JP2011149014A - 環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】スルフィド化剤とジハロゲン化芳香族化合物とを有機極性溶媒中、低含水条件下で接触させて環式ポリアリーレンスルフィドを製造する方法であって、以下の(i)および(ii)を特徴とする環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法。
(i)スルフィド化剤のイオウ原子1モルに対して有機極性溶媒を1.25リットル以上用いる。
(ii)反応混合物中の水分量がイオウ成分1 モル当たり0 . 8 モル未満である。
【選択図】なし
Description
[1] 少なくともスルフィド化剤、ジハロゲン化芳香族化合物および有機極性溶媒からなる反応混合物を加熱して環式ポリアリーレンスルフィドを製造する方法であって、以下の(i)および(ii)を特徴とする環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法。
(i)スルフィド化剤のイオウ原子1モルに対して有機極性溶媒を1.25リットル以上用いる。
(ii)反応混合物中の水分量が反応混合物中に存在するイオウ成分1 モル当たり0 . 8 モル未満である。
[2] 反応混合物中の有機極性溶媒がスルフィド化剤のイオウ原子1モル当たり50リットル以下であることを特徴とする前記[1]に記載の環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法。
[3] 反応混合物を常圧における還流温度を超えて加熱することを特徴とする前記[1]または[2]のいずれかに記載の環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法。
[4] 反応混合物を加熱する際の圧力がゲージ圧で1.0MPa以下であることを特徴とする前記[1]から[3]のいずれかに記載の環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法。
[5] スルフィド化剤がアルカリ金属硫化物であることを特徴とする前記[1]から[4]のいずれかに記載の環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法。
[6] ジハロゲン化芳香族化合物がジクロロベンゼンであることを特徴とする前記[1]から[5]のいずれかに記載の環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法。
[7] スルフィド化剤、ジハロゲン化芳香族化合物および有機極性溶媒のそれぞれが含む水分量の総和がスルフィド化剤のイオウ成分1モル当たり0 . 8 モル未満であることを特徴とする前記[1]から[6]のいずれかに記載の環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法。
[8] イオウ成分1モル当たり0 . 8 モル以上の水を含むスルフィド化剤を有機極性溶媒存在下で脱水することで、スルフィド化剤の水分量をイオウ成分1モル当たり0 . 8 モル未満に調整した混合物をスルフィド化剤として用いることを特徴とする前記[7]に記載の環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法。
[9] スルフィド化剤、ジハロゲン化芳香族化合物及び有機極性溶媒が含む水分量の総和がスルフィド化剤のイオウ成分1モル当たり0.8モル以上である、スルフィド化剤、ジハロゲン化芳香族化合物および有機極性溶媒を用い、脱水により水分量をイオウ成分1モル当たり0 . 8 モル未満に調整した反応混合物を用いることを特徴とする前記[1]から[6]のいずれかに記載の環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法。
[10] 水分量の総和がスルフィド化剤のイオウ成分1モル当たり0.8モル以上のスルフィド化剤、ジハロゲン化芳香族化合物および有機極性溶媒の全ての成分を混合後、脱水しながら反応を行い反応混合物中の水分量をイオウ成分1モル当たり0 . 8 モル未満に調整することを特徴とする前記[9]に記載の環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法。
