JP2010229233A - ポリフェニレンスルフィド樹脂の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】溶融時の揮発性成分の発生量が少なくかつ溶融紡糸性に優れたポリフェニレンスルフィド樹脂を、高い生産効率で安価に得る。
【解決手段】以下の各工程を順次行うことにより、ガス発生量が0.2重量%以下であり、残さ量が3.0重量%以下であり、かつメルトフローレートが100g/10分を越え500g/10分以下であり、かつ溶融結晶化ピーク温度が100〜210℃であるポリフェニレンスルフィド樹脂を得る。(1)スルフィド化剤とポリハロゲン化芳香族化合物とを有機極性溶媒中200〜290℃の温度で反応させ、反応物からポリマーを回収する、(2)80〜200℃の熱水で1回以上洗浄する、(3)濾過液とポリマーとを分離する、(4)分離したポリマーを、アルカリ金属を含む水溶液、アルカリ土類金属を含む水溶液、または熱水のいずれかに浸漬させて洗浄する、(5)洗浄後のポリマーを熱処理する工程。
【選択図】なし
【解決手段】以下の各工程を順次行うことにより、ガス発生量が0.2重量%以下であり、残さ量が3.0重量%以下であり、かつメルトフローレートが100g/10分を越え500g/10分以下であり、かつ溶融結晶化ピーク温度が100〜210℃であるポリフェニレンスルフィド樹脂を得る。(1)スルフィド化剤とポリハロゲン化芳香族化合物とを有機極性溶媒中200〜290℃の温度で反応させ、反応物からポリマーを回収する、(2)80〜200℃の熱水で1回以上洗浄する、(3)濾過液とポリマーとを分離する、(4)分離したポリマーを、アルカリ金属を含む水溶液、アルカリ土類金属を含む水溶液、または熱水のいずれかに浸漬させて洗浄する、(5)洗浄後のポリマーを熱処理する工程。
【選択図】なし
Description
本発明は、溶融時の揮発性成分の発生量が少なく、かつ溶融紡糸性に優れたポリフェニレンスルフィド樹脂を、高い生産効率で安価に製造する方法に関するものである。
ポリフェニレンスルフィド(以下PPSと略す)樹脂は優れた耐熱性、バリア性、耐薬品性、電気絶縁性、耐湿熱性などエンジニアリングプラスチックとしては好適な性質を有しており、射出成形、押出成形用を中心として各種電気・電子部品、機械部品および自動車部品、フィルム、繊維などに使用されている。なかでも繊維では、溶融紡糸での延伸性を上げるために溶融結晶化温度の低いPPS樹脂が多用されている。また、PPS樹脂を溶融した際に発生する揮発性成分が多いPPS樹脂を用いて溶融紡糸を行うと口金汚れを引き起こし糸切れの問題となるため、繊維用途のPPS樹脂には揮発性成分の少ないものが求められている。
揮発性成分の少ないPPS樹脂としては、例えば特許文献1のようにPPS樹脂を重合する際にスルフィド化剤1モル当たり有機極性溶媒を3.2〜5.5モル使用し、副生物の生成量を抑制することで繊維やフィルムに好適なPPS樹脂を得る方法が開示されている。しかし、重合時の有機極性溶媒量の使用量が多いため生産効率の低いものであった。また、該特許文献では重合により得たポリマーを有機極性溶媒であるN−メチル−2−ピロリドンを用いた溶媒洗浄に供してオリゴマー等を除去しているため、回収PPS量が少なく生産効率の低いものであった。
溶媒洗浄を行わずオリゴマー類を多量に含んだPPS樹脂を回収することで生産効率を上げる方法としてフラッシュ法が挙げられる。フラッシュ法で回収したPPS樹脂においても、重合後の洗浄時に揮発性成分を低減する方法が開示されており、例えば特許文献2では(1)PPS重合を行った後に急冷回収し(2)得られたポリマーを130℃以上の熱水で洗浄し(3)濾過により濾過液とポリマーに分離し(4)分離したポリマーを周期表第II族の金属元素を含む水溶液で130℃以上で処理することにより、320℃、2時間加熱時の減量が0.55重量%以下となるポリアリーレンスルフィド樹脂を得ている。該方法では確かに溶融紡糸性可能なPPS樹脂を安価に高収率で製造できるが、揮発性成分は依然として多く、より安定した溶融紡糸性を得るべく更なる揮発性成分の低減が求められていた。
PPS重合・洗浄により得られたPPS樹脂を熱処理することで揮発性成分を低減する方法も開示されており、例えば特許文献3には、メルトフローレートが2000g/10分以下のPPSを酸化架橋し、メルトフローレートが500g/10分以下、かつ酸化架橋前後のメルトフローレートの比が1/2〜1/30であるPPSの製造方法が開示されている。しかし酸化架橋前後のメルトフローレートの比が1/2〜1/30の様に高度に熱酸化処理を施すと、溶融紡糸時にゲル化物がパックに詰まりやすく、パック圧の急激な上昇を招きやすいため、かかるPPS樹脂は溶融紡糸には不向きである。
特許文献4には比較的低い酸素濃度である酸素濃度10%でPPS樹脂を硬化させる方法が実施例で開示されている。低い酸素濃度で熱処理すると、概して溶融紡糸時のゲル化物は低減する傾向にある。しかし、該特許文献では熱処理前のPPS樹脂の溶融流量つまりメルトフローレートは1000g/10分を超えるような低粘度のものであり、優れた溶融紡糸性を得るのに必要なメルトフローレートである100g/10分を超え500g/10分以下に達するには熱処理を218℃で18時間以上行う必要があり、熱処理が強いがために溶融紡糸時にゲル化物が発生し、パック圧の急激な上昇が予想される。よって、かかるPPS樹脂は溶融紡糸に不向きである。
本発明は、溶融時の揮発性成分の発生量が少なくかつ溶融紡糸性に優れたポリフェニレンスルフィド樹脂を、高い生産効率で安価に得ることを課題として検討した結果達成されたものである。
本発明者らは上記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、重合により得られたポリフェニレンスルフィドを特定の条件下で洗浄および熱処理することにより、生産効率が高く安価であると同時に揮発性成分が著しく減少したポリフェニレンスルフィド樹脂の製造方法を見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、
1.スルフィド化剤とポリハロゲン化芳香族化合物とを有機極性溶媒中で反応させて得られるポリアリーレンスルフィドを、以下の各工程を順次行うことにより、真空下320℃で2時間加熱溶融した際に揮発するガス発生量が0.2重量%以下であり、かつ250℃で5分間、20倍重量の1−クロロナフタレンに溶解してポアサイズ1μmのPTFEメンブランフィルターで熱時加圧濾過した際の残さ量が3.0重量%以下であり、かつメルトフローレート(ASTM D−1238−70に従って温度315.5℃、荷重5000gにて測定)が100g/10分を越え500g/10分以下であり、かつ示差走査型熱量計で求めた溶融結晶化ピーク温度が100〜210℃であるポリフェニレンスルフィド樹脂を得ることを特徴とするポリアリーレンスルフィド樹脂の製造方法、
(1)スルフィド化剤とポリハロゲン化芳香族化合物とを有機極性溶媒中200〜290℃の温度で反応させ、反応物からポリマーを回収する工程、
(2)得られたポリマーを80〜200℃の熱水で1回以上洗浄する工程、
(3)濾過することにより濾過液とポリマーとを分離する工程、
(3)分離したポリマーを、アルカリ金属を含む水溶液、アルカリ土類金属を含む水溶液、または熱水から選ばれる1種以上の水溶液に浸漬させて80〜200℃で1回以上洗浄する工程、
(4)洗浄後のポリマーを熱処理する工程、
2.前記工程(1)のポリマー回収がフラッシュ法であることを特徴とする1記載のポリフェニレンスルフィド樹脂の製造方法、
3.熱処理が、酸素濃度2体積%以上の雰囲気下、160〜270℃、0.1〜17時間行うことを特徴とする1または2に記載にポリフェニレンスルフィド樹脂の製造方法、
4.熱処理が、酸素濃度2体積%未満の雰囲気下、210〜270℃、0.2〜50時間行うことを特徴とする1または2に記載にポリフェニレンスルフィド樹脂の製造方法、
より構成されるものである。
1.スルフィド化剤とポリハロゲン化芳香族化合物とを有機極性溶媒中で反応させて得られるポリアリーレンスルフィドを、以下の各工程を順次行うことにより、真空下320℃で2時間加熱溶融した際に揮発するガス発生量が0.2重量%以下であり、かつ250℃で5分間、20倍重量の1−クロロナフタレンに溶解してポアサイズ1μmのPTFEメンブランフィルターで熱時加圧濾過した際の残さ量が3.0重量%以下であり、かつメルトフローレート(ASTM D−1238−70に従って温度315.5℃、荷重5000gにて測定)が100g/10分を越え500g/10分以下であり、かつ示差走査型熱量計で求めた溶融結晶化ピーク温度が100〜210℃であるポリフェニレンスルフィド樹脂を得ることを特徴とするポリアリーレンスルフィド樹脂の製造方法、
(1)スルフィド化剤とポリハロゲン化芳香族化合物とを有機極性溶媒中200〜290℃の温度で反応させ、反応物からポリマーを回収する工程、
(2)得られたポリマーを80〜200℃の熱水で1回以上洗浄する工程、
(3)濾過することにより濾過液とポリマーとを分離する工程、
(3)分離したポリマーを、アルカリ金属を含む水溶液、アルカリ土類金属を含む水溶液、または熱水から選ばれる1種以上の水溶液に浸漬させて80〜200℃で1回以上洗浄する工程、
(4)洗浄後のポリマーを熱処理する工程、
2.前記工程(1)のポリマー回収がフラッシュ法であることを特徴とする1記載のポリフェニレンスルフィド樹脂の製造方法、
3.熱処理が、酸素濃度2体積%以上の雰囲気下、160〜270℃、0.1〜17時間行うことを特徴とする1または2に記載にポリフェニレンスルフィド樹脂の製造方法、
4.熱処理が、酸素濃度2体積%未満の雰囲気下、210〜270℃、0.2〜50時間行うことを特徴とする1または2に記載にポリフェニレンスルフィド樹脂の製造方法、
より構成されるものである。
本発明によれば、溶融時の揮発性成分の発生量が少なく、かつ溶融紡糸性に優れたポリフェニレンスルフィド樹脂を、高い生産効率で安価に製造する方法を提供できる。
