JP2018198109A - 電池負極活物質液及び電池正極活物質液並びにこれらの調製方法 - Google Patents

電池負極活物質液及び電池正極活物質液並びにこれらの調製方法 Download PDF

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Abstract

【課題】特定のバナジウム濃度や硫酸水素根等の形になっている硫黄濃度に限定されることなく、特にバナジウムを高濃度とする場合においても、液中の錯体が沈殿型のバナジウム化合物に移行しにくく、自由な充放電操作下において十分な電極反応性及び流動性を維持し、安定かつエネルギー効率のよい充放電が可能になる電池負極活物質液及び電池正極活物質液並びにこれらの調製方法を提供すること。【解決手段】硫酸酸性バナジウム化合物を含有する液からなる電池負極活物質液であって、2価及び3価のバナジウムを含有し、X線回折分析における002回折ピークの半値幅が2.5°以下である炭素電極を用い、該電極及び該電池負極活物質液を静止させて、標準水素電極電位基準で−0.1Vよりも卑側の電位から貴側に向けて電位を掃引する電位掃引法によって観察される2価のバナジウムの酸化波が複数検出されることを特徴とする。【選択図】図1

Description

本発明は、電池負極活物質液及び電池正極活物質液並びにこれらの調製方法に関し、詳しくは、バナジウム化合物を活物質とする液と導電性の炭素材を電極とで構成される電池において、自由な充放電操作下において十分な電極反応及び流動性を維持し、安定かつエネルギー効率のよい充放電が可能になる電池負極活物質液及び電池正極活物質液並びにこれらの調製方法に関する。
立地条件から新設が困難な揚水発電施設に代わって、大規模なエネルギー貯蔵源として二次電池が注目されている。このような二次電池として、鉛蓄電池、ナトリウム硫黄蓄電池、レドックスフロー電池等が知られている。
特にバナジウム電解液を用いたバナジウムレドックスフロー電池は、室温で作動し、活物質は液体であり、外部タンクに貯蔵できると共に過充電、過放電耐久性にも優れている。そのため、電池の維持管理が容易で、長寿命である等の利点がある。
バナジウムレドックスフロー電池の正極活物質液にはバナジウム5価、4価系のレドックス対が用いられ、負極活物質液にはバナジウム2価、3価系のレドックス対が用いられている(特許文献1、2)。活物質がイオンとして溶解している液において、充電時及び放電時の電極反応はそれぞれ下記のように表される。
(充電時の電極反応)
正極反応:VO2+(4価)+HO → VO (5価)+2H+e
負極反応:V3+(3価)+e → V2+(2価)
(放電時の電極反応)
正極反応:VO (5価)+2H+e → VO2+(4価)+H
負極反応:V2+(2価) → V3+(3価)+e
非特許文献1〜3では、レドックスフロー電池において出力密度、エネルギー密度の増大を実現するために、正極活物質、負極活物質共に、バナジウム濃度を高濃度にする試みがなされている。
特開昭62−186473号公報 特開平4−286871号公報
L. D. Kurbatova, D. I. Kurbatov, "Vanadium(V) extraction from sulfuric acid solutions", Russian Journal of Inorganic Chemistry, July 2008, 53(7), 1154-1157 Faizur Rahman, Maria Skyllas-Kazacos, "Vanadium redox battery: Positive half-cell electrolyte studies", Journal of Power Sources, April 2009, 189(2), 1212-1219 織地学他, "バナジウムレドックスフロー電池負極におけるV(II)/V(III)反応", 電池討論会講演要旨集, 2003年11月04日, 44巻, 630-631
非特許文献1、2は、電池正極活物質液として用いられ得る硫酸酸性の5価のバナジウム含有液について報告している。
非特許文献1は、硫酸酸性の5価のバナジウム含有液について、バナジウム濃度が2.0Mを超えるとバナジウムの析出が生じやすくなることを明らかにしている。
また、析出を生じた5価のバナジウム含有液に更に硫酸を添加し、加熱することによって一時的にこの沈殿を再溶解できるとしている。しかし、このようにして得られた電池正極活物質液は、サイクリックボルタングラムにおいて可逆性の低下が見られることから充放電における電圧効率の点で好ましくないとされている。この原因として、活物質液の著しい流動性の低下があり、非特許文献1は、このような高濃度の活物質系は、結果として実用性がないと結論付けている。
非特許文献2も、サイクリックボルタングラムに基づいて非特許文献1と同様の知見を報告している。
このように、硫酸酸性バナジウム化合物を含有する従来型の電池正極活物質液では、特にバナジウムを高い濃度で用いる場合において、十分な電極反応性と流動性を維持して、安定かつエネルギー効率のよい充放電を行なうことが困難であった。
一方、非特許文献3は、電池負極活物質液として用いられ得る2価、3価のバナジウム含有液について報告している。
