JP6733826B2 - ポリアリーレンスルフィドの製造方法 - Google Patents
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Description
Polymer,vol.37,no.14,1996年
下記(I)〜(III)を満たすポリアリーレンスルフィドプレポリマーを、溶媒の非存在下、ポリアリーレンスルフィドプレポリマーの融点以上の温度で加熱重合することにより得られるポリアリーレンスルフィドの、重量平均分子量を数平均分子量で除した多分散度が2.5超、5.0以下であるポリアリーレンスルフィドの製造方法、である。
(I)重量平均分子量が3,000以上、20,000未満
(II)環式ポリアリーレンスルフィド含有量が5重量%以上、50重量%未満
(III)340℃で60分加熱した際に発生した揮発成分をイオン交換水に通気したときに、イオン交換水に捕集される塩化物イオン量が、ポリアリーレンスルフィドプレポリマーの重量基準で50ppm以上、5,000ppm以下。
ここで△Wrは重量減少率(%)であり、常圧の窒素雰囲気下で50℃から330℃以上の任意の温度まで昇温速度20℃/分で熱重量分析を行った際の、100℃到達時点の試料重量(W1)と330℃到達時の試料重量(W2)から求められる値である。
下記(I)〜(III)を満たすポリアリーレンスルフィドプレポリマー、である。
(I)重量平均分子量が3,000以上、20,000未満
(II)環式ポリアリーレンスルフィド含有量が5重量%以上、50重量%未満
(III)340℃で60分加熱した際に発生した揮発成分をイオン交換水に通気したときに、イオン交換水に捕集される塩化物イオン量が、ポリアリーレンスルフィドプレポリマーの重量基準で50ppm以上、5,000ppm以下。
少なくともスルフィド化剤、ジハロゲン化芳香族化合物、有機極性溶媒を含む原料混合物であって、原料混合物中のジハロゲン化芳香族化合物がスルフィド化剤1モル当たり0.8モル以上1.2モル以下であり、原料混合物中の有機極性溶媒量がスルフィド化剤1モル当たり0.5リットル以上5リットル以下である原料混合物を、スルフィド化剤の転化率が90%以上、ジハロゲン化芳香族化合物の転化率が90%以上かつスルフィド化剤の転化率以下となるまで加熱して反応させた反応混合物から、ポリアリーレンスルフィドプレポリマーを固体として回収するポリアリーレンスルフィドプレポリマーの製造方法であって、ポリアリーレンスルフィドプレポリマーを固体として回収する際に、ポリアリーレンスルフィドプレポリマーと酸を接触させるポリアリーレンスルフィドプレポリマーの製造方法、である。
本発明におけるPASとは、式−(Ar−S)−の繰り返し単位を主要構成単位とする、好ましくは当該繰り返し単位を80モル%以上含有するホモポリマーまたはコポリマーである。ここで、Arは芳香族基をあらわし、下記の式(A)〜式(K)などであらわされる単位などがあるが、なかでも式(A)が特に好ましい。
この繰り返し単位を主要構成単位とする限り、下記の式(L)〜式(N)などで表される少量の分岐単位または架橋単位を含むことができる。これら分岐単位または架橋単位の共重合量は、−(Ar−S)−の単位1モルに対して0〜1モル%の範囲であることが好ましい。
本発明における環式PASとは、式−(Ar−S)−の繰り返し単位を主要構成単位とする環式化合物であり、好ましくは当該繰り返し単位を80モル%以上含有する下記一般式(O)のごとき化合物である。
本発明における線状PASとは、式−(Ar−S)−の繰り返し単位を主要構成単位とする、好ましくは当該繰り返し単位を80モル%以上含有する、直鎖状のホモポリマーまたはコポリマーである。ここで、Arは前記の式(A)〜式(K)などであらわされる単位などがあるが、なかでも式(A)が特に好ましい。また、前記の式(A)〜式(K)などの繰り返し単位を含むランダム共重合体、ブロック共重合体及びそれらの混合物のいずれかであってもよい。
本発明のPASプレポリマーは環式PASと線状PASからなる混合物である。本発明のPASプレポリマーにおける環式PASの含有量の下限は5重量%であり、7重量%以上が好ましい。環式PASの含有量が5重量%未満である場合、PASプレポリマーを加熱した際に、架橋反応などの好ましくない副反応が進行し、得られる重合物の結晶化温度が低下する。その原因は定かではないが、PASプレポリマーを調製する際に生成する不純物の組成が変化するためであると推測している。
