JP5768929B2 - 環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法 - Google Patents

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Description

関連する出願の参照
本出願は、2012年12月27日に出願された日本特許出願第2012−284546号、および、2013年7月31日に出願された日本特許出願第2013−158972号に基づく優先権を主張しており、これらの日本出願に記載されたすべての内容を援用するものである。
本発明は環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法に関する。より詳しくは環式ポリアリーレンスルフィドを経済的且つ簡易な方法で効率よく製造する方法に関する。
芳香族環式化合物はその環状であることから生じる特性、すなわちその構造に由来する特異性により、近年注目を集めている。具体的には、高機能材料用途や機能材料への応用展開可能性、たとえば包接能を有する化合物としての活用や、開環重合による高分子量直鎖状高分子の合成のための有効なモノマーとしての活用などが期待されている。環式ポリアリーレンスルフィド(以下、ポリアリーレンスルフィドをPASと略する場合もある)も芳香族環式化合物の範疇に属し、上記同様に注目に値する化合物である。
環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法としては、たとえばジアリールジスルフィド化合物を超希釈条件下で酸化重合する方法(たとえば特許文献1参照。)や、4−ブロモチオフェノールの銅塩をキノリン中の超希釈条件下で加熱する方法(例えば特許文献2参照。)が開示されている。これらの方法では超希釈条件が必須であった。また、環式ポリアリーレンスルフィドが高選択で生成し、線状ポリアリーレンスルフィドの生成量をごく少量に抑制可能であるものの、反応に長時間を要する上、反応容器単位容積あたりに得られる環式ポリアリーレンスルフィドはごくわずかであり、効率的に環式ポリアリーレンスルフィドを得るとの観点では課題の多い方法であった。また、精製が困難であり、得られる環式ポリアリーレンスルフィドは純度の低いものであった。
また、スルフィド化剤とジハロゲン化芳香族化合物といった汎用的な原料から脱塩縮合により環式ポリアリーレンスルフィドを得る方法として、N−メチルピロリドンに対する硫化ナトリウム量を0.1モル/リットルとして、これにジクロロベンゼンを加えて還流温度において接触反応させる方法が開示されている(例えば非特許文献1参照。)。この方法ではスルフィド化剤の硫黄原子1モルに対する有機極性溶媒量が1.25リットル以上と希薄であるため環式ポリアリーレンスルフィドが得られると推測できるが、ごくわずかな量の環式ポリアリーレンスルフィドしか得られず、また得られる環式ポリアリーレンスルフィドは純度の低いものであり、さらには反応に長時間が必要であるという問題があった。
同様の原料を用いて収率良くまた高純度で環式ポリアリーレンスルフィドを得る方法として、スルフィド化剤の硫黄1モルに対して1.25リットル以上の有機極性溶媒を用い、スルフィド化剤とジハロゲン化芳香族化合物とを含む反応混合物を、常圧における還流温度を超える温度で加熱する方法が開示されている(例えば特許文献3参照。)。この方法では、0.5〜2時間と比較的短時間でジハロゲン化芳香族化合物の消費率が90%程度に達し、環式ポリアリーレンスルフィドの選択率は35%程度まで向上する。しかしながら、選択率向上にはより希薄な条件を要することから収率が向上しても反応容器単位容積あたりに得られる環式ポリアリーレンスルフィドは少なく、収率および収量の両立が望まれていた。
上記課題を解決する方法として、線状ポリアリーレンスルフィド、スルフィド化剤、およびジハロゲン化芳香族化合物を、反応混合物中の硫黄成分1モルあたり1.25リットル以上の有機極性溶媒中で加熱して反応させる方法が開示されている(例えば特許文献4参照。)。この方法では、線状ポリアリーレンスルフィドを原料に用いているため使用するモノマー量を低減でき、そのためモノマーに対する環式ポリアリーレンスルフィドの収率が向上し、工業的な実現性が期待できるが、反応容器容積あたりに得られる環式ポリアリーレンスルフィドは同様に少なく、収量の向上が望まれていた。
類似の方法として、少なくとも線状ポリアリーレンスルフィド、スルフィド化剤、および有機極性溶媒含む反応混合物を加熱して反応を行い、次いで得られた反応混合物にジハロゲン化芳香族化合物を追加して、反応混合物中の硫黄成分1モルに対して1.25リットル以上の有機極性溶媒中で加熱して反応を行う方法が開示されている(例えば特許文献5参照。)。この方法でも線状ポリアリーレンスルフィドを原料に用いているため使用するモノマー量を低減できるが、反応混合物の希釈およびジハロゲン化芳香族化合物の添加と工程が多段階で操作が煩雑である上、反応容器容積あたりに得られる環式ポリアリーレンスルフィドは少なく、更なる高効率化が望まれていた。
ポリアリーレンスルフィドを得る方法として、アルカリ金属硫化物およびアルカリ金属水流化物から選ばれる少なくとも1種の硫黄源、ジハロゲン化芳香族化合物、ならびに有機極性溶媒を含む単量体混合物を、静的混合用構造物を内部に有する連続管状反応器を組み込んである重合ラインに供給し、単量体混合物を重合させながら通過させる方法が開示されている(例えば特許文献6参照。)。この方法はポリアリーレンスルフィドの製造コストを抑制することを目的としており、環式ポリアリーレンスルフィドの製造については何ら言及されていない。また、この方法は硫黄源の硫黄成分1モルに対して1.25リットル未満の溶媒中で行うため、仮に環式ポリアリーレンスルフィドが生成しても収率が低いことが推測され、環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法として効率的ではなかった。
特許第3200027号公報 (特許請求の範囲) 米国特許第5869599号公報 (第14頁) 特開2009−30012号公報 (特許請求の範囲) 国際公開第2008/105438号 (特許請求の範囲) 特開2011−68885号公報 (特許請求の範囲) 特開2008−285596公報 (特許請求の範囲)
Polymer,vol.37,No.14,p.3111-3112,1996
本発明は、上記課題の少なくとも一部を解決し、環式ポリアリーレンスルフィドを経済的且つ簡易な方法で効率よく製造する方法を提供することを課題とする。
本発明の実施形態は、上記課題の少なくとも一部を解決するため、以下に挙げる構成の少なくとも一部を有する。
[1]少なくともスルフィド化剤、ジハロゲン化芳香族化合物および有機極性溶媒を含む原料混合物(a)を加熱して反応させて、環式ポリアリーレンスルフィドを製造する方法であって、原料混合物(a)から生じた反応生成物を含む反応容器内の反応混合物(b)へ原料混合物(a)を供給する操作(A)と、前記反応容器内の反応混合物(b)の一部を前記反応容器から抜き出す操作(B)と、前記反応容器内を加熱する操作(C)とを、それぞれ継続的に行い、前記反応混合物(b)中の前記有機極性溶媒の量が、前記反応混合物(b)中の硫黄成分1モルに対して1.25リットル以上、50リットル以下である環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法。
]前記反応容器内の反応混合物(b)中の硫黄成分量およびアリーレン単位量のそれぞれと、有機極性溶媒量との関係を一定に維持する前記[1]に記載の環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法。
]前記操作(A)および前記操作(B)を同時に行う前記[1]または[2]に記載の環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法。
]前記操作(A)および前記操作(B)を連続的に行う前記[1]または[2]に記載の環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法。
]前記反応容器内の反応混合物(b)の量を一定に維持する前記[1]から[]のいずれか1項に記載の環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法。
]前記反応容器内の反応混合物(b)中の未反応のスルフィド化剤およびジハロゲン化芳香族化合物の濃度をそれぞれ、前記原料混合物(a)中のスルフィド化剤およびジハロゲン化芳香族化合物の各濃度の30%以下に維持し、かつ、前記反応混合物(b)1キログラム当たりに含まれる未反応のスルフィド化剤およびジハロゲン化芳香族化合物を、それぞれ0.15モル以下に維持する前記[1]から[]のいずれか1項に記載の環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法。
]前記操作(B)によって前記反応容器から抜き出した反応混合物(b)を加熱する操作(D)をさらに行なう前記[1]から[]のいずれか1項に記載の環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法。
]前記操作(C)における加熱を常圧における還流温度を超える温度で行う前記[1]から[]のいずれか1項に記載の環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法。
]前記ジハロゲン化芳香族化合物がジクロロベンゼンである前記[1]から[]のいずれか1項に記載の環式ポアリーレンスルフィドの製造方法。
10]前記スルフィド化剤がアルカリ金属硫化物である前記[1]から[]のいずれか1項に記載の環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法。
11]前記原料混合物(a)は線状ポリアリーレンスルフィドを含む前記[1]から[10]のいずれか1項に記載の環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法。
12]予め前記原料混合物(a)を回分式で反応させて前記反応混合物(b)を得た後に、前記操作(A)および前記操作(B)を開始する前記[1]から[11]のいずれか1項に記載の環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法。
13]前記操作(B)において遠心ポンプを使用して前記反応混合物(b)の抜き出し量を調整する前記[1]〜[12]のいずれか1項に記載の環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法。
14]前記反応容器には、該反応容器に接続されポンプを用いて前記反応容器との間で前記反応混合物(b)を循環させる循環ラインが設けられており、前記操作(B)では、前記循環ラインを介して前記反応容器から前記反応混合物(b)を抜き出す前記[1]〜[13]のいずれか1項に記載の環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法。
15]前記反応容器が、該反応容器に接続されて前記操作(A)で前記反応容器に前記原料混合物(a)を供給する供給容器、および/または前記反応容器に接続されて前記操作(B)で前記反応容器から抜き出した前記反応混合物(b)が供給される受け容器と、均圧ラインで連結されて均圧化されている前記[1]〜[14]のいずれか1項に記載の環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法。
本発明によれば、環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法が提供でき、より詳しくは環式ポリアリーレンスルフィドを経済的且つ簡易な方法で効率よく製造する方法を提供できる。
特に、本発明の方法を採用することにより、環式ポリアリーレンスルフィドを高生成率で得ることができる。
反応装置の構成の概要を表わす説明図である。
以下に、本発明の実施の形態を説明する。
(1)スルフィド化剤
本発明の実施形態で用いられるスルフィド化剤とは、ジハロゲン化芳香族化合物にスルフィド結合を導入できるもの、およびアリーレンスルフィド結合に作用してアリーレンチオラートを生成するものであればよい。スルフィド化剤としては、例えばアルカリ金属硫化物、アルカリ金属水硫化物、および硫化水素が挙げられる。
アルカリ金属硫化物の具体例としては、例えば硫化リチウム、硫化ナトリウム、硫化カリウム、硫化ルビジウム、硫化セシウム、およびこれらの内の2種以上の混合物を挙げることができる。なかでも硫化リチウムおよび/または硫化ナトリウムが好ましく、硫化ナトリウムがより好ましく用いられる。これらのアルカリ金属硫化物は、水和物または水性混合物として、あるいは無水物の形で用いることができる。なお、水性混合物とは、水溶液、もしくは水溶液と固体成分の混合物、もしくは水と固体成分の混合物のことをさす。一般的に入手できる安価なアルカリ金属硫化物は水和物または水性混合物であるので、このような形態のアルカリ金属硫化物を用いることが好ましい。
アルカリ金属水硫化物の具体例としては、例えば水硫化リチウム、水硫化ナトリウム、水硫化カリウム、水硫化ルビジウム、水硫化セシウムおよびこれらから選択される2種以上の混合物を挙げることができる。なかでも水硫化リチウムおよび/または水硫化ナトリウムが好ましく、水硫化ナトリウムがより好ましく用いられる。
また、アルカリ金属水硫化物とアルカリ金属水酸化物から、反応系の中で生成されるアルカリ金属硫化物も用いることができる。また、あらかじめアルカリ金属水硫化物とアルカリ金属水酸化物を接触させて調製したアルカリ金属硫化物を用いることもできる。これらのアルカリ金属水硫化物及びアルカリ金属水酸化物は、水和物、水性混合物、および無水物から選択される化合物の形で用いることができる。水和物または水性混合物が、入手のし易さ、コストの観点から好ましい。
さらに、水酸化リチウム、水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属水酸化物と硫化水素から、反応系の中で生成されるアルカリ金属硫化物も用いることができる。また、あらかじめ水酸化リチウム、水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属水酸化物と硫化水素を接触させて調製したアルカリ金属硫化物を用いることもできる。硫化水素は気体状、液体状、水溶液状のいずれの形態で用いても差し障り無い。
本発明の実施形態においてスルフィド化剤の量は、脱水操作などによりジハロゲン化芳香族化合物との反応開始前にスルフィド化剤の一部損失が生じる場合には、実際の仕込み量から当該損失分を差し引いた残存量を意味するものとする。
なお、スルフィド化剤と共に、アルカリ金属水酸化物および/またはアルカリ土類金属水酸化物を併用することも可能である。アルカリ金属水酸化物の具体例としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウムおよびこれらから選択される2種以上の混合物を好ましいものとして挙げることができる。アルカリ土類金属水酸化物の具体例としては、例えば水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、および水酸化バリウムなどが挙げられ、なかでも水酸化ナトリウムが好ましく用いられる。
スルフィド化剤として、アルカリ金属水硫化物を用いる場合には、アルカリ金属水酸化物を同時に使用することが特に好ましい。この場合のアルカリ金属水酸化物の使用量は、アルカリ金属水硫化物1モルに対し0.95モル以上とすることができ、好ましくは1.00モル以上であり、更に好ましくは1.005モル以上である。また、アルカリ金属水酸化物の使用量は、アルカリ金属水硫化物1モルに対し1.50モル以下とすることができ、好ましくは1.25モル以下であり、更に好ましくは1.200モル以下である。
スルフィド化剤として硫化水素を用いる場合には、アルカリ金属水酸化物を同時に使用することが特に好ましい。この場合のアルカリ金属水酸化物の使用量は、硫化水素1モルに対し2.0モル以上とすることができ、好ましくは2.01モル以上であり、更に好ましくは2.04モル以上である。また、アルカリ金属水酸化物の使用量は、硫化水素1モルに対し3.0モル以下とすることができ、好ましくは2.50モル以下であり、更に好ましくは2.40モル以下である。
(2)ジハロゲン化芳香族化合物
本発明の実施形態で使用されるジハロゲン化芳香族化合物とは、芳香環の二価基であるアリーレン基と、2つのハロゲノ基とを有する芳香族化合物である。ジハロゲン化芳香族化合物1モルは、アリーレン単位1モルとハロゲノ基2モルを有している。たとえば、アリーレン基としてベンゼン環の二価基であるフェニレン基を有すると共に2つのハロゲノ基を有する化合物として、p−ジクロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、m−ジクロロベンゼン、p−ジブロモベンゼン、o−ジブロモベンゼン、m−ジブロモベンゼン、1−ブロモ−4−クロロベンゼン、および1−ブロモ−3−クロロベンゼンなどのジハロゲン化ベンゼンを挙げることができる。さらに、ジハロゲン化芳香族化合物としては、1−メトキシ−2,5−ジクロロベンゼン、1−メチル−2,5−ジクロロベンゼン、1,4−ジメチル−2,5−ジクロロベンゼン、1,3−ジメチル−2,5−ジクロロベンゼン、および3,5−ジクロロ安息香酸などのハロゲン基以外の置換基をも含む化合物を挙げることができる。なかでも、p−ジクロロベンゼンに代表されるp−ジハロゲン化ベンゼンを主成分にするジハロゲン化芳香族化合物が好ましい。特に好ましくは、p−ジクロロベンゼンを80〜100モル%含むものであり、さらに好ましくは90〜100モル%含むものである。また、環式ポリアリーレンスルフィド(以下、環式PASとも呼ぶ)共重合体を得るために異なる2種以上のジハロゲン化芳香族化合物を組み合わせて用いることも可能である。
(3)有機極性溶媒
本発明の実施形態の環式PASの製造においては、反応溶媒として有機極性溶媒を用いるが、なかでも有機アミド溶媒を用いるのが好ましい。具体例としては、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、N−シクロヘキシル−2−ピロリドンなどのN−アルキルピロリドン類、N−メチル−ε−カプロラクタムなどのカプロラクタム類、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ヘキサメチルリン酸トリアミドなどに代表されるアプロチック有機溶媒、及びこれらの混合物などが、反応の安定性が高いために好ましく使用される。これらのなかでもN−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンが好ましく用いられる。
(4)環式ポリアリーレンスルフィド
本発明の実施形態における環式ポリアリーレンスルフィドとは、式−(Ar−S)−の繰り返し単位を主要構成単位とする環式化合物であり、好ましくは当該繰り返し単位を80モル%以上含有する下記一般式(A)のごとき化合物が例示できる。
Figure 0005768929
ここでArはアリーレン基であり、下記の式(B)〜式(M)などであらわされる単位を例示できるが、なかでも式(B)〜式(K)が好ましく、式(B)及び式(C)がより好ましく、式(B)が特に好ましい。
Figure 0005768929
(ただし、式中のR1,R2は水素、炭素数1から6のアルキル基、炭素数1から6のアルコキシ基、ハロゲン基から選ばれた置換基であり、R1とR2は同一でも異なっていてもよい。)
Figure 0005768929
(ただし、式中のR1,R2は水素、炭素数1から6のアルキル基、炭素数1から6のアルコキシ基、ハロゲン基から選ばれた置換基であり、R1とR2は同一でも異なっていてもよい。)
Figure 0005768929
(ただし、式中のR1,R2は水素、炭素数1から6のアルキル基、炭素数1から6のアルコキシ基、ハロゲン基から選ばれた置換基であり、R1とR2は同一でも異なっていてもよい。)。
なお、環式ポリアリーレンスルフィドは、上記式(B)〜式(M)などの繰り返し単位を含むランダム共重合体、ブロック共重合体及びそれらの混合物のいずれかであってもよい。本発明の実施形態の環式ポリアリーレンスルフィドの代表的なものとして、環式ポリフェニレンスルフィド、環式ポリフェニレンスルフィドスルホン、環式ポリフェニレンスルフィドケトン、これらが含まれる環式ランダム共重合体、環式ブロック共重合体及びそれらの混合物などが挙げられる。本発明の実施形態の環式ポリアリーレンスルフィドとしては、主要構成単位としてp−フェニレンスルフィド単位
Figure 0005768929
を80モル%以上含有する環式ポリフェニレンスルフィドが好ましく、90モル%以上含有する環式ポリフェニレンスルフィドが特に好ましい。
環式ポリアリーレンスルフィドの前記式(A)中の繰り返し数mに特に制限はないが、mは4〜50であることが好ましく、4〜30がより好ましく、4〜25が更に好ましい。mを上記範囲とすることで、環式ポリアリーレンスルフィドの溶融温度が過剰に上昇することを抑制できる。後で述べる様に環式ポリアリーレンスルフィドを含有するポリアリーレンスルフィドプレポリマーを原料として高分子量のポリアリーレンスルフィド(以下、ポリアリーレンスルフィドプレポリマーを原料として得られる高分子量のポリアリーレンスルフィドを、単にポリアリーレンスルフィドまたはPASとも呼ぶ)を製造する場合には、このポリアリーレンスルフィドプレポリマーの加熱を、ポリアリーレンスルフィドプレポリマーが溶融する温度で行うことが望ましく、これにより効率良くポリアリーレンスルフィドが得られることとなる。
環式ポリアリーレンスルフィドの繰り返し数mが前記範囲の場合には、環式PASの溶融温度が275℃以下、好ましくは260℃以下、より好ましくは255℃以下になる傾向がある。そのため、このような環式PASを含むポリアリーレンスルフィドプレポリマーの融解温度もこれに応じて低温化する傾向がある。従って、環式PASの繰り返し数mの範囲が前述の範囲の場合には、ポリアリーレンスルフィドの製造に際し、ポリアリーレンスルフィドプレポリマーの加熱温度を低く設定することが可能となるため望ましい。なお、環式PAS及びポリアリーレンスルフィドの融解温度とは、示唆走査熱量計にて、50℃で1分保持後に、走査速度20℃/分で360℃まで昇温した際に観察される吸熱ピークのピーク温度を示す。
