以下、本発明の一実施の形態(以下、「実施の形態」と略記する。)について、図面を参照して詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
まず、本実施の形態に係る微細パタン形成用積層体を用いた被処理体の微細パタン形成方法の概要について説明する。図2A〜図2C及び図3A〜図3Fは、本実施の形態に係る被処理体の微細パタン形成方法を説明するための工程図である。図2Aに示すように、保護層10は、その主面上に凹凸構造11が形成されていると好ましい。凹凸構造11は、複数の凹部11aと凸部11bで構成されている。保護層10は、例えば、フィルム状又はシート状の樹脂保護層である。また、保護層10は、ナノ粒子12の形状及び配列を保護する機能を果たす。
まず、図2Bに示すように、保護層10の凹凸構造11の凹部11aの内部に、後述の第1のマスク層をパターニングするためのナノ粒子12を充填する。ナノ粒子12は、例えば、ゾルゲル材料、金属酸化物粒子或いは金属粒子からなる。ここで、保護層10、及びナノ粒子12を備えた積層体を、第1の微細パタン形成用積層体1、又は単に第1の積層体1と呼ぶ。
次に、図2Cに示すように、第1の積層体1のナノ粒子12を含む凹凸構造11の上に、第1のマスク層13を形成する。この第1のマスク層13は、後述する被処理体20(図3A〜図3F参照)のパターニングに用いられる。第1のマスク層13は、例えば、光硬化性樹脂、熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂からなる。
更に、図2Cに示すように、第1のマスク層13の上側には、カバーフィルム14を設けることができる。カバーフィルム14は、第1のマスク層13を保護するものであり、必須ではない。ここで、保護層10、ナノ粒子12及び第1のマスク層13からなる積層体を、第2の微細パタン形成用積層体2、又は、単に第2の積層体2と呼ぶ。この第2の積層体2は、第1のマスク層13を被処理体20に貼合させることにより、被処理体20のパターンニングに用いることができる。
ここで、複数のナノ粒子12は、保護層10と第1のマスク層13と、の間に、ナノ粒子12の数が中心面から離れるにつれて減少するように配置されるので、ナノ粒子12が第2の積層体2内にランダムに分散されることがない。これにより、以下に説明するように、第2の積層体2の第1のマスク層13を被処理体20に貼合し、被処理体20上にナノ粒子12及び第1のマスク層13を転写付与した際に、ナノ粒子12は互いに重なり合うことがなくなるため、第1のマスク層13の加工精度が大きく向上する。
また、複数のナノ粒子12の中心面内における平均ピッチ(Pav)と、複数のナノ粒子12の第1面側の平均端部位置(Spt)と第1面との間の距離(lor)と、の比率(lor/Pav)が下記式(1)を満たすことで、被処理体20に対する第1のマスク層13の貼合性が向上するため、被処理体20の面内に渡り互いに重なり合うことのないナノ粒子12を転写付与することが可能となる。
式(1)
0.05≦lor/Pav≦10
次に、図3Aに示すような被処理体20を用意する。被処理体20は、例えば、サファイア基板、Si(シリコン)基板、ITO基板、ZnO基板、SiC(炭化ケイ素)基板、窒化物半導体基板又はスピネル基板である。まず、図3Bに示すように、被処理体20の主面上に、第1のマスク層13を保護するカバーフィルム14を取り除いた後の第2の積層体2の第1のマスク層13の露出面を、被処理体20の主面に対面させてラミネート(熱圧着)する。
次に、図3Cに示すように、ナノ粒子12の形状及び配列を保護する保護層10を、第1のマスク層13及びナノ粒子12から剥離する。この結果、被処理体20、第1のマスク層13及びナノ粒子12からなる中間体21が得られる。
なお、上述したラミネートと剥離の間において、第2の積層体2に対してエネルギー線を照射してナノ粒子12と第1のマスク層13の少なくともいずれか一方を硬化又は固化させてもよい。また、ラミネート(熱圧着)時に加える熱により、ナノ粒子12と第1のマスク層13の少なくともいずれか一方を硬化又は固化させてもよい。更に、剥離後のエネルギー線照射或いは加熱処理により、ナノ粒子12と第1のマスク層13の少なくともいずれか一方を硬化又は固化させてもよい。
次に、ナノ粒子12をマスクとして、第1のマスク層13を、例えば酸素アッシングにより、図3Dに示すようにパターニングする。この結果、第1のマスク層13及びナノ粒子12により構成された高いアスペクト比を有する微細マスクパタン16aが設けられた微細パタン構造体16を得る。即ち、微細マスクパタン16aの凸部頂部上にナノ粒子12を配列させることが可能となる。このようにナノ粒子12が互いに重なり合わないことで、微細マスクパタン16aを良好に得ることが可能となる。パターニングされた第1のマスク層13をマスクとして、被処理体20に、例えば、反応性イオンエッチングを施して、図3Eに示すように、被処理体20の主面に微細パタン22を形成する。最後に、図3Fに示すように、被処理体20の主面に残った第1のマスク層13を除去して、微細パタン22を有する被処理体20を得る。
本実施の形態では、図2A〜図2Cに示す保護層10から第2の積層体2を得るところまでを一つのライン(以下、第1のラインという)で行う。それ以降の、図3A〜図3Fまでを別のライン(以下、第2のラインという)で行う。より好ましい態様においては、第1のラインと、第2のラインとは、別の施設で行われる。このため、第2の積層体2は、例えば、ナノ粒子12の形状及び配列を保護する保護層10がフィルム状であり、可撓性を有する場合に、第2の積層体2を巻物状(ロール状)にして梱包し、保管又は運搬される。また、第2の積層体2は、保護層10がシート状である場合に、複数の第2の積層体2を積み重ねて梱包し、保管又は運搬される。
本発明のさらに好ましい態様においては、第1のラインは、第2の積層体2のサプライヤーのラインであり、第2のラインは、第2の積層体2のユーザのラインである。このように、サプライヤーにおいて第2の積層体2を予め量産し、ユーザに提供することで、以下ような利点がある。
(1)第2の積層体2を構成するナノ粒子12の配列及び形状の精度を保護層10により維持することができるため、ナノ粒子12の配列精度及び形状精度を反映させ、被処理体20に微細加工を行うことができる。更に、第1のマスク層13の膜厚精度を第2の積層体2において担保することが可能となるため、被処理体20上に転写形成された第1のマスク層13の膜厚分布精度を高く保つことが可能となる。すなわち、第2の積層体2を使用することで、被処理体20面内にナノ粒子12及び第1のマスク層13を、第1のマスク層13の膜厚分布精度高く、且つナノ粒子12の転写精度高く転写形成することが可能となる。このため、ナノ粒子12を使用し第1のマスク層13を微細加工することで、被処理体20面内にナノ粒子12のパタン精度(パタン配列精度)を反映させ、且つ、膜厚分布精度高くナノ粒子12及び第1のマスク層13から構成される高いアスペクト比を有する微細マスクパタン16aが設けられた微細パタン構造体16を形成することが可能となる。精度の高い微細パタン構造体16を使用することで、被処理体20を精度高く加工することが可能となり、被処理体20面内にナノ粒子12の配列精度を反映させた微細パタン22を作製することができる。
(2)微細パタンの精度を第2の積層体2にて担保することが可能となるため、煩雑なプロセスや装置を使用することなく、被処理体20を加工するのに好適な施設において被処理体20を微細加工することができる。同時に、ナノ粒子12の周囲を保護層10及び第1のマスク層13により取り囲む形状であることから、ナノ粒子12の飛散を抑制することができる。
(3)微細パタン22の精度を第2の積層体2にて担保することが可能となるため、加工された被処理体20を使用してデバイスを製造するのに最適な場所において第2の積層体2を使用することができる。すなわち、安定的な機能を有すデバイスを製造できる。
上述したように、第1のラインを第2の積層体2のサプライヤーのラインに、第2のラインを第2の積層体2のユーザのラインにすることで、被処理体20の加工に最適な、そして、加工された被処理体20を使用しデバイスを製造するのに最適な環境にて第2の積層体2を使用することができる。このため、被処理体20の加工及びデバイス組み立てのスループットを向上させることができる。更に、第2の積層体2は保護層10と保護層10上に設けられた機能層(ナノ粒子12及び第1のマスク層13)から構成される積層体である。すなわち、被処理体20の加工精度を支配する第1のマスク層13及びナノ粒子12の配置精度を、第2の積層体2の保護層10の凹凸構造11の精度にて担保すると共に、第1のマスク層13の膜厚精度を第2の積層体2として担保することが可能となる。以上より、第1のラインを第2の積層体2のサプライヤーのラインに、第2のラインを第2の積層体2のユーザのラインにすることで、加工された被処理体20を使用しデバイスを製造するのに最適な環境にて、第2の積層体2を使用し精度高く被処理体20を加工し使用することができる。
ところで、被処理体20上にアスペクト比の高い微細マスクパタン16aを設ける場合、微細マスクパタン16aを作製する際の残膜が問題となる。上記した微細パタン形成方法においては、ナノ粒子12が互いに重なり合う、より具体的には、微細パタン形成用積層体の厚み方向に重なり合うナノ粒子12が存在する場合、第1のマスク層13のアッシングが困難となるため、別途重なり合うナノ粒子12を部分的に除去する工程(以下、残膜処理工程と呼ぶ)を設ける必要がある。このような工程を経ることで、本来マスクとして機能させたいナノ粒子12の体積が減少すると共に、体積分布が大きくなる。このため、製造工程が煩雑となり、微細パタン22を有する被処理体20の製造効率が低下すると共に、被処理体20の加工精度が低下する問題がある。
本発明者らは、第2の微細パタン形成用積層体2内の所定面内にナノ粒子12が分散する状態をとることにより、上述した第1のマスク層13のアッシング、即ち残膜処理工程における不具合を解消できることを見出した。
すなわち、本発明の微細パタン形成用積層体は、互いに略平行な第1面及び第2面を有し、被処理体に、前記第1面側に設けられた第1のマスク層を介して微細パタンを形成するために用いられる微細パタン形成用積層体であって、保護層と、前記保護層上に設けられた前記第1のマスク層の加工時にマスクとして機能する複数のナノ粒子と、前記複数のナノ粒子を覆うように設けられた前記第1のマスク層と、を具備し、前記複数のナノ粒子は、前記第1面及び前記第2面に略平行な面を横切る前記ナノ粒子の数が最大となる仮想面を中心面とした場合に、前記中心面に略平行な仮想面を横切る前記ナノ粒子の数が、前記中心面から離れるにつれて減少するように配置されていることを特徴とする。
この微細パタン形成用積層体によれば、微細パタン形成用積層体内に複数のナノ粒子が分散されると共に、この複数のナノ粒子の数が中心面から離れるにつれて減少するように配置されるので、ナノ粒子が微細パタン形成用積層体膜内にランダムに分散されることがない。これにより、被処理体へと第1のマスク層を介し転写付与されるナノ粒子は、互いに重なり合うことが少なくなるため、第1のマスク層の加工精度が向上する。即ち、後の工程でナノ粒子を部分的に除去する残膜処理工程を省くことができる。これにより、互いに重なり合うことのないナノ粒子/第1のマスク層/被処理体からなる積層体を得ることが可能となり、第1のマスク層の加工精度が向上する。このため、高いアスペクト比を有する微細マスクパタンを被処理体上に容易に形成可能となる。
本発明の微細パタン形成用積層体においては、前記複数のナノ粒子の前記中心面内における平均ピッチ(Pav)と、前記複数のナノ粒子の前記第1面側の平均端部位置(Spt)と前記第1面との間の距離(lor)と、の比率(lor/Pav)が下記式(1)を満たすことが好ましい。
式(1)
0.05≦lor/Pav≦10
この構成によれば、第1のマスク層の膜厚がナノ粒子の密度に応じ決定される。第1のマスク層の厚みが上記式(1)を満たすことにより、第2の積層体2を被処理体に貼合する際の、第1のマスク層の貼合性を向上させることができる。更に、上記範囲を満たすことで、第2の積層体2の製造や搬送、及び第2の積層体2を被処理体に貼合する際に生じるナノ粒子の配列及び形状の乱れを抑制することができるため、ナノ粒子の形状及び配列精度高く、被処理体へとナノ粒子を第1のマスク層を介し転写付与することができる。また、第1のマスク層の膜厚精度を向上させることができる。即ち、被処理体に転写付与される第1のマスク層の膜厚精度をより高めることが可能となる。
本発明の微細パタン形成用積層体においては、ドライエッチングによる前記ナノ粒子のエッチングレート(Vm1)と前記第1のマスク層のエッチングレート(Vo1)との比率(Vo1/Vm1)が、下記式(2)を満たしてもよい。
式(2)
3≦Vo1/Vm1
この構成によれば、ナノ粒子をマスクとして第1のマスク層を良好にエッチングすることが可能となるため、被処理体上に設けられるナノ粒子及び第1のマスク層から成る微細マスクパタン16aの均等性が向上する。
本発明の微細パタン形成用積層体においては、ドライエッチングによる前記被処理体のエッチングレート(Vi2)と前記第1のマスク層のエッチングレート(Vo2)との比率(Vo2/Vi2)が、下記式(3)を満たしてもよい。
式(3)
Vo2/Vi2≦3
この構成によれば、第1のマスク層を加工マスクとして使用した際の、被処理体の加工精度を向上させることができるため、第2の積層体2のナノ粒子の配列精度を反映させ、且つ、高さ精度の高い微細パタンを被処理体上に設けることができる。
本発明の微細パタン形成用積層体においては、前記複数のナノ粒子の形状が非点対称であり、前記中心面に対する垂直方向の断面視において、前記中心面に平行な方向の線分に対して非線対称であり、且つ、前記中心面に対する垂直方向の線分に対して線対称であることが好ましい。
この構成によれば、ナノ粒子の配列安定性が向上する。即ち、第1の積層体1に対して第1のマスク層を成膜した際や、第2の積層体2を運搬した際、また、第2の積層体2の第1のマスク層を被処理体に貼合した際に生じるナノ粒子の配列の乱れを抑制することができる。
本発明の微細パタン形成用積層体においては、前記保護層は表面に凹凸構造を具備し、前記複数のナノ粒子は、前記凹凸構造の凹部内部に配置されることが好ましい。
この構成によれば、複数のナノ粒子の配列を、保護層の凹凸構造により制御することが可能となる。また、ナノ粒子の形状安定性も向上する。このため、被処理体上に設けられる高いアスペクト比を有す微細マスクパタンの配列精度及び加工精度を向上させることができる。
また、本発明の微細パタン形成用積層体においては、前記第1のマスク層上に更に被処理体を設けることができる。
更に、本発明の微細パタン形成用積層体においては、前記被処理体が、サファイア、シリコン、ITO、ZnO、SiC、窒化物半導体又はスピネルのいずれかであってもよい。
これらの被処理体を採用することにより、高い外部量子効率を有す半導体発光素子を、半導体発光素子の製造に好適な施設にて製造することが可能となる。
以下、本発明の実施の形態に係る微細パタン形成用積層体について詳細に説明する。
図4は、本実施の形態に係る微細パタン形成用積層体の一例を示すの断面模式図である。図4に示すように、本実施の形態に係る第2の積層体2は、保護層101と、保護層101の表面に設けられた複数のナノ粒子102と、複数のナノ粒子102を覆うように設けられた第1のマスク層103から構成される。この第2の積層体2は、互いに略平行な一対の主面を有しており、一方の主面が第1のマスク層103の表面(以下、第1面と呼ぶ)2aとなり、他方の主面が保護層101の露出する表面(以下、第2面と呼ぶ)2bとなる。ここでの略平行とは、必ずしも完全な平行のみを意味するものではなく、本発明の効果を奏する範囲内で多少の誤差を許容するものである。
この第2の積層体2は、第2面2bと第1面2aとの間に複数のナノ粒子102を含んで構成される層102aを有する。複数のナノ粒子102は、周囲を少なくとも第1のマスク層103によって満たされている。また、複数のナノ粒子102は、上述の層102a内において、第2面2b及び第1面2aに対して略平行な面内において所定の広がりを有しており、互いに所定の間隔を設けて配列されている。複数のナノ粒子102が含まれる層の内部には、第2面2b及び第1面2aに対して略平行であり、複数のナノ粒子102を横切る数が最大となる中心面2cが含まれる。
すなわち、本実施の形態に係る第2の積層体2は、複数のナノ粒子102を内部に含み、且つ、ナノ粒子102が、第2面2b及び第1面2aと略平行な中心面2c内(紙面前後方向及び左右方向)において所定の広がりを持つように配置される。更に、中心面2cを横切る複数のナノ粒子102は、中心面2c内において所定の間隔を設けて配置される。
次に、ナノ粒子102の分布について説明する。本実施の形態に係る第2の積層体2においては、第2の積層体2内の仮想面内を横切るナノ粒子102の数により中心面2cが定義される。具体的には、第2の積層体2内に、第2面2b及び第1面2aに対して略平行な複数の仮想面を設けた際に、当該複数の仮想面の中でナノ粒子102を横切る数が最大となる仮想面を中心面2cとして設定する。
図4に示す例では、第2の積層体2の第2面2bと第1面2aとの間に、第2面2b側から第1面2a側に向けて5つの仮想面A〜仮想面Eを設けている。この仮想面A〜仮想面Eの中では、第2の積層体2の膜厚方向における中央部近傍の仮想面Cを横切るナノ粒子102の数が12個で最大となる。したがって、仮想面Cが中心面2cとなる。この中心面2cに対して第1面2a側の仮想面B、仮想面Aにおいては、第1面2aに向けて中心面2cから離れるにつれて、仮想面B、仮想面Aを横切るナノ粒子102の数が、12個、9個、0個のように順次単調減少する。また、中心面2cに対して第2面2b側の仮想面D、仮想面Eにおいては、第2面2bに向けて中心面2cから離れるにつれて、仮想面D、Eを横切るナノ粒子102の数が12個、2個、0個のように順次単調減少する。
このように、本実施の形態に係る第2の積層体2においては、複数のナノ粒子102は、第2面2b及び第1面2aに略平行な仮想面A〜仮想面Eのうち、ナノ粒子102が横切る数が最大となる仮想面Cが中心面2cとなり、当該中心面2cから離れるにつれて仮想面A、B、D、Eを横切るナノ粒子102の数が減少するように配置されている。この構成により、複数のナノ粒子102が、中心面2cから離れるにつれて減少するので、第2の積層体2内にランダムにナノ粒子102を配置する場合と比較してナノ粒子102の第2の積層体2の膜厚方向に対する重なりを抑制することができる。これにより、第2の積層体2の第1面2a、即ち第1のマスク層103の表面を被処理体に貼合し得られるナノ粒子102/第1のマスク層103/被処理体からなる積層体に対し、ナノ粒子102側から第1のマスク層103をエッチングする際の、重なり合うナノ粒子102を除去する残膜処理工程を省くことができるため、第1のマスク層103の加工精度を向上させることができる。更に、中心面2c近傍に複数のナノ粒子102が設けられるため、ナノ粒子102の第1面2aに与える影響を抑制することが可能となり、第1面2aの平坦性を良好に保つことが可能となる。このため、第2の積層体2の第1のマスク層103を被処理体に貼合する際の、エアボイドの巻き込みといった不良を抑制することができるため、被処理体面内に対する転写性が向上する。なお、複数の面を横切る複数のナノ粒子102の数は、必ずしも完全に単調減少している必要はなく、本発明の効果を奏する範囲で適宜分散した態様を含むものとする。
第2の積層体2の第1面2a、即ち第1のマスク層103の表面に略平行な面であって、複数のナノ粒子12の第1面2a側の端部によって形成される平均面を、平均端部位置(Spt)と定義する。この平均端部位置(Spt)は、第2の積層体2の膜厚方向Mにおける複数のナノ粒子102の第1面2a側の端部と第1面2aとの間の最短距離の平均値として求める。複数のナノ粒子102の第1面2a側の端部と第1面2aとの間の最短距離は、走査型電子顕微鏡或いは透過型電子顕微鏡観察、又は透過型電子顕微鏡とエネルギー分散型X線分光法とを併用した手法を用いることで測定することができる。平均端部位置(Spt)を求めるための平均点数としては20点以上が好ましい。
次に、図5は、図4に示した第2の積層体2の中心面2c内における断面模式図である。すなわち、図5においては、図4に示した中心面2cに沿って第2の積層体2をスライスし、第1面2a側より第2の積層体2を観察した際の上面図を示している。図5に示すように、中心面2cは、複数のナノ粒子102を横切るので、第1面2a側から観察すると、中心面2c内には複数のナノ粒子102が中心面内に割断されて配置されている。図5に示す距離(P)は、ナノ粒子102の隣接する中心間の距離を意味する。あるナノ粒子A1の中心とこのナノ粒子A1に隣接するナノ粒子B1−1〜ナノ粒子B1−6の中心との間の距離PA1B1−1〜距離PA1B1−6を、ピッチPと定義する。しかし、この図5に示すように、隣接するナノ粒子102によりピッチPが異なる場合は次の手順に従い、平均ピッチ(Pav)を決定する。(1)任意の複数のナノ粒子A1,A2…ANを選択する。(2)ナノ粒子AMとナノ粒子AM(1≦M≦N)に隣接するナノ粒子(BM−1〜BM−k)と、のピッチPAMBM−1〜PAMBM−kを測定する。(3)ナノ粒子A1〜ナノ粒子ANについても、(2)と同様にピッチPを測定する。(4)ピッチPA1B1−1〜PANBN−kの相加平均値を平均ピッチ(Pav)として定義する。但し、Nは5以上10以下、kは4以上6以下とする。なお、ピッチPは、走査型電子顕微鏡や透過型電子顕微鏡を使用した断面像観察より求めることができる。断面像よりピッチPを求める場合、上述したナノ粒子の中心を、凸部頂部中央位置とする。
ナノ粒子102のピッチPは、±35%以下の分布を有すと、ナノ粒子102の転写精度及び第1のマスク層103の加工精度を向上できるため好ましい。特に、±20%以下であることで、ナノ粒子102の配置精度が向上するため、第2の積層体2の膜厚方向Mに重なり合うナノ粒子数を抑制することが可能となり、このため第1のマスク層103の加工精度を向上させることができる。
ナノ粒子102の中心面内における平均ピッチ(Pav)と、複数のナノ粒子102の前記第1面2a側の平均端部位置(Spt)と第1面2aとの間の距離(lor)と、の比率(lor/Pav)が下記式(1)を満たすことが好ましい。下記式(1)を満たすことは、第1のマスク層103の膜厚をナノ粒子102の密度に応じ決定することを意味する。第1のマスク層103の厚みが式(1)を満たすことにより、第2の積層体2を被処理体に貼合する際の、第1のマスク層103の貼合性を向上させることができる。更に、第2の積層体2の製造や搬送、及び第2の積層体2を被処理体に貼合する際に生じるナノ粒子102の配列及び形状の乱れを抑制することができるため、ナノ粒子102の形状及び配列精度高く、被処理体へとナノ粒子102を第1のマスク層103を介し転写付与することができる。また、第1のマスク層の膜厚精度を向上させることができる。即ち、被処理体に転写付与される第1のマスク層の膜厚精度をより高めることが可能となる。
式(1)
0.05≦lor/Pav≦10
特に、距離(lor)と平均ピッチ(Pav)との比率(lor/Pav)は、被処理体上に転写形成されたナノ粒子102及び第1のマスク層103に対するドライエッチング性の観点から、lor/Pav≦10であることが好ましく、lor/Pav≦5であることがより好ましい。ドライエッチング時のナノ粒子102及び第1のマスク層103から構成されるピラー(微細マスクパタン)の倒れを抑制する観点から、lor/Pav≦2.5であることが好ましい。一方で、第1のマスク層103の接着層としての機能を良好に発揮し、貼合・転写精度を高める観点から、lor/Pav≧0.05であることが好ましい。距離(lor)は、転写精度の観点から0nm越であることが好ましく、ドライエッチング精度の観点から3000nm以下であることが好ましい。距離(lor)の斑は、第1のマスク層103エッチング後の、被処理体上の第1のマスク層103の幅バラつきの観点から、ナノ粒子102の平均ピッチ(Pav)にもよるが、概ね±30%以下であることが好ましく、±25%以下がより好ましく、±10%以下が最も好ましい。
更に、第1のマスク層103の表面粗さRaと距離lorと、の比率(Ra/lor)は1以下であることが好ましい。この範囲を満たすことにより、第1のマスク層103を被処理体20へと貼合する際のエアボイドの巻き込みを抑制することが可能となるため、被処理体面内における転写精度を向上させることが可能となる。同様の効果から、比率(Ra/lor)は、0.55以下であることが好ましく、0.45以下であることがより好ましく、0.40以下であることが最も好ましい。更に、比率(Ra/lor)が、0.2以下であることにより、第1のマスク層103をナノスケールに薄くすると共に、貼合精度を大きく向上させることが可能となる。同様の効果から、0.15以下であることが好ましく、0.1以下であることがより好ましい。なお下限値は特に限定されず、比率(Ra/lor)は小さい程好ましが、連続的にロール・ツー・ロール法により微細パタン形成用積層体を製造する観点から0.002以上であることが好ましく、0.004以上であることがより好ましく、0.01以上であることが最も好ましい。
また、第1のマスク層103の露出する表面(第1面2a)の表面粗さRaは300nm以下であることが好ましい。この範囲を満たすことにより、第1のマスク層103の接着層としての機能を良好に発現することが可能となる。特に、第2の積層体2の第1のマスク層102を被処理体に貼合する際のエアボイドを抑制する観点から、第1のマスク層103の露出する面に対する表面粗さRaは、150nm以下であることが好ましく、100nm以下であることが好ましく、50nm以下であることが最も好ましい。更に、第1のマスク層103の膜厚を薄くすると共に、転写精度、第1のマスク層103の加工精度、及び被処理体の加工精度を向上させる観点から、第1のマスク層103の露出する表面に対する表面粗さRaは、35nm以下であることが好ましく、25nm以下であることがより好ましく、15nm以下であることが最も好ましい。なお、表面粗さRaは小さい程好ましため、下限値は特に限定されないが、連続的に第2の積層体2を製造する観点から、2nm以上であることが好ましく、5nm以上であることがより好ましい。なお、表面粗さRaは、原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscopy)を使用し150μm×150μm以上の測定範囲を、測定周波数が1.11Hz以上にて走査し測定された値として定義する。また、第1のマスク層103の表面に異物が付着していた場合であって、該異物ごと原子間力顕微鏡により操作した場合、表面粗さRaは大きくなる。このため、走査型電子顕微鏡により測定する環境は、クラス1000以下のクリーンルームであることが好ましく、また、測定前にはイオナイザ等による除電環境下におけるエアブロー洗浄をすることが好ましい。また、第1のマスク層103の表面(第1面2a)にスクラッチ跡に代表される傷が存在していた場合であって、該傷ごと原子間力顕微鏡により操作した場合、表面粗さRaは大きくなる。このため、走査型電子顕微鏡により測定する際は、傷を避けて測定するものとする。上記測定は例えば、以下の装置及び条件により可能である。
・株式会社キーエンス社製 Nanoscale Hybrid Microscope VN−8000
・測定範囲: 200μm(比率1:1)
・サンプリング周波数: 1.11Hz
中心面2c内に横切る複数のナノ粒子102は、第2の積層体2の中心面2cに対する垂直方向(膜厚方向)における平均厚みが、5nm以上1000nm以下であることが好ましい。ナノ粒子102の平均厚みが5nm以上であることにより、第1のマスク層103の加工精度を向上させることができる。一方、ナノ粒子102の平均厚みが1000nm以下であることにより、ナノ粒子102の物理的安定性を向上でき、また第2の積層体2の第1面2aのラフネスを低減できる。更に、ナノ粒子102の転写精度を向上させることができる。この効果をいっそう発揮する観点から、ナノ粒子102の平均厚みとしては、20nm以上800nm以下であることが好ましく、30nm以上500nm以下であることがより好ましく、50nm以上300nm以下であることが最も好ましい。
また、ナノ粒子102は、第1のマスク層103の加工精度を向上させる観点から、第2の積層体2の膜厚方向におけるナノ粒子102の厚み(高さ)に±25%以下のばらつきを有することが好ましい。ここで、ばらつきは、20個以上のナノ粒子102に対し、それぞれのナノ粒子102の第2の積層体2の膜厚方向における厚み(高さ)を測定し算出される値である。なお、20個以上のナノ粒子102に対し、それぞれのナノ粒子102の第2の積層体2の膜厚方向Mにおける厚み(高さ)を測定し、測定された各ナノ粒子102の平均値が、ナノ粒子102の膜厚方向における平均厚み(Z)に相当する。
中心面2cにより割断されたナノ粒子102の割断面の径(D)の平均値をナノ粒子102の平均径とする。この平均径は、任意に複数のナノ粒子102を選択し、それらの径(D)の平均値として算出する。平均点数としては20点以上が好ましい。また、平均径を求める際の中心面2cは、第1面2a側の平均端部位置(Spt)と第2面2b側の平均端部位置との間の中央に設定された中央面である。ここで、中央面とは、次のように定義する。第1面2a側の平均端部位置(Spt)と第2面2b側の平均端部位置との間の距離をZとする。中央面とは、第1面2a側の平均端部位置(Spt)から第2面2b方向にZ/2下降した面、すなわち、第2面2b側の平均端部位置から第1面2a方向にZ/2上昇した面である。
平均径は、1nm以上1000nm以下であることが好ましい。平均径が1nm以上であることにより、第1のマスク層103の加工精度を向上させることができる。また、平均径が1000nm以下であることにより、ナノ粒子102同士の第2の積層体2の膜厚方向に対する重なりを抑制することができる。この効果をいっそう発揮する観点から、平均径は、10nm以上800nm以下であることが好ましく、50nm以上500nm以下であることがより好ましく、80nm以上300nm以下が最も好ましい。
ナノ粒子102の径は、±25%以下の分布をもってもよい。ナノ粒子102の径の分布が±25%以下であることにより、ナノ粒子102同士の第2の積層体2の膜厚方向に対する重なりを抑制することが可能となるため、第1のマスク層103の加工精度を向上させることができる。同様の効果から、±15%以下がより好ましく、±10%以下がもっとも好ましい。
次に、ナノ粒子102の形状について詳細に説明する。ナノ粒子102の形状としては、特に制限はない。ナノ粒子102の形状としては、例えば、三角柱、三角錐、四角柱、四角錐、多角柱、多角錐、円錐、円柱、楕円錐、楕円柱、及び、これらの底面が歪んだ形状、これらの側面が湾曲した形状、又は球体、円盤状、レンズ状、扁平楕円体状(扁球状)、偏長楕円体状(長球状)等が挙げられる。これらの中でも、特に、円錐、円柱、楕円錐、楕円柱のように、底面の角が少ない形状が好ましい。これらの形状とすることにより、ナノ粒子102の転写精度及び第1のマスク層103の加工精度が向上する。底面を楕円とした場合の長軸半径と短軸半径と、の比率(長軸半径/短軸半径)は1以上であることが好ましい。比率(長軸半径/短軸半径)が1の場合が円である。ナノ粒子102の配置精度を向上させ、ナノ粒子102の第2の積層体2の膜厚方向に対する重なりを抑制する観点から、底面が楕円のナノ粒子の場合、比率(長軸半径/短軸半径)は100以下であることが好ましく、25以下であることがより好ましく、5以下であることが最も好ましい。