本発明のPASプレポリマーの製造方法は、少なくともスルフィド化剤、ジハロゲン化芳香族化合物、有機極性溶媒を含む原料混合物であって、原料混合物中のジハロゲン化芳香族化合物がスルフィド化剤1モル当たり0.8モル以上1.2モル以下であり、原料混合物中の有機極性溶媒量がスルフィド化剤1モル当たり0.5リットル以上5リットル以下である原料混合物を、スルフィド化剤の転化率が90%以上、ジハロゲン化芳香族化合物の転化率が90%以上かつスルフィド化剤の転化率以下となるまで加熱して反応させた反応混合物から、ポリアリーレンスルフィドプレポリマーを固体として回収するPASプレポリマーの製造方法であって、ポリアリーレンスルフィドプレポリマーを固体として回収する際に、ポリアリーレンスルフィドプレポリマーと酸を接触させることを特徴とする。
(a)仕込んだジハロゲン化芳香族化合物がスルフィド化剤に対しモル比で等量以上である場合
ジハロゲン化芳香族化合物の転化率(%)=[仕込んだジハロゲン化芳香族化合物の量(モル)−ジハロゲン化芳香族化合物の残存量(モル)]/仕込んだスルフィド化剤の量(モル)×100
(b)仕込んだジハロゲン化芳香族化合物がスルフィド化剤に対しモル比で等量未満である場合
ジハロゲン化芳香族化合物の転化率(%)=[仕込んだジハロゲン化芳香族化合物の量(モル)−ジハロゲン化芳香族化合物の残存量(モル)]/仕込んだジハロゲン化芳香族化合物の量(モル)×100
ここで、仕込んだスルフィド化剤の量とは、反応の開始時点で系内に存在したスルフィド化剤の量を指し、反応の開始前に脱水操作によって一部のスルフィド化剤が硫化水素として系外に除去された場合は、飛散した硫化水素のモル数を考慮した上で、反応の開始時点で系内に存在したスルフィド化剤の量を見積もる。
スルフィド化剤としては、ジハロゲン化芳香族化合物にスルフィド結合を導入できるものであればよく、アルカリ金属硫化物、アルカリ金属水硫化物、および硫化水素が例示できる。
ジハロゲン化芳香族化合物としては、p−ジクロロベンゼン(以下、「p−DCB」ということもある)、o−ジクロロベンゼン、m−ジクロロベンゼン、p−ジブロモベンゼン、o−ジブロモベンゼン、m−ジブロモベンゼン、1−ブロモ−4−クロロベンゼン、1−ブロモ−3−クロロベンゼンなどのジハロゲン化ベンゼン、および1−メトキシ−2,5−ジクロロベンゼン、1−メチル−2,5−ジクロロベンゼン、1,4−ジメチル−2,5−ジクロロベンゼン、1,3−ジメチル−2,5−ジクロロベンゼン、3,5−ジクロロ安息香酸などのハロゲン以外の置換基をも含むジハロゲン化芳香族化合物などを挙げることができる。異なる2種以上のジハロゲン化芳香族化合物を組み合わせて用いることも可能であるが、なかでも、p−ジクロロベンゼンに代表されるp−ジハロゲン化ベンゼンを主成分にするジハロゲン化芳香族化合物が好ましい。ジハロゲン化芳香族化合物におけるp−ジクロロベンゼンの割合は80モル%以上が好ましく、90モル%以上がより好ましい。
有機極性溶媒としては、N−メチル−2−ピロリドン(以下、「NMP」ということもある)、N−エチル−2−ピロリドン、N−シクロヘキシル−2−ピロリドンなどのN−アルキルピロリドン類、N−メチル−ε−カプロラクタムなどのカプロラクタム類、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ヘキサメチルリン酸トリアミドなどに代表される有機アミド溶媒が挙げられる。なかでも、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンが汎用される。
反応混合物からPASプレポリマーを固体として回収する方法としては、(1)有機極性溶媒の一部もしくは大部分を蒸留により除去した後に、有機極性溶媒と混和し、かつ、副生塩は溶解するが、PASプレポリマーは溶解しない、もしくは溶解しにくい溶媒と加熱下で接触させて、PASプレポリマーを固体として回収する方法や、(2)反応混合物においてPASプレポリマーが溶解する温度で、反応混合物中に存在する固形成分と可溶成分を固液分離により分離、PASプレポリマーおよび有機極性溶媒を含む溶液成分を回収し、この溶液成分から有機極性溶媒の一部もしくは大部分を蒸留により除去した後に、有機極性溶媒と混和し、かつ、副生塩は溶解するが、PASプレポリマーは溶解しない、もしくは溶解しにくい溶媒と加熱下で接触させて、PASプレポリマーを固体として回収する方法が例示できる(溶媒との接触によりPASプレポリマーを固体として回収する方法を以下、「溶媒処理」という)。溶媒処理によりPASプレポリマーは固体として析出するので、ろ過による分離、遠心分離、デカンテーションなどの公知の固液分離法を用いてPASプレポリマーを回収することが可能である。