[11] イオウ成分1モル当たり0.8モル以上の水を含むスルフィド化剤を有機極性溶媒存在下で脱水し、スルフィド化剤の水分量をスルフィド化剤のイオウ成分1モル当たり0 . 8 モル未満に調整する工程(脱水工程)、および脱水工程で調製した脱水混合物にジハロゲン化芳香族化合物を添加した反応混合物を加熱する工程(反応工程)を含むことを特徴とする前記[9]に記載の環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法。
[12] 脱水工程と反応工程を別の反応器で実施することを特徴とする前記[11]に記載の環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法。
[13] 脱水工程における有機極性溶媒がスルフィド化剤のイオウ成分1モル当たり1リットル以下であることを特徴とする前記[11]または[12]のいずれかに記載の環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法。
本発明で用いられるスルフィド化剤とは、ジハロゲン化芳香族化合物にスルフィド結合を導入できるものであれば良く、例えばアルカリ金属硫化物、アルカリ金属水硫化物、および硫化水素が挙げられる。
本発明の環式PASの製造において使用されるジハロゲン化芳香族化合物としては、p−ジクロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、m−ジクロロベンゼン、p−ジブロモベンゼン、o−ジブロモベンゼン、m−ジブロモベンゼン、1−ブロモ−4−クロロベンゼン、1−ブロモ−3−クロロベンゼンなどのジハロゲン化ベンゼン、及び1−メトキシ−2,5−ジクロロベンゼン、1−メチル−2,5−ジクロロベンゼン、1,4−ジメチル−2,5−ジクロロベンゼン、1,3−ジメチル−2,5−ジクロロベンゼン、3,5−ジクロロ安息香酸などのハロゲン以外の置換基をも含むジハロゲン化芳香族化合物などを挙げることができる。なかでも、p−ジクロロベンゼンに代表されるp−ジハロゲン化ベンゼンを主成分にするジハロゲン化芳香族化合物が好ましい。特に好ましくは、p−ジクロロベンゼンを80〜100モル%含むものであり、さらに好ましくは90〜100モル%含むものである。また、環式PAS共重合体を製造するために異なる2種以上のジハロゲン化芳香族化合物を組み合わせて用いることも可能である。
本発明の環式PASの製造においては反応溶媒として有機極性溶媒を用いるが、なかでも有機アミド溶媒を用いるのが好ましい。具体例としては、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、N−シクロヘキシル−2−ピロリドンなどのN−アルキルピロリドン類、N−メチル−ε−カプロラクタムなどのカプロラクタム類、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ヘキサメチルリン酸トリアミドなどに代表されるアプロチック有機溶媒、及びこれらの混合物などが、反応の安定性が高いために好ましく使用される。これらのなかでもN−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンが好ましく用いられる。
本発明における環式ポリアリーレンスルフィドとは式、−(Ar−S)−の繰り返し単位を主要構成単位とする環式化合物であり、好ましくは当該繰り返し単位を80モル%以上含有する下記一般式(A)のごとき化合物である。
本発明では、スルフィド化剤とジハロゲン化芳香族化合物とを有機極性溶媒中で接触させて環式PASを製造する。
(a)ジハロゲン化芳香族化合物をスルフィド化剤に対しモル比で過剰に添加した場合
転化率(%)=[〔DHA仕込み量(モル)−DHA残存量(モル)〕/〔DHA仕込み量(モル)−DHA過剰量(モル)〕]×100%
(b)上記(a)以外の場合
転化率(%)=[〔DHA仕込み量(モル)−DHA残存量(モル)〕/〔DHA仕込み量(モル)〕]×100%。
本発明の環式PASの製造においては前記した反応により得られた反応混合物から環式PASを分離回収することも可能である。反応により得られた反応混合物には環式PAS、線状PAS及び有機極性溶媒が含まれ、その他成分として未反応のスルフィド化剤、ジハロゲン化芳香族化合物や水、副生塩などが含まれる場合もある。