以下、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
本発明の製造方法により得られるPPS樹脂は、下記構造式(I)で示される繰り返し単位を有する重合体であり、
耐熱性の観点からは上記構造式で示される繰り返し単位を含む重合体を70モル%以上、更には90モル%以上含む重合体が好ましい。またPPS樹脂はその繰り返し単位の30モル%未満程度が、下記の構造を有する繰り返し単位等で構成されていてもよい。
本発明の製造方法により得られるPPS樹脂は、真空下、320℃で2時間加熱溶融した際に揮発するガス発生量が0.2重量%以下であり、0.18重量%以下が望ましい。熱処理後のガス発生量が0.2重量%を上回ると、溶融紡糸時に口金付着物が増大するため糸切れ等の問題が発生しやすく、安定した溶融紡糸性を得ることができない。熱処理後のガス発生量の下限については特に制限しないが、ガス発生量の低減を目的に熱処理時間を長くとると経済的に不利であると同時にゲル化物が生じ易くなり、紡糸不良を引き起こす一因となり得る。
なお、上記ガス発生量とは、PPS樹脂を真空下で加熱溶融した際に揮発するガスが、冷却されて液化または固化した付着性成分の量を意味しており、PPS樹脂を真空封入したガラスアンプルを、管状炉で加熱することにより測定されるものである。ガラスアンプルの形状としては、腹部が100mm×25mmφ、首部が255mm×12mmφ、肉厚が1mmである。具体的な測定方法としては、PPS樹脂を真空封入したガラスアンプルの胴部のみを320℃の管状炉に挿入して2時間加熱することにより、管状炉によって加熱されていないアンプルの首部で揮発性ガスが冷却されて付着する。この首部を切り出して秤量した後、付着したガスをクロロホルムに溶解して除去する。次いで、この首部を乾燥してから再び秤量する。ガスを除去した前後のアンプル首部の重量差よりガス発生量を求める。
本発明の製造方法により得られるPPS樹脂は、250℃で5分間、20倍重量の1−クロロナフタレンに溶解して、ポアサイズ1μmのPTFEメンブランフィルターで熱時加圧濾過した際の残さ量が3.0重量%以下である必要があり、好ましくは2.5重量%以下、さらに好ましくは2.0重量%以下であることが望ましい。残さ量が3.0重量%を上回ることは、PPS樹脂の熱酸化架橋が過度に進行し、樹脂中のゲル化物の増加を意味する。PPS樹脂の熱酸化架橋を過度に進行させても、揮発分低減効果は少なく、一方で溶融流動性の低下、ゲル化物による紡糸不良等の原因になるため好ましくない。
なお、上記残さ量は、PPS樹脂を約80μm厚にプレスフィルム化したものを試料とし、高温濾過装置および空圧キャップと採集ロートを具備したSUS試験管を用いて測定されるものである。具体的には、まずSUS試験管にポアサイズ1μmのメンブランフィルターをセットした後、約80μm厚にプレスフィルム化したPPS樹脂および20倍重量の1−クロロナフタレンを秤量して密閉する。これを250℃の高温濾過装置にセットして5分間加熱振とうする。次いで空圧キャップに空気を含んだ注射器を接続してから注射器のピストンを押し出し、空圧による熱時濾過を行う。残さ量の具体的な定量方法としては、濾過前のメンブランフィルターと濾過後に150℃で1時間真空乾燥したメンブランフィルターの重量差より求める。
本発明の製造方法により得られるPPS樹脂は、メルトフローレート(ASTM D−1238−70に従って温度315.5℃、荷重5000gにて測定)が100g/10分を越え500g/10分以下である必要があり、好ましくは110g/10分以上400g/10分以下、更に好ましくは120g/10分以上250g/10分以下である。熱処理後のメルトフローレートが100g/10分以下であると、溶融紡糸時の樹脂圧力が高くなりすぎるため好ましくない。特に高度な熱処理により100g/10分以下の範囲に調整された場合、樹脂中にゲル化物を多量に含む可能性が高くなり、連続溶融紡糸中にゲル化物が口金やフィルターに詰まり、樹脂圧の上昇を引き起こすため好ましくない。500g/10分を越える範囲であると、重合度が低すぎるために溶融紡糸で得られた糸の強度が低下するため好ましくない。
本発明の製造方法により得られるPPS樹脂は、示差走査型熱量計で求めた溶融結晶化ピーク温度が100〜210℃である必要があり、好ましくは120〜210℃以下である。熱処理後の溶融結晶化ピーク温度が210℃を超えると、溶融結晶化速度が速いため溶融紡糸時に糸切れが発生しやすく、生産性が低下する。一方、溶融結晶化ピーク温度が100℃を下回ると紡糸後にアニール処理を施しても結晶化しにくいため、糸強度の低下につながる。
なお、本発明の効果を得る上で、上記条件を満たすPPS樹脂を100%用いて繊維やその他の成形品とすることが最も好ましいが、必要に応じ、上記条件を満たさないPPS樹脂(あるいは上記条件を満たす樹脂をペレット化したものと、上記条件を満たさないPPS樹脂をペレット化したものの混合物)とブレンド使用する事を排除するものではない。ブレンド比率としては、上記条件を満たすPPSを75〜25%(例えば75%、50%、25%)ブレンドするなど適宜必要に応じ選択することは可能である。
上記本発明のPPS樹脂の製造方法について詳細に説明するが、もちろん本発明で規定する要件を満足する限りPPS樹脂の製造法は下記に限定されるものではない。
以下に、本発明の製造方法において使用するポリハロゲン化芳香族化合物、スルフィド化剤、重合溶媒、分子量調節剤、重合助剤および重合安定剤の内容について説明する。
[ポリハロゲン化芳香族化合物]
ポリハロゲン化芳香族化合物とは、1分子中にハロゲン原子を2個以上有する化合物をいう。具体例としては、p−ジクロロベンゼン、m−ジクロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、1,3,5−トリクロロベンゼン、1,2,4−トリクロロベンゼン、1,2,4,5−テトラクロロベンゼン、ヘキサクロロベンゼン、2,5−ジクロロトルエン、2,5−ジクロロ−p−キシレン、1,4−ジブロモベンゼン、1,4−ジヨードベンゼン、1−メトキシ−2,5−ジクロロベンゼンなどのポリハロゲン化芳香族化合物が挙げられ、好ましくはp−ジクロロベンゼンが用いられる。また、異なる2種以上のポリハロゲン化芳香族化合物を組み合わせて共重合体とすることも可能であるが、p−ジハロゲン化芳香族化合物を主要成分とすることが好ましい。
ポリハロゲン化芳香族化合物とは、1分子中にハロゲン原子を2個以上有する化合物をいう。具体例としては、p−ジクロロベンゼン、m−ジクロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、1,3,5−トリクロロベンゼン、1,2,4−トリクロロベンゼン、1,2,4,5−テトラクロロベンゼン、ヘキサクロロベンゼン、2,5−ジクロロトルエン、2,5−ジクロロ−p−キシレン、1,4−ジブロモベンゼン、1,4−ジヨードベンゼン、1−メトキシ−2,5−ジクロロベンゼンなどのポリハロゲン化芳香族化合物が挙げられ、好ましくはp−ジクロロベンゼンが用いられる。また、異なる2種以上のポリハロゲン化芳香族化合物を組み合わせて共重合体とすることも可能であるが、p−ジハロゲン化芳香族化合物を主要成分とすることが好ましい。
ポリハロゲン化芳香族化合物の使用量は、加工に適した粘度のPPS樹脂を得る点から、スルフィド化剤1モル当たり0.9から2.0モル、好ましくは0.95から1.5モル、更に好ましくは1.005から1.2モルの範囲が例示できる。
[スルフィド化剤]
スルフィド化剤としては、アルカリ金属硫化物、アルカリ金属水硫化物、および硫化水素が挙げられる。
スルフィド化剤としては、アルカリ金属硫化物、アルカリ金属水硫化物、および硫化水素が挙げられる。
アルカリ金属硫化物の具体例としては、例えば硫化リチウム、硫化ナトリウム、硫化カリウム、硫化ルビジウム、硫化セシウムおよびこれら2種以上の混合物を挙げることができ、なかでも硫化ナトリウムが好ましく用いられる。これらのアルカリ金属硫化物は、水和物または水性混合物として、あるいは無水物の形で用いることができる。
アルカリ金属水硫化物の具体例としては、例えば水硫化ナトリウム、水硫化カリウム、水硫化リチウム、水硫化ルビジウム、水硫化セシウムおよびこれら2種以上の混合物を挙げることができ、なかでも水硫化ナトリウムが好ましく用いられる。これらのアルカリ金属水硫化物は、水和物または水性混合物として、あるいは無水物の形で用いることができる。
また、アルカリ金属水硫化物とアルカリ金属水酸化物から、反応系においてin situで調製されるスルフィド化剤も用いることができる。また、アルカリ金属水硫化物とアルカリ金属水酸化物からスルフィド化剤を調製し、これを重合槽に移して用いることができる。
あるいは、水酸化リチウム、水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属水酸化物と硫化水素から反応系においてin situで調製されるスルフィド化剤も用いることができる。また、水酸化リチウム、水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属水酸化物と硫化水素からスルフィド化剤を調製し、これを重合槽に移して用いることができる。
仕込みスルフィド化剤の量は、脱水操作などにより重合反応開始前にスルフィド化剤の一部損失が生じる場合には、実際の仕込み量から当該損失分を差し引いた残存量を意味するものとする。
なお、スルフィド化剤と共に、アルカリ金属水酸化物および/またはアルカリ土類金属水酸化物を併用することも可能である。アルカリ金属水酸化物の具体例としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウムおよびこれら2種以上の混合物を好ましいものとして挙げることができ、アルカリ土類金属水酸化物の具体例としては、例えば水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウムなどが挙げられ、なかでも水酸化ナトリウムが好ましく用いられる。
