JP6219715B2 - 非水電解液二次電池 - Google Patents

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Description

本発明は、非水電解液を備えた二次電池(非水電解液二次電池)に関する。詳しくは、正極活物質と負極活物質の表面にそれぞれ被膜を備える該電池に関する。
リチウムイオン二次電池等の非水電解液二次電池は、近年、パソコンや携帯端末等のいわゆるポータブル電源や車両駆動用電源として用いられている。特に、軽量で高エネルギー密度が得られるリチウムイオン二次電池は、電気自動車、ハイブリッド自動車等の駆動用高出力電源として好ましく用いられている。
このような非水電解液二次電池では、初回充電の際に非水電解液の一部が分解されて、負極活物質の表面にその分解物からなる被膜が形成される。かかる被膜によって以後の充放電に伴う非水電解液の還元分解が抑制され、電池の耐久性が向上する。
これに関連する技術として特許文献1および2が挙げられる。例えば特許文献1には、非水電解液中に被膜形成剤として0.01〜10重量%のビニレンカーボネート化合物と0.01〜10重量%のアルキン化合物を含むことで、負極に強固な被膜を形成することができ、サイクル特性をより向上し得る旨が記載されている(特許文献1の段落0027等)。
国際公開2005/008829号公報 国際公開2012/141270号公報
しかしながら、本発明者らの検討によれば、被膜形成剤の量を非水電解液全体に対して定めた場合、設計パラメータ(例えば電池容量や負極活物質層の目付量、厚み、密度等)の変更に適切に対処することが難しく、ある時は負極活物質表面の被膜が不足して耐久性が低下したり、またある時は被膜が過剰となって電池抵抗の増大を招いたりする場合があった。さらに、本発明者らの検討によれば、負極活物質の場合と同様に、正極活物質の表面にも被膜を備えることが好ましい場合があった。例えば、過酷な条件下(例えば高温環境下)に長く曝される電池では、正極で非水電解液の酸化分解反応が生じることがあり得る。あるいは、本発明者らの検討によれば、非水電解液(典型的には該電解液に含まれる支持塩、例えばLiPF)が、電池内に含まれる水分と反応して酸(例えばフッ化水素(HF))を発生させることがあり得る。かかる酸によって正極活物質からの構成元素(典型的には遷移金属元素、例えばマンガン元素)の溶出が加速し、正極活物質が劣化したり電池抵抗が増大したりすることがあり得る。
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、正極活物質および負極活物質の表面に好適な量の被膜を備えることで、より高い電池特性を発揮し得る(例えば電池抵抗が低くサイクル特性にも優れた)非水電解液二次電池を提供することである。
本発明者らは、上記課題を解決すべく、まずは正極活物質および負極活物質の被膜量を最適化することを考えた。さらに、正極活物質の劣化や電池抵抗増大の原因となり得る「酸」の発生そのものを抑制することを考えた。そして、鋭意検討を重ね、本発明に想到するに至った。
すなわち、ここに開示される発明によれば、リチウム複合金属酸化物からなる正極活物質を有する正極と、負極活物質を有する負極と、非水電解液と、が電池ケース内に収容された非水電解液二次電池が提供される。上記非水電解液中には、電池構築時において、(1)三重結合を有するスルホン酸化合物と、(2)ビニレンカーボネート化合物と、(3)ホスホノ酢酸エステル化合物と、が含まれている。また、上記正極活物質および上記負極活物質は、それぞれ被膜を備えている。上記正極活物質の被膜は、上記スルホン酸化合物に由来するSO およびSO 2−を、上記正極活物質の比表面積1m当たり3μmol/m以上10μmol/m以下で含有する。上記負極活物質の被膜は、上記スルホン酸化合物に由来するSO およびSO 2−を、上記負極活物質の比表面積1m当たり3μmol/m以上10μmol/m以下で含有し、且つ、上記ビニレンカーボネート化合物に由来するCO 2−を、上記SO およびSO 2−の量1μmolに対して2μmol以上7μmol以下の割合で含有する。
電池構築時にホスホノ酢酸エステル化合物が含まれることで、該化合物と電池内に含まれる微量な水分とが反応して、該化合物の構造内に水分がトラップ(捕捉)され得る。具体的には、ホスホノ酢酸エステル化合物のカルボン酸エステル基(−C(=O)−O−)が開裂して水和反応(付加反応)が生じ、該化合物の構造内に水分子が取り込まれ得る。これにより、非水電解液と水分との反応を好適に防止することができ、酸(例えばフッ化水素(HF))の発生を抑制することができる。したがって、正極活物質の劣化(例えば構成元素の溶出)を高度に抑制することができる。
また、正極活物質の表面にスルホン酸化合物由来の被膜を備えることで、正極活物質の結晶構造をより安定な状態で保持することができる。加えて、非水電解液の酸化分解を高度に抑制することもでき、高抵抗な被膜(例えばフッ化リチウム(LiF))が形成されることを防止することができる。
さらに、負極活物質の表面にスルホン酸化合物由来の被膜とビニレンカーボネート化合物由来の被膜とを備えることで、非水電解液の還元分解を高度に抑制することができ、例えば高温環境下に長く曝された場合でも高い容量維持率を維持することができる。
上述の通り、かかる構成の電池では、高い電池特性を安定的に発揮することができる。例えば、電池内の酸性度が緩和されることで、長期に渡ってエネルギー密度や出力密度を発揮可能な非水電解液二次電池を実現することができる。
本明細書において、活物質の比表面積1m当たりのイオンの量(μmol/m)は、イオンクロマトグラフィー(IC:Ion Chromatography)の手法によって測定される電極の単位面積当たりに含まれるイオンの量(μmol/cm)を、電極の単位面積当たりに含まれる活物質の表面積(m/cm)で除した値をいう。なお、ICを用いた被膜の定量方法については後ほど詳細に説明する。また、電極の単位面積当たりに含まれる活物質の表面積(m/cm)は、活物質の目付量(g/cm)と活物質のBET比表面積(m/g)との積によって求めることができる。BET比表面積(m/g)は、窒素(N)ガスを用いてガス吸着法(定容量式吸着法)で測定された吸着量をBET法(例えば、BET1点法)で解析することによって求めることができる。
ここに開示される非水電解液二次電池の好適な一態様では、上記正極活物質の被膜は、上記SO およびSO 2−を上記正極活物質の比表面積1m当たり3μmol/m以上8μmol/m以下で含有する。また、上記負極活物質の被膜は、上記SO およびSO 2−を上記負極活物質の比表面積1m当たり5μmol/m以上10μmol/m以下で含有する。そして、上記SO およびSO 2−の量は、上記正極活物質の被膜より上記負極活物質の被膜の方が多い。
かかる態様によれば、被膜形成に伴う抵抗の増大をより一層抑制することができ、且つ、非水電解液の分解を高いレベルで抑制することができる。したがって、本発明の効果を高いレベルで実現することができる。
ここに開示される非水電解液二次電池の好適な一態様では、上記負極活物質の被膜は、上記ホスホノ酢酸エステル化合物に由来するホスホノ酢酸イオン(RO−P(=O)−CH−C(=O)−O)を上記負極活物質の比表面積1m当たり3μmol/m以上12μmol/m以下で含有する。
本発明者らの検討によれば、上述の水分をトラップした形態のホスホノ酢酸エステル化合物は、電圧の印加によって負極活物質の表面に堆積し得る。具体的には、カルボン酸エステル基(−C(=O)−O−)が開裂した形態で、負極活物質表面に結合し得る。被膜中に含まれるホスホノ酢酸イオンの量を上記範囲に調整することで、本発明の効果をより高いレベルで実現することができる。
ここに開示される非水電解液二次電池の好適な一態様では、上記リチウム複合金属酸化物がマンガン元素(Mn)を含む。
一般に、正極活物質にマンガン元素を含む場合、過酷な条件下(例えば高温環境下)において正極活物質からのマンガン元素の溶出が問題となり得る。しかしながら、ここに開示される技術によれば、正極活物質からの構成元素の溶出を高度に抑制することができる。したがって、マンガンを多く含む(典型的には30mol%〜40mol%程度含む)遷移金属複合酸化物(典型的にはリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物)を正極活物質として用いた場合であっても、高い耐久性(例えば、高温保存特性やサイクル特性)を実現することができる。
ここに開示される非水電解液二次電池の好適な一態様では、上記電池ケースが圧力式の電流遮断機構(すなわち、電池内圧の上昇によって作動する電流遮断機構)を備える。
一般に、圧力式の電流遮断機構を備えた電池では、通常使用時に電池内でガスが大量発生すると、それによって該電流遮断機構が誤作動を生じたり、あるいは電池ケースが変形したりすることがあり得る。しかしながら、ここに開示される技術によれば、非水電解液の酸化または還元分解を高度に抑制することができ、通常使用時のガス発生量を小さく抑えることができる。したがって、電流遮断機構の作動性を向上することができ、信頼性の高い非水電解液二次電池を実現することができる。
ここに開示される非水電解液二次電池の好適な一態様では、上記負極活物質表面の被膜を厚み方向に2分したときに、上層部と下層部とで被膜の成分が異なっている。そして、上記上層部では上記スルホン酸化合物および上記ビニレンカーボネート化合物に由来する被膜の量が多く、上記下層部では上記ホスホノ酢酸エステル化合物に由来する被膜の量が多い。
本発明者らの検討によれば、三重結合を有するスルホン酸化合物とビニレンカーボネート化合物は、共重合した形態で負極活物質の表面に混合被膜を形成し得る。かかる混合被膜は安定性や耐久性に優れるため、該混合被膜を非水電解液との界面(すなわち上層部)に多く有することで、例えば高温環境下においても非水電解液の分解が生じ難く長期に渡り安定した性能を発揮することができる。
ここに開示される非水電解液二次電池の好適な一態様では、スルホン酸化合物が下記式(I)で表される化合物である。
Figure 0006219715
式(I)において、Rは、炭素原子数1〜6のアルキル基、炭素原子数3〜6のシクロアルキル基、炭素原子数6〜12のアリール基、または炭素原子数1〜6のパーフルオロアルキル基である。また、R,R,R,Rは、それぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1〜4のアルキル基である。
