JP2018193497A - ポリアリーレンスルフィドの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】溶融時のガス発生量を低減し、非ニュートン指数を向上させたポリアリーレンスルフィドの製造方法を提供する。
【解決手段】下記式(I)で表される環式ポリアリーレンスルフィドを少なくとも50重量%含む(A)ポリアリーレンスルフィドプレポリマーを、(A)ポリアリーレンスルフィドプレポリマー100重量部に対して、分岐構造および/または架橋構造を有し、重量平均分子量が2500を超え40000以下の(B)ポリアリーレンスルフィド2〜100重量部の存在下で200℃以上に加熱するポリアリーレンスルフィドの製造方法。
(Arはアリーレン基を表す。mは4〜20の整数であり、異なるmを有する複数種類の環式ポリアリーレンスルフィドの混合物でもよい。)
【選択図】なし
【解決手段】下記式(I)で表される環式ポリアリーレンスルフィドを少なくとも50重量%含む(A)ポリアリーレンスルフィドプレポリマーを、(A)ポリアリーレンスルフィドプレポリマー100重量部に対して、分岐構造および/または架橋構造を有し、重量平均分子量が2500を超え40000以下の(B)ポリアリーレンスルフィド2〜100重量部の存在下で200℃以上に加熱するポリアリーレンスルフィドの製造方法。
(Arはアリーレン基を表す。mは4〜20の整数であり、異なるmを有する複数種類の環式ポリアリーレンスルフィドの混合物でもよい。)
【選択図】なし
Description
本発明は、成形加工時のガス発生量を低減し、非ニュートン指数を向上させたポリアリーレンスルフィドの製造方法に関するものである。
ポリフェニレンスルフィド(以下、PPSと略する場合もある)に代表されるポリアリーレンスルフィド(以下、PASと略する場合もある)は優れた耐熱性、バリア性、耐薬品性、電気絶縁性、耐湿熱性、難燃性などエンジニアリングプラスチックとして好適な性質を有する樹脂である。また、射出成形、押出成形により各種成形部品、フィルム、シート、繊維等に成形可能であり、各種電気・電子部品、機械部品および自動車部品など耐熱性、耐薬品性の要求される分野に幅広く用いられている。このPASの具体的な製造方法として、N−メチル−2−ピロリドンなどの有機極性溶媒中で硫化ナトリウムなどのアルカリ金属硫化物とp−ジクロロベンゼンなどのポリハロ芳香族化合物を反応させる方法が提案されており、この方法はPASの工業的製造方法として幅広く利用されている。しかしながら、この製造方法は高温、高圧かつ強アルカリ条件化で反応を行うことが必要であり、さらに、N−メチル−2−ピロリドンのような高価な高沸点極性溶媒を必要とし、溶媒回収に多大なコストがかかるエネルギー多消費型で、多大なプロセスコストを必要とするといった課題を有している。
有機極性溶媒中で行う反応に関係する技術として、分子中に3個以上のハロゲン置換基を有するポリハロ芳香族化合物の存在下で重合させるPAS樹脂の製造方法が開示されている(特許文献1)。
上記のごとき、PASの製造方法の課題を解決するPASの別の製造方法として、環式PASを加熱することによるPASの製造方法が開示されている(特許文献2)。
ここで、特許文献2に関連する公知技術として、官能基を有するスルフィド化合物の共存下で環式PASを加熱してPASを得る方法(特許文献3)および、溶液重合法で得られるPASと特許文献2で得られるPASとを混合する方法(特許文献4)が開示されている。また、酸化性雰囲気下で環式PASを溶融重合することで分岐型のPASを製造する方法も開示されている。(特許文献5)。
PASは溶融粘度のせん断速度依存性を示す非ニュートン指数が低いという特徴があり、溶融粘度が低いPASを射出成形した場合溶融した樹脂が金型の隙間から流れ出てバリが発生しやすくなり、しばしば成形後の製品からバリを除去する工程が必要となる問題があった。特許文献1の方法ではPASの代表的な製造方法であるNMPなどの有機極性溶媒中での反応に分子中に3個以上のハロゲン置換基を有するポリハロ芳香族化合物を添加することで高分子に分岐構造または架橋構造を形成せしめ、バリの抑制を図る方法が開示されている。しかし、この方法は成形時のガスの発生量が多いという問題があった。一方、特許文献2で得られるPASは狭い分子量分布であり、かつ高純度、高分子量であり成形加工時の低ガス性や、良流動性による成形加工性の面において利点があるが、非ニュートン指数を向上させる効果はなかった。また、特許文献3および4には高純度PASに反応性を付与する方法が開示されているが、非ニュートン指数の向上という観点からは不十分であった。特許文献5には酸化性雰囲気下で環式PASを溶融重合し、発生ガス量が少なく、非ニュートン指数を向上させた分岐型ポリマーを製造する方法が開示されているが、上記方法では異物となる不溶不融の成分が生じやすく、繊維やフィルム用途には不向きであった。
本発明は、溶融時のガス発生量を低減し、非ニュートン指数を向上させたポリアリーレンスルフィドの製造方法を提供するものである。
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の製造方法を提供することで実現することが可能である。
1.下記式(I)で表される環式ポリアリーレンスルフィドを少なくとも50重量%含む(A)ポリアリーレンスルフィドプレポリマーを、(A)ポリアリーレンスルフィドプレポリマー100重量部に対して、分岐構造および/または架橋構造を有し、重量平均分子量が2500を超え40000以下の(B)ポリアリーレンスルフィド2〜100重量部の存在下で200℃以上に加熱するポリアリーレンスルフィドの製造方法。
1.下記式(I)で表される環式ポリアリーレンスルフィドを少なくとも50重量%含む(A)ポリアリーレンスルフィドプレポリマーを、(A)ポリアリーレンスルフィドプレポリマー100重量部に対して、分岐構造および/または架橋構造を有し、重量平均分子量が2500を超え40000以下の(B)ポリアリーレンスルフィド2〜100重量部の存在下で200℃以上に加熱するポリアリーレンスルフィドの製造方法。
(Arはアリーレン基を表す。mは4〜20の整数であり、異なるmを有する複数種類の環式ポリアリーレンスルフィドの混合物でもよい。)
2.有機極性溶媒中、200℃以上280℃以下の温度範囲でスルフィド化剤、ジハロゲン化芳香族化合物および分子中に3個以上のハロゲン置換基を有するポリハロ芳香族化合物の存在下に重合する方法で分岐構造および/または架橋構造を有する前記(B)ポリアリーレンスルフィドを得、次いで前記(B)ポリアリーレンスルフィド存在下で前記(A)ポリアリーレンスルフィドプレポリマーを加熱する1記載のポリアリーレンスルフィドの製造方法。
3.有機極性溶媒中、200℃以上280℃以下の温度範囲でスルフィド化剤、ジハロゲン化芳香族化合物を重合し、次いで酸素存在下160℃以上の260℃以下の温度範囲で加熱する方法で分岐構造および/または架橋構造を有する(B)ポリアリーレンスルフィドを得、次いで前記(B)ポリアリーレンスルフィド存在下で前記(A)ポリアリーレンスルフィドプレポリマーを加熱する1記載のポリアリーレンスルフィドの製造方法。
4.前記(B)ポリアリーレンスルフィド存在下で前記(A)ポリアリーレンスルフィドプレポリマーを加熱する際に無溶媒条件下で行う1〜3いずれか記載のポリアリーレンスルフィドの製造方法。
5.前記(B)ポリアリーレンスルフィド存在下で前記(A)ポリアリーレンスルフィドプレポリマーを加熱する際に非酸化性雰囲気下および/または減圧下で行う1〜4いずれか記載のポリアリーレンスルフィドの製造方法。
2.有機極性溶媒中、200℃以上280℃以下の温度範囲でスルフィド化剤、ジハロゲン化芳香族化合物および分子中に3個以上のハロゲン置換基を有するポリハロ芳香族化合物の存在下に重合する方法で分岐構造および/または架橋構造を有する前記(B)ポリアリーレンスルフィドを得、次いで前記(B)ポリアリーレンスルフィド存在下で前記(A)ポリアリーレンスルフィドプレポリマーを加熱する1記載のポリアリーレンスルフィドの製造方法。
3.有機極性溶媒中、200℃以上280℃以下の温度範囲でスルフィド化剤、ジハロゲン化芳香族化合物を重合し、次いで酸素存在下160℃以上の260℃以下の温度範囲で加熱する方法で分岐構造および/または架橋構造を有する(B)ポリアリーレンスルフィドを得、次いで前記(B)ポリアリーレンスルフィド存在下で前記(A)ポリアリーレンスルフィドプレポリマーを加熱する1記載のポリアリーレンスルフィドの製造方法。
4.前記(B)ポリアリーレンスルフィド存在下で前記(A)ポリアリーレンスルフィドプレポリマーを加熱する際に無溶媒条件下で行う1〜3いずれか記載のポリアリーレンスルフィドの製造方法。
5.前記(B)ポリアリーレンスルフィド存在下で前記(A)ポリアリーレンスルフィドプレポリマーを加熱する際に非酸化性雰囲気下および/または減圧下で行う1〜4いずれか記載のポリアリーレンスルフィドの製造方法。
本発明によれば、成形加工時のガス発生量を低減し、非ニュートン指数を向上させたポリアリーレンスルフィドの製造方法を提供する。
以下に、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
本発明の製造方法により得られるポリアリーレンスルフィドとは、式−(Ar−S)−の繰り返し単位を主要構成単位とする、好ましくは当該繰り返し単位を80モル%以上含有するホモポリマーまたはコポリマーである。Arとしては下記の式(a)〜式(k)などで表される単位などがあるが、中でも式(a)が特に好ましい。
(R1,R2は水素、炭素原子数1〜12のアルキル基、炭素原子数1〜12のアルコキシ基、炭素数6〜24のアリーレン基、ハロゲン基から選ばれた置換基であり、R1とR2は同一でも異なっていてもよい)
この繰り返し単位を主要構成単位とする限り、非ニュートン指数の向上を目的として下記の式(l)〜式(n)などで表される分岐単位または架橋単位を含むことも本発明における望ましい実施形態の一つである。非ニュートン指数の向上を目的とする場合、これら分岐単位または架橋単位の共重合量の下限は、−(Ar−S)−の単位1モルに対して0.001モル%以上が好ましく、0.01モル%以上がより好ましく、0.1モル%以上がよりいっそう好ましい。分岐単位または架橋単位の共重合量の上限は15モル%以下が好ましく、10モル%以下がより好ましい。分岐単位または架橋単位の共重合量が0.001モル%以上であることで非ニュートン指数の向上効果が得られ、15モル%以下であることで過架橋による不溶不融な異物の生成を抑止できる傾向にあるため好ましい。
この繰り返し単位を主要構成単位とする限り、非ニュートン指数の向上を目的として下記の式(l)〜式(n)などで表される分岐単位または架橋単位を含むことも本発明における望ましい実施形態の一つである。非ニュートン指数の向上を目的とする場合、これら分岐単位または架橋単位の共重合量の下限は、−(Ar−S)−の単位1モルに対して0.001モル%以上が好ましく、0.01モル%以上がより好ましく、0.1モル%以上がよりいっそう好ましい。分岐単位または架橋単位の共重合量の上限は15モル%以下が好ましく、10モル%以下がより好ましい。分岐単位または架橋単位の共重合量が0.001モル%以上であることで非ニュートン指数の向上効果が得られ、15モル%以下であることで過架橋による不溶不融な異物の生成を抑止できる傾向にあるため好ましい。
また、本発明の実施形態におけるポリアリーレンスルフィドは、上記繰り返し単位を含むランダム共重合体、ブロック共重合体及びそれらの混合物のいずれかであってもよい。
これらの代表的なものとして、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンスルフィドスルホン、ポリフェニレンスルフィドケトン、これらのランダム共重合体、ブロック共重合体及びそれらの混合物などが挙げられる。特に好ましいポリアリーレンスルフィドとしては、ポリマーの主要構成単位としてp−フェニレンスルフィド単位
を80モル%以上、特に90モル%以上含有するポリフェニレンスルフィドが挙げられる。
本発明で製造するポリアリーレンスルフィドの好ましい分子量は、重量平均分子量で10,000以上、好ましくは20,000以上、より好ましくは30,000以上、さらに好ましくは40,000以上、よりいっそう好ましくは45,000以上である。重量平均分子量が10,000以上では加工時の成形性が良好で、また成形品の機械強度や耐薬品性などの特性が高くなる。重量平均分子量の上限に特に制限は無いが、1,000,000以下を好ましい範囲として例示でき、より好ましくは500,000以下、さらに好ましくは200,000以下であり、この範囲内では高い成形加工性を得ることができる。
