JP2015173048A - リチウムイオン二次電池電極用電極およびリチウムイオン二次電池 - Google Patents
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Abstract
Description
〔1〕下記式(1)で表される3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を30モル%以上100モル%以下含有する芳香族テトラカルボン酸二無水物(A)と、0.05〜3倍モル量の水またはアルコールとを接触することによって得られる、酸無水物基の一部または全てが開環した芳香族テトラカルボン酸二無水物を含む変性体(A’)と、芳香族ジアミン化合物(B)を、(A’)/(B)の仕込みモル比が0.95〜1.05の条件下で反応させてなるポリアミド酸前駆体(C)からなるリチウムイオン電池バインダー用樹脂組成物。
〔3〕前記一般式(2)で表される芳香族ジアミン化合物(B1)が、下記一般式(3)で表される芳香族ジアミン化合物(B2)である〔2〕記載のリチウムイオン電池バインダー用樹脂組成物。
〔4〕前記一般式(3)で表される芳香族ジアミン化合物(B2)が、下記式(4)で表される芳香族ジアミン化合物(B3)である〔3〕に記載のリチウムイオン電池バインダー用樹脂組成物。
〔6〕下記式(1)で表される3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を30モル%以上100モル%以下含有する芳香族テトラカルボン酸二無水物(A)のスラリー溶液中に、水またはアルコールを撹拌下に滴下することによって、変性体(A’)のスラリー溶液を得る工程と、前記スラリー溶液中に、芳香族ジアミン化合物(B)を添加し、撹拌接触することで、ポリアミド酸前駆体溶液を得る工程を備えるリチウムイオン電池バインダー用樹脂組成物の製造方法。
〔8〕前記負極活物質が、ケイ素原子、スズ原子およびゲルマニウム原子から選ばれた少なくとも1種を含む〔7〕記載の負極用合材ペースト。
〔9〕前記合材ペーストが、芳香族テトラカルボン酸二無水物(A)と、芳香族ジアミン化合物(B)を反応させることによって得られるポリアミド酸(D)をさらに含み、前記芳香族テトラカルボン酸無水物(A)と、芳香族ジアミン化合物(B)のモル比が、98:100〜102:100の範囲であり、且つ、前記ポリアミド酸前駆体(C)と前記ポリアミド酸(D)の質量比率が、97:3〜70:30である〔7〕または〔8〕に記載の負極用合材ペースト。
〔10〕前記〔7〕〜〔9〕のいずれかに記載の負極用合材ペーストを集電体上に塗布し、加熱処理してイミド化反応することにより得られるリチウムイオン二次電池用電極。
〔11〕前記加熱処理の温度が、ポリイミド樹脂のガラス転移温度を超える温度である〔10〕に記載のリチウム二次電池用電極。
〔12〕リチウムイオンを吸蔵・放出可能な正極及び負極、並びに電解質を備えたリチウムイオン二次電池であって、前記負極が、前記〔11〕に記載のリチウムイオン二次電池用電極であるリチウムイオン二次電池。
本発明のリチウムイオン電池バインダー用樹脂組成物は、特定の芳香族テトラカルボン酸二無水物(A)と、0.05〜3倍モル量の水またはアルコールとを接触することによって得られる、酸無水物基の一部または全てが開環した芳香族テトラカルボン酸二無水物を含む変性体(A’)と、芳香族ジアミン化合物(B)を、(A’)/(B)の仕込みモル比が0.95〜1.05の条件下で反応させてなるポリアミド酸前駆体(C)からなる。バインダー用樹脂組成物はポリアミド酸前駆体(C)を単独使用してもよいし、他の樹脂組成物とともに併用してもよい。バインダー用樹脂組成物中に含みうる他の樹脂組成物としては後述するポリアミド酸(D)が挙げられる。ポリアミド酸(D)はポリアミド酸前駆体(C)と混合・ブレンドしてバインダー用樹脂組成物として用いても良いし、後述するようにリチウムイオン二次電池用合材ペーストを調製する際に、ポリアミド酸前駆体(C)とともに別々に添加してもよい。なお、後述するように、ポリアミド酸(D)を併用する場合は、前記ポリアミド酸前駆体(C)と前記ポリアミド酸(D)の質量比率は、通常97:3〜70:30、好ましくは95:5〜80:20である。
本発明において用いられる芳香族テトラカルボン酸二無水物(A)は、下記式(1)で表される3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を芳香族テトラカルボン酸二無水物の全体中に通常30〜100モル%、好ましくは50〜100モル%含有する芳香族テトラカルボン酸二無水物である。