スルフィド化剤として、アルカリ金属水硫化物を用いる場合には、アルカリ金属水酸化物を同時に使用することが特に好ましいが、この使用量はアルカリ金属水硫化物1モルに対し0.95から1.20モル、好ましくは1.00から1.15モル、更に好ましくは1.005から1.100モルの範囲が例示できる。
[重合溶媒]
重合溶媒としては有機極性溶媒を用いることが好ましい。具体例としては、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドンなどのN−アルキルピロリドン類、N−メチル−ε−カプロラクタムなどのカプロラクタム類、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ヘキサメチルリン酸トリアミド、ジメチルスルホン、テトラメチレンスルホキシドなどに代表されるアプロチック有機溶媒、およびこれらの混合物などが挙げられ、これらはいずれも反応の安定性が高いために好ましく使用される。これらのなかでも、特にN−メチル−2−ピロリドン(以下、NMPと略記することもある)が好ましく用いられる。
重合溶媒としては有機極性溶媒を用いることが好ましい。具体例としては、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドンなどのN−アルキルピロリドン類、N−メチル−ε−カプロラクタムなどのカプロラクタム類、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ヘキサメチルリン酸トリアミド、ジメチルスルホン、テトラメチレンスルホキシドなどに代表されるアプロチック有機溶媒、およびこれらの混合物などが挙げられ、これらはいずれも反応の安定性が高いために好ましく使用される。これらのなかでも、特にN−メチル−2−ピロリドン(以下、NMPと略記することもある)が好ましく用いられる。
有機極性溶媒の使用量は、スルフィド化剤1モル当たり2.0モルから10モル、好ましくは2.25から6.0モル、より好ましくは2.5から5.5モルの範囲が選択される。
[分子量調節剤]
生成するPPS樹脂の末端を形成させるか、あるいは重合反応や分子量を調節するなどのために、モノハロゲン化化合物(必ずしも芳香族化合物でなくともよい)を、上記ポリハロゲン化芳香族化合物と併用することができる。
生成するPPS樹脂の末端を形成させるか、あるいは重合反応や分子量を調節するなどのために、モノハロゲン化化合物(必ずしも芳香族化合物でなくともよい)を、上記ポリハロゲン化芳香族化合物と併用することができる。
[重合助剤]
比較的高重合度のPPS樹脂をより短時間で得るために重合助剤を用いることも好ましい態様の一つである。ここで重合助剤とは得られるPPS樹脂の粘度を増大させる作用を有する物質を意味する。このような重合助剤の具体例としては、例えば有機カルボン酸金属塩、水、アルカリ金属塩化物、有機スルホン酸塩、硫酸アルカリ金属塩、アルカリ土類金属酸化物、アルカリ金属リン酸塩およびアルカリ土類金属リン酸塩などが挙げられる。これらは単独であっても、また2種以上を同時に用いることもできる。なかでも、有機カルボン酸金属塩および/または水が好ましく用いられる。
比較的高重合度のPPS樹脂をより短時間で得るために重合助剤を用いることも好ましい態様の一つである。ここで重合助剤とは得られるPPS樹脂の粘度を増大させる作用を有する物質を意味する。このような重合助剤の具体例としては、例えば有機カルボン酸金属塩、水、アルカリ金属塩化物、有機スルホン酸塩、硫酸アルカリ金属塩、アルカリ土類金属酸化物、アルカリ金属リン酸塩およびアルカリ土類金属リン酸塩などが挙げられる。これらは単独であっても、また2種以上を同時に用いることもできる。なかでも、有機カルボン酸金属塩および/または水が好ましく用いられる。
上記有機カルボン酸金属塩とは、一般式R(COOM)n(式中、Rは、炭素数1〜20を有するアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルキルアリール基またはアリールアルキル基である。Mは、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウムおよびセシウムから選ばれるアルカリ金属である。nは1〜3の整数である。)で表される化合物である。有機カルボン酸金属塩は、水和物、無水物または水溶液としても用いることができる。有機カルボン酸金属塩の具体例としては、例えば、酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、プロピオン酸ナトリウム、吉草酸リチウム、安息香酸ナトリウム、フェニル酢酸ナトリウム、p−トルイル酸カリウム、およびそれらの混合物などを挙げることができる。
有機カルボン酸金属塩は、有機酸と、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩およびアルカリ金属重炭酸塩よりなる群から選ばれる一種以上の化合物とを、ほぼ等化学当量ずつ添加して反応させることにより形成させてもよい。上記有機カルボン酸金属塩の中で、リチウム塩は反応系への溶解性が高く助剤効果が大きいが高価であり、カリウム、ルビジウムおよびセシウム塩は反応系への溶解性が不十分であると思われるため、安価で、重合系への適度な溶解性を有する酢酸ナトリウムが最も好ましく用いられる。
これら重合助剤を用いる場合の使用量は、仕込みアルカリ金属硫化物1モルに対し、通常0.01モル〜0.7モルの範囲であり、より高い重合度を得る意味においては0.1〜0.6モルの範囲が好ましく、0.2〜0.5モルの範囲がより好ましい。
また水を重合助剤として用いることは、流動性と高靭性が高度にバランスした樹脂組成物を得る上で有効な手段の一つである。その場合の添加量は、仕込みアルカリ金属硫化物1モルに対し、通常0.5モル〜15モルの範囲であり、より高い重合度を得る意味においては0.6〜10モルの範囲が好ましく、1〜5モルの範囲がより好ましい。
これら重合助剤の添加時期には特に指定はなく、後述する前工程時、重合開始時、重合途中のいずれの時点で添加してもよく、また複数回に分けて添加してもよいが、重合助剤として有機カルボン酸金属塩を用いる場合は前工程開始時或いは重合開始時に同時に添加することが、添加が容易である点からより好ましい。また水を重合助剤として用いる場合は、ポリハロゲン化芳香族化合物を仕込んだ後、重合反応途中で添加することが効果的である。
[重合安定剤]
重合反応系を安定化し、副反応を防止するために、重合安定剤を用いることもできる。重合安定剤は、重合反応系の安定化に寄与し、望ましくない副反応を抑制する。副反応の一つの目安としては、チオフェノールの生成が挙げられ、重合安定剤の添加によりチオフェノールの生成を抑えることができる。重合安定剤の具体例としては、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ土類金属水酸化物、およびアルカリ土類金属炭酸塩などの化合物が挙げられる。そのなかでも、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、および水酸化リチウムなどのアルカリ金属水酸化物が好ましい。上述の有機カルボン酸金属塩も重合安定剤として作用するので、本発明で使用する重合安定剤の一つに入る。また、スルフィド化剤としてアルカリ金属水硫化物を用いる場合には、アルカリ金属水酸化物を同時に使用することが特に好ましいことを前述したが、ここでスルフィド化剤に対して過剰となるアルカリ金属水酸化物も重合安定剤となり得る。
重合反応系を安定化し、副反応を防止するために、重合安定剤を用いることもできる。重合安定剤は、重合反応系の安定化に寄与し、望ましくない副反応を抑制する。副反応の一つの目安としては、チオフェノールの生成が挙げられ、重合安定剤の添加によりチオフェノールの生成を抑えることができる。重合安定剤の具体例としては、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ土類金属水酸化物、およびアルカリ土類金属炭酸塩などの化合物が挙げられる。そのなかでも、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、および水酸化リチウムなどのアルカリ金属水酸化物が好ましい。上述の有機カルボン酸金属塩も重合安定剤として作用するので、本発明で使用する重合安定剤の一つに入る。また、スルフィド化剤としてアルカリ金属水硫化物を用いる場合には、アルカリ金属水酸化物を同時に使用することが特に好ましいことを前述したが、ここでスルフィド化剤に対して過剰となるアルカリ金属水酸化物も重合安定剤となり得る。
これら重合安定剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。重合安定剤は、仕込みアルカリ金属硫化物1モルに対して、通常0.02〜0.2モル、好ましくは0.03〜0.1モル、より好ましくは0.04〜0.09モルの割合で使用することが好ましい。この割合が少ないと安定化効果が不十分であり、逆に多すぎても経済的に不利益であり、ポリマー収率が低下する傾向となる。
重合安定剤の添加時期には特に指定はなく、後述する前工程時、重合開始時、重合途中のいずれの時点で添加してもよく、また複数回に分けて添加してもよいが、前工程開始時或いは重合開始時に同時に添加することが容易である点からより好ましい。
次に、前工程、重合反応工程、回収工程、洗浄工程、熱処理工程を順を追って具体的に説明する。
[前工程]
スルフィド化剤は通常水和物の形で使用されるが、ポリハロゲン化芳香族化合物を添加する前に、有機極性溶媒とスルフィド化剤を含む混合物を昇温し、過剰量の水を系外に除去することが好ましい。なお、この操作により水を除去し過ぎた場合には、不足分の水を添加して補充することが好ましい。