本発明のPASの製造方法では、PASプレポリマーを加熱することにより高重合度のPASに転化する。
本発明によれば、高分子量で機械的強度に優れ、かつ、溶融加工時のガス発生量が少なく、かつ、結晶化温度の高いPASを製造することができる。
ここで△Wrは重量減少率(%)であり、常圧の窒素雰囲気下で50℃から330℃以上の任意の温度まで昇温速度20℃/分で熱重量分析を行った際の、100℃到達時点の試料重量(W1)と330℃到達時の試料重量(W2)から求められる値である。
反応混合物中のスルフィド化剤の定量はイオンクロマトグラフィーを用いて以下の条件にて実施した。
装置:(株)島津製作所製 HIC−20A super
カラム:(株)島津製作所製 Shim−pack IC−SA2(250mm×4.6mmID)
検出器:電気伝導度検出器(サプレッサ)
溶離液:4.0mM炭酸水素ナトリウム/1.0mM炭酸ナトリウム水溶液
流速:1.0ml/分
注入量:50マイクロリットル
カラム温度:30℃
試料中に過酸化水素水を添加して試料中に含まれる硫化物イオンの酸化を行った後に上記分析により硫酸イオンとして定量し、過酸化水素水を添加しない無処理の試料を分析した際の硫酸イオン定量値を差し引く方法で、試料中の硫化物イオン量を算出した。ここで算出した硫化物イオン量を未反応のスルフィド化剤量とし、仕込んだスルフィド化剤量との割合から、スルフィド化剤の転化率を算出した。計算式は以下の通りである。
反応混合物中のジハロゲン化芳香族化合物およびNMPの定量は、ガスクロマトグラフィー(GC)を用いて以下の条件にて実施した。
装置:(株)島津製作所製 GC−2010
カラム:アジレント・テクノロジー(株)製 DB−5 0.32mm×30m(0.25μm)
キャリアーガス:ヘリウム
検出器:水素炎イオン化検出器(FID)
<分子量の測定>
PASプレポリマーおよびPASの分子量はサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)の一種であるゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により算出した。
装置:(株)センシュー科学製 SSC−7110
カラム名:昭和電工(株)製 Shodex UT806M×2
溶離液:1−クロロナフタレン
検出器:示差屈折率検出器
カラム温度:210℃
プレ恒温槽温度:250℃
ポンプ恒温槽温度:50℃
検出器温度:210℃
流量:1.0mL/min
試料注入量:300μL。
PASプレポリマーおよびPASの、環式PAS含有量は高速液体クロマトグラフィーにより測定した。
装置:(株)島津製作所製 LC−10A vpシリーズ
カラム:関東化学(株)製 Mightysil RP−18 GP150−4.6(5μm)
検出器:フォトダイオードアレイ検出器(UV=270nm)
上記高速液体クロマトグラフィー測定により成分分割した各ピークの帰属は、成分分割した成分のマススペクトル分析、分取クロマトにより分割した各成分のMALDI−TOF−MS及びGPCによる分子量情報により行い、繰り返し単位数4から15までの環式PASを帰属した。帰属した繰り返し単位数4から15までの環式PASについて、標品による検量線を用いて定量を行った。
PASプレポリマーを加熱した際の塩化物イオン捕集量は下記の方法により定量した。
(a)PASプレポリマー1gをアルミニウム製容器にはかりとり、横置きにした2.4cmφ×30cmの試験管内に設置した。
(b)試験管内に窒素を供給するためのステンレス製ニードル、および試験管内から揮発成分を窒素とともに排出するための“テフロン”(登録商標)製チューブを具備したシリコン栓を、試験管の口に取り付けた。
(c)吸収液としてイオン交換水20gを20mL三角フラスコにはかりとり、“テフロン”(登録商標)製チューブの先端が三角フラスコの底部に接するように固定した。
(d)ステンレス製ニードルから窒素を50mL/分の速度で供給することで、窒素が試験管内、“テフロン”(登録商標)製チューブを経由して三角フラスコ内の吸収液に通気(バブリング)される状態とした。
(e)340℃に温調した横置き電気管状炉に試験管を挿入し60分間加熱した。
