗膜を乾燥させた。次いで、乾燥させた塗膜をプレスして、集電体と、集電体上に形成され且つ電極密度(集電体含まず)が2.3g/cm3である負極活物質含有層とを含んだ負極中間部材を作製した。
なお、スラリーの塗布の際、集電体の一部にスラリー未塗布部を残した。この部分を、負極タブとした。この負極タブに、負極端子を超音波接合した。
<正極の作製>
以下の手順で、スピネル型マンガン酸リチウムとしてLiMn2O4を合成した。
まず、原料として、炭酸リチウムLi2CO3と、炭酸マンガンMnCO3とを準備した。これらの原料を、混合物のLi:Mnのモル比が1.0:2.0となるように混合した。混合に先立ち、原料を十分に粉砕した。
混合した原料を、大気雰囲気中において、700℃で10時間に亘って熱処理に供した。かくして、生成物の粉末を得た。
得られた生成物を、先に説明したICP、SEM−EDX及びXRDで分析した。その結果、得られた負極活物質は、式LiMn2O4で表される組成を有するスピネル型マンガン酸リチウムの粉末であることが分かった。
上で作製した活物質、アセチレンブラック及びポリフッ化ビニリデン(PVdF)を90質量%:5質量:5質量%の配合比でN−メチルピロリドン(NMP)に分散させて混合して、混合物を得た。この混合物を、自転公転ミキサーを用いて更に攪拌し、スラリーを調製した。このスラリーを、厚さが15μmであるアルミニウム箔からなる集電体の両面に塗布し、塗膜を乾燥させた。次いで、乾燥させた塗膜をプレスして、集電体と、集電体上に形成され且つ電極密度(集電体含まず)が2.9g/cm3である正極活物質含有層とを含んだ正極を作製した。
なお、スラリーの塗布の際、集電体の一部にスラリー未塗布部を残した。この部分を、正極タブとした。この正極タブに、正極端子を超音波接合した。
<電極群の作製>
厚さが25μmであるポリエチレン製多孔質フィルムからなるセパレータを2枚用意した。次いで、先に作製した正極、一枚のセパレータ、先に作製した負極中間部材及びもう一枚のセパレータをこの順序で積層して、積層体を得た。この積層体を、渦巻き状に捲回し、捲回体を得た。次いで、捲回体から巻き芯を抜き取り、捲回体を90℃で加熱プレスに供した。かくして、幅が30mmであり、厚さが3.0mmである偏平状電極群を作製した。
<電極群の外装部材への収容>
得られた電極群を、ラミネートフィルムで包んだ。ラミネートフィルムとしては、厚さが40μmであるアルミニウム箔の両面にポリプロピレン層を形成して構成され、全体の膜厚が0.1mmであるものを用いた。この際、ラミネートフィルムの1つの端部において、ポリプロピレン層の互いに対向する2つの部分の間に負極端子の一部を挟んだ。そして、負極端子の他の一部がラミネートフィルムの外に出るようにした。同様に、ラミネートフィルムの1つの端部において、ポリプロピレン層の互いに対向する2つの部分の間に正極端子の一部を挟んだ。そして、正極端子の他の一部がラミネートフィルムの外に出るようにした。
次に、負極端子の一部を挟み込んだ端部をヒートシールした。同様に、正極端子の一部を挟み込んだ端部をヒートシールした。かくして、電極群を、ラミネートフィルムからなる外装部材内に収容した。
次いで、電極群を、外装部材中で、80℃で24時間真空乾燥に供した。
<液状非水電解質の調製>
非水溶媒として、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)及びエチルメチルカーボネート(EMC)を準備した。これらを、EC:PC:EMCの体積比が1:1:4となるように混合し、混合溶媒を調製した。
この混合溶媒に、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)を1.2Mの濃度で溶解させた。かくして、液状非水電解質を調製した。
<電池ユニットの作製>
乾燥アルゴン環境下で、図10A〜図10Fを参照しながら以下に説明するようにして電池ユニットを作製した。
図10A〜図10Fは、実施例1の非水電解質電池の作製手順の一部を示す概略図である。
まず、電極群1を収納したラミネートフィルムの外装部材2内に、図10Aに示すように、先に調製した液状非水電解質8を注入した。次いで、図10Bに示すように、外装部材2の端部2aをヒートシールした。かくして、外装部材2内に電極群1と液状非水電解質8を完全密閉した。この際、図10Bに示すように、ヒートシール部2aと電極群1が収容されている部分との間に距離を設けた。
かくして、実施例1の電池ユニット10’を作製した。
<エージング処理>
作製した実施例1の電池ユニット10’を、以下の手順で第1のエージング処理、次いで第2のエージング処理にそれぞれ供した。
まず、電池ユニット10’の電圧を、先に示した手順で、2.5Vに調整した。この電池ユニットを、第1のエージング処理に供した。第1のエージング処理は、60℃の温度環境下において、10時間に亘って行った。次いで、図10Bに示す切り取り線2Aに沿って、外装部材2を図10Cに示すように切り開いた。かくして、外装部材2内部のガスを放出した。
