JP2021008602A - ポリアリーレンスルフィドの製造方法 - Google Patents

ポリアリーレンスルフィドの製造方法 Download PDF

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Yuichiro Miyahara
佑一郎 宮原
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武志 東原
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Abstract

【課題】分子鎖中に反応性官能基が多く導入されたPASを、効率よく提供することができるポリアリーレンスルフィドの製造方法を提供する。【解決手段】(a)数平均分子量6000以上50000以下のポリアリーレンスルフィドを、(a)ポリアリーレンスルフィド中のアリーレンスルフィド構造単位1モルに対して下記式(A)で表される(b)反応性官能基を有するスルフィド化合物0.1モル%以上25モル%以下の存在下で加熱する、(c)ポリアリーレンスルフィドの製造方法。式中、YおよびXは、少なくとも一方がアミノ基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、酸無水物基、イソシアネート基、エポキシ基、シラノール基及びアルコキシシラン基から選ばれる官能基であり、nは0〜20の整数を表す。【選択図】なし

Description

本発明は、官能基を有するポリアリーレンスルフィドの製造方法に関する。
ポリフェニレンスルフィド(以下PPSと略す)に代表されるポリアリーレンスルフィド(以下PASと略す)は、優れた耐熱性、バリア性、成形性、耐薬品性、電気絶縁性、耐湿熱性などエンジニアリングプラスチックとして好適な性質を有しており、射出成形、押出成形用途を中心として各種電気・電子部品、機械部品、自動車部品、フィルム、繊維などに使用されている。PASはその優れた特性ゆえに、近年使用される用途が広がっている。
一方で、PASは分子鎖中の官能基が少なく、ポリアミドやポリエステル等に代表される他のエンジニアリングプラスチックと比べて相互作用や反応性が劣るため、異素材との接着や複合化を図ることが困難である課題があった。
このため、PAS中に反応性官能基を導入する検討が多くなされている。例えば、特許文献1には、2,5−ジクロロ安息香酸をp−ジクロロベンゼンと同時に添加して重合を行い、PASの主鎖中に反応性官能基を導入する方法が開示されている。特許文献2にはポリアリーレンスルフィドを製造する際にカルボン酸を含むモノハロゲン化化合物と金属水酸化物を反応させてPASの末端に反応性官能基を導入する方法が開示されている。また、特許文献3、4には環式アリーレンスルフィドを、反応性官能基を有する含硫黄化合物と加熱することで反応性官能基を有するPASを製造する方法が開示されている。
特開平4−283247号公報(特許請求の範囲) 特開2017−066261号公報(特許請求の範囲) 特開平5−105757号公報(特許請求の範囲) 国際公開第2012/057319号(特許請求の範囲)
しかしながら、特許文献1に開示された方法では反応性官能基は立体障害の大きな主鎖中に導入されるため、反応対象との接触頻度が低下して反応性を活かすことができず最適な分子設計ではなかった。また、特許文献2に開示された方法では分子鎖中に反応性官能基を導入できているものの、原料として使用した化合物の反応性官能基量に対して導入された反応性官能基量が少なく、未反応のまま廃棄物になる化合物が多いという問題がある。特許文献3、4に開示された方法では反応性官能基を分子鎖の末端に導入できるものの、その導入量は十分とは言い難い。
本発明は、分子鎖中に反応性官能基を多く導入されたPASを、効率よく提供することを課題とするものである。
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の内容を提供することで実現することが可能である。
1.(a)数平均分子量6000以上50000以下のポリアリーレンスルフィドを、(a)ポリアリーレンスルフィド中のアリーレンスルフィド構造単位1モルに対して下記式(A)で表される(b)反応性官能基を有するスルフィド化合物0.1モル%以上25モル%以下の存在下で加熱する、(c)ポリアリーレンスルフィドの製造方法。
Figure 2021008602
YおよびXは、少なくとも一方がアミノ基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、酸無水物基、イソシアネート基、エポキシ基、シラノール基及びアルコキシシラン基から選ばれる官能基であり、nは0〜20の整数を表す。
2.上記1に記載のポリアリーレンスルフィドの製造方法であって、加熱を200℃以上で行うポリアリーレンスルフィドの製造方法。
3.上記1または2に記載のポリアリーレンスルフィドの製造方法であって、加熱を実質的に無溶媒条件で行うポリアリーレンスルフィドの製造方法。
本発明によれば、分子鎖中に反応性官能基を多く導入されたPASを、効率よく提供することができる。
以下に、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
本発明の実施形態におけるポリアリーレンスルフィドとは、式、−(Ar−S)−の繰り返し単位を主要構成単位とする、好ましくは当該繰り返し単位を70モル%以上含有するホモポリマーまたはコポリマーである。Arとしては下記の式(a)〜式(k)などで表される単位などがあるが、中でも式(a)で表される単位が特に好ましい。
Figure 2021008602
(R,Rは水素、炭素原子数1〜12のアルキル基、炭素原子数1〜12のアルコキシ基、炭素数6〜24のアリール基、ハロゲン基から選ばれた置換基であり、RとRは同一でも異なっていてもよい)
この繰り返し単位を主要構成単位とする限り、下記の式(l)〜式(n)などで表される少量の分岐単位または架橋単位を含むことができる。これら分岐単位または架橋単位の共重合量は、−(Ar−S)−の単位1モルに対して0〜1モル%の範囲であることが好ましい。
Figure 2021008602
(ここで、Arは先の式(a)〜式(k)で表される単位である。)
また、本発明の実施形態におけるポリアリーレンスルフィドは、上記繰り返し単位を含むランダム共重合体、ブロック共重合体及びそれらの混合物のいずれかであってもよい。
これらの代表的なものとして、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンスルフィドスルホン、ポリフェニレンスルフィドケトン、これらのランダム共重合体、ブロック共重合体及びそれらの混合物などが挙げられる。特に好ましいポリアリーレンスルフィドとしては、ポリマーの主要構成単位としてp−フェニレンスルフィド単位
Figure 2021008602
を80モル%以上、特に90モル%以上含有するポリフェニレンスルフィド樹脂が挙げられる。
(a)ポリアリーレンスルフィド
本実施形態における(a)ポリアリーレンスルフィドの数平均分子量の下限値は、6000以上の範囲が選択され、好ましくは10000以上である。(a)ポリアリーレンスルフィドの分子量がこの範囲よりも大きいことで、得られる(c)ポリアリーレンスルフィドの耐薬品性が十分に得られるため、好ましい。また、(a)ポリアリーレンスルフィドの数平均分子量の上限値は、50000以下の範囲が選択され、好ましくは30000以下である。(a)ポリアリーレンスルフィドの数平均分子量がこの範囲よりも小さいことで(b)反応性官能基を有するスルフィド化合物との反応性が十分に確保できるため好ましい。なお、数平均分子量Mnは、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)の一種であるゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、ポリスチレン換算で算出される値である。
以下に本発明に用いられる(a)ポリアリーレンスルフィドの製造方法について具体的に述べるが、下記方法に限定されるものではない。
まず(a)ポリアリーレンスルフィドの製造に使用する原料について説明する。
[スルフィド化剤]
本発明の(a)ポリアリーレンスルフィドの合成に用いられるスルフィド化剤とは、ジハロゲン化芳香族化合物にスルフィド結合を導入できるものであればよく、例えばアルカリ金属硫化物、アルカリ金属水硫化物、および硫化水素が挙げられる。
