JP2021024881A - ポリアリーレンスルフィド共重合体およびその製造方法 - Google Patents

ポリアリーレンスルフィド共重合体およびその製造方法 Download PDF

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宗一郎 岩花
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智幸 小田島
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幸二 山内
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Abstract

【課題】熱特性、溶融安定性、加工性に優れた結晶性のポリアリーレンスルフィド共重合体およびその製造方法を提供する。【解決手段】下記式(A)で表される構造と、重量平均分子量Mwが1000以上13000以下であるポリアリーレンスルフィド単位とを、構造単位として有するポリアリーレンスルフィド共重合体。(R1、R2は水素、炭素原子数1〜12のアルキル基、炭素原子数6〜24のアリーレン基、ハロゲン基から選ばれる置換基であり、R1、R2は同一でも異なっていてもよい。)【選択図】なし

Description

本発明は熱特性、溶融安定性、加工性に優れた結晶性のポリアリーレンスルフィド共重合体およびその製造方法に関する。
ポリフェニレンスルフィド(以下、PPSと略する場合もある)に代表されるポリアリーレンスルフィド(以下、PASと略す場合もある)は、優れた耐熱性、バリア性、耐薬品性、電気絶縁性、耐湿熱性、難燃性などエンジニアリングプラスチックとして好適な性質を有する樹脂である。また、射出成形、押出成形により各種成形部品、フィルム、シート、繊維等に成形可能であり、各種電気・電子部品、機械部品および自動車部品など耐熱性、耐薬品性の要求される分野に幅広く用いられている。PASはその優れた特性ゆえに、使用される用途が広がっており、近年熱特性のより一層の向上が求められている。
この要求に対して、PPSに剛直な成分を共重合することにより、熱特性を向上させる試みがなされている。例えば、特許文献1では、モノマーであるビフェニル構造を含有するスルホキシド化合物を重合してポリ(アリーレンスルホニウム塩)を得た後に脱アルキル化または脱アリール化することで主鎖骨格内に剛直なビフェニル構造を導入し熱特性を向上させている。
また、特許文献2では、ポリアリーレンスルフィドケトン・ブロックとポリアリーレンスルフィド・ブロックとを有するポリアリーレンスルフィド系ブロックコポリマーが開示されている。
特許文献3では、ポリアリーレンスルフィドケトンケトン・セグメントとポリアリーレンスルフィド・セグメントとを有するポリアリーレンスルフィドケトン系コポリマーが開示されている。
特許文献4では、ポリアリーレンスルフィドケトンケトンケトン・セグメントとポリアリーレンスルフィド・セグメントとを有する芳香族コポリマーが開示されている。
特許文献5では、2〜9量体のフェニレンスルフィドとアリーレン基をイミド結合で結ぶことでガラス転移点を向上させた累積フェニレンスルフィド単位を含有するポリイミドが開示されている。
特開2017−132839号公報 特開平2−225527号公報 特開平4−213327号公報 特開平5−65343号公報 特開昭62−84124号公報
前記特許文献1に記載の方法は、確かに得られるポリマーの熱特性は向上するものの、特殊なモノマーの使用やポリマーの脱アルキル化又は脱アリール化が必要であり、工業的な生産性に劣る手法であった。
前記特許文献2に記載の方法では、予め合成したポリアリーレンスルフィドプレポリマーに、ケトンモノマーを添加することでポリアリーレンスルフィドケトン・ブロックとポリアリーレンスルフィド・ブロックとを有するポリアリーレンスルフィド系ブロックコポリマーを合成しているが、十分に耐熱性を上げるためには、ジハロベンゾフェノンを主成分とするケトンモノマーを多量に用いる必要があり、経済性に改善の余地があった。
前記特許文献3の方法では、ポリアリーレンスルフィドケトンケトン・セグメントを有するポリアリーレンスルフィドケトン系コポリマーが報告されているが、前駆体となるアリーレンスルフィドプレポリマーの重量平均分子量が200以上1000未満と小さいため、一般的に重合の制御が困難であり、工業的に製造する際に課題がある。また、ポリアリーレンスルフィド・セグメントの重量平均分子量が1000以上の領域に関しては何ら言及されていない。
前記特許文献4の方法では、ポリアリーレンスルフィドケトンケトンケトン・セグメントとポリアリーレンスルフィド・セグメントとを有する芳香族コポリマーが報告されているが、分子内に3つのケトン基を有する特殊なモノマーを使用する必要があり、工業的生産には不向きな手法であった。
特許文献5に開示された方法では熱特性は向上しているものの、PASの特徴である耐薬品性が低下するという問題があった。
本発明はかかる課題を解決するために、次の手段を採用するものである。
すなわち、本発明は、
[1] 下記式(A)で表される構造と、重量平均分子量Mwが1000以上13000以下であるポリアリーレンスルフィド単位とを、構造単位として有するポリアリーレンスルフィド共重合体。
Figure 2021024881
(R、Rは水素、炭素原子数1〜12のアルキル基、炭素原子数6〜24のアリーレン基から選ばれる置換基であり、R、Rは同一でも異なっていてもよい。)
[2] 示差走査熱量測定によるガラス転移点を95℃超に有する前記[1]に記載のポリアリーレンスルフィド共重合体。
[3] 下記式(B)で示される構造を、構造単位として有する前記[1]または[2]に記載のポリアリーレンスルフィド共重合体。
Figure 2021024881
[4] 前記[1]から[3]のいずれかに記載のポリアリーレンスルフィド共重合体の製造方法であって、重量平均分子量Mwが1000以上13000以下であるポリアリーレンスルフィドプレポリマーと、下記式(C)で表されるジケトン化合物を混合し、さらに加熱するポリアリーレンスルフィド共重合体の製造方法。
Figure 2021024881
(R、Rは水素、炭素原子数1〜12のアルキル基、炭素原子数6〜24のアリーレン基から選ばれる置換基であり、R、Rは同一でも異なっていてもよい。Xはハロゲン基である。)
[5] 前記[1]から[3]のいずれかに記載のポリアリーレンスルフィド共重合体の製造方法であって、重量平均分子量Mwが1000以上13000以下であるポリアリーレンスルフィドプレポリマーと、下記式(D)で表されるジケトンプレポリマーを混合し、さらに加熱するポリアリーレンスルフィド共重合体の製造方法。
Figure 2021024881
(R、Rは水素、炭素原子数1〜12のアルキル基、炭素原子数6〜24のアリーレン基から選ばれる置換基であり、R、Rは同一でも異なっていてもよい。)
本発明によれば、耐熱性が向上し、工業的な生産に適したポリアリーレンスルフィド共重合体が提供できる。
以下に、本発明実施の形態を説明する。本発明では、後述するポリアリーレンスルフィドプレポリマーとジケトン化合物、あるいはジケトンプレポリマーを原料としてポリアリーレンスルフィド共重合体を製造する。始めに、各プレポリマーやポリアリーレンスルフィド共重合体を製造するために好ましく用いられる原料について詳述し、続いて各プレポリマーやポリアリーレンスルフィド共重合体、およびその製造方法について詳述する。
(1)スルフィド化剤
本発明の好ましい実施形態で用いられるスルフィド化剤とは、ジハロゲン化芳香族化合物にスルフィド結合を導入できるものであれば良く、例えばアルカリ金属硫化物、アルカリ金属水硫化物、および硫化水素が挙げられる。
アルカリ金属硫化物の具体例としては、例えば硫化リチウム、硫化ナトリウム、硫化カリウム、硫化ルビジウム、硫化セシウムおよびこれら2種以上の混合物を挙げることができる。なかでも硫化リチウムおよび/または硫化ナトリウムが好ましく、硫化ナトリウムがより好ましく用いられる。これらのアルカリ金属硫化物は、水和物または水性混合物として、あるいは無水物の形で用いることができる。なお、水性混合物とは水溶液、もしくは水溶液と固体成分の混合物、もしくは水と固体成分の混合物のことをさす。一般的に入手できる安価なアルカリ金属硫化物は水和物または水性混合物であるので、このような形態のアルカリ金属硫化物を用いることが好ましい。