次いで、図10Dに示すように、外装部材2の端部2bをヒートシールした。かくして、外装部材2内に電極群1と液状非水電解質8を完全密閉した。
次いで、電池ユニット10’の電圧を、先に示した手順で、2.8Vに調整した。この電池ユニット10’を、第2のエージング処理に供した。第2のエージング処理は、80℃の温度環境下において10時間行った。次いで、図10Dに示す切り取り線2Bに沿って、外装部材2を図10Eに示すように切り開いた。かくして、外装部材2内部のガスを放出した。
次いで、図10Fに示すように、外装部材2の端部2cをヒートシールした。かくして、外装部材2内に電極群1と液状非水電解質8を完全密閉した。
かくして、前述した図2及び図3に示した一例の非水電解質電池10のそれと同様の構造を有し、具体的には幅が35mmであり、厚さが3.2mmであり、高さが65mmである実施例1の非水電解質電池10が得られた。
<試験セルの充放電サイクル試験>
実施例1の非水電解質電池10を、以下の手順で、高温充放電サイクル試験に供した。
試験温度環境は、60℃とした。充電では、電池10を、0.2Cの定電流値で電圧が3.0Vに達するまで充電し、次いで電池を3.0Vの定電圧で充電した。充電は、電流値が1/20Cに達した際に停止した。放電は、0.2Cの定電流値で行った。放電は、電池10の電圧が1.8Vに達した際に停止した。充電と放電との間には、同じ温度環境での1分間の休止を行った。充電、休止、放電及び休止を1サイクルとした。この試験において実施するサイクル数は500サイクルとした。非水電解質電池の500サイクル目の放電容量を、1サイクル目の放電容量により除することで、高温における500サイクル後の容量維持率を評価した。この容量維持率は、電極のサイクル特性の指標となる。
<X線光電子分光(XPS)測定>
上記サイクル試験を行った後、以下の手順でXPS測定を行った。装置としては、PHI社製QuanteraSXMを用いた。励起X線源には単結晶分光Al−Kα(1486.6eV)を用い、光電子検出角度は45°とした。この測定により、負極表面おける289〜292eVに現れるピークP1の強度I1と、283〜285eVに現れるピークP2の強度I2とを測定した。
(実施例2〜22)
実施例2〜22では、第1のエージング処理及び/又は第2のエージング処理の条件を以下の表1に示す条件にそれぞれ変更したこと以外は実施例1と同様の手順で、実施例2〜22の非水電解質電池をそれぞれ作製した。
(実施例23)
実施例23では、負極活物質として、式Li2Na1.75Ti5.75Nb0.25O14で表される組成を有する斜方晶型Na含有ニオブチタン複合酸化物を用いたこと以外は実施例1と同様の手順で、実施例23の非水電解質電池を作製した。
式Li2Na1.75Ti5.75Nb0.25O14で表される組成を有する斜方晶型Na含有ニオブチタン複合酸化物は、以下の手順で合成した。
まず、原料として、酸化チタンTiO2と、炭酸リチウムLi2CO3と、炭酸ナトリウムNa2CO3と、水酸化ニオブ(V)Nb(OH)5とを準備した。これらの原料を、混合物のLi:Na:Ti:Nbのモル比が2.0:1.75:5.75:0.25となるように混合した。混合に先立ち、原料を十分に粉砕した。
混合した原料を、大気雰囲気中において、1000℃で10時間に亘って熱処理に供した。かくして、生成物の粉末を得た。得られた生成物の粉末を、純水中で5時間に亘って湿式ボールミル処理に供して、ろ過後、再度熱処理を行った。再熱処理の条件は600℃、3時間とした。かくして、負極活物質の粉末を得た。
得られた負極活物質を、先に説明したICP、SEM−EDX及びXRDで分析した。その結果、得られた負極活物質は、式Li2.0Na1.75Ti5.75Nb0.25O14で表される組成を有する斜方晶型Na含有ニオブチタン複合酸化物の粉末であることが分かった。
以上のようにして得られた活物質を用いて、以下の手順で負極中間部材を作製した。
上で作製した活物質、アセチレンブラック及びポリフッ化ビニリデン(PVdF)を、90質量%:5質量%:5質量%の配合比でN−メチルピロリドン(NMP)に分散させて混合して、混合物を得た。この混合物を、自転公転ミキサーを用いて更に攪拌し、スラリーを調製した。このスラリーを、厚さが15μmであるアルミニウム箔からなる集電体の両面に塗布し、塗膜を乾燥させた。次いで、乾燥させた塗膜をプレスして、集電体と、集電体上に形成され且つ電極密度(集電体含まず)が2.3g/cm3である負極活物質含有層とを含んだ負極中間部材を作製した。
なお、スラリーの塗布の際、集電体の一部にスラリー未塗布部を残した。この部分を、負極タブとした。この負極タブに、負極端子を超音波接合した。
(実施例24〜44)
実施例24〜44では、第1のエージング処理及び/又は第2のエージング処理の条件を以下の表1又は表2に示す条件にそれぞれ変更したこと以外は実施例23と同様の手順で、実施例24〜44の非水電解質電池をそれぞれ作製した。
(実施例45)
