JP2018199748A - 環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法 - Google Patents

環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法 Download PDF

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尚人 熊谷
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智幸 小田島
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俊輔 堀内
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  • Polymers With Sulfur, Phosphorus Or Metals In The Main Chain (AREA)

Abstract

【課題】工業的に有用な環式ポリアリーレンスルフィドを経済的かつ短時間で効率よく高純度で製造する方法を提供することを課題としている。
【解決手段】
少なくとも線状ポリアリーレンスルフィド(a)、スルフィド化剤(b)、有機極性溶媒(c)を含み、スルフィド化剤(b)のイオウ成分1モルあたり0.05モル以下のジハロゲン化芳香族化合物(d)を含む原料混合物であって、原料混合物中のアリーレン単位が原料混合物中のイオウ成分1モル当たり0.9モル以上1.0モル未満である原料混合物を加熱して反応(I)を行って、アリールチオラート化合物の含有量が、アリーレン単位1モル当たり0.005モル未満である反応生成物(I)を得て、
次いで、得られた反応生成物(I)に対しジハロゲン化芳香族化合物(d)を追加して、イオウ成分1モル当たりのアリーレン単位が1.0モル以上2.0モル以下で、かつ有機極性溶媒量がイオウ成分1モル当たり1.25リットル以上50リットル以下である反応混合物(II)を調製した後、加熱して環式ポリアリーレンスルフィドを得る反応(II)を行う環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法に関する。より詳しくは環式オリゴアリーレンスルフィドを経済的かつ簡易な方法で効率よく高純度で製造する方法に関する。
芳香族環式化合物はその環状であることから生じる特性に基づく高機能材料や機能材料への応用展開可能性、例えば包接能を有する化合物としての特性や、高分子量直鎖状高分子の合成のための有効なモノマーとしての活用など、その構造に由来する特異性で近年注目を集めている。環式ポリアリーレンスルフィド(以下、ポリアリーレンスルフィドをPASと略する場合もある)も芳香族環式化合物の範疇に属し、上記同様に注目に値する化合物である。
汎用的な原料からの環式PASの製造方法として、ジハロゲン化芳香族化合物としてp−ジクロロベンゼンと、アルカリ金属硫化物として硫化ナトリウムを有機極性溶媒であるN−メチルピロリドン中で反応させ、ついで加熱減圧下で溶媒を除去後、水で洗浄する事で得られたポリフェニレンスルフィドを、塩化メチレンで抽出して得られた抽出液の飽和溶液部分から回収する方法が開示されている(例えば特許文献1参照。)。
また、汎用的な原料から収率良く環式PASを製造する方法としては、スルフィド化剤とジハロゲン化芳香族化合物を、スルフィド化剤のイオウ成分1モル当たり1.25リットル以上の有機極性溶媒中で反応させる方法が開示されている(例えば特許文献2参照。)。
また、線状PASとスルフィド化剤、ジハロゲン化芳香族化合物を反応混合物中のイオウ成分1モル当たり1.25リットル以上の有機極性溶媒中で加熱して反応させる方法が開示されている(例えば特許文献3参照。)。この方法では、線状PASを原料に用いることで使用するスルフィド化剤の量を低減でき、この効果で投入スルフィド化剤に対する環式PASの収率が向上し、効率よく環式PASを得ることができる。
また、線状PASとスルフィド化剤を反応させて末端にチオラート基を有するPASオリゴマーを生成させ、次いでジハロゲン化芳香族化合物を追加して反応させることで環式PASを製造する方法が開示されている(例えば特許文献4参照。)。この方法では、スルフィド化剤とジハロゲン化芳香族化合物が直接反応して線状PASとなる反応を抑制できるため、環式PASを高収率で得ることができる。
また、線状PASとスルフィド化剤を反応させる際、イオウ成分1モル当たりのアリーレン単位を0.1モル以上0.9モル未満とすることで、アリーレン単位1モルに対するアリールチオラート化合物の含有量が0.005モル未満である反応生成物を合成し、そこにジハロゲン化芳香族化合物を加えてからイオウ成分1モル当たり1.25リットル以上の有機極性溶媒中で加熱して反応させる方法が開示されている(例えば特許文献5参照。)。この方法では、アリールチオラート化合物がPASオリゴマーと反応して不純物を生成することを回避でき、環式PASを高純度で得ることができる。
また、線状PASを原料に用いる類似の発明としては、PASにアルカリ金属硫化物を作用させて解重合することにより得られる少なくとも一方の末端にチオラート基を有するPASオリゴマーと、ジハロゲン化芳香族化合物を高濃度条件で重合する方法が開示されている(例えば特許文献6参照。)
特開平05−163349号公報(第7頁) 特開2009−30012号公報(特許請求の範囲) 国際公開第2008/105438号 (特許請求の範囲) 特開2011−068885号公報(特許請求の範囲) 特開2013−136721号公報(特許請求の範囲) 特開平04−7334号公報
しかしながら、特許文献1の方法では、生成物の大部分が高分子量ポリフェニレンスルフィドであり、環式PASが極微量(収率1%未満)しか得られなかった。
また、特許文献2の方法では、投入モノマーに対する環式PASの収率が低く、また多量の塩が副生する点などから、改善が望まれていた。
また、特許文献3の方法では、線状PAS、スルフィド化剤、ジハロゲン化芳香族化合物を一度に反応させるため、環式PASの生成反応と線状PASの生成反応が競争する傾向があり、環式PAS生成効率のさらなる向上が求められていた。
また、特許文献4の方法では、得られる反応液に低分子量の不純物が含まれることがあり、これら不純物の低減が求められていた。
また、特許文献5の方法では、投入したスルフィド化剤に対する環式PASの収率にさらなる改善が求められていた。
また、特許文献6の方法では、PASの改質を目的としており、環式PASを収率よく製造する方法は何ら記載されていない。
そこで本発明では、前記従来技術の課題を解決し、環式PASを経済的かつ簡易な方法で効率よく高純度で製造する方法を提供することを目的とする。
本発明は上記課題を解決するため以下の特徴を有する環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法を提供する。
[1]少なくとも線状ポリアリーレンスルフィド(a)、スルフィド化剤(b)、有機極性溶媒(c)を含み、スルフィド化剤(b)のイオウ成分1モルあたり0.05モル以下のジハロゲン化芳香族化合物(d)を含む原料混合物であって、原料混合物中のアリーレン単位が原料混合物中のイオウ成分1モル当たり0.9モル以上1.0モル未満である原料混合物を加熱して反応(I)を行って、アリールチオラート化合物の含有量が、アリーレン単位1モル当たり0.005モル未満である反応生成物(I)を得て、
次いで、得られた反応生成物(I)に対しジハロゲン化芳香族化合物(d)を追加して、イオウ成分1モル当たりのアリーレン単位が1.0モル以上2.0モル以下で、かつ有機極性溶媒量がイオウ成分1モル当たり1.25リットル以上50リットル以下である反応混合物(II)を調製した後、加熱して環式ポリアリーレンスルフィドを得る反応(II)を行う環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法。
本発明によれば、環式PASを、効率よく高純度で製造する方法が提供できる。より詳しくは、線状PASとスルフィド化剤の反応において、線状PASとスルフィド化剤の比をある特定の比率に制御することで、その後ジハロゲン化芳香族化合物を加えて加熱した時に、投入したスルフィド化剤に対する環式PAS収率が著しく向上する効果が得られる。また、線状PASとスルフィド化剤の反応において、アリールチオラート化合物の副生を抑制することで、続くジハロゲン化芳香族化合物との反応の際に副反応の進行を抑えることができ、得られる環式PASの純度が向上する。従来知られている技術では、「投入したスルフィド化剤に対する収率の向上」と「環式PASの純度向上」を両立することが困難であったが、本発明の好ましい態様で環式PASを製造することで、上記を両立することが可能となった。
以下に、本発明実施の形態を説明する。
(1)スルフィド化剤
本発明で用いられるスルフィド化剤とは、ジハロゲン化芳香族化合物にスルフィド結合を導入できるもの、および/またはアリーレンスルフィド結合に作用してアリーレンチオラートを生成するものであれば良く、例えばアルカリ金属硫化物、アルカリ金属水硫化物、および硫化水素が挙げられる。
アルカリ金属硫化物の具体例としては、例えば硫化リチウム、硫化ナトリウム、硫化カリウム、硫化ルビジウム、硫化セシウムおよびこれら2種以上の混合物を挙げることができ、なかでも硫化リチウムおよび/または硫化ナトリウムが好ましく、硫化ナトリウムがより好ましく用いられる。これらのアルカリ金属硫化物は、水和物または水性混合物として、あるいは無水物の形で用いることができる。なお、水性混合物とは水溶液、もしくは水溶液と固体成分の混合物、もしくは水と固体成分の混合物のことをさす。一般的に入手できる安価なアルカリ金属硫化物は水和物または水性混合物であるので、このような形態のアルカリ金属硫化物を用いることが好ましい。
