JP4302097B2 - 除染装置及び除染方法 - Google Patents
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Description
特許文献1には、除染対象物に対して粒状研磨材を含む加圧水を噴射することで除染対象物の表面に付着した放射性物質を除去する汚染除去装置が記載されている。
特許文献2には、ウォータージェットによる物理除染と化学除染材による化学除染の両方を行う除染装置が記載されている。
特許文献3には、蒸気によって研磨材を吹き付けることで除染対象物の表面に付着した放射性物質を除去する除染装置が記載されている。
また、特許文献2に記載の除染装置では、使用した化学除染材が二次廃棄物になるので、廃棄物の量を低減することは困難であった。そして、除染対象物に対する放射性物質の付着力が大きい場合には、ウォータージェットのみでは十分な除染能力を得ることができないので、化学除染材の使用量を低減することは困難であった。
また、特許文献3に記載の除染装置では、高温の蒸気を用いて除染処理を行うので、除染対象物に熱負荷が加わってしまう。また、作業者の安全管理が困難であった。
さらに、この除染装置では、空気中で除染処理を行うので、除去した放射性物質の拡散を防ぐための措置が必要となり、作業が煩雑になってしまう。
すなわち、本発明は、内部に液体と除染対象物とが収納される処理槽と、前記液体を高圧で送出する高圧ポンプと、該高圧ポンプから前記液体を供給されて前記処理槽内の前記液体中にキャビテーションジェットを発生させるノズルと、該ノズルが発生させたキャビテーションジェットの流れに研磨粒を供給する研磨粒供給装置と、前記処理槽から前記研磨粒を回収して前記研磨粒供給装置に供給する研磨粒回収装置とを有し、前記研磨粒供給装置は、ハウジングと、該ハウジングの一端を閉塞しつつ、前記ノズルをその先端部が前記ハウジング内に位置した状態で保持するノズルホルダと、前記ハウジングの他端に設けられ、その内部に、前記ノズルが発生させたキャビテーションジェットを流通させる流路が形成されたディフューザとを有しており、前記ハウジングの中間部には、接続ポートが設けられ、該接続ポートには、前記研磨粒回収装置が接続されており、前記接続ポートを通じて前記研磨粒回収装置から前記研磨粒が供給されるようになっている除染装置を提供する。
これにより、除染対象物には、キャビテーションジェットによる放射性物質の剥離処理及び洗浄処理と、研磨粒によるブラスト処理(研削処理)とが同時に行われることになり、除染対象物の表面に付着した放射性物質が効果的に除去されるとともに、研磨粒自身に付着した放射性物質の除去も同時に行われる。
そして、キャビテーションジェットより発生する超音波によって得られる、微小な凹凸部に入り込んだ放射性物質の除去効果、キャビテーションジェットの持つ特性である、前面投影では影となるシャドーゾーン部への除染効果、及びキャビテーションジェットの特性である、噴流の流れと平行な面に対する除染効果などにより、被除染面に対してウォータージェットや気中ブラストのみでは効果が得られないような角度で噴流を吹付ける場合にも、放射性物質を効果的に除去することができ、また、除染対象物のシャドーゾーン部表面に付着した放射性物質についても、効果的に除去することができる。
除染対象物のブラスト処理に使用された研磨粒は、研磨粒回収装置によって回収されて、再度研磨粒供給装置に供給されて再度ブラスト処理に利用されるので、二次廃棄物の量が低減される。
ここで、ブラスト処理に使用された研磨粒には放射性物質が付着している。しかし、この除染装置では、研磨粒は、ブラスト処理に使用されるにあたって、キャビテーションジェットの流れにさらされるので、再利用した研磨粒は、付着している放射性物質が洗い流されたのちに除染対象物に吹き付けられる。
すなわち、この除染装置では、除染対象物に対して清浄化された研磨粒が吹き付けられるので、除染対象物への放射性物質の再付着が抑制される。これにより、この除染装置は、除染対象物の除染効率が高い。
この場合には、ノズル位置調整装置によってノズルと除染対象物との相対位置を調整することで、除染対象物に対するキャビテーションジェットの当たり具合を調整することができる。
