JP2016108488A - 微粒子状高分岐型ポリアリーレンスルフィド及びその製造方法、及び該ポリアリーレンスルフィドを含む高分子改質剤 - Google Patents

微粒子状高分岐型ポリアリーレンスルフィド及びその製造方法、及び該ポリアリーレンスルフィドを含む高分子改質剤 Download PDF

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Abstract

【課題】バリ発生抑制剤として用いた場合、粉砕工程の必要がなく、分散が容易であり、ブツの発生がなく、表面性状のよいものが得られる、適度な溶融粘度を有する微粒子状高分岐型ポリアリーレンスルフィドを提供すること。
【解決手段】(i)全粒子基準で、篩分による粒子径38〜150μmの微粒子の割合が60質量%以上であり、(ii)該微粒子の全量の、温度310℃、角速度1rad/secで測定した溶融粘弾性tanδが、0.10〜0.30であり、かつ、(iii)該微粒子の全量の、温度330℃、剪断速度2sec−1で測定した溶融粘度が10.0×10〜40.0×10Pa・sである微粒子状高分岐型ポリアリーレンスルフィド。
【選択図】なし

Description

本発明は、微粒子状高分岐型ポリアリーレンスルフィド(以下、「微粒子状高分岐型PAS」と略記することがある)とその製造方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、直鎖型PASに混合してバリ発生抑制剤として使用した場合、成形加工時の課題とされているバリの発生が顕著に抑制される成形品を与えることができるとともに、分散性に優れ、成形品表面のブツ(小さな凹み)の発生のない微粒子状高分岐型PASとその製造方法に関する。また、本発明は、該微粒子状高分岐型PASの直鎖型PASに対する高分子改質剤としての使用に関する。
本発明において、「高分岐型PAS」とは、いわゆる分岐型PASとは異なり、多量の長鎖分岐を有する分岐構造が導入されたPASを意味する。
高分岐型PASは、分子鎖間絡み合いが多くなり、例えば、バリ防止等の効果がもたらされる。
本発明の多量の長鎖分岐の分岐構造が導入された高分岐型PASは、架橋構造を含まないものが望ましいが、重合反応で副生する場合がある多少の架橋構造を含んでいてもよい。また、「直鎖型PAS」とは、実質的に線状の構造を有するPASを意味する。直鎖型PASは、若干の分岐あるいは架橋構造を含んでいてもよい。
本発明において、脱水工程で反応槽(以下、「反応缶」と略記することがある)内に投入する硫黄源と区別するため、仕込み工程における硫黄源を「仕込み硫黄源」と呼ぶ。その理由は、脱水工程で反応槽内に投入した硫黄源の量は、加熱脱水処理により変動するためである。仕込み硫黄源は、重合工程でジハロ芳香族化合物及びポリハロ芳香族化合物との反応により消費されるが、他の成分とのモル比を規定する場合には、仕込み工程での仕込み硫黄源のモル量を基準とする。
ポリフェニレンスルフィド(以下、「PPS」と略記することがある)に代表されるPASは、耐熱性、耐薬品性、難燃性などに優れたエンジニアリングプラスチックである。PASは、射出成形、押出成形、圧縮成形などの一般的溶融加工法により、各種成形品、フィルム、シート、繊維などに成形可能であるため、電気・電子機器、自動車機器、化学機器等の広範な分野において樹脂部品の材料として汎用されている。
PASの代表的な製造方法として、N−メチル−2−ピロリドン(以下、「NMP」と略記することがある)などの有機アミド溶媒中で、硫黄源とジハロ芳香族化合物とを重合反応させる方法が知られている。しかし、この方法により得られるPASは、直鎖状であり、射出成形時のバリ発生量が多いという欠点を有している。また、製造条件が多岐にわたるため、条件の調整が難しく、特に加工性や溶融特性と射出成形時のバリ発生抑制特性とをバランスさせることが困難である。バリとは、成形材料が金型の隙間に流れ出て固化した部分を意味する。
射出成形時におけるバリの発生を抑制するために、超高分子量の架橋型PASを直鎖型PASにブレンドする方法が提案されている。また、分岐型・架橋型PASの製造方法についても、種々提案されている。
特許第2514832号公報(特許文献1)には、有機アミド溶媒中で、アルカリ金属硫化物とジハロ芳香族化合物に、重合反応当初からポリハロ芳香族化合物を添加し、2段階重合法により平均粒子径100〜2,000μmの顆粒状PAS架橋重合体を製造する方法が提案されている。しかし、重合反応当初から、アルカリ金属硫化物とジハロ芳香族化合物とポリハロ芳香族化合物とを重合反応させると、溶融粘度が高すぎる架橋PASが得られ易い。具体的には、実施例では、平均粒子径は、425μm、溶融粘度は、1.5×10ポイズ(1.5×10Pa・s)である。溶融粘度が高すぎる架橋PASを直鎖型PASにブレンドすると、成形品にブツなどの欠陥が生じて表面性が悪化し、しかもバリ発生の抑制効果も不十分となる可能性がある。
特許第5189293号公報(特許文献2)には、有機アミド溶媒中で硫黄源とジハロ芳香族化合物とを反応させ、ジハロ芳香族化合物の転化率が十分に高くなった時点で、重合反応混合物中に、ポリハロ芳香族化合物を所定の割合で添加し、分岐型PASを製造することが開示されている。この場合、分岐型PASは、温度310℃、角速度1rad/secで測定した溶融粘弾性tanδが、0.10〜0.30、温度330℃、剪断速度2sec−1で測定した溶融粘度が10.0×10〜40.0×10Pa・s、平均粒子径50〜2,000μmの範囲内にある。具体的には、実施例では、ジハロ芳香族化合物の転化率が90%、91%で、ポリハロ芳香族化合物を添加している。また、平均粒子径は、実施例では、具体的には、520μm、1,250μm、1,280μm、1,370μm、710μm、400μm、350μmである。しかし、特許文献2では、成形品の懸念事項であるブツの問題は大分改良されているが、実務上は、更なる改良要求がある。
このように、これらの分岐型PASは、平均粒子径が大きいため直鎖型PASに混合しても分散しづらく、成形品にブツとして残存してしまうため、多くの場合、そのブツ対策として全量を粉砕処理しなくてはならない場合も多かった。
そこで、適度の溶融粘弾性、適度の溶融粘度を有し、直鎖型PASに対して分散しやすく、バリ発生抑制に優れるとともに、ブツの発生を抑えるために、粉砕工程を必要としない低コストの微粒子状の高分岐型PASの開発が求められている。
本発明において、微粒子とは、篩分による粒子径38(400メッシュ篩)〜150μm(100メッシュ篩)の粒子を指す。微粒子状とは、全粒子基準〔本発明において、全粒子基準とは、脱水工程後の反応缶中に存在する仕込み硫黄源、すなわち有効硫黄成分(有効S)の全量がポリマーに転換したと仮定したときのポリマー質量(理論量)を全粒子(100質量%)とした基準である〕で、篩分による粒子径38(400メッシュ篩)〜150μm(100メッシュ篩)の粒子の割合が60質量%以上である粒子を含んだ状態のポリマーを指す。これは、あまり、細かすぎても、大きすぎても、表面性とハンドリング性・計量性等のバランスが適切ではないからである。なお、本発明において、篩分による粒子径38μm(400メッシュ篩通過:パス)未満の粒子を「極微粒子」、粒子径150μm(100メッシュ篩非通過:オン)超過の粒子を、「大粒子」という。
特許第2514832号公報 特許第5189293号公報
本発明の目的は、高分子改質剤として直鎖型PASにブレンドしたときに、バリの発生を顕著に抑制するとともに、ブツ発生を抑えるための粉砕工程を必要としない、分散性のよい微粒子状高分岐型PASとその製造方法を提供することにある。
このために、本発明者らは、適度な溶融粘弾性tanδ、適度な溶融粘度を有する微粒子状の高分岐型PASを開発するため、PAS製造における粒子化のメカニズムを鋭意検討した。
そもそも、PASの製造において、前段重合、後段重合の二段重合の持つ技術的意味は、前段重合で、直鎖のPASのプレポリマーを製造し、後段重合の液−液相分離状態でのポリマー濃厚相中で該プレポリマー同士を結びつけ(生長させ)、さらに鎖状を生長し、高分子量のポリマーを得るというものであって、後段重合のポリマー濃厚相中ではプレポリマーとジハロ芳香族化合物との反応による生長反応は、ほとんど生起されないことから、後段重合では、この反応によるプレポリマーの高分子量化は生じないものとなる。分岐型とは、ポリハロ芳香族化合物を添加し、分岐型PASを製造するものである。
溶融粘弾性tanδは、動的損失tanδとして知られる指標で、動的貯蔵弾性率や動的損失弾性率から算出され高分子の粘弾的挙動を示すのに用いられる。
架橋が進むと、例えば、温度310℃、角速度1rad/secで測定される溶融粘弾性tanδは、動的貯蔵弾性率や動的損失弾性率が変化して、小さくなることが知られている。
特許文献1には、240℃付近からの昇温速度が10℃/時以下と穏やかな昇温の場合には、相分離した生成ポリマーが適度な大きさの粒子になる前に重合反応が進行し高粘度化するために、架橋PASが微粉でしか得られない旨記載されている。
これは、重合当初から、ポリハロ芳香族化合物を添加するため、前段重合で、直鎖の部分があまり生長していない架橋構造を有するプレポリマーが生成され、穏やかな昇温工程の中で、これらプレポリマーが、更に架橋し、結果として昇温工程及びその後の相分離重合時にポリマー濃厚相液滴の粘度が上昇し、そのため液滴同士の合一がしづらく、凝集しないまま、微粉状架橋PASとして製造されるということと考えられる。
加えて、この微粉状架橋PASは、直鎖の部分があまり生長していないプレポリマーが、様々に架橋するため、溶融粘弾性tanδは、小さくなるものと考えられる。
してみると、穏やかな昇温だけでは、所望の微粒子状高分岐型PASが得られないことがわかる。
特許文献2では、実施例・比較例を通じて、一番小さい平均粒子径は、比較例5の110μmである。この場合、トリクロロベンゼン(以下、「TCB」と略記することがある)の添加時は、pDCB転化率65%で、前段重合開始から1.0時間である。この場合、前段重合は、3.0時間行っているから、TCB添加後2時間程度、前段重合を行っている。さらに、この場合昇温速度は、33℃/時(0.55℃/分)である。