本発明に用いられる芳香族ジアミン化合物(B)は特に限定はされず以下のような化合物を例示できる:m−フェニレンジアミン、o−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、2,2−ビス(3−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−アミノフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、3,3’−ジアミノジフェニルスルホキシド、3,4’−ジアミノジフェニルスルホキシド、4,4’−ジアミノジフェニルスルホキシド、1,3−ビス(3−アミノフェニル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェニル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェニル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェニル)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェニルスルフィド)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェニルスルフィド)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェニルスルフィド)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェニルスルホン)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェニルスルホン)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェニルスルホン)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノベンジル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノベンジル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノベンジル)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノ−4−フェノキシベンゾイル)ベンゼン、3,3’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、3,3’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス〔3−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕エーテル、ビス〔3−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕エーテル、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕エーテル、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕エーテル、ビス〔3−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕ケトン、ビス〔3−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕ケトン、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕ケトン、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕ケトン、ビス〔3−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕スルフィド、ビス〔3−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕スルフィド、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕スルフィド、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕スルフィド、ビス〔3−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔3−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔3−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕メタン、ビス〔3−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕メタン、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕メタン、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕メタン、2,2−ビス〔3−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔3−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔3−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス〔3−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、9,9−ビス(2−メチル−4−アミノフェニル)フルオレン、9,9−ビス(3−メチル−4−アミノフェニル)フルオレン、9,9−ビス(2−エチル−4−アミノフェニル)フルオレン、9,9−ビス(3−エチル−4−アミノフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)−1−メチルフルオレン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)−2−メチルフルオレン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)−3−メチルフルオレン及び9,9−ビス(4−アミノフェニル)−4−メチルフルオレン。上記のジアミン化合物の中でも、下記一般式(2)で表される芳香族ジアミン化合物(B1)を含む芳香族ジアミン化合物(B)が好ましい。芳香族ジアミン化合物(B)に占めるジアミン化合物(B1)の割合は通常50〜100モル%、好ましくは70〜100モル%である。