なお、前記重量平均分子量および数平均分子量は例えば示差屈折率検出器を具備したSEC(サイズ排除クロマトグラフィー)を使用して求めることができる。
本発明で製造するポリアリーレンスルフィドは、従来法と異なりその製造方法においてN−メチルピロリドンのような溶媒を必要としないこと、また、公知のラジカル発生能を有する化合物やイオン性化合物などの触媒を使用しないことなどから、加熱加工時のガス発生量が少ない傾向にある。
このガス発生量は、一般的な熱重量分析によって求められる、下記式で表される、加熱した際の重量減少率ΔWrから評価できる。
△Wr=(W1−W2)/W1×100 ・・・(1)
ここで△Wrは重量減少率(%)であり、常圧の非酸化性雰囲気下で50℃から330℃以上の任意の温度まで昇温速度20℃/分で熱重量分析を行った際に、100℃到達時点の試料重量(W1)を基準とした330℃到達時の試料重量(W2)から求められる値である。
△Wr=(W1−W2)/W1×100 ・・・(1)
ここで△Wrは重量減少率(%)であり、常圧の非酸化性雰囲気下で50℃から330℃以上の任意の温度まで昇温速度20℃/分で熱重量分析を行った際に、100℃到達時点の試料重量(W1)を基準とした330℃到達時の試料重量(W2)から求められる値である。
本発明で製造されるポリアリーレンスルフィドは、△Wrが0.18%以下であることが好ましく、0.12%以下であることが好ましく、0.10%以下であることが更に好ましく、0.085%以下であることがよりいっそう好ましい。△Wrが前記範囲にある場合、たとえばPASを成形加工する際の揮発成分発生量(ガス発生量)が少なく、さらに、成形品中に含まれる、揮発成分である低分子量成分量が少ないため、良好な機械強度得られ易く好ましい。また、押出成形時の口金やダイス、また射出成型時の金型への付着物が少ないために、高い生産性が得られ易いため好ましい。
△Wrは一般的な熱重量分析によって求めることが可能である。この分析における雰囲気は常圧の非酸化性雰囲気を用いる。非酸化性雰囲気とは試料が接する気相における酸素濃度が5体積%以下、好ましくは2体積%以下、更に好ましくは酸素を実質的に含有しない雰囲気、即ち窒素、ヘリウム、アルゴン等の不活性ガス雰囲気であることを指す。この中でも特に経済性及び取扱いの容易さの面からは窒素雰囲気が特に好ましい。また、常圧とは大気の標準状態近傍における圧力のことであり、約25℃近傍の温度、絶対圧で101.3kPa近傍の大気圧条件のことである。測定の雰囲気が前記以外では、測定中にPASの酸化等が起きたり、実際にPASの成形加工で用いられる雰囲気と大きく異なるなど、PASの実使用に即した測定になり得ない可能性が生じる。
また、△Wrの測定においては50℃から330℃以上の任意の温度まで昇温速度20℃/分で昇温して熱重量分析を行う。好ましくは50℃で1分間ホールドした後に昇温速度20℃/分で昇温して熱重量分析を行う。この温度範囲はポリフェニレンスルフィドに代表されるPASを実使用する際に頻用される温度領域であり、また、固体状態のPASを溶融させ、その後任意の形状に成形する際に頻用される温度領域でもある。このような実使用温度領域における重量減少率は、実使用時のPASからの揮発成分発生量や成形加工の際の口金や金型などへの付着成分量などに関連する。従って、このような温度範囲における重量減少率が少ないPASの方が品質の高い優れたPASであるといえる。△Wrの測定は約10mg程度の試料量で行うことが望ましく、またサンプルの形状は約2mm以下の細粒状であることが望ましい。
本発明の製造方法によって得られるポリアリーレンスルフィドの非ニュートン指数の下限は1.25以上であることが好ましく、1.30以上であることがより好ましく、1.40以上であることがさらに好ましく、1.50以上であることがよりいっそう好ましい。非ニュートン指数の上限は2.50以下であることが好ましく、2.30以下であることがより好ましく、2.20以下であることがよりいっそう好ましい。非ニュートン指数は溶融粘度のせん断速度依存性を示す値であり、非ニュートン指数が前記下限以上であると射出成形時に金型の隙間に樹脂が流れ込み難く、バリが発生し難い傾向にあるため好ましい。また、非ニュートン指数が前記上限以下であると流動性にすぐれ、金型転写性に優れた樹脂になる傾向にある。非ニュートン指数(N)はキャピログラフを用いて320℃、オリフィス長(L)とオリフィス径(D)の比、L/D=10の条件下で、せん断速度及びせん断応力を測定し、下記式を用いて算出した値である。
SR=K・SSN ・・・(2)
(ここで、Nは非ニュートン指数、SRはせん断速度(S−1)、SSはせん断応力(Pa)、Kは定数を示す。)
本発明の製造方法により得られるポリアリーレンスルフィドは、分岐構造および/または架橋構造がポリマー鎖に均一に導入されているため、通常分岐構造や架橋構造を有するポリアリーレンスルフィドに含まれることの多い不溶不融の成分を含み難い傾向にある。不溶不融の成分の量は溶媒である1−クロロナフタレン中でポリアリーレンスルフィド樹脂を250℃に加熱し、熱時ろ過を行った際にろ剤上に残る残渣量を測り、下記式から求める溶解残渣率によって評価できる。
(ここで、Nは非ニュートン指数、SRはせん断速度(S−1)、SSはせん断応力(Pa)、Kは定数を示す。)
本発明の製造方法により得られるポリアリーレンスルフィドは、分岐構造および/または架橋構造がポリマー鎖に均一に導入されているため、通常分岐構造や架橋構造を有するポリアリーレンスルフィドに含まれることの多い不溶不融の成分を含み難い傾向にある。不溶不融の成分の量は溶媒である1−クロロナフタレン中でポリアリーレンスルフィド樹脂を250℃に加熱し、熱時ろ過を行った際にろ剤上に残る残渣量を測り、下記式から求める溶解残渣率によって評価できる。
[溶解残渣率](重量%)=[残渣重量]/[PAS重量]×100
本発明の製造方法により得られるポリアリーレンスルフィドの溶解残渣率は10.0重量%以下であることが好ましく、6.0重量%以下であることがより好ましく、4.0重量%以下であることがよりいっそう好ましい。ポリアリーレンスルフィド中に含まれる不溶不融の成分は成形時に異物となり、強度低下や表面平滑性の低下を招く恐れがあるため少ないことが好ましいが、通常0.01重量%以下であれば問題とならない。
本発明の製造方法により得られるポリアリーレンスルフィドの溶解残渣率は10.0重量%以下であることが好ましく、6.0重量%以下であることがより好ましく、4.0重量%以下であることがよりいっそう好ましい。ポリアリーレンスルフィド中に含まれる不溶不融の成分は成形時に異物となり、強度低下や表面平滑性の低下を招く恐れがあるため少ないことが好ましいが、通常0.01重量%以下であれば問題とならない。
本発明の製造方法により得られるポリアリーレンスルフィドは、機械物性などの向上を目的とし、本発明の目的を損なわない範囲で各種充填材と複合して使用することもできる。
充填材としては、特に制限されるものではないが、繊維状充填材、無機充填材等が挙げられる。繊維状充填材としては、ガラス繊維、炭素繊維、黒鉛繊維、アラミド繊維、炭化ケイ素繊維、アルミナ繊維、ボロン繊維が挙げられる。この内、比強度及び比弾性率が良好で、軽量化に大きな寄与が認められる炭素繊維や黒鉛繊維が良好なものとして例示できる。また無機充填材としてはタルク、ワラステナイト、ゼオライト、セリサイト、マイカ、カオリン、クレー、パイロフィライト、ベントナイト、アルミナシリケートなどの珪酸塩、酸化珪素、酸化マグネシウム、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化鉄などの金属化合物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ドロマイトなどの炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸バリウムなどの硫酸塩、ガラスビーズ、セラミックビーズ、窒化ホウ素、炭化珪素、燐酸カルシウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムなどの水酸化物、ガラスフレーク、ガラス粉、カーボンブラックおよびシリカ、黒鉛などが挙げられる。
また、成形加工の際に添加材として本発明の目的を損なわない範囲で耐熱安定剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、有機顔料、無機顔料、蛍光増白剤、滑剤、離型剤、難燃剤、抗菌剤、静電剤、核化剤、撥水剤、防カビ剤、消臭剤、ブロッキング防止剤などを添加することができる。
さらに同様に本発明の目的を損なわない範囲で他の熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂およびエラストマーを混合して使用できる。熱可塑性樹脂としては例えばポリエチレン、ポリプロピレン、アクリル樹脂、ポリアミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエステル、ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリカーボネートなどが挙げられる。熱硬化性樹脂としては例えばフェノール樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂などが挙げられる。エラストマーとしては、ポリオレフィン系ゴム、フッ素ゴム、シリコーンゴム等が挙げられる。
<(A)ポリアリーレンスルフィドプレポリマー>
本発明のポリアリーレンスルフィドの製造方法におけるポリアリーレンスルフィドプレポリマーとは、式−(Ar−S)−の繰り返し単位を主要構成単位とし、好ましくは当該繰り返し単位を80モル%以上含有する、前記式(I)で表される環式ポリアリーレンスルフィドを、少なくとも50重量%以上含むものであり、好ましくは70重量%以上、より好ましくは80重量%以上含むものが好ましい。Arとしては前記式(a)〜(k)などで表される単位などがあるが、なかでも式(a)が特に好ましい。なお、本発明において「主要構成単位とする」とは、当該繰り返し単位を全繰り返し単位中50モル%以上含有することを表す。
本発明のポリアリーレンスルフィドの製造方法におけるポリアリーレンスルフィドプレポリマーとは、式−(Ar−S)−の繰り返し単位を主要構成単位とし、好ましくは当該繰り返し単位を80モル%以上含有する、前記式(I)で表される環式ポリアリーレンスルフィドを、少なくとも50重量%以上含むものであり、好ましくは70重量%以上、より好ましくは80重量%以上含むものが好ましい。Arとしては前記式(a)〜(k)などで表される単位などがあるが、なかでも式(a)が特に好ましい。なお、本発明において「主要構成単位とする」とは、当該繰り返し単位を全繰り返し単位中50モル%以上含有することを表す。
なお、ポリアリーレンスルフィドプレポリマー中の前記式(I)の環式ポリアリーレンスルフィドにおいては前記式(a)〜(k)などの繰り返し単位をランダムに含んでもよいし、ブロックで含んでもよく、それらの混合物のいずれかであってもよい。これらの代表的なものとして、環式ポリフェニレンスルフィド、環式ポリフェニレンスルフィドスルホン、環式ポリフェニレンスルフィドケトン、これらが含まれる環式ランダム共重合体、環式ブロック共重合体およびそれらの混合物などが挙げられる。特に好ましい前記式(A)の環式ポリアリーレンスルフィドとしては、主要構成単位として前記式(o)のp−フェニレンスルフィド単位を80モル%以上、特に90モル%以上含有する環式ポリアリーレンスルフィドが挙げられる。
ポリアリーレンスルフィドプレポリマーに含まれる前記式(I)中の繰り返し数mは4〜20である。ここで下限は4以上であり、5以上がより好ましく、6以上がさらに好ましく、7以上がよりいっそう好ましく、8以上がさらにいっそう好ましい。mが小さい環式ポリアリーレンスルフィドは反応性が低い傾向があるため、短時間でポリアリーレンスルフィドが得られるようになるとの観点ではmを前記範囲にすることが好ましい。一方上限は20以下であり、17以下がより好ましく、15以下がさらに好ましい。後述するようにポリアリーレンスルフィドプレポリマーの加熱によるポリアリーレンスルフィドへの重合反応はポリアリーレンスルフィドプレポリマーが融解する温度以上で行うことが好ましいが、mが大きくなるとポリアリーレンスルフィドプレポリマーが融解する温度が高くなる傾向にある。そのため、ポリアリーレンスルフィドプレポリマーのポリアリーレンスルフィドへの重合反応をより低い温度で行うためには、mを前記範囲にすることが好ましい。
