JP2008231140A - 電子部品封止用ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物、電子部品封止用錠剤の製造方法および成形品 - Google Patents

電子部品封止用ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物、電子部品封止用錠剤の製造方法および成形品 Download PDF

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秀之 梅津
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Abstract

【課題】分子量分布が狭く、金属不純物量を低減したPPS樹脂により溶融成形性、連続成形性、耐湿熱性に優れる電子部品封止用PPS樹脂組成物、およびその成形品を提供する。
【解決手段】(a)重量平均分子量(Mw)が1万以上、重量平均分子量/数平均分子量(Mn)で表される分散度が2.5以下であり、かつアルカリ金属含量が50ppm以下であるポリフェニレンスルフィド樹脂5〜60容量%および(b)無機フィラー40〜95容量%である電子部品封止用ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物。
【選択図】なし

Description

本発明は、溶融成形時の流動性に優れ、かつ加熱、溶融時の揮発性成分の発生量が少なく、イオン性不純物の溶出が少なく、電子部品封止加工時での電子部品、半導体素子、リードフレーム、ワイヤーなどの汚れや腐食を低減可能なポリフェニレンスルフィド樹脂、および該樹脂およびそれからなる電子部品封止用ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物を提供する。
ポリフェニレンスルフィド樹脂(以下PPSと略す)は、優れた耐熱性、耐薬品性などの特徴を活かして、当初はエンジニアリングプラスチックとして実用化がなされてきた。特に、耐熱性、耐薬品性、剛性、難燃性に優れ、更に良好な成形加工性、寸法安定性を有するため、射出成形用エンジニアリングプラスチックとして電気・電子機器部品、自動車部品や精密機器部品として広く使用されている。近年では、電子部品の封止用途にもPPS樹脂の優れた特性から、実用化がなされている。しかし、電子部品の封止においてPPS樹脂には種々の欠点がある。例えば、PPS樹脂は、その融点が高い故に、溶融成形温度や使用温度が高く、揮発成分が発生しやすいという問題を有している。この揮発成分の発生は、溶融成形工程において、揮発性ガス発生による電子部品の汚染や金型汚れなどにより連続成形性が低下するという問題から、揮発性ガス成分の低減が強く望まれている。
電子部品封止用
PPS樹脂組成物に使用されているPPS樹脂の具体的な製造方法として、N−メチル−2−ピロリドンなどの有機アミド溶媒中で硫化ナトリウムなどのアルカリ金属硫化物とp−ジクロロベンゼンなどのポリハロ芳香族化合物とを反応させる方法が提案されており、この方法はPPS樹脂の工業的製造方法として幅広く利用されている。
さらに、重合反応は脱塩重縮合機構であるため、塩化ナトリウム等の副生塩が多量に生成する。従って重合反応後には副生塩の除去工程が必要であるが通常の処理では副生塩の完全な除去が難しく、市販の汎用的なPPS樹脂中にはアルカリ金属含有量で1000〜3000ppm程度が含有されている。このように生成ポリマー中にアルカリ金属塩が残存していると、上記のPPS樹脂を用いたて封止した電子部品では、実際には連続使用によって電極端子や導線等の金属部材の腐食が起こり、断線や漏れ電流の増大等の不良が発生するという問題を有している。これは、金属部材の表面に付着した水分に、アルカリ金属が溶出して金属部分の腐食が発生する。このような不良を防止するにはPPS樹脂中のアルカリ金属の含有量を規定する必要がある。
また、この方法で得られるPPS樹脂は、低分子量成分を多く含み、重量平均分子量と数平均分子量の比で表される分散度が非常に大きく、分子量分布の広いポリマーである。そのため、溶融成形の際、低分子量成分による電子部品の汚染の問題や金型汚れの問題を有しており、さらに一部の揮発性成分は電子部品封止用PPS樹脂組成物中に残存し、耐湿熱環境下で電極端子や導線等の腐食が起こり、断線や漏れ電流の増大等の不良が発生するという問題があった。これら問題点を改善するためには、例えば空気中のような酸化性雰囲気下で気相酸化処理することで架橋構造を形成し高分子量化する工程が必要であり、プロセスがさらに煩雑になるとともに生産性の低下を招いていた(例えば、特許文献1参照)。
前記PPS樹脂の問題点の一つ、即ち、PPSが低分子量成分を多く含み分子量分布が広い点を改善する方法として、不純物を含有するPPSの混合物をPPSが溶融相をなす最低温度よりも高い状態で、PPSを含むポリマー溶融相と溶媒を主とする溶媒相に相分離せしめることで不純物を熱抽出に付すことにより精製する方法、または冷却後に顆粒状ポリマーを析出させて回収する方法が提案されている。これら方法では熱抽出効果により不純物が抽出されるため、揮発性ガス成分の低減、および分子量分布が狭くなることが期待されるがその効果は不十分であり、また、高価な有機溶剤を使用する手法であるためプロセスが煩雑であった(例えば特許文献2及び3)。
前記課題、即ちPPSが低分子量成分を多く含み分子量分布が広い点を改善する別の方法として、有機極性溶媒中で硫黄源とジハロ芳香族化合物とを温度220〜280℃の条件下に0.1〜2時間反応させて得られたPPSを温度100〜220℃の条件下に有機極性溶媒で洗浄することを特徴として製造される重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnの比Mw/Mnが2〜5の範囲内にあるPPSが開示されている。該PPSの製造では高温で有機溶剤洗浄を行うことで低分子量成分を除去して狭い分子量分布のPPSを得ているため、PPSの収率が低く、また、実質的に得られている最も分散度が低いPPSでもMw/Mn=2.9でありその効果は不十分であった。更に該方法ではPPSの重合に際し高価なリチウム化合物を多量に使用しているため経済性に劣り、またリチウムがPPSに少なからず残留してしまうなど、まだ解決すべき課題が多かった(例えば特許文献4参照)。
前記PASの不十分な分子量分布を改善する方法として、非プロトン性有機溶媒中でアルカリ金属硫化物及び/又はアルカリ土類金属硫化物とポリハロゲン化芳香族化合物とを重合し、得られたPPS重合反応物を含む重合溶液中に水を溶液全体の5〜50重量%、並びに無機及び/又は有機の酸を、前記重合溶液が酸性になるように添加し、かつ溶液中のPPS重合反応物が溶融相をなす最低温度よりも高い温度下で溶媒相とポリマー溶融相とに相分離させ、ポリマー溶融相を回収することを特徴とする製造方法によって得られるPPSが開示されている。この方法によれば分散度Mw/Mnが1.9程度の狭い分子量分布を有するPPSを得ることが期待できるが、この方法では広い分子量分布を有するPPSを高温高圧下の溶融解状態で抽出操作に処すことにより多量の低分子量成分をPPSから分離する方法を採用しており、プロセスが煩雑で、また得られるPPSの収率は80%以下と低く、さらに該PPSの重合では高価なリチウム化合物を多量に使用しており、これのポリマーへの残留も懸念があるといった課題が残っていた(例えば特許文献5)。
また、狭い分子量分布を有するPPSの製造方法として、環状アリーレンスルフィドオリゴマーをイオン性の開環重合触媒下で、加熱開環重合する方法が開示されている。この方法では前記特許文献2及び3とは異なり、煩雑な有機溶剤洗浄操作を行わずに狭い分子量分布を有するPPSを得ることが期待できる。しかしながらこの方法ではPPSの合成においてチオフェノールのナトリウム塩等、硫黄のアルカリ金属塩を開環重合触媒として用いるため、得られるPPSにアルカリ金属が多量に残留するという問題があった。またこの方法において開環重合触媒の使用量を低減することでPPSへのアルカリ金属残留量を低減しようとした場合、得られるPPSの分子量が不十分となる問題があった。(例えば特許文献6及び7)。
前記方法で得られるPPSの問題点、すなわちPPSへのアルカリ金属残留量を低減する方法として、加熱により硫黄ラジカルを発生する重合開始剤の存在下で環状の芳香族チオエーテルオリゴマーを開環重合するPPSの製造方法が開示されている。この方法では重合開始剤に非イオン性化合物を用いるため、得られるPPSのアルカリ金属含有量が低減されると思われる。しかしながら、該方法で得られるポリフェニレンスルフィドのガラス転移温度は85℃と低く、これは分子量が低く、また、該ポリフェニレンスルフィドが低分子量成分を多量に含み分子量分布が広いためであり、分子量及び狭い分子量分布という点で不十分であった。さらに、該方法では得られるポリフェニレンスルフィドを加熱した際の重量減少率については何ら開示が無いが、該方法で用いる重合開始剤はポリフェニレンスルフィドと比較して分子量が低く、また熱安定性も劣るため、この方法で得られるポリフェニレンスルフィドを加熱した際には多量のガスが発生し、成形加工性が劣る懸念があった(例えば特許文献8)。
また特許文献6〜8のPPSの製造方法における開環重合においては、そのモノマー源として線状ポリアリーレンスルフィドを実質的に含まない高純度の環状ポリアリーレンスルフィドオリゴマーを用いることが好ましい容態とされており、線状のポリアリーレンスルフィドは極少量の混在のみが許容されている。一般に環状オリゴマーは多量の線状オリゴマーとの混合物として得られるため、高純度の環状体を得るためには高度な精製操作が必要であり、このことは結果として得られるPPSのコストアップ要因となっており、開環重合においては環状体と線状体の混合物をそのモノマー源に用いることが許容される方法が望まれていた。
また、モノマー源として環状PPSと線状PPSの混合物を加熱するPPSの重合方法も知られている(非特許文献1)。この方法はPPSの安易な重合法であるが、得られるPPSの重合度は低く実用に適さないPPSであった。該文献では加熱温度を高くすることで重合度の向上が見られることが開示されているが、それでもなお実用に適した分子量には到達しておらず、また、この場合は架橋構造の生成が回避できず、熱的特性の劣るPPSしか得られないことが指摘されており、より実用に適した品質の高いPPSの重合方法が望まれていた。
特公昭45−3368号公報 (第7〜10頁) 特公平1−25493号公報 (第23頁) 特公平4−55445号公報 (第3〜4頁) 特開平2006−336140(第5〜6頁) 特開平2−182727号公報 (第9〜13頁) 特許第3216228号明細書 (第7〜10頁) 特許第3141459号明細書(第5〜6頁) 米国特許第5869599号明細書(第27〜28頁) Polymer,vol.37,no.14,1996年(第3111〜3116頁)
本発明は、良流動性で、溶融成形時の金型汚れ、リード線汚染がなく、かつ得られた成形品は、電子部品や電極端子および導線等の腐食がなく、耐湿熱性に優れる電子部品封止用PPS樹脂組成物およびその成形品を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記問題点を解決するために鋭意検討を重ねた結果、本発明に至った。
すなわち、本発明は、以下のとおりである。
1.(a)と(b)の合計を100容量%として、(a)重量平均分子量(Mw)が1万以上、重量平均分子量/数平均分子量(Mn)で表される分散度が2.5以下であり、かつアルカリ金属含量が50ppm以下であるポリフェニレンスルフィド樹脂5〜60容量%および(b)無機フィラー40〜95容量%を配合してなる電子部品封止用ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物。
2.ポリフェニレンスルフィド樹脂に含まれるアルカリ金属がナトリウムであることを特徴とする1記載の電子部品封止用ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物。
3.前記(a)ポリフェニレンスルフィド樹脂を加熱した際の発生ガス成分中のラクトン型化合物がポリフェニレンスルフィド樹脂重量基準で500ppm以下であり、アニリン型化合物がポリフェニレンスルフィド樹脂重量基準で300ppm以下であることを特徴とする1または2記載の電子部品封止用ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物。
4.前記(a)ポリフェニレンスルフィド樹脂が、下記一般式(1)で表される環状ポリフェニレンスルフィド混合物を、溶融加熱することにより得られたポリフェニレンスルフィド樹脂であることを特徴とする1〜3のいずれか1項記載の電子部品封止用ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物。