この比較例5で、平均粒子径が小さくなる理由は、TCBが、添加された後に、一定の前段重合時間があり、かつ昇温速度も速くないので、昇温工程での分岐構造を有するプレポリマーを含む液滴では、一定の粘度上昇があり、該液滴の合一が起こりにくいのではないかと推察される。しかし、この場合、pDCB転化率65%でTCBを添加しているので、架橋構造が多くなり、特許文献1と同じように、溶融粘弾性が大きくならないものと考えられる(実際のデータは、0.05)。
上述したとおり、本発明者らは、適度な溶融粘弾性tanδ、適度な溶融粘度を有する微粒子状の高分岐型PAS、及び微粒子状高分岐型PASを安定的に精度よく製造できる方法を探求した。
微粒子状の高分岐型PASを得るためには、昇温工程で、プレポリマーを含む液滴の合一、すなわち凝集が起こり始めないことが重要である。
そのためには、(i)前段重合工程後の昇温工程で、プレポリマーを含む液滴が合一してしまうのを防ぐために、一定の溶融粘度の上昇を得るために昇温速度を穏やかにして重合反応を進め、一定以上の液滴の粘度にすることが重要である。
同時に、前段重合工程後の昇温工程で、プレポリマーを含む液滴の粘度の上昇があっても、その後の後段重合工程で、さらに、分岐や架橋が進んだ場合、得られる微粒子状高分岐型PASの溶融粘弾性tanδや溶融粘度が、適切でなくなってしまっては何もならない。
すなわち、穏やかな昇温である昇温工程で、少なくともプレポリマーを含む液滴が、合一しないようにして、溶融粘弾性tanδや溶融粘度が一定の数値をとる必要があるが、その後の後段重合工程を経て得られる微粒子状高分岐型PASの溶融粘弾性tanδや溶融粘度が、適切でなくなってしまって目標のものが得られないものとなってしまうことを避ける必要がある。
このため、本発明者らは、(ii)ポリハロ芳香族化合物の添加時期を、ジハロ芳香族化合物の転化率94%以上の時期、すなわち、プレポリマーの鎖状部分が、十分生長している(長鎖)ことが重要であると考えた。こうすれば、昇温工程で、溶融粘度がある程度上昇しても、鎖状部分が多く残っているため、後段重合工程を経て得られる微粒子状高分岐型PASの溶融粘弾性tanδや溶融粘度が、適切になると考えた。
これは、十分に生長した鎖状のプレポリマーに、ポリハロ芳香族化合物による分岐の導入により溶融粘弾性tanδや溶融粘度を適切な範囲にすることができるからである。
次ぎに、本発明者らは、(iii)ポリハロ芳香族化合物を添加後、一定時間、前段重合温度を維持して、分岐反応を完成させる必要があることを見出した。
これは、ポリハロ芳香族化合物を添加後直ちに昇温工程に入ると、ポリハロ芳香族化合物による架橋反応が起こりやすく、得られる微粒子状高分岐型PASの溶融粘度が必要以上に上がり、溶融粘弾性tanδも、小さくなってしまうからである。
さらに、本発明者らは、(iv)昇温工程直前に、相分離剤とアルカリ金属水酸化物を添加して、液−液相分離状態を現出し、系をアルカリ性に保つことが重要であることを見出した。
これは、プレポリマーを含む液滴の合一が起こらないよう、また、溶融粘度や、溶融粘弾性tanδが適切になるよう高分子量化を図るためには、系をアルカリ性にして、昇温工程や、後段重合工程での重合反応を安定化する必要があるからである。
さらに、本発明者らは、(v)後段重合での重合温度を255±3℃とすることが重要であることを見出した。
これは後段重合反応における重合反応を安定化させ、所望の微粒子状高分岐型PASとして回収し、溶融粘弾性tanδや溶融粘度を適切にするために重要である
以上のとおり、適度な溶融粘弾性tanδ、適度な溶融粘度を有する微粒子状の高分岐型PASを得るためには、(i)昇温速度を穏やかにする、(ii)ポリハロ芳香族化合物の添加時期を、ジハロ芳香族化合物の転化率94%以上の時期とする、(iii)ポリハロ芳香族化合物を添加後、一定時間、前段重合温度維持する、(iv)前段重合後の昇温工程直前に、相分離剤とアルカリ金属水酸化物とを添加する、(v)後段重合での重合温度を255±3℃とすること、が重要であることを、本発明者らは見出した。
さらに、補助的な要因として、本発明者らは、次のことを見出した。
(vi)仕込み時での水分量を、仕込み硫黄源1モル当たり1.00〜2.00モルとする。この水分量が、微粒子状で得るためには好ましい。
(vii)ポリハロ芳香族化合物添加時における有機アミド溶媒濃度を、仕込み硫黄源1モル当たり300〜425gとする。これは、適切な液滴径を保持すると共に液滴の合一を起こりにくくするためである。
(viii)ジハロ芳香族化合物、ポリハロ芳香族化合物等のハロゲン含有芳香族化合物は、仕込み硫黄源1モル当り1.020から1.050モルが必要である。
これは、ハロゲン含有芳香族化合物の添加量が少ないと、重合反応が安定的に進まないためである。
(ix)ジスルフィド化合物を前段重合で添加する。
ジスルフィド化合物を前段重合において、添加することにより、前段重合で様々な適切なプレポリマーを得るようにするためである。ジスルフィド化合物を添加することにより、PASの一部の末端がジスルフィド化合物の開裂による−S−の置換基を含むように変化し、その末端は、その後の生長反応に関与しなくなり、結果的にPASの多分岐や低分子量化につながる効果をもたらし、ひいては溶融粘度の低下につながる効果をもたらすとともに、末端のハロゲン(塩素)が、−S−の置換基となるために、分岐状態の制御やハロゲン(塩素)含有量の低下につながる効果をもたらす。その結果、低ハロゲン含有微粒子状高分岐型PASを得ることができる。
かくして、本発明によれば、(a)有機アミド溶媒中で、硫黄源とジハロ芳香族化合物とを重合反応させ、ジハロ芳香族化合物の転化率が94質量%以上となった時点で、重合反応混合物中に、分子中に3個以上のハロゲン置換基を有するポリハロ芳香族化合物を添加して重合することによって得られる微粒子状高分岐型PASであって、
(i)全粒子基準で、篩分による粒子径38〜150μmの微粒子の割合が60質量%以上であり、
(ii)該微粒子の全量の、温度310℃、角速度1rad/secで測定した溶融粘弾性tanδが、0.10〜0.30であり、かつ
(iii)該微粒子の全量の、温度330℃、剪断速度2sec−1で測定した溶融粘度が10.0×10〜40.0×10Pa・sである微粒子状高分岐型PASが提供される。
また、本発明によれば、(b)全粒子基準で、篩分による粒子径38〜150μmの微粒子の割合が65質量%以上、粒子径38μm未満の極微粒子の割合が10質量%以下、粒子径150μm超過の大粒子の割合が25質量%以下である前記(a)の微粒子状高分岐型PASが提供される。
また、本発明によれば、(c)下記工程(1)〜(5):
(1)有機アミド溶媒、硫黄源、及び必要量のアルカリ金属水酸化物を含有する混合物を加熱して、該混合物を含有する系内から水分を含む留出物の少なくとも一部を系外に排出する脱水工程1;
(2)脱水工程1で系内に残存する混合物を用いて、有機アミド溶媒、硫黄源(以下、「仕込み硫黄源」という)、必要量のアルカリ金属水酸化物、水分、及びジハロ芳香族化合物を含有する仕込み混合物を調製し、その際、仕込み混合物のジハロ芳香族化合物は、仕込み硫黄源1モル当り0.95〜1.02モルである仕込み工程2;
(3)仕込み混合物を170〜240℃の温度に加熱することにより、水分を含有する有機アミド溶媒中で、仕込み硫黄源とジハロ芳香族化合物とを重合反応させ、次いで、ジハロ芳香族化合物の転化率が94質量%以上となった時点で、重合反応混合物中に、分子中に3個以上のハロゲン置換基を有するポリハロ芳香族化合物を仕込み硫黄源1モル当り0.01〜0.05モル添加し、0.2〜4時間重合反応を行う前段重合工程3;
(4)重合反応混合物に、重合反応混合物中のアルカリ金属水酸化物の合計量が仕込み硫黄源1モル当たり1.010〜1.075モルとなるようにアルカリ金属水酸化物と、相分離剤とを添加し、アルカリ金属水酸化物及び相分離剤添加時点の温度から昇温速度を0.6℃/分以下で252〜258℃の温度に昇温する昇温工程4;
(5)252〜258℃で、液−液相分離状態での相分離重合反応を行う後段重合工程5;
を含む前記(a)または(b)の微粒子状高分岐型PASの製造方法が提供される。
また、本発明によれば、(d)前記工程(2)を、
(2a)脱水工程1で系内に残存する混合物を用いて、有機アミド溶媒、硫黄源(以下、「仕込み硫黄源」という)、必要量のアルカリ金属水酸化物、水分、及びジハロ芳香族化合物を含有する仕込み混合物を調製し、その際、仕込み混合物のジハロ芳香族化合物は、仕込み硫黄源1モル当り0.95〜1.02モルであり、水分量が、仕込み硫黄源1モル当り1.00〜2.00モルである仕込み工程2aとする前記(c)の製造方法が提供される。
また、本発明によれば、(e)前記工程(3)を、
(3a)仕込み混合物を170〜240℃の温度に加熱することにより、水分を含有する有機アミド溶媒中で、仕込み硫黄源とジハロ芳香族化合物とを重合反応させ、次いで、ジハロ芳香族化合物の転化率が94質量%以上となった時点で、重合反応混合物中に、分子中に3個以上のハロゲン置換基を有するポリハロ芳香族化合物を仕込み硫黄源1モル当り0.01〜0.05モル添加し、かつ、有機アミド溶媒濃度を、仕込み硫黄源1モル当たり300〜425gとし、0.2〜4時間重合反応を行う前段重合工程3aとする前記(c)または(d)の製造方法が提供される。
また、本発明によれば、(f)前記工程(3a)を、
(3b)仕込み混合物を170〜240℃の温度に加熱することにより、水分を含有する有機アミド溶媒中で、仕込み硫黄源とジハロ芳香族化合物とを重合反応させ、次いで、ジハロ芳香族化合物の転化率が94質量%以上となった時点で、重合反応混合物中に、分子中に3個以上のハロゲン置換基を有するポリハロ芳香族化合物を仕込み硫黄源1モル当り0.01〜0.05モル添加し、かつ、該ジハロ芳香族化合物及び該ポリハロ芳香族化合物からなるハロゲン含有芳香族化合物が、仕込み硫黄源1モル当たり1.020〜1.050モルであり、かつ、有機アミド溶媒濃度を、仕込み硫黄源1モル当たり300〜425gとし、0.2〜4時間重合反応を行う前段重合工程3bとする前記(e)の製造方法が提供される。