また、ポリアリーレンスルフィドプレポリマーに含まれる前記式(I)の環式ポリアリーレンスルフィドは、mが単一の環式ポリアリーレンスルフィド、mが異なる値を有する環式ポリフェニレンスルフィドの混合物のいずれでもよいが、mが異なる値を有する環式ポリアリーレンスルフィドの混合物の方が、mが単一の環式ポリアリーレンスルフィドよりも融解する温度が低い傾向があり、mが異なる値を有する環式ポリアリーレンスルフィドの混合物の使用はポリアリーレンスルフィドへの重合反応を行う際の加熱温度をより低くできるため好ましい。
ポリアリーレンスルフィドプレポリマーにおける前記式(I)の環式ポリアリーレンスルフィド以外の成分は、ポリアリーレンスルフィドオリゴマーであることが特に好ましい。ここでポリアリーレンスルフィドオリゴマーとは、式−(Ar−S)−の繰り返し単位を主要構成単位とする、好ましくは当該繰り返し単位を80モル%以上含有する線状のホモオリゴマーまたはコオリゴマーである。Arとしては前記式(a)〜(k)などで表される単位などがあるが、なかでも式(a)が特に好ましい。また、ポリアリーレンスルフィドオリゴマーは上記繰り返し単位を含むランダム共重合体、ブロック共重合体およびそれらの混合物のいずれかであってもよい。
これらの代表的なものとして、ポリフェニレンスルフィドオリゴマー、ポリフェニレンスルフィドスルホンオリゴマー、ポリフェニレンスルフィドケトンオリゴマー、これらのランダム共重合体、ブロック共重合体およびそれらの混合物などが挙げられる。特に好ましいポリアリーレンスルフィドオリゴマーとしては、ポリマーの主要構成単位としてp−フェニレンスルフィド単位を80モル%以上、特に90モル%以上含有するポリフェニレンスルフィドオリゴマーが挙げられる。
ポリアリーレンスルフィドオリゴマーの分子量としては、ポリアリーレンスルフィドよりも低分子量のものが例示でき、具体的には重量平均分子量で10,000以下であることが好ましい。
ポリアリーレンスルフィドプレポリマーが含有するポリアリーレンスルフィドオリゴマー量は、ポリアリーレンスルフィドプレポリマーが含有する前記式(I)の環式ポリアリーレンスルフィドよりも少ないことが特に好ましい。すなわちポリアリーレンスルフィドプレポリマー中の前記式(I)の環式ポリアリーレンスルフィドとポリアリーレンスルフィドオリゴマーの重量比(前記式(I)の環式ポリアリーレンスルフィド/ポリアリーレンスルフィドオリゴマー)は1を超え、2.3以上が好ましく、4以上がより好ましく、9以上がさらに好ましく、このようなポリアリーレンスルフィドプレポリマーを用いることで重量平均分子量が10,000以上のポリアリーレンスルフィドを容易に得ることが可能である。従って、ポリアリーレンスルフィドプレポリマー中の前記式(I)の環式ポリアリーレンスルフィドとポリアリーレンスルフィドオリゴマーの重量比の値が大きいほど、本発明によって製造されるポリアリーレンスルフィドの重量平均分子量は大きくなる傾向にある。この重量比に特に上限は無いが、該重量比が100を超えるポリアリーレンスルフィドプレポリマーを得るためには、ポリアリーレンスルフィドプレポリマー中のポリアリーレンスルフィドオリゴマー含有量を著しく低減する必要があり、これには多大の労力を要する。本発明の製造方法によれば該重量比が100以下のポリアリーレンスルフィドプレポリマーを用いても、重量平均分子量が10,000以上のポリアリーレンスルフィドを容易に得ることが可能である。
ポリアリーレンスルフィドプレポリマー中の前記式(I)の環式ポリアリーレンスルフィドとポリアリーレンスルフィドオリゴマーの重量比は、HPLCを用いて定量したポリアリーレンスルフィドプレポリマー中の前記式(I)の環式ポリアリーレンスルフィド量から算出することができる。例えばポリアリーレンスルフィドプレポリマーにおける前記式(I)の環式ポリアリーレンスルフィド以外の成分がポリアリーレンスルフィドオリゴマーである場合には、
重量比=前記式(I)の環式ポリアリーレンスルフィド量(%)/(100−前記式(I)の環式ポリアリーレンスルフィド量(%))
と算出できる。
重量比=前記式(I)の環式ポリアリーレンスルフィド量(%)/(100−前記式(I)の環式ポリアリーレンスルフィド量(%))
と算出できる。
本発明のポリアリーレンスルフィドの製造に用いるポリアリーレンスルフィドプレポリマーの分子量の上限値は、重量平均分子量で10,000以下が好ましく、5,000以下が好ましく、3,000以下がさらに好ましく、一方、下限値は重量平均分子量で300以上が好ましく、400以上が好ましく、500以上がさらに好ましい。
<(B)分岐構造および/または架橋構造を有するポリアリーレンスルフィド>
本発明に用いられる(B)ポリアリーレンスルフィドは、分岐構造および/または架橋構造を有し、重量平均分子量が2500を超え40000以下のポリアリーレンスルフィドである。ここで、分岐構造または架橋構造とは、本発明の効果を与える範囲でいかなる構造であってもよいが、式(l)〜式(n)などで表される分岐単位または架橋単位を例示できる。これら分岐単位または架橋単位の共重合量の下限は、−(Ar−S)−の単位1モルに対して0.001モル%以上が好ましく、0.01モル%以上がより好ましい。分岐単位または架橋単位の共重合量の上限は15モル%以下が好ましく、10モル%以下がより好ましい。分岐単位または架橋単位の共重合量が0.001モル%以上であることで非ニュートン指数の向上効果が得られ、15モル%以下であることで過架橋による不溶不融化を防止できる傾向にあるため好ましい。また、導入の方法はいかなる方法であっても良いが、例えば分子中に3個以上のハロゲン置換基を有する分岐・架橋剤を共重合する方法や、重合後のポリアリーレンスルフィドを加熱することで、酸化架橋によって導入する方法が好ましく例示できる。PASは、重合反応により調製することが可能であり、以下PASの重合に関連するスルフィド化剤、有機極性溶媒、ジハロゲン化芳香族化合物、重合助剤、分岐・架橋剤、重合安定剤、脱水工程、重合工程、ポリマー回収、生成PASの順に説明する。
本発明に用いられる(B)ポリアリーレンスルフィドは、分岐構造および/または架橋構造を有し、重量平均分子量が2500を超え40000以下のポリアリーレンスルフィドである。ここで、分岐構造または架橋構造とは、本発明の効果を与える範囲でいかなる構造であってもよいが、式(l)〜式(n)などで表される分岐単位または架橋単位を例示できる。これら分岐単位または架橋単位の共重合量の下限は、−(Ar−S)−の単位1モルに対して0.001モル%以上が好ましく、0.01モル%以上がより好ましい。分岐単位または架橋単位の共重合量の上限は15モル%以下が好ましく、10モル%以下がより好ましい。分岐単位または架橋単位の共重合量が0.001モル%以上であることで非ニュートン指数の向上効果が得られ、15モル%以下であることで過架橋による不溶不融化を防止できる傾向にあるため好ましい。また、導入の方法はいかなる方法であっても良いが、例えば分子中に3個以上のハロゲン置換基を有する分岐・架橋剤を共重合する方法や、重合後のポリアリーレンスルフィドを加熱することで、酸化架橋によって導入する方法が好ましく例示できる。PASは、重合反応により調製することが可能であり、以下PASの重合に関連するスルフィド化剤、有機極性溶媒、ジハロゲン化芳香族化合物、重合助剤、分岐・架橋剤、重合安定剤、脱水工程、重合工程、ポリマー回収、生成PASの順に説明する。
(B−1)スルフィド化剤
スルフィド化剤としては、アルカリ金属硫化物、アルカリ金属水硫化物、および硫化水素が挙げられる。取り扱い性、汎用性などから、アルカリ金属硫化物、アルカリ金属水硫化物、およびそれらの混合物が好ましく用いられる。スルフィド化剤は、水和物または水性混合物として、あるいは無水物の形で用いることができる。アルカリ金属水硫化物とアルカリ金属水酸化物から、反応系においてin situで調製されるスルフィド化剤も用いることができる。
スルフィド化剤としては、アルカリ金属硫化物、アルカリ金属水硫化物、および硫化水素が挙げられる。取り扱い性、汎用性などから、アルカリ金属硫化物、アルカリ金属水硫化物、およびそれらの混合物が好ましく用いられる。スルフィド化剤は、水和物または水性混合物として、あるいは無水物の形で用いることができる。アルカリ金属水硫化物とアルカリ金属水酸化物から、反応系においてin situで調製されるスルフィド化剤も用いることができる。
好ましいスルフィド化剤としては、硫化ナトリウム、水硫化ナトリウムが挙げられ、取り扱い性の観点から水性混合物の状態で用いることが好ましい。
以下の説明において、スルフィド化剤の量は、後述の脱水操作などにより重合反応開始前にスルフィド化剤の一部損失が生じる場合には、仕込み量から当該損失分を差し引いた残存量を意味するものとする。
スルフィド化剤として、アルカリ金属水硫化物を用いる場合には、アルカリ金属水酸化物を同時に使用することが特に好ましい。アルカリ金属水酸化物の使用量はアルカリ金属水硫化物100モルに対し、好ましくは90モル以上120モル以下、より好ましくは95モル以上115モル以下、さらに好ましくは95モル以上110モル以下の範囲が例示できる。使用量をこの範囲にすることで、分解を引き起こすことなく、重合副生物量の少ないPASを得ることができる。
(B−2)有機極性溶媒
重合溶媒として有機極性溶媒を用いる。具体例としては、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドンなどのN−アルキルピロリドン類;N−メチル−ε−カプロラクタムなどのカプロラクタム類;1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ヘキサメチルリン酸トリアミド、ジメチルスルホン、テトラメチレンスルホキシドなどに代表されるアプロチック有機溶媒;およびこれらの混合物などが反応の安定性が高いために好ましく使用される。これらのなかでも、特にN−メチル−2−ピロリドン(NMP)が好ましく用いられる。
重合溶媒として有機極性溶媒を用いる。具体例としては、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドンなどのN−アルキルピロリドン類;N−メチル−ε−カプロラクタムなどのカプロラクタム類;1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ヘキサメチルリン酸トリアミド、ジメチルスルホン、テトラメチレンスルホキシドなどに代表されるアプロチック有機溶媒;およびこれらの混合物などが反応の安定性が高いために好ましく使用される。これらのなかでも、特にN−メチル−2−ピロリドン(NMP)が好ましく用いられる。
PASの重合溶媒として用いる有機極性溶媒の使用量は、特に制限はないが、安定した反応性および経済性の観点から、スルフィド化剤100モル当たり、好ましくは250モル以上550モル以下、より好ましくは250モル以上500モル以下、より好ましくは250モル以上450モル以下の範囲が例示される。
(B−3)ジハロゲン化芳香族化合物
PASを製造する際、原料としてジハロゲン化芳香族化合物を用いる。PASの代表であるPPSを製造する際、ベンゼン環と硫黄がポリマーの主骨格となるため、用いるジハロゲン化芳香族化合物としては、p−ジクロロベンゼン、m−ジクロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、p−ジブロモベンゼンなどのジハロゲン化ベンゼンが挙げられる。
PASを製造する際、原料としてジハロゲン化芳香族化合物を用いる。PASの代表であるPPSを製造する際、ベンゼン環と硫黄がポリマーの主骨格となるため、用いるジハロゲン化芳香族化合物としては、p−ジクロロベンゼン、m−ジクロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、p−ジブロモベンゼンなどのジハロゲン化ベンゼンが挙げられる。
ジハロゲン化芳香族化合物の使用量は、分解を抑制すると共に加工に適した粘度のPASを効率よく得る観点から、スルフィド化剤100モル当たり、好ましくは80モル以上150モル以下、より好ましくは90モル以上130モル以下、さらに好ましくは、95モル以上120モル以下の範囲が例示できる。スルフィド化剤100モル当たり、ジハロゲン化芳香族化合物が80モル以上とすることで、得られるPASの分解を抑制することが出来る。スルフィド化剤100モル当たり、ジハロゲン化芳香族化合物を150モル以下とすることで、得られるPASの分子量が低下し、機械物性や耐薬品性が低下することを抑制することができる。