アルカリ金属水硫化物の具体例としては、例えば水硫化リチウム、水硫化ナトリウム、水硫化カリウム、水硫化リチウム、水硫化ルビジウム、水硫化セシウムおよびこれら2種以上の混合物を挙げることができ、なかでも水硫化リチウムおよび/または水硫化ナトリウムが好ましく、水硫化ナトリウムがより好ましく用いられる。
また、アルカリ金属水硫化物とアルカリ金属水酸化物から、反応系中で調製されるアルカリ金属硫化物も用いることができる。また、あらかじめアルカリ金属水硫化物とアルカリ金属水酸化物を接触させて調製したアルカリ金属硫化物を用いることもできる。これらのアルカリ金属水硫化物およびアルカリ金属水酸化物は水和物または水性混合物として、あるいは無水物の形で用いることができ、水和物または水性混合物が入手のし易さ、コストの観点から好ましい。
さらに、水酸化リチウム、水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属水酸化物と硫化水素から反応系中で調製されるアルカリ金属硫化物も用いることができる。また、あらかじめ水酸化リチウム、水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属水酸化物と硫化水素を接触させて調製したアルカリ金属硫化物を用いることもできる。硫化水素は気体状、液体状、水溶液状のいずれの形態で用いても差し障り無い。
本発明において、スルフィド化剤の量は、脱水操作などにより反応(I)を行う前にスルフィド化剤の一部損失が生じる場合には、実際の仕込み量から当該損失分を差し引いた残存量を意味するものとする。
なお、スルフィド化剤と共に、アルカリ金属水酸化物および/またはアルカリ土類金属水酸化物を併用することも可能である。アルカリ金属水酸化物の具体例としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウムが挙げられ、アルカリ土類金属水酸化物の具体例としては、例えば水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウムが挙げられるが、なかでも、入手容易性の観点で水酸化ナトリウムが好ましく用いられる。なお、これらは単独で用いても良く、2種以上の混合物として用いても良い。また、これら水酸化物は、固体状態、水溶液の状態など、どのような形状のものも使用できる。
スルフィド化剤としてアルカリ金属水硫化物を用いる場合には、アルカリ金属水酸化物および/またはアルカリ土類金属水酸化物を同時に使用することが特に好ましく、この使用量の下限としては、加えるアルカリ金属水酸化物および/またはアルカリ土類金属水酸化物中に含まれる水酸化物イオン相当の量が、用いるアルカリ金属水硫化物のイオウ成分1モル当たり0.95モル以上となる量が好ましく例示でき、1.00モル以上がより好ましく、1.10モル以上がさらに好ましい。一方、使用量の上限としては、加えるアルカリ金属水酸化物および/またはアルカリ土類金属水酸化物中に含まれる水酸化物イオン相当の量が、用いるアルカリ金属水硫化物のイオウ成分1モル当たり2.50モル以下となる量が好ましく例示でき、2.00モル以下がより好ましい。上記好ましい範囲とすることで、後述する反応(I)でのアリールチオラート化合物の副生、およびその他副反応の進行が抑制できる傾向にある。反応(I)で副生するアリールチオラート化合物は、使用するアルカリ金属水酸化物および/またはアルカリ土類金属水酸化物に含まれる水酸化物イオン相当の量が多ければ多いほど低減できる傾向にある。この理由は明らかでないが、ひとつには、反応(I)におけるアリールチオラート化合物の副生は系内のチオール基の数に比例して起こりやすく、系内の塩基性度を高く維持しておくことでチオール基をチオラートアニオンの状態に維持できるため、アリールチオラート化合物が生成しにくい、という理由が考えられる。一方、使用量を多くしすぎると、今度は別の副反応が起こりやすくなったり、余分なアルカリ金属水酸化物の含有によって環式PAS回収段階における反応液の取り扱いが難しくなったりするため、環式PAS製造効率における総合的なバランスを考慮した場合には、アルカリ金属水酸化物および/またはアルカリ土類金属水酸化物の使用量は、上記した範囲が好ましい。また、スルフィド化剤として硫化水素を用いる場合も、アルカリ金属水酸化物および/またはアルカリ土類金属水酸化物を同時に使用することが特に好ましく、こちらも同様の理由から、アルカリ金属水酸化物および/またはアルカリ土類金属水酸化物の使用量の下限としては、加えるアルカリ金属水酸化物および/またはアルカリ土類金属水酸化物中に含まれる水酸化物イオン相当の量が、硫化水素1モル当たり1.90モル以上となる量が好ましく例示でき、2.00モル以上がより好ましく、2.20モル以上がさらに好ましい。一方、使用量の上限としては、加えるアルカリ金属水酸化物および/またはアルカリ土類金属水酸化物中に含まれる水酸化物イオン相当の量が、硫化水素1モル当たり5.00モル以下が好ましく例示でき、4.00モル以下がより好ましく、3.60モル以下がさらに好ましく、3.00モル以下がよりいっそう好ましく、2.50モル以下がことさら好ましい。
(2)ジハロゲン化芳香族化合物
本発明の環式PASの製造において使用されるジハロゲン化芳香族化合物としては、p−ジクロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、m−ジクロロベンゼン、p−ジブロモベンゼン、o−ジブロモベンゼン、m−ジブロモベンゼン、1−ブロモ−4−クロロベンゼン、1−ブロモ−3−クロロベンゼンなどのジハロゲン化ベンゼン、および1−メトキシ−2,5−ジクロロベンゼン、1−メチル−2,5−ジクロロベンゼン、1,4−ジメチル−2,5−ジクロロベンゼン、1,3−ジメチル−2,5−ジクロロベンゼン、3,5−ジクロロ安息香酸などのハロゲン以外の置換基をも含むジハロゲン化芳香族化合物などを挙げることができる。なかでも、p−ジクロロベンゼンに代表されるp−ジハロゲン化ベンゼンを主成分にするジハロゲン化芳香族化合物が好ましい。特に好ましくは、p−ジクロロベンゼンを80〜100モル%含むものであり、さらに好ましくは90〜100モル%含むものである。また、環式PAS共重合体を製造するために異なる2種以上のジハロゲン化芳香族化合物を組み合わせて用いることも可能である。
(3)線状ポリアリーレンスルフィド
本発明における線状PASとは、式、−(Ar−S)−の繰り返し単位を主要構成単位とする好ましくは当該繰り返し単位を80モル%以上含有する線状のホモポリマーまたは線状のコポリマーである。Arとしては下記の式(A)〜式(L)などであらわされる単位などがあるが、なかでも式(A)が特に好ましい。
(ただし、式中のR1,R2は水素、炭素数1から6のアルキル基、炭素数1から6のアルコキシ基、ハロゲン基から選ばれた置換基であり、R1とR2は同一でも異なっていてもよい。)
この繰り返し単位を主要構成単位とする限り、下記の式(M)〜式(P)などで表される少量の分岐単位または架橋単位を含むことができる。これら分岐単位または架橋単位の共重合量は、−(Ar−S)−の単位1モル当たり0〜1モル%の範囲であることが好ましい。
また、本発明における線状PASは上記繰り返し単位を含むランダム共重合体、ブロック共重合体およびそれらの混合物のいずれかであってもよい。
これらの代表的なものとして、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンスルフィドスルホン、ポリフェニレンスルフィドケトン、これらのランダム共重合体、ブロック共重合体およびそれらの混合物などが挙げられる。特に好ましいPASとしては、ポリマーの主要構成単位としてp−フェニレンスルフィド単位
を80モル%以上、特に90モル%以上含有するポリフェニレンスルフィド(以下、PPSと略すこともある)の他、ポリフェニレンスルフィドスルホン、ポリフェニレンスルフィドケトンが挙げられる。
本発明における各種線状PASの溶融粘度に特に制限は無いが、一般的な線状PASの溶融粘度としては0.1〜1000Pa・s(300℃、剪断速度1000/秒)の範囲が例示でき、0.1〜500Pa・sの範囲が入手の容易性の観点で好ましい範囲と言える。また、線状PASの分子量にも特に制限は無く、一般的なPASを用いることが可能でありこの様なPASの重量平均分子量としては5,000〜1,000,000が例示でき、7,500〜500,000が好ましく、10,000〜100,000がより好ましい。一般に重量平均分子量が低いほど有機極性溶媒への溶解性が高くなるため、反応に要する時間が短くできるという利点があるが、前述した範囲であれば本質的な問題なく使用が可能である。
このような線状PASの製造方法は特に限定はされず、いかなる製法によるものも使用することができるが、一般的な製造方法としては、例えば前述した特許文献2中でも記述されているスルフィド化剤とジハロゲン化芳香族化合物とを有機極性溶媒中で接触させる方法が挙げられる。また、PAS単体だけでなくPASを用いた成形品や成形屑、廃プラスチックやオフスペック品なども幅広く使用することが可能である。
また、一般的に環式PASの製造を目的とする方法では、目的物の環式PAS以外に線状PASも少なからず副生物として生成することが知られているが、本発明ではこの様な副生線状PASも問題なく原料に用いることが可能である。例えば前述した特許文献2に代表される、スルフィド化剤とジハロゲン化芳香族化合物とをスルフィド化剤のイオウ成分1モル当たり1.25リットル以上50リットル以下の有機極性溶媒を用いて、加熱して反応させて得られた環式PASと線状PASを含むPAS混合物から、環式PASを分離することによって得られた線状PASを用いる方法は、副生成物の有効利用の観点で好ましい方法と言える。また、前述した特許文献3に代表される線状PASとスルフィド化剤、ジハロゲン化芳香族化合物を原料混合物中のイオウ成分1モル当たり1.25リットル以上50リットル以下の有機極性溶媒を用いて、加熱して反応させて得られた環式PASと線状PASを含む混合物から、環式PASを分離することによって得られた線状PASを用いる方法も同様に好ましい方法と言える。
