JP2008231250A - ポリフェニレンスルフィド微粒子、その製造方法および分散液 - Google Patents

ポリフェニレンスルフィド微粒子、その製造方法および分散液 Download PDF

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宏 竹崎
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Abstract

【課題】電気・電子材料、塗料、接着またはポリマーアロイの分野で高く望まれている、粒径10μm以下でかつ、従来よりも電気絶縁特性に優れた熱可塑性微粒子およびその製造方法およびその分散液を提供する。
【解決手段】新規なPPS製造法などから得られる、アルカリ金属含量が50ppm以下であるPPSを原料に用いることにより、従来よりも、耐熱性、電気絶縁特性に優れたポリフェニレンスルフィド微粒子およびそのポリフェニレンスルフィド微粒子を用いた分散液を得ることができる。
【選択図】なし

Description

本発明は、新規なポリフェニレンスルフィド微粒子、その製造方法、分散液に関する。
耐熱性の高い熱可塑性微粒子は、塗料分野、接着材料分野、ポリマーコンパウンド分野などにおいて、樹脂の柔軟性という特性を持った耐熱性添加剤として非常に需要が高いが、下記に述べる技術的制約から、現在その入手は極めて困難である。 一般に、熱可塑性樹脂微粒子を得る方法としては、ビニル系モノマーなどを懸濁重合または乳化重合などで重合を行いながら微粒子を生成させる方法、既に重合されている重合体を機械的粉砕により細粒化する方法などが挙げられる。
前者の熱可塑性樹脂微粒子製造法においては、重合を進行させながら微粒子を生成させることが肝要であり、一般的にはオイル/水などの2つ以上の層を系内で形成させ、その層分離の特性を利用しながら重合を行う。ここでは、この方法を多層形成重合と定義する。この方法は、通常ラジカル重合などで作られるビニル系ポリマーに適用される。
一方、ポリエステル、ポリアミドなどの脱水を伴う縮合重合などでは、オイル/水層の形成は、水の共存下での反応となるため、多層形成重合の適用は困難であり、また開環重合により生成させるポリアミドの重合などでは、水が重合を阻害する原因になるため、多層形成重合の利用は困難である。
さらに、ポリフェニレンスルフィド、ポリイミド、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル等の樹脂のいずれにおいても、水の共存下では重合が進行しにくいため、重合を伴う微粒子生成は困難である。
また、後者の機械的粉砕法では、現在の技術で得られる微粒子の平均粒径を10μm以下にすることは非常に困難である。
近年、これら非ビニル系樹脂の微粒子を得る方法として、下記に示すいくつかの手法が提案されている(特許文献1〜4)。
特許文献1には、結晶性ポリエステルを微粒子化するために、相分離用溶媒中で加熱、溶解し、冷却晶析する微粒子製造方法が開示されているが、この方法では、平均粒径が数十μmから数百μmの微粒子しかできないことが分かっている。
特許文献2は、酸クロライドとジアミンを原料として、重合を進行させながらポリアミド酸微粒子及びポリアミド微粒子を製造する方法が開示されているが、重縮合を行いながらの微粒子の作成方法は、反応をさせる工程が必要であること、高価な薬品を用いるなどの課題があり、産業上有利な方法ではない。
特許文献3、4の方法では、結晶性ポリエステル樹脂有機溶媒中に高温で溶解し、引き続き冷却し、機械的な粉砕を行うことにより微粒子を製造する方法であるが、上記概念を実現するために、特殊な共重合組成をもつポリエステルに限られたものであり、また使用している離型剤が特殊であるため、非常に高価なものであることから、実用性が高いとはいい難い。
特許文献5には、ポリフェニレンスルフィドに類似した構造を持つ樹脂粉末を用いたスラリー組成物に関する発明が記載されている。このポリフェニレンスルフィドに類似した構造をもつ樹脂粉末として10〜400メッシュ(32〜1700μm)のものを用い得ることが記載されているが、実際に用いられているのは、30〜200メッシュ(75〜500μm)で分級を行った粉末であり、10μm以下のような微細な微粒子は未だ得られていない。
また、30μm程度の粒径のポリフェニレンスルフィドでは、水あるいは界面活性剤をいれた分散液に分散しにくく、沈殿してしまうため、ポリフェニレンスルフィド分散液を必要とする用途には使用が困難である。
われわれ発明者らは、これらの問題点を解決するために、既にポリアリーレンスルフィドを溶媒に溶解し析出させることによる、耐熱性の高い微粒子を得ることを見出している(特許文献6)。
特開平8−176310号公報 特開平11−140181号公報 特開2005−15589号公報 特開2005−84407号公報 特開平5−98158号公報 特願2006−295085号公報
しかし、特許文献6に記載された技術においても、耐熱性微粒子として有用であるものの、加熱時に微量なガスが発生することや少量のアルカリ金属不純物が混入していることなどから、特に電子・電気部品などに使えあれる場合には、さらなる改善を図る必要性があった。
そこで本発明者らは、鋭意検討の結果、以下に示す本発明に至った。
即ち、本発明は、以下のとおりである。
1.アルカリ金属含量が50ppm以下のポリフェニレンスルフィドからなり、平均粒径が10μm以下であることを特徴とするポリフェニレンスルフィド微粒子。
2.アルカリ金属がナトリウムであることを特徴とする1記載のポリフェニレンスルフィド微粒子。
3.ポリフェニレンスルフィド微粒子を加熱した際の発生ガス成分中のラクトン型化合物がポリフェニレンスルフィド重量基準で500ppm以下であって、かつ加熱した際の発生ガス成分中のアニリン型化合物がポリフェニレンスルフィド重量基準で300ppm以下であることを特徴とする1または2記載のポリフェニレンスルフィド微粒子。
4.重量平均分子量(Mw)が1万以上、重量平均分子量/数平均分子量(Mn)で表される分散度が2.5以下である1から3のいずれか記載のポリフェニレンスルフィド微粒子。5.ポリフェニレンスルフィドが、下記一般式(1)で表される環状ポリフェニレンスルフィド混合物を、溶融加熱することを得られたものであることを特徴とする1〜4のいずれか記載のポリフェニレンスルフィド微粒子。
Figure 2008231250
(mは4〜20の整数、mは4〜20の混合物でもよい。)
6.ポリフェニレンスルフィドを溶媒に溶解し、析出させることを特徴とする1〜5のいずれか記載のポリフェニレンスルフィド微粒子の製造方法。
7.下記一般式(1)で表される環状ポリフェニレンスルフィド混合物を、溶融加熱して得られたポリフェニレンスルフィドを溶媒に溶解し、析出させることを特徴とするポリフェニレンスルフィド微粒子の製造方法。
Figure 2008231250
(mは4〜20の整数、mは4〜20の混合物でもよい。)
8.溶媒が、N−メチルピロリジノン、o−ジクロロベンゼン、および1−クロロナフタレンから選択された少なくとも1種類であることを特徴とする6または7記載のポリフェニレンスルフィド微粒子の製造方法。
9.1〜5のいずれか記載のポリフェニレンスルフィド微粒子、または請求項6〜8のいずれか記載の製造方法で得られたポリフェニレンスルフィド微粒子を界面活性剤を含有する水に分散させた分散液。
本発明により、実用上入手困難であった、加熱時発生ガス量を極度に抑え、電気絶縁特性に極めて優れかつ高耐熱性を有するポリフェニレンスルフィド微粒子を簡便に得ることができるようになり、これは広く産業上有用な材料となりうる。
本発明におけるポリフェニレンスルフィド微粒子につき、次の4に章立てて説明する。
(I)ポリフェニレンスルフィド(以下、PPS:原料として使用するポリフェニレンスルフィド)
およびポリフェニレンスルフィド微粒子の特徴
(II)PPSの製造方法
(III)ポリフェニレンスルフィド微粒子の製造方法
(IV)ポリフェニレンスルフィド微粒子の分散液の調整方法
(I)PPS(原料として使用するポリフェニレンスルフィド)およびポリフェニレンスルフィド微粒子の特徴
本発明のポリフェニレンスルフィド微粒子の原料として使用されるPPSとは、構造式(2)で示される繰り返し単位を70モル%以上、より好ましくは90モル%以上を含む重合体である。上記繰り返し単位が70モル%未満では、ポリフェニレンスルフィド微粒子にした際の耐熱性が損なわれるので好ましくない。
Figure 2008231250
またPPSはその繰り返し単位の30モル%未満を、下記の構造式を有する繰り返し単位等で構成することが可能である。
Figure 2008231250
本発明のPPSの分子量は、重量平均分子量で10,000以上、好ましくは15,000以上、より好ましくは18,000以上である。重量平均分子量が10,000未満ではポリフェニレンスルフィド微粒子にした際に、ポリフェニレンスルフィドの微粒子の耐熱性が低下し、またポリフェニレンスルフィド微粒子の機械強度、耐薬品性の特性が低くなる。重量平均分子量の上限に特に制限は無いが、1,000,000未満を好ましい範囲として例示でき、より好ましくは500,000未満、更に好ましくは200,000未満である。