また、本発明の実施形態における環式ポリアリーレンスルフィドは、単一の繰り返し数を有する単独化合物と、異なる繰り返し数を有する環式ポリアリーレンスルフィドの混合物とのいずれでもよい。ただし、異なる繰り返し数を有する環式ポリアリーレンスルフィドの混合物の方が単一の繰り返し数を有する単独化合物よりも溶融解温度が低く、融解に要する熱量も小さくなる傾向があるため好ましい。
また、本発明の実施形態の環式ポリアリーレンスルフィドにおいて、環式ポリアリーレンスルフィドの総量に対する前記式(A)の繰り返し数mが6である環式PASの含有量の割合([m=6の環式PAS(重量)]/[環式PAS混合物(重量)]×100(%))は、50重量%未満であることが好ましく、40重量%未満がより好ましく、30重量%未満がさらに好ましい。例えば特許文献特開平10−77408号公報には、Arがパラフェニレンスルフィド単位であって繰り返し数mが6の環式PASであるシクロヘキサ(p−フェニレンスルフィド)を得る方法が開示されている。このm=6の環式PASは、348℃に融解ピーク温度を有するとされ、このような環式PASを加工する際には極めて高い加工温度が必要となる。従って、環式ポリアリーレンスルフィドを含むポリアリーレンスルフィドプレポリマーを用いてポリアリーレンスルフィドを製造する場合において、加熱に必要な温度をより低い温度にしうるとの観点から、本発明の実施形態の環式PASにおいては、特に前記式(A)のmが6である環式PASの含有量を先述の範囲とすることが好ましい。
同様にポリアリーレンスルフィドを製造する場合における溶融加工温度をより低い温度にしうるとの観点から、本発明の実施形態では、ポリアリーレンスルフィドを製造する原料中の環式PASとして、異なる繰り返し数を有する環式ポリアリーレンスルフィドの混合物を用いることが好ましいことは前述したとおりである。ここで、環式PAS混合物に含まれる環式PASのうち前記式(A)のmが4〜13の環式PASの総量を100重量%とした場合に、mが5〜8の環式PASをそれぞれ5重量%以上含む環式PAS混合物を用いることが好ましく、mが5〜8の環式PASをそれぞれ7重量%以上含む環式PAS混合物を用いることがより好ましい。このような組成比の環式PAS混合物は特に融解ピーク温度が低くなり、且つ融解熱量も小さくなる傾向にあり、溶融温度の低下の観点で特に好ましい。
なお、環式PAS混合物における環式ポリアリーレンスルフィドの総量に対する繰り返し数mの異なる環式PASの各々の含有率は、環式PAS混合物をUV検出器を具備した高速液体クロマトグラフィーで成分分割した際に環式PASに帰属される全ピーク面積に対する、所望するm数を有する環式PAS単体に帰属されるピーク面積の割合として求めることができる。なお、この高速液体クロマトグラフィーで成分分割された各ピークの定性は、各ピークを分取液体クロマトグラフィーで分取し、赤外分光分析における吸収スペクトルや質量分析を行うことで可能である。
(5)線状ポリアリーレンスルフィド
本発明の実施形態における線状ポリアリーレンスルフィド(以下、線状PASと略する場合もある)とは、式、−(Ar−S)−の繰り返し単位を主要構成単位とする好ましくは当該繰り返し単位を80モル%以上含有する線状のホモポリマーまたは線状のコポリマーである。Arとしては前記の式(B)〜式(M)などであらわされる単位などがあるが、なかでも式(B)が特に好ましい。
この繰り返し単位を主要構成単位とする限り、下記の式(N)〜式(Q)などで表される少量の分岐単位または架橋単位を含むことができる。これら分岐単位または架橋単位の共重合量は、−(Ar−S)−であらわされる主要構成単位1モルに対して0〜1モル%の範囲であることが好ましい。
Figure 0005768929
また、本発明の実施形態における線状PASは上記繰り返し単位を含むランダム共重合体、ブロック共重合体及びそれらの混合物のいずれかであってもよい。
これらの代表的なものとして、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンスルフィドスルホン、ポリフェニレンスルフィドケトン、これらのランダム共重合体、これらのブロック共重合体及びそれらの混合物などが挙げられる。特に好ましい線状PASとしては、ポリマーの主要構成単位としてp−フェニレンスルフィド単位
Figure 0005768929
を80モル%以上、望ましくは90モル%以上含有するポリフェニレンスルフィド(以下、PPSと略すこともある)、ポリフェニレンスルフィドスルホン、およびポリフェニレンスルフィドケトンが挙げられる。
本発明の実施形態の環式PASの製造方法においては、線状PASを原料として用いることができる。その場合に使用する線状PASの溶融粘度に特に制限は無いが、一般的な線状PASの溶融粘度としては0.1〜1000Pa・s(300℃、剪断速度1000/秒)の範囲が例示でき、0.1〜500Pa・sの範囲が例示できる。また、線状PASの分子量にも特に制限は無く、一般的なPASを用いることが可能である。この様なPASの重量平均分子量は5,000以上とすることができ、7,500以上が好ましく、10,000以上がより好ましい。また、PASの重量平均分子量は1,000,000以下とすることができ、500,000以下が好ましく、100,000以下がより好ましい。なお、前記線状PASの重量平均分子量は標準ポリスチレン換算として求めた値である。一般に重量平均分子量が低いほど有機極性溶媒への溶解性が高くなるため、重量平均分子量が低いほど反応に要する時間が短くできるという利点があるが、前述した範囲であれば本質的な問題なく使用が可能である。
このような線状PASの製造方法は特に限定はされず、いかなる製法によるものでも使用することが可能である。例えば特公昭45−3368号公報、特公昭52−12240号公報および特公昭63−3375号公報に代表される公知の文献に記載の方法により線状PASを製造することができる。すなわち、少なくとも1個の核置換ハロゲンを含有する芳香族化合物またはチオフェンとアルカリ金属モノスルフィドとを、極性有機溶媒中で高められた温度において反応せしめる方法により線状PASを製造することができる。また、好ましくは例えば特開平05−163349号公報に代表される公知の文献に記載の方法により線状PASを製造することができる。すなわち、スルフィド化剤とジハロゲン化芳香族化合物とを有機極性溶媒中で接触させることによって線状PASを得ることができる。またこれら方法により製造されたPASを用いた成形品や成形屑、あるいはこれら方法により製造されたPAS由来の廃プラスチックやオフスペック品なども幅広く線状PASとして使用することが可能である。
また、一般的に環式化合物を製造するための反応は、環式化合物の生成と線状化合物の生成の競争反応であるため、環式ポリアリーレンスルフィドの製造を目的とする方法においては、目的物の環式ポリアリーレンスルフィド以外に線状ポリアリーレンスルフィドが少なからず副生物として生成する。本発明の実施形態では、この様な副生線状ポリアリーレンスルフィドも問題なく原料に用いることが可能である。例えば前述した特許文献3に記載された環式PASの製造方法、すなわち、スルフィド化剤とジハロゲン化芳香族化合物とをスルフィド化剤の硫黄成分1モルに対して1.25リットル以上の有機極性溶媒を用いて加熱し、得られた環式ポリアリーレンスルフィドと線状ポリアリーレンスルフィドとを含むポリアリーレンスルフィド混合物から環式ポリアリーレンスルフィドを分離し、得られた線状ポリアリーレンスルフィドを原料に用いる方法は、特に好ましい方法といえる。また、前述した特許文献4に記載された環式PASの製造方法、すなわち、線状ポリアリーレンスルフィド、スルフィド化剤、およびジハロゲン化芳香族化合物を反応混合物中の硫黄成分1モルに対して1.25リットル以上の有機極性溶媒を用いて加熱し、得られた環式ポリアリーレンスルフィドと線状ポリアリーレンスルフィドを含むポリアリーレンスルフィド混合物から環式ポリアリーレンスルフィドを分離し、得られた線状ポリアリーレンスルフィドを原料に用いる方法も好ましい方法といえる。
さらに、少なくともスルフィド化剤、ジハロゲン化芳香族化合物および有機極性溶媒を含む原料混合物(a)を加熱して反応させて環式ポリアリーレンスルフィドを製造する方法であって、原料混合物(a)から生じる反応生成物を含む反応容器内の反応混合物(b)へ原料混合物(a)を供給する操作(A)と、同反応容器内の反応混合物(b)の一部を反応容器から抜き出す操作(B)と、前記反応容器内を加熱する操作(C)とを、それぞれ継続的に行なう環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法により得られた環式ポリアリーレンスルフィドと線状ポリアリーレンスルフィドを含むポリアリーレンスルフィド混合物から、環式ポリアリーレンスルフィドを分離することによって得られた線状ポリアリーレンスルフィドを用いることは、ことさら好ましい方法である。
従来、例えば環式ポリアリーレンスルフィドの製造において副生する線状化合物、すなわち低分子量の線状ポリアリーレンスルフィドは、利用価値の無いものとして廃棄されていた。従って環式化合物の製造においては、この副生線状化合物に起因する廃棄物量が多い、また原料モノマーに対する収率が低い、という課題があった。本発明の実施形態ではこの副生線状ポリアリーレンスルフィドを原料として使用することが可能であり、このことは廃棄物量の著しい低減や原料モノマーに対する収率の飛躍的な向上を可能とするという観点で意義の大きいものである。
なお、環式PASの製造に用いる線状ポリアリーレンスルフィドの形態に特に制限はなく、乾燥状態の粉末状、粉粒状、粒状、ペレット状でもよい。線状ポリアリーレンスルフィドは、反応溶媒である有機極性溶媒を含む状態で用いることも可能であり、また、本質的に反応を阻害しない第三成分を含む状態で用いることも可能である。この様な第三成分としては例えば無機フィラーやアルカリ金属ハロゲン化物が例示できる。ここで、アルカリ金属ハロゲン化物としては、アルカリ金属(すなわちリチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウムおよびセシウム)とハロゲン(すなわちフッ素、塩素、臭素、ヨウ素およびアスタチン)とから構成されるいかなる組み合わせのものをも含み、具体例としては塩化リチウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、臭化リチウム、臭化ナトリウム、臭化カリウム、ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、およびフッ化セシウムなどが例示できる。前述したスルフィド化剤とジハロゲン化芳香族化合物との反応によって生じるアルカリ金属ハロゲン化物が好ましく例示できる。一般的に入手が容易なスルフィド化剤およびジハロゲン化芳香族化合物の組み合わせから生じるアルカリ金属ハロゲン化物としては、塩化リチウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、臭化リチウム、臭化ナトリウム、臭化カリウムおよびヨウ化ナトリウムが例示でき、塩化ナトリウム、塩化カリウム、臭化ナトリウム、および臭化カリウムが好ましいものとして例示でき、塩化ナトリウムがより好ましいものである。また、無機フィラーやアルカリ金属ハロゲン化物を含む樹脂組成物の形態の線状ポリアリーレンスルフィドを用いることも可能である。
本発明の実施形態の環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法においては、上記のとおり線状PASが副生成物として生成する。本発明の実施形態において生成する線状PASの溶融粘度に特に制限は無いが、一般的な線状PASの溶融粘度としては0.1〜1000Pa・s(300℃、剪断速度1000/秒)の範囲が例示でき、0.1〜500Pa・sの範囲が生成しやすい傾向にある範囲といえる。また、線状PASの分子量に特に制限はないが、一般的なPASの重量平均分子量の下限としては1,000以上が例示でき、本発明の実施形態の環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法で生成する線状PASは2,500以上である傾向あり、5,000以上である傾向がより強い。また、一般的なPASの重量平均分子量の上限としては1,000,000以下が例示でき、本発明の実施形態の環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法で生成する線状PASは500,000以下である傾向があり、100,000以下である傾向がより強い。なお、前記線状PASの重量平均分子量は標準ポリスチレン換算として求めた値である。一般に重量平均分子量が高いほど、線状のPASとしての特性が強く発現するため、後述する環式PASと線状PASの分離においては分離が行いやすくなる傾向があるが、前述した範囲であれば本質的な問題なく使用が可能である。
(6)環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法
本発明の実施形態では、少なくともスルフィド化剤、ジハロゲン化芳香族化合物および有機極性溶媒を含む原料混合物を加熱して反応させて環式ポリアリーレンスルフィドを製造する方法において、原料混合物(a)から生じる反応生成物を含む反応容器内の反応混合物(b)へ原料混合物(a)を供給する操作(A)と、同反応容器内の反応混合物(b)の一部を反応容器から抜き出す操作(B)と、前記反応容器内を加熱する操作(C)とを、継続的に行うことが特徴であり、これにより高生成率で一定品質の環式ポリアリーレンスルフィドを継続して得られることから高い生産性の実現が可能である。以下、本発明の実施形態に係る基質濃度、原料混合物(a)、反応混合物(b)、操作(A)および操作(B)、およびその他の実施形態について順に詳述する。
(6−1)基質濃度
本願明細書において基質濃度とは、以下に詳述するとおり、原料混合物(a)または反応混合物(b)(以下、合わせて反応混合物等とも表記する)中の硫黄成分およびアリーレン単位のそれぞれの量(モル数)と有機極性溶媒の量との関係により表される。つまり、本願明細書において、硫黄成分の基質濃度とは、反応混合物等中の硫黄成分当たりの有機極性溶媒量をいい、アリーレン単位の基質濃度とは、反応混合物等中のアリーレン単位当たりの有機極性溶媒量をいう。
すなわち、硫黄成分の基質濃度は、反応混合物等中の硫黄成分1モル当たりの有機極性溶媒の量で定義する。反応混合物等中の硫黄成分のモル量とは、反応混合物等中に存在する硫黄原子のモル量と同義であり、例えば反応混合物等中にアルカリ金属硫化物が1モル存在し、他の硫黄を含む成分が存在しない場合、反応混合物等に含まれる硫黄成分は1モルに相当する。また、反応混合物等中にアルカリ金属硫化物が0.5モルとアリーレンスルフィド単位が0.5モル存在する場合も、反応混合物等に含まれる硫黄成分は1モルに相当する。
したがって、原料混合物(a)、すなわち原料として仕込んだスルフィド化剤およびジハロゲン化芳香族化合物の反応が進行していない段階においては、硫黄原子を有する原料がスルフィド化剤のみの場合は、原料混合物(a)に含まれる硫黄成分とはスルフィド化剤に由来する硫黄成分のことをさす。また、反応混合物(b)、もしくは線状ポリアリーレンスルフィドを含む原料混合物(a)においては、反応混合物等中に含まれるスルフィド化剤に由来する硫黄成分と、反応混合物等中に存在するアリーレンスルフィド化合物に由来する硫黄成分の合計値のことをさす。
一般にアリーレンスルフィド化合物は、スルフィド化剤、ジハロゲン化芳香族化合物および/または線状ポリアリーレンスルフィドが反応することにより生成する。そのため、反応混合物中では、反応の進行にしたがって、消費したスルフィド化剤の量に相当するアリーレンスルフィド単位が新たに生成することとなる。すなわち、反応混合物中に含まれるスルフィド化剤について除去や欠損や、追加などがない限り、反応の進行具合に関わらず反応混合物に含まれる硫黄成分の量は仕込み段階と変わらないといえる。したがって、反応混合物から有機極性溶媒の除去や欠損や、追加などもない場合、反応が進行した段階であっても硫黄成分の基質濃度は変わらないといえる。
本発明の実施形態においては、原料混合物(a)から生じる反応生成物を含む反応容器内の反応混合物(b)へ原料混合物(a)を供給する操作(A)、および同反応容器内の反応混合物(b)の一部を反応容器から抜き出す操作(B)、の各操作を継続的に行うことを特徴としているため、反応混合物(b)中の硫黄成分および有機極性溶媒の量は変動しうるが、反応混合物(b)中の硫黄成分または有機極性溶媒についてそれらの組成が一方に偏よる変動を来すような除去や欠損や、追加などがない限り、前記の各操作または反応の進行具合に関わらず反応混合物(b)に含まれる硫黄成分の基質濃度は常に変わらないといえる。
反応混合物等中の硫黄成分の量は、スルフィド化剤に由来する硫黄成分量および反応混合物等中に存在するアリーレンスルフィド化合物の量をそれぞれ定量して求めることも可能である。ここで反応混合物等中のスルフィド化剤の量は、後述するイオンクロマトグラフィー手法で求めることができる。また、反応混合物等中のアリーレンスルフィド化合物の量は、反応混合物等の一部を大過剰の水に分散させることで水に不溶な成分を回収し、ついで乾燥することで得られる固形分の量から求めることが可能である。
本発明の実施形態の環式PASの製造における硫黄成分の基質濃度を上記定義で示すと、反応混合物等中の硫黄成分1モルに対する有機極性溶媒の量は、例えば環式PASの生成効率の観点からは1.25リットル以上が好ましく、1.5リットル以上がより好ましく、2リットル以上がさらに好ましい。また、反応混合物等中の硫黄成分1モルに対する有機極性溶媒の量は、例えば反応容器容積当たりの製造効率の観点からは50リットル以下が好ましく、20リットル以下がより好ましく、15リットル以下が更に好ましい。なお、ここでの溶媒量は、常温常圧下における溶媒の体積で示す。
硫黄成分1モル当たりの有機極性溶媒の使用量が1.25リットルより少ない場合、スルフィド化剤およびジハロゲン化芳香族化合物の反応によって生成する環式PASの生成率が極めて低くなる一方で、環式PASの生成に付随して副生する線状PASの生成率が高まるため、単位原料当たりの環式PASの生産性に劣る。
なお、環式PASの生成率とは、後で詳述する環式PASの製造において、反応混合物(b)中の全硫黄成分1モルあたりの環式PASに含まれる硫黄成分の比率のことである。すなわち、環式PASの生成率が100%であれば、反応混合物(b)中の硫黄成分の全てが環式ポリアリーレンスルフィドとして存在していること意味する。
硫黄成分1モル当たりの有機極性溶媒量を多くすることは、硫黄含有原料をより効率よく目的物(環式PAS)に転化させるとの観点で好ましい。ただし、環式PASの製造に際して、極めて高い生成率を達成するために使用する有機極性溶媒量を極端に多くすると、反応混合物(b)の単位体積当たりの環式PASの生成量が低下する傾向に有り、また、反応に要する時間が長時間化する傾向がある。更に、環式PASを単離回収する操作を行う場合には、有機極性溶媒量が多すぎると、反応混合物(b)中の単位量当たりの環式ポリアリーレンスルフィド量が微量になるため、回収操作が困難となる。環式ポリアリーレンスルフィドの生成率と生産性を両立するとの観点で、前記した有機極性溶媒量の範囲とする事が好ましい。
なお、一般的な環式化合物の製造における溶媒の使用量は極めて多い場合が多く、本発明の実施形態の好ましい使用量範囲では効率よく環式化合物を得られないことが多い。本発明の実施形態では一般的な環式化合物製造の場合と比べて、溶媒使用量が比較的少ない条件下、即ち前記した好ましい溶媒使用量上限値以下の場合でも、効率よく環式PASが得られる。この理由は現時点において定かではないが、本発明の好ましい実施形態の方法では、反応混合物の還流温度を超える温度にて反応を行うため、極めて反応効率が高く原料の消費速度が高いことが、環式化合物の生成に好適に作用しているものと推測している。
また、アリーレン単位の基質濃度は、上記硫黄成分と同様に反応混合物等中のアリーレン単位1モル当たりの有機極性溶媒の量で定義する。反応混合物等中のアリーレン単位のモル量とは、反応混合物等中に存在するアリーレン単位のモル量と同義であり、例えば反応混合物等中にジハロゲン化芳香族化合物が1モル存在し、他のアリーレン単位を含む成分が存在しない場合、反応混合物等に含まれるアリーレン単位は1モルに相当する。また、反応混合物等中にジハロゲン化芳香族化合物が0.5モルとアリーレンスルフィド単位が0.5モル存在する場合も、反応混合物等に含まれるアリーレン単位は1モルに相当する。
したがって、原料混合物(a)、すなわち原料として仕込んだスルフィド化剤およびジハロゲン化芳香族化合物の反応が進行していない段階においては、アリーレン単位を有する原料がジハロゲン化芳香族化合物のみの場合は、原料混合物(a)に含まれるアリーレン単位とはジハロゲン化芳香族化合物に由来するアリーレン単位のことをさす。また、反応混合物(b)、もしくは線状ポリアリーレンスルフィドを含む原料混合物(a)においては、反応混合物等中に含まれるアリーレン単位とは、反応混合物等中に含まれるジハロゲン化芳香族化合物に由来するアリーレン単位と、反応混合物等中に存在するアリーレンスルフィド化合物に由来するアリーレン単位の合計値のことをさす。
一般にアリーレンスルフィド化合物は、スルフィド化剤、ジハロゲン化芳香族化合物および/または線状ポリアリーレンスルフィドが反応することにより生成する。そのため、反応の進行にしたがって、消費したジハロゲン化芳香族化合物の量に相当するアリーレンスルフィド化合物が新たに生成することとなる。すなわち、反応混合物中に含まれるアリーレン単位について除去や欠損や、追加などがない限り、反応の進行具合に関わらず反応混合物中に含まれるアリーレン単位の量は仕込み段階と変わらないといえる。したがって、反応混合物から有機極性溶媒の除去や欠損や、追加などもない場合、反応が進行した段階であってもアリーレン単位の基質濃度は変わらないといえる。
本発明の実施形態においては、原料混合物(a)から生じる反応生成物を含む反応容器内の反応混合物(b)へ原料混合物(a)を供給する操作(A)、および同反応容器内の反応混合物(b)の一部を反応容器から抜き出す操作(B)、の各操作を継続的に行うことを特徴としているため、反応混合物(b)中のアリーレン成分および有機極性溶媒の量は変動しうるが、反応混合物(b)中のアリーレン成分および有機極性溶媒についてそれらの組成が一方に偏よる変動を来すような除去や欠損や、追加などがない限り、前記の各操作または反応の進行具合に関わらず反応混合物(b)に含まれるアリーレン単位の基質濃度は常に変わらないといえる。
