JP2013225496A - アルカリ金属−硫黄系二次電池 - Google Patents

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Abstract

【課題】充電時の副反応を抑制してクーロン効率を向上させると共に、充放電の繰り返しによる放電容量の低下を抑制し、電池寿命が長く、入出力密度が向上したアルカリ金属−硫黄系二次電池を提供する。
【解決手段】硫黄系電極活物質を有する正極2又は負極と、THFやグライム等のエーテル化合物と、溶媒とを含み、前記エーテル化合物と前記アルカリ金属塩との少なくとも一部が錯体を形成している電解液と、対極4と、を備え、溶媒は、疎水性を有して錯体と完全に混合すると共に、アルカリ金属及び多硫化アルカリ金属(M:1 ≦ n ≦ 8)と化学反応しないフッ素系溶媒(但し、FCHC−O−CFCFHを除く)、イオン液体、及び炭化水素の群から選択される1種又は2種以上で表されるアルカリ金属−硫黄系二次電池である。
【選択図】図1

Description

本発明は、リチウム−硫黄電池等の正極又は負極に硫黄を用いた二次電池に関する。
近年、携帯電話端末の普及や、環境問題に対応した電気自動車やハイブリッド電気自動車の研究開発に伴い、高容量の二次電池が要望されている。このような二次電池としては、既にリチウムイオン二次電池が広く普及しているが、車載用に安全性を確保するため、電解液として難燃性のグライム類を用いる技術が提案されている(例えば、非特許文献1)。又、リチウム二次電池の電解液として、グライムに対するLi塩の混合比をモル換算で0.70〜1.25に調製したものを用い、これらの一部に錯体を形成させて電気化学的安定性を向上させた技術が提案されている(例えば、特許文献1)。
一方、リチウム二次電池よりさらに高容量の二次電池として、リチウム−硫黄電池が着目されている(例えば、特許文献2,3)。硫黄は理論容量が1670mAh/g程度であり、リチウム電池の正極活物質であるLiCoO(約140mAh/g)より理論容量が10倍程度高いと共に、低コストで資源が豊富であるという利点がある。
リチウム−硫黄電池については、テトラグライムに対するLi塩(LiCFSO)の混合比を、モル換算で約0.12〜0.25(LiCFSOが0.5〜1mol/L)に調製した電解液を用いる技術(例えば、非特許文献2,3)、及び本発明者らによる、グライムに対するアルカリ金属塩(LiTFSA等)の混合比を、モル換算で0.50以上に調製した電解液を用いる技術(特許文献4)等が開示されている。
特開2010−73489号公報 特表2008−527662号公報 特開2005−79096号公報 特開2012−109223号公報
数永ら、「グライム−LiTFSI溶融錯体を用いたリチウム二次電池の検討」、電池討論会講演要旨集、Vol.47、p496-497、2006年 Journal of Power Sources, 183, p441-445, 2008 Journal of the Electrochemical Society, 150(6), A796-799, 2003
しかしながら、本発明者が検討したところ、リチウム−硫黄電池において、テトラグライムとLi塩とを電解液として用いた場合、充放電時に副反応が生じてクーロン効率(放電容量/充電容量)が低下すると共に、充放電の繰り返しによって放電容量が大幅に低下し、電池寿命が短いことが判明した。この副反応は、充放電時に生成するリチウムポリスルフィド(Li2Sn; 1 ≦ n ≦ 8) の電解液への溶出であると考えられる。又、リチウム−硫黄電池の入出力密度の向上も課題である。
従って、本発明の目的は、充放電時の副反応を抑制してクーロン効率を向上させると共に、充放電の繰り返しによる放電容量の低下を抑制し、電池寿命が長く、入出力密度が向上したアルカリ金属−硫黄系二次電池を提供することにある。
本発明者らは、特定比のエーテル化合物及びアルカリ金属塩、並びに疎水性を有し、エーテル化合物とアルカリ金属塩が形成する錯体と完全に混合すると共に、該アルカリ金属及び多硫化アルカリ金属(M:1 ≦ n ≦ 8)と化学反応しない溶媒を含む電解質を用いることにより上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
即ち、本発明は、単体硫黄、金属硫化物、金属多硫化物、及び有機硫黄化合物からなる群から選択される少なくとも一つを含む硫黄系電極活物質を含有する正極又は負極と、下記式
(式中、R及びRは、それぞれ独立して、炭素数1〜9のフッ素置換されていてもよいアルキル基、ハロゲン原子で置換されていてもよいフェニル基、及びハロゲン原子で置換されていてもよいシクロヘキシル基から成る群から選択され、但しこれらは共に環を形成してもよく、Rは、それぞれ独立して、H又はCHを表し、xは0〜10を表す。)で表されるエーテル化合物と、アルカリ金属塩と、溶媒とを含み、該エーテル化合物と該アルカリ金属塩の少なくとも一部とが錯体を形成し、該エーテル化合物のエーテル酸素を[O]としたとき、[O]/該アルカリ金属塩(モル比)が、2〜10である電解液と、
