JP2014157793A - 高濃度バナジウム電解液、その製造方法及びその製造装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】従来調製できなかった高濃度のバナジウムイオンを含み、循環型のレッドクスフロー電池又は非循環型のレッドクスノンフロー電池に使用され、スラッジが発生しにくい高濃度のバナジウム電解液、その製造方法及びその製造装置を提供する。
【解決手段】1.7mol/Lを超え、3.5mol/L以下の範囲内のバナジウムイオンを含有する硫酸水溶液である高濃度バナジウム電解液によって上記課題を解決する。このバナジウム電解液は、バナジウム塩と仕立て水とを混ぜて前記バナジウム塩を溶解した第1溶液が調製され、前記第1溶液をプレ電解しながら当該第1溶液に硫酸を加えて第2溶液が調製され、前記第2溶液そのもの、又は前記第2溶液を最終的な総量に調整するための仕立て水又は仕立て硫酸を当該第2溶液に加えて調製されたものである。
【選択図】図1

Description

本発明は、高濃度のバナジウムイオンを含む高濃度バナジウム電解液、その製造方法及びその製造装置に関する。更に詳しくは、従来調製できなかった高濃度のバナジウムイオンを含み、循環型のレッドクスフロー電池又は非循環型のレッドクスノンフロー電池に使用され、スラッジが発生しにくい高濃度バナジウム電解液、その製造方法及びその製造装置に関する。
二次電池は、電気を繰り返し充放電することができる環境負荷の小さいエネルギー貯蔵源として注目を集めている。産業用の二次電池としては、鉛蓄電池、ナトリウム硫黄電池、レドックスフロー電池等が知られている。このうち、バナジウム電解液を用いたレドックスフロー電池は、室温で作動し、活物質が液体で外部タンクに貯蔵できる。そのため、大型化が容易であり、さらに他の二次電池の電解液と比べて再生が容易で長寿命である等の利点がある。
レドックスフロー電池は、イオン交換膜で陽極(正極)と陰極(負極)に分けられた電解セルを用い、それぞれの電解セルに価数の異なるバナジウムイオン溶液を入れ、そのバナジウムイオン溶液が電解セル内を循環する際にバナジウムイオンの価数が変化することで充放電が行われる二次電池である。充放電による化学反応は下記式のとおりであり、陽極では式(1)の充放電反応が起こり、陰極では式(2)の充放電反応が起こる。なお、式(1)及び式(2)において、放電時は右辺から左辺に向かい、充電時は左辺から右辺に向かう。
Figure 2014157793
レッドクスフロー電池で用いるバナジウム電解液は、通常、硫酸水溶液に酸化硫酸バナジウム(VOSO・nHO)塩を溶解して4価のバナジウムイオン溶液を調製し、そのバナジウムイオン溶液を電解して価数の異なるバナジウムイオン溶液を得ている。具体的には、例えば特許文献1のように、陽極側では、4価のバナジウムイオンの酸化反応により陽極活物質である5価(VO )のバナジウムイオンを含む溶液を調製し、陰極側では、4価のバナジウムイオンの還元反応により陰極活物質である2価(V2+)のバナジウムイオンを含む溶液を調製している。
なお、レッドクスフロー電池で用いるバナジウム電解液として、様々な先行技術が報告されている。しかし、バナジウムイオンの価数により硫酸水溶液中での安定性が異なり、バナジウムイオンが酸化して酸化バナジウム等のスラッジが発生するという問題があった。また、バナジウムイオンの濃度を高めた場合には、バナジウム塩が硫酸水溶液に溶解しにくくなって溶液中に析出し、その析出したバナジウム塩が電解セル内で詰まり、電池の作動を妨げるという問題があった。こうした問題に対し、例えば特許文献2では、バナジウムイオン及び/又はバナジルイオンを含有する硫酸水溶液に、保護コロイド剤、オキソ酸、錯化剤等を添加することにより、バナジウム塩の溶液中での析出を防ぐことができるとする技術が提案されている。
特開2002−367657号公報 特開平8−64223号公報
バナジウム電解液は、そこに含まれるバナジウムイオン濃度が高濃度であればあるほど、エネルギー密度が増し、充放電効率が高まるので好ましい。そのため、バナジウムイオン濃度の高いバナジウム電解液を得るための研究が行われている。
上記特許文献1の実施例には、バナジウムイオン濃度が1〜2.5mol/Lのバナジウム電解液が記載され、その特許請求の範囲には、バナジウムイオン濃度が1〜3mol/Lのバナジウム電解液が記載されている。また、上記特許文献2の実施例には、バナジウムイオン濃度が2mol/Lのバナジウム電解液が記載され、その特許請求の範囲には、バナジウムイオン濃度が1〜3mol/Lのバナジウム電解液が記載されている。
しかしながら、従来、バナジウムイオン濃度が1.7mol/L以下のバナジウム電解液しか実際には使用されておらず、バナジウムイオン濃度が1.7mol/Lを超えるバナジウム電解液は使用されていない。その理由は、硫酸水溶液に対する酸化硫酸バナジウム塩の溶解度の限界によってバナジウム塩が析出してしまい、バナジウムイオン濃度が1.7mol/Lを超えるようにバナジウム塩を硫酸水溶液に溶解させることはできないためであった。したがって、バナジウムイオン濃度が1.7mol/Lを超えるバナジウム電解液は実際には存在していなかった。
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、従来調製できなかった高濃度のバナジウムイオンを含むエネルギー密度の高い高濃度バナジウム電解液であって、循環型のレッドクスフロー電池又は非循環型のレッドクスノンフロー電池に使用され、スラッジが発生しにくいバナジウム電解液を提供することにある。また、本発明の他の目的は、その高濃度バナジウム電解液の製造方法及びその製造装置を提供することにある。
(1)上記課題を解決するための本発明に係る高濃度バナジウム電解液は、1.7mol/Lを超え、3.5mol/L以下の範囲内のバナジウムイオンを含有する硫酸水溶液であることを特徴とする。
この発明によれば、酸化硫酸バナジウム塩の硫酸水溶液に対する溶解度の限界よりも高い1.7mol/Lを超え、3.5mol/L以下の範囲内のバナジウムイオンを含有する従来にない高濃度のバナジウムイオン電解液を提供できる。このバナジウム電解液は、バナジウム塩を析出させずに調製されている。また、このバナジウム電解液は、陽極での酸化反応時(充電時)であっても酸化バナジウム等のスラッジの発生を抑制することができる。その結果、エネルギー密度が高く、充放電効率の高い安定した高濃度バナジウム電解液を提供できる。
(2)本発明に係る高濃度バナジウム電解液において、前記バナジウムイオンが、4価又は5価のバナジウムイオンであることが好ましい。この4価又は5価のバナジウムイオンを含むバナジウム電解液は陽極用のバナジウム電解液として用いられ、陽極での酸化反応時(充電時)であっても、酸化バナジウムの等のスラッジが発生するのが抑制できる。
(3)本発明に係る高濃度バナジウム電解液において、(A)溶存酸素が5ppm以下であること、(B)アルミニウム、カルシウム、ナトリウム、カリウム、鉄、ケイ素及びクロムのうち1又は2以上の元素が合計0.4質量%未満の酸化硫酸バナジウム(VOSO・nHO)をバナジウム塩として用いること、(C)析出物又はスラッジの発生を抑制するための添加剤が含まれていること、のいずれかであることが好ましい。
(A)の発明によれば、酸化バナジウム等のスラッジの発生をより抑制することができる。また、バナジウム電解液の常温での保管時や常温を超える温度での保管時のいずれの場合であっても、酸化バナジウム等のスラッジの発生を抑制することができる。(B)(C)の発明も同様、それらの場合での酸化バナジウム等のスラッジの発生をより一層抑制することができる。
(4)本発明に係る高濃度バナジウム電解液は、バナジウム塩と仕立て水とを混ぜて前記バナジウム塩を溶解した第1溶液が調製され、前記第1溶液をプレ電解しながら当該第1溶液に硫酸を加えて第2溶液が調製され、前記第2溶液そのもの、又は前記第2溶液を最終的な総量に調整するための仕立て水又は仕立て硫酸を当該第2溶液に加えて調製されたものであることが好ましい。
(5)本発明に係る高濃度バナジウム電解液において、前記プレ電解は、定電流電解又は定電圧電解であることが好ましい。
(6)本発明に係る高濃度バナジウム電解液において、前記硫酸を加え始める前記プレ電解の電極電位は、陽極用のバナジウム電解液を調製する場合には酸化電解時の電極電位(参照電極:銀−塩化銀電極)が800mV以上、950mV以下の範囲内であることが好ましい。
(7)上記課題を解決するための本発明に係る高濃度バナジウム電解液の製造方法は、1.7mol/Lを超え、3.5mol/L以下の範囲内のバナジウムイオンを含有するバナジウム電解液の製造方法であって、バナジウム塩と仕立て水とを混ぜて当該バナジウム塩を溶解して第1溶液を調製する工程と、前記第1溶液をプレ電解しながら当該第1溶液に硫酸を加えて第2溶液を調製する工程と、を有することを特徴とする。
