JPWO2015111546A1 - ポリフェニレンスルフィド樹脂微粒子、その製造方法および分散液 - Google Patents

ポリフェニレンスルフィド樹脂微粒子、その製造方法および分散液 Download PDF

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Abstract

均一で、加熱時のガス発生量の少ない、ポリフェニレンスルフィド樹脂微粒子、その製造方法、およびその分散液を提供する。下記式(1)で表される加熱時の重量減少率ΔWrが0.18%以下のポリフェニレンスルフィド樹脂を原料として、下記の工程(a)、(b)を含む製造方法である。(a)ポリフェニレンスルフィド樹脂の有機溶媒溶解液とする工程(溶解工程)(b)フラッシュ晶析してポリフェニレンスルフィド樹脂の微粒子を析出させる工程(析出工程)ΔWr=(W1−W2)/W1×100(%)・・・(1)(常圧の非酸化性雰囲気下で50℃から330℃以上の任意温度まで昇温速度20℃/分で熱重量分析を行った際に、100℃到達時点の試料重量(W1)を基準とした330℃到達時の試料重量(W2)から求められる値)

Description

本発明は、新規なポリフェニレンスルフィド樹脂微粒子、その製造方法、分散液に関する。
ポリフェニレンスルフィド(以下、PPSと略すこともある)樹脂は、優れた耐熱性、耐薬品性、耐有機溶媒性、電気絶縁性などエンジアニリングプラスチックとして好適な性質を有しており、射出成形、押出成形用途を中心として各種電気・電子部品、機械部品及び自動車部品などに使用されている。このような優れた各種特性を持ったPPS樹脂は、耐熱性が要求される塗料分野、接着材料分野、自動車分野、電子材料分野などにおいての需要が高く、PPS樹脂微粒子、その分散液を得る方法として下記に示す製法が報告されている。
特許文献1では、無機塩の存在下、PPS樹脂をN-メチル−2−ピロリジノン(以下、NMPと略すこともある)等の有機溶媒へ溶解させた後除冷し、得られたPPS樹脂をビーズミル等で機械的粉砕することによりPPS樹脂微粒子分散液を得る方法が開示されている。この方法ではレーザー回析・散乱方式での平均粒径(以下、単に平均粒径と略すことがある)が1μm以下のPPS樹脂微粒子分散液が得られることが開示されている。
特許文献2では、界面活性剤存在下、PPS樹脂をNMP等の有機溶媒へ溶解させた後、除冷し、得られたPPS樹脂をビーズミル等で機械的粉砕することにより平均粒径1μm以下のPPS樹脂微粒子分散液を得る方法が開示されている。
特許文献3には、PPS樹脂をNMP等の有機溶媒に溶解させた後、フラッシュ晶析させることにより微細なPPS樹脂微粒子を得、そのPPS樹脂微粒子を機械的粉砕もしくは機械的分散することにより、平均粒径1μm以下のPPS樹脂微粒子を製造する方法、およびその分散液を得る方法が記載されている。
特許文献4には、PPS樹脂を溶媒に溶解した後、析出させ、粒径数μmのPPS樹脂微粒子を得る方法が報告されている。
これらの報告では、N−アルキルアミド溶媒中、ジハロゲン芳香族化合物とアルカリ金属硫化物を通常用いられる方法によって合成されたPPS樹脂を原料に使用する。例えば、特公昭45−3368号公報に記載された製造方法により得られる比較的低分子量のPPS樹脂およびこれを酸素雰囲気下において加熱あるいは過酸化物等の架橋剤を添加して、加熱することにより高重合度化して得られるPPS樹脂が用いられる。また、特公昭52−12240号公報に記載された製造方法による本質的に線状で高分子量のPPS樹脂が用いられている。
しかし、このようなPPS樹脂には少量のPPS樹脂オリゴマーが含まれていることから射出成形時の高剪断発熱によるガス発生や成形性低下の問題がある。また、100ppm以上のアルカリ金属が含有されていることから電子材料分野で、高度な電気絶縁性が要求される用途では部材の要求特性を満たさない問題が生じる。
一方、特許文献5には、PPS樹脂オリゴマーやアルカリ金属含有量の少ないPPS樹脂を用いたPPS樹脂微粒子の製造法が記載されている。しかし、特許文献5記載のPPS樹脂微粒子は、非球形状で、且つ平均粒径が1.1μm〜8.6μmであるため、分散安定性が十分でないという問題があった。
分散安定性を十分に保つには、PPS樹脂微粒子の平均粒径が1μm以下で、且つ粒子の形状が球状であることが好ましい。また、塗料分野、接着材料分野、自動車分野、電子材料分野では、部材の軽量化、薄膜化の要求から平均粒径が1μm以下で、分散安定性に優れた耐熱性粒子が求められている。
特開2009−173878号公報 特開2009−242499号公報 特開2010−106232号公報 特開2007−154166号公報 特開2008−231250号公報
従来の技術では、得ることが出来なかった、平均粒径が1μm以下であり、かつ加熱時のガス発生量が少ないPPS樹脂微粒子を得ることが課題である。本発明により得られるPPS樹脂微粒子は、さらに、平均一次粒径が細かく、均一なものとすることができる。
そこで鋭意検討した結果、以下に示す本発明に至った。
即ち、本発明は、以下のとおりである。
(I)
ポリフェニレンスルフィド樹脂の、数平均分子量(Mn)と重量平均分子量(Mw)の比で定義される分散度(Mw/Mn)が2.5以下、該樹脂からなる微粒子の平均1次粒径が90nm以上300nm以下であることを特徴とするポリフェニレンスルフィド樹脂微粒子。
(II)
(I)に記載のポリフェニレンスルフィド樹脂微粒子を分散媒に分散させたポリフェニレンスルフィド樹脂微粒子分散液。
(III)
(I)に記載のポリフェニレンスルフィド樹脂微粒子の製造方法であって、下記式(1)で表される加熱時の重量減少率ΔWrが0.18%以下のポリフェニレンスルフィド樹脂を原料として、下記の工程(a)、(b)を含むポリフェニレンスルフィド樹脂微粒子の製造方法。
(a)ポリフェニレンスルフィド樹脂を有機溶媒中で加熱してポリフェニレンスルフィド樹脂の溶解液とする工程(溶解工程)
(b)前記溶解液をフラッシュ晶析してポリフェニレンスルフィド樹脂の微粒子を析出させる工程(析出工程)
ΔWr=(W1−W2)/W1×100(%)・・・(1)
(ここでΔWrは重量減少率(%)であり、常圧の非酸化性雰囲気下で50℃から330℃以上の任意温度まで昇温速度20℃/分で熱重量分析を行った際に、100℃到達時点の試料重量(W1)を基準とした330℃到達時の試料重量(W2)から求められる値である。)
(IV)
原料とする前記ポリフェニレンスルフィド樹脂が下記一般式(I)で表わされる環式ポリフェニレンスルフィド
Figure 2015111546
(ここで、pは4〜20の整数であり、前記(B)成分は異なるmを有する複数種類の環式ポリフェニレンスルフィドの混合物でもよい。)
を少なくとも50重量%以上含み、且つ重量平均分子量が10,000未満のポリフェニレンスルフィドプレポリマーを加熱して重量平均分子量10,000以上の高重合度体に転化させることにより得られたポリフェニレンスルフィド樹脂である(III)に記載のポリフェニレンスルフィド樹脂微粒子の製造方法。
(V)
(III)に記載のポリフェニレンスルフィド樹脂微粒子の製造方法で得られたポリフェニレンスルフィド樹脂微粒子を分散媒に分散させるポリフェニレンスルフィド樹脂微粒子分散液の製造方法。
本発明により、ポリフェニレンスルフィド樹脂の本来有する特性を損なうことなく、平均粒径が1μm以下、形状が球形で、分散安定性にも優れ、ポリフェニレンスルフィド樹脂の分散度が2.5以下、アルカリ金属含有量が100ppm未満のポリフェニレンスルフィド樹脂微粒子を簡便に得ることができるようになり、加熱時ガス発生量も少なく、広く産業上有用な材料となりうる。
(A)原料として用いるPPS樹脂
本発明の原料となるPPS樹脂とは、式、−(Ar−S)−の繰り返し単位を主要構成単位とする、好ましくは当該繰り返し単位を80モル%以上含有するホモポリマーまたはコポリマーである。Arとしては下記の式(a)〜式(k)などで表される単位などがあるが、中でも式(a)が特に好ましい。
Figure 2015111546
(R1,R2は水素、炭素原子数1〜12のアルキル基、炭素原子数1〜12のアルコキシ基、炭素数6〜24のアリーレン基、ハロゲン基から選ばれた置換基であり、R1とR2は同一でも異なっていてもよい)
この繰り返し単位を主要構成単位とする限り、下記の式(l)〜式(n)などで表される少量の分岐単位または架橋単位を含むことができる。これら分岐単位または架橋単位の共重合量は、−(Ar−S)−の単位1モルに対して0〜1モル%の範囲であることが好ましい。
Figure 2015111546
また、本発明の原料となるPPS樹脂は、上記繰り返し単位を含むランダム共重合体、ブロック共重合体及びそれらの混合物のいずれかであってもよい。
これらの代表的なものとして、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンスルフィドスルホン、ポリフェニレンスルフィドケトン、これらのランダム共重合体、ブロック共重合体及びそれらの混合物などが挙げられる。特に好ましいPPS樹脂として、ポリマーの主要構成単位としてp−フェニレンスルフィド単位
Figure 2015111546
を80モル%以上、特に90モル%以上含有するPPS樹脂が挙げられる。