該正極又は負極の対極であって、該アルカリ金属、該アルカリ金属を含む合金、炭素、又はアルカリ金属イオンを吸蔵脱離する活物質を有する対極と、
を備え、
該溶媒が、疎水性を有して該錯体と完全に混合すると共に、該アルカリ金属及び多硫化アルカリ金属(M:1 ≦ n ≦ 8)と化学反応しないフッ素系溶媒(但し、FCHC−O−CFCFHを除く)、イオン液体、及びトルエンから成る群から選択される1種又は2種以上であるアルカリ金属−硫黄系二次電池である。
本発明によれば、充放電時の副反応を抑制してクーロン効率を向上させると共に、充放電の繰り返しによる放電容量の低下を抑制し、電池寿命が長く、入出力密度が向上したアルカリ金属−硫黄系二次電池を得ることができる。
実施例で用いたリチウム−硫黄電池の構成例を示す断面図である。 トリグライムとアルカリ金属塩(LiTFSA)を含む電解液の熱重量測定の結果を示す図である。 テトラグライムとアルカリ金属塩(LiTFSA)を含む電解液の熱重量測定の結果を示す図である。 G4を用いた電解液を有する二次電池のクーロン効率の充放電サイクル依存性、及び10サイクル目のクーロン効率と混合比との関係を示す図である。 G4を用いた電解液を有する二次電池の放電容量維持率の充放電サイクル依存性、及び10サイクル目の放電容量維持率と混合比との関係を示す図である。 G3を用いた電解液を有する二次電池のクーロン効率の充放電サイクル依存性、及び10サイクル目のクーロン効率と混合比との関係を示す図である。 G3を用いた電解液を有する二次電池の放電容量維持率の充放電サイクル依存性、及び10サイクル目の放電容量維持率と混合比との関係を示す図である。 G3を用い、電解液中の溶媒の混合比を変えた二次電池の充電レート特性を示す図である。 G3を用い、電解液中の溶媒の混合比を変えた二次電池の放電レート特性を示す図である。 G3を用い、電解液中の溶媒の混合比を変えた二次電池のクーロン効率の充放電サイクル依存性を示す図である。 G3を用い、電解液中の溶媒の混合比を変えた二次電池の充放電容量の充放電サイクル依存性を示す図である。 G3を用い、電解液中の溶媒の混合比を変えた二次電池の放電容量維持率の充放電サイクル依存性を示す図である。
以下、本発明の実施形態について説明する。本発明に係るアルカリ金属−硫黄系二次電池は、硫黄系電極活物質を有する正極又は負極と、下記のエーテル化合物とアルカリ金属塩とを含む電解液と、この正極又は負極の対極とを備える。
なお、本発明に係るアルカリ金属−硫黄系二次電池としては、正極が硫黄系電極活物質を有する電池であるリチウム−硫黄電池、ナトリウム−硫黄電池;負極が硫黄系電極活物質を有する電池である硫黄−LiCoO2電池、硫黄−LiMn2O4電池が例示されるがこれらに限られない。
本発明に係るアルカリ金属−硫黄系二次電池は、例えば、上記した正極又は負極と対極とをセパレータを介して離間して配置し、セパレータ内に電解液を含ませてセルを構成し、このセルを複数個積層又は巻回してケースに収容した構造になっている。正極又は負極と、対極との集電体は、それぞれケース外部に引き出され、タブ(端子)に電気的に接続される。なお、電解液をゲル電解質としてもよい。
アルカリ金属−硫黄系二次電池は、従来公知の方法で製造することができる。
<硫黄系電極活物質を有する正極又は負極>
正極又は負極は、単体硫黄、金属硫化物、金属多硫化物、及び有機硫黄化合物からなる群から選択される少なくとも一つを含む硫黄系電極活物質を有する。硫黄系金属硫化物としては、リチウム多硫化物;Li2S(1≦n≦8)が挙げられ、硫黄系金属多硫化物としては、MS (M=Ni, Co, Cu, Fe, Mo, Ti、1≦n≦4) が挙げられる。又、有機硫黄化合物としては、有機ジスルフィド化合物、カーボンスルフィド化合物が挙げられる。
上記した正極又は負極は、上記した硫黄系電極活物質と結着剤と導電剤とを含んでもよい。そして、これら電極材料のスラリー(ペースト)を、導電性の担体(集電体)に塗布して乾燥することにより、電極材料を担体に担持させて正極又は負極を製造することができる。集電体としては、アルミニウム、ニッケル、銅、ステンレス鋼などの導電性の金属を、箔、メッシュ、エキスパンドグリッド(エキスパンドメタル)、パンチドメタルなどに形成したものが挙げられる。また、導電性を有する樹脂又は導電性フィラーを含有させた樹脂を集電体として使用してもよい。集電体の厚さは、例えば5〜30μmであるが、この範囲に限定されない。
上記した電極材料(硫黄系電極活物質と他の成分との合計量、集電体を除く)のうち、硫黄系電極活物質の含有量は、好ましくは50〜98質量%であり、より好ましくは80〜98質量%である。活物質の含有量が前記範囲であれば、エネルギー密度を高くすることができるため好適である。
電極材料の厚さ(塗布層の片面の厚さ)は、好ましくは、10〜500μmであり、より好ましくは20〜300μmであり、さらに好ましくは20〜150μmである。
