JP2012204203A - 非水系二次電池用バインダー樹脂組成物、非水系二次電池用負極及び非水系二次電池 - Google Patents

非水系二次電池用バインダー樹脂組成物、非水系二次電池用負極及び非水系二次電池 Download PDF

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Abstract

【課題】活物質を用いた非水系二次電池において、結着性に優れ、優れたサイクル特性を示すことが可能な非水系二次電池バインダー樹脂組成物を提供する。
【解決手段】ポリイミド、ポリアミドイミド、液晶ポリマーおよびポリフェニレンエーテルからなる群から選ばれる樹脂(A)と、平均粒子径が100μm以下のポリオレフィン粒子(B)とを混合して得られ、樹脂(A)の連続相と、前記ポリオレフィン粒子(B)から得られる分散相とを有する樹脂組成物からなる非水系二次電池用バインダー樹脂組成物。
【選択図】なし

Description

本発明は非水系二次電池用バインダー樹脂組成物、それを用いてなる非水系二次電池用負極及び非水系二次電池に関する。
電子機器の小型化、軽量化が進み、その電源としてエネルギー密度の高い二次電池が望まれている。二次電池とは、電解質を介した化学反応により正極活物質と負極活物質が持つ化学エネルギーを外部に電気エネルギーとして取り出すものである。このような二次電池において、実用化されているなかで高いエネルギー密度を持つ二次電池はリチウムイオン二次電池である。そのなかでも、有機電解液を用いたリチウムイオン二次電池の普及が進んでいる。
リチウムイオン二次電池には、正極の活物質として主にリチウムコバルト複合酸化物等のリチウム含有金属複合酸化物が用いられ、負極の活物質としてはリチウムイオンの層間への挿入(リチウム層間化合物の形成)及び層間からのリチウムイオンの放出が可能な多層構造を有する炭素材料が主に用いられている。正、負極の極板は、これらの活物質とバインダーとを溶剤に分散させてスラリーとしたものを集電体である金属箔上に両面塗布し、溶剤を乾燥除去して合剤層を形成後、これをロールプレス機で圧縮成形して作製される。
他の二次電池においても各活物質、集電体等の種類が異なるが同様にバインダーによって活物質が集電体に固定化されているものがある。
この際のバインダーとしては、両極ともポリフッ化ビニリデン(以下「PVdF」と略す)が多用されている。このバインダーはフッ素系の樹脂のため、集電体との密着性が劣り、活物質の脱落がおこる可能性がある。
また近年リチウムイオン二次電池の負極活物質として炭素材料の理論容量を大きく超える充放電容量を持つ次世代の負極活物質の開発が進められている。例えばSiやSnなどリチウムと合金化可能な金属を含む材料が期待されている。SiやSnなどを活物質に用いる場合、充放電時のリチウムの吸蔵・放出に伴う上記活物質の体積変化が大きいため、上記フッ素系樹脂をバインダーに用いても、集電体との接着状態を良好に維持することが難しい。これらの材料はリチウムの挿入、脱離に伴う体積変化が非常に大きく、充放電サイクルによって膨張、収縮を繰り返し、活物質粒子が微粉化したり、脱離したりするため、サイクル劣化が非常に大きいという欠点がある。
そのため活物質の微粉化や脱離を抑制してサイクル性能を良くしようとする様々な検討が行われている。例えば特許文献1では、活物質にSiを用い、バインダーとしてポリアミド酸ワニスにポリアクリル酸を溶解したものを用い、導電材料に炭素材料を用いる非水電解質二次電池用の負極の記載がある。バインダーにポリイミドおよびポリアクリル酸を用いることによって、負極活物質にポリアクリル酸が優先的に結合し、ポリイミドで負極活物質が被覆されにくいため電子伝導性を改善でき、またポリイミドの優れた結着性のため優れたサイクル性能を有すると記載されている。
しかしながら、ポリアミド酸ワニスに対するポリアクリル酸の相溶性が良好であることから、活物質であるSiを電子伝導性物質ではないポリアクリル酸もしくはポリイミドで覆うこととなり、サイクル特性改善効果は小さい。
特許文献2では、ポリアミド酸がポリイミドに転換する反応により生じる極板収縮現象を防止するために、ポリイミド前駆体(ポリアミド酸)と高柔軟性高分子をブレンドしたバインダーを用いている。
しかしながら、用いられる高柔軟性高分子の形状については何ら記載がなく、そのため、ポリイミド前駆体溶液と相溶しないかどうかも不明であり、負極活物質との結着時に高柔軟性高分子が粒子状であるかどうか
特開2007−95670号公報 特開2008−135384号公報
本発明はかかる背景技術に鑑みてなされたものであり、その課題は、活物質がSiを含む場合でも結着性に優れ、それら活物質を用いた非水系二次電池において優れたサイクル特性を示すことが可能な非水系二次電池バインダー樹脂組成物、非水系二次電池用負極及び非水系二次電池を提供することである。
本発明者らは、鋭意検討した結果、ポリイミド等の樹脂に特定のポリオレフィン粒子を添加して分散させた樹脂組成物を非水系二次電池の負極用バインダー樹脂組成物として用いることにより、充放電サイクル特性を改善できることを見出した。本発明はこのような知見に基づきなされたものである。
即ち本発明の要旨は、以下の通りである。
[1]ポリイミド、ポリアミドイミド、液晶ポリマーおよびポリフェニレンエーテルからなる群から選ばれる樹脂(A)と、平均粒子径が100μm以下のポリオレフィン粒子(B)とを混合して得られ、耐熱性樹脂(A)の連続相と、前記ポリオレフィン粒子(B)から得られる分散相とを有する樹脂組成物からなる非水系二次電池用バインダー樹脂組成物。
[2]前記樹脂(A)が、ポリイミドである、[1]に記載の非水系二次電池用バインダー樹脂組成物。
[3]前記ポリオレフィン粒子(B)が、エチレン、プロピレン、1−ブテンおよび4−メチル−1−ペンテンからなる群より選ばれる少なくとも1種類のモノマーから導かれる構成単位を含む重合体である、[1]または[2]に記載の非水系二次電池用バインダー樹脂組成物。
[4]前記ポリオレフィン粒子(B)が、極性基を有する、[1]〜[3]のいずれか一項に記載の非水系二次電池用バインダー樹脂組成物。
[5]前記極性基が、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、アミド基、イミド基、エーテル基、ウレタン基、尿素基、リン酸基、スルホン酸基およびカルボン酸無水物基からなる群より選ばれる少なくとも1種類の官能基である、[4]に記載の非水系二次電池用バインダー樹脂組成物。
[6]前記ポリオレフィン粒子(B)が、コロナ処理、プラズマ処理、電子線照射またはUVオゾン処理が施されている、[1]〜[5]のいずれか一項に記載の非水系二次電池用バインダー樹脂組成物。
[7]前記樹脂組成物は、100重量部の前記樹脂(A)に対して、5重量部以上200重量部以下の前記ポリオレフィン粒子(B)を含む、[1]〜[6]のいずれか一項に記載の非水系二次電池用バインダー樹脂組成物。
[8]前記樹脂組成物は、難燃剤をさらに含む、[1]〜[7]のいずれか一項に記載の非水系二次電池用バインダー樹脂組成物。
[9]バインダーとSiを含む負極活物質とを含有する活物質層を集電体上に形成した負極であって、該バインダーが、[1]〜[8]のいずれかに記載の電極用バインダー樹脂組成物であることを特徴とする非水系二次電池用負極。
[10]前記活物質が、シリコン酸化物(SiO、SiOx、0<x<2)、シリコン及び、炭素材料との組み合わせからなる群より選択されるものであることを特徴とする[9]に記載の非水系二次電池用負極。
[11]リチウムイオンを吸蔵・放出可能な正極及び負極、電解質並びに電解液を備えた電池において、該負極が、[9]または[10]に記載の負極であることを特徴とするリチウムイオン二次電池。
本発明によれば、Siを含有する負極活物質に炭素材料である導電材と相溶性の良好なポリオレフィン粒子が結着し、更にポリイミドがポリオレフィン粒子を支持する形で包含することにより、充放電における負極活物質の膨張収縮においても優れた結着性が得られ、充放電サイクル特性の優れたリチウムイオン二次電池を提供することができる。
本発明は、ポリイミド等の耐熱性樹脂に特定のポリオレフィン粒子を添加して分散させた樹脂組成物からなる非水系二次電池の負極用バインダー樹脂組成物、該バインダー樹脂組成物、Siを含む負極活物質、および導電材からなる非水系二次電池用負極、および該負極を用いた非水系二次電池に関する。
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、これらの内容に特定はされない。
1.バインダー樹脂組成物
樹脂(A)の連続相と、ポリオレフィン粒子(B)から得られる分散相とを含む樹脂組成物から形成される。樹脂組成物における、ポリオレフィン粒子(B)から得られる分散相は、例えば添加されたポリオレフィン粒子(B)の凝集物または溶融物等でありうる。
樹脂(A)について
樹脂(A)は、樹脂組成物の弾性率を高くし、熱膨張係数を低くする観点から、ガラス転移温度が150℃以上の樹脂が好ましい。
このような樹脂(A)の例には、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテル、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、液晶ポリマー、エポキシ樹脂、ポリエーテルスルホンおよびフェノール樹脂等が含まれる。液晶ポリマーとは、溶液状態または溶融状態で液晶性を示すポリマーであり、機械的強度や耐熱性に優れる点などから、好ましくは溶融状態で液晶性を示すサーモトロピック液晶ポリマーである。
中でも、弾性率や寸法安定性が特に優れる等の観点から、ポリイミドがより好ましい。ポリイミドは、一般式(1)で表される構成単位を有するポリイミドであることが好ましい。mは1以上の整数である。このように、分子内に比較的多くの芳香環を含み、剛直な分子構造を有するポリイミドは、弾性率が高く、熱膨張係数が低い。


一般式(1)におけるAは、下記式で表される2価の基から選ばれる。下記式におけるX1〜X6は、それぞれ単結合、−O−、−S−、−CO−、−COO−、−C(CH3)2−、−C(CF3)2−、−SO2−または−NHCO−である。複数のAに含まれるX1〜X6は、相互に同一であっても異なっていてもよい。下記式におけるR1、R2、R3およびR4は、相互に同一であっても異なってもよく、それぞれ独立して水素原子または炭素数1〜12の炭化水素基を表す。

