JP2013070093A - 太陽電池用積層カバー基板、太陽電池、並びに、太陽電池用積層カバー基板の製造方法 - Google Patents

太陽電池用積層カバー基板、太陽電池、並びに、太陽電池用積層カバー基板の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】高い反射防止性能を有し、かつ防眩性にも優れた太陽電池用積層カバー基板及び太陽電池、並びに太陽電池用積層カバー基板の製造方法を提供する。
【解決手段】透光基材の片面及び/または両面に、屈折率が1.05〜1.3である積層膜が積層された太陽電池用積層カバー基板であって、受光面側の中心線平均表面粗さRaを0.1μm〜10μmとし、かつ表面粗さの最大高さRmaxを0.1μm〜50μmとする。
【選択図】なし

Description

本発明は、太陽電池用積層カバー基板、及びその太陽電池用積層カバー基板を用いた太陽電池、並びに前記太陽電池用積層カバー基板の製造方法に関するものである。
近年、地球温暖化の防止対策として、太陽光エネルギーを電気エネルギーに変換して利用できる太陽電池の普及が注目されている。このような太陽電池においては、発電の高効率化が求められている。高効率化は低コスト化や軽量化にも深く関係している。
太陽電池の効率に関する因子としては、太陽電池セル内の半導体部分での量子効率や、太陽電池のカバー基板(受光面)の表面反射率等が挙げられる。特にカバー基板の表面反射を低減することは、太陽光エネルギーを太陽電池セル内に効率よく取り込んでエネルギー変換することに繋がり、半導体部分の種類や特性に依らず太陽電池の高効率化を図ることが可能であることから、その意義は大きい。また、例えば屋根または壁面に施工される太陽電池のカバー基板の表面反射は、反射光公害を生じさせることがあるという側面もある。
ここで、特許文献1には、表面の算術平均表面粗さを制御することにより、フィルムの防眩性を良好なものとする方法が報告されている。しかしながら、上記方法は、フィルムの表面反射自体を抑制するものではなく、この方法を用いたとしても、太陽電池の発電効率向上には繋がりにくい。
また、特許文献2には、光の反射防止と同時に防眩性を付与するため、表面に微細な凸凹形状を有する防眩層と、屈折率の低い層とを組合せたカバー基板が提案されている。しかしながら、上記文献では防眩層の凸凹の最適な条件が言及されていない。またさらに低屈折率層に関しても屈折率が1.4程度と推測されるため、十分に太陽光エネルギーを取り込むことが可能なカバー基板とすることは難しい。したがって、防眩性と同時に十分な反射防止効果が得られているとはいえない。
また特許文献3では、特定のアルコキシシランの共加水分解・重縮合物を用いることにより太陽電池に凸凹パターンを形成し、反射や散乱効果によって太陽光エネルギーの利用効率を向上させることを提案しているが、実際には屈折率が1.4以上と推測される層を形成しており、前記同様、十分な反射防止効果が得られているとはいえない。
また、特許文献4では、0.01μm〜1μmの段差の凸凹面を有する反射防止層を提案している。しかしながら、実施例をみる限り、反射防止層自体の屈折率は1.3程度であると推測され、前記同様、十分な反射防止効果が得られているとはいえない。
さらに、特許文献5では、ガラス基材上に1.22〜1.44の屈折率を有する反射防止層を提案している。しかしながら、防眩性に対しては言及されておりず、実際の屋根または壁面に施工される太陽電池に用いる場合には、防眩性の向上等、更なる改良が求められる。
特開平11−298030号公報 特開平7−333404号公報 特開2000−216417号公報 特開2002−270866号公報 特表2002−543028号公報
以上のことから、高い反射防止性能を有し、かつ十分な防眩性を維持した太陽電池モジュールや、太陽電池モジュールに用いる太陽電池用積層カバー基板はいまだ得られておらず、その提供が望まれている。
本発明は上記の課題に鑑みて創案されたもので、本発明は、高い反射防止性能を有し、かつ防眩性にも優れた太陽電池用積層カバー基板や太陽電池を得ることを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するべく鋭意検討した結果、透光基材に一定の屈折率を有する積層膜を有し、かつ受光面の中心線平均表面粗さ、及び表面粗さの最大高さがある一定領域にあることで、防眩性にも優れ、かつ太陽光の透過率が著しく向上した太陽電池用積層カバー基板が得られることを見出し、本発明に至った。
本発明の第1の要旨は、透光基材の片面及び/または両面に、屈折率が1.05〜1.3である積層膜が積層された太陽電池用積層カバー基板であって、受光面側の中心線平均表面粗さRaが0.1μm〜10μmであり、かつ表面粗さの最大高さRmaxが0.1μm〜50μmであることを特徴とする太陽電池用積層カバー基板に存する(請求項1)。
前記太陽電池用積層カバー基板においては、前記積層膜の最大膜厚が50nm〜10μmであることが好ましく(請求項2)、また前記透光基材が強化ガラスであることが好ましく(請求項3)、さらに太陽電池用積層カバー基板の面積が0.1m以上であることが好ましい(請求項4)。
また上記太陽電池用積層カバー基板におけるD65光の全光線透過率が80%以上であることが好ましく(請求項5)、さらに上記太陽電池用積層カバー基板は、熱線遮断層を有することが好ましい(請求項6)。
また本発明の第2の要旨は、上記記載の太陽電池用積層カバー基板を有することを特徴とする太陽電池モジュールに存する(請求項7)。
また本発明の第3の要旨は、上記記載の太陽電池用積層カバー基板を製造する方法であって、粘度0.05Pas・sec以下のシリカ系前駆体を用いて前記積層膜を形成する形成過程を有することを特徴とする太陽電池用積層カバー基板の製造方法に存する(請求項8)。
前記太陽電池用積層カバー基板の製造方法においては、前記シリカ系前駆体のpHが2以下であることが好ましい(請求項9)。
また前記太陽電池用積層カバー基板の製造方法においては、前記積層膜の形成過程で、100℃〜800℃の加熱工程を経ることが好ましい(請求項10)。
本発明の太陽電池用積層カバー基板によれば、受光面側の中心線平均表面粗さ及び表面粗さの最大高さが所定の範囲内とされていることから、防眩性を高いものとすることができ、反射光公害等が生じないものとすることができる。また所定の屈折率を有する積層膜との組み合わせにより、太陽光エネルギーを極めて効率的に太陽電池セル側に取り込むことが可能な太陽電池用積層カバー基板とすることが可能である。
また本発明の太陽電池モジュールによれば、上記太陽電池用積層カバー基板を用いていることから、太陽光エネルギーを極めて効率的に取り込み、電気エネルギーに変換可能なものとすることができる。
またさらに、本発明の太陽電池用積層カバー基板の製造方法によれば、所定の粘度を有するシリカ系前駆体を用いて積層膜を形成することから、生産性よく太陽電池用積層カバー基板を製造することが可能である。
本発明の太陽電池用積層カバー基板の一例を示す概略断面図である。 本発明の太陽電池用積層カバー基板の他の例を示す概略断面図である。
以下、本発明について実施形態や例示物等を示して詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態や例示物等に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、任意に変更して実施できる。
本発明の太陽電池用積層カバー基板、太陽電池、及び太陽電池用積層用カバー基板の製造方法について以下、それぞれ説明する。
A.太陽電池用積層カバー基板
まず、本発明の太陽電池用積層カバー基板について説明する。本発明の太陽電池用積層カバー基板は、透光基材の片面及び/または両面に、所定の屈折率を有する積層膜が積層されたものであり、受光面側の中心線平均表面粗さRa及び表面粗さの最大高さRmaxが所定の範囲内とされているものである。なお、本発明でいう受光面側とは、太陽電池用積層カバー基板が太陽電池モジュールに用いられた際に、太陽光が入射する側をいうこととする。
本発明によれば、受光面側の中心線平均表面粗さRa、及び表面粗さの最大高さRmaxが所定の範囲内とされていることから、太陽光エネルギーの反射を拡散反射とすることができ、防眩性を高いものとすることができる。したがって、本発明の太陽電池用積層カバー基板を、屋根や壁面に用いられる太陽電池モジュールに適用した場合に、反射光公害が生じることが少ないものとすることができる。
またさらに、上記積層膜が形成されていることから、太陽電池用積層カバー基板の太陽光エネルギーの反射を少ないものとし、太陽光エネルギーを太陽電池セル側に極めて効率よく取り込むことが可能であり、発電効率が高い太陽電池モジュールを実現することが可能となる。
以下、本発明の太陽電池用積層カバー基板の特性について説明し、その後、その太陽電池用積層カバー基板を構成する各部材について説明する。
[1.太陽電池用積層カバー基板の特性]
1−1.構成
本発明の太陽電池用積層カバー基板は、透光基材及び積層膜を有するものであれば、その構成は特に限定されない。例えば図1に示すような、所定の表面粗さの凹凸を有する透光基材1の凹凸上に、積層膜2を積層した構成や、図2に示すような、凹凸を有さない透光基材1上に、所定の粗さの凹凸を有する積層膜2を積層した構成等とすることができる。なお、上記図1及び図2は、本発明の太陽電池用積層カバー基板を説明するために便宜的に用いられるものであり、太陽電池用積層カバー基板の構成は上記構成に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない限り、いかなる変更も行うことが可能である。
本発明の太陽電池用積層カバー基板において、上記積層膜は、透光基材の片面のみに積層してもよく、また両面に積層してもよいが、太陽光エネルギーの反射防止の観点から少なくとも透光基材の受光面側に積層することが好ましい。
また従来、太陽光により、太陽電池用積層カバー基板、太陽電池セル、又は両方に発生した熱が、太陽電池セルに伝播、又は滞在することで、太陽電池セルの発電効率を低下させる場合があった。そこで、透光基材の受光面とは反対側(セル部側)にも積層膜を積層することにより、前述した太陽電池用積層カバー基板からの熱の伝播について抑制することが可能となり、熱の伝播による太陽電池セルの発電効率低下を軽減する効果も期待できる。したがって、透光基材の両面に積層膜を有してもよい。
ここで、本発明の太陽電池用積層カバー基板は、上記透光基材及び積層膜以外にも適宜必要な層を有するものとすることができる。例えば積層膜と透光基材との間や、積層膜上、または透光基材上に、熱線遮断層や、防汚性層や紫外線劣化防止層、親水性層、疎水性層、防曇層、粘着層、接着層、ハード層、導電性層、反射層、アンチグレア層、拡散層等を有していてもよい。本発明においては、特に太陽電池用積層カバー基板からの熱の伝播による太陽電池モジュールの発電効率低下を低減することが可能となることから、熱線遮断層を有することが好ましい。