この様な反応混合物からPAS成分を回収する方法に特に制限は無く、例えば必要に応じて有機極性溶媒の一部もしくは大部分を蒸留等の操作により除去した後に、PAS成分に対する溶解性が低く且つ有機極性溶媒と混和し、好ましくは副生塩に対して溶解性を有する溶剤と必要に応じて加熱下で接触させて、環式PASを線状PASとの混合固体としてPAS成分を回収する方法、反応混合物において環式PASおよび線状PASが溶解するに足る温度、好ましくは200℃を越える温度、より好ましくは230℃以上の温度において反応混合物中に存在する固形成分と可溶成分を固液分離により分離して少なくとも環式PAS、線状PASおよび有機極性溶媒を含む溶液成分を回収し、この溶液成分から必要に応じて有機極性溶媒の一部もしくは大部分を蒸留等の操作により除去した後に、PAS成分に対する溶解性が低く且つ有機極性溶媒と混和し、好ましくは副生塩に対して溶解性を有する溶剤と必要に応じて加熱下で接触させて、環式PASを線状PASとの混合固体としてPAS成分を回収する方法、が例示できる。この様な特性を有する溶剤は一般に比較的極性の高い溶剤であり、用いた有機極性溶媒や副生塩の種類により好ましい溶剤は異なるので限定はできないが、例えば水や、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、ヘキサノールに代表されるアルコール類、アセトンに代表されるケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチルなどに代表される酢酸エステル類が例示でき、入手性、経済性の観点から水、メタノール及びアセトンが好ましく、水が特に好ましい。
上記には環式PASの回収方法として、まず環式PASと線状PASを含むPAS混合物を得た後にこの混合物から環式PASを回収する方法について例示したが回収方法はこれに限定されるものではない。環式PAS回収方法として別の具体例を以下に示す。
本発明で得られる反応混合物には環式PAS、線状PAS及び有機極性溶媒が含まれ、その他成分として未反応のスルフィド化剤、ジハロゲン化芳香族化合物や水、副生塩などが含まれる場合もあることは前述した通りであるが、この反応混合物において環式PASは幅広い温度領域で有機極性溶媒に溶解状態となる傾向がある。一方で線状PASは環式PASと溶解挙動が大きく異なり、具体的には200℃以下の温度領域ではその大部分が反応混合物中で固体として存在する傾向にある。
かくして得られた環式ポリアリーレンスルフィドは十分に高純度であり、各種用途に好適に用いることができるが、さらに以下に述べる後処理を付加的に施すことによってよりいっそう純度の高い環式PASを得ることが可能である。
かくして得られた環式PASは、通常、環式PASを50重量%以上、好ましくは70重量%以上、より好ましくは80重量%以上含む純度の高いものであり、一般的に得られる線状のPASとは異なる特性を有する工業的にも利用価値の高いものである。また、本発明の製造方法により得られる環式PASは前記式(A)におけるmが単一ではなく、m=4〜50の異なるmを有する前記式(A)が得られやすいという特徴を有する。ここで好ましいmの範囲は4〜25,より好ましくは4〜20である。mがこの範囲の場合、後述するように環式PASをPASを得るための原料として用いる場合に重合反応が進行しやすく、高分子量体が得られやすくなる傾向にある。この理由は現時点判然とはしないが、この範囲の環式PASは分子が環式であるがために生じる結合のゆがみが大きく、重合時に高分子量化が起こりやすいためと推測している。
本発明で得られた環式PASを各種樹脂に配合して用いることも可能であり、このような環式PASを配合した樹脂組成物は、溶融加工時のすぐれた流動性を発現する傾向が強く、また滞留安定性にも優れる傾向にある。この様な特性、特に流動性の向上は、樹脂組成物を溶融加工する際の加熱温度が低くても溶融加工性に優れるという特徴を発現するため、射出成形品や繊維、フィルム等の押出成形品に加工する際の溶融加工性の向上をもたらす点で大きなメリットとなる。環式PASを配合した際にこの様な特性の向上が発現する理由は定かではないが、環式PASの構造の特異性、すなわち環状構造であるために通常の線状化合物と比較してコンパクトな構造をとりやすいため、マトリックスである各種樹脂との絡み合いが少なくなりやすいこと、各種樹脂に対して可塑剤として作用すること、またマトリックス樹脂どうしの絡み合い抑制にも奏効するためと推測している。