本発明に係るポリアミド酸前駆体(C)は、芳香族テトラカルボン酸二無水物(A)と、0.05〜3倍モル量の、水またはアルコールとの接触によって得られる、酸無水物基の一部または全てが開環した芳香族テトラカルボン酸二無水物を含む変性体(A’)と、芳香族ジアミン化合物(B)を、(A’)/(B)の仕込みモル比が0.95〜1.05の条件下で反応させることによって得られる。
本発明のリチウムイオン二次電池用負極用合材ペーストは、前述したポリアミド酸前駆体(C)と負極活物質とを含んでなる。本発明のリチウムイオン二次電池用電極合材ペーストはリチウムイオン二次電池用電極バインダー樹脂組成物もしくはこれを含むワニスに、導電助剤、活物質、溶剤等を添加し、撹拌ないし混錬して製造し得る。各原料の混合方法としては、以下の2つの方法が挙げられるが、これに限定されない。
i)リチウムイオン二次電池電極バインダー用樹脂組成物を含むワニスに、導電助剤を添加して混練する。得られた混練物に、活物質および溶媒を加えて電極合材ペーストとする。
ii)リチウムイオン二次電池電極バインダー用樹脂組成物を含むワニスに、導電助剤を添加し、さらに、活物質を添加して混練する。得られた混練物に溶媒を加えて撹拌して電極合材ペーストとする。上記攪拌は、攪拌羽根等を用いた通常撹拌や、自転・公転ミキサー等を用いた撹拌であればよい。混練操作は、混練機などを用いることができる。
負極活物質としては特に限定されないが、リチウムイオン吸蔵および/または挿入時の体積膨張率が110%より大きいものを好ましく使用する事が出来る。本発明で用いられるバインダー用樹脂は充放電に伴う体積膨張率が大きくとも、良好な結着性を示す。体積膨張率の値は、例えば『車載用リチウムイオン電池の開発動向』,近畿大学工学部研究公開フォーラム,2010 年10 月27日等に公開されている。
負極活物質としては、充放電容量の大きいケイ素原子、スズ原子またはゲルマニウム原子を含む活物質を好ましく用いることができる。これらは充放電に伴う体積変化が大きいため、本発明の効果がより発揮される。上記の中でもより好ましくはケイ素粒子及び/又はケイ素合金である。
リチウムイオン二次電池用電極合材ペースト中の固形分の総量(質量)に対する負極活物質の配合量(質量)は、50質量%以上が好ましく、より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは80質量%以上である。また通常97質量%以下が好ましく、より好ましくは95質量%以下である。
本発明のリチウムイオン二次電池用電極合材ペーストは、溶媒を含有し得る。溶媒の種類は、リチウムイオン二次電池用電極バインダー樹脂組成物と活物質等を均一に溶解もしくは分散可能なものであれば特に制限されない。このような溶剤として、非プロトン性極性溶媒が好ましく、非プロトン性アミド系溶媒がより好ましい。非プロトン性アミド系溶媒の例には、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジエチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、および1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノンなどが含まれる。これらの溶媒は、単独で用いてもよいし、二種類以上組み合わせてもよい。
溶媒の使用量はリチウムイオン二次電池用電極合材ペーストの粘度等を考慮して適宜選択される。通常、合材ペーストに含まれる固形分100質量部に対して、50〜900質量部の溶媒を配合することが好ましく、より好ましくは65〜500質量部である。
本発明のリチウムイオン二次電池用電極合材ペーストは、活物質とともに導電助剤を配合することができる。導電助剤は、電極の電気抵抗を低下させる目的で配合される。導電助剤としては、炭素材料を用い得る。炭素材料としては、その種類に特に制限はないが、人造黒鉛、天然黒鉛等の黒鉛(グラファイト)や、様々な熱分解条件での有機物の熱分解物が挙げられる。
リチウムイオン二次電池用電極合材ペースト中の固形分の総量(質量)に対する導電助剤の配合量(質量)は、0.01質量%以上が好ましく、より好ましくは0.05質量%以上、更に好ましくは0.1質量%以上である。また通常20質量%以下が好ましく、より好ましくは10質量%以下である。