さらに、本発明の実施により生成する線状PAS、すなわち、少なくとも線状PAS(a)、スルフィド化剤(b)、有機極性溶媒(c)を含み、スルフィド化剤(b)のイオウ成分1モルあたり0.05モル以下のジハロゲン化芳香族化合物(d)を含む原料混合物であって、原料混合物中のアリーレン単位が原料混合物中のイオウ成分1モル当たり0.9モル以上1.0モル未満である原料混合物を加熱して反応(I)を行って、アリールチオラート化合物の含有量が、アリーレン単位1モル当たり0.005モル未満である反応生成物(I)を得て、次いで、得られた反応生成物(I)に対しジハロゲン化芳香族化合物(d)を追加して、イオウ成分1モル当たりのアリーレン単位が1.0モル以上2.0モル以下で、かつ有機極性溶媒がイオウ成分1モル当たり1.25リットル以上50リットル以下である反応混合物(II)を調製した後、加熱して反応(II)を行うことにより得られた環式PASと線状PASを含む混合物から、環式PASを分離することによって得られた線状PASを用いることは、ことさら好ましい方法である。
本発明の製造方法を採用することで、従来、環式PAS製造において副生していた線状PASを原料として再利用することが可能となり、環式PASの製造における線状PAS起因の廃棄物量を減らすことができる。さらに、原料であるスルフィド化剤に対する環式PASの収率の向上を可能とするという観点で本発明は意義の大きいものである。
なお、線状PASの形態に特に制限はなく、乾燥状態の粉末状、粉粒状、粒状、ペレット状でも良いし、反応溶媒である有機極性溶媒を含む状態で用いることも可能であり、また、本質的に反応を阻害しないその他成分を含む状態で用いることも可能である。この様なその他成分としては例えば無機フィラーやアルカリ金属ハロゲン化物が例示できる。ここで、アルカリ金属ハロゲン化物としては、アルカリ金属、すなわちリチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウムおよびセシウムとハロゲン、すなわちフッ素、塩素、臭素、ヨウ素およびアスタチンから構成されるいかなる組み合わせのものをも含み、具体例としては塩化リチウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、臭化リチウム、臭化ナトリウム、臭化カリウム、ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、フッ化セシウムなどが例示できるが、前述したスルフィド化剤とジハロゲン化芳香族化合物との反応によって生じるアルカリ金属ハロゲン化物が好ましく例示できる。一般的に入手が容易なスルフィド化剤およびジハロゲン化芳香族化合物の組み合わせから生じるアルカリ金属ハロゲン化物としては塩化リチウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、臭化リチウム、臭化ナトリウム、臭化カリウムおよびヨウ化ナトリウムが例示でき、塩化ナトリウム、塩化カリウム、臭化ナトリウム、臭化カリウムが好ましいものとして例示でき、塩化ナトリウムがより好ましいものである。また、無機フィラーやアルカリ金属ハロゲン化物を含む樹脂組成物の形態の線状PASを用いることも可能である。
(4)有機極性溶媒
本発明の環式PASの製造においては反応溶媒として有機極性溶媒を用いるが、中でも有機アミド溶媒を用いるのが好ましい。具体例としては、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、N−シクロヘキシル−2−ピロリドンなどのN−アルキルピロリドン類、N−メチル−ε−カプロラクタムなどのカプロラクタム類、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ヘキサメチルリン酸トリアミドなどに代表されるアプロチック有機溶媒、およびこれらの混合物などが、反応の安定性が高いために好ましく使用される。これらのなかでもN−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンがより好ましく用いられる。
(5)環式ポリアリーレンスルフィド
本発明における環式PASとは式、−(Ar−S)−の繰り返し単位を主要構成単位とする環式化合物であり、好ましくは当該繰り返し単位を80モル%以上含有する下記一般式(Q)のごとき化合物である。
ここでArとしては前記式(A)〜式(L)などであらわされる単位を例示できるが、なかでも式(A)〜式(C)が好ましく、式(A)および式(B)がより好ましく、式(A)が特に好ましい。
なお、環式PASにおいては前記式(A)〜式(L)などの繰り返し単位をランダムに含んでも良いし、ブロックで含んでも良く、それらの混合物のいずれかであってもよい。これらの代表的なものとして、環式ポリフェニレンスルフィド、環式ポリフェニレンスルフィドスルホン、環式ポリフェニレンスルフィドケトン、これらが含まれる環式ランダム共重合体、環式ブロック共重合体およびそれらの混合物などが挙げられる。特に好ましい環式PASとしては、主要構成単位としてp−フェニレンスルフィド単位
を80モル%以上、特に90モル%以上含有する環式ポリフェニレンスルフィド(以下、環式PPSと略すこともある)が挙げられる。
環式PASの前記(Q)式中の繰り返し数mに特に制限は無いが、2〜50が好ましく、3〜40がより好ましく、4〜30が更に好ましい範囲として例示できる。後述するように環式PASを含有するPASプレポリマーを高重合度体へ転化する場合には、環式PASが溶融解する温度以上に加熱して行うことが好ましいが、mが大きくなると環式PASの溶融解温度が高くなる傾向にあるため、PASプレポリマーの高重合度体への転化をより低い温度で行うことができるようになるとの観点でmを前記範囲にすることは有利となる。
また、環式PASは、単一の繰り返し数を有する単独化合物、異なる繰り返し数を有する環式PASの混合物のいずれでも良いが、異なる繰り返し数を有する環式PASの混合物の方が単一の繰り返し数を有する単独化合物よりも溶融解温度が低い傾向があり、異なる繰り返し数を有する環式PASの混合物の使用は前記した高重合度体への転化を行う際の温度をより低くできるため好ましい。
(6)アリールチオラート化合物
本発明におけるアリールチオラート化合物とは、式、(Ar−S)x M のごとき化合物である。ここで、x=1〜3であり、Mはカチオン性化学種である。Mは反応(I)の系内に存在するいずれかの成分に由来するものであり、反応を阻害しないその他成分を添加した場合にはその物質に由来するものであってもよい。Mはカチオン性化学種であれば単体イオンでも化合物イオンでもよく特に制限はないが、Mの例としては、例えばアルカリ金属イオンであるリチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、ルビジウムイオンおよびセシウムイオン、アルカリ土類金属イオンである水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウムなどが挙げられ、本発明の好ましいスルフィド化剤である水硫化ナトリウムを反応に用いた場合には、Mはナトリウムイオンとなる。また、Arとしては下記の式(R)〜式(Y)などで表される単位などがあるが、本発明の好ましいジハロゲン化芳香族化合物であるp−ジクロロベンゼンを反応に用いた場合には、Arは式(R)の構造となる。
(ただし、式中のR1,R2は水素、炭素数1から6のアルキル基、炭素数1から6のアルコキシ基から選ばれた置換基であり、R1とR2は同一でも異なっていてもよい。)
以上の定義から、アリールチオラート化合物としては、例えばナトリウムチオフェノラート、ナトリウムビフェニル−4−チオラート、ナトリウムナフタレン−1−チオラート、ナトリウムナフタレン−2−チオラート、ナトリウム4−フェノキシベンゼンチオラート、ナトリウム4−ベンゾフェノンチオラート、ナトリウム4−ベンジルベンゼンチオラートなどが例示できるが、本発明における好ましいスルフィド化剤である水硫化ナトリウムおよび好ましいジハロゲン化芳香族化合物であるp−ジクロロベンゼンを用いた場合には、ナトリウムチオフェノラートとなる。なお、上記したようなアリールチオラート化合物は一般に弱塩基性化合物であるため、酸処理することによりアリールチオールに変化しうる。したがって、反応系内の酸性度やその他条件次第では、アリールチオラート化合物は、少なくとも一部がアリールチオールとして存在することもある。本発明ではアリールチオラート化合物の量とは、系内に存在するアリールチオラート化合物とアリールチオールを合計した量とする。その定量方法としては様々な分析方法が考えられるが、本発明における反応生成物(I)中のアリールチオラート化合物の定性定量分析の方法は、反応生成物(I)を酸処理して系内のアリールチオラート化合物を全てアリールチオールに変換し、その含有成分をクロロホルム溶液に抽出したものについてガスクロマトグラフィーにより分析する。
(7)環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法