アルカリ金属水硫化物の具体例としては、例えば水硫化リチウム、水硫化ナトリウム、水硫化カリウム、水硫化リチウム、水硫化ルビジウム、水硫化セシウムおよびこれら2種以上の混合物を挙げることができる。なかでも水硫化リチウムおよび/または水硫化ナトリウムが好ましく、水硫化ナトリウムがより好ましく用いられる。
また、アルカリ金属水硫化物とアルカリ金属水酸化物から、反応系の中で生成されるアルカリ金属硫化物も用いることができる。また、あらかじめアルカリ金属水硫化物とアルカリ金属水酸化物を接触させて調製したアルカリ金属硫化物を用いることもできる。これらのアルカリ金属水硫化物及びアルカリ金属水酸化物は、水和物、水性混合物、および無水物から選択される化合物の形で用いることができる。水和物または水性混合物が、入手のし易さ、コストの観点から好ましい。
さらに、水酸化リチウム、水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属水酸化物と硫化水素から、反応系の中で生成されるアルカリ金属硫化物も用いることができる。また、あらかじめ水酸化リチウム、水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属水酸化物と硫化水素を接触させて調製したアルカリ金属硫化物を用いることもできる。硫化水素は気体状、液体状、水溶液状のいずれの形態で用いても差し障り無い。
本発明の好ましい実施形態においてスルフィド化剤の量は、脱水操作などにより反応開始前にスルフィド化剤の一部損失が生じる場合には、実際の仕込み量から当該損失分を差し引いた残存量を意味するものとする。
なお、スルフィド化剤と共に、アルカリ金属水酸化物および/またはアルカリ土類金属水酸化物を併用することも可能である。アルカリ金属水酸化物の具体例としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウムおよびこれら2種以上の混合物を好ましいものとして挙げることができる。アルカリ土類金属水酸化物の具体例としては、例えば水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、および水酸化バリウムなどが挙げられ、なかでも水酸化ナトリウムが好ましく用いられる。
スルフィド化剤として、アルカリ金属水硫化物を用いる場合には、アルカリ金属水酸化物を同時に使用することが特に好ましい。この場合のアルカリ金属水酸化物の使用量は、アルカリ金属水硫化物1モルに対し0.95モル以上とすることができ、好ましくは1.00モル以上であり、更に好ましくは1.005モル以上である。また、5.0モル以下とすることができ、好ましくは4.5モル以下であり、更に好ましくは4.0モル以下である。スルフィド化剤として硫化水素を用いる場合には、アルカリ金属水酸化物を同時に使用することが特に好ましい。この場合のアルカリ金属水酸化物の使用量は、硫化水素1モルに対し2.0モル以上とすることができ、好ましくは2.01モル以上であり、更に好ましくは2.04モル以上である。また、6.0モル以下とすることができ、好ましくは5.5モル以下であり、更に好ましくは5.0モル以下である。
(2)ジハロゲン化芳香族化合物
本発明の好ましい実施形態で使用されるジハロゲン化芳香族化合物とは、芳香環の二価基であるアリーレン基と、2つのハロゲノ基とを有する芳香族化合物である。ジハロゲン化芳香族化合物1モルは、アリーレン単位1モルとハロゲノ基2モルを有している。たとえば、アリーレン基としてベンゼン環の二価基であるフェニレン基を有すると共に2つのハロゲノ基を有する化合物として、p−ジクロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、m−ジクロロベンゼン、p−ジブロモベンゼン、o−ジブロモベンゼン、m−ジブロモベンゼン、1−ブロモ−4−クロロベンゼン、および1−ブロモ−3−クロロベンゼンなどのジハロゲン化ベンゼンを挙げることができる。さらに、ジハロゲン化芳香族化合物としては、1−メトキシ−2,5−ジクロロベンゼン、1−メチル−2,5−ジクロロベンゼン、1,4−ジメチル−2,5−ジクロロベンゼン、1,3−ジメチル−2,5−ジクロロベンゼン、および3,5−ジクロロ安息香酸などのハロゲン以外の置換基をも含む化合物を挙げることができる。なかでも、p−ジクロロベンゼンに代表されるp−ジハロゲン化ベンゼンを主成分にするジハロゲン化芳香族化合物が好ましい。特に好ましくは、p−ジクロロベンゼンを80〜100モル%含むものであり、さらに好ましくは90〜100モル%含むものである。
(3)ジケトン化合物
本発明の好ましい実施形態で使用されるジケトン化合物とは、下記式(C)で表されるように、2つのケトン基と2つのハロゲノ基を有する芳香族化合物である。
Figure 2021024881
(R、Rは水素、炭素原子数1〜12のアルキル基、炭素原子数6〜24のアリーレン基から選ばれる置換基であり、R、Rは同一でも異なっていてもよい。また、Xはハロゲン基である。)
具体例としては、以下の(E)〜(J)などの化合物やそれらの混合物が挙げられる。特に好ましくは、(E)、(H)を80〜100モル%含むものであり、さらに好ましくは90〜100モル%含むものである。
Figure 2021024881
(Xはハロゲン基である。)
このようなジケトン化合物を用いて後述するジケトンプレポリマーやポリアリーレンスルフィド共重合体を合成することで、ポリアリーレンスルフィド共重合体の熱特性が向上する傾向にある。
また、その製造方法は特に限定はされず、前記式(C)で表される化合物が合成出来る製法であれば、いかなる製法によるものでも使用することが可能であるが、例えば文献情報(POLYMER,1988,358−369)にて開示されているような方法も好ましく採用できる。
(4)有機極性溶媒
本発明の好ましい実施形態では有機極性溶媒を用いるが、なかでも有機アミド溶媒が好ましい。具体例としては、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、N−シクロヘキシル−2−ピロリドンなどのN−アルキルピロリドン類、N−メチル−ε−カプロラクタムなどのカプロラクタム類、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ヘキサメチルリン酸トリアミドなどに代表されるアプロチック有機溶媒、及びこれらの混合物などが、反応の安定性が高いために好ましく使用される。これらのなかでもN−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンが好ましく用いられる。
(5)ポリアリーレンスルフィドプレポリマー
本発明におけるポリアリーレンスルフィドプレポリマーとは、式−(Ar−S)−の繰り返し単位を主要構成単位とする化合物であり、好ましくは当該繰り返し単位を80モル%以上含有する線状のホモポリマーまたは線状のポリアリーレンスルフィドコポリマーである。
本ポリアリーレンスルフィドプレポリマーは、その末端と、ジケトン化合物のハロゲノ基、あるいは後述するジケトンプレポリマーの末端と反応することでポリアリーレンスルフィド共重合体を形成し、ポリアリーレンスルフィドプレポリマーは、ポリアリーレンスルフィド単位としてポリアリーレンスルフィド共重合体に組み込まれる。
ここで、Arとしては下記の式(K)〜式(T)であらわされる単位などを例示できるが、なかでも式(K)が好ましい。
Figure 2021024881
(ただし、式中のR1,R2は水素、炭素数1から6のアルキル基、炭素数1から6のアルコキシ基、ハロゲン基から選ばれた置換基であり、R1とR2は同一でも異なっていてもよい。)
この繰り返し単位を主要構成単位とする限り、少量の分岐単位または架橋単位を含むことができる。これら分岐単位または架橋単位の共重合量は、−(Ar−S)−であらわされる主要構成単位1モルに対して0〜1モル%の範囲であることが好ましい。