中間位置に三重結合を有するスルホン酸化合物を含むことで、正極活物質および負極活物質の表面に、好適な割合で良質な被膜を安定的に形成することができる。
好適な一態様では、上記式(I)におけるRがメチル基(CH)である。
また、好適な他の一態様では、上記式(I)におけるR〜Rがいずれも水素原子である。
三重結合を有するスルホン酸化合物の一好適例としては、2−ブチン−1,4−ジオール ジメタンスルホネートが挙げられる。
ここに開示される非水電解液二次電池の好適な一態様では、ホスホノ酢酸エステル化合物が下記式(II)で表される化合物である。
Figure 0006219715
式(II)において、R,Rは、それぞれ独立して、炭素原子数1〜6のアルキル基、炭素原子数3〜6のシクロアルキル基、炭素原子数2〜6のアルケニル基、炭素原子数3〜6のアルキニル基、炭素原子数1〜6のハロゲン化アルキル基、または炭素原子数6〜12のアリール基である。
好適な一態様では、上記式(II)におけるRがエチル基(CHCH)である。
また、好適な他の一態様では、上記式(II)におけるRが2−プロピニル基(CHCCH))である。
ホスホノ酢酸エステル化合物の一好適例としては、2−プロピニル ジエチルホスホノアセテートが挙げられる。
ここに開示される非水電解液二次電池の好適な一態様では、ビニレンカーボネート化合物が下記式(III)で表される化合物である。
Figure 0006219715
式(III)において、R,Rは、それぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1〜4のアルキル基である。
好適な一態様では、上記式(III)におけるR,Rがいずれも水素原子である。すなわち、ビニレンカーボネート化合物がビニレンカーボネートである。ビニレンカーボネートを用いることで、三重結合を有するスルホン酸化合物との重合反応がより生じ易くなり、高い充放電効率を実現し得る。したがって、本発明の適用効果を高いレベルで発揮することができる。
上述の通り、ここに開示される非水電解液二次電池(例えばリチウムイオン二次電池)は、高い耐久性を実現し得るものである。例えば、初期特性が高く、且つ、高温環境下で保持した場合であっても、高エネルギー密度や高入出力特性を維持可能なものであり得る。さらに、電流遮断機構を備えることで、高い信頼性(過充電耐性)を実現し得る。したがって、かかる特徴を活かして、高エネルギー密度や高出力密度、あるいは広範な温度域において高い耐久性や信頼性が要求され得る用途(例えば車両に搭載されるモーター駆動のための動力源(駆動用電源))に好適に使用することができる。
一実施形態に係る非水電解液二次電池を模式的に示す縦断面図である。 一実施形態に係る捲回電極体の構成を示す模式図である。 被膜中のホスホノ酢酸イオンの量と高温保存耐久特性(容量維持率およびIV抵抗増加率)との関係を示すグラフである。
以下、本発明の好適な実施形態を説明する。本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
ここに開示される非水電解液二次電池は、正極活物質を有する正極と、負極活物質を有する負極と、非水電解液と、が電池ケース内に収容された構成である。以下、各構成要素について順に説明する。
≪電池ケース≫
電池ケースは、正極と負極と非水電解液とを収容する容器である。電池ケースの形状(容器の外形)は、例えば円形(円筒形、コイン形、ボタン形)、六面体形(直方体形、立方体形)、袋体形、およびそれらを加工し変形させた形状等であり得る。電池ケースの材質には、アルミニウム、スチール等の金属材料;ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリイミド樹脂等の樹脂材料;を使用し得る。なかでも、放熱性向上やエネルギー密度を高める目的から、比較的軽量な金属(例えばアルミニウムやアルミニウム合金)を好ましく用いることができる。
ここに開示される好適な一態様では、電池ケースに圧力式の(すなわち、電池ケースの内圧上昇により作動する)電流遮断機構(CID:Current Interrupt Device)を備える。一般に、非水電解液二次電池は、電圧が所定の領域(例えば3.0V以上4.2V以下)に収まるよう制御された状態で使用されるが、誤操作等により通常以上の電流が供給されると所定の電圧を超えて過充電となる場合がある。電池が過充電状態になると、非水電解液成分(例えば非水溶媒やガス発生剤)が電気分解され、ガスが発生する。圧力式の電流遮断機構は、このガスによって電池ケースの内圧が所定以上となった際に、電池への充電電流を遮断し、過充電の進行を停止させるものである。ここに開示される技術によれば、通常使用時のガス発生量を抑制することができるため、過充電時にのみ的確にかかる安全機構を作動させることができる。したがって、誤作動等が生じ難く、過充電に対する信頼性(過充電耐性)を一層向上させることができる。
≪正極≫
正極は、正極活物質を備える限りにおいて特に限定されないが、典型的には正極集電体上に正極活物質を含む正極活物質層が固着された形態である。
正極集電体としては、導電性の良好な金属(例えばアルミニウム、ニッケル、チタン等)からなる導電性部材を好適に採用し得る。
正極活物質層は、少なくとも正極活物質を含んでいる。正極活物質としては、非水電解液二次電池の正極活物質として使用し得ることが知られている各種の材料を1種または2種以上採用することができる。好適例として、層状系、スピネル系等のリチウム複合金属酸化物(例えば、LiNiO、LiCoO、LiMn、LiFeO、LiNi0.33Co0.33Mn0.33、LiNi0.5Mn1.5,LiCrMnO、LiFePO等)が挙げられる。なかでも、熱安定性やエネルギー密度の観点から、構成元素としてLi,Ni,CoおよびMnを含む層状構造(典型的には層状岩塩型構造)のリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物を好適に用いることができる。
一般に、遷移金属元素(特に、マンガン元素)を含む複合酸化物では、例えば支持塩の加水分解で生じた酸(例えばフッ化水素)により、構成元素の溶出が加速することがあり得る。しかしながら、ここに開示される技術によれば、かかる構成元素の溶出を防止することができ、正極活物質の結晶構造をより安定な状態で保持することができる。したがって、例えば高温環境下で溶出し易いマンガン元素を多く含む(例えば、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物のニッケルとコバルトとマンガンとの合計を100mol%としたときに、マンガンの占める割合が30mol%〜40mol%を占める)場合であっても、高い電池性能を長期に渡り安定して実現することができる。
なお、ここでリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物とは、Li,Ni,CoおよびMnのみを構成金属元素とする酸化物のほか、Li,Ni,CoおよびMn以外に他の少なくとも1種の金属元素(すなわち、Li,Ni,CoおよびMn以外の遷移金属元素および/または典型金属元素)を含む酸化物をも包含する意味である。かかる金属元素は、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、鉄(Fe)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pb)、白金(Pt)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、ホウ素(B)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、スズ(Sn)、ランタン(La)、セリウム(Ce)のうちの1種または2種以上の元素であり得る。これらの金属元素の添加量(配合量)は特に限定されないが、通常0.01mol%〜5mol%(例えば0.05mol%〜2mol%、典型的には0.1mol%〜0.8mol%)であり得る。上記添加量とすることで、より一層優れた電池特性(例えば、高エネルギー密度)を実現し得る。
正極活物質の性状は特に限定されないが、典型的には粒子状や粉末状である。かかる粒子状正極活物質の平均粒径は、20μm以下(典型的には1μm〜20μm、例えば5μm〜15μm)であり得る。また、BET比表面積は0.1m/g以上(典型的には0.7m/g以上、例えば0.8m/g以上)であって、5m/g以下(典型的には1.3m/g以下、例えば1.2m/g以下)であり得る。
上記性状のうち1つまたは2つを満たす正極活物質は、被膜が形成された状態であっても電荷担体の反応場が広く確保されているため、高い電池特性(例えば高い入出力特性)を発揮することができる。さらに、過充電時には非水電解液の成分(例えば非水溶媒や被膜形成剤)を迅速に酸化分解することができ、これを起点として過充電の初期段階で電流遮断機構を作動させることができる。
なお、本明細書において「平均粒径」とは一般的なレーザー回折・光散乱法に基づく粒度分布測定により測定した体積基準の粒度分布おいて、微粒子側からの累積50%に相当する粒径(D50粒径、メジアン径ともいう。)をいう。
ここに開示される技術では、正極活物質の表面に被膜が形成されている。そして、該被膜中にはスルホン酸化合物に由来するSO およびSO 2−が、正極活物質の単位比表面積(1m)当たり3μmol〜10μmol含有されている。上記スルホン酸化合物由来の被膜は、典型的には、硫黄(S)原子含有基(例えばスルホニル基やスルホニルオキシ基)と電荷担体とを含んだ形態である。硫黄原子を含む被膜は熱的安定性に優れるため、上記被膜中に含まれるSO およびSO 2−の量を3μmol/m以上(典型的には4μmol/m以上、例えば5μmol/m以上)とすることで、高温環境下においても被膜を安定な状態に維持し得、優れた耐久性を実現することができる。
また、一般に電池内に含まれる微量の水分と非水電解液中との反応によって生じたフッ素アニオン(F)は負に帯電しているため、正極側に引き寄せられる。そして、正極の表面(例えば正極活物質の表面)で酸化分解され、フッ化リチウム(LiF)となって正極活物質に堆積し得る。かかる被膜は抵抗成分となり、内部抵抗の増大や耐久性の低下等を招来し得る。しかしながら、上記硫黄原子含有基を含む被膜は、不対電子対(ローンペア)を多く有し、また嵩高い構造をとる。このため、正極にかかる被膜を備えることで、静電相互作用および/または立体障害を利用して、フッ化水素(具体的にはフッ素アニオン)が接近することを抑制することができる。したがって、抵抗の高いフッ化リチウムが生成されることを防止することができる。