PPS樹脂の分子量(重量平均分子量)の下限値は、10,000以上の範囲が選択され、好ましくは15,000以上で、より好ましくは18,000以上である。また、PPS樹脂の分子量(重量平均分子量)の上限値は、100,000以下の範囲が選択され、好ましくは50,000以下であり、より好ましくは30,000以下である。PPS樹脂の重量平均分子量の下限値が10,000未満では、加熱時にガス発生量が多くなるなどの得られる微粒子の特性が損なわれる。一方で重量平均分子量の上限値が100,000を超えると、有機溶媒への溶解性が低下するなどの可能性がある。PPS樹脂の重量平均分子量がより小さい方が得られる微粒子の高結晶化による耐熱性向上効果が期待できる。
PPS樹脂の分子量分布の広がり、即ち重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(重量平均分子量/数平均分子量)で表される分散度(Mw/Mn)は2.5以下が好ましく、2.3以下がより好ましく、2.1以下が更に好ましく、2.0以下がよりいっそう好ましい。分散度の下限は理論上1であり、通常1.5以上である。分散度が2.5以下の場合は、PPS樹脂に含まれる低分子成分の量が少なくなる傾向が強くなる。PPS樹脂に含まれる低分子成分の量が少ないと、得られるPPS樹脂微粒子の、加熱した際のガス発生量の減少、及び溶剤と接した際の溶出成分量の減少等の好ましい傾向を示す。なお、前記重量平均分子量及び数平均分子量は、例えば示差屈折率検出器を具備したSEC(サイズ排除クロマトグラフィー)を使用して求めることができる。
また、PPS樹脂の溶融粘度に特に制限はないが、通常、溶融粘度が5〜10,000Pa・s(300℃、剪断速度1,000/秒)の範囲が好ましい範囲として例示でき、この範囲の溶融粘度を有するPPS樹脂を用いることで、得られる微粒子は加工性に優れる傾向にある。
PPS樹脂に含まれる不純物であるアルカリ金属含有量に特に制限はないが、得られる微粒子を電気絶縁性が要求される半導体部材用途に展開する観点では、アルカリ金属含量は重量比で700ppm未満が好ましい範囲として例示できる。アルカリ金属含有量を700ppm未満とすることで、金属不純物による電気絶縁性低下を防ぐことができるので好ましい。電気絶縁性低下の観点から、PPS樹脂のアルカリ金属含有量は、重量比で500ppm未満とすることがより好ましく、200ppm未満とすることが更に好ましく、100ppm未満とすることが特に好ましい。ここで本発明の原料となるPPS樹脂のアルカリ金属含有量とは、例えばPPS樹脂を電気炉等を用いて焼成した残渣である灰分中のアルカリ金属量から算出される値であり、前記灰分を例えばイオンクロマト法や原子吸光法により分析することで定量することができる。
なお、アルカリ金属とは周期律表第IA属のリチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、フランシウムのことを指すが、本発明の原料となるPPS樹脂は、ナトリウム以外のアルカリ金属を含まないことが好ましい。ナトリウム以外のアルカリ金属を含む場合、得られるPPS樹脂微粒子の電気特性や熱的特性に悪影響を及ぼす傾向にある。また、得られるPPS樹脂微粒子が各種溶剤と接した際の溶出金属量が増大する要因になる可能性があり、特にPPS樹脂がリチウムを含む場合にこの傾向が強くなる。ところで、各種金属種の中でも、アルカリ金属以外の金属種、たとえばアルカリ土類金属や遷移金属と比較して、アルカリ金属はPPS樹脂の電気特性、熱的特性及び金属溶出量への影響が強い傾向にある。よって、各種金属種の中でも、特にアルカリ金属含有量を前記範囲にすることで、得られるPPS樹脂微粒子の品質を向上することができると推測している。
本発明の原料となるPPS樹脂の大きな特徴は、加熱した際の重量減少率が下記式(1)を満たすことである。
△Wr=(W1−W2)/W1×100≦0.18(%) ・・・(1)
ここで△Wrは重量減少率(%)であり、常圧の非酸化性雰囲気下で50℃から330℃以上の任意の温度まで昇温速度20℃/分で熱重量分析を行った際に、100℃到達時点の試料重量(W1)を基準とした330℃到達時の試料重量(W2)から求められる値である。
原料となるPPS樹脂の重量減少率△Wrは0.18%以下であり、0.12%以下であることが好ましく、0.10%以下であることが更に好ましく、0.085%以下であることがよりいっそう好ましい。ΔWrは小さい方が好ましいが、通常の下限は0.001%である。△Wrが前記範囲を超える場合は、たとえば得られるPPS樹脂微粒子を加工する際に発生ガス量が多いといった問題が発生しやすくなる傾向がある。公知の製造法によって得られる従来のPPS樹脂の△Wrは0.18%を超えるが、本発明の原料となるPPS樹脂は、従来のPPS樹脂と異なり、分子量分布が狭く、不純物含有量が極めて少ないため△Wrの値が著しく低下するものと推測している。
△Wrは一般的な熱重量分析によって求めることが可能であるが、この分析における雰囲気は常圧の非酸化性雰囲気を用いる。非酸化性雰囲気とは、試料が接する気相における酸素濃度が5体積%以下、好ましくは2体積%以下、更に好ましくは酸素を実質的に含有しない雰囲気、即ち窒素、ヘリウム、アルゴン等の不活性ガス雰囲気であることを指す。この中でも、経済性の面から窒素雰囲気が特に好ましい。また、常圧とは大気の標準状態近傍における圧力のことであり、約25℃近傍の温度、絶対圧で101.3kPa近傍の大気圧条件のことである。測定の雰囲気が前記以外では、測定中にPPS樹脂の酸化等が起こったり、実際のPPS樹脂の加工で用いられる雰囲気と大きく異なるなど、PPS樹脂の実際の使用条件に即した測定になり得ない可能性が生じる。
また、△Wrの測定においては、50℃から330℃以上の任意の温度まで昇温速度20℃/分で昇温して熱重量分析を行う。好ましくは50℃で1分間ホールドした後に昇温速度20℃/分で昇温して熱重量分析を行う。この温度範囲はPPS樹脂を実使用する際に頻用される温度領域であり、また、固体状態のPPS樹脂を溶融させ、その後、任意の形状に成形する際に頻用される温度領域でもある。このような実使用温度領域における重量減少率は、実使用時のPPS樹脂からのガス発生量や成形加工の際の口金や金型などへの付着成分量などに関連する。従って、このような温度範囲における重量減少率が少ないPPS樹脂の方が品質の高い優れたPPS樹脂であるといえる。△Wrの測定は約10mg程度の試料量で行うことが望ましく、またサンプルの形状は約2mm以下の細粒状であることが望ましい。
PPS樹脂の加熱時の重量減少率が前記式(1)を満足するようなきわめて優れた熱重量特性を発現する理由は現時点定かではないが、PPS樹脂はPPS樹脂成分以外の不純物成分の含有量が極めて少ないことが、従来のPPS樹脂では到達し得なかった著しく少ない重量減少率を発現するものと推測している。
このように前記式(1)の特徴を有するPPS樹脂は、後述するように環式ポリフェニレンスルフィド(以下、環式PPSと略することがある)を含むポリフェニレンスルフィドプレポリマー(以下、PPSプレポリマーと略することがある)を加熱して高重合度体に転化させることによって製造することが好ましい。高重合度体への転化に関しては後で詳述するが、PPSプレポリマーを高重合度体へ転化せしめる操作に処した後に得られるPPS樹脂に含有される環式PPSの重量分率が40重量%以下、好ましくは25重量%以下、より好ましくは15重量%以下であるPPS樹脂は、前述の△Wrの値が特に小さくなるため好ましい。環式PPSの重量分率の値が前記範囲を超える場合には△Wrの値が大きくなる傾向にある。この原因は現時点定かではないが、PPS樹脂の含有する環式PPSが加熱時に一部揮散するためと推察している。
なお、本発明の原料となるPPS樹脂を加熱した際の重量減少率が前記式(1)を満たす場合、PPS樹脂の重量平均分子量、分散度、およびアルカリ金属含有量から選択される条件は、必ずしも前記した範囲内である必要はない。前述したように環式PPSを一定量含んでいるPPS樹脂などでも前記式(1)の熱重量特性を満たすことが可能である。ただし、PPS樹脂の重量平均分子量、分散度、およびアルカリ金属含有量から選択される条件が前記した範囲内である場合には、加熱した際の重量減少が特に少なくなる傾向にあり望ましい。
上述のように本発明の原料として用いるPPS樹脂は、昇温を伴う加熱時の重量減少率△Wrが少ないという優れた特徴を有するが、任意のある一定温度でPPS樹脂を保持した際の、加熱の前後を比較した重量の減少率(加熱減量)も少ないという優れた特徴を有する傾向がある。
(B)原料として用いるPPS樹脂の製造方法
本発明の原料として用いるPPS樹脂は、環式PPSを少なくとも50重量%以上含み、且つ重量平均分子量が10,000未満のPPSプレポリマーを加熱して重量平均分子量10,000以上の高重合度体に転化させることによって製造する方法が例示できる。この方法によれば、容易に、前述した特性を有するPPS樹脂を得ることができる。
<環式PPS>
環式PPSとしては、下記一般式(I)で表される環式PPSを使用することができる。
Figure 2015111546
ここで、pは4〜20の整数であり、用いる環式PPSは、異なるpを有する複数種類の環式PPSの混合物でもよい。
また、環式PPSは、単一の繰り返し数を有する単独化合物、異なる繰り返し数を有する環式PPSの混合物のいずれでもよい。ただし、異なる繰り返し数を有する環式PPSの混合物の方が単一の繰り返し数を有する単独化合物よりも溶融解温度が低い傾向があり、異なる繰り返し数を有する環式PPSの混合物の使用は後述する高重合度体への転化を行う際の温度をより低くできるため好ましい。
<PPSプレポリマー>