非特許文献3は、電池負極活物質液中においてバナジウムが如何なる錯形態として存在するかを推定するために、クロノポテンシオメトリーにより、液中の2価、3価のバナジウムのそれぞれについて拡散係数を求め、実測した粘度から化学種のストークス半径を算出している。そして、算出されたストークス半径が、従来から2価、3価のバナジウムの化学種と考えられてきたアコ錯体、具体的にはV2+(HO)あるいはV3+(HO)のストークス半径と同程度であると主張している。
また、非特許文献3は、「実用的なバナジウム濃度」として1.6Mの溶液を調製している。本発明者による試験結果においても、従来の電池負極活物質液において、バナジウムの析出を防止して、安定に充放電を継続できる濃度は1.5M〜1.7M程度までであることが確かめられており、非特許文献3が記載する上記濃度は、従来の観点では妥当な値といえる。
硫酸酸性バナジウム化合物液を含有する従来型の電池負極活物質液もまた、特にバナジウムを高い濃度で用いる場合において、十分な電極反応性と流動性を維持することが困難であり、安定かつエネルギー効率のよい充放電を行ない得る電池にはならなかった。
以上、非特許文献1〜3を参照して従来のバナジウム濃度の高濃度化の試みについて説明した。なお、特許文献として、2.0Mを超えるバナジウム濃度を記載するものも多く見受けられるが、非特許文献を参照して上述したように、このような高濃度系ではバナジウムの析出を防止することが困難であり、十分な電極反応性及び流動性に劣る。この点については、実際に試験を行うことにより確認することができる。すでに実用化して稼動しているバナジウム系レドックスフロー型二次電池は、何れもバナジウム濃度として1.5〜1.7M程度である。
これに対して、本発明者の研究により、サイクリックボルタングラム、プロトン核磁気共鳴スペクトルあるいはラマン分光スペクトルにおいて特定の測定結果を示す電池活物質液が、バナジウム活物質を安定に維持し、高い電極反応性を有することが見出された。
上述した「特定の測定結果」は、何れも、電池活物質液中において、バナジウム錯体の活性種が存在することを示唆し、これは、本発明におけるサイクリックボルタングラムの酸化還元波のピークの複数化によって確認できる。即ち、非特許文献3が記載するようなアコ錯体からなる単一化学種を含む従来の電池負極活物質液とは異なり、複数化学種を共存させることによって、特にバナジウムを高濃度とする場合においても、十分な電極反応性及び流動性を維持することができ、安定かつエネルギー効率のよい充放電を可能にすることができる。この効果は、電池負極活物質液だけでなく、電池正極活物質液にも共通して発揮されることが確認された。
以上の結果として、バナジウム濃度2.0M以上の高い活物質濃度の液を有効に活用することができるようになり、レドックス電池の出力密度とエネルギー密度とを改善することが可能になった。
そこで本発明の課題は、特定のバナジウム濃度や硫酸水素根等の形になっている硫黄濃度に限定されることなく、特にバナジウムを高濃度とする場合においても、液中の錯体が沈殿型のバナジウム化合物に移行しにくく、自由な充放電操作下において十分な電極反応性及び流動性を維持し、安定かつエネルギー効率のよい充放電が可能になる電池負極活物質液及び電池正極活物質液並びにこれらの調製方法を提供することにある。
また本発明の他の課題は、以下の記載によって明らかとなる。
上記課題は、以下の各発明によって解決される。
(請求項1)
硫酸酸性バナジウム化合物を含有する液からなる電池負極活物質液であって、
2価及び3価のバナジウムを含有し、
X線回折分析における002回折ピークの半値幅が2.5°以下である炭素電極を用い、該電極及び該電池負極活物質液を静止させて、標準水素電極電位基準で−0.1Vよりも卑側の電位から貴側に向けて電位を掃引する電位掃引法によって観察される2価のバナジウムの酸化波が複数検出されることを特徴とする電池負極活物質液。
(請求項2)
硫酸酸性バナジウム化合物液からなる電池負極活物質液であって、
2価及び3価のバナジウムを含有し、
該電池負極活物質液のプロトン核磁気共鳴スペクトルにおける共鳴吸収ピークの化学シフト値が、0.1M〜10Mの硫酸水溶液の化学シフト値の1.5倍以上であることを特徴とする電池負極活物質液。
(請求項3)
硫酸酸性バナジウム化合物液からなる電池負極活物質液であって、
2価及び3価のバナジウムを含有し、
該電池負極活物質液のラマン分光スペクトルにおけるラマンシフト980cm−1、1040cm−1近傍の独立した波高h980、h1040が、h980>h1040の関係を満たすことを特徴とする電池負極活物質液。
(請求項4)
全バナジウム濃度が2.0Mを超えることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の電池負極活物質液。
(請求項5)
全バナジウム濃度が2.0Mを超える硫酸酸性バナジウム化合物を含有する液からなる電池負極活物質液を調製する際に、硫酸バナジル水溶液から、請求項4記載の電池負極活物質液を調製することを特徴とする電池負極活物質液の調製方法。
(請求項6)
硫酸酸性バナジウム化合物を含有する液からなる電池正極活物質液であって、
4価及び5価のバナジウムを含有し、