スルフィド化剤は通常水和物の形で使用されるが、ポリハロゲン化芳香族化合物を添加する前に、有機極性溶媒とスルフィド化剤を含む混合物を昇温し、過剰量の水を系外に除去することが好ましい。なお、この操作により水を除去し過ぎた場合には、不足分の水を添加して補充することが好ましい。
また、上述したように、スルフィド化剤として、アルカリ金属水硫化物とアルカリ金属水酸化物から、反応系においてin situで、あるいは重合槽とは別の槽で調製されるアルカリ金属硫化物も用いることができる。この方法には特に制限はないが、望ましくは不活性ガス雰囲気下、常温〜150℃、好ましくは常温から100℃の温度範囲で、有機極性溶媒にアルカリ金属水硫化物とアルカリ金属水酸化物を加え、常圧または減圧下、少なくとも150℃以上、好ましくは180〜260℃まで昇温し、水分を留去させる方法が挙げられる。この段階で重合助剤を加えてもよい。また、水分の留去を促進するために、トルエンなどを加えて反応を行ってもよい。
重合反応における、重合系内の水分量は、仕込みスルフィド化剤1モル当たり0.5〜10.0モルであることが好ましい。ここで重合系内の水分量とは重合系に仕込まれた水分量から重合系外に除去された水分量を差し引いた量である。また、仕込まれる水は、水、水溶液、結晶水などのいずれの形態であってもよい。
[重合反応工程]
有機極性溶媒中でスルフィド化剤とポリハロゲン化芳香族化合物とを200〜290℃の温度範囲内で反応させることによりPPS樹脂を製造する。
有機極性溶媒中でスルフィド化剤とポリハロゲン化芳香族化合物とを200〜290℃の温度範囲内で反応させることによりPPS樹脂を製造する。
重合反応工程を開始するに際しては、望ましくは不活性ガス雰囲気下、常温〜220℃、好ましくは100〜220℃の温度範囲で、有機極性溶媒にスルフィド化剤とポリハロゲン化芳香族化合物を加える。この段階で重合助剤を加えてもよい。これらの原料の仕込み順序は特に制限はなく、同時であってもさしつかえない。
かかる混合物を200℃〜290℃の範囲に昇温する。昇温速度に特に制限はないが、通常0.01〜5℃/分の速度が選択され、0.1〜3℃/分の範囲がより好ましい。
一般に、最終的には250〜290℃の温度まで昇温し、その温度で通常0.25〜50時間、好ましくは0.5〜20時間反応させる。
最終温度に到達させる前の段階で、例えば200℃〜260℃で一定時間反応させた後、260〜290℃に昇温する方法は、より高い重合度を得る上で有効である。この際、200℃〜260℃での反応時間としては、通常0.25時間から20時間の範囲が選択され、好ましくは0.25〜10時間の範囲が選択される。
なお、より高重合度のポリマーを得るためには、複数段階で重合を行うことが有効である。複数段階で重合を行う際は、245℃における系内のポリハロゲン化芳香族化合物の転化率が、40モル%以上、好ましくは60モル%に達した時点で次の段階に移行することが有効である。
[回収工程]
重合終了後に、重合体、溶媒などを含む重合反応物から固形物を回収する。
重合終了後に、重合体、溶媒などを含む重合反応物から固形物を回収する。
本発明は溶融時の揮発性成分の発生量が少なく、かつ溶融紡糸性に優れたポリフェニレンスルフィド樹脂を、高い生産効率で安価に製造する方法を提供するものであり、PPS樹脂の好ましい回収方法は急冷条件下に行うことであり、好ましい一つの回収方法としてフラッシュ法が挙げられる。フラッシュ法とは、重合反応物を高温高圧(通常250℃以上、8kg/cm2 以上)の状態から常圧もしくは減圧の雰囲気中へフラッシュさせ、溶媒回収と同時に重合体を粉粒体状にして回収する方法であり、ここでいうフラッシュとは、重合反応物をノズルから噴出させることを意味する。フラッシュさせる雰囲気は、具体的には例えば常圧中の窒素または水蒸気が挙げられ、その温度は通常150℃〜250℃の範囲が選択される。
フラッシュ法は、溶媒回収と同時に固形物を回収することができ、また回収時間も比較的短くできることから、経済性に優れた回収方法である。この回収方法では、固化過程でNaに代表されるイオン性化合物や有機系低重合度物(オリゴマー)がポリマー中に取り込まれやすい傾向がある。
但し、本発明の製造方法に用いられるPPS樹脂の回収法は、フラッシュ法に限定されるものではなく、本発明の要件を満たす方法であれば、徐冷して粒子状のポリマーを回収する方法(クエンチ法)を用いてもよい。しかし、経済性、性能を鑑みた場合、フラッシュ法で回収されたPPS樹脂を用いることがより好ましい。
[洗浄工程]
本発明では上記重合反応工程、回収工程で得られたポリマーを特定の条件で洗浄する工程が必須であり、その洗浄工程は(1)重合により得られたポリマーを80〜200℃の熱水で1回以上洗浄する工程、(2)濾過することにより濾過液とポリマーとを分離する工程、(3)分離したポリマーを、アルカリ金属を含む水溶液、アルカリ土類金属を含む水溶液、または熱水から選ばれる1種以上の水溶液に浸漬させて80〜200℃で1回以上洗浄する工程、である。以下に各工程を具体的に説明する。
本発明では上記重合反応工程、回収工程で得られたポリマーを特定の条件で洗浄する工程が必須であり、その洗浄工程は(1)重合により得られたポリマーを80〜200℃の熱水で1回以上洗浄する工程、(2)濾過することにより濾過液とポリマーとを分離する工程、(3)分離したポリマーを、アルカリ金属を含む水溶液、アルカリ土類金属を含む水溶液、または熱水から選ばれる1種以上の水溶液に浸漬させて80〜200℃で1回以上洗浄する工程、である。以下に各工程を具体的に説明する。
(1)重合により得られたポリマーを80〜200℃の熱水で1回以上洗浄する工程
本発明における熱水処理に用いる水は、蒸留水あるいは脱イオン水であることが好ましいが、熱水処理後のpHがアルカリ性となるようにアルカリ金属水酸化物などを添加しても良い。特に、熱水処理中のpHが10以上であれば、カルボン酸末端を持つ不純物の除去率が高くなり、熱処理時に揮発成分を低減しやすくなるために好ましい。また、熱水処理温度は80〜200℃が必要であり、120〜200℃が好ましく、150〜200℃がより好ましい。80℃未満では熱水処理効果が小さく揮発性成分が多くなり、200℃を超えると圧力が高くなりすぎるため安全上好ましくない。
本発明における熱水処理に用いる水は、蒸留水あるいは脱イオン水であることが好ましいが、熱水処理後のpHがアルカリ性となるようにアルカリ金属水酸化物などを添加しても良い。特に、熱水処理中のpHが10以上であれば、カルボン酸末端を持つ不純物の除去率が高くなり、熱処理時に揮発成分を低減しやすくなるために好ましい。また、熱水処理温度は80〜200℃が必要であり、120〜200℃が好ましく、150〜200℃がより好ましい。80℃未満では熱水処理効果が小さく揮発性成分が多くなり、200℃を超えると圧力が高くなりすぎるため安全上好ましくない。
熱水処理の時間は、PPS樹脂と熱水による抽出処理が十分である時間が好ましく、例えば80℃で処理する場合は2〜24時間が好ましく、200℃で処理する場合は0.01〜5時間が好ましい。
熱水処理におけるPPS樹脂と水との割合は、PPS樹脂が水に十分に浸漬された状態で処理することが好ましく、PPS樹脂500gに対して、水0.5〜500Lが好ましく、1〜100Lがより好ましく、2.5〜20Lがさらに好ましい。PPS樹脂500gに対して水が0.5Lより少ないとPPS樹脂が水に十分浸漬しないため洗浄不良となり、揮発性成分が増大するため好ましくない。また、PPS樹脂500gに対して、水が500Lを超えると、PPS樹脂に対する水が大過剰となり生産効率が著しく低下するため好ましくない。
これらの熱水処理の操作に特に制限は無く、所定量の水に所定量のPPS樹脂を投入し、圧力容器内で加熱・撹拌する方法、連続的に熱水処理を施す方法などにより行われる。
また、熱水処理前に80℃未満の水で洗浄し濾過することで、不純物を予め低減させておくことも好ましい態様の一つである。
(2)濾過することにより濾過液とポリマーとを分離する工程
本発明では上記工程(1)の熱水洗浄後に濾過を行い、濾過液とポリマーとを分離することが必須である。濾過方法に特に制限は無いが、ふるいやフィルターを用いた濾過が簡便であり、自然濾過、加圧濾過、減圧濾過、遠心濾過などの方法が例示できる。また、濾過により分離されたPPS樹脂表面に残留している不純物を除去するため、水または温水で数回洗浄することが好ましい。洗浄方法に特に制限は無いが、濾過装置上のPPS樹脂に水をかけながら濾過する方法や、予め用意した水に、分離したPPS樹脂を投入した後に再度濾過するなどの方法で水溶液とPPS樹脂を分離する方法が例示できる。洗浄に用いる水は、蒸留水あるいは脱イオン水であることが好ましい。
本発明では上記工程(1)の熱水洗浄後に濾過を行い、濾過液とポリマーとを分離することが必須である。濾過方法に特に制限は無いが、ふるいやフィルターを用いた濾過が簡便であり、自然濾過、加圧濾過、減圧濾過、遠心濾過などの方法が例示できる。また、濾過により分離されたPPS樹脂表面に残留している不純物を除去するため、水または温水で数回洗浄することが好ましい。洗浄方法に特に制限は無いが、濾過装置上のPPS樹脂に水をかけながら濾過する方法や、予め用意した水に、分離したPPS樹脂を投入した後に再度濾過するなどの方法で水溶液とPPS樹脂を分離する方法が例示できる。洗浄に用いる水は、蒸留水あるいは脱イオン水であることが好ましい。
(3)分離したポリマーを、アルカリ金属を含む水溶液、アルカリ土類金属を含む水溶液、または熱水から選ばれる1種以上の水溶液に浸漬させて80〜200℃で1回以上洗浄する工程