(f)吸収液の一部をイオンクロマトグラフィーで分析し、吸収液に捕集された塩化物イオン量を定量した。
PASの加熱時重量減少率は熱重量分析機を用いて下記の条件で測定した。
装置:パーキンエルマー社製 TGA7
測定雰囲気:窒素気流下
試料仕込み重量:約10mg
測定条件:
(a)50℃で1分保持
(b)50℃から350℃まで20℃/分の速度で昇温
重量減少率△Wrは(b)の昇温において、100℃時の試料重量を基準として、330℃到達時の試料重量から前記式(1)を用いて算出した。
PASプレポリマーおよびPASの融点および降温結晶化温度は示差走査型熱量計を用いて下記の条件で測定した。本件明細書中での融点(Tm)とは(f)の昇温における吸熱ピーク温度を、降温結晶化温度(Tmc)とは(d)の降温における発熱ピーク温度を指す。
装置:TAインスツルメンツ社製 Q20
測定雰囲気:窒素気流下
試料仕込み重量:約10mg
測定条件:
(a)50℃で1分保持
(b)50℃から340℃まで20℃/分の速度で昇温
(c)340℃で1分保持
(d)340℃から100℃まで20℃/分の速度で降温
(e)100℃で1分保持
(f)100℃から340℃まで20℃/分の速度で昇温
<灰分率の測定>
PASを5gるつぼに仕込み、電気マッフル炉を用いて空気下、550℃で5時間燃焼後、残渣の重量を測定し、仕込んだPASの重量に対する割合(百分率)を算出した。
有機極性溶媒量がスルフィド化剤1モル当たり2.5リットルである原料混合物を、スルフィド化剤の転化率が90%以上、ジハロゲン化芳香族化合物(p-DCB)の転化率が90%以上かつスルフィド化剤の転化率以下となるまで加熱して得られた反応混合液を、250℃において固液分離し、PAS成分を含む濾液を調製した例を次に示す。
攪拌機を具備したステンレス製のオートクレーブに蒸留用の装置とアルカリトラップを接続しておき、48重量%の水硫化ナトリウム水溶液28.0g(水硫化ナトリウムとして0.240モル)、48重量%の水酸化ナトリウム水溶液20.5g(水酸化ナトリウムとして0.246モル)、NMP123.1g(0.120リットル)を仕込み、反応容器内を十分に窒素置換した。
110℃から235℃まで30分かけて反応容器内を昇温後、235℃で4時間保持した。さらに、250℃まで30分かけて反応容器内を昇温後、250℃で8時間保持して反応させたあと、室温付近まで急冷して反応容器から内容物を回収した。
この反応混合物を、底栓弁および底部にガラス製フィルター(平均目開き10μ)を具備したステンレス製耐圧容器に仕込み、常圧下で攪拌しながら180℃に加熱した後、容器を窒素下に密閉した。ついで250℃まで加熱し1時間保持した。容器の底栓弁出口に冷却管を取り付け、底栓弁を開放して濾過を行った。途中濾過速度が低下した段階で容器内に0.3MPaで窒素を導入しながら濾液を回収した。この操作で得られた濾液は室温下では不溶部を含むスラリー状となった。
参考例1で得られたPPS成分を含む濾液を用い、PPSプレポリマーと酸を接触させてPPSプレポリマーを固体として回収し、得られたPPSプレポリマーを加熱重合した例を示す。
参考例1で得られた濾液(室温下ではスラリー状態)をビーカーに300g量り取り、酢酸1.1gと水100gを加え、撹拌しながら水浴で80℃に加温した。次いで、30分撹拌した後のポリマー分散液を、ガラスフィルターを用いて吸引ろ過し、ケークを回収した。得られたケークを再度ビーカーに戻し、水200gでリスラリーし、80℃で30分撹拌後にろ過した。この水洗操作を計3回繰り返した。水洗後、得られたケークを100℃の真空乾燥器で8時間乾燥し、固形分としてPPSプレポリマーを回収した。
得られたPPSプレポリマー4gを2.4cmφ×30cmの試験管にはかりとり、撹拌翼、減圧アダプター、バキュームスターラ、窒素導入管を具備したシリコン栓を取り付けた。系内を減圧した後、窒素雰囲気下とする操作を3回繰り返したあと、減圧下とした。340℃に温度調整した電気管状炉に試験管を挿入し、50rpmの速度で撹拌しながら、4時間加熱した。試験管を電気管状炉から取り出し、室温まで放冷して重合物を得た。
参考例1で得られたPPS成分を含む濾液を用い、PPSプレポリマーと酸を接触させずPPSプレポリマーを固体として回収し、得られたPPSプレポリマーを加熱重合した例を示す。