X線回折分析における002回折ピークの半値幅が2.5°以下である炭素電極を用い、該電極及び該電池正極活物質液を静止させて、標準水素電極電位基準で+0.9Vよりも貴側の電位から卑側に向けて電位を掃引する電位掃引法によって観察される4価のバナジウムの還元波が複数検出されることを特徴とする電池正極活物質液。
(請求項7)
硫酸酸性バナジウム化合物液からなる電池正極活物質液であって、
4価及び5価のバナジウムを含有し、
該電池正極活物質液のプロトン核磁気共鳴スペクトルにおける共鳴吸収ピークの化学シフト値が、0.1M〜10.0Mの硫酸水溶液の化学シフト値より大きいことを特徴とする電池正極活物質液。
(請求項8)
硫酸酸性バナジウム化合物液からなる電池正極活物質液であって、
4価及び5価のバナジウムを含有し、
該電池正極活物質液のラマン分光スペクトルにおけるラマンシフト980cm−1、1040cm−1近傍の独立した波高h980、h1040が、h980>h1040の関係を満たすことを特徴とする電池正極活物質液。
(請求項9)
全バナジウム濃度が2.0Mを超えることを特徴とする請求項6〜8の何れかに記載の電池正極活物質液。
(請求項10)
全バナジウム濃度が2.0Mを超える硫酸酸性バナジウム化合物液からなる電池正極活物質液を調製する際に、硫酸バナジル水溶液から、請求項9記載の電池正極活物質液を調製することを特徴とする電池正極活物質液の調製方法。
本発明によれば、特定のバナジウム濃度や硫酸水素根等の形になっている硫黄濃度に限定されることなく、特にバナジウムを高濃度とする場合においても、液中の錯体が沈殿型のバナジウム化合物に移行しにくく、自由な充放電操作下において十分な電極反応性及び流動性を維持し、安定かつエネルギー効率のよい充放電が可能になる電池負極活物質液及び電池正極活物質液及びこれらの調製方法を提供することができる。
また、本発明によって改善された活物質液は、狭い範囲の全バナジウム濃度とHSO、HSO 、SO 2−等の形態で存在する全硫黄濃度によらず、バナジウム錯体が広い濃度範囲で電極反応活性であり、かつ析出沈殿物を形成しない結果として、高い充放電効率とエネルギー密度が得られ、従来よりも更に改善されたレドックス電池を提供することができる。
(a)は電池負極活物質液のサイクリックボルタングラムの一例を示す図であり、(b)は電池正極活物質液のサイクリックボルタングラムの一例を示す図 (a)は硫酸水溶液のプロトン核磁気共鳴スペクトルの一例を示す図であり、(b)及び(c)は電池負極活物質液のプロトン核磁気共鳴スペクトルの一例を示す図 電池負極活物質液のラマン分光スペクトルの一例を示す図 (a)は硫酸水溶液のプロトン核磁気共鳴スペクトルの一例を示す図であり、(b)は電池正極活物質液のプロトン核磁気共鳴スペクトルの一例を示す図 サイクリックボルタングラムの他の例を示す図 サイクリックボルタングラムの他の例を示す図 サイクリックボルタングラムの他の例を示す図 比較例に係る電池負極活物質液のサイクリックボルタングラムの一例を示す図
以下に、本発明を実施するための形態について詳しく説明する。
<目次>
本発明の第1発明は電池負極活物質液であり、本発明の第2発明は電池正極活物質液である。これら電池負極活物質液及び電池正極活物質液は、液中に電池活物質としてバナジウム化合物を含有し、従来の活物質液に見られる、結晶が析出して成長沈殿するとともに、電極反応の可逆性が低下して充放電電圧効率を下げてゆく化学種とは別に、電極反応活性で結晶成長しにくい化学種を多く共存させている。以下に説明する各態様では、かかる化学種の共存状態を、サイクリックボルタングラム、プロトン核磁気共鳴スペクトルあるいはラマン分光スペクトルによって具体的に特定する。
<第1発明:電池負極活物質液>
(第1態様:CV)
まず、電池負極活物質液の第1態様について説明する。
電池負極活物質液は、硫酸酸性バナジウム化合物液からなる電池負極活物質液であって、2価及び3価のバナジウムを含有する。
第1態様において、電池負極活物質液は、電位掃引法によって観察される2価のバナジウムの酸化波が複数検出されることを一つの特徴とする。
かかる電位掃引法の条件は、X線回折分析における002回折ピークの半値幅が2.5°以下である炭素電極を用い、該電極及び該電池活物質液を静止させて、標準水素電極電位基準で−0.1V、好ましくは−0.3Vよりも卑側の電位から貴側に向けて電位を掃引することである。電極の性状によっては活物質の吸脱着によって、単一の錯体組成であっても複数の波が観察される場合もあるが、炭素電極表面の条件として、上述の特性を有するものに限定することによって、複数ピークを複合する錯体を含有する活物質液と特定できる。
電位掃引法としては、サイクリックボルタングラム(以下、CV測定ともいう)を好ましく用いることができる。CV測定を用いる場合は、電位窓の下限を標準水素電極電位基準で−0.1Vよりも卑側の電位に設定する。サイクリックボルタングラムにおける貴側の上限は、2価のバナジウムの酸化波を複数検出可能な範囲に適宜設定すればよい。こうして、電池負極活物質液に浸漬させた作用極である炭素電極の電極電位を貴側に向けて掃引する過程において、2価のバナジウムの酸化に起因する電流の変化として複数の酸化波を検出することができる。これについて、図1を参照して説明する。
(電池負極活物質液のCV図)
