以下、本発明の一実施の形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。
本発明に係る集光型太陽電池用レンズは、集光型太陽電池モジュールのレンズ部材として用いるものである。現在、提案されている一般的な集光型太陽電池モジュールを図1に示す。図1に示すように、集光型太陽電池モジュールとしては、導光板2で太陽光を太陽電池素子1に集光する方式(図1A参照)、凸レンズ3で太陽光を太陽電池素子1に集光する方式(図1B参照)、太陽電池素子1の周囲に設けた凹面反射鏡4で太陽光を太陽電池素子1に集光する方式(図1C参照)及び2つの湾曲した反射鏡5a,5bによって太陽光を太陽電池素子1に集光するカセグレン方式(図1D参照)のものがある。集光型太陽電池用レンズは、図1B及び図1Dに示した方式のものに好適に用いることができる。
図2は、一般的な集光型太陽電池用レンズ6の概略図である。図2に示すように、集光型太陽電池用レンズ6は、図1Bに示した凸レンズ3又は図1Dに示した反射鏡5a,5aで集光された太陽光を更に太陽電池素子1に収束させるために用いられる。集光型太陽電池用レンズ6は、「ロッドレンズ」、「ホモジナイザー」、「集光器」とも呼ばれる。集光型太陽電池用レンズ6としては、放物型の形状や角錐型の形状を有するものがある。
本発明者は、集光型太陽電池においては、集光型太陽電池用レンズの表面に太陽光の表面反射及び表面散乱を低減する多層膜を設けた場合であっても、太陽電池素子の発電に対応した波長領域の太陽光を必ずしも十分に透過できないことに着目した。そして、本発明者は、レンズ本体の表面にゾルゲル材料の硬化物を含む微細凹凸構造(微細構造体)を有する反射防止膜を設けることによって、空気層から反射防止膜の膜厚方向(深さ方向)における屈折率が滑らかに変化し、屈折率の界面が実質的に消滅するだけでなく、反射防止膜とレンズ本体との間の屈折率差を低減されて広い範囲に亘る入射光の波長に対して優れた透過性が得られること、及びその使用環境が高温、高湿下となる集光型太陽電池に用いた場合であっても、十分な高耐熱性かつ高対候性が得られる集光型太陽電池用レンズを実現できることを見出し、本発明を完成させるに至った。以下、本発明に係る集光型太陽電池用レンズの構成について詳細に説明する。
図3A〜図3Dは、本実施の形態に係る集光型太陽電池用レンズ10の模式図である。図3A〜図3Dに示すように、本実施の形態に係る集光型太陽電池用レンズ10は、レンズ本体11と、このレンズ本体11の表面に設けられた微細凹凸構造を有する反射防止膜12a,12bとを具備する。この反射防止膜12a,12bは、ゾルゲル材料の硬化物を含む。反射防止膜12aは、レンズ本体11の入射面11aに設けられ、レンズ本体11の入射面11aから入射する太陽光の反射を低減する。反射防止膜12bは、レンズ本体11の出射面11bに設けられ、レンズ本体11の出射面11bから出射される太陽光の反射を低減する。
この集光型太陽電池用レンズ10においては、反射防止膜12a,12bがゾルゲル材料を含むことから、反射防止膜12a,12bとレンズ本体11との間の屈折率差が小さくなるので、反射防止膜12a,12bとレンズ本体11の入射面11a及び出射面11bとの間の界面反射が低減される。また、反射防止膜12a,12bは、微細凹凸構造を有するので、空気層から反射防止膜12a,12bの膜厚方向(深さ方向)における屈折率が滑らかに変化し、空気層と反射防止膜12a,12bとの間の屈折率の界面が実質的に消滅すると共に、反射防止膜12a,12bとレンズ本体11との間の屈折率差が低減される。これらの結果、入射面11aから入射する太陽光及び出射面11bから出射される太陽光の反射をさらに低減できるので、太陽光の透過率が向上し、太陽光の利用効率が向上する。また、赤外領域及び太陽電池素子に用いられるシリコンの吸収波長領域である700nm以下の波長領域の両方の透過率を向上できるので、広い範囲に亘って入射光の波長に対して優れた透過性が得られる。
反射防止膜12a,12bとしては、太陽光の透過率を向上できるものであれば特に制限はない。例えば、反射防止膜12a,12bは、レンズ本体10の入射面11a及び出射面11bの表面に連続する微細凹凸構造として設けてもよい(図3A,図3B参照)。また、反射防止膜12a,12bとしては、ゾルゲル材料を含み膜厚Tが略均一な反射防止層を形成した後、この反射防止層の表面に微細凹凸構造を設けたものを用いてもよい(図3C,図3D参照)。
また、反射防止膜12a,12bは、空気層から反射防止膜12a,12bの膜厚方向における屈折率の変化をより滑らかにし、反射防止膜12a,12bとレンズ本体11との間の界面の屈折率差をより低減する観点から、微細凹凸構造からなることが好ましく、またゾルゲル材料の硬化物からなることが好ましい。
また、集光型太陽電池用レンズ10においては、反射防止膜12a,12bの材料であるゾルゲル材料とレンズ本体11との屈折率差が可能な限り小さいことが望ましい。この屈折率差によって、レンズ本体の入射面11a及び出射面11bで、界面反射が生じ、太陽光を損失することになる。また、この屈折率差が大きいほど、界面反射による光損失が大きくなる。よって、レンズ本体11とゾルゲル材料との屈折率差は0.1以下であることが好ましく、0.01以下であることがより好ましい。屈折率差が、0.01以下であれば、ほぼ界面反射による光損失は無視することができる。また、入射面11a側の反射防止膜12aに用いるゾルゲル材料と出射面11b側の反射防止膜12bに用いるゾルゲル材料とは、同じ材料であることが好ましい。
レンズ本体11の形状としては、太陽光を集光できるものであれば、特に制限されない。レンズ本体11としては、放物型の複合放物面型集光器(CPC:Compound Parabolic Concentrator)(図3A,図3C参照)や、角錐型のロッドレンズ(図3B,図3D参照)などを用いることができる。
レンズ本体11の材料としては、例えば、ソーダガラス、無アルカリガラス、石英ガラス、サファイアなどの無機材料を用いることが好ましい。太陽光の波長における透過率が優れる点から、より好ましくは、石英ガラス、無アルカリガラスである。
反射防止膜12a,12bの微細凹凸構造としては、円錐形状、角錐形状、楕円錘形状のいずれかの形状の凸部を複数含むピラー形状、又は円錐形状、角錐形状、楕円錘形状のいずれかの形状の凹部を複数含むホール形状であるものが好ましい。この場合、隣接する凸部12c同士の距離Lが1nm以上2000nm以下であり、凸部12cの高さHが1nm以上5000nm以下であることが太陽光の反射を低減する観点から好ましい。ここで、「ピラー形状」とは、「柱状体(錐状態)が複数配置された形状」であり、「ホール形状」とは、「柱状(錐状)の穴が複数形成された形状」である。微細凹凸構造が上記形状を有するものであれば、反射防止膜12a,12bと空気層との体積分率により屈曲率が滑らかに傾斜するので、反射防止性能が向上する。
また、隣接する凸部12c間の距離Lとしては、近赤外領域(700nm〜1000nm)における太陽光の反射率を低減して透過率を上げる観点から、300nm以上2000nm以下であることがより好ましく、500nm以上1000nm以下であることがさらに好ましい。同様に、凸部12cの高さHとしては、近赤外領域における太陽光の反射率を低減して透過率を上げる観点から、1nm以上5000nm以下であることが好ましく、1000nm以上5000nm以下であることが好ましい。近赤外領域における太陽光の透過率を上げることにより、近赤外領域に分高感度のピークトップを有する結晶系シリコン太陽電池素子のレンズ部材として、本実施の形態に係る集光型太陽電池用レンズ10を好適に用いることができる。
また、反射防止膜12a,12bの微細凹凸構造としては、ピラー形状、円錐形状、角錐形状、惰円錐形状を含む周期的な微細凹凸構造(モスアイ構造)であってもよい。ここで、モスアイ構造とは、サブミクロンオーダーのピラミッド状凹凸構造を蛾の目のような2次元パターンに配置した構造をいう。このようなモスアイ構造とすることにより表面に形成されるナノオーダーの微細凹凸構造により屈折率が滑らかに傾斜するので、空気層と反射防止膜12a,12bとの界面の屈折率差に基づく太陽光の反射を低減でき、良好な反射防止性能が得られる。
反射防止膜12a,12bは、ゾルゲル材料の硬化物を含むので、レンズ本体11の屈折率と反射防止膜12a,12bの屈折率との差が適度な範囲になる。レンズ本体11の材質としては、透明な無機材料であるガラス系材料が好適に用いられる。このガラス系材料の基本的な分子構造はSiO2で表される。一方、後述するゾルゲル材料としては、アルコキシシラン系材料が好適に用いられる。このアルコキシシラン系材料は、Si−Oのシロキサン結合で構成される。つまり、レンズ本体11の材質としてガラス系材料を用い、反射防止膜12a,12bのゾルゲル材料としてアルコキシシラン系材料を用いた場合には、両者の基本的な結合形式が同じとなるため、屈折率が比較的近い値となる。この結果、反射防止膜12a,12bとレンズ本体11との界面における太陽光の反射を低減できる。
反射防止膜12a,12b及びレンズ本体11の屈折率は、用いるレンズ本体11の屈折率に対し、用いるゾルゲル材料の屈折率を選択することで調整できる。ゾルゲル材料の硬化前の形態であるゾルは、流動性及び相溶性を有するため、屈折率を容易に調整できる。