本発明では、少なくとも線状PAS(a)、スルフィド化剤(b)、有機極性溶媒(c)を含み、スルフィド化剤(b)のイオウ成分1モルあたり0.05モル以下のジハロゲン化芳香族化合物(d)を含む原料混合物であって、原料混合物中のアリーレン単位が原料混合物中のイオウ成分1モル当たり0.9モル以上1.0モル未満である原料混合物を加熱して反応(I)を行って、アリールチオラート化合物の含有量が、アリーレン単位1モル当たり0.005モル未満である反応生成物(I)を得て、
次いで、得られた反応生成物(I)に対しジハロゲン化芳香族化合物(d)を追加して、イオウ成分1モル当たりのアリーレン単位が1.0モル以上2.0モル以下で、かつ有機極性溶媒量がイオウ成分1モル当たり1.25リットル以上50リットル以下である反応混合物(II)を調製した後、加熱して環式ポリアリーレンスルフィドを得る反応(II)を行うことで環式PASを製造する。以下に反応(I)、反応(II)について詳述する。
(7−1)反応(I)の実施
反応(I)では、少なくとも線状PAS(a)、スルフィド化剤(b)、有機極性溶媒(c)を含み、スルフィド化剤(b)のイオウ成分1モルあたり0.05モル以下のジハロゲン化芳香族化合物(d)を含む原料混合物であって、原料混合物中のアリーレン単位が原料混合物中のイオウ成分1モル当たり0.9モル以上1.0モル未満である原料混合物を加熱して反応させ、アリールチオラート化合物の含有量が、アリーレン単位1モル当たり0.005モル未満である反応生成物(I)を得る。この反応生成物(I)中には少なくとも一方の末端にチオラート基を有するPASオリゴマーが含まれ、このPASオリゴマーを合成することが反応(I)の主な目的である。
反応(I)では、原料混合物中に少なくとも線状PAS(a)、スルフィド化剤(b)、有機極性溶媒(c)を含み、スルフィド化剤(b)のイオウ成分1モルあたり0.05モル以下のジハロゲン化芳香族化合物(d)をむことが必要であり、ジハロゲン化芳香族化合物(d)は含まなくてもよい。反応(I)の目的はスルフィド化剤を線状PASに作用させて、少なくとも一方の末端にチオラート基を有するPASオリゴマーを得ることにあるが、原料混合物中にジハロゲン化芳香族化合物(d)を含む場合、少なくとも一方の末端にチオラート基を有するPASオリゴマーの生成量が減少するため、続く反応(II)の実施後に得られる環式PASの収率が低下する傾向が見られる。したがって、少なくとも一方の末端にチオラート基を有するPASオリゴマーを効率よく得るために、原料混合物中のジハロゲン化芳香族化合物(d)は少ないことが好ましい。なお本発明の実施に際し、原料の線状PASに含まれるなどして、原料混合物中にジハロゲン化芳香族化合物(d)が微量混入する場合があるが、上記のようなジハロゲン化芳香族化合物(d)の反応での影響の程度を考慮し、原料混合物に含まれるジハロゲン化芳香族化合物(d)は、原料混合物中のスルフィド化剤のイオウ成分1モルに対し0.05モル以下となるような条件で反応を行う必要がある。ここで原料混合物に含まれるジハロゲン化芳香族化合物(d)は、原料混合物中のスルフィド化剤のイオウ成分1モルに対し0.03モル以下が好ましく、0.01モル以下がより好ましい。また、下限としては少ないほど好ましく、全く含まれないことが最も好ましい。
反応(I)では、原料混合物中のアリーレン単位が原料混合物中のイオウ成分1モル当たり0.9モル以上1.0モル未満の範囲である必要がある。原料混合物中のアリーレン単位が原料混合物中のイオウ成分1モル当たり0.9モル未満では、原料混合物中のアリーレン単位が原料混合物中のイオウ成分1モル当たり0.9モル以上1.0モル未満の範囲である場合に比較して、投入したスルフィド化剤の量に対する環式PASの収率が低下する傾向があり、効率よく環式PASを得ることができない。一方、本発明では、原料混合物中に少なくとも線状PASとスルフィド化剤を含む点、ジハロゲン化芳香族化合物がスルフィド化剤のイオウ成分1モルあたり0.05モル以下である点、本発明におけるスルフィド化剤とジハロゲン化芳香族化合物の定義などから、原料混合物中のアリーレン単位が原料混合物中のイオウ成分1モル当たり1.0モル以上になることはなく、上限は1.0モル未満である。ここで原料混合物中のアリーレン単位の好ましい範囲は、下限として、原料混合物中のイオウ成分1モル当たり0.92モル以上が好ましく、0.94モル以上がより好ましい。一方、上限としては、原料混合物中のイオウ成分1モル当たり0.999モル以下が好ましい。線状PASの使用量が上記の好ましい範囲では、反応(I)に次いで反応(II)を行った際に、投入したスルフィド化剤に対する環式PASの収率がより高まる傾向にある。
なお、ここで言う原料混合物中のイオウ成分のモル数とは、原料に用いる線状PASに含まれるイオウ成分および原料に用いるスルフィド化剤に含まれるイオウ成分のモル数の合計のことである。さらに線状PASに含まれるイオウ成分のモル数とは、線状PASの主要構成単位である式−(Ar−S)−の繰り返し単位のモル数のことである。例えば、重合度100の線状ポリフェニレンスルフィド1分子に含まれるイオウ成分のモル数は、100モルと計算する。なお、本発明の本質を損なわない限りは、線状PAS、スルフィド化剤以外にイオウ成分を含有する化合物を付加的に原料混合物中に存在させることも可能であるが、このような本発明の反応に対して実質的に作用しないイオウ含有化合物に由来するイオウ成分は考慮に入れない。
同様に、原料混合物中のアリーレン単位のモル数とは、原料に用いる線状PASの主要構成単位である式−(Ar−S)−の繰り返し単位のモル数のことである。このアリーレン単位のモル数は、PAS分子鎖のモル数を意味するのではなく、すべての線状PAS分子鎖中の「繰り返し単位」の数の合計モル数を意味している。例えば、重合度100の線状ポリフェニレンスルフィド1分子に含まれるアリーレン単位は、100モルと計算する。なお、本発明の本質を損なわない限りは、線状PAS以外に、スルフィド化剤と反応しないアリーレン単位含有化合物を付加的に原料混合物中に存在させることも可能であるが、このような本発明の反応に対して実質的に作用しないアリーレン単位含有化合物に由来するアリーレン単位は考慮に入れない。
本発明では、上記の原料混合物を加熱して反応(I)を行って反応生成物(I)を合成するが、得られた反応生成物(I)中のアリールチオラート化合物の含有量は、反応生成物(I)中のアリーレン単位1モルに対し0.005モル未満である必要がある。反応生成物(I)中のアリールチオラート化合物の含有量が0.005モル以上である場合、続く反応(II)において、アリールチオラート化合物の作用により、環式PASの収率および純度が低下する。ここで、反応生成物(I)中のアリールチオラート化合物の含有量の上限としては、反応生成物(I)中のアリーレン単位1モルに対し0.003モル以下が好ましく、0.001モル以下がより好ましい。また、下限としては少ないほど好ましく、アリールチオラート化合物が全く含まれないことが最も好ましい。反応生成物(I)中のアリールチオラート化合物の含有量が上記の好ましい範囲では、続く反応(II)の実施後により収率よく環式PASが得られる傾向があるとともに、本発明の好ましい回収方法で環式PASを回収した場合には、より高純度で環式PASが得られる傾向がある。
なお、ここで言う反応生成物(I)中のアリーレン単位のモル数とは、反応生成物(I)中に含まれる主要構成単位である式−(Ar−S)−の繰り返し単位のモル数のことである。例えば重合度100の線状ポリフェニレンスルフィド1分子を原料に用いて反応(I)を行った場合、反応生成物(I)に含まれるアリーレン単位は100モルと計算する。
なお、本発明における反応生成物(I)中に含まれるアリールチオラート化合物の定量は、前述の通り、酸処理後にガスクロマトグラフィー分析を行うことで、アリールチオールとして定量している。
反応(I)における加熱温度(以下、加熱して反応させる温度を反応温度とも呼ぶ)の好ましい範囲は、原料混合物を構成する線状PAS、スルフィド化剤、有機極性溶媒の種類、量によって多様化するため一意的に決めることはできないが、好ましい下限としては100℃以上が例示でき、より好ましくは150℃以上、さらに好ましくは200℃以上が例示できる。また、好ましい上限としては250℃未満が例示でき、より好ましくは240℃以下、さらに好ましくは235℃以下が例示できる。このような好ましい温度範囲では反応(I)の主目的である末端にチオラート基を有するPASオリゴマーの生成反応の速度を大きく損なうことなく、アリールチオラート化合物の生成量を抑えられる傾向にある。また、温度の制御方法としては、一定温度で行う方法、段階的に温度を上げていく方法、あるいは連続的に温度を変化させていく方法のいずれを採用してもかまわない。
上述した温度範囲が、原料混合物の常圧における還流温度を超える温度であった場合は、反応(I)における加熱を、常圧を超える圧力下で行うことで目的の反応温度まで高めることも好ましい方法である。なお、常圧とは大気の標準状態近傍における圧力のことであり、約25℃近傍の温度、絶対圧で101kPa近傍の大気圧条件のことである。また、還流温度とは原料混合物の液体成分が沸騰と凝縮を繰り返している状態の温度である。
反応(I)における反応時間の好ましい範囲についても、温度同様、原料混合物を構成する線状PAS、スルフィド化剤、有機極性溶媒の種類、量によって多様化するため一意的に決めることはできないが、下限としては0.01時間以上が例示でき、好ましくは0.1時間以上が例示できる。また、上限としては25時間以内が例示でき、好ましくは10時間以内、より好ましくは4時間以内が例示できる。このような好ましい反応時間とすることで、反応(I)の主目的であるチオラート基を有するPASオリゴマーの生成反応が十分に進行し、アリールチオラート化合物の生成量も抑えられる傾向にある。