1−2.受光面側の中心線平均表面粗さRa、最大高さRmax、及び凹凸の平均間隔
本発明の太陽電池用積層カバー基板の受光面側の中心線平均表面粗さRaは、通常0.1μm以上、好ましくは0.2μm以上、より好ましくは0.3μm以上である。また、通常10μm以下、好ましくは7μm以下、より好ましくは5μm以下、特に好ましくは4μm以下である。
またこの際、表面粗さの最大高さRmaxは、通常0.1μm以上であり、好ましくは0.2μm以上、より好ましくは0.4μm以上、特に好ましくは0.6μm以上である。また、通常50μm以下、好ましくは40μm以下、より好ましくは35μm以下、特に好ましくは30μm以下である。上記中心線平均表面粗さ及び表面粗さの最大高さを上記範囲内とすることにより、太陽電池用積層カバー基板の光の反射を拡散反射とし、太陽電池用積層カバー基板が防眩性を有するものとすることが可能となる。
またさらに、凹凸の平均間隔Smには、通常特に制限はないが、防汚性と防眩性の観点から、通常0.005mm以上であり、好ましくは0.01mm以上、より好ましくは0.05mm以上である。また通常20mm以下であり、好ましくは15mm以下、より好ましくは12mm以下である。かかる範囲を下回ると汚れやすい表面となる場合があり、かかる範囲を超えると十分な防眩性を得られない場合がある。
上記中心線平均表面粗さRa、表面粗さの最大高さRmax、及び上記凹凸の平均間隔Smは、JIS−B0601に従った汎用の表面粗さ計で測定することで得られる。
1−3.サイズ
本発明の太陽電池用積層カバー基板の面積は、0.1m2以上が好ましく、より好ましくは0.25m2以上、さらに好ましくは1m2以上である。かかるサイズよりも小さい場合には、太陽電池モジュールとした際の発電量が低く、積層膜による反射防止効果が十分に現れない場合がある。
また、太陽電池カバー基板全体の厚みは、機械的強度およびガスバリア性の観点から0.05mm以上が好ましく、0.1mm以上がより好ましい。また、軽量化および光透過性の観点から80mm以下が好ましく、より好ましくは30mm以下、さらに好ましくは10mm以下である。
1−4.透過率及びヘイズ
本発明の太陽電池用積層カバー基板のD65光の全光線透過率は通常80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上である。これにより太陽電池モジュールの発電効率を良好なものとすることができる。
また、太陽電池用積層カバー基板のヘイズは通常5%以上、好ましくは10%以上、より好ましくは15%以上である。また通常95%以下であり、好ましくは92%以下、より好ましくは90%以下である。かかる下限以上のヘイズをもつことは、拡散透過光が存在することを意味し、その拡散透過光は太陽電池セル中での光路長が長いために、太陽電池の効率向上に寄与できる。しかしながら、かかる上限より大きなヘイズを持つ場合には、拡散透過光量があまりに多くなりすぎて、全光線透過率が減少する場合がある。
上記全光線透過率およびヘイズの値は、JIS−K7105に従ったヘーズメーターで測定することで得られる。本発明では、スガ試験機(株)社製ヘーズメーターHZ−2により測定した値とする。なお、太陽電池用積層カバー基板のセル部側にも凹凸構造がある場合には、かかる構造が全光線透過率・ヘイズに影響を与える。但し、太陽電池用カバー基板のセル部側は、通常、太陽電池モジュールに用いられるときには、EVA(エチレン−酢酸ビニル共重合体)などの樹脂層で充填されるため、セル部側の凹凸に由来する全光線透過率・ヘイズは、実際には太陽電池の防眩性、効率にはほとんど影響しない。したがって、セル部側に凹凸を有する太陽電池積層用カバー基板は、透明基材に屈折率の近いEVAなどの樹脂または溶媒でセル部側凹凸を埋めて、受光面の凹凸のみが寄与する全光線透過率・ヘイズを測定することが好ましい。
[2.透光基材]
次に、本発明の太陽電池用積層カバー基板に用いられる透光基材の材料や各種特性について説明する。
2−1.材料
本発明に用いられる透光基材としては特に限定されず、一般的な太陽電池用積層カバー基板に汎用されているものを用いることができ、具体的にはガラスや樹脂等が挙げられ、寸法安定性やガスバリア性等の面からガラスが好ましく用いられる。
上記透光基材に用いられるガラスは、任意の種類のものを使用できる。例えばその種類として、珪酸ガラス、高珪酸ガラス、珪酸アルカリガラス、鉛アルカリガラス、ソーダ石灰ガラス、カリ石灰ガラス、バリウムガラスなどの珪酸塩ガラス、硼珪酸ガラスやアルミナ珪酸ガラス、燐酸塩ガラスや、これらの強化ガラスが挙げられる。中でも価格の点で、ソーダ石灰ガラスが好ましい。さらに、耐衝撃性の観点から強化ガラスを使用することも好ましい。また、単結晶太陽電池や他結晶太陽電池などの近赤外光でも光電変換可能な太陽電池に使用されるカバーガラスについては、通常のソーダ石灰ガラスでは含有される2価の鉄イオンにより近赤外領域に吸収を持つため、鉄イオン含有量を低減することで光透過性を高め、さらに耐衝撃強度が優れた白板強化ガラスを用いることがより好ましくなる。上記白板強化ガラスのガラス組成中の全酸化鉄量は、Fe23換算で0.06重量%以下が好ましい。より好ましくは0.04重量%以下、さらに好ましくは0.02重量%以下である。かかる範囲より大きいときは、前述の通り鉄イオンによる近赤外光の吸収が顕著になる場合がある。さらに積層膜との密着性の観点で、カリウム、カルシウム、亜鉛の割合が少ない方が好ましい。上記カリウム、カルシウム、亜鉛の割合はXPSで測定でき、カリウム、カルシウム、及び亜鉛の含有量の総和が、ケイ素との元素比で0.1以下が好ましく、0.08以下がより好ましく、0.05以下がさらに好ましい。
上記強化ガラスには、任意の強化方法を適用することができる。例えば、ガラス強化方法として、物理強化、化学強化、積層強化が挙げられる。中でも物理強化は、熱処理による強化方法であり、本発明の積層膜形成に熱処理を有する場合には、強化工程と膜形成工程とを両立できる点から好ましい。
また透光基材に用いられる樹脂は透光性を有するものであれば、特に制限はないが、寸法安定性の観点から、ガラス転移点や耐熱温度の高いものが好ましい。具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート;三フッ化塩化エチレン樹脂、ポリビニリデンフルオライド、ポリビニルフルオライド等のホモポリマーや、四フッ化エチレン−パーフルオロビニルエーテル共重合体、四フッ化エチレン−六フッ化プロピレン共重合体、四フッ化エチレン−エチレン共重合体等のコーポリマ等のフッ素系フィルム;芳香族ジカルボン酸−ビスフェノール共重合芳香族ポリエステル等のポリアクリレートフィルム;ポリサルホン、ポリエーテルサルホン等の含イオウポリマーフィルム;ポリカーボネートフィルム;非晶質ポリオレフィン系樹脂、シクロオレフィン樹脂;ノルボルネン系樹脂;ポリメタクリレート樹脂;オレフィン−マレイミド共重合体、パラアラミド、フッ化ポリイミド、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、セルローストリアセテート等が挙げられる。
上記ガラス及び樹脂は、1種のみを単独で用いてもよく、また2種以上を任意の組み合わせで用いてもよい。
2−2.中心線平均表面粗さ、表面粗さの最大高さ、及び凹凸の平均間隔
上述したように、本発明の太陽電池用積層カバー基板においては、受光面側が所定の範囲内の中心線平均表面粗さを有するものである。太陽電池用積層カバー基板の受光面側の表面が上記中心線平均表面粗さを有するように、透光基材表面が凹凸を有するものとしてもよいが、例えば受光面側に形成される積層膜自体が凹凸を有し、上記中心線平均表面粗さや表面粗さの最大高さを実現するものである場合には、透光基材の中心線平均表面粗さや表面粗さの最大高さ等は特に限定されるものではない。また透光基材の受光面側と反対側の面の中心線平均表面粗さ等についても特に限定されるものではない。
透光基材の表面の凹凸によって太陽電池用積層カバー基板の受光面側の上記中心線平均表面粗さを実現する場合、すなわち透光基材表面に凹凸を形成し、その上に積層膜を形成することによって上記中心線平均表面粗さを実現する場合等における透光基材の受光面側の中心線平均表面粗さRaは通常0.2μm以上、好ましくは0.3μm以上である。また通常20μm以下であり、好ましくは15μm以下であり、より好ましくは10μm以下、特に好ましくは8μm以下である。かかる範囲より小さいと、積層膜形成後に、太陽電池用積層カバー基板表面の中心線平均表面粗さを上述した範囲内とすることが難しくなる。またかかる範囲を越えると積層膜との密着性低下、または透過率低下につながることで太陽電池モジュールの発電効率を低下させる場合がある。
また、表面粗さの最大高さRmaxは通常0.2μm以上であり、好ましくは0.3μm以上であり、より好ましくは0.5μm以上、特に好ましくは0.8μm以上である。また通常60μm以下、好ましくは50μm以下、より好ましくは40μm以下、特に好ましくは35μm以下である。かかる範囲を下回ると積層膜形成後に、太陽電池用積層カバー基板表面の表面粗さの最大高さを上述した範囲内とすることが難しくなる。また、かかる範囲を越えると積層膜との密着性が低下、または防汚性が損なわれる場合がある。
さらに、凹凸の平均間隔Smには特に制限はないが、防汚性と防眩性の観点から、通常0.005mm以上であり、好ましくは0.01mm以上、より好ましくは0.05mm以上である。また通常20mm以下であり、好ましくは15mm以下、より好ましくは12mm以下である。かかる範囲を下回ると汚れやすい表面となる場合があり、かかる範囲を超えると十分な防眩性を得られない場合がある。
上記中心線平均表面粗さRa、表面粗さの最大高さRmax、及び上記平均間隔Smは、太陽電池用積層カバー基板における測定方法と同様とすることができる。
ここで、透光基材表面に上記凹凸を形成する方法としては特に限定されず、例えば上記材料からなる基材にブラスト処理、エンボス加工、エッチング処理、スパッタリング処理、CVD処理、表面コーティング処理などの方法を適用することにより得られる。
2−3.透過率及びヘイズ
上記透光基材のD65光の全光線透過率は、可視光透過率は80%以上が好ましく、より好ましくは83%以上、さらに85%以上が太陽電池モジュールの発電効率の観点から好ましい。
