除染塗料第1塗布工程の一例を示す工程概略図である図1等の添付の図面を参照し、本発明の第1の特徴を有する除染方法およびその除染方法に使用するドライアイス打ち込みシステムの詳細を説明すると、以下のとおりである。なお、図2は、塗膜第1作成工程の一例を示す工程概略図であり、図3は、図2の3−3線端面図である。図4は、ドライアイス第1打ち込み工程および空気清浄工程、剥離領域作成工程において使用するドライアイス打ち込みシステム15の一例を示す図であり、図5は、ドライアイス打ち込みシステム15の噴射・吸引手段18の一例を示す拡大図である。図6は、ドライアイスペレットの打ち込みにおいて使用される丸ノズル21Aの一例を示す図である。
図1では、剥離型除染塗料10が放射性物質14(図3参照)の発生のおそれがある施設の床面11および内壁面12や外壁面12(所定範囲の除染対象箇所)または放射性物質14によって汚染された施設の床面11および内壁面12や外壁面12(所定範囲の除染対象箇所)に塗布される。なお、図1,2では、床面11や壁面12の一部を省略して示す。図3では、塗膜13(剥離型除染塗料10)が放射性物質14を吸着保持した状態を概念的に示す。
剥離型除染塗料10は、施設の床面11や壁面12のみならず、施設の天井面や柱、梁にも塗布することができ、さらに、施設に設置された機械や器具、家具、備品等のあらゆる設備に塗布することもできる。また、施設の平坦な面のみならず、凹凸面や複雑な起伏を有する面に塗布することもでき、さらに、平滑な面または多数の微細な孔が形成されたポーラス面に塗布することもできる。剥離型除染塗料10は、施設のみならず、あらゆる構造物に塗布することもでき、舗装道路やインターロッキング等のあらゆる敷設物に塗布することもできる。
放射性物質14の発生のおそれがある施設には、原子力関連施設や放射性物質を取り扱う医療機関がある。原子力関連施設には、原子力発電所、中間貯蔵施設、再処理工場、MOX燃料工場、高速増殖炉、高速増殖炉用燃料工場、高速増殖炉用再処理工場、高レベル放射性廃棄物最終処分施設等がある。なお、この除染方法は、放射性物質14の発生のおそれがある施設のみならず、放射性物質14によって汚染されたあらゆる箇所(たとえば、事故によって放射性物質14に汚染された地域)(所定範囲の除染対象箇所)において実施することができる。
一例として示す第1の除染方法としては、除染塗料第1塗布工程、塗膜第1作成工程、ドライアイス第1打ち込み工程、空気清浄工程、剥離領域作成工程、塗膜回収工程、除染塗料第2塗布工程、塗膜第2作成工程の各工程を実施する。除染塗料第1塗布工程では、図1に示すように、施設の床面11および壁面12に放射性物質14を吸着保持する剥離型除染塗料10を塗布する。
除染塗料10の床面11および壁面12における塗布面積に特に限定はないが、通常床面11および壁面12の全域に除染塗料10を塗布する。除染塗料10の塗布は、図1に示すように、刷毛やローラ、スプレー方式のいずれかによって行われる。除染塗料10を塗布する物には、モルタルやコンクリート等のセメント硬化物、石材、木材、金属、プラスチック等のあらゆる物が含まれる。
塗膜第1作成工程では、隔離型除染塗料10を床面11および壁面12の全域に塗布した後、塗料10を所定時間養生し、塗料10を自然乾燥させ、床面11および壁面12に所定厚みの塗膜13を作る。除染塗料10が乾燥すると、塗料10の厚み(体積)が減少し、床面11および壁面12に所定厚みの塗膜13が作られる。
なお、塗膜13の厚みは、塗料10を塗布する箇所の形状や面の状態、放射性物質14の汚染の程度等の各種条件によって適宜決定することができる。塗膜第1作成工程によって床面11および壁面12に塗膜13が作られると、図3に示すように、床面11および壁面12に存在する放射性物質14が塗膜13(剥離型除染塗料10)に吸着保持される。床面や壁面は、起伏がない平坦な面であるが、平滑面またはポーラス面のいずれかである。
床面11および壁面12に除染塗料10による塗膜13を作った後、ドライアイス第1打ち込み工程を実施する。ドライアイス第1打ち込み工程では、図4に示すドライアイス打ち込みシステム15が使用される。ドライアイス打ち込みシステム15は、ドライアイスブラスト装置16と空気吸引装置17(吸引手段)と噴射・吸引手段18とから構成されている。
ドライアイスブラスト装置16は、キャスターによって移動可能なドライアイスブラスト装置本体19と、装置本体19の噴射パイプ(図示せず)に連結されて本体19から外部に延びるブラストホース20と、ブラストホース20の先端部に着脱可能に装着された噴射ガン(図示せず)と、噴射ガンの発射口に着脱可能に連結されたノズル21(図6参照)とから形成されている。ドライアイスブラスト装置本体16には、バッテリーが内蔵されている。装置本体16は、ペレット状(粒子状)のドライアイス(ドライアイスペレット)を圧縮空気によって噴射する。
なお、ドライアイスブラスト装置16では、ドライアイスペレットの噴射量を10〜100kg/時間の範囲で調節することができ、空気の消費量を1〜15m3/分の範囲で調節することができるとともに、空気の噴射圧力を2〜20barの範囲で調節することができる。また、ドライアイスペレットの噴射速度を200〜1000m/秒の範囲で調節することができる。
空気吸引装置17は、キャスターを有する移動可能な台車22と、サイクロンセパレータ23およびバグフィルタ24と、ブロワ25(吸気装置)およびフィルタケース26と、吸引ホース27および接続ホース28とから形成されている。サイクロンセパレータ23は、台車22に搭載され、台車22の枠部材に固定手段(図示せず)を介して設置されている。サイクロンセパレータ23には、吸引ホース27が連結されている。
サイクロンセパレータ23の下方には、鉛遮蔽容器29が設置されている。鉛遮蔽容器29は、台車22に取り外し可能に積載され、サイクロンセパレータ23の下部開口に接続手段(図示せず)を介して着脱可能に接続されている。サイクロンセパレータ23は、切り屑や塵状物、紛状物等の塵埃を集塵する。サイクロンセパレータ23によって集塵された塵埃は、セパレータ23の下部開口から落下して鉛遮蔽容器29に収容される。
バグフィルタ24は、台車22に搭載され、台車22の枠部材に固定手段(図示せず)を介して設置されている。バグフィルタ24は、接続ホース28を介してサイクロンセパレータ23に連結されている。バグフィルタ24の下方には、鉛遮蔽容器30が設置されている。鉛遮蔽容器30は、台車22に取り外し可能に積載され、バグフィルタ24の下部開口に接続手段(図示せず)を介して着脱可能に接続されている。バグフィルタ24は、サイクロンセパレータ23を通過した塵埃を集塵する。バグフィルタ24によって集塵された塵埃は、バグフィルタ24の下部開口から落下して鉛遮蔽容器30に収容される。
ブロワ25は、台車22に搭載され、台車22に固定手段(図示せず)を介して設置されている。ブロワ25は、接続ホース28を介してバグフィルタ24に連結されている。ブロワ25は、吸引ホース27から空気を吸引し、吸引した空気をサイクロンセパレータ23やバグフィルタ24、フィルタケース26に流入させる。フィルタケース26は、台車22に搭載され、台車22に固定手段(図示せず)を介して設置されている。フィルタケース26は、接続ホース28を介してブロワ25に連結されている。フィルタケース26の内部には、HEPAフィルタ(図示せず)が挿脱可能に収容されている。
噴射・吸引手段18は、末広がりの円錐筒状に成型されたフード31と、吸引ホース27の吸引口32と、噴射ガンの発射口に連結されたノズル21とから形成されている。吸引ホース27の吸引口32およびノズル21は、フード31の頂部に固定手段(図示せず)を介して固定されている。なお、フード31では、丸ノズル21A(図6参照)から後記する平ノズル21B(図15参照)に交換することができ、平ノズル21Bから丸ノズル21Aに交換することができる。