実施例45では、負極活物質として、式Li2Na1.8Ti5.8Nb0.2O14で表される組成を有する斜方晶型Na含有ニオブチタン複合酸化物を用いたこと以外は実施例1と同様の手順で、実施例45の非水電解質電池を作製した。
式Li2Na1.8Ti5.8Nb0.2O14で表される組成を有する斜方晶型Na含有ニオブチタン複合酸化物は、以下の手順で合成した。
式Li2.0Na1.8Ti5.8Nb0.2O14で表される組成を有する斜方晶型Na含有ニオブチタン複合酸化物は、以下の手順で合成した。
まず、原料として、酸化チタンTiO2と、炭酸リチウムLi2CO3と、炭酸ナトリウムNa2CO3と、水酸化ニオブ(V)Nb(OH)5とを準備した。これらの原料を、混合物のLi:Na:Ti:Nbのモル比が2.0:1.8:5.8:0.2となるように混合した。混合に先立ち、原料を十分に粉砕した。
混合した原料を、大気雰囲気中において、1000℃で10時間に亘って熱処理に供した。かくして、生成物の粉末を得た。得られた生成物の粉末を、純水中で5時間に亘って湿式ボールミル処理に供して、ろ過後、再度熱処理を行った。再熱処理の条件は600℃、3時間とした。かくして、負極活物質の粉末を得た。
得られた負極活物質を、先に説明したICP、SEM−EDX及びXRDで分析した。その結果、得られた負極活物質は、式Li2.0Na1.8Ti5.8Nb0.2O14で表される組成を有する斜方晶型Na含有ニオブチタン複合酸化物の粉末であることが分かった。
以上のようにして得られた活物質を用いて、以下の手順で負極中間部材を作製した。
上で作製した活物質、アセチレンブラック及びポリフッ化ビニリデン(PVdF)を90質量%:5質量%:5質量%の配合比でN−メチルピロリドン(NMP)に分散させて混合して、混合物を得た。この混合物を、自転公転ミキサーを用いて更に攪拌し、スラリーを調製した。このスラリーを、厚さが15μmであるアルミニウム箔からなる集電体の両面に塗布し、塗膜を乾燥させた。次いで、乾燥させた塗膜をプレスして、集電体と、集電体上に形成され且つ電極密度(集電体含まず)が2.3g/cm3である負極活物質含有層とを含んだ負極中間部材を作製した。
なお、スラリーの塗布の際、集電体の一部にスラリー未塗布部を残した。この部分を、負極タブとした。この負極タブに、負極端子を超音波接合した。
(実施例46)
実施例46では、負極活物質として、式Li2Na1.4K0.1Ti5.5Nb0.5O14で表される組成を有する斜方晶型Na含有ニオブチタン複合酸化物を用いたこと以外は実施例1と同様の手順で、実施例46の非水電解質電池を作製した。
式Li2Na1.4K0.1Ti5.5Nb0.5O14で表される組成を有する斜方晶型Na含有ニオブチタン複合酸化物は、以下の手順で合成した。
まず、原料として、酸化チタンTiO2と、炭酸リチウムLi2CO3と、炭酸ナトリウムNa2CO3と、炭酸カリウムK2CO3と、水酸化ニオブ(V)Nb(OH)5とを準備した。これらの原料を、混合物のLi:Na:K:Ti:Nbのモル比が2.0:1.4:0.1:5.5:0.5となるように混合した。混合に先立ち、原料を十分に粉砕した。
混合した原料を、大気雰囲気中において、1000℃で10時間に亘って熱処理に供した。かくして、生成物の粉末を得た。得られた生成物の粉末を、純水中で5時間に亘って湿式ボールミル処理に供して、ろ過後、再度熱処理を行った。再熱処理の条件は600℃、3時間とした。かくして、負極活物質の粉末を得た。
得られた負極活物質を、先に説明したICP、SEM−EDX及びXRDで分析した。その結果、得られた負極活物質は、式Li2.0Na1.4K0.1Ti5.5Nb0.5O14で表される組成を有する斜方晶型Na含有ニオブチタン複合酸化物の粉末であることが分かった。
以上のようにして得られた活物質を用いて、以下の手順で負極中間部材を作製した。
上で作製した活物質を90質量%、アセチレンブラックを5質量%及びポリフッ化ビニリデン(PVdF)5質量%をN−メチルピロリドン(NMP)に分散させて混合して、混合物を得た。この混合物を、自転公転ミキサーを用いて更に攪拌し、スラリーを調製した。このスラリーを、厚さが15μmであるアルミニウム箔からなる集電体の両面に塗布し、塗膜を乾燥させた。次いで、乾燥させた塗膜をプレスして、集電体と、集電体上に形成され且つ電極密度(集電体含まず)が2.3g/cm3である負極活物質含有層とを含んだ負極中間部材を作製した。
なお、スラリーの塗布の際、集電体の一部にスラリー未塗布部を残した。この部分を、負極タブとした。この負極タブに、負極端子を超音波接合した。
(実施例47)
実施例47では、負極活物質として、式Li2Na1.6Ti5.5Nb0.4Zr0.1O14で表される組成を有する斜方晶型Na含有ニオブチタン複合酸化物を用いたこと以外は実施例1と同様の手順で、実施例47の非水電解質電池を作製した。
式Li2Na1.6Ti5.5Nb0.4Zr0.1O14で表される組成を有する斜方晶型Na含有ニオブチタン複合酸化物は、以下の手順で合成した。