加えて、上記被膜中に含まれる上記SO およびSO 2−の量を10μmol/m以下(典型的には8μmol/m以下、例えば6μmol/m以下)とすることで、上記効果を十分発揮させつつ電荷担体(リチウムイオン二次電池では、リチウムイオン)の反応場を好適に確保することができる。このため、安定的に高い電池性能を実現することができ、本発明の効果を高いレベルで発揮することができる。
なお、上記「正極活物質の比表面積1m当たりのSO およびSO 2−の量(μmol/m)」は、イオンクロマトグラフィー(IC)によって測定される電極の単位面積当たりのSO およびSO 2−の量(μmol/cm)を、電極の単位面積当たりに含まれる正極活物質の表面積(m/cm)で除すことによって求めることができる。
具体的には、まず電池を解体して取り出した正極(正極活物質層)を適当な溶媒(例えばEMC)に浸漬した後、適当な大きさに切り出して測定試料を採取する。次に、かかる測定試料を50%アセトニトリル(CHCN)水溶液中に所定の時間(例えば1分〜30分程度)浸漬することで、測定対象となる被膜成分(SO 、SO 2−)を溶媒中に抽出する。この溶液をICの測定に供し、得られた結果から測定対象のイオンの含有量(μmol)を定量する。次に、SO およびSO 2−の定量値(μmol)を合計し、測定に供した正極活物質層の面積(cm)で除すことにより、測定試料の単位面積当たりのSO およびSO 2−の量(μmol/cm)を求める。そして、この値を正極活物質の目付量(g/cm)と正極活物質のBET比表面積(m/g)との積で除すことで、「正極活物質の比表面積1m当たりのSO およびSO 2−の量」を求めることができる。
なお、被膜量を測定する手法として、上記にはICを用いる場合を例示したが、これに限定されず、例えば従来公知の誘導結合プラズマ発光分光分析(ICP‐AES:Inductively Coupled Plasma−Atomic Emission Spectrometry)やX線吸収微細構造解析法(XAFS:X-ray Absorption Fine Structure)等によっても把握することができる。
正極活物質層には、上記正極活物質に加えて、一般的な非水電解液二次電池において正極活物質層の構成成分として使用され得る1種または2種以上の材料を必要に応じて含有し得る。そのような材料の例として、導電材やバインダが挙げられる。導電材としては、例えば、種々のカーボンブラック(例えば、アセチレンブラックやケッチェンブラック)、活性炭、黒鉛、炭素繊維等の炭素材料を好適に用いることができる。また、バインダとしては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)等のハロゲン化ビニル樹脂、ポリエチレンオキサイド(PEO)等のポリアルキレンオキサイドを好適に用いることができる。また、本発明の効果を著しく損なわない限りにおいて、さらに各種添加剤(例えば、過充電時にガスを発生させる無機化合物、分散剤、増粘剤等)を含ませることもできる。
正極活物質層全体に占める正極活物質の割合は、凡そ60質量%以上(典型的には60質量%〜99質量%)とすることが適当であり、通常は凡そ70質量%〜95質量%であることが好ましい。導電材を使用する場合、正極活物質層全体に占める導電材の割合は、例えば凡そ2質量%〜20質量%とすることができ、通常は凡そ3質量%〜10質量%とすることが好ましい。バインダを使用する場合、正極活物質層全体に占めるバインダの割合は、例えば凡そ0.5質量%〜10質量%とすることができ、通常は凡そ1質量%〜5質量%とすることが好ましい。
正極集電体の単位面積当たりに設けられる正極活物質層の質量(目付量)は、電池容量を確保する観点から、正極集電体の片面当たり3mg/cm以上(例えば5mg/cm以上、典型的には7mg/cm以上)とすることができる。また、入出力特性を確保する観点から、正極集電体の片面当たり100mg/cm以下(例えば70mg/cm以下、典型的には50mg/cm以下)とすることができる。
正極活物質層の片面当たりの平均厚みは、例えば20μm以上(典型的には40μm以上、好ましくは50μm以上)であって、100μm以下(典型的には80μm以下)であり得る。また、正極活物質層の密度は、例えば1g/cm以上(典型的には1.5g/cm以上)であって、4g/cm以下(例えば3.5g/cm以下)であり得る。また、正極活物質層の空隙率(空孔率)は、例えば10体積%以上(典型的には20体積%以上)であって、50体積%以下(典型的には40体積%以下)であり得る。
上記性状のうち1つまたは2つ以上を満たすことで、正極活物質層内に適度な空隙を保つことができ、非水電解液を十分に浸潤させることができる。このため、電荷担体との反応場を広く確保することができ、通常使用時には高い入出力特性を発揮することができる。また、過充電時には多くのガスを迅速に発生させることができ、これを起点として的確に電流遮断機構を作動させることができる。また、正極活物質層内の導電性を良好に保つことができ、抵抗の増大を抑制することができる。さらに、正極活物質層の機械的強度(形状保持性)を好適に確保することができ、良好なサイクル特性を実現することができる。
なお、本明細書において「空隙率」とは、水銀ポロシメータの測定によって得られた全細孔容積(cm)を活物質層の見かけの体積(cm)で除して100を掛けた値をいう。見かけの体積は、平面視での面積(cm)と厚み(cm)との積によって算出することができる。具体的には、例えばまず測定対象たる正極を打ち抜き機やカッター等で正方形や長方形に切りだす。次に、上記切り出したサンプルの正極活物質層の平面視における面積(cm)と厚み(cm)とを計測し、これらの値を乗ずることにより見かけの体積を算出する。厚みは、例えばマイクロメータや厚み計(例えばロータリーキャリパー計)等により計測することができる。
≪負極≫
負極は、負極活物質を備える限りにおいて特に限定されないが、典型的には負極集電体上に負極活物質を含む負極活物質層が固着された形態である。
負極集電体としては、導電性の良好な金属(例えば、銅、ニッケル、チタン、ステンレス鋼等)からなる導電性部材を好適に採用し得る。
負極活物質層は、少なくとも負極活物質を含んでいる。負極活物質としては、非水電解液二次電池の負極活物質として使用し得ることが知られている各種の材料を1種または2種以上採用することができる。好適例として、黒鉛(グラファイト)、難黒鉛化炭素(ハードカーボン)、易黒鉛化炭素(ソフトカーボン)、カーボンナノチューブ、これらを組み合わせた構造を有するもの等の炭素材料が挙げられる。なかでも、エネルギー密度の観点から、天然黒鉛(石墨)や人造黒鉛等の黒鉛系材料を好ましく用いることができる。
負極活物質の性状は特に限定されないが、典型的には粒子状や粉末状である。かかる粒子状負極活物質の平均粒径は、50μm以下(典型的には20μm以下、例えば1μm〜20μm、好ましくは5μm〜15μm)であり得る。また、BET比表面積は1m/g以上(典型的には2.5m/g以上、例えば2.8m/g以上)であって、10m/g以下(典型的には3.5m/g以下、例えば3.4m/g以下)であり得る。
上記性状のうち1つまたは2つを満たす負極活物質は、被膜が形成された状態であっても電荷担体の反応場が広く確保されているため、高い電池特性(例えば高い入出力特性)を発揮することができる。
上述のような性状を有する負極活物質の形状は、典型的には形状異方性を有し得、例えば、鱗片状、平板状等であり得る。あるいは、鱗片状の黒鉛に応力を加えて球形化したもの(いわゆる球形化黒鉛)であり得る。
一般に、黒鉛は六角網面構造の端部(エッジ面)にヒドロキシル基やカルボキシル基のような反応活性の高い官能基を備え、該エッジ面が非水電解液と反応することによって電池の容量低下や抵抗増加を招来し得る。球形化黒鉛では、反応性に富んだエッジ面が折り畳まれた状態で褶曲構造をとるため、該エッジ面の割合が相対的に小さく、これによって非水電解液との反応性を相対的に低く抑えることができる。また、球形化によって六角網面構造の配向性が均質化され、例えば負極活物質層の厚み方向の導電性を向上させることができる。したがって、球形化黒鉛を用いることで不可逆容量や抵抗を低減することができ、より一層高い電池特性を実現することができる。
ここに開示される技術では、負極活物質の表面に被膜が形成されている。そして、該被膜中にはスルホン酸化合物に由来するSO およびSO 2−が、負極活物質の単位比表面積(1m)当たり3μmol〜10μmol含有されている。さらに、該被膜中にはビニレンカーボネート化合物に由来するCO 2−が含有されており、該CO 2−の含有割合は上記SO およびSO 2−の量1μmolに対して2μmol〜7μmolである。負極活物質の表面に形成された被膜は、典型的にはスルホン酸化合物の三重結合部位とビニレンカーボネート化合物の二重結合部位とが相互に結合し、両化合物が共重合した形態である。例えば、S原子含有基(例えばスルホニル基やスルホニルオキシ基)と、C原子含有基(例えばカルボニル基やカルボキシレート基)と、電荷担体とを含んだ形態である。
一般に、炭素材料(典型的には黒鉛系材料)を負極に備えた電池では、充放電を繰り返すと非水電解液の成分(例えば非水溶媒や支持塩)が徐々に分解され、エネルギー密度が低下することがあり得る。しかしながら、上記被膜はビニレンカーボネート化合物由来の成分(CO 2−)を含むことで安定であり、またスルホン酸化合物由来の成分(SO およびSO 2−)を含むことで低抵抗である。したがって、被膜形成に伴う抵抗の増加が少なく、且つ、長期に渡り非水電解液の還元分解を抑制することができる。
加えて、上記被膜中に含まれる上記SO およびSO 2−の量を3μmol/m〜10μmol/m(好ましくは上記正極活物質表面の被膜に含まれるSO およびSO 2−の量よりも多く、例えば5μmol/m〜8μmol/m)とし、且つ、上記被膜中に含まれるCO 2−の量を上記SO およびSO 2−の量1μmolに対して2μmol〜7μmol(好ましくは3μmol〜6μmol、例えば5μmol〜6μmol)の割合とすることで、上記効果を十分発揮させつつ電荷担体の反応場を好適に確保することができる。このため、安定的に高い電池性能を実現することができ、本発明の効果を高いレベルで発揮することができる。
