以下、本発明の実施の形態を説明する。本発明において「重量」とは「質量」を意味する。
(1)ポリアリーレンスルフィド(PAS)
本発明に用いるPASの代表例としては、PPS、ポリフェニレンスルフィドスルホン、ポリフェニレンスルフィドケトン、これらのランダム共重合体、ブロック共重合体およびそれらの混合物などが挙げられ、中でもPPSが特に好ましく使用される。本発明の高誘電性樹脂組成物に使用されるPPSとは、構造式(2)で示される繰り返し単位を70モル%以上、より好ましくは90モル%以上を含む重合体であり、上記繰り返し単位が70モル%未満では、耐熱性が損なわれるので好ましくない。
またPPSはその繰り返し単位の30モル%未満を、下記の構造式を有する繰り返し単位等で構成することが可能である。
本発明のPASの分子量は、重量平均分子量で10,000以上、好ましくは15,000以上、より好ましくは18,000以上である。重量平均分子量が10,000未満では強度、靭性などの機械特性が低下する。重量平均分子量の上限に特に制限は無いが、1,000,000未満を好ましい範囲として例示でき、より好ましくは500,000未満、更に好ましくは200,000未満であり、この範囲内では高い成形加工性と機械特性のバランスを得ることができる。
本発明におけるPASの分子量分布の広がり、すなわち重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)で表される分散度は2.5以下であり、好ましくは2.3以下、より好ましくは2.1以下であり、特に好ましくは2.0以下である。分散度が2.5を超える場合はPASに含まれる低分子量成分の量が多くなる傾向が強く、このことは成形の際の揮発性ガス成分発生量の増加により、モールドデポジットや成形品中のボイドによる特性低下の要因になる傾向にある。
なお前記重量平均分子量および数平均分子量は例えば、分子量はサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)の一種であるゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、ポリスチレン換算で算出することができる。
また、本発明のPASの溶融粘度に特に制限はないが、通常、溶融粘度が5〜10,000Pa・s(300℃、剪断速度1000/秒)の範囲が好ましい範囲として例示できる。本発明のPASは従来のものに比べ高純度であることが特徴であり、不純物であるアルカリ金属含量は100ppm以下が好ましく、より好ましくは50ppm以下、更に好ましくは30ppm以下、よりいっそう好ましくは10ppm以下である。アルカリ金属含有量が100ppmを超えると、溶融成形性が低下したり、高温高湿下での使用において端子腐食などにより信頼性が低下するなど、樹脂成形品用途に制限が生じる可能性が増大する。ここで本発明におけるPASのアルカリ金属含有量とは、例えばPASを電気炉等を用いて焼成した残渣である灰分中のアルカリ金属量から算出される値であり、前記灰分を例えばイオンクロマト法や原子吸光法により分析することで定量することができる。
なお、アルカリ金属とは周期律表第IA属のリチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、フランシウムのことを指すが、本発明のPPSは特にアルカリ金属としてナトリウムを含まないことが好ましい。アルカリ金属を含む場合、PASの耐腐食性や熱的特性に悪影響を及ぼす傾向にある。またPASが各種溶剤と接した際の溶出金属量が増大する要因になる可能性があり、またPASがリチウムを含む場合、リチウムは溶出しやすい金属であるため、この弊害が強くなる。ところで、各種金属種の中でも、アルカリ金属以外の金属種、たとえばアルカリ土類金属や遷移金属と比較して、アルカリ金属はPASの電気特性、熱的特性及び金属溶出量への影響が強い傾向にある。よって、各種金属種の中でも、特にアルカリ金属含有量を前記範囲に制御することでフィラーを添加することによって得られる成形品の特性を向上する事ができると推測している。さらにアルカリ金属の中でもPASの重合では、硫化ナトリウムに代表されるアルカリ金属硫化物などが最も一般的に使用され、ナトリウム含有量を前記範囲にすることによりフィラーを添加することによって得られる成形品のの品質を向上することができると推測している。
また、本発明に用いるPASは実質的に塩素以外のハロゲン、即ちフッ素、臭素、ヨウ素、アスタチンを含まないことが好ましい。本発明のPASがハロゲンとして塩素を含有する場合、PASが通常使用される温度領域においては安定であるために塩素を少量含有してもPASの機械特性に対する影響が少ないが、塩素以外のハロゲンを含有する場合、それらの特異な性質がPASの特性、例えば電気特性や滞留安定性を悪化させる傾向にある。本発明のPASがハロゲンとして塩素を含有する場合、その好ましい量は1重量%以下、より好ましくは0.5重量%以下、更に好ましくは0.2重量%以下であり、この範囲ではPASの揮発性ガス発生量が低減され、溶融成形性や製品の使用環境下での金型腐食が低減され、電気特性や滞留安定性がより良好となる傾向にある。
また、本発明のPASの別の特徴は、加熱した際のラクトン型化合物及び/またはアニリン型化合物の発生量が著しく少ないことである。ここでラクトン型化合物とは、例えばβ−プロピオラクトン、β−ブチロラクトン、β−ペンタノラクトン、β−ヘキサノラクトン、β−ヘプタノラクトン、β−オクタノラクトン、β−ノナラクトン、β−デカラクトン、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、γ−ペンタノラクトン、γ−ヘキサノラクトン、γ−ヘプタノラクトン、γ−オクタラクトン、γ−ノナラクトン、γ−デカラクトン、δ−ペンタノラクトン、δ−ヘキサノラクトン、δ−ヘプタノラクトン、δ−オクタノラクトン、δ−ノナラクトン、δ−デカラクトンなどが例示でき、また、アニリン型化合物とは、アニリン、N−メチルアニリン、N,N−ジメチルアニリン、N−エチルアニリン、N−メチル−N−エチルアニリン、4−クロロ−アニリン、4−クロロ−N−メチルアニリン、4−クロロ−N,N−ジメチルアニリン、4−クロロ−N−エチルアニリン、4−クロロ−N−メチル−N−エチルアニリン、3−クロロ−アニリン、3−クロロ−N−メチルアニリン、3−クロロ−N,N−ジメチルアニリン、3−クロロ−N−エチルアニリン、3−クロロ−N−メチル−N−エチルアニリンなどが例示できる。加熱した際のラクトン型化合物及び/またはアニリン型化合物の発生は、溶融成形時の発泡や金型汚れ等の要因となり溶融成形性を悪化させることのみならず、その後の製品の使用環境において電気特性や成形品の表面くもりなどの要因にもなるため、できるだけ少なくすることが望まれており、加熱を行う前のPAS樹脂の重量基準でラクトン型化合物の発生量が好ましくは500ppm以下、より好ましくは300ppm、更に好ましくは100ppm以下、よりいっそう好ましくは50ppm以下が望ましい。同様にアニリン型化合物の発生量は好ましくは300ppm以下、より好ましくは100ppm、更に好ましくは50ppm以下、よりいっそう好ましくは30ppm以下が望ましい。なお、PASを加熱した際のラクトン型化合物及び/またはアニリン型化合物の発生量を評価する方法としては非酸化性雰囲気下320℃で60分処理した際の発生ガスをガスクロマトグラフィーを用いて成分分割して定量する。
(2)PASの製造方法
本発明の重量平均分子量(Mw)が1万以上、重量平均分子量/数平均分子量(Mn)で表される分散度が2.5以下であり、好ましくは、アルカリ金属含量が100ppm以下であることを特徴とするPPSの製造方法としては、下記一般式(1)で表される環状ポリフェニレンスルフィド化合物を溶融加熱して、重量平均分子量10,000以上の高重合度体に転化させることによって製造することが例示され、この方法によれば前述した特性を有する本発明のPASを得ることができる。
(3)環状PAS化合物
本発明の環状PAS化合物は、下記一般式(1)で表される、m=4〜20の整数で表される環状PAS化合物を使用することができ、mは4〜20の混合物でもよい。
(mは4〜20の整数、mは4〜20の混合物でもよい)
上記式中の繰り返し単位mは、4〜20の整数であり、4〜15が好ましく、4〜12がさらに好ましい。
またmが単一の環状PAS単体は、結晶化の容易さに差はあるものの、結晶として得られるため、融解温度が高くなるため、高重合度体に転化させる際の温度が高くなる傾向を示す。一方、異なるmを有する混合物の場合、環状PAS単体に比べて、融解温度が低下し、高分子量体に転化させる際の温度を低下できるという特徴を有する。本特徴により、アルカリ金属を含有する重合開始剤がなくても高重合度化が速やかに進行し、さらに高重合度化の際の副反応も抑制されることから、金属含有量や、揮発性ガス成分量が少ないPAS樹脂を製造することが可能となる。
例えば、m=6の環状PAS単体(シクロヘキサ(p−フェニレンスルフィド))は、融点が348℃と高いため、高重合度化のための溶融加熱温度を高温にしないと該環状物が高分子量化しないという問題がある。そのため、環状PPS化合物を溶解する溶媒に溶かして高分子量体に転化するという方法、結晶化した環状PAS単体を一旦融点以上で溶融した後、急冷することによって結晶化を抑え、非晶化させた後、高重合度体に転化させる方法、あるいはプリメルターを環状PAS単体の融点以上に設定し、プリメルター内で環状PAS単体のみを溶融させ、融液として供給する方法などを採用することができる。