ナノ粒子102の形状は以下に説明する値以下の分布を含むと、ナノ粒子102の配置精度及び第1のマスク層103の加工精度を向上させることができる。ここで、ナノ粒子102の形状の分布とは、ナノ粒子102の形状を表現する変数の分布である。ナノ粒子102の形状は、ナノ粒子102の高さ(厚み)、側面の角度、側面の変曲点の数、側面の長さ、上面或いは下面の平坦面の面積(径)、上面或いは下面の曲率、上面或いは下面の変曲点の数、上面又は下面又は側面のラフネス(粗さ)、アスペクト比(高さ/下面の径或いは、高さ/上面の径)或いは、上面或いは下面と側面とが作る曲率等により定義される。これらを、ナノ粒子102を表現する変数xとする。変数xに対する標準偏差と相加平均と、の比率(標準偏差/相加平均)が0.5以下であることにより、前記効果を発現できる。
(相加平均)
相加平均値は、ある要素(変量)XのN個の測定値をx1、x2…、xnとした場合に、次式にて定義される。
(標準偏差)
要素(変量)XのN個の測定値をx1、x2…、xnとした場合に、上記定義された相加平均値を使用し、次式にて定義される。
相加平均を算出する際のサンプル点数Nは、10以上として定義する。また、標準偏差算出時のサンプル点数は、相加平均算出時のサンプル点数Nと同様とする。
また、標準偏差/相加平均は、面内における値ではなく、局所的な値として定義する。即ち、面内に渡りN点の計測を行い標準偏差/相加平均を算出するのではなく、局所的観察を行い、該観察範囲内における標準偏差/相加平均を算出する。ここで、観察に使用する局所的範囲とは、平均ピッチPavの5倍〜50倍程度の範囲として定義する。例えば、平均ピッチPavが500nmであれば、2500nm〜25000nmの観察範囲の中で観察を行う。
上述したように、ナノ粒子102の形状は、変数により表記可能であり、該変数に対する標準偏差/相加平均が0.5以下であればナノ粒子102の第2の積層体2の膜厚方向に対する重なりを抑制し、第1のマスク層103の加工精度を向上させることができる。同様の観点から、標準偏差/相加平均は0.35以下が好ましく、0.25以下であることがより好ましく、0.15以下であることが最も好ましい。特に、要素xが、高さ(厚み)、上面或いは下面の径(面積)或いはアスペクトであると、上記(標準偏差/相加平均)の範囲におけるナノ粒子の転写精度が向上するため好ましい。また、ナノ粒子102の配列は、ピッチを変数xにすることで表現できる。この場合も同様の効果から上記範囲を満たすと好ましい。
ナノ粒子102のピッチPをナノ粒子102を構成する要素として考えた場合、上記説明した比率(標準偏差/相加平均)は、0.4以下であることが好ましい。この場合、ナノ粒子102同士の第2の積層体2に膜厚方向に対する重なりを抑制することが可能となる。同様の観点から、0.35以下であることが好ましく、0.25以下であることがより好ましく、0.15以下であることが最も好ましい。一方、下限値は特に限定されない。これは、ピッチPに対する比率(標準偏差/相加平均)が小さい程、ナノ粒子102の配列規則性が向上し、ナノ粒子102の転写精度が向上するためである。特に、上記説明した比率(lor/Pav)の範囲を満たす場合、ピッチPに対する比率(標準偏差/相加平均)が上記範囲内において大きい場合であっても、ナノ粒子102の転写精度を良好に保つことが可能となる。
更に、ナノ粒子102の第1面2a側の頂部径と、ナノ粒子102の第2面2b側の頂部径とが異なると、ナノ粒子102の配置精度及び転写精度が向上するため好ましい。即ち、ナノ粒子102の側面は、第2の積層体2の厚み方向から勾配を有すると好ましい。このようなナノ粒子102が傾斜を有す構造であることにより、ナノ粒子102の形状が安定化し、且つナノ粒子102の転写精度が向上するため、第1のマスク層103の加工精度を向上させることができる。本効果をより発揮する観点から、ナノ粒子102の第1面2a側の頂部径と、ナノ粒子102の第2面2b側の頂部径と、は2倍以上異なると好ましく、5倍以上ことなるとより好ましく、10倍以上ことなると最も好ましい。なお、最も好ましくは、ナノ粒子102の第1面2a側の頂部径或いはナノ粒子102の第2面2b側の頂部径が0に漸近する状態、換言すればナノ粒子102の上面或いは下面に平坦面がない場合である。特に、第1面2a側の頂部径が第2面2b側の頂部径に比べ、大きい場合、前記効果をより発揮することが可能となる。
また、ナノ粒子102の高さ(厚み)に対する(標準偏差)/(相加平均)は、ナノ粒子102の転写精度の観点から、0.40以下であることが好ましい。更に、0.35以下であることにより、第1のマスク層103の加工精度を向上できるため好ましい。中でも、0.25以下の範囲であることにより、ナノ粒子102の形状の安定性が向上することから、第1のマスク層103をより良好に加工することが可能となる。特に、上記説明した比率(lor/Pav)の範囲を満たす場合、高さ(厚み)に対する比率(標準偏差/相加平均)が上記範囲内において大きい場合であっても、ナノ粒子102の転写精度を良好に保つことが可能となる。
図6A〜図6Dは、ナノ粒子102の形状の一例を示す図である。なお、図6A〜図6Dにおいては、図4と同様に、第2の積層体2の第1面2a及び第2面2bに対する垂直断面を示している。
図6A〜図6Dに示すように、ナノ粒子102の形状としては、非点対称であり、中心面2cに対して平行な方向の線分Xに対して非線対称であって、且つ、中心面2cに対する垂直方向の線分Yに対して略線対称であることが好ましい。ここでの略線対称とは、完全な線対称のみを意味するものではなく、本発明の効果を奏する範囲内で対称性の崩れた線対称も許容するものである。このようなナノ粒子102の形状としては、第1面2a側の先端が第1面2a側に突出し、第2面2b側の先端が第2面2bに対して略平行な形状を有するものであってもよく(図6A参照)、第2面2b側の先端が第2面2b側に突出し、第1面2a側の先端が第1面2a側に対して略平行な形状を有するものであってもよい(図6B参照)。また、ナノ粒子102の形状としては、第1面2a側の先端が第1面2a側に突出し、第2面2b側の先端が第1面2a側に向けて窪んだ形状を有するものであってもよく(図6C参照)、第2面2b側の先端が第2面2b側に突出し、第1面2a側の先端が第2面2b側に向けて窪んだ形状を有するものであってもよい(図6D参照)。このようなナノ粒子102を用いることにより、ナノ粒子102の配列安定性が向上する。即ち、第1の積層体1に対して第1のマスク層103を成膜した際、第2の積層体2を梱包した際、運搬した際、また、第2の積層体2の第1のマスク層103を被処理体に貼合した際に生じるナノ粒子配列の乱れを抑制することができる。
ナノ粒子102の配列は中心面2cに対して定義される。中心面2c内におけるナノ粒子102の配列は、被処理体上に設けられる高いアスペクト比を有す微細マスクパタンの用途により選択できるため、特に限定されず例えば、正六方配列、準六方配列、準四方配列、正四方配列、ランダム配列や、これらを規則的或いは規則性低く組み合わせた配列等を採用することができる。例えば、六方配列から四方配列へと徐々に変化した後に六方配列に戻る配列等も採用できる。特に、ナノ粒子102の配置精度の観点から、正六方配列における配列の歪が±25%以下の六方配列が好ましい。
本実施の形態に係る第2の積層体2は、第1のマスク層103の表面(第1面2a)上に被処理体を設けてもよい。この場合には、第1のマスク層103の表面上に被処理体を設けるか、又は被処理体の一主面上にハードマスク層を設け、このハードマスク層上に第1のマスク層103の表面(第1面2a)を設ける構成となる。
第1のマスク層103の表面(第1面2a)側に被処理体を貼合した第2の積層体2(以下、第3の積層体という)を製造し、第3の積層体を別の施設へと搬送することができる。既に説明した用語を使用すれば、第1のラインにて第3の積層体まで製造し、第2のラインにて第3の積層体を使用する状態である。この場合、被処理体と第1のマスク層103と、の界面に異物が侵入することを抑制できる。また、第3の積層体を製造する設備や環境により、第1のマスク層103と被処理体の貼合精度を担保することが可能となる。このため、ナノ粒子102をマスクとして第1のマスク層103を加工するのに最適な施設にて、加工を行うことができる。このため、被処理体を加工し微細パタンを設ける際の、加工精度も向上させることができるため、微細パタンを具備した被処理体を使用し製造されるデバイス(特に半導体発光素子)の製造安定性を向上させることができる。
ハードマスク層を被処理体上に予め設けることにより、ハードマスク層上に転写形成された第1のマスク層103及びナノ粒子102に対しドライエッチングを行い、第1のマスク層103及びナノ粒子102から成る高いアスペクト比を有する微細マスクパタンをハードマスク層上に形成できる。微細マスクパタンをマスクとし、ハードマスク層を容易に微細加工することが可能となる。ハードマスク層を微細加工することにより得られたハードマスクパタンをマスクとすることで、容易に被処理体をエッチングすることができる。特に、ハードマスク層を適用することで、被処理体を加工し被処理体上に微細パタンを得る際に、ドライエッチングの他、ウェットエッチングの適用性も向上する。
ハードマスク層は、被処理体との選択比(被処理体のエッチングレート/ハードマスク層のエッチングレート)により決定されれば、その材質は特に限定されない。当該選択比は、加工性の観点から1以上であることが好ましく、3以上であることがより好ましい。加工される被処理体のアスペクト比を高くする観点からは、当該選択比は5以上であることが好ましく、10以上であるとより好ましい。ハードマスク層を薄くできるため、選択比は15以上であるとなお好ましい。ハードマスク層の材質は限定されないが、例えば、シリカ、チタニア、スピンオングラス(SOG)、スピンオンカーボン(SOC)や、クロム、アルミ、タングステン、ハフニウムやその酸化物等を使用することができる。また、エッチング時の加工性の観点から、ハードマスク層の厚みは、5nm以上500nm以下であることが好ましく、5nm以上300nm以下であるとより好ましく、5nm以上150nm以下であると最も好ましい。
なお、ハードマスク層は多層構造であってもよい。ここで多層とは、ハードマスク層の膜厚方向への積層を意味する。例えば、被処理体の主面上に第1のハードマスク層(1)が設けられ、この第1のハードマスク層(1)上に第2のハードマスク層(2)が設けられてもよい。同様に、第Nのハードマスク(N)上に第N+1のハードマスク層(N+1)が設けられてもよい。ハードマスク層の積層数は、ハードマスク層の加工性及び、被処理体の加工精度の観点から10以下であることが好ましく、5以下であることがより好ましく、3以下であることが最も好ましい。
ハードマスク層が多層構造の場合の、各層の厚みは、5nm以上150nm以下であることが好ましく、また全ての層の総膜厚は、単層の場合も含めると、500nm以下であることが好ましい。特に、総膜厚は300nm以下であることが好ましく、150nm以下であることがより好ましい。
2層のハードマスク層の構成としては、例えば、被処理体の主面上にSiO2が成膜され、このSiO2上にCrが成膜された構成が挙げられる。また、3層のハードマスク層の構成としては、例えば、被処理体の主面上にSiO2が成膜され、SiO2上にCrが成膜され、Cr上にSiO2が成膜される構成や、被処理体の主面上に、SiO2が成膜され、SiO2上にSOGが成膜され、SOG上にSOCが成膜される構成や、被処理体の主面上に、SiO2が成膜され、SiO2上にSOCが成膜され、SOC上にSOGが成膜される構成等が挙げられる。
次に、本実施の形態に係る第2の積層体2を用いた微細パタン形成方法の概略について簡単に説明する。図7Aに示すように、第2の積層体2の第1のマスク層103と被処理体200とを貼合する。
次に、図7Cに示すように、第1のマスク層103及びナノ粒子102から保護層101を剥離することで、ナノ粒子102/第1のマスク層103/被処理体200から構成される積層体201を得ることができる。なお、保護層101の剥離は、保護層101を物理的に剥離する方法のみならず、保護層101の膨潤溶解や保護層101の化学的溶解に替えることもできる。なお、図7Aにおいては、保護層101は支持基材100上に設けられている。上記保護層101の剥離は、保護層101と支持基材100の剥離を意味する。ここで、第1のマスク層103とナノ粒子102の少なくとも一方に硬化性物質が含有される場合、第2の積層体2の第1のマスク層103と被処理体200とを貼合した状態及び/又は積層体201の状態にて硬化を促進させることが好ましい。硬化が光重合の場合は、少なくともエネルギー線を照射すると好ましい。光重合性物質が含有される場合は、特に、図7Bに示すように、第2の積層体2の第1のマスク層103と被処理体200とを貼合した後に、保護層101或いは被処理体200の少なくとも一方からエネルギー線を照射すると好ましい。一方、硬化が熱重合の場合は、少なくとも加熱を行うと好ましい。このように第2の積層体2に硬化性物質が含まれる場合、第1のマスク層103を加工マスクとして被処理体200を加工する前に、硬化を促進させると、被処理体200の加工精度を向上させることができる。特に、第1のマスク層103にガラス転移温度が存在する場合、第1のマスク層103の硬化を促進することで、ガラス転移温度が大きくなるため、被処理体200の加工精度を向上させることができる。
次に、図7Dに示すように、得られた積層体201のナノ粒子102をマスクとして第1のマスク層103をエッチングすることにより、被処理体200上に高いアスペクト比を有する微細マスクパタン202aが設けられた微細パタン構造体202が得られる。すなわち、被処理体200上に微細加工されたナノ粒子102/第1のマスク層103から構成される微細マスクパタン202aを形成できる。この微細マスクパタン202aをマスクとして、被処理体200をエッチングすることで、図7Eに示すように、被処理体200が難加工基材である場合であっても、容易に加工することが可能となる。最後に、図7Fに示すように、被処理体200上の残渣(第1のマスク層103)を除去することにより、微細パタン220が形成された被処理体200を得ることができる。
このように、ナノ粒子102/第1のマスク層103/被処理体200からなる積層体201を、第2の積層体2を直接、被処理体200上に貼合することで転写形成できる。これにより、ナノインプリント(転写)におけるレジスト層の充填や均等な押圧といったノウハウを排除でき、かつ、一般的な方法であるラミネートを用いて転写を行うことができるので、より簡便に積層体201を得ることが可能となる。更に、第2の積層体2を使用することで、第1のマスク層103の膜厚分布を第1のマスク層103の塗工精度で担保することが可能となる。すなわち、被処理体200への貼合及び転写による第1のマスク層103の膜厚分布をより小さくすることが可能となり、積層体201おいて、被処理体200面内における第1のマスク層103の膜厚分布精度を向上させることができ、被処理体200上にエッチングにより形成される微細マスクパタン202aの分布精度を向上させることができる。このため、第2の積層体2を使用することで、被処理体200面内における微細マスクパタン202aの分布精度を向上させることができ、発現される機能の面内分布を小さくすることができる。微細マスクパタン202aをマスクとして被処理体200を使用し加工する場合、加工された被処理体200の微細パタン220は、被処理体200面内において高い分布精度を有すこととなる。
第2の積層体2を用い被処理体200の表面に微細パタン220を形成する方法においては、微細マスクパタン202aを被処理体200上に形成する観点から、ナノ粒子102をマスクとして用いた第1のマスク層103の加工は、ドライエッチングであることが好ましい。このドライエッチングによるナノ粒子102のエッチングレート(Vm1)と第1のマスク層103のエッチングレート(Vo1)との比率(Vo1/Vm1)は、ナノ粒子102をマスクとして第1のマスク層103をエッチングする際の加工精度に影響を与える。Vo1/Vm1>1は、ナノ粒子102が第1のマスク層103よりもエッチングされにくいことを意味するため、大きいほど好ましい。また、ナノ粒子102の保護層101への配置性の観点から、Vo1/Vm1≦1000であることが好ましく、Vo1/Vm1≦150がより好ましく、Vo1/Vm1≦100が最も好ましい。
以上のような観点から、ナノ粒子102のエッチングレート(Vm1)と第1のマスク層103のエッチングレート(Vo1)との比率(Vo1/Vm1)が、下記式(2)を満たすが好ましい。これにより、ナノ粒子102の耐エッチング性が向上し、ナノ粒子102のエッチング量が低減されるので、微細パタン構造体202を形成することが可能となる。
式(2)
3≦Vo1/Vm1
また、比率(Vo1/Vm1)は、10≦Vo1/Vm1であることがより好ましく、15≦Vo1/Vm1であることがさらに好ましい。比率(Vo1/Vm1)が上記範囲を満たすことにより、厚みのある第1のマスク層103を用いた場合であっても、ナノ粒子102をマスクとしたドライエッチングによって、第1のマスク層103を容易に微細加工することができる。これにより、微細加工された微細マスクパタン202aを、被処理体200上に形成することができる。このような、微細マスクパタン202aを用いることで、被処理体200を容易にドライエッチング加工することや、被処理体200上に超撥水性や超親水性、粘着性、センサといった機能を付与することができる。例えば、センサの場合、ナノ粒子102に金や銀に代表される金属を選定することでセンサを作製できる。このような金属表面に微量物質(所定の病気の進行度又は感染度等をはかる指標となる分子等)が付着した場合、金属表面の表面プラズモン(表面プラズモンポラリトン)を利用し、測定困難なppmやppbといった微量濃度であっても、光学系により感度を倍増させ検知することが可能となる。
一方、第1のマスク層103のエッチング時のエッチング異方性(横方向のエッチングレート(Vo//)と縦方向のエッチングレート(Vo⊥)、との比率(Vo⊥/Vo//)は、Vo⊥/Vo//>1であることが好ましく、より大きいほど好ましい。なお、縦方向とは、第1のマスク層103の膜厚方向を意味し、横方向とは、第1のマスク層103の面内方向を意味する。また、比率(Vo⊥/Vo//)は、微細マスクパタン202aを被処理体200上に形成する観点から、用途にもよるが、概ね、Vo⊥/Vo//≧2であることが好ましく、Vo⊥/Vo//≧3.5であることがより好ましく、Vo⊥/Vo//≧10であることがさらに好ましい。得られる微細マスクパタン202aを用い、被処理体200を加工する場合は、ピッチがサブミクロン以下の領域においては、高さの高い第1のマスク層103を安定的に形成する観点、及び、被処理体200を容易にドライエッチングする観点から、第1のマスク層103の幅(径)を大きく保つ必要がある。上記範囲を満たすことにより、ドライエッチング後の第1のマスク層103の幅(幹の太さ)を大きく保つことができるため、好ましい。
被処理体200としては、微細パタン構造体202の用途(撥水性、親水性、粘着性、センサ、基材加工用のマスク等)により適宜選定することができる特に限定されない。そのため、被処理体200としては、樹脂フィルム、樹脂板、樹脂レンズ、無機基材、無機フィルム、無機レンズ等を用いることができる。
特に、微細マスクパタン202aをマスクとして使用して被処理体200を加工する場合は、被処理体200としては、例えば、合成石英や溶融石英に代表される石英、無アルカリガラス、低アルカリガラス、ソーダライムガラスに代表されるガラスや、シリコンウェハ、ニッケル板、サファイア、ダイヤモンド、SiC、マイカ、ZnO、半導体基板(窒化物半導体基板等)、スピネル基板やITO等の無機基材を用いることができる。また、第2の積層体2が屈曲性のある場合、被処理体200としては、曲率を持つ外形を有する無機基材(例えば、レンズ形状、円筒・円柱形状、球形状等)を選定することもできる。特に、第2の積層体2がフィルム状(リール状)の場合、裁断やパンチング加工により第2の積層体2の形状を容易に変えることができる。これにより、所定形状の微細マスクパタン202aを被処理体200の表面に任意に形成することができる。このため、例えば、被処理体200が円筒状やレンズ状である場合であっても、被処理体の表面の全て、又は部分的に微細マスクパタン202aを形成することが可能となる。
また、ドライエッチングによる被処理体200のエッチングレート(Vi2)と第1のマスク層103のエッチングレート(Vo2)との比率(Vo2/Vi2)は、小さいほど好ましい。Vo2/Vi2<1であれば、第1のマスク層103のエッチングレートの方が、被処理体200のエッチングレートよりも小さいため、被処理体200を容易に加工することができる。
エッチングレートの比率(Vo2/Vi2)が、下記式(3)を満たすことが好ましい。これにより、第1のマスク層103の塗工性、及びエッチング精度が向上するので、微細パタン構造体202を形成することが可能となる。また、エッチングレートの比率(Vo2/Vi2)としては、Vo2/Vi2≦2.5であることがより好ましく、第1のマスク層103を薄くできる観点から、Vo2/Vi2≦2であることがさら好ましく、Vo2/Vi2≦1を満たすことが最も好ましい。Vo2/Vi2≦1を満たすことで、被処理体200上に形成された微細マスクパタン202aをマスクとして、被処理体200を加工する際の、加工精度がいっそう向上し、更に被処理体200上に設けられる微細パタン220の形状制御性が向上する。更に、Vo2/Vi2≦0.8を満たすことで、被処理体200に設けられる微細パタン220の深さを深くできるため好ましい。なお、下限値は0.05以上であると好ましい。この範囲を満たすことにより、第1のマスク層103或いはナノ粒子102の側面が荒れた場合であっても、被処理体200に設けられる微細パタン220の凹凸表面の平滑性を向上させることができる。同様の観点から、Vo2/Vi2≧0.1を満たすことが好ましく、Vo2/Vi2≧0.2を満たすことがより好ましく、Vo2/Vi2≧0.4を満たすことが最も好ましい。
式(3)
Vo2/Vi2≦3
このように、本実施の形態に係る第2の積層体2は、保護層101の表面に複数のナノ粒子102が配列され、複数のナノ粒子102を覆うように第1のマスク層103が設けられる構成を有す。これにより、第1のマスク層103を被処理体200に貼合し、被処理体200上に第1のマスク層103及びナノ粒子102からなる積層体201を作製した際に、第1のマスク層103の表面には、第1のマスク層103の厚み方向に重なり合うナノ粒子102が殆ど存在しなくなる。この結果、被処理体200上に微細マスクパタン202aを形成する際のドライエッチング工程において、残膜に相当する積層体201の互いに重なり合うナノ粒子102を除去する工程を省くことができる。よって、被処理体200上に形成される微細マスクパタン202aの加工精度を向上させることが可能となり、被処理体200上に更なる加工により設けられる微細パタン220の精度が向上する。
更に、第1のマスク層103とナノ粒子102のエッチングレート比率が所定の範囲を満たすことにより、容易に第1のマスク層103を微細加工可能となるため、微細マスクパタン202aを被処理体200上に安定的に形成することが可能となる。
また、第1のマスク層103及びナノ粒子102内部に残存する溶剤の濃度は、以下の基準に従い測定した際に、2100(g/ml)/m3以下であると好ましい。この範囲を満たすことにより、第2の積層体2の被処理体200に対する貼合精度、ナノ粒子102による第1のマスク層103の加工精度、第1のマスク層103による被処理体200の加工精度を向上させることができる。前記効果をより発揮する観点から、1200(g/ml)/m3以下であることが好ましく、600(g/ml)/m3以下であることがより好ましく、250(g/ml)/m3以下であることが最も好ましい。更に、保護層101の表面状態によらず、ナノ粒子102及び第1のマスク層103の転写精度を向上させる観点から、170(g/ml)/m3以下であることが好ましく、150(g/ml)/m3以下であることがより好ましく、130(g/ml)/m3以下であることが最も好ましい。
1.第2の積層体2を20mm×20mmにカットし、10mLのアセトンにてメスアップし、溶液を採取する。
2.採取した溶液を、GC/MS装置を使用しSIM法により分析を行い、溶剤量を「g/ml」のディメンジョンにて求める。
3.第2の積層体2の第1のマスク層103及びナノ粒子102の平均総厚みhave[m]を求める。
4.2.の結果を、第1のマスク層103及びナノ粒子102の体積(0.02m×0.02m×have)にて除した値を第1のマスク層103及びナノ粒子102内部に残存する溶剤の濃度とする。
以下、各構成要素の材質等について詳細に説明する。
[保護層]
保護層101は、平板状、フィルム状又はリール状であることが好ましい、特にフィルム状或いはリール状であることにより、第2の積層体2を被処理体200に貼合する際の容易性及び精度が向上する。また、保護層101は、支持基材を用いずに形成されていてもよく、支持基材上に形成されていてもよい。
支持基材を具備しない保護層101としては、軟質なポリジメチルシロキサン(PDMS)、COP、ポリイミド、ポリエチレン、PET、ポリオレフィン樹脂、フッ素樹脂や、熱可塑性樹脂によって構成されたフィルム状の保護層が挙げられる。また、保護層101としては、無機材料で構成された平板状の保護層を用いてもよい。無機材料としては、石英、ガラス、シリコン、ニッケル、ダイヤモンドライクカーボン、フッ素含有ダイヤモンドライクカーボン、SiC、ダイヤモンド、クロム、サファイア等が挙げられる。
硬質な平板状の保護層101を使用することで、保護層101の面精度を高く保つことができる。ここで面精度とは、ナノ粒子102の第2面2b側の端部位置と保護層101のナノ粒子102とは反対側の面(第2面2b)との平行度を意味する。このような平行度(面精度)の高い保護層101を使用した第2の積層体2を使用することで作製される積層体201の面精度(被処理体200の一主面とナノ粒子102の頂部により構成される面との平行度)を高く保つことができる。これにより、ドライエッチングにより作製される微細パタン積層体201の微細マスクパタン202aの面精度(被処理体200の一主面とナノ粒子102の頂部により構成される面との平行度)を向上させることが可能となり、加工される被処理体200の微細パタン220の面精度(被処理体200の具備する微細パタン220の頂部により構成される面と、微細パタン220の凹部底部により構成される面との平行度)を高く保つことができる。
例えば、LEDの内部量子効率と光取り出し効率を同時に向上させるために、サファイア基板、Si(シリコン)基板、ITO基板、ZnO基板、SiC(炭化ケイ素)基板、窒化物半導体基板又はスピネル基板を被処理体200として微細加工する場合、基板上に作製される微細パタン220の大きさ及び分布が重要となる。保護層101の面精度により基板上の微細パタン220の高さ精度を担保できることは、ドライエッチングにより形成される微細マスクパタン202aの幹の太さの精度の担保に直結する。幹の太さの精度は、基板上に形成される微細パタン220の大きさ精度に直結する。更に、ステップアンドリピート方式での転写が可能となり、生産性を高く保つこともできる。
一方、軟質な保護層101を使用することで、第2の積層体2を被処理体200に貼合する際の大きな気泡の巻き込みを抑制することができる。更に、被処理体200表面の不陸やパーティクルを吸収することができるため、転写精度が向上する。これらの効果は、積層体201の転写形成精度を向上させると共に、微細マスクパタン202aをマスクとして見立てて被処理体200を加工する際の加工精度を向上させる。
支持基材(図7A及び図7B中100)を具備する保護層101としては、硬質な支持基材と軟質な保護層101との組み合わせ、軟質な支持基材と硬質な保護層101との組み合わせ、又は、軟質な支持基材と軟質な保護層101との組み合わせが挙げられる。特に、軟質な支持基材100と軟質な保護層101との組み合わせは、第2の積層体2を連続的にロール・ツー・ロールプロセスにて製造することに適している。更に、得られた軟質且つリール状(フィルム状)の第2の積層体2を使用することで、被処理体200へと連続的に且つ転写精度・転写速度高く、第1のマスク層103及びナノ粒子102を転写形成する、すなわち、連続的に高精度に積層体201を得ることが可能となる。また、軟質且つリール状(フィルム状)の保護層101を具備する第2の積層体2を使用することで、被処理体に対し、任意の部分に第1のマスク層103及びナノ粒子102を転写形成することができる。なお、曲面の場合も同様である。
硬質な支持基材と軟質な保護層101との組み合わせとしては、ガラス、石英、シリコン、SUS、アルミ板等の無機材料で構成される支持基材と、PDMS、ポリイミド、ポリエチレン、PET、COP、フッ素樹脂、光硬化性樹脂等で構成される保護層101との組み合わせ等が挙げられる。
このように硬質な支持基材上に軟質な保護層101を設けることで、硬質な支持基材の面精度を担保した状態で、保護層101の表面物性を容易に変化させることができる。そのため、保護層101上にナノ粒子102を成膜する際の成膜性、ひいてはナノ粒子102の配列性、及び第2の積層体2を製造する際の第1のマスク層103の塗工性が向上する。また、転写により形成された積層体201の面精度(被処理体200の一主面とナノ粒子102の頂部により構成される面との平行度)を高く保つことができ、積層体201のナノ粒子102上からエッチング加工を行った後の、微細マスクパタン202aの高さ精度を向上できる。これにより、微細マスクパタン202aをマスクとして見立て、被処理体200を加工する際の、加工精度も担保することが可能となる。
軟質な支持基材と硬質な保護層101との組み合わせとしては、スポンジやゴム(シリコーンゴム等)に代表される柔弾性体で構成される支持基材と、シリコン、石英、ニッケル、クロム、サファイア、SiC、ダイヤモンド、ダイヤモンドライクカーボン又は、フッ素含有ダイヤモンドライクカーボン等の無機材質で構成される保護層101との組み合わせが挙げられる。支持基材が柔弾性体である場合、支持基材のヤング率(縦弾性率)は概ね、1Mpa以上100Mpa以下であると面精度を高く保つことができるため好ましい。同様の効果から、4Mpa以上50Mpa以下であるとより好ましい。また、ナノ粒子102/第1のマスク層103/被処理体200からなる積層体201を形成する際の転写精度の観点から、0.5mm以上20cm以下の厚みであることが好ましく、1mm以上10cm以下がより好ましく、5mm以上8cm以下であると最も好ましい。
このような組み合わせにより、第2の積層体2を被処理体200に貼合・押圧する際に、軟質な支持基材による応力緩和及び応力集中吸収効果により、硬質な保護層101の面精度をよりいっそう高めることができる。その結果、微細パタン構造体202の高さ精度を向上させることができる。これにより、微細マスクパタン202aをマスクとして見立て、被処理体200を加工する際の加工精度も担保することが可能となる。
軟質な支持基材と軟質な保護層101との組み合わせとしては、PETフィルム、TACフィルム、COPフィルム、PEフィルム、PPフィルムといった樹脂フィルムで構成される支持基材と、光硬化性樹脂等で構成される保護層101との組み合わせが挙げられる。