本発明の本発明のリチウムイオン二次電池用電極合材ペーストは、バインダー用樹脂組成物として、前記ポリアミド酸前駆体(C)に加えて、芳香族テトラカルボン酸二無水物(A)と、芳香族ジアミン化合物(B)を反応させることによって得られるポリアミド酸(D)をさらに含むことができる。芳香族テトラカルボン酸無水物(A)と芳香族ジアミン化合物(B)からポリアミド酸(D)を得る方法は公知の方法によって行われ、例えば本願発明者らによってなされた発明でありWO2013/132864として公開されている公報に記載された方法を挙げることができる。この際の前記芳香族テトラカルボン酸無水物(A)と、芳香族ジアミン化合物(B)の仕込みモル比は、98:100〜102:100の範囲であり、且つ、ポリアミド酸(D)を併用する場合は、前記ポリアミド酸前駆体(C)と前記ポリアミド酸(D)の質量比率は、通常97:3〜70:30、好ましくは95:5〜80:20である。上記比率範囲内であれば、負極活物質層内で負極バインダー樹脂が負極活物質粒子の表面被覆を抑制でき、且つ良好な機械特性を示すため、良好な電池特性、とりわけサイクル特性を保持する。
本発明のリチウムイオン二次電池用電極は、集電体と負極活物質層との積層物である。この活物質層は、バインダー樹脂組成物を含むリチウムイオン二次電池用電極合材ペーストの硬化物である。リチウムイオン二次電池用電極にはシート状の電極が含まれる。
負極集電体の材質としては、ケイ素及び/又はケイ素合金、スズおよびその合金、ケイ素−銅合金、銅、ニッケル、ステンレス鋼、ニッケルメッキ鋼等の金属材料や、カーボンクロス、カーボンペーパー等の炭素材料が用いられる。
負極集電体の形状としては、金属材料の場合、金属箔、金属円柱、金属コイル、金属板、金属薄膜等が、炭素材料の場合、炭素板、炭素薄膜、炭素円柱等が挙げられる。集電体の厚みは、特に制限はないが、例えば通常5μm〜30μmであり、好ましくは9〜20μmである。
活物質層は、バインダー樹脂組成物を含有するリチウムイオン二次電池用電極合材ペーストを、集電体に塗布し、それを加熱硬化させて得られる。
また、電極合材ペーストの加熱硬化における加熱温度は、通常200℃以上、350℃以下であり、1分間〜24時間熱処理することにより、ポリイミド前駆体のポリイミドへの閉環反応を行い、信頼性のある負極を得ることができる。
このようにして得られた負極は、リチウムイオン二次電池用として使用することが出来る。
本発明のリチウムイオン二次電池の基本的構成は、従来公知のリチウムイオン二次電池と同様であり、通常、リチウムイオンを吸蔵・放出可能な正極及び負極、並びに電解質を備える。
リチウムイオン二次電池用の電解液としては、非水系溶媒にリチウム塩を溶解させた非水系電解液や、この非水系電解液を有機高分子化合物等によりゲル状、ゴム状、固体シート状にしたものなどが用いられる。
正極は、集電体と、正極活物質層とが積層された構造とし得る。
正極集電体の材質としては、通常、アルミニウム、ステンレス鋼、ニッケルメッキ、チタン、タンタル等の金属材料や、カーボンクロス、カーボンペーパー等の炭素材料が用いられる。中でも金属材料が好ましく、アルミニウムが特に好ましい。また、形状としては、金属材料の場合、金属箔、金属円柱、金属コイル、金属板、金属薄膜、エキスパンドメタル、パンチメタル、発泡メタル等が、炭素材料の場合、炭素板、炭素薄膜、炭素円柱等が挙げられる。中でも、金属薄膜が、現在工業化製品に使用されているため好ましい。なお、薄膜は適宜メッシュ状に形成しても良い。正極集電体として薄膜を使用する場合、その厚さは任意であるが、下限が、通常1μm、好ましくは3μm、より好ましくは5μm、上限が、通常100mm、好ましくは1mm、より好ましくは50μmの範囲である。上記範囲よりも薄いと、集電体として必要な強度が不足する虞がある一方で、上記範囲よりも厚いと、取り扱い性が損なわれる恐れがある。
正極と負極との間には通常、電極間の短絡を防止するために、多孔膜や不織布などの多孔性のセパレータを介在させる。セパレータには、例えば、優れたイオン透過性を有する微多孔性フィルム、ガラス繊維シート、不織布、織布などが用いられる。また、耐有機溶剤性と疎水性の観点から、セパレータの材料としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリフェニレンスルフイド、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレナフタレート、ポリメチルペンテン、ポリアミド、ポリイミドなどが用いられる。これらを単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。また、通常は安価なポリプロピレンが用いられるが、リチウムイオン二次電池に耐リフロー性を付与する場合には、この中でも熱変形温度が230℃以上のポリプロピレンスルフィド、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリイミドなどを用いることが好ましい。セパレータの厚みは、例えば10〜300μmである。また、セパレータの空孔率は、電子やイオンの透過性、セパレータの素材などに応じて適宜決めればよいが、一般的に30〜80%であることが望ましい。
NMP:N−メチル−2−ピロリドン
m−BP:4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル
m−PD:m−フェニレンジアミン
BPDA:3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物
BTDA:3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物
実施例で用いた特性の測定方法を以下に示す。