このような環状PAS化合物の特徴から、本発明で使用する環状PAS化合物は、その高分子量化の容易性、製造の容易性の面から、mが異なる環状PAS化合物が好ましい。
環状PAS化合物に対するm=6の環状PASの含有量が50重量%未満が好ましく、さらに好ましくは30重量%未満が好ましく、より好ましくは10重量%未満である(m=6の環状PAS単体(重量)/(環状PAS化合物(重量)×100)。
環状PAS化合物中の異なるmのそれぞれの比率に特に制限はないが、本発明の効果を発現させるためには、環状PAS化合物の中、最も融点が高く、結晶化しやすいm=6の環状PAS単体の含有量が50重量%未満が好ましく、さらに好ましくは30重量%であり、特に好ましくは10重量%未満である(m=6の環状PAS(重量)/(環状PAS混合物(重量)×100)。ここで、環状PAS混合物中のm=6の環状PAS単体の含有率は、環状PAS混合物をUV検出器を具備した高速液体クロマトグラフィーで成分分割した際の、PAS構造を有する化合物に帰属される全ピーク面積に対する、m=6の環状PAS単体に帰属されるピーク面積の割合として求めることができる。ここで、PAS構造を有する化合物とは、少なくともPPS構造を有する化合物であり、例えば環状PAS化合物や線状のPASであり、PAS以外の構造をその一部に有する(例えば末端構造として)化合物もここでいうPAS構造を有する化合物に属する。なお、この高速液体クロマトグラフィーで成分分割された各ピークの定性は、各ピークを分取液体クロマトグラフィーで分取し、赤外分光分析における吸収スペクトルや質量分析を行うことで可能である。
このような環状PAS化合物は、公知のPASの製造方法によって、PASと環状PAS化合物を含むPAS混合物を得た後、該PAS混合物から環状PAS化合物を抽出することにより得ることができる。以下にその製造方法について説明する。
(4)環状PAS化合物の原料となるPAS混合物の製造方法
PAS混合物の製造方法としては、公知の技術を用いることができ、たとえば、少なくともp−ジクロロベンゼンに代表されるポリハロゲン化芳香族化合物、硫化ナトリウムに代表されるアルカリ金属硫化物及びN−メチル−2−ピロリドンに代表される有機極性溶媒を含有する混合物を加熱して、PAS混合物およびアルカリ金属ハライドを含む反応溶液を調製し、該反応液をたとえば水等で処理することでPAS混合物(PASと環状PAS化合物)を得る方法や、ジフェニルジスルフィド類もしくはチオフェノール類を酸化重合することでPAS混合物を得る方法が例示できる。ただし、これら方法で一般に得られるPAS混合物中に含まれる環状PAS化合物は通常5重量%未満と低いため、環状PAS化合物を5重量%以上含むPAS混合物を得るためには、たとえばPAS混合物の重合の際に、重合溶媒を多量に用いるなどの特殊な方法が必要であり、このような方法で効率よく多量のPAS混合物を得ることは経済的に不利であり、工業的には成立に難がある。
前記以外のPAS混合物の製造方法としては、たとえば、少なくともp−ジクロロベンゼンに代表されるポリハロゲン化芳香族化合物、硫化ナトリウムに代表されるアルカリ金属硫化物及びN−メチル−2−ピロリドンに代表される有機極性溶媒を含有する混合物を加熱し重合した後、220℃以下に冷却して得られた、少なくとも顆粒状のPASと顆粒状PAS以外のPAS混合物、有機極性溶媒、水、およびハロゲン化アルカリ金属塩を含む反応液から顆粒状のPASを取り除いた際に得られる回収スラリーからPAS混合物を得る方法が好ましく例示できる。なお、ここで顆粒状PASとは平均目開き0.175mmの標準ふるい(80meshふるい)で回収できるPAS成分を指す。この方法によって得られるPAS混合物は重量平均分子量が5,000以下の低分子量PASを多く含み、たとえば前記顆粒状PASと比較して機械物性などの特性が大幅に劣るため、一般的工業材料用途への適用は困難であり工業利用上の価値のないものとして従来は認識されていた。そのため、この方法で得られるPAS混合物は通常、産業廃棄物として処理されていた。
本発明者らは前記顆粒状PAS以外のPAS混合物を詳細に分析した結果、このPASには前記式(1)で表される環状PAS(m=4〜20)が10重量%以上含まれており、特にこれらはm=4〜20の混合物として得られることから、本発明の環状PAS化合物を得るための原料として好ましいことを見いだした。このことは、従来は産業廃棄物とされていたものから、産業上極めて利用価値の高い化合物を本発明の方法によって回収できるといった観点で、意義の大きなことである。
前記回収スラリーからPASを回収する方法としては、たとえば回収スラリーから少なくとも50重量%以上の有機極性溶媒を除去し、残留物を得て、これに水を添加した後、所望に応じて酸を加えて、少なくとも残存有機極性溶媒およびハロゲン化アルカリ金属塩を除去してPAS混合物を分離回収して得る方法や、回収スラリーからPAS混合物を析出させ固体状成分としてPASを回収する方法、たとえば回収スラリーに水を加えることでPASを析出させた後に公知の固液分離法であるデカンテーション、遠心分離及び濾過などの手法によって、固体成分としてPASを得る方法などを例示することができる。
(5)環状PAS化合物含有溶液の調製
本発明ではPAS化合物を、前記式(1)記載の環状PAS化合物(m=4〜20)を溶解可能な溶剤と接触させて環状PAS化合物を含む溶液を調製する。
ここで用いる溶剤としては環状PAS化合物を溶解可能な溶剤であれば特に制限はないが、溶解を行う環境において環状PAS化合物は溶解するが、PASは溶解しにくい溶剤が好ましく、PASは溶解しない溶剤がより好ましい。PASを前記溶剤と接触させる際の反応系圧力は常圧もしくは微加圧が好ましく、特に常圧が好ましく、このような圧力の反応系はそれを構築する反応器の部材が安価であるという利点がある。この観点から反応系圧力は、高価な耐圧容器を必要とする加圧条件は避けることが望ましい。用いる溶剤としてはPASや環状PAS化合物の分解や架橋など好ましくない副反応を実質的に引き起こさないものが好ましく、PAS混合物を溶剤と接触させる操作をたとえば常圧環流条件下で行う場合に好ましい溶剤としては、例えばベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶媒、クロロホルム、ブロモホルム、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、クロロベンゼン、2,6−ジクロロトルエン等のハロゲン系溶媒、アセトン、ジエチルケトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルブチルケトン、アセトフェノン等のケトン系溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジイソプロピルエーテル等のエーテル系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、トリメチルリン酸、N,N−ジメチルイミダゾリジノンなどの極性溶媒を例示できるが、中でもベンゼン、トルエン、キシレン、クロロホルム、ブロモホルム、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、クロロベンゼン、2,6−ジクロロトルエン、アセトン、ジエチルケトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルブチルケトン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジイソプロピルエーテル、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、トリメチルリン酸、N,N−ジメチルイミダゾリジノンが好ましく、トルエン、キシレン、クロロホルム、塩化メチレン、テトラヒドロフランがより好ましく例示できる。
PASを溶剤と接触させる際の雰囲気に特に制限はないが、接触させる際の温度や時間などの条件によってPASや溶剤が酸化劣化するような場合には、非酸化性雰囲気下で行うことが望ましい。なお、非酸化性雰囲気とは気相の酸素濃度が5体積%以下、好ましくは2体積%以下、更に好ましくは酸素を実質的に含有しない雰囲気、即ち窒素、ヘリウム、アルゴン等の不活性ガス雰囲気であることを指し、この中でも特に経済性及び取扱いの容易さの面からは窒素雰囲気が好ましい。
PAS混合物を溶剤と接触させる温度に特に制限はないが、一般に温度が高いほど環状PAS化合物の溶剤への溶解は促進される傾向にある。前記したように、PAS混合物の溶剤との接触は大気圧下でおこなうことが好適であるので、上限温度は使用する溶剤の大気圧下での環流条件温度にすることが望ましく、前述した好ましい溶剤を用いる場合はたとえば20〜150℃を具体的な温度範囲として例示できる。
PAS混合物を溶剤と接触させる時間は、用いる溶剤種や温度等によって異なるため一意的には限定できないが、たとえば1分〜50時間が例示でき、短すぎると環状PASの溶剤への溶解が不十分になる傾向にあり、また長すぎても溶剤への溶解は飽和状態に達し、それ以上の効果は得られない。