なお、上記「負極活物質の比表面積1m当たりのSO およびSO 2−の量(μmol/m)」は、イオンクロマトグラフィー(IC)によって測定される電極の単位面積当たりのSO およびSO 2−の量(μmol/cm)を、電極の単位面積当たりに含まれる負極活物質の表面積(m/cm)で除すことによって求めることができる。なお、上記SO およびSO 2−の量は、正極活物質の場合と同様の分析方法で求めることができる。
また、「SO およびSO 2−の量1μmolに対するCO 2−の量」は、イオンクロマトグラフィー(IC)によって測定されるCO 2−の量(μmol/cm)を上記SO およびSO 2−の量(μmol/cm)で除すことによって求めることができる。被膜中に含まれるCO 2−の量は、以下のようにして求めることができる。
具体的には、まず電池を解体して取り出した負極(負極活物質層)を適当な溶媒(例えばEMC)に浸漬した後、適当な大きさに切り出して測定試料を採取する。次に、かかる測定試料をイオン交換水中に所定の時間(例えば1分〜30分程度)浸漬することで、測定対象となる被膜成分(CO 2−)を水中に抽出する。この溶液をICの測定に供し、得られた結果から測定対象のイオンの含有量(μmol)を定量する。次に、得られた測定値(μmol)を測定に供した負極活物質層の面積(cm)で除すことにより、測定試料の単位面積当たりのCO 2−の量(μmol/cm)を求める。そして、この値を上記測定試料の単位面積当たりのSO およびSO 2−の量(μmol/cm)で除すことにより、これらイオンの存在比率(すなわち、混合被膜中の混合割合)を求めることができる。
ここに開示される好適な一態様では、上記負極活物質の被膜中には、さらに上記ホスホノ酢酸エステル化合物に由来するホスホノ酢酸イオンを、負極活物質の単位比表面積(1m)当たり3μmol〜12μmol含有されている。これにより、本発明の効果をさらに高いレベルで発揮することができる。
なお、上記「負極活物質の比表面積1m当たりのホスホノ酢酸イオンの量(μmol/m)」は、イオンクロマトグラフィー(IC)によって測定されるホスホノ酢酸イオンの量(μmol/cm)を電極の単位面積当たりに含まれる負極活物質の表面積(m/cm)で除すことによって求めることができる。
具体的には、まず電池を解体して取り出した負極(負極活物質層)を適当な溶媒(例えばEMC)に浸漬した後、適当な大きさに切り出して測定試料を採取する。次に、かかる測定試料をイオン交換水中に所定の時間(例えば1分〜30分程度)浸漬することで、測定対象となる被膜成分(RO−P(=O)−CH−C(=O)−O)を水中に抽出する。この溶液をICの測定に供し、得られた結果から測定対象のイオンの含有量(μmol)を定量する。次に、得られた測定値(μmol)を測定に供した負極活物質層の面積(cm)で除すことにより、測定試料の単位面積当たりのRO−P(=O)−CH−C(=O)−Oの量(μmol/cm)を求める。そして、この値を負極活物質の目付量(g/cm)と負極活物質のBET比表面積(m/g)との積で除すことで、「負極活物質の比表面積1m当たりのホスホノ酢酸イオンの量」を求めることができる。
また、好適な他の一態様では、上記負極活物質表面の被膜を厚み方向に2分したときに、上層部と下層部とで被膜の成分が異なっている。そして、上層部ではスルホン酸化合物およびビニレンカーボネート化合物に由来する被膜の量が多く、下層部ではホスホノ酢酸エステル化合物に由来する被膜の量が多い。すなわち、上層部では上記SO およびSO 2−と上記CO 2−の量が多く、下層部では上記ホスホノ酢酸イオンの量が多くなり得る。
本発明者らの検討によれば、被膜形成剤の還元電位の関係や、初回充電時の充電条件等によっては、ホスホノ酢酸エステル化合物が優先的に還元分解され、まず該化合物に由来する被膜が負極活物質の表面に形成され得る。なお、かかる被膜は典型的には水分子をトラップした形態であり得る。そして、次に三重結合を有するスルホン酸化合物およびビニレンカーボネート化合物が還元分解され、典型的には上記ホスホノ酢酸エステル化合物由来の被膜上に、スルホン酸化合物およびビニレンカーボネート化合物に由来する混合被膜が形成され得る。これにより、熱的安定性や耐久性に優れる被膜を実現することができる。例えば、高温環境下においても非水電解液の分解が生じ難く、長期に渡り安定した電池性能を発揮することができる。
なお、被膜を厚み方向に2分したときの上層部および下層部の各領域に含まれる成分の大小関係は、例えば走査型電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)−エネルギー分散型X線分光法(EDX:Energy Dispersive X-ray Spectroscopy)によって比較的簡便に確認することができる。
具体的には、まず負極活物質層を備えた負極を電池ケースから取り出して、他の部材から分離する。次に、該負極を適当な溶媒(例えばEMC)で洗浄して、支持塩等を除去する。次に、かかる負極についてクロスセクションポリッシャ加工で断面出しを行い、この断面をSEMで観察する。そして、得られたSEM観察画像をEDXで解析(例えば、ホスホノ酢酸エステル化合物に特有の元素(例えばリン(P))、あるいはスルホン酸化合物に特有の元素(例えば硫黄(S))等でマッピング)し、上層部(表面近傍領域)の解析画像と下層部(集電体近傍領域)の解析画像とを比較する。これにより、上層部および下層部に含まれる被膜成分の偏析度合い(含有元素の大小関係)を把握することができる。
負極活物質層には、上記負極活物質に加えて、一般的な非水電解液二次電池において負極活物質層の構成成分として使用され得る1種または2種以上の材料を必要に応じて含有し得る。そのような材料の例として、バインダや各種添加剤が挙げられる。バインダとしては、例えば、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のポリマー材料を好適に用いることができる。その他、増粘剤、分散剤、導電材等の各種添加剤を適宜使用することもでき、例えば増粘剤としてはカルボキシメチルセルロース(CMC)やメチルセルロース(MC)を好適に用いることができる。
負極活物質層全体に占める負極活物質の割合は、凡そ50質量%以上とすることが適当であり、通常は90質量%〜99質量%(例えば95質量%〜99質量%)とすることが好ましい。バインダを使用する場合、負極活物質層全体に占めるバインダの割合は、例えば凡そ1質量%〜10質量%とすることができ、通常は凡そ1質量%〜5質量%とすることが好ましい。増粘剤を使用する場合、負極活物質層全体に占める増粘剤の割合は、例えば凡そ1質量%〜10質量%とすることができ、通常は凡そ1質量%〜5質量%とすることが好ましい。
負極集電体の単位面積当たりに設けられる負極活物質層の質量(目付量)は、負極集電体の片面当たり5mg/cm〜20mg/cm(典型的には7mg/cm〜15mg/cm)程度とすることができる。
負極活物質層の片面当たりの厚みは、例えば40μm以上(典型的には50μm以上)であって、100μm以下(典型的には80μm以下)であり得る。また、負極活物質層の密度は、例えば0.5g/cm以上(典型的には1g/cm以上)であって、2g/cm以下(典型的には1.5g/cm以下)であり得る。また、負極活物質層の空隙率は、例えば5体積%以上(典型的には35体積%以上)であって、50体積%以下であり得る。
上記性状のうち1つまたは2つ以上を満たすことで、非水電解液との界面を好適に保つことができ、通常使用時には耐久性(サイクル特性)と出力特性とを高いレベルで両立させることができる。また、過充電時には正極で生じた水素イオンを好適に還元し得、迅速に大量のガスを発生させることができる。
≪セパレータ≫
ここに開示される非水電解液二次電池では、典型的には正負極間にセパレータが介在される。セパレータとしては、正極活物質層と負極活物質層とを絶縁するとともに非水電解液の保持機能やシャットダウン機能を有するものであればよい。好適例として、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエステル、セルロース、ポリアミド等の樹脂から成る多孔質樹脂シート(フィルム)が挙げられる。なかでも、ポリオレフィン系の多孔質樹脂シート(例えばPEやPP)は、シャットダウン温度が80℃〜140℃(典型的には110℃〜140℃、例えば120℃〜135℃)と電池の耐熱温度(典型的には凡そ200℃以上)よりも十分に低いため、適切なタイミングでシャットダウン機能を発揮することができる。
セパレータの性状は特に限定されないが、例えば厚みは、通常10μm以上(典型的には15μm以上、例えば17μm以上)であって、40μm以下(典型的には30μm以下、例えば25μm以下)であり得る。セパレータの厚みが上記範囲内にあることで、イオン透過性がより良好となり、且つ、電池内に異物が混入した場合であっても内部短絡(セパレータの破膜)がより生じにくくなる。また、セパレータの気孔率(空隙率)は20体積%〜90体積%(典型的には30体積%〜80体積%、好ましくは40体積%〜60体積%)程度とすることができる。
なお、セパレータは、単層構造であってもよく、あるいは材質や性状(厚みや空孔率等)の異なる2種以上の多孔質樹脂シートが積層された構造であってもよい。多層構造のものとしては、例えば、ポリエチレン(PE)層の両面にポリプロピレン(PP)層が積層された三層構造(すなわちPP/PE/PPの三層構造)のセパレータを好適に採用し得る。また、セパレータは上記多孔質シートの片面または両面(典型的には片面)に多孔質の耐熱層を備えた耐熱性セパレータであってもよい。この耐熱層は、例えば、無機フィラーとバインダとを含む層であり得る。無機フィラーとしては、例えばアルミナ、ベーマイト、シリカ、チタニア、カルシア、マグネシア、ジルコニア、窒化ホウ素、窒化アルミニウム等を好ましく採用し得る。耐熱層の平均厚みは、例えば1μm〜10μm程度とし得る。かかる形態によれば、正負極の微短絡が高度に抑制され、一層優れた耐久性(例えば高温保存耐久特性)を実現することができる。
≪非水電解液≫
ここに開示される非水電解液二次電池の非水電解液は、非水溶媒中に少なくとも支持塩を含んでいる。非水電解液は常温(例えば25℃)で液状を呈し、好ましい一態様では電池の使用環境下(例えば0℃〜60℃の温度環境下)で常に液状を呈する。