反射防止膜12a,12bの屈折率は、ゾルゲル材料として用いる金属アルコキシドの金属種及び有機置換基の種類によって調整できるだけでなく、ゾルゲル材料の組成比によって制御することができる。例えば、金属アルコキシドの金属種をシリコンからチタンやジルコニアに変えることによって、屈折率を高くすることができる。また、金属種に結合する有機置換基についても、(CH2)nで表されるメチレン鎖からフェニル基などの芳香環に変えることによって、屈折率を高くすることができる。また、硬化前のゾルゲル材料中に無機微粒子である中空シリカを添加することによって屈折率を下げることができる。これらは、組成比、配合、硬化工程における硬化条件(加熱温度、加熱時間等)によっても、屈折率を調整することができる。このように、反射防止膜12a,12bに使用するゾルゲル材料の種類や組成比及びレンズ本体11の材質を適宜選択して屈折率差を制御することにより、レンズ本体11の入射面11a及び出射面11bにおける太陽光の反射を低減できるので、太陽光の透過率が向上する。また、ゾルゲル材料は、無機材料で構成されるので、集光型太陽電池用レンズ10として用いる場合に十分な耐熱性及び対候性が得られる。
図3C,図3Dに示すように、反射防止膜12a,12b(ゾルゲル材料)の膜厚Tは、微細凹凸構造の凸部12cの高さHよりも厚くすることが好ましい。反射防止膜12a,12bの膜厚Tが微細凹凸構造の凸部12cの高さHより厚いことにより、後述する剥離工程において、レンズ本体11とゾルゲル材料を含む反射防止膜12a、12bが、応力集中による界面剥離を防ぐことができる。よって、上述の理由から、反射防止膜12a,12bの膜厚Tと微細凹凸構造の凸部12cの高さHの比(T/H)は、2以上であることが好ましい。
一方で、反射防止膜12a,12bの膜厚Tは、反射防止膜12a,12b内部で光損失(散乱、消衰、熱変換)を防ぐ観点から、可能な限り薄くすることが好ましい。よって、反射防止膜12a,12bの膜厚Tと微細凹凸構造の凸部12cの高さHとの比(T/H)は、2以上10以下であることが好ましく、2以上5以下であることがより好ましい。反射防止膜12a,12bの膜厚Tと微細凹凸構造の高さHとの比(T/H)が5以下であれば、散乱粒子や相分離構造が内在していない限り、良好な透過率を保持することができる。ただし、微細凹凸構造の凸部12c同士の距離L及び凸部12cの高さHに関しては、前述の範囲内におけるものとする。
ゾルゲル材料としては、硬化物の耐熱性、耐候性の観点から、金属アルコキシド、金属キレート化合物、液状ガラス、スピンオンガラスが好ましく、金属アルコキシド、液状ガラス、スピンオンガラスがより好ましい。また、これらは1種だけでなく、2種以上の混合物としても用いることができる。
金属アルコキシド(金属アルコラート)とは、任意の金属種が、加水分解触媒などにより、水、有機溶剤と反応して得られる化合物群であり、任意の金属種と、ヒドロキシ基、メトキシ基、エトキシ基、プロピル基、イソプロピル基などの官能基とが結合した化合物群である。金属アルコキシドの金属種としては、シリコン、チタン、アルミニウム、ゲルマニウム、ボロン、ジルコニウム、タングステン、ナトリウム、カリウム、リチウム、マグネシウム、スズなどが挙げられる。金属アルコキシドの金属種としては、シリコン、チタン、ジルコニウム、ボロンが好ましく、シリコンがより好ましい。
例えば、金属種がシリコンの金属アルコキシドとしては、ジメチルジエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、p−スチリルトリエトキシシラン、メチルフェニルジエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、テトラエトキシシラン、トリエトキシシランなどや、これら化合物群のエトキシ基が、ヒドロキシ基、メトキシ基、プロピル基、イソプロピル基に置き換わった化合物が挙げられる。これらは、要求される物性に応じて、単独で用いてもよく複数種を組合せて用いてもよい。また、金属アルコキシドとしては、塗布可能な流動性があれば、予めある程度加水分解重縮合を進行させた上で使用することができる。
ハロゲン化シランとは、上記金属アルコキシドにおいて、金属種がシリコンであり、加水分解重縮合する官能基がハロゲン原子に置換された化合物群である。
金属キレート化合物としては、チタンジイソプロポキシビスアセチルアセトネート、チタンテトラキスアセチルアセトネート、チタンジブトキシビスオクチレングリコレート、ジルコニウムテトラキスアセチルアセトネート、ジルコニウムジブトキシビスアセチルアセトネート、アルミニウムトリスアセチルアセトネート、アルミニウムジブトキシモノアセチルアセトネート、亜鉛ビスアセチルアセトネート、インジウムトリスアセチルアセトネート、ポリチタンアセチルアセトネートなどが挙げられる。
液状ガラスとしては、シラグシタールシリーズ(新技術創造研究所社製)やTGAシリーズ(アポロリング社製)などが挙げることができる。また、液状ガラスとしては、これらに要求される物性に応じて、その他ゾルゲル化合物を添加することができる。スピンオングラスとしては、OCDシリーズ(東京応化社製)、ACCUGLASS(登録商標)シリーズ(Honeywell社製)などを用いることができる。
また、液状ガラスとしては、シルセスキオキサン化合物を用いることもできる。シルセスキオキサンとは、SiO1.5で表される化合物群の総称であり、ケイ素原子一個に対し、一つの有機基と三つの酸素原子が結合した化合物である。
ゾルゲル材料としては、硬化物の屈折率制御、強度向上、波長変換などの機能性付与のために機能性微粒子を含むものを用いてもよい。機能性微粒子としては、金属酸化物、金属微粒子、炭素系微粒子などが挙げられる。金属酸化物としては、シリカ(中空シリカを含む)、チタニア、ジルコニア、セリア、アルミナ、酸化亜鉛、酸化錫などが挙げられる。炭素系微粒子としては、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、フラーレンが挙げられる。機能性微粒子の形状としては、球状、粒状、棒状、針状、中空状、ランダム形状などが挙げられる。これらの機能性微粒子は、シランカップリング剤などの表面修飾をされていてもよい。
ゾルゲル材料としては、レベリング性向上、硬化制御、屈折率制御、無機材料層との密着性向上、膜厚制御などの改善のため、ポリマーやバインダーなどの添加剤を含むものを用いてもよい。このような添加剤としては、消泡剤、分散剤、シランカップリング剤、厚膜化剤などが挙げられる。
本実施の形態に係る集光型太陽電池用レンズ10が用いられる太陽電池素子については特に制限はない。単結晶シリコン型太陽電池、多結晶シリコン型太陽電池、薄膜シリコン型太陽電池、量子ドット型太陽電池、化合物系太陽電池、色素増感型太陽電池、有機薄膜型太陽電池などの各種太陽電池素子に用いることができる。
以上説明したように、上記実施の形態に係る集光型太陽電池用レンズ10によれば、レンズ本体11の表面にゾルゲル材料の硬化物を含み微細凹凸構造を有する反射防止膜12a,12bを設けたことから、広範囲に亘る入射光の波長に対して優れた透過性が発現される。また、反射防止膜12a,12bがゾルゲル材料の硬化物を含むので、反射防止膜12a,12bの耐熱性及び対候性を向上できる。したがって、広範囲に亘る入射光の波長に対して優れた透過性を有し、高耐熱性かつ高対候性を有する集光型太陽電池用レンズ10を実現できる。
次に、上記実施の形態に係る集光型太陽電池用レンズ10の製造方法について説明する。図4は、本実施の形態に係る集光型太陽電池用レンズ10の製造方法の概略図である。本実施の形態に係る集光型太陽電池用レンズの製造方法は、光透過性の基材111a及び基材111a上に設けられ表面に微細凹凸構造111cを有する光硬化性樹脂層111bを備えた樹脂モールド111を作製するモールド作製工程(図4A参照)と、光硬化性樹脂層111b上にゾルゲル材料を塗布してゾルゲル層112を形成するゾルゲル層形成工程(図4B参照)と、ゾルゲル層112上にレンズ本体11を配置して積層体120を形成する積層工程(図4C参照)と、積層体120のゾルゲル層112を硬化させて反射防止膜12a(12b)を形成する硬化工程と、積層体120から樹脂モールド11を剥離する剥離工程(図4D及び図4E参照)と、を含む。
<モールド作製工程>
まず、モールド作製工程について説明する。図5は、本実施の形態に係る微細構造体の製造方法のモールド作製工程に用いられる製造装置の概略図である。図5に示す製造装置は、基材111aを送り出す原反ロール101と、樹脂モールド111を巻き取る巻き取りロール102とを備える。原反ロール101と巻き取りロール102との間には、基材111aの搬送方向における上流側から下流側に向けて順に、基材111a上に光硬化性樹脂を塗布する塗布装置103と、外周面に微細凹凸構造を有する円筒状金型104と、基材111a上の光硬化性樹脂と円筒状金型の外周面との間を密着させる加圧手段105と、光硬化性樹脂に光を照射する光源106と、が設けられている。また、溶媒を用いて光硬化性樹脂を塗布する場合には、光硬化性樹脂中の溶媒を乾燥する乾燥炉107を更に備えた転写装置を用いてもよい。