反応混合物等中のアリーレン単位の量は、ジハロゲン化芳香族化合物に由来するアリーレン単位量および反応混合物等中に存在するアリーレンスルフィド化合物の量をそれぞれ定量して求めることも可能である。ここで反応混合物等中のアリーレン単位の量は、後述するガスクロマトグラフィー手法で求めることができる。また、反応混合物等中のアリーレンスルフィド化合物の量は、反応混合物等の一部を大過剰の水に分散させることで水に不溶な成分を回収し、ついで乾燥することで得られる固形分の量から求めることが可能である。
既述したように、本発明の実施形態の環式PASの製造におけるアリーレン単位の基質濃度は、反応混合物等中のアリーレン単位1モル当たりの有機極性溶媒の量として規定される。本発明の実施形態の環式PASの製造におけるアリーレン単位の基質濃度を上記定義で示すと、反応混合物等中のアリーレン単位1モルに対する有機極性溶媒の量は、0.63リットル以上が好ましく、1.00リットル以上がより好ましく、1.67リットル以上がさらに好ましい。また、55リットル以下が好ましく、22リットル以下がより好ましく、16リットル以下がさらに好ましい。
本発明の実施形態の環式PASの製造において、反応混合物等におけるアリーレン単位の基質濃度は、前記の硫黄成分の基質濃度を勘案して決めることが好ましい。反応混合物等中のアリーレン単位は、反応混合物等中の硫黄成分1モルに対し0.90モル以上が好ましく、0.92モル以上がより好ましく、0.95モル以上がさらに好ましい。また、反応混合物等中の硫黄成分1モルに対するアリーレン単位は、2.00モル以下が好ましく、1.50モル以下がより好ましく、1.20モル以下がさらに好ましい。反応混合物等中のアリーレン単位を上記範囲とすることにより、環式PASの生成率が高くなる傾向にあり、環式PASを効率よく得られる。
本発明の実施形態の環式PASの製造では、反応混合物(b)中の基質濃度を一定に維持すること、すなわち、反応混合物(b)中の硫黄成分量およびアリーレン単位量の各々と、有機極性溶媒量との関係を、一定に維持することが好ましい。ここでいう「基質濃度を一定に維持」とは、本発明の実施形態の特徴である、原料混合物(a)から生じる反応生成物を含む反応容器内の反応混合物(b)へ原料混合物(a)を供給する操作(A)、および/または同反応容器内の反応混合物(b)の一部を反応容器から抜き出す操作(B)、の各操作の実施中および実施前後において、反応混合物(b)中の基質濃度の変動幅が小さく、常に一定の範囲内にある状態のことをいう。
より具体的には、反応混合物(b)中の硫黄成分の基質濃度が一定であるとは、硫黄成分の基質濃度の変動幅が、上記各操作実施前の基質濃度を基準として±30%以内であることをいう。上記変動幅は、±20%以内がより好ましく、±15%以内が更に好ましく、±10%以内がよりいっそう好ましく、±5%以内がとりわけ好ましい。ただし、硫黄成分の基質濃度が変動しても、反応混合物(b)中の硫黄成分1モルに対する有機極性溶媒の量は、1.25リットル以上であることが好ましく、また、50リットル以下であることが好ましい。
また、反応混合物(b)中のアリーレン単位の基質濃度が一定であるとは、硫黄成分の基質濃度が定められているときに、反応混合物等中の硫黄成分1モルに対するアリーレン単位量の変動幅が、上記各操作実施前における反応混合物等中の硫黄成分1モルに対するアリーレン単位量を基準として±30%以内であることをいう。上記硫黄成分1モルに対するアリーレン単位量の変動幅は、±20%以内がより好ましく、±15%以内が更に好ましく、±10%以内がよりいっそう好ましく、±5%以内がとりわけ好ましい。
また、後述する方法によれば、原料混合物(a)と反応混合物(b)の基質濃度は実質的に同一となるため、前記の操作(A)および/または操作(B)の各操作の制御方法に関わらず、反応混合物(b)では一定の基質濃度を維持することが可能となる。反応混合物(b)中の基質濃度を上記範囲に維持することにより、環式PASの生成率と生産性の両立が達成でき環式PASを効率よく得られる。ただし、基質濃度が高濃度になるほど反応混合物(b)中の環式PASの生成率が低下し、逆に低濃度になるほど原料の消費速度が低下し反応に長時間を要する傾向にある。
(6−2)原料混合物(a)
本発明の実施形態における原料混合物(a)は、原料成分としてスルフィド化剤、ジハロゲン化芳香族化合物および有機極性溶媒を必須成分とする。原料混合物(a)は、更に線状PASを含んでいてもよく、また、前記必須成分以外に、反応を著しく阻害しない第三成分や、反応を加速する効果を有する第三成分を加えることも可能である。原料混合物(a)の組成は反応容器内に供給された時点での全原料成分の組成を基準とし、供給した原料成分全体をもって原料混合物(a)と見なす。
したがって、原料混合物(a)として反応容器内に各原料成分を全て供給できれば、その混合方法、調製方法または供給方法に特に制限はない。例えばスルフィド化剤、ジハロゲン化芳香族化合物および有機極性溶媒の各原料をそれぞれ別々に反応容器内に供給してもよく、あるいは2種以上の原料を混合した後に反応容器内に供給してもよい。また、反応混合物(b)の基質濃度を容易に一定に維持しやすいとの観点からは、少なくともスルフィド化剤、ジハロゲン化芳香族化合物および有機極性溶媒を所望の基質濃度に合わせて予め混合して調製する方法は特に好ましい方法といえる。
原料混合物(a)調製する際の有機極性溶媒の量は、原料混合物(a)中の硫黄成分1モルに対して1.25リットル以上が好ましく、1.5リットル以上がより好ましく、2リットル以上がさらに好ましい。また、硫黄成分1モルに対する有機極性溶媒量は50リットル以下が好ましく、20リットル以下がより好ましく、15リットル以下が更に好ましい。なお、ここでの溶媒量は、常温常圧下における溶媒の体積で示す。
また、原料混合物(a)を調製する際のアリーレン単位の量は、原料混合物(a)中の硫黄成分1モル当たり0.90モル以上が好ましく、0.92モル以上がより好ましく、0.95モル以上がさらに好ましい。また、硫黄成分1モル当たりのアリーレン単位の量は、2.00モル以下であることが好ましく、1.50モル以下がより好ましく、1.20モル以下が更に好ましい。
原料混合物(a)の組成を上記範囲とすることは、反応混合物(b)における前記の好ましい基質濃度を維持して効率よく環式PASを得るために好ましい方法である。また、反応混合物(b)の基質濃度を一定に維持するためには、原料混合物(a)の基質濃度も前記の好ましい基質濃度の範囲で一定に維持することが好ましい。原料混合物(a)の基質濃度が一定であるとは、基質濃度の変動幅が、変動前の基質濃度を基準として±30%以内であることをいう。上記基質濃度の変動幅は、±20%以内がより好ましく、±15%以内が更に好ましく、±10%以内がよりいっそう好ましく、±5%以内がとりわけ好ましい。
原料混合物(a)を加熱して反応させることで環式PASの製造を行うにあたっては、原料混合物(a)中の水分量を少ない状態として反応を行うことも好ましい方法と言える。これにより、反応容器内の圧力を低く保つことができる、モノマーの消費を促進でき反応に要する時間を短縮できる傾向にある、などの利点が得られる。具体的には原料混合物(a)中の好ましい水分量としては、原料混合物(a)中の硫黄成分1モルあたり5モル以下が例示でき、3モル以下が好ましい。
また、原料混合物(a)の調製に用いるスルフィド化剤や有機極性溶媒などの原料成分を予め脱水処理するなどして、原料混合物(a)中の水分量を、原料混合物(a)中の硫黄成分1モル基準で0.8モル未満、好ましくは0.7モル未満、さらに好ましくは0.6モル未満、より好ましくは0.5モル未満とすることも可能である。反応混合物中の水分量の下限はなく、0モルに近いほど好ましいが、実質的下限として反応混合物中の硫黄成分1モル当たり0.05モル以上を例示できる。水分量をこの範囲内に制御する他の利点としては、最終的に得られる反応液や反応に用いた反応器への着色物の付着が抑制できる傾向があることが挙げられる。このことは、環式PASの品質が向上するのみならず、反応器の洗浄作業が軽減されるため好ましい。
原料混合物(a)中の水分量を前記の好ましい範囲にする方法としては、例えば上記原料成分として無水または低含水量のものを用いる方法も好ましい方法として例示できる。また、上記原料成分の水分量の総和が望ましい範囲を超える場合には、原料混合物(a)を調製する前に予め脱水工程を設けて各成分の水分量を所望の範囲に減じた後に用いる方法、あるいは上記原料成分を水分量の多いまま混合して反応しながら脱水する方法を採用することも可能である。一般に、ジハロゲン化芳香族化合物および有機極性溶媒については十分に低水分量のものが比較的容易に入手可能であるのに対し、スルフィド化剤、例えばアルカリ金属硫化物については水を含む水和物または水性混合物の方が一般的により安価で入手も容易である。したがって、入手性やコストの観点からはスルフィド化剤としてこれら水和物または水性混合物を用いることが好ましいが、この場合には、ジハロゲン化芳香族化合物および有機極性溶媒の水分量が少なくても、水を含むスルフィド化剤に由来して反応混合物中の水分量が多くなる傾向にある。そのため、反応混合物中の水分量を前記の好ましい範囲に調整するためには、脱水を行う工程を設けることが望ましい。
この脱水工程における脱水方法としては水分量を調整可能な限りその方法に特に制限はないが、例えば次のような脱液法が好ましく採用される。すなわち望ましくは不活性ガス雰囲気下、常温〜150℃、好ましくは常温〜100℃の温度範囲で、少なくとも含水スルフィド化剤と有機極性溶媒とを含む混合物を調製し、常圧または減圧下で150℃以上、好ましくは170℃以上に昇温して、水を留去させる方法が例示できる。なお、上記有機極性溶媒および水分を留去させる温度の好ましい上限としては250℃である。上記脱液法において用いる有機極性溶媒の量は、スルフィド化剤の硫黄成分1モル当たり0.1リットル以上が好ましく、0.15リットル以上がより好ましく、0.2リットル以上がさらに好ましい。また、有機極性溶媒の量は、スルフィド化剤の硫黄成分1モル当たり1リットル以下が好ましく、0.8リットル以下がより好ましく、0.6リットル以下がさらに好ましい。この範囲内であれば反応に金属製容器を用いた際に容器からの金属溶出が少なくなる傾向にあり、得られる環式PAS中の金属不純物の低減が期待できる。また、脱水工程では、留去を促進するために、撹拌しながら留去を行ってもよく、望ましくは不活性ガスの気流を通じて留去を行ってもよく、また、トルエンなどの共沸成分を加えて留去を行ってもよい。あるいは、上記脱液法で用いる装置において、さらに水を選択的に留去させる目的で精留塔を設けてもよい。
上記のような脱水工程で調製した脱水成分は含水率の低いスルフィド化剤であるため、原料混合物(a)に必要な他の成分、すなわち、少なくともジハロゲン化芳香族化合物、有機極性溶媒と混合することで、含水量の少ない原料混合物(a)を調製して反応させることが可能である。
本発明の実施形態では、前記の通り原料混合物(a)中の原料成分として線状ポリアリーレンスルフィドを含んでいてもよいが、この場合に原料混合物(a)における線状ポリアリーレンスルフィドの含有量は、原料混合物(a)中の原料組成が上記の範囲にあれば特に制限はない。ただし、線状ポリアリーレンスルフィドに由来する硫黄成分の量が、線状ポリアリーレンスルフィドに由来する硫黄成分とスルフィド化剤に由来する硫黄成分の合計値、すなわち原料混合物(a)中の全硫黄成分の量の過半となることが好ましい。すなわち、反応混合物(a)中の全硫黄成分1モルに対する、反応混合物(a)中の線状ポリアリーレンスルフィドの硫黄成分の比率の下限は、0.5モル以上が好ましく、0.6モル以上がより好ましく、0.7モル以上がさらに好ましい。また、上限は、0.99モル以下が好ましく、0.95モル以下がより好ましく、0.90モル以下がさらに好ましい。線状ポリアリーレンスルフィドの含有量を上記の好ましい範囲とすれば、後述の反応混合物(b)において、原料混合物(a)中のスルフィド化剤に対する環式ポリアリーレンスルフィドの生成率が高くなる傾向にあり、原料混合物(a)の線状ポリアリーレンスルフィドとして本発明の実施形態の方法で副生する線状ポリアリーレンスルフィドを使用した際には、経済的に効率的といえる。
かくして得られる原料混合物(a)の性状は、スルフィド化剤、ジハロゲン化芳香族化合物及び有機極性溶媒の種類、また、線状PASおよび前記第三成分の有無、およびそれらの量関係等によって変化するため一意的に決まることはないが、溶液またはスラリーであることが多い。なお、ここでいうスラリーとは、固体粒子が液体に懸濁している流動体をさす。
(6−3)反応混合物(b)
本発明の実施形態の環式PASの製造方法における反応混合物(b)とは、前記の原料混合物(a)を加熱して反応させて得られる少なくとも環式PAS、線状PAS、金属ハロゲン化物および有機極性溶媒を含む反応容器内の反応混合物のことをいう。本発明の実施形態では、反応混合物(b)に対し継続的に原料混合物(a)を追加して反応させるため、反応混合物(b)はスルフィド化剤および/またはジハロゲン化芳香族化合物を含んでいてもよい。また、前記の通り反応混合物(b)の基質濃度は一定に維持するが、反応混合物(b)の成分組成は変動しうるものであり、常に一定とは限らない。
本発明の実施形態の環式PASの製造においては、後述のとおり、前記反応混合物(b)を含む反応容器内に原料混合物(a)を供給する操作(A)と、同反応容器内の反応混合物(b)の一部を反応容器から抜き出す操作(B)を継続的に行うことが特徴であり、本発明の実施形態による環式PASの製造を開始する時点を含め、反応容器内には常に反応混合物(b)が存在している。したがって、本発明の実施形態による環式PASの製造の開始点は反応容器内に反応混合物(b)を調製できた時点とする。
ここで製造開始時点の反応混合物(b)(以下、初期反応混合物と表記することもある)は、原料混合物(a)から得られたものであれば特に制限はないが、初期反応混合物中の未反応のスルフィド化剤の濃度が、原料混合物(a)中のスルフィド化剤の濃度に対し、30%以下であることが好ましく、20%以下がより好ましく、10%以下がさらに好ましく、5%以下がとりわけ好ましく、3%以下が殊更好ましい。また、原料混合物(a)中のスルフィド化剤が完全消費して初期反応混合物が得られた場合には、初期反応混合物中の未反応のスルフィド化剤の濃度は、原料混合物(a)中のスルフィド化剤の濃度に対して0%となり、理想的な状態と言える。ただし、実際反応を行う上での下限としては0.1%以上であることが多い。なお、本発明の実施形態では、未反応のスルフィド化剤の濃度は、反応混合物等(原料混合物(a)、初期反応混合物、あるいは反応混合物(b))1キログラム当たりに含まれる未反応のスルフィド化剤のモル数で表わす。また、本発明の実施形態では、後述する未反応のジハロゲン化芳香族化合物の濃度は、反応混合物等1キログラム当たりに含まれる未反応のジハロゲン化芳香族化合物のモル数で表わす。
さらに、初期反応混合物中の未反応のスルフィド化剤の濃度については、初期反応混合物1キログラム当たりに含まれる未反応のスルフィド化剤の硫黄成分が0.15モル以下であることが好ましい。より好ましくは0.10モル以下であり、0.05モル以下がさらに好ましく、0.025モル以下がとりわけ好ましく、0.015モル以下であることが殊更好ましい。また、初期反応混合物中の未反応のジハロゲン化芳香族化合物の濃度については、初期反応混合物1キログラム当たりに含まれる未反応のジハロゲン化芳香族化合物のアリーレン単位が0.15モル以下であることが好ましい。より好ましくは0.10モル以下であり、0.05モル以下がさらに好ましく、0.025モル以下がとりわけ好ましく、0.015モル以下であることが殊更好ましい。初期反応混合物中の未反応のスルフィド化剤およびジハロゲン化芳香族化合物の濃度を上記の範囲とすることで、反応混合物(b)の環式PASの生成率は高くなり、また、安定化する傾向にある。
製造開始時点の初期反応混合物としては、例えば、本発明の実施形態の環式PASの製造方法で用いる反応容器とは異なる容器で原料混合物(a)を加熱して反応させた後に移液したもの(b−1)、または、予め反応容器に原料混合物(a)を供給し、回分式で加熱して反応させて得たもの(b−2)、または、予め反応容器に少なくとも有機極性溶媒を導入し、同反応容器内に原料混合物(a)を供給する操作と、同反応容器内の反応混合物の一部を反応容器から抜き出す操作を並行して基質濃度が前記の通り一定の範囲になるまで行い得たもの(b−3)が例示できる。中でも前記(b−1)、または、(b−2)が好ましく、(b−2)がより好ましい。(b−2)を採用する場合には、反応容器を別途用意したり、移液する必要もなく、また、(b−3)に比べ初期反応混合物(b)は極めて短時間で得られる傾向にあり、工業的に効率的であるため特に好ましい方法といえる。
(6−4)操作(A)および(B)
本発明の実施形態の環式PASの製造おいては、前記の原料混合物(a)から生じる反応混合物(b)を含む反応容器内に原料混合物(a)を供給する操作(A)と、同反応容器内の反応混合物(b)の一部を反応容器から抜き出す操作(B)と、前記反応容器内を加熱する操作(C)とを、それぞれ継続的に行う。これら操作(A)および操作(B)は、継続的に反応混合物(b)が得られればいかなる方法を適用してもよい。なお、ここで言う継続的とは、双方の操作を連続的に継続する構成のみならず、少なくとも一方の操作を断続的に継続する構成、例えば双方の操作を交互に継続的に行なう態様も含む。
ここで本発明の好ましい実施形態では、前記の原料混合物(a)から生じる反応混合物(b)に対し特定の条件下、基質濃度を一定に維持して原料混合物(a)を追添加する方法により、環式PASの生成率が向上する効果がある。これは昇温過程を経ずに反応温度を高く維持できることが環化選択性に有利であるためと推測している。一方で単純に原料混合物(a)を追添加するのみの方法では、追添加により反応混合物(b)の量が増加するため反応容器の容積以内で反応を終了する必要があり、生産性の向上に課題があった。そこでその解決策として原料混合物(a)の追添加すなわち供給(A)と、反応混合物(b)を抜き出す操作(B)をそれぞれ継続的に行い、反応混合物(b)の量を反応容器の容積以下に調整することを着想し鋭意検討を重ねた結果、一つの反応容器で環式PASの生成率向上の効果を維持したまま、継続的に反応混合物(b)を得る生産性の高い方法を見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、前記の操作(A)および(B)を行わず、単純な回分式で原料混合物(a)を加熱して反応させて環式PASの製造を行った場合には、本発明の方法に比べ環式PASの生成率は低い上に、原料混合物(a)を仕込み、反応を行うごとに昇温過程に時間を要するため、環式PASの生産性は低くなる。また、前記の操作(A)のみ行い(B)を行わない場合には、前記の通り環式PASの生成率は向上するが、反応容器の容積の限界のため環式PASの生産性は低くなる。したがって、高い生成率かつ生産性で環式PASを製造するためには操作(A)および操作(B)をそれぞれ継続的に行うことが極めて重要である。
本発明の実施形態における操作(A)と操作(B)とを継続的に行なう方法としては、それぞれの操作を異なるタイミングで交互に行う方法、またはそれぞれの操作を同時に行う方法が例示できる。あるいは、いずれの操作も行なわないときと、双方の操作を行なうときと、一方の操作のみを行なうときとがあってもよい。反応容器内の反応混合物(b)の量を反応容器の許容量の最大値付近で一定に維持することで環式PASの生産性が向上できるとの観点から、それぞれの操作を同時に行う方法が好ましい。また、操作(A)と操作(B)とを継続的に行なう方法としては、それぞれを断続的に行う方法、それぞれの操作を連続的に行う方法、または一方を断続的に行い、他方を連続的に行う方法も例示できるが、反応容器内の反応混合物(b)の組成や圧力を一定に維持しやすく、一定品質の環式PASを継続的に得られやすいとの観点から、それぞれの操作を連続的に行う方法が好ましい。例えば、操作(A)と操作(B)を同時かつ連続的に行う方法も好ましく採用することができ、この場合、一定品質の環式PASを高い生産性で継続的に得られやすくなる。
ところで本発明の実施形態の環式PASの製造における反応容器内の反応混合物(b)の量については、反応混合物(b)が反応容器内に存在し、かつ反応容器の容積以下となる量に維持できれば特に制限はなく、一定に維持しても変動させてもよい。ただし、反応容器の許容量の最大値付近で反応混合物(b)の量を一定に維持することで環式PASの生産性が向上できるとの観点から、一定に維持することが好ましい。本願明細書において「反応容器内の反応混合物(b)の量が一定」であるとは、反応容器内の反応混合物(b)の量の変動幅が、変動前の反応混合物(b)の量を基準として±30%以内であることをいう。上記変動幅は、±20%以内がより好ましく、±15%以内が更に好ましく、±10%以内がよりいっそう好ましく、±5%以内がとりわけ好ましい。
したがって、操作(A)における原料混合物(a)の供給量および操作(B)における反応混合物(b)の抜き出し量についても、反応混合物(b)が反応容器内に存在し、かつ反応容器の容積以下となる量に維持できれば特に制限はなく、それぞれが異なっていても同一でもよい。ただし、同一であることが好ましく、その場合、反応容器内の反応混合物(b)の量を一定に維持できるため前述のとおり環式PASの生産性の観点から好ましい。
さらに前記方法との組み合わせ、例えば、操作(A)と操作(B)を、操作(A)における原料混合物(a)の供給量および操作(B)における反応混合物(b)の抜き出し量を同一として、同時かつ連続的に行い、反応容器内の反応混合物(b)の量を一定に維持する方法も好ましく採用することができる。この場合は連続反応系となり、定常状態においては反応混合物(b)が一定組成に維持されるため、高生成率で一定品質の環式PASを継続的に得やすくなるため極めて生産性に優れた方法となる。
ここで、操作(A)における原料混合物(a)の供給量は、通常は、反応容器内に入った原料混合物(a)の重量を意味する。供給が断続的な場合には1回の供給当たりの重量で表わし、供給が連続的な場合には単位時間当たりの重量で表す。また、操作(B)における反応混合物(b)の抜き出し量は、通常は、反応容器内から抜き出した反応混合物(b)の重量を意味する。抜き出し後に揮散する成分がある場合には、その成分の重量も含めた合計を指す。抜き出しが断続的な場合には1回の抜き出し当たりの重量で表わし、抜き出しが連続的な場合には単位時間当たりの重量で表す。