本発明によって製造される環式PASは(8)に述べたごとき優れた特性を有するので、ポリマーを得る際のプレポリマーとして好適に用いることが可能である。なおここでプレポリマーとしては本発明の環式PAS製造方法で得られる環式PAS単独でも良いし、所定量の他の成分を含むものでも差し障り無いが、環式PAS以外の成分を含む場合は線状PASや分岐構造を有するPASなど、PAS成分であることが特に好ましい。少なくとも本発明の環式PASを含み、以下に例示する方法により高重合度体へ変換可能なものがポリアリーレンスルフィドプレポリマーであり、以下PASプレポリマーと称する場合もある。
環式ポリフェニレンスルフィド化合物の生成率の測定は、HPLCを用いた定性定量分析によって行なった。HPLCの測定条件を以下に示す。
装置:島津株式会社製 LC−10Avpシリーズ
カラム:関東化学社製 Mightysil RP−18 GP150−4.6(5μm)
検出器:フォトダイオードアレイ検出器(波長270nm)。
<脱水工程>
SUS316製の攪拌機付き1リットルオートクレーブに48重量%の水硫化ナトリウム水溶液28.1g(水硫化ナトリウムとして0.241モル)、48重量%の水酸化ナトリウム水溶液19.8g(水酸化ナトリウムとして0.238モル)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)238.0g(2.40モル)を仕込んだ。原料に含まれる水分量は24.9g(1.38モル)であり、スルフィド化剤のイオウ成分1モル当たりの水の量は5.75モルであった。また、スルフィド化剤のイオウ成分1モル当たりの溶媒量は約0.97Lであった。
脱水工程の終了後オートクレーブ上部のバルブを閉じた。次いで得られた混合物を約160℃まで冷却した後、p−ジクロロベンゼン(p−DCB)34.9g(0.237モル)及びNMP377.5g(3.81モル)を加えた。この段階における、反応系内のイオウ成分1モル当たりの水分量は0.35モル、NMP量は2.52Lであった。反応器を窒素ガス下に密封し、400rpmで撹拌しながら、250℃まで60分かけて昇温した。この段階の反応器内の圧力はゲージ圧で0.40MPaであった。250℃で2時間保持した後、室温近傍まで急冷した。
<脱水工程>
SUS316製の攪拌機付き1リットルオートクレーブに48重量%の水硫化ナトリウム水溶液116.9g(水硫化ナトリウムとして1.00モル)、21.7重量%の水酸化ナトリウム水溶液193.8g(水酸化ナトリウムとして1.05モル)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)198.2g(2.00モル)を仕込んだ。原料に含まれる水分量は212.5g(11.8モル)であり、スルフィド化剤のイオウ成分1モル当たりの水の量は12.7モル、また、スルフィド化剤のイオウ成分1モル当たりの溶媒量は約0.19Lであった。
脱水工程の終了後オートクレーブ上部のバルブを閉じた。次いで得られた混合物を室温近傍まで冷却した後、得られた混合物71.6g(水硫化ナトリウムとして13.5g(0.240モル)相当、水酸化ナトリウムとして10.7g(0.267モル)相当、NMPとして45.3g(0.457モル)相当、水として2.2g(0.122モル)相当)を脱水工程とは別の容器、即ち脱水工程とは別に用意したSUS316製の攪拌機付き1リットルオートクレーブに移し、p−ジクロロベンゼン(p−DCB)36.0g(0.245モル)及びNMP575.7g(5.81モル)を加えた。この段階における、反応系内のイオウ成分1モル当たりの水の量は0.50モル、NMP量は2.52Lであった。反応器を窒素ガス下に密封し、400rpmで撹拌しながら、250℃まで60分かけて昇温した。この段階の反応器内の圧力はゲージ圧で0.4MPaであった。250℃で2時間保持した後、室温近傍まで急冷した。
ここでは、特許文献3(特開2009−30012号公報)の実施例に準じて環式PASの製造を行った例を示す。即ち、前記実施例の脱水工程を省き、反応開始前に反応系内を窒素加圧した以外は実施例1および2の反応工程と同等の反応容器、反応濃度、反応温度の条件にて環式PASの製造を行った例を示す。
ここでは反応工程で使用する溶媒量を減じた以外は実施例1と同様の反応容器、反応温度の条件にて環式PASの製造を行った例を示す。
