JP2014232704A - 非水電解液二次電池 - Google Patents

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健太 石井
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利彦 三橋
響子 菊池
Kyoko Kikuchi
響子 菊池
伊藤 友一
Yuichi Ito
友一 伊藤
中野 智弘
Toshihiro Nakano
智弘 中野
安部 浩司
Koji Abe
浩司 安部
近藤 正英
Masahide Kondo
正英 近藤
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Abstract

【課題】より厳しい使用条件においてもガスが発生し難く、高い電池特性を発揮し得る(耐久性と入出力特性とを高いレベルで両立可能な)非水電解液二次電池を提供する。
【解決手段】正極活物質を有する正極と、負極活物質を有する負極と、非水電解液と、が電池ケース内に収容された非水電解液二次電池を提供する。ここで、上記正極活物質の表面には、硫黄原子を含む被膜が該正極活物質の単位表面積(1m)当たり3μM〜8μM形成されており、上記負極活物質の表面には、ホウ素原子および/またはリン原子を含む被膜が該負極活物質の単位表面積(1m)当たり2μM〜10μM形成されている。
【選択図】図1

Description

本発明は、非水電解液を備えた二次電池(非水電解液二次電池)に関する。詳しくは、正極に硫黄原子を含む被膜を、負極にホウ素原子および/またはリン原子を含む被膜を、それぞれ備える該電池に関する。
リチウムイオン二次電池、ニッケル水素電池等の非水電解液二次電池は、近年、パソコンや携帯端末等のいわゆるポータブル電源や車両駆動用電源として用いられている。特に、軽量で高エネルギー密度が得られるリチウムイオン二次電池は、電気自動車、ハイブリッド自動車等の車両の駆動用高出力電源として好ましく用いられている。
このような非水電解液二次電池では、初期充電の際に非水電解液の一部が分解されて、負極活物質の表面にその分解物からなる被膜が形成される。かかる被膜によって以後の充放電に伴う非水電解液の還元分解が抑制されるため、電池の耐久性を向上させることができる。これに関連する技術として、特許文献1および2が挙げられる。例えば特許文献1には、非水電解液中に被膜形成剤としてリチウムビス(オキサラト)ボレート(以下、単に「LIBOB」と言うことがある。)を含む非水電解液二次電池が開示されている。
特開2008−288214号公報 特開2002−329528号公報
特許文献1に記載の電池では、充電処理の際に先ず分解電位の低い上記被膜形成剤が分解され、負極活物質の表面に安定な被膜が形成される。これによって非水電解液の還元分解が抑制されるため、電池の初期特性や耐久性(例えば、保存特性や充放電サイクル特性)を向上させることができる。しかしながら、本発明者らの検討によれば、特許文献1に記載のような電池は、例えば車載用途のように厳しい条件で使用した場合(具体的には、高温環境下で長期保管した場合や高入出力密度で充放電を繰り返した場合等)に、相変わらず多くのガスを発生し、電池内圧が上昇することがあった。
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、より厳しい使用条件においてもガスの発生が抑制され、高い電池特性を発揮し得る(例えば、耐久性と入出力特性とを高いレベルで両立可能な)非水電解液二次電池を提供することである。
本発明者らが上記ガス発生の原因について検討したところ、例えば高温環境下で長期間保管した場合等に、負極活物質の表面に形成された被膜の一部が分解してシュウ酸イオン(C 2−)を生じ、これが正極に移動して酸化分解されることでガス(典型的にはCO)が発生することを見出した。そこで、本発明者らはさらに鋭意検討を重ね、これを解決し得る手段を見出し、本発明を完成させた。
本発明により、正極活物質を有する正極と、負極活物質を有する負極と、非水電解液と、が電池ケース内に収容された非水電解液二次電池が提供される。ここで、上記正極活物質の表面には、硫黄原子を含む被膜が該正極活物質の単位表面積(1m)当たり3μM〜8μM(好ましくは5.4μM〜7.1μM)形成されており、上記負極活物質の表面には、ホウ素原子および/またはリン原子を含む被膜が該負極活物質の単位表面積(1m)当たり2μM〜10μM(好ましくは2.4μM〜3.9μM)形成されている。
負極活物質の表面にホウ素(B)原子および/またはリン原子(P)を含む被膜を備えることで、負極活物質と非水電解液との界面が安定化され、それ以降の充放電における非水電解液の還元分解を好適に抑制することができる。また、正極活物質の表面に硫黄原子(S)を含む被膜を備えることで、例えば負極活物質表面に形成された被膜が厳しい使用条件下で分解された場合であっても、該被膜に由来するシュウ酸が正極上で酸化分解され難く、ガスの発生を抑えることができる。特に硫黄原子を含む被膜は熱的安定性に優れるため、高温環境下においても分解や劣化等を生じ難く、高い耐久性(例えば、高温保存特性や高温充放電サイクル特性)を実現することができる。加えて、上記被膜量の範囲を満たす場合、電荷担体(リチウムイオン二次電池では、リチウムイオン)の反応場を好適に確保することができ、被膜の形成に伴う抵抗の増大を抑えることができる。したがって、上記構成の電池では、例えば車載用途のように厳しい条件で使用した場合であっても、電池内でガスが発生し難く、高い電池特性を長期に渡り安定的に発揮することができる。
上記「活物質の単位表面積当たりの被膜の量(μM/m)」は、イオンクロマトグラフィー(IC:Ion Chromatography)の手法によって測定された被膜値(μM/cm)を、単位面積当たりに含まれる活物質の表面積(m/cm)で除すことによって求めることができる。なお、上記ICを用いた被膜の測定方法については、後ほど詳細に説明する。また、上記「単位面積当たりに含まれる活物質の表面積(m/cm)」は、活物質の目付量(g/cm)と活物質のBET比表面積(m/g)の積によって求めることができる。「BET比表面積(m/g)」は、吸着質として窒素(N)ガスを用いたガス吸着法(定容量式吸着法)によって測定されたガス吸着量を、BET法(例えば、BET1点法)で解析することによって求めることができる。
本明細書において「非水電解液二次電池」とは、常温(例えば25℃)において液状を呈する非水電解液(典型的には、非水溶媒中に支持塩を含む電解液)を備えた電池をいう。また、本明細書において「リチウムイオン二次電池」とは、電荷担体としてリチウムイオンを利用し、正負極間におけるリチウムイオンの移動により充放電が実現される二次電池をいう。
ここで開示される好適な一態様では、上記硫黄原子を含む被膜は、実質的に上記非水電解液中に含ませたスルホン酸化合物(典型的には有機スルホン酸化合物、例えば脂肪族スルホン酸化合物)に由来する。なお、ここで「実質的に」とは、上記硫黄原子を含む被膜の主たる構成成分について用いられる表現であり、典型的には上記硫黄原子を含む被膜の80mol%以上(好ましくは85mol%以上、より好ましくは90mol%以上)がスルホン酸化合物由来であることをいう。換言すれば、上記被膜にはスルホン酸化合物以外に由来する成分、例えば非水電解液を構成する他の成分(具体的には、支持塩や非水溶媒)の分解生成物等が混入することを許容し得る。
スルホン酸化合物としては、例えば、下記式(I)で表される2−ブチン−1,4−ジオールジ(メタンスルホナート)や、下記式(II)で表される2−(メチルスルホニルオキシ)プロパン酸2−プロピニルが例示される。なかでも、式(I)で表される2−ブチン−1,4−ジオールジ(メタンスルホナート)は、後述するオキサラト錯体化合物(例えばLIBOB)に比べて0.5V程度高い還元電位(vs. Li/Li+)を有するため、充電処理(典型的には初回充電処理)において優先的に還元分解され、正極活物質の表面に好適な被膜となって結合し得る。したがって、厳しい条件下においても通常使用時のガスの発生を好適に抑制することができ、本発明の適用効果を高いレベルで発揮することができる。
Figure 2014232704
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好適な他の一態様では、上記ホウ素原子および/またはリン原子を含む被膜は、実質的に上記非水電解液中に含ませたオキサラト錯体化合物(以下、ホウ素原子および/またはリン原子を含むオキサラト錯体化合物のことを、単に「BP−オキサラト化合物」と言うことがある。)に由来する。なお、ここで「実質的に」とは、上記ホウ素原子および/またはリン原子を含む被膜の主たる構成成分について用いられる表現であり、典型的には上記被膜の80mol%以上(好ましくは85mol%以上、より好ましくは90mol%以上)がBP−オキサラト化合物由来であることをいう。換言すれば、上記被膜にはBP−オキサラト化合物以外に由来する成分、例えば非水電解液を構成する他の成分(具体的には、支持塩や非水溶媒)の分解生成物等が混入することを許容し得る。
BP−オキサラト化合物としては、下記式(III)で表されるLiBF(C)、下記式(IV)で表されるLiB(C、下記式(V)で表されるLiPF(C)、下記式(VI)で表されるLiPF(Cが例示される。これらの化合物は、負極活物質の表面に安定性に優れた良質な被膜を安定的に形成することができる。したがって、それ以後の充放電に伴う非水電解液の還元分解反応を好適に抑制することができ、本発明の適用効果を高いレベルで発揮することができる。
Figure 2014232704
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Figure 2014232704
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ここで開示される好適な一態様では、上記非水電解液は、所定の電池電圧を超えた際に分解してガスを発生し得るガス発生剤を含んでいる。ガス発生剤としては、シクロアルキルベンゼン化合物、ビフェニル化合物、アルキルビフェニル化合物等が例示される。また、好適な他の一態様では、上記電池ケースは、上記ガスの発生に伴って上記電池ケース内の圧力が上昇した際に作動する電流遮断機構(CID:Current Interrupt Device)を備えている。ガス発生剤は、電池が過充電状態になると正極で速やかに酸化分解され、典型的には水素イオン(H)を生じる。そして、該水素イオンが負極で還元されることによって水素ガス(H)が発生する。したがって、電池ケース内の圧力を迅速に上昇させることができ、過充電のより早い段階でCIDを作動させることができる。
一般に、CIDを備えた電池では、例えば高温環境で長期間保管した場合等に電池内でガスが大量に発生すると、それによってCIDが誤作動を生じたり電池ケースが変形したりすることがあり得る。しかしながら、ここで開示される技術によれば、通常使用時におけるガスの発生を好適に抑制することができるため、このような不具合の発生を好適に抑制することができる。さらに、活物質の表面には好適な反応場が確保されているため、過充電時には迅速に大量のガスを発生させることができ、これによってCIDを作動させることができる。したがって、通常使用時における電池特性(例えばサイクル特性)と、過充電時における耐性とを高いレベルで両立することができる。
非水電解液中のガス発生剤の含有量は、上記正極活物質の単位表面積(1m)当たり200μM以上250μM以下とすることが好ましい。上記範囲とすることで、過充電時に十分な量のガスを発生させることができ、的確にCIDを作動させることができる。さらに、通常使用時の抵抗増大を抑えることができ、高い電池特性を維持発揮することができる。
ここで開示される好適な一態様では、上記負極活物質は粒子状であり、該粒子状負極活物質のBET比表面積は、2.5m/g以上3.5m/g以下(好ましくは、2.8m/g以上3.4m/g以下)である。負極活物質の比表面積が上記範囲にある場合、上記被膜が形成された状態であっても電荷担体の反応場が広く確保されているため、高い電池特性(例えば高い入出力特性)を発揮することができる。また、通常使用時における意図しないガスの発生を好適に抑制し得る。したがって、一層優れた電池特性(例えば、高温耐久性と入出力特性)を実現することができ、本願発明の効果をより高いレベルで発揮することができる。
