JP2005015309A - 多孔性シリカ膜、それを有する積層体 - Google Patents

多孔性シリカ膜、それを有する積層体 Download PDF

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Abstract

【課題】高い光透過性能と低反射性能を有する多孔性シリカ膜、およびそれを有する積層体を提供する。これらは光学用途として利用できる。
【解決手段】表面における十点表面粗さ(Rz)が、10〜500nmであり、かつ有する空孔径が0.5〜100nmであることを特徴とする多孔質膜シリカ膜。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、光透過性能に優れ、表面、又は界面形状が制御された多孔性シリカ膜、それを有する積層体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
高い光透過性能を有することで、車両のフロント部における高い視界性、光センサー、レンズおける高感度、太陽電池における高効率、ディスプレイ等の表示部材における視認性向上などを得ることができる。光透過性能を向上させる為には材料の低屈折率化が従来知られている。
【0003】
例えば低屈折材料として、MgF2(屈折率1.22)を多孔質構造にする方法(特開平7−150356)があり、容易に多孔化にすることが可能である。しかしながら、前記の材料は多孔化によりMgF2 の組織自体が著しく脆くなるという欠点がある。
【0004】
他にも、AlF (屈折率1.36)のスパッタリング法による成膜方法(特開平7−151906)等が報告されている。これらの方法によって得られたフッ化物は、酸化物低屈折材料と比べ、より低い屈折率を有するが、耐湿性、耐酸化性の点で酸化物より劣る欠点があり、前述したような耐久性が要求される分野での使用はあまりされていない。
【0005】
なお、耐久性に優れた酸化物低屈折材料として、SiO2が知られている。前記の材料自体は高い屈折率であるが、近年の多孔化技術により先述分野に於ける材料としては有力である。たとえば、代表的な手法として、超臨界抽出法(USP4402927号、同4432956号)とテンプレート法(特開平4−285081号公報)がある。
【0006】
超臨界抽出法とは、アルコキシシラン類を原料として、その加水分解反応および縮合反応(ゾルーゲル反応)させることで、溶媒を含んだシリカ骨格からなる湿潤状態のゲル状化合物を調製し、含まれる溶媒の臨界点以上の超臨界状態で乾燥し、除去するという方法である。この方法は極めて高い多孔化が可能であるが、機械強度、膜厚制御、生産性などの数々の問題を抱えている。
【0007】
一方、テンプレート法とは、有機ポリマーを空孔の鋳型として用い、成膜後、加熱又は溶媒によって除去する方法である。この方法では必ず有機ポリマーを取り除くために、加熱処理、又は溶媒抽出処理を必要とし、多工程になり生産性に問題がある。さらに途中で鋳型である有機ポリマーが取り除かれることで、空孔が歪んだり、潰れたりし、膜構造が不安定な状態になってしまう。これは上記用途における環境安定性に対してもマイナスである。
【0008】
上記で挙げた従来の低屈折材料はいずれも、低屈折率化による光透過性能は向上されている。しかしながら、上記の用途においては外界の媒質や積層する媒質との屈折率差により生じる光の入出時のフレネル反射という問題があり、十分なものではない。この反射による影響を低減するためには表面または界面に粗(凹凸)構造を形成することが有効であることが従来知られている。これは外界との界面との見掛けの屈折率差を低減すると共に、光の反射を抑えるものである。
【0009】
アルコキシシラン類のゾルーゲル反応から粗(凹凸)表面を有するシリカ被膜については特開平10−203819号公報や特開平5−330768号公報に記載されている。しかしながら、これらの公報に記載の薄膜はシリカ自体の屈折率が高く、上記用途において満足のいくものではない。そこで、従来の低屈折率材料をエッチング処理などの物理的方法によって粗表面化する方法もある。しかし、前記処理はテクスチャー構造を均一に形成する事は難しく、さらに膜へのダメージも大きいという問題がある。
【0010】
低反射性能を得る他の方法として、低屈折率膜と高屈折率膜を交互に積層した多層膜も従来知られている。しかしながら、この方法は2層以上、好ましくは3層以上必要であり、コストの点で問題があった。
【0011】
以上から、機械強度の優れたSiO系材料において、低屈折率、かつ粗表面を有する材料は従来の多孔化技術(超臨界抽出法、テンプレート法)では、超臨界溶媒除去、加熱鋳型除去、鋳型溶媒抽出といった工程によって、その表面構造を制御することは困難である。つまり、前述用途において十分な従来技術はない。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、機械的耐久性に優れた、表面、又は界面領域に粗(凹凸)構造を有することで高光透過性能と低反射性能を備えた多孔性シリカ膜、及びそれを用いたディスプレイ材料、レンズ、センサー材料、車両のフロント材料、太陽電池材料に好適な積層体を提供する。
【課題を解決するための手段】
上記の問題を解決すべく、本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、機械的耐久性に極めて優れているシリカを用いた多孔性シリカ膜において、光学材料に有用な多孔性を有し、かつ、表面又は界面領域に粗(凹凸)構造を有することで、従来にはない高い光透過性能と低反射性能を有する上記材料を得ることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0013】
上記目的を達成するための本発明の多孔性シリカ膜は膜表面における十点表面粗さ(Rz)が10〜500nmであり、かつ有する空孔径が0.5〜100nmであることを特徴とする。
【0014】
この発明によれば、多孔性シリカ膜表面の十点表面粗さ(Rz)が10〜500nmであることで、成膜後のエッチング工程を施すことなしに、反射防止効果を有する粗表面を得ることができる。前記粗表面は特開平8−274359のような微粒子が規則的に並んだ表面ではなく、非周期的な粗(凹凸)表面である。これは反射防止膜の設計において問題となる反射率の波長依存性を軽減することができる。さらに、その多孔質構造において、空孔径が0.5〜100nmであることで、光学材料用途において十分な機械強度を得ることができ、かつ空孔が空気で満たされることで、透明な材料を提供することができる。さらに今後予想されるナノメーターレベルでのパターニングに対しても同様にナノメーターサイズの空孔が必要とされることから、本発明の多孔性シリカ膜は上記の用途において極めて有効である。
【0015】
そして、本発明の多孔性シリカ膜において、表面における粒子の連結構造が不規則的であり、その表面の自乗平均粗さ(RMS)が2〜50nmであることが好ましい。粒子の連結構造にすることで、機械強度、さらには積層時の密着性を向上させる。また、前記粒子が不規則に構成されており、表面の自乗平均粗さ(RMS)が2〜50nmにすることで、反射防止効果における反射率の入射角方向依存性を低減させることができる。
【0016】
さらに、本発明の多孔性シリカ膜の有する空孔は連通孔であることが好ましい。この発明により機械強度の極めて優れた多孔性シリカ膜を提供することができる。