モールド作製工程においては、原反ロール101から送り出した光透過性の基材111a上に塗布装置103により光硬化性樹脂を塗布して光硬化性樹脂層111bを形成する。次に、外周面に微細凹凸構造を有する円筒状金型104を回転させながら、加圧手段105によって円筒状金型104の外周面を光硬化性樹脂層に密着させて光硬化性樹脂層111bの表面に微細凹凸構造111cを転写する(図4A参照)。
次に、光硬化性樹脂層111bに光源106から光を照射して光硬化性樹脂層111bを光硬化してリール状樹脂モールド111を作製した後、樹脂モールド111を巻き取りロール102で巻き取る。また、モールド作製工程においては、円筒状金型からの微細凹凸構造転写後の微細凹凸構造を保護するため、光硬化性樹脂層111b上に保護フィルム(カバーフィルム)をラミネートしてもよい。
塗布装置103による基材111aへの光硬化性樹脂の塗布方法としては、公知の塗布コーター又は含浸塗布コーターを用いたコーティング法が挙げられる。具体的にはグラビアコーター、マイクログラビアコーター、ブレードコーター、ワイヤーバーコーター、エアーナイフコーター、ディップコーター、コンマナイフコーター、スプレーコーター、カーテンコーター、スピンコーター、ラミネーターなどを用いた塗布が挙げられる。これらの塗布方法は、必要に応じて1種の塗布方法を用いてもよく、2種以上の塗布方法を組合せて用いてもよい。また、これらの塗布方法は、枚葉方式で実施してもよく、連続方式で実施してもよい。生産性の観点から連続方式で塗布することが好ましい。また、ディップコーター、コンマナイフコーター、グラビアコーター又はラミネーターを使用した連続方式の塗布方法が特に好ましい。
光硬化性樹脂層111bへの光照射に用いる光源106としては、特に制限されるものではなく、用途及び設備に応じて種々の光源を用いることができる。光源106としては、例えば、高圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、無電極ランプ、メタルハライドランプ、エキシマーランプ、LEDランプ、キセノンパルス紫外線ランプなどを用いることができる。また、光硬化性樹脂は、波長200nm〜500nmの紫外線又は可視光を露光量が100mJ/cm2〜2000mJ/cm2となるように照射することにより硬化することができる。また、酸素による光硬化反応の阻害を防止する観点から、光照射時には酸素濃度が低い状態で光を照射することが望ましい。
モールド作製工程においては、加圧手段105により円筒状金型104の外周面の微細凹凸構造と光硬化性樹脂層111bとが密着した状態で、光硬化性樹脂層111bに光を照射して光硬化することにより、円筒状金型104の微細凹凸構造を正確に転写できる。また、円筒状金型104の外周面の微細凹凸構造と光硬化性樹脂層111bとが密着した状態で転写することにより酸素による硬化不足を回避することができる。
また、モールド作製工程においては、窒素雰囲気下において、円筒状金型104と光硬化性樹脂層111bとを密着させて光照射を行うことが好ましい。これにより、光硬化性樹脂層111bとの大気中の酸素との接触を避けることができるので、酸素による光重合反応の阻害を低減でき、光硬化性樹脂層11bを十分に硬化させることができる。
光硬化性樹脂層111bと円筒状金型104とを密着させて光を照射するためには、加圧手段105としてのニップロールにより光硬化性樹脂層111bと円筒状金型とを直接圧着して光を照射してもよく、巻出・巻取制御により基材111aの張力を制御して光硬化性樹脂層111bと円筒状金型104とを圧着した状態で光を照射してもよい。これらの場合においては、光硬化性樹脂層111bの転写性により押し付け圧、張力は適宜調整することができる。
(基材)
基材111aとしては、紫外・可視光領域で使用する光源に対して実質的に光透過性を有する材料を主成分とするものであれば特に限定されないが、ハンドリング性、加工性に優れた樹脂材料であることが好ましい。このような樹脂材料としては、例えば、ポリメタクリル酸メチル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、シクロオレフィン樹脂(COP)、架橋ポリエチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂、ポリサルフォン樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、トリアセチルセルロール(TAC)樹脂などの非晶性熱可塑性樹脂や、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、芳香族ポリエステル樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂などの結晶性熱可塑性樹脂などがあり、フィルム状やシート状であることが好ましい。
基材111aの表面には、光硬化性樹脂との密着性向上のため、プライマー処理、大気圧プラズマ処理、コロナ処理を施すことができる。
モールド作製工程においては、円筒状金型104と密着した状態で基材111a上の光硬化性樹脂層111bに光を照射して光硬化させる。このため、使用する光硬化性樹脂にもよるが、基材111aには、200nm〜500nmの範囲で良好な透過率が求められる。使用する光硬化性樹脂の感光性にもよるため、200nm〜500nmの範囲で具体的な透過率の値については特に限定しないが、365nm、405nm及び全光線透過率が良好であれば、光硬化性樹脂が十分に光硬化するため好ましい。また、波長200nm〜500nmの範囲における透過率が良好であれば、光硬化性樹脂の硬化に要する光照射エネルギーを低減でき、且つ、転写の迅速化を達成することができる。
(光硬化性樹脂層)
光硬化性樹脂層111bは、光硬化性樹脂を含有する。光硬化性樹脂は、転写性、円筒状金型からの剥離性、基材111aとの密着性、粘度、製膜特性、感光性、硬化後の力学特性、集光型太陽電池用レンズ10の製造工程におけるゾルゲル材料の硬化性、及び集光型太陽電池用レンズの反射防止膜との剥離性を考慮して選択する。
光硬化性樹脂層111bは、微細凹凸構造が形成された表面の表面部のフッ素元素濃度(Es)が、光硬化性樹脂層111b中の平均フッ素元素濃度(Eb)より高いことが好ましい。これによれば、光硬化性樹脂層111bにおける微細凹凸構造形成面側のフッ素元素濃度(Es)が、平均フッ素元素濃度(Eb)に対して相対的に高いことから、詳細については後述するモールド複製工程において、樹脂モールド111からの微細マスク形成用積層体の離型性が向上する。
さらに、平均フッ素元素濃度(Eb)と表面部のフッ素元素濃度(Es)との比が20<Es/Eb≦200を満たすことで、上記効果をより発揮するためより好ましい。20≦Es/Eb≦200の範囲であれば、表面部のフッ素元素濃度(Es)が、平均フッ素濃度(Eb)より十分高くなり、光硬化性樹脂層111bの表面の自由エネルギーが効果的に減少するので、樹脂モールド111からの被転写材の離型性が向上する。また、平均フッ素元素濃度(Eb)を表面部のフッ素元素濃度(Es)に対して相対的に低くすることにより、光硬化性樹脂層111b自体の強度が向上すると共に、光硬化性樹脂層111b中における基材111a付近では、自由エネルギーを高く保つことができるので、基材111aとの密着性が向上する。これにより、基材111aとの密着性に優れ、被転写材との離型性に優れ、しかも、ナノメートルサイズの凹凸形状を樹脂から樹脂へ繰り返し転写できる光硬化性樹脂層111bを得ることができる。また、26≦Es/Eb≦189の範囲であれば、光硬化性樹脂層111b表面の自由エネルギーをより低くすることができ、繰り返し転写性が良好になるため好ましい。さらに、30≦Es/Eb≦160の範囲であれば、光硬化性樹脂層111b表面の自由エネルギーを減少させると共に、光硬化性樹脂層111bの強度を維持することができ、繰り返し転写性がより向上するため好ましい。また、上記効果をより一層発現する観点から、31≦Es/Eb≦155であることが好ましく、46≦Es/Eb≦155であることがより好ましい。
また、上述のように光硬化性樹脂層111bの表面の自由エネルギーを制御する以外に、水蒸気透過性の良好な光硬化性樹脂、及び基材111aを用いることもできる。この場合には、ゾルゲル材料硬化時の加水分解重縮合によって発生する水蒸気又はアルコールを樹脂モールド111(光硬化性樹脂層111b及び基材111a)中へ拡散させることができ、ゾルゲル材料の硬化を促進することができる。
光硬化性樹脂としては、例えば、光重合開始剤により重合可能な各種アクリレート化合物及びメタクリレート化合物、エポキシ化合物、イソシアネート化合物、チオール化合物、シリコーン系化合物などを使用することができる。これらの中でも、アクリレート化合物及びメタクリレート化合物、エポキシ化合物、シリコーン系化合物を用いることが好ましく、アクリレート化合物、メタクリレート化合物を用いることがより好ましい。これらの化合物は単独種類で用いてもよく、エポキシ化合物とアクリレート化合物との組合せなど、複数種類を組合せて用いてもよい。