ここで開示される好適な一態様では、上記正極活物質は粒子状であり、該粒子状正極活物質のBET比表面積は、0.7m/g以上1.3m/g以下(好ましくは、0.8m/g以上1.2m/g以下)である。正極活物質の比表面積が上記範囲にある場合、上記被膜が形成された状態であっても電荷担体の反応場が広く確保されているため、高い電池特性(例えば高い入出力特性)を発揮することができる。また、過充電時に迅速にガス発生剤を酸化分解することができ、これを起点として、過充電の初期段階でCIDを作動させることができる。したがって、本発明の効果をより好適に発揮することができ、通常使用時における電池特性(サイクル特性や入出力特性)と、過充電時における耐性とをさらに高いレベルで両立することができる。
上述のような非水電解液二次電池は、以下の工程を包含する製造方法によって好適に製造し得る。
(1)電池構築工程;正極活物質を有する正極と、負極活物質を有する負極と、非水電解液と、を電池ケース内に収容して電池を構築する。ここで、上記非水電解液には、硫黄原子を含むスルホン酸化合物と、ホウ素原子および/またはリン原子を含むオキサラト錯体化合物と、を含ませる。
(2)第1充電処理工程;上記正極と上記負極の間の電圧が0.8V以上1.3V以下となるよう充電処理を行う。
(3)第2充電処理工程;上記正極と上記負極の間の電圧が2V以上5V以下となるよう充電処理を行う。
従来技術における充電処理(初回充電処理)では、作業効率の観点等から、例えば正負極間の電圧が3V以上の高電圧となるまで一気に充電を行う。しかしながら、かかる方法ではスルホン酸化合物とオキサラト錯体化合物とに由来する混合被膜(典型的には、オキサラト錯体化合物に由来する被膜中にスルホン酸化合物に由来する被膜が取り込まれた形態の被膜)が負極活物質上に多く形成され得る。このため、正極活物質の表面に上記被膜を精度よく形成することは困難である。さらに、本発明者らの検討によれば、かかる混合被膜は概して抵抗が高くなりがちであり、電池特性を低下させる要因となり得る。一方、ここで開示される製造方法では、初回の充電処理を2段階で行う。これにより、好適な量の被膜を正極活物質および負極活物質の表面にそれぞれ精度よく形成することができる。
図1は、スルホン酸化合物として2−ブチン−1,4−ジオールジ(メタンスルホナート)を用い、オキサラト錯体化合物としてLIBOBを用いた場合の初回充電処理工程を説明するための概念図である。図1(A)は第1充電処理工程における正負極の化学反応を模式的に示す説明図であり、図1(B)は第2充電処理工程における正負極の化学反応を模式的に示す説明図である。
図1(A)に示すように、第1充電処理工程では、先ず還元電位(vs. Li/Li+)のより高い2−ブチン−1,4−ジオールジ(メタンスルホナート)が負極表面で還元分解され、これによって生じたR−SO基(ここではR=CH)の一部が正極側へ移動する。かかるR−SO基が正極活物質の表面に結合することで、硫黄原子を含有する被膜(典型的にはスルホン酸構造を含有する被膜、例えばスルホニルオキシ基と電荷担体とを含有する被膜)を形成することができる。また、図1(B)に示すように、第2充電処理工程では、還元電位(vs. Li/Li+)のより低いLIBOBが負極表面で還元分解され、そのまま負極活物質の表面にホウ素原子および/またはリン原子を含有する被膜(典型的には図1(B)に示すようなシュウ酸構造を含有する重合被膜、例えばシュウ酸構造と電荷担体とを含有する被膜)を形成することができる。
なお、還元電位の測定は、従来公知の3極式セルを用いた手法により行うことができる。例えば、非水溶媒と支持塩とから構成される非水電解液の還元電位を測定する場合は、先ず、作用極(WE;Working Electrode)としての黒鉛系材料(例えば負極板を切り出したもの)と、対極(CE;Counter Electrode)としての金属リチウムと、参照極(RE;Reference Electrode)としての金属リチウムと、測定対象たる非水電解液とを用いて3極式セルを構築する。次に、リニアスイープボルタンメトリーの測定を行う。そして、得られた電流Iおよび電位Vから微分値dI/dVを算出する。このdI/dVを縦軸とし、電位Vを横軸としてグラフを作成し、測定開始から最初に現れたdI/dVのピークに対応する電位Vを還元電位(還元分解電位)とする。例えば、後述する実施例で用いた非水電解液(EC:DMC:EMCの体積比30:40:30の混合溶媒中に、LiPFを1.1mol/Lの濃度で含む非水電解液)の還元電位は、凡そ0.8V(vs. Li/Li+)である。また、この非水電解液にスルホン酸化合物やオキサラト錯体化合物を添加して、同様にリニアスイープボルタンメトリーの測定を行い、得られたグラフを上記化合物未添加のものと比較することで、かかる化合物の還元電位(還元分解電位)を得ることができる。例えば、スルホン酸化合物としての2−ブチン−1,4−ジオールジ(メタンスルホナート)の還元電位は凡そ2.25V(vs. Li/Li+)である。また、オキサラト錯体化合物としてのLIBOBの還元電位は、凡そ1.73V(vs. Li/Li+)である。
好適な一態様では、上記第1充電処理工程は、上記電圧の範囲内で設定される所定の電圧まで0.5C以上2C以下の充電レートで充電する定電流充電(CC充電)工程;および、上記所定の電圧で一定時間充電する定電圧充電(CV充電)工程;を包含する。
第1充電処理工程をCCCV充電で行うことによって、活物質の表面に、より精度よく所望の量の被膜を形成することができる。すなわち、負極で還元分解されたスルホン酸を十分に正極側へ移動させることができ、これによって正極活物質の表面に好適な量の被膜を形成することができる。さらには、負極活物質の表面に上述のような混合被膜が形成されることを抑制することができる。したがって、より一層高いレベルで本願発明の効果を発揮することができる。また、充電レートを上記範囲とすることで、より短時間で、好適な緻密性を有する(すなわち、低抵抗で、且つ本発明の効果を発揮するために十分な)被膜を精度よく形成することができる。このことは、作業効率の観点からも好ましい。なお、1Cとは理論容量より予測した電池容量(Ah)を1時間で充電できる電流値を意味し、例えば電池容量が24Ahの場合は1C=24Aである。
好適な一態様では、上記非水電解液中の上記スルホン酸化合物の含有量を、上記正極活物質の単位表面積(1m)当たり3μM以上8μM以下となるよう調製する。また、好適な他の一態様では、上記非水電解液中の上記オキサラト錯体化合物の含有量を、上記負極活物質の単位表面積(1m)当たり2μM以上10μM以下となるよう調製する。これによって、活物質の表面に好適な量の被膜を形成することができ、より一層の低抵抗を実現することができる。さらに、かかる被膜形成の効果によって、通常使用時においてガスが発生し難い電池を実現することができる。したがって、かかる製造方法によれば、本発明の適用効果をより高いレベルで発揮することができる。
上述の通り、ここで開示される非水電解液二次電池(例えばリチウムイオン二次電池)は、より厳しい使用条件においてもガスの発生が抑制され、高い電池特性を発揮し得る(例えば、耐久性と入出力特性とを高いレベルで両立可能な)ことを特徴とする。すなわち、ここで開示される電池は、例えば高温環境下で長期間保存した場合や高入出力密度で充放電を繰り返した場合であっても、電池容量の低下やガスの発生が生じ難い。したがって、かかる特徴を活かして、広い温度環境下において高い耐久性や入出力特性が要求され得る用途(例えばプラグインハイブリッド車に搭載されるモーター駆動のための動力源(駆動用電源))で好適に使用し得る。
一実施形態に係る電池の製造方法を説明するための図であり、(A)は第1充電処理工程における正負極の反応を模式的に示す説明図であり、(B)は第2充電処理工程における正負極の反応を模式的に示す説明図である。 一実施形態に係る非水電解液二次電池の外形を模式的に示す斜視図である。 図2中のIII−III線に沿う縦断面図である。 一実施形態に係る捲回電極体の構成を示す模式図である。 過充電試験における電池内圧と温度の経時変化を示すグラフであり、(A)は温度変化を、(B)は電池内圧の変化を、それぞれ表している。 耐久特性を比較したグラフである。
以下、適宜図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態を説明する。本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。なお、以下の図面において、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付して説明し、重複する説明は省略または簡略化することがある。また、各図における寸法関係(長さ、幅、厚さ等)は必ずしも実際の寸法関係を反映するものではない。
本発明により、正極活物質を有する正極と、負極活物質を有する負極と、非水電解液と、が電池ケース内に収容された構成の非水電解液二次電池が提供される。特に限定することを意図したものではないが、以下では一実施形態に係る非水電解液二次電池の概略構成として、扁平に捲回された電極体(捲回電極体)と非水電解液とを扁平な直方体形状(箱型)の容器に収容した形態の非水電解液二次電池を例として本発明を詳細に説明する。
本発明の一実施形態に係る非水電解液二次電池の概略構成を図2、図3に示す。図2は、非水電解液二次電池100の外形を模式的に示す斜視図である。図3は、図2に示した非水電解液二次電池100のIII−III線に沿う断面構造を模式的に示す縦断面図である。
図2および図3に示すように、非水電解液二次電池100は、長尺状の正極シート10と長尺状の負極シート20とが長尺状のセパレータシート40を介して扁平に捲回された形態の電極体(捲回電極体)80が、図示しない非水電解液とともに扁平な箱型形状の電池ケース50に収容された構成を有する。
≪電池ケース50≫
電池ケース50は、上端が開放された扁平な直方体形状(箱型)の電池ケース本体52と、その開口部を塞ぐ蓋体54とを備えている。電池ケース50の上面(すなわち蓋体54)には、捲回電極体80の正極と電気的に接続する外部接続用の正極端子70、および捲回電極体80の負極と電気的に接続する負極端子72が設けられている。蓋体54にはまた、従来の非水電解液二次電池の電池ケースと同様に、電池ケース50の内部で発生したガスをケース50の外部に排出するための安全弁55が備えられている。
電池ケース50の材質としては、アルミニウム、スチール等の金属材料;ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリイミド樹脂等の樹脂材料;が例示される。なかでも、放熱性向上やエネルギー密度を高める目的から、比較的軽量な金属(例えばアルミニウムやアルミニウム合金)を好ましく採用し得る。また、該ケースの形状(容器の外形)は、例えば円形(円筒形、コイン形、ボタン形)、六面体形(直方体形、立方体形)、袋体形、およびそれらを加工し変形させた形状等であり得る。
≪電流遮断機構30≫
電池ケース50の内部には、電池ケースの内圧上昇により作動する電流遮断機構30が設けられている。電流遮断機構30は、電池ケース50の内圧が上昇した場合に、少なくとも一方の電極端子(すなわち正極端子70および/または負極端子72)から電極体80に至る導電経路を切断することで充電電流を遮断し得るように構成されている。この実施形態では、電流遮断機構30は、蓋体54に固定した正極端子70と電極体80との間に設けられ、電池ケース50の内圧が上昇した場合に正極端子70から電極体80に至る導電経路を切断するように構成されている。
上記電流遮断機構30は、例えば導通部材を含み得る。この実施形態では、導通部材は、第一部材32および第二部材34から構成される。そして、電池ケース50の内圧が上昇した場合には、第一部材32および/または第二部材34(ここでは第一部材32)が変形して他方から離隔することによって上記導電経路を切断可能なよう構成されている。この実施形態では、第一部材32は変形金属板32であり、第二部材34は上記変形金属板32に接合された接続金属板34である。変形金属板(第一部材)32は、中央部分が下方へ湾曲したアーチ形状を有し、その周縁部分が集電リード端子35を介して正極端子70の下面と接続されている。また、変形金属板32の湾曲部分33の先端が接続金属板34の上面と接合されている。接続金属板34の下面(裏面)には正極集電板74が接合され、かかる正極集電板74が電極体80の正極シート10に接続されている。このようにして、正極端子70から電極体80に至る導電経路が形成されている。