例えば、ノズル位置調整装置によってノズルと除染対象物との距離を小さくすることで、キャビテーションジェットの流れが減衰する前に除染対象物に当たることになり、高い除染効果を得ることができる。
また、ノズルから吐出される流れのあたる位置に非常に微小且つ鋭利な凹凸のある部材を配置して、ノズルから吐出される研磨粒をこの部材に当てる事で、除染処理に繰り返し使用することで消耗した研磨粒の角部(すなわち研磨粒の研磨に作用する部位)を再生することができ、研磨粒の研磨性能を回復させることができる。
なお、本除染装置によれば、除染対象物の表面粗度の荒いものに対して除染処理を施工することで、除染対象物の表面の凹凸を滑らかにして、再付着を抑制することができるという効果も得られる。
この場合には、処理槽内の液体が循環使用されるので、除染処理に用いられる液体の量が少なくて済み、二次廃棄物の低減が可能となる。
この場合には、除染処理に薬液ではなく水を用いているので、使用した水は、フィルタ等を使って放射性物質を除去したのちに、一般の排水系統に放流することができ、二次廃棄物の低減が可能となる。
この場合には、上記のキャビテーションジェット及び研磨粒による除染能力に、さらに化学除染材の除染能力が加わるので、除染能力が高い。
ここで、この除染方法において、前記キャビテーションジェット及び研磨粒を用いた除染処理に先立って、化学除染材を用いた除染処理を前記除染対象物に施してもよい。
この場合には、除染対象物に対して化学除染材による除染処理を施し、化学除染材によって除去可能な汚染を除去したのちに、キャビテーションジェット及び研磨粒による除染処理を行うので、キャビテーションジェット及び研磨粒による除染処理を良好に行うことができ、高い除染効果を得ることができる。
図1に示すように、本実施形態に係る除染装置1は、内部に液体Pと除染対象物Wとが収納される処理槽2と、液体Pを高圧で送出する高圧ポンプ3と、高圧ポンプ3から液体Pを供給されて処理槽2内の液体P中にキャビテーションジェットJを発生させるノズル4とを有している。
本実施形態では、液体Pとして、水が用いられている。
ここで、研磨粒Aの材質(硬度、比重)や形状は、要求される除染力(研削力)や除染対象物Wの形状、材質に応じて、適宜選択される。また、高圧ポンプ3も、キャビテーションジェットJに要求される除染力(研削力)や除染対象物Wの形状、材質や研削範及びノズルから被除染物までの距離(スタンドオフ)に応じて、適切な性能(吐出圧力、吐出量)のものが選択される。
このため、本実施形態では、研磨粒Aとして、0.3mmのSUS304製ワイヤを0.3mm長で刻んだものを用いる。また、高圧ポンプ3として、液体Pの吐出圧が22MPa、液体Pの吐出量が15L/minのものを用いる。
さらに、この除染装置1は、ノズル4と除染対象物Wとの相対位置を調整するノズル位置調整装置(図示せず)を有している。ノズル位置調整装置としては、例えばノズル4を任意の位置に保持可能なアーム等が用いられる。
ここで、この除染装置1による除染処理の際に、ノズル位置調整装置によって、必要とされる除染処理能力に応じてノズル4の移動速度を自動で制御することで、均一且つ効率の高い除染処理を行って、高い除染効果を得ることができる。
ノズル送りは、例えば、多軸アームを用いて三次元的にノズル4の移動を行ってもよく、また、除染対象物Wを処理槽2の底部に固定し回転させる構成を採用することで、ノズル送りをリニア一軸移動又はそれに上下動を加えた二軸制御で行うことが可能である。
ノズル4は、図2に示すように、先端に絞り4aが設けられた管状の部材である。
研磨粒供給装置6は、略円筒形状のハウジング11と、ハウジング11の一端に設けられるノズルホルダ12と、ハウジング11の他端に設けられるディフューザ13とを有している。
ノズルホルダ12は、略円盤形状をなしており、ハウジング11の一端に対して略同軸にして取り付けられている。ノズルホルダ12には、ハウジング11の軸線と略同軸となる貫通孔12aが設けられており、ノズル4は、この貫通孔12aに挿入されることで、ハウジング11と略同軸にして保持されている。
ディフューザ13は、一端がハウジング11の他端に接続された略円柱形状の部材であって、その内部には、ノズル4が発生させたキャビテーションジェットJを流通させる流路13aが形成されている。