これらの操作(A)における原料混合物(a)の供給量および操作(B)における反応混合物(b)の抜き出し量は、使用する反応容器の容積、または使用する原料の種類や量あるいは反応温度などの諸条件に依存するので一概に規定することは難しいが、供給量、抜き出し量、および反応容器内の反応混合物(b)の量の相対関係は、反応混合物(b)の平均滞留時間として表すことができる。ここで平均滞留時間とは、原料混合物(a)の供給量と反応混合物(b)の抜き出し量が同一となった時点における、[反応容器内の反応混合物(b)の平均重量]/[単位時間当たりの原料混合物(a)の供給重量、または単位時間当たりの反応混合物(b)の抜き出し重量]で定義する。例えば、反応容器内の反応混合物(b)の平均重量が40kgであって、単位時間当たりの原料混合物(a)の供給重量および反応混合物(b)の抜き出し重量が20kgであった場合には平均滞留時間は2時間とする。なお、原料混合物(a)の供給および/または反応混合物(b)の抜き出しが断続的である場合には、この関係式における単位時間当たりの原料混合物(a)の供給重量、または単位時間当たりの反応混合物(b)の抜き出し重量は、最初の供給を基点とし、抜き出しを終えた時点までの時間と、原料混合物(a)の供給量または反応混合物(b)の抜き出し量から算出する。例えば、最初の供給から抜き出しを終えた時点までに12時間を要し、この間に原料混合物(a)の供給量が240kgであった場合には、単位時間あたりの原料混合物(a)の供給重量、または単位時間当たりの反応混合物(b)の抜き出し重量は20kgとする。
平均滞留時間は、使用する原料の種類や量あるいは反応温度などの諸条件に依存するので一概に規定できないが、0.1時間以上が好ましく、0.5時間以上がより好ましい。一方、平均滞留時間に特に上限は無いが、40時間以内でも十分に反応が進行し、好ましくは10時間以内、より好ましくは6時間以内も採用できる。
本発明の実施形態において操作(A)では原料混合物(a)を反応容器内へ供給するが、前記の通り原料混合物(a)の性状は溶液またはスラリーであることから、その供給は自重落下、圧力差、または、ポンプによるいずれかで行うことができる。
自重落下により原料混合物(a)を供給する場合は、例えば、原料混合物(a)を供給する配管を反応容器の上方から引き回すと共に、上記配管と反応容器の間にバルブを設置し、バルブ開度を制御することで供給量を調整できる。また、本発明の好ましい態様では後述の通り反応容器内の圧力が常圧を超えるが、その場合には原料混合物(a)を含む容器と反応容器とを公知の方法にて均圧化することで自重落下が採用できる。
圧力差により原料混合物(a)を供給する場合は、例えば窒素ガスのような不活性ガス、原料混合物(a)の蒸気圧などによる原料混合物(a)の加圧が利用できる。
ポンプを用いて原料混合物(a)を供給する場合には、市販のポンプを用いることが好ましい。用いるポンプとしては原料混合物(a)の物性や供給条件にもより適性が異なることから一意的に決めることはできないが、好ましくは容積型ポンプやターボ型ポンプに分類されるポンプが例示できる。中でも容積型ポンプとしては回転ポンプが好ましく、より具体的にはギヤポンプが好ましい。また、ターボ型ポンプとしては遠心ポンプが好ましく、より具体的には渦巻きポンプが好ましく、さらに具体的にはその一種であるキャンドモータポンプやマグネットポンプなどが好ましい。上記ポンプのうち、内部にメカニカルシール構造をもつポンプであれば原料混合物(a)がスラリーの場合でも問題なく供給が可能である。また、後述の通り本発明の好ましい態様においては反応容器内の圧力が常圧を超えるが、その場合にも上記のポンプを用いることができる。これらポンプを用いる場合には原料混合物(a)を安定的に供給できるとともに、反応容器内を、常圧を超える圧力に昇圧することができる。
原料混合物(a)の供給が自重落下、ポンプまたは圧力差のいずれによるものであっても、原料混合物(a)がスラリーの場合には供給時の均一性を高めるために供給前に原料混合物(a)を撹拌して十分に粒子を均一に分散させておくことが好ましい。また、スラリー状の原料混合物(a)を供給するためには、均一性を高く維持しやすいとの観点から、ポンプを用いることが好ましい。ポンプを用いる場合には、原料混合物(a)を含む容器(反応容器に接続されて反応容器に原料混合物(a)を供給する容器であり、供給容器ともいう)に該ポンプを介する循環ラインを設け、原料混合物(a)を該容器に循環させ、該循環ラインからバルブを介して設けた分岐ラインのバルブ開度を制御することで分岐ラインの流量を調整しながら反応容器に任意の量の原料混合物(a)を供給する方法も好ましく採用できる。すなわち、供給容器に対して、該供給容器に接続されて上記ポンプを用いて供給容器との間で原料混合物(a)の少なくとも一部を循環させる循環ラインを設け、循環ラインを流れる原料混合物(a)の一部を反応容器内に供給してもよい。これによりスラリー状の原料混合物(a)の均一性がライン中でもよりいっそう高く維持しやすく、供給する原料混合物(a)の組成も均一になりやすい。
また、操作(B)では反応混合物(b)を反応容器から抜き出すが、抜き出しは自重落下、圧力差、または、ポンプによるいずれかで行うことができる。
自重落下により反応混合物(b)を抜き出す場合は、例えば、反応容器の開口部にバルブを設置し、バルブ開度を制御することで抜き出し量を調整できる。また、本発明の好ましい態様では後述の通り反応容器内の圧力が常圧を超えるが、その場合には反応混合物(b)を含む反応容器と、抜き出された反応混合物(b)が供給される容器(反応容器から抜き出した反応混合物(b)が供給される容器であり、受け容器ともいう)とを公知の方法にて均圧化することで自重落下が採用できる。
圧力差により反応混合物(b)を抜き出す場合は、例えば窒素ガスのような不活性ガス、反応混合物(b)の蒸気圧などによる反応混合物(b)の加圧が利用できる。
ポンプを使用し反応混合物(b)を抜き出す場合には、市販のポンプを用いることが好ましく、用いるポンプとしては反応混合物(b)の物性や供給条件にもより適性が異なることから一意的に決めることはできないが、好ましくは容積型ポンプやターボ型ポンプに分類されるポンプが例示できる。容積型ポンプとしては回転ポンプが好ましく、より具体的にはギヤポンプが好ましい。また、ターボ型ポンプとしては遠心ポンプが好ましく、より具体的には渦巻きポンプの一種であるキャンドモータポンプやマグネットポンプなどが好ましい。
なお、本発明の実施形態において反応混合物(b)には副生物として金属ハロゲン化物が含まれ、その金属ハロゲン化物種と有機極性溶媒の組み合わせによっては金属ハロゲン化物が不溶で析出し、反応混合物(b)がスラリーとなる場合がある。したがって、このような副生物の金属ハロゲン化物が析出する場合は反応混合物(b)の抜き出し時の均一性を高めるために反応容器内では反応混合物(b)を十分に撹拌して金属ハロゲン化物の粒子を均一に分散させておくことが好ましい。また、副生物の金属ハロゲン化物が析出する反応混合物(b)の抜き出しにポンプを用いる場合には、上記ポンプのうち、内部にメカニカルシール構造をもつポンプを用いることが好ましく、例えばスラリーシール型キャンドモータポンプを用いることが好ましい。
後述の通り本発明の好ましい態様においては反応容器内の圧力が常圧を超えるが、その場合にも上記同様のポンプを用いることができる。反応容器内の圧力が常圧を超え、前記の通り副生物の金属ハロゲン化物が析出する場合には、スラリーシール型キャンドモータポンプが特に好ましく使用できる。これらポンプを用いる場合には、反応混合物(b)を安定的に高い均一性で抜き出すことができるとともに、反応容器内を、常圧を超える圧力に昇圧することができる。
反応混合物(b)の抜き出しに上記に例示したポンプを用いる場合においては、反応混合物(b)を含む反応容器に該ポンプを介する循環ラインおよび該循環ラインからバルブを介して分岐する分岐ラインを設け、分岐ラインのバルブ開度を制御することで分岐ラインの流量を調整しながら反応容器から任意の量の反応混合物(b)を抜き出す方法も好ましく採用できる。すなわち、反応容器に対して、該反応容器に接続されて上記ポンプを用いて反応容器との間で反応混合物(b)の少なくとも一部を循環させる循環ラインを設け、循環ラインを流れる反応混合物(b)の一部を反応容器内に供給してもよい。これにより例えば金属ハロゲン化物のような析出成分を含むスラリー状の反応混合物(b)の均一性がライン中でもよりいっそう高く維持しやすく、抜き出し時の均一性も高くなる。
また、本発明の実施形態では、反応容器を、原料混合物(a)の供給容器および/または抜き出された反応混合物(b)が供給される受け容器と均圧ラインで連結して均圧化することも好ましい。均圧ラインとは、各容器内の圧力を均等に制御するための、双方の容器を連結する気体の流路をいう。均圧ラインは、各容器内の混合物は、実質的に流通させない。この場合、各容器間の移液がスムーズになり、操作(A)および操作(B)の制御がし易くなる。各容器を連結する方法は公知の方法が適用できるが、反応の基質濃度を一定に保ち、また、生成する環式ポリアリーレンスルフィドの生成率を高く維持するため、原料混合物(a)および/または反応混合物(b)の各構成成分が連結した各容器間で移動しないように設備構成および操作条件を設定することが好ましい。
既述したように、反応容器から抜き出した反応混合物(b)は、配管を通じて別の容器である受け容器に移液して回収することができる。この受け容器では、後述の通り、反応混合物(b)をさらに加熱する操作(D)を行い、反応混合物(c)を得てもよい。
(6−5)その他の実施形態
本発明の実施形態において反応混合物(b)中の未反応のスルフィド化剤の濃度は、前記の操作(A)および操作(B)によって変動しうるが、原料混合物(a)中のスルフィド化剤の濃度に対し、常に30%以下に維持することが好ましく、20%以下がより好ましく、10%以下がさらに好ましく、5%以下がとりわけ好ましく、3%以下が殊更好ましい。また、反応混合物(b)中のスルフィド化剤が完全消費した場合には、未反応のスルフィド化剤の濃度は、原料混合物(a)中のスルフィド化剤の濃度に対して0%となり、理想的な状態と言えるが、実際反応を行う上での下限としては0.1%以上であることが多い。
また、本発明の実施形態において反応混合物(b)中の未反応のジハロゲン化芳香族化合物の濃度は、前記の操作(A)および操作(B)によって変動しうるが、原料混合物(a)中のジハロゲン化芳香族化合物の濃度に対し、常に30%以下に維持することが好ましく、20%以下がより好ましく、10%以下がさらに好ましく、5%以下がとりわけ好ましく、3%以下が殊更好ましい。また、反応混合物(b)中のジハロゲン化芳香族化合物が完全消費した場合には、未反応のジハロゲン化芳香族化合物の濃度は、原料混合物(a)中のスルフィド化剤の濃度に対して0%となり、理想的な状態と言えるが、実際反応を行う上での下限としては0.1%以上であることが多い。
さらに上記に加え、反応混合物(b)中の未反応のスルフィド化剤の濃度については、反応混合物(b)1キログラム当たりに含まれる未反応のスルフィド化剤の硫黄成分は0.15モル以下であることが好ましい。より好ましくは0.10モル以下であり、0.05モル以下がさらに好ましく、0.025モル以下がとりわけ好ましく、0.015モル以下であることが殊更好ましい。また、反応混合物(b)中の未反応のジハロゲン化芳香族化合物の濃度については、反応混合物(b)1キログラム当たりに含まれる未反応のジハロゲン化芳香族化合物のアリーレン単位は0.15モル以下であることが好ましい。より好ましくは0.10モル以下であり、0.05モル以下がさらに好ましく、0.025モル以下がとりわけ好ましく、0.015モル以下であることが殊更好ましい。反応混合物(b)中の未反応のスルフィド化剤およびジハロゲン化芳香族化合物の濃度を上記の範囲とすることで反応混合物(b)の環式PASの生成率は高くなり、また、安定化する傾向にある。
なお、反応混合物(b)中の未反応のスルフィド化剤およびジハロゲン化芳香族化合物の濃度は、上記の通り操作(A)および操作(B)によって変動しうるが、その方法および制御を調整することで上記の好ましい範囲に維持することができる。本発明の好ましい態様として、操作(A)および操作(B)を、操作(A)における原料混合物(a)の供給量および操作(B)における反応混合物(b)の抜き出し量を同一として反応容器内の反応混合物(b)の量を一定に維持し、同時かつ連続的に行う方法を採用した場合、定常状態においては反応混合物(b)中の未反応のスルフィド化剤およびジハロゲン化芳香族化合物の濃度を一定とすることが可能となる。この場合において反応混合物(b)中の未反応のスルフィド化剤およびジハロゲン化芳香族化合物の濃度を上記の好ましい範囲に維持するための方法として、操作(A)における原料混合物(a)の供給量および操作(B)における反応混合物(b)の抜き出し量を調整する方法が例示できる。
上記の通り、反応混合物(b)中の未反応のスルフィド化剤およびジハロゲン化芳香族化合物の濃度を原料混合物(a)中のスルフィド化剤の濃度の30%以下として、かつ反応混合物(b)1キログラム当たりに含まれる未反応スルフィド化剤の硫黄成分およびジハロゲン化芳香族化合物のアリーレン単位をそれぞれ0.15モル以下に維持することにより、反応混合物(b)中の環式PASの生成率はより向上しやすい傾向になる。これは、単量体濃度が低く維持されることにより疑似希釈条件下となり、環化反応の選択性が向上したためと推測している。
本発明の実施形態の方法において、反応混合物中のスルフィド化剤の濃度は、例えば、電気伝導度検出器や電気化学検出器を具備したイオンクロマトグラフィー手法を用いて、反応混合物中のスルフィド化剤の量を定量することにより算出可能である。イオンクロマトグラフィー手法を用いた具体的評価方法としては、試料中に過酸化水素水を添加して、試料中に含まれる硫化物イオンの酸化を行った後に、電気伝導度検出器を用いた分析により、硫化物イオンの酸化によって生成する硫酸イオン量を算出する方法が例示でき、算出した硫酸イオン量から、反応混合物中のスルフィド化剤の濃度を算出することが可能である。また、本発明の実施形態の方法において、反応混合物中のジハロゲン化芳香族化合物の濃度は、例えば、ガスクロマトグラフィー手法を用いて、反応混合物中のジハロゲン化芳香族化合物の量を定量することにより算出することが可能である。
本発明の実施形態の環式PASの製造に際しては、抜き出した反応混合物(b)をさらに加熱する操作(D)を行ってもよく、その場合、反応混合物(c)が得られる。操作(D)を行う反応条件に特に制限はないが、本操作は抜き出した反応混合物(b)中の未反応原料を消費させることが目的であり、当該原料が実質的に完全に消費する反応条件が好ましく、例えば加熱を0.1時間〜10時間継続する方法が例示でき、加熱を0.1時間〜3時間継続することがより好ましく、あるいは加熱温度を後述の好ましい範囲内で上昇させることなどが例示できる。
本発明の実施形態の環式PASの製造に際しては、前記の通り反応混合物(b)を含む反応容器内へ原料混合物(a)を供給し(操作(A))、反応容器内を加熱して(操作(C))反応をおこなうが、この反応における温度は、常圧下における反応混合物(b)の還流温度を超える温度が望ましい。この望ましい温度は反応に用いるスルフィド化剤、ジハロゲン化芳香族化合物及び有機極性溶媒の種類、量によって多様化するため一意的に決めることはできないが、通常120℃以上、好ましくは180℃以上、より好ましくは220℃以上、さらに好ましくは225℃以上とすることができる。また、350℃以下、好ましくは320℃以下、より好ましくは310℃以下、さらに好ましくは300℃以下とすることができる。この好ましい温度範囲では原料成分であるスルフィド化剤とジハロゲン化芳香族化合物の反応消費が速やかに進行して環式PASおよび線状PASが生成し、短時間で反応が進行する傾向にある。なおここで常圧とは、大気の標準状態近傍における圧力のことであり、大気の標準状態とは、約25℃近傍の温度、絶対圧で101kPa近傍の大気圧条件のことである。また、還流温度とは、反応混合物の液体成分が沸騰と凝縮を繰り返している状態の温度である。本発明の実施形態では、反応混合物(b)を常圧下の還流温度を超えて加熱することが望ましいことを前述したが、反応容器内をこのような加熱状態にする方法としては、例えば反応容器内の圧力を、常圧を超える圧力に設定する方法や、反応容器を密閉容器とする方法が例示できる。
本発明の実施形態の環式PASの製造に際し、反応混合物(b)を含む反応容器内の圧力に特に制限はなく、また圧力は、反応容器内の反応混合物を構成する原料、その組成、および反応温度等により変化するため一意的に規定することはできないが、好ましい圧力の下限としてゲージ圧で0.05MPa以上、より好ましくは0.3MPa以上が例示できる。なお、本発明の実施形態の好ましい反応温度においては反応物の自圧による圧力上昇が発生するため、この様な反応温度における好ましい圧力の下限としてゲージ圧で0.25MPa以上、より好ましくは0.3MPa以上を例示できる。また、好ましい圧力の上限としては、10MPa以下、より好ましくは5MPa以下が例示できる。この様な好ましい圧力範囲では、線状ポリアリーレンスルフィド、スルフィド化剤およびジハロゲン化芳香族化合物を接触させて反応させるのに要する時間が短くできる傾向にある。また、反応容器内の反応混合物を加熱する際の圧力を前記好ましい圧力範囲とするために、窒素、ヘリウム、およびアルゴンなどの不活性ガスにより反応容器内を加圧することも好ましい方法である。また、抜き出した反応混合物(b)は配管を通じて別の容器に移液して回収することができるが、その際の反応混合物(b)の組成や状態の変化を小さくする目的で、反応容器と上記別の容器との間の圧力差を調整してもよい。なお、ここでゲージ圧とは、大気圧を基準とした相対圧力のことであり、絶対圧から大気圧を差し引いた圧力差と同意である。
(7)環式ポリアリーレンスルフィドの回収方法
本発明の実施形態の環式PASの製造においては、前記した反応により得られた反応混合物から環式PASを分離回収することも可能である。反応により得られた反応混合物には環式PAS、線状PAS及び有機極性溶媒が含まれ、その他の成分として未反応のスルフィド化剤、ジハロゲン化芳香族化合物、水、あるいは副生塩などが含まれる場合もある。
(7−1)環式ポリアリーレンスルフィドの回収方法1
この様な反応混合物からPAS成分を回収する方法に特に制限は無く、例えば必要に応じて有機極性溶媒の一部もしくは大部分を蒸留等の操作により除去した後に、PAS成分に対する溶解性が低く且つ有機極性溶媒と混和し、好ましくは副生塩に対して溶解性を有する溶剤と必要に応じて加熱下で接触させて、環式PASを線状PASとの混合固体としてPAS成分を回収する方法が例示できる。あるいは、反応混合物中の環式PASおよび線状PASが溶解するに足る温度、好ましくは200℃を超える温度、より好ましくは230℃以上の温度において反応混合物中に存在する固形成分と可溶成分を固液分離により分離して、少なくとも環式PAS、線状PASおよび有機極性溶媒を含む溶液成分を回収し、この溶液成分から必要に応じて有機極性溶媒の一部もしくは大部分を蒸留等の操作により除去した後に、PAS成分に対する溶解性が低く且つ有機極性溶媒と混和し、好ましくは副生塩に対して溶解性を有する溶剤と必要に応じて加熱下で接触させて、環式PASを線状PASとの混合固体としてPAS成分を回収する方法が例示できる。PAS成分に対する溶解性が低く且つ有機極性溶媒と混和し、好ましくは副生塩に対して溶解性を有する溶剤は、一般に比較的極性の高い溶剤である。用いた有機極性溶媒や副生塩の種類により好ましい溶剤は異なるので限定はできないが、例えば水や、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、およびヘキサノールに代表されるアルコール類や、アセトンに代表されるケトン類、並びに、酢酸エチルおよび酢酸ブチルなどに代表される酢酸エステル類が例示できる。入手性、経済性の観点から、水、メタノール及びアセトンが好ましく、水が特に好ましい。
このような溶剤による処理を行うことで、環式PASと線状PASとの混合固体に含有される有機極性溶媒や副生塩の量を低減することが可能である。この処理により環式PAS及び線状PASは共に固形成分として析出するので、公知の固液分離法を用いて環式PAS及び線状PASの混合物としてPAS成分を回収することが可能である。固液分離方法としては、たとえば濾過による分離、遠心分離、デカンテーション等を例示できる。なお、これら一連の処理は必要に応じて数回繰り返すことも可能であり、これにより環式PASと線状PASとの混合固体に含有される有機極性溶媒や副生塩の量がさらに低減される傾向にある。
また、上記の溶剤による処理の方法としては、溶剤と反応混合物を混合する方法があり、必要により適宜撹拌または加熱することも可能である。溶剤による処理を行う際の温度に特に制限は無いが、20℃以上が好ましく、50℃以上が更に好ましい。また、220℃以下が好ましく、200℃以下が更に好ましい。この様な範囲では例えば副生塩の除去が容易となり、また比較的低圧の状態で処理を行うことが可能であるため好ましい。溶剤として水を用いる場合、水は蒸留水あるいは脱イオン水であることが好ましい。溶剤としては、必要に応じてギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、クロロ酢酸、ジクロロ酢酸、アクリル酸、クロトン酸、安息香酸、サリチル酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フタル酸、フマル酸などの有機酸性化合物及びそのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、硫酸、リン酸、塩酸、炭酸、珪酸などの無機酸性化合物およびアンモニウムイオンから選択される化合物を含む水溶液を用いることも可能である。この処理後に得られた環式PASと線状PASとの混合固体が処理に用いた溶剤を含有する場合には、必要に応じて乾燥などを行い、溶剤を除去することも可能である。
上で例示した回収方法では、環式PASは線状PASとの混合物(以下PAS混合物と称する場合もある)として回収される。環式PASと線状PASの分離を行う方法としては例えば、環式PASと線状PASの溶解性の差を利用した分離方法、より具体的には環式PASに対する溶解性が高く、一方で環式PASの溶解を行う条件下では線状PASに対する溶解性に乏しい溶剤を必要に応じて加熱下でPAS混合物と接触させて、溶剤可溶成分として環式PASを得る方法が例示できる。ここで、上記の溶解性を利用した分離方法により効率良く環式PASを得るために、線状PASの分子量は、後述する環式PASを溶解可能な溶剤に溶解しにくい、好ましくは実質的に溶解しない特性を有する分子量であることが好ましい。具体的には、重量平均分子量で2,500以上が例示でき、5,000以上が好ましく、10,000以上がより好ましく例示できる。