本発明におけるPPSの分子量分布の広がり、すなわち重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)で表される分散度は2.5以下が好ましく、より好ましくは2.3以下、さらに好ましくは2.1以下であり、特に好ましくは2.0以下である。分散度が2.5を超える場合はPPSに含まれる低分子量成分の量が多くなる傾向が強く、この分子量特性は、ポリフェニレンスルフィド微粒子にしても同様である。これらの分子量特性は、ことはポリフェニレンスルフィド微粒子にした場合の機械強度を下げる傾向にある。
なお前記重量平均分子量および数平均分子量は例えば、分子量はサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)の一種であるゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、ポリスチレン換算で算出することができる。
本発明の原料として用いるPPSは従来のものに比べ高純度であることが特徴である。不純物であるアルカリ金属含量は50ppm以下であり、より好ましくは30ppm以下、更に好ましくは10ppm以下である。また、ポリフェニレンスルフィド微粒子中のアルカリ金属量は、50ppm以下であり、より好ましくは30ppm以下、更に好ましくは、10ppm以下である。アルカリ金属含有量が50ppmを超えると、ポリフェニレンスルフィド微粒子中のアルカリ金属量も同程度含まれることになり、ポリフェニレンスルフィド微粒子の電気絶縁特性を低下させる。高度な電気絶縁特性が要求される用途特に、電気・電子部品などでは、要求特性を満たさなかったり、信頼性が低下するなどの問題が発生する。
本発明におけるアルカリ金属含有量とは、例えば、PPSおよびポリフェニレンスルフィド微粒子を電気炉等を用いて焼成した残渣中にある灰分中のアルカリ金属量から算出される値であり、前記灰分を例えばイオンクロマト法や原子吸光法により分析することで定量することができる。
なお、アルカリ金属とは周期律表第IA属のリチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、フランシウムのことを指すが、本発明の原料として用いるPPSおよびポリフェニレンスルフィド微粒子は、特にアルカリ金属としてナトリウムを含まないことが好ましい。アルカリ金属を含む場合、ポリフェニレンスルフィド微粒子の電気特性や熱的特性を低下させる傾向にある。またPPSが各種溶剤と接した際の溶出金属量が増大する要因になる可能性があり、またPPSがリチウムを含む場合、リチウムは溶出しやすい金属であるため、この弊害が強くなる。ところで、各種金属種の中でも、アルカリ金属以外の金属種、たとえばアルカリ土類金属や遷移金属と比較して、アルカリ金属はPPSの電気特性、熱的特性及び金属溶出量への影響が強い傾向にある。よって、各種金属種の中でも、特にアルカリ金属含有量を前記範囲に制御することでポリフェニレンスルフィド微粒子の品質を向上する事ができると推測している。PPSの重合では、硫化ナトリウムに代表されるアルカリ金属硫化物などが最も一般的に使用されるため、アルカリ金属の中でもナトリウム含有量を前記範囲にすることによりポリフェニレンスルフィド微粒子の品質を向上することができると推測している。
また、本発明のポリフェニレンスルフィド微粒子は実質的に塩素以外のハロゲン、即ちフッ素、臭素、ヨウ素、アスタチンを含まない。これは、原料であるPPSがこれらの不純物を含まないことに起因している。本発明で得られるポリフェニレンスルフィド微粒子がハロゲンとして塩素を含有する場合、ポリフェニレンスルフィド微粒子が通常使用される温度領域においては安定であるために塩素を少量含有してもポリフェニレンスルフィド微粒子の機械特性に対する影響が少ないが、塩素以外のハロゲンを含有する場合、それらの特異な性質がポリフェニレンスルフィド微粒子の特性、例えば電気特性や長期安定性を悪化させる傾向にある。本発明のポリフェニレンスルフィド微粒子がハロゲンとして塩素を含有する場合、その好ましい量は1重量%以下、より好ましくは0.5重量%以下、更に好ましくは0.2重量%以下であり、この範囲ではポリフェニレンスルフィド微粒子の揮発性ガス発生量が低減され、特に電気・電子部品などに使用される場合は、高温使用時における装置の誤作動、故障などを抑制し、信頼性を上げるなどの良い効果が得られる。
また、本発明で得られるポリフェニレンスルフィド微粒子の別の特徴は、加熱した際のラクトン型化合物及び/またはアニリン型化合物の発生量が著しく少ないことである。ここでラクトン型化合物とは、例えばβ−プロピオラクトン、β−ブチロラクトン、β−ペンタノラクトン、β−ヘキサノラクトン、β−ヘプタノラクトン、β−オクタノラクトン、β−ノナラクトン、β−デカラクトン、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、γ−ペンタノラクトン、γ−ヘキサノラクトン、γ−ヘプタノラクトン、γ−オクタラクトン、γ−ノナラクトン、γ−デカラクトン、δ−ペンタノラクトン、δ−ヘキサノラクトン、δ−ヘプタノラクトン、δ−オクタノラクトン、δ−ノナラクトン、δ−デカラクトンなどが例示でき、また、アニリン型化合物とは、アニリン、N−メチルアニリン、N,N−ジメチルアニリン、N−エチルアニリン、N−メチル−N−エチルアニリン、4−クロロ−アニリン、4−クロロ−N−メチルアニリン、4−クロロ−N,N−ジメチルアニリン、4−クロロ−N−エチルアニリン、4−クロロ−N−メチル−N−エチルアニリン、3−クロロ−アニリン、3−クロロ−N−メチルアニリン、3−クロロ−N,N−ジメチルアニリン、3−クロロ−N−エチルアニリン、3−クロロ−N−メチル−N−エチルアニリンなどが例示できる。加熱した際のラクトン型化合物及び/またはアニリン型化合物の発生は、前述したのと同様に、特に、電気電子部品などに使用される場合は、高温使用時における装置の誤作動、故障などを抑制し、信頼性を上げるなどの良い効果が得られる。
ラクトン型化合物の発生量は、加熱を行う前のポリフェニレンスルフィド微粒子の重量基準で、好ましくは500ppm以下、より好ましくは300ppm、更に好ましくは100ppm以下、よりいっそう好ましくは50ppm以下が望ましい。同様にアニリン型化合物の発生量は、好ましくは300ppm以下、より好ましくは100ppm、更に好ましくは50ppm以下、よりいっそう好ましくは30ppm以下が望ましい。なお、ポリフェニレンスルフィド微粒子を加熱した際のラクトン型化合物及び/またはアニリン型化合物の発生量を評価する方法としては非酸化性雰囲気下320℃で60分処理した際の発生ガスをガスクロマトグラフィーを用いて成分分割して定量する方法が例示できる。
(II)PPSの製造方法
本発明の重量平均分子量(Mw)が1万以上、重量平均分子量/数平均分子量(Mn)で表される分散度が2.5以下であり、かつアルカリ金属含量が50ppm以下であることを特徴とするポリフェニレンスルフィド微粒子を製造するための原料になるPPSの製造方法としては、下記一般式(1)で表される環状PPS化合物を溶融加熱して、重量平均分子量10,000以上の高重合度体に転化させることによって製造することが例示され、この方法によれば前述した特性を有する本発明のポリフェニレンスルフィド微粒子を得ることができる。
以下、より詳細に環状PPSについて述べる。
(1)環状PPS化合物
本発明の環状PPS化合物は、下記一般式(1)で表される、m=4〜20の整数で表される環状PPS化合物を使用することができ、mは4〜20の混合物でもよい。
Figure 2008231250
(mは4〜20の整数、mは4〜20の混合物でもよい)
上記式中の繰り返し単位mは、4〜20の整数であり、4〜15が好ましく、4〜12がさらに好ましい。
またmが単一の環状PPS単体は、結晶化の容易さに差はあるものの、結晶として得られるため、融解温度が高くなるため、高重合度体に転化させる際の温度が高くなる傾向を示す。一方、異なるmを有する混合物の場合、環状PPS単体に比べて、融解温度が低下し、高分子量体に転化させる際の温度を低下できるという特徴を有する。本特徴により、アルカリ金属を含有する重合開始剤がなくても高重合度化が速やかに進行し、さらに高重合度化の際の副反応も抑制されることから、金属含有量や、揮発性ガス成分量が少ないPPSを製造することが可能となる。
例えば、m=6の環状PPS単体(シクロヘキサ(p−フェニレンスルフィド))は、融点が348℃と高いため、高重合度化のための溶融加熱温度を高温にしないと該環状物が高分子量化しないという問題がある。そのため、環状PPS化合物を溶解する溶媒に溶かして高分子量体に転化するという方法、結晶化した環状PPS単体を一旦融点以上で溶融した後、急冷することによって結晶化を抑え、非晶化させた後、高重合度体に転化させる方法、あるいはプリメルターを環状PPS単体の融点以上に設定し、プリメルター内で環状PPS単体のみを溶融させ、融液として供給する方法などを採用することができる。
このような環状PPS化合物の特徴から、本発明で使用する環状PPS化合物は、その高分子量化の容易性、製造の容易性の面から、mが異なる環状PPS化合物が好ましい。
環状PPS化合物に対するm=6の環状PPSの含有量が50重量%未満が好ましく、さらに好ましくは30重量%、特に好ましくは10重量%未満が好ましい(m=6の環状PPS単体(重量)/(環状PPS化合物(重量)×100)。