また、本発明によれば、(g)前記工程(3)を、
(3c)仕込み混合物を170〜240℃の温度に加熱することにより、水分を含有する有機アミド溶媒中で、仕込み硫黄源とジハロ芳香族化合物とを重合反応させ、その際、ジハロ芳香族化合物の転化率0質量%の時点からポリハロ芳香族化合物の添加までの時点の間に、ジスルフィド化合物を、仕込み硫黄源1モル当り0.001〜0.03モル添加し、0.2〜4時間反応させ、次いで、ジハロ芳香族化合物の転化率が94質量%以上となった時点で、重合反応混合物中に、分子中に3個以上のハロゲン置換基を有するポリハロ芳香族化合物を仕込み硫黄源1モル当り0.01〜0.05モル添加し、0.2〜4時間重合反応を行う前段重合工程3cとする前記(a)の製造方法が提供される。
また、本発明によれば、(h)前記(a)または(b)の微粒子状高分岐型PASを含む、直鎖型PASに対する高分子改質剤が提供される。
また、本発明によれば、(i)直鎖型PASに対するバリ発生抑制剤である前記(h)の高分子改質剤が提供される。
本発明の微粒子状高分岐型PASは、粉砕工程を必要としない低コストの微粒子状高分岐型PASであり、直鎖型PASなどの熱可塑性樹脂にブレンドするときに、高分子改質剤として、バリ発生抑制効果を有し、分散が容易であり、ブツの発生がなく表面性状のよいものが得られる。また、本発明の微粒子状高分岐型PASの製造において、ジスルフィド化合物を用いた場合は、ハロゲン含有量が低くなり、さらに、高分岐構造や溶融粘度の低下をもたらす効果を有する。
1.硫黄源:
本発明では、硫黄源として、アルカリ金属硫化物またはアルカリ金属水硫化物もしくはこれらの混合物を使用する。硫黄源として、硫化水素も使用することができる。
アルカリ金属水硫化物としては、例えば、水硫化リチウム、水硫化ナトリウム、水硫化カリウム、水硫化ルビジウム、水硫化セシウム、及びこれらの2種以上の混合物を挙げることができるが、これらに限定されない。これらの中でも、工業的に安価に入手できる点で、水硫化ナトリウム及び水硫化リチウムが好ましい。
アルカリ金属硫化物としては、例えば、硫化リチウム、硫化ナトリウム、硫化カリウム、硫化ルビジウム、硫化セシウム、及びこれらの2種以上の混合物を挙げることができるが、これらに限定されない。これらの中でも、工業的に安価に入手可能であって、かつ、取り扱いが容易であることなどの観点から、アルカリ金属硫化物としては硫化ナトリウムが好ましい。
硫黄源がアルカリ金属水硫化物とアルカリ金属硫化物との混合物である場合には、アルカリ金属水硫化物とアルカリ金属硫化物との総モル量が、仕込み硫黄源のモル量となる。また、この総モル量は、仕込み工程に先立って脱水工程を配置する場合には、脱水工程後の仕込み硫黄源のモル量になる。
硫黄源が、アルカリ金属硫化物以外のアルカリ金属水硫化物等を含む場合、必要量のアルカリ金属水酸化物を添加する。
必要量とは、第一には硫黄源をアルカリ金属硫化物に転化するのに必要なアルカリ金属水酸化物の量のことである。例えば、アルカリ金属硫化物が100質量%の場合、必要量のアルカリ金属水酸化物は0モルである。アルカリ金属硫化物以外の、例えばアルカリ金属水硫化物が含まれている場合は、そのアルカリ金属水硫化物がアルカリ金属硫化物に転化するのに必要なアルカリ金属水酸化物の量を指す。すなわち、アルカリ金属水硫化物が100質量%の場合、アルカリ金属水硫化物に対して等モルのアルカリ金属水酸化物の量が必要量である。
第二には、後述する硫黄源1モル当たりのアルカリ金属水酸化物のモル量を1モルを超える量で調整するときであり、その超過分のアルカリ金属水酸化物の量をいう。例えば、硫黄源としてアルカリ金属硫化物を用いた場合、アルカリ金属水酸化物/硫黄源を1.075で調整する際には、0.075の量のアルカリ金属水酸化物を添加するということである。
2.アルカリ金属水酸化物:
アルカリ金属水酸化物としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウム、及びこれらの2種以上の混合物が挙げられるが、これらに限定されない。これらの中でも、工業的に安価に入手可能なことから、水酸化ナトリウムが好ましい。
3.ジハロ芳香族化合物:
本発明で使用されるジハロ芳香族化合物は、芳香環に直接結合した2個のハロゲン原子を有するジハロゲン化芳香族化合物である。ジハロ芳香族化合物の具体例としては、例えば、o−ジハロベンゼン、m−ジハロベンゼン、p−ジハロベンゼン、ジハロトルエン、ジハロナフタレン、メトキシ−ジハロベンゼン、ジハロビフェニル、ジハロ安息香酸、ジハロジフェニルエーテル、ジハロジフェニルスルホン、ジハロジフェニルスルホキシド、ジハロジフェニルケトンが挙げられる。これらのジハロ芳香族化合物は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
ここで、ハロゲン原子とは、フッ素、塩素、臭素、及びヨウ素の各原子を指し好ましくは塩素である。同一のジハロ芳香族化合物において、2つのハロゲン原子は、互いに同じでも異なっていてもよい。ジハロ芳香族化合物としては、多くの場合、o−ジクロロベンゼン、m−ジクロロベンゼン、p−ジクロロベンゼン、またはこれらの2種以上の混合物が使用される。
4.ジスルフィド化合物:
本発明で、ジスルフィド化合物を用いた場合、ジスルフィド化合物が開裂した−S−の置換基を含む微粒子状高分岐型PASが製造される。この場合、ジスルフィド化合物の存在下で、重合反応が行われる。ジスルフィド化合物の添加は、ジハロ芳香族化合物の転化率0質量%の時点からポリハロ芳香族化合物の添加までの間、すなわち、重合開始のジハロ芳香族化合物の転化率0質量%の時点からポリハロ芳香族化合物を添加する前の時点の間に行う。
ジスルフィド化合物は式(I)の構造のものが挙げられる。
R1−S−S−R2 (I)
(式中、R1及びR2は、同一か又は異なっていてよく、独立して1〜約20個の炭素原子を含む炭化水素基である)の構造を有する。例えば、R1及びR2は、アルキル、シクロアルキル、アリール、又は複素環式基であってよい。
R1及びR2には、反応性官能基であるカルボキシル基、水酸基、非置換又は置換アミノ基、ニトリル基、ニトロ基等を含んでもよい。これらの中でも、ハロゲン原子を含まない化合物が好ましい。
アルキル、シクロアルキル、アリールの代表例として、ジメチルジスルフィド、ジエチルジスルフィド、ジプロピルジスルフィド、メチルフェニルジスルフィド、ジフェニルジスルフィド(以下、「DPDS」と略記することがある)、ジベンジルジスルフィド、4,4’−ジメチルジフェニルジスルフィド、ジナフチルジスルフィド等が挙げられる。
複素環式基としては、三員環から大環状までの複素環式基が挙げられる。好ましいものとして、五員複素環式基の例としては、イミダゾール、ピラゾール、オキサゾール、チアゾール、イミダゾリン、アゾール、オキソール、チオール等、六員複素環式基の例としては、ピリジン、ピラジン、モルホリン、チアジン等、多環の複素環式基としては、インドール、イソインドール、ベンゾイミダゾール、プリン等が挙げられる。
これらの例示として、2,2’−ジピリジルジスルフィド、3,3’−ジピリジルジスルフィド、4,4’−ジピリジルジスルフィド、2,2’−ジベンゾチアゾリルジスルフィド、4−(2−ベンゾチアゾリルジチオ)モルホリン、4,4’−ジチオジモルホリン、ビス(2−メチル−3−フリル)ジスルフィド、1,1’−ジチオビス(1H−ベンゾイミダゾール)、2,2’−ジチオビス(1H−ベンゾイミダゾール)、2,2’−ジチオビスベンゾオキサゾール等が挙げられる。その他のジスルフィド化合物としては、ベンゾイルジスルフィド、ビス(4−メトキシフェニル)ジスルフィド、ビス(2−ベンズアミドフェニル)ジスルフィド等が挙げられる。
反応性官能基であるカルボキシ基、水酸基、非置換又は置換アミノ基を含む例としては、ビス(3−ヒドロキシフェニル)ジスルフィド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジスルフィド、ビス(6−ヒドロキシ−2−ナフチル)ジスルフィド、2,2’−ジチオジアニリン、3,3’−ジチオジアニリン、4,4’−ジチオジアニリン、2,2’−ジチオジ安息香酸、3,3’−ジチオジ安息香酸、4,4’−ジチオジ安息香酸、ジチオグリコール酸、α,α’−ジチオジ乳酸、β,β’−ジチオジ乳酸、4,4’−ジチオプロピオン酸が挙げられる。
ジスルフィド化合物としては、反応性官能基を有さないジスルフィド化合物が好ましく、中でもDPDS,ジナフチルジスルフィド、2,2’−ジベンゾチアゾリルジスルフィド、ジチオビス(1H−ベンゾイミダゾール)、ジチオビスベンゾオキサゾールが好ましい。特にDPDS,ジナフチルジスルフィドが好ましい。
ジスルフィド化合物は、−S−S−部分を有するため、ジスルフィド化合物の開裂した−S−の置換基が、重合途中のPASの一部の末端のハロゲン基(塩素基)を、置換すると推察される。例えば、ジスルフィド化合物がDPDSの場合、重合反応後、分離・回収して得られる微粒子状高分岐型PASには、末端と反応した−S−Cが含まれる。
すなわち、ジスルフィド化合物がDPDSで、ジハロ芳香族化合物がジハロベンゼンの場合、本発明の微粒子状高分岐型PASの末端基成分は、大部分が、−Cl、ジスルフィド化合物が反応した−S−C、−SH、及び有機アミド溶媒由来の窒素化合物からなると考えられる。これらの末端基成分の分析は、定量的にまたは定性的には、元素分析や高温NMR分析やIR分析により行うことができる。また、これらの具体的な定量方法例として、元素分析による−Clの定量、滴定や誘導体化反応やIR法による−SHの定量、有機アミド溶媒由来の窒素化合物を窒素分析することにより、ジスルフィド化合物が反応した−S−C量を算出できる。
5.ポリハロ芳香族化合物:
本発明では、PASに分岐構造を導入するため、分子中に3個以上のハロゲン置換基を有するポリハロ芳香族化合物を使用する。ハロゲン置換基は、通常、ハロゲン原子が直接芳香環に結合したものである。ハロゲン原子とは、フッ素、塩素、臭素、及びヨウ素の各原子を指し好ましくは塩素である。同一のポリハロ芳香族化合物において、複数のハロゲン原子は、同じでも異なっていてもよい。