環式PASと線状PASの分離に用いる溶剤としては、環式PASを溶解可能な溶剤であれば特に制限はないが、溶解を行う環境において環式PASは溶解するが線状PASは溶解しにくい溶剤が好ましく、線状PASは実質的に溶解しない溶剤がより好ましい。PAS混合物を前記溶剤と接触させる際の反応系圧力は、常圧もしくは微加圧が好ましく、特に常圧が好ましい。このような圧力の反応系は、それを構築する反応器の部材が安価であるという利点がある。この観点から反応系圧力は、高価な耐圧容器を必要とする加圧条件は避けることが望ましい。用いる溶剤としては、PAS成分の分解や架橋など好ましくない副反応を実質的に引き起こさないものが好ましい。PAS混合物を溶剤と接触させる操作をたとえば常圧環流条件下で行う場合に好ましい溶剤としては、例えばペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、シクロペンタン、ベンゼン、トルエン、およびキシレン等の炭化水素系溶媒、クロロホルム、ブロモホルム、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、クロロベンゼン、および2,6−ジクロロトルエン等のハロゲン系溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、およびジイソプロピルエーテル等のエーテル系溶媒、並びに、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、トリメチルリン酸、N,N−ジメチルイミダゾリジノン、およびメチルエチルケトンなどの極性溶媒を例示できる。中でもベンゼン、トルエン、キシレン、クロロホルム、ブロモホルム、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、クロロベンゼン、2,6−ジクロロトルエン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジイソプロピルエーテル、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、トリメチルリン酸、N,N−ジメチルイミダゾリジノン、およびメチルエチルケトンが好ましく、トルエン、キシレン、クロロホルム、塩化メチレン、テトラヒドロフラン、およびメチルエチルケトンがより好ましく例示できる。
PAS混合物を溶剤と接触させる際の雰囲気に特に制限はないが、接触させる際の温度や時間などの条件によってPAS成分や溶剤が酸化劣化するような場合には、非酸化性雰囲気下で行うことが望ましい。なお、非酸化性雰囲気とは、気相の酸素濃度が5体積%以下、好ましくは2体積%以下、更に好ましくは酸素を実質的に含有しない雰囲気、即ち窒素、ヘリウム、アルゴン等の不活性ガス雰囲気であることを指し、この中でも特に経済性及び取扱いの容易さの面からは窒素雰囲気が好ましい。
PAS混合物を溶剤と接触させる温度に特に制限はなく、一般に温度が高いほど環式PASの溶剤への溶解は促進される傾向にあるが、線状PASの分子量が低い場合、線状PASの溶解も促進される傾向にある。線状PASの分子量が前述した好ましい分子量である場合は、環式PASとの溶解性の差が大きくなるため、高い温度でPAS混合物の溶剤との接触を行っても環式PASと線状PASが好適に分離できる傾向にある。また、前記したように、PAS混合物の溶剤との接触は大気圧下でおこなうことが好適であるので、上限温度は使用する溶剤の大気圧下での環流条件温度にすることが望ましい。PAS混合物を溶剤と接触させる具体的な温度範囲は、前述した好ましい溶剤を用いる場合は、たとえば20℃以上、好ましくは30℃以上を例示できる。また、150℃以下、好ましくは100℃以下を例示できる。
PAS混合物を溶剤と接触させる時間は、用いる溶剤種や温度等によって異なるため一意的には限定できないが、たとえば1分〜50時間が例示でき、この様な範囲では環式PASの溶剤への溶解が十分になる傾向にある。
PAS混合物を溶剤と接触させる方法は、公知の一般的な手法を用いればよく特に限定はないが、たとえばPAS混合物と溶剤を混合し、必要に応じて攪拌した後に溶液部分を回収する方法、各種フィルター上のPAS混合物に溶剤をシャワーすると同時に環式PASを溶剤に溶解させる方法、ソックスレー抽出法原理による方法などいかなる方法も用いることができる。PAS混合物と溶剤を接触させる際の溶剤の使用量に特に制限はないが、たとえばPAS混合物重量に対する浴比で0.5〜100の範囲が例示できる。浴比がこの様な範囲の場合、PAS混合物と溶剤を均一に混合し易く、また、環式PASが溶剤へ十分に溶解し易くなる傾向にある。一般に、浴比が大きい方が環式PASの溶剤への溶解には有利であるが、大きすぎてもそれ以上の効果は望めず、逆に溶剤使用量増大による経済的不利益が生じることがある。なお、PAS混合物と溶剤の接触を繰り返し行う場合は、小さい浴比でも十分な効果を得られる場合が多い。またソックスレー抽出法は、その原理上、PAS混合物と溶剤の接触を繰り返し行う場合と類似の効果が得られるので、この場合も小さな浴比で十分な効果を得られる場合が多い。
PAS混合物を溶剤と接触させた後に、環式PASを溶解した溶液が固形状の線状PASを含む固液スラリー状で得られた場合、公知の固液分離法を用いて溶液部を回収することが好ましい。固液分離方法としては、たとえば濾過による分離、遠心分離、デカンテーション等を例示できる。このようにして分離した溶液から溶剤の除去を行うことで環式PASの回収が可能となる。一方、固体成分については、環式PASがまだ残存している場合、再度溶剤との接触及び溶液の回収を繰り返し行うことでより収率よく環式PASを得ることも可能である。また、環式PASがほとんど残存していない場合には、残存溶剤を除去することで高純度な線状PASとして好適にリサイクル可能である。
前述のようにして得られた環式PASを含む溶液から溶剤の除去を行い、環式PASを固形成分として得ることも可能である。ここで溶剤の除去は、たとえば上記溶液を加熱し、常圧以下で処理する方法や、膜を利用した溶剤の除去を例示できる。より収率よく、また効率よく環式ポリアリーレンスルフィドを得るとの観点では、上記溶液を常圧以下で加熱して溶剤を除去する方法が好ましい。なお、前述の様にして得られた環式PASを含む溶液は、温度によっては固形物を含む場合もあるが、この場合の固形物も環式ポリアリーレンスルフィド混合物に属するものであるので、溶剤の除去時に溶剤に可溶の成分とともに回収する事が望ましく、これにより収率よく環式PASを得られるようになる。ここで溶剤の除去は、少なくとも50重量%以上、好ましくは70重量%以上、更に好ましくは90重量%以上、よりいっそう好ましくは95重量%以上の溶剤を除去することが望ましい。加熱による溶剤の除去を行う際の温度は用いる溶剤の特性に依存するため一意的には限定できないが、通常、20℃以上、好ましくは40℃以上とすることができる。また、150℃以下、好ましくは120℃以下とすることができる。また、溶剤の除去を行う圧力は常圧以下が好ましく、これにより溶剤の除去をより低温で行うことが可能になる。
(7−2)環式ポリアリーレンスルフィドの回収方法2
上記には環式PASの回収方法として、まず環式PASと線状PASを含むPAS混合物を得た後にこの混合物から環式PASを回収する方法について例示したが、回収方法はこれに限定されるものではない。環式PAS回収方法として別の具体例を以下に示す。
本発明の実施形態で得られる反応混合物には、環式PAS、線状PAS及び有機極性溶媒が含まれ、その他成分として未反応のスルフィド化剤、ジハロゲン化芳香族化合物や水、副生塩などが含まれる場合もあることは前述した通りである。この反応混合物において、環式PASは幅広い温度領域で有機極性溶媒に溶解状態となる傾向がある。一方で線状PASは、環式PASと溶解挙動が大きく異なり、具体的には200℃以下の温度領域ではその大部分が反応混合物中で固体として存在する傾向にある。
従ってこの様な環式PASと線状PASの反応混合物中での溶解挙動差を用いることで、簡易な固液分離により環式PASと線状PASの分離が可能になる。このような固液分離による環式PASと線状PASの分離が可能となる具体的な温度領域の上限としては、200℃以下、より好ましくは150℃以下、更に好ましくは120℃以下が例示でき、一方で下限温度としては10℃以上が例示でき、20℃以上が好ましく、50℃以上がより好ましく、80℃以上が更に好ましい。この好ましい温度上限以下では、反応混合物に含まれる線状PASは固形分として存在する傾向が強く、特に前述した好ましい重量平均分子量の線状PASはこの条件下で固形分となりやすい傾向がある。一方でこの好ましい温度領域において反応混合物中の環式PASは有機極性溶媒に可溶である傾向が強く、特に環式PASの繰り返し単位数mが前述した好ましい範囲の環式PASはこの条件下で有機極性溶媒に溶解する傾向が強い。また例示した下限温度以上では反応混合物の粘度が低くなる傾向になり固液分離操作がし易く、また固形成分と溶液成分の分離性にすぐれる傾向にある。
また、先述した反応混合物の固液分離で得られる溶液成分、すなわち濾液成分(温度によっては固形成分を含む場合もある)には環式PASが含まれる。濾液成分から有機極性溶媒を除去することで、環式PASを含む固体として回収することも可能である。この有機極性溶媒の除去方法としては、例えば蒸留により除去する方法や、有機極性溶媒と混和する第二の溶剤と接触させる方法などが例示できる。蒸留により除去する具体的な方法としては、濾液成分を好ましくは20〜250℃、より好ましくは40〜200℃、さらに好ましくは100〜200℃、よりいっそう好ましくは120〜200℃に加熱する方法が例示できる。この加熱を減圧条件下や気流下で行うこと、さらには攪拌条件下で行うことで効率よく有機極性溶媒の除去を行うことが可能である。なお、加熱する際の雰囲気は非酸化性雰囲気で行うことが好ましく、これにより環式PASの分解、着色、架橋などを抑制できる傾向にある。なおここで、非酸化性雰囲気とは、気相の酸素濃度が5体積%以下、好ましくは2体積%以下、更に好ましくは酸素を実質的に含有しない雰囲気、即ち窒素、ヘリウム、アルゴン等の不活性ガス雰囲気であることを指し、この中でも特に経済性及び取扱いの容易さの面からは窒素雰囲気が好ましい。濾液成分を第二の溶剤で溶剤置換する方法で環式PASを得る具体的な方法としては、環式PASが実質的に溶解しない、もしくは環式PASが溶解しにくい第二の溶剤と接触させることで、環式PASを含む固形成分を回収する方法を例示できる。この第二の溶剤と接触させるより具体的な方法としては後述の(8)で示す方法を採用することが例示できる。
(8)その他の後処理
かくして得られた環式ポリアリーレンスルフィドは十分に高純度であり、各種用途に好適に用いることができるが、さらに以下に述べる後処理を付加的に施すことによってよりいっそう純度の高い環式PASを得ることが可能である。
前記(7)までの操作によって得られた環式PASは、用いた溶剤の特性によってはPAS混合物中に含まれる不純物成分を含む場合がある。このような少量の不純物を含む環式PASを、不純物は溶解するが、環式PASは実質的に溶解しない、もしくは環式PASの溶解しにくい第二の溶剤と接触させることで、不純物成分を選択的に除去することが可能な場合が多い。また前記(7−2)の方法で得られた濾液成分(環式PASを含む溶液)から環式PASを固形成分として分離するために、この第二の溶剤と濾液成分を接触させることも可能である。
環式PAS混合物もしくは前記(7−2)で得られた濾液成分を前記第二の溶剤と接触させる際の反応系圧力は、常圧もしくは微加圧が好ましく、特に常圧が好ましい。このような圧力の反応系は、それを構築する部材が安価であるという利点がある。この観点から反応系圧力は、高価な耐圧容器を必要とする加圧条件は避けることが望ましい。第二の溶剤として好ましい溶剤としては、環式PASの分解や架橋など好ましくない副反応を実質的に引き起こさないものが好ましく、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、フェノール、クレゾール、およびポリエチレングリコールなどのアルコール・フェノール系溶媒、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、およびシクロペンタン等の炭化水素系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルブチルケトン、およびアセトフェノン等のケトン系溶媒、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ペンチル、酢酸オクチル、酪酸メチル、酪酸エチル、酪酸ペンチル、サリチル酸メチル、および蟻酸エチル等のカルボン酸エステル系溶媒、並びに水が例示できる。なかでもメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、シクロペンタン、アセトン、酢酸メチル、酢酸エチル、および水が好ましく、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコール、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、アセトン、酢酸エチル、および水が特に好ましい。これらの溶媒は、1種類または2種類以上の混合物として使用することができる。
環式PASを第二の溶剤と接触させる温度に特に制限はないが、上限温度は使用する第二の溶剤の常圧下での環流条件温度にすることが望ましい。前述した好ましい第二の溶剤を用いる場合は、たとえば20〜100℃が好ましい温度範囲として例示でき、より好ましくは25〜80℃が例示できる。
環式PASを第二の溶剤と接触させる時間は、用いる溶剤種や温度等によって異なるため一意的には限定できないが、たとえば1分〜50時間が例示できる。この様な時間範囲内では、環式PAS中の不純物の第二の溶剤への溶解が十分となる傾向にある。
環式PASを第二の溶剤と接触させる方法としては、固体状の環式PASと第二の溶剤を必要に応じて攪拌して混合する方法、各種フィルター上の環式PAS固体に第二の溶剤をシャワーすると同時に不純物を第二の溶剤に溶解させる方法、第二の溶剤を用いたソックスレー抽出を用いる方法や、溶液状の環式PASもしくは溶剤を含む環式PASスラリーを第二の溶剤と接触させて、第二の溶剤の存在下で環式PASを析出させる方法などを用いることができる。なかでも溶剤を含む環式PASスラリーを第二の溶剤と接触させる方法は、操作後に得られる環式PASの純度が高く、有効な方法である。
環式PASを第二の溶剤と接触させた後に公知の固液分離法を用いて固体状の環式PASを回収することが可能である。固液分離方法としては、たとえば濾過による分離、遠心分離、デカンテーション等を例示できる。固液分離後に得られた環式PAS中に不純物がまだ残存している場合は、再度環式PASと第二の溶剤とを接触させて、さらに不純物を除去することも可能である。
(9)本発明の実施形態の環式PASの特性
上記のようにして環式PASとして得られたポリアリーレンスルフィドは、通常、環式PASを50重量%以上、好ましくは70重量%以上、より好ましくは80重量%以上含む純度の高いものであり、一般的に得られる線状のPASとは異なる特性を有する工業的にも利用価値の高いものである。また、本発明の実施形態の製造方法により得られる環式PASは前記式(A)におけるmが単一ではなく、m=4〜50の異なるmを有する前記式(A)が得られやすいという特徴を有する。ここで好ましいmの範囲は4〜25,より好ましくは4〜20である。mがこの範囲であれば、後述するようにPASポリマー(高重合度体)を得るための原料として用いる場合に重合反応が進行しやすく、高分子量体が得られやすくなる傾向にある。この理由は現時点判然とはしないが、この範囲の環式PASは分子が環式であるがために生じる結合のゆがみが大きく、重合時に高分子量化が起こりやすいためと推測している。
なお、mが単一の環式PASは単結晶として得られるため、極めて高い融解温度を有するが、本発明の実施形態では環式PASは異なるmを有する混合物が得られやすく、これにより環式PASの融解温度が低いという特徴がある。このことは、たとえば環式PASを溶融して用いる際の加熱温度を低くできるという優れた特徴を発現することになる。
(10)本発明の実施形態の環式PASを配合した樹脂組成物
本発明の実施形態で得られた環式PASを各種樹脂に配合して用いることも可能であり、このような環式PASを配合した樹脂組成物は、溶融加工時にすぐれた流動性を発現する傾向が強く、また滞留安定性にも優れる傾向にある。この様な特性、特に流動性の向上は、樹脂組成物を溶融加工する際の加熱温度が低くても溶融加工性に優れるという特徴を発現するため、射出成形品や繊維、フィルム等の押出成形品に加工する際の溶融加工性の向上をもたらす点で大きなメリットとなる。環式PASを配合した際にこの様な特性の向上が発現する理由は定かではないが、環式PASの構造の特異性、すなわち環状構造であるために通常の線状化合物と比較してコンパクトな構造をとりやすいため、マトリックスである各種樹脂との絡み合いが少なくなりやすいこと、各種樹脂に対して可塑剤として作用すること、またマトリックス樹脂どうしの絡み合い抑制にも奏効するためと推測している。
環式PASを各種樹脂に配合する際の配合量に特に制限は無いが、各種樹脂100重量部に対して本発明の実施形態の環式PASを、0.1重量部以上、好ましくは0.5重量部以上配合することで、顕著な特性の向上を得ることが可能である。また、50重量部以下、好ましくは20重量部以下、より好ましくは10重量部以下配合することで、顕著な特性の向上を得ることが可能である。
また、上記樹脂組成物には必要に応じて更に繊維状および/または非繊維状の充填材を配合することも可能である。その配合量は、前記各種樹脂100重量部に対して0.5重量部以上とすることができ、好ましくは1重量部以上である。また、400重量部以下とすることができ、好ましくは300重量部以下であり、より好ましくは200重量部以下であり、更に好ましくは100重量部以下である。充填材の配合量をこのような範囲とすることで、樹脂組成物において優れた流動性を維持しつつ機械的強度が向上できる傾向にある。充填材の種類としては、繊維状、板状、粉末状、粒状などのいずれの充填材も使用することができる。これら充填材の好ましい具体例としては、ガラス繊維、タルク、ワラストナイト、モンモリロナイト、および合成雲母などの層状珪酸塩が例示でき、特に好ましくはガラス繊維である。ガラス繊維の種類は、一般に樹脂の強化用に用いるものなら特に限定はなく、例えば長繊維タイプや短繊維タイプのチョップドストランド、ミルドファイバーなどから選択して用いることができる。また、上記の充填材は2種以上を併用して使用することもできる。なお、本発明の実施形態に使用する上記の充填材は、その表面を公知のカップリング剤(例えば、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤など)、その他の表面処理剤で処理して用いることもできる。また、ガラス繊維は、エチレン/酢酸ビニル共重合体などの熱可塑性樹脂や、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂で被覆あるいは集束されていてもよい。
また、樹脂組成物の熱安定性を保持するために、フェノール系およびリン系化合物の中から選ばれた1種以上の耐熱剤を樹脂組成物に含有させることも可能である。かかる耐熱剤の配合量は、耐熱性改良効果の点から、前記各種樹脂100重量部に対して、0.01重量部以上、特に0.02重量部以上であることが好ましい。また、成形時に発生するガス成分の観点からは、前記各種樹脂100重量部に対して5重量部以下、特に1重量部以下であることが好ましい。また、フェノール系及びリン系化合物を併用して使用することは、特に耐熱性、熱安定性、流動性保持効果が大きく好ましい。
さらに、前記樹脂組成物には以下のような化合物、すなわち、有機チタネート系化合物および有機ボラン系化合物などのカップリング剤や、ポリアルキレンオキサイドオリゴマ系化合物、チオエーテル系化合物、エステル系化合物、および有機リン系化合物などの可塑剤や、タルク、カオリン、有機リン化合物、およびポリエーテルエーテルケトンなどの結晶核剤や、モンタン酸ワックス類、ステアリン酸リチウム、およびステアリン酸アルミ等の金属石鹸や、エチレンジアミン・ステアリン酸・セバシン酸重宿合物、およびシリコーン系化合物などの離型剤や、次亜リン酸塩などの着色防止剤や、その他、滑剤、紫外線防止剤、着色剤、難燃剤、および発泡剤などの通常の添加剤を配合することができる。上記化合物はいずれも前記各種樹脂100重量部に対して20重量部未満、好ましくは10重量部以下、更に好ましくは1重量部以下の添加でその効果が有効に発現する傾向にある。
上記のごとき環式PASを配合してなる樹脂組成物を製造する方法は特に限定されるものではないが、例えば環式PAS、各種樹脂および必要に応じてその他の充填材や各種添加剤を予めブレンドした後、各種樹脂および環式PASの融点以上において一軸または二軸押出機、バンバリーミキサー、ニーダー、ミキシングロールなどの通常公知の溶融混合機で溶融混練する方法や、樹脂組成物の材料を溶液中で混合した後に溶媒を除く方法などが用いられる。ここで環式PASとして環式PASの単体、すなわち前記式(A)のmが単一のものを用いる場合や、異なるmの混合物であっても結晶性が高く融点が高いものを用いる場合は、環式PASを環式PASが溶解する溶媒に予め溶解して溶融混合機に供給し、溶融混練の際に溶媒を除去する方法、環式PASをその融点以上で一旦溶解した後に急冷することで結晶化を抑え、非晶状としたものを溶融混合機に供給する方法、あるいはプリメルターを環式PASの融点以上に設定し、プリメルター内で環式PASのみを溶融させ、融液として溶融混合機に供給する方法などを採用することができる。
ここで環式PASを配合する各種樹脂に特に制限は無く、結晶性樹脂にも非晶性樹脂にも適用可能であり、また、熱可塑性樹脂にも熱硬化性樹脂にも適用が可能である。