特に好ましいポリアリーレンスルフィドプレポリマーとしては、ポリマーの主要構成単位としてp−フェニレンスルフィド単位
Figure 2021024881
を80モル%以上、望ましくは90モル%以上含有するポリフェニレンスルフィド(以下、PPSと略すこともある)プレポリマーが挙げられる。
また、本発明の実施形態におけるポリアリーレンスルフィドプレポリマーの重量平均分子量の下限は1,000以上であり、1,300以上が好ましく例示でき、1,500以上が更に好ましい。ポリアリーレンスルフィドプレポリマーの重量平均分子量が1000未満の領域は、一般的に重合の制御が困難であり、分解反応などを生じやすい傾向にある。一方、ポリアリーレンスルフィドプレポリマーの重量平均分子量の上限は13,000以下であり、12,000以下が好ましく例示でき、10,000以下が更に好ましく例示できる。ポリアリーレンスルフィドプレポリマーの重量平均分子量が13000超の領域では、後述するポリアリーレンスルフィド共重合体の熱特性が向上しにくい傾向にある。
また、ポリアリーレンスルフィドプレポリマーや、後述するジケトンプレポリマー、およびポリアリーレンスルフィド共重合体の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)は、分子量既知のポリスチレンを標準物質として用いて、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定により算出された値である。
なお、ポリアリーレンスルフィドプレポリマーの分子量分布は、1.0超が好ましく、1.1以上がより好ましく、1.3以上が更に好ましい。なお、分子量分布(Mw/Mn)は、前記MwとMnの比(Mw/Mn)で求められる。ただし、ポリアリーレンスルフィドプレポリマーが一般的な有機合成反応により合成された低分子化合物である場合など、実質的に純物質からなる場合、その分子量分布は1.0として扱う。
(7)項にて後述するが、アルカリ金属硫化物とジハロゲン化芳香族化合物を有機アミド溶媒中で反応せしめる方法によってポリアリーレンスルフィドプレポリマーを合成する場合、ポリアリーレンスルフィドプレポリマーの末端は、ポリアリーレンスルフィドプレポリマーを合成する際のスルフィド化剤とジハロゲン化芳香族化合物のモルバランスによって変化する。ジハロゲン化芳香族化合物に対してスルフィド化剤を過剰に用いた場合、ポリアリーレンスルフィドプレポリマーはチオラート末端を有する傾向にある。一方、スルフィド化剤に対してジハロゲン化芳香族化合物を過剰に用いた場合、ポリアリーレンスルフィドプレポリマーの末端は、ハロゲノ基である傾向が強い。
ジケトン化合物、あるいはハロゲノ基を有するジケトンプレポリマーと反応させてポリアリーレンスルフィド共重合体を合成する場合、ポリアリーレンスルフィドプレポリマーの末端は、チオラート末端を50%/全末端以上有することが好ましく、70%/全末端以上有することがより好ましい。
一方、チオラート末端を有するジケトンプレポリマーと反応させてポリアリーレンスルフィド共重合体を合成する場合、ポリアリーレンスルフィドプレポリマーの末端は、ハロゲノ基を50%/全末端以上有することが好ましく、70%/全末端以上有することがより好ましい。
上記プレポリマーを用いることで、ポリアリーレンスルフィド共重合体の分子量が向上する傾向にある。
(6)ジケトンプレポリマー、およびその製法
本発明におけるジケトンプレポリマーとは、下記式(D)の繰り返し単位を主要構成単位とする化合物であり、好ましくは当該繰り返し単位を80モル%以上含有する線状のホモポリマーまたは線状のコポリマーである。
Figure 2021024881
(R、Rは水素、炭素原子数1〜12のアルキル基、炭素原子数6〜24のアリーレン基から選ばれる置換基であり、R、Rは同一でも異なっていてもよい。)
このジケトンプレポリマーは、前記したポリアリーレンスルフィドプレポリマーと反応させることで、ポリアリーレンスルフィド共重合体を形成するものである。
また、この繰り返し単位を主要構成単位とする限り、少量の分岐単位または架橋単位を含むことができ、これら分岐単位または架橋単位の共重合量は、上記の主要構成単位1モルに対して0〜1モル%の範囲であることが好ましい。
特に好ましいジケトンプレポリマーとしては、ポリマーの主要構成単位として下記式(U)で表される構造を80モル%以上、望ましくは90モル%以上含有するものが挙げられる。
Figure 2021024881
その製造方法は特に限定はされず、前記式(D)の繰り返し単位を主要構成単位とする化合物が合成出来る製法であれば、いかなる製法によるものでも使用することが可能であるが、例えば特開平3−203929に代表されるように、アルカリ金属硫化物とビス(ハロベンゾイル)ベンゼンを主成分とするジハロ芳香族化合物を有機アミド溶媒中で反応せしめる方法も好ましく採用できる。
なお、上記の好ましい方法によってジケトンプレポリマーを合成する場合、その末端は、ジケトンプレポリマーを合成する際のスルフィド化剤とジケトン化合物のモルバランスによって変化する傾向にある。ジケトン化合物に対してスルフィド化剤を過剰に用いた場合、ジケトンプレポリマーはチオラート末端を有する傾向にある。一方、スルフィド化剤に対してジケトン化合物を過剰に用いた場合、ジケトンプレポリマーの末端は、ハロゲノ基である傾向が強い。
チオラート末端を有するポリアリーレンスルフィドプレポリマーと反応させてポリアリーレンスルフィド共重合体を合成する場合、ジケトンプレポリマーは末端にハロゲノ基を有することが好ましい。一方、ハロゲノ基を末端に有するポリアリーレンスルフィドプレポリマーと反応させてポリアリーレンスルフィド共重合体を合成する場合、ジケトンプレポリマーは末端にチオラート基を有することが好ましい。
(7)ポリアリーレンスルフィドプレポリマーの製造方法
本発明で用いるポリアリーレンスルフィドプレポリマーの製造方法は、前記(5)の要件を満たすポリアリーレンスルフィドプレポリマーを合成出来るものであれば特に限定はされず、いかなる製法によるものでも使用することが可能である。例えば、アルカリ金属硫化物とジハロゲン化芳香族化合物を有機アミド溶媒中で反応せしめる方法も好ましく採用出来る。
なお、上記の好ましい方法によってポリアリーレンスルフィドプレポリマーを合成する場合、その末端は、ポリアリーレンスルフィドプレポリマーを合成する際のスルフィド化剤とジハロゲン化芳香族化合物のモルバランスによって変化する傾向にある。ジハロゲン化芳香族化合物に対してスルフィド化剤を過剰に用いた場合、ジケトンプレポリマーはチオラート末端を有する傾向にある。一方、スルフィド化剤に対してジハロゲン化芳香族化合物を過剰に用いた場合、ジケトンプレポリマーの末端は、ハロゲノ基である傾向が強い。
以下、それぞれの場合のより具体的な方法について記載する。
(7−A)主としてチオラート末端を有するポリアリーレンスルフィドプレポリマーの製造方法
チオラート末端を有するポリアリーレンスルフィドプレポリマーを製造する場合、スルフィド化剤1モルあたり1モル未満のジハロゲン化芳香族化合物を用いることが好ましく、0.97モル以下がより好ましく、0.95モル以下が更に好ましい。また、その下限としては、スルフィド化剤1モルあたり0.1モル以上のジハロゲン化芳香族化合物を用いることが好ましく、0.3モル以上がより好ましく、0.5モル以上が更に好ましい。このようにすることで、ポリアリーレンスルフィドプレポリマーを適切な分子量に制御することが可能である。
本製造方法における有機極性溶媒の使用量に特に制限はないが、安定した反応性および経済性の観点から、スルフィド化剤1モル当たり0.25リットル以上が好ましく、上限としては、5.0リットル未満が好ましく、1.0リットル未満がより好ましく、0.8リットル未満がさらに好ましい範囲として例示できる。