非水溶媒としては、一般的な非水電解液二次電池の電解液に用いられる各種のカーボネート類、エーテル類、エステル類、ニトリル類、スルホン類、ラクトン類等の有機溶媒を用いることができる。具体例として、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)等が例示される。このような非水溶媒は、1種を単独で、あるいは2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。なかでも、比誘電率の高いECや、酸化電位が高い(電位窓の広い)DMCやEMCを好適に用いることができる。
例えば、非水溶媒として1種または2種以上のカーボネート類を含み、それらカーボネート類の合計体積が非水溶媒全体の体積の60体積%以上(より好ましくは75体積%以上、さらに好ましくは90体積%以上であり、実質的に100体積%であってもよい。)を占める非水溶媒を好ましく用いることができる。
支持塩としては、電荷担体イオン(例えば、リチウムイオン、ナトリウムイオン、マグネシウムイオン等。リチウムイオン二次電池ではリチウムイオン。)を含むものであれば、一般的な非水電解液二次電池と同様のものを適宜選択して使用することができる。例えば電荷担体イオンをリチウムイオンとする場合は、LiPF、LiBF、LiClO、LiAsF、Li(CFSON、LiCFSO等のリチウム塩が例示される。このような支持塩は、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。特に好ましい支持塩としてLiPFが挙げられる。
支持塩の濃度は、非水電解液全体に対して0.7mol/L〜1.3mol/Lとなるよう調製することが好ましい。
ここに開示される非水電解液二次電池の非水電解液は、電池構築時において、三重結合を有するスルホン酸化合物と、ビニレンカーボネート化合物と、ホスホノ酢酸エステル化合物とを含んでいる。なお、上述の通り、これらの化合物は典型的には電池構築(組み立て)後に電池内の水分と反応し、あるいは初回充電において分解され、正極活物質および/または負極活物質の表面に良質な皮膜となって結合(堆積)し得る。したがって、電池構築時に非水電解液中に含まれるこれらの化合物は、必ずしも充放電後(典型的には初回充電後、例えばコンディショニング処理後)において非水電解液中に残存していることを要しない。
三重結合を有するスルホン酸化合物としては、スルホン酸およびその誘導体を用いることができ、公知の方法により作製したもの、あるいは市販品の購入等により入手したものを特に限定せず1種または2種以上用いることができる。典型例として、少なくとも1つの−SOR基と、三重結合を有する炭素骨格とを備えた有機スルホン酸化合物が挙げられる。例えば、上記式(I)で示されるような脂肪族スルホン酸を好適に用いることができる。
式(I)において、Rは、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基、またはペンチル基等の炭素原子数1〜6(好ましくは1〜3)のアルキル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の炭素原子数3〜6(典型的には6)のシクロアルキル基;フェニル基、メチルフェニル基、ジメチルフェニル基、エチルフェニル基、プロピルフェニル基、ブチルフェニル基、ナフチル基、メチルナフチル基、ビフェニル基等の炭素原子数6〜12のアリール基;または炭素原子数1〜6(好ましくは1〜3)のパーフルオロアルキル基;である。好適な一態様では、上記式(I)におけるRが、炭素数1のアルキル基(メチル基)である。すなわち、上記式(I)で表される化合物がメタンスルホン酸基(CH−S(=O)−O−)を有することが好ましい。かかる場合、活物質表面における被膜抵抗をより小さく抑えることができる。
また、R,R,R,Rは、それぞれ独立して、水素原子;炭素原子数1〜4のアルキル基;である。好適な一態様では、上記式(I)におけるR〜Rがいずれも水素原子である。かかる場合、被膜形成における反応抵抗を低減することができる。
このようなスルホン酸化合物としては、2−ブチン−1,4−ジオール ジメタンスルホネート、2−ブチン−1,4−ジオール ジエタンスルホネート、3−ヘキシン−2,5−ジオール ジメタンスルホネート、3−ヘキシン−2,5−ジオール ジエタンスルホネート、2,5−ジメチル−3−ヘキシン−2,5−ジオール ジメタンスルホネート、2,5−ジメチル−3−ヘキシン−2,5−ジオール ジエタンスルホネート等が例示される。なかでも、下記式(IV)で示される2−ブチン−1,4−ジオール ジメタンスルホネートを好適に用いることができる。
Figure 0006219715
また、スルホン酸誘導体の典型例としては、種々の塩が挙げられる。例えば、脂肪族スルホン酸類あるいは芳香族スルホン酸類のリチウム塩、ナトリウム塩、アンモニウム塩、メチルエステル等が挙げられる。
ホスホノ酢酸エステル化合物としては、ホスホノ酢酸エステルおよびその誘導体を用いることができ、公知の方法により作製したもの、あるいは市販品の購入等により入手したものを特に限定せず1種または2種以上用いることができる。これにより、非水電解液中のフッ化水素の濃度を低く(例えば35ppm以下に、好ましくは25ppm以下に、より好ましくは20ppm以下に)抑えることができる。このようなホスホノ酢酸エステル化合物としては、上記式(II)で示されるような化合物を好適に用いることができる。
式(II)において、R,Rは、それぞれ独立して、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基、またはペンチル基等の炭素原子数1〜6(好ましくは1〜3)のアルキル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の炭素原子数3〜6(典型的には6)のシクロアルキル基;ビニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基等の炭素原子数2〜6(好ましくは2〜4)のアルケニル基;プロピニル基、ブチニル基、ペンチニル基等の炭素原子数3〜6(好ましくは3〜4)のアルキニル基;炭素原子数1〜6(好ましくは1〜3)のハロゲン化アルキル基;またはフェニル基、メチルフェニル基、ジメチルフェニル基、エチルフェニル基、プロピルフェニル基、ブチルフェニル基、ナフチル基、メチルナフチル基、ビフェニル基等の炭素原子数6〜12のアリール基;である。
好適な一態様では、上記式(II)におけるRが、炭素数1〜3のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基)である。低級アルキルを用いることで、活物質表面における被膜の抵抗をより小さく抑えることができる。
また、好適な他の一態様では、上記式(II)におけるRが、炭素数3のアルキニル基(2−プロピニル基)である。2−プロピニル基を用いることで、活物質表面における被膜の抵抗を小さく抑えることができる。
このようなホスホノ酢酸エステル化合物としては、メチル ジメチルホスホノアセテート、メチル ジエチルホスホノアセテート、エチル ジメチルホスホノアセテート、エチル ジエチルホスホノアセテート、プロピル ジメチルホスホノアセテート、プロピル ジエチルホスホノアセテート、2−プロピニル ジメチルホスホノアセテート、2−プロピニル ジエチルホスホノアセテート等が例示される。なかでも、下記式(V)で示される2−プロピニル ジエチルホスホノアセテートを好適に用いることができる。
Figure 0006219715
ここに開示される好適な一態様では、上記ホスホノ酢酸エステル化合物(水をトラップした形態であり得る。)が非水電解液に含まれる成分の中で最も高い還元電位(vs. Li/Li+)を示す。かかる態様によれば、初回充電時にまず該ホスホノ酢酸エステル化合物を還元分解させることができる。その後、スルホン酸化合物およびビニレンカーボネート化合物を還元分解させることにより、負極活物質のより表面に近い領域(被膜の上層部)に耐久性の高い上記スルホン酸化合物および上記ビニレンカーボネート化合物に由来する被膜を形成することができる。
ビニレンカーボネート化合物としては、上記式(III)で表される化合物を用いることができ、公知の方法により作製したもの、あるいは市販品の購入等により入手したものを特に限定せず1種または2種以上用いることができる。
式(III)において、R,Rは、それぞれ独立して、水素原子;メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等の炭素原子数1〜4のアルキル基である。
式(III)で示されるビニレンカーボネート化合物の具体例として、ビニレンカーボネート、メチルビニレンカーボネート、エチルビニレンカーボネート、ジメチルビニレンカーボネート、エチルメチルビニレンカーボネート、ジエチルビニレンカーボネート、プロピルビニレンカーボネート、ブチルビニレンカーボネート等が挙げられる。
好適な一態様では、上記非水電解液は、さらに所定の電池電圧を超えた際に分解してガスを発生し得るガス発生剤を含んでいる。ガス発生剤としては、所定の電池電圧を超えた際に分解してガスを発生し得る化合物(すなわち、酸化電位(vs. Li/Li+)が正極の充電上限電位(vs. Li/Li+)以上であって、かかる電位を超えて過充電状態となった場合に分解してガスを発生し得るような化合物)であれば特に限定なく用いることができる。具体的には、ビフェニル化合物、アルキルビフェニル化合物、シクロアルキルベンゼン化合物、アルキルベンゼン化合物、有機リン化合物、フッ素原子置換芳香族化合物、カーボネート化合物、環状カルバメート化合物、脂環式炭化水素等の芳香族化合物が挙げられる。
例えば、正極の充電上限電位(vs. Li/Li+)が凡そ4.0V〜4.3V程度に設定される電池では、ビフェニル(酸化電位:4.5V(vs. Li/Li+))やシクロヘキシルベンゼン(酸化電位:4.6V(vs. Li/Li+))を好ましく採用し得る。これらのガス発生剤は、酸化電位が充電上限電位に近いため、過充電の早い段階において正極で酸化分解を生じ、速やかにガス(典型的には水素ガス)を発生し得る。また、かかる化合物は共役系をとりやすく電子授受が容易であるため、多量のガスを発生させることができる。これによって、CIDを迅速且つ的確に作動させることができ、電池の信頼性を一層高めることができる。