ここで結晶性樹脂の具体例としては例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、およびシンジオタクチックポリスチレンなどのポリオレフィン系樹脂や、ポリビニルアルコール樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリケトン樹脂、ポリイミド樹脂およびこれらの共重合体などが挙げられ、1種または2種以上併用してもよい。中でも、耐熱性、成形性、流動性および機械特性の点で、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリアミド樹脂、およびポリエステル樹脂が好ましい。また、得られる成形品の透明性の面からはポリエステル樹脂が好ましい。各種樹脂として結晶性樹脂を用いる場合は、上述した流動性の向上の他に結晶化特性も向上する傾向がある。また、各種樹脂としてポリフェニレンスルフィド樹脂を用いることも特に好ましく、この場合、流動性の向上と共に、結晶性の向上、さらにはこれらが奏効した効果として射出成形時のバリ発生が顕著に抑制されるという特徴が発現しやすい傾向にある。
非晶性樹脂としては非晶性を有する溶融成形可能な樹脂であれば、特に限定されないが、耐熱性の点で、ガラス転移温度が50℃以上であることが好ましく、60℃以上であることがより好ましく、70℃以上であることがさらに好ましく、80℃以上であることが特に好ましい。ガラス転移温度の上限は、特に限定されないが、成形性などの点から300℃以下であることが好ましく、280℃以下であることがより好ましい。なお、本発明の実施形態において、非晶性樹脂のガラス転移温度は、示差熱量測定において非晶性樹脂を30℃から予測されるガラス転移温度以上まで、20℃/分の昇温条件で昇温し1分間保持した後、20℃/分の降温条件で0℃まで一旦冷却し、1分間保持した後、再度20℃/分の昇温条件で測定した際に観察されるガラス転移温度(Tg)を指す。このような非結晶性樹脂の具体例としては、非晶性ナイロン樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂、ポリアリレート樹脂、ABS樹脂、ポリ(メタ)アクリレート樹脂、ポリ(メタ)アクリレート共重合、ポリスルホン樹脂、およびポリエーテルスルホン樹脂から選ばれる少なくとも1種が例示でき、1種または2種以上併用してもよい。これら非晶性樹脂の中でも、特に高い透明性を有するポリカーボネート(PC)樹脂、ABS樹脂の中でも透明ABS樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリ(メタ)アクリレート樹脂、ポリ(メタ)アクリレート共重合、およびポリエーテルスルホン樹脂を好ましく使用することができる。各種樹脂として透明性に優れる非晶性樹脂を用いる場合には、前述の溶融加工時の流動性向上に加えて、高い透明性を維持させることができるという特徴を発現できる。ここで、非晶性樹脂組成物に高い透明性を発現させたい場合には、環式PASとして前記式(A)のmが異なる環式PASを用いることが好ましい。なお、環式PASとして環式PASの単体、すなわち前記式(A)のmが単一のものを用いる場合、この様な環式PASは融点が高い傾向にあるため、非晶性樹脂と溶融混練する際に十分に溶融分散せずに樹脂中に凝集物となったり透明性が低下する傾向にあるが、前述したように前記式(A)のmが異なる環式PASはその融解温度が低い傾向にあり、このことは溶融混練時の均一性の向上に効果的である。ここで、本発明の実施形態の製造方法により得られる環式PASは、前記式(A)におけるmが単一ではなく、m=4〜50の異なるmを有する前記式(A)が得られやすいという特徴を有するため、高い透明性を有する非晶性樹脂組成物を得たい場合に特に有利である。
上記で得られる、各種樹脂に環式PASを配合した樹脂組成物は、通常公知の射出成形、押出成形、ブロー成形、プレス成形、および紡糸などの任意の方法で成形することができ、各種成形品に加工し利用することができる。成形品としては、射出成形品、押出成形品、ブロー成形品、フィルム、シート、および繊維などとして利用できる。またこれにより得られた各種成形品は、自動車部品、電気・電子部品、建築部材、各種容器、日用品、生活雑貨および衛生用品など各種用途に利用することができる。また、上記樹脂組成物およびそれからなる成形品は、リサイクルすることが可能である。例えば、樹脂組成物およびそれからなる成形品を粉砕し、好ましくは粉末状とした後、必要に応じて添加剤を配合して得られる樹脂組成物は、上記樹脂組成物と同じように使用でき、成形品とすることも可能である。
(11)環式PASの高重合度体への転化
本発明の実施形態によって回収される環式PASは、前記(9)項に述べたごとき優れた特性を有するので、PASポリマーすなわち高重合度体を得る際のプレポリマーとして好適に用いることが可能である。プレポリマーとしては、本発明の実施形態の環式PASの回収方法で得られる環式PAS単独でもよいし、所定量の他の成分を含むものでも差し障り無い。ただし、環式PAS以外の成分を含む場合は、環式PAS以外の成分が、線状PASや分岐構造を有するPASなど、PAS成分であることが特に好ましい。少なくとも本発明の実施形態の環式PASを含み、以下に例示する方法により高重合度体へ変換可能なものがポリアリーレンスルフィドプレポリマーであり、以下PASプレポリマーと称する場合もある。
環式PASの高重合度体への転化は、環式PASを原料にして高分子量体が生成する条件下で行えばよく、例えば本発明の実施形態の環式PAS製造方法による環式PASを含む、PASプレポリマーを加熱して高重合度体に転化させる方法が好ましい方法として例示できる。この加熱の温度は、前記PASプレポリマーが溶融解する温度であることが好ましく、このような温度条件であれば特に制限は無い。加熱温度がPASプレポリマーの溶融解温度未満では、分子量の高いPASを得るのに長時間が必要となる傾向がある。なお、PASプレポリマーが溶融解する温度は、PASプレポリマーの組成や分子量、また、加熱時の環境により変化するため、一意的に示すことはできないが、例えばPASプレポリマーを示差走査型熱量計で分析することで溶融解温度を把握することが可能である。なお、加熱温度が高すぎるとPASプレポリマー間、加熱により生成したPAS間、及び加熱により生成したPASとPASプレポリマー間などでの架橋反応や分解反応に代表される好ましくない副反応が生じやすくなる傾向にあり、得られるPASの特性が低下する場合がある。そのため、このような好ましくない副反応が顕著に生じる温度は避けることが望ましい。このような好ましくない副反応の顕在化を抑制しやすい加熱温度としては、180℃以上が例示でき、好ましくは200℃以上であり、より好ましくは250℃以上である。また、上記加熱温度としては、400℃以下が例示でき、好ましくは380℃以下であり、より好ましくは360℃以下である。一方、ある程度の副反応が起こっても差し障り無い場合には、400℃を超える温度であってもよく、450℃以下、好ましくは420℃以下の温度範囲も選択可能である。この場合には、極短時間で高分子量体への転化を行えるという利点がある。
前記加熱を行う時間は、使用するPASプレポリマーにおける環式PASの含有率やm数、及び分子量などの各種特性、また、加熱の温度等の条件によって異なるため一様には規定できないが、前記した好ましくない副反応がなるべく起こらないように設定することが好ましい。加熱時間としては、0.05時間以上が例示でき、0.1時間以上が好ましい。また、100時間以下が例示でき、20時間以下が好ましく、10時間以下がより好ましい。加熱時間が0.05時間未満では、PASプレポリマーのPASへの転化が不十分になりやすい。また、加熱時間が100時間を超えると、得られるPASの特性に対して、好ましくない副反応による悪影響が顕在化する可能性が高くなる傾向にあるのみならず、経済的にも不利益を生じる場合がある。
また、PASプレポリマーの加熱による高重合度体への転化に際しては、転化を促進する各種触媒成分を使用することも可能である。このような触媒成分としては、イオン性化合物やラジカル発生能を有する化合物が例示できる。イオン性化合物としては、たとえばチオフェノールのナトリウム塩やリチウム塩等、および硫黄のアルカリ金属塩が例示できる。また、ラジカル発生能を有する化合物としては、たとえば加熱により硫黄ラジカルを発生する化合物を例示でき、より具体的にはジスルフィド結合を含有する化合物が例示できる。なお、各種触媒成分を使用する場合、触媒成分は通常はPASに取り込まれ、得られるPASは触媒成分を含有するものになることが多い。特に触媒成分としてアルカリ金属及び/または他の金属成分を含有するイオン性の化合物を用いた場合、これに含まれる金属成分の大部分は得られるPAS中に残存する傾向が強い。また、各種触媒成分を使用して得られたPASは、PASを加熱した際の重量減少が増大する傾向にある。従って、より純度の高いPASを所望する場合および/または加熱した際の重量減少の少ないPASを所望する場合には、触媒成分の使用をできるだけ少なくする、好ましくは使用しないことが望まれる。従って、各種触媒成分を使用してPASプレポリマーを高重合度体へ転化する際には、PASプレポリマーと触媒成分を含む反応系内のアルカリ金属量が100ppm以下、好ましくは50ppm以下、より好ましくは30ppm以下、更に好ましくは10ppm以下であって、なお且つ、反応系内の全硫黄原子の重量に対するジスルフィド基を構成する硫黄原子の重量が1重量%未満、好ましくは0.5重量%未満、より好ましくは0.3重量%未満、更に好ましくは0.1重量%未満になるように触媒成分の添加量を調整して行うことが好ましい。
PASプレポリマーの加熱による高重合度体への転化は、通常溶媒の非存在下で行うが、溶媒の存在下で行うことも可能である。溶媒としては、PASプレポリマーの加熱による高重合度体への転化の阻害や生成したPASの分解や架橋など好ましくない副反応を実質的に引き起こさないものであれば特に制限はない。例えばN−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド、およびジメチルアセトアミドなどの含窒素極性溶媒や、ジメチルスルホキシドおよびジメチルスルホンなどのスルホキシド・スルホン系溶媒や、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、およびアセトフェノンなどのケトン系溶媒や、ジメチルエーテル、ジプロピルエーテル、およびテトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒や、クロロホルム、塩化メチレン、トリクロロエチレン、2塩化エチレン、ジクロルエタン、テトラクロルエタン、およびクロルベンゼンなどのハロゲン系溶媒や、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、フェノール、クレゾール、およびポリエチレングリコールなどのアルコール・フェノール系溶媒や、ベンゼン、トルエン、およびキシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒などがあげられる。また、二酸化炭素、窒素、水等の無機化合物を超臨界流体状態として溶媒に用いることも可能である。これらの溶媒は1種類または2種類以上の混合物として使用することができる。
PASプレポリマーの加熱による高重合度体への転化は、通常の重合反応装置を用いる方法で行うのはもちろんのこと、成形品を製造する型内で行ってもよいし、押出機や溶融混練機を用いて行うなど、加熱機構を具備した装置であれば特に制限無く行うことが可能であり、バッチ方式、連続方式など公知の方法が採用できる。
PASプレポリマーの加熱による高重合度体への転化の際の雰囲気は、非酸化性雰囲気で行うことが好ましく、減圧条件下で行うことも好ましい。減圧条件下で行う場合、反応系内の雰囲気を一度非酸化性雰囲気としてから減圧条件にすることが好ましい。これによりPASプレポリマー間、加熱により生成したPAS間、及び加熱により生成したPASとPASプレポリマー間などで架橋反応や分解反応等の好ましくない副反応の発生を抑制できる傾向にある。なお、非酸化性雰囲気とは、PAS成分が接する気相における酸素濃度が5体積%以下、好ましくは2体積%以下、更に好ましくは酸素を実質的に含有しない雰囲気、即ち窒素、ヘリウム、アルゴン等の不活性ガス雰囲気であることを指す。この中でも特に、経済性及び取扱いの容易さの面からは窒素雰囲気が好ましい。また、減圧条件下とは、反応を行う系内が大気圧よりも低いことを指し、上限として50kPa以下が好ましく、20kPa以下がより好ましく、10kPa以下が更に好ましい。下限としては0.1kPa以上が例示でき、0.2kPa以上がより好ましい。減圧条件が好ましい上限を超える場合は、架橋反応など好ましくない副反応が起こりやすくなる傾向にある。一方、減圧条件が好ましい下限未満では、反応温度によってはPASプレポリマーに含まれる分子量の低い環式ポリアリーレンスルフィドが揮散しやすくなる傾向にある。
前記したPASプレポリマーの高重合度体への転化は、繊維状物質の共存下で行うことも可能である。ここで繊維状物質とは、細い糸状の物質のことであって、天然繊維のごとく細長く引き延ばされた構造である任意の物質が好ましい。繊維状物質存在下でPASプレポリマーの高重合度体への転化を行うことで、PASと繊維状物質からなる複合材料構造体を容易に作成する事ができる。このような構造体は、繊維状物質によって補強されるため、PAS単独の場合に比べて、たとえば機械物性に優れる傾向にある。
ここで、各種繊維状物質の中でも長繊維からなる強化繊維を用いることが好ましく、これによりPASを高度に強化する事が可能になる。一般に樹脂と繊維状物質からなる複合材料構造体を作製する際には、樹脂が溶融した際の粘度が高いことに起因して、樹脂と繊維状物質のぬれが悪くなる傾向にあり、均一な複合材料ができなかったり、期待通りの機械物性が発現しないことが多い。ここでぬれとは、溶融樹脂のごとき流体物質と、繊維状化合物のごとき固体基質との間に実質的に空気または他のガスが捕捉されないようにこの流体物質と固体基質との物理的状態の良好且つ維持された接触があることを意味する。流体物質の粘度が低い方が、繊維状物質とのぬれは良好になる傾向にある。本発明の実施形態のPASプレポリマーは、融解した際の粘度が、一般的な熱可塑性樹脂、たとえば従来知られる方法により製造されたPASと比べて著しく低いため、繊維状物質とのぬれが良好になりやすい。PASプレポリマーと繊維状物質が良好なぬれを形成した後、本発明の実施形態のPASの製造方法によればPASプレポリマーが高重合度体に転化するので、繊維状物質と高重合度体(ポリアリーレンスルフィド)が良好なぬれを形成した複合材料構造体を容易に得ることができる。
繊維状物質としては長繊維からなる強化繊維が好ましいことは前述したとおりであり、本発明の実施形態に用いられる強化繊維に特に制限はないが、好適に用いられる強化繊維としては、一般に高性能強化繊維として用いられる耐熱性及び引張強度の良好な繊維が挙げられる。例えば、その強化繊維としては、ガラス繊維、炭素繊維、黒鉛繊維、アラミド繊維、炭化ケイ素繊維、アルミナ繊維、およびボロン繊維が挙げられる。この内、比強度、比弾性率が良好で、軽量化に大きな寄与が認められる炭素繊維や黒鉛繊維が最も良好なものとして例示できる。炭素繊維や黒鉛繊維としては、用途に応じて、あらゆる種類の炭素繊維や黒鉛繊維を用いることが可能であるが、引張強度450Kgf/mm 、引張伸度1.6%以上の高強度高伸度炭素繊維が最も適している。長繊維状の強化繊維を用いる場合、その長さは、5cm以上であることが好ましい。この長さの範囲では、強化繊維の強度を複合材料として十分に発現させることが容易となる。また、炭素繊維や黒鉛繊維は、他の強化繊維を混合して用いてもかまわない。また、強化繊維は、その形状や配列を限定されず、例えば、単一方向、ランダム方向、シート状、マット状、織物状、組み紐状であっても使用可能である。また、特に、比強度、比弾性率が高いことを要求される用途には、強化繊維が単一方向に引き揃えられた配列が最も適しているが、取り扱いの容易なクロス(織物)状の配列も本発明の実施形態には適している。
また、前記したPASプレポリマーの高重合度体への転化は、充填材の存在下で行うことも可能である。充填材としては、たとえば非繊維状ガラス、非繊維状炭素や、無機充填材、たとえば炭酸カルシウム、酸化チタン、アルミナなどを例示できる。
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。これら例は例示的なものであって限定的なものではない。
<環式ポリフェニレンスルフィド生成率測定>
環式ポリフェニレンスルフィド化合物の生成率の測定は、HPLCを用いた定性定量分析によって行なった。HPLCの測定条件を以下に示す。
装置:島津製作所製 LC−10Avpシリーズ
カラム:関東化学社製 Mightysil RP−18 GP150−4.6(5μm)
検出器:フォトダイオードアレイ検出器(波長270nm)
なお、HPLCで成分分割した各成分の構造決定は、液体クロマトグラフ質量分析(LC―MS)による分析と、分取液体クロマトグラフ(分取LC)での分取物のマトリックス支援レーザー脱離イオン化質量分析(MALDI−MS)、核磁気共鳴分光法(NMR)による分析、および赤外分光測定(IR測定)により行った。これにより、繰り返し単位数4〜15の環式ポリフェニレンスルフィドが、本条件のHPLC測定により定性定量できることを確認した。
<スルフィド化剤の分析>
反応混合物中のスルフィド化剤の定量(水硫化ナトリウムの定量)は、イオンクロマトグラフィーを用いて以下の条件にて実施した。
装置:島津製作所製 HIC−20Asuper
カラム:島津製作所製 Shim−packIC−SA2(250mm×4.6mmID)
検出器:電気伝導度検出器(サプレッサ)
溶離液:4.0mM炭酸水素ナトリウム/1.0mM炭酸ナトリウム水溶液
流速:1.0mL/分
注入量:50マイクロリットル
カラム温度:30℃。
試料中に過酸化水素水を添加して試料中に含まれる硫化物イオンの酸化を行った後に上記分析により硫酸イオンとして定量し、過酸化水素水を添加しない無処理の試料を分析した際の硫酸イオン定量値を差し引く方法で、試料中の硫化物イオン量を算出した。ここで算出した硫化物イオン量を未反応のスルフィド化剤量とし、反応混合物中の濃度を算出した。
<ジハロゲン化芳香族化合物の分析>
反応生成物を含む反応混合物中のジハロゲン化芳香族化合物の定量(p−ジクロロベンゼンの定量)は、ガスクロマトグラフィーを用いて以下の条件にて実施した。
装置:島津製作所製 GC−2010
カラム:J&W社製 DB−5 0.32mm×30m(0.25μm)
キャリアーガス:ヘリウム
検出器:水素炎イオン化検出器(FID)。
<線状ポリフェニレンスルフィドの分子量測定方法>
原料として用いる線状ポリフェニレンスルフィドの重量平均分子量は下記条件にて測定し、標準ポリスチレン換算として求めた。
装置:センシュー科学製 SSC−7100
カラム:Shodex UT806M×2
カラム温度:210℃
移動相:1−クロロナフタレン
検出器:示差屈折率検出器
検出器温度:210℃
<装置構成>
図1は、本実施例で使用した反応装置10の構成の概要を模式的に表わす説明図である。反応装置10は、容器(I)、(II)、(III)および(IV)を備える。容器(I)では、水分を含むスルフィド化剤の脱水を行う。容器(I)で脱水したスルフィド化剤は、流路20を介して容器(II)へ送られる。
容器(II)では、送られたスルフィド化剤とその他の原料成分とを混合して原料混合物(a)を調製する。容器(II)には、容器(II)との間で原料混合物(a)を循環させる循環ライン42が設けられている。循環ライン42は、スラリーシール型キャンドモータポンプであるポンプを備え、ポンプの駆動力により原料混合物(a)が循環する。循環ライン42には、バルブを介して分岐ライン22が接続されており、循環ライン42および分岐ライン22を介して、容器(II)から容器(III)へと原料混合物(a)が供給される。バルブの開度の調節により、容器(II)から容器(III)に供給する原料混合物(a)の量を調整することができる。
容器(III)では、供給された原料混合物(a)を加熱して反応させることができ、内部の圧力は常圧を超える圧力とすることができる。このようにして原料混合物(a)が加熱されることにより、反応混合物(b)が調整される。容器(III)には、容器(III)との間で反応混合物(b)を循環させる循環ライン44が設けられている。循環ライン44は、スラリーシール型キャンドモータポンプであるポンプを備え、ポンプの駆動力により反応混合物(b)が循環する。循環ライン44には、バルブを介して分岐ライン24が接続されており、循環ライン44および分岐ライン24を介して、容器(III)から容器(IV)へと反応混合物(b)が供給される。バルブの開度の調節により、容器(III)から容器(IV)に供給する反応混合物(b)の量を調整することができる。分岐ライン24には図示しない冷却機構が設けられているため、高温の反応混合物(b)を冷却して容器(IV)に回収できる。なお、容器(III)が、本願の特許請求の範囲における「反応容器」に相当し、容器(II)が「供給容器」に相当し、容器(IV)が「受け容器」に相当する。
以下に、実施例1〜8および比較例1〜4についての製造条件の詳細および分析結果について説明する。併せて、各実施例および比較例の製造条件および分析結果を、以下の表1および表2にまとめて示す。
Figure 0005768929
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[実施例1]
<原料混合物(a−1)の調製>
攪拌機および精留塔を具備したSUS316製70リットルの容器(I)に水硫化ナトリウム48重量%水溶液を14.6kg(水硫化ナトリウムとして7.0kg、125モル)、水酸化ナトリウム48重量%水溶液10.9kg(水酸化ナトリウムとして5.2kg、131モル)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)25.0kg(24.4リットル)を仕込み、窒素ガスを通じながら205℃まで徐々に昇温し脱水操作を行った。脱水操作での留出液をガスクロマトグラフィーで分析したところ留出液にはNMPが0.15kg(0.15リットル)含まれており、容器(I)にNMPが24.9kg(24.2リットル)残存していることがわかった。なお、脱水工程を通して反応系から飛散した硫化水素は2.5モルであり、硫化水素の飛散により容器(I)から水硫化ナトリウムが2.5モル減少し、水酸化ナトリウムが2.5モル増加したことになる。
続いて、攪拌機を具備したSUS316製300リットルの容器(II)に先の脱水操作で水を除いた混合物を入れ、NMPを221kg(216リットル)、p−ジクロロベンゼン(p−DCB)18.4kg(125モル)を追添加して、原料混合物(a−1)とした。したがって、原料混合物(a−1)の有機極性溶媒量で表す硫黄成分の基質濃度は、硫黄成分1モル当たり1.96リットルであった。また、有機極性溶媒量で表すアリーレン単位の基質濃度は、アリーレン単位1モル当たり1.92リットルであった。また、原料混合物(a−1)中のアリーレン単位量は、硫黄成分1モル当たり1.02モルとなった。容器(II)では、原料混合物(a−1)を撹拌しながら内温を140℃で保持した。