(B−4)重合助剤
PASを製造する際、重合助剤を用いることも好ましい態様の一つである。重合助剤を用いる目的は、得られるPASを所望の溶融粘度に調整するためである。重合助剤の具体例としては、例えば有機カルボン酸金属塩、水、アルカリ金属塩化物(ただし、塩化ナトリウムは除く)、有機スルホン酸金属塩、硫酸アルカリ金属塩、アルカリ土類金属酸化物、アルカリ金属リン酸塩およびアルカリ土類金属リン酸塩などが挙げられる。これらは単独で用いても2種以上同時に用いても差し障りない。なかでも、有機カルボン酸金属塩および/または水が好ましく用いられる。
PASを製造する際、重合助剤を用いることも好ましい態様の一つである。重合助剤を用いる目的は、得られるPASを所望の溶融粘度に調整するためである。重合助剤の具体例としては、例えば有機カルボン酸金属塩、水、アルカリ金属塩化物(ただし、塩化ナトリウムは除く)、有機スルホン酸金属塩、硫酸アルカリ金属塩、アルカリ土類金属酸化物、アルカリ金属リン酸塩およびアルカリ土類金属リン酸塩などが挙げられる。これらは単独で用いても2種以上同時に用いても差し障りない。なかでも、有機カルボン酸金属塩および/または水が好ましく用いられる。
有機カルボン酸金属塩は、水和物、無水物または水溶液としても用いることができる。具体例としては、酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸マグネシウム、酢酸カルシウム、プロピオン酸ナトリウム、吉草酸リチウム、安息香酸ナトリウム、フェニル酢酸ナトリウム、およびそれらの混合物などが挙げられる。安価でかつ反応系への適度な溶解性を有する酢酸ナトリウムが好ましく用いられる。
重合助剤として上記有機カルボン酸金属塩を用いる場合の使用量は、仕込みスルフィド化剤100モルに対し、1モル以上70モル以下の範囲が好ましく、2モル以上60モル以下の範囲がより好ましく、2モル以上55モル以下の範囲がいっそう好ましい。
重合助剤として有機カルボン酸金属塩を使用する場合、その添加時期には特に制限はなく、後述する脱水工程時、重合開始時、重合途中のいずれの時点で添加してもよく、また複数回に分けて添加してもよい。添加の容易性からすると、脱水工程開始時あるいは重合開始時に、スルフィド化剤と同時に添加することが好ましい。
重合助剤として水を用いる場合、水単独で用いることも可能であるが、有機カルボン酸金属塩を同時に用いることが好ましい。これにより重合助剤としての効果をより高めることができ、より少ない重合助剤の使用量でも短時間で所望の溶融粘度のPASを得ることができる傾向にある。この場合の重合系内の好ましい水分量の範囲は、スルフィド化剤100モルに対し80モル以上300モル以下であり、85モル以上180モル以下がより好ましい。水分量をスルフィド化剤100モルに対し300モル以下とすることで反応器内圧の上昇を抑えることができ、過剰に高い耐圧性能を有した反応器は必要でなくなるため、経済的にも安全性の面でも好ましい。
また、重合後に水を添加することも好ましい様態の一つである。重合後に水を添加した後の重合系内の水分量の好ましい範囲は、スルフィド化剤100モルに対して100〜1500モルであり、150〜1000モルがより好ましい。
(B−5)分岐・架橋剤
PASを製造する際、分岐構造または架橋構造を形成させ、得られるPASを所望の溶融粘度に調整し、非ニュートン指数を向上させるために、トリハロゲン化以上のポリハロゲン化化合物などの分岐・架橋剤を併用することも可能である。ポリハロゲン化合物としてはポリハロゲン化芳香族化合物が好ましく、具体例としては、1,3,5−トリクロロベンゼン、1,2,4−トリクロロベンゼン、1,2,3,4−テトラクロロベンゼン、1,2,3,5−テトラクロロベンゼン、1,2,4,5−テトラクロロベンゼンが挙げられる。
PASを製造する際、分岐構造または架橋構造を形成させ、得られるPASを所望の溶融粘度に調整し、非ニュートン指数を向上させるために、トリハロゲン化以上のポリハロゲン化化合物などの分岐・架橋剤を併用することも可能である。ポリハロゲン化合物としてはポリハロゲン化芳香族化合物が好ましく、具体例としては、1,3,5−トリクロロベンゼン、1,2,4−トリクロロベンゼン、1,2,3,4−テトラクロロベンゼン、1,2,3,5−テトラクロロベンゼン、1,2,4,5−テトラクロロベンゼンが挙げられる。
(B−6)重合安定剤
PASを製造する際、重合反応系を安定化し、副反応を防止するために、重合安定剤を用いることも可能である。重合安定剤は、重合反応系の安定化に寄与し、チオフェノールの生成など望ましくない副反応を抑制する。重合安定剤の具体例としては、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ土類金属水酸化物、およびアルカリ土類金属炭酸塩などの化合物が挙げられる。そのなかでも、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、および水酸化リチウムなどのアルカリ金属水酸化物が好ましい。前述した有機カルボン酸金属塩も重合安定剤として作用する。また、スルフィド化剤としてアルカリ金属水硫化物を用いる場合には、アルカリ金属水酸化物を同時に使用することが特に好ましいことを前述したが、ここでスルフィド化剤に対して過剰となるアルカリ金属水酸化物も重合安定剤となり得る。
PASを製造する際、重合反応系を安定化し、副反応を防止するために、重合安定剤を用いることも可能である。重合安定剤は、重合反応系の安定化に寄与し、チオフェノールの生成など望ましくない副反応を抑制する。重合安定剤の具体例としては、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ土類金属水酸化物、およびアルカリ土類金属炭酸塩などの化合物が挙げられる。そのなかでも、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、および水酸化リチウムなどのアルカリ金属水酸化物が好ましい。前述した有機カルボン酸金属塩も重合安定剤として作用する。また、スルフィド化剤としてアルカリ金属水硫化物を用いる場合には、アルカリ金属水酸化物を同時に使用することが特に好ましいことを前述したが、ここでスルフィド化剤に対して過剰となるアルカリ金属水酸化物も重合安定剤となり得る。
これら重合安定剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。重合安定剤は、重合反応開始前の反応系内のスルフィド化剤100モルに対して、好ましくは1〜20モル、より好ましくは3〜10モルの割合で使用することが望ましい。スルフィド化剤100モルに対して20モル以下とすることでポリマー収率の低下を抑制することができ、経済的にも合理的である。なお、反応時にアルカリ金属硫化物の一部が分解して、硫化水素が発生する場合には、その結果生成したアルカリ金属水酸化物も重合安定剤となり得る。
重合安定剤の添加時期には特に限定はなく、後述する脱水工程時、重合開始時、重合途中のいずれの時点で添加してもよく、また複数回に分けて添加してもよい。
(B−7)脱水工程
PASを製造する際、スルフィド化剤は通常水を含んだ形で使用される。ジハロゲン化芳香族化合物やポリハロゲン化化合物を添加する前に、有機極性溶媒とスルフィド化剤を含む混合物を昇温し、過剰量の水を系外に除去することが好ましい。この工程を脱水工程と呼ぶ。この方法には特に制限はないが、望ましくは不活性ガス雰囲気下、常温〜150℃、好ましくは常温〜100℃の温度範囲で、有機極性溶媒にアルカリ金属水硫化物とアルカリ金属水酸化物を加え、常圧または減圧下、少なくとも150℃以上、好ましくは180℃〜260℃まで昇温し、水分を留去させる方法が挙げられる。この段階で重合助剤を加えてもよい。
PASを製造する際、スルフィド化剤は通常水を含んだ形で使用される。ジハロゲン化芳香族化合物やポリハロゲン化化合物を添加する前に、有機極性溶媒とスルフィド化剤を含む混合物を昇温し、過剰量の水を系外に除去することが好ましい。この工程を脱水工程と呼ぶ。この方法には特に制限はないが、望ましくは不活性ガス雰囲気下、常温〜150℃、好ましくは常温〜100℃の温度範囲で、有機極性溶媒にアルカリ金属水硫化物とアルカリ金属水酸化物を加え、常圧または減圧下、少なくとも150℃以上、好ましくは180℃〜260℃まで昇温し、水分を留去させる方法が挙げられる。この段階で重合助剤を加えてもよい。
脱水工程が終了した段階での系内の水分量は、仕込みスルフィド化剤100モル当たり90〜110モルであることが好ましい。ここで系内の水分量とは脱水工程で仕込まれた水分量から系外に除去された水分量を差し引いた量である。
(B−8)重合工程
PASを製造する際、上記脱水工程で調製した反応物と、ジハロゲン化芳香族化合物やポリハロゲン化化合物を有機極性溶媒中で接触させて重合反応させる重合工程を行う。重合工程開始に際しては、望ましくは不活性ガス雰囲気下、100〜220℃、好ましくは130〜200℃の温度範囲で、ジハロゲン化芳香族化合物やポリハロゲン化化合物を加える。この段階で重合助剤を加えてもよい。これらの原料の仕込み順序は、順不同であってもよく、同時であってもさしつかえない。
PASを製造する際、上記脱水工程で調製した反応物と、ジハロゲン化芳香族化合物やポリハロゲン化化合物を有機極性溶媒中で接触させて重合反応させる重合工程を行う。重合工程開始に際しては、望ましくは不活性ガス雰囲気下、100〜220℃、好ましくは130〜200℃の温度範囲で、ジハロゲン化芳香族化合物やポリハロゲン化化合物を加える。この段階で重合助剤を加えてもよい。これらの原料の仕込み順序は、順不同であってもよく、同時であってもさしつかえない。
重合工程は200℃以上280℃以下の温度範囲で行うことが好ましいが、本発明の効果が得られる限り重合条件に制限はない。例えば、一定速度で昇温した後、245℃以上280℃以下の温度範囲で反応を一定時間継続する方法、200℃以上245℃以下の温度範囲において一定温度で一定時間反応を行った後に245℃以上280℃以下の温度範囲に昇温して反応を一定時間継続する方法、200℃以上245℃以下の温度範囲、中でも230℃以上245℃以下の温度範囲において一定温度で一定時間反応を行った後、245℃以上280℃以下の温度範囲に昇温して短時間で反応を完了させる方法などが挙げられる。なかでも、本発明のPAS樹脂組成物を得るために必要な揮発性成分が少ないPASを得るのに好ましい重合条件としては、有機極性溶媒中で、スルフィド化剤と所定量のジハロゲン化芳香族化合物やポリハロゲン化化合物を200℃以上280℃以下の温度範囲内で反応させてPASを得る際、
<工程1>230℃以上245℃以下の温度範囲内において、昇降温時間を含めた重合時間(T1a)が30分以上3.5時間以内であり、工程終了時点でのジハロゲン化芳香族化合物やポリハロゲン化化合物の転化率が70〜98モル%になるように反応させてPASのプレポリマーを生成させる工程、および
<工程2>245℃以上280℃以下の温度範囲内において、昇降温時間を含めた重合時間(T2)が5分以上1時間以内で前記PASのプレポリマーを反応させてPASを得る工程、
を経る重合条件が挙げられる。
<工程1>230℃以上245℃以下の温度範囲内において、昇降温時間を含めた重合時間(T1a)が30分以上3.5時間以内であり、工程終了時点でのジハロゲン化芳香族化合物やポリハロゲン化化合物の転化率が70〜98モル%になるように反応させてPASのプレポリマーを生成させる工程、および
<工程2>245℃以上280℃以下の温度範囲内において、昇降温時間を含めた重合時間(T2)が5分以上1時間以内で前記PASのプレポリマーを反応させてPASを得る工程、
を経る重合条件が挙げられる。
以下、工程1および工程2について詳述する。