アルカリ金属硫化物の具体例としては、例えば硫化リチウム、硫化ナトリウム、硫化カリウム、硫化ルビジウム、硫化セシウムおよびこれら2種類以上の混合物を挙げることができ、なかでも硫化リチウムおよび/または硫化ナトリウムが好ましく、硫化ナトリウムがより好ましく用いられる。これらのアルカリ金属硫化物は、水和物または水性混合物として、あるいは無水物の形で用いることができる。なお、水性混合物とは水溶液、もしくは水溶液と固体成分の混合物、もしくは水と固体成分の混合物のことを指す。一般的に入手できる安価なアルカリ金属硫化物は水和物または水性混合物であるので、この様な形態のアルカリ金属硫化物を用いることが好ましい。
アルカリ金属水硫化物の具体例としては、例えば水硫化リチウム、水硫化ナトリウム、水硫化カリウム、水硫化ルビジウム、水硫化セシウムおよびこれら2種類以上の混合物を挙げることができ、なかでも水硫化リチウムおよび/または水硫化ナトリウムが好ましく、水硫化ナトリウムがより好ましく用いられる。
また、アルカリ金属水硫化物とアルカリ金属水酸化物から、反応系中で調製されるアルカリ金属硫化物も用いることができる。また、あらかじめアルカリ金属水硫化物とアルカリ金属水酸化物を接触させて調製したアルカリ金属硫化物も用いることができる。これらのアルカリ金属水硫化物およびアルカリ金属水酸化物は水和物または水性混合物として、あるいは無水物の形で用いることができ、水和物または水性混合物が入手のしやすさ、コストの観点から好ましい。
さらに、水酸化リチウム、水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属水酸化物と硫化水素から反応系内で調製されるアルカリ金属硫化物も用いることができる。また、あらかじめ水酸化リチウム、水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属水酸化物と硫化水素を接触させて調製したアルカリ金属硫化物を用いることもできる。硫化水素は気体状態、液体状態、水溶液状態のいずれの形態で用いても差し障りない。
なお、スルフィド化剤と共に、アルカリ金属水酸化物および/またはアルカリ土類金属水酸化物を併用することも可能である。アルカリ金属水酸化物の具体例としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウムおよびこれら2種類以上の混合物を好ましいものとして挙げることができ、アルカリ土類金属水酸化物の具体例としては、例えば水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウムなどが挙げられ、なかでも水酸化ナトリウムが好ましく用いられる。
スルフィド化剤として、アルカリ金属水硫化物を用いる場合には、アルカリ金属水酸化物を同時に使用することが特に好ましいが、この使用量はアルカリ金属水硫化物1モルに対し0.95モル以上が好ましく、1.00モル以上がより好ましく、1.005モル以上がさらに好ましい。また、上限としては、1.50モル以下が好ましく、1.25モル以下がより好ましく、1.20モル以下がさらに好ましい範囲として例示できる。スルフィド化剤として硫化水素を用いる場合にはアルカリ金属水酸化物を同時に使用することが特に好ましく、この場合のアルカリ金属水酸化物の使用量は硫化水素1モルに対し2.00モル以上が好ましく、2.01モル以上がより好ましく、2.04モル以上がさらに好ましい。また、上限としては、3.00モル以下が好ましく、2.50モル以下がより好ましく、2.40モル以下がさらに好ましい範囲として例示できる。
[ジハロゲン化芳香族化合物]
本発明の(a)ポリアリーレンスルフィドの合成に用いられるジハロゲン化芳香族化合物としては、p−ジクロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、m−ジクロロベンゼン、p−ジブロモベンゼン、o−ジブロモベンゼン、m−ジブロモベンゼン、1−ブロモ−4−クロロベンゼン、1−ブロモ−3−クロロベンゼンなどのジハロゲン化ベンゼン、および1−メトキシ−2,5−ジクロロベンゼン、1−メチル−2,5−ジクロロベンゼン、1,4−ジメチル−2,5−ジクロロベンゼン、1,3−ジメチル−2,5−ジクロロベンゼン、2,5−ジクロロ安息香酸、3,5−ジクロロ安息香酸、2,5−ジクロロアニリン、3,5−ジクロロアニリンなどのハロゲン以外の置換基を含むジハロゲン化芳香族化合物などを挙げることができる。なかでも、p−ジクロロベンゼンに代表されるp−ジハロゲン化ベンゼンを主成分とするハロゲン化芳香族化合物が好ましい。特に好ましくは、p−ジクロロベンゼンを80〜100モル%含むものであり、さらに好ましくは90〜100モル%含むものである。また、異なる2種類以上のジハロゲン化芳香族化合物を組み合わせて用いることも可能である。
[有機極性溶媒]
本発明の(a)ポリアリーレンスルフィドの合成に用いられる有機極性溶媒として、有機アミド溶媒が好ましく例示できる。具体例としては、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、N−シクロヘキシル−2−ピロリドンなどのN−アルキルピロリドン類、N−メチル−ε−カプロラクタムなどのカプロラクタム類、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ヘキサメチルリン酸トリアミドなどに代表されるアプロチック有機溶媒およびこれらの混合物などが反応の安定性が高いために好ましく使用される。これらのなかでもN−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンが好ましく、N−メチル−2−ピロリドンがより好ましく用いられる。
[分子量調節剤]
生成するPPS樹脂の末端を形成させるため、あるいは重合反応や分子量を調節するためなどにより、モノハロゲン化合物(必ずしも芳香族化合物でなくともよい)を、上記ジハロゲン化芳香族化合物と併用することができる。
本発明において、形成させるポリアリーレンスルフィドの末端基として、水酸基、イソシアネート基、エポキシ基、アミノ基、カルビノール基、カルボキシル基、メルカプト基、ウレイド基、マレイン酸基、無水マレイン酸基、カテコール基、レゾシノール基を好ましく例示することができる。
[重合助剤]
比較的に高重合度の(a)ポリアリーレンスルフィドをより短時間で得るために重合助剤を用いることも好ましい態様の一つである。ここで重合助剤とは、得られる(a)ポリアリーレンスルフィドの粘度を増大させる作用を有する物質を意味する。このような重合助剤の具体例としては、例えば有機カルボン酸塩、水、アルカリ金属塩化物、有機スルホン酸塩、硫酸アルカリ金属塩、アルカリ土類金属酸化物、アルカリ金属リン酸塩およびアルカリ土類金属リン酸塩などが挙げられる。これらは単独であっても、また2種以上を同時に用いることもできる。なかでも、有機カルボン酸塩、水、およびアルカリ金属塩化物が好ましく、さらに有機カルボン酸塩としてはアルカリ金属カルボン酸塩が、アルカリ金属塩化物としては塩化リチウムが好ましい。
上記アルカリ金属カルボン酸塩とは、一般式R(COOM)(式中、Rは、炭素数1〜20を有するアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルキルアリール基またはアリールアルキル基である。Mは、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウムおよびセシウムから選ばれるアルカリ金属である。nは1〜3の整数である。)で表される化合物である。アルカリ金属カルボン酸塩は、水和物、無水物または水溶液としても用いることができる。アルカリ金属カルボン酸塩の具体例としては、例えば、酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、プロピオン酸ナトリウム、吉草酸リチウム、安息香酸ナトリウム、フェニル酢酸ナトリウム、p−トルイル酸カリウム、およびそれらの混合物などを挙げることができる。
アルカリ金属カルボン酸塩は、有機酸と、水酸化アルカリ金属、炭酸アルカリ金属塩および重炭酸アルカリ金属塩からなる群から選ばれる一種以上の化合物とを、ほぼ等化学当量ずつ添加して反応させることにより形成させてもよい。上記アルカリ金属カルボン酸塩の中で、リチウム塩は反応系への溶解性が高く助剤効果が大きいが高価である。一方、カリウム、ルビジウムおよびセシウム塩は反応系への溶解性が不十分であると思われるため、安価で、重合系への適度な溶解性を有する酢酸ナトリウムが最も好ましく用いられる。
これらアルカリ金属カルボン酸塩を重合助剤として用いる場合の使用量は、仕込みアルカリ金属硫化物1モルに対し、通常0.01モル〜2モルの範囲であり、より高い重合度を得る意味においては0.1モル〜0.6モルの範囲が好ましく、0.2モル〜0.5モルの範囲がより好ましい。