本発明において、原料混合物中の有機極性溶媒の量に制限はないが、好ましい下限としては、原料混合物中のイオウ成分1モル当たり0.2リットル以上が例示でき、0.35リットル以上がより好ましく、0.5リットル以上がさらに好ましく例示できる。また、好ましい上限としては、20リットル以下が例示でき、15リットル以下がより好ましく例示できる。原料混合物中の有機極性溶媒量が上記の好ましい範囲では、反応(I)を実施した際に、線状PASが十分に溶解できるため原料の消費率が増大しやすく、反応も短時間で完結する傾向がある。また、原料混合物中の有機極性溶媒量が上述した下限に近いほど反応(I)を効率よく短時間で行える傾向にあり、上限に近いほどアリールチオラート化合物の副生が抑制される傾向にある。したがって、有機極性溶媒の使用量について、環式PASの製造効率を重視した場合には上記の好ましい範囲内でより少なくすることが好ましく、逆に環式PASの純度を向上すべくアリールチオラート化合物の副生抑制を重視する場合にはより多くすることが好ましい。なお、ここで言う溶媒使用量は常温常圧下における溶媒の体積を基準とする。
また、原料混合物中の水分量には特に制限はないが、本発明における好ましいスルフィド化剤であるアルカリ金属硫化物は、水和物または水性混合物としての入手が容易であるため、このような形態のアルカリ金属硫化物を用いた場合、原料混合物中に水分が含まれる場合が多い。その際、原料混合物中の水分量としては、上限として、原料混合物中のイオウ成分1モル当たり6.0モル以下である場合が多く、下限として、原料混合物中のイオウ成分1モル当たり0.05モル以上である場合が多いが、水分量が上記範囲にある場合、反応液や反応に用いた反応器への着色物の付着が抑制できる傾向があり、このことは環式PASの品質が向上するのみならず、反応器の洗浄作業の軽減されるため好ましい傾向と言える。
なお、本発明における原料混合物中の水分量とは、反応系に仕込んだ線状PAS、スルフィド化剤、有機極性溶媒、およびジハロゲン化芳香族化合物、さらにはその他成分を仕込む場合にはその成分も含め、各成分に含まれて導入された水分量の総和を意味し、あるいは脱水操作など付加的な操作により反応系から水が反応系外に除去される場合には前記水分量の総和から除去された水分量を差し引いた水分量を意味するものであり、上記諸成分の混合および反応過程で生成する水は考慮しない。
また、反応(I)では、少なくとも一方の末端にチオラート基を有するPASオリゴマーが生成するに伴って反応生成物(I)中の全PAS成分の重量平均分子量が低下するが、反応生成物(I)に含まれるポリアリーレンスルフィド成分の重量平均分子量の好ましい上限としては、重量平均分子量10,000未満が例示でき、8,000以下がより好ましい。一方、好ましい下限としては、重量平均分子量1,500以上が好ましく例示でき、2,000以上がより好ましい。上記の好ましい範囲では、反応(I)で副生するアリールチオラート化合物の量が低減できる傾向にあり、反応(II)を行った場合に効率よく環化が進行し、環式PAS収率が高くなる傾向がある。ここで、本発明における反応生成物(I)中の全PAS成分の重量平均分子量の分析は、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)の一種であるゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を行うことにより、ポリスチレン換算で算出した。なお、反応生成物(I)中の全PAS成分の回収方法は、反応(I)で得られた反応生成物(I)の一部を大過剰の水に分散させ、酸処理を行ってチオール末端の形態にした後に濾過を行い、ケーク成分として全PAS成分を回収し、次いでそれを乾燥することで全PAS成分を得た。
かくして得られた反応生成物(I)は、環化反応を阻害するアリールチオラート化合物の含有量が少ないため、続く反応(II)を行った場合に、環式PASが収率よく得られ、また、不純物も低減する傾向にある。以下では、反応(II)の実施について説明する。
(7−2)反応(II)の実施
反応(II)では、反応(I)で得られた反応生成物(I)に対しジハロゲン化芳香族化合物(d)を追加して、イオウ成分1モル当たりのアリーレン単位が1.0モル以上2.0モル以下で、かつ有機極性溶媒量がイオウ成分1モル当たり1.25リットル以上50リットル以下である反応混合物(II)を調製した後、加熱して反応させることで、環式PASおよび線状PASを合成する。
ここで、反応混合物(II)の調製では、反応生成物(I)にジハロゲン化芳香族化合物(d)を追加し、イオウ成分1モル当たり1.0モル以上2.0モル以下とする必要がある。ジハロゲン化芳香族化合物の追加量が、イオウ成分1モル当たり1.0モル未満である場合、チオラート基を有するPASオリゴマーが反応(II)を実施した後も残存しやすく、環式PASの収率が上がりにくい傾向がある。一方、ジハロゲン化芳香族化合物の追加量が、イオウ成分1モル当たり2.0モルを超える場合、低分子量の不純物成分が増大する傾向が見られる。ここで、ジハロゲン化芳香族化合物(d)の好ましい追加量としては、下限として、反応混合物(II)中のアリーレン単位がイオウ成分1モル当たり1.02モル以上となる追加量が例示でき、上限として、反応混合物(II)中のアリーレン単位がイオウ成分1モル当たり1.5モル以下となる追加量が例示でき、1.2モル以下となる追加量がより好ましく例示できる。反応(II)におけるジハロゲン化芳香族化合物(d)の追加量が上記の好ましい範囲では、反応(II)を行った際に、分子量の小さい線状PASの副生を抑えられ、本発明の好ましい回収方法で環式PASを回収した場合に環式PASが高純度で得られる傾向にある。
また、反応混合物(II)は、有機極性溶媒量がイオウ成分1モル当たり1.25リットル以上50リットル以下である必要がある。有機極性溶媒量がイオウ成分1モル当たり1.25リットル未満では、線状PAS、スルフィド化剤およびジハロゲン化芳香族化合物の反応によって生成する環式PASの収率が著しく低下する一方、副生する線状PAS量が増大するため、単位原料当たりの環式PASの生産性が低下する。一方、有機極性溶媒量がイオウ成分1モル当たり50リットルを超える場合は、環式PASの収率は上がるものの、反応容器の単位体積当たりの環式PASの生成量が低下し、また、反応に要する時間が長時間化する傾向がある。以上の問題を避けるため、反応混合物(II)中の有機極性溶媒量は、上記範囲に収める必要がある。
ここで、反応混合物(II)中の有機極性溶媒量の好ましい下限としては、1.5リットル以上が例示でき、2リットル以上がより好ましく例示できる。また、好ましい上限としては、20リットル以下が例示でき、15リットル以下がより好ましく例示できる。反応混合物(II)中の有機極性溶媒量が上記の好ましい範囲では、反応容器の単位体積当たりの環式PASの生成量が増大し、効率よく環式PASを製造できる。
反応(II)で反応混合物(II)を調製した後、加熱して反応させる温度は、常圧下の還流温度を超える温度で行うことが好ましい。この温度は、反応生成物(I)中の成分の種類、量、反応生成物(I)に含まれるPASオリゴマーの分子量などによって多様に変化するため一意的に決めることはできないが、下限として120℃以上が例示でき、170℃以上が好ましく、200℃以上がより好ましく、230℃以上がさらに好ましい。また、上限としては、350℃以下が例示でき、300℃以下が好ましく、270℃以下がより好ましい。このような好ましい温度範囲ではより高い反応速度が得られ、反応が均一に進行しやすく、環式PASの収率がより高まる傾向にある。また、反応は一定温度で行う方法、段階的に温度を上げていく方法、あるいは連続的に温度を変化させていく方法のいずれで行ってもかまわない。なおここで、常圧とは大気の標準状態近傍における圧力のことであり、約25℃近傍の温度、絶対圧で101kPa近傍の大気圧条件のことである。また、還流温度とは反応混合物(II)の液体成分が沸騰と凝縮を繰り返している状態の温度である。反応混合物(II)をこのような加熱状態にする方法としては、例えば反応混合物(II)を、常圧を超える圧力下で反応させる方法や、反応混合物(II)を密閉容器内で加熱する方法が例示できる。
また、反応(II)における反応時間の好ましい範囲についても、温度同様、反応生成物(I)に含まれるPASオリゴマーの分子量や、ジハロゲン化芳香族化合物、有機極性溶媒の種類、およびこれら成分の量あるいは反応温度に依存するので一概に規定できないが、下限としては0.05時間以上が例示でき、好ましくは0.1時間以上、より好ましくは0.5時間以上、さらに好ましくは1時間以上が例示できる。反応(II)における反応時間を上記した好ましい範囲とすることで、未反応の原料成分を十分に減少できる傾向にある。一方、上限としては10時間以内でも十分に反応が進行し、好ましくは6時間以内、より好ましくは3時間以内も採用できる。
なお本発明における、環式PASの収率とは、投入したスルフィド化剤に対する環式PASの収率のことである。これは、環式PASの製造において、原料混合物の調製に用いたスルフィド化剤のイオウ成分量に対して、実際に生成した環式PAS量の比率であり、100%であれば、見かけ上、投入したスルフィド化剤が線状PASにならずに、全て環式PASに転化したことを意味する。本発明の好ましい様態においては、この環式PASの収率が100%を大幅に超える結果が得られる場合が多い。従来の技術では、このように100%を超えるような環式PAS収率が得られる反応条件は見出されてこなかったが、今回、原料混合物中のアリーレン単位に対するイオウ成分の量がある特定の範囲とすることで環式PASの収率が100%を大幅に超えることを見出し、本発明の完成に至った。
ここで、本発明における環式PASの収率の算出方法としては、環式PAS標品について高速液体クロマトグラフィー分析を行って検量線を作成しておき、その検量線を利用して環式PASのピーク面積からから環式PAS含有量を算出し、原料混合物中に含まれるスルフィド化剤のイオウ成分が全て環式PASに転化すると仮定した場合の環式PAS収量に対する実際の環式PAS含有量として計算する。