ポリハロ芳香族化合物としては、例えば、1,2,3−トリクロロベンゼン、1,2,4−トリクロロベンゼン、1,3,5−トリクロロベンゼン、ヘキサクロロベンゼン、1,2,3,4−テトラクロロベンゼン、1,2,4,5−テトラクロロベンゼン、1,3,5−トリクロロ−2,4,6−トリメチルベンゼン、2,4,6−トリクロロトルエン、1,2,3−トリクロロナフタレン、1,2,4−トリクロロナフタレン、1,2,3,4−テトラクロロナフタレン、2,2’,4,4’−テトラクロロビフェニル、2,2’,4,4’−テトラクロロベンゾフェノン、2,4,2’−トリクロロベンゾフェノンが挙げられる。なお、上記に例示した化合物のハロゲン原子を、フッ素、臭素、及びヨウ素で置換した化合物も本発明で使用するポリハロ芳香族化合物であることは言うまでもない。
これらのポリハロ芳香族化合物は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。ポリハロ芳香族化合物の中でも、1,2,4−トリクロロベンゼン及び1,3,5−トリクロロベンゼンの如きトリハロベンゼンが好ましく、トリクロロベンゼンがより好ましい。
分岐構造を導入するために、例えば、活性水素含有ハロゲン化芳香族化合物やハロゲン化芳香族ニトロ化合物等を少量併用することも可能である。
6.分子量調節剤:
生成PASに特定構造の末端を形成したり、あるいは重合反応や分子量を調節したりするために、モノハロ化合物を併用することができる。モノハロ化合物は、モノハロ芳香族化合物だけではなく、モノハロ脂肪族化合物も使用することができる。分子量調節剤は、仕込み硫黄源1モル当たり、通常、0.001〜0.3モル、好ましくは、0.0015〜0.1モル、より好ましくは、0.002〜0.05モルである。
7.有機アミド溶媒:
本発明では、脱水反応及び重合反応の溶媒として、非プロトン性極性有機溶媒である有機アミド溶媒を用いる。有機アミド溶媒は、高温でアルカリに対して安定なものが好ましい。
有機アミド溶媒の具体例としては、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド化合物;N−メチル−ε−カプロラクタム等のN−アルキルカプロラクタム化合物;N−メチル−2−ピロリドン、N−シクロヘキシル−2−ピロリドン等のN−アルキルピロリドン化合物またはN−シクロアルキルピロリドン化合物;1,3−ジアルキル−2−イミダゾリジノン等のN,N−ジアルキルイミダゾリジノン化合物;テトラメチル尿素等のテトラアルキル尿素化合物;ヘキサメチルリン酸トリアミド等のヘキサアルキルリン酸トリアミド化合物等が挙げられる。これらの有機アミド溶媒は、それぞれ単独で、あるいは2種類以上を組み合わせて用いることができる。
これらの有機アミド溶媒の中でも、N−アルキルピロリドン化合物、N−シクロアルキルピロリドン化合物、N−アルキルカプロラクタム化合物、及びN,N−ジアルキルイミダゾリジノン化合物が好ましく、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、N−メチル−ε−カプロラクタム、及び1,3−ジアルキル−2−イミダゾリジノンがより好ましく、NMPが特に好ましい。
8.重合助剤:
本発明では、重合反応を促進させるために、必要に応じて各種重合助剤を用いることができる。重合助剤の具体例としては、一般にPASの重合助剤として公知の有機スルホン酸金属塩、ハロゲン化リチウム、有機カルボン酸金属塩、リン酸アルカリ金属塩等が挙げられる。重合助剤の使用量は、化合物の種類により異なるが、仕込み硫黄源1モル当たり、通常0.01〜5モル、好ましくは0.015〜2モル、より好ましくは、0.02〜0.7モルである。
9.相分離剤:
本発明では、液−液相分離状態を生起させ、溶融粘度を調整した微粒子状高分岐型PASを短時間で得るために、各種相分離剤を用いることができる。相分離剤とは、それ自身でまたは少量の水の共存下に、有機アミド溶媒に溶解し、PASの有機アミド溶媒に対する溶解性を低下させる作用を有する化合物である。相分離剤それ自体は、PASの溶媒ではない化合物である。
相分離剤としては、一般にPASの相分離剤として公知の化合物を用いることができる。相分離剤には、前記の重合助剤として使用される化合物も含まれるが、ここでは、相分離剤とは、相分離重合反応で相分離剤として機能し得る量比で用いられる化合物を意味する。相分離剤には、大きく言って、水と水以外の相分離剤がある。水以外の相分離剤の具体例としては、有機カルボン酸金属塩、有機スルホン酸金属塩、ハロゲン化リチウムなどのアルカリ金属ハライド、アルカリ土類金属ハライド、芳香族カルボン酸のアルカリ土類金属塩、リン酸アルカリ金属塩、アルコール類、パラフィン系炭化水素類などが挙げられる。有機カルボン酸金属塩としては、例えば、酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、プロピオン酸ナトリウム、吉草酸リチウム、安息香酸リチウム、安息香酸ナトリウム、フェニル酢酸ナトリウム、p−トルイル酸カリウムなどのアルカリ金属カルボン酸塩が好ましい。これらの相分離剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。これらの相分離剤の中でも、コストが安価で、後処理が容易な水、または水とアルカリ金属カルボン酸塩などの有機カルボン酸金属塩との組み合わせが、特に好ましい。
10.微粒子状高分岐型PASの製造方法:
本発明の微粒子状高分岐型PASの製造方法は、下記工程(1)〜(5):
(1)有機アミド溶媒、硫黄源、及び必要量のアルカリ金属水酸化物を含有する混合物を加熱して、該混合物を含有する系内から水分を含む留出物の少なくとも一部を系外に排出する脱水工程1;
(2)脱水工程1で系内に残存する混合物を用いて、有機アミド溶媒、硫黄源(以下、「仕込み硫黄源」という)、必要量のアルカリ金属水酸化物、水分、及びジハロ芳香族化合物を含有する仕込み混合物を調製し、その際、仕込み混合物のジハロ芳香族化合物は、仕込み硫黄源1モル当り0.95〜1.02モルである仕込み工程2;
(3)仕込み混合物を170〜240℃の温度に加熱することにより、水分を含有する有機アミド溶媒中で、仕込み硫黄源とジハロ芳香族化合物とを重合反応させ、次いで、ジハロ芳香族化合物の転化率が94質量%以上となった時点で、重合反応混合物中に、分子中に3個以上のハロゲン置換基を有するポリハロ芳香族化合物を仕込み硫黄源1モル当り0.01〜0.05モル添加し、0.2〜4時間重合反応を行う前段重合工程3;
(4)重合反応混合物に、重合反応混合物中のアルカリ金属水酸化物の合計量が仕込み硫黄源1モル当たり1.010〜1.075モルとなるようにアルカリ金属水酸化物と、相分離剤とを添加し、アルカリ金属水酸化物及び相分離剤添加時点の温度から昇温速度を0.6℃/分以下で252〜258℃の温度に昇温する昇温工程4;
(5)252〜258℃で、液−液相分離状態での相分離重合反応を行う後段重合工程5;
を含む製造方法である。
以下に、本発明の好ましい製造方法について、さらに詳細に説明する。
10.1.脱水工程1:
本発明において脱水工程1(以下、「脱水工程」と略記することがある)は、有機アミド溶媒、硫黄源、及び必要量のアルカリ金属水酸化物を含有する混合物を加熱して、該混合物を含有する系内から水分を含む留出物の少なくとも一部を系外に排出する脱水工程である。
硫黄源は、水和水(結晶水)などの水分を含んでいることが多い。硫黄源及び必要量のアルカリ金属水酸化物を好ましい形態である水性混合物として使用する場合には、媒体として水を含有している。硫黄源とジハロ芳香族化合物との重合反応は、重合反応系内に存在する水分量によって影響を受ける。そこで、一般に、重合工程前に脱水工程を配置して、重合反応系内の水分量を調節している。
本発明の好ましい製造方法では、脱水工程において、有機アミド溶媒、アルカリ金属水硫化物を含む硫黄源、及びアルカリ金属水酸化物を含有する混合物を加熱して、該混合物を含有する系内から、水分を含む留出物の少なくとも一部を系外に排出する。脱水工程で使用する有機アミド溶媒は、重合工程で使用する有機アミド溶媒と同一のものであることが好ましく、工業的に入手が容易であることからNMPがより好ましい。
脱水操作は、反応槽内へ原料を投入した後、前記各成分を含有する混合物を、通常300℃以下、好ましくは100〜250℃の温度範囲内で、通常15分間から24時間、好ましくは30分間〜10時間、加熱する方法により行われる。
脱水工程前の投入時の有機アミド溶媒の量は、投入時の硫黄源1モル当たり100〜1,000g、好ましくは、150〜500g、より好ましくは200〜400gである。
硫黄源としてアルカリ金属水硫化物を使用する場合は、脱水工程前の投入時の硫黄源1モル当たりの投入時のアルカリ金属水酸化物のモル量は、0.93〜1.08モルである。アルカリ金属硫化物を使用する場合は、これと等モルのアルカリ金属水酸化物が既に含まれるものとして計算する。すなわち、アルカリ金属水酸化物/硫黄源として1超過で条件を設定する場合はその超過分のアルカリ金属水酸化物の量を加えて調節し、1未満の場合はアルカリ金属水硫化物を不足分の量として添加して調整する。
例えば、アルカリ金属水酸化物/硫黄源として1.075で条件を設定する場合、アルカリ金属硫化物を使用する際は、既に1の量のアルカリ金属水酸化物が含まれているとしているので、0.075の量のアルカリ金属水酸化物を添加することになる。
脱水工程では、加熱により水及び有機アミド溶媒が系外に留出する。したがって、留出物には、水と有機アミド溶媒とが含まれる。留出物の一部は、有機アミド溶媒の系外への排出を抑制するために、系内に環流してもよいが、水分量を調節するために、水を含む留出物の少なくとも一部は系外に排出する。
脱水工程では、硫黄源に起因する硫化水素が揮散する場合がある。水を含む留出物の少なくとも一部を系外に排出するのに伴い、揮散した硫化水素も系外に排出される。また系内に戻してもよい。