また水を重合助剤として用いる場合の添加量は、仕込みアルカリ金属硫化物1モルに対し、通常0.3モル〜15モルの範囲であり、より高い重合度を得る意味においては0.6モル〜10モルの範囲が好ましく、1モル〜5モルの範囲がより好ましい。
これら重合助剤は2種以上を併用することももちろん可能であり、例えばアルカリ金属カルボン酸塩と水を併用すると、より少量のアルカリ金属カルボン酸塩と水で高分子量化が可能となる。
これら重合助剤の添加時期には特に指定はなく、後述する前工程時、重合開始時、重合反応工程のいずれの時点で添加してもよく、また複数回に分けて添加してもよい。重合助剤としてアルカリ金属カルボン酸塩を用いる場合は前工程開始時あるいは重合開始時に他の添加物と同時に添加することが、添加が容易である点からより好ましい。また水を重合助剤として用いる場合は、ジハロゲン化芳香族化合物を仕込んだ後、重合反応工程の途中で添加することが効果的である。
[重合安定剤]
重合反応系を安定化し、副反応を防止するために、重合安定剤を用いることもできる。重合安定剤は、重合反応系の安定化に寄与し、望ましくない副反応を抑制する。副反応の一つの目安としては、チオフェノールの生成が挙げられる。重合安定剤の添加によりチオフェノールの生成を抑えることができる。重合安定剤の具体例としては、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ土類金属水酸化物、およびアルカリ土類金属炭酸塩などの化合物が挙げられる。そのなかでも、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、および水酸化リチウムなどのアルカリ金属水酸化物が好ましい。上述のアルカリ金属カルボン酸塩も重合安定剤として作用するので、重合安定剤の一つに入る。また、スルフィド化剤としてアルカリ金属水硫化物を用いる場合には、アルカリ金属水酸化物を同時に使用することが特に好ましいことを前述したが、ここでスルフィド化剤に対して過剰となるアルカリ金属水酸化物も重合安定剤となり得る。
これら重合安定剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。重合安定剤は、仕込みアルカリ金属硫化物1モルに対して、通常0.02モル〜0.2モル、好ましくは0.03モル〜0.1モル、より好ましくは0.04モル〜0.09モルの割合で使用することが好ましい。この割合が少ないと安定化効果が不十分であり、逆に多すぎても経済的に不利益であり、ポリマー収率が低下する傾向となる。
重合安定剤の添加時期には特に指定はなく、後述する前工程時、重合開始時、重合反応工程のいずれの時点で添加してもよく、また複数回に分けて添加してもよいが、前工程開始時あるいは重合開始時に同時に添加することが容易である点からより好ましい。
次に、本発明の実施形態に用いる(a)ポリアリーレンスルフィドの好ましい製造方法について、前工程、重合反応工程、回収工程、および後処理工程と、順を追って具体的に説明するが、もちろんこの方法に限定されるものではない。
[前工程]
(a)ポリアリーレンスルフィドの製造方法において、通常、スルフィド化剤は水和物の形で使用されるが、ジハロゲン化芳香族化合物を添加する前に、有機極性溶媒とスルフィド化剤を含む混合物を昇温し、過剰量の水を系外に除去することが好ましい。
また、上述したように、スルフィド化剤として、アルカリ金属水硫化物とアルカリ金属水酸化物から、反応系においてin situで、あるいは重合槽とは別の槽で調製されるスルフィド化剤も用いることができる。この方法には特に制限はないが、望ましくは不活性ガス雰囲気下、常温〜150℃、好ましくは常温から100℃の温度範囲で、有機極性溶媒にアルカリ金属水硫化物とアルカリ金属水酸化物を加え、常圧または減圧下、少なくとも150℃以上、好ましくは180℃〜260℃まで昇温し、水分を留去させる方法が挙げられる。この段階で重合助剤を加えてもよい。また、水分の留去を促進するために、トルエンなどを加えて反応を行ってもよい。
重合反応における、重合系内の水分量は、仕込みスルフィド化剤1モル当たり0.3モル〜10.0モルであることが好ましい。ここで重合系内の水分量とは重合系に仕込まれた水分量から重合系外に除去された水分量を差し引いた量である。また、仕込まれる水は、水、水溶液、結晶水などのいずれの形態であってもよい。
[重合反応工程]
有機極性溶媒中でスルフィド化剤とジハロゲン化芳香族化合物とを200℃以上290℃未満の温度範囲内で反応させることにより(a)ポリアリーレンスルフィドを製造する。
重合反応工程を開始するに際しては、望ましくは不活性ガス雰囲気下において、常温〜240℃、好ましくは100℃〜230℃の温度範囲で、有機極性溶媒とスルフィド化剤とジハロゲン化芳香族化合物を混合する。この段階で重合助剤を加えてもよい。これらの原料の仕込み順序は、順不同であってもよく、同時であってもさしつかえない。
この混合物を通常200℃〜290℃未満の範囲に昇温する。昇温速度に特に制限はないが、通常0.01℃/分〜5℃/分の速度が選択され、0.1℃/分〜3℃/分の範囲がより好ましい。
一般的に、最終的には250℃〜290℃未満の温度まで昇温し、その温度で通常0.25時間〜50時間、好ましくは0.5時間〜20時間反応させる。
最終温度に到達させる前の段階で、例えば200℃〜260℃で一定時間反応させた後、270℃〜290℃未満に昇温する方法は、より高い重合度を得る上で有効である。この際、200℃〜260℃での反応時間としては、通常0.25時間から20時間の範囲が選択され、好ましくは0.25時間〜10時間の範囲が選ばれる。
なお、より高重合度のポリマーを得るためには、複数段階で重合を行うことが有効である場合がある。複数段階で重合を行う際は、245℃における系内のジハロゲン化芳香族化合物の転化率が、40モル%以上、好ましくは60モル%に達した時点であることが有効である。
なお、ジハロゲン化芳香族化合物(ここではDHAと略記する)の転化率は、以下の式で算出した値である。DHA残存量は、通常、ガスクロマトグラフ法によって求めることができる。
(A)ジハロゲン化芳香族化合物をアルカリ金属硫化物に対しモル比で過剰に添加した場合
転化率=〔DHA仕込み量(モル)−DHA残存量(モル)〕/〔DHA仕込み量(モル)−DHA過剰量(モル)〕
(B)上記(A)以外の場合
転化率=〔DHA仕込み量(モル)−DHA残存量(モル)〕/〔DHA仕込み量(モル)〕
[回収工程]
(a)ポリアリーレンスルフィドの製造方法においては、重合終了後に、重合体、溶媒などを含む重合反応物から固形物を回収する。回収方法については、公知の如何なる方法を採用してもよい。
例えば、重合反応終了後、徐冷して粒子状のポリマーを回収する方法を用いてもよい。この際の徐冷速度には特に制限は無いが、通常0.1℃/分〜3℃/分程度である。徐冷工程の全工程において同一速度で徐冷する必要はなく、ポリマー粒子が結晶化析出するまでは0.1℃/分〜1℃/分、その後1℃/分以上の速度で徐冷する方法などを採用してもよい。
また上記の回収を急冷条件下に行うことも好ましい方法の一つである。この回収方法のうち、好ましい方法としてはフラッシュ法が挙げられる。フラッシュ法とは、重合反応物を高温高圧(通常250℃以上、8kg/cm以上)の状態から常圧もしくは減圧の雰囲気中へフラッシュさせ、溶媒回収と同時に重合体を粉末状にして回収する方法である。ここでいうフラッシュとは、重合反応物をノズルから噴出させることを意味する。フラッシュさせる雰囲気は、具体的には、常圧中の窒素または水蒸気が挙げられ、その温度は通常150℃〜250℃の範囲が選ばれる。
[後処理工程]
(a)ポリアリーレンスルフィドは、上記重合、回収工程を経て生成した後、酸処理、熱水処理、有機溶媒による洗浄、アルカリ金属やアルカリ土類金属処理を施されたものであってもよい。
酸処理を行う場合は次のとおりである。(a)ポリアリーレンスルフィドの酸処理に用いる酸は、(a)ポリアリーレンスルフィドを分解する作用を有しないものであれば特に制限はなく、酢酸、塩酸、硫酸、リン酸、珪酸、炭酸およびプロピル酸などが挙げられる。なかでも酢酸および塩酸がより好ましく用いられる。一方、硝酸のような(a)ポリアリーレンスルフィドを分解、劣化させるものは好ましくない。
酸処理の方法は、例えば、酸または酸の水溶液に(a)ポリアリーレンスルフィドを浸漬せしめる方法があり、必要により撹拌または加熱することも可能である。例えば、酢酸を用いる場合、pH4の酢酸水溶液を80℃〜200℃に加熱した中に(a)ポリアリーレンスルフィド粉末を浸漬し、30分間撹拌することにより十分な効果が得られる。処理後のpHは4以上となってもよく、例えばpH4〜8程度となってもよい。酸処理を施された(a)ポリアリーレンスルフィドから残留している酸または塩などを除去するため、水または温水で数回洗浄することが好ましい。洗浄に用いる水は、酸処理による(a)ポリアリーレンスルフィドの好ましい化学的変性の効果を損なわないために、蒸留水、脱イオン水であることが好ましい。