ブロワ25が起動すると、図4に矢印で示すように、空気が噴射・吸引手段18の吸引ホース27に吸引される。噴射ガンの発射口に連結されたノズル21は、図6示すように、円形の噴射口33を有する円筒状に成型された丸ノズル21Aである。丸ノズル21Aの噴射口33の口径(直径)は、3〜5mmである。なお、フード31の形状は末広がりの円錐筒状に限定されず、末広がりの角錐筒状や矩形筒状等の任意の形状にすることができる。
ドライアイス第1打ち込み工程では、圧縮空気によって噴射・吸引手段18(ドライアイスブラスト装置16の丸ノズル21A)からドライアイスペレットが塗膜13の所定部位(塗膜の一点)に打ち込まれる。なお、ドライアイス第1打ち込み工程におけるドライアイスペレットの噴射量は4.5m3/分であり、ペレットの噴射圧力は0.6MPaであった。ただし、ドライアイスペレットの噴射量や噴射圧力に特に限定はなく、各条件によって噴射量や噴射圧力を任意に決定することができる。
ドライアイスペレットの打ち込み時では、ドライアイス第1打ち込み工程と同時に空気清浄工程が実施される。空気清浄工程では、空気吸引装置17が稼働し、塗膜13の上方から塗膜13に向かってドライアイスペレットが打ち込まれると同時に、打ち込み部位の周囲の空気が噴射・吸引手段18(吸引ホース27の吸引口32)によって吸引される。ドライアイスペレットの打ち込み時において吸引ホース27の吸引口32から吸引された空気は、吸引ホース27を通ってサイクロンセパレータ23(フィルタ)に流入する。空気に含まれる粉塵は、サイクロンセパレータ23によって集塵され、鉛遮蔽容器29に収容される。
サイクロンセパレータ23から流出した空気は、接続ホース28を通ってバグフィルタ24(フィルタ)に流入する。サイクロンセパレータ23に集塵されずにバグフィルタ24に達した塵埃は、バグフィルタ24によって集塵され、鉛遮蔽容器30に収容される。バグフィルタ24から流出した空気は、接続ホース28を通ってブロワ25に進入し、ブロワ25を通過してフィルタケース26に流入する。
空気がフィルタケース26に流入すると、空気がケース26に収納されたHEPAフィルタ(フィルタ)を通流し、空気に含まれる微粒子がHEPAフィルタに捕集され、塵埃や微粒子が除去された清浄な空気が空気吸引装置17の外部に排気される。なお、それら鉛遮蔽容器29,30に収容された粉塵は、所定量の塵埃が蓄積された後、他の鉛遮蔽容器に移し替えられて保管される。
図7は、ドライアイス第1打ち込み工程の一例を示す工程概略図であり、図8は、図7から続く剥離領域作成工程の一例を示す工程概略図である。図9は、膨隆した塗膜13の一例を示す斜視図であり、図10は、図9の10−10線端面図である。図11は、図8から続く剥離領域作成工程の一例を示す工程概略図であり、図12は、塗膜回収工程の一例を示す工程概略図である。なお、図8,9,11では、フード31および吸引ホース27の図示を省略し、ノズル21のみを示す。図10では、塗膜13(剥離型除染塗料10)が放射性物質14を吸着保持した状態を概念的に示す。
ドライアイス打ち込みシステム15を使用して空気を吸引しつつ、塗膜13の所定部位にドライアイスペレットを打ち込むと、その打ち込み衝撃によって、図6に示すように、塗膜13に孔34が穿孔され、その孔34を通ってドライアイスペレットが床面11や壁面12と塗膜13との間(床面11や壁面12の表面と塗膜13の裏面との間)に進入する。剥離領域作成工程では、床面11や壁面12と塗膜13との間に進入したドライアイスペレットが床面11や壁面12と塗膜13との間で固体から気体へと瞬時に昇華(気化)しつつ、体積が膨張(約800倍)してガス(CO2)となる。
塗膜13は、図8,9に示すように、床面11や壁面12から膨隆(膨張)し、風船のように膨らんで、床面11や壁面12から剥がれる。ドライアイスペレットが昇華したガスによって塗膜13が膨隆した後、ドライアイスペレットの打ち込みを中断し、所定時間が経過すると、ガスが塗膜13の孔34から外気に放出され、膨隆した塗膜13が萎み、図11に示すように、床面11や壁面12(所定範囲の除染対象箇所)に所定面積の剥離領域35が作られる。なお、1回の剥離領域作成工程によって作られる剥離領域35の面積は、0.25〜1m2の範囲にある。
床面11や壁面12に所定面積の剥離領域35を作った後、ドライアイス打ち込みシステム15を使用してドライアイス打ち込み工程と剥離領域作成工程とを繰り返し、床面11や壁面12の他の部位に複数の剥離領域35を作り、床面11や壁面12の略全域から塗膜13を剥離する。床面11や壁面12の略全域から塗膜13を剥離した後、塗膜回収工程では、作業者がたとえば床面11や壁面12から塗膜13を捲り上げ、図12に示すように、床面11や壁面12において塗膜13を丸めて床面11全域や壁面12全域から塗膜13を回収する。回収された塗膜13は、鉛遮蔽容器に収容されて保管される。
この除染方法では、塗膜第1作成工程によって作られた塗膜13の厚み寸法が0.3〜1.5mmの範囲にある。塗膜13の厚み寸法が0.3mm未満では、ドライアイスペレットが昇華したガス(CO2)によって塗膜13が容易に裂け、ガスが塗膜13の裂け目から外気に放出されていまい、床面11や壁面12から塗膜13を膨隆させることができず、床面11や壁面12に所定面積の剥離領域35を作ることができない。
塗膜13の厚み寸法が1.5mmを超過すると、塗膜13の硬度が必要以上に上昇し、打ち込んだドライアイスペレットが昇華したとしても、床面11や壁面12から塗膜13を膨隆させることができず、床面11や壁面12に所定面積の剥離領域35を作ることができない。この除染方法では、塗膜13の厚み寸法が前記範囲にあるから、打ち込んだドライアイスペレットの昇華によって床面11や壁面12から塗膜13を膨隆させることができ、床面11や壁面12に所定面積の剥離領域35を確実に作ることができる。
この除染方法では、塗膜13に打ち込むドライアイスペレットの直径が2〜5mmの範囲にある。ペレットの直径が2mm未満では、その直径のペレットを塗膜13に打ち込んだとしても、塗膜13に与える衝撃が小さく、所定厚みの塗膜13に孔34を穿孔することができず、床面11や壁面12と塗膜13との間にドライアイスペレットを進入させることができない。
ドライアイスペレットの直径が5mmを超過すると、ペレットを塗膜13に打ち込んだときの打ち込み衝撃が必要以上に大きく、塗膜13を剥離する以前に塗膜13を破壊してしまう場合がある。この除染方法では、ドライアイスペレットの直径が前記範囲にあるから、打ち込んだペレットによって塗膜13に孔34を穿孔することができ、ペレットが床面11や壁面12と塗膜13との間に進入するから、床面11や壁面13に所定面積の剥離領域35を確実に作ることができる。
塗膜回収工程が完了した後(除染が完了した後)、除染塗料第2塗布工程および塗膜第2作成工程を実施する。除染塗料第2塗布工程では、除染塗料第1塗布工程と同様に、刷毛やローラ、スプレー方式のいずれかによって施設の床面11および壁面12に剥離型除染塗料10を塗布する。塗膜第2作成工程では、除染塗料10を床面11および壁面12に塗布した後、塗料10を所定時間養生し、塗料10を自然乾燥させ、床面11および壁面12に所定厚みの塗膜13を作る。
なお、第1の除染方法では、剥離した塗膜13を回収した後、除染塗料第2塗布工程および塗膜第2作成工程によって床面11および壁面12に所定厚みの塗膜13を再度作っているが、除染塗料第2塗布工程および塗膜第2作成工程を省略し、塗膜回収工程の完了によって除染作業を終了することもできる。