アクリレート化合物及びメタクリレート化合物としては、(メタ)アクリル酸、フェノキシエチルアクリレート、及びベンジルアクリレートなどの芳香族系の(メタ)アクリレート、ステアリルアクリレート、ラウリルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、アリルアクリレート、1,3−ブタンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタアエリスリトールトリアクリレート、及びジペンタエリスリトールヘキサアクリレートなどの炭化水素系の(メタ)アクリレート、エトキシエチルアクリレート、メトキシエチルアクリレート、グリシジルアクリレート、テトラヒドロフルフリールアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ポリオキシエチレングリコールジアクリレート、及びトリプロピレングリコールジアクリレートなどのエーテル性酸素原子を含む炭化水素系の(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、N,N−ジエチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、N−ビニルピロリドン、及びジメチルアミノエチルメタクリレートなどの官能基を含む炭化水素系の(メタ)アクリレート、シリコーン系のアクリレートなどが挙げられる。
また、アクリレート化合物及びメタクリレート化合物としては、EO変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、ECH変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、PO変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、EO変性リン酸トリアクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(メタ)アクリレート、ジメチロールジシクロペンタンジ(メタ)アクリレート、ジ(メタ)アクリル化イソシアヌレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、EO変性1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ECH変性1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、アリロキシポリエチレングリコールアクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、PO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、ECH変性ヘキサヒドロフタル酸ジアクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、EO変性ネオペンチルグリコールジアクリレート、PO変性ネオペンチルグリコールジアクリレート、カプロラクトン変性ヒドロキシピバリン酸エステルネオペンチルグリコール、ステアリン酸変性ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ECH変性プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ECH変性フタル酸ジ(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール−テトラメチレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、ポリ(プロピレングリコール−テトラメチレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、シリコーンジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエステル(ジ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリグリセロールジ(メタ)アクリレート、EO変性トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジビニルエチレン尿素、ジビニルプロピレン尿素、2−エチル−2−ブチルプロパンジオールアクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルカルビトール(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、アクリル酸ダイマー、ベンジル(メタ)アクリレート、ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、EO変性クレゾール(メタ)アクリレート、エトキシ化フェニル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルオキシエチル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、メトキシトリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールベンゾエート(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、パラクミルフェノキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、ECH変性フェノキシアクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシヘキサエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、EO変性コハク酸(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、EO変性トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、トリドデシル(メタ)アクリレート、シリコーン系アクリレート化合物などが挙げられる。なお、EO変性とはエチレンオキシド変性をECH変性とはエピクロロヒドリン変性を、PO変性とはプロピレンオキシド変性を意味する。これらは1種又は2種以上の組合せで用いることができる。また、市販のナノインプリント用樹脂であるPAKシリーズ(東亞合成社製)、NIFシリーズ(AGC社製)、NIACシリーズ(ダイセル化学工業社製)などを使用することができる。これらの中でも、PAK−02、NIAC−702が基材111aへの塗布特性及び微細凹凸構造の転写性から特に好ましい。
また、光硬化性樹脂としては、上記アクリレート化合物及びメタクリレート化合物、エポキシ化合物、イソシアネート化合物、シリコーン系化合物のうち、炭化水素中の水素がフッ素に置換されたフッ素含有化合物を用いることができる。フッ素含有化合物を用いることにより、硬化後の表面自由エネルギーが減少し、転写工程におけるリール状樹脂モールド111からの積層体120の離型性が向上する。これは、リール状樹脂モールドと樹脂鋳型を貼合後、離型する際にも同様の効果がある。
フッ素含有(メタ)アクリレートとしては、ポリフルオロアルキレン鎖及び/又はペルフルオロ(ポリオキシアルキレン)鎖と、重合性基とを有することが好ましく、直鎖状ペルフルオロアルキレン基、又は炭素原子−炭素原子間にエーテル性酸素原子が挿入されかつトリフルオロメチル基を側鎖に有するペルフルオロオキシアルキレン基がさらに好ましい。また、トリフルオロメチル基を分子側鎖または分子構造末端に有する直鎖状のポリフルオロアルキレン鎖及び/又は直鎖状のペルフルオロ(ポリオキシアルキレン)鎖が特に好ましい。
ポリフルオロアルキレン鎖は、炭素数2〜炭素数24のポリフルオロアルキレン基が好ましい。また、ポリフルオロアルキレン基は、官能基を有していてもよい。
ペルフルオロ(ポリオキシアルキレン)鎖は、(CF2CF2O)単位、(CF2CF(CF3)O)単位、(CF2CF2CF2O)単位および(CF2O)単位からなる群から選ばれた1種以上のペルフルオロ(オキシアルキレン)単位からなることが好ましく、(CF2CF2O)単位、(CF2CF(CF3)O)単位、又は(CF2CF2CF2O)単位からなることがより好ましい。ペルフルオロ(ポリオキシアルキレン)鎖は、含フッ素重合体の物性(耐熱性、耐酸性など)が優れることから、(CF2CF2O)単位からなることが特に好ましい。ペルフルオロ(オキシアルキレン)単位の数は、含フッ素重合体の離型性と硬度が高いことから、2〜200の整数が好ましく、2〜50の整数がより好ましい。
重合性基としては、ビニル基、アリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、エポキシ基、ジオキタセン基、シアノ基、イソシアネート基又は下記一般式(1)で表される加水分解性シリル基が好ましく、アクリロイル基又はメタクリロイル基がより好ましい。
一般式(1)
−(CH2)aSi(M1)3−b(M2)b