PASを溶剤と接触させる方法は、公知の一般的な手法を用いれば良く特に限定はないが、たとえばPAS混合物と溶剤を混合し、必要に応じて攪拌した後溶液部分を回収する方法、各種フィルター上のPAS混合物に溶剤をシャワーすると同時に環状PASを溶剤に溶解させる方法、ソックスレー抽出法原理による方法などいかなる方法も用いることができる。PASと溶剤を接触させる際の溶剤の使用量に特に制限はないが、たとえばPAS重量に対する浴比で0.5〜100の範囲が例示できる。浴比が小さすぎるとPAS混合物と溶剤の混合が困難になるだけでなく、環状PAS化合物の溶剤への溶解が不十分になる傾向にある。浴比が大きい方が一般に環状PAS化合物の溶剤への溶解には有利であるが、大きすぎてもそれ以上の効果は望めず、逆に溶剤使用量増大による経済的不利益が生じることがある。なお、PASと溶剤の接触を繰り返し行う場合は、小さい浴比でも十分な効果を得られる場合が多い。またソックスレー抽出法は、その原理上、PASと溶剤の接触を繰り返し行う場合と類似の効果が得られるので、この場合も小さな浴比で十分な効果を得られる場合が多い。
PASを溶剤と接触させた後に、環状PAS化合物を溶解した溶液が、残りの固形状のPASを含む固液スラリー状で得られた場合、公知の固液分離法を用いて溶液部を回収する。固液分離方法としては、たとえば濾過による分離、遠心分離、デカンテーション等を例示できる。このようにして分離した溶液については、後述する溶剤の除去を行う。一方、残存した固体成分については、環状PAS化合物がまだ残存している場合、具体的には重量基準で0.05重量%以上の環状PAS化合物が残存している場合には、再度溶剤との接触及び溶液の回収を繰り返し行うことでより収率よく環状PAS化合物を得ることができる。また、環状PAS化合物がほとんど残存していない、具体的には環状PAS化合物の残存が重量基準で0.05重量%未満の場合には、残存溶剤を除去することで、残存した固体状のPASは、高純度なPASとして好適にリサイクル可能である。
(6)環状PAS化合物溶液からの溶剤の除去
本発明では前述のようにして得られた前記式(1)で表される環状PAS化合物(m=4〜20)を含む溶液から溶剤の除去を行い、環状PAS化合物を得る。ここで溶剤の除去は、たとえば加熱し、常圧以下で処理する方法や、膜を利用した溶剤の除去を例示できるが、より収率よく、また効率よく環状PAS化合物を得るとの観点では常圧以下で加熱して溶剤を除去する方法が好ましい。なお、前述の様にして得られた環状PAS化合物を含む溶液は温度によっては固形物を含む場合もあるが、この場合の固形物も環状PAS化合物に属するものであるので、溶剤の除去時に溶剤に可溶の成分とともに回収する事が望ましく、これにより収率よく環状PAS化合物を得られるようになる。
溶剤の除去は、少なくとも50重量%以上、好ましくは70重量%以上、更に好ましくは90重量%以上、よりいっそう好ましくは95重量%以上の溶剤を除去することが望ましい。加熱による溶剤の除去を行う際の温度は用いる溶剤の特性に依存するため一意的には限定できないが、通常、20〜150℃、好ましくは40〜120℃の範囲が選択できる。また、溶剤の除去を行う圧力は常圧以下が好ましく、これにより溶剤の除去をより低温で行うことが可能になる。
(7)その他後処理
(4)〜(6)に記載の方法により得られた環状PAS化合物は十分に高純度であり、m=4〜20の環状PAS化合物として好適に用いることができるが、さらに以下に述べる後処理を付加的に施すことによってよりいっそう純度の高い環状PAS化合物やm=6の環状PAS単体を得ることが可能である。
前記(4)〜(6)までの操作によって得られた環状PAS化合物は、用いた溶剤の特性によっては、PAS中に含まれる不純物成分を含む場合がある。このような少量の不純物を含む環状PAS化合物を不純物は溶解するが、環状PAS化合物は溶解しない、もしくは環状PAS化合物の溶解しにくい第二の溶剤と接触させることで、不純物成分を選択的に除去することが可能な場合が多い。
環状PAS化合物を前記第二の溶剤と接触させる際の反応系圧力は常圧もしくは微加圧が好ましく、特に常圧が好ましく、このような圧力の反応系はそれを構築する部材が安価であるという利点がある。この観点から反応系圧力は、高価な耐圧容器を必要とする加圧条件は避けることが望ましい。第二の溶剤として好ましい溶剤としては、目的とする環状PAS化合物の分解や架橋など好ましくない副反応を実質的に引き起こさないものが好ましく、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、フェノール、クレゾール、ポリエチレングリコールなどのアルコール・フェノール系溶媒、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、シクロペンタン等の炭化水素系溶媒アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルブチルケトン、アセトフェノン等のケトン系溶媒、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ペンチル、酢酸オクチル、酪酸メチル、酪酸エチル、酪酸ペンチル、サリチル酸メチル、蟻酸エチル、等のカルボン酸エステル系溶媒が例示でき、なかでもメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、シクロペンタンが好ましく、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコール、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、アセトン、酢酸エチルが特に好ましい。これらの溶媒は1種類または2種類以上の混合物として使用することができる。
環状PAS化合物を第二の溶剤と接触させる温度に特に制限はないが、上限温度は使用する第二の溶剤の常圧下での環流条件温度にすることが望ましく、前述した好ましい第二の溶剤を用いる場合はたとえば20〜100℃が好ましい温度範囲として例示でき、より好ましくは25〜80℃が例示できる。
環状PAS化合物を第二の溶剤と接触させる時間は、用いる溶剤種や温度等によって異なるため一意的には限定できないが、たとえば1分〜50時間が例示でき、短すぎると環状PAS化合物中の不純物の第二の溶剤への溶解が不十分になる傾向にあり、また長すぎても第二の溶剤への不純物の溶解は飽和状態に達し、それ以上の効果は得られない。
環状PAS化合物を第二の溶剤と接触させる方法としては固体状の環状PAS化合物と第二の溶剤を必要に応じて攪拌して混合する方法、各種フィルター上の環状PAS化合物固体に第二の溶剤をシャワーすると同時に不純物を第二の溶剤に溶解させる方法、固体状の環状PAS化合物を第二の溶剤を用いたソックスレー抽出を用いる方法や、溶液状の環状PAS化合物もしくは溶剤を含む環状PAS化合物スラリーを第二の溶剤と接触させて、第二の溶剤の存在下で環状PAS化合物を析出させる方法などを用いることができる。なかでも溶剤を含む環状PAS化合物スラリーを第二の溶剤と接触させる方法は、操作後に得られる環状PAS化合物の純度が高く、有効な方法である。
環状PAS化合物を第二の溶剤と接触させた後には、環状PAS化合物が第二の溶剤中に析出したスラリーが得られるので、公知の固液分離法を用いて固体状の環状PAS化合物を回収する。固液分離方法としては、たとえば濾過による分離、遠心分離、デカンテーション等を例示できる。固液分離後に得られた環状PAS化合物中に不純物がまだ残存している場合は、再度環状PAS化合物と第二の溶剤とを接触させて、さらに不純物を除去することも可能である。
(8)本発明の環状PAS化合物の特性
かくして得られた環状PAS化合物は前記式(1)におけるmが4〜20であり、さらに前記式(1)で表されるm=4〜20の異なるmを有する環状PAS化合物が好ましく、さらに環状PAS化合物中の、m=6の環状PAS含量が50重量%未満の混合物であることが好ましい。
なお本発明の環状PAS化合物のmは前記のごとく、m=4〜20であり、mは4〜20の混合物でもよいが、著者らの検討により、環状PAS化合物としては、m=4〜12のものが存在することを確認しており、mがこの範囲の場合、後述するように環状PAS化合物の溶融加熱による高重合度化が速やかに進行することを見出している。
なおmが12以上の環状PPS化合物については、存在している可能性が高いが、現在の分析技術では定性や定量困難である。なぜならば後述するように、環状PAS化合物中に含まれる直鎖状PASオリゴマーとm=13以上の環状PASの区別が、現時点の最新分析技術では困難なためである。しかしながら、m=4〜20の環状PAS化合物を溶融加熱すると環状PAS化合物の高重合度化が速やかに進行し、得られるPAS樹脂の揮発性ガス成分量が低減すること、さらにその環状PAS化合物中のm=6の環状PAS単体の含有量が50重量%未満であると、さらにこれらの効果が高められることから、本発明の効果を損なわない範囲でmが13以上の環状PAS化合物が含まれていてもよい。
また(4)〜(7)に記載の方法により得られた環状PAS化合物は十分に高純度であるが、条件によっては、不純物として直鎖状PASオリゴマーが含有することもある。また前述したようにこの直鎖状PASオリゴマーとm=13以上の環状PAS化合物の区別は、現時点の最新分析技術では困難である。この直鎖状PASオリゴマーと推定されるオリゴマー成分の重量平均分子量(Mw)は、前記(4)で記載した環状PAS化合物の原料となるPASの製造方法により異なるが、通常、5000以下のものであり、場合によっては2000以下のものである。