脱水工程では、水和水や水媒体、副生水などの水分を必要量の範囲内になるまで脱水する。脱水工程で水分量が少なくなり過ぎた場合は、仕込み工程で水を添加して所望の水分量に調節することができる。また、揮散した硫黄源が多い場合は、仕込み工程で補填することもある。
10.2.仕込み工程2:
本発明において、仕込み工程2(以下、「仕込み工程」と略記することがある)は、脱水工程で系内に残存する混合物を用いて、有機アミド溶媒、硫黄源、必要量のアルカリ金属水酸化物、水分、及びジハロ芳香族化合物を含有する仕込み混合物を調製する。
本発明において、「仕込み硫黄源」の量は、脱水工程後の重合反応系内に存在する硫黄源であって、「脱水工程で投入した硫黄源のモル量」から「脱水工程で揮散した硫化水素のモル量」を引くことによって算出することができる。
仕込み工程は、脱水工程で系内に残存する混合物を用いて、有機アミド溶媒、硫黄源(仕込み硫黄源)、必要量のアルカリ金属水酸化物、水分、及びジハロ芳香族化合物を含有する仕込み混合物を調製する。
仕込み混合物のジハロ芳香族化合物は、仕込み硫黄源1モル当り0.95〜1.02モル、好ましくは0.96〜1.01モル、より好ましくは0.97〜1.00モル、さらに好ましくは0.98モル以上1.00モル未満、最も好ましくは0.985〜0.999モルとすることが望ましい。
仕込み混合物中の水分量は、仕込み硫黄源1モル当たり、水分量が通常1.00〜2.00モル、好ましくは1.20〜1.80モル、より好ましくは1.25〜1.60モルに調整することが望ましい。好適な反応条件にするためには、水分量の調整が重要である。この場合、水分の量は、脱水工程でのアルカリ金属水硫化物とアルカリ金属水酸化物との反応によるアルカリ金属硫化物の生成に伴って生成する水分、脱水工程でのアルカリ金属硫化物またはアルカリ金属水硫化物からの硫化水素の揮散に伴って消費する水分を考慮する。前段重合工程において、水分としての共存水分量が少なすぎると、生成ポリマーの分解反応など好ましくない反応が起こり易くなる。共存水分量が多すぎると、重合反応速度が著しく遅くなったり、分解反応が生じたりする。特に微粒子状にするためには、この水分量が重要である。
したがって、本発明の製造方法における仕込み工程は、(2a)脱水工程1で系内に残存する混合物を用いて、有機アミド溶媒、硫黄源、必要量のアルカリ金属水酸化物、水分、及びジハロ芳香族化合物を含有する仕込み混合物を調製し、その際、仕込み混合物のジハロ芳香族化合物は、仕込み硫黄源1モル当り0.95〜1.02モルであり、水分量が、仕込み硫黄源1モル当り1.00〜2.00モルである仕込み工程2aとすることが望ましい。
仕込み混合物中のアルカリ金属水酸化物は、硫黄源としてアルカリ金属水硫化物を含む硫黄源を使用する場合は、仕込み硫黄源1モル当たりのアルカリ金属水酸化物のモル量は、0.95〜1.075モル、好ましくは0.98〜1.070モル、より好ましくは0.99〜1.065モル、特に好ましくは1.0〜1.06モルである。この場合、アルカリ金属水酸化物の量は、脱水工程で投入したアルカリ金属水酸化物、脱水工程で揮散する硫化水素の生成に伴って生成するアルカリ金属水酸化物及び仕込み工程で添加するアルカリ金属水酸化物の合計量である。アルカリ金属硫化物を使用する場合は、これと等モルのアルカリ金属水酸化物が既に含まれるものとして計算する。1超過の場合はその超過分のアルカリ金属水酸化物の量を加えて調節し、1未満の場合はアルカリ金属水硫化物を不足分の量として添加して調整する。
仕込み工程での有機アミド溶媒の量は、仕込み硫黄源1モル当たり300〜425g、好ましくは、310〜420g、より好ましくは320〜415gである。
仕込み硫黄源1モル当たりのアルカリ金属水酸化物のモル比が大きすぎたり、少なすぎると、有機アミド溶媒の変質を増大させたり、重合時の異常反応を引き起こしたりすることがある。さらに、生成する微粒子状高分岐型PASの収率の低下や品質の低下を引き起こすことが多くなる。
仕込み混合物における各成分の量比(モル比)の調整は、通常、脱水工程で得られた混合物中に、必要な成分を添加することにより行う。ジハロ芳香族化合物は、仕込み工程で混合物中に添加する。脱水工程で得られた混合物中のアルカリ金属水酸化物や水の量が少ない場合には、仕込み工程でこれらの成分を追加する。脱水工程で有機アミド溶媒の留出量が多すぎる場合は、仕込み工程で有機アミド溶媒を追加する。また、仕込み硫黄源を調整するために仕込み工程で硫黄源を追加させてもよい。したがって、仕込み工程では、ジハロ芳香族化合物に加えて、必要に応じて、硫黄源、有機アミド溶媒、水、及びアルカリ金属水酸化物を添加してもよい。
10.3.前段重合工程3:
本発明の前段重合工程(以下、「前段重合工程」と略記することもある)は、仕込み混合物を170〜240℃の温度に加熱することにより、水分を含有する有機アミド溶媒中で、仕込み硫黄源とジハロ芳香族化合物とを重合反応させ、次いで、ジハロ芳香族化合物の転化率が94質量%以上となった時点で、重合反応混合物中に、分子中に3個以上のハロゲン置換基を有するポリハロ芳香族化合物を仕込み硫黄源1モル当り0.01〜0.05モル添加し、0.2〜4時間重合反応を行う前段重合工程である。とりわけ、ジハロ芳香族化合物の転化率が94質量%以上となった時点でポリハロ芳香族化合物を添加することで、長鎖分岐の多い高分岐型PASが得られるものと考えられる。
前段重合工程では、仕込み混合物を、170〜240℃、好ましくは180〜240℃、より好ましくは200〜235℃の温度に加熱して、重合反応を開始させる。
ポリハロ芳香族化合物を添加する時点のジハロ芳香族化合物の転化率は、94質量%以上であり、好ましくは95質量%以上であり、より好ましくは95〜99.5質量%、さらに好ましくは95.5〜99.3質量%、最も好ましくは96〜99質量%である。
ジハロ芳香族化合物の転化率は、反応混合物中に残存するジハロ芳香族化合物の量をガスクロマトグラフィにより求め、その残存量とジハロ芳香族化合物の仕込み量と硫黄源の仕込み量に基づいて算出することができる。
本発明では、ジハロ芳香族化合物の転化率は、ジハロ芳香族化合物を硫黄源に対してモル比で過剰に添加しているので、ジハロ芳香族化合物を「DHA」で表すと、下記式1:
転化率=〔DHA仕込み量(モル)−DHA残存量(モル)〕/〔DHA仕込み量(モル)−DHA過剰量(モル)〕 (1)
により転化率を算出することができる。
上記以外の場合には、下記式2:
転化率=〔DHA仕込み量(モル)−DHA残存量(モル)〕/〔DHA仕込み量(モル)〕 (2)
により転化率を算出することができる。
ジハロ芳香族化合物の転化率は、微粒子状高分岐型PASとするために重要であり、ジハロ芳香族化合物の転化率が94質量%未満では、目的とする、微粒子状、溶融粘弾性tanδ、溶融粘度が得られない。
ポリハロ芳香族化合物の添加量は、仕込み硫黄源1モル当り0.01〜0.05モル、好ましくは0.012〜0.045モル、より好ましくは0.015〜0.04モルである。
本発明の前段重合工程を、(3a)仕込み混合物を170〜240℃の温度に加熱することにより、水分を含有する有機アミド溶媒中で、仕込み硫黄源とジハロ芳香族化合物とを重合反応させ、次いで、ジハロ芳香族化合物の転化率が94質量%以上となった時点で、重合反応混合物中に、分子中に3個以上のハロゲン置換基を有するポリハロ芳香族化合物を仕込み硫黄源1モル当り0.01〜0.05モル添加し、かつ、有機アミド溶媒濃度を、仕込み硫黄源1モル当たり300〜425gとし、0.2〜4時間重合反応を行う前段重合工程3aとすることも望ましい。
この前段重合工程3aにおいて、さらに、ジハロ芳香族化合物とポリハロ芳香族化合物からなるハロゲン含有芳香族化合物の量が、仕込み硫黄源1モル当り1.020〜1.050モル、好ましくは、1.021〜1.045モルになるように、ポリハロ芳香族化合物の添加量を調整するとより望ましいものとなる。
例えば、ポリハロ芳香族化合物として、1,2,4−トリクロロベンゼン(TCB)を用いた場合は、ポリハロ芳香族化合物のモル量を1.5倍したモル量と、例えばジハロ芳香族化合物としてp−ジクロロベンゼン(pDCB)を用いた場合でのモル量との合計量が、ハロゲン(塩素)量の合計量である。換言すれば、pDCB/Sの2倍とTCB/Sとの3倍の合計量を、2で割った値である。
ポリハロ芳香族化合物の添加量が少ないと、分岐構造の形成が不充分となり、得られるPASを高分子改質剤として使用しても、バリ発生抑制剤としての特性が充分なものとはならない恐れがあるとともに、微粒子状高分岐型PASが得られにくい。一方ポリハロ芳香族化合物の添加量が多くなると、溶融粘弾性tanδが小さくなりすぎ、また溶融粘度が大きくなり過ぎて、バリ抑制効果が低下する。
前段重合工程の重合反応の場における、ポリハロ芳香族化合物の添加後の必要とされる反応時間は、0.2時間(12分間)〜4時間、好ましくは、0.5時間(30分間)〜3時間、より好ましくは0.5時間(30分間)〜2時間程度である。
前段重合工程での重合反応時間は、後段重合工程での重合時間との合計で、一般に0.5〜48時間、好ましくは0.5〜15時間、より好ましくは1〜12時間程度である。
本発明において、前段重合工程を、(3b)仕込み混合物を170〜240℃の温度に加熱することにより、水分を含有する有機アミド溶媒中で、仕込み硫黄源とジハロ芳香族化合物とを重合反応させ、次いで、ジハロ芳香族化合物の転化率が94質量%以上となった時点で、重合反応混合物中に、分子中に3個以上のハロゲン置換基を有するポリハロ芳香族化合物を仕込み硫黄源1モル当り0.01〜0.05モル添加し、かつ、該ジハロ芳香族化合物及び該ポリハロ芳香族化合物からなるハロゲン含有芳香族化合物が、仕込み硫黄源1モル当たり1.020〜1.050モルであり、かつ、有機アミド溶媒濃度を、仕込み硫黄源1モル当たり300〜425gとし、0.2〜4時間重合反応を行う前段重合工程3bとすることも望ましい。
ポリハロ芳香族化合物添加時期に、有機アミド溶媒の量は、仕込み硫黄源1モル当り、300〜425g、好ましくは310〜420g、より好ましくは320〜415gの範囲となるようにすることが望ましい。これは、適切な液滴径を保持し、後段重合の重合反応を安定に進めるために必要である。