図1(a)は電池負極活物質液の三電極法のCV測定により得られたサイクリックボルタングラム(以下、CV図ともいう)の一例を示している。
図示のCV図において、横軸は電極電位(V vs Ag/AgCl)であり、縦軸は電流(mA)である。図示の例では、参照極として銀/塩化銀電極を用い、電位窓を銀/塩化銀電極基準で−0.5V〜+0.25Vの範囲(標準水素電極電位基準で約−0.3V〜+0.45Vの範囲)に設定している。
CV測定では、電位窓の範囲内で、作用極の電極電位を卑側から貴側へ経時的に変化(掃引)した後、貴側から卑側へ経時的に変化(掃引)するサイクルを繰り返しながら、該作用極における電極反応に基づく電流の変化を経時的に測定する。作用極の電極電位を卑側から貴側へ掃引する過程で検出される酸化電流としての酸化波は、負極液に対して観察される(図1(a)中、上に凸)。
この例では、作用極の電極電位を卑側から貴側へ掃引する過程で、2価のバナジウムの電極酸化反応(V2+→V3++e)に起因する第1酸化波と第2酸化波が検出されている。このことから、2価のバナジウムを含む化学種として、第1酸化波を示す第1化学種と、第2酸化波を示す第2化学種とが存在することがわかる。ここでは、第1酸化波は、銀/塩化銀電極基準で約−0.3V(標準水素電極電位基準で約−0.1V)の電極電位で検出されている。また、第2酸化波は、銀/塩化銀電極基準で約−0.14V(標準水素電極電位基準で約+0.06V)の電極電位で検出されている。
従来、安定とされる1.5M程度のバナジウム濃度の活物質溶液中においては、2価及び3価のバナジウムは、測定されたストークス半径などに基づいて、水6分子が配位したアコ錯体として存在するとされてきた。この場合、電位掃引法を用いても、該アコ錯体を構成するバナジウムに起因する1つの酸化波しか検出されない。このような活物質溶液は、特にバナジウムを高濃度とする場合において、液中の活物質が多核錯体を含む、電極反応性及び安定性の低下した化学種となる傾向にあり、これがバナジウムの高濃度化の妨げになっていた。
これに対して、本態様の電池負極活物質液は、2価のバナジウムの酸化波が複数検出されるものであり、特に第1酸化波は十分に卑側で観察される。この卑側の酸化波によって高い出力を得ることが可能になっている。また、このような活物質溶液は、沈殿を生成してゆく多核性の錯体となりにくいため、安定かつエネルギー効率のよい充放電が可能になる効果を奏する。
図1(a)の例において、第1酸化波は、物質移動性(拡散性)及び電極表面における電荷移動過程の反応に優れた化学種によるもの、第2酸化波は、従来の活物質液に見られる化学種の電極反応によるものであると電極電位から言うことができる。本発明における活物質液は、第1波と観察される化学種を含有することによって電池反応性(電極反応性)を向上させると共に、第1波に由来する化学種は、多核化、結晶成長という性質に乏しく、結果として、従来型の化学種濃度も低下しているため、反応性、安定性共に優れた液となっている。そして、このような液を調製或いは維持するためには、該活物質液に対して、十分に卑側にもってゆく操作などを行うことが有効である。この結果、物質放電時における電池の出力(1セルあたりの出力電圧)は、負極活物質液中の負極活物質の酸化電位と、正極活物質液中の正極活物質の還元電位との電位差に対応する。このとき、負極活物質として含まれる第1化学種の酸化電位が卑側であることによって、前記電位差が増大し、電池の出力が増大する効果が得られる。
上述した第1酸化波は、作用極として、X線回折分析における002回折ピークの半値幅が2.5°以下である炭素電極を用いることで明瞭に検出できる。
また、酸化波の検出感度を向上するために、サイクリックボルタングラムの微分曲線を用いて検出を行なうことも好ましい。
図1(a)に示したCV図は、ある液組成における一例であり、負極活物質液の組成、酸濃度等によって、複数の酸化波の各々の大きさ(高さ)や検出電位は図1(a)に示したものとは異なる値になり得る。
また、本態様では、2価のバナジウムの酸化波が2つ検出される場合について示したが、2価のバナジウムの酸化波が3つ以上のピークをもって検出される場合もある。
(第2態様:NMR)
次に、電池負極活物質液の第2態様について説明する。
第2態様に係る電池負極活物質液は、液中にバナジウムを含む化学種(錯体)を複数種共存させる点で第1態様と共通する。第2態様では、この共存状態を、プロトン核磁気共鳴スペクトル(以下、H−NMRスペクトルともいう)によって特定する。
第2態様に係る電池負極活物質液は、該電池負極活物質液のH−NMRスペクトルにおける共鳴吸収ピークの半値幅が著しく大きくなるとともに、ピークの化学シフト値が、0.1M〜10.0Mの硫酸水溶液の化学シフト値の1.5倍以上であることを一つの特徴とする。
H−NMRスペクトル測定では、基準物質としてテトラメチルシラン(TMS)を用い、所定の共鳴周波数で、電池負極活物質液の共鳴吸収ピークの化学シフト値δを測定する。一方で、同じく基準物質としてテトラメチルシラン(TMS)を用い、所定の共鳴周波数で、硫酸水溶液の共鳴吸収ピークの化学シフト値δを測定する。このとき、これら化学シフト値が、δ≧1.5×δを満たすことである。これら化学シフト値の比は共鳴周波数に依存するものではないため、H−NMRスペクトル測定に用いる上述した所定の共鳴周波数は適宜設定できるが、例えば200kHz程度であることが好ましい。