環状PPS化合物中の異なるmのそれぞれの比率に特に制限はないが、本発明の効果を発現させるためには、環状PPS化合物の中、最も融点が高く、結晶化しやすいm=6の環状PPS単体の含有量が50重量%未満が好ましく、さらに好ましくは30重量%であり、特に好ましくは10重量%未満である(m=6の環状PPS(重量)/(環状PPS混合物(重量)×100)。ここで、環状PPS混合物中のm=6の環状PPS単体の含有率は、環状PPS混合物をUV検出器を具備した高速液体クロマトグラフィーで成分分割した際の、PPS構造を有する化合物に帰属される全ピーク面積に対する、m=6の環状PPS単体に帰属されるピーク面積の割合として求めることができる。ここで、PPS構造を有する化合物とは、少なくともPPS構造を有する化合物であり、例えば環状PPS化合物や線状のPPSであり、フェニレンスルフィド以外の構造をその一部に有する(例えば末端構造として)化合物もここでいうPPS構造を有する化合物に属する。なお、この高速液体クロマトグラフィーで成分分割された各ピークの定性は、各ピークを分取液体クロマトグラフィーで分取し、赤外分光分析における吸収スペクトルや質量分析を行うことで可能である。
このような環状PPS化合物は、公知のPPSの製造方法によって、PPSと環状PPS化合物を含むPPS混合物を得た後、該PPS混合物から環状PPS化合物を抽出することにより得ることができる。以下にその製造方法について説明する。
(2)環状PPS化合物の原料となるPPS混合物の製造方法
PPS混合物の製造方法としては、公知の技術を用いることができ、たとえば、少なくともp−ジクロロベンゼンに代表されるポリハロゲン化芳香族化合物、硫化ナトリウムに代表されるアルカリ金属硫化物及びN−メチル−2−ピロリドンに代表される有機極性溶媒を含有する混合物を加熱して、ポリフェニレンスルフィド混合物およびアルカリ金属ハライドを含む反応溶液を調製し、該反応液をたとえば水等で処理することでPPS混合物(PPSと環状PPS化合物)を得る方法や、ジフェニルジスルフィド類もしくはチオフェノール類を酸化重合することでPPS混合物を得る方法が例示できる。ただし、これら方法で一般に得られるPPS混合物中に含まれる環状PPS化合物は通常5重量%未満と低いため、環状PPS化合物を5重量%以上含むPPS混合物を得るためには、たとえばPPS混合物の重合の際に、重合溶媒を多量に用いるなどの特殊な方法が必要であり、このような方法で効率よく多量のPPS混合物を得ることは経済的に不利であり、工業的には成立に難がある。
前記以外のPPS混合物の製造方法としては、たとえば、少なくともp−ジクロロベンゼンに代表されるポリハロゲン化芳香族化合物、硫化ナトリウムに代表されるアルカリ金属硫化物及びN−メチル−2−ピロリドンに代表される有機極性溶媒を含有する混合物を加熱し重合した後、220℃以下に冷却して得られた、少なくとも顆粒状のPPSと顆粒状PPS以外のPPS混合物、有機極性溶媒、水、およびハロゲン化アルカリ金属塩を含む反応液から顆粒状のPPSを取り除いた際に得られる回収スラリーからPPS混合物を得る方法が好ましく例示できる。なお、ここで顆粒状PPSとは平均目開き0.175mmの標準ふるい(80meshふるい)で回収できるPPS成分を指す。この方法によって得られるPPS混合物は重量平均分子量が5,000以下の低分子量PPSを多く含み、たとえば前記顆粒状PPSと比較して機械物性などの特性が大幅に劣るため、一般的工業材料用途への適用は困難であり工業利用上の価値のないものとして従来は認識されていた。そのため、この方法で得られるPPS混合物は通常、産業廃棄物として処理されていた。
本発明者らは前記顆粒状PPS以外のPPS混合物を詳細に分析した結果、このPPSには前記式(3)で表される環状PPS(m=4〜20)が10重量%以上含まれており、特にこれらはm=4〜20の混合物として得られることから、本発明の環状PPS化合物を得るための原料として好ましいことを見いだした。このことは、従来は産業廃棄物とされていたものから、産業上極めて利用価値の高い化合物を本発明の方法によって回収できるといった観点で、意義の大きなことである。
前記回収スラリーからPPSを回収する方法としては、たとえば回収スラリーから少なくとも50重量%以上の有機極性溶媒を除去し、残留物を得て、これに水を添加した後、所望に応じて酸を加えて、少なくとも残存有機極性溶媒およびハロゲン化アルカリ金属塩を除去してPPS混合物を分離回収して得る方法や、回収スラリーからPPS混合物を析出させ固体状成分としてPPSを回収する方法、たとえば回収スラリーに水を加えることでPPSを析出させた後に公知の固液分離法であるデカンテーション、遠心分離及び濾過などの手法によって、固体成分としてPPSを得る方法などを例示することができる。
(3)環状PPS化合物含有溶液の調製
本発明ではPPS化合物を、前記式(3)記載の環状PPS化合物(m=4〜20)を溶解可能な溶剤と接触させて環状PPS化合物を含む溶液を調製する。
ここで用いる溶剤としては環状PPS化合物を溶解可能な溶剤であれば特に制限はないが、溶解を行う環境において環状PPS化合物は溶解するが、PPSは溶解しにくい溶剤が好ましく、PPSは溶解しない溶剤がより好ましい。PPSを前記溶剤と接触させる際の反応系圧力は常圧もしくは微加圧が好ましく、特に常圧が好ましく、このような圧力の反応系はそれを構築する反応器の部材が安価であるという利点がある。この観点から反応系圧力は、高価な耐圧容器を必要とする加圧条件は避けることが望ましい。用いる溶剤としてはPPSや環状PPS化合物の分解や架橋など好ましくない副反応を実質的に引き起こさないものが好ましく、PPS混合物を溶剤と接触させる操作をたとえば常圧環流条件下で行う場合に好ましい溶剤としては、例えばペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、シクロペンタン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶媒、クロロホルム、ブロモホルム、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、クロロベンゼン、2,6−ジクロロトルエン等のハロゲン系溶媒、アセトン、ジエチルケトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルブチルケトン、アセトフェノン等のケトン系溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジイソプロピルエーテル等のエーテル系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、トリメチルリン酸、N,N−ジメチルイミダゾリジノンなどの極性溶媒を例示できるが、中でもベンゼン、トルエン、キシレン、クロロホルム、ブロモホルム、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、クロロベンゼン、2,6−ジクロロトルエン、アセトン、ジエチルケトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルブチルケトン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジイソプロピルエーテル、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、トリメチルリン酸、N,N−ジメチルイミダゾリジノンが好ましく、トルエン、キシレン、クロロホルム、塩化メチレン、アセトン、ジエチルケトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフランがより好ましく例示できる。
PPSを溶剤と接触させる際の雰囲気に特に制限はないが、接触させる際の温度や時間などの条件によってPPSや溶剤が酸化劣化するような場合には、非酸化性雰囲気下で行うことが望ましい。なお、非酸化性雰囲気とは気相の酸素濃度が5体積%以下、好ましくは2体積%以下、更に好ましくは酸素を実質的に含有しない雰囲気、即ち窒素、ヘリウム、アルゴン等の不活性ガス雰囲気であることを指し、この中でも特に経済性及び取扱いの容易さの面からは窒素雰囲気が好ましい。
PPS混合物を溶剤と接触させる温度に特に制限はないが、一般に温度が高いほど環状PPS化合物の溶剤への溶解は促進される傾向にある。前記したように、PPS混合物の溶剤との接触は大気圧下でおこなうことが好適であるので、上限温度は使用する溶剤の大気圧下での環流条件温度にすることが望ましく、前述した好ましい溶剤を用いる場合はたとえば20〜150℃を具体的な温度範囲として例示できる。
PPS混合物を溶剤と接触させる時間は、用いる溶剤種や温度等によって異なるため一意的には限定できないが、たとえば1分〜50時間が例示でき、短すぎると環状PPSの溶剤への溶解が不十分になる傾向にあり、また長すぎても溶剤への溶解は飽和状態に達し、それ以上の効果は得られない。
PPSを溶剤と接触させる方法は、公知の一般的な手法を用いれば良く特に限定はないが、たとえばPPS混合物と溶剤を混合し、必要に応じて攪拌した後溶液部分を回収する方法、各種フィルター上のPPS混合物に溶剤をシャワーすると同時に環状PPSを溶剤に溶解させる方法、ソックスレー抽出法原理による方法などいかなる方法も用いることができる。PPSと溶剤を接触させる際の溶剤の使用量に特に制限はないが、たとえばPPS重量に対する浴比で0.5〜100の範囲が例示できる。浴比が小さすぎるとPPS混合物と溶剤の混合が困難になるだけでなく、環状PPS化合物の溶剤への溶解が不十分になる傾向にある。浴比が大きい方が一般に環状PPS化合物の溶剤への溶解には有利であるが、大きすぎてもそれ以上の効果は望めず、逆に溶剤使用量増大による経済的不利益が生じることがある。なお、PPSと溶剤の接触を繰り返し行う場合は、小さい浴比でも十分な効果を得られる場合が多い。またソックスレー抽出法は、その原理上、PPSと溶剤の接触を繰り返し行う場合と類似の効果が得られるので、この場合も小さな浴比で十分な効果を得られる場合が多い。