なお環状PAS化合物中に不純物として残存する直鎖状のPASオリゴマーは、環状PAS化合物に比べ、熱安定性が悪く、揮発性ガス成分量が増加すること、さらに後述するが、環状PAS化合物中にこれらが不純物として多量に含まれていると、環状PAS化合物の溶融加熱によるPASへの転化が不十分になるという問題が発生する。
そのため、(4)〜(7)に記載の方法により得られる環状PAS化合物中の直鎖状PASオリゴマーの量は、全環状PAS化合物に対して、50重量%未満が好ましく、40重量%未満がより好ましく、さらに好ましくは30重量%未満である。
なおこの時の、環状PAS化合物中の直鎖状PASオリゴマー量は、現時点の分析技術によれば、m=13以上の環状PAS化合物との総量として、MALDI−TOF−MSにより定量することが可能である。
また特開平10−77408号公報に記載されているように、架橋タイプのPASから、環状PAS化合物をソックスレー抽出し、抽出液を冷却し、析出した白色固体を「再結晶法」により、m=6の環状PAS単体が高純度で得られることが開示されている(シクロヘキサ(p−フェニレンスルフィド)。また架橋タイプのPASに比べ、回収量は少ないものの、直鎖状のPASからも、同じように抽出操作し、「再結晶」することにより同じようにm=6の環状PAS単体が高純度で得ることが可能である。
m=6の環状PAS単体は、極めて安定な針状の結晶構造を有し、かつ結晶化しやすいため、「再結晶」という方法に適した環状物である反面、その安定な針状結晶構造を反映して融点が348℃と高くなるため、高重合度化のための溶融加熱温度を高くする必要がある。
m=6の環状PAS単体のみの場合は、環状PAS化合物を溶解する溶媒に溶かして供給するという方法、結晶化した環状PAS単体を一旦融点以上で溶融した後、急冷することによって結晶化を抑え、非晶化させた粉体を供給するという方法、あるいはプリメルターを環状PAS単体の融点以上に設定し、プリメルター内で環状PAS単体のみを溶融させ、融液として供給する方法などを採用することができる。このように環状PAS単体を使用する場合、高重合度化のための溶融加熱温度を高めるという必要性、あるいは前述したように環状PAS単体を一旦溶融させた後、結晶化を抑えて非晶化するという必要性、あるいはプリメルター内で環状PAS単体のみを溶融させ、融液として供給するという必要性が生じるため、環状PASの高重合度化のための生産性や溶融加工性の面から、環状PAS化合物中の、m=6の環状PAS単体の含量が50重量%未満が好ましく、30重量%未満がより好ましく、さらに好ましくは10重量%未満が好ましい。
この理由は現時点下記の通り解釈している。すなわち、m=6の環状PAS単体の含有量が低下することにより、該環状PAS単体が結晶核として作用しないなどの効果もあって、結果として、m=4以上の混合物からなる環状PAS化合物の結晶化が抑えられ、環状PAS化合物の融点が低くなることにより、該環状PAS化合物が容易に融解し、その結果溶融加熱による高重合度化が容易になると考えられる。
またm=6以外の環状単量体は、m=6に比べ、結晶化し難いため、「再結晶」という手法により単量体として得ることは困難であったが(再結晶という手法により単離可能なのはm=6の環状PAS単体のみである)、筆者らはこれらの単量体を分集液体クロマトグラムにより分離回収し、m=4の環状PAS単体(シクロテトラ(p−フェニレンスルフィド)、融点296℃))、m=5のシクロペンタ(p−フェニレンスルフィド)(融点257℃)、m=7のシクロヘプタ(p−フェニレンスルフィド)(融点328℃)、m=8のシクロオクタ(p−フェニレンスルフィド)(融点305℃)であることが確認された。
すなわち(4)〜(7)に記載の方法によれば、得られる環状PAS化合物は異なるmを有する混合物であり、かつm=6の環状PAS単体の含量が50重量%未満のものが得られる。また条件によっては、m=6の環状PAS単体の含量が30重量%未満のもの、さらには10重量%未満のものも得ることが可能である。得られた環状PAS化合物は、単一のmからなる環状PAS単体に比べ、融解温度が低いという特徴があり、このことはたとえば環状PAS化合物を簡便な方法で、低い溶融加熱温度で高分子量体に転化することが可能となる。
(9)環状PAS化合物の高重合度体への転化
前記した本発明のPASは、前記環状PAS化合物を溶融加熱して高重合度体に転化させる方法によって製造することが好ましい。この溶融加熱の温度は、前記環状PAS化合物が溶融解する温度であることが好ましく、このような温度条件であれば特に制限は無い。加熱温度が環状PAS化合物の溶融解温度未満ではPASを高重合度化するのに長時間が必要となる傾向がある。なお、環状PAS化合物が溶融解する温度は、前述したように環状PAS化合物中に存在するmの組成や純度により異なるが、例えば環状PAS化合物を示差走査型熱量計で分析することで溶融解温度を把握することにより、その融解温度以上で溶融加熱させることが可能である。但し、温度が高すぎると加熱により生成したPASの分子間、及びPASと環状PAS化合物間などでの架橋反応や分解反応に代表される好ましくない副反応が生じやすくなる傾向にあり、得られるPASの特性が低下する場合があるため、このような好ましくない副反応が顕著に生じる温度は避けることが望ましい。溶融加熱温度としては180〜400℃が例示でき、好ましくは200〜380℃、より好ましくは250〜360℃である。
前記溶融加熱を行う時間は使用する環状PAS化合物中のmの組成や、環状PAS化合物の純度などの各種特性、また、加熱溶融温度等の条件によって異なるため一様には規定できないが、前記した好ましくない副反応がなるべく起こらないように設定することが好ましい。加熱溶融時間としては0.05〜100時間が例示でき、0.1〜20時間が好ましく、0.1〜10時間がより好ましい。0.05時間未満では環状PAS化合物のPASへの転化が不十分になりやすく、100時間を超えると好ましくない副反応による得られるPASの特性への悪影響が顕在化する可能性が高くなる傾向にあるのみならず、経済的にも不利益を生じる場合がある。
環状PAS化合物の溶融加熱による高重合度体への転化は、通常溶媒の非存在下で行うが、溶媒の存在下で行うことも可能である。溶媒としては、環状PAS化合物の加熱による高重合度体への転化の阻害や生成したPASの分解や架橋など好ましくない副反応を実質的に引き起こさないものであれば特に制限はなく、例えばN−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどの含窒素極性溶媒、ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホンなどのスルホキシド・スルホン系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、アセトフェノンなどのケトン系溶媒、ジメチルエーテル、ジプロピルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒、クロロホルム、塩化メチレン、トリクロロエチレン、2塩化エチレン、ジクロルエタン、テトラクロルエタン、クロルベンゼンなどのハロゲン系溶媒、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、フェノール、クレゾール、ポリエチレングリコールなどのアルコール・フェノール系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒などがあげられる。また、二酸化炭素、窒素、水等の無機化合物を超臨界流体状態として溶媒に用いることも可能である。これらの溶媒は1種類または2種類以上の混合物として使用することができる。
前記、環状PAS化合物の加熱による高重合度体への転化は、通常の重合反応装置を用いる方法で行うのはもちろんのこと、成形品を製造する型内で行っても良いし、押出機や溶融混練機を用いて行うなど、加熱機構を具備した装置であれば特に制限無く行うことが可能であり、バッチ方式、連続方式など公知の方法が採用できる。また、重合する際に、高誘電フィラーを入れて重合をしてもよく、そうすることで、フィラーの分散性の良好な高充填の組成物が得られる。
環状PAS化合物の加熱による高重合度体への転化の際の雰囲気は非酸化性雰囲気で行うことが好ましく、減圧条件下で行うことも好ましい。また、減圧条件下で行う場合、反応系内の雰囲気を一度非酸化性雰囲気としてから減圧条件にすることが好ましい。これにより過熱による甲重合度体への転化の際の、架橋反応や分解反応等の好ましくない副反応の発生を抑制できる傾向にある。なお、非酸化性雰囲気とは環状PAS化合物が接する気相における酸素濃度が5体積%以下、好ましくは2体積%以下、更に好ましくは酸素を実質的に含有しない雰囲気、即ち窒素、ヘリウム、アルゴン等の不活性ガス雰囲気であることを指し、この中でも特に経済性及び取扱いの容易さの面からは窒素雰囲気が好ましい。また、減圧条件下とは反応を行う系内が大気圧よりも低いことを指し、上限として50kPa以下が好ましく、20kPa以下がより好ましく、10kPa以下が更に好ましい。下限としては0.1kPa以上が例示でき、0.2kPa以上がより好ましい。減圧条件が好ましい上限を越える場合は、架橋反応など好ましくない副反応が起こりやすくなる傾向にあり、一方好ましい下限未満では、反応温度によっては環状PAS化合物に含まれる分子量の低い環状PAS化合物が揮散しやすくなる傾向にある。