また、ヘイズは通常5%以上、好ましくは10%以上、より好ましくは15%以上である。また通常97%以下であり、好ましくは95%以下、より好ましくは93%以下である。かかる下限以上のヘイズをもつことは、拡散透過光が存在することを意味し、その拡散透過光は太陽電池セル中での光路長が長いために、太陽電池の効率向上に寄与できる。しかしながら、かかる上限より大きなヘイズを持つ場合には、拡散透過光量があまりに多くなりすぎて、全光線透過率が減少する場合がある。
上記光線透過率、及び上記ヘイズは、上述した太陽電池用積層カバー基板における各値の測定方法と同様とすることができる。
2−4.屈折率
また、上記透光基材の屈折率は通常1.40以上であり、好ましくは1.43以上である。また通常1.7以下であり、好ましくは1.65以下、より好ましくは1.53以下である。かかる範囲に透光基材の屈折率があることで、透光基材の種類によらず、後述する所定の屈折率を有する積層膜がより高い反射防止効果を示すことができる。また透光基材がガラスの場合、かかる範囲を超えるガラスは光学用途が多く、高価格である場合がある。透光基材が樹脂の場合は、かかる範囲を超える樹脂は限定されるため、太陽電池用積層カバー基板としての制約を受ける場合がある。上記屈折率の測定方法としては分光エリプソメトリー、プリズムカプラーなどが挙げられる。
2−5.サイズ
さらに、上記透光基材の面積は、本発明の太陽電池用積層カバー基板の面積に応じて適宜選択される。また、上記透光基材の厚みは、機械的強度およびガスバリア性の観点から通常0.05mm以上であり、好ましくは0.1mm以上である。また、軽量化および光透過性の観点から通常80mm以下であり、好ましくは30mm以下、より好ましくは10mm以下である。
[3.積層膜]
次に、本発明の太陽電池用積層カバー基板に用いられる積層膜の材料及び各種特性について説明する。
3−1.材料
積層膜の材料としては、後述する屈折率を有する膜を形成可能なものであれば特に限定されず、樹脂などの有機層や、無機層、有機材料と無機材料との複合層が挙げられるが、寸法安定性や耐熱性の観点から、無機層、または有機材料と無機材料との複合層が好ましく、無機層がより好ましい。また、積層膜が透光基材の両面に形成される場合、それぞれ異なる材料からなる膜であってもよく、また同一の材料からなる膜であってもよい。
また各積層膜は、単層からなるものであってもよく、また2層以上が積層された複数層からなるものであってもよい。積層数には特に制限はないが、膜の安定性(内部歪み低減)の観点から、5層以下であること好ましく、3層以下がより好ましく、1層が特に好ましい。5層を越えると各層の界面で剥離等の現象が起き易く、膜安定性(信頼性)が低下する場合がある。なお、複数の層が積層されている場合、各層はそれぞれ同じ層であってもよく、また異なる層であってもよい。
積層膜の形成に用いられる無機材料としては、酸化ケイ素、酸化アルミなどの金属酸化物、窒化ケイ素などが挙げられる。これらは1種単独で、または2種以上を任意の比率及び組み合わせで用いることができる。中でも、膜安定性の観点から酸化ケイ素を用いることがより好ましい。
さらに、陽性元素を含む任意の化学組成の材料が含有されていてもよい。例えば、酸化イットリウム、酸化ランタン、酸化セリウム、酸化プラセオジム、酸化サマリウム、酸化ユウロピウム、酸化ガドリニウム、酸化テルビウム、酸化ジスプロシウム、酸化ホルミウム、酸化エルビウム、酸化ツリウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化クロム、酸化マンガン、酸化鉄、酸化コバルト、酸化ニッケル、酸化銅、酸化亜鉛、酸化カドミウム、酸化ガリウム、酸化インジウム、酸化ゲルマニウム、酸化スズ、酸化鉛等の遷移金属酸化物組成;酸化リチウム、酸化ナトリウム、酸化カリウム、酸化ルビジウム、酸化セシウム等の酸化アルカリ金属組成;酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム、酸化バリウム等の酸化アルカリ土類金属組成;酸化ホウ素組成;酸化アルミニウム組成;等を挙げることができる。この他、カルコゲナイドガラス組成、フッ化ガラス組成等の公知の無機ガラス組成、金、銀、銅などの金属ナノ粒子も挙げることができる。これらは1種単独で、または2種以上を任意の比率及び組み合わせで用いてもよい。
また積層膜の形成に用いられる有機材料としては、耐光性、耐久性に優れているものであれば、特に制限はないが、具体的にはポリイミド樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、シリコーン樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂などが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合又は積層して用いてもよい。
3−2.屈折率
反射防止の観点から、積層膜の屈折率は通常1.05以上であるが、積層膜の機械強度、防汚性(汚れによる反射防止性能の信頼性)の観点から、1.08以上であることが好ましく、より好ましくは1.1以上、特に好ましくは1.13以上である。また通常1.3以下であり、好ましくは1.28以下、より好ましくは1.26以下である。
一般的に、積層膜の屈折率が小さい場合、積層膜中に屈折率の低い「空気」や「フッ素」を含む。例えば、空気の屈折率(1.0)に近づける場合、積層膜内に空孔を有するもとすることが多く、上記下限より小さいと防汚性が著しく低下したり、機械強度が低下する可能性がある。一方、上記上限を越えると、汚れによる反射防止効果の低下が著しく、太陽電池の効率を上げることができない可能性がある。上記屈折率の測定方法としては分光エリプソメトリー、プリズムカプラー、反射分光膜厚計などが挙げられる。
ここで、積層膜の屈折率を上述した範囲とするためには、積層膜を多孔質構造とすることが有効であり、その空孔の構造には特に制限はないが、通常、空孔の構造として、トンネル状や独立空孔、またはそれらがつながった連結孔が挙げられる。ただし、上記空孔の構造としては連続的な空孔が好ましく、こうした連続的な空孔は電子顕微鏡により確認することができる。例えば、多孔質構造の積層膜を形成する方法としては、以下の方法が挙げられる。
(1)微粒子からなる積層体とすることで、粒子間に空隙を形成し、多孔質構造な積層体とする方法。
(2)積層体にエッチング処理を施すことで、多孔質構造な積層体とする方法。
(3)ポロゲン(空孔の元となるもの)を含む積層体を形成し、ポロゲンを空孔にする処理を加えることで、多孔質構造な積層体とする方法。なお、ポロゲンを空孔にする処理としては、超臨界二酸化炭素処理、溶剤処理、加熱処理、冷凍乾燥処理などが挙げられる。(4)上記の方法を組み合わせて、多孔質構造な積層体とする方法。
例えば後述する「B.太陽電池用積層カバー基板の製造方法」では、ポロゲンとして鋳型剤を含む所定のシリカ系前駆体を用いて積層膜を形成する方法を説明する。
3−3.中心線平均表面粗さ、表面粗さの最大高さ、及び凹凸の平均間隔
上述したように、本発明の太陽電池用積層カバー基板においては、受光面側の表面が所定の範囲内の中心線平均表面粗さを有するものである。積層膜が太陽電池用積層カバー基板の受光面側の最表層に位置する場合、積層膜表面が上記中心線平均表面粗さや最大高さを有するものとされる。この際、積層膜自体が凹凸を有し、上記中心線平均表面粗さや表面粗さの最大高さを実現するものであってもよく、また上記透光基材表面に形成された凹凸に沿って積層膜が形成され、上記中心線平均表面粗さや表面粗さの最大高さを実現するものであってもよい。
積層膜が、太陽電池用積層カバー基板の受光面側の最表層に形成される場合の積層膜の中心線平均表面粗さRaや、表面粗さの最大高さRmax、及び凹凸の平均間隔Smについては、上述した太陽電池用積層カバー基板の受光面側の上記各値と同一とする。
なお、受光面側と反対側の面に形成される積層膜の表面粗さについては特に制限はない。
3−4.最大膜厚
上記積層膜の最大膜厚は、反射防止性能及び防眩性の観点から、通常50nm以上、好ましくは60nm以上、より好ましくは70nm以上、特に好ましくは80nm以上である。また通常10μm以下であり、好ましくは5μm以下、より好ましくは1μm以下、特に好ましくは500nm以下である。なお、50nmを下回ると膜厚の均一な膜を形成することが困難となる場合があり、10μmを越えると凸凹表面に積層した際に均質な膜を得ることが困難となる場合がある。積層膜が複数層からなる場合には、各層の膜厚の総和が上記範囲内とされる。
また、例えば図2に示すような凹凸表面を有する積層膜である場合における上記積層膜の最大膜厚とは、積層膜の透光基材とは反対側の表面と透光基材との距離が最も大きい値をいうこととする。また最大膜厚の測定方法としては、分光エリプソメトリー、干渉膜厚計、反射分光膜厚計、接触式段差計、プリズムカプラー、太陽電池用積層カバー基板断面の電子顕微鏡観察が挙げられる。
[4.熱線遮断層]
熱線遮断層を形成する材料としては、透明誘電体の多層体、赤外線領域に吸収を有する材料、金属などが挙げられ、これらを1種単独で、または2種以上を任意の比率及び組み合わせで用いることができる。上記の中でも特に透明誘電体の多層体や赤外線領域に吸収を有する材料が好ましい。
また、上記熱線遮断層の膜厚としては、通常5nm以上、好ましくは15nm以上、より好ましくは100nm以上である。また、通常100μm以下、好ましくは50μm以下、より好ましくは5μm以下である。
また、波長1300nm〜2500nmまでの赤外線透過率は通常5%以上、好ましくは10%以上、さらに好ましくは15%以上であり、通常95%以下、好ましくは85%以下、より好ましくは70%以下である。下限値を下回ると、全光線透過率を低下させる場合があり、上限値を上回った場合、太陽電池における発電効率が低下する場合がある。なお、赤外線透過率は、分光光度計で測定した波長1300nm〜2500nmでの50nmおきの透過率の平均値と定義する。
上記透明誘電体の多層体としては、例えば、高屈折率層と低屈折率層を交互に積層したものとすることができる。また高屈折率層と低屈折率層の界面は完全に分かれていても、あるいは界面で高屈折率層と低屈折率層が混合した状態になっていてもよい。高屈折率層と低屈折率層の積層数は通常1層以上であればよく、通常5層以下、好ましくは3層以下である。高屈折率層1層でもよい。積層数が多くなると製造が困難となる場合があり、また太陽電池とした際、発電コストが増大する場合がある。
透明誘電体としては熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂、無機酸化物、これらの複合物などが挙げられる。また、金属としては、アルミニウム、金、銀、銅等が挙げられる。またさらに、赤外線領域に吸収を有する材料としては、In、等の金属化合物、色素などが挙げられる。これらは1種単独で、または2種以上を任意の比率及び組み合わせで用いることができる。金属や無機酸化物を用いた熱線遮断層の形成方法としては、真空蒸着法、スパッタ法、気相成長法、プラズマCVD法、塗布法等、いずれの方法であってもよい。