本発明では上記工程(2)の分離を行った後、分離したポリマーをアルカリ金属を含む水溶液、アルカリ土類金属を含む水溶液、または熱水から選ばれる1種以上の水溶液に浸漬させて80〜200℃で1回以上洗浄することが必要である。洗浄温度は120〜200℃が好ましく、150〜200℃がより好ましい。本工程を経ることでポリマー中の不純物が極めて低いレベルまで低減でき溶融紡糸時に発生する揮発性成分を著しく低減できる。また、アルカリ土類金属を含む水溶液での洗浄ではPPS樹脂にII価の金属イオンが導入されることでより安定した溶融紡糸性が確保できるため、より好ましい洗浄方法である。洗浄温度が80℃未満では揮発性成分の除去が不十分になるとともにアルカリ土類金属を含む水溶液で洗浄を行う場合はPPS樹脂への金属イオンの導入が不十分となる。200℃を超えると圧力が高くなりすぎるため安全上好ましくない。
本発明では上記工程(2)の分離を行った後、分離したポリマーをアルカリ金属を含む水溶液、アルカリ土類金属を含む水溶液、または熱水から選ばれる1種以上の水溶液に浸漬させて80〜200℃で1回以上洗浄することが必要である。洗浄温度は120〜200℃が好ましく、150〜200℃がより好ましい。本工程を経ることでポリマー中の不純物が極めて低いレベルまで低減でき溶融紡糸時に発生する揮発性成分を著しく低減できる。また、アルカリ土類金属を含む水溶液での洗浄ではPPS樹脂にII価の金属イオンが導入されることでより安定した溶融紡糸性が確保できるため、より好ましい洗浄方法である。洗浄温度が80℃未満では揮発性成分の除去が不十分になるとともにアルカリ土類金属を含む水溶液で洗浄を行う場合はPPS樹脂への金属イオンの導入が不十分となる。200℃を超えると圧力が高くなりすぎるため安全上好ましくない。
洗浄処理時間は、例えば80℃で処理する場合は2〜24時間が好ましく、200℃で処理する場合は0.01〜5時間が好ましい。
洗浄処理する際のPPS樹脂と水との割合は、PPS樹脂が水に十分に浸漬された状態で処理することが好ましく、PPS樹脂500gに対して、水0.5〜500Lが好ましく、1〜100Lがより好ましく、2.5〜20Lがさらに好ましい。PPS樹脂500gに対して水が0.5Lより少ないとPPS樹脂が水に十分浸漬しないため洗浄不良となる。また、PPS樹脂500gに対して、水が500Lを超えると、PPS樹脂に対する水が大過剰となり生産効率が著しく低下するため好ましくない。
これらの洗浄処理操作に特に制限は無く、所定量の水溶液または水に所定量のPPS樹脂を投入し、圧力容器内で加熱・撹拌する方法、連続的に処理を施す方法などにより行われる。洗浄に用いる水は、蒸留水あるいは脱イオン水であることが好ましい。
洗浄処理に用いるアルカリ金属を含む水溶液中のアルカリ金属としては、Li、Na、およびKなど、アルカリ土類金属を含む水溶液中のアルカリ土類金属としては、Ca、Mg、Baなどが例示できる。これら金属成分は金属イオンとして水溶液中に分散しているものであり、酢酸イオン、ハロゲン化物イオン、水酸化物イオンおよび炭酸イオンを対アニオンとする水溶性塩の形で水に添加して水溶液にすることが好ましい。具体的に好適な水溶性塩としては、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属酢酸塩、アルカリ土類金属炭酸塩、アルカリ土類金属酢酸塩、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ土類金属ハロゲン化物などが例示でき、酢酸Ca、酢酸Mg、塩化Ca、臭化Ca、炭酸Ca、水酸化Ca、酢酸Na、酢酸K、炭酸Na、炭酸Kなどが好ましく、安価で良好な溶融紡糸性が得られる水溶性塩としては酢酸Caや酢酸Naがより好ましい。水に対する水溶性塩の濃度は0.001〜5重量%程度が好ましい。
本工程(3)の後、工程(2)同様濾過により濾過液とポリマーを分離することが好ましく、分離後にPPS樹脂表面に残留している不純物を除去するため、水または温水で数回洗浄することが好ましい。
本発明に必須の上記工程(1)〜(3)すべてにおいて、PPS樹脂を処理する場がpH8を越えていることが優れた溶融紡糸性を得るために好ましい。pHが8以下となると溶融結晶化温度が210℃を超えるため、高い溶融結晶化温度ゆえに溶融紡糸時に糸切れ等の問題が発生しやすくなる。pHが8を越えていれば優れた溶融紡糸性が確保できるため、PPS樹脂を処理する場がpH8を越える範囲内であれば酢酸、塩酸、硫酸、リン酸、珪酸、炭酸およびプロピオン酸などの酸や酸を含む水溶液を適宜添加して処理しても差し障り無い。また、上記工程(1)〜(3)においてPPS末端基の分解は好ましくないので、工程での雰囲気を不活性雰囲気下とすることが望ましい。不活性雰囲気としては、窒素、ヘリウム、アルゴンなどがあげられるが、経済性の観点から窒素雰囲気下が好ましい。
本発明では工程(1)の前に有機溶媒により洗浄する工程を含んでもよく、その方法は次のとおりである。本発明でPPS樹脂の洗浄に用いる有機溶媒は、PPS樹脂を分解する作用などを有しないものであれば特に制限はなく、例えばN−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、1,3−ジメチルイミダゾリジノン、ヘキサメチルホスホラスアミド、ピペラジノン類などの含窒素極性溶媒、ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホン、スルホランなどのスルホキシド・スルホン系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、アセトフェノンなどのケトン系溶媒、ジメチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒、クロロホルム、塩化メチレン、トリクロロエチレン、2塩化エチレン、パークロルエチレン、モノクロルエタン、ジクロルエタン、テトラクロルエタン、パークロルエタン、クロルベンゼンなどのハロゲン系溶媒、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、フェノール、クレゾール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのアルコール・フェノール系溶媒およびベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒などが挙げられる。これらの有機溶媒のうちでも、N−メチル−2−ピロリドン、アセトン、ジメチルホルムアミドおよびクロロホルムなどの使用が特に好ましい。また、これらの有機溶媒は、1種類または2種類以上の混合で使用される。
有機溶媒による洗浄の方法としては、有機溶媒中にPPS樹脂を浸漬せしめるなどの方法があり、必要により適宜撹拌または加熱することも可能である。有機溶媒でPPS樹脂を洗浄する際の洗浄温度については特に制限はなく、常温〜300℃程度の任意の温度が選択できる。洗浄温度が高くなる程洗浄効率が高くなる傾向があるが、通常は常温〜150℃の洗浄温度で十分効果が得られる。圧力容器中で、有機溶媒の沸点以上の温度で加圧下に洗浄することも可能である。また、洗浄時間についても特に制限はない。洗浄条件にもよるが、バッチ式洗浄の場合、通常5分間以上洗浄することにより十分な効果が得られる。また連続式で洗浄することも可能である。
上記重合反応工程、回収工程、洗浄工程を経て得られた熱処理前のPPS樹脂のメルトフローレート(以下、MFRと略することもある)は500g/10分以下であることが好ましく、400g/10分以下、更に好ましくは300g/10分以下、より好ましくは250g/10分以下である。熱処理前のMFRが500g/10分を越えると、重合度が低すぎるため、本発明に必要なMFRである100g/10分を越え500g/10分以下のPPS樹脂を得るためには過度な熱処理が必要となり、ゲル化物が発生し溶融紡糸性が低下する。下限としては100g/10分を越える範囲であることが溶融紡糸性の点から好ましく、110g/10分以上であることが好ましい。
[熱処理工程]
本発明は、上記洗浄工程を経た後に熱処理を行うことで初めて溶融紡糸時の揮発性成分が極めて少なく、溶融紡糸性に優れたPPS樹脂が得られることを見出したものである。以下に熱処理工程を具体的に説明する。
本発明は、上記洗浄工程を経た後に熱処理を行うことで初めて溶融紡糸時の揮発性成分が極めて少なく、溶融紡糸性に優れたPPS樹脂が得られることを見出したものである。以下に熱処理工程を具体的に説明する。
本発明では、揮発性成分が少なく優れた溶融紡糸性を有するPPS樹脂を得るために熱処理を行うが、過度な熱処理は溶融流動性の低下および樹脂中のゲル化物の増加により、紡糸不良等の原因となるため好ましくない。しかしながら、熱処理が軽度すぎると揮発性成分低減効果が小さく、溶融紡糸時の口金付着物が増大し糸切れが発生しやすく、生産性が低下する傾向にある。本発明の熱処理によれば、溶融流動性を損なうことなく、ゲル化物の発生を抑制しつつ、揮発成分が低減したPPS樹脂を得ることが可能である。
熱処理は熱処理温度および熱処理時間を特定の範囲にすれば、高い酸素濃度雰囲気下でも低い酸素濃度雰囲気下でも差し支えない。
高い酸素濃度雰囲気の条件としては酸素濃度が2体積%以上であることが好ましく、熱処理温度は160〜270℃、熱処理時間は0.1〜17時間行うことが望ましい。ただ、酸素濃度が高い条件下では揮発性成分の低減速度が速いものの、同時に酸化架橋が急速に進行するためゲル化物が発生しやすくなる。そのため概して低温・長時間または高温・短時間で熱処理を行うことが好ましい。低温・長時間熱処理する具体的な条件としては160℃以上210℃以下で1時間以上17時間以下が好ましく、170℃以上200℃以下で1時間以上10時間以下がより好ましい。熱処理温度が160℃を下回る温度で熱処理を行っても揮発性成分の低減効果が小さく溶融紡糸性の改善効果は小さい。また、低温であっても酸素濃度2体積%以上の条件においては熱処理時間が17時間を越えると酸化架橋が進行しゲル化物が発生しやすくなる。高温・短時間熱処理する具体的な条件としては210℃を超え270℃以下で0.1時間以上1時間未満が好ましく、220℃以上260℃以下で0.2〜0.8時間がより好ましい。熱処理温度が270℃を超えると酸化架橋が急激に進行しゲル化物が発生しやすくなる。また、高温であっても熱処理時間が0.1時間を下回ると揮発性成分の低減効果が小さく溶融紡糸性の改善効果は小さい。