Figure 2008231140
(mは4〜20の整数、mは4〜20の混合物でもよい。)
5.(b)無機フィラーの平均粒子径(D50)が1〜100μmであることを特徴とする1〜4のいずれか1項記載の電子部品封止用ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物。
6.下記一般式(1)で表される環状ポリフェニレンスルフィド樹脂および(b)無機フィラーを溶融加熱することを特徴とする1〜5のいずれか1項記載の電子部品封止用ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物の製造方法。
Figure 2008231140
(mは4〜20の整数、mは4〜20の混合物でもよい。)
7.さらに(c)エステル系化合物、アミド基含有化合物、エポキシ系化合物、およびリン酸エステルから選ばれる少なくとも1種の化合物を(a)および(b)の合計量100重量部に対して0.1〜10重量部添加してなる1〜6のいずれか1項記載の電子部品封止用ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物。
8.1〜5、7のいずれか記載の電子部品封止用ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物を圧縮成形して錠剤化することを特徴とする電子部品封止用錠剤の製造方法。
9.1〜5、7のいずれか記載の電子部品封止用ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物を射出成形してなる成形品。
本発明の電子部品封止用ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物は、封止工程や表面実装工程、あるいは電子部品使用時における、高温、高湿度環境下での電子部品および半導体素子、リードフレーム、ワイヤーなどの汚れや腐食を低減することができる電子部品の保護に優れたものであり、さらに本電子部品封止用ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物は優れた成形時における流動性を示す。また本発明の電子部品封止用ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物の製造方法により、成形時の流動性を損なうことなく無機フィラーを高充填化することができる。
以下、本発明を詳細に説明する。
(1)電子部品封止用ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物(PPS)
本発明の電子部品封止用PPS樹脂組成物に使用されるPPSとは、構造式(2)で示される繰り返し単位を70モル%以上、より好ましくは90モル%以上を含む重合体であり、上記繰り返し単位が70モル%未満では、耐熱性が損なわれるので好ましくない。
Figure 2008231140
またPPSはその繰り返し単位の30モル%未満を、下記の構造式を有する繰り返し単位等で構成することが可能である。
Figure 2008231140
本発明の電子部品用PPS樹脂組成物の分子量は、重量平均分子量で10,000以上、好ましくは15,000以上、より好ましくは18,000以上である。重量平均分子量が10,000未満では溶融成形時にバリが発生し連続成形性が低下し、また電子部品封止後の機械強度、耐薬品性、耐熱性等の特性が低くなる。重量平均分子量の上限に特に制限は無いが、1,000,000未満を好ましい範囲として例示でき、より好ましくは500,000未満、更に好ましくは200,000未満であり、この範囲内では高い溶融成形性を得ることができる。
本発明における電子部品封止用PPS樹脂組成物の分子量分布の広がり、すなわち重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)で表される分散度は2.5以下であり、好ましくは2.3以下、より好ましくは2.1以下であり、特に好ましくは2.0以下である。分散度が2.5を超える場合はPPS樹脂に含まれる低分子量成分の量が多くなる傾向が強く、このことは溶融成形の際の揮発性ガス成分発生量の増加や金型汚れ、電子部品、リードフレーム汚れ、腐食の要因になる傾向にある。
なお前記重量平均分子量および数平均分子量は例えば、分子量はサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)の一種であるゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、ポリスチレン換算で算出することができる。
本発明で用いられる電子部品封止用PPS樹脂組成物の溶融粘度は、溶融混練が可能であれば特に制限はないが、通常5〜5000Pa・s(300℃、剪断速度1000sec−1)のものが使用される。
本発明の電子部品封止用PPS樹脂組成物は従来のものに比べ高純度であることが特徴であり、不純物であるアルカリ金属含量は50ppm以下であり、より好ましくは30ppm以下、更に好ましくは10ppm以下である。アルカリ金属含有量が50ppmを超えると、電子部品やリードフレームに腐食が生じ、高度な動作信頼性が要求される用途における、電子部品の高温高湿度連続使用下での長期信頼性が低下するなど、電子部品封止用PPS樹脂組成物の用途に制限が生じる可能性が増大する。ここで本発明におけるPPS樹脂のアルカリ金属含有量とは、例えばPPS樹脂を電気炉等を用いて焼成した残渣である灰分中のアルカリ金属量から算出される値であり、前記灰分を例えばイオンクロマト法や原子吸光法により分析することで定量することができる。
なお、アルカリ金属とは周期律表第IA属のリチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、フランシウムのことを指すが、本発明のPPS樹脂は特にアルカリ金属としてナトリウムを含まないことが好ましい。アルカリ金属を含む場合、PPS樹脂の電気特性や熱的特性に悪影響を及ぼす傾向にある。またPPS樹脂が各種溶剤と接した際の溶出金属量が増大する要因になる可能性があり、またPPS樹脂がリチウムを含む場合、リチウムは溶出しやすい金属であるため、この弊害が強くなる。ところで、各種金属種の中でも、アルカリ金属以外の金属種、たとえばアルカリ土類金属や遷移金属と比較して、アルカリ金属はPPS樹脂の電気特性、熱的特性及び金属溶出量への影響が強く、また、封止される電子部品の金属端子部分の腐食への影響が強い傾向にある。よって、各種金属種の中でも、特にアルカリ金属含有量を前記範囲に制御することで電子部品封止用PPS樹脂組成物の品質を向上する事ができると推測している。さらにアルカリ金属の中でもPPS樹脂の重合では、硫化ナトリウムに代表されるアルカリ金属硫化物などが最も一般的に使用され、ナトリウム含有量を前記範囲にすることにより電子部品封止用PPS樹脂組成物の品質を向上することができると推測している。
また、本発明の電子部品封止用PPS樹脂組成物は実質的に塩素以外のハロゲン、即ちフッ素、臭素、ヨウ素、アスタチンを含まないことが好ましい。本発明のPPS樹脂がハロゲンとして塩素を含有する場合、PPS樹脂が通常使用される温度領域においては安定であるために塩素を少量含有してもPPS樹脂の機械特性に対する影響が少ないが、塩素以外のハロゲンを含有する場合、それらの特異な性質がPPS樹脂の特性、例えば電気特性や滞留安定性を悪化させる傾向にある。本発明のPPS樹脂がハロゲンとして塩素を含有する場合、その好ましい量は1重量%以下、より好ましくは0.5重量%以下、更に好ましくは0.2重量%以下であり、この範囲ではPPS樹脂の揮発性ガス発生量が低減され、溶融成形性や封止工程や表面実装工程、あるいは電子部品使用時における、高温、高湿度環境下での電子部品および半導体素子、リードフレーム、などの汚れや腐食を低減することができる電子部品の保護が良好となる傾向にある。
また、本発明の電子部品封止用PPS樹脂組成物の別の特徴は、加熱した際のラクトン型化合物及び/またはアニリン型化合物の発生量が著しく少ないことである。ここでラクトン型化合物とは、例えばβ−プロピオラクトン、β−ブチロラクトン、β−ペンタノラクトン、β−ヘキサノラクトン、β−ヘプタノラクトン、β−オクタノラクトン、β−ノナラクトン、β−デカラクトン、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、γ−ペンタノラクトン、γ−ヘキサノラクトン、γ−ヘプタノラクトン、γ−オクタラクトン、γ−ノナラクトン、γ−デカラクトン、δ−ペンタノラクトン、δ−ヘキサノラクトン、δ−ヘプタノラクトン、δ−オクタノラクトン、δ−ノナラクトン、δ−デカラクトンなどが例示でき、また、アニリン型化合物とは、アニリン、N−メチルアニリン、N,N−ジメチルアニリン、N−エチルアニリン、N−メチル−N−エチルアニリン、4−クロロ−アニリン、4−クロロ−N−メチルアニリン、4−クロロ−N,N−ジメチルアニリン、4−クロロ−N−エチルアニリン、4−クロロ−N−メチル−N−エチルアニリン、3−クロロ−アニリン、3−クロロ−N−メチルアニリン、3−クロロ−N,N−ジメチルアニリン、3−クロロ−N−エチルアニリン、3−クロロ−N−メチル−N−エチルアニリンなどが例示できる。加熱した際のラクトン型化合物及び/またはアニリン型化合物の発生は、溶融成形時の発泡や金型汚れ、電子部品、リードフレーム(インナーリード、アウターリード)汚れ等の要因となり溶融成形性時の連続成形性を悪化させることのみならず、その後の封止工程や表面実装工程、あるいは電子部品使用時における、高温、高湿度環境下での電子部品および半導体素子、リードフレームなどの汚れや腐食などの要因にもなり、導通不良などの信頼を低下する、できるだけ少なくすることが望まれており、加熱を行う前のPPS樹脂および電子部品封止用PPS樹脂組成物の重量基準でラクトン型化合物の発生量が好ましくは500ppm以下、より好ましくは300ppm、更に好ましくは100ppm以下、よりいっそう好ましくは50ppm以下が望ましい。同様にアニリン型化合物の発生量は好ましくは300ppm以下、より好ましくは100ppm、更に好ましくは50ppm以下、よりいっそう好ましくは30ppm以下が望ましい。なお、PPS樹脂を加熱した際のラクトン型化合物及び/またはアニリン型化合物の発生量を評価する方法としては非酸化性雰囲気下320℃で60分処理した際の発生ガスをガスクロマトグラフィーを用いて成分分割して定量する。
(2)PPS樹脂の製造方法
本発明の重量平均分子量(Mw)が1万以上、重量平均分子量/数平均分子量(Mn)で表される分散度が2.5以下であり、かつアルカリ金属含量が50ppm以下であることを特徴とするポリフェニレンスルフィド樹脂を製造するためのPPS樹脂の製造方法としては、下記一般式(1)で表される環状ポリフェニレンスルフィド化合物を溶融加熱して、重量平均分子量10,000以上の高重合度体に転化させることによって製造することが例示され、この方法によれば前述した特性を有する本発明の電子部品封止用PPS樹脂組成物を得ることができる。
(3)環状PPS化合物
本発明の環状PPS化合物は、下記一般式(1)で表される、m=4〜20の整数で表される環状PPS化合物を使用することができ、mは4〜20の混合物でもよい。
Figure 2008231140
(mは4〜20の整数、mは4〜20の混合物でもよい)
上記式中の繰り返し単位mは、4〜20の整数であり、4〜15が好ましく、4〜12がさらに好ましい。
またmが単一の環状PPS単体は、結晶化の容易さに差はあるものの、結晶として得られるため、融解温度が高くなるため、高重合度体に転化させる際の温度が高くなる傾向を示す。一方、異なるmを有する混合物の場合、環状PPS単体に比べて、融解温度が低下し、高分子量体に転化させる際の温度を低下できるという特徴を有する。本特徴により、アルカリ金属を含有する重合開始剤がなくても高重合度化が速やかに進行し、さらに高重合度化の際の副反応も抑制されることから、金属含有量や、揮発性ガス成分量が少ないPPS樹脂を製造することが可能となる。
例えば、m=6の環状PPS単体(シクロヘキサ(p−フェニレンスルフィド))は、融点が348℃と高いため、高重合度化のための溶融加熱温度を高温にしないと該環状物が高分子量化しないという問題がある。そのため、環状PPS化合物を溶解する溶媒に溶かして高分子量体に転化するという方法、結晶化した環状PPS単体を一旦融点以上で溶融した後、急冷することによって結晶化を抑え、非晶化させた後、高重合度体に転化させる方法、あるいはプリメルターを環状PPS単体の融点以上に設定し、プリメルター内で環状PPS単体のみを溶融させ、融液として供給する方法などを採用することができる。