アルカリ金属硫化物とジハロゲン化芳香族化合物を有機アミド溶媒中で反応させる際の反応温度は、有機極性溶媒の種類、量によって多様化するため一意的に決めることはできないが、その下限は通常120℃以上、好ましくは180℃以上、より好ましくは200℃以上、さらに好ましくは210℃以上の範囲を例示できる。この好ましい温度範囲ではより高い反応速度が得られ、反応を短時間化することができる。一方、その上限は、通常260℃以下、好ましくは250℃以下、より好ましくは240℃以下の範囲を例示できる。このような好ましい温度範囲で反応を行うことで、過加熱による副反応などを抑制でき、また、生成するポリアリーレンスルフィドプレポリマーが溶解しやすくなるため、反応が均一で進行しやすい傾向にある。また、反応は一定温度で行なう1段反応、段階的に温度を上げていく多段反応、あるいは連続的に温度を変化させていく形式の反応のいずれでもかまわない。
また、反応時間は、使用した原料の種類や量あるいは反応温度に依存するので一概に規定できないが、0.1時間以上が好ましく、0.5時間以上がより好ましい。この好ましい時間以上とすることで、未反応の原料成分を減少できる。一方、反応時間に特に上限は無いが、40時間以内でも十分に反応が進行し、好ましくは10時間以内、より好ましくは6時間以内も採用できる。
スルフィド化剤を水和物もしくは水性混合物の形態で用いることもできるが、この際、ジハロゲン化芳香族化合物を添加する前に、有機極性溶媒とスルフィド化剤を含む混合物を昇温し、過剰量の水を系外に除去する脱水工程を行うことが好ましい。この脱水の方法には特に制限はないが、望ましくは不活性ガス雰囲気下、常温〜150℃、好ましくは常温〜100℃の温度範囲で、有機極性溶媒にアルカリ金属水硫化物とアルカリ金属水酸化物を加え、常圧または減圧下、少なくとも150℃以上、好ましくは180〜260℃まで昇温し、水分を留去させる方法が挙げられる。
アルカリ金属硫化物とジハロゲン化芳香族化合物を有機アミド溶媒中で反応させる際のスルフィド化剤の転化率は、50%以上まで反応させることが好ましく、60%以上まで反応させることがより好ましく、70%以上まで反応させることが更に好ましく、75%以上まで反応させることが殊更に好ましい。また、ジハロゲン化芳香族化合物の転化率は、50%以上まで反応させることが好ましく、60%以上まで反応させることがより好ましく、70%以上まで反応させることが更に好ましい。なお、アルカリ金属硫化物とジハロゲン化芳香族化合物の転化率の上限はなく、転化率は高い方が好ましい。
このようにジハロゲン化芳香族化合物およびスルフィド化剤の残存量を低下させた状態で、ジケトン化合物、あるいはジケトンプレポリマーと反応させることで、得られるポリアリーレンスルフィド共重合体の分子量や滞留安定性が向上する傾向にある。これは、後述するポリアリーレンスルフィド共重合体合成工程でのモノマー起因の副反応が抑制された結果と推測している。
なお、反応させる方法にはバッチ式および連続方法など公知の各種重合方式、反応方式を採用することができる。また、製造における雰囲気は非酸化性雰囲気下が望ましく、窒素、ヘリウム、およびアルゴンなどの不活性ガス雰囲気下で行なうことが好ましく、経済性および取り扱いの容易さの面からは窒素雰囲気下が好ましい。
なお、ジハロゲン化芳香族化合物の転化率は、以下の式で算出した値である。ジハロゲン化芳香族化合物の残存量は、通常ガスクロマトグラフ法により求めることができる。
転化率(%)=[ジハロゲン化芳香族化合物の仕込み量(モル)−ジハロゲン化芳香族化
合物の残存量(モル)]/[ジハロゲン化芳香族化合物の仕込み量(モル)]×100
また、スルフィド化剤の転化率は、下記の式から算出した値である。
転化率(%)=[スルフィド化剤の仕込み量(モル)−スルフィド化剤の残存量(モル)]/[スルフィド化剤の仕込み量(モル)]×100
ここで、スルフィド化剤の残存量は、イオンクロマトグラフィー(IC)によって測定可能である。
(7−B)主としてハロゲノ基を末端に有するポリアリーレンスルフィドプレポリマーの製造方法
ハロゲノ基を末端に有するポリアリーレンスルフィドプレポリマーを製造する場合、スルフィド化剤1モルあたり1モル超のジハロゲン化芳香族化合物を用いることが好ましく、1.1モル以上がより好ましく、1.2モル以上が更に好ましい。また、その上限としては、スルフィド化剤1モルあたり2モル以下のジハロゲン化芳香族化合物を用いることが好ましく、1.9モル以下がより好ましく、1.8モル以下が更に好ましい。このようにすることで、ポリアリーレンスルフィドプレポリマーを適切な分子量に制御することが可能である。
アルカリ金属硫化物とジハロゲン化芳香族化合物を有機アミド溶媒中で反応させる際の反応温度は、有機極性溶媒の種類、量によって多様化するため一意的に決めることはできないが、その下限は通常150℃以上、好ましくは180℃以上、より好ましくは200℃以上、さらに好ましくは210℃以上の範囲を例示できる。この好ましい温度範囲ではより高い反応速度が得られ、反応を短時間化することができる。一方、その上限は、通常300℃以下、好ましくは280℃以下、より好ましくは270℃以下の範囲を例示できる。このような好ましい温度範囲で反応を行うことで、生成するポリアリーレンスルフィドプレポリマーが溶解しやすくなるため、反応が均一で進行しやすい傾向にある。
なお、ジハロゲン化芳香族化合物をアルカリ金属硫化物に対してモル比で過剰に添加した場合のジハロゲン化芳香族化合物の転化率は、以下の式で算出した値である。ジハロゲン化芳香族化合物の残存量は、通常ガスクロマトグラフ法により求めることができる。
転化率(%)=[ジハロゲン化芳香族化合物の仕込み量(モル)−ジハロゲン化芳香族化
合物の残存量(モル)]/[ジハロゲン化芳香族化合物の仕込み量(モル)−スルフィド化剤に対するジハロゲン化芳香族化合物の過剰量(モル)]×100
その他の好ましい様態については、(7−A)チオラート末端を有するポリアリーレンスルフィドプレポリマーの製造方法に準ずる。
(8)ポリアリーレンスルフィド共重合体
本発明におけるポリアリーレンスルフィド共重合体とは、下記式(A)で表される構造と、重量平均分子量Mwが1000以上13000以下であるポリアリーレンスルフィド単位とを、構造単位として有するポリアリーレンスルフィド共重合体である。
Figure 2021024881
(R、Rは水素、炭素原子数1〜12のアルキル基、炭素原子数6〜24のアリーレン基から選ばれる置換基であり、R、Rは同一でも異なっていてもよい。)
ここで、ポリアリーレンスルフィド単位とは、式−(Ar−S)−の繰り返し単位を主要構成単位とする化合物であり、好ましくは当該繰り返し単位を80モル%以上含有する線状のホモポリマーまたは線状のポリアリーレンスルフィドコポリマーである。
ここで、Arとしては下記の式(K)〜式(T)であらわされる単位などがあるが、なかでも式(K)が特に好ましい。
Figure 2021024881
(ただし、式中のR1,R2は水素、炭素数1から6のアルキル基、炭素数1から6のアルコキシ基、ハロゲン基から選ばれた置換基であり、R1とR2は同一でも異なっていてもよい。)
この繰り返し単位を主要構成単位とする限り、少量の分岐単位または架橋単位を含むことができる。これら分岐単位または架橋単位の共重合量は、−(Ar−S)−であらわされる主要構成単位1モルに対して0〜1モル%の範囲であることが好ましい。
特に好ましいポリアリーレンスルフィドプレポリマーとしては、ポリマーの主要構成単位としてp−フェニレンスルフィド単位
Figure 2021024881
を80モル%以上、望ましくは90モル%以上含有するポリフェニレンスルフィド(以下、PPSと略すこともある)プレポリマーが挙げられる。
また、本発明の実施形態におけるポリアリーレンスルフィド単位の重量平均分子量の下限は1,000以上であり、1,300以上が好ましく例示でき、1,500以上が更に好ましい。一方、ポリアリーレンスルフィドプレポリマーの重量平均分子量の上限は13,000以下であり、12,000以下が好ましく例示でき、10,000以下が更に好ましく例示できる。このような範囲では、ポリアリーレンスルフィド共重合体の工業的な生産性に優れ、ポリアリーレンスルフィド共重合体の熱特性が向上しやすい傾向にある。
なお、ポリアリーレンスルフィド単位の分子量分布は、1.0超が好ましく、1.1以上がより好ましく、1.3以上が更に好ましい。ただし、ポリアリーレンスルフィドプレポリマーが一般的な有機合成反応により合成された低分子化合物である場合など、実質的に純物質からなる場合、その分子量分布は1.0として扱う。
