JP2015030319A - 車両の制動制御装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】マスタシリンダとホイールシリンダとの差圧を、精度良く制御することができる車両の制動制御装置を提供する。
【解決手段】ECUは、実差圧Xを要求差圧Mまで減少させる場合(ステップS31:YES)、指示電流値Ipを、減圧開始時差圧XDが大きいほど急勾配で減少させる(ステップS47)。ただし、要求差圧Mに応じた指示電流値Ipを基準指示電流値とし、基準指示電流値からの指示電流値Ipの減少量が制限量に達すると、ECUは、指示電流値Ipを保持する(ステップS37〜S47)。
【選択図】図14

Description

本発明は、マスタシリンダとホイールシリンダとの差圧を調整すべく駆動する差圧弁を制御する車両の制動制御装置に関する。
運転者によるブレーキ操作に応じて動作するマスタシリンダと車輪に対応するホイールシリンダとの間には、同ホイールシリンダ内の液圧を調整することにより、車輪に対する制動トルクを制御するブレーキアクチュエータが設けられている。こうしたアクチュエータは、マスタシリンダとホイールシリンダとの差圧を調整すべく駆動する電磁式のリニア弁である差圧弁と、同差圧弁よりもホイールシリンダ側の通路に接続されるポンプとを備えている。そして、ポンプからブレーキ液が吐出されている状態で差圧弁に流れる駆動電流値が大きくなると、差圧弁の開度が低くなり、差圧、すなわちホイールシリンダ内の液圧が増大するようになっている。一方、ポンプからブレーキ液が吐出されている状態で駆動電流値が小さくなると、差圧弁の開度が高くなり、差圧、すなわちホイールシリンダ内の液圧が減少するようになっている。
ところで、図16に示すように、差圧弁は、駆動電流値を上昇させる場合と駆動電流値を降下させる場合とで、マスタシリンダとホイールシリンダとの間に実際に生じる差圧(以下、「実差圧」ともいう。)が異なるヒステリシスを有している。すなわち、実差圧を要求差圧PRまで増大させるときに、指示電流値が、要求差圧PRに応じた所定電流値A1に設定されたとする。すると、この場合、差圧弁に流れる駆動電流値が上昇して所定電流値A1に達すると、実差圧が要求差圧PR近傍まで増大される。しかしながら、実差圧を要求差圧PRまで減少させる場合、駆動電流値が降下して所定電流値A1に達しても、実差圧が十分に減少されず、実差圧と要求差圧PRとの間に乖離が生じてしまう。なお、駆動電流値Idが上昇して所定電流値A1に達したときの実差圧(この場合、要求差圧PR)と、駆動電流値Idが降下して所定電流値A1に達したときの実差圧との差分を、「ヒステリシス量HY」ということもある。
この点、特許文献1に記載の制動制御装置では、差圧が要求差圧よりも大きい状態から差圧を同要求差圧まで減少させる場合、指示電流値を上記ヒステリシスに応じた所定の値で補正し、補正後の指示電流値に基づいて差圧弁を制御するようにしている。
特開2000−127929号公報
ところで、近年においては、ブレーキアクチュエータに対して自動ブレーキや自動速度調整などのような多様な要求がある。そして、こうした要求に応えるためには、車輪に対する制動トルク、すなわちマスタシリンダとホイールシリンダとの差圧をより高精度に制御することが望まれている。
本発明の目的は、マスタシリンダとホイールシリンダとの差圧を、精度良く制御することができる車両の制動制御装置を提供することにある。
上記課題を解決するための車両の制動制御装置は、マスタシリンダと車輪に対応するホイールシリンダとの間の経路に設けられる差圧弁に対する指示電流値を、同差圧弁による差圧の要求値である要求差圧に応じた値に設定する指示値設定部と、差圧弁による差圧を増大させる増圧状態から差圧弁による差圧を減少させる減圧状態に移行された時点の差圧を減圧開始時差圧として取得する減圧開始時差圧取得部と、を備えている。そして、同減圧開始時差圧取得部によって取得された減圧開始時差圧と、「同減圧開始時差圧」から「同減圧開始時差圧に応じた所定差圧」を減じた差である境界差圧との間の領域を、減圧時差圧領域としたとする。この場合、指示値設定部は、減圧状態であって、且つ要求差圧が減圧時差圧領域内に含まれるときには、要求差圧の減少量に対する指示電流値の減少量である指示電流値の減少勾配を、減圧開始時差圧が小さいほど緩やかな勾配にする。
差圧弁に流す駆動電流値を上昇させることにより差圧が第1の差圧である状態で、要求差圧が第1の差圧よりも小さい第2の差圧に設定されたとする。この場合、指示電流値は、第1の差圧に応じた値から減少される。すると、差圧を要求差圧(すなわち、第2の差圧)まで減少させるため、指示電流値の変更に伴って駆動電流値が降下される。これにより、差圧弁による差圧が小さくされる。なお、ここでいう「駆動電流値」とは、差圧弁に実際に流れる電流値、又は実際に流れる電流値に相当する値である。
このように増圧状態から減圧状態に移行された場合、上記構成では、増圧状態から減圧状態への移行が検知された時点、すなわち差圧の減少が開始される時点の差圧が減圧開始時差圧として取得される。そして、減圧状態であること、及び要求差圧(すなわち、第2の差圧)が上記減圧時差圧領域内に含まれることの双方が成立する場合、要求差圧の減少量に対する指示電流値の減少量である指示電流値の減少勾配が、減圧開始時差圧が小さいほど緩やかな勾配とされ、同減少勾配に従って指示電流値が減少される。
ここで、要求差圧が同等である場合、第1の差圧に応じた指示電流値からの駆動電流値の低下が開始される初期段階では、減圧開始時差圧が大きいときほど、駆動電流値の降下に対する差圧の減少率が低くなりやすい。すなわち、上記初期段階では、駆動電流値を指示電流値まで上昇させたときにおける差圧と、駆動電流値を指示電流値まで降下させたときにおける差圧との差分であるヒステリシス量の増大率は、減圧開始時差圧が大きいほど高くなりやすい。そして、駆動電流値の降下開始からしばらくすると、上記差圧の減少率が次第に高くなり、上記ヒステリシス量の増加勾配が次第に緩やかになる。その後、駆動電流値がさらに小さくなると、駆動電流値の低下に対する差圧の減少率が急激に高くなる、すなわち上記ヒステリシス量が小さくなる。
なお、ヒステリシス量の増大率が減圧開始時差圧の大きさによって変わる上記初期段階が上記減圧時差圧領域に相当する。そのため、減圧開始時差圧が減圧時差圧領域の上限値に相当し、上記境界差圧が減圧時差圧領域の下限値に相当する。
そこで、減圧状態では、上記のように減圧開始時差圧が大きいほど指示電流値を急勾配で減少させることにより、減圧開始時差圧が大きく、駆動電流値の降下に対する差圧の減少率が低い場合であっても、駆動電流値が小さくなりやすいため、差圧を十分に減少させることができる。その結果、差圧を要求差圧まで減少させることができる。その一方で、減圧開始時差圧が小さく、駆動電流値の降下に対する差圧の減少率が比較的高い場合、指示電流値は、減圧開始時差圧が大きい場合よりも緩やかな勾配で減少される。その結果、駆動電流値が小さくなり過ぎることが抑制され、差圧が要求差圧を大幅に下回る事象の発生を抑制することができる。
ただし、上述したように、要求差圧(すなわち、第2の差圧)が減圧時差圧領域の下限値である上記境界差圧よりも小さい場合、指示電流値の減少に伴う駆動電流値の降下開始からしばらくすると、駆動電流値の降下に対する差圧の減少率が次第に高くなる。すなわち、差圧弁のヒステリシスの特性上、要求差圧の減少に対する指示電流値の減少量が大きい状態から小さい状態に移行する。そして、このように差圧の減少率が高くなっても、減圧開始時差圧に応じた上記指示電流値の減少勾配で指示電流値を減少させたとすると、指示電流値が低くなり過ぎ、差圧が要求差圧(すなわち、第2の差圧)を大幅に下回ってしまうことがある。そこで、上記構成では、減圧状態では、要求差圧(すなわち、第2の差圧)が減圧時差圧領域内に含まれるときに限って、減圧開始時差圧に応じた上記指示電流値の減少勾配で指示電流値を減少させるようにした。その結果、差圧が要求差圧(すなわち、第2の差圧)を大幅に下回る事象の発生を抑制することができる。
したがって、マスタシリンダとホイールシリンダとの差圧を、精度良く制御することができるようになる。
また、要求差圧に応じた指示電流値を基準指示電流値とした場合、上記車両の制動制御装置は、減圧状態であるときに、指示電流値を補正するための補正量を設定する減圧時補正量設定部を備えてもよい。そして、指示値設定部は、減圧状態であるときには、基準指示電流値から減圧時補正量設定部によって設定された補正量を減じた差に基づいて指示電流値を設定することが好ましい。この場合、減圧時補正量設定部は、減圧状態であって、且つ要求差圧が減圧時差圧領域内に含まれるときには、要求差圧の減少量に対する補正量の増大量である補正量の増大勾配を減圧開始時差圧が小さいほど緩やかな勾配にし、同増大勾配に従って補正量を増大させることが好ましい。また、減圧時補正量設定部は、減圧状態であって、且つ要求差圧が減圧時差圧領域の下限値よりも小さい場合、差圧弁による差圧が減圧時差圧領域内で減少しているときには、上記補正量の増大勾配を減圧開始時差圧が小さいほど緩やかな勾配にし、同増大勾配に従って補正量を増大させ、差圧弁による差圧が減圧時差圧領域を超えて減少しているときには、補正量を制限値と等しくすることが好ましい。
上記構成によれば、減圧状態であって、且つ要求差圧が減圧時差圧領域内に含まれるときでは、補正量の増大勾配が、減圧開始時差圧が小さいほど緩やかな勾配にされ、同増大勾配に従って補正量が増大される。そして、要求差圧(すなわち、第2の差圧)が減圧時差圧領域内に含まれるときには、同要求差圧に応じた指示電流値である基準指示電流値から補正量を減じて指示電流値を設定することにより、指示電流値を、減圧開始時差圧に応じた上記指示電流値の減少勾配に従って減少させる構成を実現させることができる。
また、要求差圧(すなわち、第2の差圧)が減圧時差圧領域の下限値よりも小さいこともある。この場合、減圧時差圧領域内で差圧弁による差圧が減少している状態では、補正量の増大勾配が、減圧開始時差圧が小さいほど緩やかな勾配にされ、同増大勾配に従って補正量が増大される。そして、差圧弁による差圧が減少し、同差圧が減圧時差圧領域の下限値未満になると、補正量は制限値と等しくされる。このように補正量が大きくなりすぎることを抑制することにより、指示電流値が低くなりすぎることが抑制される。その結果、差圧弁に流れる駆動電流値が低くなりすぎ、差圧弁による差圧が要求差圧を大幅に下回る事象の発生を抑制することができる。したがって、差圧が要求差圧(すなわち、第2の差圧)を大幅に下回る事象の発生を抑制することができるようになる。
また、上記車両の制動制御装置は、駆動電流値を上昇させるときにおける同駆動電流値と差圧との関係を示す特性を記憶する記憶部を備えるようにしてもよい。この場合、指示値設定部は、記憶部に記憶されている特性に基づき、上記基準指示電流値を、要求差圧が大きいほど大きくすることが好ましい。この構成によれば、要求差圧を変更した場合、上記特性に基づき、基準指示電流値を、変更後の要求差圧に応じた指示電流値に設定することができる。そして、減圧開始時差圧に応じた上記指示電流値の減少勾配に従って指示電流値をこうした基準指示電流値から減少させることにより、差圧を適切に制御することができるようになる。
なお、差圧が小さい場合、駆動電流値の降下に対する差圧の減少率が高いため、駆動電流値の降下に対するヒステリシス量の減少率が高くなる。そこで、差圧弁による差圧が規定差圧以上であるときには、駆動電流値の降下に対する差圧の減少率が低いため、上記制限値を上限値とし、差圧弁による差圧が規定差圧未満であるときには、駆動電流値の降下に対する差圧の減少率が高いため、差圧が小さいほど上記制限値を小さくすることが好ましい。この構成によれば、制限値を、そのときの差圧弁による差圧に応じた適切な値に設定することができ、指示電流値が低くなり過ぎることを抑制することができる。その結果、差圧が要求差圧を大幅に下回る事象の発生を抑制することができるようになる。
また、上記車両の制動制御装置において、指示値設定部は、差圧領域に応じて指示電流値の減少勾配を設定するようにしてもよい。この場合、減圧開始時差圧が第1の差圧領域に含まれる場合の指示電流値の減少勾配は、同第1の差圧領域よりも高圧側となる第2の差圧領域に減圧開始時差圧が含まれる場合の指示電流値の減少勾配よりも緩やかであることが好ましい。この構成によれば、減圧開始時差圧毎の勾配を用意する場合と比較して、制動制御装置の制御負荷の増大を抑制することができる。
また、差圧を減少させる場合、ヒステリシス量の変化態様は、差圧弁が設けられている経路内におけるブレーキ液の流量によっても変化しうる。そこで、指示値設定部は、指示電流値の減少勾配を、上記経路内におけるブレーキ液の流量に基づいて補正することが好ましい。すなわち、ヒステリシス量が大きくなりやすい流量であるときには、減圧開始時差圧に応じた上記指示電流値の減少勾配を急勾配側に補正することにより、指示電流値を適切に設定することができ、ひいては差圧を適切に減少させることができる。一方、ヒステリシス量が大きくなりにくい流量であるときには、減圧開始時差圧に応じた上記指示電流値の減少勾配を緩勾配側に補正することにより、指示電流値を適切に設定することができ、ひいては差圧が要求差圧を大幅に下回る事象の発生を抑制することができる。したがって、差圧をより高精度に制御することができるようになる。
また、差圧を減少させる場合、ヒステリシス量の変化態様は、差圧弁が設けられている経路内におけるブレーキ液の温度によっても変化しうる。そこで、指示値設定部は、指示電流値の減少勾配を、上記経路内におけるブレーキ液の温度に基づいて補正することが好ましい。すなわち、ヒステリシス量が大きくなりやすいブレーキ液の温度であるときには、減圧開始時差圧に応じた上記指示電流値の減少勾配を急勾配側に補正することにより、指示電流値を適切に設定することができ、ひいては差圧を適切に減少させることができる。一方、ヒステリシス量が大きくなりにくいブレーキ液の温度であるときには、減圧開始時差圧に応じた上記指示電流値の減少勾配を緩勾配側に補正することにより、指示電流値を適切に設定することができ、ひいては差圧が要求差圧を大幅に下回る事象の発生を抑制することができる。したがって、差圧をより高精度に制御することができるようになる。