低い酸素濃度雰囲気の条件としては酸素濃度が2体積%未満であることが好ましく、熱処理温度は210〜270℃、熱処理時間は0.2〜50時間行うことが望ましい。酸素濃度が低いと揮発性成分の低減効果が小さくなる傾向にあるため概して高温・長時間で熱処理を行うことが好ましく、220℃〜260℃の熱処理温度条件下2〜20時間行うことがより好ましい。熱処理時間が210℃を下回る場合は揮発性成分が低減せず溶融紡糸性の改善効果は小さく、熱処理時間が50時間を越えて行うと生産性が低下する。
本発明の熱処理のための加熱装置は、通常の熱風乾燥機でもまた回転式あるいは撹拌翼付の加熱装置であってもよいが、効率良く、しかもより均一に処理する場合は、回転式あるいは撹拌翼付の加熱装置を用いるのがより好ましく、パドル式ドライヤー、流動層乾燥機、KIDドライヤー、スチームチューブドライヤー、さらにはインクラインドディスクドライヤー、ホッパードライヤー、縦型撹拌乾燥機などが例示できる。なかでもパドル式ドライヤーや流動層乾燥機、KIDドライヤーが均一かつ効率的に加熱する上で好ましい。熱処理の酸素濃度を調整するために、酸素、空気、オゾンなどの酸化性ガスに、窒素、アルゴン、ヘリウム、水蒸気などの非酸化性の不活性ガスを混入しても問題ない。加熱装置内で熱処理が行うことができれば、加熱装置の上部、下部、側面のどの位置から酸化性ガスや不活性ガスを導入しても特に制限はないが、より簡便な方法としては加熱装置上部からのガスの導入が挙げられる。また、酸化性ガスや不活性ガスは、加熱装置導入前に混合させてから装置に導入してもよいし、加熱装置の異なる場所から別々に酸化性ガスと不活性ガスを混入してもよい。
かくして得られたPPS樹脂は、耐熱性、耐薬品性、難燃性、電気的性質並びに機械的性質に優れ、特に射出成形用途等にも適用可能であるが、本発明の主たる目的は溶融紡糸に適用することである。
なお本発明のPPS樹脂は本発明の効果を損なわない範囲において、他の樹脂を添加することも可能である。例えば、柔軟性の高い熱可塑性樹脂を少量添加することにより柔軟性及び耐衝撃性を更に改良することが可能である。但し、この量が組成物全体の50重量%を超えるとPPS樹脂本来の特徴が損なわれるため好ましくなく、特に30重量%以下の添加が好ましく使用される。熱可塑性樹脂の具体例としては、エポキシ基含有オレフィン系共重合体、その他のオレフィン系樹脂、ポリアミド樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリサルフォン樹脂、ポリアリルサルフォン樹脂、ポリケトン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリアリレート樹脂、液晶ポリマー、ポリエーテルサルフォン樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリチオエーテルケトン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、四フッ化ポリエチレン樹脂などが挙げられる。
また、改質を目的として、以下のような化合物の添加が可能である。イソシアネート系化合物、有機シラン系化合物、有機チタネート系化合物、有機ボラン系化合物、エポキシ化合物などのカップリング剤、ポリアルキレンオキサイドオリゴマ系化合物、チオエーテル系化合物、エステル系化合物、有機リン系化合物などの可塑剤、タルク、カオリン、有機リン化合物、ポリエーテルエーテルケトンなどの結晶核剤、モンタン酸ワックス類、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸アルミ等の金属石鹸、エチレンジアミン・ステアリン酸・セバシン酸重縮合物、シリコーン系化合物などの離型剤、次亜リン酸塩などの着色防止剤、その他、滑剤、紫外線防止剤、着色剤、発泡剤などの通常の添加剤を配合することができる。上記化合物は何れも組成物全体の20重量%を越えるとPPS樹脂本来の特性が損なわれるため好ましくなく、10重量%以下、更に好ましくは1重量%以下の添加がよい。
本発明において有機シランなどのカップリング剤を配合することで糸強度を向上させることも可能である。上記有機シランの配合量はPPS樹脂100重量部に対して、0.1〜3重量部であり、好ましくは0.5〜2.5重量部である。
本発明により得られるPPS樹脂は、本発明の効果を損なわない範囲で充填材を配合して使用することも可能である。かかる充填材の具体例としてはガラス繊維、炭素繊維、チタン酸カリウムウィスカ、酸化亜鉛ウィスカ、炭酸カルシウムウィスカー、ワラステナイトウィスカー、硼酸アルミニウムウィスカ、アラミド繊維、アルミナ繊維、炭化珪素繊維、セラミック繊維、アスベスト繊維、石コウ繊維、金属繊維などの繊維状充填材、あるいはタルク、ワラステナイト、ゼオライト、セリサイト、マイカ、カオリン、クレー、パイロフィライト、ベントナイト、アスベスト、アルミナシリケートなどの珪酸塩、酸化珪素、酸化マグネシウム、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化鉄などの金属化合物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ドロマイトなどの炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸バリウムなどの硫酸塩、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムなどの水酸化物、ガラスビーズ、ガラスフレーク、ガラス粉、セラミックビーズ、カーボンナノチューブ、フラーレン、窒化ホウ素、炭化珪素、カーボンブラックおよびシリカ、黒鉛などの非繊維状充填材が用いられ、これらは中空であってもよく、さらにはこれら充填剤を2種類以上併用することも可能である。また、これらの充填材をイソシアネート系化合物、有機シラン系化合物、有機チタネート系化合物、有機ボラン系化合物およびエポキシ化合物などのカップリング剤で予備処理して使用してもよい。
本発明において、繊維を得る場合、上記PPS樹脂を原料として溶融紡糸するが、溶融紡糸に適用する前に、本発明のPPS樹脂を一旦ペレタイズした後、溶融紡糸に適用する事も可能である。また、本発明のPPS樹脂を繊維以外の用途で用いる場合も、一旦ペレタイズして用いることができる。
混練機は、単軸、2軸の押出機、バンバリーミキサー、ニーダー、及びミキシングロールなど通常公知の溶融混練機に供給してPPS樹脂の融解ピーク温度+5〜60℃の加工温度で混練する方法などを代表例として挙げることができる。副原料を用いる際、原料の混合順序には特に制限はなく、全ての原材料を配合後上記の方法により溶融混練する方法、一部の原材料を配合後上記の方法により溶融混練し更に残りの原材料を配合し溶融混練する方法、あるいは一部の原材料を配合後単軸あるいは2軸の押出機により溶融混練中にサイドフィーダーを用いて残りの原材料を混合する方法など、いずれの方法を用いてもよい。また、少量添加剤成分については、他の成分を上記の方法などで混練しペレット化した後、成形前に添加して成形に供することも勿論可能である。
次に、繊維化については、通常の紡糸機を用いて、溶融紡糸することで目的の繊維を得ることが出来る。紡糸工程では、余分の増粘によるゲル化を防止するため、好ましくは窒素雰囲気下、可能な限り低温で、しかも溶融するに十分な程度に加熱し、口金より吐出する。典型的な加熱温度は290〜370℃の範囲で、口金は通常の溶融紡糸に使用するもの、例えば0.15〜0.5mm直径で、深さ0.2〜2.0mm程度のものが好ましく用いられる。
糸条は通常、紡出後に引き取ることにより得られる。引き取り速度に特に制限は無いが、通常500m/分〜7000m/分の範囲である。かかる繊維は上記引き取りの間に冷却されるが、典型的には風速5〜200m/分の冷却風(室温または室温以下に冷却された風)を使用し、所定の引き取り装置で引き取る。
延伸工程では、好ましくは、浴中や熱板上や熱ローラー上において延伸温度130℃〜170℃程度で、延伸倍率2.0倍〜5.0倍にて延伸する。
上記、紡糸工程と延伸工程は、連続工程であっても構わないし、不連続の工程であっても構わない。また、繊維は、マルチフィラメント繊維、モノフィラメント繊維、ステープル繊維のいずれであっても構わないが、中でもステープル繊維に特に好適に用いられる。
特に、ステープル繊維を得る場合は、必要に応じて、延伸後、スタッフィングボックス型クリンパーにて捲縮を付与し、所定の温度にて弛緩熱処理を施し、次いで、油剤を付与後、所定の長さに繊維を切断し、得ることが出来る。
得られる糸の特性に特に制限は無い。通常、単糸繊度は1.5〜10.0dtexであることが好ましい。
また、強度は、本発明において好ましい態様で製造することにより、2.0cN/dtex以上のものを得ることが可能であり、より好ましい態様で製造することにより3.0cN/dtex以上、さらに好ましい態様で製造することにより、3.1cN/dtex以上のものを得ることが可能である。強度の上限に特に制限はないが通常5.0cN/dtex以下が好ましい。
伸度は、10〜100%、より好ましくは30〜80%、さらに好ましくは40〜70%である。
なお、強度、伸度は、ステープル繊維の場合、JIS L−1015−8−7−1により測定することができる。
さらに本発明における好ましい態様で製造された繊維は、乾熱収縮率0〜20%程度の物性を得ることが可能である。
本発明で得られた繊維は、抄紙ドライヤーキャンバス、ネットコンベヤー、バグフィルター、モーター結束糸などの各種用途に好適に使用することができる。また、本発明の樹脂は繊維以外の用途、例えば射出成形物品、フィルム、シートなどに適用することももちろん可能である。