熱水処理を行う場合は次のとおりである。ポリアリーレンスルフィドを熱水処理するにあたり、熱水の温度を100℃以上、より好ましくは120℃以上、さらに好ましくは150℃以上、特に好ましくは170℃以上とすることが好ましい。100℃未満ではポリアリーレンスルフィドの好ましい化学的変性の効果が小さいため好ましくない。
熱水洗浄による(a)ポリアリーレンスルフィドの好ましい化学的変性の効果を発現するため、使用する水は蒸留水あるいは脱イオン水であることが好ましい。熱水処理の操作に特に制限は無い。所定量の水に所定量の(a)ポリアリーレンスルフィドを投入し、圧力容器内で加熱、撹拌する方法や、連続的に熱水処理を施す方法などにより行われる。PPS樹脂と水との割合は、水の多い方が好ましいが、通常、水1リットルに対し、PPS樹脂200g以下の浴比(乾燥(a)ポリアリーレンスルフィド重量に対する洗浄液重量)が選ばれる。
また、末端基の好ましくない分解を回避するため、処理の雰囲気は不活性雰囲気下とすることが望ましい。さらに、残留している成分を除去するため、この熱水処理操作を終えた(a)ポリアリーレンスルフィドは、温水で数回洗浄するのが好ましい。
有機溶媒で洗浄する場合は次のとおりである。(a)ポリアリーレンスルフィドの洗浄に用いる有機溶媒は、(a)ポリアリーレンスルフィドを分解する作用などを有しないものであれば特に制限はない。例えばN−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、1,3−ジメチルイミダゾリジノン、ヘキサメチルホスホラスアミド、ピペラジノン類などの含窒素極性溶媒、ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホン、スルホランなどのスルホキシド・スルホン系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、アセトフェノンなどのケトン系溶媒、ジメチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒、クロロホルム、塩化メチレン、トリクロロエチレン、2塩化エチレン、パークロルエチレン、モノクロルエタン、ジクロルエタン、テトラクロルエタン、パークロルエタン、クロルベンゼンなどのハロゲン系溶媒、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、フェノール、クレゾール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのアルコール・フェノール系溶媒およびベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒などが(a)ポリアリーレンスルフィドの洗浄に用いる有機溶媒として挙げられる。これらの有機溶媒のうちでも、N−メチル−2−ピロリドン、アセトン、ジメチルホルムアミドおよびクロロホルムなどの使用が特に好ましい。また、これらの有機溶媒は、1種類または2種類以上の混合で使用される。
有機溶媒による洗浄の方法としては、例えば、有機溶媒中に(a)ポリアリーレンスルフィドを浸漬せしめる方法があり、必要により適宜撹拌または加熱することも可能である。有機溶媒で(a)ポリアリーレンスルフィドを洗浄する際の洗浄温度については特に制限はなく、常温〜300℃程度の任意の温度が選択できる。洗浄温度が高くなる程洗浄効率が高くなる傾向があるが、通常は常温〜150℃の洗浄温度で十分効果が得られる。圧力容器中で、有機溶媒の沸点以上の温度で加圧下に洗浄することも可能である。また、洗浄時間についても特に制限はない。洗浄条件にもよるが、バッチ式洗浄の場合、通常5分間以上洗浄することにより十分な効果が得られる。また連続式で洗浄することも可能である。後処理工程は、酸処理、熱水処理、有機溶媒による洗浄のいずれかを施すことが好ましく、2種以上の処理を併用することが、不純物除去の観点から好ましい。
アルカリ金属、アルカリ土類金属処理する方法としては、上記前工程の前、前工程中、前工程後にアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩を添加する方法、重合工程前、重合工程中、重合工程後に重合釜内にアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩を添加する方法、あるいは上記洗浄工程の最初、中間、最後の段階でアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩を添加する方法などが挙げられる。中でももっとも容易な方法としては、有機溶剤洗浄や、温水または熱水洗浄で残留オリゴマーや残留塩を除いた後にアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩を添加する方法が挙げられる。アルカリ金属、アルカリ土類金属は、酢酸塩、水酸化物、炭酸塩などのアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオンの形で(a)ポリアリーレンスルフィド中に導入するのが好ましい。また過剰のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩は温水洗浄などにより取り除く方が好ましい。上記アルカリ金属、アルカリ土類金属導入の際のアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン濃度としてはポリアリーレンスルフィド1gに対して0.001mmol以上が好ましく、0.01mmol以上がより好ましい。温度としては、50℃以上が好ましく、75℃以上がより好ましく、90℃以上が特に好ましい。上限温度は特にないが、操作性の観点から通常280℃以下が好ましい。浴比(乾燥ポリアリーレンスルフィド重量に対する洗浄液重量)としては0.5以上が好ましく、3以上がより好ましく、5以上が更に好ましい。
[熱酸化架橋処理]
その他、本発明における(a)ポリアリーレンスルフィドは、重合終了後に酸素雰囲気下においての加熱や過酸化物などの架橋剤を添加しての加熱による熱酸化架橋処理により高分子量化して用いることも可能である。ただし、前述のとおり、数平均分子量は50000以下とする。
熱酸化架橋による高分子量化を目的として乾式熱処理する場合には、その温度は160℃〜260℃が好ましく、170℃〜250℃の範囲がより好ましい。また、酸素濃度は5体積%以上、更には8体積%以上とすることが望ましい。酸素濃度の上限には特に制限はないが、50体積%程度が限界である。処理時間は、0.5時間〜100時間が好ましく、1時間〜50時間がより好ましく、2時間〜25時間がさらに好ましい。加熱処理の装置は通常の熱風乾燥機もしくは回転式あるいは撹拌翼付の加熱装置であってもよい。効率よく、より均一に処理する場合は、回転式あるいは撹拌翼付の加熱装置を用いるのが好ましい。
また、熱酸化架橋を抑制し、揮発分除去を目的として乾式熱処理を行うことも可能である。その温度は130℃〜250℃が好ましく、160℃〜250℃の範囲がより好ましい。また、この場合の酸素濃度は5体積%未満、更には2体積%未満とすることが望ましい。処理時間は、0.5時間〜50時間が好ましく、1時間〜20時間がより好ましく、1時間〜10時間がさらに好ましい。加熱処理の装置は通常の熱風乾燥機または回転式もしくは撹拌翼付の加熱装置であってもよい。効率よく、より均一に処理する場合は、回転式あるいは撹拌翼付の加熱装置を用いるのがより好ましい。
なお、本発明における(a)ポリアリーレンスルフィドの、環状ポリアリーレンスルフィド含有量は多くとも10wt%以下であり、5wt%以下であることが好ましい。
次に(b)反応性官能基を有するスルフィド化合物の好ましい様態について詳細を記す。
本発明における(b)反応性官能基を有するスルフィド化合物(以下、(b)スルフィド化合物と記載する場合がある。)とは、式(A)で表される反応性官能基を有するスルフィド化合物である。
Figure 2021008602
ここで式中のY、Xは少なくとも一方がアミノ基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、酸無水物基、イソシアネート基、エポキシ基、シラノール基およびアルコキシシラン基から選ばれる官能基である。好ましくは、Y、Xの少なくとも一方がアミノ基、カルボキシル基および酸無水物基から選ばれる官能基である。YおよびXの両方が前記の官能基であってもよいし、YおよびXのいずれか一方は水素でもよい。YおよびXの両方が官能基である場合、両者は同じであっても異なっていてもよい。