なお、使用するバナジウム電解液は、前記第2溶液が最終的な目標液量に調製されている場合にはその第2溶液そのものであり、前記第2溶液が最終的な目標液量に調製されていない場合には前記第2溶液を最終的な総量に調整するための仕立て水又は仕立て硫酸を当該第2溶液に加えて調製される。
(8)本発明に係る高濃度バナジウム電解液の製造方法において、(a)溶存酸素が5ppm以下であること、(b)アルミニウム、カルシウム、ナトリウム、カリウム、鉄、ケイ素及びクロムのうち1又は2以上の元素が合計0.4質量%未満の酸化硫酸バナジウム(VOSO・nHO)をバナジウム塩として用いること、(c)析出物又はスラッジの発生を抑制するための添加剤を含むこと、のいずれかであることが好ましい。
(9)本発明に係る高濃度バナジウム電解液の製造方法において、前記プレ電解は、定電流電解又は定電圧電解であることが好ましい。
(10)本発明に係る高濃度バナジウム電解液の製造方法において、前記硫酸を加え始める前記プレ電解の電極電位は、陽極用のバナジウム電解液を調製する場合には酸化電解時の電極電位(参照電極:銀−塩化銀電極)が800mV以上、950mV以下の範囲内であることが好ましい。
(11)上記課題を解決するための本発明に係る高濃度バナジウム電解液の製造装置は、1.7mol/Lを超え、3.5mol/L以下の範囲内のバナジウムイオンを含有するバナジウム電解液の製造装置であって、バナジウム塩と仕立て水とを混ぜて当該バナジウム塩を溶解した第1溶液が調製され、当該第1溶液をプレ電解しながら当該第1溶液に硫酸を加えて第2溶液が調製され、前記第2溶液そのものをバナジウム電解液として収容し、又は前記第2溶液を最終的な総量に調整するための仕立て水又は仕立て硫酸を当該第2溶液に加えて調製されたものをバナジウム電解液として収容する溶液槽と、前記第1溶液をプレ電解するためのプレ電解装置と、を少なくとも備えることを特徴とする。
本発明によれば、従来調製できなかった高濃度のバナジウムイオンを含むエネルギー密度の高い高濃度バナジウム電解液であって、循環型のレッドクスフロー電池又は非循環型のレッドクスノンフロー電池に使用され、スラッジが発生しにくいバナジウム電解液を提供することができる。
また、本発明によれば、バナジウムイオン溶液を電解液として用いる循環型のレッドクスフロー電池又は非循環型のレッドクスノンフロー電池に使用でき、調製時に発生し易い析出物を抑制できると共に、充電時に発生し易いスラッジを抑制することができ、充電効率を高めることができる高濃度バナジウム電解液、その製造方法及びその製造装置を提供することができる。
こうして得られたバナジウム電解液は、酸化硫酸バナジウム塩の硫酸水溶液に対する溶解度の限界よりも高い1.7mol/Lを超え、3.5mol/L以下の範囲内のバナジウムイオンを含有する電解液であるにもかかわらず、バナジウム塩が析出しない。さらに、バナジウム電解液を充電する際の酸化反応によっても、酸化バナジウム等のスラッジの発生を抑制することができる。その結果、エネルギー密度が高く、充放電効率の高い安定した高濃度バナジウム電解液を提供することができる。
本発明に係る高濃度バナジウム電解液の調製法の一例を示すフローチャートである。 本発明に係る高濃度バナジウム電解液の製造装置の一例を示すフロー図である。
本発明に係る高濃度バナジウム電解液、その製造方法及びその製造装置について、図面を参照しつつ説明する。なお、本発明の技術的範囲は、本発明の要旨を含む範囲であれば以下の実施形態の記載や図面に限定されない。
[高濃度バナジウム電解液及びその製造方法]
本発明に係る高濃度バナジウム電解液(以下、単に「バナジウム電解液」ともいう。)は、1.7mol/Lを超え、3.5mol/L以下の範囲内のバナジウムイオンを含有する硫酸水溶液である。バナジウムイオンが4価又は5価のバナジウムイオンである場合は、バナジウム電解液は陽極用のバナジウム電解液として用いられ、バナジウムイオンが2価〜4価のバナジウムイオンである場合は、バナジウム電解液は陰極用のバナジウム電解液として用いられる。特に本発明に係る高濃度バナジウム電解液は、充電時の酸化反応でスラッジが生じ易い傾向がある陽極用のバナジウム電解液として用いた場合であっても、スラッジが発生しにくい。また、後述する高濃度バナジウム電解液の製造方法の説明欄に記載のように、バナジウム電解液は、調製時に析出物の発生がない。
こうした高濃度バナジウム電解液は、酸化硫酸バナジウム塩の硫酸水溶液に対する溶解度の限界よりも高い1.7mol/Lを超え、3.5mol/L以下の範囲内のバナジウムイオンを含有する電解液である。こうした高いバナジウムイオン濃度の電解液は、従来、先行技術文献に文言上記載されているのみであり、実際には調製できておらず、市場にも存在しない。さらに、本発明に係る高濃度バナジウム電解液は、従来のように調製時にバナジウム塩が過飽和になって析出せず、さらに、充電時の酸化反応によって生じ易い酸化バナジウム等のスラッジの発生を抑制できるので、陽極用の電解液として好ましく用いられる。
<電解液組成>
(バナジウムイオン濃度)
バナジウム電解液中のバナジウムイオン濃度は、1.7mol/Lを超え、3.5mol/L以下の範囲内である。この範囲内のバナジウムイオン濃度のバナジウム電解液は、エネルギー密度が高く、充放電効率のよい高濃度バナジウム電解液となる。本発明に係る高濃度バナジウム電解液は、このような高いバナジウムイオン濃度であっても、後述するように、その調製時にバナジウム塩が析出しない。
バナジウムイオン濃度が1.7mol/L以下である場合は、本発明に係る高濃度バナジウム電解液に比べて、十分に高いエネルギー密度で且つ放電時の電流密度を十分に高めたバナジウム電解液ということはできず、レドックス電池の高性能な電解液の要求に対して十分に応えたものとは言えない。また、バナジウムイオン濃度が3.5mol/Lを超えるバナジウム電解液は、後述する本発明に係る高濃度バナジウム電解液の製造方法であっても過飽和の限界になり易く、作製しにくい。
特に好ましいバナジウムイオン濃度は、2.5mol/L以上、3.5mol/L以下の範囲内である。この範囲内のバナジウムイオン濃度のバナジウム電解液は、電極に十分な量のイオンを供給できるので、エネルギー密度が著しく高く、循環型のフロー電池用電解液として、また、非循環型のノンフロー電池用電解液として特に好ましく用いることができる。なお、バナジウム電解液中のバナジウムイオン濃度は、蛍光X線分析法、イオンクロマトグラフィー、ICP質量分析法、原子吸光光度法等で得た結果から求めることができる。
(硫酸濃度)
硫酸濃度は、0.5mol/L以上、4mol/L以下の範囲内であることが好ましい。硫酸濃度をこの範囲内のいずれの濃度に調整するかは、バナジウム電解液の電気伝導性、粘度、安定性、バナジウムイオン濃度、バナジウム塩の溶解性等が考慮される。硫酸濃度をこの範囲内にすることにより、バナジウム電解液の電気伝導性を高めることができ、充放電効率を高めることができる。
硫酸濃度が0.5mol/L未満では、電気伝導性を十分に高めることができず、また、酸化硫酸バナジウム水和物の溶解性が不十分になることがある。一方、硫酸濃度が4mol/Lを超える場合は、後述するバナジウム電解液の調製時に多量の硫酸を投入しなければならないため、最初の仕立て水の量が少なくなり、多量のバナジウム塩を水に溶解させることができない。その結果、バナジウムイオン濃度が1.7mol/Lを超える高濃度バナジウム電解液を得ることができないという難点がある。バナジウム電解液中の硫酸濃度は、電気伝導性を高めることができ、また、バナジウムイオン濃度を高めることができる観点からは、2.5mol/L以上、4.0mol/L以下の範囲内であることが好ましく、2.5mol/L以上、3.5mol/L以下の範囲内であることがより好ましい。
(溶存酸素)
溶存酸素は、バナジウム電解液中で5ppm以下であることが好ましく、1ppm以下であることがより好ましく、0.5ppm以下であることが特に好ましい。5ppm以下の溶存酸素濃度にすることにより、その溶存酸素に由来した過酸化バナジウムや酸化バナジウム等のスラッジの発生を抑制することができる。また、1ppm以下、特に0.5ppm以下の溶存酸素濃度にすることにより、スラッジの発生をより一層抑制することができる。
さらに、この範囲の溶存酸素を含むバナジウム電解液は、後述するプレ電解工程、電解工程時及び二次電池の充放電時のいずれの場合においても、過酸化バナジウムや酸化バナジウム等のスラッジを発生させたり、溶存酸素による酸化反応のために電流効率が低下したりする等の問題が起こりにくいという利点がある。