なお、本発明の実施形態においては、ポリアリーレンスルフィドプレポリマーはポリアリーレンスルフィド単位としてポリアリーレンスルフィド共重合体に組み込まれるため、ポリアリーレンスルフィド単位の重量平均分子量および分子量分布は、ポリアリーレンスルフィドプレポリマーの重量平均分子量および分子量分布と等しいとみなす。その測定方法は前記(5)項にて記載した通りである。
式(A)で表される構造としては、下記式(V)から(AA)の構造やそれらの混合物が例示でき、式(V)、(Y)を80〜100モル%含むものがより好ましく例示できる。
Figure 2021024881
(9)ポリアリーレンスルフィド共重合体の製造方法
本発明におけるポリアリーレンスルフィド共重合体の製造方法は、前記(8)の要件を満たすポリアリーレンスルフィド共重合体を合成出来るものであれば特に限定はされず、いかなる製法も採用することが可能であるが、次のような方法が好ましく例示できる。例えば、(A)重量平均分子量Mwが1000以上13000以下であるチオラート末端を有するポリアリーレンスルフィドプレポリマーとジケトン化合物の反応、(B)重量平均分子量Mwが1000以上13000以下であるチオラート末端を有するポリアリーレンスルフィドプレポリマーとハロゲノ基を有するジケトンプレポリマーの反応、あるいは(C)重量平均分子量Mwが1000以上13000以下であるハロゲノ基を有するポリアリーレンスルフィドプレポリマーとチオラート末端を有するジケトンプレポリマーの反応、である。
このよう方法を採用することで、ポリアリーレンスルフィドプレポリマーの末端と、ジケトン化合物、あるいはジケトンプレポリマーの末端が効率的に反応し、生成するポリアリーレンスルフィド共重合体の分子量が向上する傾向にある。
また、前記(7)のような方法で製造される特定分子量を有するポリアリーレンスルフィドプレポリマーを用いてポリアリーレンスルフィド共重合体を製造することで、特定分子量のポリアリーレンスルフィド単位を有するポリアリーレンスルフィド共重合体が得られる。
それぞれの好ましい実施形態を次に記載する。
(9−A)ポリアリーレンスルフィドプレポリマーとジケトン化合物の反応
本方法では、末端にチオラート基を有し、かつ重量平均分子量が1000以上13000以下のポリアリーレンスルフィドプレポリマーを合成し、引き続きジケトン化合物を添加することで、ポリアリーレンスルフィド共重合体を合成することが好ましい。
また、ポリアリーレンスルフィドプレポリマーを合成する際のスルフィド化剤の仕込み量(モル)に対する、ポリアリーレンスルフィドプレポリマーを合成する際のジハロゲン化芳香族化合物とポリアリーレンスルフィド共重合体を合成する際に用いるジケトン化合物の仕込み量(モル)の和の比は0.5以上1.5以下が好ましく、0.8以上1.2以下がより好ましく、0.9以上1.1以下が更に好ましく、0.95以上1.05以下が殊更に好ましい。このようにすることで、ポリアリーレンスルフィドプレポリマーの末端に存在するチオラート基と、ジケトン化合物のハロゲノ基の反応がスムーズに進行し、生成するポリアリーレンスルフィド共重合体の分子量が向上する傾向にある。
本製造方法における反応温度は、有機極性溶媒の種類、量によって多様化するため一意的に決めることはできないが、その下限は通常120℃以上、好ましくは150℃以上、より好ましくは180℃以上、さらに好ましくは200℃以上の範囲を例示できる。この好ましい温度範囲ではより高い反応速度が得られ、反応を短時間化することができる。一方、その上限は、通常300℃以下、好ましくは280℃以下、より好ましくは260℃以下、さらに好ましくは240℃以下の範囲を例示できる。また、反応は一定温度で行なう1段反応、段階的に温度を上げていく多段反応、あるいは連続的に温度を変化させていく形式の反応のいずれでもかまわない。
また、ポリアリーレンスルフィドプレポリマーとジケトン化合物を反応させるための添加方法は、特に限定されず、公知の方法も採用できる。例えば、予め合成したそれぞれ反応液を常温で混合しさらに加熱する方法や、予め合成した加熱状態のポリアリーレンスルフィドプレポリマーに常温のジケトン化合物を添加してさらに加熱する方法、予め合成した加熱状態のポリアリーレンスルフィドプレポリマーに加熱状態のジケトン化合物、あるいはジケトン化合物の有機極性溶媒溶液を添加してさらに加熱する方法などが例示できる。
本製造方法では、ジケトン化合物の転化率が50%以上まで反応させることが好ましく、より好ましくは70%以上、さらに好ましくは80%以上まで反応させることが好ましい。また、ポリアリーレンスルフィドプレポリマー合成由来のスルフィド化剤の転化率は、70%以上まで反応させることが好ましく、80%以上まで反応させることがより好ましく、90%以上まで反応させることが更に好ましい。ポリアリーレンスルフィドプレポリマー合成由来のジハロゲン化芳香族化合物の転化率は、70%以上まで反応させることが好ましく、80%以上まで反応させることがより好ましく、90%以上まで反応させることが更に好ましい。
このような状態では、ポリアリーレンスルフィドプレポリマーとジケトン化合物の反応が効率的に進行しやすく、ポリアリーレンスルフィド共重合体の分子量や熱特性が向上しやすい傾向にある。
なお、ジケトン化合物の転化率は、以下の式で算出した値である。ジケトン化合物の残存量は、通常ガスクロマトグラフ法、あるいは液体クロマトグラフィーにより求めることができる。
転化率(%)=[ジケトン化合物の仕込み量(モル)−ジケトン化合物の残存量(モル)]/[ジケトン化合物の仕込み量(モル)]×100
本製造方法におけるジケトン化合物とポリアリーレンスルフィドプレポリマー合成段階でのジハロゲン化芳香族化合物の使用量の比は、ポリアリーレンスルフィド共重合体の熱特性を向上させつつ、適切な融点に制御して成形加工性を確保するとの観点から、ジハロゲン化芳香族化合物1モルに対して、ジケトン化合物0.01モル超が好ましく、0.03モル以上がより好ましく、0.05モル以上が更に好ましい。一方、上限としては、ジハロゲン化芳香族化合物1モルに対して、ジケトン化合物5.0モル以下が好ましく、2.0モル以下がより好ましく。1.0モル以下が更に好ましく、0.8モル以下が殊更に好ましい。なお、ジハロゲン化芳香族化合物はポリアリーレンスルフィドプレポリマー合成時の使用量であり、ジケトン化合物はポリアリーレンスルフィド共重合体合成時の使用量である。
(9−B)ポリアリーレンスルフィドプレポリマーとジケトンプレポリマーの反応1
本方法では、末端にチオラート基を有し、かつ重量平均分子量が1000以上13000以下のポリアリーレンスルフィドプレポリマーを合成し、引き続き、スルフィド化剤に対してジケトン化合物を過剰に用いて別途合成したジケトンプレポリマーを添加することにより、ポリアリーレンスルフィド共重合体を合成することが好ましい。
また、ポリアリーレンスルフィドプレポリマーを合成する際のスルフィド化剤とジケトンプレポリマーを合成する際のスルフィド化剤の仕込み量(モル)の和に対する、ポリアリーレンスルフィドプレポリマーを合成する際のジハロゲン化芳香族化合物とジケトンプレポリマーを合成する際に用いるジケトン化合物の仕込み量(モル)の和の比が0.5以上1.5以下が好ましく、0.8以上1.2以下がより好ましく、0.9以上1.1以下が更に好ましく、0.95以上1.05以下が殊更に好ましい。このようにすることで、ポリアリーレンスルフィドプレポリマーの末端に存在するチオラート基と、ジケトンプレポリマーの末端に存在するハロゲノ基の反応がスムーズに進行し、生成するポリアリーレンスルフィド共重合体の分子量が向上する傾向にある。
また、ポリアリーレンスルフィドプレポリマーとジケトンプレポリマーを反応させるための添加方法は、特に限定されず、公知の方法も採用できる。例えば、予め合成したそれぞれ反応液を常温で混合しさらに加熱する方法や、予め合成した加熱状態のポリアリーレンスルフィドプレポリマーに常温のジケトンプレポリマー反応液を添加してさらに加熱する方法、予め合成した加熱状態のポリアリーレンスルフィドプレポリマーに加熱状態のジケトンプレポリマー反応液、あるいは有機極性溶媒で希釈したジケトンプレポリマー反応液を添加してさらに加熱する方法などが例示できる。