前記した環式PPSを含むPPSプレポリマーを加熱して高重合度体に転化させることを特徴とする。ここで用いるPPSプレポリマーは、環式PPSを少なくとも50重量%以上含むものであり、好ましくは70重量%以上、より好ましくは80重量%以上、更に好ましくは90重量%以上含むものとすればよい。また、PPSプレポリマーにおける環式PPSの含有率の上限値には特に制限は無いが、98重量%以下が好ましい範囲として例示できる。通常、PPSプレポリマーにおける環式PPSの重量比率が高いほど、加熱後に得られるPPS樹脂の重合度および溶融粘度が高くなる傾向にある。すなわち、本発明の原料となるPPS樹脂の製造法においては、PPSプレポリマーにおける環式PPSの存在比率を調整することで、得られるPPS樹脂の重合度および溶融粘度を容易に調整することが可能である。また、PPSプレポリマーにおける環式PPSの重量比率が前記した上限値を超えると、PPSプレポリマーの溶融解温度が高くなる傾向にあるため、PPSプレポリマーにおける環式PPSの重量比率を前記範囲にすることは、PPSプレポリマーを高重合度体へ転化する際の温度をより低くできるため好ましい。
PPSプレポリマーにおける環式PPS以外の成分は、線状のポリフェニレンスルフィドオリゴマー(以下、PPSオリゴマーと略することがある)であることが特に好ましい。ここで線状のPPSオリゴマーとは、式、−(Ar−S)−の繰り返し単位を主要構成単位としており、好ましくは当該繰り返し単位を80モル%以上含有するホモオリゴマーまたはコオリゴマーである。Arとしては前記した式(a)〜式(k)などであらわされる単位などがあるが、なかでも式(a)が特に好ましい。線状のPPSオリゴマーはこれら繰り返し単位を主要構成単位とする限り、前記した式(l)〜式(n)などで表される少量の分岐単位または架橋単位を含むことができる。これら分岐単位または架橋単位の共重合量は、−(Ar−S)−の単位1モルに対して0〜1モル%の範囲であることが好ましい。また、線状のPPSオリゴマーは上記繰り返し単位を含むランダム共重合体、ブロック共重合体及びそれらの混合物のいずれかであってもよい。
環式PPS以外の成分の代表的なものとして、ポリフェニレンスルフィドオリゴマー、ポリフェニレンスルフィドスルホンオリゴマー、ポリフェニレンスルフィドケトンオリゴマー、これらのランダム共重合体、ブロック共重合体及びそれらの混合物などが挙げられる。特に好ましい線状のPPSオリゴマーとしては、ポリマーの主要構成単位としてp−フェニレンスルフィド単位を80モル%以上、特に好ましくは90モル%以上含有する線状のPPSオリゴマーが挙げられる。
PPSプレポリマーが含有する線状ポリフェニレンスルフィド(以下、線状PPSと略することがある)量は、PPSプレポリマーが含有する環式PPSよりも少ないことが特に好ましい。即ち、PPSプレポリマー中の環式PPSと線状PPSの重量比(環式PPS/線状PPS)は1以上であることが好ましく、2.3以上がより好ましく、4以上が更に好ましく、9以上がよりいっそう好ましい。このようなPPSプレポリマーを用いることで、重量平均分子量が10,000以上のPPS樹脂を容易に得ることが可能になる。従って、PPSプレポリマー中の環式PPSと線状PPSの重量比の値が大きいほど、本発明の原料となるPPS樹脂の好ましい製造方法により得られるPPS樹脂の重量平均分子量は大きくなる傾向にある。よってこの重量比に特に上限は無いが、該重量比が100を越えるPPSプレポリマーを得るためには、PPSプレポリマー中の線状PPS含有量を著しく低減する必要があり、これには多大の労力を要する。本発明の原料として用いるPPS樹脂の好ましい製造方法によれば、該重量比が100以下のPPSプレポリマーを用いても十分な高分子量PPS樹脂を容易に得ることが可能である。
PPSプレポリマーの分子量の上限値は、重量平均分子量で10,000未満であり、5,000以下が好ましく、3,000以下が更に好ましい。一方、下限値は、重量平均分子量で300以上が好ましく、400以上が好ましく、500以上が更に好ましい。
PPS樹脂は高純度であることが特徴であり、製造に用いられるPPSプレポリマーも高純度であることが好ましい。したがって、PPSプレポリマーにおいて、不純物であるアルカリ金属含有量は、重量比で700ppm未満が好ましく、500ppm未満がより好ましく、200ppm未満が更に好ましく、100ppm未満が特に好ましい。PPS樹脂の製造に際し、PPSプレポリマーを加熱して高重合度体に転化する方法を用いる場合、得られるPPS樹脂のアルカリ金属含有量は、通常、PPSプレポリマーのアルカリ金属含有量に依存するため、PPSプレポリマーのアルカリ金属含有量が前記範囲を超えると、得られるPPS樹脂のアルカリ金属含有量が本発明の原料となるPPS樹脂のアルカリ金属含有量の範囲を超える恐れが生じる。 また、PPSプレポリマーを加熱して高重合度体に転化させる反応は、反応系内のアルカリ金属量が、重量比で700ppm未満、好ましくは500ppm以下、より好ましくは300ppm以下、更に好ましくは100ppm以下である条件で行うことが望ましい。さらに、PPSプレポリマーを加熱して高重合度体に転化させる反応は、反応系内の全イオウ重量に対するジスルフィド重量が、1重量%未満、好ましくは0.5重量%未満、より好ましくは0.3重量%未満、更に好ましくは0.1重量%未満である条件で行うことが好ましい。
高重合度体に転化させる反応を促進させる目的で、触媒成分としてアルカリ金属および/または他の金属成分を含有するイオン性化合物やラジカル発生能を有する化合物を用いることも可能である。ただし、上記触媒成分を用いた場合には、前記したPPS樹脂を加熱した際の重量減少が増加する傾向にあることから、このような触媒成分は使用しないことが望ましい。触媒成分としてイオン性化合物を用いる場合には、イオン性化合物としては、チオフェノールのナトリウム塩、硫黄のアルカリ金属塩などが例示できる。ラジカル発生能を有する化合物を用いる場合には、ラジカル発生能を有する化合物としては、例えば加熱により硫黄ラジカルを発生する化合物が例示でき、より具体的にはジスルフィド結合を含有する化合物が例示できる。
一方で、0価遷移金属化合物を触媒成分として用いる場合には、イオン性化合物やラジカル発生能を有する化合物を触媒成分として用いる場合とは異なり、得られたPPS樹脂の加熱時の重量減少増加は抑制される傾向にある。このことから、高重合度体に転化させる反応を促進させる目的で触媒成分を用いる場合は、0価遷移金属化合物を用いることが望ましい。
<PPSプレポリマーの製造方法>
前記PPSプレポリマーを得る方法としては例えば以下の方法が挙げられる。
(1)少なくともポリハロゲン化芳香族化合物、スルフィド化剤および有機溶媒を含有する混合物を加熱してPPSを重合することにより、80meshふるい(目開き0.125mm)で分離される顆粒状PPS樹脂、重合で生成したPPS成分であって前記顆粒状PPS樹脂以外のPPS成分(PPSオリゴマーと称する)、有機溶媒、水、およびハロゲン化アルカリ金属塩を含む混合物を調製する。その後、この混合物に含まれるPPSオリゴマーを分離回収し、これを精製操作に処すことでPPSプレポリマーを得る方法。
(2)少なくともポリハロゲン化芳香族化合物、スルフィド化剤および有機溶媒を含有する混合物を加熱してポリフェニレンスルフィドを重合する。重合終了後に公知の方法によって有機溶媒の除去を行い、PPS、水、およびハロゲン化アルカリ金属塩を含む混合物を調製する。これを公知の方法で精製することにより、PPSプレポリマーを含むPPSを得て、得られたPPSを貧溶媒を用いて再沈させて、PPSプレポリマーを回収する方法。
<PPSプレポリマーの高重合度体への転化>
PPS樹脂は、前記PPSプレポリマーを加熱して高重合度体に転化させる方法によって製造することが好ましい。この加熱の温度は前記PPSプレポリマーが溶融解する温度であることが好ましく、このような温度条件であれば特に制限は無い。加熱温度がPPSプレポリマーの溶融解温度未満ではPPS樹脂の高重合度体を得るのに長時間が必要となる傾向がある。なお、PPSプレポリマーが溶融解する温度は、PPSプレポリマーの組成や分子量、また、加熱時の環境により変化するため、一意的に示すことはできないが、例えばPPSプレポリマーを示差走査型熱量計で分析することで溶融解温度を把握することが可能である。但し、加熱時の温度が高すぎると、PPSプレポリマー間、加熱により生成した高重合度体間、及び高重合度体とPPSプレポリマー間などでの架橋反応や分解反応に代表される好ましくない副反応が生じやすくなる傾向にあり、得られるPPS樹脂の特性が低下する場合がある。そのため、このような好ましくない副反応が顕著に生じる温度は避けることが望ましい。加熱温度としては180℃以上が例示でき、好ましくは200℃以上、より好ましくは250℃以上である。また、加熱温度としては400℃以下が例示でき、好ましくは380℃以下、より好ましくは360℃以下である。
前記加熱を行う時間は使用するPPSプレポリマーにおける環式PPSの含有率、p数、分子量などの各種特性、および加熱の温度等の条件によって異なるため一様には規定できないが、前記した好ましくない副反応がなるべく起こらないように設定することが好ましい。加熱時間としては0.05時間以上が例示でき、0.1時間以上が好ましい。また、加熱時間としては100時間以下が例示でき、20時間以下が好ましく、10時間以下がより好ましい。加熱時間が0.05時間未満では、PPSプレポリマーの高重合度体への転化が不十分になりやすい。また、加熱時間が100時間を超えると、好ましくない副反応によってPPS樹脂の特性への悪影響が顕在化する可能性が高くなる傾向にある。