ここで、本発明における環式PASの純度の評価は、以下で定義する不純物率で行う。不純物率とは、反応生成物について高速液体クロマトグラフィー分析を行い、その分析において検出されたピークを、環式PASに由来するピークとそれ以外に由来するピークに分類し、検出された全てのピークの検出面積に対する環式PAS以外に由来するピークの検出面積の割合(面積比)のことである。
このとき、環式PAS以外に由来するピークの成分は、主に低分子量の線状PASであることがわかっている。環式PASの製造では、このような低分子量の線状PASが不純物として副生するが、このような低分子量の線状PASは、その特性が環式PASや十分な分子量を有する線状PASとは異なり、例えば耐熱性に劣るため成形加工時など加熱した際にアウトガスの増大要因となったり、環式PASを後述するプレポリマーとして活用する際に、高分子量化を阻害する成分として作用するなど悪影響を生じたりする。よって、環式PASに占める低分子量の線状PAS量を減らすことは工業的に重要である。
(8)環式ポリアリーレンスルフィドの回収方法
本発明の環式PASの製造においては、前記した反応により得られた反応混合物から環式PASを分離回収することも可能である。反応により得られた反応混合物には環式PAS、線状PASおよび有機極性溶媒が含まれており、その他の成分として未反応のスルフィド化剤、ジハロゲン化芳香族化合物、水、副生塩などが含まれる場合もある。
この反応混合物から環式PASを回収する方法には特に制限はないが、例えば特許文献2に示される回収方法が例示できる。そのような方法を用いることで環式PASを簡便かつ高純度で回収することが可能である。また、本発明の効果により、反応混合物中に含まれる未反応のスルフィド化剤、ジハロゲン化芳香族化合物が従来の技術に比べて低減されているため、よりいっそう高純度な環式PASを得ることが可能である。
(9)本発明の環式ポリアリーレンスルフィドの特性
かくして得られた環式PASは、通常、環式PASを50重量%以上、好ましくは70重量%以上、より好ましくは80重量%以上含む純度の高いものであり、一般的に得られる線状のPASとは異なる特性を有する工業的にも利用価値の高いものである。また、本発明の製造方法により得られる環式PASは前記式(A)におけるmが単一ではなく、m=2〜50の異なるmを有する前記式(A)が得られやすいという特徴を有する。ここで好ましいmの範囲は3〜40、より好ましくは4〜30である。mがこの範囲の場合、後述するようにPASを得るための原料として環式PASを用いる場合に重合反応が進行しやすく、高分子量体が得られやすくなる傾向にある。この理由は現時点判然とはしないが、この範囲の環式PASは分子が環式であるがために生じる結合のゆがみが大きく、重合時に高分子量化が起こりやすいためと推測している。
なお、mが単一の環式PASは単結晶として得られるため、極めて高い融解温度を有するが、本発明では環式PASは異なるmを有する混合物が得られやすく、これにより環式PASの融解温度が低いという特徴があり、このことは例えば環式PASを溶融して用いる際の加熱温度を低くできるという優れた特徴を発現することになる。
(10)本発明の環式ポリアリーレンスルフィドを配合した樹脂組成物
本発明で得られた環式PASを各種樹脂に配合して用いることも可能であり、このような環式PASを配合した樹脂組成物は、溶融加工時のすぐれた流動性を発現する傾向が強く、また滞留安定性にも優れる傾向にある。なお、本発明で得られる環式PASを配合した樹脂組成物を製造する方法には特に制限はないが、例えば特許文献2に示される樹脂組成物の製造方法が例示できる。
(11)環式ポリアリーレンスルフィドの高重合度体への転化
本発明によって製造される環式PASは(9)に述べたごとき優れた特性を有するので、ポリマーを得る際のプレポリマーとして好適に用いることが可能である。なおここでプレポリマーとしては本発明の環式PAS製造方法で得られる環式PAS単独でも良いし、所定量の他の成分を含むものでも差し障り無いが、環式PAS以外の成分を含む場合は線状PASや分岐構造を有するPASなど、PAS成分であることが特に好ましい。このようなPASプレポリマーをポリマーへ変換する方法に特に制限はないが、例えば特許文献2に示されるPASプレポリマーからポリマーへの変換方法が例示できる。
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。これら例は例示的なものであって限定的なものではない。なお、以下に示す実施例では、アリールチオラート化合物はナトリウムチオフェノラートである。
<環式ポリフェニレンスルフィドの分析>
環式ポリフェニレンスルフィドの定性定量分析は高速液体クロマトグラフィーを用いて実施した。高速液体クロマトグラフィーの測定条件を以下に示す。
装置:島津株式会社製 LC−10Avpシリーズ
カラム:Mightysil RP−18 GP150−4.6(5μm)
検出器:フォトダイオードアレイ検出器(UV=270nm)
なお、高速液体クロマトグラフィーで成分分割した各成分の構造決定は、LC−MSによる分析、および分取LCでの分取物のMALDI−MS、NMR、IR測定により行い、繰り返し単位数4〜15の環式ポリフェニレンスルフィドが本条件の高速液体クロマトグラフィー測定により定性定量できることを確認した。
上記高速液体クロマトグラフィー分析において検出されたピークを、環式ポリフェニレンスルフィドに由来するピークとそれ以外に由来するピークに分類し、検出された全てのピークの検出面積に対する環式ポリフェニレンスルフィド以外に由来するピークの検出面積の割合(面積比)を、不純物率と定義し、環式ポリフェニレンスルフィドの純度を比較した。また、環式PAS標品について高速液体クロマトグラフィー分析を行って検量線を作成しておき、その検量線を利用して環式PASのピーク面積からから環式PAS含有量を算出し、原料混合物中に含まれるスルフィド化剤のイオウ成分が全て環式ポリフェニレンスルフィドに転化すると仮定した場合の環式ポリフェニレンスルフィド収量に対する実際の環式ポリフェニレンスルフィド含有量として環式ポリフェニレンスルフィドの収率を計算した。
<ナトリウムチオフェノラートの分析>
本発明におけるナトリウムチオフェノラートの定性定量分析は、反応生成物(I)を酸処理し、系内のナトリウムチオフェノラートを全てチオフェノールに変換し、その含有成分をクロロホルム溶液に抽出したものについてガスクロマトグラフィーを行うことにより、チオフェノールとして定量した。この定量値が、本発明で言うところのアリールチオラート化合物の量に等しい。ガスクロマトグラフィーの測定条件を以下に示す。
装置:島津株式会社製 GC−2010
カラム:J&W Scientific DB−5 0.32mm×30m(0.25μm)
検出器:水素炎イオン化検出器(FID法)。
上記ガスクロマトグラフィー分析で検出されたピークのうち、別途測定した標品の保持時間を参考にしてチオフェノールに対応するピークを特定し、そのピーク面積をもとに各成分の定量を実施した。なお以下では、簡単のため、「チオフェノール」の語を、チオフェノールおよびそのナトリウム塩であるナトリウムチオフェノラートの両方の意味で用いた。
<分子量測定>
本発明における反応生成物(I)中の全PAS成分の重量平均分子量の分析は、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)の一種であるゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を行うことにより、ポリスチレン換算で算出した。GPCの測定条件を以下に示す。
装置:センシュー科学 SSC−7100
カラム名:センシュー科学 GPC3506
溶離液:1−クロロナフタレン
検出器:示差屈折率検出器
カラム温度:210℃
プレ恒温槽温度:250℃
ポンプ恒温槽温度:50℃
検出器温度:210℃
流量:1.0mL/min
試料注入量:300μL (約0.2重量%)。
なお、反応生成物(I)中の全PAS成分の回収方法は、反応(I)で得られた反応生成物(I)の一部を大過剰の水に分散させ、酸処理を行ってチオール末端の形態にした後に濾過を行い、ケーク成分として全PAS成分を回収し、次いでそれを乾燥することで全PAS成分を得た。
[参考例1]
ここでは特許文献2を参考にして実施した線状ポリフェニレンスルフィドの製造、すなわちスルフィド化剤として水硫化ナトリウムおよび水酸化ナトリウム、ジハロゲン化芳香族化合物としてp−ジクロロベンゼン、有機極性溶媒としてN−メチル−2−ピロリドンを用い、スルフィド化剤のイオウ成分1モル当たり2.50リットルの有機極性溶媒中で水硫化ナトリウムと水酸化ナトリウムとp−ジクロロベンゼンとを加熱して反応させて得られた反応混合物を固液分離に処することで、環式ポリフェニレンスルフィドと線状ポリフェニレンスルフィドの分離を行い、溶媒と副生塩を含む固形分としての線状ポリフェニレンスルフィド(以下、湿潤状態の線状ポリフェニレンスルフィドと呼ぶ。)を得た例を示す。
攪拌機を具備したステンレス製オートクレーブに、48重量%の水硫化ナトリウム水溶液46.75g(水硫化ナトリウムとして0.40モル)、48重量%の水酸化ナトリウム水溶液35.00g(0.42モル)、NMP1000g(10.1モル)、およびp−ジクロロベンゼン(p−DCB)59.98g(0.41モル)を仕込み、反応容器内を十分に窒素置換した後、密封した。
400rpmで撹拌しながら、室温から200℃まで約1時間かけて反応容器内を昇温した。次いで200℃から250℃まで約30分かけて反応容器内を昇温した。さらに250℃で2時間保持して反応させた後、室温付近まで急冷して反応容器から内容物を回収した。
