JP2005035466A - 液圧制御装置および液圧制御方法 - Google Patents

液圧制御装置および液圧制御方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 電磁流量制御弁による液圧制御において、指令電流の急激な増加により、開弁の瞬間に油圧脈動が発生し、異音が発生する。
【解決手段】 フィードフォワード制御部220は、目標液圧Prefの傾きなどからフィードフォワード電流IFを算出する。フィードバック制御部222は、目標液圧Prefと制御液圧Pwcの偏差Perrorを0に近づけるためのフィードバック電流IBを算出する。脈動低減電流供給部240は、油圧脈動を回避するための予備的な脈動低減電流IGを算出する。指令電流選択部242により、フィードフォワード電流IFとフィードバック電流IBの和、または脈動低減電流IGが選択されて、指令電流Iとしてリニア弁40、42に供給される。
【選択図】 図4

Description

本発明は、液圧制御装置及び液圧制御方法に関し、特に液圧制御装置に含まれる電磁制御弁に対して供給すべき電流を制御する技術に関する。
自動車等の車両用の制動装置として、油圧導管の途中にモjータ駆動されるオイルポンプを設け、そのオイルポンプの吐出側の作動液をアキュムレータに蓄積してアキュムレータ圧を高圧に保つものが知られている。この高圧の作動液は、運転者のブレーキペダル操作に応じ、各輪に対応して設けられた制御弁のうち増圧弁を介してホイールシリンダに導入され、所望の制動力が発揮される。こうした制動力を安定的かつ的確に発生するために、マイクロコンピュータが圧力センサによってホイールシリンダ圧を監視し、その圧力と目標の液圧との偏差が所定値を超えたときに、ホイールシリンダ圧を増圧又は減圧させている(例えば特許文献1参照)。
特開平10−278764号公報
このような制御弁を有する電子制御ブレーキ装置では、目標液圧と実際の制御液圧との偏差に応じた指令電流を制御弁に供給して通電し、フィードバック制御によって目標液圧に近づくように制御する。制御弁に与える指令電流は、理想的な立ち上がりに対して応答遅れによる傾斜がつくため、制御弁の開弁時の指令電流の変化率は一般に急峻になる。そのため、制御弁の開弁速度が急速になり、開弁の瞬間に油圧脈動が発生し、異音が発生する。この異音をなくすためにはフィードバック制御のゲインを抑制することになるが、それでは応答性が極端に悪くなる。また制御弁を開弁させるための指令電流(以下、開弁電流という)は、制御弁によりばらつきがあり、あらかじめ開弁電流を予想して制御弁に与える指令電流の変化率を調整することは難しい。
本発明はこうした課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、油圧脈動を抑制するとともに応答性を確保することのできる液圧制御装置および液圧制御方法を提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明のある態様の液圧制御装置は、供給される指令電流の値に応じた電磁流量制御弁の開閉状態の変化により液圧を調圧するものであって、開弁前の前記指令電流の変化率を開弁後の前記指令電流の変化率より小さくする電流変化率抑制制御を行う指令電流調整手段を備える。
電磁流量制御弁は、一例として、線形動作特性を有するリニア弁であってもよい。リニア弁は指令電流によって開弁圧、すなわちこのリニア弁が開き始める弁両側の差圧を調整できるため、液圧のきめ細かな制御ができる。
この液圧制御装置によれば、指令電流の立ち上がりの遅れによって開弁時に指令電流の変化率が急峻になる現象を回避し、開弁速度を抑制して油圧脈動を防ぐことができる。