膜の環境安定性の点で、上記多孔性シリカ膜の膜厚50〜2000nmであることが好ましく、低反射性能に加えて、有用な低屈折率材料を得るには、本発明の多孔性シリカ膜の空隙率は20%以上であることが好ましい。
【0017】
上記目的を達成するための積層体は、基板上に上述した本発明の多孔性シリカ膜を有することを特徴とする。また、本発明の積層体は、前記基板を透明にしたり、半導体基板であることを特徴とする。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
表面または界面に粗(凹凸)構造を施すことで表面または界面領域での見掛けの屈折率を下げ、かつ膜と接する2つの物質の屈折率を連続に変化させることができる。これにより低反射性能を得ることができる。しかしながら、単純に粗(凹凸)構造が低反射性能にはつながらず、入出射光の波長以下の微細構造とする必要がある。本発明の多孔性シリカ膜は低屈折率効果に加えて、粗(凹凸)表面構造を有し、十点表面粗さ(Rz)が10〜500nmであることを特徴とする。これにより反射率の波長依存性に優れた低反射性能を得る事ができる。十点表面粗さ(Rz)は15〜400nmとすることが好ましく、40〜380nmがより好ましく、100〜350nmがさらに好ましく、200〜300nmがもっとも好ましい。Rzが15nmより小さいと低反射性能が著しく損なわれ、500nmより大きいと多孔性シリカ膜表面の耐擦傷性が劣り、汚れが落ちにくくなることがある。
【0019】
本発明で使用する十点表面粗さ(Rz)とはJIS B0601で定義されている十点平均粗さである。つまり、指定面における最大から5番目までの山頂のZデータの平均値と最小から5番目までの谷底のZデータ(高さ方向)との平均の差である。十点表面粗さ(Rz)の測定には原子間力顕微鏡(AFM)を用いる方法がある。一定範囲の表面を測定し、その領域での十点表面粗さ(Rz)を算出する。例えば、セイコー電子社製SPI3800を用い、DFMモードによって5um*5um範囲の表面像を測定し、装置搭載のソフトにより十点表面粗さ(Rz)を算出する。
【0020】
本発明の多孔性シリカ膜は空気やガスによって満たされた空孔を有している。したがって、空孔径や空隙率(空孔量)を調節することで、前記多孔性シリカ膜における見掛けの屈折率、密度、誘電率などの物理定数を制御することができる。平均空孔径0.5〜100nmを適度に有する事で、機械的強度に優れた半導体材料(低誘電率材料など)、光学材料(低屈折材料、反射防止材料など)として適用する事ができる。好ましくは平均空孔径0.5〜50nm、さらに好ましくは平均空孔径1〜20nm、最も好ましくは平均空孔径3〜20nmである。逆に平均空孔径100nmより大きいと多孔性シリカ膜の表面性に悪影響を及ぼし、平均空孔径1nmより小さいと、空孔壁面の活性基が接近するため、多孔性シリカ膜の安定性が損なわれ、かつ多孔性を上げることが困難となる。
【0021】
さらに本発明の多孔性シリカ膜のような低反射性能に優れた表面を有する膜の空隙率は、上記の光学材料用途に有効な機能を有するには空隙率20%以上であることが必要である。好ましくは空隙率35%以上、さらに好ましくは空隙率45%以上、最も好ましくは空隙率55%以上である。一方、空隙率75%以上では多孔性シリカ膜の機械強度が著しく損なわれ、表面構造も悪化し、膜の透明性が失われる。
【0022】
平均空孔径、空隙率の測定は窒素吸着法、透過型電子顕微鏡(TEM)、走査型電子顕微鏡(SEM)により評価することができる。電子顕微鏡測定の場合は、電子線の加速電圧5kV、観察倍率1000倍〜10000倍の電子顕微鏡写真を撮り、その断面像の解析で決定することができる。なお、SEM観察試料としては、この多孔性シリカ膜を基板上に形成した際の積層体を試料として用い、その試料を液体窒素で冷却して脆化させた状態で機械的衝撃を加え、そのときの脆性破壊面を用いた。この脆性破壊面には、試料表面の導電性を向上させる目的で一般に行われている金属や炭素等の導電性物質の薄膜を蒸着等しないものを試料とした。さらに上記に記載したように空隙率は屈折率と相関をもっているため、分光エリプソメーターによっても評価することができた。空孔率は、測定光の波長範囲が250〜850nmの分光エリプソメトリー(ソプラ社製:GES−5)によって測定した結果で確認されている。
【0023】
本発明の多孔性シリカ膜表面はシリカの粒子が連続的に繋がった連結構造が不規則的であることが好ましい。粒子の連結構造にすることで、機械強度を向上させる事ができ、さらには多孔性シリカ膜上への積層膜の密着性を良好にする。また、シリカの粒子サイズなどには特に制限はないが、それらで形成される表面の自乗平均粗さ(RMS)は2〜50nmであることが好ましい。こうした粗さの不均質性が、低反射性能における反射率の入射角方向依存性の低減につながる。表面の自乗平均粗さ(RMS)は2〜45nmがより好ましく、表面の自乗平均粗さ(RMS)は2.3〜40nmがさらに好ましく、表面の自乗平均粗さ(RMS)は4〜35nmが最も好ましい。表面の自乗平均粗さ(RMS)が2より小さいと反射率の波長依存性が顕著に現れ、表面の自乗平均粗さ(RMS)が50nmより大きいと、膜の透明性が極度に悪化する。
【0024】
上記の表面構造は上述した透過型電子顕微鏡(TEM)、走査型電子顕微鏡(SEM)、原子間力顕微鏡(AFM)により確認される。例えば、AFMにより前記多孔性シリカ膜表面を観察した場合、粒子状に繋がった表面構造を確認することができいる。また、本発明で使用する自乗平均粗さ(RMS)とは断面形状における基準面から指定面までの偏差の自乗を平均した値の平方根である。表面の自乗平均粗さ(RMS)の測定は原子間力顕微鏡(AFM)を用いる方法がある。一定範囲の表面を測定し、その領域での自乗平均粗さ(RMS)を算出する。例えば、セイコー電子社製SPI3800を用い、DFMモードによって5um*5um範囲の表面像を測定し、装置搭載のソフトにより自乗平均粗さ(RMS)を見積もる。
【0025】
本発明の多孔性シリカ膜の有する空孔は連続的につながった連通孔であることが好ましい。詳細な空孔構造には特に制限はなく、トンネル状や独立空孔がつながった連結孔であってもよい。多孔性シリカ膜の均質性、機械的強度の点では独立空孔がつながった連結孔が好ましい。こうした空孔状態は上述した透過型電子顕微鏡(TEM)または走査型電子顕微鏡(SEM)により確認される。前記の連結孔の場合、平均空孔径とはそれらの幅の平均値として定義される。
【0026】
この発明により機械強度に優れ、かつ粗(凹凸)表面による低反射性能を有する多孔性シリカ膜を提供する事ができる。
さらに、上述の用途に於ける環境安定性の点において、本発明の多孔性シリカ膜は膜厚が50〜2000nmであることが好ましい。より好ましくは膜厚は50〜1000nmであり、さらに好ましくは80〜850nmであり、最も好ましくは200〜700nmである。膜厚が50nmより小さいと、シリカ2次粒子からなる粗(凹凸)表面が現れるため、多孔性シリカ膜の表面性が損なわれ、膜厚が2000nmより大きいとシリカの3次元ネットワーク構造により膜が僅かにうねるため、同様に表面性が損なわれる。測定は触針式段差・表面粗さ・微細形状測定装置(ケーエルエー・テンコール社製:P−15)を用い、測定条件はスタイラス・フォース(触圧)0.2mg、スキャン速度10um/秒とした。
【0027】