このような組み合わせにより、第2の積層体2をロール・ツー・ロール法により連続的に製造することができ、第2の積層体2を使用する際の、被処理体200への貼合が容易になる。ロール・ツー・ロール法により第2の積層体2体を製造することにより、ナノ粒子102の保護層101上における配置精度を向上させることができる。更に、第1のマスク層103の塗工性が向上するため、第1のマスク層103の膜厚分布精度を良好にできる。このため、被処理体200上に転写形成される第1のマスク層103及びナノ粒子102の厚み分布及びパタン精度を、第2の積層体2の精度を反映し、高く付与することが可能となり、積層体201の精度が大きく向上する。特に、第2の積層体2を、円筒状(円柱状)の貼合ロールを使用し、被処理体200へと貼合し支持基材/保護層101/ナノ粒子102/第1のマスク層103/被処理体200からなる積層体、すなわち第3の積層体を得る際に発生するエアボイド(マクロな気泡)といった欠陥を抑制できると共に、貼合速度を向上させることができる。更に、ロール・ツー・ロール法を適用することにより、第3の積層体から支持基材及び保護層101を剥離する際の、剥離応力が線として働くため、転写精度が向上する。
なお、軟質な支持基材と軟質な保護層101との組み合わせを硬質な支持基材上に配置することにより、上述した硬質な支持基材と軟質な保護層101との組み合わせと、同様の効果を得ることができる。
支持基材の材料に関しては特に制限はなく、ガラス、セラミック、シリコンウェハ、金属等の無機材料、プラスチック、ゴム、スポンジ等の有機材料を問わず使用できる。微細パタン形成用積層体の用途に応じて、板、シート、フィルム、リール、薄膜、織物、不織布、その他任意の形状及びこれらを複合化したものを使用できるが、ガラス、石英、シリコン、SUS等の硬質無機材料のみ、ゴム(シリコーンゴム等)やスポンジといった柔弾性体のみ、又はガラス、石英、シリコン、SUS等の硬質無機材料とゴム(シリコーンゴム等)やスポンジが積層された構造、PETフィルム、TACフィルム、COPフィルム、PEフィルム、PPフィルム等の樹脂フィルムを、支持基材として採用することが好ましい。
支持基材と保護層101との接着性を向上させるため、保護層101を設ける支持基材の一主面上に、保護層101との化学結合や、浸透等の物理的結合のための易接着コーティング、プライマー処理、コロナ処理、プラズマ処理、UV/オゾン処理、エキシマ処理、高エネルギー線照射処理、表面粗化処理、多孔質化処理等を施してもよい。
保護層101の支持基材(図7A及び図7Bに示す100)は、透明であっても着色されていてもよい。透明であることにより、保護層101を製造する際にロール・ツー・ロール法(光ナノインプリント法)を適用することが容易となるため、保護層101の精度及び製造パフォーマンスが向上する。更に、支持基材/保護層101/ナノ粒子102/第1のマスク層103/被処理体200から構成される第3の積層体に対しエネルギー線を照射する際に、支持基材越しにエネルギー線を照射することが可能となる。一方、着色されている場合、第2の積層体2の保存性を向上させることができる。特に、第2の積層体2に光重合性物質が含まれる場合、光重合性物質の光重合適用波長を着色により抑制することが可能となる。同様に、保護層101も透明であっても、着色されていてもよい。
また、透明である場合、紫外光(UV)に対する透過率が50%以下の支持基材であると第2の積層体2の保存性が向上するため好ましい。特に、第1のマスク層103の光劣化を抑制する観点から、支持基材に対する紫外光の透過率は35%以下であることが好ましく、15%以下であることがより好ましく、5%以下であることが最も好ましい。なお、紫外光吸収材や金属膜を具備した支持基材の場合、紫外光の透過率をほぼ0%にすることができる。この場合、第2の積層体2の性能保存性をより向上させることができる。
一方着色されている場合、第2の積層体2に含まれる成分の感光波長(λ)の光に対する透過率が60%以下の支持基材であると第2の積層体2の保存性が向上するため好ましい。特に、第1のマスク層103の光劣化を抑制する観点から、支持基材に対する該感光波長(λ)の光の透過率は35%以下であることが好ましく、15%以下であることがより好ましく、5%以下であることが最も好ましい。なお、金属膜を具備した支持基材の場合、該感光波長(λ)の光の透過率をほぼ0%にすることができる。この場合、第2の積層体2の性能保存性をより向上させることができる。
保護層101の支持基材としては、上述した支持基材を採用することができるが、以下に記載する屈折率、ヘーズ、微粒子を含有する樹脂層の観点を考慮した支持基材を使用することにより、第1のマスク層103及びナノ粒子102の転写精度をいっそう向上させることが可能となる。
第2の積層体2を使用し、支持基材/保護層101/ナノ粒子102/第1のマスク層103/被処理体200からなる第3の積層体を形成した後に、支持基材面側からエネルギー線を照射する場合、支持基材と保護層101との界面におけるエネルギー線の反射が小さい程、転写精度は向上すると共に、使用するエネルギー線源のパワーを小さくすることが可能となる。このため、第1のマスク層103の反応に必要な主波長(λ)に対する支持基材の屈折率(n1)と保護層の屈折率(n2)との差(|n1−n2)|は0.3以下であることが好ましく、0.2以下であることがより好ましく、0.15以下であることが最も好ましい。なお、屈折率差(|n1−n2)|が0.1以下であれば、エネルギー線は支持基材100と保護層101との界面を略認識しなくなるため、好ましい。
支持基材のヘーズは、30%以下であることが好ましい。30%以下であることにより、保護層101の密着性を担保することが可能となる。特に、転写精度と保護層101の密着性の観点から、ヘーズは10%以下が好ましく、6%以下であるとより好ましく、1.5%以下であると最も好ましい。また、第2の積層体2に対し、パターニングされたエネルギー線を照射し、パターニングされたナノ粒子102/第1のマスク層103/被処理体200からなる積層体201を形成する場合は、その解像度の観点から、ヘーズは1.5%以下であることが好ましい。ヘーズ(haze)とは、濁度を表わす値であり、光源により照射され試料中を透過した光の全透過率T及び試料中で拡散され散乱した光の透過率Dより求められ、ヘーズ値H=D/T×100として定義される。これらはJIS K 7105により規定されている。市販の濁度計(例えば、日本電色工業社製、NDH−1001DP等)により容易に測定可能である。上記1.5%以下のヘーズ値を有す支持基材としては、例えば、帝人社製高透明フィルムGSシリーズ、ダイアホイルヘキスト社製M−310シリーズ、デュポン社製マイラーDシリーズ等のポリエチレンテレフタレートフィルム等が挙げられる。
支持基材として、フィルム状の支持基材を選定する場合、二軸配向ポリエステルフィルムの一方の面に、微粒子を含有する樹脂層を積層してなる支持基材を採用してもよい。ロール・ツー・ロールプロセスにより連続的に保護層101を製造する際の作業性や、連続的に被処理体200に対し第2の積層体2を貼合する際の作業性を向上させ、微細パタンの欠陥や、ミリスケールやセンチスケールといったマクロな欠陥の発生を抑制する観点から、微粒子の平均粒径は0.01μm以上であることが好ましい。微細パタン形成用積層体に対し、パターニングされたエネルギー線を照射し、パターニングされたナノ粒子102/第1のマスク層103/被処理体200からなる積層体201を形成する場合の解像度を向上させる観点から、微粒子の平均粒径は5.0μm以下であることが好ましい。この効果をいっそう発揮する観点から、0.02μm〜4.0μmであることがより好ましく、0.03μm〜3.0μmであることが特に好ましい。
微粒子の配合量は、例えば、樹脂層を構成するベース樹脂、微粒子の種類及び平均粒径、所望の物性等に応じて適宜調整できる。微粒子としては、例えば、シリカ、カオリン、タルク、アルミナ、リン酸カルシウム、二酸化チタン、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、フッ化カルシウム、フッ化リチウム、ゼオライト、硫化モリブデン等の無機粒子、架橋高分子粒子、シュウ酸カルシウム等の有機粒子等を挙げることができる。特に、透明性の観点から、シリカの粒子が好ましい。なお、微粒子はフィラーを含む。これらの微粒子は単独で使用しても、2種類以上を併用し使用してもよい。
微粒子を含有する樹脂層を構成するベース樹脂としては、例えば、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、これらの混合物、又は、これらの共重合物等が挙げられる。ロール・ツー・ロールプロセスにより連続的に保護層を製造する際の作業性や、連続的に被処理体200に対し第2の積層体2を貼合する際の作業性を向上させ、微細パタンの欠陥や、ミリスケールやセンチスケールといったマクロな欠陥を抑制する観点から、樹脂層の厚みは、0.01μm以上であることが好ましい。第2の積層体2に対し、パターニングされたエネルギー線を照射し、パターニングされたナノ粒子102/第1のマスク層103/被処理体200からなる積層体201を形成する場合の解像度を向上させる観点から、0.05μm〜3.0μmであることがより好ましく、0.1〜2.0μmであることが特に好ましく、0.1μm〜1.0μmであることが極めて好ましい。
二軸配向ポリエステルフィルムの一方の面に、樹脂層を積層する方法としては、特に制限はなく、例えば、コーティング等が挙げられる。二軸配向ポリエステルフィルムを構成するポリエステル系樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等の芳香族ジカルボン酸類とジオール類とを構成成分とする芳香族線状ポリエステル、脂肪族ジカルボン酸類とジオール類とを構成成分とする脂肪族線状ポリエステル、これらの共重合体等のポリエステル等から主としてなるポリエステル系樹脂等が挙げられる。これらは単独で使用しても、2種類以上を併用し使用してもよい。更に、樹脂層が積層される二軸配向ポリエステルフィルムには、微粒子が含有されていてもよい。これらの微粒子としては、例えば、樹脂層に含有される微粒子と同様のもの等が挙げられる。二軸配向ポリエステルフィルムに含有される微粒子の含有量は、支持基材の透明性を保つという観点から、0ppm〜80ppmであることが好ましく、0ppm〜60ppmであることがより好ましく、0ppm〜40ppmであることが特に好ましい。上記二軸配向ポリエステルフィルムの製造方法は、特に限定されず、例えば、二軸延伸方法等を用いることができる。また、未延伸フィルム又は一軸延伸フィルムの一方の面に、樹脂層を形成後、更に延伸して支持基材としてもよい。二軸配向ポリエステルフィルムの厚みは、1μm〜100μmであることが好ましく、1μm〜50μm であることがより好ましい。これらの支持フィルムとしては、例えば、東洋紡績社製のA2100−16、A4100−25等が挙げられる。なお、上記二軸配向ポリエステルフィルムの一方の面に、微粒子を含有する樹脂層を積層してなる支持基材を使用する場合は、微粒子を含有する樹脂層面上に保護層を形成すると、接着性や転写耐久性の観点から好ましい。
上述した材料で構成される平板状の保護層101における、ナノ粒子102とは反対側の面に支持基材を配置して使用してもよい。例えば、PDMSや熱可塑性樹脂(PI,PET、COP、PP、PE等)から構成される保護層101のナノ粒子102面とは反対側の面に、ガラスやシリコンウェハに代表される無機支持基材や、ゴム弾性のある弾性体支持基材等を配置することができる。また例えば、シリコン、ダイヤモンド、ニッケル、サファイア、石英等から構成される保護層101のナノ粒子102面とは反対側の面に、ゴム弾性のある弾性体等の支持基材等を配置することができる。また例えば、ガラスやシリコンウェハといった無機材料等の支持基材や、PETフィルム、COPフィルムやTACフィルムといった有機材料の支持基材上に、光硬化性樹脂や熱硬化性樹脂からなる保護層101を形成することができる。また例えば、ガラスやシリコンウェハといった無機材料の支持基材や、PETフィルム、COPフィルムやTACフィルムといった有機材料の支持基材上に、光硬化性樹脂や熱硬化性樹脂からなる保護層101を形成し、支持基材の反対側の面上に弾性体等の支持基材を更に設けることができる。
リール状の保護層101としては、支持基材を用いずに熱可塑性樹脂のみから構成される保護層や、支持基材上に形成された熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂又はゾルゲル材料等の硬化物からなる保護層101等が挙げられる。
また、カバーフィルムを設けない場合であって、第2の積層体2をロール・ツー・ロール法により連続的に製造する場合、支持基材の保護層101とは反対側の表面(第1面2a)の表面粗さRaは、上記説明した第1のマスク層103の表面(第1面2a)の表面粗さRa以上の範囲で大きい場合であっても、ロールアップする場合は巻締めに係る力を制御することにより、第1のマスク層103の表面精度を保つことができるため、特に限定されない。しかしながら、第2の積層体2を安定的に製造すると共に、第2の積層体2を搬送する際に不意に加わる力による第1のマスク層103の表面精度の悪化を抑制する観点から、支持基材100の裏面の表面粗さRaは1000nm以下であることが好ましく、500nm以下であることがより好ましく、100nm以下であることが最も好ましい。特に、第2の積層体2を製造する際の、製造速度を向上させる観点から、60nm以下であることが好ましく、45nm以下であることがより好ましく、15nm以下であることが最も好ましい。なお、表面粗さRaは、上記説明した第1のマスク層103に対するRaの定義と同様である。
また、本実施の形態に係る第2の積層体2において、保護層101のナノ粒子102が設けられる表面に金属、金属酸化物又は金属と金属酸化物から構成される金属層を設けてもよい。金属層を設けることにより、保護層101の機械強度が向上するため、保護層101表面に対する傷を抑制することができる。金属層を構成する金属は特に限定されないが、クロム、アルミ、タングステン、モリブデン、ニッケル、金、プラチナ又はシリコン等が挙げられる。金属層を構成する金属酸化物としては、前記金属の酸化物の他、SiO2、ZnO,Al2O3,ZrO2,CaO,SnO2等が挙げられる。また、金属層を構成する材料として、シリコンカーバイドやダイヤモンドライクカーボン等を使用することもできる。なおダイヤモンドライクカーボンは、フッ素元素を含むダイヤモンドライクカーボンを使用できる。更に、金属層を構成する材料として、これらの混合物を使用してもよい。金属層は、単層であっても多層であってもよい。
また、保護層101の表面や、金属層表面に、離型層が形成されていてもよい。離型層を設けることにより、ナノ粒子102及び第1のマスク層103の転写精度が向上する。また、金属層表面にさらに離型層を設けることにより、離型処理材(離型層)の接着性が向上し、ナノ粒子102及び第1のマスク層103の転写精度及び転写耐久性が向上する。離型層の厚みは、転写精度の観点から30nm以下であることが好ましく、単分子層以上の厚みであることが好ましい。離型性の観点から、離型層の厚みは、2nm以上であることがより好ましく、転写精度の観点から20nm以下であることがより好ましい。
離型層を構成する材料は、表面自由エネルギーを低下させる効果を発現するものであれば特に限定されない。例えば、メチル基、フッ素元素、シリコーンのいずれかを含む材料を選択することができる。また離型層を構成する材料は、水に対する接触角が90度以上であることが好ましい。
第1のマスク層103の表面(第1面2a)側にカバーフィルムを設けてもよい。この場合には、第1のマスク層103の表面上にカバーフィルムを設けるか、又は表面に粘着層を具備するカバーフィルムの粘着層面を、第1のマスク層103の表面上に設ける構成となる。
カバーフィルムを設けることにより、第2の積層体2を連続的に作製した場合の巻き取りが容易になり、また第2の積層体2の第1のマスク層103を保護することができる。このため、第2の積層体2の保存安定性が向上し、また搬送等により第1のマスク層103面に対するパーティクルの付着や傷の発生を抑制できるため、被処理体200への貼合性が向上する。このようなカバーフィルムを設けることにより、第1のラインにて製造された第2の積層体2の第1のマスク層103の機能を保存すると共に、第1のマスク層103表面への傷やパーティクルの付着を抑制できる。このため、ユーザのラインである第2のラインにおいて、カバーフィルムを剥離することにより、第2の積層体2の第1のマスク層103を、被処理体200に対し、エアボイドといった欠陥を抑制し、貼合することができる。この結果、被処理体200面内において、マイクロメートルやミリメートルといった欠陥を抑制し、第1のマスク層103及びナノ粒子102を精度高く被処理体200上に転写形成することができる。なお、カバーフィルムを第1のマスク層103上に設けない場合であっても、第2の積層体2をロールアップして巻き取った場合、或いは第2の積層体2を積層した場合、第2の積層体2の第2面2b(保護層101のナノ粒子102とは反対の面、或いは、支持基材のナノ粒子102とは反対側の面)により、第1のマスク層103を保護することができる。
カバーフィルムは、カバーフィルムと第1のマスク層103との接着強度が、第1のマスク層103とナノ粒子102との接着強度及びナノ粒子102と保護層101との接着強度よりも小さければ特に限定されない。
カバーフィルムの表面粗さRaは、上記説明した第1のマスク層103の表面粗さRa以上の範囲で大きい場合であっても、カバーフィルムを貼り合わせる際の温度や圧力、またロールアップする場合は巻締めに係る力を制御することにより、第1のマスク層103の表面精度を保つことができるため、特に限定されない。しかしながら、第2の積層体2を安定的に製造すると共に、第2の積層体2を搬送する際に不意に加わる力による第1のマスク層103の表面精度の悪化を抑制する観点から、カバーフィルムの表面粗さRaは1000nm以下であることが好ましく、500nm以下であることがより好ましく、100nm以下であることが最も好ましい。特に、第2の積層体2を製造する際の、製造速度を向上させる観点から、60nm以下であることが好ましく、45nm以下であることがより好ましく、15nm以下であることが最も好ましい。なお、表面粗さRaは、上記説明した第1のマスク層103に対するRaの定義と同様である。
また、カバーフィルムは、着色されていてもよい。第2の積層体2の保存性を向上させることができる。特に、第2の積層体2に光重合性物質が含まれる場合、光重合性物質の光重合適用波長を着色により抑制することが可能となる。
また、カバーフィルムが透明である場合、紫外光(UV)に対する透過率が50%以下の支持基材であると第2の積層体2の保存性が向上するため好ましい。特に、第1のマスク層103の光劣化を抑制する観点から、カバーフィルムに対する紫外光の透過率は35%以下であることが好ましく、15%以下であることがより好ましく、5%以下であることが最も好ましい。なお、紫外光吸収材や金属膜を具備したカバーフィルムの場合、紫外光の透過率をほぼ0%にすることができる。この場合、第2の積層体2の性能保存性をより向上させることができる。
一方、カバーフィルムが着色されている場合、第2の積層体2に含まれる成分の感光波長(λ)の光に対する透過率が60%以下のカバーフィルムであると第2の積層体2の保存性が向上するため好ましい。特に、第1のマスク層103の光劣化を抑制する観点から、カバーフィルムに対する該感光波長(λ)の光の透過率は35%以下であることが好ましく、15%以下であることがより好ましく、5%以下であることが最も好ましい。なお、金属膜を具備したカバーフィルムの場合、該感光波長(λ)の光の透過率をほぼ0%にすることができる。この場合、第2の積層体2の性能保存性をより向上させることができる。
カバーフィルムは、上記説明したようにカバーフィルムと第1のマスク層103との接着強度が、第1のマスク層103とナノ粒子102との接着強度及びナノ粒子102と保護層との接着強度よりも小さければ特に限定されない。例えば、カバーフィルム中に含まれるフィッシュアイの数が多く(例えば、直径80um以上のフィッシュアイが500個/m2以上含まれるカバーフィルム)、カバーフィルム貼合時に気泡が発生する場合であっても、第1のマスク層103の膜厚が上記距離(lor)/ピッチ(Pav)を満たす範囲で薄いため、第1のマスク層103の劣化を、酸素阻害を利用して抑制できるとも考えられる。第1のマスク層103の膜厚が上記距離(lor)/ピッチ(Pav)を満たす範囲で薄い場合、数マイクロメートル〜数十マイクロメートルといった厚い第1のマスク層103に比べ、第1のマスク層103のヤング率が大きくなるため、カバーフィルムのフィッシュアイの与える第1のマスク層103への凹凸転写の影響は少なく、よって、被処理体200に貼合した場合の、フィッシュアイ由来のエアボイドの発生も抑制しやすくなる。カバーフィルムを具備した第2の積層体2を使用し、第2の積層体2の第1のマスク層103を、被処理体200に貼合する際のエアボイドをよりいっそう抑制する観点から、カバーフィルム中に含まれる直径が80μm以上のフィッシュアイは5個/m2以下であることが好ましい。ここでフィッシュアイとは材料を熱溶融し混練、押出し延伸法又はキャスティング法によりフィルムを製造する際に、材料の未溶解及び劣化物がフィルム中に取り込まれたものをいう。また、フィッシュアイの直径の大きさは材料によっても異なるが約10μm〜1mmであり、フィルム表面からの高さは約1μm〜50μmである。ここでフィッシュアイの大きさの測定方法は、例えば光学顕微鏡、接触型表面粗さ計、又は走査型電子顕微鏡で測定可能である。なお。フィッシュアイの直径は最大径を意味する。
このようなカバーフィルムは、例えばフィルムを製造する際、原料樹脂を熱溶融後に濾過する等、フィルムの製造方法の変更を行うことにより製造可能である。カバーフィルムの膜厚は、1μm〜100μmであるとカバーフィルムの貼合性、ロール・ツー・ロールとしてのウェブハンドリング性、及び環境負荷低減の観点から好ましく、5μm〜50μmであることがより好ましく、15μm〜50μmであると最も好ましい。市販のものとして、信越フィルム社製PP−タイプPT、東レ社製トレファンBO−2400、YR12タイプ、王子製紙社製アルファンMA−410、E−200C、王子製紙社製アルファンE200シリーズ等のポリプロピレンフィルム等、帝人社製PS−25等のPSシリーズ等のポリエチレンテレフタレートフィルム等が挙げられるがこれに限られたものではない。また、市販のフィルムをサンドブラスト加工することにより、簡単に製造することが可能である。
保護層101を構成する熱可塑性樹脂としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルペタクリレート、シクロオレフィンポリマー、シクロオレフィンコポリマー、透明フッ素樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、アクリロニトリル/スチレン系重合体、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン系重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ(メタ)アクリレート、ポリアリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリイミド、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルエーテルケトン、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリフッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン/ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)系共重合体、テトラフルオロエチレン/エチレン系共重合体、フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン系共重合体、テトラフルオロエチレン/プロピレン系共重合体、ポリフルオロ(メタ)アクリレート系重合体、主鎖に含フッ素脂肪族環構造を有する含フッ素重合体、ポリフッ化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン/エチレン系共重合体、クロロトリフルオロエチレン/炭化水素系アルケニルエーテル系共重合体、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン系共重合体、フッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロピレン系共重合体等が挙げられる。
保護層101を構成する熱硬化性樹脂としては、ポリイミド、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂等が挙げられる。
保護層101が樹脂により構成される場合、上述した樹脂や、金属層、又は離型層との組み合わせにより、ナノ粒子102及び第1のマスク層103との接着性が低下すれば、保護層101を構成する材料は特に限定されない。特に、保護層101は、転写精度の観点から、シリコーンに代表されるポリジメチルシロキサン(PDMS)からなる樹脂又はフッ素含有樹脂で構成されることが好ましい。ただし、保護層101上に離型層を設ける場合は、保護層101の材質は特に限定されない。一方、保護層101上に離型層を設けない場合は、フッ素含有樹脂やシリコーンに代表されるポリジメチルシロキサン系樹脂、COPやポリイミド等で構成されることが好ましく、特に、ポリジメチルシロキサン系樹脂やフッ素含有樹脂で構成されることが好ましい。フッ素含有樹脂は、フッ素元素を含有しており、かつ、水に対する接触角が90度より大きければ特に限定されない。ナノ粒子102を被処理体200に転写する際の転写精度の観点から、水に対する接触角は95度以上がより好ましく、100度以上がなお好ましい。
特に、保護層101は、光硬化性樹脂の硬化物から構成されることが好ましい。保護層101を構成する材料に、光硬化性樹脂を選択することにより、保護層101を作製する際のスループット性、転写精度が向上するため、好ましい。
また、保護層101中の樹脂表層(ナノ粒子102と保護層101と、の界面付近)のフッ素濃度(Es)を、保護層101を構成する樹脂層中の平均フッ素濃度(Eb)より大きくすることで、保護層101表面は自由エネルギーの低さゆえに、ナノ粒子102及び第1のマスク層103との離型性に優れる保護層101が得られると共に、支持基材付近では自由エネルギーを高く保つことで、接着性を向上することができると共に、繰り返し転写性が可能となる。
更に、保護層101を構成する樹脂層中の平均フッ素元素濃度(Eb)と保護層101を構成する樹脂層の表層部のフッ素元素濃度(Es)との比が1<Es/Eb≦30000を満たすことで、上記効果をより発揮するためより好ましい。特に、3≦Es/Eb≦1500、10≦Es/Eb≦100の範囲となるにしたがって、より離型性が向上するため好ましい。
なお、上記する最も広い範囲(1<Es/Eb≦30000)の中にあって、20≦Es/Eb≦200の範囲であれば、保護層101を構成する樹脂層表層部のフッ素元素濃度(Es)が、樹脂層中の平均フッ素濃度(Eb)より十分高くなり、保護層101表面の自由エネルギーが効果的に減少するので、ナノ粒子102及び第1のマスク層103との離型性が向上する。また、保護層101を構成する樹脂層中の平均フッ素元素濃度(Eb)を、保護層101を構成する樹脂層表層部のフッ素元素濃度(Es)に対して相対的に低くすることにより、樹脂自体の強度が向上すると共に、保護層101中における支持基材付近では、自由エネルギーを高く保つことができるので、支持基材との密着性が向上する。これにより、支持基材との密着性に優れ、ナノ粒子102との離型性に優れ、しかも、繰り返し転写の可能な保護層101を得ることができるので特に好ましい。また、26≦Es/Eb≦189の範囲であれば、保護層101を構成する樹脂層表面の自由エネルギーをより低くすることができ、繰り返し転写性が良好になるため好ましい。更に、30≦Es/Eb≦160の範囲であれば、保護層101を構成する樹脂層表面の自由エネルギーを減少させると共に、樹脂の強度を維持することができ、繰り返し転写性がより向上するため好ましく、31≦Es/Eb≦155であればより好ましい。46≦Es/Eb≦155であれば、上記効果をよりいっそう発現できるため好ましい。
なお、上記繰り返し転写性とは、(1)保護層101から別の保護層101を容易に複製できること、及び(2)一度使用した保護層101を再度第2の積層体2として使用できることを意味する。(1)表面状態が「+」の保護層G1をテンプレートとして、表面状態が「―」の保護層G2を転写形成可能であり、保護層G2をテンプレートとして、表面状態が「+」の保護層G3を転写形成することが可能となる。同様に、表面状態が「+」の保護層GNをテンプレートとして、表面状態が「−」の保護層GN+1を転写形成することが可能となる。また、一つの保護層G1をテンプレートとして複数枚の保護層G2を得ることも、一つの保護層G2をテンプレートとして複数枚の保護層G3を得ることも可能となる。同様に、一つの保護層GMをテンプレートとして複数枚の保護層GM+1を得ることも可能となる。このように、上記Es/Ebを満たす保護層101を使用することにより、環境対応性が向上する。
ここで、保護層101を構成する樹脂層の表層(ナノ粒子102面側領域)とは、例えば、保護層101を構成する樹脂層のナノ粒子102面側表面から、第2面2b側に向かって、略1〜10%厚み方向に侵入した部分、又は厚み方向に2nm〜20nm侵入した部分を意味する。なお、保護層101を構成する樹脂層のナノ粒子102面側領域のフッ素元素濃度(Es)は、X線光電子分光法(XPS法)により定量できる。XPS法のX線の浸入長は数nmと浅いため、Es値を定量する上で適している。他の解析手法として、透過型電子顕微鏡を使ったエネルギー分散型X線分光法(TEM―EDX)を用い、Es/Ebを算出することもできる。また、保護層101を構成する樹脂層を構成する樹脂中の平均フッ素濃度(Eb)は、仕込み量から計算することができる。又は、保護層101を構成する樹脂層を物理的に剥離した切片を、フラスコ燃焼法にて分解し、続いてイオンクロマトグラフ分析にかけることでも、樹脂中の平均フッ素元素濃度(Eb)を同定することができる
保護層101を構成する樹脂層を構成する樹脂のうち、光重合可能なラジカル重合系の樹脂としては、非フッ素含有の(メタ)アクリレート、フッ素含有(メタ)アクリレート及び光重合開始剤の混合物である硬化性樹脂組成物(1)や、非フッ素含有の(メタ)アクリレート及び光重合開始剤の混合物である硬化性樹脂組成物(2)や、非フッ素含有の(メタ)アクリレート、シリコーン及び光重合開始剤の混合物である硬化性樹脂組成物(3)等を用いることが好ましい。また、金属アルコキシドに代表されるゾルゲル材料を含む硬化性樹脂組成物(4)を用いることもできる。特に、硬化性樹脂組成物(1)を用いることで、表面自由エネルギーの低い疎水性界面等に該組成物(1)を接触させた状態で上記組成物(1)を硬化させると、保護層101を構成する樹脂層表層部のフッ素元素濃度(Es)を、保護層101を構成する樹脂層を構成する樹脂中の平均フッ素元素濃度(Eb)より大きくでき、さらには樹脂中の平均フッ素元素濃度(Eb)をより小さくするように調整することができる。
(A)(メタ)アクリレート
硬化性樹脂組成物(1)を構成する(メタ)アクリレートとしては、後述する(B)フッ素含有(メタ)アクリレート以外の重合性モノマーであれば制限はないが、アクリロイル基又はメタクリロイル基を有するモノマー、ビニル基を有するモノマー、アリル基を有するモノマーが好ましく、アクリロイル基又はメタクリロイル基を有するモノマーがより好ましい。そして、それらは非フッ素含有のモノマーであることが好ましい。なお、(メタ)アクリレートはアクリレート又はメタアクリレートを意味する。