結着剤としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルニトリル(PEN)、ポリイミド(PI)、ポリアミド(PA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメチルアクリレート(PMA)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアクリル酸(PAA)、ポリアクリル酸リチウム(PAALi)、エチレンオキシド若しくは一置換エポキサイドの開環重合物などのポリアルキレンオキサイド、又はこれらの混合物が挙げられる。
導電剤は、導電性を向上させるために配合される添加物であり、黒鉛、ケッチェンブラック、逆オパール炭素、アセチレンブラックなどのカーボン粉末や、気相成長炭素繊維(VGCF)、カーボンナノチューブ(CNT)などの種々の炭素繊維などが挙げられる。又、電極材料が支持塩(下記電解液に含まれる成分)を含んでもよい。
<対極>
正極が上記した硫黄系電極活物質を有する場合、その対極となる負極としては、リチウム、ナトリウム、リチウム合金、ナトリウム合金、リチウム/ 不活性硫黄の複合物からなる群から選択される1又は2以上の負極活物質を含む。負極に含まれる負極活物質は、アルカリ金属イオンを吸蔵脱離するよう作用する。負極活物質としては、リチウム、ナトリウム、炭素、ケイ素、アルミニウム、スズ、アンチモン及びマグネシウムからなる群から選択される少なくとも一種が好ましい。より具体的には、チタン酸リチウム、リチウム金属、ナトリウム金属、リチウムアルミ合金、ナトリウムアルミ合金、リチウムスズ合金、ナトリウムスズ合金、リチウムケイ素合金、ナトリウムケイ素合金、リチウムアンチモン合金、ナトリウムアンチモン合金等の金属材料、天然黒鉛、人造黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、グラファイト、活性炭、カーボンファイバー、コークス、ソフトカーボン、ハードカーボンなどの結晶性炭素材や非結晶性炭素材等の炭素材料といった従来公知の負極材料を用いることができる。このうち、容量、入出力特性に優れた電池を構成できることから、炭素材料もしくはリチウム、リチウム遷移金属複合酸化物を用いるのが望ましい。場合によっては、2種以上の負極活物質が併用されてもよい。
負極が上記した硫黄系電極活物質を有する場合、その対極となる正極としては、アルカリ金属イオンを吸蔵脱離する正極活物質を含むものを用いることができる。正極活物質としては、リチウム遷移金属複合酸化物が好ましく、例えば、LiMnなどのLi−Mn系複合酸化物やLiNiOなどのLi−Ni系複合酸化物が挙げられる。より具体的には、LiMn、LiCoO、LiNiO、LiFePO、LiMnPO、LiCo0.5Ni0.5、LiNi0.7Co0.2Mn0.1が好ましく挙げられる。またリチウム以外にも、アルカリ金属イオンを電気化学的に挿入、脱離する物質であれば、制限なく用いることができ、例えば、ナトリウムなどが挙げられる。2種以上の正極活物質が併用されてもよい。
対極も、上記した活物質と結着剤と導電剤とを含んでもよい。そして、これら電極材料を、導電性の担体(集電体)に担持して対極を製造することができる。集電体としては上記と同様のものを使用できる。
なお、負極が上記した硫黄系電極活物質を含有する場合も、電解液としては、下記のものを用いることができる。
正極と負極の間にはセパレータが配置されている。セパレータとしては、例えば、後述する電解液を吸収保持するガラス繊維製セパレータ、ポリマーからなる多孔性シート及び不織布を挙げることができる。多孔性シートは、例えば、微多孔質のポリマーで構成される。このような多孔性シートを構成するポリマーとしては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)などのポリオレフィン;PP/PE/PPの3層構造をした積層体、ポリイミド、アラミドが挙げられる。特にポリオレフィン系微多孔質セパレータ及びガラス繊維製セパレータは、有機溶媒に対して化学的に安定であるという性質があり、電解液との反応性を低く抑えることができることから好ましい。多孔性シートからなるセパレータの厚みは限定されないが、車両のモータ駆動用二次電池の用途においては、単層又は多層で全体の厚み4〜60μmであることが好ましい。また、多孔性シートからなるセパレータの微細孔径は、最大で10μm以下(通常、10〜100nm程度)、空孔率は20〜80%であることが好ましい。
不織布としては、綿、レーヨン、アセテート、ナイロン(登録商標)、ポリエステル;PP、PEなどのポリオレフィン;ポリイミド、アラミドなど従来公知のものを、単独又は混合して用いる。不織布セパレータの空孔率は50〜90%であることが好ましい。さらに、不織布セパレータの厚さは、好ましくは5〜200μmであり、特に好ましくは10〜100μmである。厚さが5μm未満では電解質の保持性が悪化し、200μmを超える場合には抵抗が増大する場合がある。
<電解液>
本願の電解液は、エーテル化合物、アルカリ金属塩、及び溶媒を含む。
このエーテル化合物は下式で表される。
式中、R及びRは、それぞれ独立して、炭素数1〜9のフッ素置換されていてもよいアルキル基、ハロゲン原子で置換されていてもよいフェニル基、及びハロゲン原子で置換されていてもよいシクロヘキシル基から成る群から選択される。
