JP2012177010A - ポリフェニレンサルファイド樹脂微粒子分散液の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明は、PPS樹脂微粒子100質量部に対して10質量部未満の重量平均分子量2,000以上の高分子界面活性剤を使用してポリフェニレンサルファイド樹脂微粒子の機械的分散を行い、平均粒径が1μm以下で、安定なポリフェニレンサルファイド樹脂微粒子水分散液を製造する方法である。
【選択図】なし
Description
本発明におけるPPS樹脂とは、化学式(1)
本発明に用いるPPS樹脂微粒子は、安定な分散液が得られる限り制限はないが、平均粒径で1μm以下、特に平均粒径100〜500nmのPPS樹脂微粒子であることが好ましい。上記平均粒径は、後述のレーザー回折・散乱方式粒度分布測定装置により測定される値である。
本発明に用いるPPS樹脂微粒子は、上記PPS樹脂を下記の工程(a)、(b)を含む工程を経て製造することが好ましい。
(a)PPS樹脂を有機溶媒中で加熱してPPS樹脂の溶解液とする工程(溶解工程)
(b)前記溶解液をフラッシュ冷却してPPS樹脂の微粒子を析出させる工程(析出工程)。
溶解工程では、PPS樹脂を有機溶媒中で加熱して溶解させる。本発明で使用するPPS樹脂の形態は特に問わないが、具体的に例示するならば粉体、顆粒、ペレット、繊維、フィルム、成形品等があげられる。操作性及び溶解に要する時間を短縮させる観点から、粉末、顆粒、ペレットが望ましく、特に粉末のPPS樹脂が好ましい。ここで、目的とするPPS樹脂微粒子およびその分散液を水溶性塗料等に使用する場合等、共存する無機イオンによる装置の腐食を防止するために、無機イオンを含有していない粉末、顆粒、ペレット状のPPS樹脂が特に好ましい。
上記溶解工程によって溶解させたPPS樹脂溶解液をPPS樹脂微粒子を析出させる溶媒中にフラッシュ冷却してPPS樹脂微粒子を析出させる。本発明において、フラッシュ冷却とは、加熱・加圧下にある上記溶解液を、溶解工程で用いた有機溶媒の沸点以下(冷却下でも良い)・加圧されている圧力以下(減圧下でも良い)の他の容器(以下受槽と称する場合もある)中にノズルを介して噴出させて移液し、圧力差による冷却効果や潜熱による冷却効果を利用して急速に冷却する方法を指す。
PPS樹脂微粒子を単離する方法としては、ろ過、遠心分離、遠心ろ過等の従来公知の固液分離方法で行うことができるが、1μm未満のPPS樹脂微粒子を固液分離操作で効率よく単離するためには、凝集によって粒径を増大させた後、ろ過や遠心分離等の固液分離操作を行うことが望ましい。凝集によって粒径を増大させる方法としては、経時的に凝集させる自然凝集法、加熱による凝集法、塩析等の凝集剤を用いた凝集法などを用いることができ、これらの凝集法を用いることにより、工業的な固液分離方法に適した粒径の大きな凝集体を得ることができる。このときの凝集体の平均粒径としては5〜50μm(後述の測定方法による粒径)であることが好ましい。
上記ろ過・単離工程で得られたPPS樹脂微粒子をさらに機械的分散により再分散して、より微細なPPS樹脂微粒子分散液を得ることができる。ろ過・単離工程でPPS樹脂微粒子を乾燥させると分散されがたくなるため、分散によって安定かつ微細に粒子が分散したPPS樹脂微粒子分散液を得るためにはPPS樹脂微粒子を、溶媒もしくは分散媒を含んだ状態にしておくことが必要である。分散工程に用いるPPS樹脂微粒子は50質量%以上の溶媒もしくは分散媒を含んだ状態であることが好ましい。
本発明での平均1次粒径は日本電子製走査型電子顕微鏡JEOL JMS−6700Fで得られた画像(倍率:30,000倍)から任意の100個の粒子を選び、その最大長さを粒径として粒径を測長し、その平均値を平均1次粒径とした。
超音波分散は日本精機製超音波ホモジナイザー、US−300T(超音波発振器:定格出力300W、発振周波数19.5KHz±1KHz(周波数自動追尾型)、超音波変換器:φ26mmPZT(ボルト締電歪型)振動素子)を用い、所定の出力になるように調整の上超音波発振チップをPPS樹脂微粒子懸濁液中に接液して行った。
島津製作所製の示差熱・熱重量同時測定装置DTG−60/60Hを使用した。雰囲気ガス:空気、ガス流量:50ml/min、昇温条件:10℃/minの条件で熱分解温度を測定した。
〔溶解工程〕
9.8Lのオートクレーブ(溶解槽)にバルブ開閉ができ、配管の端が槽の中に位置するように連結管を装着した。また、フラッシュ冷却の受槽として、50Lの耐圧タンクに撹拌機、コンデンサー、ガス通気管を装着し、前記溶解槽の連結管の他端を槽の中に位置するように装着した。溶解槽にPPS樹脂粉末210g、NMP6,790gを入れ、インターナル連結管のバルブを密閉してから窒素置換した。撹拌しながら内温280℃まで上昇させた後、30分間撹拌した。このときの内圧(ゲージ圧)は0.4MPaであった。
前記受槽に水6,790gを入れて受槽に設置した連結管の先端を水中に入れた。受槽を氷冷し、窒素ガスを通気した。このとき受槽の温度は5℃であった。溶解槽の連結管のバルブを開き、溶解液を受槽水中にフラッシュ冷却した。このフラッシュ液中のPPS樹脂微粒子の平均粒径は、12μmであった。このフラッシュ液を0.38質量%酢酸マグネシウム水溶液5,600gへ投入して1時間撹拌した後、5時間静置して塩析した。静置後の平均粒径は30μmであった。塩析液を遠心脱水機で固液分離し、固形分をろ取した。その固形分をイオン交換水1,800g中に懸濁した後、遠心脱水機でろ取した。同様の操作を2回行い、含水PPS樹脂微粒子(920g、PPS固形分20質量%)を得た。平均1次粒径は110nmであった。