(10)高誘電セラミックス
本発明では、組成物に高誘電セラミックスを配合することが特徴である。
本発明で用いる(b)高誘電セラミックスとして具体的には、フォルステライト系セラミックス、アルミナ系セラミックス、チタン酸カルシウム系セラミックス、チタン酸マグネシウム系セラミックス、チタン酸ストロンチウム系セラミックス、ジルコニア−鉛−チタン系セラミックス、ジルコニア−スズ−チタン系セラミックス、チタン酸バリウム系セラミックス、鉛−カルシウム−ジルコニア系セラミックス、鉛−カルシウム−鉄−ニオブ系セラミックス、鉛−カルシウム−マグネシウム−ニオブ系セラミックスなどを例示することができ、ポリアリーレンスルフィドとの高誘電樹脂組成物とした際に誘電率を得るために用いる高誘電セラミックスの誘電率(1MHz)は、30以上が好ましく、40以上がより好ましく、具体的には、(b)高誘電セラミックスの誘電率を効率よく発揮する点から、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸ネオジムバリウム、およびチタン酸ストロンチウム/ジルコン酸マグネシウム等が好ましく、誘電率の高いチタン酸バリウムが特に好ましい。これら(b)誘電セラミックスをいずれか1種、または2種以上併用して用いても良い。
なお、本発明に使用する上記の(b)高誘電セラミックスは、その表面を公知のカップリング剤(例えば、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミ系カップリング剤など)、その他の表面処理剤で処理して用いることもできる。これらはチタネート系、アルミ系、シラン系などの表面処理剤で表面処理を施されていてもよい。
また、(b)高誘電セラミックスにおいて、(a)ポリアリーレンスルフィドとの混合時における生産性および高誘電樹脂組成物の成形加工性を向上させるために、用いる(b)高誘電セラミックスの平均粒径が0.2μm以上5.0μm以下の範囲であることが必須であり、平均粒径が0.2μm以上4.0μm以下であるのが好ましく、0.2μm以上3.0μm以下であるのがさらに好ましい。平均粒径が0.2μm未満の高誘電セラミックスを用いた場合、樹脂に混合する際に流動性が低下すると共に十分に混合ができないために、特性が得られず、一方、平均粒径が5.0μmを超えると、得られる成形品の充填性が不十分で誘電性、機械強度に悪影響を与える。
ここでいう、平均粒径とは、高誘電セラミックスを水系スラリーとし、分散剤と超音波処理により十分に分散させた後にレーザー回析散乱法により測定された体積基準の平均粒径である。
さらに、用いる(b)高誘電セラミックスにおいて高誘電セラミックス間の空隙率を減少させ、より密に充填することで高誘電特性を発現させると共に、溶融成形加工時の成形品の歪みを抑制、即ち歪みによる不良低減と耐熱性を向上させるために、用いる高誘電セラミックスの粒径とBET比表面積と平均粒径の関係が制御することが必要であり、BET比表面積を平均粒径で除した値が1以上50以下の範囲が好ましく、より好ましくは、1以上40以下で、さらに好ましくは、1以上30以下である。BET比表面積を平均粒径で除した値が、1未満の高誘電セラミックスを用いた場合、熱可塑性樹脂と高誘電セラミックスの接触面積が少なくなることで、成形時の成形品に歪みが発生しやすくなり、機械強度低下へ悪影響をおよぼす。一方、BET比表面積を平均粒径で除した値が50を超える高誘電セラミックスを用いた場合、充填性が不十分になり、成形品の衝撃強度に悪影響を及ぼすのみならず、誘電率低下にも影響を及ぼす。
ここでいう、BET比表面積とは、十分に乾燥させ真空脱気した高誘電セラミックスに窒素ガスを吸着させ、吸着したガス量と高誘電セラミックスの質量から求めた高誘電セラミックスの単位質量あたりの表面積である。
本発明において(a)ポリアリーレンスルフィドと(b)高誘電セラミックスとの比率は、用いる高誘電セラミックスの特性を発揮し、かつ溶融加工性とのバランスの点から、配合される(a)ポリアリーレンスルフィドと(b)高誘電セラミックスの合計量100容量%に対し、(a)ポリアリーレンスルフィド10〜90容量%、(b)高誘電セラミックス90〜10容量%であり、(a)ポリアリーレンスルフィド10〜70容量%、(b)高誘電セラミックス90〜30容量%が好ましく、(a)ポリアリーレンスルフィド10〜50容量%、(b)高誘電セラミックス90〜50容量%であることがより好ましい。本発明では、このような配合量で高誘電セラミックスを配合することで、高誘電性樹脂組成物を得ることができ、得られる樹脂組成物の5GHzにおける誘電率が10以上のものを得ることができる。好ましくは誘電率が15以上の組成物である。
また、本発明には、(b)高誘電セラミックス界面の接合性および加工時流動性付与の観点から(c)脂肪族金属塩、エステル系化合物、アミド基含有化合物、エポキシ系化合物、およびリン酸エステルから選ばれる少なくとも1種を添加することが好ましい。このような添加剤としては、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸アルミニウム、モンタン酸カルシウム、モンタン酸マグネシウム、モンタン酸亜鉛、モンタン酸バリウム、モンタン酸アルミニウムなどの脂肪族金属塩、およびその誘導体、ステアリン酸メチル、ステアリン酸ステレートなどのステアリン酸エステル、ミリスチン酸ミリスチルなどのミリスチン酸エステル、モンタン酸エステル、メタクリル酸ベヘニルなどのメタクリル酸エステル、ペンタエリスリトールモノステアレート、2−エチルヘキサン酸セチル、ヤシ脂肪酸メチル、ラウリン酸メチル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、ステアリン酸2−エチルへキシル、ステアリン酸イソトリデシル、カプリン酸メチル、ミリスチン酸メチル、オレイン酸メチル、オレイン酸オクチル、オレイン酸ラウリル、オレイン酸オレイル、オレイン酸2−エチルヘキシル、オレイン酸デシル、オレイン酸オクチドデシル、オレイン酸イソブチルなどの脂肪酸の一価アルコールエステルおよびその誘導体、フタル酸ジステアリル、トリメリット酸ジステアリル、アジピン酸ジメチル、アジピン酸ジオレイル、アジピン酸エステル、フタル酸ジトリデシル、アジピン酸ジイソブチル、アジピン酸ジイソデシル、アジピン酸ジブチルグリコール、フタル酸2−エチルヘキシル、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジデシル、トリメリット酸トリ2−エチルヘキシル、トリメリット酸トリイソデシルなどの多塩基酸の脂肪酸エステル、ステアリン酸モノグリセライド、パルミチン酸、ステアリン酸モノグリセライド、ステアリン酸モノ・ジグリセライド、ステアリン酸・オレイン酸・モノ・ジグリセライド、ベヘニン酸モノグリセライドなどのグリセリンの脂肪酸エステルおよびそれらの誘導体、ソルビタントリステアレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンジステアレート、ソルビタンモノパルミテート、ポリエチレングリコールモノステアレート、ポリエチレングリコールジステアレート、ポリプロピレングリコールモノステアレート、ペンタエリスリトールモノステアレート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタントリオレート、ソルビタンモノオレート、ソルビタンセキスオレート、ソルビタンモノラウレート、ポリオキシメチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシメチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシメチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシメチレンソルビタンモノオレート、ポリオキシメチレンソルビタンテトラオレート、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールモノラウレート、ポリエチレングリコールモノオレート、ポリオキシエチレンビスフェノールAラウリン酸エステル、ペンタエリスリトール、ペンタエリスリトールモノオレート、などの多価アルコールの脂肪酸エステル、およびそれらの誘導体、エチレンビスステアリルアミド、エチレンビスオレイルアミド、ステアリルエルカミドなどのアミド基含有化合物、ノボラックフェノール型、ビスフェノール型単官能および多官能エポキシ系化合物、トリフェニルホスフェートなどの芳香族リン酸エステル、芳香族縮合リン酸エステルなどのリン酸エステルが挙げられる。
特にリン酸エステルについては、リン酸のモノエステル、ジエステル、トリエステル、テトラエステルから選ばれ、好ましくは、下記式(3)で表されるものが挙げられる。
まず前記式(3)で表されるリン酸エステルの構造について説明する。前記式(3)の式中nは0以上の整数であり、好ましくは0〜10、特に好ましくは0〜5である。上限は分散性の点から、40以下が好ましい。
またk、mは、それぞれ0以上2以下の整数であり、かつk+mは、0以上2以下の整数であるが、好ましくはk、mはそれぞれ0以上1以下の整数、特に好ましくはk、mはそれぞれ1である。