nは0〜20の整数を表す。nは、好ましくは15以下、より好ましくは10以下の整数である。nが20を超えると、(a)ポリアリーレンスルフィドとの反応性が低下する傾向にあるため好ましくない。取り扱い性の観点からはn=0が好ましい。
これらの反応性官能基を有するスルフィド化合物は、1種単独でもよいし2種以上の混合物であってもよい。
前記反応性官能基を有するスルフィド化合物の具体例としては、4,4’−チオジアニリン、3,3’−チオジアニリン、4,4’−チオジアニリン、ビス(2−カルボキシフェニル)スルフィド、ビス(3−カルボキシフェニル)スルフィド、ビス(4−カルボキシフェニル)スルフィド、ビス(2−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(3−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)スルフィド、5,5’−チオジサリチル酸、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’−チオジフタル酸二無水物などが挙げられる。また、これらの化合物と同様の末端基を有するオリゴマーも含む。
オリゴマーとしては、一般的に入手可能なものを用いることも、原料から合成して得たものを用いることも可能である。合成方法は限定されるものではないが、例えば2つのチオール基を有する芳香族化合物、および官能基とハロゲノ基を有する芳香族化合物を、塩基性条件下、溶媒中で加熱して反応させることで得ることができる。2つのチオール基を有する芳香族化合物とは、例えば1,2−ベンゼンジチオール、1,3−ベンゼンジチオール、1,4−ベンゼンジチオール、2,4’−チオビスベンゼンジチオール、4,4’−チオビスベンゼンジチオールなどが代表的に挙げられる。また官能基とハロゲノ基を有するフェニル化合物としては、例えばo−クロロ安息香酸、m−クロロ安息香酸、p−クロロ安息香酸、o−ブロモ安息香酸、m−ブロモ安息香酸、p−ブロモ安息香酸、o−フルオロ安息香酸、m−フルオロ安息香酸、p−フルオロ安息香酸、o−クロロアニリン、m−クロロアニリン、p−クロロアニリン、o−ブロモアニリン、m−ブロモアニリン、p−ブロモアニリン、o−フルオロアニリン、m−フルオロアニリン、p−フルオロアニリン、o−フェノール、m−クロロフェノール、p−クロロフェノール、o−ブロモフェノール、m−ブロモフェノール、p−ブロモフェノール、o−フルオロフェノール、m−フルオロフェノール、p−フルオロフェノール、3−クロロフタル酸無水物、4−クロロフタル酸無水物、3−ブロモフタル酸無水物、4−ブロモフタル酸無水物、3−フルオロフタル酸無水物、4−フルオロフタル酸無水物などが挙げられる。
(b)スルフィド化合物としては、反応性や結晶性の観点から、特にビス(4−アミノフェニル)スルフィド、ビス(4−カルボキシフェニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、4,4’−チオジフタル酸二無水物およびこれらのオリゴマーから選ばれる1種以上が好ましい。
次に(c)ポリアリーレンスルフィドの好ましい製造方法につき詳細を記す。
(c)ポリアリーレンスルフィドの好ましい製造方法として、(a)ポリアリーレンスルフィドを、(b)スルフィド化合物の存在下で加熱する方法が挙げられ、この方法によれば、分子鎖中に反応性官能基を多く導入した(c)ポリアリーレンスルフィドを効率よく、容易に得ることができる。
(c)ポリアリーレンスルフィドの製造方法における(b)スルフィド化合物の添加量は、(a)ポリアリーレンスルフィドの硫黄原子1モル当たり0.1モル%以上であることが選択される。また、その上限としては25モル%以下が好ましく、15モル%以下がより好ましく、10モル%以下がさらに好ましく、5モル%以下が特に好ましい範囲である。スルフィド化合物が0.1モル%以上の場合、得られる(c)ポリアリーレンスルフィドへの反応性官能基導入が十分となる。また、25モル%以下の場合、得られる(c)ポリアリーレンスルフィドの分子量が低くなりすぎることはなく、原料コストが増えるなどの不利益もない。
本発明により(c)ポリアリーレンスルフィドを製造する際の加熱温度は、(a)ポリアリーレンスルフィドが溶融解する温度であることが好ましく、このような温度条件であれば特に制限はない。加熱温度が反応混合物の溶融解温度以上の場合、(c)ポリアリーレンスルフィドを得るのに過度に長時間が必要となることはなく好ましい。なお、反応混合物が溶融解する温度は、反応混合物中の(a)ポリアリーレンスルフィドの組成や分子量、また、加熱時の環境により変化するため一意的に示すことはできないが、例えば反応混合物を示差走査型熱量計で分析することで溶融解温度を把握することが可能である。加熱温度の下限としては、200℃以上が例示でき、好ましくは240℃以上、より好ましくは300℃以上、さらに好ましくは320℃以上である。この温度範囲では、反応混合物が溶融解し、短時間で(c)ポリアリーレンスルフィドを得ることができる。加熱温度の上限としては、400℃以下が例示でき、好ましくは380℃以下、より好ましくは360℃以下である。この温度以下では、好ましくない副反応による(c)ポリアリーレンスルフィドの特性への悪影響を抑制できる傾向にあり、分子鎖中に反応性官能基を多く導入した(c)ポリアリーレンスルフィドを効率よく、容易に得ることができる。
反応時間は、使用する(a)ポリアリーレンスルフィドの分子量、粘度などの各種特性、使用する(b)スルフィド化合物の種類、また、加熱の温度などの条件によって異なるため一様には規定できないが、前記した好ましくない副反応が起こらないように設定することが好ましい。加熱時間としては0.01時間以上が例示でき、0.05時間以上が好ましい。また、上限としては100時間以下が例示でき、20時間以下が好ましく、10時間以下がより好ましい。
本発明における加熱は、実質的に溶媒を含まない条件下で行うことも可能である。このような条件下で行う場合、短時間での昇温が可能であり、反応速度が高く、短時間で(c)ポリアリーレンスルフィドを得やすくなる傾向がある。ここで実質的に溶媒を含まない条件とは、溶媒が10重量%以下であることを指し、3重量%以下がより好ましい。もちろん、溶媒の存在下で行うことも可能である。溶媒としては、生成したポリアリーレンスルフィド共重合体の分解や架橋など好ましくない副反応を実質的に引き起こさないものであれば特に制限はなく、例えばN−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどの含窒素極性溶媒、ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホンなどのスルホキシド・スルホン系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、アセトフェノンなどのケトン系溶媒、ジメチルエーテル、ジプロピルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒、クロロホルム、塩化メチレン、トリクロロエチレン、2塩化エチレン、ジクロルエタン、テトラクロルエタン、クロルベンゼンなどのハロゲン系溶媒、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、フェノール、クレゾール、ポリエチレングリコールなどのアルコール・フェノール系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒などがあげられる。また、二酸化炭素、窒素、水等の無機化合物を超臨界流体状態として溶媒に用いることも可能である。これらの溶媒は1種類または2種類以上の混合物として使用することができる。