上記目的を達成するための積層体は、基板上に上述した本発明の多孔性シリカ膜を有することを特徴とした形態をとることができる。例えば、半導体材料用途に於いては半導体基板に積層することができる。半導体基板の代表的なものとして、透明電導膜があり、錫を添加した酸化インジウム、アルミニウムを添加した酸化亜鉛などの複合酸化物薄膜が好ましい。他にも、シリコン、ゲルマニウム等の半導体、ガリウム−砒素、インジウム−アンチモン等の化合物半導体、セラミックス、金属等の基板等を用いることもできるし、これらの表面に他の物質の薄膜を形成した上で用いることもできる。この場合の薄膜としては、アルミニウム、チタン、クロム、ニッケル、銅、銀、白金、タンタル、タングステン、オスミウム、金などの金属の他に、多結晶シリコン、アルミナ、チタニア、ジルコニア、窒化シリコン、窒化チタン、窒化タンタル、窒化ホウ素、アモルファスカーボン、フッ素化アモルファスカーボンからなる薄膜でもよい。
【0028】
また、光学材料用途に於いては、前記基板は透明であることが好ましく、その屈折率が1.15〜2.2であることがより好ましい。この屈折率は、ASTMD−542に基づき、エリプソメーターによる測定で決定される全深さ方向の平均屈折率であり、23℃でのナトリウムD線(589.3nm)に対する値で表される。こうした屈折率を有する基板としては、汎用材料からなる透明基板を用いることができる。例えば、二酸化珪素、BK7、SF11、LaSFN9、BaK1、F2等の各種ショットガラス、フッ素化ガラス、リンガラス、ホウ素−リンガラス、ホウ珪酸ガラス、合成フューズドシリカガラス、光学クラウンガラス、低膨張ボロシリケートガラス、サファイヤ、ソーダガラス、無アルカリガラス等のガラス、ポリメチルメタクリレートや架橋アクリレート等のアクリル樹脂、ビスフェノールAポリカーボネート等の芳香族ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン等のスチレン樹脂、ポリシクロオレフィン等の非晶性ポリオレフィン樹脂、エポキシ樹脂等の合成樹脂を挙げることができる。これらのうち、BK7、BaK1等のショットガラス、合成フューズドシリカガラス、光学クラウンガラス、低膨張ボロシリケートガラス、ソーダガラス、無アルカリガラス、アクリル樹脂、芳香族ポリカーボネート樹脂、非晶性ポリオレフィン樹脂が好ましく、BK7のショットガラス、合成フューズドシリカガラス、光学クラウンガラス、低膨張ボロシリケートガラス、ソーダガラス、無アルカリガラス、アクリル樹脂、芳香族ポリカーボネート樹脂が最も好ましい。他にも水酸化シルセスキオキサンなどの無機化合物、メチルシルセスキオキサン、多孔性シリカ上に積層することもできる。
【0029】
基板の厚さには特に制限はないが、光学用途に於いては、通常、0.1〜10mmである。なお、基板の厚さの下限値としては、機械的強度とガスバリヤ性の観点から、0.2mmが好ましく、0.3mmがより好ましい。一方、基板の厚さの上限値としては、軽量性と光線透過率の観点から、5mmが好ましく、3mmがより好ましい。
【0030】
また、本発明の多孔性シリカ膜を基板上に展開する際に基板表面の性質が製造される膜の性質を左右する可能性がある。したがって、基板表面の洗浄だけではなく、場合によっては、基板表面の吸着部位を制御sする必要があり、表面処理を施すこともある。基板の洗浄では化学的な方法として、フッ酸、硫酸、塩酸、硝酸、燐酸等の酸類、水酸化ナトリウム水溶液等のアルカル類、過酸化水素と濃硫酸、塩酸、アンモニア等の混合液への浸漬、物理的方法として、真空中での加熱処理、イオンスパッタリング、UVオゾン処理などが挙げられる。また表面処理では、加熱、濃硫酸、塩酸、硝酸等の強酸類への浸漬が挙げられる。さらに多孔性シリカ膜との密着性に劣る基板に対しては、界面活性剤、高分子電解質などを吸着層を添加する方法がある。特に、本発明の多孔性シリカ膜の密着性と生産性という点で、シリコン基板、透明ガラス基板を用いた場合、硫酸、硝酸等の酸類による洗浄、及び表面処理がより好ましい。
本発明の多孔性シリカ膜は、その屈折率が1.10〜1.35である。
【0031】
本発明の多孔性シリカ膜は、酸化ケイ素(SiO2)組成を主体とするものである。なお、この多孔性シリカ膜には、例えばゾル−ゲル法によるシリカ合成において有機シラン類を共重合するなどの方法でシリカ組成の一部にケイ素原子−炭素原子結合が存在してSiOx組成(但し、xは0を超え2未満の正数である)となるものも含まれる。
【0032】
この多孔性シリカ膜には、陽性元素を含む任意の化学組成(付加組成と略すことがある。)が含有されていてもよい。例えば、酸化イットリウム、酸化ランタン、酸化セリウム、酸化プラセオジム、酸化サマリウム、酸化ユウロピウム、酸化ガドリニウム、酸化テルビウム、酸化ジスプロシウム、酸化ホルミウム、酸化エルビウム、酸化ツリウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化クロム、酸化マンガン、酸化鉄、酸化コバルト、酸化ニッケル、酸化銅、酸化亜鉛、酸化カドミウム、酸化ガリウム、酸化インジウム、酸化ゲルマニウム、酸化スズ、酸化鉛等の遷移金属酸化物組成;酸化リチウム、酸化ナトリウム、酸化カリウム、酸化ルビジウム、酸化セシウム等の酸化アルカリ金属組成;酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム、酸化バリウム等の酸化アルカリ土類金属組成;酸化ホウ素組成;酸化アルミニウム組成;等を挙げることができる。この他、カルコゲナイドガラス組成、フッ化ガラス組成等の公知の無機ガラス組成、金、銀、銅などの金属ナノ粒子も挙げることができる。前記の物質を含有することで、低反射性能における反射率の波長依存性を制御し、上述する用途に対してより有効な波長範囲を抽出する事も可能である。
【0033】
多孔性シリカ膜を構成する酸化ケイ素組成は、ケイ素を含む全ての陽性元素に対するケイ素の割合が50〜100モル%となる割合で含有される。このケイ素の含有割合が50モル%未満では、多孔性シリカ膜の表面粗さが極端に悪化し、機械的強度も低下することがある。好ましい下限値としては、70モル%、更に好ましくは80モル%、最も好ましくは90モル%であり、ケイ素の含有割合が高いほど多孔性シリカ膜の表面構造を制御することが容易となる。
【0034】
本発明における多孔性シリカ膜、およびそれを有する積層体は上述した空孔特性や粗(凹凸)表面構造に特徴を有し、その製造方法は特に制限されないが、本発明の積層体を効率よく、かつ生産性にも優れた方法の例を以下に詳述する。
【0035】
(多孔性シリカ膜および積層体の製造方法)
多孔性シリカ膜は、以下の工程により形成される。(イ)多孔性シリカ膜形成用の原料液を準備する工程、(ロ)その原料液から一次膜を形成する工程、(ハ)形成された一次膜が高分子量化して中間体膜が形成される工程、(ニ)中間膜を大気、又は有機溶媒雰囲気下で膜の安定化、及び粗乾燥する工程、(ホ)多孔性シリカ膜を乾燥および硬化する工程。以下、各工程について説明する。
【0036】
(イ)多孔性シリカ膜形成用の原料液を準備する工程;