一方、溶存酸素が5ppmを超えると、その溶存酸素に由来したスラッジの発生が起こり易くなる。そうしたスラッジの発生は、特にバナジウム電解液の酸化電解時、充電電解時や二次電池の充放電時に起こり易く、陽極側では過酸化状態になって過酸化バナジウムや酸化バナジウム等のスラッジが発生し易くなり、また、陰極側では溶存酸素による酸化反応のために電流効率の低下が起き易くなって、陽極と陰極の酸化還元反応のバランスが崩れ、スラッジが発生し易くなる。なお、溶存酸素の好ましい1ppm以下、特に好ましい0.5ppm以下の場合には、上記した過酸化バナジウムや酸化バナジウム等のスラッジの発生や、溶存酸素による酸化反応のために電流効率の低下がより抑制される。
バナジウム電解液中の溶存酸素を上記範囲内にするためには、溶解、撹拌等の調製作業を不活性ガス雰囲気で行うことが好ましい。不活性ガスとしては、窒素ガス、アルゴンガス等を挙げることができる。なお、溶存酸素の濃度は、隔膜式溶存酸素計によって測定した結果である。
溶存酸素の除去方法は、液中の溶存酸素をできる限り除去する手段であれば特に限定されず、各種の方法を適用できる。例えば、密閉容器内を減圧して液中の溶存酸素を除去する減圧脱気法、液中に投入したノズルから不活性ガスをバブリングして液中の溶存酸素を除去するバブリング脱気法、脱気膜を用いて液中の溶存酸素を除去する脱気膜法等を挙げることができる。こうした各種の脱気法は、水、硫酸、第1溶液、第2溶液、バナジウム電解液のそれぞれに対して行うことができる。また、各溶液若しくは電解液の保管時、溶液調製の際の撹拌時、後述するプレ電解や電解工程時、又はフロー型電池での充放電時等の場合には、脱気法を循環時に併せて行うことが好ましい。こうすることで、空気の巻き込みによる溶存酸素の上昇を防ぐことができる。
(添加剤)
バナジウム電解液は、析出物やスラッジの発生を抑制するための添加剤が含まれていてもよい。添加剤としては、各種のものを挙げることができ、特に限定されない。添加剤がバナジウム電解液に含まれていることにより、バナジウム電解液の充放電時に起こり易いスラッジの発生を抑制することができる。また、添加剤は、バナジウム電解液の調製時、常温での保管時及び常温を超える温度での保管時のいずれかの場合における析出物やスラッジの発生を抑制するものであってもよい。
添加剤としては、例えば、ヒドロキシル基を有する化合物、界面活性剤、特定の無機塩を挙げることができる。こうした添加剤は、上記した添加剤の作用効果の範囲内で添加されていることが好ましい。
ヒドロキシル基を有する化合物としては、例えば、クエン酸、トリスヒドロキシメチルアミノメタン(THAM、トリスともいう。)、イノシトール(1,2,3,4,5,6−シクロヘキサンヘキサオール)、フィチン酸(IP6)、グリセリン(1,2,3−プロパントリオール)、ソルビトール、有機酸、等を挙げることができる。なお、有機酸は、例えば、カルボキシル基(−COOH)、スルホ基(−SOH)、ヒドロキシ基、チオール基、エノールを特性基として持つ有機酸を含む。なお、これらと同様の作用を奏するものであれば、これら以外の化合物であってもよい。
界面活性剤としては、臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム(臭化セチルトリメチルアンモニウム、CTAB)、リグニンスルホン酸ナトリウム等の界面活性剤を挙げることができる。なお、これらと同様の作用を奏するものであれば、これら以外の界面活性剤であってもよい。
無機塩としては、例えば、硫酸カリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウム等の無機塩を挙げることができる。なお、これらと同様の作用を奏するものであれば、これら以外の無機塩であってもよい。
これらの添加剤は、バナジウム電解液中のバナジウムイオンと相互作用し、例えば錯化剤やキレート剤等として作用し、結果として、バナジウム電解液中でバナジウム又はバナジウム化合物が析出物やスラッジとして発生するのを抑制することができる。添加剤は、その目的の範囲内で、使用する添加剤の種類が選択され、その添加量が予め設定されて添加されている。
なお、上記した添加剤は、その添加剤自体の取り扱いが容易で、作業上の困難性はない。しかしながら、例えば塩化物や臭化物等のハロゲン化物は、電解スタックやプレ電解装置等の部材や装置を腐食させる腐食性があったり、管理や取り扱いが難しかったりする場合があるので、そのようなハロゲン化物等の添加剤は含まないことが好ましい。
(不純物元素)
バナジウム電解液には、溶液調製時に用いるバナジウム塩に含まれる不純物が含まれていてもよい。そうした不純物としては、アルミニウム、カルシウム、ナトリウム、カリウム、鉄、ケイ素及びクロムのうち1又は2以上の元素を挙げることができる。そうした不純物の含有量は、スラッジ等の発生を抑制する観点からは少ないことが好ましく、例えば合計0.4質量%未満であることが好ましい。また、これら以外の微量(例えば0.05質量%以下程度)の不可避不純物が含まれていてもよい。
不純物元素の含有量が合計0.4質量%未満の場合は、バナジウム電解液を二次電池に使用して充放電を繰り返した場合であっても、その不純物に由来したスラッジの発生を防ぐことができる。一方、その含有量が0.4質量%以上の場合は、バナジウム電解液を二次電池に使用して充放電を繰り返した場合に、その不純物に由来したスラッジが発生することがある。なお、不純物元素は完全に無くすことはできず、通常、0.1質量%以下程度又は0.05質量%以下程度は少なくとも含まれる。バナジウム電解液に含まれる不純物元素の含有量は、原子吸光光度法、蛍光X線分析法、イオンクロマトグラフィー、ICP質量分析法等で得た結果から求めることができる。
(調製されたバナジウム電解液)
上記した組成のバナジウム電解液は、(a)バナジウム塩と仕立て水とを混ぜて前記バナジウム塩を溶解した第1溶液が調製され、(b)その第1溶液をプレ電解しながら当該第1溶液に硫酸を加えて第2溶液が調製され、(c1)その第2溶液が最終的な目標液量に調製されている場合にはその第2溶液そのものであり、(c2)その第2溶液が最終的な目標液量に調製されていない場合にはその第2溶液を最終的な総量に調整するための仕立て水又は仕立て硫酸を当該第2溶液に加えて調製されたものである。
具体的には、1.7mol/Lを超え、3.5mol/L以下の範囲内のバナジウムイオンを含有するバナジウム電解液であり、陽極用のバナジウム電解液でも陰極用のバナジウム電解液でもよい。こうした高濃度バナジウム電解液は、従来調製できなかった高濃度のバナジウムイオンを含むエネルギー密度の高いバナジウム電解液であると共に、循環型のレッドクスフロー電池又は非循環型のレッドクスノンフロー電池に使用され、スラッジが発生しにくい電解液である。そして、循環型のレッドクスフロー電池又は非循環型のレッドクスノンフロー電池に使用でき、調製時に発生し易い析出物を抑制できると共に、充電時に発生し易いスラッジを抑制することができ、充電効率を高めることができる電解液である。
本発明に係る高濃度バナジウム電解液は、酸化反応による充電時にスラッジが発生し易い傾向にある陽極用のバナジウム電解液として用いることが好ましいが、陰極用のバナジウム電解液として用いてもよい。
(バナジウム塩)
本発明に係る高濃度バナジウム電解液を調製するためのバナジウム塩は、通常、酸化硫酸バナジウム水和物が用いられる。この酸化硫酸バナジウム水和物の純度は特に限定されないが、スラッジ等の発生を抑制する観点からは、表1に示すように、純度が99.5質量%以上であり、酸化アルミニウム、酸化カルシウム、酸化ナトリウム、酸化カリウム、酸化鉄、酸化ケイ素及び酸化クロムから選ばれる1又は2以上の不純物化合物が合計0.5質量%未満のものを用いることが好ましい。このバナジウム塩に含まれる不純物濃度(0.5質量%)と、上記したバナジウム電解液中の不純物濃度(0.4質量%)とが異なるのは、バナジウム塩の不純物化合物は酸化物を構成しているためである。こうした酸化硫酸バナジウム水和物は、市販のものを購入して用いてもよいし、純度のやや低い酸化硫酸バナジウム水和物を再結晶、濾過、蒸留等の操作により精製して用いてもよい。なお、硫酸バナジウム水和物に含まれる不純物化合物の同定と含有量は、蛍光X線分析法、イオンクロマトグラフィー、ICP質量分析法等で得た結果から求めることができる。
Figure 2014157793
表1中の不純物元素はバナジウム塩に含まれる不純物であるので、例えば上記した添加剤にナトリウムやカリウム等が含まれている場合であっても、それがバナジウム電解液のスラッジの発生に大きく影響しない場合には、そうしたスラッジ等の発生に大きく影響しない限度で不純物等が含まれていてもよい。
(硫酸、水)
硫酸は、市販の工業用硫酸等の濃硫酸が用いられ、水は、超純水、純水、蒸留水、イオン交換水等が好ましく用いられる。
[高濃度バナジウム電解液の製造方法及び製造装置]