上記式中のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基等が挙げられる。これらのアルキル基は、任意の位置がフッ素で置換されていてもよい。アルキル基の炭素数が9を超えると、エーテル化合物の極性が弱くなるため、アルカリ金属塩の溶解性が低下する傾向がある。そのため、アルキル基の炭素数は少ない方が好ましく、好ましくはメチル基及びエチル基であり、最も好ましくはメチル基である。
ハロゲン原子で置換されていてもよいフェニル基としては、特に制限はないが、2−クロロフェニル基、3−クロロフェニル基、4−クロロフェニル基、2,4−ジクロロフェニル基、2−ブロモフェニル基、3−ブロモフェニル基、4−ブロモフェニル基、2,4−ジブロモフェニル基、2−ヨードフェニル基、3−ヨードフェニル基、4−ヨードフェニル基、2,4−ヨードフェニル基等が挙げられる。
ハロゲン原子で置換されていてもよいシクロヘキシル基としては、特に制限はないが、2−クロロシクロヘキシル基、3−クロロシクロヘキシル基、4−クロロシクロヘキシル基、2,4−ジクロロシクロヘキシル基、2−ブロモシクロヘキシル基、3−ブロモシクロヘキシル基、4−ブロモシクロヘキシル基、2,4−ジブロモシクロヘキシル基、2−ヨードシクロヘキシル基、3−ヨードシクロヘキシル基、4−ヨードシクロヘキシル基、2,4−ジヨードシクロヘキシル基等が挙げられる。
は、H又はCHを表し、xが2以上の場合には、それぞれ互いに独立する。
xは、0〜10を表し、エチレンオキシド単位の繰り返し数を表わす。xは好ましくは1〜6、より好ましくは2〜5、最も好ましくは3又は4である。
このエーテル化合物は、例えば、テトラヒドロフラン(THF)、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン若しくはグライム又はその誘導体である。
上記一般式(化1)で表されるエーテル化合物は共に環を形成してもよく、この環状化合物としては、xが0の場合には、テトラヒドロフラン(THF)やその誘導体である2−メチルテトラヒドロフランが挙げられ、xが1の場合には、1,3−ジオキソランや1,4−ジオキサンが挙げられる。
グライムは、上記一般式(化1)(但し、RはHを表し、xは1以上を表し、直鎖化合物である。)で表され、モノグライム(G1、x=1)、ジグライム(G2、x=2)、トリグライム(G3、x=3)及びテトラグライム(G4、x=4)等が挙げられる。モノグライム(G1)としては、メチルモノグライム、エチルモノグライム等が挙げられ、ジグライム(G2)としては、エチリジグライム、ブチルジグライム等が挙げられる。
このエーテル化合物として、xが1〜10であるグライムを使用すると、電解液の熱安定性、イオン伝導性、電気化学的安定性をより向上でき、高電圧に耐え得る電解液となる。
電解液に用いるエーテル化合物は、一種が単独で使用されても、二種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
エーテル化合物の種類によっても電解液の酸化電位は変化する。そのため、二次電池に適用することを考慮すると、酸化電位が3.5〜5.3V vs Li/Li+になるように混合比等を調整することが好ましい。酸化電位はより好ましくは4.0〜5.3Vvs Li/Li+である。
本発明のエーテル化合物としては、トリグライム(G3)及びテトラグライム(G4)が好ましい。
アルカリ金属塩はMXで表すことができ、Mはアルカリ金属、Xは対の陰イオンとなる物質である。上記アルカリ金属塩は、一種を単独で使用してもよいし、二種以上を混合物の形態で使用してもよい。
Mとしては特に制限はなく、通常の電池に支持塩や活物質として使用されているアルカリ金属がいずれも使用可能である。具体的には、Li、Na、K、Rb及びCsが挙げられる。より好ましくはLi、Na及びKであり、汎用性の点から最も好ましくはLiである。
Xとしては、特に制限はないが、Cl、Br、I、BF、PF、CFSO、ClO、CFCO、AsF、SbF、AlCl、N(CFSO、N(CFCFSO、PF(C、N(FSO、N(FSO)(CFSO)、N(CFCFSO、N(C)、N(C)、N(CN)、N(CFSO)(CFCO)、RFBF(但し、RF=n-C2m+1、m=1〜4の自然数、nはノルマル)及びRBF(但し、R=n−C2p+1、p=1〜5の自然数、nはノルマル)からなる群から選択される少なくとも一種であると好ましい。エーテル化合物に対する溶解性や、錯構造の形成しやすさの点から、より好ましくはN(CFSO、N(CFCFSO、及びPFである。
ここで、前記エーテル化合物の、エーテル酸素を[O]としたとき、[O]/前記アルカリ金属塩(モル比)は、好ましくは2〜10、より好ましくは2〜6、さらに好ましくは3〜5である。
上記のエーテル化合物とアルカリ金属塩との少なくとも一部が錯体を形成していることは、これらを混合した電解液の熱重量測定で判定することができる。つまり、錯形成しているエーテル化合物は、錯形成していないエーテル化合物に比べて揮発しにくい。このため、エーテル化合物のみの熱重量測定による重量減少をベースとし、温度による重量減少がこのベースより少ない電解液は、エーテル化合物とアルカリ金属塩との少なくとも一部が錯体を形成しているとみなす。