第1の除染方法は、放射性物質14を吸着保持する剥離型除染塗料10を施設の床面11および壁面12(所定範囲の除染対象箇所)に塗布し、床面11や壁面12に所定厚みの塗膜13を作った後、噴射・吸引手段18(ドライアイスブラスト装置16の丸ノズル21A)から塗膜13の所定部位にドライアイスペレットを打ち込み、床面11や壁面12において塗膜13を膨隆させ、床面11や壁面12の表面から塗膜13を剥がすから、ドライアイス打ち込みシステム15におけるドライアイスペレットの打ち込み時において塗膜13(剥離型除染塗料10)に吸着保持された放射性物質14が飛散することはなく、塗膜13とともに所定範囲の施設の床面11や壁面12に存在する放射性物質14の大部分をその床面11や壁面12から確実に除去することができる。
除染方法は、床面11や壁面12から塗膜13を剥がした所定面積(0.25〜1m2)の剥離領域35が作られ、塗膜13の剥離時に床面11や壁面12から所定面積の塗膜13を一度に剥がすことができるから、塗膜13の剥離作業が容易であり、塗膜13(剥離型除染塗料10)に吸着保持された放射性物質14を床面11や壁面12から広い面積で一度に除去することができ、所定範囲の床面11や壁面12の除染を短時間に効率よく行うことができるとともに、除染に時間と手間とがかからず、低いコストで除染を行うことができる。
除染方法は、塗膜第1作成工程によって作られた塗膜13を施設の床面11や壁面12から取り除いた後、床面11や壁面12に剥離型除染塗料10を再び塗布し、その除染塗料10を乾燥させて床面11や壁面12に所定厚みの塗膜13を作るから、床面11や壁面12から塗膜13を取り除いてその床面11や壁面12の除染を行った後、その床面11や壁面12に再び除染塗料10を塗布して塗膜13を作ることで、除染した床面11や壁面12の放射性物質14による再度の汚染を塗膜によって防護することができる。
除染方法は、ドライアイスペレットの打ち込み時に空気吸引装置17(吸引手段)を利用して施設の床面11や壁面12の空気を吸引しつつ、吸引した空気に含まれる塵埃をフィルタ(サイクロンセパレータ23、バグフィルタ24、HEPAフィルタ)を利用して集塵するから、床面11や壁面12の塵埃がそれらフィルタ23,24に集塵・捕集され、床面11や壁面12における塵埃の飛散を防ぐことができ、その塵埃に放射性物質14が含まれていたとしても、塵埃による放射性物質14の二次汚染を防ぐことができる。
除染方法は、ドライアイス第1打ち込み工程において丸ノズル21Aが使用されているから、丸ノズル21Aから塗膜13の一点にドライアイスペレットが集中的に打ち込まれ、そのドライアイスペレットによって塗膜13の所定部位に容易に孔34を穿孔することができ、その孔34から床面11や壁面12と塗膜13との間にドライアイスペレットが進入し、ペレットの昇華によって床面11や壁面12において塗膜13を確実に膨隆させることができ、床面11や壁面12の表面から塗膜13を確実に剥がすことができる。
除染方法において使用するドライアイス打ち込みシステム15は、ドライアイスブラスト装置16を利用して施設の床面11や壁面12(所定範囲の除染対象箇所)にドライアイスペレットを打ち込みつつ空気吸引装置17を利用して床面11や壁面12の空気を吸引し、ペレットの昇華によって塗膜13を膨隆させて床面11や壁面12から塗膜13を剥離するから、床面11や壁面12における塵埃の飛散を防ぎつつ、塗膜13(剥離型除染塗料10)とともに所定範囲の床面11や壁面12に存在する放射性物質14の大部分を床面11や壁面12から確実に除去することができる。
ドライアイス打ち込みシステム15は、塗膜13の剥離時に床面11や壁面12から所定面積の塗膜13を一度に剥がすことができるから、塗膜13の剥離作業が容易であり、塗膜13に吸着保持された放射性物質14を床面11や壁面12から広い面積で一度に除去することができ、所定範囲の床面11や壁面12の除染を短時間に効率よく行うことができるとともに、除染に時間と手間とがかからず、低いコストで除染を行うことができる。
図13は、ドライアイス第2打ち込み工程および空気清浄工程の一例を示す工程概略図であり、図14は、塗膜第1切断工程の一例を示す工程概略図である。図15は、ドライアイスの打ち込みにおいて使用されるドライアイスブラスト装置16の平ノズル21Bの一例を示す図であり、図16は、剥離対象区画作成工程の一例を示す工程概略図である。
他の一例として示す第2の除染方法としては、除染塗料第1塗布工程、塗膜第1作成工程、ドライアイス第2打ち込み工程、空気清浄工程、塗膜第1切断工程、剥離対象区画作成工程、ドライアイス第1打ち込み工程、空気清浄工程、剥離領域作成工程、塗膜回収工程、除染塗料第2塗布工程、塗膜第2作成工程の各工程を実施する。
除染塗料第1塗布工程では、放射性物質14を吸着保持する剥離型除染塗料10を刷毛やローラ、スプレー方式のいずれかによって施設の床面11および壁面12(除染対象箇所)に塗布する(図1参照)。塗膜第1作成工程では、除染塗料10を床面11および壁面12に塗布した後、塗料10を所定時間養生し、塗料10を自然乾燥させ、床面11および壁面12に所定厚みの塗膜13を作る(図2参照)。床面11および壁面12に存在する放射性物質14は、塗膜13(剥離型除染塗料10)に吸着保持される(図3参照)。
ドライアイス第2打ち込み工程では、図4に示すドライアイス打ち込みシステム15を使用し、床面11や壁面12に作られた塗膜13に向かってドライアイスペレットを打ち込む。ドライアイス第2打ち込み工程では、図15に示すノズル21として平ノズル21Bが使用される。平ノズル21Bは、一方向へ長い噴射口33を有し、その噴射口33からドライアイスペレットを線状に噴射する。平ノズル21Bの噴射口33は、その長さが50mm、その幅が3mmである。
ドライアイス第2打ち込み工程では、塗膜第1作成工程によって床面11や壁面12に塗膜13を作った後、ドライアイス打ち込みシステム15の噴射・吸引手段18(ドライアイスブラスト装置16の平ノズル21B)を床面11の任意の方向へ移動させつつ、塗膜13にドライアイスペレットを打ち込む。
なお、ドライアイス第2打ち込み工程におけるドライアイスペレットの打ち込み時では、空気清浄工程が実施される。空気清浄工程では、空気吸引装置17が稼働し、塗膜13の上方から塗膜13に向かってドライアイスペレットが打ち込まれると同時に、打ち込み部位の周囲の空気が噴射・吸引手段18(吸引ホース27の吸引口32)によって吸引される。
塗膜第1切断工程では、ドライアイスペレットを連続して打ち込みながら、平ノズル21Bを移動させることで、塗膜13を切断する。平ノズル21Bから線状にドライアイスペレットを塗膜13に打ち込むと、ペレットの打ち込み衝撃のみならず、ペレットによる急激な局所的温度低下および熱収縮率の差により、塗膜13が低温脆弱化して開裂し、図14に示すように、塗膜13に切断部位36が形成される。
剥離対象区画作成工程では、図16に示すように、塗膜13を切断した切断部位36に囲繞された剥離対象区画37を床面11に作る。なお、図16では、剥離対象区画37が床面11に作られているが、剥離対象区画37を壁面12に作ることもできる。
剥離対象区画作成工程によって剥離対象区画37を作った後、ドライアイス第1打ち込み工程を実施する。ドライアイス第1打ち込み工程では、平ノズル21Bを丸ノズル21Aに交換した後、圧縮空気によって噴射・吸引手段18(ドライアイスブラスト装置16の丸ノズル21A)からドライアイスペレットが剥離対象区画37内の塗膜13の所定部位(塗膜の一点)に打ち込まれる(図7参照)。
ドライアイスペレットの打ち込み時では、空気清浄工程が実施される。空気清浄工程では、空気吸引装置17が稼働し、塗膜13の上方から塗膜13に向かってドライアイスペレットが打ち込まれると同時に、打ち込み部位の周囲の空気が噴射・吸引手段18(吸引ホース27の吸引口32)によって吸引される。
ドライアイス打ち込みシステム15を利用して空気を吸引しつつ、剥離対象区画37内の塗膜13の所定部位にドライアイスペレットを打ち込むと、その打ち込み衝撃によって、塗膜13に孔34が穿孔され(図8,9参照)、その孔34を通ってペレットが床面11や壁面12と塗膜13との間に進入する。