ところで、要求差圧が第1の差圧から第2の差圧に変更され、その後、要求差圧が第2の要求差圧よりも大きい第3の差圧に変更されることがある。そこで、上記車両の制動制御装置は、減圧状態から増圧状態に移行された時点の差圧を増圧開始時差圧として取得する増圧開始時差圧取得部を備えるようにしてもよい。そして、増圧開始時差圧と、同増圧開始時差圧に同増圧開始時差圧に応じた所定差圧を加算した和である境界差圧との間の領域を増圧時差圧領域としたとする。この場合、指示値設定部は、増圧状態であって、且つ要求差圧が増圧時差圧領域内に含まれるときには、要求差圧の増大量に対する指示電流値の増大量である指示電流値の増大勾配を、増圧開始時差圧が小さいほど緩やかな勾配にすることが好ましい。
差圧弁に流す駆動電流値を降下させることにより差圧が第2の差圧である状態で、要求差圧が第2の差圧よりも大きい第3の差圧に設定されたとする。この場合、差圧を要求差圧(すなわち、第3の差圧)まで増大させるために、指示電流値は、差圧が第2の差圧であった時点の指示電流値よりも大きくされることとなる。すると、指示電流値の変更に伴って駆動電流値が上昇されることとなるが、駆動電流値の上昇に対する差圧の増大率は、増圧開始時差圧が小さいときほど高くなりやすい。すなわち、駆動電流値の上昇に対するヒステリシス量の減少率は、増圧開始時差圧が小さいときほど低くなりやすい。そのため、駆動電流値の上昇に対するヒステリシス量の減少率に応じた態様で指示電流値を増大させることにより、差圧を要求差圧(すなわち、第3の差圧)まで円滑に上昇させることができる。
そこで、上記構成では、増圧状態であること、及び要求差圧(すなわち、第3の差圧)が増圧時差圧領域内に含まれることの双方が成立する場合、こうした駆動電流値の上昇に対するヒステリシス量の減少率に合わせて、要求差圧の増大量に対する指示電流値の増大量である指示電流値の増大勾配が、増圧開始時差圧が小さいほど緩やかな勾配にされ、同増大勾配に従って指示電流値が増大される。すると、差圧弁に流れる駆動電流値は、指示電流値の増大に合わせて上昇することとなる。この場合、駆動電流値の上昇態様は、駆動電流値の上昇に対するヒステリシス量の減少率に応じた態様となる。そのため、このように増圧開始時差圧に応じた上記指示電流値の増大勾配に従って指示電流値を増大させることにより、差圧を要求差圧(すなわち、第3の差圧)に向けて円滑に増大させることができる。
ただし、要求差圧が増圧時差圧領域の上限値よりも大きい場合でも、指示電流値を増圧開始時差圧に応じた勾配で増大させると、指示電流値が、要求差圧(すなわち、第3の差圧)に応じた基準指示電流値よりも大きくなる。すると、この場合、差圧弁に流れる駆動電流値が大きくなり過ぎ、差圧が要求差圧(すなわち、第3の差圧)を大幅に上回る事象が発生するおそれがある。この点、上記構成では、要求差圧が増圧時差圧領域内に含まれるときに限って、指示電流値を、増圧開始時差圧に応じた上記指示電流値の増大勾配に従って増大させるようにした。その結果、差圧が要求差圧(すなわち、第3の差圧)を大幅に上回る事象の発生を抑制することができる。
したがって、増圧状態でも差圧を精度良く制御することができるようになる。
なお、要求差圧に応じた指示電流値を基準指示電流値とした場合、上記車両の制動制御装置は、増圧状態であるときに、指示電流値を補正するための補正量を設定する増圧時補正量設定部を備えるようにしてもよい。この場合、指示値設定部は、増圧状態であるときには、基準指示電流値から増圧時補正量設定部によって設定された補正量を減じた差に基づいて指示電流値を設定するようにしてもよい。そして、増圧時補正量設定部は、増圧状態であって、且つ要求差圧が増圧時差圧領域内に含まれるときには、要求差圧の増大量に対する補正量の減少量である補正量の減少勾配を増圧開始時差圧が小さいほど緩やかな勾配にし、同減少勾配に従って補正量を減少させることが好ましい。また、増圧時補正量設定部は、増圧状態であって、且つ要求差圧が増圧時差圧領域の上限値よりも大きい場合、差圧弁による差圧が増圧時差圧領域内で増大しているときには、上記補正量の減少勾配を増圧開始時差圧が小さいほど緩やかな勾配にし、同減少勾配に従って補正量を減少させ、差圧弁による差圧が増圧時差圧領域の上限値を超えているときには、補正量を「0(零)」と等しくすることが好ましい。
上記構成によれば、増圧状態であって、且つ要求差圧が増圧時差圧領域内に含まれるときでは、上記補正量の減少勾配が、増圧開始時差圧が小さいほど緩やかな勾配にされ、同減少勾配に従って補正量が減少される。そして、要求差圧に応じた指示電流値である基準指示電流値から補正量を減じて指示電流値を設定することにより、指示電流値を、増圧開始時差圧に応じた上記指示電流値の増大勾配で増大させる構成を実現させることができる。
また、要求差圧(すなわち、第3の差圧)が増圧時差圧領域の上限値よりも大きいこともある。この場合、増圧時差圧領域内で差圧弁による差圧が増大している状態では、上記補正量の減少勾配が、増圧開始時差圧が小さいほど緩やかな勾配にされ、同減少勾配に従って補正量が減少される。そして、差圧弁による差圧が増大し、同差圧が増圧時差圧領域の上限値を超えると、補正量は「0(零)」と等しくされる。これにより、指示電流値が基準指示電流値よりも大きくなり、駆動電流値が大きくなりすぎることを抑制できる。したがって、差圧が要求差圧(すなわち、第3の差圧)を大幅に上回る事象の発生を抑制することができるようになる。
また、要求差圧が第2の差圧から第3の差圧に変更された場合、差圧を要求差圧(すなわち、第3の差圧)まで増大させるために、指示電流値の変更に伴って駆動電流値の上昇が開始されることとなるが、駆動電流値の上昇に対する差圧の増大率は、減圧状態から増圧状態への移行時点のヒステリシス量である増圧開始時ヒステリシス量が大きいときほど高くなりやすい。すなわち、駆動電流値の上昇に対するヒステリシス量の減少率は、増圧開始時ヒステリシス量が大きいときほど低くなりやすい。そのため、駆動電流値の上昇に対するヒステリシス量の減少率に応じた態様で駆動電流値の上昇を制御することにより、差圧を要求差圧(すなわち、第3の差圧)まで円滑に上昇させることができる。
そこで、上記車両の制動制御装置は、減圧状態から増圧状態に移行された時点の差圧を増圧開始時差圧として取得する増圧開始時差圧取得部と、減圧状態から増圧状態に移行された時点のヒステリシス量を増圧開始時ヒステリシス量として取得する増圧開始時ヒステリシス量取得部と、を備えるようにしてもよい。そして、増圧開始時差圧と、増圧開始時ヒステリシス量取得部によって取得された増圧開始時ヒステリシス量に応じた所定差圧と増圧開始時差圧との和である境界差圧との間の領域を増圧時差圧領域としたとする。この場合、指示値設定部は、増圧状態であって、且つ要求差圧が増圧時差圧領域内に含まれるときには、要求差圧の増大量に対する指示電流値の増大量である指示電流値の増大勾配を、増圧開始時ヒステリシス量が大きいほど緩やかな勾配にすることが好ましい。
そこで、上記構成では、増圧状態であること、及び要求差圧(すなわち、第3の差圧)が増圧時差圧領域内に含まれることの双方が成立する場合、こうした駆動電流値の上昇に対するヒステリシス量の減少率に合わせて、要求差圧の増大量に対する指示電流値の増大量である指示電流値の増大勾配が、増圧開始時ヒステリシス量が大きいほど緩やかな勾配にされ、同増大勾配に従って指示電流値が増大される。この場合、駆動電流値の上昇態様は、駆動電流値の上昇に対するヒステリシス量の減少率に応じた態様となる。そのため、このように増圧開始時ヒステリシス量に応じた上記指示電流値の増大勾配に従って指示電流値を増大させることにより、差圧を要求差圧(すなわち、第3の差圧)に向けて円滑に増大させることができる。
ただし、要求差圧が増圧時差圧領域の上限値よりも大きい場合でも、指示電流値を増圧開始時ヒステリシス量に応じた上記指示電流値の増大勾配に従って増大させると、指示電流値が、要求差圧(すなわち、第3の差圧)に応じた基準指示電流値よりも大きくなる。すると、この場合、差圧弁に流れる駆動電流値が大きくなり過ぎ、差圧が要求差圧(すなわち、第3の差圧)を大幅に上回る事象が発生するおそれがある。この点、上記構成では、要求差圧が増圧時差圧領域内に含まれるときに限って、指示電流値を、増圧開始時ヒステリシス量に応じた上記指示電流値の増大勾配に従って増大させるようにした。その結果、差圧が要求差圧(すなわち、第3の差圧)を大幅に上回る事象の発生を抑制することができる。
したがって、増圧状態でも差圧を精度良く制御することができるようになる。
なお、上記車両の制動制御装置は、増圧状態であるときに、指示電流値を補正するための補正量を設定する増圧時補正量設定部を備えるようにしてもよい。そして、指示値設定部は、増圧状態であるときには、上記基準指示電流値から増圧時補正量設定部によって設定された補正量を減じた差に基づいて指示電流値を設定するようにしてもよい。この場合、増圧時補正量設定部は、増圧状態であって、且つ要求差圧が増圧時差圧領域内に含まれるときには、要求差圧の増大量に対する補正量の減少量である補正量の減少勾配を増圧開始時ヒステリシス量が大きいほど緩やかな勾配にし、同減少勾配に従って補正量を減少させることが好ましい。また、増圧時補正量設定部は、増圧状態であって、且つ要求差圧が増圧時差圧領域の上限値よりも大きい場合、差圧弁による差圧が増圧時差圧領域内で増大しているときには、上記補正量の減少勾配を増圧開始時ヒステリシス量が大きいほど緩やかな勾配にし、同減少勾配に従って補正量を減少させ、差圧弁による差圧が増圧時差圧領域の上限値を超えているときには、補正量を「0(零)」と等しくすることが好ましい。
上記構成によれば、増圧状態であって、且つ要求差圧が増圧時差圧領域内に含まれるときでは、上記補正量の減少勾配が、増圧開始時ヒステリシス量が大きいほど緩やかな勾配にされ、同減少勾配に従って補正量が減少される。そして、要求差圧(すなわち、第3の差圧)が増圧時差圧領域内に含まれるときには、同要求差圧に応じた指示電流値である基準指示電流値から補正量を減じて指示電流値を設定することにより、指示電流値を、増圧開始時ヒステリシス量に応じた上記指示電流値の増大勾配に従って増大させる構成を実現させることができる。
また、要求差圧(すなわち、第3の差圧)が増圧時差圧領域の上限値よりも大きいこともある。この場合、増圧時差圧領域内で差圧弁による差圧が上昇している状態では、上記補正量の減少勾配が、増圧開始時ヒステリシス量が大きいほど緩やかな勾配にされ、同減少勾配に従って補正量が減少される。そして、差圧弁による差圧が上昇し、同差圧が増圧時差圧領域の上限値を超えると、補正量は「0(零)」と等しくされる。これにより、指示電流値が基準指示電流値よりも大きくなり、駆動電流値が大きくなりすぎることを抑制できる。したがって、差圧が要求差圧(すなわち、第3の差圧)を大幅に上回る事象の発生を抑制することができるようになる。
車両の制動制御装置の一実施形態であるECUを備える制動装置の一部を示す概略構成図。 差圧弁に流れる駆動電流値と、同差圧弁の駆動によって発生するマスタシリンダとホイールシリンダとの間の実差圧との関係の一例を示すグラフ。 増圧状態から減圧状態に移行する際に、減圧開始時差圧の大きさによって、ヒステリシス量の変化態様が変わる様子を示すグラフ。 増圧状態から減圧状態に移行する際における実差圧とヒステリシス量との関係を減圧開始時差圧毎に示すグラフ。 増圧状態から減圧状態に移行した場合において、要求差圧を補正するための補正量の増大勾配を決定するためのマップと、実差圧に応じて制限値を決定するためのマップとを示す図。 増圧状態から減圧状態に移行する際に、要求差圧を補正量で補正した場合における駆動電流値の降下態様を示す作用図。 減圧状態から増圧状態に再び移行する際における実差圧の変化態様を示すグラフ。 減圧状態から増圧状態に移行する際に、増圧開始時差圧は同等であるものの、増圧開始時ヒステリシス量が異なる場合にはヒステリシス量の減少態様が異なる様子を示す作用図。 減圧状態から増圧状態に移行する際に、増圧開始時ヒステリシス量は同等であるものの、増圧開始時差圧が異なる場合にはヒステリシス量の減少態様が異なる様子を示す作用図。 減圧状態から増圧状態に移行した場合において、要求差圧を補正するための補正量の減少勾配を決定するためのマップを示す図。 ブレーキ液の流量に応じて、発生するヒステリシス量が変化する様子を示す図。 ブレーキ液の温度に応じて、発生するヒステリシス量が変化する様子を示す図。 差圧の増大開始及び減少開始を判定するために、制動制御装置の一実施形態であるECUが実行する処理ルーチンを説明するフローチャート。 指示電流値を設定するために、同ECUが実行する処理ルーチンを説明するフローチャート。 要求差圧の変更によって実差圧が変化する際のタイミングチャートであって、(a)は実差圧の推移を示し、(b)は増圧状態であるか減圧状態であるかの推移を示し、(c)は差圧変化量の推移を示し、(d)は補正量の推移を示す。 電磁弁のヒステリシスを説明するグラフ。
以下、車両の制動制御装置を具体化した一実施形態を図1〜図15に従って説明する。
図1には、本実施形態の制動制御装置である電子制御装置(以下、「ECU」という。)60を備える制動装置11の一部が図示されている。図1に示すように、制動装置11は、ブレーキペダル12が連結される液圧発生装置20と、車両に設けられている複数の車輪に対する制動トルクを個別に自動調整するブレーキアクチュエータ30とを備えている。そして、ブレーキアクチュエータ30には、車輪毎に個別対応する複数のブレーキ機構のホイールシリンダが接続されている。