このような環状PPS化合物の特徴から、本発明で使用する環状PPS化合物は、その高分子量化の容易性、製造の容易性の面から、mが異なる環状PPS化合物が好ましい。
環状PPS化合物に対するm=6の環状PPSの含有量が50重量%未満が好ましく、さらに好ましくは30重量%未満が好ましく、より好ましくは10重量%である(m=6の環状PPS単体(重量)/(環状PPS化合物(重量)×100)。
環状PPS化合物中の異なるmのそれぞれの比率に特に制限はないが、本発明の効果を発現させるためには、環状PPS化合物の中、最も融点が高く、結晶化しやすいm=6の環状PPS単体の含有量が50重量%未満が好ましく、さらに好ましくは30重量%であり、特に好ましくは10重量%未満である(m=6の環状PPS(重量)/(環状PPS混合物(重量)×100)。ここで、環状PPS混合物中のm=6の環状PPS単体の含有率は、環状PPS混合物をUV検出器を具備した高速液体クロマトグラフィーで成分分割した際の、PPS構造を有する化合物に帰属される全ピーク面積に対する、m=6の環状PPS単体に帰属されるピーク面積の割合として求めることができる。ここで、PPS構造を有する化合物とは、少なくともPPS構造を有する化合物であり、例えば環状PPS化合物や線状のPPSであり、フェニレンスルフィド以外の構造をその一部に有する(例えば末端構造として)化合物もここでいうPPS構造を有する化合物に属する。なお、この高速液体クロマトグラフィーで成分分割された各ピークの定性は、各ピークを分取液体クロマトグラフィーで分取し、赤外分光分析における吸収スペクトルや質量分析を行うことで可能である。
このような環状PPS化合物は、公知のPPS樹脂の製造方法によって、PPS樹脂と環状PPS化合物を含むPPS混合物を得た後、該PPS混合物から環状PPS化合物を抽出することにより得ることができる。以下にその製造方法について説明する。
(4)環状PPS化合物の原料となるPPS混合物の製造方法
PPS混合物の製造方法としては、公知の技術を用いることができ、たとえば、少なくともp−ジクロロベンゼンに代表されるポリハロゲン化芳香族化合物、硫化ナトリウムに代表されるアルカリ金属硫化物及びN−メチル−2−ピロリドンに代表される有機極性溶媒を含有する混合物を加熱して、ポリフェニレンスルフィド混合物およびアルカリ金属ハライドを含む反応溶液を調製し、該反応液をたとえば水等で処理することでPPS混合物(PPSと環状PPS化合物)を得る方法や、ジフェニルジスルフィド類もしくはチオフェノール類を酸化重合することでPPS混合物を得る方法が例示できる。ただし、これら方法で一般に得られるPPS混合物中に含まれる環状PPS化合物は通常5重量%未満と低いため、環状PPS化合物を5重量%以上含むPPS混合物を得るためには、たとえばPPS混合物の重合の際に、重合溶媒を多量に用いるなどの特殊な方法が必要であり、このような方法で効率よく多量のPPS混合物を得ることは経済的に不利であり、工業的には成立に難がある。
前記以外のPPS混合物の製造方法としては、たとえば、少なくともp−ジクロロベンゼンに代表されるポリハロゲン化芳香族化合物、硫化ナトリウムに代表されるアルカリ金属硫化物及びN−メチル−2−ピロリドンに代表される有機極性溶媒を含有する混合物を加熱し重合した後、220℃以下に冷却して得られた、少なくとも顆粒状のPPSと顆粒状PPS以外のPPS混合物、有機極性溶媒、水、およびハロゲン化アルカリ金属塩を含む反応液から顆粒状のPPSを取り除いた際に得られる回収スラリーからPPS混合物を得る方法が好ましく例示できる。なお、ここで顆粒状PPSとは平均目開き0.175mmの標準ふるい(80meshふるい)で回収できるPPS成分を指す。この方法によって得られるPPS混合物は重量平均分子量が5,000以下の低分子量PPSを多く含み、たとえば前記顆粒状PPSと比較して機械物性などの特性が大幅に劣るため、一般的工業材料用途への適用は困難であり工業利用上の価値のないものとして従来は認識されていた。そのため、この方法で得られるPPS混合物は通常、産業廃棄物として処理されていた。
本発明者らは前記顆粒状PPS以外のPPS混合物を詳細に分析した結果、このPPSには前記式(1)で表される環状PPS(m=4〜20)が10重量%以上含まれており、特にこれらはm=4〜20の混合物として得られることから、本発明の環状PPS化合物を得るための原料として好ましいことを見いだした。このことは、従来は産業廃棄物とされていたものから、産業上極めて利用価値の高い化合物を本発明の方法によって回収できるといった観点で、意義の大きなことである。
前記回収スラリーからPPSを回収する方法としては、たとえば回収スラリーから少なくとも50重量%以上の有機極性溶媒を除去し、残留物を得て、これに水を添加した後、所望に応じて酸を加えて、少なくとも残存有機極性溶媒およびハロゲン化アルカリ金属塩を除去してPPS混合物を分離回収して得る方法や、回収スラリーからPPS混合物を析出させ固体状成分としてPPSを回収する方法、たとえば回収スラリーに水を加えることでPPSを析出させた後に公知の固液分離法であるデカンテーション、遠心分離及び濾過などの手法によって、固体成分としてPPSを得る方法などを例示することができる。
(5)環状PPS化合物含有溶液の調製
本発明ではPPS化合物を、前記式(1)記載の環状PPS化合物(m=4〜20)を溶解可能な溶剤と接触させて環状PPS化合物を含む溶液を調製する。
ここで用いる溶剤としては環状PPS化合物を溶解可能な溶剤であれば特に制限はないが、溶解を行う環境において環状PPS化合物は溶解するが、PPS樹脂は溶解しにくい溶剤が好ましく、PPS樹脂は溶解しない溶剤がより好ましい。PPS樹脂を前記溶剤と接触させる際の反応系圧力は常圧もしくは微加圧が好ましく、特に常圧が好ましく、このような圧力の反応系はそれを構築する反応器の部材が安価であるという利点がある。この観点から反応系圧力は、高価な耐圧容器を必要とする加圧条件は避けることが望ましい。用いる溶剤としてはPPS樹脂や環状PPS化合物の分解や架橋など好ましくない副反応を実質的に引き起こさないものが好ましく、PPS混合物を溶剤と接触させる操作をたとえば常圧環流条件下で行う場合に好ましい溶剤としては、例えばベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶媒、クロロホルム、ブロモホルム、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、クロロベンゼン、2,6−ジクロロトルエン等のハロゲン系溶媒、アセトン、ジエチルケトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルブチルケトン、アセトフェノン等のケトン系溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジイソプロピルエーテル等のエーテル系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、トリメチルリン酸、N,N−ジメチルイミダゾリジノンなどの極性溶媒を例示できるが、中でもベンゼン、トルエン、キシレン、クロロホルム、ブロモホルム、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、クロロベンゼン、2,6−ジクロロトルエン、アセトン、ジエチルケトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルブチルケトン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジイソプロピルエーテル、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、トリメチルリン酸、N,N−ジメチルイミダゾリジノンが好ましく、トルエン、キシレン、クロロホルム、塩化メチレン、テトラヒドロフランがより好ましく例示できる。
PPS樹脂を溶剤と接触させる際の雰囲気に特に制限はないが、接触させる際の温度や時間などの条件によってPPS樹脂や溶剤が酸化劣化するような場合には、非酸化性雰囲気下で行うことが望ましい。なお、非酸化性雰囲気とは気相の酸素濃度が5体積%以下、好ましくは2体積%以下、更に好ましくは酸素を実質的に含有しない雰囲気、即ち窒素、ヘリウム、アルゴン等の不活性ガス雰囲気であることを指し、この中でも特に経済性及び取扱いの容易さの面からは窒素雰囲気が好ましい。
PPS混合物を溶剤と接触させる温度に特に制限はないが、一般に温度が高いほど環状PPS化合物の溶剤への溶解は促進される傾向にある。前記したように、PPS混合物の溶剤との接触は大気圧下でおこなうことが好適であるので、上限温度は使用する溶剤の大気圧下での環流条件温度にすることが望ましく、前述した好ましい溶剤を用いる場合はたとえば20〜150℃を具体的な温度範囲として例示できる。
PPS混合物を溶剤と接触させる時間は、用いる溶剤種や温度等によって異なるため一意的には限定できないが、たとえば1分〜50時間が例示でき、短すぎると環状PPSの溶剤への溶解が不十分になる傾向にあり、また長すぎても溶剤への溶解は飽和状態に達し、それ以上の効果は得られない。
PPS樹脂を溶剤と接触させる方法は、公知の一般的な手法を用いれば良く特に限定はないが、たとえばPPS混合物と溶剤を混合し、必要に応じて攪拌した後溶液部分を回収する方法、各種フィルター上のPPS混合物に溶剤をシャワーすると同時に環状PPSを溶剤に溶解させる方法、ソックスレー抽出法原理による方法などいかなる方法も用いることができる。PPS樹脂と溶剤を接触させる際の溶剤の使用量に特に制限はないが、たとえばPPS樹脂重量に対する浴比で0.5〜100の範囲が例示できる。浴比が小さすぎるとPPS混合物と溶剤の混合が困難になるだけでなく、環状PPS化合物の溶剤への溶解が不十分になる傾向にある。浴比が大きい方が一般に環状PPS化合物の溶剤への溶解には有利であるが、大きすぎてもそれ以上の効果は望めず、逆に溶剤使用量増大による経済的不利益が生じることがある。なお、PPS樹脂と溶剤の接触を繰り返し行う場合は、小さい浴比でも十分な効果を得られる場合が多い。またソックスレー抽出法は、その原理上、PPS樹脂と溶剤の接触を繰り返し行う場合と類似の効果が得られるので、この場合も小さな浴比で十分な効果を得られる場合が多い。
PPS樹脂を溶剤と接触させた後に、環状PPS化合物を溶解した溶液が、残りの固形状のPPSを含む固液スラリー状で得られた場合、公知の固液分離法を用いて溶液部を回収する。固液分離方法としては、たとえば濾過による分離、遠心分離、デカンテーション等を例示できる。このようにして分離した溶液については、後述する溶剤の除去を行う。一方、残存した固体成分については、環状PPS化合物がまだ残存している場合、具体的には重量基準で0.05重量%以上の環状PPS化合物が残存している場合には、再度溶剤との接触及び溶液の回収を繰り返し行うことでより収率よく環状PPS化合物を得ることができる。また、環状PPS化合物がほとんど残存していない、具体的には環状PPS化合物の残存が重量基準で0.05重量%未満の場合には、残存溶剤を除去することで、残存した固体状のPPS樹脂は、高純度なPPS樹脂として好適にリサイクル可能である。
(6)環状PPS化合物溶液からの溶剤の除去
本発明では前述のようにして得られた前記式(1)で表される環状PPS化合物(m=4〜20)を含む溶液から溶剤の除去を行い、環状PPS化合物を得る。ここで溶剤の除去は、たとえば加熱し、常圧以下で処理する方法や、膜を利用した溶剤の除去を例示できるが、より収率よく、また効率よく環状PPS化合物を得るとの観点では常圧以下で加熱して溶剤を除去する方法が好ましい。なお、前述の様にして得られた環状PPS化合物を含む溶液は温度によっては固形物を含む場合もあるが、この場合の固形物も環状PPS化合物に属するものであるので、溶剤の除去時に溶剤に可溶の成分とともに回収する事が望ましく、これにより収率よく環状PPS化合物を得られるようになる。
溶剤の除去は、少なくとも50重量%以上、好ましくは70重量%以上、更に好ましくは90重量%以上、よりいっそう好ましくは95重量%以上の溶剤を除去することが望ましい。加熱による溶剤の除去を行う際の温度は用いる溶剤の特性に依存するため一意的には限定できないが、通常、20〜150℃、好ましくは40〜120℃の範囲が選択できる。また、溶剤の除去を行う圧力は常圧以下が好ましく、これにより溶剤の除去をより低温で行うことが可能になる。
(7)その他後処理
(4)〜(6)に記載の方法により得られた環状PPS化合物は十分に高純度であり、m=4〜20の環状PPS化合物として好適に用いることができるが、さらに以下に述べる後処理を付加的に施すことによってよりいっそう純度の高い環状PPS化合物やm=6の環状PPS単体を得ることが可能である。