前記液圧制御装置は、前記電磁流量制御弁による実際の制御液圧が目標液圧になるように制御するものであって、前記指令電流調整手段は、前記目標液圧と前記実際の制御液圧との偏差が所定の閾値より大きい場合には、前記電流変化率抑制制御の実施を制限してもよい。単に電流変化率抑制制御を中止してもよく、実際の制御液圧の応答が改善した場合に、電流変化率抑制制御を再開してもよい。これにより応答遅れを防止しつつ、指令電流の変化率を適正なレベルに調整することができる。
本発明の別の態様の液圧制御方法は、供給される指令電流の値に応じた電磁流量制御弁の開閉状態の変化により液圧を調圧するものであって、前記電磁流量制御弁を開弁すべき時刻に先立って、前記電磁流量制御弁の開弁電流よりも低い電流値の前記指令電流を準備的に供給し、開弁時における前記指令電流の変化率を抑制するステップと、前記電磁流量制御弁の開弁後に前記指令電流の変化率の抑制制御を解除するステップとを備える。この液圧制御方法によれば、電磁流量制御弁に予備的な電流を前もって供給して通電の準備を行うため、開弁時における指令電流の急激な変化を回避することができる。
本発明の液圧制御装置および液圧制御方法によれば、電磁流量制御弁の開弁速度を適正化して、油圧脈動を防止することができる。
本実施の形態に係る液圧制御装置は、電磁流量制御弁の開弁速度を適正なレベルに抑制して油圧脈動を防止するために、本来の指令電流の供給タイミングよりも早いタイミングにて開弁電流に満たない予備的な指令電流を電磁流量制御弁に徐々に供給して、開弁に備えるものである。

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は、油圧システム100と電子制御ユニット200の全体構成を示す。油圧システム100は主にアクチュエータ80とアクチュエータ80以外のマスタシリンダ14などを備える。なお、以下の説明において、電子制御ユニット200単独で液圧制御装置と捉えてもよいし、油圧システム100またはその一部と電子制御ユニット200の組合せを液圧制御装置と捉えてもよい。
ブレーキペダル12にはその踏み込みストロークを検出するストロークセンサ46が設けられている。マスタシリンダ14は、運転者によるブレーキペダル12の踏み込み操作に応じ、作動液であるブレーキオイルを外部に圧送する。ブレーキペダル12とマスタシリンダ14との間にはドライストロークシミュレータ13が設けられている。
マスタシリンダ14には右前輪用のブレーキ油圧制御導管16及び左前輪用のブレーキ油圧制御導管18の一端が接続され、これらのブレーキ油圧制御導管はそれぞれ、右前輪及び左前輪の制動力を発揮する右前輪用及び左前輪用のホイールシリンダ20FR、20FLに接続されている。右前輪用及び左前輪用のブレーキ油圧制御導管16、18の途中にはそれぞれ通常は開状態(以下これを「常開型」という)の右電磁開閉弁22FR及び左電磁開閉弁22FLが間挿され、また、それぞれ右前輪側及び左前輪側のマスタシリンダ圧を計測する右マスタおよび左マスタ圧力センサ48FR、48FLが設けられている。運転者によってブレーキペダル12が踏まれたとき、ストロークセンサ46によりその踏み込みが検出されるが、ストロークセンサ46の故障を想定し、右マスタおよび左マスタ圧力センサ48FR、48FLによるマスタシリンダ圧の計測によってもブレーキペダル12の踏み込みが検出される。マスタシリンダ圧をふたつの圧力センサで監視するのは、フェイルセイフの観点による。
マスタシリンダ14にはリザーバタンク26が接続され、また、開閉弁23を介してウェットストロークシミュレータ24が接続され、リザーバタンク26には油圧給排導管28の一端が接続される。油圧給排導管28にはモータ32により駆動されるオイルポンプ34が設けられている。オイルポンプ34の吐出側は高圧導管30になっており、アキュムレータ50とリリーフバルブ53が設けられている。アキュムレータ50はオイルポンプ34によって例えば16〜21.5MPaという範囲(以下「制御範囲」という)の高圧にされたブレーキオイルを蓄積する。リリーフバルブ53は、アキュムレータ圧が異常に高く、例えば30MPaといった高圧になったとき開き、油圧給排導管28へ高圧のブレーキオイルを逃がす。