PPSを溶剤と接触させた後に、環状PPS化合物を溶解した溶液が、残りの固形状のPPSを含む固液スラリー状で得られた場合、公知の固液分離法を用いて溶液部を回収する。固液分離方法としては、たとえば濾過による分離、遠心分離、デカンテーション等を例示できる。このようにして分離した溶液については、後述する溶剤の除去を行う。一方、残存した固体成分については、環状PPS化合物がまだ残存している場合、具体的には重量基準で0.05重量%以上の環状PPS化合物が残存している場合には、再度溶剤との接触及び溶液の回収を繰り返し行うことでより収率よく環状PPS化合物を得ることができる。また、環状PPS化合物がほとんど残存していない、具体的には環状PPS化合物の残存が重量基準で0.05重量%未満の場合には、残存溶剤を除去することで、残存した固体状のPPSは、高純度なPPSとして好適にリサイクル可能である。
(4)環状PPS化合物溶液からの溶剤の除去
本発明では前述のようにして得られた前記式(3)で表される環状PPS化合物(m=4〜20)を含む溶液から溶剤の除去を行い、環状PPS化合物を得る。ここで溶剤の除去は、たとえば加熱し、常圧以下で処理する方法や、膜を利用した溶剤の除去を例示できるが、より収率よく、また効率よく環状PPS化合物を得るとの観点では常圧以下で加熱して溶剤を除去する方法が好ましい。なお、前述の様にして得られた環状PPS化合物を含む溶液は温度によっては固形物を含む場合もあるが、この場合の固形物も環状PPS化合物に属するものであるので、溶剤の除去時に溶剤に可溶の成分とともに回収する事が望ましく、これにより収率よく環状PPS化合物を得られるようになる。
溶剤の除去は、少なくとも50重量%以上、好ましくは70重量%以上、更に好ましくは90重量%以上、よりいっそう好ましくは95重量%以上の溶剤を除去することが望ましい。加熱による溶剤の除去を行う際の温度は用いる溶剤の特性に依存するため一意的には限定できないが、通常、20〜150℃、好ましくは40〜120℃の範囲が選択できる。また、溶剤の除去を行う圧力は常圧以下が好ましく、これにより溶剤の除去をより低温で行うことが可能になる。
(5)その他後処理
(2)〜(4)に記載の方法により得られた環状PPS化合物は十分に高純度であり、m=4〜20の環状PPS化合物として好適に用いることができるが、さらに以下に述べる後処理を付加的に施すことによってよりいっそう純度の高い環状PPS化合物やm=6の環状PPS単体を得ることが可能である。
前記(2)〜(4)までの操作によって得られた環状PPS化合物は、用いた溶剤の特性によっては、PPS中に含まれる不純物成分を含む場合がある。このような少量の不純物を含む環状PPS化合物を不純物は溶解するが、環状PPS化合物は溶解しない、もしくは環状PPS化合物の溶解しにくい第二の溶剤と接触させることで、不純物成分を選択的に除去することが可能な場合が多い。
環状PPS化合物を前記第二の溶剤と接触させる際の反応系圧力は常圧もしくは微加圧が好ましく、特に常圧が好ましく、このような圧力の反応系はそれを構築する部材が安価であるという利点がある。この観点から反応系圧力は、高価な耐圧容器を必要とする加圧条件は避けることが望ましい。第二の溶剤として好ましい溶剤としては、目的とする環状PPS化合物の分解や架橋など好ましくない副反応を実質的に引き起こさないものが好ましく、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、フェノール、クレゾール、ポリエチレングリコールなどのアルコール・フェノール系溶媒、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、シクロペンタン等の炭化水素系溶媒が例示でき、なかでもメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、シクロペンタンが好ましく、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコール、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサンが特に好ましい。これらの溶媒は1種類または2種類以上の混合物として使用することができる。
環状PPS化合物を第二の溶剤と接触させる温度に特に制限はないが、上限温度は使用する第二の溶剤の常圧下での環流条件温度にすることが望ましく、前述した好ましい第二の溶剤を用いる場合はたとえば20〜100℃が好ましい温度範囲として例示でき、より好ましくは25〜80℃が例示できる。
環状PPS化合物を第二の溶剤と接触させる時間は、用いる溶剤種や温度等によって異なるため一義的には限定できないが、たとえば1分〜50時間が例示でき、短すぎると環状PPS化合物中の不純物の第二の溶剤への溶解が不十分になる傾向にあり、また長すぎても第二の溶剤への不純物の溶解は飽和状態に達し、それ以上の効果は得られない。
環状PPS化合物を第二の溶剤と接触させる方法としては固体状の環状PPS化合物と第二の溶剤を必要に応じて攪拌して混合する方法、各種フィルター上の環状PPS化合物固体に第二の溶剤をシャワーすると同時に不純物を第二の溶剤に溶解させる方法、固体状の環状PPS化合物を第二の溶剤を用いたソックスレー抽出を用いる方法や、溶液状の環状PPS化合物もしくは溶剤を含む環状PPS化合物スラリーを第二の溶剤と接触させて、第二の溶剤の存在下で環状PPS化合物を析出させる方法などを用いることができる。なかでも溶剤を含む環状PPS化合物スラリーを第二の溶剤と接触させる方法は、操作後に得られる環状PPS化合物の純度が高く、有効な方法である。
環状PPS化合物を第二の溶剤と接触させた後には、環状PPS化合物が第二の溶剤中に析出したスラリーが得られるので、公知の固液分離法を用いて固体状の環状PPS化合物を回収する。固液分離方法としては、たとえば濾過による分離、遠心分離、デカンテーション等を例示できる。固液分離後に得られた環状PPS化合物中に不純物がまだ残存している場合は、再度環状PPS化合物と第二の溶剤とを接触させて、さらに不純物を除去することも可能である。
(6)本発明の環状PPS化合物の特性
かくして得られた環状PPS化合物は前記式(3)におけるmが4〜20であり、さらに前記式(3)で表されるm=4〜20の異なるmを有する環状PPS化合物が好ましく、さらに環状PPS化合物中の、m=6の環状PPS含量が50重量%未満の混合物であることが好ましい。
なお本発明の環状PPS化合物のmは前記のごとく、m=4〜20であり、mは4〜20の混合物でもよいが、著者らの検討により、環状PPS化合物としては、m=4〜12のものが存在することを確認しており、mがこの範囲の場合、後述するように環状PPS化合物の溶融加熱による高重合度化が速やかに進行することを見出している。
なおmが12以上の環状PPS化合物については、存在している可能性が高いが、現在の分析技術では定性や定量困難である。なぜならば後述するように、環状PPS化合物中に含まれる直鎖状PPSオリゴマーとm=13以上の環状PPSの区別が、現時点の最新分析技術では困難なためである。しかしながら、m=4〜20の環状PPS化合物を溶融加熱すると環状PPS化合物の高重合度化が速やかに進行し、得られるPPS樹脂の揮発性ガス成分量が低減すること、さらにその環状PPS化合物中のm=6の環状PPS単体の含有量が50重量%未満であると、さらにこれらの効果が高められることから、本発明の効果を損なわない範囲でmが13以上の環状PPS化合物が含まれていてもよい。
また(2)〜(5)に記載の方法により得られた環状PPS化合物は十分に高純度であるが、条件によっては、不純物として直鎖状PPSオリゴマーが含有することもある。また前述したようにこの直鎖状PPSオリゴマーとm=13以上の環状PPS化合物の区別は、現時点の最新分析技術では困難である。この直鎖状PPSオリゴマーと推定されるオリゴマー成分の重量平均分子量(Mw)は、前記(2)で記載した環状PPS化合物の原料となるPPSの製造方法により異なるが、通常、5000以下のものであり、場合によっては2000以下のものである。
なお環状PPS化合物中に不純物として残存する直鎖状のPPSオリゴマーは、環状PPS化合物に比べ、熱安定性が悪く、揮発性ガス成分量が増加すること、さらに後述するが、環状PPS化合物中にこれらが不純物として多量に含まれていると、環状PPS化合物の溶融加熱によるPPSへの転化が不十分になるという問題が発生する。
そのため、(2)〜(5)に記載の方法により得られる環状PPS化合物中の直鎖状PPSオリゴマーの量は、全環状PPS化合物に対して、50重量%未満が好ましく、40重量%未満がより好ましく、さらに好ましくは30重量%未満である。
なおこの時の、環状PPS化合物中の直鎖状PPSオリゴマー量は、現時点の分析技術によれば、m=13以上の環状PPS化合物との総量として、MALDI−TOF−MSにより定量することが可能である。