<工程1>揮発性成分が少ないPASを得るには、低い温度でジハロゲン化芳香族化合物やポリハロゲン化化合物の転化率を十分上げた後に工程2を行うことが好ましい。特に、重合温度230℃以上245℃以下では反応速度が一定以上であるため、ジハロゲン化芳香族化合物の転化率が十分に上がり、得られるPASの溶融粘度は射出成形に好適な溶融流動性となりやすい傾向にある。また、230℃以上の温度で反応を行うことで長時間をかけることなくジハロゲン化芳香族化合物の転化率を上げることができる。そのため、工程1においては、比較的反応速度が高い230℃以上245℃以下の温度範囲で30分以上3.5時間以内、好ましくは40分以上3.5時間以内、より好ましくは1時間以上3時間以内、さらに好ましくは1.5時間以上3時間以内反応を行うのがよい。230℃以上245℃以下の温度範囲でジハロゲン化芳香族化合物の転化率を上げるため、230℃以下の温度範囲での重合時間を短時間にする方が生産効率上好ましい。200℃以上230℃以下の温度範囲での重合時間は2時間以内が好ましく、1時間以内がより好ましい時間として例示できる。さらに、工程1を含む200℃以上245℃以下の温度範囲内での昇降温時間を含めた重合時間(T1)は1.5時間以上4時間以内であることが好ましく、1.5時間以上3.5時間以内がより好ましく、2時間以上3.5時間以内がさらに好ましい。T1が1.5時間以上とすることで、後記のジハロゲン化芳香族化合物の転化率が高くなり、工程2において未反応のスルフィド化剤がプレポリマーの分解を引き起こし、得られたPASを加熱溶融させたときの揮発性成分が増大することを抑制することができる。また、T1が4時間以内とすることで生産効率の低下を防ぐことができる。
かかる重合温度範囲内での平均昇温速度は0.1℃/分以上で行うことが望ましい。なお、前記の平均昇温速度とは、ある一定の温度t2(℃)からある一定の温度t1(℃)までの温度区間(ただしt2<t1とする)を昇温するのに要した時間m(分)から、下記式
平均昇温速度(℃/分)=[t1(℃)−t2(℃)]/m(分)
で計算される平均速度である。従って、前述した平均昇温速度の範囲内であれば、必ずしも一定速度である必要はなく、定温区間があってもよいし、多段で昇温を行っても差し障り無く、一時的に負の昇温速度となる区間があっても良い。
平均昇温速度(℃/分)=[t1(℃)−t2(℃)]/m(分)
で計算される平均速度である。従って、前述した平均昇温速度の範囲内であれば、必ずしも一定速度である必要はなく、定温区間があってもよいし、多段で昇温を行っても差し障り無く、一時的に負の昇温速度となる区間があっても良い。
平均昇温速度は2.0℃/分以下がより好ましく1.5℃/分以下がさらに好ましい。平均昇温速度を2.0℃/分以下とすることで反応の制御が容易になる傾向があり、また昇温するために、必要なエネルギーを抑えることができる傾向がある。反応初期に激しい反応が起こる場合には240℃以下である程度反応を行った後に240℃を越える温度に昇温する方法で反応を行う方が好ましい傾向にある。
工程1終了時のジハロゲン化芳香族化合物の転化率が70〜98モル%になるように反応させてPASのプレポリマーを生成させることが好ましく、より好ましくは75モル%以上、さらに好ましくは80モル%以上、いっそう好ましくは90モル%以上になるように反応させることが望ましい。かかる転化率を上げた状態で工程2に移行することで、未反応のスルフィド化剤がプレポリマーの分解を引き起こし、得られたPASを加熱溶融させたときの揮発性成分量の増大を防ぐことができる傾向にある。また、工程1での転化率を98モル%以内とすることで、長い重合時間が必要なくなり、生産効率が良くなる傾向にある。なお、ジハロゲン化芳香族化合物(以下DHAと略す)の転化率は、以下の式で算出した値である。DHA残存量は、通常、ガスクロマトグラフィーによって求めることができる。
(a)ジハロゲン化芳香族化合物をスルフィド化剤に対しモル比で過剰に添加した場合
転化率=[〔DHA仕込み量(モル)−DHA残存量(モル)〕/〔DHA仕込み量(モル)−DHA過剰量(モル)〕]×100%
(b)上記(a)以外の場合
転化率=[〔DHA仕込み量(モル)−DHA残存量(モル)〕/〔DHA仕込み量(モル)〕]×100%。
(a)ジハロゲン化芳香族化合物をスルフィド化剤に対しモル比で過剰に添加した場合
転化率=[〔DHA仕込み量(モル)−DHA残存量(モル)〕/〔DHA仕込み量(モル)−DHA過剰量(モル)〕]×100%
(b)上記(a)以外の場合
転化率=[〔DHA仕込み量(モル)−DHA残存量(モル)〕/〔DHA仕込み量(モル)〕]×100%。
<工程2>工程2の最終温度は275℃以下であることが好ましく、270℃以下がより好ましい。後記するポリマー回収工程においてフラッシュ法を用いる場合、重合物の温度が高いことで重合溶媒の気化熱によって効率的にフラッシュ回収が出来る傾向にある。工程2の最終温度を280℃以下とすることで、得られるPASの過剰な溶融粘度の上昇を抑えることができると共に、反応器内圧の上昇を抑制することができ、過剰に高い耐圧性能を有した反応器は必要でなくなるため経済的にも安全性の面でも好ましい。
工程2の重合時間(T2)は、5分以上1時間以内であることが好ましく、10分以上40分以内であることがより好ましく、10分以上30分以内であることがいっそう好ましい。有機極性溶媒中でスルフィド化剤とジハロゲン化芳香族化合物やポリハロゲン化化合物をアルカリ金属水酸化物存在下で反応させると、NMPなどの有機極性溶媒とアルカリ金属水酸化物とが反応して、アルカリ金属カルボキシレートが生成する副反応が進行する。工程2での重合時間(T2)を1時間以内とすることで、かかる副反応の進行を抑制し、得られたPASを溶融加熱したときに副反応物由来の揮発性成分量を抑制することができる傾向にある。また、重合時間を短くすることで生産効率を向上し、PASの過剰な溶融粘度増大を抑制することができる傾向にある。また、熱によるPASの主鎖分解、それに伴う機械物性の低下も抑制することができる。
なお、工程2での反応は一定温度で行う一段反応、段階的に温度を上げていく多段階反応、あるいは連続的に温度を変化させていく形式の反応のいずれでもかまわない。
また、工程1の重合時間(T1a)と工程2の重合時間(T2)の比(T1a/T2)を0.5以上にすることが好ましい。かかる比が高いほど、工程1での重合時間を十分確保しジハロゲン化芳香族化合物の転化率を高めることができると同時に工程2での重合時間を短時間に抑えることができる。また、工程2のような高温での反応を短時間に抑えることでPASに導入された官能基の熱分解や変性も抑制することができるため、他樹脂との相溶性を発現することができる。そのため、T1a/T2は1以上がより好ましく、2以上がさらに好ましく、5以上がいっそう好ましい。T1a/T2の上限は制限されるものではないが、好ましい溶融流動性を備えたPASを得るうえで、25以下が好ましく、20以下がより好ましい。
また、工程1を含む200℃以上245℃以下の温度範囲での重合時間(T1)と工程2の重合時間(T2)の比(T1/T2)を1.2以上にすることが好ましい。かかる比が高いほど、低い温度での重合時間を十分確保しジハロゲン化芳香族化合物やポリハロゲン化化合物の転化率を高めることができると同時に工程2での重合時間を短時間に抑えることができる。そのため、T1/T2は3以上がより好ましく、5以上がいっそう好ましい。T1/T2の上限は特に制限されるものではないが、好ましい溶融流動性を備えたPASを得るうえで、30以下が好ましく、25以下がより好ましい。
さらに、工程1開始から工程2終了までの全反応時間(T1+T2)を5時間以内にすることが好ましく、4時間以内にすることがさらに好ましく、3.5時間以内にすることがいっそう好ましい。重合時間を短時間に抑えることは生産効率の向上につながるとともに、溶融時の揮発性成分量の抑制や溶融流動性の安定化、PASの機械物性の低下を抑制することに繋がる。
重合の際における雰囲気は非酸化性雰囲気下が望ましく、窒素、ヘリウム、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。特に、経済性および取扱いの容易さの面からは窒素が好ましい。反応圧力については、使用した原料および溶媒の種類や量、あるいは反応温度等に依存し一概に規定できないので、特に制限はない。
本発明において、PASに架橋構造を導入するために、重合工程に(B−5)記載のポリハロゲン化化合物を添加することが出来る。また、2種以上のポリハロゲン化化合物を混合して反応に用いても良い。その反応量は、スルフィド化剤100モルに対し0.01モル以上20モル以下が好ましく、0.05モル以上10モル以下がさらに好ましく、0.1モル以上5モル以下が一層好ましい。ここで、反応量とは、重合工程終了後にサンプリングしたサンプル中に残存するポリハロゲン化化合物をガスクロマトグラフィーにて定量し、仕込量から残存量を差し引いた値のことである。該反応量が多いほどPASへの分岐構造および/または架橋構造の導入量が多いことを意味している。スルフィド化剤100モルに対し反応量を20モル以下とすることで、得られるPASがゲル化することを抑制し、不溶不融の異物が生じることを抑制できる。一方、反応量が0.01モル以上とすることで、得られるPASが低バリ性を発現するために十分な量の分岐構造または架橋構造を導入することができる。
(B−9)ポリマー回収
PASを製造する際、重合工程終了後に、重合工程で得られたPAS成分および溶剤などを含む重合反応物からPASを回収する。回収方法としては、例えばフラッシュ法、すなわち重合反応物を高温高圧(通常250℃以上、0.8MPa以上)の状態から常圧もしくは減圧の雰囲気中へフラッシュさせ、溶媒回収と同時に重合体を粉粒状にして回収する方法や、クエンチ法、すなわち重合反応物を高温高圧の状態から徐々に冷却して反応系内のPAS成分を析出させ、かつ70℃以上、好ましくは100℃以上の状態で濾別することでPAS成分を含む固体を回収する方法等が挙げられる。
PASを製造する際、重合工程終了後に、重合工程で得られたPAS成分および溶剤などを含む重合反応物からPASを回収する。回収方法としては、例えばフラッシュ法、すなわち重合反応物を高温高圧(通常250℃以上、0.8MPa以上)の状態から常圧もしくは減圧の雰囲気中へフラッシュさせ、溶媒回収と同時に重合体を粉粒状にして回収する方法や、クエンチ法、すなわち重合反応物を高温高圧の状態から徐々に冷却して反応系内のPAS成分を析出させ、かつ70℃以上、好ましくは100℃以上の状態で濾別することでPAS成分を含む固体を回収する方法等が挙げられる。
回収方法は、クエンチ法、フラッシュ法いずれかに限定されるものではないが、フラッシュ法は、溶媒回収と同時に固形物の回収が可能であること、回収時間が比較的短いこと、クエンチ法に比較して得られる回収物量が多いことなど、経済的に優れた回収方法であること、および、フラッシュ法にて得られたPASはオリゴマー成分を多く含むため、クエンチ法で得られたPASに比較して、溶融流動性の高いPASを簡便に得やすいことから、フラッシュ法が好ましい回収方法である。
フラッシュ法では、高温高圧状態の重合反応物を常圧の雰囲気中へフラッシュしたときの溶媒の気化熱を利用して効率よく溶媒回収することができる。フラッシュさせるときの重合反応物を高温とすることで溶媒回収の効率が向上し生産性が良くなる。そのためフラッシュさせるときの重合反応物の温度は250℃以上が好ましく、255℃以上がより好ましい。フラッシュさせるときの雰囲気は、窒素または水蒸気などの雰囲気が好ましい。雰囲気の温度は150〜250℃が好ましく、重合反応物からの溶媒回収が不足する場合は、フラッシュ後に150〜250℃の窒素または水蒸気などの雰囲気下で加熱を継続しても良い。
かかるフラッシュ法で得られたPASには重合副生物であるアルカリ金属ハロゲン化物やアルカリ金属有機物などのイオン性不純物が含まれているため、洗浄を行うことが好ましい。洗浄条件としては、かかるイオン性不純物を除去するに足る条件であれば特に限定されるものではない。洗浄液としては例えば水や有機溶媒を用いて洗浄する方法が挙げられる。簡便かつ安価である点、酸やアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩の溶解性が優れている点で、水を用いた洗浄が好ましい方法として例示できる。水、酸または酸の水溶液、あるいはアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩の水溶液のいずれかの液体にPASを浸漬させる処理を1回以上行うことが好ましく、各洗浄処理の間にはポリマーと洗浄液を分離する濾過工程を経ることがより好ましい。
酸または酸の水溶液にPASを浸漬させる場合は、処理後の洗浄液のpHが2〜8であることが好ましい。酸または酸の水溶液とは、有機酸、無機酸または水に有機酸、無機酸等を添加して酸性にしたものである。使用する有機酸、無機酸としては、酢酸、プロピオン酸、塩酸、硫酸、リン酸、蟻酸等が例示できる。酢酸または塩酸が好ましい。