図2にH−NMRスペクトルの一例を示す。図中、(a)は硫酸水溶液のスペクトルであり、(b)及び(c)は電池負極活物質液のスペクトルである。
図示の例において、(b)に示す電池負極活物質液の共鳴吸収ピークの化学シフト値δ(47ppm)は、硫酸水溶液の共鳴吸収ピークの化学シフト値δ(12ppm)の3.9倍に相当するから、上述した化学シフト値の条件(1.5倍以上)を満たしている。
また、(c)に示す電池負極活物質液の共鳴吸収ピークの化学シフト値δ(53ppm)も、硫酸水溶液の共鳴吸収ピークの化学シフト値δ(12ppm)の4.4倍に相当するから、上述した化学シフト値の条件(1.5倍以上)を満たしている。
上述した化学シフト値の条件を満たす場合は、硫酸水溶液との対比で、電池負極活物質液の化学シフト値が低磁場側へシフトしていることから、主に導電性に寄与するプロトンの電子密度が低くなっている。つまり、硫酸酸性下においてもプロトンを遊離し易い化学種(硫酸水素イオン等)がバナジウム錯体に強くとり込まれた状態にあると推定される。このとき、バナジウムは単純なアコ錯体だけでなく、他の化学種として、バナジウムに硫酸水素イオンが一部配意した錯体等が形成され、第1態様と同様の状態が形成されている。
これにより、第2態様に係る電池負極活物質液は、全バナジウム濃度や全硫黄濃度によらず、特に全バナジウムが高濃度の場合においても、CVにおける放電方向の電位掃引で複数のピークを観察する活物質液に対応して、活性な電極反応性及び流動性を維持し、安定かつエネルギー効率のよい充放電が可能になる効果を奏する。
(第3態様:ラマン)
次に、電池負極活物質液の第3態様について説明する。
第3態様に係る電池負極活物質液も、液中にバナジウムを含む化学種(錯体)を複数種共存させる点で第1態様及び第2態様と共通する。第3態様では、この共存状態を、ラマン分光スペクトルによって特定する。
第3態様に係る電池負極活物質液は、該電池負極活物質液のラマン分光スペクトルにおけるラマンシフト980cm−1、1040cm−1近傍の独立した波高h980、h1040が、h980>h1040の関係を満たすことを一つの特徴とする。
図3にラマン分光スペクトルの一例を示す。
ラマンシフト980cm−1近傍に検出されるバンドは液中に遊離した状態で存在する硫酸のバンドであり、ラマシフト1040cm−1近傍に検出されるバンドはバナジウムに配位した硫酸水素イオンのバンドであると考えられる。
従って、ラマンシフト980cm−1、1040cm−1近傍の独立した波高h980、h1040が、h980>h1040の関係を満たす場合は、バナジウムのアコ錯体と共に、他の化学種として、バナジウムに硫酸水素イオンが配位した錯体等が形成され、第1態様や第2態様と同様の状態が形成されている。
これにより、第3態様に係る電池負極活物質液は、全バナジウム濃度や全硫黄濃度によらず、特に全バナジウムが高濃度の場合においても、活性な電極反応性及び流動性を維持し、安定かつエネルギー効率のよい充放電が可能になる効果を奏する。
<第2発明:電池正極活物質液>
次に、第2発明である電池正極活物質液について説明する。電池正極活物質液は、液中にバナジウムを含む複合化学種(錯体)が共存する点で上述した電池負極活物質液と共通する。
電池正極活物質液は、硫酸酸性バナジウム化合物液からなり、4価及び5価のバナジウムを含有する。そして、負極活物質液同様、CVにおける放電方向(卑側)の電位掃引によって複数の還元波が観察される。
図1(b)は電池正極活物質液の三電極法のCV測定により得られたCV図の一例を示している。
図示のCV図において、横軸は電極電位(V vs Ag/AgCl)であり、縦軸は電流(mA)である。図示の例では、参照極として銀/塩化銀電極を用い、電位窓を銀/塩化銀電極基準で−0.6V〜+1.2Vの範囲(標準水素電極電位基準で約−0.4V〜+1.4Vの範囲)に設定している。
この例では、作用極の電極電位を貴側から卑側へ掃引する過程で、5価のバナジウムの電極還元反応(V5+→V4++e)に起因する第1還元波、第2還元波及び第3還元波が検出されている。このことから、5価のバナジウムを含む化学種として、各還元波に対応する化学種が共存することがわかる。ここでは、第1還元波は、銀/塩化銀電極基準で約+0.83V(標準水素電極電位基準で約+1.03V)の電極電位で検出されている。また、第2還元波は、銀/塩化銀電極基準で約+0.7V(標準水素電極電位基準で約+0.9V)の電極電位で検出されている。更にまた、第3還元波は、銀/塩化銀電極基準で約+0.5V(標準水素電極電位基準で約+0.7V)の電極電位で検出されている。第1還元波は、バナジウム4価が5価に酸化される際の酸化波に対する酸化還元電位差が最も小さく、当該バナジウム化学種の可逆性が高いものと評価できる。
このように、本態様の電池正極活物質液は、上述した電池負極活物質液と同様に、5価のバナジウムの還元波が複数検出されるものであり、特に第1還元波は十分に貴側で観察される。この貴側の還元波によって高い出力を得ることが可能になっている。また、このような活物質溶液は、沈殿を生成してゆく多核性の錯体となりにくいため、安定かつエネルギー効率のよい充放電が可能になる効果を奏する。