酢酸を添加しないこと以外は、実施例1と同様の操作でPPSプレポリマーを回収した。得られたPPSプレポリマーの分子量を測定した結果、Mwが8,500、Mnが2,800、多分散度指数は3.03であった。また、環式PPS含有量を測定した結果、17.4重量%であった。さらに、加熱時の塩化物イオン捕集量を測定した結果、10ppmであった。また、Tmを測定した結果、279℃であった。灰分率を測定した結果、0.10重量%であった。
得られたPPSプレポリマーを用いた以外は実施例1と同様の操作でPPSプレポリマーの加熱重合を行った。
有機極性溶媒量がスルフィド化剤1モル当たり1.25リットルである原料混合物を、スルフィド化剤の転化率が90%以上、ジハロゲン化芳香族化合物(p-DCB)の転化率が90%以上かつスルフィド化剤の転化率以下となるまで加熱して反応混合物を調製した例を次に示す。
攪拌機を具備したステンレス製のオートクレーブに蒸留用の装置とアルカリトラップを接続しておき、48重量%の水硫化ナトリウム水溶液56.1g(水硫化ナトリウムとして0.480モル)、48重量%の水酸化ナトリウム水溶液41.1g(水酸化ナトリウムとして0.493モル)、NMP246.2g(0.240リットル)を仕込み、反応容器内を十分に窒素置換した。
130℃から250℃まで30分かけて反応容器内を昇温し、さらに250℃で2時間保持して反応させた。この間に、オートクレーブ上部に小型のステンレス製耐圧ポットを接続し、ポット内にp−DCB6.97g(0.0474モル)、NMP20.0g(0.0195リットル)を仕込んでおいた。その後、反応終了と同時にポットの内容物を系内に圧入添加し、さらに250℃で1時間保持して追反応させた。追反応終了後、室温付近まで急冷して反応容器から内容物を回収した。
参考例2で得られた反応混合物を用い、PPSプレポリマーと酸を接触させてPPSプレポリマーを固体として回収し、得られたPPSプレポリマーを加熱重合した例を示す。
参考例2で得られた反応混合物を用いた以外は、実施例1と同様の操作でPPSプレポリマーを回収した。
得られたPPSプレポリマーを用いた以外は実施例1と同様の操作でPPSプレポリマーの加熱重合を行った。
参考例2で得られた反応混合物を用い、PPSプレポリマーと酸を接触させずPPSプレポリマーを固体として回収し、得られたPPSプレポリマーを加熱重合した例を示す。
反応混合物に酢酸を添加しないこと以外は、実施例1と同様の操作でPPSプレポリマーを回収した。得られたPPSプレポリマーの分子量を測定した結果、Mwが10,400、Mnが3,800、多分散度指数は2.74であった。また、環式PPS含有量を測定した結果、8.2重量%であった。さらに、加熱時の塩化物イオン捕集量を測定した結果、10ppmであった。また、Tmを測定した結果、279℃であった。灰分率を測定した結果、0.50重量%であった。
得られたPPSプレポリマーを用いた以外は実施例1と同様にPPSプレポリマーの加熱重合を行った。
スルフィド化剤1モル当たりの有機極性溶媒量が本願発明の範囲よりも少ない例、すなわち、有機極性溶媒量がスルフィド化剤1モル当たり0.3リットルである原料混合物を、スルフィド化剤の転化率が90%以上、ジハロゲン化芳香族化合物(p-DCB)の転化率が90%以上かつスルフィド化剤の転化率以下となるまで加熱して得られた反応混合物を用い、PPSプレポリマーと酸を接触させてPPSプレポリマーを固体として回収し、得られたPPSプレポリマーを加熱重合した例を次に示す。
攪拌機を具備したステンレス製のオートクレーブに蒸留用の装置とアルカリトラップを接続しておき、48重量%の水硫化ナトリウム水溶液117g(水硫化ナトリウムとして1.00モル)、48重量%の水酸化ナトリウム水溶液86.2g(水酸化ナトリウムとして1.04モル)、NMP164g(0.159リットル)を仕込み、反応容器内を十分に窒素置換した。
120℃から275℃まで約2時間かけて反応容器内を昇温し、さらに275℃で40分間保持して反応させた。反応終了後、室温付近まで冷却して反応容器から内容物を回収した。
得られた湿潤状態の固形分の一部を分取して、0.5%酢酸水溶液に分散させて70℃で30分攪拌したのち濾過を行い、得られたケークをイオン交換水で十分に洗浄後、乾燥し乾燥固体を得た。この乾燥固体について赤外分光分析を行った結果、これはPPSであることがわかった。
得られたPPSプレポリマーを用いた以外は実施例1と同様の操作でPPSプレポリマーの加熱重合を行った。