PPSプレポリマーの加熱による高重合度体への転化は、通常溶媒の非存在下で行うが、溶媒の存在下で行うことも可能である。溶媒としては、PPSプレポリマーの加熱による高重合度体への転化の阻害や生成した高重合度体の分解や架橋など好ましくない副反応を実質的に引き起こさないものであれば特に制限はない。溶媒としては、例えばNMP、ジメチルホルムアミド、およびジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホンなどの極性溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、およびアセトフェノンなどのケトン系溶媒、ジメチルエーテル、ジプロピルエーテル、およびテトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒、クロロホルム、塩化メチレン、トリクロロエチレン、2塩化エチレン、ジクロルエタン、テトラクロルエタン、およびクロルベンゼンなどのハロゲン系溶媒、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなどのアルコール系溶媒、フェノール、クレゾールなどのフェノール系溶媒、ベンゼン、トルエン、およびキシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒などがあげられる。これらの溶媒は1種類または2種類以上の混合物として使用することができる。
前記PPSプレポリマーの加熱による高重合度体への転化は、通常の重合反応装置を用いる方法で行うのはもちろんのこと、成形品を製造する型内で行ってもよいし、押出機や溶融混練機を用いて行うなど、加熱機構を具備した装置であれば特に制限無く行うことが可能であり、バッチ方式、連続方式など公知の方法が採用できる。PPSプレポリマーの加熱による高重合度体への転化の際の雰囲気は非酸化性雰囲気で行うことが好ましく、減圧条件下で行うことも好ましい。また、減圧条件下で行う場合、反応系内の雰囲気を一度非酸化性雰囲気としてから減圧条件にすることが好ましい。これによりPPSプレポリマー間、加熱により生成した高重合度体間、及び高重合度体とPPSプレポリマー間などで架橋反応や分解反応等の好ましくない副反応の発生を抑制できる傾向にある。また、減圧条件下とは、反応を行う系内の圧力が大気圧よりも低いことを指し、上限として50kPa以下が好ましく、20kPa以下がより好ましく、10kPa以下が更に好ましい。系内の圧力の下限としては、0.1kPa以上が例示できる。減圧条件の圧力が好ましい上限を越える場合は、架橋反応など好ましくない副反応が起こりやすくなる傾向にある。一方、減圧条件の圧力が好ましい下限未満では、反応温度によっては、PPSプレポリマーに含まれる分子量の低い環式PPSが揮散しやすくなる傾向にある。
(C)PPS樹脂微粒子の製造方法
本発明におけるPPS樹脂微粒子は、前記PPS樹脂を下記の工程(a)、(b)を含む工程を経て製造することができる。
(a)PPS樹脂を有機溶媒中で加熱してPPS樹脂の溶解液とする工程(溶解工程)
(b)前記溶解液をフラッシュ晶析してPPS樹脂微粒子を析出させる工程(析出工程)。
さらに、下記(c)の工程を経てPPS樹脂微粒子分散液を製造することができる。
(c)得られるPPS樹脂微粒子を分散媒に分散させる工程(分散工程)
分散媒には、界面活性剤を含んでいてもよく、PPS樹脂微粒子を分散媒に分散させた懸濁液を機械的分散させる工程ことが好ましい。
[溶解工程]
溶解工程では、PPS樹脂を有機溶媒中で加熱して溶解させる。本工程で使用する有機溶媒は、PPS樹脂が溶解する溶媒であれば何れも使用できる。具体的には、クロロホルム等のアルキルハロゲン化物、o-ジクロロベンゼンや1−クロロナフタレン等の芳香族ハロゲン化物、NMP等のN−アルキルピロリジノン類、N−メチル−ε−カプロラクタム等のN−アルキルカプロラクタム類、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N、N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド(以下、DMFと略すこともある)、ヘキサメチルリン酸トリアミド、ジメチルスルホキシド(以下、DMSOと略することもある)、ジメチルスルホン、テトラメチレンスルホン等の極性溶媒の中から少なくとも一種選ばれる溶媒が挙げられる。この中でもPPS樹脂の溶解度や水分散液製造の際の溶媒交換の容易さから特にNMPが好ましい。
上記有機溶媒に対するPPS樹脂の上限仕込濃度は、所定温度で未溶解PPS樹脂や溶融状態のPPS樹脂が存在すると、フラッシュ晶析後、粗粒あるいは塊状物となって、フラッシュ晶析した液中に存在するが、これらはろ過や遠心分離等の操作により容易に除去できるので特に制限はない。通常は有機溶媒とPPS樹脂の合計100重量部に対し、PPS樹脂濃度を20重量部以下、好ましくは15重量部以下、さらに好ましくは10重量部以下である。PPS樹脂濃度が高くなるにつれて平均1次粒径が大きくなるが、PPS樹脂濃度が高すぎると粒子同士が融着する傾向がある。PPS樹脂粒子を強酸、強塩基、高温等の過激な条件で使用する場合、PPS樹脂が分解する可能性があるので、分解されにくくするためには粒子の比表面積が小さいことが好ましく、その観点から粒径の大きな粒子が好ましい。粒径の大きな粒子を得るためには、(i)PPS樹脂の仕込濃度を上げる、(ii)析出工程での受槽のNMP/水比を大きくする、(iii)析出工程での受槽の温度を上げる、ことが好ましい。このような条件では、後述する平均1次粒径150nm〜300nmで球形度が0.85以上の球状の微粒子が得られる。例えば、PPS樹脂濃度8重量%、受槽NMP/水=2/1、フラッシュ晶析前の受槽温度110℃では、平均1次粒径205nm、球形度0.900の球状のPPS樹脂微粒子が得られる。
PPS樹脂濃度が高いと平均1次粒径が大きくなるが、球形度が小さくなる。一方、PPS樹脂濃度を低くすると平均1次粒径が小さく、かつ真球に近い球形度が大きな粒子が得られるがPPS樹脂濃度が低いと生産性が悪くなるので、PPS樹脂の下限仕込濃度は0.1重量部以上が好ましい。
本発明においては前記有機溶媒にPPS樹脂を仕込み、加熱溶解させた後、PPS樹脂溶解液を、後述する析出工程においてPPS樹脂微粒子を析出させる他の容器内の析出用溶媒中にフラッシュ晶析する。
溶解工程の槽の雰囲気は、PPS樹脂の分解、劣化を抑制するため、更には安全に作業を進めるために非酸化性雰囲気が好ましい。非酸化性雰囲気とは気相の酸素濃度が5体積%以下、好ましくは2体積%以下、更に好ましくは酸素を実質的に含有しない雰囲気、即ち窒素、ヘリウム、アルゴン等の不活性ガス雰囲気であることを指し、この中でも特に経済性の面から窒素雰囲気が好ましい。
溶解方法は特に限定しないが、所定の容器にPPS樹脂、有機溶媒を入れ、撹拌しながら加熱する。粒径の揃ったPPS樹脂微粒子を製造するにはPPS樹脂を溶媒に完全溶解させてからフラッシュ晶析して析出させる方法が好ましいが、未溶解PPS樹脂や溶融状態のPPS樹脂が存在してもよい。溶媒沸点でPPS樹脂を溶解させ、その希薄溶液から析出させることもできるが、PPS樹脂は有機溶媒に対する溶解度が小さいので、オートクレーブ等の耐圧容器中で溶媒の沸点以上からPPS樹脂の分解点未満に加熱して溶解する方法が好ましい。
溶解温度は使用する溶媒の種類やPPS樹脂の濃度によって異なるが、通常は200℃から400℃で、好ましくは220℃から320℃である。温度が高いとPPS樹脂が分解する。また、200℃未満ではPPS樹脂を溶解するために大量の溶媒を使用することになる。
溶解時間は溶媒の種類、PPS樹脂の仕込濃度、溶解温度によって異なるが、通常、10分から10時間であり、好ましくは、20分〜8時間、より好ましくは30分〜5時間の範囲である。
上記操作により、PPS樹脂を溶解させることができる。ここで、オートクレーブ等の耐圧容器中で溶解させる場合、構造上の理由により未溶解樹脂の有無や、溶解せずに溶融状態にある樹脂の有無を直接確認できない場合もあるが、引き続いて実施する析出工程で析出する微粒子が溶解前のPPS樹脂と形状や粒径等が相応に異なっていれば、本発明の溶解・析出による結果と判断する。この溶解・析出による形状や粒径変化は粒度分布計を用いた平均粒径の変化およびSEMによる形状変化から判断する。
[析出工程]
上記溶解工程によって溶解させたPPS樹脂溶解液を、PPS樹脂微粒子を析出させる他の容器内(以下、受槽と称する場合がある)の析出用溶媒中にフラッシュ晶析してPPS樹脂微粒子を析出させる。本発明において、フラッシュ晶析とは、加熱・加圧下にある上記溶解液を、温度および圧力が、溶解工程で用いた有機溶媒の沸点以下(冷却下でも良い)、加圧されている圧力以下(減圧下でも良い)に制御された受槽内の析出用溶媒中に、ノズルを介して噴出させて移液し、圧力差による冷却効果や潜熱による冷却効果を利用して急速に冷却する方法を指す。受槽を加熱することにより冷却の程度を調整し、PPS樹脂微粒子の粒径を制御することもできる。
具体的には、加熱・加圧下に保持した容器からPPS樹脂の溶解液を大気圧下(減圧下でもよい)の受槽にフラッシュ晶析することにより行うことが好ましい。例えば前記溶解工程において、オートクレーブ等の耐圧容器中で溶解させると、容器内は加熱による自製圧により加圧状態となる。この状態から放圧して大気圧下の受槽に放出させることにより、よりいっそう簡便に行うことができる。