また特開平10−77408号公報に記載されているように、架橋タイプのPPSから、環状PPS化合物をソックスレー抽出し、抽出液を冷却し、析出した白色固体を「再結晶法」により、m=6の環状PPS単体が高純度で得られることが開示されている(シクロヘキサ(p−フェニレンスルフィド)。また架橋タイプのPPSに比べ、回収量は少ないものの、直鎖状のPPSからも、同じように抽出操作し、「再結晶」することにより同じようにm=6の環状PPS単体が高純度で得ることが可能である。
m=6の環状PPS単体は、極めて安定な針状の結晶構造を有し、かつ結晶化しやすいため、「再結晶」という方法に適した環状物である反面、その安定な針状結晶構造を反映して融点が348℃と高くなるため、高重合度化のための溶融加熱温度を高くする必要がある。
m=6の環状PPS単体のみの場合は、環状PPS化合物を溶解する溶媒に溶かして供給するという方法、結晶化した環状PPS単体を一旦融点以上で溶融した後、急冷することによって結晶化を抑え、非晶化させた粉体を供給するという方法、あるいはプリメルターを環状PPS単体の融点以上に設定し、プリメルター内で環状PPS単体のみを溶融させ、融液として供給する方法などを採用することができる。このように環状PPS単体を使用する場合、高重合度化のための溶融加熱温度を高めるという必要性、あるいは前述したように環状PPS単体を一旦溶融させた後、結晶化を抑えて非晶化するという必要性、あるいはプリメルター内で環状PPS単体のみを溶融させ、融液として供給するという必要性が生じるため、環状PPSの高重合度化のための生産性や溶融加工性の面から、環状PPS化合物中の、m=6の環状PPS単体の含量が50重量%未満が好ましく、30重量%未満がより好ましく、さらに好ましくは10重量%未満が好ましい。
この理由は現時点下記の通り解釈している。すなわち、m=6の環状PPS単体の含有量が低下することにより、該環状PPS単体が結晶核として作用しないなどの効果もあって、結果として、m=4以上の混合物からなる環状PPS化合物の結晶化が抑えられ、環状PPS化合物の融点が低くなることにより、該環状PPS化合物が容易に融解し、その結果溶融加熱による高重合度化が容易になると考えられる。
またm=6以外の環状単量体は、m=6に比べ、結晶化し難いため、「再結晶」という手法により単量体として得ることは困難であったが(再結晶という手法により単離可能なのはm=6の環状PPS単体のみである)、筆者らはこれらの単量体を分取液体クロマトグラムにより分離回収し、m=4の環状PPS単体(シクロテトラ(p−フェニレンスルフィド)、融点296℃))、m=5のシクロペンタ(p−フェニレンスルフィド)(融点257℃)、m=7のシクロヘプタ(p−フェニレンスルフィド)(融点328℃)、m=8のシクロオクタ(p−フェニレンスルフィド)(融点305℃)であることが確認された。
すなわち(2)〜(5)に記載の方法によれば、得られる環状PPS化合物は異なるmを有する混合物であり、かつm=6の環状PPS単体の含量が50重量%未満のものが得られる。また条件によっては、m=6の環状PPS単体の含量が30重量%未満のもの、さらには10重量%未満のものも得ることが可能である。得られた環状PPS化合物は、単一のmからなる環状PPS単体に比べ、融解温度が低いという特徴があり、このことはたとえば環状PPS化合物を簡便な方法で、低い溶融加熱温度で高分子量体に転化することが可能となる。
(7)環状PPS化合物の高重合度体への転化
前記した本発明のPPSは、前記環状PPS化合物を溶融加熱して高重合度体に転化させる方法によって製造することが好ましい。この溶融加熱の温度は、前記環状PPS化合物が溶融解する温度であることが好ましく、このような温度条件であれば特に制限は無い。加熱温度が環状PPS化合物の溶融解温度未満ではPPSを高重合度化するのに長時間が必要となる傾向がある。なお、環状PPS化合物が溶融解する温度は、前述したように環状PPS化合物中に存在するmの組成や純度により異なるが、例えば環状PPS化合物を示差走査型熱量計で分析することで溶融解温度を把握することにより、その融解温度以上で溶融加熱させることが可能である。但し、温度が高すぎると加熱により生成したPPSの分子間、及びPPSと環状PPS化合物間などでの架橋反応や分解反応に代表される好ましくない副反応が生じやすくなる傾向にあり、得られるPPSの特性が低下する場合があるため、このような好ましくない副反応が顕著に生じる温度は避けることが望ましい。溶融加熱温度としては180〜400℃が例示でき、好ましくは200〜380℃、より好ましくは250〜360℃である。
前記溶融加熱を行う時間は使用する環状PPS化合物中のmの組成や、環状PPS化合物の純度などの各種特性、また、加熱溶融温度等の条件によって異なるため一様には規定できないが、前記した好ましくない副反応がなるべく起こらないように設定することが好ましい。加熱溶融時間としては0.05〜100時間が例示でき、0.1〜20時間が好ましく、0.1〜10時間がより好ましい。0.05時間未満では環状PPS化合物のPPSへの転化が不十分になりやすく、100時間を超えると好ましくない副反応による得られるPPSの特性への悪影響が顕在化する可能性が高くなる傾向にあるのみならず、経済的にも不利益を生じる場合がある。
環状PPS化合物の溶融加熱による高重合度体への転化は、通常溶媒の非存在下で行うが、溶媒の存在下で行うことも可能である。溶媒としては、環状PPS化合物の加熱による高重合度体への転化の阻害や生成したPPSの分解や架橋など好ましくない副反応を実質的に引き起こさないものであれば特に制限はなく、例えばN−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどの含窒素極性溶媒、ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホンなどのスルホキシド・スルホン系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、アセトフェノンなどのケトン系溶媒、ジメチルエーテル、ジプロピルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒、クロロホルム、塩化メチレン、トリクロロエチレン、2塩化エチレン、ジクロルエタン、テトラクロルエタン、クロルベンゼンなどのハロゲン系溶媒、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、フェノール、クレゾール、ポリエチレングリコールなどのアルコール・フェノール系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒などがあげられる。また、二酸化炭素、窒素、水等の無機化合物を超臨界流体状態として溶媒に用いることも可能である。これらの溶媒は1種類または2種類以上の混合物として使用することができる。
環状PPS化合物の加熱による高重合度体への転化の際の雰囲気は非酸化性雰囲気で行うことが好ましく、減圧条件下で行うことも好ましい。また、減圧条件下で行う場合、反応系内の雰囲気を一度非酸化性雰囲気としてから減圧条件にすることが好ましい。これにより加熱による高重合度体への転化の際の、架橋反応や分解反応等の好ましくない副反応の発生を抑制できる傾向にある。なお、非酸化性雰囲気とは環状PPS化合物が接する気相における酸素濃度が5体積%以下、好ましくは2体積%以下、更に好ましくは酸素を実質的に含有しない雰囲気、即ち窒素、ヘリウム、アルゴン等の不活性ガス雰囲気であることを指し、この中でも特に経済性及び取扱いの容易さの面からは窒素雰囲気が好ましい。また、減圧条件下とは反応を行う系内が大気圧よりも低いことを指し、上限として50kPa以下が好ましく、20kPa以下がより好ましく、10kPa以下が更に好ましい。下限としては0.1kPa以上が例示でき、0.2kPa以上がより好ましい。減圧条件が好ましい上限を越える場合は、架橋反応など好ましくない副反応が起こりやすくなる傾向にあり、一方好ましい下限未満では、反応温度によっては環状PPS化合物に含まれる分子量の低い環状PPS化合物が揮散しやすくなる傾向にある。
かくして得られたPPSは、耐熱性、耐薬品性、難燃性、電気的性質並びに機械的性質に優れる。このようにして得られたPPSは、引き続き、ポリフェニレンスルフィド微粒子にするための原料として供される。
(III)ポリフェニレンスルフィド微粒子の製造方法
本発明における、ポリフェニレンスルフィド微粒子とは、上記(II)で得られるPPSから作られ、平均粒径10μm以下、好ましくは5μm以下の粉状体であり、その形状は、真球状、楕円球状、扁平状、岩状、金平糖状、不定形等いずれの形態でもかまわない。平均粒径の下限については特に制限はないが、0.05μm以上であることが好ましい。
本発明における平均粒径とは、いわゆるミー(Mie)の散乱・回折理論に基づくレーザ回折式粒度分布計で測定される平均粒径を示す。具体的には、レーザーの回折結果をミーの理論により解析した粒度の対数の算術平均をとり、それから算出される平均粒径のことを示す。
本発明における、ポリフェニレンスルフィド微粒子を得るためには、以下の方法を経ることにより入手することができる。
本発明では、(II)で得られたPPSを原料として、ポリフェニレンスルフィド微粒子を調製する。
ポリフェニレンスルフィド微粒子を得るためには、まず、PPSと溶媒を、容器の中にいれる。
この際、ポリフェニレンスルフィドと溶媒を容器の中へ投入する順序は問わない。用いる容器は、高温下で使用することから、耐圧製容器を用いる方が好ましい。