剥離領域作成工程では、ドライアイスペレットが床面11や壁面12と塗膜13との間で固体から気体へと瞬時に昇華(気化)しつつ、体積が膨張してガス(CO2)となり、床面11や壁面12から塗膜13が膨隆し、床面11や壁面12から塗膜13が剥がれる(図8,9,10参照)。所定時間が経過すると、ガスが塗膜13の孔34から外気に放出され、膨隆した塗膜13が萎み、剥離対象区画37に所定面積の剥離領域35が作られる(図11,12参照)。
床面11や壁面12の剥離対象区画37に所定面積の剥離領域35を作った後、ドライアイス打ち込みシステム15を使用し、さらに、剥離対象区画37においてドライアイス打ち込み工程と剥離領域作成工程とを繰り返し、剥離対象区画37の他の部位に複数の剥離領域35を作り、剥離対象区画37の略全域から塗膜13を剥離する。剥離対象区画37の略全域から塗膜13を剥離した後、塗膜回収工程では、作業者が剥離対象区画37から塗膜13を捲り上げ、剥離対象区画37において塗膜13を丸めて剥離対象区画37全域から塗膜13を回収する。
塗膜第1作成工程によって作られる塗膜13の厚み寸法は、第1の除染方法のそれと同一の0.3〜1.5mmの範囲にある。また、塗膜13に打ち込むドライアイスペレットの直径は、第1の除染方法のそれと同一の2〜5mmの範囲にある。塗膜回収工程が完了した後、ドライアイス第2打ち込み工程、空気清浄工程、塗膜第1切断工程、剥離対象区画作成工程、ドライアイス第1打ち込み工程、空気清浄工程、剥離領域作成工程、塗膜回収工程の各工程を繰り返し、床面11全域および壁面12全域の塗膜13を剥離、回収する。
床面11全域および壁面12全域の塗膜13を剥離・回収した後、除染塗料第2塗布工程および塗膜第2作成工程を実施し、除染塗料第1塗布工程と同様に、刷毛やローラ、スプレー方式のいずれかによって床面11や壁面12に剥離型除染塗料10を塗布し、塗料10を所定時間養生し、床面11および壁面12に所定厚みの塗膜13を作る。なお、除染塗料第2塗布工程および塗膜第2作成工程を省略し、床面11全域および壁面12全域における塗膜13の剥離・回収の完了によって除染作業を終了することもできる。
第2の除染方法は、前記第1の除染方法が有する効果に加え、以下の効果を有する。第2の除染方法は、ドライアイスブラスト装置16の平ノズル21Bからドライアイスペレットを噴射し、そのペレットによって施設の床面11や壁面12(所定範囲の除染対象箇所)に作られた塗膜13を切断することができ、床面11や壁面12に所定面積の剥離対象区画37を容易に作ることができる。
この除染方法は、床面11や壁面12に剥離対象区画37を作った後、剥離対象区画37の塗膜13の所定部位にドライアイスペレットを打ち込んで剥離対象区画37において塗膜13を膨隆させて剥離対象区画37の表面から塗膜13を剥がすことができるから、ペレットの打ち込み時において塗膜13(剥離型除染塗料10)に吸着保持された放射性物質14が飛散することはなく、塗膜13とともに剥離対象区画37に存在する放射性物質14の大部分を剥離対象区画37から確実に除去することができる。
この除染方法は、施設の床面11や壁面12に複数の剥離対象区画37を作り、剥離対象区画37毎に効率よく塗膜13を剥がすことができるから、塗膜13(剥離型除染塗料10)に吸着保持された放射性物質14を剥離対象区画37毎に所定の面積で一度に除去することができ、床面11や壁面12が広範囲であったとしても、所定範囲の床面11や壁面12の除染を短時間に効率よく行うことができるとともに、除染に時間と手間とがかからず、低いコストで除染を行うことができる。
図17は、ドライアイス第3打ち込み工程および空気清浄工程、塗膜第2切断工程の一例を示す工程概略図であり、図18は、塗膜13の剥離領域35が床面11や壁面12から分離された状態を示す図である。他の一例として示す第3の除染方法としては、除染塗料第1塗布工程、塗膜第1作成工程、ドライアイス第1打ち込み工程、空気清浄工程、剥離領域作成工程、ドライアイス第3打ち込み工程、空気清浄工程、塗膜第2切断工程、塗膜回収工程、除染塗料第2塗布工程、塗膜第2作成工程の各工程を実施する。
除染塗料第1塗布工程では、放射性物質14を吸着保持する剥離型除染塗料10を刷毛やローラ、スプレー方式のいずれかによって施設の床面11および壁面12(除染対象箇所)に塗布する(図1参照)。塗膜第1作成工程では、除染塗料10を床面11および壁面12に塗布した後、塗料10を所定時間養生し、塗料10を自然乾燥させ、床面11および壁面12に所定厚みの塗膜13を作る(図2参照)。床面11および壁面12に存在する放射性物質14は、塗膜13(剥離型除染塗料10)に吸着保持される(図3参照)。
床面11および壁面12に除染塗料10による塗膜13を作った後、ドライアイス第1打ち込み工程を実施する。ドライアイス第1打ち込み工程では、図4に示すドライアイス打ち込みシステム15を使用し、圧縮空気によって噴射・吸引手段18(ドライアイスブラスト装置16の丸ノズル21A)からドライアイスペレットが塗膜13の所定部位(塗膜の一点)に打ち込まれる(図7参照)。
ドライアイスペレットの打ち込み時では、空気清浄工程が実施される。空気清浄工程では、空気吸引装置17が稼働し、塗膜13の上方から塗膜13に向かってドライアイスペレットが打ち込まれると同時に、打ち込み部位の周囲の空気が噴射・吸引手段18(吸引ホース27の吸引口32)によって吸引される。
ドライアイス打ち込みシステム15を利用して空気を吸引しつつ、塗膜13の所定部位にドライアイスペレットを打ち込むと、その打ち込み衝撃によって、塗膜13に孔34が穿孔され(図8,9参照)、その孔34を通ってペレットが床面11や壁面12と塗膜13との間に進入する。
剥離領域作成工程では、ドライアイスペレットが床面11や壁面12と塗膜13との間で固体から気体へと瞬時に昇華(気化)しつつ、体積が膨張してガス(CO2)となり、床面11や壁面12から塗膜13が膨隆し、床面11や壁面12から塗膜13が剥がれる(図8,9,10参照)。所定時間が経過すると、ガスが塗膜13の孔34から外気に放出され、膨隆した塗膜13が萎み、所定面積の剥離領域35が作られる(図11参照)。
剥離領域作成工程によって剥離領域35を作った後、ドライアイス第3打ち込み工程を実施する。ドライアイス第3打ち込み工程では、図4に示すドライアイス打ち込みシステム15を使用し、丸ノズル21Aを平ノズル21Bに交換した後、剥離領域35の周縁部38に向かってドライアイスペレットを打ち込む。
ドライアイス第3打ち込み工程では、ドライアイス打ち込みシステム15の噴射・吸引手段18(ドライアイスブラスト装置16の平ノズル21B)を剥離領域35の周縁部38に沿って(任意の方向)移動させつつ、塗膜13にドライアイスペレットを打ち込む。なお、ドライアイス第3打ち込み工程におけるドライアイスペレットの打ち込み時では、空気清浄工程が実施される。空気清浄工程では、空気吸引装置17が稼働し、塗膜13の上方から塗膜13に向かってドライアイスペレットが打ち込まれると同時に、剥離領域35の周縁部38の空気が噴射・吸引手段18(吸引ホース27の吸引口32)によって吸引される。
塗膜第2切断工程では、ドライアイスペレットを連続して打ち込みながら、平ノズル21Bを剥離領域35の周縁部38に沿って移動させることで、塗膜13を切断する。平ノズル21Bから線状にドライアイスペレットを塗膜13に打ち込むと、ペレットの打ち込み衝撃のみならず、ペレットによる急激な局所的温度低下および熱収縮率の差により、塗膜13が低温脆弱化して開裂し、図17に示すように、剥離領域35の周縁部38に切断部位36が形成される。塗膜13を剥離領域35の周縁部38に沿って切断すると、図18に示すように、切断部位36に囲繞された剥離領域35が床面11や壁面12(塗膜13の他の部位)から分離される。