B.太陽電池用積層カバー基板の製造方法
次に、本発明における太陽電池用積層カバー基板の製造方法について説明する。本発明の太陽電池用積層カバー基板の製造方法は、上述した「A.太陽電池用積層カバー基板」の製造方法に関するものであり、所定の粘度を有するシリカ系前駆体から積層膜を形成する形成過程を有することを特徴とする。
本発明によれば、上記シリカ系前駆体を用いて積層膜を形成することから、湿式コーティング法を用いて太陽電池用積層カバー基板を形成することができ、従来一般的であった乾式コーティング法と比較して、コストや生産性、設備等の面で有利なものとすることが可能である。また、シリカ系前駆体を用いて積層膜を形成することから、屈折率が低い積層膜を形成することが可能となる。したがって、本発明により製造された太陽電池用積層カバー基板を用いることにより、太陽電池セル側に太陽光エネルギーをより多く取り込むことが可能となり、効率のよい太陽電池モジュールを実現することができる。
以下、本発明に用いられるシリカ系前駆体について説明し、その後、積層膜を形成する形成過程、及びその他の工程について説明する。
[1.シリカ系前駆体]
本発明でいうシリカ系前駆体とは、シリカを少なくとも含む積層膜を形成するために用いられる組成物をいうこととし、その種類は特に限定されないが、例えばテトラアルコキシシラン類、その加水分解物、及び部分縮合物からなる群(以下適宜、「テトラアルコキシシラン類群」という)より選ばれる少なくとも一種と、前記テトラアルコキシシラン類以外のアルコキシシラン類(以下適宜、「他のアルコキシシラン類」という)、その加水分解物、及び部分縮合物からなる群(以下適宜、「他のアルコキシシラン類群」という)より選ばれる少なくとも一種と、並びに/又は、前記テトラアルコキシシラン類群より選ばれる少なくとも一種及び前記他のアルコキシシラン類群より選ばれる少なくとも一種の部分縮合物(以下適宜、「特定部分縮合物」という)と、水と、有機溶媒と、触媒と、空孔を形成するための鋳型剤とを含むことが好ましい。
1−1.テトラアルコキシシラン類群
上記テトラアルコキシシラン類の種類に制限は無く、例えばテトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ(n−プロポキシ)シラン、テトライソプロポキシシラン、テトラ(n−ブトキシ)シラン等が好ましいものとして挙げられる。また、テトラアルコキシシラン類群の例としては、前記のテトラアルコキシシラン類の加水分解物及び部分縮合物(オリゴマー等)なども挙げられる。
ただし、テトラアルコキシシラン類は経時的に加水分解及び部分縮合を生じやすいため、テトラアルコキシシラン類のみを用意した場合でも、通常はそのテトラアルコキシシラン類の加水分解物及び部分縮合物がテトラアルコキシシラン類と共存することが多い。なお、テトラアルコキシシラン類群に属する化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
1−2.他のアルコキシシラン類群
他のアルコキシシラン類は、上述したテトラアルコキシシラン類に属さないアルコキシシランであれば、任意のものを使用できる。好適なものとして、例えばトリメトキシシラン、トリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン等のトリアルコキシシラン類;ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン等のジアルコキシシラン類;ビス(トリメトキシシリル)メタン、ビス(トリエトキシシリル)メタン、1,2−ビス(トリメトキシシリル)エタン、1,2−ビス(トリエトキシシリル)エタン、1,4−ビス(トリメトキシシリル)ベンゼン、1,4−ビス(トリエトキシシリル)ベンゼン、1,3,5−トリス(トリメトキシシリル)ベンゼン等の有機残基が2つ以上のトリアルコキシシリル基を結合したもの;3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシジルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロイロキシプロピルトリメトキシシラン、3−カルボキシプロピルトリメトキシシラン等のケイ素原子に置換するアルキル基が反応性官能基を有するもの;等が挙げられる。また、他のアルコキシシラン類群の例としては、前記の他のアルコキシシラン類の加水分解物及び部分縮合物(オリゴマー等)なども挙げられる。
上記の中でも、芳香族炭化水素基又は脂肪族炭化水素基を有するモノアルキルアルコキシシラン及びジアルキルアルコキシシランが好ましい。具体的には、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエチルシランなどが挙げられる。
ただし、他のアルコキシシラン類は経時的に加水分解及び部分縮合を生じやすいため、他のアルコキシシラン類のみを用意した場合でも、通常はその他のアルコキシシラン類の加水分解物及び部分縮合物が他のアルコキシシラン類と共存することが多い。
なお、他のアルコキシシラン類に属する化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
1−3.特定部分縮合物
特定部分縮合物としては、上述したテトラアルコキシシラン類群より選ばれる少なくとも一種と他のアルコキシシラン類群より選ばれる少なくとも一種とが部分縮合した部分縮合物であれば、任意のものを用いることができる。好適な例として、テトラアルコキシシラン類の好適な例として例示したものと、他のアルコキシシラン類の好適な例として例示したものとが部分縮合した部分縮合物が挙げられる。
なお、特定部分縮合物は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。さらに、特定部分縮合物は、特定部分縮合物のみで用いてもよいが、上述したテトラアルコキシシラン類及び他のアルコキシシラン類の一方又は両方と併用してもよい。
1−4.好ましい組み合わせ
上述したテトラアルコキシシラン類及び他のテトラアルコキシシラン類の組み合わせの中でも、特に好ましい組み合わせとしては、テトラアルコキシシラン類としてのテトラエトキシシランと、他のアルコキシシラン類としての芳香族炭化水素基又は脂肪族炭化水素基を有するモノアルキルアルコキシシラン又はジアルキルアルコキシシランとの組み合わせが挙げられる。この組み合わせによれば、均質且つ耐久性を有する積層膜が得られる。
1−5.アルコキシシラン類の含有比率
シリカ系前駆体中における上述したアルコキシシラン類の含有比率は、以下の条件(1)を満たすものとする。すなわち、全アルコキシシラン類由来のケイ素原子に対するテトラアルコキシシラン類由来のケイ素原子の割合が、通常0.3(mol/mol)以上、好ましくは0.35(mol/mol)以上、より好ましくは0.4(mol/mol)以上であり、また、通常0.7(mol/mol)以下、好ましくは0.65(mol/mol)以下、より好ましくは0.6(mol/mol)以下である(条件(1))。前記の割合が小さすぎる場合、得られる積層膜の疎水性は高くなるが、−O−Si−O−の結合が少なくなることで、積層膜の機械的強度が弱く、同様に耐水性も低下する可能性がある。一方、前記の割合が大きすぎる場合、積層膜中の残存シラノール基が多くなり、やはり耐水性が低下する可能性がある。
ここで、全アルコキシシラン類由来のケイ素原子とは、シリカ系前駆体に含有されるテトラアルコキシシラン類群、他のアルコキシシラン類群、及び特定部分縮合物が有するケイ素原子の数の合計をいう。また、テトラアルコキシシラン類由来のケイ素原子とは、シリカ系前駆体に含有されるテトラアルコキシシラン類群が有するケイ素原子の数と、特定部分縮合物が有するケイ素原子のうちテトラアルコキシシラン類群に対応する部分構造に属するケイ素原子の数との合計をいう。したがって、シリカ系前駆体がアルコキシシラン類以外にケイ素原子を有する化合物を含有していたとしても、当該化合物が有するケイ素原子は前記の割合の算出には関与しない。
なお、前記の全アルコキシシラン類由来のケイ素原子に対するテトラアルコキシシラン類由来のケイ素原子の割合は、Si−NMRにより測定することができる。
1−6.水
本発明に用いるシリカ系前駆体は、水を含有することが好ましく、水の純度は高いことが好ましい。通常は、イオン交換及び蒸留のうち、いずれか一方または両方の処理を施した水を用いる。ただし、より純度の高い積層膜を形成する場合には、蒸留水を用いることが好ましく、さらに蒸留後、イオン交換した超純水を用いることが好ましい。詳しくは、例えば0.01μm〜0.5μmの孔径を有するフィルターを通した水を用いればよい。
上記シリカ系前駆体における水の使用量は、以下の条件(2)を満たすようにする。すなわち、全アルコキシシラン類由来のケイ素原子に対する水の割合を、通常10(mol/mol)以上、好ましくは11(mol/mol)以上、より好ましくは12(mol/mol)以上とする(条件(2))。全アルコキシシラン類由来のケイ素原子に対する水の割合が前記の範囲よりも小さいと、ゾル−ゲル反応のコントロールが難しく、ポットライフも短く、極めて疎水的な表面を有する積層膜が得られる可能性がある。このため、積層膜の耐水性が低くなり、また、表面が荒れる可能性がある。
なお、水の量は、カールフィッシャー法(電量滴定法)により算出できる。
1−7.溶媒
シリカ系前駆体は、有機溶媒を含有することが好ましく、この有機溶媒の種類に制限は無い。中でも、有機溶媒としては、上述したアルコキシシラン類及び水を混和させる能力を有するものを1種以上用いることが好ましい。好適な有機溶媒の例を挙げると、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、t−ブタノール、1−ペンタノール等の炭素数1〜4の一価アルコール、炭素数1〜4の二価アルコール、グリセリン、ペンタエリスリトール等の多価アルコールなどのアルコール類;ジエチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、2−エトキシエタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート等の、前記アルコール類のエーテルまたはエステル化物;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N−エチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N−メチルアセトアミド、N−エチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、N−ホルミルモルホリン、N−アセチルモルホリン、N−ホルミルピペリジン、N−アセチルピペリジン、N−ホルミルピロリジン、N−アセチルピロリジン、N,N’−ジホルミルピペラジン、N,N’−ジホルミルピペラジン、N,N’−ジアセチルピペラジン等のアミド類;γ−ブチロラクトン等のラクトン類;テトラメチルウレア、N,N’−ジメチルイミダゾリジン等のウレア類;ジメチルスルホキシドなどが挙げられる。これらの中でも、含有するアルコキシシラン類がより安定な条件下で加水分解を行なうためには、アルコール類が好ましく、1価アルコールがより好ましい。