<初期反応混合物の調製>
攪拌機を具備したSUS316製70リットルの容器(III)に、容器(II)で調製した原料混合物(a−1)を40kg供給し、窒素下に密封し、内温を250℃まで昇温した後、2時間保持して初期反応を行ない、初期反応混合物を得た。初期反応後の容器(III)の圧力は0.4MPaであった。初期反応混合物をサンプリングして分析した結果、初期反応混合物における未反応のスルフィド化剤の濃度、すなわち、初期反応混合物1キログラム当たりに含まれる未反応のスルフィド化剤は、0.022モルであった。原料混合物(a−1)のスルフィド化剤濃度に対する初期反応混合物のスルフィド化剤濃度の比は、5%であった。また、初期反応混合物における未反応のジハロゲン化芳香族化合物の濃度、すなわち、初期反応混合物1キログラム当たりに含まれる未反応のジハロゲン化芳香族化合物は、0.027モルであった。原料混合物(a−1)のジハロゲン化芳香族化合物濃度に対する初期反応混合物のジハロゲン化芳香族化合物濃度の比は、6%であった。また、環式PPSの生成率は14%であった。本反応中の揮散成分および追加成分はないことから初期反応混合物の重量変化はなく、基質濃度は原料混合物(a−1)と同一に維持できたと見なせる。
<環式PASの合成>
上記の初期反応混合物を含む容器(III)に、容器(III)の内温を250℃に保持したまま、容器(II)から原料混合物(a−1)を20kg/時間の速度でスラリーシール型キャンドモータポンプを使用して連続的に供給した(操作A)。また同時に、容器(III)から反応混合物(b)を20kg/時間の速度でスラリーシール型キャンドモータポンプを使用して連続的に抜き出し(操作B)、配管内で200℃以下に冷却し、受け容器である容器(IV)に移送して環式PPSを含む混合物を得た。本操作を10時間継続した。
本操作中、容器(III)の圧力は0.4MPaで一定であった。また、容器(II)では、原料混合物(a−1)の供給以外には成分の追加および成分の揮散はなかった。また、容器(III)では、原料混合物(a−1)の供給と反応混合物(b)の抜き出し以外には成分の追加および成分の揮散はなかった。したがって、容器(III)内の反応混合物(b)における基質濃度は初期反応混合物と同一であり、一定に維持したと見なせる。また、容器(III)の液面は一定であったことから、反応混合物(b)の量も一定であったといえる。
ここで、本操作開始から5時間後および10時間後に、容器(III)から反応混合物(b)をサンプリングし分析した。5時間後では、反応混合物(b)における未反応のスルフィド化剤の濃度、すなわち、反応混合物(b)1キログラム当たりに含まれる未反応のスルフィド化剤は、0.009モルであった。原料混合物(a−1)のスルフィド化剤濃度に対する反応混合物(b)のスルフィド化剤濃度の比は、2%であった。また、反応混合物(b)における未反応のジハロゲン化芳香族化合物の濃度、すなわち、反応混合物(b)1キログラム当たりに含まれる未反応のジハロゲン化芳香族化合物は、0.014モルであった。原料混合物(a−1)のジハロゲン化芳香族化合物濃度に対する反応混合物(b)のジハロゲン化芳香族化合物濃度の比は、3%であった。また、環式PPSの生成率は16%であった。10時間後は、反応混合物(b)における未反応のスルフィド化剤の濃度、すなわち、反応混合物(b)1キログラム当たりに含まれる未反応のスルフィド化剤は、0.009モルであった。原料混合物(a−1)のスルフィド化剤濃度に対する反応混合物(b)のスルフィド化剤濃度の比は、2%であった。また、反応混合物(b)における未反応のジハロゲン化芳香族化合物の濃度、すなわち、反応混合物(b)1キログラム当たりに含まれる未反応のジハロゲン化芳香族化合物は、0.014モルであった。原料混合物(a−1)のジハロゲン化芳香族化合物濃度に対する反応混合物(b)のジハロゲン化芳香族化合物濃度の比は、3%であった。また、環式PPSの生成率は17%であった。
本実施例より、本発明の好ましい方法で基質濃度を一定にした場合、環式PPSを高生成率かつ一定の生成率で連続して得られ、効率的に環式PPSを合成できることがわかった。
[比較例1]
ここでは原料混合物(a)の供給(操作A)および反応混合物(b)の抜き出し(操作B)を行わず、回分式にて環式PASを合成した例を示す。
攪拌機を具備したSUS316製70リットルの容器(III)に、上記実施例1で調製した原料混合物(a−1)を40kg供給し、窒素下に密封し、内温を250℃まで昇温した後、2時間保持して重合反応を行ない、反応生成物を含む反応混合物を得た。本反応後の容器(III)の圧力は0.4MPaであった。得られた反応混合物をサンプリングして分析した結果、反応混合物における未反応のスルフィド化剤の濃度、すなわち、反応混合物1キログラム当たりに含まれる未反応のスルフィド化剤は、0.022モルであった。原料混合物(a−1)のスルフィド化剤濃度に対する反応混合物のスルフィド化剤濃度の比は、5%であった。また、反応混合物における未反応のジハロゲン化芳香族化合物の濃度、すなわち、反応混合物1キログラム当たりに含まれる未反応のジハロゲン化芳香族化合物は、0.027モルであった。原料混合物(a−1)のジハロゲン化芳香族化合物濃度に対する反応混合物のジハロゲン化芳香族化合物濃度の比は、6%であった。また、環式PPSの生成率は14%であった。本反応中の揮散成分および追加成分はないことから、反応混合物の重量変化はなく、基質濃度は原料混合物(a−1)と同一に維持できたと見なせる。
本比較例では実施例1と同一の原料混合物(a−1)を用い、反応時間は実施例1の環式PASの合成における平均滞留時間と同一の2時間であるが、環式PPSの生成率は実施例1に比べ低いことがわかった。実施例1の結果と比較例1の結果との対比により、回分式に対し操作Aおよび操作Bを継続的に行うことで環式ポリアリーレンスルフィドの生成率が向上する本発明の効果が示せた。
[参考例1]
ここでは従来技術による線状ポリアリーレンスルフィドの製造、すなわちスルフィド化剤とジハロゲン化芳香族化合物とをスルフィド化剤の硫黄成分1モルに対して1.25リットル以上の有機極性溶媒中を用いて、加熱して反応させて得られる反応混合物を固液分離に処することで環式ポリアリーレンスルフィドと線状ポリアリーレンスルフィドの分離を行い得られる溶媒を含む固形分を、さらに水洗して線状ポリアリーレンスルフィドを製造した例を示す。
攪拌機および精留塔を具備したSUS製10リットル反応槽に水硫化ナトリウムの48重量%水溶液を2.46kg(水硫化ナトリウムとして1.18kg、21.1モル)、水酸化ナトリウム48重量%水溶液1.84kg(水酸化ナトリウムとして0.88kg、22.1モル)、N−メチル−2−ピロリドン4.43kg(4.32リットル)を仕込み、窒素ガスを通じながら205℃まで徐々に昇温し脱水操作を行った。脱水操作での留出液をガスクロマトグラフィーで分析したところ留出液にはNMPが0.027kg(0.026リットル)含まれており、反応槽にNMPが4.40kg(4.30リットル)残存していることがわかった。なお、脱水工程を通して反応系から飛散した硫化水素は0.42モルであり、硫化水素の飛散により反応槽から水硫化ナトリウムが0.42モル減少し、水酸化ナトリウムが0.42モル増加したことになる。
続いて、攪拌機を具備したSUS製70リットルの反応槽に先の脱水操作で水を除いた混合物を入れ、NMPを50.2kg(49.0リットル)、DCBを3.15kg(21.4モル)を追添加し、反応槽を窒素ガス下に密封した。撹拌しながら、1時間かけて250℃まで昇温し250℃で2時間保持した後、冷却した。ここで得られた反応混合物をガスクロマトグラフィーおよび高速液体クロマトグラフィーにより分析した結果、モノマーのDCBの消費率は92%、環式ポリアリーレンスルフィドの生成率は16.7%であることがわかった。
次に上記で得られた反応混合物、すなわち少なくとも環式PPS、線状PPS、NMPおよび副生塩としてNaClを含む反応混合物を遠心脱水機にて固液分離し、この操作により湿潤状態の固形分を得た。得られた湿潤状態の固形分を、温水を用いて洗浄を十分に行った後に乾燥し乾燥固体1.54kgを得た。
以上の操作を繰り返し、線状PPSを10.9kg得た。
この様にして得られた固体を分析した結果、赤外分光分析(装置;島津社製FTIR−8100A)における吸収スペクトルより線状のポリフェニレンスルフィドであることがわかった。また重量平均分子量は10,000であった。
[実施例2]
ここではスルフィド化剤及びジハロゲン化芳香族化合物および有機極性溶媒に加え、線状ポリアリーレンスルフィドを含む原料混合物(a)を調製して環式PASの製造を行った結果を示す。
<原料混合物(a−2)の調製>
実施例1と同様にして脱水操作を行った後、攪拌機を具備したSUS316製300リットルの容器(II)に先の脱水操作で水を除いた混合物の5分の1(水硫化ナトリウムとして1.4kg(24.5モル)、NMPとして5.0kg(4.8リットル))を入れ、さらに参考例1で調製した線状PPSを10.6kg(硫黄成分およびアリーレン成分として98.0モル)、NMPを241kg(235リットル)、p−ジクロロベンゼン(p−DCB)3.9kg(26.5モル)を追添加して、原料混合物(a−2)とした。したがって、原料混合物(a−2)の有機極性溶媒量で表す基質濃度は、硫黄成分1モル当たり1.96リットルであった。また、有機極性溶媒量で表すアリーレン単位の基質濃度は、アリーレン単位1モル当たり1.92リットルであった。また、原料混合物(a−2)中のアリーレン単位量は、硫黄成分1モル当たり1.02モルとなった。容器(II)では、原料混合物(a−2)を撹拌しながら内温を140℃で保持した。
<初期反応混合物の調製>
攪拌機を具備したSUS316製70リットルの容器(III)に上記で調製した原料混合物(a−2)を40kg供給し、窒素下に密封し、内温を250℃まで昇温した後、2時間保持して初期反応を行ない、初期反応混合物を得た。初期反応後の容器(III)の圧力は0.3MPaであった。初期反応混合物をサンプリングして分析した結果、初期反応混合物における未反応のスルフィド化剤の濃度、すなわち、初期反応混合物1キログラム当たりに含まれる未反応のスルフィド化剤は、0.005モルであった。原料混合物(a−2)のスルフィド化剤濃度に対する初期反応混合物のスルフィド化剤濃度の比は、5%であった。また、初期反応混合物における未反応のジハロゲン化芳香族化合物の濃度、すなわち、初期反応混合物1キログラム当たりに含まれる未反応のジハロゲン化芳香族化合物は、0.009モルであった。原料混合物(a−2)のジハロゲン化芳香族化合物濃度に対する初期反応混合物のジハロゲン化芳香族化合物濃度の比は、9%であった。また、環式PPSの生成率は12%であった。本反応中の揮散成分および追加成分はないことから初期反応混合物の重量変化はなく、基質濃度は原料混合物(a−2)と同一に維持できたと見なせる。
<環式PASの合成>
上記の初期反応混合物を含む容器(III)に、容器(III)の内温を250℃に保持したまま、容器(II)から原料混合物(a−2)を20kg/時間の速度でスラリーシール型キャンドモータポンプを使用して連続的に供給した(操作A)。また同時に、容器(III)から反応混合物(b)を20kg/時間の速度でスラリーシール型キャンドモータポンプを使用して連続的に抜き出し(操作B)、配管内で200℃以下に冷却し、受け容器である容器(IV)に移送して環式PPSを含む混合物を得た。本操作を10時間継続した。
本操作中、容器(III)の圧力は0.3MPaで一定であった。また、容器(II)では、原料混合物(a−2)の供給以外には成分の追加および成分の揮散はなかった。また、容器(III)では、原料混合物(a−2)の供給と反応混合物(b)の抜き出し以外には成分の追加および成分の揮散はなかった。したがって、容器(III)内の反応混合物(b)における基質濃度は初期反応混合物と同一であり、一定に維持したと見なせる。また、容器(III)の液面は一定であったことから、反応混合物(b)の量も一定であったといえる。
ここで、本操作開始から5時間後および10時間後に、容器(III)から反応混合物(b)をサンプリングし分析した。5時間後では、反応混合物(b)における未反応のスルフィド化剤の濃度、すなわち、反応混合物(b)1キログラム当たりに含まれる未反応のスルフィド化剤は、0.005モルであった。原料混合物(a−2)のスルフィド化剤濃度に対する反応混合物(b)のスルフィド化剤濃度の比は、5%であった。また、反応混合物(b)における未反応のジハロゲン化芳香族化合物の濃度、すなわち、反応混合物(b)1キログラム当たりに含まれる未反応のジハロゲン化芳香族化合物は、0.009モルであった。原料混合物(a−2)のジハロゲン化芳香族化合物濃度に対する反応混合物(b)のジハロゲン化芳香族化合物濃度の比は、9%であった。また、環式PPSの生成率は14%であった。10時間後は、反応混合物(b)における未反応のスルフィド化剤の濃度、すなわち、反応混合物(b)1キログラム当たりに含まれる未反応のスルフィド化剤は、0.004モルであった。原料混合物(a−2)のスルフィド化剤濃度に対する反応混合物(b)のスルフィド化剤濃度の比は、4%であった。また、反応混合物(b)における未反応のジハロゲン化芳香族化合物の濃度、すなわち、反応混合物(b)1キログラム当たりに含まれる未反応のジハロゲン化芳香族化合物は、0.009モルであった。原料混合物(a−2)のジハロゲン化芳香族化合物濃度に対する反応混合物(b)のジハロゲン化芳香族化合物濃度の比は、9%であった。また、環式PPSの生成率は15%であった。
本実施例より、本発明の好ましい方法では、線状PPSを原料成分に用いても環式PPSを高生成率かつ一定の生成率で連続して得られ、効率的に環式PPSを合成できることがわかった。
[比較例2]
ここでは原料混合物(a)の供給(操作A)および反応混合物(b)の抜き出し(操作B)を行わず、回分式にて環式PASを合成した例を示す。
攪拌機を具備したSUS316製70リットルの容器(III)に、上記実施例2で調製した原料混合物(a−2)を40kg供給し、窒素下に密封し、内温を250℃まで昇温した後、2時間保持して重合反応を行ない、反応生成物を含む反応混合物を得た。本反応後の容器(III)の圧力は0.3MPaであった。得られた反応混合物をサンプリングして分析した結果、反応混合物における未反応のスルフィド化剤の濃度、すなわち、反応混合物1キログラム当たりに含まれる未反応のスルフィド化剤は、0.005モルであった。原料混合物(a−2)のスルフィド化剤濃度に対する反応混合物のスルフィド化剤濃度の比は、5%であった。また、反応混合物における未反応のジハロゲン化芳香族化合物の濃度、すなわち、反応混合物1キログラム当たりに含まれる未反応のジハロゲン化芳香族化合物は、0.009モルであった。原料混合物(a−2)のジハロゲン化芳香族化合物濃度に対する反応混合物のジハロゲン化芳香族化合物濃度の比は、9%であった。また、環式PPSの生成率は12%であった。本反応中の揮散成分および追加成分はないことから、反応混合物の重量変化はなく、基質濃度は原料混合物(a−2)と同一に維持できたと見なせる。
本比較例では実施例2と同一の原料混合物(a−2)を用い、反応時間は実施例2の環式PASの合成における平均滞留時間と同一の2時間であるが、環式PPSの生成率は実施例2に比べ低いことがわかった。実施例2の結果と比較例2の結果との対比により、回分式に対し操作Aおよび操作Bを継続的に行うことで環式ポリアリーレンスルフィドの生成率が向上する本発明の効果が示せた。
[実施例3]
ここでは原料混合物(a)および反応混合物(b)の有機極性溶媒量を実施例1よりも増加した、すなわち基質濃度が低い例を示す。
<原料混合物(a−3)の調製>
実施例1と同様にして脱水操作を行った後、攪拌機を具備したSUS316製300リットルの容器(II)に先の脱水操作で水を除いた混合物を入れ、NMPを395kg(385リットル)、p−ジクロロベンゼン(p−DCB)18.4kg(125モル)を追添加して、原料混合物(a−3)とした。したがって、原料混合物(a−3)の有機極性溶媒量で表す硫黄成分の基質濃度は、硫黄成分1モル当たり3.34リットルであった。また、有機極性溶媒量で表すアリーレン単位の基質濃度は、アリーレン単位1モル当たり3.27リットルであった。また、原料混合物(a−3)中のアリーレン単位量は、硫黄成分1モル当たり1.02モルとなった。容器(II)では、原料混合物(a−3)を撹拌しながら内温を140℃で保持した。
<初期反応混合物の調製>
攪拌機を具備したSUS316製70リットルの容器(III)に上記で調製した原料混合物(a−3)を40kg供給し、窒素下に密封し、内温を250℃まで昇温した後、2時間保持して初期反応を行ない、初期反応混合物を得た。初期反応後の容器(III)の圧力は0.4MPaであった。初期反応混合物をサンプリングして分析した結果、初期反応混合物における未反応のスルフィド化剤の濃度、すなわち、初期反応混合物1キログラム当たりに含まれる未反応のスルフィド化剤は、0.014モルであった。原料混合物(a−3)のスルフィド化剤濃度に対する初期反応混合物のスルフィド化剤濃度の比は、5%であった。また、初期反応混合物における未反応のジハロゲン化芳香族化合物の濃度、すなわち、初期反応混合物1キログラム当たりに含まれる未反応のジハロゲン化芳香族化合物は、0.017モルであった。原料混合物(a−3)のジハロゲン化芳香族化合物濃度に対する初期反応混合物のジハロゲン化芳香族化合物濃度の比は、6%であった。また、環式PPSの生成率は18%であった。本反応中の揮散成分および追加成分はないことから初期反応混合物の重量変化はなく、基質濃度は原料混合物(a−3)と同一に維持できたと見なせる。
<環式PASの合成>
上記の初期反応混合物を含む容器(III)に、容器(III)の内温を250℃に保持したまま、容器(II)から原料混合物(a−3)を20kg/時間の速度でスラリーシール型キャンドモータポンプを使用して連続的に供給した(操作A)。また同時に、容器(III)から反応混合物(b)を20kg/時間の速度でスラリーシール型キャンドモータポンプを使用して連続的に抜き出し(操作B)、配管内で200℃以下に冷却し、受け容器である容器(IV)に移送して環式PPSを含む混合物を得た。本操作を10時間継続した。
本操作中、容器(III)の圧力は0.4MPaで一定であった。また、容器(II)では、原料混合物(a−3)の供給以外には成分の追加および成分の揮散はなかった。また、容器(III)では、原料混合物(a−3)の供給と反応混合物(b)の抜き出し以外には成分の追加および成分の揮散はなかった。したがって、容器(III)内の反応混合物(b)における基質濃度は初期反応混合物と同一であり、一定に維持したと見なせる。また、容器(III)の液面は一定であったことから、反応混合物(b)の量も一定であったといえる。
ここで、本操作開始から5時間後および10時間後に、容器(III)から反応混合物(b)をサンプリングし分析した。5時間後では、反応混合物(b)における未反応のスルフィド化剤の濃度、すなわち、反応混合物(b)1キログラム当たりに含まれる未反応のスルフィド化剤は、0.008モルであった。原料混合物(a−3)のスルフィド化剤濃度に対する反応混合物(b)のスルフィド化剤濃度の比は、3%であった。また、反応混合物(b)における未反応のジハロゲン化芳香族化合物の濃度、すなわち、反応混合物(b)1キログラム当たりに含まれる未反応のジハロゲン化芳香族化合物は、0.011モルであった。原料混合物(a−3)のジハロゲン化芳香族化合物濃度に対する反応混合物(b)のジハロゲン化芳香族化合物濃度の比は、4%であった。また、環式PPSの生成率は20%であった。10時間後は、反応混合物(b)における未反応のスルフィド化剤の濃度、すなわち、反応混合物(b)1キログラム当たりに含まれる未反応のスルフィド化剤は、0.006モルであった。原料混合物(a−3)のスルフィド化剤濃度に対する反応混合物(b)のスルフィド化剤濃度の比は、2%であった。また、反応混合物(b)における未反応のジハロゲン化芳香族化合物の濃度、すなわち、反応混合物(b)1キログラム当たりに含まれる未反応のジハロゲン化芳香族化合物は、0.008モルであった。原料混合物(a−3)のジハロゲン化芳香族化合物濃度に対する反応混合物(b)のジハロゲン化芳香族化合物濃度の比は、3%であった。また、環式PPSの生成率は21%であった。
本実施例より、実施例1に比べ反応混合物内の基質濃度を低下させることで環式PPSをより高生成率で連続して得られ、効率的に環式PPSを合成できることがわかった。
[比較例3]
ここでは原料混合物(a)の供給(操作A)および反応混合物(b)の抜き出し(操作B)を行わず、回分式にて環式PASを合成した例を示す。
攪拌機を具備したSUS316製70リットルの容器(III)に上記実施例3で調製した原料混合物(a−3)を40kg供給し、窒素下に密封し、内温を250℃まで昇温した後、2時間保持して重合反応を行ない、反応生成物を含む反応混合物を得た。本反応後の容器(III)の圧力は0.4MPaであった。得られた反応混合物をサンプリングして分析した結果、反応混合物における未反応のスルフィド化剤の濃度、すなわち、反応混合物1キログラム当たりに含まれる未反応のスルフィド化剤は、0.014モルであった。原料混合物(a−3)のスルフィド化剤濃度に対する反応混合物のスルフィド化剤濃度の比は、5%であった。また、反応混合物における未反応のジハロゲン化芳香族化合物の濃度、すなわち、反応混合物1キログラム当たりに含まれる未反応のジハロゲン化芳香族化合物は、0.017モルであった。原料混合物(a−3)のジハロゲン化芳香族化合物濃度に対する反応混合物のジハロゲン化芳香族化合物濃度の比は、6%であった。また、環式PPSの生成率は18%であった。本反応中の揮散成分および追加成分はないことから、反応混合物の重量変化はなく、基質濃度は原料混合物(a−3)と同一に維持できたと見なせる。
本比較例では実施例3と同一の原料混合物(a−3)を用い、反応時間は実施例3の環式PASの合成における平均滞留時間と同一の2時間であるが、環式PPSの生成率は実施例3に比べ低いことがわかった。実施例3の結果と比較例3の結果との対比により、回分式に対し操作Aおよび操作Bを継続的に行うことで環式ポリアリーレンスルフィドの生成率が向上する本発明の効果が示せた。
[実施例4]
