JP6204069B2 - 電解液及びレドックスフロー電池 - Google Patents
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Description
〔1〕
水と、バナジウムイオンと、繰り返し単位にスルホン酸基及び/又はホスホン酸基を有する高分子と、
を含む、電解液。
〔2〕
前記高分子が、パーフルオロカーボンスルホン酸ポリマー、ポリビニルスルホン酸、及
びポリスチレンスルホン酸からなる群より選択される少なくとも1種を含む、前項〔1〕
に記載の電解液。
〔3〕
前記バナジウムイオンのモル濃度が、2.0mol/Lを超える、前項〔1〕又は〔2
〕に記載の電解液。
〔4〕
前記高分子のスルホン酸基及び/又はホスホン酸基のアニオン当量濃度が、前記バナジ
ウムイオンのモル濃度の0.0001倍以上1倍以下である、前項〔1〕〜〔3〕のいず
れか一項に記載の電解液。
〔5〕
前記高分子の他に、アニオン性物質を少なくとも1種類含む、前項〔1〕〜〔4〕のい
ずれか一項に記載の電解液。
〔6〕
前記アニオン性物質のモル濃度が、前記バナジウムイオンのモル濃度の10倍以下であ
る、前項〔5〕に記載の電解液。
〔7〕
前項〔1〕〜〔6〕のいずれか一項に記載の電解液を含む、レドックスフロー電池。
本実施の形態に係る電解液は、
水と、バナジウムイオンと、スルホン酸基及び/又はホスホン酸基を有する高分子(以下、「アニオン性高分子」ともいう。)と、を含む。
本実施の形態において用いられる水としては、特に限定されないが、例えば、蒸留水、イオン交換水を好適に用いることができる。さらに、溶存酸素による酸化の可能性を回避するため、窒素ガスによるバブリングや、真空にて脱気するなどの手段を用い、溶存酸素を減少させた水を用いることが好ましい。
本実施の形態において用いられるバナジウムイオンのモル濃度は、エネルギー密度を高くする観点から、1.0mol/L以上であることが好ましく、2.0mol/Lを超えることがより好ましく、3.0mol/L以上であることがさらに好ましい。なお、バナジウムイオンのモル濃度の上限は特に限定されないが、10.0mol/L以下が好ましい。なお、本明細書において、バナジウムイオンはバナジルイオンを含む。
本実施の形態において用いられるアニオン性高分子は、スルホン酸基及び/又はホスホン酸基(以下、まとめて「アニオン性官能基」ともいう。)を有する高分子である。このなかでも、スルホン酸基を有する高分子が好ましい。上記アニオン性高分子は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
5価のバナジウムイオンはその強い酸化力により、高温では配位水を酸化する。それが反応の中間生成体となり、最終的に五酸化バナジウムの析出物を発生させる。ここでアニオンが溶液中に存在すると、アニオンの負電荷がバナジウムイオンの正電荷を打ち消す事で酸化力が弱まり、配位水の酸化が起こりにくくなるため、高温でも析出物が発生しにくくなる。同様に、アニオン性高分子が溶液中に存在しても、析出物が発生しにくくなる。
本実施の形態に係る電解液は、アニオン性高分子の他に、アニオン性物質を少なくとも1種類含有することが好ましい。アニオン性物質と、アニオン性高分子と併用することで、さらに溶液中アニオン濃度を高めることができるため、5価のバナジウムイオンの高温安定性を向上することができるという観点より、優れる傾向にある。
本実施の形態に係る電解液の調製方法としては、特に限定されないが、例えば、上記各成分を所定の温度下、撹拌することで調製することができる。
本実施の形態に係るレドックスフロー電池は、上記電解液を含む。本実施形態に係るレドックスフロー電池は、炭素電極からなる正極を含む正極セル室と、炭素電極からなる負極を含む負極セル室と、正極セル室と、負極セル室とを隔離分離させる、隔膜としての電解質膜と、を含む電解槽を有することができる。正極セル室は活物質を含む正極電解液を、負極セル室は活物質を含む負極電解液を含むものである。活物質を含む正極電解液及び負極電解液は、例えば、正極電解液タンク及び負極電解液タンクによって貯蔵され、ポンプ等によって各セル室に供給される。また、レドックスフロー電池によって生じた電流は、交直変換装置を介して、直流から交流に変換されてもよい。
アニオン性高分子の水分散液を、25℃、飽和NaCl水溶液30mlと混和し、攪拌しながら30分間放置した。次いで、飽和NaCl水溶液中のプロトンを、フェノールフタレインを指示薬として0.01N水酸化ナトリウム水溶液を用いて中和滴定した。中和後の溶液を真空乾燥して残った固形物を秤量した。中和に要した水酸化ナトリウムの物質量をM(mmol)、真空乾燥後に残った固形物の質量をW(mg)とし、下記式より当量質量EW(g/eq)を求めた。