多孔性シリカ膜形成用の原料液は、アルコキシシラン類を主体とするものであり、加水分解反応および脱水縮合反応により高分子量化を起こすことができる原料化合物を含む含水有機溶液である。しかしながら、従来の製造法では多孔性シリカ膜における粗(凹凸)表面構造を制御することができないため、塗布時に起こる溶媒の揮発に伴うゾル−ゲル反応とシリカの持つ疎水基、又は親水基の凝集作用を制御する必要がある。まず、前記ゾルーゲル反応とはアルコキシシラン類の加水分解反応、その加水分解反応で生成するシラノール基同士による脱水縮合反応との2つの素反応からなる。重要なのは、原料液を基板上に塗布した際に、膜表面では溶媒の揮発による急激な脱水縮合反応が起こり、表面凹凸が生じるが、この過程では表面は極度に荒れ、さらに機械強度も低下する。また、この急激な反応を制御する事は困難であり、再現性も悪くなる。したがって、溶媒の揮発速度を制御し、かつシリカの持つ疎水基、又は親水基の凝集作用を制御するよう溶媒によって界面制御する。
【0037】
本発明の多孔性シリカ膜形成用の原料液である含水有機溶液は、アルコキシシラン類、有機溶媒、水、および、必要に応じて加えられる触媒を含有している。
【0038】
アルコキシシラン類としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ(n−プロポキシ)シラン、テトライソプロポキシシラン、テトラ(n−ブトキシ)シラン等のテトラアルコキシシラン類、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン等のトリアルコキシシラン類、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン等のジアルコキシシラン類、ビス(トリメトキシシリル)メタン、ビス(トリエトキシシリル)メタン、1,2−ビス(トリメトキシシリル)エタン、1,2−ビス(トリエトキシシリル)エタン、1,4−ビス(トリメトキシシリル)ベンゼン、1,4−ビス(トリエトキシシリル)ベンゼン、1,3,5−トリス(トリメトキシシリル)ベンゼン等の有機残基が2つ以上のトリアルコキシシリル基を結合したもの、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3vグリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシジルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロイロキシプロピルトリメトキシシラン、3−カルボキシプロピルトリメトキシシランなどのケイ素原子に置換するアルキル基が反応性官能基を有するものが挙げられ、更にこれらの部分加水分解物やオリゴマーであってもよい。
【0039】
これらの中でも特に好ましいのが、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、テトラメトキシシラン若しくはテトラエトキシシランのオリゴマーである。特に、テトラメトキシシランのオリゴマーは、反応性とゲル化の制御性から最も好ましく用いられる。
【0040】
さらに、前記アルコキシシラン類には、ケイ素原子上に2〜3個の水素、アルキル基、またはアリール基を持つモノアルコキシシラン類を混合することも可能である。モノアルコキシシラン類を混合することにより、得られる多孔性シリカ膜を疎水化して耐水性を向上させることができる。モノアルコキシシラン類としては、例えば、トリエチルメトキシシラン、トリエチルエトキシシラン、トリプロピルメトキシシラン、トリフェニルメトキシシラン、トリフェニルエトキシシラン、ジフェニルメチルメトキシシラン、ジフェニルメチルエトキシシラン、等が挙げられる。モノアルコキシシラン類の混合量には特に制限はないが、その混合量が70モル%を超える場合は、他のアルコキシシラン類と混合前にある程度加水分解、縮合反応を進めて、オリゴマーとするか、若しくは触媒を加えることで反応活性部位を活性化させることが必要である。
【0041】
また、(3,3,3−トリフルオロプロピル)トリメトキシシラン、(3,3,3−トリフルオロプロピル)トリエトキシシラン、ペンタフルオロフェニルトリメトキシシラン、ペンタフルオロフェニルトリエトキシシラン等のフッ化アルキル基やフッ化アリール基を有するアルコキシシラン類を併用すると、優れた耐水性、耐湿性、耐汚染性、滑水性等が得られる場合がある。
【0042】
この原料液に於けるオリゴマーの形状としては特に制限はなく、例えば、線形、架橋、カゴ型分子(シルセスキオキサンなど)などが挙げられる。しかしながら、原料液に含まれる縮合物は波長400nm、室温、光路長10mmの光線透過率が90〜100%の範囲を用いるとよい。より好ましくは92%以上、さらに好ましくは95%以上である。
【0043】
なお、上記した原料液を塗布する際には、すでにある程度の高分子量化(つまり縮合がある程度進んだ状態)が達成されていることが必要であり、その高分子量化の程度としては、見た目に不溶物ができない程度の高分子量化が達成されていることが好ましい。その理由としては、塗布前の原料液中に目視可能な不溶物が存在していると、大きな凹凸表面ができ、膜質を低下させてしまうからである。
【0044】
有機溶媒は、原料液を構成するアルコキシシラン類の有するアルキル基、アルコキシル基、及びシラノール基、水に相溶性を有するものが好ましく用いられる。使用可能な有機溶媒としては、炭素数1〜4の一価アルコール、炭素数1〜4の二価アルコール、グリセリンやペンタエリスリトールなどの多価アルコール等のアルコール類;ジエチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、2−エトキシエタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート等、前記アルコール類のエーテルまたはエステル化物;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類;ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N−エチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N−メチルアセトアミド、N−エチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、N−ホルミルモルホリン、N−アセチルモルホリン、N−ホルミルピペリジン、N−アセチルピペリジン、N−ホルミルピロリジン、N−アセチルピロリジン、N,N’−ジホルミルピペラジン、N,N’−ジホルミルピペラジン、N,N’−ジアセチルピペラジンなどのアミド類;γ−ブチロラクトンのようなラクトン類;テトラメチルウレア、N,N’−ジメチルイミダゾリジンなどのウレア類;ジメチルスルホキシドなどが挙げられる。これらの有機溶媒を、単独または混合物として用いてもよい。この中で、基板への成膜性(特に、揮発性)の点で好ましい有機溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、炭素数1〜4の一価アルコールなどが挙げられる。中でも、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロピルアルコール、アセトンが更に好ましく、メタノールまたはエタノールが最も好ましい。
【0045】