また前記式(3)の式中、R3〜R10は同一または相違なる水素または炭素数1〜5のアルキル基表す。ここで炭素数1〜5のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、tert−ペンチル基などが挙げられるが、水素、メチル基、エチル基が好ましく、とりわけ水素が好ましい。
またAr1、Ar2、Ar3、Ar4は同一または相異なる芳香族基あるいは
ハロゲンを含有しない有機残基で置換された芳香族基を表す。かかる芳香族基としては、ベンゼン骨格、ナフタレン骨格、インデン骨格、アントラセン骨格を有する芳香族基が挙げられ、なかでもベンゼン骨格、あるいはナフタレン骨格を有するものが好ましい。これらはハロゲンを含有しない有機残基(好ましくは炭素数1〜8の有機残基)で置換されていてもよく、置換基の数にも特に制限はないが、1〜3個であることが好ましい。具体例としては、フェニル基、トリル基、キシリル基、クメニル基、メシチル基、ナフチル基、インデニル基、アントリル基などの芳香族基が好ましく、特にフェニル基、トリル基、キシリル基が好ましい。
またYは直接結合、O、S、SO2、C(CH3)2、CHPhを表し、Phはフェニル基を表す。
このようなリン酸エステルの具体例としては、大八化学社製PX−200、PX−201、PX−130、CR−733S、TPP、CR−741、CR−747、TCP、TXP、CDPから選ばれる1種または2種以上が使用することができ、中でも好ましくはPX−200、TPP、CR−733S、CR−741、CR−747から選ばれる1種または2種以上、特に好ましくはPX−200、CR−733S、CR−741を使用することができるが、最も好ましくはPX−200である。
本発明において上記(c)脂肪酸金属塩、エステル系化合物、アミド基含有化合物、エポキシ系化合物、リン酸エステルは、いずれか1種、または2種以上の混合物であってもよい。このような添加剤の添加量は、(a)ポリアリーレンスルフィドと(b)高誘電セラミックスの合計量100重量部に対し、0.5〜10重量部、好ましくは0.5〜8重量部、より好ましくは1〜6重量部の範囲が選択される。
(c)脂肪族金属塩、エステル系化合物、アミド基含有化合物、エポキシ系化合物、リン酸エステルの添加量を上記の範囲とすることで、成形品表面にブリードアウトすることもなく、(a)ポリアリーレンスルフィドと(b)高誘電セラミックス界面の剥離による機械物性の低下がおきることがないので好ましい。
本発明における高誘電性樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で繊維状もしくは、板状、鱗片状、粒状、不定形状、破砕品など非繊維状の充填剤を添加することが可能である。具体的には例えば、ガラス繊維、PAN系やピッチ系の炭素繊維、ステンレス繊維、アルミニウム繊維や黄銅繊維などの金属繊維、芳香族ポリアミド繊維などの有機繊維、石膏繊維、セラミック繊維、アスベスト繊維、ジルコニア繊維、アルミナ繊維、シリカ繊維、酸化チタン繊維、炭化ケイ素繊維、ロックウール、ほう酸アルミニウムウィスカー、窒化ケイ素ウィスカー、マイカ、タルク、カオリン、シリカ、炭酸カルシウム、ガラスビーズ、ガラスフレーク、ガラスマイクロバルーン、クレー、二硫化モリブデン、ワラステナイト、酸化チタン、酸化亜鉛、ポリリン酸カルシウム、グラファイト、金属粉、金属フレーク、金属リボン、金属酸化物、カーボン粉末、黒鉛、カーボンフレーク、鱗片状カーボン、カーボンナノチューブなどが挙げられる。金属粉、金属フレーク、金属リボンの金属種の具体例としては銀、ニッケル、銅、亜鉛、アルミニウム、ステンレス、鉄、黄銅、クロム、錫などが例示できる。ガラス繊維あるいは炭素繊維の種類は、一般に樹脂の強化用に用いるものなら特に限定はなく、例えば長繊維タイプや短繊維タイプのチョップドストランド、ミルドファイバーなどから選択して用いることができる。本発明においては、上記フィラーのうち、繊維状、板状、鱗片状の形状および破砕品が高誘電樹脂組成物における成形品の強度等の点から好ましく用いられる。
本発明における高誘電性樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で多の成分、例えば酸化防止剤や耐熱安定剤(ヒンダードフェノール系、ヒドロキノン系、ホスファイト系およびこれらの置換体等)、耐候剤(レゾルシノール系、サリシレート系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、ヒンダードアミン系等)、離型剤および滑剤(モンタン酸およびその金属塩、そのエステル、そのハーフエステル、ステアリルアルコール、ステアラミド、各種ビスアミド、ビス尿素およびポリエチレンワックス等)、顔料(硫化カドミウム、フタロシアニン、着色用カーボンブラック等)、染料(ニグロシン等)、結晶核剤(タルク、シリカ、カオリン、クレー等)、可塑剤(p−オキシ安息香酸オクチル、N−ブチルベンゼンスルホンアミド等)、帯電防止剤(アルキルサルフェート型アニオン系帯電防止剤、4級アンモニウム塩型カチオン系帯電防止剤、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレートのような非イオン系帯電防止剤、ベタイン系両性帯電防止剤等)、難燃剤(例えば、赤燐、燐酸エステル、メラミンジアヌレート、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等の水酸化物、ポリリン酸アンモニウム、臭素化ポリスチレン、臭素化ポリフェニレンエーテル、臭素化ポリカーボネート、臭素化エポキシ樹脂あるいはこれらの臭素系難燃剤と三酸化アンチモンの組み合わせ等)、他の重合体を添加することができる。
本発明の高誘電性樹脂組成物の調整方法には特に制限はないが、原料の混合物を単軸あるいは2軸の押出機、バンバリーミキサー、ニーダーおよびミキシングロールなど通常公知の溶融混合機に供給して、280〜380℃の温度で混練する方法などを代表例として挙げることができる。原料の混合順序にも特に制限はなく、全ての原材料を配合後上記の方法により溶融混練する方法、一部の原材料を配合後上記の方法により溶融混練し、さらに残りの原材料を配合し溶融混練する方法、あるいは一部の原材料を配合後単軸あるいは2軸の押出機により溶融混練中にサイドフィーダーを用いて残りの原材料を混合する方法などのいずれかの方法を用いてもよい。また、少量添加剤成分については、他の成分を上記の方法などで混練しペレット化した後、成形前に添加して成形に供することももちろん可能である。
本発明の高誘電性樹脂組成物を成形するにあたっての成形方法は、通常の成形方法(射出成形、プレス成形、インジェクションプレス成形など)やガスインジェクション成形、“ミューセル”成形法により、三次元成形品、シート、ケース(筐体)などに加工することができるが、生産性を考慮した場合、射出成形あるいはインジェクションプレス成形等が好ましく採用される。また、溶着部を有する場合は、熱板、振動、超音波、レーザーなどの一般的な溶着方法を用いることが可能である。
かくして得られる成形品は、成形時の成形品の歪みよる不良が少なく、かつ、溶融成形可能であることを生かし、例えば、コンデンサー用途、マルチチップモジュール用途、アンテナ用途、マイクロ波回路要素用途に特に適している他、例えばセンサー、LEDランプ、コネクター、ソケット、抵抗器、リレーケース、スイッチ、コイルボビン、バリコンケース、光ピックアップ、発振子、各種端子板、変成器、プラグ、プリント基板、チューナー、スピーカー、マイクロフォン、ヘッドフォン、小型モーター、磁気ヘッドベース、パワーモジュール、パラボラアンテナ、コンピューター関連部品などに代表される電機・電子部品;VTR部品、テレビ部品、アイロン、ヘアードライヤー、炊飯器部品、電子レンジ部品、音響部品、オーディオ・レーザーディスク(登録商標)・コンパクトディスクなどの音声機器部品、照明部品、冷蔵庫部品、エアコン部品などに代表される家庭、事務電気製品部品;オフィスコンピューター関連部品、電話器関連部品、ファクシミリ関連部品、複写機関連部品、ファクシミリ関連部品;排気ガスセンサー、冷却水センサー、油温センサー、スロットルポジションセンサー、クランクシャフトポジションセンサー、プレーキパッド摩耗センサー、エアコンパネルスイッチ基板、ヒューズ用コネクター、車速センサーなどの自動車・車両関連部品、パソコンハウジング、携帯電話ハウジング、携帯電話基地局のアンテナケース、その他情報通信分野においてチップアンテナ、無線LAN用アンテナ、ETC(エレクトロリックトールコレクションシステム)用、衛星通信などのアンテナおよびその他の各種用途で有用に用いられ、特に小型精密化による製品設計自由度、かつ高衝撃性、高誘電性が要求され、セラミックス代替が熱望されている情報通信用途、自動車部品用途、電気・電子部品用途に有用である。
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明の骨子は以下の実施例にのみ限定されるものではない。
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明の骨子は以下の実施例にのみ限定されるものではない。
[参考例1](環状PPSの原料となるPPS混合物の製造例)
本文(4)記載の環状PPSの原料となるPPS混合物の製造例について下記に説明する。
<PPS混合物の調製>