前記(4)〜(6)までの操作によって得られた環状PPS化合物は、用いた溶剤の特性によっては、PPS樹脂中に含まれる不純物成分を含む場合がある。このような少量の不純物を含む環状PPS化合物を不純物は溶解するが、環状PPS化合物は溶解しない、もしくは環状PPS化合物の溶解しにくい第二の溶剤と接触させることで、不純物成分を選択的に除去することが可能な場合が多い。
環状PPS化合物を前記第二の溶剤と接触させる際の反応系圧力は常圧もしくは微加圧が好ましく、特に常圧が好ましく、このような圧力の反応系はそれを構築する部材が安価であるという利点がある。この観点から反応系圧力は、高価な耐圧容器を必要とする加圧条件は避けることが望ましい。第二の溶剤として好ましい溶剤としては、目的とする環状PPS化合物の分解や架橋など好ましくない副反応を実質的に引き起こさないものが好ましく、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、フェノール、クレゾール、ポリエチレングリコールなどのアルコール・フェノール系溶媒、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、シクロペンタン等の炭化水素系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルブチルケトン、アセトフェノン等のケトン系溶媒、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ペンチル、酢酸オクチル、酪酸メチル、酪酸エチル、酪酸ペンチル、サリチル酸メチル、蟻酸エチル、等のカルボン酸エステル系溶媒が例示でき、なかでもメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、シクロペンタンが好ましく、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコール、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、アセトン、酢酸エチルが特に好ましい。これらの溶媒は1種類または2種類以上の混合物として使用することができる。
環状PPS化合物を第二の溶剤と接触させる温度に特に制限はないが、上限温度は使用する第二の溶剤の常圧下での環流条件温度にすることが望ましく、前述した好ましい第二の溶剤を用いる場合はたとえば20〜100℃が好ましい温度範囲として例示でき、より好ましくは25〜80℃が例示できる。
環状PPS化合物を第二の溶剤と接触させる時間は、用いる溶剤種や温度等によって異なるため一意的には限定できないが、たとえば1分〜50時間が例示でき、短すぎると環状PPS化合物中の不純物の第二の溶剤への溶解が不十分になる傾向にあり、また長すぎても第二の溶剤への不純物の溶解は飽和状態に達し、それ以上の効果は得られない。
環状PPS化合物を第二の溶剤と接触させる方法としては固体状の環状PPS化合物と第二の溶剤を必要に応じて攪拌して混合する方法、各種フィルター上の環状PPS化合物固体に第二の溶剤をシャワーすると同時に不純物を第二の溶剤に溶解させる方法、固体状の環状PPS化合物を第二の溶剤を用いたソックスレー抽出を用いる方法や、溶液状の環状PPS化合物もしくは溶剤を含む環状PPS化合物スラリーを第二の溶剤と接触させて、第二の溶剤の存在下で環状PPS化合物を析出させる方法などを用いることができる。なかでも溶剤を含む環状PPS化合物スラリーを第二の溶剤と接触させる方法は、操作後に得られる環状PPS化合物の純度が高く、有効な方法である。
環状PPS化合物を第二の溶剤と接触させた後には、環状PPS化合物が第二の溶剤中に析出したスラリーが得られるので、公知の固液分離法を用いて固体状の環状PPS化合物を回収する。固液分離方法としては、たとえば濾過による分離、遠心分離、デカンテーション等を例示できる。固液分離後に得られた環状PPS化合物中に不純物がまだ残存している場合は、再度環状PPS化合物と第二の溶剤とを接触させて、さらに不純物を除去することも可能である。
(8)本発明の環状PPS化合物の特性
かくして得られた環状PPS化合物は前記式(1)におけるmが4〜20であり、さらに前記式(1)で表されるm=4〜20の異なるmを有する環状PPS化合物が好ましく、さらに環状PPS化合物中の、m=6の環状PPS含量が50重量%未満の混合物であることが好ましい。
なお本発明の環状PPS化合物のmは前記のごとく、m=4〜20であり、mは4〜20の混合物でもよいが、著者らの検討により、環状PPS化合物としては、m=4〜12のものが存在することを確認しており、mがこの範囲の場合、後述するように環状PPS化合物の溶融加熱による高重合度化が速やかに進行することを見出している。
なおmが12以上の環状PPS化合物については、存在している可能性が高いが、現在の分析技術では定性や定量困難である。なぜならば後述するように、環状PPS化合物中に含まれる直鎖状PPSオリゴマーとm=13以上の環状PPSの区別が、現時点の最新分析技術では困難なためである。しかしながら、m=4〜20の環状PPS化合物を溶融加熱すると環状PPS化合物の高重合度化が速やかに進行し、得られるPPS樹脂の揮発性ガス成分量が低減すること、さらにその環状PPS化合物中のm=6の環状PPS単体の含有量が50重量%未満であると、さらにこれらの効果が高められることから、本発明の効果を損なわない範囲でmが13以上の環状PPS化合物が含まれていてもよい。
また(4)〜(7)に記載の方法により得られた環状PPS化合物は十分に高純度であるが、条件によっては、不純物として直鎖状PPSオリゴマーが含有することもある。また前述したようにこの直鎖状PPSオリゴマーとm=13以上の環状PPS化合物の区別は、現時点の最新分析技術では困難である。この直鎖状PPSオリゴマーと推定されるオリゴマー成分の重量平均分子量(Mw)は、前記(4)で記載した環状PPS化合物の原料となるPPS樹脂の製造方法により異なるが、通常、5000以下のものであり、場合によっては2000以下のものである。
なお環状PPS化合物中に不純物として残存する直鎖状のPPSオリゴマーは、環状PPS化合物に比べ、熱安定性が悪く、揮発性ガス成分量が増加すること、さらに後述するが、環状PPS化合物中にこれらが不純物として多量に含まれていると、環状PPS化合物の溶融加熱によるPPS樹脂への転化が不十分になるという問題が発生する。
そのため、(4)〜(7)に記載の方法により得られる環状PPS化合物中の直鎖状PPSオリゴマーの量は、全環状PPS化合物に対して、50重量%未満が好ましく、40重量%未満がより好ましく、さらに好ましくは30重量%未満である。
なおこの時の、環状PPS化合物中の直鎖状PPSオリゴマー量は、現時点の分析技術によれば、m=13以上の環状PPS化合物との総量として、MALDI−TOF−MSにより定量することが可能である。
また特開平10−77408号公報に記載されているように、架橋タイプのPPS樹脂から、環状PPS化合物をソックスレー抽出し、抽出液を冷却し、析出した白色固体を「再結晶法」により、m=6の環状PPS単体が高純度で得られることが開示されている(シクロヘキサ(p−フェニレンスルフィド)。また架橋タイプのPPS樹脂に比べ、回収量は少ないものの、直鎖状のPPS樹脂からも、同じように抽出操作し、「再結晶」することにより同じようにm=6の環状PPS単体が高純度で得ることが可能である。
m=6の環状PPS単体は、極めて安定な針状の結晶構造を有し、かつ結晶化しやすいため、「再結晶」という方法に適した環状物である反面、その安定な針状結晶構造を反映して融点が348℃と高くなるため、高重合度化のための溶融加熱温度を高くする必要がある。
m=6の環状PPS単体のみの場合は、環状PPS化合物を溶解する溶媒に溶かして供給するという方法、結晶化した環状PPS単体を一旦融点以上で溶融した後、急冷することによって結晶化を抑え、非晶化させた粉体を供給するという方法、あるいはプリメルターを環状PPS単体の融点以上に設定し、プリメルター内で環状PPS単体のみを溶融させ、融液として供給する方法などを採用することができる。このように環状PPS単体を使用する場合、高重合度化のための溶融加熱温度を高めるという必要性、あるいは前述したように環状PPS単体を一旦溶融させた後、結晶化を抑えて非晶化するという必要性、あるいはプリメルター内で環状PPS単体のみを溶融させ、融液として供給するという必要性が生じるため、環状PPSの高重合度化のための生産性や溶融加工性の面から、環状PPS化合物中の、m=6の環状PPS単体の含量が50重量%未満が好ましく、30重量%未満がより好ましく、さらに好ましくは10重量%未満が好ましい。
この理由は現時点下記の通り解釈している。すなわち、m=6の環状PPS単体の含有量が低下することにより、該環状PPS単体が結晶核として作用しないなどの効果もあって、結果として、m=4以上の混合物からなる環状PPS化合物の結晶化が抑えられ、環状PPS化合物の融点が低くなることにより、該環状PPS化合物が容易に融解し、その結果溶融加熱による高重合度化が容易になると考えられる。
またm=6以外の環状単量体は、m=6に比べ、結晶化し難いため、「再結晶」という手法により単量体として得ることは困難であったが(再結晶という手法により単離可能なのはm=6の環状PPS単体のみである)、筆者らはこれらの単量体を分集液体クロマトグラムにより分離回収し、m=4の環状PPS単体(シクロテトラ(p−フェニレンスルフィド)、融点296℃))、m=5のシクロペンタ(p−フェニレンスルフィド)(融点257℃)、m=7のシクロヘプタ(p−フェニレンスルフィド)(融点328℃)、m=8のシクロオクタ(p−フェニレンスルフィド)(融点305℃)であることが確認された。
すなわち(4)〜(7)に記載の方法によれば、得られる環状PPS化合物は異なるmを有する混合物であり、かつm=6の環状PPS単体の含量が50重量%未満のものが得られる。また条件によっては、m=6の環状PPS単体の含量が30重量%未満のもの、さらには10重量%未満のものも得ることが可能である。得られた環状PPS化合物は、単一のmからなる環状PPS単体に比べ、融解温度が低いという特徴があり、このことはたとえば環状PPS化合物を簡便な方法で、低い溶融加熱温度で高分子量体に転化することが可能となる。
(9)環状PPS化合物の高重合度体への転化
前記した本発明のPPS樹脂は、前記環状PPS化合物を溶融加熱して高重合度体に転化させる方法によって製造することが好ましい。この溶融加熱の温度は、前記環状PPS化合物が溶融解する温度であることが好ましく、このような温度条件であれば特に制限は無い。加熱温度が環状PPS化合物の溶融解温度未満ではPPS樹脂を高重合度化するのに長時間が必要となる傾向がある。なお、環状PPS化合物が溶融解する温度は、前述したように環状PPS化合物中に存在するmの組成や純度により異なるが、例えば環状PPS化合物を示差走査型熱量計で分析することで溶融解温度を把握することにより、その融解温度以上で溶融加熱させることが可能である。但し、温度が高すぎると加熱により生成したPPS樹脂の分子間、及びPPS樹脂と環状PPS化合物間などでの架橋反応や分解反応に代表される好ましくない副反応が生じやすくなる傾向にあり、得られるPPS樹脂の特性が低下する場合があるため、このような好ましくない副反応が顕著に生じる温度は避けることが望ましい。溶融加熱温度としては180〜400℃が例示でき、好ましくは200〜380℃、より好ましくは250〜360℃である。
前記溶融加熱を行う時間は使用する環状PPS化合物中のmの組成や、環状PPS化合物の純度などの各種特性、また、加熱溶融温度等の条件によって異なるため一様には規定できないが、前記した好ましくない副反応がなるべく起こらないように設定することが好ましい。加熱溶融時間としては0.05〜100時間が例示でき、0.1〜20時間が好ましく、0.1〜10時間がより好ましい。0.05時間未満では環状PPS化合物のPPS樹脂への転化が不十分になりやすく、100時間を超えると好ましくない副反応による得られるPPS樹脂の特性への悪影響が顕在化する可能性が高くなる傾向にあるのみならず、経済的にも不利益を生じる場合がある。