EW=(W/M)−22
さらに、得られたEW値の逆数をとることにより、アニオン性高分子のアニオン当量(eq/g)を算出した。
そしてアニオン性高分子の水分散液1Lを真空乾燥して残った固形物を秤量して求めた固形分(g/L)とアニオン当量(Eq/g)の積をとり、アニオン当量濃度(Eq/L)を求めた。
(4価のバナジウムイオンを含む電解液の調製)
50mLポリプロピレン製容器に、酸化硫酸バナジウム6.9gと純水1.6mLとを仕込み、ウォーターバスにて50〜60℃程度に加温し、スターラーチップにて30分撹拌し、溶解させた。その後、パーフルオロカーボンスルホン酸水分散液(以下、「PFSA」ともいう。)(固形分10%)4.7mLを添加し、ウォーターバスにて50〜60℃程度に加温し、スターラーチップにて30分撹拌した。さらに硫酸1.6mLを添加し、ウォーターバスにて50〜60℃程度に加温し、スターラーチップにて30分撹拌した。以上の手順により、バナジウムイオン濃度が3mol/L、硫酸イオン濃度が6mol/Lでバナジウムイオン濃度の2倍であり、アニオン性高分子のアニオン当量濃度が0.1Eq/Lでバナジウムイオン濃度の0.033倍である4価のバナジウムイオンを含む電解液10mLを得た。
上記の手順のスケールを10倍にし、同様の作業を行うことで、4価のバナジウムイオンを含む電解液100mLを得た。それを下記の方法で電解を行い、3価のバナジウムイオンを含む電解液50mLと5価のバナジウムイオンを含む電解液50mLを得た。
電解条件に詳細に説明する。図1に電解装置の概略図を示す。電解装置は炭素電極からなる正極を含む正極セル室と、炭素電極からなる負極を含む負極セル室と、正極セル室と、負極セル室とを隔離分離させる、隔膜としての電解質膜と、を含むセル1を有する。以下、正極セル室に含まれる電解液を正極電解液、負極セル室に含まれる電解液を負極電解液とする。正極電解液及び負極電解液は、正極電解液タンク2及び負極電解液タンク3によって貯蔵され、送液チューブポンプ4等によって送液チューブ5を介して各セル室に供給される。
(4価のバナジウムイオンを含む電解液)
50mLポリプロピレン製容器内に4価のバナジウムイオンを含む電解液を10mL入れ、−5℃に保持した冷却槽内に60分間静置し、液中に青色の粉もしくは結晶状の析出物発生の有無を調べた。析出物は発生しなかった。その結果を表1に示す。
50mLポリプロピレン製容器内に5価のバナジウムイオンを含む電解液を10mL入れ、ウォーターバスにて50℃で60分間加温し、赤茶色の粉状の析出物発生の有無を調べた。析出物は発生しなかった。その結果を表1に示す。
(4価のバナジウムイオンを含む電解液の調製)
50mLポリプロピレン製容器に、酸化硫酸バナジウム6.9gと純水0.9mLとを仕込み、ウォーターバスにて50〜60℃程度に加温し、スターラーチップにて30分撹拌し、溶解させた。その後、ポリビニルスルホン酸水分散液(以下「PVS」ともいう。)(固形分10%)5.4mLを添加し、ウォーターバスにて50〜60℃程度に加温し、スターラーチップにて30分撹拌した。さらに硫酸1.6mLを添加し、ウォーターバスにて50〜60℃程度に加温し、スターラーチップにて30分撹拌した。以上の手順により、バナジウムイオン濃度が3mol/L、硫酸イオン濃度が6mol/Lでバナジウムイオン濃度の2.0倍であり、アニオン性高分子のアニオン当量濃度が0.5Eq/Lでバナジウムイオン濃度の0.17倍である、4価のバナジウムイオンを含む電解液10mLを得た。
実施例1と同様の方法により5価のバナジウムイオンを含む電解液を10mL調製した。
4価のバナジウムイオンを含む電解液及び5価のバナジウムイオンを含む電解液の析出試験を、実施例1と同様に実施した。4価のバナジウムイオンを含む電解液に析出物は発生せず、5価のバナジウムイオンを含む電解液にも析出物は発生しなかった。その結果を表1に示す。
(4価のバナジウムイオンを含む電解液の調製)
50mLポリプロピレン製容器に、酸化硫酸バナジウム6.9gと純水6.3mLとを仕込み、ウォーターバスにて50〜60℃程度に加温し、スターラーチップにて30分撹拌し、溶解させた。その後、硫酸1.6mLを添加し、ウォーターバスにて50〜60℃程度に加温し、スターラーチップにて30分撹拌した。以上の手順により、バナジウムイオン濃度が3mol/L、硫酸イオン濃度が6mol/Lでバナジウムイオン濃度の2.0倍である、4価のバナジウムイオンを含む電解液10mLを得た。
実施例1と同様の方法により5価のバナジウムイオンを含む電解液を10mL調製した。
4価のバナジウムイオンを含む電解液及び5価のバナジウムイオンを含む電解液の析出試験を、実施例1と同様に実施した。4価のバナジウムイオンを含む電解液に析出物が発生した。5価のバナジウムイオンを含む電解液には析出物は発生しなかった。その結果を表1に示す。
