JP7161900B2 - 太陽電池モジュールの製造方法 - Google Patents
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Description
一般的に、拡散反射によって得られる防眩性は、表面の粗さに依存し、算術平均粗さなどの表面粗さパラメータが大きいほど防眩性は向上するとされているが、上記したように強化ガラスには傷による自然粉砕の問題があるので、強化ガラスに至るまでの大きな表面凹凸を形成できない。そのため、表面粗さパラメータを大きくできない。また、表面粗さパラメータを大きくするためには、反射防止層の厚みを厚くする方策が考えられるが、厚すぎると剥がれが生じてしまうおそれがある。そのため、試作した太陽電池モジュールでは、強化ガラスに衝撃が伝わる程度まで深く凹凸を形成することができず、十分な算術平均粗さを確保することができなかった。
また、本発明の構成によれば、透光性基板に近い位置又は透光性基板までブラスト加工を行うことができるので、従来に比べて表面粗さを大きくできる。
ガラスは脆性材料であるため、ガラス製の透光性基板を用いた太陽電池の機械強度は、透光性基板の表面に存在する傷に大きく影響を受けてしまう。すなわち、透光性基板に曲げ方向の機械荷重がかかり、表面に引張応力が生じた際には、表面に傷が存在していると、表面に存在する傷の先端に応力が集中し、応力が増幅され、より小さい荷重で粉砕が生じる傾向がある。また、表面の傷が多く、長いほど増幅される応力が大きくなるので、傷がより多く存在する透光製基板は、機械強度が低下し、その結果、太陽電池モジュールの耐荷重性、耐衝撃性は低下する。
しかしながら、本発明の構成によれば、透光性基板としてガラスを使用した場合であっても、研磨粒子の硬度が反射防止層よりも高く、透光性基板よりも低いので、透光性基板の機械強度の低下を抑制できる。
また、本発明の構成によれば、研磨粒子の硬度が反射防止層よりも高く、透光性基板よりも低いので、表面に傷が付くことによる自然粉砕の発生を抑制できる。
また、この発明の構成によれば、反射防止層の厚みに対する表面凹凸の粗さを大きくでき、従来に比べて防眩性能が高くできる。
またこの構成によれば、最大の深さをもつ凹部の底部が強化ガラス層に極めて近接しているため、反射防止層の厚みに対する表面凹凸の粗さを大きくでき、従来に比べて防眩性能が高くできる。
本発明に関連する発明の太陽電池モジュールによれば、強化ガラス層での自然粉砕の発生を抑制できる。
表面凹凸12には、図2,図3のように、反射防止層11を貫通して透光性基板10を底部17とする第1凹部15と、底部18が透光性基板10まで至らず反射防止層11内に形成される第2凹部16がある。
第1凹部15は、表側封止部材2の外側主面(太陽電池ストリング5からみて外側の主面)から透光性基板10に向かって深さをもつ凹部であり、反射防止層11を貫通する貫通孔である。すなわち、第1凹部15では、反射防止層11から透光性基板10の一部が露出している。
第1凹部15の底部17は、図2,図3のように、透光性基板10の片面の一部で形成されており、底部17には、実質的に凹凸が形成されていない。すなわち、第1凹部15の底部17には、高低差が0.3μm以上の凹凸が形成されていない。
第2凹部16は、表側封止部材2の外側主面(太陽電池ストリング5からみて外側の主面)から透光性基板10に向かって深さをもつ凹部であり、反射防止層11の厚み方向の中間部に底部18をもつ有底穴である。
第2凹部16の底部18には、凹凸が形成されており、その高低差は0.3μm以上となっている。
透光性基板10は、透光性と絶縁性を有するものであれば特に限定されるものではなく、例えば、各種ガラス基板や樹脂基板が使用できる。
透光性基板10として使用できるガラスとしては、例えば、ソーダライムガラス、ホウケイ酸ガラス等を挙げることができる。
透光性基板10としてガラスを使用した場合の組成は、特に限定されないが、SiO2が50~80重量%、Al2O3が0.1~10重量%、Na2O+K2Oが1~30重量%、CaOが1~30重量%、MgOが0.1~10重量%、B2O3が0~20重量%である。また、その他成分として、BaO、ZrO2、Fe2O3を含有してもよい。
本実施形態のように透光性基板10を受光面側のカバーガラスとして使用する場合には、ガラス組成における酸化鉄量は少ない方が近赤外領域の透過率が向上する観点から、Fe2O3が0.04重量%以下であることが好ましく、0.02重量%以下であることがより好ましい。
上記したガラスの製造方法としては、特に限定されないが、ガラス原料を1500~1600℃で加熱したのち、成形して板状に加工することで製造できる。