なお、有機溶媒は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。中でも、積層膜とした際に、屈折率が低く、かつ透光基材との密着性を良好なものとすることが可能であるという観点から、2種類以上の有機溶媒を併用し、その混合物を有機溶媒として使用することが好ましい。
ただし、シリカ系前駆体を塗布後、加熱処理して均質な積層膜を形成するには、加熱処理の際に、ある程度の硬化(アルコキシシラン類の縮合反応)と水の除去とが同時に行なわれることが好ましい。したがって、表面近傍又は内部に存在する水分をある程度除去できる温度領域で、シリカ系前駆体内の有機溶媒が揮発するような有機溶媒を用いることが好ましい。
したがって、シリカ系前駆体には、有機溶媒として所定範囲の沸点を有する有機溶媒を所定の高い割合で含有させるようにすることが好ましい。具体的には、以下の条件(3)を満たすようにすることが好ましい。すなわち、沸点が通常55℃以上、好ましくは60℃以上、より好ましくは65℃以上、また、通常140℃以下、好ましくは135℃以下、より好ましくは130℃以下の有機溶媒(以下適宜、「所定沸点溶媒」という)を少なくとも1種用いるとともに、全有機溶媒中に占める当該所定沸点溶媒の割合を、通常80重量%以上、好ましくは83重量%以上、より好ましくは85重量%以上とする(条件(3))。なお、当該割合の上限は通常100重量%である。前記の沸点が低すぎるとゾル−ゲル反応が不十分な状態でシリカ系前駆体が硬化し、本発明の積層膜が極めて耐水性に劣ることになる可能性がある。一方、前記の沸点が高すぎると、局所的にゾル−ゲル反応が進むことで、本発明の積層膜が不均質となり、表面性の低下や耐水性の低下につながる可能性がある。さらに、前記の所定沸点溶媒の割合が低い場合には、上記の利点が得られない可能性がある。このような観点から前記の所定沸点溶媒の例を挙げると、エタノール、1−プロパノール、t−ブタノール、2−プロパノール、1−ブタノール、1−ペンタノール、エチルアセテートなどが挙げられる。したがって、上記の有機溶媒としては、これらの中から選ばれる少なくとも一種を用いることが好ましい。
また、有機溶媒全体の使用量は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。ただし、全アルコキシシラン類由来のケイ素原子に対して、通常0.01mol/mol以上、中でも0.1mol/mol以上、特には1mol/mol以上が好ましく、また、通常100mol/mol以下、中でも70mol/mol以下、特には20mol/mol以下が好ましい。有機溶媒の使用量が少なすぎると積層膜の表面性が低下する可能性があり、多すぎると積層膜を基板上に膜として形成した場合に膜質が基板の表面エネルギーに影響されやすくなる可能性がある。
1−8.触媒
シリカ系前駆体は、触媒を含有することが好ましい。触媒は、上述したアルコキシシラン類の加水分解および脱水縮合反応を促進させる物質を任意に用いることができる。
その例を挙げると、塩酸、硝酸、硫酸、ギ酸、酢酸、シュウ酸、マレイン酸などの酸類;アンモニア、ブチルアミン、ジブチルアミン、トリエチルアミン等のアミン類;ピリジンなどの塩基類;アルミニウムのアセチルアセトン錯体などのルイス酸類;などが挙げられる。
また、触媒の例としては、金属キレート化合物も挙げられる。この金属キレート化合物の金属種としては、例えば、チタン、アルミニウム、ジルコニウム、スズ、アンチモン等が挙げられる。金属キレート化合物の具体例としては、以下のようなものが挙げられる。
アルミニウム錯体としては、例えば、ジ−エトキシ・モノ(アセチルアセトナート)アルミニウム、ジ−n−プロポキシ・モノ(アセチルアセトナート)アルミニウム、ジ−イソプロポキシ・モノ(アセチルアセトナート)アルミニウム、ジ−n−ブトキシ・モノ(アセチルアセトナート)アルミニウム、ジ−sec−ブトキシ・モノ(アセチルアセトナート)アルミニウム、ジ−tert−ブトキシ・モノ(アセチルアセトナート)アルミニウム、モノエトキシ・ビス(アセチルアセトナート)アルミニウム、モノ−n−プロポキシ・ビス(アセチルアセトナート)アルミニウム、モノイソプロポキシ・ビス(アセチルアセトナート)アルミニウム、モノ−n−ブトキシ・ビス(アセチルアセトナート)アルミニウム、モノ−sec−ブトキシ・ビス(アセチルアセトナート)アルミニウム、モノ−tert−ブトキシ・ビス(アセチルアセトナート)アルミニウム、トリス(アセチルアセトナート)アルミニウム、ジエトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)アルミニウム、ジ−n−プロポキシ・モノ(エチルアセトアセテート)アルミニウム、ジイソプロポキシ・モノ(エチルアセトアセテート)アルミニウム、ジ−n−ブトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)アルミニウム、ジ−sec−ブトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)アルミニウム、ジ−tert−ブトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)アルミニウム、モノエトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、モノ−n−プロポキシ・ビス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、モノイソプロポキシ・ビス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、モノ−n−ブトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、モノ−sec−ブトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、モノ−tert−ブトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、トリス(エチルアセトアセテート)アルミニウム等のアルミニウムキレート化合物等を挙げることができる。
チタン錯体としては、トリエトキシ・モノ(アセチルアセトナート)チタン、トリ−n−プロポキシ・モノ(アセチルアセトナート)チタン、トリイソプロポキシ・モノ(アセチルアセトナート)チタン、トリ−n−ブトキシ・モノ(アセチルアセトナート)チタン、トリ−sec−ブトキシ・モノ(アセチルアセトナート)チタン、トリ−tert−ブトキシ・モノ(アセチルアセトナート)チタン、ジエトキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタン、ジ−n−プロポキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタン、ジイソプロポキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタン、ジ−n−ブトキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタン、ジ−sec−ブトキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタン、ジ−tert−ブトキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタン、モノエトキシ・トリス(アセチルアセトナート)チタン、モノ−n−プロポキシ・トリス(アセチルアセトナート)チタン、モノイソプロポキシ・トリス(アセチルアセトナート)チタン、モノ−n−ブトキシ・トリス(アセチルアセトナート)チタン、モノ−sec−ブトキシ・トリス(アセチルアセトナート)チタン、モノ−tert−ブトキシ・トリス(アセチルアセトナート)チタン、テトラキス(アセチルアセトナート)チタン、トリエトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)チタン、トリ−n−プロポキシ・モノ(エチルアセトアセテート)チタン、トリイソプロポキシ・モノ(エチルアセトアセテート)チタン、トリ−n−ブトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)チタン、トリ−sec−ブトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)チタン、トリ−tert−ブトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)チタン、ジエトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタン、ジ−n−プロポキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタン、ジイソプロポキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタン、ジ−n−ブトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタン、ジ−sec−ブトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタン、ジ−tert−ブトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタン、モノエトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)チタン、モノ−n−プロポキシ・トリス(エチルアセトアセテート)チタン、モノイソプロポキシ・トリス(エチルアセトアセテート)チタン、モノ−n−ブトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)チタン、モノ−sec−ブトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)チタン、モノ−tert−ブトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)チタン、テトラキス(エチルアセトアセテート)チタン、モノ(アセチルアセトナート)トリス(エチルアセトアセテート)チタン、ビス(アセチルアセトナート)ビス(エチルアセトアセテート)チタン、トリス(アセチルアセトナート)モノ(エチルアセトアセテート)チタン等を挙げることができる。