試料溶液(その質量をw1とする)を、熱風乾燥機中330℃で120分間加熱処理して、加熱処理後の質量(その質量をw2とする)を測定する。
固形分濃度[質量%]は、次式によって算出した。
固形分濃度[質量%]=(w2/w1)×100
試料溶液を、固形分濃度に基づいて濃度が0.5g/dl(溶媒はNMP)になるように希釈した。この希釈液を35℃にて、ラウダ社製 自動動粘度測定装置PVSを用いて流下時間(T1)を測定した。対数粘度は、ブランクのNMPの流下時間(T0)を用いて、次式から算出した。
対数粘度={ln(T1/T0)}/0.5
フィルム特性は、島津製作所社製小型卓上引張試験機EZ−Sを用いて測定した。
上記で得られた負極における負極活物質層の剥離強度を測定した。剥離強度は、ダイプラウィンテス社製SAICASを用い、切刃の刃幅2mm、負極活物質層表面からの切込み量10μm、切刃の水平速度8μm/secで測定した。
負極単極での電極特性を評価するために、次のようにして試験用リチウム二次電池を作製した。対極には直径16mmΦ金属リチウムを用いた。また、電解液としてエチレンカーボネートとジエチルカーボネートの混合溶媒(体積比1:1混合)にLiPF6を1mol/lの濃度で溶解したものを用い、セパレーターにポリプロピレンの多孔質膜を用いてコインセルを作製した。得られたこのコインセルを使用して、25℃の恒温下、端子電圧の充電下限電圧を0.05V、放電の上限電圧を2Vとした電圧範囲で、0.5Cの電流値で、定電流充電及び放電を繰り返した。
バインダー用樹脂組成物ワニス1の調製
撹拌機および窒素導入管を備えた容器に、38.2g(0.13モル)のBPDAと、溶媒として236gのNMPとを装入した。BPDAとNMPスラリーの撹拌下、0.70g(0.039モル)の水と、20gのNMPの混合溶液を30分かけて滴下し、室温下10時間撹拌した。その後、47.90g(0.13モル)のm−BPを数回に分けて、10分かけて添加した。さらに110gのNMPを加え、室温下24時間撹拌することで、固形分濃度18質量%のバインダー用樹脂組成物ワニス1を得た。対数粘度は0.4dl/gであった。
得られたバインダー用樹脂組成物ワニス1を、基材のガラス板上にアプリケーターによって塗布し、その塗膜を、窒素雰囲気下330℃で2時間焼成し、厚さが15μmのバインダー樹脂フィルムを形成した。得られたフィルムを用いてフィルム特性を評価した。結果を表1に示した。
SiO活物質(信越化学工業製 KSC−1064)とバインダーが質量比で85:15となるようにSiO活物質とバインダー用樹脂組成物ワニス1を混合し、さらにスラリーの固形分濃度が50質量%となるようにNMPを添加し、混練してスラリーを作製した。これを厚さ18μmの圧延銅箔に対し、厚みが均一となるように塗布し、その後、窒素雰囲気中350℃で20分間熱処理することにより、負極電極シートを形成した。本負極を用いて、サイカスによる剥離強度測定を行った。結果を表1に示した。
また、このシートから直径14.5mmΦの円形に切り出すことにより負極電極を得た。本負極を用いてコインセルによる充放電サイクル試験を行った。結果を図1に示した。
撹拌機および窒素導入管を備えた容器に、38.2g(0.13モル)のBPDAと、溶媒として235gのNMPとを装入した。BPDAとNMPスラリーの撹拌下、1.8g(0.039モル)のエタノールと、20gのNMPの混合溶液を30分かけて滴下し、室温下10時間撹拌した。その後、47.90g(0.13モル)のm−BPを数回に分けて、10分かけて添加した。さらに110gのNMPを加え、室温下24時間撹拌することで、固形分濃度18質量%のバインダー用樹脂組成物ワニス2を得た。対数粘度は0.35dl/gであった。
撹拌機および窒素導入管を備えた容器に、38.2g(0.13モル)のBPDAと、溶媒として235gのNMPとを装入した。BPDAとNMPスラリーの撹拌下、2.34g(0.13モル)の水と、20gのNMPの混合溶液を30分かけて滴下し、室温下10時間撹拌した。その後、47.90g(0.13モル)のm−BPを数回に分けて、10分かけて添加した。さらに110gのNMPを加え、室温下24時間撹拌することで、固形分濃度18質量%のバインダー用樹脂組成物ワニス3を得た。対数粘度は0.2dl/gであった。
撹拌機および窒素導入管を備えた容器に、47.90g(0.13モル)のm−BPと、溶媒として510gのNMPとを装入した。m−BPが溶解するまで撹拌した後、38.25g(0.13モル)のBPDAを約30分かけて投入し、219gのNMPをさらに加えて、20時間攪拌してバインダー用樹脂組成物ワニス4を得た。得られたバインダー用樹脂組成物ワニス4は、固形分濃度が10質量%であり、対数粘度は1.7dl/gであった。
また、このシートから直径14.5mmΦの円形に切り出すことにより負極電極を得た。本負極を用いてコインセルによる充放電サイクル試験を行った。結果を図1に示した。
撹拌機および窒素導入管を備えた容器に、47.90g(0.13モル)のm−BPと、溶媒として250gのNMPとを装入した。m−BPが溶解するまで撹拌した後、36.33g(0.124モル)のBPDAを約30分かけて投入し、107gのNMPをさらに加えて、20時間攪拌してバインダー用樹脂組成物ワニス5を得た。得られたバインダー用樹脂組成物は、固形分濃度が18質量%であり、対数粘度は0.3dl/gであった。