環状PPS化合物の溶融加熱による高重合度体への転化は、通常溶媒の非存在下で行うが、溶媒の存在下で行うことも可能である。溶媒としては、環状PPS化合物の加熱による高重合度体への転化の阻害や生成したPPS樹脂の分解や架橋など好ましくない副反応を実質的に引き起こさないものであれば特に制限はなく、例えばN−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどの含窒素極性溶媒、ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホンなどのスルホキシド・スルホン系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、アセトフェノンなどのケトン系溶媒、ジメチルエーテル、ジプロピルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒、クロロホルム、塩化メチレン、トリクロロエチレン、2塩化エチレン、ジクロルエタン、テトラクロルエタン、クロルベンゼンなどのハロゲン系溶媒、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、フェノール、クレゾール、ポリエチレングリコールなどのアルコール・フェノール系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒などがあげられる。また、二酸化炭素、窒素、水等の無機化合物を超臨界流体状態として溶媒に用いることも可能である。これらの溶媒は1種類または2種類以上の混合物として使用することができる。
前記、環状PPS化合物の加熱による高重合度体への転化は、通常の重合反応装置を用いる方法で行うのはもちろんのこと、成形品を製造する型内で行っても良いし、押出機や溶融混練機を用いて行うなど、加熱機構を具備した装置であれば特に制限無く行うことが可能であり、バッチ方式、連続方式など公知の方法が採用できる。 また、環状PPS化合物の加熱による高重合度体への転化の際に、(b)無機フィラーを入れて高重合度体への転化を行ってもよい、(b)無機フィラーを入れて環状PPS化合物の高重合度化への転化を行うことで、(b)無機フィラーの高分散の電子部品封止用PPS樹脂組成物が得られる。
環状PPS化合物の加熱による高重合度体への転化の際の雰囲気は非酸化性雰囲気で行うことが好ましく、減圧条件下で行うことも好ましい。また、減圧条件下で行う場合、反応系内の雰囲気を一度非酸化性雰囲気としてから減圧条件にすることが好ましい。これにより過熱による高重合度体への転化の際の、架橋反応や分解反応等の好ましくない副反応の発生を抑制できる傾向にある。なお、非酸化性雰囲気とは環状PPS化合物が接する気相における酸素濃度が5体積%以下、好ましくは2体積%以下、更に好ましくは酸素を実質的に含有しない雰囲気、即ち窒素、ヘリウム、アルゴン等の不活性ガス雰囲気であることを指し、この中でも特に経済性及び取扱いの容易さの面からは窒素雰囲気が好ましい。また、減圧条件下とは反応を行う系内が大気圧よりも低いことを指し、上限として50kPa以下が好ましく、20kPa以下がより好ましく、10kPa以下が更に好ましい。下限としては0.1kPa以上が例示でき、0.2kPa以上がより好ましい。減圧条件が好ましい上限を越える場合は、架橋反応など好ましくない副反応が起こりやすくなる傾向にあり、一方好ましい下限未満では、反応温度によっては環状PPS化合物に含まれる分子量の低い環状PPS化合物が揮散しやすくなる傾向にある。
かくして得られたPPS樹脂は、耐熱性、耐薬品性、難燃性、電気的性質並びに機械的性質に優れ、電子部品封止に好適に使用される。
(10)無機フィラー(b)
本発明に用いる(b)無機フィラーとしては、繊維状もしくは、非繊維状(板状、鱗片状、粒状、不定形状、破砕品など)のフィラーが挙げられ、具体的には例えば、繊維状フィラーとしてガラス繊維、PAN系やピッチ系の炭素繊維、ステンレス繊維、アルミニウム繊維や黄銅繊維などの金属繊維、石膏繊維、セラミック繊維、アスベスト繊維、ジルコニア繊維、アルミナ繊維、シリカ繊維、酸化チタン繊維、炭化ケイ素繊維、ロックウール、チタン酸カリウムウィスカー、チタン酸バリウムウィスカー、チタン酸バリウムストロンチウムウィスカー、ほう酸アルミニウムウィスカー、窒化ケイ素ウィスカー、酸化亜鉛ウィスカー等が挙げられ、ガラス繊維あるいは炭素繊維の種類は、一般に樹脂の強化用に用いるものなら特に限定はなく、例えば長繊維タイプや短繊維タイプのチョップドストランド、ミルドファイバーなどから選択して用いることができる。また、上記フィラーはエチレン/酢酸ビニル共重合体などの熱可塑性樹脂、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂、シラン化合物、チタネート系化合物、アルミ系化合物で被覆あるいは集束されていてもよい。
非繊維状フィラーとしてマイカ、タルク、カオリン、非晶質シリカ、結晶シリカ、炭酸カルシウム、ガラスビーズ、ガラスフレーク、ガラスマイクロバルーン、クレー、二硫化モリブデン、ワラステナイト、ポリリン酸カルシウム、グラファイト、金属粉、金属フレーク、金属リボン、金属酸化物(アルミナ、酸化亜鉛、酸化チタン等)、カーボン粉末、黒鉛、カーボンフレーク、鱗片状カーボン、ナノカーボンチューブなどが挙げられる。また、金属粉、金属フレーク、金属リボンの金属種の具体例としては銀、ニッケル、銅、亜鉛、アルミニウム、ステンレス、鉄、黄銅、クロム、錫などが例示できる。
非繊維状フィラーについても可能なものは、エチレン/酢酸ビニル共重合体などの熱可塑性樹脂、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂、シラン化合物、チタネート系化合物、アルミ系化合物などの表面処理剤で表面処理を施されていてもよい。
また、例えば、絶縁性が必要な電子部品封止用途には、絶縁性フィラーが好ましく用いられ、具体的には、ガラス繊維、セラミック繊維、アルミナ繊維、シリカ繊維、酸化チタン繊維、炭化ケイ素繊維、ほう酸アルミニウムウィスカー、窒化ケイ素ウィスカー、酸化亜鉛ウィスカー、マイカ、タルク、カオリン、非晶質シリカ、結晶シリカ、炭酸カルシウム、ガラスビーズ、金属酸化物(アルミナ、酸化亜鉛、酸化チタン等)が挙げられる。
上記金属酸化物の具体例としては、SnO(アンチモンドープ)、In(アンチモンドープ)およびZnO(アルミニウムドープ)などを例示することができ、これらはチタネート系、アルミ系およびシラン系などの表面処理剤で表面処理を施されていてもよい。
本発明においては強度と流動性の高位でのバランスのため、繊維状と非繊維状を2種以上併用することが好ましい。具体的には、(イ)シリカとガラス繊維、ほう酸アルミニウムウィスカー、窒化ケイ素ウィスカーおよび酸化亜鉛ウィスカーから選択される一種以上の組み合わせ、あるいは(ロ)アルミナとガラス繊維、ほう酸アルミニウムウィスカーおよび窒化ケイ素ウィスカーおよび酸化亜鉛ウィスカーから選択される一種以上の組み合わせが挙げられる。
本発明において(a)PPS樹脂と(b)無機フィラーとの比率は、用いるフィラーの特性を発揮し、かつ溶融加工性とのバランスの点から、配合される(a)PPS樹脂と(b)無機フィラーの合計量100容量%に対して(a)PPS樹脂5〜60容量%、(b)無機フィラー95〜40容量%であり、好ましくは(a)PPS樹脂15〜50容量%、(b)無機フィラー85〜50容量%、より好ましくは、(a)PPS樹脂20〜40容量%、(b)無機フィラー80〜60容量%が好ましい。
また、繊維状フィラーと非繊維状フィラーを併用する場合は、成形流動性、機械強度のバランスの点から、繊維状フィラーに対して非繊維状フィラーの方が多いことが好ましく、具体的には、2重量%以上多いことが好ましく、5重量%以上多いことがより好ましい。
本発明の特徴として用いる(b)無機フィラーにおいて溶融成形時の半導体とリードフレーム間やワイヤー部分などの微細部分の流動性不良を抑制するため、平均粒径(D50)が制御されていることが好ましく、具体的にはレーザー光回折法によって測定された累積粒度分布曲線より得られる累積度50%粒度(D50)が1〜100μmであることが必須であり、好ましくは2〜75μmであり、より好ましくは3〜50μmが好ましい。平均粒径(D50)が1μm未満であると溶融粘度が増大し成形時の流動性が著しく低下し、溶融成形時にリードフレーム変形による流動性不良による封止樹脂未充填やボイド発生、ワイヤー流れ、ワイヤー流れによるワイヤー同士の接触による導通不良などを起こす恐れが生じる。さらに100μm以上であると、粗大粒子による電子部品、半導体素子へダメージを与えたり、リードフレーム、ワイヤー損傷による導通不良、金型摩耗などの恐れがある。
本発明で用いるフィラーを上記のような粒度分布にするには、例えば平均粒径や粒径分布の異なるフィラーを2種以上併用したり、篩い分け等により粒度毎に分画したものを、所望の粒度分布になるよう混合する方法、粒径分布の異なるフィラーを2種以上併用する方法などが採用できる。
なお、上記粒度分布は、レーザ回折式粒度分布測定装置により測定される各粒子径区間における粒子量(%)をプロットした曲線により示されるものであり、累積粒度分布曲線は、その粒子径以下の粒子量(%)を累積した曲線であり、特定の粒子径以下の粒子量が全体の何%であるかを表わすものである。
レーザー光回折法による測定は、水または溶剤等の分散可能な液体を分散媒として濃度100ppmでレーザ回折式粒度分布測定装置(例えば島津製作所社製レーザ回折式粒度分布測定装置SALD−3100)を用いて測定する。
(11)エステル系化合物、アミド基含有化合物、エポキシ系化合物、リン酸エステル(c)
また、本発明には、フィラー界面の接合性および加工時の流動改良性付与の観点から、以下の(c)エステル系化合物、アミド基含有化合物、エポキシ系化合物、リン酸エステルを添加することが好ましい。このような添加剤としては、ステアリン酸メチル、ステアリン酸ステアレートなどの、ステアリン酸エステル、ミリスチン酸ミリスチルなどのミリスチン酸エステル、モンタン酸エステル、メタクリル酸ベヘニルなどのメタクリル酸エステル、ペンタエリスリトールモノステアレート、2−エチルヘキサン酸セチル、ヤシ脂肪酸メチル、ラウリン酸メチル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、ステアリン酸ブチル、ステアリン酸2−エチルヘキシル、ステアリン酸イソトリデシル、カプリン酸メチル、ミリスチン酸メチル、オレイン酸メチル、オレイン酸オクチル、オレイン酸ラウリル、オレイン酸オレイル、オレイン酸2−エチルヘキシル、オレイン酸デシル、オレイン酸オクチドデシル、オレイン酸イソブチルなどの脂肪酸の一価アルコールエステルおよびその誘導体、フタル酸ジステアリル、トリメリット酸ジステアリル、アジピン酸ジメチル、アジピン酸ジオレイル、アジピン酸エステル、フタル酸ジトリデシル、アジピン酸ジイソブチル、アジピン酸ジイソデシル、アジピン酸ジブチルグリコール、フタル酸2−エチルヘキシル、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジデシル、トリメリット酸トリ2−エチルヘキシル、トリメリット酸トリイソデシルなどの多塩基酸の脂肪酸エステル、ステアリン酸モノグリセライド、パルミチン酸・ステアリン酸モノグリセライド、ステアリン酸モノ・ジグリセライド、ステアリン酸・オレイン酸・モノ・ジグリセライド、ベヘニン酸モノグリセライドなどのグリセリンの脂肪酸エステルおよびそれらの誘導体、ソルビタントリステアレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンジステアレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ポリエチレングリコールモノステアレート、ポリエチレングリコールジステアレート、ポリプロピレングリコールモノステアレート、ペンタエリスリトールモノステアレート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタントリオレート、ソルビタンモノオレート、ソルビタンセキスオレート、ソルビタンモノラウレート、ポリオキシメチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシメチレンソルビタンモノパルミネート、ポリオキシメチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシメチレンソルビタンモノオレート、ポリオキシメチレンソルビタンテトラオレート、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールモノラウレート、ポリエチレングリコールモノオレート、ポリオキシエチレンビスフェノールAラウリン酸エステル、ペンタエリスリトール、ペンタエリスリトールモノオレート等の多価アルコールの脂肪酸エステル、およびそれらの誘導体、エチレンビスステアリルアミド、エチレンビスオレイルアミド、ステアリルエルカミドなどのアミド基含有化合物、ノボラックフェニール型、ビスフェノール型単官能および多官能エポキシ系化合物、トリフェニルホスフェートなどの芳香族リン酸エステル、芳香族縮合リン酸エステルなどのリン酸エステルが挙げられる。