本製造方法では、ジケトンプレポリマー合成由来のジケトン化合物の転化率が70%以上まで反応させることが好ましく、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上まで反応させることが好ましい。また、ポリアリーレンスルフィドプレポリマーおよびジケトンプレポリマー合成由来のスルフィド化剤の転化率は、70%以上まで反応させることが好ましく、80%以上まで反応させることがより好ましく、90%以上まで反応させることが更に好ましい。ポリアリーレンスルフィドプレポリマー合成由来のジハロゲン化芳香族化合物の転化率は、70%以上まで反応させることが好ましく、80%以上まで反応させることがより好ましく、90%以上まで反応させることが更に好ましい。
このような状態では、反応が効率的に進行しやすく、ポリアリーレンスルフィド共重合体の分子量や熱特性が向上しやすい傾向にある。
なお、ジケトン化合物の転化率は、以下の式で算出した値である。ジケトン化合物の残存量は、通常ガスクロマトグラフ法、あるいは液体クロマトグラフィーにより求めることができる。
転化率(%)=[ジケトンプレポリマー合成段階でのジケトン化合物の仕込み量(モル)−ジケトン化合物の残存量(モル)]/[ジケトンプレポリマー合成段階でのジケトン化合物の仕込み量(モル)]×100
本製造方法におけるジケトンプレポリマー合成段階でのジケトン化合物とポリアリーレンスルフィドプレポリマー合成段階でのジハロゲン化芳香族化合物の使用量の比は、ポリアリーレンスルフィド共重合体の熱特性を向上させつつ、適切な融点に制御して成形加工性を確保するとの観点から、ジハロゲン化芳香族化合物1モルに対して、ジケトン化合物0.01モル超が好ましく、0.03モル以上がより好ましく、0.05モル以上が更に好ましい。一方、上限としては、ジハロゲン化芳香族化合物1モルに対して、ジケトン化合物5.0モル以下が好ましく、2.0モル以下がより好ましく。1.0モル以下が更に好ましく、0.8モル以下が殊更に好ましい。
その他の好ましい様態については、前記(9−A)に準ずる。
(9−C)ポリアリーレンスルフィドプレポリマーとジケトンプレポリマーの反応2
本方法では、スルフィド化剤1モルあたり1モル超のジハロゲン化芳香族化合物を用いて、末端にハロゲノ基を有し、かつ重量平均分子量が1000以上13000以下のポリアリーレンスルフィドプレポリマーを合成し、引き続き、スルフィド化剤1モルあたり1モル未満のジケトン化合物を用いて別途合成したジケトンプレポリマーを添加することにより、ポリアリーレンスルフィド共重合体を合成することが好ましい。
また、ポリアリーレンスルフィドプレポリマーを合成する際のスルフィド化剤とジケトンプレポリマーを合成する際のスルフィド化剤の仕込み量(モル)の和に対する、ポリアリーレンスルフィドプレポリマーを合成する際のジハロゲン化芳香族化合物とジケトンプレポリマーを合成する際に用いるジケトン化合物の仕込み量(モル)の和の比が0.5以上1.5以下が好ましく、0.8以上1.2以下がより好ましく、0.9以上1.1以下が更に好ましく、0.95以上1.05以下が殊更に好ましい。このようにすることで、ポリアリーレンスルフィドプレポリマーの末端に存在するハロゲノ基と、ジケトンプレポリマーの末端に存在するチオラート基の反応がスムーズに進行し、生成するポリアリーレンスルフィド共重合体の分子量が向上する傾向にある。
その他の好ましい様態については、前記(9−A)に準ずる。
(10)ポリアリーレンスルフィド共重合体の回収方法
本発明のポリアリーレンスルフィド共重合体の製造においては、前記した反応により得られた反応混合物からポリアリーレンスルフィド共重合体を分離回収することも可能である。反応により得られた反応混合物にはポリアリーレンスルフィド共重合体および有機極性溶媒が含まれ、その他成分として未反応のスルフィド化剤、ジハロゲン化芳香族化合物、ジケトン化合物や水、副生塩などが含まれる場合もある。
反応混合物からポリアリーレンスルフィド共重合体を回収する方法に特に制限は無く、例えば必要に応じて有機極性溶媒の一部もしくは大部分を蒸留等の操作により除去した後に、ポリアリーレンスルフィド共重合体に対する溶解性が低く且つ有機極性溶媒と混和し、好ましくは副生塩に対して溶解性を有する溶剤と必要に応じて加熱下で接触させて、ポリアリーレンスルフィド共重合体を回収する方法が例示できる。このような溶剤による処理を行うことで、ポリアリーレンスルフィド共重合体の混合固体に含有される有機極性溶媒や副生塩の量を低減することが可能である。
上記のような特性を有する溶剤は一般に比較的極性の高い溶剤であり、用いた有機極性溶媒や副生塩の種類により好ましい溶剤は異なるので限定はできないが、例えば水や、アルコール類、ケトン類、酢酸エステル類が例示でき、入手性、経済性の観点から水、メタノール及びアセトンが好ましく、水が特に好ましい。
ここで、溶剤として水を用いる場合、水は蒸留水あるいは脱イオン水であることが好ましいが、必要に応じて酢酸、プロピオン酸などの有機酸性化合物及びそのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、硫酸、塩酸などの無機酸性化合物およびアンモニウムイオンなどを含む水溶液を用いることも可能である。
この処理によりポリアリーレンスルフィド共重合体は固形成分として析出するので、公知の固液分離法を用いてポリアリーレンスルフィド共重合体を回収することが可能である。固液分離方法としては、たとえば濾過による分離、遠心分離、デカンテーション等を例示できる。なお、これら一連の処理は必要に応じて数回繰り返すことも可能であり、これによりポリアリーレンスルフィド共重合体の混合固体に含有される有機極性溶媒や副生塩の量がさらに低減される傾向にある。
この処理後に得られたポリアリーレンスルフィド共重合体の混合固体が処理に用いた溶剤を含有する場合には必要に応じて乾燥などを行い、溶剤を除去することも可能である。ここで溶剤の除去は、少なくとも50重量%以上、好ましくは70重量%以上、更に好ましくは90重量%以上、よりいっそう好ましくは95重量%以上の溶剤を除去することが望ましい。加熱による溶剤の除去を行う際の温度は用いる溶剤の特性に依存するため一意的には限定できないが、通常、20〜150℃、好ましくは40〜120℃の範囲が選択できる。また、溶剤の除去を行う圧力は常圧以下が好ましく、これにより溶剤の除去をより低温で行うことが可能になる。
(11)ポリアリーレンスルフィド共重合体の用途
このようにして得られたポリアリーレンスルフィド共重合体は、滞留安定性や工業的生産性にも優れる傾向にあり、また、ポリアリーレンスルフィドよりも耐熱性が向上する傾向が強く、例えば示差走査熱量計により求められるガラス転移温度(Tg)は95℃超になる傾向が強く、100℃以上になる傾向がより強く、103℃以上になる傾向が更に強い。また、示差走査熱量計により求められる融点(Tm)は280℃以上になる傾向が強く、285℃以上になる傾向がより強く、289℃以上になる傾向が更に強く、295℃以上になる傾向が殊更に強い。
本発明で得られるポリアリーレンスルフィド共重合体は、耐熱性、耐薬品性、難燃性、電気的性質並びに機械的性質に優れ、射出成形、射出圧縮成形、ブロー成形用途のみならず、押出成形により、シート、フィルム、繊維及びパイプなどの押出成形品に成形することができる。この際、ポリアリーレンスルフィド共重合体を単独で用いてもよいし、所望に応じて、ガラス繊維、炭素繊維、酸化チタン、炭酸カルシウムなどの無機充填剤、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、着色剤などを添加することもでき、樹脂を配合することもできる。
またその用途としては、電気・電子部品、家庭・事務電気製品部品、光学機器・精密機械関連部品、水廻り部品、自動車・車両関連部品、その他産業用途が例示できる。
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。これら例は例示的なものであって限定的なものではない。
[ジハロゲン化芳香族化合物の転化率測定]
ジハロゲン化芳香族化合物の転化率はガスクロマトグラフィー(GC)分析により定量分析を行なった。GCの測定条件を以下に示す。