(4価のバナジウムイオンを含む電解液の調製)
50mLポリプロピレン製容器に、酸化硫酸バナジウム6.9gと純水7.1mLとを仕込み、ウォーターバスにて50〜60℃程度に加温し、スターラーチップにて30分撹拌し、溶解させた。その後、硫酸0.8mLを添加し、ウォーターバスにて50〜60℃程度に加温し、スターラーチップにて30分撹拌した。以上の手順により、バナジウムイオン濃度が3mol/L、硫酸イオン濃度が4.5mol/Lでバナジウムイオン濃度の1.5倍である、4価のバナジウムイオンを含む電解液10mLを得た。
実施例1と同様の方法により5価のバナジウムイオンを含む電解液を10mL調製した。
4価のバナジウムイオンを含む電解液及び5価のバナジウムイオンを含む電解液の析出試験を、実施例1と同様に実施した。4価のバナジウムイオンを含む電解液に析出物は発生しなかった。5価のバナジウムイオンを含む電解液に析出物が発生した。その結果を表1に示す。
(4価のバナジウムイオンを含む電解液の調製)
50mLポリプロピレン製容器に、酸化硫酸バナジウム6.9gと純水5.6mLとを仕込み、ウォーターバスにて50〜60℃程度に加温し、スターラーチップにて30分撹拌し、溶解させた。その後無水リン酸0.7gを添加し、ウォーターバスにて50〜60℃程度に加温し、スターラーチップにて30分撹拌した。さらに硫酸1.6mLを添加し、ウォーターバスにて50〜60℃程度に加温し、スターラーチップにて30分撹拌した。以上の手順により、バナジウムイオン濃度が3mol/L、硫酸イオン濃度が6mol/Lでバナジウムイオン濃度の2倍であり、リン酸濃度が0.5mol/Lでバナジウムイオン濃度の0.17倍である、4価のバナジウムイオンを含む電解液10mLを得た。
実施例1と同様の方法により5価のバナジウムイオンを含む電解液を10mL調製した。
4価のバナジウムイオンを含む電解液及び5価のバナジウムイオンを含む電解液の析出試験を、実施例1と同様に実施した。4価のバナジウムイオンを含む電解液に析出物が発生した。5価のバナジウムイオンを含む電解液には析出物は発生しなかった。その結果を表1に示す。
(4価のバナジウムイオンを含む電解液の調製)
50mLポリプロピレン製容器に、酸化硫酸バナジウム6.9gと純水6.0mLとを仕込み、ウォーターバスにて50〜60℃程度に加温し、スターラーチップにて30分撹拌し、溶解させた。その後メタンスルホン酸0.3mLを添加し、ウォーターバスにて50〜60℃程度に加温し、スターラーチップにて30分撹拌した。さらに硫酸1.6mLを添加し、ウォーターバスにて50〜60℃程度に加温し、スターラーチップにて30分撹拌した。以上の手順により、バナジウムイオン濃度が3mol/L、硫酸イオン濃度が6mol/Lでバナジウムイオン濃度の2倍であり、メタンスルホン酸濃度が0.5mol/Lでバナジウムイオン濃度の0.17倍である、4価のバナジウムイオンを含む電解液10mLを得た。
実施例1と同様の方法により5価のバナジウムイオンを含む電解液を10mL調製した。
4価のバナジウムイオンを含む電解液及び5価のバナジウムイオンを含む電解液の析出試験を、実施例1と同様に実施した。4価のバナジウムイオンを含む電解液に析出物が発生した。5価のバナジウムイオンを含む電解液には析出物は発生しなかった。その結果を表1に示す。
2:正極電解液タンク
3:負極電解液タンク
4:送液チューブポンプ
5:送液チューブ
Claims (7)
- 水と、バナジウムイオンと、繰り返し単位にスルホン酸基及び/又はホスホン酸基を有する高分子と、を含む、電解液。
- 前記高分子が、パーフルオロカーボンスルホン酸ポリマー、ポリビニルスルホン酸、及びポリスチレンスルホン酸からなる群より選択される少なくとも1種を含む、請求項1に記載の電解液。
- 前記バナジウムイオンのモル濃度が、2.0mol/Lを超える、請求項1又は2に記載の電解液。
- 前記高分子のスルホン酸基及び/又はホスホン酸基のアニオン当量濃度が、前記バナジウムイオンのモル濃度の0.0001倍以上1倍以下である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の電解液。
- 前記高分子の他に、アニオン性物質を少なくとも1種類含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の電解液。
- 前記アニオン性物質のモル濃度が、前記バナジウムイオンのモル濃度の10倍以下である、請求項5に記載の電解液。
- 請求項1〜6のいずれか一項に記載の電解液を含む、レドックスフロー電池。
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