また、このシートから直径14.5mmΦの円形に切り出すことにより負極電極を得た。本負極を用いてコインセルによる充放電サイクル試験を行った。結果を図1に示した。
撹拌機および窒素導入管を備えた容器に、38.2g(0.13モル)のBPDAと、溶媒として395gのNMPとを装入した。BPDAとNMPスラリーの撹拌下、0.09g(0.005モル)の水と、20gのNMPの混合溶液を30分かけて滴下し、室温下10時間撹拌した。その後、47.90g(0.13モル)のm−BPを数回に分けて、10分かけて添加した。さらに178gのNMPを加え、室温下24時間撹拌することで、固形分濃度12質量%のバインダー用樹脂組成物ワニス6を得た。対数粘度は1.4dl/gであった。
撹拌機および窒素導入管を備えた容器に、64.45g(0.2モル)のBTDAと、溶媒として206gのNMPとを装入した。BTDAとNMPスラリーの撹拌下、18.42g(0.4モル)のエタノールを約1時間かけて滴下し、室温下3時間撹拌した後、50度で3時間撹拌し、3、3’4、4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸ジエチルエステル溶液を得た。本溶液を撹拌しながら、73.69g(0.2モル)のm−BPを数回に分けて10分かけて添加し、205gのNMPを追加して室温下2時間撹拌し、バインダー用樹脂組成物ワニス7を得た。得られたバインダー用樹脂組成物ワニス7は、固形分濃度が23質量%であり、対数粘度は0.08dl/gであった。
Claims (12)
- 下記式(1)で表される3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を30モル%以上100モル%以下含有する芳香族テトラカルボン酸二無水物(A)と、0.05〜3倍モル量の水またはアルコールとを接触することによって得られる、酸無水物基の一部または全てが開環した芳香族テトラカルボン酸二無水物を含む変性体(A’)と、芳香族ジアミン化合物(B)を、(A’)/(B)の仕込みモル比が0.95〜1.05の条件下で反応させてなるポリアミド酸前駆体(C)からなるリチウムイオン電池バインダー用樹脂組成物。
- 前記芳香族ジアミン化合物(B)が、下記一般式(2)で表される芳香族ジアミン化合物(B1)を50モル%以上100モル%以下有していることを特徴とする請求項1に記載のリチウムイオン電池バインダー用樹脂組成物。
- 前記一般式(2)で表される芳香族ジアミン化合物(B1)が、下記一般式(3)で表される芳香族ジアミン化合物(B2)であることを特徴とする請求項2記載のリチウムイオン電池バインダー用樹脂組成物。
- 前記一般式(3)で表される芳香族ジアミン化合物(B2)が、下記式(4)で表される芳香族ジアミン化合物(B3)であることを特徴とする請求項3記載のリチウムイオン電池バインダー用樹脂組成物。
- 前記ポリアミド酸前駆体(C)を加熱、イミド化して得られるポリイミドフィルムのガラス転移温度が300℃以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のリチウムイオン電池バインダー用樹脂組成物。
- 下記式(1)で表される3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を30モル%以上100モル%以下含有する芳香族テトラカルボン酸二無水物(A)のスラリー溶液中に、水またはアルコールを撹拌下に滴下することによって、変性体(A’)のスラリー溶液を得る工程と、前記スラリー溶液中に、芳香族ジアミン化合物(B)を添加し、撹拌接触することで、ポリアミド酸前駆体溶液を得る工程を備えることを特徴とするリチウムイオン電池バインダー用樹脂組成物の製造方法。
- 負極活物質と、請求項1〜5のいずれかに記載のバインダー用樹脂組成物を含有する負極用合材ペーストであり、前記負極活物質として、炭素系活物質が、活物質全体量の50質量%以上含まれることを特徴とする負極用合材ペースト。
- 前記負極活物質が、ケイ素原子、スズ原子およびゲルマニウム原子から選ばれた少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項7記載の負極用合材ペースト。
- 前記合材ペーストが、芳香族テトラカルボン酸二無水物(A)と、芳香族ジアミン化合物(B)を反応させることによって得られるポリアミド酸(D)をさらに含み、前記芳香族テトラカルボン酸無水物(A)と、芳香族ジアミン化合物(B)のモル比が、98:100〜102:100の範囲であり、且つ、前記ポリアミド酸前駆体(C)と前記ポリアミド酸(D)の質量比率が、97:3〜70:30であることを特徴とする請求項7または8に記載の負極用合材ペースト。
- 請求項7〜9のいずれかに記載の負極用合材ペーストを集電体上に塗布し、加熱処理してイミド化反応することにより得られることを特徴とするリチウムイオン二次電池用電極。
- 前記加熱処理の温度が、ポリイミド樹脂のガラス転移温度を超える温度であることを特徴とする請求項10に記載のリチウム二次電池用電極。
- リチウムイオンを吸蔵・放出可能な正極及び負極、並びに電解質を備えたリチウムイオン二次電池であって、前記負極が、請求項11記載のリチウムイオン二次電池用電極であることを特徴とするリチウムイオン二次電池。
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