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
以下の実施例において、材料特性については下記の方法により行った。
[ガス発生量]
腹部が100mm×25mmφ、首部が255mm×12mmφ、肉厚が1mmのガラスアンプルにPPS樹脂3gを計り入れてから真空封入した。このガラスアンプルの胴部のみを、アサヒ理化製作所製のセラミックス電気管状炉ARF−30Kに挿入して320℃で2時間加熱した。アンプルを取り出した後、管状炉によって加熱されておらず揮発ガスの付着したアンプルの首部をヤスリで切り出して秤量した。次いで付着ガスを5gのクロロホルムで溶解して除去した後、60℃のガラス乾燥機で1時間乾燥してから再度秤量した。ガスを除去した前後のアンプル首部の重量差から、PPS樹脂に対するガス発生量(重量%)を算出した。。
腹部が100mm×25mmφ、首部が255mm×12mmφ、肉厚が1mmのガラスアンプルにPPS樹脂3gを計り入れてから真空封入した。このガラスアンプルの胴部のみを、アサヒ理化製作所製のセラミックス電気管状炉ARF−30Kに挿入して320℃で2時間加熱した。アンプルを取り出した後、管状炉によって加熱されておらず揮発ガスの付着したアンプルの首部をヤスリで切り出して秤量した。次いで付着ガスを5gのクロロホルムで溶解して除去した後、60℃のガラス乾燥機で1時間乾燥してから再度秤量した。ガスを除去した前後のアンプル首部の重量差から、PPS樹脂に対するガス発生量(重量%)を算出した。。
[残さ量]
空圧キャップと採集ロートを具備したセンシュー科学製のSUS試験管に、予め秤量しておいたポアサイズ1μmのPTFEメンブランフィルターをセットし、約80μm厚にプレスフィルム化したPPS樹脂100mgおよび1−クロロナフタレン2gを計り入れてから密閉した。これをセンシュー科学製の高温濾過装置SSC−9300に挿入し、250℃で5分間加熱振とうしてPPS樹脂を1−クロロナフタレンに溶解した。空気を含んだ20mLの注射器を空圧キャップに接続した後、ピストンを押出して溶液をメンブランフィルターで濾過した。メンブランフィルターを取り出し、150℃で1時間真空乾燥してから秤量した。濾過前後のメンブランフィルター重量の差から、PPS樹脂に対する残さ量(重量%)を算出した。
空圧キャップと採集ロートを具備したセンシュー科学製のSUS試験管に、予め秤量しておいたポアサイズ1μmのPTFEメンブランフィルターをセットし、約80μm厚にプレスフィルム化したPPS樹脂100mgおよび1−クロロナフタレン2gを計り入れてから密閉した。これをセンシュー科学製の高温濾過装置SSC−9300に挿入し、250℃で5分間加熱振とうしてPPS樹脂を1−クロロナフタレンに溶解した。空気を含んだ20mLの注射器を空圧キャップに接続した後、ピストンを押出して溶液をメンブランフィルターで濾過した。メンブランフィルターを取り出し、150℃で1時間真空乾燥してから秤量した。濾過前後のメンブランフィルター重量の差から、PPS樹脂に対する残さ量(重量%)を算出した。
[メルトフローレート(MFR)]
測定温度315.5℃、5000g荷重とし、ASTM−D1238−70に従って測定した。
測定温度315.5℃、5000g荷重とし、ASTM−D1238−70に従って測定した。
[溶融結晶化ピーク温度(Tmc)の測定]
パーキンエルマー社製DSC7を用い、サンプル量約10mg、窒素雰囲気下、昇温・降温速度20℃/分で、
(1)50℃から340℃まで昇温し、340℃で1分間ホールド
(2)100℃まで降温
(3)再度340℃まで昇温し、340℃で1分間ホールド
(4)再度100℃まで降温
した際、(4)にあらわれる溶融結晶化ピーク温度(Tmc)を測定した。
パーキンエルマー社製DSC7を用い、サンプル量約10mg、窒素雰囲気下、昇温・降温速度20℃/分で、
(1)50℃から340℃まで昇温し、340℃で1分間ホールド
(2)100℃まで降温
(3)再度340℃まで昇温し、340℃で1分間ホールド
(4)再度100℃まで降温
した際、(4)にあらわれる溶融結晶化ピーク温度(Tmc)を測定した。
[糸切れ回数]
溶融紡糸性は紡糸時の糸切れ回数で評価した。PPS樹脂を日本製鋼所社製TEX30型2軸ベント付き押出機で、シリンダー設定温度を290℃に設定し、160rpmのスクリュー回転にて溶融混練し、ストランドカッターによりペレット化した。ペレタイズ速度は20kg/時間であった。165℃で5時間真空乾燥を行った後、該ポリマーを用いて、ステープル繊維を作製した。溶融紡糸設備を用いて溶融し、計量ポンプを介して、口金パックから、紡糸温度320℃、吐出量350g/分にて吐出し、引取速度1000m/分にて引き取った。溶融紡糸を10時間連続で行ったときの糸切れ回数を測定した。糸切れ回数が多いほど溶融紡糸性が悪いことを示すものである。
溶融紡糸性は紡糸時の糸切れ回数で評価した。PPS樹脂を日本製鋼所社製TEX30型2軸ベント付き押出機で、シリンダー設定温度を290℃に設定し、160rpmのスクリュー回転にて溶融混練し、ストランドカッターによりペレット化した。ペレタイズ速度は20kg/時間であった。165℃で5時間真空乾燥を行った後、該ポリマーを用いて、ステープル繊維を作製した。溶融紡糸設備を用いて溶融し、計量ポンプを介して、口金パックから、紡糸温度320℃、吐出量350g/分にて吐出し、引取速度1000m/分にて引き取った。溶融紡糸を10時間連続で行ったときの糸切れ回数を測定した。糸切れ回数が多いほど溶融紡糸性が悪いことを示すものである。
[口金パック樹脂内圧上昇率]
溶融紡糸性は紡糸時の口金パック樹脂内圧上昇率で評価した。糸切れ回数の評価と同様、溶融紡糸を10時間連続で行い、初期樹脂内圧に対するする10時間連続紡糸後の口金パック樹脂内圧の上昇率を算出した。上昇率が高いほどPPS樹脂由来のゲル化物が多く、溶融紡糸性が悪いことを示すものである。
溶融紡糸性は紡糸時の口金パック樹脂内圧上昇率で評価した。糸切れ回数の評価と同様、溶融紡糸を10時間連続で行い、初期樹脂内圧に対するする10時間連続紡糸後の口金パック樹脂内圧の上昇率を算出した。上昇率が高いほどPPS樹脂由来のゲル化物が多く、溶融紡糸性が悪いことを示すものである。
[参考例]PPSの調製
撹拌機および底に弁のついたオートクレーブに、47.5%水硫化ナトリウム8267.4g(70.0モル)、96%水酸化ナトリウム2925.0g(70.2モル)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)13860.0g(140.0モル)、酢酸ナトリウム2187.1g(26.7モル)、及びイオン交換水10500.0gを仕込み、常圧で窒素を通じながら240℃まで約3時間かけて徐々に加熱し、水14772.1gおよびNMP280.0gを留出したのち、反応容器を160℃に冷却した。仕込みアルカリ金属硫化物1モル当たりの系内残存水分量は、NMPの加水分解に消費された水分を含めて1.08モルであった。また、硫化水素の飛散量は仕込みアルカリ金属硫化物1モル当たり0.023モルであった。
撹拌機および底に弁のついたオートクレーブに、47.5%水硫化ナトリウム8267.4g(70.0モル)、96%水酸化ナトリウム2925.0g(70.2モル)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)13860.0g(140.0モル)、酢酸ナトリウム2187.1g(26.7モル)、及びイオン交換水10500.0gを仕込み、常圧で窒素を通じながら240℃まで約3時間かけて徐々に加熱し、水14772.1gおよびNMP280.0gを留出したのち、反応容器を160℃に冷却した。仕込みアルカリ金属硫化物1モル当たりの系内残存水分量は、NMPの加水分解に消費された水分を含めて1.08モルであった。また、硫化水素の飛散量は仕込みアルカリ金属硫化物1モル当たり0.023モルであった。
次に、p−ジクロロベンゼン(p−DCB)10254.4g(69.8モル)、NMP6444.9g(65.1モル)を加え、反応容器を窒素ガス下に密封し、240rpmで撹拌しながら、200℃から250℃まで0.8℃/分の速度で昇温し、250℃で70分保持した。次いで、250℃から278℃まで0.8℃/分の速度で昇温し、278℃で78分保持した。オートクレーブ底部の抜き出しバルブを開放し、窒素で加圧しながら内容物を攪拌機付き容器に15分かけてフラッシュし、250℃でしばらく撹拌して大半のNMPを除去した。
得られた固形物およびイオン交換水53リットルを撹拌機付きオートクレーブに入れ、70℃で30分洗浄した後、ポアサイズ10〜16μmのガラスフィルターで吸引濾過した。次いで70℃に加熱した60リットルのイオン交換水をポアサイズ10〜16μmのガラスフィルターに注ぎ込み、吸引濾過してPPSのケーク18000g(その内PPS樹脂7550gが含まれる)を得た。
[実施例1〜4]
参考例で得たPPSのケーク18000g、イオン交換水40リットルを撹拌機付きオートクレーブに仕込み、オートクレーブ内部を窒素で置換した後、192℃まで昇温し、5分保持して熱水処理を施した。オートクレーブ冷却後、内容物をポアサイズ10〜16μmのガラスフィルターで吸引濾過した。次いで70℃に加熱した60リットルのイオン交換水をガラスフィルターに注ぎ込み、吸引濾過してケークを得た。得られたケーク、イオン交換水40リットル、および酢酸カルシウム一水和物50gを撹拌機付きオートクレーブに仕込み、オートクレーブ内部を窒素で置換した後、192℃まで昇温し、5分保持して処理を施した。オートクレーブ冷却後、内容物をポアサイズ10〜16μmのガラスフィルターで濾過した。次いで、70℃に加熱した60リットルのイオン交換水をガラスフィルターに注ぎ込み、吸引濾過してケークを得た。得られたケークを窒素気流下120℃で4時間乾燥し、PPSの粉末を得た。その後、PPSの粉末を表1に示す条件で熱処理を施した。酸素濃度2%での熱処理(実施例1)は、空気0.18リットル/分、窒素1.78リットル/分を撹拌機付き加熱装置に導入し、酸素濃度計を加熱装置内に設置して酸素濃度を測定した。酸素濃度12%での熱処理(実施例2、3)は、空気1.0リットル/分、窒素0.96リットル/分の雰囲気下で行った。酸素濃度0%での熱処理(実施例4)は、窒素量1.96リットル/分の窒素雰囲気下で行った。