本発明により(c)ポリアリーレンスルフィドを製造する際には、種々の遷移金属化合物を反応促進触媒として用いることができ、周期表第8族から第11族かつ第4周期から第6周期の金属が好ましく用いられる。例えば金属種として、ニッケル、パラジウム、白金、鉄、ルテニウム、ロジウム、銅、銀、金が例示できる。遷移金属化合物としては、各種錯体が適しているが、具体的には酢酸パラジウム、塩化パラジウム、臭化パラジウム、ヨウ化パラジウム、硫化パラジウム、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、ビス(トリ−t−ブチルホスフィン)パラジウム、ビス[1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン]パラジウム、ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)パラジウム、[P,P’−1,3−ビス(ジ−i−プロピルホスフィノ)プロパン][P−1,3−ビス(ジ−i−プロピルホスフィノ)プロパン]パラジウム、1,3−ビス(2,6−ジ−i−プロピルフェニル)イミダゾール−2−イリデン(1,4−ナフトキノン)パラジウム二量体、1,3−ビス(2,4,6−トリメチルフェニル)イミダゾール−2−イリデン(1,4−ナフトキノン)パラジウム二量体、ビス(3,5,3’,5’−ジメトキシジベンジリデンアセトン)パラジウム、塩化白金、臭化白金、ビス(トリ−t−ブチルホスフィン)白金、テトラキス(トリフェニルホスフィン)白金、テトラキス(トリフルオロホスフィン)白金、エチレンビス(トリフェニルホスフィン)白金、白金−2,4,6,8−テトラメチル−2,4,6,8−テトラビニルシクロテトラシロキサン錯体、ギ酸ニッケル、酢酸ニッケル、塩化ニッケル、臭化ニッケル、ヨウ化ニッケル、硫化ニッケル、テトラキス(トリフェニルホスフィン)ニッケル、テトラキス(トリフェニルホスファイト)ニッケル、ビス(1,5−シクロオクタジエン)ニッケル、ビスアセチルアセトンニッケル、酢酸鉄、塩化鉄、臭化鉄、ヨウ化鉄、ドデカカルボニル三鉄、ペンタカルボニル鉄、酢酸ロジウム、塩化ロジウム、臭化ロジウム、ドデカカルボニル四ロジウム、ヘキサデカカルボニル六ロジウム、塩化ルテニウム、臭化ルテニウム、ドデカカルボニル三ルテニウム、酢酸銅、塩化銅、臭化銅、酢酸銀、塩化銀、臭化銀、酢酸金、塩化金、臭化金などが例示できる。これらの触媒は、1種単独で用いてもよいし2種以上混合あるいは組み合わせて用いてもよい。
触媒となる錯体は予め錯形成させたものを添加してもよいし、遷移金属の塩などの遷移金属化合物と配位子となる化合物を別に添加してもよい。例えば配位子として、トリフェニルホスフィン、トリ−t−ブチルホスフィン、ジベンジリデンアセトン、ジメトキシジベンジリデンアセトン、シクロオクタジエン、カルボニルの錯体が挙げられる。
使用する重合触媒の濃度は、(b)スルフィド化合物の硫黄原子に対して0.001〜20モル%、好ましくは0.005〜15モル%、さらに好ましくは0.01〜10モル%である。0.001モル%以上で反応促進効果が得られ、20モル%以下では異物による特性低下のない(c)ポリアリーレンスルフィドを得ることができる。
触媒の添加に際しては、そのまま添加すればよいが、均一に分散させることが好ましい。均一に分散させる方法として、例えば機械的に分散させる方法が挙げられる。機械的に分散させる方法として、具体的には粉砕機、撹拌機、混合機、振とう機、乳鉢を用いる方法などが例示できる。また、触媒の分散に際して、触媒が固体である場合、より均一な分散が可能となるため重合触媒の平均粒径は1mm以下であることが好ましい。
本発明における加熱は、通常の加熱反応装置を用いる方法で行うのはもちろんのこと、押出機や溶融混練機を用いて行うなど、加熱機構を具備した装置であれば特に制限なく行うことが可能であり、バッチ方式、連続方式など公知の方法が採用できる。
本発明における加熱の際の雰囲気は非酸化性雰囲気で行うことが好ましく、減圧条件下で行うことも好ましい。また、減圧条件下で行う場合、反応系内の雰囲気を一度非酸化性雰囲気としてから減圧条件にすることが好ましい。これによりポリアリーレンスルフィド間などで架橋反応や分解反応などの好ましくない副反応の発生を抑制できる傾向にある。なお、非酸化性雰囲気とは(a)ポリアリーレンスルフィドが接する気相における酸素濃度が5体積%以下、好ましくは2体積%以下、さらに好ましくは酸素を実質的に含有しない雰囲気、すなわち窒素、ヘリウム、アルゴンなどの不活性ガス雰囲気であることを指し、この中でも特に経済性および取り扱いの容易さの観点から窒素雰囲気が好ましい。また、減圧条件下とは反応を行う系内が大気圧よりも低いことを指し、上限として50kPa以下が好ましく、20kPa以下がより好ましく、10kPa以下がさらに好ましい。下限としては0.1kPa以上が例示でき、0.2kPa以上がより好ましい。減圧条件が好ましい下限以上では、必要以上に減圧による負荷が反応装置にかかることがなく、一方好ましい上限以下では、架橋反応など好ましくない副反応が起こりにくい傾向にあり、前述した特性を有する(c)ポリアリーレンスルフィドを得ることができる。また、本発明における加熱は、加圧条件下で行うことも可能である。加圧条件下で行う場合、反応系内の雰囲気を一度非酸化性雰囲気としてから加圧条件にすることが好ましい。なお、加圧条件下とは反応を行う系内が大気圧よりも高いことを指し、上限としては特に制限はないが、反応装置の取り扱いの容易さの面からは0.2MPa以下が好ましい。非酸化性雰囲気下で加熱を行った場合、加熱の終了後に残留する未反応の(b)スルフィド化合物を除去する目的で減圧条件とすることも好ましい形態である。ここでいう減圧条件は上記加熱時の好ましい減圧条件と同様である。減圧条件とする時間の下限は3分以上が好ましく5分以上が好ましい。また、上限としては2時間未満が好ましく1時間未満がより好ましい。減圧時間を好ましい下限以上とすることで十分に残留する(b)スルフィド化合物を除去することができ、好ましい上限未満とすることで架橋反応など好ましくない副反応が起こりにくい傾向にある。
なお、上記方法により得られた(c)ポリアリーレンスルフィドの数平均分子量は、樹脂組成物、ポリマー改質、共重合などの原料に使用でき、用途毎に好ましい分子量が異なるため一概に規定できるものではないが、(a)ポリアリーレンスルフィドの数平均分子量よりも小さく、数平均分子量1000以上10000以下が一例として挙げられる。なお、数平均分子量Mnは、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)の一種であるゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、ポリスチレン換算で算出される値である。
本発明の製造方法により得られた(c)ポリアリーレンスルフィドは、充填材およびその他添加剤を配合してポリアリーレンスルフィド樹脂組成物として使用することができる。樹脂組成物の製造における配合の方法は特に限定されるものではないが、単軸または2軸の押出機、バンバリーミキサー、ニーダー、およびミキシングロールなど公知の溶融混練機に供給して、ポリアリーレンスルフィド共重合体の融解ピーク温度+5〜100℃の加工温度の温度で混練する方法などを代表例として挙げることができる。
本発明の(c)ポリアリーレンスルフィドを含むポリアリーレンスルフィド樹脂組成物には、充填材を配合することもできる。充填材としては無機充填材や有機充填材が挙げられる。
無機充填材としては、ガラス繊維、ガラスミルド繊維、炭素繊維、チタン酸カリウムウィスカ、酸化亜鉛ウィスカ、炭酸カルシウムウィスカ、ワラステナイトウィスカ、硼酸アルミウィスカ、アルミナ繊維、炭化珪素繊維、セラミック繊維、石コウ繊維、金属繊維、バサルト繊維などの繊維状無機充填材;タルク、ワラステナイト、ゼオライト、セリサイト、マイカ、カオリン、クレー、雲母、フェライト、パイロフィライト、ベントナイト、アルミナシリケート、酸化珪素、酸化マグネシウム、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化鉄、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ドロマイト、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、ガラスビーズ、ガラスフレーク、ガラス粉、セラミックビーズ、窒化ホウ素、窒化珪素、炭化珪素、珪酸アルミニウム、珪酸カルシウム、シリカ、グラファイト、カーボンブラック、黒鉛などの非繊維状無機充填材が挙げられる。
有機充填材としては、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、ポリアラミド繊維、フッ素樹脂繊維、熱硬化性樹脂繊維、エポキシ樹脂繊維、ポリ塩化ビニリデン系繊維、ポリフッ化ビニリデン系繊維、セルロース繊維などの繊維状有機充填材;エボナイト粉末、コルク粉末、木粉などの非繊維状有機充填材が挙げられる。
これら無機充填材および有機充填材は中空であってもよい。これら充填材を2種類以上併用することも可能である。また、これら充填材をイソシアネート系化合物、有機シラン系化合物、有機チタネート系化合物、有機ボラン系化合物およびエポキシ化合物などのカップリング剤で予備処理して使用してもよい。
充填材の種類は特定されるものではないが、樹脂組成物としての充填材による補強効果を考慮すると、ガラス繊維、炭素繊維などの繊維状無機充填材が好ましい。炭素繊維は機械物性向上効果のみならず成形品の軽量化効果も有している。また、充填材が炭素繊維の場合、樹脂組成物の機械物性や耐薬品性が向上する効果が、より大きく発現するのでより好ましい。PAN系、ピッチ系、レーヨン系の炭素繊維の中でも成形品の強度と弾性率とのバランスの観点から、PAN系炭素繊維が好ましい。