塗膜第2切断工程によって剥離領域35を床面11や壁面12から分離した後、塗膜回収工程では、作業者が剥離領域35において塗膜13を捲り上げ、塗膜13を丸めて回収する。なお、塗膜第1作成工程によって作られる塗膜13の厚み寸法は、第1の除染方法のそれと同一の0.3〜1.5mmの範囲にある。また、塗膜13に打ち込むドライアイスペレットの直径は、第1の除染方法のそれと同一の2〜5mmの範囲にある。
第3の除染方法では、ドライアイス打ち込みシステム15を使用し、ドライアイス第1打ち込み工程、空気清浄工程、剥離領域作成工程、ドライアイス第3打ち込み工程、空気清浄工程、塗膜第2切断工程、塗膜回収工程を繰り返し、床面11全域や壁面12全域から塗膜13を剥離・回収する。床面11全域や壁面12全域から塗膜13を剥離・回収した後、除染塗料第2塗布工程および塗膜第2作成工程を実施し、除染塗料第1塗布工程と同様に、刷毛やローラ、スプレー方式のいずれかによって床面11や壁面12に剥離型除染塗料10を塗布し、塗料10を所定時間養生し、床面11および壁面12に所定厚みの塗膜13を作る。なお、除染塗料第2塗布工程および塗膜第2作成工程を省略し、床面11全域および壁面12全域における塗膜13の剥離・回収の完了によって除染作業を終了することもできる。
第3の除染方法は、前記第1の除染方法が有する効果に加え、以下の効果を有する。第3の除染方法は、剥離領域作成工程によって床面11や壁面12(所定範囲の除染対象箇所)に剥離領域35が作られた後、その剥離領域35において噴射・吸飲手段18(ドライアイスブラスト装置16の平ノズル21B)を移動させつつ、剥離領域35にドライアイスペレットを打ち込み、ペレットによって剥離領域35の周縁部35(剥離領域35を含むその近傍)の塗膜13を切断することで、床面11や壁面12から剥がされた塗膜13を容易に切り取ることができ、放射性物質14を吸着保持した塗膜13(剥離型除染塗料10)を床面11や壁面12から容易に回収することができる。
この除染方法は、床面11や壁面12に剥離領域35を作った後、剥離領域35の塗膜13の所定部位にドライアイスペレットを打ち込んで塗膜13を切断し、剥離領域35の塗膜13を剥離・回収することができるから、ペレットの打ち込み時において塗膜13(剥離型除染塗料10)に吸着保持された放射性物質14が飛散することはなく、塗膜13とともに剥離領域35に存在する放射性物質14の大部分を剥離領域35から確実に除去することができる。
この除染方法は、施設の床面11や壁面12に複数の剥離領域35を作り、剥離領域35毎に効率よく塗膜13を剥離・回収することができるから、塗膜13(剥離型除染塗料10)に吸着保持された放射性物質14を剥離領域35毎に所定の面積で一度に除去することができ、床面11や壁面12が広範囲であったとしても、所定範囲の床面11や壁面12の除染を短時間に効率よく行うことができるとともに、除染に時間と手間とがかからず、低いコストで除染を行うことができる。
貫通孔穿孔工程の一例を示す工程概略図である図19等の添付の図面を参照し、本発明の第2の特徴を有する除染方法およびその除染方法に使用する除染システムの詳細を説明すると、以下のとおりである。なお、図20は、圧縮空気噴射工程および空気清浄、剥離領域作成工程において使用する除染システムの一例を示す図であり、図21は、除染システムの噴射・吸引手段の一例を示す拡大図である。図22は、圧縮空気噴射工程において使用される噴射ノズルの一例を示す図である。なお、除染塗料第1塗布工程の工程概略図は図1を援用し、塗膜第1作成工程の工程概略図は図2を援用する。
剥離型除染塗料10は、図1の除染方法と同様に、放射性物質14の発生のおそれがある施設の床面11および内壁面12や外壁面12(所定範囲の除染対象箇所)または放射性物質14によって汚染された施設の床面11および内壁面12や外壁面12(所定範囲の除染対象箇所)に塗布される。この除染方法(除染システム)は、放射性物質14の発生のおそれがある施設のみならず、放射性物質14によって汚染されたあらゆる箇所(たとえば、事故によって放射性物質14に汚染された地域)(所定範囲の除染対象箇所)において実施することができる。
除染方法は、後記する除染システムを使用し、除染塗料第1塗布工程、塗膜第1作成工程、貫通孔穿孔工程、圧縮空気噴射工程、空気清浄工程、剥離領域作成工程、塗膜回収工程、除染塗料第2塗布工程、塗膜第2作成工程の各工程を実施する。除染塗料第1塗布工程では、施設の床面11および壁面12に放射性物質14を吸着保持する剥離型除染塗料10を塗布する(図1援用)。
剥離型除染塗料10の床面11および壁面12における塗布面積に特に限定はないが、通常床面11および壁面12の全域に除染塗料10を塗布する。除染塗料10の塗布は、刷毛やローラ、スプレー方式のいずれかによって行われる。除染塗料10を塗布する物には、モルタルやコンクリート等のセメント硬化物、石材、木材、金属、プラスチック等のあらゆる物が含まれる。
塗膜第1作成工程では、隔離型除染塗料10を床面11および壁面12の全域に塗布した後、塗料10を所定時間養生し、塗料10を自然乾燥させ、床面11および壁面12に所定厚みの塗膜13を作る。除染塗料10が乾燥すると、塗料10の厚み(体積)が減少し、床面11および壁面12に所定厚みの塗膜13が作られる。
なお、塗膜13の厚みは、塗料10を塗布する箇所の形状や面の状態、放射性物質14の汚染の程度等の各種条件によって適宜決定することができる。塗膜第1作成工程によって床面11および壁面12に塗膜13が作られると、床面11や壁面12に存在する放射性物質14が塗膜13(剥離型除染塗料10)に吸着保持される(図3援用)。床面11や壁面12は、凹凸や起伏がない平坦な面であるが、平滑面またはポーラス面のいずれかである。
床面11および壁面12に除染塗料10による塗膜13を作った後、貫通孔穿孔工程を実施する。貫通孔穿孔工程では、円筒状または尖形の穿孔工具39A,39Bが使用され、塗膜13の所定の箇所に塗膜13を貫通して床面11や壁面12に達する貫通孔40を穿孔する。円筒状の穿孔工具39Aを使用する場合は、その工具39Aの先端が塗膜13に略垂直に押し当てられ、塗膜13がくり抜かれて円形の貫通孔40が作られる。尖形の穿孔工具39Bを使用する場合は、その工具39Bの先端が塗膜13に略垂直に突き刺され、塗膜13に複数の貫通孔40が作られる。
なお、除染システム41のエアーコンプレッサ42の噴射ノズル47を穿孔工具として利用してもよい。この場合は、噴射ノズル47の先端が塗膜13に略垂直に押し当てられ、塗膜13がくり抜かれて円形の貫通孔40が作られる。また、貫通孔穿孔工程では、塗膜13の所定間隔離間した位置(各貫通孔40の離間間隔:50〜100cm)に複数の貫通孔40をあらかじめ穿孔してもよい。
塗膜13に貫通孔40を穿孔した後、圧縮空気噴射工程を実施する。圧縮空気噴射工程では、図20に示す除染システム41が使用される。除染システム41は、エアーコンプレッサ42(空気噴射装置)と空気吸引装置43と噴射・吸引手段44とから構成されている。エアーコンプレッサ42は、キャスターによって移動可能なエアーコンプレッサ本体45と、コンプレッサ本体45の噴射パイプ(図示せず)に連結されて本体45から外部に延びるエアーホース46と、エアーホース46の先端部に着脱可能に装着された噴射ガン(図示せず)と、噴射ガンの発射口に着脱可能に連結された噴射ノズル47(図22参照)とから形成されている。
エアーコンプレッサ本体45には、バッテリーが内蔵されている。エアーコンプレッサ本体45は、所定の吐出ゲージ圧力の圧縮空気を噴射する。エアーコンプレッサ本体45は、吐出ゲージ圧力を0.4〜0.8MPaの範囲で調節することができ、吐出空気量を3〜6m3/minの範囲で調節することができる。