また、重合性モノマーとしては、重合性基を複数具備した多官能性モノマーであることが好ましく、重合性基の数は、重合性に優れることから1〜6の整数が好ましい。また、2種類以上の重合性モノマーを混合して用いる場合、重合性基の平均数は1.5〜4が好ましい。単一モノマーを使用する場合は、重合反応後の架橋点を増やし、硬化物の物理的安定性(強度、耐熱性等)を得るため、重合性基の数が3以上のモノマーであることが好ましい。また、重合性基の数が1又は2であるモノマーの場合、重合性数の異なるモノマーと併用して使用することが好ましい。
(B)フッ素含有(メタ)アクリレート
硬化性樹脂組成物(1)を構成するフッ素含有(メタ)アクリレートとしては、ポリフルオロアルキレン鎖及び/又はペルフルオロ(ポリオキシアルキレン)鎖と、重合性基とを有することが好ましく、直鎖状ペルフルオロアルキレン基、又は炭素原子−炭素原子間にエーテル性酸素原子が挿入されかつトリフルオロメチル基を側鎖に有するペルフルオロオキシアルキレン基がさらに好ましい。また、トリフルオロメチル基を分子側鎖又は分子構造末端に有する直鎖状のポリフルオロアルキレン鎖及び/又は直鎖状のペルフルオロ(ポリオキシアルキレン)鎖が特に好ましい。
ポリフルオロアルキレン鎖は、炭素数2〜炭素数24のポリフルオロアルキレン基が好ましい。また、ポリフルオロアルキレン基は、官能基を有していてもよい。
ペルフルオロ(ポリオキシアルキレン)鎖は、(CF2CF2O)単位、(CF2CF(CF3)O)単位、(CF2CF2CF2O)単位及び(CF2O)単位からなる群から選ばれた1種以上のペルフルオロ(オキシアルキレン)単位からなることが好ましく、(CF2CF2O)単位、(CF2CF(CF3)O)単位、又は(CF2CF2CF2O)単位からなることがより好ましい。ペルフルオロ(ポリオキシアルキレン)鎖は、含フッ素重合体の物性(耐熱性、耐酸性等)が優れることから、(CF2CF2O)単位からなることが特に好ましい。ペルフルオロ(オキシアルキレン)単位の数は、含フッ素重合体の離型性と硬度が高いことから、2〜200の整数が好ましく、2〜50の整数がより好ましい。
重合性基としては、ビニル基、アリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、エポキシ基、ジオキタセン基、シアノ基、イソシアネート基又は式−(CH2)aSi(M1)3−b(M2)bで表される加水分解性シリル基が好ましく、アクリロイル基又はメタクリロイル基がより好ましい。ここで、M1は加水分解反応により水酸基に変換される置換基である。このような置換基としては、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシロキシ基等が挙げられる。ハロゲン原子としては、塩素原子が好ましい。アルコキシ基としては、メトキシ基又はエトキシ基が好ましく、メトキシ基がより好ましい。M1としては、アルコキシ基が好ましく、メトキシ基がより好ましい。M2は、1価の炭化水素基である。M2としては、アルキル基、1以上のアリール基で置換されたアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、アリール基等が挙げられ、アルキル基又はアルケニル基が好ましい。M2がアルキル基である場合、炭素数1〜炭素数4のアルキル基が好ましく、メチル基又はエチル基がより好ましい。M2がアルケニル基である場合、炭素数2〜炭素数4のアルケニル基が好ましく、ビニル基又はアリル基がより好ましい。aは1〜3の整数であり、3が好ましい。bは0又は1〜3の整数であり、0が好ましい。加水分解性シリル基としては、(CH3O)3SiCH2−、(CH3CH2O)3SiCH2−、(CH3O)3Si(CH2)3−又は(CH3CH2O)3Si(CH2)3−が好ましい。
重合性基の数は、重合性に優れることから1〜4の整数が好ましく、1〜3の整数がより好ましい。2種以上の化合物を用いる場合、重合性基の平均数は1〜3が好ましい。
フッ素含有(メタ)アクリレートは、官能基を有すると支持基材100との密着性に優れる。官能基としては、カルボキシル基、スルホン酸基、エステル結合を有する官能基、アミド結合を有する官能基、水酸基、アミノ基、シアノ基、ウレタン基、イソシアネート基、イソシアヌル酸誘導体を有する官能基等が挙げられる。特に、カルボキシル基、ウレタン基、イソシアヌル酸誘導体を有する官能基の少なくとも1つの官能基を含むことが好ましい。なお、イソシアヌル酸誘導体には、イソシアヌル酸骨格を有するもので、窒素原子に結合する少なくとも1つの水素原子が他の基で置換されている構造のものが包含される。フッ素含有(メタ)アクリレートとしては、フルオロ(メタ)アクリレート、フルオロジエン等を用いることができる。フッ素含有(メタ)アクリレートの具体例としては、下記の化合物が挙げられる。
なお、上述した表層のフッ素元素濃度(Es)と平均フッ素元素濃度(Eb)と、の比率(Es/Eb)を調整する観点から、フッ素含有(メタ)アクリレートは、下記化学式(1)で示されるフッ素含有ウレタン(メタ)アクリレートを採用することが好ましい。このようなウレタン(メタ)アクリレートとしては、例えば、ダイキン工業社製の「オプツールDAC」を用いることができる。
(化学式(1)中、R1は、下記化学式(2)を表し、R2は、下記化学式(3)を表す。)
(化学式(2)中、nは、1以上6以下の整数である。)
(化学式(3)中、Rは、H又はCH3である。)
フッ素含有(メタ)アクリレートは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、耐摩耗性、耐傷付き、指紋付着防止、防汚性、レベリング性や撥水撥油性等の表面改質剤との併用もできる。
フッ素含有(メタ)アクリレートは、分子量Mwが50〜50000であることが好ましく、相溶性の観点から分子量Mwが50〜5000であることが好ましく、分子量Mwが100〜5000であることがより好ましい。相溶性の低い高分子量体を使用する際は希釈溶剤を使用しても良い。希釈溶剤としては、単一溶剤の沸点が40℃〜180℃の溶剤が好ましく、60℃〜180℃がより好ましく、60℃〜140℃がさらに好ましい。希釈剤は2種類以上使用もよい。
溶剤含量は、少なくとも硬化性樹脂組成物(1)中で分散する量であればよく、硬化性樹脂組成物(1)100重量部に対して0重量部超〜50重量部が好ましい。乾燥後の残存溶剤量を限りなく除去することを配慮すると、0重量部超〜10重量部がより好ましい。
特に、レベリング性を向上させるために溶剤を含有する場合は、(メタ)アクリレート100重量部に対して、溶剤含量が0.1重量部以上40重量部以下であれば好ましい。溶剤含量が0.5重量部以上20重量部以下であれば、硬化性樹脂組成物(1)の硬化性を維持できるためより好ましく、1重量部以上15重量部以下であれば、さらに好ましい。硬化性樹脂組成物(1)の膜厚を薄くするために溶剤を含有する場合は、(メタ)アクリレート100重量部に対して、溶剤含量が300重量部以上10000重量部以下であれば、塗工後の乾燥工程での溶液安定性を維持できるため好ましく、300重量部以上1000重量部以下であればより好ましい。
(C)光重合開始剤
硬化性樹脂組成物(1)を構成する光重合開始剤は、光によりラジカル反応又はイオン反応を引き起こすものであり、ラジカル反応を引き起こす光重合開始剤が好ましい。
硬化性樹脂組成物(1)は、光増感剤を含んでいてもよい。
光重合開始剤は、1種のみを単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。2種類以上併用する場合には、フッ素含有(メタ)アクリレートの分散性、及び硬化性樹脂組成物(1)のナノ粒子面側の表層及び内部の硬化性の観点から選択するとよい。例えば、αヒドロキシケトン系光重合開始剤とαアミノケトン系光重合開始剤とを併用することが挙げられる。
硬化性樹脂組成物(2)は、上述した硬化性樹脂組成物(1)から(B)フッ素含有(メタ)アクリレートを除いたものを使用することができる。保護層101を構成する樹脂が硬化性樹脂組成物(2)の硬化物である場合、金属層と離型層の両方、又はいずれか一方を設けることが、ナノ粒子102の転写精度の観点から好ましい。
硬化性樹脂組成物(3)は、上述した硬化性樹脂組成物(1)にシリコーンを添加するか、又は、硬化性樹脂組成物(2)にシリコーンを添加したものを使用することができる。
シリコーンを含むことにより、シリコーン特有の離型性や滑り性により、ナノ粒子102及び第1のマスク層103の転写精度が向上する。硬化性樹脂組成物(3)に使用されるシリコーンとしては、例えば、ジメチルクロロシランの重合体であるポリジメチルシロキサン(PDMS)に代表される、常温で流動性を示す線状低重合度のシリコーンオイルや、それらの変性シリコーンオイル、高重合度の線状PDMS又は、PDMSを中程度に架橋しゴム状弾性を示すようにしたシリコーンゴムや、それらの変性シリコーンゴム、また樹脂状のシリコーン、PDMSと4官能のシロキサンから構成される3次元網目構造を有す樹脂であるシリコーンレジン(又はDQレジン)等が挙げられる。架橋剤として有機分子を用いる場合や、4官能のシロキサン(Qユニット)を用いる場合もある。
変性シリコーンオイル、変性シリコーンレジンは、ポリシロキサンの側鎖及び/又は末端を変性したものであり、反応性シリコーンと、非反応性シリコーンと、に分けられる。反応性シリコーンとしては、−OH基(水酸基)を含むシリコーン、アルコキシ基を含むシリコーン、トリアルコキシ基を含むシリコーン、エポキシ基を含むシリコーンが好ましい。非反応性シリコーンとしては、フェニル基を含むシリコーン、メチル基とフェニル基を双方含むシリコーン等が好ましい。1つのポリシロキサン分子に上記したような変性を2つ以上施したものを使用してもよい。
反応性シリコーンとしては、アミノ変性、エポキシ変性、カルボキシル変性、カルビノール変性、メタクリル変性、ビニル変性、メルカプト変性、フェノール変性、片末端反応性、異種官能基変性等が挙げられる。
また、ビニル基、メタクリル基、アミノ基、エポキシ基又は脂環式エポキシ基のいずれかを含有するシリコーン化合物を含有することにより、シリコーンを、化学結合を介し保護層101中に組み込むことができるため、ナノ粒子102及び第1のマスク層103の転写精度が向上する。特に、ビニル基、メタクリル基、エポキシ基又は脂環式エポキシ基のいずれかを含有するシリコーン化合物を含有することにより、上記効果をよりいっそう発揮するため好ましい。保護層101の樹脂層の硬化性という観点からは、ビニル基又はメタクリル基のいずれかを含有するシリコーン化合物を含有することが好ましい。また、支持基材への接着性という観点からは、エポキシ基又は脂環式エポキシ基のいずれかを含有するシリコーン化合物を含有することが好ましい。ビニル基、メタクリル基、アミノ基、エポキシ基又は脂環式エポキシ基のいずれかを含有するシリコーン化合物は、1種類のみを使用してもよく、複数を併用してもよい。光重合性基を持つシリコーンと、光重合性基を持たないシリコーンは、併用しても、単独で用いてもよい。
硬化性樹脂組成物(4)は、上記硬化性樹脂組成物(1)〜硬化性樹脂組成物(3)に対し、以下で説明するゾルゲル材料を添加したものや、又は、ゾルゲル材料のみで構成された組成物を採用することができる。硬化性樹脂組成物(1)〜硬化性樹脂組成物(3)に対し、ゾルゲル材料を加えることで、ゾルゲル材料特有の収縮作用による上記保護層の複製効率が向上する効果や、ゾルゲル材料特有の無機として性質を発揮することが可能となるため、保護層101に対するナノ粒子102や第1のマスク層103の浸透抑制効果が向上し、ナノ粒子102及び第1のマスク層103の転写精度が向上する
保護層101を構成するゾルゲル材料としては、熱や触媒の作用により、加水分解・重縮合が進行し、硬化する化合物群である、金属アルコキシド、金属アルコラート、金属キレート化合物、ハロゲン化シラン、液状ガラス、スピンオングラスや、これらの反応物であれば、特に限定されない。これらを総称して金属アルコキシドと呼ぶ。
金属アルコキシドとは、Si,Ti,Zr,Zn,Sn,B,In,Alに代表される金属種と、ヒドロキシ基、メトキシ基、エトキシ基、プロピル基、又はイソプロピル基等の官能基が結合した化合物群である。これらの官能基が、水、有機溶剤又は加水分解触媒等により、加水分解・重縮合反応を進行させ、メタロキサン結合(−Me1−O−Me2−結合。ただし、Me1、Me2は金属種であり、同一であっても異なってもよい)を生成する。例えば、金属種がSiであれば、−Si−O−Si−といったメタロキサン結合(シロキサン結合)を生成する。金属種(M1)と、金属種(Si)の金属アルコキシドを用いた場合、例えば、−M1−O−Si−といった結合を生成することもできる。
例えば、金属種(Si)の金属アルコキシドとしては、ジメチルジエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、p−スチリルトリエトキシシラン、メチルフェニルジエトキシシラン、テトラエトキシシラン、p−スチリルトリエトキシシラン、等と、これら化合物群のエトキシ基が、メトキシ基、プロピル基、又はイソプロピル基に置き換わった化合物等が挙げられる。また、ジフェニルシランジオールやジメチルシランジオールといった、ヒドロキシ基を有す化合物も選択できる。
また、上記官能基の1つ以上が、金属種から酸素原子を介さずに、直接フェニル基等に置換された形態をとってもよい。例えば、ジフェニルシランジオールやジメチルシランジオール等が挙げられる。これらの化合物群を用いることにより、縮合後の密度が向上し、保護層101に対するナノ粒子102や第1のマスク層103の浸透を抑制効果が向上し、ナノ粒子102及び第1のマスク層103の転写精度が向上する。
ハロゲン化シランとは、上記金属アルコキシドの金属種がシリコンで、加水分解重縮合する官能基がハロゲン原子に置き換わった化合物群である。
液状ガラスとしては、アポロリング社製のTGAシリーズ等が挙げられる。所望の物性に合わせ、その他ゾルゲル化合物を添加することもできる。
また、金属アルコキシドとしてシルセスキオキサン化合物を用いることもできる。シルセスキオキサンとは、ケイ素原子1個に対し、1つの有機基と3つの酸素原子が結合した化合物ある。シルセスキオキサンとしては、組成式(RSiO3/2)nで表されるポリシロキサンであれば特に限定されるものではないが、かご型、はしご型、ランダム等のいずれの構造を有するポリシロキサンであってもよい。また、組成式(RSiO3/2)nにおいて、Rは、置換又は非置換のシロキシ基、その他任意の置換基でよい。nは、8〜12であることが好ましく、硬化性樹脂組成物(4)の硬化性が良好になるため、8〜10であることがより好ましく、nは8であることがさらに好ましい。n個のRは、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。
シルセスキオキサン化合物としては、例えば、ポリ水素化シルセスキオキサン、ポリメチルシルセスキオキサン、ポリエチルシルセスキオキサン、ポリプロピルシルセスキオキサン、ポリイイソプロピルシルセスキオキサン、ポリブチルシルセスキオキサン、ポリ−sec−ブチルシルセスキオキサン、ポリ−tert−ブチルシルセスキオキサン、ポリフェニルシルセスキオキサン等が挙げられる。また、これらのシルセスキオキサンに対してn個のRのうち少なくとも1つを、次に例示する置換基で置換してもよい。置換基としては、トリフルオロメチル、2,2,2−トリフルオロエチル、3,3,3−トリフルオロプロピル、2,2,3,3−テトラフルオロプロピル、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル、2,2,2−トリフルオロ−1−トリフルオロメチルエチル、2,2,3,4,4,4−ヘキサフルオロブチル、2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンチル、2,2,2−トリフルオロエチル、2,2,3,3−テトラフルオロプロピル、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル、2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンチル、3,3,3−トリフルオロプロピル、ノナフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロヘキシル、トリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチル、ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロデシル、パーフルオロ−1H,1H,2H,2H−ドデシル、パーフルオロ−1H,1H,2H,2H−テトラデシル、3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロヘキシル等、アルコキシシリル基等が挙げられる。また、市販のシルセスキオキサンを使用することができる。例えば、Hybrid Plastics社の種々のかご型シルセスキオキサン誘導体、アルドリッチ社のシルセスキオキサン誘導体等が挙げられる。
金属アルコキシドは、重合反応が部分的に反応し、未反応の官能基が残っているプレポリマ状態であってもよい。金属アルコキシドが部分的に縮合することで、金属種が酸素元素を介し連なったプレポリマを得ることができる。つまり、部分的に縮合することで、分子量の大きなプレポリマを作ることができる。金属アルコキシドを部分的に縮合することで、保護層101にフレキシビリティが付与され、結果、保護層101を金属アルコキシドを用いた転写により作製する場合の、微細パタンの破壊やクラックを抑制できる。
部分縮合度は、反応雰囲気や、金属アルコキシドの組み合わせ等により制御可能であり、どの程度の部分縮合度のプレポリマ状態で使用するかは、用途や使用方法により適宜選択できるため、特に限定はされない。例えば、部分縮合体の粘度が50cP以上であると、転写精度、水蒸気への安定性がより向上するため好ましく、100cP以上であると、これらの効果をより発揮できるため、なお好ましい。
また、部分縮合を促進させたプレポリマは、脱水反応に基づく重縮合又は/及び脱アルコール反応に基づく重縮合により得ることができる。例えば、金属アルコキシド、水、溶剤(アルコール、ケトン、エーテル等)からなる溶液を20℃〜150℃の範囲で加熱し、加水分解、重縮合を経ることで、プレポリマを得ることができる。重縮合度は、温度、反応時間、及び圧力(減圧力)により制御可能であり、適宜選定できる。また、水の添加を行わず、環境雰囲気中の水分(湿度に基づく水蒸気)を利用し、徐々に加水分解・重縮合を行うことで、プレポリマの分子量分布を小さくすることも可能である。更に、重縮合を促進させるために、エネルギー線を照射する方法も挙げられる。ここでエネルギー線の光源は、金属アルコキシドの種類により適宜選定できるため、特に限定されないが、UV−LED光源、メタルハライド光源、高圧水銀灯光源等を採用できる。特に、金属アルコキシドに光酸発生剤を添加しておき、該組成物にエネルギー線を照射することで、光酸発生剤より光酸が発生し、該光酸を触媒として、金属アルコキシドの重縮合を促進でき、プレポリマを得ることができる。また、プレポリマの縮合度及び立体配置を制御する目的で、金属アルコキシドをキレート化した状態にて、上記操作を行い、プレポリマを得ることもできる。
なお、上記プレポリマとは、少なくとも4つ以上の金属元素が酸素原子を介し連なった状態と定義する。すなわち、−O−M1−O−M2−O−M3−O−M4−O−以上に金属元素が縮合した状態をプレポリマと定義する。ここで、M1、M2、M3、M4は金属元素であり、同一の金属元素であっても異なっていてもよい。例えば、Tiを金属種に有す金属アルコキシドを予備縮合し、−O−Ti−O−からなるメタロキサン結合を生成した場合、[―O−Ti−]nの一般式において、n≧4の範囲でプレポリマとする。同様に、例えば、Tiを金属種に有す金属アルコキシドと、Siを金属種とする金属アルコキシドを予備縮合し、−O−Ti−O−Si−O−からなるメタロキサン結合を生成した場合、[―O−Ti−O−Si−]nの一般式においてn≧2の範囲でプレポリマとする。但し、異種金属元素が含まれる場合、−O−Ti−O−Si−のように、互いに交互に配列するとは限らない。そのため、[−O−M−]n(但し、M=Ti又はSi)と、いう一般式において、n≧4の範囲でプレポリマとする。
金属アルコキシドは、フッ素含有シランカップリング剤を含むことができる。フッ素含有シランカップリング剤を含むことで、金属アルコキシドの硬化物からなる保護層101の微細パタン表面のエネルギーを低下させることが可能となり、離型層の形成等を行わなくても、ナノ粒子102や第1のマスク層103の転写精度が向上する。これは、離型層をあらかじめ保護層内部に組み込むことを意味する。
フッ素含有シランカップリング剤としては、例えば、一般式F3C−(CF2)n−(CH2)m−Si(O−R)3(ただし、nは1〜11の整数であり、mは1〜4の整数であり、そしてRは炭素数1〜3のアルキル基である。)で表される化合物であることができ、ポリフルオロアルキレン鎖及び/又はペルフルオロ(ポリオキシアルキレン)鎖を含んでいてもよい。直鎖状ペルフルオロアルキレン基、又は炭素原子−炭素原子間にエーテル性酸素原子が挿入され、かつ、トリフルオロメチル基を側鎖に有するペルフルオロオキシアルキレン基がさらに好ましい。また、トリフルオロメチル基を分子側鎖又は分子構造末端に有する直鎖状のポリフルオロアルキレン鎖及び/又は直鎖状のペルフルオロ(ポリオキシアルキレン)鎖が特に好ましい。ポリフルオロアルキレン鎖は、炭素数2〜炭素数24のポリフルオロアルキレン基が好ましい。ペルフルオロ(ポリオキシアルキレン)鎖は、(CF2CF2O)単位、(CF2CF(CF3)O)単位、(CF2CF2CF2O)単位、及び(CF2O)単位からなる群から選ばれる少なくとも1種類以上のペルフルオロ(オキシアルキレン)単位から構成されることが好ましく、(CF2CF2O)単位、(CF2CF(CF3)O)単位、又は(CF2CF2CF2O)単位から構成されることがより好ましい。ペルフルオロ(ポリオキシアルキレン)鎖は、表面への偏析性が優れるという観点から、(CF2CF2O)単位から構成されることが特に好ましい。
また、本発明においては、金属アルコキシドは、ポリシランを含むことができる。ポリシランは、シリコン元素が主鎖を構築し、主鎖が―Si−Si―の繰り返しから構成される化合物である。ポリシランに、エネルギー線(例えばUV)を照射することで、―Si−Si―結合が切断され、シロキサン結合が生成する。このため、ポリシランを含むことで、UV照射により、効果的にシロキサン結合を生成でき、金属アルコキシドを原料に、保護層を転写形成する際の転写精度が向上する。
また、保護層101は、無機のセグメントと有機のセグメントを含むハイブリッドであってもよい。ハイブリッドであることにより、第2の積層体2を連続的に製造する際の保護層へのクラックや傷を抑制できる。更に、ナノ粒子102や第1のマスク層103の組成にもよるが、ナノ粒子102や第1のマスク層103の保護層101内部への浸透を抑制する効果が大きくなり、結果、転写精度を向上させることが可能となる。ハイブリッドとしては、例えば、無機前駆体と光重合(又は熱重合)可能な樹脂、や、有機ポリマーと無機セグメントが共有結合にて結合した分子、等が挙げられる。無機前駆体としてゾルゲル材料を使用する場合は、シランカップリング剤を含むゾルゲル材料の他に、光重合可能な樹脂を含むことを意味する。ハイブリッドの場合、例えば、金属アルコキシド、光重合性基を具備したシランカップリング材や、例えば、金属アルコキシド、光重合性基を具備したシランカップリング材、ラジカル重合系樹脂等を混合することができる。より転写精度を高めるために、これらにシリコーンを添加してもよい。シランカップリング剤を含む金属アルコキシドと、光重合性樹脂の混合比率は、転写精度の観点から、重量比にて3:7〜7:3の範囲が好ましい。
[ナノ粒子]
ナノ粒子102の材料については、後述する選択比を満たせば特に限定されず、有機物、無機物或いは有機無機複合体を使用できる。例えば、溶剤に希釈可能な種々の公知樹脂(有機物)、無機前駆体、無機縮合体、メッキ液(クロムメッキ液等)、金属酸化物フィラー、金属酸化物微粒子、金属微粒子、HSQに代表されるシルセスキオキサン、スピンオングラス等を使用できる。ナノ粒子102は、第2の積層体2を使用して、積層体201を転写形成する際の転写精度の観点から、ナノ粒子102と後述する第1のマスク層103とが化学的に結合するか、又は水素結合を形成することが好ましい。転写速度及び精度を向上させるためには、光重合又は熱重合、そしてこれらの複合重合が有用である。そのため、ナノ粒子は、重合性官能基を含まずとも使用することはできるが、光重合可能な光重合性基と熱重合可能な重合性基の両方、又はいずれか一方を含むと特に好ましい。また、ナノ粒子102は、耐ドライエッチング性の観点から、金属元素を含むことが好ましい。更に、ナノ粒子102は、金属酸化物微粒子を含むことにより、被処理体200をドライエッチングする際の加工が、より容易になるため好ましい。
ナノ粒子102に含まれる金属元素としては、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、クロム(Cr)、亜鉛(Zn)、スズ(Sn)、ホウ素(B)、インジウム(In)、アルミニウム(Al)、シリコン(Si)、金(Au)、銀(Ag)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、ゲルマニウム(Ge)、ハフニウム(Hf)からなる群から選ばれた少なくとも1種であることが好ましい。特に、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、クロム(Cr)、シリコン(Si)、又は金(Au)であることが好ましい。また、ナノ粒子102に含まれる金属元素が安定に存在し、且つ後述するドライエッチング耐性を満たし、ナノ粒子102/第1のマスク層103/被処理体200から構成される積層体201に対し、ナノ粒子102をマスクとして第1のマスク層103をエッチングする際の加工精度を向上させる観点から、ナノ粒子102は、メタロキサン結合(―O−Me1−O−Me2−O−)を含むことが好ましい。ここで、Me1及びMe2は共に金属元素であり、同一の金属元素であっても異なっていてもよい。Me1又はMe2としては、上記説明した金属元素を採用するこができる。例えば、単一金属元素の場合、―O−Ti−O−Ti−O−や、―O−Zr−O−Zr−O−、そして―O−Si−O−Si−O−等が挙げられる。異種金属元素の場合、―O−Ti−O−Si−O−、―O−Zr−O−Si−O−、―O−Zn−O−Si−O−等が挙げられる。なお、メタロキサン結合中の金属元素種は、3種類以上含まれてもよい。特に、2種類以上含まれる場合、マスク層の転写精度の観点から、少なくともSiを含むことが好ましい。
ナノ粒子102がメタロキサン結合を含む場合、ナノ粒子102全体におけるSi元素濃度(CpSi)と、Si以外の金属元素の合計濃度(CpM1)と、の比率(CpM1/CpSi)は、0.02以上24未満であると、ナノ粒子102をマスクとして第1のマスク層103をエッチング加工する際の、加工精度が向上するため好ましい。特に、0.05以上20以下であるとより好ましく、0.1以上15以下であると最も好ましい。
また、金属ナノ粒子や金属酸化物ナノ粒子をナノ粒子102の材料として選定する場合、1次粒子径は500nm以下であると、ナノ粒子102の配列制御性が向上するため第1のマスク層103の加工精度が向上する。同様の効果から、1次粒子径は250nm以下であることが好ましく、100nm以下であることがより好ましく、50nm以下であることが最も好ましい。更に、30nm以下であることにより、2次粒子径の制御性が向上するため好ましい。
一方、ナノ粒子102の材料にナノ粒子を含まない場合、ナノ粒子材料を溶剤に3重量%の濃度にて溶解させた場合の慣性半径が、5nm以下であると、保護層101上に成膜形成されるナノ粒子102の配置精度が向上すると共に、ナノ粒子102をマスクとして第1のマスク層103をエッチング加工する際の加工精度も向上するため好ましい。慣性半径は3nm以下が好ましく、1.5nm以下がより好ましく、1nm以下が最も好ましい。ここで慣性半径とは、波長0.154nmのX線を使用した小角X線散乱による測定より得られる測定結果に対し、Gunier(ギニエ)プロットを適用し計算される半径とする。
このようなメタロキサン結合をナノ粒子に含める方法としては、金属酸化物微粒子を使用するか又は、無機前駆体を縮合させる方法が挙げられる。無機前駆体を縮合する方法としては、例えば、上述した金属アルコキシドの加水分解及び重縮合による反応を利用することができる。
ナノ粒子102の材料の粘度は、25℃において10cP以上であると、ナノ粒子102をマスクとして第1のマスク層103をエッチング加工する際の加工精度も向上するため好ましい。同様の効果から、50cP以上であるとより好ましく、100cP以上であると最も好ましい。保護層101上に成膜されるナノ粒子102の第2の積層体2の膜厚方向への重なりを抑制する観点から、10000cP以下であることが好ましく、8000cP以下であるとより好ましく、5000cP以下であると最も好ましい。なお、後述するように、ナノ粒子原料は溶剤により希釈し使用される。
ナノ粒子102に金属元素を含ませる方法として、例えば、金属酸化物微粒子(フィラー)、金属微粒子や金属アルコキシドに代表されるゾルゲル材料をナノ粒子102の材料に含ませる方法が挙げられる。ナノ粒子102に使用されるゾルゲル材料は、例えば上記説明した保護層101を構成する金属アルコキシドを使用できる。
また、ナノ粒子102としての耐ドライエッチング性の観点から、Ti、Ta、Zr、Zn、Siからなる群から選ばれる金属元素を金属種に有す金属アルコキシドを含むことが好ましい。特に、転写精度及び転写速度を向上させる観点から、ゾルゲル材料は、金属種の異なる、少なくとも2種類の金属アルコキシドを含むことが好ましい。金属種の異なる2種類の金属アルコキシドの、金属種の組み合わせとしては、例えば、SiとTi、SiとZr、SiとTa、SiとZn等が挙げられる。耐ドライエッチング性の観点から、Siを金属種に持つ金属アルコキシドのモル濃度(CSi)と、Si以外の金属種M1を持つ金属アルコキシド(CM1)との比率CM1/CSiは、0.2〜15であることが好ましい。ナノ粒子材料を保護層101面上に塗工しナノ粒子102を配置する際の塗工乾燥時の安定性の観点から、CM1/CSiは0.5〜15であることが好ましい。物理的強度の観点から、CM1/CSiは5〜8であることがより好ましい。
なお、CM1/CSiが上記最も広い範囲(0.2〜15)において、0.2〜10の範囲であれば、ナノ粒子102をマスクとして第1のマスク層103をエッチング加工する際のナノ粒子102の形状安定性が向上するため好ましい。特に、0.2〜5の範囲であればナノ粒子102のエッチング時の物理的安定性が向上するため好ましく、0.2〜3.5であるとより好ましい。また、0.23〜3.5であるとナノ粒子102をマスクとして第1のマスク層103をエッチング加工する際のナノ粒子102の輪郭形状安定性が向上するため好ましい。同様の観点から、0.25〜2.5であることが好ましい。