一般式(1)におけるAは、芳香族ジアミンから誘導される2価の基でありうる。芳香族ジアミンの例には、m-フェニレンジアミン、o-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、3,3'-ジアミノジフェニルエーテル、3,4'-ジアミノジフェニルエーテル、4,4'-ジアミノジフェニルエーテル、3,3'-ジアミノジフェニルスルフィド、3,4'-ジアミノジフェニルスルフィド、4,4'-ジアミノジフェニルスルフィド、3,3'-ジアミノジフェニルスルホン、3,4'-ジアミノジフェニルスルホン、4,4'-ジアミノジフェニルスルホン、3,3'-ジアミノベンゾフェノン、3,3'-ジアミノジフェニルメタン、3,4'-ジアミノジフェニルメタン、4,4'-ジアミノジフェニルメタン、2,2-ビス(3-アミノフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-アミノフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、3,3'-ジアミノジフェニルスルホキシド、3,4'-ジアミノジフェニルスルホキシド、4,4'-ジアミノジフェニルスルホキシド、1,3-ビス(3-アミノフェニル)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェニル)ベンゼン、1,4-ビス(3-アミノフェニル)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェニル)ベンゼン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(3-アミノフェニルスルフィド)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェニルスルフィド)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェニルスルフィド)ベンゼン、1,3-ビス(3-アミノフェニルスルホン)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェニルスルホン)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェニルスルホン)ベンゼン、1,3-ビス(3-アミノベンジル)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノベンジル)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノベンジル)ベンゼン、1,3-ビス(3-アミノ-4-フェノキシベンゾイル)ベンゼン、3,3'-ビス(3-アミノフェノキシ)ビフェニル、3,3'-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4'-ビス(3-アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4'-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス〔3-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕エーテル、ビス〔3-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕エーテル、ビス〔4-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕エーテル、ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕エーテル、ビス〔3-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕ケトン、ビス〔3-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕ケトン、ビス〔4-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕ケトン、ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕ケトン、ビス〔3-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕スルフィド、ビス〔3-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕スルフィド、ビス〔4-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕スルフィド、ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕スルフィド、ビス〔3-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔3-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔4-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔3-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕メタン、ビス〔3-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕メタン、ビス〔4-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕メタン、ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕メタン、2,2-ビス〔3-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2-ビス〔3-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2-ビス〔4-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2-ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2-ビス〔3-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス〔3-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス〔4-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、9,9−ビス(2−メチル−4−アミノフェニル)フルオレン、9,9−ビス(3−メチル−4−アミノフェニル)フルオレン、9,9−ビス(2−エチル−4−アミノフェニル)フルオレン、9,9−ビス(3−エチル−4−アミノフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)−1−メチルフルオレン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)−2−メチルフルオレン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)−3−メチルフルオレンおよび9,9−ビス(4−アミノフェニル)−4−メチルフルオレンなどが含まれる。これらは、単独で用いてもよいし、二種類以上を組み合わせて用いてもよい。
一般式(1)におけるAには、前記芳香族ジアミン化合物から誘導される2価の基以外の、他の脂肪族ジアミンから誘導される2価の基が含まれてもよい。
他の脂肪族ジアミンの例には、1,3-ビス(3-アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン、1,3-ビス(4-アミノブチル)テトラメチルジシロキサン、α,ω-ビス(3-アミノプロピル)ポリジメチルシロキサン、α,ω-ビス(3-アミノブチル)ポリジメチルシロキサン、ビス(アミノメチル)エーテル、1,2-ビス(アミノメトキシ)エタン、ビス[(2-アミノメトキシ)エチル]エーテル、1,2-ビス[(2-アミノメトキシ)エトキシ]エタン、ビス(2-アミノエチル)エーテル、1,2-ビス(2-アミノエトキシ)エタン、ビス[2-(2-アミノエトキシ)エチル]エーテル、ビス[2-(2-アミノエトキシ)エトキシ]エタン、ビス(3-アミノプロピル)エーテル、エチレングリコールビス(3-アミノプロピル)エーテル、ジエチレングリコールビス(3-アミノプロピル)エーテル、トリエチレングリコールビス(3-アミノプロピル)エーテル、エチレンジアミン、1,3-ジアミノプロパン、1,4-ジアミノブタン、1,5-ジアミノペンタン、1,6-ジアミノヘキサン、1,7-ジアミノヘプタン、1,8-ジアミノオクタン、1,9-ジアミノノナン、1,10-ジアミノデカン、1,11-ジアミノウンデカン、1,12-ジアミノドデカン、1,2-ジアミノシクロヘキサン、1,3-ジアミノシクロヘキサン、1,4-ジアミノシクロヘキサン、1,4-ジアミノメチルシクロヘキサン、1,3-ジアミノメチルシクロヘキサン、1,2-ジアミノメチルシクロヘキサン、1,2-ジ(2-アミノエチル)シクロヘキサン、1,3-ジ(2-アミノエチル)シクロヘキサン、1,4-ジ(2-アミノエチル)シクロヘキサン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン、2,6-ビス(アミノメチル)ビシクロ〔2.2.1〕ヘプタン、2,5-ビス(アミノメチル)ビシクロ〔2.2.1〕ヘプタンなどが含まれる。これらは、単独で用いてもよいし、二種類以上を組み合わせて用いてもよい。
一般式(1)におけるBは、下記式で表される4価の基から選ばれる。下記式におけるY1〜Y6は、それぞれ単結合、−O−、−S−、−CO−、−COO−、−C(CH3)2−、−C(CF3)2−、−SO2−または−NHCO−である。複数のBに含まれるY1〜Y6は、相互に同一であっても異なっていてもよい。

一般式(1)におけるBは、芳香族テトラカルボン酸二無水物から誘導される4価の基でありうる。芳香族テトラカルボン酸二無水物の例には、ピロメリット酸二無水物、メロファン酸二無水物、3,3',4,4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3',4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2',3,3'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3',4,4'-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)スルフィド二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン二無水物、1,3-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物、1,4-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物、1,4-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ビフェニル二無水物、2,2-ビス〔(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル〕プロパン二無水物などが含まれ、好ましくはピロメリット酸二無水物、3,3',4,4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物である。これらは、単独で用いてもよいし、二種類以上を組み合わせて用いてもよい。
一般式(1)におけるBには、前記芳香族テトラカルボン酸二無水物から誘導される4価の基以外の、他のテトラカルボン酸二無水物から誘導される4価の基が含まれてもよい。