次に、上記した本発明に係る高濃度バナジウム電解液を製造するための方法と装置について説明する。
<方法と装置の基本構成>
本発明に係る高濃度バナジウム電解液の製造方法は、図1及び図2に示すように、1.7mol/Lを超え、3.5mol/L以下の範囲内のバナジウムイオンを含有するバナジウム電解液を製造するための方法であって、バナジウム塩と仕立て水とを混ぜて当該バナジウム塩を溶解して第1溶液を調製する工程と、その第1溶液をプレ電解しながら当該第1溶液に硫酸を加えて第2溶液を調製する工程と、を有する。そして、使用するバナジウム電解液は、前記第2溶液が最終的な目標液量に調製されている場合にはその第2溶液そのものであり、前記第2溶液が最終的な目標液量に調製されていない場合には前記第2溶液を最終的な総量に調整するための仕立て水又は仕立て硫酸を当該第2溶液に加えて調製されたものである。
本発明に係るバナジウム電解液の製造装置は、図2に示すように、1.7mol/Lを超え、3.5mol/L以下の範囲内のバナジウムイオンを含有するバナジウム電解液を製造するための装置であって、バナジウム塩と仕立て水とを混ぜて当該バナジウム塩を溶解した第1溶液が調製され、当該第1溶液をプレ電解しながら当該第1溶液に硫酸を加えて第2溶液が調製され、当該第2溶液そのものをバナジウム電解液として収容し、又は当該第2溶液を最終的な総量に調整するための仕立て水又は仕立て硫酸を当該第2溶液に加えて調製されたものをバナジウム電解液として収容する溶液槽と、前記第1溶液をプレ電解するためのプレ電解装置と、を少なくとも備えている。
ここで、図2に示す装置の構成について詳しく説明する。上記した「溶液槽」は、図2においては「エージング槽」(「陽極液エージング槽」、「陰極液エージング槽」)に相当するものであり、最終的に調製されたバナジウム電解液を収容するための槽のことである。また、「プレ電解装置」は、図2においては、「第1電解スタック」や「第2電解スタック」を含む装置のことである。
すなわち、図2に例示した製造装置は、バナジウム塩と仕立て水とを混ぜて当該バナジウム塩を溶解した第1溶液を調製するための「溶解槽」と、調製された第1溶液をプレ電解しながら当該第1溶液に硫酸を加えて第2溶液を調製するための電解槽(「陽極電解槽」又は「陰極電解槽」)と、調製された第2溶液を最終的な総量に調整するための仕立て水又は仕立て硫酸を当該第2溶液に加えてバナジウム電解液を調製するためのエージング槽(「陽極液エージング槽」又は「陰極液エージング槽」)と、を少なくとも備えている。
また、必要に応じて、図2に示すように、溶解槽で調製された第1溶液を脱気処理するための「陽極溶解エージング槽」や「陰極溶解エージング槽」を備えていてもよい。また、バナジウム電解液の総量やバナジウムイオンの価数を最終的に微調整するための「陽極液調整槽」や「陰極液調整槽」を備えていてもよい。また、溶解槽に純水を供給するための「純水貯槽」を備えていてもよい。
図2に例示するプレ電解装置は、陽極電解槽に接続された「第1電解スタック」と、陰極電解槽に接続された「第2電解スタック」とを有している。第1電解スタックは、陽極電解槽中の陽極用の第1溶液を循環して第1電解スタック内で酸化電解して4価のバナジウムイオンを5価のバナジウムイオンにするための電解スタックである。この第1電解スタックは、陽極用の第1溶液を酸化電解するための必須の構成である。なお、「電解スタック」とは、隔壁と電極とを備えた単セルが複数重ね合わされているものをいい、例えば、正極セルと、負極セルと、正極セル及び負極セル間に配置されたイオン交換膜とを有するセルを例示できる。
一方、第2電解スタックは、陰極用の第1溶液を還元電解するために設けられ、4価のバナジウムイオンを含む陰極用の第1溶液を還元電解して3価又は2価のバナジウムイオンにする。
このプレ電解装置は、陽極用又は陰極用の第1溶液をプレ電解しながら第1溶液に硫酸を加えることができるものであればその装置形態は特に限定されない。したがって、図2に示す装置形態であってもよいし、例えば第1電解スタックを有さない陽極電解槽だけであってもよい。また、溶解槽と電解槽(陽極電解槽、陰極電解槽)とエージング槽(陽極液エージング槽、陰極液エージング槽)とから選ばれる1又は2以上の槽が共通していてもよいし、全て1つの槽で共有していてもよい。
こうした方法及び装置により、従来調製できなかった高濃度のバナジウムイオンを含むエネルギー密度の高いバナジウム電解液を製造できると共に、循環型のレッドクスフロー電池又は非循環型のレッドクスノンフロー電池に使用され、スラッジが発生しにくいバナジウム電解液を製造できる。
なお、本願において、「バナジウムイオン溶液」というときは、バナジウムイオンの価数に主眼をおいた場合に用い、「バナジウム電解液」というときは、二次電池で用いられる充放電流体という意味で用いている。また、プレ電解前のバナジウム電解液を「被電解液」ということもある。また、「目標液量」とは、得ようとする液量のことをいい、「目標濃度」とは、得ようとする濃度のことをいう。「結晶水量」とは、酸化硫酸バナジウム水和物に含まれる水和物のことである。「仕立て水」、「仕立て硫酸」とは、目標液量にするために加えられる水又は硫酸のことである。
以下、バナジウム電解液の製造方法を構成する各工程と、その工程で適用する槽や装置について説明する。
<第1溶液調製工程>
第1溶液調製工程は、バナジウム塩と仕立て水とを混ぜることにより、バナジウム塩を溶解した第1溶液を調製する工程である。具体的には、図2に例示するように、純水貯槽に貯められた純水を溶解槽に投入し、その純水にバナジウム塩を投入し、そのバナジウム塩を溶解する。このとき、純水にバナジウム塩を投入してもよいし、バナジウム塩に純水を投入してもよい。通常は、純水を撹拌しながらバナジウム塩を投入してバナジウム塩を溶解する。純水は、例えば図2の純水貯槽に蓄えられている。
純水の投入量は、得ようとするバナジウム電解液の硫酸濃度によって任意に設定される。例えば、バナジウム電解液の硫酸濃度を例えば2.5mol/L程度にする場合は、第2溶液の調製時に投入される硫酸の量はあまり多くない。そのため、純水の投入量は、目標液量の50%〜85%程度の範囲内とすることが好ましい。一方、バナジウム電解液の硫酸濃度を例えば4.0mol/L程度にする場合は、第2溶液の調製時に投入される硫酸の量は多くなる。そのため、純水の投入量は、目標液量の50%〜80%程度の範囲内とすることが好ましい。なお、純水等の水については、「バナジウム電解液」の欄で説明したとおりであるので、ここではその説明を省略する。
バナジウム塩の投入量は、全量であることが好ましい。バナジウム塩としては、例えば酸化硫酸バナジウム水和物を用いることができる。バナジウム塩は、その結晶水量を考慮し、目標液量としたときに1.7mol/Lを超え、3.5mol/L以下の範囲内の目標濃度(モル数)になる量が秤量され、投入される。秤量されたバナジウム塩は、例えば図2の溶解槽に投入される。なお、バナジウム塩については、「バナジウム電解液」の欄で説明したとおりであるので、ここではその説明を省略する。
この第1溶液調製工程では、従来のようにバナジウム塩を硫酸水溶液に溶解せず、バナジウム塩を水に溶解した点に特徴がある。その結果、1.7mol/L超、3.5mol/L以下の高いバナジウムイオン濃度を調製するための多量のバナジウム塩を、水に対する溶解度限界に達しない状態で溶解させることを可能にしている。一方、従来は、バナジウム塩を硫酸水溶液に溶解していたので、硫酸水溶液に対するバナジウム塩の溶解度限界の上限は、1.7mol/L以下のバナジウムイオン濃度を調製するための量であった。そのため、1.7mol/L超のバナジウムイオン濃度とするためのバナジウム塩を、硫酸水溶液に溶解することはできていなかった。
溶解槽で溶解された第1溶液は、仕立て水に全量のバナジウム塩が溶解した溶液であり、目標液量よりも少ない液量になるように調製されている。この水溶液の色は、透明な濃い青色であった。
なお、図2に示す製造装置において、純水貯槽は、窒素バブリング手段(符号NB1)と窒素パージ手段(符号NP1)とを備えている。窒素パージ手段は、大気圧又は若干の加圧状態(1.2気圧程度)にした槽内の窒素ガスを逃がすための手段である。なお、窒素の代わりにアルゴン等の他の不活性ガスを用いてもよい。また、図2に示す製造装置において、溶解槽は、撹拌装置、バナジウム塩の投入口、窒素パージ手段(NP2)等を備えており、必要に応じて窒素バブリング手段を備えていてもよい。
溶解槽で調製された第1溶液は、例えば図2の例では、陽極溶解エージング槽と陰極液エージング槽とにそれぞれ陽極用の第1溶液と陰極用の第1溶液とが送られ、その各エージング槽で所望の溶存酸素濃度に第1溶液が脱気され、脱気された第1溶液が第2溶液を調製するための陽極電解槽に送られる。陽極溶解エージング槽や陰極溶解エージング槽には、窒素バブリング手段(NB2,NB3)や窒素パージ手段(NP3,NP4)等が設けられている。