図2、図3は、それぞれエーテル化合物としてトリグライム(G3)及びテトラグライム(G4)(上記化学式1においてRがメチル基、xがそれぞれ3及び4)を用い、アルカリ金属塩として後述するLiTFSA(LiN(CFSO)を用いた電解液の熱重量測定の結果(温度上昇と重量減少の関係)のグラフを示す。なお、各グライムとLiTFSAの混合比(モル換算)を変えた電解液を調製し、電解液の温度を室温から550℃まで、10℃min-1の昇温速度で上昇させて熱重量測定を行った。又、測定装置として、示唆熱熱重量同時測定装置(セイコーインスツル社製のTG/DTA 6200)を用いた。
なお、図2のLiTFSA/G3=1は、グライムに対するLiTFSAの混合比(モル換算)が1であることを示す。又、図2のG3の示す曲線は、トリグライムのみからなる電解液の熱重量測定を示す。図3も同様である。
図3のように、重量減少の過程は、以下の(1)-(3)の3段階で進行することがわかる。
(1)100〜200℃までの重量減少は、錯形成していないグライムの蒸発に由来する
(2)200〜400℃までの重量減少は、錯形成しているグライムの蒸発に由来する
(3)400℃以上での重量減少は、アルカリ金属塩(LiTFSA)の熱分解に由来する
従って、上記 (2)のプロセスが熱重量測定の結果から確認できる場合、グライムが錯形成していると考えることができる。
なお、グライムに対するLiTFSAの混合比(モル換算)が1より大きい系では、すべてのグライムが錯体を形成しているため、(1)のプロセスがなく、200℃以上から重量減少が始まることがわかる。
本願で用いる溶媒は、疎水性を有して前記錯体と完全に混合すると共に、前記アルカリ金属及び多硫化アルカリ金属:M(Mはアルカリ金属カチオン、1≦n≦8)と化学反応しないフッ素系溶媒(但し、FCHC−O−CFCFHを除く)、イオン液体、及びトルエンから成る群から選択される。
このようなフッ素系溶媒としては、クロロフルオロカーボン(CFC)、パーフルオロカーボン(PFC)、ハイドロクロロフルオロカーボン(HCFC)、ハイドロフルオロカーボン(HFC)、ハイドロフルオロエーテル(HFE)、パーフルオロポリエーテル(PFPE)及びハイドロフルオロポリエーテル(HFPE)が挙げられ、好ましくはハイドロフルオロカーボン(HFC)及びハイドロフルオロエーテル(HFE)、より好ましくはハイドロフルオロエーテル(HFE)である。
HFCは、C(式中、aは3以上の整数、bは1以上の整数、cは1以上の整数であり、b+c=2a+2またはb+c=2aである。)で表される化合物であり、例えば、1,1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6-トリデカフルオロオクタンが挙げられる。
HFEは、R−O−R (式中、R及びRは、それぞれ独立にアルキル基または含フッ素アルキル基であり、R及びRの少なくとも一方が含フッ素アルキル基である。また、R及びRに含まれる水素原子の数の合計は1個以上であり、かつR及びRに含まれる炭素原子の数の合計は7〜10である。)で表される化合物であり、例えば、2-トリフルオロメチル-3-エトキシドデカフルオロヘキサン、1-メチル-2,2,3,4,4,4-ヘキサフルオロブチル(1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロプロピル)エーテル、1,1,2,2-テトラフルオロエチル(2,2,3,3-テトラフルオロプロピル)エーテルが挙げられる。
本発明者が検討したところ、アルカリ金属−硫黄系二次電池の電解液として、上記エーテル化合物とアルカリ金属塩にさらに上記溶媒を加えると、充電時及び放電時の入出力密度が向上することが判明した。この理由は明確ではないが、電解液が上記溶媒を含有すると、イオン伝導率が増大して電流が流れやすくなり、また電解液の粘性率が低下して硫黄-炭素複合電極内の細孔内部まで電解液が浸透しやすくなり、電極と電解液が電気化学反応できる界面が増大するためと考えられる。なお、溶媒が不燃性であると、得られた電池の安全性が向上するので好ましい。
ここで、溶媒の疎水性は、溶媒と蒸留水を体積比1:1で混合し、相分離の有無を目視で判断する。相分離が視認できれば疎水性とし、相分離がなく一様な混合溶液であれば親水性と判断する。
電池反応過程で生成する多硫化アルカリ金属:M(Mはアルカリ金属カチオン、1≦n≦8)は、親水性溶媒に溶解しやすく、硫黄正極の場合、Mが溶解することは充電時の副反応が生じることを示し、充放電の繰り返しによりクーロン効率及び放電容量が低下することとなる。そこで、溶媒が疎水性であると、充放電時に生成するMの溶出を抑制するため、高いクーロン効率を維持する。
又、錯体と溶媒の混合性は、錯体と溶媒とを体積比1:1で混合し、相分離の有無を目視で判断する。溶媒がこの錯体と混合しないと、電解液として適さない。
溶媒がアルカリ金属と化学反応するか否かは、溶媒2mLに、1 cm(縦)×1 cm(横)× 0.02cm(厚み)のアルカリ金属箔を1日浸し、目視にて、金属箔の光沢が初期より低下したか、又は溶媒の色が初期より変化した場合、反応すると判断する。溶媒がアルカリ金属と化学反応すると、電池の副反応が生じてクーロン効率の低下、放電容量維持率(電池寿命)の低下となり、不適である。