他のテトラカルボン酸二無水物の例には、エチレンテトラカルボン酸二無水物、ブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、1,1-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,2-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,2,5,6-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-アントラセンテトラカルボン酸二無水物、1,2,7,8-フェナントレンテトラカルボン酸二無水物等が含まれる。これらの他のテトラカルボン酸二無水物の芳香環上の水素原子の一部または全てを、フルオロ基またはトリフルオロメチル基で置換したテトラカルボン酸二無水物を用いてもよい。これらは、単独で用いてもよいし、二種類以上を組み合わせて用いてもよい。
ポリイミドの重量平均分子量は5.0×10〜5.0×10であることが好ましい。重量平均分子量が5.0×10未満であると、機械強度が低下することがあり、重量平均分子量が5.0×10を超えると塗工が困難となる。ポリイミドの重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で測定されうる。
一般式(1)で表される構成単位を有するポリイミドは、下記一般式(2)で表される構成単位を含むポリアミド酸を、加熱してイミド化することにより得られる。一般式(2)におけるA、Bおよびmは、前述の一般式(1)におけるA、Bおよびmとそれぞれ同様である。

前記ポリアミド酸は、例えば下記一般式(2A)で表されるジアミンと、下記一般式(2B)で表されるテトラカルボン酸二無水物とを重縮合反応させて得られる。

テトラカルボン酸二無水物とジアミンの仕込み比を、M1:M2=0.900〜0.999:1.00(M1:テトラカルボン酸二無水物のモル数、M2:ジアミンのモル数)を満たすようにすることが好ましい。M1:M2は、0.92〜0.995:1.00であることが好ましく、0.95〜0.995:1.00であることがより好ましく、0.97〜0.995:1.00であることがさらに好ましい。ポリアミド酸をアミン末端にするためである。
ポリオレフィン粒子(B)について
ポリオレフィン粒子(B)は、炭素数2〜20の炭化水素から選ばれるモノマーを含む単独重合体または共重合体からなる。炭素数2〜20の炭化水素のうち、炭素数2〜10の炭化水素が好ましい。
炭素数2〜20の炭化水素の例には、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセン、4−メチル−1−ペンテンおよび1−エイコセン等が含まれ、好ましくはエチレン、プロピレン、1−ブテンおよび4−メチル−1−ペンテン等である。これらは単独で用いても、二種類以上組み合わせて用いてもよい。
ポリオレフィンの重量平均分子量は、5.0×10〜1.0×10であることが好ましい。重量平均分子量が5.0×10未満であると、耐熱性が著しく低下し、分解しやすくなる。重量平均分子量が1.0×10を超えると、溶媒に対する溶解性が悪く、粒子径を微小化しにくい。ポリオレフィンの重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で測定されうる。
原料として添加されるポリオレフィン粒子(B)の平均粒径は、できるだけ小さいことが好ましく、100μm以下、好ましくは0.001〜50μm、より好ましくは0.01〜20μmである。ポリオレフィン粒子(B)の平均粒径を、上記範囲にすることで、ポリイミド等の樹脂(A)への分散性を高めることができる。
ポリオレフィン粒子(B)は、公知の方法で得ることができる。例えば、ポリオレフィンを粉砕してポリオレフィン微粒子を得る方法;形状が制御された微粒子状の固形状オレフィン重合触媒を用いて、直接オレフィンモノマーを重合反応させてポリオレフィン微粒子を得る方法;乳化法により調製されたポリオレフィン微粒子の水性分散体を乾燥して、ポリオレフィン微粒子を得る方法などが挙げられる。
ポリオレフィンの水性分散体の製造方法の例には、ポリオレフィン、水および乳化剤を一括して混合して乳化させるドラム乳化法;予め粉砕しておいたポリオレフィンを乳化剤とともに水に投入して分散させる粉砕法;有機溶剤に溶解させたポリオレフィン、乳化剤、および水を混合した後、有機溶剤を除去する溶媒置換法;ポリオレフィン、水および乳化剤をホモミキサーにより乳化させるホモミキサー法や転相法などが含まれる。
ポリイミド等の樹脂(A)の多くは極性を有するため、非極性のポリオレフィン粒子を、ポリイミド等の樹脂(A)に均一に分散させにくい。ポリオレフィン粒子(B)を樹脂(A)に均一に分散させることができないと、負極活物質との接着性がばらつきやすく、十分な効果が得られにくい。こうしたことから、ポリオレフィン粒子(B)を、ポリイミド等の樹脂(A)に均一に分散させることが好ましく、そのためにはポリオレフィン粒子(B)は、極性基を有することが好ましい。
極性基は、例えば水酸基、カルボキシル基、アミノ基、アミド基、イミド基、エーテル基、ウレタン基、尿素基、リン酸基、スルホン酸基およびカルボン酸無水物基等であり、好ましくは水酸基、カルボキシル基およびカルボン酸無水物基などである。このような極性基を有するポリオレフィン粒子(B)は、ポリイミド等の樹脂(A)に対する分散性が高い。
極性基の含有量は、1.0×10−5〜1.0×10mol/kgであることが好ましく、1.0×10−3〜1.0×10mol/kgであることがより好ましい。この極性基の含有量は、ポリオレフィン粒子の重量(kg)に対する極性基のモル数(モル数)である。極性基の含有量は、ポリオレフィン粒子をグラフト変性する際の、極性基含有化合物の配合量を調整したり、2種類以上のポリオレフィンを含む場合における、極性基を持たないポリオレフィンと、極性基を有するポリオレフィンとの配合比、または極性基が多いポリオレフィンと、極性基が少ないポリオレフィンとの配合比を調整したりすることにより調整できる。
極性基を有するポリオレフィンは、ポリオレフィンを、極性基含有化合物でグラフト変性する方法等により得ることができる。
ポリオレフィンのグラフト変性は、ポリオレフィンと、極性基含有化合物の混合物を、ラジカル重合開始剤の存在下または不存在下で(混練押出機等により)溶融状態で反応させる方法;ポリオレフィンと、極性基含有化合物とを良溶媒に溶解させて、ラジカル重合開始剤の存在下で反応させる方法等により行われる。
極性基含有化合物は、分子内に少なくとも炭素−炭素不飽和結合(例えば、炭素−炭素二重結合)と、極性基とを有する化合物であればよい。極性基含有化合物の例には、不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸誘導体、不飽和エポキシ化合物、不飽和アルコール、不飽和アミン、不飽和イソシアン酸エステル等が含まれる。
不飽和カルボン酸の例には、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、テトラヒドロフタル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、ノルボルネンジカルボン酸、およびビシクロ[2,2,1]ヘプト-2-エン-5,6-ジカルボン酸等が含まれる。不飽和カルボン酸の誘導体の例には、これらの酸無水物、酸ハライド、アミド、イミドおよびエステル等の誘導体が含まれる。これらの具体例には、塩化マレニル、マレニルイミド、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ビシクロ[2,2,1]ヘプト-2-エン-5,6-ジカルボン酸無水物;
マレイン酸ジメチル、マレイン酸モノメチル、マレイン酸ジエチル、フマル酸ジエチル、イタコン酸ジメチル、シトラコン酸ジエチル、テトラヒドロフタル酸ジメチル、ビシクロ[2,2,1]ヘプト-2-エン-5,6-ジカルボン酸ジメチル;
ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシ−プロピル(メタ)アクリレート、3-クロロ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールモノ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンモノ(メタ)アクリレート、テトラメチロールエタンモノ(メタ)アクリレート、ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート2-(6-ヒドロキシヘキサノイルオキシ)エチルアクリレート、グリシジル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸エステル;
(メタ)アクリル酸アミノエチルおよび(メタ)アクリル酸アミノプロピル等が含まれる。これらのうち、好ましくは(メタ)アクリル酸、無水マレイン酸、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレートおよび(メタ)アクリル酸アミノプロピルである。
不飽和エポキシ化合物の例には、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート;
マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、テトラヒドロフタル酸、イタコン酸、シトラコン酸、エンド-シス-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン-2,3-ジカルボン酸(ナジック酸TM)、エンド-シス-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン-2-メチル-2,3-ジカルボン酸(メチルナジック酸TM)、およびアリルコハク酸等のジカルボン酸の、モノアルキルグリシジルエステルおよびジグリシジルエステル(モノアルキルグリシジルエステルに含まれるアルキル基の炭素数は1〜12である);ブテントリカルボン酸等のトリカルボン酸のモノアルキルグリシジルエステルおよびジグリシジルエステル(モノアルキルグリシジルエステルに含まれるアルキル基の炭素数は1〜12である);
p-スチレンカルボン酸のアルキルグリシジルエステル、アリルグリシジルエーテル、2-メチルアリルグリシジルエーテル、スチレン-p-グリシジルエーテル、3,4-エポキシ-1-ブテン、3,4-エポキシ-3-メチル-1-ブテン、3,4-エポキシ-1-ペンテン、3,4-エポキシ-3-メチル-1-ペンテン、5,6-エポキシ-1-ヘキセンおよびビニルシクロヘキセンモノオキシド等が含まれる。
不飽和アルコールの例には、10-ウンデセン-1-オール、1-オクテン-3-オール、2-メタノールノルボルネン、ヒドロキシスチレン、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、N-メチロールアクリルアミド、2-(メタ)アクロイルオキシエチルアシッドフォスフェート、グリセリンモノアリルエーテル、アリルアルコール、アリロキシエタノール、2-ブテン-1,4-ジオール、グリセリンモノアルコールなどが含まれる。
不飽和アミンの例には、(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸プロピルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸アミノプロピル、メタクリル酸フェニルアミノエチルおよびメタクリル酸シクロヘキシルアミノエチル等の(メタ)アクリル酸のアルキルエステル系誘導体類;
N-ビニルジエチルアミンおよびN-アセチルビニルアミンなどのビニルアミン系誘導体類;
アリルアミン、メタクリルアミン、N-メチルアクリルアミン、N,N-ジメチルアクリルアミドおよびN,N-ジメチルアミノプロピルアクリルアミド等のアリルアミン系誘導体;