まず、原料として、酸化チタンTiO2と、炭酸リチウムLi2CO3と、炭酸ナトリウムNa2CO3と、水酸化ニオブ(V)Nb(OH)5と、水酸化ジルコニウムZr(OH)4とを準備した。これらの原料を、混合物のLi:Na:Ti:Nb:Zrのモル比が2.0:1.6:5.5:0.4:0.1となるように混合した。混合に先立ち、原料を十分に粉砕した。
混合した原料を、大気雰囲気中において、1000℃で10時間に亘って熱処理に供した。かくして、生成物の粉末を得た。得られた生成物の粉末を、純水中で5時間に亘って湿式ボールミル処理に供して、ろ過後、再度熱処理を行った。再熱処理の条件は600℃、3時間とした。かくして、負極活物質の粉末を得た。
得られた負極活物質を、先に説明したICP、SEM−EDX及びXRDで分析した。その結果、得られた負極活物質は、式Li2Na1.6Ti5.5Nb0.4Zr0.1O14で表される組成を有する斜方晶型Na含有ニオブチタン複合酸化物の粉末であることが分かった。
以上のようにして得られた活物質を用いて、以下の手順で負極中間部材を作製した。
上で作製した活物質、アセチレンブラック及びポリフッ化ビニリデン(PVdF)を90質量%:5質量%:5質量%の配合比でN−メチルピロリドン(NMP)に分散させて混合して、混合物を得た。この混合物を、自転公転ミキサーを用いて更に攪拌し、スラリーを調製した。このスラリーを、厚さが15μmであるアルミニウム箔からなる集電体の両面に塗布し、塗膜を乾燥させた。次いで、乾燥させた塗膜をプレスして、集電体と、集電体上に形成され且つ電極密度(集電体含まず)が2.3g/cm3である負極活物質含有層とを含んだ負極中間部材を作製した。
なお、スラリーの塗布の際、集電体の一部にスラリー未塗布部を残した。この部分を、負極タブとした。この負極タブに、負極端子を超音波接合した。
(比較例1)
比較例1では、液状非水電解質を変更したこと以外は実施例1と同様の手順により、比較例1の非水電解質電池を作製した。
比較例1で用いた液状非水電解質は、以下の手順で調製した。まず、非水溶媒として、プロピレンカーボネート(PC)及びエチルメチルカーボネート(EMC)を準備した。これらを、PC:EMCの体積比が1:2となるように混合し、混合溶媒を調製した。この混合溶媒に、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)を1.2Mの濃度で溶解させた。かくして、液状非水電解質を調製した。
(比較例2)
比較例2では、電池ユニットの第1のエージング条件及び第2のエージング条件を以下の表2に示すように変更したこと以外は実施例1と同様の手順により、比較例2の非水電解質電池を作製した。
(比較例3〜6)
比較例3〜6では、電池ユニットのエージングを以下の表2に示す条件で1回のみ行ったこと以外は実施例1と同様の手順により、比較例3〜6の非水電解質電池をそれぞれ作製した。
実施例2〜47及び比較例1〜6の各非水電解質電池を、実施例1の非水電解質電池と同様に試験に供した。それらの結果を以下の表3及び4に示す。
(結果)
図11に、実施例1の非水電解質電池が具備する負極の表面のXPSスペクトルの一部(実線)、及び比較例1の電池が具備する負極の表面のXPSスペクトルの一部(点線)を示す。
まず、図11から明らかなように、実施例1の非水電解質電池が具備する負極表面のスペクトルは、291eVの結合エネルギーにピークトップを有するピークP1を有する。このピークP1の強度I1は、比較例1の非水電解質電池が具備する負極表面のスペクトルにおいて同様の結合エネルギーに現れたピークP’1の強度I’1よりも小さい。また、実施例1の非水電解質電池が具備する負極表面のスペクトルは、284eVの結合エネルギーにピークトップを有するピークP2を有する。このピークP2の強度I2は、比較例1の非水電解質電池が具備する負極表面のスペクトルにおいて同様の結合エネルギーに現れたピークP’2の強度I’2よりも大きい。そして、比較例1の強度比I’2/I’1は0.95であったのに対し、実施例1の強度比I2/I1は1.67であった。
表3及び4に示すように、強度比I2/I1が1以上である実施例1〜47の各非水電解質電池は、強度比I’2/I’1が1未満である比較例1〜8の各非水電解質電池よりも高いサイクル容量維持率を示した。つまり、強度比I2/I1が1以上である実施例1〜47の各非水電解質電池は、比較例1〜8の各非水電解質電池よりも優れた寿命特性を示すことができた。
比較例1は、実施例1と同様の第1及び第2のエージングを行ったが、十分な被膜が負極活物質含有層上に形成しなかった。これは、電解液の組成に原因があったと考えられる。
比較例2は、実施例1で行った第1のエージングと第2のエージングとを順序を変更して行った例である。比較例2の結果から、高いSOCに調節した電池ユニットを高い温度でエージングに供し、次いで先のエージングより低いSOCに調節した電池ユニットを先のエージングよりも低い温度でエージングに供した場合には、強度比I2/I1が1未満になり、十分な被膜が負極活物質含有層上に形成しなかったことがわかる。