電流遮断機構30はまた、プラスチック等により形成された絶縁ケース38を備えている。絶縁ケース38は、変形金属板32を囲むように設けられ、変形金属板32の上面を気密に密閉している。この気密に密閉された湾曲部分33の上面には、電池ケース50の内圧が作用しない。また、絶縁ケース38は、変形金属板32の湾曲部分33を嵌入する開口部を有しており、かかる開口部から湾曲部分33の下面を電池ケース50の内部に露出させている。この電池ケース50の内部に露出した湾曲部分33の下面には、電池ケース50の内圧が作用する。
かかる構成の電流遮断機構30において、電池ケース50の内圧が高まると、該内圧が変形金属板32の湾曲部分33の下面に作用し、下方へ湾曲した湾曲部分33が上方へ押し上げられる。この湾曲部分33の上方への押し上げ力は、電池ケース50の内圧が上昇するに従い増大する。そして、電池ケース50の内圧が設定圧力を超えると、湾曲部分33が上下反転し、上方へ湾曲するように変形する。かかる湾曲部分33の変形によって、変形金属板32と接続金属板34との接合点36が切断される。このことにより、正極端子70から電極体80に至る導電経路が切断され、充電電流が遮断されるようになっている。
なお、この実施形態では、内圧上昇時に変形する導通部材が第一部材32と第二部材34とから構成されている場合を例示したが、これに限定されず、例えば導通部材が1つの部材であってもよい。また、電流遮断機構30は正極端子70側に限らず、負極端子72側に設けてもよい。さらに、電流遮断機構30は、上述した変形金属板32の変形を伴う機械的な切断に限定されず、例えば電池ケース50の内圧をセンサで検知し、検知した内圧が設定圧力を超えると充電電流を遮断するような外部回路を電流遮断機構として設けることもできる。
従来技術に係るCIDを備えた電池では、例えば高温環境で長期間保管した場合等に電池内でガスが大量に発生すると、それによってCIDが誤作動を生じたり電池ケースが変形したりすることがあり得る。ここで開示される技術によれば通常使用時におけるガスの発生を好適に抑制することができ、このような不具合の発生を好適に抑制することができる。さらに、活物質の表面には好適な反応場が確保されているため、過充電時には迅速に大量のガスを発生させることができ、これによってCIDを早期に作動し得る。したがって、通常使用時における電池特性(例えばサイクル特性)と、過充電時における耐性とを高いレベルで両立することができる。
≪捲回電極体80≫
図4は、図3に示す捲回電極体80の構成を示す模式図である。図4に示すように、本実施形態に係る捲回電極体80は、組み立てる前段階において長尺状のシート構造(シート状電極体)を有している。かかる捲回電極体80は、長尺状の正極集電体12の片面または両面(ここでは両面)に長手方向に沿って正極活物質層14が形成された正極シート10と、長尺状の負極集電体22の片面または両面(ここでは両面)に長手方向に沿って負極活物質層24が形成された負極シート20とを、長尺状のセパレータシート40を介して重ね合わせて長尺方向に捲回し、更に側面方向から押しつぶして拉げさせることによって扁平形状に成形されている。
捲回電極体80の捲回軸方向における中央部分には、捲回コア部分(すなわち、正極シート10の正極活物質層14と、負極シート20の負極活物質層24と、セパレータシート40とが密に積層された部分)が形成されている。また、捲回電極体80の捲回軸方向の両端部では、正極シート10および負極シート20の電極活物質層非形成部の一部が、それぞれ捲回コア部分から外方にはみ出ている。かかる正極側はみ出し部分および負極側はみ出し部分には、正極集電板74および負極集電板76がそれぞれ付設され、正極端子70(図2)および負極端子72(図2)とそれぞれ電気的に接続されている。
≪正極シート10≫
正極シート10は、正極集電体12と、該正極集電体上に形成された少なくとも正極活物質を含む正極活物質層14とを備えている。そして、正極活物質の表面には、硫黄原子を含む被膜が、該正極活物質の単位表面積(1m)当たり3μM〜8μM形成されている。正極集電体12には、導電性の良好な金属(例えばアルミニウム、ニッケル、チタン、ステンレス鋼等)からなる導電性部材が好適に使用され得る。
<正極活物質層14>
正極活物質層14は、少なくとも正極活物質を含んでいる。正極活物質としては、非水電解液二次電池の正極活物質として使用し得ることが知られている各種の材料の1種または2種以上を、特に限定なく採用し得る。好適例として、層状系、スピネル系等のリチウム複合金属酸化物(LiNiO、LiCoO、LiMn、LiFeO等)が挙げられる。なかでも、構成元素としてLi,Ni,CoおよびMnを含む、層状構造(典型的には、六方晶系に属する層状岩塩型構造)のリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物(例えば、LiNi1/3Co1/3Mn1/3)は、熱安定性に優れ、且つ他の化合物に比べて理論エネルギー密度が高いため好ましい。
ここで、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物とは、Li,Ni,CoおよびMnのみを構成金属元素とする酸化物のほか、Li,Ni,CoおよびMn以外に他の少なくとも1種の金属元素(すなわち、Li,Ni,CoおよびMn以外の遷移金属元素および/または典型金属元素)を含む酸化物をも包含する意味である。かかる金属元素は、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、鉄(Fe)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pb)、白金(Pt)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、ホウ素(B)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、スズ(Sn)、ランタン(La)、セリウム(Ce)のうちの1種または2種以上の元素であり得る。これらの金属元素の添加量(配合量)は特に限定されないが、通常0.01質量%〜5質量%(例えば0.05質量%〜2質量%、典型的には0.1質量%〜0.8質量%)であり得る。上記添加量の範囲とすることで、優れた電池特性(例えば、高エネルギー密度)を実現し得る。
正極活物質の性状は特に限定されないが、例えば粒子状や粉末状であり得る。かかる粒子状正極活物質の平均粒径は、20μm以下(典型的には1μm〜20μm、例えば5μm〜15μm)であり得る。また、比表面積は0.1m/g以上(典型的には0.7m/g以上、例えば0.8m/g以上)であって、5m/g以下(典型的には1.3m/g以下、例えば1.2m/g以下)であり得る。上記性状のうち1つまたは2つを満たす正極活物質は、被膜が形成された状態であっても電荷担体の反応場が広く確保されているため、高い電池特性(例えば高い入出力特性)を発揮することができる。また、過充電時に迅速にガス発生剤を酸化分解することができ、これを起点として、過充電の初期段階でCIDを作動させることができる。
なお、本明細書において「平均粒径」とは一般的なレーザー回折・光散乱法に基づく粒度分布測定により測定した体積基準の粒度分布おいて、微粒子側からの累積50%に相当する粒径(D50粒径、メジアン径ともいう。)をいう。
正極活物質の表面には、硫黄原子を含む被膜が形成されている。かかる被膜は、実質的に上記非水電解液中に含ませたスルホン酸化合物(典型的には有機スルホン酸化合物、例えば脂肪族スルホン酸化合物)に由来するものであり得、例えば、スルホニルオキシ基(−O−S(=O)−)と、電荷担体(例えばLi)と、アルキル基(例えばCH)と、を構成元素として含み得る。
例えば、高温環境等の厳しい使用条件下で電池を繰り返し使用した場合、後述する負極活物質表面の被膜(典型的にはBP−オキサラト化合物由来の被膜)が徐々に分解され、シュウ酸イオン(C 2−)を生じることがある。シュウ酸イオンは負に帯電しているため、通常、正極側に引き寄せられる。そして、正極の表面(例えば正極活物質の表面)で酸化分解され、ガスを発生させる。しかしながら、ここで開示される正極活物質の表面には、上述のような被膜が形成されている。シュウ酸イオンおよび上記被膜はいずれも不対電子対を有するため、互いに反発しあう。このため、シュウ酸イオンが正極に接近することを防止することができ、上述のようなガスの発生を抑えることができる。さらに、硫黄原子を含む被膜は熱的安定性に優れるため、高温環境下において高い耐久性(例えば、高温保存特性や高温充放電サイクル特性)を実現し得る。
正極活物質の表面に形成された被膜の量は、該正極活物質の単位表面積(1m)当たり3μM〜8μM(好ましくは5.4μM〜7.1μM)である。被膜量を3μM以上とすることで、本願発明の効果を高いレベルで発揮することができる。また、被膜量を8μM以下とすることで、電荷担体の反応場を好適に確保することができ、被膜の形成に伴う抵抗の増大を抑えることができる。
上記「正極活物質の単位表面積当たりの被膜の量(μM/m)」は、イオンクロマトグラフィー(IC)によって測定された被膜値(μM/cm)を、単位面積当たりに含まれる正極活物質の表面積(m/cm)で除すことによって求めることができる。具体的には、先ず電池を解体して取り出した正極活物質層14を適当な溶媒(例えばEMC)に浸漬した後、測定試料(正極活物質層14)を適当な大きさに切り出して採取する。次に、かかる測定試料を50%アセトニトリル(CHCN)水溶液中に所定の時間(例えば1分〜30分程度)浸漬することで、測定対象となる被膜成分(硫化物イオン)を溶媒中に抽出する。この溶液をICの測定に供し、得られた結果から測定対象のイオン(例えば、SO 2−、SO 2−)の含有量(μM)を定量する。各イオンの定量値(μM)を合計して、測定に供した正極活物質層の面積(cm)で除すことにより、測定試料中の被膜量(μM/cm)を求めることができる。そして、この値を正極活物質の目付量(g/cm)と正極活物質のBET比表面積(m/g)の積で除すことによって、上記「正極活物質の単位表面積当たりの被膜の量(μM/m)」を求めることができる。
なお、被膜の量を測定する手法として上記にはIC用いる手法を例示したが、これに限定されず、例えば従来公知の誘導結合プラズマ発光分光分析(ICP‐AES:Inductively Coupled Plasma−Atomic Emission Spectrometry)やX線吸収微細構造解析法(XAFS:X-ray Absorption Fine Structure)等によっても概ね把握することができる。
正極活物質層14には、上記正極活物質に加え、一般的な非水電解液二次電池において正極活物質層14の構成成分として使用され得る1種または2種以上の材料を必要に応じて含有し得る。そのような材料の例として、導電材やバインダが挙げられる。導電材としては、例えば、種々のカーボンブラック(典型的にはアセチレンブラック、ケッチェンブラック)、コークス、活性炭、黒鉛、炭素繊維、カーボンナノチューブ等の炭素材料を好適に用いることができる。また、バインダとしては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)等のハロゲン化ビニル樹脂;ポリエチレンオキサイド(PEO)等のポリアルキレンオキサイド;等を好適に用いることができる。
正極活物質層14全体に占める正極活物質の割合は、凡そ60質量%以上(典型的には60質量%〜99質量%)とすることが適当であり、通常は凡そ70質量%〜95質量%であることが好ましい。導電材を使用する場合、正極活物質層14全体に占める導電材の割合は、例えば凡そ2質量%〜20質量%とすることができ、通常は凡そ3質量%〜10質量%とすることが好ましい。バインダを使用する場合、正極活物質層14全体に占めるバインダの割合は、例えば凡そ0.5質量%〜10質量%とすることができ、通常は凡そ1質量%〜5質量%とすることが好ましい。