アクリルアミドおよびN-メチルアクリルアミド等のアクリルアミド系誘導体;
p-アミノスチレン等のアミノスチレン類;
6-アミノヘキシルコハク酸イミドおよび2-アミノエチルコハク酸イミド等が含まれる。
極性基を有するポリオレフィンの例には、特開2001−348413号公報等に示される方法により得られる、極性基を有するオレフィン系ブロック共重合体が含まれる。前記極性基を有するオレフィン系ブロック共重合体は、1)末端に13族元素が結合したポリオレフィンを準備するステップ、2)該ポリオレフィンの存在下で、環状モノマーを開環重合反応させる等の連鎖重合反応を行うステップ、必要に応じて3)環状モノマーの連鎖重合反応で得られたセグメントの末端を極性基に変換するか、または末端に極性基を導入するステップ、を経て製造されうる。
1)における、末端に13族元素が結合したポリオレフィンは、例えば13属元素を含む有機金属触媒の存在下で、オレフィンモノマーを重合させて得ることができる。13属元素を含む有機金属触媒は、有機アルミニウムや、有機ホウ素化合物などでありうる。
2)における、環状モノマーの例には、ラクトン、ラクタム、2-オキサゾリンおよび環状エーテル等が含まれる。3)における極性基の例には、前述の極性基が含まれる。
極性基を有するオレフィン系ブロック共重合体は、下記式(3)で表されうる。
PO−f−R−(X)n−h …(3)
式(3)におけるfは、13族元素が結合したポリオレフィンにおける、13族元素とfとをつなぐリンカーの残基である。fは、エーテル結合、エステル結合、アミド結合などでありうる。式(3)におけるRは、環状モノマーの連鎖重合反応で得られたセグメントである。hは、前述の極性基を示し;(X)nは、セグメントRと極性基hとをつなぐリンカーである。リンカーを構成するXは、特に限定されないが、エステル結合、アミド結合、イミド結合、ウレタン結合、尿素結合、シリルエーテル結合、カルボニル結合などを含む。
極性基を有するポリオレフィン粒子(B)は、前述の他にも、ポリオレフィン粒子を、ドライプロセスで表面親水化処理することによっても得られる。表面親水化処理は、極性基を付与できる表面処理であればよく、例えばコロナ処理、プラズマ処理、電子線照射およびUVオゾン処理等がある。
樹脂組成物における、ポリオレフィン粒子(B)の含有量は、100重量部の樹脂(A)に対して、5重量部〜200重量部であることが好ましく、10〜100重量部であることがより好ましい。ポリオレフィン粒子(B)の含有量が上記範囲よりも少ないと、樹脂組成物が負極活物質を全体的に覆うことになり電子伝導性が低下し内部抵抗増加による容量低下が生じ、上記範囲よりも多いと、樹脂組成物と負極活物質との接着性が低下しやすいからである。
その他の成分について
樹脂組成物には、必要に応じて、無機フィラー等が含まれてもよい。無機フィラーの例には、シリカ、アルミナ、酸化チタン、酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、塩基性炭酸マグネシウム、ドロマイト、硫酸カルシウム、チタン酸カリウム、硫酸バリウム、亜硫酸カルシウム、タルク、クレー、マイカ、ガラスフレーク、ガラスビーズ、ケイ酸カルシウム、モンモリロナイト、ベントナイトおよび硫化モリブデン等が含まれ、好ましくはシリカである。無機フィラーの平均粒径は、好ましくは0.1〜60μmであり、より好ましくは0.5〜30μmである。
樹脂組成物には、必要に応じて、難燃剤、熱安定剤、および酸化安定剤等の各種添加剤が含まれてもよい。
ポリオレフィン粒子から得られる相を有する樹脂組成物は、ポリオレフィン粒子を含まない樹脂と比べて難燃性が低下することがある。そのため、樹脂層を構成する樹脂組成物は、難燃剤をさらに含むことが好ましい。
難燃剤の例には、有機ハロゲン系難燃剤;有機ハロゲン系難燃剤と、酸化アンチモン、ホウ酸亜鉛、錫酸亜鉛および酸化鉄からなる群より選ばれる1種以上との組み合わせ;有機リン系難燃剤;有機リン系難燃剤とシリコーン化合物との組み合わせ;赤燐等の無機燐、オルガノポリシロキサンおよび有機金属化合物の組み合わせ;ヒンダードアミン系難燃剤;水酸化マグネシウム、アルミナ、硼酸カルシウムおよび低融点ガラス等の無機系難燃剤等が含まれる。これらは、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
有機ハロゲン系難燃剤の例には、ハロゲン化ビスフェノール化合物、ハロゲン化エポキシ化合物、およびハロゲン化トリアジン化合物からなる群より選ばれた少なくとも1種類の化合物が含まれる。なかでも、樹脂の難燃性を効果的に高める点で、有機ハロゲン系難燃剤に含まれるハロゲン原子は、臭素および塩素の少なくとも一方であることが好ましい。
このようなハロゲン化ビスフェノール化合物の例には、テトラブロモビスフェノールA、ジブロモビスフェノールA、テトラクロロビスフェノールA、ジクロロビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールF、ジブロモビスフェノールF、テトラクロロビスフェノールF、ジクロロビスフェノールF、テトラブロモビスフェノールS、ジブロモビスフェノールS、テトラクロロビスフェノールSおよびジクロロビスフェノールS等が含まれる。
有機リン系難燃剤は、ホスフェート化合物、ホスフィン化合物、ホスフィン酸塩化合物、ホスフィンオキシド化合物およびホスファゼン化合物からなる群のうち一以上であることが好ましい。
ホスフェート化合物の例には、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシリルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、キシリルジフェニルホスフェート、トリルジキシリルホスフェート、トリス(ノリルフェニル)ホスフェートおよび(2−エチルヘキシル)ジフェニルホスフェート等のリン酸エステル;
レゾルシノールジフェニルホスフェートおよびハイドロキノンジフェニルホスフェート等の水酸基含有リン酸エステル;
レゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート)、ハイドロキノンビス(ジフェニルホスフェート)、ビスフェノール−Aビス(ジフェニルホスフェート)、ビスフェノール−Sビス(ジフェニルホスフェート)、レゾルシノールビス(ジキシリルホスフェート)、ハイドロキノンビス(ジキシリルホスフェート)、ビスフェノール−Aビス(ジトリルホスフェート)、ビフェノール−Aビス(ジキシリルホスフェート)およびビスフェノール−Sビス(ジキシリルホスフェート)等の縮合リン酸エステル化合物等が含まれる。
ホスフィン化合物の例には、トリラウリルホスフィン、トリフェニルホスフィンおよびトリトリルホスフィン等が含まれる。
ホスフィン酸塩化合物の具体例としては、ジエチルホスフィン酸アルミニウム塩、ジエチルホスフィン酸マグネシウム塩等が挙げられる。
ホスフィンオキシド化合物の例には、トリフェニルホスフィンオキシドおよびトリトリルホスフィンオキシド等が含まれる。
ホスファゼン化合物の例には、ヘキサフェノキシシクロトリホスファゼン、モノフェノキシペンタキス(4−シアノフェノキシ)シクロトリホスファゼン、ジフェノキシテトラキス(4−シアノフェノキシ)シクロトリホスファゼン、トリフェノキシトリス(4−シアノフェノキシ)シクロトリホスファゼン、テトラフェノキシビス(4−シアノフェノキシ)シクロトリホスファゼン、ペンタフェノキシ(4−シアノフェノキシ)シクロトリホスファゼン、モノフェノキシペンタキス(4−メトキシフェノキシ)シクロトリホスファゼン、ジフェノキシテトラキス(4−メトキシフェノキシ)シクロトリホスファゼン、トリフェノキシトリス(4−メトキシフェノキシ)シクロトリホスファゼン、テトラフェノキシビス(4−メトキシフェノキシ)シクロトリホスファゼン、ペンタフェノキシ(4−メトキシフェノキシ)シクロトリホスファゼン、モノフェノキシペンタキス(4−メチルフェノキシ)シクロトリホスファゼン、ジフェノキシテトラキス(4−メチルフェノキシ)シクロトリホスファゼン、トリフェノキシトリス(4−メチルフェノキシ)シクロトリホスファゼン、テトラフェノキシビス(4−メチルフェノキシ)シクロトリホスファゼン、ペンタフェノキシ(4−メチルフェノキシ)シクロトリホスファゼン、トリフェノキシトリス(4−エチルフェノキシ)シクロトリホスファゼン、トリフェノキシトリス(4−プロピルフェノキシ)シクロトリホスファゼン、モノフェノキシペンタキス(4−シアノフェノキシ)シクロトリホスファゼン、ジフェノキシテトラキス(4−ヒドロキシフェノキシ)シクロトリホスファゼン、トリフェノキシトリス(4−ヒドロキシフェノキシ)シクロトリホスファゼン、テトラフェノキシビス(4−ヒドロキシフェノキシ)シクロトリホスファゼン、ペンタフェノキシ(4−ヒドロキシフェノキシ)シクロトリホスファゼン、トリフェノキシトリス(4−フェニルフェノキシ)シクロトリホスファゼン、トリフェノキシトリス(4−メタクリルフェノキシ)シクロトリホスファゼンおよびトリフェノキシトリス(4−アクリルフェノキシ)シクロトリホスファゼン等が含まれる。
熱安定剤や酸化安定剤の例には、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製のイルガノックスやイルガフォス等が含まれる。耐光安定剤の例には、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製のTINUVINやCHIMASSORB等が含まれる。
また本発明では、添加するポリオレフィン粒子の平均粒径を小さくしたり、添加するポリオレフィン粒子に極性基を付与したりすることで、ポリオレフィン粒子(B)の樹脂(A)に対する分散性を高めている。このため、得られる樹脂組成物では、微小なポリオレフィンの分散相が均一に分散している。
前記樹脂組成物における、ポリオレフィン粒子(B)から得られる分散相の平均粒径は、100μm以下とすることが好ましく、0.001〜50μmとすることがより好ましく、0.01〜20μmであることがさらに好ましい。ポリオレフィン粒子(B)から得られる分散相の平均粒径は、例えば、それを含む樹脂組成物からなるフィルムの断面をTEM観察することにより測定されうる。
前記樹脂組成物は、熱膨張係数が低いという特徴を有する。ポリオレフィンの熱膨張係数が高いにも係わらず、前記樹脂組成物の熱膨張係数の増大が抑制される原因は必ずしも明らかではないが、ポリオレフィンが良好に分散していることが一因であると推定される。たとえば、樹脂組成物と負極活物質であるSiとの熱膨張係数差に起因する剥離を抑制するためには、前記樹脂層を構成する樹脂組成物の熱膨張係数は、60ppm/℃以下であることが好ましく、50ppm/℃以下であることがより好ましい。樹脂組成物の熱膨張係数は、樹脂組成物を厚み30μmのフィルムとしたときの熱膨張係数を、熱分析装置TMA50(島津製作所株式会社製)を用いて、乾燥空気雰囲気下、100℃〜200℃の範囲で測定することにより求められる。
前記樹脂組成物は、例えば、樹脂(A)とポリオレフィン粒子(B)とを溶融混練する方法;樹脂(A)を構成するモノマーまたは樹脂(A)の前駆体と、ポリオレフィン粒子(B)とを混合した後、重合反応させる方法;樹脂(A)を適当な溶媒に溶解した溶液とポリオレフィン粒子(B)を混合する方法等により得られる。