特にリン酸エステルについては、リン酸のモノエステル、ジエステル、トリエステル、テトラエステルから選ばれ、好ましくは、下記式(3)で表されるものが挙げられる。
Figure 2008231140
まず前記式(3)で表されるリン酸エステルの構造について説明する。前記式(1)の式中nは0以上の整数であり、好ましくは0〜10、特に好ましくは0〜5である。上限は分散性の点から40以下が好ましい。
またk、mは、それぞれ0以上2以下の整数であり、かつk+mは、0以上2以下の整数であるが、好ましくはk、mはそれぞれ0以上1以下の整数、特に好ましくはk、mはそれぞれ1である。
また前記式(3)の式中、R〜Rは同一または相異なる水素または炭素数1〜5のアルキル基を表す。ここで炭素数1〜5のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、tert−ペンチル基、などが挙げられるが、水素、メチル基、エチル基が好ましく、とりわけ水素が好ましい。
またAr、Ar、Ar、Arは同一または相異なる芳香族基あるいはハロゲンを含有しない有機残基で置換された芳香族基を表す。かかる芳香族基としては、ベンゼン骨格、ナフタレン骨格、インデン骨格、アントラセン骨格を有する芳香族基が挙げられ、なかでもベンゼン骨格、あるいはナフタレン骨格を有するものが好ましい。これらはハロゲンを含有しない有機残基(好ましくは炭素数1〜8の有機残基)で置換されていてもよく、置換基の数にも特に制限はないが、1〜3個であることが好ましい。具体例としては、フェニル基、トリル基、キシリル基、クメニル基、メシチル基、ナフチル基、インデニル基、アントリル基などの芳香族基が挙げられるが、フェニル基、トリル基、キシリル基、クメニル基、ナフチル基が好ましく、特にフェニル基、トリル基、キシリル基が好ましい。
またYは直接結合、O、S、SO、C(CH、CH、CHPhを表し、Phはフェニル基を表す。
このようなリン酸エステルの具体例としては、大八化学社製PX−200、PX−201、PX−130、CR−733S、TPP、CR−741、CR−747、TCP、TXP、CDPから選ばれる1種または2種以上が使用することができ、中でも好ましくはPX−200、TPP、CR−733S、CR−741、CR−747から選ばれる1種または2種以上、特に好ましくはPX−200、CR−733S、CR−741を使用することができるが、最も好ましくはPX−200である。
本発明においてリン酸エステルのいずれか1種、または2種以上の混合物であってもよい。このような添加剤の添加量は、(a)PPS樹脂と(b)無機フィラーの合計量100重量部に対し、0.1〜10重量部、好ましくは0.1〜8重量部、より好ましくは0.3〜6重量部の範囲が選択される。
(c)エステル系化合物、アミド基含有化合物、エポキシ系化合物、リン酸エステルの添加量が本発明の範囲より多すぎる場合、得られた成形品表面にブリードアウトしてくると共に、それによってPPS樹脂とフィラー界面の剥離を引き起こし、機械物性が低下する傾向にある。
本発明における電子部品封止用PPS樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で他の成分、例えば酸化防止剤や耐熱安定剤(ヒンダードフェノール系、ヒドロキノン系、ホスファイト系およびこれらの置換体等)、耐候剤(レゾルシノール系、サリシレート系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、ヒンダードアミン系等)、離型剤及び滑剤(モンタン酸及びその金属塩、そのエステル、そのハーフエステル、ステアリルアルコール、ステアラミド、各種ビスアミド、ビス尿素及びポリエチレンワックス等)、顔料(硫化カドミウム、フタロシアニン、着色用カーボンブラック等)、染料(ニグロシン等)、結晶核剤(タルク、シリカ、カオリン、クレー等)、可塑剤(p−オキシ安息香酸オクチル、N−ブチルベンゼンスルホンアミド等)、帯電防止剤(アルキルサルフェート型アニオン系帯電防止剤、4級アンモニウム塩型カチオン系帯電防止剤、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレートのような非イオン系帯電防止剤、ベタイン系両性帯電防止剤等)、難燃剤(例えば、赤燐、燐酸エステル、メラミンシアヌレート、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等の水酸化物、ポリリン酸アンモニウム、臭素化ポリスチレン、臭素化ポリフェニレンエーテル、臭素化ポリカーボネート、臭素化エポキシ樹脂あるいはこれらの臭素系難燃剤と三酸化アンチモンとの組み合わせ等)、他の重合体を添加することができる。
本発明の電子部品封止用PPS樹脂組成物は、通常公知の方法で製造される。例えば、(a)成分、(b)成分中および、(c)成分などのその他の必要な添加剤を予備混合して、またはせずに押出機などに供給して十分溶融混練することにより調製される。また、(b)フィラーを添加する場合、特に繊維状フィラーの繊維の折損を抑制するために好ましくは、(a)成分およびその他必要な添加剤を押出機の元から投入し、(b)および(c)成分をサイドフィーダーを用いて、押出機へ供給することにより調整される。
電子部品封止用PPS樹脂組成物を製造するに際し、例えば“ユニメルト”(R)タイプのスクリューを備えた単軸押出機、二軸、三軸押出機およびニーダタイプの混練機などを用いて180〜350℃で溶融混練して組成物とすることができる。
また、フィラーを多量に添加する場合、例えば添加量が(a)ポリフェニレンスルフィド100重量部に対して150重量部を越える(b)無機フィラーを添加する電子部品封止用PPS樹脂組成物を得る方法として、例えば、特開平8−1663号公報の如く、押出機のヘッド部分をはずして押し出し、粗粉砕、均一ブレンド化する方法、あるいは、原料を圧縮成形して錠剤化する方法が挙げられる。特に原料を圧縮成形して錠剤化する方法が、得られた組成物の品質安定性の点から好ましい。
本発明において錠剤は、粉末状の原料を含む原料を固相状態で押し固めた粒状物をいうが、かかる錠剤は、粉末状の原料を含む原料を固相状態で圧縮成形することにより得ることができる。なお、上記において固相状態とは、原料に含まれる熱可塑性樹脂成分が溶融していない状態であることを意味する。圧縮成形には、打錠機(ロータリー、単発式、2連式、3連式)あるいはブリケットマシンなどの圧縮ロールを有する成形機を用いることが好ましい。
錠剤化の具体的な手法としては、たとえば熱可塑性の樹脂粉末および無機フィラーをバンバリーミキサー、ニーダー、ロール、単軸もしくは二軸の押出機などを用い、固相状態で均一ブレンドし、打錠機あるいは圧縮ロールを有する成形機により錠剤(タブレット)化することにより得ることができる。また、熱可塑性の樹脂原料と無機フィラーとをバンバリーミキサー、ニーダー、ロールを用いて予めドライブレンドし、もしくはドライブレンドしないで、単軸もしくは二軸の押出機などを用い、一度溶融混練し、冷却粉砕して粉末状としたのち、打錠機あるいは圧縮ロールを有する成形機により錠剤(タブレット)化することも可能である。この場合、溶融混練に供する熱可塑性の樹脂成分としては、溶融混練が可能であれば、粉末状でもペレット状でも特に制限はないが、無機フィラーの分散不良による特性のバラツキを低減する点から粉末状あるいは粉砕品であることが好ましい。また、単軸もしくは2軸押出機を用いて、予め溶融混練した組成物を粉末状とする場合、無機フィラーの使用量が多いと、流動性が悪化するため、ダイからの押出ができずペレット化が困難になる場合があるが、その場合には、特開平8−1663号公報に記載の如く、押出機のヘッド部を開放した状態で混練・押出すことも可能である。無機フィラーが多量である場合、フレーク状の組成物が得られることもある。本発明においてはこれらの方法で予め溶融混練して得られたペレットもしくはフレーク状の組成物を必要により、冷却粉砕して粉末状とした後、錠剤化する。また、これらの方法を組み合わせて錠剤化することも可能である。すなわち、下記(イ)〜(ニ)から選択される原料を所望の含有量となるよう調整し、錠剤化することも可能である。
(イ)(a)ポリフェニレンスルフィド
(ロ)(b)無機フィラー
(ハ)(c)エステル系化合物、アミド基含有化合物、エポキシ系化合物、リン酸エステルのいずれか1種以上
(ニ)(a)〜(c)成分から選択される2種以上であって、(a)または(b)成分を必須とする成分を溶融混練してなる組成物、好ましくはその塊状物および粉体
上記方法のうち、工程が簡素である点で、上記(イ)、(ロ)の原料および必要に応じて(ハ)の原料を固相状態で均一ブレンドした混合物を打錠機あるいは圧縮ロールを有する成形機により錠剤(タブレット)化する方法が好ましい。
上記(a)、(c)成分の粉末としては、PPS樹脂など粉末状で入手できるものはそれを使用してもよい。また、ペレットを常温あるいは冷凍粉砕することによっても得ることができる。冷凍粉砕は、ドライアイスあるいは液体窒素等で凍結させた後、一般的に知られている通常のハンマータイプ粉砕機、カッタータイプ粉砕機あるいは石臼型の粉砕機により行うことができる。本発明において用いるPASの粉末としては、得られる錠剤間の組成の均一化および得られた錠剤のハンドリング性を良好にする点から、レーザー回折式粒度分布測定法に基づき測定した場合の粒子の最大長径の数平均粒子径が1000μm以下であることが好ましく、800μm以下であることがより好ましく、500μm以下であることがさらに好ましい。かかる粒径を有する粉末を得るには、粉砕などにより得られた粉体を適宜所望の大きさの篩を用いてふるい分けすればよい。
本発明の電子部品封止用PPS樹脂組成物の錠剤形状としては、輸送時の形状保持性と成形時の易圧壊性を考慮した場合、例えば、円柱状、楕円柱状、円錐台形状、球状、楕円球状、鶏卵型形状、マセック型、円盤状、キュービック状、角柱状のものが挙げられる。なかでも加工時の計量安定性の点から円柱状、楕円柱状、円錐台形状、球状、楕円球状、鶏卵型形状、マセック型が好ましい。
また、錠剤の錠剤サイズとしては、底面15mm直径以下×長さ20mm以下が好ましく、なかでも底面の直径または長さ(高さ)の最大値が15mm未満であることが好ましく、最小値が1mm以上であることが好ましい。なお、底面が円状でないものに関して、最大径、最小径の規定方法としては、外接円の最大直径で特定する場合、その最大直径が15mm未満、1mm以上であることが好ましく、更に好ましくは12mm以下、1.5mm以上であるのがよい。
また、輸送時等の形状を安定に保つために、錠剤における打錠面の側面もしくは圧縮ロールでの圧縮面に対し、垂直に圧力をかけた時の圧縮破壊強度値(圧壊強度値)が、好ましくは5〜100N、より好ましくは15〜80Nである。好ましい圧壊強度値を得るための方法としては、例えば、原料組成によるところが最も大きく、(c)成分を添加することにより、あるいは錠剤化工程において、原料供給ポケットに均一に原料を供給する方法、圧縮ロールの回転数を下げ圧縮ロール上での材料への加圧時間を延ばす方法、ホッパー内にフィードスクリューを用い、そのスクリューによりロール圧縮前において効果的な脱気と予備圧縮する方法などにより、高い錠剤密度が得られ、高い圧壊強度が得られる。なお、圧壊強度値の測定は、ロードセルなどの歪ゲージの上に錠剤を置き、その上から圧子を低速(好ましくは0.1〜2.0mm/sec)で降下させ、錠剤の圧縮破壊時に歪ゲージが示す圧力を測定する方法を用い行うことができる。
かかる方法を用いることにより、従来、成し得なかったフィラーを高充填した樹脂材料を得ることが可能となる。
本発明の電子部品封止用PPS樹脂組成物の成形方法は、通常の成形方法(射出成形、プレス成形、インジェクションプレス成形、トランスファー成形、ポッティング成形など)により、溶融成形することが可能であるが、なかでも量産性の点から射出成形、インジェクションプレス成形が好ましい。
本発明で得られた電子部品封止用PPS樹脂組成物を用いて、電子部品を封止することによって、封止電子部品を得ることができる。ここでの電子部品の種類には、特に制限はなく、ダイオード、トランジスタ、サイリスタ、トライアック、ダイアック、IGBT、LSI、CCD素子、IC等の集積回路のエレクトロニクス素子やコンデンサ、抵抗体、コイル、マイクロスイッチ、ディップスイッチ、インテリジェントパワーモジュール、発光素子、半導体レーザー、フォトカプラー、フォトインタラプター、圧力センサー、水晶発振子、トランス等の各種部品類がに好適に使用することができるが、中でもLSI、IC等の集積回路のエレクトロニクス素子の封止樹脂として好ましく使用することができるが、これらの用途に限定されるものではない。特に、本発明の電子部品封止用PPS樹脂組成物はこれら製品の製造工程中に発生する電子部品封止用PPS樹脂組成物中に含まれる揮発成分による工程の汚れや、電子部品やリードフレームの腐食が減少し製品の高信頼性を得るのに有効である。