高圧導管30にはアキュムレータ圧を計測するアキュムレータ圧センサ51が設けられる。後述の電子制御ユニット200はアキュムレータ圧センサ51の出力であるアキュムレータ圧を入力し、このアキュムレータ圧が制御範囲に収まるようモータ32を制御する。
高圧導管30は、それぞれ通常は閉じた状態(これを「常閉型」という)にあり、必要なときにホイールシリンダの増圧用に利用される電磁流量制御弁、すなわちリニア弁である増圧弁40FR、40FL、40RR、40RLを介し、右前輪のホイールシリンダ20FR、左前輪のホイールシリンダ20FL、右後輪用のホイールシリンダ20RR、左後輪用のホイールシリンダ20RLに接続されている。
右前輪のホイールシリンダ20FRと左前輪のホイールシリンダ20FLは、それぞれ常閉型で、必要なときに減圧用に利用される電磁流量制御弁、すなわちリニア弁である減圧弁42FR、42FLを介して油圧給排導管28へ接続されている。また、右後輪用のホイールシリンダ20RR、左後輪用のホイールシリンダ20RLは、それぞれ常開型の減圧リニア弁42RR、42RLを介して油圧給排導管28へ接続されている。
右前輪、左前輪、右後輪、左後輪のホイールシリンダ20FR、20FL、20RR、20RL付近には、それぞれホイールシリンダ内の液圧を計測する右前輪用、左前輪用、右後輪用、左後輪用の圧力センサ44FR、44FL、44RR、44RLが設けられている。
電子制御ユニット200は、電磁開閉弁22FR、22FL、モータ32、4個の増圧リニア弁40FR、40FL、40RR、40RL、および4個の減圧リニア弁42FR、42FL、42RR、42RLを制御する。電子制御ユニット200はマイクロコンピュータによる演算ユニット202、各種制御プログラムを格納するROM204、およびデータ格納やプログラム実行のためのワークエリアとして利用されるRAM206を備える。
詳細は図示しないが、演算ユニット202には、右前輪用、左前輪用、右後輪用、左後輪用の圧力センサ44FR、44FL、44RR、44RLより、それぞれ、右前輪のホイールシリンダ20FR内の圧力信号、左前輪のホイールシリンダ20FL内の圧力信号、右後輪用のホイールシリンダ20RR内の圧力信号、左後輪用のホイールシリンダ20RL内の圧力信号(以下、総括的にホイールシリンダ圧信号という)が入力され、ストロークセンサ46よりブレーキペダル12の踏み込みストロークを示す信号(以下ストローク信号という)が入力され、右マスタおよび左マスタ圧力センサ48FR、48FLよりマスタシリンダ圧を示す信号(以下マスタシリンダ圧信号という)、アキュムレータ圧センサ51よりアキュムレータ圧を示す信号(以下アキュムレータ圧信号という)が入力される。
電子制御ユニット200のROM204は所定の制動制御フローを記憶している。演算ユニット202はストローク信号とマスタシリンダ圧信号に基づき車輌の目標減速度を演算し、演算された目標減速度に基づき各輪の目標ホイールシリンダ圧を演算し、各輪のホイールシリンダ圧が目標ホイールシリンダ圧になるよう制御する。また、ROM204は所定の脈動低減制御フローを記憶し、演算ユニット202は、通常の制動制御に加えて、脈動低減制御を適宜実行する。脈動低減制御フローの詳細については後述する。
ROM204はさらに、所定のアキュムレータ圧制御フローを記憶している。演算ユニット202はアキュムレータ圧が制御範囲の下限値未満であるときにはオイルポンプ34を駆動してアキュムレータ圧を昇圧し、アキュムレータ圧が制御範囲に入っていれば、オイルポンプ34を停止させる。