装置:島津製作所製 GC−2010
カラム:アジレントテクノロジー社製 DB−5 0.32mm×30m(0.25μm)
キャリアーガス:ヘリウム
検出器:水素炎イオン化検出器(FID)
[スルフィド化剤の転化率測定]
スルフィド化剤の転化率は、イオンクロマトグラフィー(IC)による定量分析を行って算出した。
装置:島津製作所製 HIC−20Asuper
カラム:島津製作所製 Shim−packIC−SA2(250mm×4.6mmID)
検出器:電気伝導度検出器(サプレッサ)
溶離液:4.0mM炭酸水素ナトリウム/1.0mM炭酸ナトリウム水溶液
流速:1.0ml/分
注入量:50マイクロリットル
カラム温度:30℃
試料中に過酸化水素水を添加して試料中に含まれる硫化物イオンの酸化を行った後に上記分析により硫酸イオンとして定量した。ここで算出した硫化物イオン量を未反応のスルフィド化剤量とし、仕込んだスルフィド化剤量との割合から、スルフィド化剤の転化率を算出した。なお、計算式は以下の通りである。
転化率(%)=[スルフィド化剤の仕込み量(モル)−スルフィド化剤の残存量(モル)]/[スルフィド化剤の仕込み量(モル)]×100
[分子量測定]
ポリアリーレンスルフィドプレポリマー、およびポリアリーレンスルフィド共重合体の分子量と分子量分布はサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)の一種であるゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、ポリスチレン換算で算出した。GPCの測定条件を以下に示す。
装置:センシュー科学 SSC−7100
カラム名:Shodex UT−806M
溶離液:1−クロロナフタレン
検出器:示差屈折率検出器
カラム温度:210℃
プレ恒温槽温度:250℃
ポンプ恒温槽温度:50℃
検出器温度:210℃
流量:1.0mL/min
試料注入量:300μL (スラリー状:約0.1重量%)。
[非晶フィルムの作成]
非晶フィルムの作製条件を以下に示す。
ポリイミドフィルムに試料とスペーサー(約0.3mmのアルミ板)を挟んだ。ポリイミドフィルムごと試料の融点以上に加熱したプレスの金型に挟み、1分間加圧を行った。1分間加圧し試料を滞留させた後、ポリイミドフィルムごと取り出し、用意した水へ漬けて急冷することで非晶フィルムを得た。
[ガラス転移温度及び融点の測定]
前記の方法で作成した非晶フィルム(厚み:0.3mm)を用いて、示差走査熱量計(DSC)により、ガラス転移点、及び融点を測定した。
装置:TAインスツルメンツ社製Q20
測定雰囲気:窒素気流下
試料仕込み重量:10mg
DSCでガラス転移点を測定する場合は以下の条件で行った。
・前記方法で得られた非晶フィルムを、20℃/分の速度で50℃から380℃まで昇温した。その際に検出されるベースラインシフトの変曲点をガラス転移点とした。
DSCで融点を測定する場合は以下の条件で行った。
・前記方法で得られたプレス非晶フィルムを、20℃/分の速度で50℃から380℃まで昇温した。その後、380℃で1分保持し、20℃/分の速度で100℃まで降温した。その後、100℃で1分保持し、20℃/分の速度で100℃から380℃まで昇温した。その際に検出される融解ピーク温度の値を融点とした。
[実施例1]
ここでは、PASプレポリマーとして重量平均分子量が9,500のPPSを合成し、ジケトン化合物と反応して、ポリアリーレンスルフィド共重合体としてポリフェニレンスルフィド共重合体を合成した例を示す。
<PPSプレポリマー合成工程>
撹拌機を具備した1リットルオートクレーブに、水硫化ナトリウムの48重量%水溶液を58.40g(水硫化ナトリウムとして0.50モル)、水酸化ナトリウムの48重量%水溶液を43.10g(水酸化ナトリウムとして0.52モル)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)を81.78g仕込んだ。常圧で窒素を通じながら240℃まで約3時間かけて徐々に加熱し、水51gおよびNMP1gを留出した時点で加熱を終え冷却を開始した。また、硫化水素の飛散量は0.0075モルであったため、本工程後の系内のスルフィド化剤は0.49モルであった。
その後、200℃以下まで冷却し、p−ジクロロベンゼン(p−DCB)を68.78g(0.47モル)、NMPを170g加えた後に反応容器を窒素ガス下に密封し、400rpmで撹拌しながら1℃/分の速度で230℃まで昇温し、230℃で4時間反応した。なお、この時のp−DCBと水硫化ナトリウムのモル比は、p−DCB/水硫化ナトリウム=95/100であり、NMPの量は、イオウ成分1モル当たり0.5リットルであった。
<ポリフェニレンスルフィド共重合体合成工程>
PPSプレポリマー合成工程に引き続き、1,4−ビス(4−クロロベンゾイル)ベンゼン(1,4−BCBB)8.74g(0.025モル)をNMP165gに溶解させたものを230℃に保持したオートクレーブ内に圧入した。その後、230℃で30分間反応させた。なおこの時、1,4−BCBBと前記工程で用いたp−DCBと水硫化ナトリウムのモル比は、1,4−BCBB/p−DCB/水硫化ナトリウム=5/95/100であり、NMPの量は、イオウ成分1モル当たり0.83リットルであった。
反応終了後、内温を室温近傍まで冷却してから内容物を回収した。
<回収工程>
得られた内容物100gを約300gの0.5wt%酢酸水溶液で希釈したのちに平均目開き10〜16マイクロメートルのガラスフィルターで濾過した。フィルターオン成分を約100gのイオン交換水に分散させ、70℃で15分攪拌し、再度前記同様の濾過を行う操作を計3回行い、固体を得た。これを100℃で一晩真空乾燥し、乾燥固体を得た。
分析の結果、赤外分光分析における吸収スペクトルより、ケトン基、およびフェニレンスルフィド骨格に基づくピークが観測され、これは目的のポリフェニレンスルフィド共重合体であることを確認した。また、得られたポリフェニレンスルフィド共重合体の重量平均分子量は22,000、ガラス転移点は103℃、融点は289℃であった。本発明の方法によることで、熱特性が向上したポリマーが得られることがわかった。
[参考例1]
ここでは、実施例1の方法にてPPSプレポリマーを合成し、その評価を行った例について記載する。
前記実施例1のPPSプレポリマー合成工程と同様の方法にて230℃で4時間反応を行った後、内温を室温近傍まで冷却し、内容物を回収した。得られた内容物をGCにより分析した結果、p−DCBの転化率は98%、水硫化ナトリウムの転化率は95%であった。
前記実施例1の回収工程と同様の方法にて固体を回収した。分析の結果、赤外分光分析における吸収スペクトルより、これはPPSであることがわかった。また、重量平均分子量は9,500、分子量分布は2.7であった。
[実施例2]
ここでは、PPSプレポリマー(PPS単位)の重量平均分子量が2,000でポリフェニレンスルフィド共重合体を合成した例を示す。
<PPSプレポリマー合成工程>
p−DCBを57.92g(0.39モル)用いた以外は、実施例1のPPSプレポリマー合成工程と同様の方法にてPPSプレポリマーを合成した。なお、この時のp−DCBと水硫化ナトリウムのモル比は、p−DCB/水硫化ナトリウム=80/100であった。
<ポリフェニレンスルフィド共重合体合成工程>
1,4−BCBBを34.99g(0.20モル)用いた以外は、実施例1のポリフェニレンスルフィド共重合体合成工程と同様の方法にてポリフェニレンスルフィド共重合体を合成した。なおこの時、1,4−BCBBと前記工程で用いたp−DCBと水硫化ナトリウムのモル比は、1,4−BCBB/p−DCB/水硫化ナトリウム=20/80/100であった。
<回収工程>
実施例1と同様の方法にてポリフェニレンスルフィド共重合体を回収した。分析の結果、赤外分光分析における吸収スペクトルより、ケトン基、およびフェニレンスルフィド骨格に基づくピークが観測され、これは目的のポリフェニレンスルフィド共重合体であることを確認した。また、得られたポリフェニレンスルフィド共重合体の重量平均分子量は16,000、ガラス転移点は121℃、融点は345℃であった。