ディフューザ13に設けられる流路13aは、ノズル4と略同軸となる直線状をなしている。流路13aは、ノズル4の先端近傍部分では、ノズル4の先端から離間するにつれて内径が漸次縮径されていて、所定の内径に達した以降は、ノズル4とは反対側の端部(すなわち除染対象物W側の端部)まで、略同径とされている。
但し、除染対象範囲を広げる為に出口を広げた形状にしたり、局所的な除染能力を高くするために出口を絞った形状にすることで目的に応じたものにすることが可能である。
循環装置8は、処理槽2内の液体Pを汲み上げて高圧ポンプ3に供給する循環用ポンプ21と、循環用ポンプ21の吸い込み口に設けられるストレーナ22と、循環用ポンプ21と高圧ポンプ3との間に介装されるフィルタ装置23とを有している。
ストレーナ22は、循環用ポンプ21が吸い上げる液体P中から研磨粒Aやその他の比較的大きい固形物を取り除くためのものである。
尚、ストレーナ22として、処理槽2の底部の上方に、ストレーナーと同等のメッシュからなる網状の第二底部を設けてもよい。この場合には、より沈降しやすい物質の分離に有効である。このような構成の処理槽2を用いる場合には、処理槽2底部を漏斗形状にし、この漏斗状部分の先端部(集合部)に、研磨粒回収装置7の吸い込みノズル7aの先端を接続して、処理槽2の底部から研磨粒Aの回収を行う(なお、この構成では、研磨粒Aの循環量が適正になるよう、処理槽2への研磨粒Aの投入量を適切に調整する)。
フィルタ装置23は、循環用ポンプ21が送出した液体P中から、ストレーナ22では除去しきれなかった研磨粒Aや固形物を除去するためのものである。
この状態で、高圧ポンプ3によってノズル4に高圧の液体Pを供給して、キャビテーションジェットJを発生させることで、処理槽2内の液体P中で、キャビテーションジェットJによる除染対象物Wの除染処理が行われる。
キャビテーションは、崩壊する際に、周囲に1GPa以上の衝撃圧を発生させる。このため、キャビテーションジェットJを除染対象物Wの表面に噴射して、除染対象物Wの表面でキャビテーションを崩壊させることで、除染対象物Wの表面に壊食が生じて、除染対象物Wの表面のクラッドが削り取られる。
具体的には、ノズル4からキャビテーションジェットJを発生させると、ハウジング11内の流体がキャビテージョンジェットJの流れに巻き込まれて流路13a内に送り込まれる。
すると、ハウジング11の内圧が低下するので、接続ポート11aに接続された管路7bの内圧も低下する。これにより、処理槽2の底部に溜まった研磨粒Aが周囲の液体Pとともに吸い込みノズル7aに吸い上げられて、管路7bを通じてハウジング11内に供給される。このようにハウジング11内に供給された研磨粒Aは、ハウジング11内の液体PとともにキャビテーションジェットJの流れに供給される。
すなわち、この除染装置1は、除染対象物Wに対して、キャビテーションジェットJによる洗浄処理と並行して、研磨粒Aによるブラスト処理を施すので、除染対象物Wの表面に付着したクラッドが効果的に除去される。
また、これらの処理は、処理槽2内に貯留された液体P中で行われるので、除染対象物Wから除去したクラッドが周囲に拡散しにくく、周囲に汚染が広がりにくい。
すなわち、この除染装置1では、研磨粒Aが繰り返しブラスト処理に利用されるので、研磨粒Aの使用量が少なくて済み、二次廃棄物の量が低減される。
すなわち、この除染装置1では、除染対象物Wに対して清浄化された研磨粒Aが吹き付けられるので、除染対象物Wへのクラッドの再付着が抑制される。このため、この除染装置1は、除染対象物Wの除染効率が高い。
例えば、ノズル位置調整装置によってノズル4と除染対象物Wとの距離を小さくすることで、キャビテーションジェットJの流れが減衰する前に除染対象物Wに当たることになり、高い除染効果を得ることができる。
また、ノズル位置調整装置によってノズル4と除染対象物Wとの距離を大きくすることで、キャビテーションジェットJの流れが所定程度減衰した時点で除染対象物Wに当たることになり、除染効果が弱められる。この場合には、損傷しやすい除染対象物Wについても、除染対象物Wを損傷させずに除染処理を良好に行うことができる。