<第2溶液調製工程>
第2溶液調製工程は、第1溶液をプレ電解しながら第1溶液に硫酸を加えて第2溶液を調製する工程である。この工程で得られた第2溶液は、1.7mol/L超、3.5mol/L以下の高濃度のバナジウムイオンを含む硫酸水溶液であっても、バナジウム塩の析出物が生じないという特徴がある。一方、第1溶液をプレ電解せずに硫酸を徐々に加えると、水に溶解したバナジウム塩である酸化硫酸バナジウムが析出してしまった。その理由は現時点では明確ではないが、硫酸が加えられた硫酸水溶液に対するバナジウム塩の溶解度の限界によるものと考えられる。
(プレ電解)
プレ電解は、陽極用の第1溶液と陰極用の第1溶液の両方に対して行われる。そのプレ電解は、図2の例では、陽極溶解エージング槽から陽極電解槽に送られた陽極用の第1溶液が、その陽極電解槽と第1電解スタックとの間を循環する間に行われる。また、陰極溶解エージング槽から陰極電解槽に送られた陰極用の第1溶液が、その陰極電解槽と第2電解スタックとの間を循環する間に行われる。陽極電解槽と陰極電解槽には、図2に示すように、撹拌装置、硫酸の投入口、窒素パージ手段(NP5,NP6)等を備えており、必要に応じて窒素バブリング手段を備えていてもよい。
循環経路には、電極電位測定器(ORP)やpHセンサ等のセンサ(符号S1,S2)が設けられている。電極電位測定器は、第1電解スタックや第2電解スタックの電極電位を一定時間毎又はリアルタイムで測定し、硫酸を添加するための所定の電位に到達したか否かを測定している。この電極電位測定器(ORP)は、銀−塩化銀電極を参照電極として測定する測定器である。
第1電解スタックは、図2に示すように、陽極用の第1溶液を酸化電解するための単セルが複数重ね合わされたスタックである。陽極電解槽と第1電解スタックとの間を循環する陽極用の第1溶液は、単セルが重ね合わされた第1電解スタックの一方の端から入って他方の端から出るようにして循環する。この第1電解スタックでは、同時に還元電解が行われるが、その還元電解は、陰極用の第1溶液(図2参照)であってもよいし、硫酸や硫酸ナトリウムのような電解用溶液(図示しない)であってもよい。この電解用溶液は、単セルが重ね合わされた第1電解スタックの他方の端から入って一方の端から出るようにして循環する。なお、第1電解スタックでの還元電解を、陰極用の第1溶液で行う場合は、陽極用の第1溶液の酸化電解と同時に陰極用の第1溶液の還元電解を行うことができるのでより好ましい。
第2電解スタックは、図2に示すように、陰極用の第1溶液を還元電解するための単セルが複数重ね合わされたスタックである。陰極電解槽と第2電解スタックとの間を循環する陰極用の第1溶液は、単セルが重ね合わされた第2電解スタックの一方の端から入って他方の端から出るようにして循環する。この第2電解スタックでは、同時に酸化電解が行われるが、その酸化電解は、図2に示すような硫酸や硫酸ナトリウムのような電解用溶液である。この電解用溶液は、単セルが重ね合わされた第2電解スタックの他方の端から入って一方の端から出るようにして循環する。
この第2電解スタックでの還元電解と、上記第1電解スタックでの還元電解とを同時に行ってもよい。この場合には、第1電解スタックでは4価から5価への1価の酸化を行う電気量と、第2電解スタックでは4価から3価への1価の還元を行う電気量とを同時に印加することになる。そのため、陰極用の第1溶液は4価から2価に還元できる電気量が印加されることになり、4価のバナジウムイオンを第1電解スタック、によって5価のバナジウムイオンに酸化できるのと同時に、4価のバナジウムイオンを第1電解スタックと第2電解スタックとによって2価のバナジウムイオンに還元することも可能である。
プレ電解は、陽極電解槽の第1溶液と陰極電解槽の第1溶液のそれぞれに対し、硫酸を加える前に印加する。プレ電解は、定電流電解であっても定電圧電解であってもよいが、通常、定電流電解が好ましく適用される。
定電流電解の場合は、1mA/cm以上、5mA/cm以下の範囲内であることが好ましく、2mA/cm以上、4mA/cm以下の範囲内であることがより好ましい。なお、定電圧電解の場合は、電流計で検出される電流値が上記した、1mA/cm以上、5mA/cm以下の範囲内、好ましくは2mA/cm以上、4mA/cm以下の範囲内になるように調整された電圧であることが好ましい。
定電流電解での電流値や定電圧電解での電圧値は、硫酸を加えている間、一定(1段)の電流値又は電圧値であってもよいし、2段以上の電流値又は電圧値であってもよい。また、定電流電解と定電圧電解が交互に行われてもよい。定電流電解や定電圧電解が2段以上の場合は、上記範囲内で、徐々に高くなるように段階的に印加してもよいが、定電流値や定電圧値を上げたり下げたりしてもよく、特に限定されない。
(陽極用のバナジウム電解液のプレ電解)
硫酸を加え始める電極電位は、陽極用のバナジウム電解液を調製する場合には、酸化電解時の電極電位(参照電極:銀−塩化銀電極。本願において同じ。)が800mV以上、950mV以下の範囲内であることが好ましい。この電極電位の範囲内で硫酸を加え始めることにより、析出物やスラッジの発生を抑制することができる。このときの析出物は、過飽和によって析出し易い酸化硫酸バナジウム等であり、スラッジは、酸化電解によって生じ易い過酸化バナジウムや酸化バナジウム等である。
硫酸を加え始める電極電位が800mV未満では、硫酸を加えたときに酸化硫酸バナジウムが析出した。そして、その酸化硫酸バナジウムの析出物は、その後溶解しなかった。硫酸が加えられた硫酸水溶液に対するバナジウム塩の溶解度の限界の観点からは、800mV以上でも800mV未満でも同じであるが、800mV未満(低電場)で析出して800mV以上(高電場)で析出しない理由は現時点では明確でない。しかし、800mV以上程度の電場が加わることにより、第1溶液に含まれるバナジウムイオン又はその錯イオンの析出が抑制されたものと考えられる。
800mV以上、950mV以下の範囲での硫酸の好ましい投入開始電位は、バナジウムイオン濃度等によって若干異なり、特に限定されない。例えば2.5mol/Lのバナジウムイオン濃度の場合には、800mVを過ぎた電位〜900mV以下の範囲で投入を開始することが好ましく、例えば3.5mol/Lのバナジウムイオン濃度の場合には、850mVを過ぎた電位〜950mV以下の範囲で投入を開始することが好ましい。
硫酸を投入し始めるタイミングは、第1溶液の状態を目安にすることもできる。例えば、青色の陽極用第1溶液をプレ電解している過程で、その第1溶液に黒色の糊状浮遊物が僅かに生じてきたタイミングで硫酸を投入し始めることが好ましい。その浮遊物が生じるタイミングは、例えば2.5mol/Lのバナジウムイオン濃度では815mV程度の電位程度であり、例えば3.5mol/Lのバナジウムイオン濃度では900mV程度の電位程度であった。その浮遊物は、硫酸を入れることにより消える。なお、その浮遊物が生じても硫酸を投入し始めない場合は、その浮遊物が再溶解困難な析出物となり、950mVを超えると完全な固体析出物になってプレ電解不能になってしまう。すなわち、800mV未満の低電場の場合には、硫酸の投入は析出物を発生させるが、800mV以上の高電場の場合では、硫酸を投入しないと析出物を発生させる。こうした現象を制御することにより、高濃度のバナジウムイオン濃度を有する第2溶液を調製することができる。
硫酸は、少量ずつ投入することが好ましい。その投入量は、最終的な硫酸濃度によって異なるので特に限定されないが、硫酸の総投入量を数回から数十回に分けて投入できる量を1回当たりの投入量とすることが好ましい。例えば、200mLの硫酸(濃硫酸)を10回で投入する場合には、20mLずつ例えば5分間隔で50分かけて投入することが好ましい。所定量の投入間隔も任意である。また、少量ずつ連続して投入してもよい。
硫酸を加えている間の溶液の温度はあまり高くならないようにすることが好ましい。例えば、溶液の温度を35℃程度以下にしておくことが好ましい。この温度範囲に保ちながら硫酸を加えることにより、急激な酸化を防いでスラッジの発生等を抑制することができる。なお、硫酸の投入量を多くして急激に行うと、熱が発生して溶液の温度が局部的に高くなり(例えば50℃以上)、酸化バナジウム等からなるスラッジが発生することがある。発生したスラッジは、その後に溶解せず、電解液は使用することができない状態になる。
硫酸は、最終的なバナジウムイオン濃度が0.5mol/L以上、4mol/L以下になるのに必要な量の硫酸を秤量する。硫酸は、濃硫酸のまま、又は必要に応じて水で希釈調整した硫酸水溶液を準備する。その硫酸は、例えば第1溶液が目標液量の80%である場合は、目標液量の10〜25%程度の量の硫酸又は硫酸水溶液を準備し、第1溶液を撹拌し且つプレ電解しながら、その第1溶液中に硫酸又は硫酸水溶液を少量ずつ加える。こうして第2溶液を調製する。なお、準備された硫酸又は硫酸水溶液は予め脱気され、溶存酸素をできるだけ除去したものであることが好ましい。