空気吸引装置43は、キャスターを有する移動可能な台車48と、サイクロンセパレータ49およびバグフィルタ50と、ブロワ51(吸気装置)およびフィルタケース52と、吸引ホース53および接続ホース54とから形成されている。サイクロンセパレータ49は、台車48に搭載され、台車48の枠部材に固定手段(図示せず)を介して設置されている。サイクロンセパレータ49には、吸引ホース53が連結されている。
サイクロンセパレータ49の下方には、鉛遮蔽容器55が設置されている。鉛遮蔽容器55は、台車48に取り外し可能に積載され、サイクロンセパレータ49の下部開口に接続手段(図示せず)を介して着脱可能に接続されている。サイクロンセパレータ49は、切り屑や塵状物、紛状物等の塵埃を集塵する。サイクロンセパレータ49によって集塵された塵埃は、セパレータ49の下部開口から落下して鉛遮蔽容器55に収容される。
バグフィルタ50は、台車48に搭載され、台車48の枠部材に固定手段(図示せず)を介して設置されている。バグフィルタ50は、接続ホース54を介してサイクロンセパレータ49に連結されている。バグフィルタ50の下方には、鉛遮蔽容器56が設置されている。鉛遮蔽容器56は、台車48に取り外し可能に積載され、バグフィルタ50の下部開口に接続手段(図示せず)を介して着脱可能に接続されている。バグフィルタ50は、サイクロンセパレータ49を通過した塵埃を集塵する。バグフィルタ50によって集塵された塵埃は、バグフィルタ50の下部開口から落下して鉛遮蔽容器56に収容される。
ブロワ51は、台車48に搭載され、台車48に固定手段(図示せず)を介して設置されている。ブロワ51は、接続ホース54を介してバグフィルタ50に連結されている。ブロワ51は、吸引ホース53から空気を吸引し、吸引した空気をサイクロンセパレータ49やバグフィルタ50、フィルタケース52に流入させる。フィルタケース52は、台車48に搭載され、台車48に固定手段(図示せず)を介して設置されている。フィルタケース52は、接続ホース54を介してブロワ51に連結されている。フィルタケース52の内部には、HEPAフィルタ(図示せず)が挿脱可能に収容されている。
噴射・吸引手段は、末広がりの円錐筒状に成型されたフード57と、吸引ホース53の吸引口58と、噴射ガンの発射口に連結された噴射ノズル47とから形成されている。吸引ホース29の吸引口34および噴射ノズル23は、フード33の頂部に固定手段(図示せず)を介して固定されている。ブロワ51が起動すると、図20に矢印で示すように、空気が噴射・吸引手段の吸引ホース53に吸引される。噴射ガンの発射口に連結された噴射ノズル47は、図22示すように、円形の噴射口59を有する円筒状に成型された丸ノズルである。噴射ノズル47の噴射口59の口径(直径)は、2〜5mmである。なお、フード57の形状は末広がりの円錐筒状に限定されず、末広がりの角錐筒状や矩形筒状等の任意の形状にすることができる。
圧縮空気噴射工程では、噴射・吸引手段(エアーコンプレッサ42の噴射ノズル47)から圧縮空気が塗膜13に形成された貫通孔40に向かって噴射される。なお、各条件に応じてエアーコンプレッサ42の吐出ゲージ圧力を0.4〜0.8MPaの範囲で調節することができ、エアーコンプレッサ42の吐出空気量を3〜6m3/minの範囲で調節することができる。
圧縮空気の噴射時では、圧縮空気噴射工程と同時に空気清浄工程が実施される。空気清浄工程では、空気吸引装置43が稼働し、塗膜13の上方から貫通孔40に向かって圧縮空気が噴射されると同時に、図21に矢印で示すように、貫通孔40の周囲(除染対象箇所)の空気が噴射・吸引手段(吸引ホース53の吸引口58)によって吸引される。圧縮空気の噴射時において吸引ホース53の吸引口58から吸引された空気は、図20に矢印で示すように、吸引ホース53を通ってサイクロンセパレータ49(フィルタ)に流入する。空気に含まれる粉塵は、サイクロンセパレータ49によって集塵され、鉛遮蔽容器55に収容される。
サイクロンセパレータ49から流出した空気は、接続ホース54を通ってバグフィルタ50(フィルタ)に流入する。サイクロンセパレータ49に集塵されずにバグフィルタ50に達した塵埃は、バグフィルタ50によって集塵され、鉛遮蔽容器56に収容される。バグフィルタ50から流出した空気は、接続ホース54を通ってブロワ51に進入し、ブロワ51を通過してフィルタケース52に流入する。
空気がフィルタケース52に流入すると、空気がケース52に収納されたHEPAフィルタ(フィルタ)を通流し、空気に含まれる微粒子がHEPAフィルタに捕集され、塵埃や微粒子が除去された清浄な空気が空気吸引装置43の外部に排気される。なお、それら鉛遮蔽容器55,56に収容された粉塵は、所定量の塵埃が蓄積された後、他の鉛遮蔽容器に移し替えられて保管される。
図23は、圧縮空気噴射工程の一例を示す工程概略図であり、図24は、図23から続く剥離領域作成工程の一例を示す工程概略図である。図25は、膨隆した塗膜13の一例を示す斜視図であり、図26は、図25の26−26線端面図である。図27は、図25から続く剥離領域作成工程の一例を示す工程概略図であり、図28は、塗膜回収工程の一例を示す工程概略図である。なお、図24,25,27では、フード57および吸引ホース53の図示を省略し、噴射ノズル47のみを示す、図26では、塗膜13(剥離型除染塗料10)が放射性物質14を吸着保持した状態を概念的に示す。
除染システム41を使用して空気を吸引しつつ、塗膜13に穿孔された貫通孔40に圧縮空気を噴射すると、圧縮空気が貫通孔40を通って床面11や壁面12と塗膜13との間(床面11や壁面12の表面と塗膜13の裏面との間)に進入する。剥離領域作成工程では、圧縮空気の空気圧が床面11や壁面12と塗膜13との間に作用し、床面11や壁面12と塗膜13との間に進入した圧縮空気の空気圧によって塗膜13が床面11や壁面12から膨隆(膨張)し、塗膜13が風船のように膨らんで床面11や壁面12から次第に剥がれる。
圧縮空気の空気圧によって塗膜13が膨隆した後、圧縮空気の噴射を中断し、所定時間が経過すると、空気が塗膜13の貫通孔40から外気に放出され、膨隆した塗膜13が萎み、図27に示すように、床面11や壁面12(所定範囲の除染対象箇所)に所定面積の剥離領域60が作られる。なお、1回の剥離領域作成工程によって作られる剥離領域60の面積は、0.25〜1m2の範囲にある。
床面11や壁面12に所定面積の剥離領域60を作った後、その剥離領域60に隣接する塗膜13に貫通孔穿孔工程によって貫通孔40を穿孔するとともに、圧縮空気噴射工程によってその貫通孔40に圧縮空気を噴射し、塗膜13にあらたな剥離領域60を作る。このように、貫通孔穿孔工程と圧縮空気噴射工程とを繰り返し、床面11や壁面12の他の部位に複数の剥離領域60を作り、床面11や壁面12の略全域から塗膜13を剥離する。なお、貫通孔穿孔工程によって塗膜13に複数の貫通孔40をあらかじめ穿孔した後、それら貫通孔40に圧縮空気噴射工程によって順に圧縮空気を噴射し、複数の剥離領域60を作ってもよい。
床面11や壁面12の略全域から塗膜13を剥離した後、塗膜回収工程では、作業者がたとえば床面11や壁面12から塗膜13を捲り上げ、図28に示すように、床面11や壁面12において塗膜13を丸めて床面11全域や壁面12全域から塗膜を回収する。回収された塗膜13は、鉛遮蔽容器に収容されて保管される。
除染方法では、塗膜第1作成工程によって作られた塗膜13の厚み寸法が0.3〜1.5mmの範囲にある。塗膜13の厚み寸法が0.3mm未満では、除染システム41から塗膜13の貫通孔40に噴射された圧縮空気の空気圧によって塗膜13が容易に破損し、圧縮空気が塗膜13の裂け目から外気に放出されていまい、床面11や壁面12から塗膜13を膨隆させることができず、床面11や壁面12に所定面積の剥離領域60を作ることができない。