溶媒が多硫化アルカリ金属(M)と化学反応するか否かは、電池の充電に要した電気量が閾値以上か否かで判定した。例えば、アルカリ金属がLiの場合、充放電時に生成するLi2Snが溶媒と化学反応しなければ、Li2Snが充放電反応に寄与する。このため、電池の放電時に2.2 V及び 2.0 V付近で反応が観測され、充電時に2.4 V 付近で反応が観測される。一方、溶媒がLi2Snと反応すると、充電反応が生じない。従って、Liの場合充電に要した電気量が200 mA h g-1 以上であれば化学反応しないとみなした。アルカリ金属がNa,Kの場合も充電に要した電気量が200 mA h g-1 以上であれば化学反応しないとみなした。
なお、溶媒が多硫化アルカリ金属Mと化学反応すると、電池の副反応が生じてクーロン効率の低下、放電容量維持率(電池寿命)の低下をもたらし、不適である。例えば、後述する実験で示すように、カーボネート系溶媒は、Li2Snと化学反応することが知られている (文献J. Phys. Chem. C, 115, 25132, (2011))。
また、本発明の溶媒として用いられるイオン液体は、融点100℃以下のオニウム塩である。イオン液体としては、例えば、以下の式2
で示されるN-メチル-N-プロピルピロリジニウムビス(トリフルオロメタンスルフォニル)アミド([P13][TFSA]と略記)が挙げられる。
また、本発明の溶媒としての要件を満たす炭化水素はトルエンである。
本発明において、アルカリ金属塩に対する、溶媒の混合比{(溶媒)/(アルカリ金属塩)}が、モル換算で0.50〜6.0であることが好ましい。
(溶媒)/(アルカリ金属塩)で表される比がモル換算で0.50未満であると、溶媒が少なくて上述した効果が生じず、入出力密度が向上しない場合がある。一方、上記比が6.0を超えても溶媒による効果が飽和し、コストアップとなる。
本発明において、エーテル化合物に対する上記アルカリ金属塩の混合比が、モル換算で0.50以上、上記エーテル化合物中の上記アルカリ金属塩の飽和濃度で決まる値以下であることが好ましい。
上記した非特許文献2,3に記載されているように、従来、リチウム−硫黄電池において、テトラグライムに対するLi塩(LiCFSO)の混合比を、モル換算で0.25以下(LiCFSOが1mol/ L以下)に調製した電解液を用いることが知られている。ところが、本発明者が検討したところ、このようなリチウム−硫黄電池の充放電を繰り返すと、充電時に副反応が生じてクーロン効率(放電容量/充電容量)が低下すると共に、充放電の繰り返しによって放電容量が大幅に低下し、電池寿命が短いことが判明した。
図4は、グライム(G4)に対するLi塩(LiTFSA)の混合比とクーロン効率との関係を示し、図5は、グライム(G4)に対するLi塩(LiTFSA)の混合比と放電容量維持率との関係を示す。同様に、図6は、グライム(G3)に対するLi塩(LiTFSA)の混合比とクーロン効率との関係を示し、図7は、グライム(G3)に対するLi塩(LiTFSA)の混合比と放電容量維持率との関係を示す。
上記混合比が0.50以上であると、充電時の副反応が抑制されクーロン効率が95%以上に向上すると共に、充放電の繰り返しによる放電容量の低下が抑制され放電容量維持率が向上し、電池寿命が長くなる。なお、上記混合比が高いほど、クーロン効率及び放電容量維持率が向上するが、混合比が上記エーテル化合物中の上記アルカリ金属塩の飽和濃度で決まる値を超えて高くなるとアルカリ金属塩がエーテル化合物に溶解しなくなる。
以上のことより、上記混合比をモル換算で0.50以上、上記エーテル化合物中の上記アルカリ金属塩の飽和濃度で決まる値以下に規定すると好ましい。
なお、エーテル化合物中のアルカリ金属塩の飽和濃度は、30℃のエーテル化合物にアルカリ金属塩を溶解させたとき、アルカリ金属塩の固形分が目視で確認できたときの濃度とする。
エーテル化合物としてG3(トリエチレングリコールジメチルエーテル(トリグライムともいう))を用い、アルカリ金属塩をLi塩とした場合、G3中のLi塩の飽和濃度によって決まる上記混合比は、モル換算で1.67である。
エーテル化合物としてテトラグライム(G4)を用い、アルカリ金属塩をLi塩とした場合、G4中のLi塩の飽和濃度によって決まる上記混合比は、モル換算で2.00である。
電解液をゲル状のゲル電解質としてもよい。ゲル電解質は、イオン伝導性ポリマーからなるマトリックスポリマーに、電解液が注入されてなる構成を有する。この電解液として、上記の本発明の電解液を使用する。マトリックスポリマーとして用いられるイオン伝導性ポリマーとしては、例えば、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリプロピレンオキシド(PPO)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリアクリロニトリル(PAN)、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン(VDF−HEP)の共重合体、ポリ(メチルメタクリレート(PMMA)及びこれらの共重合体等が挙げられる。ポリアルキレンオキシド系高分子には、リチウム塩などの電解質塩がよく溶解しうる。