ナノ粒子102は、ナノ粒子102の転写精度及び耐ドライエッチング性の観点から、無機のセグメントと有機のセグメントを含むハイブリッドであることが好ましい。ハイブリッドとしては、例えば、無機微粒子と、光重合(又は熱重合)可能な樹脂の組み合わせや、無機前駆体と光重合(又は熱重合)可能な樹脂、や、有機ポリマーと無機セグメントが共有結合にて結合した分子、無機前駆体と光重合性基を分子内に具備する無機前駆体等が挙げられる。無機前駆体としてゾルゲル材料を使用する場合は、シランカップリング剤を含むゾルゲル材料の他に、光重合可能な樹脂を含むことを意味する。ハイブリッドの場合、例えば、金属アルコキシド、光重合性基を具備したシランカップリング材、ラジカル重合系樹脂等を混合することができる。より転写精度を高めるために、これらにシリコーンを添加してもよい。また、ドライエッチング耐性を向上させるために、ゾルゲル材料部分は、予め予備縮合を行ってもよい。シランカップリング剤を含む金属アルコキシドと、光重合性樹脂の混合比率は、耐ドライエッチング性と転写精度の観点から、3:7〜7:3の範囲が好ましい。より好ましくは、3.5:6.5〜6.5:3.5の範囲である。ハイブリッドに使用する樹脂は、光重合可能であれば、ラジカル重合系でも、カチオン重合系でも特に限定されない。
また、ハイブリッドとして無機前駆体と光重合性基を分子内に具備する無機前駆体を採用する場合、無機前駆体としてSi以外の金属元素を金属種に有す金属アルコキシドを採用し、光重合性基を分子内に具備する無機前駆体として光重合性基を具備するシランカップリング材を採用できる。また、これらのシリコーンを含めることもできる。
更に、第2の積層体2を使用し得られたナノ粒子102/第1のマスク層103/被処理体200から構成される積層体201に対し、ナノ粒子102をマスクとして第1のマスク層103をエッチングする際の、第1のマスク層103側面のラフネスを低減させる観点から、有機ポリマーと無機セグメントが共有結合にて結合した分子、又は、無機前駆体と光重合性基を分子内に具備する無機前駆体を採用することが好ましい。無機前駆体と光重合性基を分子内に具備する無機前駆体としては例えば、無機前駆体として金属アルコキシドを選定し、光重合性基を分子内に具備する無機前駆体として光重合性基を具備するシランカップリング材を選定することが挙げられる。特に、無機前駆体として使用する金属アルコキシドの金属種は、Ti、Ta、Zr又は、Znであると好ましく、Ti、Zr又はZnであると最も好ましい。
ナノ粒子102を、保護層101上に配置する際に、ナノ粒子材料を溶剤により希釈し、該希釈されたナノ粒子材料を、保護層101上に塗工する方法が挙げられる。希釈溶剤としては、特に限定されないが、単一溶剤の沸点が40℃〜200℃の溶剤が好ましく、60℃〜180℃がより好ましく、60℃〜160℃がさらに好ましい。希釈剤は2種類以上を使用してもよい。
また、ナノ粒子材料を溶剤に3重量%の濃度にて溶解させた場合の、慣性半径が5nm以下である溶剤を選定すると、保護層101上への配置精度が向上すると共に、ナノ粒子102をマスクとして第1のマスク層103をエッチング加工する際の加工精度も向上するため好ましい。慣性半径は3nm以下が好ましく、1.5nm以下がより好ましく、1nm以下が最も好ましい。ここで慣性半径とは、波長0.154nmのX線を使用した小角X線散乱による測定より得られる測定結果に対し、Gunier(ギニエ)プロットを適用し計算される半径とする。
ナノ粒子102に含まれる光重合性基としては、アクリロイル基、メタクリロイル基、アクリロキシ基、メタクリロキシ基、アクリル基、メタクリル基、ビニル基、エポキシ基、アリル基、オキセタニル基等が挙げられる。
ナノ粒子102に含まれる公知樹脂としては、光重合性と熱重合性の両方、又はいずれか一方の樹脂が挙げられる。例えば、上記説明した保護層101を構成する樹脂の他、フォトリソグラフィ用途で使用される感光性樹脂や、ナノインプリントリソグラフィ用途で使用される光重合性樹脂及び熱重合性樹脂等が挙げられる。特に、ドライエッチングによる、ナノ粒子102に含まれる樹脂のエッチングレート(Vm1)と、第1のマスク層103のエッチングレート(Vo1)との比率(Vo1/Vm1)が、1≦Vo1/Vm1≦50を満たす樹脂を含有することが好ましい。
ナノ粒子102を形成する材料は、ゾルゲル材料を含むことが好ましい。ゾルゲル材料を含むことで、耐ドライエッチング性の良好なナノ粒子102の、第1のマスク層103をドライエッチングする際の、縦方向のドライエッチングレート(Vr⊥)と、横方向のドライエッチングレート(Vr//)との比率(Vr⊥/Vr//)を大きくすることができる。ゾルゲル材料としては、単一の金属種を持つ金属アルコキシドのみを用いても、異なる金属種を持つ金属アルコキシドを併用してもよいが、金属種M1(ただし、M1は、Ti,Zr,Zn,Sn,B,In,Alからなる群から選択される少なくとも1種の金属元素)を持つ金属アルコキシドと、金属種Siを持つ金属アルコキシドとの、少なくとも2種類の金属アルコキシドを含有することが好ましい。又は、第2のマスク材料として、これらのゾルゲル材料と、公知の光重合性樹脂とのハイブリッドも使用できる。
第2のマスク材料は、ドライエッチング時の物理的破壊を抑制する観点から、縮合と光重合の両方、又はいずれか一方による硬化後の相分離が小さいことが好ましい。ここで、相分離とは、透過型電子顕微鏡(TEM)のコントラストで確認することが可能である。ナノ粒子102の転写性の観点から、TEMのコントラストより、相分離サイズが20nm以下であることが好ましい。物理的耐久性及び、耐ドライエッチング性の観点から、相分離サイズは15nm以下であることが好ましく、10nm以下であると、より好ましい。なお、相分離を抑制する観点から、ゾルゲル材料中に、光重合性基を具備するシランカップリング剤を含むことが好ましい。
ナノ粒子102を構成する光重合可能なラジカル重合系の樹脂としては、上記説明した保護層101を構成する光重合可能なラジカル重合系の樹脂から、フッ素含有(メタ)アクリレートを除いたものを用いることが好ましい。また、ナノ粒子材料に含まれる光重合開始材は、上記説明した保護層101の材料である硬化性樹脂組成物に使用される(C)光重合開始剤を使用することができる。
ナノ粒子102を構成する光重合可能なカチオン重合系の樹脂は、少なくともカチオン硬化性モノマーと、光酸発生剤とを含む組成物を意味する。カチオン硬化性樹脂組成物におけるカチオン硬化性モノマーとは、カチオン重合開始剤の存在下で、例えば、UV照射や加熱等の硬化処理を行うことにより硬化物が得られる化合物である。カチオン硬化性モノマーとしては、エポキシ化合物、オキセタン化合物、及びビニルエーテル化合物が挙げられ、エポキシ化合物としては、脂環式エポキシ化合物、及びグリシジルエーテルが挙げられる。これらの中でも脂環式エポキシ化合物は、重合開始速度が向上し、オキセタン化合物は重合率の向上効果があるので、使用することが好ましく、グリシジルエーテルはカチオン硬化性樹脂組成物の粘度を低下させ、塗工性に効果があるので使用することが好ましい。より好ましくは、脂環式エポキシ化合物とオキセタン化合物とを併用することであり、さらに好ましくは脂環式エポキシ化合物とオキセタン化合物との重量比率が99:1〜51:49の範囲で併用することである。
光酸発生剤は、光照射により光酸を発生すれば、特に限定されるものではない。例えば、スルホニウム塩、ヨードニウム塩といった芳香族オニウム塩が挙げられる。
このような光酸発生材をナノ粒子材料に含めることで、ナノ粒子材料の光酸発生材以外の成分が金属アルコキシドのみである場合であっても、光照射により発生する光酸により、金属アルコキシドの加水分解・重縮合速度を向上させることが可能となり、転写速度及び精度を向上させることができる。光酸発生剤を溶解させる溶剤としては、使用する光酸発生剤を溶解できれば特に限定されないが、例えば、プロピレンカーボネートや、プロピレンカーボネートとアルコール、エーテル、ケトン系溶剤(A)との混合溶剤等が挙げられる。プロピレンカーボネートと溶剤(A)との混合比は、重量比で、溶剤(A)/プロピレンカーボネートが5以上であると、相溶性に優れるため、好ましい。
希釈したナノ粒子材料の希釈溶液102Sを、保護層101上に直接塗工した際の濡れ性が悪い場合は、界面活性剤やレベリング材を添加してもよい。これらは、公知市販のものを使用することができるが、同一分子内に光重合性基を具備していることが好ましい。添加濃度は、塗工性の観点から、ナノ粒子材料100重量部に対して、40重量部以上が好ましく、60重量部以上が、より好ましい。一方で、耐ドライエッチング耐性の観点から、500重量部以下であることが好ましく、300重量部以下であると、より好ましく、150重量部以下であると、なお好ましい。
一方、ナノ粒子材料の分散性の向上や、転写精度を向上させる観点から、界面活性剤やレベリング材を使用する場合は、これらの添加濃度は、ナノ粒子材料に対し20重量%以下であることが好ましい。20重量%以下であることで分散性が大きく向上し、15重量%以下であることで転写精度も向上するため好ましい。より好ましくは、10重量%以下である。これらの界面活性剤やレベリング材は、特に、カルボキシル基、ウレタン基、イソシアヌル酸誘導体を有する官能基の少なくとも1つの官能基を含むことが、相溶性の観点から好ましい。なお、イソシアヌル酸誘導体には、イソシアヌル酸骨格を有するもので、窒素原子に結合する少なくとも1つの水素原子が他の基で置換されている構造のものが包含される。これらを満たすものとして、例えば、ダイキン工業社製のオプツールDACが挙げられる。添加剤は、溶剤に溶かした状態で、ナノ粒子材料と混合することが好ましい。
ナノ粒子102を構成するナノ粒子材料中に、希釈塗工後の溶剤揮発過程において様態が変化する材料を含むと、材料自体の面積を小さくするというドライビングフォースも同時に働くと推定されるため、より効果的に保護層101上にナノ粒子102を配列することができる。様態の変化とは、例えば、発熱反応や、粘度の大きくなる変化が挙げられる。例えば、ゾルゲル材料を含むと、溶剤揮発過程で、空気中の水蒸気と反応し、ゾルゲル材料が重縮合する。これにより、ゾルゲル材料のエネルギーが不安定化するため、溶剤乾燥に伴い低下する溶剤液面(溶剤と空気界面)から遠ざかろうとするドライビングフォースが働き、結果、ゾルゲル材料が良好に保護層101表面へと移動するため、ナノ粒子102を生成し、且つ配列することができる。
また、ナノ粒子102の希釈溶液を保護層101に直接塗工する際の濃度は、30重量%以下であると好ましい。この範囲を満たすことにより、ナノ粒子102の第2の積層体2の膜厚方向への重なりを小さくすることができる。更に、ナノ粒子102の希釈溶液の濃度は、ナノ粒子102の形状均等性を向上させる観点から15重量%以下であることが好ましく、10重量%以下であることがより好ましく、7.5重量%以下であることが最も好ましい。特に、重なりを限りなく無くす観点から、ナノ粒子102の希釈溶液濃度は、7重量%以下であることが好ましく、5重量%以下であることがより好ましく、3.5重量%以下であることが最も好ましい。
また、ナノ粒子102の希釈溶液を保護層101に直接塗工する粘度が、100cP以下であると、ナノ粒子102の希釈溶液の塗工性が良好になると共に、ナノ粒子102の配列精度が向上する。同様の効果から、50cP以下であることが好ましく、20cP以下であることがより好ましく、10cP以下であることが最も好ましい。また、ダイコートやマイクログラビアコートを良好に適用することができるため、8cP以下であることが好ましく、5cP以下であることがより好ましく、3.5cP以下であることが最も好ましい。なお、上記粘度は25℃において測定されるものとする。
更に、ナノ粒子102は透明であっても着色されていてもよい。透明であることにより、支持基材(図7A及び図7B中100)/保護層101/ナノ粒子102/第1のマスク層103/被処理体200から構成される第3の積層体に対しエネルギー線を照射する際に、支持基材越しにエネルギー線を照射することが可能となる。一方、着色されている場合、第3の積層体から支持基材及び保護層101を剥離した際の、転写性を目視或いは光学検査により容易に確認することができる。
[第1のマスク層]
第2の積層体2の第1のマスク層103を被処理体200に貼合して接着した後に、保護層101を剥離することで、容易にナノ粒子102を第1のマスク層103を介し被処理体200上へと転写することができる。
第1のマスク層103は、後述のエッチングレート比(選択比)を満たせば特に限定されず、光重合性樹脂、熱重合性樹脂、熱可塑性樹脂等を採用することができる。特に、反応性希釈材及び重合開始材を含むことで、第1のマスク層103を被処理体200に貼合する際の接着性が向上し、第1のマスク層103とナノ粒子102との界面接着強度が向上すると共に、第1のマスク層103とナノ粒子102及び第1のマスク層103と被処理体200との接着強度を固定化できる。この結果、ナノ粒子102の転写精度が向上する。
ナノ粒子102と第1のマスク層103とは、転写精度の観点から、化学的に結合することが好ましい。そのため、ナノ粒子102が光重合性基を含む場合は、第1のマスク層103も光重合性基を含むことが好ましい。また、ナノ粒子102が熱重合性基を含む場合は、第1のマスク層103も熱重合性基を含むことが好ましい。
また、ナノ粒子102中のゾルゲル材料との縮合により、化学結合を生成するために、第1のマスク層103にゾルゲル材料を含んでもよい。光重合方式としては、ラジカル系とカチオン系が存在するが、硬化速度とドライエッチング耐性の観点から、ラジカル系のみ、又は、ラジカル系とカチオン系のハイブリッド系が好ましい。ハイブリッドの場合、ラジカル重合系樹脂とカチオン重合系樹脂を、重量比率で、3:7〜7:3で混合することが好ましく、3.5:6.5〜6.5:3.5であるとより好ましい。
ドライエッチング時の第1のマスク層103の物理的安定性、及びハンドリングの観点から、硬化後の第1のマスク層103のTg(ガラス転位温度)は、30℃〜250℃であることが好ましく、60℃〜200℃であるとより好ましい。
第1のマスク層103及び被処理体200、又は第1のマスク層103及びナノ粒子102の密着性の観点から、第1のマスク層103の比重法による収縮率は、5%以下であることが好ましい。
第1のマスク層103はバインダー樹脂を含んでもよい。バインダー樹脂を含むことで、第1のマスク層103の物理的安定性が向上すると共に、第1のマスク層103を被処理体200に貼合する際の貼合精度が向上する。また、第1のマスク層103が、バインダー樹脂、反応性希釈材及び重合開始材を含むことで、第2の積層体2における第1のマスク層103の精度安定性を向上できる。このため、第2の積層体2のナノ粒子102の微細パタン配列精度及び第1のマスク層103の膜厚精度を、被処理体200へと反映させ転写することができる。
また、バインダー樹脂を含むことにより、第1のマスク層103をドライ化することが可能となる。すなわち、第1のマスク層103をタック性の極めて低い(半)固体として扱うことが可能となる。このため、第2の積層体2を、被処理体200上に貼合するまでのハンドリングが向上すると共に、被処理体200への貼合及び接着に熱圧着(熱貼合)を使用することが可能となり、貼合・転写精度がいっそう向上する。
なお、バインダー樹脂と反応性希釈材を含む場合、バインダー樹脂の反応形式と反応性希釈剤の反応形式と、は異なっていてもよい。例えば、バインダー樹脂が光重合性及び熱重合性であり、バインダー樹脂が熱重合性の場合、光硬化により反応性希釈剤の架橋が進行し、続く加熱によりバインダー樹脂と架橋された反応性希釈材と、を更に架橋することができる。同様に、バインダー樹脂及び反応性希釈剤が共に熱及び光反応性の場合も、光による架橋と熱による架橋を併用し、バインダー樹脂と反応性希釈材をクロスリンクすることが可能となる。
バインダー樹脂は反応性バインダー樹脂であると、第1のマスク層103のガラス転移温度を向上させることができる。ガラス転移温度を大きくすることにより、被処理体200をエッチングする際の熱耐性が向上するため、被処理体200上に設けられる微細パタン220の加工精度を向上させることができる。反応性バインダー樹脂の反応部位は、反応性希釈材が光反応性の場合は光反応性であることが好ましく、反応性希釈材が熱反応性の場合は、熱反応性であることが好ましい。又は、光反応性部位と熱反応性部を併せ持つ構造であってもよい。この場合、光反応による架橋と熱反応による架橋を併用できるため、ガラス転移温度の増加程度が大きくなる。バインダー樹脂が反応性バインダー樹脂であることで、第1のマスク層103と被処理体200との接着性の固定化、及び第1のマスク層103とナノ粒子102との接着性の固定化がいっそう向上するため、転写精度が向上する。
バインダー樹脂は第2の積層体2の用途により適宜選定することができるが、被処理体200を加工する観点からは、バインダー樹脂の幹ポリマーのガラス転移温度は45℃以上であることが好ましく、80℃以上であることがより好ましく、115℃以上であることが最も好ましい。
更に、バインダー樹脂はアルカリ可溶性樹脂であってもよい。アルカリ可溶性であることで、被処理体200上に微細パタン220を形成した後に、アルカリ現像を適用し、第1のマスク層103からなる残渣を容易に除去することが可能となり、そのため、被処理体200の加工マージンが広がる。被処理体200との密着性及びアルカリ現像性の観点から、バインダー樹脂にカルボキシル基が含まれることが好ましい。カルボキシル基の量は、酸当量で100〜600が好ましく、より好ましくは300〜450である。酸当量とは、その中に1当量のカルボキシル基を有する線状重合体の質量を示す。なお、酸当量の測定は、平沼産業社製平沼自動滴定装置(COM−555)を使用し、0.1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を用いて電位差滴定法により行われる。
また、バインダー樹脂の重量平均分子量は、貼合性と転写精度の観点から、5000〜500000であることが好ましい。第1のマスク層103の物理的安定性を向上させると共に、第1のマスク層103を被処理体200に貼合する際の貼合精度を向上させるという効果をよりいっそう発揮するため、バインダー樹脂の重量平均分子量は、5000〜100000であることがより好ましく、さらに好ましくは5000〜60000である。
分散度(分子量分布と呼ぶこともある)は、重量平均分子量と数平均分子量の比で表される((分散度)=(重量平均分子量)/(数平均分子量))。分散度は概ね1〜6程度のものが用いられ、1〜4であることが好ましい。なお、分子量は、日本分光社製ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)、(ポンプ:Gulliver、PU−1580型、カラム:昭和電工社製Shodex(登録商標)(KF−807、KF−806M、KF−806M、KF−802.5)4本直列、移動層溶剤:テトラヒドロフラン、ポリスチレン標準サンプルによる検量線使用)により重量平均分子量(ポリスチレン換算)として求められる。
また、後述する選択比の観点から、バインダー樹脂の側鎖、主鎖内部又は側鎖及び主鎖内部に下記化学式(4)で示される部位を有すことが好ましい。
第1のマスク層103に含まれる反応性希釈材のうち、光重合性希釈材は、特に限定されないが、例えば、上記ナノ粒子102にて説明した樹脂(光重合性樹脂)を使用することができる。耐ドライエッチング性の観点から、光重合性希釈材の平均官能基数は、1.5以上であることが好ましい。また、第1のマスク層103の成膜安定性の観点から、平均官能基数は、4.5以下であることが好ましい。被処理体200をドライエッチングする際に塩素系ガスを使用する場合は、耐ドライエッチング性の観点から、上記化学式(4)に示す部位を分子内に含む反応性希釈材を含むことが好ましい。また、ナノ粒子102と第1のマスク層103との接着性の観点から、ナノ粒子102及び第1のマスク層103中に同様の反応性希釈材を少なくとも1種含むことが好ましい。
また、第1のマスク層103に含まれる反応性希釈材のガラス転移温度は80℃以上であると、被処理体200の加工精度が向上するため好ましい。特に、第1のマスク層103全体のガラス転移温度を向上させる観点から、第1のマスク層103に含まれる反応性希釈材のガラス転移温度は120℃以上であることが好ましく、150℃以上であることがより好ましく、180℃以上であることが最も好ましい。
また、1分子内に少なくとも1つのOH基と少なくとも1つの付加重合性不飽和結合とを有する化合物を反応性希釈材として採用してもよい。このような分子を反応性希釈材として採用することで、ナノ粒子102及び被処理体200との密着性を向上させることができる。分子内のOH基は複数であってもよい。OH基はアルコール性であってもフェノール性であってもよいが、密着性、耐エッチング性の観点から、アルコール性が好ましい。分子内の付加重合性不飽和結合は複数であってもよい。
第1のマスク層103を構成する重合開始材のうち、光重合開始材としては、上記ナノ粒子102にて説明した光重合開始材を使用することができる。
バインダー樹脂の第1のマスク層103全体に対する割合は、貼合性、耐ドライエッチング性の観点から20質量%〜90質量%の範囲であり、好ましくは30質量%〜70質量%である。
アルカリ可溶性バインダー樹脂の含有量は、第1のマスク層103の全質量基準で30質量%以上75質量%以下の範囲が好ましい。より好ましくは40質量%以上65質量%以下である。アルカリ現像性を発現する観点から、30質量%以上であることが好ましく、硬化性、転写性、耐ドライエッチング性の観点から、75質量%以下であることが好ましい。
また、第1のマスク層103内部に残存する溶剤の濃度は、以下の基準に従い測定した際に、2000(g/ml)/m3以下であると好ましい。この範囲を満たすことにより、第2の積層体2の被処理体に対する貼合精度、ナノ粒子102による第1のマスク層103n加工精度、第1のマスク層103による被処理体200の加工精度を向上させることができる。前記効果をより発揮する観点から、1000(g/ml)/m3以下であることが好ましく、500(g/ml)/m3以下であることがより好ましく、200(g/ml)/m3以下であることが最も好ましい。更に、保護層101の凹凸構造101aの配列や形状によらず、ナノ粒子102及び第1のマスク層103の転写精度を向上させる観点から、150(g/ml)/m3以下であることが好ましく、130(g/ml)/m3以下であることがより好ましく、120(g/ml)/m3以下であることが最も好ましい。
1.保護層101上に、第1のマスク層103のみを、ナノ粒子102のある場合と同様の条件にて成膜し、ナノ粒子102を具備しない第2の積層体2を得る。
2.第2の積層体2を20mm×20mmにカットし、10mLのアセトンにてメスアップし、溶液を採取する。
3.採取した溶液を、GC/MS装置を使用しSIM法により分析を行い、溶剤量を「g/ml」のディメンジョンにて求める。
4.1.にて作製した積層体の第1のマスク層103の平均厚みhave[m]を求める。
5.3.の結果を、第1のマスク層103の体積(0.02m×0.02m×have)にて除した値を第1のマスク層103内部に残存する溶剤の濃度とする。
更に、第1のマスク層103に染料、顔料等の着色物質を含有させることもできる。着色物を含有することで、第2の積層体2を用いて積層体201を転写形成した際に、転写が良好に行われているかを、目視判断することができる。更に、保護層101上に成膜された第1のマスク層103の品質管理に、着色物質の吸収を利用することができる。
用いられる着色物質としては、例えば、フクシン、フタロシアニングリーン、オーラミン塩基、カルコキシドグリーンS,パラマジエンタ、クリスタルバイオレット、メチルオレンジ、ナイルブルー2B、ビクトリアブルー、マラカイトグリーン(保土ヶ谷化学社製アイゼン(登録商標)MALACHITEGREEN)、ベイシックブルー20、ダイアモンドグリーン(保土ヶ谷化学社製アイゼン(登録商標)DIAMONDGREENGH)等が挙げられる。
同様の効果から、第1のマスク層103に光照射により発色する発色系染料を含有させることもできる。用いられる発色系染料としては、例えば、ロイコ染料又はフルオラン染料と、ハロゲン化合物の組み合わせがある。
ロイコ染料としては、例えば、トリス(4−ジメチルアミノ−2−メチルフェニル)メタン[ロイコクリスタルバイオレット]、トリス(4−ジメチルアミノ−2−メチルフェニル)メタン[ロイコマラカイトグリーン]等が挙げられる。
ハロゲン化合物としては、臭化アミル、臭化イソアミル、臭化イソブチレン、臭化エチレン、臭化ジフェニルメチル、臭化ベンザル、臭化メチレン、トリブロモメチルフェニルスルフォン、四臭化炭素、トリス(2,3−ジブロモプロピル)ホスフェート、トリクロロアセトアミド、ヨウ化アミル、ヨウ化イソブチル、1,1,1−トリクロロ−2,2−ビス(p−クロロフェニル)エタン、ヘキサクロロエタン、トリアジン化合物等が挙げられる。該トリアジン化合物としては、2,4,6−トリス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジンが挙げられる。このような発色系染料の中でも、トリブロモメチルフェニルスルフォンとロイコ染料との組み合わせや、トリアジン化合物とロイコ染料との組み合わせが有用である。
更に、第1のマスク層103の安定性を向上させるために、第1のマスク層103中にラジカル重合禁止剤を含有させることは好ましい。このようなラジカル重合禁止剤としては、例えば、p−メトキシフェノール、ハイドロキノン、ピロガロール、ナフチルアミン、tert−ブチルカテコール、塩化第一銅、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、ジフェニルニトロソアミン等が挙げられる。
また、第1のマスク層103中に、必要に応じて可塑剤等の添加剤を含有させることもできる。そのような添加剤としては、例えば、ジエチルフタレート等のフタル酸エステル類やpートルエンスルホンアミド、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコールモノアルキルエーテル等が挙げられる。
更に、第1のマスク層103はn層(n≧2)以上の多層構造であってもよい。例えば、第1の積層体1のナノ粒子102上に2層の第1のマスク層103−1,103−2を設けることができる。同様に、第Nの第1のマスク層103−N上に第(N+1)の第1のマスク層103−(N+1)を設けることができる。このようなn層構成の第1のマスク層103を採用することにより、ナノ粒子102/n層の第1のマスク層103/被処理体200から構成される積層体に対し、ナノ粒子102面側からエッチング(ドライエッチング)を行った際に、第1のマスク層103の有する傾斜角度等の制御性が向上する。そのため、続く、被処理体200の加工の自由度が向上する。本効果を発揮する観点から、多層の第1のマスク層103の場合の多層度nは、2以上10以下であることが好ましく、2以上5以下がより好ましく、2以上4以下が最も好ましい。また、多層の第1のマスク層103の場合、第n層の体積をVnとした場合、第1のマスク層103の全体積VはV1+V2+…Vnとなる。この時、後述する選択比(ドライエッチングレート比)範囲を満たす第1のマスク層103が、第1のマスク層103全体の体積Vに対して50%以上の体積を有することが好ましい。例えば、3層構成の第1のマスク層103の場合、第一層の第1のマスク層103の体積がV1,第二層の第1のマスク層103の体積がV2,第三層の第1のマスク層103の体積がV3となる。また、選択比を満たす第1のマスク層103が、第二層と第三層の場合、(V2+V3)/(V1+V2+V3)は0.5以上であることが好ましい。同様に、第三層のみが選択比範囲を満たす場合、(V3)/(V1+V2+V3)が0.5以上であることが好ましい。特に、多層の第1のマスク層103の加工精度と、被処理体200の加工精度の観点から、体積比率は0.65(65%)以上がより好ましく、0.7(70%)以上が最も好ましい。なお、n層全てが選択比範囲を満たすことで、被処理体200の加工精度が大きく向上するため、体積比率は1(100%)であると望ましい。更に、n層の第1のマスク層103の場合、最も外側(凹凸構造101aから最も遠い側の層)の組成が、上述した[第1のマスク層]にて説明した組成を満たせばよく、それ以外の層は、上述した[第1のマスク層]にて説明した組成の他、上述したナノ粒子102の組成、或いは保護層101の組成物を採用することもできる。このような中で、第1のマスク層103としての安定性の観点から、n層全てを上述した[第1のマスク層]にて説明した組成範囲内にて調整することが好ましい。
[選択比]
ドライエッチングによる、ナノ粒子102のエッチングレート(Vm1)と、第1のマスク層103のエッチングレート(Vo1)との比率(Vo1/Vm1)は、ナノ粒子102をマスクとして第1のマスク層103をエッチングする際の加工精度に影響を与える。Vo1/Vm1>1は、ナノ粒子102が第1のマスク層103よりもエッチングされにくいことを意味するため、(Vo1/Vm1)は大きいほど好ましい。
(Vo1/Vm1)は、ナノ粒子102の塗工性の観点から、Vo1/Vm1≦150を満たすことが好ましく、Vo1/Vm1≦100を満たすことがより好ましい。また、(Vo1/Vm1)は、耐エッチング性の観点から、3≦Vo1/Vm1(式(4))を満たすことが好ましく、10≦Vo1/Vm1を満たすことがより好ましく、15≦Vo1/Vm1を満たすことがなお好ましい。
上記範囲を満たすことにより、厚みのある第1のマスク層103を、ナノ粒子102をマスクとしてドライエッチングすることにより、容易に微細加工することができる。これにより、ドライエッチングによって微細加工されたナノ粒子102及び第1のマスク層103からなる微細マスクパタン202aを、被処理体200上に形成することができる。このような、微細パタン構造体202を用いることで、上記説明した機能を得たり、また、被処理体200を容易にドライエッチング加工することができる。
一方、第1のマスク層103のエッチング時のエッチング異方性(横方向のエッチングレート(Vo//)と、縦方向のエッチングレート(Vo⊥)との比率(Vo⊥/Vo//)は、Vo⊥/Vo//>1を満たすこことが好ましく、より大きいほど好ましい。第1のマスク層103のエッチングレートと、被処理体200とのエッチングレートの比率にもよるが、Vo⊥/Vo//≧2を満たすことが好ましく、Vo⊥/Vo//≧3.5を満たすことがより好ましく、Vo⊥/Vo//≧10を満たすことがなお好ましい。
なお、縦方向とは、第1のマスク層103の膜厚方向を意味し、横方向とは、第1のマスク層103の面方向を意味する。ピッチがサブミクロン以下の領域においては、厚みのある第1のマスク層103を安定的に形成し、被処理体200を容易にドライエッチングするために、第1のマスク層103の幅を大きく保つ必要がある。上記範囲を満たすことにより、ドライエッチング後の第1のマスク層103の幅(幹の太さ)を大きく保つことができるため、好ましい。
ドライエッチングによる、被処理体200のエッチングレート(Vi2)と、第1のマスク層103のエッチングレート(Vo2)との比率(Vo2/Vi2)は、小さいほど好ましい。Vo2/Vi2<1を満たせば、第1のマスク層103のエッチングレートの方が、被処理体200のエッチングレートよりも小さいため、被処理体200を容易に加工することができる。第1のマスク層103の塗工性及び、エッチング精度の観点から、(Vo2/Vi2)は、Vo2/Vi2≦3を満たすことが好ましく、Vo2/Vi2≦2.5を満たすとより好ましい。(Vo2/Vi2)は、Vo2/Vi2≦2を満たすと、第1のマスク層103を薄くできるためより好ましい。なお、最も好ましくは、Vo2/Vi2<1である。
被処理体200のエッチングレートとハードマスク層のエッチングレートの比率ハードマスク層は、加工性の観点から1以上であることが好ましく、3以上であることがより好ましい。被処理体200のアスペクト比を高く加工する観点からは、選択比は5以上であることが好ましく10以上であるとより好ましい。ハードマスク層を薄くする観点からは、選択比は15以上であるとなお好ましい。