第1還元波は、上述した電池負極活物質液と同様に、作用極として、X線回折分析における002回折ピークの半値幅が2.5°以下である炭素電極を用いることで明瞭に検出できる。また、還元波の検出感度を向上するために、サイクリックボルタングラムの微分曲線を用いて検出を行なうことも好ましい。
図1(b)に示したCV図は、ある液組成における一例であり、正極活物質液の組成、酸濃度等によって、複数の還元波の各々の大きさ(高さ)や検出電位は図1(b)に示したものとは異なる値になり得る。
また、本態様では、5価のバナジウムの還元波が3つ検出される場合について示したが、5価のバナジウムの還元波が2つ又は4つ以上のピークをもって検出される場合もある。
(第4態様:NMR)
第4態様に係る電池正極活物質液は、該電池正極活物質液のH−NMRスペクトルにおける共鳴吸収ピークの半値幅が著しく大きくなるとともに、ピークの化学シフト値が、0.1M〜10.0Mの硫酸水溶液の化学シフト値より大きいことを一つの特徴とする。
図4にH−NMRスペクトルの一例を示す。図中、(a)は硫酸水溶液のスペクトルであり、(b)は電池正極活物質液のスペクトルである。
図示の例において、電池正極活物質液の共鳴吸収ピークの化学シフト値δ(13ppm)は、硫酸水溶液の共鳴吸収ピークの化学シフト値δ(12ppm)より大きい。
電池負極活物質液の場合と異なり、4価及び5価のバナジウムを含有する電池正極活物質液では、複数化学種の共存が化学シフトに大きく反映され難い。そのため、図示の例のように、電池負極活物質液の場合(1.5倍)のような大きな化学シフトが示されない場合であっても、少なくとも硫酸水溶液の化学シフト値より大きくなっていればよい。
これにより、第4態様に係る電池正極活物質液は、全バナジウム濃度や硫酸濃度によらず、特に全バナジウムが高濃度の場合においても、活性な電極反応性及び流動性を維持し、安定かつエネルギー効率のよい充放電が可能になる効果を奏する。
(第5態様:ラマン)
第5態様に係る電池正極活物質液は、該電池正極活物質液のラマン分光スペクトルにおけるラマンシフト980cm−1、1040cm−1近傍の独立した波高h980、h1040が、h980>h1040の関係を満たすことを一つの特徴とする。
電池負極活物質液の場合と同様の傾向になるため図示は省略するが、電池正極活物質液においても、ラマンシフト980cm−1近傍に検出されるバンドは液中に遊離した状態で存在する硫酸のバンドであり、ラマシフト1040cm−1近傍に検出されるバンドは、高波数で強い結合性を示し、バナジウムに配位した硫酸水素イオンのバンドであると考えられる。
従って、ラマンシフト980cm−1、1040cm−1近傍の独立した波高h980、h1040が、h980>h1040の関係を満たす場合は、バナジウムのアコ錯体と共に、他の化学種として、バナジウムに硫酸水素イオンが配位した錯体等が形成され、電池負極活物質液の場合と同様の状態が形成されている。
これにより、第5態様に係る電池正極活物質液は、全バナジウム濃度や硫酸濃度によらず、特に全バナジウムが高濃度の場合においても、活性な電極反応性及び流動性を維持し、安定かつエネルギー効率のよい充放電が可能になる効果を奏する。
<その他>
(バナジウム濃度)
以上に説明した電池負極活物質液及び電池正極活物質液において、液中の全バナジウム濃度は格別限定されないが、本発明の効果を顕著に奏する観点で、2.0Mを超えることが好ましい。これらの活物質液は、全バナジウム濃度が2.0Mを超える高濃度であっても、活性な電極反応性及び流動性を好適に維持することができる。これにより、全バナジウム濃度を高く維持できることによるレドックス電池の高出力密度及び高エネルギー密度化が可能になる。
(調製方法)
以上に説明した電池負極活物質液及び電池正極活物質液を調製する方法は格別限定されないが、例えば、硫酸バナジル(VOSO)水溶液から調製することが好ましい。これにより、特に全バナジウム濃度が2.0Mを超える電池負極活物質液及び電池正極活物質液であっても好適に調製できる。例えば、硫酸バナジル水溶液を電解還元することによって、2価及び3価のバナジウムを含む電池負極活物質液を調製することができる。また、例えば、硫酸バナジル水溶液を電解酸化することによって、4価及び5価のバナジウムを含む電池正極活物質液を調製することができる。
(用途)
電池負極活物質液は、2価及び3価のバナジウムを含有しており、例えばバナジウムレドックスフロー電池の正極活物質液として特に好適に用いることができる。
電池正極活物質液は、4価及び5価のバナジウムを含有しており、例えばバナジウムレドックスフロー電池の正極活物質液として特に好適に用いることができる。
バナジウムレドックスフロー電池において、本発明の電池負極活物質液と電池正極活物質液を組み合わせて用いることは特に好ましいことである。
(モニタリング)
また、電池において安定な充放電をより確実に継続する観点で、上述したCV図、H−NMRスペクトル及びラマン分光スペクトルの条件のうち1以上の条件に基づいて、充電時、放電時あるいは休止時における負極活物質液及び又は正極活物質液のモニタリングを行なうことも好ましい。
以下に、本発明の実施例について説明するが、本発明はかかる実施例により限定されない。
1.電池負極活物質液の調製
(実施例1)