ここでは原料混合物(a)および反応混合物(b)の有機極性溶媒量を実施例1よりも低減した、すなわち基質濃度が高い例を示す。
<原料混合物(a−4)の調製>
実施例1と同様にして脱水操作を行った後、攪拌機を具備したSUS316製300リットルの容器(II)に先の脱水操作で水を除いた混合物を入れ、NMPを155kg(151リットル)、p−ジクロロベンゼン(p−DCB)18.4kg(125モル)を追添加して、原料混合物(a−4)とした。したがって、原料混合物(a−4)の有機極性溶媒量で表す基質濃度は、硫黄成分1モル当たり1.43リットルであった。また、有機極性溶媒量で表すアリーレン単位の基質濃度はアリーレン単位の基質濃度は、アリーレン単位1モル当たり1.40リットルであった。また、原料混合物(a−4)中のアリーレン単位量は、硫黄成分1モル当たり1.02モルとなった。容器(II)では、原料混合物(a−4)を撹拌しながら内温を140℃で保持した。
<初期反応混合物の調製>
攪拌機を具備したSUS316製70リットルの容器(III)に上記で調製した原料混合物(a−4)を40kg供給し、窒素下に密封し、内温を250℃まで昇温した後、2時間保持して初期反応を行ない、初期反応混合物を得た。初期反応後の容器(III)の圧力は0.4MPaであった。初期反応混合物をサンプリングして分析した結果、初期反応混合物における未反応のスルフィド化剤の濃度、すなわち、初期反応混合物1キログラム当たりに含まれる未反応のスルフィド化剤は、0.017モルであった。原料混合物(a−4)のスルフィド化剤濃度に対する初期反応混合物のスルフィド化剤濃度の比は、3%であった。また、初期反応混合物における未反応のジハロゲン化芳香族化合物の濃度、すなわち、初期反応混合物1キログラム当たりに含まれる未反応のジハロゲン化芳香族化合物は、0.024モルであった。原料混合物(a−4)のジハロゲン化芳香族化合物濃度に対する初期反応混合物のジハロゲン化芳香族化合物濃度の比は、4%であった。また、環式PPSの生成率は10%であった。本反応中の揮散成分および追加成分はないことから初期反応混合物の重量変化はなく、基質濃度は原料混合物(a−4)と同一に維持できたと見なせる。
<環式PASの合成>
上記の初期反応混合物を含む容器(III)に、容器(III)の内温を250℃に保持したまま、容器(II)から原料混合物(a−4)を20kg/時間の速度でスラリーシール型キャンドモータポンプを使用して連続的に供給した(操作A)。また同時に、容器(III)から反応混合物(b)を20kg/時間の速度でスラリーシール型キャンドモータポンプを使用して連続的に抜き出し(操作B)、配管内で200℃以下に冷却し、受け容器である容器(IV)に移送して環式PPSを含む混合物を得た。本操作を5時間継続した。
本操作中、容器(III)の圧力は0.4MPaで一定であった。また、容器(II)では、原料混合物(a−4)の供給以外には成分の追加および成分の揮散はなかった。また、容器(III)では、原料混合物(a−4)の供給と反応混合物(b)の抜き出し以外には成分の追加および成分の揮散はなかった。したがって、容器(III)内の反応混合物(b)における基質濃度は初期反応混合物と同一であり、一定に維持したと見なせる。また、容器(III)の液面は一定であったことから、反応混合物(b)の量も一定であったといえる。
ここで、本操作開始から5時間後に容器(III)から反応混合物(b)をサンプリングし分析した結果、反応混合物(b)における未反応のスルフィド化剤の濃度、すなわち、反応混合物(b)1キログラム当たりに含まれる未反応のスルフィド化剤は、0.012モルであった。原料混合物(a−4)のスルフィド化剤濃度に対する反応混合物(b)のスルフィド化剤濃度の比は、2%であった。また、反応混合物(b)における未反応のジハロゲン化芳香族化合物の濃度、すなわち、反応混合物(b)1キログラム当たりに含まれる未反応のジハロゲン化芳香族化合物は、0.018モルであった。原料混合物(a−4)のジハロゲン化芳香族化合物濃度に対する反応混合物(b)のジハロゲン化芳香族化合物濃度の比は、3%であった。また、環式PPSの生成率は12%であった。
本実施例より、実施例1に比べ反応混合物(b)内の基質濃度を高くした場合、環式PPSの生成率は低下傾向となったが、好ましい範囲内であり、効率的に環式PPSを合成できることがわかった。
[比較例4]
ここでは原料混合物(a)の供給(操作A)および反応混合物(b)の抜き出し(操作B)を行わず回分式にて環式PASを合成した例を示す。
攪拌機を具備したSUS316製70リットルの容器(III)に、上記実施例4で調製した原料混合物(a−4)を40kg供給し、窒素下に密封し、内温を250℃まで昇温した後、2時間保持して重合反応を行ない、反応生成物を含む反応混合物を得た。本反応後の容器(III)の圧力は0.4MPaであった。得られた反応混合物をサンプリングして分析した結果、反応混合物における未反応のスルフィド化剤の濃度、すなわち、反応混合物1キログラム当たりに含まれる未反応のスルフィド化剤は、0.017モルであった。原料混合物(a−4)のスルフィド化剤濃度に対する反応混合物のスルフィド化剤濃度の比は、3%であった。また、反応混合物における未反応のジハロゲン化芳香族化合物の濃度、すなわち、反応混合物1キログラム当たりに含まれる未反応のジハロゲン化芳香族化合物は、0.024モルであった。原料混合物(a−4)のジハロゲン化芳香族化合物濃度に対する反応混合物のジハロゲン化芳香族化合物濃度の比は、4%であった。また、環式PPSの生成率は10%であった。本反応中の揮散成分および追加成分はないことから、反応混合物の重量変化はなく、基質濃度は原料混合物(a−4)と同一に維持できたと見なせる。
本比較例では実施例4と同一の原料混合物(a−4)を用い、反応時間は実施例4の環式PASの合成における平均滞留時間と同一の2時間であるが、環式PPSの生成率は低いことがわかった。実施例4の結果と比較例4の結果との対比により、回分式に対し操作Aおよび操作Bを継続的に行うことで環式ポリアリーレンスルフィドの生成率が向上する本発明の効果が示せた。
[実施例5]
ここでは操作Aで供給する原料混合物(a)および操作Bで抜き出す反応混合物(b)の量を実施例1より増加、すなわち反応混合物(b)の平均滞留時間を短縮した例を示す。
実施例1の環式PASの合成における原料混合物(a−1)の供給速度および反応混合物(b)の抜き出し速度をそれぞれ20kg/時間から40kg/時間にした以外は実施例1と同様にして、操作(A)および操作(B)を5時間継続した。すなわち、実施例5では、平均滞留時間を1時間とした。
本操作中、容器(III)の圧力は0.4MPaで一定であった。また、容器(II)では、原料混合物(a−1)の供給以外には成分の追加および成分の揮散はなかった。また、容器(III)では、原料混合物(a−1)の供給と反応混合物(b)の抜き出し以外には成分の追加および成分の揮散はなかった。したがって、容器(III)内の反応混合物(b)における基質濃度は初期反応混合物と同一であり、一定に維持したと見なせる。また、容器(III)の液面は一定であったことから、反応混合物(b)の量も一定であったといえる。
ここで、本操作開始から5時間後に容器(III)から反応混合物(b)をサンプリングし分析した結果、反応混合物(b)における未反応のスルフィド化剤の濃度、すなわち、反応混合物(b)1キログラム当たりに含まれる未反応のスルフィド化剤は、0.049モルであった。原料混合物(a−1)のスルフィド化剤濃度に対する反応混合物(b)のスルフィド化剤濃度の比は、11%であった。また、反応混合物(b)における未反応のジハロゲン化芳香族化合物の濃度、すなわち、反応混合物(b)1キログラム当たりに含まれる未反応のジハロゲン化芳香族化合物は、0.059モルであった。原料混合物(a−1)のジハロゲン化芳香族化合物濃度に対する反応混合物(b)のジハロゲン化芳香族化合物濃度の比は、13%であった。また、環式PPSの生成率は15%であった。
本実施例より、実施例1に比べ反応混合物(b)の平均滞留時間を短縮した場合、未反応のスルフィド化剤およびジハロゲン化芳香族化合物の濃度が上昇したが、好ましい範囲内であった。また、本条件では環式PPSの生成率は低下傾向にあったが、効率的に環式PPSを合成できることがわかった。
[比較例5]
ここでは原料混合物(a)の供給(操作A)および反応混合物(b)の抜き出し(操作B)を行わず、回分式にて環式PASを合成した例を示す。
攪拌機を具備したSUS316製70リットルの容器(III)に上記実施例1で調製した原料混合物(a−1)を40kg供給し、窒素下に密封し、内温を250℃まで昇温した後、1時間保持して重合反応を行ない、反応生成物を含む反応混合物を得た。本反応後の容器(III)の圧力は0.4MPaであった。得られた反応混合物をサンプリングして分析した結果、反応混合物における未反応のスルフィド化剤の濃度、すなわち、反応混合物1キログラム当たりに含まれる未反応のスルフィド化剤は、0.053モルであった。原料混合物(a−1)のスルフィド化剤濃度に対する反応混合物のスルフィド化剤濃度の比は、12%であった。また、反応混合物における未反応のジハロゲン化芳香族化合物の濃度、すなわち、反応混合物1キログラム当たりに含まれる未反応のジハロゲン化芳香族化合物は、0.068モルであった。原料混合物(a−1)のジハロゲン化芳香族化合物濃度に対する反応混合物のジハロゲン化芳香族化合物濃度の比は、15%であった。また、環式PPSの生成率は13%であった。本反応中の揮散成分および追加成分はないことから、反応混合物の重量変化はなく、基質濃度は原料混合物(a−1)と同一に維持できたと見なせる。
本比較例では実施例5と同一の原料混合物(a−1)を用い、反応時間は実施例5の環式PASの合成における平均滞留時間と同一の1時間であるが、環式PPSの生成率は実施例1に比べ低いことがわかった。実施例5の結果と比較例5の結果との対比により、回分式に対し操作Aおよび操作Bを継続的に行うことで環式ポリアリーレンスルフィドの生成率が向上する本発明の効果が示せた。
[実施例6]
ここでは反応容器から抜き出した反応混合物(b)をさらに加熱する操作(D)を行った例を示す。
なお、本実施例では前記の装置構成を以下の構成に変更した。すなわち、容器(III)と容器(IV)の間に、容器(III)と同一構成の容器(V)を設置し、容器(III)、容器(V)容器(IV)の順にスラリーシール型キャンドモータポンプを介して連結した。また、容器(V)と容器(IV)の連結においてはスラリーシール型キャンドモータポンプと容器(V)の間に冷却機構を具備した配管を設置した。
上記装置にて、容器(III)までは実施例1と同様にして操作を行い操作(A)および操作(B)を開始し、さらに容器(III)から抜き出した反応混合物(b)は、予め実施例1で得た反応混合物(b)を供給し250℃に昇温した容器(V)に供給して、さらに250℃で加熱(操作D)して反応混合物(c)とし、20kg/時間の速度で連続的に抜き出し、配管内で200℃以下に冷却、容器(IV)に移送して、環式PPSを含む混合物を得た。本操作を10時間継続した。
ここで本操作開始から5時間後および10時間後に、容器(V)から反応混合物(c)をサンプリングし分析した結果、5時間後および10時間後のいずれにおいても、反応混合物(c)における未反応のスルフィド化剤の濃度、すなわち、反応混合物(c)1キログラム当たりに含まれる未反応のスルフィド化剤は、0.004モルであった。原料混合物(a−1)のスルフィド化剤濃度に対する反応混合物(c)のスルフィド化剤濃度の比は、1%であった。また、反応混合物(c)における未反応のジハロゲン化芳香族化合物の濃度、すなわち、反応混合物(c)1キログラム当たりに含まれる未反応のジハロゲン化芳香族化合物は、0.009モルであった。原料混合物(a−1)のジハロゲン化芳香族化合物濃度に対する反応混合物(c)のジハロゲン化芳香族化合物濃度の比は、2%であった。また、環式PPSの生成率は18%であった。
本実施例より、反応混合物(b)をさらに加熱して反応することにより、未反応の原料成分をさらに消費できる上に環式ポリアリーレンスルフィドの生成率も向上する傾向にあることがわかった。
[実施例7]
ここでは基質濃度の変動を伴う例を示す。
図1に示した装置を用いて、実施例1と同様にして操作(A)および操作(B)を5時間行った後、容器(II)にNMPを85.0kg(82.9リットル)を一挙に添加し、原料混合物(a−1)を希釈し、原料混合物(a−5)とした。したがって、原料混合物の有機極性溶媒で表す硫黄成分の基質濃度は、硫黄成分1モル当たり1.96リットルから3.33リットルとなった。また、原料混合物の有機極性溶媒量で表わすアリーレン単位の基質濃度は、アリーレン単位1モル当たり1.92リットルから3.26リットルとなった。原料混合物中の硫黄成分に対するアリーレン単位量は、硫黄成分1モル当たり1.02モルで変化なかった。
原料混合物(a−5)を用い、さらに同様にして操作(A)および操作(B)を5時間継続した。本操作中、容器(III)の圧力は0.4MPaで一定であった。また、容器(II)では、原料混合物(a−5)の供給以外には成分の追加および成分の揮散はなかった。また、容器(III)では、原料混合物(a−5)の供給と反応混合物(b)の抜き出し以外には成分の追加および成分の揮散はなかった。したがって、容器(III)内の反応混合物(b)における基質濃度は原料混合物(a−5)と同程度まで徐々に低下していったと言える。また、容器(III)の液面は一定であったことから、反応混合物(b)の量は一定であったといえる。
ここで、本操作開始から5時間後(原料混合物(a−1)の供給開始から10時間経過後)に、容器(III)から反応混合物(b)をサンプリングし分析した結果、反応混合物(b)における未反応のスルフィド化剤の濃度、すなわち、反応混合物(b)1キログラム当たりに含まれる未反応のスルフィド化剤は、0.005モルであった。原料混合物(a−5)のスルフィド化剤濃度に対する反応混合物(b)のスルフィド化剤濃度の比は、2%であった。また、反応混合物(b)における未反応のジハロゲン化芳香族化合物の濃度、すなわち、反応混合物(b)1キログラム当たりに含まれる未反応のジハロゲン化芳香族化合物は、0.008モルであった。原料混合物(a−5)のジハロゲン化芳香族化合物濃度に対する反応混合物(b)のジハロゲン化芳香族化合物濃度の比は、3%であった。また、環式PPSの生成率は20%であった。
実施例1および本実施例の結果より、基質濃度を本発明の好ましい範囲で変動させると環式PPSの生成率も変動するが、効率的に環式ポリアリーレンスルフィドを合成できることがわかった。
[実施例8]
ここでは初期反応混合物の調製を実施例1で例示した回分式ではなく、反応容器に有機極性溶媒を導入し、同反応容器内に原料混合物(a)を供給する操作と、同反応容器内の反応混合物の一部を反応容器から抜き出す操作を並行して行うことで調製した例を示す。
<初期反応混合物の調製>
攪拌機を具備したSUS316製70リットルの容器(III)にNMPを20kg供給し、窒素下に密封し、内温を250℃まで昇温した後、実施例1と同様に容器(II)で調製した原料混合物(a−1)を、10kg/時間の速度でスラリーシール型キャンドモータポンプを使用して連続的に容器(III)に供給した。また同時に、容器(III)から、反応生成物を含む初期反応混合物を20kg/時間の速度でスラリーシール型キャンドモータポンプを使用して連続的に抜き出し、配管内で200℃以下に冷却し、容器(IV)に移送した。容器(III)への原料混合物(a−1)の供給および容器(III)からの初期反応混合物の抜き出しを連続して行なう初期反応の操作を、12時間継続した。
初期反応混合物をサンプリングして分析した結果、2時間後の時点で、初期反応混合物における未反応のスルフィド化剤の濃度、すなわち、初期反応混合物1キログラム当たりに含まれる未反応のスルフィド化剤は、0.057モルであった。原料混合物(a−1)のスルフィド化剤濃度に対する初期反応混合物のスルフィド化剤濃度の比は、13%であった。また、初期反応混合物における未反応のジハロゲン化芳香族化合物の濃度、すなわち、初期反応混合物1キログラム当たりに含まれる未反応のジハロゲン化芳香族化合物は、0.068モルであった。原料混合物(a−1)のジハロゲン化芳香族化合物濃度に対する初期反応混合物のジハロゲン化芳香族化合物濃度の比は、15%であった。また、環式PPSの生成率は9%であった。12時間後の時点では、初期反応混合物における未反応のスルフィド化剤の濃度、すなわち、初期反応混合物1キログラム当たりに含まれる未反応のスルフィド化剤は、0.018モルであった。原料混合物(a−1)のスルフィド化剤濃度に対する初期反応混合物のスルフィド化剤濃度の比は、4%であった。また、初期反応混合物における未反応のジハロゲン化芳香族化合物の濃度、すなわち、初期反応混合物1キログラム当たりに含まれる未反応のジハロゲン化芳香族化合物は、0.023モルであった。原料混合物(a−1)のジハロゲン化芳香族化合物濃度に対する初期反応混合物のジハロゲン化芳香族化合物濃度の比は、5%であった。また、環式PPSの生成率は15%に到達し、実施例1の初期反応混合物と同等の組成となった。
初期反応混合物の調製について、本実施例の方法でも実施例1と同等の初期反応混合物を調製することが可能だが、実施例1で例示した回分式に比べ長時間を要することから、回分式での調製の方が効率的であることがわかった。
10…反応装置
20…流路
22…分岐ライン
24…分岐ライン
42…循環ライン
44…循環ライン

Claims (15)

  1. 少なくともスルフィド化剤、ジハロゲン化芳香族化合物および有機極性溶媒を含む原料混合物(a)を加熱して反応させて、環式ポリアリーレンスルフィドを製造する方法であって、
    原料混合物(a)から生じた反応生成物を含む反応容器内の反応混合物(b)へ原料混合物(a)を供給する操作(A)と、前記反応容器内の反応混合物(b)の一部を前記反応容器から抜き出す操作(B)と、前記反応容器内を加熱する操作(C)とを、それぞれ継続的に行い、
    前記反応混合物(b)中の前記有機極性溶媒の量が、前記反応混合物(b)中の硫黄成分1モルに対して1.25リットル以上、50リットル以下である環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法。
  2. 前記反応容器内の反応混合物(b)中の硫黄成分およびアリーレン単位のそれぞれの基質濃度を一定に維持する請求項1に記載の環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法。
  3. 前記操作(A)および前記操作(B)を同時に行う請求項1または2に記載の環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法。
  4. 前記操作(A)および前記操作(B)を連続的に行う請求項1または2に記載の環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法。
  5. 前記反応容器内の反応混合物(b)の量を一定に維持する請求項1からのいずれか1項に記載の環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法。
  6. 前記反応容器内の反応混合物(b)中の未反応のスルフィド化剤およびジハロゲン化芳香族化合物の濃度をそれぞれ、前記原料混合物(a)中のスルフィド化剤およびジハロゲン化芳香族化合物の各濃度の30%以下に維持し、かつ、前記反応混合物(b)1キログラム当たりに含まれる未反応のスルフィド化剤およびジハロゲン化芳香族化合物を、それぞれ0.15モル以下に維持する請求項1からのいずれか1項に記載の環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法。
  7. 前記操作(B)によって前記反応容器から抜き出した反応混合物(b)を加熱する操作(D)をさらに行なう請求項1からのいずれか1項に記載の環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法。
  8. 前記操作(C)における加熱を常圧における還流温度を超える温度で行う請求項1からのいずれか1項に記載の環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法。
  9. 前記ジハロゲン化芳香族化合物がジクロロベンゼンである請求項1からのいずれか1項に記載の環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法。
  10. 前記スルフィド化剤がアルカリ金属硫化物である請求項1からのいずれか1項に記載の環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法。
  11. 前記原料混合物(a)は線状ポリアリーレンスルフィドを含む請求項1から10のいずれか1項に記載の環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法。
  12. 予め前記原料混合物(a)を回分式で反応させて前記反応混合物(b)を得た後に、前記操作(A)および前記操作(B)を開始する請求項1から11のいずれか1項に記載の環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法。
  13. 前記操作(B)において遠心ポンプを使用して前記反応混合物(b)の抜き出し量を調整する請求項1〜12のいずれか1項に記載の環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法。
  14. 前記反応容器には、該反応容器に接続されポンプを用いて前記反応容器との間で前記反応混合物(b)を循環させる循環ラインが設けられており、前記操作(B)では、前記循環ラインを介して前記反応容器から前記反応混合物(b)を抜き出す請求項1〜13のいずれか1項に記載の環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法。
  15. 前記反応容器が、該反応容器に接続されて前記操作(A)で前記反応容器に前記原料混合物(a)を供給する供給容器、および/または前記反応容器に接続されて前記操作(B)で前記反応容器から抜き出した前記反応混合物(b)が供給される受け容器と、均圧ラインで連結されて均圧化されている請求項1〜14のいずれか1項に記載の環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法。
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