以上の構成における制動制御の概要を説明する。まず、運転者がイグニションスイッチをオンにする前、すなわち各電磁弁に対する通電前においては、各電磁弁は内蔵しているバネの付勢力により、図1の状態にある。このとき、マスタシリンダ14から大気圧のブレーキオイルが右および左電磁開閉弁22FR、22FLを介して、それぞれ右前輪と左前輪のホイールシリンダ20FR、20FLに達している。一方、右後輪と左後輪のホイールシリンダ20RR、20RLにも、油圧給排導管28と常開型の減圧弁42RR、42RLを介して、リザーバタンク26内の液圧と同じ大気圧のブレーキオイルが到達している。この時点では、4つすべてのホイールシリンダ圧が大気圧であり、制動力は発生しない。ただし、通電前であっても、運転者がブレーキペダル12を踏めば、その踏込力に応じた制動力が右前輪と左前輪のホイールシリンダ20FR、20FLに直接作用し、これら右前輪と左前輪には制動力が生じる。
運転者がイグニションスイッチをオンすると、必要に応じてモータ32が作動し、アキュムレータ圧が制御範囲に入る。この後、通常走行に入ったときも各電磁弁は図1の状態にある。つづいて、運転者がブレーキペダル12を踏むと、まずマスタシリンダ14が押し込まれ、マスタシリンダ14とリザーバタンク26の連通が遮断される。また、右および左電磁開閉弁22FR、22FLが閉じられ、開閉弁23が開かれ、マスタシリンダ14から右前輪および左前輪のホイールシリンダ20FR、20FLへの大気圧のブレーキオイルの連通が遮断される。また、右後輪用、左後輪用の減圧弁42RR、42RLが閉じられ、4個の増圧弁40FR、40FL、40RR、40RLが開けられる。各電磁弁の開度は、後述する各種演算を経て算出された各輪の目標ホイールシリンダ圧をもとに制御される。
図2は、制動制御の際に発生する目標液圧Prefと制御の結果出力される制御液圧Pwcの様子を示す。同図の制御は一般的なものであり、同図に本実施の形態に特徴的な処理は明示的には現れないが、後述のごとく、本実施の形態の制御は増圧モード、減圧モード、保持モードに関連するため、まず制動制御の概要を述べる。なお、同図は見やすさのために制御液圧Pwcの振る舞いを比較的緩やかに描いている。一般には、制御液圧Pwcの曲線は同図のものよりも小刻みに変動する。
図2において、横軸は時間、縦軸は液圧である。目標液圧Prefは後述のごとく制動要求から各種演算を経て各輪の目標ホイールシリンダ圧Prefとして定まる。一方、制御液圧Pwcは現実のホイールシリンダ圧Pwcである。この制動制御には、目標液圧Prefを中心に含み、下限圧Plと上限圧Puで定まる幅を不感帯として設ける。制御液圧Pwcが不感帯に入っているときは増圧も減圧もせず、保持モードとして各リニア弁を閉じておく。制御液圧Pwcが不感帯の下限圧Plを下回れば増圧弁を開け、制御液圧Pwcを高める。これが増圧モードである。逆に、制御液圧Pwcが不感帯の上限圧Puを上回れば減圧弁を開け、制御液圧Pwcを下げる。これが減圧モードである。
図3は、図2の制動制御を実施するプログラムの処理の流れを示す。この制動制御フローは所定の時間間隔で継続的に実行される。制動制御に先立ち、運転者がブレーキペダル12を踏んだとき、まず右および左電磁開閉弁22FR、22FLが閉じられ、開閉弁23が開かれ、マスタシリンダ14から右前輪および左前輪のホイールシリンダ20FR、20FLへの大気圧のブレーキオイルの連通、およびマスタシリンダ14とリザーバタンク26の連通が遮断される。この状態を初期状態として、まずストローク信号が読み込まれ(S30)、マスタシリンダ圧信号が読み込まれ(S32)、これらの信号から演算ユニット202によって既知の手法で目標減速度が演算される(S34)。
つづいて演算ユニット202は、目標減速度に対する各輪の目標液圧Pref、すなわち目標ホイールシリンダ圧Prefを既知の手法で演算し(S36)、各輪のホイールシリンダ20FR、20FL、20RR、20RL内の液圧Pwcを圧力センサ44FR、44FL、44RR、44RLから読み込み(S38)、目標ホイールシリンダ圧Prefと現実のホイールシリンダ圧Pwcの差から制動制御のモードを決定する(S40)。つぎに、決定された制動制御のモードに従ってリニア弁の制御がなされる(S42)。