比較例3〜6は、エージングを1回のみ行った例である。これらの結果から、条件を変更しても、エージングを1回のみ行った場合には、強度比I2/I1が1未満になり、十分な被膜が負極活物質含有層上に形成しなかったことがわかる。
例えば、各実施例の非水電解質電池に含まれる負極を用いて新たに作製した電池によっても優れた寿命特性を得ることができる。
(実施例48)
実施例48では、負極活物質として、式Li2Na0.2Ti4.2Nb1.8O14で表される組成を有する斜方晶型Na含有ニオブチタン複合酸化物を用いたこと以外は実施例1と同様の手順で、実施例48の非水電解質電池を作製した。
式Li2Na0.2Ti4.2Nb1.8O14で表される組成を有する斜方晶型Na含有ニオブチタン複合酸化物は、以下の手順で合成した。
まず、原料として、酸化チタンTiO2と、炭酸リチウムLi2CO3と、炭酸ナトリウムNa2CO3と、水酸化ニオブ(V)Nb(OH)5とを準備した。これらの原料を、混合物のLi:Na:Ti:Nbのモル比が2.0:0.2:4.2:1.8となるように混合した。混合に先立ち、原料を十分に粉砕した。
混合した原料を、大気雰囲気中において、1000℃で10時間に亘って熱処理に供した。かくして、生成物の粉末を得た。得られた生成物の粉末を、純水中で5時間に亘って湿式ボールミル処理に供して、ろ過後、再度熱処理を行った。再熱処理の条件は600℃、3時間とした。かくして、負極活物質の粉末を得た。
得られた負極活物質を、先に説明したICP、SEM−EDX及びXRDで分析した。その結果、得られた負極活物質は、式Li2Na0.2Ti4.2Nb1.8O14で表される組成を有する斜方晶型Na含有ニオブチタン複合酸化物の粉末であることが分かった。
以上のようにして得られた活物質を用いて、以下の手順で負極中間部材を作製した。
上で作製した活物質、アセチレンブラック及びポリフッ化ビニリデン(PVdF)を90質量%:5質量%:5質量%の配合比でN−メチルピロリドン(NMP)に分散させて混合して、混合物を得た。この混合物を、自転公転ミキサーを用いて更に攪拌し、スラリーを調製した。このスラリーを、厚さが15μmであるアルミニウム箔からなる集電体の両面に塗布し、塗膜を乾燥させた。次いで、乾燥させた塗膜をプレスして、集電体と、集電体上に形成され且つ電極密度(集電体含まず)が2.3g/cm3である負極活物質含有層とを含んだ負極中間部材を作製した。
なお、スラリーの塗布の際、集電体の一部にスラリー未塗布部を残した。この部分を、負極タブとした。この負極タブに、負極端子を超音波接合した。
(実施例49)
実施例49では、負極活物質として、式Li2Na1.3Mg0.1Ti5.5Nb0.5O14で表される組成を有する斜方晶型Na含有ニオブチタン複合酸化物を用いたこと以外は実施例1と同様の手順で、実施例49の非水電解質電池を作製した。
式Li2Na1.3Mg0.1Ti5.5Nb0.5O14で表される組成を有する斜方晶型Na含有ニオブチタン複合酸化物は、以下の手順で合成した。
まず、原料として、酸化チタンTiO2と、炭酸リチウムLi2CO3と、炭酸ナトリウムNa2CO3と、水酸化ニオブ(V)Nb(OH)5と、酸化マグネシウムMgOとを準備した。これらの原料を、混合物のLi:Na:Ti:Nb:Mgのモル比が2.0:1.3:5.5:0.5:0.1となるように混合した。混合に先立ち、原料を十分に粉砕した。
混合した原料を、大気雰囲気中において、1000℃で10時間に亘って熱処理に供した。かくして、生成物の粉末を得た。得られた生成物の粉末を、純水中で5時間に亘って湿式ボールミル処理に供して、ろ過後、再度熱処理を行った。再熱処理の条件は600℃、3時間とした。かくして、負極活物質の粉末を得た。
得られた負極活物質を、先に説明したICP、SEM−EDX及びXRDで分析した。その結果、得られた負極活物質は、式Li2Na1.3Mg0.1Ti5.5Nb0.5O14で表される組成を有する斜方晶型Na含有ニオブチタン複合酸化物の粉末であることが分かった。
以上のようにして得られた活物質を用いて、以下の手順で負極中間部材を作製した。
上で作製した活物質、アセチレンブラック及びポリフッ化ビニリデン(PVdF)を90質量%:5質量%:5質量%の配合比でN−メチルピロリドン(NMP)に分散させて混合して、混合物を得た。この混合物を、自転公転ミキサーを用いて更に攪拌し、スラリーを調製した。このスラリーを、厚さが15μmであるアルミニウム箔からなる集電体の両面に塗布し、塗膜を乾燥させた。次いで、乾燥させた塗膜をプレスして、集電体と、集電体上に形成され且つ電極密度(集電体含まず)が2.3g/cm3である負極活物質含有層とを含んだ負極中間部材を作製した。
なお、スラリーの塗布の際、集電体の一部にスラリー未塗布部を残した。この部分を、負極タブとした。この負極タブに、負極端子を超音波接合した。
(実施例50)