投入する際の雰囲気は、空気雰囲気下、不活性ガス雰囲気下のいずれでも良いが、原料のPPSとの副反応をさせたり、またはPPS自身を劣化させるような雰囲気は避けるべきであるため、不活性ガス雰囲気下が好ましい。
ここでいう、不活性ガスとは、窒素ガス、二酸化炭素、ヘリウムガス、アルゴンガス、ネオンガス、クリプトンガス、キセノンガスなどが挙げられ、経済性、入手容易性を勘案して、窒素ガス、アルゴンガス、二酸化炭素ガスが最も好ましい。
この際用いる溶媒としては、PPSを溶解するものであれば、特に制限はないが、例えば、クロロホルム、ブロモホルム、1,2−ジクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、p−ジクロロベンゼン、2,6−ジクロロトルエン、1−クロロナフタレン、ヘキサフルオロイソプロパノール等のハロゲン系溶媒、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、トリメチルリン酸、N−メチルピロリジノン等の極性溶媒から少なくとも一種から選ばれる溶媒を例示することができ、好ましくは、N−メチルピロリジノン、1−クロロナフタレン、o−ジクロロベンゼンの中から少なくとも一種選ばれる溶媒である。
溶媒に対するPPSの質量比率は、PPSが溶媒に溶解する限り特に制限はないが、溶媒100質量部に対して、0.1〜100質量部の範囲を例示することができ、好ましくは、0.1〜40質量部であり、より好ましくは、0.1〜20質量部である。この範囲で実施すれば、経済的且つ取扱が容易であり且つ効率よく細粒化することが可能である。
PPSを溶解させるために、この混合した反応液は、所定の温度まで上昇させる。
この際の必要とする温度は、溶媒により異なるが、180℃以上が好ましく、さらに好ましくは200℃以上であり、より好ましくは、250℃以上である。上限としてはPPSが分解しない温度以下であり、好ましくは400℃以下である。
PPSの溶解度以上のPPSを溶解させる場合には、溶解操作を加圧下で行うことが好ましい。その際の圧力は、溶媒の種類、温度、溶解させるPPSの量および溶解させる容器の体積により異なるが、1MPa〜100MPaの範囲が好ましく、さらに好ましくは、1MPa〜10MPa以下、より好ましくは、1MPa〜5MPa以下である。この範囲であれば、実生産を行う上で実施しやすい。
この温度にすることにより、PPSを均一に溶解することが可能になり、微粒子を安定に製造することができる。
また、この際、PPSと溶媒の混合液は攪拌してもしなくても良いが、攪拌を行ったほうが好ましく、これにより溶解に要する時間を短くすることができる。
所定の温度まで上昇させた後、混合液をしばらくの間、温度を維持することが好ましい。この際の時間とは、10分〜10時間の範囲であり、好ましくは、10分〜6時間、より好ましくは20分〜2時間の範囲である。
この操作を行うことにより、PPSをより十分に溶解させることができる。
十分に溶解させて得られた反応液は、引き続き、室温付近まで冷却させる。この際攪拌しても、攪拌しなくても良い。
また、冷却する際、容器を氷水などにつけ、急冷してもよいし、降温速度を遅くし、ゆっくり析出させてもよい。
十分に冷却した混合液から、ポリフェニレンスルフィド微粒子を回収し、目的のポリフェニレンスルフィド微粒子を得ることができる。
この際、回収する方法としては、濾過、遠心分離、遠心濾過、スプレードライ、デカンテーションなどの従来公知の方法で固液分離を行うことによって単離しても良い。
(IV)ポリフェニレンスルフィド微粒子分散液の調整方法
このようにして得られたポリフェニレンスルフィド微粒子は、溶媒中での分散液として利用することができる。
この際、分散媒になりうる分散媒としては例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、シクロペンタン、デカン、ドデカン、トリデカン、テトラデカン等の脂肪族炭化水素系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレン、2−メチルナフタレン等の芳香族炭化水素系溶媒、酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸ブチル、プロピオン酸ブチル、酪酸ブチル等のエステル系溶媒、クロロホルム、ブロモホルム、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、p−ジクロロベンゼン、2,6−ジクロロトルエン、1−クロロナフタレン、ヘキサフルオロイソプロパノール等のハロゲン系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルブチルケトン等のケトン系溶媒、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール等のアルコール系溶媒、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、トリメチルリン酸、N−メチルピロリジノン等の極性溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジイソプロピルエーテル、ジオキサン、ジグライム、ジメトキシエタン等のエーテル系溶媒および水の中から少なくとも一種から選ばれる溶媒を例示できるが、環境面、安全面から水が最も好ましい。
この際、水への分散性を向上させるために、本発明の効果を損なわない範囲で界面活性剤の添加を行ってもよい。
界面活性剤としては、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、両性イオン界面活性剤、非イオン系界面活性剤が挙げられ、アニオン系界面活性剤としては、脂肪酸ナトリウム、脂肪酸カリウム、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキル硫酸エステルナトリウム、アルキルスルホン酸ナトリウム、アルキルエーテル硫酸エステルナトリウム、モノアルキルリン酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステルナトリウム、脂肪酸エステルスルホン酸ナトリウム、脂肪酸エステル硫酸エステルナトリウム、脂肪酸アルキロースアミド硫酸エステルナトリウム、脂肪酸アミドスルホン酸ナトリウムなどが挙げられる。
カチオン系界面活性剤としては、塩化アルキルメチルアンモニウム、塩化アルキルトリメチルアンモニウム、塩化ジアルキルジメチルアンモニウム、塩化アルキルジメチルベンジルアンモニウム、塩化アルキルピリジニウムなどが挙げられる。
両性イオン界面活性剤としては、アルキルアミノカルボン酸塩、カルボキシベタイン、アルキルベタイン、スルホベタイン、ホスホベタインなどが挙げられる。
非イオン系界面活性剤としては、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンラウリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリコールモノ脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシアルキルエーテル、脂肪酸アルカノールアミド、脂肪酸モノエタノールアミド、脂肪酸ジエタノールアミド、脂肪酸トリエタノールアミド、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、イソプロパノールアミド、アルキルアミンオキシド、ポリオキシエチレンアミンなどが挙げられる。
なお、ここでいうアルキルとは、例示するならば炭素数2から30までの直鎖型飽和炭化水素基、直鎖型不飽和炭化水素基、分岐型飽和炭化水素基または分岐型不飽和炭化水素基などが挙げられる。
本発明で用いる界面活性剤としては、上記のうち、アニオン系界面活性剤、両性イオン界面活性剤、非イオン系界面活性剤が好ましく、中でもアニオン系界面活性剤、非イオン系界面活性剤が好ましく、特に、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、脂肪酸ナトリウム、脂肪酸カリウム、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキル硫酸エステルナトリウム、アルキルスルホン酸ナトリウム、アルキルエーテル硫酸エステルナトリウム、脂肪酸エステルスルホン酸ナトリウム、脂肪酸エステル硫酸エステルナトリウムなどが好ましい。
これらの界面活性剤の添加量は、分散媒100部に対し、0.01質量部〜100質量部の濃度となる範囲であり、好ましくは0.5質量部〜20質量部の範囲であり、より好ましくは1質量部〜10質量部の範囲である。この範囲の量で界面活性剤を用いることにより、非常に効率よくポリフェニレンスルフィド微粒子を分散媒のなかに均一に分散させることができる。
ここで得られた分散媒100部に対して0.1質量部〜50質量部の範囲でポリアリーレンスルフィド微粒子を分散させる。
十分に分散させるために、上記で得られた分散液を、加熱、超音波照射、レーザー照射、マイクロ波照射などの物理的エネルギーの供給を行ってもよい。
このようにして得られたポリフェニレンスルフィド微粒子分散液においても、場合によっては沈殿物を含む場合もある。その際には、沈殿部と分散部を分離して利用してもよい。分散液のみを得る場合には、沈殿部と分散部の分離を行えばよく、そのためには、デカンテーション、ろ過などを行えば良い。また、より粒径の細かいものまで必要な場合には、遠心分離などを行い、粒径の大きなものを完全に沈降させ、デカンテーションやろ過を行い、沈殿部分を除去すればよい。