樹脂(A)がポリイミドである場合、前記樹脂組成物は、1)ポリアミド酸ワニスを準備するステップ、2)ポリアミド酸ワニスにポリオレフィン粒子(B)を添加して、ワニスを攪拌するステップ、および3)得られたポリアミド酸ワニスを加熱によりイミド化させるステップ、を経て製造する方法、または4)ポリイミド溶液を準備するステップ、5)ポリイミド溶液にポリオレフィン粒子(B)を添加して、ポリイミドワニスを攪拌するステップ、および6)得られたポリイミドワニスを加熱して溶媒を除去するステップ、を経て製造されうる。
ポリアミド酸ワニス
1)におけるポリアミド酸ワニスは、ポリアミド酸と、好ましくは溶媒とを含む。ポリアミド酸ワニスにおける樹脂固形分濃度は1〜40重量%であることが好ましく、10〜30重量%であることがより好ましい。後述の撹拌の条件を適切に制御するためである。
溶媒は、特に制限されないが、非プロトン性極性溶媒であることが好ましく、非プロトン性アミド系溶媒であることがより好ましい。非プロトン性アミド系溶媒の例には、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジエチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、および1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノンなどが含まれる。これらの溶媒は、単独で用いてもよいし、二種類以上組み合わせてもよい。
これらの溶媒以外にも、必要に応じて他の溶媒がさらに含まれてもよい。他の溶媒の例には、ベンゼン、トルエン、o-キシレン、m-キシレン、p-キシレン、o-クロロトルエン、m-クロロトルエン、p-クロロトルエン、o-ブロモトルエン、m-ブロモトルエン、p-ブロモトルエン、クロロベンゼン、ブロモベンゼン、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロピルアルコールおよびn−ブタノール等が含まれる。
2)では、ポリアミド酸ワニスに、前述したポリオレフィン粒子(B)を添加し、撹拌することにより、ポリオレフィン粒子(B)をポリアミド酸ワニス中に分散させる。撹拌は、攪拌羽根等を用いた通常撹拌や、自転・公転ミキサー等を用いた撹拌でありうる。添加されるポリオレフィン粒子(B)は粒子そのものであっても、溶媒に分散させた分散体であってもよい。
前述の通り、極性基を持たないポリオレフィン粒子は、(極性を有する)ポリアミド酸ワニスに対して分散しにくい。つまり本発明では、ポリオレフィン粒子(B)を凝集させることなくポリアミド酸ワニスに均一に分散させるように、分散状態を制御することが重要となる。ポリオレフィン粒子(B)の分散状態は、前述のように、添加されるポリオレフィン粒子(B)に極性基を付与したり、添加されるポリオレフィン粒子(B)の平均粒子径、濃度、および分散溶媒を適切に選択したり、攪拌のせん断強度等を調整したりすること等によって制御されうる。
例えば、添加されるポリオレフィン粒子(B)の平均粒子径は、分散性を高めるうえで、小さいほど好ましいが、小さすぎても凝集し易くなるため、100μm以下とすることが好ましく、0.001〜50μmとすることがより好ましく、0.01〜20μmとすることがさらに好ましい。また、添加されるポリオレフィン粒子(B)の分散溶媒は、ポリアミド酸ワニスに対する分散性を高めるために、ポリアミド酸ワニスに含まれる溶媒に対する相溶性の高い溶媒であることが好ましい。
前記樹脂組成物におけるポリオレフィン粒子の分散状態は、例えば、樹脂組成物から得られるフィルムの断面をTEM観察することにより観察されうる。
ポリオレフィン粒子(B)が添加されたポリアミド酸ワニスの、E型粘度計により25℃、5.0rpmで測定される粘度は、特に制限はないが、1〜2.0×10mPa・sの範囲であることが好ましい。
3)では、ポリオレフィン粒子(B)が添加されたポリアミド酸ワニスを、負極活物質および導電助剤と共に混練した後、集電体に塗布、加熱することで、溶媒を除去するとともにイミド化(閉環)させる。このため加熱温度は、例えば50〜400℃程度であり、加熱時間は、例えば1分〜12時間程度であるが、集電体である銅箔の性状変化を抑制するためにも加熱温度は80〜300℃程度が好ましく、加熱時間は3分〜2時間程度が好ましい。
ポリアミド酸のイミド化は、通常、大気圧で行われれば十分であるが、加圧下ないしは真空下で行なわれてもよい。イミド化させる時の雰囲気は、特に制限されないが、通常、空気、窒素、ヘリウム、ネオンまたはアルゴン等であり、好ましくは不活性気体である窒素またはアルゴンである。
ポリイミドワニス
4)におけるポリイミドワニスは、ポリイミドと、好ましくは溶媒とを含む。ポリイミドワニスにおける樹脂固形分濃度は1〜40重量%であることが好ましく、10〜30重量%であることがより好ましい。後述の撹拌の条件を適切に制御するためである。
溶媒は、特に制限されないが、非プロトン性極性溶媒であることが好ましく、非プロトン性アミド系溶媒であることがより好ましい。非プロトン性アミド系溶媒の例には、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジエチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、および1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノンなどが含まれる。これらの溶媒は、単独で用いてもよいし、二種類以上組み合わせてもよい。
これらの溶媒以外にも、必要に応じて他の溶媒がさらに含まれてもよい。他の溶媒の例には、ベンゼン、トルエン、o-キシレン、m-キシレン、p-キシレン、メシチレン、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、o-クロロトルエン、m-クロロトルエン、p-クロロトルエン、o-ブロモトルエン、m-ブロモトルエン、p-ブロモトルエン、クロロベンゼン、ブロモベンゼン、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロピルアルコールおよびn−ブタノール等が含まれる。
5)では、ポリイミドワニスに、前述したポリオレフィン粒子(B)を添加し、撹拌することにより、ポリオレフィン粒子(B)をポリイミドワニス中に分散させる。撹拌は、攪拌羽根等を用いた通常撹拌や、自転・公転ミキサー等を用いた撹拌でありうる。添加されるポリオレフィン粒子(B)は粒子そのものであっても、溶媒に分散させた分散体であってもよい。
前述の通り、極性基を持たないポリオレフィン粒子は、(極性を有する)ポリイミドワニスに対して分散しにくい。つまり本発明では、ポリオレフィン粒子(B)を凝集させることなくポリイミドワニスに均一に分散させるように、分散状態を制御することが重要となる。ポリオレフィン粒子(B)の分散状態は、前述のように、添加されるポリオレフィン粒子(B)に極性基を付与したり、添加されるポリオレフィン粒子(B)の平均粒子径、濃度、および分散溶媒を適切に選択したり、攪拌のせん断強度等を調整したりすること等によって制御されうる。
例えば、添加されるポリオレフィン粒子(B)の平均粒子径は、分散性を高めるうえで、小さいほど好ましいが、小さすぎても凝集し易くなるため、100μm以下とすることが好ましく、0.001〜50μmとすることがより好ましく、0.01〜20μmとすることがさらに好ましい。また、添加されるポリオレフィン粒子(B)の分散溶媒は、ポリイミドワニスに対する分散性を高めるために、ポリイミドワニスに含まれる溶媒に対する相溶性の高い溶媒であることが好ましい。
前記樹脂組成物におけるあポリオレフィン粒子の分散状態は、例えば、樹脂組成物から得られるフィルムの断面をTEM観察することにより観察されうる。
ポリオレフィン粒子(B)が添加されたポリイミドワニスの、E型粘度計により25℃、5.0rpmで測定される粘度は、特に制限はないが、1〜2.0×10mPa・sの範囲であることが好ましい。
6)では、ポリオレフィン粒子(B)が添加されたポリイミドワニスを、負極活物質および導電助剤と共に混練した後、集電体に塗布、加熱することで、溶媒を除去する。加熱温度は、例えば50〜300℃程度であり、加熱時間は、例えば1分〜12時間程度であるが、集電体である銅箔の性状変化を抑制するためにも加熱温度は80〜250℃程度が好ましく、加熱時間は3分〜2時間程度が好ましい。
ポリイミドワニスからの溶媒除去は、通常、大気圧で行われれば十分であるが、加圧下ないしは真空下で行なわれてもよいが、より低温で溶媒除去が進行する点から、真空下が好ましい。溶媒除去時の雰囲気は、特に制限されないが、通常、空気、窒素、ヘリウム、ネオンまたはアルゴン等であり、好ましくは不活性気体である窒素またはアルゴンである。
2.負極
負極は、上述した正極の場合と同様、負極活物質及び本発明であるバインダー樹脂組成物を含有する負極活物質層を集電体上に形成したものである。
負極集電体の材質としては、銅、ニッケル、ステンレス鋼、ニッケルメッキ鋼等の金属材料や、カーボンクロス、カーボンペーパー等の炭素材料が用いられる。形状としては、金属材料の場合、金属箔、金属円柱、金属コイル、金属板、金属薄膜等が、炭素材料の場合、炭素板、炭素薄膜、炭素円柱等が挙げられる。中でも、金属薄膜が、現在工業化製品に使用されていることから好ましい。なお、薄膜は適宜メッシュ状に形成しても良い。
集電体の厚さは、通常5μmから30μmであり、好ましくは9μmから20μmである。
負極活物質層は、負極活物質を含んで構成される。負極活物質としては、電気化学的にリチウムイオンを吸蔵・放出可能なものであれば、その種類に他に制限はないが、単位体積あたりのリチウムを吸蔵、放出量が炭素材料よりもより大きくできるシリコン酸化物(SiO、SiOx、0<x<2)、シリコン及び、炭素材料との組み合わせからなる群より選択されるものが好ましい。
炭素材料としては、その種類に特に制限はないが、人造黒鉛、天然黒鉛等の黒鉛(グラファイト)や、様々な熱分解条件での有機物の熱分解物が挙げられる。有機物の熱分解物としては、石炭系コークス、石油系コークス、石炭系ピッチの炭化物、石油系ピッチの炭
化物、或いはこれらピッチを酸化処理したものの炭化物、ニードルコークス、ピッチコークス、フェノール樹脂、結晶セルロース等の炭化物等及びこれらを一部黒鉛化した炭素材、ファーネスブラック、アセチレンブラック、ピッチ系炭素繊維等が挙げられる。中でも黒鉛が好ましく、特に好適には、種々の原料から得た易黒鉛性ピッチに高温熱処理を施すことによって製造された、人造黒鉛、精製天然黒鉛、又はこれらの黒鉛にピッチを含む黒鉛材料等であって、種々の表面処理を施したものが主として使用される。これらの炭素材料は、それぞれ1種を単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。
なお、上述の各種負極活物質のほかに、リチウムの吸蔵及び放出が可能なその他の材料を負極活物質として用いることもできる。炭素材料以外の負極活物質の具体例としては、酸化錫などの金属酸化物、硫化物や窒化物、リチウム単体やリチウムアルミニウム合金等のリチウム合金などが挙げられる。これらの炭素材料以外の材料についても、それぞれ1種を単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。また、上述の炭素材料と組み合わせて用いても良い。
負極活物質層中の負極活物質の含有割合は、下限が、通常70重量%、好ましくは75重量%、更に好ましくは80重量%であり、上限が、通常99.99重量%、好ましくは99.9重量%である。