以下、実施例によって本発明を更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、特に断らない限り、%は質量%を示す。
実施例A
本発明に用いることができる溶媒の特性を規定するため、溶媒の疎水性、錯体との混合性、Liとの化学反応性、及びLi2Snとの化学反応性を評価し、表1にまとめた。
実施例1〜35、比較例1〜20
<エーテル化合物-LiTFSA-フッ素系溶媒を含む電解液での実験>
<電解液の調製>
エーテル化合物として、トリグライム(G3)(キシダ化学社製)を用いた。
又、アルカリ金属塩として、以下の式3で示すリチウムビス(トリフルオロメタンスルフォニル)アミド (LiTFSA) (森田化学工業社製)を用いた。
G3と、LiTFSAとをアルゴン雰囲気下のグローブボックス内で、それぞれ混合比(LiTFSA)/(G3)=0.5、1.0、1.5(モル換算)で混合した。さらに、この混合物に、フッ素系溶媒であるHFCFCHC−O−CFCFH(1,1,2,2-テトラフルオロエチル(2,2,3,3-テトラフルオロプロピル)エーテル)(ダイキン工業社製、「ハイドロフルオロエーテル」という。)を所定の割合で加えて電解液を調製した。なお、(溶媒)/(LiTFSA)の混合比を、それぞれ0.5、1.0、2.0、4.0に変化させた。
<リチウム−硫黄電池の作製>
単体硫黄(S)を硫黄系電極活物質とし、単体硫黄を60 wt%、導電剤としてケッチェンブラックを30 wt%、結着剤としてPVA (ポリビニルアルコール)を10 wt%の割合で混合し、正極の電極材料2a(図1)を調製した。まず、単体硫黄とケッチェンブラックを混合後、155℃で加熱することで単体硫黄とケッチェンブラックを複合化した。この混合物に対し、さらにPVAを溶解した適量のNMP (N-メチルピロリドン)を加えスラリー状に混錬した。得られたスラリーを厚さ20μmのアルミニウム箔(集電体)2bに塗布した後、80℃で12時間乾燥してNMPを蒸発させた後、プレスして正極2(図1)を得た。厚さ200μmのリチウム金属板を厚さ500μmのステンレスディスクに貼り付けて負極を作製した。
アルゴン雰囲気下のグローブボックス内で、正極2に上記電解液を適量加え、60℃で60分間、電解液を正極2に浸漬させた。正極2と負極(対極)4とを、セパレータ6(厚さ200μmの東洋濾紙社製のガラス製セパレータ(商品名GA-55))を介して積層し、さらに上記電解液を注入した後、2032型のコインセルケース20(SUS304製の厚さ3.2mm)に封入し、負極(対極)4の上にスペーサ12を載置した。スペーサ12の上にスプリング14を配置した。スプリング14の上から蓋22でコインセルケース20を封止し、図1に示す構造のリチウム−硫黄電池50を作製した。なお、コインセルケース20の側壁にはガスケット10が介装されている。
<評価>
(1)充電レート特性
上記のようにして得られた二次電池について、放電電流密度を1/12 C (12 時間率、電極活物質の理論容量をn (時間) で放電する電流値を1/n のC レートと表す)として定電流放電した後、種々の充電電流密度にて充電レート特性(充電容量)を評価した。電圧は1.5−3.3Vの範囲とし、30℃一定に保持された恒温槽中で実施した。
特に、充電電流密度を1/3 Cレート(3時間率)に設定したときの充電容量を、「1/3 Cレートの時の充電容量」とし、入力特性の指標とした。なお、1/3 Cレートの時の充電容量が大きいほど、急速充電が可能になるため、好ましい。
(2)放電レート特性
上記のようにして得られた二次電池について、充電電流密度を1/12 Cとして定電流充電した後、種々の放電電流密度にて放電レート特性(放電容量)を評価した。電圧は1.5−3.3Vの範囲とし、30℃一定に保持された恒温槽中で実施した。
特に、放電密度を1/5 Cレート(5時間率)に設定したときの放電容量を、「1/5 Cレートの時放電容量」とし、出力特性の指標とした。なお、1/5 Cレートの時放電容量が大きいほど、急速放電が可能になるため、好ましい。
(2)クーロン効率、充放電容量及び放電容量維持率
得られた充電容量と放電容量(mAh/g:gは単体硫黄の質量当り)から、充放電サイクルの各サイクルで、クーロン効率(%)=放電容量/充電容量を求めた。クーロン効率は、充電した電気量を放電でどれだけ取りだせるかを示す値であり、値が100(%)に近いほど良い。
又、放電容量維持率(%)=nサイクル目の放電容量/2サイクル目の放電容量を求めた。放電容量維持率は、充放電の繰り返しの安定性を示す値であり、値が100(%)に近いほど良い。
なお、正極(硫黄電極)は充電状態で作製されるため、充放電サイクルの第1サイクルは放電過程のみ進行し、第2サイクル目以降は充電と放電過程が進行する。したがって、充放電の順序は、第1サイクルの放電→第2サイクルの充電→第2サイクルの放電→第3サイクルの充電→第3サイクルの放電となる。充放電サイクルは20サイクル行った。なお、図11の「充放電容量」は、各充放電サイクルにおけるそれぞれ充電容量と放電容量の別に表示した。