800mV以上、950mV以下の範囲内で投入を開始した硫酸の入れ終わりは、通常、1000mV前後の電極電位(銀−塩化銀電極基準)であるが、この電位に特に限定されない。なお、硫酸を投入した後の陽極用の第2溶液は、黄色であった。
第2溶液は、第1溶液をプレ電解しながら、所定の電位で開始した硫酸の投入を終えることにより得られる。この第2溶液は、その後に引き続き充電することができる。例えば、陽極用第2溶液は1200mV〜1250mV(銀−塩化銀電極基準)まで充電して5価のバナジウムイオンに酸化することができ、陰極用第2溶液は−400mV〜−300mV(銀−塩化銀電極基準)まで充電して2価のバナジウムイオンに酸化することができる。
このときの充電は、プレ電解時に印加する電流密度と同程度の電流密度をそのまま引き続いて印加することが好ましい。こうした電解を引き続き行うことにより、バナジウム電解液の初期充電(最初の充電)をスラッジ等の発生を抑制した状態で行うことができる。なお、一度フル充電した後のバナジウム電解液は、著しく高い電流密度で充電してもスラッジの発生を抑制できる。そうした電流密度としては、10mA/cm以上、80mA/cm以下の範囲内であり、20mA/cm以上、70mA/cm以下の範囲内であることが好ましい。
以上のように、第2溶液の調製工程では、プレ電解を行いながら硫酸を投入することにより、析出物を発生させずに高濃度のバナジウムイオン溶液である第2溶液を調製することができる。得られた第2溶液は、スラッジを発生させずに、高い電流密度で充電することができる。
(陰極用のバナジウム電解液のプレ電解)
陰極用のバナジウム電解液(陰極用の第2溶液)を調製する場合も、第1溶液をプレ電解することが好ましい。陰極用の第2溶液の調製では、陰極用の第1溶液をプレ電解しながらその第1溶液に硫酸を加えればよく、硫酸を加え始める電位については上記した陽極用の第1溶液をプレ電解する場合ほど厳格ではない。その理由は、電極電位に影響する析出物の発生とスラッジの発生が陽極用の第1溶液よりも起こりにくいためである。
陰極用の第1溶液のプレ電解は、上記したように、第1電解スタックと第2電解スタックとにより、陽極用の第1溶液のプレ電解と同時に行うことが便利である。陰極用の第1溶液のプレ電解時の電極電位(参照電極:銀−塩化銀電極)は、特に限定されないが、通常、200mV〜−200mVの範囲内で行うことが好ましい。
こしたプレ電解によって、酸化硫酸バナジウム塩の硫酸水溶液に対する溶解度の限界よりも高い1.7mol/Lを超え、3.5mol/L以下の範囲内のバナジウムイオンを含有する陰極用の第2溶液を調製できる。なお、陰極用の第1溶液に硫酸を入れる前は溶液がドロドロして粘度が上昇するが、硫酸を入れると粘度が下がる。
(その他)
析出物又はスラッジの発生を抑制するための添加剤は、第1溶液に加えてもよいし、第2溶液に加えてもよい。また、第1溶液の調製や第2溶液の調製は、溶存酸素をできるだけ除去する手段を適用しながら行うことが好ましい。
調製された陽極用第2溶液は、図2示す陽極液エージング槽に移送され、陰極用第2溶液は、図2に示す陰極液エージング槽に移送される。この陽極液エージング槽と陰極液エージング槽では、必要に応じて、所望の溶存酸素濃度に第2溶液が脱気され、必要に応じて最終的なバナジウム電解液を調製するための陽極液調整槽(図2参照)と陰極液調整槽(図2参照)に送られる。陽極液エージング槽や陰極液エージング槽には、窒素バブリング手段(NB4,NB5)や窒素パージ手段(NP8,NP9)等が設けられている。
<バナジウム電解液調製工程>
バナジウム電解液調製工程は、必要に応じて設けられる工程である。この調製工程では、(A)第2溶液が最終的な目標液量に調製されていない場合には、最終的な総量に調整するための仕立て水又は仕立て硫酸を当該第2溶液に加えてバナジウム電解液を得る工程、又は、(B)第2溶液中のバナジウムイオンの価数を調整する必要がある場合には、その価数を調整してバナジウム電解液を得る工程である。
(A)の液量調製工程は必要に応じて設けられる工程であり、第1溶液調製工程と第2溶液調製工程で、最終的なバナジウム電解液の目標液量にすることができていれば、この工程は不要である。そのため、仕立て水又は仕立て硫酸を加えることはなく、第2溶液そのものがバナジウム電解液として用いられる。
仕立て水又は仕立て硫酸は、第2溶液が目標液量に満たない場合に、バナジウムイオン濃度が1.7mol/Lを超え、3.5mol/L以下の範囲内の目標濃度にするため、且つ硫酸濃度が0.5mol/L以上、4mol/L以下の範囲内の目標濃度にするために加えられる。仕立て硫酸の濃度は、そうした目標濃度に調製できるように調製されていることが好ましい。
(B)の価数調製工程も必要に応じて設けられる工程であり、第2溶液が5価又は2価にフル充電されておらず、バナジウムイオンの価数調整が不要の場合には第2溶液そのものがバナジウム電解液として用いられる。このときの価数調整とは、バナジウム電解液中の5価のバナジウムイオンの一部を4価に還元するための調製や、バナジウム電解液中の2価のバナジウムイオンの一部を3価又は4価に酸化するための調製である。こうした調製は、フル充電状態又はフル充電に近い充電状態の第2溶液中の5価のバナジウムイオンの一部を4価に還元するための調製や、バナジウム電解液中の2価のバナジウムイオンの一部を3価又は4価に酸化するための調製が必要な場合に好ましく適用される。
具体的には、例えば、第2溶液調製工程でのプレ電解に引き続いて、4価のバナジウムイオンを5価のバナジウムイオンに酸化する電解工程を行った場合には、陰極液エージング槽に収容された2価又は3価のバナジウムイオンを含む電解液の所定量を陽極液調整槽に移送して、5価のバナジウムイオン溶液と2価又は3価のバナジウムイオン溶液とを混合する。こうして5価のバナジウムイオンが還元して、4価のバナジウムイオンを含む陽極用のバナジウム電解液とすることができる。
また、例えば、第2溶液調製工程でのプレ電解に引き続いて、4価のバナジウムイオンを2価又は3価のバナジウムイオンに還元する電解工程を行った場合には、陽極液エージング槽に収容された5価のバナジウムイオンを含む電解液の所定量を陰極液調整槽に移送して、2価又は3価のバナジウムイオン溶液と5価のバナジウムイオン溶液とを混合する。こうして2価又は3価のバナジウムイオンが酸化して、3価又は4価のバナジウムイオンを含む陰極用のバナジウム電解液とすることができる。
以上説明したように、本発明に係る高濃度バナジウム電解液の製造方法及び製造装置によれば、プレ電解しながら硫酸を加えることにより、従来は得ることができていなかった高濃度バナジウム電解液を製造できる。特に陽極用のバナジウム電解液では、所定の電位に達した後に硫酸を加え始めることによって、析出物が生じないバナジウム電解液とすることができる。こうして得られた陽極用及び陰極用のバナジウム電解液は、その後に酸化電解や還元電解によって充放電を行った場合でも、過酸化バナジウムや酸化バナジウム等のスラッジの発生を抑制することができる。
製造されたバナジウム電解液は、その後に引き続いて電解して充電してもよいし、そのまま保管してもよい。
<充電電解工程>
充填電解工程は、任意に適用される工程であり、上記のようにして調製された陽極用又は陰極用のバナジウム電解液を充電する工程である。具体的には、例えば、プレ電解した後の陽極用第2溶液を酸化電解して5価のバナジウムイオンを含むバナジウム電解液を得たり、プレ電解した後の陰極用第2溶液を還元電解して2価のバナジウムイオンを含むバナジウム電解液を得たりする工程である。
このときの充電は、プレ電解時に印加する電流密度と同程度の電流密度をそのまま引き続いて印加することが好ましい。こうした充電電解を引き続き行うことにより、バナジウム電解液の初期充電(最初の充電)をスラッジ等の発生を抑制した状態で行うことができる。なお、一度フル充電した後のバナジウム電解液は、一旦放電した後又は価数調整した後に再度充電する場合、著しく高い電流密度で再充電してもスラッジの発生を抑制できる。そうした電流密度としては、10mA/cm以上、100mA/cm以下の範囲内であり、20mA/cm以上、70mA/cm以下の範囲内であることが好ましい。
この電解工程では、定電流電解工程、定電圧電解工程、又は、定電流電解工程と該定電流電解工程後に定電圧電解工程とを有する複合電解工程、のいずれかを適用できる。これらの定電流電解。定電圧電解又は複合電解の電解手段は特に限定されず、各種の手段を適用できる。例えば、一定電流を印加して酸化と還元を行ってもよいし、一定電圧を印加して酸化と還元を行ってもよいし、最初に定電流で電解を行い、その後に定電圧で電解を行ってもよい。また、段階的に増した2以上の定電流や定電圧を順次印加してもよい。