負極活物質を結着するバインダーとしては、上述した本願発明のバインダー樹脂組成物の他、公知のものを任意に選択して用いることができる。このような例としては、シリケート、水ガラスなどの無機化合物やポリアルギン酸などの天然化合物が挙げられる。
<負極の製造方法>
本発明における負極の製造方法については特に制限はない。
例えば、負極活物質と樹脂組成物および導電助剤を分散媒に分散させてスラリーとし、これを集電体に塗布し乾燥させることにより、負極を製造する方法等が挙げられる。
負極活物質に対して、ポリイミド(A)とポリオレフィン粒子(B)を混合する割合について以下に述べる。
負極活物質に対して、ポリイミド(A)の含有割合は、下限が、通常0.01重量%、好ましくは0.05重量%、更に好ましくは0.1重量%であり、上限が、通常25重量%、好ましくは20重量%である。
多すぎるとサイクル特性が低下する傾向があり、少なすぎると、入出力特性が低下する傾向がある。
負極活物質に対して、ポリオレフィン粒子(B)の含有割合は、下限が、通常0.01重量%、好ましくは0.05重量%、更に好ましくは0.1重量%であり、上限が、通常25重量%、好ましくは20重量%である。多すぎると入出力特性が低下する傾向があり、少なすぎると、サイクル特性が低下する傾向がある。
このバインダー樹脂組成物には更に、所望により導電助剤(D)を加えても良い。負極活物質に対して、導電剤(D)の含有割合は、下限が、通常0.01重量%、好ましくは0.05重量%、更に好ましくは0.1重量%であり、上限が、通常5重量%、好ましくは3重量%である。多すぎると放電容量が低下する傾向があり、少なすぎると、サイクル特性が低下する傾向がある。
分散媒としては、NMPなどの有機溶媒を用いることができる。
スラリーを集電体上に塗布した後、通常60℃以上、好ましくは80℃以上、また、上限としては、通常200℃以下、好ましくは195℃以下の温度で、乾燥空気又は不活性雰囲気下で乾燥し、活物性層を形成する。
スラリーを塗布、乾燥して得られる活物質層の厚さは、下限が、通常5μm、好ましくは20μm、更に好ましくは30μm、また、上限が、通常200μm、好ましくは100μm、更に好ましくは75μmである。活物質層が薄すぎると、活物質の粒径との兼ね合いから負極としての実用性に欠け、厚すぎると、高密度の電流値に対する十分なLiの吸蔵・放出の機能が得られにくい場合がある。
<非水系二次電池>
本発明の非水系二次電池、特に好ましくはリチウムイオン二次電池の基本的構成は、従来公知のリチウムイオン二次電池と同様であり、通常、リチウムイオンを吸蔵・放出可能な正極及び負極、並びに電解質を備える。上述した本願発明のバインダー樹脂組成物は、正極及び負極のいずれの活物質層用の結着剤として使用することができるが、いずれか一方のみに用いてもよい。
<正極>
正極は、正極活物質及びバインダーを含有する正極活物質層を、集電体上に形成したものである。
正極活物質層は、通常、正極材料と結着剤と更に必要に応じて用いられる導電材及び増粘剤等を、乾式で混合してシート状にしたものを正極集電体に圧着するか、或いはこれらの材料を液体媒体中に溶解又は分散させてスラリー状にして、正極集電体に塗布、乾燥することにより作成される。
正極集電体の材質としては、通常、アルミニウム、ステンレス鋼、ニッケルメッキ、チタン、タンタル等の金属材料や、カーボンクロス、カーボンペーパー等の炭素材料が用いられる。中でも金属材料が好ましく、アルミニウムが特に好ましい。また、形状としては、金属材料の場合、金属箔、金属円柱、金属コイル、金属板、金属薄膜、エキスパンドメタル、パンチメタル、発泡メタル等が、炭素材料の場合、炭素板、炭素薄膜、炭素円柱等が挙げられる。中でも、金属薄膜が、現在工業化製品に使用されているため好ましい。なお、薄膜は適宜メッシュ状に形成しても良い。
正極集電体として薄膜を使用する場合、その厚さは任意であるが、下限が、通常1μm、好ましくは3μm、より好ましくは5μm、上限が、通常100mm、好ましくは1mm、より好ましくは50μmの範囲が好適である。上記範囲よりも薄いと、集電体として必要な強度が不足する虞がある一方で、上記範囲よりも厚いと、取り扱い性が損なわれる虞がある。
正極活物質としては、リチウムイオンなどのアルカリ金属カチオンを充放電時に吸蔵・放出できる金属カルコゲン化合物などが挙げられる。金属カルコゲン化合物としては、バナジウムの酸化物、モリブデンの酸化物、マンガンの酸化物、クロムの酸化物、チタンの酸化物、タングステンの酸化物などの遷移金属酸化物、バナジウムの硫化物、モリブデンの硫化物、チタンの硫化物、CuSなどの遷移金属硫化物、NiPS3、FePS3等の遷移金属のリン−硫黄化合物、VSe2、NbSe3などの遷移金属のセレン化合物、Fe0.25V0.75S2、Na0.1CrS2などの遷移金属の複合酸化物、LiCoS2、LiNiS2などの遷移金属の複合硫化物等が挙げられる。
これらの中でも、V2O5、V5O13、VO2、Cr2O5、MnO2、TiO、MoV2O8、LiCoO2、LiNiO2、LiMn2O4、TiS2、V2S5、Cr0.25V0.75S2、Cr0.5V0.5S2などが好ましく、特に好ましいのはLiCoO2、LiNiO2、LiMn2O4や、これらの遷移金属の一部を他の金属で置換したリチウム遷移金属複合酸化物である。これらの正極活物質は、単独で用いても複数を混合して用いてもよい。
正極活物質層中の正極活物質の含有割合は、下限が、通常10質量%、好ましくは30質量%、更に好ましくは50質量%であり、上限が、通常99.9質量%、好ましくは99質量%である。
正極活物質を結着するバインダーとしては、上述した本願発明のバインダー樹脂組成物の他、公知のものを任意に選択して用いることができる。このような例としては、シリケート、水ガラス等の無機化合物や、テフロン(登録商標)、不飽和結合を有さない高分子などが挙げられる。これらの高分子の重量平均分子量は、下限が、通常1万、好ましくは10万、上限が、通常300万、好ましくは100万の範囲である。
正極活物質層中の結着剤の割合は、下限が、通常0.1質量%、好ましくは1質量%、更に好ましくは5質量%であり、上限が通常80質量%、好ましくは60質量%、更に好ましくは40質量%、最も好ましくは10質量%である。結着剤の割合が低すぎると、正極活物質を十分保持できずに正極の機械的強度が不足し、サイクル特性等の電池性能を悪化させてしまう虞がある一方で、高すぎると、電池容量や導電性の低下につながる虞がある。
正極活物質層中には、電極の導電性を向上させるために、導電材を含有させてもよい。導電剤としては、活物質に適量混合して導電性を付与できるものであれば特に制限はないが、通常、アセチレンブラック、カーボンブラック、黒鉛などの炭素粉末、各種の金属の繊維、粉末、箔などが挙げられる。
スラリーを形成するための液体媒体としては、正極材料であるリチウムニッケルマンガンコバルト系複合酸化物粉体、バインダー、並びに必要に応じて使用される導電材及び増粘剤を溶解又は分散することが可能な溶媒であれば、その種類に特に制限はなく、水系溶媒と有機系溶媒のどちらを用いても良い。水系溶媒の例としては水、アルコールなどが挙げられ、有機系溶媒の例としてはN−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、アクリル酸メチル、ジエチルトリアミン、N−N−ジメチルアミノプロピルアミン、エチレンオキシド、テトラヒドロフラン(THF)、トルエン、アセトン、ジメチルエーテル、ジメチルアセタミド、ヘキサメチルホスファルアミド、ジメチルスルホキシド、ベンゼン、キシレン、キノリン、ピリジン、メチルナフタレン、ヘキサン等を挙げることができる。特に水系溶媒を用いる場合、増粘剤に併せて分散剤を加え、SBR等のラテックスを用いてスラリー化する。なお、これらの溶媒は、1種を単独で用いても良く、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
正極活物質層の厚さは、通常10〜200μm程度である。
なお、正極集電体へのスラリーの塗布、乾燥によって得られた正極活物質層は、正極活物質の充填密度を上げるために、ローラープレス等により圧密化することが好ましい。
<電解質>
電解質としては、非水系溶媒にリチウム塩を溶解させた非水系電解液や、この非水系電解液を有機高分子化合物等によりゲル状、ゴム状、固体シート状にしたものなどが用いられる。
非水系電解液に使用される非水系溶媒は特に制限されず、従来から非水系電解液の溶媒として提案されている公知の非水系溶媒の中から、適宜選択して用いることができる。例えば、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート等の鎖状カーボネート類;エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート等の環状カーボネート類;1,2−ジメトキシエタン等の鎖状エーテル類;テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、スルホラン、1,3−ジオキソラン等の環状エーテル類;ギ酸メチル、酢酸メチル、プロピオン酸メチル等の鎖状エステル類;γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン等の環状エステル類などが挙げられる。これらの非水系溶媒は、何れか一種を単独で用いても良く、二種以上を混合して用いてもよいが、環状カーボネートと鎖状カーボネートを含む混合溶媒の組合せが好ましい。
<リチウム塩>
非水系電解液に使用されるリチウム塩も特に制限されず、この用途に用い得ることが知られている公知のリチウム塩の中から、適宜選択して用いることができる。例えば、LiCl、LiBrなどのハロゲン化物、LiClO4、LiBrO4、LiClO4などの過ハロゲン酸塩、LiPF6、LiBF4、LiAsF6などの無機フッ化物塩、リチウムビス(オキサラトホウ酸塩)LiBC4O8などの無機リチウム塩、LiCF3SO3、LiC
4F9SO3などのパーフルオロアルカンスルホン酸塩、Liトリフルオロスルフォンイミド((CF3SO2)2NLi)などのパーフルオロアルカンスルホン酸イミド塩などの含フッ素有機リチウム塩などが挙げられる。リチウム塩は、単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。非水系電解液中におけるリチウム塩の濃度は、通常0.5M以上、2.0M以下の範囲である。
また、上述の非水系電解液に有機高分子化合物を含ませ、ゲル状、ゴム状、或いは固体シート状にして使用する場合、有機高分子化合物の具体例としては、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド等のポリエーテル系高分子化合物;ポリエーテル系高分子化合物の架橋体高分子;ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラールなどのビニルアルコール系高分子化合物;ビニルアルコール系高分子化合物の不溶化物;ポリエピクロルヒドリン;ポリフォスファゼン;ポリシロキサン;ポリビニルピロリドン、ポリビニリデンカーボネート、ポリアクリロニトリルなどのビニル系高分子化合物;ポリ(ω−メトキシオリゴオキシエチレンメタクリレート)、ポリ(ω−メトキシオリゴオキシエチレンメタクリレート−co−メチルメタクリレート)、ポリ(ヘキサフルオロプロピレン−フッ化ビニリデン)等のポリマー共重合体などが挙げられる。