以下に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。以下の実施例において、材料特性については下記の方法により行った。
<分子量測定>
PPS樹脂の分子量はサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)の一種であるゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、ポリスチレン換算で算出した。GPCの測定条件を以下に示す。
装置:センシュー科学 SSC−7100
カラム名:センシュー科学 GPC3506
溶離液:1−クロロナフタレン
検出器:示差屈折率検出器
カラム温度:210℃
プレ恒温槽温度:250℃
ポンプ恒温槽温度:50℃
検出器温度:210℃
流量:1.0mL/min
試料注入量:300μL (スラリー状:約0.2重量%)。
<環状PPS化合物の融点>
パーキンエルマー製DSC7を用いて得られたポリマーの熱的特性を測定した。下記測定条件を用い、結晶化温度Tcは1st Runの値を、融点Tmは2nd Runの値を用いた。
First Run
・50℃×1分 ホールド
・50℃から320℃へ昇温,昇温速度20℃/分
・320℃×1分 ホールド
・ 320℃から100℃へ降温,降温速度20℃/分
Second Run
・100℃×1分 ホールド・100℃から320℃へ昇温,昇温速度20℃/分(この時の融解ピーク温度をTmとする)。
<アルカリ金属含有量の定量>
PPS樹脂中のアルカリ金属含有量の定量は下記により行った。
(a) 試料を石英るつぼに秤とり、電気炉を用いて灰化した。
(b) 灰化物を濃硝酸で溶解した後、希硝酸で定容とした。
(c) 得られた定容液をICP重量分析法(装置;Agilent製4500)及びICP発光分光分析法(装置;PerkinElmer製Optima4300DV)に処した。
<ハロゲン含有量の定量>
PPS樹脂中のハロゲン量の定量は下記方法で行った。
(a) 酸素を充填したフラスコ内で試料を燃焼した。
(b) 燃焼ガスを溶液に吸収し、吸収液を調製した。
(c) 吸収液の一部をイオンクロマト法(装置;ダイオネクス社製DX320)によって分析し、ハロゲン濃度を定量した。
<PPSの加熱時発生ガス成分の分析>
PPS樹脂を加熱した際に発生する成分の定量は以下の方法により行った。
(a) 加熱時発生ガスの捕集
約10mgのPPS樹脂を窒素気流下(50ml/分)の320℃で60分間加熱し、発生したガス成分を大気捕集用加熱脱離用チューブcarbotrap400に捕集した。
(b) ガス成分の分析
上記チューブに捕集したガス成分を熱脱着装置TDU(Supelco社製)を用いて室温から280℃まで5分間で昇温することで熱脱離させた。熱脱離した成分をガスクロマトグラフィーを用いて成分分割して、ガス中のγブチロラクトン及び4−クロロ−N−メチルアニリンの定量を行った。
[参考例1](環状PPSの原料となるPPS混合物の製造例)
本文(4)記載の環状PPSの原料となるPPS混合物の製造例について下記に説明する。
<PPS混合物の調製>
撹拌機付きの1000Lのオートクレーブに、47.5%水硫化ナトリウム82.7kg(700モル)、96%水酸化ナトリウム29.6kg(710モル)、N−メチル−2−ピロリドン(以下NMPと略する場合もある)を114.4kg(1156モル)、酢酸ナトリウム17.2kg(210モル)、及びイオン交換水100kgを仕込み、常圧で窒素を通じながら約240℃まで約3時間かけて徐々に加熱し、精留塔を介して水143kgおよびNMP2.8kgを留出した後、反応容器を160℃に冷却した。なお、この脱液操作の間に仕込んだイオウ成分1モル当たり0.02モルの硫化水素が系外に飛散した。
次に、p−ジクロロベンゼン103kg(703モル)、NMP90kg(910モル)を加え、反応容器を窒素ガス下に密封した。240rpmで撹拌しながら、0.6℃/分の速度で270℃まで昇温し、この温度で140分保持した。水12.6kg(700モル)を15分かけて圧入しながら250℃まで1.3℃/分の速度で冷却した。その後220℃まで0.4℃/分の速度で冷却してから、室温近傍まで急冷し、スラリー(A)を得た。このスラリー(A)を200kgのNMPで希釈しスラリー(B)を得た。
80℃に加熱したスラリー(B)200kgを50kg/1バッチスケールで、ふるい(80mesh、目開き0.175mm)で濾別し、濾液成分としてスラリー(C)を約150kg、メッシュオン成分としてスラリーを含んだ顆粒状PPS樹脂(粗PPS樹脂(D))50kg得た。
得られたスラリー(C)150kgを50kg/1バッチで脱揮装置に仕込み、窒素で置換してから、減圧下100〜150℃で1.5時間処理した後に、真空乾燥機で150℃、1時間処理して固形物を得た。この固形物にイオン交換水200kg(スラリー(C)の1.2倍量)を加えた後、70℃で30分撹拌して再スラリー化した。このスラリーを目開き10〜16μmのフィルターで減圧吸引濾過した。得られた白色ケークにイオン交換水200kgを加えて70℃で30分撹拌して再スラリー化し、同様に吸引濾過後、70℃で5時間真空乾燥してPPS混合物を2kg得た。
ここで得られたPPS混合物を用いた環状PPS混合物の製造例について下記に説明する。
[参考例2](環状PPS化合物の製造)
参考例1の方法で得られたPPS混合物を2kgに、溶剤としてクロロホルム50kgを用いて、浴温約80℃で抽出法により3時間PPS混合物と溶剤を接触させ、抽出液を得た。得られた抽出液は室温で一部固形状成分を含むスラリー状であった。この抽出液スラリーからエバポレーターを用いてクロロホルムを留去した後、真空乾燥機70℃で3時間処理して固形物840g(PPS混合物に対し、収率42%)を得た。
このようにして得られた固形物は、赤外分光分析(装置;島津社製FTIR−8100A)における吸収スペクトルよりフェニレンスルフィド骨格を有する化合物であることを確認した。また、高速液体クロマトグラフィー(装置;島津社製LC−10,カラム;C18,検出器;フォトダイオードアレイ)より成分分割した成分のマススペクトル分析(装置;日立製M−1200H)、更にMALDI−TOF−MSおよびGPCによる分子量情報より、この固形物は表1に示す繰り返し単位数4〜12の環状PPSを主要成分とする混合物であり、環状PPSの重量分率は約87%、13%は直鎖状PPSオリゴマーとm=13以上の環状PPS(Mw=2000)、Tm=226℃であった。
Figure 2008231140
本発明によれば、環状PPSを約87重量%含む、純度の高い環状PPS混合物を高い収率で得られることがわかった。
[参考例3]PPS樹脂
PPS−1の調製
参考例2で得られた環状PPS化合物を攪拌機を取り付けた1Lのオートクレーブ中に仕込み、窒素で置換した。オートクレーブを1時間で300℃に昇温した。昇温途中で環状PPS化合物が溶融したら、攪拌機の回転を開始し、回転数10rpmで攪拌下、30分間溶融加熱した。その後、窒素圧によりポリマーを吐出口よりガット状で取り出し、ガットをペレタイズした。得られた若干黒みを帯びた生成物の赤外スペクトルはPPS構造を有することがわかった。なお、生成物は1−クロロナフタレンに210℃で全溶であった。
得られたペレットをGPCにより分析した結果、重量平均分子量56000、分子量分布1.8のPPSが生成していることがわかった。また、このペレットのNa含有量は10ppmでこれ以外のアルカリ金属は検出されなかった。さらに320℃/60分加熱した際の発生ガス成分であるラクトン型化合物としてγブチロラクトン(γ−BL)が5ppm、アニリン型化合物として4−クロロ−N−メチルアニリン(MeAn)が5ppm検出された。また、塩素以外のハロゲンは検出されなかった。ここで得られた生成物をPPS−1とした。
PPS−2の調製
参考例2で得られた環状PPS化合物を攪拌機を取り付けた1Lのオートクレーブ中に仕込み、窒素で置換した。オートクレーブを1時間で300℃に昇温した。昇温途中で環状PPS化合物が溶融したら、攪拌機の回転を開始し、回転数10rpmで攪拌下、15分間溶融加熱した。その後、窒素圧によりポリマーを吐出口よりガット状で取り出し、ガットをペレタイズした。得られた若干黒みを帯びた生成物の赤外スペクトルはPPS構造を有することがわかった。なお、生成物は1−クロロナフタレンに210℃で全溶であった。
得られたペレットをGPCにより分析した結果、重量平均分子量42200、分子量分布1.8のPPSが生成していることがわかった。また、このペレットのNa含有量は9ppmでこれ以外のアルカリ金属は検出されなかった。さらに320℃/60分加熱した際の発生ガス成分であるラクトン型化合物としてγブチロラクトン(γ−BL)が7ppm、アニリン型化合物として4−クロロ−N−メチルアニリン(MeAn)が5ppm検出された。また、塩素以外のハロゲンは検出されなかった。ここで得られた生成物をPPS−2とした。
PPS−3の調製
参考例2で得られた環状PPS化合物と球状シリカ“FB−20S”(平均粒径17μm、電気化学工業社製)をPPS樹脂30容量%、球状シリカ70容量%となるよう配合し、攪拌機を取り付けた1Lのオートクレーブ中に仕込み、窒素で置換した。オートクレーブを1時間で300℃に昇温した。昇温途中で環状PPS化合物が溶融したら、攪拌機の回転を開始し、回転数10rpmで攪拌下、30分間溶融加熱した。その後、窒素圧によりポリマーを吐出口より不定形の組成物を取り出し、ついで大きい粒子を取り除いた。得られた若干黒みを帯びた生成物の赤外スペクトルはPPS構造を有することがわかった。なお、生成物は1−クロロナフタレンに210℃で球状シリカが残留した他は、溶解した。
得られた不定形の組成物をGPCにより分析した結果、重量平均分子量56000、分子量分布1.8のPPSが生成していることがわかった。また、このペレットのNa含有量は10ppmでこれ以外のアルカリ金属は検出されなかった。さらに320℃/60分加熱した際の発生ガス成分であるラクトン型化合物としてγブチロラクトン(γ−BL)が5ppm、アニリン型化合物として4−クロロ−N−メチルアニリン(MeAn)が5ppm検出された。また、塩素以外のハロゲンは検出されなかった。ここで得られた生成物をPPS−3とした。
PPS−4の調製
撹拌機および底に弁の付いた20リットルオートクレーブに、47%水硫化ナトリウム(三協化成)2383g(20.0モル)、96%水酸化ナトリウム831g(19.9モル)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)3960g(40.0モル)、およびイオン交換水3000gを仕込み、常圧で窒素を通じながら225℃まで約3時間かけて徐々に加熱し、水4200gおよびNMP80gを留出した後、反応容器を160℃に冷却した。仕込みアルカリ金属硫化物1モル当たりの系内残存水分量は0.17モルであった。また、仕込みアルカリ金属硫化物1モル当たりの硫化水素の飛散量は0.021モルであった。
次に、p−ジクロロベンゼン(シグマアルドリッチ)2942g(20.0モル)、NMP1515g(15.3モル)を加え、反応容器を窒素ガス下に密封した。その後、400rpmで撹拌しながら、200℃から227℃まで0.8℃/分の速度で昇温し、次いで274℃まで0.6℃/分の速度で昇温し、274℃で50分保持した後、282℃まで昇温した。オートクレーブ底部の抜き出しバルブを開放し、窒素で加圧しながら、内容物を撹拌機付き容器に15分かけてフラッシュし、250℃でしばらく撹拌して大半のNMPを除去し、ポリフェニレンスルフィド(PPS)と塩類を含む固形物を回収した。
得られた固形物およびイオン交換水15120gを撹拌機付きオートクレーブに入れ、70℃で30分洗浄した後、ガラスフィルターで吸引濾過した。次いで70℃に加熱した17280gのイオン交換水をガラスフィルターに注ぎ込み、吸引濾過してケークを得た。
得られたケーク、イオン交換水11880gおよび酢酸12gを撹拌機付きオートクレーブに仕込み、オートクレーブ内部を窒素で置換した後、192℃まで昇温し、30分保持した。その後オートクレーブを冷却して内容物を取り出した。
内容物をガラスフィルターで吸引濾過した後、これに70℃のイオン交換水17280gを注ぎ込み吸引濾過してケークを得た。得られたケークを80℃で熱風乾燥し、さらに120℃で24時間で真空乾燥することにより、乾燥PPSを得た。ついで、乾燥機内に窒素を通じながら220℃で5時間処理した。得られたPPSは、ポリスチレン換算の重量平均分子量が20000、分散度3.8であった。また、得られたPPSのNa含有量は980ppmでこれ以外のアルカリ金属は検出されなかった。さらに320℃/60分加熱した際の発生ガス成分であるラクトン型化合物としてγブチロラクトン(γ−BL)が420ppm、アニリン型化合物として4−クロロ−N−メチルアニリン(MeAn)が775ppm検出された。また、塩素以外のハロゲンは検出されなかった。ここで得られたPPSをPPS−4とした。