ガラスの成形方法には種々の方法を用いることができるが、例えば、フロート法、ロールアウト法等を挙げることができる。ロールアウト法を用いるとガラス基板表面にエンボス状の凹凸を形成することができる。
熱強化ガラスは、軟化点付近まで加熱後に急冷することによって、ガラスの表面付近領域と内部領域で固化する速度に差が生じ、密度に差が生じたものである。
すなわち、本実施形態の透光性基板10は、表面付近領域に圧縮方向の圧縮応力層20,22が形成され、中心領域に引張方向の引張応力層21が形成されている。
圧縮応力層20,22は、外部から曲げ応力がかかった際に生じる表面付近領域の引張応力を打ち消す効果があり、平均の破壊応力が軽減され、平均強度が向上する機能を有する。
したがって、本実施形態の透光性基板10は、同一の厚みの熱強化処理を行っていないガラス基板(非熱強化ガラス基板)を用いた場合と比較して、より耐荷重性および耐衝撃性の大きい。
また、本実施形態の透光性基板10は、上記したように熱強化処理によって平均強度が向上するので、透光性基板10の厚みを薄くしたとしても、熱強化処理を行っていない厚みのあるガラス基板を用いた場合と同等の耐荷重性および耐衝撃性を実現することができ、製造する太陽電池モジュール1の軽量化が可能となる。
反射防止層11は、屈折率が透光性基板10の屈折率よりも大きく、空気の屈折率よりも小さい層である。
反射防止層11の形成方法としては、特に限定されないが、塗布法又はゾルゲル法を用いることができる。
ゾルゲル法は、製造コストが低廉であり、生産適合性に優れた反射防止膜の形成方法である。例えば、反射防止層11は、ゾルゲル法により基板上にチタニア・シリカ膜を形成することで形成できる。反射防止層11は、その出発原料としてアモルファス型過酸化チタン及びシリコンアルコキシドを出発原料として、金属含有アナターゼ形酸化チタン、ケイ素化合物、及び熱分解性化合物を含む被膜形成用組成物を作製して形成できる。
反射防止層11の最大厚みは、2μm以下であることが好ましく、1μm以下であることがより好ましい。
この範囲であれば、反射防止層11が透光性基板10から剥がれることを防止できる。
反射防止層11の算術平均粗さは、0.5μm以上であることが好ましい。
この範囲であれば、高い防眩機能を発揮できる。
また、反射防止層11の算術平均粗さは、反射防止層11の最大厚みの50%以上であることが好ましい。
太陽電池セル30は、第1電極層50と、第2電極層51と、電極層50,51で挟まれた光電変換部52を備えている。
具体的には、光電変換部52は、一導電型(例えば、p型)の結晶シリコン基板の受光面側に、リン原子等の導電性不純物を拡散させ、逆導電型(例えば、n型)のシリコン層を形成されたものである。すなわち、太陽電池セル30は、結晶シリコン系太陽電池であり、PNの半導体接合を有している。また、太陽電池セル30は、例えば、n型の結晶シリコン基板の受光面側に、真性なi層、p層をこの順に備え、同n型の結晶シリコン基板の裏面側に、真性なi層、n層をこの順に備えた、ヘテロ接合型太陽電池セルなどであってもよい。
封止材6,7は、透明性と接着性と封止性を有していれば、特に限定されない。封止材6,7は、例えば、エチレン・酢酸ビニル共重合樹脂(EVA)などの熱可塑性樹脂が採用できる。
なお、封止材6,7は、同じ材料で構成されていてもよいし、異なる材料で構成されていてもよい。
具体的には、表面凹凸12を形成する方法としては、コンプレッサーによる圧縮空気を用いて、表面に吹きつけるサンドブラスト法、回転体から遠心力で研磨材をガラス表面に投射して、微細な表面凹凸を生成するショットブラスト法を挙げることができる。また、表面凹凸12を形成する際には、ウエットブラストを使用することも出来る。
研磨粒子の硬度は、反射防止層11よりも高く、透光性基板10よりも低い硬度であれば特に限定されるものではないが、一般に、ガラスのモース硬度は5.5、シリカ系反射防止層のモース硬度は3未満であるので、用いる研磨粒子のモース硬度は、3以上5以下が好適である。
モース硬度が3~5の研磨粒子の材質としては、不飽和ポリエステル樹脂成型品(モース硬度3)、クルミ殻粒(モース硬度3)、ユリア樹脂成型品(モース硬度3.5)、杏の種(モース硬度3.5)、メラミン樹脂成型品(モース硬度4)、ピーチの種(モース硬度4)、還元鉄粉(モース硬度4.5)、ステンレスビーズ(モース硬度4.5)などが挙げられる。
ただし、当該JIS規格に適合しない研磨材の場合、当該JIS規格の第3表-粗粒の標準粒度分布の「3段目の試験用ふるい:公称目開き及びふるい上に残らなければならない最小質量分率」に記載された公称目開きの全ての試験用ふるいを用いて粒度分布試験を実施した場合に、公称目開き及びふるい上に残った質量分率が最も大きい公称目開きの値を、粒度とできる。