以下、増圧弁40FR、40FL、40RR、40RLを総称するときは符号40を、減圧弁42FR、42FL、42RR、42RLを総称するときは符号42を用いることにする。
図4は、演算ユニット202による液圧制御に係る機能ブロック図である。演算ユニット202は、フィードフォワード制御部220と、フィードバック制御部222と、脈動低減電流供給部240と、指令電流選択部242とを有し、目標液圧Prefの入力を受けて、増圧弁40および減圧弁42(以下、これらを単にリニア弁と総称する)に供給する指令電流Iを算出する。指令電流Iによってリニア弁40、42が駆動されることにより得られる制御液圧Pwcは演算ユニット202にフィードバックされる。図5は演算ユニット202による指令電流Iの算出手順を示すフローチャートであり、以下図5を参照しながら、図4の演算ユニット202の構成と動作を説明する。
指令電流選択部242は、スイッチ239を有し、脈動低減電流供給部240から選択命令SELの入力を受け、スイッチ239の接続先を3つの入力端子236、237、238のいずれかに切り替え、通常制御による指令電流Iの出力、指令電流Iの出力停止、脈動低減制御による指令電流Iの出力のいずれかを行う。
目標液圧Prefが与えられると、脈動低減電流供給部240は、最初に脈動低減制御を行うために、スイッチ239を脈動低減電流供給部240の出力側の入力端子238に切り替える選択命令SELを指令電流選択部242に与える。脈動低減電流供給部240は、脈動低減制御を開始し、リニア弁40、42を開弁すべき時刻に先立ってリニア弁40、42に予備的に供給する脈動低減電流IGを算出して出力し、指令電流選択部242は脈動低減電流IGを指令電流Iとしてリニア弁40、42に供給する(S60)。
脈動低減電流供給部240は、脈動低減制御の終了後、通常制御に切り替えるために、スイッチ239を加算部230の出力側の入力端子236に切り替える選択命令SELを指令電流選択部242に与える。これによりフィードフォワード制御部220とフィードバック制御部222による通常制御に切り替わる(S50〜S54)。
フィードフォワード制御部220は、目標液圧Prefの入力を受け、リニア弁40、42の負荷モデル221と、リニア弁40、42の開弁電流の推定値223とにもとづいて、フィードフォワード電流IFを所定のゲインのもとで算出して出力する(S50)。
減算部234は目標液圧Prefから制御液圧Pwcを減じて液圧偏差Perrorを出力する。フィードバック制御部222は、減算部234から液圧偏差Perrorの入力を受け、PID制御等により、液圧偏差Perrorを0に近づけるためのフィードバック電流IBを所定のゲインのもとで算出して出力する(S52)。
加算部230はフィードフォワード電流IFとフィードバック電流IBを加算し、指令電流選択部242に与える。指令電流選択部242は、フィードフォワード電流IFとフィードバック電流IBの和を指令電流Iとしてリニア弁40、42に供給する(S54)。液圧偏差Perrorが所定値以下になると、スイッチ239は無入力の入力端子237に切り替えられ、リニア弁40、42への指令電流Iの供給は停止する。
図6は、図5のステップS60の脈動低減制御の詳細手順を説明するフローチャートである。ここでは常閉型のリニア弁40、42の場合を説明する。脈動低減電流供給部240は、脈動低減電流IGの供給開始時点である場合(S62のY)、現在の液圧Pを開始液圧Pmemとして記憶する(S64)。脈動低減電流供給部240は、脈動低減電流IGにステップ電流stepを加算し、脈動低減電流IGを低い変化率で徐々に増加させる(S66)。ただし、脈動低減制御はあくまでもリニア弁40、42の開弁の準備のために行われるものであるから、脈動低減電流IGの初期値は、開弁電流IKの初期推定値を超えない値とし、増加後の脈動低減電流IGも、リニア弁40、42が開弁しない程度の値に抑える。こうして得られた脈動低減電流IGが指令電流Iとしてリニア弁40、42に供給される。