上記で得られた内容物、すなわち少なくとも環式ポリフェニレンスルフィド、線状ポリフェニレンスルフィド、N−メチル−2−ピロリドンおよび塩化ナトリウムを含む反応混合物をナスフラスコに仕込み、フラスコ内を十分に窒素置換した後、撹拌しながら100℃に調温し、加圧窒素を用いた熱時加圧濾過にて前記反応混合物の固液分離を行った。この操作により湿潤状態の固形分を得た。
得られた湿潤状態の固形分の一部を分取して、温水を用いた洗浄を十分に行った後に乾燥し乾燥固体を得た。この乾燥固体について赤外分光分析を行った結果、これは線状ポリフェニレンスルフィドであることがわかり、また、この乾燥固体についてGPC測定を行った結果、重量平均分子量はポリスチレン換算で11,000であることがわかった。
続いて、上記で得られた湿潤状態の線状ポリフェニレンスルフィドについて組成分析を行った。
湿潤状態の線状ポリフェニレンスルフィドに含まれるポリフェニレンスルフィド成分の分析方法は以下の通りである。湿潤状態の線状ポリフェニレンスルフィド4gをビーカーに量り取り、その10倍量の水を加え、80℃の水浴で30分間撹拌後、重量測定済みのガラスフィルターを用いて濾過した。フィルターオン成分を再びビーカーに取って、0.5重量%の酢酸水溶液50mLを加え、80℃の水浴で30分間撹拌後、ガラスフィルターを用いて濾過した。その後、もう一度フィルターオン成分をビーカーに取って水50mLを加え、80℃の水浴で30分間撹拌後、ガラスフィルターを用いて濾過した。最後に得られたフィルターオン成分を、ガラスフィルターごと100℃に加熱した真空乾燥器を用いて12時間以上乾燥した。得られたポリフェニレンスルフィド成分の重量を測定し、最初に量り取ったサンプル重量と比較することで、ポリフェニレンスルフィド成分の含有率を計算した。
湿潤状態の線状ポリフェニレンスルフィドに含まれるN−メチル−2−ピロリドン成分の分析方法は以下の通りである。湿潤状態の線状ポリフェニレンスルフィド1gを、重量測定済みのシャーレに量り取り、200℃に加熱した熱風乾燥器で6時間以上乾燥を行った。乾燥後に得られた固形分の重量を測定し、最初に量り取ったサンプル重量と比較することで、N−メチル−2−ピロリドン成分の含有率を計算した。
湿潤状態の線状ポリフェニレンスルフィドに含まれる未反応のp−ジクロロベンゼンは、ガスクロマトグラフィーにより定量した。
湿潤状態の線状ポリフェニレンスルフィドに含まれる塩化ナトリウム成分については、湿潤状態の線状ポリフェニレンスルフィド全量から上記各成分の合計を差し引くことで塩化ナトリウム含有率として算出した。
以上の分析から算出された湿潤状態の線状ポリフェニレンスルフィドの組成は、ポリフェニレンスルフィド成分として18.38重量%、N−メチル−2−ピロリドン成分として57.75重量%、p−ジクロロベンゼン成分として0.02重量%、塩化ナトリウム成分として23.85重量%であった。
[実施例1]
<反応(I)>
撹拌機付きオートクレーブに、参考例1で得られた湿潤状態の線状ポリフェニレンスルフィドを93.92g、48%水硫化ナトリウム水溶液を0.9811g、48%水酸化ナトリウム水溶液を1.400g、N−メチル−2−ピロリドンを356.2g仕込み、原料混合物とした。(原料混合物中の各成分の量は、線状ポリフェニレンスルフィド成分として0.1596モル、水硫化ナトリウム成分として0.00840モル、水酸化ナトリウム成分として0.0168モル、水分として0.0688モル、N−メチル−2−ピロリドン成分として0.400リットル、p−ジクロロベンゼン成分として0.00013モル、塩化ナトリウム成分として0.383モルであった。)原料混合物中のアリーレン単位は、原料混合物中のイオウ成分1モル当たり0.95モルであった。また、原料混合物に含まれるアルカリ金属水酸化物は、用いたアルカリ金属水硫化物のイオウ成分1モル当たり2.00モルであった。また、原料混合物に含まれるジハロゲン化芳香族化合物は、用いたスルフィド化剤のイオウ成分1モルに対し0.02モルであった。さらに、有機極性溶媒量は、原料混合物中のイオウ成分1モル当たり2.38リットルであった。
続いて、オートクレーブ内を十分に窒素置換して密封し、400rpmで撹拌しながら室温から200℃まで25分かけて昇温した。次いで200℃から230℃まで35分かけて昇温した後、230℃で15分間保持して反応(I)を行い、反応生成物(I)を得た。
<反応(II)>
反応(I)に引き続き、p−ジクロロベンゼン2.451g(0.0167モル)をN−メチル−2−ピロリドン20.52g(0.020リットル)に溶解させたものをオートクレーブ内に圧入し、反応混合物(II)を調製した。これにより反応混合物(II)中のアリーレン単位はイオウ成分1モル当たり1.05モルとなり、有機極性溶媒量はイオウ成分1モル当たり2.50リットルとなった。その後、内温を245℃とし、2時間保持して反応(II)を行った。反応(II)終了後、内温を室温近傍まで急冷してから内容物を回収した。
得られた反応生成物(II)を高速液体クロマトグラフィーにより分析した結果、原料混合物中に含まれるスルフィド化剤のイオウ成分が全て環式ポリフェニレンスルフィドに転化すると仮定した場合の環式ポリフェニレンスルフィドの収率を100%とすると、182%に相当する量の環式ポリフェニレンスルフィドが生成しており、不純物率(反応生成物(II)の高速液体クロマトグラフィー分析において検出された有機成分量を基準とする。以下同様。)は3.9%であった。
また、別途上記と同様にして反応(I)を行い、その後反応(II)は行わずに室温近傍まで急冷、回収し、得られた反応生成物(I)中に含まれるチオフェノールの量を、ガスクロマトグラフィーによって定量したところ、反応生成物(I)中のアリーレン単位1モルに対し0.0005モルのチオフェノールが含まれていることがわかった。さらに反応生成物(I)中の全PAS成分の重量平均分子量を測定したところMw=7,800であることがわかった。
このように、原料混合物中のアリーレン単位、および反応生成物(I)中のアリールチオラート化合物の量が本発明の好ましい範囲である場合、高収率かつ高純度の環式ポリフェニレンスルフィドが得られることがわかった。
[実施例2]
以下では、本発明の範囲の中で、実施例1よりも原料混合物中のアリーレン単位を減らした例について記載する。
原料混合物中のアリーレン単位をスルフィド化剤のイオウ成分1モルあたり0.91モルとした以外は実施例1と同様にして反応を実施した。得られた反応生成物(II)を高速液体クロマトグラフィーにより分析した結果、原料混合物中に含まれるスルフィド化剤のイオウ成分が全て環式ポリフェニレンスルフィドに転化すると仮定した場合の環式ポリフェニレンスルフィドの収率を100%とすると、139%に相当する量の環式ポリフェニレンスルフィドが生成しており、不純物率は4.0%であった。
また、別途上記と同様にして反応(I)を行い、その後反応(II)は行わずに室温近傍まで急冷、回収し、得られた反応生成物(I)中に含まれるチオフェノールの量を、ガスクロマトグラフィーによって定量したところ、反応生成物(I)中のアリーレン単位1モルに対し0.0009モルのチオフェノールが含まれていることがわかった。さらに反応生成物(I)中の全PAS成分の重量平均分子量を測定したところMw=5,000であることがわかった。
このように、原料混合物中のアリーレン単位、および反応生成物(I)中のアリールチオラート化合物の量が本発明の好ましい範囲である場合、高収率かつ高純度の環式ポリフェニレンスルフィドが得られることがわかった。
[実施例3]
以下では、本発明の範囲の中で、実施例1よりも原料混合物中のアリーレン単位を多くした例について記載する。
原料混合物中のアリーレン単位をスルフィド化剤のイオウ成分1モルあたり0.99モルとした以外は実施例1と同様にして反応を実施した。得られた反応生成物(II)を高速液体クロマトグラフィーにより分析した結果、原料混合物中に含まれるスルフィド化剤のイオウ成分が全て環式ポリフェニレンスルフィドに転化すると仮定した場合の環式ポリフェニレンスルフィドの収率を100%とすると、280%に相当する量の環式ポリフェニレンスルフィドが生成しており、不純物率は3.7%であった。
また、別途上記と同様にして反応(I)を行い、その後反応(II)は行わずに室温近傍まで急冷、回収し、得られた反応生成物(I)中に含まれるチオフェノールの量を、ガスクロマトグラフィーによって定量したところ、反応生成物(I)中のアリーレン単位1モルに対し0.0001モルのチオフェノールが含まれていることがわかった。さらに反応生成物(I)中の全PAS成分の重量平均分子量を測定したところMw=8,800であることがわかった。
このように、原料混合物中のアリーレン単位、および反応生成物(I)中のアリールチオラート化合物の量が本発明の好ましい範囲である場合、高収率かつ高純度の環式ポリフェニレンスルフィドが得られることがわかった。
[比較例1]
以下では、原料混合物中のアリーレン単位をスルフィド化剤のイオウ成分1モル当たり0.9モル未満とした例について記載する。
原料混合物中のアリーレン単位を0.85とした以外は実施例1と同様にして反応を実施した。得られた反応生成物(II)を高速液体クロマトグラフィーにより分析した結果、原料混合物中に含まれるスルフィド化剤のイオウ成分が全て環式ポリフェニレンスルフィドに転化すると仮定した場合の環式ポリフェニレンスルフィドの収率を100%とすると、94%に相当する量の環式ポリフェニレンスルフィドが生成しており、不純物率は4.7%であった。
また、別途上記と同様にして反応(I)を行い、その後反応(II)は行わずに室温近傍まで急冷、回収し、得られた反応生成物(I)中に含まれるチオフェノールの量を、ガスクロマトグラフィーによって定量したところ、反応生成物(I)中のアリーレン単位1モルに対し0.0015モルのチオフェノールが含まれていることがわかった。さらに反応生成物(I)中の全PAS成分の重量平均分子量を測定したところMw=2,900であることがわかった。