PPS樹脂微粒子を析出させる溶媒としては、特に制限はないが、析出させたPPS樹脂微粒子およびPPS樹脂溶解液の溶媒を、析出用溶媒中に均一に分散させる観点からは溶解工程で使用する有機溶媒と均一に混合する溶媒であることが好ましい。ここで均一に混合するとは、2つ以上の溶媒を混合した場合、1日静置しても界面が現れず、均一に混じり合うことをいう。 例えば、水に対しては、NMP、DMF、アセトン、DMSO、テトラヒドロフラン、メタノール、エタノール等が均一に混じり合う溶媒として挙げることができる。
具体的には、PPS樹脂を溶解させる溶媒を析出用溶媒として使用することもでき、析出用溶媒は、溶解工程で用いた溶媒と均一に混合する溶媒であって、かつPPS樹脂の貧溶媒を含むことが好ましい。NMPを溶解工程の溶媒に選択した場合には、析出用溶媒としてNMP、アルコール類、アセトン類、水等が使用できる。析出用溶媒は、目的に応じて析出させる溶媒を選択することができる。また、PPS樹脂微粒子を析出させる析出用溶媒は溶解工程で使用する有機溶媒と均一に混合するならば、単一の溶媒を用いてもよいし、2種類以上の溶媒を混合して用いてもよい。析出溶媒としては、安全性の面、経済性等の面から水、NMPと水の混合溶媒を用いることが好ましい。析出用溶媒として、NMPと水の混合溶媒を用いる場合、重量比でNMP1重量部に対して水を10〜0.1重量部とすることが好ましい。
PPS樹脂微粒子を析出させる析出用溶媒の使用量は特に限定しないが、溶解工程の溶媒1重量部に対して100〜0.1重量部の範囲を例示することができ、好ましくは50〜0.1重量部、更に好ましくは15〜0.1重量部である。
フラッシュ晶析方法は特に限定しないが、通常は200℃から400℃、好ましくは220℃から320℃の溶解液を加圧されている圧力以下、あるいは減圧下の受槽に1段でフラッシュ晶析する方法、または溶解液を入れた槽内よりも圧力の低い容器に多段でフラッシュ冷却する方法等が採用できる。具体的には、例えば前記溶解工程において、オートクレーブ等の耐圧容器中で溶解させると、容器内は加熱による自製圧により加圧状態となる。この加圧状態とした溶解液を、PPS樹脂微粒子を析出させる析出用溶媒を入れた大気圧の受槽にフラッシュさせるか、減圧下の受槽にフラッシュさせる。フラッシュ晶析する溶解液の圧力(ゲージ圧)は0.2〜4MPaであることが好ましい。この環境からこれをフラッシュ晶析、好ましくは大気圧下に、より好ましくは大気圧下の受槽にフラッシュ晶析することが好ましい。
PPS樹脂微粒子を析出させる析出用溶媒中にフラッシュ晶析する場合、受槽の温度は、受槽に入れるPPS樹脂微粒子を析出させる析出用溶媒により異なるが、PPS樹脂微粒子を析出させる溶媒が凝固しない温度〜溶媒の沸点以下、具体的には水の場合、フラッシュ晶析直前の温度として0〜100℃が好ましい。また、例えば、有機溶媒にNMPを使用し、溶解温度270℃、受槽の水の温度を100℃とした場合、フラッシュ晶析直後のフラッシュ液の温度は、100℃以上に上昇する。受槽の温度が高いとPPS樹脂微粒子の粒径が大きくなるので、平均1次粒径をより大きくしたい場合、受槽温度を高くすることが好ましい。また、受槽中の析出用溶媒としてNMPと水との混合溶媒を用いるとフラッシュ晶析直前の受槽温度を100℃以上に調整可能であり、NMPと水との混合溶媒を用いるとより大きな粒径の粒子を得ることができる。
PPS樹脂微粒子の析出用溶媒中へのフラッシュ晶析方法は、溶解槽からの連結管出口を受槽の析出用溶媒中に入れて、PPS樹脂溶解液を直接フラッシュ晶析する方法が粒径の揃ったPPS樹脂微粒子が得られるので好ましい。本明細書において、PPS樹脂溶解液を析出用溶媒中へフラッシュ晶析して得られたPPS樹脂微粒子が析出した液体をフラッシュ液という。
[ろ過・単離工程]
上記析出工程で得られたフラッシュ液をそのまま、または界面活性剤を加えた後に機械的分散を行い、PPS樹脂微粒子分散液としても良いが、新たな分散媒に置き換えてから機械的分散を行っても良い。分散媒を他の溶媒に置き換えるためには一旦固液分離を行い、PPS樹脂微粒子を単離することが好ましい。PPS樹脂微粒子を単離する方法としては、ろ過、遠心分離、遠心ろ過等の従来公知の固液分離方法で行うことができるが、PPS樹脂微粒子を固液分離操作で効率よく単離するためには、凝集によって粒径を増大させた後、ろ過や遠心分離等の固液分離操作を行うことが望ましい。凝集によって粒径を増大させる方法としては、経時的に凝集させる自然凝集法、加熱による凝集法、加熱しながら有機溶媒を除去して凝集させる方法、塩析による凝集法などを用いることができ、これらの凝集法を用いることにより、工業的な固液分離方法に適した粒径の大きな凝集体を得ることができる。このときの凝集体の平均粒径としては5〜150μm(後述の測定方法による粒径)、好ましくは20〜100μmである。
具体的には、自然凝集法の場合、1日以上静置することにより、また、フラッシュ液を50℃〜100℃に加熱することにより、さらにフラッシュ液を有機溶媒の沸点以上(常圧、減圧下どちらでもよい)に設定し、加熱しながら有機溶媒を除去することにより凝集時間を短縮することができる。塩析では、無機金属塩、または有機金属塩(無機金属塩、有機金属塩を合わせて塩析剤と略すことがある)をPPS樹脂微粒子1重量部に対して0.1〜1000重量部、好ましくは0.5〜500重量部程度を加えることにより粒径の大きな凝集体を得ることができる。具体的には、上記フラッシュ液中に直接塩析剤を添加する、あるいは、塩析剤の0.1〜20重量部の溶液を添加する等の方法が挙げられる。塩析剤としては、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、塩化リチウム、塩化カリウム等の無機金属塩、酢酸ナトリウム、酢酸マグネシウム、酢酸カルシウム、シュウ酸ナトリウム、シュウ酸マグネシウム、シュウ酸カルシウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸マグネシウム、クエン酸カルシウム等の有機金属塩が挙げられる。塩析剤を溶解させる溶媒としては、水が好ましい。また、上記無機塩をあらかじめフラッシュ晶析する際の受槽中のPPS樹脂微粒子を析出させる溶媒中に溶解しておくこともできる。このときのPPS樹脂微粒子を析出させる溶媒としては、水が好ましい。添加する無機塩の量はPPS樹脂微粒子1重量部に対して0.1重量部以上でかつ、PPS樹脂微粒子を析出させる溶媒への飽和溶解量以下が望ましい。本発明のようにフラッシュ晶析して得られたPPS樹脂微粒子は、このような方法で凝集させることにより固液分離が容易となる。
上記凝集で得られたPPS樹脂粒子の固液分離の方法としては、ろ過、遠心分離等の方法が挙げられる。ろ過や遠心分離の際にはメンブレンフィルター(ろ過)やろ布(ろ過、遠心分離)などを使用できる。フィルターの目開きとしては、得ようとするPPS樹脂微粒子の粒度に応じて適宜決定されるが、メンブレンフィルターの場合、通常0.1〜50μm程度、ろ布の場合、124.5Paでの通気度が5cm /cm・sec以下のものを使用できる。固液分離後のウエットケークを分散媒へ再分散して分散液を調整するには(分散工程)、ウエットケーク中の溶媒を分散工程で用いる分散媒でリスラリーするか、分散工程で用いる分散媒でかけ洗い洗浄すればよい。
[分散工程]
上記ろ過・単離工程で得られたPPS樹脂微粒子を超音波分散により再分散してPPS樹脂微粒子分散液を得る。ろ過・単離工程でPPS樹脂微粒子を乾燥させると分散されがたくなるため、所望の平均粒径のPPS樹脂微粒子分散液を得るためには、分散工程で用いるPPS樹脂微粒子が分散媒を含んだ状態にしておくことが必要である。分散工程に用いるPPS樹脂微粒子は50重量%以上の分散媒を含んだ状態であることが好ましい。
分散媒になりうる媒体は、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、シクロペンタン、デカン、ドデカン、トリデカン、テトラデカン等の脂肪族炭化水素系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレン、2−メチルナフタレン等の芳香族炭化水素系溶媒、酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸ブチル、プロピオン酸ブチル、酪酸ブチル等のエステル系溶媒、クロロホルム、ブロモホルム、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、クロロベンゼン、o-ジクロロベンゼン、p−ジクロロベンゼン、2,6−ジクロロトルエン、1−クロロナフタレン、ヘキサフルオロイソプロパノール等のハロゲン系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルブチルケトン等のケトン系溶媒、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール等のアルコール系溶媒、NMP、N−エチル−2−ピロリジノン等のN−アルキルピロリジノン系溶媒、N−メチル−ε−カプロラクタム、N−エチル−ε−カプロラクタム等のN−アルキルカプロラクタム系溶媒、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N、N−ジメチルアセトアミド、DMF、ヘキサメチルリン酸トリアミド、DMSO、ジメチルスルホン、テトラメチレンスルホン等の極性溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジイソプロピルエーテル、ジオキサン、ジグライム、ジメトキシエタン等のエーテル系溶媒および水の中から少なくとも一種選ばれる溶媒を例示できるが、環境面、安全面から水が最も好ましい。
固液分離操作等で得られたPPS樹脂微粒子に界面活性剤、分散媒を加えて分散工程に供する。