(c)ポリアリーレンスルフィドには、改質を目的として、以下のような化合物の添加が可能である。オレフィン系共重合体、アルコキシシラン化合物、イソシアネート系化合物、有機チタネート系化合物、有機ボラン系化合物、ポリアルキレンオキサイドオリゴマ系化合物、チオエーテル系化合物、エステル系化合物、有機リン系化合物などの可塑剤;タルク、カオリン、有機リン化合物、ポリエーテルエーテルケトンなどの結晶核剤;モンタン酸ワックス類、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸アルミ等の金属石鹸;エチレンジアミン・ステアリン酸・セバシン酸重縮合物、シリコーン系化合物などの離型剤;次亜リン酸塩などの着色防止剤;および滑剤、紫外線防止剤、酸化防止剤、難燃剤、着色剤、発泡剤などの添加剤を配合することができる。
本発明により得られる(c)ポリアリーレンスルフィドは、耐熱性、耐薬品性、難燃性、電気的性質並びに機械的性質に優れ、射出成形、射出圧縮成形、ブロー成形用途のみならず、押出成形により、シート、フィルム、繊維及びパイプなどの押出成形品に成形することができる。
また本発明の(c)ポリアリーレンスルフィドを用いた樹脂組成物の用途としては、電気・電子部品、音声機器部品、家庭、事務電気製品部品、機械関連部品、光学機器、精密機械関連部品、水廻り部品、自動車・車両関連部品、航空・宇宙関連部品その他の各種用途が例示できる。
以下、本発明の方法を実施例および比較例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
[官能基含有量の分析]
PASに導入された官能基量は、溶融状態から急冷して作成したPASの非晶フィルムをFT−IR(日本分光(株)製IR−810型赤外分光光度計)測定し、ベンゼン環由来の1,900cm−1付近における吸収に対する、各官能基由来の吸収を比較することによって見積もった。アミノ基では3360cm−1の吸収ピークを、酸無水物基では1725cm−1の吸収ピークをそれぞれ計算に使用した。
[分子量測定]
(a)ポリアリーレンスルフィド、及び(c)ポリアリーレンスルフィドの数平均分子量Mn、は、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)の一種であるゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、ポリスチレン換算で算出した。GPCの測定条件を以下に示す。
装置:センシュー科学 SSC−7110
カラム名:Shodex UT806M×2
溶離液:1−クロロナフタレン
検出器:示差屈折率検出器
カラム温度:210℃
プレ恒温槽温度:250℃
ポンプ恒温槽温度:50℃
検出器温度:210℃
流量:1.0mL/min
試料注入量:300μL。
[参考例1]
撹拌機付きの70リットルオートクレーブに、47.5%水硫化ナトリウム8267.37g(70.00モル)、96%水酸化ナトリウム2957.21g(70.97モル)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)11434.50g(115.50モル)、酢酸ナトリウム2583.00g(31.50モル)、及びイオン交換水10500gを仕込み、常圧で窒素を通じながら245℃まで約3時間かけて徐々に加熱し、水14780.1gおよびNMP280gを留出した後、反応容器を160℃に冷却した。仕込みアルカリ金属硫化物1モル当たりの系内残存水分量は、NMPの加水分解に消費された水分を含めて1.06モルであった。また、硫化水素の飛散量は、仕込みアルカリ金属硫化物1モル当たり0.02モルであった。
次にp−ジクロロベンゼン10235.46g(69.63モル)、NMP9009.00g(91.00モル)を加え、反応容器を窒素ガス下に密封し、240rpmで撹拌しながら、0.6℃/分の速度で238℃まで昇温した。238℃で95分反応を行った後、0.8℃/分の速度で270℃まで昇温した。270℃で100分反応を行った後、1260g(70モル)の水を15分かけて圧入しながら250℃まで1.3℃/分の速度で冷却した。その後200℃まで1.0℃/分の速度で冷却してから、室温近傍まで急冷した。
内容物を取り出し、26300gのNMPで希釈後、溶剤と固形物をふるい(80mesh)で濾別し、得られた粒子を31900gのNMPで洗浄、濾別した。これを、56000gのイオン交換水で数回洗浄、濾別した。70000gのイオン交換水で洗浄、濾別した後、得られた含水PPS粒子を80℃で熱風乾燥し、120℃で減圧乾燥してPPS−1を得た。PPS−1の数平均分子量は20000であった。
[参考例2]
撹拌機および上部に抜き出しバルブを具備したオートクレーブに、水硫化ナトリウムの48重量%水溶液165kg(水硫化ナトリウム79.0kg(1.41kmol))、水酸化ナトリウムの48重量%水溶液123kg(水酸化ナトリウム59.0kg(1.47kmol))、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)3590kg(36.3kmol)、およびp−ジクロロベンゼン212kg(1.44kmol)を仕込んだ。
反応容器を室温・常圧下にて窒素雰囲気下に密閉した後、400rpmで撹拌しながら、室温から200℃まで25分かけて昇温した。次いで、250℃まで35分かけて昇温し、250℃で120分反応を行った。次いで、内温を250℃に保持しながら、抜き出しバルブを徐々に開放し、溶媒26.6kgを40分かけて留去した。その後、オートクレーブを室温近傍にまで冷却し、内容物を回収した。
内容物の温度が100℃になるように窒素下にて加熱撹拌を行なった後、100℃で20分間保持し、目開き20μmの金網を用いて濾別した。得られた濾液を400リットルのメタノールに滴下し、室温で30分撹拌後、析出成分を回収した。回収した固形分にイオン交換水25リットルを加えスラリーとして、80℃で30分撹拌後、濾過して固形分を回収する操作を3回繰り返した。得られた固形分を減圧下80℃で8時間乾燥し、乾燥固体を得た。
上記の方法で得られた乾燥個体を10kg分取し、溶剤としてクロロホルム150kgを用いて、常圧還流下で1時間撹拌することでポリフェニレンスルフィドプレポリマーと溶剤を接触させた。ついで熱時濾過により固液分離を行い、抽出液を得た。ここで分離した固形物にクロロホルム150kgを加え、常圧還流下で1時間撹拌した後、同様に熱時濾過により固液分離を行い、抽出液を得て、先に得た抽出液と混合した。得られた抽出液は室温で一部固形状成分を含むスラリー状であった。
この抽出液スラリーを減圧下で処理する事で、抽出液重量が約40kgになるまでクロロホルムの一部を留去してスラリーを得た。次いでこのスラリー状混合液をメタノール600kgに撹拌しながら滴下した。これにより生じた沈殿物を濾過して固形分を回収し、次いで80℃で減圧乾燥することで白色粉末3.0kgを得た。
この白色粉末の赤外分光分析における吸収スペクトルより、白色粉末はフェニレンスルフィド単位からなる化合物であることを確認した。また、MALDI−TOF−MSによる情報より、この白色粉末は繰り返し単位数4〜12の環状ポリフェニレンスルフィドを主要成分とすることがわかった。この白色粉末の分子量を測定した結果、数平均分子量は900であった。
[実施例1]
参考例1のPPS−1を80gと4,4’−チオジアニリン(TDA)6gを撹拌翼付きの減圧・窒素置換可能なガラス製の試験管に仕込んだ後、試験管内の減圧、窒素置換を3回繰り返した。試験管内を窒素雰囲気で満たしたまま340℃に温調して、撹拌しながら180分間加熱を行って水中に吐出し、PPS(c−1)を得た。PPS(c−1)の数平均分子量は2900であった。FT−IRのスペクトルより、PPS(c−1)はフェニレンスルフィド単位を構成単位として有しており、アミノ基を630μmol/g含有していた。なお、仕込んだTDAのうち、ポリマーに取り込まれたのは98%であった。
[実施例2]
参考例1のPPS−1を80gと4,4’−チオジアニリン(TDA)3gを撹拌翼付きの減圧・窒素置換可能なガラス製の試験管に仕込んだ後、試験管内の減圧、窒素置換を3回繰り返した。試験管内を窒素雰囲気で満たしたまま340℃に温調して、撹拌しながら180分間加熱を行って水中に吐出し、PPS(c−2)を得た。PPS(c−2)の数平均分子量は5400であった。FT−IRのスペクトルより、PPS(c−2)はフェニレンスルフィド単位を構成単位として有しており、アミノ基を310μmol/g含有していた。なお、仕込んだTDAのうち、ポリマーに取り込まれたのは93%であった。