液圧発生装置20には、ブースタ21、マスタシリンダ22及びリザーバ23が設けられている。運転者がブレーキペダル12を操作する場合、運転者によるブレーキペダル12の操作力がブースタ21によって倍力され、倍力された操作力に応じたブレーキ液圧(以下、「MC圧」ともいう。)がマスタシリンダ22内に発生する。そして、リザーバ23からは、マスタシリンダ22内のMC圧に応じたブレーキ液がマスタシリンダ22及びブレーキアクチュエータ30を通じてホイールシリンダ内に供給される。すると、ブレーキ機構は、ホイールシリンダ内に発生したブレーキ液圧(以下、「WC圧」ともいう。)に応じた制動トルクを車輪に付与する。
ブレーキアクチュエータ30には、2系統の液圧回路311,312が設けられている。第1の液圧回路311には、右前輪用のホイールシリンダ50a及び左後輪用のホイールシリンダ50dが接続されている。また、第2の液圧回路312には、左前輪用のホイールシリンダ及び右後輪用のホイールシリンダが接続されている。
第1の液圧回路311には、マスタシリンダ22とホイールシリンダ50a,50dとを接続する経路に配置される常開型のリニア電磁弁である差圧弁32が設けられている。また、第1の液圧回路311において差圧弁32よりもホイールシリンダ50a,50d側には、右前輪用の経路33a及び左後輪用の経路33dが設けられている。そして、これら経路33a,33dには、ホイールシリンダ50a,50d内のWC圧の増圧を規制する際に駆動する常開型の電磁弁である増圧弁34a,34dと、WC圧を減圧させる際に駆動する常閉型の電磁弁である減圧弁35a,35dとが設けられている。
また、第1の液圧回路311には、ホイールシリンダ50a,50dから減圧弁35a,35dを通じて流出したブレーキ液を一時貯留するリザーバ36と、モータ37の回転に基づき駆動するポンプ38とが接続されている。リザーバ36は、吸入用流路39を通じてポンプ38に接続されるとともに、マスタ側流路40を通じて差圧弁32よりもマスタシリンダ22側に接続されている。また、ポンプ38は、供給用流路41を介して増圧弁34a,34dと差圧弁32との間の接続部位42に接続されている。そして、ポンプ38は、モータ37が回転する場合に、リザーバ36及びマスタシリンダ22側から吸入用流路39及びマスタ側流路40を通じてブレーキ液を吸引し、該ブレーキ液を供給用流路41内に吐出する。
なお、第2の液圧回路312の構成については、第1の液圧回路311の構成と略同等であるため、その詳細な説明を割愛するものとする。
ECU60には、ブレーキペダル12の操作の有無を検知するブレーキスイッチSW1、及びMC圧を検出する圧力センサSE1などの各種検出系が電気的に接続されている。また、ECU60には、ブレーキアクチュエータ30を構成する差圧弁32、増圧弁34a,34d、減圧弁35a,35d及びモータ37などが電気的に接続されている。そして、ECU60は、各種検出系によって検出された情報に基づき、ブレーキアクチュエータ30を制御する。
こうしたECU60は、CPU61、ROM62及びRAM63などで構築されているマイクロコンピュータを有している。ROM62には、CPU61が実行する各種のプログラム、マップ及び閾値などが予め記憶されている。また、RAM63には、適宜更新される各種情報などが一時記憶される。
ところで、ブレーキアクチュエータ30は、差圧弁32及びポンプ38(すなわち、モータ37)を駆動させてマスタシリンダ22とホイールシリンダ50a,50dとの間に差圧を発生させることにより、車輪に対する制動トルクを制御することができる。すなわち、差圧弁32のソレノイドに流す駆動電流値Idを大きくすると、差圧弁32の開度が小さくなり、差圧が大きくなる。その結果、ホイールシリンダ50a,50d内のWC圧が高くなり、制動機構から車輪FR,RLに付与される制動トルクが大きくなる。一方、駆動電流値Idを小さくすると、差圧弁32の開度が大きくなり、差圧が小さくなる。その結果、ホイールシリンダ50a,50d内のWC圧が低くなり、制動機構から車輪FR,RLに付与される制動トルクが小さくなる。
なお、以降の明細書においては、こうした差圧弁32及びポンプ38の駆動によってマスタシリンダ22とホイールシリンダ50a,50dとの間に実際に生じる差圧のことを、「実差圧X」という。また、車輪FR,RLに対する制動トルクを調整する場合において要求される差圧(差圧弁32による差圧の要求値)のことを、「要求差圧M」というものとする。また、「駆動電流値Id」とは、差圧弁32のソレノイドに実際に流れる電流値又は同電流値に応じた値である。そのため、差圧弁32に対する指示電流値Ipが大きくされる場合には駆動電流値Idが大きくなる一方、指示電流値Ipが小さくされる場合には駆動電流値Idが小さくなる。
次に、図2を参照して、差圧弁32を駆動させる際に用いられるマップMAP1について説明する。
図2に破線で示すマップMAP1は、ROM62に予め記憶されており、設定されている要求差圧に応じて指示電流値Ipを設定するためのマップである。このマップMAP1は、実差圧Xを増大させるべく駆動電流値Idを上昇させる際における実差圧Xと駆動電流値Idとの関係を示している。図2に破線で示すように、実差圧Xは、駆動電流値Idが大きくなるにつれて次第に大きくなる。そのため、要求差圧Mが大きい値に設定されているときほど、このマップMAP1に用いて設定される指示電流値Ipは大きくなる。したがって、マップMAP1が、駆動電流値Idを上昇させる際における駆動電流値Idと実差圧Xとの関係を示す「特性」に相当し、同マップ(特性)MAP1を記憶するROM62が、「記憶部」に相当する。
なお、マップMAP1の代わりに、実差圧Xを「0(零)」から増大させる際における実差圧Xと駆動電流値Idとの関係を示す関数を採用してもよい。こうした関数を用いることによっても、指示電流値Ipを要求差圧Mに応じた値に設定することもできる。この場合、同関数が、「特性」に相当することとなる。
ところで、図2に実線で示すように、差圧弁32などの電磁弁にあっては、ヒステリシスを有している。すなわち、駆動電流値Idを所定の指示電流値IpAまで上昇させたときにおける実差圧XA1と、駆動電流値Idを所定の指示電流値IpAまで降下させたときにおける実差圧XA2との間に乖離が生じる。こうした実差圧XA1と実差圧XA2との差分を、「ヒステリシス量HY」という。
図3には、駆動電流値Idを上昇させた後に駆動電流値Idを第1の指示電流値IpB1まで降下させる場合が図示されている。ここでは、第1の要求差圧MB1に応じた指示電流値Ipを第1の指示電流値IpB1といい、第1の要求差圧MB1よりも大きい第2の要求差圧MB2に応じた指示電流値Ipを第2の指示電流値IpB2という。また、第2の要求差圧MB2よりも大きい第3の要求差圧MB3に応じた指示電流値Ipを第3の指示電流値IpB3というものとする。なお、要求差圧MB1,MB2,MB3に応じた指示電流値IpB1,IpB2,IpB3とは、上記マップMAP1を用いることにより求めた電流値のことである。
図3に実線で示すように、駆動電流値Idを「0(零)」から第3の指示電流値IpB3まで上昇させることにより、実差圧Xが「0(零)」から第3の要求差圧MB3まで増大した後、駆動電流値Idを第1の指示電流値IpB1まで降下させたとする。この場合、駆動電流値Idの降下に対する実差圧Xの減少率が低いため、駆動電流値Idが降下して第1の指示電流値IpB1に達した時点における実差圧Xは、第3の要求差圧MB3よりも小さいものの、第1の要求差圧MB1よりも大きい第13の差圧MB13となる。
一方、図3に破線で示すように、駆動電流値Idを「0(零)」から第2の指示電流値IpB2まで上昇させることにより、実差圧Xが「0(零)」から第2の要求差圧MB2まで増大した後、駆動電流値Idを第1の指示電流値IpB1まで降下させたとする。この場合、駆動電流値Idを第3の指示電流値IpB3から降下させる場合よりは駆動電流値Idの降下に対する実差圧Xの減少率が高い。そのため、駆動電流値Idが第1の指示電流値IpB1に達した時点における実差圧Xは、第1の要求差圧MB1よりも大きく且つ第13の差圧MB13よりも小さい第12の差圧MB12となる。すなわち、駆動電流値Idが降下して第1の指示電流値IpB1に達した場合であっても、実差圧Xの減少、すなわち駆動電流値Idの降下が開始された時点の差圧である減圧開始時差圧XDの大きさによって、駆動電流値Idが第1の指示電流値IpB1になった時点の実差圧Xの大きさが変わる。
また、図3に実線で示すように、実差圧Xが「0(零)」から第3の要求差圧MB3まで増大した後、実差圧Xを第1の要求差圧MB1まで減少させる場合、駆動電流値Idは、第1の指示電流値IpB1よりも小さい第13の電流値IpB13まで降下される。言い換えると、駆動電流値Idを第13の電流値IpB13まで降下させることにより、実差圧Xが第1の要求差圧MB1とほぼ等しくなる。
一方、図3に破線で示すように、実差圧Xが「0(零)」から第2の要求差圧MB2まで増大した後、実差圧Xを第1の要求差圧MB1まで減少させる場合、駆動電流値Idは、第1の指示電流値IpB1よりも小さく且つ第13の電流値IpB13よりも大きい第12の電流値IpB12まで降下される。言い換えると、駆動電流値Idを第12の電流値IpB12まで降下させることにより、実差圧Xが第1の要求差圧MB1とほぼ等しくなる。
すなわち、駆動電流値Idを降下させることにより、実差圧Xを要求差圧Mまで減少させる場合、ヒステリシス量HYの増大態様が減圧開始時差圧XDに応じて変わる。そのため、減圧開始時差圧XDを加味して指示電流値Ipを設定することにより、実差圧Xを要求差圧Mまで減少させることが可能となる。
次に、図4を参照して、駆動電流値Idの降下によって実差圧Xが減少するときにおけるヒステリシス量HYの変化態様について説明する。
図4に示すように、実差圧Xの減少が開始された直後の初期状態においては、減圧開始時差圧XDが小さい場合ほど、駆動電流値Idの降下に対する実差圧Xの減少率が高いため、駆動電流値Idの降下に対してヒステリシス量HYが概ね緩やかに増大される。例えば、減圧開始時差圧XDが第11の減圧開始時差圧XD11である場合、ヒステリシス量HYは、減圧開始時差圧XDが第11の減圧開始時差圧XD11よりも小さい他の減圧開始時差圧XD12,XD13である場合よりも急勾配で大きくなる。同様に、減圧開始時差圧XDが第12の減圧開始時差圧XD12である場合、ヒステリシス量HYは、減圧開始時差圧XDが第11の減圧開始時差圧XD11である場合よりも緩やかに大きくなるものの、減圧開始時差圧XDが第12の減圧開始時差圧XD12よりも小さい第13の減圧開始時差圧XD13である場合よりも急勾配で大きくなる。
また、実差圧Xが小さくなり、実差圧Xが「0(零)」に近づくと、減圧開始時差圧XDが何れの減圧開始時差圧XD11,XD12,XD13であっても、実差圧Xの減少に対してヒステリシス量HYがほぼ一定勾配で減少されるようになる。
次に、こうしたヒステリシス量HYの変化態様を踏まえた、実差圧Xを要求差圧Mまで減少させる場合の制御方法について説明する。
実差圧Xを要求差圧Mまで減少させる場合、ヒステリシス量HYに応じた補正量Zが演算され、要求差圧Mから補正量Zを減じた差が補正要求差圧MZとされる。そして、指示電流値Ipは、図2に破線で示すマップを用い、補正要求差圧MZに応じた値に設定される。そして、こうした指示電流値Ipに基づいて駆動電流値Idを降下させることにより、実差圧Xが円滑に要求差圧Mまで減少される。
補正要求差圧MZを演算する際に用いられる補正量Zは、図5に示すマップに基づき演算される。すなわち、補正量Zは、減圧開始時差圧XDからの実差圧Xの減少、すなわち駆動電流値Idの降下が開始され、実差圧Xが要求差圧Mに近づくにつれて次第に大きくされる。しかも、このときの補正量Zの増大勾配DIZは、減圧開始時差圧XDが小さいときほど緩やかになる。なお、この補正量Zの増大勾配DIZは、「要求差圧Mの減少量に対する補正量Zの増大量」である。
なお、図2に示すマップを用いて要求差圧Mに応じた値に設定された指示電流値のことを「基準指示電流値」としたとする。そして、要求差圧Mが小さくされた場合、変更後の要求差圧Mから補正量Zを減じた差に基づき、指示電流値Ipが設定される。すなわち、指示電流値Ipは、「変更後の要求差圧Mに応じた基準指示電流値」から「補正量Zを電流値に変換した変換補正量」を減じた差に基づいた値であるということができる。そのため、要求差圧Mが小さくされた場合、指示電流値Ipは、補正量Zの増大勾配に従って基準指示電流値から減少され、結果として、駆動電流値Idは、こうした指示電流値Ipの減少に合わせて降下することとなる。なお、本実施形態では、上記変換補正量が、「指示電流値を補正するための補正量」に相当する。
次に、図5に示すマップについて説明する。なお、図5に示す破線は、図4で示した実差圧Xの減少に対するヒステリシス量HYの変化態様を示している。
図5に示すマップは、補正量Zの増大勾配DIZと減圧開始時差圧XDとの関係を示すマップである。図5に示すように、増大勾配DIZは、上記初期状態におけるヒステリシス量HYの変化勾配とほぼ一致している。そのため、増大勾配DIZは、減圧開始時差圧XDが小さいときほど緩やかになっている。なお、増大勾配DIZは、例えば、実差圧Xの減少に対するヒステリシス量HYの増大態様を近似することにより求めた一次関数の傾き又は同傾きに近い値であってもよい。
本実施形態では、範囲の異なる減圧開始時差圧の領域である差圧領域R11,R12,R13が予め設定されており、増大勾配DIZは差圧領域R11,R12,R13毎に設定されている。すなわち、第11の減圧開始時差圧XD11を含む第11の差圧領域R11の増大勾配は、減圧開始時差圧XDが第11の減圧開始時差圧XD11であるときにおけるヒステリシス量HYの増大勾配DIZ1である。また、第12の減圧開始時差圧XD12を含む第12の差圧領域R12の増大勾配は、減圧開始時差圧XDが第12の減圧開始時差圧XD12であるときにおけるヒステリシス量HYの増大勾配DIZ2である。また、第13の減圧開始時差圧XD13を含む第13の差圧領域R13の増大勾配は、減圧開始時差圧XDが第13の減圧開始時差圧XD13であるときにおけるヒステリシス量HYの増大勾配DIZ3である。すなわち、第12の差圧領域R12を「第1の領域」と見なした場合、第12の差圧領域R12の増大勾配DIZは、第1の領域よりも高圧側となる「第2の領域」と見なすことのできる第11の差圧領域R11の増大勾配DIZよりも緩やかになっている。