超音波分散によって生成するPPS樹脂微粒子の凝集抑制、および分散媒への分散性を向上させるために、界面活性剤の添加を行う。界面活性剤の添加時期は、超音波分散の前後いずれでもかまわないが、超音波分散中の微粒子の凝集防止のため、分散前添加、または分散前添加と分散中添加を併用した添加方法が好ましい。
界面活性剤としては、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、両性イオン界面活性剤、非イオン系界面活性剤、高分子界面活性剤等が挙げられる。アニオン系界面活性剤としては、脂肪酸ナトリウム、脂肪酸カリウム、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム、アルキル硫酸エステルナトリウム、アルキルスルホン酸ナトリウム、アルキルエーテル硫酸エステルナトリウム、モノアルキルリン酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステルナトリウム、脂肪酸エステルスルホン酸ナトリウム、脂肪酸エステル硫酸エステルナトリウム、脂肪酸アルキロースアミド硫酸エステルナトリウム、脂肪酸アミドスルホン酸ナトリウムなどが挙げられる。
カチオン系界面活性剤としては、塩化アルキルメチルアンモニウム、塩化アルキルトリメチルアンモニウム、塩化ジアルキルジメチルアンモニウム、塩化アルキルジメチルベンジルアンモニウム、塩化アルキルピリジニウムなどが挙げられる。
両性イオン界面活性剤としては、アルキルアミノカルボン酸塩、カルボキシベタイン、アルキルベタイン、スルホベタイン、ホスホベタインなどが挙げられる。
非イオン系界面活性剤としては、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンラノリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリコールモノ脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンモノベンジルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンジベンジルフェニルエーテル、ポリオキシエチレントリベンジルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンモノスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンジスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレントリスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンビフェニルエーテル、ポリオキシエチレンフェノキシフェニルエーテル、ポリオキシエチレンクミルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、脂肪酸アルカノールアミド、脂肪酸モノエタノールアミド、脂肪酸ジエタノールアミド、脂肪酸トリエタノールアミド、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、イソプロパノールアミド、アルキルアミンオキシド、ポリオキシエチレンアミンなどが挙げられる。
なお、ここでいうアルキルを例示するならば炭素数1から30までの直鎖型飽和炭化水素基、または分岐型飽和炭化水素基が挙げられる。アルキルの代わりに直鎖型不飽和炭化水素基、または分岐型不飽和炭化水素基であってもよい。
高分子界面活性剤としては、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリピロール、ポリチオフェン、(メタ)アクリル酸共重合物、マレイン酸共重合物、ポリスチレンスルホン酸塩、ビニルピリジン共重合物、ポリエチレンイミン、ポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、ポリアクリルアミド等の合成系高分子界面活性剤、カルホキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセスロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等の半合成系高分子界面活性剤が用いられる。
なお、高分子界面活性剤は、非イオン系界面活性剤やアニオン系界面活性剤等の一般的な界面活性剤が分子内に一対の親水性基と親油性基を持つ構造に対し、分子内に多数の親水性基と親油性基を有する複雑な構造を持ち、且つ分子量も大きい界面活性剤のことである。このように一般的な界面活性剤と高分子界面活性剤は、構造的にも分子量的にも大きく異なる。本発明で用いる高分子界面活性剤は、数平均分子量が1,000以上(GPC測定、スチレン換算)の高分子界面活性剤が好ましく、5,000以上がより好ましい。上限としては特に制限はないが、1,000,000以下であることが好ましい。
界面活性剤の使用量は、PPS樹脂1重量部に対して0.01〜2重量部、好ましくは0.01〜1重量部である。
これらの界面活性剤の添加量は、PPS樹脂微粒子100重量部に対して0.01〜100重量部の範囲であり、好ましくは0.5〜100重量部の範囲であり、より好ましくは、1〜100重量部の範囲である。この範囲の量の界面活性剤を用いることにより、超音波分散によって得られたPPS樹脂微粒子を分散媒に均一に分散させることができる。分散工程で用いるPPS樹脂微粒子と分散媒との混合割合は、分散媒100重量部に対して1〜50重量部の範囲であることが好ましく、特に1〜30重量部であることが好ましい。
上記ろ過・単離工程で得られたPPS樹脂微粒子は、超音波の出力90w〜120Wで、最大限平均粒径が小さくなるように超音波分散される。PPS樹脂微粒子分散液においても、場合によっては粗粒や沈殿物を含む場合もある。その際には、粗粒や沈殿物と分散部を分離して利用してもよい。分散液のみを得る場合には、粗粒や沈殿物と分散部の分離を行えばよく、そのためには、デカンテーション、ろ過、遠心分離などを行い粗粒や沈殿部分を除去すればよい。なお、本明細書において、分散液とは、室温(25℃)条件にて24時間静置してもPPS樹脂微粒子と分散媒との界面が現れない状態をいう。
上記により平均粒径 1μm以下のPPS樹脂微粒子分散液を得ることができる。
(D)PPS樹脂微粒子
本発明の製造方法で得られるPPS樹脂微粒子は、前述したPPS樹脂を原料とし、工程(a)、(b)を含む製造方法で製造することで、PPS樹脂の分散度が2.5以下、平均1次粒径90nm以上300nm以下で球形度が0.85以上の球状のPPS樹脂微粒子を得ることができる。
好ましくは、平均一次粒径の変動係数が20以上45%以下であるPPS樹脂微粒子とすることができる。スペーサ用途や膜厚を一定にすることが求められる用途では粒子の大きさを揃えることが要求されるので、変動係数が小さい方が好ましい。
より好ましくは、球形度が0.85以上の球状のPPS樹脂微粒子である。球形度が1に近いほど真球に近くなり、スペーサ用途や塗膜用途等の平面均一性が求められる用途では粒子の形状を揃えることが要求されるので、球形度が高い方が好ましい。
また、PPS樹脂の分散度が小さい程、低分子成分が少ないので、加熱等で粒子を加工する場合、分解ガス発生が抑えられ、部材の機械強度、物性等が均一になると考えられる。 さらに好ましくは、アルカリ金属含有量が100ppm未満であるPPS樹脂微粒子とすることができ、レーザー回析・散乱方式での平均粒径が100nm以上1000nm以下であるPPS樹脂微粒子とすることができる。
ここで、PPS樹脂微粒子の分散度、アルカリ金属含有量は原料とするPPS樹脂の分散度、アルカリ金属含有量に依存し、測定方法、好ましい範囲も同様である。
PPS樹脂微粒子の平均一次粒径は、走査型電子顕微鏡で得られた画像から任意の100個の粒子を選び、その最大長さを粒径として粒径を測長し、その平均値を平均一次粒径とする。
また、平均一次粒径の変動係数(CV)は、走査型電子顕微鏡で得られた画像から任意の100個の粒径を測長して求めた粒度分布の値を用いて下記の式(2)〜式(4)により求める値である。
Figure 2015111546
本発明の製造方法で得られるPPS樹脂微粒子の一次粒子は粒子状であればよく、例えば、球状、異形(楕円体状、不定形状など)であってもよいが、好ましい一次粒子の形状は、球状である。球状粒子には、真球状に限らず、例えば、球形度(短径と長径の長さ比)、例えば、短径/長径=0.5〜1程度である形状も含まれる。短径と長径との長さ比は、好ましくは短径/長径=0.7〜1、さらに好ましくは、短径/長径=0.85〜1である。
[平均粒径の測定]
PPS樹脂微粒子の平均粒径は日機装製レーザー回折・散乱方式粒度分布測定装置MT3300EXIIを用い、分散媒としてポリオキシエチレンクミルフェニルエーテル(商品名ノナール912A 東邦化学工業製 以後、ノナール912Aと称す)の0.5重量%水溶液を用いて測定した。具体的にはマイクロトラック法によるレーザーの散乱光を解析して得られる微粒子の総体積を100%として累積カーブを求め、その累積カーブが50%となる点の粒径(メジアン径:d50)を微粒子の平均粒径とした。
[平均一次粒径の測定]
本発明での平均一次粒径は日本電子製走査型電子顕微鏡JEOL JMS−6700Fで得られた画像から任意の100個の粒子を選び、その最大長さを粒径として測長し、その平均値を平均一次粒径とした。
[平均一次粒径の変動係数の算出]