脈動低減電流供給部240は、記憶された開始液圧Pmemと現在の液圧Pとの差の絶対値が所定の閾値th_pを超えたかどうかを判定する(S68)。液圧に所定の閾値th_pを超える変化があった場合(S68のY)、脈動低減電流供給部240は、リニア弁40、42が開弁したと判定し、開弁電流Imemを算出して記憶する(S70)。リニア弁40、42の開弁を判定した時点では、現在の脈動低減電流IGには応答遅れ分のステップ電流stepが加算されているため、応答遅れ分を調整するための所定のチューニング定数nを用いて、開弁電流Imemは現時点の指令電流Iをもとに次式により算出される。
Imem=I−step×n
次に、脈動低減電流供給部240は、開弁電流IKの推定値を補正するための補正量ΔIKを算出する(S72)。ステップS70で記憶された開弁電流Imemは使用環境等による不確定要素寄与分αが含まれているため、脈動低減電流供給部240は、不確定要素寄与分αを記憶された開弁電流Imemから減算した上で、今回の脈動低減制御に利用した開弁電流IKの元の推定値との差を求め、補正量ΔIKを算出する。ここで、脈動低減制御に利用した開弁電流IKの元の推定値と記憶された開弁電流Imemの差の絶対値が不確定要素寄与分α以下である場合には、開弁電流IKの推定値の補正は行わないことにする。したがって、補正量ΔIKは次式により算出される。
ΔIK=IK−(Imem−α) (|IK−Imem|−α>0のとき)
ΔIK=0 (それ以外のとき)
脈動低減電流供給部240は、算出された補正量ΔIKをもとに、開弁電流IKの推定値を次式により更新し、フィードフォワード制御部220は更新された値を開弁電流推定値223として記憶する(S74)。
IK=IK−ΔIK
開弁電流の推定値IKの更新が終わると、脈動低減電流供給部240は、脈動低減制御を終了し、通常制御に切り替える選択命令SELを指令電流選択部242に与える(S78)。
ステップS68において、液圧変化が所定の閾値th_p以下であった場合(S68のN)、脈動低減電流供給部240は、リニア弁40、42がまだ開弁していないと判断し、次に、液圧偏差Perrorの絶対値が所定の閾値th_errより小さいかどうかを判定する(S76)。液圧偏差Perrorの絶対値が所定の閾値th_errより小さい場合(S76のY)、最初のステップS62に戻り、脈動低減制御が続行される。液圧偏差Perrorの絶対値が所定の閾値th_err以上の場合(S76のN)、脈動低減電流供給部240は、制御液圧Pwcの応答遅れが大きいと判断し、脈動低減制御を停止し、通常制御に切り替える選択命令SELを指令電流選択部242に与える(S78)。これにより脈動低減制御の続行による応答性の低下が適宜回避される。
実施の形態に係る液圧制御の作用を説明する。まず、比較のため、仮に脈動低減電流供給部240による脈動低減制御を行わないで、フィードフォワード制御部220とフィードバック制御部222による通常制御だけを行った場合の制御液圧Pwcの変化を説明する。
図7(a)に示す目標液圧Prefが与えられた場合、図7(b)に示すように時刻t0から指令電流Iによるリニア弁40、42の通電が開始される。指令電流Iは、理想的には、矩形で示した理想電流ITのように、時刻t0で開弁電流IKに達し、時刻t0以降は線形に増加し、時刻t2に達した時点で通電が終了してゼロになることが望ましい。しかし、実際には応答遅れのため、指令電流Iは、同図のように時刻t0から急峻な傾きで増加して矩形の理想電流ITに漸近し、時刻t2に達してから急峻な傾きでゼロまで減少する。したがって、指令電流Iが時刻t1で開弁電流IKに達したとき、指令電流Iの変化率は非常に大きなものであり、リニア弁40、42の開弁時に急激に指令電流Iが供給され、高速な開弁による異音とともに、油圧脈動が発生する。これにより、図7(a)に示すように、制御液圧Pwcは開弁時刻t1において瞬間的なピークをもつようになる。瞬間的なピークの後は、制御液圧Pwcは指令電流Iの供給により緩やかに増加する。そして、制御液圧Pwcが目標液圧Prefに対する不感帯の下限圧Plを下回った時刻t3において、再びリニア弁40、42に指令電流Iが一気に供給されるため、時刻t4の開弁時に制御液圧Pwcに瞬間的なピークが現れる。このように、制御液圧Pwcの変化はリニア弁40、42の開弁ごとに油圧脈動による急峻なピークをもつようになる。