参考例1と同じ組成の原料混合物を、参考例1よりも温和な条件で加熱し、スルフィド化剤および、ジハロゲン化芳香族化合物(p-DCB)の転化率が参考例1よりも低い反応混合物を調製、250℃における固液分離を行って得られたPPS成分を含む濾液を用い、PPSプレポリマーと酸を接触させてPPSプレポリマーを固体として回収し、得られたPPSプレポリマーを加熱重合した例を次に示す。
加熱反応条件を、110℃から235℃まで30分かけて反応容器内を昇温後、235℃で4時間保持、さらに、247.5℃まで30分かけて反応容器内を昇温後、247.5℃で8時間保持と変更した以外は、参考例1と同様にして反応混合物を得た。得られた反応混合物についてイオンクロマトグラフィーによる分析を行い、スルフィド化剤の転化率を算出したところ98%と算出された。また、p−DCBの転化率を算出したところ96%と算出された。
得られた濾液を用い、実施例1と同様の操作でPPSプレポリマーを回収した。得られたPPSプレポリマーの分子量を測定した結果、Mwが8,500、Mnが2,800、多分散度指数は3.06であった。また、環式PPS含有量を測定した結果、17.4重量%であった。さらに、加熱時の塩化物イオン捕集量を測定した結果、80ppmであった。また、Tmを測定した結果、279℃であった。灰分率を測定した結果、0.05重量%であった。
得られたPPSプレポリマーを用いた以外は実施例1と同様の操作でPPSプレポリマーの加熱重合を行った。
参考例1、実施例3と同じ組成の原料混合物を、参考例1、実施例3よりも温和な条件で加熱し、スルフィド化剤および、ジハロゲン化芳香族化合物(p-DCB)の転化率が参考例1、実施例3よりも低い反応混合物を調製、PPSプレポリマーと酸を接触させてPPSプレポリマーを固体として回収し、得られたPPSプレポリマーを加熱重合した例を次に示す。
加熱反応条件を、110℃から250℃まで30分かけて反応容器内を昇温後、250℃で2時間保持と変更した以外は、参考例1と同様にして反応混合物を得た。得られた反応混合物についてイオンクロマトグラフィーによる分析を行い、スルフィド化剤の転化率を算出したところ96%と算出された。また、p−DCBの転化率を算出したところ94%と算出された。
得られた反応混合物を用い、実施例1と同様の操作でPPSプレポリマーを回収した。得られたPPSプレポリマーの分子量を測定した結果、Mwが9,500、Mnが2,500、多分散度指数は3.74であった。また、環式PPS含有量を測定した結果、17.7重量%であった。さらに、加熱時の塩化物イオン捕集量を測定した結果、1,380ppmであった。また、Tmを測定した結果、277℃であった。灰分率を測定した結果、0.19重量%であった。
得られたPPSプレポリマーを用い、加熱時間を2時間とした以外は実施例1と同様の操作でPPSプレポリマーの加熱重合を行った。
ジハロゲン化芳香族化合物(p-DCB)の転化率が本願発明の範囲よりも高い例、すなわち、有機極性溶媒量がスルフィド化剤1モル当たり2.5リットルである原料混合物を、スルフィド化剤の転化率が90%以上、ジハロゲン化芳香族化合物(p-DCB)の転化率がスルフィド化剤の転化率以上となるまで加熱して得られた反応混合物を用い、PPSプレポリマーと酸を接触させてPPSプレポリマーを固体として回収し、得られたPPSプレポリマーを加熱重合した例を次に示す。
攪拌機を具備したステンレス製のオートクレーブに蒸留用の装置とアルカリトラップを接続しておき、48重量%の水硫化ナトリウム水溶液140g(水硫化ナトリウムとして1.20モル)、48重量%の水酸化ナトリウム水溶液103g(水酸化ナトリウムとして1.23モル)、NMP616g(0.600リットル)を仕込み、反応容器内を十分に窒素置換した。
120℃から250℃まで30分かけて反応容器内を昇温し、さらに250℃で2時間保持して反応させた。この間に、オートクレーブ上部に小型のステンレス製耐圧ポットを接続し、ポット内にp−DCB17.4g(0.119モル)、NMP100g(0.0975リットル)を仕込んでおいた、その後、反応終了と同時にポットの内容物を系内に圧入添加し、さらに250℃で1時間保持して追反応させた。追反応終了後、室温付近まで急冷して反応容器から内容物を回収した。
得られた反応混合物を用い、実施例1と同様の操作でPPSプレポリマーを回収した。得られたPPSプレポリマーの分子量を測定した結果、Mwが8,000、Mnが2,600、多分散度指数は3.14であった。また、環式PPS含有量を測定した結果、18.0重量%であった。さらに、加熱時の塩化物イオン捕集量を測定した結果、40ppmであった。また、Tmを測定した結果、269℃であった。灰分率を測定した結果、0.17重量%であった。