上述したものの中でも、アルコキシシラン類の加水分解および脱水縮合反応をより容易に制御するためには、酸類若しくは金属キレート化合物が好ましく、酸類がさらに好ましい。なお、触媒は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
中でも、凸凹表面への造膜性、耐クラック性の観点から、シリカ系前駆体のpHを2以下にすることが好ましく、具体的には塩酸、硝酸、硫酸、ギ酸、酢酸、シュウ酸、マレイン酸などの酸類が好ましい。
触媒の使用量は本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。ただし、アルコキシシラン類に対して、通常0.001mol倍以上、中でも0.003mol倍以上、特には0.005mol倍以上が好ましく、また、通常0.8mol倍以下、中でも0.5mol倍以下、特には0.1mol倍以下が好ましい。触媒の使用量が少なすぎると加水分解反応が適度に進まず、製造後に積層膜中にシラノール基などの活性基が残存しやすくなり、積層膜の耐水性が低下する可能性があり、多すぎると反応制御が困難になり、製造中に触媒濃度が更に高くなることで、積層膜の表面性が低下する可能性がある。
1−9.鋳型剤
本発明により形成される積層膜中に空孔を形成したり、空孔量を制御するためには、鋳型剤を混合することが有効である。鋳型剤としては溶媒以外の分解温度が130℃以上の化合物であれば、特に制限はないが、屈折率制御の観点から、セチルトリメチルアンモニウムクロライドなどの界面活性剤、ポリエチレングリコールなどの高分子種が好ましく、シリカ系前駆体の安定性の観点から非イオン性高分子がより好ましい。さらに、アルコキシシラン類との相溶性の観点からエチレンオキサイド部位を有する化合物が好ましい。なお、主鎖骨格構造は特に限定されることはない。
主鎖骨格構造の具体例を挙げると、ポリエーテル、ポリエステル、ポリウレタン、ポリオレフィン、ポリカーボネート、ポリジエン、ポリビニルエーテル、ポリスチレン、及びそれらの誘導体などが挙げられる。中でも、ポリエーテルを構成成分とする高分子が好ましい。その具体例としては、ポリエチレングリコール(以下適宜、「PEG」という)、ポリプロピレングリコール、ポリイソブチレングリコールなどが挙げられる。中でも、ポリエチレンオキサイド−ポリプロピレンオキサイド−ポリエチレンオキサイド トリブロックポリマー、及び/又は、ポリエチレングリコールが特に好ましい。なお、上記鋳型剤は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
また、上記鋳型剤の使用量は本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。ただし、全アルコキシシラン類由来のケイ素原子に対する本発明に係る鋳型剤の割合が、通常0.001(mol/mol)以上、好ましくは0.002(mol/mol)以上、より好ましくは0.003(mol/mol)以上、また、通常0.05(mol/mol)以下、好ましくは0.04(mol/mol)以下、より好ましくは0.03(mol/mol)以下となるようにする。前記の割合が小さすぎると形成される積層膜が十分な多孔質構造を形成することができず、低屈折率を実現できない可能性がある。一方、前記の割合が大きすぎる場合には、積層膜を成形した際に表面に上記鋳型剤が過剰に析出し、表面を荒らす可能性がある。
さらに、不純物を減らす観点から上記鋳型剤は、カチオンを含まないことが好ましい。また、カチオンを含んでいたとしても、カチオンの量は少ないことが好ましい。具体的な範囲を挙げると、シリカ系前駆体中の鋳型剤の量は、10重量%以下が好ましく、より好ましくは5重量%以下、特に好ましくは1重量%以下である。カチオン成分が残存すると、透光基材が劣化したり、形成される積層膜が着色したりする可能性がある。
1−10.その他の物質
本発明の積層膜を製造することが可能である限り、シリカ系前駆体には、上述したアルコキシシラン類、水、有機溶媒、触媒及び鋳型剤以外の成分を含有していても良い。また、当該成分は1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
1−11.シリカ系前駆体の物性
上記シリカ系前駆体のpHは、例えば凸凹を有する透光基材表面への造膜性や、耐クラック性の観点から、通常pH2以下であり、好ましくは1.8以下、より好ましくは1.5以下である。
また、シリカ系前駆体の粘度は、造膜性の観点から、通常0.05Pas・sec以下であり、好ましくは0.03Pas・sec以下、より好ましくは0.02Pas・sec以下である。上記粘度は、回転粘度計により測定される。
[2.積層膜を形成する形成過程]
本発明において、積層膜を形成する方法としては、上記シリカ系前駆体を用いる方法であれば特に制限は無い。通常、シリカ系前駆体調製工程、塗布工程、焼成工程、冷却工程の順で得ることができる。また、前記工程に加え、透光基材の表面処理工程や、積層膜のシリル化処理工程等を行なってもよい。
2−1.シリカ系前駆体調製工程
シリカ系前駆体調製工程では、シリカ系前駆体を構成する上記各成分を混合して、シリカ系前駆体を調製する。この際、各成分の混合の順番に制限は無い。また、各成分は、全量を一回で混合しても良く、2回以上に分けて連続又は断続的に混合しても良い。
ただし、従来、制御困難とされているゾル−ゲル反応を制御して、シリカ系前駆体をより工業的に調製するためには、以下の要領で混合することが好ましい。即ち、アルコキシシラン類、水、触媒及び溶媒を混合し、その混合物を熟成させることでアルコキシシラン類をある程度加水分解及び脱水縮合させる。その後、上記混合物に鋳型剤を混合して、シリカ系前駆体を調製する。これにより、ゾル−ゲル反応条件下で、アルコキシシラン類と鋳型剤との親和性を維持することができる。なお、熟成は、前記の混合物と鋳型剤とを混合した後で行なってもよい。
前記の熟成の際、アルコキシシラン類の加水分解・脱水縮合反応を進めるためには、加熱することが好ましい。加熱条件として、用いる溶媒の沸点を超えなければ特に制限は無いが、通常40℃以上、中でも50℃以上、特には60℃以上とすることが好ましい。加熱温度が低すぎると反応時間が極度に長くなり、生産性が低下する可能性がある。一方、加熱温度の上限は、100℃以下が好ましく、95℃以下がより好ましい。100℃を超えるとシリカ系前駆体中の水が沸騰し、分解・脱水縮合反応を制御できなくなる可能性がある。
また、熟成時間に制限は無いが、通常10分以上、好ましくは20分以上、より好ましくは30分以上、また、通常10時間以下、好ましくは8時間以下、より好ましくは5時間以下である。熟成時間が短すぎると均一に熟成反応を進めることが難しくなる可能性があり、長すぎると溶媒の揮発が無視できなくなり、組成比が変化してシリカ系前駆体の安定性が低くなったり、得られる積層膜の耐水性が低下する可能性がある。
さらに、熟成時の圧力条件に制限は無いが、通常は常圧で熟成を行なう。圧力が変化すると溶媒の沸点も変化し、熟成中の溶媒が揮発(蒸発)することで、組成比が変化して、シリカ系前駆体の安定性が低くなったり、高い耐水性を有する積層膜が得られない可能性がある。
また、熟成の後、膜化工程の前にシリカ系前駆体は有機溶媒を更に混合して希釈することが好ましい。これにより、シリカ系前駆体内でのゾル−ゲル反応速度を低下させることができ、シリカ系前駆体のポットライフを長く維持することが可能となる。
2−2.透光基材を表面処理する工程
シリカ系前駆体を塗布する前に、透光基材表面を洗浄することが好ましい。また透光基材表面を洗浄するだけではなく、必要に応じて、透光基材表面のシリカ系前駆体を塗布する領域に表面処理を施してもよい。
透光基材の洗浄方法としては、例えば化学的な方法として、フッ酸、硫酸、塩酸、硝酸、燐酸等の酸類、水酸化ナトリウム水溶液等のアルカル類、過酸化水素と濃硫酸、塩酸、アンモニア等の混合液への浸漬、物理的方法として、真空中での加熱処理、イオンスパッタリング、UVオゾン処理、コロナ処理、プラズマ処理などが挙げられる。また表面処理では、加熱、濃硫酸、塩酸、硝酸等の強酸類への浸漬が挙げられる。
さらに積層膜との密着性に劣る透光基材に対しては、界面活性剤、高分子電解質などの吸着層を形成する方法がある。これらの方法は1種のみ、または2種以上を任意の組み合わせで行なうことができる。
2−3.シリカ系前駆体の塗布工程
シリカ系前駆体の塗布方法としては、湿式法を用いることができ、特に制限はされないが、例えば、スピンコート法、スプレーコート法、ディップコート法、カーテンコート法、インクジェット法、ロールコート法、ブレードコート法、スクリーン印刷法、ダイコート法などの方法が用いられる。
中でも膜の均質性の観点で、スピンコート法、スプレーコート法、ディップコート法、カーテンコート法、ロールコート法、ダイコート法が好ましく、スピンコート法、ディップコート法、スプレーコート法、ダイコート法が特に好ましい。
例えば上記ダイコート等の流延法でシリカ系前駆体を膜化する場合、流延速度に制限は無いが、通常0.1m/分以上、好ましくは0.5m/分以上、より好ましくは1m/分以上、また、通常1000m/分以下、好ましくは700m/分以下、より好ましくは500m/分以下である。流延速度が遅すぎると膜厚にムラができる可能性があり、速すぎると透光基材とシリカ系前駆体との濡れ性の制御が困難になる可能性がある。
また、ディップコート法においては、任意の速度で、透光基材を塗布液に浸漬し引き上げればよい。この際の引き上げ速度に制限は無いが、通常0.01mm/秒以上、好ましくは0.05mm/秒以上、より好ましくは0.1mm/秒以上、また、通常50mm/秒以下、好ましくは30mm/秒以下、より好ましくは20mm/秒以下である。引き上げ速度が遅すぎたり速すぎたりすると、積層膜の膜厚にムラができる可能性がある。一方、透光基材を塗布液中に浸漬する速度に制限はないが、通常は、引き上げ速度と同程度の速度で透光基材を塗布液中に浸漬することが好ましい。さらに、透光基材を塗布液中に浸漬してから引き上げるまでの間、適当な時間浸漬を継続してもよい。この浸漬を継続する時間に制限は無いが、通常1秒以上、好ましくは3秒以上、より好ましくは5秒以上、また、通常48時間以下、好ましくは24時間以下、より好ましくは12時間以下である。この時間が短すぎると透光基材への密着性に劣る可能性があり、長すぎると浸漬中に膜が形成されて平滑性に劣る可能性がある。