そこで、本実施形態の太陽電池モジュール1の製造方法によれば、ブラスト加工において、研磨粒子の硬度が反射防止層11の硬度よりも高く、透光性基板10の硬度よりも低い研磨粒子を用いている。そのため、透光性基板10の表面に傷をつけることなく、反射防止層11のみを研削し、微細な表面凹凸12を形成できる。すなわち、熱強化ガラスを使用しても、傷の延伸による粉砕のおそれがなく、機械強度を維持したまま、太陽電池モジュール1の防眩性を向上できる。
第2実施形態の表面凹凸101は、最大の深さをもつ凹部102が透光性基板10まで至っておらず、底部103が反射防止層11内にある。すなわち、最大深さをもつ凹部102は、底部103が反射防止層11で形成されている。
底部103と透光性基板10との最短距離Dは、0μm超過0.1μm以下となっており、0.05μm以下であることが好ましい。すなわち、底部103と透光性基板10の最表面の圧縮応力層20との距離は、極めて近い。
ここでいう「鉛筆硬度」とは、各硬度の鉛筆で対象物をひっかいて、対象物の表面が傷つくか否かを判断する尺度である。
ここでいう「ビッカース硬度」とは、ダイヤモンドでできた圧子を対象物に対して押込み、そこにできる圧痕の面積の大小で硬度を判断する尺度である。
また、摩擦試験機もしくは手作業によって、反射防止層11の形成されたガラス製の透光性基板10及び反射防止層11を形成した同等のガラス製の透光性基板10に対して研磨材を摩擦させる方法で硬度を特定してもよい。
例えば、手作業で硬度を特定する場合には、研磨材を、反射防止層11の形成されていないガラス製の透光性基板と、反射防止層11を形成した同等のガラス製の透光性基板の表面上にそれぞれ適量振り撒き、やわらかい布などで基板表面上をこすり付ける。表面を光学顕微鏡で観察し、反射防止層11の形成されていないガラス製の透光性基板には傷が観察されず、かつ、反射防止層11を形成したガラス製の透光性基板には傷が観察される場合、研磨粒子の硬度はガラス製の透光性基板の硬度よりも低く、反射防止層11の硬度よりも高い。
まず、モース硬度が約6.5のソーダライムガラス製の透光性基板の片面に反射防止層としてモース硬度が約3のシリカ系反射防止層を形成して反射防止層付き基板を作製した。そして、反射防止層付き基板の反射防止層側の面にモース硬度が12のホワイトアルミナ製の研磨粒子を吹き付けて研磨加工を行った。これを実験例1とした。
モース硬度が約6.5のソーダライムガラス製の透光性基板にモース硬度が12のホワイトアルミナ製の研磨粒子を吹き付けて研磨加工を行った。すなわち、実験例2では、透光性基板に対して反射防止層を形成していない。これを実験例2とした。
実験例1において、研磨粒子としてモース硬度が4.5のステンレスビーズを使用した以外、同様とした。これを実験例3とした。
実験例2において、研磨粒子としてモース硬度が4.5のステンレスビーズを使用した以外、同様とした。これを実験例4とした。
図6(a)(実験例1)及び図6(b)(実験例2)のように、研磨粒子として、モース硬度が反射防止層及び透光性基板よりも高いホワイトアルミナを用いた場合、透光性基板及び反射防止層の両方において表面に傷が観察された。
一方、図6(c)(実験例3)及び図6(d)(実験例4)のように、研磨粒子として、モース硬度が反射防止層よりも高く透光性基板よりも低いステンレスビーズを用いた場合、反射防止層には傷が観察されたが、透光性基板には傷が観察されなかった。
2 表側封止部材(第1封止部材)
3 裏側封止部材(第2封止部材)
10 透光性基板
11 反射防止層
12 表面凹凸
15 第1凹部
16 第2凹部
17,18 底部
20 第1圧縮応力層
22 第2圧縮応力層
30 太陽電池セル
31 接続配線
Claims (5)
- 透光性基板上に前記透光性基板の屈折率よりも低い屈折率を有する反射防止層が積層された第1封止部材を用い、第2封止部材とともに太陽電池セルを挟んで封止する太陽電池モジュールの製造方法であって、
前記透光性基板上の前記反射防止層に対して、前記反射防止層の硬度よりも高く、かつ前記透光性基板の硬度よりも低い硬度の研磨粒子を吹き付けて表面凹凸を形成する表面凹凸形成工程を含む、太陽電池モジュールの製造方法。 - 前記透光性基板は、ガラス製である、請求項1に記載の太陽電池モジュールの製造方法。
- 前記透光性基板は、前記反射防止層側の表面に圧縮応力層を有する強化ガラスである、請求項1又は2に記載の太陽電池モジュールの製造方法。
- 前記研磨粒子のモース硬度は、3以上5以下である、請求項2又は3に記載の太陽電池モジュールの製造方法。
- 前記太陽電池セルは、シリコン基板上にシリコン層が積層された結晶シリコン系太陽電池セルである、請求項1乃至4のいずれかに記載の太陽電池モジュールの製造方法。
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