実施例50では、負極活物質として、式Li2Na1.3Ca0.1Ti5.5Nb0.5O14で表される組成を有する斜方晶型Na含有ニオブチタン複合酸化物を用いたこと以外は実施例1と同様の手順で、実施例50の非水電解質電池を作製した。
式Li2Na1.3Ca0.1Ti5.5Nb0.5O14で表される組成を有する斜方晶型Na含有ニオブチタン複合酸化物は、以下の手順で合成した。
まず、原料として、酸化チタンTiO2と、炭酸リチウムLi2CO3と、炭酸ナトリウムNa2CO3と、水酸化ニオブ(V)Nb(OH)5と、酸化カルシウムCaOとを準備した。これらの原料を、混合物のLi:Na:Ti:Nb:Caのモル比が2.0:1.3:5.5:0.5:0.1となるように混合した。混合に先立ち、原料を十分に粉砕した。
混合した原料を、大気雰囲気中において、1000℃で10時間に亘って熱処理に供した。かくして、生成物の粉末を得た。得られた生成物の粉末を、純水中で5時間に亘って湿式ボールミル処理に供して、ろ過後、再度熱処理を行った。再熱処理の条件は600℃、3時間とした。かくして、負極活物質の粉末を得た。
得られた負極活物質を、先に説明したICP、SEM−EDX及びXRDで分析した。その結果、得られた負極活物質は、式Li2Na1.3Ca0.1Ti5.5Nb0.5O14で表される組成を有する斜方晶型Na含有ニオブチタン複合酸化物の粉末であることが分かった。
以上のようにして得られた活物質を用いて、以下の手順で負極中間部材を作製した。
上で作製した活物質、アセチレンブラック及びポリフッ化ビニリデン(PVdF)を90質量%:5質量%:5質量%の配合比でN−メチルピロリドン(NMP)に分散させて混合して、混合物を得た。この混合物を、自転公転ミキサーを用いて更に攪拌し、スラリーを調製した。このスラリーを、厚さが15μmであるアルミニウム箔からなる集電体の両面に塗布し、塗膜を乾燥させた。次いで、乾燥させた塗膜をプレスして、集電体と、集電体上に形成され且つ電極密度(集電体含まず)が2.3g/cm3である負極活物質含有層とを含んだ負極中間部材を作製した。
なお、スラリーの塗布の際、集電体の一部にスラリー未塗布部を残した。この部分を、負極タブとした。この負極タブに、負極端子を超音波接合した。
(実施例51)
実施例51では、負極活物質として、式Li2Na1.3Sr0.1Ti5.5Nb0.5O14で表される組成を有する斜方晶型Na含有ニオブチタン複合酸化物を用いたこと以外は実施例1と同様の手順で、実施例51の非水電解質電池を作製した。
式Li2Na1.3Sr0.1Ti5.5Nb0.5O14で表される組成を有する斜方晶型Na含有ニオブチタン複合酸化物は、以下の手順で合成した。
まず、原料として、酸化チタンTiO2と、炭酸リチウムLi2CO3と、炭酸ナトリウムNa2CO3と、水酸化ニオブ(V)Nb(OH)5と、酸化ストロンチウムSrOとを準備した。これらの原料を、混合物のLi:Na:Ti:Nb:Srのモル比が2.0:1.3:5.5:0.5:0.1となるように混合した。混合に先立ち、原料を十分に粉砕した。
混合した原料を、大気雰囲気中において、1000℃で10時間に亘って熱処理に供した。かくして、生成物の粉末を得た。得られた生成物の粉末を、純水中で5時間に亘って湿式ボールミル処理に供して、ろ過後、再度熱処理を行った。再熱処理の条件は600℃、3時間とした。かくして、負極活物質の粉末を得た。
得られた負極活物質を、先に説明したICP、SEM−EDX及びXRDで分析した。その結果、得られた負極活物質は、式Li2Na1.3Sr0.1Ti5.5Nb0.5O14で表される組成を有する斜方晶型Na含有ニオブチタン複合酸化物の粉末であることが分かった。
以上のようにして得られた活物質を用いて、以下の手順で負極中間部材を作製した。
上で作製した活物質、アセチレンブラック及びポリフッ化ビニリデン(PVdF)を90質量%:5質量%:5質量%の配合比でN−メチルピロリドン(NMP)に分散させて混合して、混合物を得た。この混合物を、自転公転ミキサーを用いて更に攪拌し、スラリーを調製した。このスラリーを、厚さが15μmであるアルミニウム箔からなる集電体の両面に塗布し、塗膜を乾燥させた。次いで、乾燥させた塗膜をプレスして、集電体と、集電体上に形成され且つ電極密度(集電体含まず)が2.3g/cm3である負極活物質含有層とを含んだ負極中間部材を作製した。
なお、スラリーの塗布の際、集電体の一部にスラリー未塗布部を残した。この部分を、負極タブとした。この負極タブに、負極端子を超音波接合した。
(実施例52)
実施例52では、負極活物質として、式Li2Na1.7Ti5.5Nb0.4Al0.1O14で表される組成を有する斜方晶型Na含有ニオブチタン複合酸化物を用いたこと以外は実施例1と同様の手順で、実施例52の非水電解質電池を作製した。
式Li2Na1.7Ti5.5Nb0.4Al0.1O14で表される組成を有する斜方晶型Na含有ニオブチタン複合酸化物は、以下の手順で合成した。