正極集電体12の単位面積当たりに設けられる正極活物質層14の質量(目付量)は、充分な電池容量を確保する観点から、正極集電体12の片面当たり3mg/cm以上(例えば5mg/cm以上、典型的には7mg/cm以上)とすることができる。また、電池特性(例えば入出力特性)を確保する観点から、正極集電体12の片面当たり100mg/cm以下(例えば70mg/cm以下、典型的には50mg/cm以下)とすることができる。これにより、本願発明の効果をより高いレベルで発揮し得る。なお、この実施形態のように正極集電体12の両面に正極活物質層14を有する構成では、正極集電体12の各々の面に設けられる正極活物質層14の質量は、概ね同程度とすることが好ましい。
正極活物質層14の片面当たりの平均厚みは、例えば20μm以上(典型的には40μm以上、好ましくは50μm以上)であって、100μm以下(典型的には80μm以下)であり得る。また、正極活物質層14の密度は、例えば1g/cm〜4g/cm(例えば1.5g/cm〜3.5g/cm)であり得る。また、正極活物質層14の空隙率(空孔率)は、例えば10体積%〜50体積%(典型的には20体積%〜40体積%)であり得る。
上記性状のうち1つまたは2つ以上を満たす場合、正極活物質層14内に適度な空隙を保つことができ、非水電解液を十分に浸潤させることができる。このため、電荷担体との反応場を広く確保することができ、通常時には高い入出力特性を発揮することができる。また、かかる空隙はガス発生剤の供給経路となり得るため、過充電時には迅速に多くのガス発生剤を酸化分解することができ、これを起点として的確にCIDを作動させることができる。さらに、正極活物質層14内の導電性を良好に保つことができ、抵抗の増大を抑制し得る。また、正極活物質層14の機械的強度(形状保持性)を確保することができ、良好なサイクル特性を発揮することができる。このため、上記範囲とすることで、通常使用時には優れた電池特性(例えば高エネルギー密度や入出力特性)を発揮することができ、且つ、過充電時には迅速にCIDを作動させることのできる電池を実現し得る。
なお、本明細書において「空隙率」とは、水銀ポロシメータの測定によって得られた全細孔容積(cm)を活物質層の見かけの体積(cm)で除して100を掛けた値をいう。見かけの体積は、平面視での面積(cm)と厚み(cm)との積によって算出することができる。具体的には、例えばまず測定対象たる正極シートを打ち抜き機やカッター等で正方形や長方形に切りだす。次に、上記切り出したサンプルの正極活物質層の平面視における面積(cm)と厚み(cm)とを計測し、これらの値を乗ずることにより見かけの体積を算出する。厚みは、例えばマイクロメータや厚み計(例えばロータリーキャリパー計)等により計測することができる。
このような正極シート10を作製する方法は特に限定されないが、例えば以下のように行うことができる。まず、正極活物質と必要に応じて用いられる材料とを適当な溶媒に分散させ、ペースト状またはスラリー状の組成物(正極活物質層形成用スラリー)を調製する。そして、調製した正極活物質層形成用スラリーを長尺状の正極集電体12に付与し、該スラリーに含まれる溶媒を除去する。これにより、正極集電体12上に正極活物質層14を備えた正極シート10を作製することができる。上記溶媒としては水性溶媒および有機溶媒のいずれも使用可能であり、例えばN−メチル−2−ピロリドン(NMP)を用いることができる。また、上記スラリーを付与する操作は、例えば、グラビアコーター、スリットコーター、ダイコーター、コンマコーター、ディップコーター等の適当な塗付装置を使用して行うことができる。また、上記溶媒の除去も、従来の一般的な手段(例えば加熱乾燥や真空乾燥)により行うことができる。
なお、上述のような正極活物質層14の性状(すなわち平均厚み、密度、空隙率)は、例えば、上記正極活物質層14の形成後に、正極シート10に対して適当なプレス処理を施すことによって調整し得る。プレス処理には、ロールプレス法、平板プレス法等の従来公知の各種プレス方法を採用することができる。また、かかる処理は1回でもよく、2回以上の複数回行うこともできる。
≪負極シート20≫
負極シート20は、負極集電体22と、該負極集電体上に形成された少なくとも負極活物質を含む負極活物質層24とを備えている。そして、負極活物質の表面には、ホウ素原子および/またはリン原子を含む被膜が該負極活物質の単位表面積(1m)当たり2μM〜10μM(好ましくは2.4μM〜3.9μM)形成されている。負極集電体22には、導電性の良好な金属(例えば、銅、ニッケル、チタン、ステンレス鋼等)からなる導電性材料が好適に使用され得る。
<負極活物質層24>
負極活物質層24は、少なくとも負極活物質を含んでいる。負極活物質としては、非水電解液二次電池の負極活物質として使用し得ることが知られている各種の材料の1種または2種以上を、特に限定なく使用することができる。好適例として、黒鉛(グラファイト)、難黒鉛化炭素(ハードカーボン)、易黒鉛化炭素(ソフトカーボン)、カーボンナノチューブ、これらを組み合わせた構造を有するもの等の少なくとも一部にグラファイト構造(層状構造)を含む炭素材料が挙げられる。なかでも、高いエネルギー密度が得られることから、天然黒鉛(石墨)や人造黒鉛等の黒鉛系材料を好ましく用いることができる。通常、炭素材料を負極に備えた電池では、例えば厳しい条件で充放電を繰り返した場合等に、非水電解液に含まれる成分(例えば非水溶媒や支持塩)が徐々に分解され、エネルギー密度が低下することがあり得る。しかしながら、ここで開示される負極活物質の表面にはホウ素原子および/またはリン原子を含む被膜が形成され、非水電解液との界面が安定化されているため、非水電解液の還元分解を好適に抑制することができる。
負極活物質の性状は特に限定されないが、例えば粒子状や粉末状であり得る。かかる粒子状負極活物質の平均粒径は、20μm以下(典型的には1μm〜20μm、例えば5μm〜15μm)であり得る。また、比表面積は1m/g以上(典型的には2.5m/g以上、例えば2.8m/g以上)であって、10m/g以下(典型的には3.5m/g以下、例えば3.4m/g以下)であり得る。上記性状のうち1つまたは2つを満たす負極活物質は、被膜が形成された状態であっても電荷担体の反応場が広く確保されているため、高い電池特性(例えば高い入出力特性)を発揮することができる。また、通常使用時における意図しないガスの発生を好適に抑制することができる。
上述のような性状を満たす負極活物質は、典型的には形状異方性を有し、例えば、鱗片状、平板状等であり得る。あるいは、鱗片状の黒鉛に応力を加えて球形化したもの(いわゆる球形化黒鉛)であり得る。一般に黒鉛は六角網面構造の端部(エッジ面)にヒドロキシル基やカルボキシル基のような反応活性の高い官能基を備え、該エッジ面が非水電解液と反応することによって電池の容量低下や抵抗増加を招来し得る。球形化黒鉛では反応性に富んだエッジ面が折り畳まれた状態で褶曲構造をとるため、該エッジ面の割合が相対的に小さく、これによって非水電解液との反応性を相対的に低く抑えることができる。また、球形化によって六角網面構造の配向性が均質化され、例えば電極活物質層24の厚み方向の導電性を向上させることができる。したがって、球形化黒鉛を用いることで不可逆容量や抵抗を低減することができ、より一層高い耐久性を発揮することができる。
負極活物質の表面には、ホウ素原子および/またはリン原子を含む被膜が形成されている。かかる被膜は、実質的に上記非水電解液中に含ませたBP−オキサラト化合物に由来するものであり得、例えば図1(B)に示すように、ホウ素原子および/またはリン原子と電荷担体イオン(例えばLi)とが、シュウ酸イオン(C 2−)によって架橋された構造であり得る。この被膜によって、負極活物質(典型的には黒鉛材料)と非水電解液との界面が安定化されるため、以降の充放電における非水電解液の分解を抑制することができる。
負極活物質の表面に形成された被膜の量は、該負極活物質の単位表面積(1m)当たり2μM〜10μM(好ましくは2.4μM〜3.9μM)である。被膜量を2μM以上とすることで、本願発明の効果を高いレベルで発揮することができる。また、被膜量を10μM以下とすることで、電荷担体の反応場を好適に確保することができ、被膜の形成に伴う抵抗の増大を抑えることができる。
上記「負極活物質の単位表面積当たりの被膜の量(μM/m)」は、上述した「正極活物質の単位表面積当たりの被膜の量と同様の手法により、求めることができる。
具体的には、先ず電池を解体して取り出した負極活物質層24を適当な溶媒(例えばEMC)に浸漬した後、測定試料(負極活物質層24)を適当な大きさに切り出して採取する。次に、かかる測定試料をイオン交換水中に所定の時間(例えば1分〜30分程度)浸漬することで、測定対象となる被膜成分(ホウ素イオンおよび/またはリンイオン)を溶媒中に抽出する。この溶液をICの測定に供し、得られた結果から測定対象のイオン(例えば、BO 3−、PO 3−)の含有量(μM)を定量する。各イオンの定量値(μM)を合計して、測定に供した負極活物質層の面積(cm)で除すことにより、測定試料中の被膜量(μM/cm)を求めることができる。そして、この値を負極活物質の目付量(g/cm)と負極活物質のBET比表面積(m/g)の積で除すことによって、上記「負極活物質の単位表面積当たりの被膜の量(μM/m)」を求めることができる。
なお、BP−オキサラト化合物は、上記式(III)〜(VI)に示すように、中心原子としてのホウ素原子またはリン原子にシュウ酸イオン等が配位した4配位または6配位の構造である。しかし、負極活物質の表面で分解されて被膜を形成すると、例えば図1(B)に示すように、ホウ素原子は4配位から3配位の構造となる。したがって、このような配位の差異を確認し得る測定手法(例えばXAFS)を用いることで、負極活物質層の近傍に存在するBP−オキサラト化合物と、負極活物質表面に形成された被膜とを区別し、より正確に定量することもできる。
負極活物質層24には、上記負極活物質に加え、一般的な非水電解液二次電池において負極活物質層24の構成成分として使用され得る1種または2種以上の材料を必要に応じて含有し得る。そのような材料の例として、バインダや各種添加剤が挙げられる。バインダとしては、例えば、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のポリマー材料を好適に用いることができる。その他、増粘剤、分散剤、導電材等の各種添加剤を適宜使用することもでき、例えば増粘剤としてはカルボキシメチルセルロース(CMC)やメチルセルロース(MC)を好適に用いることができる。
負極活物質層24全体に占める負極活物質の割合は、凡そ50質量%以上とすることが適当であり、通常は90質量%〜99質量%(例えば95質量%〜99質量%)とすることが好ましい。バインダを使用する場合には、負極活物質層24全体に占めるバインダの割合は例えば凡そ1質量%〜10質量%とすることができ、通常は凡そ1質量%〜5質量%とすることが好ましい。
負極集電体22の単位面積当たりに設けられる負極活物質層24の質量(目付量)は、負極集電体22の片面当たり5mg/cm〜20mg/cm(典型的には7mg/cm〜15mg/cm)程度とすることができる。なお、この実施形態のように負極集電体22の両面に負極活物質層24を有する構成では、負極集電体22の各々の面に設けられる負極活物質層24の質量を概ね同程度とすることが好ましい。
負極活物質層24の空隙率は、例えば5体積%〜50体積%(好ましくは35体積%〜50体積%)程度であり得る。また、負極活物質層24の片面当たりの厚みは、例えば40μm以上(典型的には50μm以上)であって、100μm以下(典型的には80μm以下)とすることができる。また、負極活物質層24の密度は、例えば0.5g/cm〜2g/cm(典型的には1g/cm〜1.5g/cm)程度とすることができる。負極活物質層24の性状を上記範囲とすることで、非水電解液との界面を好適に保つことができ、通常使用時には耐久性(サイクル特性)と入出力特性とを高いレベルで両立させることができる。また、過充電時には正極で生じた水素イオンを好適に還元し得、迅速に大量のガスを発生させることができる。なお負極活物質層24の空隙率や厚み、密度は、上述した正極活物質層14と同様に、適当なプレス処理を施すこと等によって調整することができる。