本発明において、前段重合工程を、(3c)仕込み混合物を170〜240℃の温度に加熱することにより、水分を含有する有機アミド溶媒中で、仕込み硫黄源とジハロ芳香族化合物とを重合反応させ、その際、ジハロ芳香族化合物の転化率0質量%の時点からポリハロ芳香族化合物の添加までの時点の間に、ジスルフィド化合物を、仕込み硫黄源1モル当り0.001〜0.03モル添加し、0.2〜4時間反応させ、次いで、ジハロ芳香族化合物の転化率が94質量%以上となった時点で、重合反応混合物中に、分子中に3個以上のハロゲン置換基を有するポリハロ芳香族化合物を仕込み硫黄源1モル当り0.01〜0.05モル添加し、0.2〜4時間重合反応を行う前段重合工程3cとすることも望ましい。
ジスルフィド化合物を用いる場合には、上記前段重合において、重合開始時のジハロ芳香族化合物の転化率0質量%の時点からポリハロ芳香族化合物を添加する時点までの間に、ジスルフィド化合物を添加する。
ジスルフィド化合物は、仕込み硫黄源1モル当り、0.001〜0.03モル、好ましくは0.0015〜0.02モル、より好ましくは、0.002〜0.015モルを添加する。ジスルフィド化合物の使用量が少ないと、重合途中のPAS末端へのジスルフィド化合物開裂物による置換の量が不足するために、得られる微粒子状高分岐型PASの溶融粘度が小さいものとならず、ハロゲン含有量の低減が困難となる。ジスルフィド化合物の使用量が多いと、溶融粘度が小さくなりすぎて、バリ発生抑制が困難となる。
ジスルフィド化合物の添加時期は、ジハロ芳香族化合物の転化率0質量%の時点からポリハロ芳香族化合物を添加するまでの時点の間であれば、いつの時点でもよいが、好ましくは、ジハロ芳香族化合物の転化率が10質量%の時点からポリハロ芳香族化合物を添加するまでの時点の間、より好ましくは、ジハロ芳香族化合物の転化率が30質量%の時点からポリハロ芳香族化合物を添加するまでの時点の間、特に好ましくは、ジハロ芳香族化合物の転化率が50質量%の時点からポリハロ芳香族化合物を添加するまでの時点の間、さらに好ましくは、ジハロ芳香族化合物の転化率が70質量%の時点からポリハロ芳香族化合物を添加するまでの時点の間である。
重合反応の場における、添加後のジスルフィド化合物による、必要とされる反応時間は、12分間(0.2時間)〜4時間、好ましくは15分間(0.25時間)〜3時間、より好ましくは20分間(0.33時間)〜2時間、さらに好ましくは25分間(0.41時間)〜1時間程度である。
前段重合工程での重合反応時間は、後段重合工程での重合時間との合計で、一般に10分間〜72時間、好ましくは0.5〜48時間、より好ましくは0.5〜15時間、特に好ましくは1〜12時間程度である。
10.4.昇温工程4:
後述する後段重合工程では、液−液相分離状態で、相分離剤の存在下で、相分離重合反応を行うことを主目的としている。そのために、前段重合工程から後段重合工程へ昇温しなければならない。
本発明においては、重合反応混合物に、重合反応混合物中のアルカリ金属水酸化物の合計量が仕込み硫黄源1モル当たり1.010〜1.075モルとなるようにアルカリ金属水酸化物と、相分離剤とを添加し、アルカリ金属水酸化物及び相分離剤添加時点の温度から昇温速度を0.6℃/分以下で252℃〜258℃の温度に昇温する昇温工程4(以下、「昇温工程」と略記することがある)を有する。
昇温工程が始まる前に、仕込み硫黄源1モル当たり1.010〜1.075モル、好ましくは1.015〜1.060モルとなるようアルカリ金属水酸化物を添加する。これは、昇温工程、後段重合工程を安定的に進めるために必要な重要な要件である。アルカリ金属硫化物を使用する場合は、これと等モルのアルカリ金属水酸化物が既に含まれるものとして計算する。1超過の場合はその超過分のアルカリ金属水酸化物の量を加えて調節し、1未満の場合はアルカリ金属水硫化物を不足分の量として添加して調整する。
昇温速度は、前述したとおり、穏やかな昇温となるよう昇温させる。昇温速度は0.6℃/分以下、好ましくは0.56℃/分以下、より好ましくは0.53℃/分以下、さらに好ましくは0.5℃/分以下である。昇温速度の下限は、通常0.05℃/分程度である。
一般に、液−液相分離状態は、相分離剤の存在下で、重合系を高温にすることにより発現させることができる。
本発明では、昇温工程が始まる前に、重合反応混合物中に相分離剤を添加する。
相分離剤を添加する時期は、ジハロ芳香族化合物の転化率が94質量%超過となった時点で添加する。
相分離剤が、水の場合は、昇温工程に存在する水は、仕込み硫黄源1モル当たり2モル超過10モル以下、好ましくは2.30〜7.00モル、さらに好ましくは2.50〜5.00モルである。
相分離剤が、水以外の相分離剤の場合は、仕込み硫黄源1モル当たり0.05〜10モル、好ましくは0.1〜7.00モル、さらに好ましくは0.2〜5.00モルである。
相分離剤が、水と水以外の相分離剤の混合物の場合は、水は、仕込み硫黄源1モル当たり0.5〜10モル、好ましくは1.0〜7.00モル、さらに好ましくは1.1〜5.00モルであり、水以外の相分離剤は、0.05〜3.00、好ましくは0.1〜1.0モル、より好ましくは0.15〜0.7モル、さらに好ましくは0.2〜0.5モルである。水以外の相分離剤としては、前記したものから選択され、例えば、アルカリ金属カルボン酸塩などの有機カルボン酸金属塩が好ましい。
10.5.後段重合工程5:
本発明の後段重合工程5(以下、「後段重合工程」と略記することがある)は、252〜258℃で、液−液相分離状態での相分離重合反応を行う後段重合工程である。
後段重合工程では、相分離剤の存在下で高温にすることにより、通常、ポリマー濃厚相とポリマー希薄相とに相分離が発現した状態で重合反応が継続される。
この後段重合工程は、252〜258℃の温度で、相分離剤の存在下で相分離重合反応を行う重合工程である。後段重合工程は、本発明の微粒子状高分岐型PASを得るための重要な工程である。
本発明の製造方法は、後段重合工程において、反応混合物がポリマー濃厚相とポリマー希薄相とに相分離した状態で相分離重合反応が継続される。一般に、攪拌下に相分離重合反応が行われるため、実際には、有機アミド溶媒(ポリマー希薄相)中に、ポリマー濃厚相が液滴として分散した状態で相分離重合反応が行われる。
また、微粒子状高分岐型PASの製造方法において、後段重合工程では、252〜258℃の範囲で行うことが重要である。これより温度が高い場合には、粒子状PAS中の微粒子の割合が減り、60質量%以上の微粒子が得られない。また、これより低い場合は、溶融粘度が低くなりすぎて、バリ抑制効果が十分でないものとなる。
11.後処理工程7:
重合反応終了後、重合反応混合物を冷却すると生成ポリマーを含む反応液スラリーが得られる。
冷却したスラリーを、100メッシュ(目開き150μm)に通し、粒子径150μm以上の生成ポリマーを篩分し秤量し、次いで通過物を400メッシュ(目開き38μm)に通して、粒子径38μmから150μmまでの生成ポリマーを秤量して、微粒子状高分岐型PASの粒度分布を測定する。
生成ポリマーを重合溶媒と同じ有機アミド溶媒やケトン類(例えば、アセトン)、アルコール類(例えば、メタノール)などの有機溶媒で洗浄することが好ましい。ポリマーを高温水などで洗浄してもよい。ポリマーを、酸や塩化アンモニウムのような塩で処理することもできる。
12.微粒子状高分岐型PAS:
上記の本発明の製造方法によって、
(i)全粒子基準で、篩分による粒子径38〜150μmの微粒子の割合が60質量%以上であり、
(ii)該微粒子の全量の、温度310℃、角速度1rad/secで測定した溶融粘弾性tanδが、0.10〜0.30であり、かつ、
(iii)該微粒子の全量の、温度330℃、剪断速度2sec−1で測定した溶融粘度が10.0×10〜40.0×10Pa・sである微粒子状高分岐型ポリアリーレンスルフィドが得られる。
本発明の微粒子状高分岐型PASの上記微粒子の全量の、温度310℃、角速度1rad/secで測定した溶融粘弾性tanδは、0.10〜0.30、好ましくは0.11〜0.29であり、温度330℃、剪断速度2sec−1で測定した溶融粘度は、10×10〜40×10Pa・s、より好ましくは、12×10〜35×10Pa・sである。溶融粘弾性tanδが適切な範囲でない場合は、バリ抑制効果が不十分となる。溶融粘度が高い場合には、バリ抑制効果が不十分となったり、成形品の表面性が低下する。一方、溶融粘度が低すぎると、バリ抑制効果が悪化する。
本発明の微粒子状高分岐型PASは、全粒子基準〔本発明において、全粒子基準とは、脱水工程後の反応缶中に存在する有効硫黄成分(有効S)の全量がポリマーに転換したと仮定したときのポリマー質量(理論量)を全粒子(100質量%)とした基準である〕で、篩分による粒子径38〜150μmの微粒子の割合が60質量%以上でなければならない。好ましくは65質量%以上である。粒径が150μm超過のものが多い場合は、分散性が悪くなり、ブツが発生しやすくなり、粉砕工程が必要となる。また、粒子径が38μm未満のものが多い場合は、取り扱い性が困難になる。粒子径が38μm未満の極微粒子の割合は、13質量%以下、好ましくは10質量%以下、粒子径が150μm超過の大粒子の割合が、27質量%以下、好ましくは25質量%以下である。
本発明では、全粒子基準で、篩分による粒子径38〜150μmの微粒子の割合が65質量%以上、粒子径38μm未満の極粒子の割合が10質量%以下、150μm超過の大粒子の割合が25質量%以下であり、粒子径750μm以上の粒子が実質的にないことが望ましい。ここで実質的にないとは、その割合が1重量%以下、好ましくは0.5質量%以下、より好ましくは0.1質量%未満であることをいう。
本発明の微粒子状高分岐型PASは、該PASを含む直鎖型PASに対する高分子改質剤として用いること、すなわち、直鎖型PASとブレンドして高分子改質剤として使用することが好ましい。この場合、微粒子状高分岐型PASは、直鎖型PASに対するバリ発生抑制剤としての高分子改質剤として働いているものである。直鎖型PASとは、重合時に高分子量の直鎖状ポリマーとして得られるPASである。ただし、直鎖型PASは重合時に副生する場合がある若干の分岐あるいは架橋構造を含んでいる場合もある。また、本発明の微粒子状高分岐型PASのうち、微粒子の全量を分離し、微粒子の全量を種々の用途に用いることもできる。この場合、微粒子であり、優れた特性を有するので、種々の用途に用いることができる。