又、10サイクル目の放電容量維持率(%) = (10サイクル目の放電容量)/(2サイクル目の放電容量)で求めた。
(3)イオン伝導率
イオン伝導率は複素インピーダンス法により測定した。測定機器としてPrinceton Applied Reseach社の型番:VMP2 を用い、周波数範囲を500 kHz から1 Hzとし、印加電圧を10 mV とした。サンプルとなる電解液をグローブボックス中で白金黒電極セル(東亜ディーケーケー社のCG-511B)に投入し、セルを密封して測定した。尚、白金黒電極セルは、測定前に予め標準KCl水溶液を用いてセル定数を算出した。測定温度は30℃とした。
また、表2,3に示すように、トリグライム(G3)に代わりに、その他のグライム(G1、G2、G4)(キシダ化学社製)又はTHF(和光純薬工業社製)を用いて、同様にして実験を行った。更に、表2,3に示すように、溶媒として、イオン液体([P13][TFSA])、炭化水素(トルエン)、プロピレンカーボネート(キシダ化学社社製)、ペンタフルオロプロピオン酸メチル(「PFPM」と略記、下式のエステル系溶媒)(東京化成工業社製)を用いて、同様にして実験を行った。
得られた結果を表2〜3に示す。
各実施例により、クーロン効率、サイクル特性、放電容量維持率が比較例と同等か、よりやや劣るレベルであるが、実用上は問題ないことがわかる。
なお、図8〜図12に、(LiTFSA)/(G3)=1.0(モル換算)とし、溶媒の混合比を0.5、1.0、2.0、4.0に変えたときの結果を示す。図8、9に示すように、電解液にフッ素系溶媒を加えた実施例(後述の表2の実施例1〜8)の場合、フッ素系溶媒を添加しなかった比較例(後述の表2の比較例1)に比べて、電流密度が大きても充電容量及び放電容量の低下が少なく、入出力密度(取り出せる電力)が向上することがわかる。
また、溶媒としてPFPMを用いた場合、クーロン効率、サイクル特性、放電容量維持率が実施例より大幅に劣り、実用に適さない。
2 正極
4 負極(対極)
50 リチウム−硫黄電池(アルカリ金属−硫黄系二次電池)

Claims (7)

  1. 単体硫黄、金属硫化物、金属多硫化物、及び有機硫黄化合物からなる群から選択される少なくとも一つを含む硫黄系電極活物質を含有する正極又は負極と、下記式
    (式中、R及びRは、それぞれ独立して、炭素数1〜9のフッ素置換されていてもよいアルキル基、ハロゲン原子で置換されていてもよいフェニル基、及びハロゲン原子で置換されていてもよいシクロヘキシル基から成る群から選択され、但しこれらは共に環を形成してもよく、Rは、それぞれ独立して、H又はCHを表し、xは0〜10を表す。)で表されるエーテル化合物と、アルカリ金属塩と、溶媒とを含み、該エーテル化合物と該アルカリ金属塩の少なくとも一部とが錯体を形成している電解液と、
    該正極又は負極の対極であって、該アルカリ金属、該アルカリ金属を含む合金、炭素、又はアルカリ金属イオンを吸蔵脱離する活物質を有する対極と、
    を備え、
    該溶媒が、疎水性を有して該錯体と完全に混合すると共に、該アルカリ金属及び多硫化アルカリ金属(M:1 ≦ n ≦ 8)と化学反応しないフッ素系溶媒(但し、FCHC−O−CFCFHを除く)、イオン液体、及びトルエンから成る群から選択される1種又は2種以上であるアルカリ金属−硫黄系二次電池。
  2. 前記エーテル化合物が、テトラヒドロフラン(THF)、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン若しくはグライム又はその誘導体である請求項1に記載のアルカリ金属−硫黄系二次電池。
  3. 前記フッ素系溶媒がハイドロフルオロカーボン又はハイドロフルオロエーテルである請求項1又は2に記載のアルカリ金属−硫黄系二次電池。
  4. 前記アルカリ金属塩がMXで表され、ここで、Mはアルカリ金属、Xは、Cl、Br、I、BF、PF、CFSO、ClO、CFCO、AsF、SbF、AlCl、N(CFSO、N(CFCFSO、PF(C、N(FSO、N(FSO)(CFSO)、N(CFCFSO、N(C)、N(C)、N(CN)、N(CFSO)(CFCO)、RFBF(但し、RF=n-C2m+1、m=1〜4の自然数)及びRBF(但し、R=n−C2p+1、p=1〜5の自然数)からなる群から選択される少なくとも一種である請求項1〜3のいずれかに記載のアルカリ金属−硫黄系二次電池。
  5. 前記エーテル化合物のエーテル酸素を[O]としたとき、[O]/該アルカリ金属塩(モル比)が、2〜10である請求項1〜4のいずれか一項に記載のアルカリ金属−硫黄系二次電池。
  6. 前記アルカリ金属塩に対する前記溶媒の混合比(モル比)が、0.50〜6.0である請求項1〜5のいずれか一項に記載のアルカリ金属−硫黄系二次電池。
  7. 前記硫黄系電極活物質を含有する正極又は負極が、更に結着剤と導電剤とを含む請求項1〜6のいずれかに記載のアルカリ金属−硫黄系二次電池。
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