このような負極シート20を作製する方法は特に限定されないが、例えば以下のように行うことができる。まず、負極活物質と必要に応じて用いられる材料とを適当な溶媒に分散させ、ペースト状またはスラリー状の組成物(負極活物質層形成用スラリー)を調製する。そして、調製した負極活物質層形成用スラリーを長尺状の負極集電体22に付与し、該スラリーに含まれる溶媒を除去する。これにより、負極集電体22上に負極活物質層24を備えた負極シート20を作製することができる。上記溶媒としては、水性溶媒および有機溶媒のいずれも使用可能であり、例えば水を用いることができる。また、上記スラリーの付与や溶媒の除去、プレス処理等は、正極シート10の場合と同様に行うことができる。
≪セパレータシート40≫
正負極シート10、20間に介在されるセパレータシート40としては、正極活物質層14と負極活物質層24とを絶縁するとともに非水電解液の保持機能やシャットダウン機能を有するものであればよい。好適例として、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエステル、セルロース、ポリアミド等の樹脂から成る多孔質樹脂シート(フィルム)が挙げられる。かかる多孔質樹脂シートは、単層構造であってもよく、二層以上の複数構造(例えば、PE層の両面にPP層が積層された、すなわちPP/PE/PPの三層構造)であってもよい。多孔性樹脂シートの平均厚みは、例えば10μm〜40μm程度とし得る。また、気孔率(空隙率)は20体積%〜90体積%(典型的には30体積%〜80体積%、好ましくは40体積%〜60体積%)程度とすることができる。
セパレータシート40は、上記多孔質シートの片面または両面(典型的には片面)に多孔質の耐熱層を備えた耐熱性セパレータであってもよい。この耐熱層は、例えば、無機フィラーとバインダとを含む層であり得る。無機フィラーとしては、例えばアルミナ、ベーマイト、シリカ、チタニア、カルシア、マグネシア、ジルコニア、窒化ホウ素、窒化アルミニウム等を好ましく採用し得る。耐熱層の平均厚みは、例えば1μm〜10μm程度とし得る。
≪非水電解液≫
非水電解液は、非水溶媒中に少なくとも支持塩を含んでいる。非水電解液は常温(例えば25℃)で液状を呈し、好ましい一態様では、電池の使用環境下(例えば0℃〜60℃の温度環境下)で常に液状を呈する。
非水溶媒としては、一般的な非水電解液二次電池の電解液に用いられる各種のカーボネート類、エーテル類、エステル類、ニトリル類、スルホン類、ラクトン類等の有機溶媒を、特に限定なく用いることができる。具体例として、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)等が例示される。このような非水溶媒は、1種を単独で、あるいは2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。好ましい一態様として、カーボネート類を主体とする非水溶媒が挙げられる。なかでも、比誘電率の高いECや、酸化電位が高い(電位窓の広い)DMCやEMCを好適に用いることができる。例えば、非水溶媒として1種または2種以上のカーボネート類を含み、それらカーボネート類の合計体積が非水溶媒全体の体積の60体積%以上(より好ましくは75体積%以上、さらに好ましくは90体積%以上であり、実質的に100体積%であってもよい。)を占める非水溶媒を好ましく用いることができる。
支持塩としては、電荷担体イオン(例えば、リチウムイオン、ナトリウムイオン、マグネシウムイオン等。リチウムイオン二次電池ではリチウムイオン。)を含むものであれば、一般的な非水電解液二次電池と同様のものを適宜選択して使用することができる。例えば電荷担体イオンがリチウムイオンの場合は、LiPF、LiBF、LiClO、LiAsF、Li(CFSON、LiCFSO等のリチウム塩が例示される。このような支持塩は、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。特に好ましい支持塩としてLiPFが挙げられる。また、非水電解液は上記支持塩の濃度が0.7mol/L〜1.3mol/Lの範囲内となるように調製することが好ましい。
好適な一態様では、上記非水電解液は、所定の電池電圧を超えた際に分解してガスを発生し得るガス発生剤を含んでいる。ガス発生剤としては、所定の電池電圧を超えた際に分解してガスを発生し得る化合物(すなわち、酸化電位(vs. Li/Li+)が正極の充電上限電位(vs. Li/Li+)以上であって、かかる電位を超えて過充電状態となった場合に分解してガスを発生し得るような化合物)であれば特に限定なく用いることができる。具体的には、ビフェニル化合物、アルキルビフェニル化合物、シクロアルキルベンゼン化合物、アルキルベンゼン化合物、有機リン化合物、フッ素原子置換芳香族化合物、カーボネート化合物、環状カルバメート化合物、脂環式炭化水素等の芳香族化合物が挙げられる。
例えば、正極の充電上限電位(vs. Li/Li+)が凡そ4.0〜4.3V程度に設定される電池では、ビフェニル(酸化電位:4.5V(vs. Li/Li+))やシクロヘキシルベンゼン(酸化電位:4.6V(vs. Li/Li+))を好ましく採用し得る。これらのガス発生剤は、酸化電位が充電上限電位に近いため、過充電の早い段階において正極で酸化分解を生じ、速やかにガス(典型的には水素ガス)を発生し得る。また、かかる化合物は共役系をとりやすく電子授受が容易であるため、多量のガスを発生させることができる。これによって、CIDを迅速且つ的確に作動させることができ、電池の信頼性を一層高めることができる。
非水電解液中のガス発生剤の濃度は特に限定されないが、CIDを作動させるのに十分なガス量を確保する観点からは、上記正極活物質の単位表面積(1m)当たり200μM以上とすることが好ましい。ただし、ガス発生剤は電池反応の抵抗成分となり得るため、過剰に添加した場合、入出力特性が低下する虞がある。かかる観点からは、ガス発生剤の添加量を上記正極活物質の単位表面積(1m)当たり250μM以下とすることが好ましい。上記範囲とすることで、過充電時に十分な量のガスを発生させることができ、的確にCIDを作動させることができる。さらに、通常使用時の抵抗増大を抑えることができ、高い電池特性を維持発揮することができる。
換言すれば、非水電解液中のガス発生剤の濃度は、通常、非水電解液100質量%に対して、凡そ1質量%以上(典型的には2質量%以上、例えば3質量%以上)であって、7質量%以下(典型的には5質量%以下、例えば4質量%以下)であり得る。
なお、上記非水電解液中には、本発明の目的を大きく損なわない限度で、各種添加剤をさらに含み得る。かかる添加剤は、例えば、電池の入出力性能の向上、保存性の向上(保存中における容量低下の抑制等)、サイクル特性の向上、初期充放電効率の向上等の1または2以上の目的で使用されるものであり得る。好ましい添加剤の例として、スルホン酸化合物、ホウ素原子および/またはリン原子を含むオキサラト錯体化合物、ビニレンカーボネート(VC)、フルオロエチレンカーボネート(FEC)等が挙げられる。
≪非水電解液二次電池の製造方法≫
上述のような非水電解液二次電池は、以下の工程を包含する製造方法によって好適に製造することができる。
(1)電池構築工程;正極活物質を有する正極と、負極活物質を有する負極と、非水電解液と、を電池ケース内に収容して電池を構築する。ここで、上記非水電解液には、硫黄原子を含むスルホン酸化合物と、ホウ素原子および/またはリン原子を含むオキサラト錯体化合物と、を含ませる。
(2)第1充電処理工程;上記正極と上記負極の間の電圧が0.8V以上1.3V以下となるよう充電処理を行う。
(3)第2充電処理工程;上記正極と上記負極の間の電圧が2V以上5V以下となるよう充電処理を行う。
以下、各工程を順に説明する。
<(1)電池構築工程>
電池構築工程では、正極と負極と非水電解液とを電池ケース内に収容して電池を構築する。正極および負極は、既に上述したものを用いることができる。非水電解液には上述の非水溶媒と支持塩に加え、硫黄原子を含むスルホン酸化合物と、ホウ素原子および/またはリン原子を含むオキサラト錯体化合物と、を含んでいる。これらの化合物は、後述する充電処理工程において分解され、活物質の表面に被膜を形成する。また、好適な一態様では、さらにガス発生剤を含んでいる。
スルホン酸化合物としては、スルホン酸およびその誘導体を用いることができ、公知の方法により作製したもの、あるいは市販品の購入等により入手したものを特に限定せず1種または2種以上用いることができる。スルホン酸の典型例として、少なくとも1つのスルホン酸基(−S(=O)O−)と炭素骨格とを有する有機スルホン酸化合物が挙げられる。具体的には、アルカンスルホン酸、アルカンジスルホン酸、アルカントリスルホン酸、アルケンスルホン酸、アルキンスルホン酸等の脂肪族スルホン酸;ベンゼンスルホン酸、ベンゼンジスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、アルキルナフタレンスルホン酸等の芳香族スルホン酸;等が例示される。なかでも、下記式(VII)または(VIII)で表されるような、少なくとも一つのスルホン酸基(−S(=O)O−)と三重結合とを有する脂肪族スルホン酸(アルキンスルホン酸)を好適に用いることができる。特に下記式(VII)で表される化合物は、後述するオキサラト錯体化合物(例えばLIBOB)よりも還元電位が凡そ0.5V(vs. Li/Li+)高いため、正極活物質の表面に安定性の高い被膜を好適に形成することができる。
Figure 2014232704
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式(VII)、(VIII)において、R,Rは、メチル基、エチル基、プロピル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基、又はペンチル基等の炭素原子数1〜12(好ましくは1〜6、より好ましくは1〜3)の直鎖状または分岐状のアルキル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の炭素原子数3〜6(典型的には6)のシクロアルキル基;フェニル基、メチルフェニル基、ジメチルフェニル基、エチルフェニル基、プロピルフェニル基、ブチルフェニル基、ナフチル基、メチルナフチル基、ベンジルフェニル基、ビフェニル基等の炭素原子数6〜12のアリール基;または炭素原子数1〜10(好ましくは1〜6、より好ましくは1〜3)のパーフルオロアルキル基;である。好適な一態様では、上記式(VII)におけるRおよび/または上記式(VIII)におけるRが、炭素数1のアルキル基(メチル基)である。すなわち、スルホン酸化合物がメタンスルホン酸基(CH−S(=O)−O−)を有することが好ましい。かかる場合、正極活物質表面における立体障害をより小さく抑えることができる。したがって、高い反応性を発揮し得、所望の被膜をより好適に形成することができる。
また、R,R,R,R,R,R,R,R10は、それぞれ独立して、水素原子あるいは、上記R,Rと同様に、炭素原子数1〜4の直鎖状または分岐状のアルキル基である。好適な一態様では、上記式(VII)におけるR〜R、および/または、上記式(VIII)におけるR〜R10が、いずれも水素原子である。かかる場合、被膜形成における反応抵抗を低減することができる。
また、式(VIII)において、mは0または1である。
式(VII)で示されるスルホン酸化合物の具体例としては、2−ブチン−1,4−ジオールジ(メタンスルホナート)、2−ブチン−1,4−ジオールジ(エタンスルホナート)、3−ヘキシン−2,5−ジオールジ(メタンスルホナート)、3−ヘキシン−2,5−ジオールジ(エタンスルホナート)、2,5−ジメチル−3−ヘキシン−2,5−ジオールジ(メタンスルホナート)、2,5−ジメチル−3−ヘキシン−2,5−ジオールジ(エタンスルホナート)等が挙げられる。また、式(VIII)で示されるスルホン酸化合物の具体例としては、2−(メチルスルホニルオキシ)プロパン酸2−プロピニル、2−(メチルスルホニルオキシ)プロパン酸3−ブチニル、メタンスルホン酸2−プロピニル、エタンスルホン酸2−プロピニル、トリフルオロメタンスルホン酸2−プロピニル、メタンスルホン酸3−ブチニル、トリフルオロメタンスルホン酸3−ブチニル等が挙げられる。なかでも立体障害が小さく反応性が高いことから、上記式(I)で表される2−ブチン−1,4−ジオールジ(メタンスルホナート)や、上記式(II)で表される2−(メチルスルホニルオキシ)プロパン酸2−プロピニルを好適に用いることができる。