PPS−5の調製(従来技術によるPPS混合物の調製)
ここでは非特許文献1に開示されているPPSの製造方法により得られる環状PPSと線状PPSオリゴマーからなるPPS混合物を用いてPPSを製造した場合の結果を示す。
撹拌機付きの500リットルオートクレーブに、硫化ナトリウム9水和物6000g(2.5モル)、96%水酸化ナトリウム52g(1.25モル)、NMP256kg(2590モル)及びp−ジクロロベンゼン3770g(25.5モル)を仕込み、反応容器を窒素ガス下に密封した。240rpmで撹拌しながら、室温から200℃まで約2時間かけて加熱後、1.0℃/分の速度で220℃まで昇温し、この温度で10時間保持した。その後室温近傍まで冷却してスラリー(E)を得た。このスラリー(E)100kgを400kgのイオン交換水で希釈し、70℃で30分攪拌したのち、平均ポアサイズ10〜16μmのガラスフィルターを用いて濾過した。得られた固形成分をイオン交換水100kgに分散させて70℃で30分攪拌したのち同様に濾過を行った。ついで固形成分を0.5%酢酸水溶液100kgに分散させて70℃で30分攪拌したのち同様に濾過を行った。得られた固形成分を再度イオン交換水100kgに分散させて70℃で30分攪拌したのち同様に濾過を行った。得られた含水ケークを真空乾燥機70℃で一晩乾燥し、乾燥ケーク740gを得た。
このようにして得た全乾燥ケークを、テトラヒドロフラン15kgで3時間抽出した。得られた抽出液からテトラヒドロフランを留去した。このようにして得られた固体にアセトン15kgを加えて攪拌後、目開き10〜16μmのガラスフィルターで吸引濾過し白色ケークを得た。これを70℃で3時間真空乾燥して白色粉末を得た。このようにして得られた白色粉末は、赤外分光分析(装置;島津社製FTIR−8100A)における吸収スペクトルよりPPS骨格を有する化合物であることを確認した。また、高速液体クロマトグラフィー(装置;島津社製LC−10,カラム;C18,検出器;フォトダイオードアレイ)より成分分割した成分のマススペクトル分析(装置;日立製M−1200H)、更にMALDI−TOF−MSおよびGPCによる分子量情報より、この固形物は表2に示す繰り返し単位数4〜12の環状PPSを主要成分とする混合物であり、環状PPSの重量分率は約40%、60%は直鎖状PPSオリゴマーとm=13以上の環状PPS(Mw=1500)、Tm=245℃であることがわかった。ここで得られた白色粉末をPPS−5とした。
Figure 2008231140
[参考例4]無機フィラー
Si−1:球状シリカ“FB−20S”(平均粒径17μm、電気化学工業社製)
AL−1:球状アルミナ“DAB−20SA”(平均粒径8μm、5%シリカ混合品、電気化学工業社製)
AL−2:球状アルミナ“DAW−70”(平均粒径70μm、電気化学工業社製)
なお、上記において平均粒径は、島津製作所社製レーザー光回析式粒度分布測定装置SALD−3100を用いて測定した。
[参考例5]添加剤
WH:“WH−255”(長鎖アルキル脂肪族系アミド基含有系化合物、共栄化学社製)
HWE:“Licowax−E”(モンタン酸エステルワックス、クラリアントジャパン社製)
PX:“PX−200”(粉末状芳香族縮合リン酸エステル、大八化学工業社製、CAS No.139189−30−3)
EP:“JER 1004”(ビスフェノールA型エポキシ化合物、ジャパンエポキシレジン社製)
[実施例1]
参考例3のPPS樹脂、参考例4に示した無機フィラーを表3に示す量でブレンドし、ヘッド部をはずしたPCM30(2軸押出機;池貝鉄鋼社製)にて樹脂温度280℃で溶融混練を行い、不定形の組成物を得た。ついで大きい粒子を取り除き、130℃の熱風乾燥機で3時間乾燥した後、以下に示す評価を行った。
[実施例2〜6]
参考例3のPPS樹脂、参考例4に示した無機フィラーおよび参考例5の添加剤をヘンシェルミキサーで表3に示す量でブレンドし、自動原料供給フィーダーを備えた月島機械製ロータリー打錠機を用いて常温タブレット化により、6mm直径×3mm長の円柱状のタブレット(錠剤型樹脂組成物)(最大値6mm、最小値3mm)を得た。ついで130℃の熱風乾燥機で3時間乾燥した後、以下に示す評価を行った。
[比較例1]
参考例3のPPS樹脂、参考例4に示した無機フィラーを表3に示す量でブレンドし、ヘッド部をはずしたPCM30(2軸押出機;池貝鉄鋼社製)にて樹脂温度320℃で溶融混練を行い、不定形の組成物を得た。ついで大きい粒子を取り除き、130℃の熱風乾燥機で3時間乾燥した後、以下に示す評価を行った。
[比較例2〜4]
参考例3のPPS樹脂、参考例4に示した無機フィラーおよび参考例5の添加剤をヘンシェルミキサーで表3に示す量でブレンドし、自動原料供給フィーダーを備えた月島機械製ロータリー打錠機を用いて常温タブレット化により、6mm直径×3mm長の円柱状のタブレット(錠剤型樹脂組成物)(最大値6mm、最小値3mm)を得た。ついで130℃の熱風乾燥機で3時間乾燥した後、以下に示す評価を行った。
Figure 2008231140
<流動性>スパイラルフロー
射出成形機PROMAT40/25(25ton)(住友重機械工業社製)を用い、表3に示す樹脂温度、金型温度の温度条件で、射出圧力98MPaの成形条件で厚さ1mmの試験片を作成し、その際のスパイラルフロー長さを測定した。
<流動性>ワイヤー流れ発生率
射出成形機PROMAT40/25(25ton)(住友重機械工業社製)を用い、表3に示す樹脂温度、金型温度の温度条件で、208pinLQFP(外形:28mm×28mm×1.4mm厚み、フレーム材質:42アロイ)用金型を用いて該パッケージを30個成形した。なお、評価用のシリコンチップとしては窒化珪素膜を被覆した模擬素子(チップサイズ:12.7mm×12.7mm×0.3mm厚み)を搭載した。ワイヤーはAuワイヤー(ワイヤー径:30μ)をインナーリード端子とシリコンチップに120本(1辺に30本)ボンディングした。上記成形で得られた208pinLQFPのパッケージ30個を窒素雰囲気下、温度250℃で5時間、さらに温度300℃で0.5時間の条件で後重合を行った。上記後重合で得られた208pinLQFPをX線検査装置MF100C(日立建機ファインテック社製)を用いて、成形前の画像と比較して、Auワイヤーが変形(流れ)している本数からワイヤー流れ発生率を算出した(ワイヤー流れ発生率が少ないと流動性に優れる)。
<連続成形性>成形ショット数
射出成形機PROMAT40/25(25ton)(住友重機械工業社製)を用い、表3に示す樹脂温度、金型温度の温度条件で、48pinTSOP(外形:12mm×18mm×1.0mm厚み、フレーム材質:42アロイ)用金型を用いて該パッケージを連続で成形した。なお、評価用のシリコンチップとしては窒化珪素膜を被覆した模擬素子(チップサイズ:4.0mm×6.0mm×0.3mm厚み)を搭載した。10ショット毎に金型表面、成形品外観、アウターリード部外観を目視で観察した。上記いずれかの観察で汚れや、変色などの不良が顕著に見られた成形ショット数を測定した。また、不良内容を不良原因として表記した。成形は最大1000ショットまで行った(1000ショット成形可能な材料は連続成形性に優れる)。
<耐湿熱性>PCT不良数
射出成形機PROMAT40/25(25ton)(住友重機械工業社製)を用い、表3に示す樹脂温度、金型温度の温度条件で、16pinDIP(外形:16.9mm×7.3mm×2.6mm厚み、フレーム材質:42アロイ)用金型を用いて該パッケージ50個を成形した。なお、評価用のシリコンチップはPCT(プレッシャークッカーテスト)用に配線したチップ(チップサイズ:4.0mm×3.0mm×0.5mm厚み)を搭載し、インナーリード端子とシリコンチップをAuワイヤー(ワイヤー径:40μm)でボンディングした。上記成形で得られたパッケージ50個を窒素雰囲気下、温度250℃で5時間、さらに温度300℃で0.5時間の条件で後重合を行った。上記後重合で得られたパッケージ50個について、温度121℃、100%RHの条件下で1000時間処理を施した。この試験を終えたサンプルについて、導通テストを行い、導通不良が生じているサンプルを不良とした。湿熱処理前に測定した結果を初期不良数(不良個数/50個)、得られた結果をPCT不良数(不良個数/50個)とした。
以上説明した通り、PPS樹脂の分子量分布を従来のPPS樹脂に比して狭くし、さらにPPS樹脂中のアルカリ金属含有量を低減することにより、本PPS樹脂原料から得られる電子部品封止用PPS樹脂組成物を用いて得られた電子部品封止部品は優れた耐湿信頼性が可能となり、さらに溶融成形時での流動性に優れ、さらに加熱、溶融時の揮発性成分の発生量が少なく、連続成形性に優れる電子部品封止用PPS樹脂組成物、およびその成形品を提供することが可能となった。

Claims (9)

  1. (a)と(b)の合計を100容量%として、(a)重量平均分子量(Mw)が1万以上、重量平均分子量/数平均分子量(Mn)で表される分散度が2.5以下であり、かつアルカリ金属含量が50ppm以下であるポリフェニレンスルフィド樹脂5〜60容量%および(b)無機フィラー40〜95容量%を配合してなる電子部品封止用ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物。
  2. ポリフェニレンスルフィド樹脂に含まれるアルカリ金属がナトリウムであることを特徴とする請求項1記載の電子部品封止用ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物。
  3. 前記(a)ポリフェニレンスルフィド樹脂を加熱した際の発生ガス成分中のラクトン型化合物がポリフェニレンスルフィド樹脂重量基準で500ppm以下であり、アニリン型化合物がポリフェニレンスルフィド樹脂重量基準で300ppm以下であることを特徴とする請求項1または2記載の電子部品封止用ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物。
  4. 前記(a)ポリフェニレンスルフィド樹脂が、下記一般式(1)で表される環状ポリフェニレンスルフィド混合物を、溶融加熱することにより得られたポリフェニレンスルフィド樹脂であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の電子部品封止用ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物。
    Figure 2008231140
    (mは4〜20の整数、mは4〜20の混合物でもよい。)
  5. (b)無機フィラーの平均粒子径(D50)が1〜100μmであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の電子部品封止用ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物。
  6. 下記一般式(1)で表される環状ポリフェニレンスルフィド樹脂および(b)無機フィラーを溶融加熱することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項記載の電子部品封止用ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物の製造方法。
    Figure 2008231140
    (mは4〜20の整数、mは4〜20の混合物でもよい。)
  7. さらに(c)エステル系化合物、アミド基含有化合物、エポキシ系化合物、およびリン酸エステルから選ばれる少なくとも1種の化合物を(a)および(b)の合計量100重量部に対して0.1〜10重量部添加してなる請求項1〜6のいずれか1項記載の電子部品封止用ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物。
  8. 請求項1〜5、7のいずれか記載の電子部品封止用ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物を圧縮成形して錠剤化することを特徴とする電子部品封止用錠剤の製造方法。
  9. 請求項1〜5、7のいずれか記載の電子部品封止用ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物を射出成形してなる成形品。
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