2.4MのVOSO及び5.4MのHSOを含む水溶液を、20℃において電流密度100mA/cmを維持する低電流電解還元によって、2価及び3価のバナジウムを含む電池負極活物質液を得た。
<CV測定>
得られた電池負極活物質液について下記条件でCV測定を行ったところ、図1に示したCV図が得られた。得られたCV図において、2価のバナジウムの酸化波として、第1酸化波が約−0.3V(標準水素電極電位基準で約−0.1V)に、第2酸化波が約−0.14V(標準水素電極電位基準で約+0.06V)にそれぞれ検出された。
CV測定の条件
・作用極:グラファイト電極(0.5mmφ×10mm(液深)、X線002回折ピークの半値幅2.6°)
・参照極:Ag/AgCl
・電位窓:−0.5V〜+0.25V(vs Ag/AgCl)
・電位掃引速度:50秒/V
・温度:22℃
・状態:静止電極、静止活物質液
H−NMRスペクトル測定>
得られた電池負極活物質液について共鳴周波数200kHzでH−NMRスペクトル測定を行ったところ、図2(b)に示したH−NMRスペクトルが得られた。電池負極活物質液の共鳴吸収ピークの化学シフト値δ(47ppm)は、硫酸水溶液の共鳴吸収ピークの化学シフト値δ(12ppm)の3.9倍に相当するから、上述した化学シフト値の条件(1.5倍以上)を満たしている。
<ラマン分光スペクトル測定>
得られた電池負極活物質液についてラマン分光スペクトル測定を行ったところ、図3に示したラマン分光スペクトルが得られた。ラマンシフト980cm−1、1040cm−1近傍の独立した波高h980、h1040は、h980>h1040の関係を満たしている。
(実施例2)
3.2MのVOSO及び2.0MのHSOを含む水溶液を電解還元することによって、2価及び3価のバナジウムを含む電池負極活物質液を得た。
<CV測定>
得られた電池負極活物質液について下記条件でCV測定を行ったところ、図5に示したCV図が得られた。得られたCV図において、2価のバナジウムの酸化波として、第1酸化波が約−0.43V(標準水素電極電位基準で約−0.23V)に、第2酸化波が約+0.11V(標準水素電極電位基準で約+0.31V)にそれぞれ検出された。
CV測定の条件
・作用極:グラファイト電極(0.5mmφ×10mm(液深)、X線002回折ピークの半値幅2.6°)
・参照極:Ag/AgCl
・電位窓:−0.6V〜+0.5V(vs Ag/AgCl)
・電位掃引速度:50秒/V
・温度:22℃
・状態:静止電極、静止活物質液
H−NMRスペクトル測定>
得られた電池負極活物質液について共鳴周波数200kHzでH−NMRスペクトル測定を行ったところ、図2(c)に示したH−NMRスペクトルが得られた。電池負極活物質液の共鳴吸収ピークの化学シフト値δ(53ppm)も、硫酸水溶液の共鳴吸収ピークの化学シフト値δ(12ppm)の4.4倍に相当するから、上述した化学シフト値の条件(1.5倍以上)を満たしている。
(実施例3)
3.0MのVOSO及び2.0MのHSOを含む水溶液を電解還元することによって、2価及び3価のバナジウムを含む電池負極活物質液を得た。
<CV測定>
得られた電池負極活物質液について下記条件でCV測定を行ったところ、図6に示したCV図が得られた。図6では、CV図における2価のバナジウムの酸化波を明瞭に確認するために、卑側から貴側に電位掃引する際の酸化波について微分曲線(微分波高:図中、波線で示した)も併せて示した。得られたCV図において、2価のバナジウムの酸化波として、第1酸化波が約−0.22V(標準水素電極電位基準で約−0.02V)に、第2酸化波が約−0.1V(標準水素電極電位基準で約+0.1V)にそれぞれ検出された。
CV測定の条件
・作用極:グラファイト電極(0.5mmφ×10mm(液深)、X線002回折ピークの半値幅2.6°)
・参照極:Ag/AgCl
・電位窓:−0.6V〜+0.5V(vs Ag/AgCl)
・電位掃引速度:50秒/V
・温度:21℃
・状態:静止電極、静止活物質液
(実施例4)
3.0MのVOSO及び2.0MのHSOを含む水溶液を電解還元することによって、2価及び3価のバナジウムを含む電池負極活物質液を得た。
<CV測定>
得られた電池負極活物質液について下記条件でCV測定を行ったところ、図7に示したCV図が得られた。得られたCV図においては、2価のバナジウムの第1酸化波として、吸着波ではない酸化波が検出された。得られたCV図において、2価のバナジウムの酸化波として、第1酸化波が約−0.4V(標準水素電極電位基準で約−0.2V)に、第2酸化波が約−0.18V(標準水素電極電位基準で約+0.02V)にそれぞれ検出された。
CV測定の条件
・作用極:グラファイト電極(0.5mmφ×10mm(液深)、X線002回折ピークの半値幅2.6°)
・参照極:Ag/AgCl
・電位窓:−0.8V〜+0.5V(vs Ag/AgCl)
・電位掃引速度:100秒/V
・温度:9℃
・状態:静止電極、静止活物質液
(比較例1)
2.0MのVOSO及び1.8MのHSOを含む水溶液を電解還元することによって、2価及び3価のバナジウムを含む電池負極活物質液を得た。
<CV測定>
得られた電池負極活物質液について下記条件でCV測定を行ったところ、図8に示したCV図が得られた。得られたCV図において、2価のバナジウムの酸化波として、酸化波が1つのみ、約−0.4V(標準水素電極電位基準で約−0.2V)に検出された。