また、スルホン酸誘導体の典型例としては、種々の塩が挙げられる。例えば、脂肪族スルホン酸類あるいは芳香族スルホン酸類のリチウム塩、ナトリウム塩、アンモニウム塩、メチルエステル等が挙げられる。
スルホン酸およびその誘導体は後述する第1充電処理工程において負極活物質の表面で還元分解され、これを起点として、正極活物質の表面に良質な被膜を形成し得る。
好ましい一態様では、非水電解液に含まれる成分の中で、上記スルホン酸化合物が最も高い還元電位(vs. Li/Li+)を示す。例えば、2−ブチン−1,4−ジオールジ(メタンスルホナート)の還元電位は凡そ2.25V(vs. Li/Li+)であるため、非水電解液に含まれる他の成分(典型的には、後述するオキサラト錯体化合物および非水溶媒)の還元電位は、2.25V(vs. Li/Li+)と概ね同等かそれよりも低い(典型的には0.1V以上低い、例えば0.3V以上低い、特に0.5V以上低い)ことが好ましい。
スルホン酸化合物の好適な添加量は、例えば正極活物質の種類や性状(例えば、粒径や比表面積)等によって異なり得る。一般的には、正極活物質の平均粒径が小さくおよび/またはBET比表面積が大きくなるほど、好適なスルホン酸化合物の添加量は増加する傾向にある。このため、特に限定されないが、添加量があまりに少ない場合は正極活物質表面に形成される被膜が薄くなり電池の耐久性(保存特性や急速充放電特性)が低下する虞がある。一方、添加量があまりに多い場合は負極活物質および正極活物質の表面に形成される被膜が厚くなり、充放電に伴う抵抗が増大する虞がある。このため、好適な一態様では、上記非水電解液中の上記スルホン酸化合物の含有量を、上記正極活物質の単位表面積(1m)当たり(3μM以上8μM以下となるよう調製する。換言すれば、非水電解液中のスルホン酸化合物の濃度は、通常、非水電解液100質量%に対して、凡そ0.1質量%以上(典型的には0.2質量%以上、例えば0.5質量%以上)であって、10質量%以下(典型的には7質量%以下、例えば5質量%以下、好ましくは3質量%以下)であり得る。添加量が上記範囲にある場合、本願発明の効果をより高いレベルで発揮することができる。
BP−オキサラト化合物としては、公知の方法により作製したもの、あるいは市販品の購入等により入手したものを特に限定せず1種または2種以上用いることができる。例えば、下記式(IX)または(X)で表されるように、少なくとも一つのシュウ酸イオン(C 2−)がホウ素(B)に配位した構造部分を有するオキサラト錯体化合物(B原子含有オキサレート塩)が例示される。かかる化合物は、後述する第2充電処理工程において、負極活物質の表面に良質な被膜を形成し得る。
Figure 2014232704
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ここで、式(IX)中のR11およびR12は、それぞれ独立して、ハロゲン原子(例えば、F、Cl、Br。好ましくはF)および炭素原子数1〜10(好ましくは1〜3)のパーフルオロアルキル基から選択される。式(IX)、(X)中のAは、無機カチオンおよび有機カチオンのいずれでもよい。無機カチオンの例としては、Li、Na、K等のアルカリ金属のカチオン;Be、Mg、Ca等のアルカリ土類金属のカチオン;その他、Ag、Zn、Cu、Co、Fe、Ni、Mn、Ti、Pb、Cr、V、Ru、Y、ランタノイド、アクチノイド等の金属のカチオン;プロトン;等が挙げられる。有機カチオンの例としては、テトラブチルアンモニウムイオン、テトラエチルアンモニウムイオン、テトラメチルアンモニウムイオン等のテトラアルキルアンモニウイオン;トリエチルメチルアンモニウムイオン、トリエチルアンモニウムイオン等のトリアルキルアンモニウムイオン;その他、ピリジニウムイオン、イミダゾリウムイオン、テトラエチルホスホニウムイオン、テトラメチルホスホニウムイオン、テトラフェニルホスホニウムイオン、トリフェニルスルホニウムイオン、トリエチルスルホニウムイオン;等が挙げられる。好ましいカチオンの例として、リチウムイオン、テトラアルキルアンモニウムイオンおよびプロトンが挙げられる。B原子含有オキサレート塩の具体例としては、リチウムビス(オキサラト)ボレート(LIBOB)、リチウムジフルオロオキサレートボレート(LBFO)が挙げられる。
また、他の例として、上記式(V)(VI)で表されるような、少なくとも一つのシュウ酸イオン(C 2−)がリン(P)原子に配位した構造部分を有するオキサラト錯体化合物(P原子含有オキサレート塩)が例示される。なお、上記式(V)、(VI)では、カチオンがリチウムイオンである例を示しているが、式(IX)、(X)におけるAと同様に、他のカチオンであってもよい。また、上記式(V)、(VI)におけるFは、式(IX)におけるR11、R12と同様、それぞれ独立して、Fおよび他のハロゲン原子(例えば、F、Cl、Br。好ましくはF)および炭素原子数1〜10(好ましくは1〜3)のパーフルオロアルキル基から選択され得る。P原子含有オキサレート塩の具体例としては、リチウムジフルオロビス(オキサレート)ホスフェート(LPFO)、リチウムテトラフルオロオキサレートホスフェート、リチウムトリス(オキサラト)ホスフェート等が挙げられる。
好ましい一態様では、BP−オキサラト化合物の還元電位(vs. Li/Li+)が、上述のスルホン酸化合物よりも低く、且つ非水電解液に含まれる他の成分(典型的には、非水溶媒)よりも高い。すなわち、非水電解液に含まれる成分の中で、還元電位の順が、スルホン酸化合物>BP−オキサラト化合物>非水溶媒となる態様が好ましい。例えば、LIBOBの還元電位は凡そ1.73V(vs. Li/Li+)であるため、非水電解液に含まれる非水溶媒の還元電位は、1.73V(vs. Li/Li+)と概ね同等かそれよりも低い(典型的には0.1V以上低い、例えば0.5V以上低い、特に0.7V以上低い)ことが好ましい。
BP−オキサラト化合物の好適な添加量は、例えば負極活物質の種類や性状(例えば、粒径や比表面積)等によって異なり得る。一般的には、平均粒径が小さくおよび/またはBET比表面積が大きくなるほど、好適なBP−オキサラト化合物の添加量は増加する傾向にある。このため、特に限定されないが、添加量があまりに少ない場合は負極活物質表面に形成される被膜が薄くなり電池の耐久性(保存特性や急速充放電特性)が低下する虞がある。一方、添加量があまりに多い場合は負極活物質の表面に形成される被膜が厚くなり、充放電に伴う抵抗が増大する虞がある。このため、好適な一態様では、非水電解液中のBP−オキサラト化合物の含有量を、負極活物質の単位表面積(1m)当たり2μM以上10μM以下となるよう調製する。換言すれば、非水電解液中のBP−オキサラト化合物の濃度は、通常、非水電解液100質量%に対して、凡そ0.1質量%以上(典型的には0.2質量%以上、例えば0.5質量%以上)であって、10質量%以下(典型的には7質量%以下、例えば5質量%以下)であり得る。添加量が上記範囲にある場合、本願発明の効果をより高いレベルで発揮することができる。
<(2)第1充電処理工程>
第1充電処理工程では、上記正極と上記負極の間に電流を付与する充電処理を行う。この充電処理は、使用するスルホン酸化合物やオキサラト錯体化合物の種類によっても若干異なり得るが、正負極端子間の電圧(典型的には最高到達電圧)が凡そ0.8V〜1.3V(例えば0.85V〜1.25V)となるよう行う。これによって、負極の表面でスルホン酸化合物が還元分解され、負極活物質表面にスルホン酸化合物由来の被膜が形成される。同時に、生成したスルホン酸イオンの一部が正極側に移動することによって、正極活物質の表面に硫黄原子を含んだスルホン酸化合物由来の被膜が該正極活物質の単位表面積(1m)当たり3μM〜8μM形成され得る。
好適な一態様では、負極の電位(vs. Li/Li+)が、非水電解液に含まれる上記スルホン酸化合物の少なくとも1種の還元電位以下となるよう充電処理を行う。なかでも、負極の電位(vs. Li/Li+)が非水電解液中に含まれるスルホン酸化合物の還元電位より0.05V以上(典型的には0.1V以上、例えば0.3V以上、特に0.5V)低くなるまで充電処理を行うことが好ましい。特には、負極の電位(vs. Li/Li+)が、非水電解液に含まれる上記スルホン酸化合物の少なくとも1種の還元電位以下であって、上記オキサラト錯体化合物の還元電位より大きくなるよう充電処理を行うことが好ましい。
本工程における充電は、例えば充電開始から負極端子間電圧が所定の値に到達するまで(または負極の電位が所定値に到達するまで)、定電流で充電する方式(CC充電)により行ってもよく、上記所定の電圧(または電位)になるまで定電流で充電した後、定電圧で充電する方式(CCCV充電)により行ってもよい。CC充電における充電レートは特に限定されないが、あまりに低すぎると処理効率が低下しがちである。一方、あまりに高すぎると、活物質が劣化したり、形成される被膜の質が低下したりすることがあり得る。このため、例えば0.1C〜10C(典型的には0.5C〜5C、例えば0.5C〜2C)とすることが好ましい。これによって、より短時間で、好適な緻密性の(すなわち、低抵抗で、且つ非水電解液との反応を十分抑制し得る)被膜を精度よく形成することができる。このことは、作業効率の観点からも好ましい。
好適な一態様では、充電処理をCCCV充電方式で行う。これによって上記負極で生じたスルホン酸イオンを十分に正極側へ移動させることができ、正極活物質の表面に好適な量の被膜を形成することができる。CV充電を行う時間(上記電位または電圧で保持する時間)は特に限定されないが、あまりに短すぎると被膜の形成が不十分または不均一となって、本願発明の効果が低下することがあり得る。一方、あまりに長すぎると条件等によっては被膜の形成が進行しすぎて、電池の内部抵抗(例えば、初期抵抗)が上昇することがあり得る。したがって、電池の構成要素や充電処理条件等を変更した場合は、都度、簡単な予備実験を行い、その結果から決定することが好ましい。あるいは、上記所定の電位(または電圧)に到達するまでCC充電した後に、一定時間エージング(放置)することによっても、正極活物質の表面に好適な量の被膜を形成することができる。かかる手法によれば、上記CCCV充電の方法に比べ概して作業時間が長くなるが、放置するだけでよいため、簡便である。
このようにして、正極活物質の表面に、硫黄原子を含有する被膜を該正極活物質の単位表面積(1m)当たり3μM〜8μM形成し得る。なお、上記被膜の形成量に大きな影響を与え得る要因としては、例えばスルホン酸化合物の添加量、第1充電処理工程の所要時間が挙げられる。典型的には、スルホン酸化合物の添加量が増えるのに比例して、上記被膜の形成量は大きくなる。また、第1充電処理工程の所要時間が長くなるのに比例して、上記被膜の形成量は大きくなる。
<(3)第2充電処理工程>
第2充電処理工程では、上記第1充電処理後の電池について、さらに正極と負極の間に電流を付与する充電処理を行う。この充電処理は、使用するオキサラト錯体化合物や非水溶媒等の種類によっても若干異なり得るが、正負極端子間の電圧(典型的には最高到達電圧)が凡そ2V〜5V(典型的には3V〜4.5V、例えば3.5V〜4.2V)となるよう行う。これによって、負極の表面でオキサラト錯体化合物が還元分解され、負極活物質表面にホウ素原子および/またはリン原子を含んだ被膜が形成される。このようにして、負極活物質の表面に、ホウ素原子および/またはリン原子を含有する被膜を該負極活物質の単位表面積(1m)当たり2μM〜10μM形成する。
好適な一態様では、負極の電位(vs. Li/Li+)が、非水電解液に含まれる上記オキサラト錯体化合物の少なくとも1種の還元電位以下となるよう充電処理を行う。なかでも、負極の電位(vs. Li/Li+)が、上記電解液中に含まれるオキサラト錯体化合物の還元電位より0.05V以上(典型的には0.1V以上、例えば0.5V以上、特に0.7V以上)低くなるまで充電処理を行うことが好ましい。特には、負極の電位(vs.