製造例1の含水PPS樹脂微粒子37.5gにPVP(東京化成株式会社製、ポリビニルピロリドン K30、粘度法による平均分子量40,000、カタログ値)の10質量%水溶液1.9g(PPS樹脂微粒子100質量部に対するPVPの量として2.5質量部)と水35.6gを加えて1400rpmで10分間撹拌した。超音波(出力120W)を用いて、その懸濁液を、PPS樹脂微粒子の平均粒径が400nm以下になるまで分散した。遠心分離(1000G、5分間)で粗粒を除去すると平均粒径200nmの分散液が得られた。該分散液は、室温で48時間静置したところ、凝集せず、安定であった。
製製造例1の含水PPS樹脂微粒子37.5gにPSS(アルドリッチ社製、ポリスチレンスルホン酸、重量平均分子量75,000、カタログ値)の18質量%水溶液1.0g(PPS樹脂微粒子100質量部に対するPSSの量として2.5質量部)と水36.5gを加えて1400rpmで10分間撹拌した。超音波(出力120W)を用いて、その懸濁液を、PPS樹脂微粒子の平均粒径が400nm以下になるまで分散した。遠心分離(1000G、5分間)で粗粒を除去すると平均粒径193nmの分散液が得られた。該分散液は、室温で48時間静置したところ、凝集せず、安定であった。
製製造例1の含水PPS樹脂微粒子37.5gにPVA(日本合成化学株式会社製、重量平均分子量35,000、分子量既知のプルランを標準物質とするGPC法で、GPCカラム:TSK−GEL α―4000 移動相:10mM LiBr水溶液/メタノール=8/2 流速:1.0mlの条件で保持時間と分子量の検量線を作製し、前記条件でのPVAの保持時間と検量から重量平均分子量を算出した)の5質量%水溶液7.5g(PPS樹脂微粒子100質量部に対するPVAの量として5質量部)と水30gを加えて1400rpmで10分間撹拌した。超音波(出力120W)を用いて、その懸濁液を、PPS樹脂微粒子の平均粒径が400nm以下になるまで分散した。遠心分離(1000G、5分間)で粗粒を除去すると平均粒径178nmの分散液が得られた。該分散液は、室温で48時間静置したところ、凝集せず、安定であった。
製製造例1の含水PPS樹脂微粒子37.5gにポリアクリル酸(日本触媒株式会社製、重量平均分子量10,000、標準物資としてポリアクリル酸を使用したGPC法、カタログ値))の45質量%水溶液0.4g(PPS樹脂微粒子100質量部に対するポリアクリル酸の量として2.5質量部)と水37.1gを加えて1400rpmで10分間撹拌した。超音波(出力120W)を用いて、その懸濁液を、PPS樹脂微粒子の平均粒径が400nm以下になるまで分散した。遠心分離(1000G、5分間)で粗粒を除去すると平均粒径231nmの分散液が得られた。該分散液は、室温で48時間静置したところ、凝集せず、安定であった。
耐熱性の簡易的な評価として熱分解温度が用いられる。実施例1,2,比較例1のPPS樹脂微粒子分散液1gを減圧濃縮してPPS樹脂と界面活性剤からなる固形分を得た。島津製作所製示差熱・熱重量同時測定装置DTG−60/60Hを用いて、その固形分の400℃での残存率を求めた(表1)。400℃までの加熱でPPSは、ほとんど分解しないが、通常、界面活性剤は分解するので、界面活性剤を20質量%を用いた分散剤では400℃での固形分残存率が85%まで低下した(比較例1)。これに対して界面活性剤2.5質量%使用の分散液では固形分の残存率が約98%であった。
製製造例1の含水PPS樹脂微粒子37.5gにポリオキシエチレンオレイルアルコール(エチレンオキシド24モル付加物、重量平均分子量1,300)の10質量%水溶液15g(PPS樹脂微粒子に対するポリオキシエチレンオレイルアルコールの量として20質量%)と水22.5gを加えて1400rpmで10分間撹拌した。超音波(出力120W)を用いて、その懸濁液を、PPS樹脂微粒子の平均粒径が400nm以下になるまで分散した。遠心分離(1000G、5分間)で粗粒を除去すると平均粒径188nmの分散液が得られた。該分散液は、室温で48時間静置したところ、凝集せず、安定であったが、固形分残存率が低かった。ポリオキシエチレンオレイルアルコールの使用量を減らして同様の操作を行ったところ、使用量を低減すると、分散液の安定性が低下する傾向にあった。
Claims (3)
- PPS樹脂微粒子100質量部に対して10質量部未満の重量平均分子量2,000以上の高分子界面活性剤を使用し、ポリフェニレンサルファイド樹脂微粒子を水に機械的分散させることを特徴とするポリフェニレンサルファイド樹脂微粒子分散液の製造方法。
- 重量平均分子量2,000以上の高分子界面活性剤がポリビニルピロリドン、ポリスチレンスルホン酸、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリエチレンイミン、ポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、ポリアクリル酸である請求項1記載のポリフェニレンサルファイド樹脂微粒子水分散液の製造方法。
- 機械的分散が超音波分散装置、ビーズミル装置、コロイドミル装置、湿式微粒化装置で行われることを特徴とする請求項2記載のポリフェニレンサルファイド樹脂微粒子分散液の製造方法。
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