なお、こうした増大勾配DIZに基づいて補正量Zを求めた場合、実差圧Xが要求差圧Mに近づくにつれて補正量Zが大きくなり、補正量Zが大きくなり過ぎることがある。この場合、補正要求差圧MZが小さくなり過ぎ、この補正要求差圧MZに基づいて設定される指示電流値Ipが小さくなり過ぎることがある。このように指示電流値Ipが小さくなり過ぎると、実差圧Xが要求差圧Mを大幅に下回る事象が発生するおそれがある。
この点、本実施形態では、こうした事象の発生を抑制するために、補正量Zが大きくなり過ぎることを規制する制限値Z_Limが設けられている。すなわち、図5に示すように、実差圧Xが規定差圧X_Th以上である場合、制限値Z_Limは予め設定されている上限値Z_maxに設定される。一方、実差圧Xが規定差圧X_Th未満である場合、制限値Z_Limは、実差圧Xが小さくなるにつれて小さくされる。なお、規定差圧X_Thは、ヒステリシス量HYが急激に減少し始める差圧又は同差圧近傍の値に設定されている。しかも、実差圧Xが規定差圧X_Th未満であるときのヒステリシス量HYの減少勾配よりも、制限値Z_Limの減少勾配が僅かに急勾配となっている。
また、上記の制限値Z_Limは、電流値に変換することができる。そして、このように電流値に変換された制限値が、指示電流値Ipに対する「制限値」に相当する。すなわち、本実施形態では、要求差圧Mが変更された場合、補正量Zに応じた上記変換補正量が制限値を超えない範囲で、指示電流値Ipが基準指示電流値から増大又は減少される。
また、要求差圧が小さくされる減圧状態では、増圧状態から減圧状態への移行時点における差圧である減圧開始時差圧XDに応じた勾配(すなわち、上記補正量の増大勾配)に従って補正量Zが増大される。すなわち、上記補正量の増大勾配に準じた指示電流値の減少勾配に従って指示電流値Ipが減少される。そして、補正量Zが制限値Z_Limに達したときには、補正量Zが制限値Z_Limと等しくされる。このように補正量Zが制限値Z_Limに達する時点の差圧は、図5に示すように、減圧開始時差圧XDによって異なる。したがって、補正量Zが制限値Z_Limに達する時点の差圧が、「境界差圧」に相当し、減圧開始時差圧XDとこの境界差圧との差が、「減圧開始時差圧XDに応じた所定差圧」に相当する。また、減圧開始時差圧XDと境界差圧との間の領域が、「減圧開始時差圧領域」に相当する。
次に、図6を参照して、実差圧Xを要求差圧Mまで減少させる際の駆動電流値Idの変化態様について説明する。なお、図6に示す破線は、要求差圧Mを補正しない場合の駆動電流値である基準駆動電流値IdAの変化態様を示している。
図6に示すように、要求差圧Mが小さい値に変更されると、駆動電流値Idが降下するようになる。このとき、増大勾配DIZは、図5に示すマップを用いることにより、減圧開始時差圧XDに基づいた勾配に設定される。そして、補正量Zは、こうした増大勾配DIZに応じた勾配で次第に大きくなる。そのため、駆動電流値Idと基準駆動電流値IdAとの差分は、時間が経過するに連れて次第に大きくなる。その後、タイミングt100に達すると、補正量Zが制限値Z_Lim(この場合、上限値Z_max)になる。そのため、タイミングt100以降では、駆動電流値Idと基準駆動電流値IdAとの差分が制限値Z_Limに応じた差を保った状態で駆動電流値Idが降下するようになる。そして、実差圧Xが要求差圧Mまで減少されると、駆動電流値Idが保持される。
ところで、要求差圧Mは、「0(零)」から第1の差圧に変更された後に、第1の差圧よりも小さい第2の差圧に変更され、その後、第2の差圧よりも大きい第3の差圧に変更されることがある。
次に、図7を参照して、実差圧Xの減少終了後に、実差圧Xを第1の要求差圧MA1まで増大させる際の実差圧Xの変化態様について説明する。ここでは、第1の要求差圧MA1に応じた指示電流値Ipを第1の指示電流値IpA1といい、実差圧Xの減少によって実差圧Xが第1の要求差圧MA1よりも小さい第2の要求差圧MA2になった時点における駆動電流値Idを第2の駆動電流値IdA2という。また、実差圧Xの減少によって実差圧Xが第2の要求差圧MA2よりも小さい第3の要求差圧MA3になった時点における駆動電流値Idを第3の駆動電流値IdA3というものとする。
図7に示すように、駆動電流値Idを第2の駆動電流値IdA2まで降下させることにより実差圧Xが第2の要求差圧MA2まで減少した後に、実差圧Xを第2の要求差圧MA2よりも大きい要求差圧(この場合、第1の要求差圧MA1)まで増大させたとする。この場合、駆動電流値Idは、第1の指示電流値IpA1よりも小さい第12の電流値IpA12まで上昇される。言い換えると、駆動電流値Idを第12の電流値IpA12まで上昇させることにより、実差圧Xが第1の要求差圧MA1とほぼ等しくなる。
一方、駆動電流値Idを第3の駆動電流値IdA3まで降下させることにより実差圧Xが第3の要求差圧MA3まで減少した後、実差圧Xを第1の要求差圧MA1まで上昇させたとする。この場合、駆動電流値Idは、第1の指示電流値IpA1よりも小さく且つ第12の電流値IpA12よりも大きい第13の電流値IpA13まで上昇される。言い換えると、駆動電流値Idを第13の電流値IpA13まで上昇させることにより、実差圧Xが第1の要求差圧MB1とほぼ等しくなる。
上記のようにヒステリシスが発生している状態(すなわち、ヒステリシス量HYが「0(零)」ではない状態)で実差圧Xを要求差圧Mまで増大させる場合、駆動電流値Idの上昇に対する実差圧Xの増大態様は、実差圧Xの増大が開始される時点の差圧である増圧開始時差圧XI、及び実差圧Xの増大が開始される時点のヒステリシス量である増圧開始時ヒステリシス量HYIによって変わる。そのため、このように実差圧Xを再度増大させる場合、実差圧Xの増大が開始される時点の差圧である増圧開始時差圧XI及び同時点のヒステリシス量である増圧開始時ヒステリシス量HYIを加味し、要求差圧Mを補正することが好ましい。
次に、図8を参照して、増圧開始時差圧XIの大きさによって、実差圧Xの増大態様が変わる様子を説明する。ここでは、2つのパターンについて説明する。
すなわち、第1のパターンは、要求差圧Mが第1の要求差圧MD1から同第1の要求差圧MD1よりも小さい第2の要求差圧MD2に変更され、その後、要求差圧Mが第2の要求差圧MD2から第1の要求差圧MD1に再び変更されるパターンである。また、第2のパターンは、要求差圧Mが第3の要求差圧MD3から同第3の要求差圧MD3よりも小さい第4の要求差圧MD4に変更され、その後、要求差圧Mが第4の要求差圧MD4から第1の要求差圧MD1に変更されるパターンである。
なお、第3の要求差圧MD3は、第1及び第2の要求差圧MD1,MD2よりも小さいものとする。また、第1のパターンにおいて要求差圧Mが第2の要求差圧MD2で保持されているときのヒステリシス量HYは、第2のパターンにおいて要求差圧Mが第4の要求差圧MD4で保持されているときのヒステリシス量HYと等しいものとする。
図8に示すように、第1のパターンにおいて、要求差圧Mが第1の要求差圧MD1から第2の要求差圧MD2に変更されると、駆動電流値Idの降下によって実差圧Xが減少される。そして、駆動電流値Idが第2の指示電流値IpD2に達すると、実差圧Xが第2の要求差圧MD2で保持される。その後、要求差圧Mが第1の要求差圧MD1に変更されると、駆動電流値Idの上昇が開始される。このとき、駆動電流値Idの上昇開始時点からの初期状態では、実差圧Xが比較的上昇しにくい。すなわち、駆動電流値Idの変化量に対する実差圧Xの増大量である実差圧Xの増大勾配が比較的緩やかになるため、駆動電流値Idの変化量に対するヒステリシス量HYの減少量であるヒステリシス量の減少勾配が比較的急勾配になる。この場合、駆動電流値Idが上昇すると、実差圧Xが第1の要求差圧MD1に達する前に、ヒステリシス量HYが「0(零)」になる。その後も駆動電流値Idが上昇し、同駆動電流値Idが第1の要求差圧MD1に応じた第1の指示電流値IpD1に達すると、実差圧Xが第1の要求差圧MD1となる。
一方、第2のパターンにおいて、要求差圧Mが第3の要求差圧MD3から第4の要求差圧MD4に変更されると、駆動電流値Idの降下によって実差圧Xが減少される。そして、駆動電流値Idが第4の指示電流値IpD4に達すると、実差圧Xが第4の要求差圧MD4で保持される。その後、要求差圧Mが第1の要求差圧MD1に変更されると、駆動電流値Idの上昇が開始される。このとき、駆動電流値Idの上昇開始の直後にあっては、第1のパターンと比較して、増圧開始時差圧XIが小さい分、実差圧Xが上昇しやすい。すなわち、第1のパターンと比較して、実差圧Xの増大勾配が急勾配になるため、ヒステリシス量HYの減少勾配は緩やかになる。この場合も、駆動電流値Idが上昇すると、実差圧Xが第1の要求差圧MD1に達する前に、ヒステリシス量HYが「0(零)」になる。その後も駆動電流値Idが上昇し、同駆動電流値Idが第1の要求差圧MD1に応じた第1の指示電流値IpD1に達すると、実差圧Xが第1の要求差圧MD1となる。
すなわち、増圧開始時ヒステリシス量HYIの大きさが同等であるという条件下にあっては、増圧開始時差圧XIが小さいときほど、初期状態では実差圧Xが増大されやすく、ヒステリシス量HYが減少されにくい。
次に、図9を参照して、増圧開始時ヒステリシス量HYIの大きさによって、実差圧Xの増大態様が変わる様子を説明する。ここでは、2つのパターンについて説明する。
すなわち、第1のパターンは、要求差圧Mが第1の要求差圧ME1から同第1の要求差圧ME1よりも小さい第2の要求差圧ME2に変更され、その後、要求差圧Mが第2の要求差圧ME2から第1の要求差圧ME1に再び変更されるパターンである。また、第2のパターンは、要求差圧Mが第2の要求差圧ME2よりも大きい第3の要求差圧ME3から第2の要求差圧ME2に変更され、その後、要求差圧Mが第2の要求差圧ME2から第1の要求差圧ME1に変更されるパターンである。なお、第3の要求差圧ME3は、第1の要求差圧ME1よりも小さいものとする。
図9に示すように、第1のパターンにおいて、要求差圧Mが第1の要求差圧ME1から第2の要求差圧ME2に変更されると、駆動電流値Idの降下によって実差圧Xが減少される。そして、駆動電流値Idが第21の指示電流値IpE21に達すると、実差圧Xが第2の要求差圧ME2で保持される。この場合、実差圧Xが第2の要求差圧ME2で保持されている時点のヒステリシス量HY1は比較的大きい。その後、要求差圧Mが第1の要求差圧ME1に変更されると、駆動電流値Idの上昇が開始される。このとき、駆動電流値Idの上昇開始時点からの初期状態では、増圧開始時ヒステリシス量HYI(=HY1)が比較的大きいため、実差圧Xが比較的上昇しやすい。すなわち、実差圧Xの増大勾配が比較的急勾配となるため、ヒステリシス量HYの減少勾配が比較的緩やかになる。この場合、実差圧Xが第1の要求差圧ME1に達する前に、ヒステリシス量HYが「0(零)」になる。その後に駆動電流値Idが、第1の要求差圧ME1に応じた第1の指示電流値IpE1に達すると、実差圧Xが第1の要求差圧ME1となる。
一方、第2のパターンにおいて、要求差圧Mが第3の要求差圧ME3から第2の要求差圧ME2に変更されると、駆動電流値Idの降下によって実差圧Xが減少される。そして、駆動電流値Idが第21の指示電流値IpE21よりも大きい第22の指示電流値IpE22に達すると、実差圧Xが第2の要求差圧ME2で保持される。この場合、実差圧Xが第2の要求差圧ME2で保持されている時点のヒステリシス量HY2は、第1のパターンにおけるヒステリシス量HY1よりも小さい。その後、要求差圧Mが第1の要求差圧ME1に変更されると、駆動電流値Idの上昇が開始される。このとき、駆動電流値Idの上昇開始時点からの初期状態では、増圧開始時ヒステリシス量HYI(=HY2)が第1のパターンにおける増圧開始時ヒステリシス量HYI(=HY1)よりも小さいため、実差圧Xが上昇しにくい。すなわち、実差圧Xの増大勾配が緩やかになるため、ヒステリシス量HYの減少勾配が比較的急勾配となる。この場合も、実差圧Xが第1の要求差圧ME1に達する前に、ヒステリシス量HYが「0(零)」になる。その後に駆動電流値Idが、第1の要求差圧ME1に応じた第1の指示電流値IpE1に達すると、実差圧Xが第1の要求差圧ME1となる。
すなわち、増圧開始時差圧XIの大きさが同等であるという条件下にあっては、増圧開始時ヒステリシス量HYIが小さいときほど、初期状態では実差圧Xが増大されにくく、ヒステリシス量HYが速やかに減少される。
次に、こうしたヒステリシス量HYの減少態様を踏まえた、実差圧Xを再増大させる場合の制御方法について説明する。
実差圧Xを要求差圧Mまで再増大させる場合、増圧開始時差圧XI、増圧開始時ヒステリシス量HYI及びその時点の実差圧Xに基づいて補正量Zが演算され、要求差圧Mから補正量Zを減じた差が補正要求差圧MZとされる。そして、指示電流値Ipは、図2に破線で示すマップを用い、補正要求差圧MZに応じた値に設定される。そして、こうした指示電流値Ipに基づいて駆動電流値Idを上昇させることにより、実差圧Xが円滑に要求差圧Mまで再増大される。
補正要求差圧MZを演算する際に用いられる補正量Zは、実差圧Xの増大に伴って徐々に小さくされる。このときの補正量Zの減少勾配DDZは、上記初期状態におけるヒステリシス量HYの減少勾配と同程度の勾配にすることが好ましい。
ここで、減少勾配DDZの演算方法について説明する。
上述したように、実差圧Xの増大を開始させる時点でヒステリシス量HYが「0(零)」よりも大きい場合、増圧開始時差圧XI及び増圧開始時ヒステリシス量HYIに基づいて、ヒステリシス量HYの減少勾配を推定することができる。言い換えると、要求差圧Mの増大量に対する補正量Zの減少量である補正量の減少勾配DDZは、増圧開始時差圧XI及び増圧開始時ヒステリシス量HYIに基づいて設定することができる。例えば、図10に示すマップを用い、基準減少勾配DDZBが、増圧開始時差圧XIに応じた値に設定される。また、基準減少勾配DDZBを補正するための第3の補正ゲインG3が、増圧開始時ヒステリシス量HYIに応じた値に設定される。そして、設定した基準減少勾配DDZB及び第3の補正ゲインG3を、以下に示す関係式(式1)に代入することにより減少勾配DDZが求められる。