まず、原料として、酸化チタンTiO2と、炭酸リチウムLi2CO3と、炭酸ナトリウムNa2CO3と、水酸化ニオブ(V)Nb(OH)5と、水酸化アルミニウムAl(OH)3とを準備した。これらの原料を、混合物のLi:Na:Ti:Nb:Alのモル比が2.0:1.7:5.5:0.4:0.1となるように混合した。混合に先立ち、原料を十分に粉砕した。
混合した原料を、大気雰囲気中において、1000℃で10時間に亘って熱処理に供した。かくして、生成物の粉末を得た。得られた生成物の粉末を、純水中で5時間に亘って湿式ボールミル処理に供して、ろ過後、再度熱処理を行った。再熱処理の条件は600℃、3時間とした。かくして、負極活物質の粉末を得た。
得られた負極活物質を、先に説明したICP、SEM−EDX及びXRDで分析した。その結果、得られた負極活物質は、式Li2Na1.7Ti5.5Nb0.4Al0.1O14で表される組成を有する斜方晶型Na含有ニオブチタン複合酸化物の粉末であることが分かった。
以上のようにして得られた活物質を用いて、以下の手順で負極中間部材を作製した。
上で作製した活物質、アセチレンブラック及びポリフッ化ビニリデン(PVdF)を90質量%:5質量%:5質量%の配合比でN−メチルピロリドン(NMP)に分散させて混合して、混合物を得た。この混合物を、自転公転ミキサーを用いて更に攪拌し、スラリーを調製した。このスラリーを、厚さが15μmであるアルミニウム箔からなる集電体の両面に塗布し、塗膜を乾燥させた。次いで、乾燥させた塗膜をプレスして、集電体と、集電体上に形成され且つ電極密度(集電体含まず)が2.3g/cm3である負極活物質含有層とを含んだ負極中間部材を作製した。
なお、スラリーの塗布の際、集電体の一部にスラリー未塗布部を残した。この部分を、負極タブとした。この負極タブに、負極端子を超音波接合した。
(実施例53)
実施例53では、負極活物質として、式Li2Na1.4Ti5.5Nb0.4Mo0.1O14で表される組成を有する斜方晶型Na含有ニオブチタン複合酸化物を用いたこと以外は実施例1と同様の手順で、実施例53の非水電解質電池を作製した。
式Li2Na1.4Ti5.5Nb0.4Mo0.1O14で表される組成を有する斜方晶型Na含有ニオブチタン複合酸化物は、以下の手順で合成した。
まず、原料として、酸化チタンTiO2と、炭酸リチウムLi2CO3と、炭酸ナトリウムNa2CO3と、水酸化ニオブ(V)Nb(OH)5と、酸化モリブデンMoO2とを準備した。これらの原料を、混合物のLi:Na:Ti:Nb:Moのモル比が2.0:1.4:5.5:0.4:0.1となるように混合した。混合に先立ち、原料を十分に粉砕した。
混合した原料を、大気雰囲気中において、1000℃で10時間に亘って熱処理に供した。かくして、生成物の粉末を得た。得られた生成物の粉末を、純水中で5時間に亘って湿式ボールミル処理に供して、ろ過後、再度熱処理を行った。再熱処理の条件は600℃、3時間とした。かくして、負極活物質の粉末を得た。
得られた負極活物質を、先に説明したICP、SEM−EDX及びXRDで分析した。その結果、得られた負極活物質は、式Li2Na1.4Ti5.5Nb0.4Mo0.1O14で表される組成を有する斜方晶型Na含有ニオブチタン複合酸化物の粉末であることが分かった。
以上のようにして得られた活物質を用いて、以下の手順で負極中間部材を作製した。
上で作製した活物質、アセチレンブラック及びポリフッ化ビニリデン(PVdF)を90質量%:5質量%:5質量%の配合比でN−メチルピロリドン(NMP)に分散させて混合して、混合物を得た。この混合物を、自転公転ミキサーを用いて更に攪拌し、スラリーを調製した。このスラリーを、厚さが15μmであるアルミニウム箔からなる集電体の両面に塗布し、塗膜を乾燥させた。次いで、乾燥させた塗膜をプレスして、集電体と、集電体上に形成され且つ電極密度(集電体含まず)が2.3g/cm3である負極活物質含有層とを含んだ負極中間部材を作製した。
なお、スラリーの塗布の際、集電体の一部にスラリー未塗布部を残した。この部分を、負極タブとした。この負極タブに、負極端子を超音波接合した。
(実施例54)
実施例54では、用いた負極活物質を変更したこと以外は実施例1と同様の手順で、実施例54の非水電解質電池を作製した。
実施例54では、負極活物質として、実施例1で用いたのと同様の斜方晶型Na含有ニオブチタン複合酸化物の粉末と、式Nb2TiO7で表される組成を有するニオブチタン複合酸化物の粉末との混合粉末を用いた。斜方晶型Na含有ニオブチタン複合酸化物の粉末とニオブチタン複合酸化物の粉末との重量比は、70:30とした。
式Nb2TiO7で表される組成を有するニオブチタン複合酸化物は、以下の手順で合成した。
まず、原料として、酸化チタンTiO2と、酸化ニオブNb2O5とを準備した。これらの原料を、混合物のNb:Tiのモル比が2.0:1.0となるように混合した。混合に先立ち、原料を十分に粉砕した。
混合した原料を、大気雰囲気中において、1350℃で30時間に亘って熱処理に供した。かくして、生成物の粉末を得た。