このように、原料混合物中のアリーレン単位がイオウ成分1モル当たり0.9モル未満である場合は、実施例1、2、3と比較して明らかに環式ポリフェニレンスルフィドの収率が低い結果であった。
[比較例2]
以下では、反応(I)の温度を250℃とすることで、反応(I)終了時の反応生成物(I)に含まれるアリールチオラート化合物の量がアリーレン単位1モル当たり0.005モル以上とした例について記載する。
反応(I)の温度を250℃とし、反応時間を30分とした以外は実施例2と同様の仕込みを行って反応を実施した。得られた反応生成物(II)を高速液体クロマトグラフィーにより分析した結果、原料混合物中に含まれるスルフィド化剤のイオウ成分が全て環式ポリフェニレンスルフィドに転化すると仮定した場合の環式ポリフェニレンスルフィドの収率を100%とすると、146%に相当する量の環式ポリフェニレンスルフィドが生成しており、不純物率は7.1%であった。
また、別途上記と同様にして反応(I)を行い、その後反応(II)は行わずに室温近傍まで急冷、回収し、得られた反応生成物(I)中に含まれるチオフェノールの量を、ガスクロマトグラフィーによって定量したところ、反応生成物(I)中のアリーレン単位1モルに対し0.0058モルのチオフェノールが含まれていることがわかった。さらに反応生成物(I)中の全PAS成分の重量平均分子量を測定したところMw=2,100であることがわかった。
このように、反応(I)終了時の反応生成物(I)に含まれるアリールチオラート化合物の量がアリーレン単位1モル当たり0.005モル以上である場合は、環式ポリフェニレンスルフィドの収率は実施例2と同程度であるが、不純物率が大幅に増大する結果であった。
[比較例3]
以下では、原料混合物中のアリーレン単位は本発明の好ましい範囲であるが、原料混合物中にp−ジクロロベンゼンを含んだ場合の例について記載する。
まず、原料混合物の調製時の仕込みを、以下のように変更し、かつ、反応(I)での温度を250℃、反応(I)での時間を2時間とした以外は実施例1と同様にして反応(I)を行った。すなわち、仕込み量として、参考例1で得られた湿潤状態の線状ポリフェニレンスルフィドを118.6g、48%水硫化ナトリウム水溶液を5.886g、48%水酸化ナトリウム水溶液を5.250g、N−メチル−2−ピロリドンを547.1g仕込み、原料混合物とした。(原料混合物中の各成分の量は、線状ポリフェニレンスルフィド成分として0.2016モル、水硫化ナトリウム成分として0.0504モル、水酸化ナトリウム成分として0.0630モル、水分として0.322モル、N−メチル−2−ピロリドン成分として0.600リットル、p−ジクロロベンゼン成分として0.0454モル、塩化ナトリウム成分として0.484モルであった。)原料混合物中のアリーレン単位は、原料混合物中のイオウ成分1モル当たり0.98モルであった。また、原料混合物に含まれるアルカリ金属水酸化物は、用いたアルカリ金属水硫化物のイオウ成分1モル当たり1.25モルであった。また、原料混合物に含まれるジハロゲン化芳香族化合物は、用いたスルフィド化剤のイオウ成分1モルに対し0.90モルであり、原料混合物中にジハロゲン化芳香族化合物が含まれている状態であった。さらに、有機極性溶媒量は、原料混合物中のイオウ成分1モル当たり2.38リットルであった。上記原料混合物を実施例1同様に加熱し、反応生成物(II)を得た。
続いて、反応混合物(II)の調製時の仕込みを、以下のように変更した以外は実施例1と同様にして反応(II)を行った。すなわち、仕込み量として、p−ジクロロベンゼン2.593g(0.0176モル)をN−メチル−2−ピロリドン30.78g(0.030リットル)に溶解させたものをオートクレーブ内に圧入し、反応混合物(II)を調製した。これにより反応混合物(II)中のアリーレン単位はイオウ成分1モル当たり1.05モルとなり、有機極性溶媒量はイオウ成分1モル当たり2.50リットルとなった。
上記反応混合物(II)を実施例1同様に加熱し、得られた反応生成物(II)を高速液体クロマトグラフィーにより分析した結果、原料混合物中に含まれるスルフィド化剤のイオウ成分が全て環式ポリフェニレンスルフィドに転化すると仮定した場合の環式ポリフェニレンスルフィドの収率を100%とすると、85%に相当する量の環式ポリフェニレンスルフィドが生成しており、不純物率は1.8%であった。
また、別途上記と同様にして反応(I)を行い、その後反応(II)は行わずに室温近傍まで急冷、回収し、得られた反応生成物(I)中に含まれるチオフェノールの量を、ガスクロマトグラフィーによって定量したところ、反応生成物(I)中にチオフェノールは検出されなかった。さらに反応生成物(I)中の全PAS成分の重量平均分子量を測定したところMw=7,400であることがわかった。
このように、原料混合物中のアリーレン単位は本発明の好ましい範囲であるが、原料混合物中にp−ジクロロベンゼンを含んだ場合は、不純物率は高いものの、実施例1、2、3と比較して明らかに環式ポリフェニレンスルフィドの収率が低い結果であった。
以上の結果をまとめて表1に示す。

Claims (7)

  1. 少なくとも線状ポリアリーレンスルフィド(a)、スルフィド化剤(b)、有機極性溶媒(c)を含み、スルフィド化剤(b)のイオウ成分1モルあたり0.05モル以下のジハロゲン化芳香族化合物(d)を含む原料混合物であって、原料混合物中のアリーレン単位が原料混合物中のイオウ成分1モル当たり0.9モル以上1.0モル未満である原料混合物を加熱して反応(I)を行って、アリールチオラート化合物の含有量が、アリーレン単位1モル当たり0.005モル未満である反応生成物(I)を得て、
    次いで、得られた反応生成物(I)に対しジハロゲン化芳香族化合物(d)を追加して、イオウ成分1モル当たりのアリーレン単位が1.0モル以上2.0モル以下で、かつ有機極性溶媒量がイオウ成分1モル当たり1.25リットル以上50リットル以下である反応混合物(II)を調製した後、加熱して環式ポリアリーレンスルフィドを得る反応(II)を行う環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法。
  2. 反応(I)における加熱温度が100℃以上250℃未満である請求項1に記載の環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法。
  3. 反応(II)における加熱温度が、常圧における反応混合物(II)の還流温度を超える温度である請求項1または2に記載の環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法。
  4. 反応(I)で得られた反応生成物(I)が、少なくとも一方の末端にチオラート基を有するPASオリゴマーを含み、かつ反応生成物(I)に含まれるポリアリーレンスルフィド成分の重量平均分子量が1,500以上10,000未満である請求項1から3のいずれかに記載の環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法。
  5. スルフィド化剤(b)とジハロゲン化芳香族化合物(d)とを有機極性溶媒(c)中で接触させることで線状ポリアリーレンスルフィド(a)を得、当該線状ポリアリーレンスルフィド(a)を含む原料混合物を用いて反応(I)を行う請求項1から4のいずれかに記載の環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法。
  6. スルフィド化剤(b)とジハロゲン化芳香族化合物(d)とをスルフィド化剤(b)のイオウ成分1モル当たり1.25リットル以上50リットル以下の有機極性溶媒(c)を用いて、加熱して反応させて環式ポリアリーレンスルフィドと線状ポリアリーレンスルフィドを含むポリアリーレンスルフィド混合物を得、当該ポリアリーレンスルフィド混合物から環式ポリアリーレンスルフィドを分離することによって線状ポリアリーレンスルフィド(a)を得、当該線状ポリアリーレンスルフィド(a)を含む原料混合物を用いて反応(I)を行う請求項1から4のいずれかに記載の環式ポリアリーレンスルフィド製造方法。
  7. 少なくとも線状ポリアリーレンスルフィド(a)、スルフィド化剤(b)、有機極性溶媒(c)を含み、スルフィド化剤(b)のイオウ成分1モルあたり0.05モル以下のジハロゲン化芳香族化合物(d)を含む原料混合物であって、原料混合物中のアリーレン単位がイオウ成分1モル当たり0.9モル以上1.0モル未満である原料混合物を加熱して反応(I)を行って、アリールチオラート化合物の含有量が、アリーレン単位1モル当たり0.005モル未満である反応生成物(I)を得て、次いで、得られた反応生成物(I)に対しジハロゲン化芳香族化合物(d)を追加して、イオウ成分1モル当たりのアリーレン単位が1.0モル以上2.0モル以下で、かつ有機極性溶媒量がイオウ成分1モル当たり1.25リットル以上50リットル以下である反応混合物(II)を加熱して環式ポリアリーレンスルフィドを得る反応(II)を行うことにより環式ポリアリーレンスルフィドと線状ポリアリーレンスルフィドを含むポリアリーレンスルフィド混合物を得、当該ポリアリーレンスルフィド混合物から環式ポリアリーレンスルフィドを分離することによって得られた線状ポリアリーレンスルフィド(a)を得、当該線状ポリアリーレンスルフィド(a)を含む原料混合物を用いて反応(I)を行う請求項1から4のいずれかに記載の環式ポリアリーレンスルフィド製造方法。
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