SUS316製の攪拌機付き1リットルオートクレーブに48重量%の水硫化ナトリウム水溶液28.1g(水硫化ナトリウムとして0.240モル)、48重量%の水酸化ナトリウム水溶液20.6g(水酸化ナトリウムとして0.247モル)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)238.0g(2.40モル)を仕込んだ。原料に含まれる水分量は25.4g(1.41モル)であり、スルフィド化剤のイオウ成分1モル当たりの水の量は5.87モルであった。また、スルフィド化剤のイオウ成分1モル当たりの溶媒量は約0.97Lであった。
脱水工程の終了後オートクレーブ上部のバルブを閉じた。次いで得られた混合物を約160℃まで冷却した後、p−ジクロロベンゼン(p−DCB)35.6g(0.242モル)及びNMP181.2g(1.83モル)を加えた。この段階における、反応系内のイオウ成分1モル当たりの水分量は0.59モル、NMP量は1.68Lであった。反応器を窒素ガス下に密封し、400rpmで撹拌しながら、250℃まで60分かけて昇温した。この段階の反応器内の圧力はゲージ圧で0.40MPaであった。250℃で2時間保持した後、室温近傍まで急冷した。
ここでは実施例3と同量の原料を使用し、比較例1と同様にして脱水工程を省いて環式PASの製造を行った例を示す。
本条件では原料仕込み後の昇温開始(25℃)から約60分後、約250℃到達時に内圧が1.8MPaに達しオートクレーブの安全弁(作動圧力設定値:1.8MPa)が作動したため、250℃到達時点で反応を中断した。反応系内の水分量はスルフィド化剤1モル当たり5.87モルと比較例1と同程度であるが、NMPに対する水の比率が比較例1よりも増加しており水蒸気分圧が上昇したためと考えられる。
ここでは実施例3より反応工程で使用する溶媒量をさらに減じて環式PASの製造を行った例を示す。
SUS316製の攪拌機付き1.5リットルオートクレーブに48重量%の水硫化ナトリウム水溶液93.6g(水硫化ナトリウムとして0.800モル)、48重量%の水酸化ナトリウム水溶液69.6g(水酸化ナトリウムとして0.835モル)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)818.3g(8.25モル)を仕込んだ。原料に含まれる水分量は85.0g(4.72モル)であり、スルフィド化剤のイオウ成分1モル当たりの水の量は5.90モルであった。また、スルフィド化剤のイオウ成分1モル当たりの溶媒量は約1.00Lであった。
脱水工程の終了後オートクレーブ上部のバルブを閉じた。次いで得られた混合物を約160℃まで冷却した後、p−ジクロロベンゼン(p−DCB)119.6g(0.814モル)及びNMP383.3g(3.87モル)を加えた。この段階における、反応系内のイオウ成分1モル当たりの水分量は0.76モル、NMP量は1.33Lであった。反応器を窒素ガス下に密封し、400rpmで撹拌しながら、250℃まで60分かけて昇温した。この段階の反応器内の圧力はゲージ圧で0.46MPaであった。250℃で2時間保持した後、室温近傍まで急冷した。
ここでは使用するスルフィド化剤およびp−DCBの組成を変更した以外は実施例1と同様の反応容器、反応濃度、反応温度の条件にて環式PASの製造を行った例を示す。
SUS316製の攪拌機付き1リットルオートクレーブに48重量%の水硫化ナトリウム水溶液28.1g(水硫化ナトリウムとして0.240モル)、48重量%の水酸化ナトリウム水溶液19.4g(水酸化ナトリウムとして0.232モル)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)238.1g(2.40モル)を仕込んだ。原料に含まれる水分量は24.8g(1.38モル)であり、スルフィド化剤のイオウ成分1モル当たりの水の量は5.73モルであった。また、スルフィド化剤のイオウ成分1モル当たりの溶媒量は約0.97Lであった。
脱水工程の終了後オートクレーブ上部のバルブを閉じた。次いで得られた混合物を約160℃まで冷却した後、p−ジクロロベンゼン(p−DCB)32.6g(0.222モル)及びNMP384.4g(3.88モル)を加えた。この段階における、反応系内のイオウ成分1モル当たりの水分量は0.06モル、NMP量は2.50Lであった。反応器を窒素ガス下に密封し、400rpmで撹拌しながら、250℃まで60分かけて昇温した。この段階の反応器内の圧力はゲージ圧で0.40MPaであった。250℃で2時間保持した後、室温近傍まで急冷した。