上述の非水系電解液は、更に被膜形成剤を含んでいても良い。被膜形成剤の具体例としては、ビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、ビニルエチルカーボネート、メチルフェニルカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、ジフルオロエチレンカーボネートなどのカーボネート化合物、エチレンサルファイド、プロピレンサルファイドなどのアルケンサルファイド;1,3−プロパンスルトン、1,4−ブタンスルトンなどのスルトン化合物;マレイン酸無水物、コハク酸無水物などの酸無水物などが挙げられる。
また、被膜形成剤を用いる場合、その含有量は通常10質量%以下、中でも8質量%以下、更には5質量%以下、特に2質量%以下の範囲が好ましい。被膜形成剤の含有量が多過ぎると、初期不可逆容量の増加や低温特性、レート特性の低下等、他の電池特性に悪影響を及ぼす場合がある。
また、電解質として、リチウムイオン等のアルカリ金属カチオンの導電体である高分子固体電解質を用いることもできる。高分子固体電解質としては、前述のポリエーテル系高分子化合物にLiの塩を溶解させたものや、ポリエーテルの末端水酸基がアルコキシドに置換されているポリマーなどが挙げられる。
<セパレータ>
正極と負極との間には通常、電極間の短絡を防止するために、多孔膜や不織布などの多孔性のセパレータを介在させる。この場合、非水系電解液は、多孔性のセパレータに含浸させて用いる。セパレータの材料としては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリエーテルスルホンなどが用いられ、好ましくはポリオレフィンである。
本発明のリチウムイオン二次電池の形態は特に制限されない。例としては、シート電極及びセパレータをスパイラル状にしたシリンダータイプ、ペレット電極及びセパレータを組み合わせたインサイドアウト構造のシリンダータイプ、ペレット電極及びセパレータを積層したコインタイプ等が挙げられる。また、これらの形態の電池を任意の外装ケースに収めることにより、コイン型、円筒型、角型等の任意の形状にして用いることができる。
本発明のリチウムイオン二次電池を組み立てる手順も特に制限されず、電池の構造に応じて適切な手順で組み立てればよいが、例を挙げると、外装ケース上に負極を乗せ、その上に電解液とセパレータを設け、更に負極と対向するように正極を乗せて、ガスケット、封口板と共にかしめて電池にすることができる。
このように、上記負極を用いることにより、充放電サイクル特性に優れた高エネルギー密度の非水電解質二次電池が得られる。
リチウムと合金化可能なSiを含む負極活物質は、例えば、ケイ素単体、ケイ素酸化物、ケイ素合金などが挙げられる。ケイ素酸化物には、例えばSiOx(0<x<2、好ましくは0.1≦x≦1)を用いることができる。ケイ素合金には、例えばSiと遷移金属Mとを含む合金(M−Si合金)を用いることができる。例えば、Ni−Si合金、Ti−Si合金などを用いることが好ましい。また、Siを含む負極活物質は、単結晶、多結晶、非晶質のいずれでもよい。
負極活物質が、主にSiを含む第一の相(A相)、および遷移金属のケイ化物を含む第二の相(B相)とからなり、第一の相および第二の相の少なくとも一方が、非晶質状態および低結晶状態の少なくとも一方の状態であるのが好ましい。高容量、かつサイクル寿命に優れた非水電解質二次電池が得られる。また、B相は遷移金属とケイ化物を含む相であることが好ましい。
A相は、Liの吸蔵放出に寄与する相、すなわち電気化学的にLiと反応可能な相である。A相の重量または体積あたりのLi吸蔵放出量が多い点で、A相はSiの単相であるのが好ましい。ただし、Siは電子伝導性に乏しいために、A相の電子伝導性を改善するために、A相中にリン、ホウ素、または遷移金属などの元素を添加してもよい。
ケイ化物を含むB相はA相との親和性が高く、特に充電時に体積膨張した場合でも結晶界面での割れが生じにくい。B相はSiを主体とするA相に比べて電子伝導性が高くかつ硬度も高い。そのため、活物質がB相を含むことにより、A相における低い電子伝導性が改善され、かつ膨張時の応力が緩和されて活物質粒子の割れが抑制される。
B相は複数の相で構成されてもよい。例えば、B相は、MSi2およびMSi(Mは遷移金属)のように、遷移金属Mとケイ素との組成比が異なる2相からなる。また、例えば、上記2相と、異なる遷移金属Mとのケイ化物の相と、を含む3相以上の相から構成されてもよい。遷移金属Mは、Ti、Zr、Ni、Cu、Fe、およびMoからなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましい。上記遷移金属Mのケイ化物は、高い電子伝導度を有し、かつ高い強度を有する。これらの中でも、遷移金属MはTiがより好ましい。B相はTiSi2を含むことが好ましい。
負極中の炭素材料には、例えば、黒鉛やカーボンブラックが用いられる。負極中の炭素材料の含有量は、特に限定されないが、負極活物質100重量部あたり1.0〜50重量部が好ましく、特に負極活物質100重量部あたり1.0〜40重量部がより好ましい。
本発明の非水電解質二次電池は、上記負極と、正極と、正極と負極との間に配されるセパレータと、非水電解質とを具備する。上記の負極を用いることにより、充放電サイクル特性、低温特性、および耐熱性に優れた高エネルギー密度の非水電解質二次電池が得られる。非水電解質二次電池の形状や大きさは特に限定されない。本発明の負極は、円筒型、角型など、種々の形状の非水電解質二次電池に適用できる。また、本発明の非水電解質二次電池では、上記のようにバインダーにフッ素を含む材料を用いないため、バインダーの熱分解により生成したフッ化水素が負極活物質と反応して電池が劣化することがない。
正極は、例えば、正極活物質、バインダー、および導電材を含む正極合剤からなる。
正極活物質には、リチウムイオンの吸蔵・放出が可能なリチウム含有または非含有の化合物が用いられる。例えば、LixCoO2、LixNiO2、LixMnO2、LixMn1+yO4、LixCoyNi1-yO2、LixCoyM1-yOz、LixNi1-yMyOz、LixMn2O4、LixMn2-yMyO4(M=Na、Mg、Sc、Y、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Al、Cr、Pb、Sb、Bのうち少なくとも一種である)が挙げられる。上記において、xは0〜1.2、yは0〜0.9、zは2.0〜2.3である。また、上記x値は、充放電により変化する。また、遷移金属カルコゲン化物、バナジウム酸化物およびそのリチウム化合物、ニオブ酸化物およびそのリチウム化合物、有機導電性物質を用いた共役系ポリマー、シェブレル相化合物等が用いられる。上記化合物を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
正極のバインダおよび導電材は、非水電解質二次電池で使用可能なものであればよく、特に限定されない。
セパレータには、例えば、優れたイオン透過性を有する微多孔性フィルムが用いられる。例えば、ガラス繊維シート、不織布、織布などが用いられる。
また、耐有機溶剤性と疎水性の観点から、セパレータの材料としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリフェニレンスルフイド、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリイミドなどが用いられる。これらを単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。また、通常は安価なポリプロピレンが用いられるが、電池に耐リフロー性を付与する場合には、この中でも熱変形温度が230℃以上のポリプロピレンスルフィド、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリイミドなどを用いることが好ましい。
セパレータの厚みは、例えば10〜300μmである。また、セパレータの空孔率は、電子やイオンの透過性、セパレータの素材などに応じて適宜決めればよいが、一般的に30〜80%であることが望ましい。
非水電解質には、例えば、リチウム塩を溶解させた非水溶媒が用いられる。
非水溶媒には、例えば、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)、ビニレンカーボネート(VC)などの環状カーボネート類、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジプロピルカーボネート(DPC)などの鎖状カーボネート類、ギ酸メチル、酢酸メチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチルなどの脂肪族カルボン酸エステル類、γ−ブチロラクトン等のγ−ラクトン類、1,2−ジメトキシエタン(DME)、1,2−ジエトキシエタン(DEE)、エトキシメトキシエタン(EME)等の鎖状エーテル類、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン等の環状エーテル類、ジメチルスルホキシド、1,3−ジオキソラン、ホルムアミド、アセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジオキソラン、アセトニトリル、プロピルニトリル、ニトロメタン、エチルモノグライム、リン酸トリエステル、トリメトキシメタン、ジオキソラン誘導体、スルホラン、メチルスルホラン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、3−メチル−2−オキサゾリジノン、プロピレンカーボネート誘導体、テトラヒドロフラン誘導体、エチルエーテル、1,3−プロパンサルトン、アニソール、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン、ブチルジグライム、メチルテトラグライムなどの非プロトン性有機溶媒が挙げられ、これらを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、上記のなかでも、耐リフロー性の観点から、常圧での沸点が200℃以上のエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、スルホラン、ブチルジグライム、メチルテトラグライム、γ―ブチロラクトンを用いるのが好ましい。
上記リチウム塩には、例えばLiClO4、LiBF4、LiPF6、LiAlCl4、LiSbF6、LiSCN、LiCF3SO3、LiCF3CO2、Li(CF3SO2)2、LiAsF6、LiB10Cl10、低級脂肪族カルボン酸リチウム、LiCl、LiBr、LiI、クロロボランリチウム、四フェニルホウ酸リチウム、LiN(CF3SO2)2、LiN(C2F5SO2)2等が挙げられ、これらを単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、ゲルなどの固体電解質を用いてもよい。非水電解質中のリチウム塩の濃度は、特に限定されないが、0.2〜2.0mol/Lが好ましく、特に、0.5〜1.5mol/Lがより好ましい。
以下において、本発明を、実施例を参照してより詳細に説明する。本発明の範囲は、これらの実施例によって限定して解釈されてはならない。本実施例および比較例で用いた略称の内容を示す。
(1)溶媒
DMAc :N,N-ジメチルアセトアミド
NMP :N−メチル−2−ピロリドン
(2)ポリイミド樹脂(A)の構成成分
ジアミン
PDA :p−フェニレンジアミン