得られたPPSプレポリマーを用いた以外は実施例1と同様の操作でPPSプレポリマーの加熱重合を行った。
ジハロゲン化芳香族化合物(p-DCB)の転化率が本願発明の範囲よりも高い例、すなわち、有機極性溶媒量がスルフィド化剤1モル当たり2.5リットルである原料混合物を、スルフィド化剤の転化率が90%以上、ジハロゲン化芳香族化合物(p−DCB)の転化率がスルフィド化剤の転化率以上となるまで加熱して得られた反応混合物を用い、PPSプレポリマーと酸を接触させてPPSプレポリマーを固体として回収し、得られたPPSプレポリマーを加熱重合した例を次に示す。
攪拌機を具備したステンレス製のオートクレーブに蒸留用の装置とアルカリトラップを接続しておき、48重量%の水硫化ナトリウム水溶液140g(水硫化ナトリウムとして1.20モル)、48重量%の水酸化ナトリウム水溶液103g(水酸化ナトリウムとして1.23モル)、NMP616g(0.600リットル)を仕込み、反応容器内を十分に窒素置換した。
120℃から250℃まで30分かけて反応容器内を昇温し、さらに250℃で2時間保持して反応させた。この間に、オートクレーブ上部に小型のステンレス製耐圧ポットを接続し、ポット内にp−DCB11.7g(0.079モル)、NMP100g(0.0975リットル)を仕込んでおき、その後、反応終了と同時にポットの内容物を系内に圧入添加し、さらに250℃で1時間保持して追反応させた。追反応終了後、室温付近まで急冷して反応容器から内容物を回収した。
得られた反応混合物を用い、実施例11と同様の操作でPPSプレポリマーを回収した。得られたPPSプレポリマーの分子量を測定した結果、Mwが8,600、Mnが2,600、多分散度指数は3.33であった。また、環式PPS含有量を測定した結果、17.6重量%であった。さらに、加熱時の塩化物イオン捕集量を測定した結果、40ppmであった。また、Tmを測定した結果、272℃であった。灰分率を測定した結果、0.14重量%であった。
得られたPPSプレポリマーを用いた以外は実施例1と同様の操作でPPSプレポリマーの加熱重合を行った。
非特許文献1の方法、具体的には、有機極性溶媒量がスルフィド化剤1モル当たり10リットルの希薄条件で原料混合物を反応させることで、環式PPSの生成含有量の多いPPSプレポリマーを得る方法において、PPSプレポリマーと酸を接触させて回収し、得られたPPSプレポリマーを加熱重合した例を次に示す。
攪拌機を具備したステンレス製のオートクレーブに硫化ナトリウム9水和物60g(0.25モル)、96%水酸化ナトリウム0.52g(0.0125モル)、NMP2.56kg(25.9モル)、ジハロゲン化芳香族化合物(p−DCB)37.7g(0.255モル)を仕込み、反応容器を窒素ガス下に密封した。
240rpmで撹拌しながら、室温から200℃まで約2時間かけて昇温後、1℃/分の速度で220℃まで昇温し、この温度で10時間保持して反応させた。その後、室温付近まで急冷して反応容器から内容物を回収した。得られた内容物についてイオンクロマトグラフィーによる分析を行い、スルフィド化剤の転化率を算出したところ76%と算出された。また、p−DCBの転化率を算出したところ74%と算出された。
内容物を2kg分取し、8kgのイオン交換水で希釈、70℃で30分攪拌したのち、ガラスフィルターを用いて吸引濾過し、ケークを回収した。得られたケークをイオン交換水2kgに分散させて70℃で30分攪拌したのち同様に濾過を行った。ついでケークを0.5%酢酸水溶液2kgに分散させて70℃で30分攪拌したのち同様に濾過を行った。得られたケークを再度イオン交換水2kgに分散させて70℃で30分攪拌したのち同様に濾過を行った。得られた含水ケークを真空乾燥機70℃で一晩乾燥し、乾燥ケークを得た。
得られたPPSプレポリマーを用い、加熱時間を2時間とした以外は実施例1と同様の操作でPPSプレポリマーの加熱重合を行った。
特許文献5の方法、具体的には、有機極性溶媒量がスルフィド化剤1モル当たり1.25リットル以上の条件で原料混合物を反応させて得られた反応混合物から環式PPSを単離精製し、PPS含有量が50重量%以上のPPSプレポリマーを回収する方法において、PPSプレポリマーと酸を接触させて回収し、得られたPPSプレポリマーを加熱重合した例を示す。