Claims (13)
- 少なくともスルフィド化剤、ジハロゲン化芳香族化合物および有機極性溶媒からなる反応混合物を加熱して環式ポリアリーレンスルフィドを製造する方法であって、以下の(i)および(ii)を特徴とする環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法。
(i)スルフィド化剤のイオウ原子1モルに対して有機極性溶媒を1.25リットル以上用いる。
(ii)反応混合物中の水分量が、反応混合物中に存在するイオウ成分1モル当たり0.8モル未満である。 - 反応混合物中の有機極性溶媒がスルフィド化剤のイオウ原子1モル当たり50リットル以下であることを特徴とする請求項1に記載の環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法。
- 反応混合物を常圧における還流温度を超えて加熱することを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法。
- 反応混合物を加熱する際の圧力がゲージ圧で1.0MPa以下であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法。
- スルフィド化剤がアルカリ金属硫化物であることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法。
- ジハロゲン化芳香族化合物がジクロロベンゼンであることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法。
- スルフィド化剤、ジハロゲン化芳香族化合物および有機極性溶媒のそれぞれが含む水分量の総和がスルフィド化剤のイオウ成分1モル当たり0.8モル未満であることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法。
- イオウ成分1モル当たり0.8モル以上の水を含むスルフィド化剤を有機極性溶媒存在下で脱水することで、スルフィド化剤の水分量をイオウ成分1モル当たり0.8モル未満に調整した混合物をスルフィド化剤として用いることを特徴とする請求項7に記載の環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法。
- スルフィド化剤、ジハロゲン化芳香族化合物及び有機極性溶媒が含む水分量の総和がスルフィド化剤のイオウ成分1モル当たり0.8モル以上である、スルフィド化剤、ジハロゲン化芳香族化合物および有機極性溶媒を用い、脱水により水分量をイオウ成分1モル当たり0.8モル未満に調整した反応混合物を用いることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法。
- 水分量の総和がスルフィド化剤のイオウ成分1モル当たり0.8モル以上のスルフィド化剤、ジハロゲン化芳香族化合物および有機極性溶媒の全ての成分を混合後、脱水しながら反応を行い反応混合物中の水分量をイオウ成分1モル当たり0.8モル未満に調整することを特徴とする請求項9に記載の環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法。
- イオウ成分1モル当たり0.8モル以上の水を含むスルフィド化剤を有機極性溶媒存在下で脱水し、スルフィド化剤の水分量をスルフィド化剤のイオウ成分1モル当たり0.8モル未満に調整する工程(脱水工程)、および脱水工程で調製した脱水混合物にジハロゲン化芳香族化合物を添加した反応混合物を加熱する工程(反応工程)を含むことを特徴とする請求項9に記載の環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法。
- 脱水工程と反応工程を別の反応器で実施することを特徴とする請求項11に記載の環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法。
- 脱水工程における有機極性溶媒がスルフィド化剤のイオウ成分1モル当たり1リットル以下であることを特徴とする請求項11または12のいずれかに記載の環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法。
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