なお、微細パタンに対するドライエッチングレートは、微細パタンの影響を色濃く受けるため、これらの選択比率は、各種材料のフラット膜(ベタ膜)に対し測定される値である。
例えば、第1のマスク層103に対するエッチングレートは、Si又は石英等の基材上に、第1のマスク層103を成膜して得られたフラット膜に対して、ドライエッチング又はウェットエッチングを行うことで算出している。第1のマスク層103が反応性の場合は、硬化させてフラット膜を得る。
ナノ粒子102に対するエッチングレートは、Si又は石英等の基材上に、ナノ粒子102を成膜して得られたフラット膜に対して、ドライエッチングを行うことで算出している。ナノ粒子102が反応性の場合は、硬化させてフラット膜を得る。
また、ハードマスク層に対するエッチングレートは、Si又は石英等の基材上にハードマスク層を成膜し、ドライエッチング又はウェットエッチングを行うことで算出している。
被処理体200に対するエッチングレートは、被処理体200に対してドライエッチング又はウェットエッチングを行うことで算出している。
また、上記エッチングレート比を求める際は、同様のエッチング条件を適用したエッチングレートの比率として算出している。例えば、Vo1/Vm1は、第1のマスク層103のフラット膜とナノ粒子102のフラット膜に対し、同様のドライエッチング処理を行い、得られたそれぞれのエッチングレート(Vo1及びVm1)の比率として算出している。
同様に、Vo2/Vi2は、第1のマスク層103のフラット膜と被処理体200に対し、同様のドライエッチング又はウェットエッチング処理を行い、得られたそれぞれのエッチングレート(Vo2及びVi2)の比率として算出している。
同様に、被処理体200のエッチングレート/ハードマスク層のエッチングレートは、被処理体200とハードマスク層に対し同様のドライエッチング又はウェットエッチング処理を行い、得られたそれぞれのエッチングレート(被処理体200のエッチングレート及びハードマスク層のエッチングレート)の比率として算出している。
[被処理体]
第2の積層体2を用いて作製された微細マスクパタン202aをマスクとして加工する被処理体200は、用途により適宜選択すればよく特に限定されない。無機基材から有機基材、フィルムまで使用することができる。例えば、上記説明した支持基材100や、保護層101を構成する材料を選択できる。その他にも、LEDの内部量子効率の改善と、光取出し効率の改善を同時に満たすような用途の場合、被処理体200としてサファイア基板、スピネル基板、Si基板、SiC基板或いは窒化物半導体基板を挙げることができる。この場合、得られた微細マスクパタン202aをマスクとして基板を加工することになる。一方で、光取出し向上目的でGaN基板を選択することもできる。この場合、得られた微細マスクパタン202aをマスクとしてGaN基板を加工することになる。その他にも、GaAsP、GaP、AlGaAs、InGaN、GaN、AlGaN、ZnSe、AlHaInP、ZnO、ITO等から構成される基材を使用することもできる。大面積な微細パタンにより無反射表面ガラスを作製する目的であれば、ガラス板やガラスフィルム等を選択できる。太陽電池用途等で、光の吸収効率や変換効率等を向上させるために、Si基板を採用することもできる。また、超撥水性のフィルム、超親水性のフィルムを作製する場合は、フィルム基材を使用することができる。また、完全黒体を目的とすれば、カーボンブラックが練りこまれた、又は表面に塗布された基材等を採用することができる。また、ナノ粒子102に金属を採用した場合、被処理体200表面に転写形成されたマスク層自体が機能を発現し、センサ(光学式センサ)として応用できる。この場合、基材はセンサの使用環境の観点で適宜選択すればよい。
続いて、保護層101の表面に凹凸構造が形成されている場合について説明する。保護層101の表面に凹凸構造がある場合、凹凸構造の凹部内部にナノ粒子102が配置される。このため、ナノ粒子102の配列及び形状を保護層101の凹凸構造により保護することができる。なお、保護層101に凹凸構造のある場合であっても、第2の積層体2の好ましい要件は、上記説明した範囲を満たす。
図8に示すように、保護層101の凹凸構造101aの凹部101cの内部にナノ粒子102が設けられ、ナノ粒子102及び凹凸構造101aを覆うように第1のマスク層103が設けられる。ここで、ナノ粒子102は、凹凸構造101aの凹部101c内に配置され、凹凸構造101aの凸部頂部より外側へとはみ出さない配置であると、ナノ粒子102の配置精度及び転写精度、そして第1のマスク層103の加工精度が向上するため好ましい。
このように、凹凸構造101aの凹部101c内部を埋めるようにナノ粒子102が配置される。これにより、第1のマスク層103を被処理体200に貼合し、さらにドライエッチングを行って、図7Cに示すように、被処理体200上に第1のマスク層103及びナノ粒子102からなる積層体201を作製した際に、第1のマスク層103の凹部内に配置されるナノ粒子102のない状態にすることができる。この結果、被処理体200上に微細マスクパタン202aを形成する際のドライエッチング工程において、残膜に相当する積層体201の第1のマスク層103の凹部底部に配置されるナノ粒子102を除去する工程を省くことができる。よって、被処理体200上に形成される微細マスクパタン202aの加工精度を向上させることが可能となり、被処理体200上に更なる加工により設けられる微細パタン220の精度が向上する。
[凹凸構造]
第2の積層体2における保護層101が有する凹凸構造101aの形状は、特に限定されないが、例えば、複数の柵状体が配列したラインアンドスペース構造、複数の柵状体が交差した格子構造、複数のドット(凸部、突起)状構造が配列したドット構造、複数のホール(凹部)状構造が配列したホール構造等が挙げられる。ドット構造やホール構造は例えば、円錐、円柱、四角錐、四角柱、二重リング状、多重リング状等の構造が挙げられる。なお、これらの形状は底面の外径が歪んだ形状や、側面が湾曲した形状を含む。
凹凸構造101aの形状がドット状であると、ドット間の連続的な隙間をナノ粒子材料の希釈溶液の塗工に利用でき、ナノ粒子102の配列精度及び形状精度が向上する。一方、第2の積層体2の使用に関し、転写形成されたナノ粒子102をマスクとして機能させる場合は、凹凸構造101aの形状はホール形状であることが好ましい。更に、凹凸構造101aの形状がホール形状であることで、ナノ粒子材料の希釈溶液を、凹凸構造101aに直接塗工する際の、凹凸構造の耐久性(物理的破壊に対する耐性)が向上する。
なお、凹凸構造101aがドット形状の場合、隣接するドットが滑らかな凹部を通じつながっていると上記効果をより発揮するため好ましい。また、凹凸構造101aがホール形状の場合、隣接するホールが滑らかな凸部を通じつながっていると、上記効果をより発揮するため好ましい。
ここで、「ドット形状」とは、「柱状体(錐状体)が複数配置された形状」であり、「ホール形状」とは、「柱状(錐状)の穴が複数形成された形状」である。すなわち、ドット形状とは、図9Aに示すように、複数の凸部101b(柱状体(錐状体))が配置された形状であり、凸部101b間の凹部101cは連続性のある状態である。一方、ホール形状とは、図9Bに示すように、複数の凹部101c(柱状(錐状)の穴)が配置された形状であり、隣接する凹部101c同士は凸部101bにより隔離されている状態である。
凹凸構造101aにおいて、ドット形状における凸部101b同士の中心間距離又はホール形状における凹部101c同士の中心間距離が50nm以上5000nm以下であり、凸部101bの高さ又は凹部101cの深さが10nm以上2000nm以下であることが好ましい。特に、ドット形状における凸部101b同士の中心間距離又はホール形状における凹部101c同士の中心間距離が100nm以上1000nm以下であり、凸部101bの高さ又は凹部101cの深さが50nm以上1000nm以下であることが好ましい。これらの範囲を満たすことにより、凹凸構造101aの凹部101c内に設けられるナノ粒子102の形状の制御性を向上させることができる。ここで、凸部101bとは、凹凸構造101aの平均高さより高い部位をいい、凹部101cとは、凹凸構造101aの平均高さより低い部位をいうものとする。
凹凸構造101aの配列は、正六方配列、準六方配列、準四方配列、正四方配列、ランダム配列や、これらを規則的或いは規則性低く組み合わせた配列等を採用することができる。例えば、六方配列から四方配列へと徐々に変化した後に六方配列に戻る配列等も採用できる。特に、ナノ粒子102の配置精度の観点から、正六方配列における配列の歪が±15%以下の六方配列が好ましい。ここで、配列の歪は単位格子スケールにて不規則にもうけられても、単位格子スケールの歪が連続的に長周期的な変化をする場合であっても、複数の単位格子を1組にしそれぞれの組に設けられる歪が非規則的に設けられても、規則的にもうけられてもよい。
凹凸構造101aの形状は、凹部深さ、凹部底部の幅、凸部頂部の幅、凹部側面の角度、凹部側面の変曲点の数といった変数により記載することができる。一方、配列はピッチを変数とすることで記載可能である。ここで、変数をxとした時に、xに対する標準偏差と相加平均と、の比率(標準偏差/相加平均)が0.025以上であることにより、ナノ粒子102に乱れを加えることができる。このため、ナノ粒子102をマスクにエッチング加工された第1のマスク層103や、更に加工された被処理体200の微細パタン220に乱れを加えることができる。このような乱れを含ませることにより、微細パタン220を具備する被処理体200を光学用途、例えばLEDやOLEDに使用した際に、散乱性を強く付加することができる。
上述したように、標準偏差/相加平均が0.025以上であれば散乱性を強く付加することが可能となる。より散乱性を強くし、光学素子としての性能を向上させる観点から、標準偏差/相加平均は0.03以上であると好ましい。一方、上限値は、ナノ粒子102の配置精度の観点から、0.5以下であると好ましい。また、第1のマスク層103の加工精度を向上させる観点から0.35以下が好ましく、0.25以下であることがより好ましく、0.15以下であることが最も好ましい。
また、保護層101の凹凸構造101aは、図10A及び図10Bに示すように、面内において直交する第1方向と第2方向に対し、第1方向にピッチPで凸部101b(又は凹部101c、以下同様)が配列し、かつ、第2方向にピッチSで凸部101bが配列する場合において、第2方向に列をなす凸部101bの第1方向に対するずれ(シフト量(α))の規則性が高い配列であってもよいし(図10A参照)、シフト量(α)の規則性が低い配列であってもよい(図10B参照)。シフト量(α)とは、第1方向に平行な隣り合う列において、最も近接する凸部101bの中心を通る第2方向に平行な線分間の距離をいう。例えば、図10Aに示すように、第1方向に平行な第(N)列の任意の凸部101bの中心を通る第2方向に平行な線分と、この凸部101bから最も近い距離にある第(N+1)列の凸部101bの中心を通る第2方向に平行な線分との間の距離が、シフト量(α)と規定される。図10Aに示す配列は、どの列を第(N)列としても、シフト量(α)はほぼ一定であるため、周期性を備えた配列といえる。一方、図10Bに示す配列は、どの列を第(N)列とするかによって、シフト量(α)の値が変わるため、非周期性を備えた配列といえる。
ピッチP及びピッチSは、想定する用途に応じて適宜設計することができる。例えば、ピッチPとピッチSとは等しいピッチであってもよい。また、図10A及び図10Bにおいては、凸部101bが重なりを持たず独立した状態で描かれているが、第1方向と第2方向の両方、又はいずれか一方に配列する凸部101bが重なっていてもよい。
例えば、LEDのサファイア基材(被処理体200)表面の加工を行う場合、LEDの内部量子効率を向上させるために、保護層101の凹凸構造101aは、ピッチP、Sが200nm〜800nm、高さが50nm〜800nmであることが好ましい。配列は、正規配列が好ましい。特に、内部量子効率を向上させ、且つ光取り出し効率を向上させるために、上記説明した非周期性を備えた配列が好ましい。その他にも、内部量子効率及び光取り出し効率を同時に向上させるために、保護層101の凹凸構造101aは、ナノスケールで正規配列をなし、かつ、マイクロスケールの大きな周期性を有する、ピッチP、Sにマイクロスケールの周期を有する変調を加えたホール形状であるとより好ましい。
第2の積層体2を製造するにあたり、ナノ粒子102を凹凸構造101aの凹部内部に配置する観点から、次に示す構造及びナノ粒子材料を用いることが好ましい。
図11A及び図11Bは、第2の積層体2における保護層101のドット形状の凹凸構造101aを示す断面模式図である。保護層101の凹凸構造101aがドット形状の場合、1つの凸部頂部101b−1を形成する面における、最長の線分の長さ(lx)がサブミクロンスケールであると、希釈塗工したナノ粒子材料が、系のエネルギーを減少させるように、効率的に凹部101c内部へと充填されるため好ましい。特に、最長の線分の長さが、500nm以下であると、上記効果をよりいっそう発揮できるため好ましく、より好ましくは、300nm以下、最も好ましくは、150nm以下である。なお、1つの凸部頂部101b−1を形成する面とは、各凸部101bの頂部位置を通る面と、1つの凸部頂部101b−1とが交わる面を意味する。
図11Aに示すように、凸部101bは、凸部底部101b−2の面積の方が凸部頂部101b−1の面積より大きい構造、すなわち、凸部101bが傾斜を持つ構造であると、上記効果をより発揮できるため好ましい。更に、図11Bに示すように、凸部頂部101b−1と傾斜部101b−3とは、連続的に滑らかにつながっていると、ナノ粒子102を希釈し塗工する際の、固液気界面におけるピン止め効果(TPCLよるピン止め効果)を抑制でき、上記効果をよりいっそう発揮できるため好ましい。
図12は、第2の積層体2における保護層101のホール形状の凹凸構造101aを示す平面模式図である。保護層101の凹凸構造101aがホール形状の場合、1つのホール(A)と、ホール(A)に最近接するホール(B)において、ホール(A)の開口淵部と、ホール(B)の開口淵部をつなぐ、最短の線分(ly)の長さがサブミクロンスケールであると、希釈塗工したナノ粒子材料が、系のエネルギーを減少させるように、効率的に凹部101c内部へと充填される結果、第2の積層体2の膜厚方向への重なりの少ないナノ粒子102を得ることができる。特に、最短の線分の長さが、500nm以下であると、上記効果をよりいっそう発揮できるため好ましく、より好ましくは、400nm以下、最も好ましくは、300nm以下である。その中でも、最短の線分の長さは、150nm以下であることが好ましく、さらに好ましくは100nm以下、最も好ましくは0nmである。なお、最短の線分の長さが0nmとは、ホール(A)とホール(B)との開口淵部の一部が重なり合う状態を意味している。
また、ホール開口部の面積が、ホール底部の面積よりも大きいと、上記効果をより発揮できるため好ましい。更に、開口淵と凹部側面とは、連続的に滑らかにつながっていると、ナノ粒子材料を希釈し塗工する際の、固液気界面におけるピン止め効果(TPCLよるピン止め効果)を抑制でき、上記効果をよりいっそう発揮できるため好ましい。
更に、第2の積層体2においては、保護層101の凹凸構造101aのピッチP及びピッチSはともに1500nm以下であると上記効果をより発揮するため好ましく、1000nm以下であるとより好ましい。特に、互いに重なり合うナノ粒子102を少なくし第1のマスク層103の加工精度を向上させる観点から、800nm以下であることが好ましく、500nm以下であることがより好ましく、350nm以下であることが最も好ましい。また、ナノ粒子102の充填配置精度及び転写性の観点からピッチは50nm以上であることが好ましい。保護層101の凹凸構造上へナノ粒子材料を塗工し、凹部内部へとナノ粒子102を充填する際に、開口率が45%以上であると、ピッチP、Sが50nmから1000nmの範囲内にある場合には、ナノ粒子102は凹凸構造101aを認識することができ、凹凸構造101a内部に形成されるナノ粒子102の仮想液滴の曲率半径を極大化するように、パタン内部へと濡れ広がるため、好ましい。仮想液滴とは、保護層101の凹凸構造101aの凹部内部に存在すると仮定した、ナノ粒子材料の液滴を意味する。特に50%以上であることが好ましく、55%以上であるとより好ましい。更に、開口率が65%以上であると、上記効果に加え、保護層101の凹凸構造101aの凸部上から凹部内部方向へのポテンシャルが働き凹内部へ液滴が充填された後に、凸上へとナノ粒子材料が再移動することを回避できるため、より好ましい。また、上記効果をよりいっそう発揮するために、開口率は、70%以上が望ましい。より好ましくは、開口率は75%以上であり、80%以上であるとさらに好ましい。
なお、保護層101の凹凸構造101aがホール状の場合は、図13Aに示すように、凹凸構造101aの主面と平行な面内において、凹凸構造101a上の単位面積(Sc)下に含まれる、凹部101cの面積(Sh)の比率が開口率である。図13Cは、図13Aに示す単位面積(Sc)下に含まれる凹凸構造101aを抜き出した模式図である。図13Cに示す例では、単位面積(Sc)内に微細ホール(凹部101c)が12個含まれている。この12個の微細ホール(凹部101c)の開口部面積(Sh1〜Sh12)の和がShとして与えられ、開口率Arは(Sh/Sc)で与えられる。一方で、凹凸構造101aがドット状の場合は、図13Bに示すように、凹凸構造101aの主面と平行な面内において、凹凸構造101a上の単位面積(Sc)下に含まれる、凹部101cの面積(Sc−Sh)の比率が開口率である。図13Cは、図13Bに示す単位面積(Sc)下に含まれる凹凸構造101aを抜き出した模式図である。図13Cに示す例では、単位面積(Sc)内に微細ドット(凸部101b)が12個含まれている。この12個の微細ドット(凸部101b)の頂部面積(Sh1〜Sh12)の和がShとして与えられ、開口率Arは((Sc−Sh)/Sc)で与えられる。開口率Arを100倍すればパーセントとして表記できる。
例えば、図14に示すような、開口径(φ)が430nm、x軸方向のピッチPxが398nm、y軸方向のピッチPyが460nmの凹部が六方最密充填配列で並んだ凹凸構造101aの場合、Sh/Scは0.79(開口率79%)となる。
同様に、例えば開口径(φ)が180nm、x軸方向のピッチPxが173nm、y軸方向のピッチPyが200nmの凹部が六方最密充填配列で並んだ凹凸構造に対しては、(Sh/Sc)は0.73(開口率73%)となる。
同様に、例えば、開口径(φ)が680nm、x軸方向のピッチPxが606nm、y軸方向のピッチPyが700nmの凹部が六方最密充填配列で並んだ凹凸構造に対しては、(Sh/Sc)は0.86(開口率86%)となる。
例えば、図14に示すような、凸部頂部径(φ)が80nm、x軸方向のピッチPxが398nm、y軸方向のピッチPyが460nmの凸部が六方最密充填配列で並んだ凹凸構造101aの場合、(Sc−Sh)/Scは0.97(開口率97%)となる。
同様に、例えば凸部頂部径(φ)が30nm、x軸方向のピッチPxが173nm、y軸方向のピッチPyが200nmの凸部が六方最密充填配列で並んだ凹凸構造に対しては、((Sc−Sh)/Sc)は0.98(開口率98%)となる。
同様に、例えば、凸部頂部径(φ)が100nm、x軸方向のピッチPxが606nm、y軸方向のピッチPyが700nmの凸部が六方最密充填配列で並んだ凹凸構造に対しては、((Sc−Sh)/Sc)は0.98(開口率98%)となる。
また、保護層101の凹凸構造101aは、塗工改善構造を含んでもよい。塗工改善構造は、保護層101の凹凸構造101aにおいて、ナノ粒子102を充填配置する領域(基本構造)を挟みこむように配置されており、塗工改善構造のピッチは、基本構造よりも大きいことが好ましい。特に、塗工改善構造中のピッチが、基本構造側から、フィルム端部へと、徐々に大きくなることが好ましい。例えば、ホール形状の場合、基本構造部の開口率よりも、塗工改善構造部の開口率が小さくなるように設定することが、好ましい。
次に、本実施の形態に係る第2の積層体2の製造方法について詳細に説明する。
[製造方法]
第2の積層体2は、上記説明した要件を満たすことで効果を発現するため、その製造方法は特に限定されない。例えば、保護層表面に、ナノ粒子102の分散された分散液を塗布し、溶剤を除去することでナノ粒子102を配列させ、その後、ナノ粒子を全て被覆するように第1のマスク層材料を成膜する方法が挙げらえる。このような、ナノ粒子102のエネルギー安定化をドライビングフォースとした自己配列によっても本実施の形態に係る第2の積層体2は製造できるが、ナノ粒子102の所定面内における配列を制御し、ナノ粒子102同士の重なりを抑制し第1のマスク層103の加工精度を向上させるためにも、以下に示す製造方法を採用すると好ましい。以下に記す製造方法は、ナノ粒子102を配列するガイドを利用することを特徴とする。
リール状や平板状といったその外形に関わらず、保護層101の凹凸構造101a面上に、ナノ粒子材料の希釈溶液を塗工する工程と、余剰な溶剤を除去する工程を少なくともこの順に含むことで第1の積層体1が製造される。続いて、第1の積層体1の凹凸構造101a面上に、第1のマスク層材料の希釈溶液を塗工する工程と、余剰な溶剤を除去する工程を少なくともこの順に含むこと第2の積層体2が製造される。
[リール状微細パタン形成用積層体]
リール状の第2の積層体2は、(1)リール状の支持基材100を用いた光重合性樹脂転写又は、熱重合性樹脂の転写により、又は、支持基材100を用いない熱可塑性樹脂への転写を経ることでリール状の保護層101を作製し(リール状保護層作製工程)、続いて、(2)必要な場合は金属層を成膜し(金属層作製工程)、続いて、(3)必要な場合は離型層を形成し(離型層形成工程)、(4)ナノ粒子材料を凹凸構造101a内部に導入(ナノ粒子充填工程)し、最後に(5)第1のマスク層103を成膜する(第1のマスク層成膜工程)ことで作製できる。なお、ナノ粒子充填工程まで行い得られた積層体が、第1の積層体1である。
(1)リール状保護層作製工程
1−1:支持基材あり
以下の工程(1)〜(4)を順に行うことで、リール状の保護層101(支持基材100あり)を作製することができる。図15A〜図15Cは、リール状の保護層101の作製工程の説明図である。なお、以下の工程は、ロール・ツー・ロールの連続転写プロセスで作製することが好ましい。
工程(1):支持基材100上に硬化性樹脂組成物111を塗布する工程(樹脂を塗工する工程、図15A参照)。
工程(2):塗布した硬化性樹脂組成物111を、離型処理を施したマスターモールド110に押圧する工程(樹脂を鋳型に押圧する工程、図15B参照)。
工程(3):硬化性樹脂組成物111を硬化させ硬化物を得る工程(樹脂を硬化させる工程)。
工程(4):硬化物をマスターモールド110から剥離し、マスターモールド110のパタン形状の反転形状を具備した保護層101を得る工程(硬化物を鋳型から剥離する工程、樹脂保護層Aを得る工程、図15C参照)。
工程(2)において、上記説明したEs/Eb値を満たす表面離型性に優れた樹脂保護層を作製する場合や、硬化性樹脂組成物111に内添した離型材成分を樹脂保護層Aの凹凸構造101a面側(マスターモールド110の微細パタン面側)に偏析させる場合は、離型処理を施したマスターモールド110を使用する。一方で、後の工程(2)金属層作製工程又は/及び(3)離型層形成工程を経る場合は、マスターモールド110への離型処理は行わなくてもよい。
硬化性樹脂組成物111として、光重合性樹脂組成物を使用する場合は、ロール・ツー・ロールプロセスを経る場合は特に、マスターモールド110としては円筒状マスターモールドを使用すると、連続的に高い転写精度にて保護層101を製造できる。また、工程(3)において支持基材100側から光を照射して硬化を行う。ここで光照射の光源は、光重合性樹脂組成物の組成により適宜選定できるため、特に限定されないが、UV−LED光源、メタルハライド光源、高圧水銀灯光源等を採用できる。また、光を照射し始めてから照射し終えるまでの積算光量は、500mJ/cm2〜5000mJ/cm2の範囲であると、転写精度が向上するため好ましい。より好ましくは、800mJ/cm2〜2500mJ/cm2である。更に、光照射は、複数の光源によりおこなってもよい。また、硬化性樹脂組成物111として、熱重合性樹脂組成物を使用する場合は、工程(3)において支持基材100側とマスターモールド110側の両方、もしくはいずれか一方、又は支持基材100、マスターモールド110及び硬化性樹脂組成物111全体を加熱できる系を準備して硬化を行う。特に、連続的に生産性高く、且つ、転写精度高く樹脂保護層Aを得るという観点から、硬化性樹脂組成物111は光重合性樹脂組成物であることが好ましい。
なお、マスターモールド110は、図面では平板状に記載してあるが、円筒状のマスターモールドであることが好ましい。円筒の表面に微細パタンが具備されたロールをマスターモールド110として使用することで、保護層101を連続プロセスにて製造することが可能となる。
なお、工程(4)で得られた樹脂保護層Aを鋳型として、図16A〜図16Dに示すように樹脂保護層Bを作製し、この樹脂保護層Bをリール状の保護層101として使用してもよい。なお、樹脂保護層Aから樹脂保護層Bを作製する際に用いる、硬化性樹脂組成物111は光重合性樹脂組成物であることが好ましく、より好ましくはフッ素含有光硬化性樹脂組成物であり、上述したEs/Ebを満たす組成物が転写精度の観点から最も好ましい。
工程(4−1):支持基材100上に硬化性樹脂組成物111を塗布する工程(樹脂を塗布する工程、図16A参照)。
工程(4−2):塗布した硬化性樹脂組成物111を樹脂保護層Aに押圧する工程(樹脂を鋳型に押圧する工程、図16B参照)。
工程(4−3):樹脂保護層Aの支持基材100側と樹脂保護層Bの支持基材100側の両方、又はいずれか一方から光照射を行い、硬化性樹脂組成物111を光ラジカル重合させ硬化物を得る工程(樹脂を光硬化させる工程、図16C参照)。
工程(4−4):硬化物を樹脂保護層Aから剥離し、マスターモールド110の微細パタン形状と同様の形状を具備した保護層101を得る工程(硬化物から鋳型を剥離する工程、樹脂保護層Bを得る工程、図16D参照)。
工程(1),(4−1)における塗布方法としては、ローラーコート法、バーコート法、ダイコート法、噴霧コート法、エアーナイフコート法、グラビアコート法、マイクログラビアコート法、フローコート法、カーテンコート法、インクジェット法等が挙げられる。
工程(4),(4−4)の後に、カバーフィルムを被せ(合わせ)、巻き取る工程を加えてもよい。なお、カバーフィルムとしては、例えば、上述したカバーフィルムを採用することができる。
1−2:支持基材なし
以下の工程(11)〜(12)を順に行うことで、リール状の保護層101(支持基材100なし)を作製することができる。図17A〜図17Cは、リール状の保護層101の作製工程の説明図である。なお、以下の工程は、ロール・ツー・ロールの連続転写プロセスで作製することが好ましい。
工程(11):熱可塑性樹脂組成物121に、離型処理を施したマスターモールド110を、熱可塑性樹脂組成物121のTg以上の温度の加熱環境下で押圧する工程(鋳型を樹脂に押圧する工程、図17A,図17B参照)。
工程(12):熱可塑性樹脂組成物121のTg未満の温度で、マスターモールド110を熱可塑性樹脂組成物121から剥離する工程(鋳型から剥離する工程、樹脂保護層Aを得る工程、図17C参照)。
工程(12)の後に、カバーフィルムを被せ(合わせ)、巻き取る工程を加えてもよい。なお、カバーフィルムとしては、例えば、上述したカバーフィルムを採用することができる。
なお、マスターモールド110は、図面では平板状に記載してあるが、円筒状のマスターモールドであることが好ましい。円筒の表面に微細パタンが具備されたロールをマスターモールド110として使用することで、保護層101を連続プロセスで製造することが可能となる。
(2)金属層形成工程
(1)で得られたリール状の保護層101の凹凸構造101a面上に、必要な場合は、金属、金属酸化物又は金属及び金属酸化物から構成される金属層を形成する。金属層の形成方法は、ウェットプロセスとドライプロセスに分類できる。
ウェットプロセス場合、金属アルコキシドやメッキ液に代表される金属層前駆体溶液中に、リール状の保護層101を潜らせ、続いて、25℃〜200℃の温度で前駆体を部分反応させる。又は、金属アルコキシドやメッキ液に代表される金属層前駆体溶液を、リール状の保護層101の凹凸構造101a面に塗工し、続いて、25℃〜200℃の温度で前駆体を部分反応させる。続いて、余剰前駆体を洗浄することで、金属層を形成することができる。前駆体溶液に浸す前に、リール状の保護層101の凹凸構造101a面側を、UV−O3やエキシマ等で活性処理してもよい。
ドライプロセスの場合、金属アルコキシドに代表される金属層前駆体の蒸気の中にリール状樹脂保護層を通過させることで、金属層を形成可能である。前駆体蒸気に晒す前に、リール状樹脂保護層の凹凸構造101a面側を、UV−O3やエキシマ等で活性処理してもよい。一方で、スパッタや蒸着により金属層を形成することもできる。金属層の均質性の観点から、スパッタで形成することが好ましい。
(3)離型層形成工程
(1)で得られたリール状の保護層101、又は、(2)で得られた金属層を成膜したリール状の保護層101に、必要な場合は離型層を形成する。以下、金属層を成膜した保護層101も、金属層を成膜しない保護層101も、単にリール状の保護層101と表記する。離型層形成方法は、ウェットプロセスとドライプロセスに分類できる。
ウェットプロセスの場合、リール状の保護層101を、離型材溶液中に潜らせる、又は、離型材溶液を塗工する。続いて、25℃〜200℃の乾燥雰囲気を通過させ、最後に余剰離型材を洗浄し、乾燥させる。離型材溶液に浸漬させる前に、リール状の保護層101の凹凸構造101a面側を、UV−O3やエキシマ等で活性処理してもよい。
一方、ドライプロセスの場合は、離型材蒸気の中をリール状の保護層101を通過させることで、離型層を形成可能である。離型蒸気に晒す前に、リール状樹脂保護層の凹凸構造101a面側を、UV−O3やエキシマ等で活性処理してもよい。また、加熱時に減圧してもよい。
(4)ナノ粒子充填工程
(1)〜(3)で得られたリール状の保護層101の凹凸構造101a内部に、ナノ粒子102を充填することで、第1の積層体1を作製できる。図18A〜図18C、及び図19A〜図19Cは、第1の積層体1の作製工程の説明図である。以下では、(1)で得られたリール状の保護層101、(2)で得られた金属層を成膜したリール状の保護層101、又は(3)で得られた離型層を成膜したリール状保護層も、単にリール状の保護層101と表記する。
工程(5):リール状の保護層101の凹凸構造101a上に(図18A、図19A参照)、ナノ粒子材料の希釈溶液102Sを塗工する工程(図18B、図19B参照)。
工程(6):余剰な溶剤を乾燥除去し、ナノ粒子102を得る工程(図18C、図19C、参照)。
工程(5)における塗工方法としては、ローラーコート法、バーコート法、ダイコート法、リバースコート法、噴霧コート法、グラビアコート法、マイクログラビアコート法、インクジェット法、エアーナイフコート法、フローコート法、カーテンコート法等が適用できる。特に、マイクログラビア法、リバースコート法、ダイコート法であることがナノ粒子102の塗工精度を向上できるため好ましい。ナノ粒子材料は希釈して使用することが好ましく、濃度は、単位体積当たりのナノ粒子材料固形分量が、単位面積下に存在する凹凸構造の体積より小さくなれば特に限定されない。なお、ナノ粒子102の充填に係る塗工方法に関しては、おって詳述する。