高分子改質剤として用いる場合は、400メッシュ(目開き38μm)の篩上のものを用いるが、これ以上の大きい270メッシュ(目開き53μm)以上、200メッシュ(目開き75μm)以上のものを用いてもよい。
また、高分子改質剤として用いる場合、60メッシュ(目開き250μm)、80メッシュ(目開き180μm)、または100メッシュ(目開き150μm)の篩で篩分けして、粒子径の大きな粒子を除いてもよい。
直鎖型PASは、温度310℃、剪断速度1,200sec−1で測定した溶融粘度が通常5〜1,500Pa・s、好ましくは10〜1,000Pa・s、より好ましくは15〜500Pa・sの直鎖型PPS樹脂であることが望ましい。
本発明では、直鎖型PAS100質量部に対して、微粒子状高分岐型PAS1〜50質量部を配合した樹脂組成物が好ましい。微粒子状高分岐型PASの配合割合は、好ましくは5〜40質量部である。
この樹脂組成物には、有機または無機の各種充填剤を添加することができる。充填剤としては、粉末状や粒状の充填剤、繊維状充填剤など、この技術分野で使用されている任意の充填剤を用いることができる。これらの中でも、ガラス繊維や炭素繊維などの繊維状の無機充填剤が好ましい。
充填剤の配合割合は、直鎖型PAS100質量部に対して、通常400質量部以下、好ましくは350質量部以下、より好ましくは300質量部以下である。充填剤を配合する場合、その下限値は、直鎖型PAS100質量部に対して、通常0.01質量部、多くの場合0.1質量部である。充填剤の配合割合は、上記範囲内において、それぞれの使用目的に応じて適宜設定することができる。
以下に実施例及び比較例を挙げて、本発明についてより具体的に説明する。物性及び特性の測定方法は、次の通りである。
(1)溶融粘度:
試料である本発明の微粒子状PAS(ポリマー)約10gを用いて、東洋精機製キャピログラフ1−Cにより溶融粘度を測定した。この際、キャピラリーは、直径2.095mm×長さ8.04mmの流入角付きダイを使用し、測定温度は、330℃とした。ポリマー試料を装置に導入し、5分間保持した後、剪断速度2sec−1での溶融粘度を測定した。
(2)溶融粘弾性tanδ:
乾燥ポリマー約3gを直径2cmの円形型枠内において、320℃でホットプレスし、氷水によって急冷して、レオメータ測定用の試験片を作製した。レオメトリックス社製レオメータRDSIIを使用し、測定温度310℃、パラレルプレートにより、角速度ω=1rad/secで溶融粘弾性の測定を行った。
(3)バリ特性:
温度310℃、剪断速度1,200sec−1で測定した溶融粘度が30Pa・sの直鎖型PPS樹脂100質量部に対して、試料であるポリマー20質量部とガラス繊維(直径13μm、長さ3mm、日本電気硝子製)80質量部とを2分間混合し、これをシリンダ温度320℃の二軸押出機に投入し、樹脂組成物のペレットを作製した。このペレットを、直径70mm×厚さ3mmのキャビティを有するバリ評価用金型内に、完全に樹脂組成物が充填する最小の充填圧力で射出成形した。射出成形の条件は、下記の通りである。
<射出成形条件>
射出成形機: 東芝機械製、IS−75E、
シリンダ温度条件: NH/H1/H2/H3/H4=310/320/310/300/290(℃)、
金型温度: 140℃。
<バリ長さの測定>
金型の円周部に設けられた厚さ20μm×5mmのスリットに生じるバリの長さ(バリ長)を、拡大投影器を用いて測定した。バリ長が短いほど、バリ発生を抑制する効果(バリ特性)が良好であることを示す。
(4)成形品の表面性:
バリ評価用成形品(直径70mm×厚さ3mmの円盤)の両面を目視にて観察し評価した。
(5)大粒子と微粒子:
反応液を、湿式で100メッシュ(目開き150μm)によって、篩分したものの内、篩上分を大粒子といい、さらに通過分を400メッシュ(目開き38μm)に通して篩分し、篩上分を微粒子という。400メッシュ(目開き38μm)通過分を極微粒子という。
[実施例1]
(1)脱水工程:
ヨードメトリー法による分析値62.42質量%の水硫化ナトリウム(NaSH)水溶液1870.8g、及び73.58質量%の水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液1,085.0gをN−メチル−2−ピロリドン(以下、「NMP」と略記)6,003.9gと共に20リットルの撹拌機付きチタン内張りオートクレーブ(以下、「反応缶」と略記)に投入した。
反応缶内を窒素ガスで置換後、約4時間かけて、撹拌しながら徐々に200℃まで昇温して、水873.0g及びNMP609.6gを留出させた。この際、11.25gの硫化水素(HS)(0.33モル)が流出(揮散)した。したがって、脱水工程後の缶内の有効S量は、20.52モルとなった(有効S量は、「仕込み硫黄源」に相当する)。
(2)仕込み工程:
脱水工程後、20.52モルの有効Sを含む反応缶の内容物を150℃まで冷却し、p−ジクロロベンゼン(以下、「pDCB」と略記)2,996g〔pDCB/有効S=0.993(モル/モル)〕と、NMP2,086g、及び水91g〔缶内の合計水量/有効S=1.53(モル/モル)となるように添加〕を加え、そして、缶内NaOH/有効S=1.014(モル/モル)になるように、NaOHを加えた。なお、反応缶内には、HSが揮散することにより生成したNaOH(0.66モル)が含まれていた。
(3)重合工程:
反応缶に備え付けた撹拌機を250rpmで撹拌しながら、220℃で1時間、230℃に昇温し2.5時間反応をおこなった。pDCBの転化率は、97質量%であった。次に、DPDS22.3g〔DPDS/有効S=0.005(モル/モル)〕、NMP317gの混合物を圧入し30分間反応させた。さらに、1,2,4−トリクロロベンゼン(以下、「TCB」と略記)76.6g〔TCB/有効S=0.02(モル/モル)〕、及びNMP400gの混合物を圧入し、1時間反応させ前段重合を行った。その際、pDCBとTCBとの塩素量の合計量は有効S1モル当り1.024モルであった。
次に、撹拌数を400rpmに上げ、水554gとNaOH30gを圧入し、0.5℃/分の速度で255℃まで昇温し、2時間反応させ、後段重合を行った。缶内のNMPの濃度は有効S量1モル当り399.4gであった。また、水/有効S(モル/モル)は3.03で、合計NaOH/有効S(モル/モル)は1.051であった。
(4)後処理工程:
冷却後、内容物を100メッシュ(篩目開き150μm)のスクリーンに通して大粒子を篩分して除き、大粒子ポリマーとして分離した。さらに、通過物を400メッシュ(目開き38μm)に通してポリマーである微粒子を篩分し、極微粒子ポリマーとして分離した。分離した微粒子ポリマーについて、アセトンにより3回洗浄し、水洗浄を3回行った。この微粒子ポリマーを、0.3質量%酢酸水溶液で洗浄を1回行い、さらに水洗浄を3回行って洗浄ポリマーを得た。洗浄ポリマーは、100℃で一昼夜乾燥した。大粒子ポリマーについても同様にした。大粒子は、全粒子基準で、22.9質量%、微粒子は、70.0質量%であった。
得られた、大粒子、及び微粒子の溶融粘弾性tanδは、それぞれ、0.19、0.20であり、溶融粘度は、それぞれ28×10Pa・s、25×10Pa・sであった。微粒子の全量の上記バリ特性と成形品の表面性を評価した。また、400メッシュ篩(目開き38μm)以上の全粒子(大粒子と微粒子とを加えたもの)を用い、上記バリ特性と成形品の表面性を評価した。結果は表1に示す。
[比較例1]
後段重合温度を260℃に変更した点を除いて、実施例1と同様の重合を行った。このようにして得られた大粒子は、全粒子基準で、80.8質量%、微粒子は、5.2質量%であった。得られた大粒子、微粒子の溶融粘弾性tanδは、それぞれ、0.14、0.14であり、溶融粘度は、それぞれ51×10Pa・s、46×10Pa・sであった。微粒子の全量が少量のため、微粒子の全量の上記バリ特性と成形品の表面性は評価しなかった。400メッシュ篩(目開き38μm)以上の全粒子(大粒子と微粒子を加えたもの)を用い、上記バリ特性と成形品の表面性を評価した。結果は表1に示す。
[比較例2]
後段重合温度を260℃、DPDS添加量を31.3gに変更した点を除いて、実施例1と同様の重合を行った。このようにして得られた大粒子は、全粒子基準で、81.9質量%、微粒子は、9.6質量%であった。得られた大粒子、微粒子の溶融粘弾性tanδは、それぞれ、0.20、0.23であり、溶融粘度は、それぞれ30×10Pa・s、26×10Pa・sであった。微粒子の全量が少量のため、微粒子の全量の上記バリ特性と成形品の表面性は評価しなかった。400メッシュ篩(目開き38μm)以上の全粒子(大粒子と微粒子を加えたもの)を用い、上記バリ特性と成形品の表面性を評価した。結果は表1に示す。
[比較例3]
後段重合温度を250℃に変えた点を除いて、実施例1と同様の重合を行った。このようにして得られた大粒子は、全粒子基準で、9.9質量%、微粒子は、71.9質量%であった。得られた大粒子、微粒子の溶融粘弾性tanδは、それぞれ、0.56、0.55であり、溶融粘度は、それぞれ7×10Pa・s、6×10Pa・sであった。微粒子の全量の上記バリ特性と成形品の表面性を評価した。また、400メッシュ篩(目開き38μm)以上の全粒子(大粒子と微粒子とを加えたもの)を用い、上記バリ特性と成形品の表面性を評価した。結果は表1に示す。
[比較例4]
(1)脱水工程:
ヨードメトリー法による分析値61.8質量%のNaSH水溶液1,871g(NaSH分として20.65モル)、及び73.7質量%のNaOH水溶液1,100g(NaOH分として20.27モル)を、NMP6,501gと共に反応缶に投入した。
反応缶内を窒素ガスで置換後、約4時間かけて、撹拌しながら徐々に200℃まで昇温して、水953g及びNMP878gを留出させた。この際、13.07gのHS(0.38モル)が流出(揮散)した。したがって、脱水工程後の缶内の有効S量は、20.26モルとなった。