Li/Li+)が、非水電解液に含まれる上記オキサラト錯体化合物の少なくとも1種の還元電位以下であって上記負極の放電下限電位より大きくなるよう充電処理を行うことが好ましい。
本工程における充電は、第1充電処理と同様に、CC充電方式あるいはCCCV充電方式によって行うことができる。また、CC充電における充電レートも、第1充電処理と同様に特に限定されないが、例えば0.1C〜10C(典型的には0.5C〜5C、例えば0.5C〜2C)とすることができる。
なお、上記充電処理処理(第1充電処理工程および第2充電処理工程)は一回でもよく、例えば放電処理工程を挟んで、二回以上繰り返し行うこともできる。さらに、電池特性に悪影響を与えない範囲で、上記化合物の還元分解を促進し得るようなその他の操作(例えば、圧力の負荷や超音波の照射)を適宜併用することもできる。
ここで開示される電池は各種用途に利用可能であるが、活物質表面の被膜形成の効果が好適に発揮され、従来に比べ電池特性(例えば、高温耐久性や入出力特性)が優れていることを特徴とする。したがって、このような性質を活かして、例えば、車両に搭載される駆動用電源として好適に用いることができる。車両の種類は特に限定されないが、例えばプラグインハイブリッド自動車(PHV)、ハイブリッド自動車(HV)、電気自動車(EV)、電気トラック、原動機付自転車、電動アシスト自転車、電動車いす、電気鉄道等が挙げられる。したがって、本発明によれば、ここで開示されるいずれかの非水電解液二次電池を、好ましくは動力源として備えた車両が提供される。車両に備えられる非水電解液二次電池は、複数個が接続された組電池の形態であり得る。
以下、本発明に関するいくつかの実施例を説明するが、本発明をかかる具体例に示すものに限定することを意図したものではない。
[非水電解液二次電池の構築]
まず、正極活物質粉末として、表1に示すBET比表面積を有するLiNi0.38Co0.32Mn0.30(LNCM)を用意した。かかるLNCMと、導電材としてのアセチレンブラック(AB)と、バインダとしてのポリフッ化ビニリデン(PVdF)とを、これら材料の質量比率がLNCM:AB:PVdF=90:8:2となるよう混練機に投入し、N−メチルピロリドン(NMP)で粘度を調整しながら混練して、正極活物質スラリーを調製した。このスラリーを、厚み15μmのアルミニウム箔(正極集電体)の両面に目付量が(片面当たり)30mg/cmとなるように塗布して、乾燥後にプレスすることによって正極集電体上に正極活物質層を有する正極シート(例1〜18、電極密度3.0g/cm)を作製した。
次に、負極活物質として、表1に示すBET比表面積を有する球形化黒鉛を用意した。かかる球形化黒鉛(C)と、バインダとしてのスチレンブタジエンゴム(SBR)と、分散剤としてのカルボキシメチルセルロース(CMC)とを、これら材料の質量比がC:SBR:CMC=98:1:1となるよう混練機に投入し、イオン交換水で粘度を調整しながら混練して、負極活物質スラリーを調製した。このスラリーを、厚み10μmの長尺状銅箔(負極集電体)の両面に目付量が(片面当たり)15mg/cmとなるように塗布して、乾燥後にプレスすることによって負極集電体上に負極活物質層を有する負極シート(例1〜18、電極密度1.4g/cm)を作製した。
上記で作製した正極シートと負極シートとを、2枚のセパレータシート(ここでは、ポリエチレン(PE)の両面にポリプロピレン(PP)が積層された三層構造であって、厚み20μm、気孔率48体積%のものを用いた。)とともに捲回し、扁平形状に成形して電極体を作製した。次に、電池ケースの蓋体に正極端子および負極端子を取り付け、これらの端子を、捲回電極体端部に露出した正極集電体および負極集電体にそれぞれ溶接した。なお、正極端子側には、CIDが備えられている。このようにして蓋体と連結された捲回電極体を、電池ケースの開口部からその内部に収容し、開口部と蓋体を溶接した。そして、蓋体に設けられた電解液注入孔から非水電解液を注入した。非水電解液としては、エチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DMC)とエチルメチルカーボネート(EMC)とをEC:DMC:EMC=30:40:30の体積比で含む混合溶媒に、支持塩としてのLiPFを1.1mol/Lの濃度で溶解させ、さらにガス発生剤としてのシクロヘキシルベンゼン(CHB)と、表1に示す種類のスルホン酸化合物および/またはBP−オキサラト化合物を含有させたものを用いた。なお、上記CHBの添加は、上記正極活物質の単位表面積(1m)当たり240μMとなるよう(非水電解液に対して4質量%の割合となるよう)行った。また、スルホン酸化合物としては、2−ブチン−1,4−ジオールジ(メタンスルホナート)(表1中では「BDMS」と略称する。)、または、2−(メチルスルホニルオキシ)プロパン酸2−プロピニル(表1中では「PMSP」と略称する。)を用い、正極活物質の単位表面積(1m)当たりの該化合物の含有量が、表1に示す値となるよう調製した。また、BP−オキサラト化合物としては、リチウムビス(オキサラト)ボレート(LIBOB)、リチウムジフルオロオキサレートボレート(LBFO)、または、リチウムジフルオロビス(オキサレート)ホスフェート(LPFO)を用い、負極活物質の単位表面積(1m)当たりの該化合物の含有量が、表1に示す値となるよう調製した。なお、表1において「−」とあるのは、当該化合物を添加しなかったことを示している。このようにして、理論容量が285kWh/mのリチウムイオン2次電池(例1〜18)を構築した。
Figure 2014232704
[充電処理]
<例1〜9,11〜18>
上記構築した電池について、2段階の充電処理を行った。具体的には、25℃の環境下において、1Cの充電レート(定電流)で正負極端子間の電圧が1Vに到達するまで定電流充電(CC充電)を行った後、電流値が0.02Cになるまで定電圧充電(CV充電)を行った。そして、引き続き1Cの充電レートで正負極端子間の電圧が4.1Vに到達するまでCC充電を行った後、電流値が0.02CになるまでCV充電を行った。
<例10>
上記構築した電池について、1段階の充電処理を行った。具体的には、25℃の環境下において、1Cの充電レートで正負極端子間の電圧が4.1Vに到達するまでCC充電を行った後、電流値が0.02CになるまでCV充電を行った。
[エージング処理]
上記充電処理後の電池を温度60℃の恒温槽内に24時間放置してエージングを行った。
[初期容量(定格容量)の測定]
上記エージング処理後の電池について、温度25℃、3.0Vから4.1Vの電圧範囲で、以下の手順1〜3にしたがって定格容量を測定した。
(手順1)1/3Cの定電流放電によって3.0Vに到達後、定電圧放電にて2時間放電し、その後、10分間休止する。
(手順2)1/3Cの定電流充電によって4.1Vに到達後、電流が1/100Cとなるまで定電圧充電し、その後、10分間休止する。
(手順3)1/3Cの定電流放電によって、3.0Vに到達後、電流が1/100Cとなるまで定電圧放電し、その後、10分間停止する。
そして、手順3における定電流放電から定電圧放電に至る放電における放電容量(CCCV放電容量)を初期容量とした。例1〜18の電池は、全て理論容量(285kWh/m)が得られていることを確認した。
[初期抵抗(IV抵抗)の測定]
次に、温度25℃で、SOCが20%の状態までCC充電を行った。SOC20%に調整した各電池に対し、10Cの放電レートで3VまでCC放電を行い、放電から10秒間の電圧降下を測定した。測定された電圧降下の値(V)を、対応する電流値で除してIV抵抗(Ω)を算出し、その平均値を初期抵抗とした。結果を、表1の「IV抵抗」の欄に示す。
[高温保存耐久試験]
次に、温度25℃で、SOCが85%の状態までCC充電を行った。SOC85%に調整した各電池を、温度60℃の恒温槽内で凡そ2400時間(100日間)保存した。試験終了後、恒温槽から取り出して、25℃の温度環境下で初期容量と同様に電池容量を測定した。高温保存耐久試験後の電池容量を初期容量で除して100を掛けることにより、容量維持率(%)を算出した。結果を、表1の該当欄に示す。
同時に、高温保存時のガス発生量を測定した。具体的には、ガスクロマトグラフィ−の手法を用いて、発生したガスの定性および定量を行った。その結果、主たる成分はメタン(CH)ガスと二酸化炭素(CO)ガスであることが分かった。各電池のガス発生量を、表1の該当欄にそれぞれ示す。
[活物質表面の被膜分析]
また、別途作成した各電池を解体して電極を取り出し、それぞれ活物質表面の被膜の状態についてイオンクロマトグラフィー(IC)で分析を行った。具体的には、先ず、初期容量測定後の各電池を水分管理されたグローブボックス内で解体し、正極および負極を取り出した。次に、正極と負極を適当な大きさで各10枚ずつ切り出して、非水電解液として用いたEMC中に10分程度浸漬した。次に、この正極および負極(IC測定用の試料)を、50%アセトニトリル(CHCN)水溶液中に10分程度浸漬し、かかる溶液をICで分析することによって、被膜の含有量(すなわち、正極では硫黄原子の含有量(μg/cm)、負極ではホウ素原子および/またはリン原子の含有量(μM/cm))を測定した。そして、得られた値(μM/cm)を、活物質のBET比面積(m/g)と活物質の目付量(g/cm)の積で除すことにより、活物質の単位表面積(1m)当たりの被膜量(μM/m)を算出した。結果を、表1の「被膜量」の欄に示す。
[過充電試験]
また、別途作成した各電池の表面に2枚の熱電対を張り付けた後、温度25℃で、SOCが100%の状態までCC充電を行った。この電池を、さらにSOCが140%の状態まで(すなわち過充電状態となるまで)CC充電し、かかる際の電池内圧および電池温度の変化を測定した。結果を、表1の「CID作動」の欄に示す。なお、当該欄における「◎」は、過充電の初期段階で(典型的には、過充電から2500分以内で)安全にCIDが作動したことを、「○」は、それ以降の段階で(典型的には、過充電から3000分以内で)安全にCIDが作動したことを示している。
まず、スルホン酸化合物およびBP−オキサラト錯体化合物の両方を用いた例1〜6と、スルホン酸化合物またはBP−オキサラト錯体化合物の何れかを用いた例8,9と、いずれも用いなかった例7について比較する。図6は、例1,7〜9に係る高温保存耐久特性を比較したグラフである。