本発明における平均一次粒径の変動係数(CV)は、日本電子製走査型電子顕微鏡JEOL JMS−6700Fで得られた画像から任意の100個の粒径を測長して求めた粒度分布の値を用いて下記の式(2)〜式(4)により求めた。
Figure 2015111546
[一次粒子の球形度の算出]
本発明での球形度は日本電子製走査型電子顕微鏡JEOL JMS−6700Fで得られた画像(倍率30,000倍)から任意の30個の粒子を選び、その最短径と最長径をそれぞれ短径、長径として測長し、その比(短径/長径)の平均値を一次粒子の球形度とした。
[超音波分散]
超音波分散は日本精機製超音波ホモジナイザー、US−300T(超音波発振器:定格出力300W、発振周波数19.5KHz±1KHz(周波数自動追尾型)、超音波変換器:φ26mmPZT(ボルト締電歪型)振動素子)を用い、所定の出力になるように調整の上超音波発振チップをPPS樹脂微粒子分散(懸濁)液中に接液して行った。
[分子量測定および分散度測定]
原料となるPPS樹脂および得られたPPS樹脂微粒子の分子量はサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)の一種であるゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、ポリスチレン換算で算出した。GPCの測定条件を以下に示す。
装置:センシュー科学 SSC−7100
カラム名:センシュー科学 GPC3506
溶離液:1−クロロナフタレン
検出器:示差屈折率検出器
カラム温度:210℃
プレ恒温槽温度:250℃
ポンプ恒温槽温度:50℃
検出器温度:210℃
流量:1.0mL/min
試料注入量:300μL (固形物量:約0.2重量%)
上記測定条件で得られた分子量から各平均分子量、分散度を求めた。なお、Miは分子量校正曲線を介して得られたGPC曲線の各溶出位置の分子量、Niは分子数である。
数平均分子量(Mn): Mn=Σ(Ni・Mi)/ΣNi
重量平均分子量(Mw): Mw=Σ(Ni・Mi2)/Σ(Ni・Mi)
分散度: Mw/Mn
[PPS樹脂の加熱時重量減少率の測定]
PPS樹脂の加熱時重量減少率は熱重量分析機を用いて下記条件で行った。なお、試料は2mm以下の細粒物を用いた。
装置:パーキンエルマー社製 TGA7
測定雰囲気:窒素気流下
試料仕込み重量:約10mg
測定条件:
(a)プログラム温度50℃で1分保持
(b)プログラム温度50℃から400℃まで昇温。この際の昇温速度20℃/分
重量減少率△Wrは、(b)の昇温の際に、100℃到達時の試料重量(W1)を基準として、330℃到達時の試料重量(W2)から以下の式(1)を用いて算出した。
△Wr=(W1−W2)/W1×100 (1)
[アルカリ金属含有量の定量]
PPS樹脂及びPPS樹脂微粒子中のアルカリ金属含有量の定量は下記により行った。
(a) 試料を石英るつぼに秤とり、電気炉を用いて灰化した。
(b) 灰化物を濃硝酸で溶解した後、希硝酸で定容とした。
(c) 得られた定容液をICP重量分析法(装置;Agilent製4500)及びICP発光分光分析法(装置;PerkinElmer製Optima4300DV)を用いて行った。
[参考例1](原料として用いるΔWrが0.18%以下のPPSの製造例)
撹拌機および上部に抜き出しバルブを具備したオートクレーブに、水硫化ナトリウムの48重量%水溶液1.648kg(水硫化ナトリウム0.791kg(14.1モル))、水酸化ナトリウムの48重量%水溶液1.225kg(水酸化ナトリウム0.588kg(14.7モル))、NMP35L、およびp−ジクロロベンゼン(p−DCB)2.120kg(14.4モル)を仕込んだ。
反応容器を室温・常圧下にて窒素ガス下に密閉した後、400rpmで撹拌しながら、室温から200℃まで25分かけて昇温した。次いで、250℃まで35分かけて昇温し、250℃で2時間反応を行った。次いで、内温を250℃に保ちながら、抜き出しバルブを徐々に開放し、40分かけて溶媒を26.6kg留去した。溶媒留去の完了後、オートクレーブを室温近傍にまで冷却し、内容物を回収した。
回収した内容物を、反応液の温度が100℃になるように窒素下にて加熱撹拌を行なった。100℃で20分間保持した後、平均目開き10μmのステンレス製金網を用いて固液分離を行ない、得られた濾液成分を約3倍量のメタノールに滴下し、析出成分を回収した。析出後に回収された固体成分を約2.5Lの80℃温水でリスラリー化し、30分間80℃で攪拌後、濾過する操作を3回繰り返したのち、得られた固形分を減圧下80℃で8時間乾燥を行ない、乾燥固体を得た。得られた乾燥固体の赤外吸収スペクトルおよび高速液体クロマトグラフィーによる分析の結果、得られた乾燥固体は、環式PPSを85重量%含有していることが分かった。
得られた乾燥固体を、留出管および撹拌翼を取り付けたガラス製の試験管に仕込んだ後、試験管内の減圧、窒素置換を3回繰り返した。試験管内を約0.1kPaに保ったまま340℃に温調して120分間加熱した後、室温まで冷却して重合物を得た。赤外分光スペクトルに基づいて、得られた生成物はPPS樹脂であることがわかった。また、GPC測定により、得られた生成物は、重量平均分子量は50,000、分散度は2.35であることがわかった。得られた生成物の加熱時重量減少率の測定を行った結果、△Wrは0.055%であった。さらに、得られた生成物のアルカリ金属含有量の定量化をした結果、Na含有量は重量比で70ppmであり、これ以外のアルカリ金属は検出されなかった。
[参考例2](従来のPPS樹脂の製造例)
撹拌機、および底栓弁付きの70リットルオートクレーブに47.5%水硫化ナトリウム8.27kg(70.00モル)、96%水酸化ナトリウム2.94kg(70.63モル)、NMP11.45kg(115.50モル)、酢酸ナトリウム1.89kg(23.1モル)、及びイオン交換水5.50kgを仕込み、常圧で窒素を通じながら245℃まで約3時間かけて徐々に加熱し、水9.77kgおよびNMP0.28kgを留出した後、反応容器を200℃に冷却した。アルカリ金属硫化物の仕込み量1モル当たりの系内残存水分量は、NMPの加水分解に消費された水分を含めて1.06モルであった。また、硫化水素の飛散量は、アルカリ金属硫化物の仕込み量1モル当たり0.02モルであった。
反応容器を200℃まで冷却した後、p−ジクロロベンゼン10.42kg(70.86モル)、NMP9.37kg(94.50モル)を加え、反応容器を窒素ガス下に密封し、240rpmで撹拌しながら0.6℃/分の速度で200℃から270℃まで昇温し、270℃で140分反応した。その後、270℃から250℃まで15分かけて冷却しながら水2.40kg(133モル)を圧入した。ついで250℃から220℃まで75分かけて徐々に冷却した後、室温近傍まで急冷し、内容物を取り出した。
内容物を約35リットルのNMPで希釈しスラリーとして85℃で30分撹拌後、80メッシュ金網(目開き0.175mm)で濾別して固形物を得た。得られた固形物を同様にNMP約35リットルで洗浄濾別した。得られた固形物を70リットルのイオン交換水に加え、70℃で30分撹拌後、80メッシュ金網で濾過して固形物を回収する操作を合計3回繰り返した。得られた固形物および酢酸32gを70リットルのイオン交換水に加え、70℃で30分撹拌後、80メッシュ金網で濾過した。得られた固形物を、更に70リットルのイオン交換水に加え、70℃で30分撹拌後、80メッシュ金網で濾過して固形物を回収した。このようにして得られた固形物を窒素気流下、120℃で乾燥することにより、粉末のPPS樹脂を得た。
得られたPPS樹脂のGPC測定を行った結果、重量平均分子量は50,000であり、分散度は2.66であった。PPS樹脂の加熱時重量減少率は、△Wrは0.23%であり、アルカリ金属含有量の定量化をした結果、Na含有量は重量比で120ppmであり、これ以外のアルカリ金属は検出されなかった。
実施例1
〔溶解工程〕
1Lのオートクレーブ(溶解槽)にバルブ開閉ができ、配管の端が槽の中に位置するように連結管を装着した。また、フラッシュ晶析の受槽として、1Lの耐圧タンクに撹拌機、コンデンサー、ガス通気管を装着し、前記溶解槽の連結管の他端を槽の中に位置するように装着した。溶解槽に参考例1のPPS樹脂12g、NMP388gを入れ、インターナル連結管のバルブを密閉してから窒素置換した後、撹拌しながら内温270℃まで上昇させた。このときの内圧(ゲージ圧)は0.4MPaであった。
〔析出工程〕
前記受槽に、析出用溶媒としてイオン交換水400gを入れて受槽に設置した連結管の先端を水中に入れ、窒素ガスを通気した。溶解槽の連結管のバルブを開き、溶解液を受槽水中にフラッシュ晶析した。フラッシュ液に10重量%の酢酸マクネシウム水溶液12gを加えて30分間攪拌した後、30分間静置した。得られた凝集液を遠心脱水機で固液分離し、固形分をろ取した。その固形分をイオン交換水200g中に懸濁した後、遠心脱水機でろ取した。同様の操作を2回行い、含水PPS樹脂微粒子ウエットケーク(固形分濃度:21.3重量%)を得た。PPS樹脂微粒子の平均1次粒径は98.6nm、変動係数23.0%、球形度は0.961であった。また、分散度は2.47、Na含有量は重量比で71ppmであった。
〔分散工程〕
前記含水PPS樹脂微粒子35.2g(PPS樹脂微粒子固形分7.5g相当)にポリオキシエチレンステアリルエーテル(エチレンオキシド20モル付加物)の10重量%水溶液7.5g、イオン交換水32.3gを加えてホモミキサーで予備分散した。その予備分散液を超音波(出力120W)で処理した後、粗粒を遠心沈降により分離し、平均粒径210nmのPPS樹脂微粒子水分散液を得た。