なお、上述したように、ヒステリシス量HYの減少勾配は、増圧開始時ヒステリシス量HYIが大きいときほど緩やかになりやすい。そのため、第3の補正ゲインG3は、増圧開始時ヒステリシス量HYIが大きいほど小さくされる。ただし、第3の補正ゲインG3は、「0(零)」よりも大きい。
また、図10に示すマップでは、範囲の異なる増圧開始時差圧の領域である差圧領域R21,R22,R23毎に基準減少勾配DDZBが設定されている。上述したように、ヒステリシス量HYの減少勾配は、増圧開始時差圧XIが大きいときほど緩やか勾配になりやすい。そのため、最も高圧側の領域である第21の差圧領域R21に対応する基準減少勾配DDZB1は、他の差圧領域R22,R23に対応する基準減少勾配DDZB2,DDZB3よりも急勾配に設定されている。また、2番目に高圧側となる第22の差圧領域R22に対応する基準減少勾配DDZB2は、第21の差圧領域R21に対応する基準減少勾配DDZB1よりは緩やかであるものの、第23の差圧領域R23に対応する基準減少勾配DDZB3よりも急勾配に設定されている。
なお、こうした減少勾配DDZに基づいて補正量Zを求めた場合、実差圧Xが要求差圧Mに近づくにつれて補正量Zが小さくなり、補正量Zが「0(零)」よりも小さくなる、すなわち補正量Zが負の値になることがある。この場合、補正要求差圧MZが大きくなりすぎ、この補正要求差圧MZに基づいて設定される指示電流値Ipが大きくなり過ぎることがある。このように指示電流値Ipが大きくなり過ぎると、実差圧Xが要求差圧Mを大幅に上回る事象が発生するおそれがある。この点、本実施形態では、こうした事象の発生を抑制するために、補正量Zが「0(零)」未満にならないようにしている。すなわち、減少勾配DDZに基づいて求めた補正量Zが負の値である場合、補正量Zが「0(零)」とされる。
要求差圧が大きくされる増圧状態では、増圧開始時差圧XI及び増圧開始時ヒステリシス量HYIに応じた勾配(上記補正量の減少勾配)に従って補正量Zが減少される。すなわち、指示電流値Ipは、上記補正量の減少勾配に準じた指示電流値の増大勾配に従って増大される。そして、補正量Zが「0(零)」に達したときには、補正量Zが「0(零)」で固定される。このように補正量Zが「0(零)」に達する時点の差圧は、増圧開始時差圧XI及び増圧開始時ヒステリシス量HYIによって異なる。したがって、補正量Zが「0(零)」に達する時点の差圧が、「境界差圧」に相当し、増圧開始時差圧XIとこの境界差圧との差が、「増圧開始時差圧XIに応じた所定差圧」に相当する。また、増圧開始時差圧XIと境界差圧との間の領域が、「増圧開始時差圧領域」に相当する。
ちなみに、図11に示すように、上記ヒステリシス量HYの変化態様は、差圧弁32が設けられている液圧回路311,312内を流れるブレーキ液の流量、すなわちポンプ38からのブレーキ液の吐出量Yによっても変わる。図11に示す実線は、吐出量Yが第1の吐出量Y1であるときの実差圧Xの変化に対するヒステリシス量HYの変化態様を示している。また、図11に示す破線は、吐出量Yが第1の吐出量Y1よりも少ない第2の吐出量Y2であるときの実差圧Xの変化に対するヒステリシス量HYの変化態様を示している。そして、図11に示す一点鎖線は、吐出量Yが第1の吐出量Y1よりも多い第3の吐出量Y3であるときの実差圧Xの変化に対するヒステリシス量HYの変化態様を示している。
吐出量Yが第2の吐出量Y2である場合、実差圧Xが第11の差圧XB11以上であるときには、ヒステリシス量HYが、吐出量Yが第1の吐出量Y1であるときよりも大きくなる。その一方で、吐出量Yが第2の吐出量Y2である場合、実差圧Xが第11の差圧XB11未満であるときには、ヒステリシス量HYが、吐出量Yが第1の吐出量Y1であるときよりも小さくなる。また、吐出量Yが第3の吐出量Y3である場合、実差圧Xが第11の差圧XB11以上であるときには、ヒステリシス量HYが、吐出量Yが第1の吐出量Y1である場合よりも小さくなる。その一方で、吐出量Yが第3の吐出量Y3である場合、実差圧Xが第11の差圧XB11未満であるときには、ヒステリシス量HYが、吐出量Yが第1の吐出量Y1である場合よりも大きくなる。
本実施形態では、第1の吐出量Y1は、基準吐出量となっている。すなわち、上記の増大勾配DIZ及び減少勾配DDZは、吐出量Yが第1の吐出量Y1である場合の勾配である。そのため、吐出量Yが第2の吐出量Y2や第3の吐出量Y3であるときには、増大勾配DIZ及び減少勾配DDZを補正することが好ましい。
また、図12に示すように、上記ヒステリシス量HYの変化態様は、液圧回路311,312内を流れるブレーキ液の温度TMPによっても変わる。図12に示す実線は、ブレーキ液の温度TMPが室温であるときの実差圧Xの変化に対するヒステリシス量HYの変化態様を示している。また、図12に示す破線は、ブレーキ液の温度TMPが極めて低い温度であるときの実差圧Xの変化に対するヒステリシス量HYの変化態様を示している。
実差圧Xが「0(零)」に近い状態、すなわち実差圧Xが第1の差圧XC11未満である場合、ブレーキ液の温度TMPに拘わらず、ヒステリシス量HYは同程度となる。また、実差圧Xが第2の差圧XC12以上である場合についても、ブレーキ液の温度TMPに拘わらず、ヒステリシス量HYは同程度となる。その一方で、実差圧Xが第1の差圧XC11以上であって且つ第2の差圧XC12未満である場合、ブレーキ液の温度TMPが低いほど、ヒステリシス量HYが大きくなる。そのため、ブレーキ液の温度TMPによってヒステリシス量HYの大きさが変わるような場合においては、上記増大勾配DIZ及び減少勾配DDZを補正することが好ましい。
そこで次に、吐出量Y及びブレーキ液の温度TMPに基づいて増大勾配DIZ及び減少勾配DDZを補正する方法について説明する。
吐出量Yに基づいた第1の補正ゲインを「G1」とし、ブレーキ液の温度TMPに基づいた第2の補正ゲインを「G2」としたとき、補正増大勾配DRIを以下に示す関係式(式2)のように表すことができるとともに、補正減少勾配DRDを以下に示す関係式(式3)のように表すことができる。すなわち、こうして演算された補正増大勾配DRIが、吐出量Y及びブレーキ液の温度TMPに応じて補正された増大勾配DIZに相当し、補正減少勾配DRDが、吐出量Y及びブレーキ液の温度TMPに応じて補正された減少勾配DDZに相当する。
第1の補正ゲインG1は、図11に示す図に応じたマップを用いることにより、吐出量Yに応じた値に設定することができる。すなわち、そのときの吐出量Yに基づいたマップ(例えば、吐出量Yが第2の吐出量Y2であるときには図11に破線に応じたマップ)が読み出されるとともに、吐出量Yが第1の吐出量Y1であるときのマップ(すなわち、図11に実線に応じたマップであって、以下、「基準吐出量マップ」ともいう。)が読み出される。そして、そのときの吐出量Yに基づいたマップを用い、その時点の実差圧Xに応じたヒステリシス量である第1ヒステリシス量HY11が求められる。また、基準吐出量マップを用い、その時点の実差圧Xに応じたヒステリシス量である第2ヒステリシス量HY12が求められる。そして、第1ヒステリシス量HY11から第2ヒステリシス量HY12を減じた差が正である場合には第1の補正ゲインG1が「1」よりも大きい値に設定され、差が負である場合には第1の補正ゲインG1が「1」未満の値に設定される。なお、同差が「0(零)」である場合、第1の補正ゲインG1は「1」とされる。
また、第2の補正ゲインG2は、図12に示す図に応じたマップを用いることにより、ブレーキ液の温度TMPに応じた値に設定することができる。すなわち、そのときのブレーキ液の温度TMPに基づいたマップが読み出されるとともに、ブレーキ液の温度TMPが室温であるときのマップ(以下、「基準液温マップ」ともいう。)が読み出される。そして、そのときのブレーキ液の温度TMPに基づいたマップを用い、その時点の実差圧Xに応じたヒステリシス量である第1ヒステリシス量HY21が求められる。また、基準液温マップを用い、その時点の実差圧Xに応じたヒステリシス量である第2ヒステリシス量HY22が求められる。そして、第1ヒステリシス量HY21から第2ヒステリシス量HY22を減じた差が正である場合には第2の補正ゲインG2が「1」よりも大きい値に設定され、差が負である場合には第2の補正ゲインG2が「1」未満の値に設定される。なお、同差が「0(零)」である場合、第2の補正ゲインG2は「1」とされる。
次に、図13に示すフローチャートを参照して、差圧の減圧が開始される時点及び差圧の増圧が開始される時点を検出するためにECU60が実行する処理ルーチンについて説明する。なお、この処理ルーチンは、予め設定されている制御サイクル毎に実行される。
図13に示すように、ECU60は、現時点の実差圧Xを演算する(ステップS11)。続いて、ECU60は、減圧判定フラグFLG1がオフであって且つ増圧判定フラグFLG2がオンであるか否かを判定する(ステップS12)。減圧判定フラグFLG1は、実差圧Xが増大されていないときにオンにセットされるフラグであり、増圧判定フラグFLG2は、実差圧Xが減少されていないときにオンにセットされるフラグである。本実施形態では、減圧判定フラグFLG1がオフであって且つ増圧判定フラグFLG2がオンである状態を「増圧状態」といい、減圧判定フラグFLG1がオンであって且つ増圧判定フラグFLG2がオフである状態を「減圧状態」というものとする。
減圧判定フラグFLG1がオフであって且つ増圧判定フラグFLG2がオンである場合(ステップS12:YES)、すなわち増圧状態である場合、ECU60は、その処理を次のステップS13に移行する。一方、減圧判定フラグFLG1がオンであって且つ増圧判定フラグFLG2がオフである場合(ステップS12:NO)、すなわち減圧状態である場合、ECU60は、その処理を後述するステップS19に移行する。
ステップS13において、ECU60は、最小値ホールド値H_minに予め設定されている初期値H_minAを設定する。この初期値H_minAは、ECU60が制御するブレーキアクチュエータ30で発生させることのできる差圧の最大値又は同最大値よりも大きい値に設定されている。続いて、ECU60は、現時点の最大値ホールド値H_maxと、ステップS11で演算した実差圧Xとを比較し、大きい方の値を最新の最大値ホールド値H_maxとする(ステップS14)。すなわち、最大値ホールド値H_maxは、実差圧Xが増大されているときには同実差圧Xの増大に伴って次第に大きくなる。一方、実差圧Xが増大して要求差圧Mに達し、実差圧Xが要求差圧Mで保持されている場合、最大値ホールド値H_maxもまた保持されることとなる。
そして、ECU60は、ステップS14で更新した最大値ホールド値H_maxからステップS11で演算した実差圧Xを減じ、その差(=H_max−X)を差圧減少量ΔX1とする(ステップS15)。続いて、ECU60は、演算した差圧減少量ΔX1が予め設定されている減少判定値ΔX1_Th以上であるか否かを判定する(ステップS16)。この減少判定値ΔX1_Thは、実差圧Xの減少が実際に開始されたか否かを判定するための基準値である。そのため、差圧減少量ΔX1が減少判定値ΔX1_Th以上である場合には、要求差圧Mが小さい値に変更されたことにより、実差圧Xの減少が開始されたと判定することができる。一方、差圧減少量ΔX1が減少判定値ΔX1_Th未満である場合には、実差圧Xが増大している、又は実差圧Xの減少が未だ開始されていないと判定することができる。
そして、差圧減少量ΔX1が減少判定値ΔX1_Th未満である場合(ステップS16:NO)、ECU60は、ステップS17,S18を実行することなく、本処理ルーチンを一旦終了する。一方、差圧減少量ΔX1が減少判定値ΔX1_Th以上である場合(ステップS16:YES)、ECU60は、減圧判定フラグFLG1をオンにするとともに、増圧判定フラグFLG2をオフにする(ステップS17)。そして、ECU60は、現時点の実差圧Xを減圧開始時差圧XDとしてRAM63の所定領域に記憶させる(ステップS18)。すなわち、増圧状態から減圧状態に移行したと判定できた場合(ステップS16:YES)に、その時点の実差圧Xが減圧開始時差圧XDとして取得される。この点で、本実施形態では、ECU60が、「減圧開始時差圧取得部」としても機能する。その後、ECU60は、その後、本処理ルーチンを一旦終了する。
ステップS19において、ECU60は、最大値ホールド値H_maxに予め設定されている初期値H_maxAを設定する。この初期値H_maxAは、極めて小さい値に設定されており、例えば、「0(零)」に設定されている。続いて、ECU60は、現時点の最小値ホールド値H_minと、ステップS11で演算した実差圧Xとを比較し、小さい方の値を最新の最小値ホールド値H_minとする(ステップS20)。
そして、ECU60は、ステップS11で演算した実差圧XからステップS20で更新した最小値ホールド値H_minを減じ、その差(=X−H_min)を差圧増大量ΔX2とする(ステップS21)。続いて、ECU60は、演算した差圧増大量ΔX2が予め設定されている増大判定値ΔX2_Th以上であるか否かを判定する(ステップS22)。この増大判定値ΔX2_Thは、実差圧Xの増大が実際に開始されたか否かを判定するための基準値である。そのため、差圧増大量ΔX2が増大判定値ΔX2_Th以上である場合には、要求差圧Mが大きい値に変更されたことにより、実差圧Xの増大が開始されたと判定することができる。一方、差圧増大量ΔX2が増大判定値ΔX2_Th未満である場合には、実差圧Xが減少している、又は実差圧Xの増大が未だ開始されていないと判定することができる。なお、増大判定値ΔX2_Thは、「0(零)」よりも大きい値であれば、減少判定値ΔX1_Thと同一値であってもよいし、減少判定値ΔX1_Thとは異なる値であってもよい。