次に、脈動低減電流供給部240による脈動低減制御を行う場合の制御液圧Pwcの変化を説明する。図8(a)に示すように、図7(a)と同様の目標液圧Prefが与えられたとする。通常は時刻t0で指令電流Iによる通電を開始するところ、通電開始時刻を早め、時刻tsで指令電流Iの供給を開始する。脈動低減電流供給部240は、矩形で示した理想電流ITのように、時刻tsで開弁電流IKより低い電流値となり、その後、開弁電流IKに達するまでは線形に増加するように脈動低減電流IGを制御する。脈動低減電流供給部240は脈動低減電流IGを徐々に増加させているため、時刻tkで指令電流Iが開弁電流IKに達したときの指令電流Iの変化率は小さい。このため、リニア弁40、42の開弁速度は低く抑えられ、油圧脈動は生じない。
指令電流Iが開弁電流IKに達した後は、リニア弁40、42は既に開弁しているため、指令電流Iの変化率を上げても油圧脈動が発生する心配はない。そこで、開弁時刻tk以降は、脈動低減電流供給部240による脈動低減制御から、フィードフォワード制御部220とフィードバック制御部222による通常制御へ切り替えて、指令電流Iの応答速度を高める。
脈動低減電流供給部240による脈動低減制御では、実質的には、目標液圧Prefに対して設けられた通常の不感帯のさらに内側に、幅の狭い脈動低減電流操作用の不感帯が設けられたことになる。目標液圧Prefより下側において、通常の不感帯の幅は下限圧Plにより規定されるが、脈動低減電流操作用の不感帯の幅は、下限圧Plよりも目標液圧Prefに近い脈動低減制御用下限圧Psで規定される。制御液圧Pwcが脈動低減電流操作用の不感帯から外れ、脈動低減制御用下限圧Psよりも低くなると、脈動低減電流IGの供給が始まり、指令電流Iの供給タイミングが前出しになる。したがって、脈動低減制御は開弁速度が瞬間的に高速にならないように開弁時刻に先立って予備的な電流を与えておく意味合いをもち、脈動低減電流IGを開弁のための準備電流ということもできる。
本実施の形態に係る液圧制御装置は、車両用制動制御装置におけるホイールシリンダの液圧制御に有効に用いられ、油圧脈動を防止して、異音のない静かな制動装置を実現できる。また制御弁の開弁電流の真値を推定できるため、工場出荷時の設定値の誤差や経年変化によるばらつきなどにも適応して制御が可能となる。
以上、実施の形態をもとに本発明を説明した。なお本発明はこの実施の形態に限定されることなく、そのさまざまな変形例もまた、本発明の態様として有効である。
そのような変形例として、本発明の実施の形態においては、常閉型の増圧弁及び減圧弁の開閉制御において液圧制御装置を適用する例を説明した。変形例においては、常開型である2個の減圧弁42RR、42RLの開閉制御においてこの液圧制御装置を適用してもよい。この場合、演算ユニット202は、ホイールシリンダ圧の増圧時に減圧弁42RR、42RLへ供給する閉弁のための指令電流を、それら減圧弁が開弁しない程度の値まで徐々に減少させることにより、本発明の実施の形態における脈動低減電流IGと同様の効果が得られる。すなわち、減圧弁42RR、42RLへ供給する閉弁のための定電流を基準とし、その定電流よりマイナス側の値の電流を脈動低減電流IGとして演算ユニット202が減圧弁に供給することにより、開弁時刻での指令電流Iの減少率を小さくすることができ、常開型の減圧弁においても開弁速度を抑えて油圧脈動を回避することができる。