また、場合によっては、(III)で微粒子をえる直前である、反応液から、溶媒留去などの手法を用いることで段階的に置換して、直接ポリフェニレンスルフィド微粒子分散液として入手してもよい。
上記のように得られたポリフェニレンスルフィド微粒子およびその分散液は、は、塗料、接着、ポリマーコンパウンド、電気・電子部品の分野において有用なものである。
以下、実施例をあげることにより、本発明をより詳細に説明する。しかし、本発明はこれらに限定されるものではない。
<分子量測定>
原料となるPPSの分子量はサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)の一種であるゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、ポリスチレン換算で算出した。GPCの測定条件を以下に示す。
装置:センシュー科学 SSC−7100
カラム名:センシュー科学 GPC3506
溶離液:1−クロロナフタレン
検出器:示差屈折率検出器
カラム温度:210℃
プレ恒温槽温度:250℃
ポンプ恒温槽温度:50℃
検出器温度:210℃
流量:1.0mL/min
試料注入量:300μL (固形物量:約0.2重量%)。
<環状PPS化合物の融点>
パーキンエルマー製DSC7を用いて得られたポリマーの熱的特性を測定した。下記測定条件を用い、結晶化温度Tcは1st Runの値を、融点Tmは2nd Runの値を用いた。
First Run
・50℃×1分 ホールド
・50℃から320℃へ昇温,昇温速度20℃/分
・320℃×1分 ホールド
・ 320℃から100℃へ降温,降温速度20℃/分
Second Run
・100℃×1分 ホールド
・100℃から320℃へ昇温,昇温速度20℃/分(この時の融解ピーク温度をTmとする)
<アルカリ金属含有量の定量>
PPS及びポリフェニレンスルフィド微粒子中のアルカリ金属含有量の定量は下記により行った。
(a) 試料を石英るつぼに秤とり、電気炉を用いて灰化した。
(b) 灰化物を濃硝酸で溶解した後、希硝酸で定容とした。
(c) 得られた定容液をICP重量分析法(装置;Agilent製4500)及びICP発光分光分析法(装置;PerkinElmer製Optima4300DV)に処した。
<ハロゲン含有量の定量>
PPSおよびポリフェニレンスルフィド微粒子中のハロゲン量の定量は下記方法で行った。
(a) 酸素を充填したフラスコ内で試料を燃焼した。
(b) 燃焼ガスを溶液に吸収し、吸収液を調製した。
(c) 吸収液の一部をイオンクロマト法(装置;ダイオネクス社製DX320)によって分析し、ハロゲン濃度を定量した。
<加熱時発生ガス成分の分析>
PPSおよびポリフェニレンスルフィド微粒子を加熱した際に発生する成分の定量は以下の方法により行った。
(a) 加熱時発生ガスの捕集
約10mgのサンプルを窒素気流下(50ml/分)の320℃で60分間加熱し、発生したガス成分を大気捕集用加熱脱離用チューブcarbotrap400に捕集した。
(b) ガス成分の分析
上記チューブに捕集したガス成分を熱脱着装置TDU(Supelco社製)を用いて室温から280℃まで5分間で昇温することで熱脱離させた。熱脱離した成分をガスクロマトグラフィーを用いて成分分割して、ガス中のγブチロラクトン及び4−クロロ−N−メチルアニリンの定量を行った。
<示差走査熱量(DSC)測定>
示差走査熱量測定装置(RDC220(セイコー・インスツルメンツ))を用い、窒素雰囲気下、窒素流量20mL/分とし、サンプル量5mgを秤量し、温度プログラム:30℃から340℃まで10℃/分で昇温後、2分間ホールドし、340℃から30℃まで10℃/分で降温後、2分間ホールドした後、30℃から500℃まで10℃/分で昇温した時のDSCカーブより、融解熱量を測定した。
<示差熱重量(TGA)測定>
熱重量測定装置DTG−40(島津製作所製)を用い、下記の条件で温度をかけた後に重量減少を測定したところ、重量減少は1%以下であった。
(温度条件)
室温より200℃まで:昇温40℃/分
200℃から270℃まで:70℃/20分
270℃にて40分保持。
微粒子量: 20mgオーダーで精秤 清浄窒素量:40ml/min。
<粒度分布測定>
ポリフェニレンスルフィド微粒子は、レーザー回折式粒度分布計(島津製作所製 SALD−2100)を用い測定した、レーザーの回折結果をミーの理論により解析した粒度の対数の算術平均をとり、それから算出される平均粒径を求めた。
<粉体の電気抵抗測定>
ポリフェニレンスルフィド微粒子の電気絶縁性の評価には、四端子四探針法(株式会社 ダイヤインスツルメンツ製 粉体抵抗測定システム MCP−PD51 高抵抗測定用リング電極を使用)を用いて測定を行った。
[参考例1](環状PPSの原料となるPPS混合物の製造例)
本文(3)記載の環状PPSの原料となるPPS混合物の製造例について下記に説明する。
<PPS混合物の調製>
撹拌機付きの1000Lのオートクレーブに、47.5%水硫化ナトリウム82.7kg(700モル)、96%水酸化ナトリウム29.6kg(710モル)、N−メチル−2−ピロリドン(以下NMPと略する場合もある)を114.4kg(1156モル)、酢酸ナトリウム17.2kg(210モル)、及びイオン交換水100kgを仕込み、常圧で窒素を通じながら約240℃まで約3時間かけて徐々に加熱し、精留塔を介して水143kgおよびNMP2.8kgを留出した後、反応容器を160℃に冷却した。なお、この脱液操作の間に仕込んだイオウ成分1モル当たり0.02モルの硫化水素が系外に飛散した。
次に、p−ジクロロベンゼン103kg(703モル)、NMP90kg(910モル)を加え、反応容器を窒素ガス下に密封した。240rpmで撹拌しながら、0.6℃/分の速度で270℃まで昇温し、この温度で140分保持した。水12.6kg(700モル)を15分かけて圧入しながら250℃まで1.3℃/分の速度で冷却した。その後220℃まで0.4℃/分の速度で冷却してから、室温近傍まで急冷し、スラリー(A)を得た。このスラリー(A)を200kgのNMPで希釈しスラリー(B)を得た。
80℃に加熱したスラリー(B)200kgを50kg/1バッチスケールで、ふるい(80mesh、目開き0.175mm)で濾別し、濾液成分としてスラリー(C)を約150kg、メッシュオン成分としてスラリーを含んだ顆粒状PPS樹脂(粗PPS樹脂(D))50kg得た。
得られたスラリー(C)150kgを50kg/1バッチで脱揮装置に仕込み、窒素で置換してから、減圧下100〜150℃で1.5時間処理した後に、真空乾燥機で150℃、1時間処理して固形物を得た。この固形物にイオン交換水200kg(スラリー(C)の1.2倍量)を加えた後、70℃で30分撹拌して再スラリー化した。このスラリーを目開き10〜16μmのフィルターで減圧吸引濾過した。得られた白色ケークにイオン交換水200kgを加えて70℃で30分撹拌して再スラリー化し、同様に吸引濾過後、70℃で5時間真空乾燥してPPS混合物を2kg得た。
ここで得られたPPS混合物を用いた環状PPS混合物の製造例について下記に説明する。
[参考例2](環状PPS化合物の製造)
参考例1の方法で得られたPPS混合物を2kgに、溶剤としてクロロホルム50kgを用いて、浴温約80℃で抽出法により3時間PPS混合物と溶剤を接触させ、抽出液を得た。得られた抽出液は室温で一部固形状成分を含むスラリー状であった。この抽出液スラリーからエバポレーターを用いてクロロホルムを留去した後、真空乾燥機70℃で3時間処理して固形物840g(PPS混合物に対し、収率42%)を得た。
このようにして得られた固形物は、赤外分光分析(装置;島津社製FTIR−8100A)における吸収スペクトルよりフェニレンスルフィド骨格を有する化合物であることを確認した。また、高速液体クロマトグラフィー(装置;島津社製LC−10,カラム;C18,検出器;フォトダイオードアレイ)より成分分割した成分のマススペクトル分析(装置;日立製M−1200H)、更にMALDI−TOF−MSおよびGPCによる分子量情報より、この固形物は表1に示す繰り返し単位数4〜12の環状PPSを主要成分とする混合物であり、環状PPSの重量分率は約87%、13%は直鎖状PPSオリゴマーとm=13以上の環状PPS(Mw=2000)、Tm=226℃であった。
Figure 2008231250
本発明によれば、環状PPSを約87重量%含む、純度の高い環状PPS混合物を高い収率で得られることがわかった。
[参考例3]
参考例2で得られた環状PPS化合物を攪拌機を取り付けた1Lのオートクレーブ中に仕込み、窒素で置換した。オートクレーブを1時間で300℃に昇温した。昇温途中で環状PPS化合物が溶融したら、攪拌機の回転を開始し、回転数10rpmで攪拌下、60分間溶融加熱した。その後、窒素圧によりポリマーを吐出口よりガット状で取り出し、ガットをペレタイズした。得られた若干黒みを帯びた生成物の赤外スペクトルはPPS構造を有することがわかった。なお、生成物は1−クロロナフタレンに210℃で全溶であった。以下一連の評価結果を表2にまとめて示した。
Figure 2008231250
GPCにより測定したPPSの重量平均分子量は61700、分子量分布は1.9、Na含有量は10ppmでこれ以外のアルカリ金属は検出されなかった。さらに320℃/60分加熱した際の発生ガス成分であるラクトン型化合物としてγブチロラクトン(γ−BL)が4ppm、アニリン型化合物として4−クロロ−N−メチルアニリン(MeAn)が3ppm検出された。なおNa以外のアルカリ金属や塩素以外のハロゲンは検出されなかった。