本発明の多孔質構造を形成するために、上述した有機溶媒に加えて、高沸点の親水性有機化合物を含有するとよい。高沸点の親水性有機化合物とは、水酸基、カルボニル基、エーテル結合、エステル結合、カーボネート結合、カルボキシル基、アミド結合、ウレタン結合、尿素結合等の親水性官能基を分子構造中に有する有機化合物のことである。この親水性有機化合物には、これらの親水性官能基のうち、複数個を分子構造中に有していてもよい。ここでいう沸点とは、760mmHgの圧力下での沸点である。沸点は80℃以上が好ましく、沸点が80℃に満たない親水性有機化合物を用いた場合には、多孔性シリカ膜の空孔率が極端に減少することがある。沸点が80℃以上の親水性有機化合物としては、炭素数3〜8のアルコール類、炭素数2〜6の多価アルコール類、フェノール類を好ましく挙げることができる。より好ましい親水性有機化合物としては、炭素数3〜8のアルコール類、炭素数2〜8のジオール類、炭素数3〜8のトリオール類、炭素数4〜8のテトラオール類が挙げられる。更に好ましい親水性有機化合物としては、n−ブタノール、イソブチルアルコール、t−ブチルアルコール、n−ペンタノール、シクロペンタノール、n−ヘキサノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール等の炭素数4〜7のアルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール等の炭素数2〜4のジオール類、グリセロールやトリスヒドロキシメチルエタン等の炭素数3〜6のトリオール類、エリスリトールやペンタエリストール等の炭素数4〜5のテトラオール類が挙げられる。シリカの親水基、又は疎水基の凝集作用を制御するためには、極性の異なる有機化合物を混合することが好ましい。例えば、炭素数の比較的大きい親水性有機化合物を含有することで、加水分解反応をしたシリカ成分のシラノール基が高分子ミセルのように凝集し、それが縮合反応することで、任意のサイズのシリカ粒子からなるネットワーク構造を形成する。これが塗布した際に、最適な粗(凹凸)表面を構成する。また、その混合比により、目的とする多孔度や粗表面を得ることができる。
【0046】
触媒は、必要に応じて配合される。触媒としては、上述したアルコキシシラン類の加水分解および脱水縮合反応を促進させる物質を挙げることができる。具体例としては、塩酸、硝酸、硫酸、ギ酸、酢酸、シュウ酸、マレイン酸などの酸類;アンモニア、ブチルアミン、ジブチルアミン、トリエチルアミン等のアミン類;ピリジンなどの塩基類;アルミニウムのアセチルアセトン錯体などのルイス酸類;などが挙げられる。
【0047】
触媒として用いる金属キレート化合物の金属種としては、チタン、アルミニウム、ジルコニウム、スズ、アンチモン等が挙げられる。具体的な金属キレート化合物としては、例えば以下のようなものが挙げられる。
【0048】
アルミニウム錯体としては、ジ−エトキシ・モノ(アセチルアセトナート)アルミニウム、ジ−n−プロポキシ・モノ(アセチルアセトナート)アルミニウム、ジ−イソプロポキシ・モノ(アセチルアセトナート)アルミニウム、ジ−n−ブトキシ・モノ(アセチルアセトナート)アルミニウム、ジ−sec−ブトキシ・モノ(アセチルアセトナート)アルミニウム、ジ−tert−ブトキシ・モノ(アセチルアセトナート)アルミニウム、モノエトキシ・ビス(アセチルアセトナート)アルミニウム、モノ−n−プロポキシ・ビス(アセチルアセトナート)アルミニウム、モノイソプロポキシ・ビス(アセチルアセトナート)アルミニウム、モノ−n−ブトキシ・ビス(アセチルアセトナート)アルミニウム、モノ−sec−ブトキシ・ビス(アセチルアセトナート)アルミニウム、モノ−tert−ブトキシ・ビス(アセチルアセトナート)アルミニウム、トリス(アセチルアセトナート)アルミニウム、ジエトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)アルミニウム、ジ−n−プロポキシ・モノ(エチルアセトアセテート)アルミニウム、ジイソプロポキシ・モノ(エチルアセトアセテート)アルミニウム、ジ−n−ブトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)アルミニウム、ジ−sec−ブトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)アルミニウム、ジ−tert−ブトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)アルミニウム、モノエトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、モノ−n−プロポキシ・ビス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、モノイソプロポキシ・ビス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、モノ−n−ブトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、モノ−sec−ブトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、モノ−tert−ブトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、トリス(エチルアセトアセテート)アルミニウム等のアルミニウムキレート化合物等を挙げることができる。
【0049】
チタン錯体としては、トリエトキシ・モノ(アセチルアセトナート)チタン、トリ−n−プロポキシ・モノ(アセチルアセトナート)チタン、トリイソプロポキシ・モノ(アセチルアセトナート)チタン、トリ−n−ブトキシ・モノ(アセチルアセトナート)チタン、トリ−sec−ブトキシ・モノ(アセチルアセトナート)チタン、トリ−tert−ブトキシ・モノ(アセチルアセトナート)チタン、ジエトキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタン、ジ−n−プロポキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタン、ジイソプロポキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタン、ジ−n−ブトキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタン、ジ−sec−ブトキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタン、ジ−tert−ブトキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタン、モノエトキシ・トリス(アセチルアセトナート)チタン、モノ−n−プロポキシ・トリス(アセチルアセトナート)チタン、モノイソプロポキシ・トリス(アセチルアセトナート)チタン、モノ−n−ブトキシ・トリス(アセチルアセトナート)チタン、モノ−sec−ブトキシ・トリス(アセチルアセトナート)チタン、モノ−tert−ブトキシ・トリス(アセチルアセトナート)チタン、テトラキス(アセチルアセトナート)チタン、トリエトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)チタン、トリ−n−プロポキシ・モノ(エチルアセトアセテート)チタン、トリイソプロポキシ・モノ(エチルアセトアセテート)チタン、トリ−n−ブトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)チタン、トリ−sec−ブトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)チタン、トリ−tert−ブトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)チタン、ジエトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタン、ジ−n−プロポキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタン、ジイソプロポキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタン、ジ−n−ブトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタン、ジ−sec−ブトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタン、ジ−tert−ブトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタン、モノエトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)チタン、モノ−n−プロポキシ・トリス(エチルアセトアセテート)チタン、モノイソプロポキシ・トリス(エチルアセトアセテート)チタン、モノ−n−ブトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)チタン、モノ−sec−ブトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)チタン、モノ−tert−ブトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)チタン、テトラキス(エチルアセトアセテート)チタン、モノ(アセチルアセトナート)トリス(エチルアセトアセテート)チタン、ビス(アセチルアセトナート)ビス(エチルアセトアセテート)チタン、トリス(アセチルアセトナート)モノ(エチルアセトアセテート)チタン等を挙げることができる。
【0050】
また、これらの触媒以外に、弱アルカリ性の化合物、例えばアンモニアなどの塩基性の触媒を使用してもよい。この際には、シリカ濃度調整、有機溶媒種等を適宜調整することが好ましい。また、原料液を調整する際には、溶液中の触媒濃度を急激に増加させないことが好ましい。具体例としては、アルコキシシラン類と有機溶媒の一部を混合し、次いでこれに水を混合し、最後に残余の有機溶媒、および塩基を混合するという順序にて混合する方法などが挙げられる。
【0051】
触媒の添加量は、アルコキシシラン類1モルに対して、通常0.001〜1モル、好ましくは0.01〜0.1モルである。触媒の添加量が1モルを超えると、粗大ゲル粒子からなる沈殿物が生成し、凹凸表面が悪化し、良質な多孔性シリカ膜を得られない場合がある。
【0052】
本発明の多孔性シリカ膜形成用の原料液は、上述した原料を配合して形成される。アルコキシシラン類の配合割合は、原料液全体に対して、5〜60重量%であることが好ましく、10〜40重量%であることがより好ましい。アルコキシシラン類の配合割合が60重量%を超える場合には、原料液の安定性を保つことが難しく、成膜時に多孔性シリカ膜が割れることがある。一方、アルコキシシラン類の配合割合が15重量%以下の場合はゾル−ゲル反応がより促進されるように触媒種、水の量を調整する必要がある。しかしながら、5重量%未満では前記反応の局所的に起こるため、成膜性の悪化が起こることがある。
【0053】
水は、アルコキシシラン類の加水分解反応に不可欠であり、その配合量によって反応速度も変化する。したがって、本発明の多孔性シリカ膜における粗(凹凸)表面形成においても水の配合量は重要である。水は使用するアルコキシシラン類の有するアルコキシ基1モルに対して、0.05〜5モル、好ましくは0.1〜3.5モル、さらに好ましくは0.25〜1モル配合される。
水の配合量がアルコキシ基1モルに対して0.05モル未満の場合は、ゾル−ゲル反応が局所的に起き、良質な多孔質構造とならないことがある。一方、水の配合量がアルコキシ基1モルに対して5モルを超える場合、未反応の水がシリカのネットワーク中に過剰に残るため、上記と同様に良質な多孔質構造とならないことがある。
【0054】
水の添加はゾル−ゲル反応していくアルコキシシラン類により均一に分散させるために、アルコキシ基とシラノール基に相溶性のある有機化合物に混合し、他の組成成分を混合させるとよい。好ましくはアルコキシシラン類を添加する前に、水、触媒を有機化合物に混合させる。また、水は液体のまま、触媒の水溶液としてまたは、水蒸気として加えることができ特に限定されない。また、水の添加を段階的に行うことで、より均一な多孔質構造を形成することも可能である。この場合、水の添加途中に加熱処理を加える事で、ゾル−ゲル反応に伴うシリカのネットワーク形成を制御し、粗表面構造を有する多孔性シリカ膜を得ることができる。
【0055】
原料液の調製における雰囲気温度は任意であるが、原料液中でのアルコキシシラン類のゾル−ゲル反応を抑えるため、原料液の調整は0〜60℃、中でも15〜40℃、特に15〜30℃の温度範囲条件下で行うことが好ましい。
【0056】
調液時においては、原料液の攪拌操作は任意であるが、混合毎にスターラーにより攪拌を行うのがより好ましい。
【0057】
さらに原料液調整後、アルコキシシラン類をゾル−ゲル反応を進行させるため、溶液の熟成をすることが好ましい。この熟成期間中においては、アルコキシシラン類の加水分解縮合物が、原料液内において、より均一に分散した状態であることが好ましいので、液を攪拌することが好ましい。
【0058】
熟成期間中の温度は任意であり、一般的には室温、若しくは連続的または断続的に加熱してもよい。中でも、アルコキシシラン類の加水分解縮合物による3次元ネットワーク構造を形成させるために、急速な加熱熟成を行うことが好ましい。さらに、加熱熟成する際には、原料液調整直後の加熱熟成が好ましく、原料液調整後15日以内、更には12日以内、中でも3日以内、特に1日以内の加熱熟成開始が好ましい。
【0059】
加熱温度は利用する有機化合物の沸点以下であれば、特に制限はなく、さらに加圧下でもよい。好ましくは30〜150℃、1時間以上である。この際、均一に反応を進めるために、攪拌を行うことが好ましい。
【0060】
原料液の粘度は、0.1〜1000センチポイズ、好ましくは0.5〜500センチポイズ、さらに好ましくは1〜100センチポイズであり、この範囲の粘度の原料液を用いることが製造上の観点から好ましい。また、500センチポイズを超えると粗表面構造を制御する事が困難になる場合がある。一方、0.1センチポイズ未満では、膜厚を制御することが困難になる場合がある。
【0061】
(ロ)原料液から一次膜を形成する工程;
一次膜は、原料液である含水有機溶液を基板上に塗布して形成される。基板としては、シリコン、ゲルマニウム等の半導体、ガリウム−砒素、インジウム−アンチモン等の化合物半導体、セラミックス、金属等の基板、さらにはガラス基板、合成樹脂基板等の透明基板等が挙げられる。場合によっては、基板は表面処理をしておく必要がある。
【0062】
原料液を塗布する手段としては、原料液をバーコーター、アプリケーターまたはドクターブレードなどを使用して基板上に延ばす流延法、原料液に基板を浸漬し引き上げるディップ法、または、スピンコート法などの周知を挙げることができる。これらの手段のうち、流延法とスピンコート法が原料液を均一に塗布することができるので好ましく採用される。