本実施の形態に係る液圧制御装置を車両用制動制御装置におけるブレーキ油圧制御に用いた場合、脈動低減制御により、制御液圧の目標液圧に対する追従性が悪化し、ブレーキ性能の面で許容できない場合が考えられる。そのような場合、脈動低減制御は次のような条件のもとで実施する。目標液圧の変化率が所定値以下、たとえば5MPa/秒以下であり、かつ、車速が所定値以下、たとえば20キロメートル/時以下である場合に、指令電流選択部242は、脈動低減電流供給部240による電流変化率の抑制制御に切り替え、それ以外の場合は通常制御を選択する。これにより、車両の場合に性能上許容される範囲で油圧脈動の発生を防止することができる。
実施の形態に係る液圧制御装置の全体構成図である。 実施の形態において制御液圧を目標液圧に合わせるための制動制御を示す図である。 図2の制動制御の処理を示すフローチャートである。 図1の演算ユニットの機能ブロック図である。 図4の演算ユニットの構成による指令電流の算出手順を示すフローチャートである。 図5の脈動低減制御の詳細手順を説明するフローチャートである。 図5の脈動低減制御が行われない場合における指令電流、目標液圧および制御液圧の時間変化を説明する図である。 図5の脈動低減制御が行われる場合における指令電流、目標液圧および制御液圧の時間変化を説明する図である。
符号の説明
12 ブレーキペダル、 14 マスタシリンダ、 20FR,20FL,20RR,20RL ホイールシリンダ、 22FR 右電磁開閉弁、 22FL 左電磁開閉弁、 26 リザーバタンク、 32 モータ、 34 オイルポンプ、 40FR,40FL,40RR,40RL 増圧弁、 42FR,42FL,42RR,42RL 減圧弁、 44FR,44FL,44RR,44RL 各輪の圧力センサ、 48FR 右マスタ圧力センサ、 48FL 左マスタ圧力センサ、 50 アキュムレータ、 51 アキュムレータ圧センサ、 80 アクチュエータ、 100 油圧システム、 200 電子制御ユニット、 202 演算ユニット、 204 ROM、 206 RAM、 220 フィードフォワード制御部、 222 フィードバック制御部、 240 脈動低減電流供給部、 242 指令電流選択部。

Claims (5)

  1. 供給される指令電流の値に応じた電磁流量制御弁の開閉状態の変化により液圧を調圧する液圧制御装置において、
    開弁前の前記指令電流の変化率を開弁後の前記指令電流の変化率より小さくする電流変化率抑制制御を行う指令電流調整手段を備えることを特徴とする液圧制御装置。
  2. 前記指令電流調整手段は、前記電磁流量制御弁を開弁すべき時刻に先立って、前記電磁流量制御弁の開弁電流よりも低い電流値の前記指令電流を供給することにより前記電流変化率抑制制御を行うことを特徴とする請求項1に記載の液圧制御装置。
  3. 前記指令電流調整手段は、前記電磁流量制御弁の開弁時点を判定し、前記開弁時点における前記指令電流の値を用いて前記開弁電流の値を補正することを特徴とする請求項2に記載の液圧制御装置。
  4. 前記液圧制御装置は、前記電磁流量制御弁による実際の制御液圧が目標液圧になるように制御するものであり、前記指令電流調整手段は、前記目標液圧と前記実際の制御液圧との偏差が所定の閾値より大きい場合には、前記電流変化率抑制制御の実施を制限することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の液圧制御装置。
  5. 供給される指令電流の値に応じた電磁流量制御弁の開閉状態の変化により液圧を調圧する液圧制御方法において、
    前記電磁流量制御弁を開弁すべき時刻に先立って、前記電磁流量制御弁の開弁電流よりも低い電流値の前記指令電流を準備的に供給し、開弁時における前記指令電流の変化率を抑制するステップと、
    前記電磁流量制御弁の開弁後に前記指令電流の変化率の抑制制御を解除するステップと
    を備えることを特徴とする液圧制御方法。
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