[参考例4]
<従来技術によるPPSの調製>
参考例1で得られた粗PPS樹脂(D)20kgにNMP約50リットルを加えて85℃で30分間で洗浄し、ふるい(80mesh、目開き0.175mm)で濾別した。得られた固形物を50リットルのイオン交換水で希釈して、70℃で30分撹拌後、80メッシュふるいで濾過して固形物を回収する操作を合計5回繰り返した。このようにして得られた固形物を、130℃で熱風乾燥し、乾燥ポリマーを得た。得られたポリマーの赤外分光分析による吸収スペクトルは参考例1で得られたPPS混合物の吸収と一致した。GPCにより測定したPPSの重量平均分子量は59600、分子量分布は3.8、Na含有量は1040ppmでこれ以外のアルカリ金属は検出されなかった。さらに320℃/60分加熱した際の発生ガス成分であるラクトン型化合物としてγ−ブチロラクトン(γ−BL)が618ppm、アニリン型化合物として4−クロロ−N−メチルアニリン(MeAn)が416ppm検出された。
実施例1
5000ccの耐圧容器内に、参考例3で得られたPPS10.0g、溶媒として1−クロロナフタレン(関東化学社製)1000gを加え、窒素下に密閉後、230℃まで上昇させた。230℃まで上昇したことを確認した後に、20分間攪拌しながらその状態を維持した後に、耐圧容器を氷水で冷却した。
室温付近まで冷却した後に、耐圧容器から混合液を取り出し、5C濾紙を用いて吸引濾過することによりポリフェニレンスルフィド微粒子を得た。この微粒子をレーザー回折式粒度分布計(島津製作所製 SALD−2100、分散媒:TritonX−100(アルドリッチ社製)0.5質量%水溶液)にて測定を行ったところ、平均粒径は、7.26μmであることがわかった。
さらに、ろ液を6000rpmの速度で遠心分離し、デカンテーションを行うことにより、より微細な粒子を回収した。
この微粒子の平均粒径を同様に測定したところ、平均粒径は1.92μmであり、上記微粒子よりもさらに粒径の細かい微粒子を得ることができた。本発明により、微細化したポリフェニレンスルフィド微粒子が得られることが分かった。
上記本ろ過物とデカンテーションを行って回収して得られた微粒子をあわせた微粒子について、加熱時発生ガス量、TGA熱重量減少(耐熱性の指標)、電気絶縁特性の評価を行った。その結果を表3に示す。
実施例2
5000ccの耐圧容器内に、参考例3で得られたPPS 51.6g、溶媒として1−クロロナフタレン(関東化学社製)1000gを加え、窒素下に密閉後、240℃まで上昇させた。240℃まで上昇したことを確認した後に、30分間攪拌しながらその状態を維持した後に、耐圧容器を氷水に浸し、攪拌しながら冷却した。
室温付近まで冷却した後に、耐圧容器から混合液を取り出し、5C濾紙を用いて吸引濾過することによりポリフェニレンスルフィド微粒子を得た。この微粒子をレーザー回折式粒度分布計(分散媒:TrtonX−100(アルドリッチ社製)0.5質量%水溶液)にて測定を行ったところ、ポリフェニレンスルフィドの平均粒径は8.64μmに微細化していることが分かった。
実施例1と同様にして、加熱時発生ガス量、TGA熱重量減少(耐熱性の指標)、電気絶縁特性の評価を行った。その結果を表3に示す。
比較例1
実施例1と同様にして、参考例4で得られたPPSを用いてPPS微粒子を作成した。平均粒径2.4μmであった。発生ガス量と電気絶縁特性につき、実施例1、2と同様に加熱時発生ガス量、TGA熱重量減少(耐熱性の指標)、電気絶縁特性の評価を行った。その結果を表3に示す。
Figure 2008231250
実施例3
実施例2で得られたポリフェニレンスルフィド微粒子200mgを0.1mol/Lオクタデシルトリメチルアンモニウムクロライド(東京化成(株)製)水溶液100gに分散し、超音波照射を行ったのちに、沈降部分を除去することにより、分散液を調整した。得られた分散液をレーザー回折式粒度分布計にて測定したところ、平均粒径1.3μmであった。分散性状は良好であった。
実施例4
5000ccの耐圧容器内に、参考例3で得られたPPS50.8g、溶媒としてN−メチルピロリジノン(関東化学社製)1000gを加え、窒素下に密閉後、320℃まで上昇させた。320℃まで上昇したことを確認した後に、30分間攪拌しながらその状態を維持した後に、耐圧容器を氷水に浸し、攪拌しながら冷却した。
室温付近まで冷却した後に、耐圧容器から混合液を取り出し、5C濾紙を用いて吸引濾過することによりポリフェニレンスルフィド微粒子を得た。この微粒子をレーザー回折式粒度分布計(分散媒::トリトン エックス(Triton X)−100(アルドリッチ社製)0.5質量%水溶液)にて測定を行ったところ、ポリフェニレンスルフィドの平均粒径は3.60μmに微細化していることが分かった。
実施例5
5000ccの耐圧容器内に、参考例3で得られたPPS50.2g、溶媒としてN−メチルピロリジノン(関東化学社製)1000gを加え、窒素下に密閉後、350℃まで上昇させた。350℃まで上昇したことを確認した後に、30分間攪拌しながらその状態を維持した後に、耐圧容器を氷水に浸し、攪拌しながら冷却した。
室温付近まで冷却した後に、耐圧容器から混合液を取り出し、5C濾紙を用いて吸引濾過することによりポリフェニレンスルフィド微粒子を得た。この微粒子をレーザー回折式粒度分布計(分散媒:トリトン エックス(Triton X)−100(アルドリッチ社製)0.5質量%水溶液)にて測定を行ったところ、ポリフェニレンスルフィドの平均粒径は4.45μmに微細化していることが分かった。
実施例6
実施例4で得られた微粒子のうち25.0gを、非イオン系界面活性剤であるノナール206(東邦化学社製)2.5質量%水溶液10gに加え、超音波ホモジナイザーを用いて分散させた。得られた分散液をレーザー回折式粒度分布計にて測定したところ、平均粒径2.5μmであった。分散性状は良好であった。
実施例7
実施例4で得られた微粒子のうち25.0gを、非イオン系界面活性剤であるノナール206(東邦化学社製)を1.25質量%と同じく非イオン系界面活性剤であるTween20(ジー・イー ヘルスケア バイオサイエンス社製)を1.25質量%含む水溶液10gに加え、超音波ホモジナイザーを用いて分散させた。得られた分散液をレーザー回折式粒度分布計にて測定したところ、平均粒径1.1μmであった。分散性状は良好であった。
本発明の製造法によれば、繊細で、粒径の細かく、耐熱性に優れ、電気絶縁性に優れたたポリフェニレンスルフィド微粒子を非常に容易に得ることが出来る。
このようにして得られたポリフェニレンスルフィド微粒子およびその分散液は、耐熱性の高い熱可塑性微粒子と位置づけられ、特に耐熱性を有していることから、接着剤、塗料及び印刷インク等の中の分散剤または増粘剤、医療用担体、磁気記録媒体、化粧品の基材、プラスチックの改質剤、クロマトグラフィー担体、層間絶縁膜用材料等の用途に幅広く用いることができる。

Claims (9)

  1. アルカリ金属含量が50ppm以下のポリフェニレンスルフィドからなり、平均粒径が10μm以下であることを特徴とするポリフェニレンスルフィド微粒子。
  2. アルカリ金属がナトリウムであることを特徴とする請求項1記載のポリフェニレンスルフィド微粒子。
  3. ポリフェニレンスルフィド微粒子を加熱した際の発生ガス成分中のラクトン型化合物がポリフェニレンスルフィド重量基準で500ppm以下であって、かつ加熱した際の発生ガス成分中のアニリン型化合物がポリフェニレンスルフィド重量基準で300ppm以下であることを特徴とする請求項1または2記載のポリフェニレンスルフィド微粒子。
  4. 重量平均分子量(Mw)が1万以上、重量平均分子量/数平均分子量(Mn)で表される分散度が2.5以下である請求項1から3のいずれか記載のポリフェニレンスルフィド微粒子。
  5. ポリフェニレンスルフィドが、下記一般式(1)で表される環状ポリフェニレンスルフィド混合物を、溶融加熱することを得られたものであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか記載のポリフェニレンスルフィド微粒子。
    Figure 2008231250
    (mは4〜20の整数、mは4〜20の混合物でもよい。)
  6. ポリフェニレンスルフィドを溶媒に溶解し、析出させることを特徴とする請求項1〜5のいずれか記載のポリフェニレンスルフィド微粒子の製造方法。
  7. 下記一般式(1)で表される環状ポリフェニレンスルフィド混合物を、溶融加熱して得られたポリフェニレンスルフィドを溶媒に溶解し、析出させることを特徴とするポリフェニレンスルフィド微粒子の製造方法。
    Figure 2008231250
    (mは4〜20の整数、mは4〜20の混合物でもよい。)
  8. 溶媒が、N−メチルピロリジノン、o−ジクロロベンゼン、および1−クロロナフタレンから選択された少なくとも1種類であることを特徴とする請求項6または7記載のポリフェニレンスルフィド微粒子の製造方法。
  9. 請求項1〜5のいずれか記載のポリフェニレンスルフィド微粒子、または請求項6〜8のいずれか記載の製造方法で得られたポリフェニレンスルフィド微粒子を界面活性剤を含有する水に分散させた分散液。
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