PPSプレポリマー(PPS単位)の重量平均分子量を制御し、ジケトン化合物の導入量を増加させることで、熱特性がさらに向上することがわかった。
[参考例2]
ここでは、実施例2の方法にてPPSプレポリマーを合成し、その評価を行った例について記載する。
前記実施例2のPPSプレポリマー合成工程と同様の方法にて230℃で4時間反応を行った後、内温を室温近傍まで冷却し、内容物を回収した。得られた内容物をGCにより分析した結果、p−DCBの転化率は99%、水硫化ナトリウムの転化率は80%であった。
前記実施例1の回収工程と同様の方法にて固体を回収した。分析の結果、赤外分光分析における吸収スペクトルより、これはPPSであることがわかった。また、重量平均分子量は2,000、分子量分布は1.6であった。
[比較例1]
ここでは、一般的なPPSを合成した例を示す。
撹拌機付きの70リットルオートクレーブに、47.5%水硫化ナトリウム8267.37g(70.00モル)、96%水酸化ナトリウム2957.21g(70.97モル)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)11434.50g(115.50モル)、酢酸ナトリウム2583.00g(31.50モル)、及びイオン交換水10500gを仕込み、常圧で窒素を通じながら245℃まで約3時間かけて徐々に加熱し、水14780.1gおよびNMP280gを留出した後、反応容器を160℃に冷却した。仕込みアルカリ金属硫化物1モル当たりの系内残存水分量は、NMPの加水分解に消費された水分を含めて1.06モルであった。また、硫化水素の飛散量は、仕込みアルカリ金属硫化物1モル当たり0.02モルであった。
次にp−ジクロロベンゼン10235.46g(69.63モル)、NMP9009.00g(91.00モル)を加え、反応容器を窒素ガス下に密封し、240rpmで撹拌しながら、0.6℃/分の速度で238℃まで昇温した。238℃で95分反応を行った後、0.8℃/分の速度で270℃まで昇温した。270℃で100分反応を行った後、1260g(70モル)の水を15分かけて圧入しながら250℃まで1.3℃/分の速度で冷却した。その後200℃まで1.0℃/分の速度で冷却してから、室温近傍まで急冷した。
内容物を取り出し、26300gのNMPで希釈後、溶剤と固形物をふるい(80mesh)で濾別し、得られた粒子を31900gのNMPで洗浄、濾別した。これを、56000gのイオン交換水で数回洗浄、濾別した後、0.05重量%酢酸水溶液70000gで洗浄、濾別した。70000gのイオン交換水で洗浄、濾別した後、得られた含水PPS粒子を80℃で熱風乾燥し、120℃で減圧乾燥した。得られたPPSのガラス転移点は90℃、融点は278℃であった。
[比較例2]
ここでは、PPSプレポリマー(PPS単位)の重量平均分子量が15,000でポリフェニレンスルフィド共重合体を合成した例を示す。
<PPSプレポリマー合成工程>
p−DCBを71.68g(0.49モル)用いた以外は、実施例1のPPSプレポリマー合成工程と同様の方法にてPPSプレポリマーを合成した。なお、この時のp−DCBと水硫化ナトリウムのモル比は、p−DCB/水硫化ナトリウム=99/100であった。
<ポリアリーレンスルフィド共重合体合成工程>
1,4−BCBBを1.75g(0.0049モル)用いた以外は、実施例1のポリフェニレンスルフィド共重合体合成工程と同様の方法にてポリフェニレンスルフィド共重合体を合成した。なおこの時、1,4−BCBBと前記工程で用いたp−DCBと水硫化ナトリウムのモル比は、1,4−BCBB/p−DCB/水硫化ナトリウム=1/99/100であった。
<回収工程>
実施例1と同様の方法にてポリフェニレンスルフィド共重合体を回収した。分析の結果、赤外分光分析における吸収スペクトルより、ケトン基、およびフェニレンスルフィド骨格に基づくピークが観測され、これは目的のポリフェニレンスルフィド共重合体であることを確認した。また、得られたポリフェニレンスルフィド共重合体の重量平均分子量は22,000、ガラス転移点は92℃、融点は278℃であった。
本比較例の方法では、PPSと同程度の熱特性しか発現しないことがわかった。
[参考例3]
ここでは、比較例2の方法にてPPSプレポリマーを合成し、その評価を行った例について記載する。
前記比較例2のPPSプレポリマー合成工程と同様の方法にて230℃で4時間反応を行った後、内温を室温近傍まで冷却し、内容物を回収した。得られた内容物をGCにより分析した結果、p−DCBの転化率は95%、水硫化ナトリウムの転化率は95%であった。
前記実施例1の回収工程と同様の方法にて固体を回収した。分析の結果、赤外分光分析における吸収スペクトルより、これはPPSであることがわかった。また、重量平均分子量は15,000、分子量分布は3.0であった。
[比較例3]
ここでは、1,4−BCBBの代わりに、4、4‘−ジクロロベンゾフェノン(DCBP)を用いて、ポリアリーレンスルフィド共重合体を合成した例を示す。
<PPSプレポリマー合成工程>
実施例1のPPSプレポリマー合成工程と同様の方法にてPPSプレポリマーを合成した。
<ポリフェニレンスルフィド共重合体合成工程>
1,4−BCBBの代わりに、DCBPを6.19g(0.025モル)用いた以外は、実施例1のポリフェニレンスルフィド共重合体合成工程と同様の方法にてポリフェニレンスルフィド共重合体を合成した。なおこの時、DCBPと前記工程で用いたp−DCBと水硫化ナトリウムのモル比は、DCBP/p−DCB/水硫化ナトリウム=5/95/100であった。
<回収工程>
実施例1と同様の方法にてポリフェニレンスルフィド共重合体を回収した。分析の結果、赤外分光分析における吸収スペクトルより、ケトン基、およびフェニレンスルフィド骨格に基づくピークが観測され、これは目的のポリフェニレンスルフィド共重合体であることを確認した。また、得られたポリフェニレンスルフィド共重合体の重量平均分子量は22,000、ガラス転移点は95℃、融点は283℃であった。
本比較例のようにDCBPを用いた場合、PPSと比較して若干の熱特性向上が見られるものの、同等条件で1,4−BCBBを用いた場合と比較して、熱特性向上効果は小さいことがわかった。

Claims (5)

  1. 下記式(A)で表される構造と、重量平均分子量Mwが1000以上13000以下であるポリアリーレンスルフィド単位とを、構造単位として有するポリアリーレンスルフィド共重合体。
    Figure 2021024881
    (R、Rは水素、炭素原子数1〜12のアルキル基、炭素原子数6〜24のアリーレン基、ハロゲン基から選ばれる置換基であり、R、Rは同一でも異なっていてもよい。)
  2. 示差走査熱量測定によるガラス転移点を95℃超に有する請求項1に記載のポリアリーレンスルフィド共重合体。
  3. 下記式(B)で示される構造を、構造単位として有する請求項1または2に記載のポリアリーレンスルフィド共重合体。
    Figure 2021024881
  4. 請求項1から3のいずれかに記載のポリアリーレンスルフィド共重合体の製造方法であって、重量平均分子量Mwが1000以上13000以下であるポリアリーレンスルフィドプレポリマーと、下記式(C)で表される化合物を混合し、さらに加熱するポリアリーレンスルフィド共重合体の製造方法
    Figure 2021024881
    (R、Rは水素、炭素原子数1〜12のアルキル基、炭素原子数6〜24のアリーレン基、ハロゲン基から選ばれる置換基であり、R、Rは同一でも異なっていてもよい。また、Xはハロゲン基である。)
  5. 請求項1から3のいずれかに記載のポリアリーレンスルフィド共重合体の製造方法であって、重量平均分子量Mwが1000以上13000以下であるポリアリーレンスルフィドプレポリマーと、下記式(D)で表されるプレポリマーを混合し、さらに加熱するポリアリーレンスルフィド共重合体の製造方法
    Figure 2021024881
    (R、Rは水素、炭素原子数1〜12のアルキル基、炭素原子数6〜24のアリーレン基、ハロゲン基から選ばれる置換基であり、R、Rは同一でも異なっていてもよい。)
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