【0063】
流延法で原料液を塗布する場合における流延速度は、0.1〜1000m/分、好ましくは0.5〜700m/分、更に好ましくは1〜500m/分である。
【0064】
スピンコート法で原料液を塗布形成する場における回転速度は、10〜100000回転/分、好ましくは50〜50000回転/分、更に好ましくは100〜10000回転/分である。
【0065】
ディップコート法においては、任意の速度で、基板を原料液に浸漬し引き上げればよい。この際の引き上げ速度は0.01〜50mm/秒、中でも0.05〜30mm/秒、特に0.1〜20mm/秒の速度で引き上げるのが好ましい。基板を原料液中に浸漬する速度に制限はないが、引き上げ速度と同程度の速度で基板を原料液中に浸漬することが好ましい場合がある。基板を原料液中に浸漬し引き上げるまでの間、適当な時間浸漬を継続してもよく、この継続時間は通常1秒〜48時間、好ましくは3秒〜24時間、更に好ましくは5秒〜12時間である。
【0066】
また、塗布中の雰囲気は、空気中又は窒素やアルゴン等の不活性気体中でもよく、温度は通常0〜60℃、好ましくは10〜50℃、更に好ましくは20〜40℃であり、雰囲気の相対湿度は通常5〜90%、好ましくは10〜80%、更に好ましくは15〜70%である。なお、スピンコート法はディップコート法に比べて、乾燥速度が早いため、本発明の多孔性シリカ膜が特徴としている粗(凹凸)表面構造を形成しやす傾向にある。
【0067】
成膜温度は、0〜100℃、好ましくは10〜80℃、更に好ましくは20〜70℃である。
【0068】
(ハ)形成された一次膜が高分子量化されて中間体膜が形成される工程;
原料液を基板上に塗布した際に、ゾルーゲル反応により高分子量化され、中間体膜が形成される。つまり、原料液中で形成されたシリカの粒子状ネットワーク構造が、溶媒の揮発に伴い、基板上でお互いに絡み合い、反応が加速し、本発明の多孔性シリカ膜が特徴とする粗(凹凸)表面を形成していく。
【0069】
ゾル−ゲル反応においては、相平衡の変化に起因すると考えられる相分離が起こるが、本発明においては、原料液の組成、溶媒の極性、触媒による反応速度の兼ね合いにより、相分離がナノメートルスケールで起こるように制御される。その結果、粒子状のネットワーク構造が保持されたまま基板上に成膜され、中間体膜を構成する。
【0070】
(ニ)中間膜を大気、又は有機溶媒雰囲気下で膜の安定化、及び粗乾燥する工程;
この中間体膜の形成に際しては、例えば基板上に塗布した塗布膜を粗乾燥することで、薄膜中の構造を安定化させることができる。これにより、より環境安定性に優れ、高い機械強度の多孔性シリカ膜を得る事ができる。
【0071】
また、粗乾燥させる際の雰囲気は大気、又は有機溶媒雰囲気で行うとよい。特に有機溶媒雰囲気下で粗乾燥することで、多孔性シリカ膜の表面濡れ性といった性質も制御することができる。これは積層させる場合、重要な処理となる。
【0072】
中間体膜の粗乾燥の温度は通常0〜60℃、好ましくは10〜50℃、更に好ましくは20〜40℃であり、雰囲気の相対湿度は通常5〜95%、好ましくは10〜90%、更に好ましくは15〜80%、さらに最も好ましくは25〜60%である。また、粗乾燥の時間は、通常30秒〜60分間、好ましくは1〜30分間である。なお、有機溶媒雰囲気下とする際は粗乾燥の温度は、使用する有機溶媒の沸点以下であれば、特に制限はない。
【0073】
本発明の多孔性シリカ膜中に良質な多孔質構造を形成するには、中間体膜に水溶性有機溶媒を接触させる事もある。中間体膜に水溶性有機溶媒を接触させることにより、中間体膜中の上記親水性有機化合物が抽出除去されると共に、中間体膜中の水が除去される。中間体膜中に存在する水は、有機溶媒に溶けているだけでなく膜構成物質の内壁にも吸着しているので、中間体膜中の水を効果的に除去するためには、有機溶媒中の水の含有量をコントロールする。したがって、有機溶媒中の水の含有量は、0〜10重量%、好ましくは0〜5重量%、更に好ましくは0〜3重量%である。脱水が十分に行われない場合には、その後に行われる膜の加熱または乾燥または硬化工程で空孔が崩壊して消滅または小さくなる場合がある。
【0074】
中間体膜中の親水性有機化合物の抽出除去手段としては、例えば、中間体膜を水溶性有機溶媒に浸漬すること、中間体膜の表面を水溶性有機溶媒で洗浄すること、中間体膜の表面に水溶性有機溶媒を噴霧すること、中間体膜の表面に水溶性有機溶媒の蒸気を吹き付けること等の手段を挙げることができる。これらのうち、浸漬手段と洗浄手段が好ましい。中間体膜と水溶性有機溶媒との接触時間は、1秒〜24時間の範囲で設定できるが、生産性の観点から、接触時間の上限値は、12時間が好ましく、6時間がより好ましい。一方、接触時間の下限値は、前記の沸点80℃以上の親水性有機化合物および水の除去が十分に行われることが必要であることから、10秒が好ましく、30秒がより好ましい。
【0075】
雰囲気下とする有機溶媒、又は接触処理液としては、極性溶媒が好ましく、中でも一価アルコール類、多価アルコール類、ケトン類、エーテル類、エステル類、アミド類の1種類、又は2種類以上の親水性溶媒が好ましい。2種類以上の親水性溶媒を組み合わせる際は、混合して用いても、それぞれの溶媒で単独に処理して組み合わせることもできる。さらには、同種の接触処理液を繰り返し作用させることもできる。
【0076】
なお、この抽出工程の前、抽出工程の後または抽出工程と同時に、中間体膜を酸類または塩基類と接触させることもできる。こうすることにより、中間体膜の表層での、アルコキシシラン類の加水分解縮合反応を促進させることができる。その結果、中間体膜の表層は、高硬度となるので好ましい。接触させる好ましい酸類としては、塩化水素、ギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸等の気化しやすい酸類が挙げられる。また、好ましい塩基類としては、アンモニア、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、n−プロピルアミン、イソプロピルアミン、n−ブチルアミン、シクロペンチルアミン、シクロヘキシルアミン等、分子構造中の炭素数が6以下のモノアミン類が挙げられる。
【0077】
中間体膜を酸類または塩基類と接触させる方法としては、酸類または塩基類の液体または溶液または蒸気が用いられる。また、抽出工程時で使用する上述した水溶性有機溶媒に酸類または塩基類を溶解し、抽出工程と同時に接触させることもできる。
【0078】
(ホ)多孔性シリカ膜を乾燥および硬化する工程;
乾燥および硬化工程は、多孔性シリカ膜に残存する揮発成分を除去する目的及び/又はアルコキシシラン類の加水分解縮合反応を最大限に進める目的で行われる。乾燥温度は、20〜500℃、好ましくは30〜400℃、更に好ましくは50〜350℃であり、乾燥時間は、1分〜50時間、好ましくは3分〜30時間、更に好ましくは5分〜15時間である。
【0079】
乾燥方式は、送風乾燥、減圧乾燥等の公知の方式で行うことができ、それらを組み合わせてもよい。送風乾燥の後は、揮発成分の十分な除去を目的とした減圧乾燥を追加することもできる。
【0080】