そして、差圧増大量ΔX2が増大判定値ΔX2_Th未満である場合(ステップS22:NO)、ECU60は、ステップS23,S24を実行することなく、本処理ルーチンを一旦終了する。一方、差圧増大量ΔX2が増大判定値ΔX2_Th以上である場合(ステップS22:YES)、ECU60は、減圧判定フラグFLG1をオフにするとともに、増圧判定フラグFLG2をオンにする(ステップS23)。そして、ECU60は、現時点の実差圧Xを増圧開始時差圧XIとしてRAM63の所定領域に記憶させる(ステップS24)。すなわち、減圧状態から増圧状態に移行したと判定できた場合(ステップS22:YES)に、その時点の実差圧Xが増圧開始時差圧XIとして取得される。この点で、本実施形態では、ECU60が、「増圧開始時差圧取得部」としても機能する。その後、ECU60は、その後、本処理ルーチンを一旦終了する。
次に、図14に示すフローチャートを参照して、差圧弁32に対する指示電流値Ipを決定するためにECU60が実行する処理ルーチンについて説明する。なお、この処理ルーチンは、上記制御サイクル毎に実行される。
図14に示すように、本処理ルーチンにおいて、ECU60は、減圧判定フラグFLG1がオンであるか否かを判定する(ステップS31)。減圧判定フラグFLG1がオンである場合、増圧判定フラグFLG2がオフであり、減圧状態であると判定することができる。一方、減圧判定フラグFLG1がオフである場合、増圧判定フラグFLG2がオンであり、増圧状態であると判定することができる。そして、減圧判定フラグFLG1がオンである場合(ステップS31:YES)、ECU60は、その処理を次のステップS32に移行する。一方、減圧判定フラグFLG1がオフである場合(ステップS31:NO)、ECU60は、その処理を後述するステップS39に移行する。
ステップS32において、ECU60は、減圧開始時差圧XDから実差圧Xを減じることにより、差圧変化量ΔXBを求める。続いて、ECU60は、ポンプ38からのブレーキ液の吐出量Y及び温度TMPを読み出す(ステップS33)。なお、ブレーキ液の温度TMPを検出する方法としては、ブレーキ液の温度を検出するための温度センサを液圧回路311,312に設け、同温度センサによって検出される温度を採用してもよいし、車両に設けられている外気温を検出するセンサからの検出信号に基づいて推定したブレーキ液の温度であってもよい。
そして、ECU60は、補正増大勾配DRIの演算処理を行う(ステップS34)。すなわち、ECU60は、図5に示すマップを用い、減圧開始時差圧XDに応じた増大勾配DIZを設定する。また、ECU60は、図11に示す図に応じたマップを用い、吐出量Yに応じた第1の補正ゲインG1を設定するとともに、図12示す図に応じたマップを用い、ブレーキ液の温度TMPに応じた第2の補正ゲインG2を設定する。そして、ECU60は、設定した増大勾配DIZ、第1の補正ゲインG1及び第2の補正ゲインG2を上記関係式(式2)に代入することにより、補正増大勾配DRIを求める。
続いて、ECU60は、ステップS34で演算した補正増大勾配DRIにステップS32で演算した差圧変化量ΔXBを乗じることにより、補正量Zを求める(ステップS35)。次のステップS36において、ECU60は、現時点の実差圧Xに応じた制限値Z_Limを取得する(図5参照)。続いて、ECU60は、ステップS35で演算した補正量ZがステップS37で取得した制限値Z_Lim以上であるか否かを判定する(ステップS37)。補正量Zが制限値Z_Lim未満である場合(ステップS37:NO)、ECU60は、ステップS38を実行することなく、その処理を後述するステップS46に移行する。一方、補正量Zが制限値Z_Lim以上である場合(ステップS37:YES)、ECU60は、補正量Zを制限値Z_Limとし(ステップS38)、その処理を次のステップS46に移行する。この点で、ECU60が、指示電流値を補正するための補正量を、減圧開始時差圧に応じて設定する「減圧時補正量設定部」としても機能する。
ステップS39において、ECU60は、実差圧Xから増圧開始時差圧XIを減じることにより、差圧変化量ΔXAを求める。続いて、ECU60は、ポンプ38からのブレーキ液の吐出量Y及び温度TMPを読み出す(ステップS40)。そして、ECU60は、補正減少勾配DRDの演算処理を行う(ステップS41)。すなわち、ECU60は、図10に示すマップを用いて基準減少勾配DDZBを増圧開始時差圧XIに応じた値にするとともに、第3の補正ゲインG3を増圧開始時ヒステリシス量HYIに応じた値にする。そして、ECU60は、基準減少勾配DDZB及び第3の補正ゲインG3を上記関係式(式1)に代入することにより、減少勾配DDZを求める。また、ECU60は、図11に示す図に応じたマップを用い、吐出量Yに応じた第1の補正ゲインG1を設定するとともに、図12に示す図に応じたマップを用い、ブレーキ液の温度TMPに応じた第2の補正ゲインG2を設定する。そして、ECU60は、設定した減少勾配DDZ、第1の補正ゲインG1及び第2の補正ゲインG2を上記関係式(式3)に代入することにより、補正減少勾配DRDを求める。
続いて、ECU60は、実差圧Xの減少が終了された時点、すなわち実差圧Xの増大が開始される時点の補正量ZAを読み出す(ステップS42)。この補正量ZAが、「規定量」に応じた値となる。すなわち、補正量ZAを電流値に変換した値が規定量となる。そして、ECU60は、読み出した補正量ZAから、ステップS41で演算した補正減少勾配DRDにステップS39で演算した差圧変化量ΔXAを乗じた積を減じることにより、補正量Zを求める(ステップS43)。すなわち、ECU60は、減圧状態から増圧状態への移行によって実差圧Xを要求差圧Mまで増大させるとき、設定された補正減少勾配DRDに基づいて、増圧開始時補正量である補正量ZAから補正量Zを小さくする。
そして、ECU60は、演算した補正量Zが「0(零)」以下であるか否かを判定する(ステップS44)。補正量Zが「0(零)」よりも大きい場合(ステップS44:NO)、ECU60は、その処理を後述するステップS46に移行する。一方、補正量Zが「0(零)」以下である場合(ステップS44:YES)、ECU60は、補正量Zを「0(零)」に設定し(ステップS45)、その処理を次のステップS46に移行する。すなわち、実差圧Xを増大させる場合、補正量Zが「0(零)」未満になることが規制される。この点で、本実施形態では、ECU60が、ステップS41で設定された補正減少勾配DRDで、増圧開始時補正量である補正量ZAから補正量Zを小さくする「増圧時補正量設定部」としても機能する。
ステップS46において、ECU60は、設定されている要求差圧Mから補正量Zを減じることにより、補正要求差圧MZを求める。続いて、ECU60は、図2に破線で示すマップを用い、指示電流値Ipを、ステップS46で演算した補正要求差圧MZに応じた値に設定する。(ステップS47)。この点で、本実施形態では、ECU60が、「指示値設定部」としても機能する。その後、ECU60は、本処理ルーチンを終了する。
次に、図15に示すタイミングチャートを参照して、実差圧Xを調整する際の作用について説明する。なお、前提として、ブレーキ液の温度TMPは室温であり、実差圧Xを調整する際におけるポンプ38からのブレーキ液の吐出量Yは第1の吐出量Y1で一定であるものとする。
図15(a)に示すように、第1のタイミングt1で、要求差圧Mが第1の要求差圧MC1に設定される。この第1のタイミングt1では、実差圧Xが「0(零)」であり、同タイミングから差圧弁32及びポンプ38が駆動し始める。このように実差圧Xを「0(零)」から要求差圧M(この場合、第1の要求差圧MC1)まで増大させる場合、ヒステリシスを加味することなく、図2に示すマップMAP1を用い、指示電流値Ipが要求差圧M(この場合、第1の要求差圧MC1)に応じた値に設定される。すると、指示電流値Ipの変更に伴って駆動電流値Idが上昇することにより、実差圧Xがほぼ一定勾配で増大される。このとき、実差圧Xの増大が開始される時点のヒステリシス量HYは「0(零)」であるため、図15(d)に示すように、補正量Zは「0(零)」となっている。
そして、第2のタイミングt2に達すると、実差圧Xが要求差圧M(すなわち、第1の要求差圧MC1)まで増大される。そして、第2のタイミングt2から第3のタイミングt3までは、実差圧Xが要求差圧M(すなわち、第1の要求差圧MC1)で保持される。そのため、図15(c)に示すように、差圧増大量ΔX2は、第1のタイミングt1から第2のタイミングt2までは時間が経過するに連れて次第に大きくなり、第2のタイミングt2から第3のタイミングt3までは変化しない。また、図15(b)に示すように、第1のタイミングt1から第3のタイミングt3までは、実差圧Xの減少が要求されないため、増圧状態とされる、すなわち増圧判定フラグFLG2がオンで保持される。
そして、第3のタイミングt3で、要求差圧Mが、第1の要求差圧MC1よりも小さい第2の要求差圧MC2に変更される。すると、要求差圧Mの変更に伴い、指示電流値Ipが、第2の要求差圧MC2に応じた値に設定される。この指示電流値Ipが「基準指示電流値」となる。すると、指示電流値Ipの減少に伴って駆動電流値Idの降下が開始される。しかし、こうした駆動電流値Idの降下開始の直後にあっては、最大値ホールド値H_maxから実差圧Xを減じた差である差圧減少量ΔX1が減少判定値ΔX1_Th未満となる(ステップS16:NO)。そのため、差圧の減少が開始されたと判定されず、増圧状態が保持される(図15(a),(b)参照)。
第4のタイミングt4になると、差圧減少量ΔX1が減少判定値ΔX1_Th以上となり(ステップS16:YES)、増圧状態から減圧状態に移行される。すなわち、増圧判定フラグFLG2がオフとなり、減圧判定フラグFLG1がオンになる(ステップS17)。さらに、第4のタイミングt4における実差圧Xが減圧開始時差圧XDとして記憶される(ステップS18)。すると、第4のタイミングt4以降では、減圧開始時差圧XDからの実差圧Xの減少量が差圧変化量ΔXBとして演算される(ステップS32)。
このように増圧状態から減圧状態に移行した場合、補正量Zが設定される。すなわち、第4のタイミングt4では、図5に示すマップを用い、増大勾配DIZが減圧開始時差圧XDに応じた値に設定される。また、第1の補正ゲインG1がポンプ38からのブレーキ液の吐出量Yに応じた値に設定され、第2の補正ゲインG2がブレーキ液の温度TMPに応じた値に設定される。そして、このように設定された増大勾配DIZ、第1の補正ゲインG1及び第2の補正ゲインG2を上記関係式(式2)に代入することにより、補正増大勾配DRIが求められる(ステップS34)。
第4のタイミングt4から第5のタイミングt5までは、補正増大勾配DRIに差圧変化量ΔXBを乗じた積が、制限値Z_Lim(ここでは、上限値Z_max)未満である(ステップS37:NO)。そのため、補正量Zの増大が継続される。しかし、第5のタイミングt5に達すると、補正増大勾配DRIに差圧変化量ΔXBを乗じた積が、制限値Z_Lim(ここでは、上限値Z_max)と等しくなり、第5のタイミングt5以降では、図15(d)に破線で示すように、上記積が制限値Z_Limよりも大きくなる(ステップS37:YES)。すなわち、第4のタイミングt4から第5のタイミングt5までは、差圧弁32による差圧である実差圧Xが減圧時差圧領域内で減少している。そして、第5のタイミングt5で実差圧Xが減圧時差圧領域の下限値に達する。そのため、第5のタイミングt5以降にあっては、補正量Zは制限値Z_Limと等しい値となる。
そして、第4のタイミングt4以降では、要求差圧M(すなわち、第2の要求差圧MC2)から補正量Zを減じることにより、補正要求差圧MZが求められる(ステップS46)。そして、この補正要求差圧MZに応じた指示電流値Ipが設定される(ステップS47)。すなわち、指示電流値Ipは、第3のタイミングt3で設定された基準指示電流値から補正増大勾配DRIに応じた勾配で減少される。すると、指示電流値Ipの減少に伴う駆動電流値Idの降下によって、実差圧Xは、要求差圧M(すなわち、第2の要求差圧MC2)に向けて円滑に減少される。そして、第6のタイミングt6で、実差圧Xが要求差圧M(すなわち、第2の要求差圧MC2)に達し、実差圧Xが保持されるようになる(図15(a)参照)。なお、第4のタイミングt4から第7のタイミングt7までは、実差圧Xの増大が要求されないため、減圧状態とされる、すなわち減圧判定フラグFLG1がオンで保持される(図15(b)参照)。
そして、第7のタイミングt7で、要求差圧Mが、第2の要求差圧MC2よりも大きい第3の要求差圧MC3に変更される。すると、要求差圧Mの変更に伴い、指示電流値Ipが、第3の要求差圧MC3に応じた値に設定される。この指示電流値Ipが「基準指示電流値」となる。すると、指示電流値Ipの増大に伴って駆動電流値Idの上昇が開始される。しかし、こうした駆動電流値Idの上昇開始の直後にあっては、実差圧Xから最小値ホールド値H_minを減じた差である差圧増大量ΔX2が増大判定値ΔX2_Th未満となる(ステップS22:NO)。そのため、差圧の増大が開始されたと判定されず、減圧状態が保持される(図15(a),(b)参照)。
第8のタイミングt8になると、差圧増大量ΔX2が増圧判定値ΔX2_Th以上となり(ステップS22:YES)、減圧状態から増圧状態に移行される。すなわち、減圧判定フラグFLG1がオフとなり、増圧判定フラグFLG2がオンになる(ステップS23)。さらに、第8のタイミングt8における実差圧Xが増圧開始時差圧XIとして記憶される(ステップS24)。すると、第8のタイミングt8以降では、増圧開始時差圧XIからの実差圧Xの増大量が差圧変化量ΔXAとして演算される(ステップS39)。
第8のタイミングt8以降の状態は、実差圧Xの増大が再び開始された状態である。この場合、増圧開始時ヒステリシス量HYIは「0(零)」よりも大きい。そこで、本実施形態では、第8のタイミングt8では、上記関係式(式1)を用いることにより、増圧開始時差圧XI及び増圧開始時ヒステリシス量HYIに応じた減少勾配DDZが設定される。そして、こうした減少勾配DDZと、吐出量Yに応じた第1の補正ゲインG1と、ブレーキ液の温度TMPに応じた第2の補正ゲインG2を上記関係式(式3)に代入することにより、補正減少勾配DRDが求められる(ステップS41)。