塗膜13の厚み寸法が1.5mmを超過すると、塗膜13の硬度が必要以上に上昇し、除染システム41から噴射された圧縮空気の空気圧が作用したとしても、床面11や壁面12から塗膜13を膨隆させることができず、床面11や壁面12に所定面積の剥離領域60を作ることができない。この除染方法では、塗膜13の厚み寸法が前記範囲にあるから、圧縮空気の空気圧によって床面11や壁面12から塗膜13を膨隆させることができ、床面11や壁面12に所定面積の剥離領域60を確実に作ることができる。
除染方法(除染システム41)では、エアーコンプレッサ42における吐出ゲージ圧力が0.4〜0.8MPaの範囲にある。エアーコンプレッサ42の吐出ゲージ圧力が0.4MPa未満では、除染システム41から塗膜13の貫通孔40に圧縮空気を噴射したとしても、床面11や壁面12と塗膜13との間に作用する空気圧が小さく、床面11や壁面12と塗膜13との間に圧縮空気が進入し難く、床面11や壁面12から塗膜13を膨隆させることができず、床面11や壁面12に所定面積の剥離領域60を作ることができない。
エアーコンプレッサ42の吐出ゲージ圧力が0.8MPaを超過すると、床面11や壁面12と塗膜13との間に作用する空気圧が必要以上に大きくなり、除染システム41から塗膜13の貫通孔40に噴射された圧縮空気の空気圧によって塗膜13が容易に破損し、圧縮空気が塗膜13の裂け目から外気に放出されていまい、床面11や壁面12から塗膜13を膨隆させることができず、床面11や壁面12に所定面積の剥離領域36を作ることができない。この除染方法(除染システム41)では、エアーコンプレッサ42における吐出ゲージ圧力が前記範囲にあるから、圧縮空気が床面11や壁面12と塗膜13との間に確実に進入するとともに、圧縮空気によって塗膜13が破損することはなく、床面11や壁面12に所定面積の剥離領域60を確実に作ることができる。
塗膜回収工程が完了した後(除染が完了した後)、除染塗料第2塗布工程および塗膜第2作成工程を実施する。除染塗料第2塗布工程では、除染塗料第1塗布工程と同様に、刷毛やローラ、スプレー方式のいずれかによって施設の床面11および壁面12に剥離型除染塗料10を塗布する。塗膜第2作成工程では、除染塗料10を床面11および壁面12に塗布した後、塗料10を所定時間養生し、塗料10を自然乾燥させ、床面11および壁面12に所定厚みの塗膜13を作る。
なお、図19〜図28に示す除染方法では、剥離した塗膜13を回収した後、除染塗料第2塗布工程および塗膜第2作成工程によって床面11および壁面12に所定厚みの塗膜13を再度作っているが、除染塗料第2塗布工程および塗膜第2作成工程を省略し、塗膜回収工程の完了によって除染作業を終了することもできる。
除染方法は、放射性物質14を吸着保持する剥離型除染塗料10を施設の床面11および壁面12(所定範囲の除染対象箇所)に塗布し、床面11や壁面12に所定厚みの塗膜13を作った後、噴射・吸引手段(エアーコンプレッサ42の噴射ノズル47)から塗膜13の貫通孔40に圧縮空気を噴射し、床面11や壁面12において塗膜13を膨隆させ、床面11や壁面12の表面から塗膜13を剥がすから、除染システム41における圧縮空気の噴射時において塗膜13(剥離型除染塗料10)に吸着保持された放射性物質14が飛散することはなく、塗膜13とともに所定範囲の施設の床面11や壁面12に存在する放射性物質14の大部分をその床面11や壁面12から確実に除去することができる。
除染方法は、床面11や壁面12から塗膜13を剥がした所定面積(0.25〜1m2)の剥離領域60が作られ、塗膜13の剥離時に床面11や壁面12から所定面積の塗膜13を一度に剥がすことができるから、塗膜13の剥離作業が容易であり、塗膜13(剥離型除染塗料10)に吸着保持された放射性物質14を床面11や壁面12から広い面積で一度に除去することができ、所定範囲の床面11や壁面12の除染を短時間に効率よく行うことができるとともに、除染に時間と手間とがかからず、低いコストで除染を行うことができる。
除染方法は、塗膜第1作成工程によって作られた塗膜13を施設の床面11や壁面12から取り除いた後、床面11や壁面12に剥離型除染塗料10を再び塗布し、その除染塗料10を乾燥させて床面11や壁面12に所定厚みの塗膜13をあらたに作るから、床面11や壁面12から塗膜13を取り除いてその床面11や壁面12の除染を行った後、その床面11や壁面12に再び除染塗料10を塗布して塗膜13を作ることで、除染した床面11や壁面12の放射性物質14による再度の汚染を塗膜13によって防護することができる。
除染方法は、圧縮空気の噴射時に空気吸引装置43を利用して施設の床面11や壁面12の空気を吸引しつつ、吸引した空気に含まれる塵埃をフィルタ(サイクロンセパレータ49、バグフィルタ50、HEPAフィルタ)を利用して集塵するから、床面11や壁面12の塵埃がそれらフィルタ49,50に集塵・捕集され、床面11や壁面12における塵埃の飛散を防ぐことができ、その塵埃に放射性物質14が含まれていたとしても、塵埃による放射性物質14の二次汚染を防ぐことができる。
除染方法において使用する除染システム41は、エアーコンプレッサ42(空気噴射装置)を利用して施設の床面11や壁面12(所定範囲の除染対象箇所)に圧縮空気を噴射しつつ空気吸引装置43を利用して床面11や壁面12の空気を吸引し、圧縮空気の空気圧によって塗膜13を膨隆させて床面11や壁面12から塗膜13を剥離するから、床面11や壁面12における塵埃の飛散を防ぎつつ、塗膜13(剥離型除染塗料10)とともに所定範囲の床面11や壁面12に存在する放射性物質14の大部分を床面11や壁面12から確実に除去することができる。
除染システム41は、塗膜13の剥離時に床面11や壁面12から所定面積の塗膜13を一度に剥がすことができるから、塗膜13の剥離作業が容易であり、塗膜13に吸着保持された放射性物質14を床面11や壁面12から広い面積で一度に除去することができ、所定範囲の床面11や壁面12の除染を短時間に効率よく行うことができるとともに、除染に時間と手間とがかからず、低いコストで除染を行うことができる。
除染システム41は、圧縮空気の噴射時に床面11や壁面12の空気を吸引しつつ、吸引した空気に含まれる塵埃をフィルタ(サイクロンセパレータ49、バグフィルタ50、HEPAフィルタ)を利用して集塵するから、床面11や壁面12の塵埃がそれらフィルタ49,50に集塵・捕集され、床面11や壁面12における塵埃の飛散を防ぐことができ、その塵埃に放射性物質14が含まれていたとしても、塵埃による放射性物質14の二次汚染を防ぐことができる。
図29は、除染塗料第1塗布工程の他の一例を示す工程概略図であり、図30は、塗膜第1作成工程の他の一例を示す工程概略図である。図31は、貫通孔穿孔工程の他の一例を示す工程概略図であり、図32は、圧縮空気噴射工程の他の一例を示す工程概略図である。図33は、図32から続く剥離領域作成工程の他の一例を示す工程概略図であり、図34は、図33から続く剥離領域作成工程の一例を示す工程概略図である。図35は、塗膜回収工程の一例を示す工程概略図である。なお、図29〜図35では、路面61の一部を省略して示す。図33,34では、フード57および吸引ホース53の図示を省略し、噴射ノズル47のみを示す。
図29〜図35に示す除染方法は、除染塗料第1塗布工程、塗膜第1作成工程、貫通孔穿孔工程、圧縮空気噴射工程、空気清浄工程、剥離領域作成工程、塗膜回収工程の各工程を実施する。除染塗料第1塗布工程では、凹凸面である路面61や複雑な起伏を有する面である路面61(所定範囲の除染対象箇所)に放射性物質14を吸着保持する剥離型除染塗料10を塗布する。除染塗料10の塗布は、刷毛やローラ、スプレー方式のいずれかによって行われる。
塗膜第1作成工程では、隔離型除染塗料10を路面61の全域または所定区画に塗布した後、塗料10を所定時間養生し、塗料10を自然乾燥させ、路面61に所定厚みの塗膜13を作る。塗膜第1作成工程によって路面61に塗膜13が作られると、路面61に存在する放射性物質14が塗膜13(剥離型除染塗料10)に吸着保持される。なお、路面61は、平滑面またはポーラス面のいずれかである。塗膜第1作成工程によって作られる塗膜13の厚み寸法は、0.3〜1.5mmの範囲にある。