非水電解液中のガス発生剤の濃度は特に限定されないが、CIDを作動させるのに十分なガス量を確保する観点からは、非水電解液100質量%に対して、凡そ1質量%以上(典型的には2質量%以上、例えば3質量%以上)とすることが好ましい。上記範囲とすることで、過充電時に十分な量のガスを発生させることができ、的確にCIDを作動させることができる。ただし、ガス発生剤は電池反応の抵抗成分となり得るため、過剰に添加した場合、入出力特性が低下する虞がある。かかる観点からは、ガス発生剤の濃度は、7質量%以下(典型的には5質量%以下、例えば4質量%以下)とすることが好ましい。上記範囲とすることで、通常使用時の抵抗増大を抑えることができ、高い電池特性を維持発揮することができる。
特に限定することを意図したものではないが、以下では扁平に捲回された電極体(捲回電極体)と非水電解液とを扁平な直方体形状(箱型)の容器に収容した形態の非水電解液二次電池を例に本発明を詳細に説明する。なお、以下の図面において、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付して説明し、重複する説明は省略または簡略化することがある。また、各図における寸法関係(長さ、幅、厚み等)は必ずしも実際の寸法関係を反映するものではない。
本発明の一実施形態に係る非水電解液二次電池の概略構成を図1に示す。図1は、非水電解液二次電池100の断面構造を模式的に示す縦断面図である。この非水電解液二次電池100は、長尺状の正極シート10と長尺状の負極シート20とが長尺状のセパレータシート40を介して扁平に捲回された形態の電極体(捲回電極体)80が、図示しない非水電解液とともに扁平な箱型形状の電池ケース50に収容された構成を有する。
≪電池ケース50≫
電池ケース50は、上端が開放された扁平な直方体形状(箱型)の電池ケース本体52と、その開口部を塞ぐ蓋体54とを備える。電池ケース50の上面(すなわち蓋体54)には、捲回電極体80の正極と電気的に接続する外部接続用の正極端子70、および捲回電極体80の負極と電気的に接続する負極端子72が設けられている。蓋体54にはまた、従来の非水電解液二次電池の電池ケースと同様に、電池ケース50の内部で発生したガスをケース50の外部に排出するための安全弁55が備えられている。
≪電流遮断機構30≫
電池ケース50の内部には、電池ケースの内圧上昇により作動する電流遮断機構30が設けられている。電流遮断機構30は、電池ケース50の内圧が上昇した場合に、少なくとも一方の電極端子(すなわち正極端子70および/または負極端子72)から電極体80に至る導電経路を切断することで充電電流を遮断し得るように構成されている。この実施形態では、電流遮断機構30は、蓋体54に固定した正極端子70と電極体80との間に設けられ、電池ケース50の内圧が上昇した場合に正極端子70から電極体80に至る導電経路を切断するように構成されている。
上記電流遮断機構30は、例えば導通部材を含み得る。この実施形態では、導通部材は、第一部材32および第二部材34から構成される。そして、電池ケース50の内圧が上昇した場合には、第一部材32および/または第二部材34(ここでは第一部材32)が変形して他方から離隔することによって上記導電経路を切断可能なよう構成されている。この実施形態では、第一部材32は変形金属板32であり、第二部材34は上記変形金属板32に接合された接続金属板34である。変形金属板(第一部材)32は、中央部分が下方へ湾曲したアーチ形状を有し、その周縁部分が集電リード端子35を介して正極端子70の下面と接続されている。また、変形金属板32の湾曲部分33の先端が接続金属板34の上面と接合されている。接続金属板34の下面(裏面)には正極集電板74が接合され、かかる正極集電板74が電極体80の正極シート10に接続されている。このようにして、正極端子70から電極体80に至る導電経路が形成されている。
電流遮断機構30はまた、プラスチック等により形成された絶縁ケース38を備える。絶縁ケース38は、変形金属板32を囲むように設けられ、変形金属板32の上面を気密に密閉している。この気密に密閉された湾曲部分33の上面には、電池ケース50の内圧が作用しない。また、絶縁ケース38は、変形金属板32の湾曲部分33を嵌入する開口部を有しており、かかる開口部から湾曲部分33の下面を電池ケース50の内部に露出させている。この電池ケース50の内部に露出した湾曲部分33の下面には、電池ケース50の内圧が作用する。
かかる構成の電流遮断機構30において、電池ケース50の内圧が高まると、該内圧が変形金属板32の湾曲部分33の下面に作用し、下方へ湾曲した湾曲部分33が上方へ押し上げられる。この湾曲部分33の上方への押し上げ力は、電池ケース50の内圧が上昇するに従い増大する。そして、電池ケース50の内圧が設定圧力を超えると、湾曲部分33が上下反転し、上方へ湾曲するように変形する。かかる湾曲部分33の変形によって、変形金属板32と接続金属板34との接合点36が切断される。このことにより、正極端子70から電極体80に至る導電経路が切断され、充電電流が遮断されるようになっている。
なお、この実施形態では、内圧上昇時に変形する導通部材が第一部材32と第二部材34とから構成されている場合を例示したが、これに限定されず、例えば導通部材が1つの部材であってもよい。また、電流遮断機構30は正極端子70側に限らず、負極端子72側に設けてもよい。さらに、電流遮断機構30は、上述した変形金属板32の変形を伴う機械的な切断に限定されず、例えば電池ケース50の内圧をセンサで検知し、検知した内圧が設定圧力を超えると充電電流を遮断するような外部回路を電流遮断機構として設けることもできる。
≪捲回電極体80≫
図2は、図1に示す捲回電極体80の構成を示す模式図である。図2に示すように、本実施形態に係る捲回電極体80は、組み立てる前段階において長尺状のシート構造(シート状電極体)を有している。かかる捲回電極体80は、長尺状の正極集電体12の片面または両面(ここでは両面)に長手方向に沿って正極活物質層14が形成された正極シート10と、長尺状の負極集電体22の片面または両面(ここでは両面)に長手方向に沿って負極活物質層24が形成された負極シート20とを、長尺状のセパレータシート40を介して重ね合わせて長尺方向に捲回し、さらに側面方向から押しつぶして拉げさせることによって扁平形状に成形されている。
捲回電極体80の捲回軸方向における中央部分には、捲回コア部分(すなわち、正極シート10の正極活物質層14と、負極シート20の負極活物質層24と、セパレータシート40とが密に積層された部分)が形成されている。また、捲回電極体80の捲回軸方向の両端部では、正極シート10および負極シート20の電極活物質層非形成部の一部が、それぞれ捲回コア部分から外方にはみ出ている。かかる正極側はみ出し部分および負極側はみ出し部分には、正極集電板74および負極集電板76がそれぞれ付設され、正極端子70(図1)および負極端子72(図1)とそれぞれ電気的に接続されている。
≪非水電解液二次電池の製造方法≫
上述のような非水電解液二次電池は、例えば以下のように製造することができる。
まず、正極活物質を有する正極と、負極活物質を有する負極と、非水電解液と、を電池ケース内に収容して電池を構築する。ここで、上記非水電解液には、非水溶媒と支持塩に加え、3種の添加剤、すなわち三重結合を有するスルホン酸化合物と、ビニレンカーボネート化合物と、ホスホノ酢酸エステル化合物と、を含ませる。ホスホノ酢酸エステル化合物は、添加と同時に電池内の水分と化学的に反応し得、電池内の水分残存量(水分含有量)を低減し得る。なお、上記3種の添加剤の添加量は、例えば活物質の種類や性状(例えば、粒径や比表面積)、電池の設計パラメータや初回充電の充放電パターン等によって異なり得るため特に限定されないが、例えば非水電解液100質量%に対して、各添加量が凡そ0.1質量%以上(典型的には0.2質量%以上、例えば0.5質量%以上)10質量%以下(典型的には5質量%以下、例えば2質量%以下)とすればよい。
次に、上記正極と上記負極との間の電圧が所定の値となるよう充電処理を行う。この充電処理は、負極の電位(vs. Li/Li+)が上記スルホン酸化合物およびビニレンカーボネート化合物(好適な一態様では、さらに上記ホスホノ酢酸エステル化合物(水をトラップした形態であり得る。))の還元電位以下となるよう行えばよい。例えば正負極端子間の電圧(典型的には最高到達電圧)が凡そ3.95V〜4.05Vとなるまで適当なレートで充電すればよい。これにより、正極活物質および負極活物質の表面に、上記化合物由来の被膜を形成することができる。
好適な一例では、まず上記ホスホノ酢酸エステル化合物(水をトラップした形態であり得る。)が負極で還元分解され、負極活物質の表面に被膜となって結合(付着)する。次に、三重結合を有するスルホン酸化合物およびビニレンカーボネート化合物が負極で還元分解され、負極活物質の表面(典型的には上記ホスホノ酢酸エステル化合物由来の被膜の表面)にこれら化合物の重合被膜が形成される。また、かかる還元分解によって生じたスルホニルオキシ基(R−SO)の一部は正極側へ移動し、正極活物質の表面にスルホン酸化合物由来の被膜(典型的にはスルホニルオキシ基を有する被膜、例えばスルホニルオキシ基と電荷担体とを含有する被膜)となって結合(付着)する。
次に、上記正極に形成された被膜を分析し、該分析で得られるSO およびSO 2−の量が3μmol/m以上10μmol/m以下となる正極を選択する。同様に、上記負極に形成された被膜を分析し、該分析で得られるSO およびSO 2−の量と、CO 2−の量とが、以下の条件:(1)SO およびSO 2−の量が3μmol/m以上10μmol/m以下である;(2)CO 2−の量が、上記SO およびSO 2−の量1μmolに対して2μmol以上7μmol以下の割合である;をいずれも満たす負極を選択する。そして、上記選択した正極および負極を用いて、従来公知の手法によって非水電解液二次電池を構築することができる。なお、上記正極や負極の選択は、使用する材料や設計パラメータに変更が無い場合は、省略することが可能である。
ここに開示される電池は各種用途に利用可能であるが、正極活物質および負極活物質の表面に形成された被膜の効果が適切に発揮され、従来に比べ高い電池特性(例えば、高温耐久性)を実現可能なことを特徴とする。また、電流遮断機構を備える場合には、従来に比べ過充電時の信頼性(過充電耐性)に優れたものであり得る。したがって、このような性質を活かして、例えば、車両に搭載される駆動用電源として好適に用いることができる。車両の種類は特に限定されないが、例えばプラグインハイブリッド自動車(PHV)、ハイブリッド自動車(HV)、電気自動車(EV)、電気トラック、原動機付自転車、電動アシスト自転車、電動車いす、電気鉄道等が挙げられる。したがって、本発明によれば、ここに開示されるいずれかの非水電解液二次電池(組電池の形態であり得る。)を動力源として備えた車両が提供される。