得られた生成物の粉末を、先に説明したICP、SEM−EDX及びXRDで分析した。その結果、得られた生成物の粉末は、式Nb2TiO7で表される組成を有するニオブチタン複合酸化物の粉末であることが分かった。
以上のようにして準備した混合粉末を用いて、以下の手順で負極中間部材を作製した。
混合粉末、アセチレンブラック及びポリフッ化ビニリデン(PVdF)を90質量%:5質量%:5質量%の配合比でN−メチルピロリドン(NMP)に分散させて混合して、混合物を得た。この混合物を、自転公転ミキサーを用いて更に攪拌し、スラリーを調製した。このスラリーを、厚さが15μmであるアルミニウム箔からなる集電体の両面に塗布し、塗膜を乾燥させた。次いで、乾燥させた塗膜をプレスして、集電体と、集電体上に形成され且つ電極密度(集電体含まず)が2.3g/cm3である負極活物質含有層とを含んだ負極中間部材を作製した。
なお、スラリーの塗布の際、集電体の一部にスラリー未塗布部を残した。この部分を、負極タブとした。この負極タブに、負極端子を超音波接合した。
(実施例55)
実施例55では、用いた負極活物質を変更したこと以外は実施例1と同様の手順で、実施例55の非水電解質電池を作製した。
実施例55では、負極活物質として、実施例1で用いたのと同様の斜方晶型Na含有ニオブチタン複合酸化物の粉末と、式Li4Ti5O12で表される組成を有するチタン酸リチウムの粉末との混合物を用いた。斜方晶型Na含有ニオブチタン複合酸化物の粉末とチタン酸リチウムの粉末との重量比は、70:30とした。
式Li4Ti5O12で表される組成を有するチタン酸リチウムは、以下の手順で合成した。
まず、原料として、酸化チタンTiO2と、炭酸リチウムLi2CO3とを準備した。これらの原料を、混合物のLi:Tiのモル比が4.0:5.0となるように混合した。混合に先立ち、原料を十分に粉砕した。
混合した原料を、大気雰囲気中において、800℃で12時間に亘って熱処理に供した。かくして、生成物の粉末を得た。
得られた生成物の粉末を、先に説明したICP、SEM−EDX及びXRDで分析した。その結果、得られた生成物の粉末は、式Li4Ti5O12で表される組成を有するチタン酸リチウムの粉末であることが分かった。
以上のようにして準備した混合粉末を用いて、以下の手順で負極中間部材を作製した。
混合粉末、アセチレンブラック及びポリフッ化ビニリデン(PVdF)を90質量%:5質量%:5質量%の配合比でN−メチルピロリドン(NMP)に分散させて混合して、混合物を得た。この混合物を、自転公転ミキサーを用いて更に攪拌し、スラリーを調製した。このスラリーを、厚さが15μmであるアルミニウム箔からなる集電体の両面に塗布し、塗膜を乾燥させた。次いで、乾燥させた塗膜をプレスして、集電体と、集電体上に形成され且つ電極密度(集電体含まず)が2.3g/cm3である負極活物質含有層とを含んだ負極中間部材を作製した。
なお、スラリーの塗布の際、集電体の一部にスラリー未塗布部を残した。この部分を、負極タブとした。この負極タブに、負極端子を超音波接合した。
以下の表5に、実施例48〜55の各非水電解質電池の、負極活物質の組成及びエージング条件を示す。なお、実施例48〜55の各々のエージング条件は、実施例1のそれと同様とした。また、実施例48〜55の各非水電解質電池を、実施例1の非水電解質電池と同様に試験に供した。それらの結果を以下の表6に示す。
表3〜5に示した結果から、強度比I2/I1が1以上である実施例48〜55の各非水電解質電池は、実施例1〜47の電池と同様に、強度比I’2/I’1が1未満である比較例1〜8の各非水電解質電池よりも高いサイクル容量維持率を示したことが分かる。つまり、強度比I2/I1が1以上である実施例48〜55の各非水電解質電池は、比較例1〜8の各非水電解質電池よりも優れた寿命特性を示すことができた。
また、表1〜3、5及び6から、斜方晶型の結晶構造を有するNa含有ニオブチタン複合酸化物の組成が変わっても、実施例1〜53の各非水電解質電池は、優れた寿命特性を示すことができたことが分かる。そして、表1、3、5及び6から、負極活物質含有層が斜方晶型の結晶構造を有するNa含有ニオブチタン複合酸化物以外の負極活物質を含んだ実施例54及び55の各非水電解質電池は、実施例1〜53の非水電解質電池と同様に優れた寿命特性を示すことができたことが分かる。
以上に説明した少なくとも1つの実施形態及び実施例によると、非水電解質電池が提供される。この非水電解質電池は、負極と、正極と、非水電解質とを具備する。負極は、負極活物質含有層を具備する。負極活物質含有層は、斜方晶型の結晶構造を有するNa含有ニオブチタン複合酸化物を含む。負極活物質含有層は、X線光電子分光法による比I2/I1がI2/I1≧1を満たす。この非水電解質電池は、負極活物質含有層が含むNa含有ニオブチタン複合酸化物と非水電解質との副反応を抑制することができる。その結果、この非水電解質電池は、優れた寿命特性を示すことができる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。