路面61に除染塗料10による塗膜13を作った後、貫通孔穿孔工程を実施する。貫通孔穿孔工程では、円筒状または尖形の穿孔工具39A,39B(図19参照)を使用し、塗膜13の所定の箇所に塗膜13を貫通して路面61に達する貫通孔40を穿孔する。なお、除染システム41のエアーコンプレッサ42の噴射ノズル47を穿孔工具として利用してもよい。また、貫通孔穿孔工程では、塗膜13の所定間隔離間した位置(各貫通孔40の離間間隔:50〜100cm)に複数の貫通孔40をあらかじめ穿孔してもよい。
塗膜13に貫通孔40を穿孔した後、圧縮空気噴射工程を実施する。圧縮空気噴射工程では、図20,21に示す除染システム41が使用される。圧縮空気噴射工程では、噴射・吸引手段(エアーコンプレッサ42の噴射ノズル47)から圧縮空気が塗膜13に形成された貫通孔40に向かって噴射される。なお、路面61の凹凸の状態や起伏の状態等の各条件に応じてエアーコンプレッサ42の吐出ゲージ圧力を0.4〜0.8MPaの範囲で調節することができ、エアーコンプレッサ42の吐出空気量を3〜6m3/minの範囲で調節することができる。
圧縮空気の噴射時では、圧縮空気噴射工程と同時に空気清浄工程が実施される。空気清浄工程では、空気吸引装置43が稼働し、塗膜13の上方から貫通孔40に向かって圧縮空気が噴射されると同時に、貫通孔40の周囲(除染対象箇所)の空気が噴射・吸引手段(吸引ホース53の吸引口58)によって吸引される。圧縮空気の噴射時において吸引ホース53の吸引口58から吸引された空気は、吸引ホース53を通ってサイクロンセパレータ49に流入する。空気に含まれる粉塵は、サイクロンセパレータ49によって集塵され、鉛遮蔽容器55に収容される。
サイクロンセパレータ49から流出した空気は、接続ホース54を通ってバグフィルタ50に流入する。サイクロンセパレータ49に集塵されずにバグフィルタ50に達した塵埃は、バグフィルタ50によって集塵され、鉛遮蔽容器56に収容される。バグフィルタ50から流出した空気は、接続ホース54を通ってブロワ51に進入し、ブロワ51を通過してフィルタケース52に流入する。空気がフィルタケース52に流入すると、空気がケース52に収納されたHEPAフィルタを通流し、空気に含まれる微粒子がHEPAフィルタに捕集され、塵埃や微粒子が除去された清浄な空気が空気吸引装置43の外部に排気される。
除染システム41を使用して空気を吸引しつつ、塗膜13に穿孔された貫通孔40に圧縮空気を噴射すると、圧縮空気が貫通孔40を通って路面61と塗膜13との間(路面61の表面と塗膜13の裏面との間)に進入する。剥離領域作成工程では、圧縮空気の空気圧が路面61と塗膜13との間に作用し、路面61と塗膜13との間に進入した圧縮空気の空気圧によって塗膜13が路面61から膨隆(膨張)し、塗膜13が風船のように膨らんで路面61から次第に剥がれる。
圧縮空気の空気圧によって塗膜13が膨隆した後、圧縮空気の噴射を中断し、所定時間が経過すると、空気が塗膜13の貫通孔40から外気に放出され、膨隆した塗膜13が萎み、図34に示すように、路面61(所定範囲の除染対象箇所)に所定面積の剥離領域60が作られる。なお、1回の剥離領域作成工程によって作られる剥離領域60の面積は、0.25〜1m2の範囲にある。
路面61に所定面積の剥離領域60を作った後、その剥離領域60に隣接する塗膜13に貫通孔穿孔工程によって貫通孔40を穿孔するとともに、圧縮空気噴射工程によって貫通孔40に圧縮空気を噴射し、塗膜13にあらたな剥離領域60を作る。このように、貫通孔穿孔工程と圧縮空気噴射工程と剥離領域作成工程とを繰り返し、路面61の他の部位に複数の剥離領域60を作り、路面61の略全域または所定区画から塗膜13を剥離する。路面61の略全域または所定区画から塗膜13を剥離した後、塗膜回収工程では、作業者が路面61から塗膜13を捲り上げ、図35に示すように、路面61において塗膜13を丸めて路面61全域または所定区画から塗膜を回収する。回収された塗膜13は、鉛遮蔽容器に収容されて保管される。塗膜回収工程の完了によって除染作業を終了する。
なお、図19〜図28に示す除染方法と同様に、塗膜回収工程が完了した後(除染が完了した後)、除染塗料第2塗布工程および塗膜第2作成工程を実施することもできる。除染塗料第2塗布工程では、除染塗料第1塗布工程と同様に、刷毛やローラ、スプレー方式のいずれかによって施設の路面61に剥離型除染塗料10を塗布する。塗膜第2作成工程では、除染塗料10を路面61に塗布した後、塗料10を所定時間養生し、塗料10を自然乾燥させ、路面61に所定厚みの塗膜13を作る。
図29〜図35に示す除染方法は、放射性物質14を吸着保持する剥離型除染塗料10を凹凸面である路面61や複雑な起伏を有する面である路面61(所定範囲の除染対象箇所)に塗布し、路面61に所定厚みの塗膜13を作った後、噴射・吸引手段(エアーコンプレッサ42の噴射ノズル47)から塗膜13の貫通孔40に圧縮空気を噴射し、路面61において塗膜13を膨隆させ、路面61の表面から塗膜13を剥がすから、除染システム41における圧縮空気の噴射時において塗膜13(剥離型除染塗料10)に吸着保持された放射性物質14が飛散することはなく、塗膜13とともに所定範囲の路面61に存在する放射性物質14の大部分を路面61から確実に除去することができる。
除染方法は、路面61から塗膜13を剥がした所定面積(0.25〜1m2)の剥離領域60が作られ、塗膜13の剥離時に路面61から所定面積の塗膜13を一度に剥がすことができるから、塗膜13の剥離作業が容易であり、塗膜13(剥離型除染塗料10)に吸着保持された放射性物質14を路面61から広い面積で一度に除去することができ、凹凸や複雑な起伏を有する所定範囲の路面61の除染を短時間に効率よく行うことができるとともに、除染に時間と手間とがかからず、低いコストで除染を行うことができる。
除染方法は、圧縮空気の噴射時に空気吸引装置43を利用して路面61の空気を吸引しつつ、吸引した空気に含まれる塵埃をフィルタ(サイクロンセパレータ49、バグフィルタ50、HEPAフィルタ)を利用して集塵するから、路面61の塵埃がそれらフィルタ49,50に集塵・捕集され、路面61における塵埃の飛散を防ぐことができ、その塵埃に放射性物質14が含まれていたとしても、塵埃による放射性物質14の二次汚染を防ぐことができる。
図29〜図35に示す除染方法において使用する除染システム41は、エアーコンプレッサ42(空気噴射装置)を利用して所定範囲の路面61(所定範囲の除染対象箇所)に圧縮空気を噴射しつつ空気吸引装置43を利用して路面61の空気を吸引し、圧縮空気の空気圧によって塗膜13を膨隆させて凹凸や複雑な起伏を有する路面61から塗膜13を剥離するから、路面61における塵埃の飛散を防ぎつつ、塗膜13(剥離型除染塗料10)とともに所定範囲の路面61に存在する放射性物質14の大部分を路面61から確実に除去することができる。
除染システム41は、塗膜13の剥離時に凹凸や複雑な起伏を有する路面61から所定面積の塗膜13を一度に剥がすことができるから、塗膜13の剥離作業が容易であり、塗膜13に吸着保持された放射性物質14を路面61から広い面積で一度に除去することができ、所定範囲の路面61の除染を短時間に効率よく行うことができるとともに、除染に時間と手間とがかからず、低いコストで除染を行うことができる。
除染システム41は、圧縮空気の噴射時に路面61の空気を吸引しつつ、吸引した空気に含まれる塵埃をフィルタ(サイクロンセパレータ49、バグフィルタ50、HEPAフィルタ)を利用して集塵するから、路面61の塵埃がそれらフィルタ49,50に集塵・捕集され、路面61における塵埃の飛散を防ぐことができ、その塵埃に放射性物質14が含まれていたとしても、塵埃による放射性物質14の二次汚染を防ぐことができる。