以下、本発明に関するいくつかの実施例を説明するが、本発明をかかる具体例に示すものに限定することを意図したものではない。
[非水電解液二次電池の構築]
まず、正極活物質粉末として、LiNi0.33Co0.33Mn0.33(LNCM)を用意した。かかるLNCMと、導電材としてのアセチレンブラック(AB)と、バインダとしてのポリフッ化ビニリデン(PVdF)とを、これら材料の質量比率がLNCM:AB:PVdF=90:8:2となるよう混練機に投入し、N−メチルピロリドン(NMP)で粘度を調整しながら混練して、正極活物質スラリーを調製した。このスラリーを、厚み15μmのアルミニウム箔(正極集電体)の両面に、目付量が(片面当たり)30mg/cmとなるように塗布して、乾燥後にプレスすることによって正極集電体上に正極活物質層を有する正極シート(電極密度3.0g/cm)を作製した。
次に、負極活物質として、球形化黒鉛(C)を用意した。かかる球形化黒鉛(C)と、バインダとしてのスチレンブタジエンゴム(SBR)と、分散剤としてのカルボキシメチルセルロース(CMC)とを、これら材料の質量比がC:SBR:CMC=98:1:1となるよう混練機に投入し、イオン交換水で粘度を調整しながら混練して、負極活物質スラリーを調製した。このスラリーを、厚み10μmの長尺状銅箔(負極集電体)の両面に、目付量が(片面当たり)15mg/cmとなるように塗布して、乾燥後にプレスすることによって負極集電体上に負極活物質層を有する負極シート(電極密度1.4g/cm)を作製した。
上記で作製した正極シートと負極シートとを、2枚のセパレータシート(ここでは、ポリエチレン(PE)の両面にポリプロピレン(PP)が積層された三層構造のものを用いた。)とともに捲回し、扁平形状に成形して電極体を作製した。次に、電池ケースの蓋体に正極端子および負極端子を取り付け、これらの端子を、捲回電極体の端部に露出した正極集電体および負極集電体にそれぞれ溶接した。このようにして蓋体と連結された捲回電極体を、電池ケースの開口部からその内部に収容し、開口部と蓋体を溶接した。そして、蓋体に設けられた電解液注入孔から非水電解液を注入した。
非水電解液としては、エチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DMC)とエチルメチルカーボネート(EMC)とをEC:DMC:EMC=30:40:30の体積比で含む混合溶媒に、支持塩としてのLiPFを1.1mol/Lの濃度で溶解させ、さらにガス発生剤としてのシクロヘキシルベンゼン(CHB)およびビフェニル(BP)と、表1に示す種類の添加剤(すなわち、スルホン酸化合物および/またはビニレンカーボネート化合物および/またはホスホノ酢酸エステル化合物)と、を含有させたものを用いた。なお、上記CHBの添加は、非水電解液に対して4質量%となるよう行い、上記BPの添加は、非水電解液に対して1質量%となるよう行った。また、表1において、「BDMS」とは2−ブチン−1,4−ジオール ジメタンスルホネートを、「VC」とはビニレンカーボネートを、「PDEPA」とは2−プロピニル ジエチルホスホノアセテートを、それぞれ表している。
上記構築した例1〜例7の電池について、25℃の環境下において、正負極端子間の電圧が3.95Vに到達するまで定電流充電(CC充電)を行った後、電流値が0.02Cになるまで定電圧充電(CV充電)を行った。次に、上記充電処理後の電池を温度60℃の恒温槽内に24時間放置してエージングを行った。このようにして、理論容量が285kWh/mのリチウムイオン二次電池(例1〜例7)を得た。なお、電池は各例につき最低3つ(フッ化水素の定量用、高温保存耐久試験用、被膜分析用)作製した。
[初期特性(初期容量およびIV抵抗)の測定]
上記得られた電池について、25℃の環境下において、3.0Vから4.1Vの電圧範囲で、以下の手順1〜3に従って初期容量を測定した。
(手順1)1/3Cの定電流放電によって3.0Vに到達後、定電圧放電にて2時間放電し、その後、10分間休止する。
(手順2)1/3Cの定電流充電によって4.1Vに到達後、電流が1/100Cとなるまで定電圧充電し、その後、10分間休止する。
(手順3)1/3Cの定電流放電によって、3.0Vに到達後、電流が1/100Cとなるまで定電圧放電し、その後、10分間停止する。
そして、手順3における定電流放電から定電圧放電に至る放電における放電容量(CCCV放電容量)を初期容量とした。
次に、25℃の環境下において、IV抵抗を測定した。具体的には、まず電池をSOC20%の状態に調整し、この電池に対して10Cの放電レートで3VまでCC放電を行い、放電から10秒間の電圧降下を測定した。測定された電圧降下の値(V)を、対応する電流値で除してIV抵抗(Ω)を算出し、その平均値を初期抵抗とした。
[電極の被膜分析]
上記初期特性評価後の電池をSOC0%の状態まで放電した後、解体して電極を取り出し、それぞれ電極の被膜量の定量を行った。
具体的には、まず初期容量測定後の電池を水分管理されたグローブボックス内で解体し、正極および負極を取り出した。次に、この正極および負極を非水電解液として用いたEMC中に10分程度浸漬した後、それぞれ適当な大きさ(ここではΦ40mm)にて各10枚ずつを切り出し、測定用の試料を得た。次に、かかる測定用試料(切り出した正極および負極)を、それぞれ50%アセトニトリル(CHCN)水溶液中に凡そ10分間浸漬させ、2−ブチン−1,4−ジオール ジメタンスルホネート由来の被膜成分を抽出した。次に、かかる溶液をICで定量分析することによって、SO およびSO 2−の量(μmol/cm)を測定した。なお、分析装置としては、日本ダイオネクス社製のイオンクロマトグラフ装置(ICS−3000)を使用した。そして、得られたSO およびSO 2−の量(μmol/cm)を、活物質のBET比面積(m/g)と活物質の目付量(g/cm)の積で除すことによって、正負極それぞれにおける活物質の単位比表面積(1m)当たりの被膜量(μmol/m)を算出した。結果を、表1の「スルホン酸由来の被膜量」の欄に示す。なお、表1において被膜の欄に「−」とあるのは、当該被膜の由来となる化合物を添加しなかったことを示している。
さらに、負極については、上記EMCに浸漬した後に、適当な大きさにて別途10枚を切り出し、測定用の試料を得た。かかる測定用試料をイオン交換水中に凡そ10分間浸漬させて、ビニレンカーボネート由来の被膜成分と2−プロピニル ジエチルホスホノアセテート化合物由来の被膜成分とを抽出した。次に、かかる溶液をICで定量分析することによって、CO 2−の量(μmol/cm)とRO−P(=O)−CH−C(=O)−Oの量(μmol/cm)を測定した。得られたCO 2−の量(μmol/cm)をSO およびSO 2−の量(μmol/cm)で除して、混合被膜中の存在比率(存在割合)を算出した。表1の「VC比」の欄に示す。なお、表1においてVC比の欄に「VCのみ」とあるのは、2−ブチン−1,4−ジオール ジメタンスルホネートを用いずに、負極活物質の表面にVC由来の被膜を例1〜例4と等量形成したことを示している。
また、2−プロピニル ジエチルホスホノアセテート化合物由来の被膜の量を活物質のBET比面積(m/g)と活物質の目付量(g/cm)の積で除すことによって、負極活物質の単位比表面積(1m)当たりの被膜量(μmol/m)を算出した。結果を、表1の「ホスホノ酢酸エステル由来の被膜量」の欄に示す。
[フッ化水素の定量]
上記初期特性評価後の電池を解体し、非水電解液中に含まれるフッ化水素の量(ppm)を滴定法によって測定した。結果を、表1の該当欄に示す。
Figure 0006219715
表1に示すように、ホスホノ酢酸エステル化合物を添加しなかった例1および例7では、フッ化水素の濃度が60ppm〜70ppmと相対的に高かった。これに対して、ホスホノ酢酸エステル化合物を添加した例2〜例6では、フッ化水素の濃度が35ppm以下(好ましくは25ppm以下、より好ましくは20ppm以下)と、ホスホノ酢酸エステル化合物無添加の時に比べて凡そ半分以下に抑えられていることがわかった。この理由としては、上述のとおり、ホスホノ酢酸エステル化合物が含まれることで、該化合物と水分とが反応して、該化合物の構造内に水分がトラップ(捕捉)されたことが考えられる。
[高温保存耐久試験]
また、上記初期特性評価後の電池に内圧センサを取り付けた後、25℃の環境下において、電池をSOC85%の状態に調整し、温度60℃の恒温槽内で凡そ100日間保存した。
高温保存耐久試験後の電池について、正極活物質からのMn溶出量を測定した。一般に、正極活物質から溶出した金属元素は、非水電解液中を移動して負極上に析出すると考えられる。さらに、電池の構築に使用した材料のうち、Mnを含む材料は正極活物質のみである。このため、ここでは上記高温保存耐久後の電池から負極を取り出し、負極活物質層に析出したMn量を測定することで、正極活物質からのMn溶出量とした。具体的には、まず上記高温保存耐久後の電池をSOC0%の状態まで放電させ、解体して、捲回電極体の最外周に位置していた負極部分を切り出した。次に、非水電解液として用いた非水溶媒で負極を2〜3回軽く洗浄した後、任意の大きさに打ち抜いてICP−AES分析用の測定用試料を得た。かかる測定用試料を酸性溶媒中(ここでは硫酸を用いた。)に加熱溶解させ、この溶液をICP−AESで分析することによって、マンガン(Mn)元素の量(μmol)を測定した。得られた測定値(μmol)を分析対象とした試料の負極活物質層の面積(cm)で除して測定試料の単位面積当たりのMn溶出量(μmol/cm)を求めた。この値を負極活物質の目付量(g/cm)と負極活物質のBET比表面積(m/g)の積で除すことで、「比表面積1m当たりの正極活物質からのMn溶出量」を算出した。結果を表1の該当欄に示す。
表1に示すように、非水電解液中のフッ化水素濃度が高かった例1および例7では、正極活物質からのMn溶出量が凡そ0.2μmol/mと、相対的に高い値を示した。この理由としては、電池内の水分が非水電解液(典型的には支持塩)と反応して多くのフッ化水素が発生し(非水電解液の酸性度が高まり)、正極活物質からの構成元素(Mn)の溶出が加速したことが考えられる。また、スルホン酸化合物を添加しなかった例5も正極活物質からのMn溶出量が凡そ0.15μmol/mと、相対的に高い値を示した。この理由としては、正極活物質の表面にスルホン酸化合物由来の被膜が形成されていないために非水電解液との界面が不安定だったことが考えられる。対して、例2〜例4および例6では、Mn溶出量が凡そ0.05μmol/mと低く抑えられていることがわかった。