ODA :4,4'-ジアミノジフェニルエーテル
APB :1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン
DABP :3,3’−ジアミノベンゾフェノン
m−BP :4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル酸二無水物
BPDA :3,3',4,4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物
PMDA :ピロメリット酸二無水物
BTDA :3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物
(3)ポリオレフィン粒子(B)
PO1 :ポリエチレン粒子(平均粒子径6μm、極性基の種類:マレイン酸から誘導される基、極性基の含有量:0.03mol/kg)
PO2 :エチレン−ブテン共重合体粒子(平均粒子径4μm、極性基の種類:マレイン酸から誘導される基、極性基の含有量:0.03mol/kg)
PO3 :ポリエチレン粒子(平均粒子径10μm、極性基なし)
(負極活物質の作製)
負極活物質粒子中のA相であるSi相の割合が30重量%となるように、Ti粉末(高純度化学(株)製、純度99.99%、粒径20μm未満)およびSi粉末(関東化学(株)製、純度99.999%、粒径20μm未満)を重量比32.2:67.8の割合で混合した。
そして、混合粉を振動ミル容器に投入し、さらにステンレス製ボール(直径2cm)を、ミル容器の容量の70体積%を占めるように投入した。容器内部を真空に引いた後、容器内が1気圧になるまで容器内部をAr(日本酸素(株)製、純度99.999%)で置換した。その後、60Hzの振動を加えながら60時間メカニカルアロイングを行い、Ti―Si合金を得た。
(バインダー溶液の調製)
(製造例1)
ポリアミド酸ワニスAの調製
撹拌機および窒素導入管を備えた容器に、20.55gのPDAと、溶媒として301gのNMPとを装入し、溶液の温度を50℃に昇温してPDAが溶解するまで撹拌した。溶液の温度を室温まで下げた後、55.34gのBPDAを約30分かけて投入し、129gのNMPをさらに加えて、20時間攪拌してポリアミド酸Aのワニスを得た。得られたワニスは、ポリアミド酸の固形分の含有率が15重量%であり、対数粘度は1.3dl/gであった。
バインダーAの調製
プラスチック製の容器に、ポリアミド酸Aのワニスと、PO1/DMAc分散液を投入し、混練機を用いて混ぜ合わせることにより、バインダーA1−1−10を調製した。量比はポリアミド酸A/PO1=100/10(重量部)とした。
(製造例2〜6)
ポリエチレン粒子PO1の添加量を、表1に示されるように変更した以外は、製造例1と同様にして、バインダーA1−1−25、A−1−40、A−1−60、A−1−80、A−1−100、をそれぞれ得た。
(製造例7)
製造例1のPO1/DMAc分散液を、PO2/DMAc分散液とした以外は製造例1と同様にしてバインダーA2−1−10を得た。
(製造例8〜9)
ポリエチレン粒子PO2の添加量を、表1に示されるように変更した以外は、製造例7と同様にして、バインダーA−1−25、A−1−40をそれぞれ得た。
(製造例10)
ポリアミド酸Bの調製
撹拌機および窒素導入管を備えた容器に、24.03gのODAと、溶媒として139.5gのDMAcを装入し、ODAが溶解するまで撹拌した。次いで、この溶液に、25.78gのPMDAを約30分かけて投入し、さらに103.7gのDMAcを加えて、20時間攪拌してポリアミド酸Bのワニスを得た。得られたワニスは、ポリアミド酸Bの固形分の含有量が17重量%であり、対数粘度は1.2dl/gであった。
得られたポリアミド酸Bのワニスに、ポリアミド酸B/PO1の量比が表1に示されるようになるようにPO1/DMAc分散液を混合した以外は製造例1と同様にしてバインダーB−1−40混合液を調製した。
(製造例11〜12)
PO1の替わりにそれぞれPO2,PO3を用いた以外は製造例10と同様にしてバインダーB−2−40、B−3−40混合液を調製した。
(製造例13)
ポリアミド酸Cの調製
撹拌機および窒素導入管を備えた容器に、溶媒として261.0gのDMAcを加え、これに20.44gのODAと、16.12gのm−BPとをさらに加えて、20〜30℃で撹拌して溶解させた。次いで、30.84gのPMDAを加え、11.0gのDMAcでフラスコ内部に付着した原料を洗い落とし、50〜60℃に加熱し約1時間撹拌を行った。その後、0.44gのPMDAをさらに加えて、60℃に温度を保ちながら約4時間撹拌を行い、ポリアミド酸CYのワニスを得た。
一方、別の撹拌機および窒素導入管を備えた容器に、溶媒として263.0gのNMPを加え、19.62gのPDAを加えて、20〜30℃で撹拌して溶解させた。その後、37.0gのBPDA、11.06gのPMDAをさらに加え、10.0gのNMPにてフラスコ内部に付着した原料を洗い落とし、50〜60℃に加熱し約4時間撹拌を行い、ポリアミド酸CZのワニスを得た。
そして、別の撹拌機および窒素導入管を備えた容器に、前述のポリアミド酸CZのワニスとポリアミド酸CYのワニスとを、(CZ):(CY)=77:23の重量比で混合し、50〜60℃に加熱して約4時間撹拌を行い、ポリアミド酸Cのワニスを得た。得られたポリアミド酸Cのワニスは、ポリアミド酸Cの含有率が20重量%であり、25℃でのE型粘度は30000mPa・sであった。
バインダーCの調製
プラスチック製の容器に、ポリアミド酸Cのワニスと、PO2/DMAc分散液とを投入し、混練機を用いて混ぜ合わせることにより、バインダーC−2−10を調製した。量比はポリアミド酸C/PO1=100/10(重量部)とした。
(製造例14〜15)
ポリエチレン粒子PO2の添加量を、表1に示されるように変更した以外は、製造例13と同様にして、バインダーC−2−25、C−2−100をそれぞれ得た。
(比較製造例1)
ポリエチレン粒子PO1を添加しなかった以外は、製造例1と同様にして、ポリアミド酸A−0−0を得た。
(比較製造例2)
ポリエチレン粒子PO2を添加しなかった以外は、製造例10と同様にして、ポリアミド酸B−0−0を得た。
(比較製造例3)
ポリエチレン粒子PO2を添加しなかった以外は、製造例13と同様にして、ポリアミド酸C−0−0を得た。
(実施例1)
各種特性を評価する目的で、上述の製造例で調製したバインダー混合液A−1−10を、ガラス上にキャストして硬化膜を作製した。得られたキャスト膜を用いて測定した、熱変形温度及び熱膨張係数、引張強度、弾性率を表1に示す。
(熱変形温度)
熱変形温度は以下のように測定した。熱機械分析計(TMA−50、島津製作所製)を用いて、硬化膜(厚み約30μm、長さ20mm)の両端に一定荷重(フィルムの断面積1mm2に対し14g)をかけて、温度を30〜450℃に変化させた際の伸び(縮み)を測定する引っ張り法により熱変形温度を求めた。この際、硬化膜の伸びが大きく上昇する時の温度を、熱変形温度とした。
(負極の作製)
次に、上記で得られた負極活物質およびバインダー原料溶液A−1−10、ならびに導電材として黒鉛粉末(日本黒鉛(株)製、SP−5030)を混合した。この混合物を真空下において60℃で12時間乾燥させて負極合剤を得た。この時、負極合剤中のTi−Si合金、黒鉛粉末、バインダーの重量比は、100:20:10であった。
(正極およびコイン型電池の作製)
上記で得られた負極と、正極を用い、常法に従いコイン型電池を作製した。
(電池の充放電試験)
上記で得られたコイン型電池の充放電サイクル試験を20℃に設定した恒温槽中で以下のように行った。
0.2Cの定電流で充放電を100サイクル行った。そして、2サイクル目の放電容量(以下、初期容量とする)に対する10サイクル目、50サイクル目および100サイクル目の放電容量の割合をサイクル容量維持率とした。このサイクル容量維持率が100に近いほどサイクル特性が優れていることを示す。結果を表1に示す。
(実施例2〜15)
上述の各製造例で調製したバインダー混合液を用い、実施例1と同様に評価を行った。製造例と実施例の関係は表中に記した。
表1より、本発明のポリイミド、ポリアミドイミド、液晶ポリマーおよびポリフェニレンエーテルから選ばれる樹脂(A)と、ポリオレフィン粒子(B)とポリイミドを含むバインダーを用いた場合、サイクル特性に優れた負極が得られることがわかる。
本発明の樹脂組成物からなる非水系二次電池用バインダー樹脂組成物は、結着性に優れ、サイクル特性に優れているため、特に活物質としてSiを含む負極の非水系二次電池用バインダーとして好適に用いられる。

Claims (11)

  1. ポリイミド、ポリアミドイミド、液晶ポリマーおよびポリフェニレンエーテルからなる群から選ばれる樹脂(A)と、平均粒子径が100μm以下のポリオレフィン粒子(B)とを混合して得られ、樹脂(A)の連続相と、前記ポリオレフィン粒子(B)から得られる分散相とを有する樹脂組成物からなる非水系二次電池用バインダー樹脂組成物。
  2. 前記樹脂(A)が、ポリイミドである、請求項1に記載の非水系二次電池用バインダー樹脂組成物。
  3. 前記ポリオレフィン粒子(B)が、エチレン、プロピレン、1−ブテンおよび4−メチル−1−ペンテンからなる群より選ばれる少なくとも1種類のモノマーから導かれる構成単位を含む重合体である、請求項1または2に記載の非水系二次電池用バインダー樹脂組成物。
  4. 前記ポリオレフィン粒子(B)が、極性基を有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の非水系二次電池用バインダー樹脂組成物。
  5. 前記極性基が、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、アミド基、イミド基、エーテル基、ウレタン基、尿素基、リン酸基、スルホン酸基およびカルボン酸無水物基からなる群より選ばれる少なくとも1種類の官能基である、請求項4に記載の非水系二次電池用バインダー樹脂組成物。
  6. 前記ポリオレフィン粒子(B)が、コロナ処理、プラズマ処理、電子線照射またはUVオゾン処理が施されている、請求項1〜5のいずれか一項に記載の非水系二次電池用バインダー樹脂組成物。
  7. 前記樹脂組成物は、100重量部の前記樹脂(A)に対して、5重量部以上200重量部以下の前記ポリオレフィン粒子(B)を含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の非水系二次電池用バインダー樹脂組成物。
  8. 前記樹脂組成物は、難燃剤をさらに含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載の非水系二次電池用バインダー樹脂組成物。
  9. バインダーとSiを含む負極活物質とを含有する活物質層を集電体上に形成した負極であって、該バインダーが、請求項1〜8のいずれかに記載の電極用バインダー樹脂組成物であることを特徴とする非水系二次電池用負極。
  10. 前記活物質が、シリコン酸化物(SiO、SiOx、0<x<2)、シリコン及び、炭素材料との組み合わせからなる群より選択されるものであることを特徴とする請求項9に記載の非水系二次電池用負極。
  11. リチウムイオンを吸蔵・放出可能な正極及び負極、電解質並びに電解液を備えた電池において、該負極が、請求項9または10に記載の負極であることを特徴とするリチウムイオン二次電池。
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