さらに、スピンコート法でシリカ系前駆体を塗布形成する場合、回転速度は、通常10回転/分以上、好ましくは50回転/分以上、より好ましくは100回転/分以上、また、通常100000回転/分以下、好ましくは50000回転/分以下、より好ましくは10000回転/分以下である。回転速度が遅すぎると、形成される積層膜の膜厚にムラができる可能性があり、速すぎると溶媒の気化が進みやすくなりアルコキシシラン類の加水分解等の反応が十分進まず耐水性に劣る可能性がある。
ただし、本発明の製造方法におけるシリカ前駆体の塗布工程では、相対湿度が通常20%以上、好ましくは25%以上、より好ましくは30%以上、また、通常85%以下、好ましくは80%以下、より好ましくは75%以下の環境下において塗布を行う。塗布工程での相対湿度を前記の範囲にすることにより、表面平滑性の高い膜が得られる。
塗布工程における雰囲気に制限は無い。例えば、空気雰囲気中で膜化を行なっても良く、例えばアルゴン等の不活性雰囲気中で塗布を行なってもよい。
また塗布工程を行なう際の温度に制限は無いが、通常0℃以上、好ましくは10℃以上、より好ましくは20℃以上、また、通常100℃以下、好ましくは80℃以下、より好ましくは70℃以下、更に好ましくは60℃以下、中でも好ましくは50℃以下、特に好ましくは40℃以下である。塗布の際の温度が低すぎると溶媒が気化しにくくなり膜の表面平滑性が低下する可能性があり、高すぎるとアルコキシシラン類の硬化が急速に進み膜歪みが大きくなる可能性がある。
塗布工程を行なう際の圧力に制限は無いが、通常0.05MPa以上、好ましくは0.08MPa以上、より好ましくは0.1MPa以上、また、通常0.3MPa以下、好ましくは0.2MPa以下、より好ましくは0.15MPa以下である。圧力が低すぎると溶媒が気化しやすくなり膜化後のレベリング効果が得られず膜の平滑性が低下する可能性があり、高すぎると溶媒が気化しにくくなり膜の表面性が低下する可能性がある。
ところで、ディップコート法とスピンコート法とでは、乾燥速度に違いがあり、塗布直後の膜の安定構造に僅かな違いが生じることがある。これは膜化中の雰囲気を変えることで調整する事ができる。また、前記の膜の安定構造の僅かな違いは、透光基材の表面処理によっても対処する事ができる。
2−4.焼成工程
上記シリカ系前駆体を加熱処理する方式は特に制限されないが、例えば加熱炉(ベーク炉)内に透光基材を配置してシリカ系前駆体の膜を加熱する炉内ベーク方式、プレート(ホットプレート)上に透光基材を搭載しそのプレートを介してシリカ系前駆体の膜を加熱するホットプレート方式、前記透光基材の上面側及び/又は下面側にヒーターを配置し、ヒーターから電磁波(例えば赤外線)を照射して、シリカ系前駆体の膜を加熱する方式、などが挙げられる。
加熱温度に制限は無く、シリカ系前駆体を硬化できれば任意であるが、通常100℃以上、好ましくは230℃以上、より好ましくは300℃以上、さらに好ましくは320℃以上、特に好ましくは350℃以上、また、通常800℃以下、より好ましくは550℃以下、さらに好ましくは450℃以下である。加熱温度が低すぎると得られる膜(すなわち積層膜)の屈折率が下がらなかったり、着色したりする可能性がある。一方、加熱温度が高すぎると透光基材と積層膜との線膨張が異なるため、剥離等が発生する可能性がある。なお、加熱工程において、前記の加熱温度で連続的に加熱を行なってもよいが、断続的に加熱を行なうようにしてもよい。
加熱を行なう際、昇温速度は本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常1℃/分以上、好ましくは10℃/分以上、また、通常500℃/分以下、好ましくは300℃/分以下で昇温する。昇温速度が遅すぎると膜が緻密化し、膜歪みが大きくなって耐水性が低下する可能性があり、昇温速度が速すぎると膜歪みが大きくなって耐水性が低下する可能性がある。
加熱を行なう時間は本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常30秒以上、好ましくは1分以上、より好ましくは2分以上、また、通常5時間以下、好ましくは2時間以下、より好ましくは1時間以下である。加熱時間が短すぎると十分に鋳型剤を取り除けなくなる可能性があり、長すぎるとアルコキシシランの反応が進み、透光基材との密着性が低下する可能性がある。
加熱を行なう際の圧力は本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、減圧環境とすることが好ましい。アルコキシシランの反応よりも溶媒の気化が進行し、耐水性に劣る膜になる可能性があるためである。この観点から、加熱工程では、圧力を、通常0.2MPa以下、好ましくは0.15MPa以下、より好ましくは0.1MPa以下とする。一方、圧力の下限に制限は無いが、通常10−4MPa以上、好ましくは10−3MPa以上、より好ましくは10−2MPa以上である。圧力が低すぎるとアルコキシシランの反応よりも溶媒の気化が進行し、耐水性に劣る膜になる可能性がある。
加熱を行なう際の雰囲気は本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、中でも、乾燥ムラの生じにくい環境が好ましい。その中でも、大気雰囲気下で加熱を行なうことが好ましい。また、不活性ガス処理を行ない、不活性雰囲気下で乾燥を行なうことも可能である。
2−5.冷却工程
冷却工程では、加熱工程で高温となった積層膜を冷却する。この際、冷却速度は特に制限はないが、通常0.1℃/分以上、好ましくは0.5℃/分以上、より好ましくは0.8℃/分以上、更に好ましくは1℃/分以上、また、通常50℃/分以下、好ましくは30℃以下、より好ましくは20℃/分以下、更に好ましくは10℃/分以下である。冷却速度が遅すぎると製造コストが高くなる可能性があり、速すぎると透光基材と積層膜との線膨張が異なることによる膜質の低下が予想される。
また、冷却工程における雰囲気は本発明の効果を著しく損なわない限り任意であり、例えば、真空環境、不活性ガス環境であってもよい。さらに、温度及び湿度に制限は無いが、通常は常温・常湿で冷却する。
2−6.シリル化処理
得られた積層膜をシリル化剤で処理することで、より機能性に優れた表面にする事ができる。シリル化剤で処理することにより、積層膜に疎水性が付与され、コンタミネーションにより空孔が汚染されるのを防ぐことができる。
シリル化剤としては、例えば、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルエトキシシラン、メチルジエトキシシラン、ジメチルビニルメトキシシラン、ジメチルビニルエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン等のアルコキシシラン類、トリメチルクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、メチルトリクロロシラン、メチルジクロロシラン、ジメチルクロロシラン、ジメチルビニルクロロシラン、メチルビニルジクロロシラン、メチルクロロジシラン、トリフェニルクロロシラン、メチルジフェニルクロロシラン、ジフェニルジクロロシランなどのクロロシラン類、ヘキサメチルジシラザン、N,N’−ビス(トリメチルシリル)ウレア、N−トリメチルシリルアセトアミド、ジメチルトリメチルシリルアミン、ジエチルトリエチルシリルアミン、トリメチルシリルイミダゾールなどのシラザン類、(3,3,3−トリフルオロプロピル)トリメトキシシラン、(3,3,3−トリフルオロプロピル)トリエトキシシラン、ペンタフルオロフェニルトリメトキシシラン、ペンタフルオロフェニルトリエトキシシラン等のフッ化アルキル基やフッ化アリール基を有するアルコキシシラン類などが挙げられる。これらは1種または2種以上を任意の比率及び組み合わせで用いることができる。
またシリル化は、シリル化剤を積層膜に塗布したり、シリル化剤中に積層膜を浸漬したり、積層膜をシリル化剤の蒸気中に曝したりすることにより行うことができる。
3.その他の工程
本発明の製造方法では、本発明の効果を著しく損なわない限り、上述した積層膜の形成過程における各工程の工程前、工程中及び工程後の任意の段階で、任意の工程を行なってもよい。また上記積層膜の形成過程以外にも、必要に応じて任意の段階で任意の工程を行うことができる。
なお、本発明の製造方法では本発明の積層膜を膜状に形成したが、膜状以外の形状に成形するのであれば、塗布工程の代わりに所定の形状に成形する成形工程を行なえばよい。
C.太陽電池モジュール
次に、本発明の太陽電池モジュールについて説明する。本発明でいう太陽電池セルとは、光起電力効果を利用して、光エネルギーを電力に変換することのできる素子または装置であり、太陽電池モジュールとは、一つまたは複数個の太陽電池セルに保護部材を備えた構造体のことをいう。
本発明の太陽電池モジュールは、上記「A.太陽電池用積層カバー基板」を有することを特徴とするものである。
本発明によれば、上記太陽電池用積層カバー基板を有することから、太陽光エネルギーの反射が少なく、太陽光エネルギーを太陽電池セル内に極めて効率よく取り込むことが可能となる。したがって、発電効率の高い太陽電池モジュールとすることができる。また上記太陽電池用積層カバー基板は防眩性が高いことから、本発明の太陽電池モジュールを屋根や壁面に用いた場合に、反射光公害が生じないものとすることができるという利点も有する。
本発明の太陽電池モジュールに使用できる太陽電池セルの例として、単結晶シリコン太陽電池、多結晶シリコン太陽電池、アモルファスシリコン太陽電池などのシリコン系太陽電池、CIS系太陽電池、CIGS系太陽電池、GaAs系太陽電池などの化合物太陽電池、色素増感太陽電池、有機薄膜太陽電池、また多接合型太陽電池、HIT太陽電池が挙げられるが、特にこれらに限定するものではない。
太陽電池モジュールの構造としては、様々な種類が検討されているが、本発明の太陽電池モジュールとしては、特に構造は限定されない。代表的な一例として、スーパーストレート方式が挙げられる。スーパーストレート方式の太陽電池モジュールの具体的な構造としては、直列もしくは並列接続された複数個の太陽電池セルを、その受光面側に表面保護部材として本発明の太陽電池用積層カバー基板を配置し、非受光面側に裏面保護部材として耐候性フィルムを配置する。また各太陽電池セル間に透明な充填材を封入させる。
上記耐候性フィルムとしては、例えばアルミニウムなどをフッ素系樹脂で挟んだ多層フィルムが用いられる。また透明充填材としては、例えばEVA(エチレン−酢酸ビニル共重合体)やポリビニルブチラールなどが挙げられる。また太陽電池セルの構造としては、例えば一対の電極層間に半導体層を挟んだ構造とすることができる。太陽電池セルの種類は特に限定されず、汎用されている太陽電池セルを任意に用いることができる。