ポリアリーレンスルフィドに導入する官能基として、ヒドロキシル基、カルボン酸基、酸無水物基、シラノール基、スルホン酸基を選択した場合、アルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩の水溶液に浸漬させることで(B)ポリアリーレンスルフィドに上記官能基から誘導されるアニオン種の金属塩を導入することができる。アルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩の水溶液にPASを浸漬させる場合、水溶液中のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩の量はPASに対し、0.01〜15質量%が好ましく、0.1〜10質量%がさらに好ましい。アルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩の水溶液とは、水にアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩等を添加して溶解させたものである。使用するアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩としては、上記有機酸および無機酸のカルシウム塩、カリウム塩、ナトリウム塩、マグネシウム塩等が例示できるが、これらに限定されるものではない。
洗浄液でPASを洗浄する際の温度は80℃以上220℃以下が好ましく、イオン性不純物の少ないPASを得る点において150℃以上200℃以下がより好ましく、さらには180℃以上200℃以下がより好ましい。
洗浄液に使用する水は蒸留水あるいは脱イオン水であることが好ましく、PASと洗浄液の割合は、通常、洗浄液1リットルに対し、PAS10〜500gの範囲が好ましく選択される。
いずれの洗浄液を用いても差し支えないが、酸で処理するとより高い溶融流動性が得られるため、好適な方法として例示できる。
洗浄液は洗浄工程のいずれの段階で使用してもよいが、少量の洗浄液で効率的に洗浄を行うには、フラッシュ法にて回収した固形物を80℃以上220℃以下の熱水に浸漬および濾過する処理を数回行った後、150℃以上の酸または酸の水溶液にPASを浸漬させて処理する方法が好ましい。
かくして得られたPASは、常圧下および/または減圧下で乾燥する。かかる乾燥温度としては、120〜280℃の範囲が好ましい。乾燥雰囲気は、窒素、ヘリウム、減圧下などの不活性雰囲気、酸素、空気などの酸化性雰囲気、空気と窒素の混合雰囲気の何れでも良いが、溶融粘度の関係から不活性雰囲気が好ましい。乾燥時間は、0.5〜50時間が好ましい。
得られたPASに対して、酸化による架橋構造を導入するため、乾式熱処理を行うことも出来る。架橋高分子量化を目的として乾式熱処理を行う場合、その温度は160〜260℃が好ましく、170〜250℃の範囲がより好ましい。また乾式熱処理は、酸素濃度2体積%以上、更に好ましくは8体積%以上の雰囲気下で行うことが望ましい。処理時間は、1〜100時間が好ましく、2〜50時間がより好ましく、3〜25時間が更に好ましい。
加熱処理の装置は通常の熱風乾燥機でもまた回転式あるいは撹拌翼付の加熱装置であってもよいが、効率よくかつより均一に処理する場合は、回転式あるいは撹拌翼付の加熱装置を用いるのがより好ましい。
(B−10)生成PAS
かくして、本発明で好適に用いられる分岐構造および/または架橋構造を有する(B)ポリアリーレンスルフィドが得られる。分岐構造および/または架橋構造を有する(B)ポリアリーレンスルフィドの存在下で、(A)ポリアリーレンスルフィドプレポリマーを加熱して高重合度体に転化することで成形加工時のガス発生量を抑制し、非ニュートン指数を向上させたPASを製造することができる。
かくして、本発明で好適に用いられる分岐構造および/または架橋構造を有する(B)ポリアリーレンスルフィドが得られる。分岐構造および/または架橋構造を有する(B)ポリアリーレンスルフィドの存在下で、(A)ポリアリーレンスルフィドプレポリマーを加熱して高重合度体に転化することで成形加工時のガス発生量を抑制し、非ニュートン指数を向上させたPASを製造することができる。
本発明の実施形態の(B)ポリアリーレンスルフィドの分子量(重量平均分子量)の下限値は、2500を超え、好ましくは3000以上で、より好ましくは3500以上である。また、(B)ポリアリーレンスルフィドの分子量(重量平均分子量)の上限値は、40000以下の範囲が選択され、好ましくは35000以下であり、より好ましくは30000以下である。(B)ポリアリーレンスルフィドの重量平均分子量の下限値を2500を超える値とすることで、後述する(B)ポリアリーレンスルフィドの存在下で(A)ポリアリーレンスルフィドプレポリマーを加熱する際に揮発し難くなり、生成するポリアリーレンスルフィドに分岐構造および/または架橋構造を導入しやすくなる。一方で重量平均分子量の上限値を40000以下とすることで、溶融状態でポリアリーレンスルフィドプレポリマーと容易に混和でき、均一に分岐構造および/または架橋構造を導入したポリアリーレンスルフィド樹脂を得ることができる。なお、前記重量平均分子量は、例えば示差屈折率検出器を具備したSEC(サイズ排除クロマトグラフィー)を使用して求めることができる。
<ポリアリーレンスルフィドプレポリマーの加熱>
本発明では、前記(A)ポリアリーレンスルフィドプレポリマーを前記(B)ポリアリーレンスルフィドの存在下に加熱してポリアリーレンスルフィドを製造する。(B)ポリアリーレンスルフィドの添加量の下限値は(A)ポリアリーレンスルフィドプレポリマー100重量部に対して2重量部以上が選択され、好ましくは5重量部以上である。上限値は(A)ポリアリーレンスルフィドプレポリマー100重量部に対して50重量部が選択され、好ましくは35重量部以下である。添加量が上記の下限値以上であることで得られるPASに射出成形時のバリ低減に十分な量の分岐構造および/または架橋構造を導入することができる。また、(B)ポリアリーレンスルフィドの添加量が多くなることで得られるPASが過度に架橋される傾向にあるが、(B)ポリアリーレンスルフィド添加量を上記範囲とすることで過度な架橋によるゲル化や不溶不融なポリマーの生成を抑制することができる。ここで、加熱の温度は200℃以上が選択され、230℃以上が好ましく、250℃以上がより好ましく、280℃以上がよりいっそう好ましい。加熱温度の上限としては400℃以下が例示でき、好ましくは380℃以下、より好ましくは360℃以下である。加熱温度を200℃以上とすることで容易に前記ポリアリーレンスルフィドプレポリマーを高重合度体に転化することができ、前記ポリアリーレンスルフィドプレポリマーが溶融解する温度以上とすることでより短時間で高重合度体に転化できるため好ましい。なお、ポリアリーレンスルフィドプレポリマーが溶融解する温度は、ポリアリーレンスルフィドプレポリマーの組成や分子量、また、加熱時の環境により変化するため、一意的に示すことはできないが、例えばポリアリーレンスルフィドプレポリマーを示差走査型熱量計で分析することで溶融解温度を把握することが可能である。但し、温度が高すぎるとポリアリーレンスルフィドプレポリマー間、加熱により生成したPAS間、及びPASとポリアリーレンスルフィドプレポリマー間などで好ましくない副反応が生じやすくなる傾向にあり、得られるPASの特性が低下する場合がある。このため、このような好ましくない副反応が顕著に生じる温度は避けることが望ましい。前記加熱を行う時間は使用するポリアリーレンスルフィドプレポリマーにおける環式ポリアリーレンスルフィドの含有率やm数、及び分子量などの各種特性、また、加熱の温度等の条件によって異なるため一様には規定できないが、前記した好ましくない副反応がなるべく起こらないように設定することが好ましい。加熱時間としては0.05〜100時間が例示でき、0.1〜20時間が好ましく、0.1〜10時間がより好ましい。0.05時間以内ではポリアリーレンスルフィドプレポリマーのPASへの転化が不十分になりやすく、100時間を超えると好ましくない副反応による得られるPASの特性への悪影響が顕在化する可能性が高くなる傾向にあるのみならず、経済的にも不利益を生じる場合がある。
本発明では、前記(A)ポリアリーレンスルフィドプレポリマーを前記(B)ポリアリーレンスルフィドの存在下に加熱してポリアリーレンスルフィドを製造する。(B)ポリアリーレンスルフィドの添加量の下限値は(A)ポリアリーレンスルフィドプレポリマー100重量部に対して2重量部以上が選択され、好ましくは5重量部以上である。上限値は(A)ポリアリーレンスルフィドプレポリマー100重量部に対して50重量部が選択され、好ましくは35重量部以下である。添加量が上記の下限値以上であることで得られるPASに射出成形時のバリ低減に十分な量の分岐構造および/または架橋構造を導入することができる。また、(B)ポリアリーレンスルフィドの添加量が多くなることで得られるPASが過度に架橋される傾向にあるが、(B)ポリアリーレンスルフィド添加量を上記範囲とすることで過度な架橋によるゲル化や不溶不融なポリマーの生成を抑制することができる。ここで、加熱の温度は200℃以上が選択され、230℃以上が好ましく、250℃以上がより好ましく、280℃以上がよりいっそう好ましい。加熱温度の上限としては400℃以下が例示でき、好ましくは380℃以下、より好ましくは360℃以下である。加熱温度を200℃以上とすることで容易に前記ポリアリーレンスルフィドプレポリマーを高重合度体に転化することができ、前記ポリアリーレンスルフィドプレポリマーが溶融解する温度以上とすることでより短時間で高重合度体に転化できるため好ましい。なお、ポリアリーレンスルフィドプレポリマーが溶融解する温度は、ポリアリーレンスルフィドプレポリマーの組成や分子量、また、加熱時の環境により変化するため、一意的に示すことはできないが、例えばポリアリーレンスルフィドプレポリマーを示差走査型熱量計で分析することで溶融解温度を把握することが可能である。但し、温度が高すぎるとポリアリーレンスルフィドプレポリマー間、加熱により生成したPAS間、及びPASとポリアリーレンスルフィドプレポリマー間などで好ましくない副反応が生じやすくなる傾向にあり、得られるPASの特性が低下する場合がある。このため、このような好ましくない副反応が顕著に生じる温度は避けることが望ましい。前記加熱を行う時間は使用するポリアリーレンスルフィドプレポリマーにおける環式ポリアリーレンスルフィドの含有率やm数、及び分子量などの各種特性、また、加熱の温度等の条件によって異なるため一様には規定できないが、前記した好ましくない副反応がなるべく起こらないように設定することが好ましい。加熱時間としては0.05〜100時間が例示でき、0.1〜20時間が好ましく、0.1〜10時間がより好ましい。0.05時間以内ではポリアリーレンスルフィドプレポリマーのPASへの転化が不十分になりやすく、100時間を超えると好ましくない副反応による得られるPASの特性への悪影響が顕在化する可能性が高くなる傾向にあるのみならず、経済的にも不利益を生じる場合がある。
ポリアリーレンスルフィドプレポリマーの加熱は、通常溶媒の非存在下で行うが、溶媒の存在下で行うことも可能である。溶媒としては、ポリアリーレンスルフィドプレポリマーの加熱による高重合度体への転化の阻害や生成したPASの分解や著しい架橋など好ましくない副反応を実質的に引き起こさないものであれば特に制限はなく、例えばN−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどの含窒素極性溶媒、ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホンなどのスルホキシド・スルホン系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、アセトフェノンなどのケトン系溶媒、ジメチルエーテル、ジプロピルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒、クロロホルム、塩化メチレン、トリクロロエチレン、2塩化エチレン、ジクロルエタン、テトラクロルエタン、クロルベンゼンなどのハロゲン系溶媒、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、フェノール、クレゾール、ポリエチレングリコールなどのアルコール・フェノール系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒などがあげられる。また、二酸化炭素、窒素、水等の無機化合物を超臨界流体状態として溶媒に用いることも可能である。これらの溶媒は1種類または2種類以上の混合物として使用することができる。