ゾルゲル材料をナノ粒子102に含む場合、工程(6)は、溶剤乾燥のほか、ゾルゲル材料の縮合も兼ねている。また、ゾルゲル材料をナノ粒子102に含む場合、巻き取った後に養生する工程を加えてもよい。養生は、室温〜120℃の間で行うことが好ましい。特に、室温〜105℃であることが好ましい。
(5)第1のマスク層成膜工程
(1)〜(4)で得られた第1の積層体1の凹凸構造101a面上に第1のマスク層103を成膜することで、第2の積層体2を製造することができる。図20A〜図20Cは、第2の積層体2の作製工程の説明図である。以下では、(1)で得られたリール状の保護層101、又は、(2)で得られた金属層を成膜したリール状の保護層101、又は(3)で得られた離型層を成膜したリール状保護層のいずれを使用した場合でも、第1の積層体1と表記する。
工程(7):第1の積層体1の凹凸構造101a上に(図20A参照)、第1のマスク層材料の希釈溶液103Sを塗工する工程(図20B参照)。
工程(8):余剰な溶剤を乾燥除去し、第1のマスク層103を得る工程(図20C参照)。
工程(7)における塗工方法としては、ローラーコート法、バーコート法、ダイコート法、噴霧コート法、グラビアコート法、マイクログラビアコート法、インクジェット法、エアーナイフコート法、フローコート法、カーテンコート法等が適用できる。特に、ダイコート法であることが第1のマスク層103の塗工精度を向上できるため好ましい。なお、第1のマスク層103の成膜に係る塗工方法に関しては、おって詳述する。
[平板状微細パタン形成用積層体]
続いて、平板状の第2の積層体2について説明する。平板状の第2の積層体2は、(1)平板状の保護層101を作製し(平板状保護層作製工程)、続いて、(2)必要な場合は金属層を成膜し(金属層作製工程)、続いて、(3)必要な場合は離型層を形成し(離型層形成工程)、(4)ナノ粒子102を微細パタン内部に導入する(ナノ粒子充填工程)し、最後に(5)第1のマスク層103を成膜する(第1のマスク層成膜工程)ことで作製できる。なお、ナノ粒子充填工程まで行い得られた積層体が、第1の積層体1である。
(1)平板状保護層作製工程
1−1:支持基材あり
平板状の保護層101は、(A)上記得られたリール状の保護層101を切り出し、平板状の支持基材100に貼合する手法や、(B)上記得られたリール状の保護層101をテンプレートに用い、平板状の支持基材100上に硬化性樹脂組成物の転写構造を形成する手法か、又は(C)平板状マスターをテンプレートに用い、平板状の支持基材100上に硬化性樹脂組成物の転写構造を形成する手法や、下記1−2で説明する支持基材のない平板状保護層の凹凸構造とは反対側の面上に支持基材100を配置することで作製することができる。
1−2:支持基材なし
平板状基材に対し直接微細パタン加工を施すことで、平板状の保護層101を作製できる。加工方法としては、レーザー切削法、電子線描画法、フォトリソグラフィ法、半導体レーザーを用いた直接描画リソグラフィー法、干渉露光法、電鋳法、陽極酸化法、熱リソグラフィ法等があげられる。これらの中でも、加工方法としては、フォトリソグラフィ法、半導体レーザーを用いた直接描画リソグラフィー法、干渉露光法、電鋳法、陽極酸化法が好ましく、半導体レーザーを用いた直接描画リソグラフィー法、干渉露光法、陽極酸化法がより好ましい。また、上記直接加工により作製した平板状の保護層101の凹凸構造を、熱可塑性樹脂やPDMSに代表される熱硬化性樹脂に転写形成することでも平板状の保護層101を作製することができる。また、これらの平板状の保護層101をNiに代表される電鋳を行うことで、Ni製の平板状の保護層101を得ることもできる。なお、平板状の保護層101を円筒状に接ぎ加工し、得られた円筒状マスターをテンプレートにすることで、上記説明したリール状の保護層を得ることができる。
(2)金属層形成工程
(1)で得られた平板状の保護層101の凹凸構造101a面上に、必要な場合は、金属層を形成する。金属層の形成方法は、ウェットプロセスとドライプロセスに分類できる。
ウェットプロセス場合、金属アルコキシドやメッキ液に代表される金属層前駆体溶液中に、平板状の保護層101を潜らせ、続いて、25℃〜200℃の温度で前駆体を部分反応させる。続いて、余剰前駆体を洗浄することで、金属層を形成することができる。前駆体溶液に浸す前に、平板状の保護層101の凹凸構造101a面側を、UV−O3やエキシマ等で処理してもよい。また、平板状の保護層101の凹凸構造101a面上に前駆体溶液をキャストする手法や、スピンコート法を採用することもできる。また、前駆体の部分反応工程や、洗浄工程を加えることが好ましい。
ドライプロセスの場合、金属アルコキシドに代表される金属層前駆体の蒸気の中に平板状の保護層101を静置することで、金属層を形成可能である。前駆体蒸気に晒す前に、平板状の保護層101の微細パタン面側を、UV−O3やエキシマ等で処理してもよい。一方で、スパッタや蒸着により金属層を形成することもできる。金属層の均質性の観点から、スパッタが好ましい。
(3)離型層形成工程
(1)で得られた平板状の保護層101、又は、(2)で得られた金属層を成膜した平板状の保護層101に、必要な場合は離型層を形成する。以下、金属層を成膜した保護層101も、金属層を成膜しない保護層101も、単に平板状の保護層101と表記する。離型層形成方法は、ウェットプロセスとドライプロセスに分類できる。
ウェットプロセスの場合、平板状の保護層101を、離型材溶液中に潜らせる。続いて、25℃〜200℃の乾燥雰囲気を通過させ、最後に余剰離型材を洗浄し、乾燥させる。離型材溶液に浸漬させる前に、平板状の保護層101の凹凸構造101a面側を、UV−O3やエキシマ等で処理してもよい。また、平板状の保護層101の微細パタン面上に離型材溶液をキャストする手法や、スピンコート法を採用することもできる。また、乾燥雰囲気を通過させる工程や、洗浄工程を加えることが好ましい。
一方、ドライプロセスの場合は、離型材蒸気の中を平板状の保護層101を通過させることで、離型層を形成可能である。離型蒸気に晒す前に、平板状の保護層101の凹凸構造101a面側を、UV−O3やエキシマ等で処理してもよい。また、加熱時に減圧してもよい。
(4)ナノ粒子充填工程
(1)〜(3)で得られた平板状の保護層101の凹凸構造101a内部に、ナノ粒子102を充填することで、第1の積層体1を作製できる。図18A〜図18C、図19A〜図19Cは、第1の積層体1の作製工程を説明するための説明図である。以下では、(1)で得られた平板状の保護層101、又は、(2)で得られた金属層を成膜した平板状の保護層101、又は(3)で得られた離型層を成膜した平板状の保護層101も、単に平板状の保護層101と表記する。
工程(5):平板状の保護層101の凹凸構造101a上に(図18A、図19A参照)、ナノ粒子材料の希釈溶液102Sを塗工する工程(図18B、図19B参照)。
工程(6):余剰な溶剤を乾燥除去し、ナノ粒子102を得る工程(図18C、図19C参照)。
工程(5)における塗工方法としては、例えばスピンコート法が挙げられる。その他にも、スリットコート法、キャスト法、ダイコート法、ディップ法等の後にスピンコート法を行う方法が挙げられる。スピンコート法の場合、ナノ粒子102の希釈溶液102Sを平板状の保護層101の凹凸構造101a上に液膜として形成し、その後スピンコートする方法が望ましい。ゾルゲル材料をナノ粒子102に含む場合、工程(6)は、溶剤乾燥のほか、ゾルゲル材料の縮合も兼ねている。なお、ナノ粒子102の充填に係る塗工方法に関しては後述する。
(5)第1のマスク層成膜工程
(1)〜(4)で得られた第1の積層体1の凹凸構造101a面上に第1のマスク層103を成膜することで、第2の積層体2を製造することができる。図20A〜図20Cは、第2の積層体2の作製工程を説明するための説明図である。以下では、(1)で得られた平板状の保護層101、又は、(2)で得られた金属層を成膜した平板状の保護層101、又は(3)で得られた離型層を成膜した平板状の保護層のいずれを使用した場合でも、第1の積層体1と表記する。
工程(7):第1の積層体1の凹凸構造101a上に(図20A参照)、第1のマスク層材料の希釈溶液103Sを塗工する工程(図20B参照)。
工程(8):余剰な溶剤を乾燥除去し、第1のマスク層103を得る工程(図20C参照)
工程(7)における塗工方法としては、例えばスピンコート法が挙げられる。その他にも、スリットコート法、キャスト法、ダイコート法、ディップ法等の後にスピンコート法を行う方法が挙げられる。スピンコート法の場合、希釈した第1のマスク層103を第1の積層体1の凹凸構造101a上に液膜として形成し、その後スピンコートする方法が望ましい。なお、第1のマスク層103の成膜に係る塗工方法に関しては後述する。
次に、保護層101の凹凸構造101a面上にナノ粒子材料を塗工する方法、及び第1のマスク層103を成膜する方法について更に詳述する。
上述したように、第1の積層体1は、保護層101の凹凸構造101a面上にナノ粒子材料の希釈溶液102Sを塗工する塗工工程(図18B、図19B参照)と、余分な溶液を除去してナノ粒子102を形成する溶剤除去工程(図18C、図19C参照)と、を経て作製される。
(塗工工程)
塗工工程においては、塗工工程の塗工領域内における、保護層101の一主面に平行な面内における単位面積をScとし、塗工工程における希釈溶液102Sの塗工膜厚(ウェット膜厚)をhcとし、ナノ粒子材料の希釈溶液102Sの体積濃度をCとし、かつ、単位面積Scの領域下に存在する凹凸構造101aの凹部体積をVcとしたときに、下記式(4)を満たすように凹凸構造101a上にナノ粒子材料の希釈溶液102Sを塗工する。下記式(4)を満たすことにより、凹凸構造101aの凹部101cの内部に均一にナノ粒子材料を充填可能となる。なお、塗工方法は、下記式を満たせば特に限定されず、上述した方式を採用できる。
式(4)
Sc・hc・C<Vc
(単位面積Sc)
保護層101の一主面に平行な面内における単位面積(Sc)とは、図21A及び図21Bに示すように保護層101の凹凸構造101aの上部に配置され、保護層101(支持基材(100))の一主面と平行な面の面積を示す。図21A及び図21Bは、凹凸構造101aと単位面積(Sc)との関係を示す図面である。図21Aは凹凸構造101aの上面模式図であり、図21Bは断面模式図である。図21Bに示すように、単位面積(Sc)は、凹凸構造101a上部に配置され、かつ、保護層101(支持基材(100))の一主面と平行な面における面積を示す。単位面積(Sc)の大きさは、単位セル面積(Ac)以上として定義される。単位セル面積Acは次のように定義される。
1.凹凸構造101aがドット形状又はホール形状であり、規則性のある配列の場合。
図22Aは、凹凸構造101aがドット形状又はホール形状であり、かつ、規則性を持って配列されている状態を示している。これらの凹凸構造101aから、N列をなす凹凸構造101a群(n)と、N+1列をなす凹凸構造101a群(n+1)とを選択する。続いて、凹凸構造101a群(n)の中から、隣り合う2つの構造m及びm+1を選択する。続いて凹凸構造101a群(n+1)の中から、構造m及びm+1に最も近い距離にある、凹凸構造101al及びl+1を選択する。これらの構造m、m+1、l及びl+1の中心を結び作られる領域を、単位セルとし、単位セルの面積をAcとする。
2.凹凸構造101aがドット形状又はホール形状であり、規則性の弱い配列又はランダム配列の場合。
図22Bは、凹凸構造101aがドット形状又はホール形状であり、規則性の弱い配列又はランダム配列されている状態を示している。この場合には、凹凸構造101aの平均ピッチPavが500nmよりも小さい場合は、これらの凹凸構造101aを有する領域内に、1μm×1μmの正方形をとり、これを単位セルとする。なお、凹凸構造101aの平均ピッチPavが500nm以上1000nm以下の場合は、前記正方形は2μm×2μmとし、微細パタンの平均ピッチPavが1000nm超1500nm以下の場合は、前記正方形は3μm×3μmとする。
3.凹凸構造101aがラインアンドスペース構造の場合。
図22Cは、凹凸構造101aがラインアンドスペース構造を示している。各ラインは、等間隔で配列されていても、間隔が変動していてもよい。これらの凹凸構造101aから、N列目のラインと、N+1列目のラインとを選択する。続いて、これらのライン上に、それぞれ1μmの線分を引く。これらの線分の端点を結んでできた正方形又は長方形を単位セルとする。
なお、図21A及び図21Bにおける凹凸構造101aの配列や形状は、単位面積(Sc)の定義には影響を与えず、凹凸構造101aの配列や形状は上述した形状を採用することができる。
(凹部体積Vc)
凹部体積(Vc)は、図23A及び図23Bに示すように、単位面積(Sc)の領域下に存在する凹凸構造101aの凹部体積として定義される。図23A及び図23Bは、凹凸構造101a、単位面積(Sc)及び凹部体積(Vc)の関係を示す図である。図23Aは凹凸構造101aの上面模式図であり、図23Bは断面模式図である。図23Bに示すように、単位面積(Sc)を保護層101(支持基材(100))の主面方向に垂直に降下させたときに、単位面積(Sc)が、凹凸構造101aの頂部と交わってから底部と交わり終えるまでに通過した、凹凸構造101aの空隙部(凹部101c)体積が凹部体積(Vc)である。なお、図23A及び図23Bは、凹凸構造101aがホール状の場合を代表して記載しているが、ドット状の場合もラインアンドスペース状の場合も同様に凹部体積Vcを定義する。なお、図23A及び図23Bにおける凹凸構造の配列や形状は、凹部体積(Vc)の定義には影響を与えず、凹凸構造の配列や形状は上述した形状を採用することができる。
(塗工膜厚hc)
塗工膜厚(hc)は、希釈溶液102Sの塗工膜厚(ウェット膜厚)として定義されるが、凹凸構造101aに塗工した状態での塗工膜厚の測定は困難であるため、凹凸構造101aと概ね同等の材質で作製したフラット膜面上での膜厚を塗工膜厚(hc)として定義する。すなわち、凹凸構造101aを構成する材質と略同等又は同等の材質によるフラット膜に対し、凹凸構造101a上の成膜条件と同様の条件にて塗工した膜の膜厚を、塗工膜厚(hc)として採用する。塗工膜厚(hc)の範囲は、上記式(4)を満たすように適宜設定できるため、特に限定されないが、塗工精度の観点から、0.1μm以上20μm以下であることが好ましい。
(体積濃度C)
体積濃度(C)は、ナノ粒子材料の希釈溶液102Sの体積濃度として定義される。 単位面積(Sc)、塗工膜厚(hc)、体積濃度(C)及び凹部体積(Vc)の関係が、上記式(4)を満たすことにより、凹凸構造101aの凹部101c内部にナノ粒子102を配置可能となる。凹凸構造101aの凹部101c内部に配置する配置精度の観点から、Sc・hc・C≦0.9Vcがより好ましく、Sc・hc・C≦0.8Vcを満たすとなお好ましい。
以下、凹凸構造101aの構造、塗工膜厚(hc)、体積濃度(C)の具体的な値を用いて説明するが、本発明の製造方法は、これに限定されない。
図24A及び図24Bは、凹凸構造101aにおいて、開口径(φ)が430nm、x軸方向のピッチが398nm、y軸方向のピッチが460nm、深さ(高さ)が460nmの先端の丸まった円柱状凹部が六方最密充填配列で並んでいる構造を示している。この場合、上記式(4)を満たす関係は、次のように考えることができる。
図24Aに示すように、単位面積(Sc)を六角形の単位格子として設定すると、単位面積(Sc)及び凹部体積(Vc)の値は決定され、hc・C<Vc/Sc=364と算出される。なお、一つの先端の丸まった円柱状凹部の体積は、一つの円柱状凹部の体積の8割と定義した。塗工膜厚(hc)を1000nmから5000nmの間で考えると、塗工膜厚(hc)と体積濃度(C)との関係は図25のように整理できる。図25は、hc・C<Vc/Sc=364を満たす塗工膜厚(hc)及び体積濃度(C)の関係、すなわち図24A及び図24Bに示す凹凸構造101aに対する塗工工程条件を示す図である。図25の横軸は塗工膜厚(hc)をディメンジョンnmで表示した軸であり、縦軸は体積濃度(C)(vol./vol.)であり、100倍すると体積%となる。図25に示されるプロットはhc・C=Vc/Sc=364を満たすプロットであり、プロットより下側(図25中灰色の部分)が塗工可能な条件となる。
同様に、例えば、開口径(φ)が180nm、x軸方向のピッチが173nm、y軸方向のピッチが200nm、深さ(高さ)が200nmの先端の丸まった円柱状凹部が六方最密充填配列で並んだ凹凸構造101aに対しては、図26に示す条件が塗工工程となる。図26の横軸は塗工膜厚(hc)をディメンジョンnmで表示した軸であり、縦軸は体積濃度(C)(vol./vol.)であり、100倍すると体積%となる。図26に示されるプロットはhc・C=Vc/Sc=147を満たすプロットであり、プロットより下側(図26中灰色の部分)が塗工可能な条件となる。
同様に、例えば、開口径(φ)が680nm、x軸方向のピッチが606nm、y軸方向のピッチが700nm、深さ(高さ)が700nmの先端の丸まった円柱状凹部が六方最密充填配列で並んだ凹凸構造101aに対しては、図27に示す条件が本発明の塗工工程となる。図27の横軸は塗工膜厚(hc)をディメンジョンnmで表示した軸であり、縦軸は体積濃度(C)(vol./vol.)であり、100倍すると体積%となる。図27に示されるプロットはhc・C=Vc/Sc=599を満たすプロットであり、プロットより下側(図27中灰色の部分)が塗工可能な条件となる。
(塗工圧力)
塗工に係る圧力は、1kPa以上であると、ナノ粒子材料の希釈溶液102Sの凹凸構造101aの内部も含めた塗工性が向上するため好ましい。特に、ナノ粒子102を凹凸構造101aの凹部101cの内部に充填配置する精度を向上させる観点から、塗工に係る圧力は10kPa以上であることが好ましく、20kPa以上であることが好ましく、100kPa以上であることが最も好ましい。
(溶剤除去工程)
凹凸構造101a上にナノ粒子材料の希釈溶液102Sを、上記式(4)を満たすように塗工した後に(図19B参照)、溶剤除去工程を経ることで、凹凸構造101aの凹部101c内部にナノ粒子102を充填することができ、第1の積層体1を作製できる(図19C参照)。
溶剤除去工程における温度及び時間は、ナノ粒子材料の希釈溶液102Sを作製する際に使用する溶剤の蒸気圧や沸点等、及び塗工膜厚(hc)により適宜設定できるため特に限定はされない。概ね、温度20℃〜120℃、時間10秒〜1時間の範囲であると、ナノ粒子102の配置精度が高まるため好ましい。また、使用溶剤の沸点をTsとした時に、溶剤除去工程の温度(T)がT<Tsを満たす溶剤除去工程(1)を含むと、ナノ粒子102の配置精度がより向上するため好ましく、T<Ts/2を満たすことがより好ましい。更に、溶剤除去工程(1)の後に、T≒Tsを満たす溶剤除去工程(2)を含むと、第1の積層体1の保存安定性や使用時の転写精度が向上するため、好ましい。なお、T≒Tsは、概ね、T=Ts±20%である。
なお、第1の積層体1の製造工程においては、塗工工程の前に凹凸構造101aの前処理工程を加えてもよく、溶剤除去工程の後にエネルギー線照射工程を加えてもよい。すなわち、第1の積層体1の製造工程において、前処理工程、塗工工程及び溶剤除去工程をこの順に経てもよいし、塗工工程、溶剤除去工程及びエネルギー線照射工程をこの順に経てもよいし、また、前処理工程、塗工工程、溶剤除去工程及びエネルギー線照射工程をこの順に経てもよい。
(前処理工程)
保護層101の凹凸構造101a表面への前処理工程を経ることで、ナノ粒子材料の希釈溶液102Sの塗工性を良好に保ち、結果、ナノ粒子102の配置精度の向上や、第1の積層体1を使用する際の、ナノ粒子102の転写精度を向上できるため好ましい。
ナノ粒子102の位置精度を向上する効果を得るための前処理(1)としては、上記説明した金属層の成膜が挙げられる。更に、金属層面上に酸素アッシング処理、プラズマ処理、エチシマ処理、UV−O3処理、アルカリ溶液処理等を施すことができる。金属層を成膜する手段は、上述した金属層の成膜方法を採用でき、より具体的には、例えば、テトラエトキシシランに代表される金属アルコキシドによる表面コーティング、オレフィン部位を有すシランカップリング材による表面処理、Crに代表される金属層のドライコーティング(例えば、スパッタ処理等)、SiO2に代表される金属酸化物層のドライコーティング(例えば、スパッタ処理等)や、これらの複合処理が挙げられる。 一方、ナノ粒子102の転写精度を向上する効果を得るための前処理(2)としては、上記説明した離型層の成膜が挙げらえる。前処理工程において、前処理(1)の後に前処理(2)の工程を経てもよい。
(エネルギー線照射工程)
溶剤除去工程の後に、凹凸構造101a面側(ナノ粒子102面側)又は支持基材100面側(第2面2b側)の少なくとも一方からエネルギー線を照射する工程を経ることで、ナノ粒子材料の安定性が向上し、第1の積層体1を使用した際のナノ粒子102の転写精度が向上するため好ましい。エネルギー線としては、X線、UV、IR等が挙げられる。
更に、第1の積層体1の製造工程においては、カバーフィルム貼合工程を加えてもよい。ここでカバーフィルムとしては、第2の積層体2において、第1のマスク層103面上に設けられるカバーフィルムを使用することができる。カバーフィルム貼合工程を経ることで、凹凸構造101a及びナノ粒子102を保護することが可能となる。
第1の積層体1の製造工程においては、巻出し工程、前処理工程、塗工工程、溶剤除去工程、エネルギー線照射工程、カバーフィルム貼合工程及び巻き取り工程に対し、塗工工程及び溶剤除去工程を必ずこの順に含み、かつ、この順のままこれら7つの工程から2つ以上7つ以下の工程を経ることが可能である。
(保護層の凹凸構造と接触角)
第1の積層体1の製造に用いる凹凸構造101aの物性は特に制限されないが、凹凸構造101a表面上への水滴の接触角が90度よりも小さい場合、ナノ粒子102の配置精度が向上するため好ましく、70度以下であればこの効果をよりいっそう発揮できるため好ましい。一方、凹凸構造101a表面上への水滴の接触角が90度より大きい場合、製造された第1の積層体1を使用した際のナノ粒子102の転写精度が向上するため好ましく、100度以上であるとこの効果をよりいっそう発揮するため好ましい。
凹凸構造101a表面上への水の接触角が90度以上であることで、ナノ粒子102の第2の積層体2の膜厚方向に対する重なりを小さくできるため好ましい。特に、凹凸構造101a表面上への水の接触角が90度以上、以下に記載する開口率範囲、及びナノ粒子材料を希釈する溶剤に水系溶剤を選定すると共に、上記(2)を満たす塗工をすることで、ナノ粒子102同士の重なりを限りなく小さくすることができるため好ましい。
(ナノ粒子材料及び希釈溶液)
凹凸構造101aの凹部内部へのナノ粒子102の配置精度の観点から、ナノ粒子材料の希釈溶液102Sの凹凸構造101a上への接触角は110度以下であることが好ましく、90度以下であるとより好ましい。凹凸構造101aの凹部内部への毛管力をより発揮することが可能であるため、希釈溶液102Sの凹凸構造101a上への接触角は85度以下であることが好ましく、80度以下であるとより好ましく、70度以下であると最も好ましい。
このような接触角範囲を満たす溶剤としては、水系溶剤が挙げられる。水系溶剤は、水に対する親和性が高い溶剤を意味し、例えば、アルコール、エーテル、ケトン類等があげらえる。
希釈溶液102Sとしては、特に限定されないが、単一溶剤の沸点が40℃〜200℃の溶剤が好ましく、60℃〜180℃がより好ましく、60℃〜160℃がさらに好ましい。希釈剤は2種類以上を使用してもよい。特に2種類の溶剤を併用する場合は、ナノ粒子材料の希釈溶液のレベリング性の観点から、それぞれの溶剤の沸点の差が10℃以上あることが好ましく、20℃以上あるとより好ましい。また、希釈溶液102Sの選定方法として上述した、ナノ粒子102と溶剤の与える慣性半径への影響を考慮した選定が好ましい。凹凸構造101aの形状や配列は、上記説明した内容を採用できる。
中でも、以下の開口率を満たすと共に、凹凸構造101a表面上への水の接触角が75度以上、好ましくは85度以上、最も好ましくは90度以上、かつ、ナノ粒子材料を希釈する溶剤に水系溶剤を選定すると共に、上記(2)を満たす塗工をすることで、容易に、ナノ粒子102同士の重なりを小さく或いは0にできるため好ましい。更に、凹凸構造101a表面上への水の接触角が90度以上を満たす凹凸構造101aは、上述したEs/Ebの範囲を満たす保護層であると、第2の積層体2を連続的に精度高く作製できると共に、使用時の転写性も向上するため好ましい。
凹凸構造101a上へナノ粒子材料の希釈溶液102Sを塗工し、凹部101cの内部へとナノ粒子102を充填する際に、上記説明した開口率Ar(凹凸構造101aがドット状の場合:((Sc−Sh)/Sc、凹凸構造101aがホール状の場合;Sh/Sc)は、下記式(5)を満たすことが好ましい。
式(5)
Ar≧0.45
開口率Arが、上記式(5)を満たし、かつ、ピッチ150nmから800nmの範囲内にある場合には、ナノ粒子材料の希釈溶液102Sは凹凸構造101aを認識することができる。このため、ナノ粒子材料の希釈溶液102Sは、仮想液滴の曲率半径を極大化するように凹凸構造101a内部へと濡れ広がるため、好ましい。仮想液滴とは、凹凸構造101aの凹部内部に存在すると仮定した、ナノ粒子材料の希釈溶液102Sの液滴を意味する。特に、開口率Arは、0.50以上がこのましく、0.55以上がより好ましい。更に、開口率Arは、下記式(6)を満たすことが好ましい。
式(6)
Ar≧0.65
Arが、上記式(6)を満たす場合には、上記効果に加え、凹凸構造101aの凸部101b上から凹部101cの内部方向へのポテンシャルが働き、凹部101cの内部へ液滴が充填された後に、凸部101b上へとナノ粒子材料の希釈溶液102Sが再移動することを回避できるため、より好ましい。また、上記効果をよりいっそう発揮するために、開口率Arは、0.7以上が望ましい。より好ましくは、Arは、0.75以上であり、0.8以上であるとさらに好ましい。
特に、ナノ粒子102/第1のマスク層103/被処理体200からなる積層体201のナノ粒子102面側から第1のマスク層103を加工し、微細マスクパタン202aの設けられた被処理体200を得る観点から、保護層101の微細パタンは凹型であることが好ましい。
更に、ホール開口部の面積が、ホール底部の面積よりも大きいと、ホール端部における固液気界面におけるピン止め効果(TPCLによるピン止め効果)を抑制しやすくなり、上記効果をより発揮できるため好ましい。更に、開口淵と凹部側面とは、連続的に滑らかにつながっていると、上記効果をよりいっそう発揮できるため好ましい。
第2の積層体2は、第1の積層体1におけるナノ粒子102を内包する凹凸構造101a上に、第1のマスク層材料の希釈溶液103Sを塗工する第2の塗工工程(図24B参照)と、余分な溶液を除去して第1のマスク層103を形成する第2の溶剤除去工程(図24C参照)と、を経て作製される。
(第2の塗工工程)
第1のマスク層材料の希釈溶液103Sによる塗工性は、塗工工程における希釈溶液103Sの塗工膜厚(ウェット膜厚)をho、第1のマスク層材料の希釈溶液103Sの体積濃度をCoとした場合に、下記式(7)を満たしていれば、特に限定されない。
式(7)
Sc・ho・Co≧Vc
ここで、塗工膜厚(ho)は、第1のマスク層材料の希釈溶液103Sの塗工膜厚として定義されるが、ナノ粒子102を内包する凹凸構造101a上に塗工した状態での塗工膜厚は測定が困難であるため、凹凸構造101aと概ね同等の材質で作製したフラット膜面上での膜厚をhoとして定義する。すなわち、凹凸構造101aを構成する材質と略同等又は同等の材質によるフラット膜に対し、第1の積層体1の凹凸構造101a上への成膜条件と同様の条件にて塗工した膜の膜厚を、塗工膜厚(ho)として採用する。
塗工膜厚(ho)の範囲は、上記式(7)を満たすように適宜設定できるため、特に限定されないが、塗工精度の観点から、0.1um以上20um以下であることが好ましく、0.2um〜10umがより好ましく、最も好ましくは0.3um〜2umである。特に、第2の積層体2への第1のマスク層103の成膜性と、使用時の貼合性の観点から、Sc・ho・Co≧1.5Vcであることが好ましく、Sc・ho・Co≧2Vcであるとより好ましい。塗工方法は、上記式(7)を満たせば特に限定されず、上述した塗工方法を採用できる。
(第2の溶剤除去工程)
ナノ粒子102を内包する凹凸構造101a上に第1のマスク層材料の希釈溶液103Sを、上記式(7)を満たすように塗工した後に(図20B参照)、第2の溶剤除去工程を経ることで、ナノ粒子102を内包する凹凸構造101a上に第1のマスク層103を形成することができる(図20C参照)。
第2の積層体2は、第1の積層体1におけるナノ粒子102を内包する凹凸構造101a上に第1のマスク層材料の希釈溶液103Sを塗工する第2の塗工工程と、余分な溶液を除去して第1のマスク層103を形成する第2の溶剤除去工程と、を少なくともこの順に含むことで製造される。
すなわち、第2の積層体2は、巻出し工程、前処理工程、塗工工程、溶剤除去工程、エネルギー線照射工程、カバーフィルム貼合工程及び巻き取り工程に対し、塗工工程及び溶剤除去工程を必ず含み、かつ、この順のままこれら7つの工程から2つ以上の工程を経て製造される第1の積層体1のカバーフィルム貼合工程及び巻き取り工程のある場合は、巻出し工程とカバーフィルム剥離工程とをこの順に経たのちに、微細パタン面上に対し、第2の塗工工程と第2の溶剤除去工程と、を少なくともこの順に経て製造される。一方、カバーフィルム貼合工程があり巻き取り工程のない場合は、カバーフィルム剥離工程を経たのちに、凹凸構造101a面上に対し、第2の塗工工程と第2の溶剤除去工程と、を少なくともこの順に経て製造される。また、カバーフィルム貼合工程がなく巻き取り工程がある場合は、巻出し工程を経たのちに微細パタン面上に対し、第2の塗工工程と第2の溶剤除去工程と、を少なくともこの順に経て製造される。更に、カバーフィルム貼合工及び巻き取り工程がない場合は、凹凸構造101a面上に対し、第2の塗工工程と第2の溶剤除去工程と、を少なくともこの順に経ることで製造される。
更に、上記いずれかの製造方法により製造された第2の積層体2の第1のマスク層103の露出する面上へカバーフィルムを貼合するカバーフィルム貼合工程を、第2の溶剤除去工程の後に加えてもよい。なお、カバーフィルムは上述したカバーフィルムを採用できる。また、カバーフィルムを貼合した後に、巻き取り回収してもよい。カバーフィルムは設けず、巻き取ることもできる。
[リール状微細パタン形成用積層体の使用]
続いて、第2の積層体2の使用方法について説明する。
図7A〜図7Fは、第2の積層体2を使用した被処理体200の加工工程を示す説明図である。以下の工程(2−1)〜(2−5)を順に行うことで、第2の積層体2を使用して、ドライエッチングを経て、ナノ粒子102/第1のマスク層103/被処理体200からなる第3の積層体を得ることができる。得られた積層体201のナノ粒子102面側から第1のマスク層103を加工することで、被処理体200上に微細マスクパタン202aが設けられた微細パタン構造体202を転写形成できる。微細パタン構造体202の微細マスクパタン202aをマスクとすることで、被処理体200を加工することができる。図7A〜図7Fは、第2の積層体2を使用した被処理体200の加工工程を示す説明図である。
工程(2−1):被処理体200と第1のマスク層103とを熱圧着により貼合する工程(図7A参照)。
工程(2−2):保護層101面側又は被処理体20面側の少なくとも一方からエネルギー線を照射する工程。(図7B参照)。
工程(2−3):保護層101を剥離して、積層体201を得る工程(図7C参照)。