撹拌機付きの1000Lのオートクレーブに、47.5%水硫化ナトリウム82.7kg(700モル)、96%水酸化ナトリウム29.6kg(710モル)、N−メチル−2−ピロリドン(以下NMPと略する場合もある)を114.4kg(1156モル)、酢酸ナトリウム17.2kg(210モル)、及びイオン交換水100kgを仕込み、常圧で窒素を通じながら約240℃まで約3時間かけて徐々に加熱し、精留塔を介して水143kgおよびNMP2.8kgを留出した後、反応容器を160℃に冷却した。なお、この脱液操作の間に仕込んだイオウ成分1モル当たり0.02モルの硫化水素が系外に飛散した。
次に、p−ジクロロベンゼン103kg(703モル)、NMP90kg(910モル)を加え、反応容器を窒素ガス下に密封した。240rpmで撹拌しながら、0.6℃/分の速度で270℃まで昇温し、この温度で140分保持した。水12.6kg(700モル)を15分かけて圧入しながら250℃まで1.3℃/分の速度で冷却した。その後220℃まで0.4℃/分の速度で冷却してから、室温近傍まで急冷し、スラリー(A)を得た。このスラリー(A)を200kgのNMPで希釈しスラリー(B)を得た。
80℃に加熱したスラリー(B)200kgを50kg/1バッチスケールで、ふるい(80mesh、目開き0.175mm)で濾別し、濾液成分としてスラリー(C)を約150kg、メッシュオン成分としてスラリーを含んだ顆粒状PPS樹脂(粗PPS樹脂(D))50kg得た。
得られたスラリー(C)150kgを50kg/1バッチで脱揮装置に仕込み、窒素で置換してから、減圧下100〜150℃で1.5時間処理した後に、真空乾燥機で150℃、1時間処理して固形物を得た。この固形物にイオン交換水200kg(スラリー(C)の1.2倍量)を加えた後、70℃で30分撹拌して再スラリー化した。このスラリーを目開き10〜16μmのフィルターで減圧吸引濾過した。得られた白色ケークにイオン交換水200kgを加えて70℃で30分撹拌して再スラリー化し、同様に吸引濾過後、70℃で5時間真空乾燥してPPS混合物を2kg得た。
ここで得られたPPS混合物を用いた環状PPS混合物の製造例について下記に説明する。
[参考例2](環状PPS化合物の製造)
参考例1の方法で得られたPPS混合物を2kgに、溶剤としてクロロホルム50kgを用いて、浴温約80℃で抽出法により3時間PPS混合物と溶剤を接触させ、抽出液を得た。得られた抽出液は室温で一部固形状成分を含むスラリー状であった。この抽出液スラリーからエバポレーターを用いてクロロホルムを留去した後、真空乾燥機70℃で3時間処理して固形物840g(PPS混合物に対し、収率42%)を得た。
このようにして得られた固形物は、赤外分光分析(装置;島津社製FTIR−8100A)における吸収スペクトルよりフェニレンスルフィド骨格を有する化合物であることを確認した。また、高速液体クロマトグラフィー(装置;島津社製LC−10,カラム;C18,検出器;フォトダイオードアレイ)より成分分割した成分のマススペクトル分析(装置;日立製M−1200H)、更にMALDI−TOF−MSおよびGPCによる分子量情報より、この固形物は表1に示す繰り返し単位数4〜12の環状PPSを主要成分とする混合物であり、環状PPSの重量分率は約87%、13%は直鎖状PPSオリゴマーとm=13以上の環状PPS(Mw=2000)、Tm=226℃であった。
本発明によれば、環状PPSを約87重量%含む、純度の高い環状PPS混合物を高い収率で得られることがわかった。
[参考例3]
参考例2で得られた環状PPS化合物を攪拌機を取り付けた1Lのオートクレーブ中に仕込み、窒素で置換した。オートクレーブを1時間で300℃に昇温した。昇温途中で環状PPS化合物が溶融したら、攪拌機の回転を開始し、回転数10rpmで攪拌下、30分間溶融加熱した。その後、窒素圧によりポリマーを吐出口よりガット状で取り出し、ガットをペレタイズした。得られた若干黒みを帯びた生成物の赤外スペクトルはPPS構造を有することがわかった。なお、生成物は1−クロロナフタレンに210℃で全溶であった。
得られたペレットをGPCにより分析した結果、重量平均分子量56000、分子量分布1.8のPPS―1が生成していることがわかった。また、このペレットのNa含有量は10ppmでこれ以外のアルカリ金属は検出されなかった。さらに320℃/60分加熱した際の発生ガス成分であるラクトン型化合物としてγ−ブチロラクトン(γ−BL)が5ppm、アニリン型化合物として4−クロロ−N−メチルアニリン(MeAn)が5ppm検出された。また、塩素以外のハロゲンは検出されなかった。
[参考例4]
<従来技術によるPPSの調製>
参考例1で得られた粗PPS樹脂(D)20kgにNMP約50リットルを加えて85℃で30分間で洗浄し、ふるい(80mesh、目開き0.175mm)で濾別した。得られた固形物を50リットルのイオン交換水で希釈して、70℃で30分撹拌後、80メッシュふるいで濾過して固形物を回収する操作を合計5回繰り返した。このようにして得られた固形物を、130℃で熱風乾燥し、乾燥ポリマーを得た。得られたポリマーの赤外分光分析による吸収スペクトルは参考例1で得られたPPS混合物の吸収と一致した。
得られたPPS―2のGPC測定の結果、得られたPPS−2の重量平均分子量は59600、分散度は3.8であることがわかった。また元素分析を行った結果、Na含有量は1040ppmであった。さらに、参考例3で得られたPPSについて加熱時の発生ガス成分の分析を行った結果、加熱前のPPSの重量に対してγ−ブチロラクトンが618ppm、4−クロロ−N−メチルアニリンが416ppm検出された。なおここで、Na以外のアルカリ金属や塩素以外のハロゲンは検出されなかった。
[参考例5]
<従来技術によるPPSの調製>
撹拌機および底に弁の付いた20リットルオートクレーブに、47%水硫化ナトリウム(三協化成)2383g(20.0モル)、96%水酸化ナトリウム831g(19.9モル)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)3960g(40.0モル)、およびイオン交換水3000gを仕込み、常圧で窒素を通じながら225℃まで約3時間かけて徐々に加熱し、水4200gおよびNMP80gを留出した後、反応容器を160℃に冷却した。仕込みアルカリ金属硫化物1モル当たりの系内残存水分量は0.17モルであった。また、仕込みアルカリ金属硫化物1モル当たりの硫化水素の飛散量は0.021モルであった。
次に、p−ジクロロベンゼン(シグマアルドリッチ)2942g(20.0モル)、NMP1515g(15.3モル)を加え、反応容器を窒素ガス下に密封した。その後、400rpmで撹拌しながら、200℃から227℃まで0.8℃/分の速度で昇温し、次いで274℃まで0.6℃/分の速度で昇温し、274℃で50分保持した後、282℃まで昇温した。オートクレーブ底部の抜き出しバルブを開放し、窒素で加圧しながら、内容物を撹拌機付き容器に15分かけてフラッシュし、250℃でしばらく撹拌して大半のNMPを除去し、ポリフェニレンスルフィド(PPS)と塩類を含む固形物を回収した。
得られた固形物およびイオン交換水15120gを撹拌機付きオートクレーブに入れ、70℃で30分洗浄した後、ガラスフィルターで吸引濾過した。次いで70℃に加熱した17280gのイオン交換水をガラスフィルターに注ぎ込み、吸引濾過してケークを得た。
得られたケーク、イオン交換水11880gおよび酢酸12gを撹拌機付きオートクレーブに仕込み、オートクレーブ内部を窒素で置換した後、192℃まで昇温し、30分保持した。その後オートクレーブを冷却して内容物を取り出した。
内容物をガラスフィルターで吸引濾過した後、これに70℃のイオン交換水17280gを注ぎ込み吸引濾過してケークを得た。得られたケークを80℃で熱風乾燥し、さらに120℃で24時間で真空乾燥することにより、乾燥PPSを得た。ついで、乾燥機内に窒素を通じながら220℃で5時間処理した。得られたPPS−3は、ポリスチレン換算の重量平均分子量が20000、分散度3.8であった。また、得られたPPS−3のNa含有量は980ppmでこれ以外のアルカリ金属は検出されなかった。さらに320℃/60分加熱した際の発生ガス成分であるラクトン型化合物としてγ−ブチロラクトン(γ−BL)が420ppm、アニリン型化合物として4−クロロ−N−メチルアニリン(MeAn)が775ppm検出された。また、塩素以外のハロゲンは検出されなかった。
[参考例6] 高誘電セラミックス
チタン酸バリウム(TB1):BT−01(平均粒径0.1μm、BET比表面積13.0m2/g、BET比表面積を平均粒径で除した値130、堺化学工業社製)。
チタン酸バリウム(TB2):BT―05(平均粒径0.5μm、BET比表面積2.3m2/g、BET比表面積を平均粒径で除した値5、堺化学工業社製)。
チタン酸ストロンチウム(TS1):ST−03(平均粒径0.3μm、BET比表面積4.3m2/g、BET比表面積を平均粒径で除した値14、堺化学工業社製)。