そして、第8のタイミングt8から第9のタイミングt9までは、第8のタイミングt8における補正量ZAから補正減少勾配DRDに差圧変化量ΔXAを乗じた積を減じることにより、補正量Zが求められる(ステップS43)。すなわち、補正量Zは、補正減少勾配DRDに基づいて次第に小さくなる。この補正量Zが「0(零)」よりも大きい場合(ステップS44:NO)、要求差圧Mからこの補正量Zを減じることにより、補正要求差圧MZが求められる(ステップS46)。すると、この補正要求差圧MZに応じた指示電流値Ipが設定される。すなわち、指示電流値Ipは、第8のタイミングt8で設定された基準指示電流値から補正減少勾配DRDに応じた勾配で増大される。すると、指示電流値Ipの変更に伴って駆動電流値Idが上昇する。
また、上記補正量Zが「0(零)」以下になると(ステップS44:YES)、補正量Zは「0(零)」で保持される。この場合、補正要求差圧MZは要求差圧M(この場合、第3の要求差圧MC3)と一致するようになるため、指示電流値Ipは要求差圧M(すなわち、第3の要求差圧MC3)に応じた値となる。すなわち、第8のタイミングt8から補正量Zが「0(零)」になるタイミングまでは、差圧弁32による差圧である実差圧Xが増圧時差圧領域内で増大している。そして、補正量Zが「0(零)」になるタイミングで実差圧Xが増圧時差圧領域の上限値に達する。つまり、実差圧Xが増圧時差圧領域外で増大している場合、補正量Zが「0(零)」で維持される。
これにより、第8のタイミングt8からは実差圧Xがほぼ一定勾配で大きくなる。そして、第9のタイミングt9で、実差圧Xは、要求差圧M(すなわち、第3の要求差圧MC3)に達する。
この第9のタイミングt9では、要求差圧Mが第3の要求差圧MC3から「0(零)」に変更される。すなわち、要求差圧Mが小さくなる。そして、指示電流値Ipが、「0(零)」に応じた値に設定される。この指示電流値Ipが「基準指示電流値」となる。すると、指示電流値Ipの減少に伴って、第9のタイミングt9からは、駆動電流値Idが降下され、実差圧Xが減少し始める。そして、第10のタイミングt10で、差圧減少量ΔX1が減少判定値ΔX1_Th以上になり、増圧状態から減圧状態に移行される(図15(b)参照)。すると、第10のタイミングt10で記憶された減圧開始時差圧XDに基づき、補正増大勾配DRIが求められ(ステップS34)、この補正増大勾配DRIと差圧変化量ΔXBとに基づいて補正量Zが求められる(ステップS35)。
こうした補正量Zは、実差圧Xが要求差圧M(すなわち、「0(零)」)に近づくに連れて次第に大きくなる。しかし、第11のタイミングt11で、補正増大勾配DRIに差圧変化量ΔXBを乗じた積が、制限値Z_Lim(ここでは、上限値Z_max)になるため(ステップS37:YES)、補正量Zは制限値Z_Limとされる(ステップS38)。
そして、要求差圧Mからこうした補正量Zを減じることにより補正要求差圧MZを求め(ステップS46)、この補正要求差圧MZに応じた指示電流値Ipに基づき、駆動電流値Idの降下が制御される。このときの指示電流値Ipは、第10のタイミングt10で演算した補正増大勾配DRIに応じた勾配で減少される。ただし、第12のタイミングt12を経過すると、実差圧Xが規定差圧X_Th未満となる。そのため、図15(d)に一点鎖線で示すように、制限値Z_Limが実差圧Xの減少に合わせて小さくなる。すなわち、補正量Zは、制限値Z_Limの減少に合わせて小さくなる。そして、第13のタイミングt13に達すると、実差圧Xが要求差圧M(すなわち、「0(零)」)になり、差圧の制御が終了される。すなわち、ポンプ38の駆動が停止される。
以上、上記構成及び作用によれば、以下に示す効果を得ることができる。
(1)実差圧Xを制御している際に、増圧状態から減圧状態に移行した場合、差圧弁32に対する指示電流値Ipが減圧開始時差圧XDに基づき設定される。すなわち、ヒステリシスの影響があるため、指示電流値Ipは、減圧開始時差圧XDが大きいときほど小さくされる。このようにヒステリシス量HYの変化態様が減圧開始時差圧XDの大きさによって変わることを鑑み、減圧開始時差圧XDに基づいて指示電流値Ipを設定することにより、実差圧Xを要求差圧Mまで好適に減少させることができる。
(2)すなわち、減圧状態では、実差圧Xを要求差圧Mまで減少させる場合、補正量Zが、減圧開始時差圧XDが大きいほど大きくされる。そして、要求差圧Mからこうした補正量Zを減じることにより、補正要求差圧MZが演算され、こうした補正要求差圧MZに応じて指示電流値Ipを設定することにより、指示電流値Ipを、減圧開始時差圧XDに応じた勾配で減少させることができる。したがって、減圧状態では、指示電流値Ipをこのように減少させることにより、実差圧Xを要求差圧Mまで円滑に減少させることができる。
(3)ここで、減圧状態で減圧開始時差圧XDに応じて演算した補正量Zが大き過ぎると、補正要求差圧MZ及び指示電流値Ipが小さくなり過ぎ、実差圧Xが要求差圧Mを大幅に下回ってしまうことがある。そこで、本実施形態では、補正量Zが制限値Z_Limを上回らないようにした。その結果、補正要求差圧MZ及び指示電流値Ipが小さくなり過ぎることが抑制されるため、実差圧Xが要求差圧Mを大幅に下回る事象の発生を抑制することができる。
(4)なお、実差圧Xが小さい場合、駆動電流値Idの降下に対する実差圧Xの減少率が高い。そのため、実差圧Xを減少させている場合、ヒステリシス量HYの減少勾配は、実差圧Xが小さいときほど急勾配となる。よって、実差圧Xが規定差圧X_Th以上であるときには制限値Z_Limを上限値Z_maxとする一方で、実差圧Xが規定差圧X_Th未満であるときには制限値Z_Limを実差圧Xが小さいほど小さくするようにした。そのため、制限値Z_Limを、そのときの実差圧Xに応じた適切な値に設定することができ、補正量Zが大きくなり過ぎることを好適に規制することができる。したがって、実差圧Xを減少させるときには、実差圧Xが要求差圧Mを大幅に下回る事象の発生を抑制することができ、ひいては実差圧Xを高精度に制御することができる。
(5)また、本実施形態では、減圧開始時差圧XDに応じた増大勾配DIZ(DIZ1〜DIZ3)を求め、この増大勾配DIZに基づいて補正量Zを演算している。その結果、減圧状態では、そのときのヒステリシス量HYの変化態様に見合った勾配で、補正量Zを増大させることができる。これにより、指示電流値Ipを、そのときのヒステリシス量HYの変化態様に見合った勾配で減少させることができる。これにより、実差圧Xを要求差圧Mに向けて円滑に、すなわち実差圧Xを要求差圧Mまでほぼ一定勾配で減少させることができる。したがって、車輪FR,RLに対する制動トルクを徐々に低くすることができる。
(6)増大勾配DIZ1〜DIZ3は、差圧領域R11〜R13毎に用意されている。そのため、減圧開始時差圧XD毎に増大勾配DIZを用意する場合と比較して、ECU60の制御負荷の増大を抑制することができる。
(7)本実施形態では、減圧開始時差圧XDに応じて設定した増大勾配DIZを、そのときのポンプ38からのブレーキ液の吐出量Yによって補正することにより、補正増大勾配DRIが演算される。こうした補正増大勾配DRIに基づいて補正量Zを演算し、この補正量Zに基づいて補正要求差圧MZ及び指示電流値Ipが設定される。このようにそのときのブレーキ液の吐出量Yを加味して指示電流値Ipの減少態様を決定することにより、実差圧Xをより高精度に制御することができる。
(8)また、本実施形態では、減圧開始時差圧XDに応じて設定した増大勾配DIZを、そのときのブレーキ液の温度TMPによって補正することにより、補正増大勾配DRIが演算される。こうした補正増大勾配DRIに基づいて補正量Zを演算し、この補正量Zに基づいて補正要求差圧MZ及び指示電流値Ipが設定される。このようにそのときのブレーキ液の温度TMPを加味して指示電流値Ipの減少態様を決定することにより、実差圧Xをより高精度に制御することができる。
(9)減圧状態から増圧状態に移行される場合、増圧開始時ヒステリシス量HYIが「0(零)」よりも大きいことがある。この場合、増圧開始時差圧XIもまた「0(零)」よりも大きいため、増圧開始時差圧XIに基づいて指示電流値Ipの増大態様を制御することにより、実差圧Xを要求差圧Mまで円滑に増大させることができる。すなわち、本実施形態では、増圧開始時差圧XIに基づいて補正減少勾配DRDを求め、差圧Xの増大が開始される時点の補正量ZAから、補正減少勾配DRDに差圧変化量ΔXAを乗じた積を減じることにより補正量Zを求めている。そして、この補正量Zに基づいて補正要求差圧MZ及び指示電流値Ipが設定される。すなわち、指示電流値Ipを、増圧開始時差圧XIに応じた増大勾配で増大させることができる。その結果、実差圧Xが要求差圧Mまで円滑に増大される。したがって、実差圧Xの増大時には、増圧開始時差圧XIを考慮した補正要求差圧MZ及び指示電流値Ipを設定することにより、実差圧Xを要求差圧Mまで好適に増大させることができる。
(10)また、補正減少勾配DRDを、増圧開始時ヒステリシス量HYIを考慮して求めている。そして、こうした補正減少勾配DRDに基づいて補正量Zを求め、同補正量Zに基づいて補正要求差圧MZ及び指示電流値Ipが設定される。このように増圧開始時差圧XIに加えて増圧開始時ヒステリシス量HYIをも考慮して指示電流値Ipの増大態様を決定することにより、実差圧Xを増大させるときにおける実差圧Xの制御性をさらに向上させることができる。
(11)また、補正減少勾配DRDを、そのときのポンプ38からのブレーキ液の吐出量Yも考慮して求めている。そして、この補正減少勾配DRDに基づいて補正量Zを演算し、この補正量Zに基づいた補正要求差圧MZ及び指示電流値Ipを設定することにより、実差圧Xをより高精度に制御することができる。
(12)また、補正減少勾配DRDを、そのときのブレーキ液の温度TMPも考慮して求めている。そして、この補正減少勾配DRDに基づいて補正量Zを演算し、この補正量Zに基づいた補正要求差圧MZ及び指示電流値Ipを設定することにより、実差圧Xをより高精度に制御することができる。
(13)また、増圧状態では、補正量Zが「0(零)」未満になることを規制している。そのため、補正要求差圧MZが要求差圧Mよりも大きくなることを規制できる。その結果、実差圧Xが要求差圧Mを大幅に上回る事象の発生を抑制することができる。
なお、上記実施形態は以下のような別の実施形態に変更してもよい。
・ヒステリシス量HYの発生態様や変化態様が、ブレーキ液の温度TMPによってあまり変わることがないのであれば、補正減少勾配DRDを、ブレーキ液の温度TMPを考慮することなく求めるようにしてもよい。この場合であっても、補正減少勾配DRDを、増圧開始時ヒステリシス量HYIや増圧開始時差圧XIを考慮して求めることにより、上記(9),(10)と同等の効果を得ることができる。
・ヒステリシス量HYの発生態様や変化態様が、液圧回路311,312内におけるブレーキ液の流量によってあまり変わることがないのであれば、補正減少勾配DRDを、ポンプ38からのブレーキ液の吐出量Yを考慮することなく求めるようにしてもよい。この場合であっても、補正減少勾配DRDを、増圧開始時ヒステリシス量HYIや増圧開始時差圧XIを考慮して求めることにより、上記(9),(10)と同等の効果を得ることができる。
・補正減少勾配DRDを、増圧開始時ヒステリシス量HYIを考慮するのであれば、増圧開始時差圧XIを考慮することなく求めるようにしてもよい。この場合であっても、上記(10)と同等の効果を得ることができる。
例えば、補正減少勾配DRDは、増圧開始時差圧XIの大小とは関係なく、増圧開始時ヒステリシス量HYIが大きいほど緩やかな勾配に設定される。そして、増圧状態であって、且つ要求差圧Mが増圧時差圧領域内に含まれる場合には、こうした補正減少勾配DRDに基づいて補正量Zを減少させることにより、指示電流値Ipを、増圧開始時ヒステリシス量HYIに応じた勾配で増大させることができる。その結果、実差圧Xを変更前の要求差圧から変更後の要求差圧近傍まで円滑に増大させることができる。なお、この場合における上記増圧時差圧領域とは、増圧開始時差圧XIと、増圧開始時ヒステリシス量HYIに応じた所定差圧と増圧開始時差圧XIとの和である境界差圧との間の領域のことである。そして、変更後の要求差圧Mが増圧時差圧領域の上限値に達すると、補正量Zが「0(零)」となる。
一方、増圧状態であっても要求差圧Mが増圧時差圧領域の上限値よりも大きい場合、実差圧Xが増圧時差圧領域の上限値に達するまでは、増圧開始時ヒステリシス量HYIに応じた補正減少勾配DRDに基づいて、補正量Zを減少させる。すると、実差圧Xが増圧時差圧領域の上限値に達した時点で補正量Zが「0(零)」となる。その後、実差圧Xが増圧時差圧領域外で上昇する場合には、補正量Zが「0(零)」で保持されることとなる。これにより、指示電流値Ipが、要求差圧Mに応じた基準指示電流値よりも大きくなることが抑制され、実差圧Xが要求差圧Mを大幅に上回る事象の発生を抑制することができる。
・補正減少勾配DRDを、増圧開始時差圧XIを考慮するのであれば、増圧開始時ヒステリシス量HYIを考慮することなく求めるようにしてもよい。この場合であっても、上記(9)と同等の効果を得ることができる。
例えば、補正減少勾配DRDは、増圧開始時ヒステリシス量HYIの大小とは関係なく、増圧開始時差圧XIが小さいほど緩やかな勾配に設定される。そして、増圧状態であって、且つ要求差圧Mが増圧時差圧領域内に含まれる場合には、こうした補正減少勾配DRDに基づいて補正量Zを減少させることにより、指示電流値Ipを、増圧開始時差圧XIに応じた勾配で増大させることができる。その結果、実差圧Xを変更前の要求差圧から変更後の要求差圧近傍まで円滑に増大させることができる。なお、上記増圧時差圧領域とは、増圧開始時差圧XIと、増圧開始時差圧XIに応じた所定差圧と増圧開始時差圧XIとの和である境界差圧との間の領域のことである。そして、変更後の要求差圧Mが増圧時差圧領域の上限値に達すると、補正量Zが「0(零)」となる。