こうした充電電解は、図2に示す陽極電解槽、陰極電解槽、第1電解スタック及び第2電解スタックを利用して行ってもよいし、図示しない専用の充電電解装置で行ってもよい。
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。本発明は以下の実施例により限定されるものではない。
[実施例1]
図2に示すバナジウム電解液の製造装置を用いて、バナジウムイオン濃度が2.5mol/Lのバナジウム電解液を、陽極用0.5L、陰極用0.5Lそれぞれ製造した。先ず、純度が99.5質量%以上の酸化硫酸バナジウム(IV)水和物582g(2.5mol/L相当)を準備し、比重1.8の濃硫酸を150mL(2.8mol/L相当)準備した。純水貯槽から仕立て水650mLを溶解槽に投入し、そこに酸化硫酸バナジウム水和物582gを投入し、撹拌して溶解し、第1溶液を調製した。
次に、溶解槽中の第1溶液を半分ずつ陽極溶解エージング槽と陰極溶解エージング槽に移送し、窒素ガスでバブリングして脱気処理し、各溶液中の溶存酸素を5ppmを上限として管理した。その後、陽極溶解エージング槽と陰極溶解エージング槽から陽極電解槽と陰極電解槽にそれぞれ移送した。陽極電解槽中の第1溶液を、第1電解スタックとの間で循環させながら酸化電解であるプレ電解を行った。一方、陰極電解槽中の第1溶液を、第1電解スタックと第2電解スタックとの間で循環させながら還元電解であるプレ電解を行った。また、硫酸ナトリウム槽中の硫酸ナトリウム水溶液を、第2電解スタックとの間で循環させた。こうした循環を行いながら、第1電解スタックと第2電解スタックとでプレ電解を行い、4価のバナジウムイオンを5価のバナジウムイオンに酸化する酸化電解と、4価のバナジウムイオンを2価又は3価のバナジウムイオンに還元する還元電解を同時に行った。酸化電解と還元電解のいずれも、2mA/cmの一定電流密度で行い、そのときの電極電位(参照電極:銀−塩化銀電極)をモニタリングした。
陽極用の第1溶液のプレ電解中、モニタリング中の電極電位が800mVを過ぎて820mV程度になったら、陽極電解槽に、濃硫酸150mLを15mLずつ約10分間かけて10回投入した。投入終了電位は約950mVであった。こうして陽極用の第2溶液を調製した。
一方、陰極用の第1溶液のプレ電解中、モニタリング中の電極電位が200mVを過ぎて150mV程度になったら、陰極電解槽に、濃硫酸150mLを15mLずつ約10分間かけて10回投入した。投入終了電位は約150mVであった。こうして陰極用の第2溶液を調製した。なお、マイナス側に還元電解している過程で陰極用の第1溶液に硫酸を入れると、電極電位はプラス側に移行するので、上記のように、硫酸の投入終了時の電極電位は、投入開始の電位とあまり変わらなかった。
その後、2mA/cmのプレ電解をそのまま継続し、陽極用バナジウム電解液は、電極電位が1250mVになるまで続け、陰極用バナジウム電解液は、電極電位が−350mVになるまで続けた。最終的には、5価に初期充電したバナジウム電解液と2価に初期充電したバナジウム電解液とを調製した。調製された各バナジウム電解液を、陽極液エージング槽と陰極液エージング槽にそれぞれ移送した、その陽極液エージング槽と陰極液エージング槽では、初期充電が完了したバナジウム電解液に微量の仕立て水を投入して目標液量の0.5Lとした。こうして目標濃度である2.5mol/Lのバナジウムイオンを含む陽極用のバナジウム電解液と陰極用のバナジウム電解液を同時に得た。
こうしたバナジウム電解液の製造方法により、析出物やスラッジの発生のないバナジウム電解液を2.5mol/Lという高濃度で得ることができた。初期充電したバナジウム電解液は、その後に放電させた後の再充電では、20mA/cmの高い電流密度を適用でき、この場合も析出物やスラッジの発生がなかった。
[実施例2]
実施例1において、プレ電解及びその後の充電電解を4mA/cmの一定電流密度で行った他は、実施例1と同様にして、実施例2のバナジウム電解液を調製した。こうしたバナジウム電解液の製造方法により、析出物やスラッジの発生のないバナジウム電解液を2.5mol/Lという高濃度で得ることができた。
[実施例3]
図2に示すバナジウム電解液の製造装置を用いて、バナジウムイオン濃度が3.5mol/Lのバナジウム電解液を、陽極用0.5L、陰極用0.5Lそれぞれ製造した。先ず、純度が99.5質量%以上の酸化硫酸バナジウム(IV)水和物815g(3.5mol/L相当)を準備し、比重1.8の濃硫酸を200mL(3.8mol/L相当)準備した。純水貯槽から仕立て水650mLを溶解槽に投入し、そこに酸化硫酸バナジウム水和物815gを投入し、撹拌して溶解し、第1溶液を調製した。
次に、実施例1と同様に、溶解槽中の第1溶液を半分ずつ陽極溶解エージング槽と陰極溶解エージング槽に移送し、窒素ガスでバブリングして脱気処理し、各溶液中の溶存酸素を5ppmを上限として管理した。その後、陽極溶解エージング槽と陰極溶解エージング槽から陽極電解槽と陰極電解槽にそれぞれ移送した。陽極電解槽中の第1溶液を、第1電解スタックとの間で循環させながら酸化電解であるプレ電解を行った。一方、陰極電解槽中の第1溶液を、第1電解スタックと第2電解スタックとの間で循環させながら還元電解であるプレ電解を行った。また、硫酸ナトリウム槽中の硫酸ナトリウム水溶液を、第2電解スタックとの間で循環させた。こうした循環を行いながら、第1電解スタックと第2電解スタックとでプレ電解を行い、4価のバナジウムイオンを5価のバナジウムイオンに酸化する酸化電解と、4価のバナジウムイオンを2価又は3価のバナジウムイオンに還元する還元電解を同時に行った。酸化電解と還元電解のいずれも、2mA/cmの一定電流密度で行い、そのときの電極電位(参照電極:銀−塩化銀電極)をモニタリングした。
陽極用の第1溶液のプレ電解中、モニタリング中の電極電位が850mVを過ぎて900mV程度になったら、陽極電解槽に、濃硫酸200mLを20mLずつ約10分間かけて10回投入した。投入終了電位は約1000mVであった。こうして陽極用の第2溶液を調製した。
一方、陰極用の第1溶液のプレ電解中、モニタリング中の電極電位が200mVを過ぎて150mV程度になったら、陰極電解槽に、濃硫酸200mLを20mLずつ約10分間かけて10回投入した。投入終了電位は約180mVであった。こうして陰極用の第2溶液を調製した。この場合も、マイナス側に還元電解している過程で陰極用の第1溶液に硫酸を入れると、電極電位はプラス側に移行するので、上記のように、硫酸の投入終了時の電極電位(約180mV)は、投入開始の電位(150mV程度)とあまり変わらなかった。
その後、2mA/cmのプレ電解をそのまま継続し、陽極用バナジウム電解液は、電極電位が1250mVになるまで続け、陰極用バナジウム電解液は、電極電位が−350mVになるまで続けた。最終的には、5価に初期充電したバナジウム電解液と2価に初期充電したバナジウム電解液とを調製した。調製された各バナジウム電解液を、陽極液エージング槽と陰極液エージング槽にそれぞれ移送した、その陽極液エージング槽と陰極液エージング槽では、初期充電が完了したバナジウム電解液に微量の仕立て水を投入して目標液量の0.5Lとした。こうして目標濃度である3.5mol/Lのバナジウムイオンを含む陽極用のバナジウム電解液と陰極用のバナジウム電解液を同時に得た。
こうしたバナジウム電解液の製造方法により、析出物やスラッジの発生のないバナジウム電解液を3.5mol/Lという高濃度で得ることができた。初期充電したバナジウム電解液は、その後に放電させた後の再充電では、50mA/cmの高い電流密度を適用でき、この場合も析出物やスラッジの発生がなかった。
[実施例4]
実施例3において、プレ電解及びその後の充電電解を4mA/cmの一定電流密度で行った他は、実施例3と同様にして、実施例4のバナジウム電解液を調製した。こうしたバナジウム電解液の製造方法により、析出物やスラッジの発生のないバナジウム電解液を3.5mol/Lという高濃度で得ることができた。
[実施例5]
図2に示すバナジウム電解液の製造装置を用いて、バナジウムイオン濃度が1.8mol/Lのバナジウム電解液を、陽極用0.5L、陰極用0.5Lそれぞれ製造した。先ず、純度が99.5質量%以上の酸化硫酸バナジウム(IV)水和物408g(1.8mol/L相当)を準備し、比重1.8の濃硫酸を140mL(2.6mol/L相当)準備した。純水貯槽から仕立て水850mLを溶解槽に投入し、そこに酸化硫酸バナジウム水和物408gを投入し、撹拌して溶解し、第1溶液を調製した。