後乾燥では、加圧、減圧、常圧のいずれの条件下で乾燥してもよい。乾燥温度は、前記前乾燥で生じたネットワーク構造におけるシリカヒドロゲル部に由来するシリカ骨格を変質させる温度未満で乾燥させることが好ましく、一般的には0〜100℃、中でも10〜70℃、特に15〜50℃が好ましく、乾燥時間は、通常30秒〜60分、好ましくは1分〜30分である。
【0081】
高温乾燥は、多孔性シリカ膜内の不必要な溶媒、添加物の除去、さらには膜の硬化を目的とする。加熱乾燥は、例えばオーブン炉、真空乾燥機、ホットプレート等の装置を用いることができる。乾燥時間は、通常10秒〜48時間、好ましくは30秒〜24時間、更に好ましくは1分〜12時間であり、乾燥温度は、通常100〜370℃、好ましくは130〜350℃、更に好ましくは150〜320℃である。高温乾燥も加圧、減圧、常圧のいずれの条件下で乾燥してもよい。
【0082】
得られた多孔性シリカ膜をシリル化剤で処理することで、より機能性に優れた表面にする事ができる。シリル化剤で処理することにより、多孔性シリカ膜に疎水性が付与され、アルカリ水などの不純物により空孔が汚染されるのを防ぐことができる。シリル化剤としては、例えば、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルエトキシシラン、メチルジエトキシシラン、ジメチルビニルメトキシシラン、ジメチルビニルエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン等のアルコキシシラン類、トリメチルクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、メチルトリクロロシラン、メチルジクロロシラン、ジメチルクロロソラン、ジメチルビニルクロロシラン、メチルビニルジクロロシラン、メチルクロロジシラン、トリフェニルクロロシラン、メチルジフェニルクロロシラン、ジフェニルジクロロシランなどのクロロシラン類、ヘキサメチルジシラザン、N,N’−ビス(トリメチルシリル)ウレア、N−トリメチルシリルアセトアミド、ジメチルトリメチルシリルアミン、ジエチルトリエチルシリルアミン、トリメチルシリルイミダゾールなどのシラザン類、(3,3,3−トリフルオロプロピル)トリメトキシシラン、(3,3,3−トリフルオロプロピル)トリエトキシシラン、ペンタフルオロフェニルトリメトキシシラン、ペンタフルオロフェニルトリエトキシシラン等のフッ化アルキル基やフッ化アリール基を有するアルコキシシラン類などが挙げられる。シリル化は、シリル化剤を多孔性シリカ膜に塗布したり、シリル化剤中に多孔性シリカ膜を浸漬したり、多孔性シリカ膜をシリル化剤の蒸気中に曝したりすることにより行うことができる。
【0083】
【実施例】
以下、実施例と比較例により、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0084】
(実施例1)
触媒となるアンモニアと、加水分解反応に必要なイオン交換水を混合し、0.0014%のアンモニア水溶液を調製する。次いで、溶媒全体の極性を調整するためにメタノールとn−ブタノールの混合溶媒を2対8の割合で混合する。ここで、より均一に触媒、水が分散するようにスターラーにより室温下で15分間以上攪拌する。最後に、アルコキシシラン類として、メトキシシランのオリゴマー(三菱化学(株)製 MKCシリケートMS51)を全体の重量に対して、30重量%になるように混合させる。ここで、イオン交換水の量は、メチルアルコキシ基1モルに対して、0.55モルとなるようにする。この混合溶液を25℃以上の室温下において、スターラーにより攪拌しながら、3時間以上熟成させ、その後、室温下で1日間以上静置したものを原料液とする。
【0085】
前記塗布膜を、ガラス基板上に3000回転/分の回転数でスピンコートし、一次膜を形成し、大部分の溶媒を揮発させることで、中間膜を得た。この中間膜を室温下で5〜30分間粗乾燥することで、膜の安定化を行う。構造が安定化した膜は150℃に保った乾燥機内で乾燥させ、硬化された多孔性シリカ膜を得た。
【0086】
こうして得られた多孔性シリカ膜表面を原子力顕微鏡(AFM)により観察したところ、非周期的な粒子状の連結構造が観測され、その十点表面粗さ(Rz)は242nmである。さらに有する空孔は小さく、窒素吸着による結果から2.5nmである。また、前記AFMの結果から表面の自乗平均粗さ(RMS)37.8nmであることが確認できる。さらに、SEMによる膜断面観察から前記構造が連通孔であり、分光エリプソメーターによる結果からも空隙率25%、膜厚446nmである。以上から、表面に不規則な粗(凹凸)構造を有する多孔性シリカ膜であることが分かる。
【0087】
(比較例)
実施例において、触媒にアンモニウムアセチルアセトネート錯体を使用し、メタノールとn−ブタノールの混合比を1:9に変更した。さらに、調整した混合溶液はスターラーにより攪拌しながら、ウォーターバス内で、60℃、1.5時間以上、熟成させた。得られた原料液は、局所的なゾルーゲル反応が進むことで、所々に沈殿物もみられた。さらに、基板上に塗布した時点で、膜むらが発生した。
【0088】
【発明の効果】
本発明によれば、表面又は界面領域に粗(凹凸)構造を有し、かつ膜中に小さな空孔を有する多孔性シリカ膜、およびそれを有する積層体を提供することができる。従来、ナノメーターサイズの空孔を有する多孔質膜は公知において存在するが、制御された粗表面をゆうするものは存在しなかった。したがって、本発明により、従来にはない高い光透過性能と低反射性能を有する多孔性シリカ膜、およびそれを有する積層体を得ることができ、光学用途として利用できる。
【0089】
また、本発明の多孔性シリカ膜の有する空孔の壁表面には水酸基を多く持つため、水の吸着量が多く、水の吸着剤としての用途展開もあり、さらに、前記多孔性シリカ膜の表面や空孔壁面への化学的修飾も容易であり、分離吸着剤、触媒材料、センサー材料、燃料電池の電解膜などへの応用もある。
【0090】
本発明の多孔性シリカ膜の特徴とする粗(凹凸)表面に撥水コーティングを施す、あるいは撥水性を有するフッ化炭素鎖からなるシランカップリング剤を原料液に添加する事で、水に対する接触角を著しく向上させ、優れた撥水表面を得ることも可能である。そして、撥水性が加わることで滑水性においても有利である。つまり、表面に凹凸構造があることで、僅かな傾きでも水滴が容易に転落する効果がある。したがって、優れた滑水性を得ることで、着雪雨滴防止、汚れ防止、防錆、離型性などの様々な目的に対しても高い効果を期待する事ができる。

Claims (8)

  1. 表面における十点表面粗さ(Rz)が、10〜500nmであり、かつ有する空孔径が0.5〜100nmであることを特徴とする多孔性シリカ膜。
  2. 表面における粒子の連結構造が不規則的であり、その表面の自乗平均粗さ(RMS)が2〜50nmであることを特徴とする請求項1に記載の多孔性シリカ膜
  3. 膜に空孔を有し、その空孔が連通孔であることを特徴とする多孔性シリカ膜
  4. 膜厚が50〜2000nmであることを特徴とする多孔性シリカ膜
  5. 空隙率が20%以上であることを特徴とする多孔性シリカ膜。
  6. 基板上に、請求項1〜5のいずれかに記載の多孔性シリカ膜を有することを特徴とする積層体。
  7. 前記基板が透明であることを特徴とする請求項6に記載の積層体。
  8. 前記基板が半導体基板であることを特徴とする請求項6に記載の積層体。
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