チタン酸ストロンチウム(TS2):炭酸ストロンチウム(SW−K、堺化学工業社製、BET比表面積7.7m2/g)、二酸化チタン(PT−401M、石原テクノ製、BET比表面積20.7m2/g、ルチル化率50.7%)の強熱減量(700℃に加熱して水分や揮発成分を除去したときの重量減少)を測定し、水分等の揮発成分による重量のずれを補正して、炭酸ストロンチウムと二酸化チタンのモル比が1:1となるように計約1.1kgの粉末を秤量した。10Lポリエチレン製ポットおよび15mmφの鉄芯入りプラスチックボールを用い、乾式ボールミルで秤量した混合粉末を20時間混合した。混合後のBET比表面積は22.8m2/gであった。混合物をTG−DTAにより分析した結果、チタン酸ストロンチウムの生成温度は880℃であった。混合物を石英ガラス製炉芯管を有する管状炉(炉芯管体積20L)を用いて焼成した。炉内を窒素雰囲気として昇温を開始し、600℃で塩化水素3体積%−窒素97体積%の雰囲気を導入し、700℃で空気雰囲気に切り替えて950℃まで昇温し、950℃で2時間保持して1回目の焼成を行った。なお、焼成雰囲気の圧力は全て大気圧(約0.1MPa)である。焼成後、得られたチタン酸ストロンチウム粉末を濃度0.8重量%炭酸水素アンモニウム水溶液に分散させ、濾過し、洗浄した。洗浄後の粉末を130℃で乾燥させ、空気雰囲気中において900℃、3時間保持して2回目の焼成を行った。さらに粉末を10Lポリエチレン製ポットおよび15mmφの鉄芯入りプラスチックボールを用いたボールミルにより20時間粉砕し、粒子の平均粒径0.154μm、BET比表面積8.15m2/g、BET比表面積を平均粒径で除した値は53、比重5.12のチタン酸ストロンチウム粉末を得た。
チタン酸ストロンチウムバリウム(TSB1):炭酸バリウム56.83g、炭酸ストロンチウム42.51g、及び酸化チタン46.02gの3種類の粉末(Ba/Sr/Ti=0.5/0.5/1 モル比)を溶媒にエタノールを用い、ボールミルにより24時間の混合を行った。混合終了後の粉末分散液は粉末と、ボール及びエタノールとを分離し、粉末は110℃、12時間の乾燥を行い、原料として用いた。乾燥した粉末はアルミナるつぼに入れ、電気炉を用いて1300℃、24時間の焼成を行った。焼成を行った粉末はアルミナ乳鉢で粉砕を行いながら、篩に通し、粒子の平均粒径4.0μm、BET比表面積10.0m2/g、BET比表面積を平均粒径で除した値2.5、比重5.6のチタン酸ストロンチウムバリウム粉末を得た。
チタン酸ストロンチウムバリウム(TSB2):炭酸バリウム56.83g、炭酸ストロンチウム42.51g、及び酸化チタン46.02gの3種類の粉末(Ba/Sr/Ti=0.5/0.5/1 モル比)を溶媒にエタノールを用い、ボールミルにより24時間の混合を行った。混合終了後の粉末分散液は粉末と、ボール及びエタノールとを分離し、粉末は110℃、12時間の乾燥を行い、原料として用いた。乾燥した粉末はアルミナるつぼに入れ、電気炉を用いて1300℃、24時間の焼成を行った。焼成を行った粉末はアルミナ乳鉢で粉砕を行いながら、篩に通し、粒子の平均粒径15μm、BET比表面積0.6m2/g、BET比表面積を平均粒径で除した値0.04、比重5.6のチタン酸ストロンチウムバリウム粉末を得た。
なお、上記において平均粒径は、島津製作所社製レーザー光回析式粒度分布測定装置SALD−3100を用いて測定した。
粉末のBET比表面積は、BET1点法によるBET比表面積測定装置(島津製作所社製、フローソーブIII2305モデル)を用いて測定した。
[参考例7] 添加剤
HWE:モンタン酸エステルワックス“リコワックスE”(クラリアントジャパン社製)
PX:PX−200(粉末状芳香族縮合リン酸エステル、大八化学工業社製、CAS No.139189−30−3)。
実施例1〜5、比較例1、2
参考例3〜5のポリアリーレンスルフィド、参考例6に示した高誘電セラミックスおよび参考例7の添加剤をヘンシェルミキサーで表2に示す量でブレンドし、自動原料供給フィーダーを備えた月島機械製ロータリー打錠機を用いて常温タブレット化により、6mm直径×3mm長の円柱状のタブレット(錠剤型樹脂組成物)(最大値6mm、最小値3mm)を得た。ついで140℃の熱風乾燥機で3時間乾燥した後、以下に示す評価を行った。
実施例6
参考例2で得られた環状PPS化合物を攪拌機を取り付けた1Lのオートクレーブ中に実施例5と同様の組成(PPS;45容量%、チタン酸バリウム;55容量%)となるように仕込み、窒素で置換した。オートクレーブを1時間で300℃に昇温した。昇温途中で環状PPS化合物が溶融したら、攪拌機の回転を開始し、回転数10rpmで攪拌下、30分間溶融加熱した。その後、窒素圧によりポリマーを塊状で取り出し、粉砕し、3mmφのメッシュを通過する塊状物を得た。得られた若干黒みを帯びた生成物の赤外スペクトルはPPS構造を有することがわかった。なお、生成物は1−クロロナフタレンに210℃でチタン酸バリウムが残留した他は、溶解した。
得られた破砕物についてチタン酸バリウムをフィルターで濾過し、GPCにより分析した結果、重量平均分子量56000、分子量分布1.8のPPS−4が生成していることがわかった。また、このペレットのNa含有量は10ppmでこれ以外のアルカリ金属は検出されなかった。さらに320℃/60分加熱した際の発生ガス成分であるラクトン型化合物としてγブチロラクトン(γ−BL)が5ppm、アニリン型化合物として4−クロロ−N−メチルアニリン(MeAn)が5ppm検出された。また、塩素以外のハロゲンは検出されなかった。
得られたPPS−4を用いて以下に示す評価を行った。
1.分子量測定
参考例で得られたPPS樹脂の分子量測定は、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)の一種であるゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、ポリスチレン換算で算出した。GPCの測定条件を以下に示す。
装置:センシュー科学 SSC−7100
カラム名:センシュー科学 GPC3506
溶離液:1−クロロナフタレン
検出器:示差屈折率検出器
カラム温度:210℃
プレ恒温槽温度:250℃
ポンプ恒温槽温度:50℃
検出器温度:210℃
流量:1.0mL/min
試料注入量:300μL (サンプル濃度:約0.2重量%)。
2.環状PAS化合物の融点
パーキンエルマー製DSC7を用いて測定した。下記測定条件を用い、結晶化温度Tcは1st Runの値を、融点Tmは2nd Runの値を用いた。
First Run
・50℃×1分 ホールド
・50℃から320℃へ昇温,昇温速度20℃/分
・320℃×1分 ホールド
320℃から100℃へ降温,降温速度20℃/分
Second Run
・100℃×1分 ホールド
100℃から320℃へ昇温,昇温速度20℃/分(この時の融解ピーク温度をTmとする)。
3.アルカリ金属含有量の定量
参考例で得られたPPS中のアルカリ金属含有量の定量は下記により行った。
(a) 試料を石英るつぼに秤とり、電気炉を用いて灰化した。
(b) 灰化物を濃硝酸で溶解した後、希硝酸で定容とした。
(c) 得られた定容液をICP重量分析法(装置;Agilent製4500)及びICP発光分光分析法(装置;PerkinElmer製Optima4300DV)に処した。
4.ハロゲン含有量の定量
参考例で得られたPPS中のハロゲン量の定量を下記方法で行った。
(a) 酸素を充填したフラスコ内で試料を燃焼した。
(b) 燃焼ガスを溶液に吸収し、吸収液を調製した。
(c) 吸収液の一部をイオンクロマト法(装置;ダイオネクス社製DX320)によって分析し、ハロゲン濃度を定量した。
5.加熱時発生ガス成分の分析
参考例で得られたPPSを加熱した際に発生する成分の定量は以下の方法により行った。
(a) 加熱時発生ガスの捕集
約10mgの実施例および比較例で得られた成形品を窒素気流下(50ml/分)の320℃で60分間加熱し、発生したガス成分を大気捕集用加熱脱離用チューブcarbotrap400に捕集した。
(b) ガス成分の分析
上記チューブに捕集したガス成分を熱脱着装置TDU(Supelco社製)を用いて室温から280℃まで5分間で昇温することで熱脱離させた。熱脱離した成分をガスクロマトグラフィーを用いて成分分割して、ガス中のγ−ブチロラクトン及び4−クロロ−N−メチルアニリンの定量を行った。
6.端子腐食性
UH1000(80t)射出成形機(日精樹脂工業社製)を用い、表2に示す樹脂温度、金型温度の温度条件で、リン青銅板(10mm長×3mm幅×0.5mm厚)を長さ5mm分挿入した成形品(10mm×10mm×5mm厚)を作成し、この模擬部品を温度120℃、湿度85%の環境下で1000時間処理して、端子の劣化の有無を観察した。劣化しない場合:○、劣化した場合:× とした。
7.誘電率測定
UH1000(80t)射出成形機(日精樹脂工業社製)を用い、表2に示す樹脂温度、金型温度の温度条件で、80mm×80mm×3mm厚の成形品を最低圧力+5MPaで射出成形し、同軸共振器法により、3GHzの誘電率を測定した。
8.衝撃強度
UH1000(80t)射出成形機(日精樹脂工業社製)を用い、表2に示す樹脂温度、金型温度の温度条件で、成形片を取得し、ASTM D256に従い、ノッチ付き衝撃試験を行った。
表2の結果から明らかなように本発明の高誘電性樹脂組成物は、重量平均分子量(Mw)が1万以上、重量平均分子量/数平均分子量(Mn)で表される分散度が2.5以下のポリアリーレンスルフィドと高誘電性セラミックスの粒径制御することで、高誘電セラミックスの成形品への充填時の粒子の凝集や空隙を低減でき、それによって得られた成形品は金属との複合体として用いる際に腐食による特性低下の抑制および高誘電率、衝撃強度高位に達成していることがわかる。また、射出成形が可能であることから、小型精密化や生産性向上を目的としてセラミックス代替を熱望されている情報通信分野、電気・電子部品、自動車部品用途等への展開を図ることが可能となる。