表1および図6に示すように、負極活物質の表面にLIBOB由来の被膜のみを有する例9では、当該被膜を有しない例7に比べてメタンガスの発生量が半分以下に抑えられ、容量維持率も95%近くまで向上した。これは、負極上における非水電解液の還元分解を抑制することができたためと考えられる。しかしながら、例9では二酸化炭素ガスの発生量の増大がみられた。この原因としては、LIBOB被膜の一部が高温保存によって分解され、これによって生じたシュウ酸が正極上で酸化分解されたことが考えられる。また、正極活物質の表面にBDMS由来の被膜のみを有する例8では、当該被膜を有しない例7に比べて二酸化炭素ガスの発生が抑えられていた。これは、正極上における非水溶媒の酸化分解を抑制することができたためと考えられる。しかしながら、例8ではメタンガスの発生量の増大がみられた。これは、負極上での非水溶媒の還元分解を抑制することができなかったためと考えられる。
一方、本発明に係る例1では、高温環境で長期間保管した場合であっても、負極上での還元反応(典型的には、非水溶媒の還元分解)および正極上での酸化反応(典型的には、非水溶媒の酸化分解や負極に形成された被膜の分解によって生じたシュウ酸の酸化分解)が抑制され、相対的にガスの発生を抑えることができた。さらに、耐久試験後の容量維持率も凡そ95%と高い値を示すことがわかった。
次に、スルホン酸化合物の好適な添加量について、例1,15,16を比較しながら検討する。例1,15,16は、それぞれ正極活物質表面のスルホン酸化合物由来の被膜量のみが異なっている。正極活物質表面の被膜の量が2.8μMと相対的に少ない例15では、正極上での二酸化炭素ガス発生量が4.7cmと相対的に多く、本願発明の効果(すなわちガス発生量の低減効果)が十分発揮されていなかった。また、IV抵抗も3.1mΩと相対的に高い値を示した。これは、正極活物質表面の被膜の量が少ないために、正極表面で非水電解液が酸化分解され、抵抗成分(LiF)が増大したためと考えられる。一方、正極活物質表面の被膜の量が8.3μMと相対的に多い例16では、発生ガス量を好適に低減することができたが、IV抵抗が2.88mΩと相対的に高い値を示した。これは、被膜が厚くなったためにリチウムイオンの反応が妨げられたためと考えられる。
以上のことから、正極活物質表面の被膜の形成量は、該正極活物質の単位表面積(1m)当たり3μM〜8μM(好ましくは5.4μM〜7.1μM)とすることで、抵抗特性と耐久性(高温保存耐久特性)とを高いレベルで両立し得ることがわかった。
次に、BP−オキサラト化合物の好適な添加量について、例1,17,18を比較しながら検討する。例1,17,18は、それぞれ負極活物質表面のBP−オキサラト化合物由来の被膜量のみが異なっている。負極活物質表面の被膜の量が1.7μMと相対的に少ない例17では、メタンガスの発生量が14.2cmと相対的に多く、さらには容量維持率の低下がみられた。これは、負極活物質表面の被膜の量が少ないために、非水溶媒の還元分解を抑制することができなかったためと考えられる。一方、負極活物質表面の被膜の量が11.0μMと相対的に多い例18では、上記例16と同様に、被膜が厚いためにIV抵抗が3.54mΩと相対的に高い値を示した。
以上のことから、負極活物質表面の被膜の形成量は、該負極活物質の単位表面積(1m)当たり2μM〜10μM(好ましくは2.4μM〜3.9μM)とすることで、抵抗特性と耐久性(高温保存耐久特性)とを高いレベルで両立し得ることがわかった。
次に、正極活物質のBET比表面積の好適な値について、例1,11,12を比較しながら検討する。例1,11,12は、それぞれ正極活物質のBET比表面積のみが異なっている。正極活物質のBET比表面積が0.63と相対的に小さい例11では、被膜の形成によってリチウムイオンの反応場が好適に確保されず、IV抵抗がやや増大していた。一方、正極活物質のBET比表面積が1.43と相対的に大きい例12では、過充電時のCID作動まで時間を要する場合があった。一例として、図5(A)および(B)に、例1と例12に係る過充電試験時の電池内圧と温度の経時変化を示す。図5(A),(B)に示すように、例12では過充電状態になった後の温度上昇や電池内圧の上昇が緩やかであり、CIDが作動するまでに例1より長い時間(凡そ3000分)を要した。これは、CHBの添加量を同等ととしたために、正極活物質のBET比表面積当たりのCHBの重合度が小さくなり、過充電時のガス発生が穏やかになったためと考えられる。
以上のことから、正極活物質のBET比表面積を0.7m/g以上1.3m/g以下(好ましくは、0.8m/g以上1.2m/g以下)とすることで、通常使用時における電池特性(サイクル特性や入出力特性)と過充電時における耐性とをさらに高いレベルで両立し得ることがわかった。
次に、負極活物質のBET比表面積の好適な値について、例1,13,14を比較しながら検討する。例1,13,14は、それぞれ負極活物質のBET比表面積のみが異なっている。負極活物質のBET比表面積が2.41と相対的に小さい例13では、上記例11と同様に、IV抵抗の増大がみられた。一方、負極活物質のBET比表面積が3.91と相対的に大きい例14では、リチウムイオンの反応場が確保されIV抵抗が低減されたが、容量維持率は凡そ90%だった。
以上のことから、負極活物質のBET比表面積を2.5m/g以上3.5m/g以下(好ましくは、2.8m/g以上3.4m/g以下)とすることで、一層優れた電池特性(例えば、高温耐久性と入出力特性)を実現することができ、本願発明の効果をより高いレベルで発揮し得ることがわかった。
次に、上述のような被膜を備えた電池の好適な製造方法について、例1,10を比較しながら検討する。例1では電池構築後の充電処理を2段階で行い、例10では電池構築後の充電処理を1段階で行った。例10では、相対的に二酸化炭素ガスの発生量が多いことがわかった。これは、スルホン酸化合物とBP−オキサラト化合物の酸化電位が近接しているために、例10のように1段階で充電処理を行うと、負極活物質の表面にはスルホン酸構造を取り込んだ形でシュウ酸構造の被膜が形成され得る。このため、正極活物質の表面に十分な量の被膜が形成されず、正極上で非水溶媒が酸化分解されたためと考えられる。したがって、ここで示すような充電処理によって、好適な量の被膜を正極活物質および負極活物質の表面にそれぞれ精度よく形成することができることがわかった。
上述の通り、ここで開示される技術によれば、より厳しい使用条件においてもガスが発生し難く、高い電池特性を発揮し得る非水電解液二次電池を提供することができる。好ましくは、通常使用時における電池特性(サイクル特性や高温保存耐久特性)と過充電時における耐性とを高いレベルで両立し得る非水電解液二次電池を提供することができる。
以上、本発明を詳細に説明したが、上記実施形態および実施例は例示にすぎず、ここで開示される発明には上述の具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
10 正極シート(正極)
12 正極集電体
14 正極活物質層
20 負極シート(負極)
22 負極集電体
24 負極活物質層
30 電流遮断機構
32 変形金属板(導通部材;第一部材)
33 湾曲部分
34 接続金属板(導通部材;第二部材)
35 集電リード端子
36 接合点
38 絶縁ケース
40 セパレータシート(セパレータ)
50 電池ケース
52 電池ケース本体
54 蓋体
55 安全弁
70 正極端子
72 負極端子
74 正極集電板
76 負極集電板
80 捲回電極体
100 非水電解液二次電池

Claims (11)

  1. 正極活物質を有する正極と、負極活物質を有する負極と、非水電解液と、が電池ケース内に収容された非水電解液二次電池であって、
    前記正極活物質の表面には、硫黄原子を含む被膜が該正極活物質の単位表面積(1m)当たり3μM〜8μM形成されており、
    前記負極活物質の表面には、ホウ素原子および/またはリン原子を含む被膜が該負極活物質の単位表面積(1m)当たり2μM〜10μM形成されている、非水電解液二次電池。
  2. 前記硫黄原子を含む被膜は、実質的に前記非水電解液中に含ませたスルホン酸化合物に由来し、
    前記ホウ素原子および/またはリン原子を含む被膜は、実質的に前記非水電解液中に含ませたオキサラト錯体化合物に由来する、請求項1に記載の非水電解液二次電池。
  3. 前記非水電解液は、所定の電池電圧を超えた際に分解してガスを発生し得るガス発生剤を含み、
    前記電池ケースは、前記ガスの発生に伴って前記電池ケース内の圧力が上昇した際に作動する電流遮断機構を備える、請求項1または2に記載の非水電解液二次電池。
  4. 前記負極活物質のBET比表面積は、2.5m/g以上3.5m/g以下である、請求項1から3のいずれか一項に記載の非水電解液二次電池。
  5. 前記正極活物質のBET比表面積は、0.7m/g以上1.3m/g以下である、請求項1から4のいずれか一項に記載の非水電解液二次電池。
  6. 前記非水電解液中の前記ガス発生剤の含有量は、前記正極活物質の単位表面積(1m)当たり200μM以上250μM以下である、請求項1から5のいずれか一項に記載の非水電解液二次電池。
  7. 前記スルホン酸化合物は、2−ブチン−1,4−ジオールジ(メタンスルホナート)である、請求項2から6のいずれか一項に記載の非水電解液二次電池。
  8. 前記オキサラト錯体化合物は、LiB(C、LiPF(C、LiBF(C)およびLiPF(C)からなる群から選択される1種または2種以上である、請求項2から7のいずれか一項に記載の非水電解液二次電池。
  9. 請求項1から8のいずれか一項に記載に記載の非水電解液二次電池を製造する方法であって:
    正極活物質を有する正極と、負極活物質を有する負極と、非水電解液と、を電池ケース内に収容して電池を構築する、電池構築工程、
    ここで、前記非水電解液には、硫黄原子を含むスルホン酸化合物と、ホウ素原子および/またはリン原子を含むオキサラト錯体化合物と、を含ませる;
    前記正極と前記負極の間の電圧が0.8V以上1.3V以下となるよう充電処理を行う、第1充電処理工程;および、
    前記正極と前記負極の間の電圧が2V以上5V以下となるよう充電処理を行う、第2充電処理工程;
    を包含する、非水電解液二次電池の製造方法。
  10. 前記第1充電処理工程は、
    前記電圧の範囲内で設定される所定の電圧まで0.5C以上2C以下の充電レートで充電する定電流充電処理工程;および、
    前記所定の電圧で一定時間充電する定電圧充電処理工程;
    を包含する、請求項9に記載の製造方法。
  11. 前記非水電解液中の前記スルホン酸化合物の含有量を、前記正極活物質の単位表面積(1m)当たり3μM以上8μM以下となるよう調製し、
    前記非水電解液中の前記オキサラト錯体化合物の含有量を、前記負極活物質の単位表面積(1m)当たり2μM以上10μM以下となるよう調製する、請求項9または10に記載の製造方法。
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