(2)仕込み工程:
脱水工程後、20.24モルの有効Sを含む反応缶の内容物を150℃まで冷却し、pDCB3,190g〔pDCB/有効S=1.071(モル/モル)〕、NMP3,100g〔缶内のNMP/有効S=430(g/モル)となるように添加〕、及び水151g〔缶内の合計水量/有効S=1.554(モル/モル)となるように添加〕を加えた。缶内NaOH/有効S=1.038(モル/モル)であり、反応缶内には、HSが揮散することにより生成したNaOH(0.76モル)が含まれていた。
(3)重合工程:
反応缶に備え付けた撹拌機を250rpmで撹拌しながら、220℃で3時間反応させた。pDCBの転化率は、80質量%であった。次に、TCB125g〔TCB/有効S=0.034(モル/モル)〕及びNMP406gの混合物を圧入し、4時間反応させ前段重合を行った。その際、pDCBとTCBとの塩素量の合計量は有効S1モル当り1.122モルであった。
次に、撹拌数を400rpmに挙げ、水603gを圧入した後255℃に昇温し4時間反応させ、後段重合を行った。缶内のNMPの濃度は有効S量1モル当り450.0gであった。また、水/有効S(モル/モル)は3.21であった。
(4)後処理工程:
後段重合終了後、実施例1と同様にして、大粒子及び微粒子を得た。このようにして得られた大粒子は、全粒子基準で、85.3質量%、微粒子は、2.9質量%であった。
このようにして得られた、大粒子、及び微粒子の溶融粘弾性tanδは、それぞれ、0.14、0.15であり、溶融粘度はそれぞれ25×10Pa・s、22×10Pa・sであった。微粒子の全量が少量のため、微粒子の全量の上記バリ特性と成形品の表面性は評価しなかった。400メッシュ篩(目開き38μm)以上の全粒子(大粒子と微粒子を加えたもの)を用い、上記バリ特性と成形品の表面性を評価した。結果は表1に示す。
Figure 2016108488
[脚注]
・バリ特性
A:バリ長60μm未満
B:バリ長60μm以上、100μm未満
C:バリ長100μm以上、120μm未満
D:バリ長120μm以上
・表面性(ブツ数)
A:小さなクレータ状の凹みが2個以下、
B:クレータ状の凹みが3〜5個、
C:クレータ状の凹みが6〜10個、
D:クレータ状の凹みが11個以上。
[考察]
比較例1では、後段重合の温度が高いため、溶融粘度が高くなるとともに、大粒子が増え、微粒子が減少している。そのため実施例と比べると、微粒子と大粒子の全量のバリ特性、特に表面性が著しく悪い。比較例2も、比較例1と同様に重合温度が高いため、大粒子が増え、微粒子は減少しているが、ジスルフィド化合物をさらに添加することによって、溶融粘度自体は適正化されている。しかし、実施例と比べると、、微粒子と大粒子の全量の表面性を見ると、大粒子が多いため表面性に劣る。比較例3は、後段重合の温度が低いため、溶融粘度が低くなってしまい、バリ抑制剤としての効果は期待できない。
比較例4は、pDCBの仕込み硫黄1モル当りの量が多く、また前段重合の転化率が80質量%と低く、さらに、後段重合におけるNMPの濃度が高いことによって、後段重合の温度が適正範囲であっても、微粒子の生成量は極めて少ないものとなったと考えられる。そのため実施例と比べると、、微粒子と大粒子の全量のバリ特性や表面性が悪い。
これに対して、実施例では、適切な溶融粘度を有する微粒子状高分岐型PASが得られている。そのため比較例と比べると、微粒子全量のバリ特性や表面性と、微粒子と大粒子の全量のバリ特性や表面性に優れる。
本発明の微粒子状高分岐型PASは、直鎖型PASとの混合に際して分散しやすく、ブツの発生がなく、表面性状がよいものとなり、バリ発生抑制剤として有用であり、粉砕工程を必要としないため、低コストの微粒子状高分岐型PASが得られる。ジスルフィド化合物を用いた場合、ハロゲン(塩素)含有量が少なく、溶融粘度を適正化することが可能となり、バリ発生抑制剤としてさらに有用である。
また、本発明の微粒子状高分岐型PASは、直鎖型PASなど他の熱可塑性樹脂とブレンドして、射出成形、押出成形、圧縮成形などの一般的溶融加工法により、各種成形品、フィルム、シート、繊維等に成形可能であり、電気・電子機器、自動車機器、化学機器等の広範な分野において樹脂部品の材料として利用することができる。

Claims (9)

  1. 有機アミド溶媒中で、硫黄源とジハロ芳香族化合物とを重合反応させ、ジハロ芳香族化合物の転化率が94質量%以上となった時点で、重合反応混合物中に、分子中に3個以上のハロゲン置換基を有するポリハロ芳香族化合物を添加して重合することによって得られる微粒子状高分岐型ポリアリーレンスルフィドであって、
    (i)全粒子基準で、篩分による粒子径38〜150μmの微粒子の割合が60質量%以上であり、
    (ii)該微粒子の全量の、温度310℃、角速度1rad/secで測定した溶融粘弾性tanδが、0.10〜0.30であり、かつ
    (iii)該微粒子の全量の、温度330℃、剪断速度2sec−1で測定した溶融粘度が10.0×10〜40.0×10Pa・sである微粒子状高分岐型ポリアリーレンスルフィド。
  2. 全粒子基準で、篩分による粒子径38〜150μmの微粒子の割合が65質量%以上、粒子径38μm未満の極微粒子の割合が10質量%以下、粒子径150μm超過の大粒子の割合が25質量%以下である請求項1記載の微粒子状高分岐型ポリアリーレンスルフィド。
  3. 下記工程(1)〜(5):
    (1)有機アミド溶媒、硫黄源、及び必要量のアルカリ金属水酸化物を含有する混合物を加熱して、該混合物を含有する系内から水分を含む留出物の少なくとも一部を系外に排出する脱水工程1;
    (2)脱水工程1で系内に残存する混合物を用いて、有機アミド溶媒、硫黄源(以下、「仕込み硫黄源」という)、必要量のアルカリ金属水酸化物、水分、及びジハロ芳香族化合物を含有する仕込み混合物を調製し、その際、仕込み混合物のジハロ芳香族化合物は、仕込み硫黄源1モル当り0.95〜1.02モルである仕込み工程2;
    (3)仕込み混合物を170〜240℃の温度に加熱することにより、水分を含有する有機アミド溶媒中で、仕込み硫黄源とジハロ芳香族化合物とを重合反応させ、次いで、ジハロ芳香族化合物の転化率が94質量%以上となった時点で、重合反応混合物中に、分子中に3個以上のハロゲン置換基を有するポリハロ芳香族化合物を仕込み硫黄源1モル当り0.01〜0.05モル添加し、0.2〜4時間重合反応を行う前段重合工程3;
    (4)重合反応混合物に、重合反応混合物中のアルカリ金属水酸化物の合計量が仕込み硫黄源1モル当たり1.010〜1.075モルとなるようにアルカリ金属水酸化物と、相分離剤とを添加し、アルカリ金属水酸化物及び相分離剤添加時点の温度から昇温速度を0.6℃/分以下で252〜258℃の温度に昇温する昇温工程4;
    (5)252〜258℃で、液−液相分離状態での相分離重合反応を行う後段重合工程5;
    を含む請求項1または2記載の微粒子状高分岐型ポリアリーレンスルフィドの製造方法。
  4. 前記工程(2)を、
    (2a)脱水工程1で系内に残存する混合物を用いて、有機アミド溶媒、硫黄源(以下、「仕込み硫黄源」という)、必要量のアルカリ金属水酸化物、水分、及びジハロ芳香族化合物を含有する仕込み混合物を調製し、その際、仕込み混合物のジハロ芳香族化合物は、仕込み硫黄源1モル当り0.95〜1.02モルであり、水分量が、仕込み硫黄源1モル当り1.00〜2.00モルである仕込み工程2aとする請求項3記載の製造方法。
  5. 前記工程(3)を、
    (3a)仕込み混合物を170〜240℃の温度に加熱することにより、水分を含有する有機アミド溶媒中で、仕込み硫黄源とジハロ芳香族化合物とを重合反応させ、次いで、ジハロ芳香族化合物の転化率が94質量%以上となった時点で、重合反応混合物中に、分子中に3個以上のハロゲン置換基を有するポリハロ芳香族化合物を仕込み硫黄源1モル当り0.01〜0.05モル添加し、かつ、有機アミド溶媒濃度を、仕込み硫黄源1モル当たり300〜425gとし、0.2〜4時間重合反応を行う前段重合工程3aとする請求項3または4に記載の製造方法。
  6. 前記工程(3a)を、
    (3b)仕込み混合物を170〜240℃の温度に加熱することにより、水分を含有する有機アミド溶媒中で、仕込み硫黄源とジハロ芳香族化合物とを重合反応させ、次いで、ジハロ芳香族化合物の転化率が94質量%以上となった時点で、重合反応混合物中に、分子中に3個以上のハロゲン置換基を有するポリハロ芳香族化合物を仕込み硫黄源1モル当り0.01〜0.05モル添加し、かつ、該ジハロ芳香族化合物及び該ポリハロ芳香族化合物からなるハロゲン含有芳香族化合物が、仕込み硫黄源1モル当たり1.020〜1.050モルであり、かつ、有機アミド溶媒濃度を、仕込み硫黄源1モル当たり300〜425gとし、0.2〜4時間重合反応を行う前段重合工程3bとする請求項5に記載の製造方法。
  7. 前記工程(3)を、
    (3c)仕込み混合物を170〜240℃の温度に加熱することにより、水分を含有する有機アミド溶媒中で、仕込み硫黄源とジハロ芳香族化合物とを重合反応させ、その際、ジハロ芳香族化合物の転化率0質量%の時点からポリハロ芳香族化合物の添加までの時点の間に、ジスルフィド化合物を、仕込み硫黄源1モル当り0.001〜0.03モル添加し、0.2〜4時間反応させ、次いで、ジハロ芳香族化合物の転化率が94質量%以上となった時点で、重合反応混合物中に、分子中に3個以上のハロゲン置換基を有するポリハロ芳香族化合物を仕込み硫黄源1モル当り0.01〜0.05モル添加し、0.2〜4時間重合反応を行う前段重合工程3cとする請求項3記載の製造方法。
  8. 請求項1または2記載の微粒子状高分岐型ポリアリーレンスルフィドを含む、直鎖型ポリアリーレンスルフィドに対する高分子改質剤。
  9. 直鎖型ポリアリーレンスルフィドに対するバリ発生抑制剤である請求項8記載の高分子改質剤。
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