(式(1)中、M1は、加水分解反応により水酸基に変換される置換基である。M2は、1価の炭化水素基である。aは、1〜3の整数である。bは、0又は1〜3の整数である。)
上記一般式(1)において、M1としては、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシロキシ基などが挙げられる。ハロゲン原子としては、塩素原子が好ましい。アルコキシ基としては、メトキシ基又はエトキシ基が好ましく、メトキシ基がより好ましい。また、M1としては、アルコキシ基が好ましく、メトキシ基がより好ましい。
上記一般式(1)において、M2としては、アルキル基、1以上のアリール基で置換されたアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、アリール基などが挙げられ、アルキル基またはアルケニル基が好ましい。M2がアルキル基である場合、炭素数1〜炭素数4のアルキル基が好ましく、メチル基又はエチル基がより好ましい。M2がアルケニル基である場合、炭素数2〜炭素数4のアルケニル基が好ましく、ビニル基又はアリル基がより好ましい。
上記一般式(1)において、aとしては、3が好ましい。bとしては、0が好ましい。
加水分解性シリル基としては、(CH3O)3SiCH2−、(CH3CH2O)3SiCH2−、(CH3O)3Si(CH2)3−又は(CH3CH2O)3Si(CH2)3−が好ましい。
重合性基の数は、重合性に優れることから1〜4の整数が好ましく、1〜3の整数がより好ましい。2種以上の化合物を用いる場合、重合性基の平均数は1〜3が好ましい。
フッ素含有(メタ)アクリレートは、官能基を有すると透明基板との密着性に優れる。官能基としては、カルボキシル基、スルホン酸基、エステル結合を有する官能基、アミド結合を有する官能基、水酸基、アミノ基、シアノ基、ウレタン基、イソシアネート基、イソシアヌル酸誘導体を有する官能基などが挙げられる。特に、カルボキシル基、ウレタン基、イソシアヌル酸誘導体を有する官能基の少なくとも一つの官能基を含むことが好ましい。尚、イソシアヌル酸誘導体には、イソシアヌル酸骨格を有するもので、窒素原子に結合する少なくとも一つの水素原子が他の基で置換されている構造のものが包含される。フッ素含有(メタ)アクリレートとしては、フルオロ(メタ)アクリレート、フルオロジエンなどを用いることができる。フッ素含有(メタ)アクリレートの具体例としては、下記の化合物が挙げられる。
フルオロ(メタ)アクリレートとしては、CH2=CHCOO(CH2)2(CF2)10F、CH2=CHCOO(CH2)2(CF2)8F、CH2=CHCOO(CH2)2(CF2)6F、CH2=C(CH3)COO(CH2)2(CF2)10F、CH2=C(CH3)COO(CH2)2(CF2)8F、CH2=C(CH3)COO(CH2)2(CF2)6F、CH2=CHCOOCH2(CF2)6F、CH2=C(CH3)COOCH2(CF2)6F、CH2=CHCOOCH2(CF2)7F、CH2=C(CH3)COOCH2(CF2)7F、CH2=CHCOOCH2CF2CF2H、CH2=CHCOOCH2(CF2CF2)2H、CH2=CHCOOCH2(CF2CF2)4H、CH2=C(CH3)COOCH2(CF2CF2)H、CH2=C(CH3)COOCH2(CF2CF2)2H、CH2=C(CH3)COOCH2(CF2CF2)4H、CH2=CHCOOCH2CF2OCF2CF2OCF3、CH2=CHCOOCH2CF2O(CF2CF2O)3CF3、CH2=C(CH3)COOCH2CF2OCF2CF2OCF3、CH2=C(CH3)COOCH2CF2O(CF2CF2O)3CF3、CH2=CHCOOCH2CF(CF3)OCF2CF(CF3)O(CF2)3F、CH2=CHCOOCH2CF(CF3)O(CF2CF(CF3)O)2(CF2)3F、CH2=C(CH3)COOCH2CF(CF3)OCF2CF(CF3)O(CF2)3F、CH2=C(CH3)COOCH2CF(CF3)O(CF2CF(CF3)O)2(CF2)3F、CH2=CFCOOCH2CH(OH)CH2(CF2)6CF(CF3)2、CH2=CFCOOCH2CH(CH2OH)CH2(CF2)6CF(CF3)2、CH2=CFCOOCH2CH(OH)CH2(CF2)10F、CH2=CFCOOCH2CH(OH)CH2(CF2)10F、CH2=CHCOOCH2CH2(CF2CF2)3CH2CH2OCOCH=CH2、CH2=C(CH3)COOCH2CH2(CF2CF2)3CH2CH2OCOC(CH3)=CH2、CH2=CHCOOCH2CyFCH2OCOCH=CH2、CH2=C(CH3)COOCH2CyFCH2OCOC(CH3)=CH2などのフルオロ(メタ)アクリレートが挙げられる(但し、CyFはペルフルオロ(1,4−シクロへキシレン基)を示す。)。
フルオロジエンとしては、CF2=CFCF2CF=CF2、CF2=CFOCF2CF=CF2、CF2=CFOCF2CF2CF=CF2、CF2=CFOCF(CF3)CF2CF=CF2、CF2=CFOCF2CF(CF3)CF=CF2、CF2=CFOCF2OCF=CF2、CF2=CFOCF2CF(CF3)OCF2CF=CF2、CF2=CFCF2C(OH)(CF3)CH2CH=CH2、CF2=CFCF2C(OH)(CF3)CH=CH2、CF2=CFCF2C(CF3)(OCH2OCH3)CH2CH=CH2、CF2=CFCH2C(C(CF3)2OH)(CF3)CH2CH=CH2などのフルオロジエンが挙げられる。
また、上記フッ素含有(メタ)アクリレートとしては、下記化学式(1)で示されるフッ素含有ウレタン(メタ)アクリレート、及び/又は下記化学式(2)で示されるフッ素含有(メタ)アクリレートであることで、光硬化性樹脂層111bの微細凹凸構造形成面の表面自由エネルギーをより低くできるので、光硬化性樹脂層111bと基材111aとの間の密着性が向上する。また、平均フッ素元素濃度(Eb)を減少させ光硬化性樹脂層111b2の強度を保つことができるので、繰り返し転写性がより向上するため好ましい。このようなウレタン(メタ)アクリレートとしては、例えば、ダイキン工業社製の「オプツールDAC」を用いることができる。
フッ素含有(メタ)アクリレートとしては、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、耐摩耗性、耐傷付き、指紋付着防止、防汚性、レベリング性や撥水撥油性などの表面改質剤との併用もできる。例えば、ネオス社製「フタージェント」(例えば、Mシリーズ:フタージェント251、フタージェント215M、フタージェント250、FTX−245M、FTX−290M;Sシリーズ:FTX−207S、FTX−211S、FTX−220S、FTX−230S;Fシリーズ:FTX−209F、FTX−213F、フタージェント222F、FTX−233F、フタージェント245F;Gシリーズ:フタージェント208G、FTX−218G、FTX−230G、FTS−240G;オリゴマーシリーズ:フタージェント730FM、フタージェント730LM;フタージェントPシリーズ:フタージェント710FL、FTX−710HLなど)、DIC社製「メガファック」(例えば、F−114、F−410、F−493、F−494、F−443、F−444、F−445、F−470、F−471、F−474、F−475、F−477、F−479、F−480SF、F−482、F−483、F−489、F−172D、F−178K、F−178RM、MCF−350SFなど)、ダイキン社製「オプツール(登録商標)」(例えば、DSX、DAC、AES)、「エフトーン(登録商標)」(例えば、AT−100)、「ゼッフル(登録商標)」(例えば、GH−701)、「ユニダイン(登録商標)」、「ダイフリー(登録商標)」、「オプトエース(登録商標)」、住友スリーエム社製「ノベックEGC−1720」、フロロテクノロジー社製「フロロサーフ(登録商標)」などが挙げられる。
フッ素含有(メタ)アクリレートとしては、重量平均分子量(Mw)が50〜50000であることが好ましく、相溶性の観点から重量平均分子量(Mw)が50〜5000であることが好ましく、重量平均分子量(Mw)が100〜5000であることがより好ましい。相溶性の低い高分子量を使用する際は希釈溶剤を使用しても良い。希釈溶剤としては、単一溶剤の沸点が40℃〜180℃の溶剤が好ましく、60℃〜180℃がより好ましく、60℃〜140℃がさらに好ましい。希釈剤は2種類以上使用もよい。