一方、増圧状態であっても要求差圧Mが増圧時差圧領域の上限値よりも大きい場合、実差圧Xが増圧時差圧領域の上限値に達するまでは、増圧開始時差圧XIに応じた補正減少勾配DRDに基づいて、補正量Zを減少させる。すると、実差圧Xが増圧時差圧領域の上限値に達した時点で補正量Zが「0(零)」となる。その後、実差圧Xが増圧時差圧領域外で上昇する場合には、補正量Zが「0(零)」で保持されることとなる。これにより、指示電流値Ipが、要求差圧Mに応じた基準指示電流値よりも大きくなることが抑制され、実差圧Xが要求差圧Mを大幅に上回る事象の発生を抑制することができる。
・ヒステリシス量HYの発生態様や変化態様が、ブレーキ液の温度TMPによってあまり変わることがないのであれば、補正増大勾配DRIを、ブレーキ液の温度TMPを考慮することなく求めるようにしてもよい。この場合であっても、補正増大勾配DRIを、減圧開始時差圧XDを考慮して求めることにより、上記(1)〜(6)と同等の効果を得ることができる。
・ヒステリシス量HYの発生態様や変化態様が、液圧回路311,312内におけるブレーキ液の流量によってあまり変わることがないのであれば、補正増大勾配DRIを、ポンプ38からのブレーキ液の吐出量Yを考慮することなく求めるようにしてもよい。この場合であっても、補正増大勾配DRIを、減圧開始時差圧XDを考慮して求めることにより、上記(1)〜(6)と同等の効果を得ることができる。
・減少勾配DDZを、増圧開始時差圧XIが小さいときほど緩やかにすることができるのであれば、上記実施形態での設定方法とは異なる他の方法で設定するようにしてもよい。例えば、増圧開始時差圧XIが第1の差圧であるときの減少勾配を規定減少勾配とする。そして、増圧開始時差圧XIが第1の差圧よりも大きい場合には、補正ゲインを「1」よりも大きい値とし、この補正ゲインを規定減少勾配に乗じることにより減少勾配DDZを求めるようにしてもよい。逆に、増圧開始時差圧XIが第1の差圧よりも小さい場合には、補正ゲインを「1」よりも小さくかつ「0(零)」よりも大きい値とし、この補正ゲインを規定減少勾配に乗じることにより減少勾配DDZを求めるようにしてもよい。この場合であっても、上記(9)と同等の効果を得ることができる。
・増大勾配DIZを、減圧開始時差圧XDが小さいときほど緩やかにすることができるのであれば、上記実施形態での設定方法とは異なる他の方法で設定するようにしてもよい。例えば、減圧開始時差圧XDが第1の差圧であるときの増大勾配を規定増大勾配とする。そして、減圧開始時差圧XDが第1の差圧よりも小さい場合には、補正ゲインを「1」よりも小さい値(例えば、0.9)とし、この補正ゲインを規定増大勾配に乗じることにより増大勾配DIZを求めるようにしてもよい。逆に、減圧開始時差圧XDが第1の差圧よりも大きい場合には、補正ゲインを「1」よりも大きい値(例えば、1.2)とし、この補正ゲインを規定増大勾配に乗じることにより増大勾配DIZを求めるようにしてもよい。この場合であっても、上記(5)と同等の効果を得ることができる。
・記憶部として機能するROM62に記憶される特性は、ある差圧から実差圧Xを「0(零)」まで減少させる際における駆動電流値Idと実差圧Xとの関係を示すマップ又は関数であってもよい。また、特性は、ある差圧から実差圧Xを「0(零)」まで減少させる際における駆動電流値Idと実差圧Xとの関係を示すマップ又は関数と、実差圧Xを「0(零)」から増大させる際における駆動電流値Idと実差圧Xとの関係を示すマップ又は関数との間となる特性を示すマップ又は関数であってもよい。
・実差圧Xを減少させるための補正量Zの設定方法としては、上記実施形態以外の他の方法を採用してもよい。例えば、減圧開始時差圧XDが大きいほど第1補正量を大きい値に設定し、ポンプ38からのブレーキ液の吐出量Yに応じた第2補正量を設定し、ブレーキ液の温度TMPに応じた第3補正量を設定する。そして、第1補正量、第2補正量及び第3補正量の和を補正量Zとするようにしてもよい。この場合であっても、上記(1)と同等の効果を得ることができる。
次に、上記実施形態及び別の実施形態から把握できる技術的思想を以下に追記する。
(イ)増圧時勾配設定部は、指示電流値の増大勾配を、差圧弁が設けられている経路内におけるブレーキ液の流量に基づいて補正するようにしてもよい。
ヒステリシス量は、上記経路内におけるブレーキ液の流量によっても変化しうる。そのため、指示電流値の増大勾配を上記経路内におけるブレーキ液の流量に基づいて補正することにより、増大勾配を、そのときのヒステリシス量の減少勾配に近づけることができる。そこで、上記構成によれば、指示電流値を、こうした増大勾配に基づいて大きくすることにより、差圧を増大させる際における差圧の制御性をより向上させることができるようになる。
(ロ)増圧時勾配設定部は、指示電流値の増大勾配を、差圧弁が設けられている経路内におけるブレーキ液の温度に基づいて補正するようにしてもよい。
ヒステリシス量は、上記経路内におけるブレーキ液の温度によっても変化しうる。そのため、指示電流値の増大勾配をブレーキ液の温度に基づいて補正することにより、増大勾配を、そのときのヒステリシス量の減少勾配に近づけることができる。そこで、上記構成によれば、指示電流値を、こうした増大勾配に基づいて大きくすることにより、差圧を増大させる際における差圧の制御性をより向上させることができるようになる。
22…マスタシリンダ、32…差圧弁、50a,50d…ホイールシリンダ、60…車両の制動制御装置としてのECU(指示値設定部、減圧開始時差圧取得部、減圧時補正量設定部、増圧開始時差圧取得部、増圧時補正量設定部)、62…記憶部の一例であるROM、DDZ…減少勾配、DIZ…増大勾配、DRD…補正減少勾配、DRI…補正増大勾配、FR,RL…車輪、HY…ヒステリシス量、HYI…増圧開始時ヒステリシス量、Id…駆動電流値、Ip…指示電流値、M…要求差圧、MZ…補正要求差圧、R11〜R13,R21〜R23…差圧領域、TMP…ブレーキ液の温度、X…実差圧、XD…減圧開始時差圧、XI…増圧開始時差圧、X_Th…規定差圧、Y…ポンプからのブレーキ液の吐出量、Z…補正量、ZA…増圧開始時補正量としての補正量、Z_Lim…制限値、Z_max…上限値。

Claims (11)

  1. マスタシリンダと車輪に対応するホイールシリンダとの間の経路に設けられる差圧弁に対する指示電流値を、同差圧弁による差圧の要求値である要求差圧に応じた値に設定する指示値設定部と、
    前記差圧弁による差圧を増大させる増圧状態から前記差圧弁による差圧を減少させる減圧状態に移行された時点の差圧を減圧開始時差圧として取得する減圧開始時差圧取得部と、を備え、
    前記減圧開始時差圧取得部によって取得された減圧開始時差圧と、同減圧開始時差圧から同減圧開始時差圧に応じた所定差圧を減じた差である境界差圧との間の領域を、減圧時差圧領域とした場合、
    前記指示値設定部は、前記減圧状態であって、且つ前記要求差圧が前記減圧時差圧領域内に含まれるときには、前記要求差圧の減少量に対する指示電流値の減少量である指示電流値の減少勾配を、前記減圧開始時差圧が小さいほど緩やかな勾配にする
    車両の制動制御装置。
  2. 前記要求差圧に応じた指示電流値を基準指示電流値とした場合、
    前記減圧状態であるときに、指示電流値を補正するための補正量を設定する減圧時補正量設定部を備え、
    前記指示値設定部は、前記減圧状態であるときには、前記基準指示電流値から前記減圧時補正量設定部によって設定された補正量を減じた差に基づいて指示電流値を設定し、
    前記減圧時補正量設定部は、
    前記減圧状態であって、且つ前記要求差圧が前記減圧時差圧領域内に含まれるときには、前記要求差圧の減少量に対する補正量の増大量である補正量の増大勾配を前記減圧開始時差圧が小さいほど緩やかな勾配にし、同増大勾配に従って補正量を増大させ、
    前記減圧状態であって、且つ前記要求差圧が前記減圧時差圧領域の下限値よりも小さい場合、前記差圧弁による差圧が前記減圧時差圧領域内で減少しているときには、前記補正量の増大勾配を前記減圧開始時差圧が小さいほど緩やかな勾配にし、同増大勾配に従って補正量を増大させ、前記差圧弁による差圧が前記減圧時差圧領域を超えて減少しているときには、補正量を制限値と等しくする
    請求項1に記載の車両の制動制御装置。
  3. 前記差圧弁に流れる駆動電流値を上昇させるときにおける同駆動電流値と差圧との関係を示す特性を記憶する記憶部を備え、
    前記指示値設定部は、前記記憶部に記憶されている特性に基づき、前記基準指示電流値を、前記要求差圧が大きいほど大きくする
    請求項2に記載の車両の制動制御装置。
  4. 前記差圧弁による差圧が規定差圧以上であるときには、前記制限値を上限値とし、
    前記差圧弁による差圧が前記規定差圧未満であるときには、差圧が小さいほど前記制限値を小さくしてなる
    請求項2又は請求項3に記載の車両の制動制御装置。
  5. 前記指示値設定部は、差圧領域に応じて前記指示電流値の減少勾配を設定するようになっており、
    前記減圧開始時差圧が第1の差圧領域に含まれる場合の前記指示電流値の減少勾配は、同第1の差圧領域よりも高圧側となる第2の差圧領域に前記減圧開始時差圧が含まれる場合の前記指示電流値の減少勾配よりも緩やかである
    請求項1に記載の車両の制動制御装置。
  6. 前記指示値設定部は、前記指示電流値の減少勾配を、前記差圧弁が設けられている経路内におけるブレーキ液の流量に基づいて補正する
    請求項1〜請求項5のうち何れか一項に記載の車両の制動制御装置。
  7. 前記指示値設定部は、前記指示電流値の減少勾配を、前記差圧弁が設けられている経路内におけるブレーキ液の温度に基づいて補正する
    請求項1〜請求項6のうち何れか一項に記載の車両の制動制御装置。
  8. 前記減圧状態から前記増圧状態に移行された時点の差圧を増圧開始時差圧として取得する増圧開始時差圧取得部を備え、
    増圧開始時差圧と、同増圧開始時差圧に同増圧開始時差圧に応じた所定差圧を加算した和である境界差圧との間の領域を増圧時差圧領域とした場合、
    前記指示値設定部は、前記増圧状態であって、且つ前記要求差圧が前記増圧時差圧領域内に含まれるときには、前記要求差圧の増大量に対する指示電流値の増大量である指示電流値の増大勾配を、前記増圧開始時差圧が小さいほど緩やかな勾配にする
    請求項1〜請求項7のうち何れか一項に記載の車両の制動制御装置。
  9. 前記減圧状態から前記増圧状態に移行された時点の差圧を増圧開始時差圧として取得する増圧開始時差圧取得部と、
    前記減圧状態から前記増圧状態に移行された時点のヒステリシス量を増圧開始時ヒステリシス量として取得する増圧開始時ヒステリシス量取得部と、を備え、
    増圧開始時差圧と、前記増圧開始時ヒステリシス量取得部によって取得された増圧開始時ヒステリシス量に応じた所定差圧と前記増圧開始時差圧との和である境界差圧との間の領域を増圧時差圧領域とした場合、
    前記指示値設定部は、前記増圧状態であって、且つ前記要求差圧が前記増圧時差圧領域内に含まれるときには、前記要求差圧の増大量に対する指示電流値の増大量である指示電流値の増大勾配を、前記増圧開始時ヒステリシス量が大きいほど緩やかな勾配にする
    請求項1〜請求項8のうち何れか一項に記載の車両の制動制御装置。
  10. 前記要求差圧に応じた指示電流値を基準指示電流値とした場合、
    前記車両の制動制御装置は、
    前記増圧状態であるときに、指示電流値を補正するための補正量を設定する増圧時補正量設定部を備え、
    前記指示値設定部は、前記増圧状態であるときには、前記基準指示電流値から前記増圧時補正量設定部によって設定された補正量を減じた差に基づいて指示電流値を設定し、
    前記増圧時補正量設定部は、前記増圧状態であって、且つ前記要求差圧が前記増圧時差圧領域内に含まれるときには、前記要求差圧の増大量に対する補正量の減少量である補正量の減少勾配を前記増圧開始時差圧が小さいほど緩やかな勾配にし、同減少勾配に従って補正量を減少させ、
    前記増圧状態であって、且つ前記要求差圧が前記増圧時差圧領域の上限値よりも大きい場合、前記差圧弁による差圧が前記増圧時差圧領域内で増大しているときには、前記補正量の減少勾配を前記増圧開始時差圧が小さいほど緩やかな勾配にし、同減少勾配に従って補正量を減少させ、前記差圧弁による差圧が前記増圧時差圧領域の上限値を超えているときには、補正量を「0(零)」と等しくする
    請求項8に記載の車両の制動制御装置。
  11. 前記要求差圧に応じた指示電流値を基準指示電流値とした場合、
    前記増圧状態であるときに、指示電流値を補正するための補正量を設定する増圧時補正量設定部を備え、
    前記指示値設定部は、前記増圧状態であるときには、前記基準指示電流値から前記増圧時補正量設定部によって設定された補正量を減じた差に基づいて指示電流値を設定し、
    前記増圧時補正量設定部は、
    前記増圧状態であって、且つ前記要求差圧が前記増圧時差圧領域内に含まれるときには、前記要求差圧の増大量に対する補正量の減少量である補正量の減少勾配を前記増圧開始時ヒステリシス量が大きいほど緩やかな勾配にし、同減少勾配に従って補正量を減少させ、
    前記増圧状態であって、且つ前記要求差圧が前記増圧時差圧領域の上限値よりも大きい場合、前記差圧弁による差圧が前記増圧時差圧領域内で増大しているときには、前記補正量の減少勾配を前記増圧開始時ヒステリシス量が大きいほど緩やかな勾配にし、同減少勾配に従って補正量を減少させ、前記差圧弁による差圧が前記増圧時差圧領域の上限値を超えているときには、補正量を「0(零)」と等しくする
    請求項9に記載の車両の制動制御装置。
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