この場合には、ブラスト処理を繰り返しても研磨粒Aに損耗が生じにくいので、研磨粒Aをより長期にわたって再生利用することができ、二次廃棄物をより一層低減することができる。
ここで、この除染装置1では、高圧ポンプ3、ノズル4、ノズル7aを複数設けることで、処理能力を向上させることができる。
また、この除染装置1において、複数の処理槽2を設けて、これら処理槽2を除染対象物の汚染度に応じて使い分けることで(すなわち、汚染度が高い段階と除染処理によって汚染度がある程度低下した段階とで処理槽2を使い分けることで)、除染効果(DF値及び放射能濃度の絶対値を低くする)をより大きくすることができる。
この場合には、除染対象物Wに対して化学除染材による除染処理を施し、化学除染材によって除去可能な汚染を除去したのちに、キャビテーションジェット及び研磨粒による除染処理を行うので、キャビテーションジェット及び研磨粒による除染処理を良好に行うことができ、高い除染効果を得ることができる。
2 処理槽
3 高圧ポンプ
4 ノズル
6 研磨粒供給装置
7 研磨粒回収装置
8 循環装置
A 研磨粒
J キャビテーションジェット
P 液体
W 除染対象物
Claims (8)
- 内部に液体と除染対象物とが収納される処理槽と、
前記液体を高圧で送出する高圧ポンプと、
該高圧ポンプから前記液体を供給されて前記処理槽内の前記液体中にキャビテーションジェットを発生させるノズルと、
該ノズルが発生させたキャビテーションジェットの流れに研磨粒を供給する研磨粒供給装置と、
前記処理槽から前記研磨粒を回収して前記研磨粒供給装置に供給する研磨粒回収装置とを有し、
前記研磨粒供給装置は、ハウジングと、該ハウジングの一端を閉塞しつつ、前記ノズルをその先端部が前記ハウジング内に位置した状態で保持するノズルホルダと、前記ハウジングの他端に設けられ、その内部に、前記ノズルが発生させたキャビテーションジェットを流通させる流路が形成されたディフューザとを有しており、
前記ハウジングの中間部には、接続ポートが設けられ、該接続ポートには、前記研磨粒回収装置が接続されており、前記接続ポートを通じて前記研磨粒回収装置から前記研磨粒が供給されるようになっている除染装置。 - 前記ノズルと前記除染対象物との相対位置を調整するノズル位置調整装置を有している請求項1記載の除染装置。
- 前記高圧ポンプに前記処理槽内の前記液体を供給する循環装置を有している請求項1または2に記載の除染装置。
- 前記液体として水を用いる請求項1から3のいずれかに記載の除染装置。
- 前記液体として化学除染材を用いる請求項1から3のいずれかに記載の除染装置。
- 内部に液体と除染対象物とが収納される処理槽と、
前記液体を高圧で送出する高圧ポンプと、
該高圧ポンプから前記液体を供給されて前記処理槽内の前記液体中にキャビテーションジェットを発生させるノズルと、
該ノズルが発生させたキャビテーションジェットの流れに研磨粒を供給する研磨粒供給装置と、
前記処理槽から前記研磨粒を回収して前記研磨粒供給装置に供給する研磨粒回収装置とを有し、
前記研磨粒供給装置は、ハウジングと、該ハウジングの一端を閉塞しつつ、前記ノズルをその先端部が前記ハウジング内に位置した状態で保持するノズルホルダと、前記ハウジングの他端に設けられ、その内部に、前記ノズルが発生させたキャビテーションジェットを流通させる流路が形成されたディフューザとを有しており、
前記ハウジングの中間部には、接続ポートが設けられ、該接続ポートには、前記研磨粒回収装置が接続されており、前記接続ポートを通じて前記研磨粒回収装置から前記研磨粒が供給されるようになっている除染装置を用いて行う除染方法であって、
前記処理槽内に前記液体と前記除染対象物とを収納し、
前記処理槽内の前記液体中に前記キャビテーションジェットを発生させ、
前記除染対象物に前記キャビテーションジェットとともに前記研磨粒を吹き付け、
前記処理槽内から前記研磨粒を回収して再利用する除染方法。 - 前記キャビテーションジェット及び前記研磨粒を用いた除染処理に先立って、化学除染材を用いた除染処理を前記除染対象物に施す請求項6記載の除染方法。
- 前記キャビテーションジェットによって前記研磨粒を洗浄する請求項6または7記載の除染方法。
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