次に、溶解槽中の第1溶液を半分ずつ陽極溶解エージング槽と陰極溶解エージング槽に移送し、窒素ガスでバブリングして脱気処理し、各溶液中の溶存酸素を5ppmを上限として管理した。その後、陽極溶解エージング槽と陰極溶解エージング槽から陽極電解槽と陰極電解槽にそれぞれ移送した。陽極電解槽中の第1溶液を、第1電解スタックとの間で循環させながら酸化電解であるプレ電解を行った。一方、陰極電解槽中の第1溶液を、第1電解スタックと第2電解スタックとの間で循環させながら還元電解であるプレ電解を行った。また、硫酸ナトリウム槽中の硫酸ナトリウム水溶液を、第2電解スタックとの間で循環させた。こうした循環を行いながら、第1電解スタックと第2電解スタックとでプレ電解を行い、4価のバナジウムイオンを5価のバナジウムイオンに酸化する酸化電解と、4価のバナジウムイオンを2価又は3価のバナジウムイオンに還元する還元電解を同時に行った。酸化電解と還元電解のいずれも、2mA/cmの一定電流密度で行い、そのときの電極電位(参照電極:銀−塩化銀電極)をモニタリングした。
陽極用の第1溶液のプレ電解中、モニタリング中の電極電位が800mVを過ぎたら、陽極電解槽に、濃硫酸140mLを14mLずつ約10分間かけて10回投入した。投入終了電位は約950mVであった。こうして陽極用の第2溶液を調製した。
一方、陰極用の第1溶液のプレ電解中、モニタリング中の電極電位が200mVを過ぎて150mV程度になったら、陰極電解槽に、濃硫酸140mLを14mLずつ約10分間かけて10回投入した。投入終了電位は約180mVであった。こうして陰極用の第2溶液を調製した。この場合も、マイナス側に還元電解している過程で陰極用の第1溶液に硫酸を入れると、電極電位はプラス側に移行するので、上記のように、硫酸の投入終了時の電極電位(約180mV)は、投入開始の電位(150mV程度)とあまり変わらなかった。
その後、2mA/cmのプレ電解をそのまま継続し、陽極用バナジウム電解液は、電極電位が1250mVになるまで続け、陰極用バナジウム電解液は、電極電位が−350mVになるまで続けた。最終的には、5価に初期充電したバナジウム電解液と2価に初期充電したバナジウム電解液とを調製した。調製された各バナジウム電解液を、陽極液エージング槽と陰極液エージング槽にそれぞれ移送した、その陽極液エージング槽と陰極液エージング槽では、初期充電が完了したバナジウム電解液に微量の仕立て水を投入して目標液量の0.5Lとした。こうして目標濃度である1.8mol/Lのバナジウムイオンを含む陽極用のバナジウム電解液と陰極用のバナジウム電解液を同時に得た。
こうしたバナジウム電解液の製造方法により、析出物やスラッジの発生のないバナジウム電解液を1.8mol/Lという高濃度で得ることができた。初期充電したバナジウム電解液は、その後に放電させた後の再充電では、20mA/cmの高い電流密度を適用でき、この場合も析出物やスラッジの発生がなかった。
[実施例6]
実施例5において、プレ電解及びその後の充電電解を4mA/cmの一定電流密度で行った他は、実施例5と同様にして、実施例6のバナジウム電解液を調製した。こうしたバナジウム電解液の製造方法により、析出物やスラッジの発生のないバナジウム電解液を1.8mol/Lという高濃度で得ることができた。
[比較例1]
実施例1において、プレ電解を行わないで、陽極用の第1溶液と陰極用の第1溶液とにそれぞれ硫酸を加えたところ、いずれの第1溶液も直ちに青色の析出物が発生した。析出物が発生した電解液は、その後に充放電することはできなかった。
[比較例2]
実施例1において、陽極用の第1溶液をプレ電解しながら硫酸を投入する電極電位を、750mVとした。硫酸を加え始めたところ、青色の再溶解不能な析出物が発生し、循環ができなかった。
[比較例3]
実施例1において、陽極用の第1溶液をプレ電解しながら硫酸を投入する電極電位を、1000mVとした。電極電位が850mVを超える付近から生じた糊状浮遊物が溶解不能なスラッジとなり、循環ができなかった。
[比較例4]
実施例3において、プレ電解を行わないで、陽極用の第1溶液と陰極用の第1溶液とにそれぞれ硫酸を加えたところ、いずれの第1溶液も直ちに青色の析出物が発生した。析出物が発生した電解液は、その後に充放電することはできなかった。
[比較例5]
実施例3において、陽極用の第1溶液をプレ電解しながら硫酸を投入する電極電位を、780mVとした。硫酸を加え始めたところ、青色の再溶解不能な析出物が発生し、循環ができなかった。
[比較例6]
実施例3において、陽極用の第1溶液をプレ電解しながら硫酸を投入する電極電位を、1000mVとした。電極電位が900mVを超える付近から生じた糊状浮遊物が溶解不能なスラッジとなり、循環ができなかった。
[比較例7]
実施例5において、プレ電解を行わないで、陽極用の第1溶液と陰極用の第1溶液とにそれぞれ硫酸を加えたところ、いずれの第1溶液も直ちに青色の析出物が発生した。析出物が発生した電解液は、その後に充放電することはできなかった。
[比較例8]
実施例5において、陽極用の第1溶液をプレ電解しながら硫酸を投入する電極電位を、760mVとした。硫酸を加え始めたところ、青色の再溶解不能な析出物が発生し、循環ができなかった。
[比較例9]
実施例5において、陽極用の第1溶液をプレ電解しながら硫酸を投入する電極電位を、1000mVとした。電極電位が820mVを超える付近から生じた糊状浮遊物が溶解不能なスラッジとなり、循環ができなかった。





Claims (11)

  1. 1.7mol/Lを超え、3.5mol/L以下の範囲内のバナジウムイオンを含有する硫酸水溶液であることを特徴とするバナジウム電解液。
  2. 前記バナジウムイオンが、4価又は5価のバナジウムイオンである、請求項1に記載のバナジウム電解液。
  3. 溶存酸素が5ppm以下であること、アルミニウム、カルシウム、ナトリウム、カリウム、鉄、ケイ素及びクロムのうち1又は2以上の元素が合計0.4質量%未満の酸化硫酸バナジウム(VOSO・nHO)をバナジウム塩として用いること、又は、析出物又はスラッジの発生を抑制するための添加剤が含まれていること、のいずれかである、請求項1又は2に記載のバナジウム電解液。
  4. バナジウム塩と仕立て水とを混ぜて前記バナジウム塩を溶解した第1溶液が調製され、
    前記第1溶液をプレ電解しながら当該第1溶液に硫酸を加えて第2溶液が調製され、
    前記第2溶液そのもの、又は前記第2溶液を最終的な総量に調整するための仕立て水又は仕立て硫酸を当該第2溶液に加えて調製されたものである、請求項1〜3のいずれか1項に記載のバナジウム電解液。
  5. 前記プレ電解は、定電流電解又は定電圧電解である、請求項4に記載のバナジウム電解液。
  6. 前記硫酸を加え始める前記プレ電解の電極電位は、陽極用のバナジウム電解液を調製する場合には酸化電解時の電極電位(参照電極:銀−塩化銀電極)が800mV以上、950mV以下の範囲内である、請求項4又は5に記載のバナジウム電解液。
  7. 1.7mol/Lを超え、3.5mol/L以下の範囲内のバナジウムイオンを含有するバナジウム電解液の製造方法であって、
    バナジウム塩と仕立て水とを混ぜて当該バナジウム塩を溶解して第1溶液を調製する工程と、
    前記第1溶液をプレ電解しながら当該第1溶液に硫酸を加えて第2溶液を調製する工程と、を有することを特徴とするバナジウム電解液の製造方法。
  8. 溶存酸素が5ppm以下であること、アルミニウム、カルシウム、ナトリウム、カリウム、鉄、ケイ素及びクロムのうち1又は2以上の元素が合計0.4質量%未満の酸化硫酸バナジウム(VOSO・nHO)をバナジウム塩として用いること、又は、析出物又はスラッジの発生を抑制するための添加剤を含むこと、のいずれかである、請求項7に記載のバナジウム電解液の製造方法。
  9. 前記プレ電解は、定電流電解又は定電圧電解である、請求項7又は8に記載のバナジウム電解液の製造方法。
  10. 前記硫酸を加え始める前記プレ電解の電極電位は、陽極用のバナジウム電解液を調製する場合には酸化電解時の電極電位(参照電極:銀−塩化銀電極)が800mV以上、950mV以下の範囲内である、請求項7〜9のいずれか1項に記載のバナジウム電解液の製造方法。
  11. 1.7mol/Lを超え、3.5mol/L以下の範囲内のバナジウムイオンを含有するバナジウム電解液の製造装置であって、
    バナジウム塩と仕立て水とを混ぜて当該バナジウム塩を溶解した第1溶液が調製され、当該第1溶液をプレ電解しながら当該第1溶液に硫酸を加えて第2溶液が調製され、前記第2溶液そのものをバナジウム電解液として収容し、又は前記第2溶液を最終的な総量に調整するための仕立て水又は仕立て硫酸を当該第2溶液に加えて調製されたものをバナジウム電解液として収容する溶液槽と、
    前記第1溶液をプレ電解するためのプレ電解装置と、を少なくとも備えることを特徴とするバナジウム電解液の製造装置。



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