実施例2
PPS樹脂を20g、溶解槽のNMPを380gとした以外、実施例1と同様に実施し、平均1次粒径121.0nm、変動係数43.1%、球形度0.956のPPS樹脂微粒子を得た。また、分散度は2.44、Na含有量は重量比で72ppmであった。
実施例3
PPS樹脂を36g、溶解槽のNMPを364gとした以外、実施例1と同様に実施し、平均1次粒径151.4nm、変動係数44.4%、球形度0.966のPPS樹脂微粒子を得た。また、分散度は2.49、Na含有量は重量比で72ppmであった。
実施例4
PPS樹脂を32g、溶解槽のNMPを368g、受槽温度を60℃、受槽溶媒をNMP266g、イオン交換水133gとした以外、実施例1と同様に実施し、平均1次粒径179.5nm、変動係数30.5%、球形度0.919のPPS樹脂微粒子を得た。また、分散度は2.49、Na含有量は重量比で73ppmであった。
実施例5
PPS樹脂を32g、溶解槽のNMPを368g、受槽温度を60℃、受槽溶媒をNMP320g、イオン交換水80gとした以外、実施例1と同様に実施し、平均1次粒径184.2nm、変動係数31.9%、球形度0.921のPPS樹脂微粒子を得た。また、分散度は2.40、Na含有量は重量比で72ppmであった。
実施例6
PPS樹脂を32g、溶解槽のNMPを368g、受槽温度を100℃、受槽溶媒をNMP266g、イオン交換水133gとした以外、実施例1と同様に実施し、平均1次粒径184.0nm、変動係数29.2%、球形度0.936のPPS樹脂微粒子を得た。また、分散度は2.37、Na含有量は重量比で68ppmであった。
実施例7
PPS樹脂を32g、溶解槽のNMPを368g、受槽温度を110℃、受槽溶媒をNMP266g、イオン交換水134gとした以外、実施例1と同様にフラッシュ晶析した。
フラッシュ液を80℃で4時間加熱し、室温で1時間静置した。その凝集液を遠心脱水機で固液分離し、固形分をろ取した。その固形分をイオン交換水200g中に懸濁した後、遠心脱水機でろ取した。同様の操作を2回行い、含水PPS樹脂微粒子ウエットケーク(固形分濃度:22.3重量%)を得た。PPS樹脂微粒子の平均1次粒径は205nm、変動係数33.7%、球形度0.900であった。また、分散度は2.36、Na含有量は重量比で75ppmであった。
含水PPS樹脂微粒子ウエットケーク33.6g(PPS樹脂微粒子固形分7.5g相当)にポリオキシエチレンステアリルエーテル(エチレンオキシド20モル付加物)の10重量%水溶液7.5g、イオン交換水32.3gを加えてホモミキサーで予備分散した。その予備分散液を超音波(出力120W)で処理した後、粗粒を遠心沈降で分離し、平均粒径651nmのPPS樹脂微粒子水分散液を得た。
実施例8
PPS樹脂を32g、溶解槽のNMPを368g、受槽温度を117℃、受槽溶媒をNMP266g、イオン交換水133gとした以外、実施例1と同様にフラッシュ晶析した。フラッシュ液の凝集、ケーク洗浄は、実施例7と同様に実施し、平均1次粒径227.6nm、変動係数51.4%、球形度0.894のPPS樹脂微粒子を得た。また、分散度は2.47、Na含有量は重量比で70ppmであった。
実施例9
PPS樹脂を36g、溶解槽のNMPを364g、受槽温度を60℃、受槽溶媒をNMP200g、イオン交換水200gとした以外、実施例1と同様に実施し、平均1次粒径165.9nm、変動係数40.3%、球形度0.942のPPS樹脂微粒子を得た。また、分散度は2.38、Na含有量は重量比で78ppmであった。
実施例10
PPS樹脂を36g、溶解槽のNMPを364g、受槽温度を60℃、受槽溶媒をNMP266g、イオン交換水133gとした以外、実施例1と同様にフラッシュ晶析した。フラッシュ液の凝集、ケーク洗浄は、実施例7と同様に実施し、平均1次粒径199.2nm、変動係数35.3%、球形度0.901のPPS樹脂微粒子を得た。また、分散度は2.42、Na含有量は重量比で75ppmであった。
比較例1
参考例2のPPS樹脂を用いた以外は、実施例1と同様に実施した。PPS樹脂微粒子の平均1次粒径は99.0nm、変動係数26.1%、球形度0.960であった。また、分散度は2.71、Na含有量は重量比で125ppmであった。
比較例2
1Lの耐圧容器内に、参考例1で得られたPPS樹脂10g、1−クロロナフタレン(関東化学社製)1000gを加え、窒素下に密閉後、230℃へ上昇させ、20分間攪拌した。耐圧容器を氷水で室温付近まで冷却した後、PPS樹脂粒子懸濁液をろ過して粗粒を取り除き、ろ液を6,000rpmで遠心分離し、上澄み液を採取した。上澄み液の平均粒径は1.92μmであった。生成する粒子が非球状粒子のため球形度は測定できずまた、凝集粒径と1次粒径(個々の粒子の粒径)は区別できないので、レーザー回折・散乱方式で粒度分布を測定し、平均粒径を求めた。
Figure 2015111546
本発明の製造法によれば、分散度が2.5以下で、平均一次粒径が90nmから300nm、球形度が0.85以上、アルカリ金属イオンが100ppm未満で、成形時ガス発生量の少ない、球状のPPS樹脂微粒子を容易に得ることができる。
このようにして得られたPPS樹脂微粒子、およびその分散液は、耐熱性を有していることから、耐熱性が要求される接着剤、塗料及び印刷インク、電気・電子材料等の用途に幅広く用いることができる

Claims (15)

  1. ポリフェニレンスルフィド樹脂の、数平均分子量(Mn)と重量平均分子量(Mw)の比で定義される分散度(Mw/Mn)が2.5以下、該樹脂からなる微粒子の平均1次粒径が90nm以上300nm以下であることを特徴とするポリフェニレンスルフィド樹脂微粒子。
  2. アルカリ金属含有量が100ppm未満である請求項1記載のポリフェニレンスルフィド樹脂微粒子。
  3. レーザー回析・散乱方式での平均粒径が100nm以上1000nm以下である請求項1または2記載のポリフェニレンスルフィド樹脂微粒子。
  4. 請求項1から3のいずれかに記載のポリフェニレンスルフィド樹脂微粒子を分散媒に分散させたポリフェニレンスルフィド樹脂微粒子分散液。
  5. 分散媒が水である請求項4記載のポリフェニレンスルフィド樹脂微粒子分散液。
  6. 請求項1から3のいずれかに記載のポリフェニレンスルフィド樹脂微粒子の製造方法であって、下記式(1)で表される加熱時の重量減少率ΔWrが0.18%以下のポリフェニレンスルフィド樹脂を原料として、下記の工程(a)、(b)を含むポリフェニレンスルフィド樹脂微粒子の製造方法。
    (a)ポリフェニレンスルフィド樹脂を有機溶媒中で加熱してポリフェニレンスルフィド樹脂の溶解液とする工程(溶解工程)
    (b)前記溶解液をフラッシュ晶析してポリフェニレンスルフィド樹脂の微粒子を析出させる工程(析出工程)
    ΔWr=(W1−W2)/W1×100(%)・・・(1)
    (ここでΔWrは重量減少率(%)であり、常圧の非酸化性雰囲気下で50℃から330℃以上の任意温度まで昇温速度20℃/分で熱重量分析を行った際に、100℃到達時点の試料重量(W1)を基準とした330℃到達時の試料重量(W2)から求められる値である。)
  7. 原料とする前記ポリフェニレンスルフィド樹脂の分散度が2.5以下である請求項6に記載のポリフェニレンスルフィド樹脂微粒子の製造方法。
  8. 原料とする前記ポリフェニレンスルフィド樹脂の金属含有量が100ppm未満である請求項6または7に記載のポリフェニレンスルフィド樹脂微粒子の製造方法。
  9. 原料とする前記ポリフェニレンスルフィド樹脂が下記一般式(I)で表わされる環式ポリフェニレンスルフィド
    Figure 2015111546
    (ここで、pは4〜20の整数であり、前記(B)成分は異なるmを有する複数種類の環式ポリフェニレンスルフィドの混合物でもよい。)
    を少なくとも50重量%以上含み、且つ重量平均分子量が10,000未満のポリフェニレンスルフィドプレポリマーを加熱して重量平均分子量10,000以上の高重合度体に転化させることにより得られたポリフェニレンスルフィド樹脂である請求項6から8のいずれかに記載のポリフェニレンスルフィド樹脂微粒子の製造方法。
  10. 前記(b)析出工程において、溶解液を60〜120℃の受槽にフラッシュ晶析する請求項6から9のいずれかに記載のポリフェニレンスルフィド樹脂微粒子の製造方法。
  11. 前記(b)析出工程において、ポリフェニレンスルフィド樹脂微粒子を析出させる溶媒が、水とN−メチル−2−ピロリジノンとの混合溶媒である請求項6から10のいずれかに記載のポリフェニレンスルフィド樹脂微粒子の製造方法。
  12. 前記(a)溶解工程において、有機溶媒とポリフェニレンスルフィド樹脂の合計100重量部に対し、原料とするポリフェニレンスルフィド樹脂0.1〜10重量部を溶解する請求項6から11のいずれかに記載のポリフェニレンスルフィド樹脂微粒子の製造方法。
  13. 得られるポリフェニレンスルフィド樹脂微粒子のレーザー回折・散乱方式での平均粒径が100nm以上1000nm以下である請求項6から12のいずれかに記載のポリフェニレンスルフィド樹脂微粒子の製造方法。
  14. 請求項6から13のいずれかに記載のポリフェニレンスルフィド樹脂微粒子の製造方法で得られたポリフェニレンスルフィド樹脂微粒子を分散媒に分散させるポリフェニレンスルフィド樹脂微粒子分散液の製造方法。
  15. 分散媒が水である請求項14記載のポリフェニレンスルフィド樹脂微粒子分散液の製造方法。
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