光硬化性樹脂としては、感光性を向上するため光重合開始剤を含むことが好ましい。光重合開始剤としては、光ラジカル重合開始剤、光酸発生剤、光塩基発生剤などが挙げられる。光重合開始剤は、使用する光源波長及び基材(透明シート)、諸物性などを考慮し、選択することができる。光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルケトン、ジベンジルケトン、フルオレノン、2,2’−ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオニル)−ベンジル]−フェニル}−2−メチルプロパン−1−オン、フェニルグリオキシル酸メチル、チオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、ベンジル、ベンジルジメチルケタール、ベンジル−β−メトキシエチルアセタール、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、2−ヒドロキシ−2−メチル−1フェニルプロパン−1−オン、1−フェニル−1,2−ブタンジオン−2−(O−メトキシカルボニル)オキシム、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(O−メトキシカルボニル)オキシム、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(O−エトキシカルボニル)オキシム、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(O−ベンゾイル)オキシム、1,3−ジフェニルプロパントリオン−2−(O−エトキシカルボニル)オキシム、1−フェニル−3−エトキシプロパントリオン−2−(O−ベンゾイル)オキシム、1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(O−アセチルオキシム)、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチルプロパン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、2−ジメチルアミノ−2−(4−メチルベンジル)−1−(4−モルフォリン−4−イル−フェニル)ブタン−1−オン、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド、ビス(η5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)フェニル)チタニウムなどが好ましい。また、これらは単独で用いてもよく、複数種類を混合物として用いてもよい。市販されている光重合開始剤の例としては、Ciba社製の「IRGACURE」(例えば、IRGACURE651、184、500、2959、127、754、907、369、379、379EG、819、1800、784、OXE01、OXE02)や「DAROCUR」(例えば、DAROCUR1173、MBF、TPO、4265)などが挙げられる。
光硬化性樹脂としては、光感度向上のため増感剤を含むものが好ましい。このような増感剤としては、例えば、ミヒラーズケトン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、2,5−ビス(4’−ジエチルアミノベンジリデン)シクロペンタノン、2,6−ビス(4’−ジエチルアミノベンジリデン)シクロヘキサノン、2,6−ビス(4’−ジメチルアミノベンジリデン)−4−メチルシクロヘキサノン、2,6−ビス(4’−ジエチルアミノベンジリデン)−4−メチルシクロヘキサノン、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)カルコン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)カルコン、2−(4’−ジメチルアミノシンナミリデン)インダノン、2−(4’−ジメチルアミノベンジリデン)インダノン、2−(p−4’−ジメチルアミノビフェニル)ベンゾチアゾール、1,3−ビス(4−ジメチルアミノベンジリデン)アセトン、1,3−ビス(4−ジエチルアミノベンジリデン)アセトン、3,3’−カルボニル−ビス(7−ジエチルアミノクマリン)、3−アセチル−7−ジメチルアミノクマリン、3−エトキシカルボニル−7−ジメチルアミノクマリン、3−ベンジロキシカルボニル−7−ジメチルアミノクマリン、3−メトキシカルボニル−7−ジエチルアミノクマリン、3−エトキシカルボニル−7−ジエチルアミノクマリン、N−フェニル−N−エチルエタノールアミン、N−フェニルジエタノールアミン、N−p−トリルジエタノールアミン、N−フェニルエタノールアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)アニリン、4−モルホリノベンゾフェノン、4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、4−ジエチルアミノ安息香酸イソアミル、ベンズトリアゾール、2−メルカプトベンズイミダゾール、1−フェニル−5−メルカプト−1,2,3,4−テトラゾール、1−シクロヘキシル−5−メルカプト−1,2,3,4−テトラゾール、1−(tert−ブチル)−5−メルカプト−1,2,3,4−テトラゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−(p−ジメチルアミノスチリル)ベンズオキサゾール、2−(p−ジメチルアミノスチリル)ベンズチアゾール、2−(p−ジメチルアミノスチリル)ナフト(1,2−p)チアゾール、2−(p−ジメチルアミノベンゾイル)スチレンなどが挙げられる。また、増感剤は、単独種類で用いてもよく、複数種類を混合物として用いてもよい。
光硬化性樹脂は、溶媒を添加して粘度を調整して用いることができる。溶媒としては、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホルアミド、ピリジン、シクロペンタノン、γ−ブチロラクトン、α−アセチル−γ−ブチロラクトン、テトラメチル尿素、1,3−ジメチル−2−イミダゾリノン、N−シクロヘキシル−2−ピロリドン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アニソール、酢酸エチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどが好ましい。これらの溶媒は、単独で用いてもよく、2種以上を組合せて用いてもよい。これらの溶媒中でも、N−ビニル−2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、アセトン及びメチルエチルケトン、イソプロピルアルコールが好ましい。これらの溶媒は、光硬化性樹脂の塗布方法、塗布膜厚及び粘度に応じて、適宜添加することができ、限定されるものではないが、例えば、光硬化性樹脂100重量部に対して溶媒を1重量部〜10000重量部添加することができる。
光硬化性樹脂には、バインダーとして、ポリビニルアルコールやポリジメチルシロキサン(PDMS)などの熱可塑性樹脂を添加してもよい。また、光硬化性樹脂以外に各種熱可塑性樹脂を用いることもできる。この場合、基材111a上には、光硬化性樹脂層111bに代えて熱可塑性樹脂層を設ける。
光硬化性樹脂は、例えば、光硬化、熱硬化、電子線による硬化、及びマイクロウェーブなどにより硬化させることができる。これらの中でも、光硬化を用いることが好ましい。基材111a上に光硬化性樹脂を上記塗布方法により塗布した後、所定波長における任意の光量で光硬化性樹脂に光を照射することにより、光硬化性樹脂の硬化反応を促進することができる。
(円筒状金型)
樹脂モールド作製においては、連続生産性や歩留まりの観点から円筒状金型104を用いることが好ましい。円筒状金型104としては、継ぎ目のないものがより好ましい。円筒状金型104の微細凹凸構造は、レーザー切削法、電子線描画法、フォトリソグラフィー法、半導体レーザーを用いた直接描画リソグラフィー法、干渉露光法、電鋳法、陽極酸化法などの加工方法により基材の外周面に直接形成することができる。これらの中でも、微細凹凸形状に継目のない円筒状金型を得る観点から、フォトリソグラフィー法、半導体レーザーを用いた直接描画リソグラフィー法、干渉露光法、電鋳法、陽極酸化法が好ましく、半導体レーザーを用いた直接描画リソグラフィー法、干渉露光法、陽極酸化法がより好ましい。
また、円筒状金型104としては、上記加工方法で平板基板の表面に形成した微細凹凸構造を樹脂材料(フィルム)へ転写し、このフィルムを円筒状金型104の外周面に位置精度よく張り合わせたものを用いてもよい。また、上記加工方法で平板基板の表面に形成した微細凹凸構造を電鋳法によりニッケルなどの薄膜に転写し、この薄膜をローラーに巻き付けたものを用いてもよい。
円筒状金型104の材料としては、微細凹凸構造の形成が容易であり、耐久性に優れた材料を用いることが望ましい。このような観点から、円筒状金型104に用いられる材料としては、ガラスロール、石英ガラスロール、ニッケル電鋳ロール、クロム電鋳ロール、アルミロール、又はSUSロール(ステンレス鋼ロール)が好ましい。
ニッケル電鋳ロール及びクロム電鋳ロール用の母材としては、導電性を有する導電性材料を用いることができる。導電性材料としては、例えば、鉄、炭素鋼、クロム鋼、超硬合金、金型用鋼(例えば、マルエージング鋼など)、ステンレス鋼、アルミ合金などの材料が好適に用いられる。
円筒状金型104の表面には、離型処理を施すことが望ましい。離型処理を施すことにより、円筒状金型104の表面自由エネルギーを低下させることができるので、連続的に光硬化性樹脂へ転写した場合においても、良好な剥離性及び微細凹凸構造のパターン形状を保持することができる。離型処理には、市販の離型剤及び表面処理剤を用いることができる。市販の離型剤及び表面処理剤としては、例えば、オプツール(ダイキン化学工業社製)、デュラサーフ(ダイキン化学工業社製)、ノベックシリーズ(3M社製)などが挙げられる。また、離型剤、表面処理材としては、円筒状金型104の材料の種類、及び転写される光硬化性樹脂との組合せにより、適宜好適な離型剤、表面処理剤を選択することができる。