[実施例3]
参考例1のPPS−1を80gと4,4’−チオジアニリン(TDA)0.8gを撹拌翼付きの減圧・窒素置換可能なガラス製の試験管に仕込んだ後、試験管内の減圧、窒素置換を3回繰り返した。試験管内を窒素雰囲気で満たしたまま340℃に温調して、撹拌しながら120分間加熱を行って水中に吐出し、PPS(c−3)を得た。PPS(c−3)の数平均分子量は10000であった。FT−IRのスペクトルより、PPS(c−3)はフェニレンスルフィド単位を構成単位として有しており、アミノ基を85μmol/g含有していた。なお、仕込んだTDAのうち、ポリマーに取り込まれたのは93%であった。
[実施例4]
参考例1のPPS−1を80gと4,4’−チオジアニリン(TDA)6gを撹拌翼付きの減圧・窒素置換可能なガラス製の試験管に仕込んだ後、試験管内の減圧、窒素置換を3回繰り返した。試験管内を窒素雰囲気で満たしたまま300℃に温調して、撹拌しながら240分間加熱を行って水中に吐出し、PPS(c−4)を得た。PPS(c−4)の数平均分子量は3000であった。FT−IRのスペクトルより、PPS(c−4)はフェニレンスルフィド単位を構成単位として有しており、アミノ基を600μmol/g含有していた。なお、仕込んだTDAのうち、ポリマーに取り込まれたのは93%であった。
[実施例5]
参考例1のPPS−1を80gと4,4’−チオジフタル酸二無水物(TPDA)9gを撹拌翼付きの減圧・窒素置換可能なガラス製の試験管に仕込んだ後、試験管内の減圧、窒素置換を3回繰り返した。試験管内を窒素雰囲気で満たしたまま340℃に温調して、撹拌しながら180分間加熱を行って水中に吐出し、PPS(c−5)を得た。PPS(c−5)の数平均分子量は3100であった。FT−IRのスペクトルより、PPS(c−5)はフェニレンスルフィド単位を構成単位として有しており、酸無水物基を570μmol/g含有していた。なお、仕込んだTPDAのうち、ポリマーに取り込まれたのは92%であった。
[実施例6]
参考例1のPPS−1を80gと4,4’−チオジアニリン(TDA)6g、ビスアセチルアセトンニッケル0.4gを撹拌翼付きの減圧・窒素置換可能なガラス製の試験管に仕込んだ後、試験管内の減圧、窒素置換を3回繰り返した。試験管内を窒素雰囲気で満たしたまま300℃に温調して、撹拌しながら120分間加熱を行って水中に吐出し、PPS(c−6)を得た。PPS(c−6)の数平均分子量は3200であった。FT−IRのスペクトルより、PPS(c−6)はフェニレンスルフィド単位を構成単位として有しており、アミノ基を610μmol/g含有していた。なお、仕込んだTDAのうち、ポリマーに取り込まれたのは94%であった。
[実施例7]
参考例1のPPS−1を80gと4,4’−チオジアニリン(TDA)6g、ビスアセチルアセトンニッケル0.4gを撹拌翼付きの減圧・窒素置換可能なガラス製の試験管に仕込んだ後、試験管内の減圧、窒素置換を3回繰り返した。試験管内を窒素雰囲気で満たしたまま340℃に温調して、撹拌しながら90分間加熱を行って水中に吐出し、PPS(c−7)を得た。PPS(c−7)の数平均分子量は3000であった。FT−IRのスペクトルより、PPS(c−7)はフェニレンスルフィド単位を構成単位として有しており、アミノ基を600μmol/g含有していた。なお、仕込んだTDAのうち、ポリマーに取り込まれたのは95%であった。
[比較例1]
撹拌機および底栓弁付きの70リットルオートクレーブに、47.5%水硫化ナトリウム8.27kg(70.0モル)、906%水酸化ナトリウム3.56kg(85.5モル)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)11.45kg(115.50モル)及びイオン交換水5.50kgを仕込み、常圧で窒素を通じながら225℃まで約3時間かけて徐々に加熱し、水9.82kgおよびNMP0.28kgを留出した時点で加熱を終え冷却を開始した。この時点での仕込みアルカリ金属水硫化物1モル当たりの系内残存水分量は、NMPの加水分解に消費された水分を含めて1.01モルであった。また、硫化水素の飛散量は1.4モルであったため、本工程後の系内のスルフィド化剤は68.6モルであった。
その後、200℃まで冷却し、p−ジクロロベンゼン(p−DCB)9.28kg(65.1モル)、4−クロロフタル酸無水物2.88kg(15.8モル)、NMP9.37kg(94.50モル)を加えた後に反応容器を窒素ガス下に密封し、240rpmで撹拌しながら0.6℃/分の速度で275℃まで昇温し、275℃で60分反応した。
反応終了後、直ちにオートクレーブ底栓弁を開放し、内容物を撹拌機付き装置にフラッシュさせ、重合時に使用したNMPの95%以上が揮発除去されるまで230℃の撹拌機付き装置内で1.5時間乾固し、PPSと塩類を含む固形物を回収した。
得られた回収物およびイオン交換水74リットルを撹拌機付きオートクレーブに入れ、75℃で15分洗浄した後、フィルターでろ過しケークを得た。得られたケークを75℃のイオン交換水で15分洗浄、ろ過する操作を3回行った後、ケークおよびイオン交換水74リットル、酢酸0.5kgを撹拌機付きオートクレーブに入れ、オートクレーブ内部を窒素で置換した後、195℃まで昇温した。その後、オートクレーブを冷却し、内容物を取り出した。内容物をフィルターでろ過しケークを得た。得られたケークを窒素気流下、120℃で4時間乾燥することで乾燥PPSを得た。このPPSの数平均分子量は4500であった。FT−IRのスペクトルより、PPSがフェニレンスルフィド単位を構成単位として有しており、酸無水物基を380μmol/g含有していた。なお、仕込んだ4−クロロフタル酸無水物のうち、官能基としてポリマー中に取り込まれたのは18%であった。
[比較例2]
参考例2の環状PPSを80gとp−アミノチオフェノール5.4gを撹拌翼付きの減圧・窒素置換可能なガラス製の試験管に仕込んだ後、試験管内の減圧、窒素置換を3回繰り返した。試験管内を窒素雰囲気で満たしたまま340℃に温調して、撹拌しながら180分間加熱を行って水中に吐出し、PPSを得た。PPSの数平均分子量は2400であった。FT−IRのスペクトルより、PPSはフェニレンスルフィド単位を構成単位として有しており、アミノ基を180μmol/g含有していた。なお、仕込んだTPDAのうち、ポリマーに取り込まれたのは36%であった。
[比較例3]
参考例2の環状PPSを80gと4,4’−チオジアニリン(TDA)1gを撹拌翼付きの減圧・窒素置換可能なガラス製の試験管に仕込んだ後、試験管内の減圧、窒素置換を3回繰り返した。試験管内を窒素雰囲気で満たしたまま340℃に温調して、撹拌しながら60分間加熱を行って水中に吐出し、PPSを得た。PPSの数平均分子量は21000であった。FT−IRのスペクトルより、PPSはフェニレンスルフィド単位を構成単位として有しており、アミノ基を14μmol/g含有していた。なお、仕込んだTDAのうち、ポリマーに取り込まれたのは12%であった。
比較例1のようにPPSの重合時に4−クロロフタル酸無水物を加えることで反応性官能基をPPSに導入することができるが、大部分の4−クロロフタル酸無水物は官能基としてポリマーに取り込まれず、洗浄によって取り除かれてしまう。また、比較例2、3のように環式PPSを、反応性官能基を有する含硫黄化合物と加熱することでも反応性官能基を導入することが出来るが、導入量は十分ではなく効率も悪い。対して実施例1〜7に示すように本発明の方法では多くの官能基をポリマー中に導入しつつ、スルフィド化合物中の官能基を効率良く導入することができる。

Claims (3)

  1. (a)数平均分子量6000以上50000以下のポリアリーレンスルフィドを、(a)ポリアリーレンスルフィド中のアリーレンスルフィド構造単位1モルに対して下記式(A)で表される(b)反応性官能基を有するスルフィド化合物0.1モル%以上25モル%以下の存在下で加熱する、(c)ポリアリーレンスルフィドの製造方法。
    Figure 2021008602
    YおよびXは、少なくとも一方がアミノ基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、酸無水物基、イソシアネート基、エポキシ基、シラノール基及びアルコキシシラン基から選ばれる官能基であり、nは0〜20の整数を表す。
  2. 請求項1に記載のポリアリーレンスルフィドの製造方法であって、加熱を200℃以上で行うポリアリーレンスルフィドの製造方法。
  3. 請求項1または2に記載のポリアリーレンスルフィドの製造方法であって、加熱を実質的に無溶媒条件で行うポリアリーレンスルフィドの製造方法。
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