工程(2−4):積層体201のナノ粒子102面側からエッチングを行い、ナノ粒子102及び第1のマスク層103で構成される微細マスクパタン202aを有する微細パタン構造体202を形成する工程(図7D参照)。
工程(2−5):工程(2−4)で得られた微細マスクパタン202aをマスクとして、被処理体200をエッチングする工程(図7E参照)。
なお、工程(2−1)前に、被処理体200上にハードマスク層を成膜し、その後、工程(2−1)〜工程(2−4)を順次行ってもよい。この場合には、工程(2−4)後に、ナノ粒子102及び第1のマスク層103で構成される微細マスクパタン202aをマスクとして、ハードマスク層をエッチングすることができる。ナノ粒子102及び第1のマスク層103で構成される微細マスクパタン202a及びエッチングされたハードマスク層(ハードマスクパタン)をマスクとして見立てることで、被処理体200を加工することができる。又は、ハードマスク層のエッチング後に、残存したナノ粒子102及び第1のマスク層103で構成される微細パタンを除去し、エッチングされたハードマスク層のみをマスクとして見立て、被処理体200を加工することができる。被処理体200のエッチング方法は、ドライエッチング又はウェットエッチングのいずれも採用できる。
工程(2−1)における熱圧着温度は、40℃以上300℃以下であることが好ましく、50℃以上200℃以下がより好ましく、80℃以上150℃以下が最も好ましい。特に、被処理体の第1のマスク層を貼り合わせる面の温度が前記範囲を満たすと、貼合性及び転写性が良好になるため好ましい。また、熱圧着は、被処理体200のみを加熱し行っても、被処理体200と第2の積層体2を囲む系全体を加温し行ってもよい。特に、転写精度の観点から、被処理体200を加温し、熱圧着することが好ましい。
更に、工程(2−1)は、第2の積層体2のカバーフィルムを剥がしながら第1のマスク層103と被処理体200とが接着する重ね方で、又は、カバーフィルムを剥離した後の第2の積層体2の第1のマスク層103と被処理体200とが接着する重ね方で、第2の積層体2の上部に設けられたラミネートロールにより圧着させることが好ましい。
ラミネートロールの温度は50℃〜150℃、ラミネート速度は0.1[m/分]〜6[m/分]であることが好ましい。圧力はラミネートロールの単位長さ当たりの圧力として、0.01[Mpa/cm]〜1[Mpa/cm]が好ましく、0.1[Mpa/cm]〜1[Mpa/cm]が好ましく、0.2[Mpa/cm]〜0.5[Mpa/cm]がより好ましい。
ラミネーターとしては、第2の積層体2上部に1組のラミネートロールを用いる1段式ラミネーター、2組以上のラミネートロールを用いる多段式ラミネーター、ラミネートする部分を容器で密閉した上で真空ポンプで減圧又は真空にする真空ラミネーター等が使用される。ラミネート時のエアーの混入を抑制する上で、真空ラミネーターが好ましい。
工程(2−2)のエネルギー源は、ナノ粒子材料及び第1のマスク層材料により適宜選択することができる。例えば、ナノ粒子102と第1のマスク層103との界面が、熱重合により化学結合を形成する場合、熱エネルギーを付与することで工程(2−2)を実行可能である。熱エネルギーの付与は、被処理体200に貼合された第2の積層体2全体を加熱しても、赤外線を第2の積層体2面側と被処理体200面側からの両方、又はいずれか一方から照射してもよい。第2の積層体2が重合性物質を含まない場合、工程(2−2)は行わなくてもよい。また、第2の積層体2が重合性物質を含む場合であっても、工程(2−2)を省くことができる。第1のマスク層103とナノ粒子102の少なくとも一方に硬化性物質が含有される場合、第2の積層体2の第1のマスク層103と被処理体200とを貼合した状態或いは/及び積層体201の状態にて硬化を促進させることが好ましい。硬化が光重合の場合は、少なくともエネルギー線を照射すると好ましい。光重合性物質が含有される場合は、特に、工程(2−2)のように、第2の積層体2の第1のマスク層103と被処理体200とを貼合した後に、保護層101或いは被処理体200の少なくとも一方からエネルギー線を照射すると好ましい。一方、硬化が熱重合の場合は、少なくとも加熱を行うと好ましい。このように第2の積層体2に硬化性物質が含まれる場合、第1のマスク層103を加工マスクとして被処理体200を加工する前に、硬化を促進させると、被処理体200の加工精度を向上させることができる。特に、第1のマスク層103にガラス転移温度が存在する場合、第1のマスク層103の硬化を促進することで、ガラス転移温度が大きくなるため、被処理体200の加工精度を向上させることができる。
その他にも、工程(2−1)の温度及び、貼合(圧着)速度を調整することで、工程(2−2)を同時に実行することもできる。また、例えば、ナノ粒子102と第1のマスク層103との界面が、光重合におり化学結合を形成する場合は、光エネルギーを付与することで工程(2−2)を実行可能である。光エネルギーは、ナノ粒子102及び第1のマスク層103中に含まれる光重合開始材に適した波長を含む光源より適宜選択することができる。UV光に代表される光エネルギーは、第2の積層体2面側と被処理体200面側からの両方、又はいずれか一方から照射できる。なお、第2の積層体2又は被処理体200のいずれか一方が光エネルギー不透過な場合は、光エネルギー透過体側から照射することが好ましい。ここで光照射の光源は、ナノ粒子102及び第1のマスク層103の組成により適宜選定できるため、特に限定されないが、UV−LED光源、メタルハライド光源、高圧水銀灯光源等を採用できる。また、光を照射し始めてから照射し終えるまでの積算光量は、500mJ/cm2〜5000mJ/cm2の範囲であると、転写精度が向上するため好ましい。より好ましくは、800mJ/cm2〜2500mJ/cm2である。更に、光照射は、複数の光源により行ってもよい。
なお、工程(2−2)と工程(2−3)との間に加熱工程と冷却工程を加えてもよい。加熱工程を加えることで、ナノ粒子102及び第1のマスク層103の安定性を向上可能であり、冷却工程を加えることによい、保護層101の剥離性が向上する。加熱温度は、30℃〜200℃であることが好ましい。冷却は、少なくとも被処理体200の温度が120℃以下になるように冷却すると、剥離性を向上できるため好ましい。特に、5℃以上60℃以下が好ましく、18℃以上30℃以下がより好ましい。
工程(2−3)の手法は特に限定されないが、転写精度と再現性の観点から、被処理体200を固定し、保護層101を剥離することが好ましい。このような、被処理体200を固定した状態での剥離は、微細パタンの形状が転写されたナノ粒子102への応力集中を軽減することができる。
なお、工程(2−3)と工程(2−4)との間に、光エネルギー照射と加熱工程の両方、又はいずれか一方を加えてもよい。ナノ粒子102の組成によっては、微細パタンを剥離したのちにも、まだ反応を進行できる場合がある。このケースでは、ナノ粒子102面側と被処理体200面側の両方、又はいずれか一方からUV光に代表される光エネルギーを照射するか、又は、加熱又は赤外線を照射することで、ナノ粒子102の反応を促進することが可能であり、工程(2−4)後の微細パタンの形状が安定する。
ここで光照射の光源は、ナノ粒子102及び第1のマスク層103の組成により適宜選定できるため、特に限定されないが、UV−LED光源、メタルハライド光源、高圧水銀灯光源等を採用できる。また、光を照射し始めてから照射し終えるまでの積算光量は、500mJ/cm2〜5000mJ/cm2の範囲であると、転写精度が向上するため好ましい。より好ましくは、800mJ/cm2〜2500mJ/cm2である。更に、光照射は、複数の光源により行ってもよい。
工程(2−4)のエッチングは、ドライエッチングでもウェットエッチングでもよい。ただし、第1のマスク層103を異方的にエッチングすることが好ましいため、ドライエッチングが好ましい。
工程(2−5)においては、被処理体200上に形成したい微細パタン220の形状により、第1のマスク層103がなくなるまでエッチングするか、第1のマスク層103を残した状態でエッチングを終了するかを選択することができる。特に、被処理体200上に形成される微細パタン220の先端を鋭角状に設計したい場合は、第1のマスク層103がなくなるまでエッチングすることが好ましく、被処理体200上に形成される微細パタン220の断面形状を台形状に設計したい場合は、第1のマスク層103を残した状態でエッチングを終了することが好ましい。
後者の場合は、工程(2−5)の後に、剥離工程を加えることが好ましい。剥離工程は、第1のマスク層103の組成により条件や手法を適宜選択可能だが、第1のマスク層103をアルカリ現像可能な組成に設計しておくことで、容易にアルカリ溶液による剥離を行える。なお、前者の場合も、工程(2−5)の後に洗浄工程を加えることが好ましい。工程(2−5)のエッチングにより、被処理体200の表層数nm〜数十nmの領域に、エッチングに使用したガス成分がドープされる場合がある。これらの層を剥離するために、アルカリ又は酸溶液にて洗浄することが好ましい。
<半導体発光素子>
次に、図28を参照して、上述した第2の積層体2を使用して作製された被処理体200を用いた半導体発光素子について説明する。図28は、第2の積層体2を使用して作製した被処理体200を用いた半導体発光素子40の断面模式図である。なお、図28においては、被処理体200としてのサファイア基材41上に、第2の積層体2を用いて微細パタン41aを設けた例について示している。ここでは、半導体発光素子として、LED素子について説明する。なお、上述した第2の積層体2を用いて作製された被処理体200は、LED素子に限定されず、各種半導体発光素子に適用可能である。
サファイア基材41としては、例えば、2インチφサファイア基材、4インチφサファイア基材、6インチφサファイア基材、8インチφサファイア基材等を用いることができる。なお,8インチφ以上の大きさのサファイア基材の場合、半導体結晶層を成膜した後の反りが大きくなることから、Siウェハを使用することができる。この場合、Siウェハは最終的に除去される。
図28に示すように、半導体発光素子40は、サファイア基材41の一主面上に設けられた微細パタン41a上に順次積層されたn型半導体層42、発光半導体層43及びp型半導体層44と、p型半導体層44上に形成されたアノード電極45と、n型半導体層42上に形成されたカソード電極46と、から構成されている。図28に示すように、半導体発光素子40は、ダブルヘテロ構造を有しているが、発光半導体層43の積層構造は特に限定されるものではない。また、サファイア基材41とn型半導体層42との間に、図示しないバッファ層を設けることもできる。
このような微細パタン41aを表面に具備するサファイア基材41を使用し、半導体発光素子を製造することで、微細パタン41aに応じた外部量子効率の向上を実現でき、半導体発光素子の効率が向上する。特に、微細パタンのピッチが100nm〜500nmであり、微細パタンの高さが50nm〜500nm程度であると、半導体発光層の結晶性を改善、より具体的には転位数を大きく低減でき、内部量子効率を向上させることができる。更に、配列を周期性の乱れた構造にすることで、同時に光取り出し効率も向上させることができると推定される。これにより、外部量子効率が大きく向上する。更に、ナノスケールで正規配列をなし、かつ、マイクロスケールの大きな周期性を有する、ピッチにマイクロスケールの周期を有する変調を加えたドット形状とすることにより、前記効果をいっそう高め、より高効率な半導体発光素子を製造できると考えられる。
以下、本発明の効果を確認するために行った実施例について説明する。
以下の説明において使用する記号は、以下の意味を示す。
・DACHP…フッ素含有ウレタン(メタ)アクリレート(OPTOOL DAC HP(ダイキン工業社製))
・M350…トリメチロールプロパン(EO変性)トリアクリレート(東亞合成社製 M350)
・I.184…1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(BASF社製 Irgacure(登録商標) 184)
・I.369…2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1(BASF社製 Irgacure(登録商標) 369)
・TTB…チタニウム(IV)テトラブトキシドモノマー(和光純薬工業社製)
・SH710…フェニル変性シリコーン(東レ・ダウコーニング社製)
・3APTMS…3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン(KBM5103(信越シリコーン社製))
・DIBK…ジイソブチルケトン
・MEK…メチルエチルケトン
・MIBK…メチルイソブチルケトン
・DR833…トリシクロデカンジメタノールジアクリレート(SR833(SARTOMER社製))
・SR368…トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート(SR833(SARTOMER社製)
(実施例1〜5)
以下の検討においては、まず(1)円筒状マスターモールドを作製し、(2)円筒状マスターモールドに対して光転写法を適用して、リール状樹脂保護層を作製した。(3)その後、リール状樹脂保護層に対しナノ粒子及び第1のマスク層をそれぞれ成膜し、微細パタン形成用積層体(第2の積層体)を作製した。続いて、(4)第2の積層体を使用し、光学基材上にマスクを形成し、得られたマスクを介してドライエッチングを行うことで、表面に凹凸構造を具備した光学基材を作製した。最後に、(5)得られた微細パタンを具備した光学基材を使用し、半導体発光素子を作製した。
(1)円筒状マスターモールドの作製
半導体レーザを用いた直接描画リソグラフィ法により円筒状石英ガラスの表面に、凹凸構造を形成した。まず円筒状石英ガラス表面上に、スパッタリング法によりレジスト層を成膜した。スパッタリング法は、ターゲット(レジスト層)として、φ3インチのCuO(8atm%Si含有)を用いて、RF100Wの電力で実施し、20nmのレジスト層を成膜した。続いて、円筒状石英ガラスを回転させながら、波長405nmn半導体レーザを用い、レジスト層表面を一度露光した。続いて、一度露光されたレジスト層に対し、波長405nmのレーザ光をパルス照射した。次に、露光後のレジスト層を現像した。レジスト層の現像は、0.03wt%のグリシン水溶液を用いて、240sec処理とした。次に、現像したレジスト層をマスクとし、ドライエッチングによるエッチング層(石英ガラス)のエッチングを行った。ドライエッチングは、エッチングガスとしてSF6を用い、処理ガス圧1Pa、処理電力300W、処理時間5分の条件で実施した。最後に、表面に凹凸構造が付与された円筒状石英ガラスから、レジスト層残渣のみを、pH1の塩酸を用い剥離した。剥離時間は6分間とした。
得られた円筒状石英ガラスの凹凸構造に対し、フッ素系離型剤であるデュラサーフHD−1101Z(ダイキン化学工業社製)を塗布し、60℃で1時間加熱後、室温で24時間静置し固定化した。その後、デュラサーフHD−ZV(ダイキン化学工業社製)で3回洗浄し、円筒状マスターモールドを得た。
(2)リール状樹脂保護層の作製
作製した円筒状マスターモールドを鋳型とし、光ナノインプリント法を適用し、連続的にリール状樹脂保護層G1を作製した。続いて、リール状樹脂保護層G1をテンプレートとして、光ナノインプリント法により、連続的にリール状樹脂保護層G2を得た。
PETフィルムA−4100(東洋紡社製:幅300mm、厚さ100μm)の易接着面にマイクログラビアコーティング(廉井精機社製)により、塗布膜厚2μmになるように以下に示す材料1を塗布した。次いで、円筒状マスターモールドに対し、材料1が塗布されたPETフィルムをニップロールで押し付け、大気下、温度25℃、湿度60%で、ランプ中心下での積算露光量が1500mJ/cm2となるように、フュージョンUVシステムズ・ジャパン株式会社製UV露光装置(Hバルブ)を用いて紫外線を照射し、連続的に光硬化を実施し、表面に凹凸構造が転写されたリール状樹脂保護層G1(長さ200m、幅300mm)を得た。
次に、リール状樹脂保護層G1をテンプレートとして見立て、光ナノインプリント法を適用し連続的に、リール状樹脂保護層G2を作製した。
PETフィルムA−4100(東洋紡社製:幅300mm、厚さ100μm)の易接着面にマイクログラビアコーティング(廉井精機社製)により、材料1を塗布膜厚2μmになるように塗布した。次いで、リール状樹脂保護層G1の凹凸構造面に対し、材料1が塗布されたPETフィルムをニップロール(0.1MPa)で押し付け、大気下、温度25℃、湿度60%で、ランプ中心下での積算露光量が1200mJ/cm2となるように、フュージョンUVシステムズ・ジャパン株式会社製UV露光装置(Hバルブ)を用いて紫外線を照射し、連続的に光硬化を実施し、表面に凹凸構造が転写されたリール状樹脂保護層G2(長さ200m、幅300mm)を複数得た。
材料1… DACHP:M350:I.184:I.369=17.5g:100g:5.5g:2.0g
リール状樹脂保護層G2を切り出し、走査型電子顕微鏡により観察を行った。リール状樹脂保護層G2の凹凸構造は、三角格子の交点位置に複数の凹部設けられた、ホール状構造であった。また、平均ピッチは300nmであり、平均開口径は280nm、平均開口率は79%、平均凹部深さは300nmであった。また、凹部の開口径は、凹部底部の径よりも大きく、凹部側面は傾斜を有していた。更に、凸部頂部と凹部側面部と、は連続的に滑らかにつながった構造であった。
(3)微細パタン形成用積層体(第2の積層体)の作製
リール状樹脂保護層G2の凹凸構造面に対して、下記材料2の希釈液を塗工し、第1の積層体を作製した。続いて、材料2を凹凸構造内部に内包するリール状樹脂保護層G2の凹凸構造面上に、下記材料3の希釈液を塗工し、第2の積層体を得た。
材料2…TTB:3APTMS:SH710:I.184:I.369=65.2g:34.8g:5.0g:1.9g:0.7g
材料3…Bindingpolymer:SR833:SR368:I.184:I.369=77.1g:11.5g:11.5g:1.47g:0.53g
Bindingpolymer…ベンジルメタクリレート80質量%、メタクリル酸20質量%の2元共重合体のメチルエチルケトン溶液(固形分50%、重量平均分子量56000、酸当量430、分散度2.7)
(2)リール状樹脂保護層の作製と同様の装置を使用し、PGMEにて希釈した材料2を、リール状樹脂保護層G2の凹凸構造面上に直接塗工した。ここで、希釈濃度は、単位面積当たりの塗工原料(PGMEにて希釈した材料2)中に含まれる固形分量が、単位面積当たりの凹凸構造の体積よりも小さくなるように設定した。塗工に係る装置駆動条件を一定として、希釈溶液の濃度を1重量%〜7重量%の範囲で変化させた。塗工後、95℃の送風乾燥炉内を5分間かけて通過させ、材料2を凹凸構造内部に内包する第1の積層体を巻き取り回収した。
第1の積層体を切り出し、走査型電子顕微鏡を用い断面観察を行ったところ、リール状樹脂保護層G2の凹部内部に材料2が充填されている、即ち、リール状樹脂保護層G2の凹部内部にナノ粒子が生成していることが観察された。また、透過型電子顕微鏡とエネルギー分散型X線分光法を併用することで、リール状樹脂保護層G2の凸部頂上にはナノ粒子が生成していないことが確認された。ナノ粒子の大きさは、材料2の希釈濃度により変化し、実施例1〜実施例5にかけて、ナノ粒子の平均高さは、30nm,50nm,100nm,150nm,250nmであった。また、ナノ粒子は、第1の積層体の膜厚方向に互いに重なりあうことはなかった。更に、各ナノ粒子の形状は、リール状樹脂保護層G2側の頂部径がナノ粒子の露出する表面側の径よりも小さい形状であった。
続いて、第1の積層体を巻き出すと共に、ダイコータを使用し、PGME及びMEKにて希釈した材料3を、凹凸構造面上に直接塗工した。希釈濃度は3重量%とした。塗工後、85℃の送風乾燥炉内を5分間かけて通過させ、材料3の表面にカバーフィルムを合わせ、巻き取り回収した。なお、実施例1、実施例3、実施例4の場合、カバーフィルムを使用せず巻き取り回収した。一方、実施例2及び実施例5においては、カバーフィルムの種類及びカバーフィルムを貼合する際の圧力及び温度を制御することで、第2の積層体の第1のマスク層表面の表面粗さRaがことなるサンプルを三種類ずつ作製した。
第2の積層体を切断し、透過型電子顕微鏡を用い断面観察を行った。ナノ粒子のリール状樹脂保護層G2に対する配置は、第1の積層体の場合と同様であった。ナノ粒子の第1面側の頂部位置(Spt)と第1のマスク層の表面と、の距離(lor)は、実施例1から実施例5にかけて、370nm、350nm、300nm、250nm、及び150nmであったことから、lor/Pav(平均ピッチ)は、1.23、1.17、1.00、0.83及び0.5であることが確認された。なお、第1のマスク層表面の平均位置は、断面観察像より任意に15点を選択し、それらの平均位置とした。
また、実施例2及び実施例5のサンプルについては、第1のマスク層表面に対して原子間力顕微鏡解析を行い、表面粗さRaを算出した。
(比較例1)
平均1次粒径が25nmの酸化チタン微粒子を、イソプロピルアルコールに加え、60℃に加温した状態にて超音波を30分かけ、分散させた。得られた液をナノ粒子の希釈液として、PETフィルムA−4100(東洋紡社製:幅300mm、厚さ100μm)のPET面にマイクログラビアコーティング(廉井精機社製)により、塗布膜厚2μmになるように塗布した。次いで、85℃の乾燥炉内を5分間かけて通過させ、ナノ粒子を具備するPETリールを得た。
次に、ナノ粒子を具備するPETリールのナノ粒子面側に、ダイコータを使用し、PGME及びMEKにて希釈した材料3を直接塗工した。希釈濃度は3重量%とした。塗工後、85℃の送風乾燥炉内を5分間かけて通過させ、材料3の表面にカバーフィルムを合わせ、巻き取り回収した。
(比較例2)
材料3に平均1次粒径が25nmの酸化チタン微粒子を加え、60度温度にて超音波を30分かけ、微粒子を分散化した。得られた液を、PETフィルムA−4100(東洋紡社製:幅300mm、厚さ100μm)のPET面にマイクログラビアコーティング(廉井精機社製)により、塗布膜厚2μmになるように塗布した。次いで、85℃の乾燥炉内を5分間かけて通過させ巻き取り回収した。
以上説明した実施例1〜5及び比較例1、2で作製したサンプルの詳細を表1〜表9にまとめた。
表1は、ナノ粒子の平均高さ、ナノ粒子の第1面側の平均端部位置(Spt)と第1面と、の距離(lor)、ナノ粒子の中心面内における平均ピッチ(Pav)、比率(lor/Pav)をまとめた表である。これらの値は、走査型電子顕微鏡を使用した断面観察像より得た。
表2〜8は、中心面からの距離(表中「距離」と記載する)に応じたナノ粒子の個数(表中「個数」と記載する)の変化を示している。表2中、「中心面」を基準とし第2面方向(保護層方向)にカウントした場合が表中の「中心面より左の列」に記載されている。中心面からの移動距離は「マイナスXnm」とした。一方、「中心面」を基準とし第1面方向(第1のマスク層方向)にカウントした場合が表中の「中心面より右の列」に記載されている。中心面からの移動距離は「プラスXnm」とした。
表9は、実施例2及び実施例5の第2の積層体に関し、第1のマスク層の表面粗さRa、及び、表面粗さRaと、ナノ粒子の第1面側の平均端部位置(Spt)と第1面との距離(lor)との、比率(Ra/lor)を示した表である。
表9に記載のNo.2a及びNo.5aのサンプルは、第2の積層体2を製造する際に、カバーフィルムを使用せずに作製した場合である。即ち、支持基材であるPETフィルムの凹凸構造とは反対側の面が、第1のマスク層の保護層として機能している場合である。 No.2b及びNo.5bのサンプルは、COPフィルムをカバーフィルムとして使用した場合である。No.2c及び5cのサンプルは、LDPE(低密度ポリエチレン)フィルムをカバーフィルムとして選択した場合である。また、No.2aは第2の積層体2を巻き取る際の温度が24℃の場合である。No.2b及びNo.2cは第2の積層体にカバーフィルムを合わせる際の温度が24℃の場合である。No.5aは第2の積層体を巻き取る際の温度が45℃の場合である。No.5b及びNo.5cは第2の積層体にカバーフィルムを合わせる際の温度が45℃の場合である。
(4)試験1:加工性
上記実施例1〜5及び比較例1、2にて作製したサンプルを使用し、加工性を確認した。
被処理体としてサファイア基材を選択した。サファイア基材に対しUV−O3処理を5分間行い、表面のパーティクルを除去すると共に、親水化した。続いて、第2の積層体の第1面(保護層とは反対側の面)を、サファイア基材に対して貼合した。この時、サファイア基材を105℃に加温した状態で貼合した。続いて、高圧水銀灯光源を使用し、積算光量が1200mJ/cm2になるように、サファイア基材越しに光照射した。その後、リール状樹脂保護層G2を剥離した。
得られた積層体に対し酸素ガスを使用したエッチングを行った。酸素エッチンングとしては、圧力1Pa,電力300Wの条件にて行った。
酸素アッシング後のサファイア基材を光学顕微鏡及び原子間力顕微鏡を使用し解析した。解析結果を表10にまとめた。なお、表10に記載の記号の定義は以下の通りである。
「◎」… アッシング後のサファイア基材上に、第2の積層体のナノ粒子の平均ピッチと同様のパタンが形成されており、且つ、パタン100個を任意に選択した際に、欠陥率が5%以下であった場合。
「〇」… アッシング後のサファイア基材上に、第2の積層体のナノ粒子の平均ピッチと同様のパタンが形成されており、且つ、パタン100個を任意に選択した際に、欠陥率が5%超10%以下であった場合。
「△」…アッシング後のサファイア基材上に、第2の積層体のナノ粒子の平均ピッチと同様のパタンが形成されており、且つ、パタン100個を任意に選択した際に、欠陥率が10%超20%以下であった場合。
「×」…アッシング後のサファイア基材上に、第2の積層体のナノ粒子の平均ピッチと同様のパタンが形成されており、且つ、パタン100個を任意に選択した際に、欠陥率が20%超であった場合、或いは、アッシング後のサファイア基材上に、第2の積層体のナノ粒子の平均ピッチと10%以上異なるパタンが形成されていた場合。
まず、実施例1〜5においては、全てのサンプルにおいて、ナノ粒子をマスクとして第1のマスク層をエッチングできていることが確認された。これは、表2〜表5からわかる通り、実施例1〜5の第2の積層体においては、第2の積層体の膜厚方向に互いに重なりあうナノ粒子がないためである。より具体的には、ナノ粒子同士が重なりあう場合、重なり合ったナノ粒子が除去された後に、第1のマスク層のエッチングが開始される。即ち、ナノ粒子の重なりのない部分は先行してエッチングされる。また、実施例1の精度が実施例2〜4の精度に比べ僅かに劣る理由は、保護層の凹凸構造内部に配置されたナノ粒子の形状斑に起因することが確認された。この場合の斑は、1つのナノ粒子を観察した時に、部分的にナノ粒子内に陥没部や貫通口がある状態である。一方、実施例5の精度が実施例2〜4の精度の比べ僅かに劣る理由は、保護層の凹凸構造内部に配置されたナノ粒子の、第1面側の淵の形状の乱れによることが確認された。即ち、保護層を中心にみれば、保護層の凹凸構造の凹部側面部に部分的にナノ粒子が付着生成している状態である。
次に、比較例1においては、第1のマスク層を殆ど加工できていないことが確認された。これは表7からわかる通り、比較例1においては、ナノ粒子が第2の積層体の膜厚方向に重なり合っているためである。即ち、互いに重なり合うナノ粒子を除去する時間と、ナノ粒子間に存在する第1のマスク層をエッチングする時間と、が大きくことなるため、第1のマスク層がエッチングされた場合であっても第1のマスク層の幹が極端に細くなり倒れが発生する。
比較例2は、第2の積層体に文言を統一すると、ナノ粒子が第1のマスク層内部に分散している状態である。このため、表1のlor/Pavは0となっており、表8からわかるように、ナノ粒子は第2の積層体の膜厚方向に重なり合っている。特に比較例1と異なることは、第1のマスク層内全体にナノ粒子が分散しているため、あるナノ粒子に注目すると、酸素アッシングにより、ナノ粒子の除去、第1のマスク層のエッチング、ナノ粒子の除去、第1のマスク層のエッチングが繰り返されることなる。
以上から、ナノ粒子が中央面から第2の積層体の膜厚方向に減少するように設けられることで、第1のマスク層を加工精度高く加工できることがわかる。また、本実施例においては、lor/Pavは0.50〜1.23の範囲で第1のマスク層の高い加工精度が発現され、中でも0.83〜1.17であると加工精度がより向上することが確認された。
(5)試験2:転写性
表9に記載のサンプルを使用し第1のマスク層の表面粗さRaの影響を調査するために、転写性の確認を行った。
被処理体としてサファアイ基材を選択した。サファイア基材に対しUV−O3処理を5分間行い、表面のパーティクルを除去すると共に、親水化した。続いて、第2の積層体の第1面(保護層とは反対側の面)を、サファイア基材に対して貼合した。この時、サファイア基材を105℃に加温した状態で貼合した。続いて、高圧水銀灯光源を使用し、積算光量が1200mJ/cm2になるように、サファイア基材越しに光照射した。その後、リール状樹脂保護層G2を剥離した。結果を表11にまとめた。なお、表11に記載の記号は以下の意味である。
◎… サファイア基材面内において、90%以上の割合にてナノ粒子及び第1のマスク層が転写付与されていた場合。
〇… サファイア基材面内において、70%以上90%未満の割合にてナノ粒子及び第1のマスク層が転写付与されていた場合。
△… サファイア基材面内において、45%以上70%未満の割合にてナノ粒子及び第1のマスク層が転写付与されていた場合。
×… サファイア基材面内におけるナノ粒子及び第1のマスク層の転写割合が、20%以下であった場合。
以上から、Ra/lorは小さい程転写精度が向上することがわかる。これは、Ra/lorが小さいことは、第1のマスク層の貼合時の流動性が向上することと、貼合時に大気環境の逃げ道ができることによると考えられる。特に第1のマスク層の表面粗さRaが40nm以下であることにより、転写性はより向上し、20nm以下であることによりサファイア基材のほぼ全面にナノ粒子及び第1のマスク層を転写付与できることが確認された。
(6)サファイアの加工
最後に、サファイア基材をナノ加工できるかを確認した。使用した第2の積層体は、実施例1,2a,3,4,5aである。使用方法は全て同様にした。まず、(4)試験1: 加工性と同様に、アッシング処理まで行い、ナノ粒子及び第1のマスク層からなる高いアスペクト比を有す微細マスクパタンを被処理体上に形成した。
続いて、材料2(ナノ粒子)面側からBCl3ガスを使用した反応性イオンエッチングを行い、サファイアをナノ加工した。エッチングは、ICP:150W、BIAS:50W、圧力0.2Paにて実施し、反応性イオンエッチング装置(RIE−101iPH、サムコ株式会社製)を使用した。
最後に、硫酸及び過酸化水素水を2:1の重量比にて混合した溶液にて洗浄し、凹凸構造を表面に具備するサファイア基材を得た。
サファイア基材上には複数のほぼ円錐状凸部が互いに離間し配列していることが観察された。また、凹部底部に平坦面が作製できていることも確認できた。また、輪郭形状は真円ではなくわずかに歪んでいることが確認された。更に、ほぼ円錐状凸部の凸部側面の傾斜角度は二段階に変化していた。
特に、実施例1,2a,3,4,5aの順に、サファイア基材上の微細パタンの凸部底部の径が大きくなっていることが確認された。これは、第2の積層体のナノ粒子の第1のマスク層側の径が、実施例1,2,3,4,5aの順に大きくなっているためであり、ナノ粒子の転写精度、第1のマスク層の加工精度、及び被処理体の加工精度が高いことを意味している。