前記、ポリアリーレンスルフィドプレポリマーの加熱は、通常の重合反応装置を用いる方法で行うのはもちろんのこと、成形品を製造する型内で行っても良いし、押出機や溶融混練機を用いて行うなど、加熱機構を具備した装置であれば特に制限無く行うことが可能であり、バッチ方式、連続方式など公知の方法が採用できる。
ポリアリーレンスルフィドプレポリマーの加熱の際の雰囲気は非酸化性雰囲気で行うことが好ましく、さらに減圧条件下で行うことも好ましい。また、減圧条件下で行う場合、反応系内の雰囲気を一度非酸化性雰囲気としてから減圧条件にすることが好ましい。これによりポリアリーレンスルフィドプレポリマー間、加熱により生成したPAS間、及びPASとポリアリーレンスルフィドプレポリマー間などで著しい架橋反応や分解反応等の好ましくない副反応の発生を抑制できる傾向にある。なお、非酸化性雰囲気とはポリアリーレンスルフィドプレポリマーが接する気相における酸素濃度が5体積%以下、好ましくは2体積%以下、更に好ましくは酸素を実質的に含有しない雰囲気、即ち窒素、ヘリウム、アルゴン等の不活性ガス雰囲気であることを指し、この中でも特に経済性及び取扱いの容易さの面からは窒素雰囲気が好ましい。また、減圧条件下とは反応を行う系内が大気圧よりも低いことを指し、上限として50kPa以下が好ましく、20kPa以下がより好ましく、10kPa以下が更に好ましい。下限としては0.1kPa以上が例示できる。減圧条件が好ましい上限を越える場合は、著しい架橋反応など好ましくない副反応が起こりやすくなる傾向にあり、一方好ましい下限未満では、反応温度によってはポリアリーレンスルフィドプレポリマーに含まれる分子量の低い環式ポリアリーレンスルフィドが揮散しやすくなる傾向にある。
本発明は、成形加工時のガス発生量を低減し、射出成形時のバリの発生を抑制することができ、かつ不溶不融の異物の生じ難いポリアリーレンスルフィドを提供する。本発明のPASを用いた組成物は、射出成形、射出圧縮成形、ブロー成形等の用途のみならず、押出成形により、シート、フィルム、繊維およびパイプなどの用途にも用いることができる。
以下、本発明の方法を実施例および比較例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。なお、物性の測定法は以下の通りである。
[分子量測定]
ポリフェニレンスルフィド及びポリフェニレンスルフィドプレポリマーの分子量は、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)の一種であるゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、ポリスチレン換算で算出した。GPCの測定条件を以下に示す。
装置:センシュー科学 SSC−7110
カラム名:Shodex UT806M×2
溶離液:1−クロロナフタレン
検出器:示差屈折率検出器
カラム温度:210℃
プレ恒温槽温度:250℃
ポンプ恒温槽温度:50℃
検出器温度:210℃
流量:1.0mL/min
試料注入量:300μL
ポリフェニレンスルフィド及びポリフェニレンスルフィドプレポリマーの分子量は、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)の一種であるゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、ポリスチレン換算で算出した。GPCの測定条件を以下に示す。
装置:センシュー科学 SSC−7110
カラム名:Shodex UT806M×2
溶離液:1−クロロナフタレン
検出器:示差屈折率検出器
カラム温度:210℃
プレ恒温槽温度:250℃
ポンプ恒温槽温度:50℃
検出器温度:210℃
流量:1.0mL/min
試料注入量:300μL
[PASの加熱時重量減少率の測定]
PASの加熱時重量減少率は熱重量分析機を用いて下記条件で行った。なお、試料は2mm以下の細粒物を用いた。
装置:パーキンエルマー社製 TGA7
測定雰囲気:窒素気流下
試料仕込み重量:約10mg
測定条件:
(a)プログラム温度50℃で1分保持
(b)プログラム温度50℃から400℃まで昇温。この際の昇温速度20℃/分
PASの加熱時重量減少率は熱重量分析機を用いて下記条件で行った。なお、試料は2mm以下の細粒物を用いた。
装置:パーキンエルマー社製 TGA7
測定雰囲気:窒素気流下
試料仕込み重量:約10mg
測定条件:
(a)プログラム温度50℃で1分保持
(b)プログラム温度50℃から400℃まで昇温。この際の昇温速度20℃/分
重量減少率△Wrは(b)の昇温において、100℃時の試料重量を基準として、330℃到達時の試料重量から下記式を用いて算出した。
ΔWr=(W1−W2)/W1×100
(ここでΔWrは重量減少率(%)であり、常圧の非酸化性雰囲気下で50℃から330℃まで昇温速度20℃/分で熱重量分析を行った際に、100℃到達時の試料重量(W1)を基準とした330℃到達時の試料重量(W2)から求められる値である)。
ΔWr=(W1−W2)/W1×100
(ここでΔWrは重量減少率(%)であり、常圧の非酸化性雰囲気下で50℃から330℃まで昇温速度20℃/分で熱重量分析を行った際に、100℃到達時の試料重量(W1)を基準とした330℃到達時の試料重量(W2)から求められる値である)。
[非ニュートン指数の測定]
ポリアリーレンスルフィドを窒素雰囲気下120℃で4時間予備乾燥した後、キャピログラフを用いて320℃、キャピラリーのL/D=10の条件下、せん断速度およびせん断応力を測定して、下記式を用いて非ニュートン指数Nを算出した。
SR=K・SSN ・・・(2)
(ここでNは非ニュートン指数、SRはせん断速度(S−1)、SSはせん断応力(Pa)、Kは定数を示す)。
ポリアリーレンスルフィドを窒素雰囲気下120℃で4時間予備乾燥した後、キャピログラフを用いて320℃、キャピラリーのL/D=10の条件下、せん断速度およびせん断応力を測定して、下記式を用いて非ニュートン指数Nを算出した。
SR=K・SSN ・・・(2)
(ここでNは非ニュートン指数、SRはせん断速度(S−1)、SSはせん断応力(Pa)、Kは定数を示す)。
[参考例1]ポリフェニレンスルフィドプレポリマーの調製
撹拌機および上部に抜き出しバルブを具備したオートクレーブに、水硫化ナトリウムの48重量%水溶液165kg(水硫化ナトリウム79.0kg(1.41kmol))、水酸化ナトリウムの48重量%水溶液123kg(水酸化ナトリウム59.0kg(1.47kmol))、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)3590kg(36.3kmol)、およびp−ジクロロベンゼン212kg(1.44kmol)を仕込んだ。
撹拌機および上部に抜き出しバルブを具備したオートクレーブに、水硫化ナトリウムの48重量%水溶液165kg(水硫化ナトリウム79.0kg(1.41kmol))、水酸化ナトリウムの48重量%水溶液123kg(水酸化ナトリウム59.0kg(1.47kmol))、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)3590kg(36.3kmol)、およびp−ジクロロベンゼン212kg(1.44kmol)を仕込んだ。
反応容器を室温・常圧下にて窒素雰囲気下に密閉した後、400rpmで撹拌しながら、室温から200℃まで25分かけて昇温した。次いで、250℃まで35分かけて昇温し、250℃で120分反応を行った。次いで、内温を250℃に保持しながら、抜き出しバルブを徐々に開放し、溶媒26.6kgを40分かけて留去した。その後、オートクレーブを室温近傍にまで冷却し、内容物を回収した。
内容物の温度が100℃になるように窒素下にて加熱撹拌を行なった後、100℃で20分間保持し、目開き20μmの金網を用いて濾別した。得られた濾液を400リットルのメタノールに滴下し、室温で30分撹拌後、析出成分を回収した。回収した固形分にイオン交換水25リットルを加えスラリーとして、80℃で30分撹拌後、濾過して固形分を回収する操作を3回繰り返した。得られた固形分を減圧下80℃で8時間乾燥し、乾燥固体としてポリフェニレンスルフィドプレポリマーを得た。
得られたポリフェニレンスルフィドプレポリマーを高速液体クロマトグラフィーにより分析した結果、環式ポリフェニレンスルフィドを85重量%含有していることがわかった。また、得られたポリフェニレンスルフィドプレポリマーについてGPC測定を行った結果、重量平均分子量は1,100であった。
[参考例2] ポリフェニレンスルフィド1の合成
撹拌機付きの7リットルオートクレーブに、47.5%水硫化ナトリウム水溶液117.5g(1.0モル)、96%水酸化ナトリウム46.8g(0.99モル)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)208.2g(2.1モル)及びイオン交換水64.0gを仕込み、常圧で窒素を通じながら225℃まで約3時間かけて徐々に加熱し、127.3gの液体を留出した時点で加熱を終え冷却を開始した。また、硫化水素の飛散量は0.022モルであったため、本工程後の系内のスルフィド化剤は0.98モルであった。
撹拌機付きの7リットルオートクレーブに、47.5%水硫化ナトリウム水溶液117.5g(1.0モル)、96%水酸化ナトリウム46.8g(0.99モル)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)208.2g(2.1モル)及びイオン交換水64.0gを仕込み、常圧で窒素を通じながら225℃まで約3時間かけて徐々に加熱し、127.3gの液体を留出した時点で加熱を終え冷却を開始した。また、硫化水素の飛散量は0.022モルであったため、本工程後の系内のスルフィド化剤は0.98モルであった。
その後、200℃まで冷却し、p−ジクロロベンゼン(p−DCB)158.1g(1.08モル)、トリクロロベンゼン(TCB)5.32g(0.029モル)、NMP89.2g(0.90モル)を加えた後に反応容器を窒素ガス下に密封し、400rpmで撹拌しながら0.6℃/分の速度で250℃まで昇温し、250℃で180分反応した。
反応終了後、直ちにオートクレーブを冷却し、重合混合物を回収した。
得られた回収物のうち256gおよびイオン交換水500gを撹拌機付きオートクレーブに入れ、75℃で15分洗浄した後、フィルターでろ過しケークを得た。得られたケークを75℃のイオン交換水で15分洗浄、ろ過する操作を3回行った後、ケークおよびイオン交換水500g、酢酸5.5gを撹拌機付きオートクレーブに入れ、オートクレーブ内部を窒素で置換した後、195℃まで昇温した。その後、オートクレーブを冷却し、内容物を取り出した。内容物をフィルターでろ過しケークを得た。得られたケークを窒素気流下、120℃で乾燥することで乾燥PPSを得た。GPC測定を行ったところ、重量平均分子量は25000であった。FT−IR測定を行ったところ、TCBの導入を示す680cm−1付近のピークを確認した。すなわち、本発明の(B)分岐構造および/または架橋構造を有するポリアリーレンスルフィドを得た。
[参考例3] ポリフェニレンスルフィド2の合成
撹拌機および底栓弁および圧入装置付きの70リットルオートクレーブに、47.5%水硫化ナトリウム8.27kg(70.0モル)、96%水酸化ナトリウム3.60kg(86.4モル)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)11.45kg(115.50モル)、及びイオン交換水5.50kgを仕込み、常圧で窒素を通じながら245℃まで約3時間かけて徐々に加熱し、水9.77kgおよびNMP0.28kgを留出した時点で加熱を終え冷却を開始した。この時点での仕込みアルカリ金属水硫化物1モル当たりの系内残存水分量は、NMPの加水分解に消費された水分を含めて1.06モルであった。また、硫化水素の飛散量は、アルカリ金属硫化物の仕込量1モルあたり0.02モルであった。
撹拌機および底栓弁および圧入装置付きの70リットルオートクレーブに、47.5%水硫化ナトリウム8.27kg(70.0モル)、96%水酸化ナトリウム3.60kg(86.4モル)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)11.45kg(115.50モル)、及びイオン交換水5.50kgを仕込み、常圧で窒素を通じながら245℃まで約3時間かけて徐々に加熱し、水9.77kgおよびNMP0.28kgを留出した時点で加熱を終え冷却を開始した。この時点での仕込みアルカリ金属水硫化物1モル当たりの系内残存水分量は、NMPの加水分解に消費された水分を含めて1.06モルであった。また、硫化水素の飛散量は、アルカリ金属硫化物の仕込量1モルあたり0.02モルであった。