樹脂モールド作製工程で作製した樹脂モールド111を用いることにより、複数のレンズ本体11上に対して一括してゾルゲル層を設けることができるので、生産性が高い集光型太陽電池用レンズ10を実現できる。
(モールド複製工程)
樹脂モールド111は、複製して用いることができる。図6は、樹脂モールド111を複製するモールド複製工程に用いられる製造装置の概略図である。図6に示す製造装置は、図5に示す製造装置の構成に加えて、基材201を巻き出す原反ロール202と、基材201を巻き取る巻き取りロール203と、を具備する。原反ロール202と巻き取りロール203との間には、基材201の搬送方向における上流側から下流側に向けて順に、基材201上に光硬化性樹脂を塗布する塗布装置204と、基材201上の光硬化性樹脂を部分硬化する乾燥炉205と、巻き出しロール101から巻き出された樹脂モールド111と基材111a上に設けられた光硬化性樹脂とを貼り合せる貼合手段206と、光硬化性樹脂に光を照射して部分硬化する場合に設けられる光源106と、が設けられている。樹脂モールド111を巻き出す巻き出しロール101と、基材111aを巻き出す原反ロール202とを入れ替えても構わない。入れ替えた場合、樹脂モールド111上に光硬化性樹脂を塗布することになる。また、乾燥炉107は、樹脂モールド111及び基材201の搬送方向における貼合手段206の前後のいずれに設けてもよい。
モールド複製工程においては、原反ロール202から巻き出された基材201上に、塗布装置204により光硬化樹脂を塗布して光硬化性樹脂層を形成する。次に、貼合手段206によって巻き出しロール101から巻き出された樹脂モールド111の微細パターン面を光硬化樹脂層上に貼り合わせる。次に、光硬化樹脂層に光源106から光を照射して光硬化した後、樹脂モールド111を剥離して巻き取りロール102に巻き取る。このとき、光硬化樹脂層には樹脂モールド111の凹凸構造が反転して転写されて樹脂モールドが複製される。複製された樹脂モールドは、巻き取りロール203に巻き取られる。
塗布装置204の構成、光硬化性樹脂及び光硬化性樹脂の塗布方法としては、上述した塗布装置103と同様の構成を用いることができる。なお、同様にして光硬化性樹脂を塗布した基材に複製した樹脂モールドの凹凸構造を転写することにより、樹脂モールド111と略同一の凹凸構造を有する樹脂モールドを複製することもできる。
(ゾルゲル層形成工程、及び部分硬化工程)
ゾルゲル層形成工程では、図6と同様の装置を使用する。まず、図6に示す巻き出しロール202に樹脂モールド111を取付ける。樹脂モールド111にカバーフィルムが付いている場合、巻き出しロール101で巻き取ることができる。また、巻き出しロール101にカバーフィルムを取付けることができる。次に、巻き出しロール202から樹脂モールド111を巻き出し、巻き出された樹脂モールド111の微細凹凸構造に、塗布装置204によりゾルゲル材料を塗布してゾルゲル層112を形成する。ここでは、光硬化性樹脂層111b上に設けられたゾルゲル層112のゾルゲル材料が微細凹凸構造111cの凹部内にも充填される(図4B参照)。
次に、乾燥炉205でゾルゲル層112を部分硬化してから、巻き出しロール101から巻き出されたカバーフィルム(不図示)を貼合手段206によりゾルゲル層112上に貼り合わせる。なお、ゾルゲル層112の部分硬化は、カバーフィルムを貼り合わせてから行ってもよい。ゾルゲル層112を光によって部分硬化する場合は、次に、ゾルゲル層112に光源106から光を照射し、ゾルゲル層112を部分硬化してから樹脂モールド111を巻き取りロール203に巻き取る。なお、図6に示す装置においては、乾燥炉107と光源106とを共に備えた製造装置について例示しているが、乾燥炉107又は光源106によってゾルゲル層112を部分硬化できる装置であれば、必ずしも乾燥炉107と光源106とを共に具備するものでなくともよい。
塗布装置204による樹脂モールド111の微細凹凸構造へのゾルゲル材料を塗布する際の塗布方法としては、光硬化性樹脂の塗布方法と同様の塗布方法を用いることができる。
ゾルゲル層形成工程においては、樹脂モールド111上の微細凹凸構造形成面にゾルゲル材料を塗布することが望ましい。また、予めゾルゲル材料に対して溶媒を添加し、溶液として樹脂モールド111上に塗布することが好ましい。これにより、塗布後の乾燥によって、ゾルゲル層112の膜厚を制御できるだけでなく、樹脂モールド111の微細凹凸構造111cの凹部にゾルゲル材料を選択的に埋め込むことができる。
ゾルゲル材料としては、上述したゾルゲル材料を適宜組み合わせて用いることができる。硬化を進行させる触媒としては、種々の酸、塩基を用いることができる。種々の酸には、塩酸、硫酸、硝酸などの無機酸だけでなく、各種カルボン酸、不飽和カルボン酸、酸無水物などの有機酸が含まれる。
ゾルゲル材料としては、溶媒を添加して粘度を調整したものを用いてもよい。好適な溶媒としては、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホルアミド、ピリジン、シクロペンタノン、γ−ブチロラクトン、α−アセチル−γ−ブチロラクトン、テトラメチル尿素、1,3−ジメチル−2−イミダゾリノン、N−シクロヘキシル−2−ピロリドン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アニソール、酢酸メチル、酢酸エチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、モルホリン、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、2−ブタノール、水などが挙げられる。これらは単独又は複数種を組合わせて用いることができる。これらの中でも、ケトン系及びアルコール系の溶媒が好ましい。これらの溶媒は、ゾルゲル材料の塗布方法、塗布膜厚、及び粘度に応じて、適宜添加することができる。例えば、ゾルゲル材料1質量部に対して溶媒を0.01質量部〜1000質量部含有させることができる。なお、溶媒の添加量はこれに限定されず、適時変更可能である。
(部分硬化工程)
また、集光型太陽電池用レンズの製造方法においては、ゾルゲル層形成工程と積層工程との間に、ゾルゲル層を部分硬化させる部分硬化工程を含むことが好ましい。部分硬化工程においては、樹脂モールド111の表面に形成されたゾルゲル層112を加熱して部分硬化する。なお、部分硬化工程は、必ずしも行う必要はない。
部分硬化の条件としては、例えば、窒素雰囲気下において、40℃〜120℃の温度下で1分〜60分程度で部分硬化する。この際の加熱により、ゾルゲル層112中の溶媒を蒸発させることもできる。また、部分硬化工程においては、ゾルゲル層112に予め光重合開始剤と光重合性基を有するゾルゲル材料を導入しておけば、光源から光照射、電子線(EB)照射、マイクロ波照射などを施すことにより、ゾルゲル層112を部分硬化することもできる。
また、ゾルゲル層112を巻き取った後にゾルゲル層112を養生する工程を加えてもよい。養生は、室温〜120℃の間で行うことが好ましい。特に、室温〜105℃であると好ましい。また、部分硬化工程は、レンズ本体11を積層した後に実施することもできる。この場合、ゾルゲル層112及びレンズ本体11から樹脂モールド111を剥離した後、硬化工程を実施することができる。
(積層工程)
積層工程では、樹脂モールド111上に設けたゾルゲル層112上にレンズ本体11を積層して積層体120を作製する(図4C参照)。ここでは、一つの樹脂モールド111上に多数のレンズ本体11を配置することができる(図7A及び図7B参照)。このように配置することで、複数の積層体120を一括して作成することができるので、集光型太陽電池用レンズ10の生産効率が向上する。なお、図7Aは、積層工程の一例を示す斜視図であり、図7Bは、図7Aの平面図である。
レンズ本体11の配置については、特に制限はない。レンズ本体11の配置としては、樹脂モールド111面内の充填率が高く、一度に作成する積層体120の数を増やして生産性を向上する観点から、正方格子状又は六方格子状に配置することが好ましく、六方格子状に配置することがより好ましい。
レンズ本体11の表面には、予め表面処理を施すことにより、ゾルゲル層112との間の密着性が向上する。表面処理としては、接着剤塗布、表面処理剤、シランカップリング剤、UVオゾン洗浄、プラズマ洗浄、エキシマ洗浄などを適宜選択することができる。これら表面処理は、各々組み合わせて使用することもできる。耐熱性、耐候性、ゾルゲル材料との密着性の観点から、特に好ましい表面処理は、UVオゾン洗浄、プラズマ洗浄、エキシマ洗浄である。
(硬化工程)
硬化工程においては、ゾルゲル層112を高温に加熱してゾルゲル層112を完全硬化させて反射防止膜12a(12b)を形成する(図4D参照)。硬化工程においては、ゾルゲル層112の組成によって硬化温度、及び加熱時間が異なるが、概ね150℃以上で1時間程度を加熱することにより、ゾルゲル層112を完全に硬化することができる。なお、液状ガラスであれば、室温で硬化することもできる。用いるゾルゲル材料にもよるが、基本的には、高温であればあるほど好ましく、室温硬化時間も長時間が好ましい。これは、ゾルゲル材料が加水分解重縮合機構で硬化していくため、脱水反応及び脱アルコール反応が温度と時間に依存しているためである。