参考例で得たPPSのケーク18000g、イオン交換水40リットルを撹拌機付きオートクレーブに仕込み、オートクレーブ内部を窒素で置換した後、192℃まで昇温し、5分保持して熱水処理を施した。オートクレーブ冷却後、内容物をポアサイズ10〜16μmのガラスフィルターで吸引濾過した。次いで70℃に加熱した60リットルのイオン交換水をガラスフィルターに注ぎ込み、吸引濾過してケークを得た。得られたケーク、イオン交換水40リットル、および酢酸カルシウム一水和物50gを撹拌機付きオートクレーブに仕込み、オートクレーブ内部を窒素で置換した後、192℃まで昇温し、5分保持して処理を施した。オートクレーブ冷却後、内容物をポアサイズ10〜16μmのガラスフィルターで濾過した。次いで、70℃に加熱した60リットルのイオン交換水をガラスフィルターに注ぎ込み、吸引濾過してケークを得た。得られたケークを窒素気流下120℃で4時間乾燥し、PPSの粉末を得た。その後、PPSの粉末を表1に示す条件で熱処理を施した。酸素濃度2%での熱処理(実施例1)は、空気0.18リットル/分、窒素1.78リットル/分を撹拌機付き加熱装置に導入し、酸素濃度計を加熱装置内に設置して酸素濃度を測定した。酸素濃度12%での熱処理(実施例2、3)は、空気1.0リットル/分、窒素0.96リットル/分の雰囲気下で行った。酸素濃度0%での熱処理(実施例4)は、窒素量1.96リットル/分の窒素雰囲気下で行った。
[実施例5]
酢酸カルシウムを仕込まなかったこと以外は実施例1と同様に行った。
酢酸カルシウムを仕込まなかったこと以外は実施例1と同様に行った。
[実施例6]
192℃での洗浄を150℃としたこと以外は実施例1と同様に行った。
192℃での洗浄を150℃としたこと以外は実施例1と同様に行った。
[比較例1]
参考例で得たPPSのケーク18000g、イオン交換水40リットル、および酢酸カルシウム一水和物50gを撹拌機付きオートクレーブに仕込み、オートクレーブ内部を窒素で置換した後、192℃まで昇温し、5分保持して処理を施した。オートクレーブ冷却後、内容物をポアサイズ10〜16μmのガラスフィルターで吸引濾過した。次いで70℃に加熱した60リットルのイオン交換水をガラスフィルターに注ぎ込み、吸引濾過してケークを得た。得られたケークを窒素気流下120℃で4時間乾燥し、PPSの粉末を得た。
参考例で得たPPSのケーク18000g、イオン交換水40リットル、および酢酸カルシウム一水和物50gを撹拌機付きオートクレーブに仕込み、オートクレーブ内部を窒素で置換した後、192℃まで昇温し、5分保持して処理を施した。オートクレーブ冷却後、内容物をポアサイズ10〜16μmのガラスフィルターで吸引濾過した。次いで70℃に加熱した60リットルのイオン交換水をガラスフィルターに注ぎ込み、吸引濾過してケークを得た。得られたケークを窒素気流下120℃で4時間乾燥し、PPSの粉末を得た。
[比較例2]
比較例1と同様に洗浄・乾燥を行った後、得られたPPSの粉末を表1に示す条件で熱処理を行った。
比較例1と同様に洗浄・乾燥を行った後、得られたPPSの粉末を表1に示す条件で熱処理を行った。
[比較例3]
熱処理を施さなかったこと以外は実施例1と同様に洗浄・乾燥を行った。
熱処理を施さなかったこと以外は実施例1と同様に洗浄・乾燥を行った。
[比較例4]
参考例で得たPPSのケーク18000g、イオン交換水40リットルを撹拌機付きオートクレーブに仕込み、オートクレーブ内部を窒素で置換した後、192℃まで昇温し、5分保持して熱水処理を施した。オートクレーブ冷却後、内容物を濾過することなくオートクレーブに酢酸カルシウム一水和物50gを仕込み、オートクレーブ内部を窒素で置換した後、192℃まで昇温し、5分保持して処理を施した。オートクレーブ冷却後、内容物をポアサイズ10〜16μmのガラスフィルターで濾過した。次いで、70℃に加熱した60リットルのイオン交換水をガラスフィルターに注ぎ込み、吸引濾過してケークを得た。得られたケークを窒素気流下120℃で4時間乾燥し、PPSの粉末を得た。その後、PPSの粉末を表1に示す条件で熱処理を施した。
参考例で得たPPSのケーク18000g、イオン交換水40リットルを撹拌機付きオートクレーブに仕込み、オートクレーブ内部を窒素で置換した後、192℃まで昇温し、5分保持して熱水処理を施した。オートクレーブ冷却後、内容物を濾過することなくオートクレーブに酢酸カルシウム一水和物50gを仕込み、オートクレーブ内部を窒素で置換した後、192℃まで昇温し、5分保持して処理を施した。オートクレーブ冷却後、内容物をポアサイズ10〜16μmのガラスフィルターで濾過した。次いで、70℃に加熱した60リットルのイオン交換水をガラスフィルターに注ぎ込み、吸引濾過してケークを得た。得られたケークを窒素気流下120℃で4時間乾燥し、PPSの粉末を得た。その後、PPSの粉末を表1に示す条件で熱処理を施した。
[比較例5、6]
実施例1と同様に洗浄・乾燥を行った後、得られたPPSの粉末を表1に示す条件で熱処理を行った。PPSの粉末を表1に示す条件で行った以外は、実施例1と同様に洗浄・乾燥を行った。
実施例1と同様に洗浄・乾燥を行った後、得られたPPSの粉末を表1に示す条件で熱処理を行った。PPSの粉末を表1に示す条件で行った以外は、実施例1と同様に洗浄・乾燥を行った。
[比較例7]
酢酸カルシウム一水和物50gを仕込む変わりに酢酸43gを仕込んだこと以外は実施例3と同様に洗浄・乾燥・熱処理を行った。酢酸を添加して192℃で洗浄を行った後の水溶液はpH4であった。
酢酸カルシウム一水和物50gを仕込む変わりに酢酸43gを仕込んだこと以外は実施例3と同様に洗浄・乾燥・熱処理を行った。酢酸を添加して192℃で洗浄を行った後の水溶液はpH4であった。
得られたPPS樹脂のガス発生量、残さ量、MFR、Tmc、10時間連続紡糸した際の糸切れ回数、10時間連続紡糸後のパック圧上昇率の測定結果を表1に示す。
実施例1〜6からわかるように、熱水洗浄工程、濾過工程、アルカリ土類金属を含む水溶液または熱水での洗浄工程を順次経て、更に熱処理時の温度、時間、そして酸素濃度を制御することにより、MFRが100g/10分を超える500g/10分以下の溶融粘度を有しながら、ガス発生量や残さ量が少ないPPS樹脂を得ることができ、溶融紡糸時の糸切れ回数や口金パック樹脂内圧に代表される溶融紡糸特性が著しく向上することがわかる。
本発明によれば、溶融時の揮発性成分の発生量が少なくかつ溶融紡糸性に優れたポリフェニレンスルフィド樹脂を、高い生産効率で安価に得ることができる。
Claims (4)
- スルフィド化剤とポリハロゲン化芳香族化合物とを有機極性溶媒中で反応させて得られるポリアリーレンスルフィドを、以下の各工程を順次行うことにより、真空下320℃で2時間加熱溶融した際に揮発するガス発生量が0.2重量%以下であり、かつ250℃で5分間、20倍重量の1−クロロナフタレンに溶解してポアサイズ1μmのPTFEメンブランフィルターで熱時加圧濾過した際の残さ量が3.0重量%以下であり、かつメルトフローレート(ASTM D−1238−70に従って温度315.5℃、荷重5000gにて測定)が100g/10分を越え500g/10分以下であり、かつ示差走査型熱量計で求めた溶融結晶化ピーク温度が100〜210℃であるポリフェニレンスルフィド樹脂を得ることを特徴とするポリアリーレンスルフィド樹脂の製造方法。
(1)スルフィド化剤とポリハロゲン化芳香族化合物とを有機極性溶媒中200〜290℃の温度で反応させ、反応物からポリマーを回収する工程、
(2)得られたポリマーを80〜200℃の熱水で1回以上洗浄する工程、
(3)濾過することにより濾過液とポリマーとを分離する工程、
(4)分離したポリマーを、アルカリ金属を含む水溶液、アルカリ土類金属を含む水溶液、または熱水から選ばれる1種以上の水溶液に浸漬させて80〜200℃で1回以上洗浄する工程、
(5)洗浄後のポリマーを熱処理する工程。 - 前記工程(1)のポリマー回収がフラッシュ法であることを特徴とする請求項1記載のポリフェニレンスルフィド樹脂の製造方法。
- 熱処理が、酸素濃度2体積%以上の雰囲気下、160〜270℃、0.1〜17時間行うことを特徴とする請求項1または2に記載にポリフェニレンスルフィド樹脂の製造方法。
- 熱処理が、酸素濃度2体積%未満の雰囲気下、210〜270℃、0.2〜50時間行うことを特徴とする請求項1または2に記載にポリフェニレンスルフィド樹脂の製造方法。
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Cited By (2)
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KR101584849B1 (ko) | 2013-01-07 | 2016-01-14 | 주식회사 엘지화학 | 폴리페닐렌 설파이드 수지 조성물 및 폴리페닐렌 설파이드 섬유의 제조방법 |
JP2017155065A (ja) * | 2016-02-29 | 2017-09-07 | 東レ株式会社 | ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物からなる配管部品 |
-
2009
- 2009-03-26 JP JP2009076422A patent/JP2010229233A/ja not_active Withdrawn
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