また、基板一体型太陽電池モジュールも他の代表例として挙げられる。基板一体型太陽電池モジュールの構造としては、例えば本発明の太陽電池用積層カバー基板上に透明電極層、薄膜半導体層、および裏面電極層を順次積層し、パターニングした構造とすることができる。透明電極層としては、例えばITO、IZO(酸化インジウム亜鉛)などの酸化物、金属薄膜が用いられる。また薄膜半導体層としては、例えばアモルファスシリコン、薄膜結晶シリコン、それらの複合体などが用いられる。またさらに、裏面電極層としては、例えばアルミニウム、銀などの導電薄膜が用いられる。
本発明の太陽電池モジュールでは、そのモジュール構造によらず太陽電池用積層カバー基板は受光面側の保護部材として、上述した表面粗さを有する面が、受光面側(モジュール外側)に向けた状態で用いられる。なお、上記太陽電池モジュールにおいて、上記太陽電池用積層カバー基板が最表層となるような構成としてもよいが、例えば太陽電池用積層カバー基板のさらに外側に防汚層等の機能層を設けてもよい。
上記機能層としては、例えば、熱線遮断層、紫外線劣化防止層、親水性層、防汚性層、防曇層、防湿層、粘着層、ハード層、導電性層、反射層、アンチグレア層、拡散層などが挙げられ、これらは1層単独で、または2層以上を任意の組み合わせで積層して用いることができる。本発明の太陽電池モジュールは特に、太陽光照射での発熱による太陽電池の発電効率低下を軽減するためには、熱線遮断層を有することが好ましい。
以下、本発明を実施例によって更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を逸脱しない限り、以下の実施例の記載に限定されるものではない。
なお、以下において、中心線平均表面粗さRa、及び表面粗さの最大高さRmaxは表面粗さ形状測定機((株)東京精密社製サーフコム570A)により、1走査距離30mmの条件で3回測定した平均値を算出した。
また、屈折率はJ.A.ウーラム社製分光エリプソメータにより測定した波長550nmでの値とする。
膜厚は、積層カバー基板の破断面を電子顕微鏡観察することで見積もった。
D65光の全光線透過率Ttはヘーズメータ(スガ試験機(株)製HZ−2)により測定した。なお、積層体を形成する前の透光基材の全光線透過率をTt_sub、太陽電池
用積層カバー基板の全光線透過率をTt_arとした。
反射率Rは、5°正反射付属装置(P/N132−0462)を装着した分光光度計((株)日立製作所製U−4000)により測定した。測定値の波長400〜800nm範囲における最大値をR−maxとする。
粘度は、レオメトリックス社製ARES−FRT100を用いて、せん断速度100sec-1での粘度測定により求めた。
(実施例1)
[シリカ系前駆体の調製]
テトラエトキシシラン1.70g、メチルトリエトキシシラン1.73g、及びエタノール(沸点78.3℃)0.58gを混合し、さらに水1.39g、触媒として0.3重量%の塩酸水溶液3.26gを加えて、60℃のウォーターバス中で30分、さらに室温で30分攪拌することで、混合物(A)を調製した。
次に、鋳型剤としてALDRICH社製ポリエチレンオキサイド−ポリプロピレンオキサイド−ポリエチレンオキサイドトリブロックポリマー(重量平均分子量5,800、エチレンオキサイド部位の割合は30重量%)0.61gをエタノール0.8gと混合して混合物(B)とした。混合物(B)に前記の混合物(A)を混合し、室温で60分撹拌し混合物(C)を調製した。
この混合物(C)10mlと、希釈溶媒として1−ブタノール(沸点117.3℃)10mlとを混合し、室温で30分撹拌した後、0.20μmのフィルター(ワットマンジャパン(株)社製)でろ過することで組成物(D)(シリカ系前駆体)を得た。
この組成物(D)において、全アルコキシシラン類(テトラエトキシシランとメチルトリエトキシシラン)由来のケイ素原子に対する、テトラエトキシシラン由来のケイ素原子、水、及び鋳型剤の割合は、それぞれ、0.46、14.4及び0.0059(mol/mol)である。
得られたシリカ系前駆体のpHは1、粘度は0.005Pas・secであった。
[太陽電池用積層カバー基板の製造]
平滑なガラス(中心線平均表面粗さRa=0.01μm、表面粗さの最大高さRmax=0.13μm)上に、前記シリカ系前駆体を500rpm、2分間の条件でスピンコーター(ミカサ(株)社製)でスピンコートし、450℃のホットプレートで2分焼成し、室温で5分冷却することで、積層膜の屈折率測定用基板を得た。得られた積層膜の屈折率は1.25であった。
次に、ブラスト処理したガラス(平均表面粗さRa=0.47μm、最大高さRmax=4.76μm、サイズ76mm×52mm)上に、前記シリカ系前駆体1mlを均一に滴下した。その後、500rpm、2分間の条件でスピンコーター(ミカサ(株)社製)でスピンコートし、450℃のホットプレート(アズワン(株)社製)上で2分間焼成し、室温で5分冷却することで、屈折率1.25の積層体を含む太陽電池用積層カバー基板を得た。得られた太陽電池用積層カバー基板の中心線平均表面粗さRaは0.49μm、表面粗さの最大高さRmaxは5.77μmであった。また、積層膜の最大膜厚は1.2μmであった。得られた太陽電池用積層カバー基板の全光線透過率Ttおよび反射率の結果は表1に記載する。
(実施例2)
実施例1と同様にシリカ系前駆体を調製した。その後、ブラスト処理したガラス(中心線平均表面粗さRa=1.11μm、表面粗さの最大高さRmax=11.73μm)上に前記シリカ系前駆体0.5mlを均一に滴下し、500rpm、2分間の条件で実施例1と同様にスピンコートし、450℃のホットプレートで2分焼成し、室温で5分冷却することで、太陽電池用積層カバー基板を得た。
実施例1と同様に積層膜の屈折率を測定したところ、得られた積層膜の屈折率は1.25であった。また太陽電池用積層カバー基板の中心線平均表面粗さRaは1.09μm、表面粗さの最大高さRmaxは10.60μmであった。また、積層膜の最大膜厚は400nmであった。得られた太陽電池用積層カバー基板の全光線透過率Ttおよび反射率の結果は表1に記載する。
(実施例3)
実施例1と同様にシリカ系前駆体を調製した。その後、ガラス(中心線平均表面粗さRa=2.55μm、表面粗さの最大高さRmax=22.89μm)上に前記シリカ系前駆体1mlを均一に滴下し、500rpm、2分間の条件で実施例1と同様にスピンコートし、450℃のホットプレートで2分焼成し、室温で5分冷却することで、太陽電池用積層カバー基板を得た。
実施例1と同様に積層膜の屈折率を測定したところ、得られた積層膜の屈折率は1.25であった。また太陽電池用積層カバー基板の中心線平均表面粗さRaは2.51μm、表面粗さの最大高さRmaxは24.45μmであった。また、積層膜の最大膜厚は600nmであった。得られた太陽電池用積層カバー基板の全光線透過率Ttおよび反射率の結果を表1に記載する。
(比較例1)
実施例1と同様の操作により、実施例1の組成物(D)を得た。この組成物(D)4mlと、希釈溶媒として1−ブタノール6mlとを混合することで、シリカ系前駆体を調製した。
得られたシリカ系前駆体のpHは1、粘度は0.003Pas・secであった。その後、処理なしガラス(中心線平均表面粗さRa=0.01μm、表面粗さの最大高さRmax=0.13μm)上に前記シリカ系前駆体1mlを均一に滴下し、500rpm、2分間の条件で実施例1と同様にスピンコートし、450℃のホットプレートで2分焼成し、室温で5分冷却することで、太陽電池用積層カバー基板を得た。
得られた積層膜の屈折率は1.25であり、その積層カバー基板の中心線平均表面粗さRaは0μm、表面粗さの最大高さRmaxは0.16μmであった。また、積層膜の最大膜厚は160nmであった。得られた太陽電池用積層カバー基板の全光線透過率Ttおよび反射率の結果を表1に記載する。
Figure 2013070093
表1の通り、実施例1〜3では可視光波長域(400〜800nm)での正反射R−maxが十分に小さいことから優れた防眩性を有し、かつ全光線透過率Ttも著しく大きく向上しており、防眩性と反射防止性を両立する優れた性能をもつことがわかる。
本発明は産業上の任意の太陽電池に用いることが可能であるが、特に本発明によれば、防眩性および反射防止機能を有するものであることから、例えば屋根や壁面等に用いられる太陽電池に好適である。
1 透光基材
2 積層膜

Claims (10)

  1. 透光基材の片面及び/または両面に、屈折率が1.05〜1.3である積層膜が積層された太陽電池用積層カバー基板であって、
    受光面側の中心線平均表面粗さRaが0.3μm〜10μmであり、かつ表面粗さの最大高さRmaxが0.1μm〜50μmであり、
    前記透光基材の受光面側の表面粗さの最大高さRmaxが11.73〜50μmである
    ことを特徴とする太陽電池用積層カバー基板。
  2. 前記積層膜の最大膜厚が50nm〜10μmである
    ことを特徴とする請求項1に記載の太陽電池用積層カバー基板。
  3. 前記透光基材が強化ガラスである
    ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の太陽電池用積層カバー基板。
  4. 面積が0.1m以上である
    ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の太陽電池用積層カバー基板。
  5. D65光の全光線透過率が80%以上である
    ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の太陽電池用積層カバー基板。
  6. 熱線遮断層を有する
    ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の太陽電池用積層カバー基板。
  7. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の太陽電池用積層カバー基板を有する
    ことを特徴とする太陽電池モジュール。
  8. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の太陽電池用積層カバー基板の製造方法であって、鋳型剤を含む粘度0.05Pas・sec以下のシリカ系前駆体を用いて前記積層膜を形成する形成過程を有する
    ことを特徴とする太陽電池用積層カバー基板の製造方法。
  9. 前記シリカ系前駆体のpHが2以下である
    ことを特徴とする請求項8に記載の太陽電池用積層カバー基板の製造方法。
  10. 前記積層膜の形成過程で、100℃〜800℃の加熱工程を経る
    ことを特徴とする請求項8または請求項9に記載の太陽電池用積層カバー基板の製造方法。
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