また、硬化工程は、樹脂モールド111を剥離してから行うこともできる。樹脂モールド111を剥離してから、硬化させることで、硬化条件の加熱温度を高くすることができる。剥離工程を経てから硬化工程を実施する場合、予め、部分硬化工程を経ることが好ましい。部分硬化によって、微細凹凸構造の形を保持することができるため、その後の硬化工程における条件において、微細凹凸構造の崩壊を防ぐことができる。
詳細な硬化条件については、制限されない。硬化条件は材料組成によって異なるため、材料と硬化条件が合致しない場合、ゾルゲル層112にクラックが発生する場合や表面タック性のある未硬化のままの場合がある。
(剥離工程)
剥離工程においては、部分硬化又は完全硬化したゾルゲル層112と樹脂モールド111との界面から樹脂モールド111を剥離して集光型太陽電池用レンズ10を製造する(図4E参照)。樹脂モールド111の剥離については、物理的に剥離する剥離方法を用いてもよく、化学的に剥離する剥離方法を用いてもよく、種々の剥離方法を選択することができる。物理的に剥離する剥離方法としては、レンズ本体11を直接樹脂モールド111から剥離する方法が挙げられる。
化学的に剥離する剥離方法としては、剥離剤及び溶剤への浸漬により樹脂モールドからレンズを剥離する剥離方法が挙げられる。この場合、リンス処理によって剥離したゾルゲル層112から剥離剤などを除去することができる。剥離剤及び溶剤は、用いる基材111a、光硬化性樹脂に併せて適宜選択することができる。エポキシ系、アクリル系、イソシアネート系、シリコーン系の光硬化性樹脂であれば、剥離剤にはダイナソルブシリーズ(ダイナロイ社製)、eソルブシリーズ(カネコ化学社製)などを用いることができる。その他、アルカリ水溶液、酸及び混酸などを用いることができる。溶剤としては、光硬化性樹脂の粘度調整に用いた種々の溶媒の他に、トルエン、ベンゼン、アセトニトリル、クロロメタン、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタンを用いることができる。これらの溶剤は、単独で用いてもよく、複数種を組合せて用いてもよい。
また、高温に加熱して樹脂モールド111を構成する光硬化性樹脂層111b及び基材111aなどの有機物を分解させることにより、ゾルゲル層112の表面から樹脂モールド11を消失させることもできる。この際の高温に加熱されるので、ゾルゲル層112も完全硬化させて反射防止膜12a,12bを形成することができる。
以上説明したように、上記実施の形態に係る集光型太陽電池用レンズ10の製造方法においては、樹脂モールド111を用いることから、一般的な金型を用いた場合に必要となる加熱加圧プレスを必要とせず、その昇温・降温時間、プレス成形時間が大幅に短縮されるので、製造タクトタイムが良好となる。また、樹脂モールド111の微細凹凸構造111cにゾルゲル材料を充填した状態でゾルゲル層112とレンズ本体11と貼合するため、一度に多数のレンズを賦型できる。この結果、金型からゾルゲル材料に直接転写した場合と比較して、製造タクト数や成形時間を削減することが可能となり、生産性を大幅に向上することが可能となる。
また、上記実施の形態によれば、レンズ本体10を配置したゾルゲル層112への光照射又は加熱により反射防止膜12a,12bを形成するので、真空プロセスなどを用いずに反射防止膜12a,12bをレンズ本体10の表面に簡便に設けることができる。これにより、大面積かつ多数のレンズ又は反射鏡に反射防止膜12a,12bを設ける場合であっても、製造タクトタイムを低減でき、製造コストを低減できる。
また、上記実施の形態に係る集光型太陽電池レンズの製造方法によって製造された集光型太陽電池レンズ10は、耐候性、耐環境性、長期安定性に優れると共に、広範囲の波長において良好な透過率を有するため、集光型太陽電池モジュールのレンズ部材として好適に用いることができる。
以下、本発明の効果を明確にするために行った実施例について説明する。なお、本発明は以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
[実施例]
(樹脂モールド作製工程)
円筒状金型の基材としては、石英ガラスロールを用いた。この石英ガラスロールの外周面に対して半導体レーザーを用いた直接描画リソグラフィー法により、微細凹凸構造を形成した後、Crをスパッタ法で10nm積層した。次に、微細凹凸構造を形成したCr表面に対し、デュラサーフHD−2100Z(ダイキン化学工業社製)を塗布し、60℃で1時間加熱後、室温で24時間静置して固定化した。その後、デュラサーフHD−ZV(ダイキン化学工業社製)で3回洗浄して離型処理を施して円筒状金型を作製した。
基材(透明シート)として、PETフィルム:A4100(東洋紡社製:幅300mm、厚さ100μm)を用い、光硬化性樹脂として、OPTOOL DAC HP(ダイキン工業社製)、トリメチロールプロパントリアクリレート(東亞合成社製 M350)及びIrgacure 184(Ciba社製)を重量部で15:100:5.5の割合で混合し光硬化性樹脂を調合したものを用いた。この光硬化性樹脂をマイクログラビアコーティング(康井精機社製)により、塗布膜厚6μmになるように基材表面(PETフィルムの易接着面)に塗布した。
次いで、上記円筒状金型の外周面に対し、上記光硬化性樹脂を塗布した基材(PETフィルム)をニップロール(0.05MPa)で押し付け、紫外線を照射して連続的に光硬化させた。光硬化の条件は、大気下、温度25℃、湿度60%、ランプ中心下での積算露光量が600mJ/cm2であった。また、紫外線の光源としては、UV露光装置(フュージョンUVシステムズ・ジャパン社製、Hバルブ)を用いて、連続的に光硬化を実施した。
光硬化の後、保護フィルム(ポリエチレンフィルム:厚さ20μm)をラミネートし、微細凹凸構造を保護してから連続的に巻き取ることにより、樹脂モールドを作製した。
(ゾルゲル層形成工程)
樹脂モールドの保護フィルムを巻取り、ゾルゲル材料(TGA−FPA、アポロリンク社製)をグラビアコーティングにより、樹脂モールドの表面の微細凹凸構造上に膜厚3μmになるように塗布してゾルゲル層を形成した。次に、80℃、10分の条件で乾燥することによりゾルゲル層を部分硬化した(部分硬化工程)。次に、樹脂モールドを300mm角に裁断した。
(積層工程)
裁断した樹脂モールドのゾルゲル層上にレンズ本体(複合放物面型集光器、エドモンド・オプティクス・ジャパン社製)を15個配置して積層体を作製した。
(硬化工程)
積層体を室温で1週間静置した後、窒素雰囲気下のオーブンで100℃、1時間の条件でゾルゲル層を完全に硬化させて反射防止膜を形成した。
(剥離工程)
積層体を室温まで冷却した後、樹脂モールドからレンズ本体及び反射防止膜を物理的に剥離した。また、反射防止膜を形成していないレンズ表面に対しても、上記と同様に積層工程から剥離工程までを実施し、表面に微細凹凸構造を有する反射防止膜を形成して入射面及び出射面に反射防止膜が形成された集光型太陽電池用レンズを得た。
レンズ本体の表面に設けられた反射防止膜の微細凹凸構造の形状を走査型電子顕微鏡観察で確認した結果、クラックはなく、隣接する凸部間の距離は250nmであり、凸部高さは250nmであった。
得られた集光型太陽電池レンズについて、分光光度計(島津製作所社製、UV−2450)(大型試料室:MPC−2200設置モデル)を使用して、任意の波長領域における透過率を測定した。
[比較例]
比較例としては、レンズ本体(複合放物面型集光器、エドモンド・オプティクス・ジャパン社製)に反射防止膜を設けずにそのまま使用した。このレンズ本体を用いて実施例と同様にして任意の波長領域における透過率を測定した。
図8に実施例に係る作製した集光型太陽電池用レンズ及び比較例に係るレンズ本体の透過スペクトルを示す。実施例に係る集光型太陽電池用レンズは、比較例に係るレンズ本体に対して透過光強度が約10%向上していた。この結果は、実施例に係る集光型太陽電池用レンズは、レンズ本体の表面に反射防止膜を設けたので、レンズ本体の入射面及び出射面における光の反射及び散乱を低減できたためと考えられる。
なお、本発明は上記実施の形態に限定されず、種々変更して実施することが可能である。例えば、上記実施の形態において、添付図面に図示されている大きさや形状などについては、これに限定されず、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更することが可能である。例えば、上述した実施の形態においては、本発明を集光型太陽電池のレンズ部材に適用した例について説明したが、本発明は、照明装置やディスプレイの光学部材として用いることもできる。本発明を照明装置の光学部材に適用した場合、反射防止性能に優れる共に、内部からの光の取り出し効率が良好となることから、エネルギー効率を改善することが可能となる。また、本発明をディスプレイの光学部材に適用した場合、光の反射率を低減させ透過率を向上することができる。