CV測定の条件
・作用極:グラファイト電極(0.5mmφ×10mm(液深)、X線002回折ピークの半値幅2.6°)
・参照極:Ag/AgCl
・電位窓:−0.8V〜+1.4V(vs Ag/AgCl)
・電位掃引速度:50秒/V
・温度:21℃
・状態:静止電極、静止活物質液
2.評価方法
(1)安定性の評価
実施例及び比較例で得られた電池負極活物質液の安定性について下記評価基準で評価した。
[評価基準]
○:調製後、小型単電池試験において完全充電状態で48時間以上経っても析出沈殿物がない
×:調製後、小型単電池試験において完全充電状態で48時間経過までに析出沈殿物が見られた
(2)レドックス電池におけるセル抵抗の評価
実施例及び比較例で得られた電池負極活物質液をバナジウムレドックスフロー電池の負極に4.5ml/minで供給して充放電を行ない、セル抵抗(Ωcm)を測定した。セル抵抗の値が小さいほど、溶解性及び流動性に優れると評価できる。
以上の評価結果を表1に示す。
Figure 2018198109
3.電池正極活物質液
(実施例5)
3.2MのVOSO及び3.0MのHSOを含む水溶液を電解酸化することによって、4価及び5価のバナジウムを含む電池正極活物質液を得た。
H−NMRスペクトル測定>
得られた電池正極活物質液について共鳴周波数200kHzでH−NMRスペクトル測定を行ったところ、図4(b)に示したH−NMRスペクトルが得られた。電池正極活物質液の共鳴吸収ピークの化学シフト値δ(13ppm)は、硫酸水溶液の共鳴吸収ピークの化学シフト値δ(12ppm)より大きい。
得られた電池正極活物質液は、実施例1〜4で得られた電池負極活物質液と同様に、一般に沈殿が生成し易い完全充電状態下においても十分な電極反応性及び流動性を維持し、安定かつエネルギー効率のよい充放電が可能になる効果を奏することが確認された。

Claims (10)

  1. 硫酸酸性バナジウム化合物を含有する液からなる電池負極活物質液であって、
    2価及び3価のバナジウムを含有し、
    X線回折分析における002回折ピークの半値幅が2.5°以下である炭素電極を用い、該電極及び該電池負極活物質液を静止させて、標準水素電極電位基準で−0.1Vよりも卑側の電位から貴側に向けて電位を掃引する電位掃引法によって観察される2価のバナジウムの酸化波が複数検出されることを特徴とする電池負極活物質液。
  2. 硫酸酸性バナジウム化合物液からなる電池負極活物質液であって、
    2価及び3価のバナジウムを含有し、
    該電池負極活物質液のプロトン核磁気共鳴スペクトルにおける共鳴吸収ピークの化学シフト値が、0.1M〜10Mの硫酸水溶液の化学シフト値の1.5倍以上であることを特徴とする電池負極活物質液。
  3. 硫酸酸性バナジウム化合物液からなる電池負極活物質液であって、
    2価及び3価のバナジウムを含有し、
    該電池負極活物質液のラマン分光スペクトルにおけるラマンシフト980cm−1、1040cm−1近傍の独立した波高h980、h1040が、h980>h1040の関係を満たすことを特徴とする電池負極活物質液。
  4. 全バナジウム濃度が2.0Mを超えることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の電池負極活物質液。
  5. 全バナジウム濃度が2.0Mを超える硫酸酸性バナジウム化合物を含有する液からなる電池負極活物質液を調製する際に、硫酸バナジル水溶液から、請求項4記載の電池負極活物質液を調製することを特徴とする電池負極活物質液の調製方法。
  6. 硫酸酸性バナジウム化合物を含有する液からなる電池正極活物質液であって、
    4価及び5価のバナジウムを含有し、
    X線回折分析における002回折ピークの半値幅が2.5°以下である炭素電極を用い、該電極及び該電池正極活物質液を静止させて、標準水素電極電位基準で+0.9Vよりも貴側の電位から卑側に向けて電位を掃引する電位掃引法によって観察される4価のバナジウムの還元波が複数検出されることを特徴とする電池正極活物質液。
  7. 硫酸酸性バナジウム化合物液からなる電池正極活物質液であって、
    4価及び5価のバナジウムを含有し、
    該電池正極活物質液のプロトン核磁気共鳴スペクトルにおける共鳴吸収ピークの化学シフト値が、0.1M〜10Mの硫酸水溶液の化学シフト値より大きいことを特徴とする電池正極活物質液。
  8. 硫酸酸性バナジウム化合物液からなる電池正極活物質液であって、
    4価及び5価のバナジウムを含有し、
    該電池正極活物質液のラマン分光スペクトルにおけるラマンシフト980cm−1、1040cm−1近傍の独立した波高h980、h1040が、h980>h1040の関係を満たすことを特徴とする電池正極活物質液。
  9. 全バナジウム濃度が2.0Mを超えることを特徴とする請求項6〜8の何れかに記載の電池正極活物質液。
  10. 全バナジウム濃度が2.0Mを超える硫酸酸性バナジウム化合物液からなる電池正極活物質液を調製する際に、硫酸バナジル水溶液から、請求項9記載の電池正極活物質液を調製することを特徴とする電池正極活物質液の調製方法。
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