比較例4と同様の方法で反応混合物を調製し、この反応混合物を2000g分取し、撹拌機付きのガラス製容器に仕込んだ。この反応混合物を撹拌しながら窒素バブリングを行った後、ヒーターで100℃に加熱した。次いで、加圧濾過器(平均細孔直径10μmのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製メンブレンフィルターをセット)の内部を窒素置換した後、タンク部分をバンドヒーターにて100℃に調温した。100℃に加熱した反応混合物を加圧濾過器のタンクに仕込み、密閉して窒素置換後、窒素で0.1MPaに加圧した。この加圧状態のまま液取りバルブを開放し、タンク下部から濾液を回収した。得られた濾液をHPLC測定により分析したところ、環式PPSが0.55重量%の濃度で含まれることがわかった。この濾液についてエバポレーターによる濃縮を実施して環式PPS濃度を5重量%に調整した。上記の濃縮した濾液を100g量り取り、窒素雰囲気下で撹拌しながら80℃に加熱した。次いで、チューブポンプを用いて0.5%酢酸水溶液25gを25分かけてゆっくりと液中に加えたところ、白色の固形分が析出した。この白色の固形分を、ガラスフィルターを用いて吸引濾過して回収し、次いで、得られたケークを80gの水に分散させ80℃で15分撹拌した後、再びガラスフィルターで吸引濾過する水洗操作を計3回繰り返した。得られた固形分を70℃の真空乾燥機で10時間乾燥し乾燥固体としてPPSプレポリマーを得た。
得られたPPSプレポリマーを用いた以外は実施例1と同様の操作でPPSプレポリマーの加熱重合を行った。
汎用の溶液重合PPSの製造例を示す。
攪拌機を具備したステンレス製のオートクレーブに蒸留用の装置とアルカリトラップを接続しておき、48重量%の水硫化ナトリウム水溶液117g(水硫化ナトリウムとして1.00モル)、48重量%の水酸化ナトリウム水溶液86.2g(水酸化ナトリウムとして1.04モル)、酢酸ナトリウム7.36g(0.0900モル)、NMP164g(0.159リットル)を仕込み、反応容器内を十分に窒素置換した。
120℃から270℃まで約2時間かけて反応容器内を昇温し、さらに275℃で70分間保持して反応させた。反応終了後、室温付近まで冷却して反応容器から内容物を回収した。
得られた湿潤状態の固形分の一部を分取して、温水を用いた洗浄を十分に行った後に乾燥し乾燥固体を得た。この乾燥固体について赤外分光分析を行った結果、これはPPSであることがわかった。
Claims (6)
- 下記(I)〜(III)を満たすポリアリーレンスルフィドプレポリマーを、溶媒の非存在下、ポリアリーレンスルフィドプレポリマーの融点以上の温度で加熱重合することにより得られるポリアリーレンスルフィドの、重量平均分子量を数平均分子量で除した多分散度が2.5超、5.0以下であるポリアリーレンスルフィドの製造方法。
(I)重量平均分子量が3,000以上、20,000未満
(II)環式ポリアリーレンスルフィド含有量が5重量%以上、50重量%未満
(III)340℃で60分加熱した際に発生した揮発成分をイオン交換水に通気したときに、イオン交換水に捕集される塩化物イオン量が、ポリアリーレンスルフィドプレポリマーの重量基準で50ppm以上、5,000ppm以下 - 加熱重合を300℃以上の温度で行う請求項1に記載のポリアリーレンスルフィドの製造方法。
- 加熱重合を非酸化性ガス雰囲気下もしくは減圧下で行う請求項1または2に記載のポリアリーレンスルフィドの製造方法。
- 加熱重合により得られるポリアリーレンスルフィドの重量平均分子量が20,000以上である請求項1〜3のいずれか一項に記載のポリアリーレンスルフィドの製造方法。
- 加熱重合により得られるポリアリーレンスルフィドの、下記式(1)で表される加熱時の重量減少率が0.18%以下である請求項1〜4のいずれか一項に記載のポリアリーレンスルフィドの製造方法。
△Wr=(W1−W2)/W1×100・・・(1)
ここで△Wrは重量減少率(%)であり、常圧の窒素雰囲気下で50℃から330℃以上の任意の温度まで昇温速度20℃/分で熱重量分析を行った際の、100℃到達時点の試料重量(W1)と330℃到達時の試料重量(W2)から求められる値である。 - 加熱重合により得られるポリアリーレンスルフィドの降温結晶化温度が220℃以上である請求項1〜5のいずれか一項に記載のポリアリーレンスルフィドの製造方法。
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