また、高温保存耐久試験後の電池について、正極におけるフッ化リチウム(LiF)の析出量を測定した。具体的には、まず上記Mn溶出量の測定と同様に、高温保存耐久後の電池をSOC0%の状態まで放電させ、解体して、正極を取り出した。次に、非水電解液として用いた非水溶媒で正極を2〜3回軽く洗浄した後、任意の大きさに打ち抜いて、イオン交換水中に所定の時間(例えば1分〜30分程度)浸漬することで、測定対象となる被膜成分(F)を水中に抽出した。この溶液をICの測定に供し、測定対象のイオン(F)の含有量(μmol)を定量した。得られた測定値(μmol)を分析対象とした試料の正極活物質層の面積(cm)で除して測定試料の単位面積当たりのLiF析出量(μmol/cm)を求めた。そして、この値を正極活物質の目付量(g/cm)と正極活物質のBET比表面積(m/g)の積で除すことで、「正極における比表面積1m当たりのLiF析出量」を求めた。結果を、表1の該当欄に示す。
表1に示すように、LiF析出量と上述のMn溶出量とは同様の傾向を示した。すなわち、ホスホノ酢酸エステル化合物を添加せず、非水電解液中のフッ化水素濃度が高かった例1および例7では、正極でフッ化リチウムが相対的に多く確認された。また、スルホン酸化合物を添加しなかった例5でもフッ化リチウムの量が相対的にやや多く確認された。
これに対して、例2〜例4および例6では、フッ化リチウムの析出量が2.6μmol/m以下(例えば2.5μmol/m以下)に抑えられていることがわかった。
さらに、試験終了後の電池を恒温槽から取り出して、25℃の温度環境下で、初期特性と同様に電池容量およびIV抵抗を測定した。そして、高温保存耐久試験後の値を初期値で除して、容量維持率(%)およびIV抵抗増加率(%)を算出した。また、電池に取り付けた内圧センサから内圧の上昇値を読み取り、状態方程式(PV=nRT)からガス発生量を算出した。結果を、表1の該当欄に示す。
表1に示すように、例1および例7は、高温保存耐久試験後のLiFの析出量が多く、IV抵抗増加率が相対的に高かった。また、容量維持率が相対的に低かった。この理由としては、生成したHFが負極(負極活物質)の表面にアタックし、負極表面の被膜の分解を促進したことが考えられる。さらに、このような副反応に起因して相対的にガス発生量が多くなったと考えられる。
例5は、高温保存耐久試験後のLiFの析出量が多く、IV抵抗増加率が相対的に高かった。この理由としては、スルホン酸化合物を添加していないために正極活物質がHFのアタックを受けやすかったことが考えられる。また、これに起因して相対的にガス発生量が多くなったと考えられる。
例6は、容量維持率が低かった。この理由としては、ビニレンカーボネート化合物を添加していないために負極(負極活物質)表面の被膜の安定性や耐久性が不足して、電解液の還元分解が進んだことが考えられる。また、これに起因して相対的にガス発生量が多くなったと考えられる。
これらに対して、本発明に係る例2〜例4の電池、すなわち正極活物質および負極活物質の被膜中にSO およびSO 2−をそれぞれ3μmol/m以上10μmol/m以下で備え、さらに負極活物質の被膜中には、上記SO およびSO 2−の量1μmolに対して2μmol以上7μmol以下の割合のCO 2−と、ホスホノ酢酸エステル化合物に由来するホスホノ酢酸イオン(RO−P(=O)−CH−C(=O)−O)とを備える電池は、相対的に優れた高温保存耐久性を示していた。かかる構成によれば、HFの生成を抑制することができ、正極(正極活物質)表面におけるLiFの生成が抑えられることで、IV抵抗増加率が低く容量維持率が高い非水電解液二次電池を実現することができた。さらに、このように非水電解液の無駄な還元分解反応を抑制することで、ガス発生量を小さく抑えることができた。したがって、圧力式の電流遮断機構の作動性を向上することができ、信頼性の高い非水電解液二次電池をも実現することができた。
なかでも、例2,例3では、負極活物質の被膜中に含まれるホスホノ酢酸イオンの量を3μmol/m〜12μmol/mとすることで、HFの生成を35ppm以下に抑制することができ、正極(正極活物質)表面におけるLiFの生成を0.06μmol/m以下抑えることができた。図3には、被膜中のホスホノ酢酸イオンの量と高温保存耐久特性(容量維持率およびIV抵抗増加率)との関係を示している。負極活物質の被膜中に含まれるホスホノ酢酸イオンの量を3μmol/m〜12μmol/mとすることで、例えば60℃で100日間保管した場合であっても、IV抵抗増加率を15%以内に抑えることができ、容量維持率を94%以上に維持することができるとわかった。さらには、ガス発生量を20cm以下に抑えることができるとわかった。かかる結果は、本発明の技術的意義を示している。
以上、本発明を詳細に説明したが、上記実施形態および実施例は例示にすぎず、ここに開示される発明には上述の具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
10 正極シート(正極)
12 正極集電体
14 正極活物質層
20 負極シート(負極)
22 負極集電体
24 負極活物質層
30 電流遮断機構
32 変形金属板(導通部材;第一部材)
33 湾曲部分
34 接続金属板(導通部材;第二部材)
35 集電リード端子
36 接合点
38 絶縁ケース
40 セパレータシート(セパレータ)
50 電池ケース
52 電池ケース本体
54 蓋体
55 安全弁
70 正極端子
72 負極端子
80 捲回電極体
100 非水電解液二次電池

Claims (10)

  1. リチウム複合金属酸化物からなる正極活物質を有する正極と、負極活物質を有する負極と、非水電解液と、が電池ケース内に収容された非水電解液二次電池であって、
    前記非水電解液中には、電池構築時において、三重結合を有するスルホン酸化合物と、ビニレンカーボネート化合物と、ホスホノ酢酸エステル化合物と、が含まれており、
    前記正極活物質および前記負極活物質は、それぞれ被膜を備えており、
    前記正極活物質の被膜は、前記スルホン酸化合物に由来するSO およびSO 2−を、前記正極活物質の比表面積1m当たり3μmol/m以上10μmol/m以下で含有し、
    前記負極活物質の被膜は、前記スルホン酸化合物に由来するSO およびSO 2−を、前記負極活物質の比表面積1m当たり3μmol/m以上10μmol/m以下で含有し、且つ、前記ビニレンカーボネート化合物に由来するCO 2−を、前記SO およびSO 2−の量1μmolに対して2μmol以上7μmol以下の割合で含有する、非水電解液二次電池。
  2. 前記正極活物質の被膜は、前記SO およびSO 2−を前記正極活物質の比表面積1m当たり3μmol/m以上8μmol/m以下で含有し、
    前記負極活物質の被膜は、前記SO およびSO 2−を前記負極活物質の比表面積1m当たり5μmol/m以上10μmol/m以下で含有し、
    前記SO およびSO 2−の量は、前記正極活物質の被膜より前記負極活物質の被膜の方が多い、請求項1に記載の非水電解液二次電池。
  3. 前記負極活物質の被膜は、前記ホスホノ酢酸エステル化合物に由来するホスホノ酢酸イオンを前記負極活物質の比表面積1m当たり3μmol/m以上12μmol/m以下で含有する、請求項1または2に記載の非水電解液二次電池。
  4. 前記リチウム複合金属酸化物がマンガン元素(Mn)を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の非水電解液二次電池。
  5. 前記リチウム複合金属酸化物がリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物であり、
    該リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物のニッケルとコバルトとマンガンとの合計を100mol%としたときに、マンガンの占める割合が30mol%以上40mol%以下である、請求項1から4のいずれか一項に記載の非水電解液二次電池。
  6. 前記電池ケースが圧力式の電流遮断機構を備える、請求項1から5のいずれか一項に記載の非水電解液二次電池。
  7. 前記負極活物質の被膜を厚み方向に2分したときに、上層部と下層部とで、走査型電子顕微鏡−エネルギー分散型X線分光法(SEM−EDX)の測定で得られる元素の組成が異なっており、
    前記上層部では、前記スルホン酸化合物に由来する硫黄(S)元素の量が、前記下層部に比べて多く、
    前記下層部では、前記ホスホノ酢酸エステル化合物に由来するリン(P)元素の量が、前記上層部に比べて多い、請求項3から6のいずれか一項に記載の非水電解液二次電池。
  8. 前記スルホン酸化合物が下記式(I)で表される化合物である、請求項1から7のいずれか一項に記載の非水電解液二次電池。
    Figure 0006219715
    (ここで、Rは、炭素原子数1〜6のアルキル基、炭素原子数3〜6のシクロアルキル基、炭素原子数6〜12のアリール基、または炭素原子数1〜6のパーフルオロアルキル基である。また、R,R,R,Rは、それぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1〜4のアルキル基である。)
  9. 前記ホスホノ酢酸エステル化合物が下記式(II)で表される化合物である、請求項1から8のいずれか一項に記載の非水電解液二次電池。
    Figure 0006219715
    (ここで、R,Rは、それぞれ独立して、炭素原子数1〜6のアルキル基、炭素原子数3〜6のシクロアルキル基、炭素原子数2〜6のアルケニル基、炭素原子数3〜6のアルキニル基、炭素原子数1〜6のハロゲン化アルキル基、または炭素原子数6〜12のアリール基である。)
  10. 前記ビニレンカーボネート化合物が下式(III)で表される化合物である、請求項1から9のいずれか一項に記載の非水電解液二次電池。
    Figure 0006219715
    (ここで、R,Rは、それぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1〜4のアルキル基である。)
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