その後、200℃まで冷却し、p−ジクロロベンゼン(p−DCB)10.69kg(72.7モル)、NMP9.37kg(94.50モル)、イオン水543g(30.2モル)を加えた後に反応容器を窒素ガス下に密封し、240rpmで撹拌しながら220℃で3時間反応させ、再び200℃まで冷却した。
ここでTCB373.4g(2.06モル)およびイオン交換水2.04kg(113モル)を圧入し、0.6℃/分の速度で270℃まで昇温し、270℃で140分反応した。その後、270℃から250℃まで15分かけて冷却しながら水2.40kg(133モル)を圧入した。ついで250℃から220℃まで75分かけて徐々に冷却した後、室温近傍まで急冷し、内容物を取り出した。
内容物を約35リットルのNMPで希釈しスラリーとして85℃で30分撹拌後、80メッシュ金網(目開き0.175mm)でろ別して固形物を得た。得られた固形物にNMP約35リットルで洗浄ろ別した。得られた固形物を70リットルのイオン交換水に加え、70℃で30分撹拌後、80メッシュ金網でろ別して固形物を回収する操作を3回繰り返した。得られた固形物および酢酸32gを70リットルのイオン交換水に加え、70℃で30分撹拌後、80メッシュ金網でろ別した。得られた固形物を、更に70リットルのイオン交換水に加え、70℃で30分撹拌後、80メッシュ金網でろ別して固形物を回収した。このようにして得られた固形物を窒素気流下、120℃で乾燥することにより、乾燥PPS樹脂を得た。GPC測定の結果、重量平均分子量は65000であった。また、FT−IR測定を行ったところ、TCBの導入を示す680cm−1付近のピークを確認した。すなわち、分岐構造および/または架橋構造を有するポリアリーレンスルフィドを得た。
[参考例4] ポリフェニレンスルフィド3の合成
撹拌機および底栓弁付きの70リットルオートクレーブに、47.5%水硫化ナトリウム8.27kg(70.0モル)、96%水酸化ナトリウム3.60kg(86.4モル)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)11.45kg(115.50モル)、酢酸ナトリウム1.89kg(23.1モル)、及びイオン交換水5.50kgを仕込み、常圧で窒素を通じながら245℃まで約3時間かけて徐々に加熱し、水9.77kgおよびNMP0.28kgを留出した時点で加熱を終え冷却を開始した。この時点での仕込みアルカリ金属水硫化物1モル当たりの系内残存水分量は、NMPの加水分解に消費された水分を含めて1.06モルであった。また、硫化水素の飛散量は、アルカリ金属硫化物の仕込量1モルあたり0.02モルであった。
撹拌機および底栓弁付きの70リットルオートクレーブに、47.5%水硫化ナトリウム8.27kg(70.0モル)、96%水酸化ナトリウム3.60kg(86.4モル)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)11.45kg(115.50モル)、酢酸ナトリウム1.89kg(23.1モル)、及びイオン交換水5.50kgを仕込み、常圧で窒素を通じながら245℃まで約3時間かけて徐々に加熱し、水9.77kgおよびNMP0.28kgを留出した時点で加熱を終え冷却を開始した。この時点での仕込みアルカリ金属水硫化物1モル当たりの系内残存水分量は、NMPの加水分解に消費された水分を含めて1.06モルであった。また、硫化水素の飛散量は、アルカリ金属硫化物の仕込量1モルあたり0.02モルであった。
その後、200℃まで冷却し、p−ジクロロベンゼン(p−DCB)10.42kg(70.86モル)、NMP9.37kg(94.50モル)を加えた後に反応容器を窒素ガス下に密封し、240rpmで撹拌しながら0.6℃/分の速度で270℃まで昇温し、270℃で140分反応した。その後、270℃から250℃まで15分かけて冷却しながら水2.40kg(133モル)を圧入した。ついで250℃から220℃まで75分かけて徐々に冷却した後、室温近傍まで急冷し、内容物を取り出した。
内容物を約35リットルのNMPで希釈しスラリーとして85℃で30分撹拌後、80メッシュ金網(目開き0.175mm)でろ別して固形物を得た。得られた固形物にNMP約35リットルで洗浄ろ別した。得られた固形物を70リットルのイオン交換水に加え、70℃で30分撹拌後、80メッシュ金網でろ別して固形物を回収する操作を3回繰り返した。得られた固形物および酢酸32gを70リットルのイオン交換水に加え、70℃で30分撹拌後、80メッシュ金網でろ別した。得られた固形物を、更に70リットルのイオン交換水に加え、70℃で30分撹拌後、80メッシュ金網でろ別して固形物を回収した。このようにして得られた固形物を窒素気流下、120℃で乾燥することにより、乾燥PPS樹脂を得た。GPC測定の結果、重量平均分子量は50000であった。
[実施例1]
参考例1で得られたポリフェニレンスルフィドプレポリマー90gに対して参考例2で得られたポリフェニレンスルフィド1を10gドライブレンドし、混合物を留出管および撹拌翼を取り付けたガラス製の試験管に仕込んだ後、試験管内の減圧、窒素置換を3回繰り返した。試験管内を約0.1kPaに保ったまま340℃に温調して4時間加熱重合したあと、室温まで冷却して重合物を得た。FT−IRスペクトルより得られた重合物がポリフェニレンスルフィドであることを確認した。加熱時重量減少率を測定したところ、ΔWr=0.058であった。GPC測定の結果、重量平均分子量は68000であった。また、非ニュートン指数は1.53であった。
参考例1で得られたポリフェニレンスルフィドプレポリマー90gに対して参考例2で得られたポリフェニレンスルフィド1を10gドライブレンドし、混合物を留出管および撹拌翼を取り付けたガラス製の試験管に仕込んだ後、試験管内の減圧、窒素置換を3回繰り返した。試験管内を約0.1kPaに保ったまま340℃に温調して4時間加熱重合したあと、室温まで冷却して重合物を得た。FT−IRスペクトルより得られた重合物がポリフェニレンスルフィドであることを確認した。加熱時重量減少率を測定したところ、ΔWr=0.058であった。GPC測定の結果、重量平均分子量は68000であった。また、非ニュートン指数は1.53であった。
[比較例1]
参考例1で得られたポリフェニレンスルフィドプレポリマー100gを留出管および撹拌翼を取り付けたガラス製の試験管に仕込んだ後、試験管内の減圧、窒素置換を3回繰り返した。試験管内を約0.1kPaに保ったまま340℃に温調して4時間加熱重合したあと、室温まで冷却して重合物を得た。FT−IRスペクトルより得られた重合物がポリフェニレンスルフィドであることを確認した。加熱時重量減少率を測定したところ、ΔWr=0.055であった。GPC測定の結果、重量平均分子量は51000であった。また、非ニュートン指数は1.19であった。
参考例1で得られたポリフェニレンスルフィドプレポリマー100gを留出管および撹拌翼を取り付けたガラス製の試験管に仕込んだ後、試験管内の減圧、窒素置換を3回繰り返した。試験管内を約0.1kPaに保ったまま340℃に温調して4時間加熱重合したあと、室温まで冷却して重合物を得た。FT−IRスペクトルより得られた重合物がポリフェニレンスルフィドであることを確認した。加熱時重量減少率を測定したところ、ΔWr=0.055であった。GPC測定の結果、重量平均分子量は51000であった。また、非ニュートン指数は1.19であった。
[比較例2]
参考例4で得られたポリアリーレンスルフィド3 100重量部に対して、参考例3で得られたポリアリーレンスルフィド2 20重量部をドライブレンドした後、真空ベントを具備した日本製鋼所製TEX30α型二軸押出機(スクリュー径30mm、L/D=45、ニーディング部は5箇所、同方向回転完全噛み合い型スクリュー)を用いて溶融混練し、ストランドカッターによりペレット化した。溶融混練の条件は、スクリュー回転数300rpm、吐出量20kg/hrであって、ダイス吐出部の樹脂温度が300℃となるようにシリンダー温度を設定した。加熱時重量減少率を測定したところ、ΔWr=0.24であった。GPC測定の結果、重量平均分子量は63000であった。また、非ニュートン指数は1.49であった。
参考例4で得られたポリアリーレンスルフィド3 100重量部に対して、参考例3で得られたポリアリーレンスルフィド2 20重量部をドライブレンドした後、真空ベントを具備した日本製鋼所製TEX30α型二軸押出機(スクリュー径30mm、L/D=45、ニーディング部は5箇所、同方向回転完全噛み合い型スクリュー)を用いて溶融混練し、ストランドカッターによりペレット化した。溶融混練の条件は、スクリュー回転数300rpm、吐出量20kg/hrであって、ダイス吐出部の樹脂温度が300℃となるようにシリンダー温度を設定した。加熱時重量減少率を測定したところ、ΔWr=0.24であった。GPC測定の結果、重量平均分子量は63000であった。また、非ニュートン指数は1.49であった。
[比較例3]
参考例4で得られたポリアリーレンスルフィド3の粒子3kgをステンレス製のバット上に広げ、200℃に設定した熱風乾燥機に入れて4時間熱酸化処理を施し、室温まで冷却した。加熱時重量減少率を測定したところ、ΔWr=0.19であった。GPC測定の結果、重量平均分子量は63000であった。また、非ニュートン指数は1.47であった。
参考例4で得られたポリアリーレンスルフィド3の粒子3kgをステンレス製のバット上に広げ、200℃に設定した熱風乾燥機に入れて4時間熱酸化処理を施し、室温まで冷却した。加熱時重量減少率を測定したところ、ΔWr=0.19であった。GPC測定の結果、重量平均分子量は63000であった。また、非ニュートン指数は1.47であった。
実施例1と比較例1を比較すると、架橋構造を有するポリアリーレンスルフィドの存在下でポリアリーレンスルフィドプレポリマーを加熱することで非ニュートン指数を向上させることができることがわかる。また、比較例2および比較例3からは重合反応中にポリハロゲン化合物を添加する方法で得たポリアリーレンスルフィドをバリ抑制剤として使用する方法やポリアリーレンスルフィドを酸化架橋する方法でも非ニュートン指数は向上させられるものの、その効果は十分ではなく、加熱時重量減少率も増大してしまうことが分かる。
Claims (5)
- 下記式(I)で表される環式ポリアリーレンスルフィドを少なくとも50重量%含む(A)ポリアリーレンスルフィドプレポリマーを、(A)ポリアリーレンスルフィドプレポリマー100重量部に対して、分岐構造および/または架橋構造を有し、重量平均分子量が2500を超え40000以下の(B)ポリアリーレンスルフィド2〜100重量部の存在下で200℃以上に加熱するポリアリーレンスルフィドの製造方法。
- 有機極性溶媒中、200℃以上280℃以下の温度範囲でスルフィド化剤、ジハロゲン化芳香族化合物および分子中に3個以上のハロゲン置換基を有するポリハロ芳香族化合物の存在下に重合する方法で分岐構造および/または架橋構造を有する前記(B)ポリアリーレンスルフィドを得、次いで前記(B)ポリアリーレンスルフィド存在下で前記(A)ポリアリーレンスルフィドプレポリマーを加熱する請求項1記載のポリアリーレンスルフィドの製造方法。
- 有機極性溶媒中、200℃以上280℃以下の温度範囲でスルフィド化剤、ジハロゲン化芳香族化合物を重合し、次いで酸素存在下160℃以上260℃以下の温度範囲で加熱する方法で分岐構造および/または架橋構造を有する(B)ポリアリーレンスルフィドを得、次いで前記(B)ポリアリーレンスルフィド存在下で前記(A)ポリアリーレンスルフィドプレポリマーを加熱する請求項1記載のポリアリーレンスルフィドの製造方法。
- 前記(B)ポリアリーレンスルフィド存在下で前記(A)ポリアリーレンスルフィドプレポリマーを加熱する際に無溶媒条件下で行う請求項1〜3いずれか記載のポリアリーレンスルフィドの製造方法。
- 前記(B)ポリアリーレンスルフィド存在下で前記(A)ポリアリーレンスルフィドプレポリマーを加熱する際に非酸化性雰囲気下および/または減圧下で行う請求項